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微生物の細胞複製メカニズムに関する研究

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微生物の細胞複製メカニズムに関する研究
養成技術者の研究・研修成果等
1.養成技術者氏名:
木原 誠
2.養成カリキュラム名: 微生物の細胞複製メカニズムに関する研究
3.養成カリキュラムの達成状況: 次のプロジェクトへつながる十分な成果を達成した。
4.成果(A4版2枚程度)
<研究開発業務の概要>
RITE 微生物研究グループでは、コリネ型細菌が細胞複製抑制条件下で主要代謝系は維持する現
象を見出し、この機能を応用した新規バイオプロセスの開発を行ってきた。本プロセスは細胞の増
殖を抑制しているため高密な菌体をリアクターに充填でき極めて高い生産性(STY)と副生成物を
低く抑えることが可能である。現時点では、プロトタイプとして嫌気反応条件での反応により増殖
を抑制しているが、様々な有用物質生産に適応できる汎用リアクターを実現するためには、その増
殖抑制メカニズムを解明し、普遍的に細胞増殖を制御する必要がある。
細胞増殖制御を可能とする人為的制御法の開発にあたって、個々の細胞複製のステップで機能す
る遺伝子産物の解析が必須となる。昨年度までに、細胞増殖について分子生物学的知見の集積があ
る大腸菌をモデルとした、嫌気反応条件下のコリネ型細菌細胞増殖抑制モデルを提唱した。
今年度はこれまでの結果を基に、嫌気反応条件下の細胞増殖抑制と、好気培養条件下のビオチン
欠如による細胞増殖抑制について研究開発を行った。嫌気反応条件下細胞増殖制御では、最近のバ
イオフィルム研究の知見から、バクテリア細胞間の分子レベルの相互作用と、これまでの細胞増殖
抑モデルを相関づけるデータが集積した。好気条件下のビオチン欠如細胞増殖抑制について、増殖
抑制下の細胞内に自家蛍光焦点を観察し、大腸菌染色体分配に関与する MukFEB タンパク質の機能
的相同タンパク質の存在が強く示唆された。
これらの得られた成果を基に、すでに所属する研究機関では新たなプロジェクトが立ち上がって
おり、新しいプロジェクトの主要研究メンバーとして、微生物の細胞複製メカニズムに関する研究
を引き続き行っている。
<成果の概要>
a) コリネ型細菌の嫌気反応条件における細胞増殖制御機構についての検討
コリネ型細菌を反応容器内に高密度に充填し嫌気反応条件下におくことで、その主要代謝経路
を保持しつつ細胞増殖を停止することが知られている。昨年度までに、このプロトタイプの増殖抑
制法である嫌気条件下のコリネ型細菌について、顕微鏡観察による細胞形態観察と染色体 DNA の
局在観察を行い、個々の細胞が細胞複製のどのステップにあるか解析を行った結果、細胞複製の全
てのステップ、もしくはほとんどのステップで機能するタンパク質の機能阻害、例えば染色体 DNA
伸長反応阻害、染色体 DNA 分配阻害(分裂装置の異常)
、細胞壁の合成阻害などが細胞増殖を制御
する候補として挙げた。
また、
コリネ型細菌の DNA チップ解析データから DCW
(Division and Cell
Wall)クラスターに存在する大部分の遺伝子が嫌気条件下で発現低下が見られたことから、細胞分
裂と細胞壁合成の二つのイベントが共通のタンパク質複合体で制御されるという新規な増殖抑制制
御モデルを提示した。
最近の微生物学のトピックとしてバイオフィルム研究がある。バイオフィルム形成段階で、バク
テリアが個々の細胞間で固体を認識し遺伝子発現調節を行うことにより、集団としてのポピュレー
ションや形態変化を制御する例が数多く報告されている。コリネ型細菌のゲノム情報解析より、細
胞間の認識に必要とされる遺伝子の存在が明らかとなった。この知見は、高密度嫌気反応条件下の
コリネ型細菌が、細胞外酸素分圧の低下と局所的な細胞密度増加を検知し、未知のシグナル伝達経
路を活性化することで遺伝子発現制御を行っており、そのターゲット遺伝子として染色体 DNA 伸
長反応阻害、染色体 DNA 分配阻害(分裂装置の異常)
、細胞壁の合成阻害に関与する因子が考えら
れる。
ここで得られた知見は、コリネ型細菌が嫌気条件下で増殖を抑制する機構を解明する上で極め
て重要な基礎データであり、広くバクテリアに適用できる技術開発が可能となる。
b) コリネ型細菌のビオチン欠如培地における細胞増殖制御機構についての検討
古くからアミノ酸生産菌として用いられてきたコリネ型細菌は、培地中のビオチンを除くこ
とで細胞増殖が抑制されることが知られている。この現象について、顕微鏡観察による細胞形
態観察と染色体 DNA の局在観察を行ったところ、ビオチン欠如培地で細胞増殖を止めた状態
で細胞内に強い自家蛍光を発する焦点が観察された(図1)
。
図1 ビオチン欠如培地コリネ型細菌の顕微鏡観察像
同一視野の微分干渉像(左)と蛍光像(右)
蛍光像は、DAPI 染色像(青)と自家蛍光像(赤)の重ね合わせ
この細胞内自家蛍光焦点は、細胞の両極部分と細胞分裂面に局在し、細胞あたり 2∼4 個存在
することが分かった。またこの自家蛍光焦点は、ビオチンを含む通常培地による生育では観察
されず、ビオチン欠如培地による細胞増殖の停止と相関して出現することが明らかになった。
これらの結果は、大腸菌の姉妹染色体の接着、DNA 複製フォークの接着および細胞内の位置決
定に機能が証明されている、MukFEB タンパク質と極めて似通っている。ゲノムデータベース
解析によると、大腸菌 MukFEB の相同タンパク質はこれまで他のバクテリアで見つかってい
ない。今回見つかった自家蛍光焦点を分離精製し、構造を決定することで、好気条件下におけ
る細胞増殖制御のシステムを明らかにすることが可能となる。
5.成果の対外的発表等(平成16年度の成果を対象とする)
(1)論文発表(論文掲載済、または査読済を対象。論文のコピーを添付。
)
発表件数: なし
(2)口頭発表(フェロー本人が発表したものを対象。予稿集等のコピーを添付。
)
・ 平成 16 年 11 月 プログラム研究開発成果報告会(京都グランビアホテル)
「微生物集団系システム創成による革新的バイオ変換プロセスのための基盤技術の開
発」 (添付資料①)
・ 平成 16 年 10 月 プログラム研究中間評価(ぱるるプラザ京都)
「微生物集団系システム創成による革新的バイオ変換プロセスのための基盤技術の開
発」 (添付資料②)
発表件数: 2 件
(3)特許等(出願件数を記載。
)
特許等: 0 件
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