...

第 3 章 外資制度の概要

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

第 3 章 外資制度の概要
第 3 章 外資制度の概要
1.外資導入政策
旧ソ連時代には、合弁や 100%の外資導入、特別経済区の設立が認められるなど、外資開
放政策が採られた。しかしながら、ロシアになって旧ソ連時代の外資政策が見直され、外資
は基本的に内国民待遇を受けることとなった。
1995 年の生産物分与法あるいは 2005 年に導入された特別経済区法についても、特に外資
のための法律ではなく、内国資本を含めた投資家全般を対象にした法律である。また、州、
共和国などの地方でも優遇策はあるものの、基本的には投資家一般に対する優遇措置がある
のみである。
図表 1-28 ソ連およびロシアの外資導入政策の変化の流れ
ソ連時代末期(合弁から 100%外資導入まで)
1987 年1月
初めて外資導入が認められる。但し、ソ連側出資が 51%以上の制限あり。
1988 年 12 月
合弁比率の制限が撤廃、同時に極東に税制の優遇およびいくつかの特別経済
区設立が認めらる。
1990 年 10 月
100%外資企業の承認。
ソ連解体(1991 年末)から新生ロシア期
1990 年代
ソ連時代の税制優遇、特別経済区廃止の動きが進むと同時に、一部地域に特
別経済区を設立するなど、外資導入に対する一貫した政策の欠如の時代。
1995 年
税の大幅優遇を認めた生産物分与法が成立し、サハリン1および 2 のプロジ
ェクトが開始。
1999 年 7 月
ロシアになって初の外資法の成立。
2002 年
外資が、基本的に内国民待遇を受ける。
2003 年以降
プーチン政権以降、生産物分与法の改正など資源エネルギー分野への外資参
入規制が強まる。
2005 年
特別経済区法など一部の優遇措置が認められる。
(出所)各種資料を基に作成
業種別の外資誘致についても明確な政府の方針はないが、プーチン大統領をはじめとする
政府首脳の発言、個別の政策からは、以下のような方向性があると見られている。
① 2005 年に技術導入型および工業生産型の特別経済区制度(詳細は p34 参照)が導入さ
れたことに代表されるように、ロシアにない先端技術、生産加工技術等の導入が図られ
るような分野への投資は推奨される。
② 資源エネルギーについては、投資家を優遇する生産物分与法が 2003 年に改正され外資
参入が制限されたように、外資、特に外資のみの投資については難しい対応が目立って
いる。背景には、ロシア資本が育っていること、2000 年以降の原油高、また原材料高を
背景に、外資に依存する必要がないという意見が支配的になっていることがある。
また、一部のマスコミ報道を通じて、国民の間でも資源を外国人に奪われるという短絡
的見方が広まっていることも、こうした動きを後押ししていると見られている。
29
2.主要関連法規
1999 年7月に制定された法律「ロシア連邦の外国投資活動について:連邦法」が、いわゆ
る外資法に相当するもので、ロシアでの外国投資関連の基本法である。しかしながら、実質
的な内容は余りなく、外国投資が経済活動において、国内資本同様の権利を有することが記
載されている内容に留まっている。グランドファザー条項(先行者の既得権益を例外扱いと
して擁護する条項)や、ある程度の優遇措置が記載されているものの、これらが厳密に守ら
れているかは必ずしも明らかではない。実際には、経済関係の法律および行政通達が重要な
役割を果たしており、株式会社法等の経済関係の法律のみならず、経済活動における民法の
重要性が高くなっている(民法については、以下(2)を参照)
。
(1) ロシアでの外国投資活動関連の基本法
・ 連邦法「ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国投資活動について」
(1991 年6月 26 日
No.1488-1、2003 年1月 10 日付改訂)
・ 連邦法「ロシア連邦の外国投資活動について」
(1999 年7月9日 No160-FZ、2003 年 12
月 8 日付改訂)
・ 連邦法「資本投資形態として実施されるロシア連邦の投資活動について」
(1999 年2月
25 日 No.39-FZ、2004 年8月 22 日付改訂)
(2) 事業および会社に関する法律
連邦法「民法典」
第 1 部(1994 年 11 月 30 日付 No.51-FZ)
:
民法で規定する対象、法律、所有権、債権、契約など基礎的定義を定めている。
第 2 部(1996 年 1 月 26 日付 No.14-FZ )
:
債務の種類、賃貸借の定義が規定されている
第 3 部(2001 年 11 月 26 日付 No.146-FZ)
:
相続権、国際私法について定義されている。
連邦法「有限会社について」
(1998 年 2 月 8 日付 No.14-FZ)
有限会社設立に関する条件などが規定されている。
連邦法「株式会社について」
(1995 年 12 月 26 日付 No.208-FZ)
株式会社設立に関する条件などが規定されている。
(3) 労働関係の法律
連邦法「ロシア連邦労働法典」 (2001 年 12 月 30 日付 No.197-FZ)
:
2002 年に導入されたロシアの労働雇用関係の基本法典
30
(4) 税関連の法律
連邦法 「税基本法」
(1999 年 8 月 30 日付 No.197-FZ)
:
税の基本的概念および各種税金の種類、料率等について定められている
(5) 土地関連の法律
連邦法 「土地基本法」
(2002 年 12 月 30 日付 No.197-FZ)
:
土地の地目等についての基本規定、農地を除く土地の取り扱いについて定められて
いる。
3.投資形態
ロシアにおける企業・経済活動は民法典を基本法としている。同法によれば、企業は合資
会社、有限会社等の中から一つの法的・組織的形態を選択し、法人格の取得が可能となって
いる。
外資は、有限会社、あるいは株式会社、特に閉鎖型株式会社を採用するケースが多く5、ま
た投資という形ではないが、商業活動を実施しない連絡事務所を取り敢えず開設する企業も
非常に多い。更に、最近のケースとしては、投資を伴わない委託加工も徐々に増加する傾向
がみられる。
図表 1-29 ロシアの会社事業形態
法的形態
個人事業者
単純パートナー
シップ
完全パートナー
シップ
合資会社
法 参加者の名称および法的地位
人
格
個人事業者
無
無
有
有
有限会社
閉鎖型株式会社
公開型株式会社
生産共同組合
有
有
有
有
パートナー:個人事業者および(あるい
は)商業組織
完全パートナー:自然人および(あるい
は)商業組織
完全パートナー(自然人および(あるい
は)商業組織)および出資者(市民およ
