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水産(143~191頁)

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水産(143~191頁)
問 067
湘南しらす
獲れたてのシラスで作られる加工品はどれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① たたみいわし
② 豆アジ
③ ままかり
④ くぎ煮
シラス漁業の変移について
室町時代に紀伊から地曳網漁が伝わり、
江戸時代にはイワシ
(食
用より肥料用として)を主に漁獲していました。大正時代にシラ
ス専用の地曳網が三浦から小田原にかけて約 150 ヶ網が操業し、
主に食用として漁獲しており、現在では藤沢市、茅ヶ崎市、大磯
町などで数ヶ網が観光地曳網なども含め操業しています。
船曳網は江戸時代にコマシ網が始まり、肥料や餌用のアミを漁
獲していましたが、明治 20 年頃、三浦半島沿岸でシラス網が始
まる。戦後には 230 隻も操
業し、昭和 38 年には魚探、
昭和 40 年代に揚網機が導
入され、平成元年に神奈川
県しらす船曳網漁業連絡協
議会が創設され、現在では
30 ヶ網が操業し、現在の
「湘南しらす」ブランドを
しらす船曳網漁業の操業風景
築いています。
神奈川での漁期と加工
本県のしらす船曳網漁業及びしらす地曳き網の漁期は、3月
11 日から 12 月 31 日(1月1日から3月 10 日の間は禁漁期)の
間で、現在では相模湾沿岸の横須賀市長井から大磯町の間で操業
しています。
漁獲されたシラスは、海水で数回洗浄して、ゴミや混獲魚種を
除くだけでなく、体表面を覆う粘液を洗い流し、−3℃程の氷又
は海水氷で冷却する。特に夏場の暑い時期では、魚の量と同量の
氷を用いています。
鮮度低下が極めて早いシラスは、操業(日の出から)から数時
144
間で水揚げし、一部を生しらすとして流通させるが、その多くは
産地で加工されます。
製品としては、数分間茹で上げ
た「釜揚げしらす」
、それを天日
や低温乾燥させた「しらす干し」
、
はがき大の型枠に生しらすを入れ
て、せいろ等で干しあげた「たた
みいわし」などの加工品が作られ
ます。余談ですが、少し大きくな
ったウロコが出てきたシラスは、
茹でたシラスを干す様子
ごまめや煮干しなどの加工品とさ
(しらす干し製造)
れます。
シラスについて
水
産
シラスとは、いわし類の仔魚期のうち、ウロコや消化器官が発
達したカエリ期以前を指し、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメ
イワシの総称です。
主に漁獲されるのはカタクチイワシの仔魚であるが、
春先(3、
4月)や晩秋(11、12 月)はウルメイワシやマイワシが主体に
なることが多いです。
相模湾におけるシラスの加入は、春には主に黒潮にのって来遊
し、6月には加入がおわり端境期となって大きなシラスが多くな
る。そのころには相模湾内でも産卵が始まり、9月以降には相模
湾の沖合海域からの加入が始まるが、比較的痩せている魚体が多
いです。
シラスの水揚げ量、加工品の生産量
静岡県、茨城県、宮崎県などで年間数千㌧単位で水揚げされて
います。本県では水揚げ量は少なく、年間約 500㌧程です。
食べ方
生しらす漁獲のあった当日のみに食べられ、そのままか生姜醤
油、軍艦や丼でたべられるほか、タマネギなどとかき揚げなどで
いただきます。漁獲地での名産品として、地元の漁師さんの店や
料理店で出されます。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
(正解は①)
145
問 068
小田原かまぼこ
古くから伝わる小田原かまぼこの特徴が出ているねり製品は
どれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① ちくわ(竹輪)
② さつまあげ(薩摩揚げ)
③ 蒸し板かまぼこ(蒸し板蒲鉾)
④ 笹かまぼこ(笹蒲鉾)
小田原蒲鉾の歴史
記録や資料などは関東大震災(大正 12 年)でほとんど失われ
ていますが、発見された文献によると、北条早雲時代(1432−
1519 年)から桃山時代(1573−1595 年)の間に創製されたとされ、
当時は相模湾で漁獲されたオキギスを主に用い、その後はオキギ
スの他に、トラギス、ムツ、イサキから近年ではグチ類やキンメ
ダイ、ハモなども用いられています。
すり身を板に盛りつけるようになったのは、幕末頃からであ
り、この頃から従来の焼く方法に代わり、蒸す方法が主流とな
り 「蒸し板かまぼこ」 として発展してきました。一時、漁獲物
の減少により衰退しましたが、大正7年頃に鉄道機関の発達に
伴い、丸う三代目政吉の決断と信念で小田原蒲鉾組合が一丸と
なり東シナ海の底曳網漁業によるグチ類が入荷できました。ま
た、大正 12 年の関東大震災を契機に、それまでの原始的な製法
を一新して、新しい加工機械の導入と、水晒し等の技術普及に
よって、現在の蒲鉾加工の基礎を築き小田原かまぼこの主原料
になりました。
平成 16 年において、小田原蒲鉾水産加工業協同組合は 「小田
原蒲鉾十か条」 を制定し、板付き蒸し蒲鉾の品質について、グ
ルタミン酸など添加物によって増加できない、スリ身由来の必
須アミノ酸含量が5g / 100g 以上という品質基準が作られまし
た。
原料と加工方法
相模湾の定置網で漁獲される小型のイサキやマアジを、スリ
身に 100%原料で特産品も作られています。
加工はスリ身の解凍 ― らい潰(らいかい:すりみを練る工程)
― 塩ズリ ― 加水と続き、「成形」 では小田原のかまぼこの特徴
が見られます。小口から見ると扇の地紙を広げた形で、昔なが
146
らの職人の手技に添った美くしさがあります。蒸し後は角がと
れた扇形の福々しい形になったものが今日の原型とされていま
す。続いて坐り ― 加熱 ― 冷却が行われます。
水晒し(みずさらし)
輸送に長時間を要したグチ類(通称イシモチ)ですが、蒲鉾
の歯ごたえである 「足」 を形成する能力が高いため、その生臭
さをとる方法とあわせて、水で晒すという方法が考案されまし
た。
水晒しにより、魚肉の臭み、脂肪分、pH の低下を改善し、弾
力のもとになるタンパク質の絡み合いを阻止する酵素類(水溶
性タンパク質)取り除き、小田原蒲鉾の特徴である、白くて弾
力のあるかまぼこが製造されるようになりました。
また、小田原には丁度水晒しに適した水(地下からの湧き水)
があり、特徴としてはカルシウム、マグネシウムを程よく含み、
鉄や銅等の成分を含まない軟水であることです。
水
産
板付け
蒲鉾の板の材質は樅(も
み)等が使われます。樅は水
分を吸収しやすい特徴があ
り、蒲鉾を蒸した後に出る
余剰な水分について、この
板が吸収することから、品
質的な保存性が良くなると
同時に、付き板部分におい
てもきれいに仕上がります。 板付き蒲鉾が蒸し器で加熱される様子
食べ方
蒲鉾の最もポピュラーな食べ方は 「板わさ」 だといわれます。
小田原の蒸し板蒲鉾は全国的に見ると、少し甘めに作られてい
ます。生わさびのすりおろしとわさび漬がとても良くあいます。
何も付けずに蒲鉾だけを食べた後、蒲鉾にすりわさびやわさび
漬をたっぷり乗せて、わさびの風味を楽しみながら味わう 「板
わさ」 は、小田原蒸し板の醍醐味です。
また、最近ではオリーブオイルと合わせて、刺身のカルパッ
チョのように食べるのも粋なものです。
◇参考文献
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は③)
147
問 069
まぐろ、かじきの味噌、粕漬
まぐろやかじきを味噌や粕に漬ける漬魚加工が盛んなところ
はどこでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 横浜市
② 小田原市
③ 大磯町
④ 三浦市
歴 史
「まぐろ、かじきの味噌、粕漬」は、三浦市三崎において、昭
和 30 年代から行われていた「なまり節」に代わる製品として開
発され、その後数十社による製造が始まり、50 年以上も続くベ
ストセラー商品として現在に至っています。
当初はクロマグロやメバチに代表される鮮赤色が、刺身素材
として評価が高いものの、同時に漁獲されるカジキ類について
は、その肉色が淡桃色や淡黄色であったことから、刺身素材と
しての評価が低い状況でした。そこで、新たな加工品の開発が
要望され、肉色によって商品の品質が左右されない、味噌漬け
が開発されました。しかし、カジキ類はマグロに比べて一般に
知名度も低いことから、
「かじきまぐろ」の名称で販売したとこ
ろ、カジキ特有の身の歯ごたえと旨味により、消費が著しく上
昇し、さらに各社独自の味噌のブレンドによって、様々な味の
製品が作られています。
原料魚
水揚げされたシロカジキ
148
主原料としては遠洋まぐろ
延縄(はえなわ)漁業等で漁
獲されたマグロ類のキハダや
メバチ、クロマグロ、カジキ
類ではマカジキ、メカジキ、
シロカジキ、クロカジキなど
が用いられています。 特にクロカジキ、シロカジ
キが多く用いられ、主に春先
に東南アジア沿岸域で漁獲された冷蔵魚を凍結したものを年間
利用しています。カジキ類は低脂肪の魚ですが刺身でもおいし
く食べられる高品質な魚です。また、日本沿岸域で漁獲された
マカジキやメカジキは、比較的脂肪分が多く、
「脂もの」として
用いられています。
製造方法
水
産
味付けとしては、味噌、粕、そして西京味噌が見られ、各社
によって用いる味噌の種類や、切り身の処理方法が異なります。
一般的には、数種類の味噌をブレンドし、みりんや日本酒でお
汁粉ほどの粘性にまで延ばし、味が整うまで混合したものを作
製します。解凍魚及び鮮魚を 80 〜 120g、大判では 180g 程に斜
に削ぎ切りし、そのまま味噌と合わせる事もありますが、数%
の塩水漬けや振り塩で処理することもあります。
その後、魚肉一つ一つに調合した味噌を刷毛などで塗りつけ
るか、大量生産を行うときには、どぶ漬けという大型の容器に
調合した味噌を入れ、直接、前処理した魚肉を投入し、数時間
から数日間の味を馴染ま
せます。この行程は魚種
やその品質(生鮮、解凍
原料等)で短期的に行う
ことと、長期間の熟成を
行うことがあります。袋
詰めにした後、冷凍保存
あるいは冷蔵で貯蔵され
味噌漬けになったクロカジキ
ます。
食べ方
一般には魚焼きの網で焼くか、
フライパンで焼きます。しかし、
味噌や粕が焦げたり煙が多く出ることから、味噌や粕を洗って
から焼くと調理器具が汚れず調理できます。また、アルミホイ
ルに少しの油をひき、タマネギやキノコ類などと一緒に巻いて
強火で焼いても美味しいです。
◇参考文献
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は④)
149
問 070
小田原の干もの
頭を残した背開きにして干物にされる魚はどれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① サバ(鯖)
② カマス(梭子魚)
③ イボダイ(疣鯛)
