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基礎デザイン学科 2015年発行

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基礎デザイン学科 2015年発行
武蔵野美術大学
造 形学部 基 礎 デザイン学 科
Musashino Art Universit y
College of Art and Design
Department of Science of Design
S c i enc e of D e s ig n
基礎デザイン学科
デザインは分けられない。
基礎デザイン学科は、デザイン諸領域を、科学・芸術・哲学を包括する
それを知ることから始まるデザイン。
生成の思想としてとらえ、デザインのあるべき姿を考え続ける学科です。
4
年次
デザインの先端をつくっていく
いわゆるデザインの基礎課程ではなく、社会や産業、テクノロジーや文
中心はひとりひとりの卒業研究・制作へと移っていき
明を俯瞰しながら、デザインという営みの可能性を更新し再創造してい
ます。ゼミに分かれて、それぞれの興味を尖鋭化させ、
きます。既にあるデザイン領域に対応する技能を教える場ではなく、も
自分自身の課題に集中的に向き合います。
のづくりやコミュニケーションを背景とする環境形成の諸問題を、常に
新たな視点から捉え、創造的な糸口を見いだしていく技能と能力の育成
を目指しています。
教育カリキュラムは、多様な領域を横断しながらデザインを展開できる
人材が、どのような知的背景あるいは技能を備えるべきかを問い続ける
姿勢から編まれています。
4 年間を通して展開されるデザイン論は、裾野の広いデザイン知を発展
させる下地となります。自然現象を扱う自然科学、社会現象を扱う社会
科学、文化現象を扱う人文科学と関連して、かたちと意味の諸現象を扱
うデザイン学としてそれらは位置づけられています。
3
技術を養成する演習群は、ヴィジュアル、プロダクト、インフォメーショ
ンの諸領域に広がり、ひとりひとりの学生が、それぞれの興味の進展に
年次
複雑の全体像をつかむ
独自の領域へ、それぞれの興味から接近できるようなカリキュラムが用
多様なデザインの方法を、豊富な演習授業を通して
意されています。
経験していきます。ノーテーション、シナジェティクス、
テクストインフォメーション、オートポイエーシスなど
知の先端を拓いていく多様な切り口からデザインの諸
相を学びます。
2
学年
4
年次
デザインの水脈を見つける
科目名
デザイン論 IVA / IVB
言語論
ヴィジュアル、プロダクト、インフォメーションの演習
デザイン演習 II
現代科学論
を中心に、デザイン方法の多様性を学びます。同時に、
(右ページ ダイアグラム参照)
卒業制作・卒業論文
コミュニケーション論
記号論やテクスト研究などから表現と意味への認識を
オートポイエーシス論
深めます。
文化記号論
人工知能論
3
映像工学
デザイン論 IIIA / IIIB
社会学特論
デザイン演習 I [a-n]
詩学
(右ページ ダイアグラム参照)
デザイン記号論
タイポグラフィ論
1
コンピュータ演習 II
年次
1
広い視野を身につける
デザイン論 IIA / IIB
デジタルイメージ研究
記号論 IA / IB
知覚方法論
デザイン論を通して視野を大きく拡張し、共通科目で
色彩論 II
プロダクトランゲージ研究
基本的な教養の下地をつくります。コミュニケーショ
形態論 II
ヴィジュアルランゲージ研究
ンやプロダクトの基礎演習に加えて、色彩や形態の原
表示方法論 II / III
タイポグラフィ研究
テクスト研究
シルクスクリーン演習
理を学びます。
デザイン論 IA / IB
色彩論 I
形態論 I
言語表現論
表示方法論 I
カリキュラムは上記の専門科目の他
に、他学 科などの専門を実習する
「造 形総合科目」および「文化総合
コミュニケーション実習
科目」からなります。
コンピュータ演習 I
ここに は 2 015 年 度 入学 生のカリ
プロダクト材料演習
キュラムの構成を示しました。
illustration : R.Hashiba
