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こちら - 神戸松蔭言語科学研究所
テクストにおける接続 周浦 夫美子 195–1087 神戸松蔭女子学院大学文学部 英語英米文学科 卒業論文 1999 年 1 月 8 日 提出 目次 第1章 序論 2 第2章 Halliday and Hasan の分析について 4 2.1. 接続関係を表す構造上の相当語句 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.2. 接続表現のタイプ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 2.3. 一般的な接続要素 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 2.3.1 等位の and と接続の and . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10 2.3.2 その他の接続要素:but, yet, so および then . . . . . . . . . . 12 2.4. 接続のタイプ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 第3章 接続タイプ別の実例 16 3.1. 付加的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16 3.2. 反意的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20 3.3. 因果的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23 3.4. 時間的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 第4章 結論 33 1 1 序論 この論文で扱うトピックを述べる。 言語によって事象を伝達しようとする時、話者もし くは書き手は、自分の述べ ることが 、相手によく伝わるように、各文に色々な工夫をしている。反対に聴者 もし くは読み手は、英文に限らず文を解釈するのに問題になるのは文脈である文 章なのであって、文脈から独立した文ではないということである。 文は前後の脈略もなく単独で発せられることはまれで、ある場面で適切な文脈 の中で使われるのが普通である。そこで本論では Halliday and Hasan の理論である 『文はあるまとまり (cohesion) をもったテクストの中で、その一部としてはたらく ことになる。したがって、テクスト内の流れをよくして、そこに全体としての首 尾一貫性をもたせるためには文と文のつながりがなくてはならない。』という考え を基に、テクストに関する〈結束性〉の一要素としての接続に焦点を当て、その 機能がテクスト内にどのような結束性をもたらしているのか見ていきたい。 両氏の理論を採用する理由は、文から文章までを一括する理論を提示している からである。ここで本論に入る前に Halliday and Hasan 理論の全体像を見ていき たい。 Halliday and Hasan 理論の特徴を示すキーワード は次の 3 つである。 (1) a. 言語とは 意味の体系」であるということ b. その意味は3つの意味機能をもっており重層的であること c. 統語論だけでなく音韻論、形態論、語彙論からさらに意味論、語用論まで もカバーした統合的なものであること このうち特徴のはっきりしている (1b) の3つの意味機能は次のようになる。 2 〈意味機能〉 観念構成的意味機能 対人関係的意味機能 テクスト・説話的意味機能 英文解釈に一番関係深い領域はテクスト・説話的意味機能であり、英語で Texture と呼ぶ。Texture の特徴はテクストをテクストならしめる機能である。それはテク ストに一貫性・結束性を与える働きをするものである。 〈結束性〉 (cohesion) とは、 〈テクスト性〉を作り出すための種々の手段である。 〈結束性〉には文法的結束性と語彙的結束性の2つの種類がある。 A. 文法的結束性 1. 指示 2. 代用 3. 省略 4. 接続 B. 語彙的結束性 1. 再叙 2. コロケーション この論文では、文法的結束性の接続に焦点を当てる。 3 2 Halliday and Hasan の分析について 2.1. 接続関係を表す構造上の相当語句 Halliday and Hansan の言う接続的( CONJUNCTIVE) 関係は、さまざまな構造上の 外観をとって現れる。 一例として、時間的継起の関係をとりあげてみる。この関係は、それと結びつく 他の意味的パタンに応じて、多くのさまざまな形をとって現れる。まず第1に、そ れは (1)a のように、叙述の形で表現されることがある。ここで動詞 follow は「時 間的にあとに起こる」という意味を表す。動詞を受動態にするなり、precede(よ り先に起こる)という別の動詞を使うなりすれば 、これと同じ関係を表現すること ができるが 、2つの項が逆になっていても、やはり、叙述であることに注意する。 第2に、時間的継起の関係は、小さな叙述として表現することができる。つま り、(1 )b に見るように前置詞句として表現することもできるのである。この場合 もまた、その関係は、afte r の代わりに before を用いるなら、ど ちらの方向からで も見ることができる。 第3に 、時間的継起は 、2つの叙述間の関係として表すこともできる。(1)c の ように、ある節が接続詞によって別の節に従属するものとして示されるような場 合である。ときど き、同一の語が接続詞としても、前置詞としても使われること がある。 最後に、(1)d では、独立した2つの文になっている。この場合には構造関係は、 まったく存在しないが 、2つの部分は、やはり、同じ 時間的継起という論理的関 係で連結されている。 (2) a. A snowstorm followed the battle.(The battle was followed by a snowstorm.) ( 吹雪がその戦闘のあとに起きた) 4 b. After the battle, there was a snowstorm. (その戦闘のあとに吹雪が起きた) c. After they had fought a battle, it snowed. ( 彼らが戦闘をしたあと、雪が 降った) d. They fought a battle. Afterwards, it snowed. ( 彼らは戦闘をした。そのあと 雪が降った) これらを次の例と比較してみる。 (3) a. A snowstorm preceded the battle. ( 吹雪がその戦闘の前に起きた) b. Before the battle, there had been a snowstorm. ( その戦闘の前に吹雪が起 きた) c. Before they fought a battle, it had snowed. ( 彼らが戦闘をする前に、雪が 降った) d. They fought a battle. Previously, it had snowed. ( 彼らは戦闘をした。その 前に雪が降った) (1)d と (2)d では、時間的継起の関係は、 「付加語」として機能している副詞で表 されて2番目の文頭に置かれている。この場合は、2つの出来事をつなぐ 明示的 な形式は、時間関係のみである。ところが、ほかの例では、2つの出来事は、さら に種々の構造関係によっても連結されている。ここでは、時間的継起が結束性の 担い手となっている。そして、Halliday and Hasan が接続 (CONJUNCTION) と呼ん でいるのは、まさに、この、結束機能を有する意味関係のことである。 「付加語」 は、接続語 (CONJUNCTIVE) 、接続付加語 (CONJUNCTIVE ADJUNCT) 、または 談話付加語 (DISCOURSE ADJUNCT) と呼ぶことにしている。 前述のモデルに基く構造の完全な集合を見つけるのは必ずしも可能ではない。そ の関係の下位範疇をすべて考慮に入れる場合は、特にそうである。しかし 、(1) の 5 諸例は、典型的でないわけではないので、これに代わる何らかの表現形式がつね に存在すると思われる。その表現形式によって、テクスト形成において接続とし て現れる関係がまた、さまざ まなタイプの構造によって体系的に表現されうるの である。この事実は、次の点で重要である。すなわち、たとえば (1)d では、結束 性は afterwards という接続表現によって表されているけれども、実際に結束力をも つのは、その根底にある時間的継起という意味関係であることが、この事実によっ てわかる点である。たとえ明示的に表現されていなくても、この種の関係が存在 していることを、われわれがしばしば進んで認めるのはど のようにしてかという ことが 、これによって説明される。われわれは、進んで自分でその意味関係を補 い、さらにそれによって、たとえ明示的に表現されていなくても、結束性がある と考えるのである。 英語の話し手は、同一の現象が異なった構造上の形や長さで現わされることを 認識している。また、あるタイプの現象は、あるタイプの意味関係によって相互 に結びつきがちであることに気づいている。 さらに、もう1つ考慮すべき表現形式がある。 (4) They fought a battle. After that, it snowed. (彼らは戦闘をした。