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実空間での出会いにおけるアウェアネス支援 - 石田・松原研究室

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実空間での出会いにおけるアウェアネス支援 - 石田・松原研究室
Silhouettell:
実空間での出会いにおけるアウェアネス支援
岡本昌之1
中西英之1
西村俊和1
石田亨1
我々は実世界での出会いにおけるアウェアネス支援システム Silhouettell を開発した. Silhouettell は大型
グラフィックススクリーンを用い,人々の位置 (誰がどこにいるか) がスクリーン上に影として投影される.
影からのフィードバックにより,人々は Silhouettell の機能を使い始めていることを自然に知る.また, Silhouettell は人々が自分達の間の関連を発見し,容易に会話を始めることができるように共通の話題を選定,
提供する.話題は個人のプロフィールを基に選定される.現在の実装では話題として World Wide Web
(WWW) が用いられる. 3 人での実験により Silhouettell の作用を確認した.また,様々な国の人々へのア
ンケートにより,このシステムがどのような場所での利用に適しているかを調査した.
Silhouettell:
Awareness Support for Real-World Encounter
Masayuki Okamoto
1
Hideyuki Nakanishi
1
Toshikazu Nishimura
1
Toru Ishida
1
We have developed a system called Silhouettell, which provides awareness support for real-world encounter. Silhouettell uses a large graphics screen. People's locations (who and where) are projected
as their shadows on the screen. By the feedback from projected shadows, people naturally know
that they start using functions of Silhouettell. Silhouettell also selects and presents common topics
so that people can easily start conversation and explore various relations among them. The topics
are selected based on their personal proles, using World Wide Web (WWW) pages as topics in
the current implementation. The experiments with three users is reported to show how Silhouettell
works in practice. We also examined where the system is suited to be used through a questionnaire
for people from various nations.
1
はじめに
geon
(MUD)
tools が 広 まっ て い る. 例 え ば,
FreeWalk[6] は人々の間の偶然の出会いを実現する
これまでに様々な会話支援システムが研究,開
ために 3 次元仮想空間を提供する.
発されてきた.会合にはビジネスミーティングのよ
しかし,実世界での非形式的会合の支援に関す
うな形式的会合とホールやロビーでの立ち話のよう
る研究はほとんどない.我々は共通の関心を持つ
な非形式的会合の 2 つの形式がある.また,支援対
人々の出会いを可能とする実世界の拡張が重要であ
象に関しては実世界での支援と仮想空間における支
ると考える.
援という 2 つの方向がある.
実世界での出会いのための awareness support
表 1に会合支援システムの分類を示す.
には出会いの場所の提供が必要であると考えられ
実世界での形式的会合を支援するために, pre-
る.そのために,表示された情報を共有することの
sentation
tools が 用 い ら れ る. 遠 隔 地 間 で の 会
できる大型グラフィックススクリーンを利用する.
合については, video conferencing tools が開発
WebStage[10] はユーザにとって関心のある,ある
さ れ て い る. MediaSpace[1], MAJIC[7], 及 び
いは必要な情報を積極的に提供するが,我々はこの
CU-SeeMe[2] はコンピュータネットワーク上に仮
考えを awareness support に応用した.システムか
想空間を提供する.また,遠隔地間での非形式的
らユーザに対して共通の関心を提供することで出会
会 合を 支援す るた めに, 様々な multi-user dun-
いを支援することができると考える.
1 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻
Department of Social Informatics, Kyoto University
1
表 1: 会合支援システムの分類
形式的会合
実世界
仮想空間
になる.ユーザの姿を鏡面表示する方法はユーザの
影を表示するよりも明確であるが,常に自分の姿を
非形式的会合
(business meeting) (casual meeting)
Presentation Tools Awareness Support
(PowerPoint)
(Silhouettell)
Conferencing Tools
MUD Tools
(MediaSpace, etc.)
(FreeWalk)
見るという状態は緊張を引き起こす可能性がある.
したがって,我々は影の表示が存在感を強調する最
良の方法であると考える.この 3 種類の表示の比較
を表 2に示す.
