...

2016年度シラバス

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

2016年度シラバス
平成28年度
(2016)
法務研究科
シラバス
京 都 産 業 大 学
平成28年度 法務研究科 シラバス
(頁)
1.憲法Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.憲法Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.行政法Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・・・
4.行政法Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・・・
5.基礎演習(憲法) ・・・・・・・・・・・・
6.憲法演習 ・・・・・・・・・・・・・・・
7.公法演習 ・・・・・・・・・・・・・・・・
8.行政法演習 ・・・・・・・・・・・・・・
9.公法総合演習 ・・・・・・・・・・・・・
10.民法Ⅰ(契約法) ・・・・・・・・・・・・・
11.民法Ⅱ(物権法・損害賠償法) ・・・・・・・
12.民法Ⅲ(金融取引法) ・・・・・・・・・・
13.民法Ⅳ(家族法) ・・・・・・・・・・・・
14.企業法Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・・
15.企業法Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・・
16.企業法Ⅲ ・・・・・・・・・・・・・・・
17.民事手続法Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・
18.民事手続法Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・
19.基礎演習(民法) ・・・・・・・・・・・・・
20.基礎演習(商法) ・・・・・・・・・・・・
21.民法演習Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・
22.民法演習Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・
23.企業法演習 ・・・・・・・・・・・・・・
24.民事訴訟法演習Ⅰ ・・・・・・・・・・・・
25.民事訴訟法演習Ⅱ ・・・・・・・・・・・
26.民事法総合演習 ・・・・・・・・・・・・
27.刑法Ⅰ(概論・総論) ・・・・・・・・・・
28.刑法Ⅱ(各論) ・・・・・・・・・・・・・
29.刑事訴訟法Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・
30.刑事訴訟法Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・
31.基礎演習(刑法) ・・・・・・・・・・・・・
32.刑法演習Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・
33.刑法演習Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・
34.刑事訴訟法演習 ・・・・・・・・・・・・・
35.刑事法総合演習 ・・・・・・・・・・・・・
36.法曹倫理(四宮クラス) ・・・・・・・・・
37.法曹倫理(田中クラス) ・・・・・・・・・・
38.民事訴訟実務の基礎 ・・・・・・・・・・・
39.刑事訴訟実務の基礎 ・・・・・・・・・・・
40.法情報学 ・・・・・・・・・・・・・・・
41.法文書基礎 ・・・・・・・・・・・・・・
42.民事模擬裁判 ・・・・・・・・・・・・・
43.刑事模擬裁判 ・・・・・・・・・・・・・
44.実務特殊Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・
45.実務特殊Ⅲ ・・・・・・・・・・・・・・
46.ローヤリング・クリニック ・・・・・・・・
47.エクスターンシップ ・・・・・・・・・・
48.法理論 ・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2
4
6
7
8
10
12
13
14
19
20
22
25
27
29
31
32
34
34
35
36
38
41
42
43
44
46
48
49
51
52
52
53
54
55
56
58
59
60
61
61
63
64
65
65
66
67
(頁)
49.ローマ法 ・・・・・・・・・・・・・・・ 69
50.比較法Ⅰ(英米法) ・・・・・・・・・・・・ 71
51.比較法Ⅲ(アジア法) ・・・・・・・・・・・ 72
52.
「法の支配」と政治学 ・・・・・・・・・・・ 74
53.公共政策と法 ・・・・・・・・・・・・・ 76
54.企業会計と法 ・・・・・・・・・・・・・・ 76
55. 精神医療と法 ・・・・・・・・・・・・・ 77
56.知的財産法講義Ⅰ ・・・・・・・・・・・・ 78
57.知的財産法講義Ⅱ ・・・・・・・・・・・・ 80
58.知的財産法演習 ・・・・・・・・・・・・ 82
59.労働法講義 ・・・・・・・・・・・・・・・ 85
60.労働法演習 ・・・・・・・・・・・・・・ 87
61.倒産法講義Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・ 89
62.倒産法講義Ⅱ ・・・・・・・・・・・・・・ 91
63.倒産法演習 ・・・・・・・・・・・・・・・ 94
64.執行・保全法 ・・・・・・・・・・・・・・ 95
65.経済法講義 ・・・・・・・・・・・・・・ 96
66.経済法演習 ・・・・・・・・・・・・・・・ 97
67.金融商品(証券)取引法 ・・・・・・・・・・ 99
68.保険法 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 101
69.租税法講義 ・・・・・・・・・・・・・・・ 102
70.租税法演習 ・・・・・・・・・・・・・・ 104
71.国際租税法 ・・・・・・・・・・・・・・ 105
72.国際取引法 ・・・・・・・・・・・・・・ 107
73.刑事学 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 109
74.国際法 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 110
75.医事法 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 112
76.環境法講義 ・・・・・・・・・・・・・・ 114
77.環境法演習 ・・・・・・・・・・・・・・ 115
78.情報法 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 116
79.国際人権法 ・・・・・・・・・・・・・・ 118
80.消費者法講義 ・・・・・・・・・・・・・ 119
81.消費者法演習 ・・・・・・・・・・・・・ 121
82.人権問題演習 ・・・・・・・・・・・・・ 123
83.犯罪被害者と法 ・・・・・・・・・・・・ 124
84.民法Ⅱ(物権法)(旧:カリキュラム) ・・・・・・ 125
85.民法Ⅲ(損害賠償法)(旧:カリキュラム) ・・・・ 126
86.民法Ⅳ-Ⅰ(金融取引法1)(旧:カリキュラム) ・・ 128
87.民法Ⅳ-Ⅱ(金融取引法2)(旧:カリキュラム) ・・ 129
88.刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)(旧:カリキュラム) ・・・・・ 131
89.刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)(旧:カリキュラム) ・・・・・ 132
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
憲法Ⅰ
中山 茂樹
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
講義の内容
憲法は、ある政治社会における「ものの決め方」を定めた法である。
「人の物を盗んではいけない」
「自
動車は左側通行」
「A氏はその物の所有権者である」などなど……このように、社会では、多くのこと
が決まっているし、決めないといけない。では、それはどのようにして決めるのだろうか。たとえば、
「多数決」というのは、ものを決める方法のひとつである。しかし、多数決では決められない事柄もあ
るだろうし、多数決に参加できるのはいったいどの範囲の人なのだろうか。社会がうまく成り立つため
には、こういったことを考えておかなくてはならない。
本講義は、国家を「ものを決める装置」と捉え、そのような国家を創設し規制するものとして憲法を
理解した上で、日本国憲法が定める統治機構と人権保障のしくみについて概説する。
講義目的
日本国憲法の定める統治機構全般(国会、内閣、裁判所および国民)を概観し、その組織および作用
の基本的原理と、その具体的諸問題への適用のあり方、とりわけ人権保障のしくみの基礎について理解
することを目的とする。これらの考察は、国会の立法活動を含む国家作用全般に対する憲法の統制、と
くにその際の司法権の果たすべき役割について洞察を深めるための基盤となる。2年次以降における
「憲法 II」
・
「憲法演習」における人権論の学修との関連にも留意するとともに、行政法の理解のための
基礎にもなるようにしたい。本科目の学修によって今後の公法系科目の履修の基礎を確立することを目
指す。
容
まったくの初学者を念頭において、憲法の基礎を概説する。下記に示した計画に沿って進行する。
画
1 立法権(1)
憲法 41 条が国会を「唯一の立法機関」とすることの意義について理解する。とくに、法律の留保
の原則、法律の一般性について理解し、具体的事案での処理能力を修得する。
2 立法権(2)
1をふまえた上で、立法の委任の限界、命令の法律適合性について理解し、具体的事案での処理能
力を修得する。
3 基本権論へのイントロダクション
裁判所が基本権の制限の合憲性を審査する際の一般的な枠組みについて理解する。
4 基本権を制限する法律の合憲性
猿払事件判決を題材に、基本権を制限する法律の合憲性審査のあり方について理解し、具体的事案
での処理能力を修得する。
5 基本権を制限する行政活動の合憲性
よど号ハイジャック記事抹消事件判決を題材に、基本権を制限する行政活動の合憲性審査のあり方
について理解し、具体的事案での処理能力を修得する。
6 外交統制権・財政統制権
外交の民主的統制について、条約承認権を中心に理解するとともに、国の財政活動について、租税
法律主義と予算承認権を中心に理解する。とくに、憲法 84 条の「租税」の意義、課税要件法律主義、
課税要件明確主義、財政決定の憲法的限界について理解する。
7 国会の組織と運営
両院制と国会議員の職責と特典、また、議院自律権について理解する。とくに、国会議員の免責特
権、議院自律権と司法審査の限界について理解し、具体的事案での処理能力を修得する。
8 議院内閣制と天皇
議会と政府の関係の一類型としての議院内閣制について、衆議院の解散に関する問題を中心に理解
する。また、天皇について理解する。
9 行政権と政府統制権
内閣の権限としての行政権の概念を中心に、内閣の組織と権能や国会の内閣に対する責任追及につ
いて理解する。とくに、国会の権限との関係に注意し、独立行政委員会の合憲性や議院の国政調査権に
ついて理解する。
10 裁判所
独立の法原理機関としての裁判所の地位とともに、裁判所の組織について理解する。とくに、司法
の一元性・終局性と司法権の独立(最高裁判所の規則制定権を含む)について理解し、具体的事案での
処理能力を修得する。
1
11 司法権
「法律上の争訟」性を中心にして司法権の概念について理解する。とくに、具体的事件・争訟とし
ての「法律上の争訟」を裁判する権限が立法権によっても原則として侵されないものとして裁判所に付
与され、他方で、
「法律上の争訟」性が司法権発動の要件となることを理解し、具体的事案での処理能
力を修得する。
12 付随的違憲審査制
合憲性審査制度の一類型としての付随的違憲審査制について理解する。とくに、付随的違憲審査制
が民主制との関係でもつ意義と、抽象的違憲審査制の合憲性について理解する。
13 国民と議会
国民の観念および国民主権の原理について、それらの多義性に着目して理解する。また、間接民主
制と直接民主制の問題を中心に、国民と議会の関係について理解する。とくに、
「全国民の代表」性に
ついて理解し、具体的事案での処理能力を修得する。また、憲法改正について理解する。
14 国家意思の形成と選挙制度
政党に関する問題を中心にして、個人個人の多様な意思からどのようにして国家意思が形成される
のかという問題について理解する。また、選挙法の基本原則や議員定数不均衡問題を中心に、選挙制度
について理解する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
15 地方自治
地方公共団体の権能を中心に、地方自治について理解する。とくに、条例制定権について理解し、
具体的事案での処理能力を修得する。
毎回、講義時に先立って、TKC上で講義内容を示した「講義ノート」を配布する。それを読み、ま
た、憲法の概説書をも参考にして(推薦する概説書の該当ページは、
「講義ノート」に記載している)
、
予習してくることが必要である。予習に役立てるために、基本的事項を概説した「予習ビデオ」を moodle
に掲載するので、事前に見てくること。
授業は、予習課題を課し、授業中にその答えをきく形で進める。また、
「講義ノート」や概説書を読
んでわからなかったところについて受講者から質問をうける。限られた時間の中で授業中に教員が説明
できる事項は、とくに重要なものに限定されるため、自習を十分に行ってほしい。小テストを随時課す
ことで、自習の確認をおこなう。
授業のあとには、やはり「講義ノート」を読んで復習し、内容の定着をはかってほしい。未消化のま
ま先に進んでしまわないよう、1年次には、復習に重点を置くことを勧める。宿題だけに時間を集中せ
ず、効率的な復習を行うようにしてほしい。
本講義は、統治機構論分野の相当な部分をカバーするが、時間の制約のため、平和と安全保障や日本
憲法史、憲法保障など十分に触れることができない領域がある。これらについては基本的には自習にゆ
だねられることになる。
講義の到達目標は、憲法の基本的事項を理解することである。とくに、統治機構についての基礎的な
法的知識(基本的な概念、思考枠組み、判例など)を修得することを重視する。その上で、具体的事案
に法を適用して処理する法的分析・推論能力、実定法制度を評価する批判的検討能力、それらを他の人
に説明することができる法的議論・表現・説得能力についても養いたいと考える。これらを通じ、法曹
に必要とされる正義の感覚や異文化理解の感覚を涵養することも目標とする。
2年次の「憲法 II」
「憲法演習」その他の公法系科目で必要とされる最低限の基本的な理解を得るこ
とが単位認定(60 点)の基準となる。目標に到達できるよう、通常の講義方式と対話方式を併用して授
業を進行する。
定期試験 70%、平常点 30%によって、上記の到達目標への達成度を評価し、履修要項に示された基
準にしたがって、成績評価とする。小テストやレポート(宿題)を随時課し、その合計を成績評価にお
ける平常点として計算する。授業不参加や小テストの遅れた提出は減点する。
定期試験は、上記の到達目標への達成度を確認するため、択一式および論述式の問題から構成する。
教科書はとくに指定しないが、判例集のほか、参考書の少なくともいずれかで学習することを薦める。
判例集
・高橋和之ほか編・別冊ジュリスト『憲法判例百選 I,II[第 6 版]
』
(2013 年,有斐閣)
・戸松秀典・初宿正典編『憲法判例(第 7 版)』
(有斐閣、2014)
参考書(概説書の例)
・毛利透=小泉良幸=淺野博宣=松本哲治『憲法 I 統治』
(有斐閣,2011 年)
・渋谷秀樹=赤坂正浩『憲法2統治[第 5 版]
』
(有斐閣,2013 年)
(ただし、今春改訂予定)
・大石眞『憲法講義 I[第 3 版]
』
(有斐閣,2014 年)
・野中俊彦=中村睦男=高橋和之=高見勝利『憲法 I[第5版]
』
,
『憲法 II[第5版]
』
(有斐閣,2012
年)
講 義 科 目 名 憲法Ⅱ
担 当 者 名 初宿 正典
配 当 学 年 2年次
2
学
期 春学期
単
講
授
授
位
義
業
業
目
内
計
数 2単位
必 修 ・ 選 択 必修
的 講義の内容
本講義は、統治機構分野(憲法Ⅰ)の知識を前提に、日本国憲法が保障する権利(基本的人権・基本
権)について概説する。憲法が保障する権利は、通常の民主的政治過程(議会による法律・条例やそれ
に基づく命令など)によっても原則として侵害してはいけない個人の保護範囲を憲法で定め、それが侵
害された場合の裁判所による救済(司法的救済)の制度を準備したものである。この授業は講義形式を
主としつつ、必要に応じて質疑を織り込み、課題に関連する問題についてのレポートによって理解度を
チェックしながら進める。評価に当たっては、出席、平常点(レポート)期末試験などの結果を総合し
て判定する。
講義の目的
憲法による権利の保障とその制限可能性について基本的な理解を得ることを目的とする。憲法による
権利の保障は、各国家機関にとって、それを原則的に侵害してはならないという意味で行為規範である
とともに、司法的救済と結びついて裁判規範ともなるものである。憲法の理解に際しては、この両方の
側面の理解を欠かすことができない。この授業では、基本的なポイントを個々の基本的人権について習
得し、さらに展開・発展的な科目(憲法演習)につなげることを目指す。
容 1.基本権保障の及ぶ範囲
画
基本権の享有主体性の問題、とくに外国人・団体・未成年者などの基本権主体性の有無・程度と、か
つて特別権力関係といわれた領域における憲法上の権利保障について学ぶ。また、憲法が保障する権利
が私的自治にも妥当するかという問題(いわゆる私人間効力論)についても基礎的な問題を学ぶ。
2.違憲審査制度の基本的枠組と違憲審査基準
公権力の行為が憲法で保障された権利を侵害しているかどうかを判断する枠組・基準について、基本
的な点をあらかじめ学んでおく。
3.包括的基本権
包括的権利としての憲法13条について学ぶ。とくに、幸福追求権の具体的な内容について、とくに
判例も認めている「プライバシーの権利」及び「自己決定権」を中心に学ぶ。
4.法の下の平等
「法の下の平等」の原則(14 条 1 項前段)と差別の禁止(同項後段)について、主要な関連判例を題材
に、憲法の要請がどのようなものかについて学ぶ。
5.思想・良心の自由、学問・教育の自由
内面的な精神活動の自由としての「思想・良心の自由」
(19 条)について学ぶ。また、それと同様の
性格をもつ学問の自由(23 条)や、教育に関する憲法上の諸問題についても考える。
6.信教の自由
信教の自由(20 条 1 項・2 項の信仰の自由と信仰活動の自由)について、代表的な判例を主たる題材
として学ぶ。
7.政教分離原則(1)
信教の自由と密接に関連する「政教分離原則」
(20 条 1 項後段、3 項、89 条)について、主要な論点
を代表的な判例を通じて学ぶ。
8.政教分離原則(2)
前回に引き続いて、政教分離原則に関わる最近の重要判例を中心に学ぶ。
9.集会・結社の自由
憲法 21 条 1 項の保障する集会・結社の自由及び外面的精神活動の自由としての表現の自由の性格と
内容について、その保障範囲と制約の問題を中心に一般的な理論を学ぶ。また、付随する問題である行
政情報公開や個人情報開示の基本的考え方などを学ぶ。
10.表現の自由(1)
表現の内容規制(性表現の規制など)の問題と「時・場所・方法」に関する内容中立規制の区分論など
について学ぶ。
11.表現の自由(2)
表現の自由の事前統制について、
「検閲の禁止」(21 条 2 項前段)や「事前抑制の原則禁止」について
学ぶ。特に、公安条例と裁判による差止めについても検討する。通信の秘密(21 条 2 項後段)の位置づけ
についてもここで概略学ぶ。
12.職業(選択)の自由と財産権
経済的自由権である「職業選択の自由」(22 条 1 項)と「財産権」(29 条)について、その規制に関す
る「消極目的」
・
「積極目的」の二分論(目的二分論)について学ぶ。
3
13.生存権
「生存権」
(25 条)を中心に、憲法上の社会権について主要判例を通して学ぶ。
14.労働基本権
労働基本権(28 条)について、その歴史的推移に注目しつつ検討する。また、公務員の労働基本権とそ
の制限の合憲性について、判例の動向を中心に学ぶ。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
15.適正手続と裁判を受ける権利
憲法の保障する適正手続条項(31 条以下)及びとくに「裁判を受ける権利」(32 条)など、裁判に関
する権利について学ぶ。
毎回、講義時に先立って、TKC上で「講義概要のレジュメ」
(必要に応じて追加資料)を配布する。
それを読み、また、教科書をも参考にして、十分に予習してくることが必要である(授業で質問をする)
。
授業のあとには、授業を思い出しつつ「講義概要」を読んで復習しておくこと。15回中10回の授業
後に、授業において学んだことや関連する問題に関してレポートを課すので、次の授業時に提出された
レポートをもとに定着度を確かめ、平常点の基礎とする。
講義の到達目標は、憲法による基本権保障について基本的な理解を得ることである。とくに、憲法で
保障される権利の内容についての基礎的な法的知識(基本的な概念、思考枠組み、判例など)の修得を
重視する。その上で、具体的事案を分析して問題点を抽出し、基本的知識を活用して法的推論を行い、
それを的確に表現することのできる能力の修得を目指す。その際、判例の立場に立った場合、実務上、
具体的事案においてどのように問題解決がなされることになるのかの推論ができることを重視すると
ともに、実定法制度や判例に対する批判的な視点をも養い、それを通じて、法曹に必要とされる正義・
人権の感覚を涵養することも目標とする。
2年次の公法系科目を受講するのに必要とされる最低限の基礎的な法的知識を習得し、簡単な事例問
題において表現できることが単位認定(60 点)の基準となる。目標に到達できるよう、通常の講義方式
と対話方式を併用して授業を進行する。
定期試験 70%、平常点(小テストおよび質疑応答状況など)30%によって、上記の到達目標への達成
度を評価し、成績評価とする。
授業に関連する数回のレポートの提出を求め、その合計点を成績評価における平常点の基礎として評
価する。欠席・遅刻は減点の対象となる(欠席1回につきマイナス1点、遅刻マイナス 0.5 点)
。出席
は当然のことであり、加点要素とはしない。また、欠席理由のいかんを問わず、少なくとも3分の2の
授業に出席することが、期末試験の受験資格となる。定刻より 30 分以上の遅刻などは欠席として扱う。
病気などやむをえない理由で欠席した場合には、診断書を添えて速やかに申告すること。
・教科書
初宿正典『憲法 2 基本権〔第 3 版〕
』(成文堂、2010)
戸松秀典・初宿正典編『憲法判例(第 7 版)』
(有斐閣、2014)
・参考書
初宿正典ほか『憲法 Cases and Materials 人権〔第 2 版〕
』
(有斐閣、2013)
渋谷秀樹=赤坂正浩『憲法1人権[第 5 版]
』(有斐閣、2013)
佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011)
行政法Ⅰ
平岡 久
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は、行政法上または行政法学上の基礎的な概念・原理や制度をしっかりと理解していただくこ
とを目的とする。対象となるのは、第一に、行政法(学)全体を通じる基礎的な概念・原理、第二に、
行政過程において用いられる行為形式および特有の制度の概観、第三に、行政の行為形式のうちの行政
処分の司法的統制または違法性に関する基礎的な諸問題、である。
容
授業内容は大きくA・行政法(学)全体を通じる基礎的な概念・原理、B・行政の行為形式および制
画 度(とくに行政上の義務履行の確保のための制度)の概観、C・行政の行為形式のうちの行政処分(行
政行為)の違法事由(取消訴訟において取消し原因となる瑕疵)の三つに分かれる。
Aでは、主として「行政法」の意味、行政法の三分類、行政組織法の基礎、行政法源、法と法律によ
る行政の拘束(後者が「法律による行政」の原理)
、他法分野(とくに民事法)との関係を扱う。
Bでは、一般的行為と具体的行為の区別を前提とする、法規命令・行政規則、行政計画、行政処分行
政処分(行政行為)
、行政契約、行政指導、即時執行等の行政の行為形式、および行政上の強制執行や
行政罰などの行政上の義務履行確保を扱う。
Cでは行政訴訟のうちの重要な抗告訴訟の対象の中心は行政処分(行政行為)であることに鑑み、そ
れが抗告訴訟(とりわけ取消訴訟)において違法とされる事由にとくに着目しつつ、行政処分(行政行
為)の諸問題を扱う。
以上を主として、私自身が作成したレジュメを事前にに掲載する予定である。
各回の具体的な授業内容・計画は以下のとおりである(p.記載の数字は下記・櫻井=橋本著ののもの)
。
(A・行政法(学)の基礎)
1 行政および行政法の意味・特質は何か。行政法は行政組織法・行政作用法・行政救済法に通常は三
4
分類されること。行政組織法総論の基礎概念としての行政主体・行政機関等、行政主体にはどのような
ものがあるか。/p.001-006、p.039-057。
2 行政法源-行政を拘束する法(行政法源)には成文法と不文法があり、後者の重要な一つは比例原
則・信頼保護原則等の法の一般原理であること。および前者のうち重要である国会制定法としての法律
と行政の関係についての「法律による行政」原理の意味内容(とくに「法律の留保」原則りの妥当範囲)
について。/p.009-010、p.011-012 の枠内、p.013-029、p.058-060。
3 行政主体関係-国と地方公共団体の関係、および地方公共団体の立法=条例制定権について。/
4 行政法と民事法との関係(具体的な論点に少しは立ち入る)
。併せて「公法と私法」の区別にかか
わる基本的な問題、つまり行政法は「公法」なのか、あるいは「公法」とすることにいかなる法的意味
があるのか、について。/p.006-009、p.010-011、p.030-038。
(B1・行政の行為形式)
5 行政の行為形式の概論-一般的・具体的行為の別、後者についての権力的行為・非権力的行為およ
び法的行為・事実行為の区別、および「行政計画」の意味と法的諸問題について。/前者の該当頁はな
い。後者につき p.152-163、p.225-227。
6 「法規命令と行政規則」-委任立法の諸問題および後者についてはとくに「裁量基準」について。
行政手続法上の「意見公募手続」にも論及する。/p.061-076、p.221-224。
7 「行政処分(行政行為)
」1-意味、種別、法的効果の発効について。/p.077-088。
8 「行政処分(行政行為)
」2-公定力・不可争力等の特殊な効力、法的効果の消滅の一形態として
の職権取消しと撤回、および付款について。/p.088-097、p.102-108。
9 「行政契約」
、
「行政指導」
、
「即時執行」
、
「行政調査」-それぞれの意味、法的諸問題。行政指導に
重点を置き、行政手続法上の行政指導に関する条項にも論及する。/p.129-151。p 192-195、164-173。
(B2・行政上の制度)
10 行政の実効性確保のための「制度」-主として現行の「行政上の強制執行」の制度、
「行政罰」
について。前者に関して現行行政代執行法にも言及する。および行政機関情報公開法等による「情報公
開」制度について。/p.174-192、p.228-238。
(C・行政処分/(行政行為)の違法性)
11 行政処分の瑕疵論-取消しうべき瑕疵と無効の瑕疵の区別、瑕疵の治癒、違法行為の転換、違法
性の承継について。/p.098-102、p.094-095。
12 行政裁量とその司法審査。行政「裁量」概念の理解を前提として、種々の裁量統制手法があるこ
とについて。/p.109-128。
13 前回のつづき。/p.109-128。
14 行政手続法と行政処分-行政処分に関する行政手続法の条項の基礎的・一般的な内容について。
基礎的概念、
「適正手続」法理、
「理由付記」
、および手続に瑕疵ある行政処分の効力の問題に言及する。
/p.202-210、p.219-221。
15 行政処分手続-「申請に対する処分」の手続・
「不利益処分」の手続-現行行政手続法に即して。
「審査基準」
、
「処分基準」
、理由付記、
「聴聞」手続等に論及する。p.214-218。
履修上の注意
下記に記載の<指定参考書>の該当頁を予習・復習してしっかり理解していただきたい。できれば、
これら以外の概説書と読み比べるくらいの余裕があることが望ましい。行政法Ⅰは(どの科目もそうだ
ろうが)豊富な内容をもっており、全体を詳細・網羅的に講義することはできない。授業で省略した部
分は自習しておくことが望ましい。判例については、行政判例百選Ⅰ〔第6版〕
(有斐閣、2012 年 10
月)に掲載の最高裁判決くらいは知っておく必要があり、授業でも多くは言及する。また、行政法(学)
は「法解釈」の対象となる法律が行政法Ⅰの範囲では国家行政組織法、行政手続法、行政代執行法。行
政機関情報公開法等にとどまり、<行政作用(行政活動)通則法>といった法律が存在するわけではな
いので、行政作用に関する個別の行政法規(法令・例規)の存在や定めの具体的内容を意識しながら学
修する必要がある。授業もこの点に留意して行う。なお、上記授業計画には記載していないが、前の回
に予告したうえで、適宜3回ほど小テストを行う(30 分程度)
。その他、下記の「参考書としての概説
書」の部分を参照されたい。
授業の到達目標
到達目標は、行政法(学)全体に通じる基礎的な概念・原理、行政過程を形成する個々の行政の行為
形式や「制度」に関する基本的な概念や法理および具体的な制度内容を理解しかつ身に付け、併せて具
体的事案に応じて検討する能力を涵養する前提になる基礎的な諸問題をとくに行政処分(行政行為)対
する取消訴訟を念頭において理解しかつ身に付けることである。判決例(とくに最高裁判決)や具体的
5
評
価
方
教
想定事案に言及することはあるが、具体的事案に応じて検討する能力を涵養すること自体は、主として
3年次の「公法演習」や「行政法演習」および各人の自発的な学修に委ねられる。ともあれ、行政法(学)
全体の「骨組み」
・
「構造」を(抽象的なものから具体的で細かいものまで多様だが)しっかりと理解し
かつ文章化できるようになっていただきたい。
法
定期試験70点、平常点30点、合計100点満点で成績評価する。平常点は(出席することは当然
のこととして)3回ほどの小テストの採点結果により計算する。定期試験(期末試験)は、
「講義目的」
や「授業の到達目標」に記したように、基礎的な概念・理論・制度について理解し、自ら表現(文章化)
するかどうかを主眼とする。したがって、訴訟法制の理解も必要となる、事例・事案問題は出題しない。
材 (教科書) 櫻井敬子=橋本博之・行政法〔第5版〕
(弘文堂、2016 年 02 月)の前半。なお、別途掲載
する平岡の講義レジュメも必ず読むこと。
(参考書としての概説書) ①藤田宙晴・行政法入門〔第6版〕
(有斐閣)の前半、②原田大樹・例解
行政法(東京大学出版会)
。③塩野宏・行政法Ⅰ〔第五版改訂版〕
(有斐閣、2013 年3月)および同・行
政法Ⅲ〔第四版〕
(有斐閣、2012 年 10 月)の「第一部・行政組織法」の部分。
〇行政法の学修が始めての人は、まず上の①を必ず読んでおくこと。
〇ひととおり行政法の履修をしたことがある人は、①を読んで復習を済ませた上で、指定教科書を熟
読しておくこと。さらに、②を読んで基礎的な知識をしっかりと身
につけているかどうかを確認す
ること。
〇かなり行政法の学修が進んでいると思っている人は、②を読んで復習し、さらに③にも目を通して、
理解しようと努めること。
(判例集) 行政百選Ⅰ〔第6版〕
(有斐閣、2012 年 10 月)はほとんど必須。ほかに、大橋洋一ほか編・
行政法判例集Ⅰ・Ⅱ(有斐閣、2013 年・2012 年)
、橋本博之・行政判例ノート〔第3版〕
(弘文堂、2013
年8月)などが役に立つだろう。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
行政法Ⅱ
平岡 久
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は、春学期で行った行政法Ⅰの内容を前提にして、いわゆる行政救済法、すなわち行政事件訴
訟・行政不服申立て・損失補償等の基礎的な諸問題を扱い、行政をめぐる紛争の解決または行政による
私人の権利・法益の毀損の際しての私人の法的救済の方法に関する基礎的な概念・法理を主として基本
的な最高裁判決例を素材にして理解していただくことを目的とする。
容
授業内容は大きくA・
「行政争訟」とB・
「国家補償」の二つに分けられる。
画
Aは①行政訴訟(または行政事件訴訟)と②行政不服申立てであり、Bは①国家賠償、②損失補償お
よび③その他の国家補償である。
但し、回数の制限があることから、ほとんどを前者Aに費やす。
以上を主として指定教科書によって行う。適宜、私自身が作成したレジュメ・資料や判決文の写しを事
前に又は当日に配布する。
各回の具体的な授業内容・計画は以下のとおりである(p.記載の数字は指定する教科書のもの。但し、
2013 年の第4版)
。
1 行政事件訴訟の概観--現行行政事件訴訟法を前提にして(以下、同じ)
、行政訴訟の憲法上の位
置づけ、行政訴訟と民事訴訟の区別、主観訴訟と客観訴訟の区別、抗告訴訟と当事者訴訟の区別および
抗告訴訟の諸類型を扱い、行政事件訴訟について概観する。/p.258-276.
2 公法上の当事者訴訟・客観訴訟--前回に続いて、抗告訴訟と区別される当事者訴訟および抗告訴
訟・当事者訴訟の両者を含む主観訴訟と区別される客観訴訟について、もう少し立ち入って説明する。
後者の中心は地方自治法上の「住民訴訟」である。/p.268-271、p.368-378.
3 抗告訴訟一般、取消訴訟一般、取消訴訟の対象(処分性)の1--抗告訴訟一般、取消訴訟一般に
関する概述等を行う。
4 取消訴訟(および抗告訴訟全体)の要件の一つである「処分性」を扱う(行政事件訴訟法3条1項・
2項)
。行政法Ⅰで扱った「行政処分」
・
「行政行為」に関する諸理解が前提になる。/p.266-268、
p.277-292.
5 処分性の2--続けて、取消訴訟の対象(処分性)を扱う。/p.277-292.
6 取消訴訟の原告適格の1-取消訴訟の訴訟要件である原告適格の存在について扱う(行政事件訴訟
法9条)
。この問題は基礎的には抗告訴訟全体に通じるものであることにも留意しておく必要がある。
/p.292-303.
7 原告適格の2--続けて、取消訴訟の原告適格を扱う。/p.292-303.
6
8 取消訴訟のその他の訴訟要件--狭義の訴えの利益、被告、出訴期間の制限等のその他の訴訟要件
を扱う。取消訴訟に固有のもの、無効等確認訴訟にも共通するもの、抗告訴訟一般に共通するものなど
を区分けして理解することも必要である。/p.304-311.
9 前回のつづき
10 取消訴訟の審理と判決--取消訴訟の本案審理の方法と判決について概述する。後者には、判決
の種類と判決(とくに請求認容判決)の効力という大きくは二つの問題がある。/p.312-329.
11 その他の抗告訴訟-無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟を扱う。
それぞれに関する条文の内容を正確に知っておく必要がある。無効確認訴訟については、行政処分が無
効である場合の唯一の訴訟類型ではないことに留意しておく必要がある。/p.338-362
12 前回のつづき。
13 抗告訴訟における仮の権利保護-取消訴訟・無効確認訴訟の場合の執行停止(行政事件訴訟法2
5条~)
、仮の義務付け・仮の差止め(行政事件訴訟法37条の5)という仮の権利保護の制度を扱う。
/p.330-336、p.363-367.
14 前回のつづき。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
教
法
材
15 行政不服申立て、損失補償、国家賠償をそれぞれ簡単に扱う。行政不服審査法は全面改正されて
いるので、指定教科書の p.243-253 は古い。補追等ほ参照のこと。
指定する教科書の該当頁を予復習してしっかり理解すること。できれば、指定教科書以外の概説書と
読み比べるくらいの余裕があることが望ましい。学部時代に行政法未修の人は、①藤田宙晴・行政法入
門〔第6版〕
(有斐閣、2013 年 11 月)の p.192-295 を必ず読んでおくこと。行政法Ⅱは他科目と同様に
豊富な内容をもっており、全体を詳細・網羅的に講義することはできない。授業で省略した部分は自学・
自習しておくことが必要である。判例については、行政判例百選Ⅰ〔第6版〕
(有斐閣、2012 年 10 月)
に掲載の最高裁判決くらいは知っておく必要があり、授業でも多くは言及する。損失補償を除いて、行
政事件訴訟法、行政不服審査法、国家賠償法という学修対象の基本的な法律があるので、これらの条文
は暗記できるほどになることが望ましい。但し、行政訴訟や国賠訴訟等では個々の関係行政実体法の知
識もないと、具体的事案にかかる判決例は理解できないことが少なくない。したがって、授業もこの点
に留意して行う。
到達目標は、現行の行政救済法制全体の概要を、前提的・基礎的な概念論点や法的諸問題を中心に理
解しかつ身に付けることである。判決例(とくに最高裁判決)や具体的想定事案に言及することはある
が、具体的事案・紛争に即して解決や権利保護のための具体的な法的手段を検討する能力を身に付ける
こと自体は、主として3年次の「公法演習」や「行政法演習」および各人の自発的な学修に委ねられる。
上のための素地、前提的な基礎的な知識と理解を身に付けることを重要視する。
定期試験70点、平常点30点、合計100点満点で成績評価する。平常点は(出席することは当然
のこととして)2~3回の小テストの採点結果により計算する。定期試験(期末試験)は、
「講義目的」
や「授業の到達目標」に記したように、行政救済法にかかる基礎的な概念・理論・制度について理解し、
自ら表現(文章化)できるかどうかをを主眼とする。但し、簡単な事例・事案問題を出題することを通
じてこれを試すことはありうる。
(教科書)櫻井敬子=橋本博之・行政法〔第5版〕
(弘文堂、2016 年 02 月)の後半。
(判例集)行政百選Ⅱ〔第6版〕
(有斐閣、2012 年 10 月)はほとんど必須。ほかに、大橋洋一ほか編・
行政法判例集Ⅰ・Ⅱ(有斐閣年)
、橋本博之・行政判例ノート〔第3版〕
(弘文堂)などが役に立つだろ
う。
(参考書)上記指定教科書のほかに、概説書・体系書として以下のものなどがある。
①藤田宙晴・行政法入門〔第6版〕
(有斐閣)の後半。
②塩野宏・行政法Ⅱ〔第五版改訂版〕
(有斐閣、2013 年 03 月)
。
③原田大樹・例解行政法(東京大学出版会、2013 年 10 月)p.87~159。
④南博方=高橋滋編・条解行政事件訴訟法〔第 4 版〕
(弘文堂、2014 年 12 月)
。
「履修上の注意」に記したように、行政法未修の人は、①を講義開始前に読了しておくこと。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
基礎演習(憲法)
中山 茂樹
1年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
講義の内容
「基礎演習(憲法)
」は、
「憲法 I」と並行して、重要判例を学ぶことを通じて日本国憲法が保障する
権利(基本権)を制限する国家行為の司法審査について理解を深める科目である。
7
授
授
業
業
内
計
講義目的
憲法による権利の保障と司法審査について基本的な理解を得ることを目的とする。とくに、裁判所が
国家機関の行為の合憲性(個人の権利を違憲的に侵害するものであるか否か)を審査する際の枠組みを
修得することに重点を置く。この基本的なポイントを習得して、さらに発展的な科目につなげることを
目指す。
容 1 自由制限と法律の根拠
画
行政の活動、とりわけ国民の権利を制限し又は義務を課する行為には、法律の根拠が必要であること
を理解する。
2 委任命令
医薬品ネット販売事件判決を題材に、委任命令の法律適合性の審査のあり方について理解する。
3 職業の自由
薬局距離制限事件判決および小売市場事件判決を題材に、職業の自由の規制に関する合憲性審査のあ
り方について理解する。
4 表現の自由
堀越事件判決を題材に、表現の自由を規制する法律の合憲性審査のあり方について理解する。
5 集会の自由
泉佐野市民会館事件判決および成田新法事件判決を題材に、集会の自由の規制に関する合憲性審査の
あり方について理解する。
6 財産権
森林法事件判決およびインサイダー取引規制事件判決を題材に、財産権の規制に関する合憲性審査の
あり方について理解する。
7 自由権の制限(まとめ)
自由権制限の合憲性審査のあり方について整理し、理解を深める。
履修上の注意
授業の到達目標
評
8
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
名
名
年
数
8 法の下の平等
国籍法事件決定を題材に、法の下の平等に関する合憲性審査のあり方について理解する。
本科目の開講日は秋学期授業開始前に掲示する。毎回、授業に先立って、取り扱う判例を指定する。
判例を読み、また、憲法の概説書や配布の「講義ノート」を参考にして、予習してくることが必要であ
る。
本科目の到達目標は、憲法による権利の保障と司法審査について基本的な理解を得ることである。と
くに、憲法で保障される権利の内容についての基礎的な法的知識(基本的な概念、思考枠組み、判例な
ど)を修得することを重視する。その上で、具体的事案を分析して問題点を抽出し、基本的知識を活用
して法的推論を行い、それを的確に表現することのできる能力の修得を目指す。その際、実務上、判例
の立場に立った場合、具体的事案においてどのように問題解決がなされることになるのかの推論ができ
ることをまず重視するとともに、実定法制度に対し批判的な視点をも養いたい。これらを通じ、法曹に
必要とされる正義・人権の感覚を涵養することも目標とする。
2年次の公法系科目で必要とされる最低限の基礎的な法的知識を習得することが単位認定の基準と
なる。目標に到達できるよう、講義方式と対話方式を併用して授業を進行する。
定期試験 70%、平常点 30%によって、上記の到達目標への達成度を評価し、成績評価とする。小テ
ストやレポート(宿題)を随時課し、その合計を成績評価における平常点として計算する。授業不参加
や小テストの遅れた提出は減点する。
・教科書
とくに指定しない。
・判例集
高橋和之ほか編・別冊ジュリスト『憲法判例百選 I・II[第 6 版]
』
(有斐閣、2013)
戸松秀典・初宿正典編『憲法判例[第 7 版]
』
(有斐閣、2014)
佐藤幸治=土井真一編『判例講義憲法 I・II』
(悠々社、2010)
・参考書(概説書の例)
初宿正典『憲法 2 基本権[第 3 版]
』
(成文堂、2010))
毛利透=小泉良幸=淺野博宣=松本哲治『憲法 II 人権』
(有斐閣、2013 年)
渋谷秀樹=赤坂正浩『憲法1人権[第 5 版]
』(有斐閣、2013)(ただし、今春改訂予定)
大石眞『憲法講義 II[第2版]
』
(有斐閣、2012)
野中俊彦ほか『憲法 I[第5版]
』
(有斐閣、2011)
憲法演習
初宿 正典
2年次
2年次
学
期 秋学期
必 修 ・ 選 択 必修
講
授
授
義
業
業
目
内
計
的 講義の概要
本科目は、憲法Ⅰ・Ⅱの学修を前提に、行政法学など関係する法分野の観点を含めて、基本的人権に
かかわる基本的問題を、主要な判例を十分に読み解くことによって検討する。解説・検討に際しては、
事実関係を的確に把握・整理することを基礎とし、争点を摘出し、適切な違憲審査基準を選択し、これ
を当該事実関係に適用するという法的な思考方法に特に注意する
講義の目的
人権保障のあり方を具体的事例に即して深く考察することを目的とする。具体的には、人権問題につ
いての基本的判例を素材として、争点の発見、違憲審査基準の選択など法的推理の具体的運用に熟達す
ることを目指す。なお、この授業では人権問題の実体法的側面に重点をおき、裁判的実現については「公
法演習」でさらに深く学修する。
容 1.思想・良心の自由
画 最近のこの分野での主要判例を中心に、古典的判例をめぐる従来からの議論をも踏まえて、検討する。
同時にここでは、結社の自由(団体の自律権と団体構成員の自由との調整問題) や団体の人権享有主体
性についても、主要判例を触れる中で扱う。
2.表現の自由(1)
表現の自由の保護の意義とその内容について検討する。情報の収集、受領、提供などの各場面の問題、
とくにマスメディア(テレビ・新聞など)の取材の自由、取材源秘匿権、行政情報の収集権(情報公開・
個人情報開示)などを扱う。インターネットを通じた表現の問題についても検討する。集会・結社の自
由との関係についてもここで整理しておく。
3.表現の自由(2)
表現の自由の法令による制限や他の人の権利との調整の問題(公共の福祉に基づく制限の問題と、他人
の名誉権やプライバシー権など個人的権利と表現の自由の調整問題)を、主要な判例を中心に検討する。
4.表現の自由(3)
表現活動に関する「時・場所・方法」規制について扱う。具体的には、市民会館等や道路・公園の使
用許可、公安条例による制限、屋外広告物規制、ビラ貼り・ビラ配布などにかかわる判例を中心に検討
する。集会の自由についてもここで多少学ぶ。
5.表現の自由(4)
表現の自由の事前統制問題を扱う。具体的には、検閲、事前差止、税関検査、教科書検定制度などの
判例を検討する。
6.信教の自由
信教の自由に関する一連の判例を検討し、この領域での訴訟の形態の特質や違憲審査基準のあり方を
検討する。結社の自由についてもここで触れる。
7.政教分離
政教分離原則に関する一連の判例を検討し、この領域での訴訟の形態の特質や違憲審査基準のあり方
を検討する。
8.経済的基本権
経済的基本権(職業活動の自由、財産権)の分野の判例で形成されてきた違憲審査基準(目的二分論)
、
森林法判決や酒税法判決などで示された基準を、判例や学説を精査することによってより深い理解を得
る。
9.参政権
外国人の参政権、在外日本人の投票権、選挙運動規制、政党からの離脱にともなう議員の地位の喪失
などの問題を判例を中心に検討する。議員定数不均衡の問題は後に扱うので、ここでは扱わない。
10.適正手続
憲法上の適正手続の内容を判例で確認し、その行政手続への適用可能性について、判例を中心に検討
する。
11.法の下の平等(1)
法の下の平等にかんする現代的な問題を、事例をもとに検討する。家族における平等問題(婚姻適齢
規定、女性再婚禁止期間規定、非嫡出子相続分規定など)や積極的差別是正措置(アファーマティヴ・
アクション)等の問題を扱う。
12.法の下の平等(2)
一連の議員定数不均衡訴訟を素材として、投票価値の平等の理念や立法裁量の関係、訴訟形態など多
面的に検討を加え、法の下の平等について理解を深める。
9
13.幸福追求権(1)
プライバシーの権利を中心に、その意味の変容(静穏プライバシーから情報プライバシーへ)等を素
材として、
「幸福追求権」のより具体的な意味について理解を深める。
14.幸福追求権(2)
医療関係における現代的な問題である「自己決定権」について、これまでの判例の考え方によればど
のような結論を導きうるか、事例を想定しつつ検討を加える。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
15.私人間効力論
私人が私的自治に基づいて作成したルール(私立大学の学則や私企業の就業規則)に対して、憲法がど
こまで拘束力をもつかという問題について、関係判例を検討し、より深い理解を得る。
毎回、講義時に先立って、TKC上で講義で用いる判例とその論点を整理した「レジュメ」を公表す
る。それを読み、また、憲法の教科書、また必要に応じて参考書などを読み(教科書や参考書などの該
当ページは、
「レジュメ」に記載する)
、予習してくることが必須である。適宜、予習課題又は復習課題
を課し、授業中にそのレポートを基に検討する。授業のあとには、質問を受けて、これについて検討す
る時間を設けるほか、出席と理解度をはかり、平常点の基礎とする。
講義の到達目標は、具体的な事例のなかに基本権の問題を発見し、法的に整理し、違憲審査基準を提
案し、当てはめるという法的な基本操作ができることである。この目標の達成に当たっては、当然7つ
のスキルの活用が前提となるが、人権問題が対象である以上、法曹に必要とされる2つのマインドも重
視する。
定期試験 70%、平常点(レポートおよび出欠状況)30%によって、上記の到達目標への達成度を評価す
る。合否は絶対評価を基本とする。
15回の授業のうち5回程度について授業の内容に関する問題について課題を課し、その合計を成績
評価における平常点の基礎とする。欠席・遅刻は減点の対象となる(欠席1回につきマイナス1点、遅
刻マイナス 0.5 点)
。出席は当然のことであり、加点要素とならない。欠席理由のいかんを問わず、少
なくとも3分の2の授業に出席することが、期末試験の受験資格となる。30 分以上の不在は欠席として
扱う。病気などやむをえない理由で欠席した場合には、速やかに申告すること。
・教科書
初宿正典『憲法 2 基本権〔第 3 版〕
』(成文堂、2010)
戸松秀典・初宿正典編『憲法判例(第 7 版)』
(有斐閣、2014 年)
・参考書
佐藤幸治/土井真一編『判例講義 憲法Ⅰ・Ⅱ』(悠々社、2010 年)
初宿正典ほか『憲法 Cases and Materials 人権〔第 2 版〕
』
(有斐閣、2013)
渋谷秀樹=赤坂正浩『憲法1 人権[第4版]
』(有斐閣、2010)
大石眞『憲法講義Ⅱ(第 2 版)
』(有斐閣、2012)
佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011)
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
講義目的
[行政法]
行政訴訟制度を中心に行政救済法領域の司法審査に関する諸問題の理解を深めることを目的とする。
具体的には、行政紛争が生じたときに、どういう視点から訴訟類型を選択するのか、それぞれの訴訟類
型における訴訟要件は何か、それぞれの訴訟においてどのような主張をするのか、それぞれの訴訟手続
の特色は何か、判決の効力はいかなるものか、について理解し、それらを踏まえて最も適切な訴訟は何
かを選択する能力を涵養する。これらについて判例法理を中心に考察し(その批判的理解を含む)
、も
って行政救済制度の運用能力を養い、憲法訴訟を学ぶバックグラウンドを培うこととする。
[憲法]
民事訴訟、行政事件訴訟および刑事訴訟の制度の前提となる憲法上の「司法権」について考察し、司
法権発動の要件と限界について理解する。また、憲法が保障する権利の実効性を保障する方法としての
司法審査制を、裁判所に現れる具体的な事件を通して理解する。その際、実定法制度を前提としつつ、
具体的な事案において憲法上の主張をどのようになし、どのように処理すべきかを修得するとともに、
これら実定手続法が憲法上の裁判を受ける権利などの要請に応えているかどうかを批判的に考察する
姿勢をも養成する。
容 下記に示した計画に沿って、前半を主として行政法の観点から、後半を主として憲法の観点から、他方
画 の法分野の観点も交えつつ授業を行う。
10
業
業
内
計
公法演習
中山 茂樹・湯川 二朗
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
講義の概要
本科目は、憲法Ⅰ・II、行政法Ⅰ・II および憲法演習の学修を前提にして、憲法学および行政法学の
観点から、司法審査論を解説、検討するものである。行政法担当教員(湯川)と憲法担当教員(中山)
が共同して授業を行うペア方式の科目である。
(主として行政法の観点から)
1 行政紛争に関する司法的救済の全体像
抗告訴訟、当事者訴訟、民事訴訟、住民訴訟、国家賠償法の位置づけ
抗告訴訟と民事訴訟・当事者訴訟との切り分けの問題としての取消訴訟の排他的管轄について考察す
る。
2・3 取消訴訟の訴訟要件
抗告訴訟の対象及び原告適格並びにそれらの判断基準について考察する。
狭義の訴えの利益について考察する。
4 当事者訴訟
実質的当事者訴訟と形式的当事者訴訟について考察する。
処分性の拡大に代わる公法上の法律関係の確認訴訟について考察する。
5 行政処分の違法事由
取消訴訟の訴訟物・要件事実・主張立証責任、実体的違法事由、手続的違法事由、違法判断基準時、
主張制限について考察する。
実体的違法事由としての裁量判断の合理性の欠如に関し、裁量処分の司法統制の手法についても考察
する。
6 訴訟手続と判決の効力
取消訴訟の訴訟手続、判決の効力(既判力・第三者効・拘束力)について考察する。
7 取消訴訟以外の訴訟と仮の救済
無効等確認の訴え、義務付けの訴え及び差止めの訴えの訴訟要件及び勝訴要件について考察する。
抗告訴訟における仮の救済について考察する。
(主として憲法の観点から)
8 司法権の発動
日本国憲法が定める付随的違憲審査制度のしくみをふまえつつ、実効的権利救済の理念について理解
し、司法権の発動要件である「法律上の争訟」の要件について理解する。とくに、そこに含まれる事件
性の要件について、具体的事案での処理能力を修得する。
9 裁判所の活動の限界
裁判所の活動の限界を画する諸要素について理解する。とくに、団体内部の紛争について、具体的事
案での処理能力を修得する。
10 憲法上の争点(1)法令違憲
権利制限の合憲性を司法審査する際の一般的枠組みを前提に、訴訟における当事者による憲法上の争
点の提起のしかたについて理解し、具体的事案での処理能力を修得する。
11 憲法上の争点(2)適用違憲
法令の憲法適合的解釈と適用違憲の手法について、具体的事案での処理能力を修得する。
12 憲法訴訟の審理
違憲判断の方法と文面上審査の問題について理解し、それに応じた憲法上の争点の提起のしかたと裁
判所の判断手法について、具体的事案での処理能力を修得する。
13 総合問題
総合的な事例問題について検討し、学修してきたことの理解を深める。
14 憲法判断と救済法
違憲審査の対象や憲法判断の効果・救済方法について、とくに立法不作為の問題を中心に理解し、具
体的事案での処理能力を修得する。
15 裁判手続
裁判を受ける権利に含まれるデュープロセス保障や裁判の公開について、憲法の観点から理解する。
履 修 上 の 注 意 これまでの公法分野の学習内容が前提となるので、十分に予習してほしい。
主として行政法の観点から行う前半の授業と、主として憲法の観点から行う後半の授業では、授業の
進行方法がやや異なる。それぞれの授業方法の詳細と注意事項は、次のとおりである。
(前半:主として行政法の観点から)
教科書、判例集を用いて講義をする。重要判例については判決文全文を読解する。授業の終わりには
演習問題を行い、レポートの提出(2回)を求める。一方的に教員が講義するのではなく、適宜受講生
に対して質問をしながら授業を進めるので、受講生は事前に予習をしてくること。授業後には出席の確
認を兼ねて、毎回、ムードル等を使っての感想・質問の提出を求める。
11
(後半:主として憲法の観点から)
授業は、講義方式と演習方式を併用する。授業に先立って、TKC上で講義内容を示した「講義ノー
ト」またはレジュメを配布する。それを読み、また、憲法の概説書をも参考にして、予習してくること
が必要である。
「講義ノート」のどこが理解できないかを事前に把握し、それを授業時に質問してほし
い。また、演習問題の予習課題を課し、授業中にその答えをきく予定である。授業のあとには、復習し
て内容の定着をはかってほしい。レポートまたは小テスト型の復習課題を随時課す。
授業の到達目標
私人と公権力を当事者とする訴訟を中心に、司法審査のしくみについて理解し、具体的事案での処理
能力を修得することを目標とする。司法審査制について、法曹として必要とされる最低限の基本的な法
的知識を習得することが単位認定(60 点)の基準となる。到達目標について分野ごとに分節すれば次の
ものである。
[行政法]
行政救済に関する判例実務を理解し、行政救済制度を運用する最低限の能力の涵養を目標とする。し
たがって、法曹として必要とされる最低限の基本的な法的知識を習得することが単位認定(60 点)の基
準となる。
[憲法]
講義の到達目標は、憲法上の司法権および憲法訴訟について法曹として必要な理解を得ることであ
る。現実の訴訟を想定して法を使いこなすために、とくに、基本的な法的知識(基本的な概念、思考枠
組み、判例など)をもとに、具体的な事案を分析してそれに法を適用して解決する能力を獲得すること
を重視する。また、実定手続法の合憲性や妥当な解釈を創造的・批判的に検討する能力を獲得すること
も目標とする。
評 価 方 法
定期試験70%、平常点30%によって、上記の到達目標への達成度を評価し、履修要項に示された
基準にしたがって、成績評価とする。また、定期試験および平常点は、行政法の観点および憲法の観点
それぞれからの到達目標の達成度を2分の1ずつとして、合算して評価する。すなわち、定期試験は、
行政法分野および憲法分野の達成度について、それぞれ2分の1ずつの配点となる。平常点は、前半の
授業におけるものを行政法分野の、後半の授業におけるものを憲法分野の成績として評価する。
教
材 ★教科書
櫻井・橋本「行政法〔第4版〕
」
(弘文堂、2013 年)
。
☆判例集
橋本博之「行政判例ノート〔第3版〕
」
(弘文堂、2013 年)
参考書
・橋本博之「行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く」
(日本評論社、2013 年)
・大貫裕之「ダイアローグ行政法」
(日本評論社、2015 年)
(憲法)
教科書はとくに指定しない。これまでの憲法の学習で用いてきたものでよい。
・参考書
初宿正典ほか『憲法 Cases and Materials 憲法訴訟』
(有斐閣、2007 年)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
行政法演習
平岡 久
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本授業は、行政法Ⅰ・同Ⅱの内容を前提にして、事例研究を行なう。答案作成のためのトレーニング
を直接に行なうのではなく、事例をふまえての関係行政法規の理解の仕方、出題意図にかかわる論点の
所在の把握、諸論点に関する基礎的な理解の復習等を行なう。あせることなく、じっくりと実力を蓄え
ることが肝要である。
容 下記の書物を教科書あるいは事例研究書として、おおむねつぎのように「演習」、すなわち、質疑応答
画 や討議を行う。
・指定書 曽和=金子・事例研究/行政法〔第二版〕
(日本評論社、2011)
各回の具体的な授業内容・計画は以下のとおりである。7つの事例を取り上げる。
1 「ミニ講義」の1・2・3の読み合わせ。参加者が確定していない時期なので、各人の状況等の把
握を行ないたい。
「ミニ講義」の上記3つを精読しておくこと。これを怠っている者には、参加の資格
がないものと考えていただきたい。
2 指定書の第一部の「問題3」/指定医師の指定取消し。p.37-。
概論・一般論的な議論をまずは行なう。以下の各問題についても同様。
3 同上の「問題3」について、多少は答案作成を意識した授業を行なう。未定ではあるが、参加者の
状況によっては、仮の答案作成を宿題としてあらかじめ課しておくことがありうる。以下の各問題につ
いても同様。
4 指定書の第一部の「問題4」/ホテル建築規制条例。p.58-。
5 同上の「問題4」について、つづき。
6 指定書の第一部の「問題6」/住民票の記載。p.91-。
7 同上の「問題6」について、つづき。
8 指定書の第二部の「問題1」/土地買収価格と情報公開。p.158-。
9 同上の「問題1」について、つづき。
12
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
10 指定書の第二部の「問題3」/都市計画事業認可と収用。p.194-。
11 同上の「問題3」について、つづき。
12 指定書の第二部の「問題10」/道路法による公物管理。p.318-。
13 同上の「問題10」について、つづき。
14 指定書の第二部の「問題13」/食品衛生法による規制。p.368-。
15 同上の「問題13」について、つづき。
指定書をあらかじめ購入し、各回について予習等を必ずしておくこと。
具体的な事例または紛争素材に則しての関係行政法規の理解の仕方、出題意図にかかわる論点の所在
の把握と分析、諸論点に関する基礎的な理解の復習等を行なう。合格答案の作成の練習をするのではな
い。むろん、力のある参加者は、そのような場として利用することは差し支えない。
定期試験70点、平常点30点、合計100点満点で成績評価する。平常点は(出席することは当然
のこととして)
、上には記載していないが、1~2回の小テストの採点結果により計算する。定期試験
(期末試験)は事例問題とし、限られた時間内に答案を作成する力の程度を試してみる。この点は、時
間がさらに限られるが、小テストについても同様である。
指定書(再掲)-曽和=金子・事例研究/行政法〔第二版〕
(日本評論社)のうち、上に記載した部
分(ミニ講義を含む)
。
公法総合演習
中山 茂樹・湯川 二朗
3年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
講義の内容
「公法総合演習」は、公法(憲法、行政法)の理解を深めるための科目であり、行政法担当教員(湯川)
と憲法担当教員(中山)が共同して授業を行うペア方式の科目である。これまでに学修した憲法・行政
法の内容を具体的な事案に応用する能力を涵養するとともに、他の法分野と交錯する複雑な場合におけ
る応用能力の養成もおこなう。演習科目であるので、受講生との質疑応答を中心に進め、また、受講生
に課題を割り当て、受講生による報告を中心に進めたい。
具体的な事案を理論的に「切る」作業には、多少の慣れが必要である。現実の政策・行政課題と公法
理論が接触する場面を、時事的な問題もまじえながら、できるだけ多く取り上げ、公法学的思考によっ
て現実の諸問題を分析することに慣れてもらいたい。おのずと、他の法分野や法哲学、政治学などとも
交錯することになろう。
講義目的
3年次春学期までに履修した公法系の全科目の成果を前提に、判例の理解を基礎にして、具体的事案
に公法の理論を適用する能力を一層発展させることを目指す。また、文章作成など、自らの考えたとこ
ろを適切・効果的に表現する能力の向上にも力点を置く。
容 具体的テーマは受講者とも相談して決めたいが、以下では、例示的にテーマ領域の候補を挙げておく。
画 すでに公法系演習科目等で取り上げたものと重複することもありうるが、より実践的な検討を行いた
い。
1 まちづくり条例
まちづくり条例が宗教団体の施設建設計画に適用される事例を題材に、信教の自由に関する適用上審
査や、法律と条例の関係などについて理解する。
2 開発許可と建築確認をめぐる紛争
開発適合証明制度を題材に、開発の仕組み、都市計画法と建築基準法の関係、処分性、原告適格、違
法性の承継の問題について理解する。
3 表現の自由
「世界の起源」展示中止事件を題材に、美術館における展示の制限を憲法上の「知る権利」の問題と
して捉える際の問題について理解する。
4 河川の管理をめぐる紛争
横川川事件を題材に、河川区域・河川保全区域の処分性、予防的不作為訴訟、抗告訴訟と当事者訴訟
の棲み分け、差止めの訴えや無名抗告訴訟について理解する。
5 取材源の秘匿
雑誌編集部に対する捜索・押収の事案を題材に、報道機関の取材源の秘匿の問題について理解する。
6 産業廃棄物処理業をめぐる紛争
紀伊長島町水道水源保護条例事件等を題材に、都道府県と市町村の関係、廃棄物処理法と条例の関係、
環境・水道水源の保護と営業の自由の規制の関係について理解する。
7 障害者の権利
市議会代読拒否事件を題材に、障害者の権利保障の問題について理解する。
13
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
8 条例と法律の関係(条例の補充性 法律の要件解釈に条例を斟酌できるか)
京都市市街地景観整備条例を題材に、建築基準法と景観法と条例の関係、法律と条例の関係(委任条
例、自主条例、ハイブリッド条例)
、建築確認の法的性質(確認・覊束行為か裁量行為か)
、違法性判断
のあり方について理解する。
この授業を履修する場合には、演習科目として、授業時の質疑応答ないし報告発表などのために相当
の予習が必要である。内容的には、これまでの授業内容をさらに高度にするものであるので、授業の始
まる前に夏休み中に、これまでの公法科目の総復習をしておくことを勧める。
毎回の設例・課題は、受講者と相談しつつ授業前に出題する。事前に設例・課題につき検討し、関連
箇所を概説書で予習の上、事前にレポートを作成・提出することを求める。また、報告者に指定された
者には設例の解説をしていただくことにする。
授業の到達目標は、公法の諸理論とその応用について法曹として必要な理解を得、それを説得力をも
って文章表現できるようになることである。とくに、判例についての知識を前提に、法令を分析し、具
体的事案において問題点を抽出し、それに法を適用して処理する法曹としての基本的能力の修得を重視
する。基本的知識を有し、具体的事案における公法上の問題を適切に抽出して処理できることが単位認
定(60 点)の基準となる。その上で、論理的に思考し、説得力ある理由を呈示してバランスのとれた妥
当な結論に至る能力、実定法制度を評価する批判的検討能力、それらを他の人に説明することができる
法的議論・表現・説得能力についても養いたい。これらを通じ、法曹に必要とされる正義の感覚や異文
化理解の感覚を涵養することも目標とする。
目標に到達できるよう、問題演習を行い、報告と討論のかたちで授業を進める。
定期試験70%、平常点30%によって、上記の到達目標への達成度を評価し、履修要項に示された
基準にしたがって、成績評価とする。また、定期試験および平常点は、行政法の観点および憲法の観点
それぞれからの到達目標の達成度を50%ずつとして、合算して評価する。
・教科書
とくに指定しない。
・参考書
木下智史ほか編『事例研究憲法』
(日本評論社、第 2 版、2013)
渋谷秀樹ほか『憲法事例演習教材』
(有斐閣、2009)
宍戸常寿編『憲法演習ノート:憲法を楽しむ 21 問』
(弘文堂、2015)
永田秀樹・松井幸夫編『基礎から学ぶ憲法訴訟』
(法律文化社、第 2 版、2015)
曽和俊文 , 金子正史ほか『事例研究行政法』
(日本評論社、第 2 版 2011)
石森久広『ロースクール演習行政法』
(法学書院、2012)
民法Ⅰ(契約法)
高嶌 英弘
1年次
学
期 春学期
4単位
必 修 ・ 選 択 必修
a)授業形式:本授業は,1 年次春学期配当の必修科目であり,少人数のクラスに対し,週 2 回ずつ,30
回行われることが予定されています。また,授業形式として,教員から学生への一方的な「講義」では
なく,教員と学生の対話を通した双方向の授業が実施されます。双方向授業を行う目的は,以下の点に
あります。
・契約法のすべての内容を講義することは時間的に不可能であり,受講生の予習を前提とした授業を行
うことが予定されているため,授業では,まず基礎知識の正確な理解の確認,そしてこれに引き続いて
体系的理解・応用力養成のための事例問題の検討がなされることになる。これらを実現する上で一方向
の授業は適切ではない。
・初心者が陥りやすい定型的な誤りとその原因を,対話を通して受講生全員が共有できる。すでに理解
が進んでいる受講生にとっても,他者の誤りから気づく点は少なくない。
・関連する質問を連続して与えることによって,制度の体系的理解,ある論点と他の論点の関係,ひい
ては民法全体の有機的関連を意識させることが可能になる。
・受講生が「創造的失敗」を繰り返することにより,自分で考える能力が涵養される。
b)授業対象:
「契約法」という名称からは,本授業の対象が民法典第三編「債権」の第二章「契約」
(民
法 521 条~民法 696 条)に限られるような印象があります。しかし,本授業はそれ以外にも,第一編「民
法総則」の中心部分,第三編「債権」の第一章「総則」の一部,第三編「債権」の第四章「不当利得」
の一部,さらに契約に関連する多くの民事特別法など,非常に広い領域を対象にしています(別掲資料
「民法全体の中における契約法の位置と本講義の内容」を参照して下さい)
。このように授業の対象が
広範囲に及ぶ理由は,契約法が資本主義社会における商品交換体系の法的表現であり,社会におけるあ
らゆる財貨の移転を法的に基礎づけるという意味を持っているからです。このような契約法の意義と重
要性に照らして,本授業の目的は,次の 5 点に求められます。
第 1 に,契約法における重要な法概念および法制度を正確に理解するという点です。この点について
は,法科大学院における講義の性格上,個々の受講生の相当程度の予習を前提とします。
第 2 に,現在の実務と学説の到達状況を明らかにしたうえ,そこにおけるスタンダードな理論を正確
に理解するという点が挙げられます。もちろん,現状の正確な把握だけでは今後の社会における多様な
紛争に対応できませんので,これらの理解の上に立ちつつ,さらにこれらを批判的に検討する機会が用
意されます。
14
授
授
業
業
内
計
第 3 に,応用力の養成があげられます。単に基礎的事項および現在の実務と学説を正確に理解してい
るにとどまらず,自分で思考しつつ論理を組み立てる訓練を通して,柔軟で実際的な法的思考力を身に
つけておくことが,学習を進めるうえで重要だと思われるからです。この目的を達成するため,授業に
際しては,具体的設例を素材とした法律問題の検討を随時行い,契約法の諸制度が他の民法上の諸制度
とどのような形で関連しているかを明らかにします。
第 4 に,契約法における典型論点の把握と整理・理解も本授業の対象になります。これは,多くの典
型論点の把握が体系的理解や応用力の向上につながるだけではなく,各種の資格試験においても重要な
要素であることに基づいています。この目的を達成するため,本授業においては,契約法における重要
論点を抽出し,それらが有機的にどのような関係にあるかをできるだけ明らかにすることを試みます。
第 5 に,時間が許せば,いくつかの重要な項目については,主たる対象となる条文の要件事実にも言
及します。これは,2 年次から配当される各種の演習科目においては実際の紛争をシミュレートして実
体法と手続法の双方を包含した総合的学習がなされることに対応して,要件事実論の基礎を,できる限
り 1 年次の講義で取得しておくことが望ましいという事情に基づいています。
容 a)はじめに
画
契約法の授業の組み立てにはいくつかのパターンがありますが,本講義の全体構成は,イントロダク
ション→契約総論→契約の成立→契約の効力→契約の効力否定原因→代理→契約各論→法人という順
序とします。すなわち,契約の基礎理論からはじめて,契約の成立と効力,契約を構成する意思表示お
よび法律行為の基礎問題を扱い,最後に個別具体的な契約類型を扱うという順序です。法人は,特殊な
議論が多いために最後にまわされています。
b)各回ごとの具体的な内容は以下の通りですが,授業の進み具合により,変更の可能性があります。
※以下の「S」は有斐閣Sシリーズ「民法Ⅰ~Ⅴ」を示す。
第 1 回 イントロダクション SⅠ4-27
※講義の進め方の説明,および民法典の構造,位置づけ,基本原理を対象とします。
第 2 回 財産法の基本構造/権利の主体,権利の客体 SⅠ28-34,51-53
※権利主体,権利客体,取引という財産法の基本となる 3 要素を確認します。
第 3 回 法律行為総論 SⅠ100-104
※「法律行為」という概念の意義および機能(契約との関係)を明らかにします。
第 4 回 契約の意義 SⅠ105-122,141-143,SⅣ5-6
※契約という概念の意義および機能を明らかにします。
第 5 回 契約の成立 SⅣ5-25
※契約の成立に関してどのような点が問題になるかを包括的に検討します。あわせて,判例・学説上承
認されている「契約締結上の過失」に基づく損害賠償請求の要件と効果を検討します。
第6 回 契約の効力/債権自体の効力 その1 SⅢ8~70
(第2 章「債権の目的」,
第3 章「債権の効力」)
,
197~203(第 7 章「債権の消滅」のうち「(3)第三者の弁済」の前まで)
※契約の効力はどのような要素に基づいて決定されるかを概観したうえ,契約を構成する中心的要素で
ある「債権」の効力を検討します。ただし,現実的履行の強制については,内容的に民事執行法と重な
る部分が多いので,契約法の授業では扱いません。
第7 回 契約の効力/債権自体の効力 その2 SⅢ8~70
(第2 章「債権の目的」,
第3 章「債権の効力」)
,
197~203(第 7 章「債権の消滅」のうち「(3)第三者の弁済」の前まで)
※前回に引き続き,契約を構成する中心的要素である「債権」の効力を検討します。
第 8 回 契約の効力/双務契約の効力 その 1 SⅣ31-37
※双務契約の効力のうち,成立上の牽連関係および危険負担の制度を扱います。
第 9 回 契約の効力/双務契約の効力 その 2 SⅣ26-31
※同時履行の抗弁権の制度趣旨および要件・効果を確認します。
第 10 回 契約の効力/第三者のためにする契約 SⅣ 37-38
※「第三者のためにする契約」の項目は,授業の進み具合によっては省略します。
第 11 回 履行遅滞に基づく解除、履行不能等に基づく解除(契約が守られなかった場合の法的救済) S
Ⅳ 38-52
※契約の一方当事者に債務不履行があった場合に,他方当事者に認められる法定解除(履行遅滞に基づ
く解除、履行不能に基づく解除の要件と効果を明らかにします。債務不履行に基づく損害賠償の詳細は,
損害賠償法で扱います。また,契約の効力のまとめとして,具体的な設例をもとにした検討を行います。
第 12 回 解除の効果 SⅣ 38-52
15
※契約の解除が契約の当事者や第三者に及ぼす影響を検討します。あわせて,解除と損害賠償の関係を
検討します。
第 13 回 意思能力,制限行為能力制度(契約の効力が否定される場合その1) SⅠ 35-51
※契約の効力が否定される場合のひとつとして,意思無能力に基づく無効,制限行為能力制度に基づく
取消しを扱います。
第 14 回 強行法規違反・公序良俗違反(契約の効力が否定される場合その2) SⅠ110-122
※契約の効力が否定される場合のひとつとして,強行法規違反・公序良俗違反に基づく契約の無効を扱
います。
第 15 回 心裡留保(93 条),虚偽表示(民法 94 条)(契約の効力が否定される場合その3) SⅠ122-130
※心裡留保の場合の意思表示の効力,虚偽表示の場合の意思表示の効力およびこれに関連する問題を扱
います。
第 16 回 民法 94 条 2 項による第三者保護 SⅠ122-130
※虚偽表示の対第三者効をさだめた民法 94 条 2 項の機能を明らかにしたうえ,同項が類推適用される
場合を検討します。
第 17 回 錯誤(95 条)(契約の効力が否定される場合その4) SⅠ 130-136
※思い違いによって契約してしまった場合の契約の効力を検討します。
第 18 回 詐欺・強迫(96 条)(契約の効力が否定される場合その5) SⅠ 136-140
※騙されて契約した場合,脅されて契約した場合の契約の効力を検討します。
第 19 回 給付不当利得 SⅠ 143-153, SⅣ 393-416
※契約が無効な場合の事後処理の基礎を検討します。ただし,この点の詳細は損害賠償法で扱いますの
で,授業の進み具合によっては省略します。
第 20 回 代理制度の意義と機能(代理その1) SⅠ157-178
※代理の意義,要件と効果の概略を明らかにします。
第 21 回 代理権の濫用,無権代理と表見代理(代理その2) SⅠ176-177, 179-207
※代理権が濫用された場合や,代理権がないのに代理行為がなされた場合の問題を扱います。
第 22 回 贈与契約 / 売買契約概説 SⅣ 55-62, 62-69,87-88
第 23 回 売主の担保責任 SⅣ 71-87
第 24 回 消費貸借契約・使用貸借契約 SⅣ 103-118
第 25 回 賃貸借契約総論、動産賃貸借契約
第 26 回 不動産賃貸借契約
第 27 回 雇用契約,請負契約(労務提供型契約その1) SⅣ 163-171, 171-181
第 28 回 委任契約,寄託契約(労務提供型契約その2) SⅣ 182-190, 190-195
第 29 回 その他の民法上の典型契約(組合契約,終身定期金契約,和解契約)および非典型契約,商
法上の典型契約,消費者取引 SⅣ 195-210
※非典型契約および消費者取引については別途指示します。
第 30 回 法人 SⅠ53-99
※2006 年 6 月 2 日に一般法人法および公益法人認定法が成立し,2008 年 12 月 1 日から施行されました
ので,これにともなって,民法の公益法人に関する規定は最初の5ヶ条を除いて削除され,中間法人法
も廃止されました。この授業では,法人の基礎を扱います。
※さらに、時間が許せば、民法の様々な箇所に置かれている信頼保護制度の意義を明らかにし,横断的
に要件と効果を検討します(民法における信頼保護制度の横断的考察)
。
履修上の注意
契約法は,以下の 2 点で,他の科目とは基本的に異なっています。
・民法の中核部分であり,かつ,今後の民事法学習の基礎となる科目であること。
・対象範囲が実質的に教科書 3 冊分に及ぶこと。
したがって,契約法の充分な理解がなければ後々まで問題を残すことになりますので,きちんと予
習・復習を行い,確実な知識と理解を得て頂く必要があります。具体的な予習方法・復習方法は,次の
16
a)~c)のとおりです。
a)レジュメの各項目および教科書の該当ページを授業までに読了しておく。
b)レジュメおよび当該教科書の基礎知識を前提として,レジュメの各項目の最初に記載された「予習
すべき事項」に挙げられた諸点を考察しておく。
c)授業終了後は,レジュメの中に挙げられた設例をもとにして,授業で扱った内容を設例に当てはめ
て結論を導く作業を行ってみる。
なお,授業への出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさない場合には,定期試験の受験資格を失いま
す。また,30 分を越える遅刻及び早退は欠席扱いになります。欠席は 1 点の減点,遅刻・早退は 0.5
点の減点となります。これらの点には十分に注意して下さい。
※2016 年 2 月現在,民法の改正作業が進められており,早ければ同年中に新しい民法が国会で成立する
可能性があります。その場合には,新しい民法の条文をも参考にしつつ,本講義を進めますので注意し
てください。
授業の到達目標
本講義の到達目標は,a)契約法の基本的事項の理解,b)基本事項に関する実務および学説の到達点
の正確な理解,c)具体的な紛争事例の基本的な分析能力および解決能力(論理的で明確な論述能力を
含む)の取得に求められます。
若干敷衍しますと,a)契約法における基礎的な法概念および法制度を正確に理解し,b)現在の実務
と学説におけるスタンダードな理論を正確に理解すること,の 2 点がまず必要です。そのうえで,a)
と b)の基礎知識を具体的な設例に当てはめ,紛争解決のためのおおよその道筋を示せる能力を取得す
ることが求められます。
評 価 方 法
本講義における評価の指針は,個々の受講生における上記目標の達成度です。具体的には学期末に行
われる定期試験の結果が中心となりますが,それ以外に,授業の進展状況に応じて随時レポートなどの
課題を提出して頂き,これを平常点として評価します(課題の数は,授業の進展具合によって異なりま
す)
。これらの配点比率は,定期試験 70%,平常点 30%です。
※要件事実の主張・立証責任を踏まえた論述(請求原因,抗弁,再抗弁…という形で訴訟における原告
と被告の攻撃防御方法を整理して法律要件を記述する方法)は,定期試験において必ずしも求められま
せんが,答案の論理性,明確性を高める上で有効な叙述になっておれば,+αの加点要素として扱いま
す。
※成績評価のめやすは,次のとおりです。
・90~100 点 :上記到達目標 a)~c)を達成しており、授業で充分に扱えない項目の学修も自習によ
り理解することが期待できる場合。
・80~89 点:上記到達目標の a)b)をほぼ達成しており,c)についても基礎的な能力を取得している
と認められる場合。
・70~79 点:上記到達目標の a)b)をほぼ達成しているが,c)については基礎的な能力の一部になお
