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4350 メディカルシステムネットワーク

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4350 メディカルシステムネットワーク
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
4350 メディカルシステムネットワーク
~調剤薬局のネットワークで業界 No.1 独自の地域ケアシステムを展開~
2015 年 2 月 18 日
東証 1 部
ポイント
・2015 年 3 月期に続き、2016 年 3 月期もピーク利益を更新しよう。調剤薬局事業の業績
が伸びてくることによる。2015 年 3 月期の上期は、薬価改定の負担で減益幅が拡大した
が、これは前回の薬価改定に伴う卸との価格交渉が 2 年がかりとなったこともマイナス
に影響した。今回の交渉はスムーズに進展したので、下期には好転している。M&A の効果
もあり、通期で 10%経常増益となろう。来 2016 年 3 月期は、経営効率の向上も加わるの
で、同 22%増益が期待できよう。
・トータル・メディカルサービス(TMS)を買収し、2013 年 12 月から当社の連結業績に入
った。同社は調剤薬局を九州中心に 35 店ほど展開する。年商 90 億円強、営業利益 5 億
円(のれん償却後)が加わっている。先方の大野社長はそのまま経営に当たっており、九
州地域の基盤は強化されている。
・当社は医薬品の卸と調剤薬局を結ぶネットワークで業界 No.1、医薬品の取扱高でも業
界トップクラスである。発注システム、在庫管理システム、レセプトデータ管理システ
ムなど、自社開発によるネットワークシステムの提供で、サプライチェーンマネジメン
トに新風を吹き込んでいる。自社店舗の売上高では業界 7 位にとどまるが、ネットワー
クに加盟する店舗数と医薬品の仕入高で業界トップと、独自のポジションを築いている。
・今後の経営の重点施策は、調剤薬局等加盟店のネットワーク拡大と、医療と福祉が一
体となった‘まちづくり’にある。ネットワーク加盟件数 2000 件、地域薬局店舗数 400
店が当面の目標となろう。課題であったサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のオフバ
ランス化にも、芙蓉総合リースとの戦略的包括提携で目途がつきつつある。財務戦略上、
過大な投資負担を避けて事業が推進できるようになろう。
・TMS を始め買収効果を入れて、2016 年 3 月期の売上高は 800 億円を超えてくる。調剤
薬局の収益性をどこまで改善できるかがポイントであるが、一定の効果は十分見込めよ
う。中期的には売上高 1000 億円、営業利益 40 億円台が射程内にあるので、業績の拡大
とともに、医薬品ネットワーク事業のユニークさがマーケットにおいて評価されてこよ
う。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
1
(株)日本ベル投資研究所
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Independent Research Analyst Report
目
次
1. 特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
2. 強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
3. 中期経営方針
4. 当面の業績
5. 企業評価
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
買収の効果も上乗せとなり、2016 年 3 月期もピーク利益を更新へ
先行投資の推進に向けてファイナンスが鍵
企業レーティング B
株価(15 年 2 月 17 日) 393 円
PBR 1.70 倍
ROE 14.6%
時価総額 102 億円(26.0 百万株)
PER
11.0 倍
配当利回り 2.0%
(百万円、円)
決算期
売上高
2008.9
33785
2009.9
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
1153
995
973
43.3
2.50
36786
1440
1266
431
19.5
3.75
2010.9
41131
1528
1329
473
20.4
4.50
2011.9
46508
2262
2139
1001
38.6
6.25
2012.3
25410
1357
1314
518
20.0
3.75
2013.3
54827
2046
1912
756
29.1
8.00
2014.3
66181
2091
2019
668
27.7
8.00
2015.3(予)
76500
2600
2450
850
35.6
8.00
2016.3(予)
83500
3200
3000
1050
44.0
8.00
(14.12 ベース)
総資産 45047 百万円
純資産 5819 百万円
自己資本比率 12.3%
BPS 231.2 円
(注)2012.3 期は決算期変更で、6 ヵ月決算。
ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。09.9 期で 1:200 の株式分割を実施。
12.4、12.6 に各々1:2 の株式分割を実施。それ以前の EPS、配当は修正ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
薬局と医薬品の卸を結ぶ情報システム
当社は、病気になった患者が医者に診てもらったあと、処方箋をもらい、近くの薬局に
行って、薬をもらう時の調剤薬局のネットワークビジネスが事業の柱である。調剤薬局で
は、必要な薬を医薬品の卸問屋から仕入れる。この時の受発注システムや薬局内の薬にか
かわる情報システムを得意とする。そのための情報システム開発を自社で行い、サービス
を提供している。
田尻社長は北海道の小樽で育ち、起業した時の三銃士も皆、小樽の仲間である。田尻氏(取
締役社長)はかつて医薬品卸の会社で仕事をしていた。薬局や病院への営業は昼休みと夕方
しか先方に会えない。この仕事のやり方を、ネットを活用して抜本的に変えたいと考えて
いた。小学校からの同級生であった秋野氏(専務取締役)は、実家が医薬品の卸をやってい
たが、自ら薬局を立ち上げていた。沖中氏(取締役副社長)は医薬品の卸に勤めていたが、
その中でシステム開発を手掛け、その後システムフォーというシステム会社を立ち上げて
いた。この 3 人が話し合って、三銃士のごとく当社を起業したのである。
サプライチェーンマネジメントの効率化を目指す
田尻社長は 16 年前、当時の流通の仕組みではコストがかかりもったいない、情報の提供
や物流の効率化で付加価値を作る必要がある、と考えた。90 年代にインターネットが普及
してきたので、このサプライチェーンマネジメントを担う情報システムを作ろうと決断し
た。日本の流通コストは 7~8%、米国は 3%以下である。
仕組みとしては、スーパー、コンビニの POS レジのようにできると考えた。仕入れ、在
庫に関わる受発注システムの自動化である。医薬品の価格は 2 年に 1 度の薬価改定で決ま
るが、卸と調剤薬局がバランスのとれた合理化で互いに収益を確保することを構想した。
北海道から全国に展開
当社(メディカルシステムネットワーク、MSNW)は 1999 年 9 月に創業した。当時、医薬品
産業 7 兆円の内、7~8%が流通コストであった。5000~6000 億円の流通経費を、米国並み
のコストに合理化すれば、3000~4000 億円の経費圧縮ができると考え、起業した。2002 年
3 月に、創業 2 年半で大証ヘラクレスに上場し、2008 年東証 2 部、会社設立 11 年目の 2010
年 6 月に東証 1 部に上場した。
北海道から本州を目指す時に、三井物産と組むことにした。三井物産は当社本体に 8%ほ
ど出資した。さらに医薬品ネットワーク事業に関して、エムエムネット(MM ネット:当社
51%、三井物産 49%)を合弁で作り、三井物産から代表取締役副社長が経営に入っていた。
全国の地銀を通して調剤薬局を紹介してもらうなどして、ネットワークの拡充に力を入れ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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た。この MM ネットは当初の目的を達成したので、三井物産との合弁は解消し、MM ネットの
事業も 2013 年 7 月に本体に吸収した。
メディカルシステムネットワーク(MSNW)の事業領域
SMO事業
(病院向け治験
サービス)
給食事業
(病院・福祉施
設内受託業務)
医薬品メーカー
医薬品卸
病院・医院
400社
業界売上9兆円
130社
業界売上7.8兆円
11万施設
医薬品売上2兆円
新薬メーカー
100社7.4兆円
患
メディカルモール
事業
ネットワーク
事業
者
医薬品総支出
7.5兆円
調剤薬局
後発品(ジェネリック)
メーカー
サービス付き
高齢者向け
住宅
5.5万店舗
業界売上6.1兆円
300社0.6兆円
医療と福祉が一体となった街づくり
高齢者住宅+医療モール+調剤薬局
調剤薬局
事業
なの花ブランドは業界 7 位
ネットワークとは別に、当社が自前で展開する薬局のブランドは「なの花薬局」で、統
一化を進めている。北海道からスタートして地域薬局網作りに力を入れながら、全国展開
を図ってきた。目標は地域の人々の「かかりつけ薬局」になることで、そのための薬局の
教育(集合研修や e ラーニング)
、在宅診療のための在宅薬局にも力を入れている。自社調
剤薬局は 2014 年 12 月末現在 336 店舗に増えている。
自社ブランドの調剤薬局は、アインファーマシーズ(13 年度調剤部門売上高 1484 億円)
、
日本調剤(同 1437 億円)、クラフト(同 1187 億円)、共創未来グループ(東邦ホールディング
ス、856 億円)、クオール(同 808 億円)、総合メディカル(同 710 億円)に次いで、メディカ
