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木質バイオマスの 経済的な供給ポテンシャル推計システム 利用
木質バイオマスの 経済的な供給ポテンシャル推計システム 利用マニュアル Ver.1 2012 年 5 月 独)森林総合研究所 林業経営・政策研究領域 林業システム研究室 1 目次 1. 利用上の注意 ........................................................................................................ 3 2. 起動画面 ............................................................................................................... 5 3. 「木質バイオマスの供給コストの推計結果」画面............................................... 6 ①供給コストのパラメータ変更 .............................................................................. 6 ②主題図表示 ........................................................................................................... 6 4. パラメータの変更................................................................................................. 7 林地残材 .................................................................................................................. 7 製材残材 .................................................................................................................. 8 供給コスト(現状型)............................................................................................. 9 供給コスト(欧州型)............................................................................................ 11 5. 主題図表示 ......................................................................................................... 13 主題図表示 ............................................................................................................ 13 推計結果表示 ......................................................................................................... 14 地図操作 ................................................................................................................ 16 6. 推計結果表示 ...................................................................................................... 18 表型表示 ................................................................................................................ 18 グラフ型表示 ......................................................................................................... 19 付録 .......................................................................................................................... 20 1.木質バイオマスについて ................................................................................ 20 2.供給システムについて ................................................................................... 23 2 1. 利用上の注意 1) 動作環境について ブラウザは Internet Explorer 7.0 及び 8.0 で動作を確認しています(Firefox 等では動作 しません)。画面解像度は 1024×768 ピクセル以上でご利用ください。 2) 使用データについて (ア) 2006 年前後の統計データに基づいて推計を行っているため、その後の地域の木 材加工量や林業生産量の変化に伴って、実際の供給ポテンシャルは増減すること にご注意下さい。 (イ) 特に、東日本大震災の影響の大きい東北太平洋沿岸地域の木材加工量や林業 生産量の変化は大きいと考えられますのでご注意下さい。 (ウ) 地図データは、「国土数値情報(行政区域)国土交通省」を使用して作成しました。 3) 推計結果について (ア) 供給コストは、工場残材については、粉砕済みであることを前提として輸送費のみ としました。林地残材については、土場でチップ化し、チップをそのままトラックの荷 台(コンテナー等)に積み込んでプラントまで輸送することを前提としました。土場付 近で発生しているものについては粉砕コストと輸送コストの合計としましたが、集材 路付近で発生している林地残材の搬出については、搬出コストを加え、切り捨て間 伐材の場合は、さらに集材路までの木寄せコストを加えました。(付録の「供給シス テムについて」をご参照下さい。) (イ) 推計結果は、木質バイオマス(工場残材、林地残材)の大まかな発生状況に基づく 概算値です。具体的なバイオマス利用計画を策定する際には、地域の発生・利用 状況に関する詳細な検討が必要となります。 (ウ) 隣り合う 2 つの市町村の供給ポテンシャルは、ほとんど同じ水準に推計される傾向 があります。これは、2 つの市町村のバイオマスの集荷範囲の重なりが大きくなり やすいことによるものです。そのように重なっている部分のバイオマスは、どちらか の市町村が利用すれば、どちらかは利用できないことにご注意下さい。例えば、A 市の供給ポテンシャルが 5 万 t-dry と推計されて、その隣の B 町の供給ポテンシャ ルも 5 万 t-dry である場合、これは A 市でも B 町でも 5 万 t-dry のバイオマスが利 用でき、あわせて 10 万 t-dry 利用できることを意味するものではありません。 (エ) 本推計では、パルプ工場等のバイオマスボイラーや石炭火力発電所等においてい くつか先行して行われている工場残材や林地残材のエネルギー利用については 考慮していないので、そうした利用が盛んな地域では供給ポテンシャルを割り引い て考える必要があります。 (オ) 現状型と欧州型では、使用する機械(フォワーダ、チッパー、トラック)の処理量を 違えていますが、道路条件(密度、走行速度)は同一のまま推計を行っています。 3 4) 結果の利用(引用)について 報告書等の作成に当たって利用する場合には、出典を「森林総合研究所『木質バイオ マスの経済的な供給ポテンシャル推計システム』」として必ず明記して下さい。 参考文献 ・上村佳奈・久保山裕史・山本幸一(2009)北東北三県における木質バイオマス供給可 能量の空間的推定、日本エネルギー学会誌 Vol.88:877~883 ・Kamimura, K., Kuboyama, H. and Yamamoto, K.(2011) Wood biomass supply costs and potential for biomass energy plants in Japan, Biomass and Bioenergy, Volume 36:107–115 ・久保山裕史、上村佳奈(2012)木質バイオマスの経済的な供給ポテンシャルの推計、 山林 4 2. 起動画面 Top ページは以下の通りです。 ① ② ①:システムを開始し、「木質バイオマスの供給コストの推計結果」画面を表示します。 ②:本利用マニュアル(use.pdf)を表示します。 5 3. 「木質バイオマスの供給コストの推計結果」画面 Top ページの「開始」ボタンをクリックすると、 「木質バイオマスの供給コストの推計結果」画面 が表示されます。9 種類の発生形態、4 種類の距離の合計 36 個のセルが 1 組となります。 デフォルトでは、 「輸送コスト:チャーター」の場合の「現状型供給コスト」と「欧州型供給コス ト」の推計結果が表示されます。