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初等理科 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習について
初等理科 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 − 考察の場を取り入れた学習活動の工夫を通して − 利府町立しらかし台中学校 概 今村 雅人 要 新しい時代の教育の在り方として「生きる力」の育成が求められている。そのため, 理科教育では,基礎・基本を押さえながら日常生活と関連付けた理解や科学的な見方, 考え方が重要な視点となっている。そこで,理科学習と実際の生活の中で見られる事象 がどのようにかかわっているかを考察させる方法と,そのかかわりを指導計画上に位置 付けることについて提言するものである。 1 主題設定の理由 小学校の目標の一つとして「日常生活における自然現象を科学的に観察し,処理する能力を養うこ と」(学校教育法第18条第6項)が設定され,この目標を達成するのに適した教科として理科が設けら れている。すなわち,理科は,日常生活において児童生徒を取り巻いている自然環境や自然現象を学 習の対象とするものであり,このことは他の教科には見られない理科の独自な役割であると言うこと ができる。 また,平成10年(1998年)7月の教育課程審議会答申の中では,理科における学習指導要領の改善の 基本方針を次のように示している。「小学校,中学校,高等学校を通じて,児童生徒が知的好奇心や 探究心をもって,自然に親しみ,目的意識をもって観察,実験を行うことにより,科学的に調べる能 力や態度を育てるとともに,科学的な見方や考え方を養うことができるようにする。そのため,自然 体験や日常生活との関連を図った学習及び自然環境と人間とのかかわりなどの学習を一層重視すると ともに,児童生徒がゆとりをもって観察,実験に取り組み,問題解決の能力や多面的・総合的な見方 を培うことを重視する」この方針の中では,これからの理科教育として,特に,学習内容を自然体験 や日常生活と関連付けるとともに,自然環境と人間とのかかわりを一層重視することが指摘されている。 一方で,国際教育到達度評価学会(1999年中学校2年対象)の調査結果によると,(理科が好き,ま たは大好き55%,理科の勉強は楽しい50%,将来,科学を使う仕事がしたい19%,生活の中で大切39%)な ど,日本の中学生は,「数学や理科が好きである,将来それらに関する職業に就きたいという者の割 合が少ない」など理科離れの傾向があるという。このことの原因として「児童生徒にとって,理科は 難しい,暗記ものが多い,計算が面倒くさい,抽象的思考や操作が苦手」等の理由が挙げられている。 また,理科の授業では,物理・化学・生物・地学の基本的な概念や原理,法則を重視し過ぎていて, 日常生活にかかわりをもたせた授業が少ないことも,理科離れを起こしている一つの要因であると考えている。 そこで,生徒の理科離れをなくすためにも,身近な素材を生かした教材・教具での指導と日常生活 とのかかわりを考察することが必要であると考える。そうすることによって,児童生徒は,日常生活 と理科を関連付けて考察することができ,自然の事物・現象に対して多面的,総合的な見方を培うこ とができるようになるであろう。具体的には,小学校・中学校の授業等の教材を分析して,身近な素 材を生かした教材・教具の開発と工夫・改善を行いたい。また,その授業等の教材と日常生活とのか かわりを分析し,そのかかわりを取り入れる視点,そのかかわりを考察させる,より効果的な学習活 動を検証していきたい。その他,指導計画上,学校現場で利用しやすいような方策を目指したい。 以上のことより,日常生活とのかかわりを考察することを取り入れた学習活動を工夫していけば, 理科に対する興味・関心が高まり,そのかかわりを実感できる児童生徒を育てていけるのではないか と考え本主題を設定した。 − MI1 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 2 研究の目標 日常生活と授業の教材とのかかわりを分析し,考察の場を取り入れた授業展開を通して,日常生活 とのかかわりを実感できる理科学習の在り方を探る。 3 研究の方法及び内容 本研究は,日常生活と授業の教材とのかかわりを分析し,児童生徒が,そのかかわりを考察するこ とと,その考察の在り方を追究し,日常生活とのかかわりを実感できる理科学習の在り方を次の7点 より探るものである。 (1) 新学習指導要領改訂の要点と考察 ① 小学校(平成11年5月発行) ,中学校(平成11年9月発行) (2) 理科の基礎・基本の押さえについて ① 理科における基礎・基本 (3) 日常生活とのかかわりを実感できることについて(研究主題のとらえ方) ① かかわりについて ② 実感できることについて ③ 日常生活とのかかわりを取り入れる視点 (4) 考察について ① 理科での考察について (5) 日常生活とのかかわりを取り入れた授業構想(指導案例) (6) 日常生活とかかわりのある具体的な内容例 ① 指導計画上の位置付けと評価規準との関連(学年別,単元別,題材別) (7) 評価について ① 日常生活のかかわりと評価規準との関連(具体的な内容例に記述) ② 理科の基礎基本と観点別評価から日常生活を取り入れる視点へ 4 研究の概要 4.1 新学習指導要領の改訂の要点 小中学校の新学習指導要領の改訂の要点は,次の様である。 小学校 (1) 見通しをもって観察,実験,栽培,飼育を行うなど,児童の自然の事物・現象への意図的な働き 掛けを重視する。 (2) 事象を比べたり,変化と関係する要因を抽出したり,計画的に観察,実験を行ったり多面的に考 察したりするなど問題解決の能力の育成を重視する。 (3) 日常生活との関連を一層重視することによって,児童が主体的な問題解決の活動を通して事物現 象の性質や規則性を実感するとともに,科学的な見方や考え方を自ら構築できるようにする。 中学校 (1) 目的意識をもって観察,実験を行うこと。 (2) 自然を探究する能力や態度を育成すること。 (3) 日常生活と関連付けた理解を図ること。 (4) 科学的な見方,考え方や自然に対する総合的なものの見方を育成すること。 この要点の中で,特に重視されるキーワードは,「見通しをもって(小学校),目的意識をもって(中学校)」 という概念である。江田稔氏は,「見通し,目的意識と表現は異なっているが,その趣旨は一貫して同じ である。」(文献[7])と述べている。この「見通しをもって,目的意識をもって」の意義には,三 つの考え方が含まれている。一つは,自己責任であり,自分の経験をもとに予想し仮説を立て,自分 − MI2 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 の問題としてとらえ,自ら導き出した結果に責任をもつということである。二つは,目的意識であり, 明確な目的をもって活動し,結果(一致,不一致)について確認し,予想や仮説を考え直すことであ る。三つは,科学観についてであり,現在の自分のイメージや概念と関連付けた素朴な見方や考え方 をもとに観察,実験を行うことで,見方や考え方が高まり,事物・現象への理解も成長とともに深ま り,発達していく自然観ということである。 また,小中学校ともに,日常生活とのかかわりを一層重視することが求められている。このことは, 児童生徒に,日常生活の事象に目を向けさせ考察させることによって,事物・現象の性質や規則性を 実感(体験と納得)を伴って理解させるとともに,自ら科学的な見方や考え方を構築できるようにす ることである。他に,日常生活というと,実用的な理科というとらえ方をすることもあるが,転移性 の高い生きた学習を目指すとき,この日常生活の事象とのかかわりで考察させることは,とても有効な手 段であると考える。 4.2 理科の基礎・基本のおさえ(学習指導への具体化) 理科の基礎・基本を次のようにとらえ,これらが身に付いてくれば,自然事象に興味・関心をもち, 主体的に理科学習に取り組む児童生徒を育てていけると考える。(小)小学校,(中)中学校。 (1) 自然の事物・現象について−(小)感じることができるようにする(中)関心を高めること。 (2) (小)見通しをもって 観察,実験などを行い,問題解決能力を習得すること。 (中)目的意識をもって観察,実験などを行い,科学的に調べる能力と態度を育てること。 (3) 自然の事物・現象について−(小)考えること(中)理解を深めること。 (4) 科学的な見方や考え方を−(小)つくり,もつようにすること(中)養うこと。 児童生徒が理科を楽しいと感じ,自分にとって大切な学習であると考えて取り組むように支援する ことが大切である。そのためには,基礎・基本を学習内容だけに限らず,児童生徒の学習活動全体を 見直してとらえ直す必要がある。知識体系における基礎・基本も大事であるが,それだけでなく,児 童生徒が生涯にわたって学習する主体としての理科,すなわち自然科学を学ぶ力の基礎・基本を重視 することが求められている。 4.3 日常生活とのかかわりを実感できることについて(活用の仕方) 4.3.1 なぜ日常生活とのかかわりなのか 空気のように,存在をあまり意識しないのに,私たちの生命や生活を支えているものがある。また, 科学技術は,ある一つの側面で,現代社会を支えている。この自然や科学技術と人間(児童生徒)と のかかわり,逆に言えば,日常生活(人間)と自然や科学技術とのかかわりを意図的に関連付けさせ て,考えさせることが,「かかわり」だと考える。そこで,児童生徒は,この「かかわり」を日常生 活の中の現象・問題としてとらえ,そして考察,問題解決し実感する。この過程を理科学習の中に, 適切に位置付ける方法を目指すことである。 次に,児童生徒に関する3つの視点から,かかわりについて論じることとする。 (1) 「自然離れ,児童生徒の生活体験の希薄化より」 児童生徒の身の回りに目を向けると,宮城県内では,都市化されたことにより,自然がなくなった とは一概に言えない。都市化したところでも,セミが鳴きトンボが飛ぶなど,まだまだ自然観察がで きる。地理的観点での,山沿い,海沿い,内陸部,市町村の観点から仙台市の中心部,地方の都市, それぞれで,環境が全く違う。