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運輸・交通・面的部門に係る政策オプション

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運輸・交通・面的部門に係る政策オプション
運輸・交通・面的部門に係る政策オプション
①低炭素型街区づくり
・地域冷熱供給事業の推進
・スマートグリッド
②交通需要対策
・コンパクトシティ化
・トランジットモールの推進
・大規模集客施設の適正立地
・交通円滑化の推進
③計画書制度による事業者の取組促進
・運輸事業者に対する温室効果ガス排出量削減計画書の提出
・大規模店舗の来客者交通計画書の提出
・通勤交通計画制度の提出
④物流対策
・モーダルシフトの促進
・物流効率化の促進
⑤公共交通利用促進・自動車利用の抑制
・自動車乗り入れ規制
・ロードプライシング
・カーシェアリングの促進
・パーク&ライド促進
・自転車利用の促進
⑥単体対策
・エコドライブの促進
・電気自動車のインフラ整備
・低炭素車への補助
・自動車購入者向けの環境情報の提供
・駐車料金の格差付け
1
参考資料4
①低炭素型街区づくり
施策名
概要
地域冷熱供給事業の推進
ある一定の地域において、一カ所または数カ所のプラントから複数の建物に配
管を通して、冷水・蒸気(温水)を送って冷房・暖房等を行う地域冷熱供給事業
の推進
国内外の動向
〔海外〕
北欧、特にデンマークでは、地域冷熱供給事業である地域暖房と熱電併給が広く
普及しており、地域冷熱供給事業での発電用燃料に対する税制上の優遇施策、補
助金施策等が実施されている。
〔国〕
○ 熱供給事業を進めていく政策的アプローチは、①ごみ焼却場や公営住宅での
熱供給事業体②特定の地区の事業体をつなげるコーディネーション③自治体
の首長による検討要請などがある。
○ 公的助成策もあり、日本政策投資銀行や新エネルギー財団からの融資制度が
あるほか、事業所税などの税制優遇制度もある。
○ 熱供給事業法に基づき、事業には供給区域ごとに経済産業大臣の許可を要す
るため、平成23年11月現在、許可事業者数82、許可地区数140となっている。
事例
■札幌市真駒内地区
1972年に開催された札幌オリンピック冬季大会の選手村及び関連施設で、後に
分譲や賃貸となった集合住宅と公共施設に対して、ごみ焼却廃熱を主要熱源とし
て熱供給している。当地区は当初、重油専焼であったが、1985年12月、新設され
た札幌市駒岡清掃工場と既存ボイラープラント間に約4kmの導管を敷設し、廃熱
を長距離輸送し利用している。それに伴い、1985年以降の熱源に対するごみ焼却
廃熱の依存率は約60%程度となっている。
(一般社団法人日本熱供給事業協会「あ
なたの街の地域熱供給事業」より)
■浜松アクトシティ駅前地区
日本で初めての新幹線直結型総合コンベンション施設を中心に、官民一体とな
って音楽文化、産業技術など高度な都市機能が複合化した都市空間をつくり、都
市に潤いを与え、人に優しい文化の薫り高い街となっている。地域冷暖房の熱源
は電気・ガス併用のベストミックス方式。蓄熱槽活用による夜間電力使用は昼間
の電力負荷平準化に貢献し、吸収式冷凍機による夏季のガス使用もガスの年間負
荷を平準化している。
(一般社団法人日本熱供給事業協会「あなたの街の地域熱
供給事業」より)
■横浜市地域冷暖房推進指針
地域冷暖房の導入促進により、エネルギーの合理的かつ効率的な利用を推進す
ることを目的として、横浜市環境基本条例を受けて定められた指針である。市長
が地域冷暖房推進地域の指定を行い、建築計画等の概要等から地域冷暖房の整備
について、検討を要すると認めるときは、その開発事業者に対して、その旨を通
知し、検討を行うよう要請する、さらには事業者が講じた措置について報告を求
めることができる仕組みがつくられている。
2
施策名
スマートグリッド
概要
自然エネルギーの導入や需要側での調整のためのスマートグリッドの普及促
進
国内外の動向
〔海外〕
欧州では、自然エネルギー政策による電力供給量の大幅増加が見込まれるた
め、米国でも古い送電網の更新にあわせ、スマートグリッドの取組が進んでおり、
まちづくりという大きな概念で活用されている。また、近年、中国などの新興国
においても、スマートシティづくりがさかんになっている。
〔国〕
経済産業省が実証地域を募り、社会実験をしているところであり、横浜や藤
沢などおいて、事業者中心に実験が行われている。
事例
■ 横浜市「横浜スマートシティプロジェクト」
