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圧縮芯を有する鋼製橋脚の耐震性能実験 1.序論 一般に鋼構造物は
1-197 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月) 圧縮芯を有する鋼製橋脚の耐震性能実験 愛知工業大学 学生員 ○服部宗秋 (株)梶川土木コンサルタント 正会員 加藤剛也 愛知工業大学 正会員 青木徹彦 1.序論 一般に鋼構造物は薄肉部材で構成されている.コストを下げるために薄肉部材を用いると,外力が繰り返し作用する地震時で は,必要とされる変形能が十分に期待できない.これに対処する鋼製橋脚として,その中心部に低コストのPCパイルまたはコン クリート充填鋼管を設け,これに圧縮力を受け持たせ,断面部に軸圧縮力を作用させない構造が考えられる.本研究では,供試体 中心部に圧縮芯としてコンクリート充填鋼管を用いた橋脚モデルを製作し,圧縮芯に上部工重量を想定した鉛直力を受け持た せ,地震時の慣性力に相当する水平力の繰り返し載荷実験を行って,その耐震性能を明らかにする. 表 1 供試体緒元 2.実験計画 グループ P 本実験では,圧縮芯を有す る供試体(−CR)5体と圧縮芯 を有しない供試体(−NC)5 P−15 供試体名 補剛材幅 P−30 体を用いて,それぞれ「軸力比 フランジ幅圧比パラメータ の影響」 「補剛材剛比の影響」 , 軸力比 S−100 S−175 S−250 48 40 48 55 1.75 1.00 1.75 2.50 RF 0.40 0.51 0.40 0.34 γ/γ 補剛材剛比 P−45 * b(㎜) 体の計2種類の供試体計 10 グループ S P/Py 0.15 0.30 0.45 0.15 の 2 種類の影響を検討する.供試体緒元を表 1 に示す.材質は SM490,供試体断 面寸法は 450×450 ㎜,板厚 6 ㎜とする.また補剛材を各辺 2 枚設ける.供試体 高さを 2110 ㎜とし,載荷点高さは 2420 ㎜となる.載荷装置を図 1 に示す.鉛直 4400kNアクチュエータ 載荷梁 荷重を載荷するために,4400kN アクチュエータを 2 基用いて上部工重量を想定し た鉛直力を載荷する.実験中は 2 基のアクチュエータ変位を同じ値にして,合計鉛 圧縮芯 直力を一定に保つ.水平荷重の載荷は,4400kN アクチュエータを 1 基用いて,地震 時の上部工重量の慣性力を想定した繰り返し水平力 H を与える.載荷パターンは 降伏水平変位 δy を基準とし,この整数倍を正負に同量を与え漸増させて繰り返 し載荷を行う.実験は水平荷重H が最大水平荷重Hmax に達した後,水平荷重H が 反力床 図 1 載荷装置 降伏水平荷重 Hy まで低下した時点で終了とする. 3.実験結果 3.1 水平荷重−水平変位履歴曲線 繰り返し載荷実験によって得られた水平力−水平変位履歴曲線を図 2,3 に示す.図 2(a)∼(c)は軸力比を変えたものであり, 図 3(a)∼(c)は補剛材剛比を変えた供試体 3 体を示している.圧縮芯のある供試体(図中破線)は圧縮芯のないもの(図中実線)に 比べ,大きなループを描いていることがわかる。 3.2 包絡線 繰り返し載荷実験で得られた履歴曲線を各々の圧縮芯のない供試体の降伏変位 δy,降伏水平力 Hy で無次元化し包絡線を求 めた.これを図 4 示す.図 4(a)のグループ P は軸力比を変化させたもので,図 4(b)のグループ S は補剛材剛比を変化させた供 試体についてまとめたものである.図 4(a)より軸力比が大きくなるにつれて圧縮芯の効果が大きく現れている.圧縮芯をもた ない供試体では 2δy で最大水平力が生じたのに対し圧縮芯をもつ供試体では 3δy で最大水平力が生じていた.