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24
3.2
3.2.1
/
EU
EU とトルコは 1996 年に関税同盟の決定 No:1/95 に基づき、関税同盟を発足させ、第三国からのすべ
ての工業品に対して対外共通関税(CET)を適用することになった。トルコと EU 間の関税が撤廃され、
またトルコは第三国/地域に対しては EU 関税を適用することとなっている。また、関税同盟に伴い、通関
関連法制度、知的財産権制度、独占禁止法、関税課税制度を同じくしている。なお、EU では 1995 年以
降、地中海南・東岸の諸国と汎欧州・地中海パートナーシップ強化のためバルセロナ・プログラムを推進
し、自由貿易地域創出の一歩として各国/地域との個別の FTA 締結を行っているほか、汎欧州・地中海原
産地累積制度27を導入しており、これに関連して 2006 年に EU・トルコ関税同盟の協定にもいくつか改訂
が行われた。
農水産物については、1998 年に農業分野に関する関税同盟の決定 No:1/98 に署名し、アムステルダム
条約付属書Ⅰで定義される農水産物が全て除外されるが、これら除外品目の一部に対しては両国/地域間で
特恵付与(税率引き下げ・関税割当等)が与えられることとなった。将来的な農水産物分野についての共
通関税の適用には、共通農業政策(CAP)の完全な導入が前提とされている。また、特恵付与の内容につ
いては 2006 年に関税同盟の決定 No:2/2006 により改訂された。同年には農水産物の原産地規則につい
ての決定 No:3/2006 も制定されており、これにより汎欧州・地中海原産地規則に沿うものとなっている。
農水産物についてはアムステルダム条約付属書Ⅰに規定される品目がすべて除外されている。同付属書
では、農水産物、農水産物加工品について細かく設定されており、例えば砂糖、食肉や魚介類の調製品、
ワインやコルク等が含まれる。農水産物の除外品目の状況とそれに係る特恵付与を次頁表にとりまとめた
が、詳細なリストについては本稿巻末の添付資料 2 「アムステルダム条約付属書Ⅰ」を参照されたい。
次頁表 28 で農水産物に係る特恵付与の主な内容について見ることができるが、詳細なリストを本稿巻
末の添付資料 2 「トルコ産農産物に対する EU 特恵付与」「EU 産農産物に対するトルコ特恵付与」に挙
げた。
例えば、EU はトルコ産農産物に対して、羊やヤギ肉、七面鳥、羊・バッファロー乳チーズ、果汁等で
無税あるいは減税の関税割当枠を与えているほか、ジャガイモ、タマネギ、ナス、生食用ブドウ、スイカ
等の生鮮青果物については季節別に無税枠を設定している。また、トルコ産のワインや食酢については特
恵無税としている。
一方、トルコは EU 産農産物に対して、牛肉に割当枠計約 2 万トン(枠内 50%減)
、粉ミルクやチーズ
に無税枠をそれぞれ計 2,500 トン、3,300 トン、生鮮りんごに無税枠を 1,750 トン、穀物類に季節無税枠
を 3~20 万トン、大豆粗油に無税枠 6 万トン、飼料調製品に無税枠を 6,700 トン等を設定している。
27
対象は 42 か国:EU27 か国、アルジェリア、エジプト、イスラエル、ヨルダン、レバノン、モロッコ、シリア、チ
ュニジア、ガザ、パレスチナ自治区、EEA/EFTA(アイスランド、ノルウェー、スイス(リヒテンシュタインを含む)
)
、
フェロー諸島、トルコ
41
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
全て除外
食肉・くず肉
魚介類
生きている植物
果実・ナッツ等
穀物
穀粉等
油糧種子等
肉・魚介調製品
残留物・くず
2
3
6
8
10
11
12
16
23
マテ茶を除く全て除外
ウールグリース、ホホバ油、水添ひまし油、植物
野菜・根茎等
コーヒー紅茶等
油脂・ろう等
野菜果実調製品
7
9
15
20
税枠有り、果汁等割当枠有り
等以外は全て除外
42
トマト調製品で無税枠計約 4 万 t、ジャム等無
スイートコーン、ジャガイモミール、ピーナツバター、杏仁
性ろう、デグラス等以外は全て除外
オリーブ油で若干削減。
税削減枠
ッキーニ、ナス、ブドウ等の青果に季節無税枠等
