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ADAM28:ヒト癌細胞の増殖・浸潤・転移への関与

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ADAM28:ヒト癌細胞の増殖・浸潤・転移への関与
〔生化学 第8
2巻 第1
0号,pp.9
4
0―9
4
9,2
0
1
0〕
!!!
特集:細胞外プロテオリシス研究の最前線
!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ADAM2
8:ヒト癌細胞の増殖・浸潤・転移への関与
望
月
早
月,岡
田
保
典
ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)遺伝子ファミリーの提唱から1
0数年余りが
過ぎ,ADAM 分子の生理的および病的状態での機能が明らかになりつつある.ADAM
は,プロテアーゼとして細胞膜タンパク質のシェディング(shedding)に中心的な役割を
果たすとともに,インテグリンをはじめとしたタンパク質との結合を介して細胞内シグナ
ルを調節する.ADAM2
8は,ADAM 分子の中でもヒト肺癌や乳癌において癌細胞特異的
に高発現しており,増殖因子代謝や細胞膜タンパク質との相互作用により癌細胞の増殖・
浸潤・転移に関わっている.また,血中 ADAM2
8レベルの測定は,肺癌の診断や病勢の
モニターに使用できる可能性があり,ADAM2
8を標的とした癌の診断・治療法への応用
が期待される.
は
じ
め
るとともに,ADAM 分子の中でも構造的にヘビ毒メタロ
に
プロテアーゼと最もホモロジーが高い ADAM2
8に関し
ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)は,ディス
て,その生化学的性質と癌細胞の増殖・浸潤・転移での作
インテグリン(ヘビ毒から単離された血小板凝集阻害因子)
用を解説する.なお,本稿では悪性上皮性腫瘍(癌腫)を
とメタロプロテアーゼ(Zn2+を活性中心に持つプロテアー
表す際に「癌」
,悪性腫瘍一般を総称する場合は「がん」と
ゼ)ドメインを有する膜貫通型タンパク質からなる遺伝子
して記載する.
ファミリーであり,細胞膜上の増殖因子・受容体・接着分
子のシェディングやインテグリンなどへの結合により細胞
1. ADAM 遺伝子ファミリー
の 接 着・運 動・増 殖 に 関 与 す る 多 機 能 分 子 で あ る.
ADAM は,スプライシングバリアントを有する若干の
ADAM の研究は Primakoff ら や Blobel ら による受精に関
例外を除けばすべて膜タンパク質であり,N 末端よりプロ
わる精子表面タンパク質 fertilin α(ADAM1)と fertilin β
ドメイン,メタロプロテアーゼドメイン,ディスインテグ
(ADAM2)の発見を契機に始まった.ADAM は受精や形
リンドメイン,システインリッチドメイン,細胞膜貫通ド
態形成などの発生・発育といった生理的現象に加えて3),
メイン,細胞内ドメインから構成されている.ADAM の
心肥大 ,癌細胞の増殖・転移 ,アルツハイマー病 ,て
兄弟遺伝子ファミリーとして,細胞膜貫通ドメインと細胞
んかんやけいれん8)などに関与することが明らかとなり,
内ドメインを欠失し,トロンボスポンジンタイプ I モチー
近年世界的に注目されるようになってきた.
フ を 持 つ 分 泌 型 タ ン パ ク 質 の ADAMTS(ADAM
1)
4)
2)
5,
6)
7)
本総説では,ADAM 遺伝子ファミリーについて概説す
with
thrombospondin motifs)が知られている.ヒトゲノム解析
データより,ADAM 遺伝子ファミリー分子として2
5種類
慶應義塾大学医学部病理学教室(〒1
6
0-0
0
1
6 東京都新
宿区信濃町3
5)
ADAM2
8: Involvement in cancer cell proliferation, invasion
and metastasis
Satsuki Mochizuki and Yasunori Okada(Department of Pathology, School of Medicine, Keio University, 3
5 Shinanomachi, Shinjuku-ku, Tokyo1
6
0―0
0
1
6, Japan)
の遺伝子が同定されており,そのうち4種類は偽遺伝子で
ある9).したがって,ヒトでは2
1種類の ADAM タンパク
質が産生され,そのうち HEXGHXXGXXHD 配列を活性
中心に有するプロテアーゼ型 ADAM 分子は1
3種類であ
り, 他の8種類は非プロテアーゼ型 ADAM である(表1)
.
ADAM と MMP(matrix metalloproteinase)遺伝子ファミリー
9
4
1
2
0
1
0年 1
0月〕
表1 ヒト ADAM 遺伝子ファミリー
ADAM
別名
酵素型(P)
非酵素型(NP)
splice variants (isoforms)
ADAM2 PH-30β, Fertilin-β NP
機能・特徴
基質
Sperm/egg binding/
fusion
α4β1, α6β1, α9β1 Testis
α4β1, α4β7, α9β1
CD2
3, proTNFα,
RANKL
ProHB-EGF, TNF-p7
5 re- α2β1, α6β1, α6β4,
ceptor, APP, fibronectin, α9β1, αVβ5
gelatin,
ADAM1
0 MDAM, Kuzbanian P
Sheddase, develop- ProTNF-α, collagen IV,
ment, angiogenesis
gelatin, myelin basic protein, Delta, APP, L1,
CD4
4, proHB-EGF, Notch,
Delta-like 1, Jagged ,
N-cadherin, E-cadherin ,
VE-cadherin, Ephrin A2,
Ephrin A5, FASL, IL6R
ADAM1
1 MDC
NP, Secreted form Tumor suppressor gene
P, Secreted form Sheddase, myogene- ProHB-EGF , IGFBP-3 α4β1, α7β1, α9β1
ADAM1
2 Meltrin-α,
sis, adipogenesis
and 5, proepiregulin colMCMP, MLTN,
lagen IV, gelatin, fiMLTNA
bronectin
P, Cytoplasmic Arteriosclerosis, an- Collagen IV, gelatin
αVβ3, α4β1, α5β1,
ADAM1
5 Metargidin,
giogenesis
α9β1
MDC1
5, AD5
6, form
CR II-7
ADAM7 EAP I, GP-8
3 NP
ADAM8 MS2(CD1
5
6) P
Shaddase, neutrophil
infiltration
ADAM9 MDC9, MCMP, P, Secreted form Shaddase, cell migration
Meltrin-γ
ADAM1
7 TACE, cSVP
P
ADAM1
8 ADAM2
7,
tMDC III
ADAM1
9 Meltrin-β,
FKSG3
4
NP
Sheddase, heart de- ProTNF-α , proTGF-α , α5β1
velopment
TNF-p7
5receptor, ErbB4,
TRANCE, proHB-EGF,
proamphiregulin,
proepiregulin, APP, IL6R,
CD4
4, L-selectin
ADAM2
8 e-MDC II,
MDC-Lm,
MDC-Ls
ADAM2
9 svph1
ADAM3
0 svph4
ADAM3
2 AJ1
3
1
5
6
3
ADAM3
3
NP
P
NP
P
ADAMDEC1
P
ADAM2
3 MDC3
Testis, erythrocyte
Macrophage, neutrophil
Various tissues
Kidney, brain, chondrocyte
Brain
Osteoblast, muscle,
chondrocyte, placenta
Smooth muscle cell,
chondrocyte,
endothelial cell, osteoclast, synovial cells
Macrophage, various
tissues
Testis
P, N-terminal form Sheddase, formation Proneuregulin, RANKL
of neuron and cardiovascular organs
P
Formation of sperm
P
NP, Cytoplasmic Regulate synaptic
form
transmission,
epilepsy
NP
Tumor suppressor
gene, epilepsy
P, Secreted form Growth factor me- Myelin basic protein,
tabolism
IGFBP-3, CD2
3,
Aggrecan
ADAM2
0
ADAM2
1 ADAM3
1
ADAM2
2 MDC2
発現部位
Integrin-binding
α4β1, α5β1
Various tissues
Testis
Testis
Brain
αVβ3
Brain, heart
α4β1, α4β7, α9β1 Lung, lymphocyte,
gastrointestinal system,
pancreas,
pituitary
gland
Testis
Testis
Testis
Genetically related to APP, KL-1, insulin B chain α4β1, α5β1, α9β1 Lung(flbroblast,
bronchial asthma
smooth muscle)
, uterus
Lymphatic system, gastrointestinal system
略語:HB-EGF, heparin-binding epidermal growth factor; APP, amyloid precursor protein; TNF, tumor necrosis factor; RANKL, receptor activator of nuclear factor κB ligand; IGFBP-3, insulin-like growth factor binding protein-3; TGF, transforming growth factor; IL6R,
interleukin-6 receptor; KL-1, Kit-ligand-1; ADAMDEC1, ADAM-like decysin 1. ADAM1,3,4,5は偽遺伝子であり,本表からは
削除している.
