...

2005年9月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

by user

on
Category: Documents
102

views

Report

Comments

Transcript

2005年9月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 4 巻 第 9 号( 通 巻 3 9 0 号 )
2005. 9
● 米国経済の見通しと双子の赤字
−米国経済は減速後も拡大傾向を持続 。双子の赤字の是正は中長期的課題−
● 欧米諸国における金融コングロマリットの実情と課題
−わが国における金融コングロマリット・モデルの可能性−
● 資 金の流れの構 造 変 化と金 融 機 関へ の影 響
−構造変化に対応した商品・サービス提供とその体制整備が重要に−
● NPO・コミュニティビジネスに対する創業融資
−行政や「市民金融」
(「N P Oバンク」)との協働も有益−
● 今 後の人 民 元 改 革のシナリオと日本 経 済・産 業 界へ の影 響
−年内にも人民元は再切上げ、産業界は対中戦略の見直しが課題に−
● 統計
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学国際総合科学部長(兼国際総合科学科長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:松崎、照沼)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03
(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
研 究
2005年 9月号 目次
米国経済の見通しと双子の赤字
丸山 順
2
藁品和寿
16
間下 聡
36
澤山 弘
56
黒岩達也
74
−米国経済は減速後も拡大傾向を持続。双子の赤字の是正は中長期的課題−
欧米諸国における金融コングロマリットの実情と課題
−わが国における金融コングロマリット・モデルの可能性−
資金の流れの構造変化と金融機関への影響
−構造変化に対応した商品・サービス提供とその体制整備が重要に−
NPO・コミュニティビジネスに対する創業融資
−行政や「市民金融」
(「NPOバンク」)
との協働も有益−
調 査
今後の人民元改革のシナリオと日本経済・産業界への影響
−年内にも人民元は再切上げ、産業界は対中戦略の見直しが課題に−
信金中金だより
信金中央金庫総合研究所活動状況(7月)
89
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
91
2005
9
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
研 究
米国経済の見通しと双子の赤字
−米国経済は減速後も拡大傾向を持続。双子の赤字の是正は中長期的課題−
信金中央金庫 総合研究所研究員
丸山 順
(キーワード)米国経済、住宅市場、原油価格、金融政策、双子の赤字
(要 旨)
1.米国経済の現状と見通し―減速後も拡大傾向を持続へ
米国の実質成長率は、前期比年率3∼4%程度の巡航速度を維持している。金融緩和、大型減
税といった政策効果は一巡したが、雇用・所得の回復→消費増→企業収益拡大という自律回復
局面にある。企業収益の回復で、キャッシュフローは高水準を維持しており、企業の投資余力は
依然として大きい。05年後半には、シリコンサイクルの底入れが予想され、IT関連を中心に設備
投資は今後も底堅く推移しよう。05年後半から06年前半にかけては、原油高や利上げ効果、住宅
投資の反動減などから、景気は一旦減速しようが、減速後も拡大傾向を維持できると予想される。
2.米国経済の短期的なリスク要因―住宅ブームの反動と原油価格高騰
住宅市場の活況はバブルとの指摘もあるが、その背景には、移民の流入による人口増・住宅
取得年齢層のウエイト上昇といった構造的要因もある。金利先高を見越した需要前倒しの反動
で、ブームは徐々に沈静化しようが、過度の在庫積増しはみられず、住宅市場の大幅な縮小は
回避できよう。一方、原油価格高騰については、投機的な要素も色濃く、夏場にかけては在庫
増加が予想されている。地政学的リスクや米国の製油所稼働率の高止まりが価格の押上げ要因
となっているが、米国のガソリン在庫は危機的水準にはなく、原油価格は高値維持ながらも安
定に向かおう。
3.金融政策と金利動向―利上げは最終局面
利上げ継続にもかかわらず、長期金利は歴史的な低水準にとどまっている。イールドカーブ
のフラット化は景気減速を織り込む動きが一因とみられるが、減速後も景気が拡大傾向を維持す
るとの見通しを前提とすれば、長短金利差は先行き拡大しよう。FFレートは3∼4%程度といわれ
る中立水準に近づきつつあり、物価の安定も崩れていない。利上げは最終局面にあるとみられる。
4.双子の赤字の持続性―米国経済の優位性を背景に中期的にもファイナンス可能
米国の双子の赤字は持続不可能で、いずれドル急落や金利高騰による景気の大幅悪化が避け
られないとの懸念がくすぶっている。米政府の財政赤字の半減公約に対しても、懐疑的な見方が
少なくなかったが、05年度の財政赤字見通しの大幅下方修正にみられるように、景気回復による
税収増で財政赤字は縮小傾向をたどろう。経常赤字拡大の主因は、為替ではなく、米国と日欧と
の景気格差にある。経常赤字は、日本、中国などからの証券投資でカバーされており、米国が日欧
に対して経済的優位性を維持している間は、経常赤字のファイナンスは十分可能とみられる。長
期的には家計の貯蓄率上昇とそれを原資とした投資拡大による輸出余力の拡大など、経済の構造
改革が必要といえようが、双子の赤字は中期的には景気拡大の阻害要因にならないと考えられる。
(注)本稿は2005年7月29日現在のデータに基づき記述されている。
2
信金中金月報 2005.9
われる3∼4%程度の巡航速度を維持している
1.米国経済の現状と見通し―減速後
も拡大傾向を持続へ
(図表2)
。需要項目別にみると、最大のけん引
(1)巡航速度で成長する米国経済―家計部門
月は3.3%増と1∼3月(3.5%増)から小幅減速
役を果たしているのは個人消費であり、4∼6
がけん引役
したが、依然として底堅さを保っている。ま
米国経済は、長期にわたって堅調な推移を
た、設備投資も堅調を維持しており、04年後
続けている。前年比でみた実質成長率は、足
半に大幅に伸びた反動で1∼3月は伸び悩んだ
元でも日本・ユーロ圏など他先進諸国を大き
ものの、4∼6月は9.0%増と勢いを取り戻した。
く上回っており、世界経済の機関車としての
今後も個人消費は雇用情勢の改善を背景と
役割を担い続けている(図表1)。
して回復を続け、景気のけん引役を果たす可
四半期ごとの推移を前期比年率でみても、05
能性が強い。
図表3は、非農業雇用者数を、実質GDPと実
年4∼6月の実質成長率は、3.4%と1∼3月の
3.8%からは減速したものの、潜在成長率とい
図表1 主要国・地域の実質成長率(前年比)
の推移
図表2 実質成長率と項目別寄与度の推移
(前期比年率)
(%)
政府支出
住宅投資
実質GDP
10
(%)
8
5
純輸出
設備投資
在庫投資
個人消費
6
4
米国
4
3
2
英国
2
1
ユーロ圏
日本
0
0
-2
-1
-4
-2
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05.1Q 2Q(年)
(備考)1.すべて季調値の前年比。05年は1-3月、4-6月の数字
( 2.各国・地域資料より作成
-6
00
01
02
03
04
05(年)
(備考)米商務省資料より作成
図表3 非農業雇用者増加率(前年比)の要因分解
(%)
5
実質GDP
実質雇用コスト
非農業雇用者増加率
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05(年)
(備考)1.LN(非農業雇用者数)=8.528+0.743×LN(2四半期前の実質GDP)−0.809×LN(実質雇用コスト)
(74.853)
(50.944)
(−16.415)
( R2=0.991 推計期間:90年1Q∼05年1Q カッコ内はt値
( 2.実質雇用コストは、名目指数をコア消費者物価(除く食品・エネルギー)で実質化したもの
( 3.米商務省、米労働省資料より信金中金総合研究所推計
研 究
3
質雇用コストを説明変数として要因分解した
以上の伸びを続けている。また、住宅価格の
ものである。最近の動きをみると、03年は景
上昇などによる資産効果が個人消費を押し上
気の順調な拡大にもかかわらず、非農業雇用
げている側面もある。
者数の伸びは前年比ほぼ横ばいにとどまった。
原油価格高騰によるエネルギー価格の上昇
この背景には、雇用コストの増加が企業収益
は、クルマ社会である米国では消費者マイン
を圧迫し、企業が総じて採用に慎重になった
ドを抑制する大きな要因になり得るが、エネ
ことがあるとみられる。
ルギー価格が高水準ながらも落ち着いてくれ
ただ、実質雇用コストの伸びは、03年10∼
ば、それによる悪影響は限られたものにとど
12月(前年比2.8%)をピークに低下傾向にあ
まろう。今後も雇用情勢の改善→賃金所得の
り(05年1∼3月:同1.0%)
、景気の回復持続と
回復→個人消費の増加、という好循環が米国
も相まって、企業は新規雇用を積極化させて
景気を支える可能性が大きい。
いる。非農業雇用者の前月比増加数は、4∼6
月の月平均で18.1万人と堅調なペースでの増加
(2)企業活動―設備投資は引き続き底堅い推
が続いており、当面、雇用情勢は改善を続け
移に
ると見込まれる。
一方、企業の生産活動は、回復傾向を維持
こうした雇用環境の改善が、賃金所得の拡
しているものの、伸び率は鈍化傾向にある。
大をもたらし、最近の個人消費を支える要因
GMやフォードの販売不振を受けるかたちで、
となっている(図表4)。ブッシュ政権が実施
自動車生産が伸び悩んでいるほか、製造業全
した大型減税の効果は、すでに04年前半で一
体でも軽い在庫調整局面にある(図表5)。た
巡しているが、賃金所得の増加がそれを補う
だ、個人消費の好調などを背景として企業収
図表4 可処分所得と個人消費の推移
益は回復が続いており、企業のキャッシュフ
(%)
12
10
マイクロソフトによる
特別配当(04年12月)
その他の所得
(前年比寄与度)
可処分所得
(前年比)
8
個人消費
(前年比)
6
4
2
賃金所得
(前年比寄与度)
-2
税金(前年比寄与度)
99
00
01
02
(備考)米商務省資料より作成
4
(%)
12
製造業
(05年4月)
8
実
質
在
庫
︵
前
年
度
比
︶
4
自動車
(05年4月)
0
-4
-8
0
-4
98
図表5 在庫循環図
信金中金月報 2005.9
03
04
-12
-15
-10
-5
0
5
生産(前年比)
05(年) (備考)1.自動車は3か月移動平均の前年比
( 2.FRB、米商務省資料より作成
10
15
(%)
図表6 企業収益とキャッシュフローの推移
(%)
(10億ドル)
1,300
30
税引き前利益
(前年比、左目盛)
20
1,200
10
1,100
0
1,000
-10
900
-20
800
キャッシュフロー
(右目盛)
-30
95
700
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05(年)
(備考)1.キャッシュフロー=内部留保+減価償却
( 2.米商務省資料より作成
ローも歴史的な高水準にある(図表6)。資金
図表7 実質IT投資と半導体製造装置BBレシ
オの推移
(%)
30
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
95
(倍)
半導体製造装置BBレシオ
(米国、右目盛)
1.50
1.25
1.00
0.75
0.50
0.25
実質IT投資
(前年比、左目盛)
96
97
98
99
00
01
02
03
04
0.00
05(年)
(備考)1.BBレシオとは出荷に対する受注の割合
( 2.米商務省、SEMI(国際半導体製造装置材料協会)
( 資料より作成
入れが予想される。
面からみれば、企業の投資余力は十分に大き
IT投資は新規の資本投入量の拡大をもたら
いと言え、これが設備投資の堅調さを支えて
しているばかりでなく、それが持つネットワ
いる。04年10月に成立した雇用創出法(注)1で、
ーク効果やそれを使いこなす人間の学習効果
海外子会社からの配当を米国内投資に振り向
を通じて生産性の向上をもたらし、経済成長
けた場合、税率が軽減されることも、設備投
の底上げに寄与するとされている。
図表8は、成長会計(経済成長を「労働投入
資の拡大を後押ししている。
設備投資のなかでも、IT投資は、
03年以降、再び好調に推移している
(図表7)。00年のITバブル崩壊と同
図表8 米国の成長会計分析
(%)
5
4
時に、米国経済に長期的な繁栄をも
3
たらしたITブームは終焉したとの見
2
方もあったが、03年以降の動きは依
1
然としてIT投資の需要が衰えていな
0
いことを物語っている。シリコンサ
-1
イクル(半導体景気循環)は04年半
ばをピークに下降局面にあったが、
足元の半導体製造装置BBレシオは05
年2月をボトムとして上昇しており、
05年後半にもシリコンサイクルの底
IT資本
全要素生産性
-2
95
96
97
98
99
00
一般資本
実質成長率
01
02
労働投入
03
04(年)
(備考)1.LN(GDP)=−2.293+0.763×LN(L)+0.676×LN(Ko)
( (−7.869)
(11.194)
(10.613)
( +0.120×LN(Ki)
R2=0.999
(3.048)
推計期間:86年∼03年
( GDP=米国の実質GDP、L=労働投入量、Ko=一般資本投入量、
( Ki=IT資本投入量
( 2.資本投入量は鉱工業のみ稼働率修正後の数値。04年の資本投入量
( は推計値
( 3.米商務省資料などにより信金中金総合研究所推計
(注)
1.海外子会社からの配当を米国内への投資に振り向けることを条件に、05年の間に限り、当該配当に課される法人所得税率が
軽減される(最大35%→最大5.25%)
。
研 究
5
量」、「資本投入量」、「全要素生産性=技術進
く低下し、直近では5%台の推移となっている。
歩」の3要素で分析する手法)を用いてIT投資
低金利を追い風として住宅市場へ大量な資
の効果を分析したものである。IT投資やそれ
金が流入した結果、住宅価格は04年第2四半期
に伴う全要素生産性の向上による景気押上げ
以降、前年比で2ケタの上昇を続けており(05
効果は、ITバブル崩壊後の01年には一時的に
年1∼3月は12.5%の上昇)、不動産バブルとそ
縮小したものの、03年以降は再び米国経済を
の崩壊を懸念する向きも増えてきている。
大きく押し上げる要因となっている(図表8)
。
しかし、住宅市場の好調の背景には、移民
中長期的にみても、企業は効率化を目指して
の流入による人口増加や新しい融資制度の導
IT投資を積極化するとみられ、それが設備投
入による借入れ意欲、住宅購入意欲の高まり
資の押上げ要因となると同時に、米国経済の
など、構造的な要因も大きいと推察される(図
リード役を果たす可能性は大きいといえよう。
(注)
2
。
表10)
05年後半から06年前半にかけては、原油高
や利上げ効果、住宅投資の反動減などから、景
図表9 住宅着工件数と住宅ローン金利の推移
(%)
(千件)
2,250
気は一旦減速しようが、減速後も拡大傾向を
2,000
維持できると予想される。
1,750
12
30年物住宅ローン
固定金利(右目盛)
11
10
9
1,500
2.米国経済の短期的なリスク要因―
住宅ブームの反動と原油価格高騰
8
1,250
7
1,000
6
750
(1)住宅ブームの行方―過熱気味だが、ソフ
トランディング可能
次に、米国経済にとっての当面のリスクと
なり得る要因について検討する。第1は、住宅
ブームの継続可能性の問題である。
(備考)米商務省、米抵当銀行協会資料より作成
図表10 住宅所有率と米国人口の推移
(千人)
(%)
310,000
予測
290,000
270,000
ス)前後で推移するなど、住宅市場はかつてない
250,000
66
64
230,000
低水準で推移していることである。30年物住宅
ローン固定金利は、00年の9%近い水準から大き
190,000
70
70
68
住宅所有率
(右目盛)
人口(左目盛)
210,000
らしている最大の要因は、長期金利が歴史的な
5
500
4
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年)
04年以降、住宅着工件数が200万件(年率ベー
活況を呈している(図表9)。住宅ブームをもた
住宅着工件数
(年率、左目盛)
74
78
82
86
90
94
98
02
62
60
06(年)
(備考)1.人口は海外駐在の軍人を除いたベース
( 2.04年以降の人口は米商務省センサス局による予測
( 3.米商務省資料より作成
(注)2.図表10において、94年頃を境に住宅所有率が上昇している一因として、クリントン政権時代に成立した、「連邦住宅関連機
関財務安全性・健全性確保法(Federal Housing Enterprises Financial Safety and Soundness Act)
」により、フレディーマックや
ファニーメイなどの政府支援住宅金融機関が住宅融資を推進したことが指摘されている。
みずほ総研論集(2005年1月号)
「米国住宅ブームの帰結をどう読むか」参照
6
信金中金月報 2005.9
特に、米国の人口を年齢別にみる
図表11 米国人口の年齢別構成比の比較
と、80年と03年の比較では、住宅取
〈1980年〉
〈2003年〉
得年齢層(30、40歳代)の割合が上
昇してきており、こうした人口構成
の変化も住宅需要を増加させている
60歳以上
15.7%
20歳未満
50歳代
32.0%
10.3%
一因とみられる(図表11)。住宅を
中心とした不動産ブームは実需を伴
計23.9%
40歳代
10.0%
ったものである点で、日本のバブル
時における地価の高騰とは異なると
いえよう。
60歳以上
16.5% 20歳未満
27.9%
50歳代
12.0%
20歳代
18.0%
20歳代
13.7%
計29.9%
40歳代
15.4%
30歳代
13.9%
30歳代
14.5%
(備考)1.人口は海外駐在の軍人を除いたベース
( 2.米商務省資料より作成
足元の住宅市場の活況は、金利先高を見越
した駆込み需要が支えている面もあるとみら
れ、今後、住宅投資は減少に転じると予想さ
れる。ただ、前述のように、米国では構造的
に住宅需要が高水準を維持する局面にあるこ
と、加えて住宅の販売在庫にも過度の積増し
はみられないこと(図表12)などから、住宅
投資の急激な落込みは回避できる公算が高い。
図表12 住宅供給指数の推移
(か月分)
8.0
7.5
7.0
6.5
6.0
5.0
4.5
4.0
米国経済のもう1つのリスクは、原油価格の
新築住宅
3.5
3.0
95
(2)原油価格は高値安定へ
中古住宅
5.5
96
97
98
99
00
01
動向である。足元のWTI先物価格(期近物)
図表13 投機筋の原油持ち高
(NY商業取引所)
は、50ドル/バレル台後半と高水準で推移し
100
ており、景気への悪影響が危惧されている。
中国経済の高成長など、世界的に原油に対
する需要が拡大していることもあるが、その
一方では多分に投機的な面も存在する。実際、
最近の原油価格と投機筋の売買動向には高い
(千枚)
価格が上昇する原因となっていることがうか
がえる。
いまのところ、原油需給には過度の逼迫感
03
04
05(年)
(ドル/バレル)
70
投機筋のポジション
(左目盛)
80
60
60
40
50
20
40
0
-20
30
-40
相関性が認められ(図表13)
、実需以上に原油
02
(備考)1.住宅供給指数=当該月の在庫戸数/当該月の販売戸数
( 2.米商務省、全米不動産業者協会資料より作成
WTI期近物
(右目盛)
-60
-80
00
01
02
03
04
20
10
05 (年)
(備考)1.「非商業」の建玉の差(Long-Short)を投機筋の先
( 物ポジションと仮定
( 2.CFTC(米商品先物取引委員会)資料、ブルームバ
( ーグより作成
研 究
7
はない。図表14は、IEA(国際エネルギー機
重な姿勢を続けていることがあるとされる。
関)の統計をもとに、今後の原油需給の見通
しかし、現在の米国のガソリン在庫の水準
しをみたものだが、仮に05年第2四半期以降の
は歴史的にみても決して低い水準ではなく、石
OPEC(石油輸出機構)の供給量を横ばいとし
油業界は現有の設備をフル操業させれば供給
ても、05年夏場にかけて原油在庫(供給−需
力に問題はないと考えているようだ(図表16)
。
要)は増加する見通しとなっている。その後、
このため、石油製品の需給も危機的な状況に
冬場の需要期には需要量が供給量を上回る見
あるとはいい難い。
込みだが、原油価格が60ドル/バレルを超え
当面、原油価格は高値での推移が続こうが、
るような状況には、OPECも増産を進める意向
需給面での不安が大きくはないことを考えれ
を示しており、それが一段の価格高騰を抑制
ば、いま以上の高騰を想定する必要はなかろう。
する役割を果たすものとみられる。
図表15 米国の製油所稼働率の推移
その一方で、中東情勢など地政学的リスク
(%)
100
のほか、米国の製油所稼働率が高止まりして
いることなどが心理的な不安材料となり、原
95
油相場の下方硬直性の原因になることは十分
90
に想定される(図表15)
。ガソリンなど石油製
品の供給不安が懸念される背景には、製油所
85
設備の老朽化や石油業界における長年のリス
トラによって、米国内での製油能力が低下し
ており、石油業界が依然として新規投資に慎
88
(百万バレル/日)
在庫増減(供給−需要、右目盛)
原油需要量(左目盛)
原油供給量(左目盛)
86
75
00
01
02
03
04
05(年)
(備考)米エネルギー省資料より作成
図表14 世界の原油需給の見通し
(百万バレル/日)
80
3
予測
図表16 米国のガソリン価格とガソリン在庫
(千バレル)
2
84
(ドル/ガロン)
2.50
240,000
82
2.25
小売ガソリン価格
(右目盛)
230,000
1
2.00
220,000
0
80
78
200,000
1.25
-2
74
-3
01
02
03
04
05
(年)
(備考)1.05年2Q以降はIEA(International Energy Agency)
( による予測。供給量の予測は、OPECの供給量を05年
( 第2四半期以降、一定としたもの
( 2.IEA資料より作成
8
1.50
-1
76
72
00
1.75
210,000
信金中金月報 2005.9
190,000
1.00
180,000
170,000
95
0.75
ガソリン在庫
(左目盛)
0.50
96
97
98
99
00
(備考)米エネルギー省資料より作成
01
03
04
05
(年)
生産活動は拡大傾向が続いており、景気は年
3.金融政策と金利動向―利上げは最
終局面
後半の減速後、06年には再び拡大テンポを徐々
Fedは04年6月以降、9回にわたって0.25%ず
過度な景気減速懸念が徐々に後退すれば、長短
つの小刻みな利上げを実施したが、10年国債
金利差は再び拡大し、極端なイールドカーブの
利回りは歴史的な低水準にとどまっている(図
フラット化は解消されてくる可能性は強い。
に速めてくると予想される。したがって、今後、
表17)。
一方、金融政策に目を向けると、04年前半
こうした現象を、グリーンスパンFRB議長
までの過度な金融緩和の是正過程にあるが、引
が、05年2月の議会証言において「謎」と呼ん
締めが必要とされる状況にはない。物価上昇
だことは記憶に新しい。また、7月の議会証言
率をみると、原油価格の高騰にもかかわらず、
のなかで同議長は、長期的なインフレ期待が抑
コア消費者物価(除く食品・エネルギー)は
制されていることやリスクプレミアムの低下、
足元で落着きを取り戻しており、いまのとこ
世界的な過剰貯蓄などを原因として挙げてい
ろ、インフレ懸念は抑制されている(図表19)
。
るが、その因果関係は必ずしも明確ではない。
一つの考え方としては、現在の長期金利が
図表18 長短金利差とISM製造業指数の推移
(%)
(%)
70
4
長短金利差
(右目盛)
先行きの景気減速をかなりの程度織り込んで
3
60
いる可能性である。
2
1
実際、長短金利差は製造業の景況感を表す
50
0
-1
代表的な指標であるISM製造業指数と相関性
40
が高く、今回の局面でも、04年後半以降のISM
指数の低下に伴って長短金利差が急速に縮小
している(図表18)。
ただ、前述のように、すう勢としては、企業の
図表17 FFレートと10年国債利回り
(%)
8
8
6.50
FFレート
(左目盛)
7
6
米国10年国債利回り
(右目盛)
4
3
2
01
02
03
04
02
03
04
-4
05(年)
(%)
7
6
コア消費者物価
(除く食品・エネルギー)
5
3
2.5(6月)
2
2.0(6月)
3
00
01
4
4
99
00
-3
6
3.25
1
(備考)FRB資料、ブルームバーグより作成
99
-2
(備考)1.長短金利差=(米国10年国債利回り)
( −(TBレート3か月物)
( 2.ISM(米供給管理協会)資料、ブルームバーグより
( 作成
5
5
0
98
30
98
ISM製造業指数
(左目盛)
図表19 消費者物価(前年比)の推移
(%)
7
50%が製造業の
景気拡大・縮小の分岐点
05(年)
1
消費者物価(全体)
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年)
(備考)米労働省資料より作成
研 究
9
図表20 実質短期金利の推移
図表21 双子の赤字(対名目GDP比)
(%)
(%)
4.5
4
4.0
3
3.5
財政収支
(連邦政府、対名目GDP比)
赤字増
経常収支
(対名目GDP比)
2
実質金利
3.0
1
2.5
0
2.0
-1
1.5
1.0
(6月)
1.0
0.5
黒字増
1.5(90年∼04年の平均)
-2
-3
0.0
-4
-0.5
-5
-1.0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年)
-6
(備考)1.実質金利=FFレート(月平均)−コア消費者物価
( (除く食品・エネルギー、前年比)
( 2.米労働省資料、ブルームバーグより作成
6月29、30日のFOMC(連邦公開市場委員会)
-7
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(備考)米商務省、米財務省資料より作成
(年)
(図表21)。
で、FFレートの誘導目標値は3.25%に引き上
この双子の赤字のうち、財政赤字について
げられ、すでに3∼4%程度といわれる中立的
は、米国政府は非常に楽観的な見通しを立て
水準の範囲内へ入っている。現在のFFレート
ている。ブッシュ米大統領は、05年2月の予算
の誘導目標から、コア消費者物価の前年比(6
教書で09年度までに財政赤字を半減させるこ
月2.0%)を差し引いた実質短期金利は1.25%
とを公約したが、市場では懐疑的な見方が支
と、90年∼04年の平均である1.5%に近づいて
配的であった。しかし、7月に発表された財政
おり、利上げは最終局面にあるとみられる(図
見通しで、政府は05年度の財政赤字を2月時点
表20)
。景気の減速が確認されれば、利上げは
の4,270億ドルから3,330億ドルへと大幅に下方
一旦打止めとなろう。
修正した。この見通しの大幅な修正の要因は、
景気が当初見込んだよりも強いことから、所
4.双子の赤字の持続性―米国経済の
優位性を背景に中期的にもファイナ
ンス可能
得税や法人税収入の増加により、歳入額の大
幅な増加が見込まれていることによる。04年
度に4,120億ドルと膨大な額に上った財政赤字
(1)景気拡大による税収増で財政赤字は縮小へ
米国における、財政赤字と経常赤字のいわ
は、08年度には半分以下になり、前倒しで公
約が達成可能であるとしている(図表22)
。
ゆる「双子の赤字」は、依然として米国経済
もちろん、イラク情勢次第では、軍事費が
の不安材料となっている。過去との比較にお
さらに膨らむおそれがある。また、ブッシュ
いても、その水準は高く持続不可能とみられ
大統領が重要課題と位置づけた年金制度改革
ており、いずれドル急落や金利急上昇を招き、
により、個人勘定が導入された場合における
景気に大打撃となるとの懸念がもたれている
制度移行にかかわる費用などについても、不
10
信金中金月報 2005.9
図表22 米国連邦政府の財政見通し
年度
2004
歳入
2005
2006
2007
2008
2009
2010
1,880
2,140
2,273
2,428
2,588
2,727
2,893
(所得税)
809
929
1,006
1,119
1,209
1,281
1,385
(法人税)
189
266
243
243
258
268
273
(社会保険料)
733
794
856
891
939
986
1,042
2,292
2,472
2,613
2,661
2,750
2,888
3,063
(国防費)
歳出
376
400
419
443
462
482
492
(社会保障費)
492
518
545
574
604
659
729
(メディケア)
265
290
346
385
409
435
463
財政収支
△
412
△
333
△
341
△
233
△
162
△
162
△
170
(GDP比、%)
△
3.6
△
2.7
△
2.6
△
2.6
△
1.1
△
1.1
△
1.1
(備考)1.表示のあるものを除き、単位は10億ドル
( 2.09年度以降の社会保障費は、年金制度改革により個人勘定が導入された場合の支出を含む。
( 3.05年度以降は米国政府による予測。米国政府資料より作成
確定な部分が多い。この点、政府の財政見通
かけて財政収支が黒字に転じた時期において
しは楽観的すぎるともいえようが、景気拡大
も、経常赤字は拡大傾向が続いており、経常
が持続できれば、税収の増加で、90年代のよう
赤字の背景には家計の過剰消費もある。米国
に財政赤字は中期的にも縮小傾向をたどろう。
人は借金をしてでも消費をするといわれてい
米国経済にとって、長期的により深刻な問
るが、最近ではその旺盛な消費意欲から、家
題は経常収支の赤字である。米国の貯蓄・投
計の貯蓄率は1%を割り込み、歴史的な低水準
資バランスをみると、非金融法人企業は黒字
にある。ただ、貯蓄率低下の背景には住宅価
であるものの、連邦政府と家計の赤字を埋め
格や株価の上昇があり、家計の純資産残高は
切れず、海外からの資金流入に依存する構図
可処分所得の5.5年分と高水準を維持している
となっている(図表23)
。90年代末から00年に
図表23 米国の貯蓄・投資バランス
(対名目GDP比)
図表24 貯蓄率と純資産/可処分所得の推移
(%)
8
資金余剰
海外
6
7
4
非金融法人
2
5
-2
4
-6
貯蓄率
(左目盛)
6.0
5.5
5.0
3
家計
資金不足
6.5
6
0
-4
(倍)
9
(%)
8
(図表24)。
連邦政府
2
-8
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年)
(備考)1.海外部門の黒字は、海外から米国への資金のネット
( 流入超を意味し、米国の経常収支の赤字にほぼ相当す
( る。
( 2.FRB、米商務省資料より作成
1
4.5
家計の純資産残高/可処分所得(年率)
(右目盛)
0
4.0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
(年)
(備考)FRB、米商務省資料より作成
研 究
11
(2)貿易・経常赤字拡大の主因は日欧との景
気要因(米国を除いた世界の実質成長率)と
気格差
為替要因(ドルの実質実効為替レート(注)3)に
米国の経常赤字の大半を占めているのは貿
分解したものが、図表26である。この結果に
易赤字だが、この中で、対中国の赤字が近年急
よると、米国の輸出にとって大きな要因は為
増している(図表25)。7月21日に人民元が2%
替ではなく、輸出相手国の経済成長率である
切り上げられたが、その変動幅は小さく、効果
ことがわかる。とりわけ、経済規模の大きい
は限定的とみられていることから、米国政府は
日本やユーロ圏が低成長にとどまっているこ
一段の人民元切上げを要求するとみられる。
とが、米国の輸出の伸びを限定的にしている。
しかし、本来、米国にとって、為替調整の
反対に、米国の実質輸入を、景気要因(米国
効果は限定的である。米国の実質輸出を、景
の実質国内需要)と為替要因(ドルの実質実効
図表25 主要相手国・地域別の貿易収支の推移
(億ドル)
為替レート)とに分解してみると、実質輸出の
結果と同様、輸入の伸びに対して為替はほとん
1,000
0
ど影響を及ぼしていないことがわかる(図表
-1,000
27)
。結局、仮に人民元が今後さらに切り上げ
-2,000
られ、中国からの輸入に多少の歯止めがかかり
-3,000
対中貿易赤字が減少したとしても、米国の国内
-4,000
-5,000
-6,000
需要が堅調である限り、総額としての輸入の伸
その他
対ドイツ
対OPEC
対中国
対メキシコ
対カナダ
対日本
貿易赤字
びが大きく鈍化することはないだろう。対中赤
字の減少分が、他のアジア諸国に対する貿易赤
-7,000
93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
(備考)通関ベース(未季調値)。米商務省資料より作成
(年)
字へと振り替えられるに過ぎないと考えられる。
図表26 輸出増加率の要因分解
ドル実質実効レート
世界の実質成長率(除く米国)
実質輸出(前年比)
(%)
20
15
10
5
0
-5
-10
83
86
89
92
95
98
01
04
(年)
(備考)1.LN(実質輸出)=−2.895+2.620×LN(世界の実質成長率、除く米国)
(−3.576)
(30.515)
( −0.795×LN(1年前のドル実質実効レート)
(−5.798)
( R2=0.980 推計期間:83年∼04年 カッコ内はt値
( 2.世界の実質成長率(除く米国)は、世界の実質成長率から、名目GDP比をウエイトと
( した米国の実質成長率を除いたもの
( 3.IMF、FRB、米商務省資料より信金中金総合研究所推計
(注)
3.主要貿易相手国の通貨に対するドル相場をインフレ格差で調整し、貿易額で加重平均したドル相場
12
信金中金月報 2005.9
以上、2つの要因分解の結果をまとめると、
米国の経常赤字が高水準を続けるとしても、
現在の米国の貿易赤字が歴史的にみて高水準
それが円・ドル相場を左右する大きな要因に
で推移しているのは、米国と日欧などとの景
はなり得ないとみられる。ポートフォリオ・
気格差から、米国からの輸出が伸びないこと
バランス・アプローチ(注)4という分析手法を用
と、米国内の需要が強いため、輸入の勢いが
いて、円・ドル相場の理論値を推計すると、米
衰えないことにある。
国の巨額の経常赤字がドル安要因となる一方
今後も米国景気が拡大するとの前提に立て
で、日米の実質金利差の拡大がドルの押上げ
ば、他国との成長率格差はそれほど埋まらず、
要因となっており、現在の円ドル相場はほぼ
貿易・経常赤字は高水準で推移することになる。
適正水準ということができる(図表28)。
図表27 輸入増加率の要因分解
(%)
25
ドル実質実効レート
実質国内需要
20
実質輸入(前年比)
15
10
5
0
-5
81
84
87
90
93
96
99
02
(年)
(備考)1.LN(実質輸入)=−6.394+2.227×LN(実質国内需要)+0.144×LN(ドル実質実効レート)
(−20.287)
(89.313)
(2.397)
( R2=0.997 推計期間:81年∼04年 カッコ内はt値
( 2.FRB、米商務省資料より信金中金総合研究所推計
図表28 円ドル相場のポートフォリオ・バランス・アプローチ
(円/ドル)
280
260
240
220
200
180
160
140
120
100
80
85
推計値
円ドル相場
113.45(1-3月)
104.55(1-3月)
87
89
91
93
95
97
99
01
03
05(年)
(備考)1.推計値:LN(EX)−LN(PPP)=−0.445+0.033×RRR−0.073×USCA/USGDP R2=0.578
( EX=円ドル相場、PPP=購買力平価(工業製品ベース)、RRR=実質金利差(米−日)、
( USCA=米経常収支、USGDP=米名目GDP
( 2.米商務省資料などにより信金中金総合研究所推計
(注)4.為替レートを推計する際に、購買力平価に加え為替変動リスクも考慮する分析手法。本稿では、為替変動リスク要因とし
て、①日米実質金利差と②米国の経常赤字(対名目GDP比)を用いた。
研 究
13
(3)日本、中国などからの証券投資が経常赤
字をファイナンス
国のマネーが、米国の経常赤字を穴埋めして
いる公算が大きい。
米国の経常赤字は、主に海外から米国への
また、日本の対米証券投資を証券別にみる
多額の証券投資でファイナンスされている(図
と、断トツで国債が多い(図表31)
。日銀の為
表29)
。株式の割合はそれほど多くないが、国
替介入のほか、国内の機関投資家が積極的に
債への投資が近年徐々にウエイトを高めてい
米国債を購入したためとみられる。一方、中
る。
国の対米証券投資は国債と政府機関債の割合
対米証券投資を国別にみると、日本、中国、
がほぼ半々となっており、外貨準備のユーロ、
英国などが多い(図表30)
。このうち英国の場
円へのシフトもあって、04年の対米証券投資
合は、中東産油国などが、英国のシティの金
は前年の水準を下回った(図表32)
。なお、04
融機関に運用を委託したものが主体とみられ、
年の日本と中国の米国債投資(ネット)の合
原油価格の高騰により資金の潤った中東産油
計は、海外からの米国債投資のうち、52.6%を
図表29 証券別の対米証券投資(ネット)の
推移
図表31 日本の対米証券投資(ネット)の推移
(億ドル)
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
株式
社債
政府機関債
国債
総額
(億ドル)
2,500
株式
社債
政府機関債
国債
総額
2,000
1,500
1,000
500
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
(備考)国債は短期債を除く。米財務省資料より作成
(年)
-500
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
