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我国の原子力発電所の運 転期間40年制限問題に関
我国の原子力発電所の運 転期間40年制限問題に関 する規制上の課題と提言 平成27年2月4日(火) (一社)日本保全学会 運転期間40年制限問題検討分科会 1 目 次 1. はじめに 2. プラント運転期間と寿命に関する考え方の歴史的経緯 (1) 初期のプラントの設計・建設段階において想定していたプラント運転期間と寿命 (2) 運転保守経験を蓄積した時点におけるプラント運転期間と寿命の考え方 (3) 現在のプラント運転期間と寿命の考え方 3. プラント運転期間とプラント寿命に関する考え方 (1) 原子力発電所の安全性 (2) 最新規制基準あるいは新知見のバックフィット 4. 原子力発電所設備管理のあるべき姿 (1) 機械系と人間系による安全性の確保 (2) 安全性確保の在り方(Minimum Safety Requirementsとリスク評価基準) (3) 経年劣化管理の在り方 5. 規制上の問題点と改善提案 (1) 本来あるべき姿から見た問題点と改善提案(40年制限撤廃、炉規正法改正提案) (2) 現行規制の運用上の問題点(手続期限、猶予期間など) (3) 運転期間延長申請に必要な特別点検の技術的問題点(P&B) 6. まとめ 2 1. はじめに 原子炉等規制法の改正(平成24年) • 運転期間40年制限 • 議員立法、技術的根拠なし 先進諸外国の原子力発電所の運転期間 • 米国:運転認可40年、認可更新+20年(60年)、さらに+20年(80年)の 規制について検討中、40年以上運転プラント30基 • 仏国:寿命規定なし、10年毎にPSR、60年運転への対応検討中 本来の設備管理 • 設備管理の基本は、検査技術で状態把握、評価技術で将来の健全性確認 • 健全性が確認されれば、運転継続 運転期間40年制限、規制手続の問題点 • 運転期限が無い場合、いつまで運転することになるか分からないので、長 期的視点できめ細かい設備管理が行われ、設備・機器を大事に使用していく という設備管理がなされる。また、経年劣化に関する試験・研究、改善努力 が積極的になされる。 (運転期間が有限な場合、最終時点で設備を使い切る、完全に減価償却させ るというマインドで設備管理するようにならないか?) • 規制手続の許容期間がタイト • 安全性が確保され、十分に劣化管理されていても運転継続できない場合が 生じることが懸念される 3 2. プラント運転期間と寿命に関する歴史 的経緯 (1) 初期のプラントの設計・建設段階において想定し ていたプラント運転期間と寿命 (2) 運転保守経験を蓄積した時点におけるプラント 運転期間と寿命の考え方 (3)現在のプラント運転期間と寿命の考え方 4 (1)初期プラントの設計・建設段階において 想定していた運転期間と寿命 ①我国の原子力発電業界の認識 ○建設時における設計の妥当性評価のため,30年又は40年を仮定。 ○この評価期間は,プラントの一部機器に発生する経年劣化事象の発生量や進展量を 評価し、当該期間中の健全性が確保されることを確認するために想定した期間で あり,いわゆるプラントの寿命(老朽化寿命)ではない。 原子炉(圧力)容器などの重要な機器の脆化評価や疲労評価は30年又は40年を仮定 実際の運転で想定される条件よりも厳しい条件を設定して評価* 中性子照射量 ⇒ 設計上,脆化を考慮しても十分な靱性を有することを確認(USE,遷移温度) 起動・停止等の繰り返し回数※ ⇒ 設計上,疲労割れが発生しないことを確認(UF<1) 運転開始後 ○運転経験や試験等により得られた知見を反映した的確な予防保全 ○経年劣化状況に応じた機器取替等の的確な保全活動 高経年化技術評価 プラント全体としては,当初の設計評価期間を超える運転が十分可能 *運転開始後、実際に運転実績を確認すると、運転条件は想定よりマイルドな場合が大部分。 したがって、経年劣化は設計時の想定よりも一般的に少ないか遅いことが判明。 5 ②米国の原子力発電業界の認識 米国の認可期間40年間の根拠 運転認可更新規則を最初に発行した際の官報(1991年12月13日付) 「司法省及び電気共同組合は、独占禁止の観点から20年の認可期間を支 持したが、電気事業者は、原子力発電所の減価償却の観点からより長い 認可が必要であるとの見解を示し、議会が40年の期限を決定した。」 NRCの許認可更新に関するホームページ(Fact Sheet) 「原子炉認可に対する最初の40年間の認可期間は、原子力技術の制限によ るものではなく、経済性と独占禁止の観点から決められたものである。」 「なぜ40年間か?」と題するNRCの別のホームページ 「原子力法は1934年コミュニケーション法をモデルにしており、そこで は放送局の操業が数年の間、認可されていた。そして、その免許に適合 していれば、認可の更新が認められるとされていた。原子力法において もこれと同様に、原子力発電所に対してそのライセンスを更新すること を認めた。議会が原子力発電所のライセンスに対して40年間を選択した のは、その期間であれば通常は発電所は電気料金によって費用回収が完 了するからである*。40年間の認可期間は、安全性、技術面あるいは環 境面に基づいたものではない。」 *Congress selected 40 years for nuclear power plant licenses because that was the time over which electric power plants typically were paid off in customer rates. 6 (2)運転保守経験を蓄積した時点における プラント運転期間と寿命考え方 ①運転開始後30年を迎える前の認識 経年劣化に対する取組の概要 ○原子力発電導入初期(1970年:敦賀1号運開)から日頃の巡視点検,機能試験,広範囲な点 検・手入れ等の予防保全,他プラントでのトラブルの水平展開を通じて設備の健全性・信頼 性を維持・向上 ○1976年度より,電気事業者は,電力共通の課題解決のための研究・開発の枠組みとして電力 共通研究の取り組みを開始。 ○1984年頃までは,個別機器で発生した経年劣化事象として,疲労,応力腐食割れ,絶縁低下, 蒸気発生器伝熱管に関連した劣化事象など中心に,原因究明,対策を検討 ○1985年度より,供用期間延長のための研究として,中性子照射脆化,照射誘起型応力腐食割 れ,二相ステンレス鋼の熱脆化,腐食,コンクリートの性能低下などの研究を追加 ↓ ○これらの研究成果は,発電設備技術検査協会が中心となって実施した国のプロジェクトであ る「プラント長寿命化技術開発プロジェクト(PLEX)」(1987年度~1996年度)等に反映 敦賀1号運開後17年目 上記の結果より、 経年劣化状態を検査により的確に把握し,その後の進展を評価した結果に基づき、的確な時期 に必要な補修や取替等の予防保全を継続すれば、プラント全体の健全性は維持でき、長期運転 可能と認識。 