横浜市は、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域募集」に
対し、
民間企業 5 社とともに、
「横浜スマートシティプロジェクト
(YSCP:Yokohama
Smart City Project)
」を提案。実際に多くの人が住んでいる既成市街地で展開
できる対策の実現を狙っている。
■北九州市「北九州スマートシティコミュニティ創造事業」
北九州市は、八幡東区東田地区にて、民間企業等とともに、
「北九州スマート
コミュニティ創造事業」を、平成 26 年度までの 5 ヵ年で実施中。CO2 削減目標
を市内標準街区と比較して、「2014 年までに 2005 年比 50%減」と定めている。
■ボルダー市(米 コロラド州)「スマートグリッドシティ」
現在、人口 10 万人のボルダー市ではスマートグリッドに係る実証実験が進行
中である。
本実証実験は、4 つの変電所を設置し、光ファイバーを敷設、多数のスマート
フィーダー(開閉器)と 15,000∼25,000 台のスマートメーターを結んで、リア
ルタイムで機能する配電網を作り上げるという内容。
ボルダー市では、エネルギー保全とエネルギー効率がエネルギー政策上、重要
であると位置づけられており、一番安くすむエネルギーは使わずにすむ電力、つ
まり、ネガワットであるという発想が背景にある。
3
②交通需要対策
施策名
コンパクトシティ化
概要
市街地のスケールを小さく保ちながら、LRT (Light Rail Transit)や小型バス
などの公共交通や自転車を利用できる範囲を生活圏と捉え、コミュニティの再生や
住みやすいまちづくりを目指すもの
国内外の動向
〔国〕
国交省東北地方整備局では、安全・安心、快適で美しいコンパクトシティを実
現するために、東北地方コンパクトシティ検討委員会にて「東北地方の中小都市」
のコンパクトシティ提言書をまとめている。
〔他県〕
茨城県は「茨城県におけるコンパクトなまちづくりに関する報告書」にて、市
町村におけるコンパクトなまちづくりの進め方を示している。青森市や札幌市等多
雪地域の都市でコンパクトシティの概念を取り入れた都市計画がつくられている。
事例
■富山市「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」
2008 年 7 月に「環境モデル都市」に指定された富山市は、「富山市環境モデル都
市行動計画」を策定し「歩いて暮らせるまち」を実現することで、鉄道をはじめと
する公共交通の活性化と、その沿線に居住・商業・文化などの諸機能を集めて、都
市運営コストを軽減し、持続可能な集約型都市構造を構築中である。
富山市は、運営母体が第三セクターである富山ライトレールに 33%強出資。開業
後、利用者数が大幅に増加(2.6 倍)するとともに、利用者の約 12%が交通手段を
自動車から転換しており、沿線における住宅の新規着工件数の増加(1.6 倍)や沿
線における観光施設などの入館者数の増加(3.5 倍)、高齢者の新たな外出機会の創
出など、多面的な地域活性化効果が表れている。
■クリチバ市(ブラジル)
BRT(Bus Rapid Transit)
クリチバ市は、市内有数のメインストリートを歩行者専用道路としたことを手始
めに、市内の区画の再整理に着手し、専用バスレーンを用いた道路の使用法を適用
した。環状路線と幹線道路から各コミュニティーを結ぶ路線が設けられており、市
内のどこにでも、同一料金で乗り継ぐことが可能な料金システムを採用することに
よって、都市郊外に住むことのデメリットを打ち消す効果がある。
■ポートランド市(米国、オレゴン州)
ポートランドにおいては、通勤者が交通機関の選択肢を複数持てるような街作り
を行なっている。ポートランド市と周辺の都市で構成する「メトロ」と呼ばれる独
立した行政機関があり、土地利用計画と地域公共交通政策を総合的に策定している
ため、メトロが管轄する地域では都市部と農村部を明確に区分(都市成長境界線)
してスプロール化を防いでいる。
利用促進策で最も特徴的なのが、都心地域では MAX やストリートカーの運賃は無
料で設定されている。そのため、車の利用を抑制する一方で人々が気軽に移動でき
まちが活性化される効果がある。
4
施策名
トランジットモールの推進
概要
歩行者空間・道路(モール)を、一般の車両通行を抑制した歩行者専用の空間と
し、バス、路面電車等、公共交通機関だけが通行できるようにした。
国内外の動向
〔海外〕
まちづくりや交通政策の一環として活用されている。
〔国〕
交通渋滞の緩和という観点からの取り組みにとどまるものが多く、低炭素社会
