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5-6 植物

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5-6 植物
5-6
植物
5-6 植物
5-6-1 現況調査
(1) 既往調査
1) 調査内容
植物に係る既往調査の内容を表5-6-1と表5-6-2に、調査地点を図5-6-1に示す。
なお、貧栄養湿地群については、重要種が多く生育するとともに、地域の植物の特徴を
示す重要な環境として位置付け、重点的な調査を実施した。
表5-6-1
植生
調査
調査項目
重要な湿地群落及び森林植生
調査地点
142 地点 (図 5-6-1)
調査時期
調査方法
調査項目
調査ルート
植物相
調査
調査時期
調査方法
表5-6-2
貧栄養
湿地群
調査
植物に係る既往調査の内容(植生・植物相)
調査項目
調査範囲
調査時期
調査方法
春季:平成 13 年 5 月 9、10、15~17 日
夏季:平成 13 年 7 月 23、24、30、31 日、8 月 1、2 日
秋季:平成 13 年 9 月 4 日、10 月 9、10、18、19、23 日、11 月 6~9、12、17 日
冬季:平成 14 年 3 月 16 日(補足)
調査範囲内に設定した植生調査地点においてコドラート調査を実施。
植生調査データに基づき群落組成を検討し群落単位区分を行うととも
に、航空写真判読及び現地確認踏査に基づき群落分布を検討し、現存植
生図を作成した。
シダ植物以上の高等植物
既往調査範囲(図 5-6-1で示す範囲)
早春季:平成 13 年 3 月 27~30 日
春季:平成 13 年 4 月 17、18 日、5 月 7、8、11、17、21 日
夏季:平成 13 年 6 月 14 日、7 月 23、24、30、31 日、8 月 1、20 日
秋季:平成 13 年 9 月 5 日、10 月 16、18、19、22、23 日、11 月 9、17 日
現地踏査を行い、出現種を記録した。
貧栄養湿地群に係る既往調査の内容(重点化調査)
貧栄養湿地
調査範囲内で比較的多くの貧栄養湿地が存在する事業区域周辺の 5 地域
平成 13 年 10 月 11、12、25、26 日、11 月 1、2 日
対象湿地群における貧栄養湿地の分布状況及び面積を測定し、植生調査
(全 90 コドラート)及び植物相調査を実施した。
278
図5-6-1
植物に係る既往調査位置図
279
2) 調査結果
① 植生調査
既往調査結果による群落区分を表5-6-4に、現存植生図を図5-6-2に示す。
植物群落が20群落と土地利用単位が7区分で合計27タイプに区分された。調査範囲は、
鏡山山頂から南~東側斜面と、善光寺川を挟んで対岸の八重谷山、善光寺川周辺の低地と
起伏の小さい丘陵地で構成されている。
最も広い範囲を占める丘陵部分を詳細に見ると、「鏡山中腹」、「希望が丘公園を中心
とする調査範囲西部」及び「鏡山山麓下部と八重谷山周辺の小起伏の丘陵地」の3地域に
区分され、それぞれ地形及び植生分布の傾向が異なっている。表5-6-3に3地域別の地形及
び植生の特徴を記す。
表5-6-3
地域
鏡山中腹
希望が丘公園を
中心とする調査
範囲西部
鏡山山麓下部と
八重谷山周辺の
小起伏の丘陵地
植生の分布状況
地形の特徴
谷の浸食が小さく、比較
的勾配が均一な斜面が広
がっている。
浸食の進んだ明瞭な谷地
形が刻まれている。
谷地形が未発達で尾根・
谷の方向性が不明瞭な、
起伏の小さな地形が点在
する。
280
植生の分布状況
コナラ群落がやや広い面積を占める傾向があ
り、小面積ではあるがツブラジイ-カナメモ
チ群集、アラカシ群落が分布している。
アカマツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下
位単位・コナラ群落とともにアカマツ-モチ
ツツジ群集リョウブ下位単位がやや多く分布
している。
アカマツ-トゲシバリ群落コシダ下位単位や
貧栄養湿地植物群落が多く分布している。
表5-6-4
植物群落
ハンノキ群落
群落区分単位及びその概要
相観植生
湿生林
標徴種・識別種
ハンノキ
ツブラジイ,
ツブラジイ-カナメモチ群集
常緑広葉樹高木林
アラカシ群落
常緑広葉樹高木林
アラカシ
典型下位単位
アカマツ低木疎林
アカマツ,トゲシバリ
コシダ下位単位
アカマツ低木疎林
アカマツ,トゲシバリ,
コシダ,ネザサ
落葉広葉樹高木林
コナラ
スダジイ
出現種数
立地・概要等
11~39
大半が放棄水田に二次的に
侵入
(平均 23)
29~45
(平均 39)
23
社寺林の 2 か所
露岩が多い斜面
アカマツ-トゲシバリ群落
森
林
群 コナラ群落
落
15~36
(平均 23)
12~35
(平均 22)
16~42
(平均 26)
マサ土が堆積した平坦地
露岩の多い緩斜面
貧栄養湿地を伴うことが多
い
アカマツ優占林から変化し
た林分が含まれている
アカマツ-モチツツジ群集
20~37
最も面積が広い
ウワミズザクラ下位単位 アカマツ高木林
アカマツ
リョウブ下位単位
落葉広葉樹高木林
リョウブ
ヒノキ群落
常緑針葉樹高木林
ヒノキ
モウソウチク-ハチク群落
竹林
モウソウチク,ハチク
ハリエンジュ群落
砂防緑化林
ハリエンジュ
26
沈砂池や水路脇に数か所
-
イトイヌノヒゲ,ミミカキ
グサ,オオミズゴケ,ヌ
マガヤ等
-
③貧栄養湿地群調査結果参
照
湿生高茎草地
ツルヨシ
湿生高茎草地
オギ
湿生高茎草地
ヨシ,ガマ
貧栄養湿地植物群落
湿
ツルヨシ群集
生
草 オギ群集
本
群 ヨシ-ガマ群落
落
ヌルデ-タラノキ群落
乾
生 ススキ-ネザサ群落
草
本
群 放棄畑雑草群落
落
休耕地雑草群落
造成地低茎雑草群落
陽地生低木林
乾生高茎草地
乾生高茎草地
ヌルデ,タラノキ,
ヤマハゼ
ススキ,ネザサ
セイタカアワダチソウ,
ヨモギ
乾生低茎草地
イヌビエ,タカサブロウ
乾生低茎草地
メリケンカルカヤ
281
(平均 29)
17~34
(平均 24)
17~39
(平均 25)
9~26
(平均 19)
2~9
(平均 6)
18
松枯れ後の樹林が含まれる
植栽林ほか
植栽起源の樹林
河川植生
溜池の上流部
2~19
溜池の浅瀬や放棄水田
16~27
伐採跡、谷部の小規模崩壊
地
(平均 20)
5~17
(平均 12)
3~16
(平均 8)
7
8~9
造成跡地や山間の放棄耕作
地
数年経過した放棄耕作地
1~2 年経過した休耕地
造成跡地
図5-6-2
既往調査に係る現存植生図
282
② 植物相調査
調査範囲で確認したシダ植物以上の高等植物は、137科796種であり、その内訳を表56-5に示す。
調査範囲は鏡山(標高384.8m)の山麓にあり、標高は約110~380mの間に位置している。
気候的には暖温帯に属し、地質的には花崗岩と古琵琶湖層群とが接した位置にある。
植物種の分布からは、サカキやアラカシ等、暖地性の種ばかりでなく、ウラジロノキや
マンサク等の温帯性の種も数多く見られる。
生育環境別に見ると、斜面から尾根部にかけての比較的乾燥した立地にはアカマツ、ネ
ジキ、ヤマウルシのほか、モチツツジ等のツツジ科の植物が多数生育している。調査地西
部の比較的土壌の発達した立地にはコナラやアベマキのほか、ジュウモンジシダやコバノ
イシカグマ等のシダ植物が比較的多く見られる。
調査範囲には貧栄養湿地が所々に存在しており、ここではイヌノハナヒゲやイヌノヒゲ
のほか、ミミカキグサやトウカイコモウセンゴケといった食虫植物が多数生育している。
また、ヤチスギラン、イシモチソウ、マメスゲ、ケシンジュガヤ等の重要な種が多数含ま
れる。このような貧栄養湿地生植物は48種にのぼり、全確認種の約6%を占めている。
表5-6-5
植物確認種の概要
確認種科数
分類群
科数
種数
17
64
5
7
離弁花亜綱
66
309
合弁花亜綱
29
181
20
235
137
796
シダ植物門
種子植物門
裸子植物亜門
被子
植物
亜門
双子葉
植物綱
単子葉植物綱
合
計
283
③ 貧栄養湿地群調査
貧栄養湿地とは、貧栄養水に涵養されている湿地で、他の環境には見られない特有の種
が生育している。その種として、ミミカキグサやイシモチソウ、モウセンゴケ等の食虫植
物をはじめ、イヌノハナヒゲ、ヌマガヤ等が該当し、調査範囲内で広く確認した。
これら植物の確認地点の多くは群落と呼べるほど面的なまとまりは見られないが、一部
には集中して生育している場所が見られ、貧栄養湿地として群落を形成している。
なお、調査範囲内で確認した大小多数の貧栄養湿地のうち、ある程度まとまりをもって
分布している5地域(a~e)を選び、これを『湿地群』と定義した。湿地群全体の総面積
は3,111m2である。湿地群の概要を表5-6-6に示す。
湿地群で確認した貧栄養湿地生植物、湿地群単位ではd湿地群が41種と最も多く、c湿地
群が27種と最も少なかった。湿地群の中の湿地単位ではe1湿地が33種と最も多く、e3湿地
が14種と最も少なかった。
表5-6-6
湿地群
a
確認種数
38
b
c
d
e
29
27
41
39
湿地群の概要
形成状況
表層が風化や崩壊等により裸地化した地域に形成されたも
の。一部には放棄水田や溜池跡が湿地化したものも存在す
る。
オフロードバイク等の人為的活動により裸地化した地域に形
成されたもの。
表層が風化や崩壊等により裸地化した地域に形成されたも
の。
284
3) 重要な種及び群落
① 重要な種
既往調査後に環境省レッドリスト、滋賀県レッドデータブックが改訂されたため、新た
な選定基準で重要な種を再抽出した。その結果、新たに重要な種に選定された種は、コヒ
ロハハナヤスリ、カワラハンノキ、ヒツジグサ、カラタチバナ、イガクサ、マネキシンジ
ュガヤの6種である。
上記をうけて重要な種は表5-6-7に示すとおり47種があげられた。そのうち、事業区域
内で確認した種は、ヘビノボラズ、イシモチソウ、トウカイコモウセンゴケ、カワラハハ
コ及びマメスゲの5種である。
表5-6-7(1)
No.
