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5 筋疲労について
筋 筋疲 疲労 労 1 :は じめに 私たちは、普段、激しい運動や作業の 後に感じる筋疲労の原因物質が乳酸であることを 聞き、興味を持った。そこで、本やインターネットを使い、次に示す事柄を調べた。 好気条件下において生物は好気呼吸を 行い、エネルギーを作り出す。好気呼吸は大量の 酸素が必要でグルコースが酸化され、水 と二酸化炭素が生成される反応である。この反応 により多量の ATP(エネルギーの通貨)が生成される 。反応は3段階(解糖系・ クエン酸回 路・電子伝達系 )に 分けられ 、細胞 の基質、 ミトコンドリアで行 われる。 一方、運動時な ど嫌気条件下では生物は嫌気呼吸を行い エネルギーを生成する。嫌気呼吸は動物の場合、 酸素を用いずグルコースを分解しエネルギーを作る反応で、筋肉中で起こる。この反応で も ATP は生成 されるが好気呼吸に比 べ生成量は極 少 量で、乳酸が 生成される。 乳酸は疲 労の原因物質で、これが蓄積されていくと生物は疲労を感じるようになる。つまり、私た ちが運動や作業により疲労を感じるのはここで生成される乳酸が原因なのである。 乳酸が筋疲労に及ぼす影響と筋肉疲労 の回復について研究した。 2:実験について 乳酸値(mmol/l) 実験① マウスを 水槽(容積:11655 cm3・ 水温20度)の中で泳がせ 乳酸値を測定す る ・目的 マウスが 運動 することにより疲 労の原 因 物 質で あ る乳酸値 ( mmol/l )の 変動 から 筋肉疲労 について考 察す る ・方 法 ⅰ マ ウ スを 泳がす 前にあらかじめ 乳酸値 を測 定して おく。 ⅱ マ ウ スのしっぽを持 ち一定時間 、一定温度 でマウ スをプールで泳がせる。 ⅲマウスの体 についた水をよく拭き取り、アルコー ルで消毒したカミソリを使っ てマウスのしっぽを 採血の様子 切り採血をする。 ⅳラクテートプロ(乳酸測定値)で採血した血を使い運動後の乳酸値を測定す る。 ⅴ瞬間接着剤で傷をふさぐ。 *これらの作業をを繰り返す ・道具 水槽、ラクテートプロ(乳酸測定値 )、アルコール(消毒用 )、カミソリ、 瞬間接着剤(止血用)、ストップウォッチ、ビニール手袋 ・結果・考察 マウスを 長い時間泳がせるにつれ2匹 水温20度で泳がせる とも乳酸値 は上昇していった 。したがっ 10 て、マウス が運動したことにより、疲労 8 物質である 乳酸の血中濃度が 上昇してい 6 マウスA マウスB 4 ったと考えられる。私たちが 本で調べた 2 ように、マウスが運動をすると乳酸が生 0 0 5 10 15 成されることが確認できた。 マウスA マウスB 3.8 4.6 6.3 5.1 7 7.6 時間(分) 8.7 8.3 実験② 水槽に CO2 を入れて、水槽(容積11655cm 3 ・水温 35 度)の中でマウスを泳 がせ乳酸値を測定する ・目的 嫌気条件下で運動させると乳 酸 値がさらに上昇すると推測されるので、 CO2 量 が多く O 2 量の少ない条件下でマウスを泳がせたときの乳酸値上昇を調べ、空気中 の O 2の及ぼす影響を調べる。 ・方法 ⅰ CO2 ボンベを使い水槽中の CO2 濃度(5∼10%に)を上げマウスを泳がせ る 。( O2 濃度を下げる) ⅱ以下実験①と同じ(今回はマウスの運動量の指針にするため前足のこぎ数を 数える) ・結果・考察 CO2濃度による累積かき数と乳酸値の平均 マウスA( CO2中) かき数 1400 1200 マウスB( 空気中) かき数 9 マウスA( CO2中) 乳酸値 8 マウスB( 空気中) 乳酸値 7 6 乳酸値( mmol/l) 累積かき数 1000 800 5 600 4 3 400 2 200 1 0 0 0 2 時間( 分) 4 6 CO2中でマウスが泳ぐ様子 グラフ1 マウスB(空気中) 9 8 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 マウスA(CO2中) 乳酸値(mmol/l) 乳酸値(mmol/l) マウスA(CO2中) 7 6 5 マウスB(空気中) 4 3 2 1 0 500 1000 1500 累積かき数 2000 0 0 500 1000 1500 累積かき数 2000 グラフ2 グラフ3 グラフ 1より空気中で泳 がせたマ ウ ス B のかき数 は上昇しているが、 4分ご ろ が極大 値で そ の 後は 減 少している 。 