不充分さを残す場合。
・60~69 点:上記到達目標の a)b)をかろうじて達成しているが,c)についてはなお充分ではない場
合。
・59 点以下 :上記到達目標の a)b)c)を達成したとは評価できず,今後の自習による達成がきわめ
て困難であると判断される場合。単位認定のためには再履修が必要となる。
教
材 a)レジュメその他の資料
基本的には,レジュメその他の資料を用いて授業を行います。このレジュメは,下記TKCの「教育
研究支援システム」上にアップロードしてあります。URLは以下の通りです。
https://www.e-japanlaw.jp/LS/Loginform.aspx?P=41J
レジュメには,講義内容に対応する標準的参考書(後掲)の該当頁や関連する裁判例が指示されてい
ます。レジュメはできるだけ早く用意しますが(授業の 2 週間前を目安とします)
,授業の進み方や新
しい判例の公表などの事情により内容が変化することがあります。したがって,上記サイトをしばしば
チェックして常に最新のレジュメを利用するよう心がけて下さい(本年度についてはレジュメ全体をす
でにアップロードしています)
。
授業に際しては,レジュメと参考書を用いて各回の内容をしっかり予習することが必要です。レジュ
メの体裁について一言しておきますと,まず,初心者がまず押さえるべき基礎的事項,とくに民法全体
の体系的理解に関わる重要な項目は赤で記載してあります。それ以外の基礎的事項および初学者と既修
者の双方に共通の必修事項は黒で,既修者を対象とする一歩進んだ展開事項は青で色分けして記載して
ありますので,予習・復習の際の目安にして下さい。とりわけ初心者は,基礎的事項を各自予習で押さ
えてから共通必修事項へ進み,必修事項の理解ができた後に展開事項へと学習を進めて下さい。基本的
事項の中で,ポイントになると思われる部分は強調のためにボルドー体を使っており,近時の特別法の
改正・制定を反映した部分など,上記以外の意味を持つ箇所は緑色のフォントを使っていますので参考
にして下さい。
※レジュメの文書だけを印刷する方法,コメント付き文書を印刷する方法,コメントだけを印刷する方
法は,それぞれ次のとおりです。
・レジュメをパソコンで読み込んだうえ,[表示]ボタンをクリックし,印刷レイアウトモードを選択し
ます。
・[ファイル] メニューの [印刷] をクリックします。
・[印刷対象] ボックスをクリックします(ここまで共通操作)
。
・文書だけを印刷したい場合には,印刷対象として[文書]を選択し,[OK] をクリックします。
・文書とコメントの双方を印刷したい場合には,[印刷対象] リストで [変更とコメントの内容を含む
17
文書] をクリックし、[OK] をクリックします。
・コメントだけを印刷したい場合には, [変更内容とコメントの一覧] をクリックし,[OK] をクリッ
クします。
※白黒プリンターで印刷するため,上記の色分けを下線や網掛けに変更したい場合には,ワードの「一
括置換」機能を使うと便利です。
・[編集] メニューの [検索] をクリックします。
・[検索する文字列] ボックスで、特定の書式(たとえば赤のフォント,ボルドー体やイタリック体な
ど)のみを検索します。そのためには、ボックスに文字が自動的に入力されておれはその文字列を削除
します。次に、ボックス下の[書式] をクリックし、検索する書式を選択します。
・特定の書式をもった箇所一度にすべて選択するために、[見つかったすべてのアイテムを強調表示す
る] チェック ボックスをオンにしておきます。
・[すべて検索] をクリックすると,該当する箇所がすべて強調表示(反転表示)されます。
・検索ボックスの[閉じる] をクリックして当該ボックスを閉じます。
・[書式設定] ツールバーでボタンをクリックして書式を変更します。たとえば、別のフォントの色を
選択して(下線)をクリックしたり、あるいは(斜体)をクリックしたりします。そうすると,変更内
容が、強調表示されているすべての文字列に適用されます。
また,授業に際してはレジュメと六法全書(できれば判例付きの中型六法全書)を持参して下さい。
どうしてもTKCの上記システムにアクセスできず,レジュメをダウンロードできないという事情があ
る方については,別途事務室にて相談して下さい。
b)基本文献
参考書については,1 冊でこの講義内容全部を網羅するものはありませんので,以下の書籍を基本文
献として指定しておきます。
・有斐閣Sシリーズ『民法Ⅰ~Ⅳ』
(有斐閣)
※比較的コンパクトにまとまったオーソドックスな民法の財産法部分の教科書です。契約法と直接関係
するのはⅠ(総則)
,Ⅲ(債権総論)
,Ⅳ(債権各論)の 3 冊ですが,早い時期にⅠ~Ⅳを通読する必要
があるため,受講生についてはすべてを購入したうえ,できるだけ早く全巻を通読するようにして下さ
い。また,家族法については,
『有斐閣アルマ 民法 7 親族・相続(第 3 版)
』が基本教科書に指定さ
れているので,これも併せて通読することを推奨します。Sシリーズの民法Ⅰは,法人法改正に対応済
みです。
・その他,法律要件・法律効果を整理して分かりやすく示した教科書に,近江幸治「民法講義Ⅰ~Ⅵ」
(成文堂)があります。親族法・相続法を除いて 6 冊と大部ですが,初心者にも読みやすい内容であり,
民法の現代語化にも対応していますので,これもお勧めです。
なお,レジュメ各講のタイトル横に示してある数字は,Sシリーズの該当箇所を表しています。ただ
し,これ以外の参考書が不適切というわけではなく,個々の受講生が,自分の学習の進展度に適合する
参考書を後述の参考書一覧から適宜選択して利用して頂くほうが適切です。
参照URLとして,講義担当者のホームページを挙げておきます。講義に関連する各種の資料がアッ
プロードされている場合があります。
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~takasima/index-j.html
c)民法用語辞典
民法の学習は対象範囲が広いので,初学者は法律用語辞典を用いるのが効率的です。法律用語辞典と
しては,有斐閣の Vpass(オンラインデータベース)の中に,法律学小辞典が含まれています。
しかし,法律学小辞典は,すべての法律学上の専門用語を対象としていますので,民法学習の需要を
充分満たすものではありません。そこで,以前に私が他大学の先生と共同で執筆した民法学小辞典を,
ロースクールの水準に対応させた新版を作成しました(中田邦博・高嶌英弘『新・キーワード民法』
〔法
律文化社〕
)
。授業に必要不可欠ではありませんが,教科書と併せて利用すると非常に便利です。
・要件事実論のテキスト(初心者向け)
司法研修所編『問題研究 要件事実』
(法曹会)
大江忠著『ゼミナール要件事実』
『ゼミナール要件事実 2』
(第一法規)
伊藤滋夫・山崎敏彦編著『ケースブック要件事実・事実認定』
(有斐閣)
加藤新太郎・細野敦著『要件事実の考え方と実務』
(民事法研究会)
・法律関係雑誌
『法学教室』
(有斐閣)
(学生向け,月 1 回)
『法学セミナー』
(日本評論社)
(学生向け,月 1 回)
『ジュリスト』
(有斐閣)
(一般法律家向け,月 2 回)
『法律時報』
(日本評論社)
(一般法律家向け,月 1 回)
・判例集
『最高裁民事判例集』
(略称「民集」
,公式判例集)
(年数回)
『判例時報』
(判例時報社)
(月 3 回)
『判例タイムズ』
(判例タイムズ社)
(月 2 回)
・最新判例の解説
18
『○○年度重要判例解説』
(ジュリスト臨時増刊,年 1 回 6 月刊行)
『私法判例リマークス』
(法律時報別冊,年 2 回)
・その他
民法の基本的な考え方,論理の組み立て方を学ぶうえでお薦めなのが,我妻栄『民法案内』シリーズ
(1 巻~10 巻)
,幾代通『民法研究ノート』
(有斐閣)
,加藤一郎『民法ノート(上)
』
(有斐閣)などの
案内書です。エッセイタッチで気軽に読めますが,内容は高度です。
・六法全書:以下に,代表的な六法を掲げておきます。
判例なし:小六法(有斐閣)
,ポケット六法(有斐閣)
,岩波コンパクト六法(岩波書店)
,コンパクト
六法(三省堂)
判例付き:判例六法(有斐閣)
,模範六法(三省堂)
,岩波判例コンパクト(岩波書店)
※模範六法は CD-ROM 版が出ていますので,ノートパソコンを使っておられる受講生はこれを用いるの
が便利です。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民法Ⅱ(物権法・損害賠償法)
坂東 俊矢
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
六法全書を開けて民法を見て下さい。民法は 5 つの編で構成されています。第 2 編が物権、第 3 編が
債権です。この講義は、第 2 編物権の占有権及び所有権の基本と第 3 編債権のひとつの典型である損害
賠償請求権を対象としています。民法の二種類の基本的権利を学ぶわけで、ここでの学びはこれからの
民法はもちろん、その他の法律を理解していく上での基盤ともなります。限られた時間ですが、できる
だけていねいに基本法律概念や条文を確認しながら講義をすすめていきます。
物権法の焦点は、物に対する支配権(使用・収益・処分)を実現するための基本的な法律関係にあり
ます。それは、不動産と動産という 2 種類の物の型に対応して理解する必要があります。さて、物権の
典型的な形は所有権(民法 206 条)です。誰にでもなじみがある所有権ですが、例えば、今あなたが持
っている民法の教科書があなたに所有権があることを法律ではどのように説明するのでしょうか。ある
いは、誰かがあなたに無断でその教科書を持っていったとして、その際にあなたはどのようにしてその
教科書を取り戻すことができるのでしょうか。もちろん、現実にはともかく「返して下さい」と一刻も
早くその誰かに言わなければなりません。この講義は、そうした現実を支える法律的な基盤、すなわち、
法律的な主張の根拠は何で、その主張をどのように実現するのかを学ぶわけです。なお、第 2 編物権に
は物権法定主義に基づいて数種類の権利が規定されています。この講義はその中でも、所有権を中心に、
占有権までを対象とすることになります。
一方で、損害賠償請求権は民法が規定する債権のひとつの典型です。民法が条文で損害賠償請求権を
規定しているのは、不法行為(民法 709 条)
、債務不履行(民法 415 条)
、それに瑕疵担保(民法 570 条、
590 条、634 条など)です。この講義では、不法行為に関する規定を中心に、損害賠償の基本的な法律
的考え方を学びます。
「弁償して下さい」という言葉は日常会話でも使う用語かもしれません。その法
律的な要件と効果とを整理して理解することがこの講義の目的です。
すでにお気づきになったかもしれませんが、民法の理解のためにはできるだけ身近な具体的事例を念
頭に置いて、それを法的に説明するという視点で学ぶことが不可欠です。法律は抽象的な法的概念で組
み立てられています。例えば、
「対抗要件」
(民法 177 条、178 条)とか、
「過失」
(民法 709 条)とか、
抽象的であっても、それを正確に表現できるまでに理解する必要がある法的概念が民法には少なくあり
ません。ただ、その概念を実際の紛争解決にあてはめて使うためには、具体的な事実との関係を整理し
て理解する必要があるのです。それは、本来は法学教育に普遍的に必要な学びの姿勢ですが、とりわけ
法科大学院では不可欠です。皆さんが受験されるであろう司法試験で問われているのは、事実への法律
規範の当てはめによる問題解決に他ならないからです。
本講義は全部で 15 回です。物権法と損害賠償法のすべてを講義することは困難です。大切なのは、
民法の基本概念を正確に学ぶとともに、民法を学ぶための方法と基本的な姿勢をしっかり身につけるこ
とです。法科大学院の学びは講義時間だけではもちろんありません。自学自修による自主的な努力が不
可欠です。そのための基本的な資質をこの講義を通して学んで下さい。
容 第1回
民法を学ぶための基本概念としての物権と債権-物権法を理解するための基本概念と所有権
画 の意義・客体
第2 回
所有権を保護する制度としての物権的請求権と共同所有の考え方
第3 回
所有権の取得(物権変動)と不動産物権の対抗要件としての登記
第4 回
不動産物権の対抗要件と第三者-不動産の二重譲渡を中心に
第5 回
登記を要する物権変動のまとめと動産の対抗要件としての引渡し
第6 回
動産物権の対抗要件と即時取得
第7 回
占有の概念と占有の移転
第8 回
その他の物権の概要と物権法のまとめ(理解度確認小テスト)
第9 回
不法行為の成立要件(1)-「故意と過失」と「違法性」の考え方
第 10 回 不法行為の成立要件(2)-「損害の発生」と「因果関係」の考え方
第 11 回 不法行為の効果(1)-賠償請求権の主体と損害の算定
第 12 回 不法行為の効果(2)-過失相殺と消滅時効
第 13 回 違法性(責任)の阻却事由-責任能力と正当防衛・緊急避難
第 14 回 特殊の不法行為(1)-使用者責任と工作物責任の考え方
第 15 回 特殊の不法行為(2)-共同不法行為の考え方
19
履修上の注意
本年度、私のこの講義を選択いただく方は、残念ながら再度の履修をせざるを得ない状況になった学
生さんです。恐らく限られた人数でしょうから、そのそれぞれの学びの段階や克服すべき課題を意識し
ながら講義を行います。遠慮なく、自信がもてない部分、学びに不安があることなど、遠慮なくお話し
下さい。それが「今度こそ」を超えた成果をもたらすことになると私は信じています。頑張りましょう。
授業の到達目標
物権法と損害賠償法を理解するためには、民法に関する基本的法律概念の正確な理解を前提に、一定
の範囲での判例や裁判例の理解も不可欠です。判例の理解は、基本的法律概念を事実にあてはめるため
にも重要です。また、条文を参照することで、その活用ができる能力の涵養も本講義で身につける必要
があります。この講義の到達目標は、物権法と損害賠償法の基本概念を、条文を通して理解し、それが
どのような事例で問題になるのかを基本判例のレベルを押さえることを通して理解することにありま
す。
評 価 方 法
成績の評価は以下の方法の点数を加算した評価によります。
1.期末に実施する「論述試験」
(70%)
試験範囲は半年間の講義のすべてから問題を出題します。物権法から 1 問、損害賠償法から 1 問とする
か、融合問題とするかは状況を勘案して判断します。試験の形式など詳細については、実施前に説明し
ます。また、採点後の点数評価とそれぞれの課題などについては、
「試験講評」で明らかにします。
2.講義期間中に提出を求める「レポート」
(15%)
講義で触れることができない部分を自学自修の対象として明示し、それに関する勉強の成果を簡潔なレ
ポートとして、提出いただく予定です。そのレポートを 15 点で評価します。
3.講義時間中に物権法に関する基本的法律理解を問う「理解度確認テスト」を実施します。それを 15
点で評価します。
(15%)
4.欠席や遅刻・早退をマイナス評価とします。
欠席 1 回につき-1 点。遅刻、早退については 30 分に満たない場合には-0.5 点とします。
教
材
講義の基本的な内容はレジュメを TKC に掲示しますので、それを素材にして、予習をして下さい。
なお、教科書については基本書として、有斐閣 S シリーズを使うことを民法教員で了解事項としてい
ます。レジュメには、当該教科書の該当頁を記載しますので、レジュメと教科書とをコラボして活用い
ただくには便利です。
具体的には、物権法については、淡路・鎌田・原田・生熊『民法Ⅱ 物権 第 3 版補訂』
(有斐閣 S シ
リーズ 2010 年 3 月)
。損害賠償法については、藤岡・浦川・磯村・松本『民法Ⅳ 債権各論(第 5 版
補訂版)』
(有斐閣 S シリーズ 2009 年 6 月)です。
もっとも、受講生の皆さんはそれぞれの基本書としての教科書をすでにお持ちだと思います。それを
尊重しながら、講義を組み立てます。
また、
「判例百選」の第 7 版も参考にして下さい。必要な部分は資料として提供します。詳細は、講
議の際に説明します。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
20
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民法Ⅲ(金融取引法)
山本 宣之
1年次
学
期 秋学期
4単位
必 修 ・ 選 択 必修
民法Ⅲ(金融取引法)は、債権債務の効力・流通・実現・担保を主たる対象とする。民法の領域とし
ては、債権総論の多く、および担保物権のすべてが該当する(これに、民法総則の消滅時効が加わる)。
債権の代表例である金銭債権を念頭においていえば、まさに金融取引・担保に関する基本制度を扱うこ
とになる。現実の金融取引は、そうした制度の具体的利用ないし裏づけなしには成り立たないという点
で、実務上極めて重要な領域である。
この講義の前半は、債権債務の効力・流通・実現(主に債権総論の部分)を担当する。債権総論は、
民法の財産法のなかでも抽象度の高い分野とされ、複数の制度の関連・交錯に配慮する必要もあること
から、理解の難しい領域である。この講義の後半は、債権の担保を主たる対象とする。民法の領域とし
ては、債権総論の一部、および担保物権のすべてが該当する。民法の財産法のなかでも、担保(とくに
担保物権)は人為的に設計された技術的性格の強い分野であり、複数の制度の関連・交錯にも配慮しな
ければならない点で、理解の難しい領域である。
この講義の目的は、そうした債権債務の効力・流通・実現に関する基本理解、債権の担保に関する基
本理解を獲得し、2年次以降の発展的学習の基礎を身につけることにある。
容
今年度の講義は、次のような予定である。実際の授業の進行に応じて変更する可能性がある。なお、
画 条文は、改正法案(
「民法の一部を改正する法律案」
(2015 年 3 月 31 日国会提出))に従う。
第1回 概説1
この講義の前半の対象領域を概観し、ガイダンスとする。とくに、民法典の債権総則の構造と主要な
規定を確認しながら、そもそも債権とは何かを理解するために、債権の意義、債権の発生、債権の目的
について基本的な検討を行う。
第2回 金銭消費貸借
金銭消費貸借にもとづく貸金債権は、金銭債権の代表例である。消費貸借には、要物・無償・片務契
約としての消費貸借と書面でする消費貸借があり、それぞれにつき要件・効果上の問題を検討する。ま
た、貸金債権の利息に関する特別法である利息制限法も重要である。
第3回 債務不履行と履行の強制
債務不履行の概要を民法Ⅰ・民法Ⅱの復習という位置づけで確認する。債務不履行の効果として損害
賠償責任が重要であること(また、契約解除も関係する)、金銭債務とその不履行に関して重要な特則
があることを理解する。また、債権が強制的に実現される方法として、履行の強制を検討する。直接強
制、代替執行、間接強制という3種類の方法があり、民事執行法による手続を概観する。判例や設例の
事実関係にはしばしば差押えや競売などが登場し、その手続の理解が当然の前提になるからである。
第4回~第6回 債権の消滅原因:弁済
債権の大多数は、債務者の任意の弁済によって実現されて消滅する。この弁済の要件に関しては、い
つ(履行期)、どこで(履行地)、誰が(弁済者)、誰に(受領権者)、何を(債務の本旨に従った給付)
を給付すればよいかを理解する必要があり、これに関連して、第三者弁済、表見受領権者への弁済など
が問題となる。また、あわせて、弁済の効果、弁済の充当についても検討する。
第7回 債権の消滅原因:弁済の隣接制度
債務者が弁済にとりかかり債権者が受領するまでの過程には、弁済の提供、受領遅滞、弁済供託とい
う複数の制度が密接に関連して存在する。弁済が完了しない場合に、債務者や債権者がどのような責任
を負うかは、それらの制度(および履行遅滞)に左右される。そうした関連を意識しつつ検討する。
第8回、第9回 債権の消滅原因:弁済以外の消滅原因、消滅時効
債権が任意に実現される方法として、代物弁済、相殺、更改、免除、混同を検討する。また、債権の
その他の消滅原因として消滅時効、除斥期間があり、これらも合わせて検討する。消滅時効に関しては、
時効期間、時効の起算点のほか、時効の更新・完成猶予、時効の援用の制度が重要である。
第10回~第12回 債権譲渡、債務引受、契約上の地位の移転
債権譲渡は、現代の取引において重要性を増しているが、制度全体も判例や特別法なども合わせて複
雑さを増している。とくに、譲渡制限特約とそれに反する債権譲渡の効力、債務者に対する対抗要件、
第三債務者に対する対抗要件、債権譲渡特例法による対抗要件などについて、正確な理解をすることは
不可欠である。また、債務引受、契約上の地位の移転についても概観する。
第13回~第15回 債権者代位権、詐害行為取消権
債権の保全的効力として債権者代位権と債権者取消権が存在し、それぞれ実務上の意義も大きい重要
な制度である。債権者代位権は、本来型について債権執行との相違に注意しながら、要件、効果、転用
事例などを検討する。詐害行為取消権については、法的性質、要件、効果などを検討し、多数の条文が
具体的に定めている詐害行為を検討する。
第16回 概説2(担保法)
この講義の後半の対象領域を概観し、ガイダンスとする。とくに、債権(金銭債権)がどのように実
現されるかについて、任意に弁済される場合、強制執行によって実現される場合、担保権の実行によっ
て実現される場合を比較する。関連の深い民事執行法の基礎にも簡単に言及することになる。
第17回、第18回 保証、多数当事者の債権関係
債権の人的担保の代表例は保証であり、実務的な需要はいまなお衰えていない。保証の成立要件、付
従性・補充性・随伴性などの性質をもつ保証債務の内容、また、保証人が債権者に弁済した場合の保証
人の求償権について検討する。また、保証以外の多数当事者の債権関係である連帯債務、分割債務、不
可分債務、および連帯債権についても、比較検討する。
第19回 相殺
相殺は、簡便な決済機能としてだけでなく、現在では担保的機能が重要になっている。相殺一般の要
件、効果を理解することはもちろん、相殺予約、相殺と差押え、債権譲渡と差押えの問題を通じて、相
殺の担保的機能がどのように実現されるか、どのような制限があるかを検討する。
第20回、第21回 抵当権(基礎)
債権の物的担保・担保物権の代表例は抵当権であり、極めて広範囲で利用されており、理解すべき点
も多数にのぼる。抵当権の成立要件、対抗要件としての抵当権設定登記、抵当権の効力が及ぶ被担保債
権の範囲と目的物の範囲など、基本的事項は確実に理解する必要がある。抵当権の実行方法である担保
不動産競売と担保不動産執行の概要の理解は、抵当権を具体的にイメージするうえで不可欠である。さ
らに、抵当権と目的物の賃借人の関係、譲受人との関係、侵害者との関係も重要である。
第22回、第23回 抵当権(発展)
抵当権に関するやや難解な項目の検討を行う。物上代位は、抵当権によって債権が回収される実行方
法の1つとして重要であり、共同抵当についても実行時に複雑な問題がある。また、法定地上権、根抵
当権、および、根抵当権と同じく不特定の債務を担保するための根保証についても検討する。
第24回、第25回 担保・求償・代位
第三者(担保していた保証人や物上保証人が代表である)が債権者に弁済した場合、被担保債権自体
は消滅するが、第三者は債務者に対し求償権を取得する。その求償権を担保するために、弁済による代
位が存在するが、その制度としての仕組みの理解は容易ではなく、またその効果についても理解におい
て注意すべき点が多い。
第26回 質権、留置権、先取特権
抵当権以外の約定担保物権として、質権、また、法定担保物権として、留置権、先取特権がある。実
務的意義は必ずしも大きくないが、それぞれ一定の場面では重要な役割を果たしている。それぞれの意
義、要件、対抗要件、効力などについて検討する。
第27回、第28回 非典型担保
非典型担保として、仮登記担保、譲渡担保について検討する。仮登記担保については詳細な特別法が
あるが、譲渡担保については明文の規定はなく、その規律は判例・学説を中心とする法理に委ねられ、
すでに法律関係の詳細が明らかにされてきており、その理解には注意が必要である。また、集合動産譲
渡担保についても、集合物概念を含めて概観する。
第29回、第30回 非典型担保
非典型担保として、所有権留保について検討する。所有権留保についても明文の規定がなく、その規
21
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
22
業
業
内
計
律は判例・学説を中心とする法理に委ねられているため、その理解には注意が必要である。また、あわ
せて動産担保という観点から動産売買先取特権、債権担保という観点から債権質と債権譲渡担保につい
ても、ここで検討する。
金融取引法の担当領域はかなり広くその内容も難しいが、この領域を理解しなければ民法を理解した
とはいえず、とくに実務的に全く役に立たない。4単位であるため毎週2回授業があり、授業の進度は
かなり早くなる。日々の努力を怠ると、その項目、その授業回だけが理解できないのではなく、その後
の学習全体に支障が生じることを銘記する必要がある。
授業は、レジュメ(あらかじめTKCに掲載する)にしたがって進める。とくに、基本事例について
の要件・効果の理解、簡単な当てはめ判断を行う。この基本事例の法律関係について確実に理解してい
くことが、授業時間中の中心テーマとなる。他方、レジュメの一般的内容は、基本理解の整理・充実と
いう位置づけでのみ取り上げ、むしろ、各自が基本書からそうした一般的内容を正確に読み取れている
かどうかを確認するために利用する予定である。また、初回を除いて、冒頭に前回のレジュメの復習問
題(自らの理解度を確認する問題)の答え合わせを行う。学生の解答(正誤だけでなく、正誤の理由も)
とそれへのコメントを通じて、基本理解を全員で確認し、誤りや不正確さを修正する機会とする。
以上から、予習の内容としては、基本事例の理解が圧倒的に重要である。また、各自の基本書の該当
箇所を通読し、レジュメの内容を読み取れているかを確認することが重要である。なお、レジュメは授
業進行の資料にすぎず、自分で基本文献を読むことが、学習には絶対的に不可欠である。
債権債務の効力・流通・実現・担保に関する制度の基礎知識を身につけること(法的知識の獲得)が、
主たる目標である。また、常に具体的な事案を念頭において授業を進めることにより、当該制度を用い
た事案の解決(問題解決能力)、契約書や登記簿などを含めた事実関係の整理(事実認定能力)、および、
基礎知識を前提にしたより高度な論点に対する問題意識と議論(創造的・批判的検討能力)も、従たる
目標とする。さらに、金融取引・担保に関する基本制度が、いかに深く実務に関わりいかに深く人々の
経済活動の基盤になっているかを認識することによって、それを扱う法律家の使命・責任の重さも自覚
できるはずである(法曹としての使命・責任の自覚)。
単位認定(60点以上)の基準となるのは、債権債務の効力・流通・実現・担保に関する制度趣旨、
要件、効果の基本を説明できること、それらに対する事案の基本的な当てはめができること、およびそ
れにもとづく事案の解決の基本を提示できることである。また、より上位の成績評価を得るには、そう
した基本をより正確かつ詳細に説明できること、事案をより丁寧に整理しより詳細に当てはめること、
応用・展開的内容を的確な問題意識のもとに論じることが必要である。
定期試験 70%、平常点 10%、レポート 20%として評価する。定期試験は、長文の事例についての論
述式の筆記試験(120 分)とする。平常点は、主に小テストによるものとし、また授業中の特に優れた
応答や発言をプラス評価とすることがある。レポートは比較的短い事例についての論述式を 2~3 回行
い、別途、詳細を説明する。また、欠席・遅刻早退の数をマイナス評価とする(履修要項に従う)。
基本文献は、淡路剛久ほか『民法 II 物権』
、野村豊弘ほか『民法 III 債権総論』
(ともに有斐閣Sシ
リーズ)、または、内田貴『民法 III 債権総論・担保物権』とする。改正法案に関しては、潮見佳男『民
法(債権関係)の改正法案の概要』
(2015 年、金融財政事情研究会)がある。その他の文献は、初回に
詳しいリストを配布する。なお、道垣内弘人『担保物権』は好文献であるが、研究成果としての先端的
内容も含むため、注意を要する。潮見佳男『プラクティス民法・債権総論』は詳細であるが、自説が混
在し、内容にムラがあるなど、利用上注意すべき点が多い。
民法Ⅳ(家族法)
渡邉 泰彦
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
民法Ⅳ(家族法)は、民法の親族編と相続編を扱う。実務においても、離婚、親子、相続は、数多く
問題となっている。まず、このような法律問題を解決するために必要な基礎的知識を修め、民法の規定
を体系的に理解することが目的である。
基本的な知識として、講義では、条文・判例を理解することを求める。これらの理解があってこそ、
学説の展開、位置づけが可能となるからである。家族法と財産法の違いが強調されることが多いが、本
講義では、両者の接点を示しつつ、民法全体の理解ができるようにすることをも目的とする。
また、ローヤリング・クリニックなど法律相談で家族の問題は多く出てくるので、専門的な内容を普
通の人にも理解できる形で説明しなければならない。そのため、法律・判例などを正確に理解し、それ
を自分の言葉で伝えることができるまで咀嚼していなければならない。基本的な内容を中心に、結論に
至る論理過程を重視しながら、家族法を理解することを目的とする。
生命倫理に興味がある人には、人工生殖問題の前提として、民法に定められた親子関係を学ぶことも
目的となる。
容
講義では、基本となる条文・判例をまず理解することを求める。そのうえで、学説の展開とその位置
画 づけを考えてもらいたい。
教科書で採用されている章立ては、学部通年 26 から 30 時間を想定しているものであり、法科大学院
の時間割に合致しているとはいいがたい。1 つのテーマに 1 講時をあてていくと時間が足りなくなる、
また反対に時間をかけすぎるということがある。そのため、1 講時に複数のテーマを扱う、2 講時にま
たがって 1 つのテーマを扱うこともある。
授業の中ですべてを扱うことは不可能である。そこで、予習・講義・事後学習として、次のように段
階づけている。
条文の理解 → 予習の段階で理解する。必要な範囲で授業中に確認する。小テストで確認する。
判例の理解 → 予習で読んできたうえで、講義の中で理解する。
学説の理解 → 講義の中で適時指摘するほか、事後の学習で判例との対比で理解する。
授業中は基本的な判例を扱い、さらに詳細な論点については、レジュメで[発展]として示しており、
事後の自学自習において理解することを求めている。
(1)親族、身分行為、婚約、婚姻の成立
(アルマ 2-9、36-54、109-111)
親族・血族・姻族などの概念について説明する。
身分行為の典型として婚姻締結を扱う。婚約は、内縁の一部としてではなく、婚姻の前段階として扱
う。
(2)婚姻の効力、離婚(1)協議離婚
(アルマ 26-27、54-77)
同居・協力・扶助義務、夫婦財産制などについて扱う。
離婚について、協議離婚を中心に扱う。
(3)離婚(2)裁判離婚、離婚効果(1)財産分与
(アルマ 27、77-96)
離婚について、積極的破綻主義の導入を中心に裁判離婚を扱う。
離婚効果のうち、財産分与について扱う。
(4)離婚効果(2)離婚後の子の監護、内縁
(アルマ 96-108、111-118)
離婚効果のうち、別居中から離婚後の子の監護について、子の引渡しも含めて扱う。子の引渡しは、
別居または離婚と合わせて問題となることから、ここで扱う。
内縁について、これまでの婚姻で学んだこととの比較をふまえて、扱う。
(5)親子、実親子(1)
(アルマ 119-146)
法律的親子関係の成立について、嫡出推定、認知を扱う。
(6)実親子(2)
、縁組
(アルマ 133-146、155-178)
認知について扱う。縁組について、普通養子縁組と特別養子縁組を扱う。
(7)親権
(アルマ 179-198)
親権について、身上監護権と財産管理権の総論的部分を扱う。親権の財産監護権と利益相反行為を中
心に扱う。親権は法定代理であるから、代理について民法総則の本も確認しておくこと。
(8)未成年後見、成年後見、扶養
(アルマ 199-238)
成年後見・保佐・補助について扱う。この部分については、民法総則の本でも扱われているので、そ
ちらも確認しておくこと。
扶養について、夫婦・養育費を除く親族扶養を扱う予定であるが、時間の都合で割愛することもある。
(9)相続人、相続分、相続欠格、廃除、相続回復請求
(アルマ 240-278)
法定相続人の範囲、法定相続分とともに、相続人が自らの意思によらずその資格を失う場合を扱う。
また、相続回復請求権もとりあげる。
(10)遺産承継・相続の承認・放棄、財産分離、相続人の不存在
(アルマ 279-296、342-368)
相続人が何を相続するのかという遺産承継の問題を扱う。
無権代理と相続については、民法総則の本でも扱われ、損害賠償と相続については不法行為または債
権各論の本でも扱われているので、そちらも確認しておくこと。
また、相続人の確定のために、相続の承認・放棄をここで扱う。さらに、これに関連する問題として、
相続人が不存在の場合に特別縁故者への財産分与を中心に扱う。財産分離については、時間があればふ
れる。
(11)遺産共有、遺産分割(1)
(アルマ 304-326)
相続開始から遺産分割までの相続人による遺産の共有状態について扱う。共有については、物権法の
本で扱われているので、そちらも確認しておくこと。
23
(12)遺産分割(2)
(アルマ 327-341)
遺産分割について、具体的相続分の算定を特別受益・寄与分とともに扱う。
ここで具体的相続分の算定を理解できないと、後の遺留分の侵害額が算定できなくなる。具体的相続分
で、どのように遺産を分割するのかを扱う。
(13)遺言
(アルマ 369-391)
遺言について、方式を中心に、遺言の効力も扱う。普通方式遺言のみを講義では扱う。遺言執行も扱
う。
(14)遺贈、相続させる旨の遺言、相続と登記
(アルマ 297-301、392-403)
遺贈と相続させる旨の遺言について、それぞれを比較し、説明する。相続法のこれまでのまとめとし
て、登記に関連するいわゆる相続と登記の問題を扱う。
(15)遺留分
(アルマ 404-430)
遺留分の概要、遺留分侵害額の算定、遺留分減殺請求権について扱う。遺留分の算定は、具体的相続
分の算定を理解しておくこと。
履修上の注意
毎回、TKC にレジュメとともに裁判例の抜粋を掲載する。きちんと目を通して、どのような考え方で
判例が結論に至っているのかを理解するように。講義中に確認する。2 種類用意するレジュメのうち、
基本(基礎)レジュメをもとに講義を進める。さらに必要な知識、判例の理解については、発展レジュ
メで、自学自習することを求める。
予習として、レジュメに【予習】と記載された基礎的な概念・条文を理解することを求めており、小
テストで前回の復習とともに確認する。基本的な概念を正確に用いることで理解の仕方が大きく変わ
る。基本的な概念の組合せ、補充をとおして、判例の理由付けを理解できているかどうかを確認しても
らいたい。
家族法も民法の一部であるから、財産法を理解できていることが求められ、応用問題として家族法と
財産法の交叉領域では、意思能力、行為能力、代理、177 条の対抗問題、共有、債権者代位権、詐害行
為取消権、贈与、損害賠償をはじめ様々な分野が関連してくるので、理解しておくように。
秋学期開始までに、指定した教科書をあらかじめ読めればよいが、間に合わないというのであれば、
民法を1冊で説明する本の該当部分だけでもきちんと読んでおくことが、
講義の理解に役立つであろう。
授業の到達目標
親族法と相続法の基本的な問題を正確に理解していることが、単位を認定するための到達目標であ
る。家族法の全体像をとらえたうえで、実務の出発点となる判例をその論旨からきちんと理解している
ことが求められる。
まずは、婚姻、親子、法定相続、遺言、遺留分の基本的な考え方を理解する。そして、基本的な事項
を体系的に理解し、有機的に連携させる段階までに至っていることが、第一の到達目標である。
さらに、基本的な考え方を具体的事案においてもきちんと適用できる程度まで理解に達すること。例
えば、ローヤリング・クリニックで多くの相談がある親族・相続の問題について、きちんとした対応が
できることは一つの具体的な到達目標であろう。
日常生活で起こりうる家族の問題をプロが扱う意義を考えることから法曹としての使命・責任の自覚
を養う。日々起こりうる家族の問題における問題解決能力を養い、そのために必要な法的知識を得るこ
とが目標である。情が絡む家族の問題を対象に、情に流されない中庸な法的分析・推論能力、法的議論・
表現・説得能力、創造的・批判的検討能力を身につけることが求められる。
評
24
価
方
90~100 点 個々の学説の状況をはじめ授業で扱わない問題までも自習により十分に理解できる能力を
有していると期待できる。判例・学説の状況をきちんと理解したうえで、自らの考えを十分に展開でき
る能力を有している。
80~89 点 講義内容を十分に理解し、問題を十分に把握する能力を有しており、自分の見解を論理的に
展開できる。判例・通説の理由付けを理解したうえで、自らの見解を展開できる。具体的事案において
も正確な答えを与えることができる。
70~79 点 講義内容を理解し、
問題点を正確に抽出することができ、
正確な基本的な知識を有している。
また、判例・通説の状況を理解できている。結論に至る理由付けもきちんと理解している。具体的事案
において問題点を指摘し、調べて解決できる。
60~69 点 講義内容を基本について理解しており、問題点を把握したうえで、正確な基本的な知識をも
って検討している。個別の問題について、体系的な位置づけを理解できている。具体的事案において問
題点を指摘し、さらに調べることで不明確な点を明らかにすることができる。
59 点以下 講義内容の理解が不十分である。個々の制度について理解が不十分であり、体系的な位置づ
けができていない。
法
定期試験 70%、小テスト・授業中の発言など 30%を中心に評価する。
小テストは、前回の講義の復習および当日の講義の予習の問題を出題し、毎回授業中に 5 分から 10
分の時間で実施する。欠席した場合の小テストの評価を考慮し、小テストは平均点で成績に反映する(た
だし、欠席が多いと単位認定試験の受験資格を失う)
。
出欠は、小テストの受験で判断する。欠席は、正当な理由がない場合、1 点の減点の対象となる。授
業の出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさない場合には、単位認定試験の受験資格を失う。30 分未満
の遅刻及び始業後 60 分経過後の早退は 0.5 点の減点とする。
材 1 レジュメ
TKC に毎週レジュメを掲載する。レジュメには判決の抜粋と TKC のリンク先を載せる。講義で扱う内
容のみを記載した「基本レジュメ」と、自学自習の発展問題を掲載した「発展レジュメ」を掲示する。
講義は、基本レジュメに沿って行い、自学自習のために発展レジュメを各自で利用することを求めてい
る。
講義の前週にレジュメ、復習問題を掲載する。復習問題の解答またはヒントは、その翌週に掲載する。
教
2 書籍
高橋朋子・床谷文雄・棚村政行『民法 7 親族・相続(第 4 版)
』 有斐閣アルマ(レジュメは、この
本を基本に構成している)
基本的な判例の解説として
二宮周平・潮見佳男編『新・判例ハンドブック 親族・相続』 日本評論社(コンパクト)
松本恒雄・潮見佳男編『判例プラクティス 民法Ⅲ 親族・相続』信山社(解説が簡潔)
水野紀子・大村敦志編『民法判例百選 III 親族・相続』 有斐閣(解説が詳細である)
参考文献として
(コンパクトな基本書)
佐藤義彦・伊藤昌司・右近健男『民法Ⅴ-親族・相続』有斐閣 S シリーズ(相続法の部分は理解力を
求められる)
(指定教科書にプラスするならば)
床谷文雄/犬伏由子編 『現代相続法』 有斐閣
潮見佳男『相続法 (第 5 版)
』有斐閣
大村敦志『新基本民法 7 家族編』有斐閣
(演習本)
窪田充見・佐久間毅・沖野眞己編著『民法 演習ノート III 家族法 21 問』 弘文堂
二宮周平『事例演習 家族法』 新世社
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
企業法Ⅰ
佐藤 誠
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は,商法総則・会社法を中心に,企業の組織や活動に関する種々の法律関係について理解する
ことを目的とする。企業は経済活動の担い手であり,現代社会は企業なしでは成り立たないといってよ
い。
株式会社を中心にして,その設立や組織,また企業の活動を法的に理解し,企業に関係して生起する
法律問題を解決するに必要な基礎力を習得することが目的である。
ただし,
「会社法」は非常に複雑な構造になっており,体系的に十分理解するためには相当な時間を
要する。本講義では,会社法全体を網羅的に扱うのではなく,現時点で公表されている共通到達目標(コ
ア・カリキュラム)
を踏まえて 1 年次秋学期終了時までに到達すべき目標を明示しつつ(別途TKCの授業内容にファイル
で提示する。
)
,会社法の根幹といえる部分(株式・株主,会社の機関設計,機関の権限)について基礎
的理解を達成することを目的とする。具体的には,以下の授業計画を参照。
なお,具体的な授業内容は,今後の立法動向,最新判例,学説の動向等により変更が生じうる。
容
下記に示した計画に沿って,企業法序説(企業とは何か・商法,会社法の特色・各種企業形態の特徴・
画 会社とは何かについて概説)
,株式会社総論(株式会社を理解するための重要な基本概念について会社
設立の手続の流れに沿って概説)
,株主と株式,機関(機関の権限分配および株主総会)を成立後の会
社の運営の視点から解説する。企業法Ⅰでは、基本的知識の修得と株式会社制度の根幹の理解を中心に
扱う。応用的事項については、2年次春学期の企業法Ⅱで扱う。
(企業法序説)
第1~2回 企業と社会(各種の企業形態,会社の意義・種類,会社法・商法総論)
現代社会の経済活動の大半を支えているのは企業であること,その企業には各種の形態があり,なか
でも株式会社の重要性を確認する。なお,第 1 回目の講義をガイダンスとして,会社法の全体像を示す
ことで,体系的な理解を促す。
会社の法的概念とその実態を確認し,株式会社を,合同会社・合資会社・合名会社と対照しながら理
解する。会社の権利能力(権利義務の帰属主体性)を学ぶ。
同時に,商法総論(商人および商行為の意義)との関係を理解する。
(株式会社総論)
第3~5回 株式会社の意義と特色
25
企業法の中心である株式会社について詳しく学ぶための基礎知識を修得する。株式会社を理解するた
めに不可欠のキーワードである株式・有限責任・資本制度・所有と経営の分離・機関の分化と権限分配
などについて理解する。個々の制度を個別に見るのではなく,株式会社の設立手続の基本的な流れと併
行して,株式会社がどのようにして作られるのか,その設計のあり方に照らしながら解説することで,
より相互の体系的関係について理解できるように心がける。会社の設立については,細かい規定に踏み
込むのではなく,定款の作成,募集設立や発起設立など会社設立の手続,
「設立中の会社」や発起人の
権限等今後の授業において基礎的知識として必要な事項に焦点を絞って学ぶ。
(株式と株主)
第6~9回 株式と株主(株主の権利・義務・株式の種類・株式の譲渡・単元株制度等)
株式会社におけるもっとも重要かつ基本的概念である株式と株主について詳論する。総会で議決権を
行使し,また,配当を受ける株主の権利義務を確認する。株式会社は複数の種類の株式を発行すること
ができ,目的に応じて様々な種類の株式を組み合わせて活用することができる。また,株式という抽象
的権利を証券に結合させた株券を発行する場合と発行しない場合によって権利の譲渡や行使の方法に
差異が生じる。株式の譲渡は投下資本回収の手段として原則自由とされるが,一定の制限を設けること
もできる。これらに関する基本的法律問題を扱う。
(株式会社の機関総論・株主総会)
第10~15回 会社の機関設計(株主総会,取締役,取締役会,代表取締役,会計参与,監査役(会)
,
会計監査人,委員会設置会社,執行役)
,機関相互の権限分配および株主総会
株式会社の運営においては,会社法により機関が分化され,相互の抑制と均衡によって権限が濫用さ
れることを防止し,円滑で効率的な経営が行えるように制度設計されている。会社法は,旧商法にくら
べてこの機関設計を大幅に柔軟化した。株式会社におけるそれぞれの機関の意義と役割およびその運営
上の規制について概要を理解するとともに,これら機関相互の関係についても理解する。詳細は、株主
総会の運営から決議の瑕疵までを扱い、業務執行機関等については企業法Ⅱで扱う。
・最新の判例,授業評価アンケートにおける意見,授業内容充実のための FD 活動等をふまえて,上記
の授業計画は修正されることもあり得る。具体的な授業計画は,授業開始までに TKC により公表する。
履修上の注意
本講義では,毎回の講義時に先立って講義内容を示すレジュメを配布する。講義形式は,通常の講義
方式と対話方式(質疑応答を行いつつ進める方式)を併用する。随時小テストを行う(できる限り毎週)
他,レポートの提出を求めることがある。
講義資料は,TKC 上に掲載するものとし,授業時間を有効に使うため授業中に配布はしない。各自の
ペースでプリントアウトし,授業時に必ず持参すること。また,レジュメはあくまで授業の理解を助け
るための補助資料にすぎない。
各自講義を聴きながら自分のノートを作成する必要があることを忘れないで欲しい。
ただし,随時追加の資料がある場合は,その都度コピーを配布する。
○求められる予習・復習の内容
講義の理解には特に民法総則,債権総論,契約法,不法行為などの基礎的知識が不可欠であるので,
1 年次春学期の民法科目をしっかり復習しておくことが望ましい。
また,余力があれば商法総則・商行為法,会社法の初学者向けテキスト(有斐閣Sシリーズ,法律文化
社「プライマリー会社法」
「プライマリー商法総則・商行為法」等)や「キーワードで読む会社法」等
を 1 度だけでも通読しておくことを勧める。
講義開始後については,毎回の講義に対して以下のような予習・復習が求められる。
①レジュメ及びその中で指示される教科書および関連する判例百選掲載の判例を熟読しておく。
②レジュメの中の空欄に補充すべき用語やレジュメ中の「~を説明できる」
「~とは何か理解できてい
る」といった到達目標の目安について自分なりに考察しておく。
③授業終了後は,レジュメや各自の講義ノートを見直し,知識を整理する。疑問があれば質問事項とし
てメモしておくこと。基礎的知識の修得状況を確認するための小テストを適宜実施するので,小テスト
の復習により理解度を確認する。
④余力があればサブノートの設例と設問を用いて論述の構成の仕方を身につける。
もっとも,とりわけ純粋な未修者については,基礎的な理解をしっかりと固める方が重要であるので,
予習よりも復習の方にウエイトを置いて欲しい。
授業の到達目標
商法および会社法全体の基本的な体系を理解するとともに,株式会社に関する最重要項目すなわち,
「資本・株式・有限責任,株主,機関,株式会社の設立(関連する訴訟・登記制度を含む)
」に関する
基礎的知識(用語・制度の定義・趣旨の理解,条文読解,判例の理解)を修得することを第一の到達目
標(授業で扱った範囲であれば,新司法試験の短答式レベルの問題を 7~8 割程度正解できる水準:商
法の短答式試験は廃止されたが、到達目標の目安として)とする。これを前提に,具体的事案から問題
点を的確に抽出し,上記の基礎的知識を活用し問題解決の方法を考える応用力(論理的思考力,文章表
現力)を涵養することを上位の到達目標(司法試験の論述式でも採点の土俵に登れる程度の文章表現力
を備えるレベル)とする。
すなわち,法曹に必要とされるスキルのうち,法的知識の修得を第一の目標とし,2 年次の演習で必
要とされる最低限の基礎知識を修得することが単位認定(60 点)の基準となる。その上で,法的分析・
推論能力,創造的・批判的検討能力,法的議論・表現・説得能力についても 2 年次の演習において議論
26
評
価
方
に参加し,論点を的確に指摘したり,自己の考えを説得的に主張したりすることができるための基礎的
なレベルには到達することを第二の目標とする。
履修上の注意で述べたように,上記の目標に到達するため,講義は,通常の講義方式と対話方式(質
疑応答を行いつつ進める方式)を併用する。到達度を各自がこまめに確認できるよう随時小テストを行
う。
法 1 授業期間中に実施する小テストの合計得点を 30%に換算して,平常点として評価する(配点 30 点)
:
基礎的制度・用語の定義・趣旨を確認する問題(短文記述,択一式)による小テストを数回実施する。
2 期末試験論文式(配点 70 点)
:事例形式の筆記試験。複数の設問を用意し,基礎的知識の確認とと
もに,事例から法的問題点を抽出し,論理的に考え,法規範に具体的にあてはめを行い,妥当な結論を
導くことができるか,を確認(制度の趣旨や条文解釈等を含む授業全体の体系的理解度,論理的思考力,
文章表現能力等を判定)
。特に,法律学の文章として条文解釈の姿勢が見られる文章表現力を身につけ
ることが重視される。
3 欠席等による減点:出席は当然であるので,単に出席しただけでは加点要素とはならない。欠席・
遅刻(早退)は,履修要項の定めに従って所定の減点を行う。
○成績評価の目安
・90~100 点 :上位の到達目標に到達しており,授業で扱わない範囲(計算,社債,募集株式の発行等,
新株予約権,組織再編等)の学修も自習でマスターすることが十分に期待できる。
・80~89 点:第一の到達目標にほぼ到達(8 割超)しており,上位の到達目標にもおおむね(7~8 割程
度)到達していると認められる。
・70~79 点:第一の到達目標はおおむね(7~8 割程度)到達していると認められるが,上位の到達目
標は 6 割程度の到達度。
・60~69 点:第一の到達目標にかろうじて(6 割程度)到達していると認められるが,上位の到達目標
への到達度は 6 割に達していない。
・59 点以下 :第一の到達目標に 6 割以上到達したと認められず,自習での到達がきわめて困難である
と判断される。単位認定のためには,再履修が必要。
材 「商法総則・商行為法」
(○印のあるものを推奨する) 各テキストの版は、シラバス公開後に改訂さ
れることがあるので、各自で最新の版を確認すること。
○弥永真生「リーガルマインド商法総則・商行為法」 有斐閣
商法Ⅰ総則・商行為〔全訂〕落合誠一他 有斐閣Sシリーズ
プライマリー商法総則・商行為法 法律文化社
新商法講義 1 商法総則・商行為法 法律文化社
教
「会社法」
(基本書)
:普段の予習復習に利用すべきテキスト
○伊藤靖史他著「リーガルクエスト会社法」 有斐閣
○新山雄三監修・正井章筰他「会社法講義 会社法の仕組みと働き」
(日本評論社)
○プライマリー会社法(法律文化社)
(体系書)
:初学者にはやや難易度が高いが,将来的には必携
江頭憲治郎「株式会社法」 有斐閣
◇参考書(教科書ではないが自学自習のために必携。判例百選は毎回授業時には持参すること。
)
商法(総則・商行為)判例百選[第 5 版]
(ジュリスト NO.194) 有斐閣
会社法判例百選(第 2 版)
(ジュリスト NO.205 2011/9) 有斐閣 (毎回の授業で必携)
上記以外であっても,自分に適していると考えられるテキストを任意に選んでもらってもよいが,授
業開始時点で会社法に即した最新の版であるかどうかを確認すること。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
業
内
名
名
年
数
的
企業法Ⅱ
佐藤 誠
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は,商法総則・会社法を中心に,企業の組織や活動に関する種々の法律関係について理解する
ことを目的とする。企業法Ⅰで学修した内容を基礎として、発展・応用的事項、制度を学ぶとともに、
会社法をめぐる紛争解決のための諸理論を修得することを目的とする。
ただし,
「会社法」は非常に複雑な構造になっており,体系的に十分理解するためには相当な時間を
要する。本講義では,会社法全体を網羅的に扱うのではなく,現時点で公表されている共通到達目標(コ
ア・カリキュラム)第 2 次案修正案を踏まえて到達すべき目標を明示しつつ(別途TKCの授業内容に
ファイルで提示する。
)
,会社法の根幹といえる部分(業務執行機関を中心に機関の権限・義務と責任)
について発展・応用的理解を達成することを目的とする。具体的には,以下の授業計画を参照。
なお,具体的な授業内容は,今後の最新判例,学説の動向等により変更が生じうる。
本講義は、2年次生対象の春学期開講の必修科目である。
容 (株式と株主:応用)
27
授
業
計
画 第1~4回 株式の種類とその活用方法、自己株式の取得
企業法Ⅰで扱ったもの以外の種類株式とその活用、会社は自らが発行した株式(自己株式)の取得も
可能であるが,一定の取得手続規制、財源規制を遵守せねばならない。これら、株式に関する応用的事
項を学ぶ。
第5~8回 株式会社の機関(応用)
株主総会と業務執行機関以外の機関の役割、指名委員会等設置会社や会社法改正で導入された監査等
委員会設置会社の仕組みについて学ぶ。
(役員の義務と責任)
第9~13回 役員等の義務と責任・責任追及の訴(応用)
株式会社の役員等(取締役,会計参与,監査役,会計監査人,執行役)は,会社に対して善管注意義
務を負っている。さらに、とりわけ業務執行機関の構成員(取締役・執行役)については、その権限濫
用の危険が大きいことから、その地位を利用し会社の利益を犠牲に自己または第三者の利益を優先する
ことを防ぐための規律が設けられている。競業取引規制や利益相反取引規制等がそれである。ここでは、
これらの規制の趣旨を理解するとともに、規制違反があった場合の効果や責任について、学ぶ。
(会社の資金調達)
第14~15回
会社の経営は、常に資金調達の必要性を伴う。株式会社は、大規模な資金調達に資する企業形態であ
るといわれるが、ここでは、その基本的な資金調達手段である新株発行の基本的手続について理解する。
・今後の最新の判例,授業評価アンケートにおける意見や授業内容充実のための FD 活動等をふまえて,
上記の授業計画は修正されることもあり得る。具体的な授業計画は,授業開始までに TKC により公表す
る。
履修上の注意
本講義では,毎回の講義時に先立って講義内容を示すレジュメを配布する。講義形式は,通常の講義
方式と対話方式(質疑応答を行いつつ進める方式)を併用する。随時小テストを行う(できる限り毎週)
他,レポートの提出を求めることがある。
レジュメは,TKC 上に掲載するものとし,授業時間を有効に使うため授業中に配布はしない。各自の
ペースでプリントアウトし,授業時に必ず持参すること。また,レジュメはあくまで授業の理解を助け
るための補助資料にすぎない。
各自講義を聴きながら自分のノートを作成する必要があることを忘れないで欲しい。
ただし,随時追加の資料がある場合は,その都度コピーを配布する。
講義開始後については,毎回の講義に対して以下のような予習・復習が求められる。
①レジュメ及びその中で指示される教科書および関連する判例百選掲載の判例を熟読しておく。
②レジュメの中の空欄に補充すべき用語やレジュメ中の「~を説明できる」
「~とは何か理解できてい
る」といった到達目標の目安について自分なりに考察しておく。
③授業終了後は,レジュメや各自の講義ノートを見直し,知識を整理する。疑問があれば質問事項とし
てメモしておくこと。基礎的知識の修得状況を確認するための小テストを実施するので,小テストの復
習により理解度を確認する。
④余力があればサブノートの設例と設問を用いて論述の構成の仕方を身につける。
もっとも,とりわけ純粋な未修者については,基礎的な理解をしっかりと固める方が重要であるので,
予習よりも復習の方にウエイトを置いて欲しい。
授業の到達目標
会社法全体の基本的な体系を理解するとともに,株式会社に関する最重要項目すなわち,
「資本・株
式・有限責任,株主,機関,株式会社の設立(関連する訴訟・登記制度を含む)
」に関する基礎的知識
(用語・制度の定義・趣旨の理解,条文読解,判例の理解)を修得することを第一の到達目標(授業で
扱った範囲であれば,司法試験の短答式レベルの問題を 7~8 割程度正解できる水準)とする。これを
前提に,具体的事案から問題点を的確に抽出し,上記の基礎的知識を活用し問題解決の方法を考える応
用力(論理的思考力,文章表現力)を涵養することを上位の到達目標(司法試験の論述式でも採点の土
俵に上れる程度の文章表現力を備えるレベル)とする。
すなわち,法曹に必要とされるスキルのうち,法的知識の修得を第一の目標とし,企業法演習で必要
とされる最低限の基礎知識を修得することが単位認定(60 点)の基準となる。その上で,法的分析・推
論能力,創造的・批判的検討能力,法的議論・表現・説得能力についても企業法演習において議論に参
加し,論点を的確に指摘したり,自己の考えを説得的に主張したりすることができるための基礎的なレ
ベルには到達することを第二の目標とする。
企業法演習と併行履修となる者は、授業の進度にかかわらず、講義資料や基本書をもとに各自の自学
自修で演習についてきてもらう必要がある。
履修上の注意で述べたように,上記の目標に到達するため,講義は,通常の講義方式と対話方式(質
疑応答を行いつつ進める方式)を併用する。到達度を各自がこまめに確認できるよう随時小テストを行
う。
評 価 方 法 1 授業期間中に実施する小テストの合計得点を 30%に換算して,平常点として評価する(配点 30 点)
:
基礎的制度・用語の定義・趣旨を確認する問題(短文記述,択一式)による小テストを数回実施する。
2 期末試験論文式(配点 70 点)
:事例形式の筆記試験。複数の設問を用意し,基礎的知識の確認とと
28
もに,事例から法的問題点を抽出し,論理的に考え,法規範に具体的にあてはめを行い,妥当な結論を
導くことができるか,を確認(制度の趣旨や条文解釈等を含む授業全体の体系的理解度,論理的思考力,
文章表現能力等を判定)
。特に,法律学の文章として条文解釈の姿勢が見られる文章表現力を身につけ
ることが重視される。
3 欠席等による減点:出席は当然であるので,単に出席しただけでは加点要素とはならない。欠席・
遅刻(早退)は,履修要項の定めに従って所定の減点を行う。
○成績評価の目安
・90~100 点 :上位の到達目標に到達しており,授業で扱わない範囲(計算,社債,募集株式の発行等,
新株予約権,組織再編等)の学修も自習でマスターすることが十分に期待できる。
・80~89 点:第一の到達目標にほぼ到達(8 割超)しており,上位の到達目標にもおおむね(7~8 割程
度)到達していると認められる。
・70~79 点:第一の到達目標はおおむね(7~8 割程度)到達していると認められるが,上位の到達目
標は 6 割程度の到達度。
・60~69 点:第一の到達目標にかろうじて(6 割程度)到達していると認められるが,上位の到達目標
への到達度は 6 割に達していない。
・59 点以下 :第一の到達目標に 6 割以上到達したと認められず,自習での到達がきわめて困難である
と判断される。単位認定のためには,再履修が必要。
材
各テキストの版は、シラバス公開後に改訂されることがあるので、各自で最新の版を確認すること。
教
「会社法」
(基本書)
:普段の予習復習に利用すべきテキスト
○伊藤靖史他著「リーガルクエスト会社法」 有斐閣
○新山雄三監修・正井章筰他「会社法講義 会社法の仕組みと働き」
(日本評論社)
○プライマリー会社法(法律文化社)
(体系書)
:初学者にはやや難易度が高いが,将来的には必携
江頭憲治郎「株式会社法」 有斐閣
◇参考書(教科書ではないが自学自習のために必携)
商法(総則・商行為)判例百選[第 5 版]
(ジュリスト NO.194) 有斐閣
会社法判例百選(第 2 版)
(ジュリスト NO.205 2011/9) 有斐閣 (毎回の授業で必携)
上記以外であっても,自分に適していると考えられるテキストを任意に選んでもらってもよいが,授
業開始時点で会社法に即した最新の版であるかどうかを確認すること。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
企業法Ⅲ
今井 薫
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
手形・小切手を中心とした有価証券を扱う。これらの法理論は、きわめて精緻に構築されて「美しい」
というまでに研ぎ澄まされてきたが、反面わが国は戦後の通貨不足を補うため大量の手形が多様な目的
(資金調達も含め)で使われたことにより、事例に本来とは異なる利用から生まれた複雑な判例法理の
展開を遂げてしまった。そのため、体系的に理解することが困難な法領域となっていることは否めない。
現在では、カードの普及、債権買取業(ファクタリング・ビジネス)の発展により、往時に比べ手形や
小切手の使用頻度は相対的に低下しつつあるが、有価証券法理(さらには法律行為論)基本として十分
に理解しておくことはなお必要であろうかと思われる。そこで、ここではそのうちのとくに重要な部分
について概説し、解釈能力を涵養する。
容 第 1 回目:有価証券法理と手形・小切手理論<約束手形・為替手形>
画 <内容>指名債権の譲渡は、一般に民法の 467 条に規定される方法により譲渡されるが、有価証券の場
合、それが指図証券である場合は裏書により、無記名証券の場合は、動産と同じ取り扱いになるため引
き渡しにより権利移転が権利移転が完了する。また、権利の発生については、不完全証券の場合は、原
因関係債権が証券上に化体されることになるが、手形や小切手は手形や小切手を作成・交付することに
より権利義務を生じることになる。これらの行為は、いずれも意思表示を要素とする法律行為であるが、
既存の理論を有価証券にそのまま適用すると、さまざまな問題を生じて証券の譲受人に不測の損害を与
えかねない。そこで、ここではその問題点を摘示して、これら有価証券法理の構造を概説する。
第 2 回目:手形債務負担行為と手形権利移転行為
<内容>第 1 回目の講義を受けて、ここではドイツ通説の交付契約説、わが国通説の発行説をベースに、
ここで主として取り扱う創造説の考え方を概観する。すなわち、無因行為としての手形債務負担行為と、
有因の契約とされる権利移転行為という2つの手形行為を想定することによるメリットについて考察
する。
第 3 回目:他人による手形行為
<内容>手形は、授権された他人により振出すことが可能である。また授権がなくても(無権代理)
、
追認により当該権利を与えることができるのは民法の代理理論と同じである。しかし、顕名主義によら
ずに振出される(代理人として本人のためにする意思が表示されない)代行方式による場合、無権限で
29
あれば偽造ということになり、無権代理と同様には扱えないものとなるのだろうか。この、偽造と無権
代理をめぐる固有の問題をここで取り扱う。
第 4 回目:手形の振出
<内容>手形行為理論については、すでに概観しているが、ここで個別問題として「手形の振出」をめ
ぐる判例に触れつつ、さらなる理解内容の深化を図る。
第 5 回目:白地手形と白地補充権
<内容>手形は、実際にはすべての手形要件を充足して振出されるわけではない。もっとも、そのまま
では要件付充足な無効の手形として権利行使が認められるわけではない。しかし、通常は、振出人の意
思を忖度して、白地補充権が付与されているものについては、権利移転についてはそのまま認められる
とともに、その後の所持人が当該白地部分を補充することで、真正な手形とすることができるとする法
理が考案されている。しかし、たとえば、白地手形の時効中断効や補充権そのものの時効、あるいは不
当補充の問題などがあらためて議論されねばならない。ここでは、これらについて判例の変遷を踏まえ
て議論を進める。
第 6 回目:手形の裏書(手形上の権利の移転の基本原則)
<内容>手形をはじめとする指図証券は裏書により権利が移転される。裏書にはこのような権利移転的
効力があるが、同時に裏書の連続ある手形の所持人には裏書により権利を取得したもの推定される資格
授与的効力を認められることになる。裏書の連続ある手形の所持人は、したがって、原則的には真正な
権利者として権利行使が可能なはずである。また、裏書には担保的効力も存在する。これは、かかる権
利を留保しなければ、手形の本来の趣旨である債権譲渡の容易化は図れないからである。ここでは、こ
れらについての基本的な考え方を概説する。
第 7 回目:手形行為独立の原則と手形の善意取得
<内容>創造説に基づいて、ここでは手形債務負担行為の瑕疵が手形行為独立の原則により治癒される
局面と、手形権利移転行為の瑕疵が、手形の善意取得により治癒される局面をそれぞれ概説する。また、
手形については、単なる無権利者からの真正な手形行為による善意取得で権利を原始的に取得する場合
のみならず、手形行為能力を有しない前者の手形行為についても手形を返還する義務を生じないのかに
ついての議論についても論じるものとする。
第 8 回目:人的抗弁の切断と悪意の抗弁
<内容>人的抗弁の切断は、原因関係の瑕疵は、その後の手形取得者には対抗できないというものであ
る。しかし、これをそのまま適用すると、みすみす無権利者とわかっている者に手形金を支払わねばな
らないのかという問題も出てくることになる。判例学説は、このようなケースにどのような回答を与え
てきたのかをここで説明する。同時に、例外的に人的抗弁を当事者以外の者に主張する音ができる場合
(悪意の抗弁)の、
「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」とは、どのようなケースなのかについて説明する。
第 9 回目:白地式裏書・無担保裏書・戻裏書
<内容>裏書は、他の手形行為と同様に白地式でも行い得る。また、担保的効力を否定して裏書するこ
とも可能である。さらには、手形債務者にもさらに裏書することができる(当然に混同により権利が消
滅しない)
。そこで、これらをめぐるいくつかの問題点(たとえば、第一裏書人のときには無権利だっ
たのに、つぎに手形を取得した場合には善意取得者からであったため権利者になるのか。また、この逆
の場合など)を、判例を中心に総括する。
第 10 回目:取立委任裏書・質入裏書
<内容>手形は、たてまえとしては手形債務者に対して取立により権利行使するものである。しかし、
実際には、銀行制度とリンクして貨幣節約が図られる制度になっている。わが国では、銀行と当座勘定
契約を締結したもののみが購入できる統一手形用紙だけが実際に訴訟の上で執行力を持ち得るとの判
例もある。したがって、手形金の支払は、取引銀行に取立委任しておこなわれることが大半のケースで
あるが、この場合は裏書の当初の効果が存在しないことになる。また、手形は担保に供される場合があ
るが、通常は「担保のため」などの文言が記載されることが多い。もっとも、この場合は、被担保債権
があるわけで、付遅滞効が問題になったりする。ここでは、これらについて議論する。
第 11 回目:手形債務者の免責・遡求(1)
第 12 回目:手形債務者の免責・遡求(2)
<内容>手形は、債務者の満期における支払いにより免責されることになる。ところで、手形法 40 条 2
項は、満期前の支払については単に裏書の連続ある手形について悪意重過失なく支払っても、この者が
無権利者であれば正当な弁済とはならない旨が規律されている。そこで、この点について論究するとと
もに、手形の遡求をめぐるいくつかの問題についてもここで論じる。
第 13 回目:手形保証
<内容>手形保証は、民法では保証契約であるのに対し、債務負担の単独行為であると解される。そこ
で、無権利の手形所持人により手形保証人に支払い請求がなされた場合、これを拒めるかが議論されて
きた。また隠れた手形保証と原因関係の保証をめぐっての議論や、民法改正によるその影響についても
悩ましい問題があることはすでに知られるところである。ここでは、これらについて、現在までの議論
を総括する。
第 14 回目:利得償還請求権
<内容>利得償還請求権とは、手形法の附則に規律されているように、手形条約が批准されたすべての
国によって採用された制度ではない。これは、一種の衡平法理により手形そのものが権利消滅してしま
ったあとで、これにより利得している者にそれを償還させようとする制度であって、きわめて例外的で
原因関係等で権利行使が可能であれば認められない。そこで、どのような場合に当該権利が認められる
のかについて、多様な例示により一定の理解を得るものとする。
第 15 回目:小切手
30
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
法
材
<内容>信用証券である手形とは異なり、その性質から完全に銀行制度に依拠しているとともに、支払
証券である小切手は、支払いを委託する構造から為替手形に類似するものの、たとえば引受が禁じられ
るとか、満期の記載がなく持参人払式でも振出しが可能であるなどという特色を有している。一方、紛
失の場合には、きわめて危険なため、一般線引や特殊線引などという制度を設けている。そこで、ここ
ではこれら小切手に固有の法理について概説するものとする。
レジュメを添付するので予め読んでおくこと、六法では条文を確実にチェックしておくことが求めら
れる。
手形・小切手の理論を、民法の法律行為論を基礎として理解するとともに、従来わが国で生じてきた
具体的な紛争の事例を把握しつつ、具体的に提示された事例について論点を把握し適切に解き得る力を
涵養する。
レポート(30 点)と期末試験(70 点)を合計して総合的に判断する。
教材としては、弥永昌生『リーガルマインド・手形法小切手法』
(有斐閣)などがあるが、通説的立
場からの田邉光政『最新手形法小切手法』
(中央経済社)も定評がある。
名
名
年
数
的
民事手続法Ⅰ
草鹿 晋一
1年次
学
期 秋学期(春学期)
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
この講義では、民事判決手続の基本構造についての基本的・体系的知識の一部を理解させるのを目的
とする。この講義と民事手続法Ⅱによって、次の民事訴訟法演習における民事判決手続上の重要事項の
学修に必要となる基本的知識の習得を目指す。
この講義で中心となるのは、民事判決手続の内容であるが、その正確な理解を得るためには、それを
取り巻く民事執行・民事保全等の制度との関連性も知っておく必要がある。そこで、その点も必要な限
りで言及する予定である。
容 第 1 回 民事判決手続の理念と手続構造
画
民事判決手続の理念とそれを実現すべく考案された現行民事判決手続の基本構造や特色につき講義
する。
第 2・3・4 回 訴訟主体論
訴訟手続の主体としての当事者と裁判所の要件・権限に関する問題につきまとめて概説する。この中
で、当事者能力、当事者適格、当事者が団体である場合の取扱い、第三者の訴訟担当の問題や、裁判所
の管轄の問題、裁判権の問題のほか裁判の限界の問題などについて解説する。
第 5・6・7 回 処分権主義と弁論主義
訴訟における審判対象を決定する権限は当事者に属する、という基本的手続構造を具現するものとし
て、処分権主義と弁論主義という制度が定められている。その内容を講義する中で訴訟上の請求と訴訟
物、申立事項と判決事項、当事者による争点形成権限と自白の問題等を論ずる。
第 8・9 回 訴訟審理の進め方と裁判所の権限
訴訟における審判対象を決定する権限は当事者に属するが、訴訟審理の進め方に関しては裁判所が権
限を有する、という基本的手続構造を具現する諸制度を講義する。この中で、口頭弁論における審理原
則や争点整理手続についても講義する。
第 10・11 回 事実認定の基本構造
処分権主義と弁論主義を通じて形成された事実上の論争につき裁判所はどのような手続・過程を経て
事実を認定するのかという点を講義する。
この中で、要件事実、主要事実と間接事実、否認と抗弁、主張責任・証明責任と自由心証主義、等の
基本的な事項につき体系的に議ずる。
第 12 回 証拠調手続
どのようなものが証拠となり、どのように取り調べられるのか、そこではどのようなことが問題とな
るのかを講義する。
第 13・14 回 判決事項(本案審理と訴訟要件審理)と決定事項
判決手続では、当事者によって特定された審判対象を審理するだけではなく、訴えの適法要件も審理
される。両者の関係に関する論点やその適法要件の審理手続について講義する。その中で、判決事項と
決定事項の問題や、口頭弁論に代る書面手続の問題、等についても講義する。
第 15 回 訴訟促進対策のための諸制度
計画審理や集中審理、事前の各種証拠収集手続等、訴訟促進のための現行民訴上の諸制度について体
系的に講義する。
履修上の注意
本講義は、講義方式によるものであるが、学習内容の理解を確実にするため、双方向的手法を用いる。
一度講義した内容について授業中に質問するので、必ず復習して講義に臨むこと。
前提として、民法等の実体法の知識が必要となることも多いので、きちんと履修した上、復習してお
31
くこと。
民法等の復習に際しては、どのような権利がどのような要件のもとで認められるのか、条文を中心に
確認する作業を徹底すること。
判例や学説、論点を学習するにあたっても、それがなぜ問題となるのか、条文の文言に照らして理解
するようにすること。条文のどの文言との関係で論点が生じているのか、を理解せずに学習しても、法
律家としての正しい素養が身につくとは思えない。
授業開始までに上記のことにつきしっかり意識した勉強をしてくること。
授業の到達目標
民訴法の基本的知識や手続構造を確実に修得し、次の民事手続法Ⅱの講義や演習における複雑な理論
的論点を十分理解できるだけの知識・能力の確保を目標とする。
評 価 方 法
平常点 30 点、定期試験 70 点の割合で成績をつける。平常点は、基本理解、問題発見等の度合いを授
業中の小テストや提出課題に基づき評価する。
課題等は、授業時に課した課題の達成の度合いを評価する。定期試験は、学期を通じた最終的な能力
の到達点を評価する。なお、平常点に 30 点も当てているのは、授業における学習過程を重視すべしと
の観点による。
教
材 テキスト すでに他のテキストを基本書としている者については改めて購入する必要はないが、
TKC に以下の書籍の該当頁を示して予習項目を指示するので各自参照すること。
三木浩一ほか『リーガルクエスト民事訴訟法』
(第2版:3月13日発売)
副教材 授業で用いることはないが、手続の流れや全体像を把握するために有用と思われるので、初学
者は事前に通読しておくことをお勧めする。
(1)福永有利=井上治典『アクチュアル民事の訴訟』
(2008 年・有斐閣)
(2)山本和彦著『よくわかる民事裁判』有斐閣選書
(3)中野貞一郎(著)
『民事裁判入門』
(有斐閣)
、中野貞一郎(著) 『民事執行・保全入門』
(有斐閣)
も通読することが望ましい。
その他、参考文献として、民事手続法Ⅱの該当欄を参照すること。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民事手続法Ⅱ
草鹿 晋一
2年次
学
期 春学期(秋学期)
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
この講義は、民事判決手続の基本構造についての基本的・体系的知識を理解することを目的とする。
秋学期に実施された民事手続法Ⅰに引き続き、民事訴訟法演習Ⅰ・Ⅱにおける民事判決手続上の重要論
点の学習のために必要となる基本的知識の習得を目指す。
演習では、民事手続法の講義で修得した基礎知識を用いて、応用的な事例演習をおこなうこととなる。
本講義ではその橋渡しとなるべく、基本的理解の徹底と派生問題への応用力の養成を目指す。
『実務家を養成するため』の課程であることを意識すること。
どれだけ知識を詰め込んでも具体的事件で使えなければ意味をなさない。
何のために学修しているのかを常に意識して講義に臨んでほしい。
高度に学問的な知識、議論を理解するよりも、実務家として必要不可欠な基礎知識を習得し、それを
使いこなせるようになることを主たる目標として講義するので、受講者もそのつもりで臨むこと。
容
以下の授業計画に従って、訴えと判決の対応関係、弁論主義の機能についての再確認など民事手続法
画 Ⅰで学修した内容を深化させるほか、証拠調べ、判決の効力に関する諸問題、複雑請求訴訟、上訴等に
ついて学修していく。
第 1 回 民事手続法Ⅰの内容の確認と民事手続法Ⅱの概説
第 2~3 回 弁論主義の適用範囲
弁論主義の内容について、具体的問題を通して理解を深める。
主要事実と間接事実の区別の意味、自白の効果等について検討する。
第 4~5 回 証拠調べと事実認定
証拠調べの概要と、証拠調べに基づく事実認定に関する原則および証明責任について学ぶ。
第 6~8 回 裁判とその効力
裁判、特に判決とその効力、既判力の意味とその内容について、具体的問題を通して学ぶ(既判力の
時的範囲、客観的範囲、主観的範囲への理解を定着させる)
。
第 9~13 回 複雑訴訟 以下の項目について制度の概要を学修する。
請求の併合・通常共同訴訟・必要的共同訴訟・その他の主観的併合
補助参加・独立当事者参加
訴訟承継
32
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第 14・15 回 上訴その他
上訴(控訴、上告)
、抗告、再審等について学ぶ。
講義の中心となるのは、民事判決手続であるが、正確に理解するためには、並行して学修する民法そ
の他の実体法科目の理解も不可欠である。そこで本講義は時間の許す限り、民事手続法Ⅰの内容および
民法の諸科目に関する理解を確認しつつ実施する。
受講者は、授業に関連する 1 年次に受講した各科目および並行して受講する各科目の内容を常に確認し
ながら講義に臨むこと。
授業は原則講義形式で実施するが、他の授業の理解状況を確認するため、また、講義内容の理解度を
把握するため、随時質問するので、積極的に回答されたい。
授業では複雑な問題も扱うが、基本は第一審判決手続であり、単純訴訟形態である単独訴訟である。
常に基本的な形態を頭に浮かべ、それと対比しながら学修すること。
予習範囲等は毎回 TKC にて指示するが、むしろ復習に重きを置くことが望ましい。限られた時間で最
大の結果を生むために、講義時間を有効に使ってほしい。
民事手続法Ⅰとあいまって、民事訴訟法(判決手続)の基本的知識や手続構造を確実に修得し、基本
原則を充分理解することを目標とする。講義では複雑な問題も扱うが、主たる目的は基礎知識の定着で
ある。対比の対象として複雑な問題に取組むことにより、演習における問題演習に対応できるだけの知
識・能力を確保することを目標とする。
原則として定期試験による。
単元修了ごとに基本的知識の定着を目的とした小テストもしくは復習課題を課すので、副次的に評価
に反映させる。
具体的な割合は、定期試験 70%、平常点(小テスト、復習課題の達成状況)30%とする。平常点の比
率が低いのは、理解を深めるための手段であって目的ではないからである。しかし、正確な知識を持た
ずに正しい論述はできないのであって、毎回の知識の積み重ねが大切であることは言うまでもない。
小テストでは、正確な知識の定着をはかるため、択一問題をもとにした正誤解答問題を主として出題
する予定である。
復習課題では、簡単な論述問題もしくは判例分析を実施し、知識の定着に加え、法的思考力、論理的
思考力、文章表現力の涵養をはかる。
期末試験では、具体的事例に基づき、学修した基本的知識を正しく用いることができるかどうかをは
かる。出題の偏りによる評価のばらつきを避けるため、複数の設問すべてに答えてもらう予定であるの
で、充分な準備が必要である。
期末試験の評価は、
1)出題意図が正しく把握できているかどうか
2)解答するために必要な基礎知識が正しく理解できているかどうか
3)関連する条文が適切に指摘できているかどうか
4)論理的に矛盾のない文章が書けているかどうか
5)2)~4)の結果、正しく解答できているかどうか
を総合的に評価しておこなう。すべての項目が充分満たされていた場合を最高評価(100~90 点)と
し、欠けている分だけ減点していく。
単位認定の基準は、2)基礎知識の正しい理解、3)関連条文の適切な指摘が概ねできているかどうか
であるが、出題意図からまったく外れた解答、出題に応えてない解答は論外である。
①教科書 民事手続法Ⅰで使用したテキストを引き続き使用すること。
②参考書
判例教材
・民事訴訟法判例百選は必須(判例は多く用いるので必要に応じて参照すること)
。
体系書:
各自これまで使用してきたものがあれば引き続き使用すること。
これから購入を検討する者は、以下のものを参考にすること。
・伊藤眞『民事訴訟法』有斐閣(実体法説に基づく数少ない体系書。そのため法科大学院では多く教科
書として採用されてきた。少し難解。
)
・中野ほか編『新民事訴訟法講義』有斐閣大学双書(複数の著者による定評のある教科書。文献紹介も
多く、使いやすいが、単著に比べると内容にばらつき?)
