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民主党 2003 統一地方自治体選挙政策集 ・・・安心と活力を生み出す

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民主党 2003 統一地方自治体選挙政策集 ・・・安心と活力を生み出す
民主党 2003 統一地方自治体選挙政策集
・・・安心と活力を生み出す地域をつくる・・・
目 次
代表からのメッセージ
第1章
菅直人
道州制の実現とコミュニティの再生──民主党の地方分権政策
1.地方分権こそ構造改革の本流
2.権限移譲・財源移譲で地域の自立を
3.3 本柱でコミュニティの再生・強化をめざす
第2章
安心と活力を生み出す地域をつくる自治体改革の提案
1.自治体行政改革
2.議会改革
第3章
民主党の政策が一目でわかる個別政策のガイド
分権・行革・政治改革
消費者・人権・共同参画
経済・財政・金融
社会保障・雇用
農林水産・環境・エネルギー
教育・文化・科学技術
国土・社会資本
外交・安全保障
1.分権・行革・政治改革
地方分権
○道州制への移行
○一括交付金の創設
○税源移譲と地方交付税改革
○国と地方の役割分担
○市町村合併
○「住民自治推進基本法(仮称)」の制定
○コミュニティの再生・強化
行政改革・規制改革
○天下り禁止
○公益開示法の制定
1
○政治任用制の拡大
○官民交流・中途採用・任期付職員制度の促進
○公募制の活用と能力に応じた昇進
○早期勧奨退職慣行の是正
○公務員の労働基本権
○特殊法人改革
○独立行政法人
○公益法人改革
○規制改革
○郵政事業改革
○警察改革
○構造改革特区制度
政治改革
○首相・内閣権限強化
○一票の価値の格差抜本是正(都道府県基数配分廃止)
○選挙権・被選挙権年齢引き下げ
○永住外国人の地方選挙権
○立候補休暇制度創設
○選挙制度改革の課題
○あっせん利得処罰法抜本改正
○企業・団体献金を受領できる政党支部の制限
○公共事業受注者、利子補給対象の融資を受けている法人の献金禁止
○後援会等の機関紙誌への広告規制
○収支報告書等の保存期間を 5 年に延長・インターネットで公開
○インターネット選挙運動解禁
○電子投票制度
○大使の国会同意人事化法案
○立法調査権の強化
○議員特権の見直し
○秘書制度改革
○政と官のあり方
2.消費者・人権・共同参画
消費者・NPO
○消費者教育等
○食品の安全性
○NPO活動の促進・支援税制の拡充
2
男女共同参画
○年金制度
○税制
○雇用・労働
○次世代育成
○男女平等の基盤づくり
○介護保障
○女性の健康
○男女共同参画型の国際協調
暮らしと人権
○司法制度改革の推進
○刑罰の見直し
○少年犯罪の防止
○犯罪被害者への支援
○人権擁護機関の創設
○青少年対策
○子ども政策
○ドメスティック・バイオレンス対策
○選択的夫婦別姓
○個人情報の保護
○住民基本台帳ネットワークシステム施行問題
○障害者の人権
○人権教育・啓発促進法
○テレビ字幕普及法案
○国内テロ対策
○大規模災害対策
○災害復興体制の整備
○化学物質過敏症・シックハウス対策
○たばこ・飲酒対策
○戦後処理問題
3.経済・財政・金融
財政:財政構造改革
○歳出構造の見直し
○補正予算についての考え方
○公会計制度の見直し
金融:不良債権処理など
3
○金融再生ファイナルプランの実行
○地域金融円滑化法(金融アセスメント法)の制定
○金融サービス法の制定
○証券取引委員会(日本版SEC)の設置
○出資法上限金利の引き下げ
税制改革
○経済再生に向けた税制改革
○所得税改革
○納税者権利憲章及び納税者番号制度
○消費税改革
○法人税改革
○NPO税制の拡充及び公益法人税制改革
○環境税
産業・通商
○規制緩和・公的部門民営化
○リーディング産業の育成
○人的資源の有効活用
○人的資源の活性化
○知的財産権
○WTO
○FTA(自由貿易協定)
○セーフガード
中小・ベンチャー支援
○中小企業金融
○産業・中小企業税制等
○起業・ベンチャー支援
○商店街対策
○ものづくり支援
IT政策
○電子政府
○迷惑メール防止法案
○サイバーテロ対策
○IT公正競争監視委員会の設置
○ITバリアフリー法(ユニバーサルデザイン法)
4.社会保障・雇用
社会保障
4
○社会保障制度の分権化
○健康づくり支援
○診療報酬・薬価制度の見直し
○患者の権利法案
○家庭医の創設と医療機関の役割分担
○医療事故防止対策
○医療従事者の資質向上のために
○医療保険制度の再編成
○高齢者医療制度の見直し
○地域精神保健福祉のレベルアップ・司法と精神医療の連携強化
○基礎年金の税方式化
○無年金障害者への対策
○介護サービス基盤の拡充
○介護サービスの質の向上
○介護保険における低所得者対策
○エイジフリーな介護保険
○子育て支援
○児童手当の拡充
○ひとり親家庭への自立支援策
○バリアフリー
雇用・労働
○職業能力開発
○雇用創出
○ワークシェアリング(WS)
○就業形態の多様化と均等待遇
○解雇規制
○年齢差別禁止
○ホームレス自立支援
○雇用保険制度
○仕事と家庭の両立支援
○労働時間の短縮
5.農林水産・環境・エネルギー
農林水産
○食料自給率の向上
○食料安全保障
○森林の多面的機能と整備の必要性
5
○環境保全型農業の促進
○所得補償政策
○国内産業の維持
○農業団体改革
○都市型農業
○水産業の多面的機能
○農業経営再建特別措置法案
○環境調和型養殖の推進
環境
○持続可能な社会
○地球温暖化対策
○オゾン層破壊・フロン回収
○地球環境問題
○これからの化学物質対策
○化学物質対策(これまでの取り組み)
○廃棄物・リサイクル対策
○デポジット制度
○環境教育
○野生生物保護
○自然環境保護、里地・里山の保全
○公害対策
○環境税
○アセスメント・市民参加
エネルギー
〇国民参加の戦略的な政策づくり
〇脱石油・燃料転換の促進
○省エネ政策
○新エネルギー・未来エネルギー
○エネルギー源としての第一次産業振興
○原子力政策
6.教育・文化・科学技術
教育・文化
○中央教育委員会の設置
○学習指導要領の大綱化
○「ゆとり教育」について
○少人数学級の実現
6
○教科書検定・採択について
○コミュニティースクールの設置
○体験学習の推進
○スクールカウンセラー制度の充実
○国立大学改革と支援のあり方
○奨学金制度改革
○学校施設老朽化対策
○学校図書館の整備
○生涯教育の充実
○統合教育・障害児教育の推進
○芸術文化活動への支援
○伝統文化の保存・継承
科学技術
○科学技術分野における行政改革
○人材の育成
○若手研究者の受け皿の確保
○TLOの強化
○研究環境の改善
○科学技術政策の「選択と集中」
○エネルギー関連の技術研究
○次世代の産業競争力を担う技術
○国民の安全確保への貢献
7.国土・社会資本
公共事業改革
○公共事業コントロール法
○PFIの促進
○大型公共事業事例の見直し
○道路特定財源の見直し(道路政策)
○治水政策(緑のダム)
○一次産業の名を借りた農林土木の排除
○諫早湾干拓事業の見直し
交通政策
○交通基本法の制定
○交通バリアフリー
○整備新幹線
○高速道路整備
7
都市・地域政策
○住宅政策・住宅金融
○ハートビル
○都市再生
○過疎地域の対策
○雑居ビル火災対策
沖縄政策
○一国二制度
○経済振興策
○自然環境政策
○教育政策
○在沖縄米軍基地問題
8.外交・安全保障
外交
○予防外交
○外務省改革
○機密費(報償費)の改革
○日米関係
○日米地位協定の見直し
○日露関係
○北方領土返還交渉
○日中関係
○台湾問題
○日朝関係
○北朝鮮脱出難民
○日本人拉致事件
○欧州・EUとの関係
○南西アジア地域との関係
○アフガニスタン復興支援
○中東情勢
○イラク問題
○アジア太平洋地域協力の推進
○国際経済システムへの貢献
○国連改革
○ODA(政府開発援助)
○地球規模の問題
8
○難民問題
○ジュネーブ諸条約・追加議定書
○国際刑事裁判所(ICC)
○核軍縮政策
○多層・多次元外交
安全保障
○日米安全保障体制
○在日米軍基地問題
○思いやり予算
○防衛庁改革
○防衛の基本原則
○中期防衛力整備計画
○緊急事態法制
○民間防衛
○不審船・武装工作船問題
○国際テロへの対応
○テロ特別措置法による自衛隊派遣
○ミサイル防衛構想
○情報収集・分析体制の強化
○国連平和維持活動(PKO)
○安全保障対話の促進
○アジア地域の安全保障枠組み
○国連の安全保障
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市民と自治体が選択、決定する
自治の確立をめざす
民主党代表
菅
直人
2003 年 1 月 18 日
民主党は地方分権の推進こそ、この国を変える第一歩だと考えています。それは、現在
の日本がなんでも国が決め、地域の行政の隅々にまで中央官僚が口を出す、そして身近な
自治体には権限も財源もなく、本来の自治の主役である住民には選択権、決定権はおろか
情報も公開されない、中央官僚集権国家であるからです。
9
地方自治の本旨は自治体自治であり、住民自治にあると私は思っています。選択権と決
定権が自治体と住民にあることが自治本来の姿です。そうした意味で、民主党の分権自治
政策の真髄は分権から自治への道筋が明確に示されているところにあります。
いま、自治体改革の波が急速に高まっています。利権構造に浸りきった族議員や、省益
と既得権を守ろうとする官僚に対して、住民、市民が先駆的なリーダーを自ら押し立てて
勝利しつつあることの証明です。民主党はこの流れを決して後戻りさせることなく加速さ
せたいと考えています。住民、市民の皆さんと一緒に過去のしがらみを一掃し、地域を再
生させる道筋をつけることが、今度の統一地方自治体選挙の最大の意義です。
民主党が掲げる自治体改革政策はいずれもがメニューです。全国画一、一律に押しつけ
るものではなく、選択と決定は住民が行うべきものです。民主党の政治と政策は、情報開
示の推進、住民の選択権の保障、地域主権の確立、より直接的な住民自治の推進―から成
り立っています。そして、将来の姿としての道州制を提案していますが、これは自治体と
住民の自治権確立の結果としての姿を提起するものです。
日本という国のかたちを振り返れば、民主主義国家ではありませんでしたが、江戸時代
も 300 の藩と幕府が並存する、ある種の分権連邦的国家であったともいえます。小さくて
も強力な中央政府と市民自治による地方政府の組み合わせをめざす、私流に大胆に言えば
「江戸時代ルネッサンス」とも言うべき、分権と自治が生活と行政の隅々にまでいきわた
る国、これこそ 21 世紀の日本がめざす新しい国家像であると考えています。
民主党は、国民、市民のみなさまの厳しいご批判を受け、全党がみなさまの叱咤激励に
真摯にお応えすべく、新生へのスタートを切りました。地方自治は民主主義の学校と言わ
れています。地域を再生し、豊かなコミュニティを築き上げる道のりのなかで、日本の社
会経済の抜本改革を実現させます。
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第1章
道州制の実現とコミュニティの再生民主党の地方分権政策
1.地方分権こそ構造改革の本流
民主党のめざす地方分権
民主党は結党以来、「分権連邦型国家」をめざして、地方分権政策に積極的に取り組んで
きました。先の総選挙及び参議院選挙では「道州制」を掲げ、その後は道州制の実現に向
けて、国と地方の役割分担のあり方とそれに基づく税源配分のあり方等を具体的に議論を
してきました。
こうした取り組みは、単に国の権限や財源を、都道府県や市町村に移譲することを最終
的な目的として行っているのではありません。地域のことは地域で決める、住民に身近な
10
ことは住民自身が参画し、その責任において決めるという「地域主権社会」を創造するこ
とが、本来の目的なのです。
自民党にはできない『地方分権』
地方分権は時代の要請であり、安心で活力ある社会を構築するために、不可避な構造改
革の一つであると考えています。
しかし自民党では、この地方分権は決して実現できません。なぜなら自民党こそが中央
集権型社会をつくり、それによって支えられている政党だからです。自民党は、政策づく
りを霞が関に依存し、その代わりに高度成長の果実を地方や既得権益集団に配分すること
によって、政権基盤を維持してきました。霞が関は利益配分を自民党に任せる代わりに、
政策づくりを通じて、自らの権限や財源を肥大化させてきました。既得権益集団は、自民
党に票やカネを出す代わりに、補助金や仕事を手にしてきました。この「政官業」のトラ
イアングルにとって、中央集権は非常に都合の良いシステムなのです。高度成長が終わっ
てからも、「政官業」のトライアングルは維持されてきました。その結果、財源が無いにも
かかわらず「経済対策」と称して、必要性に疑問のある公共事業を行い、補助金をバラマ
キました。しかし経済構造が変わった現在ではこのような対策の効果は乏しく、一方で巨
額な借金ばかりを抱える羽目になったのです。
中央政府の権限や財源を削る地方分権は、まさに「政官業」のトライアングルを崩壊さ
せることであり、自民党の政権基盤を根底から覆すことですから、自民党政権では決して
地方分権が実現することはありません。
2.権限移譲・財源移譲で地域の自立を
権限移譲・財源移譲プラン
民主党はすでに国の権限を縮小し、権限・財源を自治体に移譲していく全体像、具体的
な手順を提案しています。
第 1 段階では、国によって使いみちの決められている補助金などを、地方自治体が自由
に使える財源に衣替えします(補助金・負担金の一括交付化)。民主党は、政権獲得後、直
ちに国と地方自治体の役割分担を大幅に見直します。例えば、道路なら、1 号線から 58 号
線までを国道として、それ以外は地方道とします。そして、これまで 3 ケタ国道の整備に
使っていた補助金は、地方自治体に基本的には使いみちの自由な財源として交付します。
補助金・負担金は、2002 年度予算で約 17 兆円にものぼりますが、その大部分を都道府県、
市町村別に事務配分を精査した上で(民主党では専門家を含めて既に具体的な検討を行っ
ています)、交付するのです。配分基準は、さまざまな方法があるでしょうが、税財源抜本
改革までの経過措置であること、激変緩和という観点から、過去 5 年間に個別の自治体に
11
交付された補助金・負担金の平均額とします。財政健全化の観点から、この一括交付金の
漸減が必要ですが、一方で各自治体の裁量は大幅に拡大しますから、知恵と工夫次第で、
住民サービスは低下するどころか高まっていくことになります。
第 2 段階では国の税源の一部を地方に移譲します。現在、国と地方の税源配分は 3:2 と
なっていますが、この税源移譲によって 1:1 の配分を実現します。同時に地方交付税を抜
本的に見直します。地方交付税の改革には 3 つの意味があります。1 つは地方交付税を根拠
に国は様々な仕事を地方に押し付けてきましたが、この機能を廃止する(財源保障機能の
廃止)ことによって国は地方に仕事を押し付けることができなくなります。2 つは税源移譲
によって地方間の財政格差が拡大しますが、この格差をできるだけ調整する制度(財政調
整機能の強化)へと改めます。3 つは現在の地方交付税が余りにも複雑であり、このことが
結果的に地方の地方交付税依存を招いていますので、制度を思いっきり簡素化し、地方の
自立を促進します。
税源移譲によって国と地方の税源配分が同等となり、地方交付税改革によって国と地方
のお金の関係が透明になります。自治体は自らの責任と財源によって、地域に必要な事業
を自主的に選択することが可能となります。
なぜ民主党ならできるのか
通常、この段階で地方分権論議は行く手を阻まれます。なぜなら、国から地方への税源
移譲は(どのような税源を移譲するかにより程度の差はありますが)、許容範囲を超える自
治体間の財政格差を生み出す可能性が高いからです。
国の財政事情に鑑みて、国から地方への税源移譲は、財政(税収)中立で行われます。
つまり、税源移譲により生じる国の減収分は、自治体に対する地方交付税の減少によって
補われることになります。このため、移譲によって生まれてくる各自治体間の財政格差を
許容範囲内に調整するだけの資金が不足するわけです。
民主党は、自民党と違い、補助金や負担金に関わる権限を自治体や住民に移譲すること
ができますので、第 1 段階で衣替えした一括交付金をこの際、不足する財政調整資金に加
えることで"格差"を許容範囲内にとどめることができるわけです。
このように、分権改革をすすめるポイントは、結局のところ補助金や負担金問題となり、
それらの権限を手放すことのできる民主党こそが分権改革の担い手たり得ることになりま
す。
最終的には道州制の導入も検討
第 3 段階は、道州制の導入です。民主党は、地域のことは地域で決め、国はスリム化す
ることによって、本来の機能を十分に果たすべきだと考えています。この「国のスリム化」
を大胆に進めるためには、現在の都道府県より一層しっかりした受け皿が必要だと考え、
そのために道州制をめざしています。第 1 段階の開始から 10 年程度で道州制に移行するこ
12
とを考えていますが、その道州制のあり方、税財政制度のあり方、役割分担のあり方につ
いては、民主党から改めて提案し、国民全体の議論の中で方向性を見極めたいと考えてい
ます。
3.3本柱でコミュニティの再生・強化をめざす
「官官分権」で終わらせないために
以上のように、民主党が政権を獲得した際には、大胆に、かつ迅速に国から地方へ権限
と財源の移譲を進めていきます。しかしこの移譲が霞が関から地域の役場への「官官分権」
で終わってしまっては、地方分権は何ら意味をなしません。この住民に身近な場所に移っ
た権限や財源の使いみちについて、いかに住民の意思を反映させていくか、その決定過程
にいかに住民が参画していくかが、最も重要なことです。官の中に閉じこもっていた権限
や財源を広く民に開放し、住民が真に必要とする公的サービスを創造すると共に、その内
容や提供方法に民の知恵やノウハウを活用することこそが、真に必要な構造改革だと考え
ます。この反映・参画を実現するために、民主党は以下に掲げる政策の実現に取り組んで
行きます。
「住民自治基本法(仮称)」の制定
国民は政治的な権利を国に信託しています。憲法は、国がこの権利を行使するにあたっ
て準ずるべき基本的な原則を定めています。自治体も同様に住民から直接的に政治的権利
の信託を受けています。ならば自治体にも憲法に相当する基本的原則が必要だと考えます。
特に自治体は住民に身近な行政サービスの提供を役割としていますので、そのサービス
の内容や提供のあり方について住民の意見を反映させていかなければなりません。またこ
れからの時代では、サービスを住民自身が提供することも多くなると思われます。その意
味で自治体は常に住民と共にあることが必要であり、そのためには「知る権利」とこれを
確保するための情報公開のあり方、「参加する権利」とこれを確保するための手続きなどの
基本原則を定めておくことが必要です。
民主党はこのような考え方に沿って、住民・自治体の権利や義務、住民と自治体の関係、
自治体運営の基本原則を明らかにする「住民自治基本条例」の制定義務等を内容とする「住
民自治基本法(仮称)」の制定をめざします。
「住民投票法(仮称)」の制定
地方自治においても原則は代議制民主主義ですが、社会の複雑化や住民の多様なニーズ
の中で包括的な信託を行っているため、時に信託したものとされたものの意思が異なるこ
とがあり得ます。意思決定過程における情報公開・住民参加によってこのようなかい離を
13
無くすことが本来の道ですが、様々な理由によってこのかい離を埋められない場合に、住
民投票は住民の意思を確認するために非常に重要な政治的手段だと考えられます。また地
域住民にとって重大な意思決定を行う場合には、住民投票を行うことで、かえって間接民
主主義に対する信頼性が高まることも考えられます。
住民投票については様々な議論がありますが、民主党はこれを間接民主主義を補完する
有力な手段であり、代議制と調和するものと積極的に評価します。何より、住民投票によ
って一人一人がその決定に参画することにより、住民が自らの課題として捉え、議論を行
い、そして決定の責任の一端を担うことの意味を重視したいと考えます。
このような考え方から、民主党は住民投票を地域の意思決定に積極的に取り入れるため
に「住民投票法(仮称)」の制定をめざします。ただし地域の自主的な決定権を侵さないた
めに、法律は基本的な枠組みのみを規定し、実際の課題選択、実施方法等については地方
に委ねることとします。
コミュニティの再生・強化
コミュニティの再生・強化の意味は、主として 2 つあります。
1 つは住民自治の一層の推進です。民主党の考える地方分権は、行政間の権限移譲に止ま
らず、最終的には住民に決定権を移譲し、住民自らが公益を担い、共生していくことをめ
ざしています。そしてこの共生の場となるのがコミュニティです。私たちがめざす新たな
社会は、住民は単なる行政サービスの受け手ではなく、自立した市民として行政サービス
を自ら企画し、提供する側になる社会です。これを可能とするためには、従来の町内会の
イメージを払拭し、自治・自立型の地域コミュニティを構築していくことが不可欠だと考
えます。
2 つ目の意味は、1 つ目の裏返しです。即ち合併などで市町村の規模が拡大する中にあっ
て、きめ細かい行政サービスを自分たちで企画・提供し、また地域的密着性が高く独自の
文化・風土を守る単位としてのコミュニティを再生・強化するのです。
具体的には、地域団体として現に活動している地方自治法に基づく町内会、NPO、中
間法人等の法的関係を整理し、コミュニティの強化・再生に適合した制度をつくっていき
ます。
1 つには地域が必要とするサービスを、行政に代わって、或いは住民から直接信託を受け
て提供できる主体の創設が必要です。現在でもNPOが同様の役割を担っているケースが
ありますが、その法的な裏付けを強化し、提供できるサービスの範囲の拡大や対価の徴収
権、それに応じた情報公開制度の拡充や住民による監視権の創設等が課題になると思われ
ます。
また自治体の中で、限定された地域のみ影響がある政治決定がなされる場合、この決定
に対する関与権、拒否権等を有する主体の創設も必要だと考えます。例えば現在の都市計
画法では、都市計画を決定する場合でもその地域の住民に拒否権はありません。もちろん
14
意見を述べる権利等はありますが、実際には自ら住む将来の町づくりの姿を、住民が全く
知らないままに決定されていることはよくあることです。地域主権型社会を実現するため
には、そのようなことをできる限り排除し、可能な限り住民に周知徹底すること、また「地
域のことは地域で決める」という基本的な考え方からまずは地域の総体としての意見を集
約し、これを政治決定に反映させることが必要です。そのために法的根拠を持った地域主
体の創設を検討していきます。
以上に述べた制度は、あくまでも地域の主体的な決定によって活用されるものであり、
仮に法整備を行うとしても、これを地域に押し付けるものではありません。地域主権、住
民自治を実現する立場から、常に住民と情報のキャッチボールをし、また協動するために
提案するものです。また副次的な効果ではありますが、結果的に行政のスリム化を進める
ことにも寄与するものと思います。
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第2章
安心と活力を生み出す地域をつくる自治体改革の提案
●自治体改革メニューの提案
第 1 章で提案したような権限・財源の移譲を進めていくのに伴い、自治体、とりわけ市
町村の役割は飛躍的に高まっていきます。現在までの金太郎飴的な地域行政はありえず、
それぞれの地域が、それぞれに保有する地域の資源を活用し、独自の判断で地域づくりを
行っていくようになります。
既に多くの自治体で、独自の町づくりに向けた様々な取り
組みが進んでいます。ここでは、この様々な自治体の取り組みを参考にしつつ、より良い
地域の形成、質の高い行政サービスの提供、危機的な財政状況の改善に向けた政策メニュ
ーの提案を行います。もとより地域の改革は地域において決定され、実現されるべきもの
ですが、自治体の役割・責任が急速に重くなることを念頭に、改革の動きを加速させる際
の一助となれば幸いと考えています。
1.自治体行政改革
(1)役所改革
1.