この 極大値 の Y 座 標 は ど の マ ウ ス で 測定 してもおよそ 7 mmol/l でほぼ共通値である。一方、 CO 2 中で泳がせたマウス A はかき数が常に上昇して いる 。乳酸値もそれに伴いほぼ一定の値ずつ上昇し 、極大の共通値を越えている 。しかし 、 グラフ 1 からのみの考察だとマウスの運動量がわかりにくい。したがって X 軸に時間で はなく累積かき数をとったグラフ2 、3を作成した 。このグラフから考察すると 、マウス B は累積か き数が1000前 で乳酸値が 減少するが 、マウス A の乳酸値 は上昇し続 ける。 この事から 、マウス B はある程度泳ぐと乳酸値が減少し疲労が回復すると 考えられるが 、 マウス A は疲労がたまり易く時間が経過しても疲労の回復の度合いが低いことが言える 。 よって、 CO2 中で泳がしても乳酸値の 変化はほとんど見られず、回復度合いに違いが見ら れ、 この結 果は 酸素濃度が 低いことに 影響 を受 けていると 考えられる 。ただ 、マウス B の乳酸値がなぜ低下かしたのか疑問が残った。 実験③実験の2週間前からマウスにスポーツ飲料を飲ませ 、水槽( 容積11655cm 3、 水温 3 5度)の中で泳がせる * ス ポ ー ツ飲 料 (アミノバリュー /大塚製薬 )の 構 成 材 料 砂糖 、 果糖 、オレンジ果汁 、 食塩 、松樹皮抽出物 、酸味料 、 アミノ酸 (ロイシン 、 アルギニン 、イソロイシン 、バリン )塩化カリウム 、乳酸カルシウム 、ビタミンC 、 香料、炭酸マグネシウム、甘味料、カロチノイド色素 ・目的 スポーツ飲料を飲ませて運動させることで乳酸値を通して筋疲労の回復について 調べた。 ・方法 ⅰ2週間前からスポーツ飲料を飲ませておく(えさは与えた) ⅱ以下実験①と同じ(こぎ数測定) ・結果・考察 マウスA(ドリンクを飲 ませた) マ ウ スB (ドリンクを飲 ませず ) マ ウ ス B( ド リンク を飲 ませず ) 7 6 5 4 3 2 マウスA(ドリンク を飲 ませた) 1 0 0 500 1000 1500 累 積 かき数 2000 2500 乳 酸 値 ( mmol/l 乳 酸 値 (m m o l/ 7 6 5 4 3 2 1 0 0 500 グラフ4 ドリンクを飲 ませ 、運 動 さ せ たマ ウ スの 平 均 値 1000 1500 累積かき数 2000 2500 グラフ5 マ ウ スA(ドリンク飲 ま せ る:か き数 ) マ ウ スB(ドリンク飲 ま せ ず : 〃 ) マ ウ スA(ドリンク飲 ま せ る:乳 酸 値 ) グラフ 6より、マ ウ スAは運 動を始め る前の乳酸値 は、運動 6 2000 をしていない状態のマウスの標 5 準乳酸値 ( 4.8mmol/l) より 低く 1500 4 なっている。運動前にすでにド 3 リンクの 影響が出ていると考え 1000 られる。 また、マウス Aは、マ 2 500 ウスBよ り単位時間当 たりの累 1 かき数が 多く、それが 持続して 0 0 いる。つまり、速く か つ遠くへ 0 2 4 6 8 分 泳ぐことができるので 持久力が グラフ6 上がったといえる。実験 ②と同 じくマ ウ ス B は4分ごろ 乳酸値上昇のピ ー クが来る 。その後ドリンクを 飲ませた マウス Aでは 、 4から6 分の間で は、乳酸値が下 がっていて、その後 2分間再 びまた乳酸値が 上昇している。しかし、ドリンクを飲ませていない標準の状態のマウス B はマウス A に 比べて回復のスピードが遅くなっている 。これは、呼吸基質補助因子が十分に体内に蓄積 しているため呼吸反応が多く行われたためと考えられる。 グラフ 4 , 5 より、グラフが極大になるときのX座標がマウスBよりマウス A の方が大き い値になっている 。よって 、マウス A は回復期 に入る前にたくさん運 動できる。 マ ウ スB(ドリンク飲 ま せ ず : 〃 ) 7 累 積 か き数 乳 酸 値 (m m o l/ 2500 3:参考文献 生物図録 (数研出版 )生物図説(秀文堂 )生化学( タカラ出版 ) マウス解剖イラストレイテッド(秀潤社)