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女性の活躍により飛躍する企業 ~(2812KB)
平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集 第1号 【特 集】 女性の活躍により飛躍する企業 平成25年2月 はじめに~第1号発行に寄せて~ 経済産業省では、グローバル競争で我が国企業が勝ち残るためには、性別・年齢・国籍 などに関わらず、多様な人材が持てる能力を最大限に発揮できる人材戦略が欠かせないと 認識しております。 特に、その中でも、女性の活躍推進はその試金石と考えており、日本再生戦略(平成 24 年 7 月 31 日閣議決定)にも位置づけられました「『女性の活躍促進による経済活性化』行 動計画(平成 24 年 6 月 22 日関係閣僚会議決定)~働く「なでしこ」大作戦~」を推進す べく、女性の活躍など人材の多様性を活かす経営に取り組む企業への表彰制度(ダイバー シティ経営企業 100 選)の創設や女性活躍状況の可視化など、積極的に女性の活躍の推進 に取り組む企業のすそ野を広げ、その動きを加速化させる取組みを進めているところです。 関東経済産業局におきましても、女性の活躍を促進する社会的機運を醸成すべく、当局 が所管する 1 都 10 県において、社内人材、特に、女性が活躍され企業パフォーマンスに 繋げている事例を収集し、広くご紹介するとともに、これから取り組まれる地域企業の皆 様の参考(ロールモデル)として活用いただくことを目的として事例集を作成いたしまし た。 今回、第1号として、関東甲信越静岡の 1 都 10 県の 21 社のご協力をいただき、各社の 人材、特に女性活躍に関してご紹介いたします。 これら企業の特徴は、女性社員の細やかさ、コミュニケーション能力、継続力、危険へ の意識等の女性ならではの感性や特性を活かして、製品・サービスを徹底的に追求するこ とで潜在需要を顕在化させている点、女性ユーザーを想定した機器の企画・設計を推進し ている点、また、職場内の改善行動を通じて生産工程や検査工程の生産性向上を実現して いる点です。更には、経営者自らが先頭に立ち、人材育成を福利厚生の一環ではなく、経 営戦略として捉え、全社員の能力を最大限に発揮できるような研修機会の提供や生産性向 上のための施策として社内コミュニケーション活発化の仕組みを構築しています。 本書を通じ、性別はもとより、年齢、国籍など関係なく「多様な人材を活かし、その能 力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につ なげている経営」である『ダイバーシティ経営』が、これからの日本企業が競争力を高め ていくために、必要かつ有効な戦略であることをご理解いただき、自社の取り組みの一助 としていただければ幸いです。 最後になりましたが、事例集作成にあたりご協力いただいた全ての皆様に深く感謝を申 し上げます。 平成 25 年 2 月 経済産業省関東経済産業局 産業人材政策課 一同 目 次(CONTENTS) 女性活躍企業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ■有限会社モーハウス(茨城県) ~授乳服・子連れワークスタイルの提案、母となった女性が輝ける社会を目指して~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ■株式会社スズテック(栃木県) ~女性の感性を活かしたものづくりの促進、更には海外展開を目指して~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ■株式会社大塚プラスチック工業(群馬県) ~女性の細かな生産管理と細かな作業に支えられ、ニッチ分野への展開を目指して~ ■株式会社金子製作所(埼玉県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ~臥龍企業が女性役員の活躍で世界に飛躍~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ■協和界面科学株式会社(埼玉県) ~女性が半数以上、めざましい成長をとげる界面科学測定機器専門メーカー~ ■三州製菓株式会社(埼玉県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ~「脳力経営」実践により、女性がいきいきと大活躍~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 ■東彩ガス株式会社(埼玉県) ~女性によるユーザーフォロー体制の構築で顧客満足度UP~ ■赤星工業株式会社(千葉県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 ~女性溶接士の誕生と活躍!「なくてはならない存在」を目指して~ ■アシザワ・ファインテック株式会社(千葉県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ~女性社員でも技術職として現場で活躍~ ■有限会社あきゅらいず美養品(東京都) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ~「傍楽(はたらく)」と「三方よし」の精神で、まわりの人を幸せにする働き方の実践~ ■株式会社井口一世(東京都) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ~高度にIT化・標準化した工法確立により開発・製造現場でも女性が大活躍~ ■株式会社日本レーザー(東京都) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 ~「雇用を守ることは絶対!」出産や育児等に応じた柔軟な経営で親会社から独立~ ■株式会社メトロール(東京都) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 ~忍耐強く手先の細やかな女性社員が支える精密なモノ創り~ ■株式会社日の出製作所(神奈川県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 ~女性の感性を微細金属加工の現場に活用~ ■株式会社新潟味のれん本舗(新潟県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 ~マルチな女性社員がいきいきと活躍。長岡から日本一の心を込めた対応を目指して~ ■株式会社かいわ(山梨県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ~男女区別無く技術・技能の極みを目指す~ ■株式会社小川の庄(長野県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 ~過疎化の進展を地元のおばあちゃん達がストップ~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 ■株式会社小松精機工作所(長野県) ~出産育児をサポートする制度を整え、女性の多くが出産後復帰し活躍~ ■株式会社みやま(長野県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 ~女性パート社員も一丸となりプラスチック成形の限界に挑む~ ■株式会社大川原製作所(静岡県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 ~女性技術職の活躍によりユーザー視点のものづくり、更には海外展開を目指して~ 女性活躍サポート企業 ■株式会社ハーモニーレジデンス(東京都) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ~シングルマザー・女性管理職に特化した人材紹介で日本企業の女性活用に変革を~ 人材確保・育成支援メニュー ■よい人材を確保したい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 ■従業員を育成したい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 ■働く従業員を守りたい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 有限会社モーハウス ~ 授乳服・子連れワークスタイルの提案、母となった女性が輝ける社会を目指して~ 会社概要 代表者: 代表取締役 光畑 由佳氏 本 社:茨城県つくば市 設 立:平成 9(1997)年 資本金:300 万円 社員数:47 名(男性 0 名、女性 47 名)うち正社員 7 名 事業内容:授乳服 i、授乳用イ ンナーの製作・販売、出産・子育てイベントの企 画制作 1.起業の経緯と事業内容 光畑代表自身が電車内での授乳体験を基に起業。泣 きやまない子供、電車内での授乳、周りの視線、授乳 という自然な行為が母親たちの行動を拘束している という違和感がモーハウス誕生の切っ掛けであった。 産後の新しいライフスタイルを提案するため自宅で 授乳服を作りはじめ、イベントを開き、共感してくれ る母親たちが集まり法人化した。現在は、つくばと青 山のショップ、インターネットを使って授乳服を販売 している。 「女性たちが心地よい自由な生活を、赤ち ゃんと一緒に楽しんでほしい。自分自身の快適さは、 子どもの心地よさにつながります。母となった女性が 生き生きと暮らせる社会をめざし、出産育児という人 生の節目を好機とできるよう、私たちはこれからも、 そんな思いのこもった授乳服を作っていきたい」と光 畑代表は語る。 2.人材戦略の現状(子連れ出勤の実行) れば子連れ出勤できる状況を保ち、 「子供を連れてい ても働ける職場」を社会に示していきたいと光畑代表 は考えている。育休取得も含め、働き方は本人との話 し合いの中で決めている。あるデザイナースタッフは、 子供が2ヶ月であったが、仕事に復帰したいというこ とで、家でも仕事ができる体制を整えた。勤怠管理は、 全体としては総務が担当だが、各チームリーダーのも と管理している(社内は 2~4 人/チーム、店舗は 10 人/チーム) 。子どもが小さい時は、小さい働きかたと 考えれば良いという。大企業の場合、企業内保育所と いう方法も有効だが、規模が小さい企業であるならば、 子連れ出勤も一つの方法ではと光畑代表。短時間勤務、 子連れ出勤 など多様な 働き方を受 け入れてい るため、優 秀な人材の 雇用を継続 できるメリ ットがある。1 歳以下は子連れ出勤、2 歳頃から保育 所に預け始めているケースが多い。9 割以上のスタッ フは子育て中であり、限られた時間の中で業務を行っ ているため、皆、集中して仕事に臨んでいる。 3.今後の展望と課題について スタッフは授乳服のユーザーでもあるため、ユーザ ー視点で商品の開発が可能となっている。 「使いやす さ、授乳しやすさは、スタッフのおかげである」と光 モーハウスでは1歳以下 畑代表が語るとおり、授乳口には赤ちゃんの顔を傷つ の赤ちゃんがいる場合、だっ ける可能性のあるホックなど金属部品を付けないな こしながら仕事をしている。 ど、常に母親の立場にたった製品である。他社が安価 子連れ出勤できるように本 な商品を提供してしまう逆風もあるが、授乳服のパイ 社はカーペット敷きの床で オニアとして素材、デザイン、機能の揃った商品の提 おむつ替えやお昼寝用の小 供を進めていく。子連れワークスタイルの提案など講 さなお布団も用意されてい 演活動も積極的に進める。そして、これから日本が直 る。いつでも授乳もできる。 面する超高齢化社会。今後はユニバーサルデザインに 青山ショップでも赤ちゃんをだっこしての接客であ も力を入れ、高齢者向け商品も展開していく予定。 「育 る。女性が妊娠し子育てするという自然な行為の中で、 児だけでなく介護を抱えながら働く人も男女問わず 増えていく。多様な働き方を多くの企業が受け入れて 女性が仕事をすることも自然なこと、子連れ出勤も自 然なこと。とはいえ、社会的には理解が得られ ていない。そのため、子供を産むと社会的に働けない という考えを変えたいと思い、社内では子育て中であ いく必要があるはずではないか。 」と光畑代表は疑問 を投げかける。 i 授乳服とは、外出先の人前でも肌の露出が少なく、気兼ねな く授乳できるようデザインされた洋服。 【関連施策】 「IT 経営百選」最優秀賞(経済産業省)、ハイサービス日本 300 選(経済産業省) 1 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社スズテック ~女性の感性を活かしたものづくりの促進、更には海外展開を目指して~ 会社概要 代表者: 代表取締役 鈴木 康夫氏 本 社:栃木県宇都宮市 設 立:昭和 32(1957)年 資本金:1 億円 社員数:90 名(男性 79 名、女 性 11 名) 事業内容:農業機械製造販売 経営理念:堅実・先進・独創のもと、よりよいモ ノづくりを通して社会に貢献する。 1.事業内容と人材戦略の現状について 鈴木社長のもと、同社は、社員の能力を最大限に活か す人財戦略に果敢に取り組んでいる。 2.具体的な人材育成と環境整備 新人研修は 4 月 1 日からスタートし、1 週間座学を 実施。その後現場実習に入る。また、3 ヶ月間は 2 週 間に 1 度は 2 時間を鈴木社長との意見交換の場とし て設定、フリートークできる場として設けている。中 間管理職研修もある。また、電話対応研修など外部機 関の研修も積極的に会社負担で受講させている。