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体系的な「社会人基礎力」育成・評価モデルに関する調査
経済産業省委託事業 平成 22 年度産業技術人材育成支援事業 体系的な「社会人基礎力」育成・評価モデルに関する 調査・研究 実施報告書 平成 23 年 2 月 学校法人河合塾 目 はじめに 次 ……………………………………………………………………………………1 1. 社会人基礎力育成事例研究セミナーの開催 1-1. セミナー開催概要の決定 1-1-1.対象、開催時期、会場の決定 ………………………………………4 ………………………………………5 1-1-2.各会場のテーマおよびプログラム、講演者の決定 1-2. 参加者の募集 1-2-1.参加者の募集に係る広報活動 1-2-2.参加申込み受付 ………………………………………9 ………………………………………10 1-3.社会人基礎力育成事例研究セミナーの実施 1-3-1.開催概要 ………………………………………11 ………………………………………13 1-3-2.実施内容 1-4.参加者アンケート結果 1-4-1.アンケート結果の集計 ……………………………………200 ……………………………………213 ……………………………………215 1-4-2.アンケート結果の総括 1-5.社会人基礎力育成グランプリへの波及効果 2.「社会人基礎力」育成プログラム卒業生の追跡調査 2-1. 調査の設計 2-1-1.プレヒアリング ……………………………………218 ……………………………………220 ……………………………………221 2-1-2.ヒアリングの設計 2-1-3.アンケートの設計 2-2. 調査の実施 2-2-1.ヒアリングの実施 …………………………………………224 …………………………………………225 2-2-2.アンケートの実施 2-3. ヒアリング結果のまとめと分析 2-3-1.各プログラムの概要 2-3-2.社会人ヒアリングのまとめと分析 2-3-3.在学生(卒業予定者)ヒアリングのまとめと分析 …………………………………………227 …………………………………………230 …………………………………………249 2-4. アンケートの集計と分析 2-4-1.アンケート結果全体の分析 …………………………………………268 2-4-2.社会人(受講生)アンケートの集計結果 ………………………………284 2-4-3.在学生(受講生)アンケートの集計結果 ……………………………………………301 2-4-4.教員アンケート結果の分析 …………………………………………315 コラム 1 社会人基礎力育成グランプリの効果 ……………………………………326 コラム 2 理系研究室活動における社会人基礎力育成の効果 ……………………………………328 【参考】インターネット調査「社会で役に立つ力と大学教育に関するアンケート」 …………………330 2-5. 卒業生調査の総括 2-5-1.プログラムでの経験と、身に付けられる社会人基礎力 …………………………349 2-5-2. 「社会で求められる力」に関する育成プログラムの経験者と 一般的な大学教育の経験者の意識の比較 2-5-3.社会人基礎力のさらなる普及に向けて 結び ………………………………353 ………………………………354 ………………………………………………………………………………356 はじめに 社会人基礎力のさらなる普及と、育成プログラムの効果検証 「職場や地域社会で様々な人と共に仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、平成 18 年 2 月に経済産業省から発表された「社会人基礎力」は、平成 19 年度から 21 年度までの 3 年間、「社会 人基礎力育成・評価手法開発事業」として、のべ 19 大学をモデル校として、大学の教育プログラム の中での人間力育成の試みを行った。 モデル大学が行った社会人基礎力の育成プログラムは、大学が従来行ってきた様々な教育活動を通 して、社会人基礎力のどのような能力を発揮することができるかを明確に示すとともに、学生が能動 的に取り組む場面を授業に取り入れる工夫を施すものであった。具体的には、平成 19 年度が産学連 携型の PBL(Project Based Learning)を通した社会人基礎力の育成・評価、平成 20 年度が複数科目で の継続的な育成・評価、そして平成 21 年度が継続的・段階的な科目における社会人育成に加えて、 PBL 等の実践型の授業だけでなく、講義等の知識習得型の授業にも、学生が能動的・主体的に取り組 む活動を盛り込むことを目指した。このモデル大学での試みは、従来大学は学究の場であり、人間力 は授業やゼミ、研究室等の経験を通しておのずと身につくものとされてきたものを、あえて明示的な 形で教育活動と人間力育成を結びつけて示したという意味で、非常に画期的なものであったといえる。 また、これは最近の大学教育改革とも方向性を同じくするものである。現在、大学を含めた日本の 教育全体が、社会全体の要請に応えるべく変わることが求められている。すなわち、これまで学習者 は与えられた課題を受動的にこなせばよかったが、グループワークやプロジェクト形式の授業など、 能動的に学習することを通して、他者と協調し、共に能力や知識を高め、成長することが重視される ようになりつつある。社会人基礎力は、まさにこのような気運を後押しする 1 つの大きな存在である ことは明らかだろう。社会人基礎力育成を組み込んだ授業は、 「受動的な学習」スタイルが伝統的であ った日本の大学に、 「能動的な学習」スタイルの効果や意義を示し、その結果大学が社会で真に求めら れる人材育成を行う場に変わっていくための大きな転換点になりうるものである。 そこで今年度の事業では、社会人基礎力の育成・評価手法のさらなる普及に向けて、平成 21 年度版 のリファレンスブック「社会人基礎力育成の手引き」 、およびDVDの内容の紹介と、リファレンスブ ックで取り上げた事例の関係者(大学教職員・企業人)による講演を中心とした「社会人基礎力育成事 例研究セミナー」を全国 7 会場で開催した。このセミナーでは、社会人基礎力育成を大学教育に導入 する意義と、 具体的なノウハウをより多くの大学に伝えることを目的として、社会人基礎力とは何か、 現在文部科学省をはじめ、様々なところで動いている人間力育成の取り組みと比較して、どのような 点が優れているかを紹介するとともに、モデル大学や先進的な取り組みをした大学の担当者から、現 場の実体験を踏まえた社会人基礎力育成・評価のノウハウを語っていただいた。さらに、卒業後の学 生を受け入れることになる企業の方々へは、社会人基礎力育成の試みの具体例を紹介することで、大 学教育に社会人基礎力の育成を取り入れることの意味を知っていただくとともに、若手社員の成長へ の寄与をアピールし、大学と社会をつないだ人材育成の実現の必要性を訴えた。 さらに、今年度は社会人基礎力育成プログラムを受講して、すでに社会で働く卒業生に対して、プ ログラムの効果を聞くヒアリングとアンケートを実施した。これまでプログラム終了直後の受講生に 感想を聞いたものはあったが、今回の調査では、大学の授業を通して実感した能力の成長が、社会に 出てどの程度通用すると実感されているかを聞くことになり、複数の大学を対象とする横断的な調査 初めてのものである。これは、 「職場や地域社会で様々な人と共に仕事をしていくために必要な基礎的 な力」としての社会人基礎力育成の文字通りの実績を示すものでもあり、また「社会に出てからさら 1 に高めていかなければならない能力」を具体的に明らかにすることによって、大学と社会で継続的に 能力の育成を行うための示唆ともなると言えよう。 今回のヒアリングやアンケートから見えてくるのは、今まで経験したことのなかった「チームで意 見を出し合って課題に取り組む」学びによって、自分の意見を持つこと、自分で考えることの大切さ に気づき、 「大学生活で初めてここまで本気になった体験ができた」と言わしめるほどの充実した活動 ができる、という数々の事例である。この報告書では、彼らの生の声をできるだけ多く紹介し、どの ような活動によっていかなる力を身に付けていったかを見せることとしたい。 かつて象牙の塔と呼ばれ、アカデミズムの象徴であった大学も、卒業後社会に出てからいかに活躍 できるか、という現実的な課題を突きつけられている。今回の報告が、各大学がいかなる人材を育て るべきか、そのためにはどのような教育が必要かを、学生の将来を見据えて問い直し、最善の選択を するための一助となればと考える次第である。 2 1. 社会人基礎力育成事例研究セミナーの開催 3 1.社会人基礎力育成事例研究セミナーの開催 本事業では、体系的な社会人基礎力の育成・評価システムの普及に向けて、平成 21 年度版のリファレ ンスブック「社会人基礎力育成の手引き」、およびDVDの内容の紹介と、リファレンスブックで取り 上げた事例の関係者(大学教職員・企業人)による講演を中心とした事例研究セミナーを全国 7 会場で開 催した(※)。 このセミナーでは、まず「社会人基礎力とは何か」を、若者の実態や、彼らを取り巻く大学や社会の 状況を踏まえて説明した。そして、今後社会人基礎力の育成・評価に取り組もうとする大学等教育機関 に対しては、その方法及び実際の作業に向けての留意点を紹介し、既に導入しているところに対しては、 さらなる改善の方法を提示した。また、実施のためには相応の体制の整備が必要な産学連携型だけでな く、教員個人の努力によって授業改善が可能な事例を紹介し、社会人基礎力の裾野を広げる方向を示し た。さらに、「社会人基礎力育成グランプリ」に出場することによる教育効果を紹介することで、より 多くの大学がグランプリ出場の意義を知り、参加につなぐきっかけとなることを狙った。 一方、企業等からの参加者に対しては、教育改革に取り組む大学の具体的な事例を示すことで、大学 の教育内容に対する関心を高めるとともに、社会人基礎力のフレームが、大学と社会が継続的・段階的 に人材育成を行うためのツールとなりうることを示すことを意図した。 ※7 会場の地区名、および開催都市(会場)は以下の通り。なお本項では、以後会場を都市名で表記する。 北海道地区(札幌)、東北地区(仙台)、関東地区(東京)、中部地区(名古屋)、近畿地区(大阪)、中国・四国地区(広島)、 九州・沖縄地区(福岡) 1-1.セミナー開催概要の決定 1-1-1.対象、開催時期、会場の決定 セミナーの大枠は以下の通りである。 ○イベント名称:「社会人基礎力育成事例研究セミナー」 ○対象:・大学教職員を中心とする教育関係者、小・中・高校教員 ・企業関係者(大卒人材採用・育成の担当、大学の教育・研究との連携や協力等の担当)、 ・大学と関わる産学連携やキャリア教育、職業指導などの関係者等 ○入場申込み受付:web サイト、e-mail、Fax による事前登録制、先着順で入場は無料とする。 ○主催:経済産業省様 ○主管(事務局):学校法人河合塾。参加申込みの受付業務は協力企業の(株)リベルタス・コンサルティ ングが行う これらを踏まえて、開催時期と会場を検討した。 (1)開催時期 主な対象者が大学関係者であるため、夏季休暇中、もしくは後期の授業開始後間のない時期が望 ましい。さらに、10 月中旬から始まる「社会人基礎力育成グランプリ」の参加受付につなげるため にも、10 月上旬には全てを終了しておく必要がある。そのため、9 月上旬から 10 月上旬の期間中 に、後述する各地区会場のメインとなる講演者のスケジュールと会場候補地の使用可能日を勘案し て決定した。 (2)会場 会場規模は大都市圏(東京、大阪、名古屋)が 200~300 人収容、その他が 150 人程度のホール、 または会議室として、各地区の中心都市で、交通の便のよい会場を選定した。 4 1-1-2.各会場のテーマおよびプログラム、講演者の決定 7会場のプログラム、および講演テーマを決定するに当たり、まず以下の基本方針を決めた。 (1)全会場の共通プログラム 1.事務局(河合塾)からリファレンスブック「社会人基礎力育成の手引き」(以下、 「リファレンスブ ック」と略記)の内容を紹介する形で、社会人基礎力の基本的な説明と育成・評価手法の概要を 説明する。この中でDVDの上映(約 17 分)も行い、具体的な教育場面の紹介も兼ねる。 具体的には、下記の内容を軸とした。 ①なぜ社会人基礎力か a.背景について -「産業界・社会」 「若者」 「大学」の置かれている状況と変化 b.社会人基礎力の能力フレームの位置づけ -社会人基礎力の位置づけと有効性の確認 ②育成の方法のポイント a.どこで・いつ・誰が育てるか b.大学で社会人基礎力の育成を行うことのメリット c.どのような教育や授業・プログラムが考えられるか -リファレンスブック掲載の「5段階ステップモデル」に言及しつつ、ポイントを指摘する ③リファレンスブックで紹介した事例の紹介 3 章「大学での社会人基礎力育成の取り入れ方」、4 章「評価・振り返りの取り組み」、5 章「大 学全体への育成の普及の取り組み」の事例から特に優れたものを図式的に紹介する。この部分に ついては、下記の各会場のテーマ設定に合わせて商科の手厚さを変える。 2.経済産業省様から、社会人基礎力事業の位置づけ、企業の視点からの社会人基礎力への期待、社 会人基礎力育成グランプリの紹介と参加の呼びかけをお話ししていただいた。 3.各会場のテーマに副って、最低 3 名の講演者を実施する。 4.各会場の講演者によるパネルディスカッションの時間帯を設け、できるだけ会場からの質問に答 えられるようにする。 (2)会場毎の個別テーマ設定 各会場の講演やパネルディスカッションのテーマは、リファレンスブックの内容を中心に、今後社 会人基礎力の育成を教育現場に導入する際のヒントとなる話題とした。これによって、参加者は自分 の興味、あるいは大学(企業)の抱える問題に合わせて、集中して学ぶことが可能になると考えた。 具体的なテーマと、その選定理由を以下に記す。 ①既存科目、あるいはそれらとの関係の中で多様な実施方法があることを伝える 多くの大学の様々な科目で社会人基礎力の育成が行われているが、その多くは Project Based Learning(以下、PBL と略記)型の授業であり、逆に言えば PBL を実施さえすれば、社会人基礎力 の育成が可能であると考えられていると言っても過言ではない。さらに、教員に育成ノウハウがな いにも関わらず社会人基礎力を育成しようとして、授業科目の本来の目的を崩してしまうこともあ りうる。また、授業の中にしっかりした発揮場面がないにもかかわらず、学生に社会人基礎力の自 己評価を求める場合は、むしろ社会人基礎力を悪い印象で伝えることにもなりかねない危惧もある。 個々の授業の条件に合わせて、そこでいかに最善の育成を行うかは、現場の教員等の指導にゆだ ねられるが、事務局としては、社会人基礎力育成にふさわしい場面設定や、具体的な育成方法を提 示することで、少しでも良い方向につながるような指針とすることが肝要であると考えた。今回の セミナーでは、特に知識伝達を主目的とする講義型の科目が、社会人基礎力の発揮場面を取り入れ 5 ることにより学生の能動的な学習と理解の深化を促すことを紹介することを目指した。 ②振り返り・評価の方法や取り入れ方の具体例を提示する 事務局では、社会人基礎力の育成において、自分の行動を客観的に振り返り、社会人基礎力の 言葉を使って自己・他者評価することが、学生の成長を促すことを指摘してきた。教育の現場の「評 価」というと、選別化や序列化の機能の部分に意識が向きがちであるが、一方で評価には、それ自 体や、そこで提示された評価の観点を目標にして、自らのレベルを確認し、次の学習計画を決める という「育成としての機能」もある。社会人基礎力の育成における振り返り・評価は、まず育成の ために用いられるのが望ましく、その方法も、いかに育成に貢献できるかという点で考えることが 肝要である。 また、評価は教員が学生の育成目標基準を定めることでもあり、これは教育の質保証にもつなが る。これは、大学全体の教育改革とも連動すべきものであるため、よりマクロな視点からの議論が 必要になる。そのため、振り返り・評価については、学生個人の成長を主眼とするものと、教育の 質保証までを視野に入れたシステムにも関わるものの 2 つに分けて議論する必要があると考えた。 [1]振り返りや自己評価・他者評価を通した育成の方法について 事例 -段階的に意識化し、行動事実を書けるようにして就職活動と働くことを準備させる -自己理解の向上を目指した活動振り返りによって、自己効力感を高める -研究活動に合わせて社会人基礎力を詳細尺度化し、体験を言語化させ、活動向上と社会人基礎力 の意識のポイントを習得する。また、外部評価者の厳しいコメントをそのまま学生に伝えるので はなく、向上につながる読み替えを行うことで、評価の効果を高める [2]大学改革への展開の効果~成績評価に社会人基礎力評価を組み込み、大学教育の質保証へ 事例 -社会人基礎力育成を意識した「自己形成を目指すキャリア教育科目」を設計し、大学教育全体の 中核として機能させる -チームに対する貢献を成績評価に組み込み、チームとしての成果で成績を評価する 特に、このテーマではそもそも評価とは何か、について参加者の認識を合わせた上で議論を進める 必要があるため、大学評価に造詣の深い学識経験者の登壇を仰ぐ必要があると考える。 ③企業や地域等、学外との協力関係の作り方や、よりよい連携のあり方を示す 外部から課題をもらって、学生が自分なりの方法で解決したり、ものを作り上げたりして、課題を 出した相手から承認を受けるという授業の方法は、学生の主体的な学び、さらに社会人基礎力を育て る上で大変有効である。中でも企業や自治体などの現場からの課題は、学問が実社会で活かされるこ とを実感するとともに、仕事の現場の厳しさに接する経験ともなり、学びだけでなく将来の仕事に対 するキャリア意識を育てることにもつながる。 しかし一方で、学外との連携には、教育目標を教員と協力者が共有することや、指導方法のすり合 わせ、学生に要求するレベル観の調整、さらにはスケジュールの調整や事務手続き等、様々な課題が 伴う。また、学問分野によっては、そもそも学外に課題を求めることが難しいケースも少なくない。 そこで今回のセミナーでは、モデル大学やグランプリ入賞大学における学外との協力関係の成功事 例を紹介し、学外との協力の中で教育の目標とすべきものは何か、良好な協力関係を作るために、大 学は何をすべきか、できるだけ win-win の関係にするためにはどのような工夫ができるか、等につい て大学・企業双方の立場から語っていただくこととする。 ④それぞれの大学の教育目標に応じた社会人基礎力育成の取り入れ方を紹介する 授業の工夫や評価等のツール、さらに学外との関係等、いわば各論に降りるのではなく、「教育の 6 現場で社会人基礎力を育成するとはどのようなことか」について、大学・企業双方の立場からの意見 を紹介する。特に、大学はある特定の層のための能力ではないことへの理解を促すために、分野や学 生のレベルが異なるところから講師を選ぶことが必要である。また、企業は既に「社会人基礎力」を 採用や社員教育に導入している会社を選び、実際の現場で活用できるフレームであることを示すもの とする。一連のセミナーのメインテーマとなるものである。 (3)地域性・会場規模の考慮 上記(2)で述べた個々のテーマを全国7会場に振り分けるに当たって、下記の点を考慮した。 ①大規模会場の場合 東京会場はメイン会場であるとともに地方からの参加者も多いことが考えられるため、上記(2)-④で 述べた社会人基礎力の概論をテーマとした。一方、大阪、名古屋等大都市近郊圏は、モデル大学を輩 出するとともに、グランプリへの出場校が多く、社会人基礎力が既にある程度普及している、あるい はどのような教育を行えばよいかについてはある程度知られていると考えられる。そこで、ある程度 既に社会人基礎力育成を導入している大学にとっても、ブラッシュアップ的な効果が期待できる内容 を考えた。また企業からの参加者数も多いことが期待できるため、社会人基礎力が企業の人材育成に も極めて有効であることを示すとともに、大学教育への協力を促すために、(2)–②の「振り返り」の 効果と具体的な方法(名古屋会場)、(2)–③の「企業との連携のあり方」(大阪会場)とした。 ②小規模会場の場合 札幌、仙台、広島、福岡は、過去のモデル大学採択やグランプリ出場大学が少なく、社会人基礎力 の普及が遅れていると見られる。これらの地区は、大学の数が少ないため、どうしても都市部の大学 に比べると大学間の交流の機会が少なく、優れた取り組みをする大学の情報が地元であっても伝播し にくいと考えられる。そのため、この地区では社会人基礎力育成を取り入れることのメリットや、既 に行われている取り組みが社会人基礎力と重なることのアピールに重点を置くこととした。特に、こ れまでの実績が最も低い北海道(札幌)と九州・沖縄(福岡)では、上記(2)- ①に副って、優れた教育手法 を持つ大学教員の模擬授業によるワークショップを行い、教員自身に社会人基礎力の発揮場面を体験 してもらうプログラムとした。 また、中小企業が多く、地域振興の課題を抱える中国・四国地区(広島)では、地域との連携のあり 方(上記(2)- ③)を行うこととした。さらに、評価の仕組み作りについては東北地区(仙台)で実施するこ ととした。 (4)講演者の人選 講演者の人選にあたって考慮した点を下記に記す。 ①リファレンスブックおよび DVD で汎用的、かつ優れた事例として詳しく紹介した大学の教員で、 自らの取り組みを「社会人基礎力」の言葉で語ることのできる方 ②大学教育の問題全体を俯瞰的な立場からとらえた上で、社会人基礎力の有効性を語ることのでき る方 ③開催地区の大学・企業で、地域の大学や産業の実態を踏まえて社会人基礎力育成の取り組みを語 ることのできる大学・企業の方 ④全国的に知名度の高い企業で社会人基礎力による人材育成、あるいは産学連携教育に取り組んで いる方 上記(1)~(4)と各地区の会場、および講師のスケジュールを調整して、7 つの会場の概要を決定した。 →次頁図表「セミナー会場とテーマ・講師一覧」参照 7 ■図表 セミナー会場とテーマ・講師一覧 日時 北海道地 9月27日(月) 区 13:00 ~17:00(12:30開場) 会場 会場定員 北海道大学 学術交流会館 150 講演/パネリスト テーマ ・キャリアバンク㈱ 三上力氏 社会人基礎力を育成する ・広島経済大学経済学部教授 (興動館科目創造センター長) 授業の工夫 濱田 敏彦氏 ワークショップ講師 /パネリスト パネリストのみ 東京女子大学現代教養学部 教授 今村楯夫氏 ― ・神戸大学教育推進機構教授 東北地区 関東地区 10月11日(月) 13:00 ~17:00(12:30開場) 9月13日(月) 13:00 ~17:00(12:30開場) 9月21日(火) 中部地区 13:00 ~17:00(12:30開場) 近畿地区 9月15日(水) 13:00 ~17:00(12:30開場) 仙台国際センター 秋葉原UDXカンファレ ンス 河合塾千種キャンパス デルファイホール 大阪国際会議場 (グランキューブ大阪) 中国・四国 10月4日(月) 地区 13:00 ~17:00(12:30開場) 広島国際会議場 九州・沖縄 9月9日(木) 地区 13:00 ~17:00(12:30開場) 福岡国際会議場 120 300 207 237 社会人基礎力で成績評価 川嶋太津夫氏 ・東海大学文学部教授 内藤耕氏 を行うためには ・金沢工業大学工学部教授 松石正克氏 ・大阪大学大学院工学研究科教授 北岡康夫氏 ・東海大学文学部教授 内藤耕氏 大学独自の目的の中での ・法政大学大学院政策創造研究科教授 社会人基礎力育成教育 諏訪康雄氏 ・大阪大学光科学センター特認研究員 根岸和政氏 振り返り・評価を活用した ・日本生産性本部主任研究員 大山雅嗣氏 ・愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 社会人基礎力の育成 村林聖子氏 ・大阪大学大学院工学研究科教授 北岡康夫氏 産業界の協力による社会 ・流通科学大学サービス産業学部准教授 人基礎力育成プログラム 頭師暢秀氏 ・パナソニック電工㈱ 菰田卓哉氏 の作り方 ・宮城大学事業構想学部教授 富樫敦氏 ・愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 谷口功氏 ・広島経済大学興動館課長 友松修氏 120 地域との連携を通して学 生の社会人基礎力を育成 する 112 社会人基礎力を育成する ・京都産業大学経営学部教授 後藤文彦氏 授業の工夫 ・日本文理大学工学部准教授 吉村充功氏 8 ― ― 宮城大学事業構想学部教授 富樫 敦氏 富士通㈱人事部人材採用セ ンター センター長豊田 建 氏 ― ― ― 法政大学大学院政策創造研 究科教授 諏訪康雄氏 岐阜大学医学部看護学科教 授 杉浦太一氏 京都産業大学理事 中川正明氏 ・松山大学経営学部教授 吉岡洋一氏 ・亀岡酒造(株)取締役 横田光敏氏 ― 1-2.参加者の募集 開催にあたり、参加者の募集と参加申込は下記のように行った。 1.事例研究会参加者の募集に係る広報活動 2.事例研究会の参加申込み受付 1-2-1.参加者の募集に係る広報活動 事例研究会の参加者を、以下に示す各種広報手段を用いて募集した。 ①各地域の大学等教育機関、企業、行政、団体等への開催案内通知(チラシ)の送付 1)大学 7 月下旬から全国の大学学長、学部長、共通教育センター長、入試広報課、就職課・キャリアセン ター宛に添付資料のチラシをダイレクトメールで送付した。また、特に大学学長宛にはリファレン スブックと DVD を同封し、社会人基礎力への興味を喚起することを狙った。 2)高校、教育委員会 1)と同時期に、高校・都道府県と市町村の教育委員会にもチラシを送付した。教育委員会は、原則 中学校を 10 校以上所轄するところ(※)、高校は河合塾独自の高校リストから抽出した学校とした。 ※この条件に当てはまらなくても、開催地近郊で交通の便のよい市町村にも送付している。 3)企業・商工会議所 1)、2)と同時期に会社四季報の企業データベースから上場・未上場企業へ、さらに各都道府県の商 工会議所にチラシを送付した。 各地区別の送付数を下記に示す。 ■地区別ダイレクトメール発送件数 就職課・ 学長 共通教育 学部長 センター長 入試広報課 キャリア センター 高校 教育委員会 商工会議所 企業 計 北海道 35 80 7 35 35 25 14 1 125 357 東北 48 105 7 48 48 48 33 6 164 507 関東 272 754 24 289 289 310 175 10 4,424 6,547 中部 95 265 10 96 96 120 100 6 1,121 1,909 近畿 145 409 13 152 152 145 127 7 1,549 2,699 中・四国 67 198 10 68 68 79 42 9 350 891 九州・沖縄 76 202 10 77 77 92 61 8 320 923 件数 738 2,013 81 765 765 819 552 47 8,053 13,833 なお、最初のダイレクトメールの発送時期が大学等の夏休み期間であったため、担当者の手元に届か ない場合が考えられたため、9 月上旬に北海道・東北・中四国地区の大学の学部長、共通教育センタ ー長、入試広報課、就職課・キャリアセンターと教育委員会、商工会議所(上表のアミカケ部分)にダ イレクトメールを再送した。 ②高等教育関係者が購読するメールマガジン 京都大学高等教育研究開発推進センター「ASAGAO Kyoto-u メーリングリスト」 http://kyoto-u.s-coop.net/asagao/ で最終回となる東北会場の終了時までセミナー開催を告知した。 9 ③WEB 上での案内 1)経済産業省様の「社会人基礎力」ホームページに開催案内を掲載した。 2)日経 HR 様のメルマガ「日経就職ナビ 2011」の企業の採用担当者向けのページ「採用担当者通信」 https://job.nikkei.co.jp/2011/ 9 月 2 日号に開催案内を掲載した。 3)「社会人基礎力.net」 https://www.kisoryoku.net/index.html に開催案内を掲載した。 1-2-2.参加申込み受付 参加申込受付は下記の要領で行った。 ・参加申込受付は、基本的に専用 WEB サイト http://www.libertas.co.jp/kisoryoku-seminer/ で行った。 参加希望者は、同サイトに設置した参加証(PDF ファイル)をプリントアウトし、氏名等を記入の上、 事例研究会当日に提出することとした。 ・専用 WEB サイト以外にも、申込専用のメールアドレス、電話(フリーダイヤル)、ファックスを設 置し、WEB 環境にない参加希望者の参加申込及び問合せに対応した。 各会場の最終的な参加申込者数を下表に示す。 ■会場別申込者数(各会場開催日直前まで) 北海道 東北 関東 中部 近畿 中・四国 九州・沖縄 申込数合計 大学関係者 高校・専門学校 関係者 企業関係者 その他 資料のみ 39 2 15 2 0 67% 81 3% 13 57% 73 36 24% 1% 52% 79 34% 62% 70 6% 55% 0% 0% 2 11% 7 30% 37 1% 0 25 24 1 2% 40% 0% 0% 2 12 130 0 8% 73% 2% 0% 0 5 82 1 50 25% 220 4 3% 12 9% 4 108 26% 1% 0 9% 4 0% 0 63% 1% 33% 4% 0% 500 25 544 67 4 10 申込者数 合計 定員 58 150 142 120 302 300 206 207 235 237 81 120 112 112 1,140 1,246 1‐3.社会人基礎力育成事例研究セミナーの実施 1-3-1.開催概要 社会人基礎力育成事例研究セミナーの開催概要は以下の通りである(実施順)。なお、参加者数は 受付時の参加票の数をもとにした。 ■福岡会場 (九州・沖縄地区) □日時:2010 年 9 月 9 日(木) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:福岡国際会議場(定員 112 名、参加者 101 名) □テーマ:社会人基礎力を育成する授業の工夫 □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 ■東京会場(関東地区) □日時:2010 年 9 月 13 日(月) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:秋葉原 UDX カンファレンス(定員 300 名、参加者 229 名) □テーマ:大学独自の目的の中での社会人基礎力育成教育 □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 ■大阪会場(近畿地区) □日時:2010 年 9 月 15 日(水) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)(定員 237 名、参加者 180 名) □テーマ:産業界の協力による社会人基礎力育成プログラムの作り方 □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 ■名古屋会場(中部地区) □日時:2010 年 9 月 21 日(火) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:河合塾千種キャンパス デルファイホール(定員 207 名、参加者 166 名) □テーマ:振り返り・評価を活用した社会人基礎力の育成 □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 ■札幌会場(北海道地区) □日時:2010 年 9 月 27 日(月) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:北海道大学学術交流会館(定員 150 名、参加者 60 名) □テーマ:社会人基礎力を育成する授業の工夫 □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 11 ■広島会場(中国・四国地区) □日時:2010 年 10 月 4 日(月) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:広島国際会議場(定員 120 名、参加者 72 名) □テーマ:地域との連携を通して学生の社会人基礎力を育成する □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 ■仙台会場(東北地区) □日時:2010 年 10 月 11 日(月) 13 時 ~17 時(12 時 30 分開場) □場所:仙台国際センター(定員 112 名、参加者 101 名) □テーマ:社会人基礎力で成績評価を行うためには □主催:経済産業省様 □主管:学校法人河合塾 各会場の基本的なプログラムは以下の流れとして、休憩を含め全体で約 4 時間とした。 1. 経済産業省様開会挨拶(10 分) 2. 事務局よりリファレンスブックの内容の紹介、DVDの放映(50 分) 3. 大学・企業の事例紹介(90 分) 4. パネルディスカッション・模擬授業(50 分) 5. 質疑応答(10 分) 6. 経済産業省様より事業説明(20 分) 17:00 終了 各会場の実施内容を次頁より示す。 12 1-3-2.実施内容 ■社会人基礎力育成事例研究セミナー 事務局説明 [大阪会場版] 講演者:学校法人河合塾 小松原 はじめに・・・社会人基礎力とは何か 私たちは事務局として、大学での社会人基礎力育成現場を調査したり、企業の方々の現場のお話を 伺ったりして、より多くの場で、社会人基礎力を身に付ける教育をできるように、今回、お手元にな る『手引き』や DVD を制作しました。 まさに、今日から始められる小さなノウハウから、大学教育全体を考える大きなテーマまで、日本 の将来を託す若者を育てる立場にある方が、いろいろな視点から読んでいただけるための手引きを作 成しました。今から、社会人基礎力育成とはどのようなことか、どのような意味があるか簡単に説明 いたします。 社会人基礎力とはどのような能力かを説明します。今日は企業の方がたくさんお見えになっていま す。社会人基礎力は職場でいろいろな人と仕事するときに、誰もが当たり前に使っている力です。会 社毎に命名は違うと思いますが、どこでも必要になり、仕事の中で必ず使っているもの、あるいは採 用で学生を見るときに、必ず入れている力です。 産官学の有識者に集まっていただき、2006 年 2 月にまとめたものです。当たり前だったものを、 明示化したことに意味があります。振り返ればこれは、時代や価値観が変わっても、普遍的に必要な 能力です。 社会人基礎力とは、 「前に踏み出す」 「考え抜く」 「チームで働く力」の 3 つの力と 12 の能力要素か ら成り立っています。社会人基礎力の中で、一番大事なのは枠組みです。社会人基礎力は単独に存在 するのではなく、初等、中等教育がベースになった基礎学力、大学で教えられる専門知識、さらにそ のベースになる人間性、生活習慣というものと、この中をつなぐものとして存在するものです。仕事 に応じて軽重はありますが、この 4 つのいずれが欠けても駄目な中にある社会人基礎力であることが お分かりいただけると思います。 例えば実行力には責任感が伴ってきます。これが伴っていないと、幾ら実行力があっても周りの人 は、はた迷惑なだけなのですね。この場合の責任感は人間性に含まれます。そのためこの 4 つがしっ かり組み合わさって、一人の人間の中にあるべきものであるということです。 なぜこのような枠組みができてきたかといいますと、若者が変わった、あるいは学校と社会の接続 がうまくいっていないことなどが語られているからです。「社会人基礎力育成の手引き」の 1 章に書 いてあるのですが、実は、社会人基礎力に類することは、学校教育の中でも行われているはずだと前 から言われています。 特に初等・中等教育で言われている「知」「徳」「体」ですね。この 3 つの柱があるのですが、社会 人基礎力は、 「知」と「徳」の間をつなぐ部分です。社会で一番求められるのはこの部分ですが、どう もこの部分の教えられ方が、どうしても「知」に重きが置かれてしまっている。でも、本当に必要な のはこの 2 つをつなぐものであるから、しっかり身に付けておいた方がいいですよ、と作られたもの です。ただし学校教育が「知」を育てる場であることを否定するものではありません。現在の状況で は、それだけではダメではないかということで作られたものだということです。 日本とヨーロッパの大学生が、どのような就労経験があるかを調べたグラフをお見せします。日本 13 の学生はヨーロッパの学生と同じ基準で言えば、就労経験が極めて少ないのですね。その割に、大学 を卒業したらすぐに就職してしまう。だからこのギャップの大きい 4 年の間に、社会で必要な力を身 に付けなければならないという話です。 では社会で必要な力とは何かということを、学生と企業の方に同じ項目で質問したグラフをお見せ します。そうすると 2 つのグラフは非常に形が似ています。ということは、学生は社会で必要とされ る力とは何かを、ちゃんと知っているわけです。 では学生に不足している力は何かと聞いてみますと、さっきとは様子が違います。例えばコミュニ ケーション力については、学生は足りていると思っているけれども、企業は足りないと思っている。 つまり学生の間で通用しているものが、社会では通用しないということに学生が気付いていないわけ です。ですから学生が企業に入って、ちょっと叱られると凹んでしまうとか、下手をすると辞めてし まうのは、自分たちはこうした力が足りないと思ってこなかったので、びっくりしてしまうからでは ないかと思います。 一方、企業はそれほど必要とは思っていない、業界に関する専門力や語学力、簿記などを、学生は 足りない、足りないと思っています。これを見ますと、学生の認識にギャップがあるのではないか。 また現状の大学教育や学生生活の中で、社会人基礎力が自然に身に付いてくる面もありますが、それ では社会に出てから求められるレベルには足りないのだということを学生に知らせてあげる。また社 会人基礎力を高める環境を、大学の中で設定してあげる。また学生が自分たちで社会人基礎力を高め るための方法や、環境を選択できる情報を、与えてあげる必要があるのではないかと考えます。 『社会人基礎力 育成の手引き』の概要 そこで私たちが、大学の中で社会人基礎力を育成する方法、あるいは教育機関が変わっていく方法 を明確にするためにまとめたのが、この『社会人基礎力育成の手引き』です。 最近は、授業改善や教育の質の保証、キャリア教育、学士力など、いろいろな議論が活発になって いますので、それらにも配慮して編集しました。 1 章で、若者や社会の変化、社会人基礎力とは何か、2 章は社会人基礎力の育て方のモデル、3 章以 降では、大学を中心にした育成の事例を載せてあります。 学生は大学の中で、どのような場面で社会人基礎力を高めているのかというグラフをお見せします。 学生は授業よりも、アルバイト、サークル活動の方が、社会人基礎力が身に付くと答えています。そ うであればアルバイト先で、学生を受け入れる企業の側が、社会人基礎力の面で指導するとか、サー クル活動の中で、社会人基礎力を伸ばしていく仕組みを作ることも考えられますが、しかし日本の学 生は非常に授業に真面目に出ているのですね。他国と比較して、授業の出席時間が長いわけです。な ので、授業の中で、社会人基礎力育成の仕組みを作っていけば、普段の大学生活の中でも、社会人基 礎力を少しでも高めていけるのではないか。 また学生が実際に社会人基礎力発揮する場面を作っている授業に出ている学生に聞いて見ますと、 社会人基礎力が身に付いたかという質問に対して、バイトやサークル以外で身に付いたと答える学生 が多くいます。つまり授業のやり方次第で、社会人基礎力は育成できますし、大学の先生方はこれを 利用しない手はないと思います。 大学の授業の講義だけではなく、ゼミや実習、研究室など、社会人基礎力を発揮できる場はたくさ んあります。そういったところで、社会人基礎力を身に付ける機会を作っていけばいいのではないか ということです。 14 ただそうは言っても、グループ学習など、新しく社会人基礎力を育成するための場面を取り入れる ために、授業を変えていくということは、先生方の準備も大変ですし、ファシリテーションも非常に 難しいものがあります。講義型授業で、知識を教えていくことが重要であることには変わりはないの ですけれども、学生にも先生方にもメリットがあるように変えていけるかを考えてきました。つまり 授業の中に知識の活用の場面を取り入れて、学生が考える力を育てることができる、それを先生がう まくサポートしていく方法を考えられないかということを、社会人基礎力育成事業を通して、3 年間 様々な大学や企業のお話をうかがい、研究してきました。 大学の卒業時に必要な力として、今、学士力というものを、中教審が出していますけれども、社会 人基礎力の育成というのは、これともつながってくると思います。 話だけではなかなか伝わらないと思いますので、今からお手元に配りました DVD をお見せします。 社会人基礎力育成に取り組んでいらっしゃる大学の事例をまとめました。どうかご覧ください。 ・・・DVD 上映・・・ 『育成の手引き』2 章から・・・ステップモデルを中心に 社会人基礎力というのは、いろいろな授業に取り入れていくことができるのだということが、お分 かりいただけたのではないかと思います。 先生方の工夫が必要になるのですが、しかしどこから手をつけたらいいかということはなかなか簡 単ではないと思います。それで、何らかのステップが踏めないかということで、まとめたのが、2 章 後半に出てきます 5 段階のステップモデルです。 これは授業自体のレベルの高い低いではなくて、先生方が何をどう意識されるかという点を、取り 組みやすい順番に並べたものです。実際の授業の中で、 「承認」や「価値付け」というキーワードが出 てきますので、それを意識していただければと思います。 このモデルの基本は、学生が自信を付け、自尊の感情を高めること、前に踏み出す力を付けるとい うことから始まります。 次のようなグラフが幾つか本文にもでてきますが、今の学生は、非常に自信がなく、自分がどうし ていけばいいか分からない状態にあります。そういった人たちに、一歩踏み出して、自信を付けて、 もっとやってみようというのが、第一のステップです。 具体的には先生など、課題を与える立場にある他者が、課題や役割を、期待を持って学生に提示し、 学生が達成したらその価値を承認してあげるというシンプルなものです。 例えば学生が書いてきたレポートをそのままにせず、一言でも、 「ここはいいね」とコメントを付け、 アンダーラインや花丸をつけて返してあげる、つまり反応を返してあげるということだと思います。 ここで大事なのは、課題を提示する側の他者、先生あるいは企業の方が、学生に対して自己開示を し、いい意味で尊敬され親密であること、そうした人から承認されることが学生の達成感を高め、も っとやってみたいという気持ちになってくるのではないかということです。 第二ステップになりますと、問題解決のプロセスの中で、考えたこと、理解したことを何度も繰り 返す中で評価され、自分の弱いところ、理解の足りないところを見つけて、再チャレンジしていくあ り方になります。ここで考え抜く力が育てられるわけです。大阪大学の菰田さんのお話もこれに当た ります。 15 このプロセスで大事なのは、学生が課題をやらされている、与えられているという感じを持つので はなくて、自分のものとして捉えていることが大事だということです。先ほどの大阪大学さんの例で は、学生さん自身の研究テーマですから、目標にも課題にも深いコミットメントを持っています。そ れを尊敬する企業人である菰田さんから承認されたり、こういうところに気をつけようねと言われる ことで、考え抜く力がどんどん深まっていくという仕掛けになっています。 これは大学に限らず、6 章に小学生に対して行っているキャリア教育の例が出てきますが、ここで もぐるぐる、ぐるぐる、思考を回していくことによって深まっていく例が上げてあります。これはぜ ひ本文をご覧ください。 第 3 ステップになりますと、課題解決の過程にグループ活動を取り入れることで、チームで働く力 を付けていくことになります。社会人基礎力を付けるといいますと、すぐにグループ活動を入れまし ょうと考えてしまいがちなのですが、いきなりグループ活動を入れるのは、結構ハードルが高いので すね。ですから先ほど言いましたような、課題を出して実行して承認をしてあげる、それを繰り返す ところに、グループ活動が乗ってくることによって、学生が社会人基礎力をより高めることができる ということが言えると思います。 第 4 ステップになりますと、活動の最後に自分の行動を振り返って、他者による価値付けを行い、 発揮した能力を自覚して、それを定着するというステップが入ってきます。大阪大学さんの場合です と、評価に 66 項目を作っていらっしゃるわけですが、学生が自分の活動を振り返り、菰田さんから コメットをいただいたことなどをあわせて、この項目がどういう意味を持つかを考えて、自分はここ が足りないからさらに頑張ろうというサイクルが生まれてきます。 そして最後の第 5 ステップは、第 4 の振り返りや価値付けを、活動の最後だけでなく、途中で何度 も行っていくものです。岐阜大学さんの看護学科の授業がこれに当たります。看護学科の臨地実習は、 学生さんに課題と役割が与えられて、実際に患者さんに接した経験をカンファレンスという場で振り 返るという枠組みができているのですけれども、その中に、社会人基礎力の観点を導入したわけです ね。 看護スキルは、看護師さんが患者さんに接するスキルになるわけですけれども、社会人基礎力が大 事になるのは、医療行為を行う医師、看護師、医療療法士さんなどの間に、チームで働く力がどうし ても必要となるためです。看護の現場ではまさにこういう力が必要なのだということを、この社会人 基礎力の振り返りを加えることによって、学生も現場のスタッフも気が付いたと、先生がおっしゃっ ていました。 ここで重要なのは、学生を指導する立場にある実習先の看護師さんにも、社会人基礎力という言葉 を覚えてもらい、学生を見ていただいたということです。指導する側にとってもその質を高めること ができたと言われました。 これは看護の場だけでなく、例えばインターンシップ先の企業の方々が、社会人基礎力という言葉 で学生を指導する、学生がそれによって、自分の足りないところに気付く、企業と学生が共通の言語 を意識することで、指導する側も具体的な指導ができるし、学生も気付くことができるということに もつながるのではないかと思います。 最終的には、学生が他者の承認を経ずとも、自分でどういうところが、今後、付けていかねばなら ない力であるかを意識できることを目指すのが、第 5 ステップになります。 16 育成の手引き 3 章以降 大切なのは形ではなくて、目の前にいる学生さんたちの授業に、いかに臨機応変に、こうした活動 を組み込んでいくかということにあるのですが、実際の授業にはいろいろな制約もあり、組み込んで いくことには難しさがあるということで、いろいろな大学で、どのように社会人基礎力を育成してい るのかを紹介しているのが 3 章以降になります。 事例の紹介にあたっては、授業の方法だけではなくて、なるべくその背景についても、踏み込んで 紹介するようにしました。ここでは社会人基礎力の育成について個別の授業について説明しています。 今日のテーマは、企業や外部の方と連携した社会人基礎力の育て方ということになりますので、一 つ面白い例を紹介しますと、これは研究室の事例ですが、静岡県立大学の鈴木教授の研究室について です。情報学部のシステム開発の授業なのですが、外部からたくさん仕事を受け入れて、それを学生 同士に作らせる、先生が手取り足取り教えることはしなくて、学生同士が学び合いながら、勉強しな がら作っていくという形を作っています。この研究室には分担してはいけないとか、上級生を先輩と 呼んではいけないとか、色々なルールがあるのですが、これらはみな学生が、失敗を通して学べるよ うな、周到な仕組みになっているのですね。本文の 196 ページからをぜひご覧下さい。 いわゆる産学連携の授業になりますと、どうしても作ったもの、成果物が非常に重視されるのです が、ここでは企業さんと研究室の間のバッファーとなるような中間組織を作り、学生が失敗のぎりぎ りのところまでは行う。けれども最後の最後はなんとか足りるように、受け皿となる仕組みを作って あり、その下で学生が、自分たちだけで企業さんとの交渉に出て行って、そこでこっぴどくやられて、 これでは知識が足りないから勉強しなければとか、 ビジネスマナーをもっとつけなければと気が付く。 また企業さんの要求に応えるだけではなくて、こういうことをやったらどうですかと、新しい価値を 提案していけるような経験を積ませるような仕組みを作っています。 こちらの研究室の卒業生のみなさんは、ハイテクベンチャーに行く方が多く、アメリカの名のある 企業に行かれている方もいるそうです。 4 章では評価、振り返りの仕組みについて触れています。社会人基礎力の育成は、発揮した能力を 学生が自分たちで確認して定着化させることが大きなステップになるのですが、社会人基礎力は見え にくい能力ですので、どうすれば発揮できたと言えるか、具体化することが大事だと思います。ここ ではいろいろな評価・振り返りの例を上げまして、紹介しています。 例えば金沢工業大学さんでは、 研究プロセスというものが、社会人基礎力の発揮の場であるとして、 レベル基準を作って、これと社会人基礎力の 12 の要素を結び付けて、自己評価できるようになって います。 6 章には、高校の総合的学習の時間で、社会人基礎力を取り入れた例が載っています。こちらでは、 社会人基礎力を高校の授業に合わせて自己評価をさせるとともに、社会人基礎力だけではなくて、総 合的学習の時間で学ばせたい能力、学校の目標などに合わせて、自己評価シートを作っています。こ れは大学でも参考にしていただけると思います。 そして社会人基礎力は、リファレンスブックにも定義というよりは、発揮事例として書いてありま す。ですから先生方がご自分でなさる事業の目的、学生のレベルに合わせて、さまざまな解釈ができ ると思います。第1章の後半に社会人基礎力の能力の背景が詳しく書かれていますし、社会人基礎力 はどのように構成されているのかのチャートも準備してあるので、こちらも参考にしていただければ と思います。 そして 5 章で、大学全体への社会人基礎力の普及ということで、学内に普及させるための方法を整 17 理しました。社会人基礎力を学内に取り入れることは、全体で広めていくのはなかなか難しいものが あります。例えば東海大学さんでは、1 年生からのキャリア設計の授業で社会人基礎力を身に付けさ せ、それを上の学年で上げていくというものもありましたし、広島経済大学さんでは、社会人基礎力 のためのセンターを作ってしまって、学問分野ではなくて、社会人基礎力で育成する能力をベースに した単位の課目を作ったり、学生の課外活動に、社会人基礎力を伸ばす仕組みを作って、社会人基礎 力を 4 年間かけてじっくり育てていくという例もあります。 あるいは成績評価の中に、社会人基礎力の視点を取り入れたシラバス、これは日本文理大学さんの 例ですが、こういったものもあります。 先生方に、社会人基礎力を広めていくためには、FD が大事になっていますが、それも説明してあ りますので、ご参照ください。 第 6 章では、社会人基礎力を育成しているのは大学だけではないでしょうということで、実際に初 等、中等教育の中で、そうしたことに取り組んでいる例を取り上げています。 この本の中には、社会人基礎力の育成に関わる方からのヒアリングを通じた、産学連携や、PBL の ポイント、注意すべき点を秘訣集としてまとめてあるページもありますので、それもご参考にしてい ただければと思っています。 まとめ 『手引き』をいろいろな方にじっくり読んでいただきたいと思いますので、お持ち帰りになって、 ご参考にしていただければと思います。 『手引き』 は、 より多くのみなさまに読んでいただけるように、 11 月を目処に何らかの出版ルートに乗せたいと思っています。 企業のみなさまにも、現在の学生たちがどのような状況にあるか、大学がいかなる努力によって変 わろうとしているのかということをご理解いただいて、入社して来る人たちを、ぜひ継続的に育てて いただきたいと思います。 社会人基礎力は社会で求められる力と言うだけではなくて、大学の授業を活気付け、学ぶ意欲を高 め、社会に出てからも同じ視点で評価されることで、社会に出てからも、社会全体で社会人基礎力を 高めていくという、大きな成長の好循環を作るために役割を果たせるものではないかと思っています。 みなさんのご協力をよろしくお願いいたします。 講演日時:平成 22 年 9 月 15 日(月) 13:10~14:00 場所:大阪国際会議場 18 社会人基礎力育成事例研究セミナー 経済産業省政策説明 [福岡会場版] 発言者:経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 壷井秀一氏 今、社会で求められる力 「社会人基礎力」 「社会人基礎力」とは、「職場や地域社会で多用な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」 として平成 18 年 2 月に経済産業省が定義づけた概念です。諏訪先生に座長になっていただき、さま ざまな産学の有識者の方々の議論を経て、まとめられました。ここで示されているものは、どのよう な仕事についても必要最低限、ベースとして求められる力と言えるのではないでしょうか。 ではなぜ一見“当たり前”とも感じられる「社会人基礎力」を明示し、国の政策として取り組むよ うになったのか。その背景について、3つの観点からお話しします。 1 点目は「企業を取り巻く環境の変化」です。左のグラフは売れ筋商品のヒット期間を表したもの ですが、顧客の情報収集能力の向上やニーズの多様化により、年々ヒットする期間というのは短くな ってきています。最近ではグローバル化も強くなってきており、より多様な価値観の人の意見を集約 し、スピード感を持って実行に移していく能力が、 これまで以上に求められるようになってきました。 また、右側のグラフですが、IT 化や業務の効率化が進み、人材、特に若い人たちに求められる仕事の 質が、非常に高度化しているという現状も私的されています。産業界は日々激動の渦の中にいます。 2 点目はそういったこれからの産業界を担っていく若い人材の「育つ環境の変化」です。携帯電話 やインターネットの普及に代表されるように、個人対個人がダイレクトにつながるツールが爆発的に 普及してきたことに代表されますが、年齢や考え方など、自分とは違う価値観と持っている人たちが、 顔をつきあわせて、ぶつかる時間がどんどん減ってきていることが挙げられます。 3 点目は「大学を取り巻く環境の変化」です。平成 21 年度に大学(学部)への進学率が 50%を越 えました。社会に出る直前に、大学という教育機関を通過してくる学生が、非常に多くなってきてい るのです。それに伴って、大学の教育の質、卒業生の質に産業界の方からこれまで以上に大きな期待 が寄せられるようになってきたのです。 また、少し観点を変えて「就職活動」という視点から見てみると、経済産業省の調査によれば、学 生と企業の間で、社会に出て活躍するために必要だと考える能力ならびにその能力水準について、そ の認識に非常に大きな乖離があるというデータが出ています。この調査では、学生に「自分が今、身 につけていると思う能力」 「不足していると思う能力」を尋ねました。そして企業の人事の方に対して、 「今の学生がすでに身につけている能力」 「不足している能力」について尋ねました。 その結果、学生側・企業側それぞれの回答で大きく差異が出た部分があります。結論を申し上げま すと、「粘り強さ」「チームワーク力」「主体性」 「コミュニケーション能力」など、いわゆる社会人基 礎力で掲げているような能力について、学生は、 「自分はもう十分に持っている」と認識をしている一 方で、企業側からは「まだまだ足りていません」と指摘しています。 他方、「ビジネスマナー」「語学力」「業界の専門知識」「PC スキル」といった、勉強すれば比較的 容易に身に付くものや、成果が見えやすいスキル面については、学生は「自分はもっとこのような能 力を付けなければならない」と思っている一方で、企業側からは、 「まだそんなところに力をかけなく ていい」とか「もう十分である」 「これからで良い」といったような認識がされている、という結果に なりました。学生側、企業側のこの決定的な意識のズレをなんとか埋めていかなければならないので す。 このような状況も踏まえて、産と学で求められる能力を共通言語化し、成長の目標としてもらえる ように取りまとめられたのが、この「社会人基礎力」の 3 つの能力・12 の要素です。 19 この「社会人基礎力」の育成・普及事業を経済産業省が具体的に始めたのは、平成 19 年度からで、 これまで大きく 2 つの事業を行ってきました。 1 つ目は大学における「社会人基礎力育成・評価モデル事業」です。ゼミや研究室、授業といった 大学の教育活動を通じて「社会人基礎力」の育成・評価をするためのお手本となる授業づくりをして きました。