2
Graduation Works
3. 文字から見えてくる風景
4. 金魚(加藤 美帆)
卒業制作
∼コンクリートポエトリー×身体∼
作者は金魚を極限まで簡潔に表現し、美し
(柏村さくら)
いグラフィックデザインを生み出した。金魚
新國誠一のコンクリートポエトリー 6 篇を、
は人間が種の交配によって作り出した観賞
身の丈をこえる本に仕立てた舞台で行われ
魚で、目の大きさ、模様、ひれの形など、目
る舞踏。漢字が整然と連なった硬質な印象
指す特徴を強調する方向に進化させられて
をもつ詩の「静」、顔から腕にかけてドーラ
きた生物である。金魚の特徴を単純化する
ンを塗り、やわらかく肢体をくねらせておど
ことで、それぞれの金魚に対して人間が見
る緩急の激しい「動」。その強い対比は、一
立てた理想が浮かび上がってくる。日本の
冊の詩集の真っ白な見開き頁に黒い活字が
伝統美を現代的に捉えた作品としても優れ
ぎっしりと配列された静 寂な空間にいのち
ているが、動画として表現された際にも、描
が吹きこまれていくようで、あるいは詩の行
かれていない身体部位が、魚体の重なりの
間をよぎる精霊のようで、強く胸に迫ってく
なかに現れてくるところに見応えがあり、思
るのだ。
(担当教員 板東 孝明)
わず引き込まれる。
(担当教員 原 研哉)
3
1
4
1. 昇果(松尾 美果)
2. Typeface of 1min.( 髙室 湧人)
5. 樹球(池田 頼果)
美味しそうに撮られた果実の写真は世に溢
作者は、
「1分」という時間を表現する時計
いつもの見慣れた風 景のなかにある木々。
れるほどある。作者は目の前の豊かに実っ
的なモーション・グラフィックスを追いかけ
長い時を経てさまざまに変化していく樹の
た果実を趣くままに刃をいれる。あたかも
ていた。ある時、文字を回転させ、それに
幹を子細に観察する。作者は成長しながら
よって「1分」が表現できることに気づいた。
肥大化していく樹皮の表情に心を惹かれた。
実を切ることで内に秘めたかたちを見つけ
出すかのように。皮を剥かれ果肉を削がれ
「時計」という表現から離れることで、むし
そこにはそれぞれの樹体を守ってきた無数
種を取られて瞬く間に表情は変わっていく。
ろ時間に出会うことができたのである。作
の証が刻まれていると言う。変容した樹皮
そのひとときを楽しむかのように写真に収
者がデザインした「1分」は、一秒ごとに薄
を子細に観察しその姿を球に見立てたキャ
める。そこには今までみたことのない果実
くなっていく文字の形の積層によって、一秒
ンバスへ克明に映し取る。それはあたかも
の姿が鮮やかに現れる。ひとつひとつの果
一秒が過去化していく風景となっている点が
空間に浮遊する樹々の惑星のように見える。
実は生き生きとして貴石のようで無駄がなく
秀逸である。世界が一秒ごとに過去になっ
あらたな生命を宿したように不思議な感覚
美しい。
(担当教員 野口 正治)
ていく光景には不思議な無常観が漂ってさ
を覚える作品だ。
(担当教員 野口 正治)
えいる。時間あるいは過去が描写されつつ、
同時に「言葉」として放たれるメッセージは
とても詩 的である。
(担当教員 原 研哉 )
2
5
Graduation Works
3. womb(大久保 侑・山根 康喜)
卒業制作
楽曲やダンスを視覚化した図形楽譜は、旋
律やリズムを五線譜とはちがった形式で提
示してくれる。しかしその「抽象絵画」から
音そのものの「かたち」を感じることは難し
い。音はどんな「かたち」をしているのだろ
うか。音を「視る」ことはできるのだろうか。
4. Outlining(木村 浩紀)
あるいは、かたちは「ある音」を示している
ペチャンコに潰れた缶を見つけて、立体だっ
のだろうか。わたしたちが見ている「かたち」
た缶が平面になった状態から着想し、アウ
とは、聞こえない音なのだろうか。音とかた
トラインというテーマを見つけた。それは、
ちの関係をめぐる考察は面白い。
立体を平面に投 影した時に表れるアウトラ
金 属など硬質な板の上の砂を、スピーカー
インではなく、りんごの皮を剥くとできるよ
を下から当てて振 動させると、音の周波 数
うな、ひと連なりのサーフェスをさしていて、