び法人)
市民および法人(政府組織は基本的に設
立不可)
株主:自然人あるいは(および)法人
株主:自然人あるいは(および)法人
メンバーあるいは参加者:専ら自然人
参加者の数
設立必要書類
個人形態
認可証、登記証明
書
共同事業契約書
パートナーが2人
以上
パートナーが2人
以上
パートナー1人以
上および出資者
設立契約書
設立契約書
50人以下
設立契約書、定款
株主50人以下
制限なし
5人以上
定款
定款
定款
(出所)ロシア側資料より作成
有限会社と株式会社を比較すると、資本配分、出資者の権利と責任、最低資本金などで異
。
なる点がみられる(図表 1-30)
5
合弁企業の場合には株式会社、
他方 100%外資の場合には有限会社が選択されるケースが多い。
31
資本の配分
出資者の
権利と責任
最低資本金
設立諸文書
図表 1-30 有限会社と株式会社の違い
有限会社
株式会社
定款資本は、会社の債務に責任 定款資本は額面を記した一定数の株券に分か
を負わない出資者の「持分」に れる。
分かれる。
民法第 87 条により、出資者は事 株主の権利、その譲渡および停止が、すべて株
業に関連した損失に対し、その 券の保有・譲渡と結びついている点が特徴。全
出資分の範囲内でのみ責任を負 ての株式会社は、
「閉鎖型株式会社」または「公
う。
開型株式会社」のどちらかに分類される。前者
では株はあらかじめ定められた人物間でのみ
やり取りされるのに対し、後者では株主が他の
株主の同意なしに株を第三者に譲渡できる。
定款資本の最低額は最低賃金の 定款資本の最低額は、最低賃金の 1,000 倍。
100 倍。その際に、会社を登記す
る時点で資本金の 50%以上が払
い込まれている必要がある。
「設立契約書」と設立契約書の 「定款」が唯一の設立文書となる。定款には、
調印後に出資者により承認され 定款資本額、株券の種類と発行方式、組織と権
た「定款」
。会社が一人の人間に 限、その他「株式会社法」に規定された各種の
よって設立される場合は、「定 情報が記載される。
款」が唯一の設立文書となる。
(出所)ビジネスガイド・ロシア(2004∼2005)
、(社)ロシア東欧貿易会
投資形態として日本企業が有限会社、閉鎖型株式会社の方式を採用する際に留意すべき点
は、ロシア側のパートナーとの合弁にするか、あるいは日本側の 100%出資で事業を実施す
るかということである。
ロシアでは、M&A が多くみられるところ、ロシア側のパートナーをどの程度信頼出来る
かは非常に重要であり、合弁パートナーの選定に当たっては、十分な事前調査や意見交換を
行うことが望ましい。一般的には 100%外資、あるいは 75%以上の出資による拒否権を持つ
会社形態を設立する方が無難であるという声もあるが、ロシアでの事業実績が十分にあり、
信頼できるパートナーを見つけた場合には、パートナーと共に事業を実施した方が良い場合
も多い。
4.管轄官庁
投資関連の管轄官庁はロシア経済発展貿易省であるが、日本との関係では、日露貿易投資
促進機構が設立されており、経済発展貿易省内の投資政策局に事務局が置かれている(次頁
連絡先参照)
。
日露投資促進機構は、日露間の貿易投資活動の促進、経済関係の発展等に関心のある両国
関係機関の相互連携を強化することを目的としている。
同機構では、ロシア投資に関心のある日本企業に対して、初期的なコンサルティングサー
ビスを行うほか、ロシアの制度、規制法令、ビジネス慣行等の関連情報の提供等を行う。
32
ロシア側連絡窓口
(モスクワ)
(日本)
日本側連絡窓口
図表 1-31 日露貿易投資促進機構連絡先
経済貿易発展省 投資政策局副部長
Mr. Egorov S.S. e-mail: [email protected]
電話: 7(国番号)-495(モスクワ)-248-86-61
ホームページ:http://www.tip-ro-rj.economy.gov.ru
在日ロシア連邦通商代表部 A.B.Labrentiev 主席
108-0074 東京都港区高輪 4-6-9
電話:03-3447-3201、3281、3291
Fax:03-3447-3221
Email:[email protected], http://rustrade.org
(事務局)社団法人ロシアNIS貿易会(http://www.rotobo.or.jp/)
(支部)ロシア NIS 貿易会モスクワ事務所内
日本貿易振興機構モスクワ事務所内
日本センター内
(それぞれの連絡先は巻末参照)
http://jp-ru.org
日露貿易促進機構
ホームページ
(注)2006 年末時点
(出所)日露貿易投資促進機構資料
5.外資規制業種
1999 年に制定された外資法では、外資に対して内国民待遇が与えられており、安全保障上
の問題から国防産業などの一部業種を除き、国内企業と基本的に無差別に扱うこととなって
いる6。
但し、外国投資法第 4 条 2 項では、憲法体制の基礎、公序良俗、国民の健康、第三者の権
利および合法的な利益の擁護、国防と国家の安全に必要な程度に限り、別途連邦法で規制を
設けることができるとされている。
一般的には、軍需関連部門(輸送および閉鎖地域での事業を含む)
、国の基本インフラにか
かわる部門(天然資源、農業など土地所有に関係する部分など)に規制がみられる。これら
の規制の詳細な内容は、細かい通達のなかで指示されることが殆どであり、それ以外の部門
についても、個々の省令、中銀通達等において実体的に外資の参入が規制されている可能性
があることには留意が必要である。例えば、金融・保険については、1999 年 7 月の外資法
の対象分野から除かれており、特に外国企業による支店の設立は認められていない上、外資
の出資比率制限が設けられている。
6具体的には、外国投資家に対して、
国内企業に対して与える待遇に劣後しない待遇を供与しな
ければならない とされている。
33
6.主要投資インセンティブ
(1) 特別経済区(Special Economic Zone)
中央政府の方針として、投資インセンティブにより、分野や地方を差別化することに対し
消極的であることから、ロシアにおける投資インセンティブは主として地方レベルで主導さ
れてきた。1990年代には、投資誘致を意図するいくつかの地方で特別経済区が制定されたが、
個別性が高く、カリーニングラード州が実質的に最も機能していた。
しかしながら、2005年に連邦レベルで特別経済区法(2005年7月22日付No.116-FZ、以下
「2005年特区法」
)が制定され、投資インセンティブ導入方針が多少軌道修正された。
2005年特区法は、特定地域の経済発展、技術革新等の促進、観光資源開発を目的とし、設
立に際しては外資を導入すること等により、
