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安心・安全な社会の実現に向けた NTTコムウェアの防災・医療
デジタルペン 総合的な防災力向上を目指す危機管理・防災ソリューション 救急医療 音声認識 安心・安全な社会の実現に向けた NTTコムウェアの防災・医療ソリューション やまもと てるのぶ まつもと ひ ろ し 山本 輝信 /松本 博志 か わ な ひでゆき あ や だ じゅんこ 川名 英之 /綾田 純子 か つ き 本稿では,災害時における発生から復旧・復興までのさまざまなシーンに あ き 香月 亜希 おいて活用いただける,安心・安全を確保するための防災支援ソリューショ NTTコムウェア ンを紹介します. NTTコムウェアでは,これまで培っ 安心・安全を確保するための防災 ソリューション 地震,津波,台風,洪水――.大 規模な災害が起きたとき,発生の情報 主に地方自治体の災害対策本 てきたユーザ・インタフェース技術を 部向けに,災害情報の収集と指 用いて,災害現場におけるさまざまな 揮支援をサポートする「タンジブ シーンで活用できる防災ソリューショ ル災害情報管理システム」 ンを提案しています. を迅速に把握し,復旧・復興するまで ① ② 災害現場から病院搬送までの間 本稿では,活用するシーンに合わせ に適切な治療に着手できるよう支 の対策をいかに講じるかということは, て次の3つのソリューションを紹介し 援する「モバイル・テレメディシ 地方自治体にとって重要な責務です. ます(図1). ン・システム」 災害発生 初動期 平常期 災害対策本部 被災状況を把握, 情報を入力蓄積・ タンジブル災害情報 管理システム 災害図上訓練・ 市民への啓蒙活動 対策の指揮・支援 応急対応期 被災現場・避難場所 救急医療活動 避難所・避難者 の把握 応急処置・ 救急搬送 モバイル・テレメディシン・ システム Panasonic 60 83 120 80 40 復旧復興期 被災現場 被災建物点検 日常の点検・補修 構造物点検支援システム 図1 NTTコムウェアの防災・医療ソリューション 42 NTT技術ジャーナル 2010.8 12 特 集 能にした複数ペン同時利用環境,電子 イズのデジタルペーパー上に地図デー の社会インフラデータを災害の復 地図上での被災数値情報入力機能, タを投影し,デジタルペンを用いて, 旧 支 援 の対 策 立 案 に役 立 てる 数値情報のグラフ化・CSV(Comma 従来の紙作業感覚で被災情報,意思 Separated Values) 出 力 機 能 , 平 決定内容の入力・共有・対応履歴の 常時のDIG(Disaster Imagination 蓄積を行うことができます(図2). Game)訓練機能を開発し,現在複 (1) 複数ペン同時利用環境の実現 ③ あらかじめ収集された橋梁など 「構造物点検支援システム」 タンジブル災害情報管理システム 数の自治体で導入準備を進めています. NTTコムウェアでは,災害対策本部 ■災害時の災害対策本部での活用 での対策検討,災害情報の管理,意 災害対策本部などの多くの災害対応 現場では,複数人で協調して作業が行 思決定を支援する,ペン入力を活用し 自治体の災害対策本部では,災害 える環境が必要になります.今までPC たテーブル型 のG I S ( G e o g r a p h i c が起きた際に各関係機関から送られる でのキーボード・マウス操作やタッチ Information System)システム「タ 無線,FAX,電話での報告内容を紙 パネル操作では複数人で協調して作業 地図上にペンや付箋紙等で書き込み, を行うのが困難でした.本システムで 発を行ってきました.このシステムを 状況の把握を行っていました.本シス は,1システム5本のデジタルペンを さらに発展させ,複数人での作業を可 テムは,机上に敷いたA1またはA0サ 同時に利用することが可能です.これ (1) ンジブル防災ソリューション」 の開 サーバ端末 被災マップ作成 入力開始/終了 新規/継続 複数ペン同時作業 過去データ閲覧 データ入力終結 凡例表示用端末 1:1 0 0 0 1:1 5 0 0 被災情報(数値・時刻情報) の書込み 1:2 5 0 0 1:5 0 0 0 1:7 5 0 0 1:1 0 0 0 0 数値・グラフ化 住宅地図 航空写真 CSV出力 ハザードマップ 地図レイヤ操作 2009年 3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 発災日時 : 2009/01/31 13:35 30 31 印刷 データ保存日時 表示マーク等を 表示するパレット 選択日時 : 2009/01/31 16:30 発災後 0日 02:55経過 終了 図2 タンジブル災害情報管理システムの投影イメージ NTT技術ジャーナル 2010.8 43 総合的な防災力向上を目指す危機管理・防災ソリューション によって,それぞれが別々の作業を同 だけでなく,アニメーション機能を搭 時に行うことができるため,関係各課 載しているので,自治体がすでに整備 が連携して作業を行うことが可能にな しているさまざまなハザードマップ情報 ります. を基に,発災点(ポイント)と中間 「モバイル・テレメディシン・シス 点,終点をデジタルペンで書き込むこ テム」は,搬送中の患者の心電図やバ とで,災害の広がりをアニメーション イタルサイン(脈拍,血圧等初期診断 で表現することができます.