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インテリアの印象に及ぼす光色と物体色の交互作用
インテリアの印象に及ぼす光色と物体色の交互作用 - 暖色系のインテリアには低色温度の照明が似合うか - 槙 究 Keywords:電球色、昼光色、色温度、印象評価、模型実験、暖色・寒色 ○はじめに・・ 槙らは以前、室内模型を用いて配光パターン、壁面色彩、壁面素材が印象評価に 及ぼす影響を調べたことがあり、そこでは壁面色彩と壁面素材について交互作用 が見られ、配光パターンは独立変数として扱えるという結果を得ている。 しかし、これは照明光色の影響を扱っていないため、照明を独立変数として壁面 と別にデザインしてもいいということを保証するものではない。そこで、この研 究では照明光色の変化が印象評価に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、 特に色の暖寒に着目して研究を行っている。 ○調査・分析手法 被験者は実践女子大学生 50 名とし、図 1 に示した 16 畳のリビングダイニングを 想定した縮尺 1/8 のインテリア模型を用いて印象評価実験を行っている。照明パ ターンは電球色 ( 低色温度 ) と昼光色 ( 高色温度 ) の 2 パターン、壁・床面の色彩 、インテリア家具は表 1 に示すような 5 パターンを用い、これらを組み合わせて 50 パターンの条件を設定している。被験者に模型の室内を観察させ、1 分間の色 順応の後、室内の雰囲気を 10 対の SD 法 7 段階尺度により定評させている。 分析においては、印象評価実験の評定平均値を用いて因子分析 ( 主成分法、バリ マックス回転 ) を実施し、表 2 のように固有地 1.0 までで 3 因子を抽出している。 第 1 因子には「調和」「美しさ」、第 2 因子には「柔らかさ」「暖かさ」、第 3 因子 には「派手さ」が代表的に取り上げられている。図 5 10 は 3 因子の代表尺度の 評定平均値を表しており、図から照明光色と壁・床面色によって、インテリアの 印象がどう変化するか読み取り、検討している。 ○まとめ 考察においては、照明の電球色と昼光色の印象の差異は小さく、3 因子として抽 出された印象の軸によって、評価に関わる要素が変化していることを把握してい る。しかし、条件等色という現象も存在するため、この結果がすべての状況に当てはまるとは限らず、今後より 広範囲に適用できる研究を行うことが必要だと思われる。 槙 究:インテリアの印象に及ぼす光色と物体色の交互作用、 日本建築学会大会学術講演梗概集第、社団法人日本建築学会、2009 年 8 月 インテリアの内装色彩が家具の色彩選定とレイアウトに与える影響 小林茂雄、荻原利衣子 Keywords:内装色彩、家具、色彩選定、レイアウト、カフェ、縮尺模型 ○はじめに・・ 室内空間において家具の色彩を選定する際、壁や床 の内装の色彩を考慮にすることは重要とされている。これ まで、インテリアにおける壁・床面に色彩や家具の色彩の調和や印象に関する知見は多くされているが、壁・ 床面の色彩が家具の色彩計画やレイアウトに与える影響を直接取り上げた例は見られない。小林らは内装の色 彩が家具色彩とレイアウトに与える影響について調べることを目的とし、家具の色彩選定やレイアウトの仕方 について検討している。 ○調査手法・分析 1/30 の室内模型を用い、被験者自らが家具を選定 して、それをレイアウトする ( エレメント計画 ) 実 験を行っている。被験者は建築学科の大学生 22 名、 模型はインテリアの配色が多様で家具のレイアウト の仕方にも自由度があるカフェを想定している。 内装色彩は表1の白色・茶色内装の2種類で、レ イアウトに用いる家具は表2に示している。レイアウト完成後エレメント計画に対するコンセプトと室内配色 に対するコンセプトを記入させている。その後、22 名の被験者によって施された 44 種類のインテリアのエレメ ント計画について、印象を把握するために別の建築学生 12 名を対象に印象評価実験を行っている。 分析では、エレメント計画の特徴を数値的に比較するため、各エレメント計画で用いられた家具の種別や色数を 表し、家具のレイアウトの仕方を分類を行っている。