組立 ライン担当の女性社員がフォークリフト免許を取得 し、仕事の幅を広げ、職場の生産性アップに繋げた事 例もある。更に、社員同士のコミュニケーションを活 戦後間もない 1946 年に現社長の祖父が食料増産の 発化させる取り組みも数多く構築。役職別の定例会議 一翼を担いたいとの思いで農業用刃物の生産を開始 のほか、全社員を対象とした誕生会、昼食会の開催や したのが同社の起源である。1968 年に水稲苗の種ま 40 才以下の職員で構成される青年部、女子社員限定 き機(播種機)を発売して以来、開発型企業として成 の女子会等である。レクレーション予算も 1 人あた 長している。 「ニラ調製機」など数多くの新製品を開 り上限 1 万円/年の活動費を予算化し、社員 5 人以上 発し、栃木発明展の賞も多く獲得。2008 年からは、 で行うレクレーションや食事については、事前に目的 需要拡大が見込まれる中国市場へも進出し、中国浙江 内容等を申請し、領収書を添付し会での議論内容を報 省の協力工場で部品生産、販売も行っている。 告すれば支給される。縦横それぞれで風通しよく情報 は し ゅ き 同社は現社長の祖父母が立ち上げた企業であり、父 共有が出来る体制や場を整備している。 「何でも会話 が社長の時代には、現社長の叔母たち 2 名も役員で できる関係の構築ができず社員同士が疎遠になって あったことから、以前より女性が活躍する風土が根付 しまうと仕事の摺り合わせも滞り非効率となりミス いた企業であった。性別にかかわらず能力を十分に発 も発生する可能性が高まる。コミュニケーションは非 揮できる機会を社内に作ることが同社の経営戦略の 常に重要」 (鈴木社長) 。社員が毎日使う本社工場内の 一つである。現在、採用は地 トイレも人間工学の専門家にアドバイスを仰ぎ場所 元学校とのパイプがあり、先 を移動し、改修を実施。固定的な概念に拘らず、やる 生から社風に合う優秀な人 気がある社員が能力を発揮しやすい職場づくりを実 材を紹介されることが多い 行している。 という。2007 年、先生から 3.今後の展望と課題について の紹介で技術職に初めて女 現在、売上に占める国内売 性の応募があり採用し、男性 上高は 95%。5 年間で海外生 のみの技術部に配属した。農 業機械を利用するのは半数 産・販売率を 20%まで上昇さ せる計画。中国市場を狙い、 が女性である。特に、トラクターやコンバインなど自 県内大学に留学生として来日 走型の機械を除くと、女性がオペレーターになる可能 していた中国人女性を採用し 性が高い。つまりユーザーが女性であれば、設計・製 た。彼女のおかげで中国出張 造も女性であった方が、性別による体型の違い、握力 も現地アテンドの手配をせず の違い等から女性目線の設計を自然と考えることが スズテック社員のみで対応可 できる。 「2~3 年後には使い勝手が良くなったなどの 能になった。アジアを中心と ユーザーからの声が届くことを確信している。女性は した海外市場を目指し、海外で活躍できる「人財」の 繰返し作業であっても根気強く行い、展示会等の製品 育成、獲得も目指す。 説明でも女性社員が活躍してくれる。 」と鈴木社長。 【関連施策】 「栃木県発明展」関東経済産業局長奨励賞、「均等推進企業」栃木労働局長優秀賞 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 2 株式会社大塚プラスチック工業 ~女性の細かな生産管理と細かな作業に支えられ、ニッチ分野への展開を目指して~ 会社概要 代表者: 代表取締役 大塚 輝之氏 本 社:群馬県富岡市 設 立:昭和 59(1984)年 資本金:1,000 万円 社員数:84 名(男性 29 名、女 性 53 名)うち正社員 51 名(男性 24 名、女性 27 名) 事業内容:プラスチック射出成形 経営理念: との思いで女性を配属。結果、その予想は当たり、現 在では女性のみのチームで管理を進めている。逆に、 営業部署は男性のみ。取引先企業との関係もあり、業 務時間が不確定な場合もあるため、女性はまだ配属し ていない。 他方、役職については、チームリーダーも 5 名中 2 名が女性であるが、今後、女性リーダを更に増やせる 環境を整備していく予定である。 2.具体的な人材育成方策について れていると感じる。 」と大塚代表。女性の緻密さ、単 研修については、パートと正社員と別のカリキュラ ムを整備。パートには検査員としての研修を受講して もらう。正社員については新人研修を 1 ヶ月行い、 その後、各部署を回るOJTを基本としている。併せ て外部講師を呼び 4 回ほど社会人としての一般常識 や商品管理関連の研修も行っている。全社的な研修は、 生産部門については、社内情報セキュリティ研修が年 に 2 度、管理部門についても年に 1 度、外部講師を 呼んだ研修を実施している。特に、情報管理について は、新製品の情報を外部に見せない、持ち出さないな ど外部に漏らしてはいけないことを考えさせる内容 である。そして、日々使用する工作機械については操 作方法の基礎研修はメー カーから担当者が来て開 催してくれるが、実際に は稼働後に様々な課題が 出てくる。 「トライアンド エラーでやっていくしか ない。しかし、オペレー ティングは技能ではなく 技術と知識を使えばできる分野」 (大塚代表) 。その思 いから新入社員に新たな機械の担当をさせ、 「いじり 壊せ」と大塚代表は伝えている。大塚代表自身が新人 であった頃もトライアンドエラーを何度も重ね、機械 を使い倒して学習を重ねたという。日々の失敗を次の 成功に活かす経験をさせている。日々社員と自然な会 話も欠かさず状況を把握し、社員のモチベーション向 上にも気を配る。 純作業でも忍耐強く取り組める能力を活かそうと、採 3.今後の展望と課題について ■品質・技術的サービスの質を高め、お客様に低コスト で製品を提供できるよう努力します。 ■人材を育成し、働くことに喜びが持てる企業を目指し ます。 ■進歩しつづけるために日々の努力を惜しみません。 1.事業内容と人材戦略の現状について 昭和 47 年創業の同社はプラスチック射出成形をは じめ、塗装・印刷・レーザーなどの二次加工に至るま で一貫したモノづくりを手掛ける。近年は携帯電話筐 体や自動車部品に用いられるプラスチック成形品が 主力製品。試作から量産までの製造に注力しながら、 二色成形の技術レベルを大きく伸展させるなど多く の実績を残している。加えて、企業理念にも掲げるよ うに人材の育成 に力を入れてい る企業である。 まず、採用につ いては、長期的な 年齢バランスを 考慮し、7 年程前 から高校新卒を 毎年 1~2 名採用している。女性活躍については「女 性は同じ作業を継続的に行う忍耐力が男性よりも優 用後も適材適所の配置を行っている。現在、女性の 8 割が製造部門で製造と検査を担当しており、2 割が管 理部門である。生産管理については、現在、女性のみ で構成している。従来は男性が担当していた部署であ ったが、大塚代表の「一般的には女性は数字に弱いと 言われているが、マメに一つの細かなデータを分析で きるため、生産工程の無駄を上手に追求するのでは」 「国内の製造業は厳しい状況であり、コスト低減は 当然のことで、プラスαがないと生き残れない。技術 力・品質力というソフト面とコンパクトで充実したハ ード(生産設備)が必要である」と大塚代表。人材育 成投資と設備投資のバランスを取りながら、女性パワ ーを活用し、少量でも付加価値の高い製品分野への展 開を目指す。 【関連施策】 ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(経済産業省) 3 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社金子製作所 ~臥龍企業が女性役員の活躍で世界に飛躍~ 2.具体的な人材育成の取組みについて 会社概要 代表者: 代表取締役社長 金子 晴房 氏 本社:埼玉県さいたま市 設立:昭和 31(1956)年 資本金:1,688 万円 社員数:80 名(男性 62 名、女 性 18 名)うち正社員 77 名 (男性 62 名、女性 15 名) 事業内容:内視鏡の先端部品 の切削加工及び一部組立、航空機のエンジン関連 部品切削加工 経営理念:「真摯な姿勢で“ものづくり”に向き合 い、社会の発展に貢献する。社員に対しても、お 客様に対しても、社会に対しても、誠実な姿勢を 貫き、信頼される会社であり続ける。 」 秋山総務 部長の下、 HP の作成、 JISQ9100 認証取得、 新入社員定 期採用、人 事制度再構 築、海外展開、外国人採用、海外研修生の受入、JETRO 職員研修受入等、次々に社内改革が進んでいるが、中 でも注目すべきは同社独特の人材育成だ。 仕上げなど細かな作業の得意な女性の獲得と、長期 にわたる継続雇用実現のため、子育て中の女性に対し ては、本人の希望に沿った形の勤務体制を整備。加工 が花形という従来の風潮を、実は、職人技的な人の手 による技能力が出来映えの善し悪しを決めているこ 1.事業内容と人材戦略の現状について とを社内に浸透させ、仕上げ業務を誇れるように認識 創業以来、56 年間精密切削加工一筋に、真面目に 嘘偽りのない「ものづくり」に真摯に取り組んできて いる。事業領域としては、光学機器部品、医療機器部 品、航空機部品、その他試作品である。 2010 年からは積極的な海外取引を始め、海外メー カーとの直接取引も始まる。きっかけは、社長の右腕 である取締役総務部長の秋山朋子氏が 2010 年 2 月に 米国で開かれた医療機器国際展示会への出展を実行 したことだ。金子社長はこの展示会に出展するまで、 そもそも「輸出など、全く考えていなかった」と振り返 る。「うちのような小さな企業に輸出なんて絶対無理 だ」。最後まで反対する金子社長をよそに、出展して みると、「欧米メーカーは当社を単なる下請けとして 見るのではなく、技術を正当に評価してくれる」。こ の展示会で興味を示したドイツ大手の副社長が同社 工場を訪問し、正式に供給契約を結ぶまでとんとん拍 子で進んだ。 このように、潜在的には世界で競争できる技術力が あるはずなのに、国内市場にとどまる企業を、東京大 学の戸堂教授らは、「臥龍企業」と呼ぶ。同社は元々カ メラメーカーの下請け加工として、技術の向上のみに 特化していたが、女性の秋山氏が取締役に就任するや いなや、技術を知らないからこその客観的な判断を 次々に下し、ブランド力構築、アピール力向上等を実 現し、また、女性ならではの能力の活用や、外国人を 積極採用して、海外顧客の早期信頼獲得をするなど、 社内のダイバーシティ化による新たな付加価値創出 に成功した。 を変えることで女性自身が活躍していることを自覚 し易くした。また、外国人を単に通訳として採用する のではなく、海外顧客に対して技術営業できる人材と しての育成を念頭に、技術者チームでサポート体制を 作り、安心して取り組める環境を構築。等々枚挙にい とまがない。 このように、安心して働ける職場、信頼できる会社 を目指して、より良い職場環境に配慮している。きめ 細かな気遣いで、優しい職場を目指し、労務時間管理、 疲労度チェック、ストレスチェックなどメンタルヘル スにも力を入れている。 3.今後の展望と課題について 現在、新卒外国人女性の妊娠出産に対応すべく、こ れをフレキシブルな雇用形態実現の好機と捉え、企業 文化を構築中 である。 女性、外国人、 高齢者等、採用 した多様な人材 が定着し、実力 を発揮し他の社 員も触発される という好循環を 構築し、今後の国内外の事業展開に耐えうる強い組織 作りを実現しようとしている。 【関連施策】元気なモノ作り中小企業300社(経済産業省) 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 4 協和界面科学株式会社 ~女性が半数以上、めざましい成長をとげる界面科学測定機器専門メーカー~ 会社概要 代表者: 代表取締役 亀井 信一氏 所在地:埼玉県新座市 設立:昭和 39(1946)年 資本金:5,000 万円 社員数:57 名(男性 27 名、 女性 30 名) 事業内容: 理科学機器の開発・製造・販売 経営理念:お客様の研究開発や品質保証の現場に おいてはさまざまな問題が発生します。協和界面 科学の使命は信頼性が高く、使いやすい理科学機 器の開発や提供を通じて、界面科学の視点からこ れらの問題解決を支援すること。私たちは、この 使命を果たすことにより、学術および産業の発展 に貢献します。 1.事業内容と人材戦略の現状について ぬれ性、付着性、表面張力など、表界面の特性を評 価する測定機器の専門メーカー。 「商品の価値基準は 2.具体的な人材育成の取組みについて 女性の特性を、「まじめな姿勢で与えられたことを きちんとやる」「常に効率的な方法を考え、無駄なく 仕事をする」「工夫しながら仕事をする」と捉え、そ の特性を活かす職場配置を行うことで生産性がより 高まっている。また、女性の「コミュニケーションが 活発」という特性は、常に職場が明るく活気にあふれ ているという利点につながっている。 育児休業は社内で定着しており、男性社員による取 得実績もある。 海外営業部に所 属するこの社員 は育児休業後の 育児短時間勤務 を経て、以前に も増して「仕事 の効率を意識す るようになった」 とのこと。育児 短時間勤務中に記録的な売上を達成し、部長賞も受賞 した。 顧客にあり」を経営哲学とし、顧客の役に立つ商品を 当社の特徴のひとつに「短時間振替制度」がある。 開発し、提供することを第一に、優れた商品群を具現 勤務時間を 10 分単位で振り替えることが認められ、 化してきた。界面科学測定機器の分野では日本一の売 子どもの学校行事に利用するなど多くの利用実績が り上げを果たし、世界へ羽ばたこうとしている。