これによっ に有用なデータ)および救急車内に搭 (人的被害・建物被害・道路被害) て,時々刻々と変化する災害のイメー 載された小型カメラからの映像を,第 を,自動で集計しグラフ化することが ジを高めながら対策の検討を行うこと 3世代携帯電話回線(FOMA回線) 可能で,その結果をCSV出力すること が可能です. とインターネットを介して,受入先病 ができます.また,地図上に表示され ■被災情報デジタル化のメリット 院にリアルタイムで共有するシステム (2) 電子地図上での被災数値情報 入力 電 子 地 図 上 に入 力 した被 災 情 報 モバイル・テレメディシン・ システム です(図3). ているアイコンをデジタルペンでタッチ 紙中心で行っていたアナログ作業を し,被災数・被災時刻を変更するこ デジタル化し,災害時の情報共有や意 とや被災マップの作成を行いながら, 思決定の迅速化を支援するだけでなく, 器病センター(大阪府吹田市)主催 関係機関への報告書作成作業を同時 住民を交えた復旧・復興計画の検討, で,産学官共同連携により開催された に行うことができます. 平常時のDIG訓練,災害に強いまち 「循環器救急におけるモバイルテレメ ■平常時のDIG訓練での活用 づくり計画の策定への活用を行うこと ディシン研究会」を基に開発され,現 で,平常時∼災害時∼復旧・復興時 在,大阪府吹田市をはじめ,13以上 常時のDIG訓練システムとしても活用 のPDCA(Plan-Do-Check-Action) の自治体に導入されています. することが可能です.防災マップ作成 サイクルの管理が期待できます. 本システムは,災害時だけでなく平 本システムは,2002年に国立循環 ◆救急車側 ◆病院側 心電図・バイタル情報 コントローラ 患者映像 心電図データ バイタルデータ (血圧・脈拍等) FOMA 回線 PC ビューア スタッフの招集 受入・治療準備 救急車内映像 インターネット 救命士へ処置指示 指示に基づく処置 図3 モバイル・テレメディシン・システムの基本構成 44 NTT技術ジャーナル 2010.8 特 集 ■救急搬送に求められること なる作業はありません. データを収集する点検業務をより効率 救急搬送に求められることは,1秒 病院側では,救急車内の患者の映 的に行う支援として,音声認識やデジ でも早く患者を病院に送り届け,病院 像やバイタルサインをPCの画面で確認 タルペン技術を活用した点検支援シス の医師に引き継ぎ,患者を救命するこ することができます.また,患者の状 テムを開発しています. とです.そのために患者の状態をでき 態を確認するために医師側からカメラ ■音声認識技術を利用した点検支 るだけ正確に病院に伝えることが求め を操作できます. 援システム られます.病院側では,救急車からの 病院側ではこれら心電図・バイタル 次に音声認識技術を利用した点検 情報を基に,患者到着前までにICU サイン・映像といった情報を総合的に 支援システムの利用イメージを紹介し の確保・医療機器の準備やスタッフ招 判断することにより,救急救命士に対 ます(図4). 集など,病院側の適切な事前準備が して到着までに必要な指示を与えなが 橋梁等の点検は,従来,現場で野 求められます.受入先病院の医師と正 ら,病院側においても適切な分野の医 帳と呼ばれるメモに手書きで点検結果 確な情報共有を行うことで,その連携 療スタッフの事前招集,症状に応じ (損傷内容,場所等)を記載し,それ がスムーズとなり,患者の救命率向上 た医療機器類の準備など,患者受入 を事務所に持ち帰った後,PCへ手入 につながります. れ後すぐに治療が開始できるような 力でデータ登録,報告書作成作業を 体制づくりを整えることが可能になり 行っています.通常写真も撮影します 療までの時間を少しでも短縮し,かつ ます. が,大量の写真データを野帳と照合し 病院側でもすぐに適切な治療に着手 ■安心・安全のために ながら報告書にまとめる作業は多くの 一刻を争う救急搬送の現場で,治 労力がかかり,またヒューマンエラー できるよう支援できないか.このよう 患者情報の複数病院への一斉送信 な問題意識から開発されたのが,「モ や,地域内病院間での受信データ共有 バイル・テレメディシン・システム」 などを実現することで,救急車,地域 点検支援システムでは,野帳への手 です. の病院・診療所および消防指令セン 書きの代わりに,点検結果をICレコー ■救急搬送における現状 ターと連携した,地域医療ネットワー ダに接続したマイクに発話します.