また、室内の印象が内装色彩や家具の色彩・レイアウトと どのような関係にあるのか検討するため、印象評価実験で得られた評価得点をもとに因子分析を行い、表 4・図 6・7 の結果を得ている。さらに、内装色彩による因子得点の差を類似度として被験者のクラスター分析を行い、 被験者を 2 グループに分類し ( 図 8)、エレメント計画の差をグループ別に検定した結果を表 6 に示している。 そして、最後にエレメント計画全体と配色に対するコンセプトを取り上げ、内装色彩がエレメント計画に与える 影響の原因について考察している。 ○まとめ 考察においては、内装色彩が家具の色彩選定とレ イアウトに与える影響を分析しており、内装色彩 の与える影響が大きく二つに分かれることを把握 している。一つは内装色彩と同系色の家具の配色 にしようと働くもの、もう一つは対照な配色にし ようと働くものだと分析している。研究で得られ た結果が他の空間に対してどの程度適用できるか という汎用性については定かではないため、他の 空間を対象とした調査・実験と、開口部を含めた 検討が必要とであると思われる。 小林茂雄、荻原利衣子:インテリアの内装色彩が家具の色彩選定とレイアウトに与える影響、 日本建築学会系論文集第 571 号、pp17-23、社団法人日本建築学会、2003 年 9 月 オフィスにおけるタスク・アンビエント照明方式のパーティションの 相違による光環境の快適性評価に関する研究 稻沼實、渡部耕次、山川和美、岩田利枝、武田仁 Keywords:タスク・アンビエント照明、オフィス作業、パーティション、心理的評価 ○はじめに・・ タスク・アンビエント照明はその照明方式の特徴から、室全体に必要 最小限の照度を確保し、作業領域必要十分な照度を設定できることか ら、パーティションを有するパーソナルな執務空間に適合しやすく、 省エネルギーに有効であることから普及が期待されていたが、パーテ ィションの有無や反射率の違いが TAL の快適性にどのように影響があ るかは十分に明らかにされていない。そこで稻沼らは、省エネルギー を考慮したアンビエント照度とタスク照度の組み合わせを設定し、設 定照度の妥当性を実証的に検証することを目的とし、タスク・アンビ エント照明における光環境の快適性について研究している。 ○調査・分析手法 実験方法は実験室実験で、パーティションが無い執務空間 ( 実験 1) と パーティションが有る執務空間 ( 実験 2) を設定している。被験者は、 実験 1 では平均年齢 20 代の男女 19 名、実験2では 20 名で、実験 1,2 とも 5 名が学生で残りはオフィスワーカーとなっている。実験手順は、 被験者に実験室内で 3 分間オフィス作業行わせた後、評価項目に回答 させた場合と、5 分間のオフィス作業を行いながらタスク照度を被験 者に調光させ、最適と思われる照度に設定させた後、評価項目に回答 させた場合の 2 パターンを用い、実験 1 ではアンビエント照度とタス ク照度を変化させた 12 条件、実験 2 ではパーティションの反射率の 高低を加えた 15 条件を設定している。 分析においては、パーティション条件、アンビエント照度、T/A 比、 タスク照明の条件について、光環境の快適性に与える要因効果を把握 するため、表 5 のような分散分析を行っている。また、被験者のタス ク照度設定値の区間推定を行い、図 10 の結果から調光条件の比較を 行っている。さらに、快適性に影響を与えている原因を知るために、 重回帰分析を行い、表 7 のように考察を行っている。 ○まとめ 考察においては、数種類の条件を設定し、パーティションの有無や反 射率の相違、T/A 比及び昼光の導入が被験者に与える心理的影響につ いての実験室実験を検証することで、パーティションの有無や反射率 におけるオフィス作業下の快適性について把握している。 実際のオフィスでは様々な作業形態が考えられるため、タスク照明器具の位置を 移動させることによる評価の違い等について研究が必要だと思われる。 