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乱高下が続く中国株式市場:
臨時レポート 乱高下が続く中国株式市場: 中国の経済動向・政策の見通し HSBC投信株式会社 2015年7月30日 中国株式市場は7月初旬以降、値動きの激しい状況が続いています。これを受けて景気の先行き 不透明感が増すとともに投資家のリスク選好度が低下し、他のアジアや世界の株式市場にも影響を 及ぼしています。 6月は、中国の経済成長は安定に向かう兆しが見られたものの、景気回復は力強さに欠けています。 しかし、最近の株価変動が実体経済に与える影響は限定的であり、システミック・リスク(金融システ ムの大きな混乱)に発展する可能性は低いと考えます。 当面は金融政策・財政政策の両面で景気と株価の下支えが図られると見ています。株式市場の ボラティリティは高水準で推移すると思われるものの、企業のファンダメンタルズに照らして、香港 H株については依然として割安感があります。 株価変動に伴う投資家心理の悪化は、社債、特にハイ・イールド社債にも悪影響を及ぼす可能性が あります。但し、株式市場と実体経済の下支えを図る積極的な政策対応により緩和的な金融環境が 続くことが見込まれ、これは中国の債券市場にとりプラス要因になると見られます。 図表1 主要株価指数の推移 最近の中国株式市場動向 中国株式市場は値動きの激しい状況が続いてい ます。こうした中、政府は株式市場の安定をめざ し市場支援策を打ち出しました。本土市場の株式 指数であるCSI 300指数は6月12日から7月8日の 間に約30%下落しましたが、これを受け、政府主 導による株式の買い支え、空売り禁止、銘柄ごと の取引停止等の措置が実施されました。その後、 CSI 300指数は7月8日から23日までの間に約 16%上昇したものの、7月27日には一日で8.6% 下落するなど、値動きの激しい展開を見せていま す。主に香港上場の中国株で構成されるMSCI チャイナ(中国)指数も不安定な動きとなっていま す(図表1参照)。 7月27日の本土株式の下落は2007年以来最大と なったこともあり、投資家のリスク選好度が低下し、 他のアジア地域や世界の株式市場に影響を及ぼ しました。中国株式のボラティリティ上昇に伴い中 国や世界経済の先行き懸念が高まりました。米 金融政策の正常化を巡る不透明感が強まってい ることも加わり、商品市況や新興国通貨も下落し ました。7月27日の株価下落の引き金を特定する のは困難ですが、中国政府が株価下支え策の規 模を縮小するとの観測が広がり、投資家心理が 一段と悪化した可能性があります。 1 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 (2014年7月1日~2015年7月28日) (ポイント) 6,000 5,000 (ポイント) 90.0 MSCIチャイナ(中国)指数(右軸) 80.0 70.0 4,000 3,000 上海総合指数(左軸) 60.0 50.0 2,000 CSI300指数(左軸) 1,000 14/7 14/9 14/11 15/1 40.0 15/3 15/5 15/7 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 27日の引け後に中国証券監督管理委員会 (CSRC)はウェブ・サイトを通じて、システミック・リ スクを回避するため、引き続き市場と投資家心理 の安定化を図る方針を示しました。中国経済の先 行きに対する不安も投資家心理の悪化の一因と なりました。7月の財新製造業購買担当者指数 (PMI)は市場予想を下回り、6月の49.4から48.2に 低下し、2014年4月以来の低水準となりました。ま た、製造業の利益は2ヶ月連続で増加した後、6月 に前年同月比0.3%減少しました。 (次ページに続く) 臨時レポート 中国の経済動向 中国の経済指標は2015年第2四半期末にかけて 経済活動が徐々に改善したことを示していますが、 景気回復の持続性への懸念が残ります。第2四 半期の実質国内総生産(GDP)成長率は第1四半 期と同水準の前年同期比+7.0%となりましたが、 季節調整済の前期比年率では第1四半期の +5.7%から第2四半期は+7.0%に回復していま す。 産業別で見ると、第3次産業のGDPが第1四半期 の前年同期比+7.9%から第2四半期は+8.4% (2015年上半期も前年同期比+8.4%)に加速し たことが寄与しました。特に、金融業の2015年上 半期GDPは前年同期比+17.4%と大きく増加しま した。株式市場の活況と不動産販売の回復が主 な要因と考えられます。第2次産業(製造業と建 設業)のGDPは第1四半期の前年同期比+6.4% から第2四半期は+6.1%(2015年上半期も前年 同期比+6.1%)にやや減速しました(図表2参照)。 6月の経済指標では、貿易額、鉱工業生産、小売 売上高が改善を示し、また住宅市場(取引件数や 価格)では回復が続き、さらに銀行貸出とマネー サプライの増勢は強まっています。