0710 90 30)以外は全て除外
内 20%)、ジュース等割当枠 1 千 t(枠内 15%)
トマト調製品無税枠 300t、ジャム等割当枠 1 千 t(枠
税枠約 2 万 t 等
大豆粗油 季節無税枠 6 万 t、ヒマワリ油季節無
関税割当 200t(枠内最大税率 45%)
種ばれいしょ無税枠 6 千 t、キノコ、冷凍豆等に関
枠 3,700t、チーズ等計無税枠 3,300t 等
粉状等のミルク・クリームで無税枠 2,500t、バター等無税
大豆かす無税、ペット飼料・飼料調製品無税枠有り
肉の均質調製品に関税割当枠
ヒマワリ、綿実、播種用の種等に無税枠設定
オート麦フレーク、モルトに無税枠や関税割当枠設定
20 万 t、精米は無税枠約 3 万 t
小麦、ライ、大麦、メイズ等に季節無税枠 3~
その他果実無税枠割当て有り
生鮮リンゴ無税枠 1,750t、モモは季節無税枠 1,000t、
りん茎、その他、切り花等に無税枠設定
牛肉冷凍 関税割当枠約 2 万 t(枠内 50%削減)等
t、それ以外の牛 割当枠 4 千 t(枠内 50%削減)
繁殖用純粋種 無税、80-160kg の牛 無税枠 2 千
EU 産に対するトルコの特恵付与
ジャガイモ、玉ねぎ、カボチャ、スイカ、セロリ、ズ
羊・バッファロ-乳等のチーズ無税枠 2,300t
モルトで若干削減。
ライ麦で若干削減。
千t
羊肉無税枠 200t、七面鳥肉関税割当枠 1
トルコ産に対する EU の特恵付与
冷凍又は一時保存スイートコーン(0710 40 00、
たヨーグルト等以外は全て除外
デイリースプレッド、香味料・果実・ナットを加え
乳製品・卵等
除外対象
EU・トルコ関税同盟における農水産物(HS1~24、35、45、53)の除外品目、特恵付与状況
4
一部製品以外はほぼ全て除外
全て除外
生きている動物
項目
1
全て除外
HS
表 28
24
項目
除外なし
甘しゃ糖、甜菜糖、蔗糖、その他糖類、糖蜜
カカオ豆及びカカオ豆屑等のみ除外
魚介・肉等が 20%以上の詰め物をしたパスタ
タバコ(2401)を除外
アルブミン・アルブミン誘導体(3502)を除外
天然コルク(4501)を除外
亜麻(5301)、大麻(5302)を除外
組物材料等
糖類・砂糖菓子
ココア・ココア調製品
穀物・乳調製品
その他食用調製品
飲料・酢
タバコ
タンパク系物質
コルク製品
その他植物性繊維
14
17
18
19
21
22
24
35
45
53
出所)添付資料より作成
注)表中の数字は HS コード
ペクチン質等のみ除外
ラック・ガム等
13
酵酒(シードル、ミード等)、農産物由来のアル
ワインや食酢等)のみ除外
43
コール、食酢について全て免税
スパークリングワイン、ワイン、その他の発
トルコ産に対する EU の特恵付与
本リストの農産物を原料とするもの(例えば
外
香りもしくは色を付けた砂糖シロップのみ除
のみ除外
等のみ除外
産品(0511)のみ除外
牛の精液等以外の一部の非食用動物性生
動物由来製品
除外対象
5
一部製品のみ除外、又は除外製品なし
HS
24
35%)、食酢無税枠 2,500t
スパークリングワイン関税割当枠 750hl(枠内税率
EU 産に対するトルコの特恵付与
24
EU・トルコ関税同盟においては、品目別の原産地規則が導入されている。原則として、トルコ側はト
ルコ、EU 側は EU 又は欧州経済領域(EEA28)で生産された「完全生産品」
、又は「十分な作業または加
工」がなされている製品のいずれかが対象となる。品目別の「十分な作業又は加工」についての原産地規
則は、本稿巻末の添付資料 2 「品目別原産地規則(農産物関連)
」にとりまとめる。
なお、原産地規則には汎欧州・地中海原産地累積制度29が適用される。つまり、トルコ又は EU におい
て以下に示す「不十分な作業または加工」に示された最低限の加工を超える作業又は加工がなされた場合
には、その加工が上述の「十分な作業又は加工」に達しなくても、汎欧州・地中海協定加盟地域(EU、
トルコ、ブルガリア、スイス、リヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェー、ルーマニア、フェロー
諸島、その他)内での累積が認められる。
「完全生産品30」とは、以下の通りである。
a.