科名
重要な植物種一覧
事業
区域
種名
内
外
重要な種の選定基準
①
②
③
④
1
ミズゴケ
オオミズゴケ
○
NT
2
ヒカゲノカズラ
ヒモヅル
○
VU
3
ヤチスギラン
○
4
ハナヤスリ
コヒロハハナヤスリ
-
-
5
カバノキ
カワラハンノキ
-
-
6
モクレン
コブシ
7
メギ
ヘビノボラズ
8
スイレン
9
モウセンゴケ
10
⑤
⑥
A
A
希
希
他
○
C
○
○
C
ヒツジグサ
-
-
イシモチソウ
○
○
トウカイコモウセンゴケ
○
○
希
NT
C
分布
C
11
バラ
コバナワレモコウ
12
ヒメハギ
ヒナノカンザシ
13
ヤブコウジ
カラタチバナ
14
ハイノキ
クロミノニシゴリ
○
A
15
マチン
アイナエ
○
C
希
16
ガガイモ
コバノカモメヅル
○
C
他
17
ゴマノハグサ
18
19
20
タヌキモ
21
キク
22
23
○
分布
○
-
B
-
希
希
シソクサ
○
C
他
イヌノフグリ
○
VU
準
希
カワヂシャ
○
NT
準
ムラサキミミカキグサ
○
NT
C
カワラハハコ
○
他
B
サワシロギク
○
C
他
A
増大
ヤマジノギク
○
24
トチカガミ
マルミスブタ
○
25
ユリ
ミズギボウシ
○
C
他
26
アヤメ
ノハナショウブ
○
C
他
カキツバタ
○
NT
C
他
NT
C
他
B
希
C
分布
27
28
ヒメコヌカグサ
○
29
ヒナザサ
○
30
ウンヌケモドキ
○
イネ
285
希
VU
NT
表5-6-7 (2)
No.
科名
重要な植物種一覧
事業
区域
種名
内
外
31
イネ
スズメノコビエ
○
32
ミクリ
ナガエミクリ
○
33
ガマ
コガマ
○
34
カヤツリグサ
ケタガネソウ
○
35
コハリスゲ
36
マメスゲ
37
コアゼテンツキ
38
ミカヅキグサ
39
イガクサ
40
マツカサススキ
○
41
ミカワシンジュガヤ
○
42
ケシンジュガヤ
43
マネキシンジュガヤ
44
ラン
○
-
③
④
⑤
⑥
C
希
NT
準
他
C
他
C
他
C
他
○
B
他
○
C
希
-
希
VU
○
-
○
○
46
コバノトンボソウ
○
トキソウ
11
他
B
増大
A
希
希
希
NT
○
47 種
C
-
ギンラン
25 科
②
○
サギソウ
47
①
○
45
合計
重要な種の選定基準
47
0
0
0
C
希
C
他
NT
C
増大
14
36
38
注)1.重要な種は、以下に示す選定基準をもとに選定した。
①「文化財保護法に基づき指定された天然記念物」(昭和25年 文化庁)
における特別天然記念物、天然記念物
②「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年 環境庁)
における国内希少野生動植物種
③「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」(平成19年 滋賀県)における
指定希少野生動植物
④環境省報道発表(平成19年8月3日)「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、
植物Ⅰ及び植物Ⅱのレッドリストの見直しについて」に記載されている種
EX:絶滅、EW:野生絶滅、CR:絶滅危惧ⅠA類、EN:絶滅危惧ⅠB類、VU:絶滅危惧Ⅱ類、
NT:準絶滅危惧、DD:情報不足、LP:絶滅のおそれのある地域個体群
⑤「改訂・近畿地方の保護上重要な植物-レッドデータブック近畿 2001-」
(平成13年 レッドデータブック近畿研究会)に記載されている種
絶滅:絶滅種(近畿地方では絶滅したと考えられる種)
A:絶滅危惧種A(近い将来における絶滅の可能性が極めて高い種)
B:絶滅危惧種B(近い将来における絶滅の可能性が高い種)
C:絶滅危惧種C(絶滅の危険性が高くなりつつある種)
準:準絶滅危惧種(生育条件の変化によっては「絶滅危惧種」に移行する要素をもつ種)
⑤「滋賀県で大切にすべき野生生物2005年版」(平成18年 滋賀県)における対象種
絶危:絶滅危惧種(県内において絶滅の危機に瀕している種)
増大:絶滅危機増大種(県内において絶滅の危機が増大している種)
希 :希少種(県内において存続基盤が脆弱な種)
注 :要注目種(県内において評価するだけの情報が不足しているため注目することが必要な種)
分布:分布上重要種(県内において分布上重要種)
他 :その他重要種(全国及び近隣府県の状況から県内において注意が必要な種)
絶滅:絶滅種(県内において野生で絶滅したと判断される種)
保全:保全すべき群集・群落・個体群(県内において保全することが必要な群集・群落、個体群)
郷 :郷土種(県内で大切にしていきたい生き物)
2.既往調査後に改訂された選定基準に該当する6種については、確認位置が不明なため「-」とした。
286
② 重要な群落
調査範囲内には以下に示す選定基準により指定・掲載されている植物群落はなかった。
ただし、特定植物群落の選定基準と同等以上の重要性を有する群落としてツブラジイ-
カナメモチ群集と貧栄養湿地植物群落が抽出された。
[重要な群落の選定基準]
①「文化財保護法に基づき指定された天然記念物」(昭和25年 文化庁)
における特別天然記念物、天然記念物
②「第2回、3回、5回 自然環境保全基礎調査における特定植物群落」(平成12年 環境省)
A:原生林もしくはそれに近い自然林
B:国内若干地域に分布するが、極めて稀な植物群落または個体群
C:比較的普通に見られるものであっても、南限・北限・隔離分布等分布限界になる
産地に見られる植物群落または個体群
D:砂丘・断崖地・塩沼地・湖沼・河川・湿地・高山・石灰岩地等の特殊な立地に特有
な植物群落または個体群で、その群落の特徴が典型的なもの
E:郷土景観を代表する植物群落で、特にその群落の特徴が典型的なもの
F:過去において人工的に植栽されたことが明らかな森林であっても、長期にわたって
伐採等の手が入っていないもの
G:乱獲、その他人為の行為によって、当該都道府県内で極端に少なくなるおそれのある
植物群落または個体群
H:その他、学術上重要な植物群落
③「植物群落レッドデータ・ブック」(平成8年 (財)日本自然保護協会ほか)
ランク4:緊急に対策必要(緊急に対策を講じなければ群落が壊滅する)
ランク3:対策必要(対策を講じなければ群落の状態が徐々に悪化する)
ランク2:破壊の危惧(現在は保護対策が功を奏しているが、将来は破壊の危惧が大きい)
ランク1:要注意(当面、新たな保護対策は必要ない)
④「滋賀県で大切にすべき野生生物2005年版」(平成18年 滋賀県)における対象群落
保全:保全すべき群集・群落・個体群(県内において保全することが必要な群集・群落、個体群)
郷 :郷土種(県内で大切にしていきたい生き物)
287
(2) 現地調査
1) 調査内容
植物に係る調査の内容を表5-6-8に、調査地点を図5-6-3に示す。
表5-6-8
調査項目
調査地点
植生調査
調査時期
調査方法
植物相調査
植物に係る現地調査の概要
重要な湿地群落及び森林その他の植生
45 地点(図 5-6-3)
事業区域内に 10 地点、周辺地域に 35 地点のコドラートを設定し
た。
春 季:平成 19 年 5 月 11~12 日
夏 季:平成 19 年 7 月 17~19 日
秋 季:平成 19 年 10 月 15~17 日
貧栄養湿地植物群落(12 地点)は春夏秋の各季に調査を行い、同一
群落構成種の量的変化も把握した。森林域・その他の草地は夏秋の
いずれかに調査を行った。
当該植生調査データに基づき群落組成を検討し群落単位区分を行っ
た。
現地確認踏査に基づき群落分布を検討し、現存植生図を作成した。
既往調査結果に対して植生の量的・質的変化を把握した。
調査項目
シダ植物以上の高等植物
調査地点
任意ルート
調査時期
春
夏
秋
調査方法
現地調査により、事業区域内、事業区域外の区分で出現種を記録
し、植物目録を作成した。特に既往調査で重要な種の生育が確認さ
れた地点に留意して調査するものとした。
季:平成 19 年 5 月 9~10 日
季:平成 19 年 7 月 17~19 日、8 月 28 日(補足)
季:平成 19 年 10 月 15~17 日
288
図5-6-3
植物に係る調査位置図
289
2) 調査結果
① 植生調査
A . 植生区分及び現存植生図
調査範囲内で実施した45地点の植生調査データをもとに植物社会学的な群落組成表を作
成した結果、調査範囲は15の植物群落に区分され、さらに6タイプの土地利用単位を加え、
調査範囲の植生は21タイプに区分された。植生区分の一覧を表5-6-9に、現存植生図を図
5-6-4に示す。群落組成表、群落組成調査票は資料編(資151~199参照)に示す。
なお、貧栄養湿地植物群落については表5-6-11に示すように、優占種等により群落の下
位区分を行ったが、いずれも小面積であるため、植生図では貧栄養湿地植物群落としてま
とめて表示した。
表5-6-9
区分
植生区分一覧
群落名
標徴種・識別種
出現種数
面積
(ha)
9~18
13.94
割合
(%)
アカマツ-トゲシバリ群落
典型下位単位
コシダ下位単位
森林植生
コナラ群落
アカマツ、トゲシバリ
11.8
アカマツ、トゲシバリ、コシダ
14~16
6.43
5.4
コナラ
24~28
18.49
15.6
アカマツ-モチツツジ群集
植物群落
ウワミズザクラ下位単位
モチツツジ、ウワミズザクラ
