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第5641780

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第5641780
JP 5641780
(11)特許番号
特 許 公 報(B2)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
B2
2014.12.17
特許第5641780号
(45)発行日
(P5641780)
(24)登録日 平成26年11月7日(2014.11.7)
平成26年12月17日(2014.12.17)
(51)Int.Cl.
A23L
FI
1/08
(2006.01)
A23L
1/08
請求項の数7
(全11頁)
(21)出願番号
特願2010-117177(P2010-117177)
(22)出願日
平成22年5月21日(2010.5.21)
国立大学法人埼玉大学
(65)公開番号
特開2011-004736(P2011-4736A)
埼玉県さいたま市桜区下大久保255
(43)公開日
平成23年1月13日(2011.1.13)
審査請求日
平成25年5月10日(2013.5.10)
(31)優先権主張番号
特願2009-124588(P2009-124588)
(32)優先日
平成21年5月22日(2009.5.22)
(33)優先権主張国
日本国(JP)
(73)特許権者 504190548
(73)特許権者 511244621
特定非営利活動法人
秩父百年の森
埼玉県秩父市上町三丁目6番6号
(74)代理人 110000109
特許業務法人特許事務所サイクス
(72)発明者 菅原
康剛
埼玉県さいたま市桜区下大久保255
国
立大学法人埼玉大学内
(72)発明者 田島
克己
埼玉県さいたま市南区沼影2−12−3
3−103
最終頁に続く
(54)【発明の名称】はちみつ及びその製造方法
(57)【 特 許 請 求 の 範 囲 】
【請求項1】
糖 度 が 1∼ 2%の 範 囲 で あ る カ エ デ の 樹 液 を 採 取 し 、 採 取 し た 糖 度 が 1∼ 2%の 範 囲 で あ る カ エ
デ の 樹 液 を 糖 度 が 10∼ 40%の 範 囲 に な る よ う に 濃 縮 し 、 得 ら れ た 濃 縮 液 を 25∼ 40℃ に 調 節
した後に蜂に与えてはちみつを生産させ、生産されたはちみつを回収することを特徴とす
るはちみつの製造方法。
【請求項2】
カエデが、イタヤカエデ、ヒナウチワカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチワカ
エ デ 、 ウ リ ハ ダ カ エ デ 、 サ ト ウ カ エ デ 、 ま た は ア カ カ エ デ で あ る 、 請 求 項 1に 記 載 の 製 造
方法。
10
【請求項3】
カ エ デ の 樹 液 が 、 複 数 の 種 類 の カ エ デ の 樹 液 の 混 合 物 で あ る 、 請 求 項 1ま た は 2に 記 載 の 製
造方法。
【請求項4】
回 収 さ れ た は ち み つ は 糖 度 が 60∼ 85%の 範 囲 で あ る 請 求 項 1∼ 3の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方
法。
【請求項5】
はちみつの生産は、女王蜂、雄蜂及び雌蜂が生息する蜂の生息室、給餌器とはちみつ回収
す る た め 空 巣 碑 と を 備 え た 養 蜂 箱 を 用 い て 行 い 、 給 餌 器 に 25∼ 40℃ に 調 節 し た 濃 縮 液 を 供
給してはちみつを生産させて空巣碑に蓄えさせ、空巣碑に蓄えられたはちみつを回収する
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、 請 求 項 1∼ 4の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方 法 。
【請求項6】
蜂 は ミ ツ バ チ で あ る 、 請 求 項 1∼ 5の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方 法 。
【請求項7】
回収されたはちみつは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、
