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5つのポイント以外にも 知っておきたいこと。 行政書士共同研究会
遺言セミナー 補助資料 5つのポイント以外にも 知っておきたいこと。 目 次 1.遺言は何故必要 2.遺言のルール―書く前に知っておきたい 3.遺留分を少し詳しく 4.遺言の種類 5.公正証書遺言作成の方法 行政書士共同研究会・コスモス 作成 (問合せ先:080-3577―3741) 1 1.遺言は何故必要 ●遺言はなぜ必要なの ・それは あなたの財産はあなたのモノだからです。 ・この世を去る時には、この世での自分のモノをどうするのか、自分で決める必要があります。 ・あなたが決めておかなければ、残された人たちが決めなくてはいけません。 ・あなたの意思がわからなければみんなが困るのです。 ・遺言は意思表示。あなたの意思を残すことです。 ・あなたの意思を明確にすることで余計な争いを防ぐことができます。 ・遺言でなければ出来ないことがあります。(以下) ●あなたに子どもがいない時 ・あなたが結婚していて、なお両親・祖父母、子もいない場合、あなたの兄弟姉妹も相続人になりま す。 ・遺言がなければ、長年生活を共にしてきた配偶者にすべてを渡したくても、兄弟姉妹にも財産を分 けることになります。 ・遺言で、配偶者にすべての財産を相続させると書いておけば、兄弟姉妹には遺留分がないのですべ てを配偶者に渡すことができます ●認知・再婚等で、現在の配偶者の子以外にも子がいる場合 ・子どもはすべて相続人になります。 ・遺言がなければ、子供たちの間で、財産をめぐる話し合いをしなければなりませんが、関係の薄い 兄弟間での話し合いはこじれがちです。 ・遺言を残してそれぞれの子の相続分をはっきりさせておけば、子供たちに容易に受入れられます。 ●お世話になったあの人に財産を残したい、という場合 ・事実婚の配偶者、介護をしてくれた人(あなたの子の奥さんなど)などは、法定相続人ではありま せん。 ・遺言がなければ、あなたの財産を受け取ることができません。 ・あなたの人生に関わった人に財産を残したい時には、遺言が必要です。 ●不動産がある場合、不動産しかない場合 ・不動産は分割するのが不適切な財産です。 ・特に農地であれば、法定相続によって分けてしまうと農業がなりたちません。 ・農業や工場経営など、相続人のだれかが事業を継承する場合には、必ず遺言を残しましょう。 ・遺言で、遺留分に配慮した相続分の指定をしておけば、土地をめぐる争いは避けられ、あなたの事 業を無事に継承させることができます ●相続人がいない場合 ・配偶者も子も両親もきょうだいもいない場合、相続人が存在しないことになります。 ・遺言がなければ、あなたの財産は国が受け取ることになります。 ・あなたが自分の財産を有効に使ってくれる団体等に渡したいと考えるなら、遺言でその意思を明確 にしておきます 2 2.遺言のルール――書く前に知っておきたいポイント 遺言者には 民法によって一定の資格要件が遺言者に求められている。 判断能力が必要 ①年齢要件:遺言者が遺言をした時点で15歳に達していることが必要。 ②遺言能力:遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識し得るに足りる意思能力。 (注) 「事理弁識能力を欠く常況」とされる成年被後見人の方は、事理弁識能力を一 時回復した時に、特別の方式にしたがって遺言をすることができる。 相続人 ①配偶者は、常に相続人になる。 ②配偶者とともに次の者がその優先順位に従って相続人になる。 一番:子(子、子の代襲相続人(注) ) 二番:直系尊属(父母、父母がともに亡くなっている場合は祖父母) 三番:兄弟姉妹(兄弟姉妹、兄弟姉妹の代襲相続人(注) ) (注)被相続人より先に亡くなっている相続人(子または兄弟姉妹)がいて、そ の相続人に子がある場合は、その子が亡くなった相続人を代襲して相続人になる。 