や温暖化対策としてトランジットモールを位置づけている事例は少ない。
事例
■那覇市国際通り及び周辺地区
トランジットモール導入に伴う交通規制及び乗用車から公共交通機関利用転換
により、国際通りの交通渋滞の解消と歩行者の安全確保、中心市街地の活性化等
を図る。国土交通省の支援を得ながら、2回の社会実験を実施し、大気・騒音環境
改善、トランジットバス運行の安全性・周辺地区との連絡性、タウンモビリティ
の有効性を確認した。課題として、平日実施の可能性、モノレール開業後のトラ
ンジットバスの適正ルート、商品荷捌・集配システムの必要性の確認が必要であ
ることがあげられた。
■ミネアポリス ニコレットモール(米国
ミネソタ州)
都市再生の取り組みとしてメインストリートのニコレット通りをトランジット
モールにすることを決定し、1967年に開始された。バスとタクシーのみ通行可で,
バス停を約120m間隔で配置。都心来訪者は公共駐車場に駐車し、バスに乗るパー
ク・アンド・バスライドシステムを導入している。
5
施策名
大規模集客施設の適正立地
概要
大規模集客施設の立地について、立地誘導、事前協議のルール化を図るとともに、
地域貢献活動の推進を定めるもの。
事例
■鳥取県「大規模集客施設立地誘導条例」
「大規模集客施設適正立地広域ビジョン」
鳥取県は、都市機能の集積動向に大きな影響を与える大規模集客施設の立地を
適切な場所へと誘導するために、基本方針を定め、コンパクトなまちづくりの推
進に資することを目的として「大規模集客施設適正立地広域ビジョン」を策定す
るとともに「鳥取県大規模集客施設立地誘導条例」を制定している。
条例では、大規模集客施設の立地について、立地誘導、事前協議のルール化を
図るとともに、地域貢献活動の推進を定めている。
当該大規模集客施設の床面積の合計が床面積1,500平方メートル超から3段階に
分けて、該当する規模毎に立地を誘導・抑制すべき要件を定めており、大規模集
客施設を新設、増築又は改築(大規模集客施設に該当しない建築物を増築若しく
は改築又は用途変更することにより大規模集客施設にすることを含む。)する者
は、県に設置に係る施設概要や予定地の状況などを記載した「設置届」を提出す
ることが求められる等、出店計画の事前協議のルール化が図られている。
6
施策名
交通円滑化の推進
概要
公共交通機関の整備、交通量に関する情報提供、普及啓発を組み合わせて、都市
交通の円滑化を図るもの。
事例
■福山市「福山市都市圏交通円滑化総合計画」
交通混雑の著しい福山都市圏において、重点的な道路整備による交通容量拡大
策と、交通需要マネジメント・マルチモーダル施策を組み合わせて総合的な対策
を進めることで、都市交通の円滑化を図り、交通渋滞と道路環境を改善するため、
策定されたものである。備後のCO2削減「ベスト運動(bingo environmentally
sustainable transport)」と名づけ、学校、企業、居住地におけるマイカー利
用の見直しについての普及啓発に力を入れている。効果としては、CO2削減は、
毎月平均2%、渋滞損失時間は、毎月平均4.5%、所要時間は、約8%をそれぞれ
削減できた。
7
③計画書制度による事業者の取組促進
施策名
運輸事業者に対する温室効果ガス排出量削減計画書の提出
概要
一定の規模以上の運輸事業者に対して、温室効果ガス排出量削減計画書の提出・
公表を求めるもの。
国内外の動向
〔他県〕
13 都道府県にて導入
(1)
車両種別によらない設定をしている都県
100 台以上の自動車を使用する事業者
神奈川県
30 台以上の自動車を使用する事業者
東京都、埼玉県、千葉県
(2)車両種別に対象台数を設定している府県
バス・トラック
200 台以上
長野県、鳥取県
100 台以上
群馬県、神奈川県、京都府、
大阪府、岡山県、徳島県、鹿児島県
(7府県)
タクシー
350 台以上
長野県、鳥取県
250 台以上
岡山県、大阪府
230 台以上
鹿児島県
150 台以上
京都府、徳島県
100 台以上
群馬県
路線車両
150 台以上
京都府
船舶
1 万総トン以上
鹿児島県
計画の期間
計画期間は、1年から5年計画で様々。実績報告書は毎年提出(提出期限は6∼8月末日)
。
計画の期間
単年度
長野県、群馬県、鹿児島県
3ヵ年
鳥取県、京都府、大阪府
5ヵ年
東京都、千葉県、岡山県
3∼5年で事業
神奈川県、埼玉県、徳島県
者が選択
事例
■低燃費車あるいは低公害車の使用義務
(1)埼玉県は、200 台以上の自動車使用している事業者に対して、平成 26 年度
までに「低燃費車」
(温室効果ガスの排出がないか相当程度少ない自動車で、具
