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資料3 鳥取大学乾燥地研究センター国際化への取組み
鳥取大学乾燥地研究センター 国際化への取組み 資料3 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会(第81回) H28.10.4 1.乾燥地研究センターの紹介 2.国際化への対応事例 3.乾燥地研究センターの取組み・実績が大学の機能強化 を推進 4.国際共同で研究及びプロジェクトを進めるに当たっての 留意点や課題 平成28年10月4日 科学技術・学術審議会 学術分科会研究環境基盤部会 説明資料 1 1. 鳥取大学乾燥地研究センター 乾燥地が抱える課題の解決に向けて (砂漠化、食料危機、黄砂問題等への挑戦) 特に、乾燥地を有する途上国の生活向上への貢献 アフリカ、中近東、アジア等 • 日本で唯一の、乾燥地に関する研究センター • 全国の大学・研究機関の共同利用・共同研究拠点 総合的砂漠化対処部門 農業生産部門 環境保全部門 ■ 教員数:14名(外国人1名)、外国人客員教員3名(スーダン、中国)、国内客員教員3名 ■ 学生24名(内 留学生14名:スーダン、エチオピア、タンザニア、エジプト、ナイジェリア、中国 etc.) ■ 平成27(2015)年度 国際共同研究実績 海外研究機関所属研究者 受入れ数 40人 所属機関数 25機関 乾燥地の問題はグローバルな問題 乾燥地の問題はグローバルな問題 日本に乾燥地はないが、乾燥地で生じている 問題を無視することはできない。 ・日本は国際社会の一員として果たすべき役割 を持っている。砂漠化対処条約を批准している。 ・砂漠化の影響は国境を越えて直接日本にも やってくる。黄砂がその典型例 ・日本の台所は乾燥地の畑と直結している。 我国は乾燥地から多くの食料(例:小麦等)と水(バーチャルウォー ター)を輸入している。 陸地面積の 41.3% 世界人口の 34.7% 今、世界の乾燥地で何が起きているか? 乾燥地で起きている深刻な砂漠化の問題は世界が協力して取組むべき問題 乾燥地研究センターは国内外の研究者と協力して、砂漠化問題に取組んでいる。 約 10-20% の乾燥地が既に劣化している! 風食 水食 塩類集積 2. 国際化への対応事例 世界の学術界への貢献など 国際学術ネットワークの構築 (グローバルCOEを通じて) 国際乾燥地農業研究所 グローバルCOEを通じて形成された世界の乾燥 地研究機関(国際乾燥地農業研究センター:ICAR DA(ヨルダン)、砂漠研究所:DRI(アメリ カ)等)との海外学術ネットワーク、そして拠 点活動を通じて形成された国内の共同利用研究 者のネットワークをリンクさせることで共同研究 を推進する新たな国際学術ネットワークを構築 するなど、乾燥地研究センターは世界の乾燥地研 究との窓口として重要な役割を果たしている。 国連砂漠化対処条約締約国会議(UNCCD/COP) 乾燥地研究センターは、国連砂漠化対象条約(UNCCD)締約国会議 (COP)に科学技術委員会(CST)日本政府代表団の一員として出席 (本拠点恒川教授)している。また、当センターはこの条約を組織的に支援 することをミッションの一つとして掲げており、1998年に開催された第1回ア ジア地域会合への協力など、当初から深く関わっている。 乾燥地開発国際会議(ICDD) 乾燥地分野で最大級の国際会議である乾燥地開発国際会議(ICDD) の第8回会議(2006年)から主催機関の一つとなっており、日本からの 参加人数は鳥取大学が最も多い。本拠点事業開始後も、第10回会議 (2010年・カイロ)、第11回会議(2013年・北京)の開催を関連コミュニティと ともに積極的に支援している。 