④ スルメイカ(鯣烏賊)
歴 史
古くより加工生産されている干物は、その昔は現在のような
「腹開き」 ではありませんでした。古来より武士社会では、食べ
物に関しても縁起を担いでおり、切腹につながる腹開きと、戦
で負ける兜割りに通ずる頭部を
割ることは、禁忌とされていま
した。
現在でも残る頭を残した背開
きは「小田原開き」といわれ、
カマスやサヨリなどの細長い紡
錘形の魚の加工法として各地で
カマスの小田原開き(背開き)
その姿を残しています。 原 料
沿岸で漁獲されるカマス類はアカカマスとヤマトカマスの2
種類があります。両種とも体長が 25㎝程までのものが用いられ、
晩夏から初冬の間に漁獲されたものが脂ののりが良く、大きさ
も揃っています。ヤマトカマスは別名「水カマス」といわれる
ように、比較的身が柔らかく、表皮も鋭いカマスの歯で傷つき
やすいので、十分に冷却されて鮮度が良いことが重要です。
漁獲は一時期に多く水揚げされることから、冷凍保存をした
ものを、随時利用しています。
加工の原理
小田原の干もの加工工場のほとんどは、手作業による加工で、
開きの機械加工は一部にとどまっています。
鮮魚の場合は水氷で冷やされた状態から、冷凍魚の場合は前
日から自然解凍を始めて、加工を行うときにはシャーベット状
態で始めます。
エラ部に包丁先を入れ、背骨部に当たったところから、包丁
150
をねかせて背骨に沿って一気に尾部まで切り開きます。次に頭
部側に付いているエラ部を切り離し、一緒に内臓ごと取り出し
ます。
ここで用いられている小型の包丁を「アジ切り」といい、う
なぎ裂きの包丁と同様に、干物加工用に作られた専門包丁です。
数十枚開いたところで切れ味が鈍ることから、加工台にはいつ
でも予備の包丁が準備されています。
その後、事前に箱形のつけ塩用容器に水を張り、塩を加えて
溶かしたところに、ボーメ(塩分測定の比重計)で塩分濃度を
確認し、ザルカゴにて開いた側を下面にして重ね置き、そのザ
ルカゴ5〜 10 個をつけ塩容器に揺すりながら空気を逃がしなが
ら沈め、最後に魚が浮かないように押しふたをのせます。漬け
込み時間は、魚種、生鮮と解凍、大きさや脂ののりにより、大
きく異なり各社の経験から適した漬け時間を指定しています。
つけ塩行程が終わったら、背骨に付着している内臓などを歯
ブラシを用いてきれいにし、真水で 10 秒ほど洗って余分な塩抜
きをおこない、乾燥棚に開いた側を上にして冷風乾燥を2、3
時間ほど行います。特に 10 〜 15℃の冷風乾燥を行い、水分を比
較的多く残して、ソフトな食感に仕上げています。
水
産
塩のつけ方
古くは振り塩により、直接開いた魚に塩をまんべんなく振っ
て乾燥させましたが、大量に均一な干ものを作るのには、「たて
塩」といい塩水につけ込む方法が採られます。小田原地区では
10%程の塩水に、10 〜 40 分ほどを目安に、濃いめの塩水である
程度短い時間で処理して魚の味と香りを残しています。
塩に関しては、にがり成分のマグネシウムなど、不純物の多
いものより、精製塩や溶けやすいパウダー塩などを使っている
ところが多く、雑味が少ないといわれています。
品質管理
現在は、低塩で低乾燥の製品が多いことから、殆どの加工業
者で冷凍保存が行われています。また、魚体の一部が欠如した
ものや、キズのあるものについては、2級品として区別してい
ます。
さらに、油焼けによって黄色に変色しないように、機器の能
力の最大の冷凍速度で処理しています。
◇参考文献
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は②)
151
問 071
三崎のまぐろ
マグロにはいろいろな種類がありますが、三崎で水揚げされ
る一番多いマグロはどれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① クロマグロ
② ミナミマグロ
③ メバチ
④ ビンナガ
※上記の名称は標準和名です。
漁業の歴史
大正時代までの三崎は、サバ、イカ、イワシなどの沿岸漁業
が盛んでした。その頃は和船にて相模湾で流し網によってまぐ
ろ漁業を操業していました。
明治 36 年に和歌山県串本港の漁船、蓬莱丸が三崎に流れ着き、
餌場としての地理的条件も、漁業経営的にも魚商がしっかりして
いたことにより、本拠地としました。その後、かつおまぐろ漁船
が明治 40 年頃に機械船となり、全国の漁業者が新しい漁場の開
拓を目指すようになり、三崎の名が馳せることになりました。
昭和初期には県外船が続々と入港するようになり、三崎の船
も沿岸から徐々に南方へ漁場を
広げていき、昭和 40 年代にな
ると、超低温冷凍設備が船に完
備されて航海期間も長くなりま
し た。 特 に 昭 和 43 年 に は、 近
代的な拡張された三崎魚市場が
完成し、9万㌧ものまぐろ類が
水揚げされ、世界で一番となり
船から吊上げたマグロと
ました。
市場に並ぶマグロ
漁法と操業
三崎の船を含めた遠洋マグロ船は、まぐろはえなわ漁業とい
う全長 150km 以上の仕掛けを使います。
幹縄(みきなわ)に目印となるラジオブイや縄を浮かすため
のビン玉を付け、釣針の付いている枝縄(えだなわ)にはイカ
などの餌を付け、針数は 2500 ~ 3000 本を約5時間かけて投縄
します。マグロがかかるまで3~4時間縄待ちし、揚縄(あげ
なわ)作業では、10 ~ 15 時間かかり、漁獲されたマグロは、えら、
内臓、ひれを取り除いて、血抜きを処理したラウンド(丸ごと
一匹)の状態にして、-60℃の超低温で船内で急速凍結されます。
152
漁獲される魚種
三崎船(県船)は現在は東太平洋の赤道付近を主に操業海域
としています。主対象としているのはまぐろ類のメバチ、キハ
ダであり全漁獲の約7割をこの2魚種で占め、他にクロカジキ
やシイラ、サワラなどが混獲されています。
まぐろ類
スズキ目サバ科マグロ属には、クロマグロ(太平洋、大西洋)、
メバチ、キハダ、ビンナガ、コシナガ、タイセイヨウマグロ(大
西洋)、ミナミマグロ(南半球の温帯域)の8種類がいます。
メバチは全世界の熱帯・温帯海域に広く分布し、まぐろ類の
中で漁獲量が最も多く、成魚では全長 250㎝、体重 200kg に達
します。特に目が大きいことが名の由来になっており、市場で
はころころとした魚体からダルマやバチと呼ばれ、真っ赤な刺
身として販売されています。
キハダはメバチと同様に世界の熱帯・亜熱帯海域に広く分布
し、大きさもほぼ同じです。缶詰や刺身などに用いられます。
水
産
冷凍刺身の製造
冷凍マグロはラウンドの状態で加工場に運ばれ、バンドソー
にて頭を切り落としたドレスにし、三枚おろしのフィレ、四つ
割したロインにしてから皮を剥き切り、ころと呼ばれるチャン
ク(塊)にした後、サク取りをします。
解凍方法
一般には、塩を加えた 50℃程の温水に、水道水で汚れを洗い
流した冷凍のサクを浮かべ、芯まで解凍します。解凍できたら
直ぐにタオル等で表面の水分を拭き取ってから、乾いたタオル
などで包んで、酸素が通るようにして冷蔵することで、真っ赤
に発色し美味しい状態になります。解凍後はその日のうちに食
べるのが美味しいです。ちなみに、家庭用の冷凍庫では−17℃程
なので品質か劣化しますから、早くお召し上がりください。
◇参考文献
「組合史」/神奈川県鰹鮪漁業協同組合、神奈川県鰹鮪漁業協
同組合,S45
「創立 20 周年記念誌“まぐろ”」/㈳三浦青年会議所
「食材魚貝大百科4」/平凡社
(正解は③)
153
問 072
三浦の寒サバ
脂が乗った寒サバをとる漁船が三浦や長井(横須賀市)から
出漁しますが、どんな漁法でとられているでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 一本釣りで釣る
② たも網ですくいとる
③ 定置網でとる
④ 刺し網でとる
魚の名前と種類
スズキ目サバ科サバ属の海産魚で、サバと呼ばれる魚にはマ
サバと、体側の黒点が特徴的なゴマサバの2種類がいます。日
本各地に分布しますが、関東近海ではマサバは漁場水温が 16 〜
20℃、ゴマサバはこれより若干高い場合に多くとれることや、
全国的な分布の違いから、マサバは冷水性、ゴマサバは暖水性
と考えられています。
サバの語源は、サバの歯が他の魚に比べて小さいことに由来
し、サはささやかの意、ハは歯で、小歯(サバ)であるされるほか、
サバが群れをなして回遊することから、「多(さは)なる魚」の
意で名付けられたという説があります。
寒サバといわれるように、1月から3月にかけてが脂がのり、
大変美味しい旬です。
漁業の歴史
伊豆諸島海域のサバ漁は、三陸以北から南下してきたマサバ
の親魚を漁獲していました。このマサバは、水温の低い冬には
黒潮の流れる伊豆諸島近海に回遊し、春に向かって成熟し、黒
潮内側の瀬で産卵します。この魚群をねらって、神奈川県、千
葉県、静岡県、東京都の一都三県のサバ漁船が出漁します。昭
和 40 年代までは船の舷側(げんそく:船の側面)に座って、短
い釣竿に赤い布の疑似餌(ぎじえ)をつけた釣り針という単純
な仕掛けを使い、イワシのコマセを撒きながら、仕掛けを海面
に叩きつけるようにして1尾ずつ釣る「はね釣」を行っていま
した。その後、3〜4m の竿の先端に直径 70㎝の網袋をつけた「た
も網」で、撒いた餌に突進してくるサバを一度にすくいとる「た
もすくい網」という漁法が取り入れられ、現在に至っています。
154
産 地
たもすくい網漁業で漁獲さ
れたサバ類は、三浦市の三崎
漁港や横須賀市の長井漁港に
水揚げされています。
漁獲量は年変動があります
が、近年は 2,000 〜 3,000㌧が
水揚げされています。
サバのたもすくい網漁業の操業風景
水
産
品質管理
魚は死ぬと、最初に筋肉が硬くなり死後硬直を起こします。
そして、細胞の中の消化分解酵素が細胞自体を分解しはじめて
自己消化がおこります。
運動性がつよく血合い肉も発達しているサバは、鮮度低下が
速やかにおこりますが、漁獲直後に海水氷で十分に冷却される
ことで、自己消化を遅らせて品質を良く保っています。
よく「サバの生き腐れ」といわれるのは、サバ類にはヒスチ
ジンという遊離アミノ酸が多く含まれ、自己消化の際にアレル
ギー反応を伴う食中毒の原因物質であるヒスタミンに変わるか
らです。ですから、品質管理は重要で、品質劣化による身割れや、
漁獲時に体温がこもって白濁したヤケ肉にならないよう、とて
もデリケートに扱われています。
食べ方
とても旨味成分の多いサバは、塩焼きやしめ鯖、サバのみそ
煮などで一般に知られていますが、漁師料理にいくつかの食べ
方が残っています。まず、サバの叩いた身に潰した豆腐やみじ
ん切りしたニンジン、そして味噌などを混ぜて焼いた「さんが」、
鮮度がよければ醤油煮、船上でおろした身を醤油で沖漬けし、
熱々のご飯で頂きます。
最近では、しゃぶしゃぶやすき焼きなどにも用いられたり、
ソテーをトマトソースで煮込など、何にでも料理できて旨味の
濃い魚です。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科4」/平凡社
(正解は②)
155
問 073
松輪サバ
松輪サバとして出荷される発泡容器に目印として張られてい
るマークは何でしょうか?