めざ ある。また週 2 日のノー残業デーは、職場内で浸透 ましい成長について「多くの従業員の努力がなければ、 しており、やむを得ず残業する場合は事前申請が必要 成り立たなかった」と社長は言う。界面科学測定機器 だ。 の業界は特殊な世界で、決して女性が多い業界ではな 社員が休んだ場合は、社内で工夫して対応する職場 い。しかし「男女の別なく社員には継続して働き、技 風土が根付いていることも社員が休みやすい環境と 術を身につけてもらいたい」と考えた社長は、女性が なっている。 継続的に働けるための環境を整備した。 「法令等を遵 守する風土」を重視する社長。採用は男女分け隔てな くスキルを重視する、女性の出産・育児があっても決 3.今後の展望と課題について すでに外国企業と多くの取引を行っているが、社長 は、今後さらなる海外展開を進めるため、グローバル してマイナスにとらえず、その後も育てていく、とい 人材の確保を進めていきたい、と考えている。これま う社長の考え方が、企業の成長につながっていると思 での採用は、中途採用によるもので、社内はすでにキ われる。 「歴史をひもとけば、女性の社会参加は少し ャリアを持っている人材の集まりであり、それが強み ずつ改革されてきているものの、未だ社会における女 だが、今後は新規による採用についても検討していき 性の不平等は解消し切れていない。女性の仕事に対す たい、とのこと。 る思いは特別であり、大切に守りたい。 」女性の立場 今後はグロー にたった考え方が、育児休業取得率および取得後の雇 バル人材を活用 用継続率 100%として表れているのだろう。 することによる、 さらなる発展が 期待される。 【関連施策】 「多様な働き方実践企業(第1回ゴールド認定)」(埼玉県) 5 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 三州製菓株式会社 ~「脳力経営」実践により、女性がいきいきと大活躍~ 会社概要 代表者: 代表取締役社長 斉之平伸一 氏 所在地:埼玉県春日部市 設 立:昭和 25(1950)年 資本金:8,600 万円 社員数:216 名(男性 46 名、女 性 170 名)うち正社員 56 名(男性 38 名、女性 18 名) 事業内容:菓子製造(菓子専門店向け高級米菓等) 経営理念:「すべてのものを真に活かす」 1.事業内容と人材戦略の現状について を活用した人材育成である。手帳には経営理念、事業 理念の他、月次の部門別売上高、原価、経費、営業利 益、経常利益等が書き込める表等がある。パート社員 含め全員に配布され、情報の共有化を図ると共に全社 員のベクトル合わせやる気向上に繋げている。次に、 ボトムアップの組織文化の形成である。顧客に一番近 い部署や社員にかなりの権限が委譲されている。つま り上司は部下を管理ではなく支援することが求めら れ、部下は経営理念、戦略を理解した上で、自律的に 考え行動することが求められている。 更に、社員のボトムアップ活動として、部署横断的 な「委員会活動」がある。社員の自主性を育む取り組 みとして位置づけ「クレームゼロ」 「男女共同参画推 東京文京区で創業。1961 年頃より大衆品から高級 品に転換し、1988 年に現社長が就任後、量産品市場 から撤退、菓子専門店向け高級米菓及び高級洋菓子 (クッキー、半生菓子)の生産へ特化するとともに、 「すべてのものを真に活かす」という理念のもと一人 一人が心から納得できる仕事に取り組み、お互いに励 まし合いながら活き活きと働ける職場を作ることが 大切と考え、様々な取組みを推進。特に、女性社員の 活躍を促進している。 商品企画部門は全員女性。商品購入の 9 割は女性 であることから、お客様の目線に近い女性に企画を任 せている。売上に占める新商品の割合を 3 割以上に することを目標に月 2~3 品のペースで開発に挑む。 ヒット商品となった揚げパスタは育休明けの女性社 員からの提案。商品化までには数々の困難があったが 自社で専用機械までを開発し、商品化を実現。売上全 体の 1 割程度を占めるまでに成長した。また、管理 職全体の 23%が女性。以前は男性のみであった製造 部門にも女性の登用が進む。性別関係なしの実力主義。 意欲や能力ある人材に昇進・昇格のチャンスを与えて いる。 更にパートの女性社員も大きな戦力となっている。 下記に記す、様々な人材育成の取組みについても正社 員とパートタイマーの垣根は無い。パート社員で社債 (少人数私募債)も保有するものもいる。業績連動賞 与や有給休暇や皆勤手当などの諸手当を手厚くする ほか、正社員への登用制度など待遇改善を図るなど、 活き活きと働ける環境を整えている。 進」など 13 の委員会が現在活動中である。また、創 2.具体的な人材育成の取組みについて うなど海外市場への挑戦も考えている。能力を最大限 HACCP の教育など基本的な知識の他、自律型人 材育成を目ざし、様々な取組みを進めている。 まずは、社長直筆の各個人宛メッセージ入り社員手帳 に活かし全社員が自律的、意欲的な状態で仕事に臨め 造性を鍛え企画力の向上を目指した「一人一研究」や 主業務の他に 2 つの業務のスキルを磨く「一人三役」 など枚挙に暇がない。この「一人三役」運動は、突然 の休暇等により仕事が滞らないようにと始めた取組 みであるが、結果として相手の仕事を理解するように なると相手への理解も深まり、社員同士がコミュニケ ーションを取り合うきっかけとなっている。 その他、朝礼時に他人がした良いことを発表しあう 「一日一善運動」 や表彰制度として の「月間優秀社員 賞」などお互いの 長所を伸ばし、や る気向上、コミュ ニケーション深化 に寄与する取組みを多数実施。 両立支援としての「短時間正社員制度」、 「ノー残業 デー」の設置、女性社員活躍促進としての「正社員登 用制度」 (平成 20 年から計 6 名の実績) 、今やらねば ならない仕事かを上司に申請する「残業申請制度」な ど各種制度も整え、女性の活躍を支えている。 3.今後の展望と課題について 米菓業界ではじめて導入したトレーサビリティシ ステムは委員会活動の成果の一つ。高品質の確保は日 本ブランドの育成にも直結する。展示会への出展も行 るシステムを構築した斉之平社長は「それぞれの生活 も大切にしながら大いに活躍して欲しい」と優しく微 笑んだ。 【関連施策】 「IT 経営百選」最優秀賞(経済産業省)、地域産業資源活用事業計画認定(経済産業省) 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 6 東彩ガス株式会社 ~女性によるガスユーザーフォロー体制の構築で顧客満足度UP~ 会社概要 代表者: 代表取締役 川合 時雄氏 本 社:埼玉県越谷市 設 立:昭和 35(1960)年 資本金:12 億 5000 万円 社員数:262 名(男性 180 名、 女性 82 名) 事業内容:都市ガス、LP ガス の供給販売、ガス器具及び関連する器具の販売、 住宅のリフォーム工事請負など 経営理念:エネルギーサービスを通じた環境との 共生、彩りある暮らしと豊かな社会の実現。 1.事業内容と人材戦略の現状について 埼玉県春日部市、越谷市など埼玉県東部を中心に 8 市 4 町での都市ガス供給、埼玉ほか関東近県でのプ ロパンガス供給を主業とする都市ガス事業者。顧客数 は、 都市ガス 16 万 3 千件、 プロパンガス 4 万 2 千件。 どの相談を受けたときは、その場で掃除をしたり、 乾電池を交換して解決することもある。「太陽光発電 を導入する場合はオール電化にしないといけないの か?」 「食器洗浄機の 1 間当たりの電気代は?」など ガス以外の件を相談されることも多くある。即答でき ない場合は、調べて必ず回答する。お客様に選んでい ただけるスタッフを目ざし高い意識で活動を続けて いる。当初は「女性で大丈夫か?」との反応もあった が、最近では「女性が点検に来てくれて安心できる」 とのお褒めの声が多く、女性登用はガス業界で注目を 浴びている。他社からの講演依頼も多く、活動自体が 高く評価されるようになった。フォローアップレディ のやる気向上に繋がっている。 2.具体的な人材育成の取組みについて 定期保安調査には公的資格「需要家ガス設備点検員 資格」が必要だが、全員が講習を受講し資格を取得。 併せて、近年高齢化の進展によりリフォーム需要が増 加しており、同社でもリフォーム部門を担当する社員 従来ガス業界ではガス機器やガス配管設備に関する の確保が課題であったことから、ガス機器、水回りの ことは点検も含めて男性の職域であり、顧客先に訪問 設備等に関しての知識が備わったフォローアップレ するのも全て男性社員であった。しかし、台所やお風 ディを、台所、浴室、トイレ、洗面台を中心としたリ 呂などガス機器を使用する多くが主婦層であり、その フォーム工事を提案するリフォームアドバイザーと 顧客との接点を増やし、顧客満足度を高めるため、女 して育成することを決定。インテリアコーディネータ 性 社 員 の 活 躍 が 欠か ー資格取得のため会社負担で専門学校のコースを受 せないと判断、これま 講させた。8 名のフォ で 外 部 へ 委 託 し てい ローアップレディのう た 点 検 業 務 を 社 内業 ち現在 3 名がリフォー 務とし、定期保安調査 ムアドバイザーとして を 含 め た 訪 問 業 務に 活躍中である。そして、 女性社員を登用した。 「フォローアップレディ」と名 付け 2008 年より若手女性社員を中心とした活動を開 現在 2 名が社内資格で ある主任資格登用試験 始。現在 8 名の女性社員が活躍している。活動内容 にも挑戦中である。 は、①新築 3 ヶ月目の住宅への点検サービス(フォ 3.今後の展望と課題について ローアップサービス) 、②法令で定める 3 年毎のガス 設備点検、③キッチン、バスなどのリフォームアドバ イス(リフォームアドバイザー) 。 「感動を与える定期 保安検査の実施」を活動方針として掲げ、マニュアル に基づいた点検に加えて顧客のニーズに合わせた温 かい対応を心かげている。お客様のニーズを探るとと もに不満の解消、更にはライフスタイル提案と発展さ せる内容となっている。例えば、訪問時に「グリルの 彼女たちはガス展という 3 万 5 千人が来場するイ ベントの企画、運営にも携わる。ガス展において多く の来場者の前で省エネ機器などの最新機器、ライフス タイルなどのプレゼンテーションを行うなど活躍の 場も増えている。そして主任登用試験に合格すればリ ーダーとしての活躍も期待できる。女性社員のロール モデルとして、顧客の悩み事やお困りごとに誠意を持 って対応し、絆を深めることで、ガスファンを増やす ため彼女達の奮闘は続く。 「火が付かなくて困っている」な 汚れが落ちない」 【関連施策】 ガス保安功労者経済産業省関東東北産業保安監督部長表彰受賞 7 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 赤星工業株式会社 ~女性溶接士の誕生と活躍 ! 「なくてはならない存在」を目指して ~ 会社概要 代表者: 代表取締役 赤星 健二氏 本 社:千葉県市原市 設 立:昭和 22(1947 )年 資本金:5,000 万円 社員数:108 名(男性 99 名、 女性 9 名) 事業内容:アルミ、マグネシウム、チタン、ステ ンレスニッケル、ジルコニウム、タンタル、銅、 銀、プラチナなど非鉄金属加工 経営理念:社会に役立つ企業、なくてはならない 存在に 2.具体的な人材育成の取組みについて 具体的な人材育成として、技能資格取得のためアル ミニウム溶接技術検定など様々な検定試験に挑戦さ せている。その結果、ボイラ溶接士、アルミニウム JIS 溶接資格者、チタン WES 溶接資格者など各種技 能資格件数は 781 件に及び社員 1 人当たり 7 つ以上 の資格を保有していることになる。更に、技術技能の レベル向上を目ざし、外部コンクールにも数多く挑戦 させている。人材育成の取組みが評価され軽金属溶接 協議会主催の技能競技会において中小企業では全国 最多の入賞者を輩出するとともに、科学技術長官表彰 をはじめ多くの表彰を受賞している。 そして、若手育成のため、コンクール上位入賞者や 1.事業内容と人材戦略の現状について アーク溶接工として平成 22 年度に黄綬褒章を受けた 非鉄金属溶接加工に特化 社員による若手向け研修も活発である。匠の技の伝承 した事業を展開している。 電解設備内の精密品から 陸輸送が不可能な合成樹 脂プラントで使用される にも力を注いでいる。そんな中、現在 2 名の若手女 性溶接士が茂 原工場で 活躍している。特に大型 品については作業場所、 作業姿勢など から筋力 サイロやブレンダーなどの大型品までを幅広く手か 量の多い男性 の職域で げている。分野は化学、エネルギー、医療など幅広い。 あった。しかし、小さな 面白いものとしては大相撲巡回用土俵のアルミ製の 製品の溶接で あれば女 基礎部分。同社の高い溶接技術が力士の体重も支えて 性の感性を活かせる、と いる。溶接時、熱によるゆがみが生じやすい非鉄金属 を加工する同社の技術は、多くの業界からの多様なニ ーズに応え、高い評価を得ている。 同社は、先代赤星勝社長が、戦後復興が終われば工 業国に発展すると、早くから時代を読み、電機部品製 造業として操業した企業。その後、市原臨海工業団地 が造成され用地分譲が開始されると直ぐに用地を取 得し工場を建設。金属加工業へ進出した。そして、現 社長である健二氏が社長就任を機に非鉄金属加工分 野への進出を決意。生き残るためには「他とはひと味 違う、半歩先を目指さねば」と考えての判断であった。 非鉄金属へ対象材料の変遷に沿って自前の技術・技 の方針で、平成 20 年度 から女性溶接士を育成。 食塩電解用電解槽内の小さな部品を担当している。