・河野正憲『民事訴訟法』有斐閣(文章表現力が豊かで読みやすい。
)
・上田徹一郎『民事訴訟法』法学書院(かゆいところに手が届く。第 6 版から改訂者が代わり、若干変
化が見られる。独自説多い。
)
・松本=上野『民事訴訟法』弘文堂(学問的評価高いが通説ではないことも多い。
)
・藤田広美『講義 民事訴訟』東大出版会(元判事。読みやすく人気高い。上訴貧弱。
)
・梅本吉彦『民事訴訟法』信山社(枕にできるほど厚いが、内容は信頼できる。
)
・高橋宏志『重点講義民事訴訟法』上・下巻(2 分冊。網羅的ではないが学説・判例の紹介は詳しい。
ほぼ通説的見解。
)
・和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(最近出たテキスト。予想外に厚かったが、内容は
平易かも。
)
その他サブテキスト
民事手続法Ⅰであげたもののほか、
33
・池田辰夫ほか著『民事訴訟法 Visual Materials』有斐閣(豊富な資料を用いて民事訴訟手続が具体的
に理解できるように考慮されている。
)
・和田吉弘『民事訴訟から考える要件事実』商事法務(要件事実論、演習科目への架橋として格好の入
門書。民事訴訟法や民法の学び方についても参考となるはず。
)
・土屋文昭・林道晴編『ステップアップ民事事実認定』有斐閣(同じく実務基礎科目である民事裁判に
おける事実認定(民事訴訟実務の基礎)についての入門書であるが、抽象的な理論としての民事訴訟手
続の意味を具体的に理解するのに有用である。
)
・滝澤孝臣編著『実務に学ぶ 民事訴訟の論点』青林書院(裁判官らによる論点講座。論点といっても、
基本的な趣旨から説き起こし、なぜそこが論点になるのか、論点だとしてどのように考えたらいいのか、
を判例を中心にまとめているので、法科大学院生としては参考にすべき本であろう。
)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
容
画
業
業
内
計
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
34
業
業
内
計
基礎演習(民法)
田中 彰寿・坂東 俊矢
1年次
学
期 春学期
1単位
必 修 ・ 選 択 必修
この演習の目的は、民法を学ぶに際して、その基盤となる知識やその基礎的な考え方を確認するとと
もに、いかに学ぶかについての方法を教員と一緒に考えることにあります。また、同時に履修をするこ
とになる民法の講義科目に関する質問や疑問点を、教員と院生とが議論をしながら、相互に理解を深め
ていくことも重要なこの演習の目的です。その意味でも「双方向講義」の典型でもあります。今回この
科目を履修する学生さんは、ぜひこの演習を利用して、自分の民法の学習の意味と課題とを自覚できる
ようにしてください。
講義の内容や方法そのものについても、受講院生と相談をしながらすすめます。
大切なことは、普段の講義や自学自習で「腑に落ちないこと」あるいは「疑問に思ったこと」
、そし
て「どうしても理解できないこと」を遠慮なく、教員にぶつけて、院生と教員とで議論をすることです。
この演習は、一方で、民法Ⅰや民法Ⅱとリンクしながら、そのそれぞれを勉強するための考え方や方
法論をいっしょに学ぶことを意図しています。講義科目の範囲は、債権法や物権法の基礎にかかわる広
い領域です。民法をきちんと整理して理解するためには、教科書を丁寧に読んだり、裁判例をきちんと
判決原文をから読み込んだり、時には条文から考えられる事例問題を考えてみるなど、さまざまな努力
が必要です。その模擬的な体験をこの演習で経験して下さい。2 週間に 1 度の演習です。何よりも、受
け身ではなく、積極的に参加することを希望します。
「議論をしていたら、あっという間に 90 分が過ぎ
てしまった」という時間を共有できるように、ともに努力をしましょう。
自らの民法の基本知識の理解と学修方法について、教員との議論を通して、自信をもって勉強できる
基盤を作ることが、この演習の到達目標です。
演習の期間内に作成したり、提出してもらうレジュメやレポートなどを 30 点満点で評価し、平常点
とします。
それに加えて、演習終了後に実施する試験を 70 点満点で評価します。試験は、通常の解答を記述する
だけでなく、問題文の事実を例えばメモ用紙にまとめることも含めて評価したいと考えています。
議論の展開を踏まえて、必要な場合には教員から教材を準備して、お渡しします。もっとも、どのよ
うな教材を素材として演習を実施するかを含めて、受講生と相談しながらすすめます。なお、民法を学
ぶ上で条文は不可欠ですので、六法はこの演習科目でももちろん必須です。
基礎演習(商法)
今井 薫・田中 彰寿
1年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
商法総則・商行為法と会社法の基礎的部分を中心に、商法・会社法の基本的原理およびその特殊な個
所について重点的に学習する。
容 第 1 回目:企業法における行為と行為者
画 <内容>商法は、原則的には行為を基準に商行為か否かをを決定し、当該行為者をして「商人」と呼び、
これらの行為および商人に商法を適用している。ただし、会社法は、そこで定める会社についてはこれ
を商人とし、商法の適用を認めている。そこで、ここではいかなる行為が商行為であるのか、また会社
にはどのような種類があり、どのような特徴があるのかについて詳しく論述する。
「八幡製鉄政治献金
事件」などで問題になった法人の権利能力について、Ultra Vires の考え方についても説明する。
第 2 回目:法人格否認の法理
<内容>わが国には、いわゆる株式会社およびかつての有限会社がそれぞれ約 100 万社もあった。この
うちいわゆる上場企業は 2000 社に満たないから、その大半は零細な会社といって差支えがない(もち
ろん、サントリーや竹中工務店のような非上場巨大企業がないわけではないが)
。そこで、個人と法人
の区別が形骸化している例も少なくないわけだが、これを奇貨として、法人ないし個人の責任を免れる
目的で、法人格を用いる場合が散見される。そこで、いかなる場合に法人格を否認して当該個人ないし
法人に責任を問い得るのかをここで検討する。
第 3 回目~5 回目:
「取締役の責任」に関する具体的な事例問題による検討
<内容>取締役は、会社の業務執行を行う機関であるが、公開会社の場合は機関として取締役会が設置
され、彼らの互選で代表取締役が選任されて会社を代表することになるるだけでなく、取締役会非設置
会社では一般に株主総会決議事項の多くが取締役会で決定されるべき事項となる。しかも一定の事項は
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
代表取締役に委任することができないため、取締役の責任は非常に重い。しかし、具体的にその善管注
意義務・忠実義務とは何か、あるいは監視義務とは何かといわれるとなかなかに理解することが困難で
ある。そこで、具体的事例を挙げて、個々の問題点を明らかにすることで、取締役の任務と責任の範囲
を明らかにすることで、将来の企業法演習への土台を築くことに努める。
第 6 回目~第 8 回目:弁護士実務を行う上で重要なのは企業取引上の紛争である。そこで、ここでは商
行為法の具体的事例問題を題材に、手形法・小切手法なども含む検討を行うことで商法の基本的知識を
習得できるように努める。
原則として、商法領域は企業組織を扱う会社法、商法総則と、企業取引に固有の商行為法・手形法・
小切手法とに分かれ、性質が大きく異なるだけに全体としての理解はなかなかに困難だと言える。そこ
で、これらの個別問題に触れることで、むつかしいとされる商法領域全般のアウトラインを明確にし、
今後の学習を容易にするように講義および議論を行う。
商法、会社法の基本的な諸原則を理解して、条文上すみやかにポイントを指摘して、解答を導き出し
得る能力を涵養する。
レポート(30 点)
、期末試験(70 点)で評価する。欠席・遅刻は、履修要項の基準にしたがって最終
成績から減点する。
とくに指定しないが、会社法については企業法Ⅰ、Ⅱで指定されている教科書や判例集が有効である。
商法総則・商行為については弥永真生「リーガルマインド商法総則・商行為法」
、落合 誠一 ・大塚 龍
児 ・ 山下 友信 「商法 1 (有斐閣 S シリーズ)総則・商行為(第 5 版)
」
(いずれも有斐閣)などがあ
る。判例集は江頭憲治郎・山下友信(編)
「判例百選(商法総則・商行為)
(第 5 版)
」
(有斐閣)がある。
民法演習Ⅰ
山本 宣之
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
主に、契約法、物権法、損害賠償法を対象とする設例を検討する。なお、条文は、改正法案(
「民法
の一部を改正する法律案」
(2015 年 3 月 31 日国会提出))に従う。
第1の目的は、契約法、物権法、損害賠償法の骨格を成す基礎的制度を理解し、規範である要件・効
果を正確に提示、具体的事実をそれらの要件・効果に当てはめ、紛争の解決を導くという、一連の能力
を獲得することにある。講義で得た知識にもとづいて実際の紛争解決を得る能力(まさに法律判断をす
る能力といえる)は、法曹にとって必須である。
第2の目的は、基礎的な制度とそれに関する論点の理解を反復し蓄積することにより、民法全体の体
系的理解ないし有機的理解を獲得する点にある。このような体系的・有機的な観点を獲得することは、
社会における多様で複雑な課題、さらには新たに生成する課題に対応するために不可欠である。
容
契約法、物権法、損害賠償法の領域から、その体系的・理論的骨格を成す基礎的制度に関する設例を
画 1つずつ深く検討する。その際、事実関係の把握、法律構成の選択、規範である要件・効果の提示、法
的論点の抽出、事実の丁寧な当てはめなど、紛争解決に不可欠な基礎的能力を修得することに主眼をお
く。授業の進行は、主に教員からの質問、受講生の回答、その繰り返しという手法に従う。
設例ごとの授業の組立ては、次の通りである。①論点の体系的位置づけおよび広がりの確認:設例が
広い意味でどのような民法上の制度・理論のなかに位置づけられるのかを確認し、そうした民法上の制
度・理論について概観し、それらの基本理解を確固としたものに高める。②設例における基本的な法律
関係および法的論点の確認:事実関係から当事者間の基本的法律関係を抽出し、様々な法律構成の可能
性を示し、それらの法律構成の要件・効果を明確化する。③設例の当てはめと結論:事実関係を各法律
構成・要件・効果に詳細かつ丁寧に当てはめて判断し、具体的な紛争解決を導く。
各回の内容は次の通りである(ただし、受講生、進行状況に応じて変更する場合がある)
。
第1回・第2回(設例1)契約の効力否定と清算
錯誤、詐欺、強迫、公序良俗違反など、契約の効力否定根拠の広がりと体系的位置づけを確認し、設
例の当てはめを行う。有効に成立した契約の清算関係についても概観する。また、この回は、今後の授
業の全体像について把握するための機会でもある。
第3回・第4回(設例2)契約の効力と履行
契約にもとづく務が履行されない場合や弁済が受領されない場合を中心に、有効に成立した契約には
どのような効力が付与されるのかを、売買契約の設例を用いて総合的に検討する。主に、弁済の提供、
同時履行の抗弁権、履行遅滞、受領遅滞などが対象になる。
第5回・第6回(設例3)物権変動
不動産物権変動と動産物権変動の基本構造を確認し、両者の共通点と相違点を明らかにしたうえ、物
権変動に関連する主要論点(二重譲渡、対抗要件、対抗問題における第三者、背信的悪意者、取得時効
と登記、即時取得の要件など)を検討する。
第7回・第8回(設例4)賃貸借
不動産の利用を目的とする法律関係の種類および特質、適用される特別法を確認したうえ、不動産賃
貸借契約の設例を素材として、不動産の利用関係から生じる様々な問題点(契約の終了、費用償還請求、
賃貸物の譲渡、賃借権の譲渡、賃借物の転貸、信頼関係破壊の法理など)を総合的に検討する。
第9回・第 10 回(設例5)代理
代理の基本構造および要件と効果を確認したうえ、無権代理・表見代理の設例を素材とした検討を行
う。その際、代理に関連する主要論点(無権代理にもとづく法律関係、無権代理人の責任、表見代理の
種類とそれぞれの要件、代理権の濫用、他人物売買と無権代理の関係など)について検討する。
35
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第 11 回・第 12 回(設例6)担保責任
売買契約において引き渡された目的物の種類・品質が契約不適合であった場合の売主の責任(担保責
任)ないし買主が有する権利について、その要件・効果を確認し検討する。そのうえで、いわゆる建売
住宅に瑕疵がある設例を素材として、債務不履行との関係も視野に入れて、総合的に検討する。
第 13 回・第 14 回(設例7)損害賠償
損害賠償請求の根拠規定にはどのようなものがあるかを確認し、それぞれの要件と効果の共通点と相
違点を明らかにしたうえ、債務不履行・不法行為の双方に関係する設例を用いて、主要論点(帰責不可
事由・過失の判断、履行補助者・被用者に関する責任、通常損害・特別損害、損害概念および損害額の
算定、過失相殺など)を総合的に検討する。
第 15 回総合演習
第1回~第 14 回で十分に扱えなかった論点、関連する付随的論点の検討を行う。さらに、今学期の
学習についての総括、来学期以降の学習についてのアドバイスを行う。
この演習は、特別法を含めた民法全体を対象とする。議論の範囲は民法全体に及びうるため、民法科
目(とくに、民法Ⅰ、民法Ⅱ)の十分な理解が前提になる。検討する設例は、1週間前を目安にインタ
ーネット上に掲載する。授業では設例の事例分析を終えていることを前提に、基礎的制度の確認、法律
構成の提示から開始するため、予習は必須である。その際、予習を効率的に進めるための予習ガイドも
掲載するので、それを参照することが不可欠である。復習としては、当てはめの判断の確認が最も重要
であり、また、関連論点の自習によって理解を厚くすることも望まれる。
民法の体系的・有機的理解、および紛争解決能力の修得である。この能力は、次の①②③から成ると
考えられる。①民法上の重要な法概念・法制度、および判例・学説を正確に理解すること、②具体的な
事実について基本的な法律関係を整理し、紛争解決のための法律構成を選択し、要件・効果を提示する
こと、③具体的事実を要件・効果に詳細かつ丁寧に当てはめて、具体的な結論を導くこと。
定期試験 70%、レポート 30%として評価する。定期試験は、長文の事例についての論述式の筆記試
験(120 分)とする。レポートは、授業の設例を参考にした事例についての論述式を 2~3 回行う(別途、
詳細を説明する)
。また、欠席・遅刻早退の数をマイナス評価とする(履修要項に従う)。以上の合計点
の小数点以下を切り上げて、最終成績とする。
成績評価の目安は、次のとおりである。
90~100 点:上記到達目標のすべてを十分に達成しており、授業外の項目についても自習による向上
が期待できる場合。
80~89 点:上記到達目標の①②を十分に達成し、
③についても同様のレベルにあると評価できる場合。
70~79 点:上記到達目標①②を概ね達成し、③についても同様のレベルにあると評価できる場合。
60~69 点:上記到達目標①②③の達成には至っていないが、最低限のレベルには達成しており、今後
の今後の学修により向上が期待できる場合。
59 点以下:上記到達目標の①②③の達成が不十分であり、今後の自習による達成が困難であると判断
される場合。
設例を作成して教材とする。必要があれば参考文献を指示する。
民法演習Ⅱ
高嶌 英弘
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本演習では,おもに金融取引法および財産法と家族法の交錯領域を対象とする設例を用いて演習が行
われます。本演習の第 1 の目的は,金融取引法および財産法と家族法の交錯領域における汎用性の高い
基礎的な制度を正確に理解し,個々の要件を設例に当てはめて紛争解決に向けた論理を示す能力を確実
に達成する点に求められます。講義で得た知識を実際の紛争解決に用いることのできる能力は法曹に必
須であり,これを達成するには演習形式の授業が最も適しているからです。第 2 の目的は,民法演習Ⅰ
とあわせて,汎用性の高い基礎的論点の理解を積み重ねることにより,民法全体の体系的理解ないし有
機的関連性の理解を得る点に求められます。このような全体を見通す目を有していなければ,利益状況
の錯綜する今後の社会において生じる新しい課題に対応できないと考えられるからです。さらに,全体
的理解を基礎とした高度な応用力の養成もまた,本演習の目的に属します。複雑な事案に法を適用して
解決を導く能力は,実務家として必須だからです。
容 授業内容:
画
本演習は 2 年次秋学期配当の 2 単位科目であり,授業回数が限られていますので,本演習で金融取引
法および財産法と家族法の交錯領域の論点をくまなく検討することは不可能です。むしろ本演習では,
汎用性の高い基礎的論点を含む設例を深く検討することによって,資料の読み込み方や理解,論点の抽
出,紛争解決のための論理構成,要件事実論を踏まえた事案処理など,実務家として要求される事案処
理をおこなうための基礎的な能力を涵養する点に主眼がおかれています。
授業計画:
演習で対象とする設例は,演習の 1 週間前~数日前に,インターネット上に掲載されます。受講生は
これを予め熟読し,あわせて指定される関連判決および資料に目を通しておく必要があります。演習当
日には,設例を素材として,次の順序で検討を行います。
①当該設例に含まれる法的論点を明らかにしたうえ,当該論点が民法全体の中で体系的にどのように位
置づけられるのか,そして関連する論点にはどのようなものがあるかを確認します。
36
②つぎに,当該設例の事実関係から当事者間の基本的法律関係を抽出すると共に,時間的な余裕のある
場合には,受講生がこれを文章化します。
③設例の基本的法律関係を前提として,紛争解決に向けた様々な法律構成の可能性および各構成ごとの
要件を明確化したうえ,事案に当てはめて要件充足の有無を確認します。
上記①~③の検討に当たっては,当日に受講生に基本報告を求めることがあります。さらに,場合に
よっては,議論の成果を踏まえたうえで当該テーマについてのレポートの提出を求める場合がありま
す。このように,本演習は,報告担当者を指定せず,全員が常に報告者となりうる演習形式で行われま
す。
以下に,それぞれの回ごとの授業の内容を示しておきます。これらの内容については,今後,担当者
間の調整によって変更される場合がありますので注意して下さい。
第 1 回・第 2 回(設例 1) 担保物権による債権回収
担保物権の基本構造を確認したうえ,抵当権を素材にした具体的な設例を用いて,担保物権によりど
のように債権が回収されるのかを具体的に検討します。
第 3 回・第 4 回(設例 2) 担保物権以外の手段による債権回収 その 1(総論および債権者代位権)
保証,連帯保証,連帯債務,債権者代位権,詐害行為取消権,相殺,債権譲渡,代理受領,弁済によ
る代位の制度など,担保物権以外の債権回収手段ないしこれに関連する諸制度の機能を総合的に確認し
たうえ,債権者代位権を素材にした具体的な設例を用いて,債権者代位権の本来型適用事例が債権回収
との関係でどのような機能を果たすのかを検討します(債権者代位権の転用については,民法演習Ⅰの
第 5 回・第 6 回(不動産の利用関係)を参照して下さい)
。
第 5 回・第 6 回(設例 3) 担保物権以外の手段による債権回収 その 2(保証,弁済による代位)
弁済による代位の制度を素材にした具体的な設例を用いて,債務者以外の者による弁済の許容性およ
び弁済による代位の制度の機能を検討します。
第 7 回・第 8 回(設例 4) 債権譲渡・相殺
債権譲渡および相殺の要件・効果を明らかにしたうえ,具体的な設例を用いて,債権譲渡と相殺に関
連する緒論点を総合的に検討します。
第 9 回・第 10 回(設例 5) 債権の準占有者に対する弁済
民法 478 条により,債権以外の者に対する弁済が例外的に有効な弁済とされるための要件を明らかに
したうえ,本条が類推適用される事例を含めて,現実に果たしている機能を明らかにします。
第 11 回・第 12 回(設例 6) 譲渡担保
不動産譲渡担保を素材として,譲渡担保の法律構成及び効力を検討します。
第 13 回~第 14 回(設例 7) 親族法と財産法の交錯・詐害行為取消権
親族法と財産法が交錯する論点にはどのようなものがあるかを明らかにしたうえ,離婚に伴う配偶者
への財産分与と詐害行為取消権の設例を用いて,具体的な要件の解釈に際して親族法上の諸原理がどの
ように考慮されるべきかを検討します。また,第 5 回・第 6 回演習のテーマの補足として,詐害行為取
消権が債権回収との関係でどのような機能を果たすのかを併せて検討します。
第 15 回 総合演習
2 年次の民法演習の総仕上げとして,長文の設例を用いた検討を行います。具体的には,設例にあら
われた事実関係を整理し,関連する法的論点を指摘したうえ,考えられる訴訟物ごとに要件事実の整理
を行い,紛争解決に向けた様々な法的可能性を論理立てて示すことが求められます。また,検討し残し
た論点がある場合に,これを対象とした演習を行います。
履修上の注意
上述した演習の目的および内容から明らかなように,本演習は,特別法を含めた民法全体を対象とし
ています。したがって,本演習における議論の範囲は民法全体に及びますので,受講に当たっては,1
年次生配当の民法科目の十分な理解が前提になる点に注意してください。また,本演習の内容は複雑か
つ高度なので,暗記ではなく理解が必要です。そのため,演習に際しては,教員あるいは他の演習生と
充分に議論して理解を深める必要があります。
さらに,本演習では設例を用いて事例分析を行いますので,予習がとりわけ不可欠です。具体的な予
習内容としては,授業計画において述べたとおり,各テーマごとに演習で対象とされる設例を熟読し,
指定された関連判決および資料に目を通しておくことが求められます。他方,事後的な学修としては,
演習で扱った設例を復習するだけではなく,個々のテーマごとに言及された関連論点を各自で改めて学
修することによって,民法典全体の有機的な関連性を理解するように努めて下さい。
なお,授業への出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさない場合には,定期試験の受験資格を失いま
す。また,30 分を越える遅刻及び早退は欠席扱いになります。欠席は 1 点の減点,遅刻・早退は 0.5
点の減点となります。これらの点には十分に注意して下さい。
※2016 年 2 月現在,民法の改正作業が進められており,早ければ同年中に新しい民法が国会で成立する
可能性があります。その場合には,新しい民法の条文をも参考にしつつ,本演習を進めますので注意し
てください。
37
授業の到達目標
評
価
方
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
38
業
業
内
計
本授業の到達目標は,民法の体系的・有機的理解および高度な応用能力の取得に求められます。ここ
にいう高度な応用能力とは,具体的な事実から基本的な法律関係を整理し,そこから法的論点を抽出し
たうえ,紛争解決に向けたルールを定立して事実に当てはめて結論を導く能力を意味します。この能力
は,次の各要素に分けることができます。
①まず,民法全体について重要な法概念および法制度を正確に理解しているかどうか,および,現在の
実務と学説の到達状況を把握したうえで,そこにおけるスタンダードな理論を正確に理解しているかが
第 1 の評価基準です。これらの点は,1 年次の授業において取得していることがいちおうの前提となり
ますが,不充分な箇所が残されている場合には,本演習を通して,より確実な理解に高めることが求め
られます。
②つぎに,上記の基礎的知識を具体的な設例に当てはめたうえ,問題点を抽出し,紛争解決のための道
筋を論理的に示す能力を備えているかどうかが第 2 の評価基準です。この能力の基礎は 1 年次の授業に
おいて取得していることが前提となりますが,本演習を通して,民法全体を視野に入れた高度な問題抽
出能力,および,より明確かつ説得力のある論理を展開できる能力を取得することまでが求められます。
③さらに,応用力を必要とする複雑な事例に対して,取得した知識をもとに紛争解決の様々な可能性を
考える能力を備えているかどうかが第 3 の評価基準です。ここでは,従来の実務や学説において争いの
ある問題や,従来の実務や学説において充分意識されていない問題について,自分で様々な可能性を考
えて論理を組み立てる能力が求められます。
法
本演習の評価の指針は,個々の受講生における上記目的の達成度です。具体的には,平常点および学
期末に行われる考査の結果を合計して評価を行います。これらの配点比率は,定期試験 70%,平常点
30%です。なお,平常点については,演習中の発言,基本的法律関係の叙述,レポート,小試験等のう
ちのいずれか,あるいはいくつかを組み合わせて評価します。
定期試験の点数については 100 点満点で作問し,これに 0.7 を掛けた点数と平常点を合算したうえ,
ここから欠席・遅刻点を引いて最終評価とします。その際,最終合計点数に小数点以下の数字がある場
合には,切り上げ評価します。
※成績評価の目安は,次のとおりです。
・90~100 点 :上記到達目標のすべてを充分に達成しており、授業で扱えない項目の学修も自習により
理解することが期待できる場合。
・80~89 点:上記到達目標の①と②を充分に達成し,③についてもほぼ達成していると評価できる場合。
・70~79 点:上記到達目標の①と②を達成し,③についても基礎的な能力を達成していると評価できる
場合。
・60~69 点:上記到達目標③の達成には至っていないが,①と②をほぼ達成しており,今後の今後の学
修により向上が期待できる場合。
・59 点以下 :上記到達目標の①②③を達成したとは評価できず,今後の自習による達成がきわめて困
難であると判断される場合。単位認定のためには再履修が必要となる。
材
上記の演習内容に完全に沿った内容の教科書は現在のところ存在しませんので,随時,演習用の資料
を配付します。あわせて,具体的な検討に際しては,松岡久和・潮見佳男・山本敬三著『民法総合・事
例演習(第 2 版)
』
(2009 年,有斐閣)
,および大江忠著『ゼミナール要件事実 2』
(2004 年,第一法規)
に掲載された諸事例を参考にする場合がありますので,参考書に指定しておきます。
なお,近時の民事法においては,法改正や特別法の制定の動きが激しいので,従来から存在する定評
ある参考書についても,内容は随時変化しています。また,近時,法科大学院での授業を念頭に置いた
参考書類が多数公表されており,今後も開講までにいくつかの参考書が公表されることが予想されま
す。これらの理由から,本演習における全般的な教材の指示は,初回演習のはじめに最新情報に基づい
て行います。
名
名
年
数
的
企業法演習
今井 薫・佐藤 誠
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本科目は,商法総則・商行為法,会社法,有価証券法に関する基礎的知見をもとに,より応用的・実
践的テーマを扱う演習科目であり,基本的知識を実務に応用する能力の涵養を目的とする。とりわけ会
社法の分野は,従来から理論と実務の乖離が指摘されており,理論的整合性に疑問のある改正も行われ
ている。重要判例を素材とした事例演習を質疑・応答形式で行うことにより,経済実務の実態を踏まえ
つつ,企業法(会社法および商法)の理論的知識の定着・深化を図る。
2 年次秋学期開講の必修科目で,今井薫・佐藤誠の二名の教員がペアで行う演習科目である。会社法
をテーマとし,15 回の演習を行う。
共通的到達目標のモデルを元に作成した到達目標についての詳細は,別ファイルにて TKC の授業計画
に掲示する。
容
「会社関係訴訟の類型的考察」をテーマに,下記のような 15 回の演習を行う。会社法においては,
画 会社の設立,新株発行,利益供与,剰余金の分配等,役員等の任務懈怠,第三者に対する責任,組織再
編等を巡り,様々な訴訟類型がある。本演習では,旧商法からの重要判例や最近の重要判例の分析を通
じて,さまざまな訴訟類型における理論的問題点と訴訟実務との関係に関する理解を深めることを目的
とする。なお,演習で取り上げる具体的なテーマについては,秋学期の授業開始までの判例の動向を勘
案し,TKC 上にアップロードする。事前に予習課題を与え,これについて各自が検討してきていること
を前提に授業を進める。事例形式の設問に対して文章で各自の見解を授業開始前に提出することを求め
ることもある。
第 1 回 役員等の任務懈怠責任と株主代表訴訟(1)
・役員等の責任に関する法規制(とりわけ任務懈怠概念について)
・経営判断原則の意義と機能
・株主代表訴訟(責任追及等の訴え)制度
・多重代表訴訟
第 2 回 役員等の任務懈怠責任と株主代表訴訟(2)
・具体的法令違反と任務懈怠責任の関係
・内部統制システムの構築・整備
・監視義務の根拠と信頼の抗弁
第 3 回 競業取引・利益相反取引と任務懈怠責任
・競業取引の意義
・利益相反取引(直接取引・間接取引)の意義
・任務懈怠の推定と帰責事由の関係
・違法な競業取引,利益相反取引の効力
第 4 回 取締役に対する違法行為差止請求・差止仮処分
・取締役に対する違法行為差止請求の要件
・差止仮処分の要件
・差止判決・差止仮処分命令に反する行為の効力
第 5 回 株主総会決議取消の訴え,株主総会決議無効・不存在確認の訴え
・決議取消事由,提訴後の取消事由の追加
・決議無効事由,不存在事由
・それぞれの訴訟の手続的要件(提訴権者,提訴期間,被告適格)
・決議取消の訴えと決議無効確認の訴えの関係
第 6 回 会社設立と会社訴訟
・株式会社の設立手続の瑕疵とその主張方法,関係者の責任
・発起人の責任
・現物出資・財産引受に関する責任
・擬似発起人の責任
・設立無効の訴え
・会社不成立と設立無効
第 7 回 新株発行と会社訴訟
・新株発行とその差止請求・差止仮処分
・有利発行の意義と判断基準
・不公正発行の意義と判断基準
・敵対的企業買収と対抗措置
・新株発行無効の訴え
第 8 回 新株予約権発行と会社訴訟
・新株予約権の機能と様々な利用方法
・新株予約権発行とその差止請求・差止仮処分
・新株予約権の有利発行と判断基準
・不公正発行の意義と判断基準
・敵対的企業買収と対抗措置
・新株発行無効の訴え
・ストックオプションとしての新株予約権の発行
第 9 回 組織再編と会社訴訟(1)
・合併,株式交換・株式移転,分割等組織再編行為の手続とその瑕疵をめぐる問題点について検討する。
手続の流れと,各段階における会社法上の問題点を理解する。
第 10 回 組織再編と会社訴訟(2)
・組織再編における債権者保護手続
・詐害的会社分割と債権者保護
第 11 回 役員等の第三者に対する責任
取締役の対会社責任(423 条)の場合と異なり,対第三者責任(429 条 1 項)の場合には,責任要件
として任務懈怠につき悪意または重過失が必要と規定されている。
39
第三者責任の法的性質の理解を確認するとともに,対第三者責任の文脈における取締役の経営判断の尊
重について検討する。
第 12 回 役員等の報酬、ストックオプション
・役員等の報酬規制について確認する
・ストックオプションと報酬規制の関係
・ストックオプションの違法な行使と新株発行の効力
第 13 回 自己株式の取得・剰余金の配当に関する手続及び財源規制と役員等の責任
・自己株式の取得手続と財源規制
・違法な自己株式取得の効力と役員等の責任
第 14 回 事例問題作成演習
・これまでの演習を踏まえ、各自で事例問題を作成し事前に提出してもらう。授業では提出された事例
問題のうち優秀なものをいくつかとりあげ、全体で議論する。
第 15 回 2016 年度司法試験民事系第2問を素材とする事例問題演習
・2016 年度に実施された司法試験論述式民事系第 2 問(商法)の問題を素材として、本演習で修得した
ことのまとめとして、事例問題演習を行う。
(司法試験問題の解説講義や答案作成技術の習得を目的とするものではない)
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
今後のコア・カリキュラムに関する FD 活動や判例・学説の動向等により,授業内容に変更を生じる
ことがある。
本科目の履修の前提条件として,企業法Ⅰ・Ⅱの単位を修得していることを必要とする(但し,6 セ
メ生と 4 科目受験で商法を選択しなかった既修入学者には、企業法Ⅱとの併行履修を認める)
。また,
手形法・小切手法の講義を受けた経験のない者は,春学期開講の法律基本科目(選択科目)である企業
法Ⅲを履修しておくことを勧める。
各授業においては,受講生にあらかじめ文献・判例等の予習課題あるいは事例演習課題を与え,予習
していることを前提に質疑応答形式で授業を進める。演習での討論に参加するためには,十分な予習を
していることが不可欠である。各自に事前または事後のレポート提出が課されることがある。具体的な
予習課題は授業開始までに各担当教員より TKC などで指示する。
会社法に関する基礎的知識を修得していることを前提に,判例の事案や設例から積極的に問題を発見
し,その解決法を見出すとともに,説得的な文章で表現できるための論理的思考力・文章表現力の修得
に重点を置く。すなわち,法曹に必要な問題発見・解決能力,事実認定能力,法的分析・推論能力,創
造的・批判的検討能力,法的議論・表現・説得能力,コミュニケーション能力を総合的に修得・向上さ
せることを目標とする。
以上のスキルを修得することによって,司法試験の論文式試験で基本的な論点については,少なくと
も一応の水準の答案構成ができる程度の力をつけたと認められるかが,単位認定(60 点)の目安になる。
演習テーマについてのレポート課題(3 回程度予定)の成果や事例問題作成等を平常点(30%)とし,
学期末に行う定期試験を(70%)として成績評価を行う。定期試験は,会社法の論文式試験(70%)と
する。
出席は当然のことであり,単に授業に出席しているだけでは平常点として加味されないし,無断欠
席・遅刻は,履修要項の基準にしたがって,最終成績から減点する。課題の提出のみで授業に出席しな
ければ,無断欠席と扱われる。
・教科書は特に指定せず,判例や法律雑誌のデータベースを活用し,必要に応じて資料を準備するが,
「会社法判例百選(第 2 版)
(有斐閣)
」は常に参照するので各自で携帯すること。江頭憲治郎「株式会
社法(第 6 版)
」
(有斐閣)および『類型別会社訴訟(第 3 版)Ⅰ・Ⅱ』
(判例タイムズ社)は,参考書
として推奨する。その他,企業法Ⅰで指定された教科書や自分が基本書として使っているものを使って
構わない。
なお、
「会社法講義 会社法の仕組みと働き」
(日本評論社)
、
「プライマリー会社法」
(第 4 版)
(法律文
化社)を教科書として推奨する。
・参考文献 下記の他,随時 TKC において追加する。
小林秀之・近藤光男 編『新版 株主代表訴訟大系』弘文堂 2002 年 11 月の吉原和志氏の論文「取締
役の経営判断と株主代表訴訟」
。
前田雅弘等著『会社法事例演習教材』
(有斐閣)
中村信男・受川環大編『ロースクール演習 会社法(第 3 版)
』
(法学書院)
伊藤靖史他『事例で考える会社法』
(有斐閣)
黒沼悦郎編著「Law Practice 商法」
(商事法務)
野田博著 会社法判例インデックス(商事法務)
※掲載した教科書,参考書等は,シラバスの入稿後に改訂版が出版される可能性もあるので,秋学期の
授業開始前の出版案内等を注意して欲しい。
40
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民事訴訟法演習Ⅰ
石井 教文・草鹿 晋一
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
民事手続法Ⅰ・Ⅱで学習した基礎知識・基礎理論を前提に、民事訴訟法の代表的な基本判例を学習す
る。判決文等から当事者の申立事項や攻撃防御方法の内容を分析した上、そこに含まれる法的問題点を
検討することによって、基礎知識・基礎理論を事案に即して展開する能力を身につけることが本演習の
目的である。
本演習は、上記目的を達成するため、対象とする判例(授業内容・授業計画に示した「検討判例」
)
に関し、①事案の概要、②申立て(訴訟物)の内容、③攻撃防御方法の整理、④争点、⑤判旨の内容と
意義、⑥判例に対する学説の評価等につきソクラテスメソッドで検討する形式で実施する。検討を通じ、
実体法と手続法との関係、現実の訴訟における民事訴訟法理論の機能や役割を理論と実務の両面から実
践的に理解できるようにしたい。
このように本演習では、実体法をも含めた民事法学習のまとめとして、民事訴訟法の基本判例を多面
的に検討する。
法曹に必要とされるスキルとの関連でいうと、これまで学習した法的知識を前提に、基本判例の学習
を通じて事実調査・事実認定能力、法的分析・推論能力を深化させるとともに、演習での報告や議論に
よって法的議論・表現・説得能力やコミュニケーション能力の涵養を図る。また、この授業では、研究
者教員・実務家教員が連携し、当該事案処理の適否を検証し、法曹としての倫理、責任の自覚など「法
曹に必要とされるマインド」の養成をも図る。
容
民事訴訟法の基本問題についての判例研究を行う。各検討判例 1 つにつき、2 回の授業で検討する予
画 定である。1 回目は予め示した予習課題につき提出されたレポートに基づき、基本的な理解が正しくで
きているかにつき確認する。2 回目は、1 回目の理解をふまえ、さらに発展的な課題につき検討する予
定である。適宜課題を示すので、きちんと提出すること。
各回において取り上げるテーマおよび関連裁判例は次の通りである。
実際に検討する課題判例については、昨年度の実績を踏まえ第一審判決を中心に、セレクトし直し、予
習課題として事前に指示する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第 1 回 民事手続法の復習およびガイダンス
第 2~3 回 訴訟物と処分権主義
■№1 最判昭和 46.11.25 民集 25 巻 8 号 1343 号(百選 76 事件)
第 4~5 回 弁論主義(1) 主要事実と間接事実
■№2 最判平成 14.9.12 判時 1801 号 72 頁
第 6~7 回 弁論主義(2) 自白の拘束力
■№3 最判昭和 41.9.22 民集 20 巻 7 号 1392 頁(百選 54 事件)
第 8~9 回 既判力 損害額の証明
■№4 最判平成 20.6.10 裁民集 228 号 181 頁
第 10~11 回 重複訴訟の禁止 相殺の抗弁
■№5 最判平成 18.4.14 民集 60 巻 4 号 1497 頁
第 12~13 回 共同訴訟と補助参加
■№6 最判昭和 43.9.12 民集 22 巻 9 号 1896 頁(百選 101 事件)
第 14~15 回 参加的効力
■№7 最判平成 14.1.22 判時 1776 号 67 頁(百選 108 事件)
特定の報告者は定めないので、各自検討判例について、一審からの事実関係、訴訟の経過を調査・検
討し、演習での質疑・討論ができるように準備をすること。準備事項は、①事案の概要、②申立て(訴
訟物)の内容、③攻撃防御方法の整理、④争点、⑤判旨の内容と意義、⑥判例に対する学説の評価等の
6 つである。
これまでの学修内容を踏まえて質疑を行うので、民事訴訟法のみならず、民事法全体について復習を
きちんとしておくこと。
民事執行法についても可能な限り履修もしくは自習すること。
これまでの実施状況からすると、民法等実体法における権利と請求権の違い、要件・効果の把握が不十
分で民事訴訟法以前のところで躓く者が少なくない。授業開始までにしっかり復習しておくこと。
以下の力を身につける。
① 裁判例を素材に、事実関係、当事者の申立事項、攻撃防禦方法を分析する力
② その分析結果をもとに教科書等で習得した民事訴訟法の基礎知識・基礎理論を具体的事案に適用す
る力
③ 自己の調査・検討結果を簡潔に報告する能力や他人と議論する力
平常点 30 点、定期試験 70 点の割合で成績をつける。
平常点は、授業の到達目標で掲げた項目を課題レポートおよび授業中の質疑に基づき評価する。具体
的には、予習として要求された検討判例についての調査の到達度、発問に対する応答内容、演習での質
疑・議論の状況を評価する。
定期試験は、学期を通じた最終的な能力の到達点を評価する。
教科書、参考書等は特に指定しない。これまで使用していたものを十分活用して準備すること(民事
41
手続法Ⅰ、Ⅱのシラバス参照)
。
検討判例、参考判例については、各自が判例データベース等で検索して各種の判例集に当たり、判例
評釈等を自分で調査すること。なお、判決を分析し、正しく理解するためには、結論だけでなく、そこ
へ至る理由中の判断および前提となる事実関係の把握は必須である。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民事訴訟法演習Ⅱ
草鹿 晋一・三山 峻司
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
民事手続法Ⅰ・Ⅱで学修した基礎知識・基礎理論ならびに民事訴訟法演習Ⅰで習得した理論的思考能
力および判例分析能力を前提とし、双方向の演習形式による具体的事案の検討を通じて、応用力を養う
ことを目的とする。
本演習を通じてこれまでに学んだ知識が実際の手続でどのように機能するのかを体感し、使いこなせ
るようになるための素地を構築してもらいたい。
民事訴訟法演習Ⅰにおける判例分析とあいまって、確実な知識の定着と応用能力、事案分析能力を養
成することが目標である。
事前に予習範囲、検討課題等を提示するので各自予習の上、授業に臨むこと。演習ではソクラテスメ
ソッドにより随時発言を求めるので応答すること。参加者による討議を通じ、現実の訴訟における民事
訴訟法理論の機能や役割、具体的事案における基礎知識の用い方などを実践的に理解できるようにした
い。
法曹に必要とされるスキルとの関連でいうと、これまで学習した法的知識を前提に、その確実な定着
を図ると同時に、問題演習を通じて法的分析・推論能力、法的議論・表現・説得能力やコミュニケーシ
ョン能力の涵養を図る。また、復習課題を通じて、論理的表現力の強化も図る。
容
以下の項目に沿って事前に提示する課題について検討する。
画
具体的内容については TKC において指示するので随時確認すること。
第 1 回 訴えの提起と民事訴訟手続
訴えの提起の意義と判決手続において果たす機能について検討する。
今回の授業を通じてこれまでの知識の確認および演習のロードマップを提示する。
第 2 回 審理の対象
訴えと判決の関係について検討する。
関連事項 訴えの提起 訴状の記載事項 訴訟上の請求 訴訟物 処分権主義 申立事項と判決事
項
第 3 回 当事者
当事者の意義、機能に対する理解について事案検討を通じて深化させる。
関連事項 当事者概念 当事者の特定 当事者能力 訴訟能力 代理 代表
第 4 回 訴訟要件
訴えの利益を中心とする訴訟要件の意義、機能について事案を通じて理解を深める。
関連事項 訴訟判決と本案判決 訴訟要件 訴えの利益 確認の利益
第 5・6 回 弁論主義
弁論主義とその機能について理解を深める。
関連事項 弁論主義 主張責任 主張共通の原則 証拠調の必要性 自白 自由心証 主要事実
間接事実 補助事実 自白の撤回 職権探知 職権調査事項 求釈明
第 7 回 証拠調の必要性と事実認定
証拠調の必要性と事実認定の問題について理解を深める
関連事項 証拠調の必要性 要証事実 不要証事実 自白された事実 顕著な事実 事実認定 自
由心証 証明度 証明責任 証明妨害
第 8~10 回 判決とその効力
判決とその効力について理解を深める
関連事項 既判力の意義 既判力の機能 客観的範囲 時的範囲 判決主文 判決理由 判決理由
中の判断 主観的範囲 執行力 形成力
第 11・12 回 判決によらない訴訟の終結
判決によらない訴訟の終了とその問題点について理解を深める
関連事項 訴えの取下 請求の放棄 請求の認諾 和解 判決と同一の効力 既判力 執行力 形
成力
第 13・14 回 複雑訴訟
複雑訴訟についての基礎知識とその具体的適用場面について確認する
42
関連事項 客観的併合 主観的併合 弁論の併合 弁論の分離 併合の効果 選択的併合 予備的
併合 補助参加 参加の効果 独立当事者参加 訴訟告知 同時審判申出
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
教
法
材
第 15 回 上訴
上訴についての基礎知識とその問題点を確認する
関連事項 上訴の利益 移審の範囲 不利益変更の禁止 弁論の更新 上告理由 破棄判決の拘束
力
各回事前に TKC に予習課題(事例)と関連事項をアップするので、必ず確認すること(必要に応じて
参考判例は添付する)
。予習課題については授業開始前に一応の解答を提出すること。
授業では、全員が予習していることを前提に、質疑応答を通じて課題について検討する(レポーター
制は採用しないので、全員が一応の準備をしてくること)
。その際、なにが正解か、よりも解答に至る
ためにはどのような関連事項を用いてどのように考えればいいのかということを確認すること。授業で
も解答の正否よりも授業を通じて解答に至るプロセスを確認してもらうことに主眼をおく。このような
手法を通じて、自学自習のノウハウを確立し、今後の学修に活かしてもらうためである。
必要に応じて復習課題を課すので、学修成果の確認として活用すること。
本演習では以下のことを目標とする。
①民事訴訟に関する基礎知識・基礎理論の確認および確実な定着
②基礎知識・基礎理論を具体的事案に適用する応用力の養成
③ソクラテスメソッドを通じた自己発信能力やコミュニケーション能力の向上
平常点 30 点、定期試験 70 点の割合で成績をつける。
平常点は、授業の到達目標で掲げた項目の達成度を予習課題の解答状況、授業中の発問に対する応答
内容、復習課題に対する解答状況などに基づき評価する。
定期試験は、演習を通じた最終的な能力の到達点を評価する。
テキスト
松村和徳ほか『民事訴訟法演習教材』
(成文堂)から課題を選択し、
(一部改変した上で)
予習課題として提示する。
検討課題や関連事項・関連判例については TKC にて提示するので、各自必要に応じて予習・復習する
こと。
民事手続法Ⅰ・Ⅱで掲げたテキスト、参考文献のほか、
参考書として
三木浩一・山本和彦編『ロースクール民事訴訟法』有斐閣
長谷部由紀子ほか編『ケースブック民事訴訟法』弘文堂
具体的な資料の使用方法等については第 1 回の授業で説明する。
それまでは新たな資料に頼ることなくこれまでに学修した基本的事項の復習をしっかりやっておく
こと。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民事法総合演習
佐藤 誠・高嶌 英弘・野々山 宏・山本 宣之
3年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
民事系の最終科目であり、修了直前の実力向上および総仕上げとして開講する。真に法曹を目指す者
は、是非、受講していただきたい。
今年度は、実務家教員・研究者教員の 4 名が 1 クラスを担当する。全 8 回(1単位)の授業であり、
授業は隔週で行う。総論 1 回(民法の事例を用いる)、民法 4 回、会社法 3 回の割当てを予定している。
「民事法総合演習用に作成した事例」や「公表されている優れた事例」(たとえば新司法試験の事例な
ど)を用いる。
授業の主眼は、1)事実関係を迅速に整理すること、2)設問の趣旨を正確に理解し、設問に即した法
的判断を行うこと、3)その法的判断を適切な法律文によって論述すること(規範と当てはめといった
論理的な法律文としての構成、専門用語を用いた簡潔明快な表現を重視する)
、4)限られた時間内で 1)
~3)の法的作業を完結することにある。また、実務的・理論的に重要であるが未解決の問題に対し、既
存の知識・理解をどのように用いて対処すればよいのかについても、その方法を実践的に指導したい。
容
まず、各事例の設問について、指定時間内で作成した法律文の事前提出を求め、教員がそれを事前に
画 検討・協議する。次に、授業において、その法律文を手がかりに、事例の事実関係および法律関係を検
討・整理し、その適切な理解を得る。そして、その結果をふまえ、法律文としての構成・論理・表現に
ついて詳細な検討・評価を行い、民事法の総合的理解の充実を図る。なお、希望する学生は、授業のな
い隔週を利用してオフィスアワーを開き、指定時間内で作成した法律文を自主的に再作成・再提出する
ことができるので、積極的に利用されたい。この場合、教員は改めてそれを検討・協議し、法律文とし
て完成させるために必要な指摘・評価を行う。
各事例は、秋学期開始前のガイダンスの時期に提示する。また、履修者の水準・希望に応じて事例の
内容・設問を変更・修正することがある。
第 1 回 総論~民法第 1 事例
事実関係・法律関係の整理の仕方、法律文の作成の仕方などの概要を説明・確認し、授業を進めるた
めの共通理解を得る。
43
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第 2 回 民法第 2 事例
第 3 回 民法第 3 事例
第 4 回 会社法第 1 事例
第 5 回 会社法第 2 事例
第 6 回 会社法事例の総復習
第 7 回 民法第 4 事例
第 8 回 民法第 5 事例
実体法(民法、会社法)の基本的理解ができていることが前提となり、かつ修了直前の実力向上のた
めの科目であるので、当該秋学期または翌春学期に修了見込みであることが強く望まれる。また、毎回、
法律文の事前作成・提出を求めるので、指定された時間(2 時間程度)の確保、および復習が必要であ
るが、そうした負担に見合う成果は十分に得られると考えている。
具体的事例において、適切な法律構成を提示し、法的解決を導く能力(問題発見・解決能力)
、また、
その前提として、具体的事実を整理・分析して法的に評価する能力(事実認定能力)を獲得することが、
主な目標である。その際、法的分析・推論能力、演習・レポートにおける法的議論・表現・説得能力も
必要であり、これらの獲得も求められる。さらに、以上を通じて、具体的事例を受任した場合の法曹と
しての使命・責任の自覚も期待される。こうした目標のため、実務家教員・研究者教員・学生間の双方
向・多方向の質疑応答、法律文の作成を通じた理解の検証という授業方法を採用する。
成績評価の基準となるのは、設問に即した法的判断を法律文によって論述することである。単位認定
(60 点以上)を受けるためには、適切な法律構成を提示できること、要件・効果の基本的な説明ができ
ること、主要な事実を指摘できること、主要な事実の当てはめができること、法律文によって表現でき
ることが必要である。より上位の成績評価を受けるには、複数の法律構成を提示しその優劣や特徴を説
明できること、要件・効果の詳細な説明ができること、多数の事実を指摘しそれぞれの重要度を説明で
きること、多数の事実の当てはめができること、論理的かつ明快な法律文によって表現ができることが
必要である。
期末試験 70%、平常点 30%として評価する。期末試験は、事例形式の論述式の筆記試験とし、授業
で用いる設例と同水準とする。平常点は、主としてレポートによる。また、欠席・遅刻早退はマイナス
評価とする(履修要項の記述にしたがう)
。
演習用に作成した事例、公表されている優れた事例を教材とする。基本書・参考書は、各科目(民法、
会社法など)で紹介されたものを利用されたい。
刑法Ⅰ(概論・総論)
岡本 昌子
1年次
学
期 春学期
4単位
必 修 ・ 選 択 必修
刑法Ⅰ(総論)の講義目的は、第一に、あらゆる犯罪類型に共通する一般的な性質の解明を任務とす
る「刑法総論」に関する基礎的法的知識を修得することである。第二に、その法的知識を基に、新たな
事案に直面した場合にも、刑法上の問題を発見し、その解決策を導き出す問題解決能力を養成すること
である。また、刑法の目的・機能を十分に理解するためには、刑事法の概念およびその基礎的知識の修
得が必須であることから、これらも講義目的である。
そして、最終的に、受講生が、後述「
(4)授業の到達目標」に達し、演習科目である刑法演習におい
て議論できるだけの素地を養うことを目的とする。
容 第 1 回 刑事法の概観
画
第一に、刑法を学ぶための前提となる基礎知識として、法の仕組み・体系における刑事法の位置づけ、
役割について概観する。第二に、犯罪とは何か、そして、犯罪の原因と対策について、刑法の意義・目
的・機能との関係で考える。
第 2 回 刑法の歴史と刑法理論
近代刑法の歴史的展開を追いながら、古典学派と近代学派、客観主義と主観主義、社会倫理主義と法
益保護主義といった、犯罪理論に関する根本的な対立について検討する。そして、刑罰の正当化根拠を
明らかにするために、応報刑主義と目的刑主義といった、刑罰理論に関する根本的な対立について検討
し、現行法上の刑罰を概観する。
第 3 回 刑法の法源と解釈
刑法の大原則である罪刑法定主義の内容を明らかにして、法律主義の根拠を検討した上で、刑法の解
釈のあり方について考える。
第 4 回前半 犯罪論の基礎
犯罪の意義を明らかにした上で、犯罪の成立要件となるべき行為、構成要件、違法性、責任について
検討して、犯罪論体系の骨組みを示す。
第 4 回後半 構成要件 1
構成要件該当性を論じる前提として、構成要件の意義・内容・機能を検討した上で、構成要件要素に
ついて概観する。
44
第 5 回・第 6 回・第 7 回 構成要件 2-実行行為の客観面
実行行為の意義を明らかにした上で、その客観面で問題となる不作為犯および間接正犯について検討
する。
第 8 回・第 9 回 構成要件 3-実行行為の主観面 1
実行行為の主観面のうち、故意について、その意義・成立要件、未必の故意と過失との区別、錯誤論
(具体的事実の錯誤および抽象的事実の錯誤など)を中心に検討する。
第 10 回 構成要件 4-実行行為の主観面 2
実行行為の主観面のうち、過失について、その意義・成立要件、交通事故を中心に問題となる信頼の
原則、過失の競合を中心に検討し、あわせて結果的加重犯についても考える。
第 11 回・第 12 回 構成要件 5-因果関係
因果関係が問題となる事例の検討を通じて、刑法における因果関係の意義、その判断方法を明らかに
する。
第 13 回 違法性 1-違法性の概念
違法性阻却事由について検討する前提として、違法性の本質に関する結果無価値論と行為無価値論の
対立を中心に、違法性の概念を明らかにする。
第 14 回 違法性 2-違法性阻却事由 1-正当行為
違法性阻却の意義・一般原理を明らかにした上で、違法性阻却事由の一つである正当行為について検
討する。
第 15 回・第 16 回・第 17 回前半 違法性 3-違法性阻却事由 2-正当防衛
違法性阻却事由の一つである正当防衛について、違法性が阻却される根拠、要件を中心に、そして、
過剰防衛、誤想防衛、誤想過剰防衛についても検討する。
第 17 回後半 違法性 4-違法性阻却事由 3-緊急避難
違法性阻却事由の一つである緊急避難について、正当防衛との異同を中心に、違法性が阻却される根
拠、要件について検討する。
第 18 回 責任 1-責任主義
責任および責任主義の意義・内容の理解を前提として、責任の本質、責任要素、責任判断について検
討する。
第 19 回 責任 2-責任能力と原因において自由な行為
責任能力の意義・判断、責任無能力者、限定責任能力者の処分、責任能力の存在時期との関連で問題
となる原因において自由な行為を検討する。
第 20 回 責任 3-違法性の意識の可能性と期待可能性
違法性の意識の可能性、違法性の錯誤、期待可能性とその判断基準などを中心に検討する。
第 21 回 未遂犯 1
基本的構成要件の修正形式の一つである未遂犯について、その処罰根拠、危険性の捉え方、実行の着
手時期を中心に検討する。
第 22 回 未遂犯 2
未遂犯のうち、刑が減免される中止犯について、その根拠、要件を中心に検討する。そして、処罰さ
れる未遂犯と処罰されない不能犯の区別についても検討する。
第 23 回 共犯 1-正犯と共犯
構成要件の修正形式である共犯について、その処罰根拠および本質、正犯との相違を中心に検討する。
第 24 回・第 25 回 共犯 2
共犯の大部分を占める共同正犯の重要性に鑑み、その特殊性、実行共同正犯の成立要件を明らかにし
た上で、過失犯・結果的加重犯の共同正犯、承継的共同正犯、片面的共同正犯等の問題となる諸類型に
ついて詳しく検討する。
第 26 回・第 27 回 共犯 3
共謀共同正犯が共同正犯とされる根拠、その成立要件の検討を通じて、狭義の共犯との区別について
検討する。
第 28 回・第 29 回 共犯 4-共犯の諸問題
刑法 65 条の解釈および問題となる事例の検討を通じて、真正身分犯および不真正身分犯と共犯の関
45
係について明らかにする。そして、不作為犯に対する共犯、共犯の錯誤、共犯の未遂、共犯関係からの
離脱等の共犯に関連する諸問題について検討する。
第 30 回 罪数
犯罪が成立した場合に、一罪として処理すべきか、また、数罪として処理する場合に科刑上一罪とな
るか併合罪となるかを中心に検討する。
以上は、授業計画案である。受講生の理解の進度により変更する場合がある。
本科目の授業方法は、従来、未修者コースの一年次設置科目であることから講義形式を基本としてき
たが、本年度からは、受講生のニーズに合うよう、双方向形式を時間の許す範囲で実践したいと考えて
いる。したがって、受講生は、テキストおよびTKC上にて公開するレジュメ、指定した文献・判例を
熟読した上で講義に出席し、積極的な学習態度で講義に臨むことが要求される。単元終了後には、適時、
理解度をチェックするために小テストを実施する。また、理解を深めてもらうために、必要に応じてレ
ポートの提出も求め、それを添削して返却することとする。以上のように、受講生は、
「予習」だけで
なく、講義後は知識の整理、各自の理解度を確認するという「復習」もしっかり行ってもらうことが強
く要請される。
そして、授業時間にてすべての論点を教授することは時間的に不可能であるから、自学自習に委ねざ
るをえない部分がある。理解できない箇所や質問があれば、いつでもオフィスアワーを活用して質問し
てもらいたい。
なお、
「履修要項」に示されているように、法科大学院における出席の重要性にかんがみ、出席日数
が講義日数の 2/3 を超えることを単位取得の前提条件とする。
授業の到達目標
第一に、刑法総論における専門的・体系的知識を修得すること、第二に、真に処罰に値する行為を導
き出すことができる法的・論理的思考能力を身につけること、第三に、事案に対して刑法上の問題点を
発見・抽出し、その問題を解決する能力(問題解決能力)を身につけることを本授業の到達目標とし、
刑法総論に関して、未修者コースの春学期にて修得すべき最低限レベルの修得を単位認定(60 点)の基
準とする。
評 価 方 法 1 学期末に実施する定期試験の成績(成績評価に占める割合は 70%)
事例に対する論述式試験を実施する。出題趣旨および評価内容、採点のポイントは、
「出題趣旨と講
評」にて全科目共通の日程で公開する。
2 講義期間内に実施する小テスト・レポートの成績(成績評価に占める割合は計 30%)
講義内容の理解度をチェックするために、講義期間内に小テストとレポートを実施する。小テストは、
穴埋め問題や正誤問題を基本とし、実施後、すみやかに解説し、復習の助けとしてもらう。レポートは、
比較的短い事例に対する論述式で実施する。
3 欠席や遅刻・早退は、履修要項の定めに従い、所定の減点を行う。
教
材 テキスト
大谷實著・新版刑法講義総論[新版第 4 版](成文堂、2012 年)
履修上の注意
サブテキストとして以下のものを挙げる。
大谷實編・法学講義刑法Ⅰ総論(悠々社、2007 年)
大谷實編・判例講義刑法Ⅰ総論[第2版](悠々社、2014 年)
大塚裕史他・基本判例Ⅰ(日本評論社、2012 年)
成瀬幸典・安田拓人編著・判例プラクティス刑法Ⅰ総論(信山社、2010 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編・刑法判例百選Ⅰ総論[第 7 版]
(有斐閣、2014 年)
西田典之・山口厚編・刑法の争点[第 3 版]
(有斐閣、2000 年)
その他に、必要な参考文献を適時教示する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
46
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑法Ⅱ(各論)
岡本 昌子
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は、刑法第二編罪について講義する。全 15 回ですべての罪について講義することは物理的に
不可能であることから、本講義では、主要な罪、自学自修に適さない罪に焦点を置くこととする。
本講義の目的は、刑法各論に関する法的知識を修得すること、具体的には、第一に、各犯罪固有の構
成要件を明らかにして、各々の罪の処罰範囲を明確にすること、第二に、個々の構成要件相互の関係お
よび区別を解明し、真に処罰に値する行為を導き出すことのできる「法的知識の修得」である。そして、
これらの法的知識を基に、新たな事案に直面した場合にも、刑法上の問題を発見して解決策を導き出す
「問題解決能力」をも養成することである。
また、本講義では、刑法各論の学習を中核としながらも、刑法Ⅰ(総論)で修得された基礎知識を前
提として、刑法総論との有機的関連性にも留意して、真に処罰に値する行為を明らかにすることにも努
める。
容 第 1 回 生命および身体に対する罪 1
画
人の始期と終期の確定を前提として、殺人罪、自殺関与罪、同意殺人罪等について、処罰根拠、処罰
範囲の確定、同意と錯誤の問題などを中心に検討する。
第 2 回 生命および身体に対する罪 2
生命および身体に対する罪のうち、傷害罪、暴行罪について、暴行・傷害の概念、傷害罪の故意、同
時傷害の特例などを中心に検討する。
そして、遺棄の罪について、遺棄の概念、交通事故の刑法的評価などを検討する。
第 3 回 財産に対する罪 1 ~財産罪総論、窃盗の罪~
すべての財産罪に共通する問題である保護法益、客体、不法領得の意思について、窃盗罪を例に検討
する。
そして、窃盗の罪について、占有の有無などの主要論点について、具体的事案を用いて検討し、親族
相盗例についても学ぶ。
第 4 回 財産に対する罪 2 ~強盗の罪 1~
強盗罪の構成要件について検討する。そして、強盗利得罪、準強盗罪についても学ぶ。
第 5 回 財産に対する罪 3 ~強盗の罪 2~
強盗の罪における、強盗致死傷罪、強盗強姦罪、強盗強姦致死罪などを中心に検討する。
第 6 回 財産に対する罪 4 ~詐欺の罪~
詐欺の罪について、詐欺罪と窃盗罪の区別、カードの不正使用、誤振込、財産上の損害をめぐる問題、
無銭飲食・無銭宿泊などを中心に検討する。
第 7 回 財産に対する罪 5 ~横領の罪~
横領の罪について、二重売買などの問題を素材に同罪の成立要件を検討し、占有者と非占有者による
共犯事例等も検討する。
第 8 回 財産に対する罪 6 ~背任の罪~
背任罪について、事務処理者、任務違背行為、図利加害目的、財産上の損害の要件、二重抵当、横領
罪との区別の問題を中心に検討する。
第 9 回 自由・私生活の平穏に対する罪
逮捕・監禁罪、略取・誘拐罪、強姦罪、強制わいせつ罪、集団強姦罪、強制わいせつ・強姦致死傷罪、
住居侵入罪等を中心に検討する。
第 10 回 名誉・信用に対する罪
人に対する社会的評価を保護法益とする名誉に対する罪、信用に対する罪について、両罪の異同、名
誉毀損罪における真実の証明およびその錯誤等、表現の自由との関係を中心に検討する。
第 11 回 公衆の平穏および安全に対する罪 ~放火および失火の罪~
公衆の平穏および安全に対する罪の中の放火および失火の罪について、焼損の意義と既遂時期、各放
火罪の相違(現住性、公共の危険の発生、109 条 2 項と 110 条の故意など)を中心に検討する。
第 12 回 公衆の信用に対する罪 ~文書偽造の罪~
公衆の信用に対する罪の中の文書偽造の罪について検討する。まず、文書偽造罪の基本概念(文書の
概念、偽造の概念など)を学習した上で、各罪の検討を行う。具体的には、私文書偽造等罪について、
代理名義の冒用、代理権限の濫用、肩書の冒用、名義人の同意がある場合の同罪の成否を中心に検討す
る。
第 13 回 国家の作用に対する罪 1 ~公務執行妨害罪(+業務妨害罪)~
国家の作用に対する罪の中の公務執行妨害罪を中心に検討する。具体的には、職務執行の適法性(適
法性の要件、判断基準、適法性の錯誤)
、業務妨害罪との関係について検討する。
第 14 回 国家の作用に対する罪 2 ~逃走の罪、犯人蔵匿および証拠隠滅の罪、偽証の罪~
47
国家の作用に対する罪の中の犯人蔵匿等罪、証拠隠滅等罪、偽証罪を中心に、身代わり犯人を立てる
行為と犯人蔵匿罪の成否など、各罪の論点を検討する。
第 15 回 国家の作用に対する罪 3 ~汚職の罪~
国家の作用に対する罪の中の職権濫用の罪と賄賂の罪について検討する。賄賂の罪の保護法益、職務
関連性(転職前の職務に関して賄賂罪が成立するかという問題など)を検討した上で、賄賂の罪の各罪
の相違を明らかにする。
以上は、授業計画案である。受講生の理解の進度により変更する場合がある。
刑法Ⅰ(総論)を履修していることが望ましい。
授業方法は、講義形式を基本とするが、重要論点等については質問し回答を求める双方向形式も併用
する。したがって、受講生は、テキストおよびTKC上にて公開するレジュメ、指定した文献・判例を
熟読した上で講義に出席し、積極的な学習態度で講義に臨むことが要求される。単元終了後には、適時、
理解度をチェックするために小テストを実施する。また、理解を深めてもらうために、必要に応じてレ
ポートの提出も求め、それを添削して返却することとする。以上のように、受講生は、
「予習」だけで
なく、講義後は知識の整理、各自の理解度を確認するという「復習」もしっかり行ってもらうことが強
く要請される。
そして、授業時間にてすべての論点を教授することは時間的に不可能であるから、自学自習に委ねざ
るをえない部分がある。理解できない箇所や質問があれば、いつでもオフィスアワーを活用して質問し
てもらいたい。
なお、
「履修要項」に示されているように、法科大学院における出席の重要性にかんがみ、出席日数
が講義日数の 2/3 を超えることを単位取得の前提条件とする。
授業の到達目標
刑法各論における専門的・体系的理解を前提として、個々の犯罪類型固有の成立要件を明らかにする
とともに、個々の要件相互の関係から各犯罪を区別できるようになること(法的知識の修得)
、そして、
新たな事案に直面した場合にも、多様な事実関係の中から刑法上の問題点を発見・整理して、その問題
の解決策を導き出し(問題解決能力の修得)
、有害行為のなかから真に処罰に値する行為を導き出すこ
とができる論理的・創造的能力を身につけることを本授業の到達目標とする。そして、社会法益および
国家法益に対する罪に関する基礎知識の修得、履修後のさらなる自学自習により専門的法的知識を構築
することが期待できる最低限レベルの修得を単位認定(60 点)の基準とする。
評 価 方 法 1 学期末に実施する定期試験の成績(評価に占める割合は 70%)
事例に対する論述式試験を実施する。出題趣旨および評価内容、採点のポイントは、
「出題趣旨と講
評」にて全科目共通の日程で公開する。
履修上の注意
2 講義期間内に実施する小テスト・レポートの成績(評価に占める割合は 30%)
講義内容の理解度をチェックするために、講義期間内に小テストとレポートを実施する。小テストは、
穴埋め問題や正誤問題を基本とし、実施後、速やかに解説し、復習の助けとしてもらう。レポートは、
比較的短い事例に対する論述式で実施する。
3 欠席や遅刻・早退は、履修要項の定めに従い、所定の減点を行う。
材 基本書
大谷實『刑法講義各論[新版第 4 版]
』
(成文堂、2013 年)
参考書
大谷實編『判例講義刑法Ⅱ各論[第 2 版]
』
(悠々社、2011 年)
大谷實編『法学講義刑法2』
(悠々社、2014 年)
大塚裕史他・
『基本判例Ⅱ』
(日本評論社、2014 年)
成瀬幸典・安田拓人・島田聡一郎編著・判例プラクティス刑法Ⅱ各論(信山社、2012 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法判例百選Ⅱ各論[第 7 版]
』
(有斐閣、2014 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法の争点』
(有斐閣、2007 年)
なお、その他、必要に応じて、適宜、教示する。
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
48
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑事訴訟法Ⅰ
安冨 潔
1年次・2年次(既修者)
学
期 秋学期・春学期(既修者)
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
刑事訴訟法は,犯罪事実の存否を明らかにし,その存在が肯定された場合には犯人に対して刑罰を科
するための一連の手続を規律する法である。
本講義は,2年次に開講される刑事訴訟法Ⅱへの導入として,刑事訴訟法の初学者を対象として,刑
事訴訟手続を形成する制度原理とその運用の実情,および刑事訴訟手続上に生起する様々な解釈問題の
うちの基礎的なものについて講ずることを目的とする。
容 第1回 刑事訴訟手続の概観
画 刑事訴訟法,刑事訴訟規則,犯罪捜査規範及びこれらの法規の原理となる基本法である憲法等の刑事手
続法の法源,刑事訴訟法の基本原理・原則について説明し,犯罪の捜査から,起訴,公判,判決を経て,
上訴で終わる刑事手続の一連流れを概観する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第2回 捜査①(令状主義,任意捜査と強制捜査,捜査の端緒)
捜査に対する法的規律の基本構造である令状主義及び強制処分法定主義について理解する。また任意
処分と強制処分の区別についての基準を理解し,任意処分における有形力行使の限界に関する理論的枠
組みについて学ぶ。
また,捜査の端緒としての行政警察活動の法的根拠とその限界について学ぶ。
第3回 捜査②(被疑者の逮捕・勾留,逮捕・勾留をめぐる諸問題)
起訴前の身柄拘束制度の仕組みと令状主義による規制について基本的理解を得ることに重点を置いて,
被疑者の身柄拘束をめぐる基本的な規律とそれにまつわる法的問題について学ぶ。
第4回 捜査③(令状による捜索・差押え・検証)
憲法 35 条の捜索・押収に関する令状主義の趣旨,刑事訴訟法の規定する対物処分としての令状による
捜索・差押え・検証をめぐる諸問題について学ぶ。
第5回 捜査④(令状によらない捜索・差押・検証等)
令状によらない捜索・差押え・検証について,令状主義の例外とされる根拠をふまえて,それらが許容
される根拠と要件,その許される場所的・時間的限界,対象物の範囲等について具体例を通じて学ぶ。
体液等の採取についての基本的な考え方を学ぶ。
写真撮影や会話録音についての基本的な考え方を学ぶ。
第6回 捜査⑤(被疑者・参考人の取調べ)
被疑者取調べをめぐる理論的・実務的な諸問題について学ぶ。
参考人の取調べについて,実務的運用を踏まえて重要な問題点について学ぶ。
第7回 捜査⑥(被疑者の防御)
被疑者の防御手段を概観し,被疑者国選弁護人制度,弁護人の援助を受ける権利,接見交通権をめぐる
諸問題について論じる。
第8回 公訴の提起(起訴状一本主義,訴訟条件,訴因の特定)
公訴の提起に関する基本原則と,検察官の訴追裁量及びそのコンロトール手段について学ぶ。また,検
察官の訴追のあり方と裁判所の審判対象との関係について学ぶことを通して当事者主義の理解を深め
る。
訴訟条件の意義,ことに公訴時効,親告罪における告訴,告訴の追完についても基礎知識を学ぶ。
第9回 訴因変更制度(訴因変更)
審判の対象としての訴因制度について学ぶ。
訴因制度の意義,訴因変更の要否・可否・許否,訴因変更命令などについての基礎知識を身につける。
第 10 回 公判手続(公判前整理手続,公判期日の手続)
公判の準備と公判手続について学ぶ。
被告人の訴訟能力,被告人の出頭確保,起訴後の弁護制度のほか,公判前整理手続における争点と証拠
の整理について,証拠開示のあり方について学ぶ。
公判手続については,実務での運用をふまえて,公判手続の流れを身につけ,公判手続に関する諸問題
を学ぶ。
第 11 回 証拠一般(証拠裁判主義,挙証責任,違法収集証拠)
証拠法の総論を学ぶ。証拠の意義・種類と証拠裁判主義に基づく事実認定の過程について学ぶ。
挙証責任と推定,証拠の関連性,自由心証主義の意義についての基礎知識を理解する。
違法収集証拠の証拠能力を学ぶ。
第 12 回 伝聞法則①(伝聞証拠の意義,伝聞法則,伝聞法則の例外その1)
伝聞法則の趣旨,伝聞証拠の意義について論じる。
伝聞法則についての基本的な理解を身につけるとともに,伝聞法則の例外についての根拠及び要件につ
いて学ぶ。
第 13 回 伝聞法則②(伝聞法則の例外2)
伝聞法則の例外規定について,具体的な供述代用書面,伝聞供述について学ぶ。
写真・ビデオテープの証拠能力についても身につける。
第 14 回 自白(自白法則,補強法則)
,共同被告人の法律関係
自白法則の趣旨とその具体的内容及び補強法則の趣旨とその具体的内容について学ぶ。
共同被告人をめぐる法律関係に関する基礎的な理解を学ぶ。
第 15 回 裁判の効力・上訴・非常救済手続等
裁判の意義と種類,裁判の成立,形式裁判・実体裁判、裁判の効力について学ぶ。
また,上訴・非常救済手続についても概観する。
教材を読んで充分な予習をしておくことを求める。授業ではソクラテスメソッドによる双方授業を行
う。
刑事訴訟法の基本構造及び原理だけを学ぶだけでなく,裁判例や刑事実務における刑事訴訟法の解釈
と運用を身につけるとともに,刑事訴訟法を解釈適用して法的問題に解決を与えることのできる基本的
技能を習得することがこの講義の目標である。
学期末の定期試験(70%)と,平常点(授業中の質疑応答等)
(30%)とを総合して評価する。
安冨潔『刑事訴訟法講義』
〔第3版〕
(慶應義塾大学出版会,2014 年)
。
なお,適宜講義レジメを配布する。
講 義 科 目 名 刑事訴訟法Ⅱ
担 当 者 名 安冨 潔
配 当 学 年 2年次
学
期 春学期・秋学期
49
単
講
義
目
授
授
業
業
内
計
50
位
数 2単位
必 修 ・ 選 択 必修
的
刑事訴訟法は,犯罪事実の存否を明らかにし,その存在が肯定された場合には犯人に対して刑罰を科
するための一連の手続を規律する法である。
本講義においては,すでに学んだ刑事訴訟Ⅰを踏まえて実務運用において生起する刑事訴訟手続上生起
する様々な解釈問題について判例・実務運用を踏まえて基礎知識を習熟することを目的とする。
容 第1週 捜査①(任意捜査と強制捜査,令状主義,捜査の端緒)
画
捜査に対する法的規律の基本構造及び任意処分と強制処分の区別についての基準を具体的な事例を
通じて理解し,任意処分における有形力行使の限界に関する理論的枠組みについて事例を踏まえて理解
を深める。
捜査の端緒としての職務質問・所持品検査・自動車検問の法的根拠とその限界について事例を通して
理解を深める。
第2週 捜査②(被疑者の逮捕・勾留,逮捕・勾留をめぐる諸問題)
被疑者の身柄拘束をめぐる基本的な規律及びそれに関連する法的問題について事例を踏まえて理解
を深める。
被疑者の逮捕・勾留の要件,ことに現行犯逮捕・準現行犯逮捕の要件と適用について具体的事例をも
とに学修する。
その他,逮捕前置主義とその効果,いわゆる一罪一逮捕一勾留の原則の意義及び同原則の例外的取扱
いについて理解を深める。
第3週 捜査③(令状による捜索・差押え・検証)
捜索・押収に関する令状主義の趣旨,刑事訴訟法の規定する対物処分としての捜索・差押え・検証に
ついて,令状における対象の特定,令状の執行方法をめぐる諸問題について事例を踏まえて理解を深め
る。
第4週 捜査④(令状によらない捜索・差押・検証・身体検査,体液等の採取等)
逮捕に伴う捜索・差押え・検証について,令状主義の例外とされる根拠をふまえて,それらが許容さ
れる根拠と要件,その許される場所的・時間的限界,対象物の範囲等について具体例を通じて理解を深
める。
また,体液等の採取に関する理論的・実践的な問題点について事例を通じて理解を深める理解を深め
る。
第5回 捜査⑤(その他捜査における諸問題)
捜査手段としてのビデオ録画の法的性質及び適法要件をめぐる問題点,会話の一方当事者の承諾を得
た上での警察による会話内容の録音の適法性について法的規律のあり方について事例を通じて理解を
深める理解を深める。
その他の捜査の課題についてもふれる。
第6週 捜査⑥(被疑者・参考人の取調べ)
被疑者取調べをめぐる理論的・実務的な諸問題(取調べ受忍義務,取調べにあたっての録音・録画な
ど)と自己負罪拒否特権(黙秘権)について理解する。
また,任意出頭・同行後の取調べ,余罪の取調べについても事例を通じて理解を深める。
参考人の取調べについて,実務的運用を踏まえて重要な問題点について理解を深める。
第7週 捜査⑦(被疑者の防御)
被疑者の防御手段を概観し,弁護人の援助を受ける権利,とりわけ,接見交通権をめぐる諸問題(接
見指定の要件,余罪と接見指定など)について理解を深める。また,被疑者国選弁護人制度について,
事例を通じて実務運用とその限界について理解を深める。
第8週 訴因制度(訴因の特定,訴因変更)
審判の対象をめぐる議論を学ぶ。
検察官の起訴状記載に関する訴因の特定に関して,当事者主義,予断排除の原則を踏まえて,事例を
通じて理解を深める。
訴因の変更の要否・可否・許否につき具体的な事例検討を通して,判例の考え方を理解し,実務での
考え方を身につける。
さらに,訴因変更命令,罪数判断の変化と訴因についてもふれる。
第9週 公判手続(公判前整理手続,公判期日の手続)
公判の準備と公判手続について学ぶ。
公判前整理手続における争点と証拠の整理について,証拠開示のあり方について理解を深める。
被告人の勾留,保釈・勾留の執行停止の実務運用にもふれる。
公判手続については,実務での運用を学ぶとともに,公判中心主義での証人尋問におけるルールや被
告人質問のあり方について実務の運用を理解を深める。
また,被告人に対する弁護の意義,被害者参加制度についてもふれる。
第 10 週 証拠一般(証拠裁判主義,挙証責任)
証拠裁判主義における証拠による事実認定の過程について理解を深める。
証拠の関連性について,その意義,悪性格立証,科学的証拠について事例を踏まえて理解を深める。
第 11 週 違法収集証拠の証拠能力
違法収集証拠が排除される根拠と,その要件及び範囲について事例を通じた具体的検討により問題点
について理解を深める。
第 12 週 伝聞法則①(伝聞証拠の意義,伝聞法則)
伝聞法則についての理解を確かなものとするとともに,伝聞と非伝聞(伝聞不適用)の区別を具体的
な事例の検討を通して理解を深める。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
伝聞法則の例外について,その根拠及び要件についての一般論を理解するとともに,実務において重
要性の高い検察官面前調書の取扱いについて検討する。
第 13 週 伝聞法則②(伝聞法則の例外)
伝聞法則の趣旨を踏まえて、刑事訴訟法に定められている伝聞法則の例外規定について前回に続き理
解を深める。
実況見分調書(ことに立会人の指示説明部分)
,鑑定書,伝聞供述,再伝聞,同意の意義と効力,弾
劾証拠などについての理解を深める。
第 14 週 自白の証拠法則,共同被告人の法律関係
自白法則及び補強法則について事例を踏まえて理解を深める。ことに,自白の証拠能力を否定する場
合について,約束による自白や偽計による自白という自白法則で検討される場合と違法な手続きで得ら
れた自白との関係についても理解を深める。また,自白の任意性立証についての実務にふれる。
共同被告人をめぐる法律関係に関し,共同被告人の供述を相被告人との関係で証拠とする場合に生じ
る諸問題を検討することを通して,共同被告人の供述について学ぶ。
第 15 週 裁判の効力・上訴・非常救済手続等
公判の裁判,とりわけ,裁判における事実認定と裁判の効力について論じる。ことに,有罪判決にお