正解を下から選んでください。
① 船のマーク
② 錨のマーク
③ 灯台のマーク
④ 漁師さんの顔のマーク
漁業の状況
三浦半島の南端、剱崎(つるぎさき)灯台の袂に位置する松
輪地区には、みうら漁業協同組合南下浦支所松輪販売所がある
間口(まくち)漁港があります。ここは一本釣りを主な漁業と
し操業し、スルメイカやヤリイカ、キンメダイ、そしてサバを
対象に漁業を行っています。
「松輪サバ」は、6〜 11 月の漁期に沿岸域に来遊したり、磯
根に居づいた「マサバ」を一本づつ大切に釣上げる「サバ一本
釣漁業」が盛んに行われています。
出船は夜明け前に漁港を出発し、ポイントに着くとアンカー
を打ち赤い刺しゅう糸を
つけた仕掛けで手釣りを
行います。一匹がかかると
手 早 く 引 き 寄 せ て、 釣 上
げたサバには手を触れる
こ と な く、 十 分 に 氷 を 効
かせた魚槽に素早く針を
は ず し 入 れ、 昼 過 ぎ に は
水 揚 げ と な り ま す。 年 間
一本釣りを行っている様子
水揚げは 500㌧ほどです。
魚の特徴
関東近海に来遊したマサバは、春の産卵のあと沿岸域に来遊
して、産卵で消耗した魚体に栄養をつけるため沿岸域に分布す
る種類も量も豊富な餌を食べて脂がのって太ります。この松輪
サバが美味なのは、その餌を捕食して魚体が太り、しかも体全
体に脂がのってくる旬の時期だからなのです。
156
品質管理
松輪販売所では鮮魚及び活魚の出荷部があり、入札などで魚
を空気で晒すことをしない、漁協
独自の迅速な出荷体制をおこなっ
ていることで、鮮度低下を防いで
います。そこには出荷場の作業を
行う方達も、氷をぶつけて魚体を
傷めることなく、品質管理には細
心の注意を払っています。
出荷を行っている様子
「松輪サバ」の出荷用発泡容器に
は、剱崎灯台をイメージした灯台マークが貼られています。
地域団体商標
水
産
この制度は、地域ブランドの育成に資するため、平成 17 年の
通常国会で「商標法の一部を改正する法律」が成立しました。
平成 18 年4月1日に同法が施行され、地域団体商標制度がスタ
ートしました。
平成 18 年 11 月 24 日「松輪サバ」が地域団体商標登録されま
した。地域団体商標番号は第 5005200 号です。なお、商標権者
の許可なしに、「松輪サバ」(「松輪さば、松輪鯖、松輪のサバ」
等類似名も含む」)の商標を用いた場合商標権侵害に当たり、商
標法 37・38 条に基づき営業停止や損害賠償等、厳しい罰則が科
せられます。
その他
間口漁港の江奈地区に、松輪の一本釣りの魚を頂ける「エナ
ビレッジ」があります。時期になれば松輪サバを様々な料理で
頂くこともできます。
食べ方
脂ののった松輪のサバは、刺身やしめ鯖で濃厚な旨味ととろ
けるような舌触りが身上です。もちろん、塩焼きや、煮付けなど、
どれで食べても驚きの旨さです。
◇参考文献
関東農政局ホームページ
http://www.maff.go.jp/kanto/to_jyo/jyouhou/senshin/
suishin/061204_06.html
(正解は③)
157
問 074
三浦のキンメダイ
神奈川県でキンメダイの水揚げが一番多い港のある市町はど
こでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 小田原市
② 葉山町
③ 三浦市
④ 横須賀市
魚の名前と種類
キンメダイ目キンメダイ科の深海性の魚であり、南西諸島周
辺、九州南方から北海道南部に至る太平洋沿岸、から小笠原諸
島周辺の海域に分布しています。おもに水深 200m から 800m く
らいの大陸棚の縁辺部や斜面、外洋の海山の周辺に生息してい
ます。
寿命は 14 年程で体長は最大で 60㎝に達します。関東近海での
産卵期は6月から 10 月の間で、産卵された卵は表層まで浮上し
ます。仔稚魚は表層から中層で浮遊生活をおくり、ふ化後約1
年で尾又長※ 17㎝ほどになり、漁場となる海山や大陸棚斜面に着
底します。
※
尾又長(びさちょう)は、魚の頭の先から尾びれの縁の中心ま
での長さをいいます。
漁業の歴史
記録は少ないものの、神奈川県では明治時代頃には既に一本
釣りにて混獲魚として漁獲されていました。
現在では、立縄漁業及び底立てはえ縄漁業の2種類にて東京
湾口や伊豆半島近海、伊豆諸島などで漁獲されています。
キンメダイを漁獲している主要な地域は、神奈川県のほか、
東京都、千葉県、静岡県、高知県の一都四県です。
神奈川県での水揚げはほとんどが三浦市で、三崎漁港、間口
漁港(松輪)で、大きさの選別がなされて鮮魚で出荷されてい
ます。
漁獲量の変動幅が広いものの、近年では年間 500㌧前後の水揚
げがあります。
資源管理
漁業者による自主的な資源回復計画が作られており、神奈川
158
県の漁業者は、東京湾口海域では全長 22㎝以下、伊豆東岸では
28㎝以下、伊豆諸島海域の大島〜神津島周辺で 22㎝、三宅〜八
丈島では 24㎝以下を小型魚として再放流しているほか、海域毎
に夜間操業の自粛や樽流し漁法の禁止を含めて、釣り針の数や
縄の数、操業時間など、細かく取り決めし、資源管理措置を実
行しています。
品質管理
三崎漁港で水揚げされたキンメダイは、自動選別装置にて、
魚体の重さ毎に1から8Bまでの9段階に選別されており、2
kg 以上で1クラス、8Bは 400g 以下となります。
松輪では、東京湾口部で漁獲されたキンメダイを、特に「地キ
ンメ」と称して区別しています。
キンメダイは漁獲直後には銀
白色で薄い赤色ですが、氷水で
しめられるとメタリックレッド
に変色していきます。この赤さ
を保っていることが品質を保つ
目安で、冷やしているだけでは
退色が進んでしまうので、取扱
のノウハウがあります。
水
産
水揚げされたキンメダイ
逸 話
関東では昔から祝いの赤い魚はマダイであり、同じ赤色の魚
でもキンメダイは殆ど用いられていませんでした。ホテルやレ
ストランでも一般に使われず、すり身で蒲鉾などに使われてい
ました。しかし、この十数年で料理店だけでなく、スーパーな
どに鮮魚や切り身で常に並ぶ魚となりました。
食べ方
身が柔らかく、程よく脂ののったキンメダイは、煮付けや鍋
物に料理されるほか、最近ではウロコを取った皮にお湯をかけ
て松皮づくりにした刺身やお寿司、水揚げ港の料理店や民宿な
どではしゃぶしゃぶにして食べられています。特に脂がのった
魚ならば、塩焼きにしても美味しいです。
加工品としては干物や味噌・粕漬けのほか、すり身にされて
高級蒲鉾も作られています。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科2」/平凡社
(正解は③)
159
問 075
横浜のアナゴ
東京湾でアナゴを漁獲する方法に何を使っているでしょう
か?
正解を下から選んでください。
① バケツ
② 素焼きつぼ
③ 塩化ビニールパイプ
④ 空き缶
魚の名前と種類
ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属の海水魚で、北海道以南の日
本各地で分布しています。神奈川では内湾の海藻・砂泥地・岩
礁がある東京湾に多く生息しています。
アナゴの仲間にはクロアナゴやゴテンアナゴなど、いくつも
の種類がいますが、食用とするのは頭部や体に白色点があり、
特に側線孔も白斑の中に存在するマアナゴのみで、雄は体長 40
㎝、雌は 90㎝程になります。上顎
が下顎よりも突出するという特徴
があり、ウナギとはここで区別で
きます。
「あなご(穴子)」という名前は、
江戸時代に「砂地などの狭い穴に
潜んでるから穴子」が一般的な由
マアナゴの写真
来とされています。
漁業の歴史
東京湾では底曳き網、あなごはえ縄で盛んに漁獲されたとい
う明治時代の記録があります。
神奈川県では、昭和 30 年代に横須賀市東部漁業協同組合研究
会と協同で、あなご筒漁業を開発し、現在ではあなご筒漁業が
主力になっています。
あなご筒は、直径 10㎝、長さ 80㎝程の塩化ビニール製の水道
管などに使用されている筒で、両側にロートを取り付けて、入
ったアナゴが出ないようになっています。筒の中にはイワシ、
160
イカなどの餌を入れ、筒を長いロープに 500 本以上とりつけま
す。アナゴは筒のような狭い空間に入りこむ習性があるので、
この習性を利用した、とても効率の良い漁法です。
生 態
マアナゴの産卵場ははるか遠くの南西諸島周辺にあるといわ
れています。産卵場からレプトセファルスという柳の葉っぱの
ような形の幼生が黒潮系の水によって輸送され、神奈川県の沿
岸に3〜4月に到着し、変態して親と同じ形になります。
東京湾では春から夏が旬で、小型底びき網やあなご筒漁業に
よって漁獲され、天ぷらや寿司として、なくてはならない夏の
味を供してくれます。
産 地
水
産
神奈川県でのマアナゴの漁獲量は、2001 年の統計では東京湾
では 190㌧、相模湾では 10㌧で、圧倒的に東京湾での漁獲が多く、
90%以上はあなご筒という漁業での漁獲です。活魚で東京市場
に出荷されていますが、横浜市漁業協同組合柴支所では、開き
アナゴをゆうパックでも販売しています。 食べ方
一般には目打ちをして開いたアナゴを、江戸前の天ぷらか、
江戸前寿司でのやわらか煮で食べられています。とくにメソッ
コといわれる小型のマアナゴが
美味しいとされます。
その他にも、焼きあなごや棒
ずしなどで頂きますが、必ず表
皮のヌメリを湯引きや塩もみで
取り除いてから料理してくださ
焼きあなご
い。
◇参考文献
神奈川県水産技術センターホームページ メルマガより
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は③)
161
問 076
横浜のシャコ
東京湾ではシャコの漁業が盛んですが、どんな漁法で漁獲さ
れているでしょうか?