図表30 国別の対米証券投資(ネット)の推移
(備考)国債は短期債を除く。米財務省資料より作成
(年)
(億ドル)
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
その他
欧州(除く英国)
英国
中国
日本
総額
図表32 中国の対米証券投資(ネット)の推移
(億ドル)
700
600
500
5,000
株式
社債
政府機関債
国債
総額
400
4,000
300
3,000
2,000
200
1,000
100
0
-1,000
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年)
(備考)1.証券投資は、国債・政府機関債・社債・株式の合計。
( 国債は短期債を除く。
( 2.米財務省資料より作成
14
信金中金月報 2005.9
-100
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
(備考)国債は短期債を除く。米財務省資料より作成
(年)
占めるに至っており、両国の存在感は大きい。
赤字のファイナンスは十分可能であろう。長
04年4月以降、日本は為替介入を見送ってお
期的には、家計の貯蓄率上昇とそれを原資と
り、中国の為替介入に対する批判も根強いこ
した投資拡大による輸出余力の拡大など、米
とから、海外からの資金流入の持続性を不安
国内の経済構造の調整を進める政策対応が欠
視する向きもある。しかし、米国が日欧に対
かせないものの、中期的には双子の赤字が景
して経済的優位性を維持している間は、経常
気拡大の阻害要因にはならないと考えられる。
〈参考文献〉
International Energy Agency(IEA)
『Oil Market Report』(2005年7月号)
Jonathan McCarthy and Richard W. Peach『Are Home Prices The Next Bubble?』(2004年12月)
黒岩達也「原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望―地政学的リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう
可能性が大きい―」『信金中金月報』
(2004年11月号)
みずほ総研論集『米国住宅ブームの帰結をどう読むか』
(2005年1月号)
研 究
15
研 究
欧米諸国における金融コングロマリットの実情と課題
−わが国における金融コングロマリット・モデルの可能性−
信金中央金庫 総合研究所研究員
藁品 和寿
(キーワード)金融コングロマリット、ビジネスモデル、規模の経済、範囲の経済
(視 点)
2004年11月8日に、金融コングロマリット化の進展による業態横断的監督業務の重要性の高
まり等を背景として、金融庁監督局総務課に「コングロマリット室」が設置された。
こうしたなか、三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループが経営統合の検討に入
ったという報道(05年2月10日付報道)を契機として、メガバンク以外でも「金融コングロマ
リット」に対する意識の高まりがうかがわれる。
このような意識の変化を視野に入れて、欧米諸国における金融コングロマリットの進展の背
景、現状、課題などを整理し、わが国の金融サービス業の将来像を考えるうえでの参考として
供したい。
(要 旨)
●
金融コングロマリットとは、「主たる業務が金融であること」と「銀行業、証券業、保険業
のうち2つ以上を兼業していること」を満たす複合企業体であるといえる。しかし、欧米各
国での定義は一様ではなく、現状、わが国では、形態論での定義付けとなっている。
●
米国では、「対面取引」を基調としながら、90年代から現在にかけて金融コングロマリット
化は、地域金融機関を巻き込んだ「規模の経済(同業態での合併等)
」を前提として、
「範囲
の経済(異業態の合併等)」への流れとなっている。ただし、経営戦略上、シティ・グルー
プのように低収益部門である保険部門を売却するケースもある。
●
欧州では、「対面取引」と「非対面取引」をバランスよく併用しながら、90年代後半を中心
に、地域金融機関を巻き込んだ金融コングロマリット化が進展している。もともと業態間の
垣根が低いため、
「規模の経済」を志向した流れとなっている。
●
金融コングロマリット・モデルの問題点としては、金融当局にとっては規制・監督手法の調
和化、金融機関にとってはリスク管理、顧客にとってはディスクロージャーが主な課題であ
るといえる。
●
2005年6月に金融庁から「金融コングロマリット監督指針」が公表されるなど、金融コング
ロマリット・モデルがビジネスモデルの1つとして認知されるようになったが、もし金融コ
ングロマリット・モデルが定着するとしたら、時間を要すると思われる。
16
信金中金月報 2005.9
05年2月の、三井住友フィナンシャルグルー
および保険業のうち2つ以上を主要な業務とし
プと大和証券グループが経営統合の検討に入
て行っているコングロマリット(複合企業体)
」
ったという報道発表以降、わが国において「金
と定義される。しかし、金融コングロマリッ
融コングロマリット」が注目されるようにな
トは、個々で規模やグループの構造などが異
った。一方、欧米諸国では、業態間規制の緩
なり、また、国や地域によって規制・監督手
和などを背景に、20世紀後半から金融部門に
法等が異なるため、国際的に統一された定義
おける金融コングロマリットの存在感が高ま
は存在しない。
っている。
EUでは「金融コングロマリットにおける銀
そこで、本稿では、欧米主要国における金
行、保険会社、投資会社に対する補足的監督
融コングロマリットの実情と課題を概観した
(以下、
「金融コングロマリ
に関する指令(注)1」
うえで、わが国の金融サービス業への示唆を
ット指令」という。)において、図表1に示し
行う。なお、金融コングロマリットには、証
た4つの要件をすべて満たすものを、金融コン
券業あるいは保険業を中核とするケースもあ
グロマリットと定義している。一方、米国で
るが、ここでは銀行業を中核とした金融コン
は金融業法上、金融コングロマリットという
グロマリットに焦点をあてる。
用語は存在せず、1999年のLCBOs(注)2(Large
Complex Banking Organizations program)とい
1.金融コングロマリットとは
う監督手法の下では、
「大型かつ複雑」との表
金融コングロマリットとは、一般的に「主
現にとどまっており、米国での金融コングロ
たる業務が金融であり、かつ銀行業、証券業
マリットの定義は具体的ではなく、曖昧であ
図表1 金融コングロマリットの定義
区分
用語
定義
主に金融に従事する企業(銀行等)のグループ
・主たる事業が金融であり、その中の規制対象企業が銀行業務、保険業務および証券業務のうちの少なくとも2つ
に相当程度従事しており、統一的な所要自己資本規制に服していないコングロマリット(ジョイント・フォーラム)
ビジネス
・銀行業務、証券業務および保険業務のうち少なくとも2つに主に従事しており、共通の支配下にある企業のグ
ループ(G10)
米国 金融持株会社(FHC)
業法
主に金融業務(銀行・保険・証券)に従事し、複数の金融業務を一定の規模(総資産ベースなど)で行ってい
(規制・
EU
る企業のグループ注)
監督)
日本 金融持株会社型、事業持株会社型、親子会社型、外国持株会社型
注)具体的には次のいずれも満たす。①コングロマリット内で中核となる主体がEU指令の規制対象である、またはコングロマリット内の少な
くとも1つが規制対象主体である。②コングロマリット内の中核企業が、主に金融業務(銀行、証券、保険)に従事している。③コングロ
マリット内の中核企業が規制対象企業でない場合、コングロマリット全体の総資産に占める金融部門の比率が40%超である。④コングロマ
リット全体が主に金融業務に従事している(例えば、コングロマリット内の金融部門全体の総資産に占める各金融部門の総資産の比率が10
%超である、金融部門のうち最も規模が小さい部門の総資産が60億ユーロ超である)。
(備考)BIS、FRB、英国FSA、金融庁の資料を基に作成
(注)1.指令番号は、2002/87/EC。略称が“Financial Conglomerates Directive”であるため、本稿では「金融コングロマリット指
令」という。正式名称は、
“Directive 2002/87/EC of the European Parliament and of the Council of 16 December 2002 on the
supplementary supervision of credit institutions, insurance undertakings and investment firms in a financial conglomerate and amending
Council Directives 73/239/EEC, 79/267/EEC, 92/49/EEC, 92/96/EEC, 93/6/EEC, and 93/22EEC, and Directive 98/78/EC and 2000/12/EC
of the European Parliament and of the Council”である。
2. LCBOsとは、銀行の財務および経営を正確かつ即座に評価し、問題が生じた際には迅速な対応が行えるよう策定されたも
のである。具体的には、1999年以前は年1回であった監督をその時の金融情勢にあわせて回数を増やしたり、あるいは専門家
で構成される検査チームを結成したりするなどの対応を行った。
(米FRB)
研 究
17
るといえる。
わが国では、05年6月24日に金融庁から「金
金融コングロマリットをみる場合、図表2の
融コングロマリット監督指針」が公表された。
とおり、「組織」と「戦略」という2つの切り
そのうち「Ⅰ-1
口でとらえることができる。一般的には「組
義」によると、①金融持株会社グループ、②
織」でみることが多いことから、金融コング
事実上の持株会社グループ(事業持株会社)、
ロマリットを組織という切り口で分類すると、
③金融機関親会社グループ、④外国持株会社
図表3のとおり、
「統一型」
、
「親子会社型」
、
「持
等グループ、の4つのグループが示されている。
株会社型」の3つに大別できる。これら3つの
要約すれば、図表3中の「②親子会社型」と
組織構造間の大きな相違点は、
「リスクの遮断
「③持株会社型」の2つの組織構造が認められ
性の強弱(統合型→親子会社型→持株会社型
る。ただし現状では、形態論に基づいた定義
となるほど、リスク遮断性が強い)
」であると
付けとなっており、EU金融コングロマリット
いえる(日本銀行調査季報掲載論文〈信用機
指令のように資産規模等に基づいた具体的な
構局、05年4月27日〉を参考)
。
定義はなされていないことから、当面は米国
のように定義付けが曖昧なままで「現状の追
図表2 金融コングロマリットの見方
認」がなされる可能性が高い。
見方
組織
戦略
金融コングロマリットの定
● 統一型(ドイツ・モデル)
● 親子会社型(英国モデル)
● 持株会社型(米国モデル)
(高い)
内部での業務多角化
統
M&A
合
レ
ジョイント・ベンチャー
ベ
業務提携
ル
(低い)
2.欧米諸国における金融コングロマ
リットの実情と課題
(1)金融コングロマリットが発展した背景
米国では、1970年代以降、間接金融から直
図表3 金融コングロマリットの組織構造
①統一型
単一の主体
銀行
証券
保険
その他
②親子会社型
親会社
(例:銀行)
子会社C
(その他)
子会社B
(保険)
子会社A
(証券)
③持株会社型
持株会社
子会社A
(銀行)
子会社B
(証券)
(備考)『国際金融』1145号P. 30より引用
18
信金中金月報 2005.9
子会社C
(保険)
子会社D
(その他)
接金融へのシフトが生じた。なかでも投資銀
うになり、業態間規制の緩和の必要性を認識
行(注)3は、71年8月のニクソン・ショック(注)4に
するようになった。このことが、その後のグ
よるトレーディング業務の拡大とともに、
「社
ラス・スティーガル法(注)5の運用手法の緩和
債旋風」と呼ばれたIBMなどの大企業による
(図表4)につながり、さらに99年のグラム・
大型社債の発行や住宅ローンの証券化を中心
リーチ・ブライリー法(注)6の制定によって金融
とした証券化業務の進展を背景に、大きく業
持株会社方式による銀行業、証券業、保険業
績を伸ばした。その後、87年10月のブラック・
の相互参入が可能となった。
マンデーを経験するなど苦難を乗り越えつつ、
欧州では、業態間規制が緩い(別添1を参照)
Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、
という歴史的背景があり、80年代から銀行業
Salomon Brothers(ソロモン・ブラザーズ)、
と証券業を兼業するユニバーサル・バンク制
Merrill Lynch(メリル・リンチ)、Morgan
度が普及した。また、金融部門におけるEU域
Stanley(モルガン・スタンレー)などの大手
内規制の調和化、99年の「金融サービス行動
投資銀行は強固な基盤を確立した。
計画(注)7」の策定および単一通貨「ユーロ」の
一方、上記の投資銀行の状況とは裏腹に、商
導入など、EU域内における金融統合が加速化
業銀行は、80年代の途上国融資や不動産融資
している。さらに、70年代以降に財務体力を
の失敗により、80年代後半から90年代にかけ
強化した米系投資銀行の進出の影響を受け、銀
て苦境に陥っていた。この苦境を乗り越える
行は、株主のための経営、つまり高いROE(注)8
ために、商業銀行や金融当局(FRB)は、銀
(株主資本利益率)を目指している(注)9。その
行業による証券業務への参入を強く求めるよ
なかで、証券業を兼営している銀行が保険業
図表4 米国商業銀行による証券業務への進出
年
規制緩和業務
右記業務の制限
1987
CP、MBS業務
総収入の5%以内
FRB認可
1989
社債引受、ディーリング
総収入の10%以内
FRB認可
1990
株式引受、ディーリング
1996
「非適格証券注)」業務
1999
全面解除
FRB認可
総収入の25%以内
FRB認可
GRB法成立
注)グラス・スティーガル法上で取扱い業務が禁止されている証券
(備考)箭内[2002]より引用
(注)
3.わが国における証券会社にあたる組織
4.金・ドル兌換停止が発表され、為替と金利が大きく変動するようになった。
5.1933年に成立した米国銀行法で、銀行による証券引受業務および株式の売買を禁じた法律である。
6.同法により、金融持株会社方式による銀行業、証券業、保険業の相互参入が可能となった。これにより、事実上、業態間規
制は撤廃された。
7.98年10月に欧州委員会によって公表された「金融サービス:行動の枠組み構築」と題する文書をベースに、「金融サービス
政策グループ(欧州委員会、財務相の個人代表および欧州中央銀行からなる)」での議論を経て策定された。内容的には、リ
テールおよびホールセール双方の単一市場形成と健全性規制および監督体制の調和を柱とし、42項目の必要措置(各項目ごと
に優先度と実施期限を明示)が提示されている。2005年を目処に欧州の金融統合を目指している。
8.発行済み株式に対しての企業の自己資本に対する当期利益の割合
9.例えば、ドイツ銀行は「ROE=25%」を目標としている。
研 究
19
に参入するなど、銀行業と保険業の融合(バン
イ.米国
カシュランス(注)10といわれる)が進展している。
90年代以降現在にかけて、銀行数が減少す
以上、ポイントを整理すると、米国では主
る傾向が継続している。一方で、支店・事務
に「内的要因」により「銀行業と証券業の融
所数は増加傾向を維持している(図表5)。農
合」が進展し、欧州では「内的要因」に「外的
林中金総合研究所の調査(注)11によると、銀行数
要因」が重なって「証券業を兼営する銀行業と
の減少は主に合併による減少を要因とし、支
保険業の融合」が進展している(別添2を参照)
。
店・事務所数の増加は資産規模が100億ドル以
下の中小銀行の支店・事務所数の増加を主な
(2)金融コングロマリットの現状
要因としている。このことから、中小金融機
(1)で整理したとおり、米国と欧州では、金
融コングロマリットが発展した背景が若干異
関を中心に、営業店舗による「対面取引」を
重視していることが推測できる。
なる。以下では、米国と欧州のそれぞれにおけ
90年代に入ると、特に大規模な地域金融機
る金融コングロマリット化の現状を概観する。
関同士の合併が相次いだ(注)12。この背景には、
図表5 米国における銀行数・支店数の推移
80,000
11,000
銀行数
(右目盛)
75,000
事務所数
(左目盛)
10,000
支 70,000
店
数
・ 65,000
事
務
所
数 60,000
支店数
(左目盛)
銀
9,000 行
数
8,000
55,000
50,000
7,000
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
(年末)
参考 金融持株会社(FHC)数の推移
年末
2000
2001
2002
2003
FHC数
308
398
445
463
(備考)FRB、FDICの資料を基に作成
(注)
10.銀行(バンク)と保険(インシュランス)が合成された言葉であり、フランスに起源を持つ。
11.永井[2005]
12.事例に挙げたバンク・オブ・アメリカのほか、バンクワン(オハイオ州)とファースト・シカゴNBD(シカゴ州)の合併
(98年、合併後はバンクワン)、ノーウェスト(ミネソタ州)とウェルズ・ファーゴ(サンフランシスコ州)の合併(98年、
合併後はウェルズ・ファーゴ)
、フリート・ファイナンシャル(マサチューセッツ州)とバンク・ボストン(同)の合併(99
年、合併後はフリート・ボストン)などがある。
20
信金中金月報 2005.9
94年の州際業務規制(注)13の撤廃がある。その代
待した動きであったというよりは、90年代前
表的な事例が、Nations Bank(ネーションズ・
半に苦境に陥った商業銀行が、その苦境を脱
バンク、ノースカロライナ州)によるBoatmen’
s
するために、州際業務規制の撤廃やグラム・
Bankshares(ボートメンズ・バンクシェアズ、
リーチ・ブライリー法の制定などの規制緩和
ワシントン州)
、Barnett Bank(バーネット・バ
措置を利用したことであったといえる。
ンク、フロリダ州)およびBank America(バ
ンク・アメリカ、カリフォルニア州)の買収
ロ.欧州
である(別添3を参照)。合併後は、バンク・
各国ベースでは、スペインやポルトガルで
オブ・アメリカの名称を選択している。さら
の例外があるものの、EU全体では、90年代後
に90年代後半から2000年にかけては、異業種
半以降、信用機関(注)14数の減少とともに支店数
間の合併が主流となった。2000年以降の金融
も減少している(図表6)
。90年代のEU各国内
持株会社数の増加傾向がそのことを裏付けて
いる(図表5[参考]を参照)。代表的な事例
注)
図表6 欧州における信用機関 数・支店数の
推移
はCitigroup(シティ・グループ)であり、
Salomon Smith Barney(ソロモン・スミス・
信用機関数の推移
10,000
9,624
全体では減少傾向
EU全体では減少傾向
バーニー、証券業)を買収したTravelers Group
7,444
(トラベラーズ・グループ、保険業)が、さら
にCiticorp(シティコープ、銀行業)を買収し
イタリア
フランス
5,000
ドイツ
て、大規模な金融コングロマリットを形成し
英国
た(別添3を参照)。
主要4か
国以外
すなわち、米国における金融コングロマリ
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003(年末)
ット化への流れは、規制緩和を背景に、
「規模
支店数の推移
統合(90年代)」から「範囲統合(2000年以
250,000
降)」へと変化している。ただし、05年1月に
200,000
シティ・グループが保険部門をMetLife(メッ
150,000
トライフ)に売却することを決定したように、
100,000
50,000
る動きも一部で出始めている。この動きから
0
ット化の本質は、当初からシナジー効果を期
EU全体では減少傾向
全体では減少傾向
186,009
イタリア
フランス
ドイツ
英国
経営戦略上、低成長・低収益分野から撤退す
推測すると、米国における金融コングロマリ
202,092
主要4か
国以外
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003(年末)
注)信用機関とは、預金やその他資金を公衆から受け入れたり、信
用を供与したりすることを業務とする企業で、銀行等を指す。
(備考)欧州中央銀行資料を基に作成
(注)13.1927年のマクファーデン法によって、銀行は州をまたいで支店を設置することが禁止されていた。しかし、94年のリーグ
ル・ニール州際銀行業務・支店設置効率化法によって、その規制が撤廃された。
14.信用機関とは、預金やその他資金を公衆から受け入れたり、信用を供与したりすることを業務とする企業で、銀行等を指す。
研 究
21
での合併や98年から2000年にかけてのクロス
ボーダーでの合併などの金融再編が背景にあ
①大手金融機関の事例
ルール大学(ドイツ)の調査(注)19によると、
る(注)15。また、欧州中央銀行によると、EU全
HSBC(英国)
、BNP Paribas(BNPパリバ、フ
体における人口10万人当たりの支店数が、97
ランス)
、Banco Santander Central Hispano(サ
年の54店舗から03年には49店舗(注)16に減少して
ンタンデール・セントラル・ヒスパノ銀行、ス
いる。このことから欧州では、中小金融機関
ペイン)およびNordea Group(ノルデア・グル
を含めて、営業店舗による「対面取引」を最
ープ、スウェーデン)の金融コングロマリッ
重要視する戦略から、
「対面取引」に併せてテ
ト・モデルによる経営戦略は、図表7のとおり
レフォン・バンキングやインターネット・バ
である。90年以降は、買収や出資による営業
ンキングなどの「非対面取引」を販売チャネ
エリアの拡大と、インターネット・バンキン
ルとして活用する戦略へと転換しているもの
グの創設を柱とする複数の販売チャネルの確
と推測される(注)17。
立を経営戦略としている。買収等により他地
欧州では、ユニバーサルバンキングという
域への参入が行われている理由は、被買収金
言葉があるとおり、もともと業態間の垣根が
融機関の既存の顧客との取引を継続できるな
低いため、規模の拡大を志向した金融コング
ど、銀行を新設することに比べれば参入コス
ロマリット化が主流である。また、欧州では、
トが低いと判断されているためである。また、
96年にBISのジョイント・フォーラムで金融コ
ジョイント・ベンチャー等よりも買収し統合
ングロマリットの規制・監督手法に関する検
するほうが、販売費用や管理費用が大幅に削
討が行われる以前から、欧州委員会(注)18により
減されることが期待できる(図表8)。インタ
検討が行われてきており、金融コングロマリ
ーネット・バンキング・ビジネスにおいて各
ットの歴史は米国に比較して長い。それゆえ
行とも独自に新設している理由は、図表9のと
に、大手金融機関の動きのみならず、地域金
おり、銀行の新設に比べれば、一般的に設立
融機関を巻き込んだ動きに関する事例が豊富
費用が低いといわれるためである(注)20。なお、
である。そこで、以下では、大手金融機関と
提供サービスや販売チャネルについては、ノ
地域金融機関に分類した上で、それぞれの事
ルデア・グループのようにグループ全体で均
例を簡単に紹介する。
一のサービスを提供するケースがある一方で、
(注)
15.欧州中央銀行“Report on EU banking structure”p. 8 Chart2を参照(2004年11月)
16.ちなみに、日本は48.7店舗(2004年3月末、金融ジャーナル『金融マップ2005年版』を参考)でほぼ同水準である。
17.例えば、スウェーデンのノルデア・グループは、販売チャネルとして、支店網の拡大とともにインターネット・バンキン
グの創設を行うことにより、複数チャネルによるサービスの均一化および質的向上を目指している。
18.欧州委員会は、EUの執行機関である。具体的には、①主に経済分野に関する政策、法案を閣僚理事会(意思決定機関)に
提案、②EU法規の適用を監督、③理事会決定を執行、が業務となっている。
19.Carsten Eppendorfer, Rainer Beckmann, Markus Neimke[2002]
20.銀行の設立費用については明確ではないが、例えばアリアンツによるドレスナー買収(2001年)時の費用が約223億ユーロ
(約3兆1千億円)、ロイズTSBによるスコティッシュ・ウィドウズ買収(2000年)時の費用が約120億ユーロ(約1兆7千億円)
であることを考慮すると、大手金融機関にとってはインターネット・バンキングの新設費用は「安い」と判断できるものと
思われる。
22
信金中金月報 2005.9
図表7 欧州主要行の経営戦略
銀行名
国名
HSBC
英国
BNPパリバ
フランス
・オンライン・サービス(銀行・証券)
・複数チャネルを有する銀行の設立
・プライベート・バンキング・ビジネスの積極化
・クロス・セリング(組み合わせ販売)の促進
・積極的買収による組織拡大
ルクセンブルク
スペイン
フランス
ギリシャ
本国
ドイツ
スペイン
本国
参入国
・銀行新設
・銀行新設
・銀行買収
・バークレイズ ・ミッドランド銀子 ・ドイツ銀との ・支店網の拡大 ・BNPとパリ
バの合併
(HSBCルク (HSBCスペ (2000)
支店の買収
会社化(1999) ジョイント・ (1980年代)
(2000)
センブルク、 イン、1982)
(2001)
・オンライン・サー ベンチャー
参入手法
1977)
ビスでのメリル・ (2000)
リンチとの業務 子会社(Cardif, Cetelem)を通じたマーケット
提携(2000) 戦略
富裕層向けプライベート・バン
富裕層向けプライ
プライベート・バンキング
フルバンキング 消費者金融
フルバンキング
提供サービス キング
ベート・バンキング
対面
対面
複数
対面
複数
複数
対面
複数
販売チャネル
汎欧州戦略
銀行名
国名
サンタンデール・セントラル・ヒスパノ銀行
スペイン
ノルデア・グループ
スウェーデン
・ジョイント・ベンチャーや大手パートナー(ソシエテ・ジェ ・ワン・バンク・ショッピング・コンセプト
ネラル(仏)
、RBS(英)、コメルツ(独)等)との業務提携 ・ノルディック圏における支店網拡大
汎欧州戦略 ・インターネット・バンキングの創設
・インターネット・バンキング(単一かつフルバンキング)の
・南米業務の拡大
創設
ポルトガル
ドイツ
イタリア
本国
フィンランド
デンマーク
ノルウェー
本国
参入国
・金融機関への ・セントラル・ ・Meritaとの合 ・金融機関の買 ・金融機関の買 ・金融機関の買
・金融機関買収 ・銀行買収
出資
(1993、1999) (1995)
ヒスパノ銀と
併(銀行持株 収
収
収
・テレフォン・ (1998)
サンタンデー
参入手法
(2001)
(1998) (2000)
(2000)
バンクの設立
ル銀との合併 会社)
ノルデア・グループ誕生(2000)
(1999)
提供サービス フルバンキング フルバンキング 与信(貸出) フルバンキング ・アルフィナンツ(保険商品販売)
電話・
複数
複数
複数
複数
販売チャネル
オンライン中心
(備考)Carsten Eppendorfer, Rainer Beckmann, Markus Neimke[2002]を基に作成
図表8 欧州のバンカシュランスにおける費用
伝統的チャネル
(対面方式)
販
売
費
用
管
理
費
用
非統合型
統合型
バンカシュランス バンカシュランス
(ジョイントベンチャー等)
−24%
−63%
+14%
−71%
(備考)Milliman(米コンサルティング会社)資料より引用
BNPパリバのように営業エリア全体にわたり
図表9 欧州における主要なインターネット銀
行の設立コスト
(単位:億ユーロ、億円)
銀行名
所在国
Egg
First-e
Sainsbury’
s Bank
Virgin One Account
VW Bank
Standard Life Bank
IKANOBanken
OnBanca
英国
フランス
英国
英国
ドイツ
英国
スウェーデン
イタリア
設立費用
円建換算
3.10
432
0.58
81
0.47
65
0.30
42
0.30
42
0.25
35
0.25
35
0.20
28
(備考)1.円建換算は、2005年3月末裁定相場1ユーロ=139.22
( 円にて算出
( 2.英国金融イノベーション研究センター資料を基に作
( 成
子会社を通じたサービスを提供しながらも、マ
(ラ・カイシャ)が、88年に保険子会社である
ーケティングにより各国での提供サービスを
Vida Caixa(ビダ・カイシャ)を設立し、さら
特定しているケースもある。
に保険業務を拡大するため、92年にオランダ・
ベルギー系の大手銀行・保険グループである
②地域金融機関の事例
スペインでは、大手貯蓄銀行であるLa Caixa
Fortis(フォルティス)と持株会社CALIFOR
(カリフォル)を形成した。その持株会社が、
研 究
23
ビダ・カイシャを子会社化(持分80%)する
国銀行を巻き込んで金融再編の主役となった。
ことにより販売網を拡大し、保険販売チャネ
ハリファックスは、アビー・ナショナルとの
ルを強化している。
対抗上、大手住宅金融組合であるBirmingham
また、オランダの協同組織金融機関である
Midshires(バーミンガム・ミッドシャー)を
Rabobank(ラボバンク)は、90年に保険会社
買収するなど、規模の拡大を志向していた。そ
Interpolis(インターポリス)を子会社化する
のなかで、英国南部に営業エリアの拡大を狙
とともに、大手ファンドマネージャーである
っていた大手地銀であるBank of Scotland(ス
Robeco Group(ロベコ・グループ)と業務提携
コットランド銀行)と思惑が一致したため、01
をした。この時点で、ラボバンクは、
「オラン
年9月にグループ化を図り、現在では5大金融
ダの金融サービス業に“コンソリデーション
グループの1つに数えられるHBOSグループを
(統合)”時代の幕を開けた(注)21」と評された。
形成した。一方、アビー・ナショナルも、大
97年にロベコ・グループを子会社化した後も
手住宅金融組合National&Provincial(ナショナ
積極的に業務拡大を図り、03年にはインター
ル&プロヴィンシャル)を買収するなど、規
ネット・ブローカー(注)22であるAlex(アレック
模の拡大を目指すとともに、コーヒーショップ
ス)
、不動産金融会社であるFGH銀行を買収し
との共同店舗やフランチャイズ店舗の導入に
ている。
よる営業店舗の充実(注)23を図った。しかし、規
英国では、協同組織金融機関である住宅金
模を拡大するためにはパートナーが必要であ
融組合を巡って、規模の拡大を志向する金融
るとの経営判断と、HBOSグループへの対抗意
コングロマリット化への動きが生じた。住宅
識から、04年11月にスペインの大手銀行グル
金融組合のなかで普銀転換をした、Abbey
ープであるサンタンデール・セントラル・ヒ
National(アビー・ナショナル)とHalifax(ハ
スパノ・グループの傘下に入ることを選択し
リファックス)は、さらに地域金融機関や外
ている。
(注)
21.米国ジョージア州立大学論文より引用
22.インターネット上で、証券取引(委託売買取引)を専門に扱う会社
23.農林中金総合研究所『金融市場2005年2月号』pp. 30-33を参照
24
信金中金月報 2005.9
英国の住宅金融組合について
住宅金融組合業界の概要は、図表10のとおりである。71年に預金金利の自由化が行われ金融自由化が進
展するなか、業界内に存在した金利カルテルが崩れはじめ、法人税の優遇措置などが廃止されるなど、同
業界を取り巻く経営環境は厳しさを増していった。また、86年の金融制度改革(ビックバン)により住宅
金融組合法が改正(図表11)されたことで業界再編に拍車がかかり、住宅金融組合数、店舗数、組合員数
は大幅に減少している。その主な背景には、①住宅金融の分野において、同業態だけでなく他業態との競
争が激化することによって淘汰が進んだこと、②普通銀行への転換が認められたため、アビー・ナショナ
ルやハリファックスなど大手住宅金融組合が普銀転換をしたこと、③大手金融機関や地域金融機関が住宅
金融を強化するために、住宅金融組合を買収したこと、が挙げられる(図表12)。しかし、住宅金融組合
業界も他業態に対抗するため、総合金融サービスを提供している。例えば、住宅金融組合最大手のNationwide
(注)
24
(ネーションワイド)
(注)
25
は、組合員に対して各種サービスを提供している
。
現在、住宅金融組合業界は大小に明確に二分化しており、住宅金融組合全体の総資産のうち83.1%が、
組合数全体の約6分の1を占める業界上位10の住宅金融組合で占められている。
図表10 英国住宅金融組合業界の概要
図表11 住宅金融組合法改正
(単位:万人、億ポンド)
年末
1980
組合数
店舗数
273
組合員数
5,684
年
総資産
3,064
主要な変更点
・新規業務の進出容認(外為、保険・年金、消費者ロ
ーン、投信取扱、不動産、住宅ローン以外の貸出)
538
1986 ・資本市場での調達容認
1990
117
6,051
3,695
2,168
1995
80
5,141
3,900
2,999
2000
67
2,361
2,224
1,777
2003
63
2,081
2,090
・普銀転換可能(出資者、借入人投票)
・監督機関として住宅金融組合委員会(BSC)の設置
1997
2000
2,077
(備考)英国FSA資料を基に作成
・業務規制の撤廃
・BSCの監督機能の強化
・監督機能をBSCからFSAに移管
・規制・監督上の基準を他業態と統一化
(備考)英国住宅金融組合協会資料を基に作成
図表12 大手住宅金融組合を巡る動向
大手行
HBOS
Group
(新設)
BSCH
Group
(スペイン)
グループ化
(2004.11)
中堅行
Abbey
National
Plc
普銀転換
(1989.7)
Abbey
National
Bank of
Ireland Plc
(アイルランド)
Lloyds
Bank Plc
グループ化
(2001.9)
Bank of
Scotland
Halifax Plc
買収
(1996.8)
Barclays
Bank Plc
普銀転換
(1997.6)
買収
(2000.10)
買収
(1995.8)
買収
(1997.7)
買収
(1999.4)
Halifax
Woolwich
Cheltenham
&
Gloucester
Bristol
&
West
住宅金融組合
National
&
Provincial
Birmingham
Midshires
(備考)英国住宅金融組合協会、HBOS、アビーの資料を基に作成
(注)
24.組合全体の総資産は987億2,800万ポンド(約20兆円)
、グループ全体の総資産は1,014億2,800万ポンド(約20.6兆円)である
(英国住宅金融組合協会)
。
25.http://www.nationwide.co.uk/default.htmを参照
研 究
25
(3)金融コングロマリットを巡る諸課題
ここでは、金融当局、金融機関および顧客
の観点で整理する。
た間接的には外部の評判を通じてコングロマ
リット全体に波及するリスク」と定義される。
監督において伝染リスクが問題となる理由は、
金融コングロマリット全体の安全性や健全性
イ.金融当局
への懸念につながるからである。金融コング
金融当局からみた金融コングロマリットを
ロマリットは異業態を含む巨大な組織である
巡る課題は、図表13のとおり、主に3点となる。
ため、コングロマリット内で部分的に生じた
まず、規制上の問題であるが、規制フレー
経営危機が金融市場全体に悪影響を及ぼす危
ムワークに一貫性がない場合、
「ダブル・ギア
リング(注)26」や「過度なレバレッジ(注)27」を引
き起こすとされる。そのため、国際的あるい
は地域間において業態間の規制フレームワー
クの調和化に向けた作業が続けられている。一
例を挙げると、自己資本規制に関して、現状、
銀行業には国際統一基準が存在するが、証券
業や保険業には特に統一された基準が存在し
ていない。そこで、規制フレームワークの調
和化を図るため、EUでは、08年末に向けてバ
ーゼルⅡ(新BIS規制)に倣ったソルベンシー
Ⅱ(注)28を策定中である。また監督手法につい
て、複数の金融当局間における監督対象の重複
などを避けて監督手法の効率化を図るために、
統一的な監督官庁を設立する動きがある(注)29。
具体的には、EUでは15か国のうち7か国が監
督官庁の統一化をした(図表14)。
2つ目は、伝染リスクであるが、伝染リスク
とは「1つのコングロマリット構成部門で発生
した問題が、直接的には資本関係を通じて、ま
図表13 金融機関の監督における重要な論点
銀行注1)
保険会社
・銀行経営上のモラ ・消費者保護
ル・ハザード(預 ・財務の健全性
金保険)
・「最終貸し手」と
してのモラル・ハ
ザード注2)
・消費者保護
・財務の健全性
金融コングロマリット
・規制の一貫性
・伝染リスク
・規模
注1)参考文献によると、証券会社のリスクは、銀行と類似している
と整理されているため、同表では割愛した。
注2)過度にリスクを許容する行為等
(備考)英蘭合同円卓会議資料を基に作成
図表14 EU各国の規制・監督状況
国名
ベルギー
フランス
ドイツ
イタリア
ルクセンブルク
オランダ
デンマーク
アイルランド
英国
ギリシャ
ポルトガル
スペイン
フィンランド
オーストリア
スウェーデン
銀行部門
FSA
B/CB
FSA/CB
CB
BS
CB
FSA
FSA/CB
FSA
CB
CB
CB
B/CB
FSA
FSA
証券部門
FSA
S
FSA
S
BS
CB
FSA
FSA/CB
FSA
S
S
S
S
FSA
FSA
保険部門
FSA
I
FSA
I
I
CB
FSA
FSA/CB
FSA
I
I
I
I
FSA
FSA
(備考)1.国名順は、上からEU加盟順
( 2.記号の意味:FSA(単一金融監督当局)、CB(中央
( 銀行)、B(特定の銀行監督当局)、BS(特定の銀行・
( 証券監督当局)、S(特定の証券監督当局)、I(特定の
( 保険監督当局)
( 3.欧州中央銀行資料を基に作成
(注)26.自己資本を算出する際に、コングロマリット全体で調達した資本金額を、業態間(例えば、銀行業と保険業)で相殺せず