ける概括的認定・択一的認定とは何か及びその可否について,裁判例にあらわれた事例を中心に理解を
深めるとともに,一事不再理効の及ぶ範囲を審判の対象の把握との関連で論じる。
また,上訴・非常救済手続についても概観する。
受講するのにあたって,まず概説書(例えば,安冨潔『刑事訴訟法講義』
〔第3版〕
(慶應義塾大学出
版会,2014 年)など)を精読しておくこと。
講義に出席するにあたっては教材のなかの基礎的な記述について充分な予習を済ませてことを求
める。
授業ではソクラテスメソッドによる双方授業を行う。また,講義後には,復習して疑問点の解消に
努めることが重要である。
刑事訴訟法の基本構造及び原理だけを学ぶことだけでなく,具体的な事例について問題解決能力を身
につけることができるように,裁判例や刑事実務における運用を学修し,刑事訴訟法を解釈適用して法
的問題に解決を与えることのできる基本的技能を習得することがこの講義の目標である。
学期末の定期試験(70%)と,平常点(授業期間中のレポートや質疑応答等)
(30%)とを総合して評
価する。
教科書として安冨潔『刑事訴訟法』
〔第2版〕
(三省堂,2013 年)を用いる。
参考文献として,講義においてとりあげた判例についての調査官解説(法曹会『最高裁判所判例解説
〔刑事篇〕
』
)を挙げておく。なお,適宜講義レジメを配布する。
基礎演習(刑法)
岡本 昌子
1年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 必修
本演習の目的は、刑法的思考を、模擬講義、双方向の質疑応答、レポートを通して学ぶことである。
本年度は、各人の理解の間違いを正すことに焦点を置きたいと考えている。
容
刑法総論の重要論点について、受講生に模擬講義をしてもらう。口頭で発表してもらうことで、理解
画 が正しいかを教員が確認する。次に、同論点を含む事例問題を皆で解き、知識のアウトプットを行う。
以上をワンセットとし、各セット終了後、同事例問題に対する答案を提出してもらい、教員が添削して
後日返却する。それを受けて、加筆修正版を追って提出してもらう予定である。
以上のような方法で、知識の定着を図りたいと考えている。
テーマとしては、不作為犯、錯誤、因果関係、正当防衛、共犯(複数回)を考えているが、初回に履
修生のニーズを聞き、履修生に資する内容の演習としたいと考えている。
履修上の注意
授業内容・授業計画で記したように、本演習では、
「模擬授業(レジュメも作成)
」
、
「答案」
、
「加筆修
正版」を提出してもらう(初回以外、原則、毎授業時)とともに、双方向・多方向で学習していく。従
って、学生の主体的な学習態度が要求される。
授業の到達目標
今後、刑事法の講義を受け、その内容を主体的に学び、理解を深めていくための基礎的知識と方法論
の修得が本演習の到達目標である。これらについて、未修者が修得すべき最低限レベルの修得を単位認
定(60 点)の基準とする。
評 価 方 法 1 講義期間中に提出してもらう「答案」と「加筆修正版」
(成績評価に占める割合は計 30%)
初回以外、原則、毎授業時、提出してもらう上記課題に対する評価。
提出が遅れた場合は減点対象となる。
2 定期試験期間中に実施するテスト(成績評価に占める割合は 70%)
出題趣旨および採点のポイントは、
「出題趣旨と講評」にて全科目共通の日程で公開する。
教
3 欠席や遅刻・早退は、履修要項の定めに従い、所定の減点を行う。
材 各自が使用している概説書を毎授業時、持参すること。
必要な参考文献は、適時教示する。
51
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑法演習Ⅰ
奥谷 千織
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義の目的は,刑法Ⅰ・刑法Ⅱで修得した基礎的・体系的知識を前提として,具体的な事案にこれ
をあてはめて,実体法規の解釈・運用を実践することにより,法曹に必要なスキルを涵養することであ
る。
具体的には,基本判例の正確な理解,刑事実体法の理解の深化,法規範適用能力,論理的思考力,新
たな事案に対する問題解決能力の向上を目指す。
容
TKC への掲示あるいは授業中の指示により,課題事例を事前に指定するので,受講生は,同事案に対
画 する起案を作成,提出した上で,演習に出席することとなる。
各回の演習において取り上げる主要テーマは,以下を予定しているが,以下の内容は,受講者や授業
進行に応じて変更する可能性がある。
第 1 回 ガイダンス
本演習の目的,到達目標,受講するにあたっての心構え等を説明する。
第2回 不作為犯論
第3回 因果関係論
第4回 故意犯論
第5回 早すぎた構成要件の実現
第6回 違法性論
第7回 未遂犯論
第8回 共犯論(1)
第9回 共犯論(2)
第 10 回 共犯論(3)
第 11 回 個人法益に対する罪(1)
第 12 回 個人法益に対する罪(2)
第 13 回 個人法益に対する罪(3)
第 14 回 社会法益に対する罪(1)
第 15 回 社会法益に対する罪(2)
履 修 上 の 注 意 本演習では,受講生は,十分な事前の準備をして授業に出席するという積極的な学習態度が要請される。
また,復習する努力も要請される。
授業の到達目標
具体的事例において,事実関係を分析して刑事法の問題点を発見し,解決への道筋を見出していく問
題発見・解決能力,これを表現するための高度な説得能力の修得を到達目標とする。
評 価 方 法 ・成績評価は,期末試験(筆記試験)70%,平常点(提出された起案等)30%として評価する。
・欠席や遅刻・早退は,履修要項の定めに従い,所定の減点を行う。
教
材 ・教科書は特に指定しない。各自適宜なものを利用されたい。
・各回で検討する事例は,事前に TKC 上で刑事あるいは授業時間内で指示をする。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
52
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑法演習Ⅱ
奥谷 千織
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本演習の目的は,修得済みの刑法の体系的知識を前提として,具体的な事例にこれを当てはめること
で,法曹に必要なスキルの更なる向上を目指すところにある。
具体的には,刑事実体法及び重要判例の理解の深化,事実認定能力,問題発見・解決能力,表現・説
得能力の向上を目指す。
容
TKC への掲示あるいは授業中の指示により,課題事例を事前に指定するので,受講生は,同事案に対
画
する起案を作成,提出した上で,演習に出席することとなる。
本演習では,国家法益に対する罪を取り上げるほか,過去の司法試験問題を題材として使用する。た
だし,以下の内容は,受講者や授業進行に応じて変更する可能性がある。
第1回 ガイダンス
本演習の進行方法や本演習を受講するにあたっての心構えなどを説明する。
第2回~第4回
国家法益に対する罪(公務執行妨害,犯人隠避・証拠隠滅,汚職)
第5回~第15回 司法試験過去問
本演習では,受講生は,十分な事前の準備をして授業に出席するという積極的な学習態度が要請され
る。
授業の到達目標
既に修得している刑法の理解を基に,具体的事例において,事実関係を分析して刑事法上の問題点を
発見し,自らの知識を駆使してこれを解決するための道筋を見出していく問題発見・解決能力,さらに
はこれを表現するための高度な説得能力の修得を到達目標とする。
評 価 方 法 ・成績評価は,期末試験(筆記試験)70%,平常点(提出された起案等)30%として評価する。
・欠席や遅刻・早退は,履修要項の定めに従い,所定の減点を行う。
教
材 ・教科書は特に指定しない。各自適宜のものを利用されたい。
・各回で検討する事例は,事前に TKC 上で掲示あるいは授業時間内で指示をする。
履修上の注意
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑事訴訟法演習
安冨 潔
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本科目は,講義科目である「刑事訴訟法Ⅰ・Ⅱ」を踏まえて具体的な事例について検討する演習科目
である。事例問題の予習課題をもとに,各回,課題に対するレポートを全受講者に準備してもらい,そ
れを前提に,問答形式で課題を検討する。これにより刑事訴訟法の領域における具体的な問題解決能力
を体得することが本科目の目的である。
容 第1回 ガイダンス
画
現行刑事訴訟法の基本構造への一般的理解の助けを示し,裁判例の読み方など,本科目を受講するに
当たっての心構えを説明する。
第2回 捜査⑴ 捜査の端緒
捜査の端緒である職務質問やそれに伴う所持品検査などの警察の活動について,その限界や捜査との
関係につき理解を深める。
第3回 捜査⑵ 逮捕・勾留
被疑者に対する第一段階の身柄拘束である逮捕とそれに引き続く身柄拘束である起訴前勾留につい
て,生じ得る諸問題を検討し,被疑者の身柄拘束に関する手続の理解を深める。
第4回 捜査⑶ 捜索,押収,検証,鑑定処分(その1)
物的証拠の収集・保全の主要な方法である捜索・押収・検証・鑑定処分に関する法律上の問題点につ
いて,具体的な事例に基づいて検討し,その理解を深める。
第5回 捜査⑷ 捜索,押収,検証,鑑定処分(その2)
第4回に引き続いて具体的な事例に基づいて検討し,新たな捜査手法も含め,その理解を深める。
第6回 捜査⑸ 取調べ,接見交通権等
取調べに絡む諸問題を検討するほか,弁護人依頼権・弁護人との接見交通権についても,これらの権
利の行使に伴い生ずる問題点についての検討を行い,その理解を深める。
第7回 起訴,訴因変更の可否・要否(その1)
検察官の訴追裁量や訴因制度など,公訴の提起に関わる諸問題について検討を加える。
第8回 訴因変更の可否・要否(その2)
第7回に引き続き,具体的事例の検討を通じて訴因制度の理解を深める。
第9回 証拠⑴ 総説
いわゆる証拠法のうち,総説部分として,厳格な証明と自由な証明の問題,証拠能力一般の問題,自
由心証主義に関する問題及び証明の程度・必要と挙証責任について取り扱い,その理解を深める。
第10回 証拠⑵ 伝聞証拠(その1)
伝聞証拠の意義,原則として伝聞証拠に証拠能力がない理由,伝聞・非伝聞の区別,伝聞例外が認め
られる場合とその理由などについて,具体的な事例を用いて検討し,その理解を深める。
第11回 証拠⑶ 伝聞証拠(その2)
第10回に引き続いて,主に伝聞例外について具体的な事例を用いて検討し,その理解を深める。
53
第12回 証拠⑷ 排除法則
違法に収集された証拠に証拠能力が認められない理由及びその範囲について,具体的な事例を用いて
検討し,違法収集証拠排除法則の理解を深める。
第13回 証拠⑸ 自白
自白法則,補強法則について,具体的な事例に基づいて検討し,その理解を深めるとともに,排除法
則との関係についても検討を加える。
第14回 証拠⑹ 共同被告人の供述・共犯者の供述
共同被告人・共犯者の供述の証拠能力,黙秘権・反対尋問権との関係等について,具体的事例を用い
て検討し,その理解を深める。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第15回 公判の裁判
一事不再理効や上訴理由等について,具体的な事例を用いて検討し,その理解を深める。
本科目は2年次秋学期配当の必修科目である。本科目は主として刑事訴訟法の領域対象とした演習科
目であるが,受講者は,刑事訴訟法についてはもちろん,刑法についても基本的な理解を有しているこ
とが必要である。
各回,事前に検討課題や参考資料を指示するので,資料を熟読し,課題について十分な検討を行って
レポートを作成のうえ授業に参加することを求める。
すでに修得した刑事訴訟法の理解をもとに,主に刑事訴訟法上の具体的な事案について,事実関係を
分析して刑事訴訟法上の問題点を解決するために説得的な議論を展開する高度な能力を身につけるこ
とを目標とする。
成績評価は,平常点(各回の授業における参加状況,提出されたレポート等)3割,定期試験の結果
7割を総合して評価する。
欠席は1回につき1点,遅刻は1回につき0.5点を平常点から差し引く。
レポートの期限を超えた提出は1回につき0.5点を平常点から差し引く。
教科書は特に指定しないが,安冨潔『刑事訴訟法』
〔第2版〕
(三省堂)を参考文献としてあげておく。
設例等は事前に配布ないし掲示する。
各回の個別の参考文献については,別途指示する。
刑事法総合演習
奥谷 千織
3年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
本演習は,刑事実体法及び刑事手続法の基本的理解ができていることを前提に,具体的事例にそれら
を適用して問題点の検討を行うことで,的確な事案分析と適用法令の検討,必要な事実の抽出と適切な
法的評価,要件への具体的あてはめなど,法曹として不可欠な能力である問題解決能力を向上させるこ
とを目的とする。
上記目的達成のため,本演習では,刑事実体法及び刑事手続法双方の問題点を含む総合的な事案を用
いて,実務的観点も含めた検討を行うこととし,理論と実務の融合及び刑事法の総合的理解を深める。
また,解決過程を口頭及び文章において示させることにより,表現能力・論述能力の更なる向上も目
指す。
容
本演習では,まず,実体法上の問題が主となる事案及び手続法上の問題が主となる事案の検討を行っ
画 た後,第4回以降において,両者にまたがる複合的事案を扱うこととする。
ただし,以下の計画内容は,授業進行に応じて変更する可能性がある。
第1回 ガイダンス
本演習の進行方法や本演習を受講するにあたっての心構えなどを説明する。
第2回 刑法
刑法総論・各論における重要論点・主要犯罪を含む具体的事例を用い,各論点等に関する理
解及び判例理論について理解を深化させる。
第3回 刑事訴訟法
刑事訴訟法における重要論点を含む具体的事例を用い,各論点に関する理解を深化させる。
第4回・第5回 刑法・刑事訴訟法(総合その1)
複合的事案を用いて,生の事実から真に罰すべきは誰か,いかなる犯罪が成立するかなどの
事実認定を行うとともに,
これを公判において如何に立証するか,その方法及び問題点等の検討を行うことで,実体
法・手続法の総合的理解を深化させる。
第6回・第7回 刑法・刑事訴訟法(総合その2)
第4回・第5回とは異なる事例(共犯事例)を用いて,上記同様,総合的理解を深化させる。
54
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第8回 刑法・刑事訴訟法(総合その3)
第4回~第7回までとは異なる事例(否認事例)を用いて,上記同様,総合的理解を深化さ
せる。
授業は,双方向形式で行うことを基本とする。
検討事項や起案内容を事前に指示するので,受講生は,演習に先立ち,関連する判例や資料等を熟読
し、課題等を十分に検討していることが要求される。
また,当然であるが,復習も十分行われることが当然要求される。
なお,理解の深化度合いをみるため,事後のレポート課題を課す場合もある。
既に修得している刑事法の理解を基に,具体的事例において,事実関係を分析して刑事法上の問題点
を発見し,自らの知識を駆使してこれを解決するための道筋を見出していく問題発見・解決能力,さら
にはこれを表現するための高度な説得能力の修得を到達目標とする。
・成績評価は,期末試験(筆記試験)70%,平常点(提出された起案等)30%として評価する。
・欠席や遅刻・早退は,履修要項の定めに従い,所定の減点を行う。
・教科書は特に指定しない。各自適宜のものを利用されたい。
・参考文献等については,別途指示する。
・各回で検討する事例は,事前に配布又は掲示する。
法曹倫理(四宮クラス)
四宮 章夫
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は、法曹に普遍的に求められる責任一般につき自覚を促すとともに、21世紀の我が国の法曹
に求められている社会的責任についても学習し、これを果たすために必要な倫理観の涵養と、法曹とし
ての個の確立とを目指す。
容
下記に示した計画に沿って、法曹倫理序説(法曹とは何か)
、弁護士職務基本規定と弁護士懲戒手続、
画 裁判官倫理、検察官倫理について考える。
第1~3回 法曹倫理序説
法の生成、発展、特に、近代市民社会の成立と法の支配の確立、現代社会において法の果たす機能等
について考える。その上で、法曹の役割と責任、裁判官、弁護士、検察官の職務内容と理想像について
も概観する。
また、緒方洪庵の扶氏医戒の略その他の文献資料を用いて、プロフェッションの意義について考え、
次いで、平成13年6月12日の司法制度改革審議会の意見書の内容について学習する。
第4回~10回 弁護士倫理
弁護士法と弁護士懲戒制度について学習した上で、弁護士職務基本規程の内容について順次学習す
る。
先ず、弁護士職務基本規程第1章「基本倫理」について学習し、とりわけ、①弁護士の独立性と、②
真実義務、③廉潔性について考える。
次いで、弁護士職務基本規程第2章「一般的規律」について学習し、①広告問題と、②非弁護士との
関係のあり方、③事務所業務処理体制の整備について、具体的に考えてみる。
弁護士職務基本規程第3章「依頼者との関係における規律」については、①受任と職務遂行の在り方、
②利益相反事件の受任禁止、③コンフリクトルール、④報酬問題を中心に考える。
弁護士職務基本規程第4章「刑事弁護における規律」については、具体的な事例を示して、刑事弁護の
重要性を学ぶ。
弁護士職務基本規程第5章「組織内弁護士における規律」
、第6章「事件の相手方との関係における
規律」
、第7章「共同事務所における規律」
、第8章「弁護士法人における規律」
、第9章「他の弁護士
との関係における規律」
、第10章「裁判の関係における規律」
、第11章「弁護士会との関係における
規律」
、第12章「官公署との関係における規律」についても、順次学習する。
第 11・12 回 裁判官倫理
裁判官の独立性(身分保障)と裁判官の職務上の良心について考えた上で、裁判官の職務遂行上の倫
理問題について学習する。
第 13・14 回 検察官倫理
検察官の職務遂行上の倫理問題全般について学習する。
第15回 授業の総括
1年の授業を振り返って、法曹倫理に関する各自の意見を発表する。
履修上の注意
本講義では、毎回の講義時に先立って講義内容を示すレジュメを配布する。但し、TKCに掲載する
ので、各自プリントアウトし、授業時に持参するものとし、授業中には配布しない。講義形式は、通常
の講義方式と対話方式とを併用する。レポートの提出を求めることもある。
本講義を通じて、単に知識を習得するにとどまらず、プロフェッションとしての法曹に求められて
いる、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、社会や人間関係に対する洞察
55
力、人権感覚、先端的法分野その他に対する広い視野等を身に付けて貰いたい。
法曹実務家にふさわしい倫理観を身につける。
そうした倫理観を身につけたと認めた場合には、60 点以上の点数を与える。
さらに、法曹の職責等に対する洞察の深さと、真摯な内省が認められる場合には 80 点以上を与える
場合もある。
なお、
関係者の人生と交錯するにふさわしい倫理観を身に付けられなかったと判断される場合には 59
点以下とする。
法
平常点 30 点前後、定期試験 70 点前後の割合で成績をつける。レポートをもって定期試験に替えるこ
ともある。平常点は、基本理解、問題発見、問題解決の程度及び姿勢を、授業中の議論に基づき評価す
る。小レポートを提出させることもある。欠席日数に応じて減点する。
定期試験は、学期を通じた最終的な理解の到達点を評価する。
材
自由と正義 56 巻臨時増刊号「解説『弁護士職務基本規程』
」
(2005 年 5 月)
塚原他編「プロブレムブック法曹の倫理と責任(上)
」
(2004 年 1 月)
「同(下)
」
(2004 年 5 月)
その他適宜資料をレジュメの中に引用するので、興味ある人は、原点にあたることを奨励する。
研究室にある書籍は喜んで貸与する。
授業の到達目標
評
価
方
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
法曹倫理(田中クラス)
田中 彰寿
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
最近の社会の急激な変化にあわせて、司法界も急激に変化し、また変革を迫られた。そうした中で国
民に最も身近である弁護士も新たな社会への対応を迫られ、司法改革を行ってきた。しかしながら、司
法改革を巡っては必ずしも意見の一致をみることなく今日では対立はより増幅してきている。
つまり、弁護士の本来の業務は人権擁護にこそあり、業務問題などは本来弁護士の主要な課題ではな
い、他方、人権擁護を基礎づけるためにも、弁護士も他の職業と同じようにサービス業種の一環として
業務問題を考えるべきであるという。もとよりいずれも主なる置き所と価値観の違いではあるが、潮流
としてはっきりと存在するともいえる。むしろ最近では司法改革の成果を巡っていっそう対立が激しく
なっているともいえる。
他方、弁護士会の中のこうした争いとは別に、国民から弁護士を見る目は一段と厳しくなっており、
旧態依然とした業務処理を行う抵抗派的な業界として非難の対象にもなる。
しかしながら、国民とのスタンスの中で考えれば法曹、特に弁護士が求められている倫理は市民のた
めにはたらくという意味で変わらないものと思われる。
そうした意味で、法曹になる前から、法曹としての心構えを持つことはきわめて重要である。
とりわけ、すでに述べたように国民の目線が厳しくなっている昨今においては、国民の期待に答える
ためにも倫理意識は重要である。もっとも依頼者との関係で言えば、依頼者目線にたち、依頼者のため
につくすこと、そしてそのためにはどのようなことに注意しなければならないか、時間を守り、わかり
やすく説明し、依頼者の決断を援助し、適格適正に法律事務をしょりすることにほかならず、一般的に
他の一般の業務と変わりはない。
そうした中で、法曹の倫理を考えるためにはまず、今後の弁護士の業務にはどのようなものがあるの
か、依頼者との関係は一般的にどのような事象を有するのかを私の体験を交えながら説明し、そうした
なかで市民との関係に於いて弁護士がいかに有らねばならないかを研究する。
参考資料としては主に、
「解説弁護士職務基本規定」
、弁護士白書、その他、私が適宜日弁連大会、シ
ンポジウムなどに出席して得た情報などを提供して素材にあげるとともに、ひまわり基金法律事務所の
弁護士、日本司法支援センター京都事務所の役員クラスの弁護士、並びに、新聞関係者、医療界など法
曹界の外部の専門家などの外部講師を招聘し素材を提供してもらうつもりである。
容
弁護士活動とその実態を通して、弁護士がいかにあるべきかを考える。
画
(1)法律の仕組み並びに、法的思考能力の高め方など
法律の全体的な理解は大学院全体で行うことであるが、法曹倫理、とりわけ弁護士倫理を学ぶ上での
弁護士法の仕組みやその位置づけの全体を理解し、弁護士としての必要な法的な思考能力の高め方にも
及ぶ。
(2)弁護士会の仕組み並びに苦情処理や処分の実態について
法曹倫理が必要とされた理由は、最近国民の目線が高くなってきたということとともに、懲戒処分な
どの増加である。その実態を理解する。
(3)これからの弁護士の歩む道
弁護士の 2 大潮流の流れと今後の業務を鳥瞰し、弁護士倫理の理解の基礎とする。
(4)
(5)司法制度改革、とりわけ弁護士制度の改革について
そうしたなかで、10 年以上前から行われた制度改革の意義付けを理解し、弁護士職務基本規定第 2
章、弁護士の一般規律、弁護士の独立と、弁護士としてあるべき姿、他の職業人との違いなどについて
理解する。
56
(6)弁護士と広告問題について
過去に大きな対立した広告問題につき、わたしの体験を説明しながら弁護士と広告を考える。
(7)依頼者との関係における規律 1 真実義務、廉潔性
弁護士にとってもっとも重要である依頼者との距離感の置き方などについて考える。
※講義の進展具合により(7)
(9)あたりで小テストをおこなう。
(8)外部講師「報道関係者からみた弁護士」
弁護士ともっとも身近な存在である現役の新聞社編集長から彼らの目で見た弁護士像につき意見を
聞く。
(9)依頼者との関係における規律 2 報酬
もっとも重要である依頼者等から受領する報酬を考え、これがいかに弁護士との間で紛争を起こしや
すいかを考える。
(10)依頼者との関係における規律 3 利益相反行為について
多くの懲戒処分例が利益相反行為である。どのような部分に注意するべきかを考える。
(11)外部講師「法テラス弁護士に赴任して」外部講師「日本司法支援センター(法テラス)の業務に
ついて」
今、弁護士制度で重要な位置づけをもつ法テラスについてその実態を聞く。
(12)外部講師「医療関係と弁護士」
医療は弁護士ともっとも類似した専門職業である。彼らからの専門家意識を伺い、弁護士としての業
務に役立てる。
(13)依頼者との関係における規律 4 説明義務について
特に最近は、自己決定権から適切な説明を要求されている。その説明義務について考える。
(14)弁護士にとってのクレーム処理
弁護士の仕事そのものがクレーム処理を生業とする訳であるが、他方、弁護士も山ほどのクレームに
あわざるをえない。その対応について研究する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
(15)弁護士の資質とは何か(受講生全員に考え方をのべてもらう)
最後に、我々が弁護士としてどのようなことに注意して、また努力し、どのような姿勢で臨まなけれ
ばならないかについて全員で話し合う。
適宜意見を述べてもらうが資料はあらかじめ用意するので特に学生が用意する必要はない。ただ、法
律関係の出来事、情報を日頃から広く見聞していただきたい。私もできるだけ昨今の弁護士会を巡る状
況を蒐集し、皆さんにお知らせして、そうした事実の上に立ち法曹倫理を説くつもりである。受講生に
も日頃ニュースや雑誌などから、今司法界に関わることで何が問題となっているかを幅広く見聞してお
いてほしい。
その上で、私の説明の途中に皆さんの意見を適宜聞きながら進めたいと思います。
弁護士になれば依頼者が何を求め、その依頼者の求めをどのように実現するか、そして具体的に依頼
者との関係をどのようにとるかということ、かつ私たちがそのためにいかに苦労しているかを理解した
上で法曹としての使命・責任の自覚し、法曹としての倫理感を修得します。とりわけ、依頼者とのトラ
ブルの大半を占める、報酬、事件の見込みについての説明、説明の仕方などがいかに重要であるかを理
解します。
こうした理解は専門家としての弁護士が唯我独尊に陥ることなく、職務を遂行する上で最低必要な心
がけである。
また、法曹にとって最も重要な問題発見解決能力をいかにすれば取得できるか日頃からの法的知識、
特に情報調査、事実調査等がいかに重要であるか、その上で、弁護士であれば依頼者のことばの中から
真実を見抜く事実把握能力をいかに涵養するか、依頼者にいかに説明するかという表現・説得能力やコ
ミュニケーション能力がいかに重要であるかを理解します。
定期試験(論述式)70%、平常点(小テスト)30%の割合で総合評価する。
欠席 1 回につきマイナス 1 点、遅刻・早退 1 回につきマイナス 0.5 点とします。
○自由と正義 52 特集「司法制度改革審議会最終意見書をふまえて」
、同 56「解説弁護士職務基本規定」
※司法制度改革のいきさつを理解する。
○「解説弁護士職務基本規定」第 2 版 ※講義の最も基本的文献である各条の逐条解説がなされている。
適宜参考にする。
○日本弁護士連合会人権擁護大会シンポ資料 その他、弁護士会の大会シンポの資料を適宜提供しま
す。
※これらは弁護士会の最前線で弁護士達がいかに苦労し、いかに議論し、社会正義を実現していこうと
しているかの実態を把握する参考にします。私が適宜大会やシンポジウムに出席し資料と情報の入手に
つとめ、皆さんに提供します。
○弁護士白書
57
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民事訴訟実務の基礎
四宮 章夫
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
本講義は,民事裁判における当事者の主張・立証活動,裁判所の争点整理等に関する訴訟指揮,事実
認定及び裁判等が,民事訴訟法の基礎理論を基盤とし,かつ,民事実体法の要件事実を軸に行われると
いうことを理解させることを目的とする。
容
講義は,先ず,総論的事項として,民事訴訟の第一審手続の進行と裁判所による訴訟指揮の実際につ
画 いて学習し(民事訴訟の第一審手続,民事訴訟の管理運営)
,次に,要件事実の整理についての基本的
理解に務めた上で,当事者の言い分や紛争の概要等からなる長文の事例問題を教材として,重要な要素
を抽出して事実整理を行い,訴訟進行上の問題点,事実認定上の問題点などを整理することを学習する。
第1回~5回 民事訴訟構造論・民事訴訟第一審手続の解説
各自がこれまで身につけてきた民法その他の実体法や,民事訴訟法を中心とする手続法の知識を前
提として,民事訴訟の構造を説明し,実際の民事訴訟はどのように運用されるのかを体得できるように
する。
先ず,①民事訴訟の構造を説明した上で,②その理解を前提として,具体的な民事訴訟第一審手続
の流れを,ビデオ教材によって説明し,③心証形成過程についても学習し,併せて,法曹としての使命,
責任の自覚を促すとともに,法廷における法曹の倫理問題に言及する。
なお,第5回の講義の際に,実体法及び手続法の基礎知識の有無,民事訴訟の基本構造と第一審手
続についての理解の正確性,要件事実論の基礎の理解の程度等を,受講生毎に把握し,その後の授業の
参考とするために,基礎学力確認テストを実施することがある。
ただし,授業計画を立てる参考とするために実施するものであるから,期末評価の資料とはしない。
第6回~10回 要件事実論入門
民事訴訟実務に携わるには,要件事実の理解が不可欠であるから,その代表的なものを題材とする
課題を予め作成,配布した上で,説明する。併せて,法的知識の深化と,事実調査,法的分析の能力を
高める。
なお,その際,基礎学力確認テストの結果に基づき,それぞれの受講生に不足している知識の補充
を図ると共に,理解度の進んだ者については知識の一層の深化を図る。
第11回 中間テスト
要件事実の学習の結果を確認する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
58
価
方
法
材
第12回~15回
司法研修所編の模擬記録「事実認定教材-保証債務履行請求事件-」
(法曹会)を利用して、これ
までに体得した民事訴訟構造論や具体的な民事訴訟第一審手続の流れ,要件事実論を踏まえ,事前にレ
ポートを提出させた上で,演習形式で授業を進め,知識の定着を図る。併せて,創造的,批判的検討能
力を高め,法的議論,表現,説得能力を磨き,コミュニケーション能力を養う。
他に,比較的長文の判例を活用し,また,自主開発教材等も使用することもある。
講師が一方的に講義するのではなく,講師から受講生に対する質問や,受講生相互の討論をベースと
して講義を進めるので,予習に力を入れてほしい。特に,予め課題を与えられた場合には,自ら論点を
把握し,自分なりにその論点を検討した上で,その検討結果を持って講義に臨み,積極的に議論に参加
してもらいたい。
なお,本科目においても,実際の訴訟手続に対する理解を進め、起案能力の習得をも図るものであ
るが,より深く民事訴訟実務を理解するためには,口頭弁論期日,証拠調期日などにおける裁判官の訴
訟指揮の在り方や訴訟当事者の対応,さらには、裁判所の事実認定のための心証形成過程などを実践的
に学習していくことが重要である。
民事訴訟の基本構造と第一審手続についての理解を深めることと,要件事実論の基本を理解し,簡単
な題材を与えられた場合に,的確に問題点を把握し,これを法的に整理した上で,簡潔に説明できる能
力を身に付けることを目標とする。
したがって,民事訴訟実務に従事するに当たり,最低限必要とされる基礎知識を習得することが単位
認定(60点)の基準となる。
その上で,さらに,当事者の訴訟代理人として攻撃防御方法を構築する能力や,裁判官としてこれを整
理する能力を涵養することを上位の目標とすする。
1 期末試験(配点70%)
短答式問題と,論文式問題とを含む。期末試験を通じて,制度の趣旨や,条文解釈を含む授業全体の
体系的理解度,論理的思考力,文章表現能力等を判定する。
2 平常点(30%)
平常点は,中間テストを実施するほか,基本理解,問題発見,問題解決の程度及び姿勢を,授業中の
議論にも基づいて評価する。また,予習時に課題に関するレポートを作成した者には,平常点を付ける
際に考慮する。欠席日数に応じて減点する。
【要件事実の基本的解説書】
司法研修所編「四訂民事訴訟第一審手続の解説-事件記録に基づいて-」法曹会
司法研修所編「改訂紛争類型別の要件事実」法曹会
司法研修所編「新問題研究要件事実」法曹会
【民事訴訟の基本的理解のための書籍】
司法研修所編「10訂民事判決起案の手引」法曹会
民事訴訟法判例百選第5版(2015 年)
司法研修所編「事実認定教材-保証債務履行請求事件-」法曹会
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
刑事訴訟実務の基礎
奥谷 千織
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
⑴ 講義の内容
本科目は,刑事実体法・手続法の理論的理解をもとに,実際の事件記録に準拠した記録教材を使
用し,刑事事件の各段階において発生する
問題点を自ら発見・検討した上で,検察官,弁護人,裁判官のそれぞれの立場から,問題点をど
のように主張し,あるいは解決すべきかを
学ぶものである。
また,起訴状,冒頭陳述要旨,論告要旨,判決書など,法律文書の作成方法についても指導し,
実際に起案を行わせ,講評する。
授業にあたっては,事前に記録教材の必要部分を配付し,検討すべき事項あるいは起案内容を指
示する。
⑵ 講義の目的
刑事手続の流れを理解することはもちろん,実務家として必要とされる問題解決能力,事実認定
能力を身に付けさせるほか,
法的議論・表現・説得能力も涵養することを目的とする。
容 ただし,以下の計画内容は,授業進行に応じて変更する場合がある。
画
第1回 ガイダンス
実務基礎科目を学ぶに当たっての心構えなどを説明する。
また,刑事事件記録の見方等を学ぶ。
第2回~第5回 窃盗事件
逮捕手続の適法性,勾留の要件,勾留後の捜査方針,被疑者・参考人の取調べをめぐる諸問
題,捜査結果を踏まえた事件処理方針の策定,
起訴状の記載内容などについて検討する。
第5回~第8回 恐喝未遂等事件
供述の信用性判断,共謀の有無のほか,法廷での活動や主張のあり方を学ぶ。
第9回~第11回 強盗致傷等事件
事件記録から事実認定上・手続上の問題点を発見し,その解決のためにどのような活動をす
ればよいかを検討するとともに,
公判前整理手続で検察官・弁護人が行うべき活動内容につき検討する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第12回~15回 殺人未遂等事件
証拠開示,証人尋問の手法,情況証拠に基づく事実認定の考え方等を学ぶ。
本科目は,3年次春学期配当の必修科目である。本科目履修の前提として,刑事実体法・手続法の理
論的理解が必要である。
事前に記録等の教材を配付し,検討事項や起案内容を指示するので,検討・起案等の課題を行っている
ことを前提に授業を行う。
また,授業においては,指名して意見の発表を求めるので,積極的な参加が期待される。
実務家として必要とされる刑事実体法上及び手続法上の主要な実践的知識の修得,刑事手続の様々な
場面で生起する諸問題に対処するための
基本的な問題解決能力及び事実認定能力等の修得を到達目標とする。
・成績評価は,平常点(提出された起案等の評価)3割,定期試験の結果7割を総合して評価する。
・欠席・遅刻については,履修要項の定めに従い,所定の減点を行う。
⑴ 教材
法務省法務総合研究所作成の法科大学院用教材を使用する。
記録教材は,必要に応じて,配付する。
⑵ 参考文献
必要に応じて指示する。
59
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
法情報学
渡邉 泰彦
1年次
学
期 春学期集中
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
本講義では、法情報の収集に関する基本スキルを修得することを目的とします。すべての法解釈は、
既存の法情報を入手することから始まります。膨大な蓄積のなかから必要とする情報にいかに効率よく
到達するかは、直接的には法科大学院における講義・演習の履修やレポート作成にとって重要ですが、
本来的には法曹として法実務に携わるときにこそ有効かつ必須のスキルです(本講義が、実務基礎科目
に分類されているのはそのためです)
。さまざまな法律相談に適切な助言をし、その解決に向けて適切
な法の適用を図るためには、法情報の適切な活用が不可欠なのです。法情報の基本は、法令、判決、文
献(学説など)であり、それぞれ紙媒体(図書・雑誌など)と電子メディアがあり、それぞれが適合す
る収集目的や効率的な収集方法は異なっています。本講義の目的は、法律学を学ぶうえで必要となる情
報を探しだし、理解するために必要なスキルを初学者が身につけることにあります。それとともに、法
律学の学習にあたって必要となる基本的な知識を習得することも目的としています。
容 集中講義で行う。
画 第 1 回、2 回 法令
法情報の根源である法律の検索方法を学習します。また,法律の条文の構造、条文の読み方、法令中
の基本用語を確認します。学習用六法ないし中型六法、法務省の法令データベースを利用します。
第 3 回〜5 回 判例
判例集の種類、収録分野、意義を概観し、それぞれの利用方法を学習します。とりあげるのは公式判
例集、民間の判例集、各分野別の判例集です。
最高裁判所判例集には、当該事件および法解釈について多くの情報が含まれています。登載されてい
る判決を素材として、判決の読み方の基本を身につけます。さらに、判例解説や判例評釈は、判例を検
索する媒体となり、また判例の意義を知る手がかりとなります。最高裁判所判例解説、主要な民間雑誌、
判例百選等の解説集をとりあげます。
第 6、7 回文献
文献には様々な種類があります。図書(体系書、概説書、注釈書、講座など)と定期刊行物(大学紀
要、法律雑誌など)の主な種類と特徴について学習します。
文献の網羅的検索は,電子メディアだけでなく紙媒体でも可能です。本学で利用可能な、代表的な文
献検索データベースをとりあげます。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第 8 回 条文、判例、文献の連携した読み方
これまでに学習した条文、判例、文献をもちいた情報の収集、連携を扱います。実定法科目の授業が
始まってから、5 月 GW 後に実施する予定です。日程は、TKC で知らせます。
法律学を学ぶうえで必要となる基本的なスキルを身につけることを内容に含んでいるため、未修者
は、受講するようにしてください。
本授業は、1 年次春学期開始時の集中講義としておこなわれます。この講義は、ただ漫然と履修して
も意味がありません。この講義で収集スキルを着実に身につけたかどうかは、法科大学院の講義・演習
における履修を自ら充実したものにできるかどうかに直結しますので、集中して取り組んで下さい。
なお、授業中に行う課題も評価の対象となるため、授業の出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさな
い場合には、単位認定の資格を失います。その際、30 分を越える遅刻及び60分経過前の早退は欠席と
して扱われますし、30 分以内の遅刻および早退も減点の対象となります。
必要とする法情報の種類と収集目的に応じて、法情報の媒体を適切に選択し、目指す情報に効率的か
つ迅速に到達できるスキルを修得することが本授業の目標です。このスキルは、次の各要素に分けるこ
とができます。
①基本的な法情報の種類と意義の理解
②基本的な法情報の名称と所在に関する知識
③実際に必要な法情報を入手する技術
④入手した法情報を分析し、利用する能力
本科目の単位認定の目安(60 点)は、上記①~③の要素をおおよそ達成したうえで、④の能力の基礎
を身に付け、今後の継続的学習によるさらなる向上が確実に期待できるかどうかという点に置かれてい
ます。
より具体的には、1)条文を理解し、2)必要な判例を検索して内容を理解する、3)基本書の内容を、条
文、判例などを参照しながら理解する、4)自学自習を正しい方向で行うことができるスキルを身につけ
ることを目標とします。
講義中の課題、レポートで評価する。
必要な教材は各回、用意します。参考書としては、以下の書籍があります。いずれも、法情報学の授
業のみならず、今後の法科大学院における法情報収集に際して継続的に役立つものです。
・道垣内弘人『プレップ 法学を学ぶ前に』 弘文堂 (2010)
参考文献
60
・法制執務用語研究会『条文の読み方』 有斐閣 (2012)
条文の読み方、用語を丁寧に解説している。法律の初学者を対象にしている。
・いしかわまりこ・村井のり子・藤井康子著『リーガル・リサーチ(第 4 版)
』
(日本評論社、2012 年)
法情報検索のエキスパートにより書かれた最新の解説書。これを読めば、現在の法情報検索のすべて
が分かると言っても過言ではない。法情報学の受講前にあらかじめ目を通しておかれることを推奨す
る。
・西野喜一著『法律文献学入門』
(成文堂、2002 年)
法令、判例、文献の基礎知識から調べ方までを網羅的に対象とする優れたガイドブック。
・中野次雄編『判例とその読み方〔改訂版〕
』
(有斐閣、2002 年)
判例の意義及び効力からはじまり、探し方や読み方をもわかりやすく解説する判例についての総合解
説書。憲法判例、行政判例、民・商事判例、刑事判例、労働判例のそれぞれの分野の判例の読み方も付
されている。
・京都産業大学図書館『文献・情報の探し方』
(毎年度改訂、図書館より配布。図書館実習の際に配布
予定)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
法文書基礎
田中 彰寿
1年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
法律事務の処理はその多くが文書によってなされる。たとえば民事事件においては契約書の作成、相
手方への通知文書の作成、さらに訴訟を提起する場合には訴状、答弁書、準備書面の作成、その結果と
しての和解調書の作成や判決書の作成など、これらの作成の出来不出来によって裁判関係者への説得力
にも違いが出るし、訴訟の帰趨にも影響を及ぼす。また文言表現によって既判力の範囲や執行力にも影
響を及ぼす。そのためこれらの文書はわかりやすく作成することも必要であるが、5W1Hによって事
実をきちんとまとめ、法律の用語も適格に駆使し作成しなければ成らない。
刑事事件においてもことは同じである。刑事裁判実務においては検察官が起訴状において公訴事実
と訴因を適格に作成し、冒頭陳述書を作成する。証拠調べ終了後においては検察官が論告書を、弁護人
が弁論要旨を作成する。大事件においては数万語にも及ぶ文書が作成される。したがって、刑事事件に
おいてもこうした文書の適否は結論に大きな影響を及ぼす。
法律関係においてはこうした文書の重要性を認識し具体的な資料にしたがって実際に作成すること
が重要といえる。そうした実務家としての基礎を習得することを目的とする。
容
民事.家事関係 7回
画
ある具体的な事例につき、契約書作成、通告書作成、その後の訴訟関係文書の作成を行う。
①法律関係文書の作成の基本
②契約書の作成の意味合いと注意点
③通告書の作成後日の証拠文書としての意味合い、
④訴状の作成
⑤答弁書の作成
⑥準備書面の作成
⑦判決書主文の作成並びに和解調書の作成
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
刑事関係1回
ある具体的な事例につき、起訴状の作成を行う、
⑧起訴状の作成
具体的に作成してみることが重要です。作成してもらった文書を添削してお返しするようにします。
それによって、民法の条文に「人」としか記載されていなものが、具体的な名前や性別、年齢をもった
具体的な人になることを理解してください。既判力が主文にしか及ばないということを自分で主文を書
いてみて理解してください。また和解調書には主文に相当することだけではなく、どのような付属事項
が必要なのかも理解してください。そうした上で最初の契約書の作成にどのような条項を必要としたの
かも理解してください。
日頃ならっている条文が具体的な事件でどのように適用されているのかを理解するようにしてくだ
さい。
日頃から法律文書の作成になれ、一人でもこれらの文書の作成ができるようにします。そのため、必
要に応じて先例集を参考にしたりしながら検討していくと、観念的に勉強していて理解のできなかった
法律構造や用語が体でわかるようになります。そうすれば条文の解釈よりいっそう理解が深まりまりま
す。そうした深まりによって条文としてしか理解してこなかった法律に具体的な肉付けができます。そ
の上で条文の研究をすればより深く法律解釈学の勉強ができることになることを目標にします。
定期試験(文書作成)70%、平常点(毎回作成する法文書)30%の割合で評価する。欠席1回に
つきマイナス1点、遅刻早退1回につきマイナス0.5点とします。
特に指定しません。
講 義 科 目 名 民事模擬裁判
担 当 者 名 石井 教文
配 当 学 年 3年次
学
期 春学期
61
単
講
義
位
目
授
授
業
業
内
計
数 1単位
必 修 ・ 選 択 必修
的
訴訟代理人役の受講者は、生の社会的事実から訴訟物の構成やそれに関する攻撃防御方法を検討した
上、手続法のルールに従って主張・立証活動を行うことを目標とする。また、裁判官役の受講者は、訴
訟手続を適法・効率的に運営して争点を整理した上、適切な事実認定、法的判断を行うことを目標に訴
訟運営を行う。
こうした諸活動を通じ、受講者は、それまでに学習している民事手続法や実体法(要件事実)の知
識を整理、確認し、法律関係文書(訴状、答弁書、準備書面、判決書等)の起案能力や尋問技術の重要
性を体験して貰いたい。時間が許せば、具体的な事件との関係で法曹倫理の問題、紛争解決のあり方を
考えることも講義の目的とする。
容 第1回(ガイダンス)
画 ●当日の課題
ガイダンス当日は、事件資料を配付し、事案の概要を説明した上、原・被告訴訟代理人、裁判官等の配
役を決める。次回以降の開講日程についても,この日に決定する。
●次回までの課題
原告訴訟代理人役は、配布された事件資料から訴状を完成させて必要な書証及び証拠説明書とともに第
2回講義の1週間前までに受講者全員と教員にメールで配信する。裁判官は訴状審査をする。
第2回(訴えの提起)
●当日の課題
裁判官役は、訴状審査の結果を発表し、受講者全員で議論する。議論の結果を踏まえ、第2回講義にお
いて、裁判官役は、必要があれば、原告に対して補正命令、求釈明等の必要な措置をとる。
●次回までの課題
被告訴訟代理人役は、訴状等をもとに被告役に事情聴取を行い、第3回講義の前々日までに答弁書(必
要があれば、求釈明申立書、反訴状等も)を完成させて、受講者全員と教員にメールで配信する。
第3回 第1回口頭弁論期日
●当日の課題
裁判官役は第1回口頭弁論期日を主宰し、当事者双方は期日における訴訟行為を行う。被告訴訟代理人
役は答弁書起案に際して検討した問題点を発表し、受講者全員で議論する。また、裁判官役の訴訟指揮
等について、全員で論評・議論する。
●次回までの課題
訴状、答弁書等を検討し、弁論準備手続の準備を行う。
第4回 第1回弁論準備手続
●当日の課題
裁判官役、原・被告訴訟代理人役が争点整理手続を実演する。
●次回までの課題
必要に応じ、原・被告訴訟代理人役は、準備書面(場合によっては、訴えの変更申立書等)及び証拠説
明書や証拠調べの申立書を準備し、第5回講義の前々日までに受講者全員及び教員にメールで配信す
る。裁判官役は、争点整理案を完成させ、第5回講義の当日までに受講者全員と教員にメールで配信す
る。
第5回 第 2 回弁論準備手続
●当日の課題
裁判官役、原・被告訴訟代理人役は、引き続いて争点整理手続を実演する。
原・被告訴訟代理人役は、裁判所の作成した争点整理案について意見を述べ、必要があれば主張を補充
する。裁判官役は、争点を確定させた上、申出のあった人証の採否及び尋問の順序や時間について決定
し、争点整理手続を終結する。
●次回までの課題
原被告訴訟代理人役は人証調べの準備を行う。
第6回 第2回口頭弁論期日
●当日の課題
裁判官役及び原・被告訴訟代理人役は、人証尋問を実演する。
●次回までの課題
原被告訴訟代理人役は人証調べの準備を行う。
第7回 第3回口頭弁論期日
●当日の課題
裁判官役及び原・被告訴訟代理人役は、人証尋問を実演する。
●次回までの課題
原・被告訴訟代理人役は、証拠調べの結果を踏まえ、最終準備書面を作成し、第8回講義の1週間前ま
でに受講者全員と教員にメールで配信する。裁判所は、合議を行い、判決書を作成し、第8回講義の前々
日までに受講者全員と教員にメールで配信する。
62
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第8回 第4回口頭弁論期日
●当日の課題
裁判所は判決書に基づいて言渡しを行う。判決内容について全受講者で検討の上、議論をする。
上記の講義計画から明らかなように、講義外での準備に相当の注力が必要である。特に、次回までに
提出すべき書面の起案、その前提となる問題点の検討等の準備作業を主体的に行う必要がある。
模擬裁判を通じて、実際の民事裁判への理解を深める。要件事実論を機軸に当事者として攻撃防御方
法を構築する能力や裁判官としてこれを整理し適切な事実認定をすることなど、民事訴訟実務の機微に
触れ、それまでに教科書で学習した知識に肉付けをする。
模擬裁判における起案、発言、尋問等を総合して評価する。 定期試験は行わない。
模擬裁判用事件記録のほか、参考書として司法研修所編「4訂民事訴訟第1審手続の解説」
、
「10訂
民事判決起案の手引」法曹会を必要に応じて参照されたい。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
⑵ 本講座は,検察官,弁護人,裁判官が,刑事手続の各時点における様々な状況に応じて,どのよう
に関与して手続が進められているかを具体的に理解するとともに,刑事訴訟法上の問題点が実際の
刑事手続において,どのように表れ,解決されるのかについて理解を深め,もって実務家に必要な
問題解決能力,事実認定能力,さらには法的議論・表現・説得能力の修得を目的とする。
容 第1回
画
模擬裁判の実施方法・教材の説明,公判手続の概要等
業
業
内
計
刑事模擬裁判
奥谷 千織
3年次
学
期 春学期
1単位
必 修 ・ 選 択 必修
⑴ 本講座は,3年春学期必修科目である「刑事訴訟実務の基礎」における公判手続の理論的理解と並
行し,これを実践的に学習することで,冒頭手続から判決宣告に至るまでの刑事公判手続の流れ及
び検察官,弁護人,裁判官の役割等,刑事訴訟法全体に対する理解をより深めていくことを内容と
する。
受講生は,検察官,弁護人,裁判官の役に分かれ,問題点をそれぞれの立場からどのように捉え,主張
すべきかを検討するとともに,各種法文書の起案等を通じて,効果的な主張方法を学ぶ。
また,交互尋問により,当事者役は発問の内容・方法を,裁判官役は訴訟指揮及び心証形成の過程を,
体験的に学習する。
第2回
公判準備その1(公判活動に関するビデオ教材の視聴)
第3回
公判準備その2(起訴状作成,検察官請求証拠の開示・検討等)
第4回
公判準備その3(冒頭陳述書作成,証人テスト<検察官役>,被告人との接見<弁護人役>等)
第5回
公判準備その4(証人テスト<検察官役>,被告人との接見<弁護人役>の続き,争点整理等)
第6回
模擬裁判その1(冒頭手続,冒頭陳述・証拠請求,同意書証の取調べ,証人尋問等)
第7回
模擬裁判その2(被告人質問,論告・弁論)
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第8回
模擬裁判その3(判決宣告,講評・質疑応答)
※ 第 1 回授業時に,別途模擬裁判実施要領を配付する。
本科目履修の前提として,刑事実体法・手続法の理論的理解が必要である。
また,配布された記録教材を熟読していることを前提に授業を行う。
刑事公判において刑事手続法が実際にどのように適用されているのかについて理解を深め,実務家と
して必要とされる,訴訟手続に即応した基本的な問題解決能力,事実認定能力,法的議論・表現・説得
能力を身に付けることを到達目標とする。
各回の授業における参加状況,模擬裁判におけるそれぞれの役割への取組状況,起案内容等を総合し
て評価する(合否のみ)
。
⑴ 記録教材
法務省法務総合研究所作成の法科大学院教材(第1回授業時に配付する)
⑵ 参考文献
① 司法研修所監修「刑事第一審公判手続の概要」法曹会
63
② 司法研修所検察教官室編「検察講義案」法曹会
③ 司法研修所編「刑事弁護実務」日本弁護士連合会
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
実務特殊Ⅰ
川村 哲二
3年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
実際の民事事件を素材として、弁護士がどのように事実をもとにして法的な構成をし、主張や立証を
行うのか、そして、裁判所がそれをどのように整理して認定判断していくのか、さらに、執行手続も視
野に入れて、具体的に学んでいくことを目的とする。
また、事案に応じた主張や解決方法の選択方法についても議論を深めて、法律解釈や訴訟手続の基本
的理解を踏まえて、現実の社会の中での民事訴訟手続による実務的な問題解決ができる能力を涵養する
ことを目的とする。
容
以下の授業計画に従って行う予定であるが、実際の受講者数その他の状況に応じて、履修上適切と考
画 えられる変更をする場合がある。
第 1 回 授業概要説明及び民事訴訟実務概要、事例の説明
授業内容の説明、進め方等についてのガイダンスを行ったうえで、これまでに習得した民事訴訟手続
の実務的な面での基本的理解を確認する。そのうえで、授業で扱う事例について若干の説明を行う。
第 2 回 基本的な事件に関しての議論・検討
基本的な具体的事件に関して、法的構成、事実主張の方法、証拠の検討、解決方法の選択等について、
講義及び議論を行う。
第 3~7 回
実際の事件についての訴状、答弁書、準備書面、判決等の各種書面の各担当受講者による起案および
報告を基本として、具体的な事件での法的構成の方法、解決方法の選択などについて検討を行う。また、
同種事案についての、現実の訴訟進行、判決なども踏まえて、法律手続による事件解決に関して広く議
論を行いたい。
第 8 回 まとめ
これまで検討した点のまとめを行い、本授業において習得した内容の確認を行う。
履修上の注意
民事訴訟事件を扱うものであるから、民商法及び民事訴訟法の基本的理解が前提となる。また、契約・
不法行為等の分野については事前に復習しておかれたい。また、民事訴訟手続については、理論面のみ
ならず、具体的な裁判手続の進行の実務的な側面を念頭において予習、復習しておくことが必要である。
本授業は、具体的事件をもとにして、受講者が担当者として、事前に検討、起案、報告等を行っても
らうことを予定している(具体的な方法は受講者数等によって決定する。
)
。ただし、担当者以外の者も
各自で予習、検討、起案等を行ってほしい。
授業の到達目標
本授業においては、民商法等の基本的理解・知識を前提として、実際の具体的事案から、事件解決に
適切な法的構成を考え、民事訴訟手続の理解を踏まえて、適切な主張整理ができ、実務的説得力のある
文章とすることによって、民事紛争の解決に導くことができる能力を獲得することが上位の到達目標と
なる。
そして、最低限、民商法の法的知識の基礎的な理解を前提として、それを民事訴訟手続において活用
するための基礎的な知識、能力の習得が単位取得のための第一の到達目標となる。これに、問題解決能
力、法的分析・推論能力、法的議論・表現・説得能力といったさらに進んだ能力の基礎的なレベルの習
得が第二の目標となる。
評 価 方 法
期末試験の配点を 70%とし、授業内における発言、報告、起案等(小テスト形式を含む)に基づく平
常点を 30 点とする。
期末試験は、基本的な法律の理解を前提として、問題事案にそくした法的構成、事実主張、主張整理、
事実認定などが、法律的、論理的に論述ができるか、を重視する。
なお、出席点については、加点事由とはしない。遅刻・早退・欠席の取扱いについては、研究科の基
準通りとする。
教
64
○成績評価の目安
・90~100 点 :上位到達目標にほぼ到達している。
・80~89 点:基本的到達目標にほぼ到達しており、上位到達目標にもおおむね(6~8 割程度)到達し
ていると認められる。
・70~79 点:基本的到達目標はおおむね(7~8 割程度)到達していると認められるが、上位の到達目
標は 6 割程度の到達度。
・60~69 点:基本的到達目標にかろうじて(6 割程度)到達していると認められるが、上位の到達目標
への到達度は 6 割に達していない。
・59 点以下 :第一の到達目標に 6 割以上到達したと認められず、自習での到達がきわめて困難である
と判断される。単位認定のためには、再履修が必要。
材
特に指定はしないが、従前の講義で使用した民法、商法、消費者法、民事訴訟法等の教科書を活用さ
れたい。
実際の授業においては、参考裁判例、類似裁判例等の判決文、評釈などを適宜検討することとなる。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
容
画
業
業
内
計
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
実務特殊Ⅲ
辻 孝司
3年次
学
期 秋学期
1単位
必 修 ・ 選 択 選択
刑事弁護実務を知ることで、刑事訴訟法に対する理解を深め、基本的人権の擁護、適正手続き、公正
な刑事司法について高い意識と弁護技術を持った法曹を養成する。
①刑事弁護の意義と国選弁護制度
②被疑者弁護活動(接見交通権と身体拘束からの解放)
③被疑者弁護活動(取調べの可視化と自白の任意性)
④公判前整理手続きの概要(証拠開示)
⑤証拠意見と伝聞証拠
⑥尋問技術(主尋問)
⑦尋問技術(反対尋問)
⑧弁論技術(法廷プレゼンテーション)
刑事訴訟法の基本的な知識があることを前提として授業を進めていきます。
予習課題があります。
憲法上求められている刑事弁護の意義を理解する。刑事訴訟法が実務において機能し、また機能して
いない点を知り、弁護人として法を駆使して、被疑者・被告人の権利を守るための技術を身に着ける。
定期試験 7:平常点3
平常点は予習課題、出席状況、授業への参加態度によって評価します。
特に参考文献の指定はありません。
ローヤリング・クリニック
坂東 俊矢・渡邉 泰彦・野々山 宏
2年次
学
期 春学期集中・秋学期集中
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
ローヤリング・クリニックは、実務基礎科目のひとつである。
講義の目的は、実際の法律問題に触れて、それを整理する能力、問題を聞き取る姿勢、適切で分か
りやすい助言を行うことを模擬的に体験してもらうことにある。具体的な問題に触れるために、京都産
業大学むすびわざ館での無料法律相談に参加し、相談者の話を聞いて、自分が学んできた法律学の知識
に無理なく当てはめ、的確な助言をするために現場で考えることを経験する。そのことで、法を具体的
に実務で活用していくための基礎的な視点と技法とを考えるおおきな契機となるはずである。さらに、
法律相談では実際に問題に直面する相談者の生活を対象とし、個人情報を扱うため、法曹という職業の
持つ重責、倫理性の一端を実感してもらう。なお、無料法律相談であるため、裁判で係争中ではない、
個人の民事事件のみを扱う。
あわせて「消費者問題研究会」に参加し、消費者問題を扱う専門家の報告に触れることで、法律相
談での具体的な問題の発見、法科大学院の他の講義での法律学の基本的理解、研究会における最新の議
論をつなげることを体感してもらう。
容
隔週 2 校時連続で行う。
画
第 1・2 回 ガイダンスと法律相談の考え方に関する文献研究(講義形式)
名古屋ロイヤリング研究会編『実務ロイヤリング講義 [第 2 版]-弁護士の法律相談・調査・交渉・
ADR 活用等の基礎的技能』民事法研究会(¥3,500)平成 21 年を資料とする。なお、必要な部分は配布
する。
第 3~14 回
京都産業大学むすびわざ館で 5 回開催される「無料法律相談会」
(隔週金曜午後 5 時~8 時)あるい
は「消費者問題研究会」
(月に 1 回、金曜午後 6 時~8 時を予定)に参加する。
無料法律相談に寄せられた法律相談について、教員の指導の下、適切な助言を行う。具体的には、
事前に受け付けた相談の担当者を決定し、担当者は問題となりうる事項について調べておく。当日は相
談者の話を聞いて整理し、担当者と教員の間で問題を検討した後、相談者に相談結果を報告する。すべ
てにおいて、受講者が主導的に行い、教員はそれを補助するにとどまる。終了後に時間があれば、担当
した事案の法律問題についてのみ相互に検討する。
また、研究会で実際に消費者から寄せられた相談事案を検討し、それへの法の適用や解決手段につ
いて検討をする。
第 15 回
「事例」とそれに対する法律的アドバイス、問題の解決方法に関するレポートをもとに、その報告
と検討を行う。
履修上の注意
ローヤリング・クリニックを受講するためには、
「法曹倫理(2 単位、2 年次配当)
」を受講済みであ
65
ることが望ましい。また、同じ担当者による「消費者法講義」を受講する上で、ローヤリング・クリニ
ックの経験が重要な意味を持つ。受講の順番を問わないが、ぜひ双方とも受講を考えてもらいたい。
なお、受講に際しては、科目の性格上、
「秘密保持誓約書」の提出を求める。相談者の個人情報を扱
うことの重大性を決して忘れないこと。
法律相談のスムーズな運営のために、受講者には、相談所の設営・撤去にも協力してもらいたい。
授業の到達目標
ローヤリング・クリニックの教育目標は、法曹に必要とされる 2 つのマインド(1)法曹としての使
命・責任の自覚、
(2)法曹倫理、7 つのスキル(法律専門職能力)
(1)問題解決能力、
(2)法的知識(基
礎的法的知識・専門的法的知識・法情報調査)
、
(3)事実調査・事実認定能力、
(4)法的分析・推論能
力、
(5)創造的・批判的検討能力、
(6)法的議論・表現・説得能力、
(7)コミュニケーション能力のす
べてを、ひとつには「法律家として聞き、考え、調査して、説明する」という法律実務を疑似体験し、
修得することである。
1)問題解決能力
相談内容から、法律問題を的確に認識し、それに対応する解決策を短い時間で導き出す。
2)聴取能力
一般の法律相談より時間は長いとはいえ限りはある。相談者から必要な事実を中心に時間内に話をし
てもらう能力を身につける。ここで必要とされるのは、単に法律学の知識だけではない。人の話を聞き、
整理し、問題点を明確化し、その問題点を、相談者に気づいてもらう。
3)説明能力
検討した内容を相談者に説明し、理解してもらう。同じ内容であっても、語りかける態度や姿勢によ
って、相談者の受け取り方は異なる。相談者が不安とならないような態度で説明できるようにする。
評
価
方
教
また、法律相談や消費者問題に関する研究会での課題を、文書にするとともに、保管し、いつでも利
用できるよう整理し、それを自らの言葉で語ることができるだけ理解することも重要な課題になる。
そうした経験は、ひとつには日頃勉強している民事法に関する基礎的な法律知識を実務的な観点から
再確認することにつながる。そのことは、日々の地道な法律の勉強がもつ意味を実感として理解するこ
とでもあり、その動機付けそのものでもある。
法
法律相談や研究会に参加し、受講生として果たすべき役割を果たすとともに、それに関するレポート
や報告書を作成することなどから、相談内容や研究会での意見が適切であるかという法律学に関係する
点だけではなく、話の聴き取り、説明の態度を含めた、聴取能力、問題解決能力、説明能力などを総合
的に評価する。なお、合否のみで単位を認定し、定期試験は実施しない。法科大学院生として責任ある
姿勢で法律相談や研究会に参加することが前提となる。
材
現段階でわが国に定評あるクリニック(法律実務科目)科目の教科書があるわけではない。ただし、
以下の教科書を使って、クリニックに必要な視点について共通理解を図りたい。具体的には、第 1 回の
講義ガイダンスで指示する。ただちに購入する必要はない。
名古屋ロイヤリング研究会編『実務ロイヤリング講義 [第 2 版]-弁護士の法律相談・調査・交渉・
ADR 活用等の基礎的技能』民事法研究会 平成 21 年
丸の内ソレイユ法律事務所編著『リーガルクリニック・ハンドブック』 ぎょうせい 平成 24 年
なお、それ以外にも、
宮川成雄編『法科大学院と臨床法学教育』成文堂 2003 年
菅原郁夫・岡田悦典編『法律相談のための面接技法-相談者とのよりよいコミュニケーションのために』
商事法務 2004 年
羽田野宣彦・伊藤博・加藤新太郎『リーガル・コミュニケーション』弘文堂 2002 年
加藤新太郎・柏木昇『リーガル・ネゴシエーション』弘文堂 2004 年
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
エクスターンシップ
釜田 佳孝・田中 彰寿
2年次
学
期 春学期集中・秋学期集中
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
1 講義内容
法律事務所における法律実務を実体験することを通じて、将来法律実務家となるための目的意識を高
めることと、法科大学院における学習意欲を喚起することを主眼として行う。受講生は、法律調査、事
件記録の検討、法律相談・訴訟等の立ち会いや、法律文書の作成・検討をはじめとするさまざまな法律
実務に携わることになる。
2 講義目的
エクスターンシップは、弁護士など法律実務家が行う実務を現地体験することにより実務家の果たす
役割を理解するとともに、実務家は生の事実からどのように法律問題を摘出し、どのように処理をして
ゆくのかを体験し、法律が現実の世界にどのように生かされるかを理解する。
とりわけ、受講生はみずからが実務家の事件処理に接することで、指導弁護士をはじめとする法律実
務家が行う実務、つまり生の事実関係から、法的論点を発見し、調査検討のうえ、的確な法的見解に整
理して証拠収集に基づいた法的権利実現のための手段の駆使といった一連の処理を間近に観察し、法律
66
授
授
業
業
内
計
容
画
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
法
材
実務家になるために何が自分に必要かをよく考えて、一歩でもその理想に近づこうとする作業が重要で
ある。この作業を行うことで、社会生活において提起される様々な問題につき的確に論点をとらえ、か
つ妥当な解決策を見つけ、実行する能力がはぐくまれることになる。
次のとおり、事前研修と実務研修に分けて実施する。
A 事前研修
最初に1時間で、エクスターンの趣旨や要領、注意点を講義する。なお、受講生はあらかじめ守秘義
務誓約書を提出する必要がある。
B 実務研修
①研修期間は10日間とし、大学が委託した法律事務所(指導弁護士)において実施する。
②実務研修の日程は連続する必要はなく、指導弁護士の都合により適宜研修日程を決めて行うことも可
とする。
③事件処理についてはあらかじめ指導弁護士より事件の説明をうけ、その指導の下において、調査・検
討、法律相談、交渉、裁判上の手続などを通じて学生自ら事実上及び法律上の論点の整理を行い、また、
これらの論点整理に基づき、法律書面の作成などを行う。
④受講生は、実務研修中はエクスターンシップ記録に必要事項を記載のうえ、終了後は指導弁護士のチ
ェックを受けて、速やかに法務研究科事務室に提出しなければならない。
実務研修は、大学が委託する法律事務所における個別研修とする。研修先の法律事務所においては事
務所毎に取扱う事件等に差異があるが、どのような事件であってもすべて将来の法律実務家になるため
のトレーニングとしては役立つので、個別研修先では貪欲に指導弁護士の仕事を吸収すること。また、
実際の事件に触れることでロースクールで学んでいるさまざまな科目の修得や理解に役立つ場面も少
なくないので、ぜひ、その場合には基本書や講義ノート等の該当箇所を読み返すこと。
なお、本科目の受講生には、研修先の法律事務所および依頼者その他関係人の秘密保持義務が要求さ
れる。何事があってもこれらの秘密事項を第三者に漏らしてはならない。第三者の中には、当該研修先
事務所に派遣されなかった他の受講生や、ロースクール生や、教員も含まれている。エクスターンシッ
プ記録の作成にはあたっては出来るだけ特定名称の使用を避け、原告、被告、依頼者、相手方などの一
般名称を使用する。本講座の申し込みにあたっては守秘義務誓約書を提出する必要があり、誓約書の提
出のない者は本講義を受講することができない。
受講生は、みずからも生の事案に接して与えられた課題を行う中で、指導弁護士をはじめとする法律
実務家がどのように法的論点を抽出し、証拠を検討し、解決手法を見いだして、依頼者等の権利実現の
ためにその手法を実行してゆくのかをよく学び、自らそれを修得すること。また、この作業は、法律実
務家の視点、考え方、行動を体験することになるが、その結果、将来法律実務家となるための目的意識
を持つことになり、法科大学院における自己の学習意欲の向上に資するものとなる。
実務研修における指導委託弁護士の評価を基準として、合否を判定する。
特になし。
名
名
年
数
的
法理論
耳野 健二
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
第一に、
「対話」
「手続」といったキーワードを旗印に「法の支配」の理念を再構成しつつある近年の
法哲学の動向に留意しながら、現代における法の基本構造と機能を理解することを目指す。このことを
通じて、現代法システムを総括的に捉える視点を身につけたい。
第二に、法の基本概念・基本的思考法に原理的な地平で触れることを目指す。自由と共同性、行為と
意思、権利、所有、契約、等々の基本的な考え方を、歴史的・社会的背景を考慮しながら理解すること
で、各自の法的思考に厚みを加える手がかりを得ていただきたい。
講義では、上記のような目的を達成するために、中世以降のヨーロッパおよび近代以降のわが国の法
理論に関する論文の一節を読みながら、法的なものの考え方の根本にあるものに触れることを試みる。
法哲学者はもとより、実定法学者のなかにも哲学的・原理的な問題を扱った業績は多々あり、これらに
繰り返し触れることで、法的思考の基礎訓練はもとより、基本的な文章読解能力の涵養にも努める。
容 第1回 ガイダンス
画
授業全体の計画等のガイダンスをおこなったのち、
「対話」
「手続」を軸とするリベラリズムの法哲学
の概要を説明する。
第2回 現代型訴訟と対話の哲学
現代型訴訟を具体例としつつ、現代のリベラリズムが「対話」と「手続」を軸としながら「法的なる
もの」の再構成を志向しつつあることを説明する。
第3回 近代法の歴史的成立過程(1)
ヨーロッパ私法史を手がかりに、近代法がどのような歴史的過程をたどり、そこからいかなる理論的
特徴を帯びるにいたったのか、説明する。まずは、ヨーロッパ私法史のおおよその流れを確認し、市民
社会と国家の成立とそのなかでの市民法の役割に焦点をあてつつ、近代法システムの成立過程を概観す
る。
第4回 近代法の歴史的成立過程(2)
67
ヨーロッパ私法史を手がかりに、近代法がどのような歴史的過程をたどり、そこからいかなる理論的
特徴を帯びるにいたったのか、説明する。
(2)では、中世法を中心に講じ、前近代的な法システムの
特質の解明をおこなう。
第5回 近代法の歴史的成立過程(3)
ヨーロッパ私法史を手がかりに、近代法がどのような歴史的過程をたどり、そこからいかなる理論的
特徴を帯びるにいたったのか、説明する。
(3)では、近世におけるローマ法の継受と啓蒙期自然法論
の時代を中心に講ずることで、近代法システム成立の前提を確認する。
第6回 近代法の歴史的成立過程(4)
ヨーロッパ私法史を手がかりに、近代法がどのような歴史的過程をたどり、そこからいかなる理論的
特徴を帯びるにいたったのか、説明する。
(4)では、近代ドイツにおける法発展について、19世紀
を中心に説明する。これにより、我が国の法システム形成にも大きな影響を与えた近代法システムの基
本的特質を明らかにする。
第7回 現代法の基本問題
前回までの内容を受け、ここでは 20 世紀の法発展についてふれる。とくにワイマール共和国および
ナチズム期のドイツ法思想を取り上げ、近代法から現代法への法システムの変容ならびにそこに含まれ
る法理論上の基本問題を明らかにする。あわせてカール=シュミットの憲法理論にも注目する。
第8回 法における人間と「法化」
現代は法化社会といわれることがあるが、これを法哲学的に捉える際の基本的な枠組みを明らかに
し、わが国における法動態を把握するための一つの視点を説明する。あわせて、いわゆる近代法と現代
法の対比を軸に、人間像、権利概念、平等観、法的思考法など、法システムの原理的次元の基本構造を
確認する。
第9回 比較の見地から見た日本法の原理的特質(1)
川島武宜『日本人の法意識』を念頭に置きながら、その議論の紹介と、それにともなう日本法の特質
について論ずる。ここでは、法律、権利の観念について扱う。
第 10 回 比較の見地から見た日本法の原理的特質(2)
川島武宜『日本人の法意識』を念頭に置きながら、その議論の紹介と、それにともなう日本法の特質
について論ずる。ここでは、所有と契約の観念を扱う。
第 11 回 リベラリズムの法哲学(1)
戦後から現在にいたる法哲学の動向を踏まえつつ、わが国の法システムを理論的に捉えるための視点
を明らかにする。まずは戦後のわが国の社会状況と法の関連について概説する。
第 12 回 リベラリズムの法哲学(2)
戦後から現在にいたる法哲学の動向を踏まえつつ、わが国の法システムを理論的に捉えるための視点
を明らかにする。ここでは、法の三類型に基づく現代リベラリズムの法哲学を解説する。
第 13 回 リベラリズムの法哲学(3)
戦後から現在にいたる法哲学の動向を踏まえつつ、わが国の法システムを理論的に捉えるための視点
を明らかにする。ここでは、現代法哲学の提唱する法化の概念を確認し、さらにはその他の立場からの
見解を紹介しながら、リベラリズムの理解について一層の深化を図る。
第 14 回 正義の理論
現代正義論の概要と問題点を紹介する。ここでは正義論に関する全体の見取り図と、価値相対主義、
ロールズを中心とするリベラリズム、共同体主義を扱う。
第 15 回 まとめ:法と現代社会
講義全体を振り返り、現代社会において法的思考がどのような特徴をもつか、またそれが社会的にど
のような機能を有しているかを総括し、締めくくりとしたい。
履修上の注意
授業は講義形式で行われる。しかしながら、この講義の目的はなにより、より深い原理的考察に触れ、
自らもそのような思惟を展開する機会を、学生諸君に提供することにある。
「法とは何か」
「社会にとって法とはどのような意味をもつのか」といった問に一度は触れ、悩みな
がら考える経験をもつことは、これからの法曹としての自己の生涯において無駄ではないと思われる。
よき法曹、深く考える力をもつ法曹たるための一つの準備作業のつもりで参加していただけたら幸いで
ある。
予習・復習については、授業時に課題を指示する。基本的には、配布する資料およびそれに関連する
課題を実行していただく予定である。
授業の到達目標
法システムの基礎に関する歴史的・哲学的知識を修得し、これを自分の言葉で表現できること(60
点の基準)
。そのために授業では、教科書ならびにさまざまな論文の一節を読みながら「法的知識」の
修得および「法的分析・推論能力」の向上を図るとともに、双方向での議論を通じて理解の進化に努め
68
評
価
方
教
る。
教科の評価は、期末試験(70%)と平常点(30%:レポート)による。欠席については法科大学
院の規定に従う。
材 教科書
川島武宜『日本人の法意識』
(岩波新書)
法
参考書
田中成明『現代法理学』
(有斐閣): 詳細な体系的・専門的教科書
平野仁彦・亀本洋・服部高宏『法哲学』
(有斐閣): 初学者用の入門的教科書
その他、授業時間中に適宜紹介する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
ローマ法
田中 実
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
法は、社会あるところに必ず存在し機能する漠然とした行為規範ではありません。古代ローマは、財
貨の帰属をめぐる紛争を解決するにあたって、例えば多数決原理などを採用する議会とは距離をおき、
論拠を限定しつつも開かれた議論を許容する裁判制度と裁判規範の構築に成功しました。このため、そ
こで作られた概念、議論の枠組、立論のあり方、制度、基本的な考え方は、諸国の、そして西欧大陸法
を継受した我が国の法律学の範例の意味を持ってきました。法律家が、財産をめぐる真摯な紛争解決を
めぐり発達させたこの知的な遺産の素養を持たず、超越的な価値を直接に援用し、正義感のみに訴える
感情的な議論を常とするようになることは、社会にとって好ましいこととは言えません。広い意味での
ローマ法あるいはローマ法学が法曹教育において長い間、別格の扱いを受けてきた理由はここにありま
す。しかし明治期と違い、法学部でもローマ法は必修開講科目ではありませんから、この講義では、一
方で、初学者を念頭に、ローマ法についての基本的な知識を得、現行法がいかに豊かな歴史的伝統のも
とで作られているかを認識するとともに、具体的な制度を通じて得られたローマ法の知識から、今日の
日本の法や法律学、ひいては社会において用いられる概念、発想、立論をより深く理解し、それらを批
判的に検討する能力を養うことを目的とします。
容
総論としてローマ法の意義やその基本構造、歴史的展開、後代への浸透を説明し、各論として相続法
画 を含む広い意味での財産法のいくつかの制度をポイントを絞って解説します。他方で、受講者と相談し
ながら、財産法領域の啓蒙的で刺激的な短い文献や最高裁の民事判例を選んで、過度に負担にならない
形で報告を求め、現行法の科目とは異なる、この講義ならではの視点を持って議論を行う機会を作りた
いと思っています。
〈総論〉
第 1 回 イントロダクション 現行民法の条文とローマ法
現行民法の条文を取り上げて、その立法過程での議論を参照することにより、その条文がローマの議
論に由来するものであることを紹介します。ローマ法を勉強する意義を具体的に認識すると同時に、現
行民法の沿革史を知るための道具だてを紹介します。
第 2 回 なぜギリシアではなくローマか
西洋文化において、哲学や政治学の範型は古代ギリシアが形成したのに対して、なぜ法の領域では、
古代ローマが今日までの法や法律学のモデルとなっているのかという問いから、科学、哲学、政治と対
比させつつ、法や法律学とは何かを実証的に把握し、法律的な立論のあり方を考察し、法を支える基盤
を考えます。
第 3 回 古代ローマの国=市民社会(res publica=societas civilis)と法
古法時代から 6 世紀の『ローマ法大全』編纂まで、古代ローマの法制度の展開及びローマ法を支えた
市民社会の構造や司法制度を、本講義の各論理解に不可欠なものに絞って説明します。加えてローマ法
がいかなる経緯で西欧諸国に受容され、日本の民法に到達したかも解説します。
〈各論〉
第 4 回 民法総則から 1 家子や奴隷による取引と代理制度
家父権に服する子や奴隷と契約を締結した相手方がいかに保護されてきたかを解説し、今日の代理制
度や有限責任の考え方を理解する視座を与えます。
第 5 回 民法総則から 2 法人概念及び条件論
すでに学んだローマの国の捉え方から法人概念がどのように形成されたかを考えます。さらに、ロー
マ法の奴隷解放の問題から生じたとされる、条件に関する規定を勉強します。
第 6 回 物権法から 1 ローマの絶対的所有権
近代には不幸にもイデオロギーとして用いられたローマの絶対的所有権の内実を再検討します。具体
