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Ⅱ.公営バス事業の活性化への取組 1.地域再生などと連携したバス

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Ⅱ.公営バス事業の活性化への取組 1.地域再生などと連携したバス
Ⅱ.公営バス事業の活性化への取組
1.地域再生などと連携したバス事業の活性化
少子高齢化や国際化等の社会構造の変化は、地方都市への影響が軽視できな
い状況にあり、高齢化が急速に進み、人口の減少が進んでいる地域もある。さ
らに地域経済は地域産業の衰退、それによる雇用の悪化の懸念、中心市街地の
空洞化等により深刻な問題に直面しており地域活性化の必要性が高まってい
る。
このため、地域再生、活性化施策が講じられているが、各都市においてはこ
れらの施策と連携したバス事業の活性化の取り組みが行われている。
例えば、まちづくりの一環としてあるいは交通の不便な地域等の解消のため
に、中小型バスを使用し地域に密着したコミュニティバスの運行が行われてい
る。
これらの地域においては、地域住民の意見の集約・調整を行うための協議の
場を設置したところ(大阪市)や、地域コミュニティバスの運行実験に参画した
ところ(川崎市、横浜市等)もある。
また、地域の歴史や文化、味覚や風土を再発見する観光等、地域の良さや特
色を最大限生かし生活交通確保のための様々な取り組みが行われている。
これら各都市の取り組み状況を見てみると、市民生活に必要なバス路線を交
通のネットワークとして活用する(東京都、横浜市、名古屋市、京都市、神戸
市等)、一方、山間部の観光施設と連携しながらバス利用の促進と地域活性化
の相乗効果を図っている(高槻市)。あるいは市内観光地を結ぶ観光ルートバ
スの運行を行っている(仙台市、横浜市、神戸市、尾道市、松江市、熊本市、
鹿児島市等)(資料編
公営バス事業の役割(意義)とこれからのあり方につい
てのアンケート調査集計結果、以下「集計結果」という98~99ページ参照)
等の事例がある。
このように地域再生の面でも欠かせないのが公営バス事業の役割であると考
えられる。
これらは交通局単独で実施することは困難なことであり、過疎対策、商業振
興、観光等の関係部局との連携が必要である。
(1)
バス利用者の新たな需要の開拓
バス事業の活性化を図るためにバス利用者の新たな需要の開拓については
表ー1のような方策が行われている。
大阪市では、日常生活上の身近な移動ニーズを主眼に、より地域に密着した
-6-
バスサービスの提供が図れるよう、市民・利用者の親しみを増すため、愛称の
公募を通じてバス事業の市民への参画を促した。(愛称:赤バス)
参考事例:大阪市:「コミュニティ系バス地域調整協議会」
バス路線を
①
需要が多く市バス独自の責任で運営する「幹線系」
②
高速鉄道と一体となった運営を指向するのが適当である「フィーダー系」
③
十分な需要がなく採算性の確保が困難であるものの地域住民の日常生活に必要
な輸送サービスであることから行政が路線サービスの設計を行い、その運行維持に
必要な助成を交付すべき「コミュニティ系」の3つのタイプに分類し、タイプ別に路
線・サービスの設計と運営を行っている。
このうち赤バスを含む「コミュニティ系」バス路線については、地域住民の意向を十
分に反映した路線・サービスとして機能することが重要であるとの観点から、地域住
民と行政、事業者(交通局)が協力して取り組むための協議・調整の場として「地域
調整協議会」を平成16年度から行政区別に順次設置するなど、全市的な運営体制の
構築を進めている。
地域調整協議会では、地域の活性化やコミュニティづくりへコミュニティ系バスを
活用することも念頭に、地域の意見の集約・調整のほか、利用促進策や走行環境改善
策の取りまとめなどを行っている。
表ー1新たな需要の開拓
局
名
需
要
の
開
拓
方
策
苫小牧
・小学生を対象した乗車体験教室(出前講座)を実施
青
・大型車両の運行に支障がある経路に対する中小型車両の運行
森
・道路整備の状況等に対応した路線の見直し
・通勤・通学に配慮した急行便の運行
・一定の要件を具備する外国人の運賃割引
八
戸
・観光客誘致を目的としたワンコインバスの運行
横
浜
・交通不便地域おいて、地域と連携・協調した小型バス路線の整備
・商店街との連携、地域の活性化策として、西区おでかけサポートバス「ハ
マちゃんバス」の運行
・都心部において、関係民間団体と連携した観光スポット周遊バス(あか
いくつ)新設
・民営事業者のノウハウを取り入れた、市内遊覧バスの共同運行
名古屋
・地域における日常生活に密着したバス路線として、公共施設、病院、駅、
商業施設などを結び、バス停間隔を一般バスの半分程度の250m間隔
を基準として設定する「地域巡回バス」を各行政区毎に運行し、よりき
め細かな需要の対応を図っている
-7-
京
都
・市内観光地を巡る「洛バス」を市バス観光系統の車体にラッピングし、
停留所は洛バスロゴを標柱に掲示し、ひと目でわかるように改善、停留
所名を4ケ国で標記し、英語、ハングル語、中国語版の「洛バスマップ」
を作成、配布している
高
槻
・住宅開発が予定されている路線への先行的な増便や沿線住宅地へのバス
利用促進チラシや時刻表の配布など、潜在需要の開拓に努めている
大
阪
・大型バス車両によるバスサービスが行き届かなかった地域でのコミュニ
ティバス(赤バス)の運行を開始した(平成14年1月)
尼
崎
・インターネット等の活用による利用者ニーズに沿った情報提供、市営バ
スの役割や利便性を利用者、市民にアピールするなど事業PRの強化に
よる市営バスのイメージ向上、利用者の利便性の向上を図っている
神
戸
・高齢化社会において、「市民の足」としてよりきめ細かい事業展開を図
るため、中、小型バスを使用し、区役所・病院・商店街等を結ぶ「地域密
着型バス」を運行
・観光の誘致推進と連携したイベントバスを運行
尾
道
・レトロバスによる観光地循環路線運行
・温泉地直行の定期便運行
・レトロバスによる「しまなみ海道」定期観光バスの運行
三
原
・バス路線の延長や経由地の変更によりバス利用者の新たな需要の開拓を
行った
呉
・交通空白地に小型バスによる路線再編、新設を行った
・都市間輸送(呉~広島)について、従来は鉄道との競合で競争力に劣っ
ていた路線が、自動車専用道路等を経由し広島市内に直通することによ
って、時間的にも、運賃的にも競争力を回復した
岩
国
・小型ノンステップバスによるコミュニティ循環線を2系統新設した
・外国人観光客向けの英字案内の充実(岩国駅前・錦帯橋バスセンター・
新岩国駅)
宇
部
・バス停ポール表示の停留所名にローマ字を併記
松
江
・土日祝フリー定期券の導入による子どもの利用促進
佐
賀
・小型バスを導入し、路線の空白地帯に運行。新入学児童を対象に、無料
体験パスを発行(新学期前)
長
崎
・高齢化の進展に伴い、小型バスで可能な限り人家の近くまで運行するコ
ミュニティ的なバスを地域の要望に基づき運行している
佐世保
・小型車両を導入し山間部や狭隘な道路で運用している
鹿児島
・小型バスを利用した狭隘路線の運行
・夏休みを利用した期間限定の小中学生用フリー定期券の発売
・エコ定期券の導入
・乗り継ぎ割り引きなど各種割引運賃の実施
・定期観光バス及び周遊バスの案内放送を外国語でも実施
・ICカード乗車券の利用促進
-8-
(2)
マーケティング・顧客マネージメント戦略
環境、エネルギー、福祉等の観点から公共交通機関の利用率を高める施策や、
減少する輸送人員をカバーするため需要喚起を図るための施策が講じられてい
る。(集計結果153~154ページ参照)
①
横浜市の事例
横浜市では平成17年 3 月から観光スポット周遊バス「あかいくつ」の運行
を開始した。
これは、平成16年 1 月の「横浜市市営交通事業のあり方検討委員会」の答
申において喫緊の課題のひとつとされた「新たな需要が見込まれる路線の開拓」
の一環として、横浜都心部に点在する観光スポットを結ぶ路線を新設したもの
である。
この路線の大きな特徴としては、一般の路線バスを超えたサービスやホスピ
タリティを充実させるとともに、企業・団体等の連携によりオール横浜で観光
振興に取り組む「横浜プロモーションフォーラム」の会員企業を事業パートナ
ーとした「検討会議」を設立し、ルートや車両デザイン、サービス提供の内容
等について議論を重ねてき
たことで、交通事業者だけ
でなく旅行関係の事業者や
地元商業界といった民間と
の「協働」による事業とな
った。また、愛称も広く市
民から募り「あかいくつ」
と決定された。
「あかいくつ」号の運行
にあたっては、(財)日本宝
くじ協会からの助成が行わ
れている。
あかいくつ(横浜市)
②
高槻市の事例
高槻市では、「高槻TMO共通駐車・駐輪・バス券事業」が平成18年2月
