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調 査 報 告 - 日本産業機械工業会

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調 査 報 告 - 日本産業機械工業会
調 査 報 告
ウィーン
EU におけるバイオガスの利活用などの状況
EU各国におけるバイオマスの利活用の状況について以下に報告する。なお、本報告はEU
加盟28カ国全てについてではなく、バイオマス利用が盛んな国を主として報告しているこ
とに留意願いたい。
1.はじめに
熱、電力生産等に使用される固体及び気体のバイオガス資源(特に木材及び木材廃棄物)
は EU における再生可能エネルギー資源の最大の源であり、2020 年までに再生可能エネル
ギーを 20%導入しようとする目標に対し主要な貢献が期待されている。バイオマス産業は
経済成長及び雇用(特に農村部)への貢献をしている一方、気候変化やエネルギー供給の安全
性に関する懸念に対処するうえで重要な役割を果たすことができる。
2030 年の気候及びエネルギー枠組への影響評価によると、熱及び発電部門におけるバイ
オマス利用は、今世紀半ばまでに低炭素経済へ移行する EU の動きの中、更に中期的に増
加すると考えられている。
EU の再生可能エネルギー指令(RED)では輸送用バイオ燃料や他の部門で使用されるバ
イオリキッドのための持続可能性基準を定めるだけでなく、電力、熱や冷却に使用される
固体及び気体バイオマス燃料についても同様に行われている。2010 年2月には RED の第
17(9)条が要求する通り、欧州委員会は電力、熱及び冷却における固体及び気体バイオガス
資源の利用に関する持続可能な要件に関する報告書“the Biomass Report”を発表してい
る。欧州委員会は EU での包括的な基準を導入するのではなく、加盟国への非包括的な推
奨事項又は各国でのバイオマスの持続的な要件を導入するための計画を採用することを決
定した。
2014 年1月には、“2020 年から 2030 年の期間における気候及びエネルギー政策の枠組”
の中で、欧州委員会は、改善されたバイオガス政策は、堅牢かつ検証可能な温室効果ガス
の削減法を実現し、建設業、紙・パルプ産業、バイオ科学、エネルギー産業部門での様々
なバイオマスの利用形態での公平な競争を可能にするために、バイオマスの資源効率的な
利用を最大化することが必要だと述べた。これはまた、EU の森林戦略に沿った森林の持続
可能な管理やバイオ燃料のような間接的な土地利用の影響に対処することも含まれている。
2014 年2月には、2030 年の気候とエネルギー枠組に関する決議で、欧州議会はバイオマ
ス資源の非効率的な使用を制限するために温室効果ガスのライフサイクルを考慮しつつ固
体及び気体のバイオマスの持続可能性基準を提案するよう委員会に求めている。さらに
2014 年3月に議会では、将来の気候・エネルギー政策は持続可能性とエネルギーの安全保
障、競争力といった様々な政策目標の適切なバランスを目指すべきであると協調し、より
持続可能かつ競争力のあるエネルギーシステムのための再生可能エネルギー源の役割につ
いて認識した。
この政策を背景に、委員会は EU における電力、熱及び冷却のための固体及び気体バイ
オマスの持続可能性の現状を確認するために“スタッフワーキングドキュメント”を発行
した。この文書は次のように構成されている。
第2節(付属書では更なる情報がサポートされている)では、国家再生可能エネルギー行動
計画(NREAPs)、2013 年の加盟国のプログレスレポート及び気候及びエネルギーに関する
2030 年に向けての影響評価からの情報に基づき 2020 年までとそれ以降の電力、熱、冷却
に利用される固体及び気体バイオマスの利用に関する概要を提供している。
第3節は既存の国内のバイオマスの持続可能性に関する規制が域内市場への障害となり
うるか。
第4節では大規模なバイオマス生産及び使用における主要な持続可能性のリスクを分析
し、現在 EU レベルで対処されている方法について説明している。
第5節では、これらの分析の結論を提示している。
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調査報告 ウィーン
2.EU のバイオガス利活用に関する政策
EU 各国におけるバイオガス利用に関する支援政策を以下に示す。
(1)オーストリア
欧州連合が掲げる 2020 年目標を達成するために、オーストリアは総エネルギー消費量の
内、再生可能エネルギーの占める割合を 34%までに増加させる必要がある。オーストリア
のエネルギー戦略は、バイオガスを電力やバイオ燃料として提供することで目標に到達し
ようとしている。戦略の焦点は2つの選択肢を使用することでバイオマスをバイオメタン
にアップグレードすることにかかっている。一つ目の選択肢は、2020 年までにバイオメタ
ンの生産量を 2020 年までに 20%増加させることである。二つ目の選択肢は、バイオガス
の生産量をガス需要の内 10%まで増加させることであり、それはオーストリアで年間 800
M Nm³のバイオメタンを生産することに相当する。
欧州の再生可能エネルギー法では、2015 年までに追加の 100 MWe を追加するための発
電所の建設が予想されている。これは、市場の状況が近年と比べ大きく変わっていた 2010
年に設定されたエネルギー戦略に基づくものである。現在では既存のバイオガスプラント
を破産から守る為に多くの努力が行われている。
電力生産ではグリーン電力法による支援が行われており 2013 年次の固定価格買取制度は
以下となる。
・250 kWe までは 0.1950 EUR/kWh
・250 - 500 kWe の範囲では 0.1693 EUR/kWh
・500 - 750 kWe の範囲では 0.1293EUR/kWh
・750 kWe を超える場合 0.1293EUR/kWh
・バイオガスの品質が向上されている場合、追加で 0.02 EUR/kWh
・熱が効率的に使用されている場合、追加で 0.02 EUR/kWh
固定価格買取制度の資格を得るためには、最低 30%の肥料が基材として使用されている
ことが求められる。
有機性廃棄物を使用する場合、固定買取価格は 20%削減される。補助金が支給されてい
る古いバイオガスプラントは最大 20 年まで補助金の延長期間を申請することが可能である。
いくらかの投資補助金は存在しているが、それは地域の状況に依存している。
(2)デンマーク
2009 年6月に政治的合意の下可決された“Green Growth”イニシアチブは、2020 年ま
でに家畜糞尿の 50%をグリーンエネルギーとして使用することを目的としている。これに
はバイオガスの導入においては現在の開発を大幅に加速させることが求められている。
2012 年3月には、デンマーク政府は 2012 年から 2020 年までの期間の広範なエネルギー
政策協定を締結した。契約にはいくつかの要素が含まれており、デンマークのエネルギー
供給における再生可能エネルギーシェアの大幅な強化を求めている。主な目的は、2050 年
までにデンマークでの化石燃料の使用をストップすることである。バイオガスは 2012 年の
エネルギー協定の重要な要素である。
バイオガス部門への支援では、2013 年 EC により改良された金融支援パッケージが採用
され承認された。支援が、投資と活動の両方には行われないという制約がまた、2014 年 EC
により承認されている。これはバイオガス部門の将来に対する自信を強固なものとし、そ
の結果デンマーク市場でのバイオガスの導入を後押しした。
デンマークのバイオガス部門への支援システムの主な要素は以下の通りである。
・熱電供給(CHP)ユニットにバイオガスが使用される、あるいはガスグリッドへ接続され
た場合、0.056 EUR/kWh
・輸送や産業での目的のため直接使用された場合、0.037 EUR/kWh
これらの関税には最大 0.012 EUR/GJ (26 DKK/GJ)の天然ガス価格の補償と、2016 年ま
での一時的な支援金である 0.005 EUR/GJ (10 DKK/GJ) が含まれている。肥料を主に消化
するプラントに対し投資補助金を申請することもまた可能である。2013 年に天然ガスグリ
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調査報告 ウィーン
ッドに供給された精製バイオガスに対する支援金は 111.6 DKK/GJ であった。この支援き
っは 2013 年 12 月1日から有効である。エネルギー協定では、輸送と他のアプリケーショ
ンのバイオガスへの新しい支援枠組もまた合意されている。それらを以下に示す。
・熱源供給システムに対する 10.6EUR/GJ の基礎補助金(直接的及び間接的な補助金)
・天然ガスグリッドを介した精製と配送に対する 10.6EUR/GJ の基礎補助金
・工業プロセス及び輸送に対する 5.2EUR/GJ の基礎補助金
加えて、
・全てのアプリケーションに対する補助金 3.5 EUR /GJ(天然ガスの価格上昇に伴い縮小
されている。天然ガス価格が前年の基礎価格である 7.1 EUR /GJ より高い場合は、補
助金はそれに応じて削減される。)
・全てのアプリケーションに対する補助金 3.5 EUR /GJ(2016 年から 2020 年まで毎年、
補助金の有効期限が切れた場合直線的に縮小)
(3)フィンランド
フィンランド政府の目標は、使用するガスの約 10%を 2025 年までにバイオマス系のガス