この全く違う環境で育つ児童生徒なので,自然にどれだけ触れている かには,大きな差がある。一方で,児童生徒の自然離れ,生活体験の希薄化は,環境破壊と都市化・ 情報化によると言われて久しい。 ここで,児童生徒の遊びの変容は,どうだろうかと考えてみる。確かに,宮城県の場合,地方の市 町村で自然は,まだ残っているが,児童生徒が,自然を相手に遊ぶ姿を見ることが少なくなってきて いる。豊富な自然の中で生活している児童生徒でさえ,自然を相手にして遊ぶことが少なくなってき ている。地方の児童生徒も,都市部の児童生徒と同じように,家の中でゲーム等をして遊ぶ姿が多い という。このことは,ある一つの側面として,都市化・情報化の弊害,そして子供の生活様式の変化 の影響は,少なからずあると考える。 − MI3 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 児童生徒のこの様な生活傾向があるため,体験そのものを大切にし,日常生活とのかかわりをもた せながら授業を構想することに,価値を見出すことができるのである。 また,理科教育での学習レディネスを考えたとき,日常生活の過程で自然(動物,植物,岩石,気 象,等々)と体で触れ合うこと等の自然体験の不足も感じられる。このような自然とのかかわりの体 験が,レディネスの基底的部分をなすことが多い。そして,このレディネスを高めるためにも日常生 活とのかかわりは,有効な視点であると考える。 (2) 「学校知と日常知を区別する児童生徒の傾向より」 学習した内容と日常生活の中の科学的な事象が,どのように結び付くのか分からない児童生徒が多 いと感じている。つまり,児童生徒の多くは,「学校で学習して得た知識・能力」と「日常生活の中 での科学的な事物・現象」を区別する傾向がある。確かに,理科の原理・法則を学習する場合,抽象 化された純粋な原理・法則を学習する方が,能率良く理解する場合もある。しかし,その学習形態の 度合いが強いと,上述のように児童生徒が,はっきりと区別する傾向が出やすくなる。 そこで,指導者側の視点からすれば,身の回りの物質を持ち込んだり,日常生活そのものの事物・ 現象とのかかわりを取り入れることで,児童生徒のその区別する意識を少しでも取り払ってやること ができるのではないかと考える。また,その意識を取り払うだけでなく,理科で学習したことを児童 生徒の日常生活の中に生かして,生活を高める能力・資質に育てていくことにもつながると考える。 (3) 「科学と日常生活とのかかわりから」 科学と技術,科学と社会,これらは,私たちの生活とのかかわりの問題である。自然科学も社会か らの影響,そして反対に社会への影響という相互の関係の中で,それぞれ発達してきている。そして, 科学と技術の発展が,社会や私たちの生活に大きな影響力をもたらしている。また,科学と関係する 大きな社会問題に,科学者はもとより,私たち市民も日常的に遭遇するようになってきている。この ように,私たちの生活は,科学への大きな「依存と不安」の中に存在していると考えられる。 具体的には,科学の発展と利便性の追求が,地球規模で見るとオゾン層の破壊,酸性雨,森林伐採 による砂漠化等の環境問題を引き起こしている。社会では,「遺伝子組み替え」「クローン」等々, 社会と科学技術の関連性はもちろんのこと,「現代社会」と「人間」と「生活」とのかかわりの中で, 科学技術の発展の在り方やその社会的役割が真剣に問われている。 そこで,科学者たちだけでなく,これからの時代を担う児童生徒に,科学の社会的役割を理解する 科学的な見方・考え方を身に付けさせて,将来,必要があれば科学的な視点に基づいて発言すること のできる力を付けさせていくことが,今後ますます必要となってきている。この発言する力の基礎と なる能力は,表現する力「自分の考えや思いを的確に表現する力」であるととらえる。そして,この 表現する力を身に付けさせるためにも,児童生徒に,「科学と日常生活とのかかわり」「理科学習と 日常生活のかかわり」を常に意識して,問題としてとらえさせる学習の在り方が重要なのである。 4.3.2 実感できることについて 日常生活の中で,児童生徒たちは,自然の事象に接し,一人一人がもっている感性で,多様なこと を感じている。その感じたり,気付いたりすることには,不思議さ,疑問,驚き等がある。この知的 な意識が,理解の出発点となり,問題を解決しようという意欲の喚起につながると推察する。そして, 自然の事象に接することから,働きかけることに高まり,問題解決の過程を通して「実感」へと深ま ることができると考える。 また,自然の事象について感じ,考え(考察),実感し,その実感が「体験と納得」により達成でき たとき,今次の新学習指導要領で求めている「実感を伴った理解へ」より近づけていくことができると考える。 (1) 「体験から」 自然の事象を理解するとき,知識で理解していても,その理解の真の意味や価値を学びとる力の基 礎となるのは,「感性」である。一般的に感性は,外界の刺激に応じて感覚や知覚を生じる感覚器官 の感受する特性であると言われている。児童生徒は,日常生活での体験を基にして,感性で自然の事 象に自分から働きかけていくことから「実感」につながると考える。 − MI4 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 この「感性」には,自分から働きかけた体験より生じた感覚と受動的な体験から生じた感覚の二つ がある。両者とも同じ感覚ではあるが,この中でも,自分から働きかけた体験によって生じた感覚か ら問題解決をしていこうとする意欲へとつながっていくものが「実感」であると考える。 (2) 「納得から」 「納得」とは,問題解決の活動を行った児童生徒が,結果を見つめ,活動を振り返ったとき,「あ っ,そうなのか」というような知らなかったことが,分かったことに変化した時,知的に成し遂げた 感覚を得ることと考える。 このことは,様々な活動を行った結果として得た知識ということではなく,一つ一つの観察や実験 の手順,既有の知識など問題解決にかかわるすべての事象が関連付けられ一つのまとまりとなり,児 童生徒の中に新たな判断と考えが生まれたとき,深い理解が形づくられていくのである。 そして,問題解決の過程で,児童生徒は,今まで知らなかったことを知るようになったり,感覚的 なものが論理的になったり,部分的な把握が全体的になったりすることが考えられる。それらを,自 分自身の考えや日常生活での体験を基に,自分で得た知識を他人に分かるようにしたり,説明できる 形に作り替えることが「納得」である。また,このことは,得た知識を自分に合わせて,使える知識 へと高めることとも考えることができる。 (3) 「 児童生徒が実感した状態について」 児童生徒が実感した状態とは,学習活動において児童生徒が具体的な自然の事象に接する過程で, その事象の内面的な価値に気付き,自分の力で知識を獲得しようとするような態度をもつようになっ た状態と考える。また,問題解決の過程においては,獲得した知識を自分なりに使いこなせるような 認識へと成長させていくことを目指す目標とする。つまり,科学的な知識を得る場面で,自らの体験 から,その知識に自分の考えを付加できたときである。 そのため,問題解決の過程に,日常生活とのかかわりを実感できるような一連の活動,考察の場を 位置付けることで,児童・生徒が実感した状態を形成していくことが見られるであろう。 4.3.3 日常生活とのかかわりを取り入れる視点 (1) 小学校では 小学校学習指導要領解説・理科編の第4章「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い」の 「内容の取り扱い」の(3)では,まず,児童一人一人が主体的に問題解決活動を進めることができる ように指導することの大切さが強調されている。そして,「学習の成果と日常生活との関連」につい て降旗勝信氏は,「理科で学習した事柄が理科の授業の中だけでなく,児童の日常の生活の中に生か され,(図1参照)日常生活を合理的かつ創造的に営むことができるようになることは,理科教育の ねらいの基本として極めて大切なことである」(文献[6])と述べている。 (2) 中学校では 中学校学習指導要領解説・理科編の第1章「総説」の3「改訂の要点」(1)改訂に当たっての基本的 な考え方,③日常生活と関連付けた理解を図ることでは,次のように示している。 「従来の学習指導では,科学の基本概念を知識として覚えることに重点をかけ過ぎていた状況が見 られる。そのために,理科で学習したことが実際の生活の中で見られる事象とどのようにかかわって いるかを考察させることが十分でなかった。これからの理科では授業で学習したことを日常生活と関 連付けて扱うことにより,科学的な見 考察する 方や考え方を育成することを重視して 内容の改善を図った」というように授 日常生活 かかわり 理科学習 業で学習したことを日常生活とかかわ りをもたせて扱うことや,かかわりを 生かす 考察させることが重要であると指摘し ている。(図1参照) 図1 日常生活と理科学習のかかわり − MI5 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 (3) 具体的に取り入れる構想についての視点①∼③(図2参照) 視点① :日常生活上の事物・現象や体験そのものを問題の発見や解決活動に生かしてい くこと。 問題をできるだけ児童生徒の身の回りの中の事物・現象や体験から発見させること。以前より,児 童生徒の興味・関心を本質的に大切にするということは,児童生徒の経験していることや生活の中の 事柄を大切にすることである。しかし,生活の中で児童生徒が経験する事柄の中にも,そのしくみが かなり複雑なものもあるので,教師が適切な指導・助言を行って,学年段階に応じて児童生徒の力で 取り組むことができるような形に,ときには単純化した形にとらえ直したものにしてやるようにする ことが重要である。 視点② :ある事物・現象の範囲内で問題解決によって見付けた性質や規則性を別の新 しい事物・現象や日常生活の中に起こっている事象にあてはめていく活動を 豊富に取り入れること。 「分かる」ということは,新しい場面にあてはめてみて使えることによって真に納得できるものな のである。