亜 鉛 及 び 銅 を 含 有 し 、 カ リ ウ ム 含 有 量 が 200μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 30μ g/g以 上
で あ る 、 請 求 項 1∼ 6の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方 法 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
10
本発明は、カエデ等の樹液や果実の絞り液を原料としたはちみつの製造方法及びこの方
法で製造されたはちみつに関する。
【背景技術】
【0002】
カエデ糖は、カエデの樹液を原料として調製されるものであり、メープルシロップが有
名である。日本国内でもカエデ糖を甘味の原料とした菓子類が製造販売されている。
【0003】
しかし、カエデ糖は、長期保存が効かないという問題があった。糖類以外の種々の天然
成分を含有するためと考えられる。カエデ糖の貯蔵安定性の改善に関しては、特許文献1
が あ る 。 特 許 文 献 1に は 、 メ ー プ ル シ ロ ッ プ に 転 化 酵 素 を 添 加 す る こ と で カ エ デ 糖 の 貯 蔵
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安定性を改善することが記載されている。
【0004】
ま た 、 カ ナ ダ 産 の メ ー プ ル シ ロ ッ プ に は 、 比 較 的 色 や 味 が 薄 い 等 級 (エ ク ス ト ラ ラ イ ト )
か ら 、 色 や 味 が 濃 い 等 級 (ダ ー ク )ま で の 5段 階 の 等 級 が 有 る 。 色 や 味 が 濃 い 等 級 (ダ ー ク )
については、そのままで食用としては提供されず、加工用とされている。
【0005】
カエデ糖の糖成分は、カエデの種類にもよるが、一般には、主成分がショ糖であり、フ
ルクトース及びグルコースの含有量は、ショ糖に比べると極わずかである。一方、糖類の
甘 味 は フ ル ク ト ー ス が 最 高 で あ り 、 シ ョ 糖 の 約 1.5倍 も 甘 い 。 シ ョ 糖 の 加 水 分 解 物 に は 等
量のフルクトースとグルコースが含まれており、甘味料として優れ、転化糖と呼ばれる。
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【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【 特 許 文 献 1 】 特 表 2004-519257号 公 報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、主成分がショ糖であるカエデ糖に含まれるショ糖を加水分解すれば、甘
味料として優れたフルクトース含有量の多い転化糖が得られるが、加水分解をするという
加工が加わることで、天然由来のカエデ糖の良さが失われるという問題がある。
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【0008】
また、日本国内では、これまでほとんどメープルシロップは生産されておらず、日本国
内に生育するカエデの樹液について調査されたこともなかった。本発明者らが、埼玉県の
秩 父 地 方 に お い て 調 査 し た 結 果 、 秩 父 地 方 に 生 育 す る カ エ デ は 、 主 に 1月 か ら 3月 の 間 、 採
取できる程度の量の樹液を生成し、初期に比べると後期の方が樹液の生成量は多くなった
。また、採取の時期により樹液に含まれる味が変化し、カエデの種類によっても味が異な
った。樹液によって、そのまま食用に供することが適したものと、甘みはあるものの渋味
や苦みが強く、そのままでは食用に適さないものがあった。傾向として、樹液の生成量が
少ない初期の樹液は、そのまま食用に供することが適した味であり、樹液の生成量が多く
なる後期の樹液は、カエデの種類にもよるが、甘みはあるものの渋味や苦みが強く、その
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ままでは食用に適さないものが多くなった。
【0009】
そのような状況の下、カエデ糖に関する長期保存性の問題及び甘味増強に関する問題を