(主に SNG)とすることである。フィンランドエネルギー市場庁は、固定価格買取制度を利
用し、100 kVA 以上の電力を生産する新しいバイオガスプラントを支援している。これは
電力の最低価格である 83.5 EUR/MWh を保障するものであるが、発電機の合成容量が 19
MVA を超えた場合は補助金は支払われない。
発生した熱を利用する場合、総効率が少なくとも 50%(公称発電容量が 1 MVA を超えて
いる場合は 75%)であると、基本的な補助金に加え 50 EUR/MWh の熱割増金が支払われる。
固定価格買取システムでは、そのシステムにおいて承認されている発電所の電力生産者は
最大 12 年間の補助金を受取ることができる。
補助金は、3ヶ月間の電力市場の価格や排出枠の市場価格に基づいて変化する。これら
の補助金は確認された許容決定額まで支払われる。電力価格が 30 EUR/MWh を下回る場合、
目標価格である 30 EUR/MWh 以下の金額が支払われる。電力価格がマイナスのときは補助
金は支払われることは無い。
固定価格買取制度は 2011 年3月から適用され、バイオガスの生産には 170,000 ユーロが
支払われているが、同期間中に木質バイオエネルギーには 8400 万ユーロ、風力発電では
50650 万ユーロが使用されている。
投資補助金は電力を生産するバイオガスプラントに雇用・経済産業省により支払われる
が、この種の補助金は上述のプラントに接続された住宅や農場等のためのものではない。
許容可能な投資コストの最大 30%は、投資年度の予算内で利用可能な資金があるという条
件で支援される。農林省は、自国での電気と熱の生産を目指し農場に建設されたバイオガ
スプラントを支援している。バイオマスの半分以上は、自己の農場からのものでなければ
ならず、生産される電力の 50%以上は農場により使用されなければならない。支援の一部
は資金の提供とローンからなる。また、バイオガスに消費税は課されない。
(4)フランス
フランス環境・エネルギー管理庁の計画では、2030 年までに年間 70TWh のバイオガス
を生産し、毎年 600 のバイオマスプラントが建設される予定である。生産されたバイオガ
スの 50%はガスグリッドへ注入され、30%は電力を発生させ、残りの 20%は熱を作るため
に用いられている。2050 年には、100TWh の生産量を目指している。
フランスでは、以下の特性を持つバイオガスからの電力生産に対する固定価格買取制度が
ある。(エネルギー効率の特典と肥料の特典があり、これは毎年変更される。以下は 2013
年の値。)
・埋立地ガスには 0.8580~0.14521 EUR/kWhe を支給
・AD プラントには 0.1182~0.2110 EUR/kWhe を支給
また、次のような上級の買取制度もある。
・埋立地ガスからのバイオメタンには 45~95 EUR/MWh(体積に依存し、これは 2011 年
の値)
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調査報告 ウィーン
・AD プラントからの精製バイオガス(バイオメタン)には 69~125 EUR/MWh(体積と原
料の性質に依存、これは 2011 年の値)
いくらかの補助金は2つのファンド(廃棄物ファンドと再生可能熱ファンド)を通じ、環
境・エネルギー管理のためにフランス官庁により配布される。そのため、補助金は投資の
性質に依存し、量または補助の割合により制限されている。その他の補助金は地域(地域協
議会)や欧州のファンドなどに適用される。
(5)ドイツ
電力生産における再生可能エネルギーのシェアを 2025 年までに 40~50%、2035 年まで
に 55~60%、2050 念までに 80%にまで引上げる計画をしている。再生可能エネルギー法
(EEG 法)の改革は、エネルギー改革の成功に重要な役割を果たしている。異なる技術の具
体的な成長目標の導入は、ドイツの再生可能エネルギー支援計画にとって新たな発展であ
る。バイオガスを含むバイオマスの年間成長率は、陸上風力発電や太陽光発電の 2,500MW
と比べ、最大 10MW に制限されている。
2014 年8月1日には新再生可能エネルギー法が発効された。連合協定に沿って、資金の大
部分は廃棄物と残渣に制限されている。この目的のために、物質関税のクラスⅠ及びクラ
スⅡ、特に再生可能エネルギーの原材料へのより高いレベルの支援は廃止されることとな
る。さらに、バイオガス処理にかかる高いコストのために新規設備の設置に対するガス処
理の特典も廃止されることになる。
新再生可能エネルギー法の展開における回廊地帯に留まるためには、年間のバイオガス
の導入が 100MW を超える場合、新規バイオガス設備の設置に対する支援率を多かれ少な
かれ提言することになる。市場におけるより柔軟な発電インセンティブは既存あるいは新
規設備の設置に対し増加すると思われる。基盤となるカテゴリーとプラントサイズに関連
して固定価格買取制度の価格は表 2-1 のように設定されている。
表 2-1 改正 EEG2014 法による電力固定買取価格
原料カテゴリ
固定買取価格(Euro/kWh)
最大電量量
13.66
150kW
バイオマス条例
11.78
500kW
10.55
5MW
5.85
20MW
15.26
500kW
バイオ廃棄物
13.38
20MW
23.73
75kW
動物性肥料
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
(6)ノルウェー
ノルウェーで利用されている主なエネルギー源は石油と水力発電である。ノルウェーの
エネルギー消費量の 60%近くは再生可能エネルギー源、特に水力発電と木質をベースにし
ている。国会の報告書によると、バイオマスからのエネルギー量を増加させるために国家
目標が設定されている。この目標の根底には、増加したバイオエネルギーの増加は、温室
効果ガスと地域の汚染物質の排出量を削減し、同時に石油と未使用のプラント栄養素への
依存祖度を減少させることが出来るという理解がある。
バイオエネルギーの開発の増加に関する国家戦略は、2008 年に石油・エネルギー省によ
り発表された。この戦略は、2020 年までに毎年実現可能な 14TWh の利用可能なバイオエ
ネルギーの推定を示唆している。
ノルウェーにおけるエネルギー部門の共同研究開発戦略である“Energi21”は、研究開
発のための望ましいコース、及び 21 世紀のための新技術の実証を設定している。戦略は、
創造価値を高める新技術とエネルギーの再編を促進し、国際競争力のある専門家を育成す
るための一環として、石油・エネルギー省の要請によるものである。
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調査報告 ウィーン
Storting(ノルウェーの立法府)への報告書 No 39 (2008– 2009)によると、肥料の 30%(400
~500 万トン/年)は、2020 年までに 60 万トンの食品廃棄物(利用可能な食品廃棄物の約 60%)
とともにバイオガス生産のために使用されることになっている。この目標の主な動機は、
50 万トンの二酸化炭素相当の農業からの温室排気ガスの排出を削減することである。ノル
ウェー政府は 2014 年 10 月に国内の全部門にまたがるバイオガス戦略を発表した。
その戦略は、バイオガスが 2020 年までの国の温室効果ガス排出量の削減とノルウェーが
2050 年までに低排出となる目的に貢献すると主張している。バイオガスの生産と使用に関
する非常に多くの技術的可能性が発見されているが、それにかかる高コストが課題となっ
ている。バイオガスの生産と使用を増加させるために、政府は技術開発を促進し、コスト
を削減することを目指している。その新しいバイオガス戦略には以下の手段が発表されて
いる。
・研究開発、及びパイロットプラントの建設
・バイオガスの使用と生産を増加させるための動機付け
・原料の供給を増加させるための動機付け
・普及情報を確保することの動機付け
利用可能な基材を増加させるための2つの最も強力な動機付けは、2009 年からの生分解
性物質の埋立を禁止する埋立ガイドラインと、バイオガスプラントに納入された肥料1ト
ンあたり約 3.5 ユーロを支給する配送支援システムである。バイオガス生産を刺激するた
め、プラントのサイズに応じた異なる投資支援のための計画が利用可能である。バイオガ
スの使用は道路利用上の減免措置と、持続的なモビリティソリューションに関連したイン
フラに対する投資援助により刺激されている。
(7)アイルランド
アイルランドにおけるバイオガス産業はまだ上向きの傾向ではない。これには北アイル
ランドの近隣国と比較し相対的に低いレベルの再生可能エネルギー買取価格があり、その
ほかにも多くの理由がある。このため国に境北部のバイオガス開発者はより収益性が高く
なるという状況になっている。現在ではバイオマスの貿易は国境を越えて存在している。
同国南部の比較的低いレベルのバイオガス施設の開発のもう一つの理由は、基材の様々な
処理基準に関し、継続的な議論が行われているためである。これには輸送用燃料としての
バイオメタン及びガスグリッドへ注入するためのバイオメタンのためのバイオガス生産を
増加させる目標戦略が含まれていると予想されている。
アイルランドにおけるバイオガス産業への支援には以下が含まれている。
・2013 年時点で 75EUR/t の埋立税が存在する。
また、2013 年7月時点では居留区の人口が 25,000 人を超過しているため、食品廃棄物
の分別資源回収を提供する必要があった。これらの規制は都市固形廃棄物の有機分別物を