稻沼實、渡部耕次、山川和美、岩田利枝、武田仁:オフィスにおけるタスク・アンビエント照明方式のパーティションの相違 による光環境の快適性評価に関する研究、 日本建築学会系論文集第 552 号、pp1-7、社団法人日本建築学会、2002 年 2 月 オフィスにおけるタスク・アンビエント照明方式の適応性に関する実証的研究 稻沼實、渡部耕次、坪田祐二、坂田克彦、武田仁 Keywords:タスク・アンビエント照明、オフィス作業、T/A 比、快適性、心理的評価 ○はじめに・・ タスク・アンビエント照明方式は作業領域に十分な照度を与え、周辺には必要最小限の照度を確保するといった特徴から、省エネル ギー化に有効であるとともに、様々なオフィス作業に対してフレキシブルに対応できる照明として注目され、研究がされてきた。 しかし、これまでの研究ではアンビエント照度とタスク照度をどのような範囲に設定すればよいか等の研究は不十分であり、これら を明らかにすることが重要である。稻沼らは、パーティションを有するオフィスにおいて、様々な作業下におけるアンビエント照度、 タスク照度の許容範囲を把握することを目的とし、起訴段階として照度を中心に研究している。 ○調査・分析手法 20 代から 50 代の男女 22 名を対象に、アンビエント照度とタスク照度の組み合わせの好ま れる範囲を把握するため実験室実験を行い、20 代から 40 代の男女 30 名を対象に、実験室 実験で検討された照度の設定値が様々の行為を行うオフィス作業に適応可能であるかを実証 的に検討するため、実際のオフィスにおいて居住環境評価実験を行っている。 実験室実験では図 1 に示す実験室で表 2 に示す作業を想定した行為の快適性 についてアンケート調査方式で評価させ、そこから最適タスク照度、タスク ・アンビエント比を求めている ( 図 4)。さらに、最適タスク照度で点灯・消 灯させた条件における、各行為の快適性評価の区間推定を行い、図 6 の結果 をもとに各行為の快適性について分析を行っている。 居住環境評価実験では鹿島 KI ビルにおいて 表 3 に示す設定条件のもと評価させ、評価 を基に回答の図 9 のような頻度分布を作成 し分析を行っている。 ○まとめ 考察においては、二つの実験から、 アンビエント照度に対する適切な タスク照度は行為によって異なり、 T/A 比も一定ではないこと、タスク 照明の位置や照度を固定する場合、 様々な行為に適応するためのアン ビエント照度は少なくとも 300lx 程度に設定するのが望ましいこと 図6 を把握している。 この実験では、照明の位置や照度 を固定して行ったが、実際には調 光や位置を移動させて様々な行為 に適応させることも考えられるた 図9 め、タスク照明の調節機能を含め、 さらなる研究が必要だと思われる。 稻沼實、渡部耕次、坪田祐二、坂田克彦、武田仁:オフィスにおけるタスク・アンビエント照明方式の適応性に関する実証的研究 日本建築学会系論文集第 548 号、pp9-15、社団法人日本建築学会、2001 年 10 月 オフィスレイアウトと他者の存在・視線の影響に関する考察 前田薫子、姜景霞、浅田晴之、西出和彦 Keywords:オフィスレイアウト、心理的影響、大空間、パーティション、分節 ○はじめに・・ 近年、オフィスでは間仕切りもなくフレキシビリティーの高い大規模な空間が求められている。前田らは近年多く 見られる均一に広がる大空間において、ワーカーが日常的に受ける心理的影響に着目し、そこから生じる領域とオ フィスレイアウトの意味を把握するのを目的とし、大勢の人が居合わせる状況の中で他者から受ける心理的影響の 特性について研究している。 ○調査・分析手法 実際にオフィスで働く K 社と S 社の社員に実態調査を行い、大空間利用の問題を抽出した上で実験を行っている。 被験者は学生で、オフィスレイアウトされた実験室内で各席を体験させ、アンケートを行っている。実験1) では パーティションの有無や島の感覚を変化させた4パターン、実験2) では島の間隔を固定し、パーティションや中 通路を用いて1島の分節を変化させた5パターンのレイアウトを設定し、各席を体験後、『存在』『視線』に関する アンケートを行っている。分析においては①各席における他者の『存在』『視線』の影響のある範囲について、その 席を回答した人数を集計し、パーセンテージで示したものをグラフ化している。②他者との位置関係を正面、斜め、 真横に分け、距離と他者からの影響度合の関係を対数により回帰させる方法で、他者から受ける心理的影響の分布 を領域と捉えて求め、集団の中での心理的影響の拡がりについて考察している。