効率的に特区を設立することを目的としている。
同法では特区には、①技術導入、②工業生産、③観光・リクリエーションの3つの分野が定
められており、すでに技術導入型特区に4地区、工業生産に2地区が指定されており、近いう
ちに観光・リクリエーション地区の選定が行われる予定である7。
種類
技術導入型
特別経済区
(2005年7月法)
工業生産型
特別経済区
(2005年7月法)
関税自由区型
(2006年1月法)
図表1-32 ロシアの特別経済区一覧
(2006年10月現在)
所在地
想定されている事業分野
サンクトペテルブルグ市
IT、計測・分析機器
モ ス ク ワ 市 ゼ レ ノ グ ラ ー ド 区 マイクロエレクトロニクス
(Zelenograd)
モスクワ州ドゥブナ市(Dubna)
核技術・物理学、プログラミング
トムスク州トムスク市(Tomsk)
新素材、核技術、ナノテク、バイオ
リペツク州(Lipetsk)グリャジ地区
家電生産、家具生産
タタールスタン共和国エラブガ地 自動車部品、石油化学分野の高度技術
区(Yelebuga)
製品
カ リ ー ニ ン グ ラ ー ド 州 加工産業
(Kaliningrad)
(出所)各種資料を基に作成
なお、上記のとおり、カリニングラードは、関税自由区型特区として、2005年特区法前に
特別経済区に指定されているが、カリーニングラードがロシアのなかで特別な扱いを受けて
きた背景には、ロシア本土から離れた飛び地であり、ロシア本土との経済交流が不利である
ことと、経済的恩恵を与えることにより、経済的安定化を図る必要があるためとみられる。
連邦法「カリーニングラード州特別経済区およびロシア連邦法令の若干の法令の修正につい
観光・リクレーション特区については、2007 年末時点、以下の 7 つの地区が認定されたこ
とが発表されたものの、特区庁のホームページにはこれらの地区の名前をはじめとして、地区に
ついての情報はない。いずれにしても、①から④がシベリア中部から東部、⑤から⑥がロシア最
南部、⑦が飛び地でバルト海に面した地域でいずれも、ロシアの中央部からかなり遠い地域が指
定されたということだけは分かっている。①アルタイ地方、②アルタイ共和国、③イルクーツク
州、④ブリャート共和国、⑤スタヴロポリ地方、⑥クラスノダル地方、⑦カリーニングラード州。
7
34
て」(2006年1月10日付No.16-FZ)によれば、カリニングラードでは3年間で1億5,000万ル
ーブル以上の投資を行わなければならないことになっている。カリニングラードで享受可能
なインセンティブは図表1-33のとおりである。
図表1-33 2006年1月法によるカリーニングラードの税の特典
税金の種類
関税
資産税
利潤税
通常
関税率表に基づく
2.2%
24%
特別経済区内
関税なし
0%(最初の6年)その後1.1%(7年-12年)
0%(最初の6年)その後12%(7年-12年)
(出所)ロシア政府作成資料
図表1-34 特別経済区位置図
Kaliningrad
Saint Petersburg
Dubna
Zelenograd
Lipetsk
Elabuga
Tomsk
(出所)特別経済区庁資料
35
2005年特区法によれば、特区では、地下資源採掘および金属製造、それらの加工、物品税
対象商品の製造(乗用車およびオートバイを除く)が禁止される。その他の各特区の特徴は、
。
以下のとおり(図表1-35)
技術導入特区
・
・
・
工業生産特区
・
・
・
・
・
・
観光・リクリエ
ーション特区
その他
・
・
・
・
・
・
・
図表1-35 分野別特区の特徴
入居者は、協定で規定されている範囲内で、技術導入活動のみを行う。技
術導入活動とは、科学技術製品の開発・販売、試作品の製作・実験・販売
等、コンピュータ関連サービスなどである(第10条)
。
連邦法によれば、特区の面積の上限は 3 平方 km と定められる。
登録企業のインセンティブは、統一社会税が14%と低めに設定されてお
り、登録してから5年間の資産税、土地税の免除が認められる。また、土
地に関しては、私有権が発生してから5年、登録企業が保有する交通設備に
関する交通税も5年間免除される。減価償却にかかる特別なスキームもあ
り、有利な条件で減価償却が可能。
入居者は、協定で規定されている範囲内で、工業生産活動のみを行う。工
業生産活動とは、商品(製品)の生産・加工およびその販売を意味する(第
10条)
。
工業生産特区の入居者は、1,000万ユーロ相当以上の投資を実施しなければ
ならない。うち、最初の1年間で100万ユーロ相当以上の投資が求められる
(第12条)
。
生産特区の特徴は、面積は 20 平方㎞、しかも同じエリア内にまとまってあ
ることが条件である。また管理機関(行政区)もひとつであることが求め
られる。
登録企業は、当該エリア内で生産および販売活動が認められる。基本的には
物品税が付加される製品(自動車を除く)以外のすべての製品の製造が可
能。
土地を賃貸している投資家は、優先的に土地購入が認められる。
優先業種以外であっても、ケースバイケースで対応することが可能であり
いかなる業種であっても進出の可能性はある。
同特区の特徴は、土地面積の上限はない
今後4箇所が決定される見込み。
特区の入居者は、特区外に支店・代表事務所をもつことができない(第10
条)
。
協定の有効期間中は、納税者にとって不利な変更が税法にあっても、特区
の入居者には適用されない
特区内に登録をせずに進出することも可能であるが、特区に適用されるイ
ンセンティブを享受することはできない。
登録資格は基本的にすべての業種・企業に認められるものの、ロシア国営
企業は認められない。
特区内登録企業の特区企業としての有効期限は20年間である。
(出所)各種資料を基に作成
図表1-36 2005年7月の特区法による税の特典(いずれも基本は5年間)
税金の種類
通常
特別経済区内
社会統一税
26%
14%
関税
関税率表に基づく
関税なし
土地税
最大で1.5%
0%
資産税
2.2%
0%
輸送税
最大で200 ルーブル
0 ルーブル
利潤税
24%
20%
(出所)リペツク州の特別経済区HPを基に作成
36
特区に進出を希望する企業は、特別経済区庁に申請書とビジネスプランを提出する必要が
ある。ビジネスプランとは、申請する企業が特区内で行う業務内容などで、特区の管理機関
がどういった設備が必要かということを検討するのに必要とされる。そのため、必要な土地
区画についての情報、契約締結後1年間に実施される投資額についてなどの記載も求められ
る。
なお、当該資料は特区窓口を通じてエキスパート協議会(連邦の組織体)で審査される。
なお、ビジネスプランの不履行については、契約時に罰則などが定められる。エキスパート
協議会は、ビジネスプランを法律に照らし合わせて点数をつけ、十分な点数に達した企業に
