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パッシブデザインの 日射遮蔽 埼玉県北部は猛暑日の日数が毎年上位にランクされる地域で 熱貫流率を0.19W/m2Kとして断熱性能を強化した。な 1. 日本一暑くなる地域であることを踏まえる 普及を目指した あり、暑さ対策は必須。日射遮蔽を徹底し、土間の活用にも 挑戦した。また比較的気温が下がる夜間での通風に配慮した モデルハウスプロジェクト - 03 設計主旨(パッシブデザインにおける基本方針) の取り組み- <埼玉県熊谷市の猛暑日の年間日数ランキング> 2010年 1位(41日) 2012年 2011年 3位(26日) 1位(32日) <室温シミュレーション> 2013年 36位(23日) 2014年~8/8 2位(15日) 40 25 36 15 34 32 10 30 5 28 26 0 室温 -5 外気温 -10 冬期 24 室温 22 外気温 20 夏期 冬の晴れの日の代表日(熊 夏の晴れの日の代表日(熊 測。実際の室温(1Fリビン 測。実際では冷房をかけて 谷/無暖房)での室温予 グ)となかなかよく合って いる(04結果・成果参照) 基本的な狙いにもあるように、このモデルハウスは「プロが パッシブデザインを学び、体験し、ここから議論が始まり、 パッシブデザインの普及に役立つ場」としたかった。したが って、できる限り多くのパッシブデザイン手法を組み込むこ とにした。 3. 温熱環境、光環境、省エネルギー性に 一定の結果を出す 2.で述べたような“パッシブデザイン手法の展示館”的な役割を 38 20 2. プロの人にパッシブデザインの原理、 全体とディティール、おもしろさを伝えられる 谷/無冷房)での室温予 おり、単純に比較はできな いが、1日の温度変化が小さ いという傾向は合っている 木製可動ルーバー 雨戸(網戸付) 木の家のデザイン Q=1.88W/㎡K ハイサイドライト・ コストなどのバランスを考えたと 採光と排熱通風の両 冬期の室温、年間暖房負荷、建設 き、埼玉県北部を営業範囲とする 弊社では今後この程度のQ値を目 指すのが適切と判断した 公開された建物として、住宅建築関係者がパッシブデザイン えたが、弊社においてそれに挑戦することに大きな意義と価 強い思いから当モデルハウスの名称をコバケンlaboとし、そ 02 設計の進め方 フレームワーク 意匠設計担当+温熱/パッシブアドバイザー+当社代表によ る議論 パッシブデザインの提案 温熱/パッシブアドバイザーより24項目にわたる提案が された して広い通り土間とした。また屋根に工夫し、冬期は日 射取得ができるディティールとした。 トップライト 方に効果のある高窓 を設置した 明るさへのアプローチ 04 結果・成果 ① 地域での認知と集客力の向上 これまでのモデルハウスとは の優れた具体を総合的に見ることができる場にしたいという の実現にふさわしい2名の専門家の協力を仰ぐことにした。 パッシブデザインと意匠設計を ④ 高いレベルで融合させたい ①~③のすべてに通じるもっとも重要なポイントとして「パ ッシブデザインと意匠との融合」があると考え、その実現に 注力した。もちろんその過程では弊社スタッフも議論に深く 加わった。 当社からのリクエスト・パッシブデザインの提案に、独自 のアイディアを盛り込んで提案してもらった ミーティング り、パッシブデザイン普及の 場としての役割も十分に果た ある。 屋根集熱パネルと基礎コンクリート蓄熱 一次エネルギー消費量の年間収支が0となることを目指 ③ 温熱環境の実際 したが、それには太陽光発電のための南面に向いた一定 の屋根面積が必要になる。またそれは以前から弊社が取 冬期の温度測定結果 り組んでいるOMソーラーの設置にも相性がよい。したが って、冬期の集熱は屋根集熱パネルを主とし、ダイレク トゲインによる集熱を副とする考え方を採用した。 1F寝室 1Fリビング 1Fトイレ 外気温 インによるパッシブ 20 ソーラー暖房によ 15 温 度 10 ℃ 夏期日中の外気温は非常に高くなるが、夜間の気温は比 較的低くなる地域である。そのため、とくに夜間の通風 り、極めて良好な室 温を維持している。 トイレ:高い断熱性 5 に配慮した通風計画になっている。