女 性特有の細やかさを活かし小さなトーチで溶接作業 を行う。材料はチタン、ニッケル等でティグ溶接を用 いて裏あて無しの片面突合わせの裏波溶接などを担 当。彼女たちは大きな製品の溶接にも意欲を見せてい るという。女性溶接士の活躍は始まったばかり。今後、 彼女たちが先頭に立ち、後輩女子社員のロールモデル となって欲しいと赤星社長は願っている。 3.今後の展望と課題について 非鉄金属厚板のプラズマ溶接にも果敢に挑戦。プラ 能を社内で蓄積し進展させる必要があった。そして、 ズマ溶接とはプラズマガスでエネルギー密度の濃い 取り扱う素材は高価かつ希少であり、生産する製品は アーク放電を作り、金属を溶かして接着する方法。開 変電所のシステムをはじめ万が一の事故があっては 先加工せずに溶接できる。円高等で日本の製造業は厳 ならないもの。 「溶接は外観だけで良否を判断するこ しい状況が続くが、高い技術力を武器に大企業ができ とは困難であり、だからこそ、社員の人間性・技量の ないニッチ分野で一歩先をいく企業として、人間性・ 研鑽を目指す」と赤星社長は語る。 「社会に役立つ企 技量の研鑽を積んだ優秀な社員たちとともに世の中 業」 、 「なくてはならない存在」であるため赤星社長は で「なくてはならない存在」を目指す。 社員教育に注力する。 【関連施策】元気なモノ作り中小企業300社(経済産業省)、 「新連携計画」認定企業(経済産業省) 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 8 アシザワ・ファインテック株式会社 ~女性社員でも、技術職として現場で活躍~ 2.具体的な人材育成の取組みについて 会社概要 代表者: 代表取締役社長 芦澤 直太郎氏 本 社:千葉県習志野市 設 立:昭和 14(2002)年 資本金:9,000 万円 社員数:107 名(男性 79 名、女 性 28 名) 事業内容:粉砕機・分散機をは じめとする産業用粉体機器の開発・製作・メンテ ナンス スローガン:微粒子技術で“新しい可能性の共創” 1.事業内容と人材戦略の現状について 1903 年創業、110 年の歴史を持つ当社は、自社開 発や海外企業との技術提携を行う研究開発型企業。 100 周年を迎えた 2003 年には、 厳しい経営環境の中、 新創業を果たし生まれ変わった企業だ。 「一番最初につぶれるのはアシザワだ」 その後は、事務系・技術系を問わず、女性の採用を 促進する方針を社長が明示し、新卒・中途ともに毎年 積極的に採用した。採用後は社内で女性が不在だった 職種へも配置を行い、製品開発・知的財産などの基幹 業務まで任せている。 営業面では、新規顧客を開拓する展示会において女 性社員が当社の技術力を分かり易く説明できるよう 育成している。実際、展示会では女性社員からの説明 に驚く来場者が多く、企業評価が高まり、他社との差 別化が図れている。当社のホームページやパンフレッ ト・カタログ等は、女性の広報専任者が平易な表現に より作成したものであり、これは現場で働く女性社員 が自社の技術を理解しているからこそ可能となるこ とである。 その他、部品供給やメンテナンスなどアフターサー ビスの窓口を、従来の男性営業に代わり、女性が担当 することでその特性を活かし、顧客に対するきめ細か いサービスを展開している。 一方、結婚・出産・育児等の生活環境に適応した「生 現社長が父の跡を継いだ 2000 年頃、同業他社からこ 活サポート短時間勤務制度」も創設し、勤続一年以上 う噂されるほど社内は厳しい状況にあった。製品開発 の社員に対して最短で週 21 時間の勤務を認めている。 は外国企業に依存、経験ある営業マンがいない、よう 現在、育児休業を取得し復帰している女性社員や、 やく売れた製品はクレーム続発、というありさまで、 時短勤務を利用している女性社員も存在。子育て中の 取引銀行からは廃業を勧められた。 女性には配慮をしつつ、業務を 危機感を募らせた社長は、全社員を集め、解雇を宣 任せている。 言した。だがそれは、人員削減ではなく、ベンチャー 男性社員は休業の可能性が 魂の再生が目的だった。意欲ある社員が安心して働け 少ないので、熟練を要する仕事 て、独自の技術に挑戦して世の中に貢献する、という が適している。女性社員は産休 経営理念を掲げる新たな会社を設立し、一緒に頑張ろ 取得の可能性があるので、本人 うと決意する社員と共に再スタートを切った。その結 の将来設計を確認しつつ、5 年 果、社員一人ひとりが積極的に考え行動できる風土に 程度の短期間でも成果が得られ、休業中に陳腐化しに 変わっていった。 くい職種につかせる。それで仕事に魅力を感じ、産休 新創業と同時に、新卒の採用に女性 1 名を加えた ところ、彼女はそれまでの新入 社員の常識を覆す勢いで仕事 を覚えて大活躍。当時、当社で は技術系の現場で女性が働く ことは極めて珍しく、男性社員 やお客様の理解も得にくい環 境にあったが、彼女はそれを跳 ね返し、後に管理職を任される までに成長した。 の後に職場に復帰し、再度頑張ろうといった意欲や自 信につながっている。 3.今後の展望と課題について 企業の成長と女性の活躍は、リンクするものである。 これまで女性について、①いかに採用するか、②いか に育成し活躍させられるか、③いかに休業させられる か、④いかに復職させられるか、という順序で職場作 りに取り組み、成果を挙げてきた。 新創業から 10 年が経過した今日、退職する女性社 員が減少した結果、平均年齢の上昇や新規募集人数の 縮小という新たな局面を迎えている。 【関連施策】第10回千葉ものづくり認定製品(千葉県) 9 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 有限会社あきゅらいず美養品 ~「傍楽(はたらく)」と「三方よし」の精神で まわりの人を幸せにする働き方の実践~ 会社概要 代表者: 代表取締役 南沢 典子氏 本 社:東京都三鷹市 設 立:平成 15 (2003)年 資本金:300 万円 社員数:64 名(男性 12 名、女 性 52 名) 事業内容:スキンケア商品の企画開発、製造及び 販売 雑貨の企画開発、製造及び販売 経営理念:「傍楽」「三方よし」 1.事業内容と人材戦略の現状について 顧客対応や業務遂行は社員一人ひとりの固有の感 覚や認識を基に、理念や行動指針に沿って心を込めて 行われるべきものと考え、特に接客マニュアルは整備 していない。社員はロールプレイを用いた実践的な研 修や教育によって対応能力や資質を体得していく。あ らゆる状況に個人の感覚と裁量をもって対応できる よう、基礎にある哲学を身に付けるように教育してい く。お客様からも丁寧な心遣いに対する感謝の言葉を 多くいただくようになった。 社会情勢が変わってしまえば、お金でなく経験が残 る。よって、スタッフには学ぶような気持ちで仕事に 臨むように伝えている(スタッフの自立・自律・自率 を促している)。会社を大きくするのではなく、人が 南沢代表が大手化粧品会社を退職後、 「美しさをカ 育っていく会社を経営して、その理念を継承した人た タチづくるのではなく美を養うことからはじめよう」 ちが外の社会に出て、また、その理念を受け継ぐ集団 との想いから中医学を基礎としたスキンケア商品の をつくっていく、こうした流れができれば最善だと思 製造販売を主幹事業として起 っている。 業。起業直後は非常に業績も 2.具体的な人材育成の取組みについて 良かった。しかし、会社を大 まずは、縦割り組織の廃止。基本シフトとしての部 きくすることを追求した結果、 署編成に留め、各部署に管理職を置かない、全スタッ 逆に状況悪化も早く、3 年後 フが完全にフラットで自由な組織をつくっている。こ に潰れそうになった。事業が の体制をとって 4 年目。担当部署、肩書きでなく、 拡大し売上が伸び、会社が一見うまく軌道に乗ったよ その意思や能力に従った相応の職務を遂行できる仕 うに見えても、人が育っておらず、結局、社内が混乱 組みである。雇用形態も多様である。フルタイム、短 し赤字に転落。この時、事業を諦めてしまおうと悩ん 時間勤務、事業毎の限定契約労働など、育児などの事 だが、もう少し続けてみようと奮起し、一端それまで 情に合わせた勤務を可能にしている。但し、能力を発 の 3 年間を冷静に振り返った。混乱の要因は「人(社 揮する機会が雇用形態に左右されないよう、裁量権や 員)を大切にしないと何も実現しない」ことであると 責任は一律。働き方を自由にすることで、自分のアイ 実感。また、その反省から経営理念も出来た。すると ディアや工夫、小さなイノベーションを自主的に生み 自然と業績も改善した。経営理念は「傍楽」と「三方 だし、販促・部門調整会議などでも自由に発言、検討 よし」 。傍を楽にする、つまり周りの人を幸せにする が行なわれる。社外活動も奨励しており、様々な経験 働き方が本来の仕事のあり方と考えられるようにな を持ち、様々な事情を抱える社員が、それぞれの事情 った。その傍楽によって繋がる、企業、社員、お客様 に合わせて事業に携わることができている。 や縁のある方々のかたちを「三方よし」とし、みんな 3.今後の展望と課題について が良くなるために、みんなで協力しあうかたちを目指 お客様とともにライフス すようにした。この理念から基本的な礼儀や多様性を タイルを創る企業として社 認めあう精神などを記した 12 箇条の行動指針に沿っ て、現在、全社員が活動している。目指す人物像も「も のごとを明るく前向きに捉え、好奇心を持ってチャレ ンジする人」などの表現で明確化され、日常的な心得 として掲示されている。理念や指針は社内、社外を問 員食堂の「森の食堂」や社 屋 1 階部分を「森の楽校」 として地域に開放。ワーク ショップなど年間 60 件近いイベントを実施している。 本来、企業は地域社会と密接に繋がり、地域社会に支 わずあらゆる手法で表現している。社内においては朝 持されることで真の価値を得ることが出来るものと 礼で行動指針を基にしたスピーチや月例の会議で議 の想いのもと、今後、更に地域振興や産業振興に繋が 論を行うなど常に全スタッフが認識するための取組 る取り組みにも着手していく予定である。 みを行っている。 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 10 株式会社井口一世 ~高度にIT化・標準化した工法確立により開発・製造現場でも女性が大活躍~ 会社概要 代表者: 代表取締役 井口 一世氏 本 社:東京都千代田区 事業所:埼玉県所沢市 設 立:平成 13(2001)年 資本金:9,500 万円 社員数:25 名(男性 17 名、 女性 8 名)全て正社員 事業内容:金属加工用金型設計・製作、金属プレ ス加工、各種表面処理など 経営理念:最高の人材と設備に支えられた製造業 を通して新たなる文化の創造に貢献する。 1.事業内容と人材戦略の現状について までの不可能を可能にする技術を生むことを期待す る。失敗したら「うまくいかない方法を発見した!」 という捉え方である。 2.具体的な人材育成の取組みについて 業務におい ては、それぞれ の能力・適正に 合致した場所 に配置を行っ ている。他社で は例を見ない、 文系出身者の 女性が製造現場で働くことも多くある。その人の能力 や実績を評価し、成果に伴って毎月でも昇給を行って OA・FA 機器、医療機器、分析機器、輸送機器等 いる。男女における年収格差は無く、その人が努力し の主要部品の精密板金加工を手がけており、高価な金 た分を評価する。資格取得や更なるキャリアアップの 型を必要としない技術(金型レス) 、従来「機械加工」 ための大学院等への進学等も推奨している。実際に資 で製造していた部品をレーザーによる「板金加工」で 格を取得したり学校等を卒業したりした場合には個 製造する技術(切削レス)といった、従来の考え方に 別に評価を行っている。なお、従来の製造業の 3K 現 とらわれない技術を活用し、高度の IT 化・標準化し 場のイメージを一新し、女性が働きやすい環境づくり た生産システムを確立した。熟練技術者の持つ暗黙知 を推進している。当社の開発製造部門を担っている所 を顕在化させるとともに、これまでの加工技術の蓄積 沢事業所は 2011 年 9 月に竣工したばかりの新社屋で から、材料物性・加工特性・加工機械特性等のデータ 白を基調としている。作業服も白。製造現場のホワイ ベースを構築。これにより、レーザー、パンチ、ベン トカラー化の象徴でもある。女子トイレも非常に綺麗 ディングといった加工機械の性能を最大限に引き出 で女性職員から好評を得ている。 し、専門知識を有しない従業員でも直ぐに加工機械を 操作し、高精 度・高品質の 製品が出来 る生産スタ イルを確立 した。これに より先入観 が無く、新た な挑戦をすることが可能で、かつ、一定の能力を維持 し続けることが可能な女性を多く採用している。正社 員 15 名のうち女性は 8 名。20~30 歳代が多い。管 理職も 5 名中 3 名が女性。 「男性は、ピークは高いが 継続しない。女性は 80~90%の力が安定的に継続す る。安全、5S への優秀さもあるが、女性はクリエイ ティブでもある」と井口社長は語る。社員には、既成 概念に囚われず非常識に挑戦し、多くの失敗をするこ とを積極的に勧めている。その失敗から学び、これ 3.今後の展望と課題について 過去 3 年で売上高は倍増、経常利益は約 10 倍に増 加するなど社一丸となって開発、製造に取り組んだ成 果が現れてきている。当初の OA 機器・精密機器関係 から家電、自動車などへ広がるにつれ、より複雑なプ ログラミングが求められるなか、材料と加工条件のデ ータベースを蓄積し、技術に磨きをかけている。文系 社員の素人のひらめきとものづくりで広い知識を持 つベテランの経験者など多様な人材の能力を組み合 わせでものづくりの革命を進めている。