対して申請を承認する。また、最終的に連邦機関が承認された企業と登録契約を結ぶことと
なる。
これらの手続きについては、2006年11月現在、工業生産特別経済区については、特別経済
区庁のホームページの以下に必要書類(登記、税務関連証明書、ビジネスプラン等)が掲載
されており、同庁に申請することになっている。但し、2007年1月現在、英語版は公開され
ていない。
特別経済区庁HP: http:// rosoez.ru/ru/
工業生産特別経済区の居住者となる手続きHP:http://rosoez.ru/ru/oez/PPZ/rezident/
(2) 特別経済区以外の地域への投資に対するインセンティブについて
特別経済区以外の地方での投資インセンティブとして、
利潤税の低減などがある。
例えば、
サンクトペテルブルグ市の場合、利潤税率 24%を最高で 20%まで低減するようなインセン
ティブがあるが(利潤税の税率は税基本法で優遇しても 20%までしか下げられない)
、条件
については、それぞれの地域によって異なるため、関係先に問い合わせる必要がある(サン
クトペテルブルグでは、経済発展・産業政策・商業委員会)
。なお、モスクワ市については、
ゼレノグラードの特別経済区以外の投資インセンティブは存在しない。
37
7. 許認可・進出手続き
ロシアでは法律上、内外の投資家の差別はないため、投資関連手続きは、通常は法人登記
手続きのみである。しかしながら、実態的には投資規模、投資内容によっては、プロセスに
違いが出てくる可能性があるため、以下に 3 つのパターンを紹介する。
【小規模な直接投資】
投資金額が小額で、工場建設等の大規模な不動産取引、あるいはあまり許認可に関係しない
場合
法人登記手続き(次ページ参照)
【中規模な直接投資】
投資金額が大きく、工場建設等の不動産取引に関係する場合、特に生産活動を伴う場合
地方行政府(州、共和国等の経済委員会、外国投資委員会等の関係部署)
で地元の投資に際して配慮(インセンティブ、土地の提供、インフラの
整備等)を受けられるかを事前に調整
ある程度の段階で、
必要な登記手続きおよび許認可等の取得
(連絡事務所設立、
会社設立、衛生、環境、工業規格等の認可等)
【超大型の直接投資案件】
自動車製造案件等、件数は非常に少ないが、関税にかかるインセンティブ等の連邦レベルで
の優遇策が関係する投資契約を締結する場合等
連邦政府(大統領府あるいは経済発展貿易省等の連邦省庁)
にコンタクトを取り、連邦政府との投資契約を締結する交渉、および工場建設
の候補地との交渉を同時並行的に進める
候補地の決定
中規模な投資案件と同等のプロセスに移行
38
(1) 法人登記の方法
一般的な法人登記の窓口となる国家登記組織は、税務署である8。以下の流れは、サンクト
ペテルブル グ市での法 人登記手続 き例である が、登記窓 口は、No.15 地域間税務署
(Professora Popova str. 39.)に集約され、関連国家登記簿、予算外基金への法人登記など
も、この窓口でできる。
なお、モスクワの窓口は、No.46 地域間税務署(Pokhodny Proyezd 3.)である。法律上
は書類提出から登記決定まで 5 日で行われることになっているが、実際にはかなり時間がか
かる(数ヶ月から 1 年)と言われている。
図表 1-37 ロシアの法人登記の流れ及び必要書類等
以下の必要書類により申請
・国家登記の申請書
・契約書等の法人設立決定書類
・法人の定款関連書類
(原本あるいは公証人の証明を受けたコピー)
・外国での登記関連書類謄本
・国家登記手数料(2,000 ルーブル)の支払い書類
申請
交付
以下の登記関連書類
の交付
国家登記組織(窓口)
国家登記の決定
関連国家登記簿への登記
予算外基金への法人登記
・法人登記証明書(基
本国家登記番号が
書かれる)
・税務登録証明書(納
税者番号と納税分
類コードが書かれ
る)
・統一国家登記簿と統
計関係組織への登
録についての通知
書
・社会保険関連の登記
通知書
・年金基金の地元機関
への登記通知書
図表 1-38 企業設立手順
国家登記のために会社の設立諸
文書を用意
銀行に臨時の口座を開設
(定款資本への出資が金銭によ
り行われる場合)
法人を国家登記(同時に税務局に
登記される)
会社印作成
届出
地域統計局
社会保険
年金
医療保険
銀行に決済用の口座を開設
(出所)ロシア東欧貿易会、
ビジネスガイドロシア(2004∼2005)
(出所)サンクトペテルブルグ市資料を基に作成
8
金融機関、マスコミは、登記の手続きが異なるため、これらの業種については、それぞれ中央
銀行(www.cbr.ru)
、文化・マスコミ省(www.mincultrf.ru)で確認する必要がある。
39
ロシア進出に際しては、最初から商業活動を行う法人登記を行う企業は少なく、駐在員事
務所など、商業活動を行わない組織設立からはじめる会社が多い。駐在員事務所には、税務
対策上の労力が軽減されるという利点があるが、更新手続きが必要であることと、商業活動
については制限を受けるという欠点がある。駐在員事務所開設に際しては、司法省付属の国
家登記所(www.palata.ru)およびロシア商工会議所(www.tpprf.ru)で、事務所の承認手
続きが行われる(受入窓口)
。最終的に国家登記所で登記がなされて初めて手続き完了となる
が、商工会議所のほうが、民間に近く、ホームページでの手続き紹介も英語版があり、アク
セスは容易である。なお、外国企業の支店も設立が認められているが、これについては国家
登記所が窓口として承認を行うことになっている。
手続きに際しての必要書類は、駐在員事務所の場合、法人設立のための書類に加え、出身
国の取引銀行の推薦状、ロシアのパートナーの推薦書類、モスクワ市およびサンクトペテル
ブルグ市以外の地域の場合の現地連邦構成主体(共和国、地方、州等)の承認書類、所定の
アンケートが必要となる。また、支店の場合は、必要に応じてエネルギー省、天然資源省等
の省庁の鑑定書が必要となる。
商工会議所の事務所開設関連のページ http://eng.tpprf.ru/ru/main/accreditation/(英語)
Phone: (495) 620-0260、Fax: (495) 620-0170、E-mail: [email protected]
国家登記所のホームページ(www.palata.ru)
(ロシア語のみ)
駐在員事務所、支店開設の手続きが紹介されている。
国家登記所の駐在員事務所開設関連のページ
http://www.palata.ru/cgi-bin/get_page.cgi?pid=58
国家登記所の支店開設関連のページ
http://www.palata.ru/cgi-bin/get_page.cgi?pid=98
