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SFTEE NEWS No6 - NPO法人環境エネルギー技術研究所

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SFTEE NEWS No6 - NPO法人環境エネルギー技術研究所
SFTEE
News
No. 6 May 2015
目次
02 巻頭言/田路和幸
03 特別寄稿
03 自然界の有り様と人間社会におけるバイオマス/田口 信和
04 次世代バイオ固形エネルギー:バイオコークスの利用技術の
先進的取組み/井田 民男
05 微細藻類を用いたバイオ燃料生産の試み/佐々木 洋
06 生ゴミを回そう!みんなができる、エネルギー生産と
食料生産/多田 千佳
08 暮らしの中に直流給電/田路 和幸
09 直流配電におけるアーク放電抑止技術とその応用/若月 昇
10 直流電力合成供給装置「エコミノール®」/村野 實
11 小型EVによる直流分散電力ネットワークの
技術開発/藤田 充
12 電界結合非接触電力供給技術の実用化検討/原川 健一
13 Feature
13 エネルギーマネージメントシステムの紹介/窪田 正
15 第6回研究奨励賞・奨学賞受賞
研究奨励賞/多田 千佳
奨学賞/胡 勇
奨学賞/西坂 光
16 会員募集のお知らせ・編集後記
編集後記/高橋 英志
巻頭言
NPO 法人環境エネルギー技術研究所
理事長 田 路 和 幸
仙台の桜の開花が 4 月 3 日に仙台管区気象台から発表されました。平年より 8 日早く、
仙台管区気象台の観測史上 2 番目に早い開花となったようです。この桜前線は足早に津軽
海峡を渡り北海道へ、このように年々桜の開花が早まっているように思えます。地球温暖
化現象に起因しているのでしょうか!?
NPO の設立趣旨でもありますように「温室効果ガスの排出を大幅削減するための革新的
技術と省エネルギー技術、再生可能エネルギー・新エネルギー技術の創出を目指し、低炭
素社会の実現に向けた取り組みを展開する」としており、その趣旨に沿って、地球温暖化
現象の抑止の観点から、私たちは化石燃料に頼らない低炭素社会の実現に向けて、活動を
展開しております。
特に平成 26 年度は、NPO 創立 5 周年を記念いたしまして、市民公開で第 8 回 SFTEE セ
ミナー「バイオマス研究・利用技術の先進的取組み」、第 9 回 SFTEE セミナー「暮らしの
中の直流給電と技術開発」と題して、大学の先生方や多くの企業の協力の下、2 回に亘り
仙台ガーデンパレスにおいて開催いたしました。当日の講演内容につきましては、次ペー
ジ以降の特別寄稿にもありますよう最新の技術開発等の取組みを紹介しております。
平成 27 年度事業では、地球規模での地球温暖化現象の抑止の観点から、東南アジアの新
興国及び発展途上国において、低炭素社会の実現の重要性のための普及・啓発活動を展開
することとしております。
以上のように NPO が積極的に活動を展開するためには、NPO 関係者はもとより、市民の
皆様のご理解とご協力が何よりも得難い力でございます。引き続き、役員・会員が一丸となっ
て社会の発展に貢献する所存でございますので、今後とも皆様のご支援とご鞭撻のほどお
願い申し上げます。
2
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
特別寄稿
01
『自然界の有り様と人間社会におけるバイオマス』
株式会社ガイア環境技術研究所 代表取締役 田 口 信 和
ゼネコンの土木技術者から転じて、バイオマス環境事業の会社
てしまう放射性物質の微粒子を多孔質に吸着させる炭化物の開発
を立ち上げてから早 13 年目になります。土木は、ダム、トンネル、
です(図1)。これによって、除染作業で下流域に排出される放
道路などを建設することで自然環境を人間が生活しやすいように
射性汚染水の濃度を低コストで低減させることができるようにな
変える仕事でもありました。
りました。
それが、バイオマス環境事業に目を向けるきっかけになったの
また、炭化物研究の延長線上で始めた稲の籾殻に含まれるケイ
は、自然は長い年月をかけて無駄のないシステムを作って来てい
素が、骨密度の改善等に劇的な効果があることも実証されました
るはずなのに、そのバランスを崩しているのは、実は人間自身な
(図2)
。ここで縦軸の 100% は各年齢の骨密度の平均値を示しま
のではないかという長年抱いていた漠然とした疑問でした。
す。骨密度が上昇したこのモニター結果は、現在の骨粗鬆症の治
療法の常識を覆すもので、国外も含め、各方面から問合せがあり
①今の人間社会は自然界の有り様から離れているのではないか?
生態学的に言えば、自然界は「捕食」
、
「競争」、
「寄生」、
「共生」
注目されて始めています。
以上の結果は、いずれも「廃棄物」とされているバイオマスが
の4つに分類されます。人間が豚を「捕食」する“養豚業”、勝
原材料です。機能性を持たせる研究の成果として新しく見出され
ち組・負け組を作った“行き過ぎた競争社会”、大企業に依存し「寄
たものです。やはり、「地域社会は資源の宝庫だ、自然界には廃
生」せざるを得ない“下請企業”。自然界を手本にするのであれば、
棄物はなかった、その活用の方法をまだ人間が知らないだけだ」、
今の社会全体のバランスが「競争」の論理にあまりにも偏ってい
という想いを更に強くしているところです。
るのではないか、「共生」の比率を増やすべきではないか、との
素朴な疑問を持っています。
②「廃棄物」とは?
自然界には無駄なものがありません。生物が朽ちればその体は
微生物によって分解され、土に帰り、他の生物の栄養素になりま
す。ところが、人間は「廃棄物処理法」というものを作り、まず「廃
棄物」というものを定義しました。多くのバイオマス資源も廃棄
物扱いになってしまい、その下に例外的に「リサイクル法」があ
るような構造になっています。自然の姿からすれば、まず「資源
有効化法」のようなものがあり、その下に例外的に「廃棄物処理
法」があるべきだと考えますが、法が資源の有効利用を阻害して
いる側面が多々あります。
③グローバル化の功罪は?