旧資源エネルギー庁報告書「高経年化に関する基本的な考え方」(1996年4月)に基づく高経 年化対策に関する仕組みづくりに反映 7 高経年化に関する研究開発の例 この他にも,炉内構造物取替に関する実証試 験や減肉配管の耐震信頼性実証試験などの各 種実証試験(@NUPEC)も実施されてきている。 8 ②40年を超える長期運転を想定した高経年化への対応経緯 H8.4 「高経年化に関する基本的な考え方」(通産省) 60年運転を想定した技術評価を踏まえ、長期運転への対応の基本的な考え方を国が提示、 H11.2 敦賀1,美浜1,福島一1 ~ 事業者に対し高経年化対策を実施するよう通知 H11~ 高経年化技術評価(30年運転時)報告書を国へ提出 国は事業者の60年運転を想定した評価、保全計画が適切であり問題ないと判断 H15.10 高経年化技術評価の実施を義務化 (実用炉規則の改正施行) H18.1 高経年化技術評価の国への報告を義務化 (実用炉規則の改正施行) 事業者は技術評価報告書(長期保全計画含む)を国に提出、国はその妥当性を評価し結果を公表 H21.1 高経年化技術評価に基づく長期保守管理方針の保安規定認可事項化 事業者は保安規定変更認可を申請、国は意見聴取会を含む審査を行い認可 H21~ 高経年技術評価/長期保守管理方針(40年運転時)認可(実用炉規則の改正施行) 国は事業者の60年運転を想定した技術評価及び今後10年の長期保守管理方針 を妥当であると判断 敦賀1:H21.9 美浜1:H22.6 美浜2:H24.7 上記の結果を踏まえた認識は、 経年劣化状態を検査により的確に把握し,その後の進展を評価した結果に基づき、的確な時 期に必要な補修や取替等の予防保全を継続すれば、プラント全体の健全性は維持でき、長期 運転可能。 H25.7 新規制基準(運転期間延長認可制度*)施行 *運転できる期間を40年とし、その満了までに認可を受けた場合、1回に限り20年を上限に延 長を認める制度(これまでの高経年化対策制度に加え、40年超運転のための運転期間延長認可申 請が必要) *事前に、特別点検の実施とその評価、延長期間に対する劣化評価・保守管理方針の検討が必要。 9 原子力発電所の保全活動の概要 運開後 年数 活動 20年目 50年目 60年目 連続的、定期的 定期検査ごと(13ヶ月) 定期事業者検査 高経年化技術評価 長期保守管理方針 40年目 ・・・ 日常点検・保全、 状態監視、 定期試験等 定期安全レビュー (PSR) 30年目 10年ごと ・・・ 30年目 40年目 50年目 10年の長期保守管理方針 運転期間は基本的にここまで (新規制基準) 10 高経年化技術評価の概要 【高経年化対策制度】 運転開始30年を経過する原子炉施設について、以降10年ごとに機器等の高経年化技術評価を行い、 これを踏まえて策定する長期保守管理方針を保安規定認可に係らしめ、遵守を義務付けている。 高経年化技術評価の流れ 評価対象機器*の抽出 *安全機能を有する機器、重大事故等対処設備等 (劣化事象) ・低サイクル疲労 ・中性子照射脆化 ・2相SUS熱時効 ・IASCC ・電気計装品の絶 縁低下 ・コンクリート強度低下 /遮へい性能低下 ・その他 (摩耗、減肉等) 対象機器のカテゴリ化・グループ化 グループ内代表機器の選定 高経年化評価上着目すべき経年劣化事象を抽出 60年の運転を想定した劣化評価/健全性評価 (健全性評価+現状保全→総合評価) グループ内全機器への展開評価 耐震/耐津波安全性評価 通常保全に加え、「長期保守管理方針」を策定 40年目の追加評価 ・30年目実施の高経年 技術評価の検証 ・保全実績の評価 ・30年目の長期保守管 理方針の有効性評価 11 高経年化技術評価の実施プラント <30年目の高経年化技術評価> プラント 評価年 運転開始 <40年目の高経年化技術評価> 認可 美浜3 30年目 1976.12 2006.7公表 伊方1 30年目 1977.9 2007.8公表 東海二 30年目 1978.11 2008.7公表 大飯1 30年目 1979.3 2008.7公表 大飯2 30年目 1979.12 2008.10公表 玄海2 30年目 1981.3 2010.11 伊方2 30年目 1982.3 福島二1 プラント 評価年 運転開始 認可 敦賀1 40年目 1970.3 2009.9 美浜1 40年目 1970.11 2010.6 美浜2 40年目 1972.7 2012.7 島根1 40年目(冷温) 1974.3 2014.2 高浜1 40年目(冷温) 1974.11 2014.11 2012.3 玄海1 40年目(冷温) 1975.10 審査中 30年目(冷温) 1982.4 2012.4 高浜2 40年目(冷温) 1975.11 審査中 福島二2 30年目(冷温) 1984.2 2014.1 女川1 30年目(冷温) 1984.6 2014.5 川内1 30年目 1984.7 審査中 高浜3 30年目 1985.1 審査中 高浜4 30年目 1985.6 審査中 福島二3 30年目(冷温) 1985.6 審査中 柏崎刈羽1 30年目 1985.9 審査中 川内2 30年目 1985.11 審査中 旧制度 *2009.1以前は事業者報告書を国が評価 し結果を公表 新規制後(NRA審査) 12 長期運転を念頭にしたこれまでの取り組み 原子力発電所の高経年化に対応した安全確保のための保全活動 ○劣化評価等を踏まえた保全方法の改善、予防保全対策、計画的な機器の取替え等の実施 【PWRの例】 >予防措置の例:原子炉容器インコネル管台部の応力改善(WJP、ショットピーニング)や690系溶金のイン レイ施工 >大型機器の取替え例:蒸気発生器、原子炉容器上蓋、2次系熱交換器・配管、低圧タービン等) 【BWRの例】 >予防措置の例:PLR配管溶接部の応力改善(CRC,IHSI,水冷溶接等)や炉内構造物のSC C対策として水素注入やICMハウジング内面へのノーブルメタルコーティング等 >大型機器の取替え例:炉心シュラウド等の炉内構造物,PLR配管,給水加熱器,配管、タービン等 ○高経年化技術評価(現状保全活動の有効性評価を含む)の実施、長期保守管理方針策定 (→保安規定記載)による保全活動の充実 ◆劣化評価技術、保全技術向上等のための試験研究の計画的実施 劣化評価・健全性評価技術/劣化管理技術 点検・検査・監視技術保全技術(取替、補修、予防処置、劣化回復・緩和等)等 (劣化事象:照射脆化、熱時効、IASCC、疲労、絶縁低下、コンクリート強度低下、その他) →民間自主研究(電力共通研究等)、国プロ実証試験研究等 ◆規格基準化の推進 日本原子力学会 「原子力発電所の高経年化対策実施基準」、 日本機械学会 「維持規格」、「配管減肉に関する規格」、「環境疲労評価手法」等 日本電気協会 「原子炉構造材の監視試験方法」等、JANSI炉内構造物等点検評価ガイドライン ◆海外の技術調査、海外取り組みへの参画 IAEA I-GALLへの参加協業、EPRI,EDF等との共同研究等 13 長期安定運転に備えた高経年化対策工事実績 大型機器の高経年化対策工事(初期PWR炉の例) 14 長期安定運転に備えた高経年化対策工事実績 大型機器の高経年化対策工事(初期BWR炉の例) 15 (3)現在のプラント運転期間と寿命の考え方 我国におけるこれまでの認識(新規制基準施行以前) 国際原子力機関(IAEA)の考え方 米国NRCの考え方 欧州各国の考え方 他産業の考え方 上記で共通して言えることは、 経年劣化状態を検査により的確に把握し,その後の進展を 評価した結果に基づき、的確な時期に補修や取替等の予防 保全を継続実施することによりプラント全体の健全性は維 持でき、長期運転は可能、と認識。 