このように中 国景気が安定に向かう兆しが見られます。 ただ一方で不動産市場での在庫調整や企業の 設備過剰、財務状況の悪化、実質金利の上昇な どが製造業の設備投資の足枷となっています。ま た、地方都市では不動産の過剰在庫が新規住宅 着工や新規投資の重しとなっています。 株価変動の消費への影響 中国経済には、引き続き低調な外需、国内の過 剰設備、負債比率の上昇等の影響から、下押し 圧力がかかっています。投資家心理の悪化によ り株式売買高が減少すれば、2015年下半期は金 融業の経済成長率への寄与度は低下する可能 性があります。 しかし、株価の変動が実体経済全体に与える影 響は限定的であり、金融界全体の深刻な問題に 発展する可能性は低いと考えます。 7月27日時点のCSI 300指数は、年初来8.1%、1 年前と比較しても約65%上昇していますが、これ までの株価上昇が家計消費を刺激する資産効果 はさほど大きくなかったと考えられます。 2 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 その理由として、①家計金融資産に占める株式 の割合は小さいこと(不動産を含めて15%未満)、 ②家計の貯蓄率が高いこと、③証券口座を保有 する個人投資家は総人口の10%未満であること、 などが挙げられます。 このことは、株価下落による「逆資産効果」もさほ ど大きくならないことを意味します。しかし、長期 にわたり相場下落が続いた場合には、消費者心 理が悪化し、消費支出が減少する可能性は否定 できません。 企業の資金調達と金融セクターの バランスシート また、株価ボラティリティが実体経済に影響を与 え得るもう一つの経路として、企業の資金調達が 挙げられます。株式発行を資金調達手段として活 用してきた一部の業種は影響を受けると見られま す。今年は市場からの直接的な資金調達の推進、 国内貯蓄の利用、企業レベルでの債務の株式化 を通じたデレバレッジを進める上で、株式市場が 重要な役割を担ってきました。さらに株式市場の 安定は国有企業(SOE)改革の後押しになります。 しかし、2015年上半期の株式発行額は4,240億元 と、社会融資総量(TSF)の5%未満に止まりまし た。2015年6月のTSF残高で見ると、株式発行に よる資金調達の全体に占める割合は3.2%でした。 実体経済で見ると、資金調達手段として株式市場 が果たす役割はまだ小さいと言えます。 金融機関の持つ株式エクスポージャーとレバレッ ジの解消がリスク要因として懸念されています。 (次ページに続く) 臨時レポート しかし、銀行の株式市場に対するエクスポー ジャーは低く(資産に占める割合は約1%)、リス クは低いと思われます。株式投資に関連した融 資に関して正確な統計はないものの、推計ではこ のような融資による銀行の株式に対するエクス ポージャーは、銀行の資産総額188兆元に対し、 2015年6月のピーク時で1.5~2兆元に過ぎません。 このように、株価の下落による銀行への影響は、 さほど大きくなく、システミックリスクに発展する可 能性は低いと考えられます。 豚肉価格の高騰は他の品目の下落で充分に吸 収されると見ています。 本年末のCPIは、3%としている政府のインフレ目 標値を下回ると当社は予想しており、追加緩和余 地が生じると考えます。中国の経済成長見通しを 巡り不透明感は残るものの、政府の対策などを 背景に本年下半期には同国経済は緩やかに回 復するものと当社は考えます。 中国株式市場の見通しと投資戦略 中国当局の対応 株式市場の下落が続いた場合に、不動産市場に 悪影響を及ぼし、また流動性への懸念から地方 政府の負債の再編に支障をきたす可能性もあり ます。しかし、当社は、中国当局は流動性を供給 するなどして、このようなリスクが国内の金融シス テムや経済活動に広がることを防ぐ適切な手段 をとると考えます。 とはいえ、当局の株式市場支援策の一部は株式 市場を歪ませることになり、当局が持つ「経済の 中で株式市場が(資本循環の)重要な役割を果た す」という構想を阻害することにもつながります。 市場原理に基づいた経済改革は中国政府の重 要課題であり、今後政府は市場支援対策からの 「出口政策」を検討する必要に迫られると見られ ます。但し、足元の株価の不安定な動きは、株式 市場が依然ぜい弱であり政府の支援策が必要で あることを示しています。 中国当局の金融および財政政策は同国の景気 や金融市場にとり引き続き支援材料になるものと 当社は考えます。政府は、当面、財政規律を重視 しながらも、インフラ投資には引き続き配慮してい くものと思われます。また、今後、中央銀行は金 融政策を適切に実施し、これにより低コストでの 資金調達と必要とされるセクターおよび業種への 資金の振り分けが可能になるものと思われます。 インフレ環境 物価について、最近、中国の主要食品である豚 肉価格が高騰しており、インフレ動向への悪影響 が懸念されています(中国では、消費者物価指数 (CPI)に占める豚肉価格の比率が約3%)。