9
4
2
〔生化学 第8
2巻 第1
0号
は,近縁遺伝子ファミリーであり,両者はプロドメインと
ADAM では,ADAM2
2と ADAM2
3が神経シナプスで働
メタロプロテアーゼドメインを共有している.MMP は,
く特殊な分泌タンパク質 LGI1と結合して脳内のシナプス
主として細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)
伝達を調節しており,これらの分子結合破綻でてんかん発
を基質とするのに対し,ADAM の ECM 分解活性は限定的
作が発症する8).また,ADAM2
3は αvβ3インテグリンと
であり,主要な作用は膜タンパク質の細胞外ドメインを切
の結合によりインテグリ ン 活 性 を 抑 制 す る と さ れ13),
断・遊離するシェディングにあると考えられている(表
ADAM1
1はがん抑制遺伝子産物と報告されている14).
1)
.ADAM 分子のうち作用解析が最も進んでいるのは,
ADAM1
7(別名 tumor necrosis factor-α converting enzyme:
2. ADAM2
8の構造
TACE)である.遺伝子改変マウスを用いた研究から,
ADAM2
8遺伝子は,1
9
9
9年にヒトリンパ節 cDNA ライ
ADAM1
7は TNF-α のみならずトランスフォーミング増殖
ブラリーからクローニングされた15).ADAM2
8にはスプ
因子-α(TGF-α)や heparin-binding epidermal growth factor
ライスバリアントとして膜型 ADAM2
8(MDC-Lm)と分
(HB-EGF)などの膜型増殖因子のシェディングに中心的
泌型 ADAM2
8
(MDC-Ls)が存在し15),現在では ADAM2
8m
な役割を果たすとされている10).一方,ADAM1
2は,G-
および ADAM2
8s と呼ばれている16).ADAM2
8m は,7
7
5
protein coupled receptor(GPCR)刺激による細胞内シグナ
アミノ酸(分子量8
7kDa)からなる I 型膜貫通タンパク
ルで活性化され,膜型 HB-EGF のシェディングを通して
質で,N 末端側からプロドメイン,メタロプロテアーゼド
EGF 受容体を刺激することが知られており4),GPCR とチ
メイン,ディスインテグリンドメイン,システインリッチ
ロシンキナーゼ系受容体間のクロストークの一例として有
ドメイン,EGF 様ドメイン,細胞膜貫通ドメイン,細胞
名である.ADAM9,ADAM1
0,ADAM1
7は,アミロイド
内ドメインからなる(図1)
.ADAM2
8s は,5
4
0アミノ酸
前駆体タンパク質を分解する α-セクレターゼとしても知
(分子量6
5kDa)からなるタンパク質で,ディスインテグ
られている11).また,ADAM1
9は,発生過程において,
リンドメインまでは ADAM2
8m と同じ構造を持ち,その
心臓神経堤細胞や心血管内皮細胞,末梢神経系で強く発現
下流に短いシステインリッチドメインと分泌型特異的ドメ
し,それらの組織で発現するニューレグリン(neuregulin)
インを有する(図1)
.ADAM2
8のメタロプロテアーゼド
のシェディ ン グ に 関 与 し て い る12).非 プ ロ テ ア ー ゼ 型
メインには,HEMGHNFGMFHD の配列があり,3個のヒ
図1 膜型 ADAM2
8m と分泌型 ADAM2
8s のドメイン構造
ADAM2
8m は,シグナル配列(S)
,プロドメイン(PRO)
,メタロプロテアーゼドメイン(MP)
,ディスインテグ
リンドメイン(Dis)
,システインリッチドメイン(CR)
,EGF 様ドメイン(EGF)
,細胞膜貫通ドメイン(TM)
,
細胞内ドメイン(CT)から構成されている.一方,ADAM2
8s では TM や CT が欠損し,Dis の下流に短い CR と
分泌型特異的ドメイン(SS)が存在する.
2
0
1
0年 1
0月〕
9
4
3
スチジン残基に Zn2+が配位することで活性中心を形成し
活性中心の Zn2+に対する第4の配位子として機能し,ペ
ている(図2)
.また,その下流にはメチオニン残基を含
プチド結合の加水分解に必要な水分子と Zn2+との結合を
む Met-turn 構造(CVMDK)が存在し,活性中心の構造を
妨げている(図2)
.このシステイン残基を中心としたプ
補強している.ADAM2
8のプロドメインには,STCGM 配
ロドメインは,メタロプロテアーゼドメインに覆い被さる
列があり,この中のシステイン残基におけるチオール基が
ことにより潜在型における不活性状態を維持している(図
2,図3)
.ADAM 分子の多くは,プロドメインとメタロ
プロテアーゼドメインの間にプロホルモンプロセシング酵
素であるフューリン認識配列(RX
[R/K]
R)が存在し17),
フューリンによるプロドメインの切断で活性化を受ける.