また,圧縮芯を もつ供試体はもたない供試体に比べると最大水平力到達後の荷重低下が緩やかで,圧縮芯のない場合に比べ変形能が著しく大 きくなった. キーワード 鋼製橋脚,コンクリート充填鋼管 繰り返し載荷実験 耐震性能 連絡先:〒470−0392 愛知県豊田市八草町八千草 1247 TEL:0565−48−8121、FAX:0565−48−3749 -393- 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月) 400 400 200 200 200 0 水平力 (kN) 400 水平力 (kN) 水平力 (kN) 1-197 0 -200 -200 -400 -200 -100 0 水平変位 P-15-NC P-15-CR 100 (mm) P-30-NC P-30-CR 100 -400 -200 200 -100 0 水平変位 -200 200 200 -100 0 水平変位 S-100-NC S-100-CR 100 (mm) 水平力 (kN) 400 水平力 (kN) 400 -200 0 -200 -400 200 -200 -100 0 水平変位 (a) 200 (mm) (軸力比の違い) 200 -200 0 (c) 400 -400 -100 水平変位 図 2 水平荷重−水平変位履歴曲線 0 P-45-NC P-45-CR 100 -400 200 (mm) (b) (a) 水平力 (kN) 0 -200 S-250-NC S-250-CR 100 -400 S-175-NC S-175-CR 100 -200 200 (mm) (b) 図 3 水平荷重−水平変位履歴曲線 0 -200 -100 0 200 (mm) 水平変位 (c) (補剛材剛比の違い) 3.3 塑性率 最大水平力を過ぎた後,最大水平力の 95%の点での変位を δ95 とし,塑性率μ95=δ95/δy を定義した.これを供試 体グループ毎に,図 5(a),(b)に示す.図 5(a)において,圧縮芯をもたない供試体は軸力比が大きくなるにつれて塑性率 が低下しているのに対して,圧縮芯をもつ供試体は軸力比が大きくなるにつれて塑性率も増加している.塑性率の増 加量は軸力比 0.15 では 28%,0.30 では 44%,0.45 では 66%である.図 5(b)より,圧縮芯をもつ供試体は,もたない供試 体に比べて平均約 33%塑性率が増加した.補剛材剛比を大きくすると圧縮芯のあるなしにかかわらず,塑性率は増 加している.塑性率の増加率は圧縮芯をもたない供試体が約 17%,圧縮芯をもつ供試体が約 24%であった. 3.4 エネルギー吸収量 各供試体のエネルギー吸収量を図 6(a),(b)に示す.縦軸はエネルギー吸収量 E を弾性ひずみエネルギーEy で無次元 化して,横軸は変位 δ を降伏変位 δy で無次元化して表した。図 6(a)において圧縮芯をもつ供試体はもたない供試体 に比べ,どれもエネルギー吸収量が飛躍的に増加している.図 6(b)において圧縮芯をもつ供試体はもたない供試体 に比べグループ P 同様,大きく増加している.また 4δy 付近でのエネルギー吸収量の変化はクラック発生による影響 だと思われる. 3 6 80 5 4 1 能を実現できることが明らかになった. 0 2 P-15-CR P-30-CR P-45-CR P-15-NC P-30-NC P-45-NC 鋼製橋脚は従来の橋脚より,著しく高い耐震性 2 4 6 δ/δy 3 1 8 0 10 (a) グループ P 60 E /E y μ 95 実験結果を総合的に判断して,圧縮芯を設けた H /H y 2 4.結論 40 P-15-NC P-30-NC P-45-NC P-15-CR P-30-CR P-45-CR 20 0.1 0.2 0.3 P/Py 0.4 0.5 0 (a) グループ P 2 4 6 δ/δy P-15-CR P-30-CR P-45-CR P-15-NC P-30-NC P-45-NC 8 10 (a) グループ P (Ⅶ),共同研究報告書,第 178∼184 号, (2) 土木学会鋼構造委員会 1997,4 2 H /H y 限界状態設計法に関する共同研究報告書(Ⅰ)∼ 員会 S-100-NC S-175-NC S-250-NC S-100-CR S-175-CR S-250-CR 建設省土木研究所:道路橋橋脚の地震時 耐震設計のための新技術, 1996,7 60 4 50 1 0 2 4 6 δ/δy 8 (b) グループ S 図 4 包絡線 -394- 10 40 3 2 1 鋼構造新技術小委 耐震設計 WG:鋼橋の耐震設計指針案と 5 0 E /E y 3 (1) μ 95 参考文献 30 S-100-NC S-175-NC S-250-NC S-100-CR S-175-CR S-250-CR S-100-CR S-175-CR S-250-CR S-100-NC S-175-NC S-250-NC 20 10 1 γ/γ* 2 (b) グループ S 図 5 塑性率 3 0 2 4 6 δ/δy 8 10 (b) グループ S 図 6 エネルギー吸収量