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99 (5)岡山情報ハイウェイ構想(岡山県全域) (1)名称
(5)岡山情報ハイウェイ構想(岡山県全域) (1)名称…岡山情報ハイウェイ構想 http://pref.okayama/kikaku/joho/joho.htm 所在地…岡山県全域 (2)岡山情報ハイウェイ構想の経緯 岡山情報ハイウェイ構想は、 「岡山県高度情報化基本計画」として1996 年 2 月に策定され、高度情報化 社会に対応した「快適で活力あふれる岡山」を実現するために、同年より岡山県が全県的に実施している 事業である。 岡山情報ハイウェイ構想は、県庁・地方振興局・主要出先事務所を結ぶ県庁 WAN を活用して、県民が 高速なインターネット環境を利用できる「県民イントラネット」を実現しようとするものである。 (3)組織と運営方法 96 年 10 月に設立された「岡山県高度情報化実験推進協議会」 (県内外の約 280 の個人、団体、企業等 が参加)が具体的なモデル実験事業の運営主体となり、その事務局には「株式会社岡山広域産業情報シス テム」があたっている。全体の統括は97 年4月に設置された岡山県企画部情報政策課が行っている。 [高速ネットワークの整備] 岡山情報ハイウェイ構想は、大きく分けて、県内インフラの構築とコンテンツ開発の二本柱で考えられ ている。県内インフラの構築では、行政目的で敷設される大容量の基幹回線を、「パブリックファイバー」 として県内のケーブルテレビ(CATV)網やインターネットサービスプロバイダ(ISP)等に開放、接続 することにより、広く県民が安価で高速なインターネット接続環境を利用できるようにすることを目指し ている。県民は、このパブリックファイバーに接続された接続業者を介することによってこれらを利用す ることができる。 (4)ネットワークの活用状況 [高速ネットワークの活用] 敷設された高速ネットワーク(岡山情報ハイウェイ)が医療・福祉、教育・文化、産業、行政等、県民 生活に密着したさまざまな分野で有効に活用されるよう、さまざまなモデル実験事業を行う。 [基礎的実験] 岡山情報ハイウェイにおけるインフラ整備の方向性と技術的な課題について「インターネットワーキン グ技術・コンソーシアム」により研究がなされている。 [CATV 接続実験] CATV 網を利用して岡山情報ハイウェイヘの接続を行うための実験が、県内各地域で行われる。 [地域イントラネット構築実験] 県内各地で、地域イントラネットとしての地域住民参加による町内会システムや行政高度化システムの 構築実験が行われる。 [医療・保健・福祉分野の実験] 病院・診療所の連携を行う病診連携システムや、遠隔医療、福祉ボランティアネットワーク構築などの 実験が行われる。 [その他の実験] 公立図書館ネットワーク、農林水産業支援システム、在宅勤務システム、電子商取引、遠隔教育、中小 企業地域イントラネットなど多様な実験事業が行われている。 [情報キオスクの設置] 「だれでもが利用できる情報ネットワーク環境の整備」を目的とし、インターネット接続環境を持たない 県民にもインターネットを利用してもらえるように、街頭型端末機「情報キオスク」を県内各地に設置し ている。特別な知識なしでもインターネットアクセスが可能なように、インタフェースにタッチバネルを 採用するとともに、音声によるガイダンス機能などを持たせている。 [岡山県ホームページ] 行政と県民とが情報共有・交換を行う場として、またクオリティの高い行政サービスの提供のために、 96 年 10 月から庁内全課室がホームページを開設し、そのそれぞれに電子メールによる窓口を設けて県民 とのコミュニケーションを図るとともに、各利用者が関心のある項目を記録して効率的に岡山県ホームペ ージを利用できるような仕組みを持たせている。 99 (6)ブラックスバーグ・エレクトロニック・ビレッジ(アメリカ合衆国バージニア州ブラックスバーグ) (1)名称:Blacksburg Electronic Village(BEV) http://www.bev.net 所在地…アメリカ合衆国バージニア州ブラックスバーグ (2)地域の特性と BEV 設立の経緯 [地域の特性] ブラックスバーグは、バージニア州にある住民約 36,000 人の大学町。農業、建築、工学の研究を専門 とするバージニア工科大学があり、住民の半数以上がバージニア工科大学生など大学関係者である。 [BEV 設立の経緯] 1980 年代の後半に、学者や大学スタッフから自分の住居から大学のネットワークにもっと容易にアクセ スしたいという要望が出され、大学の当局者は、地域の電話会社(ベル・アトランティック)、ブラック スバーグ市の通信委員会などと意見交換を重ねた。 92 年、ブラックスパーグ市長、バージニア・ベル・アトランティック社長、バージニア工科大学長の3 者により、コミュニティ全体をインフォメーション・ネットワーク化する「電脳村」のコンセプトが発表 され、BEV は実現に向けて動きだした。 93 年、BEV は大学のコーポレート・リサーチパーク内に仮事務所を設置し、月額 8.6 ドルを払えば、 だれでもインターネットに接続できるという宣伝を始めた。その後の5年間でコミュニティの住民の 83% がインターネットを電子メールその他の用途に使用するようになり、ブラックスパーグは世界で最もイン ターネット使用者の多いコミュニティとなっている。 現在も、BEV は電脳村のコンセプトを拡大させており、同地域の他のコミュニティが同様な考えを推進 するのをサポートしている。またバージニア工科大学は、3つの州の150 万人をカバーする無線帯域ロー カル・マルチポイント・ディストリビューション・サービス(LMDS)の商業免許を受けた。大学は今後 5年問に、このラジオ電波を各種の教育、商業、行政に活用できるよう開発を進める計画を立てている。 (3)組織と運営方法 [情報基盤] 住民がインターネットにアクセスするには、電話回線とモデムによるダイヤルアップと、専用線を介し て直接接続する方法の二通りがある。市役所、図書館、寮、オフィスなどはイーサネットで接続されてお り、イーサネット組み込み済みのアパートや貸ビルも多い。 [BEV 公社] ブラックスバーグ市、バージニア工科大学、バージニア・ベル・アトランティックの3組織による BEV 公社が運営に当たっている。 また、これら3組織は協働作業により、BEV のコンセプト実現に貢献している。ベル・アトランティッ クは、通信インフラの提供、アクセスポイントヘの機器の設置、学校や公共施設のネットワーク整備など、 バージニア工科大学は、BEV ソフトウェアの開発と提供、技術サポート、ネットワーク管理の支援、ブラ ックスパーグ市は、サイバー上への行政情報やタウン情報の提供、地元企業への参加要請、地元企業のオ ンライン接続への補助金交付、広報活動などを行っている。 (4)情報ネットワークの活用状況 [電子メール] ブラックスバーグでもっとも利用されているのは電子メールである。バージニア工科大学が1台のメー ル・サーバでコミュニティと大学の両方に電子メールの配信サービスをしているが、忙しい目には 25 万 通の電子メールが処理され、配信される。 またブラックスバーグの住人は、「時間を買う」ために電子メールを利用している。ビデオレコーダで テレビ番組を録画すれば後で時間のあるときにゆっくり見られるように、電子メールなら都合のいいとき に友人と文通できる。電話はかかってくる時間をコントロールできないが、電子メールならコントロール できるというのである。 [ビジネス] BEV のビレッジモールには 300 を超えるオンライン・ショップが出店しており、カテゴリー別、アル ファベット順に検索できるようになっている。レストランは、その日の特別メニューやクーポンを、不動 産業老は売り家の写真を、食料品店は今週の特売品を載せている。オンラインで食品を注文すれば、その 日のうちに家まで届けてもらうこともできる。