表 2: ユーザ表示の比較
本稿では,ユーザ個人のプロフィールによる人々
アバター,
アイコン
の間の共通の話題を収集,提供するシステム Silhou-
影
鏡面
ettell について述べる.以下,第 2 章,第 3 章では
存在感
低い
中間 高い
それぞれ Silhouettell の設計方針について述べる.
緊張感
低い
低い 高い
また,第 4 章では Silhouettell を用いた実世界での
さらに, Silhouettell は共通の話題の提供により
出会いについて説明する.第 5 章はまとめである.
出会いや会話の発生を促す.それぞれの話題とユー
設計方針
2
2.1
ザの影との間の線は誰が同じ話題に関心があるかを
示す.
影の振舞い
awareness support には次の機能が重要である.
2.2
Social Agents[5] は人間の顔を持つエージェント
誰がいるかを表示
各ユーザに対応するオブジェクトを表示する
を CRT モニタへの表示に用いて対面での会話を支
ことにより,システムはユーザの注意を引き
援する.大型グラフィックススクリーンの利用は
つける.
CRT モニタよりも実世界での出会いの支援に効果
どのような人であるかを表示
的である.
システムがユーザのプロフィール (名前,所属,
我々は次の観点において大型グラフィックスス
クリーンが CRT モニタよりも適していると考える.
関心等) を表示することにより,ユーザは誰と
大型グラフィックススクリーン
出会っているかを知る.
ユーザ間の関係の表示
広範囲での利用
システムが小型のディスプレイを用いる場合,
システムがユーザ間に共通する関心を表示す
ユーザは狭い範囲でしかシステムの機能を利
ることにより,ユーザは自分達の間の関係を
用できない.一方,大型のスクリーンを用い
発見できる.
ればユーザは場所を気にせず広範囲でそのシ
以上の機能を実現するために, Silhouettell は大型
グラフィックススクリーンを利用する.図 1(a) は
ステムを利用できる.
ユーザの位置関係を等身大で投影
Silhouettell の概念構成を表す.また,図 1(b) は実
他人のプロフィールを確認する場合,プロフィ
際の使用例である.
ールがその人の影の上部に表示されると分か
Silhouettell は対応するオブジェクトとしてユー
りやすい.大型グラフィックススクリーンを
ザの正面に影を,また影の上にユーザのプロフィー
用いることでユーザはどのような人々がいる
ルを表示する.影による表示は他の方法よりも理解
かを一目で確認できる.
しやすい.例えば,チャットシステムには Commu-
集いの場の提供
nityPlace[9] のようにアバターあるいはアイコンを
スクリーンから離れた場所にいる人々も近く
用いるものがある.しかし,実世界においてアバタ
にいる人と同じようにスクリーン上の影を見
ーやアイコンを用いる場合,ユーザはそのアバター
ることができる.それにより,この人達もま
やアイコンが誰と対応しているかを容易には同定で
た興味を引きつけられ,会話に参加するかも
きない.影を用いる場合には,その対応はより明確
しれない.
2
提供された話題
USER 2
B Univ.
Softball
USER 1
A Univ.
Softball
ユーザのプロフィール
ユーザの影
USER 1
USER 2
(a) 概念構成
(b)
実際の使用
図 1: Silhouettell 利用時の構成要素
CRT モニタと大型グラフィックススクリーンの
り会話の機会を増やすことを意図している.表 4に
比較を表 3にまとめる.
従来の会合システムと Silhouettell の比較を示す.
表 3: CRT モニタと大型グラフィックススクリーン
表 4: 支援方法の比較
の比較
大型
CRT モニタ グラフィックス
スクリーン
利用範囲
狭い
従来の
会合システム
Silhouettell
仮想空間の
提供
共通の話題の
提供
会合支援の方法
広い
出会いの機会
増加
変化なし
会話の発生
変化なし
増加
ユーザの
影の投影
縮小表示
同じ大きさで
表示
画面を見ることの
できる人数
少ない
多い
適切な話題を選択するための最も効果的な方法
は人々に共通する項目 (所属,関心等) を発見するこ
とである. Silhouettell はユーザのプロフィールを
2.3
比較し,共通する項目に関連する話題を提供する.
