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CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験
CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 平成 26 年公認会計士試験 第Ⅱ回短答式試験 監査論【講評】 短答式試験,おつかれさまでした。 今回の短答式試験においては,監査論の出題形式には変更はありませんでしたが,1肢の文章が3 行~4行の肢がほとんどで,最近の出題傾向と比較して文章量(ボリューム)が増えております。さ らに,その増えた文章についても,監査実務指針の些細な規定の文章(多くの受験生の方々が,暗記 していない文章)や,監査実務指針の規定を試験委員の方が言い換えた表現の文章であったため,試 験時間内で考える時間が増えたのではないかと思います。東京CPA会計学院では,1問2分で解い て欲しいと言ってきましたが,今回の問題については,32 分で解き終わるのは難しかったのではない でしょうか。 このような試験であったことを踏まえると,前回の 12 月の試験より,少し難しくなったといえま す。 しかし,4肢6択の出題傾向や 16 問という問題数が継続されたこと,試験時間内で考えなければ正 答できない問題が増えたことにより,今回の試験問題についても,暗記偏重型の人は点数が伸び悩み, 監査実務指針の規定をイメージし,理解している人は,合格点を取れたという問題でしたので,より 実力差が反映される問題でした。 また,今回の出題範囲については,ここ数年の短答式試験の傾向に比べて,監査実施論の問題が3 問と少なく,その代わりに,監査報告論と内部統制監査から2問ずつ出題されていました。このよう に,監査実施論から幅広く出題されたというよりは,少し論点が寄っているというように感じました。 さらに,この数年,毎回出題されていた会社法監査からの問題がなかったことも,少し驚きました。 具体的には,監査総論から2問,監査実施論から3問,監査報告論から2問,内部統制監査から2 問,公認会計士法,金融商品取引法監査制度,監査主体論,四半期レビュー,監査の品質管理,継続 企業の前提,監査人の交代から1問ずつ出題されております。 今回の短答式試験の難易度は,正答したい問題であるA問題が9問(7点問題1問含む。),正答が 可能な問題であるB問題が5問(8点問題1問含む。),C問題が2問(7点問題1問含む。)でした。 なお,今回の試験の合格ボーダーは,A問題については9問中8問,B問題については5問中2問 ~3問,正答していただきたいので,65 点程度になると思っています。 ― 1 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 平 成 26 年 第 Ⅱ回 公 認 会 計 士 試 験 短答式試験 監 査 論 ・解 答 解 説 問題 1 正解 6 ア.× (難易度:A) 一般目的の財務諸表の場合,監査意見は,財務諸表が,適用される財務報告の枠 組みに準拠して,すべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて 表明される(「監査基準の改訂について(平成 14 年)」三 1(2),監査基準委員会報 告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」3項)。 イ.× 監査証拠は,アサーションを裏付ける情報と矛盾する情報の両方から構成される が,依頼した陳述を経営者が拒んだ場合のように,情報がないことそれ自体が監査 証拠となる場合がある(監査基準委員会報告書 500「監査証拠」A1項)。 ウ.○ (監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」6項) エ.○ (監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」12 項(8), A44 項) 問題 2 正解 3 (難易度:B) ア.○ (監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」12 項(2)②) イ.× 経営者は,財務諸表の作成に関連すると認識している記録や証憑書類等のすべて の情報を監査人に提供しなければならないので,重要な機密事項を除外することは 認められていない(監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目 的」12 項(2)③ア)。 ウ.× 経営者は,監査人が監査証拠を入手するために必要と判断した,企業構成員への 制限のない質問や面談の機会を監査人に提供することが求められているが,取引先 企業に対して,質問や面談の機会を制限なく提供することまでは求められていない (監査基準委員会報告書 200 「 財務諸表監査における総括的な目的」12 項(2)③ウ)。 