「輸送コスト:専業」の場合の供給コストを表示する際は、 「輸 送コスト:専業」のラジオボタンをチェックします。 ※青いセルは自動計算結果が表示されます。変更はできません。 ① ② ①供給コストのパラメータ変更 供給コスト及び供給可能量を計算する際のパラメータを変更します。 「林地残材」:供給可能量を計算する際に使用するパラメータを変更します。 「製材残材」:供給可能量を計算する際に使用するパラメータを変更します。 「供給コスト(現状型)」:供給コスト(現状型)を計算する際に使用するパラメータを変更します。 「供給コスト(欧州型)」:供給コスト(欧州型)を計算する際に使用するパラメータを変更します。 「パラメータリセット」:デフォルトのパラメータに戻します。 ※変更したパラメータは一連の操作中は保存されます。「パラメータリセット」をクリックする、または推計シ ステムを新たに起動した場合に、デフォルトのパラメータにリセットされます。 ②主題図表示 指定した型の主題図画面を表示します。 「現状型のチャーター」:現状型の輸送コスト「チャーター」の場合の主題図画面を表示します。 「欧州型のチャーター」:欧州型の輸送コスト「チャーター」の場合の主題図画面を表示します。 「現状型の専業」:現状型の輸送コスト「専業」の場合の主題図画面を表示します。 「欧州型の専業」:欧州型の輸送コスト「専業」の場合の主題図画面を表示します。 ※「チャーター」ではトラックを借り上げ、「専業」ではトラックを購入し、運転手を雇って輸送を行うことを想 定しています。 6 4. パラメータの変更 ※黄色いセルはパラメータの変更入力が可能です。青いセルは自動計算結果が表示されます。 ※「変更」ボタンをクリックすると入力したパラメータが保存され、「キャンセル」ボタンをクリックすると保存し ないで画面を閉じます。 ※パラメータは入力値範囲が設定されています。範囲外の値を入力するとメッセージが表示されます。 林地残材 ① ② ③ ①バイオマス収穫率 林地残材の発生量は、針葉樹の枝葉については立木幹材積の 23%として推計しており、末木や端材 (曲りや腐れ、根張り部分等を取り除く際に発生する短尺材)については、立木幹材積の 79%が主伐の 場合には用材丸太になるものとして、残りの 21%として推計しています。現実には、立木を伐倒する際に 少なからず枝葉は飛び散りますし、端材も含めて集材や造材の際に脱落したり、飛び散ったりするものも ありますので、推計された林地残材量を 100%収集するのは不可能です。そこで、実際に収穫できる割 合(バイオマス収穫率)の初期値を 80%と設定しました。 ②林地残材の販売価格 立木を買い取った素材生産事業体(伐採業者)、あるいは伐出作業を素材生産事業体に請負に出し た森林所有者に対して支払われる林地残材への対価。ここでは、山土場で引き渡される残材チップの単 価を示しており、初期値は 500 円/生 t(水分を含む実重量 1tあたりの値段)です。 ③林地残材発生場所の割合 林地残材は、その発生場所によって供給コストが異なります。例えば、切り捨て間伐材の場合、切り倒し た場所から集材路(作業路)まで木寄せしないとフォワーダ等で搬出することができませんので、木寄せコ ストがかかります(簡易な造材コスト含む)。そのため、切り捨て間伐材については、木寄せ、搬出、チップ 化、輸送の 4 つのコストの合計を供給コストとしました。 利用間伐については、伐倒した立木をその場でチェンソー造材する場合には、末木・枝条や端材は林 内に散らばって発生します。そうした林地残材の重量割合(切り捨て間伐材は除く)の初期値は 20%と設 7 定しました。なお、そうした林地残材は集材が困難であることから、供給できないものとしました。一方、集 材路まで木寄せを行い、プロセッサ等の高性能林業機械を用いて造材処理を行うと林地残材が発生しま すが、そのようにして集材路付近で発生した残材の重量割合の初期値は 50%としました。集材路付近の 残材は、土場までフォワーダ等を用いて搬出するコストが必要となりますので、搬出、チップ化、輸送の 3 つのコストの合計を供給コストとしました。 これに対して、主に皆伐等で集材機あるいはタワーヤーダ(スウィングヤーダ)を用いて土場まで直接 伐倒木を集材する場合、林地残材は土場周辺で発生します。こうした土場付近で発生する残材の重量 割合は、残りの 30%としました。それらの供給コストは、チップ化と輸送コストの合計となります。 広葉樹の場合、北日本では枝葉や末木を取り除いた長い幹部を土場まで全幹集材することが一般的で すが、本州では全木集材も多く、その場合、林地残材は土場付近で発生します。そこで、土場付近の残 材の重量割合を 80%としました。 製材残材 ① ② ①工場残材のバイオマス販売価格 工場残材の多くは有価で取引されていますので、工場渡しでの残材の単価をここで設定します。工場 渡し単価ですので、この値に輸送コストを加えたものが供給コストとなります。