財政状況等の実態が、住民に見えにくくなっている外郭団体等も、情報公開の対象と
する
2.
情報公開請求を、ホームページ上のメールで可能とし、文書もデジタルの画像情報と
してメールで送付する
3.
監査委員を補佐する事務局の充実など、内部監査機能の強化を図る。市町村において
も、監査委員のみならず、弁護士や公認会計士による外部監査制度を活用する
15
4.
パブリック・コメント手続きの条例化等を含め、政策の策定に当たって、住民の意思
を反映できる制度を整備する
5.
ホームページ上に、電子会議室を設置し、住民の意思を汲み上げる
6.
税務業務の電子化等、種々の業務の電子化を推進することにより効率化を図る
7.
職員数の削減や、退職後の就職先等となっている外郭団体の統廃合を行うことにより、
経費を削減する
8.
庁内の組織にサンセット方式を導入するとともに、名称も住民にわかりやすいものに
改める
9.
副市長制や部門制の導入等の組織見直しにより、責任の明確化や決定の迅速化を推進
する
10. 休日・祝日の行政サービスを実施する
11. 首長の名誉職的な兼職制限、冠婚葬祭等の出席禁止、職員採用委員会設置等による選
考の透明化をすすめる
12. 女性管理職の登用および委員会・審議会の女性比率を一定以上にする
13. 職員の勤務時間の厳守、休暇の計画的な取得などをすすめる
(2)予算・決算
1.
予算の効率的配分のため、政策・施策・事務事業の各レベルで、事前・事中・事後に、
一定の基準で達成度や成果を分析する行政評価制度を導入し、その結果を公表する
2.
バランスシート作成、自治体決算に関わる情報公開等、自治体の財務情報の公開を徹
底する
3.
住民にもわかりやすい、予算説明用パンフを作成し、補助金交付先・金額等も含めて
公表する
4.
予算の企画案作りの段階から、住民が参加する検討会を設置し、住民のニーズを反映
した予算を作成する
5.
前年度の政策評価の結果を踏まえ、事業見直しを行い、新年度の予算を編成する
6.
前年度に経費を削減した部局に対して、節減額の一定割合を報奨として還元する
7.
新規事業について、各部局・民間企業・NPO等がそれぞれ事業を提案し優劣を競う、
「コンペ方式」を導入し、予算の有効活用をめざす
(3)公共事業
1.
公共事業の実施箇所を、予算額を含めてインターネット等で公表する
2.
工事の入札予定価格の事前公開もしくは事後公開を行い、入札の透明性を確保する
3.
計画段階および事前評価に住民が参加して、効率性・実施プロセスの透明性を確保す
る
4.
民間企業の資金やノウハウを活かした、PFIの導入を推進し、建設経費や管理運営
16
経費の削減を図る
5.
公共事業費を削減し、森林整備費の増額等を図り、自然環境を保全する事業へ転換す
る
6.
電子入札により、入札手続きを簡素化するとともに、入札コストを抑制する
(4)補助金
1.
補助金を出す行政側と、補助金を受ける団体側の両者が、共に補助金の「自己診断シ
ート」を作成し評価する
2.
全補助金を白紙化し、一般公募と審査により順位をつけ、補助金交付を決定する
3.
補助金の配分については、第三者機関が審査し決定する
4.
都道府県の市町村向け単独補助金を、独自に使途を限定しない統合補助金として交付
する
(5)教育
1.
生徒の指導要録の総合所見欄を、自己情報コントロール権の観点から情報開示する
2.
小学校や中学校の学校運営に、地域住民の積極的参加を求める
3.
小学校の少人数学級(25 人)の導入をすすめる
4.
学習の場や共同生活の場を、地域住民の協力を得つつ、学校外においても多様な形で
提供する
(6)介護
1.
介護事業者の情報として、サービスの種類・担当者名・送迎可能地域等、詳細で広範
な情報を、わかりやすいガイドブックとして作成し配付する
2.
自治体独自の判定指針を作成し、公正な要介護認定を図る
3.
オンブスパーソン(介護福祉サービス苦情救済委員)による苦情対応や、サービス調
査・評価
等を実施する
4.
自治体が設置し、民間が運営する「公設民営型」養護老人ホームを導入する
5.
地域全体で介護を行う里家制度を導入する
(7)保育
1.
地域住民が参加しての、地方版エンゼルプランを策定する
2.
自治体が設置し、民間が運営する「公設民営型」保育所を導入する
3.
学校の余裕教室を、保育所として活用する
4.
自治体独自で民間の保育園を認証・認定し、保育環境を整備する
5.
幼稚園と保育園を統合し、幼保一元化を行う
17
(8)NPO
1.
住民との協働を促進するための、協働促進条例を制定する
2.
地域のNPOへの寄付に対する独自の税控除の創設や、地方法人住民税免除の検討を
すすめる
3.
自治体がこれまで担ってきた、公立の図書館業務やコミュニティセンターの管理業務
等を、NPOとの業務契約に移行する
4.
NPOへの補助金交付配分を、NPOが決定する仕組みをつくる
(9)環境
1.
住民と協働で自治体環境プランをつくる
2.
住民との協動、民間委託等を含めたゴミ処理サイクル(収集・焼却・処理場)を再構
築する
3.
自治体独自の環境基準を作成し、ガス等の排出量を削減する
4.
環境にやさしい物品を購入するグリーン購入を推進する
5.
産廃税の導入等による自治体レベルでの環境政策の推進を図る
6.
地球温暖化や生態系保全に取り組む樹医制度を導入する
(10)雇用
1.
技術開発、経営ノウハウの提供等を行う起業家支援(インキュベーター)施設を整備
する
2.
雇用基金を設立し、採用に積極的な民間企業への給付金を交付する
3.
自治体の業務を、地元民間企業に積極的に委託する
4.
失職した人たちを森林作業員として雇用し、荒れた森林を再生する
5.
地域資源の再発堀、人材育成等によるソフト面からの企業誘致策を拡充する
6.
失職した人たちを雇用して訪問指導等を行い、小学校の算数学習等を支援する
(11)障害者
1.
「支援費制度」開始に伴い、住民参加によるサービス評価システムの開発等提供サー
ビス水準の維持・拡充のための環境整備をすすめる
2.
地域・市町村・医療機関が一体となった精神障害者の社会復帰・地域生活支援のシス
テムづくりをすすめる
3.
ひきこもりやLD(学習障害)など新たなニーズに応える相談体制づくりをすすめる
4.
環境に優しい物品を製造する授産施設からの優先購入をすすめる
(12)災害対策
1.
災害時に備えるため、地域に内在する危険要因や防災活動に必要な資機材の所在を把
18
握する自主防災マップを作成する
2.
救急医療について、行政区域を越えて他府県とネットワークを結び情報を共有する
3.
民間建築物等の耐震診断を独自に助成する
4.
小中学校の空き教室を防災倉庫として活用する
5.
自治体内の全自治区を結ぶ地域防災無線網を整備する
6.
防災のため、土地利用を事前に規制する
2.議会改革
(1)国会における対応
現在の地方自治法は地方議会について多くのことを規定しており、時に「地域のことを
地域で決める」場合に障害になることがあります。このような弊害を極力小さくしていく
第一歩として、国会において以下の法改正を進めていきます。
1.
地方議会の定数に関する部分を削除し、それぞれの地方議会が地域に即した形で定め
ることができるようにする
2.
地方議会の議決対象範囲を、可能な限り地方議会自ら判断できることとする
3.
地方議会における議会招集権を、一定の要件を付した上で、議会自ら決定できること
とする
(2)議員定数と構成
1.
地域の実情を踏まえ、また議会が年齢、職業、性別等の観点から地域を代表する適切
な構成となるように、議会定数を定める
2.
首長が強大な権限を有することから、その多選禁止を検討する
3.
議員の出産休暇制度を条例で制定する
(3)休日・夜間の議会・委員会の開催
1.
休日・夜間に議会・委員会を開催し、住民の傍聴を容易にする
(4)議会の情報公開
1.
本会議のみならず実質的な審議を行っている委員会の議事録も、広く公開する。
2.
委員会の審議状況をインターネット上で公開する
3.
政務調査費について、使途を含めて報告書に記載し、情報公開する
(5)議員研修の充実
1.
条例による議員研修の制度化を図り、その目的・維持を明確にする
19
(6)議会事務局の充実
2.
市町村議会における議会事務局の設置の促進、政策立案補佐機能の拡充を図る
3.
広域連合、一部事務組合等による議会事務局職員機構を設置する(議会事務局もしく
は人的資源の共有)
(7)議決事件の範囲の拡大
1.
議会議決案件の積極的な見直しを図る
2.
特に基本計画や都市計画等の個別行政のマスタープラン等住民生活に大きな影響を与
える行政計画については、積極的に条例で議決事件とする
3.
公社等の予算・決算・事業計画等を議会の審議の対象とすることを検討する
(8)執行部付属機関の委員への就任見直し
1.
議会の監視機能向上、執行機関からの独立性確保のため、首長の付属機関である各種
審議会等の審議委員に議員が就任することを、原則的に廃止する
(9)議長・副議長の地位向上
1.
議長・副議長の任期を原則として法定期間である 4 年間とする
(10)質問・質疑方法の改善
1.
首長提案に対し積極的に修正動議を提出する
2.
議員提出条例の積極的活用により民意を反映する
3.
議会質疑における過度な事前通告制を見直す
4.
質疑を含め議会運営における規則の条例化を図る
(11)常任委員会所属の制限緩和
1.
法改正を前提に、議員の委員会所属の制限を緩和し、議員の積極的な議論参加の環境
を整備する一方で議員本人に利害関係のある委員会所属を制限する(建設会社役員兼
務議員の建設委員
会所属等)
(12)委員会の活性化
1.
委員会審議等における公聴人制度や参考人制度を積極的に活用する
2.
議員提出議案審議の際に補助説明員(秘書、政党職員等に限らず、議案立案に関与し
たNPOなども含める)の出席を認める
3.
特定案件の調査・審議等を行う附属小委員会の設置を検討する
20
(13)議会のIT化
1.
議会ホームページ(HP)での議事録公開、条例案に関するパブリックコメントを募
集する
--------------------------------------------------------------------------------
第3章
民主党の政策が一目でわかる個別政策のガイド
1.分権・行革・政治改革
【地方分権】
民主党は、地域のことは地域で決められる「地域主権型社会」をめざしています。国民
の方々一人ひとり、それぞれの地域が持っている本来の能力を発揮するためには、全国一
律の押しつけではなく、自分たちの判断で決定することが必要です。地域の実情にあった
決定が地域の活性化を実現し、そして国全体の活力へつながっていくと考えています。
一方で現在の中央政府は、例えば外交、安全保障、金融など本来その機能を発揮しなけ
ればならない分野において弱体化しています。これは中央政府が何から何まで抱え込み肥
大化・非効率化してしまったからです。民主党は、中央政府の役割を限定し、本来の中央
政府の機能を十分に発揮させるべきと考えています。
道州制への移行
民主党は、政権をとってから 10 年後をメドに道州制に移行することをめざしています。
国の権限や財源を思い切って地方に移すためには、現在の都道府県では小さ過ぎると考え
ています。わが国を 10 から 12 の道州に再編し、公共事業などの権限を大幅に地方に移譲
します。身軽になった国は、外交・安保、金融など本来の役割に重点的に取り組み、その
能力を十分に発揮できる体制を整えます。
一括交付金の創設
将来的に道州制の移行を実現する時には、現在の国・地方の財政制度のあり方は根本か
ら変わりますが、それ以前にも段階的・計画的に地方財政の改革をすすめます。その第一
歩が現在の個別補助金を原則廃止して、5 つの行政分野に大括りにする「一括交付金」の創
設です。例えば「町づくり一括交付金」は、公共事業関係の補助金を一括して自治体に交
付し、具体的な事業の選択は自治体が判断することとします。これによって自治体の事業
選択の裁量範囲が飛躍的に広がる一方で、なぜその事業を選択したのかを住民に説明する
義務を負うことになります。
21
税源移譲と地方交付税改革
地方財政の改革の 2 段階目は、税源移譲と地方交付税改革です。現在国と地方の財源配
分は 3:2 ですが、国の所得税の一部を地方の住民税に移譲することによって、これを 1:1
にします。同時に現在あまりにも複雑で、また地方の国依存の大きな要因となっている地
方交付税を抜本的に改め、簡素・透明でかつ地方の自立をすすめる形の制度へと転換しま
す。税源移譲と地方交付税改革によって、地方は財政的にも国と対等な関係となり、自立
が促進されることになります。
国と地方の役割分担
将来の道州制移行を念頭に置き、地方財政の改革状況にあわせて国と地方の役割分担を
見直していきます。一括交付金の時期には、現在のような国の地方に対する過剰な関与を
なくし、地方が自主的に事業の決定を行えるようにします。国と地方の財源配分が 1:1 と
なった時期には、この財源配分に即した形に役割分担を改めます。その場合、財政面・能
力面からみて可能な限り、住民に身近な行政サービスは自治体が自ら考え、自らの財源で
住民に提供できるようにします。道州制に移行した後は、国の事務は可能な限り制限し、
国にしかできない仕事以外は、すべて地方が行うことを原則とします。
市町村合併
市町村合併は、現在の地方において非常に大きな課題となっています。民主党は、地域
の意向を尊重しつつ、最終的には市町村を 1,000 まで再編することを目標としています。し
かし、再編をすすめるにあたっては上からの押しつけではなく、市町村自らが何のために
合併をするのか、それが本当に住民にとってメリットがあるのかを大切に考えます。その
ためにも税源・財源の移譲をすすめ、合併によって大きくなった自治体が、十分にその能
力を発揮できる環境を整備していきます。
「住民自治推進基本法(仮称)」の制定
地方分権とは国の権限・財源を、都道府県や市町村という「役所」に移すことではなく、
住民に身近な自治体が十分な権限・財源を有することによって、その決定に住民が参加し、
また意思が反映されるようにすることです。「情報公開」「住民参加」という最も重要な部
分を強化するために、民主党では「住民自治推進基本法(仮称)」や「住民投票法」の制定
を検討しています。
コミュニティの再生・強化
住民と自治体をつなぐ場、住民がその能力を十分に発揮する場として、コミュニティを
再生・強化することを掲げ、そのための法整備も検討しています。コミュニティが機能す
ることによって、住民が単に公的サービスの受け手を脱し、公的サービスの提供者として
22
も、また時には企画者としても積極的に地域づくりに参加する社会をめざしています。合
併によって自治体の規模が拡大しても、コミュニティによってきめ細やかなサービスを提
供できるようにしたいと考えています。
【行政改革・規制改革】
官僚主導の政治から、政治主導の政治へと改革します。これまでの官僚主導型行政シス
テムでは、中央省庁の権限が強すぎ、ここから裁量行政、政・官・業癒着による利益誘導、
不必要な規制など、様々な問題が生まれる原因となっています。これまで、自民党を中心
とする政権も、行政改革や規制改革を謳ってきました。しかし、特殊法人改革や郵政事業
改革の例が示すように、結局は族議員や関連団体などの党内外の既得権益の壁を越えるこ
とはできず、後退・妥協を繰り返してきました。行政改革・規制改革を実現するためには、
自民党に代わり民主党が中心となって政権を担う、政権交代でしかなし得ません。
天下り禁止
現在、公務員が退職後 2 年以内に営利企業に天下りすることは、原則として禁止されて
います。しかし、特殊法人・認可法人・公益法人への天下りは認められており、複数の特
殊法人等や営利企業を渡り歩き、高額の役員報酬や退職金を受け取る、いわゆる「渡り鳥」
が後を絶ちません。民主党は、「天下り関連禁止法案」を国会に提出しており、営利企業だ
けでなく特殊法人等への天下りも 5 年間禁止するとともに、天下りのリストを公表します。
公益開示法の制定
行政の不正、腐敗は国家の重大な損失であり、早急に是正する必要があります。そのた
めの 1 つの有効な手段として、
「内部告発の制度化」が考えられます。内部告発者の保護は、
アメリカ・イギリスをはじめ韓国やオーストラリアにも同様の法律があり、現在、情報公
開法の補完として機能しています。民主党は、行政内部の不正・不当な運営を内部告発し
た人が不利益な扱いを受けないよう保護する、「公益開示法案」を他の野党にも呼びかけ 4
野党共同で国会に提案していきます。
政治任用制の拡大
現行制度のように巨大な官僚組織が大きな力を持ったままでは、たとえ政権交代が実現
しても、公約として掲げた諸施策を実行に移すことは多大な困難を伴うことが想定されま
す。政治主導・内閣主導の政治を実現するために、中央省庁の局長(約 130 名)に対して
政治任用制(ポリティカル・アポインティ−)の導入をめざします。
官民交流・中途採用・任期付職員制度の促進
高度・複雑化した行政に対して、内部で育成した人材だけで対応していくことは難しく
23
なっています。民間企業や大学の研究者等の意欲と能力のある人材を外部から積極的に採
用して、人材を確保する必要があります。そのために、これまで導入されてきた官民人事
交流・中途採用・任期付職員制度をさらに活用していくことが必要です。また、官民人事
交流制度については、民間企業を退職しなくとも公務員として採用できるよう法改正を行
います。
公募制の活用と能力に応じた昇進
幹部職員の人事を行うにあたっては、これまでの年功序列に偏った人事を改めるため公
募制を活用します。公募制により、意欲・能力・実績を有する職員については入省年次に
とらわれない登用・昇進を行います。
早期勧奨退職慣行の是正
中央省庁においては、現状 52∼53 歳で退職していく早期勧奨退職慣行があります。定年
を前に退職するがゆえに、第 2・第 3 の就職先として特殊法人や公益法人等に天下りしてい
く側面もあります。このような早期勧奨退職慣行を是正し、定年まで働く意志のある職員
については引き続き勤務できるようにします。
公務員の労働基本権
公務員の労働基本権については、まず、勤務時間等の労働条件について労使が対等の立
場で協議ができるよう、労使協議制を整備します。また、地方公務員等も含めた公務員制
度全体の制度を設計するうえで基本権付与の抜本的な見直しについても検討します。
特殊法人改革
特殊法人については、以前から非効率な事業運営、巨額の補助金・出資金、ファミリー
企業等の事業独占、官僚の天下り等々、様々な問題点が指摘されてきました。民主党は、
特殊法人という法人形態をすべて廃止することを前提として、(1)廃止、(2)民営化、(3)独立
行政法人化、(4)国・地方の直轄事業化に整理・分類し、77 特殊法人のすべてを改革します。
独立行政法人
独立行政法人は、国の組織をスリム化し事業を効率化することを目的として導入された
ものです。しかし、実際は役員数や報酬が以前より増加したり、官僚の天下りの受け皿と
なるなど、「看板の掛け替え」、「焼け太り」と指摘せざるを得ない状況です。民主党は、独
立行政法人に関する情報公開を徹底すると同時に、長の公募制等による民間からの人材登
用を図り、運営の効率化をめざします。
公益法人改革
24
公益法人(財団法人・社団法人)は省庁の許可により設立されます。公益法人は、国か
ら税の優遇措置や補助金交付を受け、また所管省庁からの天下り先ともなっています。K
SD事件等に見られるように、「公益」とは名ばかりの「私益」法人も多く存在しており、
その運営実態は不透明です。民主党は、法人格付与の条件を「省庁の許可」から「準則主
義」へと変更し、公益性の判断(税等の優遇措置)は活動実績に基づき判断することを目
的とする民法改正をめざします。
規制改革
規制改革については、以下の 3 分野に分類して検討することを提言しています。(1)規制
強化:人権、雇用、環境、安全、医療、福祉等の社会的規制、人が人であるために守られ
るべき分野についての堅固なセーフティーネットを明確に提示。(2)社会的規制の見直し:
一部の規制に守られた既得権者の手から、主権者たる国民の手に真のセーフティーネット
を取り戻すために、社会的規制についても積極的な見直し。(3)経済的規制の見直し:競争
至上主義に陥らないように注意を払いながら、NPOなどの市民セクターの基盤整備等を
重視したうえで、市場や民間への分権化・経済規制のサンセット(時限)化。
郵政事業改革
政府提出の信書便法については、信書の定義等が明記されておらず、裁量行政の余地を
大きく残すものであり、民主党は反対しました。郵政公社法については、政府原案は改革
前進として賛成しましたが、与党による修正案は原案と比べて後退した内容であるため反
対しました。郵政公社の長期的なあり方については、国民の利便性を低下させないよう十
分な配慮をしながら、新しい時代環境を踏まえた積極的な議論が必要です。
警察改革
枚挙に暇がない警察の不祥事は、国民の信頼を回復できないまま、なお増え続けていま
す。民主党は、警察を国民の目線で必要な行動をとる組織に変えるための警察改革を実施
します。警察を監督する国家公安委員会の事務を警察が行っているという矛盾を解消する
ために、公安委員会に独自の事務局を置いて公正な監察のための所掌事務ができるように
します。また、国民の意見を聞く苦情処理委員会を置き、迅速な対応と必要な勧告を行う
態勢と権限を整備します。さらに、警察行政の運営の透明性を向上させる積極的な情報の
公開を図り、国民が納得できる改革を行います。
構造改革特区制度
民主党は、規制改革の実施は本来全国一律で行うべきと考えます。しかし、地方自治体
等のアイデアや主体性を活かし、特別区域(特区)を設け、規制の特例措置を試行的に実
施する「特区制度」も一定理解できます。民主党は、特例措置の評価をきちんと行い、経
25
済効果など一定の成果が上がった措置は速やかに全国展開することなど附帯決議を付し、
第 155 回国会で政府提案された「構造改革特別区域法」に賛成しました。
【政治改革】
政治改革に関しては、国民・有権者の政治参加機会とチェック機能向上のための主に選
挙に関係する制度改革と、相次ぐ政治と金にまつわる腐敗を根絶し政治に対する信頼を再
生するという視点からの政治資金規正に関する法整備が車の両輪となります。いずれも、
議会制民主主義の土台を築くものであり、根本的には政治の場にある者が自らをきびしく
律することから始まるものでもあります。民主党は常に法律案を掲げて国会の論議をリー
ドしています。
首相・内閣権限強化
与党による政策の事前調整システムを見直し、内閣による一元的な政策・法案決定を確
立するとともに、「内閣」を単なる合議機関ではなく、総理大臣の統轄及び指揮監督の下に
成立する執政機関とします。そのため、首長たる内閣総理大臣の統轄権を明記するなど内
閣法の改正をはじめとして、一連の「内閣強化法」を制定し、首相・内閣の権限強化に努
めます。首相を国民が直接選挙で選任する「首相公選制」も検討課題の 1 つとして取り組
みます。
一票の価値の格差抜本是正(都道府県基数配分廃止)
選挙における一票の価値の平等をめざします。現行制度では衆議院小選挙区割りの際に、
まず 47 都道府県に 1 議席ずつ配分し(基数配分)、残り 253 議席を人口比例で振り分けて