そのあと、雪 が降った) ここでは、2文から成っている。だから、この2文間の連結は、結束的であり、 構造的ではない。しかし 、結束性は、this の指示語によって与えられている。after が上例において結束機能を果たしているのは、this と構造的に結びついているから にほかならない。あとの文を先行する文に関係づけているのは、まさに指示語な のである。 2.2. 接続表現のタイプ 問題の接続関係のいずれの場合も、それを表す前置詞があれば 、いつでもこの前 置詞に指示語を支配させることができます。すると、その結果生じる前置詞句は、 6 結束的「付加語」として機能するようになる。このような例を接続として扱うべ きか指示として扱うべきかは、議論の余地のある問題である。厳密に言えば 、こ れらの例は指示に属する。なぜなら、これらの例は前置詞のあとの指示語の存在 に依存しているからである。しかし 、指示語を伴わないで表現された場合は、結 束的にも働く関係を含んでいるので、これらを接続という一般的な見出しの中に 含めるほうが簡単である。その上、今日では接続副詞とされるものがいくつかあ るが、それらは、現代英語では「前置詞+指示語」から成り立ってはいないけれど も、古い時期にはこの構造から発しているものである。たとえば 、therefore(それ ゆえに )や thereby(それによって )などの語である。今日では、われわれは、こ れらに指示語が含まれているとはもはや感じない。このことから、after that のよ うな分析的な形式の場合でさえ、that だけをそれ自体が逆行照応的な要素として選 び出すのではなく、むしろ、after that という句全体のもつ結束力に反応すること がわかる。 さらに、多くの接続表現は、1つは指示語を伴い、もう1つは伴わない、2つの ほぼ同義的な形式で用いられる。これらは、前置詞としても副詞としても同一の 形式をもつ表現で、それぞれ (1)d と (3) に対応する。もっと正確に言えば( 多くは 副詞ではなく as a result(その結果として)のような前置詞句なので )単独か、あ るいは「前置詞( 普通 of )+this ・ that 」の形式の「付加語」として用いられる表 現である。たとえば 、instead(of that)((その)代わりに)、 as a result (of that) ((そ の)結果として )、in consequence(of that)((その)結果)などである。as a result と as a result of that が、2つのまったく異なったタイプの結束性を表すと提案した とすれば 、かなり不自然に思えるだろう。そこで、この両方が接続という見出し のもとに含まれると想定する。基準は 、接続的に作用する( つまり、単独で表現 された場合に結束機能を帯びる)ことができる特定の意味関係がある場合、指示 詞その他の指示語の有無にかかわらず、その関係を表す語句はすべて接続の範疇 に入ると考えられる、というものである。 したがって、一般に、接続付加語は次の3種類に分けられる。 7 • 副詞:次のものが含まれる。 1. 単純副詞(「等位接続詞」) – but(しかし ),so(だから ),then(それから ),next( 次に ) -ly で終わる複合副詞:accordingly(それゆえに ),subsequently(そ の後),actually( 実は ) there-および where-で始まる複合副詞:therefore(したがって),thereupon(そこで ), whereat( 同) 2. その他の複合副詞 – furthermore(その上、さらに),nevertheless(それにもかかわらず), anyway(とにかく),instead(その代わり),besides(その上) – 前置詞句:on the contrary(これに反して),as a result(その結果), in addition(さらに ) 3. that またはその他の指示項目を伴った前置詞表現 – 指示表現が随意的なもの:as a result of that(その結果),instead of that(その代わりに ), in addition to that(それに加えて ) – 指示表現が義務的なもの:in spite of that( それにもかかわらず ), because of that(そのために ) 2.3. 一般的な接続要素 接続の最も単純な形式は ’and’ である。厳密に言えば 、’and’ および ’or’ による2つ の基本的な論理関係は、接続的というよりは、構造的なものである。すなわち、こ の2つは言語構造の中に組み込まれており、等位構造 (COORDINATION) という特 定の構造的関係の形で実現される。等位構造は、並列タイプの構造である。‘and’ の関係は、少なくとも大人の話し手には結束的というよりも、構造的なものと感 じられる。And で始まる書きことばの英文に接すると、いささか落ち着かない感 じがするのは、このためであり、また、子供の作文で、文の連結にしきりに and が つかわれていると、その作文が真に結束性をもつまとまりを成しているとは言え 8 ないと考えられがちであるのも、このためである。 とはいうものの、and という語が 、ある文を別の文に連結するために結束的に、 しかも子供だけでなく大人にも用いられているのも、事実である。’and’ の関係は、 接続という一般的な範疇に属する意味関係の1つに含めなければならない。構造 的か結束的かを区別するものは、この and による関係が 、その基本的な論理形式 では、言語構造を通して表現されるという点である。and という語は、この構造的 な関係を示すマーカーであって、 「付加語」ではない。事実、and は構成素として の資格はまったく備えておらず、構造を合図しているにすぎない。 構造としての作用域に比べれば 、’and’ の関係の接続形式としての作用域は、い くぶん修正され 、拡大されている。接続の’and’ を、付加 (ADDITIVE) という、よ り一般的な用語で呼ぶこととしよう。等位 (COORDINATE) よりもかなり穏やかで 構造性の低いものを示唆するためである。したがって、等位関係が構造的である のにたいして、付加関係は結束的である。付加は、’and’ という論理的概念に基づ く、意味体系のテクスト形成的な部門の一般化された意味的関係である。Halliday and Hasan は、付加を、接続という見出しのもとにまとめようとしている、そうい う4つの小さな集合を成す関係の1つである。 ’and’ の関係が 、文と文との間で接続的に作用して、テクストに結束性を与える 場合—もっと正確には、1つの文を他の文と結束させてテクストを作り上げる場 合— この関係は1対の文のみに限定される。このことで、構造関係としての’and’ ( 等位)と、結束関係としての’and’( 付加)との違いがわかる。 接続関係としての’and’ の場合は、文と文との関係であり、テクストが展開する につれて一度に1文ずつつながっていく。文は 、等位構造とは異なり、並べ替え て、たとえば women and men(女と男)とか men and boys, and women and girls(成 年男子と少年)と( 成年女子と少女))のように、別の順序にしたり別の括弧づけ をしたりすることはできない。そこで、ただ1つの’ and’ の関係で一連の文章全体 を連結する可能性はまったくない。新しい文は、それぞれ独立した事実として、先 行する文に連結されるか 、されないかのいずれかである。もし連結されているな 9 ら、’and ‘( 付加関係)は新しい文を独立した事実として連結する1つの方法であ る。たとえば 、 ‘I wonder if all the things move along with us?’, thought poor puzzled Alice. And the Queen seemed to guess her thoughts, for she cried ‘Faster! Dpm’t try to talk!’ (「何もかもがあたしたちと一緒に動いていくかし ら」と、かわいそうにアリスは、当惑して思いました。すると、クイー ンはアリスの心の中を見通されたと見え、 「もっと速く!口をきいては ならぬ!」と仰せられました) 上の文は、今度は ‘and’ タイプの結束性で連結されているようだが、たとえそう だとしても、単に第2文に連結されるだけだろう。この例の3つの文は、1つの 統一体を形成しないだろう。もし形成しているのであれば 、ちょうど men, women and children のような等位接続された連続のように、最後の1対の文のほかは、す べての文の間の and を省略することができただろう。ある状況のもとでは・ ・ ・特に 構造と意味の上で緊密な対句をなしている場合は、確かに、この種の文章が作ら れることはある。ただし 、このような場合は、その文章は真に独立した文として 解釈されることはない。次の例は、文として句読点が付けられているが 、実はむ しろ、一連の等位節に似たものになっている。 ‘At the end of three yards I shall repeat them- for fear of your forgetting them. At the end of four, I shall say goodbye. And at the end of five, I shall go!’ 「3ヤード 行ったところで、おまえの道順をもう一度言う−おま えが忘れないようにな。4ヤード のところで、さらばと言う。