グローバル化によって世の中は便利になりましたが、世界から
図 1 放射性物質を吸着した多孔質炭化物の SEM 写真
安い商品が入ってきたことによって地域社会の産品は競争力を失
い、多くの地場産業が衰退し、シャッター街が増えていきました。
便利さと地域社会の生活基盤の維持が大きな課題になっていま
す。
上記の 3 つの点を考察して得た結論が、「地域社会に豊富にあ
るバイオマス資源を活用して、エネルギーと食料の 30% 程度を
自給できれば、世界でどのような経済と環境の変化があっても、
その地域社会は最低限生きていくことが出来るはずだ」、という
ことでした。
そのための手段として、廃棄物扱いのバイオマスを、熱処理に
よって燃料に留まらず、油吸着材、脱臭材、土壌改良材などの高
付加価値の炭化物に変える研究開発を始めたのです。研究開発の
方向性としては、機能の数値そのものよりも費用対効果の面で社
会に受け入れられることを重視しました。
図 2 骨密度の測定結果(「PAW シリカ」は商品名)
そのうちのひとつが、除染作業で汚染水を絞った濾布から漏れ
No.6
3
特別寄稿
02
『次世代バイオ固形エネルギー:バイオコークスの
利用技術の先進的取組み』
近畿大学 バイオコークス研究所 所長/教授 井 田 民 男
近畿大学では、平成 24 年 11 月に再生可能エネルギーによる循
オコークスは、粒径:1mm 以下、初期含水率:10%、形成温度:
環型社会を構築すべく次世代・バイオエネルギーの研究教育拠点
180℃、圧力:21.7MPa、保持時間:15 分でほぼ最適なバイオコー
を構想したバイオコークス研究所を開所した。
クス化を生じていることが分かる。図 3 に冷間圧縮強度試験を示
バイオコークス研究所では、国内、海外での実証、検証事業
す。横軸は、ひずみ率εを縦軸は圧縮応力σで表している。最
に続き、独立行政法人・科学技術振興機構(JST)支援において、
高圧縮強度は、ひずみ率約 21% で 115.2MPa に達している。これ
平成 26 年度・産学共同実用化開発事業による「海外未利用バイ
は、鋳物用石炭コークスの約 5.76 倍であり、
十分な強度機能を持っ
オマス資源を活用したバイオコークスの実用化検証」(大阪ガス
ていることが分かる。この初期の冷間強度は、キュポラ等のシャ
エンジニアリング㈱)の採択を受け、事業を進めている。
フト型の溶解炉で求められる塔内で型崩れせず、塔内に吹き込ま
本事業研究開発では、未利用バイオマス原料によるバイオコー
れる空気(酸化剤)の気流を確保できることを示しており、生木
クスを市場が受け入れ可能な価格での製造を目指し、実用化検証
やペレット、ブリケット等が適合しなかった初期条件をクリアー
ならびに事業化を目指し、持続可能かつ再生可能なバイオ固形エ
していることが分かる。
ネルギーにより国産技術による我が国への基幹エネルギー安定供
本事業では、国産の持続かつ再生可能エネルギー技術を輸出し、
給だけでなく地球環境保全をしつつ、隣国諸国との裨益を叶える
海外の未利用バイオマスを有効利用しつつ、日本へ化石資源代替
ことができるビジネスモデルを構築することに重きを置いてい
可能なバイオエネルギーの逆輸入の実現を目指している。
る。特に、バイオマス資源が安価で大量に確保できるマレーシア
をフィールドとして、バイオコークス連続製造最新装置を開発・
設置し、バイオマスの収集、粉砕、乾燥並びにバイオコークス製
造までの一貫したシステムの構築を行う。バイオコークス性能の
実証には、国内の溶解炉等(キュポラあるいは高温ガス化溶融炉)
に焦点をおき、技術的な課題の抽出、妥当な経済的指標・販売可
能価格を見出す。
量的な面からは、国内消費約 60 万トン / 年の 50% 代替として
30 万トン / 年を供給することは、国内のバイオマス資源収集にお
いては、課題が多い。これらの課題を解決し、技術的、経済的に
成立するバイオコークスの事業化は、政府が唱える 3E:エネルギー
安定供給と環境保全、経済成長を実現する上でキーテクノロジー
図 1 EFB 原料の熱分解特性
となりうる可能性を秘めている。
さらに環境面からは、化石炭素資源消費削減による二酸化炭素
の削減、硫黄成分を起源とする酸性雨の抑制により地球環境保全
に貢献することができ、バイオマスを資源としていることから、
中国産が多い石炭コークス消費からのチャイナリスクを回避し、
ASEAN 諸国のエネルギー輸出に伴う振興に貢献することができ
る可能性も含んでいる。
本開発のバイオコークス製造に関する生産導入試験目標は、原
料を パーム椰子 (EFB) とした 2 トン / 日(年間 650 トン / 年)で
ある。本事業では、パーム椰子 (EFB) を主体に検討するが、バイ
オコークスは原料を選ばない技術であるので、安価で量的確保が
図 2 EFB 原料と EFB バイオコークス
できる資源を調査し、日本への安定供給を目指している。
パーム椰子 (EFB) によるバイオコークスについてその性質を述
バイオマス原料を加熱することによってヘミセルロースが熱分
重量%、水素 H:6.18 重量%、窒素 N:0.64%である。図 1 に
解されて接着、当該加熱状態で加圧することでリグニンの熱硬化
EFB の熱分解特性を示す。EFB は、木質バイオマスの性状に似て
反応により堅固に固形化。木質チップ、木質ペレットに比べ高密
おり、吸熱・発熱特性では、約 600K で揮発成分の発熱ピークが
度・高硬度であるため、輸送コストの低減、貯蔵安定性にも優れ
生じ、次に約 700K で固定炭素成分による発熱ピークが生じてい
る。放射性物質の閉じ込め効果も確認されており、長期安定性に
ることが分かる。また、固定炭素の量は、約 17% で灰分は 3%程
も優れている。用途としては、スクラップ溶解炉やゴミ溶融炉の
度であることが分かる。標準的なバイオマスに分類される。
石炭コークス代替熱源、暖房用バイオマスボイラーの燃料として
次に、図 2 に EFB 原料と EFB バイオコークスを示す。EFB バイ
4
【用語説明】バイオコークス
べる。EFB のヒゲ部位は、18.2MJ/kg で CHN 分析より炭素 C:47.3
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
期待される。
特別寄稿
03
『微細藻類を用いたバイオ燃料生産の試み』
石巻専修大学 理工学部 教授 佐々木 洋
クリオネを見たことがありますか?氷の海の妖精と呼ばれ、そ
の可憐な容姿のゆえに最も愛される海洋動物の一つです。分類学
的には巻貝の仲間ですが、大変飢餓に強く、餌の少ない冬の氷の
下で、また冷蔵庫の中でも 1 年以上も生きることがあります。そ
の秘密は体内に蓄積する中性脂質(トリグリセリド TG やジアシ
ルグリセリルエーテル DAGE)のおかげであるらしいことが最近
分かってきました。クリオネの餌は同じ巻貝のミジンウキマイマ
イですが、これは微細藻類を食べています。そして微細藻類に含
まれる主な中性脂質も TG です。つまり微細藻類が作り上げた脂
質に依存してクリオネは愛らしさを長く保っていることになりま
す。これらの脂質は、ヒトにとっても重要な栄養源ですが取りす
ぎるとメタボになります。一方では、この TG を化学的に変換さ
せると(メチルエステル化)
、脂肪酸メチルエステルとなり、こ
れがバイオディーゼル燃料 BDF です。
微細藻とは海水産や淡水産の単細胞の光合成生物です。2 分裂
増殖するので陸上の高等植物よりも圧倒的に速く増える上、種類
によっては多様な脂質成分を合成します。また、食糧生産におい
て陸上植物と競合しないことが大きな利点です。多くの微細藻の
中から私が選択した種類は真正眼点藻類のナンノクロロプシスで
す。大きさが 0.005mm ほどの小さな細胞のため肉眼では見えま
せんが、比較的脂質が豊富で、成長も速く、低温に強いなど環境
への適応性が高い特徴があります。私の研究のねらいは、効率的
なナンノクロロプシスの大量培養法を確立して、それから BDF