エ.○ 経営者には,監査人が監査の目的に関連して経営者に依頼する,すべての追加的 な情報を監査人に提供することが求められている。なお,「いかなる情報であって も」という表現に多少の違和感が生じるが,「すべての」という言葉に内包される と読むべきであろう(監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な 目的」12 項(2)③イ)。 問題 3 正解 ア.○ 3 (難易度:B) (監査基準委員会報告書 900「監査人の交代」18 項) ― 2 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 イ.× 監査人予定者は,監査契約を締結するか否かにかかわらず,監査契約の締結前に 会社から得た情報及び監査業務の引継に関して前任監査人から得た情報に対しても 守秘義務を負い,会社とその旨を文書で確認しなければならないが,前任監査人を 含めた三者で確認することまでは求められていない(監査基準委員会報告書 900「監 査人の交代」20 項)。 ウ.× 監査人予定者は,監査契約を締結するか否かにかかわらず,守秘義務を負うため, 監査契約に至らなかった場合であっても,守秘義務は解除されない(監査基準委員 会報告書 900「監査人の交代」20 項)。 エ.○ 問題 4 正解 (監査基準委員会報告書 900「監査人の交代」19 項) 5 (難易度:B) ア.(Aさん)○ (Bさん)× (「公認会計士法」第 34 条の 14 の2,第 28 条の2) 就職制限の対象範囲には,被監査会社の親会社の連結子会社(いわゆ る兄弟会社)の役員も含まれている(「公認会計士法施行規則」第 13 条)。 イ.(Aさん)○ (Bさん)○ (「公認会計士法」第 34 条の 10 の5第1項) 当該監査証明業務に関して,監査法人が負担することとなった債務に ついて,監査法人の財産をもって完済することができないときは,指定された社員 が連帯してその弁済の責任を負うが,その他の社員は有限責任となる(「公認会計士 法」第 34 条の 10 の6第8項)。 ウ. (Aさん)× 無限責任監査法人は,特定の証明について,一人又は数人の業務を担当 する社員を指定することができることになっているため,指定が義務付けられてい るわけではない。ただし,本問の表では, 「ウ.無限責任監査法人における指定社員」 という題になっているため,無限責任監査法人における指定社員制度を採用してい る場合における規定と考えると正しい記述になってしまう。その点において,少し 迷ってしまう出題形式といえる(「公認会計士法」第 34 条の 10 の4第1項)。 (Bさん)○ 指定証明に関して,被監査会社等に対して監査法人が負担することと なった債務について,監査法人の財産をもって完済することができないときは,指 定された社員のみが連帯してその弁済の責任を負うため,その他の社員は,有限責 任となる。その一方で,第三者に対して監査法人が負担することになった債務につ いては,そのような取扱いはないので,すべての社員が連帯してその弁済の責任を 負うことになる(「公認会計士法」第 34 条の 10 の6第4項)。 エ.(Aさん)○ 公認会計士の資格を有しない者が監査法人の社員になろうとする場合, 日本公認会計士協会に備えられた名簿(特定社員名簿)に特定社員の登録を受けな ければならない(「公認会計士法」第 34 条の 10 の9)。 (Bさん)○ 特定社員であっても,監査法人の社員であることには変わりはないの で,監査証明業務の業務執行社員になれないなどの特別の規定がある場合を除き, 他の社員と同様の義務を負う。なお,守秘義務に関しては,特定社員でなくなった 後についても義務を課す必要性から,別に条文が設けられている(「公認会計士法」 第 34 条の 10 の 16,第 34 条の 11,第 34 条の 14)。 ― 3 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 問題 5 正解 ア.× 6 (難易度:C) 臨時報告書は,いかなる内容であっても監査対象にならない(「財務諸表等の監査 証明に関する内閣府令」第1条各号参照)。 イ.× 公認会計士又は監査法人は,金融商品取引法第 193 条の2第6項の規定により提 出すべき報告又は資料の一部として,監査等の従事者,監査日数その他当該監査等 に関する事項の概要を記載した概要書を提出しなければならないが,その提出先は, 内閣総理大臣ではなく,財務局長等である(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府 令」第5条第1項)。 