16 国際原子力機関(IAEA): 発電所を安全に運転することが実証されている限り、元 の設計寿命を超えて継続運転することは可能。多くの加 盟国では発電所の寿命に関する明確な限度を設けていな い。(IAEA-TECDOC-1305,2002年) 原子力発電所の設計寿命は、一般に30年から40年。 この設計寿命は、 下記を行い、公衆の健康と安全、ある いは環境への脅威にならないことを実証できるなら10年 から20年、あるいはそれ以上の延長をすることが可能で あろう。(IAEA Technical Report No.448,2006年) • プラントの解析評価、傾向分析 • 設備やシステムの更新 • 予防保全・試験・経年劣化管理の強化 • その他の方法 17 米国原子力規制委員会(NRC): NRCが原子力発電所に対して発給する運転認可の有効 期間は、最長40年間。 認可更新手続きによって40年を超えて運転を継続する ことも(特例扱いとしてではなく)普通に可能。 1回の認可更新で申請できる追加認可期間は最長20年 (経年劣化に関する現在の理解を確証し、再評価する 機会を与えるため)。 その後も申請者が希望するなら複数回申請できる。 ○運転認可期間40年満了後、更新認可できる制度(10CFR Part 54)があり、2014年 12月現在、9割以上のプラントが60年の運転更新認可を申請済み。 状況 プラント数(2014.12現在) 99 稼動中 92 申請済 未申請 認可済 73 審査中 19 うち、30基は既に 40年を超えて運転 7 ○米国では、さらに、60年を超える運転期間(認可更新)について、NRCがNEI(事 業者側)の意見を聴き、NRC委員会および原子炉安全諮問委員会の場で検討を進め 18 ている。 欧州各国の考え方 欧州の主要国では、運転期間に関して明確な期限を設 けている国は少ない。 欧州諸国の多くが10年毎に実施する定期安全レビュー (PSR)によって、運転継続の妥当性が評価されている。 国名 状 況 フランス 2009年に事業者(EDF)が60年運転を提案。規制側は概ね 満足できるとしつつ、安全上の追加要求等を出している。現 在、事業者が対応中。 スウェーデン PSRの実施が義務付けされていて、40年超運転している発電 所も1基ある。 スイス PSRの実施が義務付けされていて、全5基のうち3基が40年 超の運転をしている。 ベルギー PSRの実施が義務付けられるとともに、2009年には政府が 50年間の運転を可能とする判断を示している。 スペイン PSRで運転更新を行うが、現在、今後の長期運転への対応検討が 進められている。(2014年5月 サンタ・マリア・デ・ガローニャ発電所 (運転開始後43年経過)は、運転期間を60年とする申請書を国 へ提出) ドイツ 32年間の期間制限を設けていたが、福島事故を受けて政治的 判断から2022年までに順次閉鎖することが決定された。 19 世界各国の長期運転実績 国名 運転認可期間ア プローチ ドイツ PSR 頻度 • 検査プログラムを 10年毎 通じた継続的なモ ニタリングと安全 但し最初の運転 レビュー 認可は5年間 • 定期的な運転認可 の更新及び総合的 な安全レビュー • 検査プログラムを 10年毎 プラント寿命 通じた継続的なモ (通常) ニタリングと安全 レビュー • 規制機関の裁量に よる要求に基づい て詳細な安全評価 を実施 プラント寿命: • 検査プログラムを 10年毎 通じた継続的なモ 公称期間32年 ニタリングと安全 レビュー •総 合 的 な 安 全 レ ビュー フ ィ ン ラ 法定期間 (10~20年) ンド フランス 管理方法 (注) 2014年6月末現在 運転期間の実態 (基数)(注) 全 30年 40年 基数 超 超 補足 4 4 0 58 29 0 2009 年、EDF は60 年運転の ための一般プログラムを提案。 2013年6月に規制側はこれを コメント付きで承認。 9 2 0 福島事故を受けて、2011年6 月、従来のエネルギー政策を 転換し、2022年までに国内の 原子炉全17基を停止する原子 力法改定案を閣議決定し、議 会で可決された。同事故後一 時停止中の8基はそのまま閉 鎖され、残りの9基も2022年 までに順次、閉鎖される。 法定の10年検査プログラムにリンクして実施されるが、詳細な評価と時期はCase by Case 以前はPSRの実施は電力会社の自主的なものであったが、2002年4月の原子力法改定によってPSR実施が要求された。 この公称期間の制限は、運転期間ではなく、残存発電量に基づく 20 世界各国の長期運転実績 国名 運転認可期間 アプローチ ベルギー プラント寿命 カナダ チェコ 管理方法 PSR 頻度 • 検査プログラムを 10年毎 通じた継続的なモ ニタリングと安全 レビュー •総 合 的 な 安 全 レ ビュー (注) 2014年6月末現在 運転期間の実態 (基数)(注) 全 30年 40年 基数 超 超 補足 7 5 0 2003年1月原子力法改定によ り法定期間を40年と設定した が 、 2009 年 10 月 、 政 府 は Tihange-1について50年間の 運転が可能との判断を示し、 2012年6月にこれを認めた。 法定期間(2~5 • 検査プログラムを 要求さ 年) 通じた継続的なモ れてい ニタリングと安全 ない。 レビュー • 定期的な安全解析 19 10 2 プラント寿命 2008年発行の規制文書におい て寿命延長のプロセスを規定。 各発電所の設計時の想定寿命 はおよそ30年とされているが、 これを超えて運転する場合に は、総合安全性評価(ISR) を行い、承認を受ける必要が ある。 