います。そのために一票の格差を 2 倍以内に収めることは不可能となっています。民主党
は、この「基数配分」を廃止し、小選挙区定数のすべてを人口比例で振り分ける「衆議院
議員選挙区画定審議会設置法の一部改正案」を提出しています。
選挙権・被選挙権年齢引き下げ
世界のほとんどの国では 18 歳で選挙権が付与されています。日本の若者がこれらの国の
若者と比べ、政治に対する判断力の発達が遅いとはまったく考えられません。民主党は選
挙権年齢を 18 歳に引き下げること等を内容とする法案を国会に提出しています。また、被
選挙権年齢についても、引き下げを引き続き検討します。
永住外国人の地方選挙権
民主党は結党時の「基本政策」に「定住外国人の地方参政権などを早期に実現する」と
掲げており、これに基づいて永住外国人に地方選挙権を付与する法案を提出しています。
26
立候補休暇制度創設
民主党は、政治参加の機会増大を図るため、雇用の継続を確保する「立候補休暇制度」
創設法案を提出しています。被雇用者が公職の候補者となる場合、公示・告示前 14 日から
選挙期日後 3 日までの期間、選挙運動または選挙運動の準備もしくは残務整理をするため
に「立候補休暇(無給)」を取得することができるものとします。
選挙制度改革の課題
衆議院選挙は当面は現行の小選挙区比例代表並立制を軸に、定数削減や重複立候補制度
の改善等を検討します。衆参選挙制度の抜本改革については、まず、国会における衆議院・
参議院の役割を明確にしたうえで、両院の改革をすすめ、また、その役割にあった代議員
を選出する方法としてふさわしい選挙制度に改めていきます。また、地方自治体の首長の
四選禁止を制度化します。
あっせん利得処罰法抜本改正
国会議員や秘書による口利き事件・疑惑があとを絶ちませんが、民主党はまず「あっせ
ん利得処罰法」を抜本改正すべきと考えます(第 154 回及び第 155 回国会において法案提
出)。そのポイントは、(1)処罰の対象に政治家全般の私設秘書や親族を加えること、(2)犯罪
の構成要件から「請託」や「権限に基づく影響力の行使」を外し立件しやすくすること、(3)
政党支部などに「見返り」を迂回させる第三者供賄を禁止することなどで、現行法の「抜
け道」を塞いでいきます。
企業・団体献金を受領できる政党支部の制限
2000 年から政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金が禁止されたことを受けて、
「政党支部を政治家個人への迂回献金の受け皿として悪用する、すなわち政党支部を政治
家個人のサイフ代わりに悪用する」ケースが急増しているとの批判が高まっています。自
民党の政党支部は既に 7,000 を超えていますが、民主党は「政治資金規正法等改正案」(第
154 回国会提出)によって、企業・団体献金を受領できる政党支部の数を制限し、政治資金
の出入りと流れを透明化、簡素化していきます。
公共事業受注者、利子補給対象の融資を受けている法人の献金禁止
国・地方公共団体の公共事業や補助金等にまつわる「口利き」「見返り」を排除していき
ます。公職選挙法では、公共事業受注者・利子補給対象の融資を受けている法人の選挙時
の献金を禁止していますが、選挙以外の時に献金を受けたように偽ることが可能なため、
実効性には疑問が残ります。そこで「政治資金規正法等改正案」(第 154 回国会提出)によ
って、公共事業受注者、利子補給対象の融資を受けている法人の献金を常時禁止します。
27
後援会等の機関紙誌への広告規制
後援会等の機関紙誌への広告掲載料の名を借りた実質的な政治献金が横行しています。
この脱法的行為を規制するために、民主党は「政治資金規正法等改正案」(第 154 回国会提
出)によって、後援会等の機関紙誌への広告費は年間 150 万円を上限とすること、また 20
万円以上の広告費については、広告料金の支払い者の氏名と金額を公表させることを制度
化していきます。
収支報告書等の保存期間を 5 年に延長・インターネットで公開
現行法では、収支報告書等の保存期間は 3 年とされています。民主党は「政治資金規正
法等改正案」(第 154 回国会提出)によって、この保存期間を刑法の時効期間にあわせて 5
年に延長すること、さらに情報公開・政治活動費の透明化の観点から、収支報告書をイン
ターネット上に公表することを義務づけ、国民の直接監視下に置くことで「政治とカネ」
の透明度を高めていきます。
インターネット選挙運動解禁
インターネットを利用した選挙運動を解禁することにより、ビラやハガキの処理が重負
担となっていた無所属議員や少数政党にも政治参入の機会を広げるとともに、在外邦人を
含めた幅広い有権者への情報提供が可能になります。民主党は既に、第 151 回国会におい
て「インターネット選挙運動解禁法案(公職選挙法改正案/継続中)」を提出しています。
同法案は、ホームページや電子メール、iモード等を利用した選挙運動を原則として解禁
するものです。
電子投票制度
タッチパネル方式の電子投票機で投票する国内初の選挙が 2002 年 6 月に新見市で行われ
ました。この方式を国政選挙にも広げていくとともに、投票率向上等を目的として、イン
ターネットで自宅パソコン等からも投票可能となるよう図っていきます。とくに、在外邦
人に一部認められている国政選挙の投票制度は、郵便のやりとりに時間がかかるなど問題
が指摘されており、在外邦人のインターネット投票を次期参議院選挙時に先行実施するも
のとします。
大使の国会同意人事化法案
外交立国・日本をめざすにあたり、外交上重要な職責を果たすべき大使・公使の役割は、
わが国の国際社会における役割・責任と比例してますます重要になっています。外務官僚
としての専門知識ばかりでなく、一層高い見識・人徳・品格・対人折衝能力が求められて
います。民主党は、大使・公使の任命について、その適正を期するため、両院の同意を必
要とすることを内容とした「外務公務員法」の改正案を国会に提出します。
28
立法調査権の強化
官僚や与党は、自分たちに都合の悪い資料は出そうとしません。そんな閉鎖的な隠蔽体
質を是正し、国会の調査権を強化するために、「国会の各委員会所属委員 4 分の 1 以上が要
求した資料は、3 日後には提出しなければならない」という国会法改正案を他の野党にも呼
びかけ、4 野党で国会に共同提案しています。国民への直接的情報公開を促進するとともに、
国民を代表する議会の調査権、チェック権限強化のために、国会同意人事や行政監視機能
を含めて議会機能の充実をめざします。
議員特権の見直し
民間企業や自営業で働く市民よりも、国会議員や地方議員の待遇や手当が良すぎるので
はないか――そんな市民の疑問と不満に民主党は積極的に応え、議員の特権や既得権に自
ら鋭くメスを入れています。国会議員の歳費(給与)のカット、永く務めている議員への
手当等の廃止などを実現し、議員の年金やその他の特権についても、普通の勤労者の権利
と同じレベル・水準とすることをめざし、国会及び地方議会改革に取り組みます。
秘書制度改革
国会議員の秘書をめぐる不祥事が続いています。公設秘書給与は税金からの支出であり、
秘書は公務員として国から労働に見合う給与を得ています。民主党は党所属議員の実態調
査を実施し、きびしく自らを律するよう徹底指導を行うとともに、秘書制度改革検討チー
ムを党内に設置し、国民の疑惑を招くことのない秘書制度確立と運用をめざしています。
政と官のあり方
鈴木宗男議員の汚職事件に象徴されるように、与党政治家と官僚の癒着、口利き、圧力
や恫喝などにより、公正であるべき行政や官公需が歪められています。民主党は、国会機
能の強化、政治家と官僚の接触に関する情報公開、個別事業に関する政治家と官庁の折衝
窓口(副大臣や政務官の役割の明確化)の制限など、不当な圧力排除と透明性確保のため
の制度改善をめざします。基本的には地方分権と情報公開をすすめ、族議員や官僚主導政
治を排除します。
2.消費者・人権・ 共同参画
【消費者・NPO】
経済社会が成熟し、個人の価値観が多様化している現在において、官主導の一元的公益
判断では社会的ニーズが十分に満たされなくなっています。民主党は、多様な価値観を認
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めあい、市民が主導で公益を実現する社会へと変革するために、市民活動を社会システム
に組み込むとともに、市民活動に対する税制を含む支援策の拡充に積極的に取り組んでい
ます。安全性に対する信頼が揺らいでいるなか、衣食住に関する安全性を十分に確保する
ことが必要であると考えます。規制の強化や表示の徹底など、国民が安心して暮らすこと
ができる社会の確立に向け、提言を行っていきます。
消費者教育等
「賢く強い消費者」を育成するため、義務教育の段階から消費者契約やカード利用等に
ついての知識も含め、消費者教育充実に向けた政策を行います。個人だけでなく、消費者
団体などが悪質な約款などの差し止めを求める裁判をおこすことができるように団体訴訟
権の確立をめざします。また、民主党提案の「消費生活製品の危険情報公表法案」を成立
させ、消費生活用製品の危険情報が公表されるようにし、危害の発生や拡大を防止します。
食品の安全性
BSE発生を契機に日本の行政が消費者に安全な食品を提供する視点に欠けていること
が明らかになりました。農産物などの原材料が食品になる過程で、その所管は複数の省庁
間にまたがり一貫性がありません。また世界一の食料輸入国でありながら、監視体制は機
能していません。タテ割り行政の枠を越え政策に左右されない食品安全の確立のため、食
品安全基本法を定め、独立した新機関による一元的管理を行います。
NPO活動の促進・支援税制の拡充
21 世紀を柔軟で自己改革可能な活力溢れる社会にするため、NPOの育成は緊急かつ重
要な課題です。第 155 回臨時国会にてNPO法改正案が成立し、従来民主党が主張してき
たNPO法人の活動分野拡大や設立認証申請手続簡素化等が図られることとなりました。
今後もたえず制度の見直しを図ることで、NPO活動が社会にしっかりと根付くための努
力を続けます。
また現行のNPO支援税制については認定要件が厳しいために、これを利用することが
できる「認定NPO法人」は、NPO法人全体(約 8,600 団体)の中でわずか 9 法人に過ぎ
ません(2002 年 11 月現在)。民主党は、NPO全体の 6∼7 割が支援税制を利用できるよう
に、認定要件を緩和するなどの改善をはかります。
【男女共同参画】
人生 80 年時代、女性が先行したライフスタイルの多様化は、今や男性にも及び、性別・
年齢にかかわらず多様なライフスタイルを生きる時代になりました。しかし、私たちの社
会システムは、旧態依然としたままで、社会の活力を失わせています。時代と社会の変化
に適合した新しい女性政策が必要とされています。多様なライフスタイルを前提に、性別
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や年齢を問わず、自立した男女が共に参画できる社会システムづくり。そんな新しい女性
政策(男女共同参画)が日本に活力を蘇らせます。老若男女が、それぞれ生きがいを感じ
る社会システムづくりが社会全体を豊かにするのです。性別役割分業を固定化しない(ジ
ェンダーフリー)社会こそ、日本を再創造するカギとなります。
年金制度
多様化した女性のライフスタイルに適合していない年金制度を改革します。税方式によ
りすべての国民に基礎年金を実現します。世帯単位から個人単位の年金へ切り換え、被扶
養配偶者の拠出は二分二乗方式(夫婦の所得を合算し各二分の一の所得で保険料を負担)
を採ることとします。これにより、誰でも自分の厚生年金を持つことができます。年金分
割を実現し、離婚が不利にならない安心して女性が暮らせる環境をつくります。
税制
働く女性に不利な税制を改め、個人所得税を性的役割分業に固定しないジェンダーフリ
ーの税制に変えます。配偶者控除・配偶者特別控除を廃止して、税の増収分で子ども手当
(児童手当)を充実します。手当は義務教育年齢までの支給とし、食費、被服費をまかな
える水準とします。特定扶養控除(16 歳以上 23 歳未満)は廃止し、学びたい子が学べるよ
うに奨学金制度を充実します。激変緩和のために、基礎控除の引き上げを検討します。
雇用・労働
時間外勤務手当ての割増率を国際水準に引き上げます。サービス残業の法的規制を検討
し、育児休業・介護休業による間接差別禁止を法制化します。パートに対する均等待遇の
実現は喫緊の課題であり、また、ワークシェアリングの前提ともなるため、均等待遇に向
けての法整備をすすめます。人員削減による長時間労働化を抑制し、時間外や休日労働分
を新規の雇用へ振り向けます。政府調達事業の女性起業家への一定比率割り当て、NPO
等による起業を推奨し、女性起業家を増やします。
次世代育成
低年齢児保育、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育など「多様な」
保育体制を整備します。NPOなどによる保育の質チェックの仕組みをつくります。保育
所と幼稚園の連携強化、一元化を図ります。民主党提出の民法改正案を成立させ、協議離
婚の養育費の取り決め等を明記します。子ども手当に「ひとり親加算」をします。母子(単
身)家庭の自立のため、保育所の優先入所、子育て・生活支援、職業能力開発支援等を推
進します。
男女平等の基盤づくり
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生活のさまざまな場面で知らず知らずのうちに刷りこまれていく固定的な性別役割分業
意識の克服に向け取り組みます。自律能力の形成を教育目標に据え、職業体験学習、男性
の家庭参加促進教育などをすすめます。人権に密接に関わる仕事(例えば教員、医療福祉
関係、警察、入管職員等)に従事する人への男女平等教育をすすめるとともに、政策・方
針決定過程へ女性の参画を拡大するためクオータ制(割当て制)を含む積極的差別是正(ア
ファーマティブアクション)を講じます。また、女性に対する固定観念に基づく社会制度
や慣行を改めます。
介護保障
2000 年 4 月に介護保険制度がスタートしましたが、現場を支えているのは低賃金で身分
保障の不安定な女性が中心です。とくに、訪問介護の「家事援助」は、女性のアンペイド
ワーク(無償の家事労働)に対する無理解が反映され、低額な報酬にとどまっています。
介護する人たちが安心して働けない職場環境では、サービスの向上も期待できず、安心し
て介護を任せられません。民主党は、ケアマネージャーやホームヘルパーなどの介護職員
の専門性を高めるとともに、職員の待遇改善、短時間労働者への社会保険の適用などに取
り組みます。また、介護保険制度を改善し、介護基盤の整備に取り組みます。
女性の健康
それぞれの女性が自分らしい健康を生涯にわたって保障される環境づくりに取り組みま
す。性と生殖に関する女性の権利と健康を守るための法整備をすすめるとともに、年齢に
ふさわしい性教育を男女ともに行います。また、新しい医療の領域である「ジェンダー・
スペシフィック・メディスン」(性差を考慮した医療)の考え方を、医学教育の段階から徹
底します。不妊治療については、治療の効果と安全性を、漢方治療なども含めてきちんと
検証し、適応症と効果が明らかな治療法については医療保険の適用を検討します。その一
方で、「女性は子どもを産んで一人前」というような画一的な価値観に縛られない社会を作
っていきます。
男女共同参画型の国際協調
紛争国や開発途上国において、女性の教育水準向上と仕事の充足を図ることは、貧困を
是正し、男女格差、国際間格差の解消のために重要な方策です。更にジェンダー主流化*こ
そが開発援助において中心的な考え方になっていますが、日本の援助についてはジェンダ
ー政策などを重点にする指導力が欠けています。私たちは、ODA予算配分とODAの実
施に際して、調査、計画、立案、推進、評価の全ての段階において男女共同参画の視点か
らNGOの参加を求めます。また、いまだ国際スタンダードに達していない女性や子ども
に関わる条約と関連法案を精査し締結の促進と法制化を図ります。
*開発におけるジェンダー主流化=経済開発、人間開発のすべての過程に女性が主体的にかかわる援助のあ
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り方。
【暮らしと人権】
日々の暮らしを安心・安全に送ることはすべての人々の願いです。しかし近年、家庭や
地域で周囲からは見逃されがちな人権侵害や偏見が日常化し、地域社会の活力を奪ってい
ます。また、地震や台風などの自然災害のみならず、最近ではテロ行為も市民生活を脅か
しています。民主党は、市民のための司法改革や女性・子ども政策、災害対策やテロ対策
など、市民生活に関わる諸施策を具体化し、安心・安全の社会づくり、生活のなかでの小
さな人権侵害も許さない社会づくりをめざします。
司法制度改革の推進
民主党は、国民に開かれた、迅速な司法の実現をめざしています。具体策としては、(1)
法曹人口を大幅に拡大するため、ロースクールを新設、(2)裁判を迅速化するため、集中審
理方式を導入、(3)弁護士などを経験した人から裁判官を登用(法曹一元化)、(4)国民や専門
家が裁判に参加する陪審制・参審制を導入、(5)裁判を受ける権利を充実するため、被疑者
国選弁護法を制定などを推進しています。
刑罰の見直し
法定刑が軽すぎるという批判を踏まえて刑法を全面的に見直します。特に、現行の無期
刑は最短 10 年で仮出獄できてしまうことから、仮出獄を認めない終身刑を創設します。死
刑制度の廃止についても検討を進めます。
少年犯罪の防止
少年犯罪の防止には、少年を取り巻く環境(家庭、学校など)の整備、早期発見のネッ
トワーク、安心して相談できる仕組み、家庭裁判所の充実強化など、総合的な対策が必要
です。2000 年 11 月に大改正された少年法については、「立ち直らせる」という法の理念を
堅持する立場にたって、(1)刑事処分にできる範囲を安易に拡大しない、(2)少年が不利にな
らないよう厳正な事実認定手続きを創設する等の修正案を提出しました。
犯罪被害者への支援
犯罪被害者に対し、国が給付金を支給する制度をさらに拡充します。また、民主党は、
犯罪被害者の権利を保障し、国や自治体に総合的施策を義務づける「犯罪被害者基本法案」
を提出していますが、その早期成立を求めています。
人権擁護機関の創設
政府から独立した人権擁護機関の設置は、国連からも勧告されている緊急の課題です。
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しかし政府の案(人権擁護法案)では、刑務所や入管施設を管理する法務省に設置すると
しており、刑務官らによる虐待・人権侵害を握りつぶすおそれがあります。また、報道に
よる人権侵害についても介入できることから、「表現の自由」への悪影響が懸念されます。
民主党は、政府からの独立性を確保し、報道機関による自主的な人権救済を尊重する修正
を求めます。
青少年対策
残虐な暴力や性暴力などの有害情報から子どもを守るため、書物の区分陳列や放送時間
帯の配慮などによって、普通に暮らす子ども達が有害情報に触れないですむ環境をつくり
ます。また子どもの有害情報について第三者機関(中央子ども有害情報対策委員会)を置
き、事業者が自主的に取り組むこととします。大人社会のモラルと保護者の責任感を高め、
子どもの権利を擁護します。今後、情報との付き合い方についても単に与えないだけでは
なく、与えつつ、情報化社会に生きる子どもが、情報の持つ意味を正しく理解し活用でき
る能力(メディアリテラシー)を育てる教育をすすめます。
子ども政策
大人社会の権利や利益に対して、子どもの権利利益に関する取り組みは後まわしにされ
ています。現在頻発している両親、祖父母、義理の親、兄弟、保育所などによる子どもの
虐待は計り知れないショックを子どもに与えています。民主党は、子どもの持つ「生命・
生存・発達の権利」を明確にし、学校でも家庭でもどこにいても、子どもが伸び伸びと育
つことができる環境づくりをめざして、「子ども政策」をまとめていきます。
ドメスティック・バイオレンス対策
従来、夫婦間の暴力事件は民事不介入として扱われていましたが、頻発するドメスティ
ック・バイオレンス(DV)事件は現在では社会問題にまで発展し、「心的外傷後ストレス
障害」(PTSD)の被害者を多く生みだすなど、無視できない状況に至っています。2001
年の通常国会で、民主党主導により、配偶者からの暴力は犯罪であることの明記や被害者
保護に関する国、地方公共団体の責務、配偶者暴力支援センターの機能充実などを内容と
する「DV防止法」が成立しました。今後、さらに同法に「加害者更正プログラム」を盛
りこむなどの見直しを行い、充実を図ります。
選択的夫婦別姓
夫婦同姓にすることも貴重な選択ですが、別姓を選べない法律下では、女性が「改姓し
たくない」と思ったときに、「女は結婚したら夫の姓を名乗るのが当たり前」という価値観
が押しつけられるのが現状です。民主党提出の民法改正法案を成立させ、希望すれば夫婦
が別の姓を選択することができる制度と、自らが何ら責任を有さない出生の事情によって
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子どもが不利益を被らないよう婚外子(非嫡出子)の相続差別をなくすことを実現します。
個人情報の保護
個人情報を適正に取り扱うため法律による規制は必要です。しかし、政府が提出した法
案は、自分に関する情報を見たり訂正等を請求する権利である「自己情報コントロール権」
がないうえに、公権力による民間への不当介入や取材への不当な規制が行われかねないな
ど、まったく受け入れがたいものでした。民主党は政府法案を廃案に追い込みましたが、
今後、「自己情報コントロール権」を明確にしたうえで、行政や事業者による個人情報の適
正な収集や維持管理などを定める法整備に取り組みます。
住民基本台帳ネットワークシステム施行問題
重大なプライバシー侵害の危険性が指摘されており、実施主体である自治体からも凍結
を求める声が多くあります。個人情報保護法制の不備のため、個人データ漏洩事件が多発
している現状があり、国民の多くは、行政や企業が自分の情報を勝手に収集・蓄積して活
用しているのではないかという不安と不信をいだいています。住民基本台帳ネット稼動は、
個人情報保護法の制定を少なくとも前提とするべきです。
障害者の人権
日本では障害者差別に対する法的規制が世界的にみても遅れているために何が「差別的
取扱い」か、何が「虐待か」を定める実体性の証明できない現状を変えるため、実効性の
ある法整備(「差別禁止法」の制定など)を行います。2002 年度が最終年の政府の「障害者
対策に関する新長期計画」に対応し、民主党は、2002 年 12 月、自立と参加の共生社会づく
りをめざす「新たな障害者基本計画と障害者プランの提言」を発表、政府に申し入れを行
いました。
人権教育・啓発促進法
様々な文化、宗教、価値観を認め、憲法で定める人権の尊重、世界人権宣言、人権関係
国際条約などの趣旨に基づいてあらゆる不当な差別をなくすことは国民の等しい願いです。
このような視点から、民主党は現行の「人権教育・啓発推進法」を見直し、国や地方自治
体、国民の責務で、さらに充実した教育・啓発を実施します。