ウ.○ 監査証明を受けなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして内閣 府令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けた場合,公認会計士又は監査 法人の監査証明を免除されることになる(「金融商品取引法」第 193 条の2第2項第 3号)。 エ.○ 訂正報告書において,監査証明を必要とする有価証券報告書に係る連結財務諸表 及び財務諸表に訂正がなされた場合,改めて監査証明が必要とされる(「財務諸表等 の監査証明に関する内閣府令」第1条第 15 号)。 問題 6 正解 1 (難易度:A) 〔空欄に入る語句〕A:公正不偏の態度,B:正当な注意,C:懐疑心,D:違法行為 ア.○ 監査人は,職業的専門家としての判断又は業務上の判断を行うに当たり,先入観 をもたず,利益相反を回避し,また他の者からの不当な影響に屈せず,常に公正な 立場を堅持しなければならないという「公正性の原則」を守ることにより,公正不 偏の態度を保持する(「倫理規則」第4条第1項)。 イ.○ 職業的専門家としての正当な注意には,職業的専門家としての基準及び技術的基 準に準拠して,提供する専門業務に求められる内容に従い,注意深く,適切に,か つ適時に専門業務を提供するという責任が含まれている。そのため,正当な注意の 内容は,監査機能に関する社会の期待や監査技法の発展を受けて,一般に公正妥当 と認められる監査の基準の改訂に応じて変化することになる(「倫理規則」注解3第 3項)。 ウ.× 監査人は,記録や証憑書類の適正性に疑いを抱く理由がある場合を除いて,通常, 記録や証憑書類を真正なものとして受け入れることができる。そのため,監査人が, 記録や証憑書類の適正性に疑いを抱く理由がない場合には,記録や証憑書類の真正 性を立証する証拠を入手する必要はない(監査基準委員会報告書 200「財務諸表監 査における総括的な目的」A20 項)。 エ.× 監査人は,違法行為による財務諸表の重要な虚偽表示を識別することは求められ ているが,企業の違法行為のすべてを発見することが期待されているわけではない (監査基準委員会報告書 250「財務諸表監査における法令の検討」4項)。 ― 4 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 問題 7 正解 5 ア.× (難易度:A) 結論に関する除外事項を付した限定付結論を表明する場合,修正すべき事項及び 可能であれば当該事項が四半期財務諸表に与える影響を記載しなければならないた め,常に,四半期財務諸表に与える影響を記載しなければならないわけではない(「四 半期レビュー基準」第三 6)。 イ.○ ウ.× (「四半期レビュー基準」第三 8) 監査人は,重要な偶発事象等の将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について, 四半期財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合に は,重要な四半期レビュー手続を実施できなかった場合に準じて,結論の表明がで きるか否かを慎重に判断しなければならないため,限定的結論を表明しなければな らないわけではない(「四半期レビュー基準」第三 11)。 エ.○ 問題 8 正解 ア.× (「四半期レビュー基準」第三 12(1)) 4 (難易度:A) 監査ファイルの最終的な整理が完了した後に,監査調書の修正又は追加が必要と なる状況は考えられるが,そのケースとしては,内部又は外部の関係者が実施する 監査業務の定期的な検証及び検査の指摘により,監査調書を明瞭に記載することが 必要となった場合が想定されている。このように,監査チームが自らの判断で監査 調書を任意に追加できるというわけではない(監査基準委員会報告書 230「監査調 書」A24 項)。 イ.○ (品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」A38 項) ウ.○ 監査調書の査閲を行う場合には,職業的専門家としての基準及び適用される法令 等に従って作業が行われているかどうかを考慮する必要がある。ここで,当該基準 及び法令等は,監査基準・監査基準委員会報告書・監査に関する品質管理基準・品 質管理基準委員会報告書,公認会計士法・同施行令・同施行規則,金融商品取引法, 会社法,日本公認会計士協会が公表する会則・倫理規則・報告書・実務指針・通達 その他から構成される(品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品 質管理」11 項(9),A31 項)。 エ.× 四半期レビューに関する調書のファイルは,年度監査の監査ファイルとは別のフ ァイルとして整理しなればならない。