事業の拡大を 目ざし、多様な人材の採用と育成に力を入れ、能力向 上に努めることが急務であると考えている。そのため に更に、採用方法と教育体制を整え、人材育成の環境 の質的向上に努めていく。夢は、日本一地価の高い銀 座に工場を建て、ものづくりをすること。ものづくり の常識を破り、夢を叶えるために優秀な社員たちと井 口社長は邁進する。 【関連施策】元気なモノ作り中小企業300社(経済産業省)、 IT経営実践認定企業(経済産業省)など 11 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社日本レーザー ~「雇用を守ることは絶対!」出産や育児等に応じた柔軟な経営で親会社から独立~ 会社概要 代表者: 代表取締役:近藤 宣之氏 本 社:東京都新宿区 設 立:昭和 43(1968)年 資本金:3,000 万円 社員数:38 名(男性 28 名、 女性 10 名) 事業内容:レーザー・光学製 品輸入販売、自社品開発販売 経営理念:会社は社員のものであり、お客様のもの 2.具体的な人材育成の取組みについて 多様な人材を採り入れる一方で、個々のニーズに応 じた配属、働き方を提供してきた。給与や正社員とし て働くことだけが従業員が望んでいることではなく、 短時間での勤務や責任の少ない立場を望む者もいる。 「出産・子育ての状況に応じて育児休業の取得はもち ろん、復帰後も短時間勤務、パート待遇等に切り替え て雇用を維持する外、夫の海外転勤を機に退社しなけ ればならないか悩んでいた女性社員に対しては海外 の自宅を SOHO として位置づけて在宅勤務を認めた こともあった。」 1.事業内容と人材戦略の現状について と、まずは雇用を レーザー専門商社の草分けとして大手電子光学機 器メーカーの 100%出資により創業。歴代社長は何れ も親会社の出身者であり、近藤社長も 1994 年に五代 目として就任した。就任時は三期連続の赤字経営で債 務超過に陥り、取引先の銀行からの融資は一切受けら れない状況。見切りをつけた役員や幹部社員が仏、独、 イスラエル等海外の重要な顧客や社員を連れて独立 する等、会社存亡の危機に瀕していた。 「人も商圏も 失い、普通に採用できる状況にはなく、寿退社された 女性、海外の大学を出て採用先が見つからない若者、 外国人、身障者等の人材をなんとか採用できた。」と 近藤社長は当時を振り返る。 こうした状況の中、就任 1 年目から徹底したコス トカットをしながらも、 「社員の雇用は絶対守る。」を スローガンに、業績主義も導入し、従業員のモチベー ションを高めることで赤字から脱却。2 年間で累積赤 字を一掃して復配した。2004 年 3 月期では 1 億円を 超える経常利益を計上、直近の 3 年間は史上最高益 となる 3 億円台を維持、今期に至るまで 19 年連続で 黒字経営を続け ている。また、 2007 年には国内 発の MEBO によ る親会社からの 完全独立も果た し、更に業績を 伸ばすとともに、 優秀な人材も集 まるようにもな った。 確保した上で、各 ⅰMEBO とは、Management and Employee Buyout の略で、会社の 従業員と経営陣が一体となり、買収対象の株式を買い取り、その企業 の経営権を掌握すること。 自の要望に応じ てフレキシブル に対応する「社員 第一主義」を貫い ている。 一方、徹底した能力主義を実践した結果、グループ 長以上の役職には女性が 1/3(通常の会社の 3 倍以上) を占め、パートや派遣社員でもグループ長の職位で活 躍する者もいる等、女性が中枢を担うようになった。 更には、本人が望めば 70 歳まで働ける制度も導入、 実際 70 歳まで働いた実績もある。 「 『社員が働くこと を通して幸せになる』ことを目標に、雇用を守り、働 く喜びを提供することが経営者である私の「志」であ り、 「熱意」の源でもある。」と穏やかな表情の中に強 い芯を覗かせた。 3.今後の展望と課題について 「当社が女性の活用やダイバーシティ経営に取り 組んだ経緯は、決して狙ったわけではなく、全てが結 果としてもたらされたもの。」と捉えつつも、優秀な 人材が集まるようになった今日においても、 「大学を 卒業して一斉採用している日本の採用制度は見直す べき。」と警鐘を鳴らす。グローバルに展開する日本 レーザーにとっては、新規採用では発掘できない海外 営業の経験を有する主婦層や海外留学経験者・外国人 等に多くの優秀な人材が存在することを確信し、これ まで通り随時必要な人材を採用していく考えだ。また、 「米国では、女性の CFO・CEO も多く、日本人も全 く遜色ない。能力があれば男女問わず然るべき資格を 与える。」との考えを強調されていた。 【関連施策】第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞、平成 23 年度新宿区優 良企業表彰経営大賞 新宿区長賞、東京商工会議所第10回『勇気ある経営』大賞受賞。 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 12 株式会社メトロール ~忍耐強く手先の細やかな女性社員が支える精密なモノ創り~ 会社概要 代表者: 代表取締役社長 松橋 卓司氏 本 社:東京都立川市 設 立:昭和 51(1976)年 資本金:4,000 万円 社員数:100 名(男性 31 名、 女性 69 名) 事業内容:計測制御機器、省力 化機器、精密機器、検査具などの設計製作と販売 経営理念:CEPS(セプス)「顧客満足」 「全社員満足」 「生産性向上」「スピード」の頭文字 1.事業内容と人材戦略の現状について 工作機械の工具等の原点確認を行う「刃先セン サ」の分野で、温度や金属粉の混じった切削油が飛 び散る悪環境下でも影響を受けにくく、千分の一 ミリ以内の誤差という高精度工業センサを供給し ている。CNC マシニングセンタの「刃先センサ」で は世界シェアトップ、精密機械式センサでは当社 以外にはスイスに一社、用途では独・英のレーザ ー方式を採用する測定器メーカーがライバルで存 在するのみである。当社の強みは、「多品種」、「少 量」、「短納期」の仕組みを構築していること。商品 数は約 700 種類。1 個単位の少額注文から受け付け、 クレジットカードで即日決済、世界中どこへでも 1 週間程度と超短納期となっている。 このような仕組みを可能にしているのが、設計 部門、組立部門、試作部門から構成する直接部門 間のオープンな情報のやりとりである。オフィス 内には部署を仕切る間仕切りが無く、face to face のコミュニケーション(社員同士のメールは禁 止!)を推奨。一方で部門の管理職はブログにて 情報発信を行い、全スタッフがリアルタイムで会 社が直面する様々な問題を共有している。多人数 の会議は極力やらず、気づきメモを導入して日々 改善を実施。その日に上がったメモは翌朝には決 裁、対応策を記入して回答し職員が共有しており、 このメモ件数が年間 130 件近くにものぼり、改善 提案の質も上がっている。客先からのオーダーメ ード要望に対しては直接部門が即座にニーズ会議 を開催、内容のすり合わせを行い、迅速な対応に 努めている。また、当社は 100 名超のスタッフ中、 7 割以上を女性が占めている。特に生産では、女性 は忍耐強い人が多く、精密なモノ創りに向いてい る、という代表者の考えからだ。 2.具体的な人材育成の取組みについて メトロール社のスタッフは例えるならば、オー ケストラの楽団員のように、一人一人が楽器を弾 ける、プロ意識のある人材である。採用に当たっ て意識しているのは、 “精神的に自立していて、モ ノ創りが好きな人”であり、そのような人材確保 のために、採用面接では様々な工夫と、時間をか けている。更に、女性スタッフ達が活躍しやすい ように、工場内の組み立て作業スペースでは、照 明を明るめに設定、ヒーリングミュージックをバ ックに流し、床暖房を導入、省力の組立治具等の 開発など、1 日椅子に座って細かい製品の組み立て 作業を行う女性スタッフが仕事に集中しやすく、 疲れないように、細心の配慮がなされている。 3.今後の展望と課題 リーマンショック時は、同 社の売上げもピーク時の 3 割 程度に落ち込んだ。従来から 取引先の分散等のリスク回避 策は取っていたものの、予想 を超える先の見えない需要減に直面。しかし、社 員の首切りは一切実行せず、各種雇用関連助成金 を活用して雇用を維持しつつ、休業や残業削減、 内製化、在庫や固定費の大幅カット等 会社の体 質改善を短期間で実現した。その直後、中国経済 が上向き始め、同年秋口には台湾、韓国の海外設 備投資も活発化。海外産業機械向けの受注が好調 となり、翌年には売上、利益共過去最高を更新し た。これもリーマンショックの際に熟練技術者の 雇用を維持し、年明けからの突発的な短納期・大 量注文にス タッフが一 致団結して 対応してく れたお陰。現 在では約 64 カ国との電 子取引を足 掛かりに、戦 略的に海外 販売拠点を設立している。来年は、中国:上海、 深セン、タイ:バンコク、印:バンガロールの営 業強化で、4 拠点に 20 代の女性社員を駐在員とし て海外派遣する予定だ。 【関連施策】中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律に基づく特定研究開発等計画認定 (経済産業省)、 中小企業IT経営力大賞経済産業大臣賞(経済産業省) 13 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社日の出製作所 ~女性の感性を微細金属加工の現場に活用~ 会社概要 代表者: 代表取締役 岩 和志氏 本 社:神奈川県川崎市 設 立:昭和 35(1960)年 資本金:4,800 万円 社員数:40 名 (男性 31 名、女性 9 名) 事業内容:輸送機械部品加工、 機械要素部品加工・組立、難削材加工、その他試 作品加工・組立 経営理念:嘘をつかないモノづくり 2.具体的な人材育成の取組みについて 1.事業内容と人材戦略の現状について ロボットの知識がほとんどない文系女子の新人が善 先代が 1960 年に川崎市日の出町に、自動車のエン ジンバルブや機械部品を製造する金属部品加工会社 として創業。創業以来、どんな金属加工にも挑戦して きた同社も、例外なく不景気の波との戦いを余儀なく される。メーカー等外部だけの受注に頼るだけでは生 き残るのが厳しく、自分たちで値段を付けられる自社 製品開発の重要性に気付き、いち早く手を打つべく他 社ではまねのできない超難切削の金属加工等に挑戦 し続けた。現在では、このような加工に取り組んでき たベテラン技術者達のうち 2 名が、 『かわさきマイス ター(川崎市が優れた技能者を認定する制度)』とし て活躍している。 一方、同社では若手技術者、特に「女性技術職」の育 成にも力を入れている。リーマンショックの影響で同 業他社が苦しんで いる中、国の助成金 等を活用して、全国 の工業高校を卒業 した新人社員の採 用を進めた。社長の 長男で専務の岩武 志氏を中心に、「今 後は少子高齢化の進展を見据え、もはや女性の活用は 欠かせない。女性は粘り強いうえに細やかな感性を持 っており基本的にモノづくりに向いている。」として、 平成 22 年度は 11 人の新入社員の内 6 名の女性技術 職が内定。入社受入に当たっては、3K のイメージが 先行する中小の製造現場で女性達が働きやすい職場 づくりに細心の注意を払っている。例えば、研磨作業 の火花によるやけど防止のため、機械に防護板を取り 付けたり、腕力のない女性が工作機械を扱えるように 改良したり、女子社員寮を整備する等、その心配りは 隅々にまで及ぶ。 戦し大会を盛り上げた。 同社では、新入社員研修の一環として、入社後の約 1 週間、航空自衛隊輪島分屯基地で自衛隊研修に、そ の後の 3 ヶ月間は神奈川県立東部総合職業技術校「か なテクカレッジ」にてオーダーメード研修を実施。「か なテクカレッジ」が休講の水曜日には、同社の『かわ さきマイスター』2 名が直接技術指導を実施する。新 人研修の集大成は、川崎市の製造業に従事する若手技 術者のものづくりの登竜門として知られる「かわさき ロボット競技大会」。平成 22 年度は新入社員 6 名の 女性が大会史上初となる女性チームとして参戦し 1 次予選を通過。2 次予選通過はならなかったものの、 そんな同社では、給与や年次休暇等の待遇面でも男 女格差は無く、製造技術第一主義。出産後の育児休業 制度なども完備されており、職場をいったん離れて復 職した時も、「女性 の方が高齢の男性 より早く勘を取り 戻せる」と、子育て 後の職場復帰をし やすい社内体制の 工夫にも余念がな い。岩社長は、「当 社に入社して育児 休業に入る女性社員には、その後事情があって残念な がら当社を辞めてしまう場合でも、我が国活力のため に製造業に残って欲しい」という想いから、工作機械 関係文献等での自己研鑽を継続するように助言して いるという。真の意味で人材を大切にしている会社で ある。 3.今後の展望と課題について 平成 24 年 1 月、岩社長は出身地である石川県輪島 市の能登空港に隣接する臨空産業団地にグループ会 社サンテックを設立。精密機械向けボールねじや航空 機部品などを手がけている。東日本大震災を踏まえた、 リスク分散を主眼に置いたもので、数年後には北陸地 域からの新規受注ができる体制作りを目指し、本社機 能と製造ラインを集約して地元雇用も検討している。 同時に、現在の川崎本社には、首都圏拠点として営業 部門を残し、川崎市の姉妹都市である中国瀋陽や、ベ トナムなど、東アジアの活力を取り込むハブ機能を構 想している。 