ルシステムネットワーク(MSNW、同 596 億円)は業界 7 位である。その中で、もともと基盤
のある北海道では、店舗数で 110 店(13 年度末)とアインファーマシーズを抜いて、当社が
業界トップである。
調剤薬局が取り扱う薬品の市場は 6.1 兆円。このうち、業界トップのアインファーマシ
ーズでも売上高が 1000 億円台であり、その市場シェアは極めて低い。ドラッグストアは市
場が 5.2 兆円ある中で、トップのマツモトキヨシなど大手 6 社で 30%以上を占める。調剤
薬局は大手 6 社でシェア 10%前後にすぎず、大手が伸びる余地は大きいとみられる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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M&A については、いくつかの形がある。調剤薬局事業を担うファーマホールディングが、
サンメディックや共栄ファーマシーを買収した時は株式譲渡であった。2011 年にサンメデ
ィックがメウスを買収した時は吸収合併、共栄ファーマシーがケイツージャパンを買収し
た時は事業譲渡の形をとって、店舗を中心に譲り受けてきた。
また、ドラッグストアの傘下にある調剤薬局の仕入れビジネスが当社に入ったという事
例もある。仕入額に一定の料金をかけたものが、ネットワークの使用料として当社の収入
となる。当社全体の平均的なネットワーク料率は 1.5%前後とリーズナブルである。
医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の7エリア別店舗数
店)
自社店舗数
加盟店店舗数
合計
2014.3末 2014.12末 2014.3末 2014.12末 2014.3末 2014.12末
関東・甲信越エリア
67
70
231
224
298
294
北海道エリア
110
111
106
94
216
205
近畿エリア
45
52
142
91
187
143
東海・北陸エリア
30
39
130
103
160
142
九州・沖縄エリア
37
35
87
95
124
130
東北エリア
6
5
85
86
91
91
中国・四国エリア
26
24
61
58
87
82
合計
321
336
842
(注)2014.12は、大口脱退230店、新規加盟139店。
751
1163
1087
なの花薬局の目指すもの
「なの花スタンダード」というネーミングを使っている。10 年後にリーディングカンパ
ニーを目指すには、なの花ブランドを特別なものにする必要がある。一定の水準をクリア
した薬局づくりということで、自ら新しい標準(スタンダード)を作ろうとしている。
なの花薬局は、新しい「なの花スタンダード」を確立すべく力を入れている。薬の過誤
防止や在宅医療の積極化など、地域密着を図っている。そのためには、教育レベルの向上
が必須であり、研修担当者の増員を進めていく。これまでも、調剤報酬改定のハンドブッ
クを出して好評である。薬剤師が患者の情報、状況をよく把握して、薬の事故を事前に避
ける(プレアボイド)ということである。その情報を医者にフィードバックして、薬の組
み合わせを変えてもらい、副作用を防ぐ。毎月 200 事例もあり、社内ではそのコンテスト
も実施して活動を盛り上げている。
また、当社は月 57 万枚の処方箋を取り扱っているが、そのうち在宅医療では、癌の疼痛
緩和の処方箋など自己で療養している患者の分が月 1 万枚程度ある。これを 3 万枚までも
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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っていこうとしている。
自社の薬局の構成は、小型の店が 4 割(薬剤師 2~3 人、20 坪)、中大型の店(50 坪程度)
が 3 割、医療モールの店が 2 割という内容である。将来は、薬局が予防や未病を担ってい
くことがリーディングカンパニーとして必要になってくる。そこで当社は栄養士による食
事療法のサポートにも取り組んでいる。
なお、在宅支援薬局には、在宅専門の薬局もある。介護施設から処方箋を受け、それだ
けで成り立つ薬局も出始めた。現在 2 つある。専門化できれば効率はよいが、まだ専門化
できるところは少ないので、既存の薬局が両方へ対応していく。
在宅医療への薬局、薬剤師の役割
例えば、札幌のなの花薬局南郷店の薬剤師は、介護支援専門員として、グループホーム、
介護付き老人ホーム、特別養護老人ホームなど 285 名を担当しており、月に 1~2 回 350 件
の訪問を行っている。16km 圏内の地域を 1 件 20~30 分で訪問する。医師、介護士、ケアマ
ネジャー、薬剤師がミーティングをして連携していく。医師と一緒に行く、ケアマネジャ
ーと一緒に行く、薬の管理ができない人のところに行く、などさまざまなケースがある。
在宅薬局は、居宅訪問 1 回につき 650 点(1点 10 円)の加算があるが、その報告書を書
くのに結構手間がかかる。また薬についても、飲み間違い、飲み忘れのないように色を付
けたり、箱に入れるなど分かりやすくする必要があり、在宅への対応は時間がかかる。
今後在宅薬局としてのサービスをどのように拡大していくかは課題である。需要は間違
いなく増えていくので、当社では、良いサービスと効率が両立するような在宅薬局の仕組
み作りに取り組んでいる。
スマホ、ITの活用による薬局の健康管理支援
処方箋薬の注文について、スマホを使った電子メールで薬局が受け付けるという仕組み
が広がっている。まださほど使われているわけではないが、当社も導入を検討している。
しかし、本命は医療情報連携にある。処方箋が電子化されれば、処方箋をスマホのカメ
ラを使って読みとって送信するという必要もなくなる。薬局と医療機関の IT 連携は現在実
験がいろいろ進んでいる。
薬局が健康管理を支援するという動きも始まっている。2014 年 4 月より薬局で自己採血
検査が正式に認められるようになった。自己採血だから、薬剤師がやるのではなく、自分
でやる。その上で、薬剤師に相談にのってもらうことができる。必要なら医者にいくし、
何らかの一般薬や健康食品で対応する場合もあろう。薬局が近くの住民の健康管理を担う
拠点となって国民の健康増進を図り、医療費の増加を防ごうという計画である。定着には
時間がかかるであろうが、セルフメディケーションの普及に当たっては一定の効果が見込
める。当社でも積極的に展開しようとしている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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ファミリーマートとの連携
業態の多様化が進んでいる。ドラッグストアとコンビニの組み合わせ。ドラッグストア
と調剤薬局の組み合わせ、コンビニと調剤薬局の組み合わせなどさまざまなパターンがあ
りうる。自社で双方を組み合わせる。他社と組むなど連携の仕方にも工夫がいる。立地も
重要で顧客がメリットを感じられるかどうかが最大のポイントである。
コンビニのファミリーマート(ファミマ)との業務提携に基づく、コンビニ一体型調剤
薬局を進めようとしている。このビジネスモデルは、個人を中心とする全国の調剤薬局へ、
コンビニ+薬局のフランチャイジーになることを提案していく。これによって、生活イン
フラと医療インフラの構築を共同で効率よく進めようというものである。
医療、介護、コンビニの機能を組み合わせて街づくりを支援するという発想だ。ファミ
マにとっては薬局への拡大が図れる。何よりも顧客にとっては、高齢化が進む中で、かか
りつけ薬局が身近なコンビニにあるというのは便利である。
ローソンは調剤薬局のクオールと提携している。ローソンの場合はコンビニに薬局を入
れるという考えである。当社は新業態を作ろうとしている。
SMO は調剤薬局とのシナジーに活用
当社は治験(臨床検査)の支援も行っている。新薬の開発にあたって、病院でさまざまな
治験が行われる。新薬を開発する医薬品メーカー側ではなく、治験を行う病院側をサポー
トするビジネスが SMO(病院などの治験施設を支援する業務)である。
少し大きな専門性のある病院は、何らかの新薬の開発に当たって、その協力をすること
がある。病気の治療を図るには、新薬が欠かせないからである。このサービスは調剤薬局
とシナジーがある。そういう病院で専門医として働く医師は、いずれ開業する可能性が高
い。その開業情報をいち早く仕入れて、開業サポートをし、メディカルモールとして調剤
薬局もオープンすれば、うまくシナジーが得られるのである。
SMO を担う子会社エスエムオーメディシスは、そのビジネス自体で利益をあげるというよ
りも、調剤薬局事業とのシナジー効果を重視している。この SMO については北海道のみで
展開している。現状では売上高 3 億円で、収支トントンレベルを目標にしている。
薬剤師教育専門機関を社内に有する
当社は、薬剤師研修教育専門機関「北海道医薬総合研究所」を社内に有している。ここ
は、薬剤師研修の資格認定機関として日本薬剤師研修センターから認定を受けた研修認定
薬剤師制度実施機関の1つである「北海道医薬総合研究会」と連携している。
薬剤師も資格をとったらそのままでよいというのではなく、研修を受けて自らの技量を
磨いていく必要がある。必要な単位を認定されると、研修シールが発行され、認定薬剤師
となる。ネットワークの加盟店にもこうした研修を積極的に導入することで、質的向上を
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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支援している。同業の大手企業はこのような機能を有していないので、当社の特色となっ
ている。
2.強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
医薬品ネットワーク事業でオンリーワン
当社は自前で 336 店舗の調剤薬局を展開するが、それも含めて、当社のネットワークを
活用している薬局は 1087 件(2014 年 12 末現在)に及ぶ。この数は業界トップである。当社