よって,年度監査の監査ファイルとして最終 的な整理を実施することは認められない(品質管理基準委員会報告書第1号「監査 事務所における品質管理」A50 項)。 ― 5 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 問題 9 正解 6 ア.× (難易度:C) 実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているア サーションに関連する内部統制が有効であるという監査証拠にはならない。つまり, 財務諸表に虚偽表示が存在しない場合であっても,その作成プロセスである内部統 制に重要な不備が存在することもある(監査基準委員会報告書 330「評価したリス クに対応する監査人の手続」15 項)。 イ.× 監査人は,特別な検討を必要とするリスクに対する内部統制に依拠する場合には, 当年度の監査において,これに関連する内部統制の運用評価手続を実施しなければ ならない。したがって,当年度における運用評価手続を実施するか否かの検討が行 われるわけではない(監査基準委員会報告書 330「評価したリスクに対応する監査 人の手続」14 項)。 ウ.○ (監査基準委員会報告書 330「評価したリスクに対応する監査人の手続」7項) エ.○ 監査人は,特別な検討を必要とするリスクに関連する内部統制の整備状況が良好 であると判断した場合には,通常,当該内部統制の運用評価手続を行った上で,個 別に対応する実証手続を行うと考えられる。しかし,内部統制の整備状況が良好で あると判断した場合でも,運用状況が良好でないと想定し,運用評価手続を行わな い場合も考えられる。そのため,「関連する内部統制の整備状況が良好であると判 断して運用評価手続を実施しなかった」という記述は,文章の流れだけを読むと誤 りと判断したいところであるが,例外的な取扱いもあるため,当該記述だけで誤り と判断することはできない。 ここで,監査人は,特別な検討を必要とするリスクに対して運用評価手続を行わ ない場合,すなわち実証手続のみを実施する場合には,詳細テストを行わなければ ならない。したがって,分析的実証手続のみでは十分かつ適切な監査証拠を得たこ とにはならないため,本肢は正しい(監査基準委員会報告書 330「評価したリスク に対応する監査人の手続」20 項)。 問題10 正解 3 (難易度:B) ア.○ (監査基準委員会報告書 501「特定項目の監査証拠」3項) イ.× 監査人は,期首残高に当年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす虚偽表示が含まれ ているかどうかについて,十分かつ適切な監査証拠を入手する場合には,残高が適 切に繰り越されているか,期首残高に適切な会計方針が適用されているかを検討す るほかに,以下の手続のうち,一つ又は複数の手続を実施しなければならない。 ① 前年度の財務諸表が監査されている場合,期首残高に関する監査証拠を入手 するため,前任監査人の監査調書を閲覧すること ② 当年度に実施した監査手続によって期首残高に関する監査証拠を入手でき るかどうかについて評価すること ③ 期首残高に関する監査証拠を入手するために特定の監査手続を実施するこ と ― 6 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 したがって,上記①と③の両方を実施しなければならないとする本肢は誤りであ る(監査基準委員会報告書 510「初年度監査の期首残高」5項)。 ウ.× 監査人は,第三者が保管し,管理している棚卸資産が財務諸表において重要であ る場合には,以下のいずれか又は両方の手続を実施することによって,棚卸資産の 実在性と状態について十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。 ① 棚卸資産の数量及び状態に関して,第三者に対して確認を実施すること ② 実査,又は個々の状況において適切な他の手続を実施すること したがって,上記①と②の両方を実施しなければならないとする本肢は誤りであ る。また,第三者の信頼性及び客観性について疑義が生じる情報を入手した場合な ど,状況に応じて確認の代わりに又は追加して,他の監査手続を実施することが適 切であるかどうかを検討することがある。したがって, 「第三者の信頼性及び客観性 の程度にかかわらず,確認を実施する」という記述も誤りである(監査基準委員会 報告書 501「特定項目の監査証拠」7項,A16 項)。 エ.○ 問題11 正解 (監査基準委員会報告書 501「特定項目の監査証拠」A9項) 5 ア.× (難易度:A) 監査の過程で集計した虚偽表示が重要性の基準値に近づいている場合,未発見の 虚偽表示と監査の過程で集計した虚偽表示の合計が,重要性の基準値を上回るリス クを監査上許容可能な低い水準に抑えられないことがある。