【関連施策】 「かわさきマイスター」認定 2 名(川崎市) 、「川崎ものづくりブランド」認定(川崎市) 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 14 株式会社新潟味のれん本舗 ~マルチな女性社員がいきいきと活躍。長岡から日本一の心を込めた対応を目指して~ 会社概要 代表者: 代表取締役 佐藤 誠之助氏 本 社:新潟県長岡市 設 立:昭和 63(1988)年 資本金:1 億 社員数:38 名(男性 1 名、女性 37 名(うちパート 2 名)) 事業内容:米菓・米・餅の通信販売 経営理念:お客様の心に寄り添った対応を目指す とで、部門間の柔軟な人材配置が可能となっている。 更に、中堅社員向けの外部講師を招いたマネージメン ト研修も毎年実施。また、お客様からの注文は 7 割 が電話であるため、業務としては電話対応が命。よっ て外部講師を招き「電話応答研修」を実施している。 更に、電話対応については外部コンクールにも出場、 全国大会出場に向けて取り組んでいる。実際に全国大 会出場実績もあり、同社の素晴らしい対応の証である。 独自の決まりとして、管理職となった後、産休に入 る場合は一度役職を降りる。つまり、管理職であって も入れ替えが多いが、逆の解釈をすれば、管理職とし て上に立つ大変さを経験できる機会が増えることに 1.事業内容と人材戦略の現状について なる。それぞれの立場 米菓等を「新潟味のれん」ブランドとして通信販売 を経験することでチ している。実店舗は本店のショールムのみ。電話、メ ームワークが強くな ール等で届く注文を受け、つくりたての商品を心を込 る効果もあるという。 めてお客様にお送りしている。佐藤代表以外は全て女 年に 1 回の昇級と 2 性であり、20 代から 50 代の幅広い年齢層の社員が活 回のボーナス支給時 躍する明るい企業である。扱う商品が女性と親和性の に意向調査と面接を ある食べ物であることから、稲作が身近な環境で育っ 実施。評価や感謝を社 てきた地元の女性による組織を作ろうと、昭和 63 年 員に伝えることも重 に誕生した企業である。採用は、新卒採用が主であり、 要であると、鷲頭専務は語る。意見箱に意見が投函さ 長岡市出身者が多い。優秀な人材が長く務められるよ れた際は、情報共有し、必ず対応する。また、社内の う職場環境を整備しているため、定着率が非常に高い。 委員会活動もある。安全、掃除美化・親睦会等は 1 多くのきめ細やかな チーム 7 名程度で活動し、横の連携も進め、社内コ 研修制度や休暇制度 ミュニケーションを活発にしている。 の充実、 「意見箱」の 幅広い年齢層の女性がいること、つまり結婚、出産、 設置などに取り組み、 育児、介護等人生の節目を経験した先輩である、ロー 仕事のブラッシュア ルモデルが身近にいることも同社の魅力である。自然 ップ、自己啓発の機 と周りの先輩同様に出産、育児休業も取得し、皆復帰 会、意見しやすくコ して活躍している。現在も 4 人が育児休業を取得し ミュニケーションが ている。電話対応は土日、祭日も営業するため、全社 取りやすい職場環境 員で交代でシフトを融通しあい対応している。お互い も同社の特徴。教育投資は年間数百万円。お客様の心 の立場を理解し合える、支え合えるからこそ、モチベ に寄り添った、お客様に喜ばれる企業であり続けるた ーション高く業務に臨めるという。 め、人材育成に力を入れる。 3.今後の展望と課題について 2.具体的な人材育成について 設立当初より実施している新人研修は、集中教育と して詳細なカリキュラムに沿って実施されている。ま た、 「シスター制度」という名称で、新人 1 名につき シスターと呼ばれる先輩社員 1 名が担当となり基本 的な業務の流れなどをレクチャーする。シスターを経 験することで先輩社員の成長にも繋がる。また、「多 能工化研修」として、企画・電話対応・入力業務など 全ての業務を担当出来る体制にするための研修が整 備されている。子供の熱など急な休暇や産休などの長 期間の休業に対応するためである。また、お中元、お 歳暮の時期等の繁忙期(夏・冬)とそれ以外の閑散期 が明確となる業務であるため、多能工化を推進するこ 国内販売専門であ り、現在は、国内景気 にかなり左右される。 しかし、まだ日本全国 に「新潟味のれん」と しての知名度は低い ため、伸び代はあると 佐藤代表は見ている。 コンビニスイーツの広がりなど、成熟市場である国 内菓子業界は競争が激しい分野。佐藤代表、鷲頭典子 専務のもと季節感溢れる米菓商品のラインナップと 女性社員の暖かいおもてなしの対応でお客様の心に 寄り添い、お客様の幸せを目指して米処新潟長岡市で 着実に歩みを進めている。 【関連施策】ハッピー・パートナー(男女共同参画推進)企業(新潟県) 15 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~関東経済産業局 株式会社かいわ ~男女区別無く技術・技能の極みを目指す~ 会社概要 代表者: 代表取締役 山添 重幸氏 所在地:山梨県上野原市 設 立:昭和 41(1966)年 資本金:1,000 万円 社員数:12 名(男性 7 名、女 性 5 名) 事業内容:精密プラスチック金型設計製作、同成 形加工、試作金型成形加工 1.事業内容と人材戦略の現状について 通常のプラスチック成 形の常識が通用しない、超 精密製品の加工を可能に する金型を製造し、成型品 を製造販売し、 “世界最小 のプラスチック製品”で、 な社員教育にある。例えば 機械の操作は、機械メーカ ーや会社の先輩から教わる のが一般的だが、同社はそ うしない。「メーカーの人が、 機械を 100%使いこなして いる保証はない」というの がその理由である。「当社で は、例えば 2000 万円のワイ ヤー放電加工機の使い方を習熟させるために、新入社 員には男女の区別無く、取り扱い説明書を徹底的に読 ませ、使い方だけでなく構造まで勉強させます。半年 くらいは、ひたすら四角なら四角いものをつくっては 精度を測る。これの繰り返し」。実際の仕事でも、期 日や精度などの目標値を設定するだけで、どのように つくるのかは個々の社員に任せる。機械を知り尽くし た若者の自由な発想、創意工夫が他にまねのできない 製品として結実している。このように、同社の「自分 で学ぶ・考える・編み出す」を実践させるには、「男性 携帯電話、家電製品、自動車関連など、様々な製品の も女性も関係なく、その人を信用しなければ任せられ 小型化・高密度化に貢献している。肉眼では判別不能、 ないし、それなりの力も発揮してくれない。その人の ルーペで何であるかをやっと確認でき、顕微鏡を通し 能力を認めてポジティブな視点で見て上げること」が て眺めると・・・。同社が自社技術のアピールを主な 重要。また、「もし、廃業や倒産をした際には、その 目的に作ったプラスチック製のクワガタ。全長 2.6 ㎜、 技術者が移転先の他社でも No1 の技術者でいられる 米粒との大きさと比較するとそのあまりの精密微細 ようにしてやりたい」と、強烈なプロ意識の中にも従 さがよく分かる。製作当時入社 2 年目の女性社員が 業員への暖かい眼差しが伺える。 手がけたものだ。この「世界最小のクワガタ」に象徴さ 3.今後の展望と課題について れるように、同社は超精密・高精度プラスチック成形 国立天文台 加工技術を得意とする。ミクロン単位の金型や、それ より電波望遠 を使って作る携帯電話関連部品、コネクターケースな 鏡のプラスチ ど、様々な製品で精密産業を支えている。「当社の製 ック部品を依 品づくりは、徹底した環境作りが支えています。加 頼され、他では 工・測定における外乱要因を排除するため、24℃± どこにもでき 1℃で管理された恒温恒湿室や、最新 CNC 画像測定 なかった金型 器や各種高精度測定器、埃・塵などをシャットアウト の製造や成形 する。検査室や成型機のクリーンブース化など。これ 加工の製品化 らがあってはじめて長年の成形ノウハウや、若いエン に成功した経験を活かしてミクロンオーダーのその ジニアの柔軟な発想が活き、超精密かつ超微細な金型 製造や樹脂成形加工の限界に挑戦できる。大切なのは 本気で経営者がものづくりの環境整備をできるかど うかです。」と山添社長は語る。 2.具体的な人材育成の取組みについて 同社の高度な技術を支えているのは、そのユニーク 先にあるナノ加工分野を追求し、分野不問の最先端の 仕事を目指す。更に、山添社長は日本のものづくり産 業のあるべき姿を展望し、コスト削減等のために国内 製造を縮小し、海外へ工場を移転させる現状に警笛を 鳴らしている。「日本がグローバル競争で生き残り、 優位に立つには高度で優位な技術とものづくりの現 場を国内に残していかなければならない」 (山添社長) 【関連施策】平成 21 年度第 3 回ものづくり日本大賞経済産業大臣賞受賞 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 16 株式会社小川の庄 ~過疎化の進展を地元のおばあちゃん達がストップ~ 会社概要 代表者: 代表取締役 権田 辰夫氏 本 社:長野県上水内郡小川村 設 立:昭和 61(1986)年 資本金:3,000 万円 社員数:83 名(男性 32 名、女 性 51 名)全て正社員 事業内容:食品製造業(「縄文おやき」、「農家の味 自慢」、「小川の庄御膳」等) 経営理念:(会社標語)①社内標語=「明るく、楽し く、元気よく」、②事業姿勢=「ローカルにこだわ り、グローバルに展開する。」、③商品祈願=「丸 いおやきで心もまるく」 1.事業内容と人材戦略の現状について 2.具体的な人材育成の取組みについて 小川の庄の商品理念として、飽食の今日、農村でし か食べられないものを提供しようという想いから、昔 からこの地域のみんなが食してきた信州西山地域の 郷土食である「おやき」の商品化に取り組んだ。郷愁を 味わってもらえるもの、 “おやき・つけもの・総菜” を作り商品にしようという想いが原点。小川村の郷土 食を商品にすれば、つくる技術をもった小川村の女性 の活躍にも繋がるのではないか、郷土食は村に嫁いで きた女性や出身の女性であれば、生活の中でおばあち ゃんやお母さんから教わった郷土食の作り方が身に ついている。企業の商品として売るために、こうした ら売れるのではというヒントをおばあちゃんたちと 話し合い、見た目が良く、美味しくて安全なものを商 品として作り出した。また人材管理面では、規模の拡 過疎化が進む地元の将来を思う熱意ある7人の仲 大に伴い、小川の庄のおばあちゃんの仕事を支える若 間達が、村内に農産加工会社を設立しようと申し合わ 者の力も必要となってきた。同社に入社する若者が夢 せ、各々技術の習得、ノウハウの吸収を図ってきた。 を持てる職場にしようということで、海外と関わりを ㈱小川の庄はこの仲間達が 30 年越しで集まり、村に 持った事業も展開している。設立初期の平成元年から、 暮らす人々が生きがいを持って生涯現役で働ける場 アメリカで開催されている『ジャパンエキスポ』に毎 を作り、地域貢献しようという強い思いを持って昭和 年出展、米国への販売から国際交流も進みおやきが全 61 年に設立された会社である。同社の特徴の 1 点目 国で認知されるようになった。また、ヨーロッパで最 は、行政と地域が一体となって歩む企業であること。 も美しい村と云われるドイツ・グータッハ村との村間 村からは事業基盤整備の支援を、農協からは当初資金 交流なども行っている。ジャパンエキスポの出展を契 や原材料の確保支援を受けて運営体制を確立した。2 機にマスコミも取り上げてくれるようになり、フジテ 点目は「60 歳入社で定年なし」の会社であること。 レビはドキュメンタリー仕立ての同行取材をしてく 人口の 42%が高齢者の長寿の村。高齢者には山仕事 れ た り 、 は無理でも、健康で働ける人たちが生活のハリと生き NHK の『小 がいを持って働ける場を作ろうと、当時の一般企業で さ な旅 』で はあり得ない 60 歳以上を入社条件とした。現在の社 は 、小 川の 員 83 名中、65 歳以上の高齢者は 33%、働く意思が 庄 をキ ー局 ある限り「定年なし」としており、最高齢者は男女と に 番組 を放 も 82 歳である。3 点目は「商品の集落一品づくり」 送 して くれ により、高齢者が核となって働ける職場作りを行った た 。そ の後 こと。村の集落ごとに作業所を作り、そこに通える範 の反響は予想以上で、権田代表以下マスコミの力を改 囲 の 人 た ち が 集ま めて実感している。 り 働 け る よ う にし た。歩いて畑に通う 感 覚 で 自 分 た ちが 暮 ら す 集 落 の 中で 気 心 の 知 れ あ った 仲間と共に働き歓談して過ごせる「分散型の工房作 り」を進めてきたのである。 3.今後の展望と課題について 今後も日本全国同様、小川村内も益々高齢化が進展 してゆくことは確実である。そんな時代を前に「株式 会社小川の庄」は、地域資源活用型のダイバーシティ 経営成功企業として、引き続き新しい商品開発・海外 展開等に積極果敢に挑戦し、地元の豊かな将来作りに 貢献してゆく。 【関連施策】高齢者雇用開発コンテスト特別賞(厚生労働省)、全国農業コンクール(農業経営優良部門) 名誉賞(農林水産省) 17 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社小松精機工作所 ~出産育児をサポートする制度を整え、女性の多くが出産後復帰し活躍~ 代表者: 代表取締役 小松 誠氏 本社:長野県諏訪市 設立:昭和 28(1953)年 資本金:9,750 万円 社員数:230 名(男性 145 名、女性 85 名) 事業内容:精密プレス部品 及び精密機械部品製造 経営理念: お取引先、需要先のご要望にお応えする「先取の 思想」と「誠意、熱意、善意」を言動の柱として 企業総合管理能力の確立を図り、社業を通じて社 会に貢献する 1.