10日より実施された。これは高槻TMO(Town
Management
Organization)加盟商店で2,000円以上の買い物をされた
方に、商店までの交通手段(駐車場・駐輪場・市営バス)の補助券(100円)
-9-
を発行するもの。
これにより、地元消費の促進及びお客様の利便性の向上、公共交通機関の利
用促進が図られ、違法駐車・放置自転車の軽減にも資すると期待されている。
高槻市営バスも、新たな乗客の発掘につながることを期待する立場から、バ
ス車内広告枠を提供するなど積極的に参画していくこととしている。
高槻TMO共通駐車・駐輪・バス券事業の流れ
③
神戸市の事例
神戸市交通局では、マイカーからバス・鉄道への利用転換の促進による環境
負荷の軽減とまちの活性化を目指し、平成15年10月から平成17年9月まで「交
通・環境モニター実証実験(エコモーション神戸)」を実施した。
その具体的施策の一つとして、市バスに乗って提携商店街で買い物をすると
割引きが受けられる「エコショッピング制度」を実施した。
これは、市バス車内に掲示した「合言葉」を覚えて、バス停降車後30分以内
に商店街サービスカウンターに申し出ると、200円の買物券がもらえるという
もので、5ヶ月間(土日祝日48日間)で約8千人の利用があり、商業者から高
い評価を得たが、改善すべき課題もあった。
この課題を解決すべく、平成18年1月より2月にかけて、市バス車内にチラシ
(エコショッピングチケット)を入れたポケットティシュを設置し、それを提
携店(美容院)に持参するとサービス(20%の割引)が受けられる、新しい形
態の「エコショッピング」を試行的に実施した。
これらの結果を検証・分析しながら、より利用しやすい、市バスでの「エコ
ショッピング制度」に取り組んでいくこととしている。
- 10 -
<エコショッピング制度実施風景>
<市バス車内に設置した
チラシ入りポケットティッシュ>
市バスでご来店のお客様に、お買物券
を渡した。
④
呉市の事例
呉市では中央商店街が交通局から購入したバス券を配布するサービスで、バ
スの需要喚起、中央地区の活性化が期待される。
このほか、マーケッティング・顧客マネージメント戦略については表ー2の
ような取組を行っている。
表ー2マーケッティング・顧客マネージメント戦略
局
名
苫小牧
実
施
内
容
・町内会を通じての啓蒙活動・PRのほかイベントにおける臨時バスにつ
いて、企業等と連携したワンコインバスを運行している。
青
森
・事業所等へのノーカーデー活動への協力及びバス利用のPR
・バスカード活用によるレクリェーション施設利用料金の支払い
仙
台
・今後予定されるICカードの中で顧客マネージメントに取り組んでいき
たい。
東
京
・
夏休みを利用した期間限定の1日乗車券(親子おでかけパス)を発行し、
都内の各施設とタイアップして、入場割引の特典などを付加した。
・
バスの営業所や車庫及び地下鉄の施設などを解放し、親子見学会を実
施し、促進を図っている。
横
浜
・「あかいくつ」運行にあたって、旅行代理店、地元ホテル、商業団体、
観光団体等と検討を行い、需要喚起に努めている。
名古屋
・一日乗車券やユリカカードについて、沿線施設入場割引特典を付加し利
- 11 -
用者の購買意欲を高めている。
高
槻
・「高槻TMO共通駐車・駐輪・バス券事業」が進められてお
り、バス
利用促進と商店街活性化の相乗効果を期待する立場から積極的に関わっ
ていくこととしている。
・例年6月に実施する「ホタル鑑賞バス」の運行に際しては、バス利用者
に対し、施設の入園料半額割引や弁当などのセット券の販売を行い需要
を喚起している。
大
阪
・スルッとKANSAIが発行するICカード「PiTaPa」を導入す
ることとしており、平成18年2月にサービス開始。
尼
崎
・バス路線エリアマーケッティングシステムを導入し、乗客流動実態調査
結果や、市域内の人口分布などを総合的に分析しより利用実態に即した
効率的な路線やダイヤの設定について検討を行っている。
神
戸
・【マーケティング的手法】
GIS(地図情報システム)を用いて、バス利用の現状や潜在需要がある
にもかかわらずバス利用の低迷している地域を、視覚的・客観的に分析
を行い、今後の施策を検討するうえで予想される需要や効果の推計を支
援するシステムを検討している。
・【顧客マネジメント】
クルマから鉄道・バスへの利用転換を促進するための交通・環境モニタ
ー
実証実験「エコモーション神戸」の中で、バス利用による商店街の来
店
者に、一定額の買い物券を提供する「エコショッピング」制度を実施
した
三
原
呉
ほか、時宜に応じて企画乗車券やイベントバスの運行等を企画して
いる。・駅とショッピングセンターを結ぶ路線を開設した。
・呉市中央商店街が交通局から購入したバス券を配布するサービスで、バ
スの需要喚起、中央地区の活性化が期待される。
岩
国
・駅前商店街と連携し「えきまえスキップ」を発行
宇
部
・環境問題を考えてサイクルアンドバスライドやパークアンドバスライド
の取り組みを行っている。また、商業施設との連携を検討中。
松
江
・観光ループバス一日乗車券、土日フリー定期券において、観光施設、レ
ジャー施設の割引制度を取り入れている。
徳
島
・市内主要箇所を網羅するよう平成14年度より循環バスを運行し、利用
者ニーズに対応している。
北九州
・商店街と連携したイベントの実施や、商店街が企画するポイント制度へ
の商品提供を行っている。
長
崎
・平成15年度に大型商業施設、自治体と協議を行い公共施設や商業施設
を経由する新たな路線の開設を行った。
佐世保
・市内の商店街からの要請をうけ、「お買い物バス」としてシャトル的に
運行し利便性の向上を図っている。商店街は買い物ポイントの景品とし
てバスカードも採用している。
・各観光施設とのタイアップにより、一日乗車券に施設利用料等の割引措
- 12 -
置を付加している。
熊
本
・市中心部の賑わいに翳りが見えてきており、その活性化を図る官民の施
策と連携して、いろいろな手法を研究していきたい。
鹿児島
・中心市街地(天文館)の商店街利用客に対し、商店街がバス回数券を渡し
てバスの利用促進を図っている。
2.公共交通ネツトワーク機能の向上
公共交通を利用するに当たっては、出発地から目的地までの交通手段は、一
般的には複数の交通手段を利用する場合が多い。
少子高齢化の進展等により移動手段の多様性、快適性、利便性が求められる
中、公共交通機関を誰もが利用しやすいようにするためには、各交通機関の乗
り継ぎが便利になるような工夫が必要である。
東京都ではこれまでバス路線の再編にあたっては、地域の再開発、新たな施
設の建設等、バス交通需要の発生・増加に対応して路線の新設・運行回数の増
などが行われる一方、乗客のニーズに配慮しながら路線の廃止・短縮・経路変
更・運行回数の減が行われてきた。
しかし、これまでの再編整備においては、鉄道との連携により公共交通全体
の利便性を向上させる視点が十分配慮されてこなかった。
これらの点を踏まえ鉄道等と連携したネットワークを形成する上で必要な
路線【ネットワーク路線】と、それ以外の路線で比較的狭い範囲の移動などに
対応する路線【エリア路線】とに区分して整備の方策を考えるべきであるとし
ている。
(「都営交通ネットワーク及び運賃制度検討会報告書」より)
- 13 -
ネットワーク路線のイメージ図(東京都)
その他の大都市においてもバスと地下鉄等とのネットワークにより効率的で
利便性の高い輸送サービスの提供を基本的な考え方としている。
地下鉄を兼営していない中小都市ではJR等の鉄道事業者、航空機、船舶と
の接続を考慮した利便性の高いダイヤの設定を行っている。(集計結果100
~101ページ参照)
3.子どもへの安全安心感の確保
経済状況や社会構造の変化に伴い、バスを含む公共交通の位置づけも変化し
てきている。
バスは通勤・通学の足として、安全確実な移動手段を提供してきた。
しかしながら、モータリゼーションの進展や移動手段の選択肢が増加して、
相対的にバスの利用客が減少し続けている。このような状況で免許を持てない
方、児童・生徒や障害者や高齢者等がバスの利用客の多くを占めているのが現
状にある。各都市においては、そういったなかで運行ルート、ダイヤ、乗降施
設、車両等について創意工夫を活かしながらバスサービスを行っている。
- 14 -
横浜市では平成16年 1 月からベビーカーにお子様をのせたままでも、市営
バスを利用できるようなルール作りを行った。
参考事例:横浜市:「ベビーカーにお子様をのせたまま市営バスをご利用いただくル
ールづくり」
ベビーカー使用者の要望に応えるため、外部の委員会に対して諮問を行い、安全性
検証のため実験などを経て出された提言を受け、ベビーカーに子どもを乗せたまま市
営バスを利用できるルールを定め平成16年1月から実施した。
ルールではお子様を乗せたまま乗車するか、畳んで乗車するかは、お客様の自己責
