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Page 1 消費者行動に及ぼす敵対心の影響に関する研究の系譜と課題
消 費者 行 動 に及ぼ す敵対 心 の影響 に 関す る研 究 の系 譜 と課 題 消費 者 行動 に及 ぼす敵 対心 の影 響 に関する 研 究 の系譜 と課 題 朴 目 正沫 次 1 は じめ に 2 要 因 別 に み た 敵 対 心 研ILの 系譜 z-i.戦 争 を要 因 と し た 敵 対 心 `L一'1 .経 済 を要 因 と し た 敵 対 心 2一.3,そ の 他 を 要 因 と し た 敵 対 心 3 先行研究 の考察 4 お わ りに 1.は じめ に パ レ ス チ ナ 紛 争 、 ア メ リ カ の 同 時 多 発 テ ロ 、 イ ラ ク 戦 争 、 チ ベ ッ ト問 題 な ど世.界 各 地 で は 国 家 、 民 族 、 宗 教 、 地 域 間 の 対 立 が 絶 え な い の が 現 実 で あ る 。 ご.れ ら の 対 立 発 生 地 域 の 消 費 者 は 、 対 立 国 家 ・対 立 民 族 ・対 立 宗 教 ・対 立 地 域 か ら の 人 だ け.では.な く製.品 お よ び サ ー ビ ス に 対 して も 、 無 意 識 の う ち に 敵 対 意 識 を 持 つ と 考 え ら れ る 。 マ ー ケ テ.イ ン グ お よ び 消 費 者 行 動 研 究 で は 対 立 関 係 に あ る相 手 集 団(国 家 、 民 族 、 宗 教 、 地 域 な ど)か ビ ス に 対 す る 敵 対 的 態 度.を 、 「敵 対 心(Animosity)」 Origin)研 らの製 品 お よ び サ ー と い う テ ー マ でCOO(Counh'yOf 究 の 観 点 か ら 出 発 して ア プ ロ ー チ さ れ て き.たと考 え られ る 。 敵 対 心 研 究 は 、H-einEttensonandMorris(1998)の 研 究 か ら 始 ま り 、 わ ず か10年 しか 経 過 して い な い 。 こ の 間 の 多 く の 研 究 は 、 敵 対 対 象 と し て 国 家 を 取 り あ げ た こ と か ら 、COO (Counk'yOfOrigin)研 に つ い て は 、COO研 究 の 一 部 分 と し て 捉 え る こ と も で き る 。 敵 対 心 とCOO研 究 の 起 源 が 外 国 で 生 産 され た 製 品 に対 す る消 費 者 の メ.一 ジ 」 に 着 目 され た こ と..(Schooler1965)と し て い る こ と か ら 分 か る 。 加 え て 、COO研 、COO研 究 の関連性 「ネ ガ テ ィ ブ ・イ 究 が 国 に 対 す る イ メ ー.ジを 中 心 に 究 は消 費者 行 動 研 究 の 国 際 的 側 面 か ら最 も多 く 研 究 さ れ た テ ー マ の.....一 つ で も あ る(TanandFarley1987)。 本硬 究 は 、 消 費 者 行 動 研 究 の 中で 注 目 を集 め て い る 敵 対 心 研 究 を敵 対 要 因 別 に 考 察 す る こ と に よ っ て 、 今 後 の 研 究 の 課 題 と そ の 方 向 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 、, 一65一 消 費.者行動 に及 ぼす 敵薄 心 の影 響 に関 す る研 究 の.系譜 と課題 2。 敵 対 心 研 究 敵 対 心 に 関 す る 研 究 が1990年 後 半 以 後 の 消 費 者 行 動 研 究 の 中 でCOO研 を 集 め て い て い る 背 景 は 以 下 の3点 究 を中心に、 注 目 で あ る と考 え られ る。 第 一 に 、 市 場 の 変 化 が あ げ られ る。 世 界 経 済 の 発展 に伴 い 、 第 二 次 世 界 大 戦 後 の 生 産 者 中 心 の 市 場 は1990年 代 以 後 に は消 費 者 中 心 の 市 場 に 変 化 した の で あ る。 つ ま り、 モ ノの 供 給 が 不 足 し て い る 生 産 者 中 心 の 市 場 か ら、 モ ノ の 供 給 が 十 分 で あ る 消 費 者 中 心 の 市 場 に 変 化 し た 。 例 え ば 、 モ ノの 供 給 が 不足 して い た 時 代 に は、 特 定 国 に 対 す る敵 対 心 が持 た れ て い る に も か か わ ら ず 、 当 該 国 か ら の 製 品 を 買 わ ざ る を 得 な か っ た と 思 わ れ る 。 し か し な が ら 、1990 年 代 以 後 の消 費 者 中心 市場 の成 立 に よ り敵 対 心 を持 た れ て い る国 の 製 品 以 外 の代 替 製 品 の 選 択 が 可 能 に な っ たの で あ る 。 従 って 、 現 在 の よ うな消 費 者 中 心 市 場 で は、 敵 対 心 を 持 っ て い る 国 か ら の 製 品 お よ び サ ー ビ ス を 排 除 で き る 市 場 に な つ た と い え る。 第 二 に 、 世 界 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 に よ る 不 均 衡 の 問 題 が 考 え ら れ る 。 世.界経 済 の グ ロ ー.バ ル 化 に よ っ て 、FTA締 結 の よ うな 二 国 間 の 自由 貿 易 が 活 発 に な っ て は い る が先 進 国 と開 発 途 一.LI国 お よ び低 開 発 国 間 の 貿 易収 支 の 不 均 衡 は 解 決 で きて い な い 。 多 くの 国 々 で は貿 易 収 支 の 赤 字 が さ ら に 深 化 しつ つ あ る 。 よ っ て1特 定 国 か らの 商 品 お よ び サ ー ビ ス に よ っ て 、 消 費 者 自 身 だ け で は な く 、身 の 回 り の 人 々 の 生 活 が 脅 か さ れ て い る 。 例 え ば 、 輸 入 品 の 増 加 に よ り、 国 内 産 業 へ の 悪 影 響 が 大 き く な り 当 該 産 業 の.