体的には電気自動車、燃料電池自動車、平成 27 年度燃料基準達成車等)が使用
台数の5%以上になるように、低燃費車導入方策の提出を義務付けている。
(2)千葉県は、200 台以上の自動車使用している事業者に対して、
「低公害車」
(電気自動車、国土交通省認定低排出ガス車および知事指定の自動車)が使用台
数の5%以上になるように義務付けている。
8
施策名
概要
大規模店舗の来客者交通計画書の提出
大規模荷主、大規模集客施設などの事業者に対し、顧客や従業員などを通じて
自動車排出温室効果ガスの排出を抑制に対する計画書の提出を求めるもの。
事例
■埼玉県「自動車地球温暖化対策実施方針」
埼玉県は、大規模集客施設で、その用途面積が1万平方メートル以上である施
設の所有者または運営者に対して温室効果ガス排出量削減計画書の提出を義務
付けている。
9
施策名
通勤交通計画制度の提出
概要
一定の規模以上の事業者に対して、従業員の通勤にかかる温室効果ガス排出量削
減計画書の提出を求めるもの。
事例
■静岡県「自動車通勤等に係る地球温暖化対策」
静岡県は、
従業員 1,000 人以上で6割以上がマイカー通勤である事業者に対し、
3年間の対策計画の提出を義務付けている。平成 19 年度から始めており、平成
22 年度は 39 事業者(市町村含む)が提出。
■埼玉県「自動車地球温暖化対策実施方針」
埼玉県は、自動車地球温暖化対策実施方針にて、自動車通勤者が多数の事業者
(従業員 300 人以上、50%以上の従業員が自家用自動車)に対し、通勤自動車の
対策に関する計画書の提出を義務付けている。
■岐阜県「自動車通勤環境配慮計画書」
従業員 500 人以上の事業者が対象。計画書提出事業者には、通勤対策に係る経費
への補助金(最大 30 万円)がある。
10
④物流対策
施策名
モーダルシフトの促進
概要
従来のトラック等などによる個別輸送を、発送地点や配達地点における一時集
積と代替輸送手段による共同輸送に変更するなどのモーダルシフトを促進する
もの。
国内外の動向
〔国〕
国土交通省は、荷主企業、物流事業者等、物流に係る関係者によって構成され
る協議会が実施するモーダルシフト等の取組みに対して支援する「モーダルシ
フト等推進事業」(補助事業)を実施。
事例
■神戸市「モーダルシフト補助制度」
神戸市が、神戸港で船舶への揚げまたは積みが行われるコンテナ貨物で、輸
送時に発生する CO2 排出量を削減しようとモーダルシフトの取組みに対して、
上限 1,000 万円の補助を行うもの。
この場合のモーダルシフトとは、例えば、陸送を海上・鉄道輸送に切り替え
るものや神戸港を利用して陸送距離を短縮するもの、コンテナの往復輸送を効
率的に行って空輸送量を削減するものなどである。
交付を受けているモーダルシフトの多くは、国内発送者から神戸港までの陸
上輸送を、発送者の近隣の港から神戸港まで海上輸送に転換することによる
CO2 の削減。
なお、公表されている平成 18∼21 年の実績では、全 26 件に 60,770 千円を
交付し、CO2 排出削減量効果は、合計 67,794t-CO2/年と試算。
11
施策名
物流効率化の促進
概要
共同配送やルートの最適化等により、物流効率化を促進するもの。
国内外の動向
〔国〕
経済産業省、国土交通省、物流業界団体による協力によって、グリーン
物流パートナーシップ会議が設置されており、優良事例の紹介などが行
われている。
事例
■千代田区「グリーン物流システム促進事業」
都外に貨物の集配基地を作り、低公害車トラックによる共同配送をす
ることで、都心への走行車両を減らすグリーン物流システムの構築を推
進する民間中心の団体である「大丸有神田地区等グリーン物流促進協議
会」に参加。協議会メンバーとして、千代田区も平成 22∼23 年度は負担
金を支払った。国の補助金が受けられる可能性が高まるよう、環境モデ
ル都市の提案に盛り込むこともしている。
図 グリーン物流システムイメージ
(出典:大丸有神田地区等グリーン物流促進協議会)
12
⑤公共交通利用促進・自動車利用の抑制
施策名
自動車乗り入れ規制
概要
一般車両による地域への乗り入れを規制し、バス、タクシー、自転車等での利用
を促進するもの。
国内外の動向
〔海外〕
排ガス規制や歴史ある景観を守る観点から自動車乗り入れ規制を行っている。
〔国〕
国立公園及び国定公園等において、自然環境保全の観点から地区を特定して規
制をかけている。また、自治体によっては、条例で規制をしたり、法定外目的税
を設定するなど、地域ごとに施策がなされている。
事例
■車馬等乗入れ規制制度(環境省)