正解を下から選んでください。
① すくい網
② はね釣り
③ 底びき網
④ 刺し網
魚の名前と種類
軟甲綱トゲエビ亜綱口脚目シャコ科の甲殻類で、全国の沿岸
や内湾に分布しており、水深 10 〜 30 mの泥底に浅いU字形の
穴を掘って住んでいます。
カマキリのような手を持ち、シャコパンチともいわれる強力
なひじ打ちで、アサリの貝殻をも割ってしまいます。体長は 15
㎝程ですが、大きな物だと 20㎝を越えます。英名では mantis
shrimp といいますが、日本語にするとカマキリエビということ
になります。
漁業の歴史
シャコは江戸時代から、底びき網漁業によって漁獲されてき
ました。1950 年頃から、東京湾での漁獲の中心は横浜市子安地
区でした。当時は 150 隻以上の漁船が年間 250 日以上も操業し
たといわれています。
1960 年代の高度経済成長のかけ声のもと、東京湾を漁業の場
から重化学工業の場へ変換しようとする動きが進みました。こ
れは埋め立ての拡大や水質の悪化などをもたらし、これと歩調
を合わせるようにシャコの漁
獲は急速に減少しましたが、
オイルショックによって高度
経済成長の動きが減速すると
ともに、シャコの漁獲は回復
し、現在では横浜市漁業協同
組合柴支所が中心となって、
小型底びき網漁業によって活
発に漁獲されています。
漁獲されたシャコ
162
資源管理型漁業
1977 年から漁獲制限、1978 年から出漁日数制限という資源管
理対策を横浜市漁業協同組合の漁業者が自主的に開始しました。
現在では、これらに加えて小型のシャコを漁獲しないための
網目の大きさや網目の形など、網の改良などにも取り組んでい
ます。現在、シャコ資源は大幅に減少しており、漁業者はシャ
コを禁漁にして、資源回復に努めています。
産 地
神奈川県での産地は東京湾に面する横浜市金沢区の柴漁港で
水揚げされ、加工された後に築地に出荷するほか、朝市などで
一般に売られています。
加工方法と品質管理
水
産
船上で大きなシャコだけを選別して水揚げされた物を塩ゆで
します。強力な釜で少しの塩を加えてお湯を沸かし、沸騰が止
まらない分だけシャコを入れ、約3分間茹でます。
茹で上がったシャコはハサミで頭部を切り落とし、尾部の両
サイドをカットして、背と腹部の殻をむいて、定型の箱にサイ
ズを揃えて並べます。規格としては、特大は6匹入り、マル中
は 11 匹入りで1枚となります。
さらに頭部のハサミを切り出して中身を出した物がツメとな
り、220g で1枚となります。
茹で上がったときに、脱皮前後で身が柔らかくなっていたり、
身が縮んでしまう物などは、選別されて出荷はされないように
しています。
食べ方
生きたシャコは生でも食べられますが、基本的には茹でたシ
ャコが寿司ネタや刺身として食べられます。また、天ぷらにさ
れたり中華風に炒められて食べたりします。
柴漁港の近くにあるパン屋さんで、柴のシャコを使ったシャ
コパンが有名です。
◇参考文献
「東京湾のシャコ資源」/清水詢道 うみうし通信,40, 9,
2003.
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は③)
163
問 077
相模湾のアジ
相模湾を代表する魚のマアジですが、春に多く獲れる小さな
マアジを通称でなんというでしょうか?
正解を下から選んでください。
① ノドグロ
② カンヌキ
③ ジンダ
④ ショウゴ
魚の名前と種類
硬骨魚綱スズキ目アジ科マアジ属の海水魚で、太平洋北西部
の固有種で、北海道から南シナ海までに分布します。
相模湾には黒潮に乗り、沿岸から沖合の中層から水深 100m
ほどを群れで来遊し、漁獲時期の3〜5月に年間の8割を漁獲
します。この時期は、産卵を控えた 20 ― 30㎝ほどのサイズと、
10㎝ほどのジンダと呼ばれる小型魚が水揚げされます。
居着きといわれる浅海の岩礁帯に定着したマアジもおり、市
場では「キアジ」と称して、脂がのっているため、とても珍重
されています。
マアジは成魚では全長が 50㎝にも達しますが、多くは 20 〜
30㎝ほどの大きさです。アジ類の特徴であるゼイゴと呼ばれる
稜鱗(りょうりん)は大きく側線の全体にあります。
アジの名の由来は、この魚は味が
いいとの意味でアジと呼ぶと、新井
白石が日本で使われている言葉の語
源を解説した「東雅」という本に、
「或
人の説にアジとは味也。其の味の美
をいうなりといへり」との記述が広
く知られています。
マアジ
漁業の歴史
終戦直後に、県下全域でサバ・アジの釣や延縄が行われ、昭和
22(1947)年におけるサバ・アジ釣は 573 隻が操業していました。
この釣漁業に対して、大量に漁獲する揚繰(あぐり)網漁業は、
機械揚繰網が 21 ヶ統、手揚繰網が 38 ヶ統操業し、相模湾の瀬
の海では夜焚(よたき)網としてアジの揚繰網が 1 ヶ統活躍し
ていました。
現在ではマアジの漁獲の中心は西湘地区の定置網漁業が主体
であり、近年では年間 1,500㌧ほどが水揚げされています。
164
品質管理
大量に漁獲される定置網では、魚を急速に冷却するため、冷
却殺菌海水装置を用いた−1℃の海水を魚槽に積み入れて、魚と
氷をその中に入れることで、押しつぶされることなく急速に冷
却します。また、フィッシュポンプを使って魚体選別装置により、
迅速にサイズを分別してすることで、高品質を保ちます。
加工品
小田原地域では、多くの塩干加工業者がマアジの干ものを古
くから製造しているほか、近年ではかまぼこ加工業者が、マア
ジのすり身を 100%原料とした板付かまぼこなどのご当地製品が
作られています。
逸 話
特に神奈川県西部域の消費地市場である小田原市公設水産地
方卸売市場では、地の生鮮アジを「小田原のあじ」として銘柄
品と評価して取引しています。さらに、平成 13 年3月小田原市
の「市の魚」としてメダカとともにマアジが選定され、名実と
もに小田原の魚としての地位を確立しています。
水
産
食べ方
大衆魚として刺身やたたき、塩焼き、つみれなどのほか、フ
ライや小アジの南蛮漬けなど、皆さんがよく知っている料
理があります。
漁師さん達が船の上で食べる漁師
料理として有名なものに、たたきを
ご飯に載せてお茶をかければ「まご
茶」、氷水と味噌を入れれば「水なま
す」となり、即席のご飯となります。
また、JR 東海道線で有名なアジの
西湘地区で有名なまご茶
押し寿司もお弁当で有名です。
その他
ノドグロは口の中が黒いカマスやアカムツを、カンヌキはと
ても大きなサヨリを、ショウゴはカンパチの小型魚を呼ぶ通称
です。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科3」/平凡社
(正解は③)
165
問 078
ヒラメ
ヒラメ栽培漁業により、稚魚を放流していますが、全長が何
ミリ程で放流するでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 20㎜
② 40㎜
③ 60㎜
④ 80㎜
魚の名前と種類
カレイ目カレイ亜目ヒラメ科に属する海水魚で、日本各地の
沿岸に分布して、神奈川では東京湾や相模湾の水深 10 〜 200m
程の砂泥地に生息しています。大きくなると最大で全長1m、
体重 10kg 程になります。春から夏にかけて水深 20 〜 70m 程の
岩礁地帯周辺で産卵し
ま す。 旬 は 冬 で、 小 型
魚はソゲと呼ばれます。
俗に「左ヒラメに右
カレイ」と言われるよ
うに、両目とも頭部の
左側半分に偏って付い
ているのが特徴で、口
が大きく鋭い歯があり
漁獲されたヒラメ
ます。
漁業と水揚げ
神奈川県では横浜市、横須賀市(長井)、三浦市(三崎)、小
田原市で多く水揚げされ、年間 60㌧程のヒラメが活魚や鮮魚で
流通しています。
東京湾では底曳き網で比較的小型魚が多く水揚げされ、相模
湾では刺し網で漁獲されています。共同漁業権内では各漁協が
共同漁業権行使規則により刺網漁法と漁獲時期を定めており、
共同漁業権外では県知事の許可を受けて操業しています。多く
はひらめ刺し網漁業にて漁獲されますが、資源保護のため小型
魚を逃すために、網の目の大きさが決められています。
166
種苗生産による栽培漁業
神奈川県では、相模湾・東京湾併せて毎年5、6月に 20 万尾
程のヒラメ種苗を放流しています。
2月〜4月にかけて導入した受精卵からふ化させた稚魚を、
シオミズツボワムシ(動物プランクトン)やアルテミア(動物
プランクトン)を与えて育成し、水温管理や底掃除などを行い
ながら、およそ 60 日間で全長 30 〜 40㎜になったところで取り
上げて、大きさや体色などで選別して更に中間育成させます。
全長が 60㎜を越えたところから放流が始まります。放流はふ化
後 90 日 が 過 ぎ た 5 月 〜
6月頃になります。
放流魚と天然魚の見分
け方は、ヒラメは表に白
い部分があるか、裏に黒
い部分があるかどうかか
ら判断します。漁獲物の
中に放流魚が占める割合
は2割前後と推定されて
います。
ヒラメの稚魚(孵化後2週間頃)
水
産
逸 話
三浦半島・城ヶ島沖で平成 18 年4月 30 日に、釣りの世界記
録を大きく上回る、重さ 11.5kg の巨大ヒラメが釣り上げられま
した。
食べ方
白身でもちもちとした食感の強い魚で、独特の5枚おろしと
いう包丁捌きで身を取ります。特に活け締めしたヒラメの活け
作りという、死後硬直前の食感を刺身で楽しむ魚です。各種の
刺身のお造りや昆布締め、蒸し物などでいただきます。特に背
鰭(せびれ)と臀鰭(しりびれ)の付けねの部分は、縁側とよ
び脂の乗ったコリコリとした歯ごたえで珍重されます。
また、ムニエルなどで火を入れた身は柔らかく、バターソー
スなど、風味のあるソースと良く合います。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科4」/平凡社
(正解は③)
167
問 079
マダコ
マダコの寿命は何年でしょうか?