的には、ローマの国家・租税・訴訟制度から、所有権の 3 つの特性である絶対性、排他性、渾一(弾力)
性について、明確な観念を得ることを目指します。また、私的所有権概念をめぐる中世の有名な論争な
69
ども紹介する予定です。
第 7 回 物権法から 2 ローマの占有秩序 時効と特示命令
難解とされるローマの占有概念を、とりわけ特示命令の文言などの分析から解説し、今日の占有権の
問題を考えるきっかけ、ひいては財貨帰属秩序のあり方を批判的に検討する視点を養います。
第 8 回 債権法から 1 総論
古代における二つの主要な債務発生原因の分化について考えます。同時に、債権総論の中から、例え
ば、弁済や相殺といった個別問題を選び、現行法の議論にも気を配りながら、解説します。
第 9 回 債権法から 2 典型契約の洗練
日本の典型契約の直接的な起源ともいえるローマの契約法について、その背後にあった方式書の構
造、訴権の分類を念頭に考察し、契約法を勉強するにあたっての有益な思考枠組を身につけます。同時
に、
「訴権ではなく抗弁のみが与えられる」裸の合意について、それがどのような意味があるのかも検
討します。
第 10 回 債権法から 3 典型契約の洗練
売買や賃貸借といった具体的なローマ契約法の問題を、
『ローマ法大全』の学説彙纂の具体的な法文
を取り上げて解説します。また、日本民法の典型契約のうちローマ法ではなく中世起源であり、あまり
解説されることのない終身定期金について、歴史的にどのような意味があったかを説明します。
第 11 回 債権法から 4 非典型契約の性質決定と救済
典型契約でカヴァーされない合意について、前書訴権の議論を紹介し、契約の性質決定の問題に言及
します。
第 12 回 債権法から 5 ローマの不法行為法と罰訴権の変容
ローマ不法行為法の特徴を解説し、罰と損害填補、訴権の能動的・受動的相続性や消滅時効の問題を
取り上げます。
第 13 回 相続法から 1 相続の存在理由の変遷
家の存続、相続人の確保の観点からの、ローマの養子縁組そして遺言制度の展開の概観を解説し、祭
祀の維持と財産の帰属の側面から相続法の基本的な観念を習得します。
第 14 回 相続法から 2 相続人指定と遺贈の諸問題
日本の相続法との異同を意識しながら、ローマの相続人指定及び遺贈構造並びに近親者及び相続人保
護を解説します。
第 15 回 執行法から まとめ
ローマの執行法の変遷を解説し、人的執行から財産執行への移行にともない考案されたいわゆるパウ
ルス訴権の説明をします。最後に、これまでの講義内容を整理し、ローマへのアプローチ一般について
述べたいと思います。
履修上の注意
毎回、講義時に先立ってチャートや史料邦訳などからなる比較的詳細なハンドアウトを用意します。
これが基本的な教材となります。授業の形式は、履修人数によって左右されますが、基本的には伝統的
な講義方式を原則とします。講義中に担当者から受講者に質問をすることは、科目の性質上からも、受
講者の人数や理解度に応じて、行うべきものと認識しています。上述のように、講義時間内に、受講者
と相談しながら、財産法領域の啓蒙的で刺激的な短い文献や最高裁の民事判例を選んで、過度に負担に
ならない形で報告を求め、評価の対象とします。講義への出席が求められますが、出席そのものは加点
対象ではありません。
○求められる予習・復習の内容
講義の目的は、受講者が、ローマ法と現行法との異同を意識して日本の法制度を批判的に検討する能
力を習得することにありますので、民法の各制度の、入り口にあたる基本的な事項を確認しておくこと
が望まれます。講義で説明した制度について、現行法の知識があやふやであれば再確認をお願いします。
ローマ法そのものの知識を深めたい場合に参考となる文献などは、要望に応じその都度紹介したいと思
います。
授業の到達目標
実務法曹として専門的に取り組むことになる法制度が、古代ローマ人の独特な自由の観念を基盤と
し、長い歴史的な経験の上に成り立っていることを理解することを通じて、法曹としての使命の自覚、
倫理感を養います。講義で得られた知識、とりわけローマ人の法的問題に対する解決、解決にいたる立
論、解決の背後にある基本的な考え方の知識を通じて、今日所与のものとして受け取られ、時には混乱
して用いられている概念や制度について再検討する能力を身につけることを目標とします。このことは
ローマ法の法的知識を得るにとどまらず、難解なローマ法文の具体例を紹介することを通じて、コミュ
ニケーション能力、問題解決能力、法的分析能力を高めることになります。
評 価 方 法 1 授業中に行う報告や議論における発言(配点 30 点)
2 期末試験(配点 70 点) 筆記試験を行います。問題は 2 問から 3 問を予定しています。そのうち 1
問は、講義で解説された問題や法制度を一つ選び、その制度、及び現行法との関連を説明し、ローマ
70
法がいかなる示唆を得ることができたかを確認する問題です。
○成績評価の目安
・90~100 点:講義の到達目標に到達しており、講義内容の正確な理解が確認でき、講義では解説して
いない鋭い視点が提示されている。
・80~89 点:講義の到達目標に到達しており、講義内容の正確な理解が確認でき、講義では解説してい
ない適切な視点が提示されている。
・70~79 点:講義の到達目標にほぼ到達しており、講義内容のほぼ正確な理解が確認できる。講義では
解説していない視点を欠く又は不的確な視点が確認できる。
・60~69 点:講義の到達目標になんとか到達してはいるが、講義内容の理解に正確さを欠く部分が確認
できる。講義では解説していない視点を欠く又は不的確な視点が確認できる。
材
ハンドアウトを配布しこれを教材とします。
参考文献として以下のものを挙げておきます。
ウルリッヒ・マンテ著(田中実・瀧澤栄治訳)
『ローマ法の歴史』ミネルヴァ書房
ゲオルク・クリンゲンベルク著(瀧澤栄治訳)
『ローマ債権法講義』大学教育出版
ゲオルク・クリンゲンベルク著(瀧澤栄治訳)
『ローマ物権法講義』大学教育出版
オッコー・ベーレンツ 河上正二著『歴史の中の民法』日本評論社
原田慶吉著『ローマ法―改訂―』有斐閣
原田慶吉著『日本民法典の史的素描』創文社
船田享二『ローマ法』
(全 5 巻)有斐閣
木庭顕『ローマ法案内』羽鳥書房
木庭顕『現代日本民法の基礎を問う : 笑うケースメソッド』勁草書房
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
The course will emphasize the fundamental aspects of the American legal systems that are
different from the Japanese legal system, particularly federalism, common law and the jury system
used in both civil and criminal cases. During the study of civil and criminal trial procedures,
we will simultaneously study some basics of American contract, tort, criminal and other areas
of substantive law (examining the elements of and defenses to various civil causes of action
and crimes), as well as evidence. We will conclude by continuing our study of several tort and
contract law causes of action by focusing on product liability. In addition to examining important
aspects of substantive and procedural law in the United States, the course will provide practical
training for budding legal specialists by teaching students how to conduct legal research on
American law, how to analyze cases, how to analyze statutes, how to conduct a trial and how to
deliberate a case.
容 1. Course Introduction; Brief Introduction to Basic Differences Between the American and Japanese
画 Legal Systems; Classification of Law Vocabulary
業
業
内
計
比較法Ⅰ(英米法)
キャンデル キャリン ポーラー
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
The general aim of this course is to provide a practical introduction to American law and the
American legal systems while giving students a good opportunity to practice and improve their
English language skills for use in their professional legal careers.
2. Civil Law Versus Criminal Law; Actions in Law Versus Actions in Equity (Including Remedies
at Law and Remedies in Equity)
3. Discussion of Specific Cases on How Criminal and Civil Law Complement Each Other and How Federal
Criminal Law and State Criminal Law Complement Each Other
4. Federalism; Court Systems in the United States
5. Makers and Sources of Law in the United States; Hierarchy of Law in the United States
6. Primary Authorities of Law Versus Secondary Authorities of Law; Doing Legal Research in the
United States
7. Common Law: Stare Decisis; Opinion Analysis and Synthesis; Case Study
8. Statutory Interpretation
9. Jury System: Roles and Selection of Judges and Juries; History of the Jury System
71
10. Anatomy of a Lawsuit: Trial Procedure (Civil)
11. Trial Procedure: Case Study (Criminal)
12. Mock Jury Trial / Deliberations
13. Product Liability: Introduction; General Legal Theories; Negligence, Strict Liability in
Tort and Market Share Liability (Tort Law)
14. Product Liability: Warranties (Contract Law), including Case Study
15. Review / Discussion of Specific Topics of Interest to the Students
履 修 上 の 注 意 THIS COURSE WILL BE CONDUCTED IN ENGLISH USING A CLASS-PARTICIPATION METHOD.
IT IS THEREFORE RECOMMENDED FOR STUDENTS WITH GOOD ENGLISH LANGUAGE SKILLS.
PREPARATION FOR ALL CLASSES AND ATTENDANCE ARE ESSENTIAL.
授業の到達目標
In this course students will examine and discuss in English some of the fundamentals of American
law and the American legal systems, such as the common law case system, federalism, the jury
system, litigation and trial procedures, and legal authorities and sources, as well as some basics
of various substantive law areas, including tort law, contract law, product liability law, and
criminal law. Through this study, students will be able to gain a basic understanding of and
ability to communicate in English about some important aspects of American law and legal systems
necessary for professional dealings with American and other non-Japanese lawyers, judges and
other legal professionals in the course of their legal practice or at international legal
conferences and meetings. In addition, through exercises on how to conduct legal research on
American law, how to analyze cases, how to analyze statutes, how to conduct a trial, and how
to deliberate a case, students will receive some practical training to assist them in their future
legal careers.
評 価 方 法
A student’s final grade will be based on the student’s results on a final examination [and
a possible midterm examination] (70%), and class participation, preparation and effort (30%).
教
材
There is no textbook for this course. Materials from various sources written in English will
be distributed in class. The materials will be provided to the students in advance so they can
prepare for each class.
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
比較法Ⅲ(アジア法)
蔡 秀卿
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
まず、
「比較法」科目群において「アジア法」を開設する意義について説明する。
経済のグローバル化をはじめとする諸分野のグロバール化に伴って、法学各分野においても、グロー
バル化により新たに生じた法的問題への対応や、グローバル化の下での空間の法秩序の再構築が求めら
れていることから、近時、アジア(又は東アジア)共通法の形成論又は法統合論が始動している。アジ
ア共通法の形成可能性を論ずるには、アジア各国の法を精査し理解し各国間の普遍性と特殊性を析出す
るという比較法的作業が前提となる。そのため、比較法の枠組みにおいて、従来モデル法として追随し
てきた英米法や独仏法にとどまらず、共通法形成論の基盤として探究していくためのアジア各国の法も
取り入れる必要がある。
また、このような学問的発展を直接的目的としないとしても、日本社会の実態から見ても、200 万を
超える外国人が日本社会に定住し様々な活動を行っており、そのうち殆どがアジア諸国の人々である。
多文化共生が求められる日本社会においてはその内実はアジア諸国との共生であり、アジア諸国との関
係が緊密なものとなっており、また、これらのアジア諸国の人々へのリーガルサービスのニーズが高ま
りつつある。これと相俟って、日本国内の裁判実務にとどめて見た場合にも、たとえば国際私法事件で
はアジア各国の法を調査し正しく理解し的確な法的判断をする必要があるとされるケースも増えつつ
ある。このように、アジア各国の法を調査し正しく理解することが、英米法や独仏法と同様に、現在の
日本社会や法実務においても求められているのである。
とはいっても、本授業では、アジア各国の法のすべてを対象とすることは不可能であり、中国法およ
び台湾法を中心に紹介する。理由は、中国は、日本との関係では政治面や社会面についてなかなか良い
関係に発展しないが、経済面については、日本を追い抜いて世界第 2 位の経済大国となっており、米国
や EU も無視できない国となっており、日本企業の中国進出の活発化も続いているという事実があり、
また台湾は、日本との取引活動が増えているのみならず、歴史・社会・文化上日本との深い関係をもっ
ており、本年三度目の政権交替を成し遂げさらなる民主化を実現しており、日本社会に親しまれており、
法学分野においても日本と同じく大陸法系を継受した経験を有しており法文化面でも類似性があり、日
本から見れば理解しやすい部分が少なくないからである。
72
また、本授業は、中国法及び台湾法を対象とするが、法実務に携わるために必要最低限の基礎知識、
すなわち中国および台湾の法規範体系・法源、統治制度、行政と法、民事財産法、司法制度・紛争処理
制度、国際私法に絞って説明する。
したがって本授業は、中国法及び台湾法に関する基礎知識を修得することによって、法曹としての国
際感覚を涵養し、日中・日台国際事件における的確な法的判断を為す能力を身に付け、リーガルサービ
スの質の向上を図ることを目的とする。
授
授
業
業
内
計
授業の方法は、講義式と双方向式を併用する。双方向式を用いるのは外国の法制度を理解するには日
本の法制度との比較の観点から学ぶことが重要であり、受講生が日本の法制度につきどこまで理解でき
ているのかを確認するためである。
容 第1回 中国の法規範体系・法源
画
中国の法規範体系・法源を成文法とその他に整理することを前提として、前者につき憲法、全
人大・その常務委員会立法、最高人民法院の司法解釈、国務院立法(
「行政法規」
)
、地方立法、
規章(行政規章)
、および特別行政区法を、後者につき「指導案例」
、共産党内規を説明する。
第2回 中国の統治制度
全人大および地方各級人民代表大会、憲法保障の基礎的大衆性自治組織、民族自治地区機関を
中心に説明する。
第3回 中国における行政と法
日本の行政法から見た中国の特徴的な実定行政法律(行政許可法、行政処罰法、行政強制法)
を中心に解説し、関係「指導案例」を取り上げ検討する。
第4回 中国の民事財産法
中国の民法通則、物権法、契約法(合同法)
、不法行為法(侵権行為法)を中心に概略的に説
明する。とりわけ日本と比べ特徴的な点を紹介する。
第 5 回 中国の不正競争禁止法及び製造物責任法制
中国の不正競争禁止法及び製造物責任法制につき概説する。
第6回 中国の司法制度・紛争処理制度(1)
中国における「司法制度」
・
「司法機関」の概念、中国の司法制度の特徴、裁判制度、検察制度
について日本法と比較しながら説明する。
第 7 回 中国の司法制度・紛争処理制度(2)
中国の裁判外紛争処理制度(調停制度および仲裁制度)とその実態について説明する。
第 8 回 中国の国際私法
中国の国際私法の一般法である「渉外民事関係法律適用法」と最高人民法院の関係司法解釈
を解説する。
第 9 回 台湾の法規範体系・法源
台湾の法規範体系・法源を憲法(大法官解釈を含む)
、法律、地方自治立法、法規命令・行政
規則、判例・司法解釈に分けて、それぞれの意味や日本法との違いを説明する。
第 10 回 台湾の統治構造及び人権保障
「五権分立」の原則、
「多元司法」
、中央と地方との関係の原則の下で国の統治機構の特徴や地
方制度の特色を説明する。また、人権保障の展開も触れる。
第 11 回 台湾の司法制度
台湾の「司法四元」
、違憲法令審査機関である大法官などを中心に説明する。
第 12回 台湾における行政と法
日本の行政法から見た台湾の特徴的な実定行政法律(行政手続法、政府情報公開法、行政執行
法、行政罰法、訴願法、行政訴訟法)を中心に解説し、重要行政判例を取り上げ検討する。
第 13回 台湾の民事財産法
台湾の民法総則、契約法、物権法、不法行為法(侵権行為法)を中心に概略的に説明する。
第 14回 台湾の企業法及び国際私法
台湾の企業法と及び国際私法(
「渉外民事法律適用法」
)を概説する。
73
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第 15 回 台湾の民事紛争処理制度
台湾の民事訴訟法や裁判外紛争処理制度(調停制度および仲裁制度)について説明する。
・中国語(簡体字・繁体字)の能力は特に要求しない。基本的に日本語で授業を進める。
ただ、中国法・台湾法に関する法情報を提示するため、是非法情報・法文献を自ら調べ理解するよう
に努力して欲しい。
・各回のレジュメ・資料は Web 上の教育支援システムで掲載する。これと、参考書、ネット等で調べる
法情報を利用して予習しておいた上授業に臨んでください。
・授業後、何が理解できているか、できていないかを自己確認し、とりわけ日本法との違いがどこにあ
るかを整理してください。そして日本の法制度の意義を再確認してください。
講義式および双方向式の授業方法を併用することを通じて、中国法・台湾法の基礎知識を獲得するこ
とができるほか、日本法との違いを理解し日本の法制度の意義等を再確認し又は再検討し、日中・日台
国際事件において必要な法情報を調査し正しく理解し的確な法的判断を行う能力、及び、日本社会に居
住している外国人に何をどのようにしてリーガルサービスを提供することができるかを考える力を身
に付ける。
定期試験 70%と平常点(授業で 2 回課すレポート)30%で評価する。
<中国法>
教科書は指定しない。基本的に Web で掲載するレジュメ・資料にしたがって授業を進めていく。予
習や復習に当たって、以下の参考書と授業時提示するものを読んでください。
・木間正道ほか『現代中国法入門(第 6 版)
』
(有斐閣、2012 年)
・小口彦太・田中信行『現代中国法(第 2 版)
』
(成文堂、2012 年)
・田中信行編『入門中国法』
(弘文堂、2013 年)
<台湾法>
下記のものを教科書とする。
・蔡秀卿ほか編著『台湾法入門』
(法律文化社、2016 年予定)
(教科書は、2016 年に出版を予定しているが、出版が授業開始に間に合わない場合、Web でレジュメ・
資料を掲載する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
「法の支配」の政治学
溝部 英章
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
法科大学院は、このたびの司法制度改革によって生み出された。その人的基盤を拡充する役割を担う。
したがってそこで養成されるべきは、改革理念をもった法曹でなければならない。もとより「法の支配」
は全国民が担う。すべての国民が平等かつ対等の地位に立って、自分たちの社会秩序形成を自律的に進
めていくことが「法の支配」である。アマチュアたる一般国民のこうした秩序形成活動を、プロとして
支えるのが新しい法曹である。良き法曹たらんとする意欲をもつためには、まず「法の支配」の理念と
実際を承知しておく必要がある。
だがそのような意味での「法の支配」を実現しようとすることは、日本においては直接に政治問題
を惹起する。従来ややもすれば官治主義的な国家運営がなされてきたからである。その結果、国民の間
に統治客体でいいとする受動的意識が抜けず、能動的な統治主体への転換には、当の国民の側から抵抗
がある。
「法の支配」を実現するには、まずそれが政治問題であることを充分に認識しておく必要があ
る。
ただ本講義は 2 単位科目である。
「法の支配」理念に忠実であることが日本社会で引き起こすであ
ろう政治的諸問題の全貌を講義中に詳細に明らかにすることまではできない。そこでその時々の時事問
題(政治争点となる政策、制度、立法、裁判など)を事例研究しつつ、問題の所在を認識することに務
めたい。そのことを通じて法と政治の関係についても一定の理解が得られるであろう。実現されるべき
「法の支配」の政治的基盤について、たしかな視線を持てるようにするのが講義目的である。
容
「法の支配」によって実現されるべき自由を、
(1)政治的自由、
(2)経済的自由、
(3)人格的自由の
画 三つの分野に分けて考えていく。各分野 2 題ずつ、出題する。
昨年は、政治的自由分野では、
「集団的自衛権行使問題」
、
「国旗掲揚・国歌斉唱時の不起立教員処分
問題」を取り上げた。経済的自由分野では、
「談合はなぜ悪いのか」
、
「解雇権濫用法理を緩和すべきか」
を取り上げた。人格的自由分野では、
「臓器売買を許すべきか」
、
「売春誘引少女を処罰すべきか」を取
り上げた。
総計 6 題である。1 題につき、2 回の授業を費やす。出題説明の回と、受講生が解答を持ち寄って議
論する回とである。なお第 1 回は、法の支配の概要を述べ、講義の進め方について解説する回になり、
最後 2 回は、全員が自己の「法の支配」観を述べる回になる。
時事問題を取り上げるので、現時点では、どのような具体的問題を取り上げるかを述べることは出来
ない。第 1 回で提示することになるが、その後も関心の動向によって、臨機応変に対応していくことに
したい。
第 1 回:授業の進め方を説明し、本年採り上げる問題を発表する。その後、
「法の支配」について共通
の理解を得るべく、概要を説明して議論する。
74
第 2 回:第 1 回出題(政治的自由分野)の説明。問題についての質疑応答。
第 3 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。
第 4 回:第 2 回出題(経済的自由分野)の説明。問題についての質疑応答。
第 5 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。
第 6 回:第 3 回出題(人格的自由分野)の説明。問題についての質疑応答。
第 7 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。中間総括。
第 8 回:第 4 回出題(政治的自由分野第 2 回)の説明。問題についての質疑応答。
第 9 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。
第 10 回:第 5 回出題(経済的自由分野第 2 回)の説明。問題についての質疑応答。
第 11 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。
第 12 回:第 6 回出題(人格的自由分野第 2 回)の説明。問題についての質疑応答。
第 13 回:各自の解答持ち寄り。それに関する議論。
第 14・15 回:各自の「法の支配」観の表明。任意に具体的問題を採り上げ、その議論を通じて、
「法の
支配とは何か」について自己の見解を表明することにする。
なお詳しくは教育研究支援システムの授業ライブラリーにこれまでの各年の毎回のレジュメをアッ
プロードしているので参照されたい。
履修上の注意
本講義は、法を題材とする政治学の講義である。法を学ぶに当たって踏まえておくべき政治学の知見
を講義する。政治学的センスを磨きたい。
「法の基盤が政治にある」という見方に興味を覚える学生の
受講を望む。
なお全員が 7 回レポートを書くことになる。長大なサイズは要求されないが、それでも 40 字×40 行
を 1 枚として、最低 1~2 枚程度のものを 7 回書くよう、求められる。またそれに基づくプレゼンテー
ションと議論も必要になる。このような「負担」をいとわない受講生を求む。
求められる予習:各出題回において、コピー配布されたり、紹介されたりする文献を真剣に講読しなけ
れば、レポートが作成できないので、自ずから予習が要求される。
求められる復習:各持ち寄り回の授業後、クラスでの議論を振り返り、自己の所説のどこに問題があっ
たかが反省されることになる。
授業の到達目標
第 1 に、
「法の支配」を実現することの重要性と、日本社会の実際におけるその困難を自覚する。法
は日本社会の現実の中で存在している。法を学ぶに当たって持つべき現実感覚を磨くとともに、それだ
けにますます使命感と職業倫理が必要とされることを実感することである。
第 2 に、法の各分野を関連付けることができる、自分なりの統一的視点を持てるようになることであ
る。現実に生起する具体的問題には多くの法律分野が関係している。またいくつかの法分野から多角的
に考察する方が、複合的で奥行きのある視野を持てることになる。そのような多元総合的な考察方法を
身につけることも、到達目標である。
第 3 に、法曹に必要とされる 2 つのマインド(使命と責任の自覚、法曹倫理)がなぜ必要なのかを理
解できるようになることである。そのようなマインドを基準にしなければ、解けないような実際の具体
的問題に直面することを通じて、その必要性を認識することである。
第 4 に、7 つのスキル(法律専門職能力)のうち、とくに問題解決能力に重点をおくが、それを磨く
ために、他の 6 種のスキル(法的知識、調査能力、分析推論力、批判的検討能力、議論力、コミュニケ
ーション力)の向上も同時に目指されることになる。
以上の結果、本科目で 60 点を与えられ、単位を認定されるということは、現実の諸問題を「法の支配」
の理念、並びに「法の支配」的思考方法に従って解明できることを意味する。
評 価 方 法
成績は、配点 30 点の平常点(レポートと議論)と、配点 70 点の期末試験(論述式)の結果を合計し
て出す。合計して 60 点に達しないとき、単位は認定されない。
平常点は、授業における(1)各自の文章による見解表明、
(2)毎回の集団討論での各自の議論を資
料とする。問題を理解する力、ありうべき様々な見解の間で議論を成り立たせる力、それらをまとめて
展望を示すことができる立論力に焦点を当てて評価する。
評価基準は、第 1 に「法の支配」問題の理解度、第 2 に「法の支配」が関わる具体的問題を法学的に
論じる能力、第 3 に文章力と議論力におかれる。これら 3 種の評価の平均が 1 回ごとの評価となり、7
回の平均が平常点となる。
27~30 点:3 基準のすべてで満足すべき水準に達している。
24~26 点:3 基準のうち、2 つが満足すべき水準に達し、1 つが合格点に達している。
21~23 点:3 基準のうち 1 つが満足すべき水準に達し、他の 2 つが合格点に達している。
18~20 点:3 基準のいずれもで合格点に達している。
18 点未満:3 基準のそれぞれの到達不足度に応じて採点する。
なお公欠の要件をみたす欠席を除き、欠席は 1 回につき 1 点、遅刻(30 分以上は欠席とする)は 1
回につき 0.5 点を平常点から減点する。
期末試験は、各自の「法の支配」観が具体的事例を通じて表明されるように設問する。
評価基準は、第 1 に「法の支配」問題の理解度、第 2 に「法の支配」が関わる具体的問題を法学的に
論じる能力、第 3 に文章力におかれる。
63~70 点:3 基準のすべてで満足すべき水準に達している。
56~62 点:3 基準のうち、2 つが満足すべき水準に達し、1 つが合格点に達している。
75
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
49~55 点:3 基準のうち 1 つが満足すべき水準に達し、他の 2 つが合格点に達している。
42~48 点:3 基準のいずれもで合格点に達している。
42 点未満:3 基準のそれぞれの到達不足度に応じて採点する。
各出題に関して、資料を配布しつつ解説する。詳細な解説レジュメも配布する。
公共政策と法
中谷 真憲
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
本講義は、公共政策論についての基礎的な知識を身につけ、さらに公共性そのものについて深く考察
してもらうことを目的として進める。
公共政策は学際的領域であり、あつかう分野は多岐にわたるが、本講義ではどの政策分野を学ぶにあ
たっても基礎となる理論および、とくに今日的な意義を有する政策実例の解説を中心に進める。
容 第 1 回:公共政策論とは何か
画 第 2 回:大きな政府と小さな政府
1~2 回では、公共政策論そのものについての紹介と、その背骨と言える大きな政府、小さな政府論に
ついてとりあげる。日本の実態をデータで示す。
第 3 回:民主主義と多数決のパラドクス(1)
第 4 回:民主主義と多数決のパラドクス(2)アロー
3~4 回では、民主的決定のありかたについてアローらの議論をもとに考察する。これに絡んで二大政
党制の下ではなせ政策が収斂傾向を見せるかも説明する。
第 5 回:政府の失敗と市場の失敗(1)
第 6 回:政府の失敗と市場の失敗(2)
第 7 回:コモンズとアンチコモンズ
5~7 回では、政府の失敗と市場の失敗、それぞれの原因を考察し対処を考える。また公共財とは何か、
についても説明する。さらに、IT 時代の通信政策をとりあげ、技術革新に政策がどのように対応しなく
てはいけないのかについても考察し、論議する。
第 8 回:経済政策と信頼(1)ゲーム理論
第 9 回:経済政策と信頼(2)
第 10 回:ソーシャルキャピタルと市民参加
第 11 回:日本におけるソーシャルキャピタルと政策
8~11 回では政策と信頼の関連について、ゲーム理論とソーシャルキャピタル(社会関係資本)論の
観点から考察する。おもに 1990 年代以降の日本の不況と経済政策、および自治体におけるソーシャル
キャピタル活用例を取り上げる予定である。
第 12 回:エージェンシー問題
第 13 回:政策評価と PDS サイクル
12~13 回では、政策評価論を講義する。とくに、政策失敗のひとつの要因であるエージェンシー問題
を押さえた後、PDS サイクルをどう生かすべきか、考察する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第 14 回:多文化社会と移民政策
第 15 回:多文化共生を考える
14~15 回は、今日的な課題の一つである移民政策論をとりあげる。グローバル化時代に日本は移民問
題にどう取り組めばよいのか、諸外国の例を参照しつつ考える。
本講義は基本的にパワーポイントを基に進められる。また議論の参考となる資料を必要に応じて配布
し、それをもとにした討議の機会も設ける。参考すべき文献については適宜指示する。また、全体の中
で 2 回程度小レポートを課す予定である。
1)公共政策論についての基礎的な知識と理論を身につけ、今日的な政策課題の本質を理解すると共に、
公共性のあり方について深く考える力を養うこと。
2)これらを通じて、法曹としての使命・社会的責任を自覚するとともに、問題解決能力、分析能力、
批判的検討能力を培うこと。
能動的に考察して貰うため、上述のように授業の中で討議の機会は積極的に設けていく。
60 点を超える評価は、1)の目標を最低限度クリアできているかどうかで得られるものとする。
1)授業中の質疑・討議 10%
2)小テスト(小レポート) 20%
3)学期末テスト 70%
教科書はなし。パワーポイントと配布プリントで進めるので購入の必要はない。
参考文献:足立幸男・森脇俊雅編著『公共政策学』ミネルヴァ書房、2003 年
講 義 科 目 名 企業会計と法
担 当 者 名 新井 英植
76
配
単
講
当
学
義
目
授
授
業
業
内
計
位
年 2年次
学
期 秋学期
数 2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
的
本講義は、主として会社法の観点から企業会計を理解するとともに、さらに企業が公表する財務諸表
(計算書類)から企業の実態を読みとる力を習得することを目的とする。
財務諸表から企業の実態を読み取る力は、法律の実務に携わるうえで、備えておくべきものの一つで
あると考える。そのためには、企業会計の基礎知識を習得すること、またその知識を用いて企業を分析・
評価する力を養うことが重要である。会社法に基づく計算書類や決算手続、およびそれらが実際の社会
でどのように運用されているのかを理解することも大切であろう。本講義は、将来、企業法の専門家を
志す人にとっても有用な基礎固めになると考える。
容
授業計画
学期の前半から中盤(第1~9回)は、法律の実務に携わるうえで最低限必要
画 であると思われる企業会計の基礎知識(企業会計及び複式簿記の考え方、財務諸表の概要・種類・役割、
など)について勉強する。特に、重要な財務諸表である、貸借対照表、損益計算書については、しっか
りとした理解を求める。また、それに関連する財務分析の手法についても説明する。
講義の内容に関連する部分で、会社法及び関連省令等において規定されているところについては、逐
次、条文等と照らし合せながら理解を深める。
<予定しているテーマ>
・企業会計のフレームワーク
・複式簿記と財務諸表(計算書類)
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・連結財務諸表(連結計算書類)
・キャッシュフロー計算書
学期の後半(第10~13回)は、会社法にもとづく計算書類や決算手続きについて勉強する。また
監査役や会計監査人の監査報告についても理解する。ここでは、できるだけ会社法の規定などを参照し
ながら講義を進めたいと考える。
<予定しているテーマ>
・事業報告
・計算書類の承認手続き
・監査報告
学期の終盤(第14~15回)は、これまでに修得した財務諸表に関する知識を用いて総合的に企業
を分析する演習を行う。
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
<予定しているテーマ>
・財務分析(演習)
なお、講義では、会社が実際に公表している計算書類などを用いて実践的に財務諸表が理解できるよ
うに努める。
また、法律の解釈だけではなく実務的に企業会計が理解できるよう、講義内容を工夫したいと考える。
履修上の注意
・受講に際し、会計に関する知識は特に必要ない。
・予めレジュメ及び資料を配布するので、必ず持参すること。
・予習・復習については授業中の指示にしたがうこと。
財務諸表から企業の実態を読み取るための基礎知識を身につける。
計算書類に係る会社法の規定と実際の運用を理解する。
*具体的な内容等については、講義目的、授業内容・授業計画を参照のこと。
評価方法
①平常点
学期の途中で実施する小試験:30点(15点×2回)
・具体的な実施時期・方法等については授業において説明する。
・欠席については減点(1点/回を予定)する。
(公欠を除く)
②定期試験
学期末に実施する試験:70点
特になし。
必要なものについては授業中に指示する。
精神医療と法
南雲 智子・野田 隼人
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択必修
法曹の活動は,刑事責任能力,民事意思能力,後見事件,生活困難者への支援,その他多くの場面で
77
授
授
業
業
内
計
精神医療と交錯し,精神医療に対し,ときに批判的にときに協働的に行われる。精神医療や精神医療を
巡る諸制度に関する適切な理解は,その前提として不可欠である。
本講義では,精神医療と精神医療を巡る諸制度に関する基礎的な知識の習得とその適用能力の獲得を目
標とする。
授業方法は制度に関する知識伝達等について講義形式,設例への制度適用の演習等について双方向形
式,必ずしも体系的に整理されていない問題領域等について講師間の対話,を用いる。
容 第1回 精神医療制度概論(南雲)
画 第2回 精神保健福祉法の概要(南雲)
第3回 刑事責任能力(法制度)
(野田)
第4回 医療観察法(法制度)
(野田)
第5回 刑事責任能力の判断(鑑定・簡易鑑定)
(南雲)
第6回 医療観察法の実際(鑑定・審判・治療)
(南雲)
第7回 民事意思能力(野田)
第8回 成年後見制度(野田)
第9回 医療同意を巡る諸問題(南雲)
第10回 鑑定人尋問(南雲)
第11回 精神障害と刑事弁護(野田)
第12回 精神障害に関する福祉的諸制度(野田)
第13・14回 施設見学(医療観察法病棟・一般精神科病棟)
第15回 精神医療と法の今後の課題
講師の都合により講義内容が前後することがある。
テーマはいずれも憲法,行政法,民法,刑法,刑事訴訟法といった基本的な法律科目に隣接する領域
に関するものであり,基本科目に関する一応の理解を前提とする(未履修科目については適宜配慮す
る)
。
基本的に予習は求めないが,設例検討のために講義中の集中が,獲得した知識の長期間の保持のために
講義後の十分な復習が要求される。
授業の到達目標
将来,精神医療を巡る諸制度に関連する事案においては,眼前の課題の解決に際し,精神医療を必要
とする者の自己決定と医療の必要の相克といった問題が同時に検討されることとなる。この検討は既存
制度の枠組にのることで果たされる場合もあるが,個別的検討を要することもすくなくない。将来,そ
のような事案に遭遇した際に,それと認識して適切な調査・検討に入り,事案の解決と精神医療を必要
とする者の権利擁護を適切にはかることができるだけの知識とその適用能力を得ることが目標である。
評 価 方 法
試験の成績,講義での応答と学期中のレポートで評価する。割合は平常点30パーセント,定期試験
70%とする。
教
材
講義時に資料を配付する。
履修上の注意
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
知的財産法講義Ⅰ
三山 峻司
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
知的財産法(無体財産権法)の各法およびその周辺法の民事法における位置付けや概要を理解した上
で,
「知的財産講義 I」では特許法を,
「知的財産法講義 II」では著作権法を中心に基本的知識の修得に
努める。
「講義 I」では特許法を「講義 II」では著作権法の中核となる基本的概念の理解と論点がどこにある
かを明確に把握できるようにし,関係する代表的な裁判例をあわせて紹介する。また,特許権侵害論と
ともに損害論における損害概念についても基本的な考え方を理解できるようにする。侵害訴訟と並行し
て提起される無効審判手続及び審決取消訴訟にも言及してダブルトラックの仕組みを解説する。
講義の具体的な進め方は,各回の授業に先立って各回分の範囲を明示し,その該当箇所についての予習
が必要で,授業当日をどのように充実させるかについて学生の参加意識を高める方法を取り入れる。そ
の為に授業における毎回の割り当てやレポータを必要に応じて決めて進むこともある。
特許法と著作権法とをそれぞれ各15回でカバーするにはスケジュール的にタイトである。従って,
学生の自主的で積極的な課外の学習が必要不可欠である。
「知的財産法講義 I」
「知的財産法講義 II」において学習した事項を前提に,
「知的財産法演習」の受
講者には,具体的なケースを通して具体的に問題点の理解をさらに深める授業を展開する。
容 第1回 知的財産法の体系その1
画
知的財産法(無体財産権法)を構成する諸法の概括的説明を行い,民事法の中での位置づけを不
正競業の視点から説明する。
特許法・著作権法を含めた知的財産権の全体的輪郭の把握と,そこにおける特許法・著作権法の
相対的な特徴の把握に努める。第1回目に参考文献
や学習の仕方についても説明する予定であ
る。
第2回 知的財産法の体系その2
民事訴訟手続の中における知的財産訴訟手続の流れ・特許庁のルートの手続である審判手続・審
78
決取消訴訟など手続き関係を中心に概括的な全体を
俯瞰した説明を行う。
知的財産権侵害訴訟の特徴に触れつつ,知的財産権が侵害された場合には,どのようにそれらの
権利の保護が実現されるかの基本的な流れを把握す
ることに努める。
第1回・2回の講義を通して知的財産権の実体法と手続法の全体を大きく理解する。
第3回 特許権の保護対象
特許法の目的と「発明」の概念(法2条1項の定義規定)
・種類及び「明細書」の記載を含めた
基礎的概念を中心に説明する。
時間が許せば,クレイムの具体的な作成にチャレンジしてもらう課題も取り入れる。
第4回 特許権の保護適格
特許の積極的要件として法29条の産業上の利用可能性・新規性・進歩性の意義と具体的な適用
について学習する。特に,進歩性の判断の具体的な手
法については,問題になることが多いので,
基本的な視点を的確に理解させる。
第5回 発明者の認定・特許を受ける権利(冒認出願)
・職務発明など
発明者主義から発明者の認定・職務発明・冒認出願の問題(平成23年改正の内容を踏まえて被
冒認者の救済策)について理解する。
職務発明の成立要件,相当対価請求や消滅時効などの職務発明の諸問題についても触れる。
第6回 特許権取得手続(特許の審査手続)
発明を特許権という法律上の独占排他的な権利にするための出願から審査に至る過程(権利創設
過程)を理解する。
審査過程における特有の問題と審査過程における諸問題が侵害訴訟の過程に反映してどのよう
に立ち現れるかという側面を的確に理解する(ダブルト
ラックという二元的手続が相互にどのよ
うに交錯するかを理解する)
。
第7回 審査手続と審決取消訴訟
審判手続の結果としての審決とそれに対する司法判断としての審決取消訴訟の基本的構造を理
解する。また,侵害訴訟とのダブルトラックに関する問
題点がどのような点にあり,それらの
回避策,諸改正の内容についても注意を払って学習する。
第8回 特許権の効力及びその制限(特許権の侵害その1)
侵害訴訟における各論に入る前に,特許権の効力と制限についての実体法の法文の構成と意味を
理解する。
要件事実・抗弁・再抗弁の位置付けと計画審理の現況を踏える。
第9回 クレイム解釈と文言侵害(特許権の侵害その2)
侵害訴訟におけるクレイムと被疑侵害対象物件(イ号物件)との対比の関係を意識したクレイム
解釈の手法と文言侵害の基本的な考え方(母型)を修得
する。
特に,104条の3の無効の抗弁(権利不行使の抗弁)が立法化された前後のクレイム解釈の変
化を意識して学習する。
第10回 均等侵害と間接侵害(特許権の侵害その3)
侵害訴訟において,特許権者の特許発明の技術的範囲が広くなる保護範囲である均等侵害と直接
侵害行為の準備行為としての間接侵害について,そ
れぞれの認められる要件と該当性について学
習する。均等侵害と間接侵害の最近の裁判例の動向についても紹介する。
第11回 特許侵害の抗弁事由(特許権の侵害その4)
侵害訴訟において,侵害者である被告の立場から非侵害を主張する場合の抗弁事由(先使用権・
試験研究のための実施など)を学習する。
第12回 損害賠償その1(損害立証のための推定規定を中心に)
侵害訴訟における損害賠償論の基本と特許法に用意されている損害額立証の為の各種の推定規
定についての理解を深める。
特に,特許権侵害における逸失利益の内容(特に限界利益の意義)について学習する。
第13回 損害賠償その2(損害立証のための諸手段を中心に)
前回に引き続き侵害訴訟における損害賠償に関連する各種の推定規定と派生論点及び損害額の
立証を実効あらしめるための規定(文書提出命令制
度・秘密保持命令制度ほか)について学習
する。
第14回 渉外要素のある侵害事件
知的財産権侵害訴訟の中でも特許権侵害訴訟を中心に渉外的要素が含まれるケースについての
論点(国際裁判管轄・準拠法など)について学習する。
79
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
教
法
材
第15回 補充・重点講義
これまでの講義の補充及び留意すべき注目裁判例並びに注目論点などについての解説を行う。
各回の授業の前に次回の授業において学習する範囲について予告した事項については,その該当箇所
について,裁判例の事案の読み込みを含めて,事前に予習が必要である。少なくとも事前に配付される
レジュメに即した部分の基本書の該当部分の読み込みは最低限度の予習として欠かせない。
「知的財産法講義 I」
「II」は,
「知的財産法演習」の受講の基礎知識となるもので,
「知的財産法講義
I」
「II」を受講した後に「知的財産法演習」に進む。
「知的財産法講義 I」
「II」の履修は,
「知的財産法
演習」を履修する為の前提となる基礎的知識を履修するので,
「知的財産法演習」を受講するものは,
「知
的財産法講義 I」
「II」を履修しておくことが望ましい。
特許法における基礎的知識及び中核となる論点の理解を行う。ケースにおける具体的な事実認定にお
ける論点の該当性の理解に繋げるための基本的視点を確立することを目指す。
学期末に実施する定期試験の成績(70%)
,予習を前提とした授業における質問・意見の内容や課
題として与えたレポート(30%)を総合的に評価して決定する。
その都度,関係する主要な参考図書文献類の紹介を行い,学生の便宜に供する。また,課題や予習の
ための資料等を必要に応じて配布する。特に指定はしないが,参考となる書籍をあげておく。
[特許法につき]
中山信弘「特許法」
(有斐閣)
高林龍著「標準特許法」
(有斐閣)
特許判例百選(有斐閣)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
知的財産法講義Ⅱ
三山 峻司
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
知的財産法(無体財産権法)の各法およびその周辺法の民事法における位置付けや概要を理解した上
で,
「知的財産講義Ⅰ」では特許法を,
「知的財産法講義 II」では著作権法を中心に基本的知識の修得に
努める。
「講義 I」では特許法を「講義 II」では著作権法の中核となる基本的概念の理解と論点がどこにある
かを明確に把握できることを目標とし,関係する代表的な裁判例をあわせて紹介する。また,著作権の
侵害論とともに損害概念についても基本的な考え方を理解することを目標とする。
講義の具体的な進め方は,各回の授業に先立って各回分の範囲を明示し,その該当箇所についての予
習が必要で,授業当日をどのように充実させるかについて学生の参加意識を高める方法を取り入れる。
その為に授業における毎回の割り当てやレポータを必要に応じて決めて進むこともある。多くの係争対
象となった著作物を具体的に示すようにパワーポイントの利用などを積極的に行いたい。
特許法と著作権法とをそれぞれ各15回でカバーするにはスケジュール的に相当にタイトである。従
って,学生の自主的で積極的な課外の学習が必要不可欠である。
「知的財産法講義 I」
「知的財産法講義 II」において学習した事項を前提に,
「知的財産法演習」の受
講者には,具体的なケースを通して具体的な問題点の理解をさらに深める授業を展開する。
容 第1回 知的財産法体系の中における著作権法
画
著作権法の目的や特色と共に著作物の意義と要件(著作物性及び創作性)を学習する。
特に,特許権などの産業財産権と対比した著作権の特徴について理解を深める。
著作財産権・著作者人格権・著作隣接権という構成の著作権法の建て付けについても把握する。
第2回 著作権法の保護対象(その1)
著作権法10条の著作物の種類に応じた保護対象(言語・音楽・美術・写真・建築物・プログラ
ムなど)について著作物の
要件との関係を踏まえて検討する。また,応用美術(実用品に表わされた表現)などにおける著
作物性の限界についても触れる。
例示著作物が侵害訴訟になった場合の対象となる表現の特定の仕方や保護範囲についても検討
する。
第3回 著作権法の保護対象(その2)
特殊な著作物として「編集著作物」と「データベース」の著作物について,その成立要件等を理
解する。また,二次的著作物の意義と原著作物の著作者
の権利との関係などについて学習する。
第4回 著作権の権利主体
創作者の認定(著作者)と著作権者・職務著作・映画著作物の著作権者などについて学習する。
ここでは,著作者が著作権者となる基本型と著作者と著作権者が分離する特殊型のあることを理
解すると共に特殊型(職務著作・映画著作物)の成立す
る場合の要件を理解する。
第5回 著作権の権利内容(その1)
[著作財産権]
支分権(著作権法21条乃至28条)の権利内容と権利の救済について,裁判例を紹介しながら
検討する。
80
第6回 著作権の権利内容(その2)[著作財産権]
前回の講義に引き続き,支分権(著作権法21条乃至28条)の権利内容と権利の救済について,
裁判例を紹介しながら検討する。
第7回 著作権の権利内容(その3)
[著作者人格権]
著作者人格権の権利内容と権利の救済について,裁判例を紹介しながら検討する。
著作財産権との関係や調整についての問題意識をもってもらう。
第8回 著作権の権利内容(その4)
[譲渡・出版権など著作物の利用]
著作物の譲渡や許諾及び出版権設定などによる著作物の利用について説明する。最近の改正につ
いても触れる。オーバーライドの問題やライセンス契
約の契約実務についての契約法との関係の
問題についても触れる。
第9回 著作権の制限と限界(その1)
私的使用・非営利演奏・引用などの著作権の制限規定を中心に学習する。
平成24年改正による限定制限列挙の制限規定とフェアユースや条約との関係についても言及
しつつ期限規定の存在意義についても学習する。
第10回 著作権の制限と限界(その2)
第9回に引き続いて制限規定と保護期間などの問題について学習する。
著作権の制限規定が問題となった裁判例や保護期間についても触れる。
第11回 著作隣接権
著作隣接権制度の制度的意義と著作権との関係について理解する。
実演家・レコード製作者・放送事業者の有する権利内容とその制限について触れる。
第12回 著作権の侵害と法的救済(その1)
[侵害論を中心に]
著作権の侵害論を中心に,その要件事実と「依拠」の必要性及び侵害と非侵害の分岐点について
理解を深めると共に関係する諸規定とこれまでの裁判
例を踏まえた学習をする。
加えて,デジタルとネットワーク環境下での社会状況を理解した上での著作権侵害係争の把握に
ついても検討する。
第13回 著作権の侵害と法的救済(その2)
[損害論を中心に]
著作権の損害論を中心に関係する諸規定とこれまで裁判例を踏まえて学習する。
各種の損害の推定規定の意味を理解する。
第14回 著作権の侵害と法的救済(その3)
[みなし侵害と立証の特則など]
侵害論の中での「みなし侵害」の理解と侵害及び損害立証のための特則手続きについて学習する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
法
材
第15回 補充・重点講義
これまでの講義の補充と確認及び適宜必要な改正や知財に関わる時事問題あるいは話題になっ
ている重要裁判例があれば触れる。
また,係争事
件における興味深い実務的な工夫にも触
れてみたい。
各回の授業の前に次回の授業において学習する範囲について予告した事項については,その該当箇所
について,裁判例の事案の読み込みを含めて,事前に予習が必要である。少なくとも事前に配付される
レジュメに即した部分の基本書の該当部分の読み込みは最低限度の予習として欠かせない。
「知的財産法講義 I」
「講義 II」は,
「知的財産法演習」の受講の基礎知識となるもので,
「知的財産
法講義 I」
「講義 II」を受講した後に「知的財産法演習」に進む。
「知的財産法講義 I」
「講義 II」の履
修は,
「知的財産法演習」を履修する為の前提となる基礎的知識を履修するので,
「知的財産法演習」を
受講するものは,
「知的財産法講義 I」
「講義 II」を履修しておくことが望ましい。
著作権法における基礎的知識及び中核となる論点の理解を行う。ケースにおける具体的な事実認定に
おける論点の該当性の理解に繋げるための基本的視点を確立することを目指す。
学期末に実施する定期試験の成績(70%)
,予習を前提とした授業における質問・意見の内容や課
題として与えたレポート(30%)を総合的に評価して決定する。
その都度,関係する主要な参考図書文献類の紹介を行い,学生の便宜に供する。また,課題や予習の
ための資料等を必要に応じて配布する。
特に指定はしないが,参考となる書籍をあげておく。
[著作権法につき]
松村信夫・三山峻司「要説著作権法(第2版)
」
(世界思想社)
中山信弘著「著作権法」
(有斐閣)
著作権判例百選[第三版]
[第四版]
(有斐閣)
81
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
知的財産法演習
三山 峻司
3年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
特許法と著作権法の領域の裁判例研究と問題演習が中心となる。
「知的財産講義 I」
「II」の内容と連動し,同講義で学習した基礎知識を事案を通じて掘り下げて具体
的ケースの中での適用を考える能力を養う。
特許権侵害訴訟と著作権侵害訴訟において代表的な裁判事例を中心に,実体法の基本的概念が,どの
ように議論され煮詰まるかを主体的に考え理解を深める。
授業方法は,裁判例と問題演習を組み合わせて具体的な係争で問題となった事例を判決内容と共に検
討しつつ,各論点について質問し回答を求めるなどしながら,受講者が積極的且つ主体的に関わるよう
に展開する。
授業当日の学生の参加意識を高めるため授業における毎回の割り当てやレポータを必要に応じて決
めて進むこともある。
受講者は,予め指示した文献や裁判例その他資料の予習をして,演習に望む必要がある。
容 第1回目 知的財産権侵害訴訟の開始から終了までの流れ
画
[検討課題項目]
民事訴訟の基本をベースに典型的な特許権侵害差止等請求事件を基に訴訟の開始から終了までの
第一審の審理過程の全体の審理進行の流れを理解
する。知財講義 I・II で学習した基本的概念がど
のような形で典型的な侵害訴訟に立ち現れるかを学ぶ。
イ号の特定・クレーム充足・包袋資料の意味・無効の抗弁・侵害論と損害論の峻別・計画審理・ダ
ブルトラックなどが具体的にどのように展開されるかを検
討課題とする。
ビデオを見て知的財産侵害訴訟全体の流れを理解してもらうので,予め配布されるビデオ教材のテ
キストは必ず第1回目の授業前には目を通して予習し
ておかなければならない。
[素材資料・裁判例]
(使用教材)予め配布するテキスト教材
第2回目 発明者の認定・特許を受ける権利・冒認出願など
[検討課題項目]
発明者の認定及び冒認をめぐる問題を中心に検討する。関連して,共願についても触れる。素材資
料にもとづき平成23年改正の内容と今後の問題点に
ついて検討する。
[素材資料・裁判例]
生ごみ処理装置事件(最判平成13年6月12日)
ブラジャー事件(東京地判平成14年7月17日)
第3回目 職務発明
[検討課題項目]
35条の職務発明の要件(現行法の改正経緯を踏まえる)と共に「相当な対価」の性質・算定方法・
対価請求権の消滅時効などの諸論点につき討論する。
外国における特許を受ける権利の職務発明規
定の適用についても検討する。また近時の改正に向けての動きにも触れる。
[素材資料・裁判例]
オリンパス最高裁判決(最判平成15年4月22日)
日立製作所最高裁判決(最判平成18年10月17日)
第4回目 クレイムの文言解釈を中心として/特許権侵害論における主張・立証(その1)
[検討課題項目]
典型的な特許権侵害訴訟の裁判例を素材として受講者にその主張・立証の過程について分析した結
果を報告してもらい全員で討議する(事前に素材の
裁判例を指示する)
。
知的財産権侵害訴訟の典型的な文言侵害の成否の訴訟パターンを学習し係争の展開の仕方を学び
つつ,事例を通じて明細書の読み方・公知文献の意
味・特許請求の範囲(クレイム)の解釈手法を
研究する。
また,複数主体が関与・介在する侵害についても注意を向ける。
計画審理などの実務的な動向についてもケース討論の中で理解する。
[素材資料・裁判例]
事前に素材の裁判例を指示する。
第5回目 均等論・権利行使阻止の抗弁(無効の抗弁)
・訂正の再抗弁/特許権侵害論における主張・
立証(その2)
[検討課題項目]
公刊された具体的な事例を素材にボールスプライン最高裁判決(最判平成10年2月24日)に示
された均等侵害の5要件の分析,均等要件の証明責任の
分配などについて検討する。同最高裁判決
以降の下級審における均等侵害論の流れについても紹介する。また,キルビー最高裁判決(最判平成1
2年4
月11日)と特許法104条の3(権利行使阻止の抗弁)の改正経緯と意義及び104条の
3の改正前後のクレイム解釈についても意識して学習する。あわせ
て訂正の再抗弁についても検討
する。
82
[素材資料・裁判例]
ボールスプライン最高裁判決(最判平成10年2月24日)
キルビー最高裁判決(最判平成12年4月11日)
その他事前に素材とする下級審裁判例を指示する。
第6回目 間接侵害・国内消尽/特許権侵害論における主張・立証(その3)
[検討課題項目]
インクカートリッジ最高裁判決を念頭に具体的な設題を通して,特許製品の再利用行為と特許権の
国内消尽との関係について検討する。あわせて,従前
の使い捨てカメラの再利用の許否が争点とな
ったコニカ使い捨てカメラ仮処分事件や富士フィルム使い捨てカメラ[写ルンです]事件や近時の消尽
が問題
となった裁判例のアプローチの方法との差を前記最高裁判決と比較して理解を深める。
間接侵害についても客観的間接侵害・主観的間接侵害についての裁判例の動向に触れる。
[素材資料・裁判例]
インクカートリッジ最高裁判決(最判平成19年11月8日)
コニカ使い捨てカメラ仮処分事件(東京地決平成12年6月6日)
富士フィルム使い捨てカメラ[写ルンです]事件(東京地判平成12年8月31日)
その他事前に素材とする下級審裁判例を指示する。
第7回目 国際消尽・並行輸入/特許権侵害における主張・立証(その4)
[検討課題項目]
BBS最高裁判決を素材として,特許製品の並行輸入問題(国際消尽)につき検討する。あわせて
フレッド・ペリー最高裁判決など商標権・著作権の国際消
尽と比較検討する。
また,カードリーダー事件を素材に渉外的要素のある特許権侵害に基づく差止・損害賠償請求の準
拠法などについて属地主義の原則との関連を意識しつ
つ検討する。
[素材資料・裁判例]
BBS最高裁判決(最判平成9年7月1日)
フレッド・ペリー最高裁判決(最判平成15年2月27日)
カードリーダー事件(最判平成14年9月26日)
第8回目 損害賠償論
[検討課題項目]
特許権が侵害された場合における損害賠償額の算定のあり方について提供するケースを素材に検
討する。不法行為の基本的な損害賠償の構成と推定
規定の意味などを検討する。
侵害物や損害額の立証の為の証拠収集手続きなどについても取り上げる。
変形型として①単一人の複数権利の侵害②単一権利に複数権利者(共有など)のいる場合あるいは
③単一権利に複数侵害者のいるケースにおける損
害論についても触れる。
[素材資料・裁判例]
事前に素材とする裁判例または事例問題を指示する。
第9回目 著作物の要件(創作性)及び被疑表現物への適用範囲(表現上の本質的特徴の直接感得性)
[検討課題項目]
著作物性の要件としての「創作性」の意味を著作物の種類に応じて吟味する。
あわせて応用美術の著作物性についても検討する。
ここでは具体的な事件で問題となった具体的な被疑侵害対象物を意識した議論を行う。
侵害の成否の分岐において具体的な著作物の種類に応じて創作性要件がどのようにかかわるかに
ついて考察を及ぼす。
[素材資料・裁判例]
事前に素材とする裁判例または事例問題を指示する。
第10回目 著作者と著作権者(ゲームソフト[プログラム]の著作物性・著作財産権・著作者人格権)
[検討課題項目]
ときめきメモリアル事件を素材にゲームのストーリーの改変を題材にゲームソフト(プログラム)
と映像の著作物性や著作財産権及び著作者人格権の侵害
について検討する。
あわせてゲームソフトの映画の著作物性について,中古ゲームソフト事件についても議論する。
関連論点として,
「侵害主体性」との関係についても言及する。
[素材資料・裁判例]
ときめきメモリアル事件(最判平成13年2月13日)
中古ゲームソフト事件(最判平成14年4月24日)
その他事前に素材とする下級審裁判例を指示する。
第11回目 翻案・二次的著作物と原著作物の権利処理
[検討課題項目]
モンタージュ写真事件,江差追分事件,キャンディ・キャンディ事件等を素材に表現上の本質的特
徴の直接感得性の意義や翻案あるいは二次的著作物の
権利処理について検討する。
[素材資料・裁判例]
83
モンタージュ写真事件(最判昭和55年3月28日)
江差追分事件(最判平成13年6月28日)
キャンディ・キャンディ事件(最判平成13年10月25日)
第12回目 著作権侵害等の侵害主体性
[検討課題項目]
クラブキャッツアイ事件,ビデオメイツ事件,まねきTV事件,ロクラクⅡ事件等を素材に著作権
侵害の侵害主体について検討する。侵害主体性に関する下
級審判決にも留意しつつ,カラオケ法理
の射程について考える。また,デジタル・ネットワーク技術を利用したシステムとの関係における侵害
主体性の意義
についても学習する。著作権の間接侵害規定の改正の動きについても触れる。
[素材資料・裁判例]
クラブキャッツアイ事件(最判昭和63年3月15日)
ビデオメイツ事件(最判平成13年3月2日)
まねきTV事件(最判平成23年1月18日)
ロクラクⅡ事件(最判平成23年1月18日)
その他事前に素材とする下級審裁判例を指示する。
第13回目 著作権の制限
[検討課題項目]
「パロディ・モンタージュ写真事件」や「脱ゴーマニズム宣言事件」などを素材に引用の一般的要
件を中心に検討する。これと共に様々な著作権の制限規定
の適用事例について検討する。
著作財産権に関する制限規定と著作者人格権との関係についても合わせて考察する。
[素材資料・裁判例]
パロディ・モンタージュ写真事件(最判昭55年3月28日)
脱ゴーマニズム宣言事件(東京高判平成12年4月25日)
その他事前に素材とする下級審裁判例を指示する。
第14回目 キャラクター/著作物の利用・保護期間・複製権の時効取得・他の知的財産権との交錯
[検討課題項目]
ポパイ・ネクタイ事件やポパイキャラクター事件などを素材に漫画キャラクターの著作物性や漫画
の保護期間・複製権の時効取得などの論点について検
討する。関連して不正競争防止法や商標法
からのアプローチについても触れる。
具体的な紛争が実務上の訴訟でどのように組み立てられていくかを学習してもらう。
[素材資料・裁判例]
ポパイ・ネクタイ事件(最判平成9年7月17日)
ポパイキャラクター事件(最判平成2年7月20日)
第15回目 補充・重点講義
[検討課題項目]
これまでの演習の補充及び留意すべき最近の注目裁判例並びに注目論点などについての解説を行
う。自炊問題などにも触れる予定である。
[素材資料・裁判例]
その都度事前に明らかにする。
なお,各回を平板に進めるのではなく,受講者とも相談の上で,重点的に論点を選んで討論すること
もある。
履修上の注意
「知的財産法演習」は,その基礎知識を習得する「知的財産法講義 I」
「II」を履修していることが望
ましい。知的財産法の一般的な知識を前提に講義を進めるので,
「知的財産法講義 I」
「II」を履修して
いない場合は,相当に独力での準備を心掛けねばならない。
授業方法は,受講者の主体的積極的な議論により理解を深めることに重点が置かれる。毎回の授業後
に予告する裁判例・事例問題あるいは文献に関して,ケースの事案の読み込みを含めて,事前に予習が
必要である。
具体的な物や特許公報類などに基づいて裁判例を解説するのに役立てるための教材などの資料も工
夫して利用する。
事案検討のウエイトの置き方や進捗の程度については,開講にあたり受講者数などを参酌して具体的
に指示を行う。
授業の到達目標
重要裁判例を検討材料の一つとして,特許権侵害訴訟及び著作権侵害訴訟の典型的なパターンを理解
して,その中で,原告・被告の相対立する諸議論の中で重要論点がどのように展開するかについて理解
する。
相手方の主張を理解した上で,議論がどのように深化し裁判例が形成されていくかという過程を理解
し,知財係争事件のより一層の興味関心を持続するようにつなげたい。
受講者が,ケースに論点を当てはめて基本的な知識を踏まえて説得的に論点を展開できることを目標
とする。
評 価 方 法
学期末に実施する定期試験の成績(70%)
,予習を前提とした授業における質問・意見の内容や課
題として与えたレポート(30%)を総合的に評価して決定する。
84
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
「知的財産法講義 I」
「II」で使用した教材を引き続き使用する外に各回の授業に先立って課題や予習
のための裁判例を指定し,あるいは資料等を必要に応じて配布する。
また,市販されている複数の演習テキストの紹介も行う。
労働法講義
表田 充生
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
経済のグローバル化が進展していく中で、企業等は組織のあり方や活動面等において様々な変容を迫
られているが、このような社会経済の動向に伴って、労働法も種々の変化を求められている。労働法は、
変化する社会と密接な関係を有する身近な法であるが、労使間対立の内在的契機を常に有している法律
関係を対象として展開していく法領域でもある。具体的な労使紛争が発生した場合、その紛争解決には
まずは事実認定が重要となるが、次には法の適用場面におけるバランス感覚が非常に大切となってく
る。
本講義では、労働法を通じて法的思考を鍛錬していくことを目的とするが、そのために判例研究を中
心に展開していく。判例の事実関係をしっかりと把握し、その争点を理解し、妥当な結論を導き出せる
能力を磨いていくことにより、実践的な法解釈能力及び問題解決能力の向上を図っていきたい。
容
基本的には講義形式で行っていくが、質疑応答や議論する方式を採る場合もある。受講人数に応じて
画
討議する方式を増やし、双方向性を持たせることにより、各回のテーマについての知識と理解を深め
ていきたいとも思っている。
授業計画、及び、各回の講義内容(概要)は以下のとおりである。ただし、授業においては各回のテ
ーマの中でも重要な法律問題に焦点を当てて展開していく。
基本的には講義形式で行っていくが、質疑応答や議論する方式を採る場合もある。受講人数に応じて討
議する方式を増やし、双方向性を持たせることにより、各回のテーマについての知識と理解を深めて
いきたいとも思っている。
授業計画、及び、各回の講義内容(概要)は以下のとおりである。ただし、授業においては各回のテ
ーマの中でも重要な法律問題に焦点を当てて展開していく。
<第 1 回> イントロダクション~労働法の意義・理念~
労働法の基本的性格と特徴、最近の動向及び学び方について理解する。また、労働法と日本国憲法(労
働基本権)との関係、労働憲章(労働者保護法の一般原則)
、及び、労働条件決定の仕組み等の基本
的知識を理解する。
<第2回> 労働契約の成立
労働契約の成立に関する問題を取り扱う。使用者による採用の自由の問題、採用内定の取消し、及び、
試用期間満了後の本採用拒否の問題等について検討する。特に採用内定の取消しに関する判例につい
て検討する。
<第3回> 労働契約上の権利義務
労働契約に付随的な権利・義務、具体的には労働者の秘密保持義務及び競業避止義務、職務発明の問
題、並びに、使用者の安全配慮義務等を中心に検討する。特に競業避止義務に関する裁判例を中心に
検討する。
<第4回> 人事問題
配転・出向の問題を中心に検討する。前提としてわが国における人事制度の特徴についても確認した
うえで、使用者には配転命令権や出向命令権があるのか否か、仮にこれらの権限が使用者に認められ
る場合に何らかの制約が存するのかどうか等につき考察する。特に配転命令の有効性に関する判例に
ついて検討する。
<第5回> 労働条件の変更①
労働条件の変更がどのようにして行われ得るのかを確認した後、就業規則の意義、就業規則の不利益
変更について検討する。特に就業規則の不利益変更に関する判例、及び、同問題に係る労働契約法上
の規定について検討する。
<第6回> 労働条件の変更②
労働条件の変更のうち、労働協約による労働条件の不利益変更について検討する。労働協約の意義・
機能、労働協約の規範的効力の問題を確認したうえで、特に(上述の)不利益変更に関する判例を検
討する。労働協約の拡張適用の問題にも言及する。
<第7回> 懲戒処分
使用者の懲戒権の根拠、懲戒事由、懲戒処分の種類・内容、懲戒権の濫用、及び、内部告発の問題等
を検討することにより、企業秩序や職場規律についても考察する。特に懲戒権の濫用に関する判例、
及び、同問題に係る労働契約法上の規定について検討する。
85
<第8回> 労働契約の終了
使用者による労働契約の解約である「解雇」の問題につき、解雇制約法理を中心に、整理解雇及び変
更解約告知の問題、労働者による辞職の問題、並びに、定年問題等を採り上げて検討する。特に解雇
権濫用法理に関する判例、及び、同法理を明文化した労働契約法 16 条に関して検討する。
<第9回> 非正規雇用の問題
雇用形態の多様化が進展した状況下、非正規雇用の問題について検討する。特に、雇用保障上の格差
の問題の 1 つとも考えられる、有期労働契約の雇止めの問題を中心に採り上げて、判例及び労働契約
法上の関連規定を基に検討する。なお、職場における雇用の平等に関わる問題として、男女雇用機会
均等法の内容、及び、労基法上の男女同一賃金の原則等についても言及する。
<第 10 回> 労働時間・休日・休暇
労働時間の概念、時間外労働義務の発生根拠、割増賃金、過半数労働者代表、労働時間規制の適用除
外(管理監督者等)
、及び、年次有給休暇の問題について理解する。特に時間外労働義務及び割増賃
金の支払いに関する判例等を中心に検討する。
<第 11 回> 労働安全衛生と労災補償
労災補償制度(労災保険法も対象)
、労働災害の認定(特に過労死・過労自殺の認定)
、メンタルヘル
スの問題、及び、労働契約法に明示された安全配慮義務に関して検討する。特に過労死や過労自殺の
問題に関する判例を素材に使用者の責任について検討する。
<第 12 回> 労働組合
労働組合の結成(労組法上の労働組合の要件)
、ユニオン・ショップやチェック・オフ協定、及び、
団結権の法的性格について検討する。特にユニオン・ショップ及びチェック・オフ協定に関する判例
を中心に検討する。
<第 13 回> 組合活動
組合活動の保護、組合活動の正当性に関する問題(企業施設利用の組合活動の正当性、就業時間中の
組合活動の正当性等)について検討する。特に企業施設利用の組合活動の正当性に関する判例を中心
に検討する。
<第 14 回> 争議行為
争議行為の概念、争議行為の正当性(ピケッティングの正当性等)
、違法争議行為と損害賠償責任、
争議行為と賃金カットの問題、スト不参加労働者の賃金請求権及び休業手当請求権、及び、使用者の
争議対抗行為であるロックアウトの正当性等について検討する。特にスト不参加労働者の賃金請求権
及び休業手当請求権に関する判例を中心に検討する。
<第 15 回> 不当労働行為・団体交渉
不当労働行為制度の基本知識の理解を前提として、労働委員会の救済命令の裁量・限界、並びに、不
当労働行為の一類型である団交拒否の問題に関連して、義務的団体交渉事項、誠実交渉義務、及び、
複数組合併存下での使用者の中立保持義務の問題等について検討する。
履修上の注意
本講義では、レジュメを用いて労働法上のテーマごとに重要な法律問題を確認した後、主として判例
を素材としながら各問題について検討していく。判例研究を通じて、労使紛争がどのような背景の下に
生じているのか、労使の立場の相違をも念頭に置きながら、様々な法律上の争点につき十分に考察して
もらいたい。
授業の中で受講生には各判例についてどのように考えていくべきか等を常に問いかけながら進め
ていくので、単に授業を聴くだけではなく、積極的に参加する姿勢で臨んでほしい。事前に指定したテ
キストを通読し、労働法全体に関する基本知識につき予習しておいていただきたい。また、授業の前に
は各回のテーマに関して当該テキストの該当箇所をしっかりと読み、十分に予習をして臨んでもらいた
い。各回の授業において講義内容(授業計画)で記した事項全てを取り扱うことは時間的に難しいと思
われるため、授業ではテーマ内の重要な争点に関わる判例を中心に検討していく。授業時に取り扱わな
かった事項については、レジュメをベースにしながらテキストに基づく自習を求めることになる。
さらに、労働法改正のニュース等についても注意し、常に現実社会との接点を意識しながら考察し
ていくことも非常に重要である。
授業の到達目標
労働法の基本的な知識(
「法的知識」
)を前提として、実際に発生した労使紛争に対して、当該紛争に
おける事実関係(
「事実認定能力等」
)及び法的な争点の把握、適用すべき法規定の解釈・適用(
「法的
分析・推論能力」
)
、具体的かつ妥当な解決策を判例・学説を踏まえながら(
「法的議論・説得能力等」
及び「創造的・批判的検討能力」
)提示・説明することができる能力(
「問題解決能力」及び「コミュニ
ケーション能力」
)を身に付けること。
このような到達目標を達成するためには、労働法が必要とされ誕生するに至った経緯・背景(労働者
保護の必要性等)を十分に認識したうえで、労使紛争の解決につき、労使間においてバランスのとれた
“公正かつ妥当な”解決案を提示できるよう心掛けること(
「法曹倫理等」
「幅広い価値観」等)や、授
業内における議論を通じて他者の意見にも耳を傾けること(
「共感し、理解する能力」等)もまた求め
られる。
86
評
価
方
教
この到達目標を、上述の観点からみて最低限達成している場合に 60 点の評価を行う。また、この到
達目標を達成できるようにするため、授業は単に講義形式で進めるだけではなく、質疑応答や議論する
方式を採り入れ、双方向性を持たせていきたいと思っている。そのためにも各回のテーマに関する予
習・復習が大切になる。
法 ①平常点(授業内小テストに基づく平常点:配点 30 点)
:授業中(講義第 10 回目頃)に 1 回小テスト
を実施し、労働法上の基本的な争点の理解度を確認する。
②期末試験(論述式:配点 70 点)
:通常の期末試験(筆記試験)を実施する。メインの問題としては事
例問題を必ず出題するが、設題から事実関係を的確に把握し、法的な問題点及び法的論点を明示したう
えで、適切な論理の下、妥当な結論(解決策等)を提示できているか否かを確認する。
○成績評価の目安
・90~100 点:到達目標に達しており、特に優秀な成績の場合。
・80~89 点 :到達目標に達しており、優秀な成績の場合。
・70~79 点 :到達目標は概ね達しているが、優秀な成績を得るには至っていない場合。
・60~69 点 :到達目標に最低限達しているが、今後の学修も必要である。
・59 点以下 :到達目標の最低限に達しているとは認められない場合。
(単位認定のために再履修が必要である場合。
)
材 ○テキスト
労働法に関するテキストは多々存するが、最新の内容のものであり、かつ、記述内容・水準や分量の
程度から適切なものとして次の著書を指定した。
(春に最新版が出る可能性に注意を!)