消化するための動機付けを提供している。また、バイオガスの熱電供給(CHP)に対する固定
買取価格は、
2007 年時は 7.2c/ kWhe であったが、
2008 年時は 12c/kWhe に上昇している。
2010 年5月時点では、その価格は指標付けされ、15 年間の基準に基づき提供され、それ
には以下が含まれている。
・500 kW 以下の嫌気性消化(熱電供給含む)には 15 c/ kWhe
・500 kW より大きい嫌気性消化(熱電供給含む)には 13 c/ kWhe
・500 kW 以下の嫌気性消化(熱電供給含まず) には 11 c/ kWhe
・500 kW より大きい嫌気性消化(熱電供給含まず)には 10 c/ kWhe
(8)スウェーデン
スウェーデンでは使用エネルギーの内 50%を 2020 年までに再生可能エネルギーで賄お
うという政府目標(既に達成済み)があるが、バイオガス生産に関する具体的な目標は存在し
てない。スウェーデンにはまた、2050 年までに化石燃料フリーの輸送部門を持つ政府目標
がある。この目的を達成する方法についての公聴会の結果が、スウェーデンにおけるバイ
オメタン生産のための今後の政府支援にとって重要になると予想されている。
スウェーデンは固定価格買取制度を有していないが、その代わり、他の支援システムを
― 5 ―
調査報告 ウィーン
使用している。それは主に自動車燃料としてのバイオメタンの利用を増やすことに商店が
当てられている。既存の支援システムは以下の通りである。
・2015 年末までのバイオガスに関する二酸化炭素及びエネルギー税の免除
石油と比較すると 70 EUR / MWh、ディーゼル燃料と比較すると 56 EUR / MWh に相
当し、その内 24 EUR / MWh は二酸化炭素の軽減からのものであり、残りの部分はエ
ネルギー税の軽減からのものである。
・2017 年までに天然ガス自動車(NGVs)企業の利用に対する 40%の所得税の削減
・2010~2016 年の期間中のバイオガスに関する新技術と新たなソリューションに対する
市場への投資補助金(投資コストの最大 45%あるいは 2500 万 SEK(300 万ユーロ)まで)
・ノルウェーとスウェーデン間で販売される共同電力証明書
再生可能エネルギー及び電力消費者から生産された全ての電力に対する証明書を得た生
産者は、それらの総使用量に関連した証明書を購入する必要がある。
(9)スイス
連邦協議会は長期的なエネルギー供給の安全性を保証するために“エネルギー戦略 2050”
を採用している。この戦略の推進力は、段階的に原子力発電を撤廃し、他方で新しい再生
可能エネルギー(太陽光、バイオマス、バイオガス、風力、廃棄物及び地熱発電)だけでなく、
水力発電も発展させ、建物、電化製品、輸送のエネルギー効率を向上させることである。
エネルギー供給に関する課題は化石燃料発電及び電力輸入により克服することができる。
バイオガスに関して、そのエネルギー戦略では 2050 年までに年間発電量を 1.6TWh とする
ことを目指している。この目標を達成するために、以下の主要な優先事項を統合する協調
的なエネルギー研究に焦点があてられている。
・新しいプロセス及び技術の開発
・市場に沿った技術の拡大と縮小
・品質管理
・システムの最適化と統合
スイスでは、以下の表 2-2 に沿った電力に対する固定価格買取制度が存在する。
電力クラス
基本関税
(CHF/kWh)
農業特典
(CHF/kWh)
熱特典
(CHF/kWh)
最大
(CHF/kWh)
表 2-2 スイス通貨での電力固定買取価格
50kWe 以下
100kWe 以下 500kWe 以下 5MWe 以下
0.28
0.25
0.22
0.185
5MWe を超える
0.175
0.18
0.16
0.13
0.045
0
0.025
0.025
0.025
0.025
0.025
0.485
0.435
0.375
0.255
0.20
出典:IEA Bioenrgy Task 37 , Country Reports Summary 2014
また、6年以内に年間 300 GWh のバイオメタンを注入する目的でスイスガス協会による
自主的な支援プログラムのためのファンドが存在している。その計画はまた温室効果ガス
排出量を削減することを目的としており、財政支援を受けることができる。
(10)オランダ
EU の 2020 年目標を達成するために、オランダは再生可能エネルギーの利用を 14%にま
で増加させなければならない。再生可能エネルギー量を増加させようとするオランダの計
画は、国家再生可能エネルギー行動計画で述べられている。そこでは、天然ガスグリッド
へ注入するバイオメタンの導入予想量は、再生可能エネルギーシェアの要求に到達した場
合、6.7TWh まで増加すると考えられている。
― 6 ―
調査報告 ウィーン
新しい支援計画が 2014 年に 35 億ユーロの予算で開始された。計画の興味深いコンセプ
トは、全ての再生可能エネルギーをお互いに競争するよう仕向けていることである。年間
を通じて設定された6つの決算日と段階的な申請プロセスでは、関税が自分の事業計画に
適合した時、計画が適用することが可能となる(表 2-3 参照)。
その関税は年度中徐々に増加するため、熱を利用していることを示さなくてはならない
ため、小規模施設ではなく大規模施設が適している。表 2-3 では、関税は最低所得が保証さ
れており、それは計画は電力価格が表中の価格を下回る場合にのみ支払うことを意味して
いる。
段階
1
2
3
4
5
6
表 2-3 オランダの新 SDE+計画における買取価格
開始
最大電力量
最大熱量/CHP
(EUR/kWh)
(EUR/GJ)
0.07
19.4
4月1日
0.08
22.2
5月 12 日
0.09
25.0
6月 16 日
0.11
30.6
9月1日
0.13
36.1
9月 29 日
0.15
41.7
11 月3日
最大ガス量
(EUR/Nm3)
0.483
0.552
0.621
0.759
0.897
1.035
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
(11)英国
英国政府はまだ英国と権限委譲行政機関における嫌気性消化産業の役割を支援している。
英国では、環境・食糧・農村地域省(Defra)は 2011 年、嫌気性消化産業が 2020 年までに3
~5TWh の熱及び電力を生産するビジョンを設定している。
‘One Wales Delivery Plan’
の一環として、ウェールズは嫌気性消化技術を採用しようとする地方自治体向けに資本及
び収益金融支援パッケージを作成した。スコットランドは埋立地への食品廃棄物の禁止を
導入しようとしている。これは嫌気性消化産業の容量を推進し、この傾向は今後も続くと
予想されている。北アイルランドでは嫌気性消化産業向けの魅力的な政府補助金(再生可能
電力購入義務証書)により農場供給施設が増加している。
英国における金融支援システムの範囲は嫌気性消化事業者も利用可能である。固定価格
買取制度は小規模電力発電者に固定期間での保証価格を提供している。固定価格買取制度
は小規模低炭素電力の供給を促進することを意図している。5MW の容量未満、及び 2009
年7月 15 日以降に完成した嫌気性消化施設のみが固定価格買取制度の対象となる。
表 2-4 固定期間における保証価格での買取価格
説明
買取期間
買取価格(ポンド/kWh)
12.46
総設備容量が 250kW 以下の 2014 年4月1日から
嫌気性消化
2014 年9月 30 日まで
11.21
2014 年 10 月1日から
2015 年 3 月 31 日まで
11.52
総設備容量が 250kW より大 2014 年4月1日から
きく、500kW 以下の嫌気性 2014 年9月 30 日まで
消化
10.57
2014 年 10 月1日から
2015 年 3 月 31 日まで
9.49
総設備容量が 500kW を超え 2014 年4月1日から
る嫌気性消化
2014 年9月 30 日まで
9.02
2014 年 10 月1日から
2015 年 3 月 31 日まで
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
― 7 ―
調査報告 ウィーン
嫌気性消化技術は、複数の再生可能エネルギー義務証書(グリーン証書)の形で追加の支援
を受けた技術の一つである。嫌気性消化事業者は 2015 年4月まで MWh あたり2つのグリ
ーン証書を受取り、その後エネルギー気候変動省の推定値である 2015~2016 年にかけての
1.9 ROCs/MWh、2016~2017 年にかけての 1.8 ROCs/MWh のコストに歩調を合わせる予
定である。再生可能熱インセンティブ(RHI)は再生可能熱の生産者及び再生可能バイオガス
やバイオメタン生産者へ kWh あたりの定額収入を提供する。
表 2-5 様々な資源の再生可能熱インセンティブ
関税名
バイオメタン注入
対象技術
バイオメタン
小規模バイオガス燃焼
中規模バイオガス燃焼
(委託済み又は 2013 年
12 月1日以降に委託)
大規模バイオガス燃焼
(委託済み又は 2013 年
12 月1日以降に委託)
バイオガス燃
焼
対象サイズ
バイオメタンの全ての
容量
200kWth より少ない
200kWth 以上
600 kWth より少ない
600kWth 以上
買取価格(ポンド/kWh)
7.5
7.5
5.9
2.2
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
再生可能運輸燃料義務(RIFO)は、供給されている全ての道路車両用燃料の5%を 2010
