...

欧州ユーティリティー企業の LNGビジネス動向

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

欧州ユーティリティー企業の LNGビジネス動向
欧州ユーティリティー企業の
LNGビジネス動向
2012年12月13日
石油調査部
大貫 憲二
1
本日の流れ(目次)
1.欧州におけるLNG動向
2.欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
(1)LNG受入基地使用権の保有
(2)上流権益の保有
(3)売主としての活動
(4)LNG再輸出
3.メジャー・上流事業者の欧州下流事業参画
4.インプリケーション
2
欧州におけるLNG動向
-欧州のLNG受入基地-
図 欧州のLNG受入基地及び主要パイプライン
3
欧州におけるLNG動向
-LNG輸入量の推移-
<欧州の天然ガス調達に占めるLNGの割合>
・欧州全調達量中のLNG輸入量:84.4Bcm(17%)
※パイプライン輸入:257.9Bcm(53%)
域内生産量:149.4Bcm(30%)
<LNG輸入量推移>
・2002年:2,496万トン⇒2011年:6,249万トン(2.5倍)
(出所:BP統計)
4
欧州におけるLNG動向
-LNG再輸出ビジネスの発生-
<LNG基地使用形態の変化>
・LNGを再ガス化し、供給するため、使用権を確保
⇒欧州の景気後退等で基地稼働率が低下、一部企業の重荷に
(例:DONG Energy、Gate LNGの使用権の一部を2015年までEnecoに譲渡)
⇒欧州よりLNG価格の高い地域(アジア・南米)に再輸出する動き
<LNG再輸出>
(出所:BP統計)
5
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-LNG受入基地使用権の保有-
<ユーティリティー企業の基地使用権>
○LNGの調達、再ガス化のため、基地使用権を保有
①GDF Suez:1,890万トン/年(約26Bcm/年)
②E.ON:510万トン/年(約7Bcm/年)
③Edison:460万トン/年(約6.3bcm/y) 他
※スペイン企業も国内に多くの使用権を保有(非公開)
○市場統合による天然ガス市場の流動性の高まりから、
他国の基地の使用権を獲得する企業も
①GDF Suez:Huelva,Cartagena,Zeebrugge,Grain
②E.ON:Huelva, Barcelona, Gate, Grain
○景気後退や販売価格低迷で、保有は一部で重荷に
例:DONG EnergyのGate基地権益一部譲渡(期間限定)
6
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-上流権益の保有と売主としての活動-
<ユーティリティー企業のLNG上流権益>
・294万t/年(全輸入量の5%、3社・4プロジェクトのみ)
企業名
Gas Natural Fenosa(Spain)
GDF Suez(France)
RWE(Germany)
合計数量
214万t/年
68万t/年
12万t/年
内訳(万t/年)
SEGAS:200,Qalhat:14
Snohvit:50,Egyptian LNG:18
Snohvit:12
<売主としての事業活動>
○上流権益分の販売
・RWE分:長期契約で他社に販売⇒自由度なし
・Gas Natural Fenosa, GDF Suez分は自社向け⇒自由度高い
○ポートフォリオLNG契約
・長期契約で購入したLNGを、売主として再販
⇒Iberdrola(Spain),GDF Suezが実施
7
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-ポートフォリオLNG販売契約-
①Iberdrola(スペイン)
表 IberdrolaのLNG長期契約購入数量
輸出国
プロジェクト
売主
Sonatrach
アルジェリア Arzew, Skikda
Nigeria
LNG
Nigeria
LNG
ナイジェリア
Nigeria LNG
Gas Natural Fenosa
Snohvit
Statoil/RWE/Hess
ノルウェー
Eni Portfolio
Eni
-
長期契約数量合計
契約数量
(万トン/年)
115
38
100
113
92
458
契約期間
2002-2021
2005-2025
2003-2020
2006-2023
2002-2018
-
表 IberdrolaのポートフォリオLNG販売販売
売主
買主
プロジェクト
Iberdrola → DONG Energy(Gate向け) スペイン基地より
BP(UK:Isle of Grain向け) スペイン基地より