6 0 0 • 検査プログラムを 10年毎 通じた継続的なモ ニタリングと安全 レビュー • 総合的な安全レ ビュー 21 世界各国の長期運転実績 国名 運転認可期間 アプローチ 管理方法 ハンガリー プラント寿命 • 検査プログラムを 通じた継続的なモ ニタリングと安全 レビュー • 総合的な安全レ ビュー要件は政府 の政令に記載 日本 プラント寿命 • 検査プログラムを 通じた継続的なモ ニタリングと安全 レビュー • 安全レビュー:PSR 法定期間(原 • 検査プログラムを メキシコ 子力施設に対 通じた継続的なモ して30年間) ニタリングと安全 レビュー • 総合的な安全レ ビュー オランダ プラント寿命 • 検査プログラムを 通じた継続的なモ ニタリングと安全 レビュー • 総合的な安全レ ビュー( PSR 頻度 10年毎 (注) 2014年6月末現在 運転期間の実態 (基数)(注) 全基 30年 40年 数 超 超 4 1 0 10年毎 47 19 5 10年毎 2 0 0 10年毎 1 1 1 補足 原 子 炉 等 規 制 法 ( 2012 年 改 正 ) で 最 大 40 年 間 と定められた。ただし、 1回のみの更新はあり。 1973 年 に 期 限 な し の 運 転認可を発給(ボルセラ発電 所)。2034年まで(60年 間)の運転(条件付き)を 2006 年 6 月 に 合 意 し 、 2013年3月に新しい認可 22 が発給された。 世界各国の長期運転実績 国名 韓国 スペイン 運転認可期間 アプローチ 管理方法 PSR 頻度 プラント寿命 • 検査プログラムを通 10年毎 じた継続的なモニタ リングと安全レ ビュー • 総合的な安全レ ビュー • 検査プログラムを通 10年毎 可変 じた継続的なモニタ (5~10年) リングと安全レ ビュー • 総合的な安全レ ビュー ス ウ ェ ー プラント寿命 • 検査プログラムを通 10年毎 じた継続的なモニタ デン リングと安全レ ビュー • 総合的な安全レ ビュー (注) 2014年6月末現在 運転期間の実態 (基数)(注) 全基 30年 40年 数 超 超 23 3 0 8 3 0 10 8 1 補足 経年劣化管理プログラム ( AMP ) と 長 期 運 転 に 関しては、米国の規則 (10CFR54)、IAEA NSG-2.12 ( 2009 ) そ し て 西欧原子力規制者会議 (WENRA)の調和要求 に従う。 23 世界各国の長期運転実績 国名 運転認可期間 アプローチ 管理方法 PSR 頻度 (注) 2014年6月末現在 運転期間の実態 補足 (基数)(注) 全 30年 40年 基数 超 超 経年劣化管理プログラ 5 5 3 ム(AMP)ガイドライ ン(ENIS-B01、2011 年)は、IAEA NS-G2.12を参照。 スイス プラント寿命 • 検査プログラムを通 (2プラント じた継続的なモニタ は、歴史的な リングと安全レ 技術問題に基 ビュー づいて運転認 • 総合的な安全レ 可期限が制限 ビュー されている) 10年毎 英国 プラント寿命 • 検査プログラムを通 じた継続的なモニタ リングと安全レ ビュー • 総合的な安全レ ビュー • 施設または活動に関 法定期間 して許認可基準を維 (40年) 持することを設置者 (20年の運 転認可更新の に要求する全体的な オプションが パフォーマンス評価 及び規制要件がある ある。) 10年毎 16 8 1 PSR は 要 求されて いない。 100 65 27 米国 原子力法で認可期間は 最大40年、ただし更新 は可能と規定。 10CFR54にて、認可更 新の要件を制定。 現在、2回目の認可更新 (合計80年運転)につ いて検討中。 24 ② 他産業の認識 火力発電プラント・化学プラント 実際の寿命 (例:プラント 40年超運転) >設計上の想定寿命 ≧ (例:プラント40年) 通常の運転保守の範囲を 超える費用投入 大規模補修・改修 機器・設備の取替え・更新 (例:機器10年~20年) 設計の安全率 実際の運転条件・運転履歴 機器の更新 経済性向上 技術的競争力増強 安全性向上 25 ② 他産業の認識 老朽火力(40年以上前から稼働)の割合の合計 ・基数ベース:震災前の2010年度 15.4% ⇒ 2013年度 26.2% ・設備容量ベース:震災前の2010年度 10.2% ⇒ 2013年度 20.4% 出典:資源エネルギー庁「平成25年度エネルギー に関する年次報告」(エネルギー白書2014) 図 老朽火力の割合(基数ベース) 40年を超えても、検査と評価で健全性が確認でき れば、運転を継続している ・設計上の許容値には安全余裕が含まれ、100,000時間が直ちに実際の寿命に はならない ・補修・取替えを含め予防保全、事後保全により適切な保守管理を実施 26 3. プラント運転期間とプラント寿命に 関する考え方 (1) 原子力発電所の安全性 (2) 最新規制基準あるいは新知見のバックフィット 27 (1) 原子力発電所の安全性 原子力発電所の安全性 安全設計と経年劣化管理による安全性確保 建設時点での規制基準に基づく安全設計と安全機能低下をもたら す経年劣化の管理 上記を踏まえたリスク評価結果で安全性を判断すべき 40年設計の意味 寿命の定義→設計寿命と実際の寿命(技術的寿命と経済的寿命) 原子力、他産業 Critical Components(格納容器、建屋など) プラントの安全性評価 ⇒ 定期安全レビュー(PSR) 実際の運転保守経験に基づく経年劣化評価結果と建設段階での想 定との違い ⇒ 高経年化対策(PLM) 28 原子力安全の構造 29 機械系の安全機能を発揮させるための 人間系による活動 人間系によるマネージメント (意思決定、実行管理) 有事 Pモニタ 計画 平時 事故対応 予見 A 対処 対処 学習 Dモニタ 実施 モニタ P 検査 計画 予見 A 保全サイクル D検査 実施 是正 PDCA C状態 評価 C 機能 評価 事故対応遂行能力 要領書 (情報) 燃料管理 運転管理 保全管理 事故対 応要員 資機材 仮設備 保全遂行能力 要領書 保全 要員 資機材 30 安全機能を担保する設計と保全 既存プラントは新基準 適合のための改造が容 易でない。 個々の規制基準の適合 性ではなく、トータル の安全性で評価するの が合理的。 きめ細かい経年劣化 管理が必要。 31 40年設計の意味 技術的寿命 新知見に基づく安全性確保のための設備改造等が実施で きない 経年劣化が進行した設備・機器を補修・取替等を実施する 技術がない、物理的に実施できない 40年設計はプラントの安 経済的寿命 全性に直接関係ない。 40年を超えていても、い 保全という投資の費用対効果 なくても、安全である場合 保全コストと更新コストとの比較 も安全でない場合もある。 その時点あるいは将来の時 他電源との経済的競争力などで決まる 点における条件で安全性・ 健全性を評価し判断する必 40年設計は、このいずれでもない 要がある。 すでに評価す プラント建設時の40年設計 る仕組み(PSR, 建設時における設計の妥当性評価のため,30年又は40 PLM)は確立さ れている。 年を仮定。 この評価期間は,プラントの一部機器に発生する経年劣 化事象の発生量や進展量を評価し、当該期間中の健全性 が確保されることを確認するために想定した期間であり, いわゆるプラントの寿命(老朽化寿命)ではない。 