共通の話題
例えば,互いのことを知らないが研究分野が近
テレビ,ラジオ,雑誌等のメディアの会話の発
い研究者が集まる会議場を考えてみる.そのような
生に対する役割は小さい.それらは様々な情報を含
人々が互いのことを知り,会話を始めるきっかけを
んでいるが,大抵の場合,利用者の関心の有無にか
与えるために Silhouettell は共通の項目に関連する
かわらず表示される.各ユーザはテレビのチャンネ
話題を提供する.
ルを変えたり,雑誌のページをめくるなどして自分
の欲しい情報を得るために内容を選ばなければなら
3
ない.一方,これに対して Silhouettell はユーザ間
Silhouettell
の実装
我々は前章で述べた設計方針に従い,京都大学
の共通の話題を選択,提供することにより積極的に
のヒューマンメディア実験施設において Silhouettell
会話を促進する.
のプロトタイプシステムを実装した.
従来の会合システムの共通点は,システムが仮
想的な会議室を提供することにより会話を支援する
3.1
ということである. CU-SeeMe は全ての参加者を表
システム構成
図 2に Silhouettell のシステム構成を示す.シス
示することで会議室を作り出す. MediaSpace や
テムはネットワークで接続された SGI ONYX と
MAJIC は遠隔地にいる人々の間の出会いの機会を
SGI INDY の 2 台の計算機から構成される. ONYX
増やすために 2 つ以上の地点を接続する.
は SGI Multi Channel Option (MCO) を通じて
従来の会合システムとは異なり, Silhouettell は
28802680 ピクセルの解像度を持つ大型グラフィッ
同じ場所にいる人々に対し話題を提供することによ
3
クススクリーンに接続されている.スクリーンの大
ピュータを常時着用して利用する Wearable Com-
きさは幅 5 メートル,高さ 1.5 メートルであり,画
puting[8] の考え方が広まってきた.このようなデバ
像は背面から投影される.また,ビデオカメラがス
イスの利用により人々に密着した情報を得ることが
クリーンの中央正面に設置されている.
可能である.例えば,各ユーザが自分の情報を持っ
ビデオカメラが捉える映像は INDY 上のビデオ
ているバッジを付けてスクリーンの前に来ると,シ
プロセスに入力され,それが ONYX 上のメインプ
ステムに設置されているセンサがそのユーザのプロ
ロセスに送信される.メインプロセスはプロフィー
フィールと位置を検出する.
ルファイルに格納されているプロフィール, Web
もう 1 つはシステムに全ユーザのプロフィール
ページ,そしてビデオプロセスからのデータからス
を格納する方法である.ユーザは最初の利用時に,
クリーン上の画像を生成する.
自分のプロフィールと自分を認識させるための情報
を入力する.ユーザがスクリーンの前に来ると,シ
ステムはビデオカメラが取得した服の色をもとにし
World
Wide
Web
プロフィール
ファイル
メイン
プロセス
てユーザを認識する. 2 回目以降の利用ではユーザ
に対して何の準備も要求しない.
今回の実装では,ユーザに負担をかけないため
ヒューマンメディア
実験施設
ONYX
に後者の方法を採用した.
USER 2
Kyoto Univ.
Tennis
USER 1
Kyoto Univ.
Skiing
ユーザ間の共通の話題の選択
システムの設置者が見せたいと考える WWW ペ
ージ (例えば, Silhouettell が設置されている場所の
大型グラフィックススクリーン
ビデオ
プロセス
案内) がある場合,そのページとキーワードとなる
ビデオカメラ
言葉をあらかじめ登録する.もしユーザ間に共通の
キーワードがある場合,システムはその単語に対す
INDY
USER 1
る登録ページが存在するかどうかを検索する.存在
USER 2
する場合,システムはそのページを表示する.そう
でない場合は WWW 上のサーチエンジンを用いて
ユーザ情報
関連する WWW ページを検索する.検索されたペ
画像データ
WWWページ
ージは登録され,次回以降も利用される.