任でお選びいただき、車内混雑など一定の場合には開いてのご利用をお断りすること
となっている。
また、市民の中にはバスに乗ったことがない、また、乗り方が分からない子
どもが増えているという声もあり、学校教育の段階から社会教育の一環として、
公共交通利用の意義への理解及び体験を進めることも必要である。苫小牧市で
は小学生を対象としたバス乗車体験教室(出前講座)を実施したり、休日等に
無料で乗車できるホリデーパス等を発行して体験乗車を実施している(鳴門市、
岩国市、佐賀市)。
参考事例:学校教育:鳴門市:子どもホリデーバスパスポート
平成14年 4 月から学校完全週5日制の実施に伴い、市バスを土・日に限り市内の
小学生に開放。これは平成13年5月5日に「子どものまち」宣言をし、子どものま
ちづくりを推進する施策の一環として導入を決めた制度である。
市の将来を担う子どもたちが自分たちの住んでいる市(町)の様子を知ること「子
どものまち」づくりを推進する上で非常に大切なことであり、子どもの自主性・積極
性を尊重するかたちで、行政が安全な移動手段を提供することによって、子ども達が
公共交通利用の意義への理解を進めるとともに、市内を自由に探索し、遊び、学びな
がら地域に根ざした豊かな感性が育つよう、その活動を側面から支援する。
パスポートは
①
保護者同伴パス
②
個人パス
の2種類がある。
さらに、児童が犯罪に巻き込まれる事件が多発する中、呉市では小・中学生
のより安全な通学を目的として、平成17年度から遠距離通学助成制度を導入
している。学校まで一定距離以上を通学する小・中学校児童・生徒に対し、バ
ス又はJR電車で通学する場合、その定期代金を全額補助している。
- 15 -
なお、最近、子どもが犯罪に
巻き込れる事案に対し、横浜市、
呉市、宇部市、佐賀市、佐世保
市等の市営バスではパトロール
としての役割や災害時の情報把
握など110番の補完的役割を
担い犯罪抑制に努めている。
110番移動サポーター(佐賀市)
さらに神戸市では、毎日多くのお客様に接する運転士が率先して「市民救命
士」の資格を取得することで、車内やバス停等における救急事故に対応した、
より安全で安心な市バスを目指している。
また、東京都、徳島市、佐賀市及び佐世保市等においても「救急救命講習」
を受けた職員が乗務をするなど地域と密着した活動を行っている。
参考事例:神戸市:交通局職員の市民救命士(上級コース)取得
市バス、地下鉄の運転士や乗務員、駅務員が、自らの休暇を活用して、8時間の
市民救命士上級コースを受講、資格の取得に取り組んでいる。
市民救命士講習(上級コース)では、標準コースの大人の心肺蘇生法に加え、小
児・乳児に対する心肺蘇生法やケガの手当、体位管理、搬送法など、より高度な応
急手当の技術を習得、安全で安心な市バス、地下鉄を目指している。資格取得済み
の運転士については車内に資格取得者である旨の掲示を行っている。平成18年2
月現在426名が資格取得。
4.環境問題への対応
(1)省エネ法の改正
地球温暖化防止に関する京都議定書の発効を踏まえ、各分野におけるエネル
ギー使用の合理化を一層進めるため、エネルギー消費量の伸びの著しい運輸分
野等に対し「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律」
が平成17年 8 月に成立した。
これにより平成18年 4 月より一定規模以上の旅客運送事業者等に対し省エ
ネルギー計画の策定、エネルギー使用量の報告を義務づけるとともに、省エネ
ルギーの取り組みが著しく不十分な場合に主務大臣が勧告、公表、命令を行う
- 16 -
等、運輸分野における対策を導入することとなっている。
(2)各都市の取り組み
これに対し各都市ともアイドリングストップ付バス、CNGバス、ハイブリ
ッドバス、燃料電池バス等の低公害車を導入したり、環境切符、環境定期券を
発行しマイカーから公共交通機関への転移を進めている。
(3)
公共交通機関の利用促進
各都市においては、自家用自動車から公共交通機関への利用促進を図るため、
利用者が各公共交通機関へ円滑な乗り継ぎや、利用しやすい運賃価格とするた
め乗り継ぎ割引(バス~バス、バス~地下鉄等への乗り継ぎ)の拡充、一日(二、
三日)乗車券の発行、各交通機関が共通で使用できるパスの活用、低廉な各種
企画乗車券の発行を行っている。
また、地域において商業施設等がICカードを活用して公共交通機関と連携
した買物割引等の設定を行っている(Ⅱ.6(4)参照)。
(4)
省エネルギー対策への取り組み
環境問題は企業の社会的責務であり、加えて、最近の原油高騰により軽油が
値上がりしておりバス事業の経営に重い負担がかかっていることから率先して
省エネルギー対策に取り組む必要がある。
交通エコロジー・モビリティ財団では、平成16年 4 月1日からバス事業の
「グリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)認証制度」を開始し、グリーン経
営推進マニュアルに基づいて一定レベル以上の環境保全の取り組みを行ってい
るバス事業者に対して認証・登録を行っているが、仙台市交通局が平成17年
8 月に認証を受けている。(集計結果106~107ページ参照)
参考事例: 仙台市:グリーン経営認証取得
平成17年8月、公営バス事業者として全国初のグリーン経営認証を取得した。従
前から低公害車両の導入や乗務員に対するエコドライブの教育・指導を行ってきたと
ころであるが、取り組みのレベルアップを図ることはもとより、認証取得を契機に職
員一人ひとりが自発的・積極的に環境保全活動を実践し、その結果、燃料費の削減と
事故件数の減少につなげていくことも期待したものである。
取り組みの内容はアイドリングストップをはじめとするエコドライブの実践が中心
となっており、燃費改善目標を「平成19年度までに平成16年度比で2%改善」と
設定している。この目標を達成するための具体的な取り組みとして、エコドライブの
実践ポイントや燃費改善効果等を示した「エコドライブ・マニュアル」の作成・配布
や車両ごとの燃費改善グラフの掲示、エコドライブに関する標語募集等を行っている。
- 17 -
参考事例:長崎県:省エネ運転の取り組み
省エネ運転は従来から取り組んでおり、平成16年度は対前年度比約4%の燃費節
減効果があった。
省エネ運転の主な内容は
ップブレーキの早めの実施
用
①急発進・急加速・急ブレーキを控える。
③低速走行、経済速度の励行
⑤予知運転による停止・発進回数の抑制
ストップの励行
⑧タイヤの空気圧の適正化
②シフトア
④エンジンブレーキの多
⑥空ぶかしをしない
⑦アイドリング
⑨エアコン設定温度を控えめにする。
5.バリアフリーの推進
高齢化、身体障害者の移動の利便性及び安全性の向上の促進を図るため、平
成12年 11 月に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円
滑化促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行された。
法施行以降、ノンステップバス等の低床バスの導入やバスターミナルの整備
など、バリアフリー化が進められているが、高齢者や障害者が安全で安心して
外出できる環境作りが重要である。
すなわち、ノンステップバスに適した停留所施設(防護柵)や道路の凹凸及
び高低差の少ない道路に改善する、車いすでバスへ乗降が容易な歩道の整備、
駐車車両の排除等が必要である。(集計結果108~109ページ参照)
(1)バリアフリーのハード面での対策
乗合バス事業者が新規にバスを導入する際は低床バスの導入が義務づけら
れ、ノンステップバス等の整備目標が設定された。
交通バリアフリー法の基本方針
2.移動円滑化の目標
・
旅客施設
(2)バスターミナル
1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上であるバスターミナルに
関し、平成22年までに、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便
所がある場合には身体障害者対応型便所の設置等の移動円滑化を原則としてす
べてのバスターミナルについて実施する。
また、これ以外のバスターミナルについても、地域の実情にかんがみ、利用
者数のみならず、高齢者、身体障害者等の利用の実態を踏まえて移動円滑化を
可能な限り実施する。
・車両等
(2)バス車両
- 18 -
バス車両(現時点においては、車両総数約6万台)に関し、原則として、1
0年から15年で低床化された車両に代替する。また、ノンステップバスにつ
いては、向こう3年間から5年間を目途に標準化を図ること等の措置を講ずる
ことにより、新規導入車両に占める割合を逐次高めることとし、これによって
平成22年までに、バス総車両数の20パーセントから25パーセントをノン