しかし,ADAM2
8にはフューリン認識配列が存在せず,
活性化にはフューリン以外のプロテアーゼによる切断や他
の活性化機構の存在が推定される.いずれにしても活性化
に伴い,潜在型 ADAM2
8のプロドメインは切離され,低
分子化した活性 型 ADAM2
8と な る(図3)
.ADAM2
8の
ディスインテグリンドメインには RGD 配列は存在しない
が,RGD に相当する KDEC472 の配列があり,ディスイン
図2 潜在型 ADAM2
8活性中心の構造
活性中心には zinc-binding motif があり,3個のヒスチジン残基
が Zn2+に配位し,Met-turn 構造により補強されている.また,
プロドメインに存在する STCGM 配列のシステイン残基は,活
性中心の Zn2+に配位することによりプロペプチドが活性中心を
覆い潜在性を保持している.
テグリンループを構成する(図1)
.ADAM やヘビ毒メタ
ロプロテアーゼに関する結晶構造解析の結果から(武田ら
の章を参照)
,ADAM のメタロプロテアーゼドメイン,
ディスインテグリンドメイン,システインリッチドメイン
は,全体として細胞膜上で C 字型の構造を持つと推定さ
図3 ADAM2
8m と ADAM2
8s の構造と活性化
ADAM2
8は,メタロプロテアーゼドメイン(MP)
,ディスインテグリンドメイン(Dis)
,シイステインリッチドメイン(CR)
により C 字型の構造を呈すると推定される.潜在型 ADAM2
8の活性化部位については,細胞内あるいは細胞膜上かはな
お不明である.しかし,いずれにしても活性化に伴いプロドメインは切断され,低分子化する.PRO,プロドメイン;
EGF,EGF 様ドメイン;TM,細胞膜貫通ドメイン;CT,細胞内ドメイン;SS,分泌型特異的ドメイン.
9
4
4
〔生化学 第8
2巻 第1
0号
れている(図3)
.本結晶構造解析の結果から考えると,
胞ではオールトランスレチノイン酸処理で ADAM2
8が発
ADAM2
8の KDEC472 配列末端とシステインリッチドメイ
現誘導されると報告されている33).我々も肺癌細胞や乳癌
ンのシステイン残基間はジスルフィド結合(C472/C504)が
細胞を PMA やオールトランスレチノイン酸で刺激すると
形成され,ディスインテグリンループ全体が次に続くシス
ADAM2
8発現の上昇を認めており,ADAM2
8の発現調節
テインリッチドメインと相互作用をするため,同ループへ
にはプロテインキナーゼ C もしくはレチノイン酸核レセ
インテグリンが直接結合できる可能性は低いと考えられて
プターのシグナル伝達系の関与が考えられる.一方,乳癌
いる18).
や肺癌などで癌細胞特異的に発現がみられることから,が
3. ADAM2
8の発現と発現調節機構
生理的組織において ADAM2
8m は主としてリンパ節な
どのリンパ系組織で発現し,ADAM2
8s は脾臓で発現する
ん遺伝子による形質転換が ADAM2
8発現に関与すると推
定される.
4. ADAM2
8の基質と結合タンパク質
と報告されている15).また,イムノブロット解析では,
ADAM2
8は,ADAM 分子の中でもヘビ毒メタロプロテ
ADAM2
8m は B リンパ球と T リンパ球で8
7kDa のタンパ
アーゼ(snake venom metalloproteinase:SVM)と最も類似
1
5)
ク質として検出されている .一方,ADAM2
8は活性化
性 が 高 い と さ れ て い る16).こ の こ と か ら,ADAM2
8が
した肝星細胞で発現し,肝臓の線維化に関与する可能性が
SVM の基質である IV 型コラーゲンやフォンビルブランド
指摘されている .我々の研究グループは,ヒト乳癌と非
因子(VWF)を分解することも想像されるが,ADAM2
8
小細胞肺癌組織において1
1種類のメタロプロテアーゼ型
の基質に関する情報は限られている.ここでは,これまで
1
9)
ADAM の 遺 伝 子 発 現 を 網 羅 的 に ス ク リ ー ニ ン グ し,
に報告されてきた ADAM2
8の基質と結合タンパク質につ
ADAM2
8が癌組織特異的に高発現することを見出した.
いて解説する.
イ ム ノ ブ ロ ッ ト 解 析 の 結 果,ADAM2
8m は5
5/5
7kDa,
Myelin basic protein(MBP)
:MBP をリコンビナント
ADAM2
8s は4
2kDa の活性型酵素として癌組織内で存在
ADAM2
8とインキュベーションすると,MBP は2箇所で
していた20,21). 肺腺癌組織での ADAM2
8の特異的発現は,
切断されることから,ADAM2
8のプロテアーゼ活性が初
オーストラリアの研究グループによっても確認されてい
めて証明された34).MBP は神経細胞軸索を層状に取り囲
る22).頭頸部扁平上皮癌組織では5
5kDa の ADAM2
8m と
むミエリン(髄鞘)の主要タンパク質で,中枢神経ミエリ
4
2kDa の ADAM2
8s の発現が報告されており23),腎癌細胞
ン タ ン パ ク 質 の 約1/3を 占 め て い る.MBP は MMP や
でも ADAM2
8の発現が知られている .また,定量 PCR
ADAM 分子をはじめ多くのプロテアーゼで非特異的に分
2
4)
や免疫組織化学的検討において,悪性度の高い軟骨肉腫組
解されるが,ADAM2
8による MBP 分解の生理的あるいは
織で ADAM2
8が高発現し,ADAM2
8が軟骨肉腫と内軟骨
病的意義については不明である.
腫の鑑別診断に役立つ可能性が示唆されている25).
CD2
3:CD2
3は膜貫通型糖タンパク質で低親和性の IgE
ADAM 分子の発現調節機構に関する情報は少ないが,
レセプター(FcεR II)であり,B リンパ球,単球,濾胞樹
転写因子である Foxm1のノックアウトマウスでは ADAM
状細胞に発現している35).気管支喘息,関節リウマチ,炎
1
7の発現が9
0% 抑制されることから,ADAM1
7の発現
症性腸疾患などの疾患において可溶性 CD2
3の出現が知ら
に Foxm1の関与が示唆されている .星状神経膠細胞を
れている36).Fourie ら37)は,4
9種類のペプチドを用いて基
TNF-α 刺激すると転写因子である IRF1の活性化を介して
質のスクリーニングを行い,ADAM2
8が CD2
3の合成ペ
2
6)
ADAM8が発現誘導され ,ヒト前立腺癌細胞では活性酸
プチド分解活性を有し,ADAM8と ADAM1
5にも同様な
素により ADAM9の発現上昇が報告されている28).肝星細
活性を認めている.
2
7)
胞を TGF-β で処理するとホスファチジルイノシトール3-
IGFBP-3(insulin-like growth factor binding protein3)
:
キナーゼ(PI3キナーゼ)や mitogen-activated protein kinase
インスリン様増殖因子(IGF)は,成長ホルモンの影響下
(MAP キナーゼ)を介して ADAM1
2が発現する29).我々
に種々の組織によって産生される細胞成長制御ペプチドで
は,関節軟骨細胞においても ADAM1
2が TGF-β で選択的
あり,組織内では IGF の大部分は特異的結合タンパク質
に発現上昇することを報告している30).