そして、 5ヤード 進んだところで、立ち去るつもりじゃ」 2.3.1 等位の and と接続の and ‘and’ と ‘or’ による論理関係は、結束関係を結ぶ、より広範囲なテクスト関係とは 次の点で異なっている。 1. それらの関係は、構造上、等位の形式で表される。 10 2. それらの関係は、下に説明する意味で遡及的である。 3. それらの関係は、both...and(A も B も) および either...or(A か B か ) という相関 形式をもつ。 4. それらの関係は neither...nor(=both not...and not)(A でもなく B でもない) とい う相関形式とともに、nor(=and not)(... でもない) という否定をもつ。 接続の ‘and’ が用いられる典型的な文脈は、ある文から次の文で参与者が完全に (あるいは、ほとんど 完全に )入れ替わっていて、それでいて、その2文がきわめ てはっきりと、前文と後文で、それぞれ 、テクストの 1 部になっている文脈であ る。たとえば 、 He heaved the rock aside with all his strength. And there in the recesses of a deep hollow lay a glittering heap of treasure. ( 彼は渾身の力をふりし ぼってその岩を持ち上げ、わきへ寄せた。すると深い穴の中に、きら きら輝く宝物がうず高くつまれていた) 物語り風の小説では、このような入れ替わりは、対話部と説話部の境界に特徴的 に表れる。 ‘While you’re refreshing yourself,’ said the Queen, ‘I’ll just take the measurements.’ And she took a ribbon out of her pocket, marked in inches ・ ・ ・ 「そなたが一服しているひまに」とクイーンは仰せられました。 「ちょっ と地面を測っておこう」そこで、クイーンはインチの目盛りの付いた リボンをポケットから取り出されました・ ・ ・ これとは少し異なった用法で、結束的な and が、等位構造の場合にもつ構造的機 能におそらく最も近づく用法は、 「( 述べられる事柄の)連続の中でその次に 」と いう意味を表す場合である。これは、内的 (INTERNAL) 意味である。この用法で は、結束的な and が一連の疑問文をつないでいることが非常に多く、 「次に私が知 りたいのは ... 」という意味を表す。 11 また、結束的な ‘and’ は、1つの一般的な議論に寄与する一連の要点を連結する。 この機能では、‘and’ は、men, women and children に見られるような、等位接続詞 として備えている遡及的 (RETROSPECTIVE) な効果を多少持ち越しているのかも しれない。 この遡及的機能は、事実、かなり重要なものである。 (たぶん「逆行投射的」(retroj 「さかのぼって ective) のほうがこれを表すのにふさわしい語であるかもしれない。 投射する」という適切な意味を暗示するからである。)さかのぼって投射されるこ の現象は、‘and’ と ‘or’ という2つの基本的な論理関係に関してのみ生じる。Tom, Dick and Harry と平行して、Tom, Dick or Harry があるが 、この場合も ‘or’ がさか のぼって投射されて「トムかデ ィックかハリー」(Tom or Dick or Harry) という意 味になる。この現象は、語の連鎖に限られたものではなく、すべての等位構造に 共通して見られるものである。 2.3.2 その他の接続要素:but, yet, so および then and の遡及能力は、その他のいくつかの語、特に but の意味を洞察するのに役立つ。 but という語は、付加ではなく反意 (ADVERSATIVE) の関係を表す。けれども、 「反 意」の意味に加えて、but はそれ自体の中に ‘and’ という論理的な意味も含んでい る。それは、and however(そしてしかし )の一種のかばん語あるいは速記形のよ うなものである。この証拠となるのが 、but も遡及的であるという事実であるが 、 but が遡及的に投射する意味は、‘but’(しかし )ではなく、‘and ’(そして)である。 この事実によって、英語を母語としない話し手が非常によく用いる Although...,but. .. という構造が誤りであることが説明される。ある構造が従位的であると同時に等 位的 (並立的)であることはできないのである。 yet, so, then など の語は 、普通はこのようにさかのぼって投射することはない。 概して、これらの語には ‘and’ の意味成分がまったく含まれていない。その代わり、 前述のように、これらは and としばしば結びつく。 Halliday and Hasan の考える結束性を生じるさまざ まなタイプの接続関係は、等 12 位構造によって表される基本的な論理関係と同じものではない。言い換えれば 、接 続は、単に文と文との間で作用するように拡張された等位ではないのである。 つまり、その関係は、文と文との間に認められる一般化されたタイプの連結を 表している。これらの連結がどのようなものであるかは、結局は文が表す意味に よるのであって、本質的にこれには2つの種類がある。1つは経験的なもので、言 語による経験の解釈を表し 、もう 1 つは対人関係的なもので、発話の場への参与 を表す。以下、さまざ まなタイプの接続を概観し 、それぞれの典型的な例を挙げ ていく。 2.4. 接続のタイプ 接続 (CONJUNCTION) という見出しのもとにまとめようとしている諸現象を分類 するためには、さまざ まな提案をとりあげることができる。接続関係のタイプに ついて、唯一的に正しい目録など 存在しないからである。いろいろな分類が可能 であり、いずれの分類も事実の異なる側面を浮き彫りにすることだろう。 Halliday and Hasan は、4つだけの範疇からなる案を採用している。すなわち、 付加的・反意的・因果的・時間的の4つである。以下に、それぞれの例を示す。 For the whole day he climbed up the steep mountainside, almost without stooping. ( まる1日中、彼はほとんど 休まずに険しい山腹を登っていった) (5) a. And in all this time he met no one.(additive) (そして、この間ずっと行き交 う人は1人もいなかった)( 付加的) b. Yet he was hardly aware of being tired.(adversative) (けれど も、ほとんど 疲れを意識しなかった)( 反意的) c. So by night time the valley was far below him.(causal) (だから 、日暮れに は、峡谷は眼下のはるか彼方にあった) ( 因果的) d. Then, as dusk fell, he sat down to rest.(temporal) (それから、夜のとばりが 降りると、腰をおろしてやすんだ ) ( 時間的) 13 この枠組みを選ばれた理由は、それを用いれば無用の複雑さを避けてテクストを 扱うことができるから。これら4つの見出しでそれぞれ若干の下位区分を導入す るが 、非常に厳密な区分というものではない。 4つのタイプのすべてに共通する、非常に一般的な特性が1つあるが 、まずそ れをはっきりさせるのが有益と思われる。 ・外的 (EXTERNAL) ・内的 (INTERNAL) (6) a. Next he inserted the key into the lock. ( 次に、彼は錠に鍵を差し込んだ ) b. Next, he was incapable of inserting the key into the lock. (さらに、彼は錠 に鍵を差し込むことができなかった) 上の2文のいずれも、next という語があるために、ある先行文を前提としている ことがわかる。さらに、いずれの場合も、被前提文とこの文との間に時間的継起と いう関係が存在する。a も b もともに、ある意味で「時間的に次に」という関係を 表している。これから、この2つをもとに時間的 (TEMPORAL) として分類するこ とになるが 、その「次であること」は、実はこの2つの例でかなり異なっている。 ここで扱っているのは、発話行為間の関係というよりは( もっとも、特に時間 的な状況ではこの形をとることもある)むしろ、話し手のコミュニケーション上 の役割 (COMMUNICA TION ROLE ) ・ ・ ・全体の場面への参与者として話し手が自 らに割り当てる意味・ ・ ・の展開の際のそれぞれの段階の間の関係である。a と b と の違いは、実は、言語の構成の中の基本的な機能的成分に関係しているのである。 a では、結束性は、言語の経験的 (EXPERIENTIAL) 機能の観点から解釈されな ければならない。結束性は、 「内容」、つまり外界(についてのわれわれの経験)の 描写という意味での意味間の関係である。 b では、結束性は、言語の対人関係的 (INTERPERSONAL) 機能の観点から解釈 されなければならない。結束性は、場面の上に押された話し手自身の「刻印」 ・ ・ ・ つまり、話し 手の発話の役割や修辞的伝達回路の選択、話し手の態度、その判断 などの描写という意味での意味間の関係である。 