13~25
31.41
26.5
リョウブ下位単位
モチツツジ、リョウブ
17~31
0.95
0.8
ヒノキ群落
ヒノキ
18~24
9.48
8.0
モウソウチク-ハチク群落
モウソウチク
12
0.00
0.0
ハリエンジュ群落
ハリエンジュ
15
0.59
0.5
ヌルデ-タラノキ群落
ヌルデ、タラノキ
12
3.56
3.0
4~13
0.48
0.4
貧栄養湿地植物群落
イヌノハナヒゲ、ミミカキグサ等
草本植生
ツルヨシ群集
ツルヨシ
2
3.08
2.6
ヨシ-ガマ群落
ヨシ
4
0.12
0.1
ススキ-ネザサ群落
ネザサ
3
1.42
1.2
放棄畑雑草群落
セイタカアワダチソウ、ヨモギ
造成地低茎雑草群落
メリケンカルカヤ
10
0.47
0.4
8~13
3.32
2.8
93.74
79.10
樹園地・果樹園
4.27
3.6
水田
0.95
0.8
芝地・修景緑地
1.07
0.9
裸地
1.54
1.3
建築物・造成裸地・道路
9.01
7.6
開放水域
7.94
6.7
小計
24.77
20.90
合計
118.51
100.0
小計
その他
290
図
5-6-4 現存植生図
図5-6-4
現存植生図
291
B . 現存植生の概要
確認した各植生タイプの概要を表5-6-11に示す(詳細は資料編(植物)(資151~199)参
照)。
調査範囲は、竜王ICに近い国道477号に隣接しており、山地~平地に位置している。
調査範囲の主要な植生は、山地の二次林であるアカマツ-モチツツジ群集とコナラ群落、
植林であるヒノキ群落で構成されており、これらの面積を合計すると約50%を占める。さ
らに、建築物や造成裸地、溜池を中心とする開放水面、樹園地等の植物群落以外の土地利
用区分が約20%を占め、人為的な影響を受けた里山環境といえる。
ただし、土壌のあまり発達しない尾根筋や露岩地、花崗岩の風化土が堆積する地帯等で
は、植生の発達は遅く、土地的な潜在植生とみなされるアカマツ-トゲシバリ群集がみら
れ、全体の約18%を占めているほか、地下水位の高い立地条件ではイトイヌノハナヒゲ、
イシモチソウ、ミミカキグサ等の生育する貧栄養湿地植物群落も部分的に分布している。
調査範囲を地形からみて大きく区分すると「山地(鏡山山麓)」、「丘陵地(山地の平
地の中間域)」、「平地(国道477号周辺)」の3つに大きく分けることができるため、そ
れぞれの植生分布を表5-6-10にまとめた。
表5-6-10
地形
山地
丘陵地
平地
植生の分布状況
植生の分布状況
調査範囲の西側に広く位置し、アカマツ-モチツツジ群集とコナラ群落が斜面を
広く覆っており、ヒノキ群落がパッチ状に点在している。また、渓流沿いの谷筋
では、露岩地や急斜面の崩壊地等もみられ、アカマツ-トゲシバリ群落と貧栄養
湿地植物群落も部分的に分布している。
調査範囲の山地と平地の間に南北の帯状にみられ、山麓のなだらかな斜面や小高
い丘が分布している。裸地状の砂礫地がみられ、アカマツ-トゲシバリ群落と貧
栄養湿地植物群落が集中的に分布しているのが特徴である。
国道477号に沿って分布し、八重谷沈砂池や善光寺川、住宅地や果樹園等が含まれ
る。
事業区域は大部分が平地に位置しており、緩斜面に分布するアカマツ-モチツツ
ジ群集やアカマツ-トゲシバリ群落が主要な植生である。
292
表5-6-11
区分
群落名
各植生タイプの概要
相観植生
標徴種・識別種
分布状況
森林群落
アカマツ-トゲシバリ群落
典型下位単位
アカマツ
低木林
アカマツ
トゲシバリ
調査範囲内の斜面下部から平地にか
けて分布しており、事業区域の主要
な植生のひとつである。乾燥する尾
根筋や裸地等に生育している。
アカマツ-トゲシバリ群落
コシダ下位単位
アカマツ
低木林
丘陵地や斜面下部、谷筋の傾斜地等
にみられ、周囲には貧栄養湿地を伴
うことが多い。
コナラ群落
落葉広葉樹
高木林
アカマツ
トゲシバリ
コシダ
コナラ
アカマツ-モチツツジ群集
ウワミズザクラ下位単位
アカマツ
高木林
モチツツジ
ウワミズザクラ
調査範囲内の山地~平地にかけて最
も広く分布するアカマツ二次林で、
事業区域でも広い面積を占める。
アカマツ-モチツツジ群集
リョウブ下位単位
落葉広葉樹
高木林
モチツツジ
リョウブ
調査範囲西部の山地斜面中部~下部
にかけて部分的に分布している。
ヒノキ群落
常緑針葉樹
高木林
ヒノキ
調査範囲内の山地斜面中部~下部に
かけてパッチ状に分布している。
モウソウチク-ハチク群落
竹林
モウソウチク
ハリエンジュ群落
ハリエンジュ
ヌルデ
タラノキ
ミミカキグサ
放棄農耕地や造成跡地等の平地に生
育している。
イヌノハナヒゲ群集
ミミカキグサ下位単位
先駆性落葉
広葉樹林
先駆性落葉
広葉樹林
湿生低茎
草本群落
善光寺川支川上流の堰堤付近に小規
模な群落が 1 か所のみみられた。
国道 477 号沿いの平地等。
イヌノハナヒゲ群集
ヤチカワズスゲ下位単位
湿生低茎
草本群落
ヤチカワズスゲ
イヌノハナヒゲ群集
トウカイコモウセンゴケ下位単位
湿生低茎
草本群落
トウカイコモウ
センゴケ
オオミズゴケ群落
コケ群落
オオミズゴケ
ヌマガヤ群落
湿生高茎
草本群落
湿生高茎
草本群落
湿生高茎
草本群落
多年生高茎
草本群落
多年生高茎
草本群落
路傍雑草
群落
ヌマガヤ
希望が丘リッチランド北側の丘陵地
周辺と、遊歩道の木道沿いの湿地に
みられ、事業区域には分布していな
い。
調査範囲内の湿地群の多くの場所に
生育しており、事業区域内にも分布
している。
調査範囲内の沢沿いや湿地の辺縁部
等の樹林の被陰のある立地にパッチ
状に分布している。
丘陵地北部とグラウンド南側の丘陵
地周辺にパッチ状に分布している。
ヌルデ-タラノキ群落
貧 栄養 湿 地 植 物群落
ツルヨシ群集
草本群落
ヨシ-ガマ群落
ススキ-ネザサ群落
放棄畑雑草群落
造成地低茎雑草群落
293
山地斜面や緩やかな尾根等に広く分
布している。
希望が丘リッチランド北側の丘陵地
にみられ、事業区域には分布してい
ない。
ツルヨシ
善光寺川の支川も含めた河道内に広
く帯状に生育している。
ヨシ
溜池の縁や善光寺川河道内に小面積
で部分的に生育している。
ネザサ
放棄農耕地や造成跡地に数か所、ま
とまった群落が生育している。
セイタカアワダ
チソウ
メリケンカルカ
ヤ
放棄農耕地や善光寺川河道内の一部
にみられた。
道路脇、造成跡地、グラウンド周辺
等に分布している。
階層構造・特徴
群落高
出現種数
地衣類であるトゲシバリの出現によって特徴づけられる。当面植生の発達が困難であることから、
土地的な潜在自然植生のひとつとみなされている。典型下位単位では、低木層~亜高木層にかけて
アカマツが優占するが、被度は高くなく約 50%で、枯損木も多くみられ、林内は明るく開けた環境
である。
8~10m
9~18
アカマツ-トゲシバリ群落典型下位単位よりも土壌の浅い瘠悪(せきあく)な立地条件に生育して
いる。典型下位単位とは、コシダ、ネザサ、ノギラン、アリノトウグサの出現によって区分され
る。
3~4m
14~16
発達した 4 層構造を持つ林分が多く、アカマツ、ネジキ、ウラジロを欠くことによってアカマツ-
モチツツジ群集と区分される。高木層では、コナラが高い割合で優占している。亜高木層~草本層
にかけては、サカキ、ヒサカキ、ソヨゴ、ユズリハ等の常緑広葉樹が多く出現している。
16~18m
24~28
モチツツジを標徴種とするアカマツ二次林で、アカマツ-トゲシバリ群落とはトゲシバリを欠くこ
とによって区別される。アカマツ-トゲシバリ群落よりも発達した林分であり、低木層、草本層の
被度が高く、相観が異なる。高木層~亜高木層ではアカマツが優占し、コナラやソヨゴを混生す
る。低木層~草本層では、ヒサカキ、ネジキ、コバノミツバツツジ、シャシャンボ等が生育してい
る。
5~15m
13~25
ウワミズザクラ下位単位とは、リョウブの出現によって、またネズ、シャシャンボ、イソノキ、ガ
ンピを欠くことによって区分される。亜高木層にかけてリョウブやソヨゴ、アカマツ、コナラが混
生するほか、林冠層にアカマツの枯損木が多くみられた。ウワミズザクラ下位単位にはみられない
サカキ、ネズミモチ、シラカシ等のヤブツバキクラスの種が出現しており、より遷移の進んだ林分
であると推察する。
10~12m
17~31
道路や林道から近い立地では、明瞭な植栽列がみとめられるが、斜面中部~上部では、コナラやア
カマツが混生し、植栽起源か自生かの判別が困難な林分もある。亜高木層~草本層では、ヒサカ
キ、コバノミツバツツジ、ソヨゴ等のコナラ群落やアカマツ-モチツツジ群集との共通種群が多く
みられた。また、林冠層が密閉しているため林内は暗く、サカキ、ネズミモチ、ツブラジイ等のヤ
ブツバキクラスの種の生育もみられた。
約 18m
18~24
林内はモウソウチクの優占度が高く、下層植生は少ない。
約 8m
12
砂防緑化起源と推察する群落で、亜高木層にハリエンジュが優占しており、低木層~草本層にはヌ
ルデ、フジ、ノイバラ等が生育している。
約 10m
15
林冠層の低木類はややまばらで、下層にはセイタカアワダチソウやススキといった雑草類やフジや
ヘクソカズラといったつる性植物が多く生育している。
約 5m
12
ミミカキグサ、シロイヌノヒゲ、モウセンゴケの出現によって特徴づけられ、ヤチカワズスゲ、サ
ギソウを欠いている。緩傾斜地で、地表に水が溜まっているような立地に生育している。湿地の周