正解を下から選んでください。
① 1年
② 2年
③ 6年
④ 12 年
魚の名前と種類
八腕形目マダコ科に属し、世界各地の熱帯・温帯海域に広く
分布し、日本では東北から九州にかけて分布し、潮間帯から水
深 200m 辺りまでの岩礁地帯や砂泥底に生息しています。穴を
好む習性があり、昼間は岩穴や物陰で貝殻や小石を蓋にして隠
れています。夜行性でエビ、カニ、貝、魚などを食べる。全長
は 60㎝、体重は 3.5kg にまで成長し、寿命は約2年です。
一般に頭と思われている卵型の部分が胴部で、呼吸、排泄を
行うための円錐形の漏斗(ろうと)があります。頭は胴と腕の
間であり、頭部からは8本の腕が生え、ほぼ同じ長さで外套長
の約3倍で、200 個程の吸盤が2列に並んでいます。雄では第2・
第3腕に大きな拡大吸盤があり、雄の生殖器は右第3腕の先端
にあります。
産卵期は初夏で、交尾したメスは岩陰などで長径 2.5㎜ほどの
楕円形をした卵を数万から十数万個産み、孵化するまで雌が世
話を行います。
名前の由来は、たくさんの
手があるや手をもった動物と
いうことでタコ(多股)、ある
いはテナガ(手長)やテコブ(手
瘤)、さらにタコの手が物に凝
りつく事からタコ(手凝)な
どが語源になったなど、さま
ざまな説があります。
蛸壺に入っているマダコ
漁業方法と水揚げ
本県では、餌にイシガニなどを取り付けた「たこつぼ」を、
幹縄に 200 個ほどつけて、延縄にしたたこつぼ漁にて漁獲され
ます。主な産地は三浦半島周辺で、東京湾および相模湾の両側
168
で盛んに行われています。
水揚げ量は年間 100㌧ほどで、横浜市、横須賀市、三浦市が主
産地で、網に入れて活魚として流通するほか、塩揉みされてか
ら 「ゆでだこ」 で販売されています。
タコの特徴
体表に細かい網目模様に色素細胞が分布しており、周囲の環
境に合わせて自在に色を変えることができます。また、タコの
吸盤には中心から放射状に線が入り、吸い付く機能を保つため、
吸着面だけが脱皮します。
タコの墨
タコの墨は、驚いたり敵から逃げるさいに、煙幕のように拡
散させて身を隠すために使われます。ちなみにイカの墨は拡散
せずまとまり、墨でイカの分身を作り出して逃げるのです。
珍 味
マダコの卵は房状にかたまり、フジの花のように見えること
から海藤花(かいとうげ)とも呼ばれます。ただし、本県での
生産はありません。
水
産
食べ方
ゆでだこは、刺身や寿司ねたとして一般に利用されているほ
か、煮つけやから揚げなどにされます。
ですが、地たこと称して売られているゆでだこは、歯ごたえ
があり、噛むほどにうまみが
出てくることから、粗びき黒
コショウやガーリックオイル
で食べるとさらにタコの旨さ
を強く感じられます。
また、一度冷凍した生たこ
や、煮汁に炭酸水を加えて煮
ると、やわらかく煮上がりま
す。
茹でたこ
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚介大百科3」/平凡社
(正解は②)
169
問 080
クロシビカマス
三浦半島や西湘地域で漁獲されるクロシビカマスは、その魚
体の特徴から呼ばれる西湘地域での通称はどれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 青色なので「藍染め」
② 真っ黒なので「炭焼き」
③ 真っ白なので「灰かぶり」
④ 真っ赤なので「日焼け」
魚の名前と種類
硬骨魚綱スズキ目クロタチカマス科クロシビカマス属の海水
魚で、東太平洋を除く世界の温帯から熱帯に広く分布します。
日本では相模湾のほか、駿河湾や伊豆・小笠原諸島の水深 100m
程の大陸棚の縁辺部から斜面に群れで生息しています。
細長くて平たい真っ黒な魚体に、大きな口と目をもち、上下
のアゴに大きくて鋭い歯が並ぶ肉食性のどう猛な魚で、体表に
は鱗がなく、体長 50㎝ほどに
なりますが、大きなものでは
1m にも達します。
三浦半島地域では「がらん
ちょ」とか「なわきり」、西湘
地域ではその体色から「すみ
やき(炭焼き)」と呼ばれます。
水揚げされたクロシビカマス
漁業の歴史
相模湾では夜釣りで大型魚が、定置網では小型魚が漁獲され
ます。また、キンメダイなどを狙う伊豆諸島近海で、立縄釣り
にて混獲されます。
特に相模湾では明治時代から昭和 50 年頃まで、専門に狙う一
本釣りの漁業者がおり、西湘地域では伝統的に食べられていま
した。しかし、現在では短期間この魚を釣る漁業者がいる程度
です。
相模湾では冬に夜釣りにより操業が行われ、「すみやき」と呼
170
ばれるクロシビカマス、クロタチカマス、ナガスミヤキの3種
類が水揚げされ、特にナガスミヤキという1m 以上にもなる同
属の魚が重宝されています。
近年では、定置網に 20㎝前後の小型魚が多く入ることもあり
ます。
販 売
小田原では古来から食料利用がさかんであり、郷土の味覚と
して珍重されています。しかし真っ黒な外観のためか全国的に
はほとんど利用されていません。
産地では鮮魚で流通するほか、三崎では干物やすり身などが
朝市などで販売されています。
スーパー等では、珍しい魚種は食べ方がわからず売られてい
ませんでしたが、最近ではこのクロシビカマスも頭部と尾部、
内臓が切り取られた調理済みで販売されています。
食べ方
水
産
真っ黒な皮からは想像できないほど、乳白色の脂ののった真
っ白な身です。ただし、表皮側に小骨が並んでいる点が、他の
魚種とは異なります。
三枚に下ろしてハモ切りのように骨切りをしての刺身、スプ
ーンですくい取ったたたき身の刺身、定番の塩焼きや煮付けに
します。どの料理でも、ふわっ
としたソフトな食感で、たっぷ
りのっている脂には上品ですが
強い甘みを感じられます。
小型魚なら、開いて背びれ等
のひれを切り取って、天ぷらや
素揚げにしてもとても美味です。
クロシビカマスの煮付け
◇参考文献
神奈川県水産技術センターホームページ
「食材魚介大百科4」/平凡社
「相模湾・海の不思議」/木幡孜 夢工房
(正解は②)
171
問 081
ア ユ
アユを釣る方法でおとりのアユを用いる独特の釣り方をなん
というでしょうか?