14 ここで非常に重要な事実は、コミュニケーションそのものも、特別な種類の過 程であるにせよ、1つの過程であるということ、この過程の中での顕著な出来事 がテクストであるということである。2つの酷似した接続関係、つまり外的現象 間の関係として存在する関係と、コミュニケーションの場面のいわば内的な関係 とがありうるのは、まさに、このためである。最もはっきりした例は、先に例示 したように、時間的継起の関係に見られる。すなわち、時間的継起が 、言語に記 号化される過程の特質であるとともに、ことばのやりとりそのものの過程の特質 でもあることは、かなり明白である。 どんな2つの用語をもってしても、簡潔かつ平明にこの違いをぴたりと指すこ とはできないように思われる。最適なのは、意味の機能的な成分に関係のある2語 であろう( 経験的と対人関係的)Hymes の「指示的」(referential) と「社会表現的」 (socioexpressive) 、および Lyons の「認知的」(cognitive) と「社会的」(social) も参 照))。なぜなら、この区別は、実際に言語体系の機能的構成に由来するものだか らである。しかし 、これらの語を用いれば煩雑になって、絶えず解釈する努力が必 要になる。ほかに適切なものがないため、Halliday and Hasan は外的 (EXTERNAL) および内的 (INTERNAL) を用いている。 この区別は、接続を作るさまざ まな関係すべてにあてはまるという点で価値が ある。テクストを作り出す手段として接続を用いる場合、われわれに利用できる のは、言語を用いて話題にしている現象に内在する関係か、あるいは、コミュニ ケーションの過程に・ ・ ・つまり、話し手と聞き手との間の相互作用という形式に・ ・ ・ 内在する関係かのいずれか一方である。そして、どんなタイプの接続関係であっ ても、つまり、付加的、反意的、時間的、因果的のいずれであっても、これら2つ の可能性は変わらない。事実、通例われわれは、両方の種類を利用している。両 者間の境界線は、つねに明解であるわけではない。しかし 、それはちゃんと存在 しているのであって、接続の全体像の不可欠の部分になっているのである。 これ以外の下位範疇で、これからの議論のために設定するものは、それぞれ、4 タイプの関係のいずれかに特有のものなので、次の章でとりあげることにする。 15 3 接続タイプ別の実例 この章では、Halliday and Hasan の分析を基に接続タイプを 4 つに分類し 、それぞ れの接続関係をまとめたものを示し 、そして、タイプ別にいくつか例文を挙げ、自 分なりに考察していく。 3.1. 付加的 • 単純付加関係( 外的・内的) 1. 付加的: and(そして ); and also(そして・ ・ ・も), and ・ ・ ・too(同) 2. 否定的: nor(・ ・ ・でもない); and ・ ・ ・not(また・ ・ ・でもない), not ・ ・ ・either(同), neither(同) 3. 二者択一的: or(または ); or else(同) • 複合付加関係( 内的):強調 1. 付加的: further(more)(さらにその上), moreover(同), additionally(同), besides that(同), add to this(同), in addition(同), and another thing(同) 2. 二者択一的: alternatively(あるいはまた ) • 複合付加関係( 内的):脱強調 1. 後思案: incidentally(ところで ), by the way(同) • 比較関係( 内的) 1. 類似的: likewise(同様に ), similarly(同), in the same way(同), in(just)this way(同) 2. 非類似的: on the other hand(これに対して), by contrast(同), conversely(同) • 同格関係( 内的) 16 1. 解説的: that is(つまり), I mean(同), in other words(言い換えれば ), to put it another way(同) 2. 例示的: for instance(たとえば ), for example(同), thus(同) and, or および nor の3つは、すべて外的タイプか内的タイプの接続関係のど ち らでも表すことができる。事実、 「付加」の文では、この両者の間にはあまり明確 な差異がない場合がある。しかし 、and が結束項目として単独に用いられた場合 は、and then(そしてそれから ) などとは違って、しばしば「まだ言うべきことがあ る」という意味をもっているように思える。その意味は、Halliday and Hasan の用 語で言えば 、明らかに内的なものであり、いわば談話の中の継ぎ 目のようなもの である。 ‘Did you say nineteen?’‘Yes.’ ‘Would it be all right to inquire if you have a picture of her?’ ‘Just a minute.’The shoemaker went into the store and hastily returned with a snapshot that Max held up to the light. ‘She’s all right,’he said. Feld waited. ‘And is she sensible —not the flighty kind?’ ‘She is very sensible.’(‘The Magic Barrel’p15,l29) (「十九歳だって言いましたね」 「そうだよ」 「こんなこと言っていいか ど うかわからないけど 、彼女の写真、みせてくれますか?」 「ちょっと 待っておくれ」靴屋は店にはいってゆき、スナップ写真を持って急いで もどってきた。そしてマックスはそれを明りのほうにさしだした。 「い い娘さんですね」と彼は言った。フェルドは待った。 「それで、彼女は 物わかりのいい人ですか?」 「物わかりのいい子だよ」) 「付加」関係の否定形式である。 17 The shoemaker shrugged and continued to peer through the partly frosted window at the near-sighted haze of falling February snow. Neither the shifting white blur outside,nor the sudden deep remembrance of the snowy Polish village where he had wasted his youth could turn his thoughts from Max the college boy, … (‘The Magic Barrel’p13,l5) (靴屋は肩をすくめて、また窓の外をのぞきつづけた—その窓はなかば 凍っていて、降りしきる二月の雪が 、近眼の人の眼に写るもののよう に、ぼやけていた。彼はこの白く動く薄ぼけた風景を見つめ、また自 分が若い時代をむだに過ごしたポーランド の村をふと思い出して感慨 をもよおしたりしたが 、それでも彼の頭からは大学生マックスのこと がはなれないのだった、… ) ‘and’ の関係を強調した形で、 「 前の点と関連してとりあげるべき点がさらにも う 1 つある」という内的な意味でのみ用いられる。 Having settled the matter, though not entirely to his satisfaction, for he had much more to do than before, and so, for example, could no longer lie in bed mornings because he had to get up to open the store for the new assistant, a speechless, dark man with an irritating rasp as he worked, whom he would not trust with the key as he had Sobel. Furthermore,this one, though able to do a fair repair job, knew nothing of grades of leather or prices, so Feld had to make his own purchases;… (‘The Magic Barrel’p18,l15) (ことは片づいたが、彼はすっかり満足したわけではなかった。なにし ろ前よりもずっと仕事が多くなったからで、たとえば新しい手伝いの くる前に店をあけるために朝もゆっくりベッドにいられなっくなった。 この新しい助手は無口で浅黒い顔で、働きながら不愉快な歯ぎしりを する。この男にはソベルにしたようには鍵を任せておけなかった。そ 18 ればかりか、この助手は一応は修繕仕事をこなせたけれど も、皮の品 質や値段のことはまるでわからなかったから、フェルド は自分で仕入 れをせねばならなかった。) 平叙文にもちいられると、or は、 「もう 1 つ別の解釈」、 「今述べたものの代わり に、別の可能な意見、説明など 」という内的な意味をもつようになる。 