自然景観や動植物の生息・生育環境を保全するために、環境省が国立・国定公
園内の特別地域内に車馬等乗入れ規制地区を指定する制度。自然公園法に基づき、
国立公園又は国定公園の特別地域のうち環境大臣が指定する区域におい
て、全域に渡り、車馬の乗り入れは規制されている。なお、乗入れ規制地区に車
馬を乗り入れる場合には、国立公園内においては環境大臣、国定公園内において
は都道府県知事の許可が必要であり、許可を得ずに車馬を乗り入れた場合、自然
公園法により、6 ヶ月以下の懲役又は 50 万円以下の罰金が科される。
■岐阜県「乗鞍山頂マイカー規制」
中部山岳国立公園内にある乗鞍岳周辺は、特別保護地区に指定されているが、
自動車流入の激増等から、乗鞍地域の環境保全施策を実施することとし、そのた
めの財源を原因者に求める手法として法定外目的税(乗鞍環境保全税)を導入し
ている。乗鞍鶴が池駐車場へ自動車を運転して自ら入り込む行為、又は観光ある
いは一般乗合用バスにて他人を入り込ませる行為を課税客体とし、乗鞍鶴が池駐
車場へ自動車で入りこむ回数 1 回あたり 300 円から 3,000 円の幅で、乗車定員ご
とに区分を設定し、徴収している。
■大磯町海岸自動車等乗入れ禁止条例
大磯町では、海岸の動植物の保護と良好な利用環境の確保のため、平成8年度
より条例を定め自動車等の乗入れを規制。緊急やむを得ない場合等は対象外とし
つつ、自動車(原動機付自転車・自動二輪車・三輪バギーなどを含む)を対象に、
乗入れ禁止看板の設置を通じて規制の対象範囲を定めている。罰則は、乗り入れ
行為に対して 5 万円以下の罰金であり、措置命令に従わなかった場合は、更に 5
万円以下の罰金が課される。
■イタリア
多くの観光都市では市内中心部(歴史地区)に ZTL という住人以外の車乗り入
れを規制している区域があり、タクシー、公共交通機関、居住者以外の車両乗り
入れを禁じている。
■ドイツ
自動車の排気ガスによる大気汚染抑制を目的に、都市部への自動車乗り入れ規
制が実施されている。各自動車は排気ガス量に応じて4つのカテゴリーに分類さ
れ、カテゴリーごとに色分けされたステッカーをフロントガラスのよく見える場
所に貼らなければなりません。そのステッカーは各車検場などで約5ユーロで購
入することになっている。
13
施策名
ロードプライシング
概要
道路課税といわれるもので、交通量を制限するため、公道利用を有料化するもの。
国内外の動向
〔国〕
これまでも、東京都等で渋滞緩和・環境改善のためにロードプライシングの活
用が検討されたものの、日本の場合は高速道路が有料となっている状況もあり、
進展がない。
事例
■ロンドン(英国)
2003 年 2 月より渋滞緩和対策として、ロンドン中心部に乗り入れる車両に混雑
課金を課す制度が導入された。課金区域は、約 40 平方キロメートルであり、課金
区域内で車両を運転するドライバーは課金(1 日 5 ポンド(約 1000 円程度)
)を支
払い、車両ナンバーをロンドン交通庁のデータベースに登録することになってい
る。事前支払が原則であり、そうでない場合には、割増される。違反者に対して
は 80 ポンド(約 1 万 6000 円程度)が請求され、4 週間を超えても支払わないと割
増しされる。実施効果としては、課金区域の中の混雑は平均 30%の減少を示した。
課金区域に入る乗用車の内、50∼60%は公共交通機関へ変更し、20∼30%は課金
区域を迂回したという結果がでている。
■シンガポール
シンガポールの道路料金自動徴収制度(ERP)では、対象車両を乗用車、タクシ
ー、貨物車、バス、二輪車とし、徴収方法は、入口のゲート(ガントリー)の下
をくぐると車内の車載器のキャッシュカードから料金が引き落とされる仕組みと
なっている。違反者に対しては、何らかの理由(キャッシュカードの残高不足な
ど)で料金が徴収できなかった場合、ガントリーに設置してある監視カメラが通
過車両の後方からナンバープレートを撮影、違反車両のデータをセンターに送信
し、後日、罰金が請求される仕組みになっている。なお、罰金は、車載器の未搭
載 70S$(約 5,040 円)、カードの入れ忘れ 10S$(約 720 円)となっており、
実施効果としては、市街地では、平日で終日 20∼30km/h を維持、高速道路では、
ラッシュアワーでも 45∼60km/h を達成している。
14
施策名
概要
パーク&ライド促進
自家用車で起点近くの郊外の駅やバス停に設けられた駐車場まで移動し、鉄道や
バスに乗り換えて市街地や観光地などの目的地に移動する仕組みを作るもの。
事例
■ 札幌市
地下鉄駅 7 駅の周辺に 8 ヵ所のパークアンドライド駐車場があり、収容台数は