テレビ字幕普及法案
インターネットでの市民からの政策提案を受けて、民主党は、2001 年 10 月に「テレビ字
幕普及法案」を提出しました。この法案は、聴覚障害者の利便を増進させるため、(1)放送
事業者に対して字幕番組の提供計画を義務化する、(2)総務大臣への同計画達成状況の報告
を義務化する、(3)総務大臣の勧告を可能とすること等を内容としています。更に、政府に
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対しては財政上及び税制上の支援措置を講じるものとし、2007 年までに字幕付与可能番組
については 100%の字幕付与を達成するものとしています。
国内テロ対策
わが国においてもテロ対策は焦眉の課題です。民主党は、情報収集・分析体制を内閣官
房に一元化するとともに、危機管理に関する権限を一元的に行う「危機管理庁」(日本版F
EMA)を創設します。原子力施設へのテロ対策、ハイジャック対策、核・生物・化学兵
器テロ対策、在外邦人や在日外国人の安全対策、テロ資金対策など、広範囲にわたるテロ
対策の整備を行います。
大規模災害対策
災害発生後の救急活動や情報伝達、交通規制や応急復旧などを円滑に進めるため、国・
地方公共団体・警察・消防・自衛隊・民間企業・ボランティア・NPO等の役割分担、協
力体制の整備をすすめ、情報伝達システムを確立するなど、民間の諸活動を強力に支援し
ます。また大規模かつ激甚な災害に迅速に対応するため、内閣総理大臣の責務と権限を強
化するとともに、米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)を参考にした組織(日本版FE
MA)を設置します。
災害復興体制の整備
災害による心身的ダメージを被災者が一刻も早く克服するには生活基盤の回復が必要で
あるため、「住宅再建支援法」の早期制定をめざします。生活再建支援金の支給額の引き上
げ、支給要件の緩和、財源の全額国庫負担等、「被災者生活再建支援法」及び「災害弔慰金
法」の改正に取り組みます。また、「激甚災害法」に基づく指定基準の緩和を図り、その指
定及び実施の迅速化を図ります。とりわけ、三宅島雄山噴火の被災者は避難生活が長期化
していることから、支援措置の拡充と早期実施を強くすすめます。
化学物質過敏症・シックハウス対策
快適さや便利さを求めるあまり、私たちの住環境は人工の化学物質で取り囲まれており、
それによる健康被害が生じています。建築物由来の化学物質被害を防止するために、民主
党では、建物完成時の化学物質濃度測定義務づけと、大規模建築物における化学物質の定
期的測定を義務づけたシックハウス対策 2 法案を提案しました。また、化学物質過敏症対
策として、メカニズムの解明や治療体制の確立、療養所の建設、学校(シックスクール)
対策の徹底などについても提言を行っています。
たばこ・飲酒対策
未成年者に対するたばこ、アルコール飲料の販売、提供の禁止を徹底するとともに、健
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康、公衆道徳、教育、国民の安全等の観点から、行き過ぎた喫煙、飲酒が行われないよう
な環境を整備します。健保財政への財源確保対策も視野に入れて、たばこ税および酒税の
税率アップを検討します。民主党提案の「軽犯罪法の一部を改正する法律案」を成立させ、
公共の場における喫煙を禁止し、危険で迷惑な歩きたばこをやめさせます。
戦後処理問題
わが国と近隣諸国との建設的関係の土台を構築するためにも、歴史的事実の真相究明は
必要であるという観点から、国会図書館に恒久平和調査局を設置する「国立国会図書館法
改正案」の成立をめざします。また、アジア等の女性に対する旧日本軍による「慰安婦」
問題の解決を図るため「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の成立と、
在日の旧植民地出身軍人軍属の救済を図るため「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等
に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案」の成立をめざします。これらの法律案
は、当事者の方々が高齢化していることに鑑み、早期の成立を図ります。
3.経済・財政・金融
【財政:財政構造改革】
財政に対する不安は、国民の将来に対する不安を招き、景気に悪影響を与えます。また
仮に財政破綻に至った時には、国民生活そのものに重大な影響を与えますが、とくに社会
的弱者にはその影響が大きくなります。このような考え方から、民主党は中長期的には財
政規律の維持は不可欠と考えています。ただし経済状況が危機的な状況に陥った場合には、
将来のあるべき社会を見据えつつ、真に必要な財政支出を検討することも必要と考えます。
歳出構造の見直し
理念なき自民党政権は、相変わらず旧来型公共事業を中心にバラマキを行うばかりで、
真に必要な歳出とは何かという視点をまったく欠いています。民主党は 21 世紀のわが国社
会に真に必要な政策に予算を重点配分しながら、同時に財政の改善を果たしていきます。
そのために、例えば以下のような改革をすすめます。(1)不要不急な事業の中止を含めた見
直し、入札制度の抜本改革等によるコスト削減の実現により、公共事業予算の削減を実現
します。(2)特殊法人のあり方を、廃止・民営化を含めて根本的に見直し、税金の投入を削
減します。(3)ODAのムダを省き、ハードからソフトへ転換します。(4)教育の地方分権に
より、義務教育費国庫負担、国立学校のあり方を見直します。(5)農業関係の支出を見直し、
環境保全や所得政策に重点を置きます。(6)地方分権や行政の効率化により、国家公務員の
定数削減をすすめます。
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補正予算についての考え方
自民党政権は、景気対策と称して補正予算によるバラマキを繰り返してきました。しか
し、財政危機が深刻さを増すばかりで、一向に景気は回復しません。民主党は景気回復と
構造改革の双方を強力に進めるためには、本来、本予算の充実こそが重要と考えています。
仮に補正予算の編成が不可避となった場合においても、従来型の公共事業バラマキではな
く、財政規律を可能な限り維持しつつ、セーフティネットの強化など真に必要な対策に絞
ることが必要だと考えます。
小泉政権の経済無策によって危機的な状況に陥った経済雇用情勢にかんがみ、第 155 回
臨時国会では、雇用・失業対策と中小企業対策を中心とした、セーフティネット強化のた
めの 2002 年度補正予算編成を 4 野党共同で要求しました。この際、歳出の見直しによって
国民に新たな負担を求めないこととしました。
公会計制度の見直し
現在の公会計制度はお金の出入りのみを追った会計に過ぎません。しかも、一般会計、
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常に困難です。民主党は、国民が直接財政を監視できるような制度に国の会計を改めます。
そのため、(1)発生主義会計の導入、(2)厳格な公会計基準に基づいた財政情報の公開、(3)特
別会計制度等の抜本的改革、(4)実効ある「政策評価制度」の義務づけ、(5)国会の監視機能
を高めるため「行政監視院(日本版GAO)」の設置等に取り組みます。
【金融:不良債権処理など】
「失われた 10 年」と言われるように、バブル崩壊後のわが国経済は長らく低迷を続けて
います。とりわけ、1997∼98 年にかけては、大手金融機関が次々と経営破綻するなど、ま
さに金融危機と言える状況を迎えました。民主党は、破綻した銀行を一時国有化する金融
再生法を成立させ、金融パニックを防ぎました。しかし、これまでに総額 33 兆円を超える
公的資金が投入されたにもかかわらず、政府・与党の問題先送り政策により、金融システ
ムはいまだ不安定な状態が続いています。金融システムの健全化なくして経済の再生はあ
り得ません。民主党は、金融再生ファイナルプランをはじめとする以下の施策を実行し、
金融システムの早期健全化と経済の再生に取り組みます。
金融再生ファイナルプランの実行
政府も銀行も、不良債権処理は着実にすすんでいる、金融システムの健全性には問題は
ないと言い続けていますが、今なお不良債権は増え続けています。「金融再生ファイナルプ
ラン」の柱は、金融再生法を復活させ、経営責任を明確にしたうえで存続可能な金融機関
に公的資金を投入する民主党版早期健全化法を制定するものです。民主党は、この金融再
生ファイナルプランを実行し、不良債権の抜本処理と金融システムの早期健全化を実現し
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ます。
地域金融円滑化法(金融アセスメント法)の制定
中小企業に対する貸し渋り・貸しはがしは一向に解消されません。根本的な原因は金融
機関の経営の健全性に問題があり、積極的な融資ができないことですが、担保や保証に頼
った金融機関の融資態度にも問題があります。民主党は、地域への寄与度や中小企業に対
する融資条件など情報公開を通じた金融機関同士の競争を促し、中小企業に対する金融を
円滑化するため、地域金融円滑化法(金融アセスメント法)を制定します。
金融サービス法の制定
金融ビッグバンの進展に伴い、様々な金融商品が開発・販売されるようになりました。
一方で、金融商品に関するトラブルはあとを絶ちません。例えば、国民生活センターには、
事実と異なる説明を受けた、リスクの説明がなかった、必ずもうかるといった断定的な情
報を提供されたなど、商品説明に関する苦情が数多く寄せられています。民主党は、こう
したトラブルを防ぎ顧客の保護を図るため、金融サービス法を制定します。
証券取引委員会(日本版SEC)の設置
バブル期に発生した大手顧客に対する損失補填や相場操縦、インサイダー取引などの不
公正取引は、証券市場に対する個人投資家の信頼を失わせる大きな原因となりました。民
主党は、こうした不公正取引をなくすとともに、間接金融(銀行貸出)に偏重したわが国
金融市場の構造を、直接金融(証券)をより重視した構造に変えていくため、米国の証券
取引委員会(SEC)にならった強力な権限を持つ証券取引委員会を設置します。
出資法上限金利の引き下げ
超低金利政策が続くなか、銀行の貸し渋り・貸しはがしに直面した中小企業やサラリー
マンを対象に高利融資で急成長したのが商工ローンや消費者金融です。商工ローン問題を
契機に出資法の上限金利は 29.2%まで引き下げられましたが、いまだ高い水準であり、貸
金業規制法の上限金利との間のグレーゾーンも解消されていません。民主党は出資法の上
限金利のさらなる引き下げとグレーゾーンの解消に取り組みます。
【税制改革】
税制にとって最も重要なのは、国民の信用です。そのためには税制を簡素化し、透明性
を高めるとともに、不公平感を持たれない制度へ常に改善を続ける必要があります。また
現在の税制には時代遅れの面があり、新しい社会の構築や経済の活性化に向けて大胆な見
直しが求められています。このような課題に対応するために、民主党は以下のような改革
をすすめます。
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また極めて厳しい経済状況に対応するため、税制においても迅速な対応を進めます。
経済再生に向けた税制改革
負債デフレが個人消費の足かせとなっていることから、個人消費の拡大策として、住宅・
耐久消費財、教育費等のローンに係わる利子を所得控除する制度を創設し、また住宅売却
損失を繰越控除できる要件を緩和します。不動産取引等に係わる登録免許税の定額手数料
化を進めます。さらに証券市場の活性化、直接金融の拡大を図るため、時限的に株式譲渡
益課税のゼロ税率適用、損益通算範囲の拡大、繰越控除期間の延長を行います。
所得税改革
高所得者に有利な「控除主義」を改め、必要な人に対し確実な支援が可能となる「給付
主義」へと転換します。このため扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除などの人的控除
を見直し、これによって生まれる財源を子育て支援策などの社会保障給付の財源とします。
また、国民の納税者としての意識を高めるために、確定申告を原則とし、給与所得者につ
いては年末調整も選択できるという制度を導入します。
納税者権利憲章及び納税者番号制度
プライバシー保護の観点や法人にも付番する必要があることなどから、住民基本コード
や基礎年金番号とは独立した形で納税者番号制度を導入し、グローバル化のために捕捉が
困難になってきている金融所得の正確な捕捉をすすめます。他方、税務行政の公正の確保
と透明性の向上を図るために、納税者権利憲章を定め、納税者の権利を明確にします。
消費税改革
消費税の益税など不公平感の温床となっていると指摘されている簡易課税制度、免税点
制度を縮小するとともに、仕入税額控除についてインボイス制度を導入することにより、
消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。また、滞納防止のため、
一度滞納した事業者については毎月納税とするなどの措置を講じます。
法人税改革
「頭脳立国」を実現するため、いわゆるIT、ナノテクノロジー(超微細技術)等ハイ
テク分野に限定することなく、全産業を対象として、研究開発及び環境対策に対する減税
を拡大するとともに、これを恒久措置とします。また減価償却制度を抜本的に見直し、時
代に即した制度へと転換します。なお、その他の企業向け租税特別措置については、原則
としていったん廃止します。
NPO税制の拡充及び公益法人税制改革
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市民の自立的な活動を支え、活力ある社会を形成するために、「NPO税制」を拡充する
とともに、寄付金税制について大幅な拡充を行います。同時に、公益法人課税のあり方や
公益寄付金優遇税制全般の見直しをすすめます。
環境税→【環境】項目参照
【産業・通商】
企業や人材が新しい時代の要請に応えられず、財政・年金など国民生活を支える制度イ
ンフラが破綻するなどわが国の経済・産業基盤が蝕まれる前に、一刻も早く抜本的な産業
活性化策を実行に移し、産業再生を実現し、「閉塞NIPPON」からの脱却を図るべきで
す。これからは、弱い産業は強く、強い産業はさらに強くという生産性向上の両面戦略が
必要です。民主党は、規制改革やナノテクノロジー(超微細技術)など最先端産業育成を
重視し、競争力ある日本をつくります。国民一人ひとりが意欲と能力に応じて職が得られ
るような環境をつくり、人々のやる気を高めます。グローバル経済に対応できる、自由で
公正な開かれた通商国家を構築します。
規制緩和・公的部門民営化
規制改革を経済構造改革の根本に置きます。すべての経済的規制に期限を設け、延長す
る場合は行政からの説明責任を明確にします。また、規制改革推進リストを作成し、実施
状況を政治主導で管理します。曖昧で不透明な商慣行や不公正取引を是正し、独禁法の抜
本的な改正に取り組み、公正取引委員会の権限強化を通じてすべての人に公正な取引を保
障すると同時に、「下請代金支払遅延等防止法」を改正してサービス業への適用等を図りま
す。
リーディング産業の育成
弱い産業は強く、強い産業はさらに強くします。民主党は、わが国の優位性はモノづく
り、とくに加工技術にあると考えます。その優位性をさらに高めていくには、研究開発の
水準を高めるとともに、その成果を知的財産権で十分に保護していくことが重要であり、
そのために研究開発と知的財産保護強化を推進します。非製造業を中心とする国内需要依
存型産業については、規制改革による生産性の向上を図ります。
人的資源の有効活用
人々のやる気を高め、産業の活性化につなげます。(1)働く意欲を高める所得税制、(2)何
度でもチャレンジができる仕組みづくり:個人保証を行う企業経営者へのセーフティーネ
ット導入、(3)起業家が正当な社会的評価を受けることができる環境づくり、(4)大学研究者
の意欲向上:国立大学等の非公務員型独立法人化や大学における内部昇格制限による競争
原理の強化、(5)企業におけるインセンティブ(動機づけ)・システムの導入を容易にする、
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などの政策を提唱します。
人的資源の活性化
女性の能力がフルに発揮されるための環境整備、例えば託児施設の整備、被扶養配偶者
の勤労意欲を阻害する税制の是正などを推しすすめます。また、企業の新陳代謝を活発に
するために、法人実効税率の引き下げや法人住民税の均等割り分増額などを検討します。
また再就職業務の民間委託を促進すると同時に、再就職支援を 1 つの場所で受けることの
できる、官民連携の「ワンストップ・サービス」を実現します。
知的財産権
知的創造力活性化のための包括的・総合的な政策を樹立します。民主党の主張によって
成立した「知的財産基本法」の内容をさらに具体化します。知的な創造活動を支援する税
制や補助金制度の創設、知的財産権の進展に的確に対応するための特許法改正、違反行為
の差し止め請求の権利を認めるなど裁判所の知的財産権紛争処理能力の強化を図ります。
海外における日本の知的財産権の保護や、国内における中小企業の知的財産権の保護にも
取り組みます。学生の創造性を伸ばし、知の創造センターとして大学のあり方を見直しま
す。
WTO
民主党は、自由で多角的な貿易体制を強化し、WTO(世界貿易機関)の機能をさらに
充実させる立場に立ちます。2001 年 11 月のドーハ閣僚会議で開始が決定されたWTO新ラ
ウンドについては、2005 年 1 月までのとりまとめに、日本がリーダーシップを果たすよう
努めます。新加盟の中国に対しては、経済改革を推進し、国際ルールの遵守等を働きかけ
ます。また、WTO協定に、労働基本権、環境条項などに関わる社会条項が盛り込まれる
よう努力します。
FTA(自由貿易協定)
日本を含めた環太平洋経済の活性化を期して、自由化によるわが国の市場開放と輸入拡
大をすすめる通商政策の新たな柱として、情報開示をすすめながらFTAに積極的に対応
していきます。FTAの締結を積極的にすすめるとともに、これを世界貿易の自由化推進
につなげていきます。アジア地域との経済取引を拡大し、米ドルリンクからの離脱を促し
ます。FTAをてこに、国内の保護主義的動きの是正を図り、産業構造改革を推進します。
セーフガード
貿易自由化に加えて、新ラウンドの交渉対象となったダンピング防止措置などの貿易ル
ールも含む幅広い分野についても議論を促進し、貿易制限的な措置や知的財産権侵害が恣
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意的に発動されないよう規律強化を求めていきます。また、急激な輸入自由化等により深
刻な影響をこうむる場合には、WTO協定で認められる範囲内で、TGS(繊維セーフガ
ード)をはじめとするセーフガードが十分に機能するよう、発動手続きの弾力化などに努
めます。
【中小・ベンチャー支援】
中小企業が、わが国の雇用の約 8 割と貴重な技術を支えていること、無限の可能性を持
つ芽であることなどから、新しい成長分野の担い手であるベンチャー企業、中小企業の元
気が出るよう支援策を充実することが不可欠です。元気で自立・独立した中小企業を数多
く輩出し、生きがいある仕事場としての中小企業を育て、新規起業を促進し、「大企業と中
小企業の元気の循環=産業構造の変革」、「中央と地方の元気の循環=地方分散」をすすめ
ていきます。そのために、従前の「バラマキ政策」から「やる気が出る政策」へ転換させ
ます。日本人が培ってきた"モノづくりDNA"を覚醒させ、日本経済の屋台骨を支える製造
業の発展に力を注ぎます。
中小企業金融
中小企業向けの資本・債券市場を創設し、直接金融への道を開き、担保や保証を過剰に
求める取引慣行を改めさせ、個人・中小企業への資金供給を円滑にします。貸し渋り・貸
しはがしへの緊急避難策としての「特別信用保証」の復活を図ります。天下り禁止や民間
人主導の運営等により、信用保証協会の機能を強化します。金融機関の融資については、
内容説明や書面交付の義務付けなど、貸し手責任や義務を明確化すると同時に、倒産に際
しては最低限の財産を手元に残すことを許すなど、再チャレンジの道が残される社会を確
立します。
産業・中小企業税制等
法人事業税への外形標準課税導入については、雇用及び中小企業経営に及ぼす影響に鑑
み、慎重に検討します。創業 5 年未満の中小ベンチャー法人について、法人課税を減免し
ます。創業促進のため、エンジェル(ベンチャーへの投資家)税制の複雑でメリットの少
ないシステムを改め、公募債の要件を緩和して公募債と私募債の中間にあたる募債を可能
にします。同族会社の留保金課税について中小企業への適用を廃止し、相続税全体の見直
しにより小規模企業の負担を軽減します。
起業・ベンチャー支援
廃業よりも開業をめざし、ベンチャー企業の立ち上げを容易にすると同時に企業への技
術移転を促進する制度を導入します(日本版SBIR制度の改善やSTTR制度の導入*)。
資金不足が顕著な研究開発型ベンチャーを支援するため、エンジェルを支援します。ベン
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チャー企業の株式購入時に投資額の一定割合を税額控除できる制度の導入やエンジェルネ
ットワークの設立・運営を支援します。また大企業からのスピンアウト(リストラをきっ
かけとした開業等)促進等総合的な起業支援策を講じ、
「100 万社起業」
「特別融資枠」など
を実現します。
*日本版SBIR制度/STTR制度=いずれも中小
ハイテク・ベンチャー企業への補助金制度。
商店街対策
1 階に商店街、2 階以上を高齢者向けケア付き賃貸住宅とする複合建築物の建設も含め、
「商住一体のまちづくり」をすすめます。託児所、駐車場・駐輪場等を整備し、消費者が
気軽に商店街に出かけられる環境を整備します。起業家のためのSOHO(在宅勤務の小
規模オフィス)活用、行政窓口設置により空き店舗や空き地の利用をすすめます。都市景
観の向上、防災施設や情報通信基盤の整備、電線の地中化等を促進し、美しいバリアフリ
ーの商店街をつくります。
ものづくり支援
民主党の主導によって成立した「ものづくり基本法」を生かし、ものづくり産業の基盤
強化をすすめます。ものづくり技術、人材のデータベース化など、ものづくりをITと結
びつけて振興し、中小製造業を有利な立場に誘導します。義務教育、高等教育におけるも
のづくり教育を重視し、ものづくり職人が一層評価される社会を確立し、後継者育成を推
進します。加工技術の向上につながるナノテクノロジー分野への重点化をすすめます。
【IT政策】
民主党は、インターネットをはじめとするIT革命が、官主導から民主導へ、中央政府
中心から地方政府中心へと社会を転換し、個人の生き方、生活のあり方を根本から変える
ものと位置づけています。ブロードバンド(通信の高速・広帯域化)革命、知的財産権革
命、リテラシー(情報読解力)革命と一体となったIT革命をすすめ、行政改革、教育改