に呼応するかのように、
「クラドニ図形」と
モノの外形をつくるすべてのラインのことだ
呼ばれる精緻な幾何学図形が現れる。音が
という。そのモノの外形をかたちづくる線を
「かたち」に憑依 する。この作品は金 属板
さぐり、身体の輪郭の特に首周りのラインを
にかえて水面に振動を与えたものだ。音源
起点に、衣服を捉えた作品。
は、母胎の中で聴く母親の心音。展示空間
例えば、ネックレスのように輪っかになって
の壁全面に、ドッドッドッと響き渡る心音が
いるものは、身につけてはじめてそのカタチ
変幻する波 紋を描く。羊水に浸ってまどろ
が表れる。それは付けている人の首のカタ
む胎児のように、音の「かたち」に包まれる
チであり、身体のアウトラインの一部だと言
瞬間だ。
(担当教員 板東 孝明)
える。彼は一枚の布の両端を持つと表れる
ドレープの中に、その輪っかの要素を見つ
け、それを衣服へと展開した。
一般的な衣服は身体を包み込む筒型からな
るが、この作品はその筒をどうデザインする
かという姿勢で見つけられたものではない。
1
身体のアウトラインからはじまり、無数の検
1. 紙の絵(中野 千晶)
日本 画の 技 法で 描 かれた一枚の 紙 の小
感覚をしずかに呼び醒ますのだ。紙の「白」
討モデルを制作する過程で、立体である身
品。それ以外に何も描かれてはいない。一
を通して、そこに描かれなかった何かを観
体と平面である布との関係性を自分なりの
枚の紙の上にも文字や絵があるわけではな
る者につよく想起させる。それは写真によっ
やり方で構築した示唆に富んだ作品と言え
る。そしてその結果、作品は原初的な衣服
3
い。ただ紙の折れや皺が丹念に描かれてい
て表現された紙でも、他の画材によって描
るだけだ。しばらく眺めていると、折れや
かれた紙でもない、何か尊いものを顕現さ
である貫頭衣と呼ばれる類のものに辿り着
皺の陰翳に色が移ろい、仄明るく光彩を放
せようと意図している作品だ。そのために
いたのだった。
(担当教員 柴田 文江)
つ「白」が顕現しているのを意識する。一
は、日本画という技法がもっとも適切であっ
枚の 紙を描こうとした作者が真っ白な紙と
たのだろう。
(担当教員 板東 孝明)
対峙し、過ごしたであろう時間が、観る者の
2. 肉着物(鮫島 春奈)
肉の 断面から得られるグラフィックパター
ン を、着 物 の 柄として 展 開 する 試 みで あ
る。肉と脂肪の織りなす「肉柄」は、肉を
食する文化圏では無意識に共有されている
イメージである。 したがって、これを上手
4
に取り出し整理すれば、人々の注目を喚起
し、美 的 な感 動を誘うグラフィックパター
ンとして運用できるかもしれない。作者は
まず、肉からヴィジュアルパターンを抽出し、
これを 着 物に適 用した。 着 物の柄 は 左 右
非対 称が好ましいが、作者は見事に、着物
5. 素肌のムラージュ(松成 薫)
柄としてのアシンメトリーな肉パターンをま
日常 に見 える肌 の 現 象 は 静かな皮 膚とい
とめあげている。衣桁にかかっている状態
う海 に浮かぶ氷 山の 一 角。 その内部 では
も楽しめるが、実際に着た時に「肉」に見
想 像し 得 ない世 界 が ひ ろがって いると言
えるかどうか、そしてまたそれが好ましい柄
う。 そ の 刻 々と動く肌 の 一 瞬 を 表 現した
として機能するかどうかに、このプロジェク
いと作者は 考えた。 16 世紀に皮膚病の記
トの成否のポイントがある。写真に見る通
録として制 作されたムラージュというロウ
り、作者は自らこれをきちんと着こなし「肉
模 型 の 手 法を 学 び、シミ、日焼 け、角 栓、
柄」の魅力を共感のレベルに持ち上げるこ
かさぶた、虫さされなど、肌に起きる様々
とに成功している。着物への適用も見事だ
な現象を透ける三次元モデルに再 現した。
が、帯に白っぽ い「 脂 肪」 をあしらった点
想像を交 えながら細 密につくられた塊は、
も秀逸で、これによって着物としてもメリハ
刻々と変化 する肌の 表 情を捉 えて美しい。
リが出るとともに、見た目の「 肉性 」 が際
それらは、あたかも生の証のように輝いて
いる。
(担当教員 野口 正治)