を生産することですが、そのためには様々な要素技術を集積する
必要があります。
ナンノクロロプシスを増やすことが不可欠なので、はじめにそ
の増殖特性を把握するための室内小容量(<250mL)培養実験に
取り組みました。将来は屋外で培養することもありますので、ど
のくらいナンノクロロプシスが寒さや暑さに強いのかを知る必要
がありました。選択されたナンノクロロプシス属の中から数種
を選びその増殖能の温度依存性を比較した結果、種間差はあり
ますが好適水温帯はおおむね 15-25℃でした。つまり冬の低温期
(<10℃)、夏の高温期(>30℃)は培養に適さないことになります。
そこで試みられた最初の要素技術が簡単なバイオテクノロジーの
利用です。低温や高温でも死滅しない株を作成するために突然変
異を誘導して耐性株を作りました。その結果、高い増殖能は持ち
ませんが、我慢強い株の作成に成功しました。
次の要素技術は藻類の培養に使用する培地を、食品工場廃液を
再生処理して作る試みです。一般に培地には純品の市販薬品を混
合した人工培地を用いますが、それらは高価です。そこで地元の
食品工場に入荷された魚類の一次洗浄水を廃液として使用するこ
とにしました。廃液に小さなバブルを一定期間通気させることに
よって微生物活動を活性化させ、有機物を無機栄養塩類に再生さ
せます。処理水をろ過後、培地としての適性試験を試みた結果、
人工培地と同等の増殖促進効果が確認されました。
年間を通した安定的大量培養法を確立するためには室内実験の
ような小容量(<250mL)培養では足りません。さらに培養の容
量を増やす必要があります。そこで約 35L 容量で透明な塩ビ製の
円柱型の培養装置を作りました(図 1)
。これを用いて培養試験
を継続させた結果、変動はあるものの年間を通して生産を維持す
ることができました。残る課題は、季節ごとにナンノクロロプシ
スの野生株、低温耐性株および高温耐性株をうまく組み合わせる
ことでしょう。
培養により得られた微細藻生産物はペースト状に濃縮され脂質
の抽出に使われますが、最後の課題が私の苦手なエンジニアリン
グです。従来の抽出法として有機溶媒抽出法や亜臨界(超臨界)
抽出法などがありますが、私はマイクロ波 MW 照射による抽出法
を採用しました。これはすでに先行研究例がありましたが、微細
藻を用いた実証例が少なかったので、効率的な方法を探る必要が
ありました。苦労の末、プロトタイプの MW 照射装置を組み立
てて、微細藻濃縮試料に有機溶媒と触媒を混合した溶液を細管に
流して反応させました。その結果、
粗 BDF の抽出に成功しました。
まだ抽出液中には夾雑物が含まれますので、これを除去するため
の方法の改良は必要ですが、比較的簡便な操作で BDF の生成が
可能であることが確認されたことになります。実用化への大切な
ステップであると考えています。
クリオネを愛する海洋生物学者の私にとって BDF 生産技術の
開発は未知の領域に踏み込んだ感もあります。しかし、クリオネ
の長生きを支える脂質成分とほぼ同じものが、今後のエネルギー
供給源としてヒトの長生きを支えることになるならば、同じこと
かもしれません。
* TG(トリグリセリド)
1 分子のグリセロール(グリセリン)に 3 分子の脂肪酸がエス
テル結合したもので、単純脂質に属する中性脂肪の 1 つです。ト
リアシルグリセロール(TAG)とも呼ばれます。
* DAGE(ジアシルグリセリルエーテル)
1つのアルキル基と2つのアシル基を有する中性脂質です。深
海サメ、アワビ、イカなど、また、人体でも母乳や骨髄に多く存
在する事が分かっています。
図 1. コンテナ実験棟に設置された約 35L 容量の培養装置(フォトバイオリ
アクター)。容器内で培養されているのは微細藻のナンノクロロプシス。
No.6
5
特別寄稿
04
『生ゴミを回そう!みんなができる、
エネルギー生産と食料生産』
東北大学大学院 農学研究科 准教授 多 田 千 佳
2011 年東日本大震災。このときほど、自分の研究がいかに役
ゴミをメタン発酵タンクに持ってくると灯りになる!」とアピー
立っていないかを思い知らされ、悔しい思いをしたことはない。
ルしたが、実際に、自主的にゴミを持ってきてくれた人は、1年
3
当研究センターでは、すでに、50m 規模のメタン発酵装置が
間を通して2、3人だった。あとは、こちらで環境ツアーとして、
動いていたが、震災時は何も役立たなかった。それは、電力停止
団体旅行者に対して 30 分ほどの説明会を行って、翌朝に皆さん
によって施設そのものが動かないということもあった。ガスを効
に体験して頂くコースを設定しなくては、人々は、食べ残しゴミ
率よく生産することのみを研究しており、そのガスをどのように
をタンクに入れる行為をしてくれなかったのである。
利用するか?まで、研究が展開していない事もあった。大規模の
事前アンケート調査では、こういう試みについて 84% の人が
メタン発酵システムは生活範囲から遠く離れた場所にあった。 賛成をし、歩いて 10 分以内の範囲までであれば、食べ残しゴミ
震災時にはガソリンがなく、車を移動手段に使えなかったこと
を持って行く!が 78% であった。しかし、
「思う」と「行う」の
から、行動可能な範囲はずいぶん小さくなってしまった。私は
2200 ha のフィールドセンター内に住んでおり、日々の仕事をし
間には、大きな壁があったのである。
ガス灯の頃の研究では、結局、ゴミは、データを取る都合上
ている建物からフィールドセンターの門に出るまでだけで 2km。
もあったが、研究員に集めてもらい投入していた。何か、もっ
何か情報を得るために、町に出て行くためには、さらに 3km ほ
と、生ゴミを持っていきたい!と思ってもらえる仕組みはないの
ど歩く必要があった。センターに閉じこもった状態で、震災直後
か??悩んだ。
の数日間を過ごした。避難していたログハウスでは、行動学の研
あるとき、両親が鳴子温泉にガス灯を見にきた。「ガス灯は夜
究者が、蜂の場合には、情報を得るために出て行く蜂は老齢の蜂
しか見えない。お茶が飲めたりするといいんじゃない」と母に言
であり、情報を得る事が非常にリスキーで、且つ、重要な生存戦
われた。その後、同じ意見を元研究所恩師からも言われ、カフェ
略であると教わり、それを実感した。何かあったときに、頼りに
をつくってみたいなと思うようになった。
なるのは人力だけだと強く感じた。
メタン発酵は、原料のバイオマスが、廃棄物系有機物を利用す
環境省のプロジェクトで行ってきたドラム缶を利用して作成し
た超小型メタン発酵システムは、良好にバイオガスを生産し、90
ることが多い。バイオマス資源の欠点に、その資源密度が薄く広
万円と低価格で、温泉地域であれば、分散して 69 台導入しても、
まり、収集のための労力が必要であるという課題があった。
従来型の 50 m3 メタン発酵システムを1台導入するより、ゴミ処
しかし、別の見方をすれば、すべての人が持っている資源でも
理コストを半減できることも明らかになった。
ある。この小さな資源を、もっと有効に、そして自分たちのため
その後、文科省の震災復興プロジェクトでは、環境省プロジェ
に利用できるようにしたい!そういう思いがより強くなった。歩
クトで、十分に検討できなかったことを実証することを目指した。
ける範囲に一つずつ。自分たちの資源を自分たちで活用する。そ
1 つ目は、42℃程度の源泉の温泉地にも導入できるようにする
ういうシステムにメタン発酵をしたかった。
当初、震災直前に内定が決まっていた環境省のプロジェクトで
ことであった。鳴子温泉の源泉は非常に高温で、蒸気で自噴して
おり、80℃近くのお湯を得る事ができた。しかし、日本全国の温
は、単純に、生ゴミをバイオガスにすることを体験してもらいた
泉の大半は 42℃程度のお湯が湧き出ており、
より多くの温泉地に、
い!そして、安いものを作って、みんなに使って頂きたいという
本システムを導入するには 42℃程度の温泉熱を活用する実験が
思いで、プロジェクトを採択していただいた。しかし、震災の後、
