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ボルト締結理論 ボルトの発明は,はるか古代エジプトに
埼玉工業大学 テーマ: 技術資料(小西克享) ボルト締結理論-1/5 ボルト締結理論 ボルトの発明は,はるか古代エジプトに遡ると言われています.人類の発明の中でも, 最も重要なものの一つとされています.品物を固定したり,締結する方法は多数存在しま すが,その中でボルトとナットで固定する方法は,取り付け,取り外しを簡便に行える大 変便利な方法です.一方,緩みやすいという欠点もあって,スプリングワッシャーをはじ めとする緩み止めの方法が多数存在しています.ボルトとナットが緩む原因の一つは,振 動です.あまり,振動が激しくない場合では,スプリングワッシャーやピンなどが有効で すが,これも程度問題であり,完全にナットの緩みを防止することはできません.一方, 圧力容器でボルトとナットの締め付けがゆるいと,内圧によっては隙間ができて中身が漏 れ出すという事態も発生します.これらの問題の共通点は,十分な締め付け力管理ができ ていないということです.いかに示すような手法によって,締め付け力が適正に確保され れば,緩み止めを施工しなくても緩むことはなく,また,中身が漏れるということもなく なるのです. 締め付け力が不十分なために,密閉が保たれなくなる様子を説明します. 圧力容器の蓋をボルトで固定する場合,圧力がかかると下図左側のように変形する. ↓ 最悪の場合、蓋が容器から離れて密閉が保たれない. ↓ 適度の締付力が必要. すき間が発生 計算例 dv B :容器内径 = 300 mm P :容器内圧 = 9.8 MPa n :ボルト本数 = 12 d 2 :ボルト外径= 20 mm d 1 :ボルト谷径 = 17.294 mm l2 :ボルト非ねじ部長さ = 30 mm l1 :ボルトねじ部長さ = 20 mm B :ボルト頭部2面幅 = 30 mm d 0 :ボルト穴の直径 = 22 mm E B :ボルトのヤング率 = 210 x 103 MPa d0 l l2 l1 内圧 P dv 埼玉工業大学 技術資料(小西克享) ボルト締結理論-2/5 E C :フランジのヤング率 = 210 x 103 MPa ボルト1本あたりの荷重は π FB = 4 π 2 dv P n = 4 300 2 × 9.8 12 = 57730 ⎡ ⎤ mm 2 × MPa = N⎥ ⎢単位 = 1 ⎣ ⎦ ボルトばね定数は l ⎞ 4 1 ⎛ l1 l ⎞ 1 1 ⎛ l1 ⎜ 2 + 22 ⎟ ⎜⎜ + 2 ⎟⎟ = = K B E B ⎝ A1 A2 ⎠ π E B ⎜⎝ d1 d 2 ⎟⎠ より KB = π EB l 4 l1 + 22 2 d1 d2 ⎛ ⎞ ⎜ ⎟ 210 × 10 3 N MPa ⎟ = = 1.163 × 10 6 ⎜ 単位 = = 20 30 mm 4 mm ⎟ ⎜ + ⎜ ⎟ 17.294 2 20 2 mm 2 ⎝ ⎠ π フランジばね定数は KC = 2 2 ⎫ ⎫ 210 × 10 3 π ⎧⎪⎛ E C π ⎪⎧⎛ l ⎞ 50 ⎞ 2⎪ 2⎪ 6 = + B + − d 30 ⎜ ⎟ − 22 ⎬ = 2.444 × 10 ⎟ ⎨ ⎨⎜⎝ 0 ⎬ ⎠ ⎝ ⎠ l 4 ⎪⎩ 10 50 4 ⎪⎩ 10 ⎪⎭ ⎪⎭ N / mm 内力係数は KB × 10 6 1163 . Φ= = = 0.3224 K B + K C 1163 × 10 6 + 2.444 × 10 6 . 初期締付力は F0 = α (1 − Φ) FB = 125 . × (1 − 0.3224) × 57730 = 48900 N ここで α = 125 . :負荷時の締付力を確保するための係数 α = 1 だと圧力 P がかかるとフランジが容器本体と軽く,接触した状態となる. ボルトの初期伸びは F 48900 δB = 0 = = 0.04205 mm K B 1163 . × 10 6 フランジの初期縮みは F 48900 δC = 0 = = 0.02001 mm K C 2.444 × 10 6 埼玉工業大学 技術資料(小西克享) 容器に内圧が加わった時、ボルトの引張り力と伸びは FB′ = F0 + ΦFB = 48900 + 0.3224 × 57730 = 67510 N F′ 67510 = 0.05805 mm δ B′ = B = K B 1163 . × 10 6 フランジの締付力は FC′ = F0 − (1 − Φ) FB = 48900 − (1 − 0.3224) × 57730 = 9782 N δ C′ = FC′ 9782 = = 0.004002 mm K C 2.444 × 10 6 ボルト締付状態図 1.