同時に解決でき、さらには、甘みはあるものの渋味や苦みが強く、そのままでは食用に適
さないカエデの有効利用を図ることができる新たな手段を提供することが望まれている。
【0010】
ところで、従来のはちみつは、咲いている花が生産する蜜を、ミツバチにより収集し、
蓄積されることで生産される。しかしながら、冬期のように花のない季節には、蜂が生き
ていくのに必要な最低限のカロリーをショ糖水溶液として与え、春を待つというのが実情
である。従って、養蜂業者にとって、冬は蜜を生産できず、ミツバチの生育に費用のかか
10
る季節でもある。養蜂業においては、冬期のように花のない季節にもはちみつの生産が可
能な方法の開発が待たれていた。
【0011】
尚 、 カ エ デ が 盛 ん に 樹 液 を 生 成 す る 1∼ 3月 は 気 温 が 低 く 、 ミ ツ バ チ が カ エ デ の 樹 液 を 原
料としてはちみつを生成するには適さない気候であり、天然には、カエデの樹液を原料と
したはちみつは、発明者が知る限り、存在しない。
【0012】
そこで、本発明は、上記背景技術に鑑み、カエデ糖等の樹液や天然の糖含有液について
の問題と養蜂業における問題を同時に解決できる新たな手段を提供することを目的とする
。
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【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を行った。その結果、カエデの樹
液 は 、 糖 度 は 約 1∼ 2%の 範 囲 で あ っ た が 、 こ の カ エ デ の 樹 液 を そ の ま ま ミ ツ バ チ に 与 え て
も、はちみつを作らないことが分かった。そこで、種々検討した結果、カエデの樹液を糖
度 が 10∼ 40%の 範 囲 に な る よ う に 濃 縮 し 、 か つ 濃 縮 だ け で も ミ ツ バ チ は は ち み つ を 作 ら な
か っ た こ と か ら 、 さ ら に 、 濃 縮 し た 液 の 温 度 を 25∼ 40℃ に 調 節 し て 与 え た と こ ろ 、 初 め て
はちみつを作ることが分かり、かつ得られたはちみつは、長期保存性に優れたものであり
、かつ甘味料として優れたフルクトース含有量の多いものであった。このように、採取し
たカエデ糖等の天然の糖含有原料を用い、かつ製造条件を特定の条件とすることで、はち
みつを調製することができ、かつ得られるはちみつは、長期保存性に優れ、フルクトース
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及びグルコースの含有量が増加した物であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明は以下のとおりである。
[1]
樹 液 ま た は 果 実 の 絞 り 液 を 糖 度 が 10∼ 40%の 範 囲 に な る よ う に 調 整 し 、 得 ら れ た 調 整 液 を 2
5∼ 40℃ に 調 節 し た 後 に 蜂 に 与 え て は ち み つ を 生 産 さ せ 、 生 産 さ れ た は ち み つ を 回 収 す る
ことを特徴とするはちみつの製造方法。
[2]
樹 液 は 、 カ エ デ の 樹 液 で あ る 、 [1]に 記 載 の 製 造 方 法 。
40
[3]
カ エ デ の 樹 液 の 糖 度 は 1∼ 2%の 範 囲 で あ る 、 [1]ま た は [2]に 記 載 の 製 造 方 法 。
[4]
はちみつの生産は、女王蜂、雄蜂及び雌蜂が生息する蜂の生息室、給餌器とはちみつ回収
す る た め 空 巣 碑 と を 備 え た 養 蜂 箱 を 用 い て 行 い 、 給 餌 器 に 25∼ 40℃ に 調 節 し た 調 整 液 を 供
給してはちみつを生産させて空巣碑に蓄えさせ、空巣碑に蓄えられたはちみつを回収する
、 [1] ∼ [3] の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方 法 。
[5]
カエデが、イタヤカエデ、ヒナウチワカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチワカ
エ デ 、 ウ リ ハ ダ カ エ デ 、 サ ト ウ カ エ デ 、 ま た は ア カ カ エ デ で あ る 、 [2]∼ [4] の い ず れ か