に単純に足し上げること。
27.例えば、業態間の規制の枠組みの相違を悪用し、より規制の緩和された業態にリスク等を移転していくこと。
28.ソルベンシー基準、監督上の検証、市場規律の3本柱を基本とする予定である(日本銀行)。
29.ただし、欧州中央銀行のレポート(2004年8月)や世界銀行FPSI(金融、民間セクターおよびインフラストラクチャー)ネ
ットワークの資料(1999年9月)等によると、必ずしも統一的な監督官庁の設立が、監督手法の効率化につながらないという
議論がある。具体的には、該当国の金融部門の集中度合いが高い、あるいは金融コングロマリット(あるいはバンカシュラ
ンス)の金融部門における比重が高いなどの条件がない場合である。
26
信金中金月報 2005.9
険性があり、またコングロマリット内に銀行
量的な課題」
(組織の複雑化、財務管理)およ
が含まれる場合は、預金保険制度など銀行に
び「両方に該当する課題」
(利益相反)に分類
対する公的なセーフティ・ネットの効果がコ
できると考える。
ングロマリット内の他業態にまで広げられて
しまう可能性が指摘されている。
3つ目は、金融コングロマリットの規模であ
るが、規模が大き過ぎて潰せない、つまり
「Too-Big-To-Fail」に関連するモラル・ハザー
ドが監督上の問題とされている。
定性的な課題は、
「統合型」ではなく「持株
会社型」の金融コングロマリット・モデルに
よって摩擦を少なくすることが可能であると
思われる。
定量的な課題は、主に個別の金融コングロ
マリットの「リスク管理」に依拠する。95年
に1人のマネートレーダーによるデリバティブ
ロ.金融機関
取引の失敗により破綻したベアリングズ社(英
金融機関側からみた金融コングロマリット・
国)や、オプション取引の失敗により98年に
モデルの課題を整理すると、図表15のとおり
ドイツ銀行に買収されたバンカース・トラス
となる。
ト(米国)の事例は、リスク管理の不徹底に
ここでは、6つの課題を列挙したが、いずれ
よるものであると指摘されている。また、金融
も「経営管理」に関するものであることは共
庁の「金融持株会社に係る検査マニュアル(注)33
通である。また、これらは、「定性的な課題」
(03年7月)
」においてもリスク管理の重要性が
(注)
30
、販売
(コーポレート・カルチャー〈社風〉
手法(注)31、市場戦略目標の明確化(注)32)と「定
図表15 金融機関側からみた金融コングロマ
リット化の課題
課題
強調されている。
利益相反の問題は「古くて新しい問題」で
ある。
「古くて新しい」という意味は、業態間
規制の根拠が主に利益相反問題に対処するこ
とであり、わが国を含めて業態間規制の緩和
・コーポレート・カルチャー(社風)
定性
定量
・販売手法
をする場合には必ず利益相反が問題点として
・市場戦略目標の明確化
挙げられてきたものの、最近になって金融コ
・組織の複雑化
・財務管理
定性・定量両面 ・利益相反
(備考)Harold D. Skipper and Thomas P. Bowles[2000]を基
( に作成
ングロマリットが注目を浴びてから再びクロ
ーズアップされている、ということである。典
型的な利益相反の事例としては、シティ・グ
(注)
30.米国ジョージア州立大学の調査によると、M&A全体の約半分は、コーポレート・カルチャーの違いを主因として合意され
なかったとされる。
31.例えば、91年に形成されたING(オランダ)のケースでは、合併した銀行グループであるNMB-Postbank(ポストバンク)
と保険グループであるNationale-Nederlanden(NN)の間で、保険販売チャネルを巡って対立が起きた。ポストバンクはNN
の保険販売の85%を窓口で取扱うことを表明したが、NNの保険代理店が強く反発したことから、ポストバンクはNNの保険
商品販売を制限されてしまったという経緯がある。
32.例えば、PrudentialとBacheの合併(81年)では、低・中所得層をターゲットとするPrudentialと高所得層をターゲットとす
るBacheの間で混乱があったとされる。
33.http://www.fsa.go.jp/manual/manual.htmlを参照
研 究
27
ループ、JPモルガン・チェース、メリル・リ
ンチなど大手金融グループを巻き込んだ米国
のエンロン事件(02年)が挙げられる。同事
3.わが国における金融コングロマリ
ット・モデルの可能性
件のなかで、シティ・グループは、エンロンの
わが国の金融行政は、戦後に導入された業
財務状況の困難を知りながら、関連の証券部門
態間規制を基本としてきた。すなわち長短分
を利用してエンロンに証券を発行させ、その調
離(長期金融と短期金融の分離)、銀信分離
達資金を自らへの資金返済に充当させた(注)34。
(銀行業と信託業の分離)および銀証分離(銀
また、05年2月には、日本に先駆けてバンカシ
行業と証券業の分離)である。これらの業態
ュランス(銀行業と保険業の兼業)が法制化
間規制は、敗戦後に金融危機に瀕した金融機
(03年)された韓国で、大手8行(注)35が銀行商品
関を建て直すために、業態間での競争を抑制
と保険商品の抱き合わせ販売(圧力販売)を
しながら、各金融機関が存続していく方策で
したとして金融監督委員会から懲罰を受けて
あったといわれる。また、当時は資本市場が
いる。このように、現在でも利益相反問題に
未発達であったため、間接金融の建て直しが
対する効果的な防止策は模索中の段階である。
急務であったことも背景にある。
したがって、業態間規制の中で業態間の競
ハ.顧客
争から保護されてきた金融機関は、
「収益」よ
主な課題は「ディスクロージャー(情報開
りも「規模」に注力してきた。また、91年の
示)
」である。金融コングロマリット全体の連
金融制度調査会による答申(注)36以降、子会社方
結財務の状況をみただけでは、そのグループ
式による業態間の相互参入が認められてきた
に属する各子会社の業績等は把握できない。ペ
ものの、業態間規制は撤廃されたわけではな
イオフが解禁となり、顧客に自己責任が問わ
い。したがって、銀行は株価連動型預金、証
れるなかでは不安材料である。また、同様の
券会社は証券総合口座、保険会社は保険総合
理由で投資家(株主)にとっても不安材料と
口座といったように、隣接業界の類似商品を
なる。
開発し、自前のチャネルで販売してきた経緯
また、英語で“Don’
t put all your eggs in one
がある。
basket”という諺があるが、顧客のなかには、
このように、わが国では、業態間規制によ
メインバンクにより圧力販売(抱き合わせ販
り他業態による参入から保護されてきたため、
売)が行われたり、資産状況に関するすべて
現在の保険商品の分野での銀行窓販解禁の議
の情報を把握されてしまったりすることへの
論において、保険業界から反発が出ているよ
懸念を持つ場合があることが推測される。
うに、民間(主に大手生命保険会社)からの
(注)
34.野村総合研究所『資本市場クオータリー 2002年秋号』pp. 31-40
35.国民、ウリ、ハナ、シンハン(新韓)、チョフン(朝興)
、ウェファン(外換)
、韓国シティ、企業銀行の8行
36.都銀、長信銀、信託、証券の一部業務の相互参入を検討したもの。
28
信金中金月報 2005.9
抵抗が強い。これは、グラム・リーチ・ブラ
貯金の割合は55.4%であり、依然として普通預
イリー法の成立に至るまでに、民間から要望
金や定期預金などに集中している。このよう
が出て当局が調整した米国でのプロセスとは
に元本保証商品が選好される1つの理由として、
大きく相違する。したがって、当局側の動き
顧客側に金融商品に関する知識が不足してい
として、2005年6月に金融庁から「金融コング
ることが挙げられる。金融広報中央委員会に
ロマリット監督指針」が公表され、2006年度
よると、金融商品に関して十分に知識がある
を目処に「投資サービス法(仮称)
」の制定へ
とする顧客の割合はわずか5.7%であり、最も
向けた動きが本格化しているものの(注)37、わが
馴染みのある預貯金ですら十分に知識がある
国において大手行を中心に金融コングロマリ
とする顧客の割合は17.2%に過ぎない。さら
ット・モデルが受け入れられるかについて予
に、金融機関の選択理由として「金融商品の
測することは難しい。しかし、金融機関の経
品揃えが豊富で選択の幅が広い」と答えた顧
営モデルの選択肢の1つとして、金融コングロ
客の割合はわずかであり、わが国において金
マリット・モデルが認知されるようになった
融機関による金融コングロマリット・モデル
ことは確かである。
が定着するとした場合には、時間を要すると
仮に、メガバンクが保険業まで含めた金融
思われる(別添4を参照)。
コングロマリット・モデルの採用を選択した
金融コングロマリット・モデルというと、メ
場合、現状では、多くの保険会社が相互会社
ガバンクばかりが注目されているが、欧米諸
形態であるため、メガバンクグループ内の保
国の事例のように、地域銀行(地銀・第二地
険会社を株式会社化する必要がある。しかし、
銀)が金融コングロマリット化の流れのなか
そのためには、新旧契約者の利益相反(旧契
に巻き込まれるケースも想定される。実際に、
約者の寄与分と合理的な配当期待の保護)と
地域銀行のなかにはメガバング・グループの
ともに、株主と契約者の利益相反の問題を解
傘下に入っている銀行(注)39があり、これらの地
決しなければならず(注)38、保険業が加わる欧州
域銀行がメガバンク・グループのなかで、ど
型の金融コングロマリットを形成するには障
のような動きをしていくかについて注目され
壁が大きい。したがって、当面は、銀行業に
る。一方、地域銀行が主体となって、金融コ
証券業が加わる金融コングロマリットの形成
ングロマリット・モデルを採用する動きもみ
が主流になると想定される。
られる。例えば、静岡銀行は、グループ一体
一方、法人企業の資金調達手法は多様化し
として総合金融サービスに取り組んでいる。当
つつあるものの、家計の金融資産に占める預
行は、地銀版金融コングロマリットと呼ばれ
(注)
37.ただし、当局側としては、EUの金融コングロマリット指令が、2005年1月1日以降の会計年度から適用が決定されているた
め、その動向を見極めたいという思惑もあるようである。
38.橘木他[1999]
39.例えば、みなと銀行(兵庫県)や関西アーバン銀行は、三井住友グループの一員となっている。
研 究
29
ることがあり(注)40、当行のビジネスモデルは、
かしながら、英国の住宅金融組合の事例から
「製販分離型」の金融コングロマリット・モデ
みると、金融コングロマリット化の流れは法
ルであるといえる。具体的には、証券業務に
制度面の変化が起爆剤となると考えられるた
ついて、証券子会社である静銀ティーエム証
め、将来にわたって巻き込まれないとは言い
券(注)41との連携を強化し、個人部門では証券仲
切れない。また、地域銀行が金融コングロマ
介業や投資信託の販売などを、法人部門では
リット化あるいは総合金融サービス化を図る
起債などを担わせることにより、銀行本体の
なかで、協同組織金融機関は少なからず経営
業務との「すみわけ」を明確にしている。
上の影響を受けると想定される。その場合に、
協同組織金融機関(信用金庫・信用組合)
個別金融機関がどのようなビジネスモデルを
は、現状、営業区域や出資などについて規制
構築するかどうかは、それぞれの地域性など
があり、金融コングロマリット化の流れに巻
を考慮したうえで判断する必要があろう。
き込まれる可能性は少ないと想定される。し
〈参考文献〉
Carsten Eppendorfer, Rainer Beckmann, Markus Neimke“Market Access Strategies in the EU Banking Sector”RuhrUniversity of Bochum, Jan, 2002
Corinne Legrand“New Trends in World Bancassurance”Milliman Research Report p. 9, Oct, 2004
Harold D. Skipper and Thomas P. Bowles“Financial Services Integration Worldwide : Promises and Pitfalls”Georgia State University,
2000
Iman van Lelyveld and Arnold Schilder“Risk in Financial Conglomerates : Management and Supervision”Paper prepared for
the Joint US-Netherlands Roundtable on Financial Services Conglomerates Washington D. C., October 24-25, 2002, Nov, 2002
Jonathan R. Macey“Integration of Financial Services” Paper prepared for the AIDA XI World Congress, Oct, 2002
金融庁『金融コングロマリット監督指針』
(2004年6月)
橘木俊詔他「生命保険会社のコーポレートガバナンス」
『ニッセイ基礎研所報1999Vol.10』(1999年7月)
富樫直記『リテール・ユニバーサルバンキング時代の到来―負けない銀行モデルはイギリスにあった―』日本評論社
(2004)
永井敏彦「米銀の店舗戦略−1 ∼店舗数増加の背景と今後の展開∼」
『金融市場2005年4月号』農林中金総合研究所(2005
年4月)
日本銀行信用機構局『金融サービス業のグループ化 ―主要国における金融コングロマリット化の動向―』
(2005年4月)
野村亜紀子「『エンロン後』の米国資本市場改革を検証する」
『資本市場クォータリーVol.6-2』野村総合研究所(2002)
古江晋也「欧州金融機関のデリバリー・チャネル戦略 ∼アビー・ナショナル(英国)の店舗戦略∼」
『金融市場2005年
2月号』農林中金総合研究所(2005年2月)
(注)
40.農林中金総合研究所ほか各種報道記事による。
41.平成12年12月に設立された。資本金は30億円であり、現在、12支店101名の職員で営業をしている。なお、証券業務につい
ては、静岡銀行グループ全体として顧客ニーズに対応した金融ワンストップ・ショッピング体制の構築を目指すなかで、静
銀ティーエム証券との連携を緊密にする方針を掲げている。
30
信金中金月報 2005.9
松崎英一「欧州協同組織金融機関に関する調査報告(第1回) 歴史と健全性を誇る英国住宅金融組合 ―住宅金融組合
の現状と監督機関の概要―」
『全信連レポート』(1996年2月)
箭内昇『メガバンクの誤算』中公新書(2002)
英国金融庁(FSA)ウェブサイト(http://www.fsa.gov.uk/)
英国住宅金融組合協会ウェブサイト(http://www.bsa.org.uk/)
欧州中央銀行ウェブサイト(http://www.ecb.int/home/html/index.en.html)
静銀ティーエム証券ウェブサイト(http://www.shizugintm.co.jp/index.html)
静岡銀行ウェブサイト(http://www.shizuokabank.co.jp)
総務省統計局ウェブサイト(http://www.stat.go.jp/)
米国連邦準備委員会(FRB)ウェブサイト(http://www.federalreserve.gov/)
Abbeyウェブサイト(http://www.aboutabbey.com/home.htm)
HBOSウェブサイト(http://www.hbosplc.com/home/home.asp)
研 究
31
注)
別添1 主要国 の銀行側からみた業態間規制
証券業務
諸国 アイルランド
緩 EU諸国
欧州
東ア
南ア
EU諸国
諸国 フィンランド
ロシア
台湾
インド
無制限
東南ア
インドネシア
東南
EU諸国
諸国 ギリシャ
東ア 日本
認可
中米
EU諸国
諸国 英国
イタリア
オーストリア
オランダ
スウェーデン
スペイン
デンマーク
フランス
ポルトガル
ルクセンブルク
北米 カナダ
東南ア シンガポール
東南
フィリピン
豪州 オーストラリア
EU諸国
諸国 ベルギー
欧州 アイスランド
北米 米国
東ア 韓国
東南ア マレーシア
東南
タイ
南米 アルゼンチン
チリ
ブラジル
EU諸国
諸国 ドイツ
欧州 スイス
豪州 ニュージーランド
図表右上ほど、
業態間規制が緩い
メキシコ
制限
東南ア
ベトナム
東南
東ア
中国
禁止
厳
禁止
制限
認可
無制限
保
緩 険
業
注)欧米主要国、アジア太平洋地域主要国
(備考)1.用語の意味:①無制限(銀行業・証券業・保険業への参入に特段の規制がない)、②認可(銀行は、証券業や保険業へ
の参入が可能であるものの、参入手法など一部に参入制限がある)、③制限(一部の業務について、銀行本体はもちろん
子会社方式でも参入が認められていない)、④禁止(銀行による証券業および保険業への参入が不可)
( 2.世界銀行、The Milken Instituteほか各種資料を基に作成
32
信金中金月報 2005.9
別添2 欧米諸国における金融コングロマリットの発展の背景
ARCTIC OCEAN
投資銀行の進出
NORTH
NORTH
AMERICA
ASIA
EUROPE
EUROPE
PACIFIC
OCEAN
SOUTH
AMERICA
AUSTRALIA
ANTARCTICA
《米国の動向》
〈70年代∼80年代〉
[金融機関側]
商業銀行の投資銀行業務参入への欲求、投
資銀行の商業銀行業務参入への欲求の高ま
り(業態規制への不満)
[顧客側]
・企業:CP発行等直接金融市場での資金調
達の拡大
・個人:利便性からワンストップ・ショッ
ピングのビジネスモデル受け入れ
〈90年代〉
☆当局による業態間の垣根低減
・当局(FRB)による、グラス・スティー
ガル法の運用手法の緩和
・州際業務規制の撤廃(94年)
☆グラム・リーチ・ブライリー法(99年)
⇒金融持株会社方式による銀行・証券・保
険の相互参入規制の緩和
〈00年代〉
☆兼業による利益相反問題の浮上
☆シナジー効果が得られない部門の取捨
⇒金融コングロマリット・モデルの再考
《英国の動向》
〈80年代〉
☆ビックバン(86年)
*住宅金融組合法の改正
〈90年代∼00年代〉
☆EU域内規制の調和化
[金融機関側]
☆米系投資銀行の積極的な
進出
⇒一部メガバンク(ナット
ウェスト、バークレイズ)
の投資銀行業務強化策の
失敗
⇒地域金融機関を巻き込ん
だ金融業界の再編へ発展
[顧客側]
個人を中心に伝統的金融商
品から年金・保険に対する
ニーズの拡大
《大陸欧州の動向》
〈80年代〉
☆歴史的に業態間規制が緩い
ユニバーサル・バンク制度(銀行
業・証券業の兼業)の普及
〈90年代∼00年代〉
☆規制緩和/EU域内規制の調和化
[関連するEU指令]
・銀行第2次指令(93年)
・損害保険第3次指令(94年)
・生命保険第3次指令(94年)
・投資サービス指令(95年)
☆単一通貨導入(99年)
☆欧州の金融統合を2005年を目処に
目指す「金融サービス行動計画(99
年)」の実行
☆銀行業(証券業兼営)と保険業の
融合の進展(バンカシュランス)
☆米系投資銀行の進出⇒「株主のため
の経営=高いROE」を目指す銀行
が増加⇒全体の方向性は収益のシ
ナジー効果を求めて「金融コング
ロマリット化」
☆金融コングロマリット指令(2002年)
☆EUソルベンシーⅡ策定(2008年迄)
⇒バーゼルⅡとの調和を志向
(備考)各種資料を基に作成
研 究
33
別添3 米国3大銀行持株会社を巡る動向
大手行(グループ)
中堅行(地銀グループ)
他業態
アソシエイツ・ファ
ースト・キャピタル
(消費者金融)
買収(2000.9)
シティ・グループ
買収
(2004.1)
トラベラーズ・
グループ
ワシントン・
ワシントン・
ミューチュアル・
ミューチュアル
ファイナンシャル
(銀行持株会社)
(消費者金融)
シティコープ
買収
(1998.4)
ソロモンスミス
バーニー
(投資銀行)
買収(1997.9)
バンク・ワン
JPモルガン・チェース
バンク・ワン
買収(2004.4)
買収(
チェース・
マンハッタン
ケミカル・
チェース・
バンキング
マンハッタン
(銀行持株会社) 買収
(1995.8)
買収(1991.7)
バンク・オブ・アメリカ
買収(1998.10)
ファースト・
シカゴNBD
買収(2000.9)
JPモルガン
(投資銀行)
マニュファク
チュアラーズ・
ハノーバー銀
買収
(1998.4)
バンク・
アメリカ
ネーションズ・
バーネット・
バンク
バンク
買収
(1997.8)
買収
ボートメンズ・
(1996.8)
バンクシェアズ
(銀行持株会社)
買収
(2004.4)
フリート・ファ
イナンシャル
フリート・
ボストン
買収
(1999.3)
バンク・
ボストン
(備考)各行(シティ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ)ホームページを基に作成
34
信金中金月報 2005.9
別添4 わが国における顧客の意識
●金融商品に関する知識(2003年3月)
金融商品
13.6
55.2
預貯金
有価証券投資
保険・年金
0
10
20
十分知識がある
30
40
どちらともいえない
50
60
70
ほとんど知識がない
80
90
無回答
100
(%) 金融商品に関する知識が乏
しいため、元本保証商品を
選好
●貯蓄商品選択にあたり重視する点(2001年)
換金性
4%
利回り・値上がり
27%
金融機関の信用
25%
元本保証
44%
●金融機関の選択理由(2004年)
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
10
12
理由
近所に店舗やATMがある
経営が健全で信用できる
店舗網が全国的に展開されている
営業時間が長かったり、土日に営業している
各種手数料が他の金融機関より割安
勧誘員が熱心で印象がよい
金融アドバイザーとしての窓口が充実
インターネットによるサービス・取引が充実
個人向けローンが充実
金融商品の品揃えが豊富で選択の幅が広い
より収益性の高い金融商品を販売
テレビCM、ポスター、キャラクター商品などの印象がよい
(単位:%)
割合
注)
76.7
28.6
24.6
11.1
8.3
5.3
3.8
3.6
2.4
2.1
2.1
1.1
最も多い年齢層
30歳代
70歳以上
30歳代
20歳代
20歳代
70歳以上
70歳以上
30歳代
40歳代
50歳代
30歳代
20歳代
注)3項目以内で複数回答の結果
●貯蓄の目的(2004年)
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(単位:%)
理由
病気・災害への備え
老後の生活資金
子供の教育資金
目的なし(余剰資金)
住宅取得・増改築資金
旅行・レジャー資金
耐久消費財の購入資金
子供の結婚資金
納税資金
遺産
割合
注)
65.6
57.1
28.9
27.1
17.5
13.0
12.3
9.7
4.2
3.0
最も多い年齢層
70歳以上
60歳代
50歳代
20歳代
30歳代
20歳代
30歳代
50歳代
60歳代
70歳以上
注)3項目以内で複数回答の結果
(備考)金融広報中央委員会資料を基に作成
研 究
35
研 究
資金の流れの構造変化と金融機関への影響
−構造変化に対応した商品・サービス提供とその体制整備が重要に−
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
間下 聡
(キーワード)資金過不足、バブル期、公共債の増加、貸出競争の激化、投信・保険窓販
(視 点)
近年、日本経済における資金の流れに、かつてない現象が起きている。基本的に外部から資
金調達して経済活動を行ってきた民間企業が、最近は、もっぱら借入金の返済に努めるように
なった。逆に、年々の貯蓄や投資を通じた家計の民間企業や政府に対する資金供給が急減して
いる。したがって、政府の大きな財政赤字を、結果的に民間企業からの借入返済金が埋め合わ
せているかのような状況になっている。このような資金の流れの大きな変化は、金融仲介を行
う信用金庫や銀行などの金融機関の、ポートフォリオの構成や業務上の戦略などに大きく影響
を及ぼすことになる。
本稿では、日銀の資金循環統計を用いて、戦後日本の資金の流れの構造を再認識し、これに
伴う金融機関への影響を振り返り、今後の金融機関の対応について考えてみたい。
(要 旨)
●
高度成長期以来、資金余剰主体である家計の余剰度が近年急低下する一方、長く資金不足主
体であった民間非金融法人企業が資金余剰主体となり、もっぱら借入金を返済してきてお
り、国債大量発行で政府部門が大幅な資金不足主体に陥っている。
●
資金循環構造の変化を受けて、信用金庫をはじめとする中小企業金融機関や国内銀行の資産
構成も、貸出のウエイトが低下し、国債などの公社債や外国証券での運用比率を高めざるを
得ず、評価損発生リスクも増加している。
●
信用金庫は、目先、改善の兆しの見える民間企業の資金需要をつかむとともに、新しい貸出
手法にも取り組み、中小企業からの多様なニーズに応じていく必要がある。一方、個人分野
についても借入や資産運用のニーズに対応すべく、家計に対する総合金融サービスの強化を
図っていくべきであろう。
36
信金中金月報 2005.9
また、このような日本経済における資金の
はじめに
流れの構造変化は、家計や民間企業、政府間
戦後60年目を迎えた日本経済における資金
の資金仲介を行う信用金庫や銀行などの金融
の流れに、近年、これまでなかったような現
機関の、ポートフォリオの内容や業務のあり
象が起きている。基本的に借入れや株式発行
方に大きく影響を与え、金融機関は、その環
などにより外部から資金調達して経済活動を
境変化に適応する過程でさまざまな問題に直
行ってきた民間企業が、最近は、もっぱら借
面すると考えられる。
入金の返済に努めている。一方、ずっと年々
そこで、本稿では、日本の資金循環構造の
の可処分所得から貯蓄や投資を通じて、民間
変遷を統計データに基づいてたどったうえで、
企業や政府に供給されてきた家計の資金が急
資金の流れの構造変化が金融機関に与えた影
減している。したがって、政府の毎年の大き
響を振り返るとともに、金融機関における今
な財政赤字を、結果的に家計ではなく、民間
後の対応について考察を試みたい。
企業からの借入返済金が埋め合わせているか
のような状況になっている。一部に、金融機
関の方が不良債権処理や自己資本比率維持の
ために貸剥がしを行っているのが実態だとい
う見方もあったが、それだけで起こるような
1.歴史的な構造変化をみせる日本の
資金循環
(1)資金循環と資金過不足の考え方
一国の経済においては、家計、企業、政府
事態とは思えない。よりマクロ的な視点から、
などがそれぞれ経済活動を行い、これに伴っ
民間企業が借入れ返済に走る状況があったの
て金融取引が発生し、その結果として個々の経
ではないか。
済主体は、種々の金融資産・負債を有している。
市場経済社会においては、民間企業が外部
日本においては、こうした経済主体と金融
資金を調達し、労働者を雇用して経済活動を
の関係を包括的に示す統計として、日本銀行
行い、財・サービスを生み出し、借入金利、原
が四半期ごとに作成・公表している『資金循
材料費や賃金を支払い、生み出した利益を社
環統計』がある。資金循環統計は、一定期間
会に還元し、経済成長を牽引してきた。その
の資金の流れやある一時点における資産・負
民間企業が資金を調達して営業と利益を拡大
債残高を、家計、企業、政府などの経済主体
していく活力を失い、借入金返済に走って、家
別、金融取引別に記録したものである。
計は、失業や所得減で貯蓄する余裕を失い、政
資金循環統計においては、経済主体は大き
府が巨額の財政赤字を抱えながら低迷する景
く「家計」、「非金融法人企業」、「一般政府」、
気を下支えする現状が、先述のような、最近
「対家計民間非営利団体」
、
「金融機関」
、
「海外」
の資金の流れのねじれ構造にも映し出されて
の部門に分類されており、これら資金循環の
いると考えられよう。
動向を読み取ることによって、各経済主体の
研
究
37
経済活動や資金の運用・調達状況などを把握
図表1 資金過不足の考え方
することができる。加えて、預金、貸出、有
価証券などといった金融資産・負債の内訳を
消費
可処分
所得
家計
実物投資
みることにより、家計、企業等との金融機関
の関わりや、金融機関の経営環境、資産構成
の変化なども読み取ることが可能となる。
資金循環の考え方を家計、企業における経
済活動、およびこれに伴って生じる金融取引
を例にして示すこととする(図表1)。
例えば、家計において、消費や実物投資額
資金
運用
︵
金融
資産
増分
資金余剰
資金
調達
︵
金融
︶ 負債
増分
︶
(住宅の購入等)が所得を下回れば、その差額
分が資金余剰となる。一方、企業において設
備投資などの実物投資額よりも収益が下回っ
ている場合、その分だけ企業に資金不足が生
じていることとなる。
実物
投資
金融機関や
証券市場を
通じた取引
資金
運用
資金
調達
︵ ︵
金融
金融
資産
負債
増分
増分
︶ ︶
資金不足
企業
収益
企業
この場合、家計の資金余剰分が金融機関に
預金され、これが原資となって貸し出された
(備考)信金中金総合研究所作成
り、家計の余剰資金が社債や株式の投資に向
金循環統計における資金過不足は、概念上、国
かい、証券市場を通じて企業に供給されれば、
民経済計算で示される各部門の貯蓄と投資の
これが企業の資金不足を補い、企業は投資活
差額(資金余剰=貯蓄超過、資金不足=投資
動を行うことが可能となる。
超過)に一致する。
こうした各部門の実体面の動きの裏側にあ
る資金の流れを、金融資産・負債の増減とし
資金過不足=金融資産の増減額−金融負
債の増減額(減はマイナス)
て表したものが、資金循環統計における資金
また、資金循環統計における海外部門の計
過不足である。したがって、金融資産・負債
数は、海外を1つの経済主体とみなして、海外
それぞれの増減額の差額をみることで、ある
からみた日本に対する取引を記録したもので
経済主体が資金余剰か、あるいは資金不足か
ある。日本に対する金融資産増加額が日本に
がわかる。ここでの金融資産・負債には価格
対する金融負債の増加額を上回れば資金余剰
変動分は含まれておらず、購入・売却などの
であり、逆なら資金不足を意味する。
金融取引額に基づくものである。この時の資
したがって、海外部門の資金不足は、日本
金過不足は以下の算式で示される。また、資
の投資収支赤字(注)1やその背景となる経常収支
(注)
1.日本の海外に対する直接投資、証券投資、その他投資の額が、海外の日本に対するこれらの額より大きいということ。
38
信金中金月報 2005.9
黒字を映していると考えられる。
の額の対名目GDP比率である資金過不足率で
みることとする。
(2)戦後日本の部門別資金過不足状況の推移
家計部門(注)3の資金過不足率は1999年度まで
日本銀行は、1954年から資金循環統計(以
おおむね6∼11%の資金余剰で推移してきたが
下「旧統計」という。
)を作成、公表してきた
(図表2)
、2000年度以降急速に低下し、2004年
が、1999年7月より、それを改訂する形で新し
い資金循環統計(注)2(以下「新統計」という。
)
度は、1.1%となっている。
一方、民間非金融法人企業部門(注)4は、1974
を導入し、2005年3月には1980年度まで遡及修
年度までおおむね4∼12%の資金不足であった
正した。
が、1975年度以降1986年度までは1∼5%に資
そこで、これらの統計を利用して、日本の
金不足度が弱まった。それが1991年度までに
非金融各部門の資金過不足状況の推移をみる
再び8、9%台まで強まったものの、1990年度
こととする。なお、資金過不足の絶対額は、経
代半ばにはほぼゼロとなり、その後は2003年
済成長の影響で増加傾向が強いため、それら
度の6.5%まで資金余剰度が強まった。2004年
図表2 日本の部門別資金過不足率の推移
(%)
資
金
余
剰
15
家計部門
10
5
海外部門
0
-5
資 -10
金
不
足
-15
民間非金融法人企業部門
政府部門
54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(年度)
(備考)1.資金過不足率=資金過不足額/名目GDPで、1954年度のみ分母は名目GNPで04年度は速報値
( 2.図表3とも、GDPは、80年度までは68SNA、81年度から94年度までは93SNAの固定基準年方式、その後は93SNAの連鎖
( 方式によるもの
( 3.日本銀行『資金循環統計』(1979年度まで旧統計、1980年度から新統計ベース)より信金中金総合研究所作成
(注)
2.日本のGDP計算方法の改訂、IMFによる金融統計の国際標準作成の進展を踏まえ、この統計とそれらとの調整が図られ、新
しい金融取引形態の発生、関連統計の入手範囲拡大や、利用者サイドの要望などが反映されるように、旧資金循環統計(以下
「旧統計」)の改訂により新たに導入された統計で、2005年3月にはフローで1980年度の、残高で1979年度末の計数からの遡及
データが公表されている。新しい資金循環統計(以下「新統計」)は、計算方法のほか、取引主体、取引項目が旧統計とは異
なっている。
3.以下本稿では家計部門は、旧統計の「個人部門」(消費者としての家計のほか、個人企業、農林漁業者および非営利団体を
含む。
)および新統計の「家計」
(雇用主、被用者、個人企業(農林漁業従事者)
、財産・移転所得の受給者等を含む。
)と「対
家計民間非営利団体」(学校法人、社会福祉法人、宗教法人や民法上の社団法人、財団法人のうち、家計に対する非営利性の
サービスを提供する法人を含む。)からなる。
4.以下本稿では、民間非金融法人企業部門は、旧統計の「法人企業部門」(金融機関以外の民間法人企業および事業組合のほ
か、政府出資の特殊法人(電源開発株式会社など)、地方公社等を含む。)と新統計の「民間非金融法人企業」(株式会社、有
限会社、合名会社、合資会社、および医療法人)からなる。
研
究
39
度には依然として資金余剰であるものの、3.0%
に転じてしまっているといった点が最近の大
まで弱まった。
きな特徴として挙げられよう。
政府部門(注)5は、1973年度までは最大3.3%の
2.戦後日本の期間区分別資金循環構
造の特徴比較
資金不足にとどまっていたが、1974年度から
1984年度までは4.1∼8.6%の範囲まで資金不足
度が強まった。その後、資金不足度は再び弱
ここでは、前節でみてきた戦後の期間を時
まり、1987年度から1991年度は、1989年度を
代背景も考慮して高度成長期、安定成長期、バ
除き資金余剰となっていたものの、その後は、
ブル期、バブル崩壊期、デフレ期の5つの期間
1998年度の11.1%まで資金不足度は強まり、近
、家計、民間非金融法人
に区分し(注)6(図表3)
年も6∼7%台で推移している。
企業、政府の部門を中心に、それぞれの期間
海外部門は、1984年度までは2%の資金余剰
の取引項目別の金融取引のうち、その資金運
から3%の資金不足の範囲で推移してきたが、
用額、資金調達額の対名目GDP比率(注)7が大き
1985年度以降は1.0%∼4.4%の資金不足状況が
い金融取引の動向その他、期間ごとの資金循
続いている。
環上の特徴をみていくこととする。
このように、部門別に資金過不足率の動き
をみると、戦後一貫して資金余剰であった家
(1)高度成長期(1954年度∼1974年度)
計部門の余剰が大幅に縮小する一方、おおむ
高度成長期の実質GDP成長率は、1974年度
ね資金不足部門として経済を引っ張ってきた
に第1次石油ショックによる不況でマイナス成
民間企業が、家計部門を上回る資金余剰部門
長となるまで、おおむね5∼10%の高水準で推
図表3 日本のGDP成長率の推移
(%)
25
高度成長期
安定成長期
20
バブル期
バブル
崩壊期
デフレ期
15
10
5
名目GDP成長率
実質GDP成長率
0
-5
56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(備考)内閣府ホームページより信金中金総合研究所作成
(年度)
(注)5.以下本稿では、政府部門は、旧統計の「中央政府部門」(国の一般会計および特別会計。ただし、公的金融機関に含まれる
資金運用部などの特別会計を除く。)と「公団・地方公共団体」、新統計の「一般政府」(中央政府、地方公共団体、社会保障
基金)および「公的非金融法人企業」(公団・事業団等特殊法人の一部、中央政府の企業特別会計、地方公社のうち特別の法
律により設立される住宅供給公社等、地方公営企業)が含まれる。
6.期間は実質GDP成長率の推移を中心に、部門別資金過不足の転換点、そこでの象徴的な経済事象も加味して区分されたもの。
7.金融取引の対名目GDP比率は、安定成長期までは旧統計、バブル期以降については、新統計を用いて年度ごとに求めた比率
の期間中の単純平均
40
信金中金月報 2005.9
移した(図表3)。名目GDP成長率はインフレ
基調のもと、実質GDP成長率を大幅に上回っ
ていた。
差も縮小していった。
この期の家計部門は、引き続き預金での資
金運用が中心となるなか、信託、保険による
この期の各部門の資金運用、調達の特徴を
資金運用の比率も高度成長期より高まってい
みると(図表4①)
、家計部門の資金運用では、
る(図表4②)。また、民間非金融法人企業部
定期性預金を中心に預金が対名目GDP比8.1%
門の資金調達では、貸出金、企業間信用受信
に相当した。
が中心であるものの、その対名目GDP比率は、
民間非金融法人企業部門の資金運用は、企
高度成長期の約半分にまで低下している。
業間信用与信が対名目GDP比8.3%と預金
一方、政府部門の資金調達は、国債大量発
(5.0%)を上回り、資金調達では、貸出金
行を受けて有価証券の対名目GDP比率が7.1%
(11.7%)が中心となるなか、企業間信用受信
と、高度成長期に比べ大幅に上昇した。
も6.5%となり、企業間信用の役割も大きかっ
たことを示している。
安定成長期の特徴としては、家計の資金運
用において、預金中心のなかにも運用手段の
また、政府部門は、1965年度に戦後初めて
多様化の兆しがうかがわれたことや、政府
赤字国債が発行され、1966年度以降、建設国
部門の資金調達が大きく増加し、同部門の
債が毎年発行されるようになったものの、国
資金不足度が民間非金融法人企業部門を上回
債の対名目GDP比率は0.6%にとどまっていた。
るという構造変化がみられたことなどが挙げ
このように、高度成長期は、家計の預金が
られる。
金融機関を通じて、企業に貸出金で供給され
る流れが基本であった。このような状況は、
「間接金融の優位」や「オーバーボロイング」
ということばで、高度成長期における日本の
金融の特徴として指摘されている(注)8。
