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量子物性特論(第8回目) 1/12 室温超伝導を実現するには? Outline / H27
量子物性特論(第8回目) 1/12 室温超伝導を実現するには? Outline / H27 • 超伝導発見の歴史(12/8) • 超伝導の未来(エネルギー問題, 世界的ナットワーク構築< 電力, 物流>, 医療, デバイス)(12/8) • 超伝(電)導が夢を抱かせる社会情勢の認識(12/8) • 超伝導のしくみ(基本概念)(12/15) • 実用化段階の超伝導体 (酸化物高温超伝導体 (12/15, 22), MgB2 (12/22) • FET超伝導?(疑惑と最新研究)(1/12) • 室温超伝導探索 有機超伝導体(1/12), 酸化物高温超伝導体(1/12),フラーレ ン系(1/19), グラファイト系(1/19), CNT (1/19),ピセン (C22H14) (1/19), C(diamond)/Si系(1/26), Co系, Fe系 超伝導(1/26), 高圧力印加(2/9), laser cooling (2/9), セ メント(2/9) 期末試験(2/16) 1 室温超伝導への道 銅酸化物超伝導体編 今日のテーマ ・超伝導発現のメカニズムについては既に概略を学んだので、 その範疇でいかにTcを上げるかを考えてみる。 ・同様な超伝導発現の現象を示す物質群を振り返ることで、超 伝導の(物理的)本質について想いを巡らす。 ハバード・モデル 「パウリの排他律」とは、 二個の粒子が同一の量子力学的状態を取る事ができない、というもので、 粒子間に相互作用がなくとも働く純粋な量子力学的効果である。 量子力学では、 拘束条件のきつい電子の運動は、エネルギーが上がる。 H = Σtij ci,†scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s hoping i クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。 スピンによらない。 hopingが入ることで、t2/Uの割合で、エネルギー利得を得る。 2 前川禎通 「高温超伝導の物理」 応用物理75(2006)17 3 銅酸化物高温超伝導体のペアリング + - - + d波:角運動量2→一方の電子が中心にあるとき、相棒の電子はその 周りをぐるぐる回っている。2個の電子が互いに距離を置いてクー パー対を作る(強い斥力を避けるため)。 s波:一方の電子を中心においたとき角運動量ゼロ→相手の電子が 中心の電子に向かって直線的に往来する。 どんな領域で超伝導は出現しているのか? 一般に、超伝導相は反強磁性相に隣接している。 *絶縁性の起源は反強磁性秩序ではなく、電子間斥力。 4 「パウリの排他律」とは、 二個の粒子が同一の量子力学的状態を取る事ができない、 というもので、粒子間に相互作用がなくとも働く 純粋な量子力学的効果である。 電荷と「スピン」を分けて考えてみよう! 「電子が格子上を跳び回るが、同じ格子点上に来れば 斥力を受ける。」 量子力学では、 拘束条件のきつい電子の運動は、エネルギーが上がる。 cf. BCSタイプは、電子系は格子系の格子振動を交換して 相互作用した。 hopingが入ることで、t2/Uの割合で、エネルギー利得を得る。 H = Σtij ci,†scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s i 強いて描けば hoping クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。 スピンによらない。 BCS超伝導とモット絶縁体ベースの超伝導の違い ファインマンダイアグラム (相互作用する粒子系) 5 H = Σtij ci,†scj,s+UΣni,↑ ni,↓ i,j,s i なぜ、銅酸化物なのか? hoping クーロン斥力相互作用 これが大きいと絶縁体になる。 スピンによらない。 条件 ハバード模型を実現していて、 U/tが小さすぎず大きすぎず10の程度 この二つの条件を満たすものは、 今のところ銅酸化物しかない。 電子のもつエネルギーt ~ 1eV (104K) 電子機構のTc フォノン機構のTc 104 K → 102 K 102 K → 101 K スピン揺らぎを大きくするのは難しい。大きくしすぎると反強磁性相に近づく。 Tc を上げるには? 1 U/tを最適にする。 Ans. 正方格子 5~10 2 銅酸化物以外には? Ans. 銅酸化物がベストだろう。(Ti, V, Co) 3 他の格子系は? Ans. 層状構造が必要であろう。 層状構造は、電荷供給層と伝導層が共存できる。 +α 6 ビスマス系超伝導体の結晶構造 CuO2面内に 超伝導状態の電子が集中している。 →臨界電流特性に異方性有り 結晶構造の異方性(2次元性) 超伝導コヒーレンス長 = hvF/ = 2kBTc >50meV not SC 50meV SC 50meVは2nm相当の超伝導コヒーレンス長 (SCの島の大きさ)に相当する。 温度スケールに換算すると300Kとなる。 →もし, 50meV程度の大きさを持っている部 分をマクロスケールで実現できれば、室温 超伝導体を実現したことになる。 前川禎通 「高温超伝導の物理」 応用物理75(2006)17 7 前のスライドを要約すると 超伝導コヒーレンス長 :クーパー対の波動関数の拡がり(クーパー対の半径) BCS-type SC = 10 – 100 nm 結果、多数のクーパー対が重なり合っている。 つまり、クーパー対の波動関数が重なり合っているからこそ クーパー対の位相が揃う。 1つのクーパー対の拡がりには、およそ1万個から10万個の クーパー対が重なっている。 cuprate-type SC = 2 nm 1つのクーパー対の拡がりには、数個から10個程度の クーパー対しかなく、重なり合うというよりお互いに孤立して いる感あり。 ~謎~ 不純物・欠陥を数多く含み、原子間に隙間の多く、局所的に結晶変形が 起こりやすい系で、d波超伝導の安定性と高いTcの保持はいかにして実 現できているのか? island 間距離 5-10 nm 通常、バルクのSCを示さないレベル でも、電気抵抗ゼロ、マイスナー効果を示す。 つまりisland間距離がコヒーレンス長よりはる かに長くても、SCの位相情報は十分長距離まで 運べることを示している! 8 有機超伝導 「分子」とは、種々の機能の集積が可能な究極のナノ構造体である。 小林速男先生 日本物理学会誌2001年3月号 有機化合物の一例 フタロシアニン 有機色素と金属(M)の化合物 青・緑色の顔料(新幹線の青が有名)やコピー機用の静電気発生体、大容量光 ディスク(CD-R)用色素として既に実用化されていて、生活に大変密着し た物質。さらに癌のレーザー治療、非線型光学材料(光通信等に用いられる) 等、さまざまな分野での応用が期待されているスーパーマン的な化合物。 9 年代 有機超伝導体(分子性超伝導体) 有機金属 超伝導全般 1911 超伝導の発見 1933 Meissner効果の発見 1935 Londonの理論 1950 生体物質での超伝導の可能性を指摘 (London) Ginzburg-Landau理論 1954 ぺリレン・Brでの金属伝導の発見 1957 (1955 Peierls Peierls不安定性) 1962 Josephson理論 1964 Little モデルの提案, Ginzburgモデルの提案 1973 TTF・TCNQでの巨大電気伝導率の発見 1975 ポリチアジル(SN)xでの<無機高分子>超伝導の発見 0.28K 1976 1977 TTF・TCNQでのPeierls超格子の発見 TTF・TCNQでのCDW伝導の確認 1983 ポリアセチレンを初めとする高分子金属の出現 第一世代 1980 「1D性顕著」 1981 1982 圧力下(TMTSF)2PF6での超伝導発見 [Tc = 0.9 K, P = 1.2 GPa] TMTSF塩でのSDW発見 第二世代 (BEDT-TTF)2I3での超伝導発見[Tc = 1.4 K] 圧力下(BEDT-TTF)2I3で(急冷で)8Kの超伝導発見 磁場誘起SDWの理論 1986 1990 重い電子系での超伝導発見 圧力下(BEDT-TTF)2ReO4での超伝導発見[Tc = 2 K, P = 0.4 GPa] 1984 1988 TMTSF塩での金属伝導の発見 常圧(TMTSF)2ClO4での超伝導発見 [Tc = 1.4 K] 1985 1987 BCS理論, Abriksov理論 DCNQI塩での金属伝導の発見 銅酸化物高温超伝導体の 発見 (2002)単一分子性金属 (2001) MgB2 Dmit塩での超伝導の発見 DMET塩での超伝導発見, MDT-TTF塩での超伝導発見, 「2D性顕著」 (BEDT-TTF)2Cu(NCS)2で10.4Kの超伝導発見 (BEDT-TTF)2Cu(N(CN)2)Clで13.2Kの超伝導発見 1991 アルカリ金属ドープC60での超伝導発見 2001 磁場誘起超伝導(磁性分子伝導系) max.33K 分子性超伝導体 10 TMTSFとBEDT-TTFの合成分子 Tc = 0.28 K at P = 0 Max, 0.54 K 有機超伝導の発端となった「エキシトンモデル」とは、 1964 Littleはフォノンに代えて励起子を介した 電子対形成による高温超電導体の可能性について 言及。 問題点 1. 一次元系での揺らぎの効果を過小評価 有限温度ではLROが生じにくい。 現実: LROなしでSCは起こらない。 2.低次元不安定性(パイエルス転移)による 金属-絶縁体転移が起こり易い 3.高分子中の電子間斥力を過小評価 現実物質は今日に至っても実現されていない。 Little自身の詳細な解析に寄れば、電子-エキシトン結合によって引力が生じるためには、電子は側鎖分子から 十分に離れていなければならない。 なぜならば、側鎖分子のそばの電子とエキシトンが結合すると、エキシトン形成に必要なクーロン引力そのものが 遮蔽されてしまうから。しかし、電子が離れていれば当然結合は弱い 11 Littleの励起子機構 電子とホールの生成と 見なすことができる →励起子(エキシトン) 格子振動の代わりに 電気分極による 電子間引力を媒介とする エキシトンを介するエネルギー~数eV cf フォノンSCはデバイエネルギー程度の エネルギーカットオフがある。 →室温超伝導の期待 - e 金属鎖上の電子は クーロン相互作用によって 側鎖分子を分極させ、 この分極をもう一つの電子が 感じ、実効的な引力を与える。 金属鎖 分極率の大きな有機分子側鎖 *Ginzburgは二次元電子系を誘電体の層にはり合わせた層状構造において エキシトン媒介の超伝導の可能性を議論した。 12 福山先生PPT 分子性結晶―有機分子で金属を! (TMTSF)2PF6 PF6 最初の有機超伝導体 tetra-methyl-tetra-selena-fulvalene TMTSF H3C Se Se CH3 H3C Se Se CH3 提供:加藤礼三氏 妹尾仁嗣氏 有機伝導系における電気伝導の機構 D2X ベチガード塩 D2X D2X 平面ドナー分子(D) : 無機アニオン(X-) = 2 : 1 D2X キャリアを供給するドーパントは伝導部と空間的に離れたところに存在していて、 DX2 キャリアの供給と運動が空間的に分離されている HOMOバンド D2X D2X D2X D2X DのHOMOが分子間で 重なり合って伝導バンドを形成 二つのD分子あたり一つの電子がHOMOバンドから Xに引き抜かれる。 LUMO SOMO バンド内にキャリア(ホール)が発生し、金属状態となる。 HOMO LUMO: lowest unoccupied molecular orbital SOMO: single occupied molecular orbital HOMO: highest occupied molecular orbital 13