土壌または海底から抽出された鉱物性生産品
b.
当該国で栽培、収獲された植物、野菜
c.
生きている動物であって、当該国において生まれ、かつ、生育されたもの
d.
当該国で生育された生きている動物から得られる産品
e.
当該国で行われた狩猟または漁労により得られる産品
f.
当該国の船舶により、領海外の海から得られる水産物、その他の産品
g.
(f)の産品のみから工船の船上で作られた産品
h.
当該国で収集された中古の産品であって、原材料の回収にのみ適するもの
i.
当該国で行われた製造工程から生じた廃品およびくず
j.
領海外に位置するが、排他的開発権を有している海底、またはその地下から抽出された産品
k.
(a)から(j)に特定されている産品のみから作られた産品
「不十分な作業又は加工31」のリストは以下の通り。
(a)
輸送または保管の間に産品を良好な状態に保管することを確保する保存工程
(b)
改装および仕分
(c)
洗浄、浄化および粉じん、酸化物、油、塗料その他の被覆の除去
(d)
繊維のアイロンがけまたはプレス
(e)
塗装および研磨のための単純な工程
(f)
穀物・米について、殻を除き、一部または全部を漂白し、研磨し、およびつや出しする工程
(g)
砂糖を着色もしくは香り付けし、または角砂糖とすること、もしくは氷砂糖の一部または全部
の粉砕をするための工程
(h) 果実、ナッツおよび野菜の皮、核および種を除く工程
(i)
研ぐこと、単純な破砕または単純な切断
(j)
ふるい分け、選別、分類、格付または組み合わせる工程(物品をセットにする工程を含む)
(k)
瓶、缶、フラスコ、袋、ケースまたは箱に単純に詰めること、カードまたは板への単純な固定
その他の単純な包装工程
(l)
産品またはその包装にマーク、ラベル、シンボルマークその他これらに類する識別表示を付し、
または印刷する工程
28
29
30
31
EU とスイスを除く EFTA(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)との経済協定。
2011 年の汎欧州・地中海原産地規則が最新の規則となっている。
翻訳は JETRO, 2012, EU の GSP 原産地規則ガイド(仮約)に準ずる。
同上
44
24
(m) 産品の単純な混合(異なる種類の産品の混合であるか否かを問わない)、砂糖の他原料への混合
(n) 水の単純な添加、産品の希釈、脱水、もしくは変性
(o)
完成品とするための部品の単純な組立てまたは産品の部品への分解
(p)
(p)(a)から(o)までに規定する工程の 2 以上の工程の組み合せ
(q)
動物の屠畜
原産地証明には、通常は原産地証明として移動証明書「EUR.1」又は「EUR-MED」を提出すること
になるが、事前に「認定輸出業者」として認定された輸出業者、あるいは 6 千ユーロ以下の輸出業者は、
「インボイス申告」を提出し、これをもって原産地証明に代替することができる。なお、輸入品が少額の
場合は(小荷物で 500 ユーロ以下、個人貨物で 1,200 ユーロ以下)、原産地証明は不要である。
45
24
EU
トルコが EU に加盟した場合、トルコの農産業に与える負の影響が大きいと推計されている。
一例として、以下に EU 共同研究センター未来技術研究所(JRC-IPTS)2011 年報告書「トルコの EU
加盟が農産物市場に与える潜在的インパクト」における M. van Leeuwen 他によるモデル分析による影響
の例を挙げる32。これは EU の農業政策やプログラム等が農業分野に与える影響を評価するために整備さ
れた農産物市場予測モデル「AGMEMOD」をトルコに援用して分析を行ったものである。2020 年までに
トルコが加盟しない場合(EU27)をベースライン予測とし、これと 2015 年にトルコが EU に加盟する場
