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用地補償事務の適正化に向けた審査強化の取り

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用地補償事務の適正化に向けた審査強化の取り
用地補償事務の適正化に向けた
審査強化の取り組みについて
~北陸地方整備局用地補償アドバイザー会議~
渡辺
用地部
用地補償課
(〒950-8801 住所
信
新潟市中央区美咲町 1 丁目 1 番 1 号)
公共用地の取得に伴う損失補償については、関係法令等に基づき、適切な用地補償を行って
いるところである。一方で、国の行う契約手続きについては、公正性・透明性が求められてお
り、その適正化の促進を図るための措置として、第三者の意見を反映する方策が講じられてい
る。このことから、用地補償についても、外部の者による専門的見地からの助言(アドバイス)
により、更に適切な用地補償を行うことを目的として、
「北陸地方整備局用地補償アドバイザー
会議」を用地部内に設置した。
会議を設置した経緯・趣旨、会議の開催状況や討議結果、成果について報告する。
キーワード
助言、公正性、透明性、説明責任
1.用地取得に係る契約の特徴
公共用地の取得のための契約(以下「補償契約」
という。
)は、事業用地の確保を目的とする。これは、
事業に必要な土地の範囲が定まった時点で、契約の
相手方が自ずと定まることを示している。
これに対し、工事や業務に関する契約(以下「工
事契約等」という。)は、一般競争や指名競争などの
手続きを経て、複数の者が競争した結果で決まる。
契約の必要が生じた時点では、誰が契約の相手方に
なるかわからない。
事業用地には代替性がなく、契約の性質又は目的
が競争を許さないことから、補償契約は、随意契約
に分類することができる。工事契約等が一般競争や
指名競争を主な類型とすることと異なる点である。
このように競争がないという点が、補償契約のひと
つ目の大きな特徴として挙げられる。
また、契約額については、土地代金や建物などの
物件の移転料の算定は、補償基準に則って、公平な
補償額を算定するために、起業者が算定しており、
この額により契約額が定まる。
これに対し、工事契約等において契約額は、契約
の相手方が算定した額で定まる。起業者も算定する
が、これは契約額の上限(予定価格)を示すにとど
まる。
契約額の算定方法が工事契約等と異なる点が、補
償契約の二つ目の大きな特徴である。
2.北陸地方整備局用地補償アドバイザー会議の創
設
(1) 背景と目的
補償契約は、工事契約等のように契約の適正化の
促進を図るための方策を講じることが法令により求
められているわけではないが、国の行う契約である
以上、公正性・透明性が求められている。また、事
業効果の早期発現、早期の用地取得が求められてい
る中で、地権者との不要な摩擦を起こさないために
も、しっかりと説明することが重要となっている昨
今の事情を踏まえ、適正な補償は公共用地施策にお
いて重要なウェイトを占めている。
関係法令等に基づき適切な補償契約を行っている
ところであるが、このような状況の下、更に適切な
補償となるように、第三者による専門的見地からの
助言を受け、その後の補償案件に役立てる場として、
北陸地方整備局用地補償アドバイザー会議(以下、
「アドバイザー会議」という。
)を創設した。
(2) アドバイザーの選出
アドバイザー会議で助言をいただくアドバイザー
には、補償契約が関連する経済・法律・建築の分野
の専門家から3名を選出した。具体的には、経済の
専門家として不動産鑑定士から、法律(行政法)及
び建築の専門家として大学教授から、補償内容や検
討過程の妥当性について、専門的見地からの助言を
いただくこととした。
(3) 議題の選定
会議は、年に2回開催しており、年度の上半期に
開催する会議においては、前年度の下半期に締結し
た契約を対象とし、年度の下半期に開催する会議に
おいては、当年度の上半期に締結した契約を対象と
している。各会議の案件の抽出にあたっては、対象
となる期間における契約済み案件の中から、土地及
び物件等の補償案件から3件、公共補償や事業損失
といった特殊な補償案件から1件を、アドバイザー
から任意で抽出していただくこととした。
(4) 会議の進行
対象となる補償契約を締結した事務所の事務担当
副所長が、案件について補償金額の算出過程や、建