立った。
(担当教員 原 研哉)
2
5
Information
色彩論 I
人間や環 境に対するヴィジョンを更 新する。
色彩にとって光は本質的である。その光=
色彩が見える様相は多様だ。たとえば、ス
トロボの 光、太 陽、虹、朝 焼 けの 雲や 空、
りん光、暗い行灯などがある。また、色は
人間の外側の世界にあると同時に、人間の
内側にある。ある色の刺激を見て、その刺
激を取り去った後に色 が( 心に)見える現
象が残像である。これら様々な光の現象を
体験・理解し、再構成を行う。
2. 太陽残像
強い光の残像は、いろいろな色が交代して
2
3
現れるように見える。この課題では、太陽の
残像の観察に基づいて、太陽を再構成する。
3. 光の表出
光の色を絵具で再現することは難しい。こ
の課 題では、さまざまな光の 特 徴を捉え、
その表現を行う。
4. トランスペアレンシー
この課題では光の混色(加法混色)と、絵具
の混色(減法混色)の原理を利用し、色彩構
成を行う。
4
1
インフォメーションは、ヴィジュアルコミュニケー
インを再生産するのであれば、その情報を見
ション、プロダクト環境とともに基礎デザイン
つけることは容易です。お手本を見ればよい
学科の教育プログラムの軸です。インフォメー
からです。けれども、デザインを刷新するとき、
ションは、コンピュータを使うことやメディアや
そのお 手本 や 情 報 はまだどこにもありませ
S NS 上の表現やアプリを作ることと同じではな
ん。 デザインを導いてくれる科学、デザインの
いし、またデザインするために情報を集めるこ
足場を再確認させてくれる科学、自然科学ば
とでもありません。正確には、それらもインフォ
かりでなく人間科学や社会科学も含めて、それ
つ色の特性を分析し、色 彩の構成を行う。
メーションの内容の一部には違いありませんが、
らと連携して、人間や環境に対するヴィジョン
素材の成り立ちを同時に考えることにより、
別の意味も含んでいます。
を更新することができる地平に立ってデザイン
情報(インフォメーション)を鍵にしてデザイン
していくことがインフォメーションの軸です。
5. 色彩論 II | material / color
色彩論 I で探究した色彩の様相をさらに発
展させ、形や素材との関係で様々に変容す
る色彩の現象性を探る。この課題では、身
近な素材(自然 物・人 工物を問わず)が持
物質と色・物性と色についての考察を行う。
平面だけではない、空間や時間との関係にお
いて変容する色彩の豊富な様態も見えてくる。
5
現象を捉えて、制作することは重要です。例え
ば、情報と色や形を繋げれば、形態論、色彩論
という、色や形についての思想、科学、美術を統
6. デザインナレッジ[デザイン演習 Ia ]
合して、色や形を認識する地平、創造する地平
が拓かれます。この他にも、情報とヴィジュアル
コミュニケーション、情報とプロダクト環境、さ
らに情報と環境、情報と生命を繋いでいかない
とデザインができない程、現代のデザインは複
雑であり、高度な社会関係の中にあります。
基礎デザイン学の教育の中でインフォメーショ
ンは、
「インフォメーション理論」とくくられるこ
とがあります。デザインする時、既にあるデザ
デザイナーが生み出す知識は受容者を方向
付けるが、受容者が生み出す知識もまたデ
ザインを啓 発する。デザインの知識を生み
1. テクストインフォメーション
出す場として生産と使用を捉えるのがデザ
[デザイン演習 Id ]
様々な要素によって織りなされた、テクスト
インナレッジだ。写真は、今回の課題であ
としての街の構 造を見つけ出し、再び 街を
る「 passage」 つまり時 間 的 移 行をテーマ
記述する。生物の「生態」を分析するように
に制作されたものである。一息入れて次に
環 境に蠢くヒト + モノ + コトの関 係性を改
移ること、一日のリズム、一 週間のリズム、
めて発 掘していく課題である。写真は、吉
季節のリズムは生活の中でどのように作り上
祥寺の「ハモニカ横丁」から文字の要素だ
げられているのだろうか、出しゃばりすぎず
けを抜き出しレイヤー構造として展示。その
にそれを支援するデザインはどのようなもの