合(EU28)の予測とを比較した。為替レートや国際市場価格は FAPRI(2010)を用いている。トルコが
EU に加盟する場合、両国間の関税が撤廃され、さらに現在のレベルでの EU の共通農業政策による農家
への支援がトルコにも適用されるとの仮定を用いている。
特に、EU とトルコの間で価格差のある一般小麦、大麦、コーン、コメ、ジャガイモ、砂糖の分野でト
ルコの価格や生産が減少するとみられている。同じく食肉や卵、乳製品等も価格差があるが、価格低下に
よる国内需要の増大が見込まれているため、生産に対する影響はあまり見られない。
表 29
一般小麦
デュラム
大麦
コーン
コメ
ヒマワリ
ジャガイモ
砂糖
タバコ
綿
オリーブ油
トマト
オレンジ
りんご
牛肉
鶏肉
卵
羊肉
牛乳
バター
チーズ
その他生鮮
トルコの EU 加盟による農産業への影響(2020 年ベースラインシナリオからの変化率、%)
価格
-39.4
3.4
-40.5
-35.7
-15.7
-29.2
-28.9
-55.2
-56.2
-38.0
-34.7
-6.0
-19.5
-18.7
-31.6
30.8
-29.8
-8.1
-14.8
-11.2
-16.1
-10.9
トルコに与える影響
生産
国内需要
-11.2
4.7
3.6
2.7
-4.3
10.8
-21.5
10.0
-24.6
4.1
0.7
3.7
-53.1
-0.1
-27.3
14.8
7.9
0.7
19.6
3.5
-2.1
2.0
7.7
0.2
0.3
4.5
0.9
1.2
0.0
20.5
9.6
-8.0
12.7
41.0
29.4
45.7
3.1
2.7
0.3
4.8
0.0
3.5
1.2
自給率
-15.1
0.8
-13.6
-28.6
-27.6
-2.9
-53.0
-36.7
-36.6
15.5
-4.0
7.5
-4.0
-0.3
-17.0
19.1
-20.0
-11.1
2.5
4.8
2.3
(Van Leeuwen et al. 2011)
32
(Van Leeuwen et al. 2011)
46
価格
0.9
0.1
2.1
1.2
17.4
0.0
-1.0
0.0
-0.8
6.6
0.0
-4.5
-2.8
-0.5
0.0
-3.1
-1.8
-5.0
0.1
0.4
0.1
0.1
EU(27)に与える影響
生産
国内需要
10.5
16.6
39.1
35.1
15.0
23.7
5.1
9.6
13.1
25.8
11.9
25.2
3.6
7.3
7.5
12.5
24.3
16.7
184.2
969.5
6.3
5.5
77.0
74.0
33.8
9.4
25.6
23.4
7.5
7.5
14.9
12.6
12.3
15.1
14.6
11.8
11.0
6.7
28.1
11.7
6.8
27.1
自給率
-6.2
3.0
-7.0
-4.1
-10.1
-10.6
-3.5
-4.4
6.6
-73.4
0.7
1.7
22.3
1.8
0.0
2.1
-0.8
2.5
-0.7
0.0
9.6
24
図 16
2020 年ベースライン予測における主な作物の EU とトルコの価格差
(次頁に続く)
47
24
(前頁からの続き)
(Van Leeuwen et al. 2011)
48
24
3.2.2
FTA
以下では、EU・トルコ関税同盟以外のトルコの FTA について、エジプト、モロッコ、チリ、韓国を中
心にして、関税譲許、原産地規則、その他の各項目について内容を分析する。
トルコの農水産物に関する関税譲許の方式は、FTA 相手国によって異なる。エジプト、モロッコ、チリ
の場合ではトルコ側の関税譲許は、特定の関心品目についてのみ、関税割当枠を設けて、枠内について関