8.ロシアの主な税金・会計制度
(1) 税金
ロシアの税金制度は、連邦税、地域税、地方税に分かれている(図表 1-39)。連邦税は、
基本的に連邦と地域で税収が配賦され、地域税、地方税は基本的に地方自治体内で取り扱わ
れる。
税率は、一般的には、ロシアの税率は低く、特に個人所得税は一律の 13%と高額所得者に
とっては非常に低率である。また、組織利潤税(法人所得税)
、付加価値税も世界的水準との
比較では低いほうである。
しかしながら、税金は四半期ごとの予定納税により、徴収されているものの、企業に還付
されにくいシステムになっているほか、2002 年に固定資本への投資の経費が認められなくな
るなど、課税ベースが広範となっていることから、ロシアの実効税率は高いと指摘される。
なお、ロシアの税務監査は非常に厳しく、企業は、税務署対策に労力と時間をとられるケ
ースが多く、有能なコンサルタントあるいは税務・会計担当者を欠かすことは出来ない。
40
図表 1-39 ロシアの主な税金一覧
税金の種類
連 付加価値税
邦 物品税
税
内容
商品やサービスの販売に課税(輸入も含む)
特定商品(アルコール飲料、石油・ガス製
品、貴金属・宝石、乗用車・オートバイ等)
への販売課税
個人所得税
統一社会税
個人の貨幣所得
雇用所得、個人事業者の所得
組織利潤税
(法人所得税)
資源採掘税
組織の利潤に課税
資源採掘
税率(%)
18(一部減免措置あり)
課税基準は、特定商品の販
売量あるいは販売額。以下、
主要品目別税率:
・ウオッカ(25 度以上)
1ℓ当たり 146 ルーブル
・タバコ
1,000 本当たり 65 ルー
ブル+販売価格の8%
・乗用車(150馬力以上):
1馬力(0.75kW)当たり
153ルーブル
一律13%
年間所得金額28万ルーブル
で26%から逆累進課税。課
税基準は、賃金支払額の3つ
の区分に応じる。
・年収 28 万ルーブル以下
26%
・年収 28∼60 万ルーブル
7万 2,800 ルーブル+28
万ルーブル超過額の 10%
・年収 60 万ルーブル以上
10万4,800ルーブル+60
万ルーブル超過額の2%
24%
課税基準は、鉱物資源の採
掘額あるいは採掘量。
・貴金属 6.5%
・非鉄金属、レアメタル、
ダイヤモンド 8%
・石油 16.5%(石油の世界
市場価格の変動に応じて
変動する重量税)
。
・天然ガス 1,000㎥当たり
135ルーブル
動産および不動産(事業をロシア国内で行 2.2%以下
わない外国の代表事務所は動産のみ)
自動車、船等の国家に登記する輸送機器
馬力および重量換算で課税
住宅やガレージ等の建築物
2%以下
土地、区分所有
土地価額により異なる
地 組織資産税
域
税 輸送税
地 個人資産税
方 土地税
税
(出所)税基本法等を基に作成
41
(2) 関税
ロシアの関税は、アルコール飲料に 100%の輸入関税が賦課される以外は、最高 30%の関
税率となっている。ロシアの輸入関税率は、以下のロシアの連邦関税庁の英語のホームペー
ジに主要商品の関税率が掲載されている(www.customs.ru/en/legislation/tariff/)
。
(3) 会計制度
ロシアの会計制度は、米国会計基準や国際会計基準とは異なる独自のシステムである。し
かしながら、2004 年に財務省は 2010 年までに国際会計基準に移行することを決定し、現在
法改正の検討を進めている。
ロシアの企業の会計年度は 1 月∼12 月であり、4 月までに年度の会計報告を税務署、統計
局に提出しなければならない。また、四半期報告は、四半期末日から 30 日以内に報告をす
る必要がある。なお、会計報告は、代表取締役および経理部長のサインが必要であり、一般
的に、ロシアでは経理部長の役割が制度上非常に重要である。
42
9.用地取得
土地に関する取り扱いは、土地基本法(2001 年 10 月 25 日付 No. 136-FZ)で規定されて
いる。外国人・企業の土地所有は、一部を除き、基本的にロシア人、法人と同様の扱いであ
る。
ロシアの土地は圧倒的に政府所有分が多く(図表 1-40)、都市部および大都市近郊の土地
については、民間のデベロッパーが土地を保有するケースも多くなっているものの、土地取
得に際しては、地元行政府と交渉を行うことが多い。
首都モスクワ市は、土地の所有を認めず、賃貸を基本としていることから、モスクワ最大
の企業にして不動産業者と呼ばれている。土地については非常に地域性が強いので、土地の
所有、利用については地元行政府と十分に調整をすることが無難である。
。圧倒的に森林、農地が多く、全体の 6
土地は、7つの地目に分かれている(図表 1-41)
割強を占める。なお、農地については、土地基本法とは別の法律で定められることになって
おり、外国人・企業は、国境地帯の土地、農地、森林資源を含む土地の購入・所有は不可と
されている。従って、外資企業が都市郊外で事業を実施する場合には、農地の地目の変更な
どを行う必要がある。
土地の売買は、土地台帳の記録、登記所での登記が義務付けられ、これらの手続き完了後
に、所有権が移転することになる。
図表 1-40 ロシアの所有別状況
個人所有
7.3%
図表 1-41 ロシアの土地の地目別状況
法人所有
0.3%
水資源地 住宅地
1.1%
1.6%
特別保護
2.0%
予備地
6.2%
農地
23.5%
連邦・地方
政府所有
92.4%
森林
64.6%
(出所)連邦不動産鑑定庁(http://kadastr.ru/)HP より
43
工業地
1.0%
10.知的財産権
ロシアの街中では、違法 CD、DVD などのコピー商品が氾濫していることから、知的財産
保護の意識は非常に低いように見受けられるが、法制面では、WTO 加盟を控え知的財産保
護の制度面での整備は進んでいる9。
ロシアにおける知的所有権の法的保護は、憲法(第 44 条、71 条)および民法典(第 54
条、128 条、138 条、139 条)で規定されている。ただ、個別の関連法は以下に見られるよ
うに、1992 年9月∼1993 年8月(現ロシア憲法の制定以前)に殆どが制定済みである。そ
の後、状況に応じ補足・修正されてきたが、基本線は変わっていない。
なお、法律は制定されてはいるものの、実際の遵守状況は必ずしも芳しいものではない。
米国議会図書館レポートによれば、
「海外の投資家や輸出業者は、ロシア政府が適切に関連法
を履行せず、そのために知的財産権の侵害が罰をうけることなく増大しており、被疑者は捕
まることもなく、捕まったとしても処罰されない」と述べており、2002 年ロシアでの米国製
品の知的侵害による損失は7億 5,580 万ドルと推定されるとしている(CRS Report for