である IGFBP との複合体として存在する.ヒトでは1
0種
ADAM2
8の発現調節機構については,ヒト単球細胞株
類の IGFBP がクローニン グ さ れ て お り,IGFBP-1∼6と
(THP-1)ではホルボールミリステートアセテート(PMA)
IGFBP-7∼1
0はそれぞれ高親和性と低親和性の IGF 結合能
刺激で発現上昇し,9-シスレチノイン酸処理でさらに発現
を有している.IGFBP-1∼1
0のうちで IGFBP-3は最も高
亢進することが報告されている31).また,THP-1細胞を低
濃度で血中に存在しており38),IGF が持つ増殖・分化・抗
比重リポタンパク質(LDL)で処理することで ADAM2
8
アポトーシスなどの作用は,IGFBP-3の選択的分解による
発現が上昇することも知られている32).一方,ヒト軟骨細
IGF/IGFBP-3複合体からの IGF 遊離によって調節されて
9
4
5
2
0
1
0年 1
0月〕
いる39).我々は,ADAM2
8が IGFBP-3をその中心領域で
ように, ADAM2
8を含めた多くの ADAM 分子(ADAM2,
切断し,IGF-I を複合体から遊離することを見出した40).
7,9,1
2,1
5,2
8,3
3)は α9β1と の 結 合 能 を 有 し,
IGFBP-3分 解 酵 素 に は,MMP-1,-2,-3,-7,-1
941∼44),
ADAM2
8は白 血 球 で 発 現 す る α4β1や α4β7と も 結 合 す
ADAM1
245)など,多種類のプロテアーゼが知られている.
る52,53).ADAM 分子はディスインテグリンループにある
これらの MMP や ADAM 分子のいくつかは癌組織内で発
R
(X5)
CDLPEM の配列(図1)を介して α9β1インテグリ
現していることから,in vivo で作用する IGFBP-3分解酵
ンと結合すると報告されている54).一方,Bridges ら53)は,
素を特定することは必ずしも容易ではな い.し か し,
ADAM2
8と α4β1インテグリンの結合は,上記の配列に加
MMP の多くは潜在型酵素として存在していることや,ヒ
えて,ディスインテグリンループの外側に位置するいくつ
ト乳癌組織を ADAM2
8に対する siRNA や中和抗体で処理
かのアミノ酸(Lys437,Lys442,Lys455,Lys459,Lys460,Lys469,
すると IGFBP-3分解が抑制されるのに対し,ADAM1
2に
Glu476)が必須であることを示している.いずれにしても,
対する siRNA では抑制されないことから,ヒト乳癌組織
ADAM2
8はインテグリンとの結合を介してプロテアーゼ
では ADAM2
8が IGFBP-3分解酵素として作用すると推測
活性非依存性に細胞の接着や運動を促進もしくは抑制する
される20).
可能性が考えられる.
アグリカン:関節軟骨の ECM 成分は,II 型コラーゲン
5. ADAM2
8の活性調節機構
とプロテオグリカンであるアグリカンが主体である.関節
リウマチや変形性関節症における関節軟骨破壊の際には,
生体内での ADAM 分子の酵素活性は,遺伝子発現,潜
アグリカンコアタンパク質の Glu373-Ala374 ボンド間の切断
在型酵素の活性化,インヒビターによる阻害の各ステップ
で形成されたフラグメントが中心的に出現することから,
で制御されているが,ADAM2
8の活性調節機構について
この部位を切断するアグリカナーゼと呼ばれる ADAMTS
はなお不明な点が多い(図4)
.遺伝子発現については前
1,4,5,8,9,1
5,1
6,1
8,2
0が注目されている
述したので,ここではそれ以外の調節機構について解説す
.
4
6∼4
8)
ADAM2
8はアグリカンを分解すると報告されているが33),
アグリカナーゼ活性を有するかは不明である.
る.
潜在型 ADAM2
8の活性化:ADAM 分子のうち ADAM
P-selectin glycoprotein ligand-1(PSGL-1)
:PSGL-1(別
9,1
0,1
2,1
5,1
7,1
9は,プロドメイン末端にフューリ
名 CD1
6
2)は P-セレクチン(CD6
2P)のリガンドであり,
ン認識配列(RX
[K/R]
R)を有し,細胞内でフューリンや
分子量2
2
0kDa のジスルフィド結合ホモダイマーとして発
関連のプロテアーゼにより活性化され,細胞膜表面に移動
現する¿型膜貫通タンパク質である.本分子はシアロムチ
すると考えられている.しかし,ADAM2
8には本配列が
ンファミリーに属し,末梢血の好中球,単球のみならず T
なく,マウス潜在型 ADAM2
8はゴルジ内で自己触媒作用
細胞やある種の癌細胞での発現が報告されている49,50).
により活性化されると考えられる16).潜在型の ADAM8,
我々の研究グループでは,酵母ツーハイブリッドシステム
ADAM1
5,ADAM2
8は4°
C 保存中に自発的に活性化する
で ADAM2
8相 互 作 用 タ ン パ ク 質 を 網 羅 的 に 探 索 し,
と報告されており37),潜在型 ADAM8の自発的活性化には
PSGL-1を同定した51).ADAM2
8のディスインテグリンド
C 末端ドメイン(ディスインテグリン,システインリッチ,
メインは PSGL-1細胞外ドメインの decamer repeat と結合
EGF 様各ドメイン)が必要とされている55).我々の検討で
し,本結合により PSGL-1/P-セレクチンを介した炎症細胞
は,潜在型 ADAM2
8を3
7°
C で3日間以上インキュベー
の血管内皮細胞へのローリング・接着・浸潤を亢進し,
ションすると,部分的な活性化 を 認 め て い る.潜 在 型
ADAM2
8が炎症局所での炎症細胞浸潤を促進することを
ADAM1
2は N -エチルマレイミド処理により活性化される
実験的に明らかにしている51).
が56),潜 在 型 ADAM2
8は N -エ チ ル マ レ イ ミ ド や4-
インテグリン(α4β1,α4β7,α9β1)
:ADAM のディス
aminophenylmercuric
acetate では活性化されなかった.一
インテグリンドメインはヘビ毒ディスインテグリンとホモ
方,潜 在 型 ADAM2
8を 活 性 型 MMP-1,2,3,7,9,1
3
ロジーを有することから,ADAM がインテグリンのリガ
で処理すると,MMP-7活性によってのみ活性化され,
ンドとなる可能性が古くから考えられてきた.インテグリ
MMP-7は潜在型 ADAM2
8の活性化因子として作用すると
ンは α 鎖と β 鎖のヘテロ二量体からなる機能分子であり,
推定される40).ナルディライシンは HB-EGF に結合するタ
2
4種類の αβ ヘテロ二量体が確認されている52).アミノ酸
ン パ ク 質 で あ る が,細 胞 膜 上 で ADAM1
7と 会 合 し て
配列,リガンド,機能の違いに基づいて,ARGD 受容体
ADAM1
7の 活 性 制 御 に 関 わ っ て い る57)(西 ら の 章 を 参
型(α5,α8,αv,αII)
,Bコラーゲン受容体型(α1,α2,
照)
.また,弾力線維の構成成分の一つである microfibril-
α1
0,α1
1)
,Cラミニン受容体型(α3,α6,α7)
,D白血
associated glycoprotein-2(MAGP-2)は,Jagged1(Notch の
球受容体型(αL,αM,αX,αD)
,Eそれ以外の型(α4β1,
リガンド)と結合し,ADAM1
7による Jagged1のシェディ
α4β7,α9β1)の5グループに分類されている52).表1の
ングを促進することが報告されている58).ADAM2
8は癌
9
4
6
〔生化学 第8
2巻 第1
0号
図4 ヒト癌細胞の増殖・浸潤・転移における ADAM2
8の作用
ADAM2
8は乳癌や肺癌細胞で発現し,活性化を受け,インヒビターとの不均衡をもとに,基質分解あるいはタンパ
ク質相互作用を介して,癌細胞の増殖・浸潤・転移促進に働く.
