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改正RoHS指令について - 公益社団法人日本技術士会 登録グループ

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改正RoHS指令について - 公益社団法人日本技術士会 登録グループ
改正RoHS指令について
2013.9.21
技術士 尾立良次
2011年7月、EUにおいて「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限指令」
(RoHS指令)が改
定された。この改訂案は、2008年12月に欧州委員会から公表されて以降、2年以上も修正が繰り返され、
2011年5月の合意を経て、7月1日にEU官報で公布、20日後の7月21日に施行になった。今後、加盟
各国の国内法に、この内容が取り入れられ、規制が強化されることになった。
本稿は、
「包装技術誌 平成25年4月号に投稿の日本包装専士会 顧問 西 秀樹氏」の文献を中心に纏めた
ものです。
1、 RoHSの経緯と概要
1)経緯
・EU(欧州連合:European Union)各国において、以前は廃棄された電気・電子機器の約90%が前処理を
経ず埋め立てや焼却処分され、埋立地や焼却場からカドミウム・鉛汚染等が大きな環境問題となっていた。
・このためEUでは環境対策として、2003年廃自動車指令(ELV指令:End of Life Vehicle)により4種
類の重金属(カドミウム、鉛、水銀、6価クロム)を非含有とし、
・次いで2005年に廃電気・電子機器指令(WEEE指令:Waste Electrical and Electronic Equipment)に
より、廃棄予防、製品回収、再使用を促進することになった。
・このWEEEは、製品を全部で10の製品カテゴリーに分類し、環境配慮の製品設計とマーキング(表示マー
ク)
、および回収・リサイクルにおける費用負担などが決められた。
・そして2006年、廃電気・電子機器を対象とするRoHS(Restriction of the use certain Hazardous
Substances in Electrical and Electronic equipment)が施行され、廃自動車指令の「4種類の重金属に二つの
樹脂の難燃剤」を加えた合計6物質が使用禁止となった。
2) 規制対象物質の特性
・表1にRoHSの規制対象物質と最大許容含有量、および表2に重金属の毒性を示す。
表1 RohSno規制対象物質と最大許容含有量(閾値)
規
制
物
質
最大許容含有量(閾値)ppm
カドミュウム(Cd)
100
鉛(Pb)
1000
水銀(Hg)
1000
六価クロム(Cr(Ⅵ)
)
1000
ポリ臭化ビフェニル(PBB)
1000
(Polybrominated biphenyls)
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
1000
(Polybrominated diphenyl ethers)
1/4
備
考
有害重金属
樹脂の難燃剤
表2:重金属の毒性
重金属
元素記号
カドミュウム Cd
鉛
Pb
水銀
Ⅵ価クロム
主な用途
ニッカド電池、黄色顔料
蓄電池、ハンダ
塗料、釉薬、水道管
Hg
蛍光管、体温計、液晶
Cr(Ⅵ) メッキ、黄色顔料
毒
性
腎臓障害、骨障害
中枢神経障害、白内障
障害・汚染の事例
イタイイタイ病
鉛中毒
中枢神経障害、肺水腫
水俣病(有機水銀)
皮膚炎、腫瘍(しゅよう) スラッジ処理、
工場跡地汚染
・重金属は、一般に毒性が強い有害物質であり、過去に人間に対しても大きな災害をもたらした例がある。
・カドミウムや鉛など重金属は、無機顔料に用いられており、着色剤として陶器・印刷物のインキ・樹脂の着色
剤などに用いられており、知らずに使われていることがあるので、事前確認や契約書による責任分担の文書化
も重要な要件である。
・水銀は、現在、殆どが他の材質に代替されたが、蛍光灯や液晶の一部に使用されている。
・六価クロムは、現在でも一部のメッキ製品や皮なめし用処理液に使用されていることもある。現在は、環境問