革などの構造改革につなげていきます。そのため、最優先事項として、通信分野における
競争を促進し、世界最高水準の低廉・高速インターネットをめざします。さらに、情報格
差(デジタルディバイド)解消策、ネット犯罪・トラブル対策等についても万全を期して
いきます。
電子政府
2000 年 3 月に発表した「人間中心の情報化社会をめざして」
(高度情報化社会プロジェク
ト提言)のなかで、民主党は電子政府の実現を既に公約としています。主な内容は、全行
政手続き・税務申告手続きのオンライン化、今後の公文書を電子化したうえでの全公開、
政府調達手続きの電子化促進、行政サービス・ステーションの整備、公立図書館等でのイ
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ンターネット環境の整備、民事訴訟手続きの電子化、判決のネット公開、テレビ会議によ
る証言等の司法の情報化、などです。
迷惑メール防止法案
迷惑メールが多発している商業広告メールの適正化を図るべく、2001 年 11 月、民主党は
法案を提出しました。同法案の内容は、特定の商業広告メールに対する規制、懲役を含む
罰則規定、第一種電気通信事業者による電気通信役務を拒否できる規定等です。これを受
ける形で、経済産業省主管の政府法案が提出され、さらには、総務省主管の与党案提出の
動きも見られました。民主党法案は与党案を併合する形で、参議院総務委員長提出法案と
して 2002 年 4 月に成立しました。
サイバーテロ対策
2001 年 11 月、民主党はサイバーテロ対策への提言を発表しました。ポイントは、(1)重要
インフラ防護センターの設置を軸とする組織体制の構築、(2)ネットワークの安全確保・ネ
ット犯罪・サイバー危機事態に対応した法整備、(3)防衛庁・警察庁の対応力強化、(4)ダメ
ージコントロールを軸とする対策構築の基本的な考え方の整理、(5)公的人材育成機関の設
置・技術開発への予算投入、(6)官民連携体制の強化・国際協力体制の強化、(7)ネット教育
体制の整備、等となっています。
IT公正競争監視委員会の設置
誰もが皆、世界最高水準の低廉・高速インターネットを利用できるよう、通信と放送の
融合を制度面からも推しすすめるとともに、通信分野における大胆な競争政策をすすめる
必要があります。そのためには、国家行政組織法第 3 条に基づく、独立した行政機関とし
て、強力な権限を持ち、公正な競争ルールの下、国際競争も含めた幅広い観点から民間事
業者間の競争を監視・裁定する、「IT公正競争監視委員会」(=日本版FCC)を創設す
ることが必須です。
ITバリアフリー法(ユニバーサルデザイン法)
障害者も含めてすべての人々が使いやすい情報通信機器を設計する「ユニバーサルデザ
イン」の思想を普及させ、情報バリアフリー社会を確立します。そのため、障害を持つ政
府等の職員が電子事務機器を利用できることを保障する、政府に納品する機器は身障者に
配慮したものに限られる、メーカーは障害者向けの機器を用意する義務を負うこと等を規
定した「ITバリアフリー法」を制定し、職場のバリアフリー環境の整備をすすめていき
ます。
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4.社会保障・雇用
【社会保障】
民主党は、個人が能力を生かし、各人にふさわしい生き方を選ぶことができる社会をめ
ざします。例えば、多くの人が 60 歳台前半まで元気に生き生きと働くことができ、やる気
と能力があれば安心して再チャレンジできる自立支援の仕組みがある社会、介護が必要に
なれば在宅か施設のサービスを利用者自身が選べ、バリアフリーの基盤が整う社会、患者
と医師の信頼関係のうえに安心の医療が提供され、保険で広く負担しあう社会、地域で支
える子育ての仕組みがあり、仕事と家庭の両立がしやすい社会です。民主党は、すべての
人が「安心・安全・ゆとり・豊かさ」を実感できる国民生活実現のため、社会保障や労働・
雇用政策の改革に取り組みます。
社会保障制度の分権化
年金や生活保護その他の低所得者対策などの所得保障を国の責任でしっかり行います。
そのうえで、医療は都道府県、介護・福祉などは市町村と、より身近な地域に分権化し、
保険料・自己負担分などは国民みんなで分かちあう総合的な社会保障制度を確立します。
健康づくり支援
健康に暮らせる環境対策の推進、健康相談・健診事業、たばこ・アルコールによる健康
被害防止を柱に健康づくりを支援します。そのため、バリアフリーのまちづくり、食品安
全、快適な住環境の整備、通勤ラッシュの緩和や職場環境の改善、大気汚染、騒音対策な
どに取り組みます。また、地域における健康相談事業の推進や、健康保険財政の財源確保
も視野に入れたたばこ税・酒税の税率アップを検討します。
診療報酬・薬価制度の見直し
診療報酬制度は、薬漬け・検査漬けなどの無駄を生じる「出来高払い」をやめて、治し
ていくら、上手に病気をコントロールしていくらという、病気ごと、月ごとの「定額払い」
制を基本にします。また薬価制度は、国で決めた薬の価格(公定価格)と、実際に薬販売
業者から病院が購入する価格とに格差が生じる、いわゆる薬価差益の問題があるため、将
来的に公定価格制を廃止して、市場原理に任せます。
患者の権利法案
民主党は、患者を「医療消費者」としてとらえ、医療情報の開示・評価と、医療機関や
治療方法に関する患者の選択を促すことで医療の質を向上させる改革が必要と考えます。
そのため、カルテ・レセプトなどすべての医療情報の患者本人等への開示や、診療費明細
書の発行義務化、患者が他の医師に意見を求めるセカンドオピニオンの保障などを内容と
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する「患者の権利法案」を国会に提出しました。
家庭医の創設と医療機関の役割分担
身近に何でも相談できる「家庭医」をつくり、いちいち大病院にかかって「3 時間待ちの
3 分診療」にならないようにします。家庭医養成のため、2004 年から医師の免許取得後研
修が義務化するのにあわせ、大学中心でなく、地域で患者の立場に立った優秀な医師を育
てるための研修医改革をすすめます。家庭医創設や介護施設の充実とあわせ、社会的入院
をなくし、病院医療に無駄なお金がかからないよう、病院の数と機能を集約します。
医療事故防止対策
民主党は、多発する医療事故の再発防止のため、
「医療法改正案」を国会に提出しました。
法案の第一のポイントは、病院の管理者に医療事故防止方針の作成と、都道府県知事への
届出を義務づけ、医療事故防止に対するインセンティブを高めること。第二は、第三者機
関としての医療事故防止センターにおいて、医療事故の事例を集めて調査・研究を行い、
再発防止に活かすことです。
医療従事者の資質向上のために
医師の入試制度、学部教育を抜本的に改革します。メディカルスクール(医科専門教育
をする 4 年制大学院大学)の導入も検討します。医師等の卒後研修、医局制、医師免許制
度のあり方について検討します。家庭医の養成を重視し、地域病院での研修義務づけや定
期的に卒後研修を行い、技能の向上を図ります。薬剤師の養成は 6 年課程、看護師教育は 4
年制とし、准看護師制度は廃止します。その他の有資格医療従事者についても、4 年制大学
教育とします。
医療保険制度の再編成
組合健保、政管健保、国保など大小 5,000 以上の保険者を原則都道府県単位に整理・統合
し現在の 10 分の 1 以下に減らします。3,700 万人の加入者を全国一本で運営する政管健保
は、都道府県ごとに分割し第三者機関による運営とします。今回の 3 割負担問題は、政府
の運営失敗による政管健保の赤字が原因であり、今後の運営を政府には任せられません。
整理・統合した保険者間の不公平(年齢構成等)は財政調整します。国民が保険者を自由
に選べるようにします。
高齢者医療制度の見直し
現在の老人保健制度(70 歳以上の高齢者をひとまとめにして、その医療費を各保険者か
らの拠出金でまかなう仕組み)を廃止して、高齢者をもともと加入していた医療保険者に
戻します。医療保険制度の再編成とあわせて、地域間の医療費格差、保険料格差の是正に
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努め、全国民に対して医療費の公平公正な負担を求めます。
地域精神保健福祉のレベルアップ・司法と精神医療の連携強化
大阪教育大学付属池田小学校の事件等の教訓を踏まえ、地域精神保健福祉サービスの拡
充と、司法・刑事領域と精神医療の分野の実践的な連携強化、実証的な研究・検討に取り
組みます。政府が提案している「心神喪失者医療観察法案」はこれまで以上に精神障害者
に対する差別・偏見を助長するものであり、民主党はこの法案に反対します。
基礎年金の税方式化
基礎年金について、全額税方式への移行をめざします。これにより、逆進性の強い国民
年金の定額保険料(月額 13,300 円)は不要となり、年金空洞化が解消されて、順次すべて
の国民に現行水準(月額 67,017 円)の年金が保障されます。保険料に代わる財源は、行財
政改革の進展を踏まえつつ、いくつかの試算を策定して国民的議論をすすめることとしま
す。
無年金障害者への対策
民主党の基本的立場は、無年金障害者あるいは国籍条項による無年金者をなくすことで
す。将来的に、基礎年金の税方式化によって問題の解決を図る考えですが、それまでの間、
福祉的措置も含めた実現可能な方策を早急に検討し、無年金障害者をなくす取り組みをす
すめます。
介護サービス基盤の拡充
介護サービスの充実は、地域に雇用を生み、地域の活性化を実現する効果をもたらしま
す。従来の土木型公共事業に比べ約 2 倍の経済・雇用効果が期待できるとの指摘もありま
す。民主党は、より良い介護保険制度にするため、財政のきびしい状況ではあっても、介
護基盤整備を最優先ですすめます。とくに在宅介護推進のため、ホームヘルパーやケアマ
ネージャーの増員や質の改善、グループホームや宅老所の増設などを速やかに行います。
介護サービスの質の向上
介護保険は、サービスの量に対する報酬が原則であり、必ずしもそのサービスの質は問
われません。このため、施設などサービスの絶対量が不足した状況において、市場原理に
任せるだけでは質の担保はできません。そこで保険者機能を強化して、ケア・カンファレ
ンス*実施体制の構築、第三者機関による苦情対応機関の設置などを保険者が責任をもって
行い、自治的な機能の確立を図る体制をつくります。
* ケア・カンファレンス=ケアマネージャーと介護サービス提供者が、介護を必要とする高齢者に対する
サービス内容を決める会議。
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介護保険における低所得者対策
65 歳以上高齢者の保険料は、市町村ごとに所得段階(5 段階)に応じた定額保険料が設
定され、低所得者には軽減された保険料が賦課されます。しかしなお、低年金層などでは、
過重な負担となり生活を圧迫しています。低所得者対策は、根本的には、年金など所得保
障と、医療費等も含めた生活費全体との関わりで総合的に対処すべきですが、当面、申請
に基づく個別の減免や、貸付制度などを地域の実情にあわせ全国的に行うことを徹底しま
す。
エイジフリーな介護保険
現行の介護保険は、65 歳以上の高齢者が原因によらず介護サービスを受けられる仕組み
です。民主党は、年齢の区分をなくし、65 歳未満の被保険者も保険料を払うだけでなく、
平等にサービスを受けられるよう、条件を整備しながら介護保険をエイジフリーな仕組み
に改革します。ただし、障害者施策としてのサービスは別途受けられることを保障します。
子育て支援
民主党は、多様な選択肢を用意し、安心して子育てできる環境をつくります。低年齢児
保育、延長保育、一時保育、病児保育、学童保育など多様なニーズに対応するため、「新エ
ンゼルプラン」のさらなる充実を図ります。同時に、子どもにとってより良い保育の質を
追求します。また、育児休業制度や、仕事と家庭の両立支援策、小児医療の充実を図りま
す。さらに子育ての孤立化や不安解消のための相談・支援体制も充実します。
児童手当の拡充
子どもを持つか持たないかは、夫婦・個人の選択ですが、次代を担う子どもを産み育て
る家庭の様々な負担は個人の責任にのみ帰せられるべきものではなく、社会全体でこれを
分かちあい、支援すべきです。この観点から、児童手当の支給対象期間を欧州諸国並みに
少なくとも義務教育終了までに、また支給額を現在の 2 倍程度の水準となるように拡充し
ます。
ひとり親家庭への自立支援策
離婚の増加に伴い、ひとり親家庭が増加しています。とくに母子家庭にとっては、雇用
や住宅、子育ての問題などで、安心して自立生活できる環境にはありません。民主党は、
実効性ある就労保障、子育て支援、離婚時の養育費支払いの履行確保策など、ひとり親家
庭に対する自立支援に取り組みます。今後、児童扶養手当の支給水準を変更する場合は、
母子家庭の経済状況等に十分配慮すべきと考えます。
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バリアフリー
障害のあるなしにかかわらず、誰もが安心して暮らせるバリアフリー社会を実現します。
バリアフリー住宅の普及やバリアフリーのまちづくりなどをすすめます。障害者と健常者
がともに学ぶ統合保育・統合教育を推進します。誰もが利用しやすいIT機器の普及をす
すめます。選挙情報の提供や投票補助など政治参加のバリアフリーをすすめます。また福
祉・医療・雇用などを横断的につなぐ「新・障害者プラン」を策定し、すべての人が生き
生きと暮らせる社会をつくります。
【雇用・労働】
完全失業率が 5%を超え、高失業時代に突入しました。中高年層に対するリストラ、早期
退職制度、出向などが増加しています。働き方そのものを大胆に見直し、社会全体で幅広
い雇用維持、雇用創出の方策を確立、推進しなければ、年齢・賃金・能力など「雇用のミ
スマッチ」の解消どころか、解雇やリストラによる非自発的失業がさらに増えることが予
測されます。ワークシェアリングが脚光を浴びていますが、失業対策のみならず、積極的
な雇用創出の努力が必要です。民主党は、やる気と能力があれば安心して再チャレンジで
きる自立支援の仕組みがある社会をつくります。
職業能力開発
時代にあった職業能力の自己啓発に関心が高まっています。人材は社会の基盤です。民
主党は企業内、業界内での職務内容や能力評価基準等(日本版NVQ)の明確化、社会人
の利用拡大に向けた奨学金制度、キャリアカウンセラー*の早期育成を支援します。より高
度で実践的な職業能力を有する人材育成のための職業訓練校の展開など、職業能力開発制
度の抜本強化をすすめます。一定期間勤務すれば、休業が認められるキャリアブレイク制
度の普及も支援します。
*キャリアカウンセラー=転職・再就職に際して労働者
た仕
の職務経験等について相談に乗り、その人にあっ
事をアドバイスする専門家。
雇用創出
雇用情勢の改善には、失業対策だけでなく積極的な雇用創出がカギです。民主党は短期
緊急対策として時短を伴うワークシェアリングを、新しい産業(環境・福祉・教育・IT・
都市再生など)の創出と並行してすすめます。教育・保育、福祉・介護、環境などの国民
サービス向上につながる分野は行政サービスの拡充と民間分野の誘導策とをあわせてすす
めます。SOHO(会社勤務でなく在宅も含めた小規模オフィスで働くこと)や在宅就労、
NPOなどによる起業・創業についても、就業機会の有望な受け皿として、労働環境整備
に取り組みます。
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ワークシェアリング(WS)
雇用、時間、賃金の組み合わせを変え、就労機会をより多くの労働者で分かちあい、雇
用機会を増大させる施策です。時短を伴う「緊急対応型」WSは失業をこれ以上増やさな
いための短期対策としては重要ですが、民主党は、多様な就労形態を整備して雇用を創出
するという長期的観点に立ち、フルタイマー・短時間労働者の労働時間と仕事に即した均
等待遇、社会保険制度の短時間労働者への適用拡大、女性や高齢者の就業条件整備等を追
求します。
就業形態の多様化と均等待遇
期間の定めなく、フルタイムで長期に働く正社員とは異なる就業形態の労働者が増加し
ています。女性労働者では 5 割近くが短時間労働者です。雇用側の人件費削減の要請とと
もに、仕事と家庭の両立など働く側の要請もあります。昨今、労働時間や仕事の内容がほ
ぼ正社員と同じなのに、雇用形態の違いだけで労働条件や処遇が著しく低い取り扱いを受
けるケースが指摘されており、民主党は働き方によって著しく不利にならない合理的な原
則づくりに取り組みます。
解雇規制
日本に解雇規制の実定法はありませんが、使用者による解雇はこれまで判例によりきび
しく制限されてきました。民主党は著しく不合理な解雇の禁止等を図る観点から、「整理解
雇四原則」=(1)人員削減の必要性、(2)人員削減の手段としての整理解雇(指名解雇)を選
択することの必要性、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)手続きの妥当性等、労働契約に関する
法制化について検討するとともに、事業主に対する再就職あっせんや支援の義務づけ、職
業教育訓練機会の拡大を強化します。
年齢差別禁止
きびしい経済状況を反映し、とくに中高年を対象に人員削減の波が押し寄せていますが、
転職の際に「○○歳まで」と入口で画一的に締め出され、就業チャンスを奪われることも
少なくありません。民主党は、年齢や性別、障害の有無など生来的な違いによる差別をな
くさなければならないと考えます。募集・採用における年齢差別禁止法案を提起し、高齢
者や女性も含め、働きたい意欲のある人がその能力を発揮できる社会をつくります。
ホームレス自立支援
長引く不況を背景に、都市部を中心にホームレスの姿が目立っています。民主党はホー
ムレスの生活実態を的確に把握し、生活保護の適切な実施を含め、実態にあった対応が必
要との観点から、先に「ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法案」を国会に提出
し、これが契機となってホームレスの自立のための法案が成立しました。とくに就労意欲
51
のある路上生活者について、定住場所としての住居支援、就労支援を行い、ホームレス状
態の長期化を防ぎ、自立と社会復帰を支援します。
雇用保険制度
きびしい雇用失業情勢を反映し、このままでは雇用保険財政が 2002 年度中に枯渇する見
込みです。民主党はこの間、この危機的状況にいち早く警鐘を鳴らし、雇用保険の財政安
定化のための法案を提出するなど、国民の安心確保を主張してきました。セーフティーネ
ットにふさわしい安定した財政運営を可能とするため、失業等給付を本当に困っている人
への給付を中心とし、求職中の職業訓練との連携強化、短時間就業者へ適用を拡大するな
ど、雇用保険制度の抜本的改革をすすめます。
仕事と家庭の両立支援
育児・介護休業法成立以来、半数以上の女性労働者が育児休業を取得していますが、子
育ては育児休業期間で終わるわけではなく、職場復帰後、いかに多様な子育て支援メニュ
ーを整えるかが課題となっています。民主党は先に仕事と家庭の両立支援法案を提出、子
どもの看護休暇義務化への道筋をつけましたが、今後は子どもの看護休暇の早期義務化、
父親の育児休業取得の促進、勤務時間の短縮制度の請求権化、実質上期間の定めなく雇用
されている期間労働者の育児・介護休業取得の保障などを追求します。
労働時間の短縮
家族・友人などとの絆を深める、地域・社会活動に参加、自己啓発による職業能力の向
上、休息による勤労意欲の回復など、多様な価値観に基づき、より自由でゆとりのある多
様なライフスタイルを実現するには、労働時間の短縮が不可欠です。民主党は時間外労働
の削減をすすめます。また、年次有給休暇の取得率は約 5 割と極めて低い状況にあります
が、民主党は、有給休暇の完全取得及び日数の増加、そして連続休暇を実現する「長期休
暇制度創設法案」を提出、その導入をすすめます。
5.農林水産・環境・ エネルギー
【農林水産】
農林水産業政策・食料政策は、暮らしの安心と安全にとって重要な課題です。にもかか
わらず、わが国の農林水産業・農山漁村は、戦後著しく衰退し、食料自給率は低く、食料
の品質・安全性については信頼が地に落ちてしまいました。政府・与党・業界団体によっ
て決定されてきた施策は、自給率の向上や競争力の強化どころか、利権構造の固定化や一
次産業不信にしかつながりませんでした。民主党は、このような硬直かつ不透明な政策か
52
ら脱却し、消費者に目を向け、消費者の信頼によって生産者の利益と経営の安定を実現す
る政策を確立します。そのため、「食品安全体制の確立」「食料自給率の向上」「持続的経営
支援」「エネルギー供給源としての農林水産業」を政策の軸としてすすめます。
食料自給率の向上
世界の食料需要は供給量を上まわりながら増加しています。もしも天候異変などによる
不作が起きれば、最初に経済力の弱い途上国の食料調達が困難になります。日本の購買力
が継続し、供給物があれば食料を輸入することもできますが、世界の食料需給安定のため
には、各国が一定の食料自給率を維持することが最も重要です。実際に先進 7 カ国でも、
イギリスの 71%を除けば 90%台後半から 140%近くを確保しています。現在、日本の供給
熱量換算食料自給率は 40%に過ぎませんが、当面の食料自給率目標を 50%とし、輸入と組
み合わせた食料供給体制を構築します。
食料安全保障
現在の日本の食料自給率では、天候要因による不作、海外農産物市場の需給関係の変調、
海外情勢による輸入困難などが生じれば、国内の食料供給体制は危機に陥ります。国民の
生活と生命を守るために、現在の食料需要にあわせた農作物生産への転換と農地の有効利
用体制の確立をすすめ食料自給率の向上に取り組むとともに、緊急時に食料増産ができる
体制と滞りなく供給できる制度をつくります。
森林の多面的機能と整備の必要性
国土の 6 割を占める森林が、木材生産だけではなく、温暖化対策・治山治水機能・エネ
ルギー源などの新たな機能面で注目されています。しかし、戦後日本の森林・林業政策が
木材生産・供給に偏在したなかで、国産材は外材の価格と用途にあわせた質の向上の前に
競争力を失いました。結果として生産の場である森林は放置され荒廃した状態にあります。
しかし、多様な機能を発揮するために、積極的な整備促進に着手するとともに、有効な資
源として活用する政策を推進します。
環境保全型農業の促進
農業は緑のある産業としてとらえられています。しかし農薬の多使用は農業者・周辺住
民の健康被害や残留農薬による食品安全の問題に、化学肥料の多投入は土壌の荒廃による
再生産力の低下など環境に影響を与えます。また家畜糞尿も限度を超えた排出を行えば、
土壌・水を汚染します。民主党は、環境に配慮した持続的な生産が可能な農業生産方式に
取り組む農家に財政支援を行うとともに表示制度を設けて、その拡大を促します。
所得補償政策
53
海外産と国内産の農産物価格の差が指摘されています。農地面積、労働賃金、生産コス
トが価格差要因とされます。しかし、輸出型農業国には農業生産高にかかわらず所得が補
償されるために、農産物価格の高低を気にせず農業ができる制度があるという事実は知ら