失業 に ま で 繋 が る と 、 特 定 国 に 対 す る 経 済 的 敵 対 心 は 一 層.高 ま る と 予 想 さ れ る1;。 第 三 に 、 政 治 的 な 要 因 が あ る 。 つ ま り、IEIソ 連 の 崩 壊 後 、9.11,イ ラ ク戦 争 な ど の ア メ リ カ 中心 の 世 界 秩 序 に 対 す る反 感 の 高 ま りで あ る。 特 に 、 対 イ ラク 戦 争 後 に ヨー ロ ッパ で 行 わ れ た ア メ リ カ に 対 す る 好 感 度 調 査 で も 、 か な り の 好 感 度 低 下 が 伺 え るz;。 特 に 、 ア メ リ カ イ .メー ジ が 強 い ブ ラ ン ド で あ るAmericanExpress,AOL,AmericanAirlines,Marlboro, McDonald'S,Budweiser,BazbieDollandChevronTexaccな 答 者 が 、 全 体 の5分 ギ リ ス12%)、 の1に ど の ブ ラ ン ドを 買 わ な い と い う 回 も な っ て い る こ と が 分 か っ た 。(フ ラ ン ス2].%、 ドイ ツ18%、 イ 一 方 、 ア メ リ カ 的 な イ メ ー ジ が 比 較 的 に 薄 い ブ ラ ン ドで あ るKleenex,Kodak, Visa,Heinz、EsteeLauderと 、 主 な 代 替 品 が 存 在 し な い マ イ ク ロ ソ フ トに 対 す る ネ ガ テ ィ ブ 影 響 は 大 き く な か っ た3;。 これ らの背 景 に よ っ て 、 マ ー ケ テ ィ ング お よ び 消 費 者 行 動 に お け る敵 対 心 研 究 は 近 年 注 目 され て い る と考 え られ る。 敵 対 心 の 先 行研 究 に お い て敵 対 心 の背 景 別 にみ る と、 戦 争 、 軍 事 的 衝 突 に よ る敵 対 心 、経 済 的 敵 対 心 、 そ の 他 の要 因 に 区 分 す る こ とが で き る。 各 要 因 別 に 図 表1に 収 め た。 一66一 消費 者行 動 に及ぼす 敵対 心 の影響 に関す る研究 の系 譜 と課題 図 表1.敵 対 心 研 究 の 系 譜4) 卸 簗 2-1.戦 争 を要 因 と した敵対 心 戦 争 、 軍 事 的衝 突 な ど を 中 心 と し た研 究 が 最 も 多 い。 これ らの 研 究 の 多 くは、 第 二 次 世 界 大 戦 の 侵 略 の 被 害 か ら の 敵 対 心 を 扱 っ て い る(Klein,Ettenson,andMorris1998;Kleinand Ettenson1999;Klein2002:NijssenandDouglas2004;Shimp,Dunn,andKlein2004; 朴2005;HonagandKang2006;Shoham,Davidow,H-ein,andRuvio2006;古 Klein,Ettenson,andMorris(1998>は 川 ・金2007)。 、 初 め て 敵 対 心 と い う概 念 を 確 立 し た 。 彼 ら は 、 ShimpandSharama(1987)のCETSCALC(Consumerethnocentrictendencyscale)モ (1997)を デル 踏 ま え た.r.で 、 敵 対 心 と い う観 点 か ら 中 国 の 南 京5}に お い て 敵 対 心 が 製 品 評 価 と 購 買 意 図 に 与 え る 影 響 を調 査 し た 。 調 査 の 結 果 、敵 対 心 は エ ス ノ セ ン ト リズ ム と は 異 な っ て 、 製 品 の 品 質 は高 く評価 す る が 、購 買 意 図 に は負 の 影 響 を 与 え る と い う こ とが 実 証 され た。 調 査 対 象 地 は 中 国 の 南 京 で あ り、 敵 対 要 因 は 第 二 次 世.界大 戦 中 の 南 京 大 虐 殺 に よ る 敵 対 心 と 経 済 的 敵 対 心 で あ っ た 。 そ の モ デ ル が 以 下 の 図 表2で KleinandEttenson(1999)は (NationalElectionStudy)の あ る。 、 ア メ リ カ 市 民 を 対 象 に し た1992年 調 査 デ …52,`L25名 の 国 家 選 挙 研 究 分 を 用 い て 、 敵 対 心 と エ ス.ノ セ ン ト リズ ム の 関 連 性 を 分 析 し た 。 こ の 調 査 で は 、 被 験 者 の 社.会経 済 的 側 面 だ け で は な く人 口 統 計 的 側 面 ま で 詳 細 に デ ー タ分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 か ら 、 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム は 女 性 で か つ 社 会 的 地 値 が 低 い 層 に 多 く 見 ら れ る こ と が 明 ら か に な っ た 。...・ 方 、 ア ジ ア 人 に 対 して ネ ガ テ ィ ブ な 態 度 を持 っ て い る高 齢 の 白人 の 消 費者 は 、 日本 に 対 す る敵 対 心 が 高 い こ とが 示 され た。 この 研 究 に よ っ て 、 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム と敵 対 心 に 対 す る ア メ リ カ 人 の 人 口 統 計 的 、 社 会 経 済 的 な ア プ ロ ー チ が で き た と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら 、 ア メ リ カ 経 済 が 最 も 低 迷 して い た 時 期6; で あ る と 思 わ れ る1992年 の 選 挙 の 際 に 行 っ た 調 査 で あ る 点 はzす 一67一 べ きで あ る。 