全国からいくつかの大学を、モデル校に指定し、企業と連携した課題解決型の授業 (PBL=Project Based Learning)という手法の導入や、「社会人基礎力」の指標を用いた行動目標の 設定・振り返りの導入などを教育活動の中に取り込んでいきました。それにより、異なる価値観の議 論を行う場面や、チームプレーをする場面、PDCA サイクルを実践する場面などを教育活動の中に創 り出し、 「社会人基礎力」の育成に寄与できるプログラムにしていったのです。本日、お手元にお配り している『手引き』は、そうした大学におけるさまざまな工夫を、さまざまな場面に応じて大学の教 育活動に導入していただけるよう、ポイントをまとめたものになっています。 2 つ目は学生チームによるプレゼン大会「社会人基礎力育成グランプリ」です。こちらは大学のゼ ミや研究といったさまざまな活動を通して「社会人基礎力」のこういう面をこのように伸ばすことが できた、ということを学生さん自身に、チームで発表してもらう大会です。本年度で 4 年目になりま すが、年々、参加校が増えてきていています。本年度は全国から昨年度に比べてほぼ倍増の 100 大学 が参加しています。また、今年度は初めてこの福岡でも年末に予選大会を開催させていただくことに なりました。九州の大学のがんばりを、九州の産業界の皆さんにもぜひ知っていただきたい、産学を つなぐ場として機能させたい、そしてこの地域の大学の横の連携も深める場にしたい、という思いか ら地域ブロックでの予選を開催することにしました。 グランプリでは、各大学から個性的な発表がされます。昨年度上位に入賞した流通科学大学は「産 学連携による弁当開発」、準優秀賞の京都産業大学は「日本の古典文学」 、阪南大学は「外国人観光客 に対する現場での取り組み」 、山形大学は「理系学生のキャリアデザイン」といったように扱うテーマ は本当にバラバラなのですが、それを「社会人基礎力」12の指標で振り返ってみると、大学での活 動が、社会で活躍するために必要な力の伸びにつながっていたことに気付くことができます。 実際に参加された学生さんや先生方の声を紹介させていただきます。グランプリ出場の効果は大き く 2 つです。1 つ目は、学生にとって、 「社会人基礎力」の伸びに気付くことが出来る“気づきの機会” となっていることです。自分たちが普段取り組んでいる大学の授業やゼミというものをこの「社会人 基礎力」の 12 の指標に照らし合わせて振り返ってみると、実は、知らず知らずのうちに成長してい た、ということが、このグランプリに出て、人前で発表したことによって実感できます。 「社会人基礎 力」の成長は、気づきの機会を与えてあげないとなかなか分からないものですので、そういう意味で も大きな効果があると考えられます。 2 つ目は、グランプリに出場するということ自体が、 「社会人基礎力」の育成に大きく寄与している ということです。例えば、自分たちが普段、ゼミで発表する場合は、自分たちが知っている人たちの 前、もしくは、同じテーマに興味を持っている人たちの前で発表することが多いと思うのですが、そ のテーマについて何の知識も無い、大勢の大人たちの前に出ていって伝えるということは、 「前に踏み 出す力」が絶対に必要になりますし、プレゼンをまとめる過程で「チームで働く力」も必要になりま す。また、どうやったらうまく伝わるのかを徹底的に「考え抜く力」も必要です。 今年度はこのグランプリは、 「九州・沖縄地区予選大会」ということで、12 月 13 日に福岡でも予選 を開催させていただく予定になっています。学生にとっても、大学教職員の皆さんにとっても、そし て地域の皆さんにとっても本当に良い機会になると思いますので、ぜひ沢山の方々のご参加をお待ち しています。 講演日時:平成22年9月9日(水)16:45~17:00 場所:福岡国際会議場 20 ①福岡会場 時間 内容 13:00~13:10 開会挨拶 (九州経済産業局 13:10~14:00 地域経済部産業人材政策課 安部修二氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 14:00~14:30 山本真司) 事例紹介①(日本文理大学工学部准教授 吉村充功氏) 「全学を巻き込んだ社会人基礎力育成の工夫と実践」 14:30~15:00 事例紹介②(京都産業大学経営学部教授 後藤文彦氏) 「通常の科目(外書セミナー)における社会人基礎力育成のための 工夫とその効果」 15:00~15:15 休憩 15:15~16:15 ワークショップ(法政大学大学院政策創造研究科教授 諏訪康雄氏) 「社会人基礎力を育成する授業の工夫~ ささやかな経験から ~」 16:15~16:45 質疑応答(吉村先生・後藤先生・諏訪先生) 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 九州経済産業局 安部修二氏 事務局説明 河合塾 山本 壷井秀一氏 日本文理大学 吉村充功氏 ) 京都産業大学 後藤文彦氏 ワークショップ 法政大学 諏訪康雄氏 パネルディスカッション 21 経済産業省 壷井秀一氏 社会人基礎力育成事例研究セミナー 福岡会場 第1部 吉村充功氏発言 日時:平成22年9月9日(水) 場所:福岡国際会議場 発言者:吉村充功 日本文理大学人間力育成センター長 工学部准教授 日本文理大学の人間力育成センター長として、人間力育成プログラムの開発にあたる。学生のみならず指導する教 員も学部混成で行う PBL 型授業、企業の現場を想定した授業設計など、学生・教員双方に、社会人基礎力を「社会で 必要なスキル」として意識させるための取り組みを行っている。 全学を巻き込んだ社会人基礎力育成の工夫と実践 はじめに 日本文理大学の吉村と申します。私の方からは、全学を巻き込んだ社会人基礎力育成の工夫と実践 ということで、本学でほとんどの教員が関わって、この社会人基礎力、本学では人間力と呼んでいる のですけれど、実践をしておりますので、その一部をご紹介し、各大学さんに参考にしていただき、 企業の方にも知っていただきたいなと思っています。 本日のトピックですが、われわれが社会人基礎力をどう捉えているのかというのが、授業の中に取 り込めた最大のポイントになりますので、まずそれをご紹介したいと思います。そのあとが事例の紹 介になりますが、工学教育の中のある事例、手引きの 3 章にありますが、それを紹介します。あとは 全学の取り組みということで、5 章になりますが、その教育の事例と、われわれはそれを FD にまで 展開させていますので、それをご紹介します。 本学における社会人基礎力のとらえ方 まずわれわれの大学ですが、大分にある私立大学です。工学部と経営経済学部の文系・理系 2 学部 です。学生数は約 2100 名、教員が 90 名程度です。 われわれは産学一致という建学の精神を大事にしています。教育の上では、産業界が何を求めてい るかをきちっと捉えて、学士課程教育に落とし込むことが大前提です。最近では、時代の変化と共に 産業界の求めてきているものも変わってきているだろうということで、教育理念も見直しまして、40 周年を機に、再編しました。それまでの「産学一致」に加えて、 「人間力の育成」、 「社会・地域貢献」 という3つになりました。社会人基礎力の必要性をわれわれの言葉では人間力と捉えたわけです。 私も今、人間力育成センター長となっていますが、 「人間力とは何だ」とよく言われます。答えがあ るものではないのですが、われわれの大学でどう考えていくか、整理をしなければということで、教 職員で議論をしまして、人間力とは、すべてのものを包括する力であり、それを持っていれば、実社 会を力強く生き抜けるものだと思っています。 これを「こころの力」 「社会人基礎力」 「職業能力」 「専門能力」の 4 つに分解しました。今までの 大学であれば、専門能力に走ってしまうのですが、われわれはこれも人間力の一部だと解釈していま す。これ以外に、職業能力、社会人基礎力も位置づけました。 さらに本学の特徴として、 「こころの力」を人間力として位置づけています。これは道徳教育ではけ してなくて、社会人基礎力とは、われわれの解釈の中で、スキルだろうと捉えています。今の学生で あれば、スキルだけ持っていればいいと誤解する傾向があって、例えばチームで働く力を、ぶっきら ぼうに発揮されても困るわけですね。やはり相手の表情をみながら、楽しそうにやって欲しいとか、 相手の気持ちを考えてやって欲しい。これは社会人基礎力だけでは説明がつかないだろうということ で、われわれは、 「こころの力」というものを、別に考えています。相手を思いやる力などになります が、これら 4 つを複合的に捉えながら、実践をしています。 22 これをどう落とし込むかですが、何も別に新しいことをやっているわけではなく、教養基礎科目、 専門教育科目、その集大成としての卒業論文・研究がベースですが、教養基礎科目は、人間力に特化 して再編しています。 われわれの特徴は、循環型教育にあります。今までの知識習得型の科目に、実践型、つまりワーク ショップ型とかプロジェクト型の授業を学年ごとに配置して繰り返す。知識を実践してみて、成功す れば自信を持つ、失敗すればまた勉強しなおせよということでまた知識を学ぶ。この循環をしながら、 学年をステップアップさせながら、内容を難しくしていく。成功と失敗を繰り返していく。その集大 成が卒業論文・研究になるということです。この全体をわれわれは人間力育成プログラムと呼んでい ます。 最近は、これだけでも難しいのではないかということで、正課外で、 「NBU チャレンジプログラム」 というものを設けまして、ここは職員主導で行っています。 工学教育における育成事例 次に事例に入りたいと思います。工学系の事例からお話します。二つほど紹介したいのですが、基 本は設計教育です。機械電気工学科と建築学科の設計になります。科目そのものは工学系のところで あれば、必ずあると思うのですが、それを少し社会人基礎力の発想で、授業の展開の仕方を変えるだ けで、能力が身につくという事例になります。 機械電気工学科で、ガソリンエンジンの設計図を描いています。その際に、理論計算から入ってい きます。CAD を使わずに手でやらせますが、これを担っている土佐陽三先生は、民間企業で 30 年間 働いてこられた方で、企業の現場をよく知っています。それをそのまま、つまり企業の設計部で行っ ていることを、授業に持ち込んだのがこの事例になります。 その中で、実際の専門の知識だけではなくて、期限の厳しさや作業の正確さ、失敗をしたときにど う対処するのかというところ、課題発見力を理解させて、社会に出て行くまでにつけるべき心構えを 培わせるということになるのですが、工夫は次のところになります。 実は授業の現場、製図室になりますが、それ自体を企業の設計部と設定しています。先生が設計部 長になり、学生が部下になります。学生は課題である設計を行って、それを上司である部長に、許可 を得にいくことになります。 教員と学生という関係では、学生は甘えてしまうのですね。しかし上司という立場であると、教員 は怒りやすくなります。企業ではこのような怒り方をしていると教えていますから、場合によっては、 「こんなこともできないのか」と罵倒する場合もあります。 もちろん後でフォローするのですが、 「会社に出たらこんなことは言われるよ」ということで、「あ あ、これではダメなのだ、もっときちんとやらないといけないのだ」と学生自身が気づいてくれます。 あと、いろいろな工夫をされているのですが、与えられた条件だけで行っていると、必ず失敗をす るように組み込んでいます。どこかではたと困ってしまう。そこから立て直す、課題を見つけるとい うこともそこでやっています。当然、失敗が組み込まれていることを学生は知りませんから、それま でスケジュールに間に合うと思っているのですが、失敗すると数工程、戻らなければならないし、締 め切りに間に合わなくなるわけですね。それでスケジューリングをし直す。それで計画力の向上に発 展させていこうとしています。 個人ごとに設計の仕様を変えているので、隣の学生のものを丸写しすることができないようにもし ています。 授業の風景ですが、先生は上司の席に座っています。学生はチェックを受けたいときにこの席にき 23 て個別指導を受けるというユニークな指導をされています。 もう一つの建築学科の設計ですが、先生方は、1 名を除いて、もともとアカデミックのプロパーの 方々です。ここでの工夫ですが、建築の設計の授業は 5 段階のステップで編成されています。その中 で、実際の社会の中での建築をすることを意識させようとしています。実際の設計屋さんがやるプロ セスを、授業の中に組み込んいます。 社会人基礎力というところでの工夫では、課題を学年が上がることに難しくしているのですが、最 初は簡単な、というより身近なものの設計をしています。具体的には最初の 2 年生のところでは、自 分たちの使っている大学のもの(大学構内のレストハウス)で、学生は自分たちのことだけ考えて、 主体性を発揮できる場を考えてやっていく。 そこから対象が大きくなり、街の中に出て行く。スモールオフィスビル、住宅、美術館、学校、最 後は街づくりというものにしていきます。 それで実際に現場に出て行く。建築物は、一つ一つ違いまして、敷地の条件や、施主が出す要件な ど、いろいろなものがあるのだよ、ということを学びながら進めます。 発表の場ですが、これも単なる発表の場ではなくて、振り返りの場としてあり、自分の意図を相手 に分かってもらうように努力しなさいと言っています。その後、相手にどう伝わったかを振り返り、 自分のアイデアを客観的に見直しなさいという仕掛けを作っています。 全学教育(教養教育)における育成事例と FD への展開 次に全学への展開の仕方です。これは人間力育成センターで、学部に関係なく展開している授業に なります。われわれは人間力教育の根幹として、社会参画授業を展開しています。全学で、必修、準 必修で、1 年生から 3 年生まで、ほとんどの学生が受ける授業になります。いろいろな仕掛けがあり ます。 1 年生の後期に、両学部混成で学内ワークショップ、PBL を行います。2 年生になると企業課題の PBL を行います。3 年生では地域課題の PBL を行います。これも学年を上げながら、課題を難しく し、企業、地域と広がる中で、社会人基礎力を育成しています。 今日は後期に行う 1 年生の「社会参画実習1」についてだけ説明します。これは 1 年生全員が受け ているので、500~600 人が受けますが、担当する教員は、クラス担任を兼ねていて 50 人ぐらいが関 わります。 学部混成のクラス編成をします。各担任が 15 人ぐらいのクラスを持っていますので、自分が持っ ているクラスと、学部の違うクラスの学生 15 人ぐらいが集まって、30 人のクラスを作って、一緒に 授業を行います。 その中で、学内の施設改善、図書館や食堂を改善しましょうというテーマを与えて、ワークショッ プをする。30 人ではできないので、各チームに両方の学部の学生が必ず入るようにした上で、5~6 名のチームを作ります。そこでワークショップを行います。 これも先ほどの建築と同じような発想で、1 年生のときは、学内の身近なものの改良を目指します。 自分たちの大学への愛着も絡めながら、社会人基礎力、人間力を伸ばしていく取り組みになっていま す。 この授業の取り組みですが、実はわれわれがもともと意識しているのは、今の学生はなかなか、同 じような価値観を持っている者とか、内輪の学生とでしか話したことが無いというのがありますので、 強制的にでも、違う教育を受けている人と混じり合わせたい。 なかなかすぐに上の人と話をするのは難しいので、まずは同世代の、自分とちょっと違う教育を受 けている人と混ぜたいというのが発端で、工学部の学生と経営経済学部の学生が話をすることになり 24 ます。 そういうことで、いろいろと価値観が違う人と、チームで働くことを強く意識させながら、社会に 出たらそれが当たり前だよということをやろうという展開になっています。これが一つ目のポイント です。 実はもう一つありまして、先ほど、1 年生はクラス担任を兼ねていると紹介しましたが、実はその 一つのクラスを、教員も 2 人で持ちます。工学部と経営経済学部の教員 2 名のダブルティーチングに なります。そうすると非常に面白いことになります。 というのは、自分が今まで教えていた学生と、まったく雰囲気が違うというのが教員の反応になる のですね。工学部の学生は、非常におとなしく静かに聴いている者が多い。経営経済学部はちょっと 私語をする者がいたりする。よく言うと元気がいいし、ワークショップではむしろ主体性を工学部の 学生以上に発揮するわけですが、工学部の先生方からすると、 「なかなか、通常の講義を行うのが大変 とは聞いていたけれども、経営経済学部の先生方は、こんなに苦労していたのですね」となります。 経営経済学部の先生方は逆の反応で、工学部の学生と会うと、 「なんて教えやすいのだ」となるわけ です。ポイントになるのは、そこで指導方法や何かヒントになることを得てもらうこと、気づいても らうことで、実はこれは FD の効果につながっています。 この仕掛けはある程度、トップダウンで入れたのですが、その後は、教員たちが自発的に社会人基 礎力の取り組みをしていっています。自分たちの教育内容も、良いところを採り入れながら改善して いこうという方向につなげることができています。 「社会参画実習1」は普通の講義室では少しやりにくいのですが、ワークショップも普通に行って います。また調査にも行きますが、学食のスタッフと話をしたりしています。これも大事なコミュニ ケーションの場ですから、社会人基礎力を発揮できる。身近なところでもこういうことができるわけ です。 成果発表はチーム毎に発表をするので、パワーポイントを準備するのに一つのパソコンに学生が集 まって議論しながら行っていたりします。そして 50 人ぐらいを前に発表させて、きちんと最後に講 評をしています。こういう流れです。 評価もきちんと行って、成長を確認しています。 それで FD への展開ですが、学部を越えて教員が交わった結果、FD に対する敷居を下げることが できました。8 割方の教員が社会参画実習1の授業を体験していますので、その結果、公開授業の完 全実施ができるようになりました。期間は決めていますが、教職員が自由に、どの授業を観に行って もいいことになっています。 また教員自身が、授業参観のあとに、ワークショップを開いて、ここは良かったなど、後で発表し あう研修会付き、こういうワークショップ付きの授業参観もできるようになってきました。それでシ ンポジウムも、学生を交えながら、学生の意見を取り入れてパネルディスカッションをすることなど も行うようになってきています。 本年度から、われわれはこの成果の流れに乗って、シラバスの全面改訂を行いました。全学部でシ ラバスの見直しに踏み切れたのですが、それも敷居を下げてきた効果だと思います。社会人基礎力や 人間力など、人材育成目標に対しての、科目ごとの評価をきちんとしていかなくてはいけないという ことで、シラバスの中に、これを載せています。 ですから、成績評価の指標として、最初にご紹介したように人間力を 4 つに分解し、その中の社会 人基礎力は 3 つに分かれますので、 「こころの力」 「前に踏み出す力」 「考え抜く力」 「チームで働く力」 25 「専門能力」 「職業能力」とありまして、さらに「学習に取り組む姿勢・意欲」を加えた 7 つの評価 指標というものを入れました。 それに対して、これをどこで測るのかという視点から、独自の観点をまとめました。 そのときに説明会で使ったものですが、シラバスの中にこういう内容を出しています。われわれが 掲げている大学としての到達目標に対して、各科目としての到達目標がありますよね。それに対して 事前と事後の伸びを考えてもらうわけですが、 それの評価指標は、われわれが作った 7 つのものです。 それらを考えて、授業の設計をし直してください、ということが、本学で落とし込めたことなのです。 それで先ほどのシラバスに落とし込みが可能になりました。 あらかじめ去年の研修会で説明したのですけれども、必ず自分の科目すべてに社会人基礎力が出て こないと困るとは言っていません。ですので、実は全科目に入れてみて、社会人基礎力のところに点 数がついているのが、だいたい 6 割弱でした。何かしら意識してもらって、6 割弱の科目で、できる かどうかは別にして、まずは教員の方で意識してもらうことができています。このあとまたこれにブ ラッシュアップをかけながら、本当に評価方法はそれであっているのかという話を、FD で展開して 行こうと思っています。 学生の側には、きちっと到達目標やそれをどうやって評価するのかを、きちっとシラバスの中で示 しているということです。本当にこれがきちんとできているのかの検証も FD の中で行って行こうと 思っています。 まとめ 本学の考え方は、建学の精神に対してどういう人材を作りたいのかということを、教職員でしっか り議論した結果、社会人基礎力が一部として位置づけられたということがあります。それで社会人基 礎力、人間力育成の仕方で、場をちょっと設定し直す、つまり授業を設計部に見立てる、といった内 容で学生の主体性を引き出す。もしくはその中で教員が、学生と一人の人間として向き合う。それが できれば、非常に社会人基礎力の育成につながるということが分かりました。 あとは学生の進歩に合わせて、身近なものから、企業、社会に課題を展開することに配慮する中か ら、主体性、前に踏み出す力の育成ができるのかなと思います。 われわれとしてはそれプラス、大きな成果として、教職員自身が他学部の状況など、いろいろなこ とに初めて問題意識を持つようになった、 教育に対しても非常に真剣に取り組むようになったことで、 ここまでの成果ができたと言えます。これで現時点でのご報告としたいと思います。 26 社会人基礎力育成事例研究セミナー 福岡会場 第1部 後藤文彦氏発言 日時:平成22年9月9日(水) 場所:福岡国際会議場 発言者:後藤文彦 京都産業大学経営学部教授 キャリア教育研究開発センター運営委員長 京都産業大学の社会人基礎力育成の中心的な役割を担う。キャリア教育研究開発センターの産学連携型 プログラム(キャリア教育科目)から経営学部1年の「外書セミナー」といった専門教育科目まで、さまざまな 形の授業、カリキュラム全体に社会人基礎力を導入する仕掛けづくりに取り組んでいる。 通常の科目における社会人基礎力育成のための工夫とその効果 はじめに 続きまして、ご紹介にありましたように、通常の科目における社会人基礎力育成のための工夫と効 果についてご報告させていただきます。話のテーマが一科目だけのケースに絞られていきますので、 その点はご了解下さい。お手元の手引きの 332 ページから 337 ページに紹介されている部分です。 最初に少し大学について説明させていただきまして、次に、経営学部における「外書セミナー」が どういう内容で行われているかをご紹介させていただきます。 続きまして、私どもの大学において、社会人基礎力育成教育がどのような構造を持っているのか。 4 番目に、 「外書セミナー」でどのような工夫と効果をあげているのか。最後に、現在残された課題と いう順番でご報告します。 (1)京都産業大学の概要 私たちの大学は、9学部・7研究科からなり、学生が約 13,000 名の中規模の総合大学です。専任 教員は 320 名、非常勤その他が 67 名、事務職員は 396 名になります。 (2)経営学部における「外書セミナー」の位置づけと内容 経営学部には 1 学年 700 名ぐらいの学生が在籍していますが、1 年生から卒業まで何らかの形でゼ ミが用意されています。「外書セミナー」は1年生秋学期に用意されたゼミで、だいたい 1 クラス、 25 名から 30 名くらいです。クラス・メンバーは、ランダムに配置されます。2年生以降については、 学生の希望に応じて、本ゼミを展開しています。 今日のテーマの「外書セミナー」は必修ではありません。経営学部は、極力、必修を避けています。 必修は教員の方が、卒業させてやらなくてはならないということで、弱みを握られてしまう。本ゼミ に入るには、これを通らないとダメだという形にするとわれわれも気が楽になりますので、そういう かせ 形で枷をはめて、「外書セミナー」を本ゼミに入るための先修条件としています。 1 年生の春学期が「基礎セミナー」、秋学期が、 「外書セミナー」です。これは妙な名前ですが、一 般に「外書講読」と言われているものです。私たちの大学のケースですが、英語を通らずに入学して くる学生が約 4 分の 1 いますので、昔の輪読形式の授業では、学生が耐えられなくなっています。こ れは私たちの大学だけではありませんが、大学院に進学するのにも英語を通さずに入学させている場 合がかなり見受けられます。 そういうことを考えて、従来の外書講読という形を振り切って、英語をネタにわいわいやりましょ うということで、展開しています。 「外書セミナー」は、全 1 年生を対象にした担任制のクラスです。 (3)京都産業大学における社会人基礎力育成教育の基本構造 こういう授業に対して、われわれは、社会人基礎力の育成のために、いろんなケースに適用できる 27 3 つの基本的教育構造を持っています。1つはチームワークを働かせる。もう一つは課題解決型の授 業展開。これはチームワークを展開するのには、課題解決型が適しているからです。もう一つが大き な特徴ですが、コーチングとかファシリテーションというスタイルを中心に展開しています。教員の 役割はコーチでありファシリテーター。願わくは学生同士もそうあって欲しいということで展開して います。 なぜそうするかといいますと、ご存知のように、最近の若者は、非常に人とくっつく力が弱いとい われています。足りないからむりやりくっつけようとすると壊れてしまいます。それを避けるために、 心の栄養と言っていますが、ストロークを学生に与える。そのためにコーチングやファシリテーショ ンを利用していくのです。 そうすると、どういうことになるかといいますと、学生一人ひとりが持っている可能性が引き出さ れていきます。またチーム、クラスの雰囲気がどんどん醸成されていきます。これがチームワークを 働かせるもとになって展開されています。 ですからこの3つが基本的な構造となっており、これから紹介する工夫は、みなこの構造に基づい て展開されています。 (4)「外書セミナー」における授業展開の工夫とその効果 ①チームワーク 次に工夫と効果をご紹介します。この授業では、チームワークについて、どんな工夫をしたかとい いますと、毎時間、学生にはランダムに着席させます。ランダムにチームを編成していく。毎時間、 隣の人、チームのメンバーが変わって行きます。 具体的にどうしているのかといいますと、入り口に、割り箸に番号をふったものを置いておきまし て、学生はそれを抜いて、番号の席に座っていくという形をとっております。学生はそれに対してど のような印象を持ったのか、学期の終わりに振り返りをしているのですが、そこでは「いろいろな人 と話せるようになった」「出会いが多くて良かった」 「友だちが増え、一つの暖かい場所だと感じた」 「いろいろな人と話ができたことが、何よりもワクワクでした」とありました。 われわれもそうですが、高等学校まで、席替えのときは非常にワクワクしませんでしたか?隣に誰 がくるのだろう。その感じが大学生にもあるわけですね。われわれのときには、大学には女子学生は 本当に少なかったので、席替えにまったく興味がなかったのですが、今やかなり女子学生が多いので、 そのワクワク気分はよく理解できます。 そうやって、チームワークの基をまず作っておくのが、ファシリテーションの要領だと思います。 させるのではなく、そういう雰囲気をこっちで作っておいてやるのですね。 ②課題解決型授業 次は課題解決型。英語の勉強を課題解決型に変えなければいけない。なんとか組み替えるための題 材として、VOA(注 Voice of America)の中に、英語を母国語としない人のための英語のサイトが あるので、それを使っています。1,500 の単語をベースに展開しています。音声も動画もあります。 そこにクロスワードパズルがあります。けして難しくありません。ですからこの段階では、まだ経営 学の英語には関係ない英語をやります。この段階での最大の目標はチーム作り、クラス作りで、英語 の辞書を引いたことの無い人に、懸命に辞書を引かせる。しかも英英辞典、英和辞典、両方をしっか りと引きながらやらせるという訓練を目的にします。これに 1 学期の半分を使い、英語に対する興味、 チームの雰囲気ができあがったところで、ようやく経営学の英語に入ります。 VOA の中に、1,500 の単語のリストがあります。英英辞書になるわけです。そこから経営学によく 出てくる単語をひっぱりだして、それをテーマにチームでやる。 28 例えば、A からはじめて、経営学に関係のある単語というと、administration というのが出てくる のですけれども、これをご覧になると、1,500 のボキャブラリーの中でのものですから、このリスト にとりあげられているのは行政上の意味合いになります。本当は経営学ではこれは管理とか経営とい う言葉になっていくわけですけれども、ここでは行政的な言葉になるわけで、そこで彼らには、この リストにあがっている意味にぴったりとした言葉を探しなさいという課題を与えるわけです。 そうすると辞書を引いて、いろいろな意味があるのだなということを知りますし、その中から一番 良い言葉をチームで相談して出してくる。それが終われば、実はこれ、政治学の分野では、行政とい う意味合いになるけれども、経営学に来たら、管理とか経営という意味になるのですよと、ちょっと 薀蓄を傾けてやる。 そうすると初めて、一つの言葉がいろんな意味を持つんだ、あるいは経営と行政と、日本語ではま ったく違う意味に思えるけれども、英語の世界では経営学も行政も同じことなのだと、そういう勉強 をしながら、ちょっと英書講読の勉強をしていくわけです。 これに対して、彼らが最後の振り返りでどういうことを言っているかというと、 「英語を訳す力や単 語力がついた」とあります。本当はたいしたことをやっていないのですけれど、しかしそういう気に なっていることが大切なのですね。またとんでもないことですけれど、 「英字新聞を訳すこともやって みたかった」とあります。とても難しいのですけれども、そういう気になってくれた。それから「英 語を楽しめるようになった」。もう一つは、「英語の勉強が、文法や単語を覚えるだけの堅苦しいもの ではないことが分かった」 「英語のことわざを調べたら面白いと思った」というように、本当にどこま で力がついたか分かりませんけれども、とにかく英語については、前に踏み出そうという力を立派に もってくれた。ですから目的は達成したのではないかと思っております。 ③コーチング・ファシリテーション 次はコーチング、ファシリテーションです。どんな工夫と効果があったのかを説明します。3 つの 工夫をおこなったのですが、その一つは「ワクワク・トーク」というもので、傾聴訓練を兼ねたアイ ス・ブレークを行います。毎時間、ランダムに席が替わりますので、隣の席の人とペアを組んで、過 ごしてきた 1 週間のワクワクした経験を語り合うのです。 どうするかといいますと、一方が 3 分間、語り続けて、その間、聞き手は一生懸命傾聴する。3 分 過ぎたら、交代する。その場合のポイントとして、相手の話を認めてやる。相槌をついたり、頷いた りして、本気で聞く。この訓練は、話す訓練ではなくて、聞いてやると相手はいかに楽しくしゃべれ るか、そして聞いてやるというのはいかに辛いか、しかしその辛いのをしっかり我慢すれば、相手は 自分の思っていることをしゃべれる。それを体験してもらう訓練です。 相手がしゃべることにつまったら、的確な質問をして話を引き出してやる、これはなかなか難しい のです。さらに何かあれば、提案をしてあげる。こういう分野での提案の仕方は、こうあるべきだと いうのではなくて、「こんなやり方もあるんと違う?」という提案になるわけですが、これを毎時間、 6 分やるわけです。 そうすると、どういうことを書いてくるかというと、 「毎週朝にあるワクワク・トークはとても楽し くて、目が覚めて、積極的に授業に取り組める」とあります。 「なごやかで楽しい」という雰囲気がで きた。「ワクワク・トークを通じて、社会人基礎力を積極的に発揮できるようになった」「ワクワク・ トークが魅力的だった」 「ワクワク・トークがきっかけで、いろんな人と話ができるようになった」 「ワ クワク・トークが楽しくてみんなの雰囲気が明るくなった」 。さらに面白いのは「ワクワク・トークの おかげで、1 週間が楽しくなった」というものです。というのは、来週またやるから、1 週間のワク ワクをきっちり覚えてこいとなるわけです。人間、誰でも何かしらワクワクはありますが、それを忘 29 れてしまう。ところが次の授業で話すので、しっかり 1 週間胸に秘めてきてくれといいますと、1 週 間が楽しくなるということが書いてありました。こういうことでまず雰囲気を作っていきます。 もう一つ、 ここに最大の時間をかけたいところなのですが、毎時間の社会人基礎力の目標管理です。 これも手引きにあります。1 枚の紙の表裏にプリントしてあるのですけれども、表に、この時間の目 標を書いてもらいます。時間が終わったら、この時間に得たことを目標の下に書いてもらう。裏面に は、社会人基礎力の 12 の項目がありまして、授業の始まる前に、意識してみようと思う項目に○を つけてもらいます。この特徴は、教員がまず授業のコンテンツをしっかり作り、その上で、具体的な 目標は学生自身が決めることにあります。それがコーチングの鉄則です。そのため授業の初めに自分 で○をつけさせて、授業が終わったら、12 の項目の全部について、5 点満点で、自己採点し、それを 提出させる。 それで私が 1 週間の間に、コメントを書きます。 たいしたコメントを書こうとすると大変ですので、 時間がないときには花丸だけで済ませることもあります。とにかく承認、見てあげたよということが 大事なので、それを書き入れて、次の週に返しています。 ④総合的効果 そういうことをした結果、どういう効果が出てきたのか。12 の項目の学期の初めと中間、終わった ときの自己評価をグラフにしたものをお見せします。その結果、ご覧のように、1 学期間で大きく伸 びてくれたことがお分かりだと思います。人数は 17 人、クラスは 25 人いたのですが、去年の秋学期 は、新型インフルエンザが猛威を振るったときで、残念ながらこの数になりました。それでもこのよ うに伸びたことが分かります。 さらに具体的にどういう効果があったのかということで、もう少し具体的な分析も行いました。先 ほど申しました、目標管理の成果の相関分析をしました。これもなかなか数が揃わず、初めての経験 でしたので、データをきちんと記録できないケースもありまして、きっちり取れたのは 3 人でした。 どういうデータになったかというと、毎授業開始時と、毎授業終了時の相関関係をみました。そう すると、学生 A と学生 B では強い相関が現れました。つまり授業前にこれをやろうと思ったことをき ちんとやって伸ばしていったわけですね。それに対して、学生 C ではそれはなかったのですが、毎授 業の終了時のものと、学期開始時に行った自己評価のものとの間に、相関関係が出てきました。この 場合は、最初にやった自己評価を覚えていて、それとの関係で毎時間、取り組んでいったのだなとい うことがわかります。 その結果、毎授業終了時での 5 点満点の動きと、学期終了時の自己評価の相関が 0.6 も出てきまし た。そういう結果で、最初の授業開始時の自己評価と、学期終了時の自己評価をグラフにしてきまし た。これを見ると、C は一番、伸びが大きい。 目標管理にはそれぞれタイプがあるのが当然ですけれど、これを行えば、タイプによって成長の様 子がつかめるのではないかというきっかけをつかめました。願わくば、サポートをいただいて、これ を完成させたいと思っています。 いろいろなことを申しましたが、総合的にどんなことが学生から出たか。驚くべき告白ですけれど も、大学生で「 (この授業のお陰で)学校に来られるようになった」というのが 21 名のうち 4 名いま した。パーセントで言えば 20 パーセントです。最近、年間 5 万人が大学を辞めていますが、特別な 対策をしなくても、20 パーセントの学生は救える、社会人基礎力がついた証拠だと思います。社会人 基礎力がついてないから、学校にこれなくなってしまうので、非常に総合的な効果があったと自負し ています。 30 また「ちゃんと出席をして、遅刻もしたくないと思える授業だった」というのが 1 名あります。い いところばかり拾ったのだろうということになるかと思いますが、実際にそうなのです。課題も残さ れています。 (5)残された課題 今回は 3 人しかデータを出せませんでしたが、自分でちゃんと整えられた環境の中での目標管理、 それをもう少し、実験的に解明する必要がある。そうすれば、もっとパターン化できて、誰でもそれ が使えるということにつながります。 今の授業は、かなり教員個人の経験と個性に基づいて行っている面が多いわけです。これではいく ら FD で頑張ってがんがん言ったって、できない人にはできないです。でもちゃんとこうした仕組み が、はっきりと、客観的に、科学的につかめれば、特別な人は別にして、8 割ぐらいの人に同じこと ができます。なので、ぜひとも実験的にこうした仕組みを解明したいと思っています。 またこういうやり方は、授業の進捗状況はよろしくありません。それで例えば英語の力が弱い場合 は、がんがん英語をやろうということになります。でもそれは大間違いで、短絡的な対処療法はやめ た方がいい。経済学の分野には、迂回生産という言葉があります。大きな成果を狙うためには、しば らく本来のことを犠牲にする。例えば、橋のない川向こうに多量の資材を運ぶために、まず、資材を 運ぶためだけに人材を投入するのではなく、橋を作るために力を注ぐ。そして橋ができれば、橋のな かった時に比べれば多量の資材が運べて、生産を増やせる。 そういうものを迂回生産と言うのですけれども、教育の分野でも、やはり迂回教育がいるのだと思 います。数年前では迂回期間が 1 学期必要でした。しかしその数年の間に、迂回期間が 1 年いるだろ うということになったと思っています。1 年というのは、心に芽生えた心理的な変化が定着する期間 です。どうも 1 年かかると今は思っています。 またこれはまだ解決できていないことなのですが、このような授業スタイル、ワクワク・トークな どに馴染めない学生が何名か必ずいます。そういう学生に無理やりこうしたことをさせるとかえって マイナスですから、こうした学生にどうしたらやる気をださせることができるか。これは私もまだ解 決できない課題として残っています。 以上で私の話を終えます。 31 社会人基礎力育成事例研究セミナー 福岡会場 第2部 諏訪康雄氏発言 日時:平成22年9月9日(水) 場所:福岡国際会議場 発言者:諏訪康雄 法政大学大学院政策創造研究科教授 平成 17 年より経済産業省の社会人基礎力委員会座長として、「社会人基礎力」のとりまとめにあたる。自 身も 30 余年に渡って授業改善に取り組み、学生が講義やゼミを通して自ら学びを深め、チームとして力を 発揮するようになる「ボトム・アップ型」の教授法を確立。 社会人基礎力を育成する授業の工夫~ささやかな経験から~ はじめに こんにちは。諏訪です。通常の授業の中で、どうやって社会人基礎力を高めたらいいかという問題 について、私が試行錯誤してきたことの一部分をご披露してみたいと思います。大学の個々の授業に はかなり個性があって、標準化しにくいものがあるのですが、私は相当程度まで、定式化して、一般 化ができるだろう、とりわけスキルにあたる部分、ちょっとしたノウハウにあたるものは、相当程度 にみんなで共有できると思っています。その点では、全学に渡って一貫した形で進められている吉村 先生のお話などは、大変、勇気付けられるものでした。以下、私の経験をお話させていただきます。 昔、学生たちといろいろな本を読んでいるときに、作家の山田智彦さんという人の『解雇・男たち のリストラ』という本があり、その中の一節にこんなことが書いてありました。 「リストラ対象者の選 出の基準ははっきりしている。能力がなく、意欲もない者、会社をよく休む者、病弱な者、性格のわ るい者、礼儀作法を知らぬ者、遅刻常習者、非常識な者、協調性のない者、小生意気な態度をとる者、 言葉遣いの悪い者、傲慢な人物、身の程知らぬ者、平気で約束を破る者、時間を守らぬ者・・・」とあり まして、こういうのを読んでいましたら、学生が「これ大学の教師だ」というのですね(笑い)。僕ら は、リストラ一直線の人材なのかと、そのときあらためて、ドキッといたしました。現に私も原稿が いつまでも出なくて時間を守っていないと怒られたり、あるいは本来ちゃんとした論文を書くといっ たのにロクでもない論文を書いたり、みんながいいという意見に反対したり、いろいろなことをして いるなと、胸が痛むわけです。 これらの多くは、おそらく人間の持つ弱い部分ですが、組織的に働く社会人はいろいろな形で是正 される。ところが教室の中で、自分が王様になってしまう先生たちは、なかなかそこが補正ないのか もしれないなと思っています。 よくある授業批判ですが、1994 年に新聞の投書欄に載っていたものですと、34 歳の企業人が大学 に派遣されたところ、 「学生に質問意欲が無い、学生には自らの知識不足を実感する機会がほとんどな い、自分は仕事上の体験を通じて、知識不足を痛感したけれども、学生はこういう部分が無いのだ」 という指摘ですとか、 「教授は、授業は片手間仕事でちゃんとやっていない。学ぶことに緊迫感を持た ない学生と、教えることに努力しない教授側との『甘えの連鎖』が悪しき反応を繰り返している」、な どということが書かれてありました。ですから、学生は昨日、今日、ダメになったわけでもなければ、 ましてや教員も、昨日、今日、ダメになったわけでは絶対にないという、こういうことが分かります。 私はこういう投書欄をよく切り抜いてデータベースにとってあるのですが、それから 6 年ぐらい経 ったときに、63 歳で定年後に大学生になった人が、こんなことを書いていました。「今の学生は、遅 刻が多い。先生が遅刻学生にプリントを手渡しされる光景を見ると、いいかげんにせいと言いたくな る」。このいいかげんにせいとは、先生に対してなのですね。そういえば、私も渡しているなあとドキ ッとしました。 32 ところが、遅刻がぜんぜんない、居眠りもほとんどないという素晴らしい授業にも出会ったという ことも書いてありました。こういう素晴らしい授業をされている先生が実際にいらっしゃるのだなと、 10 年ほど前に、あらためて思いました。 この 10 年、おそらく大学は随分、変わったと思います。私はキャリア教育を自大学で初めて担当 した教員ですが、教授会の了解を得て正式科目にするまでに何年もかかり、ようやく 2000 年にそう いう授業になりました。その 2000 年あたりが転換点で、それ以降、いろいろな大学がそれぞれに工 夫をしてきています。というわけで、以下、伝統的な教育スタイルをどう変えていったら良いか、4 つの視点で話していきたいと思います。 社会人基礎力育成授業のパターン まず社会人基礎力育成授業のパターンにどのようなものがあるのだろうかということ、こうしたパ ターンの違いを模擬的に経験していただこうという、一種のシミュレーションをやってみたいと思い ます。 また講義、実習・演習、PBL には、どんな長短所があるかということを考えて見て、最後に、アル バイトやサークル活動などの課外活動にはどのような意味があるかを検討したいと思います。そうし たことの全体からなる学園生活、それらを通じて、学生たちの社会人基礎力は伸びていくだろうと考 えます。少なくとも、授業の中では伸びなくていいのだ、外で伸びるから、というものでもないのだ ろうと思っております。 そこで社会人基礎力育成授業のパターンですが、従来型は、完全な伝統的スタイルは、ノート読み 上げ方でして、御経を読むように、読みあげていって、だいたい 5 分後には、みんな安らかな眠りに 誘われて行ったりして、さすがに先生だけは自分が読んでいますから、なかなか目がとろんとしない というのが一つでした。でもこれは、今はさすがに凄く少ないと思います。 では今、多いのは何かと言うと、講話的スタイル。レジュメやパワーポイントなどを用いて、解説 型で行う授業です。今から、25 年ぐらい前でしょうか。私は授業にレジュメを持ち込むことを始めま した。というのも、海外の大学で教えますと、向こうではハンドアウトを撒くことを経験しましたの で、自分でもこれはなかなかいいなと思って始めました。 驚いたことに、そのころ、レジュメを 200 人分、300 人分と印刷しますと、誰も手伝ってくれない ところは我慢できるのですが、なんと、年度の終わりに、印刷請求書がきたのですね。驚きましたね、 10 何万円か取られてしまいました。今はうちの大学も、印刷代は取りませんし、事前に渡しておくと、 受講人数分だけ教材を用意しておいてくれます。 いずれにしましてもこういう講話スタイルで進む。これが今の主流だと思います。 他方、最近、対話取り入れ型も結構入ってきまして、時折、質疑応答を入れてきます。これは私自 身、70 年代後半に講義を始めた当初から行っています。クイズダービーという番組をみていていいな と思ったので、5 択では難しいので、3 択で行ってみました。反応はよかったです。多くの授業はせ いぜいここぐらいまでですかね。 これをもう一歩先に進めるにはどうしたらいいのか。現在では社会人基礎力育成をさらに意識した 授業を試みています。 まず教員側が意識するスタイルとして、規律というものがあります。チームで働くときに、遅刻を してこられると、会議でもなんでも困ってしまう。したがって社会では遅刻が厳しく問題視されてい るわけですが、学生は平気なのですね。酷い学生は、授業の終わる数分前にずかずか入ってきて、レ ジュメが残っていないがどういうことだと糾弾したりします。本当にびっくりします。 33 こういう遅刻学生がその後どうしているか見ていると、私語が多い学生が多いです。要するに規律 がない、自分がしていることが他人に迷惑をかける、あるいは自分自身にとってもマイナスになって いることが分からない。 それから予習、復習をわれわれは求めるのですが、学生はなかなかしない。とりわけ、予習はとて も大事です。授業より先に自分なりにシミュレーションしてみて、専門家である教師がどのように言 うかを見ていくわけですから、非常に重要なのですけれども、なかなかしてくれない。 それから授業中の対話、対話で「これどう思う?」と聞いて一番多い答えは、「分かりません」で、 なかなか対話も成立しない。 これらに多少とも工夫をしてきました。遅刻に対しては怒ったりしたこともありますが、効果はあ りませんでした。授業評価の中で、 「遅刻ぐらいでがたがたいうな」とか書かれて、二重に嫌な思いを しました。遅刻の意味が分かってないということで、遅刻はいかに問題かを説明する一方で、よく考 えると私もベルが鳴ってから教員室を出てきましたから、5 分ぐらい遅刻して教室に入っていたので すね。これはまずいということで、5 分前に教室に行き、チャイムとともに開始するように改めまし た。 また定刻にこないと学生が損するようにしました。前回分の復習テストの 5 択問題を作りまして、 3 問できた人だけが今回の出席点をもらえるようにしました。しかもそれは授業の最初の 5 分しかや らないというやり方をしました。こうしたところ、遅刻は相当減りました。 その次の工夫として、遅刻はいかに悪いかを話した上で、すぐにはやめられないだろうから、次回 は 20 分まで認める。その次は 10 分。3 回目からは遅刻したら入らないでねとしました。ですが、そ れでも入ってくるのですね。 それでポケットマネーでティーチングアシスタントを雇いまして、廊下の前に立たせて、遅刻者は 入らないように言わせました。交通機関の事情で遅れたものだけ入れるとしましたが、非常に効果が ありました。学生の感想がありますが、200 人、300 人の授業でも遅刻なしになります。どんなにこ れが気持ち良いかということを学生が書いてくれました。 そうなると、次は私語退治です。これにもいろいろな工夫をしました。私語をしている人を指して 質問するなどから初めて、いろいろな手を使いましたが、結局分かったのは、学生が何を嫌がるかを 調べることが大事だということでした。それで調べてみると、授業が、鐘が鳴ったあとに延びるのが 何よりも嫌だと分かり、しめたと思いました。私語があったら、授業を延ばすと警告したのです。逆 に私語をしなかったら、もともと授業が定刻に始まっているのだから、5 分早く終わってあげる。と いうわけで、私語をしたら、警告して、それでだめなら授業を 5 分延ばす。この遣り方も非常に効果 的でした。教師が怒らないでも、見事に彼らは変わっていきました。 予習をさせるのははどうしたかというと、前回に次回資料を渡して、次回にやる分野をはっきりと 示して、1 回の分は教科書の 10 ページから 15 ページの範囲ですし、せいぜいそれに関連した A4で 2枚程度の資料を渡して読んでくるように言いました。 でもこれは初め、なかなかうまく行きませんでした。せっかく予習してきたのに、私が以前と同様 に一から説明してしまうからでした。それでは、学生たちが予習してくる意味がない。それでこうい う基礎的なものは、全部、予習してきていることを前提に、教員側から説明せず、パッと当てまして、 定義や論理を質問するやり方をとるようにしました。それでみんな、満座で恥をかきたくない一心で 予習をしてくるようになりました。 一体、予習する授業としない授業ではどれぐらい差があるかということで、予習を課さない授業の ときに、先週一週間、授業外でどれぐらい勉強をしたかをアンケートし、他方、予習を課した授業で 34 も同様にしたところ、差は 1 時間でした。だから 1 科目につき 1 時間ぐらいの予習ならば、どの授業 でもやらせることができるのかもしれないと思います。しかし全ての科目がやったら、できるかどう かはちょっと分かりません。日本では受講科目数が多大だからです。しかし今のところ、予習を課す 授業は少ないので、効果があります。 さて、学生側に講義内容の意味を意識させる方法ですが、教師が一方的に結論を話すのではなく、 意義づけの説明を授業の中に組み込んで、これこれの意味があるのだよと説明していくと、授業をそ ういう視点から聞くという、気づきの機会が学生に与えられて、態度変容を生んでいきます。 それから教員と学生の間で意識を共有化するために、リアクションペーパーを書いてもらい、それ に必ず目を通すことも、教師と学生の双方にとって有益です。いい感想が書いてあると、通常は 1 点 の出席点を 2 点にしてあげるとか、リアクションペーパーに対するリアクションコメントを必ず書き まして、翌週配布しますと、喜ばれます。その中で、とくに良かったのはだれだれさんだと名前を書 くと、これも励みになるようです。これは学生たちになかなか評判が良くて、いい反応がありました。 というわけで通常の講義で学生参加を高めたり、社会人基礎力をのばしたりすることはやってやれ なくはないのですが、なかなか難しいところもあります。そうした力をもっと高めるにはどうしたら いいかでは悩みはつきません。講義でいうと、セメスター制をとっていますので、前期で入門的にや ったら、後期で発展的にできますので、この発展的なところで、一工夫が必要でしょう。例えば私は、 もともとは法律の教師でして、法律では、裁判所の判例を読むということが非常に重要なので、それ を学生に探させまして、自分なりに読み込んで報告させるということをしました。こうしたことをす ると、たちまち受講生の数は減るのですが、ついてくる学生との間では授業はきわめて高いレベルで 進めていくことができます。こうした学生の社会人基礎力はやはり高まります。 それからさまざまな工夫が一番できるのがゼミです。課題解決型で、よそから少しお金と課題をい ただいてきまして、それに取り組むということを何回も行いました。これはかなり大変でしたね。何 年か前の学生は、へとへとになりました。ある程度、水準の高い課題を、シンクタンクと協力して調 査したのですが、通常の学期中は、今の学生は出席率がいいですから、学園外に出て行って調べると いうのはなかなか難しいのですね。しかも企業相手の調査ですから、土日にはできないわけです。 それで結局、夏休みにやらざるをえなくなりまして、夏休みに 5 回もゼミを行い、春休みにも何回 もゼミもやることになりました。挙句の果てには 3 年生は、就職活動がありますと言って、レポート を書いてくれませんから、こっちが必死になって下書きを作るなどと言う、本末転倒な結果になった こともありました。ともかくこの実習授業は社会人基礎力の視点からとても効果があります。 もちろん、インターンシップ、アルバイトなどを、うまく単位と結びつけながらやっていきますと、 これも効果があります。前者はすでに多くの大学が実行していますが、後者はほとんど手がつけられ ていません。けれども、軽視すべきでなく、工夫の余地があると思われます。 3 パターンの違いの体感 以上のようなわけで、3 つのパターンの違いが分かります。 欧米の大学でいう従来型は、Teach me, I’ll forget.というもので、一方的に教えられたって忘れてし まうよというパターンが多かったと思います。それに対して、Show me, I’ll remember. 実際にやっ てみせてくれたり、多少とも、対話などがあったりしますと、覚えているかもしれないねというレベ ルになります。そして最後に、巻き込んで参加型でやりますと、Involve me, I’ll understand.で、ま さに腑に落ちる。ああ、そういうことだったのか。なるほどと、理解が格段に進み、自分の身につく 35 ということでして、この 3 番目を、どう大学の正課授業の中に入れていったらいいか、が課題だと思 っています。というのも、凄く時間を食いますから、カリキュラムの中にどう入れていったらいいか ということです。 これらを時と場合によって、使い分けながら授業を進めざるを得ないわけです。そこで、これから 少しだけ、参加型授業の工夫として、300 人ぐらいの授業でもやっているやり方を、みなさんと、行 ってみることにします。この中にも大学の先生がいらっしゃって、似たようなこと、あるいはもっと 素晴らしいことを行われていると推測しますが、足らざるところは後ほどご指摘いただきたいと思い ます。 みなさまのお手元に配布されてありますが、誰でも興味があるのではないかという、 「新卒一括採用 の光と影」というテーマを選んでみました。これに関係して、いろいろな人がさまざまなことを言っ ていることを、要約してここに載せてあります。 ご存知の通り、新卒一括採用は、良い面と悪い面がありまして、不況では悪い面が出てきます。し かし第一番目になぜそれがなくならないかといいますと、昨年度の新卒の求人倍率は、1.28 倍ぐらい の有効求人倍率でした。では正社員としての転職事情はどうかというと、最近の数字はだいたい 0.2 強です。4 人に 1 人くらいしか採ってくれない。そうなりますと、なんとしても新卒で潜りこんだ方 が良い。しかも名だたる企業は大部分、新卒中心です。それで新卒入社のために、学生が一生懸命に 動くのは、合理的な行動をしているということでして、一概に教師が、それをダメだとか言っても仕 方がないのですね。会社も長い間、年次管理をして、人材を育ててきましたから、なかなか一括採用 慣習から逃れられない。 2 番目に生涯所得で計算すると、不況のときに会社に採用されていった人たちは、低いのですね。 中途採用が難しい中では、こういう結果がでてしまう。結果、卒業年度によって凄い不公平が生まれ るという問題があります。 3 番目に、就職浪人という、非常に好ましくない状況が出てくる。欧米はどうしているかを見ると、 普通、就職率を見るときは、卒業後 1 年後ぐらいにどれぐらい就職するかを見ていく。在学中から就 職活動をして就職していくというのは、欧米でみると、意外と少数です。卒業するまでは学校のこと を一生懸命にやって、卒業してから、就職活動をしていく。逆に言えばそれが卒業後、半年、1 年か かってしまう。 4 番目に、なんとか内定をとろうと学生が焦っていくと、向かないところでの就職などにより早期 離職が生じます。いわゆる七五三です。中卒で 7 割、高卒で 5 割、大卒で 3 割以上が、新卒就職後 3 年以内に辞めていってしまう。マッチングのあり方に疑念が示されているところです。 それから新卒採用にはしばしば年齢制限をかけられていまして、少し寄り道をして、いろいろな経 験しながら就職するということが難しい。30 歳ぐらいまでを適職選択のための期間ともっと長い視野 で捉えられないかという声があるのは、ご存知のとおりです。また文系は大学院に行くと、就職がか えって不利になるという問題もあります。 こうして、新卒一括採用をなくせという強い意見や、3 年ぐらいは新卒扱いにしてはどうかなどと、 いろいろな改革の意見が出ています。 さてプリントの裏をめくっていただきますと、政策提言をする上で、ポイントとなる枠組みでよく 使っている紙があります。新卒一括採用は一体、何が問題なのか、まずこれ(What?)を考えて見て ください。それからなぜそれが問題になるのか(Why?)。過去からの経緯を探ります。最後に、では どうしていったらいいのか(How?)。未来に向けて考えます。これを学生なら 5 分で考えさせるので すが、ここは能力が高い方が多いので、3 分で用紙に書いてみて下さい。 36 ・・・各自、プリントに記入・・・ はい。だいたい 3 分経ちました。それでは、これをどう使うか。まず自分の考えを自分なりに考え てみました。そこで次に、同じテーブルに座っている方々、番号が振ってありますが、そのみなさん でどう思うのかの意見交換をしていただきたいと思います。それで暫くしましたら、即席でできたグ ループの当面の結論を出していただいて、誰か一人が代表として発表していただきたいと思います。 