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第5章 地域保健医療福祉における人材育成
第5章 地域保健医療福祉における人材育成 - 129 - 第5章 地域保健医療福祉における人材育成 現状と課題 1 医療専門職による質の高いサービス提供と人材育成 ● 高齢者人口の増加や医療の高度化・専門化、保健医療ニーズの多様化等により、一層の医療 需要の増加が見込まれています。 ● こうした動きに応えるには、医師、歯科医師、薬剤師、看護師をはじめとする様々な職種が 専門性を活かし相互に連携することによって、質の高いサービスを提供する必要があります。 ● 現代の地域保健医療福祉において安定したサービスを提供していくため、保健医療従事者の 養成・確保と質の向上を図ることが重要な課題となっています。 2 医師 ● 都内で医療施設に従事している医師数は、39,965 人(人口10万対 303.7 人・平成22年末 現在)で、圏域では 2,860 人(人口10万対 285.6 人・平成22年末現在)となっています。圏 域にある48病院のうち、医師法に基づく基幹型臨床研修病院が4か所あります。保健所は臨床 研修医や医学生の保健所実習を受け入れています。圏域における一般診療所は827か所あり、 圏域各市の地区医師会が会員向けに各種の研修を実施しています。 ● 地域医療支援病院(医療法第4条)は地域の医療従事者の資質向上のための研修等を実施し ています。圏域では、日本赤十字社東京都支部武蔵野赤十字病院(平成18年5月都知事承認)、 財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院(平成18年5月都知事承認)があります。 ● 患者中心の医療の実現に向けて医療連携体制を構築するためには、患者やその家族と身近に 接するかかりつけ医の役割が重要となっています。都は、東京都医師会と協力して在宅療養など に対応するかかりつけ医の機能強化に努めています。 3 歯科医師 ● 都内の歯科医師は 16,054 人(人口10万対 122.0)で、圏域では843人(人口10万対 84.2)となっています。圏域各市に地区歯科医師会があり、会員向け研修会を実施していま す。 ● 障害者や高齢者等の在宅療養患者はもちろん、誰もが身近な地域で適切な歯科疾患の予防・ 治療が受けられるようにするため、かかりつけ歯科医を中心とした歯科医療連携を推進していく 必要があります。そのためには、かかりつけ歯科医の資質向上が求められています。 ● 保健所は、北多摩南部地域保健医療協議会地域医療システム化推進部会口腔保健分科会を毎 年度定期的に開催して、圏域の口腔保健関係者へ情報提供に努めています。 ● 保健所は、都立多摩総合医療センターの臨床研修歯科医に対して、保健所事業や公衆衛生活 動について研修を実施しています。 - 130 - 4 薬剤師 ● 都内の薬剤師は、44,356 人(人口10万対 337.1)で、圏域では 2,496 人(人口10万対 249.2) となっています。医療法の改正(平成18年)により薬局が医療提供施設に位置付けられました。 また、薬事法の改正(平成21年)により薬局の医療安全や従業者に対する研修の実施等が規定 されています。薬剤師法の改正(平成18年)により、薬局薬剤師には医療従事者としての資質 向上が求められています。 ● 医療機関では医療の高度化からチーム医療に取り組んでおり薬剤師の役割が高まっています。 医薬分業の進展に伴い地域医療に貢献する薬局の重要性が増しており、質の高い薬剤師の養成が 求められています。 ● 良質な医療を提供する体制を確立するため、薬剤師によるかかりつけ薬局機能を一層充実さ せるとともに、在宅療養患者の居宅等において調剤業務の一部を行うなど、在宅療養への体制整 備を図っていく必要があります。 ● 圏域の地区薬剤師会では、薬剤師の資質向上のため会員を対象とした研修会を実施していま す。保健所は、圏域の地区薬剤師会と連絡会議を開催して情報交換に努めています。 5 看護職員(保健師、助産師、看護師・准看護師) ● 都内の看護職員数は毎年増加傾向にありますが、高齢化の進展や医療技術の高度化・専門化等 により、看護職員の需要は一層増加しています。 ● 都内における看護職員のうち、看護師は、86,033 人(人口10万対 653.8)で、圏域では 7,869 人(人口10万対 785.7)となっています。助産師は、3,312 人(人口10万対25.2)で、 圏域では325人(人口10万対32.5)となっています。保健師は、3,403 人(人口10万 対25.9)で、圏域では268人(人口10万対26.8)となっています。 ● 医療の高度化・多様化や医療技術の進歩、患者のニーズが増大する中で、新人看護職員の看護 実践能力と医療現場が期待する能力にギャップがあり、新人看護職員の早期離職が少なくありま せん。また、妊娠・出産・育児等で医療の現場を離れると、その後に復帰できない看護師等がい ます。新人看護職員の離職防止や離職看護師等の再就業促進が必要です。 ● 東京都は、社団法人東京都看護協会に委託して、再就業を希望する看護職員に都内の東京都 看護職員地域就業支援病院(29か所)で、経験や技術に応じた復職支援研修や就業相談を実施 しています。圏域では、3病院が指定されています(平成24年度)。そのほかに、各病院では 看護の質の向上や医療安全対策等の院内研修が実施されています。 ● 東京都は、看護サービスの質を向上するため、保健・医療・福祉に携わる看護管理者がそれ ぞれの立場から看護の資質向上に係る諸問題を討議・検討する場として、「看護管理者連絡会」 を設置しています。全体会の下に区部部会・多摩部会・教育部会の3部会を設置して、日常業務 に伴う諸問題の検討や情報交換をしています。 ● 東京都看護協会や東京都ナースプラザは、様々な分野で活躍できる看護職員を育成する研修 を実施しています。