消 費者 行 動 に及 ぼす 敵対 心の影 響 に関す る研 究 の系 諮 と課題 図 表2,敵 対 心モデル 6漏 塵 〉 一(壷 》 ノ ㊥型 (,4U所)Klein,Ettens〔}n,andMorris(1998) Klein(2002)は 、 敵 対 心 とエ ス ノ セ ン トリズ ム は 異 な る構 造 を持 っ て お り、 消 費 者 が利 用 で き る商 品集 合 に よ って 違 う役 割 をす る こ と を示 した 。例 え ば、 外 国 製 品 の み の 集 合 に お け る消 費 者 の 選 択 に は 特 定 国 に 対 す る 敵 対 心 が 影 響 す る が 、 外 国 製 品 と 国 産 製 品 の 集 合 の 選 択 に は エ ス.ノセ ン ト リ.ズム が 関 連 す る と い う 。 ア メ リ カ で 行 わ れ た こ の 調 査 で は 、 敵 対 国 家 は 日本 で あ り、 代 替 案 の 外 国 製 品 は 韓 国 で あ る 。 敵 対 心 に 対 す る 質 問 項 目 は 、 第 二 次 世 界 大 戦 を 要 因 と し た 敵 対 心 と 経 済 的 敵 対 心 で あ り 、 そ の 中 に は 、 第...7=次 世 界大戦 中の真珠湾攻 撃 に 対 す る怒 り も 入 っ て い る 。 NijssenandDouglas(2004)は 、 海 外 の 輸 入 依 存 度 が 高 い 国(オ ラ ン ダ)に お け る敵 対 心 とエ ス ノ セ ン ト リ.ズム の 影 響 を 調 査 し た.。調 査 結 果 に よ っ て 、 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム と 敵 対 心 は 外 国製 品 の 評 価 に 多 大 な影 響 を与 え る こ とが 明 らか とな っ た。 敵 対 心 対 象 国家 は ドイ ツ で あ り、 敵 対 要 因 は 第 二 次.世界 大 戦 を 要 因 と し た 経 済 的 敵 対 心 で あ る 。 調 査 対 象 製 品 は 、 国 内 ブ ラ ン ドが 存 在 し な い 製 品 カ テ ゴ リ ー と し て 自 動 車 を 、 有 力 な 国 内 の ブ ラ ン ド(フ ス)が ィ リ ップ 存 在 す る製 品 カ テ ゴ リ ー と して テ レ ビ を 調 査 最 象 製 品 に し た 。 朴(2005>は 、2004年 当 時 の 韓 国 ・中 国 に お け る 反 日感 情 の 標 的 と な っ て い た 当 時 の 小 泉 首 相 の 靖 国 神 社 参 拝 と領 圭 問 題(竹 (1987>の 島 、 尖 閣 諸 島)を エ ス ノ セ.ン ト リ ズ ム のCETSCALEを 敵 対 要 因 と し、ShimpandSharama 採 用 し て 、 日本 ・韓 国 ・中 国 に お け る 比 較 調 査 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム が 日本 ・韓 国 ・中 国 の 消 費 者 行 動 に 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、 敵 対 心(反 日感 情 〉 は 、 韓 国 と中 国 の消 費 者 に お い て は 知 覚 品 質 と購 買 意 図 に直 接 的 に影 響 しな い こ と が 明 らか に な っ た。 HongandKang(2006)は い 場.合 の み 、 製 品 のCOOに Shimp,Dunn,andKlein(2004)は 、 製 品へ の 評 価 が原 産 国 へ の 評 価 を 基礎 と して形 成 され て い な 向 か っ た 敵 対 心 が 負 の 影 響 を及 ぼ す こ と を 明 ら か に し た 。 、n間 の 敵 対 心(H-ein.,Etttenson,andMorris1998) を 国 家 内 の 地 域 間 に お け る 敵 対 心 に 適 応 し 、 地 域 的 敵 対 心(RegionalAnimosity)の 一65一 構造 を 消 費 者行 動 に及 ぼす 敵対 心 の影響 に 関す る研 究 の系譜 と課 題 明 ら か に した。 地 域 的 敵 対 心 は 、 人 は 自 分 の 地 理 的 地 域(内 集 団)の 集 団)を 選 好 し、 他 の 地 域(外 人 に対 して敵 対 心 を持 つ こ と を示 す 。 社 会 ア イ デ ンテ ィテ.イ理 論 、 ス テ レオ タ イ プ の 活 性 化 、 敵 対 心 な どが、 この 地 理 的 敵 対 心 の 理 論 的 枠 組 み とな っ た。 こ の研 究 は ア メ リカ の 南 北 戦 争 を背 景 とす るア メ リカ の 南 部 と北 部 に残 存 す る 国 内 の 地 域 間 に お け る敵 対 心 を対 象 と しtこ の 研 究 に よ って 、 地域 的 敵 対 心 が 存 在 し測 定.可能 な 現 状 で あ る こ とが明 らか に な っ た 。 さ らに、 地 域 的 敵 対 心 は 購 買 選 択 に 影 響 して 内 集 団 地 域 か らの 選 択 に価 格 プ レ ミア ム を払 う意 思 が あ る こ とが 示 され.た。 Shoham,llavidow,Klein,andRuvio(2006)は 、 教 条 主 義(Dogmatism)、 (nationalism>、 国 際 主 義(lnternationalism)が 民族 主 義 敵 対 心 に与 え る 影 響 を明 らか に し た。 この 研 究 で は 、 国 家 間 の敵 対 心 で は な く国 内 の 民 族 間 に お け る敵 対 心 を調 査 した 。 敵 対 心 は 、 イ ス ラ エ ル 国 内 の ア ラ ビア系 イ ス ラエ ル 人 に 対 す るユ ダ ヤ 系 イ ス ラエ ル 人 の 敵 対 心 で あ る。 敵 対 背 景 と して は 、パ レ スチ ナ地 域 で2度 に 渡 って 起 こ っ た イス ラエ ル の軍 事 占領 に対 す る イ ン テ ィ フ ァー ダ 仮 イ ス ラエ ル 闘 争)に よ る ア ラ ブ系.に対 す る イ ス ラ エ ル 人 の 反 感 を背 景 と す る。 調 査 項 目は、 イ ン テ ィフ ァ ー ダ に よ る ア ラ ブ人 に 対 す る敵 対 心 とア ラ ブ系 イス ラ エル 人 に対 す る経 済 的 敵 文寸心 で あ っ た 。 