ポートフォリオLNG販売契約数量 合計
数量(万t/年)
契約期間
73.5
2011-2021
36
2012-2022
109.5
-
・LNG購入量の約24%(1/4)をポートフォリオLNGとして再販
・減少するスペイン国内での使用量を補うビジネス
・欧州よりもLNG価格の高い地域に販売⇒より大きな利益の確保を目指す
(出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」)他
8
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-ポートフォリオLNG販売契約-
②GDF Suez(フランス)
・LNG長期購入契約数量:1,645万トン/年
・ポートフォリオLNG販売契約数量:合計1,080万トン(2010年-2016年)
表 GDF SuezのポートフォリオLNG販売契約(短・中期)
買主
KOGAS(韓国)
CNOOC(中国)
Petronas(マレーシア)
Petronet(インド)
PTT(タイ)
KOGAS(韓国)
GAIL(インド)
合計(2010-16)
数量
合計250万トン(41カーゴ)
合計260万トン(44カーゴ)
合計250万トン(41カーゴ)
合計60万トン(9カーゴ)
合計20万トン(3カーゴ)
合計160万トン(24カーゴ)
合計80万トン(12カーゴ)
1,080万トン(174カーゴ)
締結時期
2010年9月
2010年10月
2011年5月
2011年11月
2012年6月
2012年8月
2012年8月
-
期間
2010年9月から3.5年間
2013年から4年間
2012年8月から3.5年間
2012年
2012年
2013年-2014年(2年間)
2013年-2014年(2年間)
2010年-2016年
(出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」)他
・2011年末までに、第三者向けに累計135カーゴ(820万トン)のLNGを販売。
・ポートフォリオ契約LNGの販売は、契約ベースで年間購入量の約11%
9
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-LNG再輸出-
<LNG再輸出が可能な基地>
・欧州のLNG基地では、LNG再輸出に関心が高まる⇒2012年、3基地が運開
・2012年末現在:7基地
・Gate LNG基地(オランダ):再輸出化を検討中
国名
基地名
ベルギー
Zeebrugge
フランス
Montoir de
Bretagne
Fos-Cavaou
スペイン
Huelva
Cartagena
Reganosa
ポルトガル
Sines
再ガス化能力
(百万トン/年)
650
(0.9Bcf/d)
720
(10Bcm)
600
(8.25Bcm)
860
(1.35 million
m3/h)
860
(1.35 million
m3/h)
260
(0.41 million
M3/h)
520
(7.2Bcm)
所有権
Fluxys
Elengy (GDF Suez 100%)
Elengy(GDF Suez 100%)70%
Total 30%
Enagas 100%
Enagas 100%
使用権
(百万トン/年)
QP & ExxonMobil:330
Distrigas:200
GDF Suez:130
GDF Suez:650
EDF & 三井物産:70
GDF Suez:320
Total:160, その他(第三者向)
GDF Suez:40, Shell:30
E.ON:60
その他非公開※
GDF Suez:120
その他非公開※
Xunta
de
Galicia
10%, 非公開※
Commonwealth Bank 26%,
Union
Fenosa Gas ( ENI 50%, Gas
Natural Fenosa 50%) 21%, Grupo
Tojeiro 18%, Caixa Galicia 10%,
Sonatrach 10%, Caixanova 5%
Ren Atlanco 100%
非公開
※受入の90%:Galp Energia(2011)
再輸出
○
○
○
○
○
○
○
10
欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス
-LNG再輸出-
<ユーティリティー企業の再輸出可能な基地使用権>
○再輸出可能な基地使用権
①GDF Suez:1,270万トン/年(約17.5Bcm/年)
②Distrigas(ベルギー):200万トン/年(約7Bcm/年)
③E.ON:60万トン/年(約6.3bcm/y) 他
※スペイン企業も国内3基地に多くの使用権を保有(非公開)