東京都ナースプラザは、看護師等の再就業促進の拠点として再就業に向けた 研修や就業相談、看護に関する情報提供を行い、都民への普及啓発活動を実施しています。 ● 保健所では、保健医療関係の大学等の要請に基づいて保健師学生を受け入れ、保健所事業の - 131 - 説明や公衆衛生活動の実践的指導を行っています。圏域各市でも保健師学生等の実習を受け入れ ているほか、圏域の医療機関、福祉施設等では、それぞれの分野で学生実習を受け入れています。 6 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 ● 都内の理学療法士は 3,431.5 人(人口10万対26.1) 、作業療法士は 1,987.2 人(人口10 万対15.1) 、言語聴覚士は 670.4 人(人口10万対5.1)で、圏域の理学療法士は 229.5 人(人 口10万対22.9) 、作業療法士は 174.2 人(人口10万対17.4) 、言語聴覚士は42.3人 (人口10万対4.2)となっています。 ● リハビリテーションを行う理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、患者の早期回復や急性期 医療から回復期、維持期等の医療連携で重要な役割を担っています。リハビリテーション専門職 の国家資格取得者が年々増加傾向にあり、現場経験が不足する若手療法士等の資質向上が求めら れています。また、訪問リハビリテーションの普及促進に向けて、総合的な技術や判断力、コミ ュニケーション能力を有した人材の育成が必要とされています。訪問リハビリテーションの知 識・技術に関する研修を実施し、 訪問リハビリテーションを行う人材を育成する必要があります。 ● 職能団体である東京都理学療法士協会、東京都作業療法士会、東京都言語聴覚士会は、会員 向けの研修を実施しています。勤務する病院で研修が行われています。北多摩南部保健医療圏脳 卒中ネットワーク研究会は、講演会や研修会、シンポジウム等を実施し、リハビリテーション関 係者の資質向上に努めています。 7 歯科衛生士 ● 都内の歯科衛生士は、10,714 人(人口10万対81.4)で、圏域では694人(人口10 万対69.3)となっています。東京都歯科衛生士会が会員向けの研修会を実施しています。 ● 保健所は、北多摩南部地域保健医療協議会地域医療システム化推進部会口腔保健分科会を毎 年度定期的に開催して、圏域の口腔保健関係者へ情報提供に努めています。また、歯科医療専門 学校の歯科衛生士学生に保健所事業の説明や公衆衛生活動の実践的な指導を行っています。 8 管理栄養士、栄養士 ● 都内の病院に従事する管理栄養士は 1,480.7 人(人口10万対11.3)、栄養士は 691.1 人 (人口10万対5.3)で、圏域の管理栄養士は 122.9 人(人口10万対12.3)、栄養士は 68.3人(人口10万対6.8)となっています。 ● 保健所では、食を通した健康づくりの担い手である特定給食施設等の管理栄養士や栄養士に 対して、巡回・来所による個別指導や栄養管理講習会等を実施して、施設の特性に即した給食管 理と栄養管理を指導しています。 ● 保健所は、栄養士の資格を活かして地域で自主的に都民の食生活支援活動及び市の栄養事業 の協力を行っている地域活動栄養士会に対して、研修会を開催するとともに情報提供をして支援 をしています。 ● 保健所は、管理栄養士養成施設の学生に対して、公衆衛生学実習の受入を行っています。 - 132 - 9 都保健所、市保健センターにおける専門職種 ● 圏域における行政機関の専門職種は、保健所に10職種(医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、 保健師、診療放射線技師、歯科衛生士、栄養士、福祉、衛生監視)、6市の保健センターに3職 種(保健師、歯科衛生士、栄養士)いて、集合研修や職場研修により人材育成に努めています。 ● 市の保健センターにいる専門職種は全職員が常勤職員であるとは限りません。職種によって は常勤職員と非常勤職員、臨時職員が混在している場合や非常勤職員、臨時職員の非正規職員だ けで組織されていることもあります。圏域全体で見ると、専門職種が各市単位に少数で分散して いるため、相互の経験交流が不十分となる傾向があります。 ● 保健所では、平成9年度から圏域6市の保健医療福祉関係者を対象にして、 「市町村等支援研 修」(圏域研修)を実施しています。各市の新任期保健師(1~3年目)を対象とした新任期保 健師研修などを実施し、公衆衛生に関する資質向上やネットワークづくりに努めています。 今後の取組 1 人材の育成、資質向上のための支援体制整備 【保健所】 ● 研修・教育の実施 保健所は、圏域における保健衛生の広域的、専門的、技術的な拠点として、保健医療福祉関係 者に研修などを行い、公衆衛生の向上に努めていきます。 ● 研修・実習生の受入れ 地域の保健医療を担う人材の育成や公衆衛生に理解のある保健医療関係者の人材を確保する ため、大学等の要請を踏まえて研修生や学生を受け入れ保健所事業や公衆衛生活動の実践的指導 を行います。 ● 衛生教育 地域住民が保健衛生に対して理解と関心を高め、健康で快適な日常生活が送れるように、保健 所はそのすべての業務を通じて衛生教育活動を行います。 【病院、診療所、歯科診療所、薬局等】 ● 資質向上と医療安全 病院、診療所、歯科診療所、助産所及び薬局等では、集合研修や職場研修等を行い、職員の資 質向上と医療安全対策に取り組みます。 【関係機関】 ● 会員や関係職員の資質向上 圏域各市の地区医師会、地区歯科医師会、地区薬剤師会は、会員の資質向上に努めるとともに 人材の育成を継続していきます。 【重点プラン】 人材の育成、資質向上のための支援体制を整備します 〔評価指標〕 市町村等関係職員向けの研修 〔目 標〕 充実する - 133 - - 134 -