辺にチガヤ草地が分布する。
0.3~
0.5m
9~13
ヤチカワズスゲ、サギソウ、ヤチスギランによって特徴づけられる。生育立地はミミカキグサ下位
単位と共通しているが、水分条件がやや多様で、より良好な湿地環境に分布している。
0.4~
1.0m
9~12
0.1~1.0
4~10
群落の規模は 0.5m 四方程度のものが多い。群落内ではオオミズゴケがほぼ 100%の植被率を持って
いる。
約 0.2m
9
生育立地はイヌノハナヒゲ群集とやや共通しており、日当りの良い湿地に生育するが、放棄水田に
生育する群落ではヨシやハンノキが混生している。
約 1.5m
13
ツルヨシを識別種とする抽水植物群落で、ツルヨシがほぼ 100%の植被率で優占している。
約 2m
2
ヨシを識別種とする抽水植物群落で、ヨシがほぼ 100%の植被率で優占している。
約 2m
4
ネザサによって特徴づけられる草本~木本群落で、ネザサがほぼ 100%の植被率で優占している。
約 2m
3
セイタカアワダチソウ、ヨモギによって特徴づけられる高茎雑草群落である。セイタカアワダチソ
ウが約 80%の植被率で優占している。
約 2m
10
メリケンカルカヤ、カゼクサによって特徴づけられる低茎雑草群落である。メヒシバ、アキノエノ
コログサ、トダシバ等の路傍雑草群落が混生している。やや乾燥した立地で、植被率は低い。
約 0.7m
8~13
トウカイコモウセンゴケ、アリノトウグサ、トダシバの出現によって特徴づけられる。生育立地
は、礫が目立ち、地下水位がやや低く、急傾斜地にも生育している。
294
C . 貧栄養湿地植物群落
a.貧栄養湿地植物群落の生育・分布状況
貧栄養湿地植物群落は、イヌノハナヒゲやモウセンゴケ等の特有の貧栄養湿地生植物の
出現によって特徴づけられる。一方、調査範囲内には大小様々な大きさ(0.5m×0.5m~
20m×20m程度)の湿地が多数パッチ状に分布しているが、水分条件の良い丘陵地、砂礫
地、放棄水田、崩壊斜面等ではいくつかの湿地が集中的に分布している。
湿地の集団の地域別の状況を表5-6-12にまとめ、植生調査結果及び植物相調査結果から
貧栄養湿地生植物の分布状況を表5-6-13に整理した。
表5-6-12
地域
事業区域
希望が丘
リッチラ
ンド北側
湿地の集団の地域別の状況
植生の状況
事業区域北部の山麓に帯状の湿地が点在し
ている。周囲の植生はアカマツ-トゲシバ
リ群落とアカマツ-モチツツジ群集が混在
しており、他の地域に比べると安定した立
地で、アカマツ林が発達している。植生遷
移が進行しつつあり、やや乾燥した環境で
ある。
調査範囲中程の希望が丘リッチランド北側
に位置する丘陵地の上部、比較的平坦な立
地に分布している。植生は、アカマツ-ト
ゲシバリ群落にまばらに覆われており、そ
の中に湿地が点在している。現地調査範囲
内で最も多くの湿地がまとまって分布す
る。
木道沿い
調査範囲西部の鏡山に続く登山道沿いの渓
流環境である。崖地斜面等の日当りの良い
貧栄養湿地と、樹林下で陰湿な渓流沿いの
湿地とが混在しており、他の地域とは異な
った環境である。サワシロギクとコハリス
ゲは木道沿いの地域のみで確認した。
グラウン
ド南側
グラウンド南側の丘陵地下部の緩やかな斜
面に位置している。国道 477 号から近く、
オフロードバイクの乗り入れが頻繁に行わ
れており、人為的破壊の影響が強い。相観
は、アカマツ-トゲシバリ群集がまばらに
生育している。
八重谷沈砂池の岸辺や、希望が丘リッチラ
ンド西側の造成跡地、鏡山南側の沢筋等が
あげられ、小さな湿地が点在している。
その他の
地域
295
特徴
トウ カイコモウ センゴケや イガク
サ等 の比較的乾 燥した立地 に生育
する種によって特徴づけられる。
イシ モチソウと サギソウに ついて
はそれぞれ 100 株以上確認したほ
か、 トウカイコ モウセンゴ ケ、ヤ
チカ ワズスゲ、 ケシンジュ ガヤ等
の貧栄養湿地生植物の群生が多
く、 調査範囲内 で最も湿地 の状態
が良 好な地域で ある。なお 、湿地
へ通 じる歩道は ササが茂っ ており
到達 が困難で、 人為的な撹 乱は少
ない。
登山 道に隣接し ているため 、湿地
への 立ち入りが 容易である ほか、
オフ ロードバイ クの乗り入 れもみ
られ たが、湿地 の状態は比 較的良
好で 、サギソウ の群生等も 確認し
た。 登山道沿い は定期的な 草刈り
が施 されており 、日当りの 良い環
境を 好む貧栄養 湿地生植物 に適し
た環境が保たれている。
希望 が丘リッチ ランド北側 の地域
に似 ているが、 個々の湿地 が小さ
く、湿地の数も少ない。
コバ ナワレモコ ウとミズギ ボウシ
は、 その他の地 域にのみ分 布して
いる。
表5-6-13
貧栄養湿地生植物の分布状況
事業区域外
No.
種名
事業
区域内
希望が丘
リッチラ
ンド北側
木道沿い
グラウンド
南側
●
●
●
●
●
●
●
●
●
1
オオミズゴケ
2
ヤチスギラン
3
ヘビノボラズ
●
4
イシモチソウ
●
5
モウセンゴケ
6
トウカイコモウセンゴケ
7
コバナワレモコウ
8
ヒナノカンザシ
9
アリノトウグサ
10
クロミノニシゴリ
●
11
ミミカキグサ
○
12
ホザキノミミカキグサ
13
サワシロギク
14
スイラン
15
ミズギボウシ
16
コウガイゼキショウ
○
○
17
シロイヌノヒゲ
○
○
18
カリマタガヤ
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
ヌマガヤ
コハリスゲ
ヤチカワズスゲ
マメスゲ
ハリイ
シカクイ
イヌノハナヒゲ
イトイヌノハナヒゲ
イガクサ
コマツカサススキ
イヌホタルイ
ケシンジュガヤ
マネキシンジュガヤ
サギソウ
コバノトンボソウ
トキソウ
○
○
●
○
●
貧栄養湿地生植物の種数(●+○)
貧栄養湿地生植物の重要な種の種数
(●)
含まれる植生調査地点
●
●
その他
●
●
○
○
●
●
●
●
●
○
○
●
●
○
○
○
○
○
○
○
●
○
●
○
○
○
●
○
●
○
○
○
○
●
○
●
●
●
○
○
●
●
●
●
●
○
○
○
●
○
○
●
●
●
9
26
20
15
8
4
12
12
10
4
No.9
No.1~6
No.11,12
No.7,8
No.10
注)1.●:重要な種。確認状況・選定基準は後述の植物相調査結果に示した。
2.○:普通種。確認状況はコドラート調査結果に示した。
3.重要な種のうちカワヂシャやウンヌケモドキ等貧栄養湿地生でない種は除外した。
296
b.重要な湿地群の選定
表5-6-13に示した地域ごとの湿地の集団のうち、貧栄養湿地生植物の生育・分布状況や
湿地の分布状況からみて良好な状態である湿地の集団3か所を「湿地群」として選定した。
湿地群の一覧と特徴を表5-6-14、湿地群の位置を図5-6-5に示す。
湿地群①と③は既往調査において選定された湿地群またはその一部である。湿地群②の
木道沿いの地域は、既往調査では湿地群としてまとめられていないが、本調査では貧栄養
湿地生植物の重要な種を集中して確認している地域であり、新たに湿地群として選定した。
表5-6-14
湿地群
①
②
③
重要な湿地群一覧
特徴
備考
調査範囲内で最も多くの湿地が分布している。
重要な種の種数が多い(12 種)。
人為的な撹乱が少ない。
重要な種の種数が多い(12 種)。
特有の重要な種がみられた(サワシロギク等)。
木道が設置されているが、人為的な撹乱は少ない。
重要な種の種数が多い(10 種)。
オフロードバイクの影響が大きい。
既往調査で選定
さ れ た 湿 地 群
(a)
新たに選定した
湿地群
既往調査で選定
さ れ た 湿 地 群
(c)の一部
注)既往調査で選定された湿地群の概要はp284を参照。
c.同一群落構成種の季節的変化
貧栄養湿地植物群落における、春季(5月)、夏季(7月)、秋季(10月)の季別の植生
調査結果を表5-6-15に示した。季別の群落組成調査票は資料編(植物)(資155~199参照)
に示す。
表5-6-15
対象群落
イヌノハナヒ
ゲ群集
(10 地点)
オオミズゴケ
群落(1 地点)
ヌマガヤ群落
(1 地点)
同一群落構成種の季節的変化
春季(5 月)
夏季(7 月)
秋季(10 月)
ヤチカワズスゲとイシモ イ ヌ ノ ハ ナ ヒ ゲ が 高 さ 植生調査地点内の種組成
チソウの開花・結実期で 60cm 程 度 に 生 長 す る ほ としては夏季から大きな
あり、春季にのみ生育を か 、 ミ ミ カ キ グ サ 、 サ ギ 変化はない。イヌノハナ
確認した。この時期は群 ソ ウ 、 シ ン ジ ュ ガ ヤ 類 ヒ ゲ 類 は や や 生 長 し
集の識別種であるイヌノ ( サ ギ ソ ウ と シ ン ジ ュ ガ 80cm 程 度 の も の が 目 立
ハナヒゲやイトイヌノハ ヤ類の開花確認は 8 月下 つ よ う に な る 。 そ の ほ
ナヒゲは高さ約 10cm の 旬 ) 等 、 貧 栄 養 湿 地 植 物 か、スイラン、イヌノヒ
茎葉のみであり、前年の 群 落 の 主 要 な 構 成 種 が 段 ゲ類が秋季に開花・結実
枯れ草に紛れている状況 階 的 に 開 花 ・ 結 実 期 を 迎 期を迎えて生育を確認し
である。
える。
た。
トウカイコモウセンゴケやヤチスギラン等は、3 季を通じて地上部の生育を確認
した。