あてはめて理解するならば,新しい知識が児童生徒の中にしっかりと定着すると考える。 そして,理科で学習した事柄が児童生徒の日常生活の中に生かされるならば,日常生活の中での児童 生徒のものの見方や考え方も変わり,行動の仕方そのものも変容してくるようになる。 視点③ :視点②のポイントのあてはめていく活動をさらに深めて,日常生活にかかわる ものづくりをしたり,日常生活の事象を見直していくことや情報を集め交換す る活動を取り入れること。 学習を通して得た,科学的な見方や考え方を利用・発展させて,日常生活にかかわるものづくりを したり,日常の事象を再確認してみて,改めて考えたりすることである。この学習成果を生かしての ものづくりや事象の見直しは,学習のゆとり(場所的,物的,時間的)がなければできないと考える。 そのために,年間を見通した指導計画に,ものづくり,事象の見直しを位置付けることが大切と考える。 情報を集め交換する活動では,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用し,学 習の場を広げたり学習の質を高め,日常生活とのかかわりをさらに深められると考える。 視 点 ① 日常経験そのも のをもとにする 場合 視 点 ② 学習の成果を生 かす場合 視 点 ③ 日常生活の事象, 素材を発展させ る場合 自 然 の 事 象 を 感 性 で 感 じ る こ と 感じる場 図2 児童生徒の身 のまわりの問 題の発見 児童生徒の経験, 生活の中の事柄 の想起 学年段階に応じ た形,単純化し たものでの学習 見付けた性質 や規則性の選 択 生活の中の事象 に当てはめてい く活動 当てはめてみて 通用するか確か める活動 小 中 簡単なものづくり 事象の見直し 中 かかわる ものの選 択 事象,素材 の特性を調 べる活動 特性を生かしたものづくり 情報を集め交換する 活動 結 果 の 発 表 ・・ 話討 合論 い 実 感 を 伴 っ た 理 解 日常生活に 再びもどす 活動 かかわりを考察する場 実感の場 日常生活とのかかわりを取り入れる学習活動の構想 ※ものづくり①観察・実験の装置・器具(道具)づくり②きまりや規則性を見付ける手だてとしてのものづくり ③学習内容を生かしたおもちゃづくり④特性を生かしたものづくり − MI6 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 (4) 具体的に取り入れる際の留意点 日常生活との関連(かかわり)を図ったものは,「学習の導入」「学習の展開」「学習のまとめ」 のそれぞれの段階で取り入れることができる。(表1参照) 表1 1単位時間の学習過程の段階で導入する時の留意点 ・「学習の導入」では,児童生徒に自らの生活経験とのかかわりを見いださせる手だてとして, 日常生活に結び付いた内容を取り上げる。 (視点①と関連) ・「学習の展開」では,観察実験などの体験による思考を深める手だてとして,日常生活に結び 付いた内容を取り上げる。 (視点①②③と関連) ・「学習のまとめ」では,学習した内容を生かし,ものなどを作ったり,日常生活のどういう場 面で役立っているのか,どのような生活用品に利用されているのかを考えさせて,科学的な見 方や考え方を高める内容を取り上げる。 (視点②③と関連) また,児童生徒に実感を伴った理解を図り,理科学習を生きた学習に,より近づかせていくために は,日常生活との関連(かかわり)を生かした理科学習を行っていくことが大切である。ただ単に日 常生活とのかかわりを図っていけばよいのではなく,児童生徒にどのような関連付けを図っていくの か(考察させる)というポイントを意識した授業づくりを考えていくことが必要である。 そして,児童生徒が主体となる問題解決学習を行っていくことは言うまでもない。また,年間指導 計画等を作成し,1単位時間を見据えて計画的に実施すると,より効果的であると考えている。 上述の構想で,授業を組み立てる場合,まず,その授業の大まかな概要を考え,過去にその単元, 題材の授業を経験していれば,その授業で使用した事象,素材等を思い出す。そして,その事象素材 等を下記の観点(表2参照)で吟味し,適切(学習効果性,視点との整合性,安全性,経済性等)であ れば,導入できると判断する。 表2 学習素材等を取り入れる場合の観点 ・ 日常生活に結びついた学習素材 ・ 身近にある生活用品や日常生活でよく利用する製品などの学習素材 ・ 身近な自然現象や生活環境 ・ 自然災害(現象,予防,活用など) ・ 環境の問題 4.4 考察について 「考察」の日本語の意味は,「物事を明らかにするため考え調べること」である。理科の学習では, 一般的に「自分で考えた意見とその説明」という様に,調べたことに対して,自分の意見(結論)を 導き出した理由を他人(児童生徒)によく分かるように述べることであると解釈できる。そして,理 科学習での「調べること」は,「探究すること」と換言できる。 探究の過程は,その対象や求める結果などによって変わるが,一般的には,問題の設定,情報の収 集,仮説の設定(予想),観察・実験による仮説の検証,「結果の考察」,結論といった流れである。 この探究的な活動を進めるためには,何の手がかりもないところで,児童生徒に「考察させる」こ とは難しく,単なる思いつきの学習活動に終始してしまうことがある。そこで,学習の意味や目的, 「考察の手がかり」となるものを教師が明確化して,児童生徒に働きかけることが大切である。その際の 資質・能力,そして養う見方・考え方等を小学校学習指導要領解説,理科編(平成11年5月)の各学年の目標 からまとめたものが表3,4である。 (1) 小学校での考察(質的な側面) 次頁の表4の中で,特に考察と関連しているのが,「育成する資質・能力」の観点だと考える。こ の観点は,小学校の教科目標,評価の観点及びその趣旨の「科学的な思考」に基づくものである。 − MI7 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 表3 気付く視点,資質・能力,養う見方・考え方 対象 3年 気づく視点 差異点から 自 4年 然 養う見方・考え方 共通性や相互のかかわり 共通点 〃 物質の性質や特徴 変化に着目し の 5年 事 育成する資質・能力 比較する能力 変化の要因を抽出する 性質や変化 能力 規則性 それにかかわる 制御すべき要因と制御 生命の連続性 物 条件 ,量的変 しない要因とを区別す 変化の規則性 ・ 化,時間的変化 る能力 現 6年 象 これらの観点を指導 者側が把握して,授 業を構想し,児童に 考察させることが重 要である。 に着目し 変化や働きを その要因と関係付ける 相互関係 能力 規則性 (2) 中学校での考察(質的な側面) 表4 考察の仕方 中学校では,小学校で培った資質・能力を基礎として,次の4つの視点で考察することが考えられる。 考 察 の 仕 方 意 義 , 価 値 等 ① 関連付けて考察する 他の事物・現象とかかわりを持たせて。日常生活とのかかわりを持たせて ② 分析的に考察する 複雑な自然の事物・現象を単純な要素に分けて性質をはっきりさせること ③ 科学的に考察する 論理性,実証性,客観性を持たせて ④ 多面的,総合的に考察する 情報収集し,客観的,合理的に判断して (3) 考察を充実させる方法(学習形態とMD法1) 指導者は,児童生徒に考察させるとき,まず初めに,その指導内容が,どの様な形態(一斉,グル ープ,少人数等)で実践するのが,より効果的であるかを検討する。次に,質的な側面として,上述 の比較(小学校3年)∼多面的,総合的な考察(中学校3年)のどれが適切であるかを判断(併用の場合 もある )し児童生徒に対する授業のシナリオ(思考支援の言葉,発問,評価の言葉)を考えることに より,児童生徒の考察そのものをより充実させることができる。 特に,その考察を充実させる方法の一つとして,MD法がある。これまでの一斉指導での考察だと, 発言は一部の子供のみの傾向が強く,果たして,全員が考察(思考)しているかなという不安や心配 を感じ取ることが多かった。それを解消するために,考案されたのがMD法である。この学習形態は, 個に応じた指導法の工夫としての要素が強いが,児童生徒一人一人が,実験結果などについて説明す るため,学習者にとっても役割や責任があり,思考を深めることや表現力の育成にも役立つと考えられる。 また,日常生活とのかかわりをMD法で,考察させる場合,グループの他の児童生徒から,より多 くのかかわり等を出してもらい,自分の考えと比較することによって,より優れた考察を作り上げる ことが期待できる。指導者は,常に日常生活とのかかわりを大切にする「それは,どんなことに役立 っているの」「それを使っているものは」「○○と比べてみよう」等の発言を授業のシナリオの中に 事前に考えておくと効果的である。(表5参照) 表5 考察の形態とMD法について ・一斉(学級全員) 考 ・実験,観察グループ(6人位まで)MD法と関連 ・課題ごとのグループ 察 ・少人数 ・個人 ・指導者指名の児童生徒,自主的な生徒(数人) 発 ・グループの代表(6人位まで) ・課題グループの代表(2から3人位まで) 表 ・少人数,個人(内容等により適宜) ・MD法 (説明者1人,情報収集者数人) (4) MD(マーケティング・ディスカッション)法の導入について ① MD法 MDとは,Marketing Discussion (マーケティング・ディスカッション)の略で,児童生徒の活動が 1 マーケティング・ディスカッションの略でグループごとに説明者,情報収集者を決め,グループで課題を吟味して,最後に全体 の話し合いで課題を解決する方法。 − MI8 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 が市場の売り手と買い手の様子に似ていることから名付けられたものであるという。この学習形態は, 小グループによる児童生徒同士のかかわりや積極的に周りの環境を利用することを重視したものであ る。授業では,主に,まとめ,発表,考察場面で行うことが考えられる。 また,MD法のよさは,全ての児童生徒が,役割分担により他のグループに分かりやすく説明する 過程を通して,児童生徒が学習内容を再認識することである。