約 3,000 台である。札幌市交通事業振興公社が代行運営している。
■
熊本県「熊本都市圏パークアンドライド」
熊本市を中心とした鉄道沿線の駅における通勤・通学等の為に利用できる駐車
場について、稼動状況等の情報提供を行なっている。
■
滋賀県大津市「パーク&ライド」
大津市は、市街地における渋滞解消と公共交通の活性化を目的として、パーク
&ライドを実施している。市内の駅前の 2 ヶ所に公共駐車場を設け、地元の私鉄、
バスを利用した大津観光や京都観光のための各種乗車セット券を購入した利用者
に、一日駐車サービス券を販売している。
■
フライブルグ(ドイツ)
フライブルグは、排気ガス、駐車場不足、騒音の対策として実施された。パー
ク&ライド料金が自動車よりも安価にするため中心部の駐車料金を高くするとと
もに、本数を増やして待ち時間なく乗れるようにし、「環境定期券」を発売した。
大規模な駐車場が何ヶ所も整備されており、全体で 4,000 台以上の駐車容量があ
り、駅の跨線橋の脇には、1,000 台の自転車を収容できる有料自転車ステーション
が設置されている。
■
シンガポール
シンガポールは、都心の渋滞緩和策として、パーク・アンド・ライドを導入し
ている。利用者は、最寄り駅等に隣接する公共駐車場に駐車し、電車やバスに乗
り換えて都心部へ通勤を行い、1カ月分の駐車料金と公共交通機関の運賃とが一
つになったプリペイドカードを購入して利用する。
15
施策名
概要
自転車利用の促進
自転車専用の道路(バイクレーン)を設置する等、自転車利用の利便性を向上
ざせるもの。
国内外の動向
〔国〕
国土交通省と警察庁では、自転車通行環境整備の戦略的展開を図ることを目的
に、
「自転車通行環境整備モデル地区」事業を行い、モデル地区を、全国で 98 箇
所を指定。また、
「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」を開
催している。
事例
■ 前 橋 市 「地 球 温 暖化 防 止 策と し て の自 転 車利 用 の 促 進」
前 橋 市 は、地 方か ら の 環境 維 新 とし て、環 境 にも 健 康 に も優 し い 自転 車
利 用 促 進 を総 合 的 に施 策 化 し、 民 学 官の 「 自転 車 の ま ち前 橋 推 進委 員 会 」
等 を 組 織 し て 、 自 動 車 王 国 か ら 「 自 転 車 の あ る 生 活 様 式 」 の 普 及 、「 日 本
一の自転車王国まえばし」の実現とともに、地球温暖化防止策としての
CO2 削 減 、 地 方 か らの 環 境維 新 ( 革命 ) を 進めて い る 。
■ 金 沢 市 「バ ス レ ーン を 利 用し た
自転 車 走行 指 導 帯 」
道 上 を 走 る自 転 車 と歩 行 者 の接 触 す る危 険 な状 態 を 解 消す る た め 、2007
年 10 月 よ り 本 格 実 施。 バ ス レー ン 内に 自 転 車レ ー ン を 設け 、 ク ルマ と 同
様 、 左 側 (一 方 )通 行に し た 。
■ 金沢市
金沢市まちなか自転車利用環境向上計画
自転車を公共交通と組み合わせた都市交通の一つとして再認識し、金沢のまち
の特性に応じた市民・来街者の身近な移動手段として利用できる環境を整えるた
め、金沢市がまとめた計画。
■ポートランド市
(米国、オレゴン州)
ポートランド市では、市内総延長 400kmを越えて縦横に張り巡らされたバイク
専用路、自転車レーン、信号機付近に設けられた「巻き込み事故」防止用のボッ
クス状の停止ラインなどが整備されており、きめ細かく立てられた自転車用道案
内やいたるところに駐輪用ラックが設置されている。
■アムステルダム市(オランダ)
首都アムステルダムには、中央駅前に世界最大の駐輪場が設置され、電車には
自転車専用車両が備え付けられており、無料のレンタサイクルも多い。自転車通
勤を奨励するために、企業に対して自転車購入補助金、自転車保険加入費補助等
の一部または全額を費用計上できるなど政府による優遇施策が手厚い。
16
施策名
概要
国内外の動向
カーシェアリングの促進
予め登録した会員に対して、短時間の車の貸出を行うもの。
〔海外〕
スイス、ドイツ、フランス等では、カーシェアリングの事業者が多数存在し、
行政の代行業務を行っている。
〔国〕
政策的なものはなく、自治体による社会実験的なものが多い。
事例
■京都eco観光EVカーシェアリング
京都市は、低炭素社会と公害のない社会の実現を目指して、次世代自動車の普
及促進事業に取り組んでおり、観光目的で市内に流入する車両を抑え、より環境