税の減免を行うという方式であった。エジプト、モロッコについては対象品目が非常に狭い範囲に留まっ
ているが、チリではかなり多くの品目をカバーするようになった。いずれも FTA 発効と同時に即時実施と
なる。韓国との関税譲許では、工業品と同じく全てのタリフラインについて除外、即時~10 年間での関税
撤廃が示される形となった。
関税譲許の品目分野については、一般に、トルコの関心品目は、ヘーゼルナッツ、干しあんず等乾燥果
実、イチジク、サクランボ、レモン等の果実類とその調製品、キュウリの酢漬け等の調製品、トマト調製
品、果汁、大豆油、ひまわり油、コーン油、マーガリン、オリーブ油、パスタ等となっている。また、逆
にトルコ側のセンシティブ品目には、穀物、野菜・果実、水産等の幅広い分野が含まれている。
トルコ・エジプト(2007 年発効)
農産物については工業品とは別枠で交渉し、一部のお互いの関心品目のみについて関税割当枠を定め、
完全撤廃あるいは削減する形式で、譲許を交換する方式を採用している。トルコは、トルコ側関心品目に
ついて、ヘーゼルナッツ、イチジク、乾燥アプリコット、各種植物油で無税枠が得られたのに対し、エジ
プト側関心品目に対して、コメ(玄米無税枠、精米関税半減)
、魚介類(全て関税半減)
、ナツメヤシやい
ちご等の一部果実やスパイス(無税枠)等を譲許している。(添付資料 2 参照)
トルコ・モロッコ(2006 年発効)
農産物については工業品とは別枠で交渉し、一部のお互いの関心品目のみについて関税割当枠を定め、
完全撤廃あるいは削減する形式で、譲許を交換する方式を採用している。エジプトに比べ、関税撤廃品目
は無く、削減は非常に限られている。トルコは、トルコ側関心品目について、チーズやヒヨコマメ、ヘー
ゼルナッツや乾燥果実等で 10~50%関税を削減する関税割当枠が得られたのに対し、モロッコ側関心品目
に対して、キャベツやキュウリ、アボカド等の野菜、スパイスやワインについて 10~35%関税を削減する
関税割当枠を付与している。(添付資料 2 参照)
トルコ・チリ(2011 年発効)
農産物については同じく工業品とは別枠で交渉した。トルコ側は、エジプトやモロッコと同じく、チリ
側関心品目について関税割当枠を定めて、即時に完全撤廃あるいは削減する形式であるが、エジプトやモ
ロッコとの協定に比べると対象品目の幅は非常に広い。チリは、一部の品目について除外(A 表)と 6 年
間かけての削減(B 表)を設定し、その他の全ての農産物についての関税を即時撤廃する。
チリの除外品目には、牛肉、豚肉、羊肉、くず肉、ミルク・クリーム、小麦粉、甜菜糖、甘しゃ糖、加
糖、砂糖を含んだココア等が含まれる。また、6 年間をかけて撤廃する品目には、ジャガイモ、スイート
コーン、豆、デュラム小麦、ライムギ、オーツ麦、コメ、ライムギ粉、オレガノ、魚油等が含まれる。
トルコの関税割当枠は魚介類や果実、野菜、それら調製品、飲料等について、50%~100%の削減が導入
され、一部果実については季節割当枠となった。
49
24
表 30
トルコ・チリ FTA におけるトルコの主な譲許内容
品目
割当枠
MFN 税率削減
サーモン等の一部の魚類
計 7,200 トン
枠内 50%削減
エビ等
計 300 トン
枠内 50 %削減
カキ等
2,200 トン
枠内無税
その他のチーズ
800 トン
枠内 50%削減
玉ねぎ、アスパラ、豆類等
各 50~200 トン
枠内無税
ニンニク
100 トン
枠内 50%削減
播種用の豆類種子
無制限枠
枠内無税
アーモンド、クルミ
計 1,400 トン
枠内 50%削減
パイナップル、アボカド、グアバ・マンゴ
無制限枠
枠内 50%削減
1,500 トン
5 月 1 日~8 月 31 日枠内無税