調 査 の 結 果 、 教 条 主 義 と民 族 主 義 は 敵 対 心 に正 の 影 響 を.与 え るが 、 国 際 主義 は 敵 対 心 に 負 の 影 響 を 与 え る.こ.と が 明 らか に な つ た 。 この 研 究 に よ り、 敵 対 心研 究 が 国 家 間 の 敵 対 心 か ら国 内 の民 族 グル ー プ 問 の 敵 対 心 ま で広 が って い る こ と が示 さ れ た. 2-2.経 済 を要因 と した敵対 心 経 済 的 敵 対 心 に 関 す る研 究 は 、 前 述 のKleinF.ttenson,andMorris(1998)の 研究 におい て 戦 争 を要 因 と し た敵 対 心 の 調 査 と 同 時 に 初 め て 調 査 され た こ と が 知 られ て い る。 しか しな が ら 、COO研 (1987)に 究 に お け る 経 済 的 敵 対 心 に 関 す る 研 究 の 実 質 的 起 源 は 、ShimpandSharma よ っ て 、COO研 究 で初 め て 提 案 され た エ ス ノ セ ン トリズ ム 研 究 か らで は な い か と 考 え られ る 。 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム 研 究 の 代 表 的 尺 度 で あ るCETSCALEの 質 問項 目には、外 国 製 品 の 輸 人 に よ る被 害 か ら 自国 産 業 を守 る た め に 国 産 製 品 を 買 うべ き で あ る とい う繹 済 的 敵 対 心 か ら の 規 範 的(Normative)な 消 費 老 行 動7〕が 中 心 と な っ て い る(Obermillerand Spangenberg1989;VerleghandSteenkampl999)。 本 稿 で は 、 敵 対 心 に関 す る 研 究 を 中 心 に議 論 す るの で 、 経 済 的 敵 対 心 とエ ス ノセ ン トリズ ム のCETSCATrと の 関 連 性 に つ い て は 別 の 論 文 で 議 論 す る こ とに す る。 経 済 的 敵 対 心 は 、 戦 争 ・軍 事 的 敵 対 心 と 同 時 に 調 査 さ れ る こ と が 多 い(Klein,Ettenson,andMorris1998; H-einandEttenson1999;H-ein2002;NijssenandDouglas2004;Shoham,Davidow,Klein, andRuvio2006)。 1997年 以 下 で 、 経 済 的 敵 対 心 を 中 心 に し た 研 究 を.見て い く 。 そ の 中 で も 特 に 、 の ア ジ ア 経 済 危 機 か ら 経 済 的 敵 対 心 を 中 心 に.調1査 し たAng,Jung,Kau,Leong, 一69一 消 費者 行 動 に及ぼ す敵 対心 の影響 に 関す る研 究 の系 譜 と課題 Pornpitakpanand'Can(2004)の 研 究 に注 目 した い Ang,Jung,Kau,Leong,PornpitakpanandTan(2004)は 、1997年 ア ジ ア で起 こっ た ア ジ ア 経 済 危 機 か ら生 じた ア メ リカ と 日本 に対 す る経 済 的 敵 対 を敵 対 要 因 と して 調 査 を行 っ た 。 調 査 国 は タ イ 、 イ ン ド ネ シ ア 、u、 マ レ ー シ ァ 、 シ ン ガ ポ ー ル で あ り 、 敵 対 対 象 国 は 、 ア.メ リ カ と 日本 で あ る 。 こ の 研 究 の 特 徴 はH-ein,EttensonandMorris(1998>の 研 究 が 第..∴次 世 界 大 戦 を 背 景 と す る 政 治 的 要 因 を 主 な 敵 対 要 因 と し て 調 査 し て い た の に 対 し、 敵 対 要 因 を 経 済 的 敵 対 に し た こ とで あ る。 さ らに 、 敵 対 要 因 を 国家 に対 す る状 況 的敵 対 、 個 人 的 な状 況 的 敵 対 、 国 家 に対 す る 持 続 的 敵 対 、 個 人 的 な持 続 的 敵 対 とい う四 つ の カ テ ゴ リー に分 類 して 調 査 し た 。 調 査 の 結 果 、 消 費 者 経 済 危 機 が あ っ た 際 に は 現 地 の 製 品 へ の 購 買 に 対 して 、 よ り 愛 国 的 に な る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、 韓 国 で は 、 戦 後50年 が 経 過 し た に も か か わ らず 、 日本 に 対 す る敵 対 心 は衰 え て い な い こ とが 見 受 け られ た 。 RusselandRusse1(2006)は 、 映 画 を調 査 対 象 サ ー ビ ス と して サ ー ビス 産 業 に対 す る 敵 対 心 を調 査 した。 映 画 を 調 査 対 象 に した の は 、 映 画 産 業 の 中 心 で あ る ア メ リカ に 対 す る イ ラ ク 戦 争 以 後 の 世 界 的 な 米 国 に対 す る 敵 対 心 Hinck(2004)は 仮 米 感 情)と の 関 連 性 を考 察 す るた め で あ る。 、 ドイ ツ の 統.一一に よ っ て 発 生 し た 旧 西 ドイ ツ と 東 ド イ ツ 問 の 敵 対 心 問 題 を 取 り 上 げ た 。 ド.イツ の 内 部 に お け る 敵 対 心 の 調 査 は 、 ベ ル リ ン の 壁 の 崩 壊 後 に 経 済 的 不 均 衡 に よ っ て も た ら さ れ た 旧 西 ドイ ツ に 対 す る 旧 東 ドイ ツ の も の で あ る 。 2-3,そ の他 を要 因 と した敵対 心 最 後 に 、 上 記 の2つ の敵 対 心 に含 ま れ な い 、 そ の 他 の 敵 対 心 研 究 を紹 介 す る。 EtkensonandKlein(2005)は 、 フ ラ ンス に よ っ て 南 太 平 洋 で 行 わ れ た核 実験 を要 因 と した オ ー ス トラ リ ア 消 費 者 の フ ラ ン ス に 対 す る 敵 対 心 を 実 証 した 。 