どこに当たるかは、私の手元に座席表がありまして、適当にさせていただきます。4 チーム当てます ので、自分のところが当たったらという想定で、議論してみて下さい。数分差し上げますので、どう ぞ議論してみてください。 ・・・各グループで討論し、盛り上がる・・・ よろしいでしょうか。今、バズタイムとして 7 分を使いました。個人で書くのに 3 分、討論に 7 分、 10 分を考察に使っています。ではただいまから、4 チームに報告をしていただきます。 第 1 グループ 私たちのグループで話し合ったことなのですが、それぞれ、職業選択の問題、雇う企業の側の問題、 新卒採用 4 月からの問題などを考えていった中で、期間の余裕を認める、そしてこれを支える社会、 システムなどの構築なども考える必要があるよねというのがだいたいの意見でした。 第 2 グループ 新卒一括採用を廃止すべきか否かは、イエス、ノーで言えないとなりました。さまざまな言い分が あるでしょうから、利害対立をどうやって調整していくのかが問題だと思います。具体的な話として は、職業選択の余裕がないとか、学業に専念するにはとか、採用側の問題もあるでしょうし、色々な 問題が噴出しまして、では今、どうすればいいのというと、答えがでないということで議論は終わっ ております。 第 3 グループ 私たちも、今の方たちと同じで、光と影がそのまま出てきたという感じです。やはり授業に学生た ちが、きちんと出席できないのは問題であるという話が一方であり、採用の方では一括でないと処遇 の面など、いろいろな問題がある。とはいえ、学生たちが、やり直しがきかないという状況はいかが なものかなど、まったく同じような結論でした。 第 4 グループ 二人で話し合ったので、結論が出なかったのですが、日本は命令主義が強い国で、学校から企業ま でもがそうですので、その部分を改革していかないと、どうにもならないのかなという気がしますし、 今日のテーマは社会人基礎力ですが、自分の能力をどう測るのかという適切な時期と機会を失ってい ますし、能力を測る道具やシステムがうまく整っていないので、その辺りの改革をしていかないとい けないということで、新卒一括採用の廃止については、賛成でもあるし、反対でもある。しかし途中 採用がいいとも言えないというのが結論です。 ありがとうございました。 このように、講義の間にバズタイムを入れることも、私語をなくす効果があります。しゃべりたい エネルギーをバズタイムで使えますから。これが終わると、早く授業が終わった方がいいということ で(私語すると授業が延長になる約束を思い出してください)、さらに私語が出にくくなるという状況 です。 37 本当の授業ですと、黒板に今出てきた意見を書いて、まるで囲んだり、線でつなげたりしながら解 説していくわけですが、ここで普通の人が気づいてないことをちょっと話しておきますと、もし新卒 一括採用をなくそうと思ったならば、年次管理以外の何らかの人事管理の基準がないと、即ち専門職 みたいな職業ごとの採用みたいにならないと、難しいのではないかということがあります。 それから欧米の場合は、実は大学は 5 月頃に終わってしまうのですね。新年度は 9 月、10 月頃なの で、ちょうど夏休みに当たる時期に就職活動ができる。日本は 3 月に卒業で、4 月から新年度になり ます。これを 9 月に採用とすればやりやすくなると思うのですが、これも現状では難しいのではと思 います。 しかし一番大きな問題は、実は新卒一括採用をなくすと、相当程度の数の、就職が決まらないで大 学を卒業する人間が今以上に生まれかねないことです。外国で比較的在学中に就職活動を始める割合 の高い国のイギリスでも、その割合は 5 割を切っていますから、残りの国では、もっとたくさんの人 が就職を決めないまま大学を出ます。そうするとこれらの人々は失業者となります。この若年失業者 に対する手当てをどうするかというと、日本では制度がないのです。日本は働いた後でなければ失業 手当てが出ません。 ということで、平均的な就職までの活動期間をかりに 6 ヶ月としますと、学生でかりに就職したい ものが 40 万人、そのうちの 20 万人が在学中に就職を決め、残りが 6 ヶ月かかるとしますと、後者に 毎月 10 万円ずつかりに手当てを払うと、1200 億円の原資が必要になり、それをどこからか出さない と苦しくなります。 その点では、一括採用は、就職や失業にかかわるコストを、全部、大学生の期間の中に織り込んで しまうシステムです。これは貧しい国であった日本にとっては、うまいシステムだったとも思います。 しかしそれは同時に大学の授業は意味がないというメッセージともなりかねません。3 年生の後半か ら、勉強はもう止めていい。それでも採用してあげますよということで、これは知識社会の将来に向 けてはたしていいのかというと、多くの人は強く疑問を感じています。 というわけで、社会の問題はなかなか答えが出ないのですね。正解は幾らでもある。どれが一番い い正解かは、短期的なことと、中長期的なこととでは違ってくると、学生に説明していくことになり ます。 それで学生には、最後にこの授業はどうであったかを書いてもらって、それを提出させて、出席を 確認する方法が最近よく見られます。 お分かりになっていただけましたでしょうか。たくさんの人数のクラスでも、導入しようと思った ら、グループワークをそれなりにできないわけではない。ただそのためには、たくさんのことを教え ようということをやめなければいけないというのが一番大きな問題です。なにしろ教師は、少しでも たくさんのことを教えたい、教えなければならないと思っている人種だからです。 講義、実習・演習、PBL の長短所 ひと通りこういう経験をしますと、もっとも運営コストがかからない、学生にとっても教師にとっ ても気楽なのが、伝統的講義スタイルだという思いを強くします。ゼミさえも手を抜く教師もでてき まして、単純な輪読形式で行う。これは今の学生では成り立たないことが多いのですが、にもかかわ らずその種のものも根強く残っています。 講義も実習・演習も、ひとたび社会人基礎力育成を考慮しはじめますと、教師にとっても、あるい は学生にとっても、準備と後始末に、凄く時間と精力がかかるようになります。例えばリアクション ペーパーを 300 枚読むと、どんなに急いでも 2,3 時間かかります。さらにコメントを書けば、同じ 38 ぐらいの時間がかかる。つまり講義内容とは別のところで毎週5~6時間を費やさざるをえなくなり ます。 ここら辺は TA などのいろいろな制度とうまく結びつけてやっていきませんと、無理は長く続きま せんから問題だな、といつも思っています。 しかしなんといっても大変だったのは、PBL です。まずそういうちょうど学生にとって、いい仕事 をもらってくるのが大変です。学生が学園の外に出るのにも交通費がかかります。それで経験ですと、 ゼミの場合、年間で 60 万円ぐらいのお金が必要になりました。それを出してもらわなければならな い。またお金をもらった以上はそれなりの報告書を出さなければいけないので、教員も指導が大変で す。 しかし学生も教師も、もっとも成長するのは PBL かな、と感じます。だからこれを無理なくやっ ていくために、いろいろな工夫や仕掛けが必要だと思います。 経験から思うこと 結局のところ、現在の心境としては、教員全体が授業運営に社会人基礎力の観点を入れるのは、も っとも望ましいと思っています。しかしながらそれには、教員全体がその重要性に気づくということ が大切でして、その気づきをどう与えるかというのが、一つの問題です。同時に、すべての授業を社 会人基礎力で変えようという無理なことはしない方がいいのではないかとも思います。 それから PBL だと支援措置が不可欠だと感じています。また授業で相当程度、社会人基礎力を入 れようと思えば入れられるし、入れるべきだと思うのですが、しかし正課だけでやろうとするのもよ ろしくないのであって、正課以外のものももっと活用すべきだと思います。 例えばどういうときに遅刻しないかと学生たちに調査をしてみたら、学生生活の中で一番は圧倒的 にアルバイトでした。次が必修科目のように大事であるか、ゼミといったような少人数の科目でした。 友人との待ち合わせやサークルにも平気で遅刻するみたいです。でも一番、平気で遅刻をするのが選 択科目でした。というわけで、こうした学園生活の全体を通じて気づきと、自分を律していく社会人 基礎力の基本的なものを分からせていくのも大事かなと思います。 またボランティアはきわめて有効ですが、ここでは飛ばさせていただきます。学生調査によると、 大学生活のどこで社会人基礎力がついたかと自覚しているかといいますと、一般に講義は低くて、特 に前に踏み出す力の育成が弱いです。でも先ほどのようなバズタイムを使いますと、ちょっと変わっ ていく。また、グループワークのためには、教室の中で仲良しとだけ座らないでバラけさせるように 工夫していくことなども含めて、もう少し、授業を活性化させていくことが課題だと思います。 学生はグループワークをすると、みんなチームビルディングの苦労を経験します。ゼミも最初の時 (私の場合は 2 年生)がまさにその時期で、成果がなかなか出ないのですが、そこを我慢してチーム をうまく作ると、3 年生になると非常にいいチームワークで、さらにみんなが仲良くなるなどという ことが、学生たちの感想としても残っています。 気づきはいかに大事かということなのですが、学習効果は気づきで非常に違ってきます。アルバイ ト経験で身に付くものを調査してみますと、キャリアのことに敏感な学生たちは、いろいろなことが 身に付くと言っています。それに対して、情報科学部というところがあります。朝から夕方まで一言 も口を聞かないで PC に向かう学生もいると教師が言っていますが、こういう子たちのところは、ア ルバイトをやっても気づきがどうもダメなようですね。同じことをやっても気づきがあるかないかで 学習効果がぜんぜん違ってきます。 39 同じようなことで「教員」は問題ではないかという調査結果もあります。将来何になりたいかとい う「卒業後の進路」を訊いたところ、進学・留学を選んでいる学生が一番、アルバイトをしても学ん でいない。とくに「言葉遣い、社会常識が身に付いた」が低い。 「仕事上の人間関係が理解できた」も 低い。ここから教師になる人が出るわけですから、やはり何か、措置が必要なのだなと自戒していま す。 授業では学生たちには絶えずミニアンケートを取って、分析結果を学生たちにフィードバックする ことにしています。これをプリントとして配布したので、後でお読みください。以上で私の経験談は 終わりにします。ご清聴ありがとうございました。 40 社会人基礎力育成事例研究セミナー 福岡会場 第2部 質疑応答 日時:平成 22 年 9 月 9 日(水) 場所:福岡国際会議場 発言者:吉村充功先生、後藤文彦先生、諏訪康雄先生 質問 福岡県立大学のナツハラと申します。吉村先生にご質問なのですが、建学の精神に対する人材育成 方針の明確化ということで、人間力というような、あいまいな、どういう力をさしているか、分から ないことに対して、教員が全員、こういうことを目指していけばいいかというコンセンサスを得るの が大変だったと思うのですが、具体的にどういうことをなさったのか聞かせて下さい。 回答(吉村) 一番難しい質問ですが、本学の場合でいいますと、ある部分はトップダウンでした。それと地道な 説明です。議論の場はあるのですけれど、ある程度上層部で枠組みのようなものを決めた上で、研修 会や説明会を繰り返し、それでもダメだったら、個別で説明に行くということを繰り返しました。 そういう形でやったのですが、本学の教育理念を作り直すのに、内部の議論で 2 年ぐらいかかって います。落とし込みにも 2 年ぐらいで、未だに理解されていない先生ももちろんいらっしゃいます。 なるべく、それらの方々には、個別で説明するようにしています。それを含めて 3,4 年、かかって きています。 あとは私の経験なのですけれど、今、人間力育成センターを立ち上げてやっているのですけれど、 実践的にやってみせて、結果を出してくると、みなさん、納得されるというところがあるので、方針 を明確化した上で、どこかで走って、こういうことですと実例を示すことが早いのかなと本学の経験 から思います。 質問 TOTO 株式会社のヒルサワと言います。人材開発の仕事をしているのですけれども、諏訪先生にご 質問させてください。バズタイムとおっしゃいましたよね。新入社員が、高卒もいれば大卒もいる。 バラバラなのが集まってきて、その中でグループワークをさせるのですけれど、やはり温度差や、う まく進まないという面があるのですね。それでお聞きしたいのは、1 年生でもバズタイムをさせてい るのかというところと、初めにこれをさせるときに、何かうまくいくアドバイスがあればお教え下さ い。 回答(諏訪) 1 年生にも当然、させています。大学生の 1 年目はとても重要で、それも夏休み前が、もの凄く大 事だと私は感じています。そこで大学に入って、自分は少しずつ成長しているのだなと感じさせるか どうかが、その後の 3 年半をうまく過ごさせられるかどうかのポイントではないかと思っています。 1 年生の場合は、最初から難しい課題は無理ですので、すぐに答えが出てくるような簡単な課題で すとか、いろいろな高校や地方の出身がありますので、これらの人が共通に答えられるような身近な 課題を出しています。この場合は、チームビルディングを学ぶとか、少し自分で考えるとか、みんな で考えて、思いもよらないような答えが出せたとか、そういう体験をさせることに意味がありますか ら、できるだけ、頭のてっぺんから尻尾までを、全部食べられるようなテーマを出しています。 例えば、なぜ学生は、大学に入ると勉強しなくなるのかなどというのは、毎年、大学に入って 1 ヶ 月ぐらい経って出すと非常にうまくいきます。もっと出席がうるさいと思ったのにそうではなかった とか、もっとレポートが多いと思っていたのにすくないとかとしてきされ、教師も学ぶことが多いで 41 す。 もう一つ、コツは、ともかく結論を急がないことだと思っています。後藤先生が言われた迂回教育 は、とてもうまい言葉だと思います。スローエデュケーションと言えますかね。クイックな、ファー ストなものも場合によっては必要ですが、最初に一番学ばなければならないのは、チームビルティン グの仕方です。みんなで一緒に仕事をやって成果を出すにはどうしたらいいか。しかも昨日まで顔を みたこともない者とどうやって組んで、成果を出すか。 そのための刺激に私は、プロポーザルコンテストを絶えずやっています。あるいはゼミの報告でも、 まったく同じテーマをいつも 2 つのチームが行うようにして競争させて、周りの人には匿名の評価シ ート(アドバイスカードと呼んでいます)を書かせる。それをまとめてあとで本人に渡すようにして おりますが、こういうようなことをして、よりいい点を取った方が勝ちということで、拍手をしたり する。誉めて、認知をするわけです。 日本人は、一人だと勝負から腰が引けるのですが、チームになると、勝負から腰を引くことはない ですよね。ですから日本人をうまく乗せるには、小チームを作って競わせるといいのではないでしょ うか。下手をすると常勝チームと常敗チームができますから、格差社会にならないためには、チーム を、絶えず作っては壊し、作っては壊すことも大事です。 そのために私は、チーム編成のためのいろいろな道具を持っています。サイコロを振ったり、くじ を作ったり。阿弥陀くじがいいですね。各自に一本ずつ足させます。世の中には、こういう運はつい てまわりますから、運を味方につける訓練にもなると思います。 やはり慣れない 1 年生、2 年生はなかなか大変なようですね。ケンカをしたりして。そのような場 合も、行き過ぎない限りは、できるだけ見て見ないフリをして、自分たちで解決できるようにしてい ます。うまくいくと非常に成長します。うまくいかないと、時々ですが、ゼミから一人、二人が抜け て、心が痛みますね。後藤先生と一緒で、ここは課題だなと思います。 質問 北九州市立大学のミタネと申します。山本さんも含めて、4 人の先生にお伺いしたいのですが、社 会人基礎力を授業で身に付けていくためには、だいたい 2 つの方法があって、授業自体で成長させる のか、授業の方法を変えて、アクションラーニングなどを取り入れて変えるのかだと思います。後者 の方は FD が主体で、先生方、社会人基礎力を取り入れた授業をやってくださいねということを、全 学あげて、やっていかなくてはいけないわけですけれど、だいたい、ほとんどの先生方は言うことを 聞かない。 方法としてトップダウンというお話がありましたけれど、意欲がなかったらやらないですよね。や れといわれてやるのではうまくいかない。本当に、ああそうだよね、ではみんなでグループワークを 取り入れて行こうとか、楽しい授業を作ろうじゃないかと思わせるようにして、全学で、トップダウ ンでもなく、強制でもなく、みんながやっていこうと思えるようないい取り組みはどういうものか。 またそれが無い場合に、自分が学長であったらどうするのか。その点をお聞きしたいと思います。 回答(後藤) 非常に難しい問題ですが、教員間にどう広めるかということですよね。 これは組織論的に言っても、 共通目的が持てないとどうしようもないわけですね。でもその共通目的が個人によって、随分違うわ けで、そこでコンセンサスを作らなくてはいけない。 それで何をやっているかですが、うちは、シラバスには全部、社会人基礎力が入れたのですが、教 員に浸透させるのに何をしているかというと、今、教員が一番、興味を持っているのは、自分のゼミ が活性化しないことです。それで授業を活性化させるポイントが、社会人基礎力だということです。 社会人基礎力を初めからボンとぶつけるのではなくて、ゼミの活性化から入る。自分のゼミは活性化 42 していて、教員の方が出るのが楽しくて仕方がないという例はほとんどないと思います。あるとすれ ば、その担当者は、豊富な経験と、強烈な個性と、かなりの家族の犠牲、その上に成り立っていると 思うのです。 ですから共通目的はゼミの活性化で、これに反対する人はいないと思います。その点が、私が工夫 しているところです。 吉村 先ほど紹介した FD の展開で、問題意識を共有化させるという点で言うと、とりあえず、枠組みだ けトップダウンでしてしまうのですね。実はうちは今、教養科目が、かなりの部分、オムニバス形式 と言うか、チームティーチングになっていて、いろいろなところで、何人かの先生で教えないといけ ない科目を、ガンガン作ったのですね。初めは何をしていいか分からなかったのですが、何とかしな いといけないということで、自分たちで改善していくと、気づきがあって、自分たちで生かせるなと いうようになりました。 つまり枠組みはトップダウンで作って、中身はそれぞれの先生たちが自分で作って、それをまた専 門のゼミに戻してもらうということで、教員自体に社会人基礎力を身につけさせる形に、うまく FD に落とし込めたと思っています。その点では運もあり、時代の流れにうまくあったのかなとも思いま す。 あと、本学の場合では、教員の危機意識を煽ったのは、うちの建学の精神から言うと、就職率が問 題になるのですよね。その就職率が少し下がっているときに、このままではまずい、地方の私立大学 では学生募集に関わってくるわけです。そうなるとほっておくわけにはいかないという危機意識が生 まれるので、その辺をうまく組み合わせながら、煽ることができたのかなと思います。 諏訪 全学にというのはとても難しいテーマだと思います。私が勤務している大学は、マンモス大学で 2 万数千人の学生がいて、常勤の教員が 700 人、非常勤を合わせて 3000 人ほどもいますから、これが 全員、社会人基礎力に向かって走っていったら、むしろ気持ちが悪いだけですので、せめて数パーセ ント、1 割ぐらいが意識してくれればと思っています。 一つはキャリア教育との連動で、いろいろな工夫をしています。また一生懸命やっている先生や学 生たちを、うまく誉める仕組みが必要だと思います。例えばゼミの成果発表会をやり、なんとか賞な どを出したりしますと、それだけで学生たちはのってくる。ごく普通の人がそれなりにやっているこ とを、素直に、誉め称えあって、良いことは学びあうという空気をどう作っていくかがこれからの課 題だと思います。 ただこのままでは、2018 年の 18 歳人口は 93 万人で、大学入学定員と同じになってしまいます。 10 年後ですから恐ろしいことですよね。そのためこういう全体の雰囲気と、グローバルな中で、日本 の学生たちの持つ問題点がいろいろと明らかになってくる中で、おそらく火がついていくと思います。 この間、立命館大学のカセム先生(副理事長)の話を聞いたときに、日本の教育には誇るべきもの がないと大学の先生が言うけれど、あるのだと。それは何かと言うとゼミだそうです。日本のゼミは 合宿など、人間的な関わりが強くて諸外国にも持っていけるものだとおっしゃる。そう考えると、昔、 南山大学の、外国人の学長の方が、日本の大学に来て、ゼミを経験して、非常に驚いたという話もあ ります。ヨーロッパにこうした種類のゼミはないと指摘されていた。われわれの中にあるこうした良 い資産をうまくいかしながら、次の世代が少しでも元気に育ってくれるように、対応していくのがい いかなと思います。 43 質問 国際経済大学のゲンジマと申します。諏訪先生にお伺いしたいのですけれども、先生がおられる法 政大学は、キャリア教育を非常に真剣にお進めになっている。また最近、キャリアデザイン学部が作 られています。そうなりますと、教育の中心として、社会人基礎力をいかに高めるかの取り組みをさ れていると思うのですが、すでに卒業生も出ていると思うのですけれども、その卒業生たちが、他の 学部の学生たちに較べて、際立った社会人基礎力が高いという評価が出ているのかどうか。またその 卒業生に対する外部の評価はいかがなものか。教えていただければと思います。 諏訪 非常にお答えしづらい質問でして、大学は、個人商店の集まりのようなところがあり、他の学部の ことは、もの凄く良く知っているというわけではありませんが、同学部は大変活発な活動はしていま す。学内のキャリアセンターのところのボランティアを引き受けるなど、活発な学生が多いです。た だ就職その他でそれがもの凄く差が出ているかどう承知しておりません。また、残念ながら、社会人 基礎力を核としてやっているとも聞いていません。なかなか大学というのは一筋縄ではいかないもの ですね。 質問 福岡女子高校のナガサキです。本校では、昨年度から、本校の形容詞の中に、社会人基礎力を育む ということを目標に掲げて、取り組んでいます。具体的には独自の進路ノートを作り、プログレスノ ートと言っているのですが、3 つの領域、12 の要素を、子ども達に説明をしてから、学校の行事ごと、 また学期末に振り返りをする。そうした取り組みを去年から始めています。 導入にあたって、それなりに研修をしたのですが、職員の共通理解ということではまだまだ課題が あります。そこで夏季休業中にそのための研修を開催しています。今年はさらにその進化として、全 職員、シラバスを作るのですが、その教科のシラバスの中に、12 の要素の幾つかを、評価項目の中に 書き込むという試みも始めました。 あとですね、もっと生徒たちに身近なものとして感じさせる仕組みとして、12 の要素を 40 センチ ×20 センチのマグネットパネルにして、本校は 24 のクラスがあるのですが、黒板の横に貼っておい て、例えば私語が出てきたら、 「傾聴力」というカードを黒板の真ん中辺りに貼り付ける。あるいは、 眠りかけた子どもがいたら、 「ストレスコントロール力」とかですね、貼り付けるなどの工夫を始めて いるところです。 高校では実践例がない中で、模索しながら進めてきているので、今日は大学の先生方の素晴らしい 研究を聞けまして、すべて活用できるような内容でした。 それで初めに河合塾の先生が、シートの最後の方に、高校のことも触れられているのですが、ぜひ その点を聞かせていただければと思います。時間がなければ、後でも結構です。 司会 これは話せば長くなると思いますので、後ほど、山本の方から説明させていただきます。それでは 質疑応答の時間を終わらせていただきます。 44 ②東京会場 時間 13:00~13:10 内容 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~13:50 林揚哲氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 小松原潤子) 13:50~14:00 休憩 14:00~14:40 事例紹介①(大阪大学大学院工学研究科教授 北岡康夫氏) 「自らの価値に気づくことと伝える力の重要性」 14:40~15:20 事例紹介②(東海大学文学部教授 内藤耕氏) 「成績評価とキャリア設計をつうじた社会人基礎力の育成」 15:20~15:40 休憩 15:40~16:45 パネルディスカッション 「大学独自の目的の中での社会人基礎力育成教育と企業現場での実 践」 富士通㈱人事部人材採用センター 豊田 建氏 北岡先生 内藤先生 [司会]法政大学大学院政策創造研究科教授 諏訪康雄氏 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 経済産業省 林揚哲氏 大阪大学 北岡康夫氏 壷井秀一氏 東海大学 内藤 耕氏 パネルディスカッション 法政大学 諏訪康雄氏 富士通株式会社 豊田 建氏 45 ) 社会人基礎力育成事例研究セミナー 東京会場 第 2 部 北岡康夫氏発言 日時:平成22年9月13日(月) 場所:秋葉原 UDX カンファレンス 発言者:北岡康夫 大阪大学大学院工学研究科教授 自身が企業在職中に経験した大学との共同研究で、大学教育の問題点を痛感した経験から、工学系の 研究室における新しい産学連携型教育 Internship On Campus を確立した。研究開発の現場に合わせた社 会人基礎力の定義付けや、企業人による直接指導など、先進的な取り組みを行っている。 自らの価値に気づくことと伝える力の重要性 背景 ご紹介ありがとうございます。北岡です。DVD でご紹介ありました事例の中身についてご紹介し ます。 題名に「自らの価値に気づくことと伝える力の重要性」と掲げているのは、われわれのコンセプト として、今の学生に対して、この辺が一番欠けているのではないか、ということを学生時代の間に身 につけて欲しいということで、プログラムを開発しました。 自己紹介になりますが、1991 年に松下電器(現 Panasonic)に入って、DVD などの光源開発をし ていました。その中で米国会社や他社や社内でいろいろなネットワークを形成できました。また組合 の執行委員をしまして、若いうちに経営幹部の方々とディスカッションできたことが、私の今の礎に なっているのかなと思います。 2003 年からは大阪大学との包括契約の中で、産学連携の研究開発を始めました。その中で大学の先 生方や他者とのネットワークが広がりました。 これらを振り返って感じますのは、いろいろな組織でいろいろな方と出会って、意見をぶつけあっ てきた経験から、そうしたことが今後の学生さんにも社会を生きていく上で重要だということです。 それが、私が社会人基礎力育成を進めていくモチベーションになっています。 大阪大学の工学研究科をご紹介しますが、ホームページにありますように、5 つの学科と 10 の大学 院の専攻からなっています。一つ面白いのは、ビジネスエンジニアリング専攻です。この専攻は、経 済学研究科との協力体制の中で、PBL を主体として、経営的なセンスと工学的な基盤、技術、研究力 を身に付けるという面白い試みを実施しています。 この試みを鑑みながら、通常の大学院の研究専攻に対して、どのようなプログラムを入れることが、 学生たちが将来、社会に出て、研究開発者として活躍していく上で、意味があるのかを考えて、プロ グラムを実施してきました。 学生の現状としては、確かに、われわれの時代よりも非常に学問に対しては真摯に取り組んでいま す。しかし教員からディスカッションのために質問を投げかけると、尻込みするところが見受けられ ます。さらに、答えのないものをディスカッションしようとすると、それはどこに答えがあるのです かという声が返ってきます。その点で彼らの考えを引き出すことがまず重要だと痛感しました。 また、自己実現や社会貢献への関心も、われわれの時代よりも強く持っています。しかし日本の社 会に将来の不安があり、彼らにしてみますと、夢を描けと言われてもなかなか描ききれないという現 状もあります。 もう一つ、われわれの時代との大きな違いは、就職活動の長期化です。そもそも就職活動のために 大学に来ているのかというような場合もあります。大学院に進学しても、1 年の後半から就職活動に 入らざるを得ない状況があります。そうしますと、2 年生になって研究しようかなという段階で、も う就職が決まっていますから、なかなかモチベーションが上がらない。われわれの時代ですと、大学 46 院 2 年生の夏休みを越えてから就職活動をするのが一般でした。これについては、今日、参加の方々 と一緒に、もう一度考えていかなければいけない課題なのではないかなと思います。 私が、4 年半前に大阪大学に帰りまして、何とか大学院の研究活動を中心として、特に、主体性に 主眼を置き、交渉力、研究力、創造力、課題設定力などの能力を大学院の研究室の中で育むにはどう したらいいかと考えてきました。 一方、大学の現状と改革の必要性ということで、国立大学の場合ですと、独立法人化後、教員は独 自に研究予算をいろいろなプロジェクトから取らなければいけない状況におかれ、研究を推進するた めに先生方が日夜奔走せざるを得ない。研究第一になり、その中で教育しているのが現状です。大学 はすべて教育でというわけではなく、これからの産業界の研究シーズを作っていかなくてはならない わけですが、この研究と教育の両立をどうしていくのかが重要な課題だと私なりに考えました。 工学研究科では実は独立法人化後、いろいろなプロジェクトを国から予算をもらってやってきまし た。そのうちの一つが「フロンティア研究機構プロジェクト」で、文科省の予算で 5 年間やりました。 その中でも、研究だけではなく、大学の中での改革や、研究のモチベーションをいかにあげるのかと いうような新たなプログラムに取り組んできました。 その流れの中で、平成 19 年から社会人基礎力育成プログラムをご支援いただいて 3 年間やってき ました。そのときのコンセプトが Internship on campus ということで、これを後でお話します。大 学内で実施する研究プロジェクトの中で、学生の人材育成を実施するスキームを構築するということ を目的とするプロジェクトです。 社会人基礎力育成プログラム 今日は企業の方々がたくさん来ておられますが、 私も松下電器にいるときにたくさんの学生さんを、 インターンシップで預かりました。海外のインターンシップ事情を見ますと、3 ヶ月間、実際のプロ ジェクトに入ってやるということがよくあります。しかし日本の場合は、1 週間、学生さんを預かっ て、建物の案内をして、木曜日にはもう研究成果報告会だねということで、決まった枠の中でインタ ーンシップを行い、企業を知るのが実態だと思いますが、なかなか本当の意味での現場を知ることは できません。 とくに大阪大学の場合は、多くの研究室で、世界の最先端研究プロジェクト、もしくは企業からの 委託研究など、実践の場がいっぱいあるわけです。それならば大学の研究実践の場でインターンシッ プを行ったらどうかということが、もともとの発想です。 研究実践の場で、外部から講師を招いて、研究開発に対する主体性と、研究の価値を社会に対して 知らせる力を身に付けようというのが、この Internship on campus のコンセプトです。実際に、い ろいろな企業さんのお力を借りしまして、これを実践してきました。 社会人基礎力は 3 つの力と 12 の要素がありますが、私が一番、注目したのは主体性です。やはり 研究開発する、モノを売る、いろいろなプロジェクトを進める中で、何が大事かと言うと、それに主 体的に取り組んで熱中し、集中することだと考えるからです。学生が研究開発に携わる中で、 「ほんま におまえ、それがやりたいんか」という主体性をいかに引き出すかにポイントを置きまして、それに 付随する能力として 5 つを掲げました。 もう一つは、チームワーク力の中で、自分の考えを持ち、それを伝える発信力にわれわれは注目し ました。そのためには当然人の話を聞けなければいけないし、柔軟性も持たなければいけない。状況 も把握しなければいけない。それを編集する力も重要である。そこでこの伝える力に主眼をおいて、 プログラムを進めてきました。 47 あるときに、たまたまある会社の人事の方からお話を聞いたときに、社会人基礎力は聞いたことは なかったのだけれど、スティーブン・コヴィーの『7 つの習慣』と非常に似ているねと言われました。 実はこの中に、主体性ということと、 「相手を理解し」「相乗効果を発揮する」ということが書かれ ています。われわれが求めている物事に対する主体性を持つということと、自分の考えを相手との相 関関係の中で、どのように伝えるのかということが、世界的に見ても昔から言われているのだなとい うことで、このように主体性と伝えることを主眼に進めることは、間違っていないのかなと思いまし た。 ここで、大阪大学のプログラムの全体ですが、大阪大学は、1 年生から 4 年生までと、大学院前期 課程ということで、とくに工学部の学生は、9 割以上は大学院までの 6 年を大学での生活としていま す。 その中で、まず私たちが取り組んだのは、1 年生のときにメンターと出会い、自分たちの先輩方が、 企業でどういう活躍をされているか、どういう気持ちで仕事をしているか、それを聞こうという教育 でした。 二つ目がプロジェクト実践です。もう一つが交渉学ということで、自分の考えを相手に伝える力で す。法学部では、司法ですから考えを使えなければいけないわけですね。それで法学部にグローバル リーダーシップ学がありまして、この法学部との連携で、交渉学を工学部に取り入れました。 まずメンターに出会うキャリアデザイン教育を紹介します。工学部は5学科 10 専攻ありますので、 卒業生はいろいろなメーカーさんにお世話になっています。そのいろいろな企業さんの、中堅クラス から取締役クラスまで、いろいろな方に来ていただいたり、官庁に就職したりする者もいるので、経 済産業省からも来ていただいています。この講義では、できるだけ先輩と学生が議論をする場を設け ています。 こういう講義をすると、自分の自慢話が多くなって、学生には面白くなくなってしまいがちなので すが、これは社会人基礎力育成の一環ですので、どういう人生観で今の地位に来られて、今、会社や 社会をどう変えようとしているかについて、お話くださいということで講義を進めてきました。 工学部は 800 人いますが、だいたい 200 人が受講しています。卒業単位は関係ないのですが、彼ら の興味が表れていると思います。 この講師の話をまとめてみました。一つは本物を知るということです。やはりわれわれとしては、 製品を開発し、モノを売ることに携わる学生が多いのですが、これから日本が生きていくためには質 が大事であり、本物を知らなければいけないよ、ということや、本当に研究が世界のトップにあるの か確かめなさいよ、ということがお話にあります。 もう一つが、チャレンジしなさいということです。肯定から始める。自分に対して前向きな言い訳 をする。学生時代に挑戦して、失敗するということを 1 回は経験しておかないと、企業に入ってから なかなか難しいのかなと思います。 三つ目は、自分の考えを持ち、議論をする力を学生のうちに身に付けろということです。本を読む とか、専門性に対してのバイブルを持てとか、ビジョンを作れとか、講師たちからお話いただきまし た。10 人ぐらいの講師に来ていただきましたが、同じ事を多面的にいろいろな表現で言われている。 学生にとって新鮮味があったと思いますし、10 人来て、同じことを言っているのなら、間違いはない のだろうという印象を持ってもらえたと思います。 四つ目は交渉学というものですが、誰もが、子どもの頃からも、 「誕生日に何かを買ってね」とかし てきたと思います。ところが今の学生さんは、この面に長けてないと感じています。社会に出ていろ いろな職種に就くために、交渉していくことは非常に重要ではないかなということで、どう自分の技 48 術をアピールするかについてトレーニングしています。 その中で、法学部から来られたキム先生(特任助教)に、講義をいただいているのです。アジアは 今、凄いよ、君たちも本当に自分をアピールしなかったら生きていけないということをお話いただき ました。 私も驚きました。ソウル大学の学生さんは、就職率が 53%です。あのソウル大でそうなのかと思い ます。実際、韓国の学生さんは、留学経験の回数で、サムソンなどへの就職が決まるといいます。そ の中で、日本の学生もいろいろなところで自分をアピールすることが重要だよということで、このよ うなプロジェクトを行っています。 プロジェクト実践 それでは、われわれの根幹のプロジェクト実践についてお話します。 社会人基礎力とは何かについて、毎年、学生たちに私が言っているのは、 「世の中が何を期待し、自 分に何ができるかを知る」ことであるということです。研究開発、基礎研究をしていると、蛸壺の研 究をしていればいいと感じる学生もいるのですけれども、ノーベル賞の基礎研究といえども、若い子 ども達に夢を与えているわけですし、新しい技術であれば時間や楽しさを、新薬であれば健康や安全 を世の中に与えているわけです。つまりわれわれの社会活動というのは、何かを社会に対して与えて いるわけです。 では自分が大学で行っている研究活動は、社会に対して何を与えるといえるのか、というのがプロ ジェクトの根幹になっています。 よく松下幸之助の事例をあげるのですが、幸之助さんは、15 歳のときに市電をみて、「これからは 電気の時代だ」と思いました。そのときに、今で言う関西電力の中でいろいろと提案したけれど、受 け入れられなかったので、退職して、ベンチャーを起した。その中で主婦を家事労働から解放しよう ということで、やってきたわけです。 私も学生時代にレーザの研究をしまして、今、こうして使っているポインターのレーザも、20 年前 に私が開発した技術が入っているのですが、学生のときに緑のレーザを見て、 「こんなきれいな緑って、 あるんだな」と思えたのですね。それが今の研究のベースにあって、赤と緑と青のレーザを、なんと か生涯かけて実現できないかなとういことで、今、LED の研究などに携われています。その意味で私 自身も学生時代に見た、このグリーンのレーザが、今を支えているのだなと感じます。そういった意 味で、学生時代に何か一つ感じるものを持ちなさいね、と話しています。 実際のプロジェクト実践については、教員の力だけでそれを実現できるのかが問題になりました。 学生さんは先生から研究テーマを与えられます。それは絶対的なテーマで、なかなか「これは嫌だ」 「これはあかんと思う」とか言えません。そういう中で先生自身も「このテーマがいると思うか」と は学生に聞けないですね。そういうときに産業界の人に「このテーマ、ほんまに社会に役立つの」と 聞かれたときに、ふと、考えるわけです。 「いやもともと先生に言われて始めたけれども、本当に役に立つのかな」と。それでディスカッショ ンをしているうちに、本当にそのテーマが、世の中のどういう役に立つのか、そういうことを企業の 講師と真剣勝負で議論する。そういう中でいろいろな産業界で使われている研究開発のシートとツー ルを使って、研究の意味と位置付けを知るということが、このプロジェクト実践の中身となっていま す。 49 実践の場には、教員と企業講師がいます。教員がテーマを与えているわけですけれども、それに対 して、講師が産業界から、テーマの位置づけや必要性に関して聞いていく。面白いのはここに産業カ ウンセラーがいます。 DVD の中にもありますが、パナソニックの菰田さん、なかなか厳しいです。あれを本気で受けて しまうと、学生も倒れてしまうのですね。倒れるギリギリでやっているから意味があります。本当に 厳しいところまで追い込んでいくから意味があるのです。 ところが倒れてしまったらまた意味が無いのですね。その中で、産業カウンセラーは「菰田さんは 実際にはこういうことをおっしゃっているのやで。お前の人格を否定しているのではなくて、こうい うことを言っているのだよ」と変換していく力ですね。これがプロジェクトを進める上で非常に重要 です。われわれが 3 年間続けてこられたのは、こうした側面的支援があったからだと思います。 プロジェクトとしましては、経済産業省から委託を頂くのが 7 月ごろですので、後期にプロジェク トを組みます。全 4 回で、1 回目は学生が自分の研究テーマを紹介する。2 回目はいろいろなツール を活用して、自分の研究の位置付けや、自分の位置付けを明確化していく。その中で自己と他者の評 価を実施しながら、圧迫面接と書いてありますが、学生をぎりぎりのところまで追い込んでいって、 自分の研究テーマの位置付けを自ら見出していくと、そういったことをプロジェクト 4 回で実施しま した。 そのときに使ったツールの事例を上げさせていただきます。一つはテーマアセスメントです。 実際、 みなさんがお仕事をしている中で、この 8 項目をあげてくださいと言われるとなかなか難しいのでは ないかと思います。とくにここにニーズ、ベネフィット、ボトルネック、アプローチ、アイデンティ ティ、コンペティション、ベンチマーク、ミドルフルーツとあるのですけれども、アプローチとコン ペティションは、言いやすいのですが、ニーズとベネフィットの違いをなかなか解釈できない。 「世の中で必要としているからこの研究をしているのです」 「それはベネフィットか」という議論を 徹底してやるのですね。 その分かりやすい事例を上げてみますと、例えば携帯電話を、これで埋めてみました。ニーズは、 私が学生時代、自動車電話というものがありました。 「モバイルでいろいろなところに持っていけたら 便利だな」と言われていました。僕自身は、ハンドバックのように大きなものでしたから、 「そんなも のを持っても、嬉しくないな」と思いながら、ニーズとは何か、ベネフィットは何かを考えました。 そのときにアプローチとして電池技術や液晶パネルや LSI などいろいろな技術が発展して軽くなっ てきました。それで私はここが非常に面白いなと思うのですが、1990 年代前半に携帯電話を一人 1 台持つことを予想できたかという問題です。あるいは社長さんに対して直接ダイレクトに電話ができ るようになった。そこが本当はベネフィットだったと思うのですね。 学生に笑い話で話すのですが、僕らの時代は、彼女に電話するのに、うるさい人が出てきて、その 壁を突破するのがしんどかったわけです。でも今の君たちの時代は、一発で彼女に電話ができるじゃ ないかなと。これは社会変革やねと。これがベネフィットであって、ニーズとベネフィットはこれだ け違うのだよと説明して、それでは君の研究は、社会に対してどんなベネフィットを与えられるのか、 それを徹底的に考えていくのが面白いということです。 さらに最終的にはエレベーターピッチということで、社長にエレベーターで偶然会ったと想定して、 実際に 3 分ないし 1 分で、自分のテーマについて述べて、社長から、君のテーマが認められるかどう かということも最終講義でやり、ここのところはもっとこういえば、1000 万円を引き出せたのではな い?というようなことをやったりしています。 もう一つは、評価シートについてです。66 項目の評価シートを作りましたが、もともと経済産業省 50 が 12 項目を作って下さいましたが、これを勉強していく中で、どう伝えたら学生さんに伝わりやす いかということで、項目を増やしてみました。 増やし方は、評価シートは学生さんと講師の間で渡されるのですが、それがこの 3 年間で、だいた い 500 シートぐらいになりました。その中の企業さんのコメントを並べていったのですね。どういう ことを訴えているか、それを並べてみると、結構、同じことを言っています。例えば主体性に関して どんなことを言っているかと言えば、知識を持っていること、考えを持っていること、モチベーショ ンが高いこと、目標を自分ではっきり持っていること、そういうことを言ってはるわけです。 それらを 66 項目に並べていったのが、独自のシートです。前に踏み出す力と考え抜く力を 33、チ ームで働く力を 33 に分けました。この全てを使うというわけではなく、この中の何個かを使って、 分かりやすく学生さんに伝えていけば、社会人基礎力とは、どのようなことを伸ばせば身に付いたと いえるのか、説明にも使えるのではないかと思いました。 われわれは工学部ですから、研究開発を行っています。どちらかと言えば、大学ではシーズについ てやります。そのときに成功イメージやニーズやベネフィットを考えていこうやないか。そのときに 一番大事なのが、主体性ではないかとわれわれは考えました。この主体性があれば、実際にプロジェ クトを提案したり、創ったり、最後までやりきる。これが主体性、働きかけ力、実行力の育成につな がっているのかなと。当然、それを実現しようとすれば、課題発見力や、発信力を発揚していかなけ ればなりません。われわれはやはり工学部としてこういうものを進めていく上では、この3つの軸が 重要ではないかなと思います。 まとめ 最後に、今、社会には何が必要とされているかです。学生さんは就職が厳しくなってきています。 われわれも終身雇用が苦しくなってきています。アジアの他国の台頭もありますし、団塊の世代が定 年された中で、メンターとなる企業人、経営陣も少なくなってきています。そうした中で、なんとか していかなければならない状況の中で、若い人たちの力を使わないとしんどいだろうと。 私が最近思うのはマニュアルが通じない時代だと思います。学生たちも就職のマニュアルは通じな いと分かっていながら、マニュアルを読んでいるのですよね。これは絶対に企業の面接官も読んでい ますから、それを読めば落ちるのに、分かりながらやっています。 どうしてあげたらいいか。それは本当に自分がやりたいことを考えるしかないと思うわけです。そ れで私がいつも言っているのは、大学時代に自分の価値に気づき、それをできるだけ最大化して世の 中に伝え、活用できるということが、学生たちが今、一番、やらなければいけないことではないかな ということで、大学もこの辺をサポートしていかなければいけないと考えています。 価値創造のためには、人と異なる考え、行動を必要とします。だから自分の価値を最大化できるよ うにして欲しいわけです。その中で社会人基礎力というものを、学生自身がもう一度、考えることが 重要ではないかなと思っています。 例えば、アクションについて言えば、自分のキャリアデザインをする上において、本当に自分で意 味をもっているか。シンキングであれば、本当に闘う武器を持っているのか。チームワークであれば、 自分の考えを日々議論しているか。 こういうことを学生時代から不断に声をかけることによって、彼ら自身にこういう行動を起しても らって、社会で活躍してもらえれば良いなと思って、このようなプロジェクトを進めてきましたし、 社会人基礎力プログラムがいろいろな大学で広がることをわれわれも願っていますので、今後とも、 ご支援をよろしくお願いいたします。 51 社会人基礎力育成事例研究セミナー 東京会場 第 2 部 内藤耕氏発言 日時:平成22年9月13日(月) 場所:秋葉原 UDX カンファレンス 発言者:内藤耕 東海大学文学部アジア文明学科教授 東海大学のキャリア支援センター次長としてキャリア教育改革に取り組む。キャリア設計科目に社会人基 礎力を導入することで、学生の積極的な学びを促し、さらに社会人基礎力の 3 能力 12 要素を成績評価の 観点として採用。10 キャンパス 40 以上の学科を有する大学全体への普及を図っている。 成績評価とキャリア設計を通じた社会人基礎力の育成 はじめに ご紹介をいただきました内藤です。東海大学が昨年度、1 年限りですが、経済産業省から委託を受 けたテーマは、 「総合大学における社会人基礎力の育成評価と、ウェブシラバス、成績評価システムを 通じたその普及手法の開発」でした。 総合大学ということで、文系・理系にわたるモデル事業の展開を行ってきました。今日は私が主に 担当した部分、私は東南アジア研究を専門としていまして、その文系のクラスで得た知見を中心にお 話させていただきたいと思います。 対象はさきほどの大阪大学さんと違いまして、学部学生ですので、大分、レベルが異なっています。 混同なきようにお願いいたします。 PBL の要素も入れつつ実践したものもありますが、主に普通の講義、演習で、企業との連携を中心 に考えないもので、どういう知見が得られたのかをお話します。ここでは事例よりも狙ったことです とか、設計上のポイント、ノウハウ的なとことでお話をさせていただきます。 ポイントは 3 点です。一つは評価手法についてです。具体的な達成目標の提示と評価の成績への反 映についてお話しします。二番目は社会人基礎力育成評価の中心としてキャリア科目を置いていくと いうことです。社会人基礎力を全ての科目に広げて行こうとすると、どこかで根幹となる科目を置か ないと、うまくいかないのではないかと実感しました。その科目としてキャリア設計科目を置いてい こうということです。そこでは社会人基礎力の意識付けと直接的育成を目指しました。三番目に事業 を通して感じたこと、社会人基礎力のコンセプトを勉強させていただいて、実際、事業運営を通じて 感じたことを述べたいと思います。 社会人基礎力の評価手法について 社会人基礎力の評価手法についてお話します。私の担当しているゼミでは、研修旅行を行っていま して、その成果を秋の大学祭で報告することを学生に義務付けています。これは大学から 1 企画 30 万円の補助金を得て実施しているものです。私はほとんど直接的な指導はしていません。忙しくて指 導の余裕がないというのが本当のところですが、5,6 年展示をやっています。こういうことをやらせ て幾つかのことを感じたのですが、チームで働く力が非情に重要だということです。必ずこの展示の 前と後で、ゼミの中の人間関係が大きく変わるのですね。 また文系の学生ですので、われわれの常識では考えられないことが次々と起こります。たとえば、 設計図なしで展示を創ってしまうとか、そうした例がいくらでも出てきます。ほとんどほったらかし のなかでも、肝心なところは指導しますが、なかなかこちらの意図が通じなかったりして、苦労して います。 さて、社会人基礎力の評価への反映についてですが、社会人基礎力の 3 つの力、12 の要素、これを 教育目標の中に入れなければならないし、自己評価や他者評価を入れなければならない。こうした社 52 会人基礎力の評価と、通常の単位認定のための評価とは切り離して別にする考え方があります。しか し、今回の育成事業では、単位認定の中に、この社会人基礎力の評価項目を入れました。 これは一般教員からすれば、かなり抵抗のあるところではないかなと思います。社会人基礎力の育 成や評価を一般の講義の中に入れておくのにも反対があるのに、さらにそれを基準にして成績をつけ るということになりますと、まったくもって受け入れがたいものを感じられる方もおられるのではな いでしょうか。しかし、私は教育目標に掲げたことは、必ず何らかの方法で評価し、それが学生にと ってもメリットになっていかないと、学生はそれに向かって動いていかないのではないかと思ってい ます。動機付けのためにも重要だということです。 さきほど、研究の上でも、社会人基礎力が重要なのではないかという話が出ていました。文系はチ ームで研究する場面が少ないものですから、なかなかそういう認識が持てないでいます。しかし私の 専門とします地域研究の分野では、最近、研究チームを組んで研究を遂行していく場面がたいへん増 えてきています。私自身、今、文部科学省から多額の研究費をいただいて、非常にわがままな先生方 をまとめる仕事をおおせつかっています。研究は一人ひとりでやっていくものという常識が崩れつつ あるのは、人文科学系でも同じなのではないかと思うわけです。 ところがちょっと勉強ができて、そのまま大学院に行ってしまって、もう行き先がないから大学に 残ったみたい人が、そのまま大学の教師になってきたというのが現状でして、これでは日本の教育は 担えないのではないかなと思っております。これからの時代は研究にも社会人基礎力は重要なのだと いうことを、繰り返し言っていかねばならないのではないかと思っています。 つぎに、育成にあたっての細かい留意事項ですが、私どもでは 1 つの科目では育成目標や評価項目 について欲張らないということを原則にしました。もっとも、口を酸っぱくしてこれを言っても、担 当された先生方の中には、社会人基礎力はよい発想なので、12 の要素のあれもこれも入れようという 方もおられました。しかし、目標とするのは、3 つまでにさせていただきました。 これは一つには特定の目標に資源を集中させるということもあります。また例えば 12 のうち 6 項目 も入れて普通の授業ではたしてまともに育成、評価できるのか、ということもあります。それでその 授業で一番得意なのは何なのかを教員がきちんと認識して科目を設定していくということを求めまし た。 そもそも、私も含めて大学の教員自身がチームで働く力がないなと思う点ですが、他科目の担当者 を信用してないのですね。だから全部、自分の担当のところでやってしまおうとする。それは止めま しょうということです。自分のところでできないものは、他の担当者に任せればいいのです。そう考 えまして、12 の要素から最大 3 つ、その数字自体に大した根拠はありませんが、そのように考えまし た。 また課題ごとに評価項目をきちんと「見える」化するようにしました。できれば一つの課題が一つ の力。たとえばプレゼンテーションで評価するのは発信力、ついプレゼンの中身までみたくなります が、そこはあえてはずして、プレゼンについては発信力だけをみる。知識の定着度合いをみたければ、 プレゼンではなく試験をしてしまえばいいわけです。 やはり能力要素を測るには、あるいは伸ばしていくためには、適切な手法というものがあると思う のですね。そこを確認していくことが重要ではないかなと思っています。ですから課題は一つの科目 で複数設定していくことになってきます。 また、個別課題の評価基準は具体的かつ客観的なものにしました。アルバーノ大学の例があり、最 初それを見たときにこんなに細かくするのかと驚きましたが、実際に学生といろいろやっていくと、 評価基準が曖昧なことにかれらは非常に不安を感じていることに気づきました。どこまでやったら何 53 点もらえるのかが見えないということは、やはりまずいと思います。抽象的であればあるほど、主観 的で恣意的な評価に陥りがちですので、具体化していくことが必要なわけですね。 『手引き』の例にも上げましたが、1 年生の授業で、東南アジアの概論の授業を持っていますので、 東南アジアの料理を食べにいくという課題を出しています。そんなもの、大学の課題かと言われてし まいそうですが、これには先行例がありまして、上智大学の先生が、 「内藤君、こんなに面白い課題を 出しているのだよ」と自慢しているので、ではいただいてしまおうとうちでもやっているだけです。 が、普通にレポートを書かせても面白くないので、写真をきちんと付けたかとか、そういう評価基準 を設定しています。 ではそういう細かい評価基準を設定したら、みんなその通りにやって、全員に満点を出さないとい けなくなるのではないかと、教師はどうしてもついそのように考えてしまうのですが、そのときはそ のときで、全員に満点を出せばいいと思っています。しかし、実際は、ここまでやれば 5 点をあげる と言っているのに、そこまでやってこない学生が大半です。ですから、やはり小さなハードルを一歩 一歩確実に上がっていくということを、とくに 1 年生のうちに教え込まなくてはいけない。 この点は、みなさんのお仕事の現場でも同じではないでしょうか。同じ失敗をするなとか、報告書 はこう書きなさいとか、やはり一回だけではすっといかないのではないのでしょうか。必ずしも大学 生だけがレベルが低いわけではなくて、マニュアル通りという話もありましたけれども、マニュアル 通りにもきちんとやれていないのが、労働の現場ではないかなと思っています。 それから抽象化した基準の場合、非常に評価しにくいということがあります。これは私の苦い経験 から学んだことです。私はかなり前からキャリア教育に興味を持っておりまして、ゼミの学生を引き 連れて、キャリア合宿を行ったことがあります。その中のワークで、友だちに自分の長所を聞いてま とめなさいという課題を出したのですね。そうしたら誰々からこんなにいい評価をしてもらったとか みんな凄く喜ぶんです。 でも、その次がまずかったのです。 「先生、僕のいいところ、先生から見てなんですか」と言われて、 凍り付いてしまいまして、何も言えないのです。日ごろから細かく学生を観察することを心掛けてい ないと、こういうときに、君はあのときああいうことをしてくれたから、君にはこういう力があると 思うよと、言葉に変えていくことができないのです。 教師はふだん抽象的に、あいつは行動力があるとか、頑張っているとか、そうした評価言語でしか 認識していないところがあるわけです。最初はアルバーノ・スタイルはどうかとも思ったのですが、 そうした経験もありまして評価基準の具体化に至ったわけです。 考えてみれば、職場の人物評価も、細かい事柄の積み重ねとして、成り立っているのではないかな と思います。 基準が具体的だと、 容易に達成されてしまうのではないかという不安もあるわけですが、 実はそう簡単には達成されませんし、また実際にはそれなりに負荷のある課題を出していかないとい けないと思います。 例えば、東南アジア料理を食べるということですが、私どもの大学の周りにはそんなレストランは 1軒もないのですね。