必要であった。
プロジェクトを採択した時以上に、切迫した思いで、なんとして
も、これを皆さんの生活の中に導入しなくては!!という思いに
2 つ目は、少しスケールアップをして、もう少しバイオガス発
生量を多くしたいということ。
駆られた。その当時、ガスの利用方法として採用したガス灯は、
元々電気がないと着火できないタイプであった。しかし、ガス灯
会社の担当者に、しつこく、電話でお願いし、特別に、ガス灯の
窓を直接開いて、手動で、火を使えば着火できるようにも改造し
てもらった。メタン発酵装置ができ、しばらくガスが出ず、研究
員と1ヶ月ほど思い悩みながら、考えられることは全部改善した。
それでもガスが出てこなくて、メタン発酵の研究を開始した頃の
恩師に電話した。「もう少し待てば出てくるでしょう。」と言われ、
少しホッとした。その翌日からガスが出はじめ、大喜びした。初
めてバイオガスで点灯したガス灯の優しげな灯りは、今でもはっ
きりと思い浮かぶ。
ところが、鳴子温泉に宿泊するお客さんに、「自分の食べ残し
6
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
小型メタン発酵システム(鳴子温泉ゆめぐり駐車場)
特別寄稿 04
3 つ目は、生ゴミを地域の人に持ってきてもらう参加型を、今
度こそ実現する!こと。
4 つ目は、消化液(生ゴミ分解後の液体)を使って野菜を育て
食べるところまで実現する!ということであった。
消化液は、一日に 50 L 排出される。それらを全て利用するた
めには、プチトマトの鉢であれば 333 株が必要になる。現在は、
この消化液を無料でご提供している。昨年では、ペットボトルで
460 本をご提供、その他、自分でポリタンク容器などを持って、
1 つ目は、鳴子温泉の足湯のかけ流した後の廃湯を活用する事
月に2度取りにくるお客様もいる。リピーターの中には、農家の
で、より低い温度の温泉熱でもタンク内を 35℃に温め、中温メ
方もいらっしゃる。ほうれん草、なす、ピーマン、ネギ、インゲ
タン発酵が良好にできるか検討した。タンクの構造もドラム缶型
ン豆などに利用して頂いたし、青果物も持ってきて下さった。家
から箱形に変更し、生ゴミを多く入れられるように工夫した。高
庭園芸や芝生への散布も行われた。いずれも、実のなりが長く続
温メタン発酵に比べ、中温メタン発酵システムでは、分解効率が
く、花のつきがいい等の好評を得た。
低い事が知られている。1年間の微生物の馴養によって、現在は、
投入生ゴミの 85% がバイオガス化するまでの高効率化を達成し
消化液のネーミングが悪いという意見を大学生からもらった。
そこで、ネーミングを公募した。35 件の案が集まった。その中
た。HRT(水理学的滞留時間)15 日で行っているが、今後は処理
の3つに、バイオエスプレッソ、メタン菌のチカラ、循(MEGURU)
時間をもう少し短くできるように、検討する予定である。
があった。先日の国連防災会議のシンポジウムの際に、3 つから
2 つ目のスケールアップにより、実際に、バイオガスが毎日
1300L 生産できるまでになった。これは 26 MJ/ 日であり、都市
3
一つを観客席の拍手で選んだところ、循(MEGURU)となった。
これは、野菜が生ゴミになってエネルギーや液肥となり、そして
ガスであれば、約 0.6m にあたる。この量であれば、100 人分の
また、野菜に戻ってくるといった、様々な運命をめぐってきたバ
温かいお茶をご提供できるエネルギーになる。
イオマス資源の循環をよく表したネーミングだと思う。今後、こ
3 つ目は、カフェをオープンしたことで、自然と地域住民の方々
が生ゴミを歩いて持ってきて、タンクに投入することに参加して
の循(MEGURU)で、消化液の液肥利用を促進させたいと考えて
いる。
くださるようになった。お金の代わりに「生ゴミがお茶に!」と
MEGURU には循環の「循」の字があてられているが、
「恵る」
いうキャッチフレーズである。自分の生ゴミからできたエネル
でもあるなと思っている。実際に、野菜は人々の食べ物になり、
ギーを利用してお茶が飲めると、ゴミを出す行為が直接、自分に
そして、バイオガスはお茶を沸かすエネルギーになって、人々に
返ってくる仕組みが、ゴミを持ってくる最初の動機づけに大きく
温かい飲み物を提供できる。カフェでは、人はその野菜やお茶を
働いた。カフェオープン前に視察が入り、初めて紅茶をご提供し
飲食してホッとしたひとときを味わっている。恵みをいただいて
た。その際の、視察者の一様の驚きと喜びよう、そして、感心の
いるのである。
仕方がガス灯のときと全く異なっていたのである。これは、私自
身の大きな発見となった。
今回、小型メタン発酵システムを研究し始めた時は、震災直後
で、なんとかエネルギー供給を!という思いだけであったが、そ
4 つ目の消化液についてである。こちらは、プチトマトの栽培
れから数年が経ち、カフェに訪れる人々との交流を通して、小型
に利用してみた。簡単な実験であるが、通常の堆肥を施用したも
メタン発酵システムは、人々の暮らしに幸せをもたらすシステム
の。全く堆肥を使わずに、消化液を毎日供したものと比較した。
ではないかと思うようになってきた。このしくみは、人のアクショ
その結果、消化液のみを毎日供ししたプチトマトも、堆肥で育て
ンによって成り立つものである。ゴミを出すアクションによって、
たプチトマトとほぼ同様に育ち、実際に、食べて頂く事が可能で
次にカフェに来る人のエネルギーや野菜を育てる液肥をつくる素
あった。もちろん、味も美味であった。よって、目標としていた
を提供していることになる。そして、これは未来へのアクション
液肥利用と食物生産、そして、実際に食べるまでの資源循環が実
へとつながり、次世代を幸せにすることに参加できることになる。
現した。
技術はなんのためにあるのか?それは人を幸せにするためにある
と思う。小型メタン発酵システムは人を幸せにし、地球を幸せに
できるシステムだと考える。今後もこのシステムが人と地球のた
めに貢献できるよう、私もがんばろうと思う。
小型メタン発酵システムからつくられた消化液と
消化液を毎日供したプチトマト
ene・café METHANE(鳴子温泉ゆめぐり駐車場)
No.6
7
特別寄稿
05
『暮らしの中に直流給電』
東北大学大学院 環境科学研究科 教授 田 路 和 幸
エネルギーは人類文明史の在り方を根本的に規定してきた。火
意の周波数の交流に変換する機能の回路なり機器を言います。よ
の利用から始まって、化石燃料の利用そして原子力の利用にいた
り正しく言えば、インバータ回路は、交流を直流に変換するコン
るまで、人類のエネルギーの利用と文明史の転換はきわめて密接
バータ(正変換。ほとんど整流回路)、直流を蓄電するコンデンサ、
にかかわっている。しかも、エネルギー利用が社会システムの根
その直流を任意の交流に変換するインバータ(逆変換)、そして、
幹を形成し、文明の展開に大きくかかわっていることを人々が実
それらを制御するコントローラから成り立っています。」
感するのは、危機の時代・文明の転換期である。
この説明のように、省エネルギー家電は、インバータ回路を持っ
今、日本人が立っている歴史的転換期は、まさにエネルギー分
ている。すなわち、機器の中で交流を直流化しているわけである。
野における技術革新をいかにスムーズに社会システムの変革と文
さて、図 1 のスマートハウスを見てみると太陽光発電、蓄電池、
明の転換につなげていくかが問われている時代である。その契機
EV 車、燃料電池自動車、パソコン、LED 照明、これらは全て直
が 3.11 東日本大震災と福島原子力発電所の事故によって作られ
流で稼働している。そして、モータの入っている冷蔵庫、エアコ
た。すなわち、2011 年の 3.11 の東日本大震災によって、東北の
ンなどはインバータで制御されている。最近では DC モータを利
地域社会は大きな変容をこうむった。それだけではなく、福島原
用した掃除機も販売されるようになっている。このように我々の