年までに持続可能な再生可能資源にすることを保証するための輸送用燃料供給業者に関す
る要求事項である。
3.EU におけるバイオガス利活用の状況及び利用技術
EU 各国におけるバイオガス利活用の状況及び利用技術について以下に示す。
(1) オーストリア
今日では、バイオガスの生産はエネルギー作物、下水汚泥及び埋立地由来のものである(表
2-6 参照)。年間のバイオガス生産量は 1.5~2.5TWh に相当する。現在の傾向は、バイオガ
ス原料(トウモロコシ等)の高価格がプラントを経済的に稼働させる妨げとなっている。この
ため、代替原料を使用する可能性についての調査が熱心に行われている。オーストリアに
は合計 368 施設のバイオガスプラントがあるが、その内 2013 年に OeMAG 社との契約を
行っていたのは 337 プラントのみであった。
表 3-1
OeMAG 社と契約しているオーストリアにおけるバイオガス生産の状況(2013 年)
プラントタイプ
廃水処理プラント及び埋立地
農業及びバイオ廃棄物
合計
電力生産プラント数
44
293
337
エネルギー生産量(GWh/年)
26
544
570
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
オーストリアでは、バイオガスは主に電力と熱生産に用いられている。目的は自動車燃
料としてより多くのバイオガスをバイオメタンに精製することであるが、この変更は幾分
ゆっくりと行われている。国内にはおよそ 7,700 台の天然ガス自動車(NGVs)と約 180 の圧
縮天然ガス充填ステーションが存在している。充填ステーションの内3つはバイオガス精
製施設に位置している。
― 8 ―
調査報告 ウィーン
表 3-2 オーストリアのバイオガス利用状況(2013 年)
GWh
570
7
13
利用法
電力
自動車用燃料
その他
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
また、稼働中の 11 のバイオガス精製ユニットが存在している。精製プラントは幾分小規
模で生産能力は 600~800 Nm 3 /h である。それらはまた、バイオメタンを年間約 600 Nm3
の合成容量を有している。
(2) デンマーク
デンマークでは 154 のバイオガスプラントが稼働中であり、バイオガスの年間生産量は
1.2TWh である。動物性肥料は高い将来性を持つ最も重要なバイオガス燃料である。デンマ
ークバイオガス協会によると、今日では動物性肥料の約7%がデンマークのバイオガスプ
ラントに供給されている。その目的は 2020 年までに動物性肥料の使用率を 50%まで増加
させることである。肥料と共に、産業及び下水汚泥からの有機性廃棄物は今日ではバイオ
ガス産業に多大な貢献をしている。
表 3-3 デンマークにおける現在のバイオガス生産量(2012 年)
原料/プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物
農業
産業
埋立地
合計
プラント数
57
67
5
25
154
生産量(GWh/年)
250
861
51
56
1,218
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
2012 年にデンマークエネルギー庁は 2020 年までのバイオガスの総生産量は4倍
(4.7TWh)に増加すると予測している。しかし、バイオガス専門調査団は 2020 年までには
総生産量は倍増(約3TWh)に留まるだろうと結論付けている。デンマークのエネルギー協定
によると、この拡張の主な原因は電力生産とバイオメタンの精製のためのバイオがすりよ
うに対する支援が増加しているためであり、それは 2013 年 11 月に EC により承認されて
いる。最も優先する事項は、2013 年デンマーク政府により採用された新しい“無駄のない
資源戦略”に沿った容易に入手可能な廃棄物の利用である。
環境の持続可能性の理由から、デンマークの政治家はデンマークのバイオガスはエネル
ギー作物に基づき開発されるべきではないと指摘しており、そのためバイオガス生産に使
用されるエネルギー作物のシェアの制限が導入されている。代わりに、デンマークではバ
イオガス生産にゴミや藁の使用に関心が高まっている。
デンマークにおけるバイオガスの潜在性に関する近年の推定(AgroTech, 2012- quoted
by Biogas Task Force, 2014)では、デンマークのバイオガス生産の最大量は 12~22TWh で
あり、これは時間軸とエネルギー作物のシェアに依存している。これらのデータから、バ
イオガス専門調査団は 2020 年のバイオガスの潜在性は約 13.5%と推定している。農業部門
は非常に高いバイオガスの潜在性を有しており、6TWh と推定されている。これは主に 2012
年に生産された 3700 万トンの動物性残渣に基づいている。
今日のデンマークでのバイオガスは主に熱と電力生産のために利用されている。デンマ
ーク政府は、バイオガスは将来重要な自動車用燃料になり、特に大型車両で使用される化
― 9 ―
調査報告 ウィーン
石燃料と交換された場合顕著となると考えている。2013 年1月にデンマークの Skive で開
催されたバイオガス会議では、デンマークの Martin Lidegaard 気候・エネルギー大臣は、
「ガスは輸送の将来のための主要な解決策の一つとなると考えている。」と述べている。
また、自動車用燃料にバイオガスを使用する一般的な関心も高まってきている。初期の
4つのデンマークにおけるバイオガス精製プラントは稼働中であり、多くのバイオガス精
製プロジェクトは現在計画の様々な段階にある。現在7つのバイオガス充填ステーション
が存在し、さらに多くのステーションが建設されようとしている。現在、約 80 台の圧縮天
然ガス自動車(CNG 車)がデンマークで動作中である。
2013 年には、天然ガスグリッドへバイオメタンを供給する稼働中のバイオガス精製プラ
ントは小規模な1施設のみであったが、2014 年では4つの新しい施設が稼働している。輸
送用燃料としてのバイオガスの使用は、まだ始まったばかりであり、証明書を通してほぼ
完全に確立されている。2014 年末には、10 の圧縮天然ガス(CNG)充填ステーションが存在
した。
表 3-4 デンマークのバイオガス利用状況(2013 年)
GWh
1023
250
5 未満
15 未満
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
%
79
20
1%未満
1%未満
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
デンマークエネルギー庁は、将来のエネルギーシステム分析の一環として、2035 年と
2050 年それぞれのために多くのシナリオを設定している。そのシナリオは、2050 年に再生
可能エネルギーシステムを 100%使用するというエネルギー政策目標が反映されている。推
定では、2035 年までには化石燃料による電力と熱の供給は廃止される予定である。全ての
シナリオでは風力発電が中心的な役割を果たしている。シナリオ間の主な違いはエネルギ
ー供給に使用されるバイオマスの量である。これはバイオマスを大量に輸入する燃料ベー
スのシステムと、デンマーク自身が資源を供給できるレベルにバイオマスの使用を制限す
る電力ベースのシステム間の政治的選択を反映している。
シナリオは、2012 年時のエネルギー予測に基づいており、それは 2020 年には5TWh の
バイオガスが、2050 年には 12TWh のバイオガスが使用可能であることを前提としている。
また、2050 年での 12TWh は、利用可能なバイオガスを 18TWh まで増加させるためにメ
タンを介して上方修正されると想定されている。この制限量は利益が最大となる輸送、産
業部門や迅速に適応可能な発電設備を対象としている。
(3) フィンランド
2013 年におけるバイオガスからの総電力生産量は 82 の異なるバイオガス製造所から、
合計 589GWh であった。バイオガスの生産量は 2012 年時から僅かに2%程度増加してい
る。2つの共同消化プラントと1つの下水消化槽が 2013 年に生産を開始した。埋立地は
2012 年以降、約5%減少しているにも関わらず主要なガス生産所であった。
表 3-5 フィンランドのバイオガス生産の状況(2013 年)
プラントタイプ
下水汚泥、一般廃棄物
バイオ廃棄物、
農業
産業廃水
埋立地
合計
プラント数
16
11
12
3
40
82
エネルギー生産量(GWh/年)
126
124
4
7
295
567
出典:IEA Bioenrgy Task 37, Country Reports Summary 2014
― 10 ―
調査報告 ウィーン
理論的には年間4~6TWh までのバイオガスが廃棄物や肥料から生産されると推定され
ているが、バイオガス生産のための公式な目標は存在していない。貯蔵牧草からのバイオ
ガス収量はほぼ同僚であるが、現在使用されているのはごく僅かであり作物消化に対する
大規模な投資計画は存在していない。2014 年には、約 20 の共同消化プラントが建設中あ
るいは計画段階にあった。加えて、ガス化による木質ベースのバイオ代替天然ガス(SNG)
の生産が大幅に将来のガス供給に用いられる予定である。
バイオガスは、主にバイオガス生産施設にある熱電供給(CHP)プラントで熱と電力の生産
のために用いられるか、工業プロセスでの使用のためパイプラインでの輸送に用いられて