最 初 の 調 査 で は 、 オ ー ス ト ラ リア消 費 者 の 核 実 験 に 対 す る フ ラ ンス へ の 敵 対 心 は フ ラ ンス 製 品 の 品 質 に独 立 して 、 フ ラ ン ス 製 品 の 購 買 意 図 に 負 の 関 係 が あ る こ と を示 し た 。 そ の 一 年 後 に 行 っ た2回 目の 調 査 で も、 オ ー ス トラ リア 消 費 者 は フ ラ ン ス の 商 晶 に 対 し て 強 く 否 定 的 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 .Edwards ,Gut,andMavondo(2007)は 、BtoBに お け る購 買者 の 敵 対 心 を調 査 した 。 この 調 査 は 、 フ ラ ン ス の 核 実 験 を 敵 対 心 の 対 象 に し て 、 オ ー ス トラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドの 産 業 財 市 場 の 購 買 行 動 を 調 査 し た 結 果 、 産 業 財 市 場 の 敵 対 心 は 消 費 者 市 場 ほ ど 目立 た な い こ と を明 らか に した。 NakosandHajidimitriou(2007)は 、 トル コ 民 族 に よ る ギ リ シ ア 支 配 な ど 歴 史 的 な 敵 対 心 を 調 査 し た 。 調 査 対 象 は 、 一 般 の ギ リ シ ァ 人 で あ る 。 そ の 結 果 、 敵 対 心 は エ ス ノ セ ン ト リ.ズ ム と外 国 製 品 の 知 覚 品 質 と は 独 立 し て 消 費 者 の 購 買 意 図 に 影 響 す る こ と を 示 し た 。 以 上 の 敵 対 心 に 関 す る 先 行 研 究 を 年 代 順 に 図 表3に _70_ 収 め た。 消 費者 行 動 に及 ぼ す敵対 心 の影響 に関す る研 究 の系譜 と課 題 図 表3. .敵 対 心 既 究(年 代 順) 研究者 調査地 Klein,Ettenson, andMoris(1998) 中 国 〔南 京) Klein,Ettenson ア メリカ (isss) 敵対国 敵対主要 因 注 目点 敵 対心 と い う観 点 か らCOOの 南京大r殺 経済的敵対 日本 響 を与 え る。 国家 選 挙研 究 の 調 査 デ ー タzzzs名 第二次世界 大戦 経済的敵対 日本 ア メリカ 会 経 済 お よ び 人 口 統 計 的 側 面 か ら敵 対 心 とエ ス ノ セ NijssenandDouglas (eooa; オランダ 関 連 す る も の の 、 外 国 に向 か っ た 敵対 心 は 、外 国 製 品間の選択 に関連する。 戦 争 の 敵 対 心 は 外Q製 品 の 購 買 を躊 躇 す る こ とに 直 接 的 に 影 響 す る が 、経 済 的 敵 対 心 は エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム を通 じ て、 外 国 製 品 へ の 購 買 に間 接 的 に影 響 す 第二次 世界 大戦 経済的敵 対 ドイ ツ トリ ズ ム 一を分 析 した。 エ ス ノ セ ン トリズ ム は 、 国 内 と外 国 の 製品 の選 択 に 第 二次世界 大戦 経 済的敵対 日本 分 を用 い て、 敵 対 心 と エ ス ノセ ン ト リズ ム の 関連 性 を分 析 し た。 社 1ン Kleln(2002; 影 響 を調 査 。 敵 対 心 は エ ス ノセ ン トリ ズ ム よ り大 き く購 買 決 定 に 負 の 影 る。 タ イ 、 イ ン Ang,Jung,Kau, Leong,ornpitakpan antlTan(zooa) ドネ シ ア 、 韓 国 、 マ レ ー シ ア 、 シ 経済的敵対 (アジア経 済危機) ア メ リカ 、 日本 敵対 要 因 を国 家 に対 す る状 況 的 敵 対 、 個 人 的 な状 況 的敵 対 、 国 家 に 対 す る 持続 的 敵 対 、 個 人 的 な持 続 的 敵対 と い う四 つ の カ テ ゴ リー に 分 類 して調 査 した。 ン ガ ポ ー ル Shimp,Dunn,anc Klein(2004; ア メリカ Hinck(2004; ア メリカ ア メ リカ の 国内 南北戦争 イデ ン テ ィ テ ィ、 ステ レ オ タ イ プ 、 消 費 者 敵 対 心 を 理 論 的 枠 組 み で 明 ら か に した。 ベ ル ワ ン壁 の崩 壊 後 に 経 済 的 不 均 衡 に よ る 旧 西 ドイ ドイ'ン の ドイツm内 ドイ ツ 国 内 地 域 に 対 す る敵 対 心 が存 在 す る こ と を、 地 域 ア 1ツ に 対 す る 旧東 ドイ ツの 敵 対 心 を調 査 した 。 1統 … オ ー ス トラ リ ア 消 費 者 の フ ラ ン ス に 対 す る 敵 対 心 11 EttensonantlKlein オ ー ス トラ (loos; リア フラ ンス 南太平 洋で の核実験 は、 フ ラ ン ス 製 品 品 質 の 評 価 に独 立 して 、 否 定 的 購 買 意 図 に 影 響 す る。 靖国神社 日本 、 朴(2005) 日本 、 韓国 、 中国 韓国 参拝、 反 日 感 情 は韓 国 と中 国 の 消 費 者 にお い て は知 覚 品 質 領土問題 と購 買 意 図 に 直接 的 に 影 響 しな い こ と が明 らか に な (竹島 、 尖 っ た。 閣 諸 島) HongandKang (zoos; Shoham,Davidow Klein,andRuvio (zoos) RusselandRusse. (zoos) 日本 、 韓国 ドイ ツ 製品 へ の 評価 が原 産 国 へ の 評価 を基 礎 と して形 成 さ れ て い な い 場 合 の み 、 製 品 のCOOに 向 か った 敵 対 第二次世界 大戦 心 が負 の 影 響 を及 ぼ す。 イ ン テ ィフ . イ ス ラエ ル アラ ブ ア ー ダ(反 独 断 的 な 態度 、 愛 国 心 、 お よ び イ ン タ ーナ シ ョナ リ イスラエル ズ ム が.