(3)バブル期(1985年度∼1991年度)
1985年9月のプラザ合意後の株価・地価高騰
により実質GDP成長率が再び6%台に達した
(図表3)
。1990年以降は、1989年度からの金融
引締めを受けて株価、地価の下落、景気の減
(2)安定成長期(1975年度∼1984年度)
安定成長期の日本経済の実質GDP成長率は、
速が始まったが、バブル期の民間非金融法人
企業部門は、3度も10%近い資金不足を示し
おおむね3∼5%で推移した(図表3)
。2度の石
(図表2)、一方、政府部門は、税収増などか
油ショックとその間の円高が克服され、イン
ら、1989年度を除く1987年度∼1991年度で資
フレ度合いを示すGDP成長率の名目と実質の
金余剰となった。
(注)8.鹿野[2001]によれば、「間接金融の優位とは、企業金融上、銀行等の金融仲介機関を経由する資金供給が(直接金融に比
べて:筆者)圧倒的な地位にあったこと」を、「オーバーボロイングとは、法人企業部門(ここでいう民間非金融法人企業部
門)の資金調達において銀行借入への依存度が極めて高い状態のこと」をいい、たとえば、鈴木淑夫著『現代日本金融論』東
洋経済新報社(1974年)で指摘がある。しかし、鹿野は、これらは当時の普通社債の起債調整や発行規制が厳しすぎ、制度の
結果現出した状況であると指摘している。
研
究
41
図表4 部門別期間区分別主要金融取引額の対名目GDP比
①高度成長期(1954年度∼1974年度)
家計部門
資金運用
資金調達
預金
8.1 貸出金
流動性預金
1.6
民間金融機関貸出金
定期性預金
6.5
公的金融機関貸出金
信託
0.8 企業間信用(受信)
保険
1.8
有価証券
1.9
金融債
0.5
株式
0.8
投信
0.4
②安定成長期(1975年度∼1984年度)
家計部門
資金運用
資金調達
預金
9.1 貸出金
流動性預金
0.8
民間金融機関貸出金
定期性預金
8.3
公的金融機関貸出金
信託
1.2 企業間信用(受信)
保険
2.6
有価証券
1.9
国債
0.6
金融債
0.6
株式
0.2
投信
0.5
③バブル期(1985年度∼1991年度)
家計
資金運用
資金調達
預金
7.8 貸出金
流動性預金
0.9
民間金融機関貸出金
定期性預金
6.9
公的金融機関貸出金
信託
0.8 企業間・貿易信用(受信)
保険準備金
3.6
年金準備金
1.6
有価証券
1.3
国債
△0.1
金融債
0.4
株式・出資金
0.2
投信
0.6
対外証券投資
0.3
④バブル崩壊期(1992年度∼1998年度)
家計
資金運用
資金調達
預金
5.5 貸出金
流動性預金
1.4
民間金融機関貸出金
定期性預金
4.1
うち住宅貸付
信託
△0.3
公的金融機関貸出金
保険準備金
2.2
うち住宅貸付
年金準備金
1.6 企業間・貿易信用(受信)
有価証券
0.1
国債
0.1
金融債
△0.2
株式・出資金
0.2
投信
0.0
対外証券投資
0.2
3.6
3.0
0.6
1.8
4.3
3.2
1.1
1.0
5.4
4.4
0.9
0.7
2.1
1.2
0.8
0.9
0.8
0.0
⑤デフレ期(1999年度∼2004年度)
家計
資金運用
資金調達
預金
1.4 貸出金
△0.6
流動性預金
3.5
民間金融機関貸出金 0.2
定期性預金
△2.2
うち住宅貸付
1.0
信託
△1.0
うち個人企業向け △0.9
保険準備金
△0.3
公的金融機関貸出金 △0.7
年金準備金
1.0
うち住宅貸付
△0.7
有価証券
0.4 企業間・貿易信用(受信)△0.1
国債
0.5
金融債
△0.4
株式・出資金 △0.2
投信
0.4
対外証券投資
0.2
民間非金融法人企業
資金運用
預金
流動性預金
定期性預金
有価証券
公社債
株式
企業間信用(与信)
資金調達
5.0 有価証券
2.6
1.9
事業債
0.7
2.8
株式
2.0
0.9 貸出金
11.7
0.2
民間金融機関貸出金 10.6
0.7
公的金融機関貸出金 1.1
8.3 企業間信用(受信)
6.5
民間非金融法人企業
資金運用
預金
流動性預金
定期性預金
譲渡性預金(CD)
有価証券
公社債
株式
企業間信用(与信)
資金調達
有価証券
事業債
株式
居住者発行外債
貸出金
民間金融機関貸出金
公的金融機関貸出金
企業間信用(受信)
2.9
0.9
1.6
0.3
0.7
0.4
0.2
4.3
信金中金月報 2005.9
政府部門
資金調達
有価証券
政府短期証券
国債
地方債
公社公団公庫債
貸出金
民間金融機関貸出金
公的金融機関貸出金
7.1
0.3
4.8
0.8
0.9
2.9
0.2
2.7
民間非金融法人企業
資金運用
預金
2.1
流動性預金
0.4
定期性預金
1.5
信託
0.5
有価証券
1.1
株式・出資金
0.9
コマーシャルペーパー(CP)0.2
預け金
1.2
企業間・貿易信用(与信) 2.2
対外直接投資
0.7
対外証券投資
1.2
政府部門
資金調達
資金調達
有価証券
4.3 有価証券
事業債
0.5
政府短期証券
株式・出資金
1.9
国債
居住者発行外債
1.2
地方債
コマーシャルペーパー(CP)0.4
政府関係機関債
貸出金
9.1 貸出金
民間金融機関貸出金 7.2
民間金融機関貸出金
公的金融機関貸出金 0.4
公的金融機関貸出金
非金融部門貸出金
0.9
非金融部門貸出金
割賦債権
0.5
預け金
1.2
企業間・貿易信用(受信) 1.4
民間非金融法人企業
資金運用
預金
0.0
流動性預金
0.6
定期性預金
△0.9
譲渡性預金
0.5
外貨預金
△0.1
信託
△0.3
有価証券
0.0
債権流動化関連商品 0.1
株式・出資金
△0.1
預け金
△0.8
企業間・貿易信用(与信)△0.8
対外直接投資
0.4
対外証券投資
0.5
政府部門
資金調達
資金調達
有価証券
0.7 有価証券
事業債
0.7
政府短期証券
株式・出資金
0.7
国債
居住者発行外債
△0.6
地方債
貸出金
0.1
政府関係機関債
民間金融機関貸出金 △0.4
株式・出資金
公的金融機関貸出金 0.3 貸出金
非金融部門貸出金
0.3
民間金融機関貸出金
預け金
△0.6
公的金融機関貸出金
企業間・貿易信用(受信)△0.7
民間非金融法人企業
資金運用
預金
0.6
流動性預金
1.7
定期性預金
△1.1
譲渡性預金
△0.1
外貨預金
0.0
信託
0.0
有価証券
0.4
債権流動化関連商品 0.3
株式・出資金
0.0
企業間・貿易信用(与信)△0.7
対外直接投資
0.2
対外証券投資
0.7
政府部門
資金調達
資金調達
有価証券
0.4 有価証券
8.9
事業債
△0.2
政府短期証券
2.2
株式・出資金
0.6
国債
6.6
居住者発行外債
△0.1
地方債
0.3
貸出金
△3.8
政府関係機関債
△0.3
民間金融機関貸出金 △3.1
株式・出資金
0.1
公的金融機関貸出金 △0.3 貸出金
1.6
非金融部門貸出金 △0.4
民間金融機関貸出金 0.7
企業間・貿易信用(受信)△0.5
公的金融機関貸出金 0.9
(備考)日本銀行『資金循環統計』(②まで旧統計、③から新統計)より信金中金総合研究所作成
42
1.3
0.4
0.7
0.2
6.9
6.1
0.8
3.3
(単位:%)
政府部門
資金調達
有価証券
2.2
政府短期証券
0.3
国債
0.6
地方債
0.4
公社公団公庫債
0.9
貸出金
1.4
民間金融機関貸出金 0.2
公的金融機関貸出金 1.2
2.6
0.3
1.9
0.0
0.1
1.5
0.2
1.0
0.3
5.6
0.2
3.7
0.9
0.3
0.5
2.1
0.3
1.9
家計部門では、保険準備金、年金準備金(注)9、
信託、投信による資産運用の対名目GDP比率
(4)バブル崩壊期(1992年度∼1998年度)
この期に日本経済は、実質GDP成長率が、
が上昇し(図表4③)、資金調達も地価の高騰
1993年度と1998年度にマイナスとなり、プラ
などを映じて、貸出金が民間金融機関を中心
スとなった年度も2∼3%台にとどまった。ま
に5.4%まで上昇している。
た、企業、民間金融機関とも不良債権の処理
一方、民間非金融法人企業部門の資金調達
に伴うバランスシートの改善に追われ、新た
については、民間金融機関からの貸出金が7.2%
な投資は少なく、資金需要の低迷が続くこと
に上昇し、非金融部門貸出金(注)10、割賦債権(注)11、
となった。
預け金(注)12による資金調達もみられる。企業
家計部門の資金運用は、預金と保険準備金
間・貿易信用の受信は、1.4%まで低下した。
が中心であるものの(図表4④)、雇用、所得
また、有価証券も、事業債、株式・出資金(注)13、
環境の悪化などから、対名目GDP比率は、そ
外債の比率が上昇した。また、事業債は国内
れぞれ5.5%、2.2%に低下し、資金調達も、民
転換社債中心、居住者発行外債は海外新株引
間金融機関貸出金の低下により貸出金が2.1%
受権付社債中心であった。
に低下している。
こうしたなか、政府部門の資金調達の対名
民間非金融法人企業部門をみると、資金調
目GDP比率は、有価証券が安定成長期を大幅
達において、民間金融機関貸出金、預け金、企
に下回る2.6%に低下し、公的金融機関貸出金
業間・貿易信用受信がマイナスに転じており、
も1.0%に低下した。
対名目GDP比率で大きな調達項目はみられな
このように、バブル期は、家計の資金運用
い。また、資金運用でも、信託、株式・出資
において、預金以外の金融商品のウエイトが
金、預け金、企業間・貿易信用与信がマイナ
一時的に高まり、企業の資金調達においては、
スとなっている。
民間金融機関からの貸出金ばかりでなく、エ
一方、政府部門の資金調達は、国債の対名
クイティ・ファイナンスが活発に利用され、バ
目GDP比率が3.7%に高まり、地方債の比率も
ブル期における企業の資金調達意欲が旺盛で
上昇している。
あったことを物語っている。
バブル崩壊期における資金循環の特徴とし
て、まず、所得の伸びや金利の低下傾向から、
家計部門の資金余剰度が弱まったことが挙げ
(注)9.年金準備金については、旧統計では信託銀行受託分は信託に、生命保険受託分は保険に割り振られていたが、新統計になっ
て独立の項目としてくくりだされた。
10.金融機関以外の経済主体による貸出金(金銭消費貸借)のことであり、法人企業の取引先、子会社・関連会社に対する貸
出金、地方公共団体の制度融資等が含まれている。
11.商品の実質的な販売に伴って発生した債権で、元本と利子が一体となって分割返済されるものである。ここには、消費者
信用に当らないものが含まれ、延払信用やファイナンシャルリースなどが含まれている。
12.預け金には、①証券会社、証券取引所に預け入れる証拠金、②建物への入居保証料、③ゴルフ場会員権の発行に伴うゴル
フ場への預託金、④従業員預かり金などが含まれる。
13.旧統計では株式は、上場株式のほかに情報の取れる一部の非上場株式を含む。新統計の株式・出資金は、商法上の株式会
社、特別法に基づき設立された法人(特殊法人等)の株式・出資金を含む。
研
究
43
られる。また、企業の資金調達は減少傾向を
資金はマイナスとなっている。
続け、この結果、1994年度以降の民間非金融
資金調達は、民間金融機関貸出金が0.2%に
法人企業部門の資金過不足はゼロを挟んだ水
低下し、公的金融機関貸出金はマイナスにな
準となった。
った。民間金融機関貸出金のうちの住宅貸付
は、1.0%になったが、これは公的金融機関の
(5)デフレ期(1999年度∼2004年度)
1999年度∼2004年度の実質GDP成長率は平
均して1%強であるが、一貫して名目成長率を
上回っており、デフレ傾向が続く期間となっ
た(図表3)。
住宅貸付の△0.7%に負うところが大きい。民
間金融機関の個人企業向け貸出もマイナスに
なっている。
なお、家計部門の資金余剰が急速に減少し
てきている背景としては、前述のとおり、賃
この間の部門別資金過不足をみると、家計
金減少、失業増や預金金利の低下により家計
部門の資金余剰度は、2004年度の1.1%まで低
所得が減少するなか、必要な消費が減らせな
下した(図表2)
。民間非金融法人企業部門は、
いため貯蓄に回らないこと、消費性向が高い
2003年度には資金余剰度が6.5%に達し、2004
無職高齢者世帯比率が上昇していることが挙
年度は3.0%に低下したものの、依然として資
げられる。
金余剰が続いている。政府部門の資金不足度
また、戦後長く家計部門の土地を買い上げ
は、6∼7%で推移し、2004年度は6.0%となっ
てきた非金融法人企業部門がリストラで保有
た。以下、デフレ期については、現状を含む
土地を放出しはじめ、それを家計部門が買い
期間であるので、詳細に検討することとする。
向うようになった結果、不動産投資増で家計
の資金余剰が減ったという見方もある(注)14(図
イ.家計部門
表5)
。
資金運用は、預金が引き続き中心であるも
のの1.4%に低下した(図表4⑤)
。流動性預金
ロ.民間非金融法人企業部門
の3.5%に対して定期性預金が△2.2%と、ペイ
資金運用をみると、預金がバブル期のゼロ
オフ解禁に備えた預替えの動きとなったため
から0.6%に戻った。流動性預金は1.7%のプラ
である。家計部門の運用のもう一つの柱であ
スとなったものの、△1.1%となった定期性預
った保険準備金もマイナスに転じ、年金準備
金からの預替えの部分が大きい。債権流動化
金も1.0%に縮小した。生命保険の解約、減額
関連商品(0.3%)が目を引く。株式・出資金
や、厚生年金基金の解散などの影響がみられ
がゼロで企業間・貿易信用与信が△0.7%とな
る。貸付信託中心に信託も減少した。また、国
るなか、対外証券投資は0.7%にのぼっている。
債、投信が上向く一方で、金融債、株式・出
資金調達の方は、民間金融機関貸出金が
(注)
14.櫨・矢嶋[2004]、石川[2001]参照
44
信金中金月報 2005.9
△3.1%と、大幅なマイナスとなった。 図表5 制度部門別土地の購入
他にも公的金融機関貸出金、非金融
(兆円)
30
部門貸出金、事業債、居住者発行外
購 20
入
債が、軒並みマイナスとなった。借
10
入金返済傾向の強まりがうかがえる。
0
株式・出資金こそ0.6%であるが、企
-10
業間・貿易信用受信も△0.5%と、収
売 -20
却
縮が続いている。
さて、今回の民間非金融法人企業
一般政府
非金融法人企業
家計(含む対家計民間非営利団体)
-30
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
(年度)
(備考)『国民経済計算年報』より信金中金総合研究所作成
部門の大幅な資金余剰は、かつてない水準で
社グループの余資でまかなうという高度キャ
ある。これについては、最近、その企業規模
(注)16
してい
ッシュマネジメントが急速に普及」
別、業種別内訳が推計(注)15されている。それに
るといわれる。ファームバンキングもこれに
よれば、近年の資金余剰に占める割合は、非
相当するものである。また、売掛債権担保や
製造業が86%を占めており、なかでも中堅中
動産担保活用ファイナンスが企業間信用を高
小非製造業が高く、業種別には、卸売・小売
度化させることで、間接金融の役割がさらに
業、不動産業、サービス業の比率が高い。そ
後退する可能性があることも指摘されている。
れは、デフレの影響による資本財の価格下落
で、同じ実物設備投資水準でも、かかる費用
ハ.政府部門
が低下し、設備投資額が減価償却費を下回る
資金調達についてみると、政府短期証券
傾向が続き、景況感の改善が遅れている中小
2.2%、国債6.6%を中心に有価証券による調達
非製造業が債務返済に努めたためと考えられ
が8.9%と、バブル崩壊期を上回る水準である。
ている。また、資金余剰の増加要因として、営
業利益の増加、設備・在庫純投資額の減少、純
支払利息額の減少以上に、リストラの一巡に
ニ.デフレ期の特徴
以上みてきたデフレ期の特徴として一番注
よる特別損失の減少などが大きいとしている。
目されるのは、やはり、民間非金融法人企業
さらに、借入金返済の動きばかりでなく、そ
部門の貸出金の減少である。バブル崩壊期以
れを支える新たな金融サービスが普及してい
降の同部門の資金過不足の絶対額を、金融資
ることの影響をあげる者もいる。大企業では、
産増加額と金融負債増加額に分解してみると、
「グループ全体の資金過不足をリアルタイムで
1997年度から2003年度まで、一貫して金融負
把握し、グループ内企業のファイナンスを自
債は減少している(図表6)。そのため、金融
(注)15.小玉[2005]参照。小玉は、資金循環統計の資金過不足が国民経済計算上の貯蓄投資バランスであることから、国民経済
計算の貯蓄投資バランスを財務省法人企業統計を利用して推計し、その企業規模別業種別内訳について紹介している。
16.大垣[2004]参照
研
究
45
資産が増加した1999年度、2000年度と2002年
度、2003年度には資金余剰額が急増している
のである。
これは、バブル期までに貸出金残高を対名
目GDP比で110%まで増加させた同部門が、バ
ブル崩壊期以降、負債の重荷に耐え切れず、生
残りを賭けて設備投資を抑えリストラを行い、
貸出金の返済に努めたためだと考えられる(図
図表6 民間非金融法人企業部門の資金過不足
額の内訳
(兆円)
40
金融資産増加額
30
金融負債増加額
資金過不足額
20
10
0
-10
-20
-30
-40
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
表7)。法人企業の借入の減少については、一
部金融機関サイドの貸剥がしの動きがあった
ことも指摘されているが、マクロ的には企業
サイドでの借入金圧縮の圧力が強かったと考
えられる。
(年度)
(備考)1.2004年度は速報値
( 2.日本銀行『資金循環統計』(新統計)より信金中金
( 総合研究所作成
図表7 民間非金融法人企業部門の貸出金残高
の対名目GDP比の推移
(%)
120
110
それが、2004年度には金融負債が再び増加
100
に転じ、資金過不足額が低下している。最近
90
の景況感の改善から設備投資も増加しており、
貸出金残高の対名目GDP比も、2004年度末は
80
70
60
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(年度末)
すでに1979年度を下回る68.1%まで低下してい
(備考)図表6に同じ
ることから、循環的視点からは、同部門の資
(1)中小企業金融機関の資産構成の推移
金需要も改善の兆しがみえ始めている。
まず、資金循環統計を用いて中小企業金融
機関(注)17のおもな資産項目の総資産に占める割
3.資金循環構造の変化が金融機関の
資産構成に与えた影響
合の推移をみると、民間非金融法人企業部門
これまでみてきたような、非金融各部門間
小企業金融機関の貸出金残高はおおむね総資
の資金過不足状況の変化による資金循環構造
産の80∼85%で推移してきた(図表8)。しか
の変化は、金融機関の資産構成にも影響をも
し、経済が2度の石油ショックへの対応を迫ら
たらした。ここでは、金融機関のうち、中小
れる安定成長期に移行し、民間非金融法人企
企業金融機関と国内銀行に焦点を当てて、そ
業部門の資金不足度が低下するのにあわせ、貸
の資産構成の推移をみることとする。
出金残高のウエイトは80%台から70%台に低
の資金不足度が高かった高度経済成長期に、中
下していった。
(注)
17.中小企業金融機関は、旧統計(図表8)では信用金庫、信用組合、労働金庫およびそれらの中央機関を含み、中央機関向け
預金は資産・負債で相殺されている。新統計(図表9)ではそれらに加えて商工組合中央金庫が含まれるが中央機関向け預金
の相殺はない。
46
信金中金月報 2005.9
図表8 中小企業金融機関の資産構成(その1)
(%)
高度成長期
安定成長期
100
90
80
70
60
50
40
貸出金
30
株式・投信
公社債
20
信託
10
コール・手形
現預金
0
54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84
(備考)1.公社債には政府短期証券、国債、地方債、公社公団債、金融債、事業債とCPを含む。
( 2.現預金には現金と流動性預金、定期性預金、譲渡性預金と日銀預け金を含む。
( 3.日本銀行『資金循環統計』(旧統計)より信金中金総合研究所作成
(年度末)
一方、同じ安定成長期に政府部門の資金不
調達も活発化させたので、中小企業金融機関
足度が上昇するなか、公社債のウエイトが
も、1988年度末には株式の増加を中心に、株
10.5%から16.2%に上昇した。これは、そのう
式・投信のウエイトをかつてない4.9%まで高
ちの公共債(政府短期証券、国債、地方債、公
めた。また、この時期に同様にウエイトを高
社公団公庫債の合計)のウエイトが、4.3%か
めた信託も、おもに特定金銭信託やファンド
ら11.6%に上昇したことによる。このように、
トラストであると考えられ、それらの資金も
資金不足の中心が民間非金融法人企業部門か
株式投資に回ったと思われる。
ら政府部門に移るのに併せて、中小企業金融
しかし、バブル崩壊期に入ると、民間非金
機関の資産運用のウエイトも、貸出金から公
融法人企業部門の資金需要の減少、借入金返
共債にシフトしていった。
済姿勢の強まりや、既存貸出の不良債権化な
図表9は、新統計によるため、図表8とデー
どから、中小企業金融機関の貸出金のウエイ
タの連続性がないが、バブル期に入ると、再
トも低下基調をたどった。そして、バブル崩
び資金不足の中心が政府部門から民間非金融
壊期末の1998年度末の61.5%から、デフレ期の
法人企業部門へ戻るのをうけて、公社債のウ
2004年度末には、さらに51.4%まで低下した。
エイトが下がる一方、貸出金は、1991年度末
一方、景気下支えのために政府部門の資金
には63.0%まで回復する。加えて、この時期の
不足度の拡大を受けて、中小企業金融機関の
株式相場の好調を受けて、民間非金融法人企
公社債は、1990年度末の9.4%から2004年度末
業部門がエクイティ関連債や増資による資金
には24.5%にウエイトを上昇させている。その
研
究
47
図表9 中小企業金融機関の資産構成(その2)
バブル期
(%)
バブル崩壊期
デフレ期
100
90
80
70
60
50
貸出金
40
外国証券等
30
株式・投信
公社債
20
信託
コール等
10
預金等
現金等
0
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
(年度末)
(備考)1.現金等には現金と日銀預け金を含む。
( 2.預金等には流動性預金、定期性預金、譲渡性預金を含む。
( 3.公社債には政府短期証券、国債、地方債、政府関係機関債、金融債、事業債、債権流動化関連商品、CPを含む。
( 4.コール等にはコール、買入手形、現先・債権貸借取引を含む。
( 5.外国証券等には外貨預金、居住者発行外債、対外証券投資を含む。
( 6.2004年度は速報値
( 7.日本銀行『資金循環統計』(新統計)より信金中金総合研究所作成
うち、国債だけで3.0%から10.8%に、公共債
や円高による評価損発生リスクを負っている。
(政府短期証券、国債、地方債、政府関係機関
このように、中小企業金融機関も、日本の
債の合計)では5.5%から17.2%に上昇してい
資金循環構造の変化に伴って、自らのポート
る。この時期は、不良債権問題の発生、深刻
フォリオ変更を余儀なくされ、高い評価損発
化や民間企業、金融機関の相次ぐ倒産などが
生リスクを内包している。
起こり、健全な貸出先も借入金返済に努める
ようになったことから、金融機関は、信用リ
(2)国内銀行の資産構成の推移
スクを避けながら余資運用するために国債な
次に、国内銀行(注)18についても、資産構成の
どの公共債を保有せざるを得なかったと思わ
変化をみていくことにする。なお、国内銀行
れる。その結果、現在では市場金利が急上昇
の変化の傾向は、中小企業金融機関の場合と
した場合、多額の評価損が発生するリスクに
ほぼ同じなので、ここでは中小企業金融機関
さらされている。
とは異なる特徴にスポットを当ててみたい。
また、2001年度以降、外国証券等のウエイ
まず、国内銀行の場合、その株式・投信の
トも高まっており、こちらも海外金利の上昇
ウエイトは、中小企業金融機関のウエイトに
(注)
18.国内銀行は、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行(旧相互銀行)
、信託銀行、長期信用銀行を含むが、旧統計(図表10)で
はほぼ同様の内容の全国銀行を用いている。全国銀行は、資産側の預金はすべて全国銀行に預けられているという仮定の下
に全額、負債側の預金と相殺されている。しかし、新統計(図表11)の国内銀行は、そのような預金の相殺は行われていない。
48
信金中金月報 2005.9
図表10 国内銀行の資産構成の推移(その1)
(%)
高度成長期
安定成長期
100
90
80
70
60
50
40
貸出金
30
株式・投信
公社債
20
信託
10
コール・手形
現預金
0
54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84
(年度末)
(備考)現金等には現金と日銀預け金を含み、あとは図表8に同じ。
比べ高くなっているが(図表10)
、それは戦後
バブル期には(図表11)
、株式・投信のウエ
の資本取引自由化の過程で、民間企業と銀行
イトが急上昇している。信託のウエイトも盛
との間の株式持合いが進展していったためで
り上がっているが、これも特金・ファントラ
あると考えられる。
であると考えられる。
一方、貸出金のウエイトは、低下傾向にあ
バブル崩壊期、デフレ期の貸出金と公社債
るなかで、主として金融債と事業債の増加か
のウエイトについては、中小企業金融機関と
ら、すでに高度成長期から公社債のウエイト
同様に貸出金が縮小する一方、公社債が拡大
が盛り上がりをみせている。
している。公社債の増加の9割近くは、公共債
なお、公社債のウエイトは、安定成長期の
当初には赤字国債発行を伴う国債大量発行を
(政府短期証券、国債、地方債、政府関係機関
債の合計)である。
受けて、中小企業金融機関と同様に急上昇し
また、中小企業金融機関より高い株式・投
た。しかし、1980年台に入り、急増した国債
信のウエイトが2000年度から2002年度にかけ
の持ち高が長期金利の低下に合わせて減少す
て縮小している。これは、株式の含み益が含
るのとともに低下した。これは、国債引受シ
み損に変わり、自己資本比率の維持・向上に
ンジケート団の引受額が急増してきたことを
対応するため、売却する動きが進んだためで
受けて、それまで安定保有に努めて市場売却
あると考えられる。日銀による買取制度など、
を自粛してきた金融機関が、1977年度以降、自
そのための制度的手当てもなされた。
主判断で市場売却をはじめることになったこ
とも影響している。
研
究
49
図表11 国内銀行の資産構成の推移(その2)
バブル期
(%)
バブル崩壊期
デフレ期
100
90
80
70
60
その他
50
貸出金
外国証券等
40
株式・投信
30
公社債
信託
20
コール等
10
預金等
現金等
0
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
(年度末)
(備考)図表9に同じ
のように示されている(予測の前提条件:2010
4.日本の資金循環構造の将来像と金
融機関の対応
年代初頭までに国と地方の基礎的財政収支が
以上、日本の資金循環構造の変化と、それ
債残高(名目GDP比)を引き下げること、2021
が民間金融機関に与えてきた影響をみてきた。
年度から2030年度に実質成長率は1%台半ばの
今後も、金融機関は、資金循環構造の変化を
伸びを維持(注)19すること)。
黒字化して、それ以降、その黒字を維持し、公
はじめとする環境の変化を伴いながら金融サ
ービス業を持続的に展開していくために、そ
の変化にスピード感を持って対応していく必
要がある。
本章では、今後の日本の資金循環構造の見
通しを踏まえ、金融機関にとっていかなる取
組みが必要であるかを考えてみたい。
そこで、2005年4月19日に経済財政諮問会議
専門調査会により発表された2030年までの日
①家計部門
高齢化に伴う貯蓄率の低下により、資金余
剰幅が縮小する。
②法人部門
投資が堅調に伸びることに伴い、資金余剰
幅は大幅に縮小する。
③政府部門
小さくて効率的な政府の構築に向けた取組
本社会の長期的展望である「日本21世紀ビジ
みが進められ、資金不足幅が縮小する。
ョン」をみると、2030年の部門別貯蓄投資バ
④海外部門
ランス、すなわち、資金過不足の状況が以下
財・サービス収支が赤字に転じるものの、所
(注)19.「高齢者等の労働力率が上昇し、生産年齢人口の減少を一定程度相殺」すること、「設備投資の伸びに支えられて、資本装
備率の伸びがやや高まるとともに、技術革新や資源配分の効率化により、全要素生産性が現在より高まることから、労働生
産性は2%強上昇」することが前提となっている。
50
信金中金月報 2005.9
得収支の黒字がGDP比で拡大することから、
り事業リスクを分担してもらえる資金供給を
経常収支の黒字が維持され、グローバルに投
求めるようになり、その資金の質もニーズに
資活動を行う『投資立国』へと日本が発展す
あわせて多様化していこう。プロジェクト・
る。したがって、海外部門の資金不足が継続
ファイナンスなどを通じたノンリコースローン
する。
の利用、より劣後性の高い負債やエクイティ
をからめたメザニン投融資や、スコアリング・
このように「日本21世紀ビジョン」では、
モデルを活用した商品やコベナンツ(注)20の一種
2002、2003年度のような民間非金融法人企業
である財務制限条項(注)21を活用した商品を利用
部門の大幅な資金余剰は是正されるものの、家
した無担保融資による調達が増えると考えら
計部門の資金余剰幅の縮小と併せて、民間非
れる。金融機関は、伝統的な有担保ローン以
金融法人企業部門の資金余剰の傾向は続くと
外に、それらへの対応も求められていこう。
の見方を示している。景気の好・不況による
大企業との取引が大きい都市銀行は、上記
資金需要の振幅はあるとしても、高度成長期
のような供給資金の多様化ニーズに応えて、新
やバブル期のような企業部門からの旺盛な資
しいタイプの融資に応じるほか、グループの
金需要は、今後は期待しがたい。したがって、
証券会社による証券業務に注力していく。一
金融機関は、限られた資金需要を確実につか
方で、貸出残高を一定規模確保するために、都
むとともに、自らの手による貸出先の創造な
市銀行が中小企業向け貸出にもこれまで以上
どにより、事業継続のための収益源を確保し
に注力しよう。そのため、中小企業向け貸出
ていく必要があるともいえよう。
市場の競争激化が予想される。法人業務専門
店舗を展開して店舗網の薄い地域での活動領
(1)民間非金融法人企業部門の資金余剰の継
続への対応
「日本21世紀ビジョン」における法人部門の
域を拡げたり、クレジットスコアリングなど
を利用した機動的な無担保ローンを中小企業
向けに展開してこよう。
資金過不足に関する見通しをみても、民間非
また、地域銀行においても、その9割が都市
金融法人企業部門は、資金余剰幅が縮小する
銀行に対抗してスコアリング・モデルを活用
ものの、今後も資金余剰部門であり続けると
した商品を導入するなど(図表12)
、担保・保
みられる。したがって、民間法人向け貸出市
証に過度に依存しない融資等の新しい中小企
場も、量的資金確保の必要性が薄れる状況の
業金融への取組みを進めている。
もとでは、借り手優位の傾向が残ろう。
すなわち、企業は、資金の出し手に対し、よ
さらに、新規参入者の進出により、競争が
厳しくなることも予想される。民間非金融法
(注)
20.ローン契約に際し設定される遵守条項のこと。
21.財務内容が一定の水準を達成できない場合等に金利等の融資条件が変更される特約
研
究
51
人企業部門が資金余剰部門になったことが象
徴するように、トヨタのようなキャッシュフ
図表12 担保・保証へ過度に依存しない融資
の促進等の取組実績
(単位:%)
ローの潤沢な事業会社が金融関連事業の拡大
に熱心である。こうした新規参入の動きを行
政サイドの市場整備や規制緩和が後押しする
方向でもある。アメリカではGEの金融子会社
の成功例もある。事業会社は、将来キャッシ
ュフローによる事業価値の評価に対する経験
スコアリング 信用金庫
・モデル商品 地方銀行
第2地銀
信用組合
財務制限条項 信用金庫
活用商品
地方銀行
第2地銀
信用組合
2003年4月∼2005年3月
実施機関数 業界総数 実施率
136
298
46
57
64
89
43
48
90
32
175
18
30
298
10
22
64
34
9
48
19
5
175
3
とノウハウや、商品の開発・販売に欠かせな
(備考)1.実施率とは実施機関数を業界総数で割った比率
( 2.各業界団体の機能強化計画進捗状況取りまとめより
( 信金中金総合研究所作成
いマーケティング力を豊富に有しており、そ
借入需要が高まることが期待されるからだ。ま
ういった新規参入者と企業向け貸出をめぐる
た、公的年金への不安から老後資金の運用ニ
競争をしていかなければならないであろう。
ーズも高まるため、投信や年金など家計部門
ただし、信用金庫も、他が取り組むからと
の資産運用ニーズに応えるビジネスチャンス
りあえず自金庫でも行ってみるといった横並
も増加してくる。
び意識では、構造変化やマーケットニーズに
実際、この個人金融市場に期待した新規参
適切に対応していくことは困難であろう。一
入がみられている。たとえば、自動車会社は、
方で、経営相談支援に努め、従来からの強み
高級車を購入する富裕層を顧客に多く持つ。そ
である信用金庫ならではの地域の中小企業と
ういった富裕層の資産運用ニーズに応えよう
のリレーションシップをこれまで以上に強め
とするのも不思議ではない。また、ネット会
ていくことも求められているのである。まず
社や電気機器会社も自らの技術を生かした新
営業地域のニーズや取引先企業の特性を踏ま
しいチャネルでの金融業参入を積極化しつつ
え、自らの経営戦略を見据えたうえで、対象
ある。このような新たなビジネスモデルを持
新規業務を絞って注力していくことが必要と
った新規参入者も個人の利便性に応えること
なる。
を狙ったものが多い。最近認可されたネット
専業銀行等をみても(図表13)
、個人がインタ
(2)家計部門の資金余剰の縮小への対応
ーネット・ショッピングを行う際にその代金
家計全体での資金余剰度合いの縮小で、個
決済がしやすいようにネットバンキングを提
人の借入れニーズが高まることにより、個人
供するようなものや、既存の広範な小売店舗
金融市場の拡大、多様化も予想される。少子
網を生かしてATMネットワークを構築し、そ
高齢化社会の到来による消費の増加で、家計
れを提携金融機関に提供することで、提携先
部門の貯蓄余力が低下して同部門から金融部
の顧客利便性の向上を支援することを狙った
門への資金流入は細るが、一方で、同部門の
ものがある。投信や外貨預金などの投資商品
52
信金中金月報 2005.9
図表13 ネット専業銀行等の概要
銀行名
大株主
口座数
預金
ジャパンネット銀行
三井住友銀行、
富士通など
105万
2,071億円
貸出金
174億円
有価証券
総資産
経常収益
営業経費
経常利益
概況
2,919億円
3,485億円
107億円
48億円
11億円
ネット専業銀行
ネットショッピングや
ネットオークションの
際の決済サービスや保
険販売を行う。
ネット決済件数1,758
万件(2004年度)
(2005年3月末現在)
ソニー銀行
イーバンク銀行
ソニーフィナンシャル
GMOインターネット、
ホールディングスなど
インデックスなど
36.7万
101.2万
5,467億円
2,644億円
うち外貨預金
1,591億円
1,263億円
6億円
うち住宅ローン
1,227億円
3,216億円
148億円
6,184億円
2,931億円
113億円
69億円
69億円
73億円
△
16億円
△
4億円
ネット専業銀行
ネット専業銀行
ネットショッピングや
円預金、外貨預金を集
ネットオークションの
め、有価証券や住宅ロ
際の決済サービスや電
ーンなどで運用し、投
信や保険の販売を行う。 子マネー「edy」への
チャージサービスを行
う。決済件数331万件
(2005年1∼3月)
アイワイバンク銀行
イトーヨーカ堂、セブン
イレブンジャパンなど
22.5万(個人)
1,897億円
うち個人預金
400億円
0億円
260億円
3,133億円
479億円
378億円
100億円
25都道府県のセブンイ
レブンやイトーヨーカ
ドーの店舗内にATMを
9,981台設置し、469の
提携金融機関に有料で
開放(2005年3月末)
(備考)1.ソニー銀行の投信預かり残高は296億円で、イーバンク銀行は資産に金銭の信託1,209億円を保有している。
( 2.イーバンク銀行とアイワイバンク銀行は、営業費用の代わりに経常費用を記載
( 3.各行ホームページなどより信金中金総合研究所作成
は、顧客にとっては商品情報や相場情報をタ
利状況の継続やペイオフ解禁もあって、預金
イムリーに入手し、また、タイムリーに購入
者が、預金や新規持ち込み資金によって投信、
や解約ができた方がよく、ネットという通信
年金の購入を進めており、銀行等投信窓販に
手段がそれに向いているという点もある。
よって販売された公募投信の純資産残高は、株
また、最近の貸出債権の流動化や証券化を
式投信を中心に着実に増加してきている。銀
前提に、預金を集めず、貸出債権を満期まで
行等による投信や保険の窓販定着によって(図
保有せず、流動化、証券化までのつなぎ融資
表14)
、外資系の投信運用会社や生命保険会社
で収益をあげるというビジネスモデルによっ
が個人向け運用資産を伸ばしていったような
て、住宅ローンを取り扱うノンバンクが出て
ことが、預貸金業務に起こらない保証はない。
きている。
銀行代理店の規制緩和は、内容によっては、
都市銀行も個人向けサービスを重視して個
人顧客の決済利便性の向上を図り、住宅ロー
国内に店舗網を持たないが高度の金融業務ノ
ンその他個人向けローンに一層注力し、預金、
ウハウを持っている外国銀行のような新規参入
投信、年金や証券仲介業務も通じて個人向け
者が、伝統的な銀行店舗網に近いサービス体制
総合金融サービスの強化を図っている。地域
を迅速かつ効率的に整える可能性をもたらす。
銀行においても、預かり資産残高の増加を主
また、投信や保険の窓販開始以降、超低金
目標とする先が多く、近県都市部への進出を
研
究
53
図表14 公募投信の銀行等窓販純資産種類別残高の推移
(兆円)
18
16
14
(%)
50
MMF(左目盛)
公社債投信(左目盛)
株式投信(左目盛)
公募株式投信純資産残高に占める
銀行等窓販分のシェア(右目盛)
40
30
12
20
10
10
8
0
6
4
2
0
00.1
7
01.1
7
02.1
7
03.1
7
7
05.1
(年.