細胞や癌組織では,常に4
2kDa と5
5 kDa の活性型酵素と
ことを示唆している.RECK(reversion-inducing
して検出されており
,細胞や組織中には効率的な活
rich protein with Kazal motifs)は,ras がん遺伝子で形質転
性化機構が存在すると考えられる.潜在型 ADAM2
8タン
換した NIH3T3細胞を正常復帰させる遺伝子として単離さ
2
0,
2
1,
2
3)
cysteine-
パク質の限定分解や,相互作用分子による立体構造変化に
れた膜結合型(GPI-アンカー)タンパク質で,MT1-MMP,
基づく潜在型 ADAM2
8活性化機構の解明は,今後の重要
MMP-2,MMP-7などの酵素活性のインヒビターとして作
な研究課題である.
用する61).しかし,RECK は ADAM1
0の活性を阻害する
Tissue inhibitor of metalloproteinases(TIMP)による
ADAM2
8の 活 性 制 御:活 性 型 MMP に 共 通 な イ ン ヒ ビ
ターである TIMP には4種類 の 分 子(TIMP-1,2,3,4)
が区別されている59). TIMP の分子量は2
1―2
8kDa であり,
相互に4
0―5
0% のホモロジーを持つ.TIMP のインヒ ビ
タードメインは N 末端側領域にあり,MT-MMP の TIMP-
ことから62),ADAM2
8を含めた他の ADAM 分子へのイン
ヒビター活性の検討が必要である.
6. ADAM2
8の癌細胞増殖・浸潤・転移での役割
種々のヒト癌細胞が ADAM8,9,1
0,1
2,1
5,1
7,1
9,
2
8を発現することが報告されている5,6).我々は,ヒト乳
1不 応 答 を 除 け ば,い ず れ の TIMP も1:1の モ ル 比 で
癌組織や非小細胞肺癌組織において ADAM2
8が癌細胞で
MMP 活性を阻害する60).一方,TIMP の中で ADAM の酵
高発現し,ADAM2
8m と ADAM2
8s の mRNA レベルは癌
素活性を阻害するのは,主に TIMP-3である.ADAM2
8に
細胞の増殖マーカーである MIB-1陽性細胞率と正の相関
関しては,TIMP-3と TIMP-4がインヒビターとして機能
を示すことから,ADAM2
8はこれら癌細胞の増殖に関与
するのに対し,TIMP-1や TIMP-2の阻害活性はきわめて
する可能性を見出した20,21).また,ADAM2
8高発現乳癌細
弱い .TIMP-1や TIMP-2がインヒビターとして作用しな
胞株(MDA-MB2
3
1)では,ADAM2
8の発現ないし活性の
いことは,ADAM2
8の活性調節に TIMP 以外の組織由来
特異的な阻害により IGFBP-3の分解と IGF-I 誘導性細胞増
インヒビター分子や MMP とは異なる調節機構が存在する
殖が抑制された.さらに,ヌードマウス皮下に移植された
4
0)
9
4
7
2
0
1
0年 1
0月〕
同細胞株の腫瘍増殖は ADAM2
8に対する siRNA の投与に
ルは,病期 I 期の早期肺癌においても有意に上昇してお
より抑制された.これらの実験データから,乳癌細胞由来
り,肺癌診断に用いられている carcinoembryonic antigen よ
の ADAM2
8は IGFBP-3の分解により IGF-I/IGFBP-3複合
り感度と特異性の点で優れていた.これらのデータは,
体より IGF-I を遊離し,乳癌細胞の増殖促進に作用するこ
ADAM2
8を標的とした ELISA 系は非小細胞肺癌の診断や
とが強く示唆された .
病勢の非侵襲的モニター法として有望であることを示唆し
2
0)
ヒト非小細胞肺癌においては,ADAM2
8の発現レベル
ている66).
は癌細胞の増殖のみならずリンパ節転移と正の相関を示
MMP インヒビターを用いた癌治療は,明らかな有効性
し,ADAM2
8が癌細胞の浸潤・転移にも関与する可能性
を示す基礎的研究データにも関わらず,最終的には失敗に
が示唆された21).我々は ADAM2
8を高発現するヒト肺癌
終わってしまった.その理由として,(1)
MMP 分子特異
細胞株(PC-9細胞)においてルシフェラーゼを恒常的に
的インヒビターの開発ができなかったこと,(2)
標的とす
発現する安定細胞株を樹立し,NOD/SCID マウス尾静脈
る MMP 分子の特定をせずに臨床治験が進められたこと,
内注入による転移モデルを開発した.本癌細胞株での
(3)
臨床治験が末期の進行癌患者で進められたこと,(4)
ADAM2
8遺伝子発現を short hairpin RNA や siRNA で抑制
MMP の非 ECM 成分に対する活性や生体内での作用に関
すると肺転移が有意に抑制されることを認めており,
する情報が充分でなかったこと,(5)
MMP インヒビター
ADAM2
8が癌細胞の浸潤・転移にも重要な役割を果たす
による ADAM 分子の活性抑制の重大性が予期できなかっ
ことを示している(論文投稿準備中)
.
たこと,などがあげられる.これらの中でも,特に比較的
ADAM2
8の新規基質や相互作用分子を酵母ツーハイブ
広域スペクトルの MMP インヒビターを用いて,MMP 分
リット法を用いてヒト肺 cDNA ライブラリーより網羅的
子を特定することなく臨床治験が行われたことは反省すべ
に 探 索 し た 結 果,ADAM2
8の 結 合 タ ン パ ク 質 と し て
き点である.Devy ら67)は,ファージディスプレイ法を用
PSGL-151)や VWF などを見出している.PSGL-1は一部の
いて MMP-1
4
(MT1-MMP)に対するヒト型抗体を開発し,
癌細胞株で発現することから49,50),癌細胞で産生された
MT1-MMP 活性の特異的阻害により癌細胞の増殖・浸潤・
ADAM2
8が 癌 細 胞 膜 上 の PSGL-1と 結 合 す る こ と で,
転移と血管新生の有意な抑制を示し,MMP 研究分野では
PSGL-1/ P-セレクチンを介した血管内皮細胞上での癌細胞
ヒト型抗体を用いた治療法に対して期待が集まっている.