子力発電所の事故でエネルギーと文明の在り方に根本的な問いか
暮らしは、直流化した方が合理的であると言う結論が導かれる。
けがはじまった。そうした変化の中で、21 世紀の世界をリード
すなわち、電力会社から送られてくる電力が直流に変わるのが最
する新たなエネルギー文明社会を構築することを迫られている。
も理想的である。直流というと直ぐに安全性が問われるが、安全
その解決策の一つが暮らしの中に直流給電を導入することである
性を担保する技術は既に完成していると思える。
と考える。
現在、再生可能エネルギーをベースとする社会を目指す議論が
東日本大震災後の原発停止は、日本のエネルギーのあり方を考
各方面でなされているが、キーテクノロジーは、直流給電である
える良い機会になった。日本は、エネルギーを自給できない先進
と考える。すなわち、直流電力を供給する太陽光発電を例に取る
国として発展してきた。その歴史を振り返るとそれをさせたのは、
と、直流―交流、交流―直流の変換を何度も行いながら利用して
世界をリードする省エネルギー技術であったと考える。特に電気
いるのが現状である。その場合、直流―交流変換の度に、10%以
の省エネ技術としてインバータ技術が様々な家電製品に取り入れ
上の変換ロスが生じ、電力が熱として消失している。これを無く
られた。どの家電製品を見てもインバータという文字が家電製品
せば、生活スタイルを変えることなく省エネルギー、低炭素化が
についていた時代があったように思う。現在では、省エネタイプ
実現する。この事実を社会が知り、これからの低炭素型かつ省エ
の家電製品は、必ずインバータで制御されている。ところで、イ
ネルギー社会の実現に向けて直流給電が社会に浸透することを願
ンバータとは何か。調べると、以下のように書かれている。
う。
「インバータとは、逆変換器の意味で、商用周波数の交流を任
家庭では、太陽電池と蓄電池を組み合わせた直流給電システムが普及す
る。まずは LED 照明などの直流で駆動する機器とつながり、その後、エ
アコンや洗濯機など電力容量の大きな機器への供給も可能となるだろう。
将来的には、フィットネス機器などを使ってゲーム感覚で発電すること
を楽しんだり、電気自動車の登場によって家庭と電気自動車との間で電
力を融通し合う時代が来るかもしれない。
図 1 スマートハウス
8
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
特別寄稿
06
『直流配電におけるアーク放電抑止技術とその応用』
石巻専修大学 理工学部 特命教授 若 月 昇
1. まえがき
電力は暮らしの中で、人間生活や社会活動の根源を担う。これ
までは、地域の電力会社が提供する交流電力(商用電力)をその
まま利用していた。最近、直流に変換して利用する機器が増えて
いる。太陽光発電や風力発電は直流発電である。電力を蓄積でき
る蓄電池は、直流電力を扱う。しかし、直流給電ではアーク放電
対策が難しい。対策である過渡電流スイッチ回路の動作原理と応
用を述べる。
2. 交流電力と直流電力
磁石や摩擦電気の起源は紀元前数百年にさかのぼる。しかし、
電気理論に関する大発明は明治維新前後の 100 年間に集中する。
地球の一人当たりの生産高の急激な時代の変換点に対応する(図
1)。
図 2 直流給電のむずかしさはアーク放電対策
ク放電が持続すると、電気火災や電源破損の原因となる。
4. アーク放電の点弧を抑止する過渡電流スイッチ回路
アーク放電は 15V 程度の低電圧でも、大電流で持続する。交流
であれば、電流、電圧の零点で放電は消滅しやすい。直流では、
空間距離が十分に拡大するまで持続する。電流遮断時に、アーク
放電に至らないような条件で接点を開離する回路を図 3(a)に示
した。開閉接点に並列にダイオードとコンデンサを挿入した回路
であり、接点 SE 開離時には接点電流 Ic はゼロになり、接点電圧
Vc もゼロになる回路である。図 3(b)にスイッチで 300V,33A
を遮断した時の負荷電流と接点電圧の波形を示した。アークフ
リーで電流を遮断している。本技術は、スイッチ、リレー、バイ
メタル、ヒューズなどにも適用できる。
図 1 世界の豊かさ(1 人当たりの GDP)」の増加と電磁気学の歴史
日本の文明開化がそれに遅れなかったことは僥倖であった。電
力機器への給電が、交流から直流に変わろうとしている。電力の
有効活用に遅れてはならない。
省電力;電力機器の動作を環境や要求に従い制御したい。状況
はコンピュータが検出し、最適な電力を推定し、機器に給電した
い。直流電力をパルス幅制御(PWM)するインバータ技術が、モー
(a)過渡電流スイッチ回路の原理図
タから照明まで多用される。
発電;コイルを外力で回転して発電する原子力・火力・水力や
風力発電の原理は同じである。回転で発生する電力は周期的に変
化する。電力会社は変化を精密に制御するが、地域の風力発電は、
変化を平坦化した直流発電である。太陽光発電は、光量でゆるや
かに変化する直流発電である。
蓄電;物質の化学反応を利用する電池は、充放電が直流である。
(b)スイッチでのアークフリー電流遮断特性
系統電力回線の停電時や自動車内では電力は電池に頼る。
図 3 過渡電流スイッチ回路の原理図
3. 直流給電ではアーク放電対策が必要
直流給電では、金属電極の接触で電流のオン・オフを制御する
5. むすび
スイッチやブレーカなどの機構デバイスが多用される。電流遮断
暮らしの中に直流給電はますます普及するだろう。その時、電
時には、図2に示したように電極表面に電流・電圧が集中して金
源や配線や機器の安全を確保しつつ、小形化・軽量化が求められ
属が溶融しアーク放電が発生する。発生後は、機械的に間隙が十
る。障害となるのは直流アーク放電であるが、過渡電流スイッチ
分拡大するまで持続する。落雷もアーク放電である。接点間アー
回路はその解決策の 1 つとなれるだろう。
No.6
9
特別寄稿
07
直流電力合成供給装置「エコミノール ®」
シオン電機株式会社
代表取締役社長 村 野 實
身近な自然エネルギー利用の発電は、長期的にみて、電力生産
とができる。水力や風力、燃料電池、小型発電機など様々な種類
コストの削減と環境負荷軽減に最良の方法である。最近は、固定
の電源に対応できる「オリジナル・エコミノール」と、太陽光発
価格買取制度の効果により、特に売電目的の太陽光発電設備が大
電に特化することで、太陽光発電の利用効率を最大とし、また、
幅に増加している。しかし、それに伴い、いくつかの問題も浮き
機器コストを大幅に削減しうる「シンプル・エコミノール」
(特
彫りになりつつある。
許取得済)である。このシンプル・エコミノールについては、さ
発電量が多くなり、売電が増加すると、その地域の幹線の電圧
らに「P 型」と「S 型」を開発中である(特許申請中)
。エコミノー
が上昇してしまうこと、幹線電圧が上昇すると、発電に使用する
ルの技術は、複数の電源や負荷を接続する「直流型マイクログリッ
機器の働きにより売電に制限がかかり、発電した電力が売電でき
ドネットワーク」として特許を取得している。
ず無駄になってしまうこと、さらに、災害などによって障害が発
エコミノールによる実証実験はすでに始まっており、LED 照明
生し、復旧作業のために電源を切り離す必要がある場合でも、売
やエアコンなどでも、電気代削減と環境負荷の軽減効果が証明さ
電設備が多いと、電源を切り離すのが困難になる場合があること、
れつつある。一般の事業所では、その電力消費の大部分は、空調
電源の周波数安定性にも悪影響を及ぼす可能性があること、送電
と照明によるものであり、直流化とエコミノールの利用により、
線の容量による制限など、様々な問題があり、実際、大手電力会
さらに大きな効果を期待できる。事業所等において、電力消費の
社が、影響の大きいメガソーラーによる発電電力の受け入れを拒
大きくなる時間帯は、人が活動する日中であり、太陽光発電によ
否するなどの事態も発生している。また、固定価格買取制度は、