さらに,説明する児童生徒が情報収集 者の質問に答えることで,より深く学習内容を理解し,基礎・基本を習得することが期待できる。 ② MD法の具体例 7.1の場合,6人×6班で36人学級の時,次の①∼⑤の流れで学習することができる。 ① ・班毎に,調査の結果を話 し合ってまとめる。 ・班毎に,説明の準備をす る。(演示実験,説明原 稿,図など) ・自分の班の説明者と情報 収集者の役割分担を決める。 ④ ・自分の班に必要な新しい 情報をもとに,班で話し 合い,自分たちの班のま とめを吟味する。 ② 1班のA児童を1Aとする。 1A→説明者(1班に残留) 1B→2班へ情報収集に行く 1C→3 〃 1D→4 〃 1E→5 〃 1F→6 〃 ⑤ 班の代表が,学級全体に,班 のまとめを発表し,学級での 話合いを通して,課題を解決 する。(代表は,Aに固定しない) ③ ・自分の班にもどり他の 班で収集した情報につ いて班員に説明する。 (B∼Fの児童) ・メモをとりながら聞く こと。 ※T1,T2で発表原稿に, 助言と支援は入れる。 図3 学習の流れ(手順) この方法の場合,指導者は,情報収集者の児童生徒が自分たちの班でまとめたことと比較し,不足 を補うような観点で,説明を聞くことを示唆したり,質問したりするような目的意識をもたせる働き かけを行うことが重要である。今までの一斉学習での全体発表を聞く場面と,この点が違うところで ある。 また,全ての児童生徒に役割を与え,一人一人が説明するという場面があるため,知識の表面的な 理解にとどまらず実感を伴った理解を促すことにも役立つと考えられる。他人に説明するということ は,本当に理解していないと困難な場合が多いからである。その他,自分の行った実験結果について 説明できない場合は,学習内容が十分に理解できていないと評価でき,補充的な指導に生かす方法も考えられる。 問題点は,時間のかかる方法なので,1単位時間内での時間配分に配慮が必要である。その他,児 童生徒にも一人一人能力に質的な相違点(実験は,得意だが説明が苦手,この反対も)があるため, 指導者は,評価する時,特に注意が必要である。 (5) 日常生活とのかかわりを考察することの最終的な意義 日常生活を過ごしていると,日々様々な判断が要求される。また,科学は,人間生活と深くかかわ っており,日常生活を営む中で,科学的な知識,技術等を用いて判断して行動することが少なくない。 また,児童生徒の「理科が重要であるとする意識」は,理科が何かの役に立つという意識とかかわ りがある。すなわち,理科学習において,日常生活や環境,社会とのかかわりで,科学的な見方が, その判断,意志決定の基礎となることを実感できると,児童生徒は,理科を学習する意味をとらえることができる。 つまり,日常生活とのかかわりを考察する最終的な目標は,理科実験での事実に基づいた判断だけ でなく,「生きる力」として社会的な意志決定までも視野に入れた判断力の育成であると考える。 − MI9 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 5 日常生活とのかかわりを取り入れた授業構想 中学校(指導案例) 5.1 日常経験そのものをもとにする授業展開例 1.単元名 エネルギー(3年1分野) ②位置エネルギーと運動エネルギーの移り変わり 2.単元目標 ③エネルギーにはどんなすがたがあるか (本節) エネルギーに関する観察・実験を通してエネルギー の基礎について理解するとともに,これらの事象を 日常生活と関連付けて科学的な見方や考え方を養い, エネルギーに対する興味・関心を高める。 3.活動の概要 11時間扱い ①物体がもつエネルギー 2時間 ④化学変化と熱エネルギーの関係 ⑤化学変化と電気エネルギーとの関係 4.授業の実際 (1)題材 いろいろなエネルギー(本時)1/3 (2)目標 ・電気がエネルギーであることを説明できる (3)指導過程 段 階 学 習 活 動 1 電車の走るVTRを見て,電車は何で動 導 いているかを考える。 入 2 電気自動車のVTRを見て,何で動いて いるかを考える。 3 質問の答を発表する。 ・「電気エネルギー」の説明を聞く。 4 実験1 ・電気エネルギーを利用したア∼エの 展 実験をする。 (ア,モーターの回転 イ,豆電球の 開 点灯 ウ,電熱線の発熱 エ,スピ ーカーの振動) 1 3 3 2 ・電気エネルギーの使い方を発表できる ・熱や光もエネルギーであることを, 実験を通して確認できる ・支援・指導上の留意点 ○日常生活とのかかわり ・モーター等の答に対して「モータ ー」は,何で動くかの質問をす る。 ○身近な電車,電気自動車は,何で動く か考える。 (身の回りの問題の発見) (考察1) ・電気自動車の答は,ガソリン等 (誤答)が出ると面白い。 ・エネルギーの定義をしっかりと押 さえさせる。 観点別評価 (評価規準) 時間 時間 時間 時間 【知】 【関】 【技】 準備物 VTR テープ 【知】 電気がエネルギー であることを説明 できる ・分かっている生徒でも,確認の意味 で体験させる。 ・次の日常生活の例を誘発するように 指導する。「電流を流すと,どうな るか等」 ・安全への注意(電熱線でのやけど 等)。 カード モーター 豆電球 電熱線 スピーカ ー 5 話合い 電気エネルギーは,生活の中で,どんなことに使われ ているか,いろいろ例をあげてみよう。 ・電気エネルギーの使い方の例につい て考え,自分の意見を積極的に発表 ○(生活の中の事柄の想起)(考察2) する。 ・電気製品等より考えさせる。 【関】 電気エネルギーの 使い方を発表でき る 6 実験2 熱で物体を動かしたり,光で電流をとり出したりしよう。 ・グループで実験をする。 (ガラスビンをあたためる,光電池に 光を当てる。) ま と め ・結果をまとめ考察する。 ・机上整理 ・自己評価をする。 【技】 熱や光もエネルギ ○(単純化したものでの学習)(考察3) ーであることを, ・十円玉へ着目させる。 実験を通して確認 ・光電池での発電は,モーター電子オ できる ルゴールで確認させる。 ・手の熱,光が何になったかに着目さ せる。 ・学習プリントにまとめさせる。 ・本時の実験を生かし,課題意識をも たせるようにする。 丸底フラ スコ ゴム栓 ガラス管 色の付い た水 電気スタ ンド 光電池 モーター 電子オル ゴール ※【関】自然事象への関心・意欲・態度 【科】科学的な思考 【技】観察・実験の技能・表現 【知】自然事象についての知識・理解 5.1.1 授業を構想しての考察 学習活動の1∼5までが,電気エネルギーに関することで,電気がエネルギーであることと,日常 生活の中でどんなことに使われているかについて例を挙げさせながら考察させるところである。4の 実験は,日常生活の例を想起しやすいように,思考の橋渡し,きっかけの実験となる。実験そのもの は,生徒にとって簡単な内容であるが,電気エネルギーの見えない動きや働きを考察させることが重 要であり,5の話合い活動の成否を握る部分となる。 − MI10 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 5.2 学習の成果を日常生活の事象に生かす授業展開例 1.単元名 5.1と同じ て説明できる 【知】 2.単元目標 〃 ・日常生活の中の現象を,エネルギーの移り変わりを用いて説明 3.活動の概要 〃 できる 【科】 4.授業の実際 ・エネルギーの移り変わりの前後で,エネルギーが保存されてい ③エネルギーにはどんなすがたがあるか (本節)3時間 ることについて,説明できる 【知】 (1)題材 エネルギーの移り変わりと保存 (本時) 3/3 ・日常生活の中で見られるエネルギーの保存やエネルギーの移り (2)目標 ・さまざまなエネルギーの移り変わりについ 変わりの例を,具体的に指摘できる 【科】 (3)指導過程 段 階 導 入 展 開 ・支援・指導上の留意点 学 習 活 動 ○日常生活とのかかわり 1 エネルギーには,どんなものがあるだ ・エネルギーには,いろいろなすがた ろう。 があることを想起させる。 (位置,運動,電気,熱,光,音) ・エネルギーの定義にもふれる。 2 光電池に光を当てると,何エネルギー が発生するか考える。 3 実験1 火きり,手回し発電機は,運動エネルギーから何エ ネルギーを発生させるのかやってみよう。 ・火きりで火を起こしてみる。 ・グループで1セットずつ実験して ・ゼネコンで,豆電球をともしてみる。 体感してみる。 ・火きり,ゼネコンに与えたエネルギ ーは,何かを,再確認してみる。 4 モーター,豆電球,電熱線,スピーカ ーは,電気エネルギーから何エネルギ ーを生じさせたのか考える。 ・エネルギーの変換について説明を聞 く。 5 実習1 【技】 運動エネルギーが 熱,光のエネルギ ーになることを実 験を通して確認で きる 準備物 火きり 手回し発 電機 豆電球 ○(見付けたきまりや規則性の選択) (考察1) ・エネルギーは,すがたを変えるこ とができることを確認する。 生活の中で,エネルギーを別のエネルギーに変換 させている例をさがしてみよう。 ・生活の中から変換の例をさがす。 ・純粋に1つの変換でなくても。 観点別評価 (評価規準) ○(生活の中の現象にあてはめていく活 動) (考察2) 教師側の補足を入れる。 【知】 エネルギーの移り 変わりについて説 明できる 【科】 日常生活の中の現 象を,エネルギー の移り変わりを用 いて説明できる 学習プリ ント 具体例 ・電気エネルギー ・熱エネルギー ・光エネルギー ?エネルギー ( ?エネルギー ( ?エネルギー ( ) ) ) 太陽から,電気製品までのエネルギーの流れの図を 完成させる。 ま と め ・答の発表をする。 ・エネルギー保存について説明を聞 く 。 ・わたしたちの身の回りで見られるエネル ギーの移り変わりやエネルギーの保 存の例について話し合う。 ・分かったことを学習プリントにまとめる。 ・机上整理 ・自己評価をする。 ○(あてはめてみて通用するか確かめ る活動) (考察3) 学習プリ ント 【科】 保存と移り変わり の例をあげること ・熱エネルギーを含めると総量は,変 ができる 化しないことに留意する。 ・ エネルギーが移り変わるときには, エ ネルギーの総量が保存され ることに 気付くように支 援する。 