He couldn’t exactly recall when the thought had occurred to him, because it was clear he had more than once considered suggesting to the boy that he go out with Miriam. But he had not dared speak ,for if Max said no, how would he face him again?Or suppose Miriam, who harped so often on independence, blew up in anger and shouted at him for his meddling? (‘The Magic Barrel’p14,l12) (彼は自分がそんな考えをいつからいだくようになったのか、はっきり は思い出せなかった、ただし一度ならず、自分があの若者にミリアム とデートしてみないかと言いたがっていたのは確かだった。しかしあ えて言い出せなかった、なぜなら、もしマックスがノーと言ったら、二 度と彼に顔を合わせられないではないか?また、いつも自立するなど と口癖にしているミリアムが 、腹をたてて、よけいなお節介はやめて などと怒鳴りでもしたらど うする?) 次の接続も内的な意味で使われた良い例だと思われる。 “That’s what I do. I’ve been writing for over twenty years and sometimes— for one reason or another—it gets so bad that I don’t feel like going on. But what I do then is relax for a short while and then change to another story. After my juices are flowing again I go back to the other and usually that starts off once more.Or sometimes I discover that it isn’t worth bothering over. After you’ve been writing so long as I you’ll learn a system to keep yourself going. It depends on your view of life. If you’re mature you’ll find 19 out how to work.” (‘The Magic Barrel’p44,l29) (「あたしはそうしてるのよ。あたし 、もう二十年も書いてるわ、そし てときどき— 理由はいろいろだけど —うまく書けなくて、全然書く気 しないときもあるわ。でもそんな場合にはあたし 、しばらく気を楽に してから別の作品にとりかかるの。そして調子が出てきたら、またも とへもど ると、たいていなんとか書き進められるわ。でもときによる と、これが書く値打ちのない作品だと気がついたりする。あたしぐら い長いこと書いていれば 、あなただって中絶しないでやれるコツを覚 えるわよ。これは人生観の違いにもなるわね。あなたも心が成熟して くると、書いてゆく方法が見つかるようになるわ」) 3.2. 反意的 • 反意関係( 本来の) (「・ ・ ・にもかかわらず」) ( 外的・内的) 1. 単純: yet(しかし ); though(同); only(同) 2. ‘and’ を含む: but(しかし ) 3. 強調: however(しかし ); nevertheless(それにもかかわらず ), despite this(同), all the same(同) • 対比関係(「・ ・ ・に反して」) ( 外的) 1. 単純: but(しかし ), and(それなのに ) 2. 強調: however(しかし ), on the other hand(これに対し て ), at the same time(同), as against that(同) • 対比関係(「・ ・ ・に対して」) ( 内的) 1. 明言: in fact(実は ), as a matter of fact(同), to tell the truth(同), actually(同), in point of fact(同) • 修正関係(「 A ではなく B 」) ( 内的) 20 1. 意味の修正: instead(そうではなくて), rather(それよりはむしろ), on the contrary(これに反して ) 2. ことば 使いの修正: at least(とにかく), rather(というよりは ), I mean(つ まり) • 却下(一般化された反意)関係(「たとえ・ ・ ・でも、それでも」) (外的・内的) 1. 却下、二者選択的: in any/either case/event(とにかく), any/either way(同)whichever ・ ・ ・(同) 2. 却下、自由選択的: anyhow(とにかく), at any rate(同), in any case(いずれ にせよ), however that may be(それはともかく) 反意関係の基本的な意味、 「予想に反して」の( But ) (As a matter of fact)「…に反して」という対比の意味の内的用法に相当するものと 見る。表す意味は、 「コミュニケーション過程の現状の成り行きから予想されるこ とに反して、実際の実態は…」というもので、タイプは明言の形である。 He did not argue; as the days went by he hoped increasingly she would change her mind. He wished the boy would telephone, because he was sure there was more to him than Miriam, with her inexperienced eye, could discern. But Max didn’t call. As a matter of fact he took a different route to school, no longer passing the shoemaker’s store, and Feld was deeply hurt. (‘The Magic Barrel’p20,l39) ( 彼はそれ以上言い争わなかった、しかし日がたつにつれて、いつか は彼女の気持ちも変るだろうという希望をよみがえらせた。あの若者 が電話してくれればいいがと願った、なにしろあの若者は、経験の浅 いミリアムにわからぬいいところがあるのだと彼は信じていたからだ。 しかしマックスは電話してこなかった。それどころか、学校へ通うに も別の道を選ぶようになり、もう靴屋の店の前を通らなくなった、そ してフェルドはすっかり落胆したのだった。) 21 (However) yet や but と違って、文頭以外の位置に生じることができる。本来の 反意関係で、 「けれども」である。(Instead) これは「 A ではなくて B で」という意 味の修正の関係である。フェルド はソベルを靴屋に戻そうと家へ訪ねて行ったの に、実際は他の人を雇ってしまっている。 After the incident with the broken last, angered by Sobel’s behavior, the shoemaker decided to let him stew for a week in the rooming house, although his own strength was taxed dangerously and the business suffered. However, after several sharp nagging warnings from both his wife and daughter, he went finally in search of Sobel, as he had once before, quite recently, when over some fancied slight—Feld had merely asked him not to give Miriam so many books to read because her eyes were strained and red—the assistant had left the place in a huff, an incident which, as usual, came to nothing for he had returned after the shoemaker had talked to him, and taken his seat at the bench.But this time, after Feld had plodded through the snow to Sobel’s house—he had thought of sending Miriam but the idea became repugnant to him—the burly landlady at the door informed him in a nasal voice that Sobel was not at home, and though Feld knew this was a nasty lie, for where had the refugee to go? still for some reason he was not completely sure of—it may have been the cold and his fatigue—he decided not to insist on seeing him. Instead he went home and hired a new helper. (‘The Magic Barrel’p17,l33) ( 靴型をぶちこわした事件の後、腹を立てた靴屋は、自分の健康に危 険なほど 負担ではあるし 、仕事の損もあるけれど も、あの男を下宿屋 で一週間ばかり苦しめておこうと決心した。