のようなネットワークシステムを持っている同業他社はない。その強みは何か。通常は医
薬品卸への大量発注によるバイイングパワー(購買力)を行使して、安く仕入れるというこ
とが考えられるが、当社は方針として、無理なバイイングパワーは使わない。
医薬品等ネットワーク事業
2013.3
1033
948
2014.3
1163
1124
発注手数料(百万円)
897
1018
564
1255
システム販売額(百万円)
586
933
658
1213
その他(百万円)
138
174
124
181
合計(百万円)
1622
2126
1348
2650
(注)加盟店舗数には自社店舗も含む。2012.3は6ヵ月決算。
1490
1183
170
2843
加盟店舗数(店)
医薬品発注取扱高(億円)
2010.9 2011.9
597
740
537
704
2012.3
854
415
薬局での薬の価格は国によって決められているので、販売価格に自由度はない。その中
で、薬局と卸がマージンの取り合いをしても生産的でないと考えている。むしろ、デッド
ストックにならないような在庫の有効利用によるコスト削減、薬剤師教育や店舗管理の効
率化などによって、当社の利用度をあげてもらうことに力を入れている。こうした当社の
ネットワークの使い勝手の良さが紹介営業に繋がっている。
卸と調剤薬局を結ぶ当社のネットワークシステムは、価格交渉、在庫管理、自動発注、
決済、薬剤師の教育などをビジネスとして担っている。年間の医薬品の取扱高は、05 年 9
月期の 118 億円から 2010 年 9 月期 537 億円、2014 年 3 月期 1124 億円と急ピッチで増えて
きた。ネットワーク事業の収入は売上全体の 4%だが、営業利益では 45%を占める高収益部
門である。ここを伸ばすことが最大の戦略である。
医薬品ネットワーク事業の営業利益率は 50%と高い
調剤薬局は、患者が医者の処方箋によって求めてくる薬をある程度取り揃えておく。そ
のために、必要と思われる薬を医薬品の卸に注文する。この受発注システムを当社が担当
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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して、その手数料を得る。必要な薬には常に余剰となるものがあり、どう在庫管理するか
によって無駄を排除し、コストの削減になる。薬局間で在庫のやり取りができれば、期限
切れの薬の廃棄ロスも少なくて済む。
ネットワーク事業は、加盟店がこのネットワークを通じて仕入れた金額の一定料率を発
注手数料として売上げにたてる。この収入が毎月入ってくるので、加盟店が増えるほど収
入は上がってくる。これとは別にシステムの販売もある。レセプトを処理するレセプトコ
ンピューター(ファーマシーエース)の販売も、新規加盟やシステムの入れ替えで収入と
なる。システム販売の利益は発注手数料に比べれば高くないが、安定した更新需要はある。
実際、新規加盟に伴う情報機器のシステム販売の粗利は 10%程度で、医薬品の発注手数料
で稼いでいく。当社のネットワーク事業は、売上高営業利益率が 50%前後と極めて高い。
セグメント別業績
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
(百万円、%)
2014.3
医薬品等ネットワーク事業
売上高
1622 (+8.4)
2126 (+31.0)
1348 (+30.2)
2650 (+8.7)
2843 (+7.3)
営業利益
789 (+8.0)
997 (+26.3)
596 (+21.5)
1221 (+10.8)
1475 (+20.7)
同利益率
48.7
46.9
44.2
46.1
51.9
調剤薬局事業
売上高
39645 (+12.0) 44641 (+12.6)
24273 (+10.2) 52581 (+12.1) 63006 (+19.8)
営業利益
1426 (+4.8)
2032 (+42.4)
1233 (+17.1)
1766 (-20.1)
1840 (+4.2)
同利益率
3.6
4.6
5.1
3.4
2.9
賃貸・設備関連事業
(調剤薬局関連、
売上高
912 (+0.8)
987 (+8.1)
509 (+0.3)
1122 (+13.6)
1317 (+17.4)
高齢者賃貸住宅関連) 営業利益
63 (+25.7)
136 (+113.1)
65 (-12.1)
111 (-12.7)
-39 (na)
同利益率
7.0
13.8
12.8
9.9
-3.0
給食事業
(病院、福祉施設内) 売上高
607
営業利益
ー
ー
ー
ー
-12
同利益率
-2.0
その他事業
(SMO、
売上高
257 (-12.7)
225 (-12.2)
131 (+16.3)
252 (+3.1)
407 (+61.5)
治験施設支援業務) 営業利益
-22 (na)
-18 (na)
5 (na)
4
10 (+116.3)
同利益率
-8.6
-7.8
4.1
1.9
2.5
合 計 売上高
41131 (+11.8) 46508 (+13.1)
25410 (+10.8) 54827 (+11.9) 66181 (+20.7)
営業利益
1528 (+6.1)
2262 (+48.0)
1357 (+15.4)
2046 (-16.2)
2091 (+2.2)
同利益率
3.7
4.9
5.3
3.7
3.2
(注)2012.3期は決算期変更で6ヵ月決算。カッコ内は前年同期比伸び率、naは黒転、赤転で計算できず。
給食事業は、TMS買収で2014.3期より加わる。
トータル・メディカルサービスを買収
2013 年 11 月に、当社の子会社で調剤薬局を統括するファーマホールディングが、トータ
ル・メディカルサービス(TMS)を公開買付(TOB)によって買収した。投資額は 51 億円であ
った。これによって、九州地区での店舗数が大幅に充実した。九州において、TMS は総合メ
ディカルに次いで、2 番手である。九州で TMS32 店+当社 5 店、中国地区で TMS3 店+当社
23 店という規模である。全国では、282 店(2013 年 9 月末時点)に 35 店が加わったので、
その効果は大きい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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当社は絶えずシナジーを考えており、ドミナントを形成できるかどうかがポイントであ
る。子会社となった TMS の大野社長はそのまま経営を担っている。TMS とのシナジーについ
て、大野社長とは考え方が合うので、九州は任せられる。TMS は、薬局のアメニティについ
ても高いものをもって実践している。当社のネットワークシステム、在宅医療サービスな
どで展開の余地はかなりある。
2014 年 3 月期の 12 月よりトータル・メディカルサービス(TMS)が連結に入った。TMS
の 2015 年 3 月期への寄与度は年商で 90 億円、のれん償却後で 5 億円ほどのってくる。
TMS が手掛けている病院給食については、今後とも続けていく。当社のサ高住(サービス
付き高齢者向け住宅)で給食事業のノウハウが活用できる。給食事業はまだ赤字であるが、
利益面では収支トントンを目指していく。一方、TMS が行っていた事業の中で、医薬品の卸
については事業として撤退した。年商 15 億円ほどであるが、利益への影響はない。
調剤薬局関連の上場企業比較(関連5社)
社名
コード
市場
MSNW
アイ ン ファ ーマシーズ
日本調剤
クオール
総合メディカル
4350
9627
3341
3034
4775
東証1
東証1
東証1
東証1
東証1
業界順位
店舗数
売上高(13年度)(億円)
経常利益(億円)
売上高経常利益率(%)
7位
321
662
20
3.1
1位
616
1702
106
6.2
2位
494
1653
42
2.5
5位
520
1010
22
2.2
6位
493
1033
51
4.9
株価 (2/17) (円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
393
102
1.70
14.6
11.0
2.0
4355
1389
3.13
12.4
25.1
0.7
4080
327
1.68
18.8
9.3
1.7
890
319
1.59
8.5
17.6
2.0
5960
457
1.71
11.7
14.7
1.3
(注)売上高、経常利益は全社ベース。業界順位は調剤報酬額ベース。
PBR、ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
ネットワーク加盟と自前薬局は経営の両輪
薬局の役割も単なる薬の処方だけではなく、予防、医療、介護までを含めて新しいサー
ビスのあり方を工夫していく必要がある。
また、当社はネットワーク加盟店に対しては、薬剤師の研修も提供していく。社内の薬
剤師だけではなく、広く機会を提供して、人材の育成を通して連携の強化を図っていく。
2015 年 3 月期からココカラファインがネットワーク事業から抜けたセグメント利益への
影響はさほど大きくない。抜けた理由は、同業他社が計画した共同仕入れの仕組みに入っ
て、仕入れコストをより下げようとした。しかし、当社にとって、ネットワーク事業のコ
ンペティターというわけではないので、競合という点では心配する必要はない。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ネットワーク事業については、一段と強化していく必要がある。当社は医薬品受発注シ
ステムやレセコン(レセプトコンピュータシステム)、債権流動化サポート業務で独自の強
みを有するが、医療分野における IT 化を一段と促進していくことが求められる。サプライ
チェーンの中で、新しいイノベーションを起こすことや、そのために他の企業と連携する
ことも十分ありえよう。
加盟店を今後 2000 件に増やす手立てとしては、当社のネットワークに加盟するメリット
をよりはっきりさせていく必要がある。基本的には、システムベンダーとの連携を強化し