しかし、 需要は鈍いことから、豚肉価格の高騰はインフレ 率の大幅上昇に繋がるとは考えていません。また、 3 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 米国の利上げやギリシャ情勢など、国際金融情 勢を不安定にする要素もあり、中国株式市場、特 に本土株式市場は、当面、値動きの激しい状況 が続く可能性があります。中国政府は当面、株価 対策を続けると見込まれますが、中国株式市場 の中期的な見通しにとり鍵となるのは、経済改革 の動きと企業の利益成長のトレンドとなります。 香港H株は、最近はボラティリティが高いものの、 優れたリスク・リターン特性(リスクと比較して優れ た投資収益が期待できること)が示されており、中 国本土A株と比べ割安感が強い点も注目されま す。そして、中国株式への投資では、中国経済の 構造変化の恩恵を受ける企業、収益性の改善が 予想される国有企業、また構造改革により成長 性が再評価される可能性がある業種の銘柄を当 社は選好しています。 債券市場については、社債、特に高利回り債券 は、投資家のリスク回避志向による市場センチメ ントの影響を受ける傾向が見られます。しかしな がら、政府の株式市場および景気の下支えに向 けた強い姿勢により、今後も流動性は十分に確 保されるものと見られ、これは中国債券市場にも プラス要因となります。 中国株式市場のボラティリティは、ファンダメンタ ルズの変化というよりも、流動性やレバレッジの 拡大・縮小に大きく影響されたものです。このため、 中国株式市場のボラティリティが中国経済や金融 システム全体、ひいてはアジアの金融市場に大き く影響する可能性は低いと考えます。 以上 当資料は、HSBC投信株式会社が、投資家の皆様へ の情報提供を目的として、HSBCグループのHSBC グローバル・アセット・マネジメント(UK)リミテッドが 作成した資料を翻訳・編集したものです。 留意点 投資信託に係わるリスクについて 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場に おける取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従いまして、 投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、預金保険機構 または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の投資信託は投資 者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論見 書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその内 容をご確認頂きご自身でご判断ください。 投資信託に係わる費用について 購入時に直接ご負担いただく費用 購入時手数料 上限3.78%(税込) 換金時に直接ご負担いただく費用 信託財産留保額 上限0.5% 投資信託の保有期間中に間接的に ご負担いただく費用 運用管理費用(信託報酬) 上限年2.16%(税込) その他費用 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。 「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約締結前交付書面(目論 見書補完書面等)」等でご確認ください。 ※上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。 ※費用の料率につきましては、HSBC投信株式会社が運用するすべての投資信託のうち、ご負担いただく それぞれの費用における最高の料率を記載しております。 ※投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資される際には、かならず 「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。 HSBC投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第308号 加入協会 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会 ホームページ www.assetmanagement.hsbc.com/jp 電話番号 03-3548-5690 (受付時間は営業日の午前9時~午後5時) 【当資料に関する留意点】 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作成したものであり、特定の金 融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、 データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 4