東京まで出て行かねばならないわけです。都会について体験させる一つの契機 になるという思いもあります。つまり、何らかの気付きにつながる課題を戦略的に設定していくこと が必要であると思っています。 評価と成績は、このように、育成する力と評価対象の課題の紐付けを明確にすることを心がけまし た。単位認定については、評価比重に重みを付けた上で、総合点で認定していくわけですけれども、 個別の能力要素については、これはこれとして、数字を引っ張ってきて、社会人基礎力ポートフォリ オを作成するという設計を行いました。 54 繰り返しになりますが、評価基準は、具体的なものを示していくことが重要です。やはりここに何 かこの科目の意図とか、設計思想、あるいはその教員の教育に対する思想が、現れてくる必要がある と思います。なぜこういう課題が出されたのか、なぜここまでやると高い点がもらえるのか、それが きちんと説明がつく内容である必要があると思っています。 それで成績処理については、WEB による育成・評価支援のシステムを開発しました。シラバスと成 績処理システムの連結です。シラバスを作ったと同時に、その中に、プレゼンは発信力をみる、それ については最大何点あげますよと、そのまま成績処理システムにプレゼンの点数の欄が出てくるとい う連携付けを行いました。 成績システムの方は、随時、学生が見られる。出席回数も、先生がチェックすれば、いつでも学生 が見られるというものです。なかなか凄いものを作ったなと自負していましたが、考えてみれば、小 中学校の先生は、同じ事をすでにやっておられるのですね。閻魔帳があって、そこに毎回の小テスト や授業中の様子など、書き込んでいて、それが成績に反映するシステムができていた。なぜ小中学校 で行われていたことが、大学でできてこなかったのか。そう考えると、われわれの作りたかったもの は、電子閻魔帳であるわけです。ただし児童の場合は勝手に見られませんが、このシステムの場合は 学生が見ることができます。 それから当たり前のようでいて実はあまりやられてないのですが、シラバスや成績処理を電子化し ていても、顔写真は貼り付けられてないと思います。やはりどの学生が出席しているのかを、教員が 認識していくこと、学生の名前と顔をきちんとアイデンティファイできるシステムにしていこうとし ました。 ポートフォリオの考え方はいろいろありますが、社会人基礎力の点数の積み上げを、レーダチャー トにして、学生が学期末以降に閲覧できるシステムにしています。これは各科目から得られた平均点 でもって、表していこうという試みです。 このシステムは、委託事業ですので、すべて著作権は経済産業省さんの方にいっていますので、ご 覧になりたい、活用したいという場合は、経済産業省の方に言っていただければと思います。 ポートフォリオを構築していく中ででてきたもう一つの疑問として、これが本当に社会人基礎力を 表しているのだろうか。またその前提になったのが、アルバーノ大学型ですから、何かができれば、 例えばレポートをきれいに作ったら、なんとか力が付いているということになるのですが、それで本 当に力が付いているのだろうかという疑問が出てきます。 本来コンピテンシーというものは、量的評価が、必ずしも容易なものではないと思います。その学 生がおかれている環境や条件によって、評価内容も変わっていってしまう場合があります。例えば、 鳩山さんが二転、三転していたということで、あの人は決断力がないとマスコミに叩かれたわけです が、果たして総理大臣が行う決断とは何なのか。われわれが日常行っている決断とは質が違うわけで すよね。 その役柄に期待される決断力もありますし、おかれている状況にも拠ります。ですから環境や状況、 条件によって、人の能力は変わってしまうわけですね。だからこちらの科目では高い点を獲ったのに、 違う科目では低いということもあると思うわけです。 ただ、大学の 4 年間で 124 単位の科目を取りますので、全体としてはある程度の傾向の中で、コン ピテンシーを見ていくことになりますから、社会人基礎力の評価のなかにも一つの傾向が出てくるの ではないかと思います。 しかしそれを持って、ある学生の人間性をどうのこうのと言うふうに計るか。とくに企業さんに見 ていただいて、この学生はこうだということで使っていけるかというと、私はそれ以前に、このポー 55 トフォリオは、学生自身が PDCA のサイクルを回していくための大きなツールにしていく、それが本来 の目的ではないかと思っています。そこに本当に社会人基礎力が反映しているかどうか、その学生の 潜在的な力が反映されているかどうかを考えても、意味がないのではないか。そこをしっかり考える のは学生自身だと思っています。 根幹としてのキャリア設計 「キャリア設計」という授業を展開してきまして、これは社会人基礎力の事業展開の中心で、グル ープワーク型の授業を実施してきました。これも学内的にいろいろな意見がありました。とくに技術 系、工学系についてはそのままモノ作りに結びついているのだから、日常的な授業がそのままキャリ ア教育であるという方もいたのですが、それはやはり違うだろうということで、学部学科の異なった 学生から成り立つ授業とクラスで推し進めました。 これには、同じような価値観、目標を持った学習者集団だけでは、コミュニケーション能力の本当 の向上はできないのではないかといことと、もう一つは動機付けがありました。同じ学部学科ですと、 学力の差が歴然と見えてしまう問題があります。例えば数学科の学生だけ集めると、成績の差がすぐ に分かってしまうわけです。そうすると成績的に下の方にいる学生の自尊心が傷ついて、モチベーシ ョンが崩れていってしまう。 ところがそういった学生が文系の学生とグループを組んで、 「数学科の学生です」といいますと、と くに文学部の学生は、 「エーっ、凄い」という声を上げて、異星人を見るような顔をします。それが大 切なのですね。自分が数学科の学生であるということに対して、プラスの評価を与えてくれる人と出 会うことが、学習を進めていく大きなモチベーションの一つになると思います。そのため初年次にお ける混成のグループの形成に気をつけました。 学部学科はどうしても 1 年生のうちから学生を囲い込んでしまいたいという傾向が強くて、 「共通教 育は信用がなくて、とにかく専門だけやればいいのだ」というようなことを平気でおっしゃる方もい て、そういう中でこういう科目を立ち上げていくのはなかなか大変です。 こうした科目では、与えられた環境を最大限に利用することを、学生に徹底させることを目的にし ました。私たちの大学には、「他の大学に行きたかった」とか、 「この内容を勉強したいわけではない けれど、ここしか受からなかった」とか、そうした感覚を持っている不本意入学の学生が非常に多い のですね。 もちろん仮面浪人をして他大学に変わっていくとか、私どもでは、学部学科間の転学を認めていま すので、他学科に変わっていく例が非常に多い。たしかに、それも一つの逃げ道です。しかしできる ならば、いま与えられた環境を最大限に利用していくことをまず考えさせる。幸福の青い鳥探しに集 中させないということですね。 それから社会人基礎力の向上の意識付けと直接的な育成があります。他の科目の場合には、それぞ れ専門分野の教育目標も設定しています。そこから逃れることはできませんが、キャリア関係科目に ついては、社会人基礎力を伸ばせばそれでいいというぐらいでいます。 社会人基礎力の向上の意識付けですが、社会が学生に対して何を期待しているのかということを、 少なくとも情報だけでもまず伝達することです。意識付けといっても、いきなり 1 年生から頑張れと いうのもなかなか難しいところがあり、まず情報として与えていく。 社会人基礎力の価値観そのものに対して教員の中に抵抗感を持っている人がいますし、学生の中で も感じる者もいると思うのですが、抵抗感を持ってもいいから、社会はこういう人間を求めていると いうことを知ってもらうということは、とても重要ではないかと思います。それをあちらこちらの授 業でやっていますと、本来の他の教育目標が達成できなくなってしまいますので、キャリア教育の中 56 に集中させていくということです。 具体的には、社会人基礎力の自己評価を「キャリア設計」科目の中で展開しています。事前、事中、 事後と評価を一つの科目の中で、多段階で行っていくのが、今回の委託事業の骨子でしたが、なかな か難しいところがあります。とくに社会人基礎力一般について、あちらでもこちらでも行うと、学生 の方も評価慣れしてきて、あまり効率的なことができない。どこかに集約する必要があると考えてい ます。 今、考えているのは、学期ごとに WEB で履修登録を行っていますが、その登録画面の前に自己評価 シートをおいて、自己評価しないと、その学期の科目が取れないようにしてしまうことです。強引だ という反対が出てくると思うのですが、それぐらいやらないと、評価をしない学生が出てきますので なんとか実現したいと思います。 「キャリア設計」の授業の中では、社会人基礎力を意識した戦略的履修をすすめていくようにして います。この春から、カリキュラムマップというものを設定しました。それぞれの科目で、どんな力 がつくのか示したマップで、学生に開示されています。自分のどういうところを伸ばしたいのかを学 生に考えさせて、そのためにどういう科目を取ったらいいのか学生が自分で考えていくということで すね。そういう履修指導みたいなものも、この「キャリア設計」の中でやっていきたいということで す。 「キャリア設計」の授業を通じた社会人基礎力の向上ということですが、グループワーク中心でや っていて、ほとんどのワークが社会人基礎力に結びついていくと考えています。このキャリア関係の 授業だけではなくて課外の支援も含めて、私が信条としていますのは生餌でないと意味がないという ことです。これは企業と連携した PBL の考え方にも強く表れていると思うのですが、死んだといいま すか、教科書に文字だけで書かれている情報を一方的に伝えようとしてもダメだということです。生 きた教材を学生に与えないと学生の力は伸びていかないということです。ここが一番、私が心がけて いる点です。 例えば「キャリア設計」の発展科目の中に、3 年生から行っているのは社会人訪問があります。就 職活動が、WEB に頼っているという批判があるのですけれども、たしかにその現れか OB/OG 訪問をす る学生の数が減ってきています。そこで本学では3年向けのキャリアの授業の中で作らせたチームで OB/OG 訪問させています。この春学期は、400 人近い学生が社会人に会っています。 最初は、社会人という異世代の人に会いに行くことに、学生が凄いストレスを感じると思っていま した。確かにストレスなのですが、実は一番大変だったのは、同世代のコミュニケーションでした。 一人で行くと大変だろうからということで、5 人のグループで行くことを親心から奨励したのですが、 この 5 人の間の日程調整が大変なのですね。幾つものグループが崩壊していくわけです。やって見て 分かったのは、これこそが社会人基礎力だということです。みなさんの仕事でも、相手にアポを取っ て、そこに上司も連れて行かなくてはならない。そういうことが日常の仕事としてありますよね。だ からこんなことでビビッていては、社会人になれないぞということです。 これをやり遂げた学生の達成感は非常に大きいものがありました。嫌がる学生もいますけれども、 来年以降も続けて、早いうちに毎年 1000 人の学生を社会人に会わせたいと思っています。私どもの学 部は 5000 人ですので、その 2 割が動けば新しい流れになるのではないかと思います。 事業を通じて感じたこと 最後に事業を通して感じたことを紹介します。育成・評価に大変、苦労しました。事前、事中、事 57 後と 3 回やらねばならないというのが相当大変でした。そこから思うのは、育成・評価はもっと柔軟 であってもいいのではないかということです。 心理学の実験のように、この授業でこういう力が付いたとはっきり言えればいいですが、そうとは 言えないところがあります。とくに学生の生活は、サークルやアルバイトなどいろいろな課外の活動 にも支えられていて、その中でもいろいろな力がついています。そのため社会人基礎力を授業の効果 として正確に評価することは難しいのではないかなと思います。だから授業については課題が達成さ れ、それに自己評価と他者評価が加われば、十分ではないかなと思います。 それから、どうしてもこういう教育手法を設計していくときに、初年次から卒業までの積み上げ型 のイメージで考えていくのですが、実は学生は 20 歳前後で大きく変わって行きます。なぜかは分から ないのですが、非常にドラスティックに、大胆に変わっていく瞬間があるのですね。それを心理学の 実験のように評価していくのは大変、難しいことだと思っています。ですから育成・評価のイメージ をあまり固く捉えず、ある程度、アバウトに捉えるのも必要ではないかと思っています。 ドラスティックに変わるということですけれど、授業の中でやるとすれば PBL だと思います。今日 は一般の講義の中で得た知見を中心にお話させていただきましたが、やはり PBL はもっとも効果があ ります。そして、その効果は必ずしもこちらが設計した通りにはなりません。学生がいろいろなこと を経験するからです。ですからわれわれの側も、学生の成長を見て、いろいろと気づいていかなくて はいけないと思います。 ただ、PBL にはいろいろなリスクもあります。私は海外での研修旅行に学生を連れて行きますけれ ど、どうしてもさまざまなリスクが伴ってきます。教室の中のリスクとは格段に違うのですね。これ をどうマネージメントしていくのか。そこに教員や大学の持っている底力が試されると思うのですが、 やはり一定のリスクは覚悟しなくてはならないと思います。 しかしなんにしろ、 「百聞は一見にしかず」という言葉もありますので、一方的に講義で学生に伝え ていても、学生が、真綿が水を吸収するように学ぶことはないので、なんとかしてこの PBL を構築し ていかなくてはいけないと思います。 最後ですが、モデル授業をやって思ったのはコストがかかることです。時間と金と手間が本当にか かります。なるべく簡便なシステムをこれから考えていく必要があると思います。作り込まないよう にというのはこういう点もあります。ですから例えば評価項目を絞り込んで 3 つにするとかいう工夫 も必要だと思いますし、また、無理して他者評価を入れなくてもいいではないかと思います。 今回の授業の中で評価項目の評価というものも行いました。別の評価シートを作って、成績と学生 の自己評価が一致するかを調べてみました。統計的には、自己評価と他者評価はあまり乖離しません。 ですから他者評価を無理やり入れる必要はないのではというのが一つの知見です。 ただし PBL で企業と連携していくこと、また教員が行う他者評価が果たして社会人が行う評価と一 致しているだろうかという、FD 上の問題が最後までつきまとってきます。教員の独りよがりの評価が、 果たして社会の方々が抱いている評価基準と合致するかどうかを、常にチェックしていく必要がある と思います。 教員が何もかもやろうとすると大変ですが、例えば私の場合、研修旅行の展示発表は学生に任せき りです。しかし学生は、発表の場が設けられれば何とか形にしていくし、設計図が書けないような展 示であっても、自己評価は高いものがあります。それが、学生自身が次に向かうステップにもなりま す。ですから過保護な親のように、あれもこれも教員が作りこんで、教員も学生もヘトヘトになって しまうことだけは避けた方がいいのではないかというのが、私がこの事業から感じた知見です。 どうもご清聴、ありがとうございました。 58 社会人基礎力育成事例研究セミナー東京会場 第 3 部 パネルディスカッション 日時:平成 22 年 9 月 13 日(月) 場所:秋葉原 UDX カンファレンス 発言者:北岡康夫 大阪大学大学院工学研究科教授 内藤耕 東海大学文学部教授 豊田建 富士通株式会社人事部人材採用センター長 司会: 諏訪康夫 法政大学大学院政策創造研究科教授 大学独自の目的の中での社会人基礎力育成教育 諏訪 大変、熱のこもった話が続きましたが、これから、社会人基礎力は企業の側から見るとどのよう に捉えることができるのかということを、豊田さまに少しお話をしていただいた後に、私の方から全体 を通すトーンとしての簡単なプレゼンをさせていただきます。その後に、頂いたご質問を振り分けなが ら、北岡先生、内藤先生にも参加していただいて、みんなで少し、討論をしていきたいと思います。 先生方のお話を聞いていて、パネルディスカッションでは次の3つの柱で話していただくといいので はないかと思いました。一つは、5W1Hといいますが、その中のWhatとWhyでしょうか。社会人基礎 力とは何で、何故必要なのか、学校と社会の共通言語、ものさしに関する議論です。これには豊田先生 のお話が寄与すると思います。 次にこれが大事なら、何時、誰に行ったらよいのか。WhenとWhomですか。初年次教育がいいと言 われていますが、この点をもう一度確認したいと思います。 三番目はこのように大事であって、かつできるだけ早い時期に体系的に展開していくと良いとなる と、誰が、どんなふうにやればいのか。WhoとHowの問題です。このような順番で後ほど、パネルディ スカッションをしていただきます。それでは早速、豊田さまから、企業の立場からのお話をいただきま す。 講演 新卒採用者の育成における活用について 豊田建 富士通株式会社人事部人材採用センター長 富士通㈱の人事部人材採用センター長。システムエンジニア、営業部門の人事、グループ会社の経営戦略担 当等を経て現職。人材採用・育成では「ATT(Action,Thinking,Teamwork)チャレンジ」に取り組み、内定から入社 2年目の約3年間で社会人基礎力を計9回チェックする仕組みを導入する。 富士通で人材採用を担当している豊田です。当社では新卒採用者に対して、採用内定期間中から入 社 2 年目の終了まで足掛け3年間、社会人基礎力を活用した育成プログラムをおこなっておりますの で、それについてご紹介します。 まず富士通について簡単にご紹介しますと、1935 年に設立し、今年 75 周年を迎えた企業です。従 業員数は単独で 26000 人強、海外も含むグループ連結では 175000 人強となっています。日頃、皆様 にはパソコンや携帯電話をご愛用いただいておりますが、これらは売上の約 18%、売上全体の 6 割強 は企業や官庁、団体様向けのコンピュータシステムに関わるサーバやソフトウェア、サービスが占め ております。 新卒採用数は 2010 年度が 440 名、2011 年度は 540 名を予定しています。例年 500 名程度をベー スとして決定しています。求める人材は「FUJITSU WAY を体現できる方」 。お客様起点で考える、 現場・現実・現物の三現主義を実践できる、チャレンジングでチームワークとスピードを重視するこ とができる。このような価値観を持ち一緒に働いていける方を求めております。 おかげさまでここ数年採用している新卒者に対して、職場からは、パソコンや英語ができかつてに 較べて優秀だという評価をいただいています。ところが反面、チームで仕事をする場面になると、あ まりうまくないという声もありまして、入社前から社会人基礎力の概念を理解させ、きちんと身に付 59 けさせようという取り組みを昨年より始めました。 昨年の 9 月に当社の取り組みが日経新聞に掲載されましたのでご紹介します。 「富士通が 2010 年入 社予定の内定者向けに、若手社員をメンターにする制度を始めた。入社前の教育制度の一環として、 社会人としての基礎能力の育成を支援する。富士通の内定者 440 名が対象で、内定者 1 名に対して、 若手社員 1 名を割り当てる。内定者はまず実行力や課題発見力などの基礎能力を、セルフチェック方 式で評価をして、その弱点を補強するための行動計画をメンターに提出する。そのもとで 1 カ月毎に 計画の進展を報告する。社員のメンターは、報告をもとにメールなどで、今後の計画についてアドバ イスしたり相談に乗ったりする。内定者と年代の近い世代をメンターとすることで目線を合わせた指 導ができると言っている」というものです。 当社では、これを Action Thinking Teamwork の頭文字をとって、「ATT チャレンジプログラム」 と名付けています。入社前の採用内定時から、入社後の 2 年間、当社ではトレーニーと呼ばれる期間 にあたりますが、この足掛け 3 年間を通じて社会人基礎力の向上を図っています。 狙いとしては、一つはビジネスパーソンとして求められる能力を、社会人基礎力を通じて理解させ ることです。これまでも富士通なりの言葉で、新入社員はこのような力を身に付けるよう心掛けなさ いと言っていたのですが、今回、社会人基礎力と言うパブリックな概念ができましたので、これを使 わせていただこうと考えました。 二つ目は、節目毎でセルフチェックを行って PDCA を習慣化させる。三つ目は社会人基礎力を高め ることで、入社 2 年目までに業務遂行力の基礎を固めていくことです。 具体的には、4 月からの採用選考で合格となった内定者を、夏頃までの間で都合のつく土日に来て もらい、まず社会人基礎力の概念を理解してもらいます。そして、その回に参加した内定者 6 人ずつ を一つのグループとし、各グループには社内の若手社員と採用センターの担当者の2名をメンターと してアサインします。 内定者は社会人基礎力の 12 の能力それぞれについて例示に基づいてセルフチェックし、中で弱い 能力を入社までの半年間でどのように向上させていくか考え、グループの他のメンバーやメンターに も意見をもらいながら計画を立案します。例を上げますと、主体性が足りないというある学生は、部 活動やゼミ、資格取得などにもっと積極的に取り組むことで主体性を上げていくという計画を立てて います。課題発見力が足りないという学生は、研究活動を通じて、問題点を的確に示して、解決力を 上げていきたいという計画を立てています。この計画の進捗を1ヶ月に 1 度、グループ内とメンター に報告し意見をもらいながら取り組んでいくというものです。入社までの期間がフェーズⅠになりま す。 4 月に入社し、新入社員教育期間中がフェーズⅡになります。これまで学生なりの視点で自分はこ の能力はこのぐらいあると評価してきましたが、実際に入社して教育を受けた上で社会人なりの視点 でセルフチェックさせます。その後、職場に配属され OJT を受けながら実際に仕事を始めていくこと になりますが、この期間がフェーズⅢ。この期間中にもセルフチェックをさせます。このような要領 で、入社 2 年間のトレーニー期間が終了するまで、合計8回、セルフチェックをおこなうことになり ます。 12 の能力のセルフチェック結果をレーダーチャートにしていますが、通常、採用内定時に取り組み をはじめ、入社までの期間では少しずつ向上していきます。ところが、入社すると、学生時代の考え ではこの能力はこれぐらいでいいと思っていたものが、いざ入社してみるとまだまだ足りないと感じ、 一度萎むことになります。教育期間中にまた少しずつ向上していきますが、現場に配属されると、ま たギャフンとなって、ぜんぜん足りないことに気づきます。このようなプロセスで足掛け 3 年間かけ て社会人基礎力を向上させていくことになります。 60 以上で富士通の社会人基礎力を活用した育成の取り組みのご紹介を終えます。 講演 社会人基礎力を考慮した授業とは、そんなに特別なものか? 諏訪康雄法政大学大学院政策創造 研究科教授 それでは私の方からも、少しだけプレゼンを行います。 今日のお話の中でお分かりのことと思いますが、社会人基礎力を考慮した授業はそんなに特別なもの なのでしょうか。少し工夫を加えると、とりわけ教える側と教わる側が意識をしていくと、気付きを持 つだけで随分違うと私は思います。 今、知識社会と言われますが、知の世界は大きく分けると、 「維持・保守」していくものと、 「創造・ 革新」していくものの二つに分かれると思います。 そして教師がだいたい学校で教えているのは、人類の知の遺産を次の世代に伝えるもので、「維持・ 保守」にあたる。しかし社会に出て、日々、人々が行っているのは、小さな創造ではないだろうか。そ う考えますと、人類の知的遺産を受け継ぐ教育を踏まえた上で、自分の場において、課題に積極的に取 り組む、自分なりに工夫し成果につなげるために仲間と協力していく姿勢は当然、不可欠なのではない だろうか。実際、多くの人は、社会の実務をする上では、それほど大きな、あるいは抜本的な創造に関 わることはないでしょうが、小さな知の創造、応用的な創造には日々、対処し続けているのではないか と思います。 ではそのような小さな知の創造を支えていく社会人を育てるのに、どのような教育をしたらいいので しょうか。知識伝授型の伝統的授業に徹しているわけにはいかなくて、なんとか知の創造をする、課題 を解決するという形で、われわれがいろいろな工夫をして小さなものを付け加えていく課題解決型の授 業が必要になるでしょう。当然、参加型で、学生が自ら課題に取り組み、悩み、苦しみ、工夫をするプ ロセスが必要です。 チームを組んでの作業を体験することも不可欠です。なぜなら社会における仕事は、一人で完結して 誰とも連携しないなどということは、まずありえないからです。さらにもう一つ大事なのは、課題対処 にあたっては、頭から尻尾まで、一連の作業を一通り体験していくことが非常に大切で、こうした仕組 みをどう作っていくかが大事だと思います。 知識伝授型では教師が、いろいろなことをまず自分が覚えて、分かりやすく説明すればそれで終わり ですが、課題解決型になったら、教師は何をしたらいいのでしょうか。当然、唯一絶対の正解を出すこ とではない。授業のフィールドを設定し、課題を具体的に明示し、解決に有益な条件付けをし、時折は、 自分の方が知識はありますから、少しずつ伝授をしますが、主たる仕事は、コーチング、ファシリテー ションに徹することであると思います。指導者ではなく、支援者になる。そして支援者に必要な技術、 技能、ファカルティデベロップメントができるかどうかです。 こうした授業を行うと、学生は変化します。もちろん初めは教員も学生も戸惑います。しかし徐々に 課題解決型の学習方法に慣れていくもので、大変なのは、最初の時期のチームビルディングです。そこ で今の若者たちはとても苦しみます。悩んでいろいろなことを経験します。社会人に会ってみなさいと いうと、社会人に会うことよりも、社会人に会いにいくまでで苦労をする。しかし何度も辛い思いをし ながら、自ら学び取ることに意味があるわけですから、その意味では一つの課題達成の中で、小さなチ ームを作っては壊し、作っては壊して、いろいろな人とチームを組む体験をすることが、成果において はまどろっこしいのですが、社会人基礎力を身に付けさせることでは、ずっと有効だと感じています。 こうして嵐の初期段階が過ぎ、チームが順調に動き出すと、学生たちは勉強を楽しみにし始めます。 本当に楽しみにして、やがてサブゼミのように自分たちだけで行動したり、10の課題に対して、12も15 61 もやってきたり、それをみて他のチームも頑張るということがおき、われわれとしては、彼らの成長に 目を細めることになります。私自身の経験では、何と言っても教員が、自分自身の成長を実感すること にもなると思います。 こうしたことを考えると、最近、高等教育の課題は知識を詰め込むことではなくて、知識を作れる人 間、あるいは時代の変化に対応できる人間を作っていく、学習し続けられる人間にしていくことが大事 だと言われていますが、そのとおりだと実感します。アメリカでは学部のことをCOLLEGEと呼びます が、それをもじって学部教育の課題をこう言っている例があります。 ①Communication skills コミュニケーション能力、②Organization skills チーム編成能力、 ③ Leadership リーダーとなる能力、④Logic 論理的能力、⑤Effort 努力(計画・集中能力)、 ⑥Group skills チーム作業能力、⑦Entrepreneurship 起業家精神です。 どこにも知識を増やす、専門的な何かをするということは出てきません。これがアメリカの学部教育 の性格です。大学院の位置付けが違っているという問題もあると思います。 これらを社会人基礎力で分類してみますと、3番目と7番目は前に踏み出す力、4番目と5番目は考え抜 く力、1番目、2番目、6番目はチームで働く力にそれぞれ対応しています。 われわれはこのように、国際的に言われていることと似たような方向に向かって努力しているのでは ないかと思っています。 パネルディスカッション(1) What, Why 諏訪 最初に問題提起として3本の柱を立てました。まず何を、何故というWhat Whyから入りたいと 思います。社会と学校教育をつなげる共通言語について、どうようなことを思っているか。内藤先生か ら順番にお話ください。 内藤 社会と学校の共通言語ということですが、なかなかそれが大学の現場では理解されていないと いうことを、どう改善していくのかが一番大きな問題だと思っています。 社会人基礎力の授業は、究極的には大学の授業を変えていく契機になるのだと思います。具体的な 枠組を作ることから始めるよりも、まず学生にプロジェクトをやらせてみる。そのなかから教員自身 が気づくことが非常に重要だと思います。 通常の講義だけでは、やはりかなり限界がありまして、何かの課題を学生が達成していく、そのそ ばに教員がいるという状況を、大学の中にたくさん作っていくことが、教員が社会人基礎力を理解し ていく一つのステップになるのではないかと思います。 北岡 私が会社に入った頃は、企業の方がよく言われたのは、「大学は何も教えんといてくれ」とい うことでした。 「いらんことせんかったら、企業の方で何とかするから」ということでした。ところが 社会が凄く変わってきて、企業も大学に即戦力をよこしなさいと言い、一方では大学は職業訓練校に ならないでくれというように、いろいろな意見があると思います。その中でどこかで共通認識の言葉 がないと、お互いに議論できないということで、私は社会人基礎力という言葉が、先ほど、パブリッ クと言われたのですけれども、そういう言葉になっているのかなと認識しています。 大学によって、いろいろな位置付けがあると思います。やはり社会人基礎力の前提は、社会に個人 が何を還元して、それぞれの価値をどう見出していくかということを学生自身に分かってもらえるこ とで、その中のツールがいろいろあっていいと思います。その意味で、社会と大学の共通言語を持て たことが、非常に大きな成果ではないかなと思います。 豊田 かつて企業は、大学にはあまり期待しない、白紙のままで入ってきたら、われわれが現場で育 62 てるという風潮がありましたが、ここ 10 数年、日本企業がおかれている環境が変わり、競争も激し くなってきています。また一方で、学生の方たちも、変わってきています。その中でどうやってでき るだけ早く、彼らを戦力として立ち上げていこうかと考えて、私どもも 2 年前から始めました。正直 言いまして、当初はこうした社会人基礎力で、ビジネスパーソンの力を計ると、もしかすると、元気 があって、大きな志を持っている学生には抵抗があるのではないかなと心配もしました。 もちろん社会人基礎力はこれを全て合わせるとその人のすべてが出来上がるものではありません。 それ以外にも、ベースになる価値観や志、性格など、いろいろなものがあるわけですが、ただそれら の力を仕事で生かそうとすると、こういう変数で自分の能力を見ることが役に立つではないかと説明 しています。実際には学生の皆さんは、社会人になるための準備として分かりやすいと捉えてくれて いるようです。 諏訪 そこでフロアから必ず出ると思っていた質問です。「現在の大学教員には、社会経験、社会人経 験、企業経験が不足している。大学教育の現場では、教員の社会人経験は必要ないのだろうか」。この 点について北岡先生からお願いします。 北岡 あるかないかと言われると、確かに社会に出ていないわけですから、企業の中身を知らない先 生が多いと思います。しかし大学は、職業訓練学校ではなく、ミッションがいろいろとあると思うの です。アカデミックなところで、学術界を維持する先生方もおれば、学生を社会に出していく先生方 もいて、両方とも重要だと思います。 そこで私が思うのは、昔はアカデミックな人材は、大阪大学では 2 割から 3 割いましたが、今はほ とんどアカデミックなポジションにはつけなくて、学生たちは、ほとんど産業界での研究・開発に進 んでいきます。その実態を考えれば、先生方も、社会がどんな人材を望んでいるか、知らなければ人 材を育てられません。なので、先生方もそこに目を向けてくださいということです。 大学の中での研究をすべて産業界のテーマにする必要は、僕はないと思うので、その辺のバランス を常に教員の中で討論していって、全てが同じになってしまったら、メンターが一種類になってしま うので、それは大学として一番危機的なことではないかと思います。 内藤 私は民間の経歴はありません。ただし、シンクタンクにはいました。その後、外務省の専門調 査員を 2 年間やりまして、官僚の世界はこういうものかと、まざまざと勉強させていただきました。 大学院博士課程を終えてから、ジャカルタの日本大使館にいましたが、アカデミックな環境にいた者 としては、新鮮な驚きがあって、インドネシアの研究というよりも、日本の官僚機構がどのように動 いているのか、身を持って学ぶことができました。 結論から言えば、教員には社会人経験があった方がいいと思いますが、本学の場合、学部による違 いがありまして、工学部系はほとんど企業からこられた先生で固められています。しかし私がいる文 学部は、私は就職委員長をやっていてキャリア教育や就職支援にかなり力を入れているのですけれど も、そういう中で就職委員の先生の中でも、未だに企業経験がない人間がこんなことをやるのはおか しいとか、及び腰な状況がありまして、それをどのように変えていくのか、大きな課題だなと思って います。 昔と今をうまく較べられませんが、かつては中学や高校の教師から、文学部の教授になった方がい らしたのですけれども、最近は、大学院からそのままという方が多いです。その意味で経験知の低い 人が多くて、そこをどのように変えていくかが、FDの大きな課題だと思っています。 パネルディスカッション(2) When, Whom 63 諏訪 次の柱に移ります。社会人基礎力は、共通言語になるだろう。それをつなげるためには、できる だけ社会と学校の両方の経験をした人の方が望ましいだろうということは言えると思いますが、では、 通常の社会に出ていない人がまるでダメかというとそんなことはないでしょう。学生たちは必ず社会に 出て行くわけで、そこで活躍して欲しいのですから、そのために必要な力は何かを考えさえすれば、学 校の内部にずっといた人間でも一定の理解と教育が可能かと思います。 そこで、何時、誰に、When, Whomという点についてお伺いします。今度は、豊田先生から順番にお 聞きしますが、大学では何時の時期に、どの学年の学生にこうした訓練をするといいのでしょうか。 豊田 難しい問いですね。内藤先生がお話をされた、20 歳前後の若者が凄く大きく変わるというのは、 本当だと思います。私自身の学生時代を振り返っても、今学生と接していても、サークルや体育会な ど、集団の中で、下級生として引っ張られる立場から、上級生になってリードする立場になると、本 当に生まれ変わったように人間が大きくなってきますよね。 私は、下級生のうちは、まず学問を学ぶということはどういうことなのかという教育を受けて、授 業やアルバイトなどを経て、ちょうど大人に変わってくる 20 歳過ぎの頃、自分がこれからどういう 人間になっていくべきかと考え始める頃に、自分が世の中で自己実現しようとすると、こんな力が必 要だよ、と教えられるといいような気がします。 北岡 私は、入学して半年間が勝負かなと思っています。企業が導入教育をするのも、会社の哲学を 教えたりするためですね。また技術部門であっても営業に回って、モノを売る難しさを知るから、研 究開発に戻ってこられるなどということは、どの会社の方もやられていると思うのです。 大学というのは、私も来てビックリしたのですが、入学式があって、総長の話があって、学部長の 話があったら、だいたいその 2 週間後から授業が始まって、単位を取ることが次へのステップになっ て、専門教育にいくことになるのですね。 私は例えば半年ぐらい、なぜ大学に来たのかとか、君たちは将来どういう道に進もうとしているの かなど、産業界の方を巻き込んで議論をして、学部のところから人材を育てていけば、彼らが結果と してどの道を選ぶかを決めるので、例えばアカデミックに行き、そこから産業界に行って、また戻っ てくるのも彼らの選択だと思うのです。そういった意味で、各大学で 1 年次の半年間で、何かを産業 界とやっていくというのがいいと思います。 内藤 北岡先生の意見とまったく違うのではないのですけれども、今、大学教育の世界では、初年次 教育という言葉があることを多くの方がご存知だと思います。初年次に教育の資源を集中させるわけ ですが、社会人基礎力については、大学に入った当初だけではなくて、もっと長い期間で考えていか なくてはならないのではないかと思います。 先ほど、控え室でも話が出たのですが、例えば、中学・高校での社会人基礎力の育成はどうなるの か。あるいは北岡先生は大学院でもやっておられる。段階ごとに課題は変わっていくのかもしれませ んけれども、しかし目指すところは同じだろうと思っています。 私たちの大学は体育会が盛んなものですから、 授業の例でもよくスポーツのことをあげるのですが、 これと同じだと思うのですよね。ルールや練習の仕方など、ホワイトボードの上で解説して、それで 分かるのだろうか。何度も実践を繰り返して、またミーティングでそれを確認してということが必要 だと思います。それがプロ並みのレベルになるためには、おそらく小学生のときから、ずっと同じ事 を繰り返しているのだと思います。 社会人基礎力も、多分、小学校や中学校などそれぞれの段階で、みんなで頑張っていかないと、社 会が要請するような人材は生み出せないのではないかと思っています。 64 諏訪 一年生、あるいはそのあとも体系的にということですが、そこでまた頭の痛い質問です。「ビデ オの中で帽子を被っていたり、マフラーを巻いていたり、規律がないではないか。マナーや常識を教え るのは重要ではないか」。こういうのは何時ごろ、教えたらいいのでしょうね。 内藤 すいません。私はこの DVD を 3 回見たのですけれども、さっき見て、しまったと気がつきまし た。 マナーについてですが、基本的には私はキャリア教育の中に入れていません。社会人訪問のプロジ ェクトで 1 回ぐらいは、一定のマナー教育は行いますが、実質的には行っていません。それには理由 がありまして、特殊事情からいいますと、マンモス大学なものですから、マナー教育を始めますと、 もの凄いエネルギーがかかってしまうわけです。 それから学生にどのように説明するかということがあります。なぜ授業で帽子を被っていてはいけ ないのかということは、理屈を持って説明するのはなかなか難しくて、究極的には、それで不快感を 持つ人がいて、あなたにマイナス点がつくから被らない方がいいよということぐらいではないかと思 います。 これは一つの境目でして、私より上の年齢の方は、いきなりきれて怒り出してしまうのですね。し かしそうすると学生の側は、なぜ怒られているのか、理由が分からない。こちらも論理的に説明でき ないという面があります。 またマナーについては、教室の中で教えるのでは効果は大きくなくて、学生がどこかで痛い目に合 わないと。その辺が難しくて、生きている餌でないといけない。カニなどは死んでいても手を切りま すが、まあ、手を切るぐらいのリスクは、学生も負わないと納得しないだろうなと思います。 諏訪 うちの大学のキャリアセンターが、大学1年生向けの、ビジネスマナー講座を行って大変な人気 でした。これを受けた学生は何と挨拶をするのです。というわけで、必ずしも教室ではなくて、どこか 違うところでやった方がいいのかもしれませんね。 ディスカッション(3) 諏訪 Who, How では3番目の柱に移ります。誰が、どのように社会人基礎力の教育をしたらいいかという問題で す。Who, Howですね。この点にはたくさん質問がありますので、かいつまんでそれらを紹介させてい ただいてから、お答えいただければと思います。 まず「採用などで面接すると、きちんと話せる人が非常に少ない。もっときちんと話せるようになる のにはどうしたらいいのか。またもう少しそのような訓練をしていただけないだろうか」とあります。 あるいは新入社員に関してお書きになっていますが、「小さなハードルを越えながらだんだん成長する わけだが、モチベーションを下げずに、ハードルを越えさせるにはどうしたらいいだろうか」。 「学生の メンターはどのように選んでいったらいいのだろうか」。また「学生や新入社員に訓練するのにあたっ て、型で学ぶというのと、型に縛られずに学ぶというのと両方あるのではないだろうか。この点はどう だろうか」という質問があります。ひとつ内藤先生からお答えください。 内藤 質問事項が多岐にわたりますが、メンターをどのように設定するかが重要な問題だと思います。 これは大学によって、おかれている状況が違いますので、やりやすいところと、やりにくいところが あると思います。 私は文学部の教員ですが、学部、大学院は社会科学系にいました。理系ほどではないのですが、ゼ ミで動くという文化を持っています。文学部はそういう文化ではなくて、先輩、後輩の関係ができに くくて、意図的に教員の側で作っていかなくてはならない。 社会科学系であっても、理系であっても、先輩、後輩の軸があると思うのですが、それをきちんと 65 作りあげていく工夫をしていかなくてはいけない。理系の場合ではそれがうまく機能しているかのチ ェックと改善から入っていくのでしょうけれども、文系の場合は、一から作っていかなくてはならな いということではないかと思います。 きちんと話ができるようにさせるにはどうしたらいいか。モチベーションを失わせないためにはど うするかですが、私どものところでも、コーチングとカウンセリングを導入しました。ただまだきち んと検証できていません。キャリア教育では、キャリアコンサルタントの資格をお持ちの方を講師に すえていますが、みなさんそれぞれに思いがあって、大学の実情に合わせて中身を作っていくのは、 相当大変な努力です。 キャリア教育の世界も、スタンダードができていて、しかし私自身はそのスタンダードでいいのか という思いがありまして、やはりきちんと角を突き合わせて議論をやって、出来合いのキャリア教育 ではなくて、それぞれの大学の学生を見て作っていく努力を重ねていかなくてはいけないのではない かなと思っています。 北岡 メンターということですが、うちの大学では、若手の研究者やドクターに、社会人基礎力を入 れようとしているのですね。なぜかというと、若い研究者も、研究費を取ってこないと研究を続けら れないし、独立していかねばならない時代に来ているからです。昔のように、助手になれば、何年か 後には、助教授になってやがて教授になるという時代ではなくなってきています。 その意味では若い研究者も、企業に行った者も、同じような立場にあるわけです。教授にお金があ るからといって、そのままじっとしていたら、そのままになりますよということで、若い研究者にも こういうことを勉強して欲しい。 それで今回の社会人基礎力で、若い助教さんやポスドクさんもこの講義の中に、オブザーバーで入 っているのですけれども、彼らにとっても非常に気付きの場であったということがありました。そう いう先生が成長していきますと、今は企業の力を借りていますけれども、大学の中でそういう先生方 がいっぱいいて、産業化を全てにするのではないのですけれども、研究の価値を伝える力が、大学の 教員にも就いてくる。結果的に学生さんもそれを見て、育つようになるのかなと思います。その意味 で、社会人基礎力に、若い先生方が入っていくことも、重要ではないかなと思います。 きちんと話すということについては、一つ面白い事例がありまして、ある学生が、面接で自分をア ピールしなさいと言われても、アピールしなかったのですね。ところがその子は凄く能力が高いので すね。それでなぜアピールをしないのかと話を聞いたら、 「私は親から、質素に、我を出さないでいき なさいと言われて来たので、我をだしてはいけないと思いました」というのです。そうした勘違いな どには、カウンセラーのアドバイスがとても効くと思います。 ただ本当に話せない子も学生の中にはいます。逆に言うと、われわれはどういうところに彼らを送 ると、彼らが活きるかを考えなくてはいけなくて、一般企業に送ることが幸せなのかどうかを考えな くてはいけない。そういった意味で、いろいろな人と話をして、彼らの能力が生かせる場所を探して あげるのも、教員の仕事なのではないかと思います。 豊田 当社の取り組みの中で、入社 4,5 年目の先輩をメンターにつけることをご紹介しましたが、 実はこれは、このプログラムを通じて内定者の育成だけではなくて、若手社員の育成もできないもの かということを狙ったものです。当社がかつて 1000 名を越える大量の採用を毎年行っていた頃は、 だいたいどの部署でも、毎年後輩が入ってくるのですね。そうなると嫌でも後輩を育てないといけな くなるのですが、採用数が 500 名前後だと、職場によってはぜんぜん後輩が入ってこずに、4,5 年 目を迎えるケースもあるようになりました。 社内の若手社員のメンター向けにこの ATT チャレンジプログラムのガイダンスを行った際、社会人 基礎力とはこういうものという説明はおこないましたが、内定者向けにこういう指導をしてください 66 とはあまり言いませんでした。一人の学生には、若手社員の他に採用センターの担当者もメンターと してつくようになっていますので、どう指導したらよいか迷った時には採用センターの担当者に相談 するようにさせました。そうすると、4,5 年目の社員自身が、学生に対して教える中で自分自身が育 ったということがありました。 ご質問の中に、型で学ばせるべきなのか、型に縛られない部分もあるのではないかというものがあ りました。当社では ATT チャレンジプログラムのメンターのほかに、各職場で新人のトレーナーを務 める者を対象に事前教育をおこなっていますが、 その中で、今の若者の気質はこう変わってきている、 彼らの生まれたときから 22 歳まで、どのような事件があって、どのような世の中を経てきたから彼 らはこうなのだ、自分の若い頃とは違うのだということを説明し、入社 3 年目までの期間の中で必ず 何か一つ、小さいことでもいいので成功体験をさせてあげてください、そのためにはまず仕事の型を 覚えさせてくださいと言っています。スポーツや楽器演奏などと同じように、必ず基本があってその 後ではじめて個性が生きるのではないでしょうか。 諏訪 質問ですが、「インターンシップについて、大学側との意思疎通に苦労する」という企業側、も う片方は大学側で、同じように、「企業のご協力を得るためにご苦労している」というのがありました ので、この点についてお答えください。豊田さんからお願いします。 豊田 インターンシップは就業観を作る上でとても有効な機会だと思います。富士通は毎年、職場に 入って 3 週間程度実習するインターンシップを 300 名、その他に職場には入らず採用センターがおこ なうワークショップ形式の1週間程度のインターンシップを 1000 名規模で実施しています。 ご質問にあったように、大学の先生方と学生に何を学ばせたいのか、もうちょっとわれわれと意思 疎通ができれば、もっと良いものになるのではないかと思います。 北岡 うちの大学に関しては、インターンシップについては、反対している先生方が大部分ですね。 学生のモチベーションも就職を目指したものになりますから、それだったら、大学にいて研究を、ま た国際学会に出るなどしなさいというのが大方の指導方針です。 一部、成功しているインターンシップは、「システム系のアナログ回路」であったり、「デジタル設 計」などで、先生の研究と企業がまったく合致している場合に、3 ヶ月間企業に行って、そのまま研 究成果を国際学会で発表して、その会社に就職するということがあると思うのですけれども、そうい った事例を、企業さんと大学で作らないと、就職のためのインターンシップはいかがなものかなと、 私自身も感じています。 内藤 私もまったく同感です。就職のためのインターンシップ、とくに 1 日ぐらいだと、企業見学会 や説明会と変わらないと思います。 私どもの大学全体で行っているインターンシップは 2 年生の終わりの春休みに設定しているのです が、単位にもなりませんので、意欲の高い学生が来ます。そこで問題になるのは、マッチングができ ないということです。学生の方は、何か華やかに見える職種、業界に飛びつく傾向がありまして、私 の意見としては、どのような職場でも学ぶものがあり、とくに社会人基礎力の点では、どこへいって もいろいろな気づきはあるはずなのですが、学生の側がなかなか、納得してくれないという問題があ ります。 もう一つは、今日は実はある会社に寄ってきまして、向こうからインターンシップで学生を送って 欲しいと言われたのですけれども、最低 3 ヶ月、週 5 日とおっしゃるのですね。大学の仕組みに合わ ないのです。この点で技術的にクリアしなければならないことが山ほどあるのだなと思っています。 67 また全体で見ますと、インターンシップを導入している大学はたくさんありますが、経験した学生 は、同年代の中でもまだ非常に少ない。そこをどうやってクリアするのか。量はいつか質に転じるの で、その量をなんとか稼いでいきたいと思います。 諏訪 以上で、パネルディスカッションを終了します。社会人基礎力を共通言語にすると、大学と企業 でかなり重なる部分があり、相乗効果は大きいのだよというのが、諸先生方のご意見だったと思います。 みなさん、どうもありがとうございました。 68 ③大阪会場 時間 13:00~13:10 当日の流れ 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~14:00 林揚哲氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 小松原潤子) 14:00~14:10 休憩 14:10~14:40 大学事例紹介①(流通科学大学サービス産業学部准教授 頭師暢秀氏) 「産学連携弁当開発を通した社会人基礎力の育成」 14:40~15:30 大学事例紹介②(大阪大学大学院工学研究科教授 北岡康夫氏) 「自らの価値に気づくことと伝える力の重要性」 (パナソニック電工(株)先行技術開発研究所 技監 菰田卓哉氏) 「社会人基礎力と産業界における価値」 15:30~15:45 休憩 15:45~16:45 パネルディスカッション 「産業界の協力による社会人基礎力育成プログラムの作り方」 京都産業大学進路センター・キャリア教育研究開発センター ディレクター 中川正明氏 北岡先生 頭師先生 菰田氏 [司会]経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 林揚哲氏 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 流通科学大学 頭師暢秀氏 大阪大学 北岡康夫氏 パナソニック電工株式会社 菰田卓哉氏 パネルディスカッション 京都産業大学 中川正明氏 69 壷井秀一氏 ) 社会人基礎力育成事例研究セミナー 大阪会場 第 2 部 頭師暢秀氏発言 日時:平成22年9月15日(水) 場所:大阪国際会議場 発言者:頭師暢秀 流通科学大学サービス産業学部准教授 サービス・マーケティングをテーマにしたゼミでは PBL(Project Based Leaning)スタイルの授業を実行。食 品会社と連携した弁当開発では、商品化・販売の実演等を通して学生の大きな成長を促した。同取り組み は「社会人基礎力育成グランプリ2010」で社会人基礎力大賞・会場特別賞を獲得。 産学連携弁当開発を通した社会人基礎力の育成 はじめに 私たち、流通科学大学では実学を通した学生の育成に努めています。本日は「産学連携弁当開発を 通した社会人基礎力の育成」というテーマでお話しますが、この内容は『手引き』には載っていませ んので、どうかごゆっくりお楽しみください。 私たちが行ったのは 4 つのステップに分かれています。これを踏まえて、最後に産学連携の効果と 課題について、みなさんと考えていきたいと思います。 私たちのゼミは、サービス・マーケティングをテーマにしています。いかにお客様に喜んでいただ くかを考えている学問です。今回紹介しますのは、3 年生 15 人で取り組んだお弁当開発のお話です。 自立した社会人を目指しながら、自らの考えを世に問おうというテーマで活動を続けています。毎年、 PBL スタイルで行っていますが、特徴として敬語を禁止しています。なぜかというと、最近の学生は、 自分の話すことを話しづらい。とくに教員、大人に対しては言いたくない、言えない。その心のハー ドルを少しでも下げるために、私に対して敬語を使ってはならないと厳命しています。 本日、ご紹介する内容です。 ステップ 1、競技としてのビジネスコンテストです。ここでは主にシンキング、考え抜く力の向上 を目的としていますが、フィールドワークが絡んできますので、前に踏み出す力も必要になります。 ステップ 2、参加学生全員で一つのお弁当のアイデアを、もっとよくしようという段階です。ここ ではチームワーク力を強く向上させようという機会に設定しました。 ステップ 3、阪神デパートの中での販売実習、実際にデパートの中で法被を着させていただいて、 一般のお客様に販売するという機会を設けました。ここではアクション、前に踏み出す力の向上を、 主な目的にしています。 このステップ 3 までが、私が当初、設計していた理想形で、もしできたらいいなと思っていたもの です。ところが学生たちはもっと頑張ってくれまして、ステップ 4、日本一の駅弁大会に向けてと、 予想外の展開をしてくれました。これは後ほど、ご説明します。 ステップ 1 競技としてのビジネスコンテスト それでは一つずつご覧ください。ステップ 1、競技としてのビジネスコンテストです。 いわゆる「大学全入時代」とか「ゆとり時代」とか、学生たちは競争というものにあまり晒されて おりません。いつも仲良しと、好きなものに囲まれて暮らしておるようです。もちろんゼミの中でも、 仲良しグループなどがあるわけですが、くじ引きで 5 つのチームに 15 人を分けました。 そして企画力とフィールドリサーチという 2 つの観点で評価するということを前もって明らかにし て、新型弁当の開発をテーマにやってきました。 70 条件については、実現可能性の高いお弁当を考える。期間としては 3 ヶ月。プレゼンテーション大 会にて発表し、専門家の審査委員に見ていただくことにしました。今回、企画をご一緒させていただ いた「まねき食品」の社長さん、部長さん、それから「京阪行く人、おけいはん。」というキャッチコ ピーを考えた、コピーライターの田中有史さん、また野菜ソムリエの関宏美さん。こういう本物の人 たちをお招きして、こういう人たちに評価してもらうのだよ、ということで、彼らはいろいろなこと をやってきたわけですね。 またその人たちに評価されるだけではなくて、一般と言いますか、学生、私の同僚、一般職の人た ちに声を掛けまして、200 人の前でプレゼンテーション大会をしました。そのときに審査用紙を配布 しています。 これは彼らの傷つきやすい自尊心を、少しでも和らげられないか、審査員がダメ出ししても、会場 の中にあなたはいいと言ってくれる人がいるかもしれないという思いからでした。そうしたら実際に は、一番話しベタだと思われていた 3 人が、最も上手にプレゼンしました。しかし優勝したのはこの チームではありません。 このときの学生の感想ですが、 「何でテーマが弁当なの」というものがありました。しかし弁当は非 常に奥深くて夢がありますが、成熟していて、その中で新しいものを作り出すというのは、なかなか 考える力を培えるよいテーマではなかったと思っています。 彼らは楽しくやっていましたし、くじ引きでの編成も楽しんでいました。また競争を嫌がってきま したが、意外にも評価されることは楽しかったようです。特に勝ったチームは嬉しかったようです。 またフィールドワークを義務付けていましたので、知らない人にインタビューをしたり、アンケー ト用紙を配ったりで、調べる習慣が付いたという感想もあります。 このコンテストですが、できれば優勝案を商品化していただけませんかと、まねき食品さんにお願 いしていました。ここで出てきた『夫婦三昧弁当』が優勝になったのですけれども、彼らが考えたの は、熟年離婚や仮面夫婦、共働き夫婦が増えている中で、夫婦が仲良くなる弁当でした。彼らの斬新 なアイデアは、お弁当を二つセットで、夫用、妻用にし、2200 円で売るというものでした。買ってみ たいでしょうか。 ステップ 2 参加学生全員でのプロジェクト さてこれは優勝チーム 3 人のアイデアでしたが、ここからステップ 2、参加学生全員でのプロジェ クトを敢行しました。 勝ったチームに対して、負けたチーム 12 人に、一緒にやりなさいというわけです。また会社側か らも、このアイデアは秋の行楽シーズンによろしいのではないかと言われました。 このプレゼンは 7 月に行われて、学生たちは夏休みに一服したかったのですが、夏休み返上でやれ ますかと問われて、やりますと答えて、企業との討論も活発化していきました。 このころの学生の感想としては、 「優勝チームのものを作るのはモチベーションが上がらない」とい うものがありました。ところが役割分担を彼らなりに仕組んで、できていったのですね。優勝者は男 性 3 人でしたが、彼らは絵を描けません。そうすると絵の得意な人たちが力を発揮しだしたりして、 みんながみんな、分担ができ始めた。 