ていくことや、ジェネリックの仕入ネットワークを独自に作っていく方針である。
日本の医薬品の市場は約 9 兆円である。その内新薬が 8.5 兆円で、ジェネリックと言わ
れる後発品は 0.6 兆円である。ジェネリックは、新薬の特許が切れた後に同じ薬効のもの
を作るので、価格が安くなり、患者にとっても負担は軽くなる。こういったジェネリック
の指導も調剤薬局が担うことになるが、選ぶのは患者であり、高い薬の方が、収益性がよ
いのも明らかである。その薬局の受発注は全国でみるとまだ電話やファックスを利用して
いる方法が 4 割以上を占めており、ネットワークシステムの利用は遅れている。
沖中副社長は調剤システムを担当し、秋野専務が調剤薬局を担当している。ネットワー
クに加盟したいという薬局は大いに歓迎し、ネットワークに加盟している薬局でも当社と
経営を一体化したいというニーズもある。また、ネットワークに入るのではなく、直接当
社が M&A をする場合もある。
当社のネットワークが加盟店に役立つという点では、価格代行+決済代行+ファイナン
ス+在庫という機能がある。大量仕入れの中で価格が決まる。決済も速やかに進む。支払
いのサイトが通常は 3 カ月程度だが、当社は 2 カ月で対応する。流通在庫を減らすように
対応する、といったメリットがある。
メディカルモールに独自の強み
子会社である日本レーベンは、不動産の開発を手掛けている。サ高住(サービス付き高
齢者向け住宅)を手掛けるほか、薬局の不動産開発にも力を入れている。サ高住を単独で
拡大するよりも、それだけの資金があれば、サ高住とメディカルモール、薬局の開発を組
み合わせた新しいまちづくりに力を入れている。
薬局の開発の中でもメディカルモールに力を入れ、336 店ほどある薬局のうち、70 店程
度がメディカルモール型である。メディカルモールとは、2 科以上のクリニック(医院)の前
に薬局を作るという一体型の医療施設開発でビル型が多い。
これは、ドクターが新たに開業したい場合に複数の診療科目を用意し、そこに薬局を併
設することで、集客力を高めることができ経営効率も上がる。立地をうまく考えることに
よって、患者サービスの向上にも結び付く。このメディカルモールについて、他社は不動
産業者に頼っているが、当社はグループで機動力を発揮し、実績を上げている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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サービス付き高齢者向け住宅ウィステリアの事業展開
ウィステリア清田は 2014 年 12 月末で、75 戸に対して 59 戸が入居し、8 割に近づいた。
評判はよいので 2016 年 3 月期中にはほぼ満室となろう。当社第 2 号案件のウィステリア清
田は、
「高齢者住宅+医療モール+調剤薬局」+「病院」が一体となった再開発である。
JR札幌駅から 1km、北海道大学病院の近くにウィステリアN17 がある。これが第1号
である。64 室のサービス付き高齢者向け住宅である。有料老人ホームではないが、同様の
介護サービスを行うことのできる許可を北海道から受けている。
設立から 7 年を経ており、3 年目からはほぼ満室である。84 名が入居(1 室 1 名または 2
名)しており、平均年齢は 82 歳である。マンションの1階には内科循環器のクリニックと
調剤薬局(なの花薬局)がある。1室の広さは 65~73m2 と広く、リハビリのスペースも有し
ている。基本的に高級な施設である。
札幌市清田区の医療法人清田病院の前に当社として 2 棟目のサ高住となるウィステリア
清田を建設、2013 年 5 月から入居が始まった。札幌の清田病院の建て替えに伴い、その隣
に当社のウィステリアを作ることになった。1 棟目のウィステリアN17 が投資額 20 億円、
1 室のスペースも広めであったが、こちらは投資額 10 億円、1 人部屋タイプで 1 室が 25~
30m2 と標準的なものである。このサ高住は、家賃 7~8 万円と手頃である。75 戸のうち 65
戸を単身向けに作っている。
サ高住にはクリニックが数件入り、薬局も入っている。年商 3 億円で営業利益率は 10~
15%を目指す。回収には 10 年を要するが、入居率が上がれば 2 年目から黒字化する。併設
する薬局も 2 年程度で収益化するので、そこでのシナジーを追求する。
昭和 40 年代、50 年代の住宅、マンションも高齢化が進む中で、建て替え、住み替えが必
要になってきている。医療介護ゾーンにショッピングモールも組み合わせた新しいクラス
ターの形成も求められている。それに向けて、当社では、2012 年 10 月に開発の事業組織を
作って、担当常務のもと 20 名が活動を始めた。複合型医療・介護施設を計画している。但
し、投資をすべて自社で持つとバランスシートが重くなるので、土地は自社で購入すると
しても、建物については、オフバランスしてマネジメント業務のみを担当する方式とする。
基本的には、これ以上借入金を増やさずに事業展開していく方向である。
3.中期経営方針
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
重点施策の明確化
田尻社長は今後の経営環境を次のように認識している。2050 年をみると、日本の人口は
3300 万人ほど減少する一方で、65 歳以上の高齢者は 1200 万人ほど増加する。これに伴っ
て、医療から介護へという動きは加速する。調剤薬局の市場は、6 兆円から 8 兆円に増える
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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反面、今ある調剤薬局数 5.5 万件は 5.0 万件程度へ減少しよう。薬剤としてはジェネリッ
クが増加する一方で、中小薬局の統合は進んでいくという見方である。また、現在の動き
をみると医薬分業の比率も 80%へと、さらに高まりそうである。
その中にあって、当社の長期目標は 10 年後の 2022 年に、①医薬品サプライチェーンの
キープレイヤーとなり、流通の合理化に貢献すること、②調剤薬局のリーディングカンパ
ニーとして、ネットワークを活かして圧倒的業界№1になることである。
2015 年 3 月期までの 3 カ年計画では、1)医薬品の取扱高で圧倒的№1になる、2)地域薬
局としての役割を追求する、3)まちづくりに役立つ医療介護ゾーンを開発する、4)その中
で財務の健全性は確保する、という点に力を入れてきた。
中期経営計画の方向
基本的な方向 ・医薬品ネットワーク事業を全国に展開し、医薬品取扱高で圧倒的No.1になる
・地域薬局の追求
・まちづくりの視点から医療・介護ゾーンを開発
・持続的成長と財務の健全性を両立
重点施策
・中小薬局を中心に医薬品ネットワークへの加盟店の拡大
・メディカルモールの開発 ・メディカルモール、調剤薬局、介護施設を併設する複合施設の展開
・なの花スタンダードの確立によるブランドの向上
・在宅医療の取扱処方箋枚数の拡大
・経営規模の拡大に対応したシステム効率化の推進
・ドミナント形成に向けたM&A戦略の実行
(注)アナリストの視点でまとめたもの
当社は、毎期必ずその期の重点施策を挙げており、その内容については、KPI(重要業績
指標)を具体的にあげ、その達成度を自己評価する。この方式は、社内で浸透しているとと
もに、投資家にとっても極めて分り易いディスクロージャー(情報開示)であり、マネジメ
ントのあり方として評価できる。
2015 年 3 月期の重点施策は 6 点ほどあった。第 1 は医薬品ネットワークの拡大である。
ココカラファイングループの 230 店が抜けたからといって、大きな心配はいらない。上期
だけで新たに 120 店が加わっている。第 2 の既存店の改善では、不採算店の閉鎖に力を入
れている。見直しは逐次進めていく。また、薬の調剤過誤防止などのプレアボイドについ
てもシステム化対応で強化している。第 3 の医療モールの新規出店では、14 店の出店計画
中 4 件で医療モール型店舗を開発する。クリニックの誘致でも 11 件と前年度の 6 件から増
やす計画だ。
第 4 の M&A によるドミナント化では、案件が増える傾向にある。中小の調剤薬局は後継
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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者と薬剤師の確保のいずれも苦労しており、信頼できる大手に任せたいというところが増
えてきている。薬学部は 4 年から 6 年制となったが、肝心の薬剤師の国家試験の合格者数
がさほど増えていない。薬科大学の新設等により学生数は増えているが、合格者数は 8000
人前後とあまり変わっていない。
つまり、国家試験が難しくなって、合格率が下がっている。かつての 90%が今は 60%(う
ち新卒者の合格率は 70%)に留まっている。よって、業界では店舗を増やしても、それに
見合った薬剤師が獲得できない。また、薬剤師合格者も、将来を考えて、小さな薬局には
入社しなくなっている。
当社は昨年の 2 倍の内定者を採っており、大手の一角として、それなりの人員は確保で
きている。M&A の案件が増えている理由は、会社を売却する側が売却後の薬局の経営安定化
を志向していることによる。売却後も社員を守り、長期的な経営をきちんと実行できる信
頼できる会社かどうかを見ている。その意味において、当社の信頼感は高まっている。
一方、投資採算は十分考慮している。高値掴みはしない。DCF(割引キャッシュ・フロー)
モデルで試算して、土俵にのらないものが多かったが、最近では売却する側のプライス感
にも落ち着きが出ている。
第 5 は在宅の取り組み強化である。在宅処方箋枚数月 2 万枚、全店舗での在宅実施を目
標に力を入れている。当社は調剤薬局ビジネスをドラッグストアの方に向けるつもりはな
い。過去に買収した共栄ファーマシーはドラッグストアを手掛けているが、ここで独自の
強みを出せるとは考えていない。むしろ地域包括ケアシステムの中で、まちづくりとして、