環境が与える特殊なイメージの解析を試み
だろうか。課題に対して、絵本、装置、サー
ビスなどの興味深い提案がなされた。
た作品である。
6
Visual Communication
潜在している可能 性を、可視化すること。
ヴィジュアルコミュニケーションには独創性が重
要ですが、それは必ずしも誰も見たことがない
荒唐無稽なヴィジュアルを強引にひねり出すとい
うことではありません。むしろ、誰もが既に知っ
ている事柄を、あらためて新鮮に捉え直すよう
なものの見方を獲得することで、自然に発露さ
れてくる力なのです。
イメージの資源は、人々の頭の中に既に蓄積さ
2
れている記憶です。経験によって人々の頭の中
に蓄えられてきた膨大な記憶こそ、最もアクティ
ブなイマジネーションの鉱脈なのです。意外性
タイポグラフィ研究 a
のある角度から刺激されることで、蓄積された
タイポグラフィを広 義 の 意 味でとらえ、空
間のなかでのポイエーシスの生成をめざす。
記憶相互に新鮮な連携や融合が起こり、生き生
音楽のリズムや旋律、拍子を、文字組版、空
きとしたイメージや共感が生成されてきます。
間構成へと拡張する。
そういう意味では、冷静な観察力や洞察力こそ
3. typography in a space
重要で、そこにのびのびと闊達な表現や合理的
ある曲を、指 定された詩を用い 箱という 3
な定着方法が掛け合わされることで、優れたヴィ
次元空間に構成する。曲の「空間」を視覚
化することを試みる。
ジュアルコミュニケーションが生まれます。
4. typography in a book
ヴィジュアルデザインの役割は、潜在している可
自ら書いた詩によって「本」という四次元空
能性を、可視化することでもあります。社会や
間を表現した。本は、頁をめくる行為によっ
て積層された疑似立体、さらに流動する時
世界の中に潜在し、可能性の領域にとどまって
間を生む仮想空間となる。
いるものを、
説得力のあるイメージとしてヴィジュ
5. typography in a poster
アライズすることで、人々を動かしていく期待や
記 憶 のどこ か に 残 る、
「 ラ ジ オ 体 操 第 1」
の歯切れのいい掛け声とピアノの軽 快なリ
希求が強く湧き上がってくるのです。
ズム。身体と掛け声と音楽によるタイポグ
ポスト工業化する日本の産業状況の中で「価値」
を生み出していく局面で機能するデザインとして、
ヴィジュアルコミュニケーションはより大きな役
ラフィで、記憶のかたちを呼び覚ますこと
を試みる。
3
4
割を担っていくと考えられます。
ヴィジュアルコミュニケーション
[デザイン演習 I m ]
1. 円グラフ
「円グラフ」は、円を中心から円周への線で
区分し、ものごとの割合を表現する形式で
ある。これを「俳 句」のような、創 造 的な
制約と考え、この形式を用いて世界の様相
を捉えてみることを試みた。色彩の巧みな
運用で、円グラフは驚くべき表現 力を獲 得
する。
2. RESTAURANT
架空の「レストラン」を構想し、展開してい
く。視覚記号の運用によるイメージの制御
と発展性について学習する。まずは、独創
的なレストランやそのサービスについて詳
細かつ奔放にイメージを膨らませ、誰もが理
解できる名称を考え、そのマークやロゴタ
イプを考える。サービスやその思想を体現
したシンボルやロゴタイプを運用することで、
仮想や構想を広げ、発展させていく過程を
学習する。
1
5
Product Environment
デザインによって世の中との関わりがはじまる。
3
1
道具からは、その暮らしぶりを見ることが出来
見ぬそれらの問題に対して、さまざまな技術や
を共に学び、新しい自分をみつけましょう。これ
ます。そして、そこに込められた作り手の創意
テクノロジー、多様なジャンルの専門知識や学
までの自分が言葉を使って人との関わりを持っ
と工夫は、人の営みを充実させ幸せをシェアす
問、それらの壁を乗りこえて繋ぎあわせる役割
てきたように、デザインによって世の中との関わ
3. プロダクト環境[デザイン演習 I g ]
るために考えられています。モノに限らず人とそ
もデザインの重要な機能です。それはデザイン