また心理的スケールの意味を考察 し、レイアウトの効果について検討している。 ○まとめ 考察においては、『存在』『視線』の影響度合は前方方向に広がり、正面方向に関する影響について対面者の背後か らの影響は受けにくいこと、『存在』より『視線』の影響度合の方が対面者からの影響が強く、受ける範囲は狭い ことを把握している。また、サイドパーティションは近くの他者からの影響に効果があり、フロントパーティショ ンは正面に対しての効果はないが、フロア全体の他者からの影響を減少させる効果があることを把握し、他者から の心理的影響を受ける広がり方を求め、その距離を尺度化し、レイアウトの効果について考察している。 実際のオフィス空間においては他者との関係や行動領域などをさらに考慮する必要があり、より詳細な研究が必要 だと思われる。 前田薫子、姜景霞、浅田晴之、西出和彦:オフィスレイアウトと他者の存在・視線の影響に関する考察 日本建築学会系論文集第 620 号、pp15-21、社団法人日本建築学会、2007 年 10 月 建築空間における通路幅に関する実験的研究 - すれ違い及び回避行動と印象評価の関係 高久洋介、柳瀬亮太 Keywords:回避行動、通路幅、パーソナルスペース、印象評価実験 ○はじめに・・ 歩行者は、対向者とすれ違う際に、対向者との 距離や空間の状況によって不安や不快を感じる ことがある。そのため、歩行空間を計画する際 は、歩行者の行動と歩行者を取り巻く環境の相 互関係を把握することが欠かせない。高久らは、 実験を通して歩行者の歩行軌跡と心的側面を把 握することにより、建築空間における通路幅に ついて検討することを目的とし、回避行動と印 象評価の関係について研究を行っている。 ○調査・分析手法 平均年齢 21.8 歳の被験者 42 名を対象に、 予備調査として、廊下歩行時の現状を把握 するためアンケート調査を行っている。 その後、被験者 46 名を対象に、パーティションを配置した疑似通路を用いて、印象 評価実験を行っている。実験の条件は表 2 のような 24 条件を設定し、被験者に印象 評価させている。さらに、ビデオカメラでの撮影により被験者の歩行軌跡を把握して いる。 分析においては、歩行者の回避行動に通路の型と通路幅がどう影響す るか調べるため、通路の型と通路幅を要因とする二元配置分散分析を 行っている。また、通路の型と通路幅の変化が歩行者の印象評価にど う影響するのか調べるため、通路の型と通路幅を要因とする二元配置 分散分析を行い、印象評価の幅と型による比較を行っている。 ○まとめ 考察においては、被験者の歩行軌跡から、被験者によってパーソナルスペ ースに個人差が存在することを把握し、二元配置分散分析による結果から、 通路の型と通路幅による印象評価の関係性、回避行動と印象評価の関係性 の考察を行い、図 5 のような結果を得ている。 この実験では、通路幅が限られており、それ以外の通路幅と通路の型の相 互関係を検討する必要があると思われる。また、実験対象者が若年層に限 られていたため、中年層、高年層の回避行動、心理的側面を検討するべき だと思われる。 高久洋介、柳瀬亮太:建築空間における通路幅に関する実験的研究 日本建築学会系論文集、社団法人日本建築学会 公共空間における他者の占有領域の知覚に関する研究 大野隆造、松田好晴 Keywords:公共空間、パーソナルスペース、占有領域、居場所選択 ○はじめに・・ 公園や広場などの公共の空間であっても、他者によって、ある広がりを持った空間が一時的に占有されていると感じることが ある。これまで、人間相互の距離や文化的背景などの点から他者による空間の占有を研究した例はあるが、建築的な要素が及 ぼす影響を系統的に究明した研究は見られない。そこで、松田らは E.T. ホール、R. ソマーの研究した概念をもとに人がある場 所に位置した際にその人が一時的に占有したと他者からみなされる空間的広がりを『占有領域』と呼び、それが壁や柱などの 空間構成要素の配置とその中での人の位置によってどのように変化するかを明らかにすることを目的とし、建築的要素が空間 に及ぼす影響を系統的に研究している。 ○調査・分析手法 建築教育を受けていない学生を対象とし、小空間の実写大空間模型を用いて 1) 居場所選択実験、2) 空間把握実験を行っている。