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に記載の製造方法。
[6]
カ エ デ の 樹 液 が 、 複 数 の 種 類 の カ エ デ の 樹 液 の 混 合 物 で あ る 、 [2]∼ [5]の い ず れ か に 記 載
の製造方法。
[7]
回 収 さ れ た は ち み つ は 、 糖 度 が 60∼ 85%の 範 囲 で あ る 、 [1]∼ [6]の い ず れ か に 記 載 の 製 造
方法。
[8]
蜂 は ミ ツ バ チ で あ る 、 [1]∼ [7]の い ず れ か に 記 載 の 製 造 方 法 。
[9]
10
[1]∼ [8]の い ず れ か に 記 載 の 方 法 で 製 造 さ れ た は ち み つ 。
[10]
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅を含有し、カ
リ ウ ム 含 有 量 が 200μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 30μ g/g以 上 で あ る 、 濃 縮 及 び 希 釈 を
しておらず、かつ添加剤の添加をしていないはちみつ。
[11]
カエデの樹液を原料として調製されたものであり、かつ、カエデが、イタヤカエデ、ヒナ
ウチワカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチワカエデ、またはウリハダカエデで
あ る [10]に 記 載 の は ち み つ 。
[12]
20
糖 濃 度 が 60∼ 85% の 範 囲 で あ る [10]ま た は [11]に 記 載 の は ち み つ
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カエデ等の樹液や果実の絞り液を原料として、長期保存性に優れ、フ
ルクトース及びグルコースの含有量が増加した甘味料であるはちみつを、最終製品に対し
て人工の手段を加えることなく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明で用いる養蜂箱の概略図を示す。
【図2】給餌器の概略図を示す。
30
【図3】女王蜂生息室又は空巣碑の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のはちみつの製造方法は、
(1) 樹 液 ま た は 果 実 の 絞 り 液 を 糖 度 が 10∼ 40%の 範 囲 に な る よ う に 調 整 す る 工 程 、
(2)得 ら れ た 調 整 液 を 25∼ 40℃ に 調 節 し た 後 に 蜂 に 与 え て は ち み つ を 生 産 さ せ る 工 程 、
(3)生 産 さ れ た は ち み つ を 回 収 す る 工 程
を含むものである。
【0018】
本発明のはちみつの製造方法の原料は、樹液または果実の絞り液である。樹液としては
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、カエデの樹液を例示できるが、これに限定されない。果実の絞り液は、種々の果実を皮
ごとまたは果肉だけ絞ることで得られる液である。果実に限定はないが、例えば、みかん
等の柑橘類、リンゴ、ナシ、桃、苺、ブドウ、メロン、柿等を挙げることができるが、こ
れらの限定される意図ではない。
【0019】
以下、原料としてカエデの樹液を用いる場合を例として説明する。カエデの樹液は、カ
エデに樹液が出やすい用に小さな傷(例えば、直径10∼50mm、深さ5∼100mm
の孔)を空け、傷からしみ出る樹液を採取するための樹液採取器を取り付けて採取するこ
とができる。カエデ以外の樹液の採取も同様に行うことができる。採取された樹液は、カ
エデの種類により、糖成分やその他の成分に違いがある。カエデの種類には特に制限はな
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いが、例えば、イタヤカエデ、ヒナウチワカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチ
ワカエデ、ウリハダカエデ、サトウカエデ、及びアカカエデを挙げることができる。イタ
ヤカエデ、ヒナウチワカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチワカエデ、及びウリ