りがはじまるのです。
を通じ、イメージを具体化する演習。モノと
れを取り巻く環境に対して、より良い方法を探
がいつも人に近く、有機体のように多くの事象
し実践することも、同じ思考のなかで執り行わ
と緊密に関連し、人と環境に背かないソリュー
れます。そのようにデザインは「人が人らしく生
ションであるからです。
きるための知恵」であり、それを探し続けるこ
未来を見据え問題の正しい解に近づくために、
とがまたデザインなのです。
表現技術や手法を学ぶだけではなく、デザイン
私たちの未来には、これまで経験したことのな
を元から考え問い続ける力を養うこと、それが
い種類の問題が待ち構えているでしょう。まだ
基礎デザイン学科の目的と考えます。デザイン
発想から思考、展開というデザインプロセス
の関わりの中で身につけた体験や気づきを
「使う」という受動的な物から「つくる」と
いう能動的な視点へ転化させる。モノを現
実に対応させるために、寸 法という概 念を
身につける。
形態論 II
4. シナジェティクス[デザイン演習 Ib]
1. 身にまとう自然
黄 金 比、フラクタル、螺 旋、音 や 光 のスペ
自然の中にある現象や表情から美しい要素
クトル、極 小 曲面 や 雪の 結 晶、空 間 充 填、
を抽出し、身につけ装飾するものとする。紙
準結晶、そしてシナジェティクスなど、自然
という素材の組 成と、自然の成立ちをシン
が採用している構造や数理的な秩序、法則
クロさせた美しいカタチを追求する。シンプ
を学ぶ。造形を志す者は、個の感性に頼る
ルに、複雑に、細やかに、大胆に、曲げ、折
だけでなく、自然 科 学の知見への目配りも
り、つなぎ、切り、重 ねる。 具 象でも模 様
でもない表現がのぞましい。素材という現
4
必 要である。 自然 の「 かたち」は、未 知の
造形を示唆している。写真は紙によるマス
実の中にいかに創作の余地を見いだすのか、
ク。紙を折る。一枚の紙が構造になる。折
カタチは素材の組成と密接に関わり生まれ
り方によってそれは可変的な造 形にもなり
て来る。
得る。折りが紙の中からかたちをたぐり寄
せるのだ。
2. ポジティブなカタチ
トロフィーをつくってみる。ポジティブな言
5. プロダクト材料演習
葉を選び出し、そのイメージを手にとれる
身の回りのモノの性質を改めて認識し、材
実像とする。記憶や経験を変換しカタチに
料と方法論の両方からアプローチを試みる。
投影することで、勝者を讃え、勝利の象徴と
「木」
「プラスチック」
「金属」の 3 つの素材を
なるシンボリックでアイコニックな自分だけ
用いて立体を制作する。それぞれの素材の
のフォルムをさがす。カタチの存在感はいつ
特性を把握し、またそれに応じた加工方法
も美の内側にあり、また存在感のあるカタ
を体験しながら、質感の違いや美しさを立
チは美しいと言うことができる。
2
体として表現する。
5
専任教員紹介
右手には右手の仕事、
基礎デザイン学の「基礎」には
デザインのはじまりは、
生命と響きあう何か。
映 像という分野は一歩目の段 階。
デザインの視点を学び、
現状を生かし、
左手には左手の仕事を。
別な意味がある。
つくる喜びから。
新たな社会を予感させる何か。
二歩目を踏み出すのはみなさんだ。
デザインの芯を形成する。
育て、使い続けるデザイン。
原 研哉
小林 昭世
柴田 文江
板東 孝明
菱川 勢一
宮島 慎吾
吉田 愼悟
コミュニケーションデザイン / デザイン学
デザイン学 / 記号学
プロダクトデザイン
タイポグラフィ / シナジェティクス
モーションデザイン
プロダクトプランニング / デザイン
色彩計画
自分とはどんな可能性であるかを見つめ
基礎デザイン学科は、今以上に高いレベ
つくるということはこれまでの経験から
点線で、いまだ見ぬ「かたち」を描き、こ
小さい頃、不思議に思ったことがあるで
あらゆる分野で必要性が求められてい
デザイナーは、日々、美しい製品や魅力的
てください。オリジナルな部分はどこに
ルで実践や研究などを行うために、基礎
得られたことを、別の次元で何かに投影
れがデザインだ!と主張する。人は嘲笑
しょう。雲はどうして空に浮かんでいる