サ高住、調剤薬局との連携、クリニックの誘致などを一体として取り組んでいく方向であ
る。第 6 は業務の効率化による間接コストの削減である。
薬価改定のせめぎ合いと合理性の追求
2014 年 4 月の薬価改定は、全体の医療費を抑えながら、医療サービスの質を上げる方向
に沿ったものであった。大病院の前に薬局を構えて、効率よく集客するという経営につい
ては、調剤報酬がより大きく引き下げられた。一方で、在宅や介護を重視する方向で、こ
こにはインセンティブが与えられた。在宅重視という点で、当社は 2~3 年先行してきたの
で、これを活かして加算をとっていこうとしている。
前回は 2012 年 4 月に薬価改定があったが、それに伴う取引価格が卸と調剤薬局でなかな
か妥決しなかった。いつもなら 1 年かけて交渉し、3 月期末までには決まるのであるが、こ
の時は 2 年目の 2 月までかかった。ビジネスにおいて、最も大事な価格が 1 年を経ても決
まらないというのは異常であった。
なぜ価格が決まらなかったのか。卸との交渉において、どの程度の価格が妥当なのか、
基準、根拠がはっきりしていないからである。価格は交渉事であるが、単に力の強い方が
いい値を通すという戦いではない。サプライチェーンの中で、何らかの基準について合意
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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できなければ価格は決まらない。その仕組みをきちんと作ろうというのが、田尻社長の創
業来の考えである。本来なら、薬価改定があったら、すぐに新しい価格が決まるのがある
べき姿であろう。
2 年越しで続いた前回の薬価改定に伴う卸との取引価格交渉は、2014 年 2~3 月に決着し
た。そして、2014 年 4 月から新たな薬価改定に伴う卸との取引価格交渉がスタートした。2
年に 1 度の改定である。今回は消費税の増税もあるので、それを加味して名目と実質が決
まった。消費税+3%、薬価の実質引き下げ平均-5.7%を、医薬品の卸と調剤薬局で応分に
負担する。いつもと同じパターンのやりとりであった。
今回は 2 つの変化があった。
1 つは、
実質的に卸との価格交渉に期限がついたことである。
2014 年 9 月までに卸と調剤薬局サイドで取引価格が妥結しない場合には、国がペナルティ
を課すということになった。妥結率の低い調剤薬局の調剤報酬が減額されるという仕組み
である。よって、9 月までには取引価格を決める方が得策である。いつまでも価格が決まら
ず、仮の薬価で決算を行っていくのは望ましくないので、このような方策がとられること
となった。
もう 1 つの変化は、大きな病院の前にある薬局(いわゆる門前薬局)で、処方箋受付回
数が 2500 回超で、1 つの病院に 90%超依存している薬局の調剤報酬は低く見積もられると
いう仕組みが導入されることになった。門前薬局で大きく稼いでいる大手調剤には、相対
的に厳しい影響が出てくる。地域密着の薬局を推進しようという流れに沿った施策の現れ
である。当社にとっては、この影響は相対的に低い。
医薬品加盟件数と発注取扱高
2008.9
2009.9
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
2014.12
加盟件数(件)
499
545
597
740
854
1033
1163
1087
医薬品発注高(億円)
398
474
537
704
830 *
948
1124
952 **
(注)*:6カ月を年率換算、**:9カ月を年率換算
2014.12は一部大口先の脱退で減少
これらを勘案すると、調剤薬局のセグメントの利益率は 2015 年 3 月期の上半期にかなり
下がり、それを下半期からとり戻していくというパターンになる。また、薬価改定に伴う
卸との価格がはっきりしてくれば、当社のネットワークに加盟しようという薬局は増えて
こよう。そのメリットがはっきりみえるからである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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ネットワークへの加盟は拡大傾向
価格の決め方について、当社は積極的な提案を行ってきた。薬価改定後の卸と薬局と値
決めについて、後決め、仮価格によるビジネス慣行を改め、妥当な方式によって価格がは
っきり分るようにしようというものである。ここが、はっきりしてくれば、当社の医薬品
ネットワークへの加盟が一挙に拡大してくる可能性もある。
ネットワーク加盟店について、最近は大口の引き合いも増えている。当社のネットワー
クの知名度が上がり、信頼も増してきていることによる。医薬品取扱高の増加につれて、
価格交渉におけるリーダーシップをとって、業界の流通改善に寄与することができるよう
になろう。単に大量仕入れをテコに、卸に対して値引きを要求するという構図ではない。
適正な価格をスピーディに決めて、互いの無駄を省こうという考えである。
医薬品のサプライチェーンの中で、さまざまな参入や再編が起きている。大手商社の医
薬品流通への参入、医薬品卸の調剤薬局の系列化、調剤薬局間の M&A、調剤薬局とドラッグ
ストアの提携など、いろいろなパターンがみられる。重要なことは、顧客のために役立っ
ているか、その方針にそって流通合理化で収益性が高まっているか、ということである。
この点でみると、調剤薬局を囲い込むというだけでは不十分で、ネットワークシステム
を強く築けるかどうかが重要である。その点で、当社はユニークな戦略を展開している。
業界 9 位の阪神調剤薬局と業務提携
2012 年 11 月に業務提携した阪神調剤ホールディングスと医薬品仕入れの合弁会社 H&M
(出資比率当社側 51%、阪神調剤 49%)を作り、2013 年 7 月から活動を開始した。関西では
調剤薬局 300 件をまとめることになるので、業界でトップクラスである。医薬品の仕入れ、
流通合理化に共同で取り組み、サプライチェーンを強化していく考えだ。
阪神調剤薬局は、兵庫、大阪を中心に東京も含めて 187 の直営店舗を有し、業界 9 位で
ある。7 位の当社と単純合算すれば、両社で業界 4 位のポジションに位置する。業務提携し
た狙いは、仕入れにおける協業である。この 2 社の調剤薬局を合計すると、仕入れ規模で
は業界トップのアインファーマシーズを抜いてトップとなる。こうしたバイイングパワー
の強化を通して、田尻社長が長年主張していた医薬品卸と調剤薬局のプライシングのあり
方について、新しい仕組みを作っていこうとしている。
医薬品の仕入れ額については、阪神調剤薬局の分を含めれば、1100 億円を超えて、アイ
ンファーマシーズの仕入れ額をかなり上回ろう。それでも、卸全体のシェアは 3%程度であ
るから、本当のバイイングパワーになるかどうかはまだはっきりしない。大事なことは、
業界のサプライチェーンにおいて、正常な値決めができるような大義が前進することにあ
る。これによって、当社の医薬品ネットワークに参加してくる中小薬局のピッチはさらに
上がってこよう。
H&M では、卸との勉強会を 1 年余りに亘って続けてきた。マージンのあり方、決済期間と
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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金利負担、配送頻度と在庫の兼ね合いなど、どういう値決めが合理的かという点について
議論を重ねてきた。
2014 年 2 月に前回の薬価改定に伴う値決めが決着したが、その時には、今回の薬価改定
の影響についても、その折り込み方がほば固まっていた。今回は 2014 年 9 月までに価格が
決まった。その意味では、H&M によっていい効果は出てきている。
調剤薬局チェーンの業界順位
(2013年度ベース)
(億円、店)
調剤報酬額
店舗数
順位
会社名
アインファーマシーズ
1
1484
616
2
日本調剤
1437
493
3
クラフト
1187
506
4
共創未来グループ(東邦HD)
856
482
5
クオール
808
470
6
総合メディカル
710
493
ファーマホールディング(MSNW)
7
596
321
8
アイセイ薬局
468
287
9
阪神調剤薬局
428
187
10
たんぽぽ薬局
351
109
11
フロンティア
323
138
12
ファーコス
319
190
ファーマライズホールディングス
13
311
206
14
薬樹
287
148
15
メディカル一光
202
87
ファルコSDホールディングス
16
185
102
アポロメディカルホールディングス
17
161
84
18
ファーマシィ
159
74
19
関西メディコ
129
55
20
メディカルファーマシィー
126
32
(出所)ドラッグマガジン、2014年7月号
高齢化時代の都市の再生
地域医療の立て直しが必要になっている。同時に福祉施設の充実も求められ、生活者と
しての街の機能も大切である。行政と民間の力をうまく合わせて、複合施設を開発してい
くことが、社会インフラ作りのイノベーションとしてビジネスになる。
当社は北海道からスタートしているので、札幌では知名度も基盤もある。病院の近くに
高齢者住宅と薬局とショッピングモールを複合的に開発するという計画がいくつか動き出
している。医療モールのプラン自体は既に一般的であるが、病院、クリニック、薬局、高
齢者住宅を含めたまちづくりで、独自のモデルを作ろうとしている。
札幌で画期的な複合型医療モールプロジェクトを開始
サ高住のうち、札幌の案件については、2017~18 年に遅れそうである。建設費が高騰す
る中で、事業の中身を再検討していくことによる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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(株)日本ベル投資研究所
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ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
