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Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香]
Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] 112 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] [授業実践の詳細] 1 時限目 「ガーナ報告会」 1 子どもの活動の流れ この時限のねらい ① ガーナ・クイズ・・・ガーナの位置・国旗等の基本情報、食べ 世界には、いろいろな感じ方や 物・トイレ・テレビ・チョコレート・稲作・世界遺産等の生活情報 考え方があっておもしろいことに気 をクイズ形式で紹介した。3人グループに分かれ、チーフが づく。それぞれの国には、いいとこ グループの答えをとりまとめ、指番号で回答した。(教材1) ろもあれば課題もあることを知る。 ② ガーナの深イイ話・・・実践者が実際にガーナを訪れておもし ろいと感じたトリビア(学校・お葬式・名前・サッカーゴール・給料等)をグループに2つずつ渡し、どちら か1つを生徒が深イイ話として全体に向けてクイズ形式で出題した。(教材2) ③ 今日の気づき・・・ガーナについて①「ここがおもしろい!」②「ここが残念!嫌!」と思ったことについて 記入し、全体で共有した。 2 子どもの活動の成果・反応 ◇「日本と大きく違うところがあっておもしろいなって思いました。他の国について知れることはあまりないの で、いい学習になりました。他の国についても自分で学習できたらいいなと思いました。」「ガーナはおもし ろくて、楽しそうだったので一度行ってみたいと思いました。」「ガーナの奴隷など、昔はひどいことをたくさ んしていましたが、今はすごく平和な感じになって いていいなと思いました。」等、ガーナの課題に気 づきながら、ガーナと肯定的に出会うことができた。 参加型の手法により楽しく学べたという感想が多 かった。 3 使用した教材 <教材1>ガーナ・クイズ(右写真) <教材2>ガーナの深イイ話(下2枚の写真) 113 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] 2 時限目 「奴隷貿易の真実」 1 子どもの活動の流れ この時限のねらい ① 前時の振り返り・・・前時の気づきから、本時の内容に関わる 人種差別の背景にある歴史的 事実(奴隷貿易)について知り、差 感想を紹介した。 ② 3つの写真から知ろう!・・・3人グループに分かれ、奴隷捕 別は不公平さや一方の利益を優 獲・城塞・地下牢の写真を見て、それぞれどんな写真か書き 先させた人間の愚かさが生んだこ 出した後、解説文とのマッチングを行い、時系列に並べてス とに気づく。 トーリー化した。(教材3) ③ ストーリーをつけ加えよう・・・さらに4枚の写真と解説文を与え、マッチングをした後で時系列に並べた。 ストーリーを2パターン用意しておき、他グループに自分の言葉でストーリーを語った。(教材4) ④ 今日のまとめ・・・どうして「奴隷貿易」という制度ができたのか考え合い、今日一番印象に残ったことを 記入し、発表した。 2 子どもの活動の成果・反応 ◇「同じ人間なのに家畜以下の扱いを受けた人がいる時代、「自分がされたら嫌だな」という単純な考えさえ あればすぐにやめられたと思った。自分の利益のためならなんでもするという考えがあったのかもしれな い。」「自分がされたらいやなんじゃないかとか、もっと早く気づくことができれば350年も続かないことだ と思った。」等、奴隷貿易の根底には人間が作り出した「不公平さ」が存在したことに気づくことができた。 ストーリーを語る場面で、絵や写真から自分が感じたことや考えたことを自分の言葉で語ったことで、奴 隷貿易についてより深く知り、考えることができた。 3 使用した教材 <教材4>ストーリーをつけ加えよう <教材3>3つの写真から知ろう! 3 時限目 「六千人の命のビザ」 1 子どもの活動の流れ ① あなたならどうする?・・・「あなたは家族で唯一の稼ぎ手で、やっとのことで村にたった一つの井戸を 守る仕事を得た。井戸に水を分けてくれという今にも倒れそうな人が来たが、あなたは上司に水を誰か 114 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] に分けたらクビだと言われている。」という設定で、自分なら どう行動するか意見を共有した。 ② 「六千人の命のビザ」のビデオを見る。(教材5) ③ ビザを発行しようと自分で決めた時の杉原さんの気持 この時限のねらい(道徳) 私心を超え、ビザを発行した杉原 さんの心情を考えることで、正義を ち・・・「ビザを発行したら、しなかったら、自分はどうなって、 大切にする心情が自身の内にもあ ユダヤ人の人達はどうなったかビデオの内容を整理した後 ることに気づく。 で、杉原さんの心情を考えた。 ④ 今日の感想 2 子どもの活動の成果・反応 ◇ 勇気を持って決断をする場面についてビデオ教材を基に考えたことで、自分だったら・・・と自分自身に迫 り、考えることができた。生徒達からは、「後から後悔しないように、自分も人のためになるようなことをし たいと思いました」「どうしようと悩んで、自分を優先して行動してしまったことが何回かありました」等の 感想が出た。この授業を 行ったことで、「おかしいと 思うこと(いじめや差別)に 出会ったり気がついたりし たときには、勇気を持って 自分も言いたい」という気 持ちを持つことにつながり、 後の授業でそのような生 徒の意見が見られた。 