小空間には自立壁と円柱 を 1.8m 間隔を基準として図 1 のような構成パターンで配置し、被験者に居 心地の良い場所を選択させ数値化している。また他者の存在による行動の変 化を明らかにするため、図 2 のように他者を配置して同様の実験を行ってい る。1) では、被験者の場所の評価得点を棒グラフで表し、他者のいる場合と いない場合を比較しながら居心地の良い場所や選択の傾向を明らかにしてい る。そして、2) では物理的要素と占有領域の広がりの関係を明らかにするた め、日常使う空間を限定する言葉『そば』『あいだ』『なか』『そと』によっ て顕在化して説明することを試みている。1) と同様の配置パターンの模型を 用い、4 つの言葉があてはまる場所を評価させることで下のような分析を得 ており、それぞれの言葉についてその表現があてはまるとされた範囲の広がりを等高線で分析している。 ○まとめ 考察においては、1) で人が壁や柱を背にして立つ傾向があることより、屋外空間における快適な居場所の条件として、背後が 守られると同時に前方にほど良い空間の広がりや眺望が得られることが重要であるという結果を得ている。また被験者が空間 を他者の占有領域として知覚していることも考察している。2) では、空間を占有する人は立つ位置や向き、物理的要素との関 係によって『そば』『あいだ』『なか』『そと』を知覚していることから、他者の占有領域は『そば』『あいだ』『なか』『そと』 の広がりを組み合わせることで予測できると考え、占有領域の判定基準について考察している。 今回の実験により空間構成要素と占有領域の関係やその中での人の居場所選択の傾向が明らかになった。しかし、被験者の人 数が少ないため占有領域の把握が十分でないように思われる。被験者数を増やすことで、占有領域の知覚という点においてよ り明確な分析を得ることが出来ると思われる。 大野隆造、松田好晴:公共空間における他者の占有領域の知覚に関する研究、 日本建築学会系論文集第 519 号、pp93-99、社団法人日本建築学会、1999 年 5 月 私室における「過ごしやすい」家具配置と行為に応じた居場所・姿勢 笠尾円、大井尚行、高橋浩伸 Keywords:私室、行為、居場所、姿勢、家具配置 ○はじめに・・ 一般的な住居では各個人が私室を持ち、その中でさまざまな行為をしている。限られた空間の中で多くの行為を 行い、その空間を過ごしやすい空間にするために、私室においては各自が様々な工夫をして空間を作り上げてい る。笠尾らは、空間と家具を与えられた時に、人は何を考えながらどのように家具を配置するのか把握すること を目的とし、一般的な家具配置とそれに伴う行為、居場所・姿勢について研究を行っている。 ○調査・分析手法 20 代の学生 10 名を対象とし、箱庭手法を用いた家具配置実験を行ってい。実験 1) では 10 分の 1 縮尺の室内 模型を用い、一人暮らしをすると想定して表1に示す家具を過ごしやすいように配置させ、その後アンケートを 行っている。実験 2) は 1) で得た一般的な家具配置の模型を用いて、室内で行われる行為に応じた居場所とその 時の姿勢を知ることを目的とし、行為を行うときに想定される居場所とその向き、姿勢 ( 図3) を調査、集計し、 棒グラフに表している。また室内で同時進行する行為の相互関係についても検討している。 ○まとめ 考察においては、1) より全体の傾向として、多くの被験者が自分の私室を参考にして家具配置を行っていること から、自分の部屋は過ごしやすく改良を加えた結果であるか、もしくは自分が長く過ごしている室内に愛着があ るため、「自分の私室の配置=過ごしやすい配置」という構図が成り立っていることを把握し、2) からは私室に おける居場所がベッドの上、机の前、テーブル周辺の3か所に集中すること、行為・姿勢については図4・5の ような結果を得ている。そこから、家具配置と行為の関係、居場所・姿勢についての特性について考察している。 この研究では行為を限定しているので、今後は行為の組み合わせを考慮に入れた研究や別のアプローチから行う 実験の必要性があると思われる。 笠尾円、大井尚行、高橋浩伸:私室における「過ごしやすい」家具配置と行為に応じた居場所・姿勢 日本建築学会九州支部研究報告第 46 号、社団法人日本建築学会、2007 年 3 月 私室における「集中できる」空間と「くつろげる」空間に関する研究 笠尾円、大井尚行 Keywords:私室、集中、くつろぎ、行為 ○はじめに・・ 現在、高齢化・少子化などに伴って生活単位が個人化し、一般的な住居では各個人が私室を持つようになってき ている。