輸送コストは、林地残材と同 じであると仮定しています。なお、針葉樹バークは初期値を 50 円/生 t としておりますが、酪農の盛んな地 域では 1000 円/生 t を超すこともあります。 ②製材工場における残材利用率 量産製材工場では、木くず炊きボイラーを設置して工場残材を熱源として製材品の乾燥を行うのが一 般的です。そうした工場では、工場残材が大量に発生していますが、そのほとんどが工場内で消費され てしまうので、外部に供給される量は少なくなります。そこで、工場自らが残材を消費する割合の初期値を ここでは 80%として、20%だけが外部に供給されるものとしています。 8 供給コスト(現状型) ① ② ③ ④ ⑤ ①間伐材木寄せ 切り捨て間伐を行った林分では、あとから切り捨て間伐材を利用しようとする場合、切り倒されている樹 木を集材路まで引き出す(木寄せ)必要があります。木寄せした樹木はそのままでは搬出しづらいので、 いくつかに分割したりする作業が必要となりますが、そうしたコストも含めた木寄せコストの初期値を 2000 円/m3 としました。 9 ②搬出コスト ここでは、丸太の搬出に用いるフォワーダを残材の搬出でも用いることを想定しています。丸太搬出の 空き時間を利用する場合、フォワーダの利用コスト(減価償却費や維持管理費等)は無視できますが、機 械の空き(待ち)時間が長い作業システムは非効率であることや、丸太搬出が終わったあとに林地残材を 搬出する場合、丸太と同様に利用コストを考慮するべきであることから、専業的に作業を行う前提でコスト を推計しました。初期値は、たとえば機械の購入代金は 800 万円とし、積載量は当研究所の試験結果を 参考に 0.85t-dry としました。機械の利用コストは、機械の減価償却・メンテナンス費を、残存価値 10%、 維持修理比率 50%、償却期間 6 年として計算しました(減価償却費は定額法で計算)。これとは別に、機 械管理費として購入代金の 5%を計上しています。 ③粉砕コスト 土木作業現場で一般的に利用されている粉砕機を用いることを想定しています。粉砕機は、トレーラー 輸送する必要があることから、同じ現場で数日間移動しないことも考慮に入れて、輸送費は平均で 1 万円 /日としました。機械の減価償却・メンテナンス費および管理費は、搬出コストと同様に計算しました。 ④輸送コスト・チャーター 輸送コストについては、運送会社からトラックをチャーターする場合と、専業的にトラックを購入する場合 の 2 通りの計算ができるようにしました。チャーターする場合については、当研究所における 10tトラックの 借り上げ見積もりを参考に、ドライバー込みで 5 万円/日(燃料代別)を料金の初期値として設定しました。 トラックの荷台の容積によって積載量が大きく変わり、それにあわせてコストも変わりますが、ここではチッ プの輸送に適したコンテナータイプの荷台を想定し、容積の初期値を 24m3 としました。この容積に、「林 地残材」のところの針葉樹チップのかさ密度 0.25 生 t/m3 を乗じて積載量を 6 生 t、つまり 3t-dry と計算し ています。輸送距離については、25 ㎞圏内については、最低でも 10 ㎞は輸送する必要があると考えて、 25 ㎞との間をとって平均の 17.5 ㎞から輸送時間および輸送回数を計算しています。50 ㎞圏内について は、25 ㎞から 50 ㎞までの間をとって平均 37.5 ㎞とし、75 ㎞と 100 ㎞圏内についても同様に計算してい ます。 ⑤輸送コスト・専業 専業的にトラックを購入する場合については、トラックの減価償却・メンテナンス費および管理費は、搬 出コストと同様に計算しました。輸送距離、輸送回数と輸送量については、チャーターする場合と同じもの として計算しております。 10 供給コスト(欧州型) ① ② ③ ここでの推計の基本的な構造は、「現状型」と同じですが、計算に用いているパラメーター(係数)に違う 値を用いています。以下、その内容について説明いたします。 11 ①搬出コストの推計に用いた積載量 現状型においては、付録2のところに示してあるような用材丸太搬出専用のフォワーダを用いることを想 定してその積載量は 0.85t-dry としましたが、欧州型ではバイオマス搬出にも対応できるフォワーダを用い ることを想定して積載量は 1.7t-dry としました1)。機械の機構が異なるので、機械購入代金は高めの 1500 万円を初期値としました。ちなみに、欧州では丸太搬出専用のフォワーダをそのまま利用することが一般 的ですが、それはそのまま利用しても 3t-dry 程度の積載が可能な大型フォワーダが普及しているためと 考えられます。そうしたフォワーダは、重量が 12t 前後と大型トラック並みに大きいことや、ホイール(車輪) タイプであるため、幅が狭く傾斜が急でぬかるんでいる集材路には適していないと考えられます。 ②粉砕コストの推計に用いた粉砕量 現状型において想定した粉砕機は、バイオマスをハンマーでたたいて砕くタイプであることや機械の動 力が小さいため粉砕量は 2t-dry/h としましたが、ここでは、欧州で一般的に用いられているドラムについ ている刃物でバイオマスを切削するタイプのチッパー(ドラムチッパー)を想定しました。チッパーの動力 が現状型の 3 倍前後であることも手伝って、粉砕量は 10t-dry/h と高くなっています。ドラムチッパーは、 一般的にトラクターで牽引するか、あるいはトラックの荷台に積載しているため、機械総体の購入費用は 高額になります。ここでは高性能のチッパートラックを想定し、初期値を 6000 万円としましたが、機械の移 送経費はかからず、クレーンも架設されているため 1 人のオペレーターで作業が可能なことから、結果とし てコストは大幅に低減されています。なお、日本のそれぞれの林業現場では、バイオマスの発生量が少 ないため、現場から現場への移動が頻繁に必要となることを念頭に、1 日の稼働時間を 3 時間と短く設定 しています。これを長くできれば、さらにコストを引き下げることが可能となります(本来高額な機械は 1 日 8 時間くらい稼働させることができると経済性は大きく高まります)。 ③輸送コストの推計に用いた積載量 かさばる木質バイオマス燃料を低コストで輸送するためには、(a)できるだけ容積密度を上げて輸送する、 (b)荷台の容積をできるだけ大きくして 1 回あたりの輸送量を大きくする、という 2 つの方法が考えられます。 前者に関しては、ここでは残材をそのまま輸送するのではなくチップにすることでかさ密度を高めることを 前提としています。欧州型では、(b)について、コンテナー1 つあたりの大きさを大きくするとともに、2 連結 にしたフルトレーラー輸送することを想定し、積載量を 9 t-dry としました(これにあわせてチャーター料金 やトラック購入代金を引き上げています)。山土場までフルトレーラーが入り込むのは困難ですが、前のト ラックの部分は普通の 10t トラックと同じですので、これが山土場まで入り、近くのスペースにとめてあるトレ ーラーに荷物を積み替える方法を想定しました。 1)森林総合研究所(2011)第2期中期計画成果集 12 5. 主題図表示 主題図表示「現状型のチャーター」ボタンを押下すると、下図のように、コスト上限価格 14000(円/t-dry) の場合の、各市町村の供給可能量推計結果が、色分け主題図として表示されます。 画面は、「主題図表示」「推計結果表示」「地図操作」の 3 つのメニューと地図表示画面で構成されます。 主題図表示 コスト上限価格を変更後、「再表示」ボタンを押下すると、供給コストに対応した供給可能量を市町村単位 で再計算し、日本の広域を表示する縮尺の色分け主題図として表示します。 ①コスト上限価格:17000 円/t-dry の例 13 ②コスト上限価格:20000 円/t-dry の例 推計結果表示 指定した市区町村の供給コスト/供給可能量の表及びグラフ(供給曲線)を表示します。 ①「都道府県」選択リストから都道府県を選択します。選択した都道府県全域が地図上に赤枠で拡大表 示され、市区町村名も表示されます。 14 ②「市区町村」選択リストから市区町村を選択します。選択した市区町村が地図上で赤いハッチでハイラ イト表示されます。 ※ハイライト表示をクリアする場合は、「地図操作」メニューの「ハイライト削除」ボタンを押下します。 ③「推計結果とグラフ表示」ボタンを押下すると、供給コスト/供給可能量の表及びグラフを表示します。 →「5. 推計結果表示」へ 15 地図操作 地図の基本操作メニューです。 「全画面表示」:地図を全域(初期状態)で表示します。 「拡大」:ボタンを押下すると地図を 2 倍に拡大します。 「縮小」:ボタンを押下すると地図を 1/2 に縮小します。 「範囲拡大」:ボタンを押下後、地図にドラッグ操作で矩形を描くと、その範囲で拡大します。 「範囲縮小」:ボタンを押下後、地図にドラッグ操作で矩形を描くと、その範囲で縮小します。 「距離計測」:地図上を複数回左クリックし、ダブルクリックすると、距離を表示します。 「面積計測」:地図上を複数回左クリックし、ダブルクリックすると、面積を表示します。 16 「移動」:ボタンを押下後、左ボタンでドラッグすると地図が移動します。 「ハイライト削除」:都道府県の赤枠、市区町村の赤いハッチ、距離・面積計測結果をクリアします。 「凡例表示/非表示」:地図左上の凡例の表示/非表示を切り替えます。 17 6. 推計結果表示 パラメータ設定した供給コストと、供給可能量の推計結果を、市区町村単位で表示します。 表型とグラフ型があり、デフォルトでは表型の推計結果を表示します。 表型表示 表型の推計結果表示画面では、9 種類の発生形態、4 種類の距離の 36 種類の条件ごとに、供給コスト と供給可能量の推計値を数値で表示します。