500 トン
12 月 1 日~4 月 30 日枠内 50%削減
リンゴ
3,000 トン
枠内 50%削減
アプリコット等
500 トン
11 月 1 日~4 月 30 日枠内無税
ナシ、イチゴ、キウイ等
各 100~600 トン
枠内 50%削減
冷凍ベリー類
1,500 トン
枠内 50%削減
コーヒー
無制限枠
枠内無税
ナツメグ、クローブ、生姜等
無制限枠
枠内 50%削減
穀粉、フレーク等(コーン、オーツ等)
各 50~400 トン
枠内 50%削減
ヒマワリ種子
500 トン
枠内無税
魚介調製品(サーモン、サバ等)
各 100~600 トン
枠内 50%削減
ー等
かんきつ類
出所)WTO ATR データベースを基に著者作成
トルコ・韓国(2012 年妥結)
工業品、農産物とも、全てのタリフラインの品目について、除外もしくは、即時撤廃~10 年かけての関
税削減等の各分類が設定される方式となった。自動車・機械部品、アルコール飲料(ワイン)、果汁・乾燥
果実、植物油、有機農産物がトルコの関心分野で、自動車、電気製品・部品、繊維がトルコのセンシティ
ブ分野であった。
農水産物については、10 年以内に撤廃する品目についてのトルコ・韓国 FTA におけるカバー率は、タ
リフラインでは韓国 52.5%、トルコ 52.7%、輸入額では韓国 96.7%、トルコ 96.8%となった。33 主要
な譲許状況と品目の内容については次頁表 31、表 32 にとりまとめる。
韓国側の完全除外品目はコメとコメ関連製品で、このほか牛肉、鶏肉、唐辛子、ニンニク、タマネギ、
ミカン、リンゴ、ナシ、サバ類、イカ(冷凍/乾燥)などについては現行関税を維持することとなった。ま
た、飼料用調製品や一部ワイン等は現行から 10~30%程度の削減にとどめている。
トルコ側については、インスタントコーヒー、キムチ、麺類、焼酎等で即時撤廃を行うこととなってい
る。
33
数値は、韓国関税貿易開発院ウェブサイト資料による
50
24
表 31
トルコ・韓国 FTA 農水産物の譲許状況
韓国の譲許
品目
トルコの譲許
輸入額
シェア
シェア
(百万$)
品目
輸入額
比重
シェア
(百万$)
即時撤廃
194
9.9
3.5
8.1
479
18.4
4.8
68.5
5 年で撤廃
201
10.3
17.9
40.8
62
2.4
0.3
4.2
(5 年以内)
395
20.2
21.4
48.9
541
20.7
5.1
72.7
7 年で撤廃
21
1.1
2.1
4.9
34
1.3
0
0
10 年で撤廃
609
31.2
18.8
42.9
801
30.7
1.7
24.1
(10 年以内)
1,025
52.5
42.4
96.7
1,376
52.7
6.8
96.8
RD *
134
6.9
0.2
0.6
175
6.7
0
0.5
譲許除外
795
40.7
1.2
2.7
1,060
40.6
0.2
2.7
E*
599
30.7
1.1
2.5
748
28.6
0.1
1.6
NS *
180
9.2
0
0.2
312
11.9
0
1.1
R*
16
0.8
0
0
-
-
-
-
1954
100
43.9
100
2,611
100
7.1
100
合計
出所)韓国関税貿易開発院ウェブサイト
注)RD: 両国の譲許表に示された削減関税率を適用、E:譲許表上の現行関税率を維持(Stand still 義務)、NS:Standstill 義務無
く、WTO 譲許税率の範囲内で調整可能、R:FTA 交渉で完全に除外
表 32
トルコ・韓国 FTA 農水産物の譲許各分類の主要な品目
韓国の譲許
トルコ譲許
主な品目
即時撤
廃
5 年撤廃
7 年撤廃
10 年
撤廃
RD
ャップ、調製食料品、タイムと月桂樹の葉、
194