いる。バイオガス精製ユニットの数は3つから9つへ増加し、精製されたバイオガスは自
動車燃料に使用されるか天然ガスグリッドへ注入されている。自動車用燃料としてのバイ
オガスの利用は、初めて総バイオガス使用量のうち1%を超えた。
2014 年8月には9つのバイオガス精製プラントが運用段階に入った。水洗浄技術は一つ
の設備を除き全てにおいて使用されており、1つのプラントでは膜技術を使用している。
2014 年8月には、23 のバイオメタン、圧縮天然ガスのための公共充填ステーションと民
間による充填ステーションが稼働中であり、それらは主にフィンランド南部に位置する。
いくつかの精製所及び充填ステーションはまたグリッド外に存在している。輸送用に販売
されているメタンを圧縮天然ガスを混合したバイオメタンのシェアは 2014 年時で約 27%
であった。合計で約 1,800 のガス自動車が 2014 年8月に運転中であった。バイオメタンの
価格はガソリンと比べ約半分である。
表 3-6 フィンランドのバイオガス利用状況(2013 年)
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
GWh
151
404
11
126
%
22
58
2
18
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
(4) フランス
フランスでは 256 のバイオガスプラントと 245 の埋立地が存在している。245 の埋立地
の内、90 の埋立地はバイオガスを安定化させている。嫌気性消化プラントの数は 2013 年
末には倍増すると予測されている。
表 3-7 フランスのバイオガス生産の状況(2012 年)
プラントタイプ
プラント数
60
11
電力生産量
(GWh/年)
97
51
熱生産量
(GWh/年)
540
15
下水汚泥
都市廃棄物からの
バイオ廃棄物
産業
農場及び
集中型プラント
バイオガスを安定化した
埋立地
合計
80
105(90+15)
7
260(120+140)
350
390(190+200)
80
858
296
336
1,273
1,591
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
嫌気性消化利用のための原料の推定に関する環境エネルギー節約庁(ADEME)により行
われた近年の研究では、嫌気性消化の潜在的な資源は 2030 年までに 56TWh となる可能性
― 11 ―
調査報告 ウィーン
があることを示している。独自の計算に基づき、ADEME の推定では理論上 2030 年までに
70TWh の生産を見込んでいる。
フランスでは埋立地で発電用のバイオガスを回収するため農場及び集中型バイオガスプ
ラントを集中的に開発している。約 120 の農場嫌気性消化プラントと約 15 の集中型バイオ
マスプラントが 2013 末までに建設されている。また、80 の農食品産業の嫌気性消化プラ
ントが現在稼働中である。
2010 年の調査ではバイオマスエネルギー分野は比較的低い回復を示し、埋立地からのも
のが大部分であった。表 3-7 に関し、エネルギー回収されたものの内 44%は電気に変換さ
れ、56%は熱に変換されている。
バイオガスの精製プラントは4施設のみであるが、天然ガスグリッドにバイオメタンを
注入するための装置は 400 以上存在しており、それは近い将来精製プラント数の大幅な増
加を示している。今日では、生産される全てのバイオメタンは天然ガスグリッドに接続さ
れるか自動車用燃料として販売されている。フランスでは 13,500 台を超える自動車(内
3,500 台はトラック)に毎日 265,000 Nm 3 のバイオメタンが消費されている。また、37 の
公共充填ステーションと、約 130 の民間充填ステーションが稼働している。
(5) ドイツ
2013 年と比べ、バイオガスからの電力の生産はわずかに上昇した。しかし、これは成長
率の制限と 2014 年の改正再生可能エネルギー法の規制によるものである。したがって、エ
ネルギー供給におけるバイオガスの貢献は将来的には大幅に減少すると考えられている。
農業部門における 7960 のバイオガスプラントは、電力を 25,120 GWh/年、熱を 10,550
GWh/年供給しており、今日のバイオガス生産に最大の貢献をしている。(表 3-8 参照)
表 3-8 ドイツのバイオガス生産の状況(2014 年)
原料/プラントタイプ プラント数
エネルギー生産量(GWh/年)
電力
熱
1400
1,310
1,740
下水汚泥
180
850
360
バイオ廃棄物
7960
25,120
10,550
農業
80
450
190
産業
400
540
90
埋立地
10,020
28,270
12,930
合計
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
再生可能資源庁とドイツバイオマス研究センターのデータに基づくと、2020 年における
バイオガス生産のための技術的な一次エネルギーの潜在量は以下の割合で 123 TWh/年に
達すると考えられている。
・160 万ヘクタールの耕地からのバイオガス作物により 94 TWh/年、動物性肥料から 19
TWh/年、一般廃棄物から 7 TWh/年、産業廃棄物から 3 TWh/年を生産。
ドイツ環境・自然保護・建設・原子炉安全省からの情報によると、2013 年におけるバイ
オガスは自動車燃料としての利用はわずかである一方、大部分が電力と熱の生産に使用さ
れている。ドイツのエネルギー消費における電力、熱及び燃料のシェアはそれぞれ 4.7%、
1%、0.1%である。
― 12 ―
調査報告 ウィーン
表 3-9 ドイツのバイオガス利用状況(2013 年)
GWh/年
28,270
12,930
350
-
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
%
68
31
1
-
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
2014 年には総数 151 のバイオガス精製プラントが稼働中であり、93,650 Nm 3 /h のバイ
オメタンがガスグリッドに接続されている。前年のデータと比較すると(表 3-10 参照)、プ
ラント数は 25%増加した。アミン洗浄、水洗浄及び圧力スイング吸着法(PSA)は、最も一
般的に利用されている技術である。固定買取価格の削減のため、過去数年間の間の新しい
バイオガス精製プラント数は 20~30 プラント/年を下回っていると思われる。調査による
と、建設中または計画中のプロジェクトの内少なくとも5つは、2014 年の改正再生可能エ
ネルギー法及び最終的に明確化されていないため実現には至っていない。
表 3-10 ドイツのバイオガス精製技術の状況(2013 年)
精製技術
アミン洗浄
水洗浄
圧力スイング吸着法(PSA)
物理有機洗浄
膜分離
合計
プラント数
39
36
30
12
3
120
原料ガス容量(Nm3/h)
44,430
53,750
29,990
11,450
900
140,520
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
Erdgas Mobil 社の 2013 年のデータに基づくと、約 170 のバイオメタン充填ステーショ
ンでは 300 TWh のバイオメタンが販売されている。これはドイツにおける 95,000 台のガ
ス自動車が消費する天然ガスの 20%に相当する。バイオガスプラントに接続された Power
to Gas(P2G)プラントは、Solar Fuel 社、太陽光発電・水素研究センター、風力発電とエネ
ルギーシステム技術の Fraunhofer 研究所及び EWE energy 社との共同により Audi 社によ
りドイツ、Lower Saxony 州の Werlte における“Audi e-gas”プロジェクトで開発されて
いる。2013 年の秋以来、約 3,840 Nm 3 /日のメタンがガスグリッドに供給されている。二
酸化炭素は有機廃棄物を消化する地方のバイオガスプラントから供給されている。
(6) ノルウェー
2010 年におけるバイオガス生産量は約 0.5TWh である。他の発電方法と比較すると、同
年、水力発電は 118 TWh、天然ガス(液化天然ガス除く)による発電は 1,000 TWh であった。
表 3-11 ノルウェーのバイオガス生産の状況(2010 年)
原料/プラントタイプ
プラント数
生産量(GWh/年)
25
164
下水汚泥
11
63
バイオ廃棄物
4
3
農業
3
No data
産業廃水
85
270
埋立地
129
500
合計
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
― 13 ―
調査報告 ウィーン
現実的なバイオガス生産の潜在性は 2020 年には 2.3 TWh であると推定されている。そ
の内訳は、糞尿から 32%、産業廃棄物から 22%、家庭ごみからのバイオ廃棄物が 14%、
飲食業からのバイオ廃棄物が7%、埋立地から 12%、藁から 7%、下水汚泥から6%であ
る。
現在は 0.5 TWh のみが利用されており、具体的な計画に対しては別に 0.3 TWh を使用可
能である。これは 2020 年までのノルウェーにおけるバイオガス生産は 1.5 TWh の潜在性
が残されているということである。
バイオガスの生産及び使用は最近までは低かったものの現在では大幅に増加している。
バイオガスエネルギーのかなりの量は、生産プラント内部で使用されている。残りは燃料