しかし妻と娘に口やかま し く幾度も責めたてられて、ついにソベルをたずねに出かけた。前に も一度、それもご く最近に、彼はソベルを訪問したことがあったのだ が、そのときはちょっとした言葉がきっかけだった…娘の眼が疲れて赤 22 くなっているから、あんまり本ばかり貸さないでくれ 、とフェルドが 頼んだだけのことだった…するとこの職人はむっとして出ていってし まったのだが 、この事件は、例のごとく、靴屋が彼を説得にゆき、彼 が帰ってきて椅子にすわったので、無事におさまったのだ。しかし今 度は、フェルドが雪の中をソベルのいる家までやってくると…彼はミ リアムを使いに出そうと思ったのだが 、それは考えただけでも腹立た しかった…戸口にでた大柄なおかみさんがソベルはうちにいませんと 鼻声で答えた、そしてフェルド はそれが意地の悪い嘘だとは知ってい たけれども、 (あの亡命者がほかにどこへゆく所があるだろう?)彼自 身にもはっきりできないいくつかの理由のために…寒さと疲れのせい もあったかもしれぬ…無理に会おうという気も起こさなかった。そし て家にもど ると新しい手伝いを雇った。) but はそれ自体の中に and という論理的な意味も含んでいる。だから、and yet で 始まる文はよく見かけるが 、and but で始まる文は決して見かけないのである。 You know, there was a saying, “The blues had a baby and they call it rockn-roll.” but I say you should put, that Bluegrass has had its part in there too. (ビル・モンロー p1,l30) (「ブルースが子供を生んだ、それがロックンロールだ」という文句を 知っているだろう。ブルーグラスも一枚かんでいると言うべきだ。) 3.3. 因果的 • 因果関係、一般的(・ ・ ・なので、だから ) ( 外的および内的) 1. 単純: so, thus, therefore 2. 強調: consequently, accordingly, because of this • 因果関係、特定的 23 1. 理由: 2. (主として外的)for this reason, on account of this (内的)it follows(from this), on this basis(これを根拠にして ) 3. 結果: (主として外的)as a result(of this), in consequence(of this) (内的)arising out of this 4. 目的: (主として外的)for this purpose(この目的で ), with this in mind/view(同), with this intention(同) (内的)to this end(このために ) • 転倒した因果関係,一般的 1. 単純: for; because • 条件関係(もし・ ・ ・なら、そのときは ) ( 外的および内的) 1. 単純: then 2. 強調: in that case, that being the case, in such an event, under those circumstances 3. 一般化: under the circumstances( 現状では ) 4. 極性逆転: otherwise(もしそうなら・そうでなければ ), under the circumstances • 各個関係(・ ・ ・に関しては( 内的) 1. 直接的: in this respect/connection, with regard to this; here 2. 極性逆転: otherwise(他の状況では ), in other respects(その他の点では ); aside/apart from this(このことはさておき) 因果関係の単純な形式は、so, thus, hence, therefore, consequently, accordingly(し たがって ),as a result(of that), in consequence(of that)(その結果), because of that(その 24 ために ) のような、いくつかの表現で表される。これらはすべて、節頭の and と結 びつく。これらの項目が文中で占めるさまざ まな位置について、ここで立ち入る 余裕はないが、反意表現の場合と同様に、一般的なタイプが存在する。たとえば 、 so は、and に続かないかぎり節頭にしか現れない。 I like those old time fiddle numbers, you know. I learned them years and years ago the way they played’ em, I think they play’ em the right away… So, I try to play them note for note, how they play’ em. (ビル・モンロー p3,l10) (こういうオールド ・タイムのフィド ル・ナンバーが好きだ。ずいぶ ん昔、みんなが演奏しているとおり覚えた。あれが正しい弾き方だと 思う。だから、私は昔のとおり、1 音 1 音忠実に弾く。) 因果関係という一般的な見出しのもとで、もう 1 つ別のタイプの接続関係を取 り上げる。それは、条件タイプである。両者は、言語学的に密接な関係をもって いる。因果関係が ‘A, therefore B’(A である。だから B である) を意味するのに対し て、条件は ‘possibly A; if so, then B’(もしかしたら A であろう。もしそうなら、B である) を意味する。 「こういう状況のもとでは」という意味を表す単純な形の条 件関係の表現は then である。 “I didn’t have strength I should argue with her, so I went home. I went home but hurt me my mind. All day long and all night I felt bad. My back pained me where was missing my kidney. Also too much smoking. I tried to understand this woman but I couldn’t. Why should somebody that her two children were starving always say no to a man that he wanted to help her? What did I do to her bad? Am I maybe a murderer she should hate me so much? All that I felt in my heart was pity for her and the children, but I couldn’t convince her. Then I went back and begged her she should let me help them, and once more she told me no. 25 (‘The Magic Barrel’p88,l30) (「私は言い争うだけの力がなかったよ、それで家に帰った。家に帰っ たけれど も気持ちは傷つけられたよ。その日じゅう、そして夜もずっ と私はつらい気分だった。腎臓をとったほうの背中も痛んだ。それに 煙草も吸いすぎたしね。私はあの女を理解しようとしたけれど もでき なかった。飢えかけた二人の子供をかかえた女が 、それを助けたいと 思う者にど うしていつもノーとばかり言うんだろう?私は彼女にどん な悪いことをしたんだ?彼女があんなに嫌うのも、私を人殺しかなん かだと思ってるからか?私の心にあるものといえば 、ただ彼女とあの 子供たちにたいするかわいそうだという気持ちだけなんだ 、それなの にそれを彼女に納得させられないのか。そこで私はもど っていって彼 女になんとか私の援助を受けいれてくれと頼んだ 、すると彼女はまた もノーと言ったよ。) 因果関係は、反復されて結束性の連鎖を形成することがある。下の例は、連鎖 されることによって、二人の白熱さが良く伝わってくると思われる。 “His mother—God bless her—gave me many times a plate hot soup. Also when I came to this country, for years I ate at his table. His wife is a very fine person—Dora—you will someday meet her—” Kobotsky softly groaned. “ So why I didn’t meet her yet?” Bessie said, after a dozen years, still jealous of the first wife’s prerogatives. “You will.” “Why didn’t I ?.” “Lieb—” pleaded Kobotsky. “Because I didn’t see her myself fifteen years, ” Lieb admitted. “Why not?” she pounced. Lieb paused. “A mistake.” Kobotsky turned away. “My fault,” said Lieb. “Because you never go any place,” Bessie spat out. “Because you never go any place,” Bessie spat out. “Because you live al26 ways in the shop. Because it means nothing to you to have friends.” (‘The Magic Barrel’p169,l35) (「この人のお袋は…ほんとうによい人だったがね…なんど もわしに 熱いスープをくれたもんだ。それに、この国へ来てからも、何年もの あいだ 、おなじテーブルで食事をしたんだよ、彼の妻も、とても良い 人でな…ド ーラという名だ…いつかおまえにも会わせるけれど…」カ バッキイは低くうめいた。 「じゃあ、ど うしていままで会わせなかったの?」ベシーは言った。十 二、三年もたっているのに、まだ最初の妻の持った特権を嫉妬してい た。 「会わせるとも」 「なぜいままで会わせなかったのよ」 「リーブ 」とカ バッキイが懇願した。 「なぜって、じつはわし自身が彼女には十五年間 も会わなかったからだよ」とリーブは打明けた。 「ど うして?」彼女は責めたてた。リーブはすこし黙ってから、 「誤解 からさ」カバッキイは顔をそむけた。 「わしが悪かったのだ」とリーブは言った。 「ほんとは、あんたがどこ にも行かないからでしょ」とベシーは吐き出すように言った。 「年じゅ う店にばかりいるからでしょ。あんたには友達を持つことなんて、な んの値打ちもないせいでしょ」 3.4. 時間的 • 単純時間関係( 外的) 1. 連続的: (and)then(それから ), next(次に ), afterward(あとで ), after that(そ のあとで ), subsequently(あとで ) 2. 同時的: (just)then(ちょうど そのとき), at the same time(同時に ), simultaneously(同) 27 3. 先行的: earlier(先に ), before then/that(それより以前に ), previously(以前に ) • 複合時間関係( 外的) 1. 即時的: at once(すぐに ), thereupon(そこで直ちに ), on which(そこで ); just before(直前に ) 2. 中断的: soon(やがて ), presently(同), later(あとで ), after a time(しばらく たって ), some time earlier(それよりしばらく前に ), formerly(以前は ) 3. 繰り返し的: next time(次には ), on another occasion(別な機会には ); this time(このたびは ), on this occasion(この機会に ), the last time(この前は ), on a previous occasion(前回には ) 4. 特定的: next day(翌日に ), five minutes later(5分後に ), five minutes earlier(5分前に ) 5. 持続的: meanwhile(その間に ), all this time(この間ずっと ) 6. 終結的: by this time(この時までに ); up till that time(その時まで ), until then(それまで ) 7. 点的: next moment(次の瞬間に ); at this point/moment(この瞬間に ); the previous moment(たった今) • 結論関係( 外的) 1. 単純: finally(ついに ), at last(とうとう), in the end(終わりに ), eventually(結 局) • 連続および結論関係( 外的) :相関形式 1. 連続的: first ・ ・ ・then(最初に・ ・ ・次に ), first ・ ・ ・next(同), first ・ ・ ・second(最 初に・ ・ ・第 2 に ) 2. 結論的: at first ・ ・ ・finally(最初は・ ・ ・ついに ), at first ・ ・ ・in the end(最初 は・ ・ ・終わりに ) • 時間関係( 内的) 28 1. 連続的: then(それから ), next(次に ), secondly ・ ・ ・(第2に・ ・ ・) 2. 結論的: finally(最後に ), as a final point(最後にひとつ), in conclusion(要す るに ) • 時間関係( 内的):相関形式 1. 連続的: first ・ ・ ・next(最初に・ ・ ・次に ), first ・ ・ ・then(最初に・ ・ ・それから ), ・ ・secondly(第1に・ ・ ・第 2 に )・ ・ ・; in the first place ・ ・ ・(第 1 に・ ・ ・); first ・ to begin with ・ ・ ・(まず第 1 に・ ・ ・) ・ ・finally(最後に ),・ ・ ・to conclude with(結論すれば ) 2. 結論的: ・ • 「今この場で」の関係( 内的) 1. 過去: up to now(今までは ), up to this point(ここまでは ), hitherto(これま では ), heretofore(同) 2. 現在: at this point(この段階で ), here(ここで ) 3. 未来: from now on(これからは ), henceforward(今後は ) • 要約関係( 内的) 1. 要約的: to sum up(要約すると ), in short(手短に言えば ), briefly(同) 2. 再叙的: to resume(話を戻すと), to get back to the point(要点に戻ると ), anyway(いずれにせよ) コミュニケーションの過程の中で、 「話していくうちで次に」という意味である。 “Why do you think I worked so long for you?” Sobel cried out.“For the stingy wages I sacrificed five years of my life so you could have to eat and drink and where to sleep?” “Then for what ?”shouted the shoemaker.“For Miriam,” he blurted— “for her.” (‘The Magic Barrel’p22,l32) (「私がなんであんなに長くあんたのところで働いてたと思うんです?」 とソベルは叫んだ。 「けちな賃金で五年間も我慢したのも、私があんた 29 たちに飲ませたり食べさせたり、無事に眠らせたりするためだと思う んですか?」 「じゃあ、なんのために働いてたんだ?」と靴屋は怒鳴っ た。 「ミリアムのためです」と彼は一息に叫んだ —「彼女のためだ 」 時間的継起の意味のほかに、付加的な意味をもった要素があると、一段と特定 的なものになる。(next time) 「同時」の意味で、最初の文と関連していることもある。(at the same time) 次の例文のように長いテクストを見ると、たくさんの接続によってつながって ゆき、流れを作っていっているのがわかる。 Afterwards, he told himself that he hadn’t spoken to her because it was while she still had the candy on her, and she would have been scared worse than he wanted. When he went upstairs, instead of sleeping, he sat at the kitchen window, looking out into the back yard. He blamed himself for being too soft, too chicken, but then he thought, no there was a better way to do it. He would do it indirectly, slip her a hint he knew, and he was pretty sure that would stop her.Sometime after, he would explain to her why it was good she had stopped.So next time he cleaned out this candy platter she helped herself from, thinking she might get wise he was on to her, but she seemed not to, only hesitated with her hand before