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授業のファイル - 東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子
スーパーカミオカンデ実験 (素粒子・宇宙研究) 現代物理学入門@本郷 2006年7月3日 塩澤 真人 [email protected] スーパーカミオカンデ実験は、世界最大のニュー トリノ観測・陽子崩壊探索装置であり、素粒子の 基礎理論や宇宙の理解のために必要不可欠な実 験である。 今後も、素粒子ニュートリノの性質のより精密な測 定や、新しいニュートリノ源の探索、陽子崩壊の探 索を行っていく予定である。 再建作業終了後、給水中のスーパーカミオカンデ(2006年4月23日) スーパーカミオカンデの歴史 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 Start SK-I 光電子増倍管数 エネルギーしきい値 (太陽ニュートリノ解析) (光電面被覆率) 11,146 (40%) 5 MeV 5,182 (19%) 7 MeV SK-III 大気ν L/E効果の発見 K2K 最終結果 Full reconstruction (完全再建) 11,129 (40%) 大気ν振動の発見 太陽ν振動の発見 Accident(事故) Partial Reconstruction(部分再建) SK-II 主たる成果 4 MeV(plan) 低エネルギーニュートリノ観測を再開 電子機器も入れ替える予定(新規開発) hit timing Trigger PMT signal charge QTC FPGA amp multihit-TDC ATLAS-TDC ATLAS-TDC Discri.(CFD) FIFO 3gain x 3ch 2004 2005 2006 2007 2008 カスタムASICの開発開始 基板全体の設計 ボードの試作、試験 システム全体の開発、試験 大量生産、 スーパーカミオカンデ入れ替え 最初のQTCchip+評価ボード 高感度、高精度、高速なデータ収集装置の開発。 ハードウエアのエネルギー閾値をゼロに下げる。 スーパーカミオカンデ実験 スーパーカミオカンデ 50000トンの容積の水タンク (42m高さ、40m直径) 32000トン有感度体積 22000トン有効体積 11146本の50cm光電子増 倍管 光電面被覆率 40% 地下1000mの神岡鉱山内 カミオカンデの30倍の 有感度体積 現在の標準理論における 「素」粒子 = 陽子 Proton = 中性子 Neutron ニュートリノは物質となかなか反応しない ニュートリノ 地球 地球を通過する間に反応する確率は、0.0000000002程度 (太陽ニュートリノの場合) しかし、たくさんニュートリノが飛んでくれば、実験装置 で希に反応してくれる。 ニュートリノを「見る」 The neutrino is observed by “seeing” the product of its interaction with matter. νe Electron (e) νµ Muon (µ) Electron neutrino Muon neutrino The products are charged particles. Water Cherenkov Detector Light emission from a charged particle – Cherenkov radiation 粒子識別と チェレンコフリング数 Super-Kamiokande Super-Kamiokande Super-Kamiokande Run 5704 Event 3551590 Run 3962 Sub 125 Ev 965982 Outer: 1 hits, 0 pE (in-time) D wall: 915.5 cm 98-03-17:07:14:39 97-05-01:15:32:29 Inner: 3397 hits, 7527 pE Inner: 2887 hits, 9607 pE Outer: 0 hits, 0 pE (in-time) Outer: 1 hits, 0 pE (in-time) Trigger ID: 0x07 Trigger ID: 0x03 D wall: 1089.6 cm D wall: 1690.0 cm FC e-like, p = FC mu-like, p = 1323.6 MeV/c Run 1871 Sub 2 Ev 6467 96-06-11:02:06:46 Inner: 3021 hits, 7254 pE 923.2 MeV/c Charge(pe) Charge(pe) >15.0 13.1-15.0 11.4-13.1 9.8-11.4 8.2- 9.8 6.9- 8.2 5.6- 6.9 4.5- 5.6 3.5- 4.5 2.6- 3.5 1.9- 2.6 1.2- 1.9 0.8- 1.2 0.4- 0.8 0.1- 0.4 < 0.1 >26.7 23.3-26.7 20.2-23.3 17.3-20.2 14.7-17.3 12.2-14.7 10.0-12.2 8.0-10.0 6.2- 8.0 4.7- 