春季から秋季まで、コケ植物であるオオミズゴケの植被率が 100%であり、大きな
変化はなかった。
優占種であるヌマガヤは、春季には高さ約 0.4m で、25%程度の植被率であるが、
秋季には高さ約 1.5m、植被率 90%程度に生長した。
297
図5-6-5
図
5-6-5 湿地群の分布状況
湿地群の分布状況
298
② 植物相調査
A . 植物相の概要
現地調査の結果、調査範囲内で113科545種のシダ植物以上の高等植物を確認した。確認
種科数を表5-6-16及び図5-6-6に、確認種の一覧である植物目録を資料編(植物)(資200
~220参照)に示す。
調査範囲は、鏡山(標高384.8m)の東側山麓の標高110~210mに位置している。気候的
には、全域が暖温帯のヤブツバキクラス域(潜在的な自然植生が常緑広葉樹林である地
域)に属している。植物相の地理的特徴からみると、ツブラジイ、モッコク、ヤブツバキ、
アラカシ等の暖温帯の種が多く出現しているが、イワナシ、コハリスゲ、ヤチスギラン等
の冷温帯の種もみられた。
表5-6-16
事業区域
分類群
科数
種数
4
7
2
種数
3.2
15
32
3
1.4
4
離弁花亜綱
36
84
38.4
合弁花亜綱
17
63
8
67
種子植物門
裸子植物亜門
双子葉
植物綱
単子葉植物綱
合
計
事業区域内 7
3
事業区域外
科数
シダ植物門
被子
植物
亜門
植物確認種科数
%
調査範囲全域
科数
種数
6.1
15
33
6.1
6
1.1
4
6
1.1
52
194
36.7
53
199
36.5
28.8
26
136
25.8
26
141
25.9
62
28.3
15
160
30.3
15
166
30.5
219
100
112
528
100
113
545
100
84
63
%
62
シダ植物門
(219 種)
事業区域外
裸子植物亜門
32 6
194
136
160
33 6
199
141
166
双子葉植物綱
離弁花亜綱
双子葉植物綱
合弁花亜綱
単子葉植物綱
(528 種)
調査範囲全域
%
(545 種)
0%
10%
20%
30%
図5-6-6
40%
50%
60%
確認種数
70%
80%
分類群別の植物確認種数
299
90%
100%
B . 生育環境からみた植物相の特徴
植物相の生育環境別の割合を図5-6-7に示す。生育環境の区分は表5-6-17のとおりであ
る。また、事業区域の内外別の概要を表5-6-18にまとめた。
表5-6-17
区分
林内
林縁
草原
路傍・畑地
湿地
帰化・逸出
その他
対象種
主に林内に生育している種
主に林縁に生育している種
主にススキ草原に生育している種
路傍及び・畑地雑草
湿生、水生植物及び水辺に生育する植物
帰化植物、逸出植物
上記のいずれにも該当しないもの
63
事業区域内
生育環境の区分
26
10
45
34
37
4
(219 種)
林内
林縁
草原
134
事業区域外
48
(528 種)
129
15
112
81
9
路傍・畑地
湿地
帰化・逸出
138
調査範囲全域
50
18
131
115
84
9
(545 種)
数字は種数
0%
10%
20%
30%
図5-6-7
40%
50%
60%
確認種の割合
事業区域外
70%
80%
90%
100%
生育環境別の確認種の割合
表5-6-18
区分
事業区域内
その他
事業区域内外別の概要
概要
山地の斜面下部~平地に位置しており、面積は
18ha で 調査 範囲 全域 ( 約 120ha) の 15%に当 た
る。植生はアカマツ林と造成裸地を中心としてお
り、日当りの良い乾燥した環境である。また、ま
ばらな低木林が多いため林縁環境が多く存在す
る。このため、林縁の植物や路傍畑地雑草及び帰
化・逸出植物の割合が比較的高く、湿地植物の割
合が低い。
事業区域内との生育環境の違いをみると、山地の
林内に生育する種の割合は変わらないが、路傍・
畑地や湿地の植物の割合がやや高く、林縁の植物
の割合がやや低くなっている。道路や農耕地は事
業区域外の平地に多くみられる環境であり、湿地
は河川、水田、貧栄養湿地ともに分布の中心は事
業区域外にある。
300
植物相の特徴
事業区域のみで確認した種は、サイ
ゴクベニシダ、シナサルナシ、テリ
ミノイヌホオズキ、ヤマジノギク、
マ ツ カ サ ス ス キ 等 の 17 種 で あ っ
た。山地の草本類や路傍雑草類、落
葉広葉樹のほか、湿生草本類が含ま
れている。
事業区域外のみで確認した種は 326
種であった。オクマワラビやジュウ
モンジシダ等のシダ植物や、クスノ
キやモッコク等の常緑広葉樹、エノ
キやウラジロノキ等の落葉広葉樹が
含まれるほか、ヤチカワズスゲ、ケ
シンジュガヤ、サギソウといった貧
栄養湿地生植物が多く含まれてい
る。
3) 重要な種及び群落
① 重要な種
重要な種としては、表5-6-19に示すとおり、16科31種を確認した。なお、オオミズゴケ
はコケ植物であり、維管束植物ではないため植物目録には含まないが、貧栄養湿地を特徴
づける重要な種として本項で扱うものとした。
重要な種の確認位置を図5-6-8に、確認状況を表5-6-20に示す。重要な種の生態的特性
は資料編(植物)(資221~222参照)に示した。
本調査は、平成13年に実施された既往調査から6年が経過していることから、既往調査
でまとめられた結果に基づき重要種の再確認については特に留意して実施した。その結果、
既往調査において本調査範囲内で確認されていた種については全て確認した。
表5-6-19
ミズゴケ
ヒカゲノカズラ
メギ
モウセンゴケ
バラ
ヒメハギ
ハイノキ
マチン
ゴマノハグサ
キク
オモダカ
ユリ
イネ
ガマ
カヤツリグサ
ラン
事業区域
種名
外
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
合計
科名
内
No.
重要な植物種一覧
①
オオミズゴケ
ヒモヅル
ヤチスギラン
ヘビノボラズ
イシモチソウ
トウカイコモウセンゴケ
コバナワレモコウ
ヒナノカンザシ
クロミノニシゴリ
アイナエ
シソクサ
カワヂシャ
カワラハハコ
サワシロギク
ヤマジノギク
マルミスブタ
ミズギボウシ
ヒナザサ
ウンヌケモドキ
スズメノコビエ
コガマ
コハリスゲ
マメスゲ
コアゼテンツキ
イガクサ
マツカサススキ
ケシンジュガヤ
マネキシンジュガヤ
サギソウ
コバノトンボソウ
トキソウ
16 科 31 種
●
●
●
●
●
②
重要な種の選定結果
③
④
⑤
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
NT
VU
●
●
●
●
●
VU
NT
NT
B
A
C
C
準絶
B
C
●
●
NT
●
●
●
10
●
●
●
●
●
●
●
●
●
28
A
C
B
C
C
C
C
C
B
C
A
NT
0
0
注)重要な種は、以下に示す選定基準をもとに選定した。(次ページに続く)
301
A
A
C
C
C
0
NT
8
C
C
C
26
⑥
絶危
希
分布
分布
希
希
他
他
希
増大
他
希
分布
希
他
他
他
希
他
希
希
希
他
増大
24
①「文化財保護法に基づき指定された天然記念物」(昭和25年 文化庁)における特別天然記念物、天然
記念物
②「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年 環境庁)における国内希少野
生動植物種
③「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」(平成19年 滋賀県)における指定希少野生動植
物
④環境省報道発表(平成19年8月3日)「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱ
のレッドリストの見直しについて」に記載されている種
EX:絶滅、EW:野生絶滅、CR:絶滅危惧ⅠA類、EN:絶滅危惧ⅠB類、VU:絶滅危惧Ⅱ類
NT:準絶滅危惧、DD:情報不足、LP:絶滅のおそれのある地域個体群
⑤「改訂・近畿地方の保護上重要な植物-レッドデータブック近畿 2001-」(平成13年 レッドデ
ータブック近畿研究会)に記載されている種
絶滅:絶滅種(近畿地方では絶滅したと考えられる種) A:絶滅危惧種A(近い将来における絶滅
の可能性が極めて高い種) B:絶滅危惧種B(近い将来における絶滅の可能性が高い種) C:絶
滅危惧種C(絶滅の危険性が高くなりつつある種) 準:準絶滅危惧種(生育条件の変化によっては
「絶滅危惧種」に移行する要素をもつ種)
⑥「滋賀県で大切にすべき野生生物2005年版」(平成18年 滋賀県)における対象種
絶危:絶滅危惧種(県内において絶滅の危機に瀕している種) 増大:絶滅危機増大種(県内において
絶滅の危機が増大している種)
希:希少種(県内において存続基盤が脆弱な種) 注:要注目種(県内において評価するだけの情報が
不足しているため注目することが必要な種) 分布:分布上重要種(県内において分布上重要種)
他:その他重要種(全国及び近隣府県の状況から県内において注意が必要な種) 絶滅:絶滅種(県内
において野生で絶滅したと判断される種) 保全:保全すべき群集・群落・個体群(県内において保全
することが必要な群集・群落、個体群) 郷:郷土種(県内で大切にしていきたい生き物)
302
図5-6-8
重要な種の確認位置
303
表5-6-20(1)
重要な種の確認状況
No.