月)
(備考)1.不動産投信(J−REIT)は含まず。
( 2.投資信託協会資料より信金中金総合研究所作成
図っているケースもみられる。
04.1
れないほどの預金を集めて証券投資で運用し
信用金庫は、預かり資産への取組みについ
続けることになるが、リスクを考えればそれ
ては、銀行に劣後しているのが実情である。し
にも限界があろう。特に、現在は政府部門が
かしながら、信用金庫には築き上げてきた顧
発行する公共債を中心に保有しているが、政
客とのFace To Faceによるリレーションシッ
府部門の資金不足幅の減少を考えると、将来
プがあり、その強みは、預金取引ばかりでな
はグローバルな投資立国として外国証券のウ
く投信や年金も含めたよりトータルな家計の
エイトを高めざるを得なくなる。したがって、
総合金融資産管理サービスを行っていく上で
市場情報の取得、消化、投資判断のための外
も活きてくるはずである。
国証券運用に向けた管理体制を整備する必要
が出てこよう。
(3)政府部門の資金不足幅の減少への対応
逆に、そのような状況を緩和するという観
一方、金融機関は、前述のように民間非金
点からも、前述のように個人の資金運用ニー
融法人企業が資金余剰主体となってきたこと
ズに応えるべく、他業態同様に投信や保険の
から、近年は貸出を思うように伸ばせず、集
窓販にも注力していくことが考えられる。預
めた預金の運用先として国債など公共債を中
金者がその預金を引き出して投信や年金を購
心とした有価証券のウエイトがより高まり、長
入し、その分、金融機関が自己資本によるリ
短金利や円相場の急上昇などの場合の大きな
スク負担を伴う自身の証券投資を減らすこと
評価損発生リスクを抱えるようになった。
になれば、結果として、預金者に直接、運用
今後も、民間非金融法人企業が資金余剰で
リスクを負担してもらう部分が増え、預金の
あり続けると考えると、金融機関がこのまま
減少によって、預貸率は上がることになる。投
自己資本でリスク負担しながら、貸し出しき
信や保険の窓販を通じて運用リスクのないフ
54
信金中金月報 2005.9
ィー収入が確保され、収益源の多様化が図ら
循環構造の動向を視野に入れて、経営戦略を
れていくことになる。
練っていく必要がある。
もちろん、すべての金融機関が同じベクト
おわりに
ルを持つ必要はない。個別には、預貸金業務
以上、資金循環構造の将来像を踏まえて、法
に特化する戦略を選ぶ金融機関もあろう。ま
人向け貸出市場のパイが伸びず、新規参入の
た、運用力とリスク管理態勢を強化し、有価
増加などから金融機関間の競争が激化すると
証券運用に活路を求める経営判断を行う金融
いう見通しのもと、貸出商品・サービスの多
機関もあろう。金融機関は、上記のような環
様化、営業ネットワークの再検討、投信・保
境変化を踏まえつつ、顧客ニーズや利用可能
険窓販の拡大といった方向を検討してきた。幸
な経営資源、競合先に対する自らの比較優位
い、目先は民間非金融法人企業部門の資金ニ
を検討し、可能な経営戦略を選択し、それを
ーズも改善する兆しをみせており、リテール
実行できる体制を整備し、そこに経営資源を
市場の拡大も期待されるが、やはり短期的な
集中して取り組むことが重要である。
市場の好転ばかりでなく、より長期的な資金
〈参考文献〉
石川達哉『家計部門の金融資産と実物資産の関係』ニッセイ基礎研REPORT(2001年10月)
石川達哉、矢嶋康次『日米比較で見る高齢者の貯蓄・消費と住宅資産の関係』ニッセイ基礎研REPORT(2001年2月)
大垣尚司『金融アンバンドリング戦略』日本経済新聞社(2004)
小玉祐一『不動産業に16兆円の余剰資金』エコノミスト(2005年3月15日)
鹿野嘉昭『日本の金融制度』東洋経済新報社(2001)
『日本21世紀ビジョン』専門調査会報告書(2005年4月)
日本銀行調査統計局『資金循環統計からみた1980年代以降のわが国の金融構造』日本銀行調査季報、2005年春(4月)号
日本銀行調査統計局経済統計課『入門 資金循環』東洋経済新報社(2001)
櫨浩一、矢嶋康次『消えた家計の資金余剰』ニッセイ基礎研REPORT(2004年6月)
研
究
55
研 究
NPO・コミュニティビジネスに対する創業融資
−行政や「市民金融」
(
「NPOバンク」
)との協働も有益−
信金中央金庫 総合研究所主席研究員
澤山 弘
(キーワード)NPO、コミュニティビジネス、市民金融、NPOバンク
(視 点)
NPO法施行後、労働金庫や20近い信用金庫で「NPO支援ローン」の取組みが進められてき
ている。また、自分の資金を目に見える形で社会に役立つことに使ってほしいとの願いから、
自分たちで資金を持ち寄りNPO等に貸し出す「市民金融」
(「NPOバンク」
)も台頭している。
NPO・コミュニティビジネスはその担い手が事業経験に乏しいことが多く、創業時の融資リ
スクが高くなりがちだが、行政や「市民金融」と協働することにより、リスクをシェアしてい
くことも考えられる。本稿では、こうした視点から、行政との協働事例や、「市民金融」の実
態を紹介しながら、協働の可能性を考えてみたい。
(要 旨)
●
NPO・コミュニティビジネスを対象としたローンは2000年から始まっている。無担保で5年
以内、融資上限額は300万円ないし500万円といったものが多いが、介護系NPO法人などの設
備資金には、介護保険報酬や不動産等を担保として、多額の融資も実行されている。
●
創業時の融資リスクをどう負担するかが問題となるが、大阪府や札幌市では、地域金融機関
の融資に対して自治体が一定割合まで損失補填を行う制度を始めた。総務省の「コミュニテ
ィ・ファンド形成事業」は、自治体のほか企業等にも出資も募り、投融資や債務保証を行う
ものであり、自治体とのリスク・シェアが可能となろう。
●
「市民金融」の流れは80年代末から始まっているが、近年、
「NPOバンク」といった名称で
新たな設立が相次いでいる。事業組合が集めた出資金を貸金業登録した別の事業体に融資
し、その事業体が組合員に融資する形を採っていることが多いが、互いに顔の見える関係の
中にいるので、借入人に「信頼を失いたくない」という気持ちが働くため、貸倒れはないと
いう。
●
地域貢献のひとつとしてNPO・コミュニティビジネスを支援していく場合、地域金融機関と
しても、「市民金融」が集めた資金を預託金として預かったり、自らファンドを募ったりし
て、これらをもとに、
「市民金融」と協働しながら融資を行っていくことも有益だろう。
56
信金中金月報 2005.9
いくにはどうしたらよいかであり、第2点は、
はじめに
創業融資に伴う高いリスク負担を軽減しつつ、
95年の阪神・淡路大震災におけるボランテ
新規貸出を進めていくにはどうしたらよいか
ィアの活躍を機に、98年末、
「特定非営利活動
である。このうち、第1点の創業支援のあり方
促進法」(NPO法)が施行された。当初、700
については、拙稿「地域貢献としてのNPO・
程度の認証数に過ぎなかったNPO法人数は、6
コミュニティビジネス支援 ―創業支援の新
年後の2005年1月には2万件を超えるに至っ
(注)2
において、すでに検討
たな対象として―」
た(注)1。その拡大速度は目覚しく、地域の様々
した。
な生活ニーズに応え問題解決を図るコミュニ
そこで本稿では、まず第1章で、地域金融機
ティビジネスの重要な担い手として、近年ま
関におけるNPO・コミュニティビジネスに対
すます脚光を浴びてきている。
するローンの取組状況を概観した後に、上記
地域経済の衰退が叫ばれる中で、NPO(=
第2点のNPO・コミュニティビジネス向け創業
Non Profit Organization、非営利組織)・コミ
融資に関わるリスクに対してどのように対応
ュニティビジネスは、地域に根ざした様々な
したらよいのかを検討してみたい。そのひと
事業を起こし雇用を増やすことによって、地
つは、第2章で紹介する行政と協働した創業融
域の新たな成長産業として台頭してきている。
資制度の試みであり、もうひとつは、
「市民金
したがって、地域の活性化を進める彼らを支
融」との協働である。近年、市民が自分たち
援していくことは、地域金融機関の評判を高
の資金を持ち寄って「NPOバンク」といった
め、地域貢献を通じたプレゼンスの向上に役
ものを作り、自らNPO・コミュニティビジネ
立つと思われる。
スに貸し出していく「市民金融」の動きが活
ただし、NPO・コミュニティビジネスは、
発化している。第3章では、これらの試みを紹
新しく成長してきた事業体ないし事業分野で
介するとともに、
「市民金融」と協働していく
あり、その担い手の多くは、専業主婦や定年
ことによって、NPO・コミュニティビジネス
退職者、さらには事業経験に乏しい若い世代
を対象とした創業融資に関わるリスクをシェ
である。したがって、彼らを支援していくに
アしつつ、これらを支援していく方途を考え
あたっては、ふたつの問題を解決していく必
てみたい。
要があるだろう。第1点は、初めて事業を起こ
すコミュニティビジネス起業者に対する創業
支援をどう進めるか、そのコストを軽減して
(注)
1.NPO法人の現況については、
「拡大著しいNPO法人の現況 ―地域の問題解決を図る新しい担い手層の成長―」と題した澤
山[2005a]参照
2.澤山[2005c]参照。同レポートでは、創業支援時に必要となる事業計画作成指導など、様々な人的支援コストを低減する
ために進められている行政や起業支援NPOとの協働について紹介した。
研 究
57
ば(注)5、信用金庫業界でも、奈良中央信金(奈
1.進展するNPO・コミュニティビジ
ネス融資の取組み
(1)労働金庫と一部信用金庫が先行
良県)が2000年5月にスタートさせたのを初め
として、永和信金(大阪府)
、岐阜信金(岐阜
県)
、金沢信金(石川県)
、長野信金(長野県)
NPO・コミュニティビジネスを対象として
が先行し、03年度には、新庄信金(山形県)、
新たなローン商品を組む動きは、すでに2000
多摩中央信金(東京都)
、東濃信金(岐阜県)
、
年ごろから始まっている。NPOローンへの取
さわやか信金(東京都)
、北陸信金(石川県)
、
組みが最も早かったのは労働金庫業界である。
沼津信金(静岡県)の計5金庫、04年度には、
まず2000年4月に、東京労金(現中央労金)
、群
水戸信金(茨城県)、福島信金(福島県)、青
馬労金(現中央労金)、および近畿労金が、
梅信金(東京都)、佐野信金(栃木県)、西武
「NPO事業サポートローン」を開始し、05年5
信金(東京都)などが加わり、04年12月現在
月までに、北海道労金、新潟県労金、静岡県
16金庫が、NPOローンをスタートさせている。
労金、北陸労金、東海労金、中国労金、四国
これらは一般に、NPOローンとして、NPO
労金、九州労金、沖縄県労金が加わった。ま
法人を対象としているケースがほとんどであ
た、東北労金(宮城県地区、山形県地区)と
るが(注)6、より広く営利企業なども含めたコミ
長野県労金では、県との提携によるNPO融資
ュニティビジネス事業者全体を対象としてい
を行っているので、現在、13労金すべてが何
るものもある。たとえば、岐阜信金は、以前
らかの形でNPOローンを取り扱うに至ってい
から取り扱っていた「ベンチャーサポートロ
る。04年度までに累計156件、約9億6千万円の
ーン」や「女性起業家ローン」に加え、03年
融資実績を持つ(注)3。
11月から、「ぎふしん地域活性化支援ローン」
近畿労金を例にとると、05年3月までの相談
の販売も始めた(注)7。同じく、しずおか信金で
件数は205件に達し、融資実行は、50団体、3
も、04年4月から、「企業サポートローン・創
億9,570万円となっている。融資先を見ると、
業」を発売した(注)8。さらに、福島信金でも、
高齢者福祉関係が半分弱、次いで、子育て、障
04年6月から、コミュニティビジネス支援ロー
害者福祉、バリアフリー化などのまちづくり
ン「わくわく・SHOP」を開始した(注)9。これ
が続いている(注)4。
らはいずれも、地域活性化につながる新しい
NPO法人「アリスセンター」の調べによれ
事業、すなわちコミュニティビジネスの育成、
(注)
3.全国労働金庫協会総合企画部部長代理多賀俊二氏への取材による。
4.近畿労金地域共生推進センターセンター長法橋聡氏への取材による。
5.NPO法人「アリスセンター」は、後述するとおり、04年12月に横浜市で、主要な「市民金融」団体を集めたフォーラム(本
稿P. 64参照)を開催するなど、意欲的な取組みを進めている。信金業界の取組状況については、石塚[2004]pp. 44-45、およ
び多賀[2004b]pp. 29-30参照
6.労働金庫の場合、そもそも営利企業に対する貸付は認められていないので、初めからNPO法人のみが対象とならざるを得ない。
7.岐阜信金[2004]参照
8.しずおか信金[2004]参照
9.福島信金ホームページ(http://www.shinkin.co.jp/fshinkin/)参照
58
信金中金月報 2005.9
起業支援に焦点を当てたものだという。
とした「コミュニティビジネス・ローン」と
して、間口を広げたものにしていくべきだろう。
(2)小口ローンが主体
各金融機関によって多少の違いはあるが、そ
通常の株式会社形態の起業向けであれば、
わざわざ新しくローン商品を区別して発売す
の商品内容はおおむね以下のようである。す
る必要はないと考えられるかもしれないが、
なわち、無担保で5年以内、融資上限額は300
コミュニティビジネス創業者は、一般に企業
万円ないし500万円といったものが多い(ただ
経営および借入れに不慣れであり、様々な段
し、福島信金のように、1,000万円のケースも
階で創業支援を必要としていることが多い。
ある。なお、同信金では、法人格を取得して
したがって、彼らに対して門前払いを避ける
いない団体も対象としている)
。一般に、代表
ためにも、独自なローン商品を用意したほう
者を含む2名以上の保証人が必要としており、
が良いし、償還可能性を高めるためにも、創
金利は、年2%台後半が多いが、行政などから
業支援付きであることが望ましいように思わ
の委託事業に関わるつなぎ資金の場合は年1%
れる。
程度と、低利としている。
いずれも、無担保を前提としているため、小
額にとどまっているが、実際に借入れ需要が
2.行政と協働した創業融資
(1)NPO・コミュニティビジネスの創業リス
多い介護系NPO法人などの設備資金について
クとは
は、通常の融資の場合と同様、介護保険報酬
NPO・コミュニティビジネスに限らず、一
を担保としたり、不動産等を担保としたりす
般に、起業資金を用立てる創業時融資のリス
ることで、より多額の融資も実行している。
クは高い。その事業に関する実績がない段階
なお、近年、しっかりとした収益事業基盤
で貸し出す以上、事業が軌道に乗った段階で
を持った「事業型NPO」と呼ばれるNPO法人
の融資に比べ、リスクが高くなるのは当然だ
が増えてきている一方、株式会社という営利
ろう。
企業の形態を採りながらも、社会性の強い事
ただし、NPO・コミュニティビジネスの創
業を進める企業(注)10も増えてきている。このよ
業リスクは、ベンチャービジネスのように、新
うに、今後次第にNPOと営利企業との境目が
製品を開発したり、新たな需要そのものを創
つけがたくなっていくことを考えれば、これ
造したりすることによって、新しい市場を生
から地域金融機関が新設していくべき創業支
み出そうとする場合の創業リスクとは、多少
援ローンは、NPOに絞った「NPOローン」と
異なるといってよいだろう。
いうよりも、NPOも含め様々な事業体を対象
ベンチャービジネスの場合には、仮に画期
(注)10.「社会企業」(ソーシャル・エンタープライズ)と呼ばれるもので、欧米では近年目覚しい成長を見せおり、わが国でも注
目を浴びつつある。詳しくは町田[2000]参照
研 究
59
的な新製品を生み出してもコストが高すぎて
ている「NPOローン」なども、事業開始後3年
需要が伴わなかったり、
「新たな需要」なるも
といった条件を課しているケースが多い。事業
のが創業者の独りよがりの思い込みだったり
経営が軌道に乗り始めたことを確認してから、
することも多い。これに対して、NPO・コミ
融資の検討に入っているのが実情なのである。
ュニティビジネスは、一般的に言えば、介護・
しかし、創業時の融資リスクを必ずしも地域
子育てなど、地域の中に存在する様々な問題
金融機関だけで背負う必要はないはずである。
に注目し、その解決を図っていこうとする事
今日、長引く景気低迷の中、多くの自治体に
業体ないし事業である。現に解決が求められ
とっても、地域活性化や雇用創出は大きな課
ているニーズに応えようとしているものなの
題となっており、厳しい財政状況ながらも、創
で、その限りで需要は(潜在的な「ウォンツ」
業者向けの制度融資を強化する取組みが相次
を含め)存在しているはずである。
いでいる。したがって、コミュニティビジネ
もちろん、需要があるだろうということと、
ス創業者に対して、必要事業資金の一部は自
個々の創業者が、的確にそうした需要をとら
己資金で用意してもらったうえで、自治体の
え、適正な収益を上げていけるということは
制度融資や各種の補助金・助成金の活用、公
別物である(注)11が、そもそも、新製品を完成で
的金融機関からの借入れなど、様々な資金調
きたり、新たな需要を創り出したりできるか
達手段の併用を勧めれば、地域金融機関自身
どうか自体について、不確かさの度合いが高
のリスク負担額を減らすことも可能である。
いベンチャービジネスと比べれば、コミュニ
さらに一歩進めて、今後、自治体や公的金
ティビジネスは、相対的にはローリスクな事
融機関と制度融資を活用した協働を進めるこ
業分野であるとはいえよう。少なくとも、一
とができれば、より大きな効果をもたらすと
般にはそのように定義づけされている(注)12。
考えられ、有効だろう。大阪府と近畿労金と
一方、NPO・コミュニティビジネスに対す
の間ですでに始められている次の事例は、地
る創業融資に存在する特徴的なリスクは、そ
域再生を願う行政と金融機関が協働した好例
の創業者の多くが、専業主婦、定年退職者や、
であり、今後はこうした動きが急速に広がっ
若い世代であり、事業経営の経験がないため、
ていくことと思われる。
既存の事業者が新たに事業を開始する場合に
比べれば、新規開業のリスクは高くならざる
を得ないだろうという点にある。
このため、すでに地域金融機関で取り組まれ
(2)
「大阪府コミュニティビジネス創出支援融
(注)
13
資制度」
すでに述べたとおり、近畿労金では、2000
(注)
11.これは、どのような産業・事業分野についてもいえることだろう。
12.たとえば細内[1999]は、コミュニティビジネスを「等身大の生活のなかで無理をせず、顔の見える関係の中で飯の種と
なるような小さなビジネス起こし」と位置づけている。P. 19参照
13.大阪府ホームページ(http://www.osaka-cb.net/sientoha.html)
、近畿労金[2004]P. 22、および法橋聡[2004]pp. 57-60参照
60
信金中金月報 2005.9
年度から独自にNPOローンを開始しているが、
時の資金として十分でないことは言うまでも
融資にあたっては、他の地域金融機関の場合
ない。そこで、
「コミュニティビジネス創出支
とほぼ同様、法人格取得を含めて3年以上の事
援融資制度」
(同「創出支援資金貸付事業」と
業経歴を有し、かつ法人格取得後最低1事業年
も言う)も同時に開始したのである。これは、
度の決算が確定しているなどの条件を課して
上記「公募事業」選考委員会で融資申込み資
おり、最もニーズが強い創業時の資金需要に
格ありとされたNPO法人を対象とするもので、
は応じられないできた。また保証人の要件も
実際の融資審査は近畿労金が行い、最高400万
厳しかった。
円(期間は7年以内、運転資金の場合は5年以
一方、大阪府では、03年度から、コミュニ
ティビジネス創出支援を地域活性化と雇用創
内、金利は年1.95%)まで、無担保で融資を実
行する。
出のための重点施策と位置づけ、
「コミュニテ
ポイントは、経営実績のある企業と比較すれ
ィビジネス創出支援公募事業」をスタートさ
ば高いと想定せざるを得ない倒産リスクに対
(注)
14
。
せた(図表1)
して、大阪府が一定割合まで損失補填を行う
これは、コミュニティビジネスの起業を募
点にある(注)15。具体的には、03年度の場合、1
り、公募に応じてきたなかから、先駆性・社
億円の融資枠に対して、倒産確率を15%と設定
会性などに優れた事業プランを選定し、一団
したうえで、その7割である1,050万円(=1億
体あたり100万円を「事業化奨励金」として交
円×15%×70%)まで補填することとした(注)16。
付し助成するものである。2年間ですでに約100
この結果、近畿労金では事業の立ち上げ時に
団体に交付済みという実績を挙げている。
も資金を融資することが可能になったほか、保
しかし、これだけでは、一般に、立ち上げ
証人の要件も法人代表者および連帯保証人1名
図表1 「大阪府コミュニティビジネス起業家応援事業」のイメージ
[事業イメージ]
事業化支援(奨励金、融資)
1.先導的CB創出支援事業
府民の地域づくりへ
の意欲とアイデアで
大阪らしいCBを創出
先導役
呼
び
水
府内1,000ヶ所でCB創出
雇用創出効果3,000人
2.モデル提案型CB創出支援事業
3.CB創出支援資金貸付事業
4.CB創出支援プロジェクト
運営支援(情報発信・運営相談・人材育成)
(備考)http://www.osaka-cb.net/sientoha.html(平成16年度時点)より転載
(注)
14.
「コミュニティビジネス起業家応援事業」とも称されている。
15.なお、同制度は、03、04年度の施策として創設されたが、05年度以降の扱いを改めて検討中である。法橋[2004]参照
16.04年度は、8,000万円が融資目標額とされた。
研 究
61
の個人保証でよいとするなど、一部緩和でき
るようになった。
金利との差額は利子補給されることになった。
原則として3年以上の活動実績が必要だが、
札幌市および北海道労金がともに認めた場合
(3)「さっぽろ元気NPOサポートローン」
札幌市と北海道労金が提携して04年6月から
開始した「さっぽろ元気NPOサポートローン」
も、ほぼ同様のスキームである(注)17。
には、活動実績を条件としないなど緩和され
る可能性もあるとしている。
運転・開業資金については、無担保で短期1
年以内、長期3年以内、上限500万円であるが、
これは、札幌市が、04年度から開始した「札
設備資金については、無担保でも5年以内で、
幌元気基金」において、融資対象を中小零細
500万円以内、担保があれば、10年以内で、
企業のみならず、NPO法人まで拡大すること
5,000万円以内まで借入れできる。04年度の融
とし、
「NPO事業サポートローン」の実績を持
資枠としては総計2億円を予定した。
つ北海道労金に要請してきたものだ(図表2)
。
札幌市のケースでは、短期運転資金の場合
(4)
「コミュニティ・ファンド」への出資・協働
で50%、その他の場合で90%を損失補填する。
こうした自治体の制度融資機能と民間金融
また、札幌市が設定した金利は04年度につい
機関の協働をさらに一歩進めようというのが、
ては2%であり、北海道労金が内部で設定した
総務省が支援に乗り出した「コミュニティ・
図表2 「さっぽろ元気NPOサポートローン」
の「お申し込み手続きの流れ」
ファンド形成事業」であるといえよう。
これは、「地域再生本部」が04年2月に策定
した「地域再生推進のためのプログラム」に
おいて「政策金融等の利便性の向上」策とし
て打ち出されたものである。
地方自治体が、公益法人などを受け皿とし
たファンドを設立し、自治体自ら出資または貸
付を行うほか、地域の住民や地域金融機関、企
業等にも出資も募り、
「コミュニティ・サービ
(注)18
者等への投融資や、地域金融機関
ス事業」
等からの借入れに対する債務保証を行ってい
く。出資に際しては、住民参加型のミニ公募
(備考)http://www.rokin-hokkaido.or.jp/より転載
債を募ることもできる。さらに、同ファンドに
(注)
17.北海道労金ホームページ(http://www.rokin-hokkaido.or.jp/)、および多賀[2004a]pp. 16-19参照
18.「コミュニティ・サービス事業」とは、「地域住民のニーズに対応したサービス等を廉価で継続的に提供し、自らの利益の
追求よりも地域課題の解決を目的とする事業」
(総務省[2003]参照)と位置づけられており、一般に言われるコミュニティ
ビジネスの定義とほぼ同一のものと思われる。
62
信金中金月報 2005.9
対する出資または貸付のための財源として発
ことで、相当程度負担を軽減することも可能
行する地方債については、償還利子の50%が、
であることが理解されよう。
地方交付税に算入される形で、自治体に戻し入
これらは、近年活発化してきたPPP(=Public
れられる措置も取られることになっている(注)19。
Private Partnership、行政と民間の協働)のひ
「コミュニティ・ファンド」は、いわゆる
とつともいえるものであり、こうした動きは
「ベンチャー・ファンド」のように、ハイリス
今後一層拡がっていくことが予想される。地
クではあるがハイリターンを期待しえるベン
域金融機関としても、そうした新しい流れを
チャー企業に投資し、成功した企業が株式を公
先取りする形で、行政等と協働して、NPO・
開した際に得る売却益を、配当という形で出資
コミュニティビジネスを積極的に支援してい
者に還元しようといったものではない。あく
くことが期待されているといえよう。
まで「コミュニティ・サービス事業」等の支
援を目的としたものであるので、出資自体から
は高い収益を期待しえるものではないだろう。
3.
「市民金融」の生成と協働の可能性
(1)「市民金融」の生成
しかし、地域金融機関としては、
「コミュニ
ところで、上述の「コミュニティ・ファン
ティ・ファンド」への出資に加われば、NPO・
ド」のアイデアは、本章で述べる「北海道NPO
コミュニティビジネスに対する情報を得るこ
バンク」での試みと非常に類似している。
とができ、間口を広げることができよう。同
1989年、
「市民ベンチャー」に資金を貸し出
ファンドからのNPO・コミュニティビジネス
すために「市民バンク」が設立されたが、
「北
向け融資案件について協調融資を組んだりす
(注)20
の
海道NPOバンク」は、この「市民金融」
れば、自治体とリスクをシェアしながら、融
流れを汲むものである。市民が自ら貸出を行
資を進めることが可能になる。また、自金融
う「市民金融」は、NPO・コミュニティビジ
機関のNPO・コミュニティビジネス向けロー
ネスを主たる貸出対象としており、これから
ンについて、同ファンドから債務保証を受け
そうした貸出を始めようとする地域金融機関
るといった利用の仕方も考えられよう。
にとって、貸出の実際をイメージするのに多
以上、NPO・コミュニティビジネスに対す
少とも参考になろう。また、彼らと協働して
る創業融資について、行政と協働した先進的
いくことは、相互に有益であるように思われ
な事例を紹介してきた。創業融資のリスクが、
るので、近年広がりを見せてきた「市民金融」
事業経験がある一般事業者と比べ相対的に高
について、次に紹介してみたい。
いのは事実ではあるが、行政と協働を進める
(注)
19.04年4月20日付総務省通達「コミュニティ・ファンド形成事業等に関わる出資債の取り扱いについて」による。
20.
「市民金融」という概念については、
「NPOバンク」
、あるいは「市民銀行」といった表現も用いられているが、後述すると
おり、預金の受け入れができない以上、「銀行」という表現はやや誤解を生むおそれがあるので、本稿では、「市民金融」と
した。
研 究
63
イ.
「市民バンク」に始まった「市民金融」の
流れ
野県、03年)、「東京コミュニティパワーバン
ク」(東京都、03年)、「ap bank(アーチスト
「市民バンク」は、「地域を軸とする新しい
社会の中で、事業に込められた社会性と志を
パワーバンク)」(東京都、04年)など、新た
な設立が相次ぐようになってきている(注)23。
(注)21
ことを目的
担保に、金と知恵を貸し出す」
「未来バンク」以降の「市民金融」に共通し
として、永代信用組合(東京都、当時)との
ている特徴は、自分の資金を目に見える形で
提携をもとに設立された。その後、殖産銀行
社会に役立つことに使ってほしいとの願いか
(山形県)、池田銀行(大阪府)、96年4月から
ら、自分たちで資金を持ち寄って、自分たち
は、都内31の信用組合(当時)とも提携する
で貸出そうとしている点にある。市民社会を
ようになった(注)22。また、96年8月には伊丹市
育てていくために、市民が自分たち自身で、資
などと提携して「伊丹市民バンク」が立ち上
金の使い方や、融資対象を考え、新しい資金・
げられたほか、西京銀行(山口県)が支援す
資源の循環システムを作り出そうというので
る「しあわせ市民バンク」も、2001年11月、
ある。
「市民バンク」との提携によって始まったもの
である。
ただし、
「北海道NPOバンク」や「NPO夢バ
ンク」などは、自治体や地域金融機関からの
「市民バンク」では、それまで既存の金融機
出資・寄付や融資も受け入れており、必ずし
関からは貸出の対象としてほとんど意識され
も市民からの資金だけに拘わっているわけで
ず、なかなか借入れできないできた階層に対
はない(注)24。また、融資のみならず、起業支援
して、いかにして金融をつけるかに重点が置
やネットワーク作りなども支援したり、人材
かれており、貸出原資については既存の金融
の紹介や資材の提供などもおこなったりと、活
機関との提携を志向してきた。
動内容は様々である。
「ともだち融資団」によ
一方、90年代に入り、
「未来バンク事業組合」
(東京都、94年)と、「女性・市民信用組合設
る連帯保証の試み(注)25(東京コミュニティパワ
ーバンク)などもある。
立準備会」
(横浜市、98年)が設立され、さら
04年7月には、札幌市で第1回「NPOバンクフ
に、2000年代に入ってからは、
「北海道NPOバ
ォーラム」が開かれ(注)26、同年12月には、横浜
ンク」(北海道、02年)、「NPO夢バンク」(長
市で「社会的事業のための金融システムを考
(注)
21.市民バンク・WWBジャパン[1996]P. 20参照
22.現在は、江東信用組合、および青和信用組合との提携が続いている。
「市民バンク」ホームページ(http://www.p-alt.co.jp/bank/)
参照
23.石塚[2004]参照。本節の記述は、同書の事例収集に多くを負っている。
24.なお、「ap bank」は、三人のアーチスト(櫻井和寿氏、小林武史氏、坂本龍一氏)の個人資産を原資としているという点
で、やや異色かもしれない。朝日新聞2004年4月23日付参照。
一方、「市民バンク」を立ち上げた片岡勝氏は、「さわかみ投資顧問」の澤上篤人氏と共同して、投資ファンドを別途立ち
上げている。また、同氏による起業家と支援者をマッチングさせる「地域財オークション会議」
(片岡[2002]参照)も、創
業時のリスクを考えると、融資には限界があり、エンジェル投資(起業経験を持った個人投資家による支援を伴った投資)
のほうがふさわしいとの発想に立っているようである。
25.友人同士で一緒に出資し、誰かが借り入れるときには、出資金の範囲内で互いに返済を保証しあうというものである。
26.同フォーラムの内容については、千島[2004]参照
64
信金中金月報 2005.9
える ―市民・金融機関・行政の自覚とアク
に必要になるのは、民法上の組合では組合員
ション」と題するフォーラムが開かれる(注)27な
が無限責任を負うことになるので、それを回
ど、
「市民金融」の動きは活発になってきてい
避する必要があるからである。そこで、貸金
る。実際、新潟(注)28、名古屋(注)29、釧路、岩手、
業者として登録を行った後者の事業体が、組
青森、熊本など、各地で続々と誕生しつつあ
合員である個々の出資者を対象に融資するこ
る。以下で、そのいくつかを紹介してみよう。
とになる。
「未来バンク事業組合」が設立されたのは94
ロ.「未来バンク」
年だから、すでに10年以上経つことになる。当
自分たちで資金を集めるといっても、銀行
初2千万円からスタートした出資金は、今では
免許等がなければ預金を集めることは銀行法
約1億3千万円となり、出資者は377名を数える
等で禁じられているので、いわゆる貸金業者
に至っている(注)30。出資者は全国にわたってい
として、出資金などをもとに貸し出すしかな
るが、今後大きく増やすことは考えていない
い。その場合も、NPO法人は出資を受け入れ
という。配当することは当面考えていない。
られないので、一般的には、まず民法667条に
貸金業登録をした「未来舎」による融資累
基づく組合を設立し、市民有志から出資を募
計額は、5億5,000万円を超えた。太陽光パネ
ったのち、その資金を実際の融資業務を行う
ルを購入する際の補助金に対する「つなぎ融
別の事業体に融資する形が採られてきた(図
(注)31
など、環境改善・自然エネルギーの普
資」
表3)。出資金の受け皿組織と融資組織が二重
及関連や、NGO、NPOへの貸出件数が多いが、
図表3 「未来バンク」の法的根拠
出資
未来バンク事業組合(*1)
組
合
員
出資金払戻(+配当)
出資
融資
未来舎(*2)
元本返済+利子
(*1)未来バンクは、民法667条に基づいて設立された組合(市民の集まり)です。
(*2)融資実務の部分については、別に設立した「未来舎」を通じて行います。
貸金業登録番号 都知事(1)18333
(備考)http://homepage3.nifty.com/miraibank/より転載
(注)
27.同フォーラムの内容については、石塚[2005]参照
28.新潟でも、05年3月23日、「新潟コミュニティバンク設立発起人会」が開かれ、同年7月10日、「設立総会」が開催された。
29.名古屋では、05年3月5日、フォーラムが開かれ、06年春の設立に向けて準備が進められている。
30.
「未来バンク」事業報告書および田中優理事長、奈良由貴理事への取材による。
31.太陽光パネルに対する補助金は年度末に支給される。
「つなぎ融資」は、この年度末までの立て替え資金を融資するもので
ある。
研 究
65
民間企業が借り手のこともある。
貸出額は、通常、出資金の10倍までとして
す女性や市民に優先して融資することを目指
(注)32
。
して、生まれてきたものである(図表4)
おり、1,000万円程度までのことが多い。金利
90年代に入って多発したバブル崩壊に伴う金
は年3%である。この水準は、今日では割高に
融不祥事を目の当たりにして、既存金融機関
思われるかもしれないが、まだ金利が比較的
に対して不信感を持ったことも、動機のひと
高かった94年のスタート時点から変えていな
つだったという。
いのだという。このうち、2%相当は、事業準
96年、信用組合設立を目指した第1回世話人
備金(将来の引当原資としての内部留保金)と
会を開催したが、信用組合の設立認可を得る
して積み立てている。
には時間がかかることを想定し、98年に、
連帯保証人は2名求めている。借入人は、出
資者でもあり、「仲間の信頼を失いたくない」
「WCB」を設立して貸金業登録を行い、融資
を開始した。
という気持ちが強いので、返済はきちんと続
「WCC」では、個人一口10万円以上、団体
けており、債務不履行となった事例はないと
は3口以上の出資金を募っている。現在、約420
いう(遅延は3件あるが、適正に引当を実行済
人、約60団体から、計約1億2,000万円を集め、
みである)。
「WCB」に無利子で融資を行っている。
「WCB」
の融資額の上限は、1,000万円(出資金の20倍
ハ.
「女性・市民信用組合(WCC)設立準備会」
以内)で、貸出条件は、年利2∼5%、最長5年。
「女性・市民信用組合(WCC)設立準備会」
融資累計は、67件、約3億円に達しているが、
は、横浜市における生活クラブ生協運動の中か
毎月確実に返済してもらっており、やはり貸
ら、非営利活動を目的として地域で事業を起こ
倒れは一件もない。事業の採算性と継続性が
図表4 女性・市民信用組合設立準備会の融資の仕組み
(備考)http://www.wccsj.com/より転載
(注)32.「女性・市民信用組合設立準備会」ホームページ(http://www.wccsj.com/)、向田映子代表、鵜飼敏哉事務局長への取材、
および石塚[2004]による。
66
信金中金月報 2005.9
審査の重要ポイントではあるが、互いに顔の
総会を開催するに至った(注)33。
見える関係のなかで融通しあう「助け合い」を
NPO法人である「北海道NPOバンク」自体
基点とした組合なので、借入人は、信用と信
は、出資を受けることはできないので、任意
頼を維持することに努めるからだという。
「融
団体(民法667条に基づいて設立された民法上
資を受けるということは信用を得た、与えた
の組合)としての「NPOバンク事業組合」が、
という緊張関係を生み出す」ものであり、
「仲
出資・寄付を募り、全額を「北海道NPOバン
間から信頼されたことが誇りだ」という関係
ク」に融資しているのは、他と同様である。
が生まれてくるという。
04年6月現在、約4,400万円の出資・寄付金の
融資審査委員会が審査を行うが、審査委員
45%は北海道と札幌市から拠出されており、残
自身の多くが起業家なので、現場を知ってい
りは、個人24%、NPO法人18%、企業12%の
るという強みがある。生活クラブ生協運動の
内訳になっている。
中で培われてきたネットワークも多様な情報
をもたらしてくれるという。
なお、北海道労金も、理事および審査委員
を派遣しているほか、100万円の寄付を行って
さらに、出資者も、融資先の状況報告を受
いる。寄付金としたのは、出資金として資産
けていくことで、
「自分が出資したお金が生き
に計上すると、個々の貸出債権の回収可能性
て地域を回っているんだ、というつながりを
を含め、同事業組合の財務内容を毎年度自己
実感できる」という。
査定しなければならず、実務上の負担が大き
いためである。出資金であるから、元本保証
二.行政とも協働した「北海道NPOバンク」
以上はいわば「仲間内」の金融であったが、
一方、
「北海道NPOバンク」
(図表5)は、行政
はなく、配当も支払いは当分の間予定されて
いない。
図表5 北海道NPOバンクの仕組み
や既存の地域金融機関(北海道労金)が出資
や寄付を行ったり、理事や審査委員を派遣し
たりして協力している点で、地域金融機関側
から見ると、協働の好例と言えそうである。
きっかけは、01年末に、年末の資金繰りの
ため地域金融機関に借入れを依頼したあるNPO
が断られたことだった。これを受けて、
「NPO
推進北海道会議」が北海道庁に働きかけ、02
年5月に、「NPO融資制度検討準備会」を設立
させ、02年8月に、「北海道NPOバンク」設立
(備考)http://www.npo-hokkaido.org/bank_hp/より転載
(注)
33.河西[2004]および多賀[2004a]参照
研 究
67
融資審査については、学識経験者、公認会
の特徴は、事業目的として、融資だけでなく、
計士、税理士、NPO実務家、北海道労金職員
初めから、市民起業のための人材育成事業、起
などから構成される「融資審査委員会」に委
業講座の実施や相談事業も位置づけているこ
託している。融資条件は、
「北海道NPOバンク
とである(図表6)。融資機能を整えただけで
事業組合」員(最低1万円以上の出資者)であ
は、そもそも返済能力のあるところにしか貸
ることと、事業目的に社会性があることであ
せないとの考えから、事業の立ち上げ段階か
る。融資上限額は200万円、金利は年2%、期
ら、専門家が助言していくことが必要だと考
間は1年以内で、年4回融資申込みを募集して
えていたという(注)34。さらに、様々な分野の専
いる。2会計年度の累計融資額は35団体、約
門家や地域の人たちとのネットワーク作りも
6,000万円であり、ほとんどがNPOである。金
支援していく。
額ベースでみると、保健福祉が57%と過半を
04年1月に貸金業登録を済ませた「東京CPB」
占めており、その多くは、介護保険事業者で
と、04年4月に認証されたNPO法人「コミュニ
ある。ついでNPO支援16%、環境保全11%、
ティファンド・まち未来」の事務局は一体と
社会教育11%の順となっている。
なっており、両輪となって、市民事業の立ち
上げを支援する。人材育成事業は、
「一般・基
ホ.起業支援に重点を置いた「東京コミュニ
ティパワーバンク」
礎コース」と「アドバンスコース」に分かれ
ている。前者は、
「個人の夢や想いを事業計画
「東京コミュニティパワーバンク(東京CPB)
」
として作り上げるまでの基礎知識を学ぶ連続
図表6 東京コミュニティパワーバンクとコミュニティファンド・まち未来との関係
市民自身が、地域に必要なさまざまな事業や機能を支援することで、
いきいきとした社会を、自らの手で作り出すことを目指します。
NPO法人コミュニティファンド・まち未来
相談事業
人材育成事業
(講座、セミナー) (個別相談)
東京コミュニティパワーバンク
助成事業
(草の根市民基金)
事業開始のための基礎知識、事
業の振り返り、さらに専門知識
の取得など、継続した市民事業
の支援を行います。
社会に必要な活
動への助成を公
開の場で行いま
す。
会員
寄付
情報
仲間
助成
融資事業
(市民事業への融資)
市民審査委員会で審査を行い、開かれた形での
公平な融資を行います。
市民のお金を有効に活用することで、自分たち
の住んでいる“まち”を自分たちの力でよりよ
くしています。
出資(会員)
融資(会員)
市民、市民団体、NPO団体、ワーカーズ・コレクティブなど
(備考)http://www.h7.dion.ne.jp/~fund/com.fund.htmlより転載
(注)
34.
「東京コミュニティパワーバンク」事務局の奥田裕之氏への取材、および石塚[2004]による。
68
信金中金月報 2005.9
助言
講座」で、マーケティングの基礎や財務諸表
関としては、
「市民金融」
の動きに対してどのよ
の見方などに加え、論理的思考、コミュニケ
うに対応していったらよいのか考えてみたい。
ーション手法なども学習し、自分で事業計画
「市民金融」が広がってきた背景には、第1
書を作成できるようにすることを目指す。後
に、既存金融機関の多くがNPO・コミュニテ
者は、すでに事業を立ち上げたか、ほぼ事業
ィビジネスへの融資にこれまで必ずしも積極
計画が出来上がっている起業者を対象に、実
的とは言えなかったという事実と、第2に、自
際の事業運営能力をつけていくことを目標に
分たちの資金を目に見える形で地域に還元さ
している。
せたいという出資者たちの動機の高まりがあ
このほか、
「コミュニティファンド・まち未
来」は、
「生活クラブ生協・東京」が93年に立
る。地域金融機関としては、このそれぞれに
ついて、対応を考える必要があるだろう。
ち上げた「草の根市民基金」の運営も行って
まず第1の点についていえば、これまで多く
おり、市民からの寄付を基にしたこの基金か
の地域金融機関が必ずしも積極的でなかった
らの助成事業も行う。
のは、①NPO・コミュニティビジネスの新し
「東京CPB」の融資に当たっては、社会性な
い担い手が台頭してきていることへの認識が
どを重視して、公開審査により決定する。こ
不足していたこと、および、②彼らを支援し
れは、審査手続きの透明性を高めると同時に、
ていくことの意義がはっきりしないでいたこ
借入希望者に対する教育効果も考えたものだ
とが、原因として挙げられよう。
という。融資額は、出資金の10倍までで、1,000
したがって、NPO・コミュニティビジネス
万円を上限としており、金利は、年1.5%から
が台頭してきていることへの理解を深めそれ
2.5%以上となっている。
らを支援していくことが、将来的には、自ら
の新しい貸出基盤の拡大につながっていくと
(2)「市民金融」との協働の可能性
イ.