オリーブオイル、天日塩、小麦(飼料用)
ン、パスタ、サトウキビ、インスタントコーヒー、マグロ
ジャム、バター調製品、イチジク(新鮮/乾
201
21
燥)、ビール、食塩、ヘーゼルナッツ
葉たばこ(オリエント種)、小麦粉、ココアペース
479
、バラ、からし種子、犬・猫飼料、ニシン
チューリップ、グラジオラス、アルブミ
ン、鯨類
62
34
801
メ、マグロ
補助飼料、ナマコ、イワシ、マス、カニ、カ
134
キ、ムール貝、アンコウ、エイ
ネギ、ブドウ、オレンジ、ミカン、甲イカ(冷
599
凍)、蜂蜜、ヒラメ、ナシ、松の実、ナツメ、クルミ
米
小麦グルテン、高麗人参類、サボテン
609 リ、ジャガイモ、大豆、サバ、サケ、ヒラ
ワリ油、ブドウジュース、いわし缶詰、ピスタチオ
R
チ、醤油、味噌、ビール、ベビー調製
葉たばこ(黄色種)、キャベツ、キュウ
ト、レモン汁、コーン油、醤油、ウイスキー、ワイン、ヒマ
その他紙巻タバコ、ローヤルゼリー、アイスクリーム
ン、その他の調製食料品、焼酎、キム
食料品、寒天、キハダマグロ
チョコレート、オリーブオイル(バージン)、レモ
NS
品目数
インスタントコーヒー、タバコ、ラーメ
パスタ、トマトペースト、レーズン、トマトケチ
牛肉、豚肉、鶏肉、唐辛子、ニンニク、タマ
E
主な品目
品目数
ヨーグルト、チューインガム、マーガリ
ン、砂糖菓子
混合ジュース、パイナップル、チェリ
ー、アプリコット
180 鶏肉、チーズ、コメ
16 -
出所)韓国関税貿易開発院ウェブサイト
51
175
748
312
0
24
エジプトとモロッコとの FTA について、原産地規則は EU の原産地規則に準じ、汎欧州・地中海原産
地累積制度が適用される。チリ、韓国との FTA においても、原産地規則は EU の原産地規則に準じるも
のとして規定されている。
52
24
3.3
/
トルコ政府で海外貿易を担当するのは経済省(Ministry of Economy – MoE)で、2011 年に外国貿易
事務次官局(Undersecretariat for Foreign Trade)から改組された組織である。このうち FTA 交渉を担
うのは EU 総局(General Directorate of the European Union)となっている。
貿易・投資促進業務を担うのは、トルコ輸出促進センター(Export Promotion Center of Turkey –
IGEME)で、日本の JETRO に当たる組織である。
図 17
経済省の機構図
出所)トルコ経済省ウェブサイト
トルコ海外経済連携委員会(Foreign Economic Relations Board – DEIK)はトルコの民間セクターの
海外経済連携の促進を担う団体で、トルコの大手企業 750 社のほか、40 の基金、112 の審議会、129 の商
業・工業会議所・商品取引所等をメンバーとする。FTA 等の貿易交渉のほか、海外との経済連携において
最も重要な民間団体となっている。
商工会議所では、アンカラ、イスタンブール、イズミルの商業会議所、工業会議所等が有力であるが、
上位組織としてトルコの商業会議所・商品取引所連盟( The Union of Chambers and Commodity
Exchanges of Turkey – TOBB)がある。また、トルコの主要な財閥企業が 1971 年に設立したのがトルコ
工業・企業家協会(Turkish Industrialists and Businessmen's Association – TUSIAD)で、大手 600 社
(傘下企業を含めると 4,000 社)が会員である。
53
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