6.2 3.3- 4.7 2.2- 3.3 1.3- 2.2 0.7- 1.3 0.2- 0.7 < 0.2 νe + N Æ e + N’ + (X) Electron-like ring categolized as (diffused ring) 1-ring e-like event (νe CC enriched sample) νµ + N Æ Trigger ID: 0x03 Fully-Contained Mode Charge(pe) >15.0 13.1-15.0 11.4-13.1 9.8-11.4 8.2- 9.8 6.9- 8.2 5.6- 6.9 4.5- 5.6 3.5- 4.5 2.6- 3.5 1.9- 2.6 1.2- 1.9 0.8- 1.2 0.4- 0.8 0.1- 0.4 < 0.1 930 744 558 372 186 0 0 1000 1500 2000 Times (ns) µ + N’ + (X) 1400 νµ + N Æ muon-like ring categolized as (sharp edge) 1120 1-ring µ-like event 840 560 (νµ CC enriched sample) 280 0 0 500 500 1000 Times (ns) 1500 2000 µ + N’ + π + (X) 1100 categolized as 880 660 multi-ring event 440 220 (Additional cut for oscillation analyses) Times (ns) 0 0 500 1000 1500 2000 Super-Kamiokande 地下千メートルに5万トンの超純水をたたえた素粒子検出器 超新星ν 太陽ν 大気ν SK 陽子崩壊 大強度加速器ν (JPARC) 人工ν ビッグバンの直後にあらゆる物質が作られた ビッグバン 宇宙の膨張 あらゆる粒子の生成 クォーク・反クォーク ニュートリノ・反ニュートリノ 銀河形成 http://map.gsfc.nasa.gov/ この宇宙起源のニュートリノは現在1cm3に約300もある。 ニュートリノ振動とは? νe νµ ντ ニュートリノ振動 ( ) ( = Ue1 Uµ1 Uτ1 Ue2 Ue3 Uµ2 Uµ3 Uτ2 Uτ3 ν1 ν2 ν3 )( ) 質量の固有状態 ユニタリー行列 弱い相互作用の固有状態 2つのニュートリノの場合 cosθ να = νβ - sinθ ( ) ( sinθ cosθ ν1 ν2 )( ) P(να→νβ) = sin22θ sin2(1.27∆m2L/E) ∆m2 = m22 - m12 (eV2): 質量の2乗の差 L (km): ニュートリノの飛行距離 E (GeV): ニュートリノのエネルギー ニュートリノ振動をもう1ページ ⎛ | ν e > ⎞ ⎛ cos θ ⎜ ⎟ ⎜ | ν > ⎟ = ⎜⎜ − sin θ ⎝ µ ⎠ ⎝ sin θ ⎞⎛ | ν 1 > ⎞ ⎟⎟ ⎟⎟⎜⎜ cos θ ⎠⎝ | ν 2 > ⎠ | ν 1 (t ) >=| ν 1 (0) > e −iE1t |< ν 1 (t ) | ν 1 (0) >|2 = e iE1t e −iE1t |< ν 1 (0) | ν 1 (0) >|2 = 1 質量(エネルギー)の固有状態は時間経過しても確率不変。 でも複数の固有状態の混合状態はどうなる?Æ時間変化する! | ν µ (t ) >= − sin θ | ν 1 (0) > e − iE1t + cos θ | ν 2 (0) > e − iE2t 異なるフェイズでまわる P(ν e → ν µ ) =|< ν µ (t ) | ν e (0) >|2 ( ) = − sin θ < ν 1 (0) | eiE1t + cos θ < ν 2 (0) | e iE2t • (cos θ | ν 1 (0) > + sin θ | ν 2 (0) > ) = − sin θ cos θeiE1t + sin θ cos θe iE2t ( 2 = sin 2 θ cos 2 θ 2 − e i ( E1 − E2 ) t − e i ( E2 − E1 ) t 1 = sin 2 2θ [1 − cos( E1 − E2 )t ] 2 2 ) E1 − E2 = | m12 − m22 | ∆m 2 p +m − p +m = = 2p 2E 2 2 1 2 2 2 ニュートリノの状態は、質量の異なる状態の重ね合わせで あると仮定する。 空間、または時間 波の伝播 時間 質量M1の 質量状態 1 ニュートリノ 質量M2の 質量状態 2 ニュートリノ 2つの重ね合せ 合成した状態 =(例えば)電子ニ ュートリノ うなりが 起きる 電子 ニュートリノ ミュー ニュートリノ 電子 ニュートリノ ミュー ニュートリノ ニュートリノの伝播 電子 ニュートリノ ミュー ニュートリノ 電子 ニュートリノ 時間、あるいは距離 ミュー ニュートリノ このように種類が変化してしまう現象を「ニュートリノ振動」とよぶ。 ニュートリノが質量を持つ場合に起こる。 ニュートリノ振動を実験で測定することにより、ニュートリノ混合角 (θ)と質量(∆m2)の知見が得られる。 