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企画日程等
「理系研究者が教える課題研究の見つけ方、進め方、纏め方」 甲南大学フロンティアサイエンス学部 1.プログラムのねらい 高等学校において課題研究に取り組むことは、論理的思考力、表現力のような科学的能力を育成する 上で重要であり、昨今、たくさんの高等学校が課題研究に取り組むようになってきた。しかし、多様な 専門分野に及ぶ課題研究を如何にして指導するか、高等学校の教員がその指導法を学ぶ機会はあまりな い。本プログラムでは、大学の理系研究者が、課題研究の見つけ方、進め方、纏め方について、自分た ちの指導経験をもとにその指導法を伝授する。プログラムでは、参加者が研究(実験)を進める中でど のような指導法が効果的であるか、研究や講義、研究指導、グループ討議等を通じて実践的に学んでい ただく。同時に、研究開発が行われている企業における研究シーズの探索、研究推進、商品開発につい ての現状を、企業の研究者を講演者として招へいして伺う機会も用意している。プログラム全体を通じ て、参加者には課題研究の先にある将来像を把握していただき、そこで必要となる研究者としての科学 的能力の育成法を学び、さらに、それを各現場の教育活動に還元していただくことをねらっている。 2.主会場の特徴 フロンティアサイエンス学部の立地する甲南大学ポートアイランドキャンパスは、神戸市が推進する 医療産業都市の研究クラスターに位置しており、近隣には 200 社を超える医療・健康に関連する企業、 公的研究機関が立地している。本学部では、クラスター内の企業との産学連携、また、それを活用した 独自の教育活動を行っている。本プログラムでは、課題研究における指導法を実践的に学んでいただく のと同時に、その地域連携の枠組みを活用して、企業における研究の見つけ方、進め方の現状について も知っていただく。 3.プログラムの特徴 ① 研究を知る プログラムでは生物系、化学系のテーマをそれぞれ用意している。参加者は申込み時点で生物、化学 のいずれかのテーマを選択いただき、4日のプログラムを通じてそのテーマに関する研究を3名1組の グループで行ってもらう。 生物系テーマでは遺伝子解析に関する研究を、化学系テーマでは色素の合成とその機能に関する研究 を予定している。 1 研究の細かな方向性や実験計画等に関しては、こちらから事前に送付する資料に情報(使用すること ができる原料化合物、調べることができる機能、遺伝子鑑定に用いるプライマーや酵素に関する情報な ど)を記載するので、それをもとに、例えば、遺伝子解析の実験であれば、どのような遺伝子を解析す るか、どのように解析・評価するか、各グループでお考えいただき、計画いただくことを予定している。 プログラム実施日までのグループ毎の議論が円滑に進むよう、参加者には、フロンティアサイエンス学 部が開設するインターネット掲示板のアクセス法を説明し、そこでテーマに関する話し合いを進めてい くことを考えている。必要に応じてプログラム実施に関わる大学教員からアドバイス等も行う予定であ る。 事前にこちらから送付する資料には種々の情報が入れ込んであるので、こちらが用意する化合物や酵 素等をもとに、組み合わせを考えれば、取り組める課題は無限にあり、グループ毎にテーマの設定に特 徴を入れていくことは可能である。 2 下図に実施体制を示している。化学、生物の研究テーマ毎に3名の大学教員がサポートし、また、各 グループには1名ずつのTAが配置され、実験の指導、補助を行う。また、研究計画に応じて必要な装 置や器具が使えるよう柔軟に対応できる予定である。 ② プログラムの進め方 参加いただく教員には、申込みの段階で化学、もしくは生物のいずれかのテーマを選択いただきます。 各テーマの内容および背景、進め方については下記に示しておきますので、参考としてください。 【生物系テーマ】 生物系テーマでは、 「遺伝子解析」について研究を進めていた だきます。背景と方向性は以下に示しておきます。 ヒトゲノムが解読され、ゲノムから引き出される遺伝情報に よって発生や分化、進化、個人の体質や疾病などとの因果関係 が解明されつつあります。