新しいビジネスモデル作りが進んでいる。従来の大病院前に薬局を作るという方式から、
医療モール、メディカルビルに展開しているが、さらにその次の形として、医療+福祉+
まちづくりを推進している。具体的には、高齢者住宅と医療モールと調剤薬局を複合的に
組み合わせた再開発である。札幌の中心地でそれを具体化する。
この場所は札幌市の中心部にあり、徒歩 5 分圏に札幌医科大学を含む総合病院 4 つ、医
院が 20 ほどある集積地である。ここに、医療、介護、見守り・配膳・買い物などの生活支
援サービス、バリアフリー高齢者住宅を含めた「地域包括ケアシステム」
(厚生労働省、国
土交通省提唱)を実現しようというプロジェクトである。
当社では、
「医療と福祉が一体となったまちづくり」と称している。この地域は病院の銀
座通りであるが、190 万人の札幌市民にとって、どこの病院も混み合っている状態にあり、
新しい医療モールを作っても十分ビジネスとして成り立つ地域である。この地域の調剤薬
局のトップクラスは、年商 10 億円(通常の薬局は 2 億円レベル)に達する。
日本レーベン(100%子会社)が札幌市から複合型医療・介護施設の建設用地を取得した。
日本レーベンは医療モール作りで培われたノウハウと実績を有しており、それが認められ
た。このプロジェクトへの入札(コンペ)で、同業他社に勝った。13 億円で土地を購入し、
ここの医療開発をリードする。
今後の展開に当っては、まちづくりの建物については、自ら投資するのではなく、当社
はそれを 1 棟借りして、運営に当るという方式をとる。そうすれば固定投資の負担が重く
なって、バランスシートの有利子負債が重くなるという点を回避できる。
サ高住の建物はオフバランス化
サ高住など広い意味での介護施設の M&A 案件はいろいろあるが、当社にはなかなか合わ
ない。そこに生活する人々の居心地は、建物というハードとサービスというソフトに依存
する。建物自身が、当社が考えるサービスに合わない場合が多いと田尻社長はいう。それ
ならば、自分達で作った方がよいのではないかという考えである。
大阪の千里中央で新しいサ高住の計画が進んでいる。14 階建てのビルの1~9 階が病院、
10~14 階がサ高住である。総投資額 32 億円、85 戸の予定で家賃は月額 17 万円程度からで
ある。医療は純幸会、介護は日本レーベンが担う。この病院は救急が 3000 件と大阪で 2 番
目に多い急性期病院である。
サ高住については、2015 年 11 月に小樽、同 12 月に千里がオープンする予定である。つ
まり、2016 年 3 月期に 2 件入ってくる。
オフバランスについては、オペレーティングリースをベースについて考えていくことに
なろう。当社の売上高の見込みは変わらないが、金利や償却負担がなくなるかわりにリー
ス料が発生し、資産もバランスシートに載らない。投資利回りは低下するが、初期負担が
軽減され、バランスシート上長期負債が軽くなるので、財務上の健全化も図れる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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リースの活用が具体化、芙蓉総合リースと戦略的包括提携
1 月に芙蓉総合リース(コード 8424)と戦略的包括提携を結んだ。業務面では通常のリ
ース以外に、2 つの戦略的内容を含む。
1 つは、医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の加入時ファイナンスをサポートする。
これまで新規加入先は、医薬品仕入代金を 3 ヶ月サイトで支払っていた場合、支払サイト
を 2 ヶ月に短縮するために、新たな資金が必要となるケースがあった。このため、加入月
の医薬品仕入代金を芙蓉総合リースが当社へ一括立替払いを行い、加盟先は最長 60 回の分
割払いで芙蓉総合リースへ返済、分割手数料は当社が負担する。このサポートにより、当
社のネットワークに加盟する薬局が年 100 店ペースで従来よりも上乗せすることができる。
芙蓉総合リースにとっても新しいビジネスとして収益機会となる。
もう 1 つは、サ高住及びメディカルモール等の不動産リーススキームの開発である。当
社にとってはサ高住を重要なビジネスと位置付けており、強みも有する。しかし、土地建
物を自前で所有すると、そのファイナンスには財務上限界がある。
このリースをファイナンスリースではなく、オペレーティングリースになる仕組みとし
て連携する。そうなると、当社のバランスシートには載らないので、サ高住の投資をオフ
バランス化でき、当社は賃料(リース料)を支払えばよい。費用も均等化できる。
小樽のサ高住(20 億円)
、千里のサ高住(40 億円)という新規の案件から新しいリース
のスキームがスタートしよう。当社はサ高住のマネジメント収入が入り、リースの費用を
支払う。自己投資するよりも収益性は下がるが、リートを使うよりも収益性は高いとみら
れる。芙蓉総合リースにとっては、サ高住へのファイナンスが新しいビジネスとなる。
MSNWのバランスシート
(百万円、%)
2009.9
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3 2014.12
流動資産
7238
8071
7786
8901
8271
10941
11583
現預金
1532
1792
1329
2072
2091
3106
2796
売掛金
2496
2803
2238
2596
1513
2801
2996
商品
1312
1497
1710
1735
2150
2650
3637
固定資産
12458
14411
16747
17700
22518
32172
33463
有形固定資産
5835
6752
9162
9975
11471
15975
16535
のれん
4630
5099
4900
4968
8176
12253
12760
投資等
1864
2448
2601
2684
2783
3797
3849
資産合計
19696
22482
24533
26602
30789
43114
45047
負債
16403
18184
19270
20923
24553
37761
39227
買掛金
3980
4595
5026
5158
5615
7798
8895
短期借入金
1540
845
1099
2405
3015
10270
7528
長期借入金
6955
8043
7364
5921
7510
9669
12926
純資産
3293
4297
5263
5679
6236
5352
5819
有利子負債
8525
9138
8663
9480
12193
22011
22917
有利子負債比率
43.3
40.6
35.3
35.6
39.6
51.1
50.9
自己資本比率
15.3
17.7
19.9
19.7
18.8
11.9
12.3
(注)2014.3期はM&Aでのれんが増加。三井物産との合弁解消で、自己株式が増加し純資産が減少。
TMSの買収で、資産負債とも増加。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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サ高住のセグメント利益率は、オペレーティングリースを利用して、オフバランス化を
図るとある程度低下するが、新しい社会インフラを作りつつ調剤薬局とのシナジーを出し
ていくビジネスモデルなので、複合的に考えていく必要があろう。
これで設備投資は調剤薬局の新規出店と M&A が中心となる。サ高住の新規投資がリース
契約となれば、初期投資額は大幅に軽減され、財務体質の悪化が制約となる可能性も低下
する。
調剤の新規出店は 10 店程度、M&A で 30 店程度となろう。投資額としては有形固定資産で
15 億円、M&A で 20~25 億円という水準である。M&A については中小もベースにするが、大
型の案件についても機会があれば検討していく方向である。
それでも投資額としては年 40 億円となるので、
営業キャッシュ・フローでは賄い切れず、
10 億円前後の外部ファイナンス(銀行借入れ)は必要であろう。
自己資本比率の改善に向けて
自己資本比率が 12.3%(2014 年 12 月末ベース)と低い水準にある。これにはどのように
手を打っていくのか。目標とする自己資本比率は 25%であるが、まずは収益力の向上を図る
ことである。同時にサ高住の資産をオフバランス化することで負債を増やさない。加えて、
タイミングを見て、エクイティ・ファイナンスを検討するということになろう。
2014 年 3 月期のバランスシートでは、トータル・メディカルサービスなどの M&A で、の
れんが 40 億円ほど増加した。また、サ高住と新規出店等で有形固定資産も 45 億円ほど増
加した。それを借入金で賄ったため、有利子負債は 98 億円ほど増加している。
キャッシュ・フローの動きでも、営業キャッシュ・フローを投資キャッシュ・フローが
大幅に上回っており、それを財務キャッシュ・フローでカバーした。有利子負債の増加と、
子会社吸収合併に伴う自己株式の取得で純資産が減少したため、自己資本比率は 11.9%
(2013 年 3 月末 18.8%)へ低下した。
純資産の減少には自己株式の増加 1135 百万円が効いている。三井物産との合弁解消で MM
ネットの資本提携を止めた。それに伴い三井物産が持っていた当社の株も買い取った。そ
の分が自己株式となって、純資産から引かれたことによる。この自己株式については、将
来 M&A による株式交換か売り出しによるファイナンス時に活用することになろう。
ファイナンスの多様化が必要
キャッシュ・フローからみると、大型 M&A のファイナンスもあり、借入金が大幅に増え
ている。現在の総資産が 450 億円であるから、当面自己資本比率を 20%に戻すには、純資産
を現状の 58 億円から 90 億円にもっていく必要がある。自己株式が 11 億円ほどあるので、
これも含めて 20~30 億円程度のエクイティ・ファイナンスがほしいところである。
うまく進めば、2~3 年で自己資本比率を 20%台へ復帰させることが可能となろう。その