種名
確認状況
1
オオミズゴケ
(ミズゴケ科)
ヒモヅル
(ヒカゲノカズラ科)
ヤチスギラン
(ヒカゲノカズラ科)
貧栄養湿地の縁や沢沿いの林縁部等の湿潤な環境に、約 0.5×0.5m の群落をパッチ
状に形成している。春季調査において、湿地群の各所等で合計 14 か所確認した。
春季調査において、1 か所、約 5×7m のツルがアカマツ等の樹木に絡み付いて生育
しているのを確認した。
日当りの良い湿地に約 0.3×0.3m の群落をパッチ状に形成している。春季調査にお
いて、グラウンド南側湿地や希望が丘リッチランド北側の湿地、木道沿いの湿地等
で合計 6 か所確認した。
貧栄養湿地の縁や沢沿いの林縁部等に高さ約 70cm の低木が、数本~10 数本ずつ散
在して生育している。春季~秋季調査において、湿地群の各所や、谷筋の渓流脇等
のほか、事業区域の湿地でも生育しており、合計 14 か所で確認した。
2
3
4
ヘビノボラズ
(メギ科)
5
イシモチソウ
(モウセンゴケ科)
日当りの良い貧栄養湿地に数 10~100 個体程度が群生している。春季調査におい
て、グラウンド南側の湿地や希望が丘リッチランド北側の湿地のほか、事業区域の
湿地でも生育しており、合計 9 か所で確認した。
6
トウカイ
コモウセンゴケ
(モウセンゴケ科)
日当りの良い貧栄養湿地に数 10~数 100 個体程度が群生している。近縁種のモウ
センゴケに比べると、やや乾燥した環境に生育しており、表土が崩壊した崖地や造
成跡地に出現した湿地でもみられた。春季~夏季調査において、湿地群の各所のほ
か、事業区域の湿地でも生育しており、合計 13 か所を確認した。
7
コバナワレモコウ
(バラ科)
秋季調査において、八重谷沈砂池南岸の土砂が堆積している湿地に 2 か所、合計
18 個体を確認した。近縁の亜種で紅色の花をつけるナガボノアカワレモコウを同
所で確認した。
8
ヒナノカンザシ
(ヒメハギ科)
クロミノニシゴリ
(ハイノキ科)
8 月の夏季の補足調査において、グラウンド南側の湿地と希望が丘リッチランド北
側の湿地でそれぞれ 1 か所ずつの合計 2 か所、合計 17 個体を確認した。
夏季調査において、希望が丘リッチランド北側の貧栄養湿地の縁で 4 か所、合計 4
個体を確認した。樹高は約 1m で、1 個体ずつやや離れて生育していた。
10
アイナエ
(マチン科)
11
シソクサ
(ゴマノハグサ科)
カワヂシャ
(ゴマノハグサ科)
カワラハハコ
(キク科)
春季~夏季調査において、八重谷沈砂池北側の池の岸辺や、善光寺川支川沿いの造
成跡地、林道沿いの裸地等の、日当りが良くやや湿った環境に数 10~200 個体程度
の群生を合計 7 か所、確認した。
秋季調査において、調査範囲北側の水田の畦(稲刈り後)に 1 か所、1 個体を確認
した。
春季調査において、善光寺川河道内で 1 か所、約 10 個体を確認した。
9
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
サワシロギク
(キク科)
ヤマジノギク
(キク科)
マルミスブタ
(オモダカ科)
ミズギボウシ
(ユリ科)
ヒナザサ
(イネ科)
ウンヌケモドキ
(イネ科)
スズメノコビエ
(イネ科)
コガマ
(ガマ科)
夏季~秋季調査において、八重谷沈砂池南よりの石積み護岸付近で 1 か所、調査範
囲北側の造成跡地で 1 か所と、事業区域の造成跡地で 1 か所、合計 3 か所、19 個
体を確認した。周囲の環境はススキやメリケンカルカヤ等がまばらに生える明るく
乾燥した環境であった。
夏季~秋季調査において、木道沿いの渓流脇の林縁部等の適湿な環境で合計 3 か
所、約 40 個体を確認した。
秋季調査において、八重谷沈砂池北側の道路沿いで 1 か所、4 個体を確認した。
夏季~秋季調査において、グラウンド南側の湿地内の水溜まりで 1 か所、約 80 個
体の群生を確認した。
秋季調査において、調査範囲の南西約 100m の沢沿いで 1 か所と、調査範囲北西部
の沢沿いで 1 か所の合計 2 か所、9 個体を確認した。
夏季調査において、調査範囲北部の造成跡地の縁で 1 か所、200 個体以上の群生を
確認した。
貧栄養湿地の縁等の日当りの良い草地に数個体ずつがまばらに生育している。秋季
調査において、グラウンド南側の湿地で 1 か所、希望が丘リッチランド北側の湿地
で 1 か所と、事業区域の湿地で 1 か所、合計 3 か所約 15 個体を確認した。
秋季調査において、グラウンド南西側のやや湿気のある道路脇で 1 か所、約 7 個体
を確認した。
夏季調査において、事業区域の造成跡地の縁に形成されている湿地で 1 か所、4 個
体を確認した。同所ではマツカサススキの生育も確認している。
304
表5-6-20(2)
重要な種の確認状況
No.
種名
22
コハリスゲ
(カヤツリグサ科)
マメスゲ
(カヤツリグサ科)
春季調査において、木道周囲の適湿な林縁部で 1 か所、約 40 個体を確認した。
コアゼテンツキ
(カヤツリグサ科)
イガクサ
(カヤツリグサ科)
秋季調査において、希望が丘リッチランド北西側にある林道脇の造成跡地で 1 か
所、約 15 個体を確認した。アイナエと混生していた。
日当りの良い貧栄養湿地に数個体から数 10 個体が群生している。夏季~秋季調査
において、グラウンド南側の湿地、希望が丘リッチランド北側の湿地、事業区域の
湿地で合計 7 か所を確認した。
26
マツカサススキ
(カヤツリグサ科)
27
ケシンジュガヤ
(カヤツリグサ科)
28
マネキシンジュ
ガヤ
(カヤツリグサ科)
夏季調査(8 月)において、事業区域の造成跡地の縁に形成されているやや湿生の
草地で 1 か所、7 個体を確認した。なお、近縁のコマツカサススキは、調査範囲各
所の湿地や河川内、沢沿い等で多数の生育を確認した。
日当りの良い貧栄養湿地に、数 10~100 個体程度がカーペット状に群生しており、
マネキシンジュガヤと混生している。夏季調査(8 月)において、グラウンド南側
の湿地や希望が丘リッチランド北側の湿地、木道脇の沢沿い等で合計 9 か所を確認
した。
夏季調査(8 月)において、ケシンジュガヤと共に数 10~100 個体程度の群生を合
計 9 か所確認した。
29
サギソウ
(ラン科)
コバノトンボソウ
(ラン科)
夏季調査(8 月)において、希望が丘リッチランド北側の湿地や、木道沿いの湿地
等で合計 6 か所、数個体~100 個体程の群生を確認した。
夏季調査(8 月)において、木道脇の湿地で 1 か所、約 20 個体を確認した。
トキソウ
(ラン科)
春季~夏季調査において、グラウンド南側の湿地で 1 か所と、木道脇の湿地で 1 か
所の合計 2 か所、17 個体を確認した。
23
24
25
30
31
確認状況
春季調査において、木道周囲の林縁部で 1 か所と、希望が丘リッチランド北側の湿
地の縁で 1 か所の合計 2 か所、約 50 個体を確認した。
305
② 重要な群落
調査範囲内には以下に示す選定基準に指定・掲載されている植物群落はなかった。
しかし、重要種の確認状況を踏まえ、特定植物群落選定基準と同等以上の重要性を有す
る群落として、貧栄養湿地植物群落を抽出した。
重要な植物群落(貧栄養湿地植物群落)の確認位置を図5-6-9に示す。
[重要な群落の選定資料]
①「文化財保護法に基づき指定された天然記念物」(昭和25年 文化庁)における特別天然記念物、天然
記念物
②「第2回、3回、5回 自然環境保全基礎調査における特定植物群落」(平成12年 環境省)
A:原生林もしくはそれに近い自然林 B:国内若干地域に分布するが、極めて稀な植物群落または個
体群 C:比較的普通に見られるものであっても、南限・北限・隔離分布等分布限界になる産地に見
られる植物群落または個体群 D:砂丘・断崖地・塩沼地・湖沼・河川・湿地・高山・石灰岩地等の
特殊な立地に特有な植物群落または個体群で、その群落の特徴が典型的なもの E:郷土景観を代表
する植物群落で、特にその群落の特徴が典型的なもの F:過去において人工的に植栽されたことが
明らかな森林であっても、長期にわたって伐採等の手が入っていないもの G:乱獲、その他人為の
行為によって、当該都道府県内で極端に少なくなるおそれのある植物群落または個体群 H:その他、
学術上重要な植物群落
③「植物群落レッドデータ・ブック」(平成8年 (財)日本自然保護協会ほか)
ランク4:緊急に対策必要(緊急に対策を講じなければ群落が壊滅する) ランク3:対策必要(対策
を講じなければ群落の状態が徐々に悪化する) ランク2:破壊の危惧(現在は保護対策が功を奏して
いるが、将来は破壊の危惧が大きい) ランク1:要注意(当面、新たな保護対策は必要ない)
④「滋賀県で大切にすべき野生生物2005年版」(平成18年 滋賀県)における対象群落
保全:保全すべき群集・群落・個体群(県内において保全することが必要な群集・群落、個体群)
郷:郷土種(県内で大切にしていきたい生き物)
306
図5-6-9
重要な植物群落の確認位置
307
4) 既往調査結果からの植生の量的・質的変化
平成13年に実施された既往調査から6年が経過していることから、既往調査結果と本調
査結果について量的、質的な観点から比較した。比較は以下の方法で行った。
・量的変化:植生面積の変化と植生図の比較による変化状況の確認
・質的変化:貧栄養湿地群落の重要種確認状況の比較
① 植生面積の量的変化
平成13年に実施された既往調査と現地調査の植生面積の変化を図5-6-10に示し、現存植
生図の変化を図5-6-11に示す。
全体的に群落面積の大きな変化はみられず、特に、山地に分布している植生の分布状況
及び面積の変化は小さかった。わずかに変化が見られたのは平地の裸地や草本群落である。
面積が減少したのは裸地(図中群落No.19(図5-6-10参照))であり、グラウンド周辺
では造成地低茎雑草群落に、善光寺川ではツルヨシ群集に移行した。
また、裸地や造成地低茎雑草群落がアカマツ林に移行した箇所もみられた。
なお、現地調査によって、新たに確認した群落・群集はなかった。
1
平成13年面積
平成19年面積
2
3
4
5
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
6
7
8
9
10
群落
11
No.