説明の 図 【知】 移り変わりの前後 の保存を説明でき る 5.2.1 授業を構想しての考察 学習活動の実験1は,運動エネルギーが,何エネルギーに変化するかを実感させるところである。 火きりは,回転部分にさわると熱いので生徒は納得できるが,手回し発電機は,電磁誘導の理論には 触れないで,回すことによって発電しているととらえさせることから進めたい。そして,学習活動4で エネルギーの移り変わりを確認させ,5の実習1で,具体的に日常生活の中での変換の例を探すという 活動をする。この時,純粋に一つの変換でない例もあるので,教師が単純化するなどして生徒の考察 を支援するように助言することが大切である。 − MI11 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 5.3 日常生活の事象,素材を発展させる授業展開例 1.単元名 科学技術と人間 (3年1分野) 2.単元目標 金属資源の利用に関わる酸化と還元の観察・実験を行い,酸化や還元が酸素の関係する反応であることを見いだし,科学技 術の進歩をささえる金属資源の有効な利用について,日常生活と関連付けて科学的な見方や考える態度を養う。 また,エネルギー資源の利用と環境保全との関連を日常生活と関連付けて科学的に考える態度を養い,科学技術と人間生活 に対する興味・関心を高める。 3.活動の概要 12時間扱い ①金属と酸素の化合 2時間 ②金属をどのようにしてとり出すのか 2時間 ③資源としての金属 1時間 ④エネルギー資源の利用を調べよう 1時間(本時)1/1 ⑤効率よくエネルギーを使うために 1時間 ⑥資源・エネルギーの大量消費がもたらすもの 1時間 ⑦情報・通信技術とわたしたちの生活 1時間 ⑧新素材とわたしたちの生活 1時間 ⑨環境を守る科学技術とわたしたちの生活 1時間 ⑩これからの課題 1時間 4.授業の実際 (1)題材 エネルギー資源の利用を調べよう (2)目標 ・日常生活とエネルギーとの関連について,調べようとする 【関】1 ・いろいろなエネルギー資源を活用してエネルギーの変換を行い,生活していることを,例をあげて説明できる 【知】 ・電気エネルギーは,エネルギー資源からどのようにしてつくり出されているか,例をあげて説明できる 【科】 ・水力,火力,原子力発電のしくみや,それぞれの発電の長所や短所について,関心をもって調べようとする 【関】2 ・水力,火力,原子力発電に共通するしくみを見いだすことができる 【科】 (3)指導過程 段 階 学 習 活 動 1 毎日の生活の中で,どんなエネルギー 導 が使われているのかを発表する。 2 エネルギーは,どのようにして作られ 入 るのか話し合う。 3 発電により電気エネルギーを作ってい ることを確認する。 4 実習 展 ・支援・指導上の留意点 ○日常生活とのかかわり ・エネルギーの定義について復習し, 日常生活のエネルギー利用に目を向 けさせる。 ○(かかわるものの選択)(考察1) ・私たちは,エネルギー変換を行 い生活していることに気付かせる。 ・発電に関係する話を上手に取り上げ る。 ・電気エネルギーは,発電によってで きることと一致させるようにする。 いろいろな発電のしくみや,それぞれの発電の長所や短 所を調べて,話し合おう。 開 ・インターネットで調べる。 ・自分たちが,準備した資料,本で調 べる。 ・調べた結果について発表し,話し合 う。 ○(事象の見直し,情報を集め交換する活 動) (考察2) ・2人に1台で,協力しながら調査す る。必要な部分は,画面よりメモを 取らせる。 ・同じ様な調査結果であっても,お 互いに認め合うように指導する。 ・共通するしくみについて考えさせる。 観点別評価 (評価規準) 【関】1 準備物 学習プリ 日常生活とエネル ント ギーとの関連につ いて,調べようとする 【知】 いろいろなエネル ギー資源を活用し てエネルギーの変 換を行い,生活し ていることを,例 をあげて説明できる 【関】2 水力,火力,原子 力発電のしくみや それぞれの発電の 長所や短所につい て,関心をもって 調べようとする コンピュ ーター室 で 資料本 【科】 ま と め 調べた発電方法は,どんなエネルギーをどんなエネ ルギーに変換しているのだろう。 ・学習プリントの図と→にそってエネルギー ・各発電方法は,3∼4段階で変換して 変換について考えて 発表する。 いることを考えさせる。 私たちの日常生活では,どんな利点から,電気エネルギ ーを多く利用しているのだろう。 ・電気エネルギーを利用しているもの を想起し,他のエネルギー利用と比 ○(日常生活に再びもどす活動 較しながら,考えて発表する。 (考察3) ・便利なところ,環境の観点からも考えさせる。 共通するしくみ 【科】 電気エネルギーはエネルギ ー資源からどのようにして つくり出されているか,例 をあげて説明できる 【関】2と同じ 5.3.1 授業を構想しての考察 この授業では,インターネット等で水力,火力,原子力,その他の発電のしくみや,それぞれの発 電の長所や短所について調べ,それを話し合う活動をする。このことが,将来どの発電を選択するか という場面に立つとき,その生徒の科学的な判断力の基礎を作ることになると考える。また,私たち の日常生活で,電気エネルギーを多く利用する理由を環境の観点からも考察させることができる。 − MI12 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 6 日常生活とかかわる具体的な内容例 表6 中学校の内容例 視点①日常経験そのものをもとにする場合②学習の成果を生かす場合③日常生活の事象,素材を発展させる場合 (1分野) ※かかわりをもたせることが困難な内容 単元名 エネルギー 単元目標 エネルギーに関する観察・実験を通して,エネルギーの基礎について理解するとともに,これらの事象を日常生活と 関連付けて科学的な見方や考え方を養い,エネルギーに対する興味・関心を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 いろいろ 位置,運動エネルギー 2 スキー,ダム ① 高いところから滑る理由 ○ なエネル 力学的エネルギーの保存 1 ジェットコースター ① どうして,坂を登るのだろう ○ ギー いろいろなエネルギー 2 電車,電気自動車,おどるコイン ① 電気は,エネルギーなのか ○ ○○ 3 移り変わりと保存 1 火きり,ゼネコン,テレビ ② テレビが熱くなる理由 ○○○ 化学変化 化学変化と熱エネルギー 3 化学かいろ,冷却パック ① どうして熱くなるの ○○ ○ とエネル (有機物の燃焼) どうして冷たくなるの ギー 化学変化と電気エネルギー 2 木炭電池,レモン電池 ③ 台所にある物で,電池を作っ ○ (電池,燃料電池) ダイコン電池,電池のリサイクル てみよう 単元名 科学技術と人間 単元目標 金属資源の利用に関わる酸化と還元の観察・実験を行い,酸化や還元が酸素の関係する反応であることを見いだし,科 学技術の進歩をささえる金属資源の有効な利用について,日常生活と関連づけて科学的な見方や考える態度を養う。 また,エネルギー資源の利用と環境保全との関連を日常生活と関連づけて科学的に考える態度を養い,科学技術と人間生 活に対する興味・関心を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 物質資源 金属の酸化,酸化物 2 さび釘,さびたスコップ ① どうしてさびるのだろう ○○ ○ の利用 酸化と還元 2 たたら製鐵と砂鉄 ③ たたら製鉄のやり方 ○○○○ 資源としての金属 1 リサイクルされるアルミ缶 ③ 私たちは,何をすべきか ○ ○ 人間が利用するエネルギー (1) 石油ストーブ,ガソリンの給油 ① 石油や電気のエネルギーは, ○ ○ エネルギ 資源 どのようにしてつくるのか ー資源の 水力発電,火力発電,原子 1 インターネットでの調査 ③ 環境にやさしいのは,どれか ○○ 3 利用 力発電 な 効率的なエネルギーの利用 1 新しい発電システムの紹介 ③ コ・ジェネレーションシステ ○○ ム 新しいエネルギー資源 1 太陽光発電,風力発電,燃料電池 ② どうして,これらの発電なの ○ ○ 情報・通信技術 1 無線通信,電子メール,GPS ① 電子メールの仕組みは ○ ○ 科学技術 新素材 1 紙おむつ,分解性プラスチック ③ 紙おむつに入っている物は ○ ○ の進歩と 環境保全と科学 1 エネルギー資源の枯渇 ③ 新エネルギーのアイディア ○ ○ 人間生活 環境保全と科学技術 1 ゴミ問題,リサイクル,新エネル ③ ゴミの再利用,わたしたちの ○○ ○ ギーの開発,循環型社会 手でできることからの実践 単元名 運動と力 単元目標 身の回りの物体の運動の観察・実験を通して,運動の調べ方の基礎を身に付けるとともに,力と運動についての 基本的な規則性を理解し,これらの事象を日常生活と関連付けて,運動の初歩的な見方や考え方を養う。