水町勇一郎『労働法[第 5 版]
』
(有斐閣、2014 年)
(なお、講義自体は配布レジュメを中心に行い、テキストは授業中参照する場合はあるものの、主とし
て予習・復習用にと考えている。
)
○参考書
テキストと同様の趣旨に基づき選定しつつも、少し記述の視点の異なるテキスト等を若干参考書とし
て掲げておく。
(テキスト同様、春に最新版が出る可能性に注意を!)
土田道夫『労働法概説[第 3 版]
』
(弘文堂、2014 年)
菅野和夫『労働法[第 10 版]
』
(弘文堂、2012 年)
西谷 敏『労働組合法[第 3 版]
』
(有斐閣、2012 年)
村中孝史・荒木尚志『労働判例百選[第 8 版]
』
(有斐閣、2009 年)
大内伸哉『最新重要判例 200 労働法[第 3 版]
』
(弘文堂、2014 年)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
労働法演習
塩見 卓也
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本講義は,労働法の基礎知識を習得していることを前提として,現実に生起する様々な労働紛争を解
決していくために必要な実務家としての能力を,ゼミ形式において,各紛争類型ごとの典型的な具体的
事例を題材として,習得することをめざす。
容
下記に示した計画に沿って,個別的労働関係及び集団的労働関係についての紛争事例を題材に演習を
画 行い,具体的事案を分析し,それに労働法規をあてはめ,その結果を論理的に構成した文書として表現
する能力を身につけてもらう。
第1回
労使紛争の特徴と弁護士の役割,各種労使紛争解決システムの概要と選択,労使紛争におけ
る相談の在り方と必要な事前準備,労働訴訟におけ
る要件事実と主張・立証責任 西谷「労
働法」第2版 2頁~132頁
第2回
労働契約の成立,内定取消をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西
谷「労働法」第2版 27頁~31頁、41頁~49
頁,134頁~149頁
第3回
労働条件の決定・変更をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西谷「労
働法」第2版 54頁~60頁、150頁~177頁
第4回
労働者の義務,服務規律をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西谷
「労働法」第2版 178頁~214頁
第5回
職種変更,配転,出向,転籍をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西
谷「労働法」第2版 215頁~244頁
第6回
賃金,退職金,労働時間,休暇をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動
西谷「労働法」第2版 245頁~344頁
第7回
性差別をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西谷「労働法」第2版
98頁~115頁,345頁~355頁,431頁~489頁
第8回
小テスト
87
第9回
小テスト問題の検討
第10回 退職,解雇,雇止め等,労働関係の終了をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・
立証活動 西谷「労働法」第2版 388頁~489頁
第11回 労災,安全配慮義務をめぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西谷「労
働法」第2版 356頁~387頁
第12回 労働協約めぐる労使紛争の相談および訴訟における主張・立証活動 西谷「労働法」第2版
517頁~528頁、622頁~643頁
第13回 不当労働行為事件についての労働委員会および行政訴訟における主張・立証活動 西谷「労
働法」第2版 517頁~597頁,608頁~621頁
第14回 組合活動,争議行為めぐる労使紛争の相談における対処 西谷「労働法」第2版 598頁
~607頁,644頁~666頁
第15回 労働事件における労働者側弁護士・使用者側弁護士の役割と活動の在り方
以上の授業計画については,授業の進行度合い等を勘案し変更することがある。変更する場合は,履修
者に対し速やかに連絡する。
履修上の注意
本演習では,第2回以降、毎回の演習に先立って演習問題を配布する。授業は,演習問題につき履修
者の全員が検討し,解答をまとめていることを前提に,履修者への質疑応答,討論を通じて進める。
本演習は,労働法の基本的知識を有することを前提に行われるものなので,あらかじめ労働法講義を
履修しておくことが望ましい。
労働法の体系的理解のためには,基本書として西谷敏「労働法」第2版(日本評論社)を通読してお
くことを勧める。西谷労働法は,通読に適した基本書である。特に,司法試験にて労働法を選択科目と
することを考えている者は,事前に西谷労働法を通読しつつ,菅野和夫「労働法」や労働判例百選を参
照して判例・通説の考え方を確認するという学習法にて労働法講義の復習をしておくことが望ましい。
講義開始後については,予習として,あらかじめ指示される教科書参照ページを熟読した上で,演習問
題の解答を準備しておくこと。復習としては,各自のやり方で演習により理解した内容をまとめておく
ことを勧める。まとめノート作成は,司法試験直前時にそれを見直すことにより記憶喚起ができるもの
を作成することを心がけるのがコツである。
授業の到達目標
労働法の基本的な体系を理解するとともに,その理解を前提に具体的事案を分析し,労働契約におけ
る実質的非対等性を是正するという労働法規の根本趣旨を出発点として,労働法規を当てはめ,そこか
ら導かれる結論を論理的に構成された文章によって表現することができるようになることを到達目標
とする。すなわち,法曹実務家として労働紛争に対応するための基本的スキルを身につけることが,こ
の授業の目標である。
演習問題につき履修者の全員が検討し,解答をまとめていることを前提に,履修者への質疑応答,討
論を通じ,具体的事案の法的分析能力,法的議論・表現・説得能力,コミュニケーション能力等を身に
つけてもらう。
評 価 方 法 1 小テスト(配点30点)
:事例形式の論文筆記試験による小テストを実施し,労働法の理解度,事
案分析能力,論理的思考力,文章表現力を確認する。
2 期末試験論文式(配点70点)
:事例形式の論文筆記試験。事例から法的問題点を抽出し,論理的
に考え,法規範に具体的にあてはめを行い,妥当な結論を導くことができるか,を確認(労働法規,判
例法理の体系的理解度,論理的思考力,文章表現力等を判定)
。
3 小テスト以外の平常点は減点方式。正当な理由のない欠席で1点,遅刻・早退ごとに0.5点減点
する。
○成績評価の目安
・90~100点 :司法試験においても上位合格と評価されうる程度に労働法の理解,事案分析能力,
論理的思考力,表現力が高水準に到達していると評価される水準。
・80~89点:実務家に要求される程度の労働法の理解ができているといえる理解度に達しており,
かつそれに基づき具体的事案への対処を説得力の高い文章で表現できていると評価される水準。
・70~79点:労働法の理解ができており,かつそれに基づき具体的事案への対処を論理的に説得力
ある文章で表現できていると評価される水準。
・60~69点:労働法の理解が水準に達しておりており,かつそれに基づき具体的事案への対処を論
理的に構成された文章で表現できており,以後の自習によって司法試験合格水準の答案を作成する能力
を身につけることが見込まれる水準。
・59点以下 :労働法の理解が水準に達しておらず,自習によっても具体的事案を分析して論理的に
構成された説得力ある文章に表現することができる水準に到達することがきわめて困難であると判断
される。単位認定のためには,再履修が必要。
88
教
材
演習問題は適宜配布する。
◇ 参考書
西谷敏「労働法」第2版 日本評論社 4700円+税
菅野和夫「労働法」第十一版 弘文堂 6200円+税
労働判例百選第8版 有斐閣 2600円
労働事件審理ノート第3版 判例タイムズ社 3150円
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
倒産法講義Ⅰ
釜田 佳孝
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本講義の目的は、倒産法講義Ⅱと併せて、各種倒産処理法制の基本的な理解と、破産法および民事再
生法の修得にある。
本講義では、教科書1の叙述にしたがって、倒産処理手続全体を概観した後、倒産実体法のうちの個
別の債権の行使、担保権の処遇、保証・物上保証・多数債務者、取戻権、契約関係の処理・その他の法
律行為まで(倒産実体法①)を、教科書1を中心に、教科書2を補充的に用いて、教員が作成するレジ
ュメを使って説明するとともに、副教材などを使って質問(議論)形式で理解を深めてゆく。
倒産法講義Ⅱでは、倒産実体法のうちの相殺権と否認権(倒産実体法②)と、倒産手続法としての私
的整理の概観を説明した後、破産法、民事再生法に絞って講義を行うので、本講義を受講する方は、秋
学期における倒産法講義Ⅱも受講されたい。
なお、倒産処理におけるさらなる専門能力を高めるために、本講義以外に「倒産法演習」および「企
業会計と法」も受講されることをお勧めする。
容
各講義における授業内容と授業計画は、下記のとおりであるが、各講義で説明し、質問(議論)する
画 具体的な内容と問題点は、事前に、TKCなどで配布するレジュメその他の関係資料において提示する。
(倒産法総論)
第1回~第3回 倒産法総論(倒産と倒産法/倒産法制の全体像)
倒産処理制度の全体像を概観した後、同制度の必要性と理念、倒産処理手続の全体構造を説明する。
受講生にとっては、各種倒産手続の名称、特質、構造、根拠法令、実務の運用などの骨格部分を把握す
ることが課題である。
(倒産実体法①)
第4回~第6回 債権の行使(破産債権・再生債権/財団債権・共益債権/個別の債権)
ここでは、倒産実体法のうちの債権の行使について講義する(教科書1では、第2章第1節の「総論」
、
第2節の「債権の行使」の部分)
。各倒産手続においては、債権の種類に応じて、手続的拘束力(個別
的権利行使の禁止)が及ぶものとそうでないものがあり、また、優先順位や権利行使方法に差異が設け
られているので、各債権の種類に応じた手続上の処遇、権利行使方法を理解することが課題である。
第7回~第9回 担保権の処遇(別除権)
破産、民事再生では、担保権はそれら倒産手続に拘束されない別除権として、担保権実行による債権
回収が行える。しかし、担保権であっても別除権と扱われないものもある。また、別除権と扱われる担
保権であっても、一般の債権者との関係で、その実行が阻止されたり、担保権が抹消されるなどの影響
を受けることもある。さらに、被担保債権の一般の債権としての権利行使については、無担保債権者と
異なり、基本的に担保権でカバーできない不足額の範囲を立証し、かつ、その範囲内でのみ配当・弁済
にあずかれるなどの不利な面もある。このような各倒産手続における担保権の処遇の問題を理解するこ
とがここでの課題である(教科書1では、第2章第3節の「担保権の処遇」の部分)
。
第10回~第11回 保証・物上保証・多数債務者
いわゆる多数債務者の全部または一部の倒産の問題を取り扱う。ここでは、主債務者が倒産した場合
(破産あるいは民事再生の開始)
、債権者は保証人や物上保証人との関係で当該倒産手続でどのような
権利行使ができるか、保証人・物上保証人は当該倒産手続でどのような権利行使ができるか、あるいは
保証人や物上保証人が倒産した場合、債権者は当該倒産手続でどのような権利行使ができるかといった
問題を扱う。ここでは、
「債権者優先主義」
、
「手続開始時現残存額主義」の理解を中心に、民法の関連
規定の理解を前提に、倒産法の規定ではそれら関係人がどのような債権回収をすることになるかを理解
することが、ここでの課題である(教科書1では、第2章第4節の「保証・物上保証・多数債務者」の
部分)
。
第12回 取戻権
取戻権は、倒産債務者の財産管理機構との関係で、所有権などを根拠に、管理機構が占有する財産を
自己に引き渡すように請求したり、自己が占有する当該財産につき管理機構からの引渡要求を拒絶でき
る権利である。取戻権には、倒産法以外の実体法規定から導かれる「一般の取戻権」と、倒産法上特別
に認められる「特別の取戻権」があることを理解の前提として、各取戻権の内容と、その変形としての
代償的取戻権を理解することがここでの課題である(教科書1では、第2章第5節の「物権・その他の
権利-取戻権」の部分)
。
89
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
90
価
方
法
材
第13回~第15回 契約関係の処理、その他法律行為
ここでは、倒産手続(破産あるいは民事再生)開始後における倒産債務者の財産変動が倒産手続に及
ぼす影響、双方未履行双務契約の処理、倒産を理由とする解除特約の効力などの問題を取り扱う。破産
と民事再生では、一般的に開始後の財産管理処分権の帰属に差異があるため、開始後の倒産債務者の財
産処分の効果にも相異がある。開始時に双方未履行双務契約が存する場合、各倒産手続の関係でどのよ
うに処理するのかがさまざまな契約類型毎に問題となる。倒産解除特約についてはその効力について議
論がある。ここでは、それら開始後の財産変動を各倒産手続との関係でどう取り扱うか、双方未履行双
務契約による倒産法特有の処理とはどのようなものか、それが適用される場面はどのような場合か、倒
産解除特約の効力について理解することが課題である(教科書1では、第2章第6節の「契約関係の処
理、その他法律行為」の部分)
。
1 理解度を高め、専門能力を習得するために、基本的理解について説明する中で、できる限り質問(議
論)により理解を深める手法で行う。受講生は、事前に配布されたレジュメや資料に沿って、あらかじ
め講義前に指定された教科書・指定図書その他の文献・資料を精読のうえ予習をなし、レジュメの問題
点について自分の回答を準備しておくこと。また、講義終了後は質問、副教材の利用などにより講義内
容を確実なものにすること。
2 レジュメや講義で取り上げる副教材の問題に対する解答は、教材等で読み取ってわかった段階では
終わらず、できるだけノートに簡潔にまとめる習慣を身につけること。
3 講義では、レジュメに沿った説明をするとともに論点を問題点として質問するので、受講生は必ず
意見を述べること。
意見の述べるに際しては、次のような点をよく注意すること。
①簡にして要を得た表現を心がけること。
②判例、学説等他人の意見等を引用するような述べ方ではなく、それらを自分なりに理解したうえで意
見として述べること(このことで、本当に理解しているか、どの程度まで理解しているかが判ります)
。
③意見を述べる際には、理由と結論を分けて順序立てて述べること。
④ 自分の意見の正当性を裏づける根拠条文や判例(特に最高裁判例)があるときは必ずそれらを引用
するか、それらを念頭に置いていることが判る表現を用いること。
⑤事例問の場合、必ず、事実認定のうえ、自分の法解釈を事実に当てはめる過程を経て、事例に沿った
結論を言うことになるので、かかる事例に沿った事実認定、法解釈、あてはめ、結論を言うようにする
こと。
⑥できれば他の受講生の意見に対する自分の意見表明も積極的に行うこと。
4 更に、深い理解と文書表現能力を養成するために、講義の内容に関してレポートの提出を課するの
で、受講生は次回の講義日にそれを提出しなければならない。提出期限を徒過したレポートは採点の対
象とならない。
このレポートについては、次のような点をよく注意すること。
①自筆で書くこと(ワープロは認めない)
。要領は次のとおり。
ⅰ)用紙は指定のものを用いること。
ⅱ)黒の万年筆かボールペンを使用すること。
ⅲ)削除する部分は二重線できれいに消すこと。
②簡にして要を得ていること。
③字は、達筆である必要はないが、できるだけ丁寧に書くこと。
④結論と理由を分けて順序立てて論述すること。
⑤自分の論述の正当性を裏づける根拠条文や判例(特に最高裁判例)があるときは必ずそれらを引用す
ること。
⑥事例問の場合、必ず、事実認定のうえ、自分の法解釈を事実に当てはめる過程を経て、事例に沿った
結論を論述することになるので、かかる事例に沿った事実認定、法解釈、あてはめ、結論を記載するこ
と。事実認定やあてはめが落ちているレポートを散見するが、総論部分だけで各論部分のない論述とな
り、評価は低い。
⑦優秀なレポートは、そのコピーを他の受講生に配布するので、自分のレポートと比較して、更なる向
上に努めること。
破産法と民事再生法をベースとした倒産法の理念・体系、解決手法を習得し、将来として実務におい
て倒産処理とかかわった場合に、倒産処理分野において果たすべき法曹の使命・責任を自覚したうえで、
法曹倫理に適ったマインドを持って、的確な分析、事実認定、問題解決ができる素養を身につけること。
1 発言点及びレポート(配点30点)
発言点は、各講義時における受講生の発言内容を個別に評価して積算し、レポートも個別に評価した
ものを積算のうえ、両者の積算点を30点を上限として評価する。
2 期末試験(配点70点)
事例形式の筆記試験で行う。内容は論述式であり、短答式は用いない。
3 欠席による減点
出席は当然であるので加点対象とはならない。始業後 30 分を越える遅刻及び60分を経過しない早
退は欠席扱いとする。欠席は試験の評価から 1 点の減点,遅刻や早退は 0.5 点の減点とする。
〔教科書〕
1をベースとして使用するが、同書では不十分な部分などについて2を補充的に使用する。
1 山本和彦外著「倒産法概説(第2版補訂版)
」
(弘文堂)
(2015)
ロースクール生にとってボリューム的に適量だが、2と比較して説明不十分な部分があり、また、会
社更生など本講義の対象外の部分も含まれている。基本書としても十分役立つ。
2 伊藤眞「破産法・民事再生法(第3版)
」
(有斐閣)
(2014)
破産と民事再生のみに絞った概説書で、将来の実務においても十分に耐えうるほどあらゆる点につい
て詳述されている。本書を基本書とすることもできるが、ロースクール生にとっては大部で全部を読み
込むのは大変かも知れない。
3 「現代倒産手続法」
(中島弘雅ほか)
(有斐閣アルマ)
(2013)
概説書としては新しいが、ロースクールレベルの教材としてはボリューム不足。倒産法の基本的理解
には役立つ
4 「破産・再生」
(藤田広美)
(弘文堂)
(2012)
コンパクトであり、基本書として利用することも可能であるが、これのみでは不十分であり、重要な
論点については他の概説書等で補う必要あり
〔副教材〕
A 演習教材
1 三木浩一外編「ロースクール倒産法(第3版)
」
(有斐閣)
(2014)
演習用の教材であり、講義でも、問題点をここからも出題する。
2 山本一彦編著「倒産法演習ノート(第2版)
」
(弘文堂)
(2012)
演習用の教材であり、1と異なり、設問に対する解説と解答例があって、参考となる。講義でも、
参考箇所を指摘したり、問題をここから出題することがある。
B 判例
1 青山善充外編「倒産法判例百選(第 5 版)
」
(有斐閣)
(2013)
言わずと知れた判例百選シリーズの一冊。2013に改訂版がでたばかり。重要判例につき深い理
解を必要とするときには役立つ。
2 瀬戸英雄外編「倒産判例インデックス(第3版)
」
(商事法務)
(2014)
倒産判例150件が、概要、事実関係、判決要旨、本判決の位置づけ・射程距離に分けて、簡潔に記
載されており、短時間で当該判例の要点が把握できる。時間を有効に使う意味で、まず、これで当該判
例の要点を掴み、さらに深い理解がいるときは、前記の百選を読み込むという手法は効果的と思われる。
なお、講義では重要判例のダイジェストをレジュメとして配布するが、それには解説は付していない。
C 注釈
1 伊藤眞外著「条解破産法(第2版)
」
(弘文堂)
(2014)
2 竹下守夫外編「破産法」
(青林書院)
(2007)
3 園尾隆司「条解民事再生法(第3版)
」
(弘文堂)
(2013)
4 才口千晴外監修「新注釈民事再生法(第2版)
」上・下(金融財政事情研究会)
(2010)
〔参考図書〕
1 山本和彦著「倒産処理法入門(第4版)
」
(有斐閣)
(2012)
前記教科書1の山本教授の単著。ボリュームは薄いが、倒産処理全体についてまんべんなく説明され、
法的倒産処理制度については要点を簡潔に説明している。前記教科書1の理解を深めるために利用する
ものよい。
2 山本克己「破産法・民事再生法概論」
(商事法務)
(2012)
破産と民事再生に絞った概説書で、概説書としては新しく、最近の判例や学説にまで触れられている
が、やや全体的にボリュームが少なく、ロースクールで修得必要と思われる論点に触れられていない箇
所がある。
3 伊藤眞「会社更生法」
(有斐閣)
(2012)
前記教科書2の著者による会社更生法の概説書である。会社更生法も破産法・民事再生法と去通する
制度があるので、破産・民事再生を理解するのにも役立つ。
4 西謙二外編「破産・民事再生の実務(3版)
」上・下(金融財政事情研究会)
(2014)
東京地裁の倒産部の裁判官が実務上の問題点について記載したもの。裁判所の倒産処理実務がよくわ
かる。
※受講するために教科書1と六法は必携です。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
業
内
名
名
年
数
的
倒産法講義Ⅱ
釜田 佳孝
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本講義の目的は、倒産法講義Ⅰと併せて、各種倒産処理法制の基本的な理解と、破産法および民事再
生法の修得にある。
本講義では、教科書1の叙述にしたがって、倒産実体法のうちの相殺権と否認権(倒産実体法②)と、
倒産手続法としての私的整理、破産、民事再生を破産法と民事再生法に絞って、教科書1を中心に、教
科書2を補充的に用いて、教員が作成するレジュメを使って説明するとともに、副教材などを使って質
問(議論)形式で理解を深めてゆく。本講義を受講する方は、秋学期における倒産法講義Ⅰも受講され
たい。
なお、倒産処理におけるさらなる専門能力を高めるために、本講義以外に「倒産法演習」および「企
業会計と法」も受講されることをお勧めする。
容
各講義における授業内容と授業計画は、下記のとおりであるが、各講義で説明し、質問(議論)する
91
授
業
計
画 具体的な内容と問題点は、事前に、TKCなどで配布するレジュメその他の関係資料において提示する。
(倒産実体法②)
第1回~第3回 相殺権
相殺権は、破産では平常時よりも行使しやすくしているが、民事再生ではそのような取扱いはしてい
ない。また、破産と民事再生ともに、危機時期や倒産手続開始後における相殺適状の作出などによる濫
用的相殺を禁止している。ここでは、各倒産手続においてどのような債権が倒産債権者の自働債権にな
りうるか、相殺の時期的制限、相殺権の拡張、相殺禁止について理解することが課題である(教科書1
では、第2章第7節の「相殺権」の部分)
。
第4回~第6回 否認権
否認権とは、危機時期以降倒産手続開始時までになされた詐害的あるいは偏頗的財産変動行為を否認
する(無効とする)ことにより、逸失財産を回復する権利である。否認権は民法の詐害行為取消権と沿
革的に共通の起源をもっていたが、現在では似て非なるものと言った方が正解である。ここでは、否認
権制度の趣旨、詐害行為と偏頗行為、否認の要件、行使の方法と効果について理解することが課題であ
る(教科書1では、第2章第8節の「否認権」の部分)
。
(倒産手続法)
第7回~第11回 企業の倒産(裁判外の倒産処理/破産法/民事再生法)
倒産手続法として、私的整理の手続(再建型と清算型/教科書1では第3章第1節の「裁判外の倒産
処理」の部分)
、破産手続(企業破産/教科書1では第3章第2節の「破産法」の部分)
、民事再生手続
(企業再生/教科書1では第3章第3節の「民事再生法」の部分)につき、それぞれの手続の流れと各
手続における開始の端緒(申立てなど)
、開始に至る裁判、手続の関係人、手続の進行、財産の管理・
処分等、計画、配当・弁済、終了の順で、各手続の特質に沿って類似点、相異点を意識しながら理解し
てゆくことになる。
第12回~第14回 消費者の倒産(裁判外の倒産処理/消費者の破産/個人再生)
倒産手続法として、私的整理の手続(再建型と清算型/教科書1では第4章第1節の「裁判外の倒産
処理」の部分)
、破産手続(消費者破産/教科書1では第4章第2節の「消費者の破産」の部分)
、民事
再生手続(個人再生/教科書1では第4章第3節の「個人再生」の部分)につき、それぞれの手続の流
れと各手続における開始の端緒(申立てなど)
、開始に至る裁判、手続の関係人、手続の進行、財産の
管理・処分等、計画、配当・弁済、終了の順で、各手続の特質に沿って類似点、相異点を意識しながら
理解してゆくことになる。
第15回 全体的考察
過去の判例や仮想事例などを素材として、倒産実体法や倒産手続法からなる倒産法全体についての理
解を問う質問を行い、全体的な理解を深める。
履 修 上 の 注 意 1 理解度を高め、専門能力を習得するために、基本的理解について説明する中で、できる限り質問(議
論)により理解を深める手法で行う。受講生は、事前に配布されたレジュメや資料に沿って、あらかじ
め講義前に指定された教科書・指定図書その他の文献・資料を精読のうえ予習をなし、レジュメの問題
点について自分の回答を準備しておくこと。また、講義終了後は質問、副教材の利用などにより講義内
容を確実なものにすること。
2 レジュメや講義で取り上げる副教材の問題に対する解答は、教材等で読み取ってわかった段階では
終わらず、できるだけノートに簡潔にまとめる習慣を身につけること。
3 講義では、レジュメに沿った説明をするとともに論点を問題点として質問するので、受講生は必ず
意見を述べること。
意見の述べるに際しては、次のような点をよく注意すること。
①簡にして要を得た表現を心がけること。
②判例、学説等他人の意見等を引用するような述べ方ではなく、それらを自分なりに理解したうえで意
見として述べること(このことで、本当に理解しているか、どの程度まで理解しているかが判ります)
。
③意見を述べる際には、理由と結論を分けて順序立てて述べること。
④自分の意見の正当性を裏づける根拠条文や判例(特に最高裁判例)があるときは必ずそれらを引用す
るか、それらを念頭に置いていることが判る表現を用いること。
⑤事例問の場合、必ず、事実認定のうえ、自分の法解釈を事実に当てはめる過程を経て、事例に沿った
結論を言うことになるので、かかる事例に沿った事実認定、法解釈、あてはめ、結論を言うようにする
こと。
⑥できれば他の受講生の意見に対する自分の意見表明も積極的に行うこと。
4 更に、深い理解と文書表現能力を養成するために、講義の内容に関してレポートの提出を課するの
で、受講生は次回の講義日にそれを提出しなければならない。提出期限を徒過したレポートは採点の対
象とならない。
このレポートについては、次のような点をよく注意すること。
①自筆で書くこと(ワープロは認めない)
。要領は次のとおり。
ⅰ)用紙は指定のものを用いること。
ⅱ)黒の万年筆かボールペンを使用すること。
ⅲ)削除する部分は二重線できれいに消すこと。
92
②簡にして要を得ていること。
③字は、達筆である必要はないが、できるだけ丁寧に書くこと。
④結論と理由を分けて順序立てて論述すること。
⑤自分の論述の正当性を裏づける根拠条文や判例(特に最高裁判例)があるときは必ずそれらを引用す
ること。
⑥事例問の場合、必ず、事実認定のうえ、自分の法解釈を事実に当てはめる過程を経て、事例に沿った
結論を論述することになるので、かかる事例に沿った事実認定、法解釈、あてはめ、結論を記載するこ
と。事実認定やあてはめが落ちているレポートを散見するが、総論部分だけで各論部分のない論述とな
り、評価は低い。
⑦優秀なレポートは、そのコピーを他の受講生に配布するので、自分のレポートと比較して、更なる向
上に努めること。
授業の到達目標
破産法と民事再生法をベースとした倒産法の理念・体系、解決手法を習得し、将来として実務におい
て倒産処理とかかわった場合に、倒産処理分野において果たすべき法曹の使命・責任を自覚したうえで、
法曹倫理に適ったマインドを持って、的確な分析、事実認定、問題解決ができる素養を身につけること。
評 価 方 法 1 発言点及びレポート(配点30点)
発言点は、各講義時における受講生の発言内容を個別に評価して積算し、レポートも個別に評価した
ものを積算のうえ、両者の積算点を30点を上限として評価する。
2 期末試験(配点70点)
事例形式の筆記試験で行う。内容は論述式であり、短答式は用いない。
3 欠席による減点
出席は当然であるので加点対象とはならない。始業後 30 分を越える遅刻及び60分を経過しない早
退は欠席扱いとする。欠席は試験の評価から 1 点の減点,遅刻や早退は 0.5 点の減点とする。
教
材 〔教科書〕
1をベースとして使用するが、同書では不十分な部分などについて2を補充的に使用する。
1 山本和彦外著「倒産法概説(第2版補訂版)
」
(弘文堂)
(2015)
ロースクール生にとってボリューム的に適量だが、2と比較して説明不十分な部分があり、また、会
社更生など本講義の対象外の部分も含まれている。基本書としても十分役立つ。
2 伊藤眞「破産法・民事再生法(第3版)
」
(有斐閣)
(2014)
破産と民事再生のみに絞った概説書で、将来の実務においても十分に耐えうるほどあらゆる点につい
て詳述されている。本書を基本書とすることもできるが、ロースクール生にとっては大部で全部を読み
込むのは大変かも知れない。
3 「現代倒産手続法」
(中島弘雅ほか)
(有斐閣アルマ)
(2013)
概説書としては新しいが、ロースクールレベルの教材としてはボリューム不足。倒産法の基本的理解
には役立つ
4 「破産・再生」
(藤田広美)
(弘文堂)
(2012)
コンパクトであり、基本書として利用することも可能であるが、これのみでは不十分であり、重要な
論点については他の概説書等で補う必要あり
〔副教材〕
A 演習教材
1 三木浩一外編「ロースクール倒産法(第3版)
」
(有斐閣)
(2014)
演習用の教材であり、講義でも、問題点をここからも出題する。
2 山本一彦編著「倒産法演習ノート(第2版)
」
(弘文堂)
(2012)
演習用の教材であり、1と異なり、設問に対する解説と解答例があって、参考となる。講義でも、
参考箇所を指摘したり、問題をここから出題することがある。
B 判例
1 青山善充外編「倒産法判例百選(第 5 版)
」
(有斐閣)
(2013)
言わずと知れた判例百選シリーズの一冊。2013に改訂版がでたばかり。重要判例につき深い理
解を必要とするときには役立つ。
2 瀬戸英雄外編「倒産判例インデックス(第3版)
」
(商事法務)
(2014)
倒産判例150件が、概要、事実関係、判決要旨、本判決の位置づけ・射程距離に分けて、簡潔に記
載されており、短時間で当該判例の要点が把握できる。時間を有効に使う意味で、まず、これで当該判
例の要点を掴み、さらに深い理解がいるときは、前記の百選を読み込むという手法は効果的と思われる。
なお、講義では重要判例のダイジェストをレジュメとして配布するが、それには解説は付していない。
C 注釈
1 伊藤眞外著「条解破産法(第2版)
」
(弘文堂)
(2014)
2 竹下守夫外編「破産法」
(青林書院)
(2007)
3 園尾隆司「条解民事再生法(第3版)
」
(弘文堂)
(2013)
4 才口千晴外監修「新注釈民事再生法(第2版)
」上・下(金融財政事情研究会)
(2010)
〔参考図書〕
1 山本和彦著「倒産処理法入門(第4版)
」
(有斐閣)
(2012)
前記教科書1の山本教授の単著。ボリュームは薄いが、倒産処理全体についてまんべんなく説明され、
法的倒産処理制度については要点を簡潔に説明している。前記教科書1の理解を深めるために利用する
ものよい。
93
2 山本克己「破産法・民事再生法概論」
(商事法務)
(2012)
破産と民事再生に絞った概説書で、概説書としては新しく、最近の判例や学説にまで触れられている
が、やや全体的にボリュームが少なく、ロースクールで修得必要と思われる論点に触れられていない箇
所がある。
3 伊藤眞「会社更生法」
(有斐閣)
(2012)
前記教科書2の著者による会社更生法の概説書である。会社更生法も破産法・民事再生法と去通する
制度があるので、破産・民事再生を理解するのにも役立つ。
4 西謙二外編「破産・民事再生の実務(3版)
」上・下(金融財政事情研究会)
(2014)
東京地裁の倒産部の裁判官が実務上の問題点について記載したもの。裁判所の倒産処理実務がよくわ
かる。
※受講するために教科書1と六法は必携です。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
倒産法演習
四宮 章夫
3年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
本講義は、破産法の規定に重点を置きながら、倒産処理法制の基礎知識の習得に努めると共に、破産
法と民事再生法との若干の比較を通じて、清算型と再建型の各倒産処理法制が現実に機能している姿を
正しく認識し、国民の社会生活、経済活動との関係についての認識を深める。
容
講義は、先ず、破産手続を中心として、法的倒産手続と倒産実体法について学習し、同時に民事再生
画 手続との違いについても理解を深める。
併せて、重要判例の前提事実を丹念に分析してみせることによって、判例によって実現される倒産処
理の模様について、学生が具体的なイメージが抱けるようになるよう、努力したい。
第1回 倒産法総論
特定調停、私的整理のガイドライン、各種ADRによる再生支援手続も含めた倒産処理全般について
俯瞰した上で、破産、民事再生、個人債務者再生、会社更生、特別清算の各手続について概観し、その
役割を理解する。
第2回~7回 倒産手続法
破産手続を中心として倒産手続法の学習を進めるが、民事再生手続において異なる制度を採用してい
る場合等にあっては、それらにも言及する。
先ず、①倒産手続開始の申立てと保全処分に関して、倒産能力、倒産手続開始要件、開始障害事由、各
種保全処分制度等の基本的問題点について学習する。
次いで、②倒産手続の開始の効力について学習する。倒産手続遂行機関の法的性質等やその第三者性
に重点を置き、対抗問題、虚偽表示、融通手形の抗弁等について検討するが、開始が各種手続に及ぼす
効果等についても触れる。
また、③倒産手続に服する債権と、服しない債権がどのように仕分けされているか、弁済禁止の原則と
例外がどのように手続に組み込まれているかという点について学習する。
④担保権については、破産、民事再生における別除権者の地位、権利の内容、倒産債権の行使方法、
担保権消滅請求制度等について検討し、非典型担保権者(不動産譲渡担保権、手形の譲渡担保権、所有
権留保売買の売り主、フルペイアウト方式のリース債権者)の取扱いはどうなるのかについても検討す
る。
第8回~14 回 倒産実体法
倒産手続が、契約当事者間等における実体上の権利関係に与える影響について学習する。
先ず、①破産を中心とする倒産手続の開始が継続的契約を中心とする契約関係に与える効果について
学習する。破産法 53 条等が認める双方未履行の双務契約の解除権とその効果について、判例を中心と
して検討し、賃貸借契約、委任契約、その他の各種契約関係への適用問題についても検討する。
次いで、破産法の実体法規定について、②先ず、否認権を選択して学習する。否認制度全般について
学習し、支払不能概念についても理解を深めるが、特に、詐害否認、偏頗否認、適正価格売買等に関す
る重要判例についても学習する。
さらに引き続き、破産法の実体法規定について、③相殺制限を選択して、いくつかの論点に関する重
要判例について学習する。
第 15 回 消費者倒産
消費者破産、小規模個人再生を中心とする自然人の債務整理手続全般につき学習し、併せて、再生手
続における住宅資金特別条項についても学習する。
履修上の注意
本講義では、毎回の講義時に先立って講義内容を示すレジュメを配布する。但し、TKCに掲載する
ので、各自プリントアウトし、授業時に持参するものとし、授業中には配布しない。
本講義を通じて、破産法を中心とする倒産法の理解を深めるにとどまらず、社会や人間関係に対する
洞察力、柔軟な思考力、自己の思想を表現し他を説得する能力等を修得することが要求される。
講師が一方的に講義するのではなく,受講生相互の討論をベースとする演習としての実を挙げたいと
考え,予め課題と講義資料とを与えるので、予習に力を入れ、自ら論点を把握し,自分なりにその論点
94
を検討した上で,その検討結果を持って講義に臨み,積極的に議論に参加してもらいたい。
倒産法制全体の基本的な体系を理解すると共に、破産手続を中心とする倒産手続法と倒産実体法の基
礎的知識を習得することを第一の目標とするが、これを前提として、常に具体的事案を想定しながら、
問題点を的確に抽出し、問題解決の方法を考えることによって、より妥当な結論を導く応用力を獲得す
ることを目標とする。
上記基礎的知識の習得を単位認定(60点)の基準とする。
法
平常点 30 点、定期試験 70 点の割合で成績をつける。
平常点は、基本理解、問題発見、問題解決の程度及び姿勢を、授業中の議論に基づき評価する。中間
テストを実施することもある。また、予習時に、課題に対するレポートを作成した者には、平常点を付
ける際に考慮する。
定期試験は、学期を通じた最終的な能力の到達点を評価する。なお、欠席・遅刻については、履修要
項の定めに従い所定の減点をする。
材 【倒産法制を横断的に理解する。
】
山本和彦外編著「倒産法概説(第2版補訂版)
」
(2015 年 4 月)
【破産法を詳しく理解する。
】
伊藤真「破産法・民事再生法(第3版)
」
(2014 年 9 月)
【判例を理解する。
】
別冊ジュリスト 184 号「倒産判例百選(第5版)
」有斐閣(20013 年 10 月)
【倒産法制が個人生活や会社運営に与える影響を考える。
】
山本和彦外編著「倒産法演習ノート 22」弘文堂(2012 年 4 月)
授業の到達目標
評
価
方
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
執行・保全法
石井 教文
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
民事法全般を俯瞰し、その有機的な関連性を理解できるように判決手続や民事実体法との関係を重視
した講義を行う。また、実学的視点を加味し、特に債権回収案件に関する実務的対応力の基礎を養うこ
とを目標とする。
容 第1回 請求権と民事手続
画 実体法における請求権の意義と効力を軸に民事訴訟法、民事執行・保全法及び倒産法との関係を概観す
る。
第2回 強制執行と担保執行
強制執行と担保執行の構造上の差異を説明した上,民事執行の実体的正当性の問題と救済手段を検討す
る。
第3回 執行文①
執行文の意義と種類,執行文付与の手続を概説した上,将来給付の訴えと条件成就執行文の制度の関係
を重点的に学習する。
第4回 執行文②
給付判決の執行力の主観的範囲と承継執行制度の関係等について学習する。
第5回 債務名義と請求異議
確定判決を例に強制執行における債務名義の意義と請求異議の訴えについて学習する。
第6回 責任財産と第三者異議
債権の摑取力・貫徹力と責任財産との関係や責任財産の構造を学習した上,第三者異議の訴えの性質と
役割を検討する。
第7回 不動産執行①
差押えの効力を中心に売却準備までの手続を学習する。
第8回 不動産執行②
不動産執行の換価・配当手続を概観し、不動産執行と用益権の関係及び配当異議を中心に学習する。
第9回 債権執行①
債権執行の制度を概観し,債権執行における差押えの効力について学習する。
第 10 回 債権執行②
債権執行の換価と満足について,取立訴訟,転付命令を中心に学習する。
第 11 回 非金銭執行①
非金銭執行の総論と引渡・明渡執行を学習する。
95
第 12 回 非金銭執行②
不動産登記手続訴訟と意思表示執行を学習する。
第 13 回 民保全制度の概要
保全手続の構造と特質(仮定性,付随性,緊急性)及び発令手続における審理の対象論(訴訟物)を中
心に,保全機関,保全当事者,担保,審理方法,保全
異議,保全取消し,保全抗告等の保全命令の発令手続を学習する。
第 14 回 民事保全の類型①
仮差押えと仮の地位を定める仮処分について学習する。
履修上の注意
授業の到達目標
評 価 方 法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第 15 回 民事保全の類型②
係争物に関する仮処分の効力について学習する。
基本的には,復習重視の姿勢でよいが,事前にレジュメをアップするので,併せて教科書の該当範囲
を読んでおいて貰いたい。
請求権の実現、担保権の実行を手続法的観点から再学習して理解を深める。
期末試験の成績を 70%、平常点 30%の割合で総合評価する。平常点は、授業におけるレポート,発
言、回答、質問などから基本的理解・問題意識の度合いを評価する。期末試験は、学期を通じた最終的
な能力の到達点での評価を行う。
教材は事前にレジュメを配布し,授業はそれに基づいて重点的に行う。
民訴法,債権総論,担保物権法の教科書の授業のテーマに関連する部分を読んでおくことが望ましい。
なお,余力のある院生は,上原敏夫ほか著「民事執行・保全法」
〔第3版〕有斐閣アルマで知識を整
理するとよい。
判例は、教科書で紹介されたもの程度を伊藤眞ほか編「民事執行・保全判例百選」有斐閣(2005)で読
んでおくことを勧める。
経済法講義
村田 淑子
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
市場経済が本来期待されているように機能するには、市場における企業の活発な競争が前提となる。
そのため、市場経済を採用する各国では、競争を守るため、わが国の独占禁止法に相当する競争法を制
定している。本講義は、独占禁止法について、その目的、全体の構造、基礎概念、禁止される行為類型、
手続について学ぶ。禁止される行為については、とくに、いわゆるカルテルである「不当な取引制限」
、
「私的独占」
、
「不公正な取引方法」
、合併などの「企業結合」を中心に学ぶ。
容 第 1 回 独占禁止法の目的と全体像
画
市場経済における競争の意義、独占禁止法の目的(1 条)
、禁止規定及び手続規定にかかわる体系・構
造を学ぶ。
第 2~4 回 企業結合
合併などの企業結合規制について解説する。ここで、
「一定の取引分野」の画定、すなわち市場画定
について解説し、企業結合が市場における競争に及ぼす効果(反競争効果)について、企業結合の 3 つ
の形態に合わせて検討する。
第 5~7 回 不当な取引制限
「不当な取引制限」規制について解説する。まず、不当な取引制限に該当することが多いカルテルの
形態について説明する。その上で、ここでは、
「不当な取引制限」の行為要件である「共同して」の意
味内容、それがどのような場合に立証されるのかを中心に検討する。
第 8・9 回 私的独占
「私的独占」規制について解説する。とくに、行為要件である「支配」及び「排除」の意味、私的独
占における「排除」と通常の競争におけるライバルの排除との違いを中心に検討する。
第 10~13 回 不公正な取引方法
不公正な取引方法について解説する。様々な不公正な取引方法の行為類型のうち、とくに「取引拒絶」
、
「不当廉売」
「再販売価格維持(再販売価格の拘束)
」
「排他条件付取引」
「拘束条件付取引」
「優越的地
位の濫用」を中心に検討する。
第 14~15 回
エンフォースメント
独占禁止法違反行為に対する行政処分、刑罰、民事救済を解説する。とくに、公正取引委員会が行う
排除措置命令・課徴金納付命令とその手続き、課徴金減免制度、民事救済である差止請求と損害賠償請
求を中心に解説する。
履修上の注意
この講義で学んだことを、経済法演習では実際に事例に当てはめて結論を導く作業を行う。そのため、
この講義で独禁法の全体像及び基礎概念をしっかりと習得するつもりで受講してほしい。
96
経済学の知識が無い場合、これまでの感覚で考えると、一見したところ悪くないように思える行為が
独禁法違反であったり、反対に、問題がありそうに思える行為が独禁法違反でなかったりするかもしれ
ない。この講義では、憲法、民法、刑法の基本 3 科目の基本的知識があることを前提としているが、経
済学の知識をもっていることは前提としてない。しかし、新しい見方を受け入れる柔軟な姿勢で受講し
てほしい。
講義開始後は、次のような予習・復習が求められる。
まず、各回の終わりに次回の予習として支持された教科書の箇所を読み、分からない部分・疑問に感
じる部分を見つけておくこと。講義では、その部分の解説にとくに注意し、理解できるように努めるこ
と。復習においては、レジュメや講義ノートを見直し、知識を整理すること。その際に、教科書だけで
なく、紹介した事例につき『経済法判例・審決百選』等で確認することが求められる。
なお、第 1 回については、教科書の最初の章を読んでおくこと。
授業の到達目標
独占禁止法の重要な基本概念を理解し、重要な違反行為の要件を理解し、独禁法違反の場合の 3 つの
手続に関する法的知識を確実なものとし、それを論理的な文章で表現し、これらを使ってシンプルな事
案について独禁法上の分析をすることができること。これが、単位認定(60 点)の基準となる。
すなわち、この授業では、法曹に必要とされるスキルのうち、
(2)法的知識の習得を主とし、その上
で、
(1)問題解決能力、
(4)法的分析・推論能力の習得を目標とする。
これらのスキルを習得するため、法的知識に確実に定着させ、事例に当てはめて問題を解決し、法的
分析や推論を論理的に表現する練習を行うため、期末試験だけでなく、レポートを数回行う。
評 価 方 法 1.レポート(配点 30 点)
独占禁止法の主な違反行為類型及び重要概念の理解度を確認するためのレポートを数回実施する。
2.期末試験論文式(配点 70 点)
期末試験においては、問題解決力を中心に到達目標の到達度を判定する。すなわち、
イ 独占禁止上の重要な概念および手続を正確に理解しているかどうか、
ロ 事例問題に際して、法的問題点を抽出し、論理的に考え、法規範を具体的に当てはめ、妥当な結
論を導くことができるどうか
を確認し、独占禁止法の理解度、論理的思考力、文章表現能力等を判定する。
3.正当な理由のない欠席および遅刻・早退は不利益に扱う。
○成績評価の目安
・90~100 点 課題に適合した、十二分な知識をもち、非常に強い説得力(論理構成力)のある解答が
なされており、到達目標に十二分に到達している。
・80~89 点 問題に適合した、十分な知識と十分な説得力のある解答がなされている。到達目標に十分
到達している。
・70~79 点 到達目標はおおむね(7~8 割程度)達していると認められる。知識または説得力のどち
らかかがやや不十分である。
・60~69 点 到達目標にかろうじて(6 割程度)達していると認められる。ただし、内容面での必要最
低限の知識は認められるものの、説得力のある表現の点で、一層の努力が必要であるなど、知識または
説得力の片方が不十分、あるいはその両方がやや不十分である。
・59 点以下 課題に適合した知識が不十分であり、かつ、論理的に構成された説得力に欠ける解答であ
る。到達目標に 6 割以上到達したと認められず、自習での到達がきわめて困難であると判断される。単
位認定のためには、再履修が必要。
材 ・毎回プリント(レジュメ)を配布する。
・教科書
川濱昇・瀬領真悟・泉水文雄・和久井理子『ベーシック経済法[第 4 版]』
(有斐閣、2014 年)
・参考書
船田正之・金井貴嗣・泉水文雄編『経済法判例・審決百選』
(有斐閣、2010 年)
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
経済法演習
村田 淑子
3年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
独占禁止法について、実際の事例を通じて理解を深める。ケースブック掲載の実際の審判決について、
その事実関係に則して分析し、当該結論を導くうえで重要な事実を抽出する作業を行う。この作業を通
じて適用すべき規定の選択、要件の意義等について、
「経済法講義」で学んだ独占禁止法についての理
解を深め、取り上げた事件と類似の事案につき、独占禁止法に関する適切な判断ができるようになるこ
とを目指す。
容
各回のテーマと中心として取上げる事例の予定は以下の通りである。
()内は、ケースブックの番号
画 である。なお、報告の分担の決定及びレジュメの作成方法の説明は第 1 回で行う。
第 1 回 独占禁止法の概要・企業結合 1 報告の分担決定
東宝・スバル事件(4-1)
97
第 2 回 企業結合 2
日清食品・明星食品株式取得事例(★第 3 版)
第 3 回 企業結合 3
新日鉄・住友金属合併事例(4-5)
第 4 回 不当な取引制限 1(共同行為の立証)
東芝ケミカル審決取消請求事件(差戻審)
(1-1)
第 5 回 不当な取引制限 2(共同行為の当事者)
シール談合刑事事件(1-8)
第 6 回 不当な取引制限 3(入札談合)
多摩談合事件(1-2)
第7 回
不当な取引制限 4(公共の利益に反して)
石油価格カルテル刑事事件(1-17)
第 8 回 事業者団体の活動
日本遊戯銃協同組合事件(2-1)
第 9 回 私的独占 1
NTT 東日本事件(3-2)
第 10 回 私的独占 2
インテル事件(3-5)
第 11 回 私的独占 3
日本音楽著作権協会(JASRAQ)事件(3-9)
第 12 回 不公正な取引方法 1(拘束条件付取引)
資生堂東京販売(富士喜)事件(5-20)
第 13 回 不公正な取引方法 2(抱き合わせ等)
東芝昇降機サービス事件(5-30、5-32)
第 14 回 不公正な取引方法 3(優越的地位の濫用)
セブン―イレブン・ジャパン事件(5-27)
第 15 回 エンフォースメント(損害賠償)
神戸市ストーカー炉談合住民訴訟(9-8)
履修上の注意
演習という性格上、当然のことながら、独占禁止法について一通りの学習・理解があることを前提と
して授業を行う。そのため、
「経済法講義」の単位取得者以外の受講は原則として認めない。それ以外
の者には担当教員が「十分な知識あり」と判断した場合にのみ受講を認める。
本講義では、受講生による報告及び討論を中心に授業を行う。少人数の演習方式の教育効果を十分に
発揮するため、報告者以外の受講生もミニ・レポート(後述)を通じた予習を行い、問題意識を持って
授業に参加し、積極的に発言し、クラス全体としてより深い理解に到達することに貢献することが求め
られる。
○求められる予習・復習の内容
講義開始前の予習として、最低限、
「経済法講義」で学習した独占禁止法の基本知識の復習が求めら
れる。
講義開始後は、次のような予習・復習が求められる。
報告者の場合、責任をもって、十分な準備をした上で報告に臨むことが求められる。具体的には、担
当ケースにつき、事実の概要、争点を整理し、各ケースの Question について参考文献を活用して自分
なりの答えを準備し、レジュメを作成して分かりやすく報告し、質問に答えられるよう準備しておくこ
と。
報告者以外の参加者は、ケースブックを読み、各回のテーマに関する基本知識を復習し、自分なりに
事前に配布するミニ・レポート(A4 1~2 枚程度)にそって予習をし、問題意識を持って出席すること。
授業終了後には、論点の整理、理解の困難であった個所につき、参考文献を自分で読むなど、理解を確
実なものとし定着させることが求められる。
授業の到達目標 1.問題解決力における到達目標
法曹として独占禁止法にかかわることを想定して、その基礎となる基本的事案処理能力を獲得するこ
と。すなわち、独占禁止法の重要概念・要件・手続に関する法的知識を確実なものとし、事例から法的
問題点を抽出し、論理的に考え、法規範を具体的に当てはめ、妥当な結論を導くことができる力、すな
98
わち問題解決の方法を考える応用力を習得することを到達目標とする。
2.表現力における到達目標
報告及び討論を通じて、独占禁止法に関する法的知識の理解を前提として、法的分析・推論能力、創
造的・批判的検討能力、法的議論・表現・説得能力、コミュニケーション能力一般を鍛える。そして、
議論に参加し、論点を的確に指摘したり、自己の考えを口頭及び文書で説得的に主張したりすることが
できることを到達目標とする。
事例において、問題となる行為類型を的確に指摘し、その要件の意味を理解し、事例への当てはめが
できることが単位認定(60 点)の基準である。
評
価
方
上記の到達目標に到達するため、授業手法として、効率的な予習のためのミニ・レポート、授業冒頭
での基本的な法知識の確認、レジュメを用いた報告、議論等を用いる。
法 1.期末試験論文式(配点 70 点)
期末試験においては、問題解決力を中心に到達目標の到達度を判定する。すなわち、事例問題に際し
て、法的問題点を抽出し、論理的に考え、法規範を具体的に当てはめ、妥当な結論を導くことができる
どうかを確認し、独占禁止法の理解度、論理的思考力、文章表現能力等を判定する。
2.平常点(配点 30 点)
平常点は、報告(20 点)とミニ・レポート(10 点)によって判定する。具体的には、報告について
は、必要な参考文献などを利用し、各ケースの法的問題点を適切に抽出し、各ケースの Question に対
する答えを準備し、分かりやすく報告することができるかどうかを重視する。ミニ・レポートについて
は、予習し問題意識を持って授業取り組んでいるかどうかを重視する。どちらの場合も、判例や参考文
献の内容を咀嚼せずに抜粋するのではなく、それらを参考としつつ、自分の頭で考え、自分の言葉で表
現しようとする態度が求められる。
3.欠席による減点
報告形式の演習という性質上、予習をした上での出席が当然求められる。よって、単に出席しただけ
では加点要素とはならない。正当な理由のない欠席および遅刻・早退は不利益に扱う。
教
○成績評価の目安
・90~100 点 知識、表現力ともに到達目標に十分到達していると認められる。具体的には、既存のケ
ースに類似していない新しい事案にも説得力のある合理的な結論を導く力が認められる。
・80~89 点 知識、表現力ともに到達目標にほぼ到達している。少なくとも既存ケースに類似のケース
の問題解決を確実に行う力がある。
・70~79 点 到達目標におおむね(7~8 割程度)到達していると認められる。
・60~69 点 到達目標にかろうじて(6 割程度)到達していると認められる。ただし、内容面での必要
最低限の理解は認められるものの、文章や発言における説得力のある表現の点で、一層の努力が必要で
ある。
・59 点以下 到達目標に 6 割以上到達したと認められず、自習での到達がきわめて困難であると判断さ
れる。単位認定のためには再履修が必要。
材 金井貴嗣・川濱昇・泉水文雄 編 『ケースブック独占禁止法[第 3 版]』
(弘文堂、2013 年)
参考書等
川濱昇・瀬領真悟・泉水文雄・和久井理子『ベーシック経済法[第 4 版]』
(有斐閣、2014 年)
ケースブックの各ケースの末尾の参考文献
その他の参考書等は最初の授業で連絡する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
金融商品(証券)取引法
山田 廣己
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
会社企業の中でも比較的大規模の株式会社に関して生ずる法律問題を理解し、解決するためには、会
社法の知識だけでは足らない。株式会社が発行する株式・社債やその取引についての法律知識が必要で
ある。米国では証券や証券取引に関する一群の連邦法があるが、それは「連邦会社法」と呼ばれるに至
って久しい。日本でも、オリンパス(株)や東芝など大規模な会社による有価証券報告書上での虚偽表
示事件、大王製紙の会社資金の流用事件、未公開株の勧誘事件、インサイダー取引など、金融商品取引
法の理解を必要とする事件が、最近、頻発している。民事事件の場合もあれば、刑事事件の場合もある。
本講義では、開示(ディスクロージャー)制度(有価証券報告書・半期報告書・四半期報告書・臨
時報告書・有価証券届出書など)
、会社乗っ取りの手段である株式公開買付け、株券の大量保有の状況
に関する開示、金融商品取引業者(証券会社等)
・金融商品取引所(証券取引所)
・証券取引等監視委員
会などの法規制や、相場操縦や内部者(インサイダー)取引などの不公正な取引についての法規制を学
び、大規模会社の法規制に関する法律知識を深めることを目的にする。
金融商品取引法に違反すると、その制裁として、民事責任、刑事責任、行政的な制裁(課徴金など)
が用意されている。この制裁方法についても基礎を学ぶ。
99
授
授
業
業
内
計
容
おおむね、次に掲げるテーマにしたがって講義を進める。
(2006 年に、証券取引法が金融商品取引法
画 に改称された。従来の証券取引法や金融先物取引法など関連するいくつかの法律がこれに統合された。
第1回 金融商品取引法の意義・金融商品取引法の目的
金融商品取引法が現在の株式会社法制にとって重要であることを理解し、あわせて「国民経済の適切
な運営」
「投資者の保護」という法目的を理解する。
第2回 金融商品取引法上の金融商品・有価証券概念
「金融商品」概念を説明する。
「有価証券」概念は、この用語を用いる法律によって異なる。手形法
上の有価証券、刑法上の有価証券概念があるが、金融商品取引法でいう有価証券概念を確定する。
第3回 各種の金融商品取引
金融商品取引といってもその取引の形態は一様でなく、通常の取引、信用取引、先物取引、オプショ
ン取引など様々な取引形態がある。証券取引に対する法規制を理解するためには、これらの各種の取引
形態を確認する。
第4回 開示制度(1) (有価証券届出書・有価証券報告書)
株式会社の設立、募集株式の発行(新株の発行)や組織再編成(合併・会社分割・株式交換・株式移
転)の際に株式が発行される。その発行総額が高額(1億円以上)になる場合、会社の内容が詳細に記
載された「有価証券届出書」を提出する。上場会社は毎年「有価証券報告書」を提出する。これらの書
類上での虚偽記載・不実表示は許されない。会社の内容を明るみにさらして、投資者を保護しようとし
ているからである。重要な企業情報の開示(ディスクロージャー)制度を学ぶ。
第5回 開示制度(2) (公開買付けと開示)
会社の乗っ取り、買収の一手段である公開買付け(TOB)に関する情報開示制度を検討する。
第6回 開示制度(3) (株券等の大量保有の状況に関する開示)
株券等の大量保有はその発行会社に影響を与える。その会社と取引する者にとっても見過ごせない。
公にされていない株券の大量保有について、その保有者自らが保有状況を明らかにすべきとする開示制
度について検討する。
第7回 金融商品取引所(証券取引所)
金融商品取引は証券市場、なかでも証券取引所という組織を経由して行われる。証券取引所の組織・
権限をここでは確認する。
第8回 金融商品取引業; 証券会社(損失補償の禁止・不当勧誘行為・向呑みの禁止)
・証券業協会等
証券会社は、会社が発行する株式の引受けを行い、投資者の注文を取引所につなぐ金融商品取引の主
要な担い手である。ここでは損失補償の禁止・不当勧誘行為・向呑みの禁止などを検討する。証券会社
が集まって協会が設立され、投資者保護のための基金も設けられている。これらの組織の概要も学ぶ。
第9回 証券取引清算機関・証券金融会社
金融商品取引を円滑に進めるために、清算機関や証券金融会社がある。これらの組織についても基礎
的な知識を得る。
第 10 回 証券取引等監視委員会
どのような金融商品取引が行われているか、一般社会からは窺い知れない。投資者の証券市場に対す
る信頼を崩すような詐欺的取引・不公正な取引が行われることもある。このような取引を未然に防止す
るため、また摘発するための監視機関が証券取引等監視委員会である。米国の SEC(Securities Exchange
Commission)に相当する。この委員会の権限・活動についても検討する。
第 11 回 詐欺的取引行為の禁止・相場操縦の禁止
金融商品取引の世界では多額のお金が移動する。詐欺的取引や、株価の人為的操作も試みられる。金
融商品・証券市場に対する信頼を維持するため、このような詐欺的な取引・試みは禁じられる。ここで
は複雑な取引に法がどのように対応しているのか確認する。
第 12 回 安定操作の規制・信用取引の規制
募集株式(新株)の発行を容易にするため、株価の安定操作が例外的に認められる。また、仮の需要
と供給(仮需給)を導入して公正な株価形成を図るため信用取引が認められている。この安定操作と信
用取引に対する法規制を検討する。
第 13 回 内部者取引の規制(1)
(内部者の売買報告書の提出義務・短期売買差益の利得)
会社についての公になっていない情報を入手した者(内部者)は、この情報に基づき証券取引を行い
利益を得たり、損失を免れたりすることができる。これまた、証券市場への信頼を崩す行為である。こ
こでは、内部者の売買報告書提出義務・短期売買差益の利得に関する法律問題を取り上げる。
第 14 回 内部者取引の規制(2)
(役員・主要株主・会社関係者による取引規制・公開買付けに関する
100
内部者取引)
内部者取引は、会社役員・会社関係者によって行われる。乗っ取りのために行われる公開買付け(第
6 回講義参照)ついても内部者取引が行われる。法がこれにどのように対処しているかを検討する。
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
法
材
第 15 回 国際的金融商品取引
資本主義諸国には必ず証券取引所がある、社会主義国である中国やヴェトナムにもある。金融商品取
引・証券取引には国境がなくなってきている。詐欺的、不公正な取引が海を越えて行われることもある。
国際的な金融商品・証券取引に法はどのように対処するのかを見る。
選択・展開科目である。本講義を履修するには、企業法や民法の基礎をすでに習得していることが望
まれる。講義前にレジュメおよび資料を配布する。講義は、通常の講義方式を主に、ときおり質疑応答
による対話形式を併用する。受講者は事前に配布するレジュメを予習する必要がある。
企業法Ⅰ、企業法Ⅱおよび民法(特に不法行為法)や刑法の講義で得た知識を活用して、金融商品取
引についての法規制を理解し、株式会社が活動する現代社会における証券市場・金融市場をめぐる重要
法律問題の解明ができるようになることが目標である。
提出レポートおよび小テストの結果(30%)と期末試験の結果(70%)で評価する。
テキストとして特に指定はしない。 講義レジュメ・資料等 (無料)を配布する。
携帯用法令集には金融商品取引法の一部が掲載されているだけである。必要に応じて条文をレジュメ
にコピーして配布する。
河本・大武「金融商品取引法読本(第 2 版)
」
(有斐閣)
、山下・神田「金融商品取引法概説」
(有斐閣)
など金融商品取引法と題するテキストは多い。購入する必要はありません。図書室を利用してください。
講義では、配布レジュメを中心にして条文に依拠しつつ、平易な解説に努める。
名
名
年
数
的
保険法
今井 薫
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
不確実な社会である現代において、もっとも有効なリスク移転機能を有する保険について、その法的
側面から講義する。もっとも、単なるリスク回避の手段としては、法は瑕疵担保の追完責任、保証、危
険負担などのさまざまな制度をすでに用意している。しかし、保険制度がこれらと決定的に違うのは、
被保険者というリスク保有主体が、それを回避するために、主に自らが拠出する保険料によって、担保
原資を確保するところにある(保険者は、個々の契約者の拠出するリスク・プレミアムを糾合してリス
ク・プールを形成し提供する金融仲介者である)
。したがって、リスクに見合った拠出がなされないと
保険は成り立ちえない。そこで、これを確実なものとするために、保険はさまざまな制度と固有の法理
を準備している。本講義では、このような保険法に固有のドグマと、契約法としてのドグマをめぐる問
題について概説することで、保険契約の理解を深めることを目的とする。
容 第 1 回目:保険とはどのような制度であるか
画 <内容>保険制度は、13 世紀ころから存在する制度であるが、そのシステムにおいて中世型保険(単一
リスクを複数の保険者が担保する)と近代型保険(複数のリスクを保険会社を介して相互で担保する)
とは構造において大きく異なる。そこで、保険固有のドグマの理解のために、近代型保険における「保
険とは何か」の問題をここで取り上げておく。
第 2 回目:約款の拘束力と個別合意の効力
<内容>損害保険代理店は、現在のところ契約締結権を有する締約代理商であるとされる。したがって、
代理店が普通保険約款とは異なる個別合意をしてしまった場合も、かかる個別合意は当事者を拘束する
はずである。しかし、過去の裁判例を見ると、これとは異なる判決が出ている。これには批判もあるが、
ある意味保険に固有の問題でもあるので、ここでその意味について検討する。
第 3 回目:損害保険の基本概念
<内容>損害保険の定義は、
「保険者が一定の偶然の事故(保険事故)によって生ずることのある損害
をてん補する」
(保険 2 条 6 号)ことにある。ここでは、保険給付の前提となる「保険事故」とは何か、
だれが当該事故のあったことを立証するか、保険の目的とは何か、保険給付の前提要件たる「保険金額」
、
「保険価額」とは何かを、予めここで論じることとする。
第 4 回目:被保険利益・告知義務
<内容>被保険利益とは、保険事故の発生により失われることのあるべき経済的利益のことで、たとえ
保険事故が発生しても当該利益が存在しなければ保険者は保険給付をなすべき義務を負わない。そこ
で、ここでは被保険利益とはどのような利益であるかをまず明らかにするとともに、契約締結時に保険
契約者・被保険者が負担する「告知義務」という特殊な責務について概説する。
第 5 回目:一部保険・超過保険・重複保険
<内容>これらは、損害保険に固有の損害てん補から生じる損害保険に固有の制度である。一部保険は、
保険金額(a)<保険価額(v)
、超過保険は、a>v の保険である。たとえば、一部保険では支払保険金の
額については分損時の比例てん補を原則として、その他「コ・インシュアランス・クローズ」や「実損
てん補条項」などの保険給付の方法があり、超過保険では、評価済み保険契約が問題となる。また、重
複保険の場合には、だれがどのように保険給付を行うのかについて、保険法の施行により原則が変更さ
れた。そこで、これら、保険法に特徴的な法理をここで検討する。
第 6 回目:損害保険給付をめぐる諸問題
<内容>保険契約に際しては、保険契約者・被保険者は損害防止義務や損害発生の通知義務を負う。他
101
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
法
材
名
名
年
数
的
方、保険者は当該保険事故について、それが故意または重過失により保険契約者・被保険者が招致した
とされる場合、戦争その他の変乱、あるいは保険の目的物の性質による場合は免責の主張が可能である。
また、支払保険金についても、損害てん補の範囲やてん補額の算定をめぐっての争いも少なくないので、
これらについては、ここで論究する。
第 7 回目:残存物代位・請求権代位
<内容>損害保険は、あくまでも損害のてん補が原則なので、保険給付により利得を生じないのを原則
とする。したがって、目的物が実質的に全損しても、残存物や価値変形物が残存した場合には、保険給
付を条件に保険者にその所有権が移転するものとされる。同様に、保険事故による損害発生と同時に、
被保険者が他者になんらかの請求権を生じる場合があるが、これらについても支払い保険給付を限度に
保険者に当該請求権が移転されるものとなっている。そこで、これらについて、ここでその内容を概説
する。
第 8 回目:損害保険契約の終了
<内容>ここでは、損害保険契約について、保険契約者による任意解除、危険増加による解除、目的物
の譲渡に伴う諸問題(自動車保険における「車両入替」を含む)についても説明する。
第 9 回目:賠償責任保険
<内容>賠償責任保険一般を説明するとともに、強制保険としての自動車損害賠償責任保険について、
被害者の直接請求や、被害者に過失ある場合の過失相殺の制限などの問題、および専門職業賠責保険や、
製造物責任保険などについてもここで概説する。
第 10 回目:任意の自動車保険・火災保険
<内容>個別の内容の損害保険を論じる。任意の自動車保険には、搭乗者傷害保険、車両保険や盗難保
険、あるいは人身傷害保険などが付帯されている。これらをめぐっていくつもの判例が近年登場してい
るので、これらについて説明する。
第 11 回目~第 12 回目:生命保険
<内容>定額給付型保険として損害保険の対極にある保険が生命保険である。とくに、この保険をめぐ
っては、その一般的性質が条件付金銭給付契約であるため一般的理解は容易だが、反面では「第三者の
ためにする生命保険契約」
、
「他人の生命の保険」
、
「保険金受取人の先死亡」
、
「被保険者の承諾前死亡」
、
「解約返戻金債権の差押と介入権」および「特別受益の持ち戻し」
、
「遺留分減殺」など、生命保険をめ
ぐるいくつもの困難な固有の議論を生じている。そこで、ここではこれらについて概説する。また、重
大事由解除についても、もっぱらここで論じるものとする。
第 13 回目:傷害保険・疾病保険
<内容>新しい保険法では、傷害疾病保険について損害保険型のものと定額保険型のものを想定し、前
者については保険法に第 4 章という形で規律を別に定め、また後者については、第 2 章の損害保険の中
で規律することとした。これらは新しい類型であるため、傷害保険の場合の保険事故の立証をめぐる問
題や疾病保険における「契約前発病不担保条項」などの効力をめぐる新しい議論が登場してきている。
そこで、これらについて、ここで概説する。
第 14 回目~第 15 回目:海商法と海上保険
<内容>海商法の分野は、国際的であるのみならず海商法固有の法理が発達している。そこで、これら
の固有の分野の理論の概略を学ぶのみならず、海商法と関連する保険固有の法理(これらはすでに学ん
できている)を解釈学的に検証してみる。
保険法は、司法試験科目ではないが、民事紛争では多く保険に関連した事件と遭遇することになる。
また、民法の契約各論で論じられる契約法の一種であると同時に、特別な団体性を前提とした個別のド
グマなどが多数あって(収支相当原則、危険の著増・著変、告知義務、被保険利益、重複保険、超過保
険、一部保険、保険代位など)
、そのすべてを理解することがなかなかに困難である。この講義におい
ては、それらについてできるだけわかりやすく習得できるように、過去の判例などを題材にして説明に
努めるつもりであるから、受講者も積極的に講義に参加してほしい。
保険をめぐる紛争に際して、そこでの問題が何をめぐる紛争(紛争のベースにある論点の整理)であ
るかを理解するとともに、これに一定の解決を与えることができる法理と判例をベースに具体的な解決
を与える力を涵養する。
レポート(30 点)
、期末試験(70 点)で評価する。なお、欠席および遅刻は一定の基準で減点する。
とくに教材を指定しないが、新保険法に対応しているものとしては、潘阿憲『保険法概説』
(中央経
済社)
、山下友信・竹濱修・洲崎博史・山本哲生『保険法(第 3 版)
』
(有斐閣アルマ)
、甘利公人・山本
哲生・潘阿憲・山野嘉朗・今井薫『損害保険講座テキスト・保険契約法』
(公財・損害保険事業総合研
究所。今年度改訂予定)などがあり、判例集としては、山下友信・洲崎博史(編)
『保険法判例百選』
(有
斐閣)がある。
租税法講義
一高 龍司
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
この講義では、所得税を中心に、租税法上の基本的な制度と論点について学ぶ。民法等の領域との接
点に注意しながら、解釈適用上の問題を中心に検討する。租税法の初学者を前提に、基本的な制度、論
点を整理しつつ、裁判例を基に対話形式で検討を行い、受講者の理解を深めていきたい。