遺伝子解析技術は、メディアでも頻 繁に取り上げられ、例えば、新型インフルエンザウィルスの検出、食品偽装の解明、犯罪捜査や個人鑑 定、予防医学など様々な分野に使われるように至っています。 遺伝情報の解析には、高等学校の生物の教科書で取り扱う「ポリメラーゼ連鎖反応」が広く利用され、 高等学校で実験できるキットも販売されています。しかし、課題研究として遺伝子解析を取り扱うとな 3 ると、市販のキットで対応できない場合にどのような試薬、手法をとるべきか、具体的な調査方法を設 定することができないことも教育現場では多くあると思います。 今回のプログラムでは、ヒトの体質に関する遺伝情報の増幅、解析を通じて、参加者に遺伝子解析に おける遺伝子の抽出(組織の選択、抽出法)、前処理(ゲノムの精製法)、増幅(プライマーの設計、使 用する酵素等)、解析(電気泳動法、制限酵素の使用等)などの違いが、どのように結果に影響するか を学んでいただきます。また、本プログラムでは、多様な用途を持つ遺伝子解析の研究技術を学んでい ただくと共に、遺伝子解析の研究を例に、他の生物系の課題研究における実験計画の立て方や、実験・ 解析方法に広く応用、展開できるノウハウや考え方を学んでいただくことを期待しています。 【化学系テーマ】 化学系テーマでは、 「色素の機能」について研究を進めていた だきます。背景と方向性は以下に示しておきます。 天然の繊維を草木や貝類から得た天然色素で染色し、身にま とったのは非常に古い時代で、エジプトのミイラの着衣がイン ジゴで染められていたことからも窺い知ることができます。色 素(天然色素)は非常に高価であり、色は地位の象徴でもありました。例えば、地中海産の貝から採れ る紫色の色素は“皇帝紫”、 “古代紫”とも呼ばれ、それで染めた衣服をまとえるのは文字通り、皇帝や 元老院の議員に限られていました。その歴史を大きく変えたのは、1856 年のことです。イギリスの William Perkin(ウィリアム・パーキン)という化学者が偶然、モーベインと呼ばれる紫色の色素を合 成することができたことに端を発します。1858 年には、アゾ色素が、1868 年にはアリザリンが発見さ れ、天然からしか作れないと思われていた色素が、現在に至るまで多量に発見されてきました。そして、 今では布を染める“染料”に限らず、色素は、 “指示薬”、 “センサー”、 “太陽光発電”、 “記憶媒体(CD-R)”、 “医療材料”に至る幅広い用途で使われるに至っています。 今回の実験では、機能を探索する合成色素として、高等学校の化学の教科書でも取り扱う「アゾ色素」 を取り上げます。参加者には多種多様なアゾ色素を合成いただき、どのような化学構造を持つアゾ色素 がどのような機能を持つのかグループ毎に探索していただきます。指示薬、金属イオンセンサー、染色 材料など、探索する機能はグループ毎に設定いただき、色素の化学構造と性質(機能)の相関について 研究を進めていきます。 化学の分野では、創薬に代表されるように分子を設計し、合成する技術が重要となります。その核と なるは分子設計法であり、そこには物質の機能と化学構造との相関関係を理解することが不可欠となり ます。本プログラムを通じて、”ものづくり”に関して分子を設計する発想と機能解析の手法について広 く学んでいただくことを期待しています。 4 ③ 企業を知る 課題研究を進めていくことは、将来的には企業において研究者を志望する学生にとって大きな力とな るはずである。しかし、教える立場の教員がその現状を知らねば、正しい方向性で生徒に研究指導する ことが難しいと思われる。 そこで、企業における研究の見つけ方、進め方について、企業の方にご講演いただくことを予定して いる。講演では、企業における研究シーズの探索や商品開発の現状、また、そこに携わる人材に必要と される能力について各企業の実情を交えてお話いただく。 【企業講演者(予定)】 ・「企業における研究シーズの探索(仮題)」 株式会社カネカテクノリサーチ ・「企業における商品開発(仮題)」 ダイソー株式会社 ・「企業が必要とする人材像(仮題)」 調整中 鈴木利雄様 4.