32 (2) バックフィット 先進諸外国の考え方 国名 米国 規制要件 10CFR50.109 「バックフィッティング」 説明 • 公衆の健康と安全の「適切な防護」を確保するための措置に該当す る場合は、バックフィットを実施 • 「適切な防護」が確保されており、「追加の防護」のためである場合、 * バックフィット解析 を実施 英国 • 設置者が対策を実施しない場合、その対策によるリスク低減量が 費用に比べて不均衡に小さいことを提示して正当化しなければなら ない。 ― • 定期安全レビュー(PSR)で摘出された不適合点と改善措置(バック フィット措置)の取扱いは、PSR 技術評価手引きに基づいて判断 フランス 原子力の透明性と安全 • 設置者に対して10年間隔で原子力施設のPSRを行うことを要求 に関する法律(TNS 法 • PSRでは、施設に適用される規則基準に照らして施設の状況を評 2006 年) 価し、安全、公衆の健康及び衛生又は自然環境の保護に対して施 第29 条「バックフィット」 設がもたらすリスク又は不都合についての評価を行う ドイツ • 原子力法の目的の1つである公衆防護等を達成するため、既設プ ラントに対して追加の要件を課すことを認めている • プラントの設計がそれを可能とする限り、バックフィット措置を行い、 ― 既設プラントの安全性を最新の科学技術の水準に適応させる • 国際的に受け容れられている基準も規制機関によるバックフィット 要求の根拠となる。 *当該問題に伴うリスクをPRAで試算し、安全目標スクリーニング基準に照らし合わせ、リスクが低いとみなされたものは バックフィットを実施しない。リスクが低いとみなされないものは、コスト利益解析(Value/Impact 評価)でバックフィット措 置によるコスト増加と安全性向上を対比し、安全性向上が上回るとバックフィットを実施 33 原子力規制庁の考え方 新規制基準導入以前 法的に明文化されたバックフィット規制はなかった。 たとえば、大地震の経験を踏まえ、事業者が安全上重要な設備に対して耐震性を 評価確認し、必要に応じて対策・補強をする、いわゆるバックチェックを行い、 国がそれを確認する、というやり方をしてきた。 新規制基準導入後(原子力規制庁) 原子炉等規制法第四十三条の三の十四 発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施 設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなけれ ばならない。(バックフィット要求と考えられる。) 第四十三条の三の二十三 原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造 若しくは設備が・・・技術上の基準に適合していないと認めるとき、・・・その 発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又 は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ず ることができる。 ・現在行われている新規制基準適合性審査でも新基準への適合性が厳しく求め られている。高経年プラントも例外とされていない。 ・一方、規則/ガイドには、”同等の性能があればよい”との記載がある。 規制の目的は何か? 規制基準に適合させることか、それとも法 の目的(安全性確保)を達成することか? (注) • バックフィットの適用範囲、適用対 象選定方法、判断基準、猶予期間な どが具体的に明確にされていない。 • 行政裁量の幅が大きくなりすぎない ようにすべき。 原子力基本法の目的 :原子力利用を推進し、将来エネルギー資源を確保することにより、学術進歩と産業振興 とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与すること 原子炉等規制法の目的:原子力の平和利用を前提として公共の安全確保等のため規制を行い、国民の生命、健康、 34 財産や環境等を守ること 4. 原子力発電所設備管理のあるべき姿 (1) 機械系と人間系による安全性の確保 (2) 安全性確保の在り方(Minimum Safety Requirementsとリスク評価基準) (3) 経年劣化管理の在り方 35 保全作業前後の機器状態と 劣化経路 最適な点検周期 を追求 機器の健全度 保全後の 機器状態 保全後の 機器状態 修復 劣化 劣化 保全前の 機器状態 (劣化状態) 保全方法(修復方法)は 多種多様。安全性と経済 性の最大化を追求。技術 の進歩により時代ととも に最適なやり方が変わる。 保全前の 機器状態 (劣化状態) 劣化 故障 状態 運転時間 36 保全の構造 機械系、人間系および保全活動の関係 劣化、機能低下 の生じるシステム 劣化、機能低下を 修復するシステム 機械系 人間系 保全活動 P 劣化等の 発生・進展 A 大規模複雑プラン トシステム 是正 措置 劣化等の 修復 計画 保全サイクル PDCA C 評価 D 実施 保全実行部隊 37 計画と実行 (PとCの類似性、 DとAの類似性) 保全サイクル PDCA 検査計画 検査実施計画 対象機器 要領書 検査内容 (検査方法) 保全実行部隊 (作業チーム) 検査計画 検査時期 資機材(ツール) P Plan 是正実施 A Maintenance Action Cycle PDCA D Do 検査実施 C Check 是正実施計画 要領書 結果評価 是正計画 是正計画 対象機器 保全実行部隊 (作業チーム) 是正内容 (是正方法) 資機材(ツール) 是正時期 38 38 機器の健全性確認方法 機 能 A’ B’ ○ 機能喪失レベル 将来予測の信頼性は、検査の 信頼性と評価の信頼性に依存 ○ C’ 経 年 劣 化 劣化の予測評価が完璧なら 検査・モニタリングは不要。 予測評価結果に従って、必 要時に是正(補修等)のみ 実施すればよい。 C 当初予測 ○ 機器の健全性を確認するには、 検査と評価の両方が必要。 いずれを欠いても将来の健全 欠陥測定値 性を確認できない。 A 欠陥検出限界 潜伏期間 B ○ 今回検査 時期 今回予測 測定値と予 測評価の組 合せで将来 予測。これ により予測 精度を向上 させる。 運転時間(実時間) 39 4. 原子力発電所設備管理のあるべき姿 (1) 機械系と人間系による安全性の確保 (2) 安全性確保の在り方(Minimum Safety Requirementsとリスク評価基準) (3) 経年劣化管理の在り方 40 安全規制のハードル 高いハードル 厳しい取締り ⇒警察国家 安全性向上意欲 を減退させる。 社会・国民の 安全を守る。 可能であれば ハードルは低い方が良い。 規制基準 Minimum Requirements 規制基準に満足せず それを超えて 実質的な現場の安全性を 常に向上させようとする 事業者の努力を引き出す。 事業者自らが 安全性向上に 取り組む環境作り 上げる 環境を保全 する。 下げる 事業者の活動 を阻害しない。 事業者の活動 により社会を 活性化。 