砂漠研究所 特筆すべき研究成果 拠点活動で得られた世界的な研究成果 研究担当者は、2016年HCS (Highly Cited Scientist)に選出 世界初の新奇化合物の創出に成功 ■本拠点、静岡大学、東京農業大学及び理化学研究所を中心とし た国際共同研究グループ(米・カリフォルニア大学リバーサイド校及びカナダ・ トロント大学の研究者各1名を含む。)による研究成果により、植物の ストレス応答を抑制する化合物の開発に世界で初めて成功。 ■本研究成果は、米国科学雑誌「Nature Chemical Biology」に掲載 され、毎日新聞ほか多くのメディアで取り上げられた。遺伝子組み 換え技術に頼らず乾燥などの環境ストレスによる作物生産性■の 低下を解決する新技術の開発に大きな期待が寄せられている。 乾燥地を有する途上国の生活向上への貢献 現地語による書籍の出版 モンゴルの放牧地植物の本を出版 スーダンにおける耐暑性小麦 の育種に関する共同研究 Rangeland Plants of Mongolia Ⅰ,Ⅱ モンゴルの次世代を担う若者や、実際に 放牧地の管理に携わる方々を特に意識 して、モンゴル語と英語を併記している。 スーダン農業研究 機構の圃場での共 同研究 辻本先生、 写真、文 JICAとの連携による研究成果 の現地実証試験 国際的認知度の確保 UNCCD(国連砂漠化対処条約)会議及びICDD(乾燥地開 発国際会議)への継続的、組織的参加 UNCCD: ■ 科学技術委員会のメンバー、ブース展示、サテライトシンポ ジウム等の開催 ■ 2006年:「砂漠と砂漠化に関する国際年 (IYDD)」東京・鳥 取イベントをUNCCD等と共催 ■ UNEP, WMO, UNCCD (2016). 「Global Assessment of Sand and Dust Storms」への執筆協力 ■ 2017年2月(予定): 「東京国際シンポジウム~砂漠化と闘う」 UNCCD、環境省等と共催 ICDD: ■ 2006年第8回から連続参加、会議運営母体のメンバー ■ 2016年8月:ICARDAとの共同シンポジウムを開催(エジプト) JICA課題別研修の受入れ 鳥取大学では1989年からJICA課題別研修「乾燥地におけ る持続的農業のための土地・水資源の適正管理」を実施。 2015年までで55ヶ国、延べ257名の研修員を受入れ。 各国要人の乾燥地研究センター訪問 アラブ諸国大使訪問 国際共同研究の推進 「乾燥地植物資源を活用した天水 栽培限界地における作物生産技術 の開発」(2015~2018年度) 2016年 度~ 2012年6月 海外ファンデイング機関からの支援 カタールプロジェクト カタール科学基金による全額出資の共同研究 乾燥地研究センターでは、カタール国立大学との共同研究「干魃 及び塩分への耐性を有する新規かつ独自の遺伝子の分離(通称: カタールプロジェクト)」(2013~2017年度、127,197ドル)を実施中。 この研究経費はカタール科学基金により全額出資されており、本 学で初めて海外の機関から研究資金を受入れた。 カタールは中東の産油国として有名だけでなく、ナツメヤシの実 (デーツ)の生産も主な産業である。しかし、ナツメヤシの栽培には 長年を要し、これまでその品種改良は困難であったため、本研究 では有用な遺伝子を用いナツメヤシを効率的に栽培することを最 終目標としている。 カタール国立大学 サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコによる研究支援 サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの日本法人であるアラムコ・アジア・ジャパン株式会社から、 鳥取大学 乾燥地研究センターに対し研究支援 サウジアラムコは、世界屈指の石油会社であるとともに、サウジ アラビア国内のみならず、各国において、CSR(corporate social responsibility)活動を積極的に展開している。