正解を下から選んでください。
① ドブ釣り
② 毛針流し釣り
③ 友釣り
④ 餌釣り
魚の名前と生態
サケ目アユ科アユ属の淡水魚で、北海道中部以南に分布しま
す。3月上旬から5月上旬にかけて海から川へと体長7〜8㎝
の稚アユが遡上し、石に付いた付着藻類をこそげ取り成長しま
す。そのあとが「はみあと」で、
アユの大きさや数を把握する
目処となります。河川に定着
すると、比較的大きな石を中
心になわばりをつくり、なわ
ばりに侵入する他のアユを体
当たりで追い払います。この
習性を利用したのが“友釣り”
友釣りで釣れたところ
です。
秋に大水が出た後などに、川を下って産卵行動に入ります。
生まれたふ化仔魚(6㎜ぐらい)は海へ下り、翌年の春川をそ
上するまで、海の中で生活します。
なお、産卵期に、下流に下るアユを「落ちアユ」婚姻色が出て、
黒くなったアユを「サビアユ」ともいいます。また、1年で一
生を終えることから「年魚」とも呼ばれています。
漁業と規則
アユの漁法としては、代表的な友釣が酒匂川のほぼ全域、中
津川中・上流、相模川上流域が専用区で行われるほか、解禁初
期のドブ釣りや毛針流し釣り、エサ釣り(早川で盛ん)のほか、
たくさんの掛け針の付いた仕掛けでアユを引っかけるコロガシ
釣りがあります。
漁業調整規則により、アユは1月1日から5月 31 日までが禁
漁にされ、稚アユの保護を行っています。海でも川と同様に採
172
捕禁止となっていますまた、10 月 15 日から 11 月 30 日を更に禁
漁にして、産卵するアユを保護しています。
共同漁業権が設定されている河川では、法に基づきアユの放
流を漁協に義務づけています。それにより入漁料が設定され、
1日券や年券を購入して遊漁を行います。
水
産
養殖技術
稚アユの放流は多摩川、相模川水系、酒匂川水系、早川、千
歳川で行われ、約 100 万匹を有償で放流しています。
この稚アユの生産には、海で生活している時期に採捕した海
産アユを放流や養殖用種苗とします。昭和5年に国立試験場(現
在の中央水産研究所)の中野宗治技師が三浦半島の長井町にて、
地引き網漁をしていた原田角左エ衛門と共に小田和湾に回遊す
る海産アユを研究して、昭和8年(1933 年)にアユの大量採捕
に成功しました。
現在、種苗生産用の稚アユの特別採捕により、2月から4月
の上旬にかけて捕まえます。
昭和 36 年からは相模湾産海産あゆ需給調整協議会が発足し、
価格、採捕尾数、採捕時期、配布数量の決定などを行っています。
琵琶湖に陸封されたアユは、コアユとして全国の河川に放流
されていますが、最近のミトコンドリアDNA分析等により川
と海を行き来するアユとは遺伝子型が異なることが解ってきま
した。また、産卵期(海産アユよりも1ヶ月ほど早い)や卵の
大きさ(海産アユよりも小さい)等に違いが見られています。
逸 話
古事記や風土記には鮎が多く出ています。鮎の字は、占いに
よく使われたことから来ており、「神武天皇が東征の際、夢のお
告げで土器と壺を作り川に沈めて占った」記紀の神功皇后が、
遠征の際、飯粒をエサにして「新羅に勝つことができるなら魚
が釣れますように」と祈って川の中に投げ入れたところ釣れた
魚がアユだったなど多くの話があります。
食べ方
アユは塩焼きや甘露煮、炊き込みご飯、天ぷらなど色々な食
べ方で楽しまれますが、産地ではアユの干物なども作られて売
られています。
◇参考文献
「食材魚貝大百科1」/平凡社
(正解は③)
173
問 082
マダイ
昭和 53 年からマダイの種苗放流が行われて、平成 12 年ま
での 22 年間に合計何尾放流されたでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 500 万尾
② 1,000 万尾
③ 2,000 万尾
④ 4,000 万尾
魚の名前と種類
スズキ目タイ科マダイ亜科の海水魚で、北海道から九州にか
けて広く分布し、体長は最大で1mに達します。産卵期は3〜
6月で、稚魚は体長1㎝前後になると、海藻の多い海岸近くに
住みつき、深場と浅場を往来しながら大きくなり、3才ぐらい
で成熟します。
タイの名前の由来は、他の魚に比べ側扁した体が特徴であり、
「たいら(平ら)」と同源と考えられています。また、漢字の「鯛」
も「調和のとれた魚」の意味があり、均整のとれた側扁に由来
しています。
産卵期は4、5月頃で、雄は白色の婚姻色に変化し、抱卵し
た雌は腹の身が薄くなって、味が落ちます。旬と言われるのは
産卵前の「桜鯛」と呼ばれる桜が咲く時期と、秋の飽食してい
る時期が旬となりますが、基本的に産卵前後以外はとても美味
しい魚です。
栽培漁業について
マダイは昭和 30 年代後半から 40 年代はじめに、80 〜 90㌧もの
漁獲がありましたが、その後は 30㌧程に減少してしまいました。
近年、人工的にマダイ稚魚をつくる技術が開発され、相模湾・
東京湾に併せて、毎年8〜
9月に約 100 万尾のマダイ
種苗を放流しています。
マダイは、昭和 53 年から
種苗放流が行われて、平成
12 年 ま で の 22 年 間 に 合 計
2,000 万尾を超える種苗が放
流された結果、放流を開始
した当時の神奈川県でのマ
大きくなって漁獲された放流マダイ ダイ漁獲量はわずか 30㌧だ
174
ったのが、平成7年には漁業と遊漁を合わせると約 100㌧前後も
獲れるようになりました。
県水産技術センターでは、種苗放流による栽培漁業の効果を
把握するため、定期的に魚市場で水揚げされたマダイの体長測
定と放流魚の漁獲割合を調べています。マダイの天然魚は片側
2つずつ鼻の穴がありますが、放流魚は一つに繋がった形にな
っている魚が多いので、これを標識に識別すると、水揚げされ
るマダイの約 34%が放流魚と推定されます。
遊漁への負担金
水揚げされるマダイの約 2/3 は、釣り船などの遊漁での一般
の釣人によって漁獲されています。そこで、平成 13 年度から行
うマダイ放流事業について、漁業者と遊漁者の採捕の程度に応
じた経費負担を基本として、遊漁船業者の協力を得て実施する
こととしています。そのために、マダイ遊漁者を対象とした協
力金制度を新たに設け、協力をお願いすることをおこなってい
ます。
水
産
漁業と水揚げ量
マダイは釣りや定置網で漁獲されます。水揚げが多い地域は
横浜市、横須賀市、三浦市、小田原市ですが、特異的に多く獲
れている訳ではなく、沿岸各地で一様に漁獲されています。
逸 話
日本では赤い色がめでたい色とされており、また「タイ」が「め
でたい」に通じることから、古くから縁起の良い魚とされ、現
代でも祝いの席には鯛の尾頭つきが出されます。
ちなみに、タイと名の付く魚は 200 種類はおりますが、タイ
科の仲間はマダイ、クロダイ、チダイ、ヘダイなどの 13 種類だ
けです。キンメダイやイシダイはタイ科の仲間ではありません。
食べ方
様々な刺身のお造り、かぶとを使った潮汁やかぶと煮、姿焼
きに蒸し物、鯛飯や鯛素麺など、伝統的な和食料理から、ソテ
ーやフライなど和洋中にて重宝されます。天然の活け締めを一
度は丸ごと味わいたい魚がマダイです。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科3」/平凡社
神奈川県漁連ホームページ
(正解は③)
175
問 083
みうらのアワビ
アワビ類のうち、神奈川県では漁獲されない貝はどれでしょ
うか?
正解を下から選んでください。
① クロアワビ
② マダカアワビ
③ メガイアワビ
④ エゾアワビ
※上記の名称は標準和名です。
魚の名前と種類
腹足綱前鰓亜綱原始腹足目ミミガイ科の巻貝で、外洋に面し
た岩礁帯の水深 30 m程の所までに生息しています。神奈川には
主に岩礁地帯の多い三浦半島や伊豆半島に、マダカアワビ、メ
カイアワビ、クロアワビの3種類のアワビが生息しています。
アワビは夜行性で、岩礁にはえているカジメやアラメなどの
褐藻類を食べています。
マダカアワビは殻長 25㎝、重さ4kg にもなる最大の大きさに
なるアワビで、価格はクロアワビが一番高いです。
漁法と産地
神奈川県では年間 20㌧程が水揚げされています。主な産地は、
横須賀市、三浦市、小田原市で、潜水漁や船から箱メガネで海
中を覗きカギの付いた長い竿
で魚介類を獲る覗突き(みづ
き)漁で漁獲されています。
県漁業調整規則により、殻
長 11㎝以下は漁業者でも採
捕禁止にしており、小さなア
ワビの資源管理を行っていま
潜水漁と覗突き漁
す。
漁業の歴史
アワビの種苗放流は昭和 41 年に始まりました。 昭和 61 年に
は「つくり育てる」漁業を推進するため、「財団法人神奈川県栽
培漁業協会」が設立され、神奈川県とともに、クロアワビ、メ
ガイアワビ、マダカアワビの3種の種苗生産を行っています。
11 月から 12 月にかけて産卵が行われ、約2年で殻長が 25㎜
176
程になった稚貝を海藻が豊富な岩礁帯に潜水により放流を行い
ます。
アワビは孵化してから1週間ほど浮遊生活し、大きさは 0.3㎜
ほどで、幼生はこの殻から身体を出して泳ぎまわります。
その後、生存に適した場所を見つけて着底すると、遊泳器官
を自らはずし、幼殻の縁辺部から周口殻という幼殻とは異なる
殻を形成し、普段眼にするアワビの形になって成長します。
神奈川の漁業者が漁獲するアワビは、約9割が放流した種苗
から大きく育ったもので、大きな放流効果がみられます。
漁業者と県では、
禁漁区を設け種苗放
流を行い、親貝場と
して造成するアワビ
資源回復計画など、
新たな資源管理にも
取り組んでいます。
着底した稚貝と海中のアワビ
水
産
風 習
神事に使われる「のしあわび(熨斗鮑)」は、アワビを細く切
って乾燥させたものです。伊勢神宮での神事に縁起物として配
ったものが一般に広まったものです。進物にも熨斗鮑を添付す
るのが正式であり、次第に簡略化して熨斗鮑を図案化した物を
印刷した熨斗紙で済ませることが多くなりました。
逸話やことわざ
磯の鮑の片想い(いそのあわびのかたおもい)という言葉は、
常に相手を思っている状態のことを表したことわざで、アワビ
はアサリやシジミのように二枚貝ではないため、ピッタリの貝
が無く、相手を常に想う状態であるということを例えたもので
す。
食べ方
活けアワビは、貝をたわしでよく汚れを洗い落とした後、ス
プーンやおろし金の取っ手部分など貝から剥がし、水貝や刺身、
天ぷら、蒸し物などで食べられます。
また、大根とともに蒸されたアワビのソテーやフリッターは
絶品です。
◇参考文献
「神奈川農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科2」/平凡社
(正解は④)
177
問 084
みうらのサザエ
サザエ漁業で、覗突き(みづき:ハコメガネで覗いて三つ叉
で獲ります)や潜水漁以外で、サザエを多く漁獲する漁法は
どれでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 投網
② はね釣り
③ 刺し網
④ 地引網
魚の名前と種類
腹足綱原始腹足目リュウテン科の海にいる巻貝で、日本海側
では青森県から、太平洋側では茨城県から九州にかけて分布し、
沿岸部と潮間帯から水深 30m 程の岩礁帯に生息します。夜行性
で、夜になると岩礁を動き回って、褐藻類を歯舌(しぜつ)で
削り取って食べています。
サザエの産卵期は7〜9月で、殻の中のらせん部分が雌は緑
色、雄はクリーム色をしています。サザエの寿命は7、8年程
とされています。
漁業と産地
神奈川県では、覗突きや潜水漁業、刺し網で漁獲され、年間 400
㌧程の水揚げがあります。
相模湾側の三浦半島で多く漁獲され、横須賀市の長井や大楠、
三浦市の各地、葉山市、逗子市、鎌倉市が主産地です。また、
伊豆半島側では小田原市、真鶴町でも水揚げが多くあります。
県漁業調整規則により、サザエの殻の蓋(殻蓋長径)が3㎝
以下のものは、漁業者でも採捕禁止になっています。
種苗生産
サザエは一度に 40 〜数百万
粒もの卵を産みます。神奈川県
では年間約 75 万個のサザエを
放流しています。
種苗生産には、親貝に温度調
整や紫外線を照射した海水など
で刺激を与えて人工的に卵を産
178
放流の様子
ませます。生まれたての赤ちゃんは浮遊生活をおこなっていま
すが、やがて波板などに着底し、殻高5㎜ほどになると、カジ
メなどの海藻を与えて育てます。ふ化後から1年から1年半で
殻高が 2.5 〜3㎝になり、餌となる海藻が生い茂る岩礁帯に放流
します。その後、1、2年程で漁獲サイズまでに成長します。
県水産技術センターでは、市
場に水揚げされたサザエの大き
さや、放流貝の混獲状況を調べ
効果的な放流方法を検討してい
ます。なお、市場に水揚げされ
たサザエの殻の頭頂部を磨き、
白っぽい色であれば放流貝で、
放流したサザエの 30%以上が漁
水揚げされた放流サザエ
獲されています。
水
産
豆知識
サザエの殻には角のはえている貝と全くはえていない貝があ
ります。角の生えている貝は、外洋の荒波をかぶる岩礁に住ん
でいて、角は流されないためのつっかえ棒とか、餌の海藻を巻
き付かせるためと言われています。ちなみに、角のあるサザエ
を水槽で飼育していると、成長しても新たな角が出てきません。
販 売
サザエは海水につかっていなくても、真夏の暑い日を除けば
2、3日は生きています。生産地に行けば、おみやげ物屋さん
で売られているほか、活魚を扱う漁協や、直販施設等で水槽に
入れられて販売されています。
食べ方
壺焼きが有名ですが、味付けには醤油の他に味噌バターやガ
ーリックオイルなど、バラエティーに富みます。貝剥きを使っ
て身を取りだし、刺身や酢の物、炒め物にもします。浜ではサ
ザエご飯がよく食べられます。
◇参考文献
「神奈川農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科2」/平凡社
(正解は③)
179
問 085
ワカメ
一年中食べられているワカメですが、ワカメが獲れる時期は
何月頃でしょうか?