ステップバスとする。
交通バリアフリー法の基本方針を実現するための各都市の現状、取り組み、
バリアフリー化の推進に向けた解決手法は概ね表ー3のような対策が上げられ
ており、これらは行政部局と一体となって推進する必要がある。(集計結果1
33~134ページ参照)
表ー3バリアフリーのハード面の対策
現状
取組(例)
バリアフリー化推進に向けた解決手法
停留所の整備・改良
・公安委員会、道路管理者との調整、
1.乗り場、停留所
①停留所構造
(停留所の高低差、防
関係法令の規制のクリア
護柵の整備)
②停留所の未整備
〃
[屋根がない、シェル
ター式でない(降雪
地)、ベンチがおけな
い]
③バス停間隔が一定で
適切な配置
・道路管理者、市長部局との調整、地
ない
④誘導ブロックが未整
権者の理解、利用者ニーズ把握
誘導ブロックの整備
・道路管理者、市長部局との調整
①ノンステップバス
・ノンステップバス導入の推進を図っ
備
2.バス車両数・構造
(座席、通路スペース、 導入の推進
車内の高低差)
ている。
②車両の改良・開発
・現在のノンステップバスは座席が少
ない、車内に高低があり通路スペース
に問題がある。後方は床が高くなって
いるので乗客が前方に集中し易い。床
をフルフラットにする検討が必要。
(2)バリアフリーのソフト面での対策
施設・設備面でのバリアフリー化については多額の設備投資が必要となり、
一気に解決することは難しいが、これを利用者全体の理解により施設・設備を
カバーし高齢者・障害者等が円滑に利用できる工夫も必要である。
高齢化、社会構造の変化、女性の社会進出などが進んでいる現代社会におい
- 19 -
て、高齢者や障害者、妊婦などの疑似体験、介助体験の場を提供する等様々な
方法により利用者の理解と協力を一層進めていくことも「心のバリアフリー」
化の一歩である。(集計結果135~136ページ参照)
神戸市では、市バス福祉車両(ノンステップバス、在来車)を使って、小学
生児童に乗車体験や車両比較を通して、福祉について学んでもらう「市バス福
祉体験授業」を実施している。
「市バス福祉体験授業」は、市バスの若手運転士の「日頃ノンステップバス
やワンステップバスに乗務している運転士の体験や知識を、小学生のみなさん
が福祉について学ぶきっかけとして役立てたい」との思いから始まったもので、
授業の講師も市バス運転士が務めている。
擬似体験装具を装着しての乗車体験
車いすに乗ってノンステップバスに乗車
(神戸市)
(神戸市)
その他、バリアフリーのソフト面での課題、取組、解決手法としては、概ね
表ー4のような内容になっている。(集計結果135~136ページ参照)
表ー4バリアフリーのソフト面の課題
現
状
取組(例)
バリアフリー化推進に向けた解決手法
1.運行案内情報の提
供
① ノンステップバス
ノンステップバス運
の運行情報等バリアフ
行情報は時刻表に表
リーに関する情報の不
示している。
足
②
案内情報が事業者
調整機関が必要
毎に異なり利用者に分
ターミナルの新設・改良等を地方公共
団体が行う場合は各事業者の案内表示
- 20 -
かりずらい。
を一体的に整備しているが、そうでな
い場合は困難である。費用の問題を含
めて協議機関において検討する。
2.リフト、車いす固
[新規採用職員]
全職員が同じ水準に達するよう研修を
定の不適切な乗務員対
○
さらに深度化を図る。
応
基本的な接客マ
ナーの習得
○
車いす固定装置
の操作・スロープ板
の操作
3.バリアフリー教育
等
バリアフリーについ
全職員が同じ水準に達するよう研修等
て啓発、定期的に教
をさらに深度化を図る。
育・指導をしてい
る。
職員・乗務員に対し
○
外部講師による
接客マナー研修
○
ハンディキャッ
プ体験(高齢者や身
体障害者の疑似体
験)研修や、介助研
修。
○
国土交通省等主
催のバリアフリー講
習に共催、参加。
○
普通・上級救急
救命講習を受講。
○
高齢者や障害者
の立場にたった運転
を心がけるよう指
導。
(3)バスボランティア
交通バリアフリー法が制定されたことに伴い、ソフト的な事業の一環とし
て、特に公営バス事業者として一層の推進が必要であるとの観点から行って
いるものである。社会全体の意識や活動の定着、進展を目指して、学校や地
域と連携したバリアフリーの学習や市民・利用者のボランティア活動への支
援も重要な活動である。(仙台市、横浜市、名古屋市)(集計結果137ペー
ジ参照)
- 21 -
参考事例:仙台市:バスちかサポーター
平成15年度から実施し交通局が行う介助方法などの研修を、受講し、登録したボ
ランティアが、自分の通勤・通学や買い物等でバス・地下鉄を利用した際、高齢者や
障害のある方等で困っている方を見かけた場合、率先して支援をするもので、これに
よりバス地下鉄を利用しやすい環境の整備が期待される。
平成16年からキャラクターを作成し、制度の浸透と活動の充実を図っている。
6.バスと他の公共交通機関とのシームレスな乗り継ぎの円滑化
(1)シームレス化
公共交通におけるシームレス化は、バス相互間やバスと他の交通機関との間
の接続や乗り継ぎの円滑化を図るため、交通機関相互の乗り継ぎに係る「継ぎ
目」を利便性や施設面の両面にわたって解消し、出発地から目的地までの移動
を全体として円滑かつ利便性の高いものにすることである。
(2)施設面でのシームレス化
鉄道駅構内やバスターミナル内においては、利便性の向上を図る観点から、
相互の乗り場案内を分かりやすく設置することや、施設の構造を使いやすくす
る必要がある。
また、交通機関相互の乗り継ぎにおいては、乗り継ぎ経路の短縮化、同一ホ
ームでの乗換が可能となるための動線の工夫や乗り場の集約化なども空間的な
連続性を確保するために重要である。
(3)利便性の面でのシームレス化
鉄道とのICカードによる共通化を図ることにより、1枚のカードで複数の
交通機関が利用でき利便性が増すとともに、例えば乗り継ぎ割り引きやマイレ
ージ割引というような運賃制度の導入が可能となるほか、ショッピングとの連
携などICカードシステムを活用することによって、バス利用促進につなげる
こともできる。
また、乗り継ぎをスムーズにするための接続ダイヤの設定、あるいはリアル
タイムでの運行情報の提供というようなことにも取り組むことにより、時間的
接続を図ることができる。
アンケートの集計結果においても、以上のようなことは各都市において順次
改善・取り組みが進められているところである。(集計結果110~113ペ
ージ参照)
- 22 -
(4)
ICカードシステムの導入
現在、先行導入されているJR東日本、西日本以外では関東圏(平成18年
度末導入予定)及び近畿圏において、一部交通機関では平成16年に既に導入
されており、平成18年 2 月には大阪市が導入(地下鉄・バス)、神戸市は平成
18年秋導入予定(地下鉄)、逐次、鉄道・バス事業者の拡大が期待される。
これにより鉄道とバスの乗り継ぎが1枚のICカードで利用でき、乗継利便
の向上により、利用者にとって利便性の高いシームレスな公共交通サービスを
提供されることとなる。
バスだけのICカードは交通局独自(北九州市)にあるいは県内(長崎県、鹿
児島県)のバス共通のICカードが導入されている。
なお、他の中小都市においては初期投資が大きいこと、ICカードのコスト
が大きいことなどから導入については将来の検討事項とされている。
また、ICカードのメリット、デメリットについては
① ICカードのメリット
・
パスケースからのカードの出し入れが不要であり、特に高齢者等にと
つて迅速かつ楽な乗降が可能
・
ポイント制など利用実績に応じた多用な割引や乗継割引が可能
・
1枚のカードで各種交通機関を利用可能であり、商業施設との連携が
可能
・
バス乗降時間の短縮により、交通渋滞の緩和や環境改善に資する。
・
利用者データを活用し利用者の動向把握が可能
・
視覚障害者については少ない動きですみバリアフリー効果が大きい。
・
定期券の目視確認がなくなり不正防止に繋がっている。
② ICカードのデメリット
・
初期投資が大きい。
・
ICカードのコスト負担が大きい。
・
運賃設定の変更時にシステム変更経費がかかる。
・
他社との共同事業であるため、独自の取り組みを行おうとしても制約
を受ける。
が上げられている。(集計結果155~156ページ参照)
なお、同一事業者内においても現在多数の磁気式カードが発行されている
が、これをICに統一されれば利用者が複数のカードを所持する必要がなく
なる。
- 23 -
7.利用者の声を反映するシステム及びサービス、接客マナーの向上対策
(1)利用者の声を反映するシステム
公営バスにおける利用者の声の集収方法は、①ホームページ、②電話、FA
X、手紙(アンケートはがき)、③モニター、④eメール、⑤自治会懇談会、
婦人会の集まり等で収集を行っている。それらの意見に対し、直ぐ対応が可能