she took two candy bars from the next plate and dropped them into the black patent leather purse she always had with her.The time after that he cleaned out the whole top shelf, and still she was not suspicious, and reached down to the next and took something different. One Monday he put some loose change, nickels and dimes, on the candy plate, but she left them there, only taking the candy, which bothered him a little. Rosa asked him what he was mooning about so much and why was he eating chocolate lately. He didn’t answer her, and she began to look suspiciously at the women who came in, not excluding the little girls; and he would have been glad to rap her in the teeth, but it 30 didn’t matter as long as she didn’t know what he had on his mind.At the same time he figured he would have to do something sure soon, or it would get harder for the girl to stop her stealing.… (‘The Magic Barrel’p95,l27) (あとになって彼は自分が少女に話しかけなかった理由を自分にこう 説明した—何しろあの子は盗んだキャンデーを手に持ってたんだから な、あんなときにお説教するのは、あの子をおじけさせるばかりで効 果はないさ。彼は二階にあがったときも、昼寝するかわりに、台所の 窓べにすわって裏庭をながめた。自分に向って、おまえはお人好しす ぎすぞ 、気弱すぎるをと叱ったが、しかしまた、いや、もっとよい方法 があるのだ、とも思った。そうだ、もっと間接的にやる方法がいい。た とえばこっちが知っているとあの子にヒントを与えれば彼女はきっと やめるだろう。そしてすこしあとになってから、彼女がやめたのはい かによいことだったか、説明してやろう。彼はそう考え、つぎのときに は少女が盗んだ菓子箱をすっかりからにしてしまい、こうすればあの 子も彼が知っていることに気づくだろうと思った。ところが少女は気 づかないらし く、すこし手をためらわせたあとで、隣の箱からキャン デーを二本とりだし 、いつも持っている黒い模造皮の小袋のなかへ落 し込んだ。そのつぎからは、彼は上の棚の菓子をすっかり片づけてし まったが 、それでも少女は疑問さえ起さず、下の棚に手を伸ばしてな にか別のものを盗んだ。ある月曜日、彼は小銭をすこしばかり菓子棚 の上に置いてみた。しかし少女は金をそのままにしてキャンデーだけ 取ったので、これには彼もすこし戸惑った。ローザは彼に向って、この ごろなにをそう考え込んでいるのかと問い、また彼がチョコレートを 食べるようになったのはなぜか、とたずねた。彼が答えなかったので ローザは店へくる少女たちばかりか、大人の女客たちさえ疑わしげに ながめるようになった。彼はローザを思いきりなぐ りとばしたい気分 31 になったが、とにかく自分の考えていることを悟られないかぎり、放っ ておけばいいと思った。と同時に、遅くならぬうちに、この問題には 確かな手を打たねばならない、さもないとあの少女に盗みをやめさせ ることはますますむずかしくなる、とも考えた。…) 32 4 結論 従来の伝統文法だけでは理解することのできない文章解釈における接続のメカニ ズムを Halliday and Hasan 理論の観点から見ることによって、 「接続の新しい意味」 が見えてくると考えられる。つまり、接続のことばは談話、文章がど のように流 れているのか、その方向をサインしている、ということである。従来、伝統文法 では、文単位の等位接続詞、従属接続詞の用法が中心であった。しかし 、これか らは文単位を超えたテクスト (談話)の流れを的確に捉えなければならない。そう でないと、真に内容を理解したとは思われない。 そのためには接続のことばを大きく捉え、単に接続詞ばかりでなく、接続の意 味機能を果たしていることばは、すべて網羅しなければならないと思われる。そ の点においても、Halliday and Hasan の理論は非常に有効であると思われる。 もちろん、Hasan(1984) がのちに認めているように、接続を含む文法的結束性や 語彙的結束性という〈テクスト性〉を作り出す手段は、非常に重要な手段である が 、それだけでは〈テクスト性〉は十分ではない。さらにマクロなレベルで、〈首 尾一貫性〉 (coherence) が備わっていなければならない。具体的に言うと、文章理 解における推論作業、代名詞(指示詞)の名詞(句)との指示関係の確立作業、文 章内容に関する背後的知識( 常識)などが必要なのである。しかし 、このことを 考慮に入れても、結束性という概念は、テクストの一般的構造を探るために必要 であると、本論を通して確認できたと思われる。 後、付け加えておくこととして、Halliday and Hasan 理論では 4 つの接続範疇に 容易に入らない、しかし 、テクスト内で結束力をもって用いられる項目として、継 続語 (CONTINUATIVES) について( 例えば 、Now, Of course, Well, Anyway など ) 述べていたが 、本論ではふれるまでにいたらなかった。 33 主な参考文献 大島 眞 (1992)『談話文法研究』 リーベル出版 福地 肇 (1985)『談話の構造』 大修館書店 M.A.K ハリディ・ルカイヤ ハサン (1997)『テクストはどのよに構成されるか』ひ つじ書房 M.A.K ハリディ・ルカイヤ ハサン (1991)『機能文法のすすめ』 大修館書店 Bernard Malamud(1950)‘The Magic Barrel’ POCKET BOOK. 加島 祥造 (1970)『マラマッド 短編集』 新潮社 西垣内 寿枝・西垣内 泰介 (1997)『ビル・モンロー ファーザー・オブ・ブルーグ ラス』 ( 対訳ハンドブック) B.O.M. サービス 34 Summary In this essay, I am going to discuss about conjunction. I will base my study on Halliday and Hasan’s work,which is based on the Systemic Grammar. Their arguments say that ‘text’ as a semantic unit is realized by sentences. They say that ‘text’ consist of texture, and cohesion is the various means to realize texture. Conjunction is one of GRAMMATICAL COHESION. I shall analyze their arguments and view conjunction from a different angle. This essay shall divide conjunction into four types (ADDITIVE, ADVERSATIVE,CAUSAL and TEMPORAL), and I will give some examples. • Conjunction 1. ADDITIVE: and, furthermore, that is, in the same way, etc. 2. ADVERSATIVE: yet, but, however, actually, on the contrary, etc. 3. CAUSAL: so, hence, therefore, in that case, etc. 4. TEMPORAL: then, after that, previously, in the end, etc. Example For the whole day he climbed up the steep mountainside, almost without stooping. 1. And in all this time he met no one.(additive) 2. Yet he was hardly aware of being tired.(adversative) 3. So by night time the valley was far below him.(causal) 4. Then, as dusk fell, he sat down to rest.(temporal) Finally, I am going to explore to find some new meaning of conjunction based on actual examples from Malamud’s novels. 35