敵 対 心 に 影 響 す る こ と を実 証 した。 闘 争) 一 ア メ リカ フフンス 中国 日本 政治、 経済的 i イラ ク戦 争 後 の フラ ンス に対 す る 感 情 を映画 とい う サ ー ビス 産 業 を対 象 に敵 対 心 を 調 査 し た。 1敵 対 心 モ デ ル に 主観 的 規 範 を加 え た修 正 敵 対 モ デ ル 吉川 ・金(2007) Edwards, GutandMavondo (zoos (zom; を用 い て 、 反 日 感情 が 日系 製 品 の購 買意 図 に 直接 的 に 影 響 を与 え な い こ と を示 した。 オ ース トラ リア 、 ニ ラ Nakosantl Hajidimitrioc 第二次世界 大戦 ュ ー ン `' ン ー フ ランス 南太 平洋で の核 実験 BtoB(産 業 財)市 場 に お け る敵 対 心 の 影 響 は、 消 費 者 市場 ほ ど 目立 た な い こ と を案 証 した。 ド トル コ に対 ギ リシ ア トル コ す る過 去 の 歴 史 問題 敵 対 心 は 、 エ ス ノ セ ン トリズ ム と外 国 製 品 の 知 覚 品 質 と は独 立 して 消 費 者 の 購 買 意 図 に 影 響 す る。 _71_ F. 消 費者 行動 に及 ぼす 敵対 心の 影響 に 関す る研 究 の系 譜 と課題 3.先 行研 究 の考 察 以 上 の 敵 対 心 に 関 す る 先 行 研 究 の レ ビ ュ ー を 基 に 考 察 す る と 以.下の4点 が 考 え られ る。 第 一 に 、 第.二次 世 界 大 戦 を 背 景 と す る 戦 争 ・軍 事 的 要 因 に 対 す る 敵 対 心 が 先 行 研 究 の 中 心 に な っ て い る が 、 経 済 的 な 敵 対 心 も.付随 し て 多 く の 調 査 が さ れ て い る 。 ま た 、1997年 の .ア ジ ア 経 済 危 機 か ら 経 済 的 敵 対 心 を 中 心 に 調 査 し たAng,Jung,Kau,Leong,Pornpitakpan andTan(2004)の 研 究 は 注 目 に 値 す.る.そ の 他 の 要 因 と して 、 南 太 平 洋 に お け る フ ラ ン ス の 核 実 験 に 対 す る 敵 対 心(EttensonandKlein2005;Edwards,GutandMavondo2007)、 二 次 世 界 大 戦 か ら の 残 存 す る 敵 対 心 を 外 交 的 懸 案 問 題(2004年 参 拝 と領 土 問 題 〉 を 敵 対 要 因 と し て 捉 え た 朴(2005)の 第 当 時 の小 泉 首 柑 の 靖 国 神 社 研 究 な ど が あ るBI。 第 二 に 、 敵 対 対 象 国 は 日 本 が 最 も 多 く 、 そ の 次.に ア メ リ カ 、 ド イ ツ な ど が 挙 げ ら れ て い る 。 敵 対 心 の 調 査 対 象 国 と して 日本 が 多 く挙 げ られ た の は、 敵 対 心 研 究 の 要 因 ぶ 第 二 次 世 .界大 戦 と い う 要 因 と 、 日 本 経 済 の 対 外 依 存 度 が 高 い こ と か ら 、 日 本 製 品 が 世 界 各 国 へ 輸 出 さ れ る こ と に よ っ て 政 治 的 な 敵 対 心 だ け で は な く、 相 手 国 に お け る 経 済 敵 対 心 も 誘 発 し や す か っ た と思 わ れ る。 第 三 に 、 図 表3の 敵 対 心 研 究 の 系 譜 で も示 した よ う に 国 家 間 の 敵 対 心 だ けで は な く 、 国 内 の 民 族 間 敵 対 心(Shoham,Davidow,Klein,andRuvio2006)、 DunnandH-ein2004;Hinck2004)が 地 域 間 敵 対 心(Shimp, 研 究 さ れ た こ と が 示 され た 。 第 四 に 、 多 く の 敵 対 心 研 究 で は 、 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム も 調 査 対 象 に し.て い る(Klein, Etten・ ・nandM・ ・ri・1998;幻 ・in1999;Klei・2002;Nijssen.andD・ugl・ ・2004;ホ ト2005; NakosandHajidimi4iou2007) 敵 対 心 と エ ス ノ セ ン トリズ ム との 関 連 性 につ い て み る と以 下 の よ うで あ る。 エ ス ノ セ ン ト リ ズ ム は 、 製 品 評 価 と 購 買 意 図 に.影 響 す る(ShimpandSharma1987;Han1988; Netemyer,Durvasula,andLichtenstein1991)が 、 敵 対 心 は製 品 評 価 とは 独 立 して 購 買 意 図 に 負 の 影 響 を..与え る(Klein,Et!enson,andMorris1998>と 考 え られ る。 ま た 、 エ ス ノ セ ン トリズ ム は全 て の 外 国 製 品 に 対 して 影 響 す る が 、 敵 対 心 は 反 感 を持 た れ た特 定 の 国 だ け に ネ ガ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え る こ と が わ か る 、 さ ら に 、NijssenandDouglas(2004)は 戦争 の 敵 対 心 は外 国 製 品 の 購 買 を 躊 躇 す る こ と に 直 接 的 に 影 響 を与 え る が 、 経 済 的 敵 対 心 は エ ス ノせ ン ト リズ ム を通 じて 、 外 国 製 品 へ の 購 買 に 間 接 的 に影 響 す る と し た。 そ の 理 由 と して は 、ShimpandSharma(1sx7>のCETSCALEに 国 内 に お け る失 業 率 の 上 昇 な ど の 外 国 製 品 購 買 に よ る 経 済 的 脅 威 が 反 映 され て い る か ら で あ る と 指 摘 し て い る 。 朴(2005>の 調査 結 果 で も 、 韓 国 と 巾 国 の 消 費 者 は 日本 の 薄 型 テ レ ビ ブ ラ ン ド に 対 し 日 本 に 対 す る 反 感.