スケジュール 8月21日(火)(1日目) 14:00 参加者集合 14:00 〜 15:00 開校式・オリエンテーション 15:00 〜 17:30 グループワーク「研究」※ 17:30 〜 18:15 講演「企業における研究シーズの探索(仮題) 」 (株式会社カネカテクノリサーチ 川端 裕輔 様) 18:30 〜 20:30 参加者と講演者、教職員との交流会 8月22日(水)(2日目) 9:00 〜 12:00 グループワーク「研究」※ 12:00 〜 13:00 昼食 13:00 〜 17:30 グループワーク「研究」※ 17:30 〜 18:15 講演「企業における商品開発(仮題)」 (ダイソー株式会社 鈴木 利雄 様) 18:15 〜 19:00 講演「企業が必要とする人材像(仮題) 」 (調整中) 19:15 〜 参加者と講演者、教職員との交流会 8月23日(木)(3日目) 5 川端裕輔様 9:00 〜 11:00 11:00 〜 12:00 グループワーク「研究」※ 講義「理系研究者が教えるプレゼンテーション資料作成のコツ」 (甲南大学フロンティアサイエンス学部 准教授 甲元 一也) 12:00 〜 13:00 昼食 13:00 〜 15:00 研究施設の見学「ベーリンガーインゲルハイム・神戸医薬研究所」 15:00 〜 19:00 グループワーク「研究」※ 8月24日(金)(4日目) 9:00 〜 12:30 プレゼンテーション (12分発表+5分質疑応答×10グループ) 12:30 〜 13:30 昼食 13:30 〜 15:00 意見交換会「課題研究を進めるために」 15:00 〜 15:30 閉校式 ※ グループワーク「研究」は(3)に記載したように、生物テーマ、化学テーマ各3名の大学教員とTAが 補助しながら、グループ毎に研究を進めていく。 5.参加者交流 本プログラムは3泊4日の合宿型であり、参加者同士、関係スタッフ、講演者との交流が円滑に進む よう、プログラムの実施に工夫している。例えば、インターネット掲示板を通じた事前の交流、グルー プワーク、1日目、2日目に企画している参加者交流会等を通じて参加者がプログラム終了後も情報交 換が行える場を提供する。 6.キャンプのまとめとして行うプログラム キャンプのまとめとして2つのことを4日目に企画している。 ①研究成果の発表会 3日間行った研究成果をグループ毎にプレゼンしていただく。類した研究を行っていても纏め方やデ ータの見せ方の違いで成果の伝わり方も全く違ってくる。課題研究を指導するにあたり、重要となる研 究の纏め方、見せ方について、他グループのプレゼンを参考に今後の教育活動へ活かす点を考えていた だく。 ②課題研究指導についての意見交換会 本プログラムで実験に取り組むことを通じ、日頃の「教える立場」から生徒と同じ「習う立場」を体 験できる。その体験を元に、4日間のプログラムを通じて各々が感じたこと、課題研究の指導に関して 思ったことを発表していただき、今後の教育活動に活かすことができる点について意見交換していただ く。 7.才能ある生徒を伸ばすための効果的な指導法を学ぶプログラム等 課題研究を体験した生徒が学んだことを活かして成長する(才能を伸ばす)には2つの事が重要とな 6 る。一つは、それを学ぶことで何に繫がっていくのか、という学んだ先に見える将来像を具現化させる ことであり、もう一つは、その目標に向かって効率よく考え、実行できる科学的技能を生徒に習得させ ることである。本プログラムでは、実験を通じて、課題研究に対して必要となる科学的技能を育成させ る指導法を実践形式で学んでいただく。併せて、企業の研究者に企業における研究の実情をお話いただ くことで生徒に伝える将来像についても学べるようにする。これらを複合的に学び、教育現場に帰って 実践することが才能ある生徒を伸ばすことに繫がると考えている。また、プログラム終了後も参加者の 疑問、相談にインターネット掲示板を通じて回答し、参加者の教育活動を継続的にサポートする予定で ある。 8.参加者にお願いしたい要件 ①プログラムを通じて、作成したプレゼンテーション資料や実験方法に関しては、参加者全員で情報を 共有することをご了承下さい(プログラム終了後にコピー等を行い、参加者全員に配布する予定)。 ②プログラムの様子を、こちらのスタッフが写真・ビデオ撮影する予定です。これらは実施報告書やそ の後の公開情報として使用することをご了承ください。 ③1日目、2日目の参加者交流会の実費として、7,000 円を初日の受付にて徴収いたします。 7