なものに対しては直ちに対処し、添乗指導、接遇研修等を行う他、事業運営に
反映させている。(集計結果114~115ページ参照)
(2)サービスマナーの向上対策
青森市では「優しい気持ちで安全運転」、「優しい気持ちで対応」、「優しい気
持ちでごあいさつ」の3つの実施項目「サンキュー運動」を通年実施している。
また、名古屋市では職員の接客マナーの向上に向けて、お客様に対する礼詞
の励行、高齢者・障害者のお客様・不慣れなお客様等への気配り、電話応対の
向上の3項目を重点目標に掲げ、接客サービス向上期間を年2~3回設定する
などの取り組みを行っている。
さらに大阪市では1年に2回全乗務員を対象に「添乗指導」を実施し、乗務
員への指導教育を行うとともに、安全運転・接客サービス向上への意識改革を
目指して、より必要度の高い乗務員から順に1回20人単位で、民間の外部講
師による 1 日の参加型研修を受講させている。
その他の交通局(部)でも同様の取り組みを行っている。(集計結果115
~116ページ参照)
なお、横浜市交通局ではISO9001を取得しサービスマナーの向上に努
めている。
参考事例:横浜市:ISO9001の取得
若手職員による提案のもとに、平成17年5月に路線バス事業者として全国ではじ
めてISO9001の認証を取得した。この規格は「お客様満足の向上」や「お客様
の視点に立った継続的なサービスの改善」などの「品質方針」を定め、この方針を実
現していく仕組みの運用などを内容としている。
この実践により、お客様の一層の信頼確保や、お客様満足の向上実現とともに組織
の活性化、企業風土の改革などが達成されるものである。
8.安全運行の確保対策
(1)乗務員に対する安全指導・教育
バス事業は安全輸送が第一の使命であり、利用者に安心、安全に利用してい
ただくために、安全運行の確保が極めて重要である。これを怠ると経営問題に
- 24 -
発展しかねない。
安全に対する職員の指導、教育についての具体的な対策は、概ね表ー5のよ
うな内容となっている。(集計結果117~119ページ参照)
表ー5乗務員に対する安全指導・教育
項
目
内
容
1.点呼
出帰庫時における確実な点呼。
2.事故防止研修
事故防止に関する研修、内部職員による他外部の講師によ
る場合もある。
3.添乗指導
幹部職員が添乗指導する。
4.安全運転研修
警察からの講師派遣、あるいは外部へ委託。
5.適正診断の受診
独立行政法人自動車事故対策機構等の適正診断の受診。
6.新規採用職員研修
乗務員の養成研修。
7.個別指導
有責事故惹起者に対する研修、モニターによる乗務観察指
導。
(2)飲酒運転事案と運行管理
飲酒運転の防止については、平成13年12月の刑法の一部改正による「危
険運転致死傷罪」の新設等を踏まえ、国土交通省においても平成14年 2 月に
「飲酒運転等悪質・危険な運転行為による事故防止の徹底について」が通達さ
れたにもかかわらず、同年7月にバス事業者の飲酒・酒気帯び運転事故が連続
発生し、国土交通省において再三通達が発せられ再発防止対策の周知徹底が行
われたところであるが、平成18年6月末までに19件[うち3件は公営バス
事業者による((社)日本バス協会資料)]飲酒運転事案が発生している。
(社)公営交通事業協会としては、いずれの事案も運行管理者による点呼等が
確実に実行されていれば防げたものであることから、平成16年度より運行管
理者の職務に対する重要性についての研修を実施している。
(3) 事故防止に係る取り組み事例
各都市においては、上記(1)乗務員に対する安全指導・教育のほか、交通
安全運動月間などの機会をとらえ事故防止対策に取り組んでいる。
また、バスが走行していることが分かりやすいように名古屋市、尼崎市等が
昼間点灯を行っている。(名古屋市は昼間時にフォグランプを点灯)
参考事例:名古屋市:昼間ライド&ライト運動
夕暮れ時の交通事故を防止することに併せ、増加傾向で推移している人身事故に歯
止めをかけるため、昼間帯から前照灯を点灯。
愛知県交通安全推進協議会では、平成15年9月1日から12月31日までの4か
- 25 -
月間にわたって、昼間ライド&ライト運転モデル事業を実施した。同モデル事業とし
て委嘱した348事業所の交通事故件数は15.2%減少しており、一定の効果が得
られた。なお、名古屋市交通局ではその後も夕暮れ時より早めのライトの点灯を行っ
ている。
(4) バス車両の整備
市街地の過酷な環境を走行する車両の日常点検はもとより、自主点検、法定
点検など点検整備に心がけ整備不良による故障や交通事故の防止のため車両の
整備に重点を置き安全の確保に努めている。
9.利用者サービスの向上・充実対策
(1)利用者サービスの向上
①
柔軟性・弾力性のある運行対策
各都市においては、朝夕の通勤通学による混雑時間帯は混雑状況に配
慮した時刻表や経路の設定を行っている。
祭り、花火、コンサート等の各種イベントが開催されるときは臨時便
を運行したり、シャトルバスを運行して対応している。(集計結果12
0~121ページ参照)
②
遅延の改善対策
遅延の要因、改善対策としては、表ー6となっており、道路実態にあ
ったダイヤの設定、道路管理者、公安委員会等関係機関との調整を図り
改善に努めている。(集計結果122~123ページ参照)
表ー6遅延の改善対策
遅延の要因
〇道路混雑
改
善
対
策
(例)
・ 運行実績に基づいた通過時刻の設定
・ 時間調整場所の設定
・ バス待機所の有効活用
・ 交差点改良、矢印信号の点灯時間延長
・ 違法駐停車等の防止の啓発活動
・ 予備勤務者による運行
・ バス優先レーン、専用レーンの設置
・ 公共交通優先システム(PTPS)の設置
〇降雪時
・ 除雪体制の強化
・ バスターミナルに遅延対策車両を待機
〇ターミナルの混雑
・ 監視員の配置
・ 乗り入れ事業者、関係機関との調整
③
運行頻度の向上対策
- 26 -
バスの運行上運行頻度は重要な要素である。乗客の需要と乗務員、車両
数、収支状況をみながらダイヤの編成を行っているが、そのような制約が
ある中で少しでも運行頻度を向上させるため車庫と起終点との回送運行を
できる限り営業化を行ったり(名古屋市)、雨天時に需要の多い系統では朝
のラッシュ時に「雨降りダイヤ」を実施(東京都)、前日の夕方の降水確率
が60%を超える場合は雨対策として、予備車による臨時運行便を出す等
の工夫を行っている(高槻市)。(集計結果124ページ参照)
④
運行情報の提供
バス運行情報については次表のように多種多様な方法で提供が行われて
いる(表ー7)。
伊丹市では平成7年1月の阪神・淡路大震災で阪急伊丹駅が倒壊した
が、バスターミナル再建に際し、高齢者、障害者の方々との協議を重ね
た結果、「乗り場案内」や「乗り場への誘導」等を音声ガイドによるシス
テムが導入された。
また、京都市では2次元コード(約1.3センチ四方、バーコードの数
百倍のデータ容量がある。)をバス停に張り、携帯電話で情報をとりなが
ら観光できるサービスを行っている。(集計結果125~126ページ参
照)
表ー7バス運行情報の提供
運行情報提供の方法
実施都市
1.ホームページによる路線図・時刻表の提供
青森、八戸、秋田、仙台、東京、
川崎、横浜、名古屋、京都、高
槻、大阪、伊丹、尼崎、神戸、
明石、姫路、尾道、三原、呉、
宇部、岩国、松江、徳島、鳴門、
北九州、佐賀、長崎、熊本、鹿
児島等
2.バスロケーションシステムによる提供
青森、八戸、東京、川崎、横浜、
名古屋、京都、大阪、神戸、呉、
岩国、松江、小松島、熊本等
3.パソコン・携帯電話を端末としたバス接近情報
の提供
青森、川崎、横浜、名古屋、京
都、大阪等
4.FAXによる送信サービス
青森、仙台、佐賀等
5.遠隔放送案内システムによる情報提供
高槻等
(電話回線を活用しバス運行情報を営業所から駅
ターミナル乗り場、バス停へ案内を行う)
6.LEDによる情報提供(ターミナル)
名古屋等
7.市の広報誌、ケーブルテレビ、ラジオによる情
呉、尾道、松江等
- 27 -
報提供
8.冊子による時刻表提供
松江、佐賀等
参考事例:京都市:2次元コードで観光サービス
市バスの接近情報を提供する画面に直接アクセスできる2次元コードを市内の全停
留所660カ所に「時刻表」と「接近情報」の2種類のコードを標柱に掲示した。
読み取り機能のある携帯電話で撮影すると、周辺の神社仏閣などの紹介や周辺地図、
詳しい時刻表や目的のバスがどこまで近づいているかが分かる。
⑤
運賃の簡素化
大都市においては均一運賃制を採用しており、運賃収受が容易で乗降もスム
ーズに行われているが、反面、乗客の運賃負担の公平性に欠ける面がある。
そのため市内の短距離、多需要路線の需要喚起等を目的として100円運賃
を設定している都市もある。また、全線定期券の発行を行い利便性を高めてい
る都市もある。(集計結果127ページ参照)
(2)
快適性の向上