ハダカエデは日本国内に多く生育するカエデであり、一方、サトウカエデ、及びアカカエ
デは、カナダを初め諸外国において多く生育するカエデである。カエデの樹液は、単独の
種類のカエデの樹液であっても、複数の種類のカエデの樹液を適当な混合比で混合した混
合物であってもよい。また、カエデの樹液は、採取の時期やカエデの種類によって微量成
分の組成が変化する。本発明の方法では、比較的そのままでは食用に適さない、渋味や苦
みの成分が多いカエデ樹液であっても原料として用いることができ、渋味や苦みの成分が
多いカエデ樹液を原料として用いても、生成するはちみつは、樹液が有していた渋味や苦
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みをほとんど有さず、そのまま食用とできるという利点がある。
【0020】
カ エ デ の 樹 液 の 糖 度 は 、 通 常 、 1∼ 2%の 範 囲 で あ る 。 但 し 、 カ エ デ 樹 液 の 糖 度 は こ の 範
囲に限定する意図ではない。本発明では、蜂がはちみつの原料として好適に利用するとい
う 観 点 か ら 、 カ エ デ の 樹 液 を 糖 度 が 10∼ 40%の 範 囲 に な る よ う に 調 整 す る 。 糖 度 が 10%未 満
の樹液では蜂がはちみつの原料とせず、はちみつをほとんど生産しないことが本発明者ら
の検討の結果、明らかになった。一方、糖度が高くなる程、濃度調整にコストがかかり、
ま た 、 樹 液 の 安 定 性 も 低 下 す る こ と か ら 、 糖 度 の 上 限 は 40%で あ る 。 好 ま し く は 15∼ 35%の
範 囲 、 よ り 好 ま し く は 15∼ 30%の 範 囲 で あ る 。 カ エ デ か ら 採 取 さ れ た 糖 度 1∼ 2%の 樹 液 を 、
例えば、減圧下で加熱濃縮して、上記範囲の糖度とすることができる。濃縮倍率は、カエ
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デ 樹 液 の 糖 度 に よ り 適 宜 選 択 で き 、 例 え ば 、 10∼ 30倍 の 範 囲 で あ る 。
【0021】
糖 度 を 調 整 し た 調 整 液 は 、 次 い で 温 度 を 25∼ 40℃ の 範 囲 に 調 節 す る 。 本 発 明 者 ら の 検 討
の 結 果 、 糖 度 を 調 整 し た 調 整 液 を 加 温 せ ず 、 常 温 (例 え ば 、 10∼ 20℃ 程 度 )で 蜂 に 与 え て も
はちみつはほとんど生産しなかった。それが、上記範囲に加温することで、はちみつの生
産 性 は 、 驚 く ほ ど 向 上 し た 。 一 方 、 40℃ を 超 え る 温 度 で は 、 暑 く な り す ぎ て 蜂 の 活 動 が 低
下し、最悪の場合には死に至る場合もある。糖度を調整した調整液の温度は、好ましくは
30∼ 35℃ の 範 囲 に 調 節 す る 。
【0022】
本発明のはちみつの製造方法は、養蜂箱を用いて実施することができる。以下、養蜂箱
30
について説明する。養蜂箱は、通常のミツバチの生育と花蜜に由来するはちみつの生産に
用いられるものと同様のものであることができる。但し、本発明では、通常の養蜂箱の内
部にある空巣碑の一部を撤去し、同じ大きさの給餌器を挿入して用いる。図1に本発明で
用 い る 養 蜂 箱 50の 概 略 図 を 示 す 。 養 蜂 箱 50は 、 給 餌 器 10、 女 王 蜂 、 雄 蜂 及 び 雌 蜂 が 生 息 す
る 蜂 の 生 息 室 20、 は ち み つ を 回 収 す る 空 巣 碑 30を 備 え る 。
【0023】
本 発 明 の は ち み つ の 製 造 方 法 は 、 給 餌 器 10に 25∼ 40℃ に 調 節 し た 調 整 液 を 供 給 し て は ち
み つ を 生 産 さ せ て 空 巣 碑 30に 蓄 え さ せ る 。 但 し 、 は ち み つ の 生 産 開 始 直 後 は 、 働 き バ チ は
、 女 王 蜂 に は ち み つ を 運 搬 す る 。 そ こ で 、 は ち み つ 生 産 開 始 初 期 の 段 階 は 、 給 餌 器 10aに
カ エ デ の 樹 液 調 整 液 以 外 の 糖 原 料 液 (例 え ば 、 砂 糖 水 ( シ ョ 糖 水 溶 液 )) を 供 給 し て 、 女 王