本講義は、法務一般に関係する所得課税法の専門的な基礎知識を身につけたい受講生や、本格的な学
102
授
授
業
業
内
計
習に備えるための基礎固めに取り組みたい受講生に適した内容とする。なお、法人税法については、租
税法演習で扱うこととする。
容 1.所得税の計算・申告の基礎と所得概念
画
所得税の計算構造、申告に係る制度の基礎を押さえ、制度の全体像を把握する。その上で、違法所得
及び損害賠償金に対する課税上の論点を起点に、所得概念、非課税所得、課税のタイミングに関する本
質的論点に接近を試みる。
2.課税単位
課税単位論の基礎を踏まえ、現行制度の特徴と解釈論上の主たる論点について学習する。
3.所得の帰属・納税義務者
判例を検討を通じて、所得の人的帰属、法人格否認の法理との関係、連帯納税義務などについて、検
討を行う。
4.事業所得・山林所得
事業所得の所得区分論、関連する源泉徴収規定について、判例を通じて考察する。また、山林所得の
所得区分論及び課税方式の趣旨について確認する。
5.給与所得
フリンジ・ベネフィット(付加的給付)への課税の要否と所得概念論、関連する所得区分と源泉徴収
制度について、判例を通じて検討する。
6.退職所得・利子所得
退職所得の優遇の趣旨、分掌変更等の場合の取り扱いと問題点について、租税回避的事案にも留意し
つつ考える。また、利子所得の所得税法上の取り扱いと租税特別措置法上の取り扱いとその趣旨につい
て押さえる。
7.配当所得・不動産所得
配当所得該当性を巡る判例から、借用概念の意義と統一説が当てはまる範囲について考え、また配当
控除の趣旨を確認する。また、不動産所得という類型の必要性と、譲渡所得等との区分について検討す
る。
8.譲渡所得(1)
「資産の譲渡」という要件の解釈、増加益清算説、譲渡所得の優遇の趣旨などについて、財産分与や
借家権に関係する判例などから学ぶ。
9.譲渡所得(2)
譲渡担保、売渡担保、収入金額又は求償権の回収不能時の扱い、みなし時価譲渡、遺産分割、遺留分
減殺請求等に関係する判例を通じて、解釈上の論点を掘り下げる。
10.譲渡所得(3)
二重利得法、ストックオプション行使益、金銭債権、ゴルフ会員権などが絡む課税上の論点を考えて
みる。
11.譲渡所得(4)
・一時所得・雑所得
取得費、譲渡費用を巡る判例の検討と、一時所得と雑所得の課税の基礎、さらに死亡保険金(年金)
の非課税所得該当性や馬券当選金を巡る近時の判例の含意について検討を行う。
12.収入金額(1)
実現主義、権利確定主義、管理支配基準の意義と相互関係(適用範囲)について、判例の考察をとお
して習得する。
13.収入金額(2)と必要経費
前受収益の取り扱い、管理支配基準の適用可能性、必要経費と損失の関係、必要経費の控除可能性と
控除の時期について、判例・学説の検討を踏まえて議論する。
14.損益通算
所得税法上の損益通算の範囲と、生活に通常必要でない資産に係る損失に係る制限、生活に通常必要
な動産の譲渡損益の取り扱いなどについて押さえ、判例から通算可能性の限界を探る。
15.所得控除
各種所得控除の制度、趣旨と意義について裁判例にも当たりつつ学習する。加えて、臨時所得・変動
所得に対する平均課税について、制度の趣旨・概要と適用要件を押さえる。
履修上の注意
受講・履修予定者は、税務大学校のウェブ上の以下の公開教材(税大講本、最新のもの)を入手して、
第 1 回目の授業までに通読しておくことを必須の課題とする。
103
(http://www.nta.go.jp/ntc/kouhon/index.htm)
『税法入門』
(但し、平成 26 年度版で言えば、第 8 章(地方税)は任意とする)
授業の到達目標
評
価
方
教
なお、各回 4~5 時間程度の予習を前提とする講義とするので了解されたい。
本講義では、所得税法を中心に、個人が行う取引や活動から生じる所得に対する租税制度について広
く学ぶことで、法曹実務に一般的に関係すると考えられる租税上の問題のありかを知り、その解決に要
する基本的な知識を得ることを第一の目標とする。各論点について、じっくり時間をとって、判例の検
討を中心に議論を掘り下げる予定である。つまり、基礎から始めて初学者にも十分に対応しながら、応
用的な問題を扱うための分析能力を向上させることを目標としている。
なお、租税法の発展的な学習機会(特に法人税法の学習)を求める方は、
「企業会計と法」も合わせ
て履修した上で、
「租税法演習」を履修されたい。さらに「国際租税法」の履修へと繋げることができ
れば、租税法律家としての対応力の幅を広げるのみならず、国際法務一般を扱う上で役立つ租税に関す
る実践的な知識を習得することもできる。
法
学期末の筆記試験と小テスト(2 回予定)の結果を、それぞれ 70%、30%で評価する。小テストは、
学習した内容の基本的な理解を確認する(例えば、制度の要点、趣旨、基本的な理論、判例の要点等)
○×式又は択一式のものである。学期末の筆記試験は、講義で学習した内容を踏まえ、主として仮設事
例を基に出題し、そこから問題を発見し、その解決のための説得的な論理を展開することができるかど
うかを問う内容とする。
材
金子宏『租税法(第 20 版)
』
(弘文堂・2015)
、金子宏ほか編『ケースブック租税法(第 4 版)
』
(弘文
堂・2013)
(いずれも最新版を入手)
。
講義では、範囲を指定して、これらを予習に用いる。授業はレジュメに基づいて行う。他の参考書、
必読文献、資料等は、レジュメに記載されているもののほか、適宜指示する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
租税法演習
一高 龍司
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
この演習は、租税法講義を通じて習得した所得税を中心とする基礎知識を基に、特に法人税との関わ
りに留意しつつ、想定される税務上の法的紛争につき、問題をより実践的に分析し、解決する能力を磨
くことを目的とする。具体的な事実と状況から、租税法上の論点を発見し、これに対して妥当な解決を
もたらす論理を展開する能力を身につけてもらいたい。このような趣旨から、法人税法と租税法総論を
扱う授業をしっかり確保し、その上で、租税法講義を含めたこれまでの学習を踏まえ、具体的な裁判例
又は仮設事例問題の受講生による検討と教員との双方向での議論をとおして、応用的かつ実践的な分析
能力を高めることを目標とする。
容 1.法人税法の基礎
画
法人の所得、納税義務者、公正処理基準、確定決算基準主義、公益法人等及び人格のない社団等の収
益事業課税などを押さえる。
2.益金の額の計算(1)
益金の算入時期を扱う基本判例を中心に検討する。
3.益金の額の計算(2)
特に、無償取引、低額取引及び高額取引の計算構造と理論について、寄附金との関係を踏まえて判例
をとおして理解する。
4.損金の額の計算(1)
原価・費用・損失に係る原則的な規定を押さえ、売上原価、減価償却費、繰延資産、資産評価損に関
する制度と判例を考察する。
5.損金の額の計算(2)
人件費(役員給与の損金不算入等)
、ストックオプション、公益的寄附金、引当金等に係る制度と趣
旨、関係する裁判例等について検討を加える。
6.損金の額の計算(3)
交際費、貸倒損失、債務の株式化などについて、関係する制度と趣旨、裁判例の検討を通じて学ぶ。
7-8. 同族会社課税(1)
(2)
日本の法人の殆どが同族会社である。同族会社に固有の制度(行為計算否認規定、留保金課税等)を
押さえ、そこでの解釈上及び政策上の論点について議論する。推計課税の制度と理論を学習する。
9.多様な事業体の課税
任意組合を通じた事業・投資活動から生じる所得への課税のルールとそこでの問題点を知り、判例の
104
検討から、そこでの所得区分、構成員課税の計算方法の選択の可能性などについて議論する。また匿名
組合の課税ルールについても押さえる。
10.租税法の基本原則
租税法律主義、租税公平主義、合法性の原則を中心に学ぶ。課税の不公平をいう場合の違憲審査基準、
信義則(禁反言)などを学習する。
11.租税法の解釈と適用
課税要件事実の認定、租税法の解釈原則、租税法と私法との関係、借用概念と固有概念、更正の請求
などについて、これまでの学習を踏まえて整理する。
12.租税回避(1)
租税回避の定義、否認の可否、節税又は脱税との違い、私法上の法律構成による否認、法の趣旨解釈
による課税便益の否定など、理論面を押さえた上で、近時の判例の示唆・射程範囲について検討する。
13.租税回避(2)
私法上の法律構成による否認が裁判所で許容された事案と許容されなかった事案の検討から、両者の
境界を探る。一般的否認規定の立法論についても若干検討する。
14-15.裁判例又は仮設事例の検討(1)~(2)
裁判例又は仮設事例とそこでの問いを事前に示し、これに対し、各受講生が解答を記述して事前に共
有し、それに基づいて、講師との対話および参加者相互間での議論をとおして、実践的、発展的な分析
能力を高める。新しい裁判例の動向にも注意を向けることとする。
履 修 上 の 注 意 「租税法講義」を履修済であるか又はこれに相当する予備知識を有することが前提である。また、履修
予定者は、以下の税務大学校のウェブ上の 2 つの公開教材(税務大学校講本、最新のもの)を入手して
第 1 回目の授業までに通読しておくことを必須の課題とする。
(http://www.nta.go.jp/ntc/kouhon/index.htm)
(1) 『法人税法』
(2) 『国税通則法』
講義は、第 1 回から第 13 回までは、レジュメに基づいて、双方向の議論を通じて、法人税法及び租
税法総論の理解を深める。残りは、裁判例又は仮設事例に基づく学習である。一週前の授業において、
裁判例又は仮設事例上の各問いに対する答案を受講生は作成してシェアする。演習の当日は、当該答案
に基づいて質疑討論を行うことで、事案の批判的・実践的分析能力を高め、そのアウトプット能力の向
上を図る。
本講義の受講者には、
「企業会計と法」
「国際租税法」も履修して、企業法務、税務又は国際法務を扱
う法曹に求められる基本的な知識と実践的能力に厚みをもたせることが期待される。
授業の到達目標
税務にも強い又は目が届く法曹となるための基礎の習得をめざし、所得税法及び法人税法を中心とす
る租税法の知識水準と問題解決能力を高めることを目標とする。インタラクティブな講義を通じ、課税
処分や裁判例に対する批判的検討能力を高めるとともに、書面及び口頭での表現力、合法的かつ合理的
な取引の構築能力を磨くことも目標に含まれる。
評 価 方 法
学期末の筆記試験と小テスト(2 回予定)の結果を、それぞれ 70%、30%で評価する。小テストは、
学習した内容の基本的な理解を確認する(例えば、制度の要点、趣旨、基本的な理論、判例の要点等)
○×式又は択一式のものである。学期末の筆記試験は、説得力のある理由付けで妥当な結論を導けるか
を問う事例形式の出題が中心となる。租税法上の問題発見能力及び論理構成能力を確認するのが目的で
ある。
教
材
金子宏『租税法(第 20 版)
』
(弘文堂・2015)
、金子宏ほか編『ケースブック租税法(第 4 版)
』
(弘文
堂・2013)
(いずれも最新版を入手)
。
講義では、範囲を指定して、これらを予習に用いる。各種判例集、他の参考書、必読文献、資料等は、
レジュメに記載されているもののほか、適宜指示する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
国際租税法
水野 正夫
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
経済のグローバル化に伴い国際課税問題が大きく取り上げられ、国際取引を行う企業が海外に進出す
る際、国際課税の問題は常に直面せざるを得ない状況である。また、グローバル企業の組織形態や取引
形態の多様化に伴い国際租税回避の様態も多様化してきていることから、各国においても海外への税金
の流出を防止することが現在大きな一つのテーマとなっている。従って、国際取引を行う企業に対し最
適な法律上の助言を行うには国際租税法の知識と思考が欠かせない。本講義は、国際租税法の基本概念
および構造を理解し、国際的租税回避及びそれに対する規制について所得課税上の問題点を理論的かつ
実務的な視点から事例も交えて検討することにより、関係国が行う課税権の行使のルールと争点を体系
的に把握できるようになることを目的とする。基本的な制度、判例等の予習を前提として、授業では対
105
授
授
業
業
内
計
話方式で論点を掘り下げ、復習小テスト又はレポートにより理解を深めていく。
容 第1回 国際課税の基礎構造(1)
画 国際租税法を学ぶための前提となる基礎知識として、法人概念・内国法人と外国法人・全世界所得課税
主義・領土内所得課税主義・租税条約・二重課税の排除・外国税額控除・移転価格税制・タックスヘイ
ブン対策税制・過少資本税制等の国際課税の基本的な仕組みについて鳥瞰する。
第2回 国際課税の基礎構造(2)
外国法人課税(恒久的施設-帰属主義・総合主義)
・ソースルール・源泉徴収・租税条約等、特に外国法
人に対する課税の基本的な仕組みについて鳥瞰する。
第3回 国内源泉所得
電子商取引の発展に伴う国際的な課税問題を題材に、源泉地国及び居住地国における課税の配分につい
て、特にソフトウェアの対価が使用料に該当するかどうかについての裁決事例を検討する。
第4回 恒久的施設
外国法人に対する課税問題について、恒久的施設の概念とソースルールとのかかわりについて検討す
る。
第5回 二重課税の排除
二国間での二重課税の排除の方法について、法的二重課税及び経済的二重課税の排除方法についての仕
組みを確認し、銀行が行った外国税額控除制度を利用した租税回避に関する判例を用いて検討する。
第6回 租税条約
租税条約の基本理念を確認するとともに、租税条約の各条項のうち、主に論点となる事業所得、投資所
得、条約便益制限条項等を中心に理解を深めるとともに、国内法との関係について、グラクソ事件につ
いての判例も参照しながら検討を行う。
第7回 タックスヘイブン対策税制(1)
タックスヘイブンを利用した租税回避の典型例の検討を行い、ガンジー島事件を検討することにより、
国際的な租税回避の論点を整理する。
第8回 タックスヘイブン対策税制(2)
来料加工に関するタックスヘイブン対策税制の判例を検討し、タックスヘイブン対策税制の論点を整理
する。
第9回 移転価格税制(1)
移転価格税制の有形資産取引、無形資産及び役務提供に係る国際的な議論を踏襲しつつ、判例研究を行
い(今治造船事件)
、本邦移転価格税制の問題点と現状を整理する。
第10回 移転価格税制(2)
実際の移転価格税制の執行状況を理解し、移転価格税制上の問題点について判例(日本圧着端子事件)
にも触れながら検討し、多国籍企業のプランニングの観点からも検討を加える。
第11回 相互協議手続・事前確認制度・仲裁制度
租税条約上の相互協議手続について、理論的側面から検討を加える。特に移転価格課税後における二重
課税排除にかかる相互協議手続について実務的な問題点を明らかにする。また、移転価格税制に係る事
前確認制度について検討を行うとともに、仲裁制度についても紹介する。
第12回 国外関連者に対する寄附金
グループ内での国際取引を利用した利益の供与に係る課税問題について、最近の動向及び重要な判例も
踏まえて論点を整理する。
第13回 金融取引と国際課税
利子、配当などの支払に対する課税について議論する。金融取引に対する課税を概括すると共にレポ取
引の所得区分を扱う裁判例を検討する。
第14回 国際組織再編
国際的な組織の再編の際に論点となる課税問題を整理するとともに、アドビ事件を検討することによ
り、国際的な機能の移転に対する課税問題についても検討を加える。
第15回 多様な組織体に対する課税
租税法が前提とする課税単位たる法人について、外国での取扱いとの違いから生じる課税問題について
考える。また、民法上の組合又は商法上の匿名組合を使った租税回避事案を扱う近時の裁判例(ガイダ
ント事件)について検討する。
履修上の注意
本講義では、毎回の講義時に必読文献、裁判例及び講義内容を示すレジュメを前もって配布し、受講
106
者による十分な予習を前提に質疑応答形式で授業を進める。随時小テストを行う他、レポートの提出を
求めることがある。従って、受講生は配布された必読文献、裁判例を通読し、論点を整理する予習が求
められる。講義後は各自で知識を整理すると共に、疑問があれば質問事項をまとめておくことが求めら
れる。
本講義は国際租税法の初学者を前提に運営するが、限られた回数の授業で受講者が理解を深め、この
講義の履修を有意義なものにするためには、第一回の授業までに国際課税の基礎的な制度についてある
程度受講者が理解しておくことが重要である。従って、第一回目の授業までに、望月文夫『図解国際税
務(平成 27 年度版)
』
、大河原健・水野正夫他『税務コストの減らし方-すぐに役立つ国際税務戦略の
ノウハウ』等の入門書のうち自分が読みやすいと思うものを通読し、大まかな制度や論点を理解してお
くこと。
また、国際租税法を学ぶにあたっては、基本的な企業会計及び法人税法における知識が求められるこ
とから、より深い知識と洞察を求める受講生は「企業会計と法」及び「租税法」を履修しておくことが
推奨される。
授業の到達目標
基本的な国際租税法の法的構造を体系的に理解した上で、事例研究を通じて重要な論点を解釈上及び
立法政策上の観点から検討を行うことにより、将来国際租税法に関連する論点に直面した場合にも、事
実関係を確実に押えたうえで論点を把握し、解決策を導き出す論理的・創造的能力を身につけることが
目標である。
従って、何よりもまず国際租税法の法的知識の習得構造を体系的に理解し、具体的な事案に対して、
論点を整理し、議論を行えることになることが単位認定の基準(60点)となる。
評 価 方 法 1 平常点(配点30点)
:平常点は、授業中の議論に基づき評価するとともに、授業中の議論に基づ
き評価する。授業中の議論は、主に基礎的制度・用語の定義・趣旨を理解しているか、それを事実
にあてはめた時の論点を把握しているかを確認する。なお、到達度確認テスト(短文記述、択一式)
又はレポート提出をさせることもある。
2 期末試験論文式(配点70点)
:論文式の筆記試験。事例形式の短答式を含む複数の設問を用意し、
基礎的知識の確認とともに、論理的思考力、文章表現能力を確認する。
教
材 ・望月文夫『図解国際税務(平成 27 年度版)
』大蔵財務協会、2015 年
・中里 実・太田 洋他『クロスボーダー取引課税のフロンティア』有斐閣、2014 年
・中里 実・太田 洋他『国際租税訴訟の最前線』有斐閣、2010 年
・大河原健・水野正夫他『税務コストの減らし方-すぐに役立つ国際税務戦略のノウハウ』中央経済社、
2001 年
(参考書)
・増井 良啓・宮崎 裕子『国際租税法 第 3 版』東京大学出版会、2015 年
・
『租税条約法規集』清文社、毎年刊行
・OECD 編川端康之監訳『所得と財産に対するモデル租税条約(簡略版)
(2010 年版)
』租税研究協会、
2011 年
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
国際取引法
大貫 雅晴
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
国際取引法を理解するためには、まず、ビジネス活動としての国際取引の実態を理解することが大切
であり、それによって国際市場におけるビジネス活動の諸々の事実関係の中から法律問題が関連する要
素が見えてくる。
本講義では、国際物品売買を中心にして、企業の実践的な国際取引活動を法的に理解し、取引実践か
ら発生する法律問題を理解するに必要な基礎力を習得する。具体的には、国際取引の法の適用問題、平
成 21 年 8 月 1 日にわが国で発効した国際物品売買契約に関する国連条約(CISG)の下での国際物
品売買契約に関する種々の法律問題、国際物品運送に関する法律問題を取り上げる。また、国際取引紛
争の解決手段について、特に、仲裁法及びニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条
約)を中心に諸問題を取り上げ、それらの問題の解説、検討を通して、基礎力を習得することを目的と
する。
容
隔週講義とする
画
(10時45分 -休憩- 2時)
(7月16日講義は10時45分―12時15分)
第一回 4月9日
国際取引法の特色と国際取引に適用される法
1)国際取引の種類と特色
2)国際取引に適用される法律
国際私法(法の適用に関する通則法)
統一私法(ウイーン売買条約等)
慣習法、
(インコタームズ等)
国際取引の公法的規制 (独禁法、外為法等)
107
第二回 4月23日
国際取引の当事者
個人
企業・法人
国家・国家機関
国家・国家機関との契約
外国国家に対する裁判権の免除
投資家対国家間の紛争解決(ISDS)
投資家(私人)と国家との間の投資紛争仲裁
第三回 5月7日 国際物品売買(1)
国際売買の構造
国際契約の準拠法
統一売買法とインコタームズ
ウイーン売買条約(CISG)
CISG の適用範囲適用範囲及び総則
第四回 5月21日 国際売買契約(2)
国際売買契約の成立
国際売買契約の当事者の権利義務
CISG とインコタームズ
貿易条件(FOB、CIF 、他)とインコタームズ
物品の引渡場所と危険の移転、所有権の移転
第五回 6月4日 国際売買契約(3)
国際売買契約の主要条件と履行義務
売主、買主の契約違反に対する買主、売主の救済
{重大なる契約違反}による契約の解除
第六回 6月18日 国際売買契約 (4)
国際的な代金決済方法
銀行送金決済、荷為替手形決済、 信用状付荷為替手形決済
国際物品運送(国際海上運送を中心に)
海上物品紛争契約と船荷証券
国際海上物品運送法
第七回 7月2日 国際取引紛争解決(1)
国際取引紛争の解決方法
交渉、ADR、訴訟
調停と仲裁の相違
国際商事仲裁の意義
仲裁合意
仲裁手続
外国仲裁判断の承認と執行
第八回 7月16日 国際取引紛争解決 (2)
国際民事訴訟
国際裁判管轄権(日本の裁判所の管轄権)
外国への訴状送達
外国判決の承認及び執行
履修上の注意
本講義では、テキストおよび随時配布する講義関係資料に基づき、通常の講義方式と対話方式(質疑
応答を行いつつ進める)を併用する。また、小テスト及びレポートの提出を求めることがある。
授業の到達目標
国際物品売買取引の実務、国際売買の法適用のありかた、国際物品売買契約に関する国連条約(CI
SG)及び、国際取引紛争の解決手続きの全体の基本的な体系を理解する。
国際物品売買契約の成立、当事者の権利、義務、違反の救済、危険の移転、所有権の移転、また国際
物品売買契約の当事者の履行実務に必要とされる重要事項である、FOB、CIFなどのトレードター
ムズとINCOTERMS、国際海上運送、国際代金決済の基礎知識を習得する。
さらに、国際取引紛争の解決手続につき国際商事仲裁を中心に取り上げ、国際商事仲裁と国際民事訴
訟の比較、国際商事仲裁における仲裁合意、仲裁人と仲裁廷、仲裁手続と仲裁判断、外国仲裁判断の承
認と執行に関する知識を習得する。
以上に挙げた国際物品売買、国際取引紛争解決手続きの基礎知識を活用して問題解決の方法を考える
応用力を涵養することを到達目標とする。
評 価 方 法
定期試験(論述式筆記)70%、平常点(小テスト・レポート等)30%で評価する。
108
教
材 テキスト
・
「国際取引法」
(佐野寛) 有斐閣
・
「国際ビジネス判例精選」
(道垣内正人・古田啓昌)有斐閣
・
「貿易売買契約とリスク対応実務」
(大貫雅晴) 同文館出版
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
刑事学
田村 正博
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
犯罪学・刑事政策の理論を踏まえつつ,わが国における犯罪対策の在り方を、刑事に関する法制度の
解釈・運用とそれ以外の手法(行政的手法等)とを含めて検討する。現実に生じている問題への対応策
を考える手法を習熟することを目的とする。
容 第1回 ガイダンスとわが国の犯罪情勢
画
講義概要につき説明する。その後、犯罪情勢をどのように分析するか(犯罪統計と暗数)
,わが国の
犯罪情勢についてどのような変化がみられるかなどについて検討する。
第2回 犯罪原因論
犯罪原因論についての歴史的展開を振り返り,現代における考え方とその政策的な意義を考える。
第3回 刑罰
死刑,自由刑(無期刑及び有期刑)
,財産刑などの現行の刑罰制度の意義と機能を分析し,刑罰の諸
問題について検討する。刑罰に関する近年の刑法改正についても言及する。
第4回 刑罰の執行と関連制度
刑事施設における処遇と、ダイバージョン(起訴猶予、執行猶予)とについて、現状と問題点等を分
析する。
第5回 社会内における犯罪者への対応組織
保護観察機関とその現状を検討するとともに、犯罪の予防と捜査に当たる警察組織についても言及す
る。
第6回 犯罪被害者の保護と支援
刑事手続における犯罪被害者の保護,犯罪被害者の刑事手続への関与,財産的損害の回復への刑事手
続の利用,さらに刑事手続外における被害者の支援について検討する。
第7回及び第8回 犯罪の予防
主として街頭犯罪と侵入犯罪を対象に、環境設計、地域における活動、犯罪発生前の行為規制などを
含めて、犯罪予防の手法とその基となる理論を考察し、予防政策の課題を検討する。防犯カメラについ
ての統制の在り方についても言及する。
第9回 財産犯(詐欺)
近年被害の急増している振り込め詐欺への対策を考える。合わせて、振り込め詐欺を含めた犯罪のツ
ールとなり得る銀行口座等の不正取得を含めた詐欺に関する諸問題を考察する。
第10回 暴力団犯罪
暴力団犯罪と刑罰法規適用の現状を踏まえ、暴力団に対する対策をどのようにすればよいかを考え
る。
第11回 薬物犯罪
薬物犯罪の現状を踏まえ,薬物犯罪対策をどのように進めていけばよいのかを考える。合わせて、危
険ドラッグ(脱法ドラッグ)への近時の対策を分析し、刑罰法と行政法対処の意義について考察する。
第12回 家庭内での犯罪
ファミリー・バイロレンスといわれる児童虐待,ドメスティック・バイオレンス,高齢者虐待につい
て,児童虐待防止法,配偶者暴力防止法,高齢者虐待防止法を踏まえてその課題を検討する。児童虐待
に関わる親族法等の論議についても言及する。
第13回 情報化社会における犯罪
高度情報社会におけるサイバー犯罪について,社会的インフラストラクチュアであるサイバー空間を
保護するために情報セキュリティの観点から考える。
第14回 その他の犯罪
その他近年における社会的に重要な犯罪類型で、受講生の関心の高いものについて考察する。
第15回 犯罪への行政的対応と総括
109
履修上の注意
授業の到達目標
評
教
価
方
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
法
材
犯罪に対して、刑罰法規以外の行政法的な手法が展開されている現状を分析し、行政法と刑事法の関
係を考察する。最後に、本講義全体を総括する。
各回に対応する教科書の該当部分(それが無い場合は別途指定する文献の該当部分)を読むとともに、
現実の社会状況に問題関心をもって予習をしておくことを求める。
伝統的な刑事政策や犯罪学の学修にとどまることなく,今日の犯罪現象に対して問題解決という観点
から対応策を考える手法を身につけることが,この講義の目標である。
単純な一つの価値観で犯罪現象への問題解決を図ることはできず、事実を適切に評価分析した上で、多
様な価値観への目配りができることが前提となる。
学期末の定期試験(70%)と平常点(授業中の質疑応答等、30%)を総合して評価する。
教科書として川出敏弘=金光旭『刑事政策』
(成文堂、2012 年)を用い、各回の講義において該当部
分を掲示する。同書で論じていないものは、別文献の該当部分を掲示する。
名
名
年
数
的
国際法
岩本 誠吾
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
司法試験問題を解くためには、国際法の成立基盤である国際社会の特徴を十分理解した上で、基本的
な教科書に書かれた内容を徹底して理解することが、先ず必要がある。更に、国際法にかかわる日本の
国内判例を取り上げることによって、国内判例における国際法のかかわり方及びその重要性を認識する
とともに、当該論点にかかわる幅広い国際法の理解を深めることも不可欠である。そのような学修の中
で、現在発生している国際紛争を国際法という観点からどのように位置づけ分析できるのかという国際
法の知識を応用できる問題解決能力を 養う。本講義は、それらを修得することを目的とする。
なお、司法試験の選択科目である国際関係法(公法系)は、国際法、国際人権法及び国際経済法を対
象としている。本授業は、そのうち、各論として国際人権法及び国際経済法を除いた国際法全般を対象
とするものである。それには、国際人権法及び国際経済法にも共通する総論部分も当然含まれる。
容
具体的な授業内容は、教科書の章立てに従い、次のとおりである。
画
第1 回
第 1 章 国際法の基本構造 2 国際法の基本構造、3 国際法と国内法の関係
第2 回
「シベリア抑留補償請求事件」を取り上げる。国際法と国内法との関係はどのようになっているのか、
更に慣習国際法が国内的に適用可能か(自動執行性)を考える。あわせて、国際人道法における捕虜待
遇問題も概観する。
「ハーグ陸戦条約損害賠償事件」を取り上げる。これも国際法と国内法との関係に関連する事例であ
るが、本件は条約(ハーグ陸戦条約 3 条)の自動執行性を考える。更に国際人道法での違法行為による
被害救済方法(賠償責任の追及)を概観する。
第3 回
第 2 章 国家の成立と変動 2 国家承認、3 政府承認、4 国家承継
第4 回
「王京香対王金山事件」を取り上げる。国際法の主体としての国家(本件では、中華人民共和国及び
中華民国)に関連して、国家承認・政府承認の法的効果を考える。
「光華寮事件」を取り上げる。中華人民共和国と中華民国の間で学生寮の所有権をめぐる訴訟事件で、
政府承継問題を考える。
第5 回
第 3 章 国家の基本的権利義務と管轄権 1 国家の基本的権利義務、2 主権、3 国家平等原則、4 国内
問題不干渉義務、5 国家管轄権の行使と規律、6 主権免除
第6 回
第 4 章 国家領域 1 国家領域の構造、2 領域主権、3 領海、4 領空、5 領域権原の取得、6 日本の領
土問題
第7 回
第 5 章 海洋法 2 領海の地位と無害通航権、3 内水の地位、4 群島水域、5 接続水域、6 国際海峡、7
公海、8 排他的経済水域、9 大陸棚、10 海域の境界画定
第8 回
「テキサダ号事件」を取り上げる。紀伊水道付近で発生した船舶衝突事件を通じて、海洋法における
内海、歴史的湾及び刑事管轄権の所在を考える。関連する海洋法についても概観する。
「韓国漁船拿捕事件」を取り上げる。海洋法の中の領海制度に関連して、領海の確定方法・直線基線
の法的効果を考える。
110
「ウタリ共同事件」を取り上げる。日本の統治権が事実上及んでいない北方領土周辺海域(日本の主
張する領海及び漁業水域)での漁業活動に関連して、日本の法令の適用可能性を考える。
第9 回
第 7 章 国際関係における国家機関 2 外交使節・領事の種類と階級、3 外交・領事関係の開設及び
任務の開始、4 外交使節・領事の任務、5 外交使節団及び領事期間の構成員、6 特権・免除、7 任務の終
了、8 その他の国家機関
第 10 回
「外交官訴状送達事件」を取り上げる。本件を通じて、国家機関である外交官の特権免除、特に民事裁
判権の免除を考える。その他国家機関についても概観する。
「神戸英水兵事件」を取り上げる。本件を通じて、在日米軍の法的地位について考える。
第 11 回
第 10 章 条約法
第 12 回
第 13 章 武力行使の規制 2 安全保障、3 自衛権、4 軍縮・軍備管理
第 13 回
第 13 章 武力行使の規制 5 武力紛争法、6 中立制度の地位
第 14 回
「原爆判決」を取り上げる。国際人道法の中で害敵手段の法規制がどのように適用されるかを原爆投
下の事件を通じて考える。
「水交社事件」を取り上げる。国際人道法の中で陸戦法規慣例条約での私有財産尊重原則が戦後総司
令部に没収された本件不動産にどのように適用されるかを考える。
第 15 回
第 1 回から第 14 回までの授業の総まとめ(授業では触れなかった点の補足説明)
履修上の注意
本講義には、毎回講義に先立ち、レジュメを作成している。受講者は、必ず、そのレジュメをプリン
トアウトして授業時に持参すること。演習方式の場合には、報告者は、教科書の担当部分及び判例を紹
介する。報告用レジュメは事前に作成・配布すること。受講者も事前に教科書およびレジュメを読んで、
各自国際法上の論点を把握しておくこと。 講義方式の場合には、受講生は、事前にレジュメを参考に
しつつ、教科書を読み理解しておくこと。
授業では、随時質問をしながら進め、授業内容の理解を確認するために、後にレポートの提出を求め
るので、自分なりの講義ノートを作成すること。
授業後は、授業で補足説明した点をレジュメ及び教科書を参考に確認して、自分の講義ノートを整理
しておくこと。自分で理解が不十分な点については、次回の授業の冒頭で確認するために質問事項をま
とめておくこと。
授業の到達目標
具体的事例を通じて国際法の基礎知識を習得し、体系的理解を深めることから、今後発生する国際関
連の事例に対して、国際法が関わる論点を整理し、それらの相互関係を理解し、国際法の論理的な法解
釈をする能力を身に付けることが目標である。すなわち、法曹に必要とされる基礎的な法的知識を身に
付け、国際問題が発生した場合の国際法の論理的な思考・分析能力及びそれに対する問題解決能力を養
成することが第 1 の到達目標(60 点の達成目標)である。
それに関連して、理解したことを対外的に論理的に表現(口頭発表やレポート作成)するコミュニケ
ーション能力の修得も第 2 の到達目標である。このようなスキルを身につけつつ、国際法が関連する法
的問題にも、法曹としての使命・責任を自覚し、積極的に取り組む姿勢が養われる。
授業方式は次のとおりである。受講者が少ない場合には、演習方式を採用し、以下の要領で授業をす
る。
(ア)報告者による関連国際法の概要説明、
(イ)報告者による判例紹介、
(ウ)参加者による討議、
(エ)教員による補足説明。受講者が多い場合には、講義形式を中心に、随時、授業内容の理解度を確
認するために、質疑応答方式を取り入れ、対外的に論理的に表現する能力(質問し自分の意見を述べる
能力)を修得する。
いずれの場合にしても、授業の内容を十分理解し、それを的確に表現できるようにするために、小レ
ポートを課し、文章表現力や説得力を養うようにする。
評 価 方 法
平常点(30 点)として、国際法の担当部分の概要説明、判例の紹介、討議の内容、授業時の質疑応答
(10 点)
、小テスト(基本的事項の確認問題 20 点)を評価する。これらは、それぞれの内容を評価する
ことで、基本的理解の到達度を確認するものである。欠席(マイナス1点)
、遅刻、早退(マイナス0.
5点)については、履修要項の規定に従って減点する。
期末試験(70 点)は、論述形式で行い、基本的用語の理解度、論点の体系的理解度、論理的思考力及
び文章表現能力を確認するものである。
上記の合計の成績評価の目安として、
80 点以上:到達目標を十分満たしており、今後、自己学習によってより深くより正確に国際法を理解
することができ、国際的事案に対して国際法を応用して適用できると認められる。
70 点以上:到達目標をおおむね満たしている。しかし、国際的事案に対する応用力について不十分な
点があると思われる。
111
60 点以上:国際法の基本的な部分の理解は充分修得しているが、細部の詳細な理解は不十分であると
思われる。
60 点未満:国際法全体について基本的理解が不十分であり、応用力も身に付いていないものと思われ
る。
材
最も体系的に書かれている最新の教科書として、以下のものを授業で使用する。
杉原その他『現代国際法講義 第 5 版』 有斐閣 2012 年
教
上記の教科書以外にも、自修のための体系的な教科書として、以下のものを推奨する。
浅田編『国際法』 東信堂 2011 年
酒井その他『国際法』 有斐閣 2011 年
家その他『ワンステップ国際法』 嵯峨野書院 2011 年
また、判例・条約集の補足的な参考書として、授業では基本的な以下のものを用いる。
別冊ジュリスト 『国際法判例百選 第 2 版』 有斐閣 2011 年
田畑その他編『判例国際法 第 2 版』 東信堂 2006 年
松井編『ベーシック条約集 2014』 東信堂 2014 年
その他の参考文献は授業の際に指示する。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
医事法
高嶌 英弘
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
近時のわが国では,医師の医療過誤責任を追及する訴訟の増加や,患者の自己決定権と信仰上の理由
に基づく輸血拒否,さらに代理母や卵子提供など生殖補助医療の進展から生じる問題,脳死と臓器移植,
尊厳死・安楽死など人の死に関する問題,さらに遺伝子を対象とする診断や治療に関する法的問題など,
医学と法律学の双方に関連する諸問題が噴出している。これらの問題を,おもに法学的観点から包括的
に対象とするのが,本講義の対象である「医事法」である。
一見してわかるように,そこで扱われている諸問題は,いずれも社会に大きなインパクトを与えてお
り,あるいは将来与えうるという点で重要な意義を有しているにも関わらず,最終的な解決が図られて
いないものばかりである。
このような現状に照らして,本授業では,先述した諸問題が現在どのような状況にあり,どのような
法的問題点を内包しているのか,そして今後はどのような処理が望ましいのかを,演習形式のディスカ
ッションを通して(詳細については後述)
,包括的に検討する。
容
本講義は,2 年次春学期配当の 2 単位科目である。授業の全体の順序については後述するが,おおよ
画 そ次のようなものである。まず,医事法の意義と内容につき概略的な検討を行った後,医師と患者の法
律関係一般を扱い,当該関係の法的位置付けを明らかにする。そして,医師と患者の法律関係の重要論
点として,診療過誤に基づく医師の刑事責任・民事責任の問題,患者の自己決定権をめぐる問題,代理
母や卵子提供などの生殖補助医療の問題,脳死ならびに臓器移植に関連する問題,遺伝子に関連する問
題を,できる限り相互に関連づけて議論する。授業に際しては,従来のわが国の判例・学説だけを対象
とするのではなく,今後の議論に展望を与えるという観点から,わが国に較べ,議論においても制度に
おいても異なった状況にある欧米諸国の状況をも比較の対象とする予定である。
次に,授業方法については,原則として演習形式でおこなう。その理由は,本授業の受講生数は非常
に少ないことが予想されるため,一方的な講義形式をとるよりも,個々のテーマについて,受講生との
議論を通して理解を深めるのが適切であると考えられる点にある。
具体的には,各テーマごとに受講生の担当者が簡単な報告を行い,その後に教員を交えて全体で議論
をおこなう。また,重要テーマについては授業の内容を踏まえて受講生にレポートの提出を求めること
がある。
参考までに,以下にそれぞれの回ごとの授業(演習)の内容を示しておく。
第 1 回 本講義の概要,医事法の意義
本講義の概要を示したうえ,現代における医療と法の関係,および「医事法」という法分野がどのよ
うに成立したかを明らかにする。
第 2 回 日本における医療の現状
現在のわが国における医療の現状について,各種の保険制度,医療関係施設の区分と業務分担,医療
関係者の資格要件と業務に関する諸規則,医薬品や医療機器に関する規制の概要を明らかにしたうえ,
現状の問題点を検討する。
第 3 回 医師と患者の法律関係
医師と患者の法律関係の性質と,その性質から導かれるべき権利義務関係を明らかにする。
第 4 回 医療事故と医師の医療過誤責任 総論
医療事故とは何か,そして医療事故に対して法がどのように対処すべきかを概観したうえ,医療過誤
に関する判例と学説の概要を示し,責任の法的性質について検討を加える。
112
第 5 回 医療事故と医師の医療過誤責任 各論
医療過誤に基づく医師の民事責任を追及するうえでの重要論点を個別に検討する。具体的には,以下
の項目があげられる。医療過誤訴訟の特徴,医師の注意義務の基準(医療水準論)
,因果関係,損害,
複数関与者の責任,証明責任,医療過誤訴訟における鑑定,診療記録の開示と保存,患者の個人情報の
保護,医療集中部における集中審理方式。
第 6 回 医師の説明義務と患者の自己決定権
医師の説明義務・患者の自己決定権の意義と具体的な機能を明らかにしたうえ,その法的根拠を検討
する。
第 7 回 説明義務の範囲,自己決定権の限界
末期ガンの場合の説明や信仰上の理由に基づく治療拒否など,医師の説明義務と患者の自己決定に関
する諸問題を扱う。
第 8 回 生殖補助医療の意義と現状
人工授精,体外受精に代表される生殖補助医療の意義と種類,および従来の日本の状況を明らかにす
る。
第 9 回 生殖補助医療の諸問題 その 1
厚生科学省の厚生科学審議会生殖補助医療部会により,2003 年 4 月 28 日に公表された「精子・卵子・
胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」を素材として,生殖補助医療の法的規制の
問題全般を検討する。
第 10 回 生殖補助医療の諸問題 その 2
前回に引き続き,生殖補助医療に関連する重要問題として,胎児とヒト胚の法的地位,および精子・
卵子などのヒト由来物質の法的取扱いについて検討する。併せて,生殖補助医療の「商品化」傾向を明
らかにしつつ,これに対する法的対応を考える。
第 11 回 遺伝子をめぐる科学技術と法的問題
遺伝子とは何か,遺伝子は現代医療ないし現代社会とどのように関わっているのかを概観する。そし
て,遺伝子に関する個別問題として,日本および諸外国における遺伝子診断,遺伝子治療の現状と規制,
遺伝子情報の性質と取扱いの規制について,それぞれ検討する。
第 12 回 脳死と臓器移植
脳死の定義および判定方法および脳死の法的承認に伴って生じる問題を概観したうえ,臓器移植法制
定に至る経緯とこれまでの議論を整理する。そして最後に,現行の臓器移植法の概要と問題点を指摘す
る。
第 13 回 安楽死・尊厳死
安楽死・尊厳死の定義と従来の判決,諸外国の状況を概観したうえ,問題点を指摘する。
第 14 回 医師の研究活動に対する規制
ヒトのクローニング研究やES細胞、iPS 細胞、STAP 細胞等を用いた再生医療の研究,ヒト遺伝子の
研究,臓器移植の研究など,先端的医学研究の法的規制の現状と問題点を包括的に検討する。
第 15 回
第 1 回から第 14 回までに扱った各テーマが社会にどのようなインパクトを与え,あるいは現在与え
つつあるかを全体的に検討し,今後のあるべき医療と法の関係を総合的に検討する。
履修上の注意
上述した医事法の特質および授業内容からすでに窺われるように,本授業では,医療の法的規制と関
係する限りで,憲法,行政法,刑法,民法などの多くの法律が扱われる。したがって,本講義の受講に
は,これらの法分野に対する基本的理解が前提となることに注意されたい。
なお,医事法と重なる領域を対象とする講義として,同じく 2 年次配当の「生命倫理と法」がある。
両者の関係は,以下の通りである。
まず,医事法は,医療と法律の交錯領域を,おもに法学的観点から対象とする法律学の一分野である。
したがってそこでの議論は,現在における法の解釈論および将来の立法論が中心になる。これに対して,
「生命倫理と法」では,医療のみならず,生命科学に関連する領域一般を対象としうる可能性を有して
おり,しかもそこでの検討は,法律による規律以前の生の価値判断が中心となる。具体的には,倫理学
からの吟味,宗教的規律との関係,心理学ないし社会学的分析などである。この基本的相違に照らすと,
現在の医療が社会に対して与えているインパクトを全体として理解するためには,両方の講義を受講す
ることが望ましい。
以上のことから明らかなように,本授業の履修に当たっては関連分野の幅広い知識が要求されるこ
と,および各回の授業の予習に相当な時間が必要であることに照らせば,本授業については 3 年次春学
期における履修が推奨される。
授業の到達目標
先述のように,本授業の対象となる医事法上の諸問題は,現在なお流動的な状況にあるため,他の講
113
評
価
方
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
義のように一定の法的紛争解決能力の取得を最終目標として掲げることは必ずしも適切ではない。むし
ろ,本授業の到達目標は,各受講生が,演習を通してここで扱われている諸問題のわが国における現状
と意味を考察することにより,今後の社会における医と法の関係を総合的にとらえる視点を身につける
ことに求められる。
法
本授業においては,授業の進み具合に応じて提出を義務づけるレポート,および学期末に行われる考
査の結果を対象として評価を行う。配点比率は,レポートが 30%,学期末考査が 70%である。
材
授業内容のすべてを扱った教科書は存在しないので,授業に際しては,演習の前提として各自が読ん
でくる資料を指定する。また,必ずしも新しい資料が存在しない分野については,担当者がレジュメそ
の他の資料を配付する。配布したレジュメは,TKCのホームページに随時掲載する。
また,本授業で扱う諸問題については,医学の急速な発展や新たな法律規制の実施などによって,刻々
と内容が変化している。そのため,あまり古い参考書は役に立たない点に注意すべきである。本授業に
おいても,関連する参考書の指示は,各回ごとに最新の情報にもとづいて行う。
※医事判例百選の新版が 2014 年春に出版されています。本授業でも、掲載された事例の一部を参考資
料として使用します。
名
名
年
数
的
環境法講義
湯川 二朗・玉村 匡
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
環境を保全し創造するための法実践の手法を環境行政訴訟や環境民事訴訟を通して学習し、あわせて
行政訴訟・民事訴訟の理解を深めていく。
容
下記テーマにつき、各回演習形式で、具体的設例・課題に基づいて検討を深める。実務家教員 2 名が
画 隔週でリレー形式で授業を担当する。各回で取り扱う具体的説例・課題は、授業前にウェブで提示する。
第1回 導入講義の位置づけで、
司法試験で問われている環境法がどういうものかを概観するとともに、
環境法の全体像を提示する。
第 2 回 環境法総論
環境法の基本的概念(汚染者負担原則・拡大生産者責任、未然防止原則・予防原則)や環境政策の手
法について、実定法を通して理解する。
(湯川担当)
第 3 回 まちづくり①
都市計画法上の開発許可制度の概要と問題点を理解し、開発許可の違法を争う方法について考察す
る。
(玉村担当)
第 4 回 ごみ問題Ⅰ
廃棄物処理法について学習し、産業廃棄物処理場の建設・操業の差止めを求める行政訴訟・民事訴訟
をめぐる実務上の諸問題について理解を深める。
(湯川担当)
第 5 回 まちづくり②
建築基準法上の建築確認制度の概要と問題点を理解し、建築確認の違法を争う方法について考察す
る。
(玉村担当)
第 6 回 ごみ問題Ⅱ
廃棄物概念について学習するとともに、一般廃棄物(ごみ)処理の有料化問題を通して廃棄物処理法
の一般廃棄物処理の法制度及び条例のあり方について検討する。できれば、リサイクル法にも触れてみ
たい。
(湯川担当)
第 7 回 まちづくり③
まちづくりと交通問題について考える。
(玉村担当)
第 8 回 大気汚染防止法・水質汚濁防止法
西淀川大気汚染公害訴訟や水俣病訴訟等を通して大気環境保全や水環境保全のための法制度・行政訴
訟・民事訴訟について理解を深める。
(湯川担当)
第 9 回 都市環境①
景観法の概要を理解する。
(玉村担当)
第 10 回 土壌汚染対策法
土壌汚染対策法について学習し、土壌汚染防止・回復のための法制度について理解を深める。
(湯川
担当)
第 11 回 都市環境②
国立マンション訴訟や鞆の浦世界遺産訴訟を題材に、景観利益の侵害に対する司法的救済について考
114
察する。
(玉村担当)
第 12 回 環境影響評価
環境影響評価法について学習し、具体的事例を通して環境影響評価の手法とその結果の活用方法につ
いて理解を深める。
(湯川担当)
第 13 回 自然保護①
自然保護に関する法律について理解する。
(玉村担当)
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第 14 回 地球温暖化防止のための訴訟戦術
環境影響評価義務履行請求事件や二酸化窒素環境基準取消訴訟等を参考に地球温暖化防止のための
法戦略・訴訟活用法について考える。
(湯川担当)
第 15 回 自然保護②
「自然の権利」訴訟の意義について考察する。
(玉村担当)
毎回の設例・課題及び参考判例は、授業に先立って web に掲載する。関連箇所を基本書で予習し、法
律・政省令や参考判例に目を通して、事前に設例・課題につき検討すること。授業には、設例・課題を
各自印刷し、全文読解を指定された参考判例についてはその判決文全文を持参すること。授業形式は、
講義および演習形式・対話方式(受講生に対する質問と受講生の回答・発表)を適宜織り交ぜて行う。
事前準備として答案作成までは求めないが、2 通以上のレポートの提出を求める。
環境実定法規や環境行政訴訟・環境民事訴訟の実務についての基本的理解を得ること、環境を保全し
創造するための法実践を学習すること、環境を保全し創造するための法体系及び個別行政法規の手法を
理解すること、環境の保全創造に関する行政(市町村と都道府県と国との三層構造をなす行政)と事業
者と住民との関係を理解すること、環境に関する情報管理及び計画管理に主体的に関与する方法を修得
することを第一の到達目標とする。これが単位認定の基準となる。
次に、具体的事案において問題点を抽出し、問題解決のための法手段を適格に選択し、論理的に思考
して説得力ある理由を呈示し、バランスのとれた妥当な結論(私益と公益の調整、多数関係者の利益調
整、事業者と周辺住民との利益調整、民主的行政原理と司法救済の調整)に至る、実務家としての基本
的能力の涵養を上位の到達目標とする。
毎回の設例・課題を検討するに当たり、常にそのような視点で検討を進めてもらいたい。
1)平常点(配点 30 点) 毎回の授業における法的対話の能力、判例・制度についての理解力及び毎回
の課題の中から選択して提出したレポート(最低 2 通)に基づき評価する。欠席は 1 回につき 1 点、遅
刻は 1 回につき 0.5 点を減点する。
2)期末試験・論文式(配点 70 点) 毎回の課題・設例に準じた事例式問題に対する筆記試験を行う。
事例から法的問題点を抽出し、適切な解決法を選択し、結論に至る理由を論理的にかつ説得力をもって
提示し、妥当な結論に達しているか、制度の趣旨や判例を正確に理解しているか、論理的な文章表現力
があるかを判定する。
教科書 指定しない
参考書
北村喜宣「環境法(第 3 版)」
(弘文堂)
有斐閣アルマ「環境法入門(第 3 版)
」
(有斐閣) 北村・環境法は分厚く専門的なので、まずはとっ
つきやすい入門書
「環境判例百選(第2版)
」
(ジュリスト別冊、有斐閣)
環境法演習
湯川 二朗
3年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
環境を保全し創造するための法実践の手法を環境行政訴訟や環境民事訴訟を通して学習する。司法試
験を意識した授業を行うこととしたい。
容
下記テーマにつき、各回演習形式で、具体的設例・課題に基づいて検討を深める。各回で取り扱う具
画 体的説例・課題は、授業前にウェブで提示する。
第 1 回 導入講義
環境法に係る司法試験問題ついて何が問われているかを通覧しつつ、環境政策の手法や環境規制の法的
アプローチについて理解する。
第 2 回、第 3 回 環境影響評価法
第 4 回、第 5 回 水質汚濁防止法と大気汚染防止法
第 6 回~第 8 回 廃棄物処理法
第 9 回、第 10 回 土壌汚染対策法
115
第 11 回 容器包装リサイクル法
第 12 回 自然公園法
第 13 回 地球温暖化対策法
第 14 回 法律と条例
第 15 回 環境法総論まとめ
毎回の設例・課題及び参考判例は、授業に先立って web に掲載する。関連箇所を基本書で予習し、法
律・政省令や参考判例に目を通して、事前に設例・課題につき検討すること。授業には、設例・課題を
各自印刷し、参考判例の全文を持参すること。授業形式は、演習形式・対話方式(受講生に対する質問
と受講生の回答・発表)により行うので、事前の準備は不可欠である。事前準備として答案作成までは
求めないが、2 通以上のレポートの提出を求める。なお、環境法演習は、まだ内容・進め方とも試行錯
誤を繰り返しているところであるので、本年度も講師と受講生の協働作業を通じて内容を発展させてい
きたい。
授業の到達目標
環境実定法規や環境行政訴訟・環境民事訴訟の実務についての基本的理解を得ること、環境を保全し
創造するための法実践を学習すること、環境を保全し創造するための法体系及び個別行政法規の手法を
理解すること、環境の保全創造に関する行政(市町村と都道府県と国との三層構造をなす行政)と事業
者と住民との関係を理解すること、環境に関する情報管理及び計画管理に主体的に関与する方法を修得
することを第一の到達目標とする。これが単位認定の基準となる。
次に、具体的事案において問題点を抽出し、問題解決のための法手段を適格に選択し、論理的に思考
して説得力ある理由を呈示し、バランスのとれた妥当な結論(私益と公益の調整、多数関係者の利益調
整、事業者と周辺住民との利益調整、民主的行政原理と司法救済の調整)に至る、実務家としての基本
的能力の涵養を上位の到達目標とする。
毎回の設例・課題を検討するに当たり、常にそのような視点で検討を進めてもらいたい。
評 価 方 法 1)平常点(配点 30 点) 毎回の授業における法的対話の能力、判例・制度についての理解力及び毎回
の課題の中から選択して提出したレポート(最低 2 通)に基づき評価する。欠席は 1 回につき 1 点、遅
刻は 1 回につき 0.5 点を減点する。
2)期末試験・論文式(配点 70 点) 毎回の課題・設例に準じた事例式問題に対する筆記試験を行う。
事例から法的問題点を抽出し、適切な解決法を選択し、結論に至る理由を論理的にかつ説得力をもって
提示し、妥当な結論に達しているか、制度の趣旨や判例を正確に理解しているか、論理的な文章表現力
があるかを判定する。
教
材 教科書
北村喜宣「環境法(第 3 版)」
(弘文堂)
「環境法ケースブック(第 2 版)
」
(有斐閣)
履修上の注意
参考書
「環境法判例百選(第2版)」ジュリスト別冊(有斐閣)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
情報法
川村 哲二
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
この講義では、情報法の広い分野の内、IT社会において一般市民、事業者が直接関わる法律問題の
現状および今後の課題について、基本的な知識を習得することを目的とする。主に、電子商取引関連法、
個人情報保護法、著作権法を含めて民事法分野を中心とするが、不正アクセス禁止法等の刑法分野も若
干取り扱う。
今後の法律実務家にとって、IT分野の法律の理解は不可欠であり、また、日々進化するIT社会に
おいて、法制度や法律解釈がどのように対応していくかという点も極めて重要である。新しい問題につ
いて法的な対応を行うためには、新しい法制度についての知識だけではなく、民法をはじめとした従来
の基本的な法律の理解が必要である。ITという断面から法を考えることによって、このような基本的
な法律の理解に資することも本講義の重要な目的の一つである。
容 第 1 回 総論 IT社会の特質と法の役割-「情報法」
「IT法」の基本視点
画
現在のIT社会における法律的な問題点を概観し、情報法を考えるうえでの基本的な視点を理解す
る。また、IT基本法の制定の背景とその内容、その後の立法状況を学び、IT社会での法政策の課題
を考える。
第 2~4 回 IT社会における契約、ネット通信販売(1)
(2)(3)
IT・ネット社会における消費者保護を主に契約、取引の面で考える。電子商取引特有の契約問題や
消費者保護、企業の対応を検討し、最近の消費者保護法制、経済産業省の「準則」などの各種ガイドラ
インやネットオークション、広告・表示等の問題も取り上げたい。
第 5 回 ITと刑事法
116
不正アクセス禁止法を中心に情報法に関する刑事的な規制とサイバー犯罪の状況について学ぶ。
第 6~7 回 個人情報保護(1)
(2)
マイナンバー制度の導入もあり、個人情報保護法の理解は企業にとっても法律実務家にとっても不可
欠なものとなっている。その成立過程と内容を充分に理解するとともに、各種ガイドラインや実際の企
業対応などを研究する。なお、個人情報保護法のうち、民間事業者部門に関する規定(第 4 章)を主な
対象とする。個人情報流出に関する民事責任についても考える。
第 8・9 回 ネット社会における名誉毀損、誹謗中傷(1)
(2)
ネット社会の特質の一つである匿名性による問題の中心となる掲示板等での誹謗・中傷事件を素材と
して考える。また、プロバイダ責任制限法の現状等を検討することにより、ネット社会における法規制
の課題を考える。
第 10~12 回 著作権等知的財産権とインターネット(1)
(2)(3)
デジタル技術とインターネットの発展により、著作権やその他の知的財産権に関するトラブル、問題
点が多方面で生ずるようになった。裁判例の検討を中心として、情報社会における著作権のあり方を議
論したい。不正競争防止法(営業秘密除く)のIT関連事案についても触れる。
第 13 回 営業秘密の保護
不正競争防止法に規定されている営業秘密(トレード・シークレット)の保護制度を概観し、幾つか
の裁判例を検討して基本的な理解を行うとともに、個人情報保護法などの他の情報保護法制との異同を
理解する。
第 14 回 SNS、ネット選挙を考える
ここまでの講義の内容を踏まえて、最近一般的に利用されるようになった twitter や facebook など
のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やネット選挙解禁に関しての法的な考察を行う。最
近問題となっている「忘れられる権利」などについても触れる。
第 15 回 まとめ
IT社会において法が果たすべき役割や今後検討すべき課題などについてまとめの検討を行う。
履修上の注意
本講義では、毎回の講義時にレジュメおよび必要に応じて資料を配付する。基本的には、通常の講義
方式を中心とするが、適宜、質問、討論を行う。小テストは少なくとも 1 回は実施する。
情報法分野の特性上、基本書的な文献は少なく、また、新しい問題が生起し続けている分野であるた
め、日頃より、関連分野の問題について興味を持って考えることが望まれる。また、当然のことではあ
るが、基本となるのは、民法、民事訴訟法等を中心とした民事法の理解であるので、充分に習得されて
いることを前提とする。
新しい分野でもあるので、予習よりも、講義で配布または提示された裁判例や各種資料などを参考に
して、理解を深めるような復習を行うことが望ましい。講義中の質問、討論に関しては、特別法などに
ついての予習は必要条件とはしないが、上述の通り、民事基本法の理解、特に、契約法、不法行為法分
野の理解は不可欠であるので、習得が充分でない学生は努力が求められる。
授業の到達目標
IT社会における様々な社会問題の現状を認識し、それらの問題と各種の法律との基本的な関係を習
得することが最低限求められる基本的到達目標である。
以上を踏まえて、各種法律制度の知識を踏まえて、新しい問題を分析することによって、問題に適切
に対応するための法的解決策の検討ができ、それを論理的に論述、発言できる力を習得することが、上
位の到達目標である。
つまり、法曹に必要とされる 7 つのスキルのうち、法的知識の習得が最低限の基本的到達目標であり、
これが単位認定の基準となる。さらに、◎問題解決能力、◎法的分析・推論能力、◎創造的・批判的検
討能力、◎法的議論・表現・説得能力といったスキルの習得が上位到達目標ということとなる。
評 価 方 法
最低 1 回は実施する小テスト(実施する場合は事前に通知する)の配点を 30%とし、期末試験の配点
を 70%とする。期末試験は、講義内容および基本的な法制度の理解ができているか、問題分析、論理的
かつ法的な論述ができるか、を重視する。なお、出席点については、加点事由とはしない。遅刻・早退・
欠席の取扱いについては、研究科の基準通りとする。
○成績評価の目安
・90~100 点 :上位到達目標にほぼ到達している。
・80~89 点:基本的到達目標にほぼ到達しており、上位到達目標にもおおむね(6~8 割程度)到達し
ていると認められる。
・70~79 点:基本的到達目標はおおむね(7~8 割程度)到達していると認められるが、上位の到達目
標は 6 割程度の到達度。
・60~69 点:基本的到達目標にかろうじて(6 割程度)到達していると認められるが、上位の到達目標
への到達度は 6 割に達していない。
・59 点以下 :第一の到達目標に 6 割以上到達したと認められず、自習での到達がきわめて困難である
と判断される。単位認定のためには、再履修が必要。
117
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
本分野では、様々な法律にわたる分野であるうえに、日進月歩のIT社会を対象とするものであるた
め、適当な基本書等が少なく、ここでは特に基本書的な文献、教材を指定しないが、
「インターネット
の法律問題-理論と実務」
(新日本法規 平成25年)は、最近のものとして紹介しておく。
参考資料としては、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
(平成 26 年 4 月改訂)
をはじめとして、個人情報保護法(内閣府)やプロバイダ責任制限法(総務省)
、著作権法などに関す
る関係官庁の解説、ガイドライン等が、各官庁のwebサイトからダウンロードできるので、参考にさ
れたい。
その他、必要に応じて、講義時に文献、裁判例等の資料を配付するとともに、文献の紹介を行うこと
とする。
国際人権法
戸田 五郎
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
第二次世界大戦後数多くの人権諸条約が締結され、基本的人権の保障は国内法上の問題であるにとど
まらず国際法上の問題でもあると認識されるようになってきた。これら人権諸条約は、それを通じた人
権保障の国際標準の設定や、履行確保のための国際的手続の確立と運用というように、国際的平面にお
いて機能しているだけでなく、国内的平面においても機能しているといえる。すなわち、国内的効力を
獲得した人権諸条約の国内裁判所等による解釈適用の展開がそれである。本講義では、受講者が将来日
本の法曹となって人権諸条約に取り組むことを前提に、日本が締約国である国際人権規約等を中心とし
て、その国際・国内両平面における解釈適用の状況を理解し、人権保障の促進において人権諸条約が果
たす役割とその限界について考察していく。
授 業 内 容
授業は以下のように進める予定である。
授 業 計 画
第 1 回:総論①-人権の国際的保障の発展・人権条約の国際的実施(講義)
第 2 回:総論②-人権条約の国内的実施(講義)
第 3 回:自由権規約 7 条の「品位を傷つける取扱い」の意味(大阪高判平成 6 年 10 月 28 日、報告と討
論)
第 4 回:自由権規約 14 条と裁判所へのアクセスの権利(徳島地判平成 8 年 3 月 15 日・高松高判平成 9
年 11 月 25 日、報告と討論)
第 5 回:自由権規約 14 条 3 項(f)の無料で通訳の援助を受ける権利(東京高判平成 5 年 2 月 3 日、報告
と討論)
第 6 回:国籍法違憲判決(最大判平成 20 年 6 月 4 日、報告と討論)
第 7 回:婚外子相続差別違憲決定:国際社会の動向への視線(最大決平成 25 年 9 月 4 日、報告と討論)
第 8 回:国公法堀越事件最高裁判決:欧州人権裁判所判例に照らして(最判平成 24 年 12 月 7 日、報告
と討論)
第 9 回:自由権規約委員会の「一般的意見」の意義(福岡高判平成 29 年 9 月 7 日、報告と討論)
第 10 回:人権条約と平和的生存権(岡山地判平成 21 年 2 月 24 日、報告と討論)
第 11 回:出入国管理事案における「児童の最善の利益」の考慮(東京高判平成 25 年 4 月 11 日、報告
と討論)
第 12 回:社会権享有における差別禁止(最判平成 13 年 4 月 5 日、報告と討論)
第 13 回:人種差別撤廃条約関連事例:小樽入浴拒否事件(札幌地判平成 14 年 11 月 11 日、報告と討論)
第 14 回:少数民族の権利:二風谷ダム事件(札幌地判平成 9 年 3 月 27 日、報告と討論)
第 15 回:人権条約機関の動向(報告と討論)
履修上の注意
授業は、総論部分を講義した後、毎回国際人権法に関連する国内判例を取り上げ、受講者から報告を
受けて討論を行うかたちで進める。
受講に当たり、国際法(特に国際法と国内法の関係及び条約法)に関して一通りの知識を有している
ことが望ましい。
授業の到達目標
国際人権法の基本的概念を理解するとともに、日本の法曹として人権条約を人権保障の促進のために
いかに「利用」できるかを探求することを通じて、各人が憲法及び国際法等の分野で既に有している基
礎的知識を用いた問題解決能力を養うことを到達目標とする。
国際法の関連分野、特に条約の国内的効力および国内適用可能性に関する正確な基礎的知識を前提と
して、人権条約の「利用」可能性とその限界についてほぼ適切に理解していることが確認できれば合格点
(60 点)とする。
上記の目標に到達するため、授業ではできるだけ対話方式を用いる。
評 価 方 法 1:授業において受講者に課す報告の内容(15%)
2:小テストの成績(15%)
3:学期末に行う論文形式の筆記試験の成績(70%)
により評価を行う。
1:指定した判例をまとめ、中心的論点について考察を加えるかたちで、レジュメを作成・配布の上、
報告を行って頂く。
2:知識の確認のため、3 回程度行う。
3:基礎的素養を問う問題と、事例に即した問題を組み合わせて出題する予定である。評価の視点は他
118
教
の諸科目と異なるところはなく、基礎的知識を十分に有しているか否か、論理的思考能力を十分に
備え、事実に法規範を適用して説得力のある結論を導くことができているか否かの確認を中心とし
て行う。
材
担当教員がレジュメを作成するが、参考書として以下を手元に置くことが望ましい。
戸波・北村・建石・小畑・江島(編)
『ヨーロッパ人権裁判所の判例』信山社(2008 年)
田中則夫・薬師寺公夫・坂元茂樹 (編集代表)
『ベーシック条約集 2016』東信堂:国際法学習に条約
集は必携。有斐閣等の条約集でも可。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
消費者法講義
野々山 宏
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
人は誰もが消費者として取引に関与します.消費者法は、民法の特別法として、消費生活に最も身近
で、実務でも必ず使う法律です。
消費者は事業者と異なり契約や取引について専門的な知識を有していません。一方で、私たちの経済
に個人消費が占める割合が 6 割を超えていることからも理解できるように、消費者取引は法が取り扱う
べき重要な契約類型になっています。実務上も多くの紛争や訴訟があります。そして、消費者取引は事
業者間取引とは異なる視点での法の規律が求められています。消費者と事業者の間には情報の質・量や
交渉力などに構造的な格差があって、対等平等な当事者を前提とする旧来の民事法制を適用するだけで
は、適切、妥当な問題解決が図れないことが少なくありません。消費者契約法や特定商取引法など、契
約をめぐる消費者法は、理論的にも実務の観点からも重要な法規範になっています。一方で、食品偽装、
欠陥製品などによる被害も、消費者をめぐる深刻な法律問題です。ここでも行政規制の実効性が問われ
るとともに、被害救済のための民事法理の検討が不可欠です。多重債務やクレジットカードなど、金融
をめぐる消費者問題に関しては、最高裁判例や新規の立法など、大きな変化が現実のものになっていま
す。また、少額多数を特徴とする消費者被害の救済制度も民事訴訟法の特別法として新しい立法がされ、
2016年10月1日から施行されます。
この講義では、消費者基本法に規定された消費者の権利という観点から、消費者被害の民事救済法理
の基礎を学びます。また、実際に消費者訴訟を動かしていくという観点から、消費者訴訟の意義と課題
とを考えたいと思います。対象とする法令は、消費者基本法、民法、消費者契約法、特定商取引法、割
賦販売法を中心に、その他にテーマ別に対応する法律として、製造物責任法、消費者裁判手続特例法、
消費者教育推進法をとりあげます。もっとも、これらの法律には、民事法規だけでなく、いわゆる行政
規制の根拠となる条項が規定されています。個々の被害救済はもちろん、被害の拡大や未然防止にとっ
て、行政規制の活用は重要な課題です。その点にも留意した講義になります。
なお、消費者法は立法、判例(裁判例)ともに、大きく変化している法領域です。例えば、2012 年度
には、特商法の改正による「訪問購入」の規制や消費者安全法の改正、そして消費者教育推進法の制定
と施行され、2013 年度には集団的消費者被害回復のための新しい訴訟法である消費者裁判特例法が制定
されました。2016 年度中には、消費者契約法、特定商取引法、かっぱん法の改正も国会で議論される予
定です。このように、講義中にも重要な法改正や裁判所による判断が示されるかもしれません。講義内
容は、それを反映したものになります。その際には、事前に明示をしますが、シラバスとは異なる場合
があることを認識しておいて下さい。
容 第 1 回 「消費者法とはどのような法律か?」
画
第 1 回の講義は消費者法のガイダンスをします。
まずは、
「消費者法」を横断的に考えてみましょう。その際に、
「消費者」とはどのような法的主体で、
それに関する法制度はどのようにあるべきなのかを考えてみましょう。
2004 年 6 月 2 日に公布、同日施行された「消費者基本法」はわが国の消費者政策の基礎となる法律で
す。私たちの国の消費者政策と法がどのような傾向を有しているのか。また、消費者行政を担当する消
費者庁や国民生活センターの役割などについてもここで学びます。
第 2 回 「消費者契約法(1)-消費者契約の定義と情報提供義務・不当勧誘による取消し」
2001 年に制定された消費者契約法は、その適用が「消費者契約」に限定されたわが国で最初の民事法
です。消費者契約とはどのように定義されているか。消費者と事業者はどのようにとらえられているか。
それが実際の消費者被害の救済にどのような意味を有するのか。不実告知を例に考えてみましょう。
第 3 回 「消費者契約法(2)-不当勧誘による取消し」
消費者契約法4条に規定された取消し原因について学びます。
できるだけ具体的な事案を考えながら、
その意味を理解しましょう。一方で、取消しが認められるための要件事実、その効果も大切です。また、
第 5 条に規定する「媒介の委託を受けた第三者」
、第 7 条「取消しの行使期間」についてもここで検討
します。
第 4 回 「消費者契約法(3)-不当条項の規制」
消費者契約法 8 条~10 条に規定された消費者契約における不当条項の無効について学びます。
これも
具体的な条項を想定して理解することが不可欠です。
第 5 回 「消費者契約法(4)-不当条項の規制(学納金最高裁判決を考える)
」
最高裁は 2006(平成 17)年 11 月 27 日に「前納授業料」の不返還特約を消費者契約法に反するとし
119
て、無効であると判示しました。この判決については、さまざまな観点から検討がなされています。あ
えて、講義 1 回を使って、この判決の意味と課題とを議論してみましょう。