として精製されるか電力や熱生産のために用いられる。
ノルウェーには 10 以下の精製プラントが存在しており、今日では約 400 台のメタンを燃
料とするバスと、約 1000 台の自動車、24 の充填ステーションもまた存在している。
(7) アイルランド
アイルランドにおけるバイオガスプラントの正確な数を詳細に入手することは困難であ
る。多くの廃水処理施設は消化装置を有しているが、それらは民間企業が所有しているた
めデータの照合を行うことは困難である。また、約8つの埋立地ガスプロジェクトや廃水
汚泥処理を含む 14 の産業施設が存在している。アイルランドバイオエネルギー協会
(IrBEA)は、デスクトップ開発がかなり進んだ状態の多くの他の施設が存在していると述べ
ている。アイルランドコンポスト及び嫌気性消化協会(Cre)は表 3-12 に示すように埋立地や
廃水処理施設に関するデータを提供している。
表 3-12 アイルランドのバイオガス生産の状況(2012 年)
プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物
農業
産業廃水
埋立地
合計
プラント数
14
8
8
30
設備容量(MWe)
No data
2.7
29
-
出典:IEA Bioenrgy Task 37, Country Reports Summary 2014
現在の施設は電力及び熱を供給するものが大部分である。これは REFIT 計画を反映した
ものである。しかしながら、国内のバイオガス産業が上向きとなった場合、生産されたバ
イオガスからの収益をより促進するためにガスグリッドへの注入が要求されるだろうとい
う見方もある。
Bord Gais 社の報告では、現実的なバイオガス産業は5%の牛、豚、羊のスラリー、75%
の家禽類のスラリー、50%の食肉処理廃棄物、25%の食品廃棄物及び 10 万ヘクタールの牧
草地(農業用地の 2.2%に相当)に基づいていると示唆している。同報告では、バイオガスは
バイオメタンに精製されガスグリッドに接続されるべきであると述べている。
これには約 180 の地方での消化装置と4つの屠殺場廃棄物処理装置及び4つの自治体消
火装置が必要となり、またそれらは全て 50,000 トン/年の原料規模を必要としている。その
投資コストは約 14 億ユーロと推定されている。
この投資規模は現在の天然ガス需要の 7.5%
分を代用することができ、輸送におけるエネルギーの5%を提供することができる。
アイルランドにはガスグリッドへの注入が可能な建設中のバイオガス精製プラントが1施
設存在している。この2年間では、多くの企業が天然ガス自動車(NGVs)への投資を行って
いる。アイルランドの Cork と Celtic Linen における Bus Eireann 社(アイルランドの国営
バスサービス企業)による初期試験は非常に有用なものであり、この産業は急速に成長する
と予想されている。天然ガスに基づく気体輸送用燃料市場はバイオメタンのグリッドへの
注入を容易にしている。
― 14 ―
調査報告 ウィーン
(8) スウェーデン
スウェーデンではバイオガスの生産量は数年前から焼く 1.3~1.7TWh とほぼ一定である。
主な理由は、新たな投資や新しいバイオガスプラントに対する合理的な利益を示すことが
難しいためである。新プラントで生産されたバイオガスは、埋立地で生産されるバイオガ
ス量の着実な減少により均衡状態にある。表 3-13 にスウェーデンの異なる種類のプラント
からのバイオガス生産量を示す。
表 3-13 スウェーデンのバイオガス生産の状況(2013 年)
プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物
農業
産業廃水
埋立地
合計
プラント数
137
23
39
5
60
264
バイオガス生産量(GWh/年)
672
580
77
117
240
1,686
出典:IEA Bioenrgy Task 37, Country Reports Summary 2014
2030 年までの嫌気性消化及びガス化産業からのバイオガス生産の可能性は最近評価され
てきている。その可能性は主に金融支援システムの開発や技術開発、化石燃料価格に依存
している。調査ではこれらのパラメータにより高・中・低の3つのシナリオが作られてい
る。
嫌気性消化産業からのバイオガス生産の潜在性はシナリオ3(低シナリオ)では1~3
TWh、シナリオ2(中シナリオ)では5~8TWh、シナリオ1(高シナリオ)では5~10TWh
と示されている。今日では、バイオガスの 50%以上はバイオメタンに精製されており、こ
のウェア利愛は 2030 年まで増加すると予想されている。
スウェーデンでは、バイオガスの約 50%は車両用ガスとして使用されている。この割合は
ガス自動車の増加による需要の上昇に対応するため毎年増加している。残りのバイオガス
の主要部分は熱生産に用いられている。スウェーデンにおけるバイオガス全体の使用状況
を表 3-14 に示す。
表 3-14 スウェーデンのバイオガス利用状況(2013 年)
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
GWh
46
521
907
165
%
3
31
54
11
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
スウェーデンではほぼ全ての精製バイオガスは“fordonsgas(自動車燃料)”と呼ばれる
自動車用燃料として使用されており、それはスウェーデンにおける年間バイオメタン生産
量が約 900 GWh であることを示している(表 3-14 参照)。バイオメタンは様々な技術(約 70%
は水洗浄、15%は圧力スイング吸着法(PSA)、15%はアミン洗浄)で 53 のバイオガス精製プ
ラントで生産されている。60 GWh の容量を持つ一つのプラントでは、バイオメタンは液
化され液化バイオガス(LBG)として販売されている。
自動車用燃料として用いられるメタンのうち、2013 年のバイオメタンのシェアは 58%で
あった。これは 47,000 台のガス自動車に使用され、その内 2,200 台はバス、750 台は大型
車両である。約 210 の充填ステーションが車両用ガスを分配しており、その内5つは液化
車両ガスも提供している。
― 15 ―
調査報告 ウィーン
(9) スイス
スイスでは約 610 のバイオガスプラント、6つの埋立地が存在しており 2013 年の総バイ
オガス生産量は 1,129 GWh であった(表 3-15 参照)。
表 3-15 スイスのバイオガス生産の状況(2012 年)
プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物(共同消化)
農業
産業廃水
埋立地
合計
プラント数
約 465
29
96
22
6
616
バイオガス生産量(GWh/年)
550
275
226
67
11
1,129
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
バイオガスは主に CHP プラントで電気と熱を生産するために使用されているが、バイオ
メタン生産量もまた急速に上昇している(表 3-16 参照)。
表 3-16 スイスのバイオガス利用状況(2012 年)
GWh
281
348
128
No data
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
スイスには 19 のバイオガス精製施設(主に圧力スイング吸着法(PSA)、アミン洗浄、物理
有機洗浄を使用)があり、2つは農業用地に、8つは廃水処理施設に、7つはバイオ廃棄物
の嫌気性消化施設にある。それらの総バイオメタン生産量は約 128GWh である。目標は
2016 年までに 300GWh をガスグリッドに接続することである。今日ではメタンを燃料と
する 11,000 台の自動車と 140 の充填ステーションが稼働している。
(10) オランダ
オランダでは、252 のバイオガスプラントがありそれらは約 4TWh のバイオガスを生産
している。異なるプラントタイプからのバイオガス生産量のデータは存在しない。代わり
に、設備容量は熱及び電気の生産によって得られ、表 に示すバイオガス精製プラントは
どのように生産業が区分けされているかを提供している。
プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物
農業
産業廃水
埋立地
合計
表 3-17 オランダのバイオガス生産の状況(2013 年)
プラント数 熱設備容量
電力設備容量 精製容量
(MW)
(MW)
(Nm3 バイオメタン/h)
82
8
46
470
11
2
11
3,892
105
18
129
606
13
0
18
5,312
41
0
15
1,625
252
28
219
11,905
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
― 16 ―
調査報告 ウィーン
オランダにおけるバイオガス産業の発展は主に原料コストの増加のために数年間にわた
りあまり強く進められてはいなかった。農業部門の発展は非常に低い一方で、産業及び一
般のバイオ廃棄物のエネルギー利用に開発の焦点が置かれている。固定価格買取制度の変
化のため、将来的には農業部門での新プロジェクトの開発が期待されている。
2014 年に発表されたグリーンガスロードマップでは、2020 年には消化産業により潜在的
には推定 12 億 Nm 3 のバイオガス(63%のメタン含有率、約 7TWh 相当)が生産されると結