正解を下から選んでください。
① 5 〜 6 月
② 8 〜 9 月
③ 11 〜 12 月
④ 2 〜 3 月
生態と名前の由来
褐藻綱コンブ目チガイソ科ワカメ属の海藻で、東京湾や相模湾
の沿岸に天然物と、筏による養殖物が生育しています。1、2月
頃から繁茂し、5月頃には枯死する温海性の一年草です。
藻体は暗褐色で、外観的には茎と葉、および根の部分に分けら
れます。茎は葉部の真ん中に一本の中肋(ちゅうろく)が先端ま
で続いており、葉の縁にリアス式海岸のような切り込みが入った
小葉片を数多く出します。全長で 50㎝から大きいものでは2m
にもなる海藻で、春には葉部の下方の茎にはひだの多い厚肉質の
メカブと呼ばれる胞子葉が作られます。
古くから食用とされてきた海藻で、
『万葉集』
で稚海藻
(わかめ)
、
和海藻(にきめ)などとして詠まれています。
ワカメ養殖
ワカメ養殖は、人工採苗の技術の確立により、昭和 30 年代後
半から作られるようになりまし
た。メカブを晩春にとりためて、
そこから発生した配偶体をタンク
培養して、細い糸に付着させます。
それを秋の頃に養殖ロープに巻き
付けて、海中にぶら下げて成長さ
せます。5ヶ月後には1〜2m ほ
どに成長したワカメとなります。
漁業と規制
漁業法第6条に基づく区画漁業権によりワカメの養殖が行われ
ています。区画漁業権は、一定の水面にいかだ等を設置し養殖業
を営む権利で、免許された漁業協同組合は、営む権利を有する者
180
の資格、区域、いかだ等の数、期間等を内容とした漁業権行使規
則を定め、この規則に基づき組合員が養殖を行います。
神奈川県では横浜市から小田原市まで養殖が行われており、年
間約 1,000㌧の水揚げがあります。
特に横須賀市では県内生産の約6割を占めており、次いで三浦
市、鎌倉市での生産が多くなっています。
加工品
神奈川県では、水揚げした生ワカメをそのまま販売するのは産
地のみで、その殆どは干しワカメや塩蔵ワカメに加工して販売し
ています。
刈り取ったワカメは、メカブを切り取った後、真水で1分ほど
茹でて鮮やかな緑色に変化させます。そして素早く真水で冷却し
て退色することを防ぎます。茎の太いワカメの場合は葉と分け、
塩蔵や干したわかめや茎を作っています。
加工品は各漁家で袋詰めされて、船名のついた家内製品として
流通し、ワカメの味噌漬けや茎ワカメの佃煮などもあります。
水
産
逸話とその他
神奈川県の横須賀沖にある猿島には、くびれの大きな天然ワカ
メが繁殖していました。この胞子を用いて「猿島ワカメ」のブラ
ンドで養殖・加工されています。
また、各地で小学校や地域住民向けのワカメ刈り体験が行われ
ているほか、地域の取組として葉山町役場と葉山町漁業協同組合
の協働で進められている、
「養殖ワカメのオーナー制度」が数年
前より始まっています。
食べ方
生わかめは湯通しし、良く水で冷やしてから。塩蔵ワカメは水
戻ししてから、サラダや酢の物にします。 また、干しわかめは汁物のほか、天ぷらなどで食べられます。
最近では、生ワカメのしゃぶしゃぶ料理も産地で食べられていま
す。
◇参考文献
「神奈川農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科4」/平凡社
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は④)
181
問 086
早煮こんぶ
神奈川県でもコンブの養殖が行われていますが、もっとも盛
んな地区はどこでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 藤沢市
② 小田原市
③ 横須賀市
④ 三浦市
魚の名前と種類
褐藻綱コンブ目コンブ科コンブ属の海藻で、広く食用にされ
ているもの全てを一般にコンブといい、主に北海道、青森県、
岩手県、宮城県に分布しています。特にマコンブ、リシリコンブ、
オニコンブ、ミツイシコンブ、ナガコンブが有名ですが、神奈
川県で養殖されているものはマコンブです。マコンブの分布は
狭く、北海道噴火湾、津軽海峡の北・南岸および金華山までの
本州北部太平洋沿岸です。寿命は2年であり、天然の物では2
年目の大きな藻体を採取します。高さは2〜6m、幅は 30㎝、厚さ
は3㎜になります。
産 地
生産量は北海道が全国の生産量の約6割と多く、ついで岩手
県、宮城県と続きますが、神奈川県は第4位となっています。
養殖は横浜市、横須賀市、三浦市、葉山町、小田原市で行われ
ていますが、横須賀市で県内生産量の約8割を占めています。
最近のコンブの収穫量はおおよそ年間 150㌧となっています。
漁業の歴史
本県でのコンブ養殖は、昭和 40 年代前半に北海道函館水産試
験場の協力です。マコンブの母藻を入手し種糸を生産したのが
始まりで、その後、神奈川県水産試験場(現水産技術センター)
前面海域で試験養殖が始められました。これらの試験により県
内でも養殖できることが確認できました。
その後、昭和 46 年に横須賀市の漁業者が県水産試験場の指導
によりコンブ養殖を始め、そして、本格的な養殖は昭和 53 年以
降となります。函館の漁協から「促成こんぶの種糸」を横須賀
182
市東部漁業協同組合が窓口になり、県下各漁協に有料で配布し、
コンブ養殖が本格的に始まりました。
養殖漁場となる東京湾、相模湾は冬場の水温が低くなり、コ
ンブ養殖が可能となりますが、北の海に比べて養殖期間は短く
なります。このため、北海道産(日高、利尻コンブ)のような「だ
しコンブ」と同じにはなりません。
養殖方法
海水温が低くなった 10 月頃、種糸を筏にして生育を始めます。
順調に生育すると、海面の綱に根を張り、葉体は海底側にたな
びく形になります。4月頃には2m 程に成長し収穫が始まり、
5月末頃まで行われます。
ただし、台風の影響や高波などで、種が糸から溢れてしまい、
コンブの収穫が減少することがあります。
加工方法と特徴
水
産
コンブを干している様子
神奈川県の海で潮流が早く、栄
養成分も豊かな海域では、柔らか
く、また、独特の香りがあるコン
ブが生産されます。
刈り取ったコンブは熱湯でひ
と茹でされた後に、冷水にて粗熱
を取ってから風乾されてから、三
つ折りや四つ折りにして、「早煮
コンブ」として、地元の消費者を
始め県内で販売されています。
食べ方
早煮コンブはダシではなく、柔ら
かで芳しい香りのコンブ自体を食べ
る料理にされます。特に横須賀名産
「早煮こんぶ」は、昆布の炊き込み
ごはんや混ぜご飯、昆布の佃煮やみ
そ汁などで頂きます。
加工品の早煮こんぶ
◇ 参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「食材魚貝大百科4」/平凡社
(正解は③)
183
問 087
ヒジキ
ヒジキは岩礁帯に生える海藻で、三浦半島が産地ですが、刈
り取られる時期はいつでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 春(4月ごろ)
② 夏(7月ごろ)
③ 秋(11 月ごろ)
④ 冬(1月ごろ)
魚の名前と種類
ヒジキは褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科ヒジキ属で、一属一
種の日本特産の海藻です。
おもに相模湾側の外海に面する岩礁上の、潮間帯中部に生育
し、根は這うように岩の上を長く伸び、直立する体の茎は円柱
状で中空、ほぼ互生に葉と小枝をのばします。長さは1m ほど
にまで成長し、太さは4㎜程
もあります。
晩秋に新芽が伸び、冬から
春にかけて繁茂期となり、晩
春以後は衰退していきますが、
岩面に固着しているほふく根
部は夏季も生き残って、そこ
から次の秋に新芽を出します。 潮間帯の岩礁に生育したヒジキ
漁 業
共同漁業権行使規則によって漁協ごとに漁獲の口開け(解禁)
が決められており、多くは3、4月頃に行われます。
大潮の干潮時に、岩場に生えているヒジキを包丁や鎌のよう
なもので刈り取りますが、月に2、3度しかそのタイミングは
ありません。
一部の漁協では一般の消費者向けに、有料でヒジキ刈り体験
が行われることもあります。
加工方法と産地
刈り取られたヒジキは、鉄釜で5時間ほどじっくりと煮られ、
お湯につけた当初は緑色であるが、鍋の鉄分と結合して真っ黒
184
になります。茹で上がった
後は、扇風機などで冷まし
たのち、天日干しなどによ
り乾燥させます。神奈川県
で は 三 浦 半 島 が 主 産 地 で、
三浦市や横須賀市で全体の
9割以上を生産し、県全体
では年間約 300㌧を採藻し
ヒジキの刈り取りを行っている漁業者
ています。
品質管理
干しあがったヒジキは、小枝と葉だけのものが 「芽ひじき」、
茎だけのものが 「長ひじき」 となります。一般的に、煮付けに
する場合は、芽ヒジキの方が柔らかく仕上がる特徴があります。
栄養成分
水
産
100g あたり、カルシウムが 1,400mg と海藻の中でもっとも含
有量の多い食材です。鉄分が 55mg と豊富で、食物繊維が 43.3g
あり、特に、フコイダンやアルギン酸といった水溶性食物繊維
も豊富で、便秘解消や大腸ガンの予防にも役立つといわれてい
ます。
ただし、ヒジキにはヒ素が比較的多く含まれるため、必ず茹
でてから食べてください。採ったヒジキの生食は厳禁です。
食べ方
干しヒジキは、10 倍量の 20℃程の水で 30 分程で浸して戻し
ます。その後、ざるに入れてゆすいで、よく水をきってから調
理します。
油との相性がよく、油揚げとニンジン、大豆などと一緒に煮
たヒジキの煮付けは総菜の定番です。近年では、
「釜揚げヒジキ」
という干していない煮たヒジキが産地で売られており、炒め物
やかき揚げなどで食べられています。
◇参考文献