事業内容と人材戦略の現状について したくないこと」の 4 つのカテゴリーに社員個人が 記入する。悩みを抱えている時は「できないこと、し たくないこと」が多くなり、不満がたまった状態であ る。こうした状態で仕事に臨むと不良品の発生可能性 が高く、作業効率にも影響するため、現場の直属の上 司が丁寧に社員を観察し、必要な時は幹部が面接する システムを整えている。普段の朝礼でも小松製造部長 は「仕事をやらされていると感じる時には直ぐに申し 出て欲しい」と社員に伝えている。自らの意思で向上 心をもって職務を遂行して欲しいとの想いからであ る。次に、 「職場での役割の明確化」 。こちらも 4 分 類。現行の仕事を守る「キーパー」 、職人気質で機械 の癖まで知っている「スペシャリスト」 「エキスパー ト」 、部署の業務を広範囲で把握し全体をマネージメ ントできる「ゼネラリスト」 、答えの判らない課題が 発生した際にその解決のため実験・解析を行う「プロ 時計部品組立作業からスタートし、機械加工、表面 フェッショナル」である。どの役割を果たすかは本人 処理加工、プレス加工、金型製作と事業分野を拡大、 の希望と会社の希望を摺り合わせて決める。職務が明 一貫生産を行い、そこで培った精密加工技術を基に、 確になると仕事に臨む姿勢が良くなりモチベーショ 事業領域を 1980 年には情報通信機器部品、更に平成 ンを保ちやすくなるという。次に、 「プロジェクト制」 以降は自動車部品へと変化させた。ガソリンエンジン の導入である。改善などの際にプロジェクト制を敷く の電子制御燃料噴射装置のオリフィスプレートはエ が、具体的には製造工程のレイアウト変更の際に女性 ンジン性能を左右する基幹部品であり、世界シェアの 社員が大活躍している。 「女性は特に 5S(整理・整 トップクラスを占めている。現在は、医療機器関連部 頓・清潔・清掃・躾)と安全については高い能力を持 品など新規事業にも取り組んでおり、更なる発展を目 つ傾向である。更に、男性はスタートとゴールのみを 指す。 重視しがちであるが、 女性社員については最大 4 回産休を取得したもの 女性は間のプロセス サンプル もいる。職場で教育を受け慣れた人材が辞めてしまう と順番を大切にする。 のは会社にとっても本人にとっても損失であると認 物事を進める際は、プ 識。産後休暇に併せて復帰後の女性社員のため短時間 ロセスを解析、説明す 勤務制度を整備するなど、復帰しやすい環境を整えて ると周囲の理解を得 いる。女性社員の活躍促進をはじめ、現在、小松隆 やすいため女性の企 史製造部長が中心となり人材育成確保に積極的に 取組んでいる。 画は非常に優れたも 2.具体的な人材育成の取組みについて ないといけない物に対しても感度が高い。」と小松製 「玉突き多能工化」 「自己分析」 「必要に応じた幹部面 造部長は語る。 接」 「製造現場での役割の明確化」 「プロジェクト制」 を進めている。まず、 「玉突き多能工化」は、派遣社 員の急な退社等に対応するために 5 年前に考案。各 工程を三角で回していくシステム。その 3 人のうち 誰か 1 名抜けたとしてもカバーできる体制である。 「自己分析」とは、得意分野で力を発揮してもらうた めの取組。 「できること、できないこと、したいこと、 のであった。また、危険や重さに敏感で、繊細に扱わ 3.今後の展望と課題について 小松製造部長は学会を有効に活用している。学 会誌を読むことで改善や技術の刷新などに気がつ くこともあるという。学会での発表を目ざし技術 を向上させるなど教育投資も惜しまない。高いモ チベーションと確たる技術・知識を持つ社員とと もに新規分野への展開を目指す。 【関連施策】元気なモノ作り中小企業300社(経済産業省)、 戦略的基盤技術高度化支援事業(経済 産業省)、国内立地推進事業費補助金(経済産業省)など 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 18 株式会社みやま ~女性パート社員も一丸となりプラスチック成形の限界に挑む~ 会社概要 代表者: 代表取締役社長 百瀬 眞希氏 本 社:長野県茅野市 設 立:昭和 22(1947)年 資本金:4,000 万円 社員数:45 名(男性 29 名、女 性 16 名)うち正社員 30 名(男 性 27 名、女性 3 名) 事業内容:プラスチック成形・真空ガス抜き成形 &金型(家電、OA 機器、水処理関連、光学機器部品) 経営理念:PPS 樹脂※の加工といえば日本のみや まを目指す 1.事業内容と人材戦略の現状について 2.具体的な人材育成の取組みについて 社長を含め社員同士の横の連携を深めるため、バー スデーカードの贈呈を始めた。カードには感謝の気持 ちなどが書かれている。カードをもたった誕生日の社 員は逆にスピーチを行う。更に、年始には漢字 1 文 字の書き初めを行い、全社員の前でその字に懸ける想 いと 1 年後の自分の姿を発表するなど、社員一人ひ とりの想いを社内で共有し始めると、コミュニケーシ ョが取りやすい雰囲気となった。話が苦手な社員につ いても周りの社員が想いを共有することで温かく見 守ることができるようになった。 「不良品が出るのは 社員同士のコミュニケーション不足が最大の原因」と 言い切る百瀬社長ならではの取組みである。 また、女性の活躍を推進するため、子育て中の社員 プラスチック射出成形において早くからスーパー にはいつ休んでもらっても良い、子供が大きくなった エンジニアリング・プラスチック (特に強度に優れ、 ら戦力として働いてくれれば、と百瀬社長は伝えてい 耐熱性のような特定の機能を強化したプラスチック、 る。女性社員については、土地柄か、結婚し、妊娠す 以下「スーパーエンプラ」という)への成形に挑み、 ると仕事を辞めてしまう人が多いという。以前は正社 真空金型の製造によるガス抜きの工夫やガスによる 員、現在パートで働いている社員もいる。正社員への 金型の磨耗を如何に伸ばせるかなど、成形と金型が一 登用をお願いして 体となって現場と設計が話し合い「良いもの作り」に もかえって負担に 挑戦している。グローバル競争に晒されているが、今 なってしまうこと まで培った成形ノウハウを金型に盛り込むこと等に もある。逆に、ア より、更にスーパーエンプラの成形を極めるべく研究 ルバイトから正社 を進めている。「社員については同じ舟に乗っている 員へ登用したケー 同志と認識している。各々が能力を発揮することが会 スもある。それぞれの生活、事情に合った働き方で力 社を伸ばすと考えている。各々の社員の持てる能力を を発揮して欲しいと考えている。 どう発揮させてあげられるかが社長の役目だと思っ ている。また、社員の思いを共有し、社員の将来の夢・ 目標に対してアドバイスできる会社組織でありたい と思う」と百瀬社長は語る。 父親から社業を引き継いだ直後、リーマンショック 3.今後の展望と課題について 現在、社員の立ち位置の確認を進めている。上司か らの見え方と本人判断が異なっていれば指導・支援が かみ合わなくなってしまう。会社の未来ビジョンの共 が襲うが、絶対リストラをしないと社員に宣言。逆に 有や会社としてある 経費削減など一丸となって取り組んで欲しいとお願 べき姿を共有し、こ いした。実際に役職関係なくパートの女性陣から改善 れを達成するために 提案が複数出され、経費削減に繋がった。更に、社員 自分はどのような立 のモチベーション向上やレベルアップのためには、社 場でどのような役目 内コミュニケーションを活発にし、社長としても社員 を果たしていくべき 一人ひとりについてより良く知ること、社長と社員の かを明確に認識して 信頼関係の構築が一番であるとの認識から様々な取 もらう取組を始める 組みを始めた。 など、全社員が最大限の能力を発揮できるよう環境整 ※PPS 樹脂:ポリフェニレンサルファイド樹脂。金属の代替 素材として誕生した樹脂。従来品と比較すると耐熱性に優れ、 強度も高い。エンプラの一種。 19 備を進めている。金属の代替素材としての需要拡大が 予測されるエンプラの加工技術を高め、社員が一丸と なり欧州をはじめとしたグローバル市場へ挑む。 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 株式会社大川原製作所 ~女性技術職の活躍によりユーザー視点のものづくり、更には海外展開を目指して~ 会社概要 代表者: 代表取締役 大川原 行雄氏 本 社:静岡県榛原郡吉田町 設 立:昭和 20(1945)年 資本金:7 億 7921 万円 社員数:293 名(男性 246 名、 女性 47 名) 事業内容:乾燥・濃縮・造粒・ 殺菌・濾過装置、焼却炉等の設計、製造販売 経営理念:お客様が抱える様々な課題に対し専門 の知見と幅広い経験による最適な技術と装置を提 案する。 1.事業内容と人材戦略の現状について 昭和 2 年創業の同社は地場産業である製茶業向け の乾燥機を提供してきた。その乾燥技術を基軸に、現 在は、食品、化学、製薬、環境など幅広い分野に乾燥・ 濃縮・殺菌・濾過及び焼却に係る各種装置を提供して いる。キッコーマンの殺菌技術の継承、海外市場を見 据えてスペインやチェコの企業と積極的に業務提携 をしている元気企業だ。最近はヒートポンプ式乾燥機、 食品残渣等の活用によるバイオマス発電などにも展 開している。同社の顧客である企業は、扱う素材・材 料も様々。顧客ニーズに合わせて、一つひとつ手を加 えカスタムメイドした製品を納める。技術と知識、経 験に加えて柔軟な対応、発想が必要となる。機械を造 るのは人であり、優秀な人材の確保、育成に力を入れ ている。 人材戦略として 19 年度から、女性、特に大卒技術 職の積極採用を開始した。今では、技術職採用の半数 は女性である。それまでは女性と言えば経理、人事な ど事務職のみで、大卒の女性技術職は皆無であった。 女性技術職の積極採用に至った理由は 2 つ。まず は、納入先企業では女性オペレーターが増え、体格の 違いから材料投入口や点検窓等は女性向けに少し低 い方がいいなど、女性技術者の目線や感性による機械 設計の必要性を実感したことが第一の理由。次に、工 学部卒の男性の採用が非常に難しい時期であったこ ともきっかけであった。工学部に限らず理学部まで範 囲を広げ採用募集を行った結果、19 年度入社した大 卒社員は女性 2 名 (水産学部出身 1、 理工学部出身 1) 、 男性 1 名。次年度以降、技術職の採用の半数が女性 となっている。女性更衣室や女性トイレ等社内環境も 整備し、女性技術職をバックアップ。また、地元出身 以外の社員も増えたため社員寮も整備した。1 階が男 性、2 階が女性。女性にとって製造現場は厳しい環境 であることも確かである。会社説明会では作業環境、 社内制度など全て現状を説明し、女性であっても納得 して入社してくるため、高いモチベーションで業務に 臨んでいる。また、理系女子学生は、結婚・出産後も 働ける職場を探していることが多いが、同社ではそれ を実践できる仕組み ができている。入社の 際のインセンティブ になっているようで ある。「女性管理職は まだいないが、19 年 度以降入社した社員 が育っていけば、素晴 らしいリーダーとなるであろう」と社内の評価は高い。 2.具体的な人材育成と制度面のバックアップ 新入社員には 1 週間の研修、その後は各部署での OJT。技術的な研修は必要に応じて各部署で実施され ている。24 年度から基本的なビジネススキルの研修 を始めた。制度面では、産前産後休暇、育児休業など が完備されている。育児休暇は殆どが 1 年取得、短 時間勤務制度は 3 年間取得する社員もいる。有給休 暇は繰越しを入れれば、最大年間 70 日の取得が可能 となる。併せて、以前より 1 分単位での取得を可能 としており、多くの社員が、子供の急病や親の介護等 にこの制度を積極的に利用している。更に 2 年前か ら残業申請も1分単位に変更した。社是の「まじめで 元気で、さすがと言われる企業」のように安心して長 く務めることができる研修制度や休暇制度等両立支 援環境の整備をすすめている。 3.今後の展望と課題について 24 年度に入り若手社員を中国の子会社へ 3 ヶ月間 単位で派遣している。海外での生活を体験し、外国人 との係り方を経験して欲しいとの思いからの派遣で ある。採用面でも中国人、マレーシア人、ブラジル人 の優秀な外国人を雇用した。更に、24 年度は静岡県 経済産業部企業立地推進課主催の静岡ビジネスイン ターンプログラムに参加し、外国人学生のインターン シップを受け入れている。アジアを中心とした海外市 場を視野に入れ、海外で活躍できる人材の育成、獲得 を進める。 優秀な若手女性技術職と優秀な外国人を戦力に、全 社一丸となって更なる飛躍、グローバル展開を目指す。 【関連施策】 身体障害者雇用助成金(厚生労働省)、職業能力開発機構助成金(同) 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 20 株式会社ハーモニーレジデンス ~シングルマザー・女性管理職に特化した人材紹介で日本企業の女性活用に変革を起こす~ 会社概要 代表者: 代表取締役 福井 真紀子氏 本 社:東京都杉並区 設 立:平成 9(2007)年 資本金:1,000 万円 社員数:4 名(男性 1 名、女性 3 名) 事業内容:人材紹介業 経営理念:女性が当たり前に子どもを産み、仕事 と両立可能な社会の実現に貢献すること。 1.事業内容について 2007 年に日本で初めてシングルマザーの正社員 人材に特化した人材紹介を開始し、100 社以上の企 業への紹介の実績があり、リピート求人依頼率も 90%以上を誇る。 