写 クができます. 真データとともに,録音ファイルを取 救急車の現場到着から病院での患者 受 入 れまでの全 国 平 均 搬 送 時 間 は 今後とも,普段の対応だけでなく, が発生していました. り込み音声認識を実施することで,点 1997年に19.9分だったものが2007年 災害時においても救命の一助となるシ 検結果のテキスト化および写真データ には2 6 . 4 分と長時間化がみられてい ステムを目指していきたいと考えてい とのリンク付けを行い,報告書を自動 ます. ます. 的に作成します.図面との連携等,点 加えて,急性心筋梗塞の例では,患 者が病院到着後に亡くなる病院内死亡 率は過去25年間で約20%から約5% 構造物点検支援システム 橋梁などの構造物(社会インフラ) 検結果報告に必要な機能を備え,導 入した企業からは報告書作成稼働が約 半分になったと評価を受けています. ■デジタルペンを利用した点検支援 まで減少した一方,病院到着前の搬送 を適切に維持管理するためには,定期 中に亡くなる病院外死亡率は,依然 的な点検で情報を収集することが必要 システム 30%台のままで推移し続けている現状 です.平常時の点検により収集された 点検業務では,図面を用いて実施さ があり,医療技術の進歩だけでは解 データは災害時の対策立案の基礎デー れるものもあります.通常,現場で図 決できない壁があることを物語ってい タともなります.点検業務の重要性は 面用紙へ手書きした点検結果を事務所 ます . ますます高まると考えられますが,限 でCADソフトを利用して描き直す作業 ■救急車から患者情報を伝送する られた財源の中でより効率的な実施も をしています.また,図面用紙に記載 求められます. したメモ書きを基に,資産管理台帳等 (2) 救急車からは,情報を送る搬送先の 病院を選択すれば,救命処置の妨げに NTTコムウェアでは,正確,詳細な のデータベースに点検結果をテキスト NTT技術ジャーナル 2010.8 45 総合的な防災力向上を目指す危機管理・防災ソリューション 音声による結果記録 音声認識 ■“話す”という記録方法で,ハンズフリー で簡単な記録を実現. 空いた両手を体の固定に使うことで,点検員 の安全を守ります. 写真連携 報告書作成 ■音声認識技術により,点検結果を自動的に文字化し,報告書作成稼働を低減. 同時に,データの入力ミスなども軽減. 正確性の向上 点検原価の削減 安全性の向上 情報活用 うまく認識されなかった音声も, 聞き返し,データ追加可能. 音声認識で文字化した点検結果と写真を リンクさせて表示. 損傷の状態や,現地の状況を発話します. ICレコーダ& ノイズキャンセルマイク 取り込まれた写真を 一覧表示. ◆損傷発話例 ・1径間目・主桁・0101・腐食・ランク大小b 損傷の写真を撮影します. デジタルカメラ ■結果をデータベースとして 管理することで,履歴管理, 損傷進行の分析等データの 有効活用を促します. 写真番号を発話します. ◆例 写真番号 1 データ有効利用 報告書および点検結果と連動した図面を自動作成. 傾向分析,緊急時等に利用 図4 音声認識を用いた構造物点検支援システムの利用イメージと導入メリット 情報として,登録しています. デジタルペンを利用した点検支援シ 今後の取り組み ステムでは,デジタルペンで図面用紙 今後は,本稿で紹介したソリュー 上に記載したスケッチ等をCADソフト ションの連 携 を検 討 するとともに, 上に自動反映します.また,「異常な NTT東日本・NTT西日本の法人営 し」や「要対処」等の状態を記載し 業,各支店と連携して,全国の自治 たパレット用紙の該当項目(状態)を 体等へ提案・提供していく予定です. チェックした後,図面上の資産管理番 ■参考文献 号や図形(オブジェクト)をデジタル ペンでチェックすることで,該当資産 の状態(点検結果)をデータベースに 登録します. このように,図面用紙にペンで手書 きするという従来と同じ作業で,現場 で記録した点検結果を CADファイル 上とデータベースへ自動的に登録し, 点検結果整理,報告作業の効率化を 支援します. 46 NTT技術ジャーナル 2010.8 (左から)山本 輝信/ 松本 博志/ (1) 山本・松本・綾田・香月・小林:“NTTコム ウェアの次世代防災ソリューション,”NTT 技術ジャーナル,Vol.21,No.9,pp.40-44, 2009. (2) 総務省消防庁:“平成20年度版消防白書,” 2009. 川名 英之/ 綾田 純子/ 香月 亜希 NTTコムウェアでは,さまざまな最先端 技術を活用し,幅広いシーンで利用可能な 防災ソリューションの技術開発を通じて, より安心な社会の実現に貢献します. ◆問い合わせ先 NTTコムウェア エンタープライズ・ソリューション事業本部 SCMソリューション部 TEL 03-5796-3600 FAX 03-5463-5461 E-mail bousai nttcom.co.jp