論付けている。2030 年には、これは潜在的に 46 億 Nm 3 まで増加すると考えられており、
それはほぼ 30 TWh に相当する。
オランダでは、生産されたバイオガスの 78.5%(約 3 TWh に相当)は熱もしくは電力に利
用されている(表 3-18 参照)。
表 3-18 オランダのバイオガス利用状況(2013 年)
GWh
1,085
1,971
1 未満
71
利用法
電力
熱
自動車用燃料
その他
%
35
63
0
2
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
オランダのガスグリッドでは 88%のメタン濃度のみを要求しており、これはバイオガス
精製を、シンプルな設計の膜精製ユニットのような低品位のバイオメタンを製造するため
の技術にとって、より安価で適当なものにしている。2012 年には深冷分離技術を用いた最
初のバイオガス精製ユニットがオランダで稼働している。今日では、約 7,000 台のメタン
ガスを燃料とする自動車と 186 の充填ステーションが存在する。
(11) 英国
2013 年の全体としてのバイオガス(下水汚泥、埋立地ガスと嫌気性消化)からの電力容量
は 1,389MW であった。今日では 80 の食品廃棄物を処理する嫌気性消化プラントと 63 の
農場プラントがある。新プラント数はガス生産量に伴い 2005 年から急激に増加しており、
急速に上昇し続けると予測されている。英国の嫌気性消化産業からの発電量は 2012~2013
年の間で 26.5%上昇した。
表 3-19 英国のバイオガス生産の状況(2013 年)
原料/プラントタイプ
下水汚泥
バイオ廃棄物
農業
産業廃水
埋立地
合計
プラント数
146
55
63
25
345
634
発電量(GWh/年)
761
707
5,169
6,637
出典:IEA Bioenrgy Task 37 ,Country Reports Summary 2014
2011 年に英国エネルギー・気候変動省により発行された報告書“バイオガスについての
特性と成長の前提条件の分析”によると、その上昇傾向は継続し、2030 年での嫌気性消化
部門からのバイオガスの総発電量は約 23~37TWh になると推定されている。
英国におけるバイオガスの主な利用法は電力生産であり、埋立地、下水汚泥及び嫌気性
消化により 2013 年には 6.6TWh が生産されている(嫌気消化のみの生産量は 707 GWh)。
バイオガスからの熱の生産は現在再生可能熱インセンティブ(RHI)の受取りを承認されて
― 17 ―
調査報告 ウィーン
いるのは4つのバイオガスプラントのみであり、まだ完全には成熟したとは言えない。こ
れら4つのプラントは 2011 年 11 月から 2014 年8月の期間に 729MWh の熱を生産してい
る。RHI 制度はまだ揺籃期にあり今後数年間に認定されるプラント数は大幅に増加すると
考えられている。
英国でのバイオメタンの生産量は増加し始めている。2015 年の進捗状況は、最近、英国
Minworth のガスグリッド施設が稼働を始めたこともあり、非常に芳しいものである。英国
におけるその種としては最大のプラントは、1時間あたり 1,200 Nm 3 のバイオガスを 750
Nm 3 のバイオメタンに変換する能力があり、それは天然ガスグリッドに接続されている。
全体的には、2015 年末までには 60 のバイオメタン施設が稼働或いは建設男系にあると見
込まれており、年間 2 TWh を超える生産量を持つ見通しである。
燃料の面では、2014 年1月から5月にかけ約 200 万リットルの自動車用燃料がバイオガ
ス産業から製造されている。Gasrec Albury 社が所有する施設は現在英国で唯一の液化バイ
オメタンの生産拠点であり、年間推定生産容量は 4,000~5,000 トンであり、これは約 300
台の2系統燃料トラック、或いは 150 台の専用ガストラックに十分な燃料を供給できる。
(12) まとめ
年間のバイオガス生産量はドイツは約 80TWh、英国は 80TWh、オランダ及びフランス
は4TWh、それ以外の国は 0.5~2TWh である。埋立地ガスはドイツ、スイス、デンマーク
といった国では寄与としては小さいものである一方、英国のような国では埋立地で生産さ
れるバイオガスは最大の資源となっている。
生産されたバイオガスは約半分が自動車用燃料に使用されているスウェーデンを除き、ほ
とんどの国では熱及び電力生産に用いられている。またデンマークやドイツといった国で
は、近い将来自動車用燃料としてのバイオガスのシェアを増加させることに関心を持ち取
組んでいる。
4.EU 各国におけるバイオガスの導管注入の状況
(1) EU各国におけるバイオガスの導管注入の状況
バイオメタンの市場は欧州諸国全体で広く異なっている。一方ではスウェーデンやオラ
ンダ、ドイツ、スイス、オーストリアといったいわゆる先駆者は、バイオメタンの導管注
入技術における豊富な経験を有している。他方では、イタリア、ハンガリー、スロバキア、
クロアチア、ポーランドといった、導管注入を開始したばかりの国は情報を集めている段
階であり、バイオガス生産のための優れた農業経済状況を有しているが、バイオマス産業
の発展としては初期段階にある。表4-1に欧州各国の導管注入の状況を示す。
― 18 ―
調査報告 ウィーン
表 4-1 欧州各国の導管注入の状況
国
バイオメ
タンプラ
ント数
導管注入
を行って
いるバイ
オメタン
プラント
総バイオ
ガスプラ
ント数
(LFG,下
水、農業含)
農業
バイオ
廃棄物
(有機廃棄
物、都市廃
棄物)
汚泥
LFG
出典:COTRIBUTION GREENGSAGRIDS PROJECT TO DEVELOPMENT IN
BIOMETHANE MARKETS
(2) 現在使われる導管注入の必須要件
ガス網の安全性、完全性、操作性を確保するために、非従来・従来的なすべてのガスは
一定の最低ガス品質の要件を満たす必要がある。ガス品質のパラメータやその制限値は、
一般的に国により指定される。国境を超える場合、当事者により定められる。表4-2に、一
般的に国により制約されるパラメータを示す。
― 19 ―
調査報告 ウィーン
表 4-2 欧州各国の制約パラメータ
基準温度(℃)
体積
熱量
総熱量
ウォッベ指数
密度
メタンの価数
炭化水素凝縮点
水の露点
硫黄
着臭剤
メルカプタン
硫化カルボニル
組合わせの可能性
リフト指数
その他の指標
すす指数
金属カルボニル
不純物(液体及び固体)
.
芳香族化合物
ハロゲン
出典:Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
― 20 ―
調査報告 ウィーン
欧州連合域内では、天然ガス品質規格を調和する提案があり、欧州エネルギー取引の合
理化協会ガス部(EASEE-gas)が作った規格は、マドリード・フォーラムにより認められ
た。EASEE-gasは、行動計画とその実施のためのタイムスケールを提案する一般的な商慣
行を準備した。現在、整合ガス品質規格はガスグループHに入るガスにしか適用しない。こ
の仕様に従うガスは交換されることが可能である。欧州委員会の信認M400に基づき、天然
ガスHの品質のためにヨーロッパの規格を作る予定がある。この規格は2014年に想定され
ている。
表4-3は、パラメータを形成する整合仕様、制限値、ステータスを示す。
表 4-3 整合仕様、制限値、ステータス
ウォッベ指数
推奨。低ウォッベ指数値では困難と認識されて
おり、開始時の範囲は 13.76~15.81 が推奨さ
れている。
相対密度
総硫黄量
メルカプタン
いくつかの地下所蔵施設では 100ppm が許可
されている。
酸素
二酸化炭素
水の露点
炭化水素凝縮点
現在不確定
水素
出典:Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
ガスの非従来の供給は、現行国内および欧州の法律を遵守する必要があり、非在来型ガ
スが注入されるガスの品質規格に準拠する必要がある。パイプラインの所有者・オペレー
ターへ提供されるガスが上記の仕様を満たしていない場合、当事者は、そのガスを消費者
へ提供する導管に注入する前に、ガスの処理または他のガスとブレンドする可能性を検討
する。
ガス品質の変化の頻度と規模は、いろいろなガスを注入することか、注入の停止による。
それにより、特定の産業の天然ガスの利用に対して問題となる可能性があり、家庭用・産
業用の利用に対して安全上の問題も起こり得る。この面ではさらなる研究が必要である。
ガス注入により、メタンの含量が低くなると、原料として天然ガスを利用する企業(例え
ば、H2、メタノール、アンモニア、ススの製造者)に供給されるガスの商業的化価値が低
下するだろう。
(3)
国内ネットワークに注入されるNCSガスの必須要件
いくつかの国では、NCSガスの注入の特定の要件がある。表4-4に示す。
― 21 ―
― 22 ―
炭化水素凝縮点
水の露点
メタンの価数
注入ガス温度
相対密度
ウォッベ指数
総熱量
物理的性質
単位
NCS ガスの注入に関する要件
出典:Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
表 4-4
調査報告 ウィーン
― 23 ―
一酸化炭素(CO)
重金属
シアン化水素
塩化水素(HCl)
フッ素含有化合物
塩素含有化合物
アンモニア
臭気レベル(THT)
メルカプタン
無機結合硫黄(H2S)
総硫黄量
水
要素
単位
NCS ガスの注入に関する要件(続き)