「市民金融」が広がってきた背景とそれへ
同時に、拙稿「地域貢献としてのNPO・コミ
ュニティビジネス支援―創業支援における新
の対応
(注)35
で検討したように、地
たな対象として―」
以上のような自発的な動きが市民の間に広
域貢献における重要施策にもなりえるとの認
がってきていることは、今後NPOなどの活動
が社会に広がっていくことを後押していくと
識が必要となろう。
しかし、そうした認識に立ったとしても、実
いう意味で、望ましいことだろう。とはいえ、
際に取組みを進めていく上では、③創業支援
こうした「市民金融」の台頭は、ある意味で既
の際に必要となる経営指導などのコストや、④
存の金融機関に対するアンチテーゼの提出と
創業融資において、事業経験に乏しいゆえに
言えなくもない。そこで、最後に、地域金融機
相対的に高くならざるを得ないリスクをどの
(注)
35.澤山[2005c]参照
研 究
69
ように負担していくかといったことが、大き
を注視したいという預金者は、今後次第に増
な障害となりそうだ。この両者に対して、一
えていくだろう。
般の貸出金利にこれらのコストやリスク相当
そうした潮流に応えていくには、ここでも
分を上乗せする形で解決を図ることもひとつ
協働を働きかけるということがひとつの方向
の方法ではあろうが、それでは、地域再生の
かもしれない。具体的に言えば、出資や寄付
新しい担い手として登場してきたNPO・コミ
を集めるための「NPOバンク事業組合」等が
ュニティビジネスを、地域貢献の一環として
従来別途設立してきた貸金業事業体の代わり
支援していくという姿勢にはふさわしくない
に、地域金融機関がその受け皿になることを
と受け止められるかもしれない。
申し出たらいかがだろうか。
これに対して、上記拙稿では、③の創業支
この場合、市民から出資や寄付を集める主
援に伴うコストを軽減するための行政や起業
体は、これまでどおり「市民金融」主導の
支援NPOとの協働について様々な事例を紹介
「NPOバンク事業組合」
(以下、
「NPOバンク」
してきた。ついで、本稿では、④の創業融資
という。
)であってもよいし、全国労働金庫協
リスクについても、
「大阪府コミュニティビジ
会が提唱しているような、地域金融機関が主
ネス創出支援融資制度」や「さっぽろ元気NPO
(注)36
導して立ち上げる「ソーシャルファンド」
サポートローン」の事例のように、地域金融
(以下、
「ファンド」という。
)といったもので
機関側も、行政や起業支援NPOと協働して融
もよいだろう。中央労金や奈良中央信金は、
資業務を進めていくことで、多少なりともリ
「ろうきんNPOサポーターズ」預金や、
「なら・
スクを軽減していくことが可能になることを
未来創造基金」といった基金を設立し、NPO
述べてきた。総務省が提唱した「コミュニテ
の中間支援組織などと連携して、市民等から
ィ・ファンド」の設立は、こうした動きを後
の寄付金をもとに助成金を交付してきてい
押しする行政上の支援策といえる。
る(注)37が、ここでは、NPO・コミュニティビジ
ネスに対する融資や投資を目的とした「ファ
ロ.預金の受け皿になり融資で協働するスキ
ームづくりを
ンド」を設立して、市民から預金を募るので
ある。
それでは、第2の市民自らが目に見える形で
「NPOバンク」の場合も「ファンド」の場合
自分の資金を使いたいという動機についてはど
も、集まった寄付・出資金や預金は、一括し
うだろうか。これは、SRI(=Social Responsibility
て地域金融機関に預託金として預け入れられ
Investment、社会的責任投資)の考え方とも
る。地域金融機関は、それらからの預託金を
共通するものであり、自分の預金の使われ方
担保とした保証をもとに、通常のローンとは
(注)
36.
「ソーシャルファンド預金担保融資」制度。詳細は多賀[2004a]参照
37.詳細は澤山[2005c]参照
70
信金中金月報 2005.9
切り離して、貸出を実行する形になる。資金
それも「NPOバンク」に払い戻されることに
貸借取引に伴う様々な手間は、地域金融機関
なる。
が代行することになる。
一方、地域金融機関側が、たとえば事業性
ただし、貸出先の開拓、選定、審査、融資
の評価などの面で、貸出審査を主導するので
管理、リスク分担をどう行うか、したがって、
あれば、
「NPOバンク」からの預託金は、大阪
その対価としての金利収入をどう配分するか
府の「コミュニティビジネス創出支援融資制
などについては、それぞれの関わり度合いに
度」のケースのように、損失補填に備えた一
応じて、様々なバリエーションがありえよう。
部保証の担保に充当されることになろう。こ
一般に、
「市民金融」の側では、貸出審査自
の場合は、リスク負担の度合いに応じた金利
体、自分たちでしっかりとやりたいという意
を受け取ることが妥当だろう。
向が強いし、その能力もあるという自負もあ
いずれにせよ、
「NPOバンク」は、地域金融
る。実際、金融の専門家が加わっているケー
機関が有する本来的な金融仲介機能を活用し
スも多い。その場合は、「NPOバンク」自身
つつ、自らの判断に基づき社会性のある事業
が、融資を受け付け、社会性などの観点から
に対する融資を行うことができる。一方、地
融資先を選定し、審査も実行することになる。
域金融機関としても、自らの金融仲介機能を
さらに、貸出先の管理も自ら行うケースも多
提供することによって、NPO・コミュニティ
いだろう。現状では、貸出件数自体が少ない
ビジネスに対する支援を行うことになり、地
こともあり、貸出実行後もあくまで「顔の見
域貢献を果たすとともに、新たな貸出先の開
える関係」を維持していきたいという意向が
拓を進めることができる。こうして、両者の
強いからである。さらに、審査の過程や貸出
協働が実現する。
先の経営状況なども出資者に開示することに
このようにして、
「NPOバンク」から預託金
すれば、各出資者の「参加度合い」も高まる
を受け入れたり、みずから「ファンド」を立
ことになろう。
ち上げたりすることができれば、市民の側の
こうした場合には、地域金融機関は、
「NPO
「自分たちの預金を目に見える形で社会性のあ
バンク」による保証をもとに預金担保融資を
る事業に融資したい」という意識の高まりに
実行するだけになる。もし、貸出の全額が預
応え、市民参加による新たな地域内資金循環
金担保によって保全されているのであれば、地
の仕組みが作られることになる。
域金融機関が受け取るべき金利は、当然、通
地域金融機関にとってのもうひとつの利点
常の預金担保融資と同じであるから低利にな
は、創業時の相対的に高い融資リスクを軽減
る。融資リスク分に対応する金利部分は、
できるという点にある。すでに述べたとおり、
「NPOバンク」側に払い戻すことになろう。ま
た、借入人から保証料を徴求するのであれば、
既存の金融機関としては、創業時の資金需要
に対しては、NPO・コミュニティビジネスに
研 究
71
限らず、リスクの高さからなかなか応えられ
ず、第三者保証も求めるなど、保証人の数も
おわりに
多くせざるを得ないのが一般的である。これ
以上、本稿では、NPO・コミュニティビジ
は、経営の健全性を求められる金融機関とし
ネスを対象とした創業融資をどのように進め
ては、貸出に当たって回収可能性を厳格に判
たらよいのかを論じてきた。その際、行政と
断せざるを得ないからであり、やむを得ない
の協働が、リスクのシェアを通じた軽減を可
一面でもある。
能にすることを示し、
「市民金融」との協働も
そのリスク軽減策のひとつが、すでに述べ
たような行政とのタイアップによるリスク・
シェアであった。そして、もうひとつが、こ
そのひとつの可能性として考えられることを
述べてきた。
中央労金が実施したNPO法人の「立ち上げ
の「市民金融」との協働による「NPOバンク」
、
(注)38
によれば、
資金のニーズ調査」(03年12月)
あるいは自ら立ち上げた「ファンド」からの
理事個人からの借入れによるケースが3割を超
預託金をもとにした担保付融資ということに
えており、一回当たり平均267万円、3年間の
なろう。この結果、創業時の資金需要へのよ
累計平均499万円と、かなりの個人負担になっ
り柔軟な対応が可能になると思われる。
ている。現状では金融機関からの借入れは13%
なお、金融機関側のリスクテイク意欲や能
力が高まってくれば、
「NPOバンク」自体に融
資したり、
「NPOバンク」との協調融資を進め
たりするなどの可能性も出てこよう。
にとどまっているが、今後融資を受けたいと
の希望は68%に達しているという。
今日、地域活性化の鍵を握るもののひとつ
として、NPO・コミュニティビジネスに対す
また、これまでに、NPO・コミュニティビ
る地域の期待は、ますます高まっている。彼
ジネスが「私募債」を発行して資金調達して
らの志は高く、事業意欲も強いが、事業経験
きた例が見られるが、その際、「NPOバンク」
に乏しい者が多いとすれば、今後は、行政や
や「ファンド」からの預金を担保として、金
「市民金融」と協働していていきながら、地域
融機関が債務保証をすることも考えられる。
金融機関自らも、本稿で述べたような様々な
NPO・コミュニティビジネスを支援したい市
スキームを編み出し、彼らの創業時資金需要
民としては、償還確実性が高まるので、
「私募
にも応えていくことが求められているのでは
債」の購入希望を高めることが期待される。
ないだろうか。
(注)
38.NPO中間支援組織の推薦などにより、中央労金管内1都6県の財政規模年間500万円以上の99NPO法人を選定したもので、回
収率は53.5%である。
72
信金中金月報 2005.9
〈参考文献〉
石塚貢子「広がる市民金融の波」
『たあとる通信』16号、アリスセンター(2004)
石塚貢子「ろうきん・NPO共同フォーラム 社会的事業のための金融システムを考える ―市民・金融機関・行政の自
覚とアクション」報告書、アリスセンター(2005)
河西邦人「NPOの現状と金融機関に期待するもの」『信用組合』2004年11月号、全国信用組合中央協会(2004)
片岡勝『儲けはあとからついてくる―片岡勝のコミュニティビジネス入門』日本経済新聞社(2002)
岐阜信用金庫「当金庫の創業支援・経営改善支援業務」
『信用金庫』2004年5月号、全国信用金庫協会(2004)
近畿労働金庫『Rokin Report Disclosure 2004』(2004)
澤山弘「拡大著しいNPO法人の現況―地域の問題解決図る新しい担い手層の成長―」『産業企業レポート16-10』(『信金
中金月報』2005年5月号)
(2005a)
澤山弘「NPO・コミュニティビジネスと地域金融」『地域金融と企業の再生』
(共著、中央経済社)第9章(2005b)
澤山弘「地域貢献としてのNPO・コミュニティビジネス支援―創業支援における新たな対象として―」
『産業企業レポー
ト17-1』信金中金総合研究所(2005c)
しずおか信用金庫「当金庫ビジネスサポートセンターにおける創業および新事業展開等の支援業務について」
『信用金庫』
2004年9月号、全国信用金庫協会(2004)
市民バンク・WWBジャパン『夢を育てる市民バンク 応援します起業家精神―コミュニティバンクの挑戦』アドア出版
(1996)
市民ベンチャー研究会『お金貸します 市民ベンチャーを応援する、市民バンクとは』ゴマ書房(1999)
総務省「地域再生支援プラン」経済財政諮問会議提出資料、平成15年11月26日(2003)
多賀俊二「特集・NPO施策と労働金庫」『RESEARCH』第15号、労働金庫研究所(2004a)
多賀俊二「金融機関のNPO施策に関する動向」『たあとる通信』16号、アリスセンター(2004b)
千島美江子「―市民が作る『銀行』―『第1回 NPOバンクフォーラム』∼ボランタリー・ファイナンスの可能性∼開催さ
れる』」『信用金庫』2004年10月号、全国信用金庫協会(2004)
藤井良広「お金の行き先自分で決める 市民銀行が金融を変える」日本経済新聞2004年8月23日付(2004a)
藤井良広「
『市民銀行』へのニーズと信用金庫の役割 ―コミュニティビジネスと信用金庫〈最終回〉
」
『信用金庫』2004
年12月号、全国信用金庫協会(2004b)
藤井良広「金融を手作りする」日本経済新聞夕刊連載、2005年4月16∼30日(2005)
法橋聡「『大阪府コミュニティビジネス創出支援制度』の取り扱いについて」『たあとる通信』16号、アリスセンター
(2004)
細内信孝『コミュニティ・ビジネス』中央大学出版部(1999)
町田洋次『社会企業家―
「よい社会」をつくる人たち』PHP研究所(2000)
研 究
73
調 査
今後の人民元改革のシナリオと日本経済・産業界への影響
−年内にも人民元は再切上げ、産業界は対中戦略の見直しが課題に−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
黒岩 達也
(キーワード)人民元改革、通貨バスケット、購買力平価、対中戦略、対中証券投資
(要 旨)
1.人民元改革の評価と見通し―年内にも再切上げの可能性
7月21日、中国政府は人民元改革に踏み切った。人民元の対ドル相場は約2%切り上げられ、
同時に、事実上の対ドル固定相場制は放棄された。人民元相場は、通貨バスケットの動きと市
場の需給動向によって決定されることになったが、これまでのところ、人民元相場は極めて狭
いレンジでの取引が続いており、通貨バスケットの動きをほとんど反映していない。新制度の
下でも、人民銀行はドル買い介入によって人民元相場の安定を図っており、人民元改革による
経済的効果は皆無に等しいとみられる。
2.人民元高が日本経済・産業界に与える影響―人民元高を前提とした対中戦略を
人民元が年内に合計5∼7%程度切り上げられた場合でも、日本のマクロ経済へ与える影響は
さほど大きなものにはならない。また、米国の貿易赤字の削減にもほとんど寄与しないとみら
れる。
ただ、個別産業には様々なかたちで影響を及ぼす。最も恩恵を受けるのは輸出企業であり、
すべての業種において輸出拡大効果が期待される。中国進出企業では、海外からの調達比率が
高く、かつ輸出比率も高い鉄鋼、非鉄金属などに大きなメリットがある。一方、中国から日用
雑貨・衣料品などを輸入する企業にとってはマイナス面が大きい。
日本企業は、中長期的に人民元高基調が続くことを前提として、対中戦略を描いていく必要
がある。とりわけ、中国進出企業は中国を従来の生産・輸出基地としてきた方針を転換し、現
地生産・現地販売を主体とすべきである。輸入企業は、高付加価値製品の取扱いを拡大すると
ともに、中国リスクを分散させるため、他のアジア諸国からの調達を徐々に増やしていく必要
がある。
3.人民元切上げと資産運用―中国株への理解を深めることが第一歩
今後も、人民元高基調が継続し、中国経済が比較的高い成長を遂げるとすれば、対中証券投
資には妙味がある。外貨建ての中国株投資や中国株に集中投資する投資信託が投資対象になる
が、投資を実行する際には中国証券市場の現状や中国株の特徴をよく理解するとともに、株式
相場を大きく左右する政策動向にも注意する必要がある。
(注)本稿は2005年8月3日現在のデータに基づき記述されている。
74
信金中金月報 2005.9
きる余地を残している。
1.人民元改革の評価と見通し
(1)見えない対ドル固定相場制との違い
7月21日夕刻、中国人民銀行(中央銀行)は
人民元改革に踏み切った。人民元の対ドル相
場は1米ドル=8.2765元から8.11元へ約2%切り
実際、7月22日以降の9営業日の動きをみる
と、人民元の対ドル相場の変動幅(終値ベー
ス)は1日当たり平均0.02%と許容幅0.3%の15
分の1にとどまっている(図表2)
。
一方、当研究所の試算によると、この1年間、
上げられ、同時に、事実上の対ドル固定相場
ドル、円、ユーロなど主要7通貨で構成される
制は放棄された。
通貨バスケットの1日当たり変動幅は平均0.15%
今後、人民元の対ドルレートは、通貨バス
と許容幅の半分程度に達している(図表3)。
ケットを参考とする管理フロート制(人民銀
人民銀行が参考とする通貨バスケットの中身
行が公表する中心相場を基準に日々上下0.3%
がどのようなものかは明確に公表されておら
の範囲内での変動を許容)の下、より柔軟に
ず、あくまでも推測の域をでないが、いまの
変動することになった。
ところ、人民銀行が通貨バスケットの動きを
しかし、人民銀行は「実際の変動幅は、米
そのままトレースしようと試みている様子は
ドル、ユーロ、円などの主要通貨で構成され
ない。わずかに、通貨バスケットが参考にさ
る通貨バスケットの動きと市場の需給動向に
れていると思われるのは、前日に比べて元高・
よって決定される」としている(図表1)。つ
元安のどちらに動くか、という方向感だけで
まり、通貨バスケットはあくまでも参考指標
ある。
であり、人民銀行が恣意的にコントロールで
もっとも、人民元が通貨バスケット・ペッ
図表1 中国人民銀行による人民元改革に関する声明
(1)中国は2005年7月21日以降、市場の需給を基礎とし、通貨バスケット制を参考に調整される管理された変動為替
相場制度を実施する。人民元は今後、米ドル単一通貨へのペッグ制を取らず、より弾力性に富む人民元為替レー
ト決定システムを形成する。
(2)中国人民銀行は各営業日の市場取引終了後、当日の銀行間外国為替市場における米ドルなど各通貨の対人民元為
替レートの終値を発表し、翌営業日の対人民元の取引の中心相場とする。
(3)2005年7月21日午後7時、米ドルの対人民元為替レートを1ドル=8.11元とし、翌日の銀行間外国為替市場におけ
る外貨取扱指定銀行による取引の中心相場とし、外貨取扱指定銀行は、この時より顧客に公表する為替レートを
調整する。
(4)現段階において、毎日の銀行間外国為替市場における米ドルの対人民元の取引価格の変動幅は、引き続き中国人
民銀行が発表する米ドルの取引の中心相場の上下0.3%以内とする。米ドル以外の通貨の対人民元為替レートの
変動幅は、中国人民銀行が発表する同通貨の取引の中心相場に対する規定の比率内とする。
中国人民銀行は今後、市場の育成状況や経済・金融情勢に合わせ、レート変動幅を適時に調整する。同時に、中国
人民銀行は国内外の経済・金融情勢に合わせて、市場の需給を基礎に、通貨バスケットの為替レートの変動を参考に、
人民元為替レートに対する管理と調整を行い、人民元為替レートの正常な変動を守り、人民元為替レートの合理的か
つバランスの取れた水準での基本的な安定を守り、国際収支の基本的な均衡を促進し、マクロ経済と金融市場の安定
を守っていく。
(備考)『中国人民銀行公告(2005)第16号』により作成
調
査
75
グ制へ完全に移行したとしても、1営
業日の対ドル相場が値幅上限の0.3%
まで上昇し、それが10営業日続いて
合計3%切り上がるような事態はほと
図表2 人民元の対ドル相場の動き
(元/ドル)
8.1140
8.1120
終値
8.1100
8.1080
んど起こり得ない。そのような事態
元の安値
始値
始値
終値
8.1060
が発生するとすれば、ドルが円やユ
8.1040
ーロなど主要通貨に対して独歩安で
8.1020
8.1000
推移する場合だけである。同様に、
急激な人民元安という事態も起こり
にくいわけである。
実際、図表3の通貨バスケットの
7/22
7/24
7/26
7/28
7/30
8/1
8/3
(時期)
(備考)ブルームバーグにより作成
図表3 人民元の通貨バスケット(主要7通貨を採用
した場合)の事例
(2004.7.21=100)
例でも、1日の変動幅が0.3%を超え
たのは260営業日のうち37営業日しか
なく、この結果、通貨バスケットは
最大4.6%の上昇、0.4%の下落と比較
的狭いレンジでの推移となっている。
新制度の下でも、人民元相場は人
民銀行によって厳しく管理されてお
り、対ドル固定相場制との違いはみ
えてこないのが現状だ。人民銀行は、
変動レンジの極めて狭い相場を維持
するために、引き続き巨額なドル買
104.6
105
104
103
102
101
100
99 99.6
102.8
通貨バスケット(貿易ウエイト基準)
(元/ドル)
7.8
7.9
8.0
8.1
8.2
8.3
8.4
04/7
人民元を通貨バスケットに完全
に連動させた場合の対ドル相場
8.0529
8.1051
実際の人民元対ドル相場
04/10
05/1
05/4
05/7 (年/月)
(備考)1.通貨バスケット=exp[Σ通貨の構成比×ln(構成通貨の指数)]
( 2.構成通貨はユーロ圏(30.8%)、米国(29.5%)、日本(29.2%)、
( オーストラリア(3.5%)、英国(3.4%)、カナダ(2.7%)、スイス
( (0.9%)の各通貨(カッコ内は04年の中国の輸出入総額から算出
( した通貨構成比)
( 3.信金中金総合研究所試算
い介入を続けている可能性が強い。
(2)中長期的な人民元高は避けられない
今回の人民元改革は、米国などへの政治的
今回、人民元切上げが2%にとどまったこと
メッセージとしては、賞味期限付きながら、一
を受けて、市場では第2弾の切上げがあるとの
定の成果を挙げたと言えよう。しかし、巨額
期待が強まった。香港の人民元先物相場(NDF)
な為替介入を継続し、外貨準備を不必要に積
は、人民元切上げ後の7月25日、1米ドル=7.735
み上げ、国内の過剰流動性を増やし続けるな
元の史上最高値まで上昇した。
らば、経済的な成果は皆無に等しいと言わざ
るを得ないであろう。
人民銀行は7月26日、市場での過度な期待を
鎮静化させるため、異例の声明を発表した。具
体的には、
「2%の切上げは第一歩ではなく、今
後さらなる調整があることを意味しない」
、
「今
76
信金中金月報 2005.9
回の切上げ幅はわが国の貿易黒字と構造調整
きを軽視するわけにはいくまい。7月29日、ス
の必要性、ならびに国内企業の受容能力、構
ノー米財務長官は人民元の動きについて、
「市
造調整の適応能力を考慮した結果である」と
場実勢に合わせて相場の変動幅を拡大しない
いうものだ。
なら問題だ」、「私は継続的な努力を期待して
この声明発表により、市場では当面、人民
いる。為替相場の柔軟性を増すことが重要だ」
元の再切上げが遠のいたとの見方が優勢とな
と述べ、人民元の変動幅をさらに拡大するよ
り、足元ではNDFも落ち着いた動きとなって
う要請した。さらに、8月2日、訪中したゼーリ
いる。
ック米国務副長官は、
「人々は明らかにそれに
しかし、中国が引き続き実質的な対ドル固
続くプロセスを期待している」との表現で、人
定相場制を堅持しようとすれば、米国の産業
民元高への誘導を期待する旨の発言をしている。
界や議会の中国に対する不満は、改革への失
米国政府としては、対中制裁法案の成立・
望感もあり、むしろ人民元改革前よりも激し
発動という事態を極力回避したいと考えてい
さを増す可能性がある。
るとみられるが、中国政府の対応次第では米
7月27日、米下院は対中制裁法案を賛成多数
で可決した(図表4)。夏休み明けには、上院
でも、同様な法案が可決される可能性が高く、
中貿易摩擦が泥沼化する最悪のシナリオもあ
り得る。
人民銀行が指摘するように、大幅な人民元
年末にかけて、米国議会による対中圧力は着
高は中国の産業界へ打撃を与える懸念がある
実に高まってくることが予想される。
のも事実である。実際、中国の工業企業の収
ブッシュ政権としても、こうした議会の動
益は悪化傾向にある。05年1∼6月の工業企業
図表4 人民元切上げをめぐる日米欧の反応
日 付
05/7/21
05/7/21
05/7/21
05/7/21
05/7/22
05/7/27
05/7/29
05/7/29
05/8/2
発 言 内 容
グリーンスパンFRB議長、中国の人民元切上げについて「一段の通貨調整に向けた重要な第一歩だ」
と歓迎の意向を表明
ドイツのアイヒェル財務相、「決定を歓迎する。中国の為替柔軟化が独経済にも恩恵を及ぼすだろう」
と発言
(人民元関連の対中制裁法案を出している)イングリッシュ下院議員は、「改革に向けた第一歩にすぎ
ない」と述べ、米中小製造業界などが求める切上げ幅に比べて小さすぎることに強い不満を表明
全米製造業者協会(NAM)のイングラー理事長、「新しい為替制度がうまく機能するのかを見極める
必要がある」と指摘
谷垣禎一財務相、「速やかで柔軟な為替制度への移行を評価する。2%切上げは初期値であり、まだス
タート時点。関心をもってみていきたい」と発言
米下院、対中制裁法案を255対168の賛成多数で可決。中国製の安価な輸入品に相殺関税を課すととも
に、人民元制度の改革が機能するかどうかを監視する条項を盛り込む。人民元の小幅切上げに対する
議会の不満を裏付け
スノー米財務長官、「市場実勢に合わせて相場の変動幅を拡大しないなら問題だ」、「私は継続的な努
力を期待している。為替相場の柔軟性を増すことが重要だ」と述べ、人民元の変動幅をさらに拡大す
るよう要請
米大統領経済諮問委員会(CEA)のバーナンキ委員長、
「中国の次の動きを注視している」と発言
ゼーリック国務副長官、「人々は明らかにそれに続くプロセスを期待している」との表現で、一段の
人民元高に期待を表明
(備考)新聞報道等により作成
調
査
77
の利潤総額(税引後利益)は6,266億元、前年
図表5 中国の工業企業の収益状況
同期比19.1%増となった(図表5)。ただ、業
(億元)
12,000
種別にみると、繊維、自動車、建材などが大
幅減益となり、石油化学は赤字転落している。
これは、原油価格の高騰などから生産コスト
が上昇している反面、内外市場における競争
激化によって、コスト上昇分を価格転嫁でき
ないでいるためだ。とりわけ、競争力に乏し
い国有企業にとっては厳しい状況が続いてい
る。同期の赤字企業の赤字総額は1,075億元、
10,000
利潤総額(左目盛)
赤字企業の赤字総額(左目盛)
利潤総額(前年比:右目盛)
赤字総額(前年比:右目盛)
(%)
120.0
100.0
8,000
80.0
6,000
60.0
4,000
40.0
2,000
20.0
0
0.0
-2,000
-20.0
-4,000
-40.0
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
(年)
.1-6
(備考)1.工業企業はすべての国有企業と売上高500万元以上
( の非国有企業
( 2.国家統計局資料により作成
同59.3%増となったが、そのうち、国有企業の
層推進して産業競争力を高め、活力ある民営
赤字額は543億元、同84.4%増と全体の50.5%
企業の発展に力を貸すと同時に、貧困に苦し
を占めた。このほか、米国産の安価な穀物が
む農家には所得の直接補償を増やし、現在、農
中国市場へ流入することによって、中西部の
村地域ではほとんど普及していない社会保障
貧困農民の生活に追い討ちをかける懸念もあ
制度を充実させ、地方政府による横暴な農地
る。確かに、中国国内の状況だけをみれば、こ
収用といった行為を止めさせることである。
れ以上の人民元高は回避したいところである。
いまの人民元の対ドル相場は明らかに過小
しかし、中国はすでに世界第7位の経済大国
評価されている。米中の消費者物価で算出し
であり、国際的な責務を果たすことを求めら
た購買力平価は1米ドル=7元程度、生産者物価
れている。国際的な責務とは、つまり経済的
では1米ドル=5元程度の水準にある(図表6)
。
な痛みを分け合うことである。いつ
までも中国の1人勝ちが許されるほ
図表6 人民元の対ドル相場と購買力平価
(元/ドル)
0
ど、いまの世界経済に余裕はない。
1
中国経済にとっても、人民元高は
2
悪いことばかりではない。輸入製品
4
の価格低下は国内の購買力拡大に寄
与するほか、人民元高というプレッ
シャーが中国の産業構造の高度化を
促すことも考えられる。
いま、中国政府がやるべきことは
人民元相場を安易に維持することで
はなく、国有企業の民営化をより一
78
信金中金月報 2005.9
1.8195
2.1511
2.2991
3
5
6
7
8
9
10
5.1409
国連ICP
GDPデフレーター
単位労働コスト
PPI
CPI
人民元対ドル相場
6.9962
8.1100
52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04(年)
(備考)1.国連ICP=国際比較プログラムは各国通貨の購買力の国際比較統計
( を作成しており、数値は同組織が作成したGDPベースの購買力平価
( 2.PPI(生産者物価)は1984年基準、GDPデフレーター、CPI(消費
( 者物価)、単位労働コストは1952年基準
( 3.国連、中国国家統計局、米国労働省資料などにより信金中金総合
( 研究所推計
人民元改革は始まったばかりであり、その
歩みを止めることは中国にとってマイナスが
大きい。さらなる改革を通じて、中長期的に
図表7 人民元、香港ドルの対ドル相場と
人民元先物相場の動向
(元・香港ドル/米ドル)
香港ドル対ドル相場
7.70
香
港
ド
ル
目
標
相
場
圏
7.80
は人民元相場を購買力平価の水準に収斂させ
ていくべきである。
7.90
8.00
NDF
8.10
人民元対ドル相場
(3)年内にも再切上げの可能性
米国政府は、中国政府に対して「米国産業
界を納得させるためには少なくとも10%の切
上げが必要」との意思を伝えているとされる。
8.20
8.30
05/01 05/02 05/03 05/04 05/05 05/06 05/07 05/08
(年/月)
(備考)1.NDF(Non Deliverable Forward)は人民元対米ドル
( 差額決済型フォワードレート(香港オフショア市場の
( 1年物)
( 2.ブルームバーグにより作成
無論、中国政府が米国の言いなりに動くこと
ただ、年末に向けて米国からのプレッシャ
はあり得ないだろう。しかし、市場がさらな
ーが高まるにつれ、中国本土経済と一体化し
る人民元改革を促すというシナリオがないわ
つつある香港に巨額な投機資金が流入し、香
けではない。
港ドル高圧力が急速に高まるリスクは大きい
現在、中国政府は厳しい外貨管理を続けて
ものと予想される。人民元改革が将来的にも
おり、人民元相場に切上げプレッシャーをか
継続されるのであれば、香港ドルも最終的に
けることは難しい。そこで、カギを握るのが
はフロート制への移行を余儀なくされよう。
香港ドルである。
その第一歩は、人民元と香港ドルの対ドル
従来、香港ドルは1米ドル=7.8香港ドルでほ
相場を統一し、共通の通貨バスケットにペッ
ぼ固定されていたが、05年5月18日以降は1米
グする体制へ移行することである。その段階
ドル=7.75∼7.85香港ドルの目標相場圏(ター
で、人民元の対ドル相場は、香港ドルの対ド
ゲット・ゾーン)内での変動が許容されてい
ル相場へ収斂するために、3∼5%程度の再切
る(図表7)。
上げが実施されることになる。
この制度変更は、明らかに人民元改革の準
前述のように、現在の制度下では急激な元
備の一環として実施されたものである。予め
高も元安もほとんど想定できない。人民銀行
香港ドル相場にも柔軟性を持たせることによ
が通貨バスケットの動きを無視して意図的に
り、香港ドルも人民元同様、硬直的なドル・
人民元高へ誘導する場合を除けば、短期間に
ペッグ制から柔軟な相場に移行したことを印
人民元高を演出するには再切上げしか手立て
象付ける狙いがあったものとみられる。いま
がない。
のところ、その狙いは成功しており、香港ド
中国政府は、2%切上げによる経済への悪影
ル相場は、若干、香港ドル高に動いているに
響が軽微であることを確認した後、早ければ
すぎない。
年内にも第2弾の切上げを実行に移す可能性が
調
査
79
高い。その後は、通貨バスケットとの連動性
でなく、有力な市場として重視し、それに伴
を強めることにより、人民元相場の変動幅を
う日中間の貿易は年々拡大の一途をたどって
拡大していくことになろう。
おり、その流れは若干の人民元高で変わるも
のではない。
2.人民元高が日本経済・産業界に与
える影響
(1)再切上げでも日本のマクロ経済に与える
図表8は、05年5月、アジア開発銀行(ADB)
が人民元切上げによる主要国への影響を試算
した結果である。シナリオ1は05年半ばに人民
影響は軽微
元の対ドル相場が10%切り上げられた場合、シ
人民元の対ドル相場が年内に合計5∼7%程
ナリオ2は20%切り上げられた場合を想定し、
度切り上げられたとしても、日本のマクロ経
切上げがなかった場合に比べて各国経済にど
済へ与える影響はさほど大きなものにはなら
のような影響をもたらすかをみている。
ないと予想される。
シナリオ1の場合、中国の実質GDP成長率は
元来、日中経済は相互補完関係にあり、競
05年0.3%、06年1.9%押し下げられる、とされ
合分野が少ない。しかも、日中間の製品価格
る。05年1∼6月の中国の実質GDP成長率は9.5%
差は、中国の人件費の安さもあり、10%前後
に達し、7∼8%と言われる潜在成長率からみ
の切上げでは到底埋まらないものである。加
ると、依然として過熱感が強い。こうした状
えて、日本企業は中国を生産拠点としてだけ
況からすれば、10%程度の切上げはむしろ中
図表8 人民元切上げによる中国・日本・米国経済への影響
GDP
投資
消費
インフレ率
単 位
%
%
%
%
(シナリオ1)2005年半ばに人民元が対米ドルで10%切り上げられた場合
中国
2005
△ 0.3
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.2
2006
△ 1.9
△ 1.7
△ 0.5
△ 1.2
日本
2005
0.0
0.0
0.0
0.0
2006
0.0
0.0
0.0
0.0
米国
2005
0.0
0.0
0.0
0.0
2006
0.0
0.0
0.0
0.0
(シナリオ2)2005年半ばに人民元が対米ドルで20%切り上げられた場合
中国
2005
△ 0.6
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
2006
△ 3.9
△ 3.5
△ 1.0
△ 2.4
日本
2005
0.0
0.0
0.0
0.0
2006
0.1
0.1
0.0
0.0
米国
2005
0.0
0.0
0.0
0.0
2006
0.1
0.0
0.0
0.1
貿易収支
億ドル
経常収支
対GDP比、%
△ 35.7
△ 149.7
△ 0.3
△ 0.8
0.96
5.0
0.0
0.0
2.2
36.2
0.0
0.0
△ 75.8
△ 317.9
△ 0.6
△ 1.7
2.2
12.0
0.0
0.1
5.1
78.7
0.0
0.1
(備考)1.数値は人民元切上げがなかった場合(ベースシナリオ)に比べてどの程度の変化がもたらされるかを推
( 計したもの
( 2.Cyn-Young Park『Coping with Global Imbalances and Asian Currencies』ADB(2005年5月)により作成
80
信金中金月報 2005.9
国経済のソフトランディングに貢献
するとみられる。
図表9 日本の輸出企業の輸出採算レート
(円/元)
14.0
05年7月21日の人民元対円相場水準(1元=13.6円)
日本や米国のマクロ経済に与える
13.5
13.0
04年度末:1元=12.9円
影響はほとんどない。GDP成長率や
12.5
12.3 12.4
12.2 12.3
物価への影響はゼロと推計されてい
12.0
る。06年の効果をみても、日本の貿
11.5
易黒字は5億ドルの増加、米国の貿易
11.0
赤字も36億ドルしか改善しない。加
えて、ADBは「米国の対中輸入が減
っても、その分、他のアジア諸国か
らの輸入が増えて相殺される可能性
12.6 12.6 12.6
13.6
13.1 13.1
13.0 13.0
12.9 13.0
12.8 12.9
12.8
12.7
11.8
10.5
非 食 商 石 化 そ ゴ 電
鉄 料 業 油 学 の ム 気
金 品
・
他 製 機
属
石
製 品 器
炭
品
製
品
繊 機 建 医 ガ
維 械 設 薬 ラ
製
業 品 ス
品
・
土
石
製
品
輸 鉄 パ 精 金 海
送 鋼 ル 密 属 運
用
プ 機 製 業
機
・ 器 品
器
紙
(備考)1.輸出採算対ドルレートを対元レートに換算(1ドル=8.11元で計算)
( 2.内閣府『平成16年度企業行動に関するアンケート調査』により作成
がある」と指摘している。
シナリオ2の場合は、中国経済への悪影響が
大きい。06年の中国の実質GDP成長率は3.9%
ながら、個別の産業界に与える影響はプラス
もマイナスもある。
押し下げられることになり、貿易黒字も318億
最も恩恵を享受できるのは、対中輸出のウ
ドル減少することになる一方、米国の貿易赤
エイトが大きい企業群である。図表9は、日本
字は79億ドル削減されることになる。この場
の輸出企業の輸出採算レート(対ドルレート)
合でも、日米のマクロ経済にはさほど大きな
を対人民元レートに換算して示したものであ
インパクトを与えないと予想されているが、人
る。人民元切上げ当日の7月21日の為替レート
民元の比較的大幅な切上げで中国経済が減速
(1元=13.6円)を基準にすれば、ほとんどの輸
すれば、世界経済へのマイナス効果は予想外
出企業で利益がでる水準にある。業種別には、
に大きくなることも考えられる。
非鉄金属、食料品、商業、石油・石炭製品、化
ADBの試算結果からみても、当面の人民元
学などの収益性が高い。また、切上げ前には
切上げ幅は10%以下にとどめるのが妥当であろ
採算ライン上にあった輸送機器、鉄鋼、紙パ、
う。その後は、前述のとおり、通貨バスケット
精密機器などでは、今後、人民元高基調が定
との連動性を高めることにより、人民元相場を
着すれば、中国への製品輸出を一段と拡大す
より柔軟に変動させることが重要になってくる。
る余地が生まれてくる。さらに、中国進出企
業などが日本からの原材料・部品の調達を増
(2)輸出企業、中国進出企業には好影響も、
輸入企業はやはり厳しい
やす動きも期待される。
中国進出企業への影響は、形態別にみて、大
人民元切上げが日本のマクロ経済へ与える
きく4つに分けて考えることができる。図表10
影響は軽微にとどまるとしても、当然のこと
は、95年度と03年度の2時点において、現地販
調
査
81
図表10 中国進出企業の形態別為替リスク
(1)2003年度時点
(2)1995年度時点
(%)
(%)
現地調達型内販業種:△
100
海外調達型内販業種:○
建設業
木材紙パ 食料品
90
現地調達型内販業種:△
100
海外調達型内販業種:○
建設業
木材紙パ
90
鉄鋼
鉄鋼
輸送機器
石油石炭
80
80
非鉄金属
輸送機器
非鉄金属
食料品
化学
70
70
現 60
地
販
売 50
比
率 40
情報通信・運輸 その他製造
電気機械
商業
情報通信機器
繊維
30
石油石炭
商業
農業
製造業全体
電気機械
30
精密機械
20
化学
現 60
地
販
売 50
比
率 40
サービス業
製造業全体
農業
サービス業
その他製造
20
一般機械
10
一般機械 繊維
10
現地調達型輸出業種:×
海外調達型輸出業種:△
鉱業
0
現地調達型輸出業種:×
精密機械
海外調達型輸出業種:△
0
0
10
20
30
40
50
60
海外調達比率
70
80
90 100
(%)
0
10
20
30
40
50
60
海外調達比率
70
80
90 100
(%)
(備考)1.○はプラス、△はややマイナス、×はマイナス
( 2.経済産業省『我が国企業の海外事業活動』第26回、第33回により作成
売比率と海外調達比率を判断基準として、産
がこれに該当する。ただ、今後の人民元の動
業別の影響をみたものである。
向次第では、海外製品との競争が激化する可
人民元高がプラスに作用するのは、海外か
らの原材料・部品などの調達比率が高く、中
能性もある。
人民元高がマイナスに作用しそうな産業は、
国で製造した製品を主に中国市場で販売して
原材料や部品を現地調達して、製品の主たる
いる「海外調達型内販業種」である。03年度
販売先が海外にある「現地調達型輸出業種」で
時点で言えば、鉄鋼、非鉄金属、サービス業
ある。具体的には、電気機械、繊維、一般機
がこの分類に属する。
械などである。
海外からの調達比率が高く、かつ輸出比率
95年度時点との比較でみると、輸送機器は、
も高い「海外調達型輸出業種」においては、人
自動車産業の国産化率を重視する中国の政策
民元高による輸出価格の上昇を輸入原材料・
誘導によって、国内調達比率を急速に高めて
部品のコスト低減によって相殺できるため、為
きている。電気機械、一般機械などの分野で
替リスクは小さいと考えられる。この分類に
は、一段のコスト削減を図るために、部品産
は、商業、情報通信機器、精密機械が当ては
業を担う中小企業が対中進出したことにより、
まる。
国内調達比率が高まっている。こうした背景
逆に、現地調達比率が高く、国内販売中心
から、これら産業では安易に部品等の調達先
の「現地調達型内販業種」も為替リスクを受
を見直すことはできにくいものと想像される。
けにくいという意味で影響は小さいとみられ
一方、中国製品を輸入する企業にとって、人
る。木材紙パ、食料品、輸送機器、化学など
民元高は死活問題である。特に、100円ショッ
82
信金中金月報 2005.9
図表11 日中の日用雑貨・衣料品の小売価格と購買力平価
ティッシュ(100枚1箱:S)
歯磨き粉(120g:S)
フライパン(テフロン加工:S)
トイレットペーパー(2ロール:S)
婦人コート(バーバリータイプ:C)
洗剤(3 :S)
メンズコート(バーバリータイプ:C)
石鹸(100g:S)
ビジネスシャツ(白:C)
子供ジーンズ(C)
ハンドクリーム(125m :S)
シャンプー&リンス(400m :S)
電球(60W2個:S)
紳士背広上下(Mサイズ:C)
紳士ソックス(ウール混紡:C)
婦人シューズ(C)
子供シューズ(C)
紳士ビジネスシューズ(C)
婦人カーデガン(C)
婦人ドレス(C)
05年7月21日時点の為替レート
北京
(元)
12.33
18.81
208.00
8.34
4,000.00
264.20
6,000.00
10.00
700.00
340.00
28.75
35.00
17.50
4,500.00
65.00
1,100.00
260.00
1,000.00
800.00
1,600.00
―
東京
(円)
36.00
155.25
1,980.00
79.67
39,900.00
2,657.81
66,150.00
112.59
8,190.00
4,095.00
359.24
532.36
272.00
72,450.00
1,050.00
18,900.00
5,145.00
21,000.00
25,200.00
71,400.00
―
購買力平価
(円/元)
2.92
8.25
9.52
9.55
9.98
10.06
11.03
11.26
11.70
12.04
12.50
15.21
15.54
16.10
16.15
17.18
19.79
21.00
31.50
44.63
13.60
(備考)1.Sはスーパーマーケット、Cはチェーンストアの小売価格(04年)
( 2.EIU City Dataにより作成
プで販売されているような安価な軽工業品に
ていることを考えると、日本経済や日本の消
関して言えば、多少、輸入コストが上昇して
費者にとっても、急激な人民元高は望ましい
も、それを製品価格に転嫁することは容易で
ものではない。
はない。
図表11は、北京と東京における日用雑貨・
(3)最終的な対応策は高付加価値化と中国市
衣料品20品目の小売価格を比較して、一物一
場開拓
価の購買力平価を計算したものである。この
戦後、日本経済が歩んできた歴史をみても、
うち、ティッシュからハンドクリームまでの
円相場は日本経済の実力を反映するかたちで
11品目の購買力平価は、7月21日時点の為替レ
上昇基調を続けてきた。いまの中国は高度経
ート、1元=13.6円よりも元安・円高水準にあ
済成長期の日本の状況に酷似している。した
る。このうち、コートやビジネスシャツなど
がって、今後、日本企業は、人民元高基調が
については、中国やアジアの製品が日本の消
続くことを前提として、対中戦略を描いてい
費市場に深く浸透して、大きく価格破壊が進
く必要があろう。
展した結果と考えられる。逆に言えば、これ
前述のように、輸出企業にとっては、人民
以上の人民元高は採算割れに直結する可能性
元高は価格競争力の向上に直結することから
が大きい。日本の消費市場には日用雑貨、衣
特段の対策を必要としない。人民元高を追い
料品をはじめとして様々な中国製品が出回っ
風として、中国の消費市場の開拓に邁進する
調
査
83
図表12 人民元切上げへの対応策
メリット、デメリット
企業の分類
対応策等
中国へ製品輸出す 元高は価格競争力 ・特段の対策は不要
・中国市場開拓を一段と強化
る日本企業
の向上に直結
・人民元と外貨ポジションの調節により、人民元建て資産をネットで拡大
(人民元建て負債の圧縮、駐在員の借上げ社宅を自社所有へ転換等)
元高により輸出価
・国有銀行が取り扱う為替先物予約の利用(経常取引に基づくものに限る。
中国へ進出してい 格は上昇
最長1年)。NDF取引の利用
る日本企業
輸入原材料・部品
・海外から中国国内への販売先シフト加速
のコストは低下
・原材料・部品の海外調達比率の引上げ
・製品の高付加価値化
・シンガポール、香港でのNDF取引(人民元差額決済型フォワード取引)