「神奈川県農林水産統計年報」/関東農政局神奈川農政事務所
「水産加工品総覧」/光琳
「食材魚貝大百科4」/平凡社
(正解は①)
185
問 088
芦ノ湖のワカサギ
公魚とも書き宮内庁に献上されている芦ノ湖のワカサギです
が、芦ノ湖での刺網解禁日はいつでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 3 月1日
② 3 月1日
③ 10 月1日
④ 12 月1日
魚の生態
サケ目キュウリウオ科ワカサギ属の淡水魚で、本来の分布域
は、島根県と千葉県以北の沿岸域やこれに繋がる河川・湖沼に
生息していましたが、約 100 年前から全国各地へ移植されるよ
うになり、今では鹿児島県まで広く分布しています。
産卵期は1月から6月ですが、北方地域ほど遅くなります。
海域や湖沼に流入する河川に遡上(そじょう)し、砂礫(され
き)に産卵します。また、湖岸帯の浅場で砂礫や水生植物に産
卵することもあります。孵化
した仔魚は主にプランクトン
を食べて成長し、1年で全長
60 〜 150㎜になります。多く
は満1年で成熟し、産卵した
後に死にますが、越年した2
年魚や稀に3〜4年魚も認め
ワカサギ
られます。
漁業の歴史
神奈川県では、芦ノ湖、丹沢湖、相模湖、津久井湖において、
年間 10 億粒もの卵から孵化した仔魚が放流する増殖事業が行わ
れており、初秋から初春のシーズン中にはボート釣りを楽しむ
お客さんで賑わいます。
芦ノ湖のワカサギは、大正7年に霞ヶ浦から移植されてから
現在に至るまで、大切に保護育成されています。平成 20 年には、
芦之湖漁協が確立した「芦ノ湖方式」と呼ばれる稚魚の種苗技
術が、高いふ化率を評価され農林水産大臣賞を受賞しました。
186
種苗生産
芦之湖漁業協同組合は長年にわたり、これまで搾出法を用い
た種卵生産・放流を行っていましたが、ワカサギが水槽内でも
自然産卵することを発見し、新たな採卵方法として、水槽内で
の自然採卵と回収した受精卵に粘土等を不粘着処理した後、ふ
化器に収容して管理する一連の自然産卵法の「芦ノ湖方式」を
確立しました。
また、県水産技術センター内水面試験場では、一般的に自然
水域のワカサギは、産卵期になると成熟魚が流入河川を遡上し
て産卵することを利用し、陸上施設で養成した親魚を用いて、
人工水路での大量産卵を成功させました。特に、ふ化率が高い
特徴があります。
逸 話
水
産
漢字で「公魚」と書くのは、かつての常陸国麻生藩(現茨城
県)が徳川 11 代将軍徳川家斉に年貢としてワカサギを納め、公
儀御用魚とされたことに由来し
ます。
芦 ノ 湖 の ワ カ サ ギ は「 神 奈
川 の 名 産 百 選 」 の 一 つ で、 毎
年 10 月1日が刺網漁解禁日に、
その初漁の公魚を箱根神社に奉
納し、宮内庁に献上しています。
また、箱根町では平成 20 年
献上のため奉製される
ワカサギ(箱根神社)
に「町の魚」に指定されました。
食べ方
ワカサギを使った料理はこの地で古くから伝わる郷土料理と
して、甘露煮や、昆布巻きなどがあり、正月料理にも利用され
ています。最近では、フライや天ぷら、南蛮漬けなどのように、
料理方法も多彩なものになり食卓を飾るようになってきていま
す。
◇参考文献
「食材魚貝大百科1」/平凡社
「全国水産加工品総覧」/光琳
(正解は③)
187
問 089
アカモク
県内で最初にアカモクを採藻して、商品化し販売をおこなっ
たところはどこでしょうか?
正解を下から選んでください。
① 小田原市
② 鎌倉市
③ 三浦市
④ 横須賀市
名前と種類
褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科の海藻で、日本各地に分布し
ており、砂地に点在する岩礁域や港などの潮下帯に着床し、高
さ2〜 10m ほどまでたいへん早く成長します。円柱状で縦溝の
ある茎には、円柱形の気胞がついており、その先端には切れ込
みがある葉があります。
生育する時期は冬から春
にかけてで、6月頃までに
はほとんど枯れてなくなり
ます。特に枯れ落ちる前に
は、藻体が赤茶けてきて、
海面が赤褐色に見えるさま
が名の由来になっています。
アカモク(水揚げ直後)
漁業の歴史
新潟県では「ナガモ」青森県や秋田県では「ギバサ」と呼ばれ、
乾物や湯どうししたものの冷凍品が流通し、そのシャキシャキ
した食感を生かして、麺類の具や酢の物などで食べられていま
す。
神奈川県では平成 18 年から三浦市の金田地区の漁業者が採藻
し始め、朝市で生のままや乾物にされたアカモクが販売され、
現在では県内各地の朝市でも広く販売されるようになりました。
収穫は1月中旬から4月にかけてで、生産量も年々増えてい
き、平成 20 年度では三浦地区で 1.7㌧が水揚げされています。
188
加工方法
漁獲された生のまま販売されるか、茹でたものを冷凍した製
品、乾燥した製品に加工されます。
茹でるには、よく水洗いして汚れなどをとった後に、沸騰し
たお湯に入れます。茹で時間は1分以内ですぐに緑色になりま
す。そしてザルで冷やした後、包丁で刻みます。ご家庭では、
小分けにして冷凍しておくと便利です。
また、乾物なら生のアカモクを数日間、天日により風乾させ
て保存します。
機能成分
アカモクには、粘液多糖類のアルギン酸とフコイダンが多く
含まれています。アルギン酸には、コレステロールの上昇抑制
やナトリウムを排出し高血圧の予防にも役立ちます。フコイダ
ンにはピロリ菌が胃につくのを防いだり、がん予防や肝機能強
化の働きがあるといわれています。
水
産
販売と食べ方
神奈川県では、主に三浦市の金田湾の朝市や、小田原市の港
の朝市などで販売されています。
生のアカモクなら湯通しして、乾燥アカモクなら水に 30 分程
戻してから湯通しして、緑
色の状態にしてから包丁で
良く刻みます。シャキシャ
キした食感とともに多量の
ネ バ ネ バ が の ど ご し 良 く、
汁物や酢の物で食べられる
他、丼ものやソバやラーメ
ンの麺類のトッピングとし
て美味しく食べられます。
湯通しし刻んだ
アカモクを使った料理
◇参考文献
「栄養を知る事典」/日本文芸社
(正解は③)
189
問 090
走水のノリ
神奈川県で始めてノリの養殖が始まった地域はどこでしょう
か?
正解を下から選んでください。
① 川崎市
② 横浜市
③ 横須賀市
④ 三浦市
魚の名前と種類
紅藻綱ウシケノリ科アマノリ属に分類される海藻で、スサビ
ノリ、アサクサノリ、ウップルイノリ、マルバアサクサノリが
海苔として利用されます。多くは北海道から太平洋沿岸に分布
し、特に東京湾でスサビノリから作られた養殖品種であるナラ
ワスサビノリが全国で広く養殖されています。
スサビノリは全長 15 〜 23㎝程で、宮城県以北から北海道西南
部の湾口や湾外など外洋に面した場所に生息します。生育時期
は秋から春までで、成熟藻体は 12 月から4月まで出現します。
漁業の歴史
ノリの養殖は江戸時代中期に東京湾で始まったとされ、神奈
川県のノリ養殖は川崎大師河原の漁師が明治4年に本格的に始
めたと伝えられています。昭和 20 年代には人工採苗法が確立し
て、陸上採苗、冷蔵網冷蔵保存、浮き流しという一連の養殖手
法が確立していきました。現在では浮き流し養殖という、浮き
と重りでロープの筏(いかだ)を作り、その中でノリ種子の付
いた網ひびを水面に浮かべて養殖しています。
ノリは雄性・雌性の器官をもつ有性世代と、胞子によって無
性的に増える無性世代を繰り返して増殖します。私たちが食べ
るノリは、葉に生殖細胞を作り、精子が造果器と受精して果胞
子を作り水中に放たれ、蛎殻などに穿孔して潜り込んで糸状体
を形成して越夏します。20℃程度
の高水温下で糸状体は成長して、
水温が 23℃に達すると糸状体の先
端に胞子を形成し、20℃程度まで
低下すると放出して、それが成長
した物がノリになります。
網のノリを刈り取るもぐり船
190
加工方法
収穫したノリは洗浄されてゴミを取り除き、3〜4㎜程に細
断します。水にその裁断したノリを溶いて 19 × 21㎝の板状に
抄き、乾燥させて水分が 10%程になり完成します。できあがっ
た海苔板は束ねて出荷され、検査員等に色調や光沢、抄(す)
きの善し悪しなどで優等から七等までの9段階に等級分けされ、
品質評価とあわせると 160 ものランクに分かれます。
また、海苔は乾海苔、焼き海苔、味付け海苔があり、大きさ
は全版、版切り、三切、六切、八切、十二切のサイズがあります。
機能成分
ノリにはビタミンA、B類、C、ミネラルのカリウム、亜鉛
などが多く含まれています。
生産と販売
神奈川では、主に横浜市の金沢、横須賀市の走水で養殖され
ており、漁業者が板海苔に加工し、年間2、3千万枚ほどが生
産されています。
採取された時期により、通常は1〜5番程の海苔があり、料
亭や寿司屋などで使われる高級海苔は 12 月頃に最初に刈られた
1番海苔です。
水
産
逸 話
アサクサノリは絶滅危惧種に挙げられています。
ノリが租税として定められた大宝律令が施行されたのは、大
宝2年元旦(西暦 702 年2月6日)で、この史実に基づいて、
全国海苔貝類漁業協同組合は、昭和 42 年より2月6日を「海苔
の日」として定めました。
食べ方
海苔の選び方は、香ばしいノリの香りと黒い光沢、隙間など
ムラがないものです。湿気が一番の敵ですから、密閉して乾燥
剤を入れて冷暗所で保管します。
寿司や吸い物、加工品では佃煮にされますが、焙り海苔や板
海苔の天ぷらなども美味しいものです。
◇参考文献
「食材魚貝大百科4」/平凡社
「水産加工品総覧」/光琳
(正解は①)
191
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