今回、CSR活動の 一環として、乾燥地研究センターが取組んできた乾燥地における 干魃による農作物の不作、水・食糧不足、貧困といった乾燥地問 題への研究実績が認められ、更なる研究発展を目的に支援が行 われた。 今後、サウジアラムコの環境保全部門と共同研究の検討をはじ め、研究者間ネットワークの確立と協働体制の充実を目指す。 写真は、研究支援に関する調印式(2016.7.22) アラムコ・アジア・ジャパン株式会社代表取締役社長と鳥取大学長 事務体制の国際化に向けた取組 世界第一線級外国人教員の教授会等への積極的参画(オブザーバー参加) ■ ユニークな視点からの各種助言 ■ セクレタリーが複数の外国人研究者へ同時通訳 ■ 業務メール・会議資料等の英文併記(取り組みを開始) ■ 将来的にはすべて英語で会議が行われることが理想的 外国人教員、研究者、留学生の増加 ■ 技術部による実験機器等トレーニング ■ 英語対応可能な事務、技術職員の採用 ■ 重要書類の英訳は、事務局へ協力依頼、外部委託する 場合があり、時間や経費がかかる。英語以外が必要な場合もあるなど課題も多い 国際的な外部評価の実施体制の整備 過去に2回 国際外部評価を実施 ■ 1996年: 外部評価報告書「海外乾燥地研究 機関の研究管理者の評価と提言」 ■ 2007年:「国際外部評価2007準備報告書」 この報告書を要約・英文化した「Preparatory Report for 2007 International External Review of the ALRC」を作成 2007年国際外部評価委員 国際連合大学副学長、国際乾燥地農業研究センター(当時シリ ア) (ICARDA)所長、JICA上級審議役、日本沙漠学会会長、東 京大学大学院農学生命科学研究科教授、中国・北京師範大学副 校長、アメリカ・ネバダ・砂漠研究所(DRI)所長 9 国際的な頭脳循環ハブの形成と若手人材の育成に向けた取組 海外の優秀な研究者を呼び込むための取組ー1 ■ 外国人客員教員(任期1年、常時3名) 帰国後、若手研究者の本学派遣や留学生の推薦等、 交流の好循環が生まれている。 (例:エチオピアからの外国人客員がきっかけで、交流の 発展、SATREPSの採択へ繋がる) スーダン農業研究機構 外国人客員教員経験者や鳥取大学 で学位を取得した研究者が多い。 ■ 世界の第一線級研究者を含む外国人教員 (現在2名、本年度末4名) 鳥取大学卒業者 同、エジプト人 客員教授 連携機関研究員 大学の機能強化として、国際乾燥地研究教育機構へ配置 ■ 海外研究機関 (ICARDA) との クロスアポイントメント制度 (2015年度~) ■ 海外研究者招へい型共同研究 (拠点事業:2016年度より開始) 拠点の期末評価等を踏まえて導入進める。 1990年度~ 延べ78名受入れ 10 海外の優秀な研究者を呼び込むための取組ー2 先端的研究施設・設備の整備 (国内共同利用から国際共同利用へ) 特に自国で先端的研究設備を利用できない、途上国の研究者への利用促進を進めている デザートシミュレーター 全天候型乾燥地土壌侵食動態三次 元解析システム 塩分動態モニタリングシステム 植物応答総合解析システム (2016年度導入予定) ゲストハウスの整備(2011年) ■ 学外の研究者、学生が研究や 研修のために宿泊できる施設 ■ 外国人研究者の長期滞在、 来賓の宿泊にも使用 11 若手研究者を対象とした、海外派遣や国際交流などの取組 MSプログラム(国連大学との共同企画) 統合的乾燥地利用に関する共同修士号プログラム MSc Programme on Integrated Drylands Management 乾燥地における統合的資源管理法に関する国際的視野を持った人材育成を目的として,国 連大学ほか7機関が共同実施する国際共同修士課程プログラム (2005年から始まる) 国連大学(国連大学 水・環境・保健研究所(UNU-INWEH),カナダ) ① 乾燥地域研究所(IRA,チュニジア) ② チュニジア国立農業研究所(INAT,チュニジア) ③ 中国科学院寒区旱区環境工学研究所(CAREERI,中国) ④ 国際乾燥地農業研究センター(ICARDA,開始時シリア) ⑤ 鳥取大学(2007年から参加) ⑥ 地球機構(GM,イタリア) ⑦ バーリ地中海農学研究所(CIHEAM, MAI-Bari,イタリア) 乾燥地の現場に 約1年間どっぷり! 