規制基準は何のためにあるか? 41 規制基準( Minimum Requirements) とバックフィット 新知見は常に新たにもたらされ、技術は常に日進月歩 規制基準は、新知見・新技術を取り入れて制定された瞬間に陳腐化 したがって、あらゆる新知見を完全バックフィットすると、産業プラ ントの運営は成り立たない 新知見が得られた場合、プラントの安全性を評価して判断すべき ①新知見に基づく対策は、プラントが具備すべき必要最低限の安全性を確保するのに 不可欠か否かを評価(Minimum Requirements) ②リスク評価等により、安全性を評価し、対策の有効性や優先度を評価 ③以上を踏まえて総合的に対策を検討・実施 規制当局は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境を守るために必 要な最低限の規制基準(Minimum Requirements)を明確にする必要 がある 規制当局は、新知見に対する対策が必要最低限の安全性を確保するの に不可欠な場合、新知見に基づく新規性基準のバックフィットを実施 すべき その際、規制当局は新規制基準の要求(文面)を既存プラントにその まま適用するのではなく、プラントの安全性を評価し、代替策を許容 すべき。また、リスク評価等により、合理的な猶予期間を設けるべき42 4. 原子力発電所設備管理のあるべき姿 (1) 機械系と人間系による安全性の確保 (2) 安全性確保の在り方(Minimum Safety Requirementsとリスク評価基準) (3) 経年劣化管理の在り方 43 システム安全と劣化管理 システム安全と下記の関係を明 確にする必要がある。 • 系統機器の安全重要度(設計) • 機器健全性の掌握度(保全) さらに • 保全指標 システム安全の確保 健全な状態の系統機器 構成機器の正確な状態把握/評価と是正措置(保全) 系統A ・・・・・・ 系統X ・・・・・・系統Y ・・・ ・・・ 機械 機械 機械 電気 電気 電気 制御 制御 制御 土建 系統単位のAMP 土建 土建 系統単位のAMP 系統単位のAMP ロバストな システム構成(設計) 疲労 SCC 減肉 その他 ケーブル絶縁低下 その他 P29参照 機器単位 のAMP 劣化事象 毎の AMP コンクリート強度低下 その他 AMP: Ageing Management Program 44 系統単位の経年劣化の高度管理 疲労 照射脆化 SCC 減肉 ケーブル 絶縁低下 コンクリート 強度低下 同左 同左 同左 同左 第1スクリーニング (全体サーベイ) 同右 系統 全般 評価 広域 検査・モ ニタリング + 第2スクリーニング (局所サーベイ) 詳細 解析 評価 局所 検査・モ ニタリング 45 信頼できる、効率的な 機器状態の把握と予測評価 第一段階 対象系統全体の状態把握と 詳細把握すべき個所の抽出 第二段階 異なる手法による 2段階の状態把握 詳細把握すべき個所の状態の 正確な把握 解析評価技術 検査・モニタリング技術 異なる技術の相互補 完による状態把握 解析評価技術 検査・モニタリング技術 46 効率的・効果的な劣化管理方法 対象箇所の分類 感受性を有す る箇所の特定 系統全般評価 ( 解 析 評 価 or 定性評価) 広域検査・モ ニタリング 効率的効果的な管理方法 ① 類似個所のグルーピング、 代表個所の選定 ② 代表個所の詳細解析評価 左記方法の精 ③ 代表個所に対する検査計画 ― 立案とその計画に基づく局 度が良い個所 所検査・モニタリング ④ 代表個所の検査結果に基づ く他個所の管理 ① 全対象箇所の従来型検査 評価上,あるい 計画立案 は経験的に劣 化速度が遅い ② その計画に基づく従来型 検査(保守的に検査間隔 左記方法の精 個所 を設定) 度が悪い個所 評価上,あるい は経験的に劣 ① 全対象箇所を連続モニタ 化速度が速い リング 個所 47 評価/検査の不確定要素を 考慮した系統の健全性評価 48 設備の検査結果が持つ 不確定要素(信頼性と誤差) 電気設備 (ケーブル劣化) 制御設備 (ケーブル劣化) 機械設備 (き裂、減肉等) 土建設備 (コンクリート劣化) 49 系統に要求される信頼性とそれを確保する ために必要な検査性能の関係 プラント安全目標 安全リスク重要度 FV値、RAW 重要系統の抽出 プラント安全目標を 達成するために必要な 各系統の信頼性 系統A 必要な信頼性 ・・・ ・・ 系統X 必要な信頼性 ・・・ ・・ ポンプの ・・ 配管系の ・・ ・ 信頼性 信頼性 ・ 系統? 必要な信頼性 電動弁の 信頼性 配管系の信頼性解析評価 • 系統構成 • 劣化発生部位、初期欠陥 • 劣化進展速度 • 検査のサイジング精度 信頼性(POD) 深さ±𝐚𝐚、長さ±ℓ 欠陥サイズと検出確率 50 検査の精度と信頼性の現状調査 安全リスク重要度等に より対象系統を特定 例:原子炉系 当該系統内にある機械、電気、制 御、土建の各設備の機器をリスト サイジング精度 材質 寸法 構造 検査部位 健全性確保に 必要な検査精度 現状技術 の精度 DA: a≧T/4=40㎜ (T=160㎜と仮定) SA:≦±??㎜ DA: ・・ ・ SA: ・・・ 検査信頼性 (POD) 健全性確保に必要 な検査信頼性 課題 調査・研 究項目 現状技術の 信頼性 原子炉圧力容器 円筒胴(炉心 領域) 低合金鋼 板厚??㎜ 円筒 原子炉再循環 出口ノズル 低合金鋼 板厚??㎜ ノズルコーナ CRDハウジン グ貫通部スタ ブ溶接部 Alloy600/Alloy82 板厚??㎜ J溶接 原子炉再循環系 配管(エルボ、 ティー) オーステナイト系 ステンレス鋼 ポンプ溶接部 同上 弁溶接部 同上 DA: Detectability Accuracy a≧T/4=40㎜を 100%検出 ・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・・ ・ ・・・ 系統機器の機能維持の観 点から、検査精度、検査 信頼性を追求する必要の ある箇所はどこか? その条件(材料、形状・寸 法、応力)は? 安全重要度の高い機器 臨界欠陥サイズの小さい部位 進展速度が速い部位 SA: Sizing Accuracy a: Crack Depth ℓ: Crack Length 51 5. 規制上の問題点と改善提案 (1) 本来あるべき姿から見た問題点と改善提案 (40年制限撤廃、炉規正法改正) (2) 現行規制の運用上の問題点と改善提案 (手続期限、猶予期間など) (3) 運転期間延長申請に必要な特別点検の問題点 52 (1) 本来あるべき姿から見た問題点 1. 原子炉等規制法による40年規制は技術的根拠に基づくものではなく、恣意的な制限。 国会での議論からそれは明らか。 世界では、科学的・技術的見地から設備の安全性、健全性を証明できれば、運転継 続できるというのが一般的な考え方。 