快適性の向上策としては、朝の通勤、通学等に配慮した急行便の運行(青森
市、高槻市等)、市街地等を通過しないで目的地につける直行便(八戸市、東京
都、佐世保市、鹿児島市等)、郊外から都心への直行快速便(仙台市、呉市、長
崎県等)、 あるいはコンサート終了時刻に合わせた運行も行われている(川崎
市)。
交通の煩雑でない地域でのフリー乗降等様々な工夫がなされている(苫小牧
市、仙台市、三原市、岩国市、松江市、長崎県、佐世保市、鹿児島市等)。(集
計結果128~129ページ参照)
(3) 着席率の向上
乗合バスでの座席定員制は見られないが、空港連絡バスについては全ての
乗客が着席出来るよう便数を確保している(長崎県)。車両を構造上最大限着席
できるよう座席数を確保したり(神戸市、三原市)、車内事故防止の面から、
「空
いている座席へお掛けいただく、あるいは走行中の座席移動をご遠慮いただく
よう」車内放送を行っている(尼崎市、呉市、岩国市、長崎県、熊本市、鹿児
島市等)。(集計結果130ページ参照)
(4)
停留所のグレードアップ
バス停留所は道路上、または歩道にポールと呼ばれる標識が設置され、停留
所名及び時刻表が掲示されているもの、あるいは「行灯式ポール」と称する電
- 28 -
灯が入っているものであったが、近年では利用者の利便性を考慮し上屋、ベン
チ、路線図、時計がついたものやソーラー(電照式)でポールの存在が分かりや
すく、時刻表が明示されるものが増加している(表ー8)。
(社)公営交通事業協会でも「モデルバス停留所設置事業」として(財)日本宝
くじ協会の助成を得て平成4年度から各交通局(部)にソーラ照明付停留所標識
の寄贈を行いその普及を図っている。
また、最近ではバスロケーションシステムを設置したものや、LED式行先
案内の表示等をするもの、音声案内をするもの、また、2次元コードにより「時
刻表」や「接近表示」、「観光地図」が表示されるものまで多種多様な停留所の
グレードアップ化がされて、老朽化した既存の停留所は順次おきかえられ利用
者のサービス向上に役立てている。概ね表ー8のような停留所設備が設置され
ている。(集計結果131~132ページ参照)
2次元コードをバス停標柱に掲示(京都市)
表ー8グレードアップバス停留所の設置種別
グレードアップバス停の種別
1.箱形停留所、上屋、時計、ベンチ、路線図等の
設置
局(部)名
苫小牧、青森、秋田、八戸、
仙台、東京、川崎、横浜、名
古屋、京都、高槻、大阪、伊
丹、尼崎、神戸、明石、姫路、
尾道、三原、呉、岩国、松江、
徳島、鳴門、小松島、北九州、
佐賀、長崎、佐世保、熊本、
鹿児島
2.電照式標識の設置
苫小牧、青森、八戸、仙台、
東京、横浜、名古屋、京都、
高槻、大阪、伊丹、尼崎、神
- 29 -
戸、明石、姫路、尾道、三原、
呉、岩国、松江、徳島、鳴門、
小松島、北九州、佐賀、長崎、
佐世保、熊本、鹿児島
3.バスロケーションシステムの設置
青森、仙台、東京、川崎、横
浜、名古屋、京都、大阪、神
戸、呉、岩国、松江、小松島
4.2次元コードをバス停標柱に掲示
注
①
京都
3.は1.の上屋があるものに併設されている。
広告付バス停上屋の事例
バス停留所上屋に広告パネルを設置し、その広告料を原資として上屋やベン
チなどの待合い施設を整備、管理するもので交通局の負担が無く民間活力を導
入してバス利用者のサービスの向上を図っているものもある(横浜市、名古屋
市、神戸市)。
広告付バス停上屋(横浜市)
- 30 -
②
バス停ネーミングライツ(命名権)制度
神戸市交通局では、お客様に愛され、地域に
密着した利用しやすい市バスをめざし、バス停
名に社名や店舗名をつけ加えるネーミングライ
ツ(命名権)制度を試験的に実施している。
バス停ごとにネーミングライツ スポンサーを
募集し、局内の審査を経てスポンサーを決定す
る。スポンサーは、従来のバス停名に社名や店
舗名を併記する形で、新しいバス停名を命名す
ることができる。神戸市交通局は、バス停の標
柱や車内放送等で新しいバス停名を使用し、ス
ポンサーからスポンサー料を受け取る。
(5)
案内標識の統一化
ターミナル等における案内標識が各事業者によりバラバラに表示されている
と利用者に分かりづらくバスが敬遠される要因ともなるため統一表示がなされ
ているかについてアンケート調査結果(集計結果157~158ページ参照)で
みてみると、次のようになっている。
①
ターミナル内は単独で使用しているので統一表示は利用者にとって利便
性が高くなっている。(苫小牧市)
②
民営事業者と協議の上統一表示している。(秋田市、明石市、姫路市、
北九州市)
③
複数の事業者が発着するバスターミナルについては施設管理者により統
一されている。 (名古屋市)
④
費用負担の問題があり他の事業者と連携を強化して取り組む必要があ
る。(京都市)
⑤
他のバス事業者と調整し統一が図られるよう努力している。(高槻市)
⑥
市バスと民営バスとの棲み分けができており、特に統一表示等の意見は
ない。(伊丹市)
⑦
案内標識は市が設置しており統一されている。(三原市、佐賀市)
⑧
乗り場が遠く離れているので統一性がない。(岩国市)
- 31 -
⑨
標識統一等の課題がある場合は県のバス協会を中心に各事業者間の調整
を行い、統一化を行っている。(熊本市、鹿児島市)
(6) 運賃の低廉化
① 乗り継ぎ割引運賃制度の拡充
利用者が公共交通機関を利用し易くするための方策として乗り継ぎ割り
引きは有効な手段である。これをアンケート調査の結果でみてみると表ー9
のとおりとなっている。(集計結果138~139ページ参照)
表ー9乗り継ぎ割引の種別及び内容
局名
仙
台
乗り継ぎ割引種別
割引内容
市バスと地下鉄を乗り継ぐ場合
合計額から大人40円、小児20円を割
引
東
京
都営バス専用乗り継ぎ割引カー
90分以内に都営バスから都営バスへ乗
ド
り継いだ場合は100円(小児50円)の
割引
名古屋
トランパス対応カード(ユリカ)
90分以内に市バス~市バス、市バス~
地下鉄、市バス~名古屋臨海高速鉄道、
地下鉄~名古屋臨海高速鉄道を乗り継い
だ場合80円の割引。
京
都
トラフィカ京カード
市バス~市バス、市バス~地下鉄、90
分以内で90円割引
大
阪
バス・地下鉄乗り継ぎ割引
地下鉄・ニュートラムと市バスを乗り継
ぐと、大人100円、小児50円の割引
バス・バス乗り継ぎ割引
90分以内の乗り継ぎが1乗車分の料金
(大人200円、小児100円)で可能
尼
崎
神
戸
呉
回数カード(普通・昼間時間帯
60分以内に再度同じカードにより乗り
別)
継いだ場合1回に限り運賃半額
市バス専用乗り継ぎカード
90分以内に乗り継ぐ場合100円割引
市バス・地下鉄NEW
同日内にバスと地下鉄を乗り継ぐ場合2
Uライ
ンカード
0円割引
共通バスカード
30分以内に乗り継ぐ場合20円の割引
岩
国
共通バスカード
30分以内に乗り継ぐ場合20円の割引
宇
部
共通バスカード
30分以内に乗り継ぐ場合20円の割引
ICバスカードによる乗り継ぎ
60分以内に乗り継ぐ場合は70円割引
北九州
割引
長
崎
ICバスカードによる乗り継ぎ
30分以内に乗り継ぐ場合1度目と2度
割引
目の乗車運賃の合計額に対し5%の割引
- 32 -
佐世保
熊
本
鹿児島
ICバスカードによる乗り継ぎ
30分以内に乗り継ぐ場合1度目と2度
割引
目の乗車運賃の合計額に対し5%の割引
共通バスカード
1時間以内に乗り継ぐ場合20円割引
ICバスカードによる乗り継ぎ
市バス~市バスに乗り換た場合、合計額
割引
の5%を割引
市バス~市電に乗換の場合は40円割引
②
割引切符、企画切符
割引切符、企画切符とも多様な種類の乗車券が発売され、利用者の利
便に供されている。乗り継ぎ割り引き制度も合わせると種類が多く、利用
者にどの程度理解されているのか検討の余地がある(表ー10)。
バス利用向上策としてもこれら乗車券のPRを積極的に行い利用者の増
加を図る必要がある。(集計結果140~141ページ参照)
表ー10割引切符、企画切符割引内容
局
名
内
苫小牧
・高齢者定期券
青
・小中学生を対象にした平日以外のワンコインパス
森
1ケ月
容
3,000円
・65歳以上を対象にした熟年定期券の発売(3,000円)
・フアミリー、通学用などのプレミアム付バスカードの販売
仙
台
・市内区域全線、近郊区域全線を1日あるいは3日連続して何回でも自由
に乗降できる乗車券、上記区域におけるお得なフリーパス、平日及び土
曜日の利用については利用時間帯を限定した買物定期券、都心部100
円均一区間内で利用できる定期券
東
京
・夏の企画乗車券
川
崎
・オリジナルバスカードの定期的な発行
横
浜
・全線定期券、シニアパス、夏休み等長期休校期間中の小児割引運賃(50
円) 、各種一日乗車券
名古屋
・平日の昼間時間帯や土日休日のバス利用者増を促すため平日10時~1
6時、土日休日に終日利用することができる昼間割引専用ユリカ(28.