したがって,このよう な場合には,監査人は,当初策定した監査計画の修正を検討する必要がある(監査 基準委員会報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」A5項)。 イ.○ (監査基準委員会報告書 450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」11 項) ウ.× 個々の虚偽表示が重要であると判断した場合,当該虚偽表示を他の虚偽表示と通 常相殺できない。例えば,売上の重要な過大計上があり,その利益影響額が同額の 費用の過大計上によって相殺される場合でも,全体としての財務諸表において,重 要な虚偽表示が存在することになる(監査基準委員会報告書 450「監査の過程で識 別した虚偽表示の評価」A13 項)。 エ.○ 問題12 正解 (監査基準委員会報告書 450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」A2項) 2 (難易度:A) ア.○ (監査基準委員会報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」A53項) イ.× 有価証券報告書に含まれるその他の記載内容に修正が必要であるが,経営者が修 正することに同意しない場合,監査人は,監査役等に当該事項を報告するとともに, 以下のいずれかを行わなければならない。 ① その他の事項区分を設け,重要な相違について記載する。 ② 監査報告書を発行しない。 ③ 可能な場合,監査契約を解除する。 ― 7 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 よって,このような場合には,監査人は,意見に関する除外事項を付した限定付 適正意見を表明することはない。なお,除外事項付意見を表明しなければならない のは,監査した財務諸表の方に重要な虚偽記載があり,経営者が修正することに同 意しない場合である(監査基準委員会報告書 720「監査した財務諸表が含まれる開 示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」9項)。 ウ.○ (監査基準委員会報告書 705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」 22 項(1)) エ.× 無限定適正意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できず,意見不 表明となる場合があるのは,未発見の虚偽表示がもしあるとすれば,それが財務諸 表に及ぼす可能性のある影響が重要かつ広範であると判断する場合である(監査基 準委員会報告書705「 独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」12項(2))。 問題13 正解 5 ア.× (難易度:A) 監査人は,会計基準等において詳細な定めがない場合であっても,経営者が採用 した会計方針が当該会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかに ついて,監査人が自己の判断で評価しなければならない。よって,このような場合 であっても,監査人は意見を表明する(「監査基準の改訂について(平成 14 年)」三 9(1)③)。 イ.○ (監査基準委員会報告書 706「独立監査人の監査報告書における強調事項区分と その他の事項区分」A5項) ウ.× 重要性の基準値は,監査計画の策定時点で決定するが,監査の過程において状況 に応じて改訂するものである。したがって,意見表明の際に用いる重要性の基準値 は,監査計画の策定時に決定したものではなく,改訂後の重要性の基準値である(監 査基準委員会報告書 320「監査の計画及び実施における重要性」8項(1),同 450 「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」9項,10 項,A10 項,A11 項)。 エ.○ 問題14 正解 (「監査基準の設定について(昭和 31 年)」(3)) 3 (難易度:A) ア.○ (監査基準委員会報告書 570「継続企業」A20 項) イ.× 強調事項区分は,意見区分の前ではなく,意見区分の後に設けられる(監査基準 委員会報告書 706「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項 区分」6項(1))。 ウ.× 監査人は,経営者の評価期間を超えた期間に発生する可能性がある継続企業の前 提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況に関して経営者が有する情報に ついて質問しなければならない(監査基準委員会報告書 570「継続企業」12 項,14 項)。 