(敵 心 、 反 日 感.情)は 対 知 覚 品 質 に も購 買 意 図 に も影 響 して い な い もの の 、 韓 国 と中 国消 費 者 の 一72一 一 消 費.者行 動 に及ぼ す敵対 心 の影響 に 関す る研究 の 系譜 と課題 エ ス ノ セ ン ト リム は 日本 ブ ラ ン ドの 薄 型 テ レ ビの 知 覚 品 質 と購 買 意 図 に 負 の 影 響 を 与 え る こ と が 示 され た。 4..お わ りに 以 上 の よ うに 、 敵 対 心 研 究 を概 観 す る と以 下 の よ う な課 題 が 呈 示 で き る。 第 一 に、 敵 対 心 の 敵 対 対 象 に 関 す る課 題 で あ る 。 本 研 究 で も考 察 した よ うに 多 く の 先 行 研 究 は 敵 対 対 象 を国 家 に した研 究.が多 か っ た 。COO研 究 が 国 家 に対 す る イ メ ー ジ を 中 心 に し て い る もの の 、 敵 対 心 研 究 に お い て は 、 国 家 間 の 敵 対 心 の み な らず 、 国 内 に お け る地 域 間 の 敵 対 心(Shimp,DunnandKlein2004;Hinck.2004)、 Klein,andRuvio2006)を 民 族 間(Shoharn,Davidow, そ の 研 究 対 象 に して い る こ と が わ か る。 グ ロ ー.バル ・ブ ラ ン ドの タ ー ゲ ッ トは国 家 と い うマ ク ロ的 単 位 だ け で は な く世 界 各 地 の 一 人 一 人 の 潜 在 顧 客 を対 象 に マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 を しな くて は な らな い 。 例 えば 、.ある 国 の消 費 者 を対 象 に す る テ レ ビCMを 製 作 す る.際に 当該 国 の 地 域 敵 対 心 を無 視 して 、 地 域 敵 対 心 が あ る相 手 地 域 を背 景 に し、.きらに 敵 対 地 域 出 身 の 有 名.人を モ デ ル に起 用 した 場 合 を 仮 定 す る と、 そ の 広 告 キ ャ ンペ ー ンの 結 果 は い う まで も な い 。 従 っ て 、.今後 の研 究 課 題 と して は 、国 家 と い うCOO研 究 の 範 囲 を乗 り越 え て 敵 村 心 研 究 を 国 内 の 地 域 、国 内 の 民 族 間 、 宗 教 間 な ど の 多 様 な集 団 間 に お け る敵 対 心 に敵 対 対 象 を さ らに 拡.大 してCOO研 究の 一部 分 と して の 敵 対 心 研 究 か ら、 消 費 者 行 動 に お け る独 自 の 研 究 領 域 と して 位 置 づ け られ る よ う に 発展 させ る 必 要 が あ る と考 え られ る。 第 二 に、 調査 対 象 製 品 と ブ ラ ン ドが取 り...i.げ られ て い な い 研 究 が 多 い と.いう こ とで あ る。 敵 対 心 研 究 で は 、 図 表 ユで 見 ら れ る よ うに 調 査 対 象 製 品 と調 査 対 象 ブ ラ.ンドが な い 研 究 が 殆 ど で あ っ た。HuiandZhou(2003)は 、COO研 究 に お け る外 部 的 妥 当 性 を高 め る た め に は 実 存 す る プ ラ ン ドを 調 査 対 象 に す る 必 要 性 が あ る と 指 摘 して い る.し (2005)の か しな が ら、 朴 研 究 以 外 は 具 体 的 な 調 査 対 象 ブ ラ ン ドは 使 用 して い な い、 敵 対 心 とエ ス ノ セ ン ト リズ ム の 関 連 性 を究 明 したKlein(2002)で も、 日本 製 品対 ア メ リカ製 品 、 日本 製 品 対 韓 国 製 品 を 同 じ品 質 と価 格 、 ス タ イ ル と い う仮 定 を基 に した 調 査 で あ る。 しか しな が ら、COM (CountryOfManufacture)と い う製 品 カ テ ゴ リー の み で はAuiandZhou(2003)の 調査 が 指 摘 す る よ う に 外 部 的 妥 当性 が確 保 で き な い と考 え れ る 。 従 っ て 、 今 後 の 敵 対 心 研 究 で は 実 存 す る ブ ラ ン ドを質 問 項 目 に取 り入 れ 、 調 査 の 外 部 的 妥 当 性 を高 め る必 要 が あ る と.考え られ る。 一.に、 消 費 者 の 敵 対 心 が企 業 の マ ー ケ テ.イン グ活 動 に.与え る弊 害 に対 す る影 響 を 明 確 にす る必 要 が あ る と考 え られ る。 消 費 者 行 動 研 究 で は 、特 定 企 業 に 対 す る不 買 運 動(Boycott) 一73一 消 費者 行動 に 及ぼ す敵 対心 の影 響 に関す る研 究 の系 譜 と課 題 に 関 す る研 究 が既 に蓄 積 され て き た と 思 わ れ る。 特 に 、 近 年 は プ ロ グ 、 ネ ッ ト掲 示 板 な ど に よ っ て、 特 定 企 業 に対 す る 不 買 運 動 が 日常 化 され て い る と考 え られ る。 こ の よ うに 自国 お よ び 自 社 に 敵 対 心 を 抱 い て い る消 費 者 は 誰 で あ れ 、 な ぜ 敵 対 心 を抱 く よ う に な っ た か、 さ らに ど の よ うに そ の 敵 対 心 を緩 和 で き るか は 、 企 業 の マ ー ケ テ ィ ン グ ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン活 動 に も大 きな 課 題 に な る と考 え られ る。 従 って 、 た だ 敵 対 心 を持 っ て い る だ け で は な く、 そ の 敵 対 心 か ら不 買 運 動 ま で 至 る消 費 者 行 動 の プ ロセ ス を 考 察 す る こ とは 実 務 家 に とっ て も意 義 あ る研 究 に な るだ ろ う。 