授業の板書 3 使用した教材 <教材5>「六千人の命のビザ」 (『わたしの築く道しるべ 2』より 一部抜粋) 115 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] 4-5 1 時限目 「ソーテ・サワサワ ~人間みな同じ~ 小林フィデアさん講演 子どもの活動の流れ この時限のねらい ① 講演会 ○フィデアさんのお話から、タンザ ② 感想を書く・・・「フィデアさんのお話の感想」と「フィデアさんの ニアやフィデアさんの生き方・考え お話や今までの学習から、自分の生活に生かしたいこと」の 方のよさに気づく。 2点について感想を記入した。 ○フィデアさんが長野県内で受け た差別について知ることで、自分が 2 これからの学校生活で生かしたい 子どもの活動の成果・反応 ◇「ありがとう」や「さようなら」はいつもあたりまえのように使ってい る言葉だけど、今日お話を聞いてみて、特別な言葉のように聞 ことや自分が心がけたいことにつ いて考えを持つことができる。 こえました。なので、意識して使えるようにしたいです。 ◇フィデアさんのように明るく生活したいと思いました。そうすれば友だちもたくさん集まってくる気がするから です。この人権旬間で、「思いやり」と「平等」が一番大切だと思いました。 ◇タンザニアの4つの宝のうち、「お年寄り」と「子ども」はとても天龍村に関わることです。この村のお年寄り はすべてが先輩の方で、何でも知っている人たちばかりです。また、子どもは人数が少なくて、とてもいい 支援をしてもらっていると思います。そんな村なので、やっぱり感謝という言葉がとても大切なんだと思い ました。 ◇それぞれの国で、いろいろな違いがあって、でもその違いはその人たちのよさでもあるし、その違いから差 別をしたり何かを判断したりするのは間違っていること。どんな人でも命の重さは一緒、大切さも一緒で ムダな命は一つもないことを知ることができた。それぞれの文化があり、違いももちろん出てくると思う。 でも、その違いを一つのよさとしていろいろな観点から見るというのは大事なことなんだなと思いました。 私は困っている人がいたら手を差し伸べる、自分に嫌な気持ちがあっても、それを受け入れ許すというこ と、難しいことだけど少しずつできるように頑張りたいです。 フィデアさんのお話から、自分が生活している天龍村・学校のよさに気づけた点は、ねらい以上であった。 3 講師のプロフィール 小林 フィデアさん 1970年タンザニア生まれ。高校卒業後、1年間の 兵役を経て、心身障害児養護施設の教員となる。19 96年、青年海外協力隊員としてタンザニアに赴任し ていた小林一成氏と結婚、来日。長野県三水村(現 飯綱町)で生活している。 1998年より(株)サンクゼールに勤務。1999年、 タンザニアのエイズ孤児らを支援する「ソンゲア女性 と子供の施設団体(SWACCO)」を、タンザニア在住の母とアメリカ在住の姉と立ち上げる。現在、NPO ムワ ンガザ・ファンデーション・ジャパン 代表。タンザニアのソンゲアに孤児院村を建設するため活動中。 116 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] 6 時限目 「天中が過ごしやすい理由」 1 子どもの活動の流れ この時限のねらい ① フィデアさんから教えてもらった大切なこと・・・講演会から学 自分たちの学校のよさに気づ き、これからもそれを大切にしてい んだことを発表し合い、共有した。 ② 天中のいいところ探し・・・「こういうことがしっかりできる天中 こうという決意を持つことができる。 って過ごしやすい!」ということを個人で付箋に書き、3~4 人グループで共有、タイトルをつけてグルーピングした。グループの代表者が全体で発表し、共有した。 ③ 「思いやり」ってどんな行動?・・・「思いやりがあるから天中はいい!」とまとまったので、思いやりを感 じた日常の場面やどんな行動が思いやりがあるのか、ポップコーン方式で出し合った。 ※この授業の内容を、後日全校集会で学級長が全校に発信・共有した。 2 子どもの活動の成果・反応 ◇天中のよい点で「優しい」がすべての学年にありました。みんな同じことを考えて接しているからこそ、今の いい天中があるんだなぁと思いました。18人という少ない人数でも、1人1人の絆は100人や200人の 学校よりも強いと思います。これからも、互いに気持ちを理解し合える天中でいてほしいです。 ◇各学年の発表を聞いて、最終的な事は似ていることがたくさんあるのに、最初のきっかけや途中の話し合 いが全く違っているので、天中生徒が全員いれば、多人数の学校以上にいろいろな視点で物事を考えら れると思いました。だからいじめがないのかな。 たくさんの天中のよさを自分たちで探し共有したことで、ねらいを達成することができた。この活動により、 あいさつや清掃等、日常の一つ一つの行動を大切にしていくことを再確認することができた。 「天中のいいところ探し」の成果物1・2 117 Ⅶ.ガーナ実践報告書[梨本絵理香] ■ 全体を通して 1 授業の様子 <写真1>「ガーナの深イイ話」でグループ <写真2>「ストーリーをつけ加えよう」で ごとにトリビアクイズを出題する <写真3>フィデアさんの講演会の様子 友だちにストーリーを語る <写真4>「天中のよさを共有しよう」で全校に クラスで考えたことを発表する 2 参考文献・資料 1) 高根務・山田肖子編著『ガーナを知るための47章』2011年、明石書店 (教材1・2) 2) 愛知県国際交流協会編 『わたしたちの地球と未来 ガーナ共和国』2011年、愛知県国際交流協会 http://www2.aia.pref.aichi.jp/topj/indexj.html (教材1・2) 3) ジュリアス・レスター、ロッドブラウン著『あなたがもし奴隷だったら』1999年、あすなろ書房(教材3・4) 4) 本田創造著『アメリカ黒人の歴史 新版 岩波新書165』1991年、岩波書店(教材4) 5) 信濃教育会編『わたしの築く道しるべ 2』 2012年、信州教育出版社(教材5) 以上 118