40
蜂 が 生 息 す る 生 息 室 20を は ち み つ で 満 た し 、 そ の 後 に 、 給 餌 器 10bに カ エ デ の 樹 液 調 整 液
を 供 給 し て 、 空 巣 碑 30に 生 産 し た は ち み つ を 蓄 え さ せ る こ と が 好 ま し い 。 そ の 際 、 給 餌 器
10aと 10bの 間 に 両 者 の 間 を 遮 断 す る 分 割 板 40を 設 け る 。 尚 、 本 発 明 の 製 造 方 法 で 用 い る 蜂
はミツバチであることができる。しかし、ミツバチ以外のはちみつを蓄積する習性を有す
る蜂も同様に用いることができる。
【0024】
図 2 に 、 給 餌 器 10の 説 明 図 を 示 す 。 給 餌 器 10中 に は 、 樹 液 を 濃 縮 し て 得 た 調 整 液 ( 樹 液
濃 縮 液 ) 11を 適 量 供 給 し 、 そ の 上 に 蜂 が 止 ま る こ と の で き る フ ロ ー ト 12を 浮 か せ る こ と が
で き る 。 働 き 蜂 13は フ ロ ー ト 12の 上 に 止 ま り 、 濃 縮 液 11を 吸 う こ と が で き る 。 濃 縮 液 を 吸
っ た 働 き 蜂 は 空 巣 碑 30に 生 産 し た は ち み つ を 蓄 え る 。 図 3 に 空 巣 碑 30の 内 部 構 造 を 示 す 。
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濃 縮 液 を 吸 っ た 働 き 蜂 は 、 空 巣 碑 30内 の 蜜 嚢 31に は ち み つ を 蓄 え る 。
【0025】
上 記 方 法 で の は ち み つ の 生 産 は 、 養 蜂 箱 50の 大 き さ や ミ ツ バ チ の 生 育 数 に も よ る が 、 カ
エ デ の 濃 縮 樹 液 を 供 給 し た 後 1∼ 7日 程 度 で 、 空 巣 碑 30に 蓄 え ら れ た は ち み つ を 定 法 に 従 い
回収することができる。はちみつの回収は、例えば、遠心分離法で行うことができる。
【0026】
回収されたはちみつは、カエデの濃縮樹液にもよるが、例えば、糖度は60∼85%の
範囲であり、好ましくは70∼85%の範囲である。また、カエデの濃縮樹液ではなく、
果実の絞り液を用いた場合もほぼ同様である。本発明の製造方法で得られるはちみつは、
花蜜由来のはちみつと異なり、カエデ等の樹液の種類や果実の種類に応じた特色のあるは
10
ちみつである。即ち、樹液や果実の絞り液に含まれる微量のミネラル等が、本発明の方法
で得られたはちみつに反映されるので、本発明の製造方法で得られるはちみつは、従来の
はちみつに無い味覚や栄養素を含むことができる。また、本発明の方法によれば、渋味や
苦みの成分が多く含まれ、そのままでは食用に適さないカエデ樹液、メープルシロップで
あっても、そのような渋味や苦みが低減または消失したはちみつを得ることができる。
【0027】
また、従来のはちみつは、国際規格で次の二種類が定義されている。その一つは、花は
ちみつまたは花蜜はちみつと呼ばれ、植物の花蜜に由来するはちみつである。他の一つは
甘露はちみつと呼ばれ、主として植物の生組織上で植物の汁液を吸う昆虫の排泄物に由来
するはちみつである。本発明の樹液や果実の絞り液に由来するはちみつは、上記国際規格
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に当てはまらない第3のはちみつと分類することもできる。
【0028】
本発明は、上記本発明の方法により、カエデ樹液を原料として調製された、新たなはち
みつも特許請求の対象とする。本発明のはちみつは、ナトリウム、カリウム、カルシウム
、 マ グ ネ シ ウ ム 、 リ ン 、 鉄 、 亜 鉛 及 び 銅 を 含 有 し 、 カ リ ウ ム 含 有 量 が 200μ g/100g以 上 、
カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 30μ g/100g以 上 で あ る 、 濃 縮 及 び 希 釈 を し て お ら ず 、 か つ 添 加 剤 の 添
加をしていないはちみつである。
【0029】
上 記 本 発 明 の は ち み つ は 、 カ エ デ の 樹 液 を 原 料 と し て 、 か つ こ の 樹 液 を 濃 縮 (糖 度 調 整 )