れていません。日本においても、農林予算の構成を所得補償政策中心に変更することとし、
農産物価格は市場において輸入農産物との競争によって形成されるようにします。 所得補
償へ移行した上で、生産調整に関連する国の関与は完全に廃止します。
国内産業の維持
2001 年にネギ、生シイタケ、イグサを対象としてセーフガードの暫定発動が行われまし
た。この発動に対して賛否両論がありましたが、WTOにおける国際的な取り決めのなか
でも、国内の生産者が急増する輸入によってその経営に甚大な影響を被る可能性がある場
合、セーフガードが認められています。発動にあたっては将来見通しを明確にし、一層の
努力が求められますが、ルールに則った手段を活用しつつ、国内産業の維持と育成を行い
ます。
農業団体改革
全中・全農を頂点とするピラミッド型の農業協同組合系統は、民間分野と比べて事業再
構築が遅れており、事業面でも専門企業と競う力がない状況にあります。協同組合の精神
に基づく運営方針については尊重すべきところがありますが、硬直化した現在の組織のあ
り方は根本的に改め、地域の農協が自ら考え行動し農業の振興を行うシステムを確立しま
す。
都市型農業
農業は地方の農村で行うものという意識があります。しかし、消費地である都市近郊の
農地で生産された農産物を供給することには、鮮度の高さ、輸送にかかるコストの軽減と
いったメリットがあるとともに、農地が都市の緑地帯等としての役割を果たすという効用
もあります。また、食品廃棄物の飼・肥料化によるリサイクルも都市近郊農業の方が取り
組みやすいという利点があります。このような利点を活かすためにも都市型農業の振興を
すすめます。
水産業の多面的機能
海難事故が起きた時に、近辺の漁船はボランティアとして救助に協力していることは意
外と知られていません。また、日常的な操業によって、異変が起きた時の監視機能を果た
しています。意識しないながらも、食料の供給以外にも水産業が継続しているからこそ果
たされる機能について評価をし、水産業振興を行います。
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農業経営再建特別措置法案
国の施策に沿って経営規模拡大・農地改良に取り組みながら、農産物価格の下落などに
よって経営負債の償還が困難な状況に陥っている農家が増加しており、その経営再建は喫
緊の課題です。効率の高い農業経営基盤の活用は食料自給率の向上にも必要です。このよ
うな観点から民主党は 2001 年の通常国会に「農業経営再建特別措置法案」を提出しました。
この法案は、財政支援や農地の買い入れなどの策を講じ、農業経営の再建及び優良農地の
保全を図る内容となっています。同法案の成立をめざし、農業の発展及び農村の振興をす
すめます。
環境調和型養殖の推進
養殖に使用される薬剤は、行政の指導によって環境負荷の少ないものであることが定め
られています。しかし、値段は安く効果は高くという欲求が、自らの生産の場である海を
汚染する禁止薬品の使用を野放しにし、結果として生産を低迷させる原因をつくり出して
います。自然環境と調和した持続的生産となるように薬剤使用を規制する法律を提案しま
す。
【環境】
森林伐採・開発などによる自然環境の破壊や生態系の破壊、化学物質の拡散、化石燃料
や金属類資源の枯渇など、人間の活動に起因する環境負荷の増大により、
「環境の許容限度」
や「人体の許容限度」が限界に近づいています。このような環境問題に対応するために、
現在の「大量生産、大量消費、大量廃棄」社会から、持続可能な社会へと変革し、将来世
代にツケを残さないようにしなければなりません。民主党は、持続可能な社会をめざし、
環境容量内での循環型社会システム構築に向け、積極的に取り組んでいます。
持続可能な社会
地球温暖化をはじめとする地球規模の環境問題がその規模を拡大しています。また、自
然破壊や土壌汚染など、地域での環境問題もあとを絶ちません。環境の悪化とそれに伴う
脅威は増大し続けています。美しい自然や生命を育む地球を将来の世代に受け継いでいく
ことは、いまを生きている私たちの責任です。環境問題を解決し、持続可能な社会をつく
るためにも、環境意識の向上・市民参加・情報公開・公正な市場構築・良好な自然の保全・
NGO中心の国際貢献などの施策を推進します。
地球温暖化対策
地球温暖化の進展を食い止めるためにも、世界の温室効果ガスの 5%を排出している日本
の責任は非常に大きいと言わなければなりません。ところが、政府の地球温暖化対策方針
である「地球温暖化対策推進大綱」は、実効性の乏しい施策が記載されているだけです。
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民主党は、国内における人為的排出の削減を原則として、エネルギーの需要抑制、省エネ
ルギーの推進、再生可能エネルギーの普及促進のために、環境税等の経済的措置の導入に
よる実効性のある地球温暖化対策を行うべきであると主張しています。
オゾン層破壊・フロン回収
フロン類はオゾン層破壊や地球温暖化の原因となるなど、地球環境に大きな負荷を与え
ることから、その回収破壊・代替物質への転換が重要になります。民主党がかねてから主
張していたフロンの回収義務化法がようやく 2001 年に成立しましたが、スプレー缶や断熱
材への使用規制が行われていないなどの問題があります。民主党は、今後も環境負荷の少
ない代替物質への転換や使用規制などを強力にすすめるべきであると考えています。
地球環境問題
開発途上国を中心とした人口の急増と貧困等により、地球環境の悪化が各地で顕在化し
ています。開発途上国への環境保全技術の積極的な援助、被援助国の民主化促進、環境マ
インドを育むための「人づくり」支援強化、森林保全・水環境の保全・砂漠化防止などの
自然環境保全への支援強化などを積極的にすすめ、日本が環境分野でのリーダーシップを
発揮すべきであると考えます。また、支援の際の国際的な環境基準の設定を国際社会に積
極的に働きかけるべきであると考えます。
これからの化学物質対策
日本国内で流通している化学物質は約 5 万種類あると言われ、また、毎年数百種類の化
学物質が新たに製造・使用されています。人工の化学物質が環境中に排出された場合の影
響が十分に把握されていないことを考えれば、予防を基本としたリスク対策が必要である
と考えます。民主党では、「化学物質の審査及び製造に関する法律」を改正し、化学物質の
製造から廃棄までの全体を包括的に管理し、製造規制・表示の徹底・使用後の回収など、
リスクに応じた化学物質対策をすすめるべきであると考えています。
化学物質対策(これまでの取り組み)
民主党では、現在の化学物質対策が不十分であるとして、様々な法案を提案してきまし
た。化学物質排出移動登録(PRTR)法の審議の際には、政府案では情報公開の範囲や
内容などが不十分であるとして対案を提出しました。また、ダイオキシン対策では、環境
基準の設定と対策を内容とするダイオキシン対策法案と焼却炉対策をさらに強化した廃棄
物処理法改正案を提案し、これによりダイオキシン対策の法律が制定されることになるな
ど、化学物質対策に積極的に取り組んできました。
廃棄物・リサイクル対策
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現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を省資源型の循環型社会へと転換させるた
めに、また、不法投棄や不適正処理を防ぐためにも、現在の法制度を変える必要がありま
す。民主党では、(1)廃棄物・リサイクル法制度の統合、(2)有価・無価に影響されない廃棄
物の定義、(3)リサイクル施設に対する環境規制の適用、(4)製造者の製品引取義務(拡大生
産者責任)の明記、(5)埋立税・焼却税の導入(経済的措置)を内容とする「資源循環・廃
棄物管理法案」の成立をめざしています。
デポジット制度
環境負荷の少ない持続可能な社会を築くためには、事業者・消費者などの各主体が自主
的に取り組むことが重要ですが、それが十分に行われない場合には、経済的措置による誘
導や法的規制により環境への負荷を低減する必要があると考えます。製品の販売にあたり
預り金(デポジット)を価格に上乗せし、回収の際にそれを返却するデポジット制度は、
不法投棄の防止や回収率の引き上げのために一定の効果が認められることから、民主党が
作成している「資源循環・廃棄物管理法案」のなかでも位置づけるとともに、飲料容器の
再使用促進のための制度として検討をすすめています。
環境教育
先進国と途上国間の不公平、現世代と将来世代間の不公平、自然と人間の間の不公平を
解決し、持続可能な社会を構築するためには、ライフスタイルの変革や意識改革が不可欠
であり、環境教育の推進が極めて重要になります。民主党では、(1)環境教育の原則の確立、
(2)計画的な環境教育の推進、(3)学校における環境教育の推進、(4)NGOの参加、(5)教員に
対する研修制度などを内容とする「環境教育法」の制定を検討しています。
野生生物保護
干潟や湖沼などの湿地は多様な生物の生息地となっていますが、開発などにより多くの
湿地が失われています。湿地の開発を抑制し、保全を図る法律の制定をすすめなければな
りません。また、農作物の被害対策や狩猟を優先する現在の鳥獣保護法では、野生生物の
保護・生物多様性の保全は十分ではありません。野生生物の生息区域の保全を含めた野生
生物保護法の制定をめざします。また、生態系を破壊する外国からの移入種対策を行う法
律の制定をめざしています。
自然環境保護、里地・里山の保全
人の手の入らないありのままの原生的自然を将来世代のために保全していくことは言う
までもありませんが、人が手を入れることによって維持されてきた里地や里山の自然が、
過疎化の進展や廃棄物処分場の建設などにより急速に破壊されている現状にも対応が求め
られています。地域にある文化や伝統を活かし、地域の循環を基本とした経済システムを
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つくることで、世界に誇ることのできる日本の里地・里山の自然を保全する必要がありま
す。地域の経済・物質循環を推進するための施策についても検討をすすめていきます。
公害対策
日本は、たび重なる公害による大気汚染・水質汚濁等を、様々な技術により解決してき
ました。そして、公害対策では世界一の技術立国となっています。その一方で、大気の窒
素酸化物や湖沼における水質汚濁など、環境基準を上まわる状況が今なお続くなど、対策
が進展していない部分も残されています。民主党では、排出基準の強化や規制対象の拡大
を、経済的措置の導入などにより、大気・水・土壌などの環境基準を速やかに達成すべき
であると考えています。
環境税
地球環境問題を解決するためには、地球環境がタダで無限に使うことのできる自由財で
あるという考え方を見直し、経済活動の地球環境に与える影響(外部費用)を内部化し、
適正な市場経済における価格決定システムに組み入れる必要があります。民主党が提案し
ている「資源循環・廃棄物管理法案」でも、埋立税・焼却税・デポジット制度などの経済
的措置の導入を提案しています。また、地球温暖化問題を解決するためにも、二酸化炭素
の排出に応じた経済的負担を課す「炭素税」の導入が不可欠です。民主党では、炭素 1 ト
ンあたり、3,000 円を課税することが現時点では適当であると考えています。
アセスメント・市民参加
現在の環境アセスメント制度は事業アセスであり、計画自体の見直しや代替案の検討、
累積的な環境影響への配慮をより効果的に行うためには、政策立案・計画段階から環境に
対する影響を評価する「戦略的環境アセスメント」の導入が不可欠です。計画段階でのア
セスメント導入により、市民参加・市民合意がより早期の段階で図られることから、環境
と開発の調和を図ることが可能となります。民主党としては、国レベルでの戦略アセスメ
ント導入をめざしています。
【エネルギー】
一元的かつ戦略的なエネルギー政策を推進します。COP3(気候変動枠組条約第 3 回締
約国会議)における京都議定書などの公約達成に向け、資源循環型社会を確立し、省エネ
ルギーを国民運動としてすすめます。国の責任においてエネルギーの安定確保に努めます。
再生可能エネルギーの開発・導入を積極的に推進し、天然ガス利用の普及促進等により、
石油依存度の低減を図ります。原子力政策は安全性を最優先に過渡的エネルギーとして慎
重に推進します。
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国民参加の戦略的な政策づくり
戦略的なエネルギー政策を推進するため、各省庁のエネルギー関連部門を内閣府に移管
して、エネルギー政策に携わる一元的な機関を設置します。国家と市場の役割等を総合的
に考慮し、国民の意見を十分反映した国家エネルギー戦略を構築します。エネルギー基本
計画を国会承認事項とするとともに、計画策定にあたっては、地方公共団体や広く国民の
意見を聴くための場を設定します。また、エネルギーに関する情報公開を一層促進します。
脱石油・燃料転換の促進
石油に過度に依存した化石エネルギー政策を転換し、セキュリティー向上、環境保全な
どを優先させる新しい政策を構築します。中東依存度低減を図るとともに、産油国との関
係強化を図ります。国の関与は必要不可欠なものにとどめ、中核的な企業グループの育成
を図るなど、効果的、効率的な自主開発政策を推進します。天然ガスへの燃料シフトをす
すめるほか、ガス・コジェネ(ガス燃料による熱電供給)、ガス冷房、マイクロガスタービ
ンの普及促進等を図っていきます。
省エネ政策
地球温暖化防止、COP3 における国際公約の達成に向け、エネルギー多消費のライフス
タイルや経済活動を見直すため、環境重視の省エネルギー教育の啓発・徹底など省エネを
国民運動として位置づけ、省エネ型産業構造への転換、省エネ型ライフスタイルの普及促
進に努めます。環境税を含む経済的措置の具体化、自助努力を促進する省エネ減税、クリ
ーンエネルギー自動車やコジェネシステム、省エネ型住宅建築などの技術開発に対する支
援策強化などに取り組みます。
新エネルギー・未来エネルギー
風力、太陽、バイオマスなど再生可能エネルギーの一次エネルギー総供給に占める割合
をEUにおける導入目標をふまえ 2012 年までに 10%程度をめざし、大幅に引き上げます。
民主党の「自然エネルギー発電促進法案」でも提案した、再生可能エネルギーによる電気
の買い取りを積極的に推進し、必要な法整備を行うとともに、関連予算を増額します。燃
料電池、鉛電池よりも効率的なNAS(ナトリウム硫黄)電池や石炭ガス化複合発電など
の技術開発に対して重点的支援を行います。
エネルギー源としての第一次産業振興
間伐材を利用した木質バイオマス発電やエネルギー作物(なたね、ひまわりなど)から
抽出したアルコールの利用等が注目されています。耕作放棄された田畑でエネルギー作物
の栽培を行い、利用されていなかった間伐材を利用することも、今後のエネルギー政策の
なかで位置づけを行う必要があります。農林水産物のエネルギー利用は、化石燃料の使用
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と比べて環境負荷が少ないため、早期の技術確立とコスト削減のための利用拡大を図りま
す。
原子力政策
原子力政策は、安全性を最優先させ、万一に備えた防災体制を確立したうえで、過渡的
エネルギーとして慎重に推進します。発電所における自主点検作業記録の不正問題を重く
受けとめ、再発防止と原子力に対する国民の信頼回復につとめます。安全チェック機能の
強化のため、国家行政組織法第 3 条による独立性の強い原子力安全規制委員会の創設に向
け、民主党提出の法律の成立をはかります。住民の安全確保に関しては、国が責任をもっ
て取り組む体制を確立します。原子力発電所の経年劣化対策などのあり方について、議論
を深めます。プルトニウム再利用はMOX(ウラン・プルトニウム混合)燃料、高速増殖
炉などの研究開発用として使用計画のある分量のみを抽出し、その他の使用済み燃料は中
間貯蔵します。
6.教育・文化・科学技術
【教育・文化】
学級崩壊や不登校、いじめ、学力問題など学校現場が抱える様々な問題に対し、現在の
教育行政は有効な方針を示すことができずにいます。民主党は、従来の官主導の画一的な
教育を改め、学びの現場からまず徹底的に検証し直し、地域や学校の個別状況に応じた学
びの環境をつくり出すことを提案します。高等教育においては、改革を促すために国立・
私立間の公平な競争を喚起し、効果的な研究支援システムを確立するとともに、意欲を持
つ人が誰でもいつでも学べる機会を提供します。2001 年に民主党が中心となって制定した
「文化芸術振興基本法」を足がかりに、地域を立脚点とする芸術・文化活動の支援と伝統
文化の保護・育成をすすめます。
中央教育委員会の設置
文部科学省のうち教育に関わる部局を廃止し、これに代わって独立行政委員会としての
「中央教育委員会(仮称)」を設置します。国=「中央教育委員会」の役割は、各年齢段階
の最低基準・基本方針を定めることに限定し、その他の権限は最終的に地方自治体が行使
できるものとします。
学習指導要領の大綱化
地域・学校・学級の個別状況に応じて、学習内容・学校運営を現場の判断で決定できる
よう、学習指導要領の大綱化と最低基準性の明確化を行い、現場裁量権を大幅に拡大しま
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す。また、高校の学習指導要領については速やかに廃止します。
「ゆとり教育」について
ゆとりであれ、詰め込みであれ、すべての児童・生徒に画一的な教育を行うことは問題
があります。民主党は、文部科学省がすすめてきたいわゆる「ゆとり教育」を根本的に見
直し、学びの現場からまず徹底的に検証を行い、すべての児童・生徒がそれぞれの可能性
を開花できるような学びの環境をつくります。
少人数学級の実現
民主党は、
「30 人以下学級法案」を提出するなど一貫して少人数学級の実現をめざしてき
ました。学力問題や不登校、学級崩壊など学校現場での様々な問題に対応するためには、
児童生徒の抱える問題を教師が把握でき、わかる授業を行う態勢にしていくことが重要で
す。民主党は、少人数学級を原則とする教育をめざします。
教科書検定・採択について
地域や子どもたちの個性に適した多様な教育を実現するために、教科書も様々な工夫を
取り入れた多様なものが存在すべきであり、民主党は将来的に検定制度を廃止すべきと考
えます。廃止の前提として、教科書採択にあたって保護者や教員の意見が確実に反映され
るよう、現在の広域採択から市町村単位へ、さらには学校単位へと採択の範囲を段階的に
移行します。このような分権的採択制度が確立されるまでの間、検定制度は維持しますが、
検定過程は公開とします。
コミュニティースクールの設置
従来の公立学校に加えて、「コミュニティースクール」という地域のニーズに基づいて運
営される、新しいタイプの学校が設置できるように法律を整備します。「コミュニティース
クール」は、現在の小・中学生を対象とする学校で、各自治体が市民から公募した校長の
イニシアティブの下に、保護者や地域住民の意思を取り入れながら運営されます。
体験学習の推進
子どもたちの自律性を引き出しながら、命をいつくしむ心、他者や自然と共生する知恵
を養う機会をつくるため、体験学習を推進します。共同生活、職業体験、異年齢間交流、
都市と農山村地域の交流、国際交流、自然体験、農業体験、社会奉仕体験など、子どもた
ちが自ら考えたプログラムを尊重しつつ、教職員、保護者、地域住民や児童生徒で構成す
る「学校運営協議会」がサポートする形で体験学習を実行します。
スクールカウンセラー制度の充実
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いじめや不登校などの問題や、職業選択などの進路指導について専門的知識を持って児
童生徒の相談に応じることができるスクールカウンセラーを全国の小学校、中学校、高等
学校等に配置するため、必要な法整備を行います。
国立大学改革と支援のあり方
現在の国立大学は将来、地方立(公設民営など)や私立大学に移行することも視野に入
れ、抜本的に見直します。大学教育に対する国の支援は、原則として民間のインセンティ
ブが働きにくい基礎研究などを行う少数の大学院大学に限定します。研究開発のうち、短
期的な市場価値は低いものの、学術的に必要な研究については、学校への支援ではなく、
個別の研究プロジェクトに対する補助システムを導入して、その水準を確保します。
奨学金制度改革
大学生・大学院生に対する奨学金制度を大幅に改め、希望する人なら、誰でも、いつで
も利用できるようにします。学費のみならず、最低限の生活費も貸与することで、いった
ん社会人となった人でも、また、親の支援を一切受けなくても、意欲があれば学ぶことが
できるシステムをつくります。新奨学金制度の普及にあわせて、大学・大学院そのものへ
の助成は、順次縮減します。
学校施設老朽化対策
児童生徒の学習・生活の場であり、震災時などの防災拠点でもある公立学校施設の 4 割
以上が現行の耐震基準を満たしておらず、施設の老朽化による事故なども増加しています。
民主党は、老朽校舎・危険校舎の改修を早急に進めるため、耐震診断の義務づけと補強・
改築費用の補助のかさ上げを図る「公立学校耐震改修促進法案」を提出しています。
学校図書館の整備
子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊か
にするうえで欠かせないものです。2001 年に成立した「子どもの読書活動推進法」を足が
かりとしながら、全国の学校図書館の整備・充実をすすめ、子どもの読書環境を改善しま
す。
生涯教育の充実
技術の高度化、転・再就職の準備、地域活動のリーダー養成、教養講座など多様な教育
ニーズに対応する生涯学習社会を実現します。子どもから大人までが利用しやすい施設の
整備、公民館活動の活性化、公立図書館の一層の充実を図ります。また、大学・短大を卒
業し社会で働く人に、本人の希望で再び大学や大学院で教育を受けることができる制度(リ
カレント教育制度)を確立します。
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統合教育・障害児教育の推進
学校教育において障害者と健常者がともに学ぶ機会を増やし、障害者への偏見をなくす
「こころのバリアフリー化」をすすめます。このため、保育園・幼稚園の段階から小中学
校教育まで統合保育・統合教育に取り組み、障害を持つ子どもと持たない子どもとの分離
を前提とした教育を見直します。また、学校施設のバリアフリー化や弱視者用の拡大教科
書導入のための制度改正など、障害者の視点に立った教育環境をつくります。
芸術文化活動への支援
人々の創造性や表現力、コミュニケーション能力を高めるうえで、芸術文化の振興は極
めて重要です。民主党は、従来の文化ホール建設といったハコモノ中心の行政を改め、人
材を活かす文化政策へと転換します。様々なジャンルの芸術文化に対する地域住民のニー
ズや取り組みに応えて、芸術家・専門家がソフト・マンパワーを用意できるように行政が