はあるが、高プレミアムや低流動性などから利用価値は低い。
中国製品を輸入す 元高により輸入コ ・為替管理上、人民元建て資産の保有は難しいため、人民元に連動して上
昇する可能性が高い香港ドル資産を保有する。
る日本企業
ストが上昇
・高付加価値製品の輸入・取扱いを拡大
・他のアジア諸国からの輸入を拡大
(備考)各種資料により信金中金総合研究所作成
のみである。
中国進出企業にとってはプラス・マイナス
今後、日本の中小企業における海外戦略は、
チャイナ・プラス・ワン(中国ともう1か国)
両方の側面があるが、基本的な考え方として
を念頭に置き、中国リスクを分散する努力が
は、中国を生産・輸出基地としてきた従来の
求められることになる。
方針を転換し、現地生産・現地販売を主体と
すべき時期に差し掛かっている。人民元高基
調が輸出の足かせとなるほか、近い将来、中
3.人民元切上げと資産運用
(1)対中証券投資のルートは限定的
国の外資に的を絞った優遇措置が廃止され、増
今後も、中長期的に人民元高基調が続き、
税によりコストが上昇すれば、輸出基地とし
中国経済も比較的高い成長を遂げるとすれば、
ての中国のメリットは大きく薄れるからだ。製
対中証券投資には妙味がある。しかし、中国
品の高付加価値化という選択肢もあり得るが、
は対外資本取引を厳しく規制しており、非居
そうした製品群を日本から中国へ生産シフト
住者が直接、人民元建て資産を保有すること
するメリットはあまり大きくないと思われる。
はできない。
輸入企業について言えば、人民元はハード
現在の投資対象としては、外貨建ての中国
カレンシーではないため、海外で為替リスク
株が主体である。具体的には、上海や深 の
をヘッジする手段はNDF(人民元差額決済型
取引所に上場されている外貨建て中国株(B
フォワード取引)に限られており、その利用
株:米ドルあるいは香港ドル建て)
、香港に上
価値も低い(図表12)
。このため、当面の対応
場されている香港ドル建ての中国株(H株)、
策としては高付加価値製品の取扱いを拡大す
ニューヨークやロンドンに上場されている中
ることしかないであろう。さらに、将来的に
国株(N株、L株とも呼ばれる)、などである
はベトナムなど中国よりも低コストのアジア
(図表13)。証券会社等が設定している中国フ
諸国からの輸入を増加させる必要もあろう。
ァンド(投資信託)も、主として、これら外
84
信金中金月報 2005.9
図表13 中国証券市場の全体像
QD I I
投資家
中国国内投資家
QF I I
中国から許可を
得た機関投資家
海外投資家
(27社)
市場
B株
A株
(人民元建て)
合
併
CDR
(米ドル、
香港ドル)
1,352社
110社
国内企業
(国有企業、集団企業、
民営企業)
外資企業
(日系企業等)
86社
香港市場
海外企業
(日本の
上場企業等)
海外市場
(香港ドル建て)
110社
上海・深 市場
資金調
達企業
レッド
チップ
H株
(香港ドル建て)
18社
NY 13社
LDN 3社
SIG 2社
中国系の
香港企業
(備考)1.QFI I=適格海外機関投資家、QDI I=適格国内機関投資家、CDR=中国預託証書
( 2. は検討中または将来的な構想。上場会社数は04年末現在
( 3.中国証券監督管理委員会資料などにより信金中金総合研究所作成
貨建て中国株に投資するものである。
資判断が求められることは言うまでもない。
このほか、中国当局は預かり資産の規模や
投資業務の経験など一定の条件を満たし、適
(2)慎重な銘柄選別が必要
格と認められる機関投資家(QFII)に対して、
中国の株式市場の最大の特徴は、上場企業
中国国内の人民元建て有価証券への投資を解
の大多数が国有企業であるということである。
禁している。現在は、日本の大手証券会社な
株式の構成比をみても、国有株の比率は4割以
ど27社がQFI Iに指定されている。最近、中国
上、国有企業の持合い株である法人株を併せ
当局はQFI Iによる総投資枠を従来の50億ドル
ると6割以上は最終的に国家によって保有され
から100億ドルへ引き上げており、人民元建て
ている(注)1。
有価証券への投資ルートも中長期的に拡大す
つまり、中国証券市場は国有経済を代表す
ると予想される。QFI Iの認可を受けている一
る市場であって、工業生産の6割を占め、経済
部の証券会社では、同制度を利用して購入し
の主役を演じている民営企業や外資企業など
た中国国内株(A株:人民元建て株式)を組み
非国有経済を代表する市場ではないことに注
入れた投資信託を日本で販売しているケース
意する必要がある。
もある。
中国政府は、国有株の売却、民営化を考慮
いずれにしても、人民元高は、中国企業の
しているが、国有株があまりにも膨大である
資産が外貨建て評価で増加するため、海外の
ことから、売却計画は慎重かつ小規模に実施
投資家にとっては歓迎すべきものである。も
されてきている。しかし、潜在的な需給悪化
ちろん、人民元高による産業界への影響は様々
懸念は続いており、中国国内のA株、B株市場
であり、個別銘柄へ投資する場合は慎重な投
は長期的な低迷から脱し切れていない。
(注)
1.国有株とは、国家が保有している株式のことで、いわゆる日本の政府保有株。法人株とは、国有企業をはじめとする法人も
しくは法人資格を有する社会団体などが保有している株式
調
査
85
図表14 今後の中国資本市場における改革開放
①資本市場の発展は、資源配分の効率化、国有経済の構造調整と戦略的再編、非国有経済の発展、直接金融比率の引
上げなどにおいて重要な意味を持つ。
②「公開・公平・公正」、「法制・監督管理・自律・規範」に基づいた資本市場の改革開放と発展の推進
③証券発行・上場認可制度の改善、資本市場の投資リターンの重視、投資信託や保険会社を主体とする機関投資家の
育成、証券会社の資金調達ルートの拡大
④メイン・ボードの充実、店頭市場の創設など多層型の株式市場体系の構築、債券市場・先物市場の発展
⑤上場会社の質的向上、コーポレート・ガバナンスの強化、市場退出制度の整備
⑥証券会社、先物業者の市場参入制度の改善、顧客資金の流用禁止、証券会社と先物業者の合併・再編の奨励、証券
会社、先物業者の退出制度の整備
⑦資本市場の発展と投資家権益保護に関する関連法規の整備、監督管理の効率向上、業界の自主規制と世論によるモ
ニタリング機能の発揮
⑧市場リスクの軽減に向けた各関係部門の連携、証券先物市場における違法行為に対する厳格な取締り
⑨外国証券会社による証券会社、運用会社への資本参加奨励、QFI I(適格海外機関投資家)の継続発展、海外資本
市場の積極利用、対外交流・協力の推進
(備考)中国証券監督管理委員会資料により作成
国内株式市場が長期にわたって低迷してい
場)や海外の機関投資家による対内証券投資
る原因は、こうした潜在的株式需給の問題だ
を容認するQFI I制度を一層活用すること、な
けではない。上場企業による粉飾決算の多発、
どである。
インサイダー取引の横行などが嫌気され、中
中国の証券市場は、90年代初頭に取引所が
国証券市場は次第に投資家の信頼を失ってし
成立したばかりの歴史の浅い市場であり、証
まったのである。
券制度の整備、市場関係者の認識、市場参加
こうした状況を踏まえて、中国の証券監督
者の質、など様々な面で改善されるべき点が
機関である中国証券監督管理委員会(CSRC)
多いのは事実であり、今後の証券改革の進展
は、将来の証券市場改革としていくつかの構
が待たれるところである。
想を明らかにしている(図表14)。
海外投資家は中国A株市場へ直接的に投資す
その第1は、不正行為を防止するための法整
ることはできないが、香港H株やレッドチップ
備を徹底させること、第2は国有株の受け皿と
(中国資本の香港企業)に投資する場合も、中
して、また安定株主として機関投資家を育成
国証券市場の現状や中国株式の特徴をよく理
すること、第3は人民元建てのA株市場と外貨
解しておく必要がある。また、中国の株式市
建てのB株市場を統合すること、併せて上海市
場では、当局の証券政策の動向が相場の大き
場を東証一部のようなメインボードとし、深
な流れを決定する要因になってきた歴史があ
□市場は東証二部、あるいは店頭市場に特化
り、政策動向をきめ細かにウォッチすること
させ、各市場に特色を持たせること、債券市
も大切である。
場、先物市場を育成すること、第4は中国経済
有望分野としては、中国のブルーチップ(基
の真の主役である外資企業や民営企業の上場
幹産業の株式)のほか、いまの中国経済の発
を促進すること、第5は中国証券市場の国際化
展の原動力である外資企業、あるいは外資と
を推進するため、外国企業の上場(CDRの上
の提携関係を上手く活用している企業、など
86
信金中金月報 2005.9
図表15 中国機関投資家の投資資金規模(03年末現在)
金融機関の有価証券運用残高
保険会社の有価証券運用残高
証券会社の自己運用額
年金基金の残高
投資信託の残高
残高合計
金額(億元)
30,259.5
3,828.9
673.0
2,206.5
1,614.7
38,582.6
米ドル換算(億ドル)
3,656.0
462.6
81.3
266.6
195.1
4,661.6
(備考)1.金融機関には、中国人民銀行、政策銀行、国有商業銀行、その他の国内商業銀行、郵
( 政貯蓄機構、都市合作銀行、農村信用社、都市信用社、外資銀行、信託投資公司、リース
( 会社、財務公司が含まれる。
( 2.国家統計局『中国統計年鑑』2004年版等により作成
が考えられよう。民営企業については、非常
術を有する日本企業は多く、日本の法整備が
に活力のある企業が多く、成長性も極めて高
進展すれば、中国資本によるM&Aも今後着実
いが、企業規模が総じて小さく、業績の振幅
に増加してくるであろう。
が大きいことが特徴であり、それだけ投資リ
スクが高いことに注意すべきである。
このほか、今後は海外への資本還流を目的
として中国適格機関投資家(QDII)による対
外証券投資も徐々に認められる見通しである。
(3)中国マネーの動向にも注目
一方、最近では中国企業による対外投資も
徐々に拡大している。中国政府も、「走出去
実際、05年2月、国家外貨管理局は大手の平安
保険会社に対して17.5億ドルの外貨運用枠をは
じめて許可した。
(外に出て行く)」を合言葉に、国家的戦略と
中国機関投資家の資金運用額は03年末で4,662
して対外投資を奨励しており、04年の中国企
億ドルとほぼ台湾の株式時価総額に匹敵する
業による対外直接投資は36億ドル、前年比27%
規模がある(図表15)
。例えば、以前、日本の
増加した。
生保業界では外貨建て資産の保有が一般勘定
中国企業の海外投資は、業種別には製造業
資産の30%以内に規制されていたが、仮に中
や国内需給が逼迫している資源・エネルギー
国でも機関投資家の投資資金の3割が外貨建て
関連、地域別には東南アジアに集中している。
資産で運用されるようになれば、その規模は
先進国のなかでは、米国への投資が最も多く、
1,400億ドル程度となる。これは、03年の東京
記憶に新しいところでは、レノボ・グループ
株式市場における外人買越し額706億ドルの2
(聯想集団)がIBMのパソコン部門を買収した
事例が挙げられる。
倍に相当する。
もちろん、中国マネーがすべて東京市場に
いまのところ、日本に対する直接投資の事
流入するわけではないが、今後、中国マネー
例は少ないが、これは日本のM&Aに関する法
の存在が国際金融資本市場に大きな影響を与
整備の遅れや市場の閉鎖性に原因があると思
える日も遠くないと予想される。
われる。ただ、中国企業にとって魅力ある技
調
査
87
〈参考文献〉
Cyn-Young Park『Coping with Global Imbalances and Asian Currencies』ADB(2005年5月)
経済産業省『我が国企業の海外事業活動』第26回、第33回
中国日本商会(在中国日本商工会議所)
『人民元切上げの影響に関する緊急アンケート調査』
(2005年7月27日)
内閣府『平成16年度企業行動に関するアンケート調査』
真家陽一「特集:人民元切り上げと進出企業の対応策―総論―」
『ジェトロ通商広報』(2005年6月10日)
88
信金中金月報 2005.9
信 金 中 金 だ よ り 信金中央金庫総合研究所活動状況(7月)
1.レポート等の発行
発行日
05.7.1
05.7.1
05.7.6
レポート分類
内外金利・為替見通し
香港だより
産業企業情報
05.7.7
05.7.12
05.7.13
金融調査情報
上海通信
内外経済・金融動向
05.7.15
中小企業景況レポート
05.7.20
貿易投資相談ニュース
通巻
タ
イ
ト
ル
17-4 ―
29
―
17-2 NPO・コミュニティビジネスに対する創業融資
―行政や「市民金融」
(「NPOバンク」)との協働も有益―
17-3 信用金庫の社会的責任(CSR)とその情報開示
3
―
17-3 2004年度の中小企業の業況と経営課題―財務体質は
改善が続いたが、規模別・地域別格差は一段と拡大―
120 1∼3月期業況は2四半期ぶりの小幅改善
(特別調査:後継者問題について)
123 ―
執 筆 者
斎藤大紀
―
澤山弘
廣住亮
―
峯岸直輝
―
―
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
種類
05.7.4
講座
バーゼルⅡについて
タ イ ト ル
05.7.5
講演
信用金庫における企業格付と査定実務 融資審査講座
05.7.5
講演
貿易投資相談
05.7.5
∼7.6
05.7.6
講演
中小企業経営改善支援実務研修
講座
不良債権処理の取組み
05.7.7
05.7.8
講演
講演
中国ビジネスの成功・失敗事例
田原本駅前再開発事業について
05.7.8
05.7.8
∼7.9
講演
講演
最近の中国事情等について
中小企業経営改善支援実務研修
05.7.11
講座
ノンバンクによる中小企業金融の実
態とそのビジネスモデル
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
05.7.12
05.7.13
05.7.13
講演
講演
講演
建設業の経営改善
変貌する中国、企業経営への影響
温泉旅館経営改善
05.7.13
講座
地元企業の海外進出と地域金融機関
業種別研究会
外国為替セミナー
温泉旅館経営改善支援
勉強会
横浜信用金庫・信金中
央金庫寄付講座
中小企業経営改善支援
実務研修
中国(上海)視察会
05.7.14
講演
∼7.16
05.7.14
講演
∼7.16
05.7.15
講演
中国経済および中小企業の中国進出
について
地域活性化事例について
05.7.19
地場工務店成功の鍵
講演
中小企業経営改善支援実務研修
講座・講演会・番組名称
場所・放送局
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
講 師 等
金融庁監督局総務課
監督調査室長兼
バーゼルⅡ推進室長
北村信氏
全国信用金庫研 小島一泰
修所
林徹
輸入品&多摩の物産
立川グランドホ 佐藤克己
EXPO’
05
テル
中小企業経営改善支援 青梅信用金庫
藤津勝一、加藤要一、
実務研修
里田雄俊
横浜信用金庫管理部
横浜信用金庫・信金中 神奈川大学
央金庫寄付講座
部長 橋村雅量氏
中小企業支援セミナー 青梅信用金庫
篠崎幸弘
田原本駅前再開発事業 奈良中央信用金庫 笠原博
について
ロータリークラブ講演会 埼玉りそな銀行 篠崎幸弘
中小企業経営改善支援 多野信用金庫
藤津勝一、加藤要一、
実務研修
里田雄俊
新井信用金庫
京都信用金庫
関川村商工会
株式会社ニッシン
常務取締役兼執行役員
野尻明裕氏
長山宗広
黒岩達也
長山宗広
神奈川大学
佐藤克己
高松信用金庫
藤津勝一、加藤要一、
里田雄俊
篠崎幸弘
信金中央金庫
上海駐在員事務所
生活環境と融和する観 ホテル観潮楼
長山宗広
光地区活性化を考える
工務店向けセミナー
八王子信用金庫 鉢嶺実
信金中金だより
89
実施日
05.7.20
05.7.20
∼7.21
05.7.21
05.7.21
種類
講演
講演
タ イ ト ル
変貌する中国、企業経営への影響
中小企業経営改善支援実務研修
講演
講演
講座・講演会・番組名称
株式新聞懇話会
中小企業経営改善支援
実務研修
貿易投資相談
市場業務入門研修
場所・放送局
株式新聞
青梅信用金庫
講 師 等
黒岩達也
藤津勝一、加藤要一、
里田雄俊
篠崎幸弘
斎藤大紀
05.7.22
貿易投資相談
ファンダメンタルズ分析
(経済金融動向)
講演 国内外の金融・経済情勢について
05.7.27
05.7.28
05.7.29
講演
放送
講演
四万十市の商店街活性化
成長するアメリカの南部について
地域密着型金融の機能強化の推進に
関するアクションプログラムに
ついて外
京都信用金庫
信金中央金庫
北海道支店
資金運用勉強会
信金中央金庫
斎藤大紀
福岡支店
商店街の活性化について 中村商工会議所 笠原博
ラジオ深夜便
NHKラジオ
青木武
第6回「中小企業の経営 信金中央金庫
藤津勝一
改善支援に係る情報交 八重洲別館
間下聡
換会」
05.7.29
講演
これからのまちづくりのために
―更なる金沢の活性化の参考に
興能金沢ブロック経済 金沢ニューグラ
交流会
ンドホテル
笠原博
3.原稿掲載
発行日
05.7.10
05.7.27
90
タ
イ
ト
ル
最新中国事情⑪「日本語のなかの中国語」
中国の存亡はグローバル・スタンダードにあり
信金中金月報 2005.9
掲 載 誌
発
行
信用金庫7月号
全国信用金庫協会
中国情報ハンドブック 蒼蒼社
2005年版
執筆者
黒岩達也
黒岩達也
統 計
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況…………91
(2)信用金庫の店舗数、合併等………93
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金……94
(4)信用金庫の預金者別預金…………95
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金……96
(6)信用金庫の貸出先別貸出金………97
(7)信用金庫の余裕資金運用状況……98
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等……………………99
(2)業態別貸出金 ……………………100
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況(2005年6月末)
○預 金
6月の全国信用金庫の預金は、月中9,502億円、0.8%増と、前年同月(9,612億円、0.9%増)と同様に増加した。
① 要求払預金は、年金振込金の滞留やボーナス預金の受入れ等から、月中7,589億円、2.1%増と、前年同月
(7,080億円、2.1%増)と同様に増加した。
② 定期性預金は、公金預金やボーナス預金の受入れ、預金増強キャンペーンの実施等から、月中1,845億円、
0.2%増と、前年同月(2,215億円、0.3%増)と同様に増加した。
③ 外貨預金等は、月中67億円、1.3%増加した。
なお、2005年6月末の預金の前年同月比増減率は、1.6%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中1,344億円、0.2%増と、前年同月(952億円、0.1%増)と同様に増加した。
① 割引手形は、売上低下および季節的要因による受取・持込手形の減少や、期日落込みの増加等から、月中
32億円、0.1%減と、前年同月(47億円、0.2%減)と同様に減少した。
② 貸付金は、住宅ローンの実行や、ボーナス支払資金等季節的な資金需要の増加等から、月中1,377億円、0.2%
増と、前年同月(999億円、0.1%増)と同様に増加した。
なお、2005年6月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.0%増となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中8,686億円、1.6%増と、前年同月(8,676億円、1.7%増)と同様に増加した。
主な内訳をみると、預け金は、月中8,222億円、3.7%増となった。
金融機関貸付等は、買現先勘定が減少したものの、コールローンが増加したことから、月中48億円、8.4%増
となった。
有価証券は、国債(286億円増)、地方債(437億円増)および社債(479億円増)等が増加したことから、月
中1,496億円、0.5%増となった。
統 計
91
信用金庫の主要勘定増減状況(2005年6月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買 現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要 求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定 期 性 預 金
定
期
預
金
項
定
期
積
金
外 貨 預 金 等
質
預
金
目 実
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増 減 額
1,610,579
△
(△
128,400 )
22,783,535
(
21,381,620 )
(
49,000 )
62,986
1,000
0
57,986
3,999
△
0
375,810
298,764
△
7,783
28,205,779
7,663,526
3,151,877
45,988
11,085,421
570,938
71
779,788
4,800,958
△
107,207
53,345,238
61,524,339
(
61,224,837 )
1,960,718
△
59,563,620
6,641,317
△
50,006,995
2,915,307
△
108,865,547
(
107,746,100 )
36,376,162
2,510,915
31,498,284
1,262,276
△
138,506
926,214
△
39,963
71,988,018
65,216,562
6,771,456
△
501,366
108,737,146
139,451
667,858
56.4
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資 本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利 益 準 備 金
特 別 積 立 金
前 期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,836,381
590,576
57,390
0
30,133
0
370,656
4,460,498
140,438
2,291
185,661
0
1,265
0
0
△
△
△
△
増 減 率
119,205
△
(△
19,051 )
822,296
(
799,726 )
(
0)
4,897
0
0
6,897
2,000
△
0
11,275
578
△
366
149,647
28,642
43,771
19,795
47,923
5,785
0
11,861
10,405
△
2,275
868,697
134,491
(
5,797 )
3,279
△
137,769
5,091
△
169,933
27,074
△
950,278
(
207,911 )
758,917
21,763
827,721
1,569
△
4,170
93,819
△
650
184,584
281,461
96,877
△
6,777
969,329
28,347
48,465
6.8
(△
12.9 )
3.7
(
3.8 )
(△
0.0 )
8.4
0.0
―
13.4
33.3
△
―
3.0
△
0.1
△
4.9
△
0.5
0.3
△
1.4
75.5
0.4
△
1.0
0.0
△
1.5
0.2
△
2.1
1.6
0.2
(△
0.0 )
0.1
△
0.2
0.0
△
0.3
0.9
△
0.8
(
0.1 )
2.1
0.8
2.6
0.1
△
3.1
△
9.1
△
1.6
0.2
△
0.4
△
1.4
△
1.3
0.8
25.5
7.8
25,240
414
0
0
10,566
0
12,432
157,842
134,562
319,965
30
0
70
0
0
0.4
0.0
0.0
―
25.9
―
3.4
3.6
*
99.2
0.0
―
―
―
―
△
△
△
△
(備考)1.預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
( 2.前年同月比増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
92
信金中金月報 2005.9
前年同月比
増 減 率
前
月中増減額
4.7
△
(△
9.5 )
9.9
(△
10.3 )
(
3.9 )
8.9
△
―
―
16.3
△
50.0
△
―
11.1
3.2
△
48.9
0.1
1.9
7.8
*
2.3
12.4
68.0
△
23.5
1.4
73.1
4.1
0.0
(△
0.0 )
9.5
△
0.3
7.0
△
1.6
3.5
△
1.6
(
1.7 )
6.6
8.8
7.2
4.1
△
8.2
0.9
△
1.3
0.6
0.0
6.0
△
3.0
1.7
48.6
31.4
3.0
2.1
31.6
―
△
2.7
―
3.4
2.9
17.4
―
△
6.9
△ 100.0
―
―
―
年
△
△
△
△
△
同
38,680
△
(△
6,020 )
67,810
(△
141,984 )
(
0)
12,093
△
0
0
11,094
△
1,000
△
0
33,118
140
△
471
817,209
492,197
93,816
0
112,880
8,610
12
△
11,603
97,458
655
867,695
95,236
(△
147,025 )
4,750
△
99,986
20,444
△
164,120
43,690
△
961,213
(
157,611 )
708,065
22,496
739,754
586
△
8,892
63,149
△
659
221,572
318,430
96,858
△
31,577
967,232
11,412
21,757
22,002
495
0
0
8,917
1
4,682
99,793
111,700
229,330
494
0
70
0
0
月
前年同月比
増 減 率
2.4
△
3.0
(△
4.0 )
5.6 )
0.3
△
0.4
(△
0.7 )
0.9 )
( △ 40.2 )
0.0 )
17.2
△ 52.0
―
△ 100.0
―
―
18.2
△ 44.9
11.1
△ 20.0
―
△ 100.0
8.4
△ 31.6
0.0
15.5
3.1
△ 42.1
2.9
9.1
6.7
24.3
3.3
14.7
0.0
―
1.0
0.8
1.7
10.8
5.1
△ 79.7
1.8
2.7
2.0
6.2
1.0
△
0.1
1.7
4.0
0.1
△
0.7
(△
0.2 )
0.7 )
0.2
△
5.9
0.1
△
0.5
0.2
△
8.6
0.3
1.1
1.4
△
5.5
0.9
1.5
(
0.1 )
1.5 )
2.1
4.9
0.9
6.1
2.5
5.4
0.0
△
1.7
6.2
△ 11.3
6.3
△
1.2
1.6
3.4
0.3
△
0.0
0.4
0.5
1.3
△
4.5
6.9
5.1
0.9
1.5
13.8
44.1
4.4
△ 10.5
月中増減率
△
△
△
△
△
0.3
0.0
0.0
―
22.3
100.0
1.3
2.3
*
100.4
0.2
0.0
―
―
―
△
△
△
△
2.4
3.9
147.8
―
122.6
100.0
0.3
1.4
18.3
258.6
3.4
―
―
―
―
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移
店
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7
本 店
支 店
(信用金庫数)
371
7,842
349
7,781
326
7,673
314
7,513
306
7,471
306
7,452
304
7,438
304
7,427
304
7,398
303
7,365
301
7,346
301
7,347
301
7,344
299
7,329
298
7,312
298
7,309
298
7,301
298
7,291
p
297
舗
(単位:店、人)
数
常
出張所
合 計
267
270
264
266
282
281
274
271
273
268
270
270
269
272
r 269
r 272
276
279
8,480
8,400
8,263
8,093
8,059
8,039
8,016
8,002
7,975
7,936
7,917
7,918
7,914
7,900
r 7,879
r 7,879
7,875
7,868
7,857
会 員 数
常勤役員
8,941,138
8,981,084
9,001,391
9,083,334
9,091,805
9,112,262
9,113,379
9,116,103
9,121,880
9,124,839
9,129,343
9,136,429
9,139,656
9,144,344
r 9,134,192
9,139,669
9,144,928
9,150,605
9,151,288
2,804
2,734
2,557
2,455
2,396
2,385
2,380
2,379
2,373
2,372
2,360
2,358
2,355
2,351
2,342
2,340
2,336
2,308
勤
男 子
94,112
91,451
87,922
86,194
84,345
84,696
84,388
84,150
83,744
83,412
83,173
82,878
82,603
82,375
r 81,431
82,876
82,682
82,253
役
職
職
員
女 子
41,004
38,851
37,086
36,622
35,051
36,381
36,040
35,762
35,395
35,206
35,094
34,655
34,435
34,284
r 33,342
35,514
35,363
34,988
員
数
計
135,116
130,302
125,008
122,816
119,396
121,077
120,428
119,912
119,139
118,618
118,267
117,533
117,038
116,659
r 114,773
118,390
118,045
117,241
合
計
137,920
133,036
127,565
125,271
121,792
123,462
122,808
122,291
121,512
120,990
120,627
119,891
119,393
119,010
r 117,115
120,730
120,381
119,549
118,952
信用金庫の合併等
年 月 日
2003年 7 月 7 日 芝
2003年 7 月 7 日 一宮
2003年 7 月22日 東京東
2003年 7 月22日 赤穂
2003年10月20日 秋田
2003年10月20日 富山
2003年10月20日 福岡ひびき
2003年11月 4 日 能登
2004年 1 月13日 王子
2004年 1 月19日 直江津
2004年 1 月19日 北伊勢
2004年 2 月 9 日 高松
2004年 2 月 9 日 鹿児島相互
2004年 2 月16日 興能
2004年 3 月22日 金沢
2004年 7 月12日 下関
2004年 7 月20日 彦根
2004年10月12日 大阪
2004年11月15日 大牟田
2004年11月22日 足利
2005年 1 月 4 日 伊勢崎太田
2005年 2 月14日 北海
2005年 2 月14日 阪奈
2005年 3 月14日 (大分県信組)
2005年 7 月19日 仙台
異
東調布
愛北
小岩
伊那
五城目
射水
新北九州
共栄
太陽
高田
上野
さぬき
川内
(高浜信組)
福光
豊浦
近江八幡
南大阪
柳川
小山
古平
八光
杵築
塩竈
動
金
庫
名
津島
門司
築上
荒川
日興
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
大阪
大牟田柳川
足利小山
アイオー
北海
大阪東
(大分県信組)
杜の都
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
303
302
301
301
300
299
298
297
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
名称変更
合併
合併
合併・解散
合併
統 計
93
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,068,100
1,055,175
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
1,072,481
1,070,447
1,085,557
1,073,341
1,078,486
r 1,074,324
1,085,423
1,079,152
1,088,655
1,087,216
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
1.9
1.8
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
1.6
要求払
230,205
297,903
312,842
336,074
328,610
341,198
337,982
338,902
340,543
344,680
343,476
355,831
342,412
349,189
350,807
362,751
356,172
363,761
360,792
前年同月比
増 減 率
7.3
29.4
5.0
4.8
5.0
4.9
6.5
4.7
5.5
6.9
5.0
5.8
5.5
5.4
6.7
7.7
6.6
6.6
6.7
定期性
801,008
723,681
716,192
727,873
720,951
724,892
727,453
727,436
725,012
723,529
722,149
725,305
726,009
724,527
717,300
718,091
718,034
719,880
721,770
実質預金
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.4
6,829 △ 20.0
1,033,760
△ 9.6
6,613 △ 3.1
1,024,192
△ 1.0
6,500 △ 1.7
1,032,788
0.7
4,152 △ 13.0
1,065,180
0.6
5,614 △ 13.6
1,052,971
△ 0.0
4,866
5.1
1,069,538
△ 0.1
4,227 △ 5.8
1,067,069
△ 0.1
4,719
8.8
1,069,717
△ 0.1
4,910 △ 4.2
1,068,785
△ 0.0
4,270 △ 4.8
1,070,047
△ 0.1
4,821
2.5
1,069,066
△ 0.3
4,419
6.4
1,083,009
△ 0.1
4,919
18.9
1,071,968
△ 0.1
4,769
17.5
1,077,044
△ 0.4
6,216
10.7 r 1,072,219
△ 0.4
4,580
1.7
1,082,752
△ 0.6
4,945
8.6
1,077,678
△ 0.6
5,013
3.0
1,087,371
△ 0.7
4,652
10.0
1,084,618
前年同月比
増 減 率
1.6
△ 0.9
0.8
2.0
1.9
1.5
1.7
1.4
1.6
1.9
1.5
1.6
1.7
1.7
1.8
2.0
1.7
1.7
1.6
譲渡性預金
105
114
244
766
789
938
977
1,207
1,099
1,148
1,201
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
1,394
1,405
前年同月比
増 減 率
△ 13.3
7.9
113.7
138.1
223.1
44.1
51.0
35.3
20.0
14.2
10.8
63.3
14.8
52.3
26.6
65.4
34.8
48.6
43.7
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
( 3.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別預金
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
(単位:億円、%)
北海道
53,392
54,596
55,302
57,719
56,194
57,357
57,005
57,133
56,869
57,031
57,543
58,882
56,990
57,170
57,186
57,863
57,328
58,307
57,978
近 畿
207,950
201,814
201,600
207,067
205,213
208,296
208,205
208,434
208,501
208,700
208,393
210,818
209,303
210,071
209,461
212,010
210,965
212,695
212,546
前年同月比
増 減 率
3.2
2.2
1.2
1.5
1.6
1.5
2.1
1.7
2.0
2.5
1.5
2.0
1.7
1.7
1.7
1.6
1.2
1.6
1.7
前年同月比
増 減 率
0.7
△ 2.9
△ 0.1
1.7
1.7
1.6
1.8
1.5
1.5
2.0
1.5
1.8
1.9
1.9
2.0
2.5
2.2
2.1
2.0
東 北
39,684
39,036
39,462
40,851
39,896
40,639
40,517
40,590
40,438
40,721
40,552
41,067
40,597
40,782
40,036
40,836
40,457
40,773
40,634
中 国
49,578
49,651
50,175
51,138
50,456
51,106
51,030
51,049
50,911
50,989
50,908
51,687
50,987
51,438
51,044
51,615
51,109
51,784
51,582
前年同月比
増 減 率
2.1
△ 1.6
1.0
1.2
1.0
0.7
0.9
0.6
0.7
1.3
0.6
0.5
0.5
0.4
0.3
0.6
0.5
0.3
0.2
前年同月比
増 減 率
0.1
0.1
1.0
0.9
0.5
0.1
0.6
0.0
0.1
1.3
0.8
1.0
1.2
1.6
1.1
1.7
1.0
1.3
1.0
東 京
194,416
190,125
193,270
199,155
196,903
199,329
199,319
199,038
199,504
200,269
199,570
201,919
199,994
201,060
200,759
202,302
201,265
202,650
202,677
四 国
17,773
18,064
18,206
18,769
18,625
18,887
18,946
18,952
18,954
18,996
18,952
19,263
19,089
19,200
19,286
19,453
19,456
19,695
19,705
前年同月比
増 減 率
1.2
△ 2.2
0.8
2.5
1.8
1.4
1.8
0.8
1.5
1.9
1.1
1.3
1.2
1.3
1.9
2.0
1.6
1.6
1.6
前年同月比
増 減 率
3.3
1.6
0.7
2.3
2.3
2.1
2.5
2.2
2.5
3.0
2.4
2.6
2.4
2.5
3.5
3.9
4.0
4.2
4.0
関 東
199,809
198,309
197,820
204,715
201,888
205,068
204,725
205,230
204,838
205,454
204,742
208,026
205,579
206,371
205,375
207,339
205,933
207,716
207,425
九州北部
17,940
17,916
17,984
18,766
18,298
18,751
18,728
18,745
18,665
18,815
18,750
19,087
18,830
18,966
18,597
19,085
18,940
19,124
19,146
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 0.7
0.4
1.8
2.0
1.6
1.9
1.5
1.6
2.0
1.4
1.6
1.6
1.4
1.7
1.9
1.3
1.2
1.3
前年同月比
増 減 率
3.0
△ 0.1
0.3
1.7
1.7
0.8
1.4
0.7
1.1
1.9
1.4
1.7
1.4
1.7
1.6
2.3
1.9
1.9
2.2
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
( 3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
94
信金中金月報 2005.9
北 陸
31,560
31,829
32,313
33,108
32,710
33,249
33,132
33,199
33,031
33,040
32,889
33,312
32,991
33,146
33,050
33,317
33,145
33,407
33,357
南九州
24,392
23,556
23,746
24,855
24,219
24,541
24,539
24,587
24,525
24,613
24,581
25,117
24,695
24,628
24,085
24,493
24,375
24,541
24,572
前年同月比
増 減 率
2.6
0.8
1.5
1.5
1.2
1.3
1.1
0.6
0.7
0.8
0.2
0.6
0.5
0.4
1.0
0.9
0.7
0.4
0.6
東 海
200,034
201,901
204,281
210,580
209,402
212,288
212,039
212,642
212,782
212,426
212,149
214,966
212,887
214,266
213,983
215,642
214,770
216,436
216,080
前年同月比
増 減 率
3.5
0.9
1.1
2.3
2.5
1.9
2.0
1.9
2.1
2.4
2.0
2.0
2.1
2.1
2.1
2.4
2.0
1.9
1.9
全国計
前年同月比
増 減 率
1.0
1,038,043
△ 3.4
1,028,198
0.8
1,035,536
1.7
1,068,100
1.9
1,055,175
1.1
1,070,958
1.6
1,069,663
1.2
1,071,058
0.9
1,070,466
2.0
1,072,481
1.4
1,070,447
1.0
1,085,557
1.5
1,073,341
1.6
1,078,486
1.0 r 1,074,324
2.3
1,085,423
1.7
1,079,152
1.5
1,088,655
1.7
1,087,216
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
1.9
1.8
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
1.6
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
年 月 末
3
3
3
9
12
04. 3
04. 6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
1,037,617
1,027,696
1,035,334
1,053,806
1,068,098
1,054,774
1,070,956
1,069,662
1,071,056
1,070,465
1,072,480
1,070,445
1,085,555
1,073,340
1,078,485
1,074,223
1,085,421
1,079,151
1,088,653
792,296
802,012
820,195
833,099
846,003
842,751
851,169
850,365
853,612
850,091
855,761
851,472
863,937
859,332
864,889
861,040
866,517
860,570
869,500
一般法人預金
2001.