り電力が得られる時間帯と一致する。このことから、太陽光発電
売電が増えると、賦課金が増え、景気に対するブレーキにもなり
利用のエコミノールは、事業所等に適したエネルギー供給法であ
かねない。
るといえる。図に、東北大学大学院環境科学研究科エコラボにて
このような背景の中、複数の自然エネルギーを効率よく利用す
行った、エコミノール+直流化改造エアコンによる実証実験のグ
る技術として、
「エコミノール ®」
(直流電力合成供給装置)が誕
ラフを示す。1日 24 時間電力を使用する環境では、太陽光発電
生した。エコミノールは、売電を行わないので、逆潮流に伴う多
によって賄われる電力は 37%程度にとどまるが(グラフ左)、電
くの問題を回避でき、また、固定額買取制度で問題になっている
力消費を人の活動時間(この事例では 8:30 ∼ 17:30)とするなら、
ような賦課金の問題も発生せず、より多くの家庭・事業所などへ
約 78%もの電力を太陽光発電により賄うことができる(グラフ
の普及が期待される。
右)。ここに示されたデータはひとつの実験結果であり、実際の
エコミノールは、複数の自然エネルギーおよび商用電源を、優
先順位をつけて利用することができる直流電力供給技術である。
以下に、エコミノールの特徴を示す。
環境、日照条件などによって効果は異なるが、エコミノールは、
発電源と電力消費を効率よく結ぶ架け橋となるものであり、すで
に到来しつつある直流化社会の先駆けとなるものである。
1. 簡単な構成で、複数のエネルギーを合成し、コストの安い順
に利用できるため、電気料金を最大限減らす事が出来る。
2. 自然エネルギー由来の変動や不足を、商用電力から補うこと
で、安定した電力を利用することができる。
3. 自分の畑で採れた食用野菜を自家消費する分には消費税が掛
からないように、電気も地産地消する分には消費税の負担が
無い。
4. 逆潮流(売電)しないので、逆潮流に伴う諸問題(幹線電圧
の上昇、周波数安定性への悪影響など)を回避できる。
5. 太陽光発電など身近に利用できるエネルギーを利用すること
で、電源の分散化に貢献する。
このように、エコミノールは、様々な種類の電気を、コストの
安い順に合成して利用できるので、経済的であり、しかも安定し
て利用することができ、環境負荷の削減効果が期待できる。また、
逆潮流しないので、売電に伴う種々の問題も発生しない。また、
電源分散化は、自然災害における電源喪失の被害を小さくする効
果も期待でき、さらに、地方のエネルギー産業およびエネルギー
需要に活気をもたらし、地方再生の一助となる。
エコミノールは、その構成により、大きく2種類に分類するこ
10
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
平成 24 年度ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金に係
る補助事業として採択され、北海道工業試験場の協力により開発した試作機
特別寄稿
08
『小型 EV による直流分散電力ネットワークの
技術開発』
株式会社デンソー 技術開発センター
マイクログリッド開発室 室長
藤 田 充
1. デンソーとマイクログリッド
3. システム構成
デンソーでは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車
(1)全体システム構成
(PHV)が普及した時代に向け、車・家・地域全体でエネルギー
図 2 にシステム構成を示
を効率的にマネジメントするためのマイクログリッドシステムを
す。 シ ス テ ム は DC48V の
提案し、低炭素社会の実現に貢献することを目指している。ここ
電池、小型 EV を分散配置し、
をもつ小規模な電力ネットワークのことで、情報通信技術(ICT)
各々は DC バス電圧を所定
を利用して、ネットワーク全体を管理・運転できることが特徴で
の範囲内に維持するように
ある。
自 律 制 御 す る。 小 型 EV に
2.小型 EV による直流分散電力ネットワーク
は“移動する蓄電池”とし
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の 小 型 EV が 考 え ら れ
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化や移動手段の多様化
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図 2 システム構成
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交流変換にともなう損失を極力抑える。太陽光発電、蓄電池、小
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型 EV(充電時)の他、LED 照明やパソコン・携帯電話など情報
機器など直流機器である。直流のまま利用することにより直流−
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る。こうしたモビリティ
は、交通の省エネルギー
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従来の自動車よりコン
る 1 人∼ 2 人乗り程度
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て充放電できる機能を持たせている。電力を消費する負荷は、小
将来のあるべきモビ
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の手軽な移動の足とな
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バス上に、太陽光発電、蓄
で、マイクログリッドとは、一定地域内で分散型電源と消費施設
パクトで、地域や構内
1/23
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ढ़‫ش‬३ख़॔জথॢ
‫ط‬ग़ॿঐॿ਑౪
図 1 モビリティ×エネルギーによる
街づくりのイメージ
の点で需要が期待でき
型 EV での各エネルギー情報は、インターネットを介してクラウ
ドのサーバで管理され、カーシェアや全体システムのエネルギー
マネジメント制御に利用する。なお、図中に示すとおりこのシス
テムでは系統電力との接続も可能な構成とするが、必ずしも必須
ではなく、オフグリッド(系統電力網と接続しない電力システム)
での利用が可能なように設計している。
(2)小型 EV- 充放電器間の制御
る。一方で、低炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギー
小型 EV を“移動する蓄電
や電力利用の効率化と一体のシステムが求められる。そこでデン
池”として利用するために
ソーでは、図 1 に示すモビリティ×エネルギーによる街づくり
は、 充 放 電 器 は DC バ ス の
のイメージに基づいて、小型 EV による直流分散電力ネットワー
状態を監視するのと並行し
クの開発を行っている。
て、小型 EV と通信し、小型
地域内での中心市街地と郊外の主要拠点間の移動は、バスや電
2/23
39
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EV の蓄電池の電圧や充電状
৵஑(9
車といった公共交通機関を利用する。公共交通機関のステーショ
態(SOC: State of Charge)
ンから目的地までは小型 EV をカーシェアリングで利用する。小
などを把握しながら充電ま
型 EV は、照明や携帯電話など小電力機器への給電機器としても
たは放電の制御コマンドを
活用できるため、平時のみならず非常時の活用が可能となる。提
やり取り必要がある。そこで本システムでは、小型 EV- 充放電器