Congress,”Russia’s Accession to the WTO”,July 16, 2006)
。
(1) 特許法
1992 年9月 23 日付連邦法 No.3517-I(2003 年2月7日 改正)
・ 対象:発明、実用新案および工業意匠
・ 権利存続期間:発明特許権 20 年、実用新案特許権5年(3年延長可能)
、工業意匠特許
10 年(5年延長可能)
・ 特許手続き:先願主義
国からの依頼により創作された発明・実用新案・工業意匠に関する特許権については、
国家契約に特許権は連邦もしくは連邦構成主体に属するとの記載がない場合、その発明
に対する特許権は遂行者(請負者)に属する。
(2) 商標、サービスマーク、原産地表示に関する連邦法
1992 年9月 23 日付連邦法 N 3520-I
・ 商標は「知的所有権に関する連邦行政機関」(現行では、ロシア連邦教育・科学省管轄
の連邦知的所有権・特許・商標局が当該機関と思われる)に登録をする必要がある。
・ 商標権存続期間:10 年(10 年単位での更新可能)
・ 原産地表示証明の有効期間:10 年
・ 外国の法人・自然人は、ロシアの国際協定もしくは相互主義に基づき、ロシアの法人・
9
詳細については、特許庁が日本貿易振興機構に委託した実施した「模倣対策マニュアル(ロシ
ア編)」があるので、詳しくは、これは参照されたい。以下、特許庁のホームページである。
www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/mohouhin/mohouhin2/manual/manual.htm
44
自然人と同様、本法に規定された権利を行使する。
・ ロシアの国際協定が本法とは異なる規定を定めている場合は、国際協定の規定が採用さ
れる。
(3) コンピュータ用プログラムおよびデータベースの権利保護に関する連邦法
1992 年9月 23 日付連邦法 No.3523-I(2002 年 12 月 24 日 改正)
・
対象:コンピュータ用プログラムとデータベースの著作権。
「知的所有権に関する連邦
行政機関」に登録。著作物が創作されればただちに著作権が成立する(無方式主義)
・ 著作権の保護期間:著者の生存中および死後 50 年。
・ 権利保護手段:使用差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、罰金
・ 労働職務の遂行に関連しもしくは雇用者の指図に従って被雇用者(著者)によって製作
されたコンピュータ用プログラムとデータベースの排他的権利は、労働協約に定めがな
い限り、雇用者に属す。連邦もしくは連邦構成主体の必要のために国家契約に従って製
作されたコンピュータ用プログラムとデータベースの排他的権利は、その権利は連邦も
しくは連邦構成主体に属すと国家契約に定めがない場合、遂行者(請負者)に属す。
(4) 集積回路配置の権利保護に関する連邦法
1992 年9月 23 日付連邦法 No.3526-1(2002 年7月9日 改正)
・ 集積回路の著作権の保護(著作権は「知的所有権に関する連邦行政機関」に登録可能)
・ 集積回路の著作権保護期間:10 年
・ 権利保護手段:使用差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求
(5) 著作権および著作隣接権に関する連邦法
1993 年7月9日付連邦法 No.5351-I(2004 年7月 20 日 改正)
・ 著作権の対象は創造的活動の結果としての学術、文学、芸術作品であり、コンピュータ
のプログラムも含む。
・ 著作権の対象にならないのはアイデア、方法、過程、システム、手段、概念、原則、発
見、事実、さらに公的文書(法律、政令等)
、国章、 国旗、民衆文化、ニュース。
・ 著作物が創作されればただちに著作権が成立する無方式主義
・ 著作権保護期間:著者の生存中および死後 70 年間
・ 著作隣接権は実演者、レコード製作者、放送事業者、優先放送業者に与えられる。
・ 著作隣接件の保護期間:初リリースから 50 年間
45
(6) 営業の秘密に関する連邦法
2004 年7月 29 日付連邦法 N98-FZ
・ 営業秘密の定義:
「それを保有することによって、その保持者が、現行のないしは可能な
状況において、所得を増やし、無駄な出費を避け、商品・作業・サービス市場における
地位を維持し、もしくはその他の営業上の利益を取得することができるような情報秘
密」
。
・ 営業秘密を成す情報の定義:
「合法的には自由にアクセスできない第 3 者にとって、そ
の未知性ゆえに実際にもしくは潜在的に営業上の利益を有するもので、その情報所有者
によって営業秘密保護措置が講じられる科学技術、工学、生産、財務・経済上、その他
の情報(生産秘密(ノウハウ)を含む)
。
」
・ 営業秘密を成す情報の保有者は雇用者であり、被雇用者は営業秘密情報を口外しない義
務を負い、口外によってもたらされた損害に対し賠償責任を負う。被雇用者は、労働契
約失効後 3 年間は守秘義務がある。組織の幹部は、営業秘密に関するロシア連邦法規違
反によって所属組織にもたらされた損失を賠償する責任がある。
・ 営業秘密情報の保有者は求めに応じて、その情報を国家機関、地方自治体に提出する。
提供を拒否した場合、当該機関はこの情報を司法手続きで請求する権利がある。
・ 同法違反の場合、規律上、民法上、行政上、刑事上の責任を伴う。情報秘密保護に関す
る措置を講じることを、情報秘密利用者が拒否した場合、営業秘密情報の保持者は司法
手続きで自らの権利の保護を要求する権利がある。
(7) 担当官庁
監督官庁は、連邦知的財産・特許・商標庁(略称 ROSPATENT)である(連絡先は以下の
とおり)
。
FEDERAL SERVICE FOR INTELLECTUAL PROPERTY,
PATENTS AND TRADEMARKS (ROSPATENT)
住所:30-1 Berezhkovskaya nab. Moscow G-59, GSP-5、123995 Russian Federation
Fax: (495) 240-61-79、 http://www.rupto.ru、 e-mail:[email protected]
11.環境規制
(1) 環境アセスメント
連邦法「環境アセスメントについて」
(1995 年 11 月 23 日付 No.174-FZ、2004 年 12 月 29
日付改訂)に関する連邦法
・ 環境に関係する事業の場合、ビジネス案件のフィージビリティスタディにおいて、基本
的に「環境保護」の項目が必要とされる。
・ 具体的には、以下の手順で国家環境アセスメントが作成することが求められる。
46
図表 1-42 国家環境アセスメント作成手続き