表示される話題の大きさの変更
図 2: システム構成
3.2
Silhouettell は各話題の大きさを対象となるユー
ザ間の距離に応じて変化させる.離れているときは
共通の話題の提供
話題は小さく表示され,近いときには大きく表示さ
今回の実装では,マルチメディアを利用して様々
れる.これはユーザ同士が離れているときには内容
な話題を提供するための題材として WWW ページ
があまりよく見えず,表示をよく見ようとして互い
を用いる. ilhouettell は選択された話題に対する
に近づくという効果を想定している.
WWW ページを検索し,検索されたページを対象と
なるユーザの間に表示する.
3.3
ユーザのプロフィールの取得
影の投影
システムは現在の画像と背景画像の比較により
影を生成する.システムの起動時に部屋に誰もいな
ユーザのプロフィールを取得するための方法と
い状態での画像から背景画像を取り込む.その際に
して,次の 2 種類が考えられる.
100 フレームの画像を平均化してノイズを拡散して
1 つは,各ユーザが小さなデバイスを持つ方法で
いる.次に,ユーザの利用時にはシステムは現在の
ある.デバイスが小さく安価になるに伴い,コン
4
画像と背景画像の差分を検出し,差分があらかじめ
ettell によって提供される (図 3(b)).その話題
決められた閾値を超えている領域を影として表示す
が SAGAWA と TANAKA の間に共通する関
る.入力された画像にはノイズが含まれているため,
心であることを示すために,ページと 2 つの
システムは一度画像にぼかしをかけることでノイズ
影の間には線が引かれる.
の影響を減らす.そして,幅と高さが人間の影とし
3. 一方のユーザが他方に近づく
て認識できるだけの大きさの領域を検出する.また,
二人が提供された話題に興味を持ち,一方の
表示に際してはカメラから入力された画像とスクリ
ユーザが他のユーザの方へと近づく.すると
ーンの縦横比の違いを考えることが必要である.ス
話題の WWW ページが拡大表示される (図 3
クリーンでは幅が高さよりも大幅に長いため,シス
(c)).そして,そのページについての会話が発
テムは人間の影として認識された領域を切り出して,
生する.
4. 三人目のユーザが入室
座標変換したのちに貼り付ける.
さらに,二人の会話を見ている三人目のユー
3.4
個人同定
ザ (名前: MATSUMOTO Hiroaki,所属: Ky-
oto University,趣味: Softball) が入室する.
システムは服の色によってユーザを認識する.
TANAKA と MATSUMOTO の間に共通する
システムは人間の胸に対応する領域のピクセル
Softball に関する話題のページが新たに表示さ
値の平均をとる.そして,登録されている値が最も
れ,全員に共通する Kyoto University に関す
近いユーザであると判断する.
るページはスクリーン中央に移動する (図 3
同時に,システムは人々の位置を検出し,それ
(d)).
ぞれの話題の WWW ページの位置と大きさを決定
する.システムは全ユーザの現在と 1 つ前のフレー
4.2
ムでの位置を記録する.この 2 つのフレームの間の
考察
3 人のユーザによる Silhouetell の利用を通じて,
位置の違いからユーザの移動距離が算出される.そ
実装方針を確認した.前もって個人のプロフィール
れが大きすぎる場合,システムは個人同定が誤って
いると判断し,ピクセル値の平均が次に近い人に対
を登録した 3 人のユーザに部屋で 10 分程度自由に
応づける.色と位置の情報の組み合わせにより,誤
過ごしてもらった.ユーザにはシステムについての
認を減らしている.
説明はされていない.
実験に際して,我々は次の仮説を立てた.部屋
4
Silhouettell
4.1
を用いた出会い
に入ったユーザはまずスクリーン上の影に気付き,
すぐにそれが自分を表すものであると理解する.次
使用例
に,自分の影と他の人の影との間に WWW ページ
図 3に Silhouettell を用いた出会いの例を示す.
を見つける.最初は小さすぎて内容がよく見えない
が,互いに近づくと拡大され,ユーザはそれが共通
1. 一人目のユーザが入室
の話題であることを認識する.そして,表示されて
ユーザ SAGAWA が部屋に入室すると,彼の
いる WWW ページの内容に関する会話が発生する.