大気・加速器ニュートリノ 大気ニュートリノ 地球の大気 宇宙線(陽子等) Proton, He π π π π µ e νµ 電子ニュートリ νe νµ ミューオンニュートリノ Super-Kamiokande 地球の裏側 から飛んで くるミューオ ンニュートリ ノは半分に 減っている。 大気ニュートリノの上下非対称性の発見 Super-K νµ J ν τ 振動の証拠 cos Number of Events θ 350 Multi-GeV µ-like + PC ミューニュートリノ 300 のまま検出 250 ντ に変身 振動なし の予想 200 150 ミューニュートリノがタウ 100 ニュートリノ変化しする 50 ので検出されない 0 1 -1 上向き νµのまま -0.5 0 cosθ 0.5 1 下向き Data/Prediction (null oscillation) ニュートリノの生存確率 P(νµÆνµ) L/E分布 1.8 1.6 Best fit expectation w/ systematic errors 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1 10 10 2 10 3 10 4 L/E (km/GeV) ニュートリノの「振動」が見えた。 • ニュートリノは0ではない質量を持っている。 • 電子質量の100万分の1程度。非常に小さい。 • 質量の起源?高エネルギーの物理が関係している可能性。 • ミューオンニュートリノÅÆタウニュートリノの振動確率が大きい ν3 νe νµ ντ • νµ~50%、ντ~50% なぜ?クオークの混合と比較しても大 きい。より精密な測定が必要。 • νe~0? 電子だけ特別?なぜ?未知の原理がある? • ミューオンニュートリノÆ電子ニュートリノ振動の測定が必要。 T2K実験へ T2K実験(2009年開始予定) TokaiからKamiokaへの長基線ニュートリノ実験 世界最大のニュートリノ 検出器 スーパーカミオカンデ 5万トン 世界最大強度のνµビーム Kamioka 研究目的 J-PARC 0.75MW 50GeV PS Tokai ミューオンニュートリノÆ電子ニュートリノの探索 ミューオンニュートリノÆタウニュートリノの精密測定 大気ニュートリノ観測と相補的に研究を進める。 From Linac to 3 GeV 3 GeV Extraction Point From 3 GeV to Materials and Life Middle of Linac Tunnel JPARC Neutrino Tunnel Upstream of Linac Tunnel Tunnel Tour 50 GeV Tunnel T2Kスケジュール 2005 2006 2007 2008 2009 T2K construction 2011 First results SK full rebuild Linac MR 2010 April 2009 ν commissioning Full power • Possible upgrade in future – 4MW J-PARC + Hyper-K ( 1Mt water Cherenkov) – 粒子・反粒子の違い? – 陽子崩壊 振動パラメータの実験精度( νµÅÆντ ) 大気ニュー T2K 陽子崩壊探索 力の強さのパラメータ 素粒子の大統一理論 相互作用の統一 粒子の統一 Quark+lepton エネルギー(GeV) 陽子が壊れ ることが予 言されてい る。 陽子崩壊の探索 p u u d + e X d d π0 大統一理論により予言される 崩壊の頻度 Γ=10∼35年 たくさんの陽子が必要 Å 5万トン スーパーカミオカンデは世界最大の陽子崩壊実験装置 minimal SU(5) minimal SUSY SU(5) Super-K SUSY SO(10) 1030 1031 1032 1033 1034 1035 陽子の寿命 (年) • 陽子崩壊の発見 • 素粒子の基本理論の構築 を目指す。 SK-IIIではこのような現象を捉えたい pJe+π0 シミュレーション Super-Kamiokande Run 999999 Event 294 102-11-06:00:06:35 Inner: 3849 hits, 8189 pE Outer: 4 hits, 2 pE (in-time) Trigger ID: 0x03 D wall: 946.1 cm FC, mass = 909.0 MeV/c^2 e+ Charge(pe) >15.0 13.1-15.0 11.4-13.1 9.8-11.4 8.2- 9.8 6.9- 8.2 5.6- 6.9 4.5- 5.6 3.5- 4.5 2.6- 3.5 1.9- 2.6 1.2- 1.9 0.8- 1.2 0.4- 0.8 0.1- 0.4 < 0.1 910 γ γ 728 546 364 182 0 0 500 1000 Times (ns) 1500 2000 超新星ニュートリノ 超新星SN1987a 超新星爆発とは? 重い星の最後の姿 内側から、 鉄 ケイ素 酸素 炭素 ヘリウム 水素 中心の鉄の核が重力崩壊して、中性子星やブラックホールになる現象。 超新星爆発が我々の身の回りにある物質の源泉 99%のエネルギーがニュートリノになる。 