案する小型 EV による直流分散ネットワークは次の 6 つを特徴と
間で CAN 通信を用いてこれらの情報をやり取りするためのプロ
する。
トコルを開発した。このイメージを図 3 に示した。
①地産地消:地域で発電した電力を、その地域内や小型 EV で
消費する
②電力融通:小型 EV が電線の代わりとなってステーション間
で電力を移動させることができる
③カーシェア:バスや電車の幹線交通のステーションから先の
移動を小型 EV のカーシェアで補完する
④電気安全:IEC 60950-1 にしたがい、安全特別電圧(SELV:
Safety Extra Low Voltage)である DC60V 以下を使用する
⑤自律制御:各機器の自律制御により様々な規模のシステムに
対応できる
⑥非常用電源:平時の利用に加え、非常時の移動や給電に利用
できる
図 3 小型 EV- 充放電器間の制御
4. 応用例
今回のシステム構築を目指して実験中
の事例として、東北大学エコラボに設置
した小型 EV による直流給電システムが
ある。トヨタ車体製の COMS を直流給
電できるように改造し、エコラボ内の直
流給電実験室へ直流で電力供給し、照明
電源として利用できるようにしている。
5. まとめ
太陽光発電で得られた直流電力と小型 EV の親和性は高く、本
稿で紹介した直流分散電力ネットワークの開発を進め、実証を通
じて技術や運用方法を検証していく。
No.6
11
特別寄稿
09
『電界結合非接触電力供給技術の実用化検討』
株式会社 ExH(イークロスエイチ)
代表取締役 原 川 健 一
1 電界結合非接触電力供給技術とは
電側の電極は、同軸線路構造を採用
電力を伝送する技術には、接触式や磁界結合方式がプラグやト
ランスとして広く世の中で使用されている。マイクロ波は電力伝
送ではないが電子レンジで食物内に電気エネルギーを熱エネル
ギーに変換して伝えている。
電界方式は、電子機器のスイッチに使用されており、エネルギー
伝達用途には使用されていない。しかし、電力伝送に使用してみ
ると制約はあるものの極めて優れた特徴があることが判ってき
た。
電界結合によってエネルギー
を伝達する場合には、図 1 に示
すように、接合容量(コンデンサ)
を介して高周波電源の電流を負
荷に伝達する。この接合容量は、
二枚の金属板を対向させたもの
であるため、移動させることが
出来る。
図 1 電界結合の基本回路
さらに、アルマイトで覆われ
たアルミニウムを用いて送電で
きるため、軽量かつ資源的不安のないシステム構築が可能になる。
ただし、送電電極と受電電極の距離が離せないのが他方式に比し
て劣るものの、それが電磁波放射の低減を可能にしている。磁界
結合方式のように場を作るために大きなコイルを使用しないた
め、大きく発熱する箇所が無いことも利点である。
効率よく電力を伝送するためには、インダクタンスを接合容量
に対して直列に接続する直列共振方式または、並列共振回路を組
み込んだ並列共振回路方式がある。
している。この場合も、50W の電
2 回転系への展開
二枚の金属板を回転軸側電極とすべり軸受側のバックメタルで
接合容量を形成した時には、図 2 に示すように回転系への電力伝
送が行えた。この場合には、2MHz の高周波を 500pF の二つの接
合容量を介して 50W の電力を送電できた。回転・停止に関係な
く極めてスムーズに電力伝送が行えた。軸受には、市販の NTN
社製すべり軸受を用いている。本すべり軸受は、摺動面にテフロ
ン樹脂がコーティングされていて良好な絶縁層として機能している。
力を 2MHz の周波数で送電してい
る。受電体を滑らせても、安定して
送電できた。さらに、受電体を任意
の位置で脱着可能にしている。隙間
に指を差し入れても、電極がアルマ
イトで覆われ、かつ人の手には共振
回路が付いていないため、感電しな
い安全性を有している。
図 3 スライド系への電力伝送
4 フリーポジション系への展開
送電側の金属板をアレイ状に配置し、市松模様状に位相が 180
度反転した電圧を印加している、約 60cm 角の送電パネルを製作
した。受電体を送電パネルに上に乗せて、自由位置で受電可能に
した。受電体にも複数の受電電極を配列し、各受電電極に方向の
異なる一組のダイオードを付けることにより、受電体を移動させ
ても適切に送電電極の電圧に対応して負荷に電力が送電できた。
この場合には、2MHz の電力を 5W の受電体(二台)に送電して
いる。送電電極間の隙間を 1mm 程度にしているため、受電電極
が跨ってしまい、寄生容量が生まれるが、これも活用し、受電体
が存在しているときにのみ共振するような構造にしている。この
構造は、不要部分からの電磁波放射を低減するのにも効果を発揮
している。
5 直流送電系との関係
今後の電力分配は、単純化と伝送効率の点から直流給電が採用
されるべきである。この様なシステムにおいて、電界結合は利便
性の高いユーザーインターフェース性を有する電力ピックアップ
として活用されるべきである。最終段階で高周波化して絶縁層を
透過させるが、その後は整流して直流電力として負荷に供給され
る。このため、直流給電系の重要なパートを占める可能性がある。
絶縁層を介しての送電であり、共振回路が無いと受電が出来な
いため、共振回路の付いていない人が触っても感電しないという
点も大きな利点である。
6 今後の計画
図 2、 図 3 お よ び 図 4
に 示 す よ う に、 回 転 系、
スライド系、フリーポジ
ション系で、電力伝送が
可能なことを実証できた
が、製品化を進めるため
には、多くの問題を解決
図 4 フリーポジション系への電力伝送
してゆかなければならな
図 2 回転系への電力伝送
12
い。このためには、一刻も早く製品化を進め、皆様に提供して行
3 スライド系への展開
けるよう努力してゆきたい。
二枚の金属板を横方向に滑らせ、送電側の電極をレールにした
時には、図 3 に示すようなスライド系への電力伝送が行えた。送
力伝送だけでなく通信機能も組み込んでゆきたい。
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
特に、IoT(Internet of Things)の要素機能となるためには、電
Feature
『エネルギーマネージメントシステムの紹介』
デルタ電子株式会社
技術部 部長 兼 仙台事務所所長
窪 田 正
平成 24 年度に東北大学大学院環境科学研究科が提案されまし
1.実証システムのコンセプト
た「IT 融合 DC/AC ハイブリッド制御システムの開発・実証」に
参画して以来、弊社が協力してきました「災害時でもエネルギー
を確保でき、電力変換効率のよいエネルギーシステム」関連事業
において、弊社が太陽光発電&蓄電池を基本に構築し、実証試験
を行ってきたエネルギーシステムと管理システム(EMS)を紹介
します。
1)自給自足できる独立型エネルギーシステムム
*再生可能エネルギー、蓄電池などの利用
⇒ CO2 削減、災害時(停電)の電力確保
2)変換効率のよい電力システム
*直流給電、直流電力駆動電源システム、
⇒無駄の排除による CO2 削減
実証してきましたエネルギーシステムは田路教授が東北大震災
前から提言された「再生可能エネルギーとリチウムイオン二次電
池を組み合わせたエネルギーの地産地消」の基本概念にさらに直
3)電力の有効活用が出来る電力管理システム
*電力計測解析管理によるデマンドコントロール
⇒余剰電力の蓄電、EV などへの充電、有事の負荷制御に
流電力利用による電力効率向上、電力状況の見える化、系統との
よる電池利用の長時間化
連携機能などを追加してより実用的なシステムにしています。
2.実証システムの概要
1)実証システムの設置拠点
2)各実証システムの概要
給電
(KW)
発 電
蓄電池
EMS &
見える化
直流蓄電型系
統連パワコン
DC 電源用
LED
1 環境科学本館
DC
AC
太 陽 光 60.0
58.0
〇
(専用電源システム)
〇
2 石巻鹿妻小
AC
12.0
〇