優勝チームも、自分たちの力だけではどうしようもないと感じて、一緒にやろうと声掛けするよう になりました。そうしてやっているうちに、もしかすると商品化してもらえるという感じだったもの が、自分たちが作ったものが本当にお店に並ぶのだという実感が強くなり、充実感がたっぷりになっ 71 ていきました。 そして企業側からの議論も活発になっていきましたが、なかなか納得してもらえないこともあるの ですね。先ほども述べましたが、二つセット 2200 円で売るというのが学生側の強い主張でしたが、 企業側は、バラ売りをしましょう、2200 円のお弁当をセットで買う人がどれだけいるのかということ で、随分、バトルがありました。 こちらが完成した『夫婦三昧』です。一つ 630 円になりました。随分、下がりました。秋口の発売 でしたが、11 月 4 日からでした。夫婦用セットで 1260 円という売り方をずっとされていましたが、 11 月 22 日の「いい夫婦」の日だけは 1122 円で売ってくださいと学生が頑張り、これは勝ちました。 地産地消を心掛け、姫路にある、まねき食品さんにちなみまして、姫路のレンコン、また兵庫県と いうことで、淡路のタマネギなどを工夫して入れました。またこのセットには、それぞれ中身が二つ ずつ入っています。偶数個です。そしてご夫婦で中身を交換していただこうというアイデアが詰まっ ています。日ごろ、あまり会話がなくなってしまっているご夫婦に対して、替えっこすることから会 話を促進しようというアイデアです。 また掛け紙をご覧ください。緑と赤で真ん中に糸がデザインされていますが、二つ並べると赤い糸 が結びつくように作られています。掛け紙の裏にはクイズが書いてありまして、問題を解いて頭文字 をつなげていきますと、 「たまには一緒に出かけよう」とか「いつもありがとう」というメッセージが 浮かびます。 また別にメッセージカードが入っていまして、その中には、 「いつもありがとう」とか「パンツ一丁 でお風呂上りに歩くのをやめて」とか、笑いも含めてのカードを交換していただくという一貫したコ ンセプトで出来上がっています。 ステップ 3 阪神百貨店での販売実習 さて商品が完成しました。ここまでできれば私は御の字だと思っていました。たかだか 3 ヶ月、考 えた品物を世に出すのはなかなか難しいのではないかと思いますが、彼らの頑張りが通じました。 続きまして、阪神百貨店の販売実習を行いました。ここでは彼らもドキドキしたようです。今まで も大人との関係はありましたが、今度は、今そこを通りかかったお客様に声を掛けて売り込む。買っ ていただき、お金の受け渡しをするというコミュニケーションを行います。 このとき、百貨店の現場のみなさんに、大変、お世話をいただきました。まず商品に対して興味を 持っていただくことから始めなくてはいけない。声を掛けてみましょう。もっと大きな声を出してみ ましょう。いろいろなことを教えてくださいました。 また販売量の予測や、陳列の技術なども教わりました。雨だったらどうするなど、実地で教えてい ただきました。仕入れの仕組み、搬入のルート、デパートの裏側は良くできていますが、彼らの学び になりました。 一緒に働いていただいた会社のみなさんには、この点について強くお願いしていたのですが、マナ ーやルール、これに関しては企業サイドに丸投げでお任せしました。私のゼミは敬語禁止のノリです ので、礼儀も何もない状態だったのですが、そうした点を、みなさんに厳しく教えていただきました。 この頃の学生は何を思ったのか。緊張したそうです。しかしみなさんのアドバイスで落ち着いたよ うです。ガラリと態度が変わりました。 企業との議論では納得のいかないこともありました。2 つ 2200 円ということを1ヶ月主張したに もかかわらず、1 つ 630 円になったからです。ところが販売を始めて驚いたのですが、 『夫婦三昧』と、 72 二つセットでいただくものとして売っているのですが、夫用ばかり 3 つとか、妻用ばかり 2 つなど、 そうした買い方をされ、たくさん売っていきますと、両者のバランスが取れているのですね。この点 は現場の方の判断がモノをいったのだと思いました。 売れた、売れないという点は、3 ヶ月の成果が問われるものでした。私は常々、サービスは長い仕 掛けと一瞬の勝負と言っています。サービスは、計画を建てて、しっかりと積み上げていって、お客 さんと出会ったその瞬間に結果が決まってしまうのだと言っていましたが、この言葉の真意が分かっ たと言ってくれる学生がいたことが、私にとって嬉しいことでした。 販売実習の写真をお見せします。このときにびっくりしたのが、学生たち、当意即妙に、上手に話 すのですね。ここに写っている彼女の名ゼリフですが、お一人と思わしき女性がお見えになったので す。「私一人やけど買っていい?」と言うのですね。これに対して彼女は、「もう一人を想像して買っ てください」と言って、二つ、三つ、買っていただきました。そういった能力も培われていったのか なと思いました。 何より私が嬉しかったことですが、ここからは、彼らがこんな風に育ってくれたらいいなと思った ことを通り越しています。 「お金をサイフから出していただいたとき、涙が出そうになりました」とい うのですが、私も横で見ていて、感動しました。ここでは心と言うものも培えていたプロジェクトな のかなと、さらに感動を増すことができました。 ステップ 4 日本一の駅弁大会に向けて ここからが本当に予想外の展開だったのですが、西日本一の駅弁大会に向けて取り組みました。 『夫 婦三昧』は、秋に販売を始めて 12 月頃まで続けて、取りやめました。同時にその頃、彼らの次の学 年が、自分たちも似たようなことをしたいと言って来ました。 これをまねき食品さんと、阪神百貨店さんに言いましたところ、1 月に駅弁大会をやりますといわ れました。ほとんど 2 ヶ月しかありませんが、何かやってみましょうかということになり、後輩たち はたった 2 ヶ月で成果を出さなければならない窮地に立たされました。 そこで先ほどの『夫婦三昧』を作ったメンバーが、相談に乗ってくれたのですね。このとき彼らは、 「教えることができて初めて一人前になれた」 「伝えていくことの大切さを感じた」と述べました。ま た商品開発は楽しいと再認識してくれました。 彼らがたった 2 ヶ月で作ったのは、 『トライスバーガー』です。 『夫婦三昧』ほどではなかったので すが、こちらの商品は、甲子園球場で今も売られています。 学生の感想として次のようなものがあります。「外堀が埋められている感覚がしました」。自分たち が想像した以上に、企業さんが一生懸命になってくれますと、彼らも燃えざるをえません。 また「専門家との関わりがリアルだった」。 「こんなに大げさなことになるとは・・・」 「一生懸命し てきて良かった」「仲間なしでこんな結果は生まれなかった」「有名人になれた」などがあります。 効果と課題 最後に効果として、メディア露出がありました。これは特に企業側にとってメリットがあるのでは ないでしょうか。新聞、テレビ、ラジオにたくさん取り上げていただきました。 産学のそれぞれについてみますと、まねき食品さんは 120 年の歴史をお持ちです。しっかりとした 会社ですが、どちらかというと守りに入ってしまっているそうです。そんなときに大学生が短期間の 73 うちに結果を出してしまったことで、社員の中に、こんなことを言ってもいいのだ、やってもいいの だという意識変化があったと聞いています。 また、近年久しく新卒採用をしていなかったそうですが、大学生を採用してみようと考えてくださ り、流通科学大学から 2 名、内定をいただきました。 大学側では、教職員の意識の変化、実際的な経験、知名度の向上などのメリットがありました。阪 神百貨店さんも、メディア露出の効果がありました。 姫路市の観光を盛り上げる面でも効果があり、良いサイクルが回っていきました。 課題としては、企業サイドとしては、失敗のリスクがあります。当然のことながら、お弁当一つ作 るにも何度も試作品を作り、人的資源も割かねばなりません。また変なものを作ってしまえば、ブラ ンドに傷が付きます。また特に部長さんに、通常業務以外で忙殺させてしまいました。 大学サイドも失敗のリスクがあります。企業を優先すると、講義を欠席する事態が生じます。学生 たちの学びという点でこれは良かったかどうかは悩みです。私も通常業務外で忙殺されました。教員 側に過大なストレスがかかります。 また成功が招く不幸というものもあります。『夫婦三昧』は凄く売れましたが、こう言われました。 「彼らは、自分が商品化したものがどんどん売れる体験をしましたよね。そんな体験を得られる社員 はそういません。そのため、彼らが入社してからの毎日を、先生はつまらなくしたのですよ」。 これは確かにそうです。またマーケティングの観点からも、早く売り切れるのは、マーケティング のミスとも言えるのですね。ですから成功が招く不幸というのは深遠だと思いました。 しかしこれだけはみなさんと共有していただきたいのは、人づくりは国づくりではないかという言 葉です。日本がいろいろな面で優れてきたのは人材があったからですね。大学は人づくりに直接携わ りますけれども、企業のみなさんもぜひご一緒に、人づくりをしていただいて、ひいては国づくりに つなげていただきたいなと思います。この言葉を最後に、私のプレゼンテーションを終わらせていた だきます。 74 社会人基礎力育成事例研究セミナー 大阪会場 第 2 部 北岡康夫氏発言 日時:平成22年9月15日(水) 場所:大阪国際会議場 発言者:北岡康夫 大阪大学大学院工学研究科教授 自らの価値に気づくことと伝える力の重要性 ご紹介ありがとうございます。北岡です。DVD での内容は後で菰田さまからご説明いただきます が、われわれがどのようなコンセプトでこれを行っているか、ご説明します。 題名に「自らの価値に気づくことと伝える力の重要性」とありますが、工学研究者であっても、こ の力がない限り、社会に出て活躍することはできない。こういうコンセプトのもとで、プロジェクト を進めてきました。今の学生に対して、この辺が一番欠けているのかなということで、われわれのコ ンセプトとして、こういうことを学生時代の間に身に付けて欲しいということで、プログラムを開発 しました。 学生の現状ですが、確かに、われわれの時代よりも非常に学問に対しては真摯に取り組んでいます。 出席を取らないと学生から、「なぜこの授業では出席を取らないのですか」と要望が出るぐらいです。 しかし、私は 15 年間、パナソニックで勤めて、4 年半前に大学に帰ってきましたが、そのとき、学 生と教員、あるいは学生同士のディスカッションが非常に少ないと思いました。 またいろいろな学生と話して思うのですが、彼らは自己実現や社会貢献をしたいという気持ちを強 く持っているのですが、一方では、今の世の中の状況を考えて、進学や就職に対して非常に不安を抱 えています。 ショッキングなこととして、 就職を考えて他大学から大阪大学に来たという者もいます。 確かに一理はあるのですが、学問のベースを考えたときに、こういう研究をやりたいからこの大学、 この研究室に来たと、教員の立場としては言って欲しい。しかし就職を前提として大学院に来ている 学生がいる中で、もう少し学生に、学問に対して真摯に取り組んでもらってもいいかなと思っていま す。 もう一つ、われわれの時代との大きな違いは、就職活動の長期化です。大学院に進学しても、1 年 の後半から就職活動に入らざるを得ない状況があります。そうしますと、2 年生になって研究しよう かなという段階で、もう就職が決まっていますから、なかなかモチベーションが上がらない。われわ れの時代ですと、大学院 2 年生の夏休みを越えてから就職活動をするという状況の中で、これについ ては、今日、参加の方々と一緒に、もう一度考えていかなければいけない課題なのではないかなと思 います。 その中で私が、4 年半前に大阪大学に帰りまして、何とか 4 年生の卒業研究、および大学院の研究 活動の中で、経済産業省から 3 年前に社会人基礎力というキーワードをいただいて、何か研究活動の 中で、そうした能力を付けられれば、彼らが社会に出てから活躍できるのではないかなということで、 このプロジェクトに参画しました。 一方で教員も、国立大学の場合ですと、独立法人化後、非常に忙しくなっています。研究予算をい ろいろな外部資金に取りに行かなくてはならない。ところが大学にはもともとプロジェクトを実践し ていく、マネージメントの仕組みというものはないのですね。その中で、研究と教育の両立をどうし ていくのかが、重要な課題だと私なりに考えました。 そういう中で、学生の主体性を上げるということと、教員の意識改革も含めて、この社会人基礎力 を工学研究科の中に入れていこうと考えました。 75 大阪大学の工学研究科では、実は 6、7 年ぐらい前から、通常講義以外で、いろいろな学生の研究 意識、開発意識などを向上させていくプログラムが行われていました。その流れの中で、平成 19 年 から社会人基礎力育成プログラムの提案を受けて、われわれは、Internship on campus というコンセ プトで、プログラムを実施してきました。 インターンシップはこれまでもいろいろに行われてきていますが、私も企業にいて、受け入れてみ て、インターンシップを 1 週間受け入れても、本当に学生さんにとって企業を知ったことになるのか と思いました。目新しい感動はあるでしょうけれども、実際、企業に来て、様子を知ってレポートを まとめる経験はできますが、本当の現場を知ることはできない。アメリカでは 3 ヶ月とか半年のイン ターンシップがありますが、なかなか日本では難しい。 そうであれば、大学の中でインターンシップができれば、学生にとっても教員にとっても一番いい のではないかということで、大学の研究プロジェクトの中で、研究開発に対する主体性や、その価値 を社会に伝える力を育むようなプログラムをやっていこうということで、Internship on campus とい うプロジェクトを始めました。これにはいろいろな企業の方のご支援をいただいています。 今日は人事の方がたくさん来ておられますが、あるときに、たまたまある会社の人事の方からお話 を聞いたときに、社会人基礎力について聞いたことはなかったのだけれど、スティーブン・コヴィー さんも『7 つの習慣』で同じことを言っていましたよと言われました。 大阪大学では、「研究開発に対する主体性を向上させましょう」ということと、 「自分の研究の価値 を世の中にアピールしていきましょう」と強調しているのですが、これは第 1、第 5、第 6 の習慣に 当たることで、主体性や、価値を伝えていくことであり、社会人基礎力は世界中で必要とされている ことを、私も知ることができます。 それで大阪大学の取り組みですが、実は 1、2 年生を対象としたメンター教育や、法学部とも連携 した交渉学もプログラムの中に入っています。 メンター教育では、社会で活躍している自分たちの先輩方に、仕事のあり方や、仕事に対する考え 方をお話いただきました。できる限り講師の方の人生観や、若者に対して伝えたいことをお話くださ いということで実施しています。これは工学研究科 800 人ぐらいのうち、200 人ぐらいが受講してい ます。 交渉学は、今、日本で交渉学コンペが毎年開かれています。法学部の交渉術をベースとして行って いるわけですが、これからは工学研究者もそのような力が必要だろうということで、法学部から先生 を招いて行っています。 われわれの根幹のプロジェクト実践についてお話します。自分の研究価値をアピールしようという ことです。なぜそれに講師の力がいるのかといいますと、私は「隣のオヤジ効果」があると思ってい ます。 学生さんは先生から研究テーマを与えられます。そのテーマに対して先生が、学生さんにそのテー マの価値はあるのかと聞くのは矛盾しているのですね。その学生も「価値がないです」とは言えない ですよね。それに対して、隣のオヤジさんが口を挟むのと同じことで、社会を経験した第三者の方か ら、そのテーマの価値な何かと聞かれることは、ものごとを考える上で必要だろうと。それでこうい う真剣勝負の議論を、 企業の研究開発ツールを使いながらやっていこうというのが、コンセプトです。 実際に、企業の講師に来ていただき、大学の教員も入ります。私のように企業経験をした教員も入 りまして、いろいろと議論を進めていきます。 もう一つのポイントとして、産業カウンセラーが実は入っていまして、DVD の中にもありますが、 76 菰田さんの口調は大変、厳しくて、それで倒れていく学生もいます。でも本当に倒れたら意味が無い のですね。研究の考え方とモチベーションを上げることが最終的な目標ですから、そのときに、菰田 さんが言おうとしていることは何なのか、菰田さんからどのようなことを指摘されたのかということ を、丁寧に学生に指摘していくことも重要で、そういった意味で、われわれは、この産業カウンセラ ーの位置付けが非常に重要だと考えています。 プログラムとしては、4 回実施しています。1 回から 3 回は、企業の開発現場で使っているツール を使って、そこに書いている内容に自分の研究テーマを照らし合わせて記述して、それをプレゼンし ていきます。 もう一つは、厳しい面接、いわゆる圧迫面接を通じて、彼らが考え抜いてですね、実際に自分たち の考え、気持ちを伝えていくことがこのプログラムの全容になっています。 最後になりますが、私なりに社会人基礎力とは何なのか、この 3 年半、考えさせていただきました。 よく工学研究者、とくに基礎研究をやっているものには社会人基礎力はいらないのではないかと言わ れます。アカデミックに行くなら、社会人基礎力はいらないという先生方も一部にいます。 ただ私が思うのは、世の中に対して何かを提供していく、それがお金になって返ってくる。その感 覚を工学者であっても持たなければいけない。そういうことを、学生と話し合って、理解させるのが 大事かなと思います。私は何々の技術で、何々をどうしたいと語っていけるようになる、これを学生 が理解するのが、社会人基礎力の根底なのではないかと考えています。 よく松下幸之助の事例を上げるのですが、幸之助さんは、15 歳のときに市電を見て、「これからは 電気の時代だ」と思いました。幸之助さんが凄いのは、そこからベンチャーを起したことです。その 一歩、前に踏み出す力に、とてつもないエネルギーがあったのではないかと思います。 私も大学時代にレーザの研究をしまして、このポインターのレーザも、20 年前に私が開発した技術 が入っているのですが、学生のときに緑のレーザを見て、赤と緑と青が揃うとディスプレイになるの ではないかなという直感がありまして、今、現在もこの研究を続けていて、照明や、LED の開発など をしています。私自身も学生のときに出会った技術の種が今を導いているということで、何かを学生 に大学院を通じて感じてもらうということが、このプログラムの根底にあるのかなと感じています。 最後に DVD にも出ていますが、大阪大学工学科で彼らはシーズをやっています。しかしそこから ニーズへのイメージを持たなければ、研究は意味がないということが分かった結果、研究を進めてい く主体性や、何かに結び付けて最後までやりきって発表したいという気持ちを軸にしてやっていく。 その中でその他の能力が補完していくのではないかなということで、軸となりうる能力を彼らが身に 付けるようにサポートしているプログラムです。その詳細については、今から菰田さんからご紹介い ただきますから、楽しみながら、お聞きいただければと思います。 77 社会人基礎力育成事例研究セミナー 大阪会場 第 2 部 菰田卓哉氏発言 日時:平成22年9月15日(水) 場所:大阪国際会議場 発言者:菰田卓哉 パナソニック電工株式会社 先行技術開発研究所 技監 大阪大学の社会人基礎力育成プログラム「Internship On Campus」に平成 19 年度の立ち上げから講師 として協力。長年にわたる産学連携の経験で大学教育の問題点を知り尽くした立場から、社会人基礎 力を企業の現場の不可欠な力として意識付ける指導を行っている。 社会人基礎力と産業界における価値 はじめに みなさん。こんにちは。DVD で吼えておりました菰田です。先ほどですね、この会が始まる前に、 林さんの方から、 「あなた、いつもあんな怖い顔をしているのですか」と聞かれたのですけれども、別 にそういうわけではないので、あくまでも役割ということで芸をしているだけだということをご理解 いただけるとありがたいです。 あれを見ていただいた後にこういう話をするのはなかなか難しいのですけれども、なぜ私どもがこ ういう事業に参画させていただいたかというところを、少しご説明したいなと思いまして、今日、参 りました。 先ほどお聞きしますと、企業の方、とくに人事の方が多くお見えだとのことですが、なんのために ここに来られたのか、まあ人事考課への応用を考えておられるのか、採用のツールとしてのことを考 えておられるのか、よく分からないのですけれども、そういうことにも多少参考になればと思います し、大学の関係の方々はぜひとも、私どもがなぜこういうことを大学と一緒にやっているのかという ことで、これからの教育のご参考に、もし、なれば非常にありがたいことだなと考えております。 手前ミソで恐縮ですけれども、宣伝の方をしないと会社に顔向けできませんので、1 分半ほど、宣 伝もさせていただきますけれども、実は私は、研究開発部門におりまして、今の日本の研究開発は、 非常に重要なステージに来ていると感じています。みなさまも多分、そのようにお感じになっている ことがあるかと思いますが、そのバックグラウンドを少し解説しないことには、大阪大学さんとやら せていただいている内容をご理解いただけないので、これを少し説明させていただきます。 その後に、具体的に何をやってきたのかということで、スライドに平成 21 年度と書いてあります が、19 年度の初めから立ち上げて、3 年間かけて 21 年までもっていったということがありますので、 その辺のところも、少し詳しくご説明させていただければなと思います。そしてそれらを総括するも のとして、われわれが実はどういう人物が欲しいのかということを、ご説明させていただいて最後に まとめたいと思います。 【Ⅰ】パナソニック電工の紹介 私どもにはいろいろな業容がありまして、昨年あまりよくなかったですけれども、一応、1 兆 6000 億ぐらい売り上げを出させていただいています。その中でいろいろな商材がありますが、お客様にど うやってお金を払っていただくのか、やはり非常に大きな問題でして、われわれはメーカーではあり ますけれど、商人ですのでモノを売らないと、社員が生活できないという現状の中で、どうやってモ ノを売っていくかと考えますと、これだけたくさんの商材をどうやって「これはお金を払っても良い な、欲しいな」と思っていただけるかというところは、実は研究開発に拠る所が非常に大きいわけで す。 78 特に最近は、エコと快適ということが非常に大きなキーワードとして動いておりますので、グロー バルにエコと快適をどう両立するのかということが、私どもの使命である、ということで、これを支 えるのはいろいろな研究開発による技術成果だと考えているわけです。 こういうことを遂行していくための技術者、社員というものをこれからどうやって私どもで採用し ていくか、あるいは育成していくかということが、企業の底力にもつながってくると理解しているわ けです。 特に時代を先取りしなければいけない。早すぎでもダメなのですけれども、遅いともっとダメです ので、とにかく先取りをして新しい価値を作るのが研究開発の基本なのですね。従来の延長戦上では 成長できないというのは、みなさんご承知の通りで、新しい切り口を出していかなければいけないと いう状況に現在来ております。 最近は、感動というもう一つのキーワードが付け加わると思うのですね。何か感動がないとお客さ んにモノを買っていただけない。他社さんの例で恐縮ですけれども、最近で言うと、サンヨーさんの パン焼き器などは、その一つの例ですね。米から直接パンが焼けるというような、新しい感動がある と非常に大きな力になります。 【Ⅱ】日本における研究・技術開発のミッションとその重要性 もう一つは人口の問題です。すでに日本の人口は減り始めていまして、2006 年がピークで、現在は 増える兆候は全く見られず、人口増加率はどんどん減っている。 ところが中国インドは増えています。 そうは言っても、中国は後 10 年ぐらいでピークを迎えますが、インドに至ってはまだどんどん増え ていく状況にあります。ですので、どう考えても、これからの時代は、中国・インドが発展していき、 富はどんどん、あちらの側に移っていく中で、それでは日本の 1 億 2 千万はどうやって生きていくの かということを、真面目に考えていかなければいけない。それには人材というものが非常に大きな力 になってくるかと思います。 「技術立国」とわれわれは言っておりますけれども、もう日本の中だけでは生きていけないという ことが、大きなキーワードになると思います。世界の中で、日本がどうやって生きていくのか。たか だか、世界 80 億の人口のうちの 1 億 2 千万が、どうやって生き残っていくかということが、これか ら非常に大きな課題になっていく。 話は少し脱線しますが、現在、日本が使っているエネルギーの総量は、世界の 14 分の 1 です。世 界の 80 分の 1 の人口で、エネルギー総量の 14 分の 1 を使っている。それが皆様方の生活を支えてい るという現実の中で、そのレベルをどうやって保持していくのかを考えていくと、もう生半可な対応 ではやっていけないということで、やはり深堀をしていく、あるいは真摯な議論の中で、本当のもの は何なのか、真実は何なのかを見つけていく努力をしなければいけない。そういう努力がだんだんと 無くなってきているという危機感が、私どもに、最近、非常に強くあるのが現状です。 【Ⅲ】大阪大学での社会人基礎力研修実践事例(平成 21 年度) 具体的に、どのようなことをやってきたのかですが、その前にこの社会人基礎力とは何かをわれわ れなりに考えますと、人間力を高めることだろうなと私どもは理解をしています。では人間力はなん ぞや。これもまた定義があると思いますが、一つの定義は人間性+能力だなと、私なりに理解をして います。人間性というのは、人間らしさとか、外部から観察できて、他の方がご覧になって、この人 は一人前だなと認めてくれるような風格です。 能力は、本当は外からは見えません。賢そうに見えても中身はアホやというのがよくありますが、 それと一緒ですよね。こういうものは、内部に所有する力なので、どうやって外部から見ていくかと 79 いうことが、非常に難しくなってくるわけですね。これを解決する一つのやり方として、能力を分類 してみるということがあります。 よくスキルと言われますが、分類すると3つぐらいになると思うのですね。Conceptual Skill とい うもの。これは人間特有のものだと思うのですけれども、考える力であり、モノを抽象化して概念化 する力です。Human Skill というのは、対人スキルで、人によって対応を変えていくというのも、こ れですね。それからわれわれが日ごろよく使っているのが、Technical Skill というヤツで、いろいろ な職務のスキルもそうでしょうし、研究のスキルもそうでしょうし、マーケティングや企画などいろ いろなスキルがあるわけです。こういうもの即ち顕在能力ともう1つ潜在能力がありますが、これは 外からは見えないかもしれないけれども、能力としてある。 しかしわれわれがいつも評価の対象としているのは、顕在能力で、表から見えるものしか評価でき ていない。ただその人の素質としては潜在能力がありまして、もって生まれたものには素晴らしもの があるとよくいいます。これらを一体どうやって、体系化して捉えていくのかというのが、非常に重 要な要素になるかと思います。 われわれは実は、行動に注目しています。Behavior ですね。行動というのは、先ほどのような個性 とか人柄とか性格とか、こういうものと、その人が生きてきた環境や、置かれてきた事態、どういう 風な雰囲気の中に自分が置かれているか、これらは変数です。素質はおそらく変わらない。持って生 まれたものである可能性が高いですが、しかしこのような変数に影響される関数が行動で、行動によ って中身が分かる、あるいは推定できるという式が成り立つのではないかなと思います。 われわれは、顕在能力を求めることが非常に多い。というか顕在能力だけあればいいと言い切る人 事もいます。しかし行動とは何なのかというと、内面の鏡、中身が浮き上がってきて見えるものが、 実際の顕在的な能力につながってくるだろうなということで、その人の行動を通じてだけ、その人の 内面のことが理解できるのではないかなと考えているわけです。 それを図式化すると、スライドのようになります。気質や素質のようなものは、外から見えないも のですね。その周りに本能的なものがあります。その上に、その人がそれまでの生活で得てきた文化 的な背景や、いろいろな、子どものときから教えられてきた教育などがここにあります。その上に現 在、表から見える行動、こういう状況だったらこうしようという適用行動がある。 気質や素質の方は見えにくいし、変わりません。人は、本性は変わらないとよくいいますけれども、 本当にここはおそらく生物学的に、DNA か何かで決まったものがあるのではないかと思います。し かしながら人間の素晴らしいところは、変数の側は、変えることができることにあるわけですね。行 動は人からの教育や、それを変えようとする自分の努力によって、変えることができる。ところがこ こが変わると、潜在的な中の方の能力も、それに合わせて変わっていくのではないかなと考えている わけです。 技術に関して言うならば、同じようなことがあって、知識というものは、本を読むとか、 先生に教えていただくことで、ある程度、指導や伝達ができるのですけれども、今、一番、日本で問 題になっていることですが、技能というのはなかなか伝達がしにくい。われわれもマイスターという 社員を雇っていますけれども、その技能を若い社員に伝達するのに、困難を極めております。 このような流れの中で、いわゆる Knowledge と Skill のこういう構造をどう具現化していくのかと いうことがこれからの一つの課題であり、これを解決していく一つの手段が、今回大阪大学でやらせ ていただいた社会人基礎力であり、それが大きく役立つのではないかなという発想に立っているわけ です。 80 もう一つの問題、冒頭にも話がありましたが、コミュニケーションは学生はできると思っているが 会社の方ではできないと思っている、差があったということがありましたけれども、これはとくに技 術の場合は、聞き手と話し手があって、この話し手がいろいろ言うわけですね。その間に介在するい ろいろなパラメータがあります。例えばテーマの内容ですとか、どういう場所で話をするのか、議論 はどうなったのか、言葉の掛け方、どのような言葉で喋るのか、それらによって、聞き手は聞く耳を 持たないという状況になることもありますし、非常に興味を持って聞いてもらえる場合もあります。 この場でもこれだけ大きな会場になってきますと、いろいろな方がいますから伝達係数は人それぞれ なのですよね。 特に技術の場合、一番難しいのは認識の違い。この技術は伸びると思っている人と、こんなことは ばけがく やっても仕方がないよと思っている人で、まったく違うのです。それから専門もあります。化学の専 門の人に、物理学の話をすると、まったく違います。言葉も違います。 また見通しも、これは 2 年後には絶対にブレイクすると考える人と、こんなんまだ 10 年ぐらいか かると思う人と、まったく違うわけです。この伝達係数をどう打ち破るか、これがないと実は技術者 としてはなかなか自分の仕事がやっていけないという苦しさもあります。 コミュニケーションというのは、昔からいろいろあって、雄叫びから始まり、発展をしてきていま す。江戸時代は飛脚で、今はインターネットとなっています。しかしながら基本は、人と人がどう話 をするかにあります。言葉ですよね。しかし言葉だけではなくて、伝えるための一つのプロトコル、 マナー、仕組みがあるわけで、どういうふうに言えば、どこを押せば、どう反応するのか、それをど のように理解していくのかということが必要です。ただその基本はあるわけで、それが社会人基礎力 の一番重要な点になってくる。前に踏み出す力ですね。自分から何かを働きかけようという力が、一 番、社会人基礎力の中で、重要視しなければいけないのではないかということになったわけです。 この辺を北岡先生と相談させていただいて、進めていくということでやりました。犠牲になったの は、尾崎先生の研究室でして、尾崎先生とは共同研究で、私どもの社会人ドクターを入れていただい て、いろいろなことでお世話になっておりまして、その研究室で平成 19 年から 3 年間、やらせてい ただいています。 実はここは、尾崎先生のご意向で、研究室メンバーが全員参加するということを言われて、学部生か ら博士課程の学生まで、全員が参加するということで、先ほど、DVDで観ていただいたように、大 きな会議室で行っています。前で発表しているのは、その中で犠牲になった、3 人から 5 人の代表者 なのですね。先生から言われて「えーっ」とか言いながら、最初は嫌々ながらやっていました。 3 年間でだいたい 15 名の方に前に出てやっていただいて、その後でオブザーバーとして学生さんが 聞いておられると、こういう状況ですね。 そうなってくると、みなさん、お気付きと思いますけれども、19 年に参加した人は、大学を辞めな い限り、20 年、21 年もいるわけですよね。その中から、犠牲者が出てくるわけですから、その人た ちは、当然、学習するのですよ。 19 年にいた人が、20 年に先生に当てられて、君、やれと言われるわけですよね。そうするとその 人は 19 年に聞いていますから、こんなん言われるとか、こんな資料を作ったらバカにされるとか、 分かっているわけですよね。 これ、年々、レベルが上がるのですよ。だんだんレベルが上がってきて、こっちも言うことがなく なってくるのですよね。これは困ったなあ、これはメシの食い上げになると思いましてですね、それ をどうするかはまた後で話しますが、そういう状況になります。そういう意味で、尾崎先生の取り組 81 みは非常に良かったなと思います。 後ですね、最初にオリエンテーションをしないと、学生さんがなんのこっちゃ分からんということ がありますので、3 つの能力分類を、まず自分なりに理解してくださいねということで、いろいろな お話をしました。 前に踏み出す力が重要だということで、特に研究者ですから、大学院のマスターの 2 回生、それも 就職の決まっているマスター2 回生が対象者のほとんどです。尾崎先生が選ばれて、マスターの 2 回 生が代表で受講するということになっていますので、その人たちは修士論文も控えていますし、来年 になったら企業に行くという人たちばかりで、そういう人たちにこういうことをやっていくというこ とで、進めてきました。 とにかく自分の研究の内容を発表するのがいいということで、社会人基礎力講座で得た知見を修士 論文発表に役立たせることを前提に行いました。 もう一つ、発表は個人毎なのですね、ところが全員参加のセミナーなので、全員に質問をしてもら うことにしました。そうすると、このときとばかり自分を指導しているマスターに質問をする学部学 生もいますから非常に面白いのですけれども、やはりチームワークで働く、自己中心では成功しない ようということを理解してもらわないといけない。 最近の大学も、マスターの 2 回生、1 回生、学部の 4 回生、3 回生ということで、チームを作って やっているところもあるのですけれども、学生の中には言われたことしかやってない、あるいは言わ れたこと以外のことを本当はやりたいと思っている人もいるわけで、そういう人たちが、ざっくばら んにこの中でいろいろな意見交換をやっていこうというようなことにしました。 もう一つ、われわれが行った特徴は、場のシミュレーションに強くなろうということで、どういう ことかと言うと、例えば、今日の発表は、専門外の人に、自分の研究を理解してもらうということを 想定してやってください、ということを言います。 次の発表のときは、研究費をあなたが自分でパトロンから取ってくるという場を想定して、研究費 をもらえるような発表をしてくださいとお願いをします。三つ目は、われわれ会社の中ではよくある ことなのですが、エレベーターで上にあがる 1 分間に、これやりたいのですけれど、ちょっと説明し ますというようなことで、1 分間で自分の研究の面白さを発表してくださいというようなこともやり ました。このような発表の場のシミュレーションも合わせて、一緒にやりました。 その発表の中で絶対入れて下さいよと言ったのが次の四つです。何が新しいの、What’s new? 何故今 するの、Why now? 将来、どうなるのか、So what? 何がユニークなのか、What’s unique? この 4 つの内容は必ず入れて下さいと話ました。 もう一つは、これは学会発表ではないので、ボトムラインをヘッドラインに持って来いよと、結論 を先に言えよ、何か言っているうちに結論になると、相手が寝てしまうよというような話をして、ま た目次を書かない学生が非常に多かったものですから、目次を入れろと、非常に細かいノウハウ的な ところになることもいいました。 それから、 相手に聞こえないと何の意味も無いので、声が小さいのはダメということもいいました。 またよく大学でやられることで、省略形を非常に使うのですけれども、これは、門外漢には何のこ とかさっぱり分からない、誰に説明するかによって内容を説明しないと、 門外漢の人に説明するのに、 略語を使ってしまったら、何も理解されないよ、ということとかですね。 それから相手の理解している意味に言葉を使っているかよく考えましょう。例えば製造の現場にい る人に、 「これくらいはすぐにできます」と言ってしまうと、その人は、明日にもすぐに製造できるも のだと思ってしまうよと、そのようなこととか、いろいろと申し上げました。 技術者は、うちの会社でもよく嘘つきといわれます。なぜ嘘つきと言われるかというと、論理的で 82 はないということですね。あなたは感覚でモノを言っているのではないの?と思われる人は、非常に 損をします。説明の下手な人はその典型的な例ですよね。内容を自分でもあまりよく理解せずに、分 かっているつもりで説明するのも非常によくないことで、言葉一つ一つを大事にすると、その言葉の 意味をきちんと理解して、相手に伝えようとしますから、この辺のところを、きちんと行って下さい と申し上げて、理解をしてもらいました。 ステークホルダーというのは、誰が判断するかという決定権をもった人のことで、例えば聞いてい る人が黙っているというのは、単純に考えているか、寝ているかもしれんし、テニスと一緒で、ボー ルを返してもらわないと、プレーになったことにはならないので、そういうことを肝に銘じてやって くださいということ、 難しい話ばっかりしていてもダメだよ、易しい話もしてくださいということで、 21 年度は小学生にも分かる話もやろうかと思ったのですけれども、そこまでやるとなかなか大変なの で、それは止めました。そういうことも視野に入れてやってくださいという話はしました。 もう一つは、So what?の話ですね。最近、非常に弱くなっていると思うのは、調査・研究までは どこでも、大学に在籍していればやると思います。ところがここで終わることが非常に多い。調査・ 研究をやって、分かった、よっしゃ、終わりということですが、そこまででは勝てないのですね。底 が浅すぎてとにかく他を出し抜いてやっているこの国際社会の中ではとても勝てない。 だからこの So what?を何回繰り返せるかということで、調査・研究の結果を、それでどうなん? と最初に戻れるかどうかが非常に重要でして、これを最低 3 回、理想としては 5 回以上やってねとい いました。 それをやるための一つの思考訓練ですが、フェルミ推定というものがあります。物理学をやってい る人間にとっては、非常に重要な推定技術ですけれども、その一つの例として、こういうふうな課題 を出しました。日本の中に電柱は何本あんの?という話ですね。 これは最近、いろいろな本も出ていますので、ご存知かと思いますけれども、こういうものを入社 試験に使う会社もありますが、これは大学の中でもとても重要なことで、あたりをつけるというのは ものすごく大事なのですよね。 つまりこれだけ複雑な世の中で、どこに本当にマーケットがあるのか、需要があるのかと考えると きに、こういうふうな考え方でやっていかないと、大体のところがつかめない。考え方は、日本は 2 割が市街地で 8 割が郊外というのは、小学校で習う話ですよね。あと観察がいります。それで市街地 だったらだいたい 50 メートル四方ぐらいに 1 本あるなと。郊外に行くと、200 メートル四方に 1 本 かなというような話ですよね。それで 38 万平方キロで計算するとだいたい 3800 万本になる。 電気事業連合会に聞くと、3300 万本といいますから、大体あっていますよね。こんな推定をするこ とが非常に大事だということを言いました。 それで昨年度はこれをベースに研究企画書を作ってみようということで、これもなかなか書くのが 大変なので、最初に書いたときには、各項目に 10 文字ぐらいしかなくて、これでは誰も金を払わん という話をしました。最後にはそれを表にしてまとめて書けるようになりました。 【Ⅳ】産業界で期待される人物像と社会人基礎力 最後に、われわれがなぜこういうことをやらなければいかんかと考えたかという、もう一つの例は ですね、本当に今までは日本の中に、市場が結構、立派にありました。日本の中で真面目に働いてい れば、とにかく匠の技が日本の原動力だ、これで世界に勝てるのだと思われていたし、日本のものづ くりの源泉はここにあるわけですけれども、今は欧米文化がどんどん侵食して来ています。狩猟民族 の文化ですね。ゼロサム社会で、獲ったもの勝ちの社会です。 こういう中でやっていこうとすると、どうしても情報収集をきちんとやって、企画をきちんと立て 83 て、自分で動いて、自分の目で確かめてというのが、非常に重要になってきます。こういうのが知恵 や行動、成果の源泉になるので、単にメモリーがいっぱいあって、知識がいっぱいあるというのは、 もうリスクにしかならないのですね。それらを組み合わせることができる方が、これからわれわれが 欲しい人材なのです。 ただ、知識がまったく要らないのかと言うと、それはまったく違う話で、知識があって当たり前な のです。今、20 年前のスーパーコンピューターよりも優れたものが、どこでも机の上にあるわけで、 それがベースなのですね。学生の場合も、知識があるのがベースで、それがなければ話にならないと いうことで、理解をしてもらわないとなかなか難しいことになってくる。 アポロ計画というものが昔ありまして、人、モノ、金が無限にあれば、人間を月にだって送れるの ですね。でもそういうことができないというのが今の現状なのですね。どこにリソースをはらなけれ ばいけないかということになってくると、先ほど挙げた企画力、あるいは推定力などが、非常に重要 になってくることになります。 だから、開発すべきは、儲ける仕掛けだということで、大学の研究といえども、研究費の源泉は儲 けにあるわけですから、仮定の段階でもこれをこうしていくと面白いことになるよと話を持っていか ないと、去年、仕分けが話題になりましたけれども、ああいうものに耐えていけるようにはならない だろうなと思います。 時間は資源です。だから時間をどうやって買うのか?アライアンスで買うというのは、最近の例で すけれど、これってまさに、コミュニケーション能力とチームワークの勝利ですね。でないと、アラ イアンスなどというのはできないわけです。まったく違う会社と組むわけですから。そこで考え方や 育ってきた土壌の違う人と一緒にやっていくことが、これから普通になっていくし、日本の国ではな くて、中国やインド、ヨーロッパなど、いろいろな国の人とやっていかなくてはいけない。それをス ピード感持ってやっていくのがこれからの課題ということで、これをやるために、まず大学の方で、 そういうふうな土壌をもってもらいたい。 そのために大学にだけ、ちゃんとした学生を送ってねというのは、ちょっと片手落ちだなというの が私の正直な考えで、それなら大学の先生と、われわれはこう考えていますので、一緒になってやり ませんかということで、この社会人基礎力の考え方は非常にいいなと思ったわけです。 【Ⅴ】まとめ 最後にまとめですが、基本は、研究者稼業という言葉をもう一度ここで考えたい。実は松下幸之助 が言った言葉で、社員稼業というのがあるのですが、まったく同じような話で、自分のものとしてモ ノを考えられるかということが非常に大きな切り口になります。誰かのためにやっている、あるいは 誰かにやらされているという発想ではなくて、これを自分の事業として、あるいは楽しみとして、本 来の自分の行くべき方向として、モノをみて判断して、自分でやっていけるかどうか。それが非常に 重要です。 それは奇しくも最近のインターネット社会に非常によく似ていまして、Flat でありかつ Web の体 制でないとできない。今までのように、上長はもちろんいますけれど、上長から言ってもらう内容を、 口を開けて待っているような状況の中で、これから世界の中で勝っていくのは、まったく不可能な話 で、その場で判断をし、その場で先を見て、これは誰と組んだらいいか、あるいは誰に聞けばいいか ということで、Web を活用するというような発想がいるのではないかと考えているわけです。 社会人基礎力というのは、社会人としての免許取得というような意味合いがあると思います。ただ 84 まだ初心者マークだろうなと思います。それが一生はずれない人も中にはいますけれども、1 年で外 れる人もいれば、2 年かかる人、3 年かかる人、これは努力に関わっています。これは学生にも言っ ています。 同じテーマの内容では、最近、10 年はメシを食ってはいけません。企業の中で同じテーマを 10 年 というのはなかなか至難の業です。もちろんそうした方もいますけれど、 非常な努力をされています。 いろいろな発展系、進化系をイメージして、前に踏み出していくことをやっていかないといけない。 同じテーマで、メシを食っている方も、いろいろな発展や進化をしていっています。そういうことを ここで理解していただかないといけない。 それからこれが大事なのですけれども、では知識はいらないのかと言われるのですね。そうではな くて、知識の総量は、創造力の源泉です。知識のないものから創造力は生まれません。人間の力はこ こにあるので、まず総量を増やさないと力は出ません。その次はやはりネットワーク力ということに なります。現在、ネットワーク力の方がやたら重要視されていますが、知識の少ないものがネットワ ーク力を発揮できるはずがありません。 科学技術の基礎は 20 世紀の前半で出尽くしたと私は思っています。ただ、応用できない者が凄く 多い。応用するということが非常に重要なので、これも考える力なのですよね。基盤はあるので、知 識を集めたら、後はこれをどうやってつなぐか、どうやって先に行くかと考え抜く力が大事なので、 各々の学問の成果は、すでにあるわけですから、これをどうやって活用していくかと考えていくこと を、学生に教えていかなければいけないなと考えています。 以上で、私の発表を終わります。 85 社会人基礎力育成事例研究セミナー大阪会場 第 3 部 パネルディスカッション 日時:平成 22 年 9 月 15 日(水) 場所:大阪国際会議場 発言者:頭師暢秀 流通科学大学サービス産業学部准教授 北岡康夫 大阪大学大学院工学研究科教授 菰田卓哉 パナソニック電工株式会社 先行技術開発研究所技監 中川正明 京都産業大学キャリア教育研究開発センターディレクター 司会: 林揚哲 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室人材開発担当企画官 産業界の協力による社会人基礎力育成プログラムの作り方 講演 産業界の協力による社会人基礎力育成プログラムの作り方 中川正明 京都産業大学キャリア 教育研究開発センターディレクター 学校法人の運営管理を担うとともに、京都産業大学のキャリア形成支援教育や社会人 基礎力育成事業の 企画・運営、インフラ構築や学生指導等を担当。特に、日本型コーオプ教育の定着に向けて、各種フォーラムを開 催するとともに、講演を通して参画企業を開拓している。進路センター(旧・就職部)においては、就職支援プログラ ムの開発やキャリア教育研究開発センターとの連携強化に取り組んでいる。 中川です。パネルディスカッションの露払い的役割ですが、私に課せられたテーマは、プログラムを 作ることについてです。主に、組織の問題、教育プログラム、そういった部分で本学が取り組んでい る事例をお聞きいただければと思います。今の若者に関して、北岡先生からお話がありましたが、バ ックグラウンドとしては同じ認識です。 京都産業大学は、建学の精神に則り、人材育成に邁進してきました。実はインターンシップを組み 込んだ 4 年間の授業、プログラムを立ち上げました。その中で、コーオプ教育に出会いました。海外 の場合は、半年あるいは 1 年のインターンシップが定着していますが、日本の場合は、夏休みの 2 週 間で、体験型でしかありません。はっきりいって中身の薄いインターンシップです。これでは大学の 教育プログラムとしての深化はしづらい。 本学では、就業力の問題に立ち向かうために、キャリア教育研究開発センターが 4 年前に立ち上が りました。その教育コンセプトは、 「コンセプチュアルスキル」、 「ヒューマンスキル」、 「テクニカルス キル」の養成です。これをわが大学では『根幹的な実力』の養成として、学生の 4 年間に育ませたい ということで、キャリア教育が展開されています。 そうしていますと、経済産業省から、社会人基礎力の提示がありました。これは非常に似通ってい るコンセプトと考え、社会人基礎力養成プログラムをスタートさせました。始めたプログラムは、 O/OCF(ON/Off Campus Fusion)といいます。これはインターンシップを軸に考えてきたのですが、 なかなか本格的で大学教育とコミットするインターンシップが根付きにくいため、インターシップを PBL(Project-Based Learning 課題解決)に置き換え、O/OCF-PBL という科目に進展させまし た。 どういう構造かといいますと、平成 20 年に採択されたプログラムは、1 年生から 3 年生までの各 10 名が、PBL 実践Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに取り組みました。21 年度にはそれぞれ進級しながら成長させるとい う、スパイラル・ステップ方式とを採っています。2、3 年生になりますと企業から課題をいただいて、 その解決に当たります。1 年生は、オンキャンパスでの社会人基礎力のベースを養う授業です。平成 22 年度の 1 年生からは、100 名でスタートしています。2、3 年生では 60 名です。平成 18 年からプ レ授業で動き出したのですが、いよいよ本格的な展開となってきています。 86 教育手法は1つ目に、企業からの課題解決に取り組む手法です。本学は 8 学部ありますが、どの学 部の学生も希望すればこの科目が取れるようになっています。社会科学系理工系の学部から集まって きて、それぞれの学部の勉学と合わせて課題解決に立ち向かっています。2つ目に、これに対する教 員の役割を、コーチング、ファシリテーションに徹するという考え方で進めています。3つ目はチー ムワークです。先ほど、2、3 年生で 60 名といいましたが、それを 5 クラスに分け実施しています。 経済産業省の評価モデルを使って、外面的な評価を行い、内面的な評価には頭の「働かせ方」、「ス トレス耐性・精神タフネス」などの検査をしています。これらは学生たちに受講前と受講後にそれぞ れでフィードバックして、自己評価と合わせてアドバイスを加えて自身の実力や適性を見極めさせて います。 これらを動かす組織体制ですが、本学にはキャリア形成支援科目が 18 あります。インターンシッ プは 6 科目あり、海外に出て行くものもあります。また座学としてのキャリア教育、O/OCF-PBL の ように実践的な科目など多彩な科目を設けていますが、実はこの O/OCF-PBL は一番、労力と時間が かかります。スパイラルステップアップ社会人基礎力実施体制などの図をご覧ください。O/OCF-PBL は現状では 160 名です。 次にプログラムの作り方の一つですが、私も企業さんを回って、お題をいただきに参るのですが、 そのときに留意していることをお話します。1 つには企業が実際に抱える課題をご提供いただくとい うことです。学生の興味を引く真剣な課題をいただくことにしています。解決すれば、何らか会社に 影響が出ることを望んでいます。 また単位認定をしている関係で教育目線であること、また段階的に思考を深め、意思決定、判断す ることを心掛けた課題をお願いしています。 それから、学生が学習する事項を自ら発見し、深く学習するスタイルです。本学では 8 学部の学生 が受講しているものですから、 それぞれの学部の専門科目もリンクする関係を十分に作りたいと考え、 クラスごとにチームが作られますと、チーム内の学生の手により、専門教育を意識した役割分担など が決められ、授業が進んで行きます。学部の特性が生かされた役割で解決に向かっていると考えてい ます。 ここに望ましい課題の相関表図を掲げましたが、 「大学生の生活空間」と、「企業等の抱える若者へ のニーズ」、それがクロスするところにある課題設定が望ましい課題であろうと考えています。 テーマをいただきますと、十分に時間を割いて、学生に説明・解説を行っています。企業にも来て いただきます。どれだけ深く学生に課題を理解させるかです。また、重要なことはゴールイメージ作 りだと思っています。できれば成果物を作り上げて、少しでも学生に「成功体験」をさせて、自信を 持たせてやりたいと思っています。学生にはフィールドワークや会社訪問を必ず入れています。 次に、企業様にお願いする場合ですが、まず人事の方にお願いする際の段取り力が問われると思い ます。あまり負担を掛けず、スムーズにプログラムに入っていただくため、スタッフは、情熱と、ス ピード感等々、企業ニーズを十分に捉えて、根気よくお願いしないとこのプログラムは進展しないと 思います。 お願いする際は、総務人事を中心に行くわけですが、結果的には人という個人との結びつきが強い と考えています。 次に実際にいただいている課題についてお話します。オンワード樫山さんが、学生たちの就活のと 87 きに使うスーツに関する販促の課題が出されているわけですが、学生諸君はアイデアを出し合い、果 敢にチャレンジしています。現在、京都の高島屋百貨店にて実際の販促に従事しています。 また本学の近くに上賀茂神社があり、 『再生は活力となるか』という課題をいただいています。葵祭 りの斎王の道を辿りながら、文化の継承をしていくというもので、若者感覚で散策マップと音声 CD を作成しています。そこで大事なのは五感よりも六感ですね、アイスバーグモデルで言えば、見えて いる部分よりも「見えない部分」を学生たちに磨かせないとこれからの世の中を渡っていけないだろ うということで、第六感を磨こうとしています。 将来、教員になりたという学生たちも、京都の教育委員会を通じて、 「京都まなびの街 生き方探求 館」における「ボランティア活動推進戦略プラン作成と情報発信」という課題をいただいてその作成 をしています。 JTB 西日本さんからは「京都が世界に発信すべき ECO 事業を盛り込んだツアー企画」という題を いただいています。大日本印刷さんからも「外国の方々に京都の文化財などを IT を駆使して観光サ ービスをする」というテーマをいただいて、今準備を進めています。 このような授業を実施していて、学内でもどれだけ効果・成果があるのかという声があります。可 視的には私たちも見ていて、学生の大きな変化が見られます。それは自信です。自己表現力がアップ し、自己実現に向けてエネルギーが出ているという、大きな成長を果たしていると考えています。 受講した延べ学生 435 名の就職率は 98.4%、受講しなかった延べ学生 10,670 名の就職率は 95.2%、 就職率の比較では 3.2%の開きがありました。これはほんの一部です。 こういった数字を出しますと、もともとモチベーションの高い学生が受けているからだという声も ありますが、勉学実績の GPA のポイントも高いものがあります。 就職先の中身を見ていきますと、決して大企業には行っていません。キャリア教育を受けていくと、 生涯の仕事を考えての就職をと捉えている関係か、オンリーワンの企業への就職が目立ちます。われ われプロの眼から見てもよくぞという会社に内定を貰ってきたなということがあります。それだけキ ャリア意識や生き方についての考えが成熟しているのだと思います。 また話は大きく変わりますが、当初 1 学年 10 名だった科目を、今は 50 名に増やしました。増員が 学内的に推進できています。本学はアウトソーシングをせずに自前の専任教員でやっていますが、そ れが積み上がっていろいろなバージョンができてきています。 一つは経営学部の 1 年次の外書セミナー。入門ゼミのようなものですが、ここに社会人基礎力を活 用したゼミができています。またシラバスの到達目標に、社会人基礎力の能力要素を入れていただく ようになりました。 学外にもこれを進化させたプログラムとして、商工会議所で、新入社員向けの研修会を、先ほどの PBL 教育プログラムを利用して行っています。課題はそれぞれの新入社員の所属会社から出していた だきます。それを研修の一環で取り組んでいます。 また京都の経営者協会、会員会社の人事担当者向けに、この社会人基礎力トレーナーという教育手 法を伝授しています。 