平面的な通風はもち により、1Fリビング 0 2階平面図 地冷熱利用 -5 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 2014年2月17日 2014年2月18日 ☀ ☀ する「土間の寝室」を設けた。またその効果を発揮させ MJ/年 るために、断熱性能・ 29685 30000 日射遮蔽性能の高い 建具を窓の内側に設 25000 置している。 20000 15000 10000 認定低炭素住宅の 30% 8966 5000 遮熱層 ことができた。 ンとすることでそこが遮熱層となることを期待した。 西面の窓を最小限にしつつ、非居室を西側に並べるプラ (暖房室)から-3 ℃程度の室温を維持 している。 ④ 暖冷房に係る一次エネルギー消費量の実際 無冷房で就寝できることを目指し、北側に地冷熱を利用 に加わった。極めて貴 リビング:OMソーラ ー及びダイレクトゲ 25 通風 ろん、立体的な通風経路も確保し、排熱効果の高い高窓 している N 合せの全てに設計チー 重な刺激と経験を得る 築関係者が視察に訪れてお 事ができた。集客数も順調で 繰り返し開催された打 ム全員が参加し、議論 完成直後から300社以上の建 新しい提案の引き出しを得る を設置した。 意匠設計への落とし込み 住宅建築関係者も集まってくる ② モデルハウスに 違うコンセプトにしたことで 住宅建築関係者も集まってくる ② モデルハウスでありたい まだパッシブデザインは十分に一般生活者に知られたもので のプロジェクトにおいてもそれを期待した側面が大きい。 える場所となることを狙いつつ、熱容量を増やす工夫と 涼しさへのアプローチ(夏期) 01 プロジェクトの狙い 学び、次の時代への方向性を明確にすることができた。今回 の中間にある場所と考え、来客者が気軽に過ごしてもら 暖かさへのアプローチ(冬期) 用途 住宅 建設・接客という過程で社内スタッフは非常に多くのことを 土間による蓄熱は一般的であるが、ここを建物と外部と 凡例 建築地 埼玉県本庄市児玉町 すでにこれまでモデルハウスの建設を通じて、議論・設計・ ダイレクトゲインによる集熱と広縁土間による蓄熱 専門家からの提案などを融合させることでそれを目指した。 ID:00680911 株式会社 小林建設 小林 伸吾 これからの弊社が目指す家づくりを ③ 実践的に考えたい お、この建物は「μ値=0.03」である。 社が得てきた経験・知見を踏まえながら、シミュレーション、 雨戸を製作した 値があると判断した。 射遮蔽とを融合させるものとして採用した。また屋根の ギーになるような建物にしなければならない。これまでに弊 するオリジナル はなく、その言葉や内容で集客力を高めることは難しいと考 可動式木製ルーバーや木製面格子を視覚的デザインと日 果たしつつも、当然ながら結果として快適であり、省エネル と夏の機能が両立 ① 地域での認知と集客力を向上させたい 南面でとくに有効な日射遮蔽の手法である深い軒とし、 0 当モデルハウス実測値 1階平面図 低炭素基準値 ※全ての用途を含めてゼロエネルギー ハウスと試算される <1次エネルギー消費量 の算出方法>HEMSによ り暖冷房設備の電力消費 量を計測し、その年間消 費量から1次エネルギー 消費量に換算した <認定低炭素住宅の基準 値の算出方法>1次エネ ルギー算定用WEBプロ グラム(建築研究所)に 当モデルハウスの地域区 分、床面積を入力して算 出した 夏期の温度測定結果 1Fリビング 1F寝室 外気温 外気温度ピークか ら6℃以上低い室温 40 を維持している 38 36 (11:00~16:00まで 34 平均1.4kWの冷房 32 温 度 30 ℃ 28 出力)。寝室は日射 遮蔽と土間の効果 26 により1Fリビング 24 22 20 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 2014年8月18日 2014年8月19日 ☀ ☀ から2℃程度低い室 温を維持している (冷房なし)。 ⑤ モデルハウス設計以降に建設した住宅 当モデルハウスを見学されたお客様がその心地よさと考え方 に納得・共感して下さり、ほぼ同様のコンセプトでの建設を 依頼された。こうした動きが具体的に出てきたことは心強い。