に配慮した観光を行ってもらうことを目的に、京都市内の提携先宿泊者を対象に、
市の公用車である電気自動車によるカーシェアリングの社会実験を行っている。
(平成24年2月末まで)対象者は普通自動車免許を所持している者で、市が指定す
る宿泊施設に宿泊する者となっており、貸出は無料。
■越前市「電気自動車カーシェアリング事業」
越前市が電気自動車の静かで快適な乗り心地を、市民の方に体感してもらうた
めに、市が所有する電気自動車を週末に無料で貸し出す制度。用途としてはイベ
ントでの利用、団体での移動、県内観光地めぐりなどの利用を想定し、個人的な
利用や営利目的での利用を除き、特に制限はない。
■イギリス
地方行政機関は、開発者との計画協定の中で、カーシェアリングに関する優遇
策を導入するよう誘導することができる。
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⑥単体対策
施策名
エコドライブの促進
概要
車両を保有している事業者等がエコドライブを推進するための取組を支援するも
の。
事例
■ 神奈川県「運行管理者向け講習会」
神奈川県では、エコドライブの推進を図るため、
「かながわエコドライブ推進協議
会」を設置。県、市、運送業者、荷主企業、エコドライブの専門機関、自動車教習
専門機関、自動車ディーラー・メーカー、運行管理機器メーカーを委員として、エ
コドライブの推進を行なっている。
かながわエコドライブ推進協議会では、運行管理者向けエコドライブ講習会を定
期的に開催。平成23年度は、運行管理者と対象として、県内各地で7回開催した。
また、エコドライブ推進マニュアルを作成し、エコドライブの実践方法、効果、
評価の方法等を提示している。
■愛媛県「エコドライブ推進事業所登録書制度」
エコドライブの実践を行う事業所が登録を行い、取組について実績報告書を提出、
公表するもの。登録を行った事業者に対して、愛媛県エコドライブ推進事業登録証
及びステッカーを交付する。県は、毎年度、登録事業所のエコドライブ推進責任者
を対象にエコドライブ講習会を開催し、エコドライブ推進の徹底を図る。平成23年4
月時点の登録事業所は、368事業所(保有台数4,768台)となっている。
また、県では交差点でのアイドリングストップを普及促進することを目的に、信
号待ち時間、信号の見やすさ、安全性等を調査し、安全で効果的にアイドリングス
トップできる松山市内の交差点を選定、公表し、アイドリングストップを推奨して
いる。
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施策名
電気自動車のインフラ整備
概要
EV の充電設備設置等インフラ整備に関する計画策定や補助を行うもの。
事例
■愛知県「愛知県EV・PHVタウン推進マスタープラン」
愛知県では、EV・PHVタウン推進マスタープランを策定し、2013年度でのEV・PHV
の県内新車販売2,000台(累計5,000台)
、充電インフラの整備累計100基(一般開放)
を目指している。
これを受けて、以下の施策を実行中である。
県、市町、自動車メーカー、商社、通信システム会社、駐車場、ガソリンス
タンド等80団体が参加する「あいちEV・PHV普及ネットワーク」の構築及び関
係者の協力による充電設備整備の推進
事業所、公共施設、商業施設の駐車場への充電設備の設置及び一般開放
普通充電設備を中心とした整備
インターネット、カーナビゲーションシステムによる充電設備の設置場所等
の情報発信の検討
集合住宅における充電設備の整備の検討
■京都府「京都府EV・PHVタウン推進マスタープラン」
京都府では、EV・PHVタウン推進マスタープランを策定し、2020年度時点の京都府
内における新車販売台数の1/2(20万台)がEV・PHVとなることを目指している。2013
年度までに、急速充電器50基、100V・200Vコンセント7,000基の設置を目指す。
これを受けて、以下の施策を実行中である。
自動車メーカー・電力会社・経済団体・学識経験者等により構成された「次
世代自動車協議会」を定期的に開催
統合型地理情報システムによる、充電インフラ設置場所の公表
EV・PHVのタクシー、レンタカーを利用して寺院・神社を訪問した人に限定の
優待(記念品贈呈等)を行う事業を、京都仏教会、京都府神社庁及び各寺院・
神社の協力で実施
■ドイツ「エレクトリック・モビリティ国家開発計画」
(e-mobility)
ドイツでは、全国に8つのe-mobilityモデル地区を指定し、2020年までに充電スタ