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 速さ(平均,瞬間の速さ) 1 電車,自転車,三輪車の速さ ① いろいろな物の速さを調べて ○○ みよう 物体の運 物体の運動と速さ・向き 2 ボーリングの玉,跳び箱を跳ぶ時 ② ビデオで記録して調べよう ○ ○○ 動 の体 速さの変化を調べよう 3 速さが変わる運動 2 ボブスレー,スライディング ② 〃 ○○○ 等速直線運動 運動と力 慣性の法則 1 高速道の自動車,ドライアイスの 滑走 1 電車の乗客のビデオ − MI13 − ② ドライアイスは,どのように 動くだろうか ① 乗客は,どうして傾くの ○○ ○ ○ 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 視点①日常経験そのものをもとにする場合②学習の成果を生かす場合③日常生活の事象,素材を発展させる場合 単元名 化学変化と原子・分子 単元目標 化学変化についての観察・実験を通して,化合,分解などにおける物質の変化やその量的な関係について理解するとと もに,これらの事象を原子,分子のモデルと関連付ける見方や考え方を養い,物質の成り立ちや化学変化のしくみに対 する関心・意欲を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 化学変化 3 カルメ焼き ① カルメ焼きは,なぜ膨らむの ○○○○ 物質の変 分解(熱分解,電気分解) 2 ペットボトルでの分解装置 ② 水は,もっと分解できるの ○○ 化 物質の構成単位 1 ダイヤモンドと木炭 ② 二つは,本当に同じなの ○ ○ 単体,化合物 1 水素の分子,水の分子 ② 水素と酸素で水をつくる ○ ○ 原子の記号 1 薬の表示の記号 ② この記号の意味は,何だろう ○ ○ 2 化合,燃焼 2 金属の燃焼,花火 ① 燃えたかすは,重いだろうか ○○ 物質どう 原子・分子のモデル 2 原子のゆくえ ③ モデルの模型を作ってみよう ○○ しの化学 質量保存の法則 2 ペットボトルでの実験 ② 本当に軽くなるのだろうか ○○○ 変化 化学式,化学反応式 2 化学式で書いてあるものは ② 病院でO2 と書いてある ○ ○ 化学変化に関する物質の質 3 ※ ○○○ 量 単元名 電流 単元目標 電流回路についての観察・実験を通して,電流と電圧との関係および電流のはたらきについて理解するとともに,日常 生活と関連付けて電流と磁界についての初歩的な見方や考え方を養い,電流に対する関心・意欲を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 静電気と電流 2 自動車のドア,下じき ① 下じきで,髪の毛をこする ○ ○ 電流,電圧 2 発光ダイオード,乾電池 ① 発光ダイオードを光らせよう ○○○ 電流の流 直列,並列回路の電圧と電 4 タコ足配線が危険な理由 ③ どうして危険なんだろう ○ ○○ れ 流 オームの法則と電気抵抗 3 電熱線,セメント抵抗器 ② 抵抗器の役目はなんだろうか ○○ 2 回路の全体の抵抗 1 ドライヤー ③ ニクロム線の抵抗を調べよう ○○ 電流による熱・光 1 アイロン,電球 ① 中に入っている物は何だろう ○ 電力と熱量・光の強さ 2 ドライヤー,こたつ ② 1200wと600wをくらべよう ○○○ 電流のは 磁界と磁力線,電流による 2 テレホンカード,フロッピーディ ③ フロッピーディスクのデータ ○ ○○ たらき 磁界 スク が磁石でこわれる理由は 磁界の中で電流が受ける力 2 クリップモーター,モーター ② 回るわけを話してみよう ○○○ 電磁誘導,誘導電流 2 自転車の発電機 ③ 発電機の中身はどうなってい ○○ るのだろう 単元名 身のまわりの現象 単元目標 身近な事物・現象についての観察・実験を通して,光や音の規則性や力の性質について理解するとともに,これらの 事象を日常生活と関連付けて科学的な見方や考え方を養い,光・音・力のはたらきに対する興味・関心を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 光の進み方(反射,屈折) 3 車のバックミラー,カップコイン ① 後ろが,見える理由 ○○ 光の世界 全反射とその起こる条件 1 光ファイバー ③ 光ファイバーは,何に使われ ○ ○ ているの 凸レンズのはたらき(焦 2 レンズ付きフィルム ② 凸レンズで像をつくってみよ ○○ 点,実像,位置と大きさ) う 物体の振動と音の伝わり方 1 のどのふるえ,スピーカーの振動 ① のどにさわってみよう ○ ○ 音の世界 音の速さ 1 花火,いなずま ② 聞こえたときの時間をはかる ○ ○ 1 発音体の振動の振幅と音の 1 ギター,輪ゴムモノコード,ピア ① 弦を観察し,さわってみよう ○ ○ 大小 ノ 発音体の振動数と音の高低 1 ピアノの鍵盤のたたき方 ③ コンピューターで音のようす ○ ○ を観察してみよう 力のはたらき 2 ソフトテニスのボール ① にぎってみよう ○○ ○ 力の世界 力の三要素,力の矢印 2 台車 ① 台車の三要素を調べよう ○○ 2力のつり合いの条件 2 綱引き ② どうして,つり合うのだろう ○ ○ 圧力 1 エアーベット,スキー,タイヤの ② エアーベットにのれるわけは ○ ○○ 空気圧 空気の重さ,大気圧 1 漬物用簡易真空器,空き缶つぶし ② 空き缶は,どうしてつぶれる ○ ○ のかな 単元名 身のまわりの物質 省略 − MI14 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 視点①日常経験そのものをもとにする場合②学習の成果を生かす場合③日常生活の事象,素材を発展させる場合 (2分野) 単元名 自然と人間 単元目標 微生物のはたらきや自然環境を調べ,自然界における生物相互の関係や自然界のつり合いについて理解し,自然と人間 のかかわり方について総合的に見たり考えたりすることができるようにする。さらに,自然環境を保全することの重要 性を認識して,これまでの学習を踏まえて主体的で探究的な学習ができるようにする。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 食物連鎖 2 学校の周りに見られる生物で ① どのようにつながっているの ○○ 自然の中 生産者,消費者,分解者 1 コーンポスト,ヨーグルト,カビ ② ヨーグルトが細菌でできるの ○ ○ の生物 自然界の物質の流れ 1 自然界では,人間も消費者 ③ 循環にかかわっているの ○ 自然界のつり合い 1 水そうの中の生物のつり合い ② 水槽を地球におきかえると ○ 身近な自然環境 2 生活が,自然環境に与える影響 ① 生活と環境の関係を調べる ○○○ 自然と環 自然環境と人間生活 1 身近な自然環境調査の計画 ③ インターネットで調査方法を ○ ○ 3 境保全 調べてみよう 自然環境の保全 1 身近な環境において実践しようと ③ 環境に良い行動で,できるこ ○ ○ すること とを考えてみよう 日本列島の気候と生活 1 気象現象による災害と恩恵 ③ 台風のよいところは何だろう ○ 自然と人 火山と地震と生活 1 宮城県の地震災害 ③ 宮城県沖地震の災害を調べる ○○○ 間生活 地域の自然と生活 2 宮城県の自然の特徴と恵みの調査 ③ 地域の自然とのかかわり方 ○ ○ (選択) 自然のなかの人間 1 自然は,生命の営みによってつく ③ 自然を子孫に残すため何をし ○ ○ られたこと たらよいか考える 単元名 生物の細胞とふえ方 単元目標 身近な生物についての観察・実験を通して,細胞のレベルで見た生物のからだのつくりと生殖について理解するととも に,親の形質が子に伝わる現象について認識し,生命を尊重し,自然環境を保全しようとする意欲と態度を育てる。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 植物と動物の細胞のつくり 3 身の回りの生物の細胞の観察 ① ヒトのほおの細胞の内側 ○○ 生物と細 細胞の分裂と生物の成長 2 長ネギ,タマネギの根の細胞分裂 ① 細胞分裂の順序は,どうなの ○ ○ 胞 染色体,遺伝子 1 父母,祖父母と似ているところ ② 遺伝子の役目は,何だろう ○ 3 多細胞生物,単細胞生物 1 ゾウリムシのふえ方 ① ヒトは,どちらだろう ○ ○ 生物の子 無性生殖,有性生殖 1 身近な生物のなかまのふやし方 ① ゾウリムシ,カエルのふえ方 ○ ○ 孫の残し 受精と発生 1 ムラサキツユクサの熟したおしべ ① 花粉管がのびるのはどうして ○ ○○ 方 有性生殖と親の形質の遺伝 1 両方の親の遺伝子を受け継ぐこと ② 親子で似ていない理由 ○○ ○ 無性生殖と親の形質の遺伝 1 オリヅルラン,ベゴニア,ジャガ ① ジャガイモのふえ方を調べて ○ ○ イモ みよう 単元名 地球と宇宙 単元目標 身近な天体の観察を通して,地球の運動について考察するとともに,太陽の特徴および太陽系についての認識を深め, 天体および宇宙への興味・関心を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 夜空の観察 1 天体について知っていること ① 私は○○座を見たことがある ○ ○ 天球 1 プラネタリウム ① 天井の球面はどうしてだろう ○○ 地球の自転と天体の日周運 3 地球の自転の影響 ② 昼夜は,どうしてできるのだ ○ 地球の運 動 ろう 動と天体 地球の公転と天体の年周運 1 地球の公転の影響 ② 太陽のまわりを1年で1回り ○ 3 の動き 動 しているのか 地球の公転と星座の年間の 2 昔の人は季節の星座で仕事をして ③ 季節で星座が変わるのは,ど ○ ○ 動き いた うしてかな 地軸の傾きと季節,昼夜の 2 春分,秋分,夏至,冬至の日より ③ 太陽の光の当たり方,昼夜の ○○ 長さと太陽高度の変化 長さのちがい 太陽系の天体 省略 ※ − MI15 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 視点①日常経験そのものをもとにする場合②学習の成果を生かす場合③日常生活の事象,素材を発展させる場合 単元名 動物の世界 単元目標 身近な動物についての観察・実験を通して,動物の調べ方の基礎を身に付けるとともに,動物のからだのつくりとはた らきを理解し,動物の種類やその生活についての認識を深め,自然環境を保全し生命を尊重しようとする意欲と態度を 育てる。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 身のまわりの動物 3 ペット等の身近な動物 ① 動物と自分のかかわりを話す ○ 動物の行 感覚器官(目,鼻,耳,皮 3 ヒトの感覚器官のしくみと,使い ③ 目が見にくくなって困ったこ ○ ○ 動とから 膚) にくくなって困ったこと と だ 神経系(感覚,運動神経) 1 神経の図をなぞってみよう ① 脳につながっているのか ○○ 反射のしくみ 1 危険から体を守る例 ① 意識しないのに動く理由 ○○ 骨格と筋肉 1 骨のエックス線写真 ③ 骨折した時 ○ ○ 2 動物のか 消化系のしくみ 3 ベネジクト液での反応 ① だ液は,消化に関係するの ○○ らだのは 呼吸系のしくみ 1 タバコの煙と肺 ③ ペットボトルでの肺のモデル ○ ○ たらき 循環系のしくみ 1 ペースメーカーと携帯電話 ③ ドキドキするのはどうして ○ ○ 排出系のしくみ 1 人工透析 ③ 尿は,どこで作られるのかな ○ ○ 動物のな セキツイ,無セキツイ動物 1 セキツイ動物のエックス線写真 ① わたしたちの背骨 ○ ○ かま 胎生,卵生 1 ヒトのうまれ方 ② ヒトは胎生,卵生のどちらか ○ 恒温動物,変温動物 1 カエルの冬眠 ③ 冬眠する動物を調べよう ○○ ○ 単元名 天気とその変化 単元目標 身近な気象の観察,観測を通して,天気変化の規則性に気付くとともに,気象現象が起こるしくみと規則性についての 認識を深め,気象現象に対する興味・関心を高める。