<LNG再輸出ビジネスの可能性>
○再輸出可能な基地の使用権保有⇒ビジネスの可能性
○但し、可能数量は使用権の半分以下
※LNG船が2回着桟、基地保冷によるオフガスの発生
○使用権、再積込み費用、フレート他が上乗せ
⇒これらを踏まえても利益性のある市場への販売が重要
11
メジャー・上流事業者の下流事業参入
-LNG受入基地使用権の保有/再輸出-
<メジャー・上流事業者・NOCの基地使用権>
・欧州下流事業への進出:最近の動き(一部を除き、2009年の英国基地に集中)
・再輸出可能な基地使用権も保有
⇒元々優位な価格設定と仕向地条件を保有しており、再輸出ビジネスの
重要性は低い
企業名
国名
基地名
所有権
BP
Shell
英国
スペイン
Total
フランス
英国
英国
英国
ベルギー
英国
イタリア
英国
英国
Isle of Grain
Huelva
Barcelona
Fos-Cavaou
South Hook
South Hook
South Hook
Zeebrugge
South Hook
Adriatic LNG
Dragon LNG
Isle of Grain
英国
ベルギー
英国
イタリア
ConocoPhillips
Chevron
ExxonMobil
BG Group
Sonatrach
(アルジェリアNOC)
Petronas
(マレーシアNOC)
Qatar Petroleum
(カタールNOC)
再輸出
-
-
-
30%
8.35%
-
-
-
24.15%
70.7%
50%
-
使用権
(万トン/年)
不明
30
90
160
不明
不明
不明
330(QPと共有)
-
-
600(Petronasと共有)
不明
Dragon LNG
30%
600(BGと共有)
-
Zeebrugge
South Hook
Adriatic LNG
-
67.5%
22%
330(Exxonと共有)
-
-
○
-
-
-
○
-
○
-
-
-
○
-
-
-
-
12
インプリケーション
①再輸出ビジネスに学ぶべき点
・再輸出ビジネス=石油で行っているスキームの応用
・市場を俯瞰し、自ら利益を生み出すプロセスに学ぶ点
②再輸出ビジネス:日本に馴染まないビジネスモデル
・最もLNG価格が高く、再販で利益を生むことが難しい
・最大の消費国で、ストックの余裕も限定的
③ビジネスモデルの検証は重要
・地域間の価格差を活用したスキームの可能性の検証
・欧州基地に使用権を保有し、スワップを行う、もしくは実際に
持ち込む、等。
※伊藤忠:韓国のLNG基地に使用権、大阪ガス:Sagunto基地(スペイン)
に出資等、日本企業の動きも見られる
④但し、適正なLNG価格導入のためには、価格交渉、仕向地条項
の緩和・撤廃等が、時間を要するが最も正攻法と思われる。
13
(参考資料)
-欧州ユーティリティーの受入基地使用権-
表 欧州ユーティリティ企業の受入基地使用権
企業名
国名
GDF Suez
(フランス)
フランス
ベルギー
スペイン
英国
E.ON
(ドイツ)
オランダ
スペイン
英国
Distrigas
(ベルギー)
ベルギー
DONG Energy
(デンマーク)
オランダ
EconGas
(オーストリア)
RWE
(ドイツ)
Edison
(イタリア)
Centrica(英国)
Endesa(スペイン)
オランダ
Iberdrola
(スペイン)
Natural Gas Fenosa
(スペイン)
基地名
所有権
使用権
(万トン/年)
再輸出
650
380
320
140
40
120
240
○
-
○
○
○
○
-
220
60
90
140
-
○
-
-
200
○
140(~’15)
220(’15~)
-
5%
220
-
Montoir
100%
Fos Tonkin
100%
Fos Cavaou
70%
Zeebrugge
-
Huelva
-
Cartagena
-
Isle of Grain
-
使用権合計:1,890(うち再輸出可能な基地使用権:1,270)
Gate
5%
Huelva
-
Barcelona
-
Isle of Grain
-
使用権合計:510(うち再輸出可能な基地使用権:60)
Zeebrugge
-
使用権合計:200(うち再輸出可能な基地使用権:200)
Gate
5%
Gate
オランダ
Gate
5%
220
-
イタリア
Adriatic LNG
7.3%
460
-
英国
スペイン
Isle of Grain
不明(スペイン国内)
-
-
不明
不明
-
○
スペイン
英国
スペイン
不明(スペイン国内)
Isle of Grain
不明(スペイン国内)
-
-
-
不明
不明
不明
○
-
○
※スペインの基地使用権は原則非公開(企業側が発表している数値のみ記載)
14
Fly UP