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8)B 型肝炎,C 型肝炎

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8)B 型肝炎,C 型肝炎
N―128
日産婦誌60巻 6 号
(表 D187)4) HI
V感染症の管理と治療
【診断基準】
HI
Vの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法,粒子凝集法,免疫クロマトグラフィー法など)の結
果が陽性で,以下のいずれかが陽性の場合に HI
V感染症と診断する.
1.抗体確認検査(West
er
nBl
ot法,蛍光抗体法など)
2.HI
V抗原検査,ウイルス分離および核酸診断法などの病原体に関する検査
【妊婦管理】
1.HI
V感染症妊婦に必要な特有の妊娠初期検査
CD4%,CD8%,HI
Vウイルス量,抗 CMV I
gG,胸部 XP,眼底検査(CMV感染症の検査と
して)淋菌検査(必要時)
2.母子感染予防のための抗 HI
V薬投与法(PACTG076,AZT療法)
1)分娩前
妊娠 14~ 34週に以下の処方を開始し,全期間を通じて継続する.
AZT(レトロビルカプセル ®)経口 100mg×5回/
日,あるいは 300mg×2回/
日
2)分娩中
分娩開始とともに AZT2mg/
Kgを 1時間経静脈的に投与し,引き続き出産まで 1mg/
Kgを
持続的に投与する.
3)分娩後
新生児に対しては,出生後 8~ 12時間までに AZTを経口投与し(シロップ,2mg/
Kg,6
時間ごと),生後 6週間まで続ける.経口投与できない場合は,1.
5mg/
Kgを 6時間毎に静脈
投与する.(なお,AZTの静注用およびシロップは,本邦では未承認薬である)
感染症があると易感染性となるため,他の STD に罹患しやすい.
母子感染経路は,胎内感染・産道感染・母乳感染の3つであり,妊娠のあらゆる時期に
感染するが,約70%は分娩時期周辺とされている.すなわち,妊娠末期の胎内感染およ
び産道感染であり,無治療では25∼30%の母子感染率とされている.しかし,いまでは
多くの施設で妊娠中に HIV 検査が行われ,陽性妊婦に対する有効な予防対策(薬剤治療と
陣痛発来前の選択的帝王切開)
がとられるようになったため,新生児への感染は1%以下
になっている4)5).
現在の厚生労働省のサーベイランスのための診断基準を表 D-18-7)
-4に示す.
治療の原則は母体血漿中ウイルス量を検出感度以下に抑え続けることである.母体血漿
中 HIV-RNA 量と児への感染率は相関しており,HIV-RNA 量が1,000コピー"
ml 以下の
場合には,児への感染率がゼロであったと報告されている6).したがって,妊婦において
も強力な多剤併用療法(HAART:highly active antiretroviral therapy)
が行われるが,
ジドブジン(AZT)
単独投与により母子感染率が1"
3に減少したという臨床研究(PACTG
076)
もあり7),母子感染予防を行うにあたっては PACTG076に沿った治療が基本となっ
ている4).
HIV 感染症と妊婦との係わりは以下のような場合が考えられるが,いずれにしても,
薬剤の選択,投与時期などの治療方針は専門医と連携すべきである:1)
抗 HIV 薬を内服
しておらず,HIV 感染症が判明した場合,2)
抗 HIV 薬を内服しており,妊娠が判明した
場合,3)
分娩時に HIV 感染症が判明した場合,4)
分娩後に HIV 感染が判明した場合.ど
のような場合であっても,母乳哺育は避ける.
8)B 型肝炎,C 型肝炎
B 型肝炎,C 型肝炎共に経皮的(血液・精液・唾液)
に感染するウイルスが原因の慢性肝
疾患であり,母体肝機能の把握と母子感染の予防が管理の要点である.病状が進行すれば
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2008年 6 月
N―129
ハイリスク児群
ローリスク児群
放置した場合の出生児
感染率:100%
キャリア化率:85∼90%
放置した場合の出生児
感染率:約 10%
キャリア化率:極めて稀
母子感染防止
プロトコール 1
母子感染防止
プロトコール 2
母子感染防止プロトコール 1:
HBIG の接種:出生時(遅くとも出生後 48 時間以内)および生後 2 カ月
目の 2 回
HB ワクチンの接種:生後 2 カ月目、3 カ月目、5 カ月目の 3 回
母子感染防止プロトコール 2:
HBIG の接種:出生時(遅くとも出生後 48 時間以内)の 1 回
HB ワクチンの接種:生後 2 カ月目、3 カ月目、5 カ月目の 3 回
(図 D188)1) B型肝炎の母子感染防止対策
妊娠の継続が困難になる場合もある.また,妊娠中はウイルス量が増加することがあり,
その場合,妊娠終了後に肝機能が悪化することもあるので注意が必要である.キャリアの
ほとんどは無症候性であり,肝機能が正常ならば治療の必要はなく,定期的な検査だけで
よい.
母子感染のほとんどは,出生時に大量のウイルスに曝露したことによる産道感染と考え
られているが,胎内感染もあり得る.分娩方法は経腟分娩でよく,母乳哺育も特に制限す
る必要はない.