12
13
14
15
増加
16
17
18
減少
19
群落名
アカマツ-トゲシバリ群落典型下位単位
アカマツ-トゲシバリ群落コシダ下位単位
コナラ群落
アカマツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下位単位
アカマツ-モチツツジ群集リョウブ下位単位
ヒノキ群落
モウソウチク-ハチク群落
ハリエンジュ群落
貧栄養湿地植物群落
ツルヨシ群集
ヨシ-ガマ群落
ヌルデ-タラノキ群落
ススキ-ネザサ群落
放棄畑雑草群落
造成地低茎雑草群落
樹園地・果樹園
水田
芝地・修景緑地
裸地
建築物・造成裸地・道路
開放水域
20
21
0
5
10
15
20
面積(ha)
図5-6-10
植生面積の変化
308
25
30
35
平成 13 年
アカマツ林の発達
アカマツ林の発達
雑草群落の繁茂
アカマツ林の発達
ツルヨシ群集の発達
平成 19 年
(凡
図5-6-11
例)
現存植生図の変化
309
② 貧栄養湿地植物群落の質的変化
重要な種の生育基盤として保全上重要である貧栄養湿地植物群落の質的変化に着目し、
既往調査と現地調査における重要な種の確認状況を整理して表5-6-21に示す。
いずれの地域でも、1種か2種の違いはみられたが、オオミズゴケやトウカイコモウセン
ゴケ等の群落・群集の単位区分に用いられた種を含むほとんどの種の分布状況に大きな変
化はなく、重要な種の生育基盤としての質的な変化は認められない。
表5-6-21
貧栄養湿地生植物(重要な種)の変化状況
事業区域外
事業
区域内
種名
現
地
調
査
H19
既
往
調
査
H13
オオミズゴケ
ヤチスギラン
ヘビノボラズ
●
●
希望が丘
リッチラ
ンド北
湿地群①
木道沿い
湿地群②
グラウン
ド南
湿地群③
現
地
調
査
H19
既
往
調
査
H13
現
地
調
査
H19
既
往
調
査
H13
現
地
調
査
H19
既
往
調
査
H13
●
●
●
●
●
●
その他
現
地
調
査
H19
既
往
調
査
H13
既往調査
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
イシモチソウ
●
●
●
●
トウカイコモウセンゴケ
●
●
●
●
ヒナノカンザシ
●
●
クロミノニシゴリ
●
●
コバナワレモコウ
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
ムラサキミミカキグサ
●
●
●
サワシロギク
ミズギボウシ
コハリスゲ
マメスゲ
イガクサ
ミカヅキグサ
ケシンジュガヤ
マネキシンジュガヤ
ミカワシンジュガヤ
サギソウ
コバノトンボソウ
トキソウ
調査
範囲外
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
合計
4
4
12
12
12
12
10
11
現地調査で新たに確認した種
0
0
1
1
数
現地調査では確認しなかった
1
0
2
2
種数
2 か年とも確認した種
3
12
10
9
既往調査の確認位置不明の種
1
0
1
0
数
注)1.網掛けは確認状況に変化のみられた種
2.既往調査後に選定基準が改訂された種は、確認位置が不明な場合がある。
310
●
4
5
0
1
4
0
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
21
5-6-2 予測
植物に係る予測項目及びその内容は、表5-6-22に示すとおりである。
表5-6-22
植物の予測項目
(1)植生の量的変化
植物生育地の消滅・改変による影響
(2)重要な植物群落への影響
(3)重要な植物種への影響
事業による環境変化が植物の生育環境に与える影響
(4)照明による影響
(1) 植生の量的変化
1) 予測内容
植物生育地の消滅・改変による影響として植生の量的変化を予測する。
2) 予測方法
事業の実施に伴い改変する区域と現存植生図を重ねあわせ、消滅・改変による各群落タ
イプの面積変化を算出し、植生の量的変化を予測する。
① 予測地域
事業区域内とする。
② 予測対象時期
Ⅲ期工事の完了時点とする。
③ 予測条件
事業の実施に伴い改変する区域は、「土地利用計画図」に示した緑地(残地)以外の全
ての区域とした。
3) 予測結果
図5-6-12(p.313参照)に示すように、現地調査で得られた現存植生図に改変区域を重
ねあわせ、事業計画による面積変化を予測した。植生・土地利用単位の面積変化と改変率
(改変する面積/現況の面積)を表5-6-23に示す。
事業計画によると、事業区域18.00haのうち14.14ha(事業区域の78.6%)が改変区域に当
たり、この区域内に分布する植生単位は消滅すると予測する。改変区域内の主な植生単位
の内訳は、アカマツ-トゲシバリ群落典型下位単位が6.52ha(改変区域の46.1%)、アカ
マツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下位単位が4.80ha(改変区域の34.0%)、造成裸地
等が1.78ha(改変区域の12.6%)である。
311
ただし、本事業では、事業区域内西部の山麓部を自然緑地として残存(保全)する計画
としているため、改変区域内の主な植生単位であるアカマツ-トゲシバリ群落コシダ下位
単位及び典型下位単位や、アカマツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下位単位等の植生単
位の全ては改変しない。
表5-6-23
植生・土地利用単位の面積変化予測
現況
植生・土地利用単位
改変状況
事業区域(A)
面積(ha)
B/A
改変面積(B)
割合(%)
面積(ha)
事業実施後
割合(%)
事業区域(A-B)
改変率(%)
面積(ha)
割合(%)
アカマツ-トゲシバリ群落
典型下位単位
7.14
39.7
6.52
46.1
91.3
0.62
3.4
アカマツ-トゲシバリ群落
コシダ下位単位
0.74
4.1
0.30
2.1
40.8
0.44
2.4
コナラ群落
0.33
1.9
0.00
0.0
0.0
0.33
1.9
アカマツ-モチツツジ群集
ウワミズザクラ下位単位
6.20
34.4
4.80
34.0
77.5
1.40
7.8
アカマツ-モチツツジ群集
リョウブ下位単位
-
-
-
-
-
-
-
0.96
5.3
0.21
1.5
21.9
0.75
4.2
-
-
-
-
-
-
-
ハリエンジュ群落
0.06
0.3
0.06
0.4
100.0
0.00
0.0
ヌルデ-タラノキ群落
0.02
0.1
0.02
0.1
100.0
0.00
0.0
貧栄養性湿地植物群落
0.08
0.5
0.03
0.2
34.3
0.06
0.3
-
-
-
-
-
-
-
ヨシ-ガマ群落
0.03
0.1
0.03
0.2
100.0
0.00
0.0
ススキ-ネザサ群落
0.27
1.5
0.27
1.9
100.0
0.00
0.0
-
-
-
-
-
-
-
0.21
1.1
0.13
0.9
63.4
0.08
0.4
樹園地・果樹園
-
-
-
-
-
-
-
水田
-
-
-
-
-
-
-
芝地・修景緑地
-
-
-
-
-
-
-
裸地
-
-
-
-
-
-
-
1.97
11.0
1.78
12.6
90.1
0.20
1.1
-
-
-
-
-
-
-
18.00
100.0
14.14
100.0
78.6
3.86
21.4
-
-
-
-
ヒノキ群落
モウソウチク-ハチク群落
現況単位
ツルヨシ群集
放棄畑雑草群落
造成地低茎雑草群落
建築物・造成裸地・道路
開放水域
小計
造成単位
商業施設用地
道路・駐車場等
調整池・沈砂池・水路等
緑地(法面等)
小計
合計
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3.45
8.65
1.02
1.01
19.1
48.0
5.7
5.6
-
-
-
-
-
14.14
78.6
18.00
100.0
14.14
100.0
78.6
18.00
100.0
注)1.網掛けは、改変されない植生・土地利用単位である。
2.面積は小数第3位を四捨五入した値であるため、計算値、合計値が合わない場合がある。
312
図5-6-12
植生の面積変化予測
313
(2) 重要な植物群落への影響
1) 予測内容
植物生育地の消滅・改変による重要な植物群落への影響を予測する。
2) 予測方法
事業の実施に伴い改変する区域と重要な植物群落の分布状況を対比し、重要な植物群落
の生態的特性をもとに、影響の程度を予測する。
① 予測地域
植物の調査範囲とする。
② 予測対象時期
Ⅲ期工事の完了時点とする。
③ 予測条件
事業の実施に伴い改変する区域は、「土地利用計画図」に示した緑地(残地)以外の全
ての区域とした。
3) 予測結果
貧栄養湿地群落は事業区域の地質特性を反映し、特有の動植物の生育生息環境を形成す
るものであるが、なかでも、重要種が多く生育し、持続性の高い群落は、ある程度のまと
まりを持って存在している。同群落は調査範囲内外に点在しているが、現況調査では上記
の観点から、まとまりがあり比較的状況の良い「湿地群」を重要な植物群落として抽出し
ている(p.306、307参照)。
抽出した3か所の貧栄養湿地群落はすべて事業区域外にあり、改変は行わない。また、
いずれも事業区域よりも上流域もしくは標高の高い場所に位置し、水分条件は変化しない
ため、重要な植物群落は維持されると予測する。
また、事業区域内には、規模が小さく、まとまりを欠いているため、重要な植物群落と
しなかった貧栄養湿地群落が点在しており、事業の実施により、全てを改変しないものの、
その一部は消失すると予測する。
314
(3) 重要な植物種への影響
1) 予測内容
植物生育地の消滅・改変による重要な植物種への影響を予測する。
2) 予測方法
改変区域と重要な植物の分布状況を対比し、重要な植物の生態的特性をもとに、影響の
程度を予測する。
① 予測地域
事業区域及びその周辺とする。
② 予測対象時期
Ⅲ期工事の完了時点とする。
③ 予測条件
事業の実施に伴い改変する区域は、「土地利用計画図」に示した緑地(残地)以外の全
ての区域とした。
3) 予測結果