例えば、25 ㎞範囲内の山土場で発生している針葉樹の林 地残材の量は 1,309t-dry であり、それを供給しようとすると 13,563 円/t-dry のコストがかかることを示し ています。 供給コスト欄の赤色表示数値は、主題図表示画面で設定した、コスト上限価格以内で供給可能である ことを示しています。 主題図表示では、赤色で表示されて供給コストに対応した供給可能量を合計した値を用いて色分けを 行っています(下図の例は、コスト上限価格 20,000 円/t-dry で供給可能量の値は 39,980t-dry)。 「条件設定画面」:供給コストのパラメータの変更や、輸送コストの条件などを変更したい場合にボタンを 押下します。「供給コストの推計結果」画面に戻ります。 「主題図画面」:供給コストの上限や、他の市区町村を選択したい場合にボタンを押下します。主題図表 示画面に戻ります。 18 グラフ型表示 グラフ型表示では、縦が供給コスト、横が供給可能量の推計値となる矩形を、供給コストの小さいもの から順番に表示します。 また、設定した供給コスト上限価格を、赤い点線で表示します。 それぞれの矩形の右上の角をクリックすると、該当するセルの属性を表示します。 例えば、「工残-針-チップ-100」は、工場残材・針葉樹・製紙用チップの、市区町村役場から 100km 以内の集荷距離の場合の推計値(縦:供給コスト、横:供給可能量)であることを示します。 主題図で設定し たコスト上限値 を示す線 右上の角をクリック すると属性を表示し ます。 「条件設定画面」:供給コストのパラメータの変更や、輸送コストの条件などを変更したい場合にボタンを 押下します。「供給コストの推計結果」画面に戻ります。 「主題図画面」:供給コストの上限や、他の市区町村を選択したい場合にボタンを押下します。主題図表 示画面に戻ります。 19 付録 1.木質バイオマスについて (1)木質バイオマスの種類 森林バイオマス 立木:上層木、中・下層木 枯死木、下層植生、土壌等 林地残材 切り捨て間伐材 末木・枝条 端材(短尺材等の用材不適木) 工場残材 バーク 端材、剥き芯 鋸くず・かんなくず 製紙用チップ 建築廃材 木造家屋等の解体・新築時に発生する木くず 廃パレットや梱包材廃材 園芸残材 果樹剪定枝 街路樹の剪定枝 製品バイオマス 住宅に使われている建築材:製材、合板 紙・板紙(紙ゴミ) 本推計シス テムの対象 木質バイオマスは、上記のように多様なものを含んでいますが、本推計システムでは、このう ちの林地残材と製材残材(製材工場、チップ工場)を対象としております。 20 (2)林地残材の種類 (a) 切り捨て間伐材 左の写真は、保育(切り捨て)間伐を行っ たあとの、スギ・ヒノキ等の針葉樹人工林の 様子です。売り物にならない小径材や、搬出 しても赤字になるために林内に切り倒した ままになっている林木のことを「切り捨て間 伐材」といいます。 切り捨て間伐材 (b) その他の林地残材 林業の伐採・搬出にともなって発生する、末木・枝条(下左写真)や端材(下右写真)も林地 残材の大きな割合を占めています。立木の梢端部(末木)や枝葉(枝条)は、用材にならないた め造材(丸太の生産)を行う際に取り除かれます。また、根元近くの直径が急に広がる部分や、 曲がりや割れ、腐れ等の欠点部分も取り除かれて、一般的に林内に残されたままとなっています。 ↑端材 ↓広葉樹の枝条 末木・枝条 端材(用材不適木) 末木・枝条 広葉樹の枝条 21 (3)工場残材の種類 (a)バーク(樹皮) 一般的に、製材工場では丸太の樹皮(バ ーク)を取り除いてから、柱や板等の製材 品を生産します。これは、バークについた 異物を除去するとともに、背板から質のよ い製紙用チップを生産するための作業です。 取り除かれたバークは、家畜の敷料等への 利用がしやすいように粉砕してから右の写 真のように積み上げられて貯蔵されます。 近年は、畜産業の減少やバーク堆肥需要の 縮小などの影響によって、バークの需要が 減少したため、処理に困る工場も出てきて います。一方で、乾燥材生産のための熱源 としての利用が拡大しています。 樹皮(バーク) (b)木屑・のこ屑 製材品を生産するために、帯のこや丸のこ で丸太を鋸断する際にのこ屑が発生します。 のこ屑は、家畜の敷料やキノコ栽培の菌床 等に利用されており、比較的高い価格で取 引されています。 粗挽きされた製材を乾燥した後、あるい は生のまま、寸法を整え、表面を平滑にす るためにプレーナー(かんな)がけをする 場合、かんな屑も発生します。 製品を出荷する前には、製材品の長さをそ ろえますが、その際、端材が発生します(修 正挽きで発生するべら板(商品にならない 薄い板)もこれに含めました)。これらの 3 つの合計によって「端材・のこ屑」の発生量 を推計しています。 のこ屑(おが粉)・かんな屑 端材 22 (c)製紙用チップ 針葉樹の製材用材の場合、皮むきをした丸 太から、柱角や板を生産すると、外側の丸み の部分が背板として残ります。背板はチッパ ーによって切削され、右の写真のような皮な しの切削チップが生産されます。