そして、人はその空間の中で集中状態からくつろぎ状態まで様々な行為を行っている。笠尾らは、住居 内の一人で使う私室に空間を限定して、私室内で行う行為について「くつろげる空間」と「集中できる空間」を キーワードに挙げ、双方の関係性を見出すことを目的とし、一つの空間において様々な行為をするときの空間の 使い分けについて研究を行っている。 ○調査・分析手法 対象者は平均 20 代の男女 45 名で、実験1では一般的に人が住居内の私室の中でどのような行為をするのかを把 握するために表1に示すような 21 項目についてするかしないか○× 方式のアンケートを行っている。実験2で は実在の写真を見てもらい、その部屋がくつろげるか、集中できるかについて評価を行ってもらっている。分析 においては、アンケート結果を基に図 2 のように散布図を作成し、「くつろいでする」「集中してする」の分布の 傾向を考察し、その後、被験者を「男女別」「住居タイプ別」に分け比較検討を行っている。 ○まとめ 考察においては、図 2 より「くつろいでする」の割合がほとんどの項目で高い値のところに集中していること、 「集中している」の割合は広範囲に広がっていることを把握しており、私室は集中できる空間というよりも、くつ ろげる空間として重要な空間だということを考察している。また、「男女別」「住居タイプ別」の比較検討では、 ほとんど有意差は見られなかった。 この研究では私室空間の使われ方について調査しているが、評価の高いもの、低いものごとに特徴を細かく要素 にわけ分析されていないので、今後は私室の評価構造を明らかにすることが必要だと思われる。 笠尾円、大井尚行:私室における「集中できる」空間と「くつろげる」空間に関する研究 日本建築学会九州支部研究報告第 45 号、社団法人日本建築学会、2006 年 3 月 住宅居間における光環境と家具配置の関係 小林茂雄、村中美奈子 Keywords:家具配置、不均一照明、リビングダイニングルーム、個人差、模型実験 ○はじめに・・ 住宅のリビングルームでは、食事をする、本を読む、TV を見るなど様々な行為がなされ、それぞれの行為に 適している環境条件がある。小林らは、住宅のリビングルームにおける家具配置の仕方や時間の過ごし方を 基に、行為に適した光環境のあり方を探ることを目的とし、不均一な照明条件と家具配置との関係、光環境 と家具配置との結びつきに関する個人差について研究している。 ○調査・分析手法 大学生 25 名を対象に無窓の暗室で 10 縮尺模型を用いて家具の配置実験を行っている。家具はダイニングテ ーブル (DT) と椅子、ソファ (S)、ソファテーブル (ST)、TV の 5 種類、部屋の照明方法は①全般照明②3灯片 側照明③2灯斜め照明④1灯中央照明⑤1灯窓側照明の5種類で、照明条件ごとに固定されている。照明条 件ごとに家具配置を行った後、照明や家具配置を含めた部屋の満足度についてアンケートを行っている。 分析では、被験者の家具配置などを集計することで図のような結果を得ており、そこから家具配置の全体的 傾向、個人差について考察している。 ○まとめ 考察においては、アンケートの結果で得た DT の重要性に着目し、照明条件による家具 配置の変わり方の個人差に関わる要因を把 握するため、DT を中心に検討を行っている。 家具配置実験により、部屋全体が明るい照 明ではキッチン側に DT を置き、壁側の離 れた位置に S を置くことが被験者に共通し ていること、キッチン側が暗い場合、照明 の近辺に DT を置く傾向があること、そし てその場合には配置の個人差が大きくなる ことを把握し、被験者の持つ光環境と家具 配置の結びつきの傾向について考察してい る。 この研究は夜を想定しているので 、外からの採光がある昼の条件で 同様の実験を行うことによって、 より詳しい光環境と家具配置の 関係について知ることができる のではないだろうか。 小林茂雄、村中美奈子:住宅居間における光環境と家具配置の関係 日本建築学会系論文集第 620 号、pp15-21、社団法人日本建築学会、2007 年 10 月