影とプロフィールがスクリーン上に表示され
実験におけるユーザの振舞いは予想とは少し異
る (図 3(a)). プロフィールは上から順に,名
なっていた.ユーザは最初に自分の影を見て自分の
前が SAGAWA Ryusuke,所属が Kyoto Uni-
手足を動かした.次に,歩き回ったり,他人とすれ
versity,趣味が Skiing であることを表してい
違うなどして影で遊び出した.そして,表示されて
る.
いる WWW ページについての会話が始まった.会
2. 二人目のユーザが入室
話が始まるとユーザはあまり動かなくなり,座る者
次に,二人目のユーザ (名前: TANAKA Hi-
もいた.これらの振舞いから次のような解釈が考え
ronori,所属: Kyoto University,趣味: Soft-
られる.
ball) が入室する.すると,共通の話題 Kyoto
University に関する WWW ページが Silhou5
ユーザは正面に表示される影に興味を持つ.
図 3: Silhouettell を用いた出会い
を促進する
そしてその動きが自分と同じであることから
それが自分自身の影であることに気付く.次
と結論付けられる.
に,ユーザは他のユーザの影に興味を持ち,
我々の予想通り,ユーザは自分の影を認識し,
近付いたりすれ違ったりして干渉する.
提供される WWW ページに関連する会話を始める.
ユーザは一通り影の振舞いについて理解する
しかし, WWW ページの大きさの変化による効果
と,提供される WWW のページに興味を引き
はほとんど見られなかった.これはユーザ間の距離
つけられ,その話題に関する会話を始める.
の変化があまりなかったためであると考えられる.
会話の内容は表示される WWW ページに直接関わ
これより,
るものではなく,そのページがユーザに連想させる
1. 影や共通の関心を表示することはシステムに
話題に関するものであった.
ユーザを引きつける効果がある
また,我々は京都大学内の 5 人の日本人と 25 人
2. 話題の提供は実世界での出会いにおける会話
の外国人を対象としたアンケートを行った.外国人
6
は欧米,アジア,アフリカから来た人達で,主に研
表 7: 表示されるデータとして受け入れられるプロ
究生,大学院生,学部生である.表 5は回答者の国
フィール
籍の割合を示している.
内容 名前 所属 国籍 住所 電話番号 趣味 誕生日
人数
表 5: 国籍の割合
国籍
日本
アジア
(日本除く)
人数
5
11
割合 (%) 16.7
36.7
アフリカ 欧米
3
10.0
25
21
24
9
7
22
12
{ Silhouettell の利用場所
表 8は表 6をアジア,欧米の 2 地域につ
11
36.7
いて個別に集計したものである.アジア
では community space に対して肯定的
アンケートを通じて,全体としては次のような
評価 (1 または 2) を与えた人が 90% を占
特徴が得られた.
めるのに対し,欧米では半数に留まって
Silhouettell はどのような場所での利用に適し
いる.また, private party については
ているか
欧米では肯定的,否定的評価の両方に分
表 6は Silhouettell が利用されると考えられる
かれたがアジアでは 70% の人が否定的な
場所の順序を表している.
評価 (3 または 4) を与えている.
表 6: どのような場所での利用に適しているか
順序
(1 が最適)
1
Public
Space
Event
Hall
Community
Space
Private
Party
2
(7.1%)
10
(34.5%)
12
(42.9%)
6
(22.2%)
2
5
(17.9%)
8
(27.6%)
8
(28.6%)
7
(25.9%)
3
6
(21.4%)
7
(24.1%)
8
(28.6%)
6
(22.2%)
表 8: 利用場所についての地域差
4
15
(53.6%)
4
(13.8%)
0
(0.0%)
8
(29.6%)
の community space に 1 あるいは 2(有用) の
評価を与えた.また, 62% が国際会議場等の
event hall に 1 あるいは 2 の評価を与えた.
3
36.4
18.2
10.0
30.0
4
27.3
27.3
0.0
40.0
(b) 欧米
1
Public Space (%)
10.0
Event Hall (%)
27.3
Community Space (%) 20.0
Private Party (%)
40.0
2
20.0
36.4
30.0
20.0
3
10.0
27.3
50.0
10.0
4
60.0
9.1
0.0
30.0
{ 表示されるプロフィール
反対に,街角等の public space は 70% 以上の
回答者が 3 あるいは 4(有用でない) と評価した.