京都府の未来を担う人づくりサポートセンターでは、一旦就職して離職後、今は無職の方への対策 にもこのプログラムを提供しています。 大学が一方的にお願いするのではなくて、企業さんとウィン・ウィンの関係になっていく、そうで ないと、プログラムを継続的に進めていくことはできないだろうと考えています。 88 今後の展開ですが、5 年以上を経過してきましたが、われわれは第二ステージに入るということで、 O/OCF-PBL は来年から 1 学年 300 名の体制で取り組むことになります。1 学年の在学生 3,000 名で すので 1 割に当たります。 冒頭にコーオプ教育のことに触れましたが、今、アジア諸国の中ではこのようなプログラムが積極 的に展開されています。日本は非常に遅れています。北米では 100 年以上の歴史があり、効果は実証 済みですが、われわれもようやくその域に入っていきたいと思っています。 このようにプログラムを進めていますが、現況、就業力や社会人基礎力の養成は喫緊の課題と言わ れています。一番問われているのは、教員あるいはわれわれスタッフが社会人基礎力に劣っているの ではないかとも考えられます。 こう云う良いプログラムは、やればできると自信を持っているのですが、教育界の改革の中ではい ろいろなハードルがあり、改革の進み方は遅いが、この社会人基礎力養成プログラムのようにスタッ フが自信と学生のためと云う強い想いを持って進めていくことが今後も重要と考えてます。 以上です。 パネルディスカッション 林 それではパネルディスカッションを始めます。これまでの講師のみなさんのご発言を引き継ぎ、 また会場からもたくさんの質問をちょうだいしています 今回、社会人基礎力を導入するにあたって、産学連携で取り組まれたと思うのですけれども、実際 に PBL などに取り組むときに、学生の中には冷めている人もあったのではないかと思います。また 既存の大学のシステムの中で、彼らを評価するシステムについて、なかなか硬直した面もあると思う のですけれども、最初の質問は、 そうした学生のモチベーションを上げるために行った仕掛けや工夫、 また成績・評価はどうだったのか、企業と連携するコーディネートはどうだったのかといって点につ いて、お伺いしたいと思います。まず頭師先生、お願いします。 頭師 お弁当の開発においてですが、学生のモチベーションアップに何をしたかと言いますと、ビジ ネスコンテストにインセンティブを付けました。優勝チームには 10 万円あげるというものです。10 万円という金額は、彼らの労力からみれば安い金額になりましたが、それでも取り組みの初めでは、 これがかなり効いていたと思います。しかしやり始めたら、それ自身が楽しくなり、結局、優勝チー ムはこのお金をみんなで祝勝会をやることで、消費していたようです。 もう一つあるとすれば、一番気を付けたのは、彼らと長い時間を一緒に過ごすことでした。何をし ているわけではなくてもそばにいて、彼らが困ったときには一言、口を挟むという形で、基本的には 勝手にやれというスタンスに立ちながら、彼らの近い所にいたことが、モチベーションアップにつな がったのではないかと思います。もしかすると、監視されているという意識だったのかもしれません が、私は、見守られると思われていたのではないかと自負しています。 二点目のゼミの評価方法ですが、私は、成果ではなくて、頑張ったかどうかで評価をしています。 結果的に全員が素晴らしい成績だということになりました。 三点目の企業とのコーディネートにつきましては、実は私が最も苦労したことの一つです。このお 弁当開発は、昨年の 4 月から 7 月まででコンテストをやり、秋口に実際に販売するというプロジェク トになりましたが、4 月の時点で、どこかの企業さんとお約束ができていなければならなかったわけ です。 なので、私自身はその半年前、9 月ぐらいから、企業さんに、一緒にこういうことをしませんかと、 営業活動といいますか、いろいろな会社を訪問したり、異業種交流会があればそこに出向いて、初め てあった人の会社の商品にケチをつけて、 「そんな風にいうのなら何か考えてくださいよ、先生」「実 はいい学生がいるのですよ」という具合に、仕掛けをしてまいりました。この頃、リーマンショック 89 があった時期で、いったん 5 つの会社が一緒にやりましょうとなりましたが、後にすべてキャンセル になりました。その後、お弁当屋さんが乗ってくれて良かったのですが。 活動を始めてからのコーディネートということでは、相手と私の時間帯を合わせなければなりませ ん。学生も当然にそうです。大学は神戸市西区にありますが、まねき食品さんは姫路市にあります。 50 キロ離れています。場合によっては、先方に大学に来てもいただきましたが、できるだけ私が伺う ようにして、お手間をかけないようにしました。その意味で、昔の営業マン時代よりももっと頑張り ました。大学教員もフットワークが必要なのかと思っています。 北岡 大阪大学では、Internship on campus という概念で、PBL でテーマを与えているわけではな くて、彼らの卒業研究や大学院での研究をベースにしていますから、モチベーションがあるかどうか については、彼らのペース、学生の自主性に任せています。 むしろ私自身が考えているのは、その時間内に彼らが何かを学んだというよりは、将来、就職活動 で企業の人と議論するとか、国際学会や、学会で企業の人と議論するとき、もしくは彼らが会社に入 って議論するときに、菰田さんや尾崎先生の一言の意味を感じてくれたらいいなということで、その 場でのモチベーションに対してどうこうするということについてはあまり取り組んでいません。むし ろ先ほどお話したように、産業カウンセラーなりわれわれが、側面的にマイナス側に振れないように サポートすることに気を付けながらやったということです。 単位につきましても、正直言って、プロジェクトをしたからといって、単位はないのですね。ただ、 シラバスには新たな単位を作りましたが、彼らはそうした単位のためというよりも、企業の方と本気 で話ができることに対して興味を持ち参加しているというのが、実際のところだと思います。 あと企業の協力に関しましては、先ほどいいましたが、真剣勝負で行いますので、学生さんがある 面ショックを受けることもありうるのですね。その意味で信頼関係がないとできないことで、研究室 の OB であったり共同研究先であったり、ある程度の人間関係が構築されている人をお呼びしていま す。向こうにもそれなりの責任感が発生しますし、学生に対しても、何か起こったときにフォローの しようがないということで、もともと深い人間関係ができている方を、講師で呼んでいるというのが 実態です。 中川 モチベーションですが、まだ受講生は 100 名程度ですので、もともと高いレベルの学生が応募 していると思います。授業が始まると最初に合宿をする、ここがポイントでして、いろいろなゲーム などをしながらチームビルディングをして仲間意識を作らせています。この仲間で 3 年間、やってい くのだという強いものを作るわけです。 中に 3 年生もいますので、1 年生の中に 3 年生を入れることで、一種のロールモデルとなり、将来 このようになれるのだという憧れや目標を見定めることができ、少しずつ成長していく気配を感じま す。 単位のことは、基本的には半年 14 コマの授業ですので 2 単位ありますし、評価は社会人基礎力を 入れて、教員の可視化したもの、出席の状況などで付与しています。 コーディネートのことですが、経験的には PBL は本格的なインターンシップより負担は少ないと 思います。インターンシップは企業様に手が掛かるところがあり、なかなか本格的には教育的側面で 根付かない部分もあります。一方、PBL は設定された課題を解説していただいたり、学生の中間・最 終報告を聞いて評価していただいたりとなります。 時間もはっきりしているため、 都合もつけやすく、 初めからスケジュールも明確なプログラムとなっています。 コーディネーターの重要性についてですが、欧米の CO-OP 教育が進んでいるのは、一つの大学に アカデミック教員と同数のコーオプ教員がおられる点です。その方々が、少人数の授業を展開され、 企業とのやり取りもされています。 90 実践することで、学生にとって様々なリスクもあります。学生たちが外に出て行くことでいろいろ なことが起こるわけですが、欧米ではこれをコーオプ教員が担っています。日本ではコーディネータ ーという職域が大学内に存在せず、教員か事務スタッフが行っていますが、事務スタッフは定期的な 人事異動があり、せっかく培ったものが継承されません。そこでわれわれは第三の領域としてのコー オプスタッフを養成し、その職域を学内で確立しようとしています。 林 菰田先生、DVD で見たときは怖くて今日お会いするまでドキドキしたのですけれども、産業界 から実際に講師として大阪大学に入られて、産業界から見た学生のモチベーションの上げ方だとか、 課題などについて教えていただきたいのですけれども。 菰田 DVD のようなやり方をなぜしたのかですが、大学の中、特に尾崎先生の研究室などは、優秀 な学生さんが集まっておられます。研究内容も非常に先端的な内容をされていまして、4 年生から研 究室に入り、マスター1、2 年、ドクター3 年間とおられます。 そうすると研究室の中で、ほぼ先生や助教、ドクターとの交流の中にだけにいますから、彼らは自 分の研究がどう世の中の役に立つか分かってないのですね。せっかくいいものをもってやっているの に、どうやったらそれが将来広がっていくのかということについて、少し切り口を変えてこういう見 方をした方がいいよということを教えてあげないと可哀相だなというのが正直なところです。せっか くそれだけの技術開発や研究を行っているのに、一つの結果がでることだけを目的にしている。それ でどうなるのと突っ込むと立ち往生するのが普通の学生で、それではあまりに可哀相だと思うのです。 そのためにですが、実は私は自分の恩師から「工」という字をどう見るか、天と地を結ぶのだと教 えられました。ようするに世の役に立たないと工学ではないと私自身が教えられましたので、そうい う話を工学部の学生さんによく理解していただきたいと思っていまして、その上で、あなた方の仕事 はこれからの科学技術にこのように役に立ちそうだよと、そういう見方をしたらどうだ、と話すのが ある意味で一つのモチベーションになるのではないかと思います。それがひいては自分のやりたい仕 事に就いていくという力になっていくし、場合によっては私どもの会社に来ていただけるということ もあるでしょう。 いずれにせよ、そのように前へ自分たちが行くことによって、世の中がもっと広がるよということ を理解してもらうこと、それが一番大きなモチベーションではないかなと私は思いますね。 そのためには最初は落とさないといけない。最初から図に載せてはいけないので最初は落とす。そ れから持ち上げるということが非常に重要だということであのような指導をやってみようと思った次 第です。 林 優しい方だということで安心しました。今までの講師の方々のお話を聞きますと、実はデメリッ トもあるのではないかということで、学生が外に出ずっぱりになって、授業に出てにくくなってしま うとか、あるいは学生が外に出るときのリスクがあるというご指摘もありました。その他に、例えば 実際にこういうことをやることによって、青田買いの問題や就職活動の問題など、非常にセンシティ ブな、ナイーブな問題につながっていくのではないかという会場からの指摘もありました。その辺に ついてどうお考えなのかお伺いしたいと思います。まず頭師先生、お願いします。 頭師 こういった活動をすることによって、悪い面として授業に関する影響があります。それに対し て私がこうすると良いと思うのは、今、月曜日から土曜日まで授業がある時間割が設計されています。 そんな中で、例えば水曜日は授業を一切なくして、そういう活動をしなさいという風にする。そうし た環境づくりがどうしても必要だと思います。 といいますのは、厳しく出席を見る先生の授業を取っていると、学外で非常に大きなことで頑張っ 91 ている人が、たった 1 回、欠席したから 4 単位を失ってしまうということも起こりうる。これは大学 の制度として、応援してあげなければならないのではないかと思っています。 北岡 デメリットというのは、サポート教員が必要であるとか、お金がいるとか、そういったものが あると思いますが、学生や教員にとっては、メリットしかないのかなと思っています。特に、若手の 教員は、研究価値を知る場がなかなかなくて、産業界の方が来られて、生の声が聞けるというのは、 すごくメリットがあることだと思います。 その意味では、産業界が、研究シーズをどう見ているのかを、学生や若手教員が知るには非常にい い意味があると思うのですね。 青田買いということに関しては、技術者の方は気にしないのですが人事の方は気にされます。われ われも最終報告会に対して人事の方に来て下さい、その中で人事の方がどういう人材を求めているか お話くださいということに関しては、この時期に大学に足を踏み入れていいのですかと言われるので すね。 その意味で、人事の方に来ていただくのは、ルールがあって、難しい面があるのですが、共同研究 先の方でしたら、年がら年中、大学にいろいろな方が来られています。それを青田買いと言うのかど うかは、国の方で判断していただければいいのですが、学生にとっては、就職活動に入ってから初め て企業の方と出会うというのは、ある意味では不幸で、1 年生の段階から、産業界の人と話し合って、 なぜ大学に行くのか、何を学ぶのかを先輩から聞くというのは、本来あるべき姿だと思いますので、 そこについて私自身は、若い人を育てていくという点で、産業界と大学が連携していくのは重要なこ とだと思います。 実際に、菰田さんに関しましては、M2 の学生というのは、就職が決まっているのですね。S 社だ とか、D 社だとか、いろいろな会社に行く学生を指導しているわけです。これは非常に素晴らしいこ とだと思います。 講師の方も、お前、S 社に行くんか、それなら教えへんという方は、講師になる資格はないのであ って、ひょっとしたら、その先に何らかの連携で一緒に仕事をすることもあるかもしれないよねと、 そういう気持ちを持った方が、本来、大学の講師になるべきなので、そういった意味で、青田買いと いうことは、それほど心配する必要はないのではないかなと思っています。 中川 私も大きなリスクはないと思っているのですが、ただ今の青田買いの問題はすっきりしないも のがあります。その場合、今の採用の仕方そのものがこれでいいのかという議論もあります。現場で は、実際 3 年生の後半から 4 年生、決まらない学生は秋口まで授業に出席できない状況があります。 日本学術会議は、卒業してから 3 年以内を新卒扱いにしようと言っています。今日の全般的な採用環 境は果たしてグローバルスタンダードにあっているのでしょうか。 特に東アジアとの競争が問題になっていますが、欧米ではインターンシップを受けている学生たち は、それで 6、7 割は就職が決まるといいます。それが青田買いなのかということは議論しなければ ならないし、内定を出す時期の問題もあると思います。 研究室単位の場合は、内定を得る 4 月 1 日までに、多くの出会いがあると思います。それを否定す るのは難しいのではないか。就業体験型を増やしなさい、低学年からインターンシップをさせて、就 業観を養いなさいといいながら、それが一方で青田買いだと言われてしまうと、このような授業は成 り立ちません。このことで大学にいろいろなレッテルを貼られるのは避けたいですからね、そういっ た側面で難しい問題が出てくるかと思います。 林 では菰田さん。産業界の観点から、今のお話について何かあれば教えてください。 92 菰田 そうですね。リスクについてはおそらくわれわれの方からはないと思いますね。学生さんがシ ョックを受けて、引いてしまうということはありますがね。しかし 3 年やって、かなり引かれて、う ちの会社に来ない人が増えるのではないかなと思ったら、逆に応募が増えて良かったなと思うところ もありまして。今ではメリットしかないのではないかなと思います。 青田買いの問題に関しては、私はまったくそうしたことをやっている感覚はありません。先ほど、 北岡先生が話されましたが、過去、3 年間で 15 人を指導しましたが、全部、他の会社に行っています。 もう就職が決まった方ばかりをやるというのではないのですが、そういう方がたまたま選ばれてきま すので、そういう方を指導して、何のメリットがあるのかと、逆にわれわれから聞きたいぐらいです ね。 でも企業側から見ますと、パナソニック電工からしたら、何のメリットもないかもしれませんが、 尾崎先生の研究室は、全員参加でやりますので、うしろでいろいろな学生さんが聞いているのですよ ね。その人たちが冷静に判断するわけです。中にはこういう指導をきちんとやっている所に行きたい なと思う奇特な人もいるわけで、そうするとそういう人が応募で来ることがあります。それでマスタ ーを出て、うちに来られた方もいます。 そこにはタイムラグもあるのですね。だから長期的な視野に立って、企業がやらないと、とにかく いいのを採りたいから青田買いという発想なのでしょうけれど、それは一方的過ぎて、やはり自分で ちゃんと種を撒いて、草をとって、害虫も殺して、というふうにやらないとダメでしょうね。そうし た思いはあります。 特に技術分野については、密接に先生方との関係を作りますので、学生さんたちも日ごろからわれ われを見て、こういうおっさんのおるところやったら、行ってもいいかなと思われるように企業側も 努力して、活動していく必要があると思います。 林 時間の関係で最後の質問になります。新しいことをやるということは、組織内でさまざまな抵抗 があったと思います。実際、大学は研究をする機関でもあり、また教育においても社会人基礎力は教 育ではないなど、いろいろな議論があったのではないかと思いますが、一番辛かったことは何だった のか。それをどう克服したのか。またその後に、組織や学生にどのような変化が見られたのか、簡潔 に教えてください。また菰田さんには、そういうお話を聞いて、最後に、いつものように大学に喝を 入れていただきたいと思います。それではよろしくお願いします。 頭師 とても難しくて、即答しかねますが、どこからお答えすればいいですか。 林 学内でこれをやろうとしたら、抵抗する人がたくさんいらっしゃると思うのですが、どうやって 説明したのか。何でこのようなことをしたのかという点からお話ください。 頭師 身内が来ているのですが・・・。しかし勇気を出してお答えしましょう。私たちの大学は、実 学を通して学生を育てようということですので、このようなプロジェクトはかつてからあります。で すがこれだけ大きくやったというのは、かつてなかったことだそうです。そこで辛かったのは、静か に研究生活を送っていた同僚から、 「なんとなく周りから、こういったことをしなければならないとい う空気を感じる。あんたが来なければこんなことにはならなかった」と言われたことです。その後に その先生が、 「私も興味がある」と立ち話でおっしゃってくださったときに、その辛さはリリースされ たなという感じがします。 この活動を通じて、嬉しかったことでは、実は学長が最近、変わりまして、その前の学長先生の時 代を私は知らないのですが、その方はどちらかというと学者肌の方だったそうです。現在の学長は、 社会連携に大変ご理解のある方で、今や応援していただいています。時代の流れなどがぴったり合い、 93 タイミングよくやらしていただいています。 北岡 一番悲しいのは、大阪大学を職業訓練学校にする気なのかと言われることですね。それには一 理あります。大学はあくまでも就職を有利にするためにいくところではないということは、みなさん も思うことだと思います。大学では自分の学びたいことを学んで、その後に社会に旅立つのだと思い ます。 大阪大学でも今や、卒業生の 9 割以上が、産業界にお世話になっています。またわれわれの時代で は何もしてなくても、企業に行けば 4 年間の研修をさせていただいて、社会人としてのマニュアルが あり、いろいろなことを教えていただきましたが、今は学生さんが、即戦力で来ないといけない。そ ういった大学と産業界の考え方の変化をどうフォローしていくのかということが私のモチベーション ですので、職業訓練校と言われようとも、そこを徹底してやってきたということですね。 それと、大阪大学にも、何割か産業界から戻ってきた先生がおられるのですね。そういう先生方の 中で何かをしなければいけないと思われている方が、2 割ぐらいおられます。私が帰ってきたときに、 経済産業省のプログラムがあったので、そういう先生方とぜひ一緒にやりませんかということで、仲 間がいたということが励みになったというのは事実だと思います。まだまだ全員が賛成しているわけ ではないですが、一部の先生方に賛成していただけているということです。 中川 今から 10 年前に、 「インターンシップが教育変えられる」という書籍に出会いました。当時は 教学センターという教務系の組織におりましたが、その時期にコーオプ教育に思いを強くし、キャリ ア教育センターを立ち上げたいと思いました。正規科目にするということでしたので、いろいろと抵 抗もあり、理解を得るため教授会をも回って説明しました。 教育プログラムは当然、教授会が決めるもので、そこに手を出したということ、しかも単位認定す るということでしたから、相当難しい側面もありましたが、それを乗り越えて、現在では本学の教養 課程にキャリア形成支援科目群が入りました。 乗り越えてきた結果が、学生のためになっていると思い、また、実ってきていることは嬉しく思いま す。 大学組織の中には、教育に対する情熱も 2・6・2 に分かれる部分があり、その情熱的な2の方たち を巻き込んでいます。それが核とならなければ、改革はできないと思います。そうして巻き込んで担 っていただいた方には、本学では教員評価にも反映させていただいています。 菰田 社会人基礎力育成は教育ではないというのは、われわれ企業側でも言われるのですね。人事か ら言われるのです。人事というのはひとごとなのでね。ようするに、ある枠の人数だけ取ればいいと いうアホな人事もおります。そういう方ばかりではないですよ。 それは間違っていると思っていまして、企業が活力を持つために、企業が必要とする人材を、日本 の中でみんなが養い、教育していかなければならない。それは大学だけの仕事ではないし、企業だけ の仕事でもないと思っています。 特に技術系は、今日もお話したように、だんだん状況が変わっていまして、日本の技術は世界のト ップをいっているのですけれど、差がなくなってきているのですね。韓国などは、20 年前は、論文な どは読む価値がないと言い切る先生もおられました。しかし最近はぜんぜん違う。韓国の論文は参照 すべき一番、大きなものになってきています。それぐらい世の中が変わってきているのはなぜか。一 つには韓国の研究者の教育の仕方が、根本的に日本と違ってきているという面があります。手を上げ たものが進めるシステムになっています。 私も韓国に呼ばれて、講演などしますと、質問攻めにあって帰してくれないという状況が続きます。 日本で講演しますと、ほとんど質問が出ません。逆にこっちから聞いたろうかなと思うぐらいです。 94 迫力が無い。このままでは世界の中で教育だけで負けてしまって、その先にいかないということが起 こってくる。それが一番怖いのですね。 大学の先生からは、日本のドクターをもっと採れと怒られて、優秀だったらもっと採りますよ、と はぐらかすのですが、なぜそういうことになってくるかというと、大学 4 年間も入れると全部で 9 年 間の教育の中で、何か差が出てきているわけです。 海外のドクターは即戦力でもあるし、論理的な力も強い。実はドクターも含めて、パナソニックグ ループ全体で海外の社員が 7 割以上ぐらいになっています。採用も日本だけではなくて、日本人の割 合は少なくなっています。 そんな中で、学生たちに世界の中で自分たちが競争していかなければならないという気持ちを持っ てもらわないと、日本の将来はないということを感じているところでして、そう考えると、大学の先 生方の中には、学生を研究の手足ぐらいにしか思ってない先生も中にはいるのですよね。その考え方 をまずは変えないといけない。学生を研究者にするという中に、研究というツールを使って、学生を 育てる考え方に変えてもらう必要があると思います。 われわれは今、大学と共同研究をいろいろとやっていますが、20 年ぐらい前は、海外との共同研究 の方が、投資額が大きかった時代があります。それはやはり成果の返り方が違うということでそうい う時代もありましたが、最近になって、企業を経験して大学に戻られる先生方も増えましたし、大学 の意識も随分、変わってきているのですね。自分たちのメシの種を稼がんといかん、そのためにエサ を持っていかんと食ってくれんということも、分かってきていただいていて、最近は、日本の大学と の共同研究が増えていまして、海外とのものよりも多いかもしれません。そういう流れも聞いていま す。 その中で大学と企業が、親密なコミュニケーションを取りながら、われわれは、学生さんを、日本 の中で、どう迎えていかねばならないかということを、われわれとしては考えていかないといけない なと思っています。 林 ありがとうございました。以上を持ちまして、パネルディスカッションを終わります。私の感想 として、講師のみなさんのお話を伺いますと、一つの自信として、人は必ず成長できるのかなと思え ました。この 1 年間、社会人基礎力のプロジェクトを通じて、学生さんのプレゼンをずっと見てきま したが、着実に、毎回、回を追うごとに成長しています。人は工夫次第でまだまだ成長できるのだと 思います。自分の大学の学生や、自分の会社の職員は頼りないという話をまだまだ聞きますが、社会 人基礎力のツールを、ぜひみなさんの組織で有効活用されて、人材の活性化を作り出していただきた いと思います。本日はどうもありがとうございました。 95 ④名古屋会場 時間 13:00~13:10 当日の流れ 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~14:00 林揚哲氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 山本真司) 14:00~14:10 休憩 14:10~14:35 大学事例紹介①(日本生産性本部主任研究員 大山雅嗣氏) 「自己評価能力の育成のポイント~武蔵大学の事例~」 14:35~15:00 大学事例紹介②(大阪大学光科学センター特任研究員 根岸和政氏) 「振り返り・評価を活用した社会人基礎力の育成~『気付き』を促す 振り返り・評価の具体的な方法」 15:00~15:25 大学事例紹介③(愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 村林聖 子氏) 「学生の自己理解と自信のための社会人基礎力」 15:25~15:35 休憩 15:35~16:45 パネルディスカッション 「振り返り・評価を活用した社会人基礎力の育成」 岐阜大学医学部看護学科教授 杉浦太一氏 大山氏 村林先生 根岸先生 [司会]河合塾 山本真司 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 日本生産性本部 大山正嗣氏 岐阜大学 杉浦太一氏 大阪大学 根岸和政氏 壷井秀一氏 愛知学泉大学 村林聖子氏 パネルディスカッション 96 ) 社会人基礎力育成事例研究セミナー 名古屋会場 第 2 部 大山雅嗣氏発言 日時:平成22年9月21日(月) 場所:河合塾名古屋千種キャンパスデルファイホール 発言者: 大山雅嗣 財団法人 日本生産性本部主任研究員 平成 19 年度「社会人基礎力育成・評価事業」のモデル大学に採択された武蔵大学で、学生評価の指針 作成と振り返り面接の実施を担当するキャリアコンサルタントとして協力。学生が自分で社会人基礎力 の理解を深めるためのアドバイス集「社会人基礎力アドバイスシート」を大学と共同で作成した。 自己評価能力の育成のポイント~武蔵大学の事例~ 武蔵大学の取組(平成 19 年度)と社会人基礎力の育成・評価 はじめまして。大山です。私は企業向けの人材開発コンサルタントということで現場の人間です。 併せて 3 つの大学で、非常勤で社会人基礎力プログラムを行っています。そうした現場の人間のスタ ンスからということで、ぜひお聞きください。 武蔵大学さんとの関係ですが、私たちは評価の仕組みを作ってくれないかと頼まれました。また私 たちは、キャリアコンサルタントの人材を育成しています。私自身、その講師もしているので、ぜひ それも活用してほしいというオーダーがありました。それで評価とキャリアコンサルタントがどう絡 めるかというところをコンサルティングさせていただきました。平成 19 年度です。今もこのプログ ラムは形を変えて、継続されています。 武蔵大学さんは、東京都にある大学で、文系の私立大学です。経済学部、人文学部、社会学部の 3 学部です。ゼミの武蔵と呼ばれていて、課題解決型の学習をする土壌があり、これがプログラム作り に大きな影響を与えました。私たちはプログラム作りには関わっていないのですが、評価を入れるに は、全体像を知っておかなくてはならないので、お聞きしました。 半期、実質 10 月から 1 月までの短期のプログラムでした。どのようなことを行ったのかというと、 「IT 企業 3 社における文系学生の採用課題の解決」ということで、なかなか難しい課題でした。経済 学部は「効果的な母集団の形成」、人文学部は「効果的な採用面接の方法」、社会学部は「訴求力のあ る HP の作成」というテーマで関わっていきました。学部ごとにテーマを検討し、最後に 3 学部合同 して企業に提案していくという形を取りました。まずは社会人基礎力を試される状況が大事だと思い ます。他学部との合同というのは初めてですので、その中で、柔軟性や発信力、働きかけ力が、非常 に伸びたという結果が出ています。こうしたプログラムがベースだということを前提にお話を進めた いと思います。 社会人基礎力の評価・育成ということで、まず私は、担当教員の方に事情を詳しくお聞きしようと 思ったのですが、すでにガチガチの評価を作っておられました。まず自分たちのスタンスを見て欲し いという関わりでした。キャリアコンサルタントの投入の方が中心的な課題だったようで、それを見 せていただいたときに、これは誰が評価をするのですか、どの行動を見て、観察するのですかと思い ました。評価というのはなかなか難しいものがあります。実際に先生も、企業に行って学生さんの姿 を見ているわけではありません。学生さんたちが議論している姿しか見てないわけです。チームでや っても先生が常時いるとは限りません。ではこんなにガチガチにやってどうなのでしょうという話に なりました。 そもそも何のために課題解決型プログラムをやるのか。社会人基礎力を育成するために行うのか。 それとも課題解決を経て、何かを学んでもらうのか。そういう泥臭い議論から始まりました。 そういうわけで、作っていただいたものをある程度はベースにして、実際には評価はその目的、育 97 成的観点からしようではないかということになりました。その観点は何かというと、学生さんに成長 していただくことです。成長とは、これまでできなかった行動ができるようになったり、これまで考 えてなかったことが考えられるようになったり、これまでを越えて、何かやってみようかなという意 欲が出てきたりするようなものとして、評価を考えようではないかということなのですね。ダメだ、 ダメだ、あなたはここをもう少しやったらいいですよ・・・ということは絶対にやらないと。 まずはプロジェクトの課題解決をしっかり行って、締め切りまでにプレゼンができることを目標に しようではないかと。社会人基礎力はプラスアルファという感じでいいのではないですかという感じ で話をさせていただきました。 また学生の自己評価能力をベースにしたいなと思いました。まずは自分がほんの少しでもできてい るところを探していく。それが大事だと思います。またよく企業で生産管理のところで、PDCA サイ クルというものが出てきますが、要するに行ったら考えて、修正していこうではないか、考えたらま ずは実行していこうではないか、こういうサイクルを回していきましょうという話もしました。単に 評価するだけではなく、そういうことが目的だということです。 さらに私は社会人基礎力というのは、キャリアプログラムに携わっていて、なかなか難しいものを 感じます。学内だけ、授業内だけで終わってしまうのです。プログラム自体に興味を示さない学生さ んもいます。しかし社会人基礎力は学内だけで終わらせるものではありません。そうすると、プログ ラム外、終了後、1 年生で言えば、2、3 年生になってから、もっと言えば、卒業してからも自分の育 成能力で、継続的に成長していくことを視野にいれませんかという話をしました。この考え方がある からこそ、具体的な評価のあり方にもつながったと思っています。 自己評価能力育成のための工夫―アドバンスシートの作成・ワークショップ、個別カウンセリングの 実施 かといって学生さんに、経済産業省さんが出された雛形を見せて、これで自己評価してね、という のでは、なかなかしんどいのですね。われわれなりに翻訳をして、興味を持ってもらえる読み応えの あるもの、長たらしくないものを作りたいと思ったのですね。そのため能力要素一つにつき、A4 一 枚ぐらいのアドバイスシートを作りました。 社会人基礎力では一般的な能力を定義していますから、大学の具体的な場面でどういうものである かが私も見えていません。そこはゼミで学生と一緒になっている先生の方が詳しいので、一緒に作り こみました。 またワークショップを実施しました。学生さんに社会人基礎力についての意識を持ってもらう。だ んだん行っているうちに学生さんが乗ってくるように、学生自身が、自分の力で意欲を持ってやって いける触媒になろうということです。また個別カウンセリングも行いました。 アドバイスシートでは、まず社会人基礎力の知識レベルでの解説を行いました。しっかりとした解 説を付けました。また自己評価の着眼点、行動レベルで、こういう視点で見てくださいねということ を明らかにしました。3 つ目には基礎力が発揮されていない状態例を書きました。4 つ目に、基礎力 をどうしたら高められるのかを入れ込みました。 アドバイスシートの例として、「主体性」について、スライドでお見せしますが、私の考えでは、 12 項目のうち、主体性が伸びれば、ほかも上がっていくのではないかと思います。企業でも主体性が 非常に問題になっていますので、これがクリアされれば、ひとりでに何でもやってしまうのではない かということで、主体性については 12 項目の中で、大きなポイントかなと思っているのですが、そ 98 の意味で、抜粋を持ってきました。 ワークショップはこのプロジェクトが始まる導入プログラムとして実施しました。30 分程度のもの で、社会人基礎力の重要性を学生に考えてもらうのが目的です。 学生さんには、課題解決学習なので、IT 企業に 3 社に行って、礼節をわきまえながら、しっかり報 告書を出してくださいと話しをして、社会人基礎力の説明よりも、納期の中でしっかりと質の高いも のを作るようにと話をするのですね。社会人基礎力をもっと説明したらいいのではとも言われました が、そうではなくて、学生さんにはまずしっかりと課題をこなしてもらう必要があります。それで自 分の持っている力を 100%以上出して、しかもチームワークでやらないと、この課題は難しいよと言 いました。社会人基礎力は結果として付いてくるのではないのという程度でやっています。 だけれども、そうはいいつつも忘れないでねということで、アドバイスシートも渡しています。こ れは幸いしているのですが、ゼミの武蔵大学と言うことで、社会人基礎力のプロジェクトには、問題 意識の高い学生さんが集まってきています。だから私がしゃかりきにならなくても、みなさん、自分 自身でアドバイスシートを読んできています。だけれどもまだ定着はしてない状況です。そういう中 で、社会人基礎力育成についての動機付け、重要性についての意識付けをさせていただくコーナーで す。ですからそれほど時間を取っていません。30~40 分ぐらいのミニワークショップでした。 個別カウンセリングですが、実際に 3 回行っています。30 分程度です。私たちが育成したキャリア コンサルタントを派遣して、10 人ぐらいで、1人で 6 人ぐらい見てもらうとかしました。私はそのマ ネージメントもしましたので、ちょっと大変でした。もっと長い時間を取りたかったのですが、その 点の限界もあり、30 分ぐらいしか取れませんでした。 それを事前と、一ヵ月後の中間と、最後の報 告会の前の週ぐらいに行いました。その中で振り返り等をしました。 初めは社会人基礎力ということで、キャリアコンサルタントが入って、自己評価能力の向上をはか ったり、目標設定をおこなったりしていました。もちろんこれはダメなところからではなく、できる ところから探していきました。例えば主体性について、学生さんが、ぜんぜん上がってないという評 価をしていた場合に、今回、ほんの少しでも主体性を発揮したところはどこでしょうかというところ から入っていって、今度はどうしたら主体性が発揮できるかと問いかけながら、育成していきました。 ただやはり 30 分では足りませんでした。メンバーとうまが合わないとか、自分の役割をどう遂行 していけばいいのかとかなど、通常のカウンセリングになってしまうことが多いということです。ま ずは学生さんの話を傾聴し、アドバイスするということで面談が終わってしまうこともあります。社 会人基礎力以外のテーマだけれども、それを自分で解決することによって、結果的に社会人基礎力が 伸びればいいと考えました。まずは、学生さんが相談したいことを優先させました。その点ではカウ ンセリングができるキャリアコンサルタントが入る意味が、凄くあったのではないかなと思います。 私も、そういう方と出会いましたし、他のカウンセリングを行った者からも、社会人基礎力のこと よりも、メンバーとの軋轢やリーダーとしてどう動いたかが中心になりましたという報告がありまし たが、それでいいですよと答えました。 ただ 30 分間という時間は非常にタイトでした。学生さんが訴えたいことを把握・整理して、次に つながるように、的確にアドバイスしなければいけませんので。 まとめ 自己評価育成ということで言えば、学生のマインド形成というが凄く大事だと思っています。幾ら 精緻な評価の仕組みを作っても、学生がよし、やってやるぞというモチベーションを持たないのでは、 いいものも宝の持ち腐れになってしまいます。そのために、ワークショップをやったり、個別カウン 99 セリングを行ったりして、学生さんのマインドをしっかり支援しました。 それから社会人基礎力については、しっかり伝えるべきところは詳しく解説しました。こんなもの があるよと 1 行程度で済ませずに、しっかり記述したものを作り込んでいくということです。そうす ると、学校を離れても、日常生活の中で学生自身が自己評価できるようになっていくのではないか。 しっかりと、こういう能力はこういうことですよということを理解してもらうことが大事だと思いま す。そのために詳しい記述が必要です。 それから 3 番目に、社会人基礎力の汎用性、継続性を前提にした指導を行うことです。汎用性とは、 いろいろなところで活用できるということです。ゼミや課題解決授業に参加すること以外に、学生さ んはアルバイトをしたり、サークル活動をしたりしますが、面談をしていると、そういうところでも 発揮できたという話を学生さんがしています。ということはいろいろなところで、社会人基礎力は試 すことができるわけです。そうしたことを意識しながら、われわれも支援していくということです。 継続性ですが、日常生活でも意識して取り組むことができます。意識して、傾聴したり、発信した りしてトレーニングすることができます。トレーニングを継続することで、無意識に社会人基礎力を 発揮できるようになります。無意識に、自然にできることが理想です。そういうことも、学生さんに 伝えながら支援していくということです。私の方からは以上です。 100 社会人基礎力育成事例研究セミナー 名古屋会場 第 2 部 根岸和政氏発言 日時:平成22年9月21日(月) 場所:河合塾名古屋千種キャンパスデルファイホール 発言者: 根岸和政 大阪大学光科学センター特任研究員(産業カウンセラー) 工学系の研究室における新しい産学連携型教育 Internship On Campus で学生の自己評価・振り返りの システム作りを担当した。学生自身が、社会人基礎力の言葉(3 能力・12 要素)で活動を振り返り、表現 することで気付きを促す等、学生の相談役としてきめ細かなケアに当たっている。 「気付き」を促す振り返り・評価の具体的な方法 はじめに・・・なぜ 66 項目のシートなのか はじめまして。根岸です。私は 20 代に児童福祉の仕事に就いていまして、主に高校生の社会的自 立、適用を援助する仕事をしていました。大学に行く子はほとんどいませんでしたが、その子ども達 の支援をしていました。 30 代にメンタルクリニックで、精神科のリハビリテーションの一環として、患者さんの社会復帰の プログラムに従事しました。それで 40 代になって、ご縁があって大阪大学で、研究者の創造性の活 性化やコミュニケーション能力の向上という部分で、心理学的アプローチを用いたプログラムを展開 していましたが、大阪大学での社会人基礎力育成事業については、私の上司である北岡教授が大学の 中で展開されていて、私がそういうことを展開していたので、参画させていただいたという経緯があ ります。 さっそく内容に入りますが、社会人基礎力育成事業が、学生にとって自分のものになるかどうかが 重要なことなのですよね。どんなにいいプログラムを提供したところで、学生がそれを生かせるかど うかが重要だということを最初に考えました。そのためには、いわゆる気付きが重要になる。気付い て意識できれば、変えられるわけです。 それでは何か物事を習得するにはどうしたらいいかというところで、See it→Do it→Teach it とス ライドに書かせていただきましたが、これは私がメンタルクリニックに勤めていたときに、精神医学 研修学なるものを体系化しようとしているドクターがいまして、その先生が、スキルを習得するため には、まず見ること、そしてやってみることが大切であり、そしてそれを人に説明できるということ が、習得したことを表す指標として考えられるとおっしゃっていて、確かにその通りだなと私も思い ます。 特に重要なのは、やってみること、体験なのですよね。つまり説明を聞いて、頭で分かることはで きますけれど、分かっているけれどできないというのがポイントになってきます。それでそれを払拭 するにはどうしたらいいかというと、体験なのですね。しかもその体験が、気付きの機会になるかど うかを設定できるかどうかは、指導する側、あるいは支援する側の課題だと考えています。 ここで DVD でもご紹介いただいた評価シート 66 項目についてお見せします。前に踏み出す力、考 え抜く力については合わせて 33 項目、チームワークの力について 33 項目があります。北岡教授がこ の項目を作った根拠には、とにかく細分化するのは、ある意味、面倒くさいのではないかという話も あったのですけれども、とにかく読んで、評価シートを見るだけで、学生に気付きを与えられるよう なものを作りたいということがありました。 前に踏み出す力と考え抜く力については、私は文系の人間で、工学的なセンスが何もないので、あ まり関わることがなかったのですけれども、チームワークの部分については、北岡教授のコンセプト をいただいて、細分化をさせていただきました。ちなみに北岡教授も菰田先生と系列が同じで、パナ 101 ソニックに勤めてから大阪大学に戻ってこられて、この事業と、ご自身の半導体の研究を続けておら れます。 何故、66 項目なのかですが、自分の行動について詳細にチェックする必要があるわけです。自分の 行動は、意識しないと分かりませんから、意識しやすくするために 66 項目にしました。設問の内容 は、過去の 2 年間に参加した学生 151 名の、514 枚の評価シート、これに企業の講師や他の先生方の コメントがあります。これらを全部、抽出していって、こうしたことが分かっていたらいいのではな いかということで、質問項目に変えました。 もう一つは、大事なことですが、評価シートの言語を、学生と教員側が一致することによって、共 通言語が生まれるということが非常に重要だと思います。いわゆる通信簿ですね。何がいけないとか、 何がどうという場合に、その「何」が別々だったりしますと、概念の違いから食い違いが起こるわけ です。そういうところから、評価シートの言語を共通に認識できるということは、非常に重要だと思 います。これはお手元の『手引き』の P304 にもありますので、後ほど、参考にしていただければと 思います。 評価項目細分化のポイント この内容をそれぞれ詳しく説明させていただきます。大阪大学では、チームワーク力の中の発信力 と傾聴力をそれぞれ 3 つの力に分類しています。発信力については、 「非言語的発信力」 「言語的発信 力」「総合的発信力」に分けています。 人間のコミュニケーションには非言語の部分の影響が大きくあります。つまり非言語の部分でどれ だけ表現することができるかが、周りに理解してもらう上で重要です。もちろんそれだけではなくて、 論理的に説明できる必要がありますから、言語の部分では、論理的かつ主体性を表現することが重要 になり、それが工夫されているかが大事です。さらにこうした言語と非言語が、一致して発信されて いるかどうかが非常に重要だと思います。 例えばですが、驚かないでいただきたいのですが、「(大声で)怒ってないから正直に言いなさい」 と言って、僕は怒ってないでしょうか。これ、怒っていますよね。言語で怒っていないと言っても、 非言語の方が影響力を与えるわけです。つまり言語と非言語を一致させれば、非常にいい発信ができ るということなのです。 傾聴ですが、私はカウンセラーをやらせていただいていますが、カウンセラーには傾聴が重要なポ イントになります。なぜ傾聴が重要なのかと言えば、クラインアントから正確な情報を聞き出すだけ でなく、一番重要なのは、傾聴することによって、信頼関係を育むことができるということなのです。 つまり傾聴する過程そのものが、チームワークをよくすることに寄与することになります。その中で も最も重要なことは、共感できるかどうかですよね。非常に重要なポイントです。そして理解してい ることが正しいのかどうかを相互に確認すること。 さらに、よく学生の評価シートを見ていて思うのですが、効果的な質問というのがなかなかできな いのです。言われたら言われっぱなしで、聞いているのですが、深掘りしていかない。これは後々、 問題になるのですね。 「聞いていたよね」 「何を」ということになってしまう。つまり先に広がる質問、 相手の言っていることを確認していく質問が重要だということで、その工夫をお願いしています。 柔軟性についても 3 つ。「冷静な対応力」「有効的な交渉力」 「能動的な対応力」ですが、冷静な対 応力では、相手の意見や物事を肯定的に捉えるということです。ネガティブに捉えるか、ポジティブ に捉えるかは自分の自由なわけです。ネガティブなことを言われたからといって、そのまま受け取る 102 必要はないわけですね。 これを助けるには、この体験から自分は何を学ぶ必要があるのかということの工夫なのです。そう いう思考のパターンを作っていくことが重要です。 友好的な交渉力ですが、交渉というのは、Win-Winの関係、互いの利益を得るものですから、 チームワークの中の重要なポイントだと思います。そのためにはまず相手のペースを優先するという ことなのですね。傾聴力にもつながると思います。 また能動的な対応力というのは、主体性の喚起する工夫ということで、やれといわれてやらされて いては、主体性は喚起されません。言われたらやるけれどもという話になります。一度組織に入って、 やりなさいと言われたことにはいと言ったら、そのことに対して自分が責任を持って遂行しますと表 現しているわけですから、そういった工夫をしていかなくてはならない。 状況把握力は、 「情報収集力」 「客観的把握力」 「分析行動力」に分かれます。情報収集力については、 インターネットの情報を集めて編集するのも大事ですけれども、当事者からちゃんと話を聞くことが できるかということです。リアルに話が聞けないとホットな情報を得ることもできませんし、情報を 取り寄せるためにも一次情報が大事だということです。 また客観的な把握力としては、収集した情報が、自分の目的にどう関係しているかをちゃんと考え られるということです。分析行動力については、自分の意見と他者の意見に相違点がある場合が当然 あるわけですけれど、状況に応じて最善は何かを考えるということです。これらのことを求めていま す。 規律性については、さすがに大学生ですから、それほど逸脱したことをすることはないのですけれ ども、一応、 「自律的行動」 「社会的適応力」 「マナー遵守力」ということが言えるのではないかと思い ます。 特に「自律的行動」には時間の制限があります。大学は割りと時間に関しては厳しくないので、研 究室の発表に遅れてきたりするのですね。その点で重要だと思います。 「社会的適応力」は、自分の行 動の正当性を振り返ってもらえばいいわけですから、その確認の工夫をしてくださいということです。 「マナー遵守力」については、状況に応じた態度や姿勢を取ることです。マナーについて重要なの は、相手に対する尊敬や敬意を意識付けしているかどうかです。その点でこうしたことの表現の工夫 をしてくださいと言っています。 ストレスコントロール力については、 「分析力」 「回避力」 「解消力」と分けています。何がストレス になっているかが分かれば、対応策を講じることができます。またストレスを感じたときにそれをそ のまま蓄積することが問題なので、回避する方法があります。またストレスを安全に解消する工夫も 大切です。これらが評価シートの細分化の中身です。 もう一つ、グラフをお見せしますが、自己・他者評価における各項目の評価点の平均点を可視化す ることで、途中経過と最終との相違を確認してもらっています。これが絶対に正しいとかいうことよ りも、この変化から何を学ぶのかということを学生さんにお伝えしています。自分はこれだけ状況把 握力があると思っているのに、講師の評価を見ると、思ったほどではなかったという気付きがあった りします。そのためデコボコがあって当然で、それよりも大事なのは、変化をどう受け止めるかです。 自己評価・他者評価からの「気付き」の促進 自己評価ですが、活動記録シートの記述欄に「具体的な気付き・行動事実について記述してくださ い」と言う設問を作り、2 つの項目を設けています。これはプレゼンをしたりしたときに、外部講師 103 などからアドバイスをもらうわけですけれども、そのときのことをちゃんと回想して咀嚼してもらう ために質問を設定しています。 「聴者に対して分かりやすく伝える工夫や事例、もしくは講師からのア ドバイスを記載してください」がその一つです。 また、それらのできごとから何を学べるかに関わりますが、その体験を社会でいかに生かせるかを 常に意識して聞くということ、これを意識付けするために、 「その体験を社会でどう活かすかイメージ を記載してください」という質問事項も設けています。 それから他者評価のコメントの留意点なのですけれども、山本さんの紹介の中にも、 「承認」という 言葉がありましたが、人間が自信を持つためには、他者からの承認が必要なのですね。承認されるこ とは非常に重要なことです。それをきちんと言葉で伝えていくこと。 また自尊感情という言葉を、山本さんが使っていましたが、自尊心を喚起する必要があります。そ うしないとモチベーションを向上させることは難しいわけです。 それから効果的なフィードバックを提供することが非常に重要です。ダメ出しを避けるということ です。失敗したときに、 「ダメじゃないか、何をやっているのだ」と言われたりしている方がおられる のではないでしょうか。どうですか。 それに対して、「どこまでうまくいっていましたか」「改善点はどこですか」と質問してあげれば、 その問題の先に進んでいけます。 「何故失敗したの」と「何故」と言うと、人は責められたと思うのが 一般的です。このようにフィードバックの仕方を工夫することで、前向きな気持ちを維持することは 可能だと思います。 それから肯定的な表現、僕はリフレームと言っていますけれども、学生に受け止めやすくする工夫 が重要だと思います。 汚い例になりますが、 「トイレを汚さないでください」と書いてあるトイレほど、 僕は汚いと思います。最近のトイレを見ると、 「いつも綺麗に使ってくださってありがとう」というプ レートがありませんか。僕は女性のトイレは知りませんが。こう書いてあるトイレの方が実はきれい なのです。 どういうことかと言うと、人間は、肯定的に表現されたことの方が、受け止めやすいのです。一つ の例として、 「忘れ物ありませんか」と言われて、頭に忘れ物が浮かびますか?明日の準備ができてい ますか?と聞かれて、初めてモノが浮かぶのです。このように肯定的に表現することが非常に重要な ので、こういったことに注意するようにしています。 とにかく学生が言っていることに対して、承認を与えると同時に、さらにどうしたらいいかをフィ ードバックする書き方をすることが大切です。リフレームで言えば、 「本質的な問題がどこにあるのか、 分析不足だ」と、「不足だ」とコメントすると、ネガティブになりやすい。その場合は、「本質的な問 題を、徹底的に追及しましょうね」と言えばいいわけですよね。そのような事例をスライドでお見せ しています。 ネガティブな例として、「主体性が感じられない」 「声が小さくて、聴き取りづらい」などがありま す。どちらも「ない」で終わっています。日本人のコミュニケーションでは「ない」が非常に多いの です。それはもともと、謙虚さを表すために使っている言葉だと思うのですよ。けしてそれが悪いわ けではないのですけれど、やはり心理学的に考えると肯定的に話した方がストレートに入りやすいと いうことから、こうした場合は、 「『I』メッセージで発表しましょう。主体性がアピールできます」 「プ レゼンで大きな声で発表しても注意されることはありません」といった返し方をしています。 講義中の講師・カウンセラーからのアドバイス それでも講義では、実際にはダメ出しをされることがあるわけです。 「あなたのプレゼンを聞いてい 104 たら、お金を出してもらえないよ」 「ちゃんと何をしたいのか、明確に言わなければダメだ」と言われ てしまったときに、企業の講師の先生からそう言われると、学生はあまりそうしたことを言われたこ とがないですから、ショックを受けてしまうわけですよ。こういったことを避けるのは非常に大事な ことだと思います。 それで僕はどうしているかと言うと、本当に、みんなの前でプレゼンをして、 「おまえ、何もできて いないじゃない」とか言われると、学生は凹んでしまうわけですよ。凹んだときにどうするかと言う と、僕は「今、どんな気持ちですか」とその場で聞いてしまいます。そのときに恥ずかしくて言いに くい場合もあるのですが、そうしたら「恥ずかしかったら言わなくていいよ」と言ってあげると、大 抵、「凹みました」と言ってくれます。 「それは凹むよね。僕もそんな言い方されたら凹みます」と、 企業の講師の方の前で、平気で言います。それで企業の講師の方から何かをされるわけではないです しね。 そうして共感的な理解を示しながら、例えば、 「発表している時に、あなたの呼吸は速くなっていた ように見えましたがどうでしたか」と気付きを促進してあげる。話すのが早くなったときに呼吸も速 くなっているのですよね。ゆっくり話さなければダメだと言われても、そんなことは分かっていても できない。それならどうしたらいいのかと言えば、呼吸をゆっくりしさえすれば、話はゆっくりなる わけですよ。このように具体的な体験をしてもらうということです。 それから、無意識的な対応をする学生へのアドバイスです。実際にあった会話なのですが、 「この研 究の中で、何か一番、魅力的なのでしょうか」という講師からの問いに、 「そうですね。社会貢献でき ることですかね」と答えたのですが、その時に、腕を組んで、首を傾けていたのです。 この態度を見てどう思われますか。何を偉そうにと思いますよね。ところが本人は気付いていない のですよ。それで何をするかと言ったら、 「首が曲がっていたのだけれど、どういうこと」と聞くわけ です。実際に僕が首を傾けて見せます。そうすれば学生はすぐに気が付くわけですよ。つまり鏡にな ってあげればいい。つまり先ほど申し上げたように、非言語的なメッセージが影響を及ぼすわけだか ら、そのことに気をつけましょうと体験してもらうわけです。 これらをまとめますと、とにかくネガティブな体験に終始することを避ける必要があります。体験 したことから何を学ぶかという気持ちにさせてあげる。そのためには、指導する側が気を付けなけれ ばいけないと思います。どれほど、その学生のことを思って言っても、伝わらなければ意味が無い。 よく小学校のお子さんに、電車の中などで、怒りながら「あんたのことを思って言っているのよ」 と言っている風景を見ますが、それは違うだろうと思います。この子がどう思っているかを先に聞き なよと思うわけです。つまりどんなに善意があっても、表現の仕方を間違えてしまったら、伝わらな いということです。 それから、学生の自尊感情を大切にするということです。どれほどこちらが良かれと思ってコメン トしても、受け取り方は、千差万別なのですよ。本当に。そのときに受け止めた瞬間の非言語的な態 度を見れば、その子がきちんと受け止めたかどうかは、その場ですぐに分かる話なのです。だからそ の場できちんと手当てをする必要があるということです。それをなし崩しにしてはいけない。 