「女性をもっと活用したいが、先 頭を走ってくれる女性のロールモデルの人材がい ない。」という企業側の切実なニーズに着目し、 「ロ ールモデル戦略」を提案。企業からは、社内に新 しい風が吹き込み、男女問わず社員全員のモチベ ーション向上、社内活性化、業績向上など様々な プラス効果が生まれるという成果が出たとの声が 多く寄せられている。こうした「ロールモデル戦 略」の数々の成功事例が口コミで拡がり、同様の 変化を望んでいる企業からの求人依頼が増加して いる。また、企業が直面しているもう一つの女性 活用に関する課題は、 「女性リーダー・管理職候補 者がいない」こと。政府目標でも 2020 年までに女 性の指導者的割合を 30%にするという高い目標が ある中、各企業はその対策に苦慮している。よっ て、①社内に女性リーダーとなる候補者がいない こと。②リーダーになるための経験や研修を受け させる余裕がないことの 2 点に着目して、2012 年 11 月より「女性リーダーシップ研修」を修了した 女性管理職候補者 と企業が効率よく 面談できる「女性 管理職候補者採用 合同面接会」を開 催した。研修に参 加した 12 名の女性候補者のうち 5 名が内定(2013 年 1 月 7 日現在)し、企業側、候補者側双方から 大変高い評価を得ている。 2.グローバル化時代に対応した女性リーダー女 性管理職人材育成の取り組み 「先進国の中で若年労働人口が、最も急激に減少 している我が国において、女性活用及び女性リー ダー層の人材育成は待ったなしの喫緊の課題であ る。女性リーダーが活躍している企業ほど好業績 であるという明確なデータもある中で、まずは女 性管理職人材の育成を急がなければならない」と 福井代表は語る。問題は、ほとんどの企業に、管 理職となる女性候補者が社内におらず、育成する 時間もないこと。だからこそ、発掘する作業が必 要になる。日本女性は世界でも上位 3 位に入る高 学歴でありながら、埋もれたまま活用されていな いことに着目。全国に潜在的に埋もれている女性 管理職候補者となる意欲の高い女性人材を登録受 付し、書類選考・面談により対象候補者の絞り込 みを実施。選抜された女性管理職候補者に対して、 日本女性リーダーシップ開発センターと連携して 「女性リーダーシップ研修」を実施。研修は 1 週 間(35 時間)の集中型研修で、米国人、英国人の 女性リーダーシップ研修の第一人者が担当するも の。旧来の「男性型リーダー」ではなく女性特有 の能力を最大限引き出しながら、リーダーシップ を発揮する新しい「女性型リーダー」の人材を育 成する。子育ての経験がある女性ほど、 「人材育成 マネジメント能力」が高く、今求められている「女 性型リーダー」に最適の候補者である、と福井代 表は語る。 3.今後の展望と課題について 今後 3 年間は、 「無料女性リーダーシップ研修」 と「女性管理職候補者採用合同面接会」の開催を 年 6 回まで増やすことで、 「女性管理職ロールモデ ル人材」を多数輩出し、女性管理職同士のネット ワークを組織化する予定である。 「課題となるのは、 社会の意識、企業の意識、働く女性の意識の変革 であり、意識変革には時間がかかる。従って定着、 浸透させるためにも、実際に活躍している『女性 管理職ロールモデル人材』の増加が不可欠である」 と福井代表。当面は女性管理職の量的拡大に集中、 特化し、事業展開していく。 【関連施策】平成 23 年度「東京ひとり親家庭就職フェア」(東京都福祉保健局受託) 21 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 人材確保・育成支援メニュー ~まずは、関東経済産業局産業人材政策課(048-600-0358(直通))までお問い合わせ下さい~ 1.よい人材を確保したい 新卒者就職応援プロジェクト(平成 24 年度補正予算事業) 中小企業・小規模事業者の事業現場で働く上で必要な技能・技術・ノウハウを習得す る機会を提供するため、中小・小規模事業者で実施する職場実習を支援します。また、 中小企業・小規模事業者の海外展開を担うグローバル人材確保のため、アジア等の優秀 な留学生を対象とした支援も実施致します。(実習期間は数ヶ月から6ヶ月程度) ○対象者は、「新卒者等及び平成22年3月以降に大学等を卒業した未就職者」 です。(2万人規模で実施) ○実習生には、中小企業・小規模企業の現場等で、カリキュラムに沿って社会 人基礎力や各分野毎の基本的知識・技能を習得していただきます。 ○実習生には日額7,000円の技能習得支援助成金を支給します。 *本プロジェクトは職場体験を行うものであり、雇用ではありません。 また、単に労働力の確保を目的とした企業は参加できません。 (担当部署) ○中小企業庁経営支援課 TEL:03-3501-1763(直通)、 ○中小企業庁新事業促進課 TEL:03-3501-1767(直通) URL:http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/jinzai.htm 中小企業新戦力発掘プロジェト(平成 24 年度補正予算事業) 育児等で一度、退職し、再就職を希望する女性等(新戦力)に対し、職場経験のブラ ンクを埋める機会を提供するために、中小企業・小規模事業者で実施する職場実習を支 援します。(実習期間は数週間から6ヶ月程度) ○対象者は、育児等で退職し、再就職を希望する女性等(5千人規模で実施) ○実習生には、中小企業・小規模事業者の現場等でカリキュラムに沿って、即戦力で活躍するために必要 な分野毎の技能習得をしていただきます。 ○実習生には日額6,000円(実習時間6時間の場合)の技能習得支援助成金を支給します。 *本プロジェクトは職場体験を行うものであり、雇用ではありません。 また、単に労働力の確保を目的とした企業は参加できません。 (担当部署) ○中小企業庁経営支援課 TEL:03-3501-1763(直通)、 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 22 地域中小企業の人材確保・定着支援事業(平成 24 年度補正予算事業) 中小企業・小規模事業者が優秀な人材を確保していくために、地域の中小企業団体等 と大学等が連携し、中小企業・小規模事業者と学生の日常的に顔が見える関係構築から 両者のマッチング、新卒者の採用・定着までを一気通貫に支援します。また、中小企業・ 小規模事業者の海外展開を担うグローバル人材確保のため、アジア等の優秀な留学生を 対象とした支援も実施致します。 (担当部署) ○中小企業庁経営支援課 TEL:03-3501-1763 (直通) ○各地域の実施主体は、中小企業庁のホームページでご確認下さい。 URL:http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/jinzai.htm 中小企業海外高度人材育成確保支援事業(平成 25 年度予算事業) 中小企業・小規模事業者の優秀な現地人材の確保のため、タイ・ベトナム等の日系中 小企業や現地の大学・高専等と連携し、現地におけるジョブフェアや企業文化講座を実 施します。 (担当部署) ○貿易経済協力局 技術協力課/中小企業庁 新事業促進課・国際室 TEL:03-3501-1937/03-3501-1767/03-3501-9093 ジョブカフェ(各都道府県施策) 各都道府県に設置された「ジョブカフェ(若年者のためのワンストップサービスセン ター)」では、若者へのカウンセリングなどの就職支援や中小企業の魅力発信などの人材 確保支援をワンストップで提供しています。 ※各都道府県によって提供されているサービスは異なります。詳細は各都道府県のジョ ブカフェにご確認ください。 ○企業魅力情報発信 中 小企 業の 強み や魅 力な ど PR したい情報の発信、知名度向 上、イメージアップなどをお手 伝いします。 ○マッチング 中小企業の経営者・人事担当者と若者が一 同に会する企業説明会や若者との交流イベ ントの開催などにより、若者に対し地域中小 企業の魅力を PR する機会を提供します。 ○職場定着支援 中小企業の経営者、人事担当者、 若手社員などを対象に、新入社員の 早期離職を防止するため、コミュニ ケーション力向上の研修などを実 施します。 (担当部署) ○経済産業政策局 産業人材政策室 TEL:03-3501-2259(直通) URL:http://www.meti.go.jp/policy/jobcafe/jobcafe_all.html 23 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 中小企業基盤人材確保助成金(厚生労働省施策) 健康・環境分野等に該当する事業への新分野進出に必要な基盤人材(中小企業の経営 基盤強化に資する人材)などを雇用保険の一般被保険者として雇い入れた中小企業事業 主は助成を受けることができます。 (担当部署) ○厚生労働省の各都道府県労働局にお問い合わせ下さい。 URL:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/chusyo_yatoi.html 2.従業員を育成したい 中小企業大学校 中小企業大学校では、中小企業の経営者や経営幹部等に対し、座学による講義に加え、 自社の経営データを持ち寄った経営課題の解決策や、製造業等における現場改善実習と いった実践的な方法による以下の研修を実施しています。 ・経営者、管理者、後継者が、自社の経営課題解決につながる経営全般の 応用力を習得する長期養成型の研修 (例)後継者研修(10 ヶ月) 、 経営管理者研修(4 日×6 ヶ月又は 5 日×12 ヶ月) ・経営戦略、販路開拓、生産、財務、労務、グローバル化、IT経営等の 経営課題解決を目指した 2~15 日間の研修 ○全国に展開 *北海道から九州まで、全国に 9 校展開しています。 北海道(旭川校) 兵庫県(関西校) 宮城県(仙台校) 新潟県(三条校) 東京都(東京校) 広島県(広島校) 福岡県(直方校) 熊本県(人吉校) 愛知県(瀬戸校) キャリア形成促進助成金(厚生労働省施策) 企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、その雇用する労働者を対象 として、目標が明確化された職業訓練の実施、自発的な職業能力開発を支援する事業主は訓 練経費や訓練中の賃金など助成を受けることができます。 (担当部署) ○厚生労働省の各都道府県労働局にお問い合わせ下さい。 URL:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/d01-1.html 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 24 グローバル人材育成インターンシップ(平成 25 年度予算事業) グローバル人材の育成や開発途上国とのネットワーク強化に向けて、日本の若手社会人・学 生を現地の政府系機関、民間企業等へ派遣する海外インターンシップを実施します。 (担当部署) ○貿易経済協力局 技術協力課 TEL:03-3501-1937(直通) ※24 年度事業委託先:財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO) URL: http://intern.hidajapan.or.jp/ 新興市場開拓人材育成支援事業(平成 25 年度予算事業) 中小企業等の海外展開に必要となる開発途上国の現地拠点強化に向けて、経営・販売・開 発・設計・製造等に携わる幹部人材の育成等を支援します。 (担当部署) ○貿易経済協力局 技術協力課 TEL:03-3501-1937(直通) ※24 年度事業(経済産業人材育成支援事業)実施機関:財団法人海外産業人材育成協会(HIDA) URL: http://www.hidajapan.or.jp/jp/ikusei/index.html 3.働く従業員を守りたい 中小企業緊急雇用安定助成金(厚生労働省施策) 景気の変動などにより、売上高や生産量が減少し、一時的に休業等を実施する場合、支払 った休業手当等の一部を助成します。 【休業・教育訓練の場合】休業手当又は賃金相当額の 4/5 (教育訓練を行った場合は一人一日あたり 3,000 円を上乗せ(事業所外訓練の場合一人一日あたり 6,000 円)) 【出向の場合】出向元事業主が負担した賃金相当額の 4/5 (教育訓練費を除く、一日一人あたりの助成額は、7,890 円(平成 23 年 8 月 1 日現在)が)限度となります。) 【出向の場合】(平成 24 年 1 月速報値)届出事業所数合計 40,157 事業所 対象者 700,638 人 (担当部署) ○厚生労働省の各都道府県労働局またはハローワークにお問い合わせ下さい。 URL:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a01-2.html 25 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~ 関東経済産業局 平成 24 年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集 第1号 【特 集】女性の活躍により飛躍する企業 平成 25 年 2 月 発行:〒338-9715 埼玉県さいたま市中央区新都心 1 番地1 関東経済産業局 地域経済部 産業人材政策課 TEL:048-600-0358 FAX:048-601-1292 URL:http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/humanresources/index.html