ンド75万台の設置を行う計画を策定している。これに基づき、ベルリンでは、エネ
ルギー供給会社RWEと自動車会社ダイムラー社の約500台の充電施設をオフィス、家
庭、大型ショッピングセンター、ショッピングモール、有料駐車場などの公共の場
に設置していく予定である。また、ハンブルグでは、100%再生可能エネルギーを使
用することを前提とした充電インフラの構築を計画している。
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施策名
低炭素車への補助
概要
低炭素車(電気自動車、ハイブリッド車、クリーンディーゼル車等)への購入支援
(補助金、減税)を行うもの。
事例
■愛知県「低公害車導入促進費補助金」
大気環境の改善を目的として、低公害車の導入や、使用過程車の低公害車への改
造を行う旅客・貨物運送事業者、中小企業等の事業者、自動車リース事業者に対し
て、その経費の一部を補助。下表のように、車両本体価格と通常車両価格との差額
等での補助を行なっている。
補助対象
新車の導入
新車の導入
補助対象経費
CNG トラック・バス、ハイブリ
車両本体価格と通常
ッドトラック・バス
車両価格との差額
電気自動車トラック・バス
車両本体価格と通常
補助率
3 分の 1 以内
2 分の 1 以内
車両価格との差額
新車の導入
電気自動車乗用車
車両本体価格と通常
4 分の 1 以内
車両価格との差額
新車の導入
車両本体価格
5%以内
使用過程車の CNG バス及び
CNG 自動車又は電気
3 分の 1 以内
CNG トラック並びに電気自動
自動車への改造に要
車への改造
する経費
ハイブリッド乗用車(タクシ
ー・レンタカー)
改造
■京都府「京都府電気自動車等導入促進対策補助金」
京 都 府 内 の タ ク シ ー 事 業 者 、レ ン タ カ ー 事 業 者 が 電 気 自 動 車 、プ ラ グ イ
ン ハ イ ブ リ ッ ド 車 を 導 入 す る 際 の 補 助 。補 助 率 は 、一 般 社 団 法 人 次 世 代 自
動車振興センターが実施するクリーンエネルギー自動車等導入促進対策
費 補 助 金 の 補 助 金 交 付 上 限 額 の 1/2 と な っ て お り 、 電 気 自 動 車 の 場 合 は
60 万 円 、 プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド 車 の 場 合 は 300 万 円 と な っ て い る 。
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施策名
自動車購入者向けの環境情報の提供
概要
自動車販売者に対し、新車購入者への排出ガス等の環境情報の説明を義務付けるもの。
事例
■東京都 「環境条例」
条例において、自動車販売者に対して、新車販売時において、条例の義務の遵守に
必要な事項、販売する新車の自動車排出ガスの量、騒音の大きさ、燃料の種別、燃料
消費量、二酸化炭素の排出量を記載した書面等の備え置き、購入者への書面交付・説
明を義務づけている。
■京都府 「京都府地球温暖化対策条例」
条例において、新車を販売する自動車販売事業者には、以下の 2 点が義務づけられ
ている。
自動車販売事業者は、新車を購入しようとする者に対して、新車に関する適
切な自動車環境情報の説明が義務づけ。
年間の新車販売台数が 100 台以上の自動車販売事業者には、事業者内での販
売員に対する新車に関する自動車環境情報の説明についての指導・推進役と
して「エコカーマイスター」を選任し、京都府知事に届出することが義務づ
け。
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施策名
駐車料金の格差づけ
概要
一般車と低炭素車に、駐車料金の格差をつけるもの。
事例
■
神奈川県「EV イニシアティブかながわ」
電気自動車普及への取組みの一環として、同県の電気自動車導入補助金の対象
車種の使用者に交付される電気自動車認定カードを県立施設の有料駐車場で提示
すると、50%程度の料金割引が受けられる。
地球温暖化の防止、都市環境の改善、化石燃料からの脱却など「環境・資源問
題」に有効な電気自動車(EV)の普及に向け、2014 年度までに電気自動車(E
V)を県内に 3,000 台普及させるためのEV社会へのムーブメント。EV購入時
の優遇策、有料駐車場の割引や高速道路料金の割引等の利用時の優遇策、充電イ
ンフラの整備などを掲げている。
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