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低コスト林業の普及に向けてコンテナ苗植付功程調査(中間報告)

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低コスト林業の普及に向けてコンテナ苗植付功程調査(中間報告)
低コスト林業の普及に向けて
~コンテナ苗植付功程調査(中間報告)~
上川南部森林管理署
三浦 英泰
1.課題を取り上げた背景
林業の採算性を更に向上させるためには、林業経営コストの大部分を
占める植付や保育作業について作業効率の改善を図る必要があります。
こうした中、マルチキャビティコンテナ苗(以下「コンテナ苗」とい
う(写真1)。)については、植付効率の向上等によりコスト低減効果
が認められつつあり、
本州の国有林では平成 20 年度以降導入が進められ、
現在、東北・関東・九州森林管理局において植付が行われています。
そのため北海道森林管理局においても、独立行政法人森林総合研究所
北海道支所や民間苗木生産者と連携し、平成 23 年度の秋植の一部につい
て、コンテナ苗を導入することとしました。
2.取組みの経過
コンテナ苗には以下のようなメリットがあるとされています。
① 空気根切り等を利用し、根鉢に成型性を確保出来ます(写真1、2)。
そのため仮植が必要なく、裸苗やポット苗に比べて植え付けやすい。
② 活着率がよく、成長率もよい。
③ 植栽時期を選ばないので、成長が始まってからでも問題なく植え付
けることが出来る。
そのため、植付効率の向上、補植・下刈の保育作業のコスト削減が
期待出来ます。
今年度は取組みの初年度ということもあり、植付に係わる功程までを
調査することとして実施しました。
写真1 コンテナ苗(懸架中)
※懸架することで空気根切りを
実施。
写真2 コンテナ内部(リブ)
※リブによって根が底面まで誘
導される。
(1)調査地概要
上川南部森林管理署仁々宇森林事務所1269林班ら小班
区域面積 16.00ha のうち実行面積 0.48ha
傾斜区分:0~15°
植生区分:クマイザサ
石礫比 :15%以下
(2)施業方法
地拵:バックホウによる大型機械地拵(筋刈 3m×残幅 4m)
植付:樹種 アカエゾマツ
(コンテナ苗 1 号、300cc)
植栽本数 2,100 本/ha
総本数 1,000 本
(2 条植、列間 1.80m 苗間 1.43m)
(3)調査項目(植付功程調査)
① コンテナ箱配置作業
苗畑からの運搬に使用したダンボール箱(苗木約 60~80 本入)の
重さを確認し、それを人力で調査地の中心に運ぶまでの所要時間
を計測する。
② 苗木小運搬及び植付作業
配置されたコンテナ箱から植
付箇所まで苗木袋を使って苗
木を運搬する時間を計測する。
運搬した 100 本のうち 50 本を
「スペード」(写真3)で、
残り 50 本を「鍬」で植え付け
し、その所要時間を計測する。
写真3 スペード
但し、鍬での植え付けは1鍬
植えで実施する(コンテナ苗が入る植穴を確保出来れば十分なた
め)。
3.
実行結果
(1)コンテナ箱配置作業結果
① 苗木 1 本当りの平均苗長及び根本径、重量
樹種・規格
アカエゾマツ
300cc
※作業道から現地まで片道 142m。
※運搬時間は休憩時間を除く。
(2)苗木小運搬及び植付作業結果
使用器具
苗木本数
植付時間
スペード
鍬
○
50 本
49 分 19 秒
ヤマザキ1
男
○
50 本
40 分 01 秒
○
50 本
51 分 40 秒
オダギリ
男
○
50 本
31 分 00 秒
○
50 本
42 分 10 秒
ワタナベ
男
○
50 本
28 分 30 秒
○
50 本
38 分 23 秒
ヤマザキ2
男
○
50 本
35 分 30 秒
○
50 本
55 分 28 秒
ヤマザキ
女
○
50 本
40 分 30 秒
※運搬時間は箱配置箇所から苗木 50 本を運搬し、各使用器具で植付後、
箱配置箇所まで戻るまでの時間。
植付者
性別
苗長(cm)
根元径(mm)
重量(g)
4.考
28.04
5.92
294.72
(1)コンテナ箱配置までの課題
今回は、苗畑から運搬に使用したダンボール箱を人力で抱えて配置す
るという手法を採用しましたが、培地が水分を吸って重くなっているこ
ともあり、作業員の中には運びづらそうにしている方がおられました。
これだと配置距離が長くなった場合、作業効率が低下すると予想されま
す。
背負子等で運搬する手法や地拵で重機を使用した場合はその時点で搬
入しておく手法等を検討するなど、運搬方法自体を見直す必要がありま
す。
② 箱運搬時間
運搬者
性別
苗木本数
運搬時間
ワタナベ
オダギリ
男
男
10 分 21 秒
12 分 24 秒
ヤマザキ
男
231 本(77 本/箱を 3 回)
231 本(77 本/箱を 3 回)
139 本(77 本/箱を 1 回、62 本
/箱を 1 回)
12 分 26 秒
察
(2)苗木小運搬時における課題
小運搬は通常の裸苗同様、苗木袋に入れて運搬しましたが、根鉢が崩
れ培地が半分くらい無くなっている苗木も見られました。培地の種類や
含水量等にもよりますが、根鉢の形状を保持しながら運搬するにはあま
り苗木袋は適していないと思われます。
コンテナに入れたまま運搬出来れば一番いいですが、それだと苗畑か
らのトラック運搬時点でコスト増になってしまうため厳しいと思われま
す。箱配置同様、運搬方法について検討する必要があります。
(3)植付時における課題
今回、植付にはスペードを使用
しました。本来前後にゆすって植
穴を開ける道具(写真4)ですが、
その作業だけでは苗木を植える
のに十分な穴が開かなかったた
め、差し込んだ後回転させるとい
う作業が必要なようでした。これ
は土質にもよりますが、植穴を開
けている途中から崩れてきてい
写真4 スペードによる植付
※前後にゆすっているところ
たのが原因だと思われます。
スペードを使い慣れていない
ということもあり、今回の調査では鍬での植付より遅くなりました。
地形や土質による影響が大きい植付方法についてはさらなる検証が
必要だと思われます。
(4)次年度以降の取組み
今年度は植付功程調査のみですが、次年度以降は活着調査・当年度
成長調査及び下刈作業の実施の有無を検証する予定です。
活着調査や成長調査の結果によっては、コスト削減に繋がるかの方
向性が決まっていくとともに、植栽本数や下刈回数、除間伐時期の見
直し等の可能性も出てくるので、今後に注目していきたいと思います。
(5)まとめ
コンテナ苗については、育苗技術にしろ植付技術にしろ、日本では
まだ発展途上の技術です。植栽時期を選ばない等、従来の裸苗とは大
きく違ったメリットがあることからも、これまでの森林の取扱いにと
らわれることなく、作業効率向上及びコスト削減に向けた施業方法を
検討していきたいと思います。
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