のローリングと内皮細胞間通過プロセスを亢進する可能性
MMP に対する広域スペクトル合成インヒビターである
が考えられる.VWF は一部のマウス癌細胞株に対してア
BB9
4
(Batimastat)
は,
IC50=5
0nM 程 度 で ADAM8や ADAM
ポトーシスを誘導する こ と が 報 告 さ れ て お り63),VWF
1
9の活性も阻害する68,69).一方,ADAM9に対する特異的
ノックアウトマウスを用いた実験では癌転移が促進すると
な 阻 害 剤 と し て CGS2
7
0
2
3が 報 告 さ れ て い る(Ki=1
されている64).また,進行癌患者においては血中 VWF の
7
0)
nM)
.Asakura ら4)は,2,
0
0
0個以上のメタロプロテアー
分解が亢進しており,その分解には生理的な VWF 分解酵
ゼ阻害剤から ADAM1
2活性に対する阻害剤(KB-R7
7
8
5)
素(ADAMTS-1
3)とは異なるプロテアーゼ活性が関与す
を開発した(IC50=0.
2
3µM)
.本インヒビターは,1µM
るとされている65).これらのことから,ADAM2
8は VWF
の濃度で ADAM2
8酵 素 活 性 も 阻 害 す る20,40).GI2
5
4
0
2
3X
と結合ないし分解することにより,VWF 促進性癌細胞ア
は,ADAM1
7よりも ADAM1
0に対して1
0
0倍以上強い阻
ポトーシスの抑制を通して癌細胞の浸潤・転移に関わる可
害 活 性 を 持 つ こ と が 報 告 さ れ て お り71),INCB3
6
1
9は
能性が推定される(論文投稿準備中)
.
ADAM9や ADAM3
3よ り も ADAM1
0と ADAM1
7に 対 し
て約3
0
0倍強い阻害活性を示すことが知られている72).し
7. ADAM2
8の診断・治療への応用
かし,特定の ADAM 分子の活性を特異的に阻害する合成
これまでの我々の研究から,ADAM2
8はヒト肺癌と乳
ペプチドインヒビターの開発には限界があると思われる.
癌細胞の増殖・浸潤・転移に関わる最も重要な ADAM 分
ADAM2
8の発現や活性抑制により肺癌や乳癌細胞の増
子の一つと考えられる(図4)
.ADAM2
8は癌細胞でほぼ
殖・転移が抑制されることは実験的には明らかなことか
特異的に発現されることから,癌組織中で産生された
)
ら20(論文投稿準備中)
,ADAM2
8を標的とした乳癌や肺
ADAM2
8は血中へと吸収され,肺癌患者では末梢血中に
癌の治療が今後期待される(図4)
.しかし,MMP インヒ
検出できると推測される.実際,我々は抗 ADAM2
8モノ
ビターを用いた臨床治験の失敗経験を踏まえて,ADAM
クローナル抗体を用いた ELISA(enzyme-linked
2
8分子特異的インヒビターの開発とともにその分子作用
immuno-
sorbent assay)系を開発し,非小細胞肺癌患者では血清中
ADAM2
8濃度が健常者より有意に高値であり,肺癌の臨
床病期,リンパ節転移,腫瘍径,再発の有無と正の相関を
示すことを明らかにした66).また,血清中 ADAM2
8レベ
機構の詳細な検討が臨床治験を進める上で必須である.
お
わ
り
に
ADAM2
8の性質とヒト癌における重要性について概説
9
4
8
〔生化学 第8
2巻 第1
0号
してきた.ADAM2
8は,ヒト ADAM 遺伝子ファミリー分
子の中でも癌細胞の増殖・浸潤・転移に最も深く関与する
分子の一つである.しかし,ADAM2
8の癌細胞選択的な
発現,遺伝子発現調節,活性化などの分子メカニズムにつ
いては未解決な部分が多く残されている.また,ADAM
2
8の基質や結合タンパク質についての情報も限られてお
り,プロテオーム解析技術を駆使した検討が待たれる.
ADAM2
8特異的インヒビターの開発や ADAM2
8を標的と
し た イ メ ー ジ ン グ や 治 療 薬 の 開 発 を 進 め る 一 方 で,
ADAM2
8の生理的組織での機能の解明も ADAM2
8分子標
的治療法開発に際して重要である.
文
献
1)Primakoff, P., Hyatt, H., & Tredick-Kline, J.(1
9
8
7)J. Cell
4
9.
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0
0
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0
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0)Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1
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9)Edwards, D.R., Handsley, M.M., & Pennington, C.J.(2
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9,2
5
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(2
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4,7
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0,4
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1
2)Wakatsuki, S., Kurisaki, T., & Sehara-Fujisawa, A.(2
0
0
4)J.
Neurochem.,8
9,1
1
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3)Verbisck, N.V., Costa, E.T., Costa, F.F., Cavalher, F.P., Costa,
M.D., Muras, A., Paixao, V.A., Moura, R., Granato, M.F., Ierardi, D.F., Machado, T., Melo, F., Ribeiro, K.B., Cunha, I.W.,
Lima, V.C., Maciel Mdo, S., Carvalho, A.L., Soares, F.F.,
Zanata, S., Sogayar, M.C., Chammas, R., & Camargo, A.A.
(2
0
0
9)Cancer Res.,6
9,5
5
4
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5
5
2.
1
4)Emi, M., Katagiri, T., Harada, Y., Saito, H., Inazawa, J., Ito, I.,
Kasumi, F., & Nakamura, Y.(1
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3)Nat. Genet.,5,1
5
1―1
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5)Roberts, C.M., Tani, P.H., Bridges, L.C., Laszik, Z., & Bowditch, R.D.(1
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9)J. Biol. Chem.,2
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4,2
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2
5
1―2
9
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6)Howard, L., Maciewicz, R.A., & Blobel, C.P.(2
0
0
0)Biochem.
J .,3
4
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1
7)Massova, I., Kotra, L.P., Fridman, R., & Mobashery, S.(1
9
9
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2,1
0
7
5―1
0
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1
8)Takeda, S., Igarashi, T., Mori, H., & Araki, S.(2
0
0
6)EMBO
J .,2
5,2
3
8
8―2
3
9
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1
9)Schwettmann, L., Wehmeier, M., Jokovic, D., Aleksandrova,
K., Brand, K., Manns, M.P., Lichtinghagen, R., & Bahr, M.J.
(2
0
0
8)J. Hepatol .,4
9,2
4
3―2
5
0.
2
0)Mitsui, Y., Mochizuki, S., Kodama, T., Shimoda, M., Ohtsuka,
T., Shiomi, T., Chijiiwa, M., Ikeda, T., Kitajima, M., & Okada,
Y.(2
0
0
6)Cancer Res.,6
6,9
9
1
3―9
9
2
0.