るデザインは、今日の多様な社会に秩序
な広告をつくり出しています。このような仕
あるのか、成長していく可能性はどのく
的なことについての認識を絶えず問い直
するものです。自分だけの喜びや感動
するかもしれない。見向きもしないかも
のか、とか、タイムマシンはどうやったら
と美しさを提供する使命を担っています。
事は今後も必要とされるでしょうが、真に
らいあるのか。美術大学とは、社会や世
し、変革していくことです。たとえば、基
だったことが、誰とでも共有できること
しれない。しかしその「かたち」が生命
作れるのか、とか。素朴な疑問に真正面
そのための最適なデザイニングシステム
快適な暮らしを実現するためには、過剰な
界の次のかたちを、独創的に問いかけ提
礎デザイン学科 教育プログラムにある
に変化してゆく、
そこにデザインの楽しさ
と響きあう何か、あるべき社会の姿を予
から向き合うことがデザインの入口なの
として、既成概念や領域にとらわれない
モノや情報を整理する必要もあります。基
案できるやわらかな頭脳と感性を育む場
知覚や脳研究の成果、言語研究の成果、
があると考えます。自分自身を拡張して
感させる何かを宿しているとしたら、や
です。もうすでに入口から入ったのなら
視点を学び、実行するための芯となる思
礎デザイン学は、様々なデザイン領域の関
所です。デザインを通して、自分を発見
物理等からの形状や色彩研究の成果等
大勢の喜びとつながること、まずはその
がてその点線はリアルに立ちあらわれ、
ば、いかに楽しく追求できるかを考えま
考や技術を身につけてください。
係性を調整して、秩序ある社会環境をつく
してください。
は、デザインを問い直すためにとても刺
つくることの素晴しさを実感してほしい
人々は、自分たちが待ち望んでいた「か
しょう。答えは見つかるかもしれないし、
武蔵野美術大学卒業。GK インダストリアルデ
り出すための学問でもあります。
日常をとらえ直す視点や、潜在する問題を可視
激的です。
と思います。
たち」だと知るでしょう。
見つからないかもしれない。そのプロセ
ザイン研 究 所を 経て、86 年に(有)ケイ・プロ
エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、
武蔵野美術大学基 礎デザイン学 科卒業。主な
スそのものもデザイン。世の中にはまだ
ジェクトを設立。主な仕事として、流通小売業
武蔵野美術大学卒業。向井周太郎デザイン研究
武蔵野美術大学大学院造形研究科(修士)修了。
専門は、ユーザーが人工物に接するときの体験、
ホテルのトータルディレクションまで、インダスト
作品に、リートフェルト、ミース、桂離宮のグラ
まだデザインで豊かにすることができる
操作の了解、誤使用や誤操作、人工物に対する
リアルデザインを軸に幅広い領域で活動をして
フィック、
「Kieler Woche 1996」VI( ド イツ )
イメージ形成などの知識を情報デザイン、製品デ
いる。代表的な作品に、無印良品「体にフィット
など。98 年吉野川可動堰建設計画に対する住
ザインに役立てる研究「デザインナレッジ」につ
するソファ」/ オムロン「けんおんくん」/ カプセル
民投票に代表世話人として参加。01 年よりシナ
いて記号論から考えること、そして、20 世紀はじ
ホテル「9h ( ナインアワーズ )」/ JR 東日本ウォー
ジェティクス理論による軽量多面体構造の研究
90 年代にニューヨークにてミュージックビデオ
や CM の演出・編 集を手がけ帰国 後、デザイ
めにヨーロッパで展開するデザイン概念、関連す
タービジネス「 次 世代自販 機 」/ 包丁「 包丁 工
開発。04 年より LED イルミネーション「光マン
ン スタジ オ「 DRAWING AND MANUAL」
化していく姿勢からデザインを展開。活動を象
徴 する展 覧 会 に「RE-DESIGN 日常 の 21 世
紀」
(2000)、
「HAPTIC- 五感の覚 醒 」
(2004)、
「 S E N S E WA R E 」
( 2 0 07/2 0 0 9 )、
「H O U S E
VISION 」
( 2013)、
「 SUBTLE (
」 2014 )等があ