ホームパーティ等の private party については
同様に,表 9は表 7の項目をアジア,欧
米の 2 地域について集計したものである.
全体的に,欧米よりもアジアの人の方が
様々な意見があった.
プロフィールの表示に対して寛容である.
ユーザが見せるプロフィールの内容
また,欧米の人はアジアの人よりも所属
表 7は回答者が表示しても構わないと考えてい
を表示されることに抵抗感を感じている.
るプロフィールの内容を示している.回答者
2
27.3
36.4
20.0
20.0
評価
多くの回答者 (70% 以上) が大学の学生会館等
(a) アジア
1
Public Space (%)
9.1
Event Hall (%)
18.2
Community Space (%) 70.0
Private Party (%)
10.0
評価
は名前,所属,趣味,国籍については表示さ
また,回答者の国よりも日本で利用する方が
れても気にしないと答えているが,電話番号
有用であるという意見が多数を占めている.
や住所についてはほとんどの人が表示を望ん
その理由に関しては現在分析中である.
でいない.
これらの意見をまとめると,次のようになる.
文化の相違
1. Silhouettell の利用価値
アンケート結果を地域別に集計したところ,
共通の話題を持っているが互いのことを知ら
次のような地域差が確認できた.
7
今後の課題としては話題の選定方法の改良のよ
表 9: プロフィールの表示に対する地域差
項目
うなシステムの拡張や,文化の相違に基づくユーザ
人数 (アジア) 人数 (欧米)
名前
所属
国籍
住所
電話番号
趣味
誕生日
10 (90.9%)
10 (90.9%)
10 (90.9%)
5 (45.5%)
4 (36.4%)
8 (72.7%)
3 (27.3%)
8
4
8
2
2
7
3
の反応のさらなる解析が挙げられる.
(72.7%)
(36.4%)
(72.7%)
(18.2%)
(18.2%)
(63.6%)
(27.3%)
参考文献
[1] S. A. Bly, S. R. Harrison and S. Irwin, \Media spaces: bringing people together in a
video, audio and computing environment,"
Communication of the ACM, Vol. 36, No. 1,
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http://cu-seeme.cornell.edu/, 1997.
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Generation Computing, Vol. 16, No. 1, pp.
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T. Ishida, \FreeWalk: Supporting Casual
Meetings in a Network," CSCW-96, pp. 308{
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Matsushita, \Multiparty Videoconferencing
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CSCW-94, pp.385{393, 1994.
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Agent: A System for Augmented Memory,"
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Web," http://vs.spiw.com/vs/, 1995.
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\WebStage: An Active Media Enhanced World
Wide Web Browser," CHI-97, pp.391{398,
1997.
ない人々の集まるコミュニティスペースにお
いて, Silhouettell は最も効果的であると思わ
れる
2. プライバシー
人々がどの程度まで自分のプロフィールを公
開できるかという問題が存在する.人々は初
めて出会う人には連絡方法を教えない傾向が
ある
3. 地域差
地域ごとの話題提供,プライバシーに対する
意識の違いが存在する.
5
おわりに
我々は実世界の出会いにおける awareness sup-
port のために Silhouettell というシステムを提案し
た.システムの設備としては大型グラフィックスス
クリーンを用いるが,各ユーザには何の設備も必要
としない. Silhouettell は影を表示することにより
人々を引きつけ,ユーザのプロフィールに基づく共
通の話題を提供することで会話を促進する.提供す
る話題の題材として,適切な WWW ページを選定
する. 3 人のユーザによる予備実験を通じて,我々
はシステムが実世界での出会いにおけるアウェアネ
スを支援することができるという実装方針を確認し
た.また,様々な国から来た人々へのアンケートを
通じてこのシステムがどのような場所での利用に適
しているかを調査した.
我々は様々なコミュニティ支援ツールを開発して
いる [3].これらは協調作業の一歩手前の段階,つま
り様々な人々のコミュニティ形成を支援する.実世
界での出会いにおける awareness support は人々が
互いについて知ること (knowing each other[4]) を
促進する.
8
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