2
1)Ohtsuka, T., Shiomi, T., Shimoda, M., Kodama, T., Amour, A.,
Murphy, G., Ohuchi, E., Kobayashi, K., & Okada, Y.(2
0
0
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Int. J. Cancer,1
1
8,2
6
3―2
7
3.
2
2)Wright, C.M., Larsen, J.E., Hayward, N.K., Martins, M.U.,
Tan, M.E., Davidson, M.R., Savarimuthu, S.M., McLachlan, R.
E., Passmore, L.H., Windsor, M.N., Clarke, B.E., Duhig, E.E.,
Yang, I.A., Bowman, R.V., & Fong, K.M. (2
0
1
0) Genes
Chromosomes Cancer,4
9,6
8
8―6
9
8.
2
3)Stokes, A., Joutsa, J., Ala-Aho, R., Pitchers, M., Pennington,
C.J., Martin, C., Premachandra, D.J., Okada, Y., Peltonen, J.,
Grenman, R., James, H.A., Edwards, D.R., & Kahari, V.M.
(2
0
1
0)Clin. Cancer Res.,1
6,2
0
2
2―2
0
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2
4)Roemer, A., Schwettmann, L., Jung, M., Roigas, J., Kristiansen, G., Schnorr, D., Loening, S.A., Jung, K., & Lichtinghagen,
R.(2
0
0
4)Oncol. Rep.,1
1,5
2
9―5
3
6.
2
5)Matsuura, S., Oda, Y., Matono, H., Izumi, T., Yamamoto, H.,
Tamiya, S., Iwamoto, Y., & Tsuneyoshi, M.(2
0
1
0)Hum. Pathol .,4
1,3
4
3―3
5
1.
2
6)Kim, I.M., Ramakrishna, S., Gusarova, G.A., Yoder, H.M.,
Costa, R.H., & Kalinichenko, V.V.(2
0
0
5)J. Biol. Chem.,
2
8
0,2
2
2
7
8―2
2
2
8
6.
2
7)Schlomann, U., Rathke-Hartlieb, S., Yamamoto, S., Jockusch,
H., & Bartsch, J.W.(2
0
0
0)J. Neurosci.,2
0,7
9
6
4―7
9
7
1.
2
8)Sung, S.Y., Kubo, H., Shigemura, K., Arnold, R.S., Logani, S.,
Wang, R., Konaka, H., Nakagawa, M., Mousses, S., Amin, M.,
Anderson, C., Johnstone, P., Petros, J.A., Marshall, F.F., Zhau,
H.E., & Chung, L.W.(2
0
0
6)Cancer Res.,6
6,9
5
1
9―9
5
2
6.
2
9)Le Pabic, H., Bonnier, D., Wewer, U.M., Coutand, A., Musso,
O., Baffet, G., Clement, B., & Theret, N.(2
0
0
3)Hepatology,
3
7,1
0
5
6―1
0
6
6.
3
0)Okada, A., Mochizuki, S., Yatabe, T., Kimura, T., Shiomi, T.,
Fujita, Y., Matsumoto, H., Sehara-Fujisawa, A., Iwamoto, Y.,
& Okada, Y.(2
0
0
8)Arthritis Rheum.,5
8,7
7
8―7
8
9.
3
1)Worley, J.R., Baugh, M.D., Hughes, D.A., Edwards, D.R.,
Hogan, A., Sampson, M.J., & Gavrilovic, J.(2
0
0
3)J. Biol.
Chem.,2
7
8,5
1
3
4
0―5
1
3
4
6.
3
2)Worley, J.R., Hughes, D.A., Dozio, N., Gavrilovic, J., &
Sampson, M.J.(2
0
0
7)Cardiovasc. Diabetol .,6,2
1.
3
3)Hikichi, Y., Yoshimura, K., & Takigawa, M.(2
0
0
9)Biochem.
Biophys. Res. Commun.,3
8
6,2
9
4―2
9
9.
3
4)Howard, L., Zheng, Y., Horrocks, M., Maciewicz, R.A., &
Blobel, C.(2
0
0
1)FEBS Lett.,4
9
8,8
2―8
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3
5)Delespesse, G., Sarfati, M., Wu, C.Y., Fournier, S., & Letellier,
M.(1
9
9
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2
5,7
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3
6)Bonnefoy, J.Y., Plater-Zyberk, C., Lecoanet-Henchoz, S.,
Gauchat, J.F., Aubry, J.P., & Graber, P.(1
9
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6)Immunol. Today,1
7,4
1
8―4
2
0.
3
7)Fourie, A.M., Coles, F., Moreno, V., & Karlsson, L.(2
0
0
3)J.
Biol. Chem.,2
7
8,3
0
4
6
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0
4
7
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3
8)Hwa, V., Oh, Y., & Rosenfeld, R.G.(1
9
9
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0,
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0
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0年 1
0月〕
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6
9,2
5
7
4
2―2
5
7
4
6.
4
2)Miyamoto, S., Yano, K., Sugimoto, S., Ishii, G., Hasebe, T.,
Endoh, Y., Kodama, K., Goya, M., Chiba, T., & Ochiai, A.
(2
0
0
4)Cancer Res.,6
4,6
6
5―6
7
1.
4
3)Manes, S., Llorente, M., Lacalle, R.A., Gomez-Mouton, C.,
Kremer, L., Mira, E., & Martinez, A.C.(1
9
9
9)J. Biol. Chem.,
2
7
4,6
9
3
5―6
9
4
5.
4
4)Sadowski, T., Dietrich, S., Koschinsky, F., & Sedlacek, R.
(2
0
0
3)Mol. Biol. Cell .,1
4,4
5
6
9―4
5
8
0.
4
5)Loechel, F., Fox, J.W., Murphy, G., Albrechtsen, R., &
Wewer, U.M.(2
0
0
0)Biochem. Biophys. Res. Commun., 2
7
8,
5
1
1―5
1
5.
4
6)Okada, Y. (2
0
0
9) Proteinases and matrix degradation. in
Kelley’
s Textbook of Rheumatology(Harris, E.D., J., Budd, R.
C., Genovese, M.C., Firestein, G.S., & Sargent, J.S. eds.)
, 8th
edition, pp.1
1
5―1
3
4, Elsevier Saunders, Philadelphia.
4
7)Zeng, W., Corcoran, C., Collins-Racie, L.A., Lavallie, E.R.,
Morris, E.A., & Flannery, C.R. (2
0
0
6) Biochim. Biophys.
Acta,1
7
6
0,5
1
7―5
2
4.
4
8)Silver, D.L., Hou, L., Somerville, R., Young, M.E., Apte, S.S.,
& Pavan, W.J.(2
0
0
8)PLoS Genet.,4, e1
0
0
0
0
0
3.
4
9)Thomas, G.M., Panicot-Dubois, L., Lacroix, R., Dignat-George,
F., Lombardo, D., & Dubois, C.(2
0
0
9)J. Exp. Med ., 2
0
6,
1
9
1
3―1
9
2
7.