BEV に接続している企業は確実に売り上げを伸ばしてい 100 る。インターネットを利用することで、地元だけでなく国内外からの顧客を獲得した店もある。 またサー、ビス・プロバイダや WWW 製作業者など、ネットワークに関係した新規ビジネスが地元に 立ち上がっている。 [行政情報] ブラックスパーグ市は、電子メールによる市民からの意見や問合せに対し、24 時間以内に返事を書くこ とを目標にしている。市役所からは、市議会の議事録、道路の交通止め、公共料金表、緊急災害の対応、 求人情報、リサイクル、ごみ収集といった情報が発信されている。 市役所でよく利用される申請や手続きは、オンラインで 24 時間受け付けてもらえる。ポリス・バケー ション・チェック(後述)、ピクニック場や公共施設の予約、警察レポートの請求、特別ゴミ収集の請求 などである。また、さまざまな登録や料金の支払いがオンライン上でできるようになった。飼い犬の鑑札、 上下水道料金の支払い、接続料金、車の登録、事業税、建築許可などである。 あるテーマについて計画をサイバー上で公開し、電子メールやオンライン・チャットで直接、住民から 意見を求める試みも始まっている。 [ポリス・バケーション・チェック] 住民が家を留守にするとき、オンラインで出発、帰宅の日時を明記して、留守中の巡回を警察に申し込 むことができる。 [学校] ブラックスバーグの学校に通う子どもたちは、自分の宿題や作品を定期的に WEB 上に提供し、世界中 の人が閲覧できるようにしている。それについて外国からコメントが返ってくることもある。子どもたち は世界中の電子メール友だちと日常的にメールのやり取りをしている。 マーガレット・ピークス小学校では、4年生がインターネットを使って、合衆国と他の国の家族が持つ 消費財の量を比較した。他の小学校でも、子どもたち自身がインターネットで国の内外から情報を集め、 チャートにして自分たちの勉強に利用することが多く行われている。 (5)BEV の課題と展望 ブラックスバーグにおけるネットワークの使用が拡大するにつれて、地域交流の効率を高め、また接続 のコストを引き下げ、革新的な地域サービスの成長に拍車をかけるために、ネットワークの交換と管理を 行う新しいレイヤが必要であることが明らかになってきた。 たとえば、ブラックスバーグの中で E メールをやり取りするために国際的なインターネットを使用する 必要はない。E メールはひとつの例だが、サービスがマルチメディアやビデオのような広帯域を必要とす るようなものになってきたために、町の一方から他方への文吉の配達といったトラフィックが無視できな い問題となっている。現在のところブラックスバーグのメールはワシントンを経由して配達されているの で、50%ぐらいのパケット・ロスが出ている。 この問題を解決するには、地域のパケットは地域で処理し、全国的なインターネットのバックボーンを 使用しない地域 NAP(ネットワークアクセスポイント)をつくり、全国的なネットワークに載せるのは 実際に地域を離れるトラフィックに限るようにすることである。NAP を設置すれば、地域サービスを提 供するためにインターネット・バックボーンを持つ必要がなくなる。また小さな地元企業が、地域コミュ ニケーション・サービスの提供を行うというような新しいビジネスの可能性も期待できる。 101 4.デジタルアーカイブ事例 (1)京都市デジタルアーカイブ 伝統工芸とデジタル技術との融合、あるいはデジタルアーカイブの活用により、地域を活性化しようと いう動きが活発になってきた。従来、情報技術とは縁遠かったこれら伝統芸術の分野においてデジタル化 の波が押し寄せたことから、新たなデジタルコンテンツとしての価値が見出され、地域に根差す伝統文 化をデジタルアーカイブ化することで地域振興につなげようとの試みが始まっている。 伝統文化・産業の厚い蓄積をもつ京都では、京都商工会議所を中心とするデジタルアーカイブ推進機 構の設置など、京都の持つ文化資産をデジタル技術で蓄積し、産業・文化等の分野で活用を目指して地 場産業や大学によるデジタルアーカイブの取り組みが進んでいる。 京都におけるデジタルアーカイブ事業の推進母体となったのは、京都市と京都商工会議所が中心とな って 1998 年 8 月に産学官の 84 の企業・組織が集まって設立された「京都デジタルアーカイブ推進機 構」である。同推進機構では、デジタルアーカイブの進行に向け大規模な見本市や国際シンポジウムを 開催してきたが、時限組織としてその使命を終え、推進機構の第 2 ステージとして研究拠点となる京都 デジタルアーカイブセンターが 2000 年秋に開設された。 京都デジタルアーカイブ研究センター概要 ◇主旨 京都の優れた文化資産をデジタルアーカイブにより蓄積保存し、次世代への文化の継承を図ると共 に、蓄積されたコンテンツを発信、 活用することによって、21 世紀に向けた新文化の創造と新産業 の 創出を図るため、産官学連携のもと、デジタルアーカイブシステムの ハード、 ソフトの研究開 発を行う研究センターを設立する。 ◇目的 本研究センターは、京都デジタルアーカイブ推進機構の第 2 ステージとして設立するものであり、会 員企業が(財)大学コンソーシアム京都の加盟大学と共同して 社寺仏閣、美術館・博物館、伝統産 業事業者等との連携のもとに、 1 デジタルアーカイブ技術・機器等の展示 2 デジタルアーカイブの蓄積・配信・活用に係る実証実験 3 デジタルアーカイブ関連事業との共同研究 4 京都デジタルアーカイブの将来構想の策定 5 人材育成 6 市民に対する啓発 の事業に、国からの事業受託及び会費収入を財源として取り組むものである。 この京都コンテンツの蓄積・発信・活用の全分野におけるデジタルアーカイブシステムの研究開発及 び実証実験等の研究事業の成果を通じて、 京都がデジタルアーカイブの中核都市となることを目指 すものである。 研究センター設立のメリット 1 日本 文化的、伝統的資産の宝庫である京都コンテンツ−日本文化−の海外への紹介 文化領域においても境界無き社会に変貌していく我が国のアイデンティティの再確認 2 京都 京都の文化、産業、学術等の活性化 観光事業の新展開、伝統産業の新事業システムへの再構築 3 京都市民 京都文化の次世代市民への継承 デジタル化に対する市民意識の向上 102 ◇京都の伝統産業における動き 伝統工芸を手がける事業者が自らデジタルアーカイブの可能性を探る動きもある。京友禅・西陣織・ 京繍などの伝統産業約 80 事業者が 98 年 9 月に設立した「京都市染織デジタルアーカイブ研究会 (KSDA)」では、伝統産業におけるデジタルアーカイブの事業性を研究し、その事業化や商品化に向 けた仕組み作りに乗り出している。 99 年 6 月には、京都市が進める「京都市デジタルアーカイブ事業」の一環として、KSDA とデジタ ルアーカイブビジネスを展開するイメージモールジャパン社がプロジェクトチーム「KyoDOS(京ど す) 」を組織してデジタルアーカイブ商品化事業に着手している。KyoDOS では、西陣織や京友禅の染 織デザインをデジタルデータ化し、文具やインテリア用品、ファッション商品などのデザインソースと して活用するなど、伝統意匠を活かした商品群の開発に取り組む。 また、今後のデジタルアーカイブビジネスにおいて考えられるのが、デジタルアーカイブのネットワ ーク上での流通である。しかし、現在のところデジタルコンテンツのネットワーク流通に関しては不正 な複製が行われる可能性が高く、著作権保護が十分担保されている状況にはない。こうした課題をクリ アするため、KSDA では NTT 西日本と共同でプロジェクトチーム「京都プラネット」を組織し、デジ タルコンテンツ保護・流通の研究開発に乗り出している。京都プラネットでは、99 年秋からオンライ ン上で染織意匠(デザイン)の流通(売買や閲覧)実験を開始しており、これらの実験を通して、ネットワー ク上アーキテクチャの開発、高度統合セキュリティ型デジタルコンテンツ保護・流通方式の確立、など の実用研究を進めるとしている。 