題対応のため多くが3価クロムなどに代替されている。
・樹脂の難燃剤は、電機・電子機器の延焼防止のために、必ずと言ってもよいくらい使用されている物質である。
・船、航空機、新幹線、電線、カーテンなどに対し国際的に難燃性基準が制定され、この基準に適合した樹脂や
部品の任意登録制度も広く定着している。
・難燃剤としては、無機系化合物と並びに臭素系化合物が主体であり多数の化合物がある。このうちPBBとP
BDEは体内蓄積性や神経系への健康影響が指摘されて使用禁止となっている。
・このように難燃剤は、電機・電子機器において特異的に使用され、樹脂の難燃性付与のために敢えて意図的に
樹脂に添加するものである。
3) RoSHの規制対象製品
① 規制対象製品
表3にWEEE指令のカテゴリー(1~10)
、および今回の改正RoHSによる追加カテゴリー
(11)を合わせて示す。
2006年施行済の従来のRoHSは、カテゴリー(1~7)及び10の合計8カテゴリーが規制対象であ
る。尚、WEEE指令においては、カテゴリー1から10までが既に規制対象となっている。
表3:規制の対象製品カテゴリー
No カテゴリー
対象製品例
強制運用開始
1
大型家庭用電化製品
冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ 2006.7.01
2
小型家庭用電化製品
掃除機、時計、アイロン
3
ITおよび遠隔通信機器
パソコン、プリンター、携帯電話
4
民生用機器
テレビ、ラジオ、ビデオカメラ、楽器
5
照明装置
蛍光灯、放電灯、
6
電動後工具(裾付型大型産業用は除く)
ドリル、のこぎり、ミシン、ボール盤
7
玩具
電車、ビデオゲーム機、スポーツ器具
8
医療用機器
補聴器
2014.07,22
体外診断用医療機器
インビトロ診断用医療機器
2016.06.22
監視および制御機器
煙感知機、自家発電機
9
2014.07.22
工業・産業用監視および制御機器
工場設備に使用されるもの
2017.0722
自動販売機
飲用自動販売機、現金引出器
10
2006.07.01
上記のカテゴリーに入らないその他の電気
11
2019.07.22
電子機器
2/4
② 適用除外用途
RoHSにおいては、現在の科学・技術では特定化学物質を使用する以外に代替手段がない場合は、
「
適用除外用途(Exemption)
」の規定があり、現在、約50製品において例外的に使用が認められている。
その例として、光学フィルターガラス中のカドミウムと鉛、コネクター接点中のカドミウム、合金中の鉛、高
融点はんだ中の鉛、液晶中の水銀、蛍光灯に含まれる水銀が挙げられる。
この「適用除外用途」は、EU加盟国はもちろんであるが、日本や米国の行政や産業界も所定の手順に基づき
技術的論拠(代替不可能の理由とデータ)を提出し、個々の製品ごとに委員会などにおける審議を経て最終的に
欧州委員会の審議により決定される。
2、 改正RoHS指令の概要
今回の改正RoHSは、EUでは「RoHS2」と呼ばれているが、その意図は、有害化学物質の規制
強化であり、主な変更のポイントは次の、4点である。
1) 対象製品カテゴリー追加
改正前RoHS指令では、WEEE指令の適合範囲10製品のうち、カテゴリー8(医療用機器)と
カテゴリー9(監視・制御機器)が対象から外されていた。
改正によりカテゴリー8及び9が対象となるとともに、カテゴリー11として「10製品群以外の
電気・電子機器」が新しく対象に追加された。これによって、一部の適用除外を除きすべての電気・電子機器が
対象となった。
尚、適用除外用途に関して、機器の大きさや重量、用途の定義が明確な規定がないため、行政や関係
団体が情報入手に努めている。また、適用除外用途は、今後、定期的に見直し検討が計画されている。
2) CEマーキングの貼付
これまでRoHS指令対象製品は、CEマークの対象製品ではなかったが、改正RoHSにより、
製造者(輸入者)に対し適合宣言書とCEマーク貼付の義務が追加された。
「CE」は、フランス語の(Conformite Europeenee),英語で(European Conformity)の略である。この