出典:Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
表 4-4
調査報告 ウィーン
― 24 ―
ホスフィン
病原体/微生物
シロキサン
ばい塵
水素
芳香族炭化水素類
ベンゼン、トルエン、
キシレン
窒素
要素
単位
NCS ガスの注入に関する要件(続き)
出典:Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
表 4-4
調査報告 ウィーン
調査報告 ウィーン
(4) ガスのグリッド提供のための最低ガス品質要件
グリッドに注入されるNCSガスは少なくとも天然ガスの規格を満たす必要がある。
水素に基づくガスを除き、NCSガスと天然ガスの主成分はメタンである。そのため、バイ
オメタンと合成天然ガス(SNG)は天然ガスと似た性質がある。ただし、NCSガスは天然
ガスといくつかの重要な面において異なる。それらの違いを、グリッドに入っている天然
ガスの仕様のほか、適切な品質仕様で対処する必要がある。
(5) 一般必須要件
測定、制御、安全装置のための要件を評価するために、ガス源に関係なく、すべてのガ
スが導管に注入される前にリスクアセスメントが推奨されている。そのため、こういった
リスクアセスメントはNCSガスに関するさらなるリスクを検討するべきである。
ガス輸送企業は、天然ガスグリッドにガスを注入する処理施設が発熱量、密度、含水率、
ならびにガス源と要件によりメタン、CO、炭化水素、硫黄、酸素のレベルを連続的に測定
することを必要とする。最低要件も満たされない場合のために、提供を停止するシステム
も必要である。測定する必要のあるコンポーネントとパラメーター、その測定が行われる
べきの制度と頻度は、導管注入を行う側とグリッドのオペレーターの間に決定されるべき
である。
水素などのNCSガスが天然ガスへ挿入されるとき、計測ルールにより、消費者へ提供さ
れたガスの発熱量の測定システムを対応する必要がある可能性がある。
可能な限り、非従来源のガスの性質の測定は、国際的、欧州連合、各国の規格で定義され
た標準方法で実行されるべきである。ISO/TC 193 “Naturalgas”は、いくつかの大切な規格
を作ったが、いくつかの NCS ガスに関連する規格がない(例えば、PAH、微生物)。
(6) 生物学的化合物の要件
天然ガスグリッドにより提供されるガスは、消費者またはそのガスやガス状燃焼生成物
を扱う人の健康に悪影響を与える物質を含めてはいけない。また、天然ガス提供システム
とそのコンポーネントへの追加危険を避けなければならない。そのため、汚染のリスクを
排除するために、天然ガスグリッドに注入するバイオガスプラントなどが生物学的作用物
質が含めているリスクの高いNCSガスのために、品質保証システムまたはそれに相当する
原料、ガス生産、ガス処理を行う証明を有するべきである。
EU指令91/155/EECと2001/58/ECに従い、天然ガスグリッドへ注入されたバイオメタン
は安全データ用紙に仕様されるべきである。
(7) シリコン化合物に関する要件
シロキサンは、都市下水や埋立て廃物によく含めている可能性がある。燃焼時に、それ
らは特に燃焼エンジンで破壊的SiO2に変換される。エンジンへの損傷を避けるために、天
然ガスグリッドに注入されるシリコン化合物を含めるガスに対して、制限が必要である。
例えば、オーストリアでは、シロキサンのレベルは、<10mg/m3で決まっている。
(8) ハロゲン化合物に関する要件
消費者に提供されるガスには、ハロゲン化炭化水素を含めてはいけない。ガスバーナー
を使う時、銅がある場合、ダイオキシンやフランが作られる可能性がある。ハロゲン化炭
化水素はよく埋立てガスに入っている。もしそうであれば、そのガスを完全に監視できる
機能を備えた決まった産業消費者のみに提供しない限り、天然ガスグリッドに注入しては
いけない。イギリスでは、Ten Year Statementにグリッドに注入しても良い有機ハロゲン
化物の最大量を1.5mg/m3で決めている。
(9) アンモニアに関する要件
酸素の存在下で、アンモニアは鉄系材料(炭素鋼)と非鉄系材料(真鍮)を腐食する。
高強度の鋼(>400MPa)に対して割れのリスクも高められる。ガスの含水量が0.2%以上で
あれば、そのリスクは減少する。
― 25 ―
調査報告 ウィーン
塩化アンモニウムの腐食は、高いと知られている。
(10) バイオマスの発酵プロセスで生成されるガスの導管注入の最低ガス品質要件
発酵プロセスからのガスには、上述でのNCSガスの導管注入の要件が適用される。
(11) 熱プロセスで生成されるガスの導管注入の最低ガス品質要件
例えば、熱プロセスでバイオマスや石炭から生産されるガスは、石炭ガス化プロセスに
基づいているので、石炭または亜炭から生産される都市ガスと似ている。ガスの生成プロ
セスにより、そのガスのメタン割合はかなり高い、または主に水素と一酸化炭素の混合物
となる。バイオマスのガス化から生成されるガスの硫黄含有量と灰残渣は、石炭のガス化
から生成されるガスより少ない。精製後(生都市ガスのための同じプロセスを利用して)、
そのようなガスは都市ガスの代替として利用できる。ただし、ヨーロッパでは都市ガスが
ほとんどないため、天然ガスグリッドに入っているガスを増やすための利用に限られてい
る。このような使用は、一酸化炭素の完全なる除去、二酸化炭素と水素の部分除去を含む
より徹底的な処理を要求している。このようなガスは石炭ベースガスと同様に、基本的に
湿性のあるガスのため、乾燥が必要である。
いかなる固体炭素を含む燃料を熱でガス化させる場合でも、多環芳香族炭化水素(PAH)
とタールが生じる。Pahは、2つ以上の縮合芳香環を含む有機化合物として定義される。PAH
はガス管の中に凝結する可能性があり、官の閉塞の原因となりえる。また、それらの分解
は非常にのろいため、人間の体内に蓄積する可能性もある。タールも、ガスシステムの閉
塞を起こす可能性があり、燃焼時にススの形成につながる。
通常、PAHはガス化炉に形成され、グリッド注入に適したガスを生成するため、その後
に続Kuプロセスで除去される。
ドイツでは、ガスと水に関する協会DVGWにより、都市ガスの凝結を防ぐのために、単
環芳香族化合物の最大含有量を10g/m3と最大コンテンツダブル環芳香族化合物(ナフタレ
ン)の最大含有量を50/P mg/m3(Pはガスが注入されるところのバーの最大圧力とのこと)
に指定されている。DVGWによると、炭化水素の露点はガスが注入される管の温度より低
いことが必要とされる。
一酸化炭素は、ガス化プラントからのガスに含まれている可能性があり、非常に有毒で
ある。今日は、都市ガスの生産規模は非常に小さいが、デンマークとスウェーデンでは、
普通の都市ガス仕様は一酸化炭素のレベルを3mol%に制限を加える。
(12) 石炭に関するガスの導管注入の最低ガス品質要件
天然ガスとの類似性により、処理後、これらのガスに対して、天然ガスと同じような導
管注入要件が適用される。ただし、この種類のいくつかのガス源にはラドンなどを含む放
射性ガスはグリッドに注入してはいけない。
イギリスでは、2002年の放射性物質(天然ガス)指令により変更された1993年の放射性
物質法により、すべての1グラム当たり5ベクレル(ヌクレオチドごとに)の含有量を超え
た天然ガス施設の登録を必要とする。この制限値は、普段のイギリスの天然ガスのラドン
含有量の約10倍である。
(13) 水素を含むガスの導管注入の最低ガス品質要件
いくつかのNCSガスは、水素のかなり高い割合を含む可能性があるため、これらのガス
の化学的・物理的性質は天然ガスと著しく異なる場合がある。水素は以下のポイントに影
響を与える。
• 送電、配電、ガスの使用に関連する安全性
• ガスの燃焼特性に影響を与えるため、消費者の機器の性能
• パイプラインの材料の機械的性質(そのため、安全な利用とパイプラインの完全
性に大きな影響を与える可能性がある)
提供される水素の量は、消費者の機器や材料の条件と仕様、グリッドの操作条件などに
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調査報告 ウィーン
依存し、高圧グリッドの0.02%から低圧都市ガスグリッドの60%までの幅がある可能性があ
る。水素が天然ガスへ注入しても良い、許容範囲の結果を持つ条件を定義した
NATURALHYプロジェクトは2009年10月に完成し、この問題についてさらに調査研究が行
われているが、内容を拡張する必要がある。
消費者の水素を含むガスに対する知覚と受容も、重要な問題である。水素含有量は現在
のところでは、EASEE-gas により提案されたガス品質整合規格には指定されていない。
(参考資料)
・IEA Bioenergy Task 37, “Country Reports Summary 2014”, 2015, p.7-45.
・Matté Brijder, Mathieu Dumont, Axel Blume, “CONTRIBUTION
GREENGASGRIDS PROJECT TO DEVELOPMENT IN BIOMETHANE
MARKETS”, 2014, p.21.
・“Gases from non-conventional sources — Injection into natural gas grids —
Requirements and recommendations”, 2011, p.19-28.
・欧州委員会ホームページ、(http://ec.europa.eu/index_en.htm)
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