103 (2)石川新情報書府 石川県は加賀百万石と称された江戸時代に培われた伝統文化を継承している。石川新情報書府は、こ れらの伝統文化資産をマルチメディア技術を駆使してデジタル情報化し、次世代に保存、継承するとと もに、石川県の個性を世界へ情報発信すること、さらには情報通信産業、伝統文化関連産業の振興を目 指したプロジェクトである。 ◇事業の背景∼歴史的背景に支えられた石川の文化資産∼ 石川県では江戸時代より加賀百万石文化が栄え、加賀藩の歴代藩主が美術工芸を推奨してきた歴史 が受け継がれ、数々の伝統工芸、伝統文化が今もくらしの中に息づいている。 五代藩主・前田綱紀の時代(1643-1724)、加賀藩は諸国の名工を招き、工芸品の製作を行なう工芸 製作工房「御細工所(おさいくしょ) 」を金沢城内に設けた。また工芸諸分野の製品や技法を比較対 照するため、全国各地から様々な工芸品や標本を集め「百工比照(ひゃっこうひしょう) 」と呼ばれ る一大コレクションも整備していた。こうした加賀藩の取り組みに対し、幕府の政治顧問だった新井 白石は「加賀は天下の書府なり」という言葉を残したと言われている。 今日でも石川県では、輪島塗、山中漆器、九谷焼、加賀友禅、金沢箔(金箔)など国指定の伝統工 芸品10種のほか数多くの伝統工芸が産業として営まれ、これら工芸品の一大生産地として広く世界 に知られています。また「加賀宝生」といわれる能楽や、邦楽・舞踊など、独自の発展を遂げた数々 の伝統芸能も受け継がれてきた。様々な史跡や名勝など歴史文化財も数多く残る石川県は、日本を代 表する伝統と文化の地である。 ◇事業の目的 ① 文化資産の保存・継承し、石川県の個性を情報発信 「石川新情報書府」構想は、国際的なデジタルアーカイブの流れに対応して文化資産の保存・ 継承に寄与するとともに、文化資産という石川県の個性を情報発信することを目指す。 ② 情報通信関連産業の振興 デザイン、出版・印刷、映像・音楽、コンピュータ関連などの情報通信関連産業が、連携し、 最先端のデジタル技術を駆使し、高品位なマルチメディアソフトを製作することにより、技術を 向上させ、石川県の基幹産業として発展することを期待する。 ③ 伝統文化関連産業の振興 石川県の伝統文化を世界に向けて情報発信することで、伝統文化関係者間の交流を促進する。 さらには情報通信技術を活用することで、新たな受注機会の開拓や新たな作品の発案などを期待 するとともに、伝統技術の保存・継承につながることを願う。 104 ◇石川新情報書府構想事業 平成8年度から行なわれているこの事業のソフト制作は、石川県内のマルチメディア関連産業・団 体・個人に対して広く企画公募が行なわれる。 そして各ソフトテーマ別に、ソフト制作企業グループを形成して制作にあたることを原則とし、募 集・応募・審査は公的なマルチメディア専門機関に委託され事業が展開されている。 また、ソフト制作企業グループへは、この事業を通じて、技術の向上のための研究開発や人材の育 成を行なうことが期待されている。 (「石川新情報書府」ホームページ資料) 105 (3)大阪市・デジタルシティ構想 大阪市のアメリカ村および南船場周辺では、大阪デザインのファッションベンチャー、ITコンテン ツ・ソフト制作のベンチャー企業およびアミューズメントの集積が見られ、新しい都市文化の拠点形成 が進んでおり、同地区を対象に(財)大阪科学技術センター、関西経済連合会によりデジタルシティ構想 の検討が進んでいる。 ◆デジタルシティ構想とは情報系ベンチャー企業等が集積する象徴的地域づくりと、その継続的な活性 化活動・体制を確立するためのプロジェクトづくりにより、都市型新産業の創出、大阪の中心市街地 の活性化を目指すものである。 若者の文化があふれるアメリカ村には、約 2,000 件のショップなどがひしめき、休日ともなれば30万人 もの人が訪れるといわれている。一方、アメリカ村に接する南船場、堀江、新町周辺には、ITを活用す る事業所(個人事業主も含めて)が644社集まっていることがわかってきた。 大阪都心部には、新大阪 や南森町周辺など同様の集積地があるといわれているが、対象エリアは、高密な商業集積と交通利便性、 ビジネス街に近接する立地と、他にはないポテンシャルを有している。デジタルシティ構想研究会では、 この現状とポテンシャルに既存の産業集積を維持・促進する地域のしくみを織り込むことで、都市型新産 業が創出し持続的に活性化するまちづくりが可能になるのではないかという考えのもとに、調査研究活動 を行っている。 ■基本的考え方 モデル地域への着目 ? 都心の新しい成長地域 ◇ モ デ ル 地 域 に お け る 地 域 I T 企 業 の 初 期 集 積 −全国第5位レベルの集積 地域IT企業集積ビルの存在 都心ならではの豊富な地域資源 ◇IT産業集積地としての発展の可能性 ◇構想実現に向けた課題 ■地域IT企業の交流機会が必要 ■構想のプロモーションが必要 ■シンボル・ビルによる情報発信が必要 ■さらなる成長・発展のしかけが必要 構想の基本的考え方 ●「デジタルシティ構想」 (以下、DC構想)は、地域に集積する IT 企業の芽を発掘しながら交流を促進し、 リアル&サイバーの双方からビジネスコミュニティの形成を目指すとともに、地域 IT 企業の活動を支え地域 のシンボルとなるインキュベータ的要素を持つインキュベータ・シンボルビルの整備を提案することによっ て、IT産業初期集積地の成長を促進する。 (ファースト・ステージ) ●さらに、IT産業の初期形成が実現されてきた段階では、地域資源を活かした実証実験の推進等によりIT産 業集積地の継続的発展を促進する。 (セカンド・ステージにおける地域資源の活用) ●ファースト・ステージ、セカンド・ステージを通じてIT産業集積地の継続的発展を目指し、対象地域におけ る「都市型新産業の創出」 「都市活性化の実現」 「デジタル・ソリューション拠点の形成 」の実現を図る。 106 構想推進の考え方 構想推進主体 構想に賛同 する公的機関 環境整備等 自治体・ 関係機関 地域IT企業交流組 識 ( 新 設 ) 会員メーリングリス ト 大小の交流会 DC構想ウエブサイト 支援・コーディネート 大阪科学技術センター (情報通信部会) 107 構想に賛同する 民間企業 連携・協働等 構想に関心の高い 民間企業 (4)岐阜県大垣市を中心とするエリア(岐阜県スイートバレー構想) 岐阜県では、大垣市に頭脳育成のための「IAMAS」(県立情報科学芸術大学院大学(修士)、国際 情報科学芸術アカデミー(専門士) ) 、人材・産業インキュベートのための「ソフトピアジャパン」を整備 し、情報価値生産の「情場」づくりを進めている。 ◇岐阜県スイートバレー構想 岐阜県は美しい自然(Sweet Green) 、きれいな空気(Sweet Air) 、水(Sweet Water) 、長良 川などの清流にすむ鮎(Sweet Fish)、近代養蜂発祥地(Sweet Honey)といったさまざまなスイ ートなものに恵まれ、その豊かな自然、地理、歴史、文化、都市の資源などから首都機能移転先の候 補地にも選ばれた、日本のスイートスポットである。 20 世紀半ばに発祥したアメリカ・シリコンバレーでは、多くのベンチャー企業が覇を競い、IT 産業 の誕生により新世紀の扉を開きました。1990 年代には、ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストン、 シンガポール、ノルウェーなど世界の多くの場所で新産業集積地域が形成されつつある。 スイートバレーとは、岐阜県の南部に広がる濃尾平野を流れる木曽三川流域(Valley)を中心とし た地域に現在集積している、ソフトピアジャパン、VR テクノジャパンなどの情報通信・マルチメディ ア分野の研究開発拠点、ハイテク産業、教育機関や商業複合施設などの資源を結集して、IT 関連企業、 コンテンツビジネスの一大集積地を形成し、世界に誇る情報価値生産の場「情場」づくりをめざす構 想である。 ●岐阜情報スーパーハイウェイ計画 岐阜県では、県内全域をカバーする光ファイバー網「岐阜情報スーパーハイウェイ」の整備を進めている。 この「岐阜情報スーパーハイウェイ」を民間に無料で開放することにより、2002 年までに高速大容量の通 信サービスを一般的な水準より3割程度安く(立地・場所により差はあり)スイートバレー地域に立地する 企業に提供する予定である。 108 ①ソフトピアジャパン(大垣市) 岐阜県では、マルチメディア産業を次世代の基幹産業と位置づけ、新産業の育成や地域産業の高度化、 さらには、医療・福祉・教育など県民生活とのかかわりの深い民政分野の情報化を目指し、国際的なソ フトウェアの研究開発拠点として岐阜県大垣市に「ソフトピアジャパン」が建設された。 このソフトピアジャパンでは、国際ソフトウェア・コンプレックスの中核センターとして日本におけ る情報化推進の一翼を担い、マルチメディア関連の人材の育成・確保、マルチメディアなどに関する先 端的な研究開発の支援など4つのコア機能を実現する岐阜県版シリコンバレー(スイートバレー)づく りを、産学官が三位一体となって進めている。 現在では、センタービルを中心に快適な環境を整え、全国から研究開発型企業が集積しつつあり、 「国 際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)」や「VR テクノジャパン」とともに「高度情報基地ぎふ」の中核と しての役割を担っている ②国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS) (大垣市) 時代を先導できるマルチメディア文化を創造し世界へ向けて情報発信するメディアマスターを育成 するアートアンドメディアラボ科と、実践的な技術を持つマルチメディアクリエーターやメディアエン ジニアを育成するメルチメディア・スタジオ科に加え、2001 年4月に設置された大学院大学からは、 創造性豊かな人材がソフトピアジャパン入居企業等へ供給されている。また、企業との共同研究開発を 通じた人材の育成を行っている。 ③テクノプラザ (各務原市) テクノプラザは、VR技術やロボット技術など、科学技術に関する各種研究開発機能が集積する研究 開発拠点として、岐阜県各務原市に整備されました。大垣市のソフトピアジャパンと並び、IT関連企 業等が集積する岐阜県南部に広がる「スイートバレー」の中核拠点である。 21 世紀型モノづくりの拠点として、岐阜県科学技術振興センターを中心に、 「ITとモノづくりの融 合」による産業の高度化、情報化及び新産業の創出を推進している。 ④連携ネットワーク 産業や経済、文化、生活などあらゆる分野において、情報化が進んでいる。しかし一方では、地域間 の情報格差、情報化社会で活躍する人材の育成など、諸課題もある。スイートバレーでは国内外の有力 な大学や研究機関との交流協定など知的インフラを活用し、産・学・官が三位一体となり、新たな価値 を生み出す高度情報化社会の形成を目指している。 ・ソフトピアジャパンにおける慶應義塾大学との連携 情報新時代をリードする、世界に開かれた高度な情報産業集積拠点を創造 ・DPS プロジェクト(ドコモ・パナソニック・ソフトピアジャパン共同研究開発) モバイルを活用した福祉・医療及び行政サービス等に関する共同研究 ・テクノプラザにおける早稲田大学との連携 地域産業への知的支援方策の検討 ・岐阜薬科大学、東京農業大学、名城大学との連携 研究開発力の強化を目指し、大学との連携大学院協定を進めています。 ・海外直結戦略と「グローバル・ヴィレッジ(地球村) 」構想 国と国との垣根を越えた1つの共同体の構築が目的 ・ソフトピアジャパン・グローバルネットワーク構想 県内産業を世界に通用する産業に育成するために、国際的取引を支援 ・国際ネットワーク大学構想 IT を活用し、国内外大学と連携 109 5.検討委員会議事録 (1)第 1 回検討委員会議事録 〇開催日時:平成13 年 11 月 26 日(月)15:30∼18:30 〇場 所:関西文化サロン「桃の間」 〇出席者:(検討委員) 京都橘女子大学 文化政策部教授 端信行 奈良大学 文学部教授 西山要一 吉本興業株式会社 田澤紀子 (オブザーバー) 関西文化学術研究都市建設推進室室長 山田篤司 社団法人関西経済連合会事業推進部主任 梅村その子 (事務局他) (財)関西文化学術研究都市推進機構総務企画部長 鍛冶舎康昭 (財)関西文化学術研究都市推進機構事業推進部調査役 中井克巳 (財)関西文化学術研究都市推進機構事業推進部調査役 高崎義邦 (有)創造計画研究所代表 宮田治 (有)創造計画研究所 宿院佳子 [議事要旨] (1)本検討会の主旨 鍛冶舎:インターネットをはじめとするIT情報技術が一般市民に身近なものとなってきた。歴史風土に 育まれてきた地域芸術文化を一挙に世界に発信することで地域の活性化が図れないか。箱ものをつくった けれどもうまく発信されていないということもIT技術を使い込んで一気に活性化するというモデル的な イメージを作りこめないかと考えている。方策、提言をこの委員会でまとめてほしい。セカンドステージ プランで文化を担当されていた端先生に今回のとりまとめを、文化と情報技術を奥野先生、文化財の保存 を西山先生、地域活性化を吉本興業さんにお願いしています。 (2)委員長挨拶・検討委員の紹介 端:今回、文化は広く取り扱っていく。文化財∼文化芸術∼地域文化活動というあたりまで視野を広げて 進めていきたい。 西山:私は保存科学が専門です。保存科学では、合成樹脂による保存措置やCTスキャンなど最先端科学 も利用している。一方ではわたしどもの分野ではIT、デジタルアーカイブによる検索システムがある。 これは便利だが、やはり実物をみなければならない。実物をみて将来どう生かすか、何を伝えるかと、ど う役立てていくかを創造することが大切だ。そういう意味で今回のテーマに興味がある。 田澤:いいアイデアになるものができればと考えている。 山田:活性化にはいろいろなパターンがある。地域状況に応じた活性化がある。一挙にグローバルという のはともかくとして、地域活動を起こすことも文化という観点がある。そのような初歩的な段階からIT 技術活用があれば今までとは違った展開が考えられる。確かに資源があるにこしたことはないが、資源が ないと思っているところが自己実現をするために外から認めてもらう、その手段にITがあるのではない か。状況に応じたパターンが描ければありがたい。 (3)作業企画書(案)について <宮田:資料説明> 110 (4)意見交換 山田:p8 の活性化区分とp11 の活性化区分が違っている。 宮田:最初の仮説で(ケーススタデイ対象は)文化庁から文化財の保存継承を強く打ち出したものを入れ て欲しいと伺っていました。事務局議論の中で産業育成から考えると文化産業創出型のほうがいいのでは ないかという話があって、おおまかに伝統文化に着目したものと産業育成に着目したものがケーススタデ ィ対象としてあると。 端:p7 のほうがつながりやすいのではないか。地域資源、地域課題がどんなものかで後の動きが変わっ ていくという意味でp11 につながる。 鍛冶舎:p8 の地域活性化の 6 区分とp9以降がどうつながるのか?p8の 6 区分はp7の地域資源、地 域課題の図とどこかでうまく整合がとれていますか。 宮田:p8で 6 区分に分けているのですが、p9,10 で目的が複合している。そこでポイントをどこにおく かになる。p11 の分け方は①伝統文化継承型がp8 の③地域文化の継承・発展を一番強調している。②文 化産業創出型というのがp8 の④地域産業の活性化に一番重点をおいた整理です。 鍛冶舎:p7 からすっとp11 につなげたほうが見やすい。 端:もうひとつ混乱があるのは、p11 の中小都市の抽出するときに区分類型が先にきていてわかりにくい。 