フィージビリティスタディでの事前環境アセスメントの作成(閲覧可能)
↓
公聴会
↓
国家環境アセスメントの作成
(2) 環境保護法
連邦法「環境保護について」(2002 年1月 10 日付 No.7-FZ)
・ 環境に悪影響を与えている企業の支払い義務、具体的支払額等を定めている
・ 対象環境汚染物質は、①大気汚染、②水質汚染、③土壌汚染、④廃棄物、⑤騒音、熱、
強磁気、⑥その他の環境悪影響である。
(3) 担当官庁
環境分野の所轄官庁としては、連邦環境・技術・原子力監督局(連邦政府直轄、
www.gosnadzor.ru/)および連邦自然利用分野監督局(天然資源省内、control.mnr.gov.ru/)
の2つの省があるが、特に前者が実務上は大きな権限を有している。
12.為替管理・貿易管理
ロシアでは、2004 年に発効した改正外為法により、経常取引については原則制限がなくな
っている。また、ソ連解体以降、維持されてきた外貨収入の強制売却制度も 2006 年 5 月に
廃止され、2007 年 1 月以降は、海外口座の開設の自由化、海外からのローンの取得に関わ
る特別口座および事前積み立て義務が廃止されるなど大幅に自由化されている。
しかしながら、ロシアの場合、銀行を通じた中銀への報告義務は多数あり、末端での規制
措置が残る場合がある点については、留意が必要である。
13.資金調達
ロシアの金融機関の大部分は、実態として投資銀行に近いところが多い。また、ロシア地
場銀行からの借り入れは、金利が高く、銀行の透明性も低く、長期の融資の実績も殆どない
(短期融資が殆どである)ことから、あまり現実的ではない。ロシア地場企業でも外国から
資金調達する企業が増えており、民間企業の対外債務が急増している。
47
14.銀行取引
(1) 外資系の銀行
2005 年末現在、ロシアに進出している外資系銀行は 136 銀行で、その内 100%外資銀行
は 41 銀行であった。ロシアでは外国銀行の支店開設が認められないので、外資銀行はすべ
て外国銀行の子会社、ロシア法人となっている。主な大手外資系銀行は図表 1-43 のとおり。
図表 1-43 ロシア進出の大手外資系銀行リスト
ライファイゼン銀行(Raiffeisen International Bank-Holding AG 略称:RI)
所在地:ロシア国内に拠点が多数あり、所在地については以下の英語のページを参照のこ
と。http://map.raiffeisen.ru/en/
URL:http://www.raiffeisen.ru/
ハンザバンク(Hansabank)
所在地:(モスクワ) 24,Sadovaya-Spasskaya,107078, Moscow
Phone: + 7 (495) 777-63-63、777-63-42
Fax:+7 (495) 777-63-64
営業時間:月∼金、 09:00-18:00;
現金窓口対応時間:09:00-17:00
ATM:月∼金 9:00-21:00.
(サンクトペテルブルグ)2/4 Shpalernaya, Letter A,191187
Phone: +7 (812) 600-63-63
Fax: +7 (812) 600-63-64
( カ リ ー ニ ン グ ラ ー ド ) 40, Moskovskiy prospekt, 3 floor, mail box
131,236006,Kaliningrad
Phone:+ 7 (4012) 30-40-40
Fax:30-40-41
URL:http://www.hansabank.ru/eng/
Credit Suisse[CSFB(Credit Suisse First Boston)
]
所在地:(モスクワ) Visitor address :Credit Suisse Moscow Representative Office、
Romanov Dvor II 4 Romanov Pereulok, Building 2, 7th Floor
125009 Moscow, Russia
Phone :+7 (495)-518-98-88
Fax: +7 (495)-518-98-89
URL:http://www.credit-suisse.com/emea/en/
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)
所在地:
(モスクワ)Ducat Plaza II、7 Gasheka Street 123056 Moscow, Russia
Phone:+7 (495) 589 2100
Fax::+7 (495) 589 2101
URL:http://www.morganstanley.com/about/offices/russia.html
国際モスクワ銀行(INTERNATIONAL MOSCOW BANK、略称IMB)
ロシア国内に拠点が多数あり、以下の英語のページを参照のこと。http://www.imb.ru/en/
CITI Bank(ZAO Citibank)
所在地:
(法人向け、モスクワ)8-10 Gasheka St. 125047 Moscow, Russia
Phone: +7-495-725-1000,
Fax. +7-495-725-6700
(法人向け、サンクトペテルブルグ)5 Italyanskaya St. 191011 St. Petersburg,
Phone:+7-812-118-3696,
Fax: +7-812-118-3690
(個人向け)23 時間テレフォンバンキングサービス有り
Phone(モスクワ)
:+7 (495) 775-75-75
48
Phone(サンクトペテルブルグ)
:+7 (812) 336-75-75
Phone(その他エリア)
:+8 (800) 200-38-38
URL:https://www.citibank.ru/RUGCB/JPS/portal/Index.do
スベンスカ・ハンデルス・バンク(ZAO Svenska Handelsbanken)
所在地:
(モスクワ)Smolenskaya sq. 3, 12th floor,RU-121099
Phone: +7 (495) 961 32 55
Fax:+7 (495) 961 32 56
E-mail:[email protected]
(サンクトペテルブルグ)1, Chaikovskogo str., 2nd Floor business centre
SENATOR,191187 St. Petersburg
Phone: +7 (812) 332 33 93
Fax:+ 7 (812) 332 33 94
URL:http://www.svenskahandelsbanken.ru/
ドイチェ・バンク(Deutsche Bank Ltd.)