相続分 相続人の組合せと相続分(カッコ内が相続分) ①配偶者(1/2) と子(1/2) ②配偶者(2/3)と直系尊属(1/3) ③配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4) 遺産の分け方 二つの方法 ①具体的に遺産を指定する方法 「甲土地はA、乙銀行預金はBに相続させる」と、特定財産の帰属を具体的に定め る。遺産分割協議の必要がない。 ②全財産の割合を指定する方法 「妻A、子B、子Cはそれぞれ3分の1ずつ相続させる」と、全財産の割合を指定 して譲る方法。 「遺産はすべて内縁の妻Aに遺贈する」と、全財産を包括的に特定 の人に譲る意思表示をすることもできる。相続時に、遺産分割協議が必要となる。 遺贈の注意点 遺言で財産を譲る相手にとくに制限はない。法人に対してもできるが注意も必要。 ・譲り方を間違えると、借金も遺贈することに 「全財産の割合を指定する方法」による遺贈で、遺言者に借金がある場合、指定し た同じ割合の借金も遺贈される。遺贈は、財産を特定する方法をとるのがよい。 ・遺言執行者を指定 遺贈は相続人の反発を買うことも考えられる。遺言をスムーズに実現するには、遺 言執行者を指定するとよい。遺言執行者は遺贈を受ける本人でも可。 遺言は自由に撤回 できる 遺言は、いつでも、何度でも、撤回することができる。遺言の全部撤回も、一部撤 回も可。新たな遺言をすることもできる。撤回も、遺言の方式に従っている必要があ る。公正証書遺言を自筆証書遺言によって撤回することも、その逆でも可。 撤回擬制 次の場合、撤回したのと同様の効果が生じるので、遺言の書き換えは不要。 ①前にした遺言の内容と後でした遺言の内容とが抵触する場合 抵触した部分については前の遺言が撤回したものとみなされる。 例) 「甲土地をAに相続させる。乙土地をBに相続させる」遺言の後に「甲土地はC に相続させる」遺言を作成した場合、 「甲土地はC」 [乙土地はB」が相続する。 ②遺言の内容と抵触する処分(土地の売買や贈与など)をした場合 抵触した部分について遺言が撤回したものとみなされる。 例) 「甲土地をA相続させる。乙土地をBに相続させる」遺言の後に、甲土地を売却 した場合、 「甲土地をA相続させる」部分は撤回されるが、Bは乙土地を相続する。 3 3.遺留分に配慮した遺言書を書こう! 遺留分制度とは 人は、生前に自分の財産を自由に処分できるのと同様に、遺言によって死後の財産も 自由に処分することができるはずである。しかし、まったく自由であるとすると、相 続財産をすべて他人に遺贈(注)されてしまい、被相続人の財産に依存して生活して いた相続人が生活に困る事態にならないともかぎらない。 ・そこで、相続人の生活を保障するため、一定の範囲の相続人に相続財産の一定の割 合を留保させるのが遺留分制度である。 遺留分減殺請求 権 ・遺留分を侵害された相続人は、侵害された分を限度に遺贈や贈与の効力を失わせ、 財産の返還を求めることができる。 ・これを遺留分減殺請求権という。 ・この権利を行使するかどうかは遺留分権利者の自由にまかされており、遺留分を侵 害している遺言が当然に無効になるわけではない。 (注)遺贈 ・遺贈とは遺言によって人に遺言者の財産を無償で与えることである。 ・受遺者に一定の負担を負わせることもできる(負担付贈与) 。 ・死因行為であり、単独行為である。 ・遺贈は遺留分と衝突しない範囲で遺産の自由処分を認めるものである。 遺留分権利者 ・配偶者 ・子(代襲相続人含む) ・直系尊属(父母又は祖父母) ・兄弟姉妹には権利がない 遺留分の割合 ・直系尊属のみが相続人の場合 相続財産全体の3分の1 ・その他の場合 対象となる財産 相続財産全体の2分の1 ① 相続開始の時の所有財産 ② 贈与した財産 ・被相続人の死亡前1年以内にされた贈与 ・被相続人の死亡前1年以上の贈与のうち、当事者双方が、遺留分を害すること を知ってした贈与 ・ 相続人に婚姻・養子縁組・生計の資本としてされた贈与 ※ ①+②より負債額を差し引く 遺留分減殺請求 ・減殺請求は遺留分を侵害している相手方に対する意思表示のみでよく、裁判による 権の行使 必要はない。 ・口頭でもよいが、証拠を残すため、配達証明付き内容証明郵便によるべきである。 遺留分減殺請求 ① 遺留分権利者が相続開始および減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った 権の時効 時から1年経過したとき ② 相続開始の時から10年経過したとき 遺留分の放棄 ・相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要である。 ・遺留分の放棄により他の相続人の遺留分が増えるわけではない。 4 4.遺言の種類 遺言は、民法の定めている方式に従わなければ無効である。 この遺言方式は「普通方式遺言」と特別な場合にだけ用いる「特別方式遺言」がある。 普通方式 自筆証書遺言 遺言者が遺言の全文、日付および氏名を自分で書きこれに押印して作成する方 【メリット】 ・他の2つと比較して、手間をかけずに作れる。 ・費用がかからない。 ・証人がいらないため秘密性が保たれる 【デメリット】 ・保管が難しい。発見されない可能性あり。 ・方式不備で無効となる危険性がある。 (専門家による検証が望ましい) ・偽造、変造の恐れあり。 ・検認手続きが必要 ・自筆が必要 公正証書遺言 証人2人の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を述べ、又は遺言の下書きを 渡し、公証人がこれをもとに筆記し作成する。 作成されたものに、遺言者、証人、公証人が署名押印する。 【メリット】 ・公証人が保管するので、安心 ・方式不備による無効の危険性はない。 ・検認手続きが不要 ・謄本は再交付される。 (無くしても心配ないということ?) 【デメリット】 ・公証役場への出頭など、手続きが煩雑である。 ・費用がかかる。 ・証人2人が必要 ・機密保持が難しい。 (証人が内容を知っている) 秘密証書遺言 遺言者が自己又は第三者の作成した遺言書に署名押印し、同じ印鑑で封印をし、公証 人や証人の前で遺言書の存在を明らかにする方式 【メリット】 ・秘密性が保たれる ・公正証書遺言より安価。 (11,000円くらい) ・自書能力がなくても作成できる。 【デメリット】 ・保管場所の確保が困難 ・検認手続が必要 ・遺言の内容面の不明確さが残る。 (専門家による検証が望ましい) 特別方式の遺言:死が差し迫っているなど普通方式の遺言ができない場合に認められた遺言の方式で、危 急時遺言と隔絶地遺言とがある。 5 5.公正証書遺言作成の方法 公正証書遺言の 1 法定相続人(推定相続人)などを調査する 作成手続きの流 2 財産の内容を確認し、分配方法を決定する れ 3 遺言書を下書きする 4 証人 2 人を決定する 5 資料を収集する (6 公証人と事前に打ち合わせする) 7 再度公証役場へ出向き、公正証書遺言を作成する 8 手数料について 9 その他(改訂・取消・書換え・保管) 1 相続人を調査 法定相続人、遺贈される人 2 財産の内容を ・遺贈をする場合の包括遺贈か特定遺贈か、 確認し、分配方法 ・遺産分割の方法の指定や禁止、 を決定 ・また、特別受益者がいるかどうか ・相続発生後の寄与分による相続分の変動など 3 遺言書を下書 箇条書きでメモを作成するのもよいと思います。 き (専門家による検証が望ましい) 4 証人 2 人 注意:証人となれない者 1 法定相続人(推定相続人) ・遺贈を受ける人 2 1 の配偶者・直系血族 3 公証人の配偶者や四親等以内の親族・公証役場の書記や従業員 4 遺言書の内容が読めなかったり理解できない人 ●ポイント どうしても適当な人物がいなければ、公証役場に依頼して証人を紹介してもらうこと も可能です。 (有料:公証人に証人の紹介を頼む場合の料金は 1 万円前後が相場のよ うです。 ) 5 資料を収集 公証役場での事前相談・作成日の際に持っていく資料をそろえます。 ①遺言者を明らかにする資料 1 実印 2 印鑑証明書(3 ヵ月以内のもの) 3 身分証明書(運転免許証・パスポートなど) ②相続人・受遺者を明らかにする資料 1 戸籍謄本 (遺言者と相続人との関係、相続人の現在の氏が分かるもの) (法人の場合は登記簿謄本) 2 住民票 (財産を相続人以外の人に遺贈する場合はその受遺者のもの) ③証人を明らかにする資料 1 証人 2 人の住所・氏名・生年月日・職業を記載したメモ 2 証人 2 人の認印(シャチハタがダメ) 3 証人 2 人の住民票 ④財産を明らかにする資料 1 不動産登記簿謄本(相続財産に不動産がある場合) 2 不動産の固定資産評価証明書( 〃 ) 6 3 財産の明細を正確にメモしたもの (預金の場合、銀行名・支店名・口座番号・名義など) ●ポイント: 不動産については、なるべく登記済みであるほうがよいです。 遺言で「遺贈」や「相続させる」場合には、必ず登記簿の表示を 記載する必要があります。図面を付けるだけでは不十分です。 預金や有価証券が目的になっている場合は、通帳や株券等のコピ ーがあるとよいです。 7 公証役場へ出 ・証人 2 人も同行します。 向き、公正証書遺 ・資料を持参します。 言を作成 ・現金を持参します。 (多めに持参したほうがよいです。 ) ●公証役場での手続 ①公正証書に記載 1 公証人は、遺言者の下書きの内容を公正証書に記載します。 2 書き上がったところで、遺言者と証人に読み聞かせます。 ②署名・押印 1 遺言者と証人が間違いないことを確かめたうえ、署名押印します。 2 遺言者が署名をできないときは、公証人が代署します。 3 最後に公証人が署名押印して遺言公正証書が完成します。 ※口がきけない者については自書(筆談)によるか、通訳人を通じて行うこ とが必要です。 ③原本・正本・謄本 原本は公証役場が保管し、遺言者には正本・謄本を交付します。 ※なお、病気で公証役場に行くことができない場合は、公証人が病院や自 宅に出張して作成することも認められています。 (この場合には 5 割増の 手数料となります。 ) 8 手数料 ①公証人手数料 遺言者の財産総額や分け方により異なります。 (下記の表参照) ※ 相続人や受遺者ごとに計算するので、複数人いればそれぞれの手数料を合算しま す。 ②遺言手数料(11,000 円) 相続財産が 1 億円未満の場合に支払います。相続人の数は関係ありません。 ③用紙代 一枚当たり 250 円で、一般的なケースでは合計 3,000 円前後となります ④その他 公証人を自宅や病院に呼んで遺言書を作成した場合は、①の公証人手数料が通常の 5 割増しになるほか、日当(2 万円、4 時間内は 1 万円)と交通費(実費)が必要と なります。 7 例:5,000 万円の財産を相続人 2 人が均等に相続した場合 公証人手数料 23,000 円×2 人=46,000 円 遺言手数料 11,000 円 用紙代 約 3,000 円 ―――――――――――――――――――― 合 計 約 60,000 円 公証人手数料 目的の価額 手 数 料 ~ 100 万円まで 5,000 円 100 万円超~ 200 万円まで 7,000 円 200 万円超~ 500 万円まで 11,000 円 500 万円超~ 1,000 万円まで 17,000 円 1,000 万円超~ 3,000 万円まで 23,000 円 3,000 万円超~ 5,000 万円まで 29,000 円 5,000 万円超~ 1 億円まで 43,000 円 43,000 円 1 億円超~ 3 億円まで +超過額 5,000 万円までごとに 13,000 円を加算 した額 95,000 円 3 億円超~ 10 億円まで +超過額 5,000 万円までごとに 11,000 円を加算 した額 249,000 円 10 億円超 +超過額 5,000 万円までごとに 8,000 円を加算し た額 遺言の目的の価額が 1 億円以下の場合には、上記の額に 11,000 円が加算されます。 8