支援していく地域住民主導型の文化政策をめざします。
伝統文化の保存・継承
日本の伝統文化を保存し、そのうえにさらなる新たな文化を創造する基盤を整備します。
文化財の保護、地域に固有の伝統芸能・工芸の継承、教育における体験鑑賞など、文化・
伝統を保護、育成するための環境整備を行います。
【科学技術】
わが国は 20 世紀、既存技術の改良・応用を中心としたいわゆるキャッチアップ型を中心
とした研究開発で製造業の強い競争力を生み出し、成功してきました。しかし 21 世紀にお
いては、情報通信、バイオテクノロジーなどに代表される時代の先端技術分野において、
より独創的な成果を自ら生み出す国や企業でなければ国際競争のなかで勝ち残っていくこ
とは困難です。科学技術政策の本質は「人」の育成です。今後継続して独創的な研究開発
の成果を生み出していくためには、研究者の水準を質・量ともに向上させていく必要があ
ります。民主党は「キャッチアップ型研究開発から独創的研究開発へ」「モノへの投資から
人への投資へ」という視点に立ち、「科学技術で世界をリードする国」をめざします。
科学技術分野における行政改革
科学技術政策を戦略的に推進するため、各省庁の科学技術関係の政策立案権限・機能を
分離・一元化し、総合科学技術庁を設置します。公的予算の配分は組織単位の補助金では
なく、研究内容そのものに着目し研究者単位での資金配分を行う競争的研究資金中心の制
度に転換します。また、研究開発への客観的評価を徹底するために「研究開発評価法」を
制定します。
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人材の育成
子どもたちの理数科の基礎学力の底上げを図り、科学技術に対する適応力を高めるため、
とくに初等教育において科学技術・理数に理解のある教員を拡充するなど、理数系教育環
境を改善します。中等教育において創造力や論理力を重視した教育・学習を重視する環境
を生み出すべく、大学入試選抜の改革を図ります。また大学改革を通じて「知的戦力」と
なりうる人材の募集、試験成績よりも知的創造力を重視した入学者選抜を行えるよう後押
しします。
若手研究者の受け皿の確保
近年、名目上の「研究者数」の増加は見られるものの、進路に恵まれず研究から離れて
しまっている状況が多く見られます。優秀な人材を育成しても活躍の場がなければ意味は
なく、その受け皿となる大学・研究機関・企業の改革に着手するとともに、若手研究者の
流動性確保を促進します。
TLOの強化
研究機関から企業へ研究成果を移転する試みとしてTLO(技術移転機関)の活用がす
すめられていますが、多くのTLOが赤字に悩み、公的支援に頼っている現状にあります。
技術移転対価の大学・研究者への還元を活性化し新たな研究成果を生み出す「知的創造サ
イクル」の要として、TLOの質的強化を図ります。
研究環境の改善
わが国の大学や研究機関の施設の手狭さ・老朽化はかねてから重ねて指摘されていると
ころです。研究者の日常の研究の質的向上に向け、研究施設整備における場あたり的予算
配分を改め計画的投資を行います。また、研究補助者の増員と地位の向上を図り、研究者
が研究活動に専念できる環境を整えます。
科学技術政策の「選択と集中」
限られた財源を有効に活用するため、(1)今後 20 年程度に予想される観点、(2)さらに長期
的観点の 2 つに分けて、それぞれ取り組むべき研究テーマを厳選し、公的研究資源を集中
的に投入します。(1)としては、国民の生活を維持向上させるために必要な政策、次代のわ
が国の産業競争力のために有望なもの、国民の安全のために必要な研究などを重点課題と
します。(2)としては、より幅広い基礎研究の確保や、地球環境と人間性回復のための施策
を重点課題とします。
エネルギー関連の技術研究
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原子力技術は、より安全で持続利用可能なエネルギーが開発されるまでの間、安全性を
最優先に過渡的エネルギーとして利用・研究を継続します。ただし近年の原子力の安全に
対する国民の懸念を踏まえ、独立機関としての原子力安全規制委員会を設置し、安全確保
体制を刷新することが必要です。また地球温暖化対策において世界をリードすることを使
命とし、省エネルギー関連技術の研究をさらに後押しするとともに、新エネルギー・自然
エネルギーの効率向上やコスト低減、環境特性の一層の向上といった観点からの研究開発
を促進します。
次世代の産業競争力を担う技術
21 世紀初頭においては、医療を含む生命科学分野や、ますます変化のスピードを増す情
報通信技術、あらゆる技術分野に応用が及ぶともされるナノテクノロジー(超微細技術)
関連技術などが世界の競争ステージの主要をなすことは確実と言えます。しかし、これら
先端技術分野におけるわが国の立ち遅れも強く指摘されており、次世代の産業競争力を確
保するという観点から、研究者・技術者の質的・量的不足を一刻も早く解消するとともに、
課題とされる倫理規制の整備などを含む戦略的な技術開発施策を推進します。
国民の安全確保への貢献
従来より、科学技術の発達には災害などの危害の防止・軽減への寄与が期待されてきま
した。また一方、近年社会が高度科学技術社会化していくなかで、一般市民が技術のもた
らす危険に遭遇する場面が増え、国民の科学技術に対する不安も高まりつつあります。国
民生活の安全を守ることは国の最も基本的な責務であり、食品の安全確保、プライバシー
の防衛、地震防災・予知への取り組みなど、科学技術の安全への応用について積極的に推
進します。
7.国土・社会資本
【公共事業改革】
不要不急の公共事業の実施は税金の浪費のみならず、土木建設業をはじめとする産業構
造改革の妨げになっています。またダムのように自然環境を大きく破壊し、将来に負の遺
産を残すものも存在します。いま行われている公共事業のすべてが不必要であるという訳
ではありませんが、今後はこれまでより少ない予算で効率的に、しかも情報化・高齢化・
バリアフリー・自然再生型などの事業に転換する必要があります。民主党は、以下の点を
中心に、新しい公共事業のあり方をめざします。
公共事業コントロール法
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道路整備 5 箇年計画や空港整備 7 箇年計画など、わが国の公共事業の多くは「長期計
画」によって事業の内容や量が定められています。これらの長期計画はあわせて 15 本あり
ますが、閣議決定事項とされているために国会のコントロールが及びません。またそれぞ
れの計画に連携がなく縦割りであるために、重複による無駄もあります。民主党はこれら
15 本の長期計画を一本化し国会承認事項とするとともに、再評価・事後評価の仕組みを盛
り込んだ「公共事業コントロール法」を制定します。
PFIの促進
PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)とは、道路や橋、刑務所や役場
庁舎などといった公共施設の建設や運営を、資金調達を含め民間事業者に委ねることによ
り、公共事業のコストを削減する手法です。PFIの一番の目的は、事業にかかるリスク
を民間事業者に負わせることで、民間の経営感覚を活用し、効率的かつ高品質な公共サー
ビスを提供することにあります。このPFI制度を積極的に活用するため、モデル事業の
展開やPFIの数値目標を定めるとともに、PFIの促進を阻害する法律・政省令・条例
等の改正をすすめます。
大型公共事業事例の見直し
川辺川ダム建設事業や諫早湾干拓事業、長良川河口堰など、全国各地で大型公共事業事
例のあり方が問題になっています。例えば川辺川ダム建設事業は、数千億円の費用をかけ
て利水や治水などを目的とした多目的ダムを建設する計画ですが、多くの人家の水没とい
う犠牲を強いる一方で、受益者である地元農家の多くが利水事業計画に反対して訴訟を起
こしており、ダムによる治水は不要であるとして学者から代替案が示されるなど、ダム計
画の必要性が著しく疑問視されています。民主党はこれらの無駄な公共事業事例について、
今後もきびしく追及していきます。
道路特定財源の見直し(道路政策)
ガソリンの購入価格に含まれるガソリン税、自動車を購入する際に徴収される自動車取
得税、車検の際に納入する自動車重量税、これらはいずれも使途が道路整備に限定される
「道路特定財源」です。一方でわが国の道路整備の水準は、十分ではないにしろ既に高い
レベルにまで達していることから、道路に特化された特定財源の存在は、無駄な道路建設
や財政硬直化の原因との批判が高まっています。民主党は道路特定財源を一般財源化とす
るとともに、複雑な自動車関係税制を簡素化します。
治水政策(緑のダム)
ダムは河川の流れを寸断し、自然生態系に大きな悪影響をもたらすばかりか、堆砂(砂
が溜まること)により数十年間から百年間で使い物にならなくなります。このように環境
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負荷の大きいダム建設を続けることは、将来にたいへん大きな禍根を残すものであると言
わざるを得ません。今後はダム建設をやめるとともに、森林の再生を通じ、森林のもつ保
水機能や土砂流出防止機能を高めること、つまり「緑のダム」へと治水政策の転換を図り
ます。現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、2 年以内
をめどにその必要性の再検討を行います。
一次産業の名を借りた農林土木の排除
生産性・効率性向上を掲げて整備をしても利用されない農地や水揚げのない漁港、一般
車両ばかりが通行する農道や高規格林道など、本来の事業目的と関連がない農林関係公共
事業があまりにも多過ぎます。それらは、農林水産業を目的に掲げると予算獲得ができる
ので、その抜け道を使用しているのです。これらの公共事業の計画にあたっては、農林漁
業者の要望と生産見通しに基づくこととし、生産性・効率性の向上に結びつく事業へと転
換します。
諫早湾干拓事業の見直し
諫早湾干拓事業が、有明海における漁獲の低下、ノリ被害等の究極の要因であることは、
過去の経緯から十分推定されます。にもかかわらず政府・与党は、干拓事業の継続に固執
し、地元自治体には中止すれば補助金返還義務が生じると説明して見直しを遮っています。
しかし、失われつつある自然の機能の大きさは、事業の価値を失わせるほど多大です。地
元から要望される防災機能については必要な手立てを講じ、補助金負担を含め事業の見直
しを行います。
【交通政策】
誰もが安心して移動できる環境を整えることは、わが国の交通政策を考えるうえで最も
大切なことです。また、より高速・低コストな交通・物流の実現は、経済の発展・維持の
ために欠かすことはできません。しかし現状では、障害者や高齢者などの方々が安心して
利用できる交通機関や施設の整備が遅れていたり、鉄道・空港・道路・港湾などの整備が
縦割りで行われ体系的なものとなっていないなど、様々な問題が存在しています。これら
の解決のために、民主党は以下の施策をすすめます。
交通基本法の制定
日常生活に欠くことのできない安全かつ円滑な移動は、高齢者や障害者をはじめとして
すべての国民に等しく保障されなければなりません。これを「移動の権利」として具体的
に明記したのが、2002 年 6 月に民主党が国会提出した「交通基本法案」です。
「交通基本法
案」ではその他、交通基本計画によって総合的な交通インフラを効率的に整備することに
より、重複による公共事業の無駄づかいを減らし、環境負荷の少ない持続可能な社会の構
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築をめざすことが定められています。
交通バリアフリー
高齢者や障害のある方々は、長い間交通機関や道路の利用について大変な制約を受けて
きました。2001 年に成立した「交通バリアフリー法」は、旅客施設新設や車両導入におけ
るバリアフリー化を義務づけたほか、市町村が策定する基本構想によって、関係者が協力
してバリアフリー化をすすめることが規定されています。しかし民主党の対案で盛り込ま
れていたSTS(スペシャルトランスポートサービス=既存の交通機関の利用が著しく困
難な移動制約者に対し別途の移動手段を確保すること)について措置がされていないなど、
まだまだ現行法には不十分な点も多く存在します。移動制約者の自立と社会参加の促進の
ため、民主党は今後も引き続きバリアフリー社会の実現を働きかけていきます。
整備新幹線
新幹線は、その高速性のみならず、大量輸送性、高い安全性、優れたエネルギー効率な
ど、他の交通機関と比較して優れた機能と特性を有しています。とりわけ自動車や航空機
と比較して二酸化炭素の排出量も少なく、地球温暖化問題等の観点から環境にやさしい省
エネ型の交通機関と位置づけることもできます。しかし整備新幹線の建設に要する財源を
考えたとき、費用対効果の観点からその必要性については多くの疑問があることも事実で
す。民主党としては、鉄道・自動車・海運・航空等の各交通機関が、それぞれの特性を活
かしつつ、重複を避けて効率的・総合的に整備されることが望ましいと考えます。
高速道路整備
かつてのように道路整備の水準が未熟であり、かつ財源も乏しい時代においては、財政
投融資などからの借入金で高速道路を建設し、利用者から徴収した通行料金で債務を返済
する「有料道路制度」は優れた成果をあげてきました。しかし、今後の交通量需要は頭打
ちが予想されるため、これまでと同様のペースで高速道路の建設を続ければ、いずれ破綻
を招くことは明白です。民主党は日本道路公団等を民営化する過程において、現行の高速
道路整備計画を一時的に凍結し、本当に必要な高速道路路線をきびしく選別します。
【都市・地域政策】
戦後の混乱期から高度成長期を経て今日に至るまで、わが国では経済成長を重視した国
土形成が行われてきました。しかしその結果、住民不在の都市計画や農山漁村の荒廃、地
域文化の衰退や没個性的なまちづくりなど、様々な問題が発生するようになりました。こ
れらを解決し、真に国民・住民のための都市・地域政策を実現するために、民主党は以下
の施策をすすめます。
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住宅政策・住宅金融
政府のこれまでの住宅政策は、国民に住宅を取得させること、つまり持ち家重視の施策
が採られてきました。しかし多額のローンを抱えて持ち家を取得するより、賃貸住宅等を
活用し、家族構成等ライフステージの変化にあわせて住替えを行うなど、国民の住宅に対
する価値観や嗜好は変化しつつあります。民主党はこれまで質・面積ともに低く抑えられ
てきた賃貸住宅の充実促進を誘導するとともに、中古住宅の流通促進、住宅ローン証券化、
リバースモーゲージ(高齢者が持ち家を担保に生活資金を借入れること)の促進、職住接
近のまちづくりなどをすすめます。
ハートビル
視覚障害を持つ方でも使いやすい廊下やエレベーター、車イスでも利用できるトイレ、
段差のないスロープ式の出入口など、高齢者・身体障害者等が使いやすい設備の完備され
た建築物をハートビルと言い、その建築を促進するための法律がハートビル法です。しか
し現行の法律では、バリアフリー義務づけの対象が老人ホーム等に限られているなど、ま
だまだ問題が多数存在します。民主党はすべての公共建築物にバリアフリー対応を義務づ
けることや、対象者の範囲を妊産婦・子ども・傷病者・知的障害者などに拡大することを
めざします。
都市再生
これまでわが国の都市環境は、災害に対する脆弱性、無機質・没個性的な街並み、慢性
的な交通渋滞など、けっして誇れるような状態ではありませんでした。また近年、都市郊
外の乱開発により中心市街地の空洞化が生じるなど、深刻な問題が発生しています。その
ため都市を魅力溢れる空間に再生することを目的に、民間資金やノウハウを活用し、都市
の基盤整備や再開発等を促進する「都市再生特別措置法」が成立しました。しかし現状で
は、都市再生のあり方が経済対策・景気対策の視点からのみ考えられる傾向にあります。
今後はそこに住む住民の意向や参画を担保しながら、地域文化の育成や発信などソフト面
等の充実も踏まえ、都市の魅力を取り戻すためにはどうすべきかという観点からも、都市
再生のあり方を考えていく必要があります。
過疎地域の対策
戦後の驚異的な経済成長の陰で、わが国の農山漁村は、超高齢化と若年労働者の流出が
すすみ、過疎化による地域社会の崩壊や農地・林地の荒廃などが進行しています。しかし
経済至上主義の価値観が転換を迎えつつある今日、農山漁村地域には、水源確保や土砂流
出防止などの国土環境保全機能や、伝統文化や自然との共生等の文化・余暇機能の充実な
ど、多種多様な機能が期待されるようになってきました。今後は現行の画一的・縦割的な
地域振興関係諸法を改め、地域独自の事情や特性に対応した振興策により、過疎地域の自
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立化・多様化の実現をめざします。
雑居ビル火災対策
2001 年 9 月 1 日に発生した新宿区歌舞伎町雑居ビル火災を踏まえ、雑居ビルの目にあま
る消防法違反の実態を抜本改正するために、消防署は違反を認めた時には必ず是正命令を
出すことの義務化を軸とする議員立法を提出しました。同法案提出から 4 カ月遅れて、よ
うやく政府からも消防法改正案が提出されましたが(2002 年 4 月成立)、これは民主党議員
立法の流れを受けたものでした。多くの尊い生命を犠牲にする惨事を二度と繰り返すこと
のないよう、民主党は消防行政のあり方を今後とも検討していきます。
【沖縄政策】
沖縄は先の大戦で唯一の地上戦により、数多くの犠牲者を出す悲劇に見舞われました。
さらに、敗戦後も米軍による占領を経験しました。2002 年、沖縄は復帰 30 周年にあたりま
したが、沖縄には依然在日米軍基地の 75%が集中し、県民は過重な負担を強いられていま
す。復帰後の経済発展も期待どおりにすすんでいません。この状況を重く受け止め、民主
党は 1999 年 7 月に「民主党沖縄政策」を発表、また、2000 年 2 月に軍用地返還特別措置法
(軍転法)改正案を提出し、5 月には日米地位協定の見直し案を提示しました。そして 2002
年 8 月 26 日には、「民主党沖縄政策」を刷新した「民主党沖縄ビジョン」を沖縄の地で発
表し、「一国二制度」の推進等、沖縄の真の自立と発展への道程を示しました。
一国ニ制度
沖縄を連邦分権型国家のモデル県と位置づけます。沖縄はその歴史や地理的特性により
「一国二制度」を他県に先行して導入するのに適しているからです。沖縄本島以外にも多
くの離島が存在し、画一的な保険制度の適用にそぐわない等、沖縄の自立と発展のために
「一国二制度」の実現が必要であるという観点から、全県自由貿易(フリートレードゾー
ン)構想をはじめとし、沖縄が地方分権の先がけとなるような諸政策を推進します。
経済振興策
沖縄の持つ独自性と優位性を活かした沖縄振興策に取り組みます。補助金依存型の経済
構造から脱却するため、国からの支出は全額使途を限定しない一括交付金として財政上の
主体性を確立するなど、財政調整制度のあり方を検討します。また、観光業等をはじめと
した比較優位の分野に力を入れた起業家支援制度を整備し、経済的に自立した沖縄を実現
していくなかで、失業率の低下及び雇用の安定を図ります。
自然環境政策
沖縄の豊かで多様な自然環境は、わが国だけではなく世界的にも貴重な財産です。この
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わが国の誇る自然環境を有用微生物の技術を積極的に取り入れながら保全・再生するとと
もに、自然環境を大事に活用した観光業(エコ・ツーリズム)の発展に努めます。また、
沖縄独自の基準による自然環境再生型公共事業を全国のモデルケースとして積極的に促進
します。
教育政策
沖縄独自の文化・芸能を継承しつつ、外国語や環境等、沖縄の特性をさらに引き出す教
育を支援し、沖縄人(ウチナンチュー)としての自立心を育みます。アメラジアン(国際
児)については、公的助成を含め教育環境の整備、及び養育費を確保するための米国との
協定締結等の実現を図ります。また、東アジアのみならず世界の知性が集まり交流する「学
問・研究の沖縄」をめざします。この際、環境・観光・地域安全保障戦略等に関連した研
究分野に特化し独自性を活かします。
在沖縄米軍基地問題
日米安保条約を日本の安全保障政策の機軸としつつ、在日米軍基地の整理・統合・縮小
を強力にすすめます。SACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告の早期実施をめ
ざすと同時に、SACOII の設置に努めます。基地縮小に際して生ずる雇用問題には、セー
フティーネットの確保も含め、十分な対策を講じます。また、当事者としての立場を明確
にするためにも在沖米軍の課題を話し合うテーブルに、沖縄県なども加わることができる
よう働きかけていきます。
8.外交・安全保障
【外交】
冷戦後、国際社会は劇的な変化を遂げていますが、平和で安定した国際環境は、生活資
源と安全を世界に大きく依存する日本にとって、まさに国家と国民生活の存立基盤そのも
のです。民主党は、「国際社会の利益と調和させつつ、わが国の安全と主体性を実現してい
く『外交立国・日本』」を基本政策としています。地球社会の一員として、自立と共生の友
愛精神に基づいた信頼される国をめざし、
「平和を享受する日本」から「平和を創造する国・
日本」に向けて主体的な外交を展開します。そのために、日米関係の成熟化、アジア近隣
諸国との信頼醸成、予防外交の積極的な展開、軍縮や地球環境、人権、貧困問題等への取
り組み、国連平和維持活動など国連の場を重視した平和秩序の構築、途上国支援など非軍
事的貢献としてODAの活用やNGO支援などを重視します。
予防外交
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民主党は、紛争の発生を未然に防止する「予防外交」を外交活動の柱とします。国際社
会での対話と信頼醸成を推進することで、「アジア不戦共同体」のような紛争に至らないた
めの国際環境を築くこと、対立の火種には和解を図ること、地域紛争の背景にある経済的
困難、貧困や社会的不平等の解決に向けて、NGOや国際機関等と連携して開発協力や人
道支援などを積極的に行うことなど、総合的な外交力で平和の創造に貢献していきます。
外務省改革
報償費汚職から一連の不祥事が続いてきたにも拘わらず、新たに会計検査院から支援委
員会等についての無駄が指摘されるなど、政府による改革は遅々として進みません。この
悪循環を断ち切る根本的な外務省刷新が必要です。民主党は、2000 年 2 月には人事刷新案
を発表。政府・与党が「改革」看板のかけ替えに終始するなか、2002 年 7 月に「外務省刷
新:7 つの柱」(外交のあり方と組織使命、組織、人的資源、経理・業務監査、海外援助と
国際開発、情報収集・情報公開、外交戦略の刷新)を提示し、外交の再建に全力で取り組
んでいます。
機密費(報償費)の改革
一連の不祥事の温床となった報償費を、抜本的に改革するため、(1)国の安全や外交等に
係る本来の「機密費」と一般経費に峻別し厳しい用途制限を課す、(2)「機密費支払い記録