所在地:(モスクワ) Address:4 Shepkina street, 129090, Switchboard
Phone:+7 (095) 797-5000
Fax:+7 (095) 797-5017
E-mail: [email protected]
URL:http://www.db.com/russia/
BNP パリバ(BNP Paribas ZAO)
所在地:
(モスクワ)Bolshoy Gnezdnikovsky pereoulok 125009 Moscow, Russia
Phone : +7 (495) 785 60 00
Fax : +7 (495) 785 60 01
URL:http://www.bnpparibas.ru/en/home/default.as1/2
(出所)各種資料を基に作成
(2) 日系の銀行
2006 年末現在、日系の銀行はユーラシア三菱東京 UFJ 銀行およびみちのく銀行の 2 行で
あるが、三井住友銀行もモスクワに事務所を設立している。
なお、2006 年 10 月には、みずほコーポレートによるみちのく銀行の海外現地法人の買収
が発表され、みずほコーポレートも本格的にロシアビジネスへ参入することとなった10。
日系の銀行は、主として日本人、日本企業の銀行送金、決済サービス等を行っているが、
みちのく銀行はユジノサハリンスク、ハバロフスクに支店を持ち、ロシア人向けに住宅ロー
ンを供与している。
10
みずほコーポレート銀行プレスリリースより。“株式会社みちのく銀行とのロシア現地法人に
係る株式譲渡契約及び戦略的業務協力協定の締結について”株式会社みずほコーポレート銀行(頭
取:齋藤宏)と株式会社みちのく銀行(頭取:杉本康雄)は、平成 18 年 10 月 12 日付で、下記
の内容について合意致しました。①当行が、日本・ロシア両国の関係当局の認可を前提に、株式
会社みちのく銀行が所有するみちのく銀行ロシア現地法人(みちのく銀行(モスクワ))の発行済普
通株式 10 百万株(100%)を取得すること。②上記株式取得完了までの間、当行がお取引先のロ
シア関連ビジネスをサポートする為に、お取引先にみちのく銀行ロシア現地法人を紹介すること
等を骨子とした戦略的業務協力協定を締結すること。
49
図表 1-44 ロシア進出の日系銀行リスト
ユーラシア三菱東京 UFJ 銀行 ZAO Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ (Eurasia)
所在地:4 Romanov Pereulok, Moscow 125009 Russia
Phone:7-495-225-8999
Fax: 7-495-225-8998
みちのく銀行
所在地(モスクワ)
:Ltd.37 Bolshaya Ordynka,Moscow,119017, Russia
Phone:7-495-729-5858, 日本人スタッフ(直通):7-495-729-5888
所在地(ユジノサハリン支店)
:Michinoku Sakhalin Building 1st Floor,234 Lenina St.,
Yuzhno-Sakhalinsk
Phone:日本人スタッフ(直通):
(7)509-95-1111
所 在 地 ( ハ バ ロ フ ス ク 支 店 ): Business Center Parus 2nd Floor,5 Shevchenko
St.,Khabarovsk
Phone:
(7)4212-64-9600
Fax: (7)4212-64-9522
欧州三井住友銀行モスクワ駐在員事務所 Sumitomo Mitsui Banking Corporation Europe Limited,
Moscow Representative Office
所在地:Room Number 305, Building 5, Ilyinka St. 3/8, Moscow, 109012
Phone:+7(495)789 3973
(出所)各社ホームページより作成
(3) 口座の開設方法
ロシアでは、顧客との決済・出納業務は決済口座が開設できて始めて可能となるため、企
業登記後には、決済口座を開設する必要がある。なお、決済口座の開設前に仮(貯蓄)口座
を開設し、①口座開設申請書、②法人設立決議、③設立文書、④仮口座開設契約の銀行との
締結をまかせる設立者の代理人への委任状などを提出する必要がある。
また、決済口座開設に際し必要な書類は、①定型様式の口座開設申請書、②国家登記証明
書(公証人あるいは登記機関の認証を受けたコピー)
、③法人設立決議、④設立文書(民法に
適合したもの)
、⑤税務署登録証明書(原本)
、⑥サインおよび印章の見本が示された銀行顧
客カードを3通、1通は公証人あるいは上級機関が認証したものとする。⑦ 口座管理をま
かせる責任者の権限を証明する書類
(特に、
職員のなかに主任会計士がいれば、
その任命書)
、
⑧ 口座管理をまかせる権限を与える銀行顧客カードにサインと印章の見本をのせてある責
任者の履歴データ(必要があれば)
、⑨ 統一国家企業組織登記簿に当該組織が含まれて入る
ことを示す国家統計機関の通知書、である。
(4) 送金
日本とロシアの銀行間送金については、様々な規制(契約書の存在など、送金目的の確認
が必要なケースがある)があるものの、基本的には問題なく行うことができる。
なお、日本とロシアにはソ連時代以来の租税条約が継承され、配当、利子、ロイヤリティ
ーについては源泉国で課税されることもあり、税率はそれぞれ 15%、10%、10%となって
いる。
50
Fly UP