第 6 回 「消費者団体訴訟制度-その実際と課題」
消費者契約法の改正によって導入された消費者団体訴訟制度は、2007 年 6 月からスタートしていま
す。現在、13 の適格消費者団体、多数の訴訟が継続中です。どのような事案がそこで検討され、どのよ
うな結論が出されており、その法的な争点はどこにあるのか。それを具体的に検討します。素材につい
ては、TKC で指摘をします。また、2013 年に制定された、集団的な被害回復訴訟制度である消費者裁判
手続特例法についても検討します。
第 7 回 「消費者契約法に関する理解度確認テスト」
「特定商取引法(1)-特商法の改正経緯と法的性
格」
前半の 50 分を使って、消費者契約法についての理解度確認テストを実施します。
その後、特商法が規制する 6 つ取引類型とその改正経緯、特商法の刑事規制、行政規制、民事ルール
としての法的性格についても整理します。
第 8 回 「特定商取引法(2)-クーリングオフを考える」
消費生活センターでの消費者被害の救済にもっとも効果的であると言われているのが「クーリングオ
フ」です。クーリングオフは、現在は特商法だけでなく、様々な法律に規定されています。ここでは、
特商法の訪問販売におけるクーリングオフの要件、効果を理解するとともに、クーリングオフの裁判上
の論点についても検討します。
第 9 回 「特定商取引法(3)-通信販売の規制を考える」
通信販売、連鎖販売取引、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、業務提供誘因販売の規制について概
説した上で、ネット通販に関する消費者被害の現状と法の対応について検討をします。
第 10 回 「特定商取引法(4)-過量販売解除権と不実告知による取消し」
2008 年の法改正で特商法に、訪問販売に関して過量販売解除権が規定され、2009 年 12 月 1 日から施
行されました。
「過量」を理由に契約の解除ができる意義とその法的な要件をまずは理解しましょう。
また、不実告知による契約の取消しは、消費者契約法にも特商法にも規定されています。その異同はど
こにあるのか。できるだけ具体的な事例に即して理解を図ることとします。
第 11 回 「割賦販売法と抗弁権の対抗」
消費者が悪質商法の被害に遭うひとつの理由として、そうした取引にクレジットを利用することがで
きるという現実があります。直ちに代金全額を支払わなくても、商品や役務の提供を受けることができ
るのです。実際の悪質商法に関する裁判は、クレジット会社が相手であることが珍しくありません。割
賦販売法 30 条の 4、割販法 35 条の 3 の 19 は、抗弁権の対抗を規定しています。この条文の意味と限界
とをきちんと理解しましょう。また、2008 年改正で、特商法に規定された過量販売解除権あるいは不実
告知を理由として売買契約が効力を失った場合、信販契約も効力を失って、すでに返済済みの割賦金(既
払金)についての返還請求が可能となる規定が追加されています。その意味についても検討します。
第 12 回 「クレジットカードと消費者」
わが国には、分割支払いが可能なカードと翌月一括払いのカードがあります。前者には割賦販売法が
適用されますが、後者には法の規律は及ばず、もっぱら約款によって法的な責任が規定されています。
わが国でもクレジットカードをめぐって、いくつかの裁判が行うれています。割賦販売法の改正によっ
て規制が強化された結果、最近では決済代行と仕組みでクレジットカードが悪質業者の代金決済に使わ
れているという問題もあります。カードとそれに関する消費者法理について学びます。
第 13 回 「製品の欠陥と製造物責任法(1)-欠陥製品による被害救済法理」
1995 年に施行された製造物責任法は、製品の欠陥に関する製造業者等の法的責任を「欠陥」責任と規
定しました。その要件と効果について検討するとともに、法施行 10 年以上を経過して、製品の欠陥に
基因する裁判がどのように機能しているかを考えます。
第 14 回 「製品の欠陥と製造物責任法(2)-欠陥に関する被害情報とその一元管理」
法に規定された消費者の権利が実効性をもつためには、どのような制度や社会が必要なのでしょう
か。製品の安全にかかる情報の一元管理の重要性について、消費生活用製品安全法の改正経緯を踏まえ
て学びます。
第 15 回 消費者と消費者団体の役割 - 消費者市民社会とは何か
構成で安全な市場を形成するために、消費者と消費者団体の役割が重要となっている。消費者教育推
進法が制定され、新しい消費者市民教育が推進されている。その内容と、これからの市場の在り方に私
たちがどう対処するかについて考える。
履修上の注意
本講義では、第 2 回以降、日本弁護士会連合会編『消費者法講義 第4版』日本評論社(2013・3)
の該当箇所をコピーして配布します。j 事前に該当箇所を読んでおいてください。その上で、毎回の講
義時に先立って講義内容の概要を記載したレジュメを配布します。それぞれの講義のポイントを事前に
120
理解し、準備をして下さい。 とりわけ、講義の対象となる法だけでなく、その前提となる民法や行政
法についてもきちんと整理して講義にのぞむことを忘れないで下さい。とりわけ、民事救済に関しては、
民法との関係がとても重要です。
講義レジュメや資料は、TKC の「科目内容」の頁に、講義 4 日前までに掲載または指示します。各自、
プリントアウトあるいは準備し、授業時に持参して下さい。
なお、授業の出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさない場合には、単位認定試験の受験資格を失い
ます。また、30 分を越える遅刻及び早退は欠席として扱います。もっとも、仮に 30 分遅刻しても、講
義には来て下さい。シャットアウトすることはしません。いうまでもないことですが、講義は LIVE で
す。弁護士として、また、国民生活センターの理事長の経験をふまえて、消費者行政と消費者訴訟など
横断的な視点から、さまざまなことを学ぶことができると思います。
求められる予習・復習の内容
その段階で問題となる消費者被害について、できるだけ身近な事例を考えて、関連する法や制度を理
解することを忘れないで下さい。また、予習をする際に、事前配布する日本弁護士会連合会編『消費者
法講義 第4版』日本評論社(2013・3)法の該当箇所を必ず目を通しておいて下さい。条文も大切で
す。条文を参照せずに、その内容だけを理解することは不可能です。消費者被害の救済には民法の理解
が必要になることも多々あります。この点に関する確認も、講義中にも行いますが、自ら確認すること
も忘れないで下さい。
授業の到達目標
消費者法には、民事ルールに加えて、行政規制としての側面を持ちます。その両方の法が、消費者法
の目的である、被害者救済や被害の拡大防止のために、どのように機能しているのかを理解することが、
この講義の目的になります。身近な人から消費者被害に該当する事例の相談を受けた際に、最低限の法
律的な助言ができるだけの理解をもってもらいます。
また、消費者被害救済という観点からは、消費者法理と民法との関係がとても重要です。消費者法の
考え方を学ぶ中から、あらためて民法の重要性を再確認し、その理解を深めるきっかけをつくっていた
だけるような講義を提供したいと思います。消費者契約法や特定商取引法の民事規定が民法との関係で
どのような意義を有するのかを、民法の正確な理解をもとに考えましょう。
消費者法は法曹がその実務的な被害救済活動の中で積み上げてきた側面があります。消費者法におけ
る法曹の使命感や責任、倫理観等を理解してもらいたいと考えています。
評 価 方 法
成績の評価は以下の方法の点数を加算した評価によります。
1.期末に実施する「論述試験」
(70%)
試験範囲は半年間の講義のすべてから出題します。試験の形式など詳細については、実施前に明示し
ます。また、採点後の点数評価とそれぞれの課題などについては、
「試験講評」で明らかにします。
2.講義期間中に実施する「
(消費者契約法に関する)理解度確認テスト」
(30%)
講義期間中の理解度確認テストの点数を 30%換算して評価します。
教
3.欠席や遅刻・早退をマイナス評価とします。
※欠席・遅刻・早退については、履修要項に従い減点します。
材
資料として、日本弁護士会連合会編『消費者法講義 第4版』日本評論社(2013・3)のコピーを事
前配布します。
他にも、以下の書籍は、消費者法全般をまとめたものとしていずれも推薦できるものです。ただ、消費
者法は毎年、改正や法の制定があります。できるだけ、現行法を反映した内容のものが適切です。詳し
くは講義時に説明します。
・長尾治助編『レクチャー消費者法(αブックス) 第 5 版』法律文化社(2011・7)
やや専門的、研究書的ではありますが、
・大村敦志『消費者法 第 4 版(法律学大系)
』有斐閣(2011・4)
逆に入門で全体を見渡す教科書として、
・坂東俊矢・細川幸一『18 歳から考える消費者と法』法律文化社(2010・11)
も参考にして下さい。
その他、消費者契約法、特定商取引法などに定評ある解説書がありますが、詳細は講義時に改めて紹
介します。
判例を学ぶ素材としては、以下の書籍を推薦します。
・島川勝・坂東俊矢編『裁判例から学ぶ消費者法第 2 版』民事法研究会(2014・3)
・広瀬久和・河上正二『消費者法判例百選(別冊ジュリスト 200 号)
』有斐閣(2010・6)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
消費者法演習
野々山 宏
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
消費者をめぐる法や制度は、その法的性質や民法の関係など理論的にも重要ですが、何よりも身近で
実務に直結して実践的法分野です。2004 年 6 月に施行された「消費者基本法」は消費者の 8 種類の権利
を規定しました。逆に言えば、消費者は「保護」されるだけではなく、自ら適切に権利を行使して被害
121
授
授
業
業
内
計
の回復を図るとともに、公正な取引市場の実現に役割を果たすことが求められています。もっとも、消
費者は権利行使に慣れてはいません。消費者行政はもちろん、法律実務家も、消費者の権利実現を支援
していくことが求められているのです。
消費者法は生成中の法領域であり、法律そのものも新た法律が制定されたり、改正などがくり返され
ています。また、最高裁判例を含め、判決理論も幅広く、その理解は容易ではありません。消費者が適
切に権利行使を専門家として支援するためには、消費者法の理論とその展開とを理解した上で、それを
実務の視点から使いこなすことが求められています。それは、事業者が公正な販売活動するためのコン
プライアンスの実現においても、共通に求められる視点です。
この演習では、代表的な消費者法の理解を確認するとともに、実際の事件や判決を素材に、その実務
での活用の視点と手続きについて検討をします。その検討を踏まえて、最終的には、内容証明郵便や事
業者に対する通知文の作成などを行ってもらいたいと考えています。
消費者法の対象は多岐にわたりますが、この演習では契約にしぼって消費者法理を検討します。具体
的には、消費者契約法、特定商取引法を基本に割賦販売法や民法の適用を考えます。
容
消費者契約法と特定商取引法、割賦販売法、製造物責任法に関する裁判例を素材に、それらの法律の
画 概要の理解と具体的事例への適用について、少なくとも 6 つの事例について検討をします。少なくとも
一つのテーマについて報告をしてもらいます。
なお、法の改正や判例の変化などがあった場合には取り扱う事例を変更することがあり得ますので留
意して下さい。現在、検討対処として考えている裁判例は以下の 6 件です。1件につき2回の授業で検
討と解説をします。最後の3回は実際の事例を基に作成した事案について、実務的な法律文書を作成し
てもらい、これを検討します。
(1)第1回、第2回
宅配便約款の責任制限条項の効力
最判平成 10 年 4 月 30 日判時 1646 号 162 頁、判タ 980 号 101 頁
消費者法判例百選 86 頁
(2)第3回、第4回
未成年者による有料サイト利用と親のクレジット・カード不正使用
長崎地裁佐世保支部平成 20 年 4 月 24 日金判 1300 号 71 頁
消費者法判例百選(別冊ジュリスト 200 号)230 頁
(3)第5回、第6回
保険契約の無催告失効条項と消費者契約法
最判平成 24 年 3 月 16 日民集 66 巻 5 号 2216 頁
(4)第7回、第8回
デート商法の公序良俗違反と抗弁権の対抗
最判平成 23 年 10 月 25 日民集 65 巻 7 号 3114 頁
消費者法判例百選 84 頁(高裁判決)
(5)第9回、第 10 回
玩具の入っていたカプセルの幼児による誤飲と製造物責任法
鹿児島地判平成 20 年 5 月 20 日判時 2015 号 116 頁
消費者法判例百選 198 頁
(6)第 11 回、第 12 回
建物の欠陥による損害賠償請求と居住利益の控除の可否
最判平成 22 年 6 月 17 日民集 64 巻 4 号 1197 頁
(7)第 13 回、第 14 回、第 15 回
実際の事案に基づいて作成された事案についての検討と、通知書面、訴状、答弁書などの法律文書
の作成
履修上の注意
この演習を受講する前提として、
「消費者法講義」を受講することを強くすすめます。演習でも消費
者契約法や特定商取引法の基本事項について確認をしますが、その理解はけっして容易ではありませ
ん。まずは消費者法講義で概要を理解した上で、その実践での活用をこの演習で学ぶjことを期待して
います。
また、事例の検討に際しては、民法の理解が不可欠です。とりわけ、契約法の基本を正確におさえて
下さい。もちろん、演習の場でその点については繰り返し指摘をしますが、自分で復習をしておくこと
を忘れないで下さい。
演習は事前に当該事件の判決に現れた事案を検討し、当事者の各主張について分析して何が争点かを
検討してきてきてもらい、それを各事例検討の第 1 回目に議論します。それぞれ、民法を適用するとど
うなるか、その特別法である消費者法を適用するとどうなるかを比較して検討してもらいます。第 2 回
目は第 1 回目の議論を踏まえて、各争点について判例の考え方を踏まえた上で、その妥当性や課題につ
いて検討して議論します。取り上げた多くの最高裁判例で、下級審で結論が分かれています。なぜ分か
れるのか、これをどう考えるべきなのかを議論します。
なお、演習である以上、受講生の皆さんに課題を提示し、それについて報告をしてもらいます。それ
に基づいて、議論をしますので、その準備があることを認識して置いて下さい。
授業の到達目標
消費者契約に関する基本的な法律である消費者契約法および特定商取引法の内容とその実践的な役
割とを理解するとともに、それらを駆使して具体的な消費者紛争を法的に解決する方法について学ぶこ
とを目的とします。民法と特別法である消費者法の違いと、これを最高裁等の裁判所がどう判断してい
るのかについて理解してもらうことになります。それは、民法その他の民事法の理解にもつながります。
122
評
価
方
消費者紛争の特殊性に配慮し、民法の基礎的な理解を前提として、消費者の権利行使を支援するとの
観点から消費者法を活用することができる資質とその法的な能力とを身につけることが、この演習の目
的です。
演習の後に配付する資料に基づいて該当する消費者法を復習するとより理解が進みます。
この講義を通じて、最高裁判例が積み重ねられている消費者事件に対して、その主張の分析、法的知
識を踏まえた争点の理解と抽出、ディスカッション能力、実務的な法律文書の作成能力を身につけても
らうことを目標とします。
、
法 1.期末に実施する「論述試験」
(70%)
試験範囲は半年間の演習を踏まえて、事例問題を作成して出題します。試験の形式など詳細について
は、実施前に明示します。また、採点後の点数評価とそれぞれの課題などについては、
「試験講評」で
明らかにします。
2.演習における報告内容を 10%換算し、講義の後半に作成してもらう法律文書を 20%換算します。
3.欠席や遅刻・早退をマイナス評価とします。
※欠席・遅刻・早退については、履修要項に従い減点します。
この演習において担当する事例についての報告(10%)
、まとめとして作成した法律文書(20%)お
よび定期試験(70%)により、総合評価をします。
材
各事例における、下級審があるものをそれを含めた各判決書。
各事例に該当する民法の知識は各自が持っている教科書を活用してください。
該当する消費者法の資料として、日本弁護士会連合会編『消費者法講義 第4版』日本評論社(2013・
3)の該当部分のコピーを事前配布します。
教
他にも、以下の書籍は、消費者法全般をまとめたものとしていずれも推薦できるものです。ただ、消
費者法は毎年、改正や法の制定があります。できるだけ、現行法を反映した内容のものが適切です。詳
しくは講義時に説明します。
・長尾治助編『レクチャー消費者法(αブックス) 第 5 版』法律文化社(2011・7)
やや専門的、研究書的ではありますが、
・大村敦志『消費者法 第 4 版(法律学大系)
』有斐閣(2011・4)
・島川勝・坂東俊矢編『裁判例から学ぶ消費者法第 2 版』民事法研究会(2014・3)
・広瀬久和・河上正二『消費者法判例百選(別冊ジュリスト 200 号)
』有斐閣(2010・6)
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
名
名
年
数
的
人権問題演習
初宿 正典
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
講義の内容
現代の世界には、様々な人権問題が優れて現代的な形で存在する。人権擁護を主要な目的のひとつと
する法曹にとって、このような問題に関して十分な知見をもつことは極めて重要である。本科目は、現
在わが国でも論争中の問題やこれから問題となるであろう課題を選び、世界における動向にも目を向け
ながら、理論的な分析を加える。一応以下のようなテーマを掲げておくが、重要な時事的テーマが生起
する場合もあるので、授業テーマの変更もありうる。講義の内容は、受講者による毎回の「報告」に基
づいて議論を積み重ねる形式とする。法曹に必要な「7つのスキル」を涵養する活発な討論を期待する。
講義の目的
人権問題への取組みには、基本的な理論の十分な理解を前提として、実情に即した実務的問題解決能
力をもつことが重要である。ここで取り上げるような問題の解決には、一つは過去との対話によって貴
重な示唆がもたらされることがあるし、すでに問題が現実化している諸外国の例を参考にすることも非
常に重要かつ有用である(これらを科目化したのが法史学であり、比較法学である)
。この授業では、
これらの解決の補助手段も活用しつつ問題解決能力を高めることを重点目的とする。
容 1.授業の進め方、各回の報告担当者の決定(以下は例示であり、受講者の関心に応じてテーマについ
画 ては変更の可能性がある)
2.グローバル社会における人権――国籍をめぐる問題
3.先端研究と人権――学問の自由をめぐる現代的問題
4.男女共同参画社会と平等――日本版パリテ法
5.障害者自立支援法など――ノーマライゼションの課題
6・性犯罪者情報公開法(メーガン法)に関する諸問題
7. 「サムの息子法」
8.環境と人権――環境権をめぐる今日的問題
9.対テロ法と人権保障――9・11 以降の世界
10.同性愛の諸問題――同性パートナシップ法など
11.宗教的摩擦と人権――カルト・新興宗教
12.代理母問題
13.生(ライフ)に関する憲法問題
123
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
14.死に関する憲法問題――人の死の時期と法制度のありかた
15.人権条約と憲法の基本権――国際法と憲法の調和と緊張
この科目は、憲法理論上の問題の検討だけではなく、政策的な考察も織り込んで、法曹として人権問
題に適切に取り組む姿勢を喚起しようとするものである。高い志をもって受講されたい。また、この授
業は演習形式で行うので、毎回のテーマについて各受講生の輪番による約 40 分の報告(レポート)提
出を前提として、それを基に教員と参加者が十分な予習をして検討することとするため、各回の報告担
当者はもちろん、各受講者の事前の準備が不可欠であることに注意されたい。このことからしても、4
名以上の受講生が受講することを開講の前提となる。各参加者が概ね5回に一回の割合で合計3回程度
の報告をすることとなろうが、テーマによっては担当教員による報告を行うこともある。
なお、受講の前提として様々な法分野の基礎的理論をひととおり理解していることが望ましいので、
この科目は1・2年次の基本的科目の単位修得をした後の履修が望ましい。
本科目の性質上、出席は当然のことなので、欠席・遅刻は減点する(欠席1点、遅刻 0.5 点)
。病気
などやむをえない理由で欠席・遅刻する場合には、事前に連絡すること。また欠席の場合も、担当のテ
ーマについてのレポートは事前に提出すること。
この科目では、現代社会に起っている現実の人権問題に接して認識を深めるとともに、人権侵害を排
除し被害者を救済する実務法律家の役割を理解し、かつ、理論的な視角を広げることを目標とする。法
曹に必要とされる2つのマインド、7つのスキルを具体的に学ぶためであることを意識して受講された
い(特に問題解決能力を重視する)
。
期末試験(70%)
、各自の担当課題のレポート(30%)で評価する。合否は、おおむね到達目標を満たし
たかどうかの絶対評価を基本としする。
必読の資料はTKCを通して通知するほか、授業中にも紹介する。
その他の資料については、適宜、コピーを配布するなど、必要に応じて便宜を図る。
犯罪被害者と法
新 恵里
2年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 選択
近年、わが国においては、司法政策上、犯罪被害者保護の視点が求められており、その成果は、犯罪
被害者保護法の立法や、刑事訴訟法の改正にみられる。本講義では、海外諸国の被害者対策と比較しな
がら、わが国の犯罪被害者対策の現状と課題について理解する。とくに、近年、わが国では、犯罪被害
者の刑事裁判参加、裁判員制度等によって、犯罪被害者をとりまく状況が変化しており、法曹としても
その対応がせまられ、犯罪被害者の心情等を理解した制度運用が期待されている。
「犯罪被害者保護関
連ニ法」
「犯罪被害者等基本法」
、
「犯罪被害者等給付金支給法」の知識習得とともに、実務家として犯
罪被害者に対してどのような法的救済や保護が考えられるか、具体的な事例を検討していきたい。
容 第 1 回 被害者学の歴史-犯罪被害者の地位
画
歴史的に犯罪被害者が、法的、社会的にどのように扱われてきたかについて紹介するとともに、初期
の被害者学(victimology)の理論について解説する。
第 2 回 各国の被害者対策
被害者学がいわゆる「原因論」から「対策論」に転換してきた経緯に触れ、1970 年代以降の欧米の被
害者救済対策について解説する。また、わが国が行ってきた犯罪被害者対策の歴史と比較検討を行う。
第 3 回 犯罪被害者への経済的補償(1)
犯罪被害者への救済政策として欧米諸国で 1960 年代から行われてきた経済的補償について、補償の
法的根拠と理論、意義について解説する。
第 4 回 犯罪被害者への経済的補償(2)
わが国で 2001 年に改正された「犯罪被害者等給付金支給法に関する法律」について解説する。
「犯罪
被害者等給付金支給法」の成立過程についても触れる。また、現在の運用状況と問題点についても解説
する。
第 5 回 わが国における犯罪被害者の実態(1)
近年の「被害調査」
(victim survey)を検討しながら、被害の発生状況、犯罪被害者が事件後抱えて
いる問題、心情などについて概観する。また、近年の犯罪被害者による司法上の問題点について解説し、
問題点を明らかにする。
第 6 回 わが国における犯罪被害者の実態(2)
犯罪被害者が受ける二次被害の問題について解説する。とくに、捜査機関や司法機関等から受ける二
次被害の問題点とその対策については、事例を交えて検討する。また、報道被害の問題について、犯罪
被害者保護の観点から検討する。
第 7 回 少年法と犯罪被害者の問題
少年犯罪による被害について、犯罪被害者が抱える問題について解説する。とくに、改正少年法に盛
り込まれた犯罪被害者への配慮項目と、今後の課題について検討する。
124
第 8 回 警察の被害者対策
警察庁および各都道府県警に設置されている「被害者対策室」の役割など、警察の被害者対策につい
て、実務における被害者保護の状況について解説する。また、事件直後の犯罪被害者への法的介入の可
能性についても検討する。
第 9 回 犯罪被害者の心理と法
犯罪被害を受けた後の心理的反応や状態について解説するとともに、裁判所等での証言や意見陳述等
の場面において、司法機関が被害者に考え得る配慮についても検討する。
第 10 回 犯罪被害者保護関連三法(1)
犯罪被害者保護法の目的と意義について解説する。また、運用状況等にも触れ、同法の問題点と今後
の可能性についても解説する。
第 11 回 犯罪被害者保護関連三法(2)
犯罪被害者に関する 2000 年の改正刑事訴訟法、改正検察審査会法について、その目的と意義につい
て解説する。
第 12 回 犯罪被害者等基本法について
2004 年に成立した、犯罪被害者等基本法の目的と意義について解説するとともに、とくに、同法に基
づく犯罪被害者等基本計画の現状や、実務家の果たすべき役割について考える。
第 13 回 犯罪被害者等の刑事裁判参加について
2008 年から施行された、犯罪被害者等の刑事裁判参加制度について解説するとともに、現状、運用に
あたっての課題などについて考える。
第 14 回 修復的司法の可能性と限界
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
授
授
業
業
内
計
第 15 回 ケース・スタディ
講義での解説を踏まえて、実際に犯罪被害者が当事者となった判例について検討する。
特に、犯罪被害者が提訴した様々な事例のほかに、刑事裁判での犯罪被害者の意見陳述事例も検討す
る。
授業前に参考資料を提示するので、テーマに関連する条文や参考文献などをあらかじめ読んでおくな
ど、予習が必要である。また、随時、課題(小レポート)の提出を求めることがある。
現代社会が抱える犯罪被害者の現状について理解する。また、現行の犯罪被害者保護法や改正刑事訴
訟法に関する知識を身につけるとともに、犯罪被害者に対する法的救済の方法とあり方について理解を
深める。とくに最近の法改正にあたり、犯罪被害者等が刑事裁判に参加するなど、犯罪被害者をめぐる
制度は変わりつつある。また、裁判員制度の開始にあたり、一般市民の司法への参加や関心が高まるこ
とを鑑み、法曹に求められる責任や役割は大きい。これらの状況を踏まえ、当講義では、これら法曹の
期待に応えられる知識や能力の習得を目標とする。
定期試験(論述・筆記式)70%、課題(小レポート)
・授業中の発言・質問など、授業への積極的参
加度 30%で評価する。
参考書:新恵里『犯罪被害者支援-アメリカ最前線の支援システム』
(径書房、2000)
参考書:
『被害者法令ハンドブック』
(中央法規出版、2009)
その他、参考書については授業中に紹介する。また、適宜、プリントを配布する。
民法Ⅱ(物権法)
(旧:カリキュラム)
坂東 俊矢
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
この講義の目的は、民法の物権法(担保物権法を除きます)の基本概念を理解するとともに、それに
関する条文の要件と効果とをきちんと整理して理解することにあります。加えて、物権法、とりわけ所
有権に関する判例理論について、より具体的な事例を踏まえて理解することも、この講義の目的です。
なお、物権法とりわけ不動産物権に関しては、登記法や登記簿の理解も重要です。この点も資料などを
参照して確認をすることとします。
物権法の理論は、抽象的で、ある意味哲学的ですらあります。もっとも、その理論の背後には、多くの
場合、所有権の帰属をめぐる具体的な紛争が背景にあるのです。この講義は未修者の 1 回生春学期配当
科目です。法律の基本的な理解を大切にしつつ、所有権をめぐる法律問題に関する問題意識を持ちなが
ら、条文や理論を理解できるよう努力をしたいと考えています。
容
以下の順序で講義を行う。
画 第1 講
民法を学ぶための基本概念としての「物権」と「債権」-所有権の意義と客体
第2 講
「物」とは何か-民法におけるものとその権利体系
第3 講
物権的請求権の意義-自分のものを取り返すための法律根拠
第4 講
所有権の取得とその移転時期-民法 176 条論
第5 講
不動産に関する物権変動と対抗要件-民法 177 条論
125
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
126
第6 講
不動産に関する登記制度と登記を要しない物権変動
第7 講
登記を要する所有権の移転-時効と登記の問題を中心に
第8 講
動産の物権変動の対抗要件と即時取得
第9 講
占有の意義とその効果-占有権とはどのような権利か
第 10 講 物権変動とその対抗要件の考え方
第 11 講 所有権の内容と相隣関係
第 12 講 共有-複数の者による物の所有形態
第 13 講 用益物権(1)地上権-土地を借りる法的手段としての地上権の役割
第 14 講 用益物権(2)地役権-通行地役権をめぐる判例の考え方
第 15 講 その他の用益物権と物権法のまとめ
この講義はいわゆる旧カリキュラム科目です。残念ながら現段階まで、この科目を履修できなかった
のには、さまざまな事情があると思います。こんどこそ、物権法を理解しましょう。そのためには、基
本的な法律概念の理解を確実にしていくとともに、必ず条文を参照して、その基本概念が条文ではどの
ように表現されているかを確認することが不可欠です。
物権法の基本的な法律概念を理解して、それを条文から読み取ることができる能力を身につけること
が第一の講義の到達目標です。また、そのためにも、不動産登記に関する基本事項についても理解をし
ていただく必要があります。物権に関しても、いくつかの重要な判例があります。基本的な法律概念の
何が、どのような事実関係で問題となったのか。それを整理して理解することができることも、この講
義の到達目標になります。
成績の評価は以下の方法の点数を加算した評価によります。
1.期末に実施する「論述試験」
(70%)
試験の形式など詳細については、実施前に説明します。また、採点後の点数評価とそれぞれの課題など
については、
「試験講評」で明らかにします。
2.講義期間中に提出を求める「レポート」
(15%)
講義で触れることができない部分を自学自修の対象として明示し、それに関する勉強の成果を簡潔なレ
ポートとして、提出いただく予定です。そのレポートを 15 点で評価します。
3.講義時間中に物権法に関する基本的法律理解を問う「理解度確認テスト」を実施します。その主な内
容は、司法試験で実施されている短答式問題を活用する予定です。確実に基本的な知識が理解できてい
るかを確認します。それを 15 点で評価します。
(15%)
4.欠席や遅刻・早退をマイナス評価とします。
欠席 1 回につき-1 点。遅刻、早退については 30 分に満たない場合には-0.5 点とします。
講義の基本的な内容はレジュメを事前に TKC に掲示しますので、それを素材にして、予習をして下さ
い。
なお、教科書については基本書として、有斐閣 S シリーズを使うことを民法教員で了解事項としてい
ます。淡路・鎌田・原田・生熊『民法Ⅱ 物権 第 3 版補訂』
(有斐閣 S シリーズ 2010 年 3 月)です。
レジュメには、当該教科書の該当頁を記載します。もっとも、受講生の皆さんは自らの基本書を決めて
おられるかもしれません。それは、講義時に確認をして、その教科書を尊重しながら講義にいかしてい
きたいと思います。
また、判例集として、
『民法判例百選 総則・物権 第 7 版』別冊ジュリスト 223 号があります。こ
れも勉強のためには重要な資料になります。
民法Ⅲ(損害賠償法)
(旧:カリキュラム)
渡邉 泰彦
1年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
この講義は、旧カリキュラムの民法Ⅲです。何らかの理由で再度の履修をしていただくことになりま
すが、ぜひ「損害賠償」については司法試験レベルの理解ができたと思えるくらいの充実した履修にし
て下さい。それが結果的には再度の履修を意味のあるものにすると思います。
さて、損害賠償を学ぶ目的は、民法の基本を損害賠償という観点から整理することに他なりません。
民法では、不法行為と並んで、瑕疵担保、契約責任で損害賠償が問題とされています。この講義は、
主として不法行為に関する損害賠償を学ぶことを通して、その基本的な法律的理解を深めることにあり
ます。
損害賠償にかかわる民法の条文は実は多くありません。まずは、それをきちんと整理できる力をつけ
ましょう。
加えて、損害賠償が問題となる事例では、複雑な当事者や事実関係を整理して、法律にあてはめる力
をつけることが不可欠です。それを判例を読む際にも強く意識しましょう。
講義の対象として、不当利得と事務管理も最後に講義します。
損害賠償とは、きわめて法的な概念です。もっとも、損害の賠償を求める被害者にとっては、深刻な
被害救済としての側面があります。損害賠償を求める訴訟や責任追及には、理論を超えた想いが込めら
れていることも少なくありません。法的な概念を学ぶときに、その背景にある人の気持ちや社会問題を
見失わないセンスを身につけることも、本講義の大切な目的(メッセージ)です。被害の救済は、けっ
して法だけでできるものではありません。法は、ひとつの社会規範であって、過小評価することも過大
評価することも間違いなのかもしれません。半年間の講義で、損害賠償にかかわる法の役割をいっしょ
に考えてみましょう。
授
授
業
業
内
計
容 第 1 回 /2 回 総論、故意過失、責任能力
画 不法行為に関する規定の全体の構造を概観し、709 条にあげられた要件を確認します。そのなかで、故
意・過失の意義について、判例理論を考えます。
第 3 回 / 4 回 権利侵害
権利侵害について、生命・身体、物権、債権、公害・生活妨害について、判例の展開を見ていきます。
後半では、名誉、プライバシーの侵害、その他の権利の侵害について、判例の展開を見ていきます。名
誉毀損については、原状回復についても扱います。
第 5 回 因果関係、損害、阻却事由
損害の意義、因果関係について判例の展開を見ることで 709 条の要件を終える予定です。それとともに、
阻却事由として、正当防衛と緊急避難についても扱います。
第 6 回 不法行為の効果
金銭賠償の原則、算定方法、損害賠償の範囲、逸失利益について概観します。
第 7 回 賠償額の減額調整
過失相殺、被害者の素因、損益相殺について、判例の展開を概観します。
第 8 回 主体、消滅時効など
損害賠償請求権者、消滅時効などについて概観します。
第 9 回 / 10 回 特殊不法行為
使用者責任、監督者責任、土地工作物責任について判例の展開を概観します。
第 11 回 共同不法行為
共同不法行為について、基本的な問題点を指摘したうえで、判例の展開を概観します。
第 12 回 債務不履行による損害賠償
債務不履行の成立要件を確認し、損害賠償について検討します。
第 13 回 不当利得総論
事務管理について概観し、不当利得の一般的な問題点について判例の展開を見ていきます。
第 14 回 三者間不当利得、不当利得の効果
不当利得の応用編としての転用物訴権など三者間不当利得について判例を概観し、不当利得の効果につ
いて判例を見ていきます。
第 15 回 特殊不当利得、事務管理
不法原因給付を中心に、特殊不当利得について判例を概観します。事務管理について、概要を扱います。
履修上の注意
本講義では、毎回の講義時に先立って講義内容の概要を記載したレジュメを配布します。そこに掲載
されている「判例」や該当する教科書の頁などを事前に読んでおいて下さい。講義は、レジュメに従っ
て講義を行うだけでなく、基本的な概念や理解をするにあたってそれぞれの考え方が問われるような法
理論について、積極的に質疑応答をすることによって、理解を共有し、深めることができるようにすす
めます。その実現のためには、受講する院生諸氏の積極的な参加が不可欠です。自覚と熱意とを期待し
ます。
なお、授業の出席回数が全授業数の 3 分の 2 を満たさない場合には、単位認定試験の受験資格を失い
ます。また、30 分を越える遅刻及び早退は欠席として扱います。もっとも、仮に 30 分遅刻しても、講
義には来て下さい。シャットアウトすることはしません。いうまでもないことですが、講義は LIVE で
す。何よりも積極的に講義に参加する姿勢を持ち続けることがもっとも大切な履修上の注意です。
[求められる予習・復習の内容]
講義の時間は限られています。その時間で、幅広い損害賠償について理解するためにも、事前に教科
書の該当する頁を読んでおいて下さい。また、損害賠償にかかわる法制度は、判例によってその理論的
発展が図られた部分が多数あります。判例百選を使うなどして、その基本的な事実関係、争点、判決理
由とその理論的意味を、自分なりに理解する時間を持って下さい。
なお、とりわけ不法行為は、本講義が対象とする領域全体を学んでから、もう一度、それぞれの視点
で要件や効果を組み立てることが、理解を確実にするためにも不可欠だと思われます。そのためにも、
毎回の講義で学んだことを整理するとともに、半年の講義終了後に再度、全体を通して教科書やレジュ
メ、資料、講義ノートなどを復習する機会を必ずもって下さい。
授業の到達目標
損害賠償(および不当利得、事務管理)が法的な責任として評価されるために必要な要件と効果につ
いて基本的な理解を修得するとともに、その知識をその他の法律の勉強の土台として絶えず自ら確認す
ることができる勉強姿勢と方法とを身につけることが、本講義の到達目標です。なお、それに加えて、
具体的事例の事実関係を整理、法的な要件のあてはめ、具体的な効果の導きだしができる能力を、判例
や事例の学修を通して、磨きましょう。損害賠償の理解のためには、事実の法的要件へのあてはめが不
127
評
価
方
教
可欠です。そのための基礎力を身につけましょう。
なお、損害賠償の講義対象部分は、判例理論の理解が不可欠の領域が少なくありません。あらためて、
裁判例の読み方とその理論的理解についての方法論を学んでいただきたいと思います。それも、この講
義の目標です。
法
成績の評価は以下の方法の点数を加算した評価によります。
1.期末に実施する「論述試験」
(70%)
試験の形式など詳細については、実施前に明示します。また、採点後の点数評価とそれぞれの課題など
については、
「試験講評」で明らかにします。
2.講義中の小テスト(30%)
授業の最初に「理解確認テスト」を実施し、それを点数化します
4.欠席や遅刻・早退をマイナス評価とします。
欠席 1 回につき-1 点。遅刻、早退については 30 分に満たない場合には-0.5 点とします。
材
基本文献(教科書)は、藤岡・浦川・磯村・松本『民法Ⅳ 債権各論(第 5 版補訂版)』
(有斐閣 S シ
リーズ 2009 年 6 月)とします。この 1 冊で、不法行為に加え、不当利得や事務管理も記述されていま
す。
内田貴『民法 II 債権各論 [第 3 版]』 東京大学出版会。こちらも、不法行為から不当利得までカバ
ーしています。
さらに、債務不履行に基づく損害賠償については、これまで利用してきた債権総論の本を参考にして
ください。
その他
前田陽一『債権各論 II 不法行為法 [第 2 版]』 弘文堂 NOMIKA 4-2
判例を中心とした記述となっているコンパクトな本です。不法行為の部文についてこの教科書の章立て
を参考にしています。田貴『民法 II 債権各論 [第 3 版]』
不当利得法の部分について、講義の組み立ての参考にしています。
中田裕康・窪田充見編『民法判例百選Ⅱ 債権 第 7 版』
(有斐閣 別冊ジュリスト 2015 年 1 月)も
できれば用意して下さい。
判例百選の旧版は、オンライン検索を利用することもできます。
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
128
業
業
内
計
名
名
年
数
的
民法Ⅳ‐Ⅰ(金融取引法1)
(旧:カリキュラム)
山本 宣之
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
民法Ⅳ-Ⅰ、Ⅱ(金融取引法Ⅰ、Ⅱ)は、債権債務の効力・流通・実現・担保を主たる対象とする。
民法の領域としては、債権総論の多く、および担保物権のすべてが該当する(これに、民法総則の消滅
時効が加わる)。債権の代表例である金銭債権を念頭においていえば、まさに金融取引・担保に関する
基本制度を扱うことになる。現実の金融取引は、そうした制度の具体的利用ないし裏づけなしには成り
立たないという点で、実務上極めて重要な領域である。
この講義は、こうした金融取引法の「前半」に当たり、債権債務の効力・流通・実現(主に債権総論
の部分)を担当する。債権総論は、民法の財産法のなかでも抽象度の高い分野とされ、複数の制度の関
連・交錯に配慮する必要もあるため、理解の難しい領域である。この講義の目的は、そうした債権債務
の効力・流通・実現に関する基本理解を獲得し、2年次以降の発展的学習の基礎を身につけることにあ
る。
容
今年度の講義は、次のように予定している。実際の授業の進行に応じて変更する可能性がある。なお、
画 改正法案(
「民法の一部を改正する法律案」
(2015 年 3 月 31 日国会提出))に従うかどうかは、授業開始
前に告知する。
第1回 概説
この講義の対象領域を概観し、ガイダンスとする。とくに、民法典の債権総則の構造と主要な規定を
確認しながら、そもそも債権とは何かを理解するために、債権の意義、債権の発生、債権の目的につい
て基本的な検討を行う。
第2回 金銭消費貸借
金銭消費貸借にもとづく貸金債権は、金銭債権の代表例である。消費貸借は、要物・無償・片務契約
という特殊な類型であり、この点に伴う要件・効果上の問題を検討する。また、貸金債権の利息に関す
る特別法である利息制限法も重要である。
第3回 債務不履行と強制履行
債務不履行の概要を契約法・損害賠償法の復習という位置づけで確認する。債務不履行の効果として
契約解除、損害賠償責任が重要であること、金銭債務とその不履行に関して重要な特則があることを理
解する。また、債権が強制的に実現される方法として、強制履行を検討する。直接強制、代替執行、間
接強制という3種類の方法のほか、民事執行法による手続も概観する。判例や設例の事実関係にはしば
しば差押えや競売などが登場し、その手続の理解が当然の前提になるからである。
第4回~第6回 債権の消滅原因:弁済
債権の大多数は、債務者の任意の弁済によって実現されて消滅する。この弁済の要件に関しては、い
つ(履行期)、どこで(履行地)、誰が(弁済者)、誰に(受領権限者)、何を(債務の本旨に従った給付)
履修上の注意
授業の到達目標
評
価
方
法
教
材
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
名
名
年
数
的
を給付すればよいかを理解する必要があり、これに関連して、第三者弁済、準占有者への弁済などが問
題となる。また、あわせて、弁済の効果、弁済の充当についても検討する。
第7回 債権の消滅原因:弁済の隣接制度
債務者が弁済にとりかかり債権者が受領するまでの過程には、弁済の提供、受領遅滞、弁済供託とい
う複数の制度が密接に関連して存在する。弁済が完了しない場合に、債務者や債権者がどのような責任
を負うかは、それらの制度(および履行遅滞)に左右される。そうした関連を意識しつつ検討する。
第8回、第9回 債権の消滅原因:弁済以外の消滅原因、消滅時効
債権が任意に実現される方法として、代物弁済、相殺、更改、免除、混同を検討する。また、債権の
その他の消滅原因として消滅時効、除斥期間があり、これらも合わせて検討する。消滅時効に関しては、
各債権の時効期間のほか、時効の中断、時効の援用の制度が重要である。
第10回~第12回 債権譲渡
債権譲渡は、現代の取引において重要性を増しているが、制度全体も判例や特別法なども合わせて複
雑さを増している。とくに、譲渡禁止特約とそれに違反した債権譲渡の効力、債務者に対する対抗要件、
第三債務者に対する対抗要件、異議を留めない承諾、債権譲渡特例法による対抗要件などについて、正
確な理解をすることは不可欠である。
第13回~第15回 債権者代位権、詐害行為取消権
債権の保全的効力として債権者代位権と債権者取消権が存在し、それぞれ実務上の意義も大きい重要
な制度である。債権者代位権は、本来型について債権執行との相違に注意しながら、要件、効果、転用
事例などを検討する。詐害行為取消権については、法的性質、要件、効果などを検討し、取り消しうる
行為を具体的に検討する。
この講義の領域は、内容的に難しい項目を多数含んでいるが、事件の具体的解決に不可欠なものが多
く、この領域を理解しなければ民法を理解したとはいえない。日々の努力を怠ると、その項目、その授
業回が理解できないだけでなく、その後の学習全体に支障が生じることを銘記する必要がある。
授業は、レジュメ(あらかじめTKCに掲載する)にしたがって進める。とくに、基本事例について
の要件・効果の理解、簡単な当てはめ判断を行う。この基本事例の法律関係について確実に理解してい
くことが、授業時間中の中心テーマとなる。他方、レジュメの一般的内容は、基本理解の整理・充実と
いう位置づけでのみ取り上げ、むしろ、各自が基本書からそうした一般的内容を正確に読み取れている
かどうかを確認するために利用する予定である。また、初回を除いて、冒頭に前回のレジュメの復習問
題(自らの理解度を確認する問題)の答え合わせを行う。学生の解答(正誤だけでなく、正誤の理由も)
とそれへのコメントを通じて、基本理解を全員で確認し、誤りや不正確さを除去する機会とする。
以上から、予習の内容としては、基本事例の理解が圧倒的に重要である。また、各自の基本書の該当
箇所を通読し、レジュメの内容を読み取れているかを確認することが重要である。なお、レジュメは授
業進行の資料にすぎず、自分で基本文献を読むことが、学習には絶対的に不可欠である。
債権債務の効力・流通・実現に関する制度の基礎知識を身につけること(法的知識の獲得)が、主た
る目標である。また、常に具体的な事案を念頭において授業を進めることにより、当該制度を用いた事
案の解決(問題解決能力)、契約書などを含めた事実関係の整理(事実認定能力)、および、基礎知識を
前提にしたより高度な論点に対する問題意識と議論(創造的・批判的検討能力)も、従たる目標とする。
さらに、金融取引に関する基本制度が、いかに深く実務に関わりいかに深く人々の経済活動の基盤にな
っているかを認識することによって、それを扱う法律家の使命・責任の重さも自覚できるはずである(法
曹としての使命・責任の自覚)。
単位認定(60点以上)の基準となるのは、債権債務の効力・流通・実現に関する制度趣旨、要件、
効果の基本を説明できること、それらに対する事案の基本的な当てはめができること、およびそれにも
とづく事案の解決の基本を提示できることである。また、より上位の成績評価を得るには、そうした基
本をより正確かつ詳細に説明できること、事案をより丁寧に整理しより詳細に当てはめること、応用・
展開的内容を的確な問題意識のもとに論じることが必要である。
定期試験 70%、平常点 10%、レポート 20%として評価する。定期試験は、長文の事例についての論
述式の筆記試験(120 分)とする。平常点は、主に小テストによるものとし、また授業中の特に優れた
応答や発言をプラス評価とすることがある。レポートは比較的短い事例についての論述式を 2~3 回行
い、別途、詳細を説明する。また、欠席・遅刻早退の数をマイナス評価とする(履修要項に従う)。
基本文献は、野村豊弘ほか『民法 III 債権総論』
(有斐閣Sシリーズ)、または、内田貴『民法 III 債
権総論・担保物権』とする。その他の文献は、初回に詳しいリストを配布する。なお、潮見佳男『プラ
クティス民法・債権総論』は詳細であるが、自説が混在し、内容にムラがあるなど、利用上注意すべき
点が多い。
民法Ⅳ‐Ⅱ(金融取引法2)
(旧:カリキュラム)
山本 宣之
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
民法Ⅳ-Ⅰ、Ⅱ(金融取引法Ⅰ、Ⅱ)は、債権債務の効力・流通・実現・担保を主たる対象とする。
この講義は、その「後半」に当たり、債権の担保を主たる対象とする。民法の領域としては、債権総論
の一部、および担保物権のすべてが該当する。現実の金融取引は、そうした担保制度の具体的利用ない
し裏づけなしには成り立たないという点で、実務上極めて重要な領域である。また、民法の財産法のな
かでも、担保(とくに担保物権)は人為的に設計された技術的性格の強い分野であり、複数の制度の関
連・交錯にも配慮しなければならない点で、理解の難しい領域である。
129
授
授
業
業
内
計
容
画
履修上の注意
授業の到達目標
130
この講義の目的は、そうした債権の担保に関する基本理解を獲得することにある。
今年度の講義は、次のように予定している。実際の授業の進行に応じて変更する可能性がある。なお、
改正法案(
「民法の一部を改正する法律案」
(2015 年 3 月 31 日国会提出))に従うかどうかは、授業開始
前に告知する。
第1回 概説
この講義の対象領域を概観し、ガイダンスとする。とくに、債権(金銭債権)がどのように実現され
るかについて、任意に弁済される場合、強制執行によって実現される場合、担保権の実行によって実現
される場合を比較する。関連の深い民事執行法の基礎にも簡単に言及することになる。
第2回、第3回 保証、多数当事者の債権関係
債権の人的担保の代表例は保証であり、実務的な需要はいまなお衰えていない。保証の成立要件、付
従性・補充性・随伴性などの性質をもつ保証債務の内容、また、保証人が債権者に弁済した場合の保証
人の求償権について検討する。また、人的担保として機能しうる債務引受や連帯債務、および、その他
の多数当事者の債権関係である連帯債務、分割債務、不可分債務についても、比較検討する。
第4回 相殺
相殺は、簡便な決済機能としてだけでなく、現在では担保的機能が重要になっている。相殺一般の要
件、効果を理解することはもちろん、相殺予約、相殺と差押え、債権譲渡と差押えの問題を通じて、相
殺の担保的機能がどのように実現されるか、どのような制限があるかを検討する。
第5回、第6回 抵当権(基礎)
債権の物的担保・担保物権の代表例は抵当権であり、極めて広範囲で利用されており、理解すべき点
も多数にのぼる。抵当権の成立要件、対抗要件としての抵当権設定登記、抵当権の効力が及ぶ被担保債
権の範囲と目的物の範囲など、基本的事項は確実に理解する必要がある。抵当権の実行方法である担保
不動産競売と担保不動産執行の概要の理解は、抵当権を具体的にイメージするうえで不可欠である。さ
らに、抵当権と目的物の賃借人の関係、譲受人との関係、侵害者との関係も重要である。
第7回、第8回 抵当権(発展)
抵当権に関するやや難解な項目の検討を行う。物上代位は、抵当権によって債権が回収される実行方
法の1つとして重要であり、共同抵当についても実行時に複雑な問題がある。また、法定地上権、根抵
当権、および、根抵当権と同じく不特定の債務を担保するための根保証についても検討する。
第9回、第10回 担保・求償・代位
第三者(担保していた保証人や物上保証人が代表である)が債権者に弁済した場合、被担保債権自体
は消滅するが、第三者は債務者に対し求償権を取得する。その求償権を担保するために、弁済による代
位が存在するが、その制度としての仕組みの理解は容易ではなく、またその効果についても理解におい
て注意すべき点が多い。
第11回 質権、留置権、先取特権
抵当権以外の約定担保物権として、質権、また、法定担保物権として、留置権、先取特権がある。実
務的意義は必ずしも大きくないが、それぞれ一定の場面では重要な役割を果たしている。それぞれの意
義、要件、対抗要件、効力などについて検討する。
第12回、第13回 非典型担保
非典型担保として、仮登記担保、譲渡担保について検討する。仮登記担保については詳細な特別法が
あるが、譲渡担保については明文の規定はなく、その規律は判例・学説を中心とする法理に委ねられ、
すでに法律関係の詳細が明らかにされてきており、その理解には注意が必要である。また、集合動産譲
渡担保についても、集合物概念を含めて概観する。
第14回、第15回 非典型担保
非典型担保として、所有権留保について検討する。所有権留保についても明文の規定がなく、その規
律は判例・学説を中心とする法理に委ねられているため、その理解には注意が必要である。また、あわ
せて動産担保という観点から動産売買先取特権、債権担保という観点から債権質と債権譲渡担保につい
ても、ここで検討する。
この講義の領域は、内容的に難しい項目を多数含んでいるが、事件の具体的解決に不可欠なものが多
く、この領域を理解しなければ民法を理解したとはいえない。日々の努力を怠ると、その項目、その授
業回が理解できないだけでなく、その後の学習全体に支障が生じることを銘記する必要がある。
授業は、レジュメ(あらかじめTKCに掲載する)にしたがって進める。とくに、基本事例について
の要件・効果の理解、簡単な当てはめ判断を行う。この基本事例の法律関係について確実に理解してい
くことが、授業時間中の中心テーマとなる。他方、レジュメの一般的内容は、基本理解の整理・充実と
いう位置づけでのみ取り上げ、むしろ、各自が基本書からそうした一般的内容を正確に読み取れている
かどうかを確認するために利用する予定である。また、初回を除いて、冒頭に前回のレジュメの復習問
題(自らの理解度を確認する問題)の答え合わせを行う。学生の解答(正誤だけでなく、正誤の理由も)
とそれへのコメントを通じて、基本理解を全員で確認し、誤りや不正確さを除去する機会とする。
以上から、予習の内容としては、基本事例の理解が圧倒的に重要である。また、各自の基本書の該当
箇所を通読し、レジュメの内容を読み取れているかを確認することが重要である。なお、レジュメは授
業進行の資料にすぎず、自分で基本文献を読むことが、学習には絶対的に不可欠である。
債権の担保に関する制度の基礎知識を身につけること(法的知識の獲得)が、主たる目標である。ま
た、常に具体的な事案を念頭において授業を進めることにより、当該制度を用いた事案の解決(問題解
決能力)、契約書や登記簿などを含めた事実関係の整理(事実認定能力)、および、基礎知識を前提にし
たより高度な論点に対する問題意識と議論(創造的・批判的検討能力)も、従たる目標とする。さらに、
金融取引における担保制度が、いかに深く実務に関わりいかに深く人々の経済活動の基盤になっている
かを認識することによって、それを扱う法律家の使命・責任の重さも自覚できるはずである(法曹とし
評
価
方
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
授
授
業
業
内
計
ての使命・責任の自覚)。
単位認定(60点以上)の基準となるのは、債権の担保に関する制度趣旨、要件、効果の基本を説明
できること、それらに対する事案の基本的な当てはめができること、およびそれにもとづく事案の解決
の基本を提示できることである。また、より上位の成績評価を得るには、そうした基本をより正確かつ
詳細に説明できること、事案をより丁寧に整理しより詳細に当てはめること、応用・展開的内容を的確
な問題意識のもとに論じることが必要である。
法
定期試験 70%、平常点 10%、レポート 20%として評価する。定期試験は、長文の事例についての論
述式の筆記試験(120 分)とする。平常点は、主に小テストによるものとし、また授業中の特に優れた
応答や発言をプラス評価とすることがある。レポートは比較的短い事例についての論述式を 2~3 回行
い、別途、詳細を説明する。また、欠席・遅刻早退の数をマイナス評価とする(履修要項に従う)。
材
基本文献は、淡路剛久ほか『民法 II 物権』
、野村豊弘ほか『民法 III 債権総論』
(ともに有斐閣Sシ
リーズ)、または、内田貴『民法 III 債権総論・担保物権』とする。その他の文献は、初回に詳しいリ
ストを配布する。なお、道垣内弘人『担保物権』は好文献であるが、研究成果としての先端的内容も含
むため、注意を要する。
名
名
年
数
的
刑法Ⅱ-Ⅰ(各論1)
(旧:カリキュラム)
岡本 昌子
1年次
学
期 秋学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)と刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)で、刑法各論を講義する。刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)では、個
人法益に対する罪、特に財産に対する罪を中心に、刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)では、社会法益に対する罪およ
び国家法益に対する罪を中心に講義する。
刑法Ⅱ‐Ⅰ(各論1)の目的は、個人法益に対する犯罪に関する法的知識を修得し、各種の犯罪に固
有の構成要件を明らかにして処罰範囲を明確にするとともに、個々の構成要件相互の関係および区別を
確定し、真に処罰に値する行為を明らかにすることにより、既存の知識にはない新たな事態に直面した
場合にも、そこから刑法上の問題を発見・整理して解決策を導き出すことができる能力を養成すること
である。そのために、刑法Ⅱ‐Ⅰ(各論1)では、刑法Ⅰ(総論)で修得された基礎知識を前提として、
刑法各論の学習を中核としながら、刑法総論との有機的関連性に留意しつつ、各種の犯罪に固有の構成
要件を明らかにして処罰範囲を明確にするとともに、個々の構成要件相互の関係および区別を確定し、
真に処罰に値する行為を明らかにすることに努める。
容 第 1 回 財産に対する罪 1-財産罪総論
画
すべての財産罪に共通する問題である保護法益、客体、不法領得の意思について、窃盗罪を例に検討
する。
第 2 回 財産に対する罪 2-窃盗の罪
窃盗の罪について、占有の有無・帰属、親族相盗例を中心に検討する。
第 3 回 財産に対する罪 3-強盗の罪 1
強盗罪をめぐる諸問題のうち、窃盗罪との区別、強盗利得罪、準強盗罪を中心に検討する。
第 4 回 財産に対する罪 4-強盗の罪 2
強盗罪をめぐる諸問題のうち、強盗致死傷罪、強盗強姦罪、強盗強姦致死罪などを中心に検討する。
第 5 回 財産に対する罪 5-詐欺の罪 1
詐欺の罪について、詐欺罪と窃盗罪の区別、カードの不正使用等の詐欺罪の特殊類型の問題を中心に
検討する。
第 6 回 財産に対する罪 6-詐欺の罪 2
詐欺の罪について、誤振込、証明文書の詐取等の欺罔行為と財産上の損害をめぐる問題を中心に検討
する。
第 7 回 財産に対する罪 7-詐欺の罪 3、恐喝罪
詐欺の罪のうち、詐欺利得罪、電子計算機使用詐欺罪、そして、恐喝罪について、強盗罪との区別、
権利行使と恐喝罪の問題を中心に検討する。
第 8 回 財産に対する罪 8-横領の罪
横領罪について、売買の目的物、代替物、不法原因給付物等の客体の問題、二重売買の問題等を中心
に検討する。
第 9 回 財産に対する罪 9-背任の罪
背任罪について、事務処理者、任務違背行為、図利加害目的、財産上の損害の要件、二重抵当、横領
罪との区別の問題を中心に検討する。
第 10 回 財産に対する罪 10-盗品等に関する罪、毀棄・隠匿の罪
盗品等に関する罪の財産犯としての特殊性、領得罪と毀棄罪との関係を中心に検討する。
131
第 11 回 自由・私生活の平穏に対する罪 1
逮捕・監禁の罪、脅迫の罪、略取・誘拐および人身売買の罪について、自由・私生活の平穏および同
意と自由の侵害の意義を中心に検討する。
第 12 回 自由・私生活の平穏に対する罪 2
性的自由・感情に対する罪について、強姦罪、強制わいせつ罪、集団強姦罪、強制わいせつ・強姦致
死傷罪の成立範囲を中心に検討する。
第 13 回 自由・私生活の平穏に対する罪 3
住居を侵す罪、業務に対する罪、秘密を侵す罪について、住居侵入罪における同意と侵入の意義、業
務妨害罪における業務と公務との関係を中心に検討する。
第 14 回・第 15 回 名誉・信用に対する罪 1・2
人に対する社会的評価を保護法益とする名誉に対する罪、信用に対する罪について、両罪の異同、名
誉毀損罪における真実の証明およびその錯誤等、表現の自由との関係を中心に検討する。
以上は授業計画案であり、受講生の理解の進度に応じて変更する場合がある。
授業方法は、講義方式を原則とするが、受講生には、あらかじめレジュメを TKC にて公開し、同レジ
ュメにて指示した文献・判例の予習を前提として、授業においては各論点について質問し回答を求める
などの双方向的な手法を採用する。そして、適宜、理解度 check の小テストを実施し、そして、レポー
ト課題の提出を求める。提出されたレポートについては、添削して返却することとし、必要に応じて再
提出させる。これらにより、受講生の理解を深めるものとする。
したがって、受講生は、十分な予習をした上で授業に出席し、授業後には知識の整理と定着を行うと
いう、積極的な学習態度が強く要請される。刑法Ⅰ(総論)を履修していることが望ましい。
授業の到達目標
刑法各論における専門的・体系的理解を前提として、個々の犯罪類型に固有の成立要件を明らかにす
るとともに、個々の要件相互の関係から各犯罪を区別できるようになること、また、既存の知識にはな
い新たな事態に直面した場合にも、多様な事実関係の中から刑法上の問題点を発見・整理して、その問
題の解決策を導き出し、有害行為のなからか真に処罰に値する行為を導き出すことができる論理的・創
造的能力を身につけることが目標である。
評 価 方 法 1 学期末に実施する定期試験の成績(成績評価に占める割合は 70%)
事例に対する論述式試験を実施する。出題趣旨および評価内容、採点のポイントは、
「出題趣旨と講
評」にて全科目共通の日程で公開する。
履修上の注意
2 講義期間内に実施する小テスト・レポートの成績(成績評価に占める割合は計 30%)
講義内容の理解度をチェックするために、講義期間内に小テストとレポートを実施する。小テストは、
穴埋め問題や正誤問題を基本とし、実施後、すみやかに解説し、復習の助けとしてもらう。レポートは、
比較的短い事例に対する論述式で実施する。
教
講 義 科 目
担 当 者
配 当 学
単
位
講 義 目
132
3 欠席や遅刻・早退は、履修要項の定めに従い、所定の減点を行う。
材 基本書
大谷實『刑法講義各論[新版第 4 版]
』
(成文堂、2013 年)
参考書
大谷實編『判例講義刑法Ⅱ各論[第 2 版]
』
(悠々社、2011 年)
大谷實編『法学講義刑法2』
(悠々社、2014 年)
大塚裕史他『基本判例Ⅱ』
(日本評論社、2014 年)
成瀬幸典・安田拓人・島田聡一郎編著・判例プラクティス刑法Ⅱ各論(信山社、2012 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法判例百選Ⅱ各論[第 7 版]
』
(有斐閣、2014 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法の争点』
(有斐閣、2007 年)
なお、その他、必要に応じて、適宜、教示する。
名
名
年
数
的
刑法Ⅱ-Ⅱ(各論2)
(旧:カリキュラム)
岡本 昌子
2年次
学
期 春学期
2単位
必 修 ・ 選 択 必修
刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)と刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)で、刑法各論を講義する。刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)では、個
人法益に対する罪を中心に、刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)では、社会法益に対する罪および国家法益に対する罪
を中心に講義する。
刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)の講義目的は、刑法各論の社会法益および国家法益に対する罪に関する法的知識
を修得すること、具体的には、第一に、各犯罪固有の構成要件を明らかにして、各々の罪の処罰範囲を
明確にすること、第二に、個々の構成要件相互の関係および区別を解明し、真に処罰に値する行為を導
き出すことのできる「法的知識の修得」である。そして、これらの法的知識を基に、新たな事案に直面
した場合にも、刑法上の問題を発見して解決策を導き出す「問題解決能力」をも養成することである。
また、刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)でも、刑法各論の学習を中核としながらも、刑法Ⅰ(総論)で修得された
授
授
業
業
内
計
基礎知識を前提として、刑法総論との有機的関連性にも留意して、真に処罰に値する行為を明らかにす
ることにも努める。
容
刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)と刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)の計 30 コマを有効的に用いて刑法各論の内容を講義すべ
画 く、個人法益に対する罪に含まれる、生命および身体に対する罪から始めるが、刑法Ⅱ-Ⅱ(各論 2)で
は、社会法益に対する罪および国家法益に対する罪を中心に講義する。
第 1 回・第 2 回・第 3 回前半 生命および身体に対する罪
人の始期と終期の確定を前提として、殺人罪、自殺関与罪、同意殺人罪等について、処罰根拠、処罰
範囲の確定、同意と錯誤の問題を中心に検討する。その後、傷害罪、暴行罪、堕胎罪等について、暴行・
傷害の概念、傷害罪の故意、同時傷害の特例などを中心に検討する。最後に、遺棄の罪について、遺棄
の概念、交通事故の刑法的評価などを検討する。
第3回後半・第 4 回・第 5 回 公衆の平穏および安全に対する罪~放火および失火の罪~
公衆の平穏および安全に対する罪の中の放火および失火の罪について、焼損の意義と既遂時期、各放
火罪の構成要件の相違(現住性、公共の危険の発生、109 条 2 項と 110 条の故意など)を中心に検討す
る。さらに、不真正不作為犯による放火罪の成否についても検討する。
第 6 回前半 公衆の信用に対する罪①~通貨偽造の罪~
公衆の信用に対する罪の中の通貨偽造の罪について、保護法益、偽造と変造、行使などを中心に検討
する。
第 6 回後半・第 7 回・第 8 回 公衆の信用に対する罪②~文書偽造の罪~
公衆の信用に対する罪の中の文書偽造の罪について検討する。まず、文書偽造罪の基本概念(文書の
概念、偽造の概念など)を学習した上で、各罪の検討を行う。具体的には、私文書偽造等罪について、
代理名義の冒用、代理権限の濫用、肩書の冒用、名義人の同意がある場合の同罪の成否等を中心に検討
する。
第 9 回 公衆の信用に対する罪③~有価証券偽造の罪と支払い用カード電磁的記録に関する罪~
公衆の信用に対する罪の中の有価証券偽造罪と支払い用カード電磁的記録に関する罪について検討
する。
第 10 回 風俗に対する罪~わいせつ物頒布罪、賭博罪・常習賭博罪、死体損壊等罪~
風俗に対する罪の中のわいせつ物頒布罪、賭博罪と常習賭博罪、死体損壊等罪について検討する。わ
いせつ物頒布罪については、わいせつの意義、判断方法、そしてサイバーポルノの判例を素材としてわ
いせつ「物」
、頒布の概念について検討し、賭博罪と常習賭博罪については常習性、共犯の問題につい
て検討する。
第 11 回 国家の作用に対する罪①~公務執行妨害罪(+業務妨害罪)~
国家の作用に対する罪の中の公務執行妨害罪を中心に検討する。具体的には、職務執行の適法性(適
法性の要件、判断基準、適法性の錯誤)
、業務妨害罪との関係について検討する。
第 12 回・第 13 回 国家の作用に対する罪②~逃走の罪、犯人蔵匿および証拠隠滅の罪、偽証の罪~
国家の作用に対する罪の中の犯人蔵匿等罪、証拠隠滅等罪、偽証罪を中心に、身代わり犯人を立てる
行為と犯人蔵匿罪の成否など、各罪の論点を検討する。そして、判例を素材として、これらの罪の共犯
の事案の解決についても検討する。
第 14 回・第 15 回 国家の作用に対する罪③~汚職の罪~
国家の作用に対する罪の中の職権濫用の罪と賄賂の罪について検討する。賄賂の罪の保護法益、職務
関連性(転職前の職務に関して賄賂罪が成立するかという問題など)を検討した上で、賄賂の罪の各罪
の相違を明らかにする。
履修上の注意
以上は、授業計画案である。受講生の理解の進度により変更する場合がある。
刑法Ⅰ(総論)を履修していることが望ましい。
授業方法は、刑法Ⅱ-Ⅰ(各論 1)同様、講義形式を基本とするが、重要論点等については質問し回答
を求める双方向形式も併用する。したがって、受講生は、基本書およびTKC上にて公開するレジュメ、
指定した文献・判例を熟読した上で講義に出席し、積極的な学習態度で講義に臨むことが要求される。
単元終了後には、適時、理解度をチェックするために小テストを実施する。また、理解を深めてもらう
ために、必要に応じてレポートの提出も求め、それを添削して返却することとする。以上のように、受
講生は、
「予習」だけでなく、講義後は知識の整理、各自の理解度を確認するという「復習」もしっか
り行ってもらうことが強く要請される。
そして、授業時間にてすべての論点を教授することは時間的に不可能であるから、自学自習に委ねざ
るをえない部分がある。理解できない箇所や質問があれば、いつでもオフィスアワーを活用して質問し
てもらいたい。
なお、
「履修要項」に示されているように、法科大学院における出席の重要性にかんがみ、出席日数
が講義日数の 2/3 を超えることを単位取得の前提条件とする。
133
授業の到達目標
評
価
方
刑法各論における専門的・体系的理解を前提として、個々の犯罪類型固有の成立要件を明らかにする
とともに、個々の要件相互の関係から各犯罪を区別できるようになること(法的知識の修得)
、そして、
新たな事案に直面した場合にも、多様な事実関係の中から刑法上の問題点を発見・整理して、その問題
の解決策を導き出し(問題解決能力の修得)
、有害行為のなかから真に処罰に値する行為を導き出すこ
とができる論理的・創造的能力を身につけることを本授業の到達目標とする。そして、社会法益および
国家法益に対する罪に関する基礎知識の修得、履修後のさらなる自学自習により専門的法的知識を構築
することが期待できる最低限レベルの修得を単位認定(60 点)の基準とする。
法 1 学期末に実施する定期試験の成績(評価に占める割合は 70%)
事例に対する論述式試験を実施する。出題趣旨および評価内容、採点のポイントは、
「出題趣旨と講
評」にて全科目共通の日程で公開する。
2 講義期間内に実施する小テスト・レポートの成績(評価に占める割合は 30%)
講義内容の理解度をチェックするために、講義期間内に小テストとレポートを実施する。小テストは、
穴埋め問題や正誤問題を基本とし、実施後、速やかに解説し、復習の助けとしてもらう。レポートは、
比較的短い事例に対する論述式で実施する。
教
3 欠席や遅刻・早退は、履修要項の定めに従い、所定の減点を行う。
材 基本書
大谷實著・刑法講義各論[新版第 4 版]
(成文堂、2013 年)
参考書として以下のものを挙げる。
大谷實編著・判例講義刑法Ⅱ各論[第 2 版]
(悠々社、2011 年)
大谷實編『法学講義刑法2』
(悠々社、2014 年)
大塚裕史他『基本判例Ⅱ』
(日本評論社、2014 年)
成瀬幸典・安田拓人・島田聡一郎編著・判例プラクティス刑法Ⅱ各論(信山社、2012 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編・刑法判例百選Ⅱ各論[第 7 版]
(有斐閣、2014 年)
西田典之・山口厚・佐伯仁志編・刑法の争点(有斐閣、2007 年)
その他、必要な参考文献を適時教示する。
134
Fly UP