人文的資源、産業的資源、人的資源も、自然系資源もすべてどの都市にもある。しかし、事例をみると取 り扱い方が少しずつ違う。だから活性化のタイプでは類型はでてくる。都市を考えたときに、こういう人 文、産業、人、自然で類型するにはムリがある。対象都市を何をもって選ぶかについては違った視点がい る。逆にいうと人文、産業、人、自然の要素がある程度そろっているということを見極めることが必要だ。 そろっていないとp7 の絵にはならないのではないか。p7 の絵の循環は内的循環を示している。ひとつ ひとつの円から外につながる可能性がある。どこか開放的な絵にしておく。外につながっていないと展開 がおこりにくい。基本モデルはp6 でよい。資源を地域で循環させる動きがないといけない。地域おこし という言葉より、コミュニティ活動、内部的活用が基本になる。文化財をコミュニティの中で熟知させる ということが意外に欠けている。そういう内部的活用でIT技術が今の事例でみると相当利用される。 鍛冶舎:成功事例の最初イニシャルの部分は何が原因でうまくいったのかというプロセスを今回調査しな ければならない。その後分類されることになる。その切り口をこちらが勝手に決めてかかってはおこがま しい。 端:そうです。面白そうだから調査してみようということで進めていかないと難しい。 鍛冶舎:その結果としてp11 にあるような伝統文化にこだわっていたというような整理ができる。 端:そうです。調査しているうちにまとまってくる場合もあると思う。 鍛冶舎:われわれは多少仮説をもちながら進めていくが、事例調査でどろどろとしたところを浮かび上が らせていく、成功への条件をさぐっていくことになる。 端:事例の村上町屋商人会はITがどこにかかるのか、あまり関わらないのでは。 宮田:ITに限定しただけでは事例がうまらなかったということです。 山田:この事例はまだ対外的にみとめてもらう段階にはいってなくて、その段階になればITが使えると いうことでとらえる。p8 活性化の区分がストーリーになっている。 ①地域コミュニティの活性化があって②人材育成がある、その玉となるのが③地域文化の継承・発展で④ 地域産業の活性化に使う、そして⑥地域の情報発信・交流が行われる。 端:今回の課題である情報技術がp8 の 6 区分でどのように出てくるのか。項目をふやして抜書きする。 わらび座ははじめからブロバイダーとして出発している、どの段階でネットワークが動き出すのかをつな げてみると面白くなる。最初の段階なのか産業の活性化からなのか?いろいろなタイプが出てくる。 山田:IT技術をもっている人がどのくらいいるのか。いなければ育てる。あるいは情報発見ステップが はじめにあるのかな。それがあると思う。 端:まさに循環だろう。 宮田:考え方として①コミュニティの活性化は大前提の目標でその手法として②文化③産業⑤環境という サブテーマがある。それがある程度熟したところで⑥情報・発信という組み立てでよろしいですか。 鍛冶舎:いや始めから同時スタートのものもある。そういった人たちがたまたまいれば一気にいくであろ 111 うし。いろいろなケースがある。成功しているというのはどういうケースなのかとうことがわからない。 それを知りたいところだ。 端:それを事例ヒアリングで調べるべきだ。 西山:事例資料はどのように入手されましたか? 宮田:インターネットです。 西山:それでは、非常に格好のいいことしか言っていない。ほんとにそれを作り出すまでのどろどろした ことが知りたい。 宮田:10 年前に地域活性化の事例を網羅的に収集しました。ヒアリングに行きますと成功したところでも 文献情報とは実態が異なっていました。リーダーシップのトラブルが多いようです。 西山:文化財保存会でもそうで、はじめリーダーがいて、ある程度までいくとおれは目立ちたいんだがそ れができないので足をひくと言い出す。目立ちたがりやがリーダーではうまくいかない。やはりたくさん の人が根気強くやっている団体に持続性があり、また活動も広がり成功している。 端:事例はある程度集めてみないと、どういうプロセスをふんでいくのかわかりにくいだろう。 鍛冶舎:失敗事例は調査できないだろう。 宮田:10 年前の 200 リストと現況をつけあわせてみると、消えているものが失敗事例と考えられます。 そうなるとほとんど消えています。 端:それはどこか火のつけ方が間違っているのだろう。行政がプランだけを広げるとか・・・。 山田:昔、リーダーが大事という話があったが最近は状況が変わってきているのだろうか。一人の人が先 頭を走りつづけるのはムリですね。また一つの問題だけでは人は続かないだろう。いろいろな話につなが っていなければ。つながっていくことによってそれぞれのいろいろな活動が広がっていくというようなパ ターンに持っていく。それがカギになるのではないかと思う。 宮田:そのイメージに近いのが宍道湖の例でしょう。クラブがひとつの縦糸、それだけでなく主婦団体や 町づくりの団体がある部分で接点をもつ、いろいろなクラスターが織り込まれる。 山田:琵琶湖も同じ形だ。県が湖沼会議などを開いている。環境保全という形に関連していろいろなこと につながっている。つながりをもたせることが活動を長続きさせ地域全体としても元気がでる。 端:ひとつは県が琵琶湖研究所をつくったことが大きかった。ダイレクトな県の顔ではなくて、研究所と いう皆で勉強しようという顔ができた。それが琵琶湖ネットをつなげていく。ひとつは新しく出てきたメ ディアにアプローチする面白さがある。そしてそこに琵琶湖の環境という課題があった。だから琵琶湖研 究所のようなやや客観的な研究機関、文化機関がいる。文化機関がひとつはメディアを用いながら一つは 課題を用いながら見事に成功した例だ。そういういくつかのものが必要だ。 宮田:近江八幡市長の話によると、琵琶湖研究所、琵琶湖博物館、滋賀県立大環境系学科で一貫性があっ て全体がよくなっていると評価しています。 端:世界の湖沼会議でそれが結びついている。メッセもしている。大きな課題を地域でみつけることが大 事。田沢湖の例にしてもベースに地道な活動があるのではないか。映像を記録してデジタルコンテンツに 参加するというような活動もある。たんにわらび座が運営しているのではない。その前になにかある。 山田:地域活性化に対する吉本のアドバイスとはどういうものですか? 田澤:いろいろな形で関わっています。地方自治体イベント事業(地元参加型の演劇創作もある)がベー スです。ここ 5、6 年、箱ものプログラムプロデュース、地元プロデューサー育成という形で関わりがで きた。7、8 年前、3年間くらい半年間ずつ大分県野津町の職員が研修インターシップという形で吉本に 入ってきた。イベントリーダーの研修です。 兵庫県加美町では総合計画、農村環境計画のコンサルタントで入っています。ここではいわば学級委員の 役割を期待されている。活気のある会議づくり。これで町に外から見られているという意識が出てきてい る。他に南海電鉄と一緒にクリエーターズスクールという美術系専門学校を運営しています。 西山:町の資源を計画にかみ合わせて行くというノウハウをお持ちなのですか? 田澤:地元で新喜劇の公演を行うときには、地元パンフレットで情報収集し舞台台本の台詞に入れます。 市町の持っているモノは、A∼DランクでいくとCレベル、実は突出したものはない。その中で興味のあ るモノを見つけてデフォルメするということを考えています。それは財産だけではない、役場の人の人柄 である場合もある。タレントづくりと似たところがある。ただ市町の場合は切り捨てることができない。 112 ほめるところをほめちぎって、自信をもたせ客の前に立たせる。たぶん私たちが期待されるのは町が目立 ちたい、外に向けてアピールしたいということからきている。私たちはできるだけ長所をみつけてそれを 10 倍にも 100 倍にもしてお返しすることしかできない。しかし継続となるとそういう方法ではないのだ ろう。 加美町と私たちの関わりは役場の若者の発言がきっかけです。この方は消防団で劇団をつくっている方で 積極的に地域おこしをしたいと思っています。 