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 気象情報 2 地域の観天望気 ① 地域の観天望気を調べよう ○ ○ 気象情報 気象観測 1 学校内の気象を観測しよう ① 結果をグラフにしてみよう ○○○ と気象観 気圧の変化と天気 1 観測結果のグラフより ② 気圧の変化と天気の関係 ○ ○ 測 気温・湿度の変化と天気 1 〃 ② 関係を調べてみよう ○ ○ 霧,露のできる条件 2 冬,はく息が白く見えること ① どのようなときに起きるのか ○○ 2 空気中の 飽和水蒸気量,湿度 1 洗たく物 ① よく乾く日はどんな日だろう ○○ 水の変化 水蒸気の凝結 1 窓ガラスの結露 ① 水滴はどこからきたのだろう ○ ○ 雲のでき方・雨・雪 1 ペットボトルでの雪の結晶 ③ 雲や雪を作ってみよう ○○ 気圧と空気の流れ 1 テレビの天気予報 ③ 説明の言葉に注意してみよう ○ ○ 気団と前線 1 暖房している部屋の温度(上下) ① 足もとが冷たいのはどうして ○○ ○ 前線と天 寒冷,温暖,停滞前線 1 雲の画像 ② インターネットで調べよう ○ ○ 気の変化 前線と天気の変化 2 〃 ③ 雲の画像と天気の変化の関係 ○ ○ 天気の変化の予測 2 数日間の天気図 ③ 天気を予測しよう ○○ 単元名 大地の変化 単元目標 大地の活動のようすや身近な地形,地層,岩石などの観察を通して,地表に見られるさまざまな事物・現象を調べた結 果を,大地の変化と関連付けてみる見方や考え方を養い,自然に対する興味・関心を高めるとともに,さらに深く調べ ようとする探究意欲と,自然の調べ方の基礎を身に付ける。 時 視 評価規準との関連 年 題 材 名 学 習 内 容 間 日常生活とかかわる内容 点 予想される生徒の課題等 関思技知 火山と噴火 1 三原山の噴火のビデオ,温泉 ① 身近で火山が爆発したときど ○○ 火をふく 火山の形とマグマ 1※ うしますか ○ ○ 大地 火成岩(火山岩,深成岩) 1 石畳,墓石,灯籠,壁 ② 火成岩で身近な岩石を探そう ○○ 石基と斑晶 1 御影石(花こう岩) ① 花こう岩の鉱物は何だろう ○ ○ 地層のでき方 1 崖や道路の切り通し,崖崩れ ① 観察した地層は,どのように ○ ○ 地層の調べ方(野外観察) 3 〃 ② してできたと考えられるか ○○ けずられ 堆積岩の特徴 1 石灰岩(鍾乳洞) ① 鍾乳洞のでき方 ○○ る大地 地層のつくりと広がり 1 ボーリング試料,地盤と杭 ③ 学校の下の地層を調べよう ○○ 1 化石(示相,示準化石) 1 住んでいる所の昔の環境を調べる ③ 当時の環境は,何だろう ○ ○ 地震(震度,震源,震央) 1 宮城県沖地震 ① 宮城県沖地震の被害を調べる ○ ○ 初期微動,主要動 1 〃 ① 宮城県沖地震の震度分布を作 ○○ 初期微動継続時間 1 〃 ① ってみよう ○○ ゆれる大 地震のゆれの伝わり方と震 1 〃 ② 〃 ○○ 地 度分布 地震の規模(M) 1 兵庫県南部地震 ② マグニチュードと震度の関係 ○ ○ 地震の原因とプレートの動 1 長町−利府活断層 ③ インターネットで活断層を調 ○ ○ き べよう 単元名 植物の世界 省略 − MI16 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 7 日常生活とのかかわりを取り入れた授業構想 小学校(指導案例) 7.1 日常生活の事象,素材を発展させる授業展開例 授業形態: ティーム・ティーチングとMD(マーケティング・ディスカッション)法の導入 1.単元名: 台風と天気の変化 5年C区分(地球と宇宙) 2.単元目標: 台風による強風や大雨と,それがもたらす災害に問題をもち,台風の進路と天気の変化について,テレビ や新聞,インターネットなどからの情報やいろいろな資料などを活用して調べ,台風は西から東への天気の 変化とは異なる特有の動きをすることをとらえることができるようにする。また,台風による災害例などに ついて,地域にある資料を調べ,災害に対する備えや情報活用の重要性に気付くようにする。 3.活動の概要 (3時間扱い) ①台風による強風や大雨と,それがもたらす災害に興味をもち,これまでの経験や資料 をもとに,台風の進みかたや台風が接近したときの天気の変化について考える。 1時間 ②いろいろな資料を使って,台風の進路と雨や強風の地域が移り変わっていくようすを 調べ,台風の進路と天気の変化との関係について考える。 1時間 ③台風によってもたらされる天気の変化や災害について調べ,防災や情報活用の重要性 に気付き,実際の生活に生かすことの大切さを考える。 1時間(本時) 4.授業の実際 (1)本時の目標 ①日本を通過する台風の時期とおよその進路の傾向について,資料を見て知る。② 台風によってもたらされ る天気の変化や災害例について,地域の資料をもとに調べる。③台風情報によって,事前に災害を防ぐこと の必要性と,情報活用の大切さを考える。④説明者,情報収集者の役割の学習過程を通して,学習内容を再認識する。 (2)指導過程 段 階 導 入 展 開 ・支援・指導上の留意点 学 習 活 動 (・思考例) ○日常生活とのかかわり 1台風の進みかたと天気の変化につい ・台風の進路と天気の変化の関係につ て,前時に分かったことを発表する。 いて説明できるように支援する。 (前時の復習) 2話合い(全体) 台風は,日本付近をどのように動いていく のだろうか。 ・台風は,夏から秋にかけて来ることが ○かかわるものの選択(考察1) 多いね。 ・日本付近を通過する台風の時期と, ・台風は,西に進む時もあるみたいだ。 およその進路の傾向について,目を 向けさせる。 (1とのかかわり) ・去年の台風は,日本に上陸したよ。 ・8月や9月が台風シーズン,台風 が,さまざまな進路をとることにつ 3調査(班で) いても説明する。 ※MD法の話し合い,説 台風による,災害のようすを調べよう 課題1 明準備 班で,説明者,情報収集者を決める。 ○情報を集め交換する活動(考察2-1) ・去年の台風のとき,学校が休みになっ ・農作物の被害や交通網が遮断された たよ。 りする被害もあることにも目を向け させる。 ・近くの砂押川の水があふれそうだった ・人間の生命にも,かかわる場合があ よ。 ることにも気付かせる。 ・道路が,冠水して,どこにもいけなか ったよ。 ・畑のなしが,落ちてしまったよ。 ・台風情報が,私たちの生活や生命を ・台風が近づいたら,テレビ,ラジオ, 守るために,大切な役割を果たして コンピューターからのニュースに注意 いることに気付かせる。 して,備えないといけないね。 観点別評価 (評価規準)他 T1 準備物 前時の台 風の進路 図 T1 【知】 台風は,日本付近 では,南から北の ほうに移動し,そ れにともなって天 気が変化すること を理解する。 T1,T2 【関】 台風による天気の 変化と災害のよう すに興味をもち進 んで資料などを調 べようとしている か。 事前に集 めた資料 新聞記事 インター ネットよ り インタビ ューのテ ープ 台風が近づいたら,どのような備えをして 課題2 T1,T2 おくとよいだろうか。 ・テレビ,ラジオから,正しい情報を集 めることが大切だね。 ○情報を集め交換する活動(考察2-2) ・砂押川に近づくのは,やめよう。 ・自分たちでも,できることはない ・しらかし台小が,避難場所だったよ かを考えさせる。 ね。 ・情報を活用すれば災害に備え被害を ・連絡先を家族で,話し合っておくこと 最小限にとどめることができること も大切だ。 に気づかせる。 ・班の発表原稿を班でまとめる。 ・3分内で,発表できるように班で話 (課題1,2) し合いながら,まとめさせる。 地域の資 料等 ま 4MD法による発表と考察 ①説明者は,他の班の情報収集者に, 班のまとめを説明する。 め ②①の情報をもとに自分たちの班のま と ○日常生活に再びもどす活動(考察3) ・自分の班の不足を補う観点で説明 を聞いたり,質問するように支援する。 ・日常生活とのかかわりで,台風以外の自 − MI17 − T1,T2 【関】 台風に対する備え の必要性と情報活 発表用紙 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 とめを考察し吟味する。 ③各班の代表による発表,全体での話 し合い。 ま と め 然災害にも目を向けさせるようにする。 ・台風に対する備えの必要性と情報活 用の大切さに気づかせる。 ・日常生活に生かすように支援する。 用の大切さに気付 き,すすんで実際 の生活に生かそう としているか。T1 7.1.1 授業を構想しての考察 インターネットの発達と学校への普及により,児童は,手軽に雲の画像,天気図,各地の天気を調 べることができる。台風の動きについても調べることができる。しかし,台風の動きが分かっても, 台風を実感させることは困難である。例えば,台風の動きの情報と連動して,台風の目の中にいるこ と,台風が過ぎると暑くなる,巻き返しの風が吹く等を体験させることは容易ではないので,さらに 工夫が必要とされるところである。また,地域の資料,写真,ビデオ,作文等は,自然の災害を実感 させることができる。その他,MD法により,児童にとって,自分たちで授業をしているという新鮮 な体験をし,日常生活にかかわりをもたせた情報で学習できると考えられる。 8 日常生活とかかわる具体的な内容例 表7は,7.1の授業と関連する小学校の具体的な内容例である。 表7 小学校の内容例 視点①日常経験そのものをもとにする場合②学習の成果を生かす場合③日常生活の事象,素材を発展させる場合 単元名:台風と天気の変化 主な学習活動 ・台風による天気の変化と災害,台 風の進路について話し合う。 ・資料や写真を見て,台風の進みか たと天気の変化について調べる。 ・台風の進路と天気の変化,台風に よる災害についてまとめ,地域の 資料を調べる。 