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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場合、エクイティ・ファイナンスによるダイリューション(希薄化)が 20%前後想定される
が、今後 4~5 年で利益が 2 倍に伸ばせるので、十分吸収していける。ROE も 15%以上を確
保できるので問題ないと考えられる。
MSNWのキャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フロー
税引後当期純利益
減価償却
のれん償却
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産取得
子会社株式の取得
フリー・キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フロー
長短借入金
配当金
自己株式の取得
現金・同等物の期末残高
(注)2012.3期は6カ月決算
4.当面の業績
2011.9
3352
1184
633
337
-2746
-2487
-220
606
-1069
-504
-116
0
1314
2012.3
1565
648
353
177
-1247
-804
-43
318
425
829
-161
0
2058
2013.3
3790
840
840
487
-5425
-1624
-3543
-1635
1654
2581
-200
-129
2077
(百万円)
2014.3 2015.3 (予) 2016.3 (予)
3706
3000
3300
754
850
1050
1076
1300
1400
669
850
850
-7559
-3600
-4000
-4180
-1600
-1500
-4179
-2000
-2500
-3853
-600
-700
4863
300
800
7055
500
1000
-199
-200
-200
-1155
0
0
3088
2788
2888
買収の効果も上乗せとなり、2016 年 3 月期もピーク利益を更新へ
前 2014 年 3 月期は小幅増益にとどまった
2014 年 3 月期は、売上高 66181 百万円(前年度比+20.7%)
、営業利益 2091 百万円(同+
2.2%)
、経常利益 2019 百万円(同+5.6%)、当期純利益 668 百万円(同-11.6%)となった。
売上高の伸びに比べて利益の伸びが鈍かったのは、2 年近く交渉してきた卸との仕入価格
妥結の影響が予定より大きく出たこと、調剤薬局の新規出店が思ったほどの効果を上げな
かったことが響いた。
売上高が大幅に伸びたのは、調剤薬局の既存店の伸びが+6.1%と好調だったこと、トー
タル・メディカルサービスの M&A と自社に新規出店の拡大が寄与した。調剤薬局の店舗数
は新規出店 14 店、退店 7 店、M&A 45 店を含めて、2014 年 3 月末には 321 店となった。M&A
では、トータル・メディカルサービスの 35 店舗(主に九州北部)を含め、株式取得で 5 社
(44 店舗)
、事業譲受けで 1 店舗を取得した。
利益増減要因で最も大きかったのは、仕入れ価格差異が-588 百万円発生したことである。
2 年がかりで、医薬品卸会社と交渉してきた医薬品仕入価格が 2~3 月に確定し、それに伴
う精算費用が 4Q に計上され、それが予定を上回った。3 億円は引き当てていたが、6 億円
近い負担となったので、予定を 3 億円近く下回ったことが利益の伸びを抑制した。
ただ、今回の価格交渉を通して、合理的な値決めに対する考え方のすり合わせは前進し
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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たので、2014 年 4 月の薬価改定に伴う価格交渉については、かなりスムーズに進展した。
調剤薬局の売上内訳 (%)
内 訳
処方箋枚数(万枚) a
処方箋単価〈円/枚) b
技術料
薬剤収入
2013.3期
(伸び率)
内 容
525.2 (+13.2)
9349
2206
7143
内 容
606.1
(+15.4)
(+0.6)
新規出店、M&A効果
9831
2256
7576
(+5.1)
(+2.3)
(+6.0)
(+5.5)
(+2.0)
(+6.6)
後発医薬品体制加算
処方日数の長期化
63006
59585
3421
(+19.8)
(+21.3)
(-1.5)
(+6.1)
(-0.7)
(+1.4)
(-1.3)
売上高(百万円)
52581 (+12.1)
調剤売上 a×b
49106 (+12.4)
その他
3474
(+8.4)
(注)伸び率は前年度比全店ベース。
2014.3期
要 因
(伸び率) (既存店伸び率)
調剤薬局の子会社の収益格差が十分縮まらないことも、利益伸び悩みのもう一つの要因
であった。連結売上高の 10%を越えている子会社(薬局)は 3 つあるが、コムファが売上高
135 億円、経常利益 7.5 億円であるのに対して、共栄ファーマシーは同 171 億円、同 0.7 億
円であった。売上高経常利益率で 5.5%と 0.4%という差である。関西を基盤とする共栄ファ
ーマシーについては、経営体質の強化にここ数年力を入れてきたが、新規出店が上手く行
かなかったこともあり、収益性が低下した。ここで、経常利益を 3~5 億円稼ぐ力は十分つ
けられるはずなので、一段のテコ入れが必要であった。この点については手を打っており、
2015 年 3 月期からかなり好転している。
主要子会社の業績
調剤薬局
決算期
売上高
(百万円、%)
経常利益 同利益率
コムファ
2013.3
2014.3
11692
13546
805
753
6.9
5.5
サンメデック
2013.3
2014.3
7380
10433
254
233
3.4
2.2
共栄ファーマシー
2013.3
2014.3
15613
17163
112
74
0.7
0.4
ネットワーク事業の加盟件数は 130 件増加し、期末で 1163 件(調剤薬局 1136 件、病院・
医院 27 件)となった。目標の 1250 件は下回ったが、医薬品発注取扱高が 1124 億円と、念
願の 1000 億円を突破した。
サ高住は 2 つ目のウィステリア清田(札幌市)が 2013 年 5 月にオープンし、その減価償
却が先行して収益性は低下した。また、この事業部門の人員も今後に備えて強化している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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給食事業は、さくらフーズ、ケイエム(2014 年 4 月 1 日付で TMS に吸収合併)という子
会社が担っており、病院、福祉施設内での給食事業受託業務を行っており、今のところ赤
字である。
この期は、2013 年 5 月に三井物産との提携を解消し、MM ネットを 100%子会社化し、その
ために自己株式の取得を行った。その後 MM ネットは本体に吸収合併した。また、2013 年 7
月には阪神調剤 HD と合弁企業を作った。
調剤薬局のエリア別自社店舗数
エリア
北海道
関東甲信越
近畿
九州沖縄
東海北陸
中国四国
東北
2012.3末 2013.3末
101
34
41
4
20
19
4
出店数
109
62
44
5
24
20
5
退店数
2
5
1
0
4
1
1
M&A
-1
-3
0
0
-2
-1
0
0
3
0
32
4
6
0
(TMS)
0
0
0
32
0
3
0
(店)
2014.3末 2014.12末
110
67
45
37
30
26
6
111
70
52
35
39
24
5
合計
223
269
14
-7
45
35
321
336
(注)TMS(トータル・メディカルサービス)の店舗数。2014.12は新規+8店、退店-12店、M&A+19店
トータル・メディカルサービス(TMS)の買収が上乗せへ
TMS の子会社化の影響については、年間の数字をみれば総資産で 73 億円、売上高で 90 億
円、営業利益で 5 億円が乗ってくる。今回の TMS の買収に伴いのれんが 38 億円ほど発生し
た。これを 20 年で償却するとすれば年間 1.9 億円ののれん代が発生する。一方、TMS は給
食事業の買収に伴うのれんの償却を行っていたが、この分は今回の買収でなくなる。結果
として TMS の営業利益 5 億円はそのまま連結利益に寄与してくるとみてよい。
2014 年 3 月期については、このうち 12 月から 4 カ月分がのってくるので、売上高で 35
億円、営業利益で 2 億円が上乗せとなった。
2015 年 3 月期は下期から本格回復へ
2015 年 3 月期の 3Q 累計は、売上高 55546 百万円(前年同期比+16.2%)、営業利益 1783
百万円(同-11.6%)
、経常利益 1710 百万円(同-14.2%)
、四半期純利益 587 百万円(同-
28.6%)となった。薬価改定、調剤報酬改正の影響が出ていることによる。しかし、四半期
別の営業利益は 1Q 264 百万円、2Q 624 百万円、3Q 895 百万円と次第によくなっている。
前年度の 4Q は前回の薬価改定に伴う仕入価格の調整で赤字になっているので、それとの比
較でみると今期の 4Q は順調である。よって、2015 年 3 月期は会社計画を上回る業態が達成
できよう。
P/L を見ると、売上高粗利率が上がって、その分売上高販管比率も上がっている。これは、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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消費税増税分が薬価と調剤報酬に反映されているので、粗利率は上がった。一方、仕入れ
にかかる消費税の増税分が販管費比率の上昇につながっている。消費税の 3%アップによる
売上高粗利率、売上高販管比率への影響は 2%程度で、この分は相殺される。その他では、
給食事業が入ってきたので、ここは人員も多いので、労務員の増加が 1% 強効いている。