端:ポイントの一つは若い人がいることになるのか。 山田:いやいまからは中高年でもいけますよ。 田澤:加美町の総合計画策定委員会には、Uターンしてきたパン屋さん、高校生、都会に出たいミュージ シャンなどが入っていた。で、吉本が皆さん格好いいじゃないですかと誉める、私たちもここに住みたい と発言することで誇りをもたせる。私たちは外からの援軍です。自分の町はいいでしょと言えるというと ころから始まるのだと思う。 鍛冶舎:ここに住みたいと言える、そういう自己認識を持ちたいのですね。そのために外からのきっかけ がほしいということですね。 端:やはりポイントはまわりに若い人がいるということでしょう。役場にある程度若い人がいて吉本がよ べる。 田澤:どこでも少ない 30∼40 代が少数で頑張っている。ただ価値観の違い等、壁は多くある。 山田:その壁を越えてつながっていくのがIT。自分をITで見せる、そして誰かがITでつながる、そ して山が出来ていくというイメージがある。 田澤:加美町の集落の個人が孝行のさとHPで親孝行の話を2、3年募集し、日本中から届いた親孝行話 を出版しました。一人の活動が町おこしにフィードバックされた。加美町はケーブルテレビ化率 100%で す、立派な編集スタジオをもっている。そこで吉本がタレント一人をいれて総合計画紹介番組を 3 回連続 で作成しました。編集、取材はすべて役場です。この総合計画ビデオは永遠に再放送されると思う。他に も立派な設備をもった市町村はたくさんあるので、ケーブルテレビのソフト交換などができると思う。吉 本もCSのチャンネルを持っているのでそこでケーブルテレビベスト 10 などの番組が作れる。ケーブル テレビに関しては可能性があります。 山田:本当に立派なスタジオを市町は持っている。しかし、あまり利用されていないのではないか。 田澤:そうですね。吉本が 1 件 1 件声をかけて、つないでいくことができる。そうしたいなと思っている。 西山:文化財の範囲は広い。各家庭の先祖の残してきたものなどもはいる、どこにでもある。ですからど この町、 どこの地域にも文化財はある。その認識が地域に住んでいることのアイデンティティにつながる。 文化庁の指定は文化財保護法の価値レベルにすぎない。そいうものが取り上げられるだけであれば、ほと んどの市町村は掬いあげられない。だから文化財の大切さ、歴史の大切さの押しつけではだめです。自分 たちで認識しなければならない。ですから、 「あなたのところにはこんな素晴らしいものがある」という一 言だけでも地域が盛り上がる。それが一番の根っこにあって、そこから地域の文化をどう創っていこうか という話になる。その次に他と比べてみる。それを繰り返すことで活性化につながる。 ところでこの策定委員会はきっかけづくりでいいのですか? 山田:きっかけづくりだけではない。状況を想定する、地べたの広がりなどレベルで形が変わる。 西山:実際のモデルづくりですか? 山田:モデルで町名は出せないが、ケーススタディはある。 端:ケーブルテレビは文化財のひとつだ。それをフルに活用することをほとんど考えていないことがかな り問題。フルに活用できれば今のような問題はかなり前進する。ところが通常それをつくって管理してい る首脳陣にはそういう意識がないのが、非常に大きな課題だ。市町村の上層部が外部から人を呼ぶことが ない。役所の若者は情報を探し求めている、上層部に問題がある。古いタイプの価値観が上層部に根付い ている。だから事例分析は大事、そこから議論の材料が見つかる。 ホールも大事な資源だが、それを十分に使いこなしていないことが問題だ。だから吉本興業を呼ぶ。そこ にくさびを打ち込める材料を見つけなければいけない。地方で施設をうまく使っている事例を見つけてこ なければいけない。わらび座は参考になる、地域に劇団があるとお金も内部に流れる。外部に依頼すると お金が外に出る。内部にある程度お金がたまってから、外へ出ていくのが望ましい。内部施設を上手に使 113 うことがひとつの役割になる。文化財にとっても同じことでしょう。 西山:文化財もそう、いかに活用するか。活用の手段の一つにITやケーブルテレビがある。 山田:鳥取は城下町で資産はけっこうあるが、地元にその看板がない。パンフレットにはベスト 10 くら いは掲載してあるが、それ以上の情報がない。地元の人間も知らない。まずは地元で発見するしくみがい る。そして発信する。そういう時にお墨付きをもらうということだろう。 鍛冶舎:町に対して危機感をもっていて、若者の意見を聞くというリーダーがいないと町はすたれてしま う。そういう町長がいれば良いのだが。 山田:何かに興味を持っている人でないと。 鍛冶舎:そういう人にリーダーが思い切ってまかすということですね。 西山:鳥取県ではここ 10 年活発に発掘調査がなされている。淀江町は上淀廃寺発掘がきっかけで寺や町 並の整備(見学コースの設定など)が教育委員会主導で行われている。国府町には万葉館がある。市町村 に活気がある。一生懸命に動いているのは若い人です、インターネットも自由に使いこなしている。 たとえば、青谷町の遺跡で弥生人の脳が見つかりましたが、脳のDNA鑑定をする、その情報をインター ネットで発信するというふうに使いようだと思う。 山田:しかし埋蔵文化財は、東京の国立博物館で収蔵することになっている。 西山:ええ、国が文化財に指定して土地の持ち主から買い上げ保存します。ただあまりにも批判が多いの で最近では地元に立派な博物館ができれば貸し出しをします。 端:外部からの目が大事な場面はたくさんある。宮崎県椎葉村でそばの焼畑を復活した。そばを地元で作 って民宿で出されたがうどんのようで商品にならない。あわてて大阪からそばうち名人を呼んで教えても らった。そういうことが現実にたくさんある。研究の問題でもそう。地元では資源の意味がわからない。 だから国がきちんと言わなければいけない側面、価値付けの必要性もある。しかし地元が鵜呑みになって はいけまない、だからたえず外との文化交流がいる。湯布院は一度外へ出た人がやっているし、単に地元 内発的にというだけでない、そのような要素も考えておくべきだろう。 鍛冶舎:恐らく成功したところでは自分たちが自分たちがと言うかもしれないが、外からの助言があった はず。そのきっかけを探りたい。 端:都市をどう選びますか。 (議論) ヒアリング候補 ・滋賀県琵琶湖の環境関係団体・運動 ・たざわ湖芸術村 ・しんじ湖自然派倶楽部 ・内子町の石畳地区 鍛冶舎:どれも自然発生ではないようだ。段階的にモデルをとっていきたい。 端:しかし、事例にピックアップされたってことは、情報発信段階にはきている。 鍛冶舎:無名なところが、こういうところで、このような視点で探せば、これがすごい町おこしにつなが ってくるといったときの条件、もう少しで突破できる段階ならITができる若者を確保する等のような段 階のストーリーがあるはずだ。そこに、最初からITがあるのか、中間からなのか、あるいはある日突然 なのか。そういう多少なりともモデルがいる。 西山:文化財研究もけっこうコンピューターを使っている。10 年ほど前、鳥取県博物館デジタルミュージ アム構想があった。東大の資料館にも映像があるのですが収蔵もしている。鳥取の場合は何も収蔵してい ない。今ならできる、データベースをうまく活用する仕組みさえあればよい。 宮田:ここ 2、3 年でITは 2 ステップくらい進むでしょう。しかしITが進んでも地域活性化の発展的 なパターンは変わらないのではないでしょうか。人材は育成しなければいけない。最初に問題意識があっ て地域資源の棚卸をしなければいけない。その地域でできるシナリオをまず書くことが必要です。そうい うステップは不変のような気がします。ただし、考える段階で最初からITが入ってきていて他地域の人 と議論してコンセプトつくっていけるというところは変わってきていると思います。 