こうした高 品質のチップは、紙・板紙の原料となる製紙 用チップとして販売されています。 また、針葉樹の小径材や低品質材あるいは 広葉樹の小径材等のパルプ用材の場合には、 皮むきをした後、そのままチッパーにかけて 紙・板紙の原料となる製紙用チップを生産し ています。 2.供給システムについて (1)推計システムの基本設定 一般的な林業生産では、小さな空き 地を林道や作業道等のトラックが走 行可能な道路に面した場所に開設し て、造材した丸太や造材作業に伴って ① 発生した林地残材を集積しておきま ② す。こうした空き地は、「土場」と呼 ばれています。図中の①のように、道 路(作業道)に隣接した土場において 発生した林地残材は、利用に適してい ます。しかし、林地残材のかさ密度は 0.13 生 t/m3(当研究所の試験結果) 出典:林野庁資料「第 1 回「森林・林業基本政策検討委員会」配付資料 と低いため、荷台が 24m3 あっても 3.12 生 t しか積載できず、そのままで は輸送効率は低くなります。これに対して、チッパー を用いてチップ化するとかさ密度は約 2 倍の 0.27 生 t/m3 に高まるので、輸送効率を上げることができ、 経済的であることがわかっています。 一方、図中の②のように作業路(集材路)上に集積 された林地残材の場合、そのままではトラック輸送で きませんので、フォワーダ等を利用して土場まで搬出 する必要があります。「現状型」の供給コスト推計で は、フォワーダは林業現場で用材丸太を搬出するため に利用されている機械に右の写真のように林地残材 を積んで搬出することを想定しました。 現状型の粉砕機については、土木現場で一般的に利用 されている右の写真のような機械を想定しています。オ ペレーターは、グラップルクレーンを操作してバイオマ スを粉砕機に投入し、粉砕機はリモコンで操作すること 23 を想定しました。 土木現場用の粉砕機は、右の写真のような泥や石等の異物 に強いハンマー状のもので木材をたたいて砕くタイプです。 これによって生産されるチップは、ピンチップと呼ばれ、下 左の写真のようにやや繊維状のためブリッジ(チップが絡み 合って固まりや空間ができること)が起こりやすいようです。 チップの輸送については、右下の写真のような着脱可能な コンテナーをアームロールで積み込みできるトラックを想 定しました。コンテナーには、荷台に積載した状態あるいは着脱して地面におろした状態で粉砕 機から直接チップを投入することを前提としました。 (2)欧州型のバイオマス供給システム 欧州では、我が国の現状型で想定したような林地 残材供給システムとは大きく異なるシステムを用 いている。林内からの林地残材搬出には、用材丸太 搬出用のフォワーダを右の写真のようにそのまま 利用している(グラップルはバイオマス用に爪形の アタッチメントに交換している)。こうしたフォワ ーダは、機械の重量だけで 12t 前後となっており、 ホイール(車輪)タイプであるため傾斜が緩く乾いて 欧州における用材用フォワーダによる残材運搬 いる林地に適しているため、我が国での利用は今の ところ現実的でないと考えられます。 そこで、ここでは、当研究所で開発した下の写真のようなバイオマス対応フォワーダを利用す ることを想定しましました。この機械の特徴は、荷台を広げて多くの林地残材をのせ、その後に 圧縮することでそのまま積載した場合の 2 倍程度の 2.2~3.3t の林地残材を運搬することが可能 となっています2)。 2)森林総合研究所(2011)第2期中期計画成果集 24 バイオマス対応フォワーダ(左:荷台を広げた状態、右:輸送 粉砕については、下の写真のようなチッパートラクター(左上)やチッパートラック(右上)が土 場までやってきて、そこでチップ化を行うのが欧州では一般的です。ともに、トラクターやトラ ックのエンジンから動力を取りだし PTO を回してでチッパーを動かすことが多いようですが、日 本の 120 馬力程度の粉砕機と違って、360 馬力以上のものが一般的です。また、ハンマーでたた いて砕くタイプではなく、左下の写真のようなドラムに鋭利な刃が 10 枚前後取り付けられた、い わゆるドラムチッパーで切削しているため、粉砕機が 4 生 t/h であるのに対して 15~45 生 t/h と 生産性が高くなっています。切削されたチップは、右下の写真のようになります。チッパーのス クリーンが大きめであることもあって、やや不揃いで 15 ㎝程度の長い削片も見られますが、この 程度でもブリッジは起こりにくいようです(出力 300kW 以上のボイラーではスクリューフィー ダではなくプッシャーフィーダが一般的であることも関係しているかもしれません)。 日本では、北海道を除いて 200 馬力前後の高出力トラクターは普及していないことや、トラク ターの最高速度は 50 ㎞/h と広域移動にやや難があることから、本システムではチッパートラッ クを念頭に置き、機械購入代金を 6000 万円(50 万ユーロ前後)としました(チッパートラクタ 25 ーの場合 3000 万円程度から購入可能)。 