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言語・方言の継承活動
言語・方言の継承活動 国立国語研究所・言語変異研究領域 木部 暢子 2016年8月27日 1 言語・方言の継承の取り組み 1.学校等での言語・方言の教育 2.教材の作成 教科書(保育園用、幼稚園用、小学校低学年用、小学校 高学年用、中学生用、大人用) 方言かるた 方言カレンダー 3.方言大会、方言劇等 4.民謡等を使った言語・方言の指導と教材の作成 5.講演会、講座等の開催 2 3 アイヌ語の取り組み • 1997年「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する 知識の普及及び啓発に関する法律」(通称「アイヌ文化振興 法」)施行。 • 財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構設立。「アイヌ語ラ ジオ講座」、「アイヌ語上級講座」、「語り部育成事業」、「アイ ヌ語弁論大会」等の事業新設。http://www.frpac.or.jp/about/details/27.html • 「アイヌ語弁論大会」は年を追うごとに出場者が増加し、口 承文芸部門と弁論部門、子供の部の新設など、漸次体制を 整えつつ継続されている。 • 「アイヌ語指導者育成講座」などの取り組み。 • アイヌ民族博物館でアイヌ語を含む集中的な研修を実施 (2008年8月~2011年3月)。 http://www.ainu‐museum.or.jp/ 4 公益社団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構 http://www.frpac.or.jp/about/details/27.html より • 指導者育成 アイヌ語教育の充実に向けて、アイヌ語研究者などの協力を得て、アイヌ語 の文法や言語学の基礎を踏まえた効果的な指導方法などについての学習機 会を提供し、アイヌ語指導者の育成を図ろうとする事業です。 講師6名、受講者8名 年3回スクーリング(集中講義方式) • 上級講座 アイヌ語教育の充実に向けて、アイヌ語研究者などの協力を得て、中級話者 を対象に地域において講座を開設し、将来、アイヌ語教育の指導者となる上 級話者の育成を図ろうとする事業です。 • 親と子のアイヌ語学習 アイヌ民族の親子を対象とし、アイヌ語話者及びアイヌ語研究者の協力を得 て、アイヌ語の振興及びアイヌの伝統や文化の保存を図ろうとする事業です。 • アイヌ語入門講座 アイヌ語を学習、習得及び敬称しようとする意欲のある者を対象としたアイヌ 語入門講座を実施し、アイヌ語伝承者のさらなる掘り起こしと裾野の拡大を 図ろうとする事業です。 5 Yoron 6 与論島の取り組み 菊秀史(2006-2014)『与論の言葉で話そう(1)~(4)』 8 菊秀史(2006-2014)『与論の言葉で話そう(1)~(4)』 9 与論島(ユンヌフトゥバ)の取り組み 1998 ユンヌフトゥバの危機を感じ、町政懇談会で学校での方言授業を提唱。 2001 集落の子ども会育成会長となり、月1回公民館で集落の子どもたちを対象にユンヌ フトゥバの勉強会を始める。 2002 1学期は月2回与論小学校図書室にてユンヌフトゥバの授業(希望者のみ)を実施。 2学期からは月1回「総合的な学習の時間」でユンヌフトゥバの授業を実施(現在ま で続く)。各学年、年間10時間。 2003 「総合学習」に与論中学校でユンヌフトゥバの授業を実施。与論民俗村で年3回、1 回2時間、ユンヌフトゥバの勉強会を実施(現在まで続く)。 2006 与論町文化協会で月日を「ユンヌフトゥバの日」に決定。『与論の言葉で話そう1』 (挨拶、名詞、こそあど言葉・感動詞・副詞)出版。 2007 奄美大島地区文化協会で2月18日を「方言の日」に決定。『与論の言葉で話そう 2』 (動詞の文型・文法) 出版。 2008 公民館でユンヌフトゥバ講座開講。1回2時間、20回実施。第1回ユンヌカルタ大会 開催(以降、毎年開催)。与論町で「ユンヌフトゥバの日に関する条例」制定。 2009 『与論の言葉で話そう3』 (活用種類別動詞単語集) 出版。 2010 茶花小学校にて「ユンヌに学ぼう(家族で出来る方言教育)」始まる。与論小学校P TAによる「ユンヌフトゥバ学習の成果を上げるための取組み」始まる。 2014 『与論の言葉で話そう4』 (形容詞・助詞・助動) 出版。 10 与論島(ユンヌフトゥバ)の取り組み 与論小学校の取組 平成19年度に鹿児島県へき地・小規模校研究連盟の研究指定を 受けて、「郷土の文化を生かした教育活動の展開~ユンヌフトゥ バ学習を中心に~」を実施した。 ① 体系的なカリキュラム:「ユンヌフトゥバで会話ができるように なること」を目的として、第1時から第10時まで、体系的なカリ キュラムを組んでいる。 ② 家庭や地域との連携:「ユンヌフトゥバの日(毎月18日)音読 カード」により、親子でユンヌフトゥバの上達状況をチェックす るようにしている。 ③ 教材のデジタル化:ユンヌフトゥバ学習で用いている教材をデ ジタル化し、パソコン操作によって、子どもが自分で知りたい ユンヌフトゥバを選んで聞くことができるようにしている。 (与論小学校「郷土愛を深め、『話す力・聞く力』を高めるユンヌフトゥバ学習の取組」から抜粋) 11 与論小学校玄関 授業風景 デジタル教材 カルタ大会 12 鹿児島県奄美の取り組み 喜界島 奄美大島 徳之島 沖永良部島 与論島 シマユミタの日 シマユムタの日 シマクトゥバの日 島口の日 シマグチ(島口)の日 シマユミィタの日 島ムニの日 ユンヌフトゥバの日 https://www.pref.kagoshima.jp/aq01/chiiki/oshima/kyoi ku/oosimatikuhougennnohi.html 13 報告書 50頁 奄美の取り組み 『しまくとぅば読本』 • 木部暢子・狩俣繁久監修(2010)『島唄 から学ぶ奄美のことば』かごしま地域 文化創成事業奄美地区実行委員会 • 「瀬戸内のシマグチ」編集委員会 (2013)『瀬戸内のシマグチ』東京外国 語大学国際日本研究センター • 「瀬戸内のシマグチ」編集委員会制作・ 前田達朗監修(2016)『瀬戸内のシマグ チ2 シマウタとぅシマグチ シマとぅシ マグチ』Land映像・編集 14 15 教科書 沖永良部:松村雪枝、山田真寛、横山(徳永)晶子、元 木環、浅川友里江(2016)『みちゃぬ ふい(土の声)」』 16 17 八丈島の取り組み 学校教育での取り組み ① 実態調査(全小・中・高校生) ② 「八丈・島ことばカルタ」の作成 ③ 「八丈方言100」を作成し,覚える取り組み ④ 「今週の島ことば」の作成,掲示・・日常的な取り組み ⑤ 方言劇(小学校の学芸会での発表) ⑥ 八丈町教育研究指定校制度の導入で行った八丈町立三原 小学校の研究 ⑦ 教職員研修会 18 八丈島の取り組み 社会教育での取り組み ① 八丈方言講座(4年間に6回実施) ② 八丈・島ことばカルタ大会(2年間に2回実施) ③ 島ことば教室 ④ 八丈方言文法講座 ⑤ 八丈島の代表的な民謡「ショメ節」の歌詞100句の収集,作成 19 20 八丈島の取り組み 21 22 沖縄県の取り組み しまくとぅばの日に関する条例 (沖縄県)平成18年3月31日 条例第35号 (趣旨) 第1条 県内各地域において世代を越えて受け継がれてきたしまくとぅばは、本県文化の基層 であり、しまくとぅばを次世代へ継承していくことが重要であることにかんがみ、県民のしまく とぅばに対する関心と理解を深め、もってしまくとぅばの普及の促進を図るため、しまくとぅば の日を設ける。 (しまくとぅばの日) 第2条 しまくとぅばの日は、9月18日とする。 (事業) 第3条 県は、しまくとぅばの日の啓発に努めるとともに、その日を中心としてしまくとぅばの普 及促進のための事業を行うものとする。 2 県は、市町村及び関係団体に対し、しまくとぅばの普及促進のための事業が行われるよう 協力を求めるものとする。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。 23 沖縄県の取り組み 『しまくとぅば読本 小学生』 24 25 26 27 与那国の取り組み 地元の協力体制(担当室の設置、人員の配置) 専門員の雇用 予算措置 与那国語の教科書の作成(保育所用) 与那国方言辞典の編纂 28 「日本の危機言語・方言サミットIN八丈島」 29 「日本の危機言語・方言サミットIN八丈島」 30 「日本の危機言語・方言サミットIN八丈島」 <プログラム>町役場内 多目的ホール おじゃれ 12月13日(土) 13:00 開会(挨拶) 13:30 記念講演 伊奈かっぺい氏(津軽弁 おふぃす・ぐう) 「方言で遊ぶ・方言を遊ぶ-少し訛って、ずうーッと訛って」 15:00 「各地域の現状と課題」1 言葉による発表・文化紹介 「お国ことばで語る 桃太郎」 与那国語・八重山語・宮古語・沖縄語 12月14日(日) 9:00 「各地域の現状と課題」2 言葉による発表・文化紹介 「お国ことばで語る 桃太郎」 国頭語・奄美語・アイヌ語・八丈語 11:00 パネルディスカッション 「継承するための取り組み」 12:15 閉会行事(挨拶・感想) 31 32 パネルディスカッション 33 国語研の取り組み 八丈島 34 継承の取り組みの注意点 1.学校等での言語・方言の教育 • 教員の負担の問題:教師が地元出身とは限らない。 • 方言の授業を計画し、実行することの教員、学校の負担。 • 熱心な校長や教員がいる間はよいが、転勤によりその教 員がいなくなると急激に方言の授業が縮小する。 • 器機の更新をどうするか。 2.教材の作成 • どの地域の言葉で教材を作るか。学区・校区が同一の方 言とは限らない。 • minor 言語が killer 言語になる。 35 継承の取り組みの注意点 3.方言大会、方言劇等 • マンネリ化 • 常連化 4.民謡等を使った言語・方言の指導と教材の作成 • 芸能としての歌詞の定型化 • 新しい会話を作ることがない 5.講演会、講座等の開催 • 企画、運営に労力がかかる • 講師の手配、運営経費の問題 • 参加者の固定化 36