図5-6-13(p.317)に示すように、重要な種の分布位置に改変区域を重ねあわせ、事業
による改変状況を予測した。
その結果、事業区域内の改変区域に分布する種は、ヘビノボラズ、イシモチソウ、トウ
カイコモウセンゴケ、アイナエ、カワラハハコ、コガマ、イガクサ、マツカサススキの8
種であった。
それぞれの種の予測結果は表5-6-24に示すとおりであり、コガマ、マツカサススキ、カ
ワラハハコの3種については、事業区域及びその周辺での種の存続が危ぶまれると予測す
る。
また、ヤマジノギクについては、事業区域内の非改変区域で確認しているが、工事中の
踏圧や今後の植栽による淘汰等の影響を受ける可能性があると予測する。
その他の重要種については事業区域及びその周辺での種の存続は可能と予測する。
315
表5-6-24
重要な植物種への影響予測
確認地点数(個体数)
種名
事業区域内
予測
改変
区域
非改変
区域
コガマ
1(4)
確認
なし
確認なし
マツカサススキ
1(7)
確認
なし
確認なし
カワラハハコ
1(8)
確認
なし
2(11)
ヘビノボラズ
イシモチソウ
トウカイコモウセンゴケ
1(10)
2(20)
1(20)
1
事業区域外
12(200 以上)
7(400 以上)
12(1,800 以上)
1(10)
2(20)
2(20)
2(30)
確認
なし
1(10)
ヤマジノギク
確認なし
1(4)
確認なし
オオミズゴケ
ヒモヅル
ヤチスギラン
コバナワレモコウ
ヒナノカンザシ
クロミノニシゴリ
シソクサ
カワヂシャ
サワシロギク
マルミスブタ
ミズギボウシ
ヒナザサ
ウンヌケモドキ
スズメノコビエ
コハリスゲ
マメスゲ
コアゼテンツキ
ケシンジュガヤ
マネキシンジュガヤ
サギソウ
コバノトンボソウ
トキソウ
確認なし
確認
なし
生育を確認
アイナエ
イガクサ
(100 以上)
6(600 以上)
2 種とも改変区域の造成跡地の縁に
形成されている 1 か所の湿地に生育
しており、改変区域内個体が消失に
より、事業区域及びその周辺での種
の存続が危ぶまれると予測する。
なお、2 種とも平成 13 年の既往調査
において周辺区域で確認されてい
た。
改変区域の造成跡地で確認した 1 か
所 8 個体が消失する。
また、事業区域外でも 2 か所 11 個体
を確認しているが、そのうち 1 か所
(10 個体)は事業区域に隣接してお
り、事業の影響を受ける可能性があ
るため、事業区域及びその周辺での
種の存続が危ぶまれると予測する。
改変区域における少数の生育地が消
失するが、事業区域外にも個体数が
多く、まとまりのある生育地が存在
するため、事業区域及びその周辺で
の種の存続は可能と予測する。
6(180 以上)
316
確認地点は非改変区域であるが、植
栽による淘汰等の影響を受ける可能
性がある。
改変区域内における生育を確認して
いないため、事業による影響を受け
ず、種の存続は可能と予測する。
図5-6-13
重要な種への影響予測
317
(4) 照明による影響
1) 予測内容
事業による照明が植物の生育環境に与える影響を予測する。
2) 予測方法
照明計画の内容を踏まえ、照明による影響を定性的に予測する。
① 予測地域
事業区域及びその周辺とする。
② 予測対象時期
施設の供用後(Ⅲ期工事完了以降)とする。
③ 予測条件
事業の実施に伴い改変する区域は、「土地利用計画図」に示した緑地(残地)以外の全
ての区域とした。
3) 予測結果
事業区域の東側は、現状でも国道、住宅地、24時間営業の商業施設、工場、その他の人
為的な光の影響下に位置しているため、施設の供用による光環境の変化量は小さい。事業
区域の西側の残地森林は、林縁部に接する法面において低木林(ソデ群落)を形成するほ
か、照明機器の選定にあたっては、下向きで過剰光を抑制したものを極力採用する計画で
あることから、残地森林内への過剰な光の流入が抑制され、林内の著しい環境変化は生じ
ないと予測する。
これらのことから、植生及び重要な植物群落と重要な種の生育環境は持続すると予測
する。
318
5-6-3
環境保全措置
本事業で実施する環境保全措置は表5-6-25~表5-6-28のとおりである。
表5-6-25
項目
植生の量的変化による影響を低減するための環境保全措置
検討の視点
環境保全措置の内容
緑地の保全
[計画段階]
・事業区域内の西部及び北部にまとまりのある残地森林
を保全することにより、鏡山山麓の樹林に対する緩衝
緑地としての機能を持続させる。
・残地森林として事業区域面積の約 20%の樹林を保全
し、緩衝緑地の育成とあわせて約 25%の緑地を確保す
る。
緩衝緑地の育成
[計画段階]
・道路及び駐車場等の人工物との境界にあたる緑地(残
地)林縁部は、種子吹き付けや低木によるソデ群落の形
成等で緑のフェンスを形成する。
・種子吹き付けの種子選定にあたっては、法令等で定めら
れる特定外来種に十分留意する。
-
-
計画段階か
らの配慮
予測評価の
結果を踏ま
えて実施
表5-6-26
重要な植物群落及び植物種への影響を低減するための環境保全措置
項目
検討の視点
環境保全措置の内容
計画段階か
らの配慮
-
-
貧栄養湿地の保全
[設計段階]
・貧栄養湿地の改変面積を少なくするため、地形に沿った
造成計画により、造成法面の出現割合を削減する。
・貧栄養湿地の水源を絶たないよう、事業区域内西部の樹
林を非改変区域として保全する。
・貧栄養湿地に接する造成法面の下部に排水溝を設置し、
現状の環境が変化しないように管理する。
[工事中]
・事業区域内に残存する貧栄養湿地及び周辺区域をロープ
で囲い、工事の際の立入り禁止区域とする。
事後監視
[工事中・供用後]
・造成法面の緑化植物が貧栄養湿地に侵入しないように管
理する。
・貧栄養湿地の成立する現状の日照状況を維持するため、
定期的な監視と植生管理を継続して、高茎草本や木本植
物の繁茂を防止する。
予測評価の
結果を踏ま
えて実施
319
表5-6-27
重要な植物種への影響を低減するための環境保全措置
項目
検討の視点
環境保全措置の内容
計画段階か
らの配慮
-
-
重要種の保全
[工事中]
・改変区域に生育する重要種のうち、コガマ、マツカサス
スキ、カワラハハコの 3 種については、移植を実施す
る。移植計画の詳細は資料編(資 223 参照)に示す。
・ヤマジノギクの確認地点は非改変区域であるが、植栽工
事等による影響を受けないように、生育地点をロープで
囲み、植栽や踏圧を避けるように配慮する。
事後監視
[工事中・供用後]
・移植後の生育状況についてモニタリング調査を実施す
る。
予測評価の
結果を踏ま
えて実施
表5-6-28
項目
照明による影響を低減するための環境保全措置
検討の視点
緩衝緑地の育成
計画段階か
らの配慮
予測評価の
結果を踏ま
えて実施
環境保全措置の内容
表 5-6-25参照
照明計画による影
響の低減
[計画段階]
・照明の採用にあたっては、過剰光を抑制し、下向きで光
を極力制御した器具を極力採用する。
照明配置計画によ
る影響の低減
[設計段階]
・植物の生育環境への影響を低減するため、周辺の緑地に
照明が直接あたらないような配置計画とする。
320
5-6-4 評価
(1) 植生の量的変化
事業区域面積の約79%にあたる14.14haを改変するため、植生としてはアカマツ-トゲシ
バリ群落典型下位単位、アカマツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下位単位の一部が縮小
すると予測した。
しかし、本事業では、事業区域面積の約20%の樹林を残存(保全)する計画とし、改変
区域内の主な植生単位であるアカマツ-トゲシバリ群落コシダ下位単位及び典型下位単位
や、アカマツ-モチツツジ群集ウワミズザクラ下位単位等の植生単位の全ては改変しない
よう努めている。
以上のことから、本事業による影響は最善の方法によりできる限り低減できていると評
価する。
(2) 重要な植物群落への影響
重要な植物群落として抽出した、「湿地群」(まとまりのある貧栄養湿地群落)はすべ
て事業区域外にあり、事業による水分条件の変化も無いため、影響を受けないと予測した。
また、事業区域内には、規模が小さく、まとまりを欠いているため重要な植物群落とし
なかった貧栄養湿地群落が点在しており、事業の実施により、その一部は消失すると予測
したが、事業区域内の消失する群落面積は地形状況等を勘案し、極めて小規模に留めてい
る。
なお、貧栄養湿地群落は踏圧による影響を受けやすいので、事業区域内の同群落につい
ては、周辺を含めてロープで囲い、工事の際の立入り禁止区域とし、残存させる貧栄養湿
地群落では、高茎草本や木本植物の繁茂を防止するため、事後監視を行う。
以上のことから、本事業による影響は最善の方法によりできる限り低減できていると評
価する。
(3) 重要な植物種への影響
事業区域内に生育する重要な植物のうち、コガマ、マツカサススキ、カワラハハコ、ヤ
マジノギク以外については、事業区域及びその周辺での種の存続は可能と予測した。
コガマ、マツカサススキ、カワラハハコの3種については、事業区域及びその周辺での
種の存続が危ぶまれると予測されたが、移植を実施することで種多様性の低下を低減する
措置を図る。移植計画の詳細は資料編(植物)(資223参照)に示すとおりである。
また、非改変区域で確認しているヤマジノギクについては、工事中の踏圧や今後の植栽
による淘汰等の回避するため、生育地点をロープで囲み、影響を受けないように配慮する。
以上のことから、本事業による影響は最善の方法によりできる限り低減できていると評
価する。
321
(4) 照明による影響
供用後の事業区域の東側については光環境の変化量は小さく、西側の残地森林について
は、林縁部に接する法面において低木林(ソデ群落)を形成するほか、照明機器の選定に
あたっては、過剰光を抑制したものを極力採用する等の計画により残地森林内への過剰な
光の流入が抑制され、林内の著しい環境変化は生じないと予測した。
さらに、周辺の緑地に照明が直接あたらないような配置計画を講じる等、植物の生育環
境への影響の低減措置を講じていく。
以上のことから、本事業による影響は最善の方法によりできる限り低減できていると評
価する。
322
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