6%引き)の発売
・通勤定期券の持参人方式の拡大、通勤定期所持者と同伴する家族の運賃
を土日休日に半額にする。
・夏休みの乗客誘致対策として子供を対象にした人気アニメキャラクター
をデザインに用いた格安の一日乗車券の発売
京
都
・民間鉄道事業者との企画乗車券「いい古都チケット」の発売
大
阪
・他の交通事業者や集客施設と連携した企画乗車券の発売
尼
崎
・65歳以上を対象にした熟年定期券(1ケ月3,000円)の発売
神
戸
・市バス専用カード(4,000円券の場合、4,600円分利用可能)
・市バス昼間専用カード(4,000円券の場合、5,600円分利用可能)
・イベントとタイアップした企画乗車券の発売
- 33 -
明
石
・JR西日本のプリペイドカード利用可能(磁気カード)
姫
路
・お買い物回数券(9時30分~16時までの降車に限り利用可。運賃の1
0倍の価格で13枚綴り)
呉
・呉市中央地区商店街バス券サービス専用回数券作成
・学生支援
1ケ月
3,900円(サンキューパス)
・買物定期券
70%引き
・通勤定期券
50%引き
・ホリデーパス
小学生土日祝日無料
宇
部
・通学フリー定期券
松
江
・土日祝日フリー定期券(1ケ月当たり大人900円、小児450円で3ケ
月、6ケ月券)を発行
北九州
・高齢者定期券
3ケ月
4,000円
・一日乗車券(700円で全線利用可)
・土休日家族割引(土休日に限り、一日乗車券で家族4人まで利用可)
・夏休みこどもパスぽーと(小中学生に限り、夏休み期間中一日乗車券で7
日間利用可)
佐
賀
・高齢者向け定期券(3ヶ月5,000円)、ノーマイカーデ割引
長
崎
・観光施設、テーマパークとセットした割引、各種イベント時の割引切符
発
佐世保
行
・ICカードの積み増し時に、積み増し額の10%及びそれまでの利用実
績に応じたポイントを付加している。
熊
本
・サンリオのキャラクター「ハローキティ」のバスカードを毎年制作し販
売している。
鹿児島
・特殊共通定期…市電とバス路線が並行する区間についてはバスの定期で
市電も乗車できる。
・夏休み子供乗車券…小中学生を対象に夏休み期間格安で全路線を乗車出
来る。
注
③
環境切符(環境定期券)一日(二日、三日)乗車券等大部分の都市で発行されている。
運賃の上がり方の緩和
均一性運賃の短距離運賃の割高感を解消するため、乗車区間が2㎞未満
について短距離割引定期を発行している(横浜市、京都市)。
また、高槻市においては乗降区間が1.5㎞以内の場合は「特定近距離
回数券・定期券」を発行している。
特殊区間制を採用している北九州市では調整区界を設け調整したり、特
殊区間制エリアから対キロ区間制へ跨る部分については「調整停留所」を
設け運用している(長崎県)。
市中心部において商店街の利用客の増加対策として、運賃区界を見直し
実質運賃を下げている(佐世保市)。
- 34 -
さらに、近距離の割安感を高め、近くでもバスを利用してもらうため、
初乗り1.5㎞までの運賃を100円としている(熊本市)。
このように大部分の都市では利用者の負担が軽減されるような様々な工
夫がなされている。(集計結果143ページ参照)
④
分かりやすい運賃の設定
大都市では多くの旅客のスムーズな乗降や運賃収受ということもあり
均一運賃制が設定されている。
また、近年、都心部における短距離その他、需要喚起を目的として1
00円運賃を設定する場合もある。
このほか対キロ運賃をとっている事業者においては利用者の利便を考
慮して刻みをワンコイン(50円)にするなどの例もある。(集計結果14
4ページ参照)
10.バス利用者の意見・要望
バス利用者からの意見・要望は各都市とも、ホームページ、電話、手紙等多
様な方法で受け付けることとされている。
そのほかアンケート調査、モニター懇談会等からの意見・要望・感想を受け
ている。
利用者からの提言で即実行可能なものは実施し、その旨提出者へ回答・報告
がなされている。さらに大局的な事柄は業務の改善、事業運営に活かされてい
る(表ー11)。(集計結果145~146ページ参照)
表ー11バス利用者の意見・要望の対処方法
局
名
苫小牧
仙
東
川
横
台
京
崎
浜
名古屋
京
都
意見・要望の集約方法
対処方法
毎年市内の各高校にアンケート調査を実施
調査に基づき、次年度の定期
し要望等調査
便、学生便の時間帯等を検討
モニター葉書、ホームページの公聴制度、
ダイヤの検討、乗務員の指導
アンケート葉書による
に活用
お客様の苦情を提言としてとらえ「お客様
決済をうけ回答、改善できる
の声カード」を作成
ものは直ちに改善
市政モニターによるバス利用のアンケート
調査をもとに業務の見直しを
を実施
行っている。
ホームページ、電話、手紙による
業務の改善、事業運営に活用
ネットモニター等によるアンケート、市営
局内の「お客様のご意見検討
交通懇談会、市民の声、ご意見葉書等でお
会」の活用などにより事業運
客様の声を広く伺う
営に反映させている。
「市政モニター」、「お客様満足調査」を
お客様の声を事業運営に反映
実施
- 35 -
高
槻
市の管理職員による「アドバイザー制度」
乗務員の指導に活用
を実施
大
阪
投書、電話、インターネット等により随時
寄せられた意見・要望は今後
受け付けている。そのほか「公営企業モニ
の事業の運営方針の参考とす
ター制度」により、モニターの意見聴取を
る他、「 市民の声」として担
行っている。
当課に伝達している
伊
丹
市バスモニター制度
業務に反映させている
尼
崎
公募方式で市営バスのモニターを募り、モ
日頃利用者の感じている生の
ニター会議やモニター便で意見を聴てい
声をバス事業に反映させ、サ
る。
ービスの向上を図るとともに
理解と協力をもとめている
神
戸
明
石
呉
バス車内に「お客様の声ハガキ」を設置、
乗務員に個別に指導を行って
利用者の声を収集・反映している。
いる
バス車内に「お客様の声ハガキ」を設置、
乗務員に個別に指導を行って
利用者の声を収集・反映している。
いる
ホームページ、バスの日キャンペーン時に
ダイヤ等の見直し等に反映さ
おけるアンケート、労使協働におけるアン
せている
ケート調査を実施
岩
国
モニター制度の実施、流動調査時にお客様
〃
の声を報告、アンケートの実施
宇
部
モニター制度の実施、市報による「市民の
業務に反映させている
声」電話等で要望を受けている
松
江
ホームページで意見・要望を受けている
徳
島
旅客流動調査を実施
〃
利用者の意見を把握し、路線
開発の参考にしている。
北九州
バスモニターを募集、交通局ホームページ
受けた意見・要望等は職員の
に「北九州交通局へのご意見」を設けてい
指導に役立てている
る。
佐
賀
・乗降調査時に調査
ダイヤ編成の参考としている
・地域・職域等にアンケート調査を実施
長
崎
・高速バスの増客対策の参考にするためア
ダイヤ編成の参考としている
ンケート調査を実施
・ホームページにより意見、感想を受けて
業務に反映させている
いる
佐世保
鹿児島
市バスモニター制度の実施、手紙、電話、
説明や対応状況の報告等を確
メール等で意見を受ける
実に実施
・市バス利用者からモニターを選任、感想、 乗務員の指導、業務に反映さ
要望を郵送送付してもらうほか、年3回
モニター会議を開催し意見を聞いている
- 36 -
せている
・利用者へ直接アンケートハガキを配布、
意見を送付してもらっている。
11.民営事業者やNPOとの協調関係
市場原理の中においても利用者の多用なバスサービスに応えるために都市の
交通体系を確立していくために民営バス事業者や補完的にNPO(非営利組織)