米国ライセンス制度はライセンス期間を40年と定めているが、経年劣化をきちん と管理し、健全性を証明できれば、ライセンス期間をいつでも延長できるとのスタ ンスを取っている(40年から60年、さらに80年へ)。一方、我国は科学技術 的な根拠が無く、政治的に運転期間を40年に制限している。 本来、原子力発電所の寿命は、設備の健全性と経済性で決まるもの。 2. 技術的根拠のない運転期間40年制限は、劣化管理技術の高度化研究や事業者による 劣化管理高度化努力を減退させ、却ってリスクを高める可能性がある。 運転期限が無い場合、いつまで運転することになるか分からないので、長期的視点 できめ細かい経年劣化管理が行われ、貴重な資産である設備・機器を大事に使用して いくというマインドが生まれる。 設備・機器の経年劣化管理をきめ細かく行い、大事に使用すれば、長期間使用できる 可能性があるので、劣化現象の解明や劣化管理の高度化などへの意欲、活動を促進 する。また、有能な人材の育成へつながる。 53 運転期間を40年に制限することの問題点 運転期間を40年に制限しても、新知見に対する安全対策や経年劣化管理を適切に行わなければ、プラント の安全性を確保することはできない。却ってプラントの安全性を低下させることにつながりかねない。 本来、プラントの安全性は、機械系の安全設計と人間系によるマネージメントの組合せで確保されるもの 。また、規制の目的は、プラントの安全性を確保することにより、国民の生命・健康・財産や環境等を守 ることである。 したがって、機械系と人間系の組合せトータルの安全性を評価し、運転期間延長の可否を判断する規制の 枠組みが必要である。 改善案 ○ 現行の原子炉等規制法を改正し、運転期間40年制限を撤廃する。(原子炉等規制法の改正) その上で、機械系の安全設計と人間系によるマネージメントの個々について基準適合性を評価 するのではなく、それらの組合せ全体でプラントの安全性を定期的に評価し、判断する規制の 枠組みを構築する。 運転期間延長手続の時期の問題点 本来、プラントの安全性は、機械系の安全設計と人間系によるマネージメントの組合せで確保される。ま た、規制の目的は、プラントの安全性を確保することにより、国民の生命・健康・財産や環境等を守るこ とである。 したがって、事業者からの運転期間延長申請を受け付ける時期はむしろ寛大にすることにより、貴重な資 産である原子力発電所の有効利用への門戸を広くし、申請後の規制当局による審査においてプラントの安 全性を厳しくチェックする仕組みを構築すべきである。 改善案 ○ 事業者による運転期間延長の申請は余裕のある審査スケジュールを見込んで受理できるように 、また、何らかの理由で40年を超過した場合でも申請を受理できるように現行の原子炉等規制 法を改正し、関連諸規定を改正する。 (原子炉等規制法、実用炉則等の改正) ○ プラントの安全性を厳しく審査することに重点を置いた新規制基準のバックフィットルール (適用範囲、適用対象の選定方法、判断基準、猶予期間など)を明確にし、運用する。 54 既に40年を経過あるいは40年に近いフ゜ラントに対する運転期間満了の猶予期間を延長(たとえば5年に)する。 既に40年を経過あるいは40年に近いフ゜ラントに対する運転期間満了の猶予期間を延長(たとえば5年に)する。 既に40年を経過あるいは40年に近いフ゜ラントに対する運転期間満了の猶予期間を延長(たとえば5年に)する。 既に40年を経過あるいは40年に近いフ゜ラントに対する運転期間満了の猶予期間を延長(たとえば5年に)する。 (2) 現行規制の運用上の問題点 運転期間延長認可申請の期間の問題点 現行制度下での申請期間は,40年の運転期間満了の1年から1年3カ月前に限定されており,申請後約1年 の期間内に認可を得る必要がある。このような短期の審査期間では,40年時点までに確実に認可が受けら れるか不透明であり、事業者は重大な投資の経営判断を容易に行えない。規制は十分な予見性を与えるべ きである。 改善案 ○申請手続きは,40年満了時期の数年(5年程度)前から可能とし,時間的に余裕を持った許認 可手続と十分な審査を行えるようにする。(実用炉規則の改正) これにより,ある程度の予見性をもって供給計画や投資計画が立案可能となる。また,審査を 踏まえた設備対策が必要な場合でも計画的な対応が可能となる。 運転期間延長認可申請プラントの認可期限の問題点 運転期間延長申請後の約1年間の審査期間で認可を得られない場合(40年満了までに認可を得られない場 合),その時点でプラントの設置許可が失効し,廃炉となる可能性がある。 特に,運転延長認可申請とともに,新規制基準適合のための設置変更許可申請並びに工事計画認可申請を 行うプラントは,基準地震動の審査をはじめ,審査に長期間を要している実績があるので、審査期間と認 可期限の設定には問題がある。 改善案 ○運転期間延長申請の審査中プラントに対しては,仮に審査が40年満了時点を経過したとしても ,審査が継続され,判断が下されるまで運転継続が許可されるようにする。(原子炉等規制法 の改正) ○既に40年を経過しているプラントあるいは40年近く経過しているプラントについては、猶予期 間を延長(たとえば5年に)する。 ※:敦賀1号機,美浜1,2号機,高浜1,2号機,玄海1号機,島根1号機 55 運転期間延長認可制度(関係法令)の概要 【原子炉等規制法】第43条の3の32(運転の期間等) 原子炉を運転することができる期間を40年とする。 運転期間はその満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、1回に限り20年を超えない期間で延長できる。 【原子力規制委員会設置法】附則第25条 運転期間について、法施行時点(H25.7.8)で37年を経過しているプラントに対しては、40年でなく 、H28.7.7までとする。 対象プラント:敦賀1号、美浜1号、美浜2号、高浜1号、高浜2号、島根1号、玄海1号 【原子炉等規制法施行令】第20条の6(期間上限) 延長できる期間は最大20年とする。ただし、設置法附則第25条の適用を受けるプラント(猶予を受 けたプラント)は、20年から猶予期間分を控除した期間とする。 申請に関する規定 【実用炉規則】第113条(延長認可の申請) ○運転期間の延長認可を受ける場合、満了前1年 ~1年3ヶ月前に申請書提出を規定 ○申請書記載事項を規定 ○申請書添付資料として、特別点検・劣化評価・保守 管理方針を記載した書類提出を規定 【NRA】運転期間延長認可申請に係る運用ガイド 運転期間延長認可申請書の記載内容、特別点検内容、 劣化評価、保守管理方針等について定めたもの 認可基準の規定 【実用炉規則】第114条(延長の認可の基準) ○運転期間の延長認可の基準は、延長しようとする期間にお いて、原子炉その他の設備が延長しようとする期間の運転 に伴う劣化を考慮した上で技術基準規則に定める基準に適 合するものとする。 【NRA】運転期間延長審査基準 審査にあたって確認すべき事項を定めたもの ○運転期間延長認可の時点で、技術基準規則に適合させる ために必要となる工事の計画が認可等の手続きにより確定 していること。 ○延長しようとする期間において、対象機器・構造物の劣化 56 状況に関する技術評価が規定の要求事項に適合すること。 運転期間延長手続の工程イメージ N-2年度 11 12 1 2 N-1年度 3 4 5 6 7 8 9 10 延長申請期間(3ヶ月) 4/8 N年度 11 12 1 2 3 4 6 7 ▽ 1年 8 9 10 11 ~ たとえば、7/7を運転 期限とした場合 7/8 ▽延長認可申請 特別点検、劣化評価、 保全計画等 運転期間延長に 関する許認可工 程(イメージ) 5 ▽認可 延長審査/高経年化技術評価審査 ▽新規制基準申請 (変更反映) ▽許可・認可 (設置変更許可申請~工事計画認可申請) 新規制基準適合 への対策評価 新規制基準適合 審査 初期プラントの場合、N=28であ り、延長申請と新規制基準適合 審査が重なる。 認可された対策工事 新規制基準適合のための工事計画認可が、 運転期間延長認可の前提条件 57 当該事項に関連する海外の運転期間延長手続きの状況 参考 米国 10CFR2.109 Effect of timely renewal application. (b) If the licensee of a nuclear power plant licensed under 10 CFR 50.21(b) or 50.22 files a sufficient application for renewal of either an operating license or a combined license at least 5 years before the expiration of the existing license, the existing license will not be deemed to have expired until the application has been finally determined. 現行の運転認可期限が満了する5年前までに適切に運転認可更新申請を行なった場合は、その申請に対する NRCの判断が出るまで、運転認可が満了したとはみなさない。 審査が長期化し、当初の運転できる期間を超えた場合においても審査は継続され、更にプラント の運転も継続可能。 *運転延長審査中であるIndian Point-2は、既に当初の運転認可期限(2013年9月28日)を超えているが、プラントは継続 運転中である。 スペイン 停止宣言が、原子力安全上の理由からではない場合、停止宣言※を行ってから1年以内であれば、ライセンスの 更新申請を認める。) ※:最終運転停止は、運転延長申請をしない場合、宣言してから一年後 上記に加え、移行措置として既に最終運転停止しているプラントであっても、原子力安全性又は 放射線防 護による理由による停止で無い場合、最終停止1年以内であれば運転延長申請が可能。 58 *2013年7月に閉鎖をしたSanta María de Garoñaは、2014年5月に運転延長申請をし、現在審査を受けている。 (3) 運転期間延長申請に必要な特別点検の 問題点 特別点検の対象となる部位や経年劣化事象は高経年化技術評価対象と重複。 ○高経年化技術評価に基づき,追加が必要と判断される点検は長期保守管理方針と実施する仕組みが確立 ○特別点検の対象部位,着目すべき劣化事象,点検方法については,これらが選定された技術的背景や点 検の必要性、技術的根拠が必ずしも明確にされていない。 特別点検の対象部位,着目すべき劣化事象,点検方法が選定された技術的背景や点検の必要性、技術的根拠 (規制の意図)を明確すべきである。 例1:原子炉(圧力)容器:中性子照射脆化に対して母材も含む炉心領域100%の超音波探傷試験要求 ○母材は製造段階で超音波探傷試験により内在欠陥等がないことを確認済。 ○欠陥が発生する可能性が高い部位は溶接部(熱影響部含む)であり,通常の供用期間中検査(UT)で 代表部位の健全性を定期的に確認済(異常が確認されれば検査範囲を拡大して検査) ⇒照射脆化の程度はUTでは把握できない。脆性破壊を念頭にすれば欠陥が発生する可能性が高い溶接部 を検査対象とすべきであり,母材を含む100%の点検は過剰ではないか? 例2:PWR一次冷却材ノズルコーナー部やBWR給水ノズルコーナー部:熱疲労に対して表面検査(渦流探傷試 験や浸透探傷試験等)の要求 ○通常の供用期間中検査(UT)にて構造健全性を確認済。 ○PLMの疲労評価にて健全性確認済。 ⇒ノズル内面にUTでは確認できない程度の浅い割れがある可能性はゼロではないが,そのような浅い割れ は健全性に影響を与えないことが実証されている。 特別点検:実用炉規則第113条に基づき実施する点検で,詳細は「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に記載さ れている。 59 特別点検(PWR) 60 特別点検(BWR) 61 まとめ 一般に産業設備はその劣化状況を検査・把握し、その検査結果を評価して必要な補 修等を実施することにより維持され、運転に供される。また、運転保守経験や試験 研究により新たな知見が得られれば、それらを踏まえて設備を改良し、必要な安全 性を確保した上で運用される。このように、設備が健全に劣化管理され、安全性が 確保されていると評価される限り、運転期間に制限を加えずに設備を活用し、国民 や社会に役立てるのが本来の考え方である。これは、国内外を問わず、また産業設 備の種類に依らず、普遍的な考え方、やり方である。 しかるに、平成24年に改正された原子炉等規制法は原子力発電所の運転期間を原則 40年に制限するという世界的にも極めて特殊な考え方に基づき我が国の原子力発電 所を規制している。この法改正は議員立法で提案され、成立したもので、「40年」 にはまったく科学的、技術的根拠のなく、政治的に決定されたものである。本来、 産業設備の寿命は科学技術的に、あるいは経済性で決定されるべきものである。こ のような政治的に決定された運転期間40年制限は、むしろ原子力発電所の安全性を 低下させることに繋がり兼ねない。また一方で優良な我国の資産を活用することを 妨げ、それによって生じる負荷を国民に押し付けることにもなり兼ねない。 我国の原子力基本法および原子炉等基本法はその目的において、安全を確保して原 子力を活用し、将来エネルギー資源を確保することにより、学術進歩と産業振興と を図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを求めてい る。この法の精神に則り、原子力発電所の安全性が技術的に確保される限り、運転 を許容し社会・国民に役立てられるようにすべきである。 以上を踏まえ、本検討分科会は原子炉等規制法やそれに基づく諸規則等を改正し、 原子力発電所の運転期間40年制限を撤廃することを含む改善策を提案する。 62 ご清聴ありがとうございました。 63