また、子会社である共栄ファーマシーの業績が好転している。3 月には同社が所有するド
ラッグストア5店舗を、広島県を基盤とするハーティウォンツ(ツルハの子会社)へ売却
する。収益改善にも取り組んだので、同社の売上計上利益は 4%程度まで改善してこよう。
主要指標
売上高粗利益率
売上高販管比率
売上高営業利益率
2013.12
35.2
31.0
4.2
2014.12
37.8
34.6
3.2
(%、人)
増減
+2.6
+3.6
-1.0
総従業員数
調剤薬局
給食事業
賃貸・設備関連
2013.9
1936
1799
0
48
2014.9
2672
2205
303
67
増減
+736
+406
+303
+19
(注)TMSの買収で給食事業が新規に加わった。
従業員には8時間換算の臨時従業員を含む。
2016 年 3 月期は+22%経常増益で、引き続きピーク利益更新へ
2016 年 3 月期についても業績の拡大が続こう。ネットワーク事業は新規の加盟が 200~
300 件は見込める。ネットワークの加盟店は 2015 年 3 月末 1200 店に対して、2016 年 3 月
末で 1500 店はいくことになろう。
薬価改定がない年なので、調剤薬局事業については、処方箋枚数の伸びや技術料などに
よる単価の上昇、後発医薬品の体制加算などの経営努力が寄与する。調剤の新規出店は無
理をせず、新しい業態との連携も含めて 10~15 店程度であろう。M&A には力を入れていく
ので、この部分の上乗せの方が大きいとみられる。
サ高住は小樽と千里が 2015 年末に出来上がってくるので、入居者が埋まるまでは、コス
トが先行するので、この部門の収支は悪化しよう。給食は収支トントンに向かい、SMO も受
注は増えているので、収支は改善しよう。
2016 年 3 月期は売上高で 835 億円(前年度比+9.2%)、経常利益で 30 億円(同+22.4%)
、
が見込めよう。2 期連続でピーク利益の更新となろう。
2016 年 4 月の薬価改定
2016 年 4 月の薬価改定がどうなるか、2014 年 4 月のように国の政策によって、9 月まで
に価格交渉を妥決できるようになれば、期間としてはスムーズに運ぶ。ただ、当社が主張
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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するような合理的な値決めになるのはまだ難しい。配送回数を減らすことや返品を減らす
ことによる物流費などを考えた単品ごとの価格決めというレベルには至っていない。ジェ
ネリックメーカーが卸を通さない直接配送も徐々にではあるが増えている。そうなると卸
の機能が相対的に低下するので、彼らの業績にも影響してくる。せめぎ合いは続くとして
も、前回の価格交渉がベースとなろう。
セグメント別業績予想
2013.3
2014.3
2015.3
(予)
2016.3
(予)
医薬品等ネットワーク事業
売上高
2650
2843
2850
3100
営業利益
1221
1475
1500
1650
同利益率
46.1
51.9
52.6
53.2
調剤薬局事業
売上高
52581
63006
72550
79300
営業利益
1766
1840
2400
3000
同利益率
3.4
2.9
3.3
3.8
賃貸・設備関連事業
売上高
1122
1317
1500
1700
営業利益
111
-39
-30
-100
同利益率
9.9
-2.9
-2.0
-5.9
給食事業
売上高
ー
607
2000
2000
営業利益
ー
-12
-4
0
同利益率
ー
-2.0
-0.2
0.0
その他事業
売上高
252
407
200
400
営業利益
4
10
-70
10
同利益率
1.9
2.5
-35.0
2.5
売上高
54827
66181
76500
83500
営業利益
2046
2091
2600
3200
営業利益率
3.7
3.2
3.4
3.8
経常利益
1912
2019
2450
3000
経常利益率
3.5
3.1
3.2
3.6
当期純利益
756
668
850
1050
(注)給食事業はTMS買収に伴い、2014年3月期3Qより加わる。(予)はアナリスト予想。
(百万円、%)
4~5年後の
業績イメージ
5000
2500
50.0
95000
3800
4.0
4000
200
5.0
2500
20
1.0
500
10
2.0
1010000
5050
5.0
4800
4.8
1700
中期的な業績の見方
2015 年 3 月期はこれまで進めてきた 3 カ年計画の最終年度に当たるが、目標とした売上
高 750 億円以上、売上高経常利益率 5.0%以上に対して、売上高は 765 億円となり達成でき
ようが、利益率は 3.2%にとどまり及ばない見込みである。
次の中期計画は 2015 年春に公表されようが、1 つの目途としては売上高 1000 億円、売上
高経常利益率 5%が目標となろう。
中期計画の KPI をみると、ネットワーク加盟店は、中小薬局をネットワークでつなぐと
いうビジネスモデルは強いので、
中期的には 2000 件を目指して展開していくことになろう。
自社の調剤薬局は、自社出店 15 店、M&A 40 店、閉店 5 店というレベルで継続することに
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なろう。M&A は引き続き着実に実行していくことになろう。
当社の当期純利益は経常利益に比べると少ないようにみえる。これは M&A が株式の取得
なので、税務上のれんの償却(年間 8 億円)が有税となる。その分実効税率が高くなるので、
経常利益に比べて、純利益が少ないようにみえる。よって、実態の収益力についてはキャ
ッシュ・フローのベースとなる EBITDA「のれん・減価償却前営業利益」でみる方がよい。
中期的な業績の見方については、売上高で 1000 億円、営業利益で 40 億円台は十分射程
内にある。ネットワーク事業は、加盟店 2000 店に向けて引き続き拡大が見込める。ここは
高収益で、当社の独自性を最も発揮するところである。ここで、売上高 50 億円、営業利益
25 億円は達成できよう。調剤薬局は M&A を入れて、900 億円を超える規模は狙っていける。
ネットワーク事業を活かした薬の仕入れコストと調達の安定化、サ高住ビジネスの拡大に
よる薬局事業との連携など、シナジー効果も十分見込めよう。営業利益率で 4%台を確保す
ることができよう。
5.企業評価
先行投資の推進に向けてファイナンスが鍵
ネットワーク事業の業績拡大に期待
ネットワークへの加盟件数については、半期で 120 件とピッチが上がっている。従来 1
社あたり 4~5 件の薬局から 10~20 件を有する薬局へと参加企業の規模が大きくなる傾向
がある。当社のネットワークのよさが分かってきたことによる。
田尻社長は、調剤薬局のサプライチェーンを効率化するというテーマに長年取り組んで
きたが、ここにきて、ようやく足並みが揃う兆しがある。医薬品の取扱額で業界トップク
ラスになってきたが、さらに効率化を図るべく新しいモデルを形成していくことに力を入
れていく。
また、次世代を担う当社のマネジメント人材について、創業者の 3 人に続く人材が育っ
てきていると、田尻社長は強調する。それが、M&A 案件で当社が先方からより信頼される理
由でもある。
ネットワーク事業は有望で、利益貢献はかなり期待できよう。その先は加盟店を 2000 店
に増やすことが目標となろうが、それには今までの延長線ではない戦略も必要になるが、
方向ははっきりしてきた。
中小調剤薬局の収益性をどう改善するかが課題である。業界における調剤薬局 1 店当た
りの年商は平均で 1 億円規模である。当社は平均 2 億円であり、トップクラスの企業は 3
億円を超えている。中小の調剤薬局の M&A をするということは、相対的に効率の悪いとこ
ろを傘下に入れる可能性があるので、収益構造改革を行う必要がある。どのように効率を
高めていくか、という点で当社はすでに経験と実績を有している。低採算の M&A は実施し
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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ない方針であり、ネットワーク事業をもっていることが有利に展開できる余地も大きい。
中期計画では、加盟店ネットワークの拡大と、医療と福祉が一体となったまちづくりを
テーマにした医療モール+調剤薬局+サービス付き高齢者向け住宅のビジネスモデルがコ
アである。土地、建物を所有しないオペレーション中心の展開を定着させる必要があろう。
当社独自の強みを生かして、加盟店を 2000 店へと拡大できそうであるが、その実行戦略
はもう少し見極める必要がある。激戦が続く調剤薬局業界で再編のコアとなって、業界ト
ップを目指す田尻社長の経営戦略には期待が持てるが、そのためには、一定の努力を要す
るので、企業レーティングはBとする。
(企業レーティングについては表紙を参照)
株主数は一時 2000 人を切ったが、2012 年 4 月に続いて、同 6 月にも 1:2 の株式分割を
行った。この 2 度の株式分割、J-ESOP の導入(2012 年 6 月に実施した社員 1200 人への 1 単
元株の株式給付)等の影響により、2014 年 9 月末の株主数は 5976 人となり、大幅に増加し
た。配当に関しては 8 円を継続する。配当性向 20%程度を目途に、業績を見ながら決めてい
くという考えである。
2 月 17 日時点の株価(393 円)でみて、PBR が 1.70 倍、ROE が 14.6%、PER が 11.0 倍、配
当利回り 2.0%である。薬価改定と M&A の進捗および成果を見る必要はあるが、業績が伸び
ていくことは十分見込めるので、それを反映して株価は今後見直されていくことになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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