それから非言語的な表現については、その場でよく観察して、効果的なフィードバックを与えれば いいということです。その辺をなし崩しにすると、気付きの機会が得られないという話なのです。 受講した学生のコメントを紹介します。これを見ると、能力の不足への気付きになったことが分か るコメントが出ています。また「指摘されるまで気付きませんでしたが、プレゼンの際に、人それぞ れ癖があることを知りました」とあり、これも気付きを促進している例だと思います。また「相手の 105 ことを考えて発信することと、できるだけ相手から情報を引き出すことを意識していきたいと思いま す」と自分で考えたコメントがありますので、何らかの効果があったと言っていいと思っています。 まとめ まとめとしまして、評価項目を細分化したことで、学生自身が自分の課題を具体的に意識すること ができたこと。それから自己評価のコメント欄に、2 つの質問項目を設けたことで、自分が体験した ことが何だったのかをしっかり認識してもらうことと、それが将来に対してあるいは社会に対してい かに役立つかを意識してもらうこと。 さらに効果的なフィードバックによって、学生のモチベーションを向上させることができたと思い ます。またリフレームによって、学生が講師のコメントをしっかりと受け止めることができたのでは ないかと推察しています。 また僕は特にこれが重要だと思っているのですが、その場で起こったことに対して、即、その場で 対応することだと思います。その場で学生に気付きを与えることができたと思います。以上で、報告 を終えます。 106 社会人基礎力育成事例研究セミナー 名古屋会場 第 2 部 村林聖子氏発言 日時:平成22年9月21日(月) 場所:河合塾名古屋千種キャンパスデルファイホール 発言者: 村林聖子 愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 社会人基礎力は「自分の強み・弱みを意識するためのツール」として1~3年次にかけて段階的に意識 付けさせる。更に独自の「自己目標設定・評価シート」で学生自身の振り返りを促し、グループ面談では 学生に自分の役割と他者への理解を意識させるなど、新しい指導のサイクルを導入した。 学生の自己理解と自信のための社会人基礎力 学部教育と社会人基礎力 はじめまして、村林です。愛知学泉大学には家政学部と経営学部とコミュニティ政策学部の 3 学部 があります。2009 年度から全学部で社会人基礎力育成に取り組むことになり、2008 年度からコミュ ニティ政策学部の教務委員長をしていた私が、学部の責任者としてこれに関わることになりましたの で、その実例をご紹介させていただきます。 コミュニティ政策学部は、現実の社会における問題は、一つの専門性だけでは解決できないという 認識に立って作られた学部です。例えば児童虐待という問題は、 児童福祉という専門性だけではなく、 学校や病院などの取組も加わることによって、現実的に解決されていきます。従来の学問分野を横に つないで、現実の問題の解決にコミットしていきたいという発想の中で作られた学部です。その教育 目標は、地域のさまざまな問題を発見し、解決策を考え、実践する人材の育成にあります。13 年前、 1998 年に作られた学部です。 この学部の教育の特徴として、出発点から理論と実践の二つが考えられてきました。理論の部分は、 大学の講義科目やゼミなどで専門性を深め、広げていきます。非常に学際的にさまざまな専門性を持 った教員で一つの学部が形成されています。学生にとっては、例えば自分が公務員になりたいという ときに、福祉に詳しい公務員になりたいとか、環境政策に詳しい公務員になりたいという専門性を深 めることができるようになっています。 そのため一部の科目を 4 つのコースに分けています。例えば福祉に詳しい公務員を目指すのであれ ば、地方行政コースと環境・福祉・スポーツ政策コースの 2 つを履修すれば専門性が深められます、 という形です。 コミュニティ運営実習という科目は 3 年次の必修科目で、一年間通して活動されるものです。担当 教員は複数いまして、毎年 7~8 つの実習が展開しています。担当教員それぞれの専門性とネットワ ークに基づいて、学外の福祉団体や自然保護団体、スポーツ団体、あるいは自治会だったり、地元農 家だったり、自治体だったり、企業だったりするのですが、そうした学外の組織と連携して、そこで の問題解決や、共同での企画運営を実践的に行うという科目です。学部は 1 学年 100 名ですので、1 つの実習は 10 名前後で行っています。 いくつか 2009 年度の取組をご紹介しますと、建築設計を専門とし、地域の中での空間の使い方、 公園のあり方などを考えておられる伊藤雅春教員は、愛知県みよし市の農村生活アドバイザーの方と 連携し、大学キャンパスでファーマーズマーケットを定期開催する実習を行いました。 また高齢者福祉を専門とする小坂啓史教員は、豊田市内の福祉団体と連携し、介助やレクリエーシ ョン活動の企画・運営を行うことを通して、福祉コミュニティについて学ぶ実習を行いました。 さらにカメの研究をされている矢部隆教員は、渥美自然の会、あかばね塾などと連携し、自然観察 107 会、環境調査、会誌発行どに参加し、企画や組織運営を体験し学ぶ実習を行いました。 また金融やマーケティングを専門とされる三村聡教員は、愛知県豊田市逢妻地域を対象として、逢 妻地域会議、小学校、中学校、高校、豊田市役所、トヨタ自動車、シンクタンクと連携し、小学生・ 地域住民を交通事故から守るための活動の企画・運営に参加する実習を行いました。 この他、スポーツ経営学を専門とされる山本達三教員は、大学のグランドを利用して、小学生対象 のサッカー大会を開いたり、冬にはスキーツアーを企画運営する実習を行いました。 今年は新しく、犯罪被害者の支援をテーマとするものや、豊田市の中心地の活性化をテーマとする ものが加わりました。後者では市街地中心部にパブリカという活動センターが作られたのですが、こ の運営に学生が関わり、地元の高専や高校の学生たちと、街をどう活性化させていくか、一緒に考え るという取組を行っています。 こうした運営実習では、メンバーが一つの目標を共有し、役割意識を持って、よりよいチーム活動 を行うことが求められています。社会人基礎力が育成される場が、すでに学部カリキュラムの中に存 在しているということになりますので、この科目で 2009 年度の社会人基礎力の育成の取組を行って いくことになりました。 なお、先にも述べましたが、この運営実習は 3 年次の必修科目です。これに対して、プロジェクト 型で、何か一つの企画に有志の学生を募って行うという案もありました。しかし今、学生の中には、 経済的困窮で、学費をアルバイトで稼いでいる学生もいます。プロジェクト型だと時間的また経済的 に余裕のある学生しか参加できないということになってしまいかねないと考え、学部としてはこの必 修科目を使っていこうということになりました。 学部学生と社会人基礎力 コミュニティ政策学部は、豊田市にあり、一学年 100 名の小規模な学部です。学生の中には、小さ な大学・学部だからこそ、そこでいろいろなことを行ってみたいという積極性のある学生もいます。 また社会科学系の中で、生態学や福祉、スポーツを考えることができる学部なので、それをやりたい という学生もいます。一方では、自分自身に対して自信が持てずに小規模な雰囲気を望む学生もいま す。小規模ですので、学生と教員との距離が非常に近い学部です。 学生の将来像、進路はさまざまで、学部全体として一つの将来目標は作れません。ですから学部と しての社会人基礎力育成の取組では、何か目標設定をするのではなく、社会人基礎力育成の取組自体 が、学生自身にとって、自分自身の強みと弱みを認識することになるものとしました。また私たち教 員や外部の方の学生評価は、学生の自己認識をサポートすることだと位置付けました。 学部の取組の工夫点の一つは、3 年間の段階的なプログラムとして構成したことです。最初から社 会人基礎力はこういうものだと言ってしまうと、学生が、優等生的な振る舞いをすることが求められ ていると受け止めてしまうのではないかということを危惧しましたので、1 年次はあまり社会人基礎 力自体を意識させず、社会に出ると、外側から評価される項目としてこういうものがあるという程度 の理解をしてもらうことにしました。 2 年次には、ゼミを半期ごとに行っていますので、そのゼミでの、議論をするとか、報告原稿を作 るといった活動の中で、担当教員がアドバイスをすることを取り入れました。演習でシートの記入を し、担当教員による評価を行い、社会人基礎力についての意識を高めます。 3 年次には、運営実習が 1 年間通して行われますので、そこには担当教員だけでなく、外部から一 人の方に評価に入っていただき、年間を通じて、中間と事後の 2 回、学生はその方にお会いすること にしました。その面談の中で学生は自分がどのような活動をしたのかなどを説明します。自分の思い 108 をうまく伝える訓練の場としても、評価というものを位置付けています。 学生が取り組むのは自己目標設定・評価シートの記入です。3 年生の 4 月に運営実習が始まります が、そこで以後 1 年間の運営実習の内容と課題について認識する機会が与えられます。そこで、5 月 の中旬までに、学生は 12 の能力要素のそれぞれについて、現在の自分にとっての難易度を 5 段階で 判断するとともに、自己目標や意識したい社会人基礎力を自分の言葉で記入します。そして半年、も しくは 1 年活動した後に、どれだけその要素を発揮できたかを 5 段階で自己評価します。 学生自身の自己評価とともに、他者との面接・面談の機会もあります。2 年次では担当教員が、3 年次では担当教員以外の教員や学外の実習先の方が行います。学生自身が「自分はこれぐらいだった と思う」と自己評価した発揮レベルを見て、評価者は「このように自己評価しているけれども、もっ とあの点やこの点も評価していいのではないのか」というようなアドバイスをします。このアドバイ スの後に、学生は再度自己評価します。 この面接・面談はグループでも可能とし、そこでは実習のメンバー同士で誉めあうということも取 り入れました。学生同士でチーム活動におけるお互いの良い点を指摘しあうことで、学生は、自分で は無意識にしている行動を他の人が見ていてくれて、このように評価してくれるのだということに気 付くことになります。 学生はまず自分で一度振り返りをし、面接・面談でのアドバイスを新たな気付きとして、もう一度 振り返るということになります。教員や他のメンバーなどに肯定的に捉えてもらった自分の強みを、 再度自分なりに表現することで、就職活動などで自分の行動を客観的にかつ肯定的に語る訓練になっ ています。 学部教員と社会人基礎力 なぜ社会人基礎力育成を、学生自身が自分の強みと弱みを認識する取組だと位置付けをしたのかと 言うと、学部の教員として検討課題、簡単に言うと不安があったためです。 不安というのは、学部教員は社会人基礎力を指導できるのだろうかということです。教員は担当科 目の成績を評価するということでは、一定の資格を持っていると言えるだろうが、社会人基礎力育成 を指導しそしてそれを評価することはできるのだろうか、ということです。大学教員は社会性がない とされていますので、それで指導できるのか、評価できるのかという疑問がたくさんありました。 また私たちの学部は、非常に学際的で、専門分野が異なっています。分野が異なるということは、 自分自身が学生の時にも、教員とどのような関係を持っていたのか、どのようなことが教育目標だっ たのかという点でずれているということです。そのため統一の目標を持ち指導することは難しいと考 えました。 運営実習毎に活動内容や、社会人基礎力の重点項目も違ってくることになります。ですから学部と しては統一的な目標を持って社会人基礎力の育成を行うのではなく、運営実習という科目を、学生が 社会人基礎力を意識して活動する場と位置付け、そして教員もしくは評価者には、学生に対するアド バイスをお願いしました。 つまり検討課題の中心は、学生に対する公平性をいかに確保するのかということでした。運営実習 毎に内容が違う。また担当教員によって指導の仕方も違ってくる。その中で、公平性を確保しながら どう学部として社会人基礎力育成に取り組むのかが検討課題でした。 学生自身の自己理解のための取組だと位置付けることで、統一的な学部の取組ということになりま した。評価も学生に対するアドバイスと捉え、そこでは誉めることを重視しました。それは学生にと 109 っては自信を付けてもらう、自分のいいところを自覚してもらうということでしたが、学部教員にと っては、ハラスメント防止策でもありました。誉めることを中心とする仕組みを作ったことで、指導 と言う名のハラスメントにならない対策になったと思います。 おわりに 私たちの学部では、小規模の、非常に分野が違う教員の中で、共通見解を持ってこれに取り組みま した。そのような一つの実例として、お聞きいただければと思います。報告は以上です。 110 社会人基礎力育成事例研究セミナー 名古屋会場 第 3 部 パネルディスカッション 日時:平成 22 年 9 月 21 日(月) 場所:河合塾名古屋千種キャンパスデルファイホール 発言者: 杉浦太一 岐阜大学医学部看護科教授 村林聖子 愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 根岸和政 大阪大学光科学センター特任研究員 大山雅嗣 財団法人 日本生産性本部主任研究員 司会: 山本真司 学校法人 河合塾 講演 ポジションステートメント 杉浦太一 岐阜大学医学部看護科教授 社会人基礎力を看護スキルの基になるものとして捉え、養成教育のカリキュラムで重要な位置を占める「臨地 実習(医療機関や介護施設など)」に社会人基礎力の振り返りを導入。従来から行っていた臨地実習評価に加 えて社会人基礎力の評価表を導入することで、学生の意識付けを促す取り組みを行う。 私たちのところで、経済産業省の事業として行ったテーマは「社会人基礎力の育成を目指した看護 学実習における育成・評価プログラムの開発・実施」でした。 看護の特徴は、サービス業で、ストレスが多い仕事ということです。看護師は看護過程の展開をしな がら、看護を行っています。どういうことかというと、アセスメントをして、看護診断という名前で 患者さんが持っている健康問題などを明らかにしていって、それらについてどのように援助していか ねばならないかという計画を立てます。そして援助の評価をして、どの段階に戻って考え直さなくて はいけないのか考えます。要するに社会人基礎力の中の考え抜く力ですね。それがメインになってき ます。 なぜ看護師に社会人基礎力が問われるのでしょうか。看護師はいろいろな援助を考えて実践しなけれ ばならず、他の医療者、また地域社会などと連携を取っていく必要があり、コーディネーターの役割 を果たしていかなければなりません。看護学科における社会人基礎力育成にあたっては、経済産業省 から出てきた 12 の要素に、倫理という項目を入れて、13 項目で考えていました。 実際の社会人基礎力育成では、臨地実習に焦点をました。実習前と実習中の自己学習の段階では、 主体性、実行力が発揮されないといけない。それから患者や医療者、地域住民と関わる段階には、主 体性、働きかけ力、実行力と、倫理の部分が絶対に必要になってきます。また対象のニーズを考えて 個別性にあった具体的な援助を考え、実施する段階では、課題発見力、計画力、想像力と、主体性、 実行力、倫理性が関わってきます。そして臨地実習指導者やグループメンバーとの良い人間関係を保 ち、お互いの学びを高め合うというところで、チームワーク力が問われてきます。 岐阜大学医学部看護学科を例にして、看護学実習(臨地実習)の特徴をお話します。まず、1年生 で初期体験実習として看護師が働く現場を知る実習を行い、2 年生では初期看護学実習として初めて 患者さんを受け持ちます。その後、3 年生から 4 年生にかけて成人や母性、小児などの実習が入りま す。2 年生からは受け持ち患者さんに対して看護過程を展開しながら、学習を深めていきます。 一つ大事なことは、岐阜大学だけではないのですが、看護学実習の評価には、もともと社会人基礎 力の規律性や考える力などの要素は既に含まれていることです。 岐阜大学医学部看護学科の実習スケジュールでは、1 年生では 6 月に1ヶ月かけて毎週 1 日現場に行 きます。2 年生では 11 月の半ばから 12 月にかけて、学生が複数のグループに分かれ、2 週間ずつ行 きます。3 年生になると、10 月から 3 月の始めまで 6 種類の実習に行くことになります。4 年生も 5 月から 7 月の終わりまで、実習に出ます。教員も学生と同じくらい実習の場で指導をします。さらに 教員には実習以外にも他学年の講義が入ってきますので、時間割上隙間がないぐらい詰まったスケジ ュールになります。 111 病院などへの協力依頼については、社会人基礎力のプロジェクトのメンバーが分担して、看護部長 など実施施設の責任者のところに話にいきました。 結果的にほとんどの施設で協力が得られましたが、 協力内容には温度差がありました。例えば、 「経済産業省の表を使った数値での評価はできるけれども、 評価の根拠の自由記述の部分は、記入する時間が無いため、口で言うので後で記入しておいて」とい うような話も聞きました。 他にも、 「ようやく学校側がそういうことをやるようになったか」という発言がありました。またも う一つ印象に残っているのですけれども、 「働くスタッフに社会人基礎力が欠如しているので、それを 高めなければね」というような発言も見られていました。一貫した評価の仕方を工夫して、積極的に 協力してもらえた施設もありました。 トップは必要性を感じているのだけれども、現場の方はこれ以上、仕事が増えたら困るということ もありましたし、プロジェクトへの協力後、社会人基礎力を取り入れる方向で動き出した病院もある ように聞いています。 プログラムは、経済産業省 HP の評価シートを一部、看護実習に合うように変えて使っています。 しかし、この評価シートだけでは実習の記録は終わりません。本来の実習記録が、実習ごとに何十枚 とあるため、学生は実習記録を書きながら評価シートも書いていく形になりました。 教員は、できるだけ評価の部分と自由記述の部分に関してリアルタイムにフィードバックするよう に関わりました。また、事前説明会を学生と教員に行っています。そのときに評価のスケジュールに 関しても話しています。実習終了後――3 年生は 8 週間後の区切り――に事後評価をしまして、2 年 生と 3 年生には教員が小集団の面接を行い、学びの確認をしました。 評価は、レベル 1「発揮できない」 、レベル 2「通常の状態では発揮できる」、レベル 3「通常の状態 で効果的に発揮できる。困難な状況でも発揮できる」としました。自由記述は、評価の根拠を書くよ うに設定しました。また「具体的行動事実の例」を作成して学生に配布しました。 振り返りまでの時間ですが、1 週間に一度は評価シートを書くことにしたのですが、学生は提出日 の直前に書かなくてはいけないと思ったらしく、 「いいことがあったのだけれど忘れてしまって思い出 すだけで大変だった」とか、 「記入したのだけれど、多分こうだった」と内容に自信の無いことを話す 学生もいました。1 週間に一度では忘れてしまうことが多々あるため、振り返りは、評価の根拠にな る体験が起こった時に、できるだけリアルタイムで記入することが大事ですし、指導教員や臨床指導 者にも同じことが言えます。 実習中には、学生と教員および臨床指導者が集うカンファレンスを行うのですが、持ち方は実習に よっていろいろです。毎日から週に 1 回行うグループカンファレンスでは、実習中に体験した困難な 場面への対応について話し合うテーマカンファレンスと、受け持ちの健康問題の把握や、援助方法の 検討を行う――ドクターたちが行うような――症例カンファレンスです。このうち、テーマカンファ レンスでは社会人基礎力育成に関するフィードバックを、ある程度返せました。特に 2 年生の基礎実 習――2 週間なのですけれども――では毎日カンファレンスを行い、フィードバックも返せたと思い ます。 3 段階の評価は、やはり実習が終われば上がりましたが、学年によって上がる割合は異なっていま した。 学生の自由記述に注目してみると、主体性では「実習で必要な技術について帰校日に自発的に練習し た」という主体性が発揮できた記述や、 「分からないことを自分から看護師さんに質問することがなか なかできませんでした」という発揮できなかった記述がありました。また、「『やってみたい人』と言 われた時に、今まではなかなかできなかったけれど、自分からやりたいと言えた」という発揮できた 記述などがありました。 働きかけ力は傾聴力と重なる部分もあるのですが、実習で患者さんからいろいろと話を聞くことは 働きかけ力として定義しました。その中で、 「グループメンバーの人に環境整備の・・・これはベッド 112 サイドの整備ですが――協力のお願いをし、手伝ってもらう計画を立てた」とか、 「グループメンバー を巻き込んで、授乳法の説明をできた」という、力を発揮できたものや、 「自分のやりたいことを周囲 に提示はするが、まだ巻き込むまでには至ってない」という十分に発揮できなかった記述がありまし た。また、 「『(物事を)~やって』と言ってくる人に『一緒にやりましょうか』という呼びかけができ た」という記述もありました。 こうした実習後に、2、3 年生ではまとめ会を行っています。5、6 人が一つのグループになり、教 員が一人入って、一人ずつ、 「どのようなことを実習中に学ぶことができたか、どこの部分でも構わな いから話してください」というように投げかけます。事後評価シートの記入後におこない、目標とし ては、自分自身の臨地実習前半で活用した、または活用できなかった社会人基礎力の再確認と、今後 の自己目標を確認すること、さらには、他の学生の社会人基礎力の発揮の場面、または発揮できなか った状況とその対処などを共有して、今後の実習につなげていくこととしました。 まとめ会で出された内容を紹介します。2 年生は、 「最初は患者のベッドサイドに行っていいのか分 からなかった」「ケアは PT などと相談しながら内容を考えて行うことができた」 「記録を含む実習中 のストレスは、グループ仲間と週末などに集まって一緒に記録したり話したりすることで解消できた」 と話していました。 また、3 年生は、 「実習は一人で考え行動すると思っていたが、同じ疾患の患者を受け持つ学生と会話 し相談することでアセスメントやケアの幅がとても広がった。また、看護師や教員からの助言もとて も役立った」 「今までの自分は人に言われても、妥協してしまうのが嫌で受け入れることが少なかった が、この実習で人の意見も受け入れられるようになったと思う」と話していました。 報告は以上です。 振り返り・評価を活用した社会人基礎力の育成 山本 今、先生方にお話いただいたのは、まさに今日の主題である社会人基礎力をめぐっての評価を、 多用な形で展開している現実でした。これをどう司会の立場でまとめたらいいか、難しいなという気 がしているのですが、もともと評価というと、あまりいいイメージがないと思います。効果測定とい う言葉から評価がイメージされるわけですが、それでも社会人基礎力は見えにくい能力なので、やは り効果測定が重要ではないかという中で、評価が行われているわけですが、その一方で効果測定以外 に、育成の側面が花開いているのが、社会人基礎力の新しい成果です。 今まで、大学教育の中で評価があまりいいものとされていなかったことに対して、ユニークな形で 開いてきたと思うのですけれども、これをさらにいろいろなところで開いていこうと考えたときに、 評価についての良かった点、悪かった点を、忌憚無く話していただくことが、次につながる一歩かな と思います。そうした観点で、現状をお話ながら、一方で評価とは何か、社会人基礎力とは何か、産 業界はどのような役割を負っているかなどをお聞きして、今日、来ているみなさんにこの話を持ち帰 っていただいて、職場の中で生かしていけたらなと思います。 それでまず、各先生方が取っている立場の中で、社会人基礎力とは一体何であると捉えているのか お聞きしたいと思います。実は社会人基礎力のユニークなところは、12 の要素は並んでいるものの、 共通言語といいながらも、その解釈が非常に多様な点です。それが現にある教育と呼応しあう中で意 味がでてくるのではないかと思うので、それぞれの方々が今いる大学で、また自分の経験、そしてま たこのプログラムをやらなければいけないという立場の中で、考えたことをお話いただけたらなと思 います。大山さんからお話ください。 大山 社会人基礎力とは何かということですね。私は企業の人材開発のコンサルタントをしてきまし たので、コンピテンシーという観点は今までもあったのですね。だから大学教育の中でも、行動指標 113 として具体的なものを提示して、それを<見える化>にするということだと思います。しかし経済産 業省の出しているものでは、まだまだ<見える化>にはなっていないので、それでアドバイスシート を作ったのですね。 だから社会人基礎力というのは、スキルというか、コンピテンシーとして身に付けることができる もので、トレーニングすれば身に付けられるということです。例えば 12 の要素のうちの「主体性」は 意欲ですが、それを行動指標に落としこんで、<スキル>にしてしまう。そこがやはり見せ所という か、われわれキャリアコンサルタントが入って、しっかり作り込む所だと思います。具体的な行動指 標として作れるかどうかだと思います。傾聴力にしても、「それは何ですか」と聞かれたときに、「傾 聴力とはこういうことです。こういう行動です」と具体的に、明確に定義される必要があります。 もう一つ、私はアドバイスシートを作って、A4 一枚にまとめましたが、社会人基礎力を通して仕事 とは何かというリアルなものを学生に伝えたかったのですね。学生さんにできるだけリアルに、ニュ ートラルに仕事のことを伝えたい。だから傾聴についても、そのテクニカルな部分とあわせて、考え 方やマインドを伝えたい。例えば傾聴力でいえば、同時並行的に、発信力も活かさなければいけない。 要するに社会人基礎力は状況に応じてバランスを図りながら、コントロールできるかどうかが大事な のですね。状況に応じて傾聴もする、また発信もする。そうしたリアルな部分を伝えたかったのです。 根岸 私は非常にシンプルに考えていて、これからの日本や世界を動かしていくのが、今の学生さん であることを考えれば、社会人としてどのように生きていくのかということは、すなわち世の中をど うやって作っていくかということなのだと思うのです。ですから社会人として本当に世の中に貢献す る人物になってもらいたいというのが、私の個人的な思いでもあります。 今、日本で養護施設に措置されている子ども達が 3 万人ぐらいいます。みなさんご存知のように、 1998 年以降でしょうか、自殺される方が 3 万人を超える状態が続いています。これらを考えたとき に、やはりこの社会が何かを考えなければいけない。いろいろな角度からこういった問題に対して、 取組がなされていることが分かるのですが、私自身で何ができるのか考えたときに、これからの学生 さんの自己実現のお手伝いができればな、というのが、私の社会人基礎力の位置付けであり、モチベ ーションです。 村林 社会人基礎力ですが、学生にとっては一つの目安だろうと思います。自分に対して他の人が評 価するときに、こういう項目があるのだなという目安であり、それに対して、例えば自分はこういう 場面でこういう形で主体性を発揮できたというような記録を残す作業として、取組を位置付けました。 教務として心配だったのは、教育の場面で、成績評価とは別の評価を教員が行っていいのかという ことです。その点で社会人基礎力は怖い面もあると感じています。その評価を学生が絶対的なものと して受け止めてしまったときの怖さがあるので、私たちの学部では、この評価をするときに数値化は せず、文章であなたのこういうところはこうですよと、言葉をたくさん与えるという形での評価をし ています。 そのやり方や内容によって社会人基礎力が暴力的なものに見える学生もいるだろうと私は思ってい ます。 杉浦 私は小児看護に関わっているのですけれども、社会人基礎力はやはり社会で生きていく力だと 思います。私どもは岐阜大学として大学生の基礎力の育成に関わったりましたが、社会人としての教 育力が落ちている高校、中学校、小学校とか、もっと遡って家庭で行う必要があると思うのですね。 教育力は落ちているけれども、芽はあるのかなと思うので、どこから、誰が、どのように社会人基礎 力を育成していくかが課題です。大学としてもどうやったら(社会人基礎力の)種から芽を出すこと ができるのか、芽をどのように育てていくのかが大切になってくると思っています。 114 山本 ありがとうございました。今、杉浦先生がお話されていた、社会で必要になる力として育成さ せていく方向の中に、振り返り・評価があると思うのですが、その点で、今回のような振り返りや評 価はどうだったのでしょうか。 また実際に質問の中でも「成果があったどうか聞きたい」というのがあるのですが、授業の中で、 例えば村林先生の所ですと演習で外に出向いているわけですから、そこで成長している部分があると 思います。それに対して、あらためてその場面を見ようとしたということに、いろいろと手間を掛け ているわけで、そこに喜びがあるとは思うのですけれども、実際にどのような成果があったのか、お 話いただきたいのですが。 村林 学生は、運営実習を 1 年間通してやっています。その最初に各項目について自分にとっての難 易度を書いておき、1 年間の活動が終わったときに、自分でどの程度努力できたか評価をします。そ して外部評価の後、もう一回自己評価をしてみます。 その中で目に見えて明らかなのは、学生自身の言葉が増えてくることです。語数が確実に増えてき ます。初めは言葉が単純だったり、不明瞭だったりするのですが、面談や面接での学生自身の発言や、 シートでの文章が非常に分かりやすい表現になり、どんどんと深みを増してきます。そういうところ で、目に見えて学生自身の成長になっていると思います。 学生自身がそれを有効利用しているのは、就職活動です。履歴書を書くときに、自分の長所を表現 するような際に生かしているという実感があります。また、普段の学生の行動の中でも、サークル活 動を見直してみたとか、地域での活動でこれを生かしてみたということも出てきています。彼らにと っては勇気が沸いたのかなと感じています。 大山 私が言いたかったのは、社会人基礎力ではなしに、それを動かしているプログラムというか、 体験が成長させるのだと思うということです。武蔵大学さんでは、非常に難易度の高い課題を与える のですね。私自身も、えっ、これはできるかなと思うような。それをチームでやっていくわけですよ。 それで例えば企業に行ったときも、多分、担当の先生が、遠慮無しにがんがんやってくださいね、叱 ってくださいねと言っていると思うのです。面談するとそれが分かるのです。その時、どういうとこ ろが主体的にできたのと聞いていくわけですが、そうすると気付いていくのですね。「自分は 1 年生 なので、採用や就職のことは、まったく考えていませんでした」とか、一から知らなくてはいけない と、知識を仕入れていく段階から気付きがあるのですよね。それはやはり、どういった刺激的な、感 情を揺さぶるような体験を出せるかどうかにかかってくることなのですよ。 私は他の大学でもいろいろとプログラムを行っているのですが、このようなことで感動するのかと いうこともあります。例えばグループワークをやることでも学生さんは感動するのですよ。 「こんなこ と、授業で初めてやりました」とか「大山さんは、90 分のうち 10 分しかしゃべらないのですね」と かいいます。実際は初めに 10 分ぐらい話して、中で 5 分ぐらい話して、最後に 15 分ぐらいでまとめ て、そこで引き出してあげるわけですが、それ以外の学生同士で話す時間が非常に新鮮で、そういっ た体験が成長につながるということだと思うのです。 根岸 大山さんの言われたことに非常に賛同します。やはり体験して成長するというのが非常に重要 なポイントになるので、研究室単位での実際の講義が始まる前に、社会人基礎力に参加する学生全員 に対して、コミュニケーション学や交渉学の講義を持っているのですね。そこで何をしているかとい うと、ワークショップと同じで、基本的にやってもらうわけです。そこで体験しておいてもらえたら、 例えば自分が主張をするときに、「私は」という I メッセージで伝えないと、誰が言っているか分か らないというようなことを、練習してもらうわけですよ。そういう風にしておけば、プレゼンテーシ 115 ョンのときに、I メッセージになっていなかったら、アイが足りないよと言ってあげれば分かるわけ です。 そうした取組をしていく中で、成長していく機会があるし、実際に学生が、就職面接のときにも、I メッセージがいいのだと聞いてきて、面接中に、私はこう考えます、私やこう思います、私はこう考 えますと、 「私は」を続けたら採用になりましたという連絡が来ました。驚きましたけれども、それぐ らいに、自分のものにして生かそうとしていることが成長の目安だと思いますので、それが実感でき ることを、多々、体験させてもらいました。 村林 少し付け足しますと、私たちの方は従来あった運営実習の中で、社会人基礎力として振り返っ てもらいました。運営実習自体、活動をし、その中で喜びや悲しみがあり、そして報告書にまとめた り打ち上げをしたりということがあるわけです。社会人基礎力のシート記入があると、客観的に自分 自身を振り返ったり、シート記入の際に他のメンバーから、あの時はあなたのこういうところが良か ったと言ってもらうことで、新たな気付きになったりします。活動自体の成果なのか、社会人基礎力 の成果なのかは分かりませんが、言葉化することは非常に意味があるし、12 の要素に基づいて振り返 ってごらんと言えること自体に意味があると思います。 杉浦 学生の成長評価については、4 週間とか 2 週間の短いスパンで学生を見ていくので、なかなか 難しいのですが、学生の評価を学生自身と教員および臨床指導者が 3 段階でつけました。その結果を まとめて興味深かったのは、2 年生では学生の自己評価よりも教員や臨床指導者の方が高くつけてい るのです。初めての本格的な実習で学生が折れてしまうことが非常に問題だと思っていますので、自 己評価が低い学生に「もっと頑張っていたよ」というフィードバックができたと思います。 学生の成長については、先ほど発表しました学生の振り返りの言葉が物語っていると思います。発 表ですべてを伝えたわけではありません。やはり患者さんも様々ですし、その時の学生の体験は全て 異なってきます。患者さんの個別性に左右されるだけでなく、同じ患者さんを複数の学生が受け持っ ても体験が違うことがあります。ですから学生の言葉だけで成長したとは言い切れないのですけれど も、やはりいろいろな気付きが学生の中にありました。 山本 評価の成果は、明確ではないけれどもあるだろうというお話でしたが、実施の問題があるので はないかと思うのですね。そこでいろいろと大変なことがあったのではないかと思います。例えば杉 浦先生の場合は、病院の現場に受けていただくわけですが、その点で質問があって、 「評価に非協力だ った機関には、どのような理解活動をしたのでしょうか。今回の教育の心を評価サイドに理解してい ただかないと、フィードバックができないで学生が可哀相なのではないか」とあります。また「やろ うとしない、こういう活動に乗ってこない学生に対しては、どういう対処法がありましたか」という 質問もあります。 新しい試みですので、いろいろと苦労や困難があったのではないかと思うのですが、その辺を忌憚 無くお話いただければと思います。 大山 武蔵大学さんは、ゼミの武蔵と言われていますから、来る学生さんは、そもそも問題意識が高 いのですね。先ほどアドバイスシートの話をしましたが、面談のときも振り返りシートを使います。 目標を設定するときに行動計画を立ててもらいますから、それをやってくださいねという話なのです。 それでやってもらって振り返ってどうたったのかという話になります。 ただ中にはやはりやってみて、モチベーションが上がらずに萎えそうになる学生さんはいますね。 個別面談をしているメリットはそこにあると思うのです。先生にも相談できない。先生が決め付けて しまって、 「頑張ればいいのだよ」と気持ちを切り捨ててしまうこともあるかもしれない。そうなると 116 やはりニュートラルな第三者で、しっかり組んでおいたキャリアコンサルタントがいることによって、 そこでもう一度やってみようかなという気持ちになれます。こういうことは結構ありました。社会人 基礎力をやりながら、実は自分はいろいろなことで悩みがあって、そっちよりも大変だなどという場 合もあって、そこで個別で対応できるということが、一つの対処法なのではないかなと思います。 根岸 実施の上で大変だったことですが、一つには 12 の研究室に外部の企業の先生がいらっしゃる ので、スケジュール管理が非常に大変でした。それこそ会社さんの都合で、朝の 8 時からでないと無 理だとか、会社が終わってからでないとできない場合は、夜の 7 時から 10 時までということも実際 にあり、この辺が一番、大変でした。 それから乗ってこない学生さんの話ですが、当たり前のようにいますよね。その場合、乗ってこな いからどうなのだという話の前に、なぜ乗らないのかが大事なのですね。例えば大学の先生があまり 賛同していなかったら、そこの学生に無理やりやらそうとしてもそれは無理です。 まず各研究室の先生が、社会人基礎力育成事業を使って、学生に対してこういったこともあると教 えたことを、北岡教授が聞き取りをしながら、どういった形で展開するか、各研究室の色合いに合わ せる形で展開するわけです。それでいろいろと工夫をしても、乗ってこない学生に対しては、無理に 出てこないでいいですよということを話します。 どういうことなのかというと、大学院生なので、非常に忙しいのですよ。リアルに研究テーマを与 えられていて、後輩たちの指導もあって、学会の発表も控えていて、そんな中で、なんでこんなプレ ゼンをしなくちゃあかんのかということがあったりします。そういうことを鑑みたときに、無理に出 なくていいと説明します。そうすると大概は出るのですよね、人って。不思議なことにね。そういう ときに、意味付けを明確に伝えてあげることが大事です。 また他にも学生が乗ってこないときには、その根拠が必ずあるわけですね。人間の言動に根拠のな いことはないのですよ。その根拠をきちんと聞いてあげて、改善を図る。しかしそれでも無理だとい うことであるならば、それでいいということになります。 阪大の学生さんの中にも、自分で学費を稼がなあかんので、そんな時間はありませんという学生さ んはいます。それを無視してまでやる必要はない。ただ社会人基礎力の中で、このようなことをやっ ていますよとか、過去の報告書などを提示して、何か参考になればいいし、つながりだけはつけてお くという形になります。 実際にやっていく中で、分かっているけれどもできませんという話については、 大山先生と同じで、 個別に相談を受けることを定期的に行います。僕は 90 分時間を取らせてもらってやっています。 村林 私たちの学部では、運営実習は 3 年次の必修科目になっていまして、これをやらないと卒業で きない科目に設定されています。1 年生から段階的に、なぜ 3 年生で実習として外に出て行くのかと いうことを積み重ねていますが、確かに、やる気が落ちている学生や、やりたくないという学生を一 生懸命フォローしながら、なんとかかんとかやっているのが実情です。 社会人基礎力のシート記入については、手を抜く学生もいます。それに対しては手を抜いても構わ ないという姿勢でいます。後で他の友だちがちゃんと書けているものが、自分には書けないことに気 付いたときに、その意義を感じてくれればいいと思っていますので、シートが完璧に書けなくても全 然いいし、その時の感情で手を抜いていてもかまわないという姿勢で取り組んでいます。 杉浦 病院から協力できないと言われた時にどうしているのかというご質問がありましたが、できな いと言われるのは病院よりも規模の小さなところで、訪問看護ステーションであったり保健センター であったりです。そのようなところでは人手が少なく、学生を継続して見ていることが難しいために 時間が無いと言われます。 117 病院でも、学生に関わる指導者が勤務の関係上、日替わりになることがあるので、そのような場合 には学生の成長を見守るための工夫が必要になります。ノートを 1 冊作って、それに学生のことを全 部書いて連絡を取り合うような工夫を病院自体がしてくれたこともありました。反対に、 「工夫などで きない。学校側で考えてよ」という病院・病棟に対しては、先のノートに準ずるようなものを渡して、 できるだけ活用してもらう形をとりました。 実習で学生は本来の実習記録と社会人基礎力の評価シートの両方を書くのですが、両方に同じこ とが書かれていたりします。しかし、書く際は「看護の展開」と「社会人基礎力」の観点に違いがあ ります。違うはずなのですけれど、学生は書いているうちに、同じことを二度書いているような気に なってしまい、記録の大変さが余計に増してしまうことがありました。そこをどうしていくかが課題 です。 (取り組みに)乗ってこない学生はいなかったですね。看護(学科)は真面目な学生が多いとこ ろですし、卒業のための単位認定がかかっていることも影響していると思います。また、社会人基礎 力の観点は看護の実習評価の観点と一部似通っていたりすることも抵抗を少なくしていると思います。 また、社会人基礎力の評価が低いと、実習の評価も低いということがあるので全員取り組んでいまし た。ただ、「やりたくないな」と思いながらやっていた学生はいたはずです。 山本 もう一つ、課題になってくるのは、実際に現場に立って、学生さんにどのように声掛けをして いくかということではないかと思います。先ほど村林先生が、そういうことをできる力は教員にはな いのではないかという意見も言われました。そこまで否定されなくてもいいのではと思ったのですが、 そういう問題をみなさん、気にされているようです。例えば質問で「叱ることへの関わりとは。どう やって叱るのか」というものがあります。またもう少し細かい話になりますが、 「モチベーションの低 い学生がいます。自信はあるのだけれど、自分勝手に動く学生に、どうやって自分に向き合わせるか。 自分の現実を認めたくない学生にどう向き合わせるか」というものもあります。学生に対しての接し 方の工夫というところですが、このような成功があったということを含めて、話していただけたらと 思います。 大山 初日の導入プログラムのワークショップもそうなのですが、カウンセリングとかでも、私や他 のコンサルタントのメンバーで気をつけているのは、初回は、ラポール1形成、信頼関係を築きましょ うねということです。まずは学生さんからプログラム初日の感想を聞きます。 プログラムの初日は企業の方が来られて、企業説明会のような感じもあって、いろいろなことを言 われるのですね。学生たちは、この会社に行くのだなとか、担当者はこのような人なのだなとか、い ろいろなことを思うわけですね。まずはそこに「どうでした?」という形で入っていって、この場は 何でも話せる場だよ、君の成長をこれから一緒に支援していくよとしっかり伝えます。 私自身はワークショップもやり、いろいろと学生さんと会う機会もあるのですが、他のキャリアコ ンサルタントの方はなかなか会えないので、初回の 30 分が重要ですね。先生がどのようにするかはな かなか難しいところがありますけれど、キャリアコンサルタントとしてはそれが大事なのです。だか らそこで学生さんと向き合ってもらいます。 学生さんたちはチームを組みますから、リーダーやサブリーダーなど役割を決めるのですが、リー ダーになった学生さんが自分は向いてないのではないかと言ってくることがあります。そのときに、 こうすればいいのではないのと、寄り添ってあげます。気持ちを聴いてあげて、状況を聴きながらや っていきます。そうするとやはり向き合ってもらえます。 また私が、キャリアプログラムを他の大学でやっているときに気を付けているのは何かというと、 1 ラポール(rapport) 臨床心理学で、セラピストとクライエントの間に、信頼が生まれ、安 心して感情の交流を行える状態のこと 118 学生さんからすればわれわれは上から目線なのですね。だからポジションを降りていくのです。もち ろん指導することは大事なのですが、社会人基礎力についてはキャリアコンサルタントである自分も、 今もなお、継続的に向上を図っていることを伝えます。同じ目線を出せれば、そこでもラポールを築 けます。媚を売るわけではなくて、そういう姿勢を示すことが大事だと思っています。 根岸 学生に対しての接し方については、大山さんがおっしゃってくれたことと、私もまったく同じ ことをしているつもりですけれど、もっと単純に言ってしまうと、笑顔で接すること、これだけです。 なぜかと言うと、笑顔で接するということは、一番、手っ取り早くつながることだからです。 笑顔を共有する中で、次の段階の何に進めるかというと共感なのですよ。共感できるというのはい いことで、何がいいのかというと、失敗しようが成功しようが共感できるのですよ。成功したら誉め ればいいですが、失敗したときには誉めるとはならない。でも共感する態度を取ることはどちらでも できるのですね。だから共にその感情を共有することを意識することがいいのかなと思って、僕はそ の辺を接し方の工夫にしています。 僕は教官ではありませんので、学生さんたちには通りすがりのおっさんのように思われていて、そ れで全然オーケーなのですけれども、僕自身が学生に対する尊敬や尊重を感じていることを表すこと を意識しています。 村林 私自身は運営実習の担当ではないので、普段の大学教育の中でどうしているのかということし か話ができないのですが、教員の間で話をしているのは、自信満々なヤツは鼻をへし折ったらいい、 ガッツリ鼻をへし折って、でも最後にきちんとフォローを入れて、そのときは怒っても、次のときは ちゃんと笑顔で話ができるような関係を作っておかないとダメだよねということです。 報告では誉めるということを強調しましたが、弱いところもきちんと指摘した上で、こういうとこ ろはこうだけれど、ここはいいよねと、そういう形での評価をきちんとしながら、やっていきたいと 話し合っています。 また私が教務として他の先生方にお願いしているのは、感情的になることについてです。運営実習 は学外とのつながりの中で行っていることですので、そこには怒髪天を突くぐらいに腹が立つことも いっぱいあるのですね。ただそういうときにも、自分はこう思うよ、という言い方をしてください、 神様のような存在が言っているのではなくて、自分はこうだから感情的に怒っているのだよ、という ように言ってくださいとお願いしています。 評価の場面で、学部教員が行う部分と、外部評価者にお願いする部分は少し違っています。学内の 教員が行うときには、こういう私はあなたに対してこういう評価をするよというスタンスです。外部 評価の方は年に 2 回しか会わないので、短い時間しか会わない方がこういう評価をした、と。それに 対してあなたの説明はどうだったのか、発表の仕方はどうだったのかの振り返りを学生たちに促すと いう形で行っています。 杉浦 工夫というのは無いといった方が正しいかもしれません。自分の体験しか話せませんが、実習 中に一度(教員または臨床指導者と学生の)ボタンを掛け違ってしまうと、その先、どんどん(学生 の)モチベーションが下がってしまうのですね。何とか戻そうとするのですけれども、戻せなくて、 それでも戻そうとすると、それはもうハラスメントの世界になってしまいそうで、お手上げ状態にな ってしまったことがありました。恥ずかしい話なのですが、その学生にはもう工夫の仕様がなくて、 実習がボロボロで終わってしまいました。学生との相性の問題もあるかもしれませんが、どこかで何 か・・・自分の意識してないところでボタンを一つ掛け間違ってしまうと、後で戻すのが凄く大変な ので、掛け間違わないということに気をつけて、接していかなければならないということを痛感しま した。 119 山本 振り返り・評価についての困難性の話をしていただいたのですが、こういう新しい取組をして いくと、一方でそれは先生方にも学習活動になると思うのですね。自分たちへのフィードバック、効 果というものもあったと思います。それが共有化できれば、いろいろな大学さんや研究機関で、こう いう活動を入れていけるようになるのではないかと思うのですが、そのような意味で、自分にとって 得たことや、自分たちが変わったことがあれば、お話いただけますか。 大山 武蔵大学さんでは、ゼミの武蔵と言うことですから、そういうことばかり行ってきたのですが、 一番大きいのは、その成果が見えたということです。グループワークを行ったり、意見交換を行った りということは、ずっと行われてきて、それを PR もしてきたのですけれども、それだけではなくて、 効果性が分かったということが、先生方にとってあったのではないかと思うのですね。また社会人基 礎力を受けた方は、自分の第一志望の行きたいところに就職ができていると聞きました。そのような 効果が確認できました。 根岸 研究室によってもばらつきはあるのですけれど、ある研究室の教授に言わせると、ドクターコ ースに進学する学生が圧倒的に増えたそうです。実際の企業の方のお話を聞いて、まだまだ自分の研 究は不足している、もう少し技術的な面も含めてトレーニングしてから社会に出たいと、きちっと自 分で認識することができているという点で、高く評価されていました。 僕自身が学んだことは、先ほどボタンの掛け違いの話がありましたけれども、本当に最初の一歩を 間違えると、大変なことになってしまうのですよ。ベクトルを間違えると時間の経過と共に広がって いくわけですから、広がった部分で対策を考えても難しいですね。だから最初の出だしでどれだけ学 生さんの理解を深められるか。またその後に実践してどうなるのか、全てをあらかじめ明らかにして いたら教育になりませんが、こうしたことが考えられると提示してあげる、その匙加減が非常に重要 だということを学びました。 村林 学部として社会人基礎力に取り組むということで、成績評価以外での学生との関わりというこ とで、ハラスメントにならない形でどのように学生に関わっていくのかということについて、学部教 員の間で共有ができたのが、一番大きな成果だと思います。 ゼミごとに学生が分かれていて、その指導はそれぞれの教員が行っていて、遠慮がちだったり、外 から心配をしていたりしたわけですが、こういう仕組みの中で、少し相対化したり、お互いに「叱る だけ叱って、ほっておくのは止めてくれ」とか、そうしたことが言いやすい環境になるので、そうい う仕組み作りに使えるのではないかと思っています。 杉浦 (評価には)経済産業省のホームページからダウンロードできる評価シートをそのまま使って みたのです。評価シートはとても項目が多く、評価シードだけの記入であれば(学生も)やれるので はないかと思います。しかし、看護の場合はさらに本来の実習記録や評価表もあるので、非常に書く ものが増えてしまって、学生自身もアップアップ状態でした。もっと実習の中身に突っ込んでいきた いのだけれど、それより「まず記録をしなければならなかった」という感じが学生の印象としてあり ました。でも、 「面白かった」と言ってくれる学生もいたのです。ですから大事なことは、簡略化では ないのですが、いかに実習の記録の中に(社会人基礎力の要素を)入れ込んでいくかではないかと思 うのです。 社会人基礎力の要素を明確にしたことは学生にとって良かったことだと思います。また、病院など の協力が思っていたよりも得られたというところも良かったことでした。病棟の指導者の方々は、患 者さんの命を預かっていますので、肯定的なフィードバックばかりはできなくて、どうしても良くな いところは「ダメ」になってしまうのですね。なので、学校だけではなくて、できれば将来働くこと 120 になる職場も一緒に社会人基礎力を考えていきたい。そうしないと実習のウエイトは非常に大きいの で、 (うまくいかないと)学生の伸びにはなかなかつながらないのかなということも感想として持って います。 ただ、病院の方も変わろうとしているところが多いと思うので、もう少し様子を見ていくことにな るかなと思っています。 山本 最後の質問になりますが、こうしたものがあります。「あいまいになりそうなスキームに科学 的な視点でアプローチしたいという取組、 意志が感じられました。それが大学の基本なのでしょうか。 一体どういうことが、こうした取組のきっかけになったのでしょうか」 。ということは、大学全体、あ るいはもう少し小さくて学部、学科でもいいのですが、そこに広げていける要素、あるいは原因があ るのではないかということでもあると思うのですが、この点はいかがでしょうか。 大山 私は第三者の視点になりますが、社会人基礎力についてはそれぞれの大学で思いがあると思う ものの、武蔵大学さんではさらに授業を良くしていきたいということが取組の動機だと思います。ゼ ミの武蔵というのはどういうことかと言うと、個別に学生さんを見るということであるわけですが、 より決め細やかな授業の方法の、一つの起爆剤として、社会人基礎力を捉えているのだと思います。 結果として大学の志望者が増えたり、企業にきちんと就職できたりということもあるかもしれません が、まずそのためには、しっかりと授業作りというか、クラス作りというか、個別に対応していこう という視点があったのだと思います。 根岸 北岡教授がここにいれば、端的に説明していただけると思うのですが、北岡教授はパナソニッ クに 10 数年勤務なさって、大学に帰って、学生たちに触れていく中で、何か欠けているのではない かと感じられたわけですね。授業に出ている態度を見ていると確かに優秀なのだけれど、何か足りな いよという目線を持っておられて、例えば「君、将来の夢は何だ」と問うて、答えられる学生がほと んどいない。 「できれば電気系に行きたいのですけれど」などと、あいまいな答えばかりで主体性が感 じられない。そのようなことを、北岡先生と僕で話をしているときに、このプロジェクトのお話があ って、これだよねということになって北岡先生が始められたという経過があります。 そもそも本来大学の使命は、社会貢献であり、研究であり、教育であるわけですよね。ところがど ちらかというと研究になっているわけですよ。教育は講義の中でというのがメインになってしまって、 1 対 1 で学生とディスカッションしながらなどという形で時間を取れる先生があまりにも少なすぎる。 つまり教育の部分が、僕から見ても非常に少ない。そういうところを補完する必要があるだろうとい うこともありましたし、大学の先生たちに、教育という視点ではこうしたものがあった方がいいとい うニーズもあったし、そこから先生たちが、 「そうか、学生にこんな風に言ったらいいんだな」と学ん でいただく機会にもなったというところがありますね。 村林 愛知学泉大学は、先行して家政学部と経営学部の一部の学生が、プロジェクトとしてお弁当開 発を行って、社会人基礎力に取り組んでいました。その後大学全体で 2009 年度には 3 学部で取り組 むことになったという経緯です。 学部では社会人基礎力について、初めは言葉自体に対して、いろいろな抵抗感があり、また数値化 するのはおかしいなどの意見がありました。その中でこの学部らしい取組にするにはどうしたらいい のかということで、教員の話し合いを進めていったのが実情でした。 杉浦 岐阜大学の看護学科で特にここ数年目立ってきたのは…先ほど看護に来る学生は真面目だと いいましたが…真面目なのですが遅刻をする学生が何人かいることや、授業中に後ろの方で…特定の 121 人たちなのですけれども…頻繁な出入りがあることです。また、教員からは「廊下ですれ違った時の 挨拶とか、基礎的なことができてないね」という意見も聞かれていました。そのようなときに、たま たま岐阜大学で社会人基礎力に取り組むという企画があって…1 年間のプロジェクトでしたので、そ れならば実習で学生はどのように伸びるのだろうかというところを中心に見ようと考えたわけです。 今、岐阜大学では、学士力と就業力を伸ばすという考え方があり、山本さんから違うものだという お話がありましたが、似通っている部分も非常に多くて、岐阜大学としてどちらをメインとして、ど のような能力を求めていくかというところで、社会人基礎力のあり方も変わっていきそうな感じです ので、今はちょっと大学の動きを見ている段階になっています。 山本 どうもありがとうございました。今日、お集まりいただいた先生方は、みなさんお立場が違っ ていて、大山さんはキャリアコンサルタント。根岸先生がカウンセラーをやりつつも人材育成のプロ デュースを行っている。村林先生はリベラルアーツ系の教員。杉浦先生は、看護系の職業教育の中で の教員です。その意味で個別のケースに降りていくとそれぞれに多様な話が出てくるわけですけれど も、こういう話をお伺いしていますと、社会人基礎力の評価と言いますと、画一な教育を大学に織り 込むと思われがちなのではないかと思いますが、実際にはこうした方々が担い、新たな学生さんへの 接し方をそこから見出そうとされています。 これは新しい教育の個性にもなるし、実際に 66 項目を作られた大阪大学さんにしても、倫理を加 えられた岐阜大学さんにしても、多様な顔が、社会人基礎力という一つの取組の中にあることが分か ります。その意味で社会人基礎力は、教育の多様性を広げるものではないかなということが、私も理 解できましたし、ぜひ多くの方にも知っていただければなと思います。 その意味で、新たな学生への接し方としての振り返り・評価というものについて、ここにおられる 大学の方、企業の方はどう協力し合えるのか。