(専用電源システム)
―
9.0
〇
2台
―
項
3
設置場所
東北放送
ハウジングセンター
AC
太 陽 光 9.6
エコウィル 1.0
太 陽 光 7.8
エコウィル 1.0
4 鳴子温泉中山平
AC
太 陽 光 9.0
13.5
未
3台
―
5 石巻東保育園
AC
太 陽 光 4.0
エコウィル 1.0
4.5
〇
1台
―
AC
太 陽 光 4.0
4.5
〇
1台
―
6
石巻田代島
総合開発センター
EV 充電
急速
充電器
充電
コンセント
充電
コンセント
充電
コンセント
充電
コンセント
充電
コンセント
No.6
13
Feature
3)システム例と特徴
① IT 融合 DC/AC ハイブリッドシステム
・DC/AC 電源供給
・大容量リチウムイオン電池の利用
・DC300V 電源対応 LED 照明システムの開発
・EV 用急速充電器の導入
・一般見学公開(電力情報、設備の見える化)
②石巻東保育園
・災害時の防災拠点用システム設計(停電時の
電力確保)
・エコウィルとの電力連携
・電池の有効利用(夕方の電池電力利用)
・逆潮流防止制御
③ EMS 見える化
3.今後に向けて
2013 年以降、東北大学プロジェクトに参加しながら経験をさせて頂いたノウハウを一般のお客様へ安価で効率の良いエネルギーシ
ステムの提供をしていきたいと考えています。そのためには、①お客様が購入しやすいシステムコスト実現(機器、設置費用など)
、
②地域内ミニグリッド内での発電電力・蓄電電力の共有化、③効率の良い蓄電機能付きパワーコンディショナーなどのメーカーとして
の努力と、電力環境の規制緩和、政府指針など多くの課題がありますが、実用化に向けて関係者との協力を図りながら推進できればと
考えています。
14
Shaping the Future Technology for the Environment and Energy
第6回
研究奨励賞受賞
東北大学大学院
これまで、私は、環境やエネルギーの研究をしてきましたので、今回、NPO
法人環境エネルギー技術研究所と、まさに同分野の皆様から奨励賞をいただけ
たことをとても感謝しております。NPO 法人の目的に、環境をよくするために
は、その技術の普及が大事とあり、私もそれを感じ、今の研究スタイルになり
農学研究科
ました。技術だけでは、人を幸せにできないと感じます。技術の普及を通して
准教授 多田 千佳
地域の人と関わりながら、低炭素社会をつくることは、そこに暮らす人々が幸
せになり、さらに、そこに生きる生物が幸せになる道の一つだと考えます。こ
の美しい星が、ずっと美しい星のままであるように。微力ではありますが、今
回の賞を励みに、やれるだけ、これからもがんばりたいと思います。最後に、
これまでたくさんの方々に心あるご理解とご支援をいただいたおかげで、ここ
までやってこられました。その皆様に対してこの場をお借りして御礼申し上げ
ます。どうもありがとうございました。
第6回
奨学賞受賞
東北大学大学院
第 6 回 NPO 法人環境エネルギー技術研究所の奨学賞をいただいたことに対
し、NPO 法人環境エネルギー技術研究所の皆様および関係者の皆様に厚くお礼
申しあげます。
私は硫酸塩含有化学工業廃水の省エネルギー処理に関する研究を取り組んで
環境科学研究科
きました。嫌気性排水処理では、余剰汚泥発生量の抑制、曝気などの設備動力
胡 勇
の削減、メタンガス発生によるエネルギー回収などのメリットが見込まれるが、
嫌気性処理に寄与する微生物の増殖が一般的に遅く、比較的高濃度廃水でない
と適用できないことや廃水中に含まれる硫酸塩が嫌気雰囲気化で硫化水素とな
ることから、化学工業分野での普及の妨げとなっています。このような背景か
ら私の研究は、化学工場廃水への UASB 法の適用可能性について化学量論、物
質収支、微生物の競合などの観点から評価し、実用できる成果を上げることが
できました。これらの研究結果を通じて、嫌気性処理を硫酸塩含有化学工場廃
水へ適用することで、温室効果ガスを大幅に削減することが期待できます。
最後にこれまでご指導いただいた先生方に深甚なる感謝を申し上げます。こ
の度の受賞を励みとし、これからも頑張ります。
第6回
奨学賞受賞
仙台市 建設局 下水道事業部
南蒲生浄化センター
西坂 光
この度は第 6 回奨学賞に選出していただき、誠にありがとうございます。推
薦していただきました東北大学大学院環境科学研究科准教授 佐藤義倫先生を
始め、御指導いただいた先生方、共同研究者の皆様にこの場をお借りして改め
て御礼申し上げます。
大学院在学中は独立行政法人日本学術振興会の特別研究員として研究テーマ
「高配向ナノチューブとグラフィン結合技術を用いた超軽量高強度カーボン材
料の創製」に取り組みました。また、本大学院の環境リーダー育成プログラム
に参加し、環境問題に関して様々な専門分野、文化を持つ研究者と意見交換を
行ってきました。
修了後は仙台市職員として地方行政に広く携わりますので、大学院在学中に
身につけた深い専門性と環境問題に関する幅広い視野が必ず役立つと考えてお
ります。栄誉ある賞の名に恥じぬように今後も環境問題の解決に尽くしてまい
ります。
No.6
15
編集後記
編集委員長 高橋 英志
東日本大震災と福島第一原発事故は、自然に対する
驚異を再確認させると共に、エネルギーに対する考え
方を大きく変化させる重大な契機となりました。特に、
自然エネルギーであれば善という単純な考え方から、
創エネと共に“如何に効率よく利用するのか”という
システム全体を俯瞰した考え方が重要であるとの認識
を持つ人々が増加したと感じております。この様な意
識の変化は革新をもたらす重大な契機となりますが、
これを達成するためには、これまでの自己の研究開発
分野に対する視点や考え方を大きく変革し、様々な分
野を融合させる事が重要となります。環境とエネルギー
技術を更に発展させるべく、皆様と共に前進していけ
ればと考えております。
会員募集の
お知らせ
環境エネルギー技術研究所は革新的な環境及びエネルギー関連
技術をもとに、地球規模での低炭素社会の実現を目指します。そ
の実現のためには環境エネルギー 技術の発掘と育成及び普及・啓
発などの事業を推進いたします。
以上の目的と事業に賛同いただき、共に活動できる会員を募集
しております。
法人正(賛助)会員
この法人の目的に賛同して入会する法人
入 会 金
300,000 円
年 会 費
100,000 円
個人正(賛助)会員
この法人の目的に賛同して入会する個人
表紙イラストについて
<作者コメント>
入 会 金
30,000 円
年 会 費
10,000 円
参加申込
シモヤマ トモミ
次の URL から参加申込書をダウンロードすることができます。
URL:http://www.sftee.or.jp
私は自然が大好きです。私たち人間の営みと自然が
いつまでも共生していけたらと願い、描いています。
お問合せ
NPO 法人 環境エネルギー技術研究所
仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-20
東北大学大学院環境科学研究科内
TEL:022-795-7391 FAX:022-795-7392
E-mail:[email protected]
SFTEENews
編集・発行
No. 6
May 2015
NPO 法人環境エネルギー技術研究所
Shaping the Future Technology for the Environmental and Energy
〒 980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-20 東北大学大学院環境科学研究科内
TEL:022-795-7391 FAX:022-795-7392 URL:http://www.sftee.or.jp E-mail:[email protected]
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