CEマークは、EU地域に販売される指定の製品に貼付が義務付けられている基準マークであり、
EU指令の必須安全要求事項に適合したことを示すものである。
3) 対象6物質は不変だが、今後の追加物質候補を提示
制限物質につては、改正前RoHS指令の対象6物質(鉛、水銀、カドミウム,六価クロム、
ポリ臭化ビフェニル(PBB)
、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
)は、変更されていない。
但し、今後、優先的にリスクを評価すべき物質として4物質
・Hexabromo cyclododecane、 (HBCDD)
,ヘキサブロモシクロドデカン。
・Di-(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP),フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
。
・Butyl benzyl phthalate
(BBP)
,フタル酸ブチルベンジル。
・Dibuthyl phthalate
(DBP),フタル酸ジブチル
が挙げられている。
更に、含有禁止物質については、REACH規則付属書(ⅩⅣ及びⅩⅡ)を考慮に入れ、定期的に見直しをすべき
ことも、併せて盛り込まれた。
4) 適用除外項目の追加及び有効期限の設定
RoHS指令では、技術的に6物質の代替が出来ない場合その使用を認めるため、例外的に適用除外項目を規
定している。
改正前RoHS指令では、全カテゴリー共通の項目が付属書に規定されていたが、改正により全カテ
ゴリー共通の適用除外項目(付属書Ⅲ)及び新たに追加された医療用機器(カテゴリー8)
、監視・制
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御機器(カテゴリー9)の適用除外項目(付属書Ⅳ)の二つに分けて規定された。
それぞれの適用除外項目の有効期間についても見直され、これまで4年であったのが全カテゴリー共
通の適用除外項目については、2011年7月21日から最長5年、医療用機器、監視・制御機器につ
いては、それぞれ適用開始日から最長7年とされた。
3、 今後のスケジュール
今後の主なスケジュールとしては、2013年1月までに、EU加盟国における改正RoHS指令の国内法化,
施行後3年以内の2014年7月までに制限物質、適用範囲の見直しなどが行われる。
尚、電機・電子機器のカテゴリー1~11によって、改正指令が適用となる開始年が異なるため留意が必要で
ある。
4、 企業への影響と対応
・RoHS指令適合の責任は、製造者にある。
・製造者が自社の製品がどのカテゴリーに属するかを把握し、RoHS対応について検討し、対処方針
を定めることが重要である。
・工業製品に含まれる化学物質は、多種多様であり、有害物質は、分野ごとに法律や業界自主基準により規制
されている。
・企業にとって最も厄介なのは、重金属に代表されるような不純物として非意図的に知らずに混入いているケ
ースである。このような問題は一企業での対応は困難であり、国や業界同士の協議により品質保証ルール作
りが望まれる。
5、 規制対象となる場合の要求事項
1) 適合性の評価
・適合性評価は、製品によって第三者認定機関の認証を受ける場合と自己宣言が認められる場合があるが、約
8 割は後者となっている。
・第三者認定機関の場合は、製品と技術文書などを提出して審査を依頼し、認証をもらう方法がある。
・自己宣言は、製造者自身が規格への適合、技術文書の整備などを評価して、自ら「適合宣言(Declaration of
Conformity)
」を作成し、自己宣言を行うことになる。
2) CEマークの貼付
・改正RoHSにより義務となり、このための製品、包装、添付資料のデザイン変更が必要となる。
3) 文書管理
・適合宣言書、技術文書、販売記録等は、10年保管とされている。
6、参考文献;
1) 経済産業省:HP
2) 東京海上日動火災保険㈱:HP
3) 包装技術、平成25年4月号 40~44 頁 日本包装専士会 顧問
以上
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