物などの物件の移転工法に関する検討内容、その他
の補償項目について説明し、これに対して各アドバ
イザーから助言をいただくものである。
写真1
会議風景
3.これまでの会議における助言
22年度下半期からアドバイザー会議を始めてい
るが、これまでの3回の会議で出された助言を紹介
する。
①
②
土地の取得価格の算定にあたっては、当該市町
村にも隣接市町村にも該当する公示地価・基準
地価(公的な地価指標のひとつ。国が調査する
のが公示地価、都道府県が調査するのが基準地
価)がなければ仕方がないが、なるべく規準価
格(公示地価・基準地価から算定した土地価格)
を算定すべきと考える。
規準価格は重要視されなければならない。比準
価格(取引事例から算出した土地価格)を採用
することが妥当と判断され、比準価格を決定価
格としたものと思うが、規準価格との関連につ
いて、標準地評価説明書の決定理由の中に記載
して残す必要があるのではないか。
③
非木造建物の再建築費の算出にあたり、鉄骨量
やコンクリート量について、耐震基準の設定前
後の建築事例から算定した一律の統計数値を
用いているということだが、建築基準法に基づ
く耐震構造を施した建物と施さない建物では
価格が異なると思われる。その価格差を考慮し、
統計数値に反映すべきと考える。
④
建物の移転工法の検討のうち照応建物(従前の
建物と階層や形状は異なるが、従前と同じ機能
を持った建物)について、建蔽率オーバーで不
採用になる工法だと思うが、建蔽率もクリアし
た状態で残地に建物を収めたときにどうなる
かを検討するのか、従前の建物の機能を確保し
た上で、有形的・機能的・法制的・経済的検討
をするのか、手法が幾つかあるように思う。
⑤
関係者は長期間に渡って振動を受忍しており、
精神的部分は相当苦痛を感じられていたと思
う。精神損失の補償は、損失補償では全く手当
てできないと思うが、それは住民に対する説明
で納得してもらうより仕方ないという対応な
のか。精神的な苦痛についても何らかの手立て
なり、配慮が必要ではないか。
4.助言の活用
(1) 土地の取得価格の算定について
土地の取得価格は、取引事例を基に、規準価格や
不動産鑑定価格(不動産鑑定士が算定した土地価格)
を参考にして決定している。
3.①及び②の助言を契機として、
(ア)原則、規
準価格を算定することとし、規準価格を求められな
い場合には、その理由を明記すること。
(イ)公示地
や基準地が近傍類地に存する場合には、規準価格と
の均衡を図り、整合性のある価格を決定し、決定理
由を必ず記載すること、の2点を、用地担当課長等
会議の場で事務所に指導するとともに、その運用を
徹底している。
(2) 非木造建物の建築費の算定について
現在、非木造建物の積算に係る鉄骨量やコンクリ
ート量の算定にあたっては、
「統計数量表」を用いて
いる。この「統計数量表」は、全国的に取り組んで
いる補償基準等の見直しの検討項目の一つとして既
にあがっていたが、3.③の助言を契機として、見
直しの検討を早期に行うよう要望した。
(3) 建物の移転工法の検討手順について
3.④の助言を契機として、用地部内に用地部職
員から成る検討部会を設け、約1年をかけて照応建
物に関する検討手順や業務発注における発注項目と
その発注時期について検討し、その結果を整備局管
内に通知した。
(4) 事業損失について
事業損失の申し出があった場合に、事業が完了し
た後、損傷箇所の調査など原因の特定や補償額の算
定に向けた具体的な対応を始める。
損失補償基準要綱等により、精神的負担に対する
補償は認められていないが、応急措置が認められて
いる。3.⑤の助言により、原因調査や補償額算定
に入る前から、例えば、応急措置について速やかに
検討し、場合によっては当方から申し出人に対して
応急措置の要否を尋ねるなど、誠意を持って対応す
ることが必要と再認識した。
5.今後に向けて
用地補償アドバイザー会議は、国土交通省では初
めての取り組みである。回を重ねていくことにより、
すべての事務所の案件が対象となるとともに、アド
バイザーの助言や意見が浸透していくことで、より
適切な補償、説明責任を果たしていくことができる
ものと考えている。今後とも、アドバイザー、事務
所の力を借りながら、積極的に取り組みを続けてい
きたい。
図1
検討部会による周知内容の一部
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