Supernova SN1987a 13秒間でKamiokandeが11現象、IMBが8現象捉えた。 観測された現象から得られた爆発のエネルギー(~3 x 1053 erg)は 超新星爆発のシナリオと一致。 しかし、19現象では爆発の詳細な情報は得られなかった。 スーパーカミオカンデで期待される現象の数 Neutrino flux and energy spectrum from Livermore simulation (T.Totani, K.Sato, H.E.Dalhed and J.R.Wilson, ApJ.496,216(1998)) 5MeV threshold 銀河中心 ~7,300 νe+p events ~300 ν+e events (-) ~100 νe+16O events for 10 kpc supernova 銀河中心でおきれば、 全部で8000イベント 近い数が期待される。 超新星爆発の時間発展 Time profile of the explosion SN at 10kpc 平均温度の変化 中性子化バースト Expected number of events in parentheses Neutrino oscillations are not taken into account here. 爆発の時間発展を詳 細にみることができる。 50 events/bin events/bin 電子散乱事象を使えば超新星の方向がわかる Energy = 5-10 MeV 40 ν+e 30 20 νe+p 20 -0.5 0 0.5 ν+e 40 30 20 10 νe+p -0.5 電子散乱の現象を使って 超新星の方向を2−3°の 精度で決めることができる 1 0 0.5 0 -1 νe+p -0.5 0 0.5 cos(θSN) 25 Energy = 30-40 MeV 22.5 ν+e 20 17.5 15 12.5 10 7.5 5 2.5 νe+p 0 1 -1 -0.5 0 0.5 cos(θSN) 1 events/bin events/bin Energy = 20-30 MeV 50 0 -1 ν+e 80 40 cos(θSN) 60 SN at 10kpc Energy = 10-20 MeV 60 10 0 -1 100 ニュートリノ天文学 1 cos(θSN) 超新星との方向分布 Figure from S.Ando 宇宙の進化 現在 超新星背景ニュートリノ Neutrino Flux per sq-cm per second per MeV 期待される超新星背景ニュートリノのスペクトル 10 7 10 6 10 5 10 4 10 3 10 2 Reactor ν Solar 8B Solar hep 10 1 10 10 10 10 10 10 10 Population synthesis (Totani et al., 1996) Constant SN rate (Totani et al., 1996) Cosmic gas infall (Malaney, 1997) Cosmic chemical evolution (Hartmann et al., 1997) Heavy metal abundance (Kaplinghat et al., 2000) LMA ν oscillation (Ando et al., 2002) 超新星背景ニュートリノの予想 -1 Atmospheric ν -2 -3 -4 -5 -6 -7 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Neutrino Energy (MeV) 他のニュートリノに邪魔されず、観測できるエネルギー範囲がある。(~10-30MeV) 次世代陽子崩壊・ニュートリノ検出器 次世代実験ハイパーカミオカンデ Super-K 22kton Hyper-K 540kton 2 detectors×48m × 50m ×250m, Total mass = 1 Mton comparison of data and MC in pJe+π0 search まとめ スーパーカミオカンデは再出発します。 完全なPMT数(2006年∼) 高速、高精度エレクトロニクス(2008年∼) 最強度加速器ニュートリノビーム(2009年∼) 大気・太陽・超新星爆発ニュートリノ、陽子崩壊、、 若い方の参加を大歓迎します。大学院生を募集中。 神岡の見学も歓迎します。 もしさらに聞きたいことがあれば塩澤まで。 [email protected] SK-I (1489日) SK-II (804日) 全運動量 全運動量 SKでの今までの結果( pÆe+π0探索) 全質量 予想される領域に候補は、観測されなかった。 陽子の寿命の下限値:>8.4 x 1033 年 全質量 陽子崩壊から期待され る範囲 ニュートリノ質量の不思議 クォーク、電子類の質量 質量(eV) ニュートリノの質量は極めて小さい 柳田らのシーソー機構によってニュ ートリノの軽い質量を説明できる: ? mquark,lepton2 mν = mR 重い右巻きニュートリノ (>>1010GeV) 大統一理論のヒントがニュートリノ 質量に隠されているかもしれない。 世代