第 四 に 、 敵 対 心 とエ ス ノ セ ン トリズ ム との 関 係 に 関 す る.更な る 調 査 が 必 要 で あ る と考 え られ る。Klein,Ettenson,andMorris(1998)の 敵 対 心 研 究 か ら、 敵 対 心 研 究 に は エ ス ノセ ン ト リズ ム が よ く調査 対 象 変 数 と して 調 査 され て い る。 さ ら に、Klein(2002)の 研究 で は 敵 対 心 とエ ス ノセ ン ト リズ ム と の 関 係 性 を、 選 択 集 合 に お け る外 国 製 品 と国 内 製 品 の 組 み 合 わ せ に よ っ て 、 実 証 して い る。 しか し な が ら、ShimpandSharma(1987)に COO研 よ っ て、 究 で 始 め て 提 案 され た エ ス ノ セ ン ト リズ ム研 究 の 代 表 的 尺 度 で あ るCETSCALEは 、 外 国 製 晶 の 輸 入 に よ る被 害 か ら 自 国 産 業.を守 る た め に 国 産 製 品 を買 うべ き で あ る とい う規 範 的 内容 が 中心 と な っ て い る。 従 っ て 、ShimpandSharma(1987)のCETSCAGEと 貿易 負 均 衡 に よ る経 済 的 敵 対 心 は か な り類 似 性 が 高 い と思 わ れ る。 従 っ て 、 敵 対 心 と エ ス ノセ ン ト リズ ム との 関 係 性 を 明確 にす る必 要 性 が あ る と考 え られ る。 第 五 に 、 本 稿 で 考 察 し た よ う に、 消 費 者 行 動 研 究 に お け る敵 対 心 研 究 は 、 始 ま っ て わ ず かio年 程 しか 経 過 して い な い新 しい 研 究 領 域 で あ る。 敵 対 心 の主 な対 象 は 他 国 家 、他 民 族 、 他 地 域 で あ る。 社 会 心 理 学 で は 内 集 団 と 外 集 団 と の 関 係 を 社 会 的 ア.イデ ン テ.イテ ィ理 論 、 .ス テ レ オ タ イ プ、 偏 見 な ど の 観 点 か ら ア プ ロ ー チ して き た と思 わ れ る 。 従 っ て 、 社 会 心 理 学 の研 究 成 果 を積 極 的 に 取 り入 れ て 、 消 費 者 行 動 研 究 に お け る敵 対 心 研 究 を確 立 す る 必 要 性 が あ る と考 え られ る。 一a4一 消 費者 行 動 に及 ぼす敵 対心 の影 響 に関す る研 究の系 譜 と課題 【 注} 1)1960年 以 後 か らア メ リカ の対 外 貿 易 収 支 の赤 字 が続 き、 さらに ア メ リカ国 内 製 造業 の 停滞 に よ り、大 量 の失 業 者 が 発 生 して1990年 代 ま で 景 気 が低 迷 す る なか で 、 一般 消 費 者 に も外 閏 産 製 品 に対 す る敵 対 心 が広 が っ た と思 われ る。 図 表4.戦 日 後 日 ・米 の 失 業 率 ・米 の 失 業 率 歪0ρ 8.0 60 一 アメリア 4,0 ー伽∼ 日本 % 2,0 0.0 〆〆評評 〆試 年 (出 所)ア メ リ カ合 衆 国 商 務 省 セ ン サ ス 局 『現 代 ア メ リ カ デ ー タ 総 覧 』 (2GO4)に ) 2 図 表5.ア よ り作 成 メ リカ に対 す る 好 意 感 の 変 化(対 イ ラ ク戦 争 前 後) (出 所)Johansson(2004>"lnyousfaceー 3)Fioaanri「dTimes(November22nd,2004),ーEuropeauwnsumerssnubUSbrands" 4)敵 対 要 因 は.各 々 実 証 研 究 に お け る 質 問 項 目 を 中 心 に 分 類 した 。 5;南 京 で は、 一 一一九 三 七 年 に 旧 日本 軍 に よ っ て 大 虐 殺 が 行 わ れ た た め 、 反 目 感 情 が 中 国 の 中 で 最 も 強 い 地 域 で あ る。 6)以 下 の図 表 で 見 られ る よ うに 、1990年 代 初 頭 は対 日の 貿 易収 支 の 赤字 が高 く、 さ ら にア メ リカの 景 気 が 低 迷 して い る時 期 で あ るた め に、 日本 に対 す る経 済 的 敵対 心 が 最 も高 い時期 で あ る と考 え られ る。 一75一 消 費.:欝 行 動 に及ぼ す敵対 心 の影響 に関す る研 究 の系 譜 と課題 図 表6.戦 後 、 対 ア メ リ カの 貿 易 収 支 日本 の対アヂリカ貿易 収 支 io,ooo,aaa B,000,WO 百 幽 6.000000 万4,DOO,000 円z ,ooo,ooo C -2 ,000,000 年 (出}弄)ラ ン.1)力合 衆 国商 務 省 セ ンサ ス局f現 代 ラメ リカ デ ー タ総 覧 』(2004>に 7)消 費 者 が 持 っ て い るCOOに 8)そ よ り作成 関 連 し た 社 会 的 ・個 人 的 規 範(norms)を の 他 の 分 類 基 準 と し て は 、RiceandWongtada(2007)は 究 に お け る ネ ガ テ ィ ブ ・イ メ ー ジ に 関 連 し た 概 念 を 消 貸 者 エ ス ノ セ ン ト1フズ ム(d。 。,um。,Eth。 〔Anfiglobali2ation>、 敵 対 心(ConsumerAnimosity;に 分 類 し た 。 敵 対 心 の 要 因 と して は 、 戦 争 、 政 策 、 エ コ ロ ジ カ ル 、 社 会.文 化 、 経 済 にj}し 惨 、COO研 さす。 考 。cent,1,m),反 グ 。 一バ ル 犠 て い る。 文 献} Ang,SweeHoon.,Jung,Kwon.,Kau,AhKeng.,E£ Jiuan(2004),"Animositytowordsec〔 〔mg,WiewMeng.,Pornpitakpan,Chanthika.,andTan,Soo 川omicgiants;whatthelitOcguysthink,"JournalofConsumer M「rk「ting,,21(3),正90-207. 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