との相互協力や協調が必要である。(集計結果147~148ページ参照)
(1) 京都市における「生活支援路線」の社会実験
京都市では平成16年 8 月に設置され市内のバス輸送の大部分を担う市バス
と他の交通事業者が協力して、市民の足を守りより利便性の高い公共交通網を
目指すための方策について協議を行ってきた「京都のバス事業を考える会(協
議会)」から、平成17年 1 月に中間答申として「生活支援路線」の確保方策
について提案が出された。
その中で、効率的な運行と利便性向上の両立を目指すための手段として「小
型バス・乗合タクシーによる代替運行」が示され、その具体化を図るためモデ
ル系統による実証実験を行う必要があると指摘された。
提案を受け、市民生活に必要な市バス路線を守るため、民営事業者と連携し
た小型バス・ジャンボタクシーを活用する代替モデル実証実験を平成17年7
月23日から開始し、企画乗車券の活用などサービス面においても民営バス等
との連携を強化し、公共交通全体の利用拡大を図ることとしている。他にも公
共交通の利用促進を図るため環境と共生する持続型社会づくりを目指すためN
PO組織との協議を行った。
- 37 -
実証実験系統図(京都市)
(2)神戸市の事例
従前から、一部区域において、民営バス事業者と共同運行を行っている。ま
た、一部の地域で、地域団体NPO等によるコミュニティバスの運行が開始さ
- 38 -
れ、バス停の共用等、個別的な協力・調整を行ってきた。さらに地域の強い要
請を受ける形で民営バス事業者が路線を新設した事例があり、一部のバス停に
ついて共用で使用している。
(3)
尾道市の考え方
これまで市域の中心部を交通局が運行を担い、他市町から市内を結ぶ路線を
民間が運行してきたが、これは従来からの路線権を継続した流れの中で現在に
いたっている。しかし合併の推進により、今後、必然的に民営バス事業者との
協調やNPOとの協力関係がどこまで得られるかなど不透明な部分はあるが、
利便性や効率性を考慮する中で、公営バス事業者と民営バス事業者の役割分担
を明確化にし、運行形態を形成する必要がある。
(4) その他
多くの公営バス事業者は民営バス事業者とは共同運行・競合路線のダイヤ
調整、バス停の利用調整、イベントなどの輸送体制、あるいは共通バスカード
での協調は保たれている。今後も多種多様な利用者ニーズに応えるため民営バ
ス事業者やNPOとの連携を深め幅広いニーズに応えていくべきであるとして
いる。
12.マイカーから公共交通機関への利用転換
都市部における交通混雑、環境、安全対策等の観点で自家用自動車から公共
交通機関への利用転換を促進するためITS(高度道路交通システム)、TD
M(交通需要マネージメント)等の社会実験に国、地方公共団体とともに参加
し、本格実施につなげ公共交通の利便性の発展に寄与できるよう先行的な基盤
整備を行うことは公営バス事業の役割と考えられるが、これまでの取り組み、
今後の計画は、次のようになっている。
(集計結果100~101ページ参照)
参考事例:川崎市:TDM実証実験ークリーン軽油使用車を用いたPTPS導入実験
急行系統のある路線(川崎市~臨海部方面路線)でPTPSの機能を最大限活用し
た「特急バス」運行の可能性を検討した結果、所用時間の短縮効果が得られたため、
平成15年8月から「特急バス」の運行を開始した。
参考事例:名古屋市:「交通需要マネージメント実証実験」
市バス車両に圧縮天然ガスバス(CNGバス)を導入し公共交通機関の低公害化を
推進するとともに、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)を一部の市バス車両に装着
するなどバスの排ガスのクリーン化を行うことにより、環境への負荷の低減効果の検
- 39 -
証を行った。また、テラス型バス停を設置し、バスの走行環境の改善及び公共交通機
関の利用促進効果の検証を行った。(平成13~15年度)
参考事例:名古屋市:「市バス・地下鉄の最適経路選択システム」
従来の固定情報(時刻表等)のみでの経路検索では提供されなかった、市バスのリ
アルタイムな運行状況に合わせた最適な経路の選択が行えるシステムを構築した。
このシステムは、経路検索候補のバス路線の運行が遅れている場合には、その遅れ
を加味して他の経路を検索し、携帯電話やパソコンへ情報を配信するものであり、こ
れによる公共交通機関の利便性向上や実用性の検証を行った。(平成15年度)
参考事例:京都市:パークアンドライド
観光シーズンを中心に渋滞などの交通問題が市民生活に影響を及ぼしているため、
自動車から公共交通機関への転換などTDMの指針となる「歩くまち・京都まちづく
りプラン」を策定した。このプランにあわせ、観光シーズンにおける嵐山や東山地区
内の交通円滑化を図るため、パークアンドライド用の駐車場を設け、渋滞の緩和、旅
行時間の短縮、観光の周遊性の拡大などの成果をあげている。
参考事例:大阪市:デマンドバス実証実験
南港コスモスクエア地区は、従来の市街とは異なりスーパーブロックあるいはゾー
ン開発によつて土地利用の区画が大きく、旧市街の稠密混在に対して、まとまった土
地利用がクラスターまたは飛び石的に構成されている。
このため、平日/休日またはピーク時/オフピーク時によって人の動きが大きく変
動し、従来のスケジュールバスでは、路線・停留所ともに、需要の変動に対応しつつ
効率的な運行を実現することが困難であることから、未来型の町に対応したバスサー
ビスの開発を目指して、利用者の要求があったところのみ運行するデマンドバスの実
証実験を行った。(平成12年度)
マイカーから公共交通機関への転換は、市民や企業に対して継続的に働きか
けていくほか、上記参考事例にあるような社会実験を行うに当たっては、地域
社会を豊かに快適にするという目標を設定して、その達成に向けた施策を行う
など利用者の公共交通利用のメリットが実感できるような様々な創意工夫を展
開することが重要である。
神戸市では、マイカーからバス・鉄道への利用転換の促進による環境負荷の
軽減とまちの活性化を目指し、平成15年10月より平成17年9月まで「交通・環
境モニター実証実験(エコモーション神戸)」を実施した。
実施に当たっては、国土交通省の補助制度である「広域的な公共交通利用転
換に関する実証実験」制度を活用し、国土交通省(近畿運輸局)、市民、NP
O、学識経験者、交通事業者等で構成する「神戸市TDM研究会」において立
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案し、検証・評価を行った。
その具体的施策の一つが、土日祝日に大人1人につき小学生以下2人まで無
料とする「エコファミリー制度」であり、実験期間中、利用実績の把握や市民
アンケート調査などを実施し、事業採算性も含め制度を検証した結果、平成 17
年 10 月より、本制度を本格導入している。
「エコファミリー制度」が始ま
ってから、土日祝日などの地下
鉄・バスを、多くの小学生が利
用している。
(神戸市)
また、公営バス事業者としてダイヤ・運賃その他サービスの充実を図り、公
共交通機関の利用に向けた環境整備を総合的に進めて行く必要がある。
さらに、地域の理解や企画切符、イベント、キャンペーンを含めた各種の施
策や、トランジットモール、パークアンドバスライド、シャトルバス、バス専
用レーン、バス優先レーン、公共車両優先システム(PTPS)など公共交通
を優先する取り組みや、まちづくりの一環としての整備やバス活性化の取り組
みを一層推進する必要がある。
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