エ.○ (監査基準委員会報告書 570「継続企業」19 項) ― 8 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 問題15 正解 6 ア.× (難易度:B) 内部統制監査は,同一の業務執行社員の指示・監督下で監査チームが構成され, 財務諸表監査と一体となって実施される。すなわち,財務諸表監査と内部統制監査 は,監査計画の立案,監査証拠の十分性と適切性に関する監査人の判断,監査証拠 を入手するための監査手続の実施,意見表明までの監査実施の一連の過程のすべて において一体となって実施される。よって,財務諸表監査におけるリスク評価手続 によって企業環境や事業の特性等に関する理解が得られた場合には,監査人は,内 部統制監査の目的に合致する情報を別途入手する必要はない(監査・保証実務委員 会報告書第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」22 項)。 イ.× 監査人である公認会計士等は,依頼人の責任において実施する作業に対して助言 や指摘をすることはできる。 なお,内部統制の整備や運用を自ら実施するような業務は,経営者の責任を担う こととなり,自己監査となってしまうため,行ってはならない(監査・保証実務委 員会報告書第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」49 項)。 ウ.○ 監査人は,経営者による業務プロセスに係る内部統制の評価の妥当性について検 討する際,経営者が評価した個々の統制上の要点について,内部統制の基本的要素 が適切に機能しているかを判断するため,実在性,網羅性,権利と義務の帰属,評 価の妥当性,期間配分の適切性及び表示の妥当性等の監査要点に適合した監査証拠 を入手しなければならない(「財務報告に係る内部統制の報告及び監査の基準」Ⅲ3 (4))。 エ.○ 監査人は,財務報告に係る内部統制の有効性を評価する経営者の評価手続の内容 について,その計画も含めて把握し,理解する。ここで,経営者の評価手続きの内 容には,内部統制の不備が開示すべき重要な不備に該当するかどうかを判定するた めに経営者が設定した重要性の判断基準等の設定状況が含まれる(「財務報告に係る 内部統制の評価及び監査に関する実施基準」Ⅲ3(1)③)。 問題16 正解 3 (難易度:A) ア.○ (監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実 務上の取扱い」257 項) イ.× 監査人は,内部統制自体の有効性ではなく,経営者の作成した内部統制報告書の 適正性について,内部統制監査報告書により意見を表明する。したがって,もし期 末日において内部統制の開示すべき重要な不備が存在していても,経営者が内部統 制報告書において当該開示すべき重要な不備の内容及びそれが是正できない理由等 を記載しており,かつ,内部統制の評価範囲,評価手続及び評価結果についての経 営者が行った記載が適切である場合には,無限定適正意見を表明する(「財務報告に 係る内部統制の報告及び監査の基準」Ⅲ4(3))。 ― 9 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず> CPA平成 26 年第Ⅱ回-短答式試験-監査論 ウ.× 経営者が,やむを得ない事情とは認められない理由により必要な評価範囲の内部 統制の評価手続の一部を完了できなかった場合には,監査人は,重要な監査手続を 実施できない可能性もあるため,その影響に応じて,意見不表明とするか又は監査 範囲の制約に関する除外事項を付すかを慎重に検討しなければならない。すなわち, 経営者が評価を実施していない場合,そもそも監査対象が存在しないため監査範囲 の制約の問題として取扱うので,意見に関する除外として取扱うことはない(監査・ 保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱 い」271 項)。 エ.○ 経営者が,内部統制報告書に財務報告に係る内部統制に開示すべき重要な不備の 内容及びそれが是正されない理由を適切に記載している場合,監査人は,当該開示 すべき重要な不備がある旨と当該開示すべき重要な不備が財務諸表監査に及ぼす影 響を,追記情報として記載する。ここで,財務諸表監査に及ぼす影響とは,財務諸 表に対する監査意見に及ぼす影響である。したがって,当該開示すべき重要な不備 が財務諸表に与える影響額を追記することは求められていない(「財務報告に係る内 部統制の報告及び監査の基準」Ⅲ4(6)①)。 ― 10 ― 解答解説 CPA公認会計士講座 <無断転載を禁ず>