書」の作成と、決算行政監視委員会(衆)、行政監視委員会(参)に設置する小委員会での
非公開審議、(3)とくに機密性の高いものは 25 年、それ以外は 10 年経過後に公表を義務づ
ける、等を内容とする「機密費の使用に係る文書の作成、公表等に関する法律案」の成立
をめざします。
日米関係
米国は、政治、経済、安全保障、文化・人的交流など多様な分野での重要なパートナー
です。地球的な問題や国際社会の平和と安全、自由経済の推進や各国の民主化支援など様々
な政治・経済上の課題に対し、日本の主体性をもって米国に対して建設的に関与し、質の
高い政策協議と協調行動を積み重ねていきます。日米安全保障体制を基軸に据えつつ、そ
のあり方については、米国との緊密な協議と意思疎通を図り、国際情勢の変化にあわせて
絶えず主体的に検証していきます。
日米地位協定の見直し
民主党は、沖縄に集中する在日米軍基地の縮小をめざすとともに、2000 年 5 月に「日米
地位協定の見直し案」を策定し、政府に改正を迫ってきました。とくに、一定の凶悪犯に
ついて、起訴前に日本の司法当局に引き渡しを認める刑事手続きの修正、米軍施設等への
日本法令適用の確認、環境保全条項の新設等を平成の条約改正と位置づけ、早急な改定を
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求めています。
日露関係
ロシアは、冷戦後の国際社会において、プーチン大統領の下、国際テロ対策での協調、
アメリカとの核軍縮、NATOとの連携強化、先進国首脳会議(サミット)への正式参加、
印パ紛争への仲介努力等、新たな秩序構築に向けて着々と外交実績を積み上げています。
日本は、核兵器廃棄への支援、経済・文化交流、民間交流等を継続しつつ、平和条約締結
交渉や鈴木宗男議員の関与等で歪められた北方領土返還交渉について、抜本的に建て直し
ます。
北方領土返還交渉
ロシアとの北方領土返還交渉は、鈴木宗男議員の疑惑や北方四島支援事業での外務省不
祥事などで頓挫しました。民主党は、北方四島の一括返還をめざし、2000 年 8 月の羽田孜
幹事長(当時)による初の総理経験者北方領土訪問、同年 9 月のプーチン大統領との会談
等、野党として問題解決に積極的に取り組んできました。今後とも、経済・文化交流等を
通じて信頼醸成に努め、ロシア国民の理解を深め、領土返還に向けて粘り強く交渉に臨み
ます。
日中関係
先に新指導部体制が発足した中国は、政治、経済の両面で、ますます国際社会における
存在感を高めていくでしょう。改革開放路線やWTO加盟、ARF(アセアン地域フォー
ラム)等への積極的な関与をはじめとした外交姿勢は歓迎しますが、一方で、在瀋陽日本
総領事館事件やODAのあり方等についての懸案も存在し、その解決が急がれます。国交
正常化 30 周年を経て、日中両国のさらなる友好関係の促進を図ります。
台湾問題
民主党は台湾の一方的な独立を支持せず、同時に中国の台湾に対する武力行使について
は断固反対します。わが国は、台湾海峡をめぐる緊張が生じないように中国・台湾にあら
ゆる予防的働きかけを行うことを外交政策の最重要課題の一つに位置づけるべきです。そ
の際には、1972 年の日中共同声明が前提となることは当然のことです。
日朝関係
2002 年 9 月 17 日の日朝首脳会談で、日朝平壌宣言がなされ、日朝国交正常化交渉が再開
されました。その際、北朝鮮は日本人拉致の事実を認め、その後、核開発の事実が明らか
になりました。拉致事件、核及びミサイル開発疑惑等の諸課題は、わが国の主権と国益、
国民の生命と人権に関わる重大な課題であり、これらの解明・解決を最優先課題とし、主
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体的に毅然と対応していくべきです。その際には、国民の人権及び安全、わが国の主権、
国益、安全保障を基本に、日米韓を中心に、中国、ロシア、EU等関係各国が緊密に連携
し、北朝鮮の姿勢を慎重に見極め、日本と北東アジア地域の平和と安全に資するよう取り
組みます。
北朝鮮脱出難民
2002 年の在瀋陽日本総領事館への北朝鮮脱出者の駆け込み事件は、外務省の態勢や体質
ばかりでなく、わが国の難民等への人道的な対応全体の見直しを迫るものでした。北朝鮮
にはかつての在日韓国・朝鮮人や日本人配偶者、その家族が 20 万人はいるとの推計もあり
ます。民主党では、議員連盟を設立し、韓国・中国・米国・国際機関やNGOなどとも協
議しつつ、中朝国境の北朝鮮からの脱出難民に対する人道的な救済策を含め、総合的に取
り組んでいきます。
日本人拉致事件
北朝鮮による拉致事件は、主権と人権・人道上の重大問題です。拉致被害帰国者の支援
に万全をつくすとともに、北朝鮮に残された家族の早期帰国、被害者や家族に対する北朝
鮮の謝罪と補償、被害者の全面解放と永住帰国による原状回復、責任者の処罰、再発防止、
未認定の拉致疑惑を含めさらなる徹底調査による拉致事件の全容解明などについて、北朝
鮮の具体的かつ誠意ある対応を強く迫りつつ、完全解決に向けて全力で取り組みます。ま
た、そのために国連決議を求めるなど国際世論にも強く働きかけていきます。
欧州・EUとの関係
ユーロ通貨統合やEU拡大など、欧州が新たな動きを見せるなか、わが国と欧州各国や
EUとの関係は、政治的にも経済的にもますます重要になっています。民主党では、欧州
政策検討プロジェクトで、欧州における政策動向についての理解を深めるとともに、国際
テロ対策での協調、WTO交渉、環境問題、ASEM(アジア欧州会合)や先進国首脳会
議などの場を通じて、相互の連携の強化と深化を図っていきます。
南西アジア地域との関係
南西アジア地域各国とわが国とは、文化・経済・外交等、親密で友好な関係を築いてき
ましたが、残念ながらインド・パキスタン両国の緊張が続いています。民主党はこの状況
を憂慮し、党幹部や女性議員団等の両国訪問を通じて、両国に対して自制と対話、和解を
強く求めてきました。とくに、両国の核兵器の保有については自制と核軍縮を粘り強く訴
えています。民主党は今後とも、南西アジア地域の安定のために積極的に取り組みます。
アフガニスタン復興支援
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アフガニスタンの復興支援は、アフガニスタン国民のためばかりでなく、中央アジア地
域の安定と国際テロや麻薬の取り締りなど国際社会の観点からも重要です。民主党は、い
ち早くこの点を指摘し、多くの皆様にご協力を頂きながら、現地や日本のNGOと連携し
て人道支援、復興支援に取り組んできました。これらをふまえて、2002 年 11 月にはアフガ
ニスタン女性支援会議を開催するなど、とくに女性や子女教育支援などを重視ししつつ、
アフガニスタンの復興支援に積極的に取り組んでいます。
中東情勢
イスラエルの軍事攻勢とパレスチナの自爆テロとの応酬は、とどまるところを知りませ
ん。ブッシュ政権は、パレスチナ国家の樹立を支持していますが、これに向けた道筋の提
示を 2003 年 1 月のイスラエル選挙後に延期しました。政府は、イスラエル軍の自治区から
の撤退とともに、パレスチナ自治政府が自爆テロ停止のための具体的な措置を取るよう、
国連等と連携して働きかけるべきです。米国がイスラエルに対して影響力を行使し、平和
的にパレスチナ国家の樹立ができるよう、わが国としてもねばり強く働きかけます。
イラク問題
イラク問題は、大量破壊兵器の不拡散や石油の安定供給などの観点から、わが国の外交
上、極めて重要です。民主党は、イラクが国連査察に全面的かつ速やかに協力し、大量破
壊兵器の廃棄など一連の国連安保理決議等を完全に履行するよう要求します。他方、イラ
ク問題は、国際協調の枠組みの中で解決が図られるべきであり、単独でも対イラク武力攻
撃をも辞さない米国の姿勢に対して、自制と慎重な対応を強く求めます。わが国は、イラ
クや国際社会の動向、憲法上の制約、国益等を慎重に見極めて、あくまでも外交的な解決
をめざし、主体的に対応すべきです。
アジア太平洋地域協力の推進
日米中にまたがるアジア太平洋地域が世界経済に果たす役割は、極めて大きいものです。
アジア太平洋経済協力閣僚会議(APEC)や様々な民間の経済交流の場等を通じて、開
かれた公正で自由な経済活動の場として、アジア太平洋地域の経済活動の環境整備と協力
を推進します。また、アジア経済危機の教訓を踏まえ、国際的な投機の監視等を実施し、
アジア金融システムの整備と安定にむけて積極的に取り組みます。
国際経済システムへの貢献
自由で公正、安定した国際経済システムは、グローバル化した世界で、共存共栄をめざ
すわが国に不可欠です。システムの恩恵を享受するばかりでなく、世界経済の健全な発展
をめざして、各国及び世界銀行(IBRD)、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(W
TO)などの国際経済機関と緊密に協力・連携し、安定した国際金融・通貨システムと、
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環境や人権にも配慮した公正な貿易ルールの確立に積極的に取り組みます。
国連改革
国連は、紛争解決能力の限界や非効率な運営などの問題が指摘されています。国連外交
を大きな柱とする日本は、国連が国際の平和、安全と繁栄に一層よく機能するように、国
連改革に主体的・積極的な役割を果たすべきです。安全保障理事会や拒否権の見直しとと
もに、国内世論と加盟国の支持を前提にわが国の常任理事国入りをめざします。経済社会
理事会の審議権限を強化し、開発や社会的な問題での総合調整機能を高めるよう努めます。
ODA(政府開発援助)
様々な疑惑や外交政策としての効果に疑問が呈されてきたODAは、予防外交・人道・
人間の安全保障といった外交政策の新たな柱として位置づけ、内容と執行方法を抜本的に
改革します。情報公開や事業評価を徹底させ、透明性・効率性を確保し、インフラやハコ
モノ等ハード重視型から、教育・人材育成や技術支援、医療・福祉、保健衛生、環境とい
った人や生活、ソフト面重視型とし、NGOとの連携をさらに強化します。
地球規模の問題
今や私たちの生活は、一国だけでは解決できない地球規模の問題に脅かされています。
環境問題、貧困、人権侵害、テロ、麻薬、難民、感染症、地雷除去など、人類の安全保障
に関わる国際社会の諸課題への対処は、紛争を予防し和解を図る上でも不可欠です。民主
党は、国連の諸機関の改革やODAの活用、NGOとの連携等を図り、各国と協調してそ
の解決に全力で取り組みます。
難民問題
戦争や紛争のたびに、人種、宗教、政治的意見等を理由とする迫害を怖れ、大量の難民
が生じています。日本は他国に比べて難民の受け入れに厳しい実態が、アフガン難民の申
請や在瀋陽日本総領事館事件で改めて浮き彫りにされました。人道的見地から難民認定制
度の抜本的な見直しと地域社会での受け入れ態勢の整備に着手します。また、そもそも難
民が生じないよう、国際的な支援活動や予防外交を積極的に推進します。
ジュネーブ諸条約・追加議定書
ジュネーブ諸条約等では戦時捕虜や戦傷病者、文民等の戦争犠牲者の人道的な保護が謳
われています。文民の保護は、
「民間防衛」の項で住民の避難等として列挙されていますが、
わが国は、ジュネーブ諸条約を補完する「追加議定書」に未加入で、有事法制法案におい
ても、政府は検討を避けています。民主党は、政府が早急に追加議定書に加入し、有事法
制の中でも、人道的見地から、ジュネーブ諸条約・追加議定書に基づく国内法を整備する
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ことを求めています。
国際刑事裁判所(ICC)
2002 年 7 月 1 日、国際刑事裁判所の設立条約が発効しました。集団殺戮や人道上の重大
犯罪、戦争犯罪、侵略を裁くための国際機関です。従来、戦争等に乗じて重大な犯罪行為
が繰り返されながら、内政不干渉の原則等によって具体的な解決を阻まれてきました。日
本は、国内法の未整備を理由に批准に至っていません。国際的に看過できない犯罪を裁く
という趣旨から、日本は、関連国内法を早急に整備し、ICCが機能するよう国際社会に
働きかけていくべきです。
核軍縮政策
北朝鮮やイラクによる核開発問題、核保有国であるインド、パキスタン間の緊張、ロシ
アからの核物質・技術の流出等の危険など、核拡散の脅威が指摘されています。核保有国
による核軍縮への取り組みと、実効性のある査察体制の確立を含む核不拡散体制の強化が
必要です。わが国は被爆国として、非核保有諸国やNGO等と連携をとりつつ、核軍縮の
先頭となって国際社会に働きかけていくべきです。
多層・多次元外交
NGO・民間・地方公共団体等のネットワークと連携し、幅広く厚みのある総合的な外
交をめざします。平和と共生をめざす日本のあり方を、国民全体で世界に発信していける
ように、留学生支援や若者・青少年交流、スポーツ交流等の国際交流活動、NGOや青年
海外協力隊等の地道な国際協力活動と連携し、日本の伝統・芸術・文化・技術・考え方な
どを積極的に発信し、「顔」の見える総合的な外交を展開します。
【安全保障】
冷戦構造の崩壊後、各国は新たな安全保障の秩序構築に様々な模索をしています。平和
への脅威も、従来の大規模な国家間紛争より、国内・地域紛争、テロやゲリラが増え、小
型兵器や核・生物化学兵器、サイバーテロなど形態も多様化し、新たな安全保障のあり方
が問われています。民主党では、安全保障対話と信頼醸成による紛争の予防・和解を第一
義とし、とくに、アジア地域での安全保障枠組みの構築をめざして、ARF(アセアン地
域フォーラム)等を充実させるとともに、「アジア不戦共同体」構想などを近隣諸国に提起
しています。日米安全保障体制を基軸としつつ、新たな脅威も含め、わが国と国民の平和
と安全・主権・人権が脅かされるような緊急事態に対処できるよう法制・態勢を整備しま
す。
日米安全保障体制
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日米安全保障条約の下で、日米が緊密な同盟関係にあることは、わが国の国益だけでな
く、NATOのような集団安全保障の枠組みを持たないアジア・太平洋地域の平和と安定
に大きく寄与しています。2001 年 9 月の米国同時多発テロ以来、米国の行動に変化も見ら
れます。同盟国としての信頼関係を基礎にして、米国が国際社会の理解を得られる行動を
とるよう、率直な協議を通じて日米安保体制の実効性を高めていきます。
在日米軍基地問題
冷戦後のアジア太平洋地域の安全保障における米軍のあり方や在日米軍基地の位置づけ
など中長期的な視点に立って検討を行い、地域における信頼醸成と安全保障枠組みの構築
とともに、在日米軍基地のあり方を不断に見直します。戦後半世紀を経てもなお、過度に
沖縄に集中し多くの負担と犠牲を強いている現状を直視し、沖縄米軍基地の国内外への移
設を含め、その整理・縮小の実現に積極的に取り組みます。
思いやり予算
日米安保条約、日米地位協定及び特別協定によるいわゆる「思いやり予算」で在日米軍
基地労働者の労務費、光熱費、訓練移転費等を日本が負担しています。近年、本来の目的
を逸脱している事例が散見され、不十分ながら米軍の節約努力、光熱費等の削減等の措置
が採られました。アジア・太平洋地域の平和といった中長期的な観点から、日米の経費負
担のあり方、公私の区分等について、より厳格な執行と不断の検証を求めていきます。
防衛庁改革
防衛庁は、個人情報リストを違法に作成したことで、国民の厳しい批判を浴び、人権意
識の欠落と組織的な隠蔽体質を露呈しました。実力組織として、よりきびしい規律が要求
されるにもかかわらず、調達疑惑等一連の不祥事等の反省が生かされておらず、これでは、
「省」への格上げどころか、安全保障に対する国民の信頼が得られません。徹底的な事件
の全容解明を行い、隊員の意識改革、再発防止の徹底など防衛庁の刷新にきびしく対応し
ていきます。
防衛の基本原則
民主党では、1999 年策定の「安全保障基本政策」で以下の原則を確認しています。(1)個
別的自衛権の行使を超えた海外における武力行使は行わない、(2)専守防衛の堅持、(3)実力
の保持は個別的自衛権のための必要最小限度、(4)集団的自衛権を行使しない、(5)核・生物・
化学兵器等の大量破壊兵器を保持しない、(6)自衛権の発動は、急迫不正の侵害で他に適当
な手段がない場合で必要最小限度の実力行使に限る、(7)徴兵制は採用しない、(8)文民統
制、(9)武器輸出三原則、(10)非核三原則など、国会審議を通じて戦後確立された諸原則
の尊重。
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中期防衛力整備計画
政府は、安全保障環境に基本的な変化はないとの認識のもと、個別装備品の是非論に終
始し、同時多発テロの発生や朝鮮半島情勢の変化に対応する新たな安全保障の将来像を示
していません。軍事情報技術革命、サイバー攻撃対策、テロ・ゲリラや核・生物・化学兵
器対処能力の向上、ミサイル防衛、人的基盤の充実等についてはハード面の整備が中心で、
運用態勢整備への施策が不十分です。国際情勢に即応した政策とすべく不断の見直しを求
めていきます。
緊急事態法制
現在の法制においては、緊急事態において、国民の生命・財産・基本的人権等を守るた
めに、迅速かつ適切な措置をとる上での様々な問題が指摘されています。自衛隊による防
衛活動、地方公共団体の協力、国民保護や民間防衛等の規定を整備するとともに、それぞ
れが連携して総合的かつ円滑に実施されるよう法や態勢を整備する必要があります。民主
的な統制を確保し、国会が政府と共同して緊急事態に対処するため、事態に応じて国会承
認等を通じて適切に関与していく仕組みを導入します。また、国民保護法制を整備して、
緊急時における基本的人権の保障や被害を被った場合の補償規定のあり方を含め検討しま
す。
民間防衛
有事の際には、自衛隊等が武力攻撃事態へ対処する一方で、国民・住民に被害が及ぶ可
能性が生じます。政府一体となった取り組みが重要であるにもかかわらず、政府の有事関
連法案は、地方自治体の役割の検討なども先送りしています。民主党は、日本版FEMA
(危機管理庁)の設置により、政府全体の取り組みを促進します。また、保護・避難・誘
導等に対して、NGO、NPO、ボランティア等と連携した被害極小化の方策について検
討します。
不審船・武装工作船問題
わが国周辺海域に不審船や武装工作船が出没している事態には、わが国海域の安全確保
上、毅然たる対応が必要です。不審船に対する警戒態勢、重武装をした工作船に対する武
器使用基準、官邸の危機管理体制のあり方、海上保安庁、警察庁と防衛庁及び外務省との
連携等について、緊急事態法制の検討も含めた検証を行います。
国際テロへの対応
2001 年 9 月 11 日の米国同時多発テロ以降、テロ撲滅への国際社会での協調が進んでいま
す。憲法上、海外での自衛隊活動は慎重でなくてはいけませんが、わが国も国際社会と協
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調して、憲法の枠内で毅然とした対応が必要です。一方、テロの背景には、社会的格差や
不公正等があり、わが国としては、紛争予防の観点で、テロの原因を取り除くために、国
際的な対話や協力の促進、貧困問題や人間の安全保障、中東和平への取り組み、人道援助、
復興開発支援等など、日本の特性を活かした外交努力を第一義とするべきです。
テロ特別措置法による自衛隊派遣
民主党は、いわゆる「テロ特別措置法」には、自衛隊の海外派遣への民主的統制の観点
から、国会の事前承認を求めて反対しました。しかし、同法成立後、2001 年 11 月に政府が
示した自衛隊による「対応措置」は、期間・活動範囲等が妥当と判断し承認しました。そ
の後、政府は、2002 年 5 月、11 月の 2 度にわたって期間を延長し、12 月 4 日、イージス艦
の派遣を決定しましたが、派遣の必要性、憲法・法律上の疑義、イラク問題等との関係、
現地での運用の問題点、国会での説明、派遣決定の手続き等を総合的に判断し、シビリア
ン・コントロールの観点から反対しました。民主党は、自衛隊派遣の継続については、そ
の都度、国会の審議に付し、事実をしっかりと質した上で是否を決めるよう強く求めてい
ます。
ミサイル防衛構想
ブッシュ政権は、対弾道ミサイル(ABM)制限条約の破棄や大陸間弾道弾の核弾頭削
減をする一方で、ミサイル迎撃システムの再構築など新たなミサイル防衛構想に踏み出し
ています。「日米共同技術研究を引き続き推進」とのわが国の立場も、大幅な修正を迫られ
る可能性があります。ミサイル防衛は、抑止的、政治的効果や日米同盟強化の側面と技術
的可能性や費用面から慎重な検討が必要であり、諸外国の評価も固まっていません。事態
の推移を見極めた対応が必要です。
情報収集・分析体制の強化
専守防衛を国是とするわが国は、情報収集・分析・対応能力の向上が喫緊の課題です。
不審船・武装工作船やミサイル発射の意図を知るのも、専門家による継続的かつ徹底的な
情報収集・分析が前提です。十分なチェック機能を付与したうえで、情報収集衛星の主体
的な運用、情報本部の充実、国連、各国政府、NGO等との連携を積極的に進めるべきで
す。
国連平和維持活動(PKO)
PKOは、国民の間にも理解と支持が定着しており、東ティモールにも、かつてない規
模でPKOを派遣しています。紛争停止や武装解除の監視、緩衝地帯における駐留・巡回
等のPKF活動も含め、国際的な平和の維持に対して積極的に貢献していくことを基本的
な政策として、発展するPKOの要請に応ずべく検討を重ねていきます。中東情勢等不透
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明ななか、NGOなどとも連携し、経済面、行政面での復興協力等を検討することが重要
です。
安全保障対話の促進
米国、アジア諸国、ロシア、EU、豪州など二国間・多国間協議の場において、安全保
障関係者の交流、基地や施設への相互訪問、演習などの事前通報・情報公開、通信連絡手
段の設置などの信頼醸成措置を積極的に実現していきます。また国際テロや海賊情報も含
めて安全保障情報の共同管理や情報交換、情報衛星の共同運営の提案などについて、憲法
の枠内で主体的・積極的なイニシアティブを果たすべきです。
アジア地域の安全保障枠組み
アジア太平洋地域の安全保障では、日米安保体制を柱としつつ、多国間安全保障対話の
枠組み構築をめざします。アセアン地域フォーラム(ARF)、ASEAN+3 など、既存
の仕組みを充実・発展させるとともに、いまだ枠組みのない東アジア地域において「北東
アジアフォーラム」や「東アジア不戦共同体」の構築に向けて、同地域における信頼醸成
を高め、安全保障対話を進めるようリーダーシップを発揮していきます。
国連の安全保障
国連の安全保障に対しては、安全保障理事会の改革、拒否権行使のあり方について検討
する一方、国連のPKO、紛争予防・和解等の活動には、日本も主体的・積極的に取り組
むことが重要です。他方、武力行使を伴う多国籍軍への参加は、安保理決議があろうとも、
わが国憲法によりできません。
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