鍛冶舎:端先生の文化政策研究科が文化という切り口でもって地域の町おこしにキュレーターという目で 114 なにかをさせていこうという専門科目であれば、自治体と文化という視点でなにかをとらえてもらえない かという話が出てくるのではないですか。 端:実際にはそういう例があると思うが、専門家の世界はなかなか複雑です。紹介するという形になる。 アカデミックネットワークを上手に使えばうまくいくが・・・。実はアカデミックな場でもそういう面が 少し欠けている。 縦割りになっている。地域で困っているときに分野毎に先生がうまくマッチングしない。 端:なかなか。ところで吉本への地域からの依頼は電話ですか? 田澤:電話とメール。相談窓口をHPにもうけている。営業のオーダーもメールできます。 端:使い始めたら大きく変わる。そういうことにまず対応できる人でないと。情報化にはいろいろな段階 があるが、実際使い始めたら全然違う展開があるだろう。年々状況もかなり変わる、将来予測もいれる。 山田:事例を進捗レベルで選んでは。 (議論) ① コミュニティ的なもので内発型―宍道湖 ② コミュニティ的で外から刺激をうけているもの−内子町石畳地区 ③ 外から持ってきたもの−田沢湖芸術村 ④ 産業として取り組んでいる−デジタルアーカイブ石川 ⑤ 兵庫県加美町 ⑥ 地域文化は宇治市 ⑦ 環境は滋賀県琵琶湖 等 山田:抽出パターンをうまくあわせてほしい、レベルの話と対象の話が一緒になっていてわかりにくい。 梅村:目的と手段も一緒になっている。 (議論) 地域活性化の区分はあくまで仮説で以下の区分とする。 ①地域コミュニティの活性化が大きな目標 ②∼⑤は地域づくりで同レベル(※②地域づくり人材育成は②人材育成に変更) ⑥地域の情報発信、交流は①∼⑤すべてにかかる。 115 (2)第2回検討委員会議事録 〇開催日時:平成13 年 2 月 22 日(金)10:00∼13:00 〇場 所:関西文化サロン「桃の間」 〇出席者:(検討委員) 京都橘女子大学 文化政策部教授 端信行 関西学院大学 社会学部教授 奥野卓司 奈良大学 文学部教授 西山要一 吉本興業株式会社 田澤紀子 (オブザーバー) 関西文化学術研究都市建設推進室室長 山田篤司 社団法人関西経済連合会事業推進部主任 梅村その子 (事務局他) (財)関西文化学術研究都市推進機構総務企画部長 鍛冶舎康昭 (財)関西文化学術研究都市推進機構事業推進部調査役 中井克巳 (財)関西文化学術研究都市推進機構事業推進部調査役 高崎義邦 (有)創造計画研究所代表 宮田治 (有)創造計画研究所 宿院佳子 [議事要旨] (1)はじめに 鍛冶舎:今回はじめて参加される奥野先生に自己紹介をお願いします。 奥野:民博ではコンピューター民族学と呼ばれている、情報人類学を担当しています。富山県山田村の事 例は研究室で長く取り組んでいるテーマの一つです。 (2)作業企画書(案)について <宮田:資料説明> (3)意見交換 端:ずいぶん整理ができている。いろいろなレベルがみえてきた。これで対応するハードがみえてくるだ ろう。携帯をどうみるのか?パソコンとほぼ近いのですか? 宮田:今後はパソコンだけじゃなく携帯情報端末を利用するのがメインになってくると思います。現在の パソコンによるインターネットの使用率は 38%、携帯も同じくらいです。 端:どういうもので人はこのシステムにのるのか、これが大きな課題になる。全国幹線ネットから個々人 の端末にいたるまで、これを支えるモノ群がいる。それは何なのか? 奥野:モノの問題ですが、モノにも地域性がある。情報社会論ではあまり論じられていないのですが・・・。 携帯の流れは日本や東アジアの大都市部独自のものです。アメリカでは携帯電話をあまり使わない。モバ イル型情報社会は日本都市部の大きな特長で、日本でも山間部には見られない。モバイル型とディスクト ップ型の流れは違うのです。CAN(コミュニティ・エリア・ネットワーク)の流れについていうと、ま ず日本は基本的に電話はつながる、だからプロバイダにつなげることはどこでも平等な状況です。しかし ハードウェアとしては次のブロードバンド(マルチ配信)に対応するには、ADSLやケーブルを引かな ければならない。ラストワンマイルの問題、そこそこまでは電話会社も太い幹線をひいてくれますが、家 までつなげるのは田舎では難しい。そこが一番重要なところで誰がひくのかが問題なのです。 また、しばしば先行(整備)すると困ることがある。お金もかかるし、(投資の)意味がなくなることも 116 ある。例えば通信衛星の流れが進むと線はいらない。ブロードバンドの流れによって、どうしていいのか わからないということがある。各自治体で頭を悩ませているところだ。 CANのコンテンツ作成は住民のコラボレーションでできる。地域性は放っておくと情報化によってな くなる怖れがある。情報化と地域化はクロスされているように言われるが、実は商売がたきです。だから 情報化が進歩すればするほど地域の価値が外に流出していく。だから地域での協同作業をのこすのです。 ローカルな部分をつくっておくということは必要で、 CANはコラボレーションの作業の場として使える。 報告書はうまくまとまっていると思います。事例の成功という評価、何をもって成功とするかは難しい がよくまとまっている。 以前はキーパーソンが地域の価値に気づかないことがあった。天文の世界ではアマチュア研究者が注目 されていて、岡山の美星町、和歌山の美里町がよく上げられるのですが、どちらもインターネットが興っ て成り立ったことです。美星町は民族学者の神埼さん(東京)が中心となり、町の灯りがなくて暗いとい うことの新たな価値が見出された。暗ければ星がよく見える、そこで天文台をつくった、まわりの農家が ペンションをはじめたという流れがある。美里町(和歌山県)では先端的な天文画像ソフトウエアベンチ ャーが作られた。そのベンチャーの方は今アメリカ村でベンチャー指導をしている。キーパーソンが交流 するという動きもインターネットを通じておこりはじめている。ですから外からの目を入れるのにITが 使える。 鍛冶舎:NHKのプロジェクトXの風力発電の話もそうでした、空っ風というマイナスをプラスに生じる 第三者の目があった。 奥野:キーパーソンはJターンみたいな方がいいでしょう。やがて外から学生を連れてくるなどお助け隊 になる。 山田:外部の目はここでいうとどこのステップになるのでしょう? 宮田:第二ステップ? 山田:第一ステップでも外部の目がいる。 奥野:どのステップにもはいるのでしょうが・・・。 端:イノベータ−?人はどうでしょう?わからないですね。 山田:この組み立てでいくと、地域の内在型の活動がはじめにある。 端:第一ステップは、認識の転換という言葉のほうがいい。 鍛冶舎:価値を認識するといいうステップがいるのでしょう。 端:ただし、ひたすら地域学を勉強している方の話ではない。 西山:地域内のことを長く勉強されている方は地域外との交流はないですね。地域外との交流があってそ こで価値を見出すという話でしょう。 端:とくに自然環境は価値の転換がずいぶんおこっている、雪中米の開発(北海道)等 山田:ステップ 1 の現状認識という話は①、②発表の場(外からの評価)がセットされるのが重要だと考 える。 鍛冶舎:文化、歴史といった古いもの価値は証明、事実というものがベースにないと、素人が思いつきで してもアイデンティティにつながらない。やはり何かが起こったとき、外からの第三者の目がいる。そう じゃないと地域の人が待ち望んでいる力にはならない。 西山:いままでは国宝、重要文化財はだれでもが認める価値です。それから都道府県、市町村の文化財指 定も始まった。しかしこれが地域の活性化といえば違う。指定されていないものにも価値があるものを見 出していくという作業が必要だ。いままで郷土史家と呼ばれる方々は外部に広がっていかなかった、相対 化するという作業ができてこなかった。いま、それはITで発信できる。そこで他地域と比べて価値がつ く、価値づけをするためにはコメントを出す人がいる。最近の新発見でも必ずコメントを出す人がいて、 日本全国、世界と比べてどうなのかを評価する。 