5年C区分(地球と宇宙) 時 間 日常生活とかかわる内容 1 地域の災害例の資料 台風のニュースビデオ 1 台風の新聞記事 インターネットの資料 1 地域の人のインタビュー 水害を経験した児童の作文 アメダスの資料 単元目標:7.1と同じ 視 点 ① ① ③ 予想される児童の反 応,課題等 川の水があふれて大変だっ たよ 台風の進路を予想してみよ う 自分たちでも,できること を考えてみよう 評価規準との関連 関 思 技 知 ○ ○ ○ ○ ○ 9 評価について (1) 学習の評価 理科に限らず,学習の評価は,児童生徒の活動を主体とし,児童生徒一人一人のよさをとらえて伸 ばしていくものでなければならない。児童生徒をどのようにとらえ,それをどう評価していくかを明 らかにすることが必要である。可能な限り,多面的に児童生徒をとらえ,それらの情報を集積するこ とによって,児童生徒一人一人のよさをとらえ,指導者の経験と勘を十分に発揮して指導,評価する ことが大切である。そして,さらに伸びていこうとする意欲を育てられるようにしたい。 (2) 評価の観点と日常生活を取り入れる視点との関係 下記の図は,学習指導要領の教科目標より,理科の基礎・基本,それに関係する評価の観点,そし て,その観点を具体的な評価項目に分析したものである。また,その評価項目と日常生活とのかかわ りを取り入れる視点①∼③が,どのように関連しているかを表したものである。特に,日常生活とか かわる理解を指導し評価する場合,重要な視点になると考える。 小 中 小 中 小 中 ※ 図4 ( 評価項目 ) ( 視点 ) ・意欲をもって調べる ( 理科の基礎・基本 ) ( 評価の観点 ) ◎意欲をもって探究する 自然の事物への関心・意欲 ・自然を愛する ・態度 ・生活に生かす (視点③) 問題解決の能力 ◎人間生活とのか (視点③) 科学的に調べる能力 かわりでみる ・問題を見いだす (視点①) (資質・能力) ・比較したり,関係づけたり (視点②) 条件に着目したり,多面的に 科学的な思考 追究したりして調べる ◎事象を実証的,論理的に考える 自然を愛する心情 ・結果を考察する (視点①②③) 科学的に調べる態度 ◎事象を分析的,総合的に考察する 〃 ・事実を科学的にとらえ問題を解決する (心情・態度) ・観察・実験を計画,実施 す る ◎観察,実験の基本操作を習得 (視点②③) 観察・実験の技能・表現 ・機器や器具を目的に応じて 自然の事物・現象 図る 工夫し扱う についての理解を 深める ◎事象を科学的に探究する方 法を身に付ける (知識) ・過程や結果を的確に表現する ◎自分の考えを的確に表現する ・性質や規則性,相互の関係 などについて理解し,知識 自然事象についての知識 をつくり,もつ (視点②③) ・理解 ◎基本的な概念や原理・法則を ・小学校 ◎中学校 理解し知識をもつ (視点②③) 理科の基礎・基本と評価の観点の関係(日常生活とのかかわりを取り入れる視点との関係) − MI18 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 (3) 評価の手順 評価の具体的な工夫は,次のような流れで進める。(図4,5参照) ①単元の目標を設定する。 ↓ ②単元の評価規準を設定する。 ↓ ③単元を構想する。 ↓ ④指導と評価計画を作成する。 ↓ ⑤評価資料の準備及び評価 規準の確認を行う。 ↓ ⑥授業中,授業直後の評価 と指導を行う。 ⑦総括的な評価 単元全体を見通した単元の目標。 (日常生活とのかかわりがもてるかのチェック) 単元の目標を4観点別に具体化した評価規準。 (目標との連動) 学習前の子供の姿をとらえる。単元の特性を明確にする。 (日常生活とかかわるか) 指導計画に基づき,いつ,どこで,どのように評価するか。 (評価方法の選定) 評価カード,チェックリスト等,おおむね満足できる状況 (B)の確認をし,(C)(A)も明らかにする。 ①子供の印象的な様子をとらえたり,その場での評価を生 かした即応的な指導をする。 ②授業終了後に簡単な印象メモやチェックリスト等で評価する。 ③単元の途中で評価状況を見直し,ある観点における評価 の少ない子供に視点をあてて評価と指導を行う。 単元終了後,学期末,学年末に観点別の総括的な評価を行 う。それらを総括して評定する。 図5 評価の手順 (4) 評価方法と評価の観点 表8 評価方法の適合性 評価方法の選定においては,児童生徒の 関心・意 科学的 表現・ 知識・ 実態との適合,評価規準との適合,各評価 欲・態度 な思考 技能 理解 方法の意義,長所,短所などを考慮するこ 教師による観察 ◎□ ○□ ○□ △ とが必要である。特に,評価規準は,教師 作品,レポート ◎□ ○□ ◎□ △ の教材観,児童生徒観,学習観(指導観)によ パフォーマンステスト ◎ ○ ◎ △ って当然違ってくるので,設定には,客観 ペーパーテスト △ ○□ △ ◎□ 性,信頼性等が求められる。 自己評価・相互評価 ◎□ ○ ○ ○ また,評価には,学習活動過程での評価 最も適した方法◎,やや適した方法○,あまり適さない方法△ と学習活動後の評価があるので,評価時期 ※ 日常生活とのかかわりとの関連□ は,評価方法選定の一つの条件とすることが 考えられる。 表9 評価方法 そして,左記の評価方法は,学校がおかれ 評価時期 具体的な評価方法 (評価物) ている環境(人的環境,物的環境,社会的 学習活動過程 教師による観察,観察・実験報告書 環境)によって,それぞれ異なるので,年 作品の記録等,感想ノート,ワークシート 間の評価計画を作成して指導にあたること パフォーマンステスト が大切である。 学習活動後 自己評価,SD法,ポートフォリオ評価 特に,指導と評価の一体化を考えたとき 生徒間の相互評価,ペーパーテスト 日常生活とのかかわりを児童生徒が実感で アンケート法,面接テスト法 きたかを判断する観点で,特に関連してい 依頼した時 保護者評価法,専門家・協力者評価法 るのが,自然事象への関心・意欲・態度と 科学的な思考と考える。自然事象への関心 ・意欲・態度は,学習内容と日常生活とのかかわり,科学的な思考は考察とそれぞれ関連している。 具体的には,評価補助簿を利用し,図4の評価項目と日常生活とのかかわりを整合させながら,指 導評価していくことが大切である。 − MI19 − 日常生活とのかかわりを実感できる理科学習についての一考察 10 研究のまとめと今後の課題 10.1 研究のまとめ 昨年(2001年)ノーベル化学賞を受賞した名古屋大教授の野依良治氏は,「すべての人が自然の仕組 みを知り,その知恵を使い豊かに生きることこそが理科だ」(河北新報,河北春秋)と述べている。 また,宇宙飛行士の毛利衛氏は,「理科の知識を現代社会において知恵としてどのように展開させて いくのか,という視点を持つことは,教師にとっても容易ではない」と述べている。 つまり,この二つのことは,理科で学習した知識を理科で終わらせるのではなく,私たちが自然の 一員として豊かに生きるための知恵に変えて使うことが大切なのだと解釈できる。本研究は,理科が 日常生活とかかわっていることを,児童生徒に実感させたいという願いからスタートした。研究を進 めていく途中で,日常生活とかかわる「もの」の吟味だけでは,実感や本質的な理解につながらない ことをとらえることができた。そこで,理科学習を生活に生かすこと,人間生活とのかかわりでみる ことという視点からも研究を進めてきた。 自分としては,今まで教科書通りの授業というような創造性,発展性,日常性の不足する実践が多 かった。理論では,日常生活とのかかわりが大切なのだというこを理解していたが,その理論と実践 を結び付ける何かが不足していた。それは,事象や素材だけでなく,かかわりを考察させることだと いうことが僅かに認識できた。 これからは,この研究を生かした授業を取り入れて,児童生徒にとって「生きる力」としての科学 的な見方や考え方を育成する一助にしたいと考える。 10.2 今後の課題 この研究の中で,指導計画(具体的な内容例)を作るために,小学校3年生から中学校3年生まで の理科の全ての内容について,日常生活とのかかわりがもてるかどうかを分析してきた。その分析で 感じたことは,小中学校のほとんどの内容で,かかわりをもたせることができたが,一部困難である 内容(例:中学校2分野の地球と宇宙の一部等)も確認できた。 今後は,授業の日常生活とのかかわりを考察する場面で,MD法やジグソー学習といったような個 に応じた指導法の工夫を,いかに適切に導入していくかを研究していきたい。また,本研究の日常生 活とかかわる具体的な内容例,指導案例に修正を加え,学校現場で実践的に活用できるように,さら に充実したものにしていきたい。 主な参考文献 全般的な参考書 [1] 文部省:「小学校学習指導要領解説 −理科編−」 東洋館出版社 1999 [2] 文部省:「中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 −理科編−」大日本図書 1998 [3] 文部省:「小学校理科指導資料 指導計画の作成と学習指導」 大日本図書 1991 [4] 文部省:「小学校理科指導資料 新しい学力観に立つ理科の学習指導の創造」東洋館出版社 1993 [5]「新理科教育法」編集委員会:「新理科教育法」 東京書籍 1999 [6] 降旗勝信:「新しい理科指導100のポイント」 国土社 1991 [7] 江田 稔:「中学校 新理科授業の基本用語辞典」 明治図書 2000 [8] 角屋重樹:「理科の授業展開と新しい評価」 小学館 2002 [9] 福島哲史:「感性がもっと鋭くなる本」 三笠書房 1999 [10] 安彦忠彦:「学校知の転換」 ぎょうせい 1998 [11] 奥井智久,星野昌治:「小学校新学習指導要領Q&A解説と展開 理科編」 教育出版 1999 [12] 江田 稔,三輪洋次:「新中学校教育課程講座 理科」 ぎょうせい 1999 [13] 日本理科教育学会:「理科の教育」1995,2002年版 東洋館出版社 1995 [14] 平成14年度 観点別評価 年間指導計画 東京書籍 2002 [15] 文部科学省:「個に応じた指導に関する指導資料−発展的な学習や 補充的な学習の推進−」(小学校理科編) 平成14年9月 2002 − MI20 −