講義,研究指導は 全て英語で行われ 論文も英語で作成 コースワーク:1ヶ月 フィールドリサーチ:10ヶ月 論文作成 乾燥地科学に関連した広範な講義 第一線の乾燥地研究機関の講師陣 英語による講義(多国籍,英語) 派遣先の研究機関の研究者と鳥取大学の 主指導教官による修士論文研究指導 現地長期滞在,英語による研究指導 論文審査 修了 3. 乾燥地研究センターの取組・実績が大学の 機能強化を推進 「国立大学等の機能強化を推進する改革構想」として、乾燥地科学分野を中心と した改革構想が採択される。 →2015年1月: 「国際乾燥地研究教育機構」 発足 乾燥地問題に貢献できるグローバル人材育成のための教育体系の充実 機能強化を促進する改革構想として 「乾燥地科学分野の大学院設置」を構想 2017.4 「国際乾燥地科学専攻」 設置 ★専攻内に完全英語の「特別コース」を 設置し、国際乾燥地研究教育機構、乾 燥地研究センターのリソースを活用 リソース活用・投入 鳥取大学の乾燥地科学分野の教育・研究資源 ◆国際乾燥地科学研究教育機構 ・世界第一線級外国人教員、 ・クロス・アポイントメント教員 ◆乾燥地研究センター ・研究者、外国人客員研究員 ・研究プロジェクトのサイトと研究成果 ◆国外連携機関 ・国際乾燥地研究所ネットワーク所属機関 ・中央西アジア・北アフリカネットワーク機関 ・アフリカ、中国、中央アメリカ等の研究所 乾燥地科学分野が本学 の教育組織改革、グロー バル教育を牽引 4. 国際共同で研究やプロジェクトを進めるに当たって の留意点や課題 -1 シリア・アレッポ:ICARDA圃場 ・海外でのリスクマネジメント 背景 ■ アラブの春に始まる、北アフリカ・中東の治安悪化 ■ チュニジアに派遣した学生(MSプログラム)の退避問題 ■ シリアの戦場化(ICARDA本部:アレッポの崩壊) 内戦状態のアレッポ市街 対策、改善 ■ 国際交流危機管理マニュアルの整備(大学) ICARDA本部はヨルダンへ 移転 ■ 渡航審議(外務省安全情報に基づく) ■ 学生、教員への教育(国際交流センター:教本の作成) ■ リスクシミュレーション ■ JICAとの連携(JICAとの人事交流に基づく情報収集シ http://imgdex.com/245ce ステム、安全対策) ・国内でのリスクマネジメント (外国人教員、留学生等への配慮) ■ 地震、津波、火事等発生時の対応 地震発生時初動行動マニュアル(英語版)→ 海外渡航を予定し ている学部学生・ 大学院生は、必ず 事前教育を受ける とともに、「海外渡 航届」を提出 15 4. 国際共同で研究やプロジェクトを進めるに当たって の留意点や課題 - 2 乾燥地植物資源バンク室の開設 (生物多様性条約により、海外からの植物資源導入や研究利用が困難に) 乾燥地植物資源バンク室 ■乾燥地に由来する植物を用いた研究を推進する ため、共同利用・共同研究拠点の機能を拡充し、 2012年4月に開設。 ■本バンク室では、乾燥地に生存する植物や耐乾・ 耐塩性の作物品種・系統などを組織的に収集・保 存・増殖・評価して共同研究者に提供可能な仕組 み・体制を整備し、様々な乾燥地植物(ブルーアガ ベ、ウェルウィッチア、アフリカバオバブ等)を100系 統以上導入している。 ■2014年度には共同研究者3名に対して、乾燥地 植物ジャトロファ(種子50粒、植物48個体、さし穂 60本)を提供した。 メキシコから導入した油糧植物 ジャトロファ ジャトロファ、等の写 真 16