02.
03.
03.
r
r
r
r
r
r
r
年 月 末
3
3
3
9
12
04. 3
04. 6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
2.2
1.9
1.8
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
200,268
182,602
173,622
176,942
183,661
175,652
176,093
179,106
173,419
178,967
180,181
176,881
184,607
174,643
174,309
178,067
184,444
176,870
177,155
要求払
2001.
02.
03.
03.
r
r
r
r
r
r
r
3,569
12,046
11,804
11,960
9,971
9,929
12,665
10,803
13,023
11,564
9,496
13,072
10,154
11,798
12,060
10,292
10,506
14,368
12,975
前年同月比
増 減 率
△ 0.4
△ 8.8
△ 4.9
△ 0.1
0.4
r 1.1
r 0.8
r 3.7
r△ 1.5
r 1.1
r 3.8
r△ 1.5
0.5
r△ 1.4
r△ 1.4
r 1.4
r 3.8
r 0.7
0.6
前年同月比
増 減 率
3.9
237.4
△ 2.0
△ 17.0
△ 18.6
r△15.8
r△11.0
r△20.6
r 12.5
r△ 3.3
r△16.4
r 15.7
1.8
r 23.0
r 25.6
r 3.7
r△11.3
r 3.3
2.5
要求払
r
r
r
r
r
r
r
69,649
85,538
84,315
88,331
96,030
88,396
89,404
92,475
86,908
92,295
93,612
91,102
99,046
88,933
88,851
93,657
99,974
93,057
93,743
定期性
r
r
r
r
r
r
r
20,719
10,738
10,366
13,747
12,817
10,554
15,453
15,740
15,496
14,145
13,523
13,129
12,657
12,552
11,666
9,410
10,534
11,850
14,284
前年同月比
増 減 率
3.1
1.2
2.2
3.3
2.9
2.7
2.2
2.2
1.9
2.0
2.2
1.9
2.1
2.0
2.0
2.2
2.3
2.1
2.1
要求払
前年同月比
増 減 率
11.2
22.8
△ 1.4
3.0
3.6
r
4.8
r
4.4
r 10.3
r△ 0.8
r
4.4
r
9.7
r△ 0.6
3.1
r△ 0.7
r△ 0.4
r
5.9
r 10.9
r
5.1
4.8
定期性
153,271
195,149
211,169
217,690
226,794
226,091
235,714
232,606
235,435
233,048
239,572
235,376
244,003
238,588
244,256
243,198
249,912
244,912
254,127
r
r
r
r
r
r
r
130,298
96,760
88,922
88,215
87,249
86,899
86,322
86,273
86,141
86,312
86,194
85,402
85,187
85,326
85,125
84,078
84,131
83,482
83,097
前年同月比
増 減 率
8.0
27.3
8.2
7.2
7.3
7.0
6.6
7.6
6.2
7.0
7.6
6.5
7.5
7.0
6.5
7.5
8.1
7.6
7.8
定期性
638,772
606,630
608,742
614,990
618,654
616,073
614,853
617,135
617,523
616,392
615,496
615,309
619,105
619,861
619,748
616,915
615,699
614,775
614,540
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
0.3
273
24.1
1.9
407
61.7
1.3
544
117.4
1.2
576
110.9
0.6
591
85.7
0.3
612
81.2
0.2
643
85.8
0.2
641
57.3
0.2
682
47.6
0.2
775
62.7
0.0
818
50.2
0.2
872
57.7
0.3
874
54.4
0.1
915
58.7
0.1
894
49.0
0.1
872
51.6
△ 0.0
822
39.0
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 8.1
376
28.2
△ 3.2
386
11.3
△ 2.9
373
5.2
r△ 2.2
349
△ 7.3
r△ 2.5
358
1.4
r△ 2.4
348
△ 1.6
r△ 2.3
360
△ 1.0
r△ 2.1
350
△ 9.2
r△ 1.8
365
△ 3.1
r△ 2.4
368
0.9
△ 2.3
365
△ 2.0
r△ 2.2
374
2.4
r△ 2.4
324
△ 6.6
r△ 3.1
323
△ 7.4
r△ 3.4
330
△ 3.9
r△ 3.7
323
△ 6.7
△ 3.6
306
△ 14.3
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 3.4
118
△ 41.2
△ 0.7
51
35.2
△ 1.7
57
54.1
r
1.8
298
152.7
r△ 3.0
371
77.8
r△ 2.3
11
△ 27.5
r△ 0.7
154
319.2
r
2.8
190
266.5
r
1.5
105
535.5
r△ 0.1
269
33.5
△ 1.2
22
△ 60.1
r△ 0.2
7
△ 41.2
r△ 1.2
2
△ 97.7
r△10.8
349
17.2
r△ 8.3
1
△ 97.9
r△11.8
85
340.4
△ 7.5
110
△ 70.1
金融機関預金
20,141
20,084
19,217
17,995
15,577
15,579
15,195
13,628
15,342
15,497
13,404
15,613
14,168
14,997
15,549
15,055
13,410
15,397
14,619
公金預金
r
r
r
r
r
r
r
24,903
22,990
22,292
25,763
22,850
20,785
28,493
26,558
28,678
25,904
23,128
26,474
22,838
24,362
23,732
20,055
21,045
26,307
27,373
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 4.3
1
△ 6.5
1
△ 10.2
0
△ 18.9
0
△ 11.9
0
△ 19.0
0
△ 1.3
0
△ 13.8
0
△ 15.4
0
△ 0.7
0
△ 9.0
0
4.2
0
3.8
0
△ 3.3
0
△ 11.1
0
△ 2.8
0
△ 3.7
0
前年同月比
増 減 率
0.9
△ 7.6
△ 3.0
△ 8.9
△ 9.8
r△ 6.7
r△ 6.2
r△10.7
r
5.3
r
0.5
r△ 6.3
r
7.4
△ 0.0
r
9.8
r 10.3
r△ 3.4
r△10.0
r△ 3.8
△ 3.8
譲渡性預金
105
114
244
915
766
789
938
977
1,207
1,099
1,148
1,201
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
1,394
(備考)1.日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは
一致しない。
2.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
95
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
661,879
639,805
626,342
633,013
622,364
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
619,837
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
615,243
619,498
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 1.1
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
0.0
△ 0.0
33,932
28,762
24,051
26,093
22,388
21,682
23,697
20,655
20,832
22,705
20,622
24,118
21,074
20,401
20,555
22,005
19,639
19,607
21,568
貸付金
前年同月比
増 減 率
6.7
△ 15.2
△ 16.3
△ 7.2
△ 6.9
△ 5.9
4.1
△ 15.9
△ 6.3
2.0
△ 16.1
△ 7.5
△ 16.9
△ 17.8
△ 8.1
0.6
△ 9.5
△ 9.5
△ 8.9
627,946
611,043
602,291
606,919
599,975
593,638
596,017
595,693
601,273
598,981
599,215
605,177
599,309
598,965
600,393
596,213
594,258
595,636
597,930
前年同月比
増 減 率
△ 4.1
△ 2.6
△ 1.4
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.4
0.1
0.1
0.3
0.3
0.3
手形貸付
97,975
90,943
84,739
80,066
77,758
71,481
71,932
72,150
73,854
72,570
72,400
74,024
72,073
72,137
71,918
68,773
66,464
66,413
66,953
前年同月比
増 減 率
△ 9.1
△ 7.1
△ 6.8
△ 7.9
△ 8.2
△ 8.6
△ 8.3
△ 8.2
△ 7.6
△ 8.1
△ 8.0
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.6
△ 7.4
△ 7.4
△ 7.2
△ 7.0
△ 6.8
証書貸付
493,986
485,532
484,045
495,078
490,499
491,932
494,014
493,185
495,820
496,224
496,200
500,898
497,248
496,760
498,000
498,348
498,370
500,069
502,039
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.3
1.0
1.3
1.1
1.2
0.8
1.1
1.2
0.9
1.1
0.9
0.9
1.5
1.6
1.6
1.6
1.6
当座貸越
35,984
34,567
33,506
31,774
31,717
30,223
30,069
30,357
31,598
30,186
30,614
30,254
29,986
30,067
30,473
29,091
29,423
29,153
28,937
前年同月比
増 減 率
△ 6.5
△ 3.9
△ 3.0
△ 4.5
△ 5.3
△ 5.5
△ 6.1
△ 4.2
△ 4.4
△ 5.6
△ 4.2
△ 4.7
△ 4.1
△ 3.7
△ 3.8
△ 4.7
△ 4.0
△ 3.5
△ 3.7
(備考)2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別貸出金
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
(単位:億円、%)
北海道
29,377
29,521
29,628
30,095
29,855
28,524
28,792
28,845
29,485
29,731
29,604
30,313
29,481
29,574
29,999
29,459
29,051
29,029
29,237
近 畿
136,814
130,271
124,418
125,340
122,626
121,845
122,789
121,660
122,425
122,441
121,775
123,521
121,850
121,622
121,978
122,233
121,457
121,620
122,599
前年同月比
増 減 率
△ 2.7
0.4
0.3
0.7
0.7
0.9
1.4
0.3
1.3
1.3
0.5
0.7
0.0
0.3
0.4
1.0
1.8
1.7
1.5
前年同月比
増 減 率
△ 5.5
△ 4.7
△ 4.4
△ 1.7
△ 1.4
△ 1.5
△ 0.8
△ 2.1
△ 1.4
△ 1.0
△ 2.2
△ 1.4
△ 2.1
△ 1.9
△ 0.5
0.1
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.1
東 北
24,875
24,520
24,413
24,136
23,865
23,242
23,350
23,303
23,543
23,531
23,467
23,624
23,352
23,406
23,463
23,235
22,941
22,966
23,062
中 国
31,863
30,826
30,140
30,114
29,815
29,412
29,567
29,492
29,702
29,577
29,470
29,852
29,494
29,591
29,537
29,269
28,914
28,996
29,179
前年同月比
増 減 率
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.4
△ 1.5
△ 2.2
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.3
△ 1.6
△ 1.6
△ 2.1
△ 2.1
△ 2.4
△ 2.2
△ 1.6
△ 1.2
△ 1.4
△ 1.1
△ 1.2
前年同月比
増 減 率
△ 4.7
△ 3.2
△ 2.2
△ 1.8
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.5
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.9
△ 0.5
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.3
東 京
131,381
125,915
124,445
126,390
123,525
123,115
124,253
123,066
123,743
123,851
123,456
125,326
123,555
123,201
123,026
123,043
122,109
122,684
123,667
四 国
11,060
10,974
10,823
10,893
10,800
10,628
10,664
10,673
10,774
10,748
10,732
10,874
10,731
10,715
10,753
10,629
10,583
10,627
10,633
前年同月比
増 減 率
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.1
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.9
△ 0.2
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.6
△ 1.4
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.4
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.3
△ 0.0
△ 0.2
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.5
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.4
△ 0.6
△ 0.0
△ 0.2
関 東
125,418
120,357
116,756
118,457
116,513
115,517
116,136
115,785
117,045
116,937
116,916
118,592
117,144
116,879
117,256
116,611
116,091
116,319
116,893
九州北部
11,797
11,551
11,575
11,553
11,406
11,184
11,261
11,197
11,311
11,345
11,331
11,502
11,362
11,371
11,364
11,284
11,176
11,223
11,346
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 4.0
△ 1.9
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
0.0
△ 0.6
0.0
0.2
△ 0.2
0.1
△ 0.4
△ 0.6
0.6
0.7
0.6
0.6
0.6
前年同月比
増 減 率
△ 1.9
△ 2.0
0.2
△ 1.5
△ 1.4
△ 1.7
△ 1.2
△ 2.3
△ 1.0
△ 0.6
△ 1.2
△ 0.4
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.3
0.0
△ 0.0
0.3
0.7
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
( 3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
96
信金中金月報 2005.9
北 陸
20,088
19,287
19,061
19,077
18,768
18,580
18,722
18,666
18,703
18,680
18,693
18,940
18,661
18,632
18,633
18,575
18,451
18,424
18,543
南九州
16,530
15,972
15,489
15,788
15,470
15,336
15,412
15,473
15,586
15,616
15,653
15,892
15,687
15,615
15,362
15,223
15,187
15,161
15,192
前年同月比
増 減 率
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.1
△ 1.7
△ 1.5
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.4
△ 0.8
△ 0.9
前年同月比
増 減 率
△ 2.5
△ 3.3
△ 3.0
△ 0.5
△ 0.1
0.6
0.7
0.6
0.5
0.7
0.3
0.6
0.6
0.3
0.6
1.2
0.9
0.1
△ 0.1
東 海
121,487
119,553
118,573
120,157
118,715
116,943
117,776
117,196
118,796
118,238
117,737
119,853
118,060
117,752
118,485
117,572
116,900
117,159
118,117
全国計
661,879
639,805
626,342
633,013
622,364
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
619,837
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
615,243
619,498
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.8
△ 0.2
0.1
△ 0.1
0.3
△ 0.6
0.0
0.2
△ 0.8
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.1
0.4
0.2
0.1
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 1.1
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
0.0
△ 0.0
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
建設業
2001. 3
661,877
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
459,368
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.3
69.4
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△ 8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
03. 3
626,341
△ 2.1
100.0
415,266
△
4.5
66.3
86,148
△ 7.9
13.7
65,273
△
8.5
10.4
03. 9
12
625,429
633,012
△ 0.6
△ 0.7
100.0
100.0
412,144
417,958
△ 2.5
△ 2.8
65.8
66.0
84,519
86,323
△ 5.5
△ 5.1
13.5
13.6
63,150
63,997
△ 6.4
△ 5.8
10.0
10.1
04. 3
6
9
12
05. 3
6
△ 0.6
0.7
0.5
0.5
0.1
0.0
100.0
405,336
△
2.3
65.1
82,022
61,786
△
5.3
9.9
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
400,204
405,257
411,017
404,453
400,718
△ 2.2
△ 1.6
△ 1.6
△ 0.1
0.1
65.0
65.1
65.3
65.1
65.1
80,845
81,511
83,493
79,376
78,001
△ 4.7
4.5
3.5
3.2
3.2
3.4
13.1
615,319
622,104
629,294
620,947
615,241
13.1
13.1
13.2
12.7
12.6
59,001
60,444
61,279
59,463
57,123
△
△
△
r△
△
4.8
4.2
4.2
3.7
3.1
9.5
9.7
9.7
9.5
9.2
622,363
r
年 月 末
3
3
3
9
12
04. 3
6
9
12
05. 3
6
卸売業
2001.
02.
03.
03.
年 月 末
r
39,320
36,758
34,242
33,991
34,913
33,039
32,441
32,689
33,621
32,320
31,863
△
△
△
△
r
小売業
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.5
6.8
3.9
3.6
3.5
4.0
3.8
3.7
2.1
1.7
5.9
5.7
5.4
5.4
5.5
5.3
5.2
5.2
5.3
5.2
5.1
r
46,558
42,824
39,615
38,719
38,724
37,328
36,586
36,632
36,058
34,509
33,935
102,545
r
飲食店
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.7
8.0
7.4
6.1
5.5
5.7
6.0
5.3
6.8
7.4
7.1
7.0
6.6
6.3
6.1
6.1
5.9
5.9
5.8
5.7
5.5
5.5
r
前年同月比
構成比
増 減 率
80,128
77,123
86,079
△ 3.8
△ 3.7
―
12.1
12.0
13.7
11,762
13,527
15,680
0.5
15.0
15.9
1.7
2.1
2.5
190,747
191,192
195,395
03. 9
12
04. 3
6
9
85,644
86,286
83,956
83,353
83,992
―
―
△ 2.4
△ 2.4
△ 1.9
13.6
13.6
13.4
13.5
13.5
13,957
14,630
16,932
15,293
15,615
8.8
8.9
7.9
12.1
11.8
2.2
2.3
2.7
2.4
2.5
84,233
80,908
80,333
△ 2.3
r△ 3.6
△ 3.6
13.3
13.0
13.0
16,224
18,529
17,371
10.8
9.4
13.6
2.5
2.9
2.8
r
r
不動産業
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
r△
△
6.1
7.0
6.2
5.9
6.4
6.8
6.3
6.0
5.7
6.8
7.4
2.3
2.2
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
2.0
1.9
1.9
1.8
前年同月比
構成比
増 減 率
2001. 3
02. 3
03. 3
12
05. 3
6
△
△
△
r△
△
78,299
r
71,861
74,989
78,140
80,660
81,759
82,306
83,358
85,104
86,796
92,942
94,618
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.4
11.8
前年同月比
構成比
増 減 率
△
1.8
4.3
4.2
5.8
5.5
5.3
5.1
5.5
6.1
12.9
13.5
10.8
11.7
12.4
12.8
12.9
13.2
13.5
13.6
13.7
14.9
15.3
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
15,623
14,524
13,622
13,265
13,110
12,684
12,526
12,456
12,353
11,812
11,589
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.1
15.4
r
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
2.2
0.2
2.1
28.8
29.8
31.1
123,501
127,347
134,682
1.8
3.1
5.7
18.6
19.9
21.5
199,328
200,424
200,095
199,822
201,232
2.9
2.9
2.4
1.6
0.9
31.8
31.6
32.1
32.4
32.3
139,909
142,644
143,110
143,772
144,922
6.9
7.0
6.2
5.2
3.5
22.3
22.5
22.9
23.3
23.2
202,053
197,965
197,152
0.8
△ 1.0
△ 1.2
32.1
31.8
32.0
146,884
143,956
144,394
2.9
0.6
0.4
23.3
23.1
23.4
r
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一致
しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
4.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
97
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03.12
04. 3
6
04. 7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
6
7 p
現 金
14,238
19,391
17,492
18,842
16,040
15,385
15,848
15,075
15,158
14,069
16,882
19,237
17,348
15,645
19,162
17,584
17,297
16,105
16,355
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6)
2,175
1,575
0
3,095
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
200,710(△ 0.0)
410
186,621(△ 1.8)
549
449
0
4,238
208,705(
5.0)
410
194,193(
3.2)
482
372
0
4,053
206,143(
6.9)
410
166,545(
2.0)
1,119
1,119
0
3,439
211,157(
8.5)
380
193,205(
4.9)
542
432
0
3,697
206,939(
5.7)
380
192,468(
3.9)
573
473
0
3,796
210,465(
5.2)
420
195,406(
3.2)
725
625
0
4,005
208,091(
5.9)
400
193,875(
4.1)
691
611
0
3,782
213,959(
3.5)
390
199,134(
1.7)
768
668
0
3,667
199,157(
1.4)
290
150,939(△ 2.4)
2,472
1,555
0
3,142
222,345(
7.8)
480
208,331(
6.8)
837
737
0
3,412
219,612(
6.3)
490
205,818(
5.4)
580
510
0
3,645
227,835(
9.9)
490
213,816( 10.3)
629
579
0
3,758
217,657(
8.4)
460
203,609(
9.1)
534
494
0
3,915
金銭の
信 託
4,057
3,103
2,463
3,297
2,729
3,089
3,167
3,164
3,202
3,238
3,283
3,275
3,265
3,245
2,678
2,992
2,993
2,987
3,020
198
188
197
208
159
152
150
135
121
112
95
91
86
102
78
74
74
77
79
有価証券
国
221,566(
236,169(
248,064(
267,560(
268,761(
281,796(
283,389(
280,791(
277,917(
278,075(
279,339(
278,968(
279,949(
283,005(
287,574(
278,770(
280,561(
282,057(
286,957(
11.7)
6.5)
5.0)
10.9)
8.3)
9.1)
8.0)
4.2)
2.5)
3.0)
3.7)
4.2)
4.5)
6.5)
7.0)
2.3)
2.5)
0.1)
1.2)
貸付信託 投資信託
58
24
17
4
2
2
2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14,226
8,034
5,176
6,106
5,650
6,315
6,631
6,691
6,519
6,787
6,933
6,831
6,893
6,910
6,745
7,346
7,679
7,797
7,919
債
50,807(
58,911(
62,730(
68,790(
73,655(
78,190(
79,303(
77,171(
76,097(
74,316(
74,306(
74,933(
75,610(
78,216(
82,465(
75,776(
76,348(
76,635(△
78,777(△
地方債
34.6)
15.9)
6.4)
32.0)
17.4)
24.3)
21.6)
10.7)
4.5)
4.1)
6.2)
8.9)
8.8)
14.4)
11.9)
2.1)
4.2)
1.9)
0.6)
20,554
24,778
24,914
26,237
26,755
29,244
29,426
29,603
29,675
30,000
30,356
30,329
30,554
30,956
31,460
30,855
31,081
31,518
32,307
短期社債
―
―
0
0
0
1
2
2
2
3
3
3
4
3
3
142
261
459
519
社
余資運用 信金中金
その他の 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 (A)
36,743(
7.4)
346
439,243
166,783
39,660(
7.9)
442
445,987
159,156
41,917(
5.6)
565
468,216
159,131
48,380( 11.7)
630
495,024
189,285
46,121( 10.0)
643
489,360
154,855
48,751(
6.2)
619
512,578
193,808
48,992(
3.7)
625
508,054
186,621
49,106(
2.9)
619
512,408
194,193
48,485(
1.5)
630
507,102
166,545
49,090(
2.4)
631
510,893
193,205
49,592(
2.8)
637
510,910
192,468
49,677(
2.6)
638
516,770
195,406
49,787(
3.3)
635
513,216
193,875
49,240(
2.7)
639
520,393
199,134
47,983(
4.0)
1,102
514,265
150,939
48,024(
1.3)
1,034
526,018
208,331
48,113(
0.7)
1,049
524,765
205,818
48,009(△ 1.4)
1,072
533,452
213,816
48,897(△ 0.1)
1,092
528,519
203,609
外国証券
債
92,497(
99,328(
108,534(
112,821(
110,483(
113,591(
113,222(
112,321(△
111,146(△
111,813(△
112,094(△
111,153(△
111,067(△
111,614(
111,680(
110,028(△
110,374(△
110,854(△
111,722(△
公社公団債
6.7) 15,595
7.3) 21,166
9.2) 27,267
5.0) 33,364
1.7) 33,875
0.8) 37,211
0.2) 37,412
2.0) 37,170
1.7) 37,083
1.1) 37,430
1.2) 37,719
1.4) 37,854
1.2) 38,097
0.0) 38,674
1.1) 39,070
1.8) 38,369
1.8) 38,579
2.3) 38,639
1.3) 39,277
預貸率 (A)
/預金
63.7
62.2
60.4
59.2
58.9
57.4
57.8
57.4
58.0
57.9
57.8
57.9
57.7
57.3
57.7
56.8
56.8
56.4
56.9
42.3
43.3
45.2
46.3
46.3
47.8
47.4
47.7
47.3
47.5
47.6
47.5
47.7
48.1
47.8
48.4
48.5
48.9
48.5
金融債
31,849
34,374
37,894
35,081
34,274
34,586
34,368
33,987
33,661
33,582
33,457
32,789
32,635
32,700
32,452
31,926
32,075
32,306
32,419
その他
45,052
43,787
43,372
44,376
42,334
41,793
41,441
41,163
40,401
40,800
40,918
40,509
40,334
40,239
40,158
39,732
39,720
39,907
40,024
信金中金月報 2005.9
株 式
6,325
4,987
4,206
4,587
5,449
5,079
5,182
5,273
5,358
5,429
5,413
5,399
5,395
5,422
6,131
5,560
5,651
5,709
5,720
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
21.3
22.9
23.9
25.0
25.4
26.2
26.4
26.1
25.9
25.9
26.0
25.6
26.0
26.2
26.7
25.6
25.9
25.8
26.3
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
( 3.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
98
商品有価
証
券
16.0
15.4
15.3
17.7
14.6
18.0
17.4
18.1
15.5
17.9
17.9
17.9
18.0
18.4
14.0
19.1
19.0
19.6
18.7
37.9
35.6
33.9
38.2
31.6
37.8
36.7
37.8
32.8
37.8
37.6
37.8
37.7
38.2
29.3
39.6
39.2
40.0
38.5
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
2001. 3
1,038,043
02. 3
1,028,198
03. 3
03.12
(債券、信託
を含む。) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む。) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
△ 0.0
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
1.0
04. 3
1,055,175
1.8
6,798,238
△
0.0
4,420,297
△ 0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
0.6
6
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677
△ 0.0
△
04. 7
1,069,663
1.8
6,799,707
2.4
4,411,376
3.4
2,807,968
1.7
2,420,989
2.0
1,832,415
0.4
8
1,071,058
1.3
6,775,417
1.8
4,394,076
2.9
2,801,325
1.1
2,413,968
1.2
1,827,581
△ 0.2
9
1,070,466
1.5
6,766,095
1.8
4,390,204
2.7
2,812,367
1.4
2,422,226
1.5
1,818,903
0.1
10
1,072,481
2.0
6,772,980
2.9
4,402,443
3.7
2,810,390
2.8
2,426,064
3.0
1,840,313
2.6
11
1,070,447
1.4
6,834,275
2.7
4,455,299
3.9
2,856,652
3.2
2,466,062
3.3
1,848,023
1.7
12
1,085,557
1.6
6,805,698
1.9
4,397,021
2.5
2,797,507
1.4
2,410,195
1.7
1,868,042
2.3
05. 1
1,073,341
1.6
6,796,554
2.1
4,421,376
2.7
2,811,261
1.8
2,416,332
1.5
1,842,403
2.3
2
1,078,486
1.6
6,820,506
1.9
4,434,605
2.5
2,812,815
1.4
2,421,313
1.3
1,851,089
2.2
3
r 1,074,324
1.8
6,902,096
1.5
4,483,596
1.4
2,862,150
0.7
2,470,227
0.5
1,878,876
2.9
4
1,085,423
2.1
6,909,364
1.4
4,488,501
1.3
2,857,610
1.1
2,470,674
1.1
1,880,588
2.8
5
1,079,152
1.6
6,923,710
1.3
4,516,268
1.5
2,884,859
1.2
2,493,531
0.9
1,871,665
2.0
6
1,088,655
1.6
6,884,387
0.9
4,452,269
0.8
2,826,387
0.8
2,436,783
0.8
1,889,928
2.1
7
p 1,087,216
1.6
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
△ 0.6
0.2
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△ 0.3
03.12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
2,300,362
△ 2.4
11,099,909
△
04. 3
552,400
△
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820
△ 2.5
11,175,236
△ 0.1
1.3
0.3
6
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
p 2,261,257
△ 2.6
p11,219,869
04. 7
555,916
0.9
154,249
2.3
140,296
3.0
771,625
2.2
p 2,247,216
△ 2.8
p11,182,756
1.2
8
553,760
0.2
154,457
1.8
139,624
2.7
773,108
2.1
p 2,241,378
△ 3.1
p11,155,042
0.7
9
556,988
0.6
155,056
2.1
138,731
2.6
769,856
2.3
p 2,216,109
△ 3.6
p11,116,313
0.7
10
530,224
△
2.8
155,101
2.4
138,658
2.8
774,911
2.4
p 2,214,131
△ 3.7
p11,128,262
1.3
11
530,953
△
3.3
154,474
1.9
138,083
2.4
774,666
2.3
p 2,193,274
△ 4.2
p11,165,219
1.1
12
540,635
△
3.2
156,737
2.1
140,959
2.1
783,907
2.2
p 2,193,498
△ 4.6
p11,166,356
0.5
05. 1
532,775
△
3.0
155,504
2.1
140,265
2.2
778,575
2.3
p 2,178,929
△ 5.0
p11,123,168
0.6
2
534,812
△
3.1
155,950
2.0
140,289
2.1
780,957
2.2
p 2,174,183
△ 5.2
p11,150,371
0.4
3
539,624
△
2.3
156,095
2.3
138,604
2.1
776,685
2.2
p 2,141,330
△ 5.8
p11,189,134
0.1
4
540,275
△
2.3
157,121
2.6
140,826
2.0
780,703
2.2
p 2,135,480
△ 6.0
p11,208,917
5
535,777
△
3.0
156,417
2.2
140,028
1.8
778,768
2.0
p 2,110,746
△ 6.4
p11,188,821
6
542,190
△
2.7
142,541
1.5
p 2,110,407
△ 6.6
p 2,095,013
△ 6.7
7
0.0
△
0.1
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
99
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
信用金庫
年 月 末
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
03.12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
△ 0.7
04. 3
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△ 5.4
1,352,081
△ 0.0
420,236
△ 2.0
91,234
△ 0.3
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△ 4.7
1,324,230
△ 0.4
413,043
△ 0.0
90,456
△ 0.0
04. 7
619,714
△
0.2
2,283,623
△
2.6
1,915,566
△ 2.9
1,331,384
△ 0.2
415,252
0.1
90,910
0.0
8
616,348
△
1.2
2,288,310
△
3.0
1,920,610
△ 3.3
1,320,041
△ 1.4
412,277
△ 0.8
90,721
△ 0.4
△ 0.1
9
622,105
△
0.5
2,298,590
△
3.2
1,920,894
△ 3.6
1,330,223
△ 1.1
415,191
△ 0.2
91,404
10
621,686
△
0.2
2,262,948
△
3.1
1,889,727
△ 3.7
1,349,841
1.0
396,849
△ 4.3
91,469
0.0
11
619,837
△
1.1
2,261,103
△
4.0
1,885,709
△ 5.0
1,348,112
0.6
396,574
△ 5.0
91,532
△ 0.2
12
629,296
△
0.5
2,262,020
△
4.2
1,885,334
△ 5.3
1,373,768
1.5
404,221
△ 4.6
92,358
△ 0.0
05. 1
620,383
△
1.1
2,242,250
△
4.2
1,864,138
△ 5.4
1,362,481
1.2
398,503
△ 5.1
91,546
△ 0.4
2
619,366
△
1.1
2,240,982
△
3.8
1,868,226
△ 4.2
1,365,368
1.2
398,228
△ 5.1
91,519
△ 0.4
3
620,948
△
0.2
2,243,788
△
4.3
1,869,540
△ 4.5
1,372,381
1.5
403,403
△ 4.0
91,836
0.6
4
618,219
0.1
2,225,183
△
2.9
1,845,500
△ 3.5
1,363,867
2.0
400,287
△ 3.4
91,306
0.6
5
613,898
△
0.0
2,204,388
△
3.6
1,825,122
△ 4.6
1,353,910
2.1
397,502
△ 3.7
90,893
0.5
6
615,243
△
0.0
2,200,208
△
3.5
1,824,916
△ 4.4
1,354,609
2.2
399,866
△ 3.1
619,498
△
0.0
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
7
p
労働金庫
年 月 末
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合 計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
03.12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 3
92,664
6.1
214,871
0.1
1,531,569
△ 5.2
274,726
△ 1.7
605,947
△ 9.8
6,669,640
△ 2.9
△
6
92,663
5.3
214,190
0.3
1,522,584
△ 5.2
272,745
△ 2.0
595,953
△ 9.6
6,553,079
△ 2.8
04. 7
92,746
5.1
214,457
0.2
1,518,198
△ 4.7
277,180
0.0
589,569
△ 9.4
6,566,284
△ 2.0
8
93,061
4.7
214,776
0.1
1,508,032
△ 4.7
274,463
△ 0.7
583,785
△ 9.0
6,543,566
△ 2.5
9
93,555
4.3
214,504
△
0.0
1,496,693
△ 4.6
277,060
△ 0.3
578,784
△ 8.7
6,562,265
△ 2.4
10
94,046
3.9
214,153
△
0.2
1,489,838
△ 4.5
275,243
△ 0.0
575,288
△ 8.6
6,520,830
△ 2.1
11
94,448
3.5
213,602
△
0.5
1,483,737
△ 4.8
273,841
△ 1.3
572,517
△ 8.6
6,508,945
△ 2.8
12
94,852
3.3
212,704
△
0.3
1,480,807
△ 4.8
277,263
△ 0.9
568,428
△ 8.7
6,550,026
△ 2.6
05. 1
94,317
3.1
212,134
△
0.3
1,470,876
△ 4.9
272,692
△ 1.4
563,239
△ 8.8
6,492,490
△ 2.7
2
3.1
212,304
△
0.4
1,463,396
△ 4.8
271,484
△ 1.5
557,460
△ 9.0
6,485,827
△ 2.6
3
r
94,664
94,887
r
2.3
212,986
△
0.8
1,457,114
△ 4.8
270,971
△ 1.3
550,993
△ 9.0
6,497,343
△ 2.5
4
r
94,769
r
2.3
212,152
△
1.0
1,449,983
△ 4.8
270,052
△ 0.8
546,390
△ 9.2
6,455,766
△ 1.9
212,515
△
0.8
1,447,292
△ 5.2
266,806
△ 1.4
543,893
△ 9.5
6,415,169
△ 2.2
538,538
△ 9.6
5
94,771
2.3
6
94,625
2.1
7
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
100
信金中金月報 2005.9
ホームページのご案内
当研究所のホームページでは、当研究所の調査研究成果である各種レポート、信金中金月報のほか、統計デー
タ等を掲示し、広く一般の方のご利用に供しておりますのでご活用下さい。
また、「ご意見・ご要望窓口」を設置しておりますので、当研究所の調査研究や活動等に関しまして広くご意
見等をお寄せいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
【ホームページの主なコンテンツ】
○当研究所の概要、活動状況、組織
○各種レポート
内外経済、中小企業金融、地域金融、
協同組織金融、産業・企業動向等
○刊行物
信金中金月報、全国信用金庫概況等
○信用金庫統計
日本語/英語
○アジア主要国との貿易・投資に関する各種情報
アジア業務室ページ
○論文募集
【URL】
http://www.scbri.jp/
ISSN 1346−9479
2005年( 平 成17年 )
9月1日 発行
2005年9月号 第4巻 第9号( 通 巻390号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本誌の無断転用、転載を禁じます>
Fly UP