文化の存在をITで知ってもらう(インフォメーション)というお話がでていますが、文化財そのものを 伝えることはできるのか。鳥取県博物館構想、東京大学博物館の情報検索があるが、やはり実物をみなけ れば、とうことが地域活性化のポイントになる。事例でも実際にきてもらうということが大きな意義を占 めている。そのための助走期間が長かった。そこでITをどう組み合わせていくのがいいのか。文化の世 界ではITの限界を認識する、予測することも必要だ。 117 奥野:デジタルミュージアムは、画像の前に分類が難しい。また単に公開してもいいのか、隠しているか ら価値があるというものもある。ただ野球のテレビ中継で、セパの明暗がわかれた事例がある。それが人 を呼ぶこともあると考えたセリーグはうまく利用して成功した。ですから情報発信することで刺激を得て 発展させる、 新たな価値をつけるということもある。 むしろそのほうが大きいのかなという気がしている。 端:山田さんに最終確認しておきたいのですが、文化の概念を文化庁よりの処理でいいのかどうか。地域 に進出した工場も文化(一般産業活動)なのか?産業活動も地域密着固有型がうたわれている、文化の質 的転換が問われている。 山田:産業活動までは考えにくいが、しかしできるだけ広く取り上げたいという気持ちはある。文化の定 義をどこかでする必要があると感じている。 端:文化の質的転換の話を一行ほどどこかでのせる。地域文化の役割が求められているというようなこと を・・。しかしあまり大きく捉えるとややこしくなる。定義はあまりしないほうが良い。むしろp13 の活 性化のテーマできちんと整理する。活性化のテーマは2)文化資源の商品化・産業化、3)交流人口観光 人口の増大による地域経済の活性化として、順序を逆にしてはどうか。観光・交流人口というのは地域の 人の満足度が高くなければ意味がないという議論が大数を占める。イベントや単一施設で人がきても長期 的にみれば何の効果もない。 西山:観光が地域文化と結びついていないと駄目ですね。 端:そう、それが発信されるということで、つまり町が快適だから人が集まってくるというのが、本来の 観光というものに近い。 鍛冶舎:ここでいう文化は地域の有形無形の生活文化に限定されているのがイメージですね。 西山:酒造業は、奈良白鹿、神戸白鶴など、盛んなところが一時に全国に広がったが、結局各地域でつく るものが認められるようになった。 端:地域の酒の復権、淘汰されたあと復権される。新潟旭酒造などもそうだ。 田澤:加美町は外からの発見があった。情報による均一化は感じる。ただ、その町の形をつくるのは人に かかっていると思う。 西山:インターネットショッピングもそういう形でしか残っていかない。地方のローカル色のあるものを みつけたいときに役立つ。ですから地方でもグローバルにやるのなら、ここでしか通用しないものを売っ たほうがいい。 端:大分の「いいちこ」もそうです。情報化によって、全国にぽつぽつマーケットが開かれることになる、 でいつのまにか下町のナポレオンに、いまやシンガポールに輸出されている。グローバル商品をつくると いうのじゃなく、それを愛好する人を見つけるマーケットができあがるのがインターネットだ。これは転 換の面白いところだ。 山田:ITは評価につかうことができるのではないか。発表することで評価される、それがイノベーター の核になるというストーリーはできる。いろいろな角度のメカニズムが働かないのかどうか。 端:ある種のマーケット性みたいなもので、市場評価という形になるのだろうか?ハードを通じて出て行 く情報は平等だが、それに対する反応はどう捉えるか? 奥野:市場原理でないオークションみたいなものは考えられる。書き込み文化的オークションの場をつく って、そこに市町村が文化を出品する、それを全国の素人が見て評価する。 端:そういうシステムが働くなかで、これはやめとことかいう評価のメカニズムはどのように発生してく るのか。 山田:評価という話がでたときに、いろいろな活動に自治体が支援をする。支援をするための評価といよ うなイメージがあったのですが・・・。 端:自治体はブロードバンドの動きがあって判断に迷っているという話でしたが・・それはハードのもつ 傾向に対しての投資していいかの評価ですよね。もう少しそれをブレイクダウンしてステップ 2 や 3 の段 階でシステムを評価することはどういう形であらわれるだろう。 奥野:極端にいうと、先行事例は失敗した、岐阜、岡山もそうです。ひとつは大きなセンターをつくった ところは失敗している。ここであげられている面白い事例はそうでないところから始まった。小さなとこ ろは失敗していない。もちろんセンターは必要でそことうまくつながることが必要ですが、今のところそ れはうまくいっていない。線は使えるがセンターは古くなって使えない、ベンチャーは集まってこない。 118 うまくいっている町は小さくで出来る範囲でやっているから大きな失敗はない、住民を巻き込んできてい るので成立している、だがCANとはまだ結びついていない。 端:幹線的インフラは将来的には必要だ。 奥野:いまは民間が事業化する。民間のほうが安くなったりしている。 端:情報化の世界は、最新のものでも入れたとたんに古くなる、小回りのきくシステムがよくみえるとい うことがよくわかる。 端:若者は携帯とデジカメで自分の身の回りの情報を自分で編集する生活様式になっている。ですからチ ェック機能が気になる。 奥野:現実には第三世代通信を利用している人はそういない、いくら若者でも。本当に皆がそれをやりは じめるといまのサーバーでは対応できない。サービス開始時に準備しておくべきなのだが、サーバーの提 供者は自信がなくて用意していない。少数でいてもらいたいので具体的なサービスが始まらない、ブロー バンドのiネットはない、そうすると利用者は使えない。だから、いまは何も起こらない。 鍛冶舎:ITは手段としてみる、やなり本物がみたい、感動は現場にある、現場が評価される、ローカル はここで生き残る。 第三者がどんどんきて評価して、 地域のアイデンティティ再認識され継承されていく。 そういう循環系に飛び越えていける手段にITが使えると思う。 西山:文化財ではITはインフォメーション機能としては非常に役立っている。古代史ブーム、考古学ブ ームを作り上げてくれた。インターネットをみて本物がみたいという気がおこるのは事実です。ですが最 初は本物をみてほしい、遺跡はとくにそう、歩いて現場に出向いてほしい。 奥野:先ほど野球の話で実物をみたくなるというお話をしましたが、今の若者(学生)はもしかすると情 報で満足してしまうかもしれない。 端:文化財の話ではITは一種の情報公開です。資料、書籍ではむずかしい。ITはアクセスしやすいた め、母数がおおくなり、実際に訪ねる人が多くでてくるとは思う。 西山:訪ねたとききちんと見せることも必要になる。 端:情報公開で文化財を比較することを可能にする。しかし文化財の何を見るのかがわからない。 西山:文化財の鑑賞には時間がかかる。その入り口にITが利用できる、鑑賞するための情報を共有する ことができる。いまは専門家の言語になっている。 (4)まとめ 山田:資料 1、IT活用の欄にヒアリング活動事例を少しいれる。実際事例ではあまりIT活用はされて ないが、具体例として活動事例のIT活用をアイデア例というかたちで盛り込む。 端:8 事例のドメインをつけてはどうか。レファーしていけばよい。 鍛冶舎:こうした検討や地域における社会実験を進めるために、国の補助、助成で地方自治体が利用でき るものはありますか? 山田:アドバイザー派遣という形のものは結構ある。直接的な補助金という話はあまり聞きません。 端:自治省、文化庁、国土交通省の 3 つの筋があるでしょう。 鍛冶舎:来年度の国のご助力によりこの調査を来年も続けていければ、より知見が深まると思います。今 回の調査では、皆様の有益なご助言を多く頂きました。皆様のご意見を生かす形で報告書を取りまとめて いきたいと存じます。ご出席ありがとうございました。 119