1.B 型肝炎(病原体:B 型肝炎ウイルス Hepatitis B virus
(HBV)
(
)図 D-18-8)
-1)
B 型肝炎母子感染防止事業(1985年)
により,キャリア化の主因であった母子感染は予
防されてきているが,いまだに成人では性感染によるものが少なくないので,妊娠初期に
加えて末期にも検査をする必要がある.
性行為による HBV 感染では,感染機会後2∼6週間で HBs 抗原が陽性化する.針刺し
や輸血による感染では,侵入するウイルス量が多く,潜伏期は数日∼数週間と短い.
妊婦では,スクリーニングとして HBs 抗原検査を行い,陽性の場合に一般肝機能検査
と HBe 抗原・抗体,HBV-DNA 量の検査を行う.HBe 抗原(+)
をハイリスク児群,HBe
抗原(ー)
をローリスク児群として扱う(母子感染防止プロトコール)
.これにより,感染性
の高い HBe 抗原陽性妊婦から生まれた児でも95%以上に感染を防止できる.また,感染
性は低いが,劇症肝炎となる可能性のある HBe 抗体陽性妊婦からの児に対しても有効で
ある.
2.C 型肝炎(病原体:C 型肝炎ウイルス Hepatitis C virus
(HCV)
)
本邦のキャリア人口は200万人以上と推定され,妊婦の HCV 抗体保有率は0.5∼1%で
ある.母子感染(胎内・産道感染)
は5%前後とされ低率だが,近年漸増傾向にある.
妊婦では,スクリーニングとして HCV 抗体検査を行い,陽性の場合に一般肝機能検査
と HCV-RNA の有無と量の検査を行うことが母子感染の観点から重要である.すなわち,
母子感染のリスクは HCV-RNA 量の多寡と関連性が高いとされており,また,抗体が陽
性でも HCV-RNA が陰性ならば母子感染の報告例はない.
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N―130
日産婦誌60巻 6 号
C 型肝炎には,B 型肝炎に対するような特異的な予防法はない.
10)成人 T 細胞白血病 Adult T cell leukemia
(ATL)
(病原体:Human T lymphotropic virus type-1(HTLV-1)
)
ATL は九州,沖縄に多発する地域特異性がある.妊婦の HTLV-1キャリア率も同様で
あり,1995年の調査では静岡,北海道が1%以下であったのに対して,それら地域では5%
前後と高かった.しかし,平成14年の報告では沖縄でも1.8%に低下している8).
HTLV-1感染者は大部分がキャリア化するが,一部は ATL を発症,現時点で確立され
た治療法はなく,予後は不良である.しかし,ATL の発症年齢のほとんどが50歳以上で
あるので,妊婦自身や妊娠・分娩経過あるいは胎児に対する影響はない.
キャリア率の地域差があることから,妊婦に対する画一的なスクリーニング検査は必要
ないと思われるが,検査に際しては十分なインフォームドコンセントと妊婦の自由意思を
確認のもとに行う.抗 HTLV-1抗体陽性の場合,EIA 法・PA 法を行い,IF 法・WB 法な
どにより確認試験を行う.
感染経路は輸血,性行為と母子感染が知られているが,ATL 発症に係わる唯一のハイ
リスク因子は母子感染であり,その主な経路は母乳を介するものである.したがって,感
染予防には人工乳あるいは除感染処理母乳(凍結母乳:−20℃・12時間)
での哺育が望ま
しい.ただし,母乳での感染率は6∼13%とそれほど高くなく,人工乳でも3∼6%の感
染する.経産道および胎内感染はきわめて少ないが(2∼10%)
,胎内感染を予防すること
は困難である.
《参考文献》
1.感染症法に基づく医師の届出基準.日本医師会 発行 東京:中央法規出版株式会
社,平成18年3月
2. Blas MM, Canchihuaman FA, Alva IE, Hawes SE. Pregnancy outcome in
women infected with Chlamydia trachomatis : a population-based cohort
study in Washington States. Sex Transm Infect 2007 ; 83 : 314―318
3.性感染 症 診 断・治 療 ガ イ ド ラ イ ン 2006.
日 本 性 感 染 症 学 会 誌 2006;17
(Suppl)
:35―39
4.HIV 母子感染マニュアル 第4版.平成17年度厚生労働省化学研究費補助金エイズ
対策研究事業「HIV 感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する臨床的・
疫学的研究」班(主任研究者 稲葉憲之)
5.The international Perinartal HIV Group. The mode of delivery and the risk of
vertical transmission of human immunodeficiency virus type 1 ― A mataanalysis of 15 prospective cohort studies. N Engl J Med 1999 ; 340 : 977―
987
6.Garcia PM, Kalish LA, Pitt J, Minkoff H, Quinn TC, Burchett SK, Kornegay J,
Jackson B, Moye J, Hanson C, Zorrilla C, Lew JF. Maternal lecels of plasma
human immunodeficiendy virus type 1 RNA and the risk of perinatal transmission. N Engl J Med 1999 ; 341 : 394―402
7.Pediatric AIDS Clinical Trials Group Protocol 076 Study Group. Reduction of
maternal-infant transmission of human immunodeficiency virus type 1 with zidovudine treatment. N Engl J Med 1994 ; 331 : 1173―1180
8.Maehama T. Human T cell leukemia virus-1 in pregnancy. Int J Gynaecol Obstet 2004 ; 87 : 247―248
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