また企業の方でもその延長としての社会人基礎力のあ り方をぜひ考えていただければいいと思いますし、今日の会合がそのようなものにつながればと思っ ています。まだまだお話を聞きたいところですが、時間がありますので、以上で終わりにさせていた だきます。 122 ⑤札幌会場 時間 13:00~13:10 内容 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~13:55 大野孝二氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 山本真司) 13:55~14:05 休憩 14:05~14:35 事例紹介①(キャリアバンク㈱ 雇用創出事業部課長 三上力氏) 「企業の取組み紹介」 14:35~15:05 事例紹介②(広島経済大学経済学部教授(興動館科目創造センター長) 濱田 敏彦氏) 「興動館教育プログラム」の取り組み~「興動館科目」を中心に~ 15:05~15:15 休憩 15:15~16:25 ワークショップ(東京女子大学現代教養学部教授 今村楯夫氏) 「事例: 『講義 ニューヨーク文学散歩』(東京女子大学)について」 16:25~16:45 質疑応答(三上氏、今村先生) 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 経済産業省 大野孝二氏 キャリアバンク株式会社 壷井秀一氏 ) 広島経済大学 濱田敏彦氏 三上 力氏 質疑応答 東京女子大学 今村楯夫氏 ワークショップ 123 社会人基礎力育成事例研究セミナー 北海道会場 第 2 部 三上力氏発言 日時:平成22年9月27日(月) 場所:北海道大学学術交流会館 発言者:三上力 キャリアバング株式会社 雇用創出事業部 教育関連チーム課長 経済産業省/地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクトなどに参画し、小学生から大学生を対象と したキャリア教育全般に関わる各種事業に携わっている。またキャリアコンサルタントとして、札幌市立 の小中高校の新人教員のキャリアガイダンス研修に社会人基礎力を導入し、実施している。 企業事例紹介 キャリアバンク株式会社 はじめに キャリアバンク株式会社の三上です。まずどうしてキャリアバンクが社会人基礎力や、小中高校の 教育に関わっているのか、会社の紹介を兼ねながらご紹介します。次に社会人基礎力について、日ご ろ考えていることをみなさんと共有できたらと思います。 私自身は、もともとは大学を卒業してから金融機関に勤めていました。その後、バブルの時代を迎 えたときに、NHK のニュースで自分の会社が無くなったということを聞いた人間なのです。その時 に私が感じたのは、仕事とは何なのだろう、働くこととは何なのだろうと考え始めたことがきっかけ となり、キャリア教育に関わる道に進んできました。 社会人基礎力に出会って、これは社会に入ってからも活用できるものだと思いました。私は 46 歳 ですが、その私でもこの社会人基礎力を意識するだけで、ちょっと成長していくことができるのでは ないかという思いでいます。そうした観点からお話をさせていただければと思います。 キャリアバンクは、北海道で最初に人材紹介のビジネスを始めた会社です。人材派遣の会社だと思 っている方が多いと思いますが、人材派遣以外にも、さまざまな人材に関するビジネスを行っていま す。 弊社のスローガンは、Work Work(わくわく)社会の創造です。働くことを通して、北海道を元気 にしたい、「働くこと」をキーワードにしながら、さまざまな事業を展開しています。 紹介、派遣、再就職支援と歩んできて、平成 15 年から高校生の新卒就職支援を始めたのいをきっ かけにして教育の世界に入ってきました。 その就職支援の現場で私自身、高校生や大学生の、さまざまな悩みや声を聞いてきました。その中 で「あれっ」と思ったことがありました。それは学校で学んできたことや体験してきたことが、社会 につながっていないぞ、つなげるための仕組みがないぞと感じたのです。それがキャリア教育という 言葉が出てきたときと重なって、それから足掛け 7 年ほど、教育分野に携わっています。 平成 17 年から、経済産業省が実施した「地域自律民間活用型キャリア教育プロジェクト」に関わ らせていただいていて、小学校や中学校、高校で、先生方と協力しながら、キャリア教育の普及やプ ログラムの開発、実施運営という形でのコーディネート活動をやらせていただいています。大学関連 では、道内の大学の単位制のキャリア形成科目の企画・立案・運営や各種講座、またインターンシッ プ生も、この夏は 6 大学 21 名を受け入れました。 教育現場で行っている実践 これまで小学校、中学校、高校でどのようなことを行ってきたかをご紹介いたします。 124 小学校では、地域のシンボルから職業や社会の広がりを学ぶ企画を行いました。これは札幌ドーム を中心としながら、札幌ドームという夢の舞台を支える仕事やその広がり、それらの人々との交流を 行うというものです。 他には、小学校で従来行っている地域の訪問活動の中に、タウン情報誌の作成という視点を取り入 れることで、国語の授業である「インタビュー名人になろう」という単元とつなげ、地域情報紙の記 者から、域の情報を子どもたちが伝える、職業の広がりを学びました。また算数の授業の中に広告の チラシを導入して、チラシに書いてあることを計算して、算数と社会を繋げることなどといった授業 に取り組んでまいりました。 中学校では、全国的にキャリア・スタート・ウィークという職場体験を行っていますので、その支 援をさせていただき、高校では、課題解決型のプロジェクト体験を行いながら、社会人基礎力の大切 さを学ぶ授業を行っています。 私たちが民間の立場で高校などに関わるときに、プログラムの特徴として、結果が見える授業を行 っていこうということがあるのですが、その根幹をなすのが社会人基礎力であり、マナーや人間性を 大切にすることです。それを軸に授業の構成をしています。 なぜこのようなプログラム形態を取るかと言うと、私たち民間企業は学校ではありません。子ども たちと関わる時間には制約があります。教育の主体はあくまで学校です。学習や人格の形成といった 学校が本来取り組んでいるところを土台にしなければ、学校現場で継続されるプログラムとはなりま せん。近年、個人情報保護などの制約も多い中で、多様な企業人との出会いをいかに創出するかを考 えながら、社会人基礎力というキーワードの中で、プログラムを作ってきました。 これからビデオをご紹介します。これもプロジェクト型の学習です。目的は出会った大人たちの職 業に関する思いを取材して、それを自分たちの言葉で、HP を使って同年代の高校生に発信しようと いうものです。このビデオに登場するのは定時制高校の子ども達です。中学時代に経済的事情やいじ めなどの問題で、学校に通えなかった子達です。この子達が社会人基礎力をちょっと意識したプログ ラムを受けて、どのようになっていったのかを紹介します。 ・・・DVD 上映・・・ ご覧のように、社会人基礎力を共通言語にして、一歩踏み出してみようよ、チームで働く力で、み んなで踏み出せば大丈夫だよ、そこで考え抜いていこうよと取り組んだものです。子ども達が、この プログラムを通して、変容していく姿を見て社会人基礎力という言葉が、子どもたちに響くものであ るという確信を強く感じました。 この他にも弊社では社会人基礎力に関わるものとして、小樽商科大学さんと連携し、世代間交流イ ンターンシップというものにも取り組んでいます。高校生の職場体験学習と大学のインターンシップ の時期を合わせて実施するものなのですが、弊社の若手社員が上司、大学生が中間管理職、高校生が 部下という設定で、課題に取り組むというプログラムです。 この課題の設定の仕方は、マーケテ ィングなど大学生が学んでいる学問をベースにした内容にしています。 大学生は高校生より数日早くインターンシップに取組みはじめます。後から入ってくる高校生に対 し、社員に代わって会社の説明などのオリエンテーションを実施します。そして自分たちがリーダー となり、社会人基礎力を意識して、課題に取り組んでいきます。また、高校生は大学生を通して、大 学で学んでいることと、社会との繋がりを学ぶことになります。大学生を通して、大学の学びと社会 との関係、社会人基礎力を学びます。 このプログラムを長年続けていているのですが、参加した高校生がその大学に入学した事例もでて 125 きています。またこのインターンシップを指導する弊社の社員、今年は、この春に入社した社員に担 わせたのですが、上司の立場や、入社してから指導を受けてきたことの意味、社会人基礎力の大切さ を実感することとなります。新入社員は「とても良い経験となり、自信を持つことが出来た」と話し ています。 大学生も高校生も、そしてそれを指導した新入社員も、一歩前に踏み出す力によって、課題にチャ レンジし、うまくいくように考え抜き、チームで力を発揮しながら結果を得ることができるのです。 このように弊社では、社会人基礎力を土台にしながら、各種プログラムに取り組んでいます。 社会人基礎力との出会い 次に私が社会人基礎力と出会ったきっかけについて話してみたいと思います。 私たちの会社ではそもそも「働くこと」をキーワードに学校への関わりを行ってきたわけですが、 キャリア教育に取り組み始めた当初は「キャリア教育で身に付けさせる能力とは何か?」ということ や「社会で求められる人材像とは何かを教えて欲しい」という質問や講演の依頼が学校からたくさん 寄せられており、それらに答えていたわけですが、いつも、先生等に話しをしても、何かが足りない と感じ「学校と、産業界をうまく繋ぎきれていない」と感じており、試行錯誤していた頃に登場した のが社会人基礎力でした。 これから、詳しくお話しをしますが、社会と学校をつなぐ言葉として、社会人基礎力を意識したプ ログラムを作りながら、学校さんと連携してきました。 社会人基礎力醸成を目的にプログラムをやって来たのですが、そこで新たに出てきた疑問は、特別 なことをしないと社会人基礎力は身に付かないのかということでした。社会人基礎力は学校の教育目 標に通じる普遍的なものではないのか?人材育成の観点からも、その根本に関わる凄く大切な言葉で はないかと考え始め、いろいろと調べてみました。 そうすると小学校にも中学校にも、学校の教育目標があります。以前キャリア教育でお世話になっ た札幌市立駒岡小学校の教育目標は、 「健康で粘り強い子ども」 「よく考え実践力のある子ども」 「明る く助け合う子ども」を育てるとあります。これを社会人基礎力で読み替えてみると、 「一歩前に踏み出 す力」「考え抜く力」 「チームで働く力」 、社会人基礎力そのものなのですね。 ということは、学校で育てようとしている子ども達と、社会で求められる人材はつながるのではな いか、ということを発見し、それから学校と社会人基礎力をつなぐお話を、どんどんするようになっ ていきました。例えば大学でも、今日は会場を北海道大学さんをお借りしていますが、北大さんの理 念の一つに「フロンティア精神」というものがあります。これはまさに一歩前に踏み出す力というこ とにも通じると思うのです。 このように学校の理念と、社会人基礎力は、すぐにつながるのです。そこを意識するのかしないの かが一番のポイントではないかと思いまして、教員の研修会などで、学校の教育現場の中で、どうい ったところで社会人基礎力が身に付くのか、簡単なワークショップなどを行ってきました。 例えば発信力は、学校の中でどのような場面でどうすれば発揮されるのか。こうしたことを先生方 に討論していただいて発表してもらったりしているのですけれども、数年前に、ちょっとがっかりし たことがありました。どのチームの発表の中にも、自分の担当する授業が入っていなかったのです。 部活や学級活動などが上げられているのですが、授業の中では、社会人基礎力の発揮の場面はないと なっていたのです。 「そんなことはないでしょう。創造力などはどうなのですか」などと話をしていって、そこで初め て、 「ああ、社会人基礎力とはそういうことなのか」とわかっていただいたことがあります。学校でも 普段行っていることの中に社会人基礎力を育成していける視点を、私は大切にしています。 126 このことは企業にとっても同じです。座学や OJT の中で、社会人基礎力を意識させるだけで、新し い仕事にチャレンジする時も共通言語として「一歩踏み前に出そうか」と言うことができます。特別 なことをしなくても、社会人基礎力という言葉を共有し、日頃から社会人基礎力のキーワードをちり ばめていくことが、社会人基礎力を高めるためには大切なことだと感じています。 社会人基礎力育成は今からでもスタートできる 今回、この講演のお話をいただきましたので、インターンシップ生に質問してみました。社会人基 礎力を身に付けられる大学での場面は何か、考えてもらったのですが、社会人基礎力の 12 の要素に ついて、それぞれいろいろなものを上げてくれました。その中で圧倒的に多かった場面は、日常の講 義やゼミでした。その中で多く出てきたキーワードは、 「グループワーク」と「ディスカッション」で した。 私たちも、大学の中にキャリア形成科目で入らせていただいているのですが、このグループワーク とディスカッションは、少しの時間で取り組むことができます。 「ちょっと今のことを、周りの人と話 してみて」というような形で・・・。そうするだけで、社会人基礎力の育成は、今からでもすぐにスター トできると思います。 その場合のポイントは何か。大学の先生ではない私の立場から考えてみますと、やはり社会人基礎 力の理解と共有が大事です。会社では上司と部下の間で、大学では教員と学生の間で。ただし細かい ものはいらないのではないかと思います。個人的には 3 つの力だけでも十分ではないかと思っていま す。 上司の立場に問われるのは、そのような場面を作ってあげることです。それが大切です。任せてみ る、やらせてみる、そして一緒に考えてみる。もしくは相談する。最終的に振り返りを行う場面があ るといいですね。 それからもう一つのポイントですが、自ら社会人基礎力を意識するだけで、自分が変わるというこ とです。向き合い方が変わってくるのです。私も「一歩前に踏み出しているのだろうか」とかいう具 合です。 私自身は巻き込み力を考えると、巻き込まれる方が強いと感じるのですが、周りの人と話をすると、 「それはそれでいいのではないですか」と言われ、ともあれ共通言語として会話ができます。 もう一つ、部下の立場で言うと、場面を設定できるようになります。大学の講義の場合でも、こち らから「ちょっとこういう場面はどうだろう」と出しただけで、学生たちは自分でいろいろと設定し、 社会人基礎力を高められるようになっていきます。やはりここでも、振り返りを行うなど、その体験 をフォローするようにできれば、より良い仕組みになると私は考えています。 まとめにかえて まとめにかえてお話したいことは 3 点です。一つ目は、社会人基礎力育成は、今からでもスタート できるということです。これは若手の社員も大学生もそうなのですが、「成長したい」「社会の役に立 ちたい」という思いは、必ず誰でも持っているものです。自己肯定感を得られる体験が無かった子た ちもたくさんいるのですが、それでも何らかの形で成長したいと思ったときに、一つの指標として、 社会人基礎力は有効だと考えます。 また私たちは、社会人基礎力を意識したプログラムを過去にたくさん作って、学校さんに提供して やってきましたけれども、それをずっと回してくための仕組みがとても大切だと思います。そのとき 127 に大事なのは、特別なことをしなくてもできるということです。 ただし特別なことは一つありまして、 私たち自身が変わることです。指導にあたる人たちが変わることで、実践をスタートできるのかなと 思っています。 二つ目に、継続的なフォローが定着のポイントだということです。社会人基礎力という言葉は使わ ないと、だんだん消えていってしまいます。そのために会社の中で、例えばチームでの月間目標を作 るときに、社会人基礎力の言葉をポッと入れてあげるとか、何らかの仕掛けをしていきます。大学の 中での定着にあたっても、これから私の後に登壇させる方々が、具体的な事例の中でお話しが出て来 るのではないかと思いますので、私も楽しみにしていますが、社会人基礎力という言葉を、学校や企 業や産業界、さまざまなところから、いろいろな機会を通して発信し続けることが、定着のポイント になるのではないかと思います。 最後に、この社会人基礎力の言葉を意識して、何かにあたる中で、若手社員から「自ら模範になる ように意識した」という発言がでてきました。私はこれにつきると思っています。それは 23 歳の新 入社員も、その倍の 46 歳の中間管理職の私もまったく変わらなくて、その言葉を大切にしようと思 うことが、自分自身を変え、成長させていく一つの材料になります。 そのことを考えて、これからもさまざまな場面で社会人基礎力を発信しながら、自分自身も自己研 鑽を続けて行きたいと考えています。私は社会人基礎力は世代をつなぎ、学校と社会をつなぐ共通言 語だと思っています。だからその言葉ができたことは、とても大きなことだと思っています。私自身、 その言葉を伝えていくことに、微力ですが、まだまだお役に立てていければと思います。 128 社会人基礎力育成事例研究セミナー 北海道会場 第 2 部 濱田敏彦氏発言 日時:平成22年9月27日(月) 場所:北海道大学学術交流会館 発言者:濱田敏彦 広島経済大学経済学部教授/興動館科目創造センター長 地域との連携を強く意識した人間力育成カリキュラム「興動館教育プログラム」は、社会人基礎力の定 義や評価方法を導入することで、更なる学生の成長を促すことに成功した。社会人基礎力をすでに導入 している大学が評価部分を強化し、育成プログラムの進化と学内理解を進めた代表例である。 大学事例紹介「興動館教育プログラム」の取り組み~「興動館科目」を中心に はじめに 興動館科目と興動館プロジェクト こんにちは。濱田です。本学の興動館教育プログラムにつきましては、 『手引き』の中に上手にまと めてくださっていますので、今回はいくつかのポイントにしぼってお話します。 まず、興動館という名称は、学生が自ら主体的に物事を立ち上げて、社会に動きを興し、最終的に 何かを成し遂げていくという意味合いからつけられたものです。 平成 18 年度からスタートした興動館教育プログラムですが、立ち上げの際には、全学的なカリキ ュラム改革も行いました。本学のカリキュラムは3つの柱から成り立っています。1本目は教養教育 や専門教育の講義を中心とする基礎知識開発プログラム、2本目はゼミを中心とするプレゼンテーシ ョン能力開発プログラム、そしてそこに3本目の柱として新しく加えたのが、社会人基礎力育成、本 学では人間力開発プログラムと言っていますが、興動館教育プログラムです。 その社会人基礎力あるいは人間力を養っていくためには、従来型の座学も大切ですが、やはりさま ざまなことを経験し失敗して、その過程で気付きを得て、主体的に学問に戻っていく、本学ではこの サイクルこそが大切だと考えて、興動館教育プログラムを創りました。 このプログラム実施のために、拠点となる教育センターとして興動館をキャンパスの麓に作り、そ こで学生たちの人間力、社会人基礎育成を行っています。興動館では、社会人基礎力のための新しい 科目である興動館科目と、学生が主体的に行う興動館プロジェクトが用意されており、この二本柱で 興動館教育プログラムを運営しています。 まず、興動館科目では、各科目を人間力の諸要素である「元気力」 「行動力」 「企画力」 「共生力」と いうフィールドに分けて配置しています。それぞれのフィールドに入っている授業科目は、そのフィ ールドの力を身に付けさせることに重点を置いて、授業を展開してもらっています。また、授業運営 にあたって、①少人数(原則として 30 名以内) 、②双方向授業、③座学に終始しない、④グループワ ーク、フィールドワーク重視、⑤プレゼンテーション重視という、5 つの条件を設定しています。現 在 29 科目 36 クラスあり、本学は 1 学年が 850 人、全学で 3,900 人ぐらいの学生数ですが、履修者は のべ人数で約 1,000 名に達しています。 もう一つの興動館プロジェクトは、興動館科目などで学んだ人間力、社会人基礎力をもとに、学生 が問題意識を持ってやりたいと思ったことを、自ら手を上げ、主体的に実行するものです。まず学生 たちは、企画書をまとめて大学側に提案します。そして何回かにわたる審査をへて承認されると、大 学からの予算措置を受けて原則1年間のプロジェクトを開始します。プロジェクトは国際交流、社会 貢献、地域活性、経済活動などの分野で、学生同士が集団(チーム)で活動して目標を達成していき ます。今、このプロジェクトは 21 プロジェクトが動いていて、参加者数は約 350 名になっています。 どのようなプロジェクトがあるかですが、 海外に行くものもあれば国内のものもあります。 大きくは、 主催プロジェクトという大学が発案して学生に行わせているものと、公認プロジェクト(公認A,公 認B,準公認)という学生発案のものに別れます。 129 最近の学生は、集団で何かをするということが苦手なところがあります。興動館プログラムに参加 する学生は、本学でも積極的・主体的な学生ばかりではないかとよく言われるのですが、実際には、 初めは相手の目も見られないような学生たちも来ていまして、そういう学生たちも集団の一員となり、 リーダーを中心にチームでプロジェクトを少しずつ実行していく中で、次第と目線が上がり、胸をは って人と話せるようになっていきます。おそらく小さな成功体験の積み重ねで自信が付くのだと思い ますが、興動館教育プログラムはそうした教育効果も狙っています。 プロジェクトについては学生が主体となって行いますので、われわれ教職員は基本的には手を出し ません。企画、交渉、予算管理、準備・実行、報告・発表をすべて学生が行うことが原則です。する と、やはり学生はいろいろなところで躓きます。そこではじめて教職員コーディネーターがフォロー をします。失敗に対してクレームなどが来た場合には、一緒に行って申し訳ありませんでした、とコ ーディネーターが頭を下げるケースもあります。それでもとにかく学生にやらせよう。失敗や挫折経 験とそれをいかにして乗り越えるかを経験させることこそ大切である、というスタンスに立っていま す。 こうして興動館教育プログラムにより実社会で必要な人間力を培い、知識を中心に養う専門教育・ 教養教育やプレゼンテーション能力などを中心に伸ばすゼミとともに三位一体で、 「ゼロから立ち上げ る興動人」として活躍する人材を育成することを目指しています。 興動館プログラムと社会人基礎力 この興動館教育プログラムは、本学が平成 18 年から取り組んできたものですが、実は同じ年に経 済産業省が社会人基礎力を提案されました。そして、本学が目指している人間力教育や、興動館教育 プログラムにおける人間力の諸要素である「元気力」 「行動力」 「企画力」 「共生力」という各フィール ドが、社会人基礎力と非常に重なるではないかと考えたわけです。たとえば、 「元気力フィールド」は、 社会人基礎力では「前に踏み出す力」の主体性に相当し、一部、働きかけ力にも当たります。また「行 動力フィールド」は働きかけ力や実行力などに、 「企画力フィールド」は「考え抜く力」などに、「共 生力フィールド」は「チームで働く力」などに相当すると考えています。そして、本学では、現在、 この社会人基礎力を取り入れながら、興動館教育プログラムを運営しています。 興動館科目と興動館プロジェクトとの関係ですが、この二つは科目で学んだことをプロジェクトで 実践し、プロジェクトの実践で気づいたことを科目で学びなおす、という連動を理想としています。 それが目に見える形で顕れた例は、それほど多くはありませんが、例えばディベートに関する科目で は、授業を受けた学生らがディベートのプロジェクトを立ち上げて、自ら授業で学んだことを、地域 の小学生を対象にディベート大会を開いて教えていくプロジェクトを立ち上げました。 逆に興動館プロジェクトを行う中で、学びに目覚めた事例では、例えばインドネシア国際貢献プロ ジェクトがあります。このプロジェクトは、インドネシアで学校建設をしたり、教育活動をしたりす るとともに、フェアトレードも行っているのですが、税関の知識を持っていませんから、インドネシ アの品物を輸入しようとして、税関で荷物がストップされたりするわけです。そうするとこれは大変 だということで、貿易や税務に関して学ばなければならない、と自覚するわけです。 あるいはカフェを運営している学生たちがいるのですが、その経験の中で経理に関する知識がいる だろう、マーケティングがいるだろうという気付きを持って、興動館科目、あるいは専門科目に学び に戻ってくる、ということがあります。興動館では、この気づきによる「主体的な学び」を生むこと を目指しています。 130 一方、その興動館教育プログラムは人間力を伸ばすことを目指しているわけですから、それが伸び ているかどうかを、何らかの形で示さなくてはならないわけです。ここは一番悩ましいところですが、 伸びたかどうか、それを評価する「ものさし」がいるだろう、それを考えてみよう、ということで導 入したのがプログレスシート評価システムです。これは『手引き』380~383 ページに載っています。 ここでは、まず、大学独自の 4 つのフィールドからなる人間力をもとに本学独自の人間力マップを 作り、社会人基礎力と対応させながら、どんなことができたらどのレベルに達しているのかを自己評 価させます。人間力マップでは、まったくできなかった段階(レベル 0)から、非常にできた段階(レ ベル 3)まで 4 段階に分けて示し、学生自身に自己評価してもらう。何ができれば人間力・社会人基 礎力の中のどの力がどれぐらい上がったことになるか、それをイメージできる、そんな指標を人間力 マップとして作りました。 これは本学なりの人間力、社会人基礎力のレベル分けですからご批判もあるかもしれませんが、と にかく育成すべき能力を明示化し、意識化させることを目指し、興動館科目や興動館プロジェクトに おいて定期的に自己評価させています。プロジェクトに関しては、学士同士のピア評価(相互評価) も取り入れています。 また、プログレスシートの自己評価を通じて学生に「ふりかえり」をさせるために、たとえば主体 性がレベル 2 になったなどと学生が書いた場合、何故そう評価したのか、その理由も書かせます。さ らに、それを科目担当教員やプロジェクトコーディネーターが読んで、「君はレベル 2 だというけれ ども、こういう場面で君はこういう状況だったから、人間力マップのレベルのどれに相当するだろう か」などと、面談もしくはプログレスシートの評価欄への書き込みを通じて修正を図っていきます。 これにより、プログレスシートに一定の客観性や説得力を持たせるとともに、学生に社会人基礎力を 意識させるという効果を上げているのではないか、と考えています。 科目の場合では、事前と事後でこの評価を行っていますし、プロジェクトの場合は、事前・中間・ 事後でこの評価を行っています。 興動館科目の特色のまとめ ここからは、興動館教育プログラムのうち、興動館科目を中心にお話ししていきます。本学では、 人間力を構成する諸要素を、「元気力」 ・「企画力」・ 「行動力」・「共生力」の 4 つのフィールドに分け て、その諸力を培うための科目をそれぞれに配置しています。そして各科目は、担当する教員の工夫 によって、その属するフィールドごとに明示された、達成されるべき目標、そのための授業内容・授 業方法によって展開されています。 実は、興動館科目は必修ではないのですね。学生がのべ 1,000 人程度受けていますが、どうしても 履修しなければはならないものではありません。そのため、学生を惹きつけるために、たとえば興動 館科目の授業名には、通常の大学科目名に比すれば少し異質に感じられるようなタイトルが付けられ ています。しかし、もちろん各科目は、それぞれの担当教員が自らの専門性に引きつけ、専門科目や 教養教育科目などに相当する内容を担保しながら授業を行っています。 また、興動館科目は、学科や学年の垣根を越えたさまざまな学生の履修が可能になっています。興 動館科目の形態はゼミにも似ていますが、ゼミの場合は同学年・同学科ごとにくくられているのが普 通ですが、興動館科目の場合は学年も学科も違った学生が履修しています。本学は経済学の単科大学 なのですが、経済学科、経営学科、国際地域経済学科、メディア学科、ビジネス情報学科の 5 学科が あります。それらの学生が、自分たちの専門学科を越えて、プロジェクト型の授業を行っているとこ ろに特徴があると思います。 興動館科目の目標は、従来型の教える授業から、学びを生む授業に転換することであり、インプッ 131 ト以上にアウトプットを大切にする授業、結果以上にプロセスを大事にする授業、また個々の学びだ けでなく学生同士を協働させる授業を行うことにあります。そのため、担当教員はコーディネーター やファシリテーターの役割も要求されるようになります。 そのため、興動館科目を担当する教員は年に 2 回ほど担当者会議を開き、授業の中身について反省 点を出し合ったりしています。また興動館で開催されるコーディネーターやファシリテーター講習会 に参加したりもします。また基本的には一つの科目を一人の教員が担当していますが、幾つかの科目 ではチームティーチングも行っています。こうした中で各科目を、できるだけ活性化するよう努力し ています。 面白いのはチームティーチングを行うことで、たとえば広がりのある授業が展開できることです。 私の場合は、 二つほど科目を持っています。一つは瀬戸内海地域の魅力を発信しようという授業です。 私は実は歴史学が専門ですが、地域の歴史の中から学生自身が発信したいことを見つけ出し、それを 学生自身が独自の切り口でどうアピールするかを考えて、最終的にはパンフレットを作らせるという 授業を行っています。 そして、もう一つは日本の歴史や文化に関して、英語を交えたビデオブログを学生に作らせる、そ れをネットにアップさせる授業で、チームティーチングで行っています。一緒に教えてくれているの はイギリス人、ネイティブの先生なので、私が日本の歴史や文化について、その英語の先生が英訳や 日本文化との比較でイギリス文化について担当してくれています。狙っているのは異文化理解や表現 技法などです。学生たちはこれぞ面白い日本文化だと思ってビデオを撮って編集し、ネットにアップ します。ですから、海外の人たちもタイトルの付け方や内容説明の仕方によっては興味を持って見て くれるわけですね。ところが自分たちが面白いと思ってアップしても、まるでアクセスがなかったり する。それどころか期待したような良い評価ではないコメントが返ってきて、ガックリしたりします。 それらを通じて、学生たちは異文化理解を深め、日本文化についてとらえ返し、英語表現、あるいは 映像表現の力を、少しずつですが身につけていきます。 “SETSUBUN” そこでちょっと、授業で実際に学生たちが作ったビデオをお見せしたいと思います。 というタイトルで、節分を海外の人に紹介するにはどうしたらいいか、ということで作ったものです。 ここに出てくる学生たちは、授業の 1 回目にグルーピングをしたときには、お互い目を合わせて積 極的に話をするという感じではありませんでした。しかし、テーマを決め、そのシナリオをつくり、 役割分担をしてビデオをつくっていく過程で、自分たちが映像に登場して、こんなにおかしくて生き 生きとした寸劇までやってしまうのですね。 彼らは、授業グループのあるメンバーの下宿に行って、時期は節分でもなんでもないのですが、豆 まきの映像を撮ったりしていました。なので「鬼は外」などとやっていると、近所の人がみんな見て いたそうですが、こんなことをやりながら節分紹介のビデオブログを作成したわけです。 担当教員としては、見知らぬ学生同士が互いに自己開示して、ビデオカメラの前で演じることがで きるようになった点は、非常に大きいのでは、と感じています。英語についても学生たちは決して得 意とはいえないわけですが、自分たちが体を張って一生懸命つくったビデオ作品ですから、ネイティ ブの先生の指導を受けて、短いながらも内容を紹介する英語のコメントをなんとか考えていくわけで す。このように、1つの授業の中に英語の要素や日本文化論的な要素、あるいはメディア的な要素が 入って授業が展開されるのも、興動館科目の特徴です。 興動館科目は、大袈裟ながら、大学における新しい科目を創造する試みでもありますから、学内は もちろん、いろいろなところからご批判も受けたりもするわけですが、人間力、社会人基礎力を実践 的に伸ばすという点では、ある程度効果をあげているのではないか、と考えています。また先ほども 述べたように、それぞれに専門性は担保していますので、試行錯誤はありながらも、方向性としては 132 これでよいのでは、と思っています。 それから先ほど本学は興動館科目をフィールドに分けて行っていると言いましたが、このメリット としては、場合によっては、フィールド内での教員がある程度意識を共有できるし、一人で行ってい るという孤立感が少ない、ということもあります。興動館科目は、本学の教員百数十名の中で三十数 名ぐらいの教員が手を上げて担当してくれています。そして、個別の取り組みでは限界がありますの で、興動館科目全体として、あるいは、フィールドごとの担当教員として、私たち教員の側も協働す る、そういう雰囲気が作られているのではないかと思っています。このような授業の取り組みは、い きなり全学的に広げるのは難しいので、興動館科目での事例を積み上げて、全学的なFDに活かせる ものは活かしていきたいと考えています。 興動館科目における取り組み・工夫 これまで、興動館教育プログラムの枠組みの概略についてお話しましたが、次にそれが現場の教員 にどう受け止められているかについてお話したいと思います。先ほどお話したように、現場の教員で 年に 2 回の担当者会議を開いていますが、実はそこではいろいろと問題点が出されています。 議事録やアンケートなどをもとに、出された意見をランダムにまとめたものをお手元にお配りしま した。興動館科目における取り組みとしてどんなことを担当教員が心掛けているかお話ししますと、 まずは授業内容について、テーマ選びの重要性が上げられています。学生が主体的に関わるためには 大学の授業としての専門性は担保しつつも、面白いテーマでなければならないだろう、教員自身の興 味・関心と学生の興味・関心の交わるテーマを見極めることが大事だ、興味を惹くような魅力的なタ イトルと内容が必要だということなどが言われています。また、学生が主体的に参加する第一歩とし て自由選択科目にするということがあります。必修にするという意見もあったのですが、そうすると かえって主体性を奪うデメリットがあるのでは、という意見もあります。それから目標を学生に明示 することの大切さなどです。 二番目に、授業方法の中で、アイスブレイクを導入することです。当たり前のように思われるかも しれませんが、意外とこれを取り入れている大学の授業は少ないようです。しかしグループワークを するときにアイスブレイクは重要で、これを行う際には必ず教員も参加する。学生相互の心理的距離 を縮めることはもちろん大事ですが、教員自身も自己開示をして、学生との距離を初期の段階で縮め ておかないと、授業展開でうまくいきません。私も痛い目にあったことが何回かあります。 それから早急に学生全員の名前を覚えること。これも当たり前のように思えますが、以外と難しく て、デジカメで写真を撮る、携帯メールアドレス交換をするなどをしながら、人間的な関係を築いて います。また、ある先生は、授業開始の 10 分前と、10 分後に教室にいることが必要だといわれます。 なかなか大変だという声もありますが、それが学生との信頼関係を育てる時間になるのだというので す。 授業展開では、グループワークを取り入れることです。グループワークを通じて、参加型の授業に する。また、授業におけるプロセス・結果の評価は、個人評価とグループ評価を併せて導入していく。 また、グループワークをすると、良くやる子とやらない子の差が必ず出てきますから、作業における グループ内の責任分担を教員の側がきちっと明確に意識させていく必要があるだろうと。一人ひとり の取り組みがチーム全体の成績に影響を及ぼすことを認識させ、チームの一人だけがリーダーではな い、本当の意味でのリーダーシップを各自が持つという雰囲気を醸成していくことが大切だ、という 133 意見もよくでてきます。 学生同士の教え合いの効果についての意見も出されます。異なる学年、異なる学科の学生で授業が 構成されているのは大きいことです。またグループの役割が決まり、その役割を果たせば、自らが役 に立っている感覚、自己肯定感が生まれたり、認知の欲求が充足されたりもします。この辺がとくに 大切だ、というのもよく出される意見です。 興動館科目では、PBL 型授業として到達すべき目標やゴールがあり、多様な価値観や知識を持った 複数の人間が、その達成目標を意識して取り組むことで、人間力、社会人基礎力を身につけていくこ とに意義があると考えています。一方で、 「人間力」は、さまざまな学問体験の中で、知らず知らずの うちに身につけていくもので、それをことさらに教育プログラムとして行うのはどうだろうか、高価 があるのだろうか、というご意見は、興動館科目を担当してくださる教員の中にもあります。 ただ、そういう先生でさえも、この興動館科目に参加してくださり、興動館科目の達成目標や授業 方法にそって授業をやってくださっているわけで…。この点がとても重要だと考えていますし、感謝 しています。 これらのポイント以外にも、親しみやすい雰囲気を醸成する中で、定期的に人生観・価値観を教員 自らが「熱く」語る、出席カード・ふりかえりシートを活用する、グループの組み換えを積極的に行 っていく、などという点も意見もよく出てきます。 とくに、授業の基本的ルールは徹底して妥協せずにやる、という指摘もよく出されます。ここは一 番難しいところ、と教員は感じているのですが、学生に歩み寄ってその点をきちんと説明していくと、 最初はサングラスをかけて授業に来ていたような学生が、意外に素直にこちらの話を聞くようになる というのですね。 「この学生は、実はそのようなルールを学んでこなかっただけなのでは」と改めて驚 いたりするわけです。その辺は教員側が矜持をもって臨まなければいけないのだということが、いろ いろな先生方から意見として出されています。 それから、これも当たり前のことのようですが、半期 15 回の授業の中で、学生が段階的に思考を 深めるような授業展開をしていくことの大切さも必ず意見として出されます。当然、教員はそのつも りでシラバスを書くわけですが、授業展開においても「丁寧に」それを積み上げていくことが何より も大切だと…。 私がイギリス人英語教員と一緒に行っている授業では、初期にはアイスブレイクやグルーピング→ 過去の履修生による作品批評→世界から見た日本文化の特色を学生たちにグループディスカッション させる→ビデオ撮影・編集の基礎トレーニングをさせます。中期にはグループによる討議(ブレーン ストーミングなど) 、テーマ設定、企画立案、絵コンテシナリオ、そして後期には、撮影・編集、そし てネットへのアップ、振り返り、アクセス状況確認などを行います。これを 2~3 サイクルぐらいや り、あわせてビデオブログの企業活用紹介などで意識づけもします。最後は作品発表会、相互批評な どを行い、レポートの提出と…。こんな形で、初期、中期、後期で授業を展開しています。 ただこのようにお話しすると、いかにも興動館科目は成功しているかのように聞こえるかもしれま せんが、実際には多くの問題点も存在しますし、授業運営においていろいろと苦労しています。それ ら失敗体験をさらけ出し、認識して克服することの重要性を、担当教員自身がよく分かっているから、 担当者会議やアンケートなどで正直に答えてくださるのだと思います。 例えば、履修生の意欲に関する温度差は間違いなくあり、全員が同じ方向を向くことはありません。 ひどい場合は、半分くらいしか向いてくれないこともあり、教員が繰り返しそのような履修生をモチ ベートしていくことをやらざるをえず、授業も思ったようには進まない。 134 そうすると、一生懸命にやる学生の中には、 「先生、僕は一生懸命やっているのに、グループの中の あいつはやらない」、 「達成目標には届かない」と文句を言うものも当然います。そういう場合には、 「そもそも社会において全員の意思統一を図れることがレアケースである」と…。 「だけど、社会に出 るとそういうことはあるよ。それをチームやグループできちっとカバーしていくことも大切なのでは …」と。その学生が納得するかどうかは別として、本音でそう話さざるを得ないことも多々あるわけ です。 また、異学年が履修するということは、教え合いが生まれて良い効果も生むのですが、一方で、知 識や経験、自己表現力にもの凄く差があったりしますから、授業を展開するにあたってのレベル設定 が難しい。だから知識やいろいろな経験が不足している学生に丁寧に説明すると、それなりの知識が ある子からは説明がくどいと不評をかってしまうわけです。その場合にも互いの知識や経験値違いを 認めさせ、その解決方法やカバーの仕方を学生たちに検証させることに、 時間を割かざるを得ません。 興動館科目を担当する先生方の話を聞くと、年々、顕著になる人間関係の希薄さや、その結果、モ チベーションが低くなった学生にどう対処していくのか、本当に悩ましいという意見があるのが事実 です。ただ最後は、協働してやっていこう、頑張ろう、お互いに工夫を出し合いながらやっていこう、 というところに落ち着いてはいます。実は、興動館に関わる教職員自身が、一つのプロジェクトをや っているという感覚があったりするわけです。 以上、本日は、本学興動館教育プログラムの取り組みについて、興動館科目を中心にお話させて頂 きました。纏まりのない話になったかも知れませんが、皆様が常日頃お考えになっていることに対し て、なにがしかの参考になれば幸いです。 135 社会人基礎力育成事例研究セミナー 北海道会場 第 3 部 今村楯夫氏講義 日時:平成22年9月27日(月) 場所:北海道大学学術交流会館 発言者:今村楯夫 東京女子大学現代教養学部教授 ヘミングウェイ研究の第一人者。学生一人ひとりの個性や能力を引き出し伸ばすことを信条とし、予習 やレポートを頻繁に出すとともに、グループワーク、グループディスカッションを中心として学生が共に学 び合う授業は、通常の英語購読の授業の中でも「社会人基礎力」を育成できる、全く新しいスタイルとし て確立されている。 ワークショップ はじめに 講義「ニューヨーク文学散歩」について 模擬講義の概要 今村です。よろしくお願いします。ハンドアウトをご覧になっていただきますが、最初にセミナー の事例として科目の名前がありまして、どのようなことを行っているかを書いています。また今日、 実際にやっていただくセミナーの質問と回答があります。その次にテキストがあります。日本語のも のと原作の英語のものがあります。 今日は普通の授業の 90 分の講義科目をみなさんにやっていただくことを考えています。大学では 英語の授業ですので、テキストは英語でやりますが、今日は英語の授業ではありませんので、英語の 原文は参考資料として添付いたしますが、翻訳を使ってみなさんにワークショップに参加していただ きたいと思います。 時間配分ですが、今の説明を 5 分行いまして、まず個人で文章を読んで、質問に答えていただくこ とに 10 分かけます。文章を読んでこの文は何について書かれたものかを見つけていただきます。そ のときにそれはどこで分かったのか、一つでも二つでも探していただきたいと思います。 続いて 10 分ほど、自分の回答を隣の人と見せ合って、ディスカッションをしていただきます。そ れが終わったら再び 10 分、今度は 4 人、あるいは 6 人ぐらいのグループでディスカッションをして いただき、その後、全部の方に発表してもらう時間はないと思いますので、グループからひとり代表 を出して、10 分ほど、自分たちはどのように考えたのかを発表してもらいます。そして残りの 10 分 で、私が何をここでやろうとしているのかということを説明します。 実際に大学で行っている授業では、学生にはこの 1 枚の質問を書いた紙が配られていまして、学生 たちは予習をして来ることになっています。予習は基本的には分からなかったこと、疑問に思ったこ とを書き出してくることです。それで授業中に、分からなかったことを話し合って、最終的にその答 えを見つけることが目的なので、原則的には、自分が分からないことはどこかを知って、授業に臨む ことになります。 従来の大学の英語の授業では、学生が教室で当てられて、読んで訳しなさいというパターンが多か ったのですけれど、そういうことはしません。予習の主旨は、訳せなかったことはどこかを明確にす ることでもあるし、書いてあることがどういう意味か分からなかった、それを幾つでも持ってくれば いいということで、そうして準備をしてきた学生たちが、授業を通過する中で、答えを与えられ、理 解に至るというのが基本的なパターンです。 ですから講義があって、ディスカッションがあって、プレゼンテーションをするというパターンを、 90 分の内でさまざまな時間配分で行います。それぞれおおまかに 30 分という刻みである場合である こともありますし、そうでない場合もあります。 後でもう少し詳しい説明をしますので、まずはこの文章を読んでください。英語の得意な人は原文 136 の英文を読んでください。10 分差し上げますので答えを見つけてください。 講義の実際(1)テキストの解読、ペアワーク、グループディスカッション ・・・参加者はそれぞれテキストを読み始める。今村先生は会場を歩きながら、時折、立ち止まって 参加者と話をし、その内容をマイクで会場に伝える・・・ ・・・3 分後・・・ 一通り、読み終わった人、手を上げてください。読み終わった段階で、これはこの話だと分かった 人、手を上げてください。あ、だいたい分かったようですね。分からない人は、手を上げてくだされ ば、ヒントをお教えします。 ・・・4 分後・・・ 話は 21 世紀。原爆ですかと言った人がいるけれど、原爆の話ではありません。でもこれはとても いい推察です。 ・・・5 分後・・・ 一つか二つ、ここが決定的だというところを抜き出してください。できるだけ個性を持って、これ は他の人は気が付かないだろう。私はここを見て、これはこの話だと分かったというところ、誰もが 同じ回答ではつまらないので、ここは私の発見だろうというところがあったら、そこにアンダーライ ンを引いたり、キーワードを書き出したりしてください。 ・・・6 分後・・・ だいたい答えが出てきたようですので、予定より少し早いですが、ペアディスカッションに移って もらいます。2 人ないし 3 人で討論をしてください。どうぞ、意見交換をして、答えを確認してくだ さい。これは何の話ですかというところです。 ・・・会場は積極的なディスカッションで溢れかえる・・・ ・・・8 分後・・・ ペアの相手の人のアイデアを、自分の解答用紙に加えてください。 ・・・12 分後・・・ それでは前後に向かい合って、4 人ないし 6 人のグループで話し合って、次に、この文章、この作 品の内容を決定付けているというものを、コンセンサスとして選んで、決定打を出してください。そ れからそれ以外に、いかにもこの事件といいますか、このことに関わっているところで、表現として 面白いもの、それは一体、何の話なのかということですよね。極めて異常な状況の中で起きている「あ ること」が描かれているわけですけれども、その異常さを表現するものを拾って見てください。 これは「ニューヨーク文学散歩」という 1 年間の授業の中で取り上げた一つの作品です。90 分の授 業でやっていくわけですが、その異常さをあらわしている部分は、その状況の中で本質的な人間性が 現れているところでもあります。そういうことをもし見つけることができるなら、 見つけてください。 前後で向き合って話をしてください。 ・・・さらに討論が盛り上がっていく。今村先生はあちこちで討論の輪に加わる・・・ 137 ・・・15 分後・・・ かなりの決定打が出ているようですので、次に新たな質問を加えます。この作品にタイトルを付け てください。もうみなさん答えは分かっていますので言いますが、9・11 ですよね。まさか「9・11」 なんていうタイトルはつけないでください。 ・・・18 分後・・・ 人間に着目してください。何人人が登場しますか、その人は何者ですか、その人の描写はどうなっ ていますか。タイトルも考えてください。いっぱい考えることがありますね。 「9・11」ではダメです。 ・・・20 分後・・・ 文章の中で、エッセンスがありますよね。その辺りから、文学的なタイトルは生まれます。みなさ んが作家になったつもりで、このページの中にタイトルを探してください。 ・・・21 分後・・・ 英語を読んだ人は、一行目で分かったそうです。 (会場からえーっというどよめき)凄いなあ。これ は訳が素晴らしくうまいのですよ。原作を越えるほどの翻訳だと思っているのですけれどね。 ・・・22 分後・・・ 英語だと、It was not a street anymore but a world, a time and space of falling ash and near night.(注、1 行目の書き出しの文章)と、朝なのに夜のようになっているのですよね。直訳しても、 「それはもはや通りではなかった。しかし世界だった」と論理的に通じない箇所です。a time and space of falling ash and near night.落ちる灰の時間と空間。夜が近づいている。 ・・・23 分後・・・ みなさんは、私が設定していたよりもよっぽど早く、答えが分かったので、先ほどの時間配分を早 めています。今からマイクロフォンを回しますので、それぞれのグループで決定的な文章を示しても らいますが、どこのグループも同じ箇所を指摘していますので、一つのグループに発表していただい た後、それとは別の箇所を新たに取り上げ、この場面こそ、9・11 を端的に表すものであるというこ とと、できたらタイトルを発表してください。 講義の実際(2) 各グループの意見発表 ・・・24 分後、グループ発表の開始・・・ 参加者 物語っていたところは、「市警の警察官たちと警備員たち」という文言。それから「千フィ ート頭上の窓に見える人影が何もない空間に落ちていく」。あとは「立ったまま身体を左右に揺らして いる」というところと、 「契約書や履歴書が風に流されていく、ビジネスの断片が紙飛行機のように滑 空する」という 4 箇所でした。タイトルについては、まだこのグループ内ではついていません。 (拍 手) 今村 テーマについては、ほとんどのグループが「これもまた世界だった-千フィート頭上の窓に見 える人影が何もない空間に落ちていく」というところを、とり上げていましたので、次のグループは そこを除いて、かつ今、発表したグループとも違う箇所で、ここが決定打だというところがあったら 発表してください。 138 参加者 僕は英語を読んで、「もはやストリートではない、世界だ」、先生がおっしゃったように灰が 落ちてきて、9・11 は朝でしたが、その結果、夜のようになっていた。そこが決定的というか印象に 残りました。タイトルは、これはグループの意見ではなくて僕の意見ですが、”near night”と考えま した。発音が北海道弁になってしまってすみません。(笑いと拍手) ・・・今村先生は、黒板にこのタイトルの英文を大書き・・・ 参加者 だいたい同じところなのですが、 「「朝食スペシャル」という看板を通り過ぎたとき」という ところをこのグループで話しました。明け方だったということと、朝食スペシャルという華やかなも のとの対比、コントラストがいかにも小説っぽい文章で、文学的かなと思いました。そこからタイト ルは、このグループでは「最悪の朝食スペシャル」とつけました。(拍手) 参加者 私たちの班では、千フィートというところが一番、ひっかかったのですが、それはすでに出 ていますので、裏側のページに行きまして「彼の耳に二度目の倒壊の音」というところで、確実に 2 つの塔が倒れたことが分かるので、これが二番目に決定的だと考えました。あと、タイトルなのです が、一番初めの行から考えて、 「崩れゆく世界」としました。(会場からああ、というため息) 今村 「崩れゆく世界」というのが英語でなんというのか分からないので書きません。(笑) ・・・と言いつつ、Falling World と黒板に大書き。またマンハッタンの図を書いて説明・・・ 2 枚目の方に行かれて、 「やがて彼の耳に二度目の倒壊の音が聞こえてきた」というところを選ばれ ました。もちろんこれも決定的ですけれども、その後、文章は「彼はカナル・ストリートを渡った」 と続きます。それはどこかと言いますと、マンハッタンとロングアイランドを結ぶブルックリン・ブ リッジにつながっている重要な通りなのです。この人はビルから飛び出して、この道を渡ってきて、 ここまで来ると、それまでのダウンタウンとはちょっと違う世界になります。この辺りにチャイナタ ウンがあり、ソーホーという芸術家村があります。このように北に、北に逃げているわけです。そう したことが分かりますので、次のページでの答えはその通りです。 ・・・31 分後・・・ 参加者 私たちのグループの中では、もうすでに出ているところが二箇所出てきました。その他に私 が 2 人でお話させていただいたときには、初めから 7 行目、「轟音がまだ空中に残っていた。ドドド ドッと裂け、崩れていく音。これが今や世界だった」というところと、その後「彼はスーツを着て、 ブリーフケースを抱えていた」というところから、9・11 ということが読み取れるのではないかと思 いました。タイトルは出てきませんでした。(拍手) 今村 ありがとうございます。一つ、ヒントを言います。言葉の一部が正解と重なっているものがあ ります。Falling が正解の一部です。しかし World ではないです。 参加者 だいたい、決定打と言えるところは出ているのですけれど、タイトルはまだ結論が出ていま せん。 今村 一通り出たようですけれど、まだ他のグループでこれは言っておきたいというタイトルはある でしょうか。 参加者 いろいろなものが出たのですが、これまで出てないもので決定打だと思ったのは、2 ページ 139 目の 7 行目で「地殻変動のような煙の津波」というところです。津波は水なので、煙の津波とは、倒 壊した煙が四方八方に広がっていったということで、ここがそうではないかと思いました。タイトル は、「墜ちていく人」です。 今村 あたりです(拍手)。”Falling Man”、これで決定打です。 参加者 ついでに言うと、”Falling Man”、はページの下に書いてありました(爆笑、ああそうかとい う声) 今村 本当ですね。消すのを忘れていました。(笑) ・・・ここまで 35 分・・・ 講義の中での社会人基礎力の育成 これ以上、授業を続けていく時間はないのですけれども、この授業は 19 世紀末から 21 世紀の文学 作品を扱って、学生にそれを読んでディスカッションさせるということで、全体的には牧歌的な時代 のものから、21 世紀の崩壊してしまうニューヨークというところまで、ニューヨークをどう読むか、 ニューヨークを読み解き、そこにアメリカさらには都市のかかえる問題というテーマで行っています。 学生の中には、この夏に実際にニューヨークに行っているものがいますので、後期にその体験談を 話してもらおうと思っています。 次にこれは社会人基礎力とどう関係するか、お話したいと思います。新たにハンドアウトを配りま したが、そこにこの授業の解説と、授業形態が書かれています。 実は学生には、”Falling Man”だということは明らかにして渡していて、学生はそのつもりでそれを 読んで来ています。先ほどお話ししたように、学生はなぜこのようなことが書かれているのかという ことを、たくさん用意して授業に臨みます。例えば先ほどの、モーニングスペシャルという看板があ ったというところがありますよね。それをとり上げている方もいましたけれど、もの凄く異常な事態 が起こっている中で、モーニングスペシャルという看板が書かれていることによって、極めて日常的 なものがそこにある。こんな店があるのかと通り過ぎていくわけですが、異常事態の中に、日常性み たいなものが並んでいるこのアンバランスな状況が、作品の一つの特徴になってくるわけです。学生 はこうしたところについて、 「なぜ」という質問をたくさん書いてくるわけです。それでお互いに話し 合って、これはこうじゃないいのとディスカッションしあって、作品の理解を深めていきます。 それでどういうことを授業で目的としているのかという点ですけれども、実際、みなさんに初めに やっていただいたことは、ペアディスカッションです。この場合、予習をしてこない学生は話し合い に参加できないので、学生は 100%予習してきます。しかも予習が楽しくて仕方がない。分からない ことを持ってきなさい、分からないことは何かを明らかにして授業に臨んでくださいと言ってあるわ けですから、疑問を持って授業に参加して、友達同士、話し合って、その中で回答を見つけていくわ けですよね。 この授業は3、4年生のアメリカ文学を専攻している学生に開かれた選択必修科目です。学生数は 約 80 名で、5、6 人のグループを作っていますから、それが 15 ぐらいのグループとなって教室に点 在しているわけです。座席はフィックスで、少なくとも前期は同じ席に座り、同じグループのメンバ ーでディスカッションをします。そこで自分が考えてきたことを、1 対 1 で話をするのがまずは目標 です。要するにどんなシャイな人でも、それなら話をすることができるわけですね。いわゆるアイス 140 ブレイクなのかもしれませんが、そこできちんと自分の考えを述べ合います。その時に、学生同士に は、お互いに話し合う中で尊敬し合うような気持ちが芽生えていきます。自ずとそこに個人のもつ個 性とも