輸送については、現状型では産業廃棄物の輸送に使われているコンテナートラックを想定しま したが、産業廃棄物の場合、比較的かさ密度が高いため過積載になりやすく、荷台容積を極力増 やすという形になっていないようです。反対に、チップの場合、かさ密度が低いので、可能な限 り容積を増やさないとトラックの最大積載量に近づけることができません。現状型では、24m3 の荷台容積を初期値としましたが、針葉樹チップの場合、満載しても 6 生 t 程度にしかなりませ ん。10t 積みのトラックであれば、60%しか積めていないことになりますので、容積をもっと増 やす必要があります。まずできることは、 規制ぎりぎりまでコンテナーの高さを引 き上げることですが、それだけでは足り ないので長めのコンテナーにすることも 検討する必要があるでしょう。さらに欧 州では、右の写真のようにフルトレーラ ーによる輸送も一般的に行われています (写真のコンテナーサイズは 1 つ 50m3 前後)。そこで本システムでは、トレーラ ーは適当な空き地にとめておき、山土場 までは 10t トラックと同様のトラック部 分が入り、コンテナーを近距離で積み 替えることを想定しました。オースト リアなどでは、右の写真のようにトラ クターが牽引するコンテナーでチップ を配送する方法も普及しています。 ところで、本システムで前提とした 土場でチップ化してコンテナー輸送す る供給方法の他に、欧州では次ページ の表のようにチッパーフォワーダを利 用する方法や、残材をそのまま輸送す る、あるいはバンドリング(結束)マシンで生産したバンドル(結束した残材)をプラントで破 砕する方法など、さまざまなやり方でバイオマス供給が行われています。表の中の数値は、各作 業工程の生産コストを示していますが、本システムで想定している土場でチップ化してコンテナ ー輸送する供給方法が 11.28 ユーロ/MWh で最も低コストであるという結果が示されています。 ちなみに、11.28 ユーロ/MWh は 6000 円/t-dry 程度と推計できますので、欧州では非常に低コス トな供給システムが確立されていることがわかります。また、フィンランドでは商業的に生産さ れたバイオマスの 60%近くが土場近くでチップ化された後、コンテナー輸送されており、本シス テムで想定している方法と同じやり方が主流となっています3)。このようなことから、表の一番上 の供給方法を念頭にコスト推計を行うことといたしました。 3) Kalle Kärhä (2011) Industrial supply chains and production machinery of forest chips in Finland, Biomass and Bioenergy Volume 35, Issue 8, p3404–3413 26 (ユーロ/MWh) 表.集荷方法別の林地残材供給コスト 森林所有 土場におけるチッ 者への支 林地残材の集積 林地残材の搬出 プ化 払い 0.5 0 .6 7 森林所有 者への支 林地残材の集積 払い 2.6 0.5 0 .6 7 6.11 森林所有 者への支 林地残材の集積 林地残材の搬出 払い 0.5 0 .6 7 2.55 管理手数料 合計 3.11 0.5 11 .2 8 3 .9 チッパーフォワーダによるチップ化& 搬出 0.5 0 .6 7 2.6 森林所有 林地残材のバン 者への支 林地残材の集積 ドリング(結束) 払い チップを輸送(50㎞) チップを輸送(50㎞) 0.5 4.1 残材を輸送(50㎞) 4.8 結束残材の搬出 2 .4 プラントにおける チップ化 2 .4 結束残材の輸送 プラントにおける (50㎞) チップ化 3.6 管理手数料 合計 1.95 11 .8 8 管理手数料 合計 0.5 11 .4 7 管理手数料 合計 0.5 12 .1 7 データの出典:Ehrig, R et. al(2010) Wood fuel production technology and benefits derived from producing wood fuel, AFO 図の出典:Tekes(2004)Developing technology for large-scale production of forest chips-Wood Energy Technology Programme 1999–2003、およ びForest Energy Portal 注:条件次第では、バンドリングマシンを用いる方法が最も低コストにもなり得ますが、機械購入代 金が 5000 万円前後と高額であるため、年間 1 万 t-dry 程度の処理量がないと効果が出ないことや、機 械の重量が 20t 以上もあることから日本の状況に適合的ではないと考えられます。 27