る。近年の仕事は、無印良品や蔦屋書店のアー
トディレクションなど。主著の『デザインのデザ
イン』
( 岩波書店)
『白』
、 ( 中央公論新社)
『日本の
、
デザイン』
( 岩波新書)は多言語に翻訳され世界
に読者を持つ。毎日デザイン賞、東京 AD C グ
ランプリ、亀倉雄策賞、原弘賞、日本文化デザイ
ン賞などの他、著書『デザインのデザイン』でサ
ントリー学芸賞を受賞。2011 年から 12 年にか
ことがたくさんある。見つけよう。
る形態、機能などの概念の成立と発展を歴史を
房タダフサ」/ 木のおもちゃ「buchi 」などがあ
ダラドーム」を制作し、国内外にて展示してきた。
を 設 立。 モ ーショングラフィックス分 野 の 第
踏まえて検証する研究。
る。毎日デザイン賞、グッドデザイン賞金賞、ド
0 7 年より竹による球体 構 造の開 発を行い、11
一人 者として CI や VI などの 数々の 実 績を重
イツ i F デザイン賞金賞、ドイツ red dot design
年インドネシア・バンドン工科大学にて在外 研
ね、多くの企業のブランド構築や、ドラマ、映画、
award 賞など多数受賞。著書『あるカタチの内
究期間に、バンブーシェルターのプロトタイプを
TVCM などを手がけている。映 像作家、写真
完成。13 年「竹民具」展および竹ドーム制作を
家、脚本 家、作 詞家など多 彩な肩書きをもつ。
通して「デザインの原像」を探る。14 年よりカー
カンヌ広告祭金賞、iF デザイン賞金賞、 One
ボン・ファイバーの超軽量折り畳みドームを開発。
Show 金 賞 など受賞歴多 数。 代 表 作は NHK
側にある、もうひとつのカタチ』
( ADP )。
けて北京、上海で大規模な個展を巡回。
におけるブランド開発及び商品開発(西武百貨
店、西友等)。地域産業におけるブランド開発及
び商品開発。北海道 / オホーツクの木工商品・
十勝のバッグ、地域ブランド「キレイマメ」、埼玉
県 / 埼玉の新日本酒ブランド・高齢者の衣料品、
宮城県 / 間抜材の利用展開・日本酒グラス、滋
賀県 / 陶器の新領域商品等多数。さらに大学で
の活動として、多数の産学共同プロジェクト、そ
して現代 GP「いわむろのみらい創生プロジェク
ト」、
「EDS 竹デザインプロジェクト」及び「わら
アート」
( 新潟市、香川県小豆島、愛媛県今治市、
埼玉県行田市)を推進。
室勤務の後渡仏し、著名なカラリスト、ジャン・
フィリップ・ランクロに色彩計画を学ぶ。その後、
日本で「環境色彩デザイン」を提唱し、地域の景
観形成を推進した。現在は基礎デザイン学科で
色彩を軸とした教育に関わりつつ、日本やアジア
の多くの環境色彩計画に携わっている。また山
梨県、静岡県、佐賀県、横須賀市、上越市等数
多くの自治体の景観アドバイザーを務めている。
最近では地域の個性を活かしたまちづくりを推
進するために、地域の住民と協働のデザインを
進めることも多い。著書に『都市と色彩』『まち
の色をつくる』『景観法を活用するための環境色
彩計画』等がある。
ドラマ「八重の桜」アートディレクション、NTT
ドコモ「森の木琴」CM 監督など。
ドラマ「坂の上の雲」/ 21_21_ Design sight「動きのカガク展」/ NTT ドコモ「森の木琴」|菱川 勢一
オムロン「けんおんくん」|柴田 文江
竹尾ペーパーショウ 2014「 SUBTLE 」
|原 研哉
「わらアート」プロジェクト監修|宮島 慎吾
『武蔵野美術 No.111』「バウハウスとウルム」|小林 昭世
カーボンファイバーの超軽量折り畳みドーム|板東 孝明
甲府平和通りの環境色彩計画|吉田 愼悟
武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科
187-8505
東京都小平市小川町 1-736
1506134000
tel 042-342-6068
fax 042-342-5181
http://www.kisode.com
[email protected]
表紙作品:形態論 II
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