したものを用いて調製されたものであり、かつ、カエデが、イタヤカエデ、ヒナウチワカ
30
エデ、イロハモミジ、オオモミジ、コハウチワカエデ、またはウリハダカエデである。こ
れらのカエデは、樹液に含まれるミネラル分が豊富であり、この樹液を原料として生産さ
れたはちみつも豊富なミネラル分を含有する。樹液中のミネラル分含有量は、カエデの種
類により、また生育する地方の土壌により変化するが、例えば、秩父地方に生育するカエ
デの場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅を
含 有 し 、 カ リ ウ ム 含 有 量 が 20μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 7μ g/g以 上 で あ り 、 カ エ デ
の 種 類 に よ っ て は 、 カ リ ウ ム 含 有 量 が 80μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 30μ g/g以 上 で あ
る も の も あ る 。 こ れ ら を 濃 縮 す る と 、 例 え ば 、 濃 縮 倍 率 に も よ る が 、 カ リ ウ ム 含 有 量 が 40
0μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 100μ g/g以 上 で あ り 、 カ エ デ の 種 類 に よ っ て は 、 カ リ ウ
ム 含 有 量 が 1000μ g/g以 上 、 カ ル シ ウ ム 含 有 量 が 500μ g/g以 上 で あ る も の も あ る 。 本 発 明
40
では、原料であるカエデ樹液またはカエデの濃縮樹液の組成を選択することで、はちみつ
のミネラル分含有量をコントロールすることが可能である。
【0030】
本発明のはちみつは、糖濃度が60∼85%の範囲であり、好ましくは70∼85%の
範囲である。本発明のはちみつは、ミネラル分含有量が高く、ミネラル補給源用の食品と
しても有用である。
【0031】
通常のはちみつ製造は、花蜜が豊富な季節にのみ行われているが、本発明の方法によれ
ば、花蜜が乏しい季節である晩秋から早春にかけても、カエデの樹液は採取できることか
ら、この季節にもはちみつ製造が可能となり、はちみつ製造業の稼働率向上にも寄与でき
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る。
【0032】
さらに、各地で有名となっている樹木の樹液や果実を原料としたはちみつを地域ブラン
ド商品とし、地域活性化や自然環境保全の手段としても利用できる。特に樹液を原料とし
た場合、樹木の保全が山林の保全に繋がることが期待される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実 施 例 1∼ 3
(1)カ エ デ の 樹 液 を 採 取 す る 工 程
10
カ エ デ の 幹 に 直 径 約 15mm、 深 さ 約 30mmの 穴 を あ け 、 ホ ー ス を 接 続 し 、 タ ン ク に 樹 液 を 受
け る 。 1 本 の カ エ デ か ら 、 1 シ ー ズ ン で 約 40Lの 樹 液 を 採 取 す る こ と が で き る 。 こ の よ う
にして、カエデ樹液を採取した。
【0034】
(2)カ エ デ 樹 液 の 濃 縮 工 程
採 取 し た 樹 液 の 糖 度 が 30% に な る よ う に 減 圧 濃 縮 し 、 濃 縮 液 50L を 得 た 。 こ れ を 90℃ に
加熱し、殺菌した。
【0035】
(3)約 20℃ に 保 温 し た 図 1に 示 す 養 蜂 箱 50(幅 37cm、 高 さ 25.5cm、 奥 行 き 48.6cm)に は 、 約 2
万 匹 の ミ ツ バ チ が 飼 わ れ て い た 。 給 餌 器 10aに シ ョ 糖 水 溶 液 を 供 給 し て 、 は ち み つ を 生 産
20
さ せ 、 女 王 蜂 生 息 室 20を は ち み つ で 満 た し た 。 つ い で 、 35℃ に 調 節 し た 濃 縮 樹 液 を 、 図 1
に 示 す 養 蜂 箱 50の 給 餌 器 10bに 供 給 し 、 空 巣 碑 30内 の 蜜 嚢 31に は ち み つ を 生 産 さ せ た 。 濃