フランジを締付けた状態を図にプロットすると(図中 A 点) 力 初期締付力 F0 A ボルト初期伸び δB 伸び 2.ボルトとフランジの状態を作図すると 力 ボルトの状態を示す線 傾き=ボルトばね定数 F KB = 0 δB F0 A フランジの状態を示す線 傾き=フランジばね定数 F KC = 0 δC δB δB ボルトの伸び δC 伸び フランジ縮み 3.負荷時におけるボルトとフランジの状態 ボルト締結理論-3/5 埼玉工業大学 技術資料(小西克享) ボルト締結理論-4/5 ボルトの状態はB点に移動、フランジはC点に移動。 力 FB′ 力 負荷時のボルト引張り力 FB′ B F0 負荷時の外力 = FB C B F0 負荷時の締付力 δB 負荷時のボルト伸び δ B′ FC′ 伸び 負荷時のフランジ縮み δ C′ C δB δ B′ α=1 のとき 練習問題 先の計算例で,ボルトの数を 10 本としたとき,初期締付力はいくらか.また, 負荷時の締付け状態図を描け. 解答 π ボルト1本あたりの荷重 FB = 4 n KB = ボルトばね定数 π 2 dv P = 4 π 300 2 × 9.8 10 EB l 4 l1 + 22 2 d1 d2 = 69270 N π 210 × 10 3 = = 1163 × 10 6 . 20 30 4 + 2 2 17.294 20 N / mm フランジばね定数 2 2 ⎫ ⎫ 210 × 10 3 π ⎧⎪⎛ E C π ⎪⎧⎛ l ⎞ 50 ⎞ 2⎪ 2⎪ KC = ⎨⎜⎝ B + ⎟⎠ − d 0 ⎬ = ⎨⎜⎝ 30 + ⎟⎠ − 22 ⎬ l 4 ⎪⎩ 10 50 4 ⎪⎩ 10 ⎪⎭ ⎪⎭ = 2.444 × 10 6 N / mm 内力係数 Φ= 初期締付力 F0 = α (1 − Φ) FB = 125 . × (1 − 0.3224) × 69270 = 58670 N ボルトの初期伸び δB = F0 58670 = = 0.05045 mm K B 1163 . × 10 6 フランジの初期縮み δC = F0 58670 = = 0.02401 mm K C 2.444 × 10 6 KB × 10 6 1163 . = = 0.3224 K B + K C 1163 × 10 6 + 2.444 × 10 6 . 負荷時、ボルトの引張力と伸びは FB′ = F0 + ΦFB = 58670 + 0.3224 × 69270 = 81000 N F′ 81000 = 0.06965 mm δ B′ = B = K B 1163 . × 10 6 埼玉工業大学 技術資料(小西克享) ボルト締結理論-5/5 FC′ = F0 − (1 − Φ) FB = 58670 − (1 − 0.3224) × 69270 = 11730 N フランジ側は δ C′ = FC′ 11730 = = 0.004800 mm K C 2.444 × 10 6 100000 力, N 81000 ボルト負荷状態 初期締付け状態 F0=58670N 内圧負荷 Fb=69270 N 50000 11730 0 フランジ負荷状態 0.06965 0.1 0.05 δB=0.05045mm δc=0.02401mm 伸び, mm ボルト締結状態図 http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/Bolt.pdf Copyright ⓒ 2009, 2010 小西克享, All Rights Reserved. 個人的な学習の目的以外での使用,転載,配布等はできません.