5
0)Dimitroff, C.J., Descheny, L., Trujillo, N., Kim, R., Nguyen,
V., Huang, W., Pienta, K.J., Kutok, J.L., & Rubin, M.A.
(2
0
0
5)Cancer Res.,6
5,5
7
5
0―5
7
6
0.
5
1)Shimoda, M., Hashimoto, G., Mochizuki, S., Ikeda, E., Nagai,
N., Ishida, S., & Okada, Y.(2
0
0
7)J. Biol. Chem., 2
8
2, 2
5
8
6
4―
2
5
8
7
4.
5
2)Bridges, L.C. & Bowditch, R.D.(2
0
0
5)Curr. Pharm. Des.,
1
1,8
3
7―8
4
7.
5
3)Bridges, L.C., Hanson, K.R., Tani, P.H., Mather, T., & Bowditch, R.D.(2
0
0
3)Biochemistry,4
2,3
7
3
4―3
7
4
1.
5
4)Eto, K., Huet, C., Tarui, T., Kupriyanov, S., Liu, H. Z., PuzonMcLaughlin, W., Zhang, X.P., Sheppard, D., Engvall, E., &
Takada, Y.(2
0
0
2)J. Biol. Chem.,2
7
7,1
7
8
0
4―1
7
8
1
0.
5
5)Hall, T., Leone, J.W., Wiese, J.F., Griggs, D.W., Pegg, L.E.,
Pauley, A.M., Tomasselli, A.G., & Zack, M.D.(2
0
0
9)Biosci.
Rep.,2
9,2
1
7―2
2
8
5
6)Loechel, F., Gilpin, B.J., Engvall, E., Albrechtsen, R., &
Wewer, U.M.(1
9
9
8)J. Biol. Chem.,2
7
3,1
6
9
9
3―1
6
9
9
7.
5
7)Nishi, E., Hiraoka, Y., Yoshida, K., Okawa, K., & Kita, T.
(2
0
0
6)J. Biol. Chem.,2
8
1,3
1
1
6
4―3
1
1
7
2.
5
8)Nehring, L.C., Miyamoto, A., Hein, P.W., Weinmaster, G., &
Shipley, J.M.(2
0
0
5)J. Biol. Chem.,2
8
0,2
0
3
4
9―2
0
3
5
5.
5
9)Gomez, D.E., Alonso, D.F., Yoshiji, H., & Thorgeirsson, U.P.
9
4
9
(1
9
9
7)Eur. J. Cell. Biol .,7
4,1
1
1―1
2
2.
6
0)Brew, K., Dinakarpandian, D., & Nagase, H.(2
0
0
0)Biochim.
Biophys. Acta,1
4
7
7,2
6
7―2
8
3.
6
1)Oh, J., Takahashi, R., Kondo, S., Mizoguchi, A., Adachi, E.,
Sasahara, R.M., Nishimura, S., Imamura, Y., Kitayama, H., Alexander, D.B., Ide, C., Horan, T.P., Arakawa, T., Yoshida, H.,
Nishikawa, S., Itoh, Y., Seiki, M., Itohara, S., Takahashi, C., &
Noda, M.(2
0
0
1)Cell ,1
4,7
8
9―8
0
0.
6
2)Muraguchi, T., Takegami, Y., Ohtsuka, T., Kitajima, S., Chandana, E.P., Omura, A., Miki, T., Takahashi, R., Matsumoto, N.,
Ludwig, A., Noda, M., & Takahashi, C.(2
0
0
7)Nat. Neurosci.,1
0,8
3
8―8
4
5.
6
3)Terraube, V., Marx, I., & Denis, C.V.(2
0
0
7)Thromb. Res.,
1
2
0, S6
4―7
0.
6
4)Terraube, V., Pendu, R., Baruch, D., Gebbink, M.F., Meyer,
D., Lenting, P.J., & Denis, C.V.(2
0
0
6)J. Thromb. Haemost.,
4,5
1
9―5
2
6.
6
5)Koo, B.H., Oh, D., Chung, S.Y., Kim, N.K., Park, S., Jang, Y.,
& Chung, K. H.(2
0
0
2)Thromb. Res.,1
0
5,4
7
1―4
7
6.
6
6)Kuroda, H., Mochizuki, S., Shimoda, M., Chijiiwa, M., Kamiya, K., Izumi, Y., Watanabe, M., Horinouchi, H., Kawamura,
M., Kobayashi, K., & Okada, Y.(2
0
1
0)Int. J. Cancer., 1
2
7,
1
8
4
4―1
8
5
6.
6
7)Devy, L., Huang, L., Naa, L., Yanamandra, N., Pieters, H.,
Frans, N., Chang, E., Tao, Q., Vanhove, M., Lejeune, A., van
Gool, R., Sexton, D. J., Kuang, G., Rank, D., Hogan, S., Pazmany, C., Ma, Y.L., Schoonbroodt, S., Nixon, A.E., Ladner, R.
C., Hoet, R., Henderikx, P., Tenhoor, C., Rabbani, S.A., Valentino, M.L., Wood, C.R., & Dransfield, D.T.(2
0
0
9)Cancer
Res.,6
9,1
5
1
7―1
5
2
6.
6
8)Schlomann, U., Wildeboer, D., Webster, A., Antropova, O.,
Zeuschner, D., Knight, C.G., Docherty, A. J., Lambert, M.,
Skelton, L., Jockusch, H., & Bartsch, J.W.(2
0
0
2)J. Biol.
Chem.,2
7
7,4
8
2
1
0―4
8
2
1
9.
6
9)Chesneau, V., Becherer, J.D., Zheng, Y., Erdjument-Bromage,
H., Tempst, P., & Blobel, C.P.(2
0
0
3)J. Biol. Chem., 2
7
8,
2
2
3
3
1―2
2
3
4
0.
7
0)Roghani, M., Becherer, J.D., Moss, M.L., Atherton, R.E.,
Erdjument-Bromage, H., Arribas, J., Blackburn, R.K.,
Weskamp, G., Tempst, P., & Blobel, C.P. (1
9
9
9) J. Biol.
Chem.,2
7
4,3
5
3
1―3
5
4
0.
7
1)Ludwig, A., Hundhausen, C., Lambert, M.H., Broadway, N.,
Andrews, R.C., Bickett, D.M., Leesnitzer, M.A., & Becherer, J.
D.(2
0
0
5)Comb. Chem. High Throughput Screen,8,1
6
1―1
7
1.
7
2)Zhou, B.B., Peyton, M., He, B., Liu, C., Girard, L., Caudler,
E., Lo, Y., Baribaud, F., Mikami, I., Reguart, N., Yang, G., Li,
Y., Yao, W., Vaddi, K., Gazdar, A.F., Friedman, S.M., Jablons,
D.M., Newton, R.C., Fridman, J.S., Minna, J.D., & Scherle, P.
A.(2
0
0
6)Cancer Cell ,1
0,3
9―5
0.
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