縮 樹 液 10L を 2 日 間 で 供 給 し た 。
【0036】
(4)蜜 嚢 31を 遠 心 分 離 機 で 処 理 し 、 は ち み つ を 3L回 収 し た 。
【0037】
回 収 し た は ち み つ の 糖 組 成 と 原 料 で あ る カ エ デ 濃 縮 樹 液 の 糖 組 成 を 表 1に 示 す 。 ま た 、
参 考 に は な は ち み つ の 糖 組 成 も 表 1に 示 す 。
【0038】
【表1】
30
40
【0039】
さらに、実施例1∼3のはちみつの糖度、透明度、香り及び味覚について表2に示す。
参考にはなはちみつの糖度、透明度、香り及び味覚も表2に示す。
【0040】
50
( 8 )
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尚 、 実 施 例 1及 び 3で 原 料 と し て 用 い た 樹 液 は 、 2月 中 旬 ∼ 3月 中 旬 の 比 較 的 後 期 に 採 集 し
た 樹 液 で あ る 。 ま た 、 実 施 例 2で 原 料 と し て 用 い た 樹 液 は 、 2月 中 旬 ∼ 3月 中 旬 の 比 較 的 後
期に採集した、イタヤカエデ、ヒナウチワカエデ、オオモミジ、ウリハダカエデの樹液の
混 合 物 (各 25%)で あ る 。 い ず れ の 樹 液 も 渋 味 や 苦 み が 強 く 、 そ の ま ま で は 食 用 に 適 し な い
ものであった。
【0041】
【表2】
10
20
【0042】
実施例1∼3で製造したはちみつ及び原料であるカエデ樹液(糖度を30%まで濃縮し
たもの)のミネラル分等の含有量の分析結果を表3に示す。分析は、ナトリウム、カリウ
ムは原子吸光分析法(日立ハイテクノロジーズ製Z2300)により行い、その他の元素
はICP発光分光分析法(PerkinElmer製Optima4300DVまたはエ
スアイアイ・ナノテクノロジー製SPS4000)により行った。分析結果は3回の分析
結 果 の 平 均 値 で あ る 。 参 考 と し て 通 常 の 花 は ち み つ の ミ ネ ラ ル 分 等 の 含 有 量 (公 表 値 )も 表
3に示す。
【表3】
30
40
【産業上の利用可能性】
【0043】
はちみつ及びメープルシロップ製造に関する分野に有用である。
【符号の説明】
【0044】
10, 10a, 10
給餌器
50
( 9 )
11
濃縮樹液
12
フロート
13
働き蜂
20
女王蜂生息室
30
空巣碑
31
蜜嚢
40
分割板
50
養蜂箱
【図1】
【図2】
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( 10 )
【図3】
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(72)発明者 島崎 武重郎
埼玉県秩父市上町3−6−6
審査官 菅原 洋平
(56)参考文献 特開2006−280294(JP,A)
IGLESIAS, M.T.et al.,Usefulness of Amino Acid Composition To Discriminate between Hon
eydew and Floral Honeys. Application to Honeys from a Small Geographic Area.,Journal
of Agricultural and Food Chemistry,2003年12月,Vol.54,pp.84-89
TURHAN, I. et al.,Quality of honeys influenced by thermal treatment,LWT Food Science
and Technology,2008年11月,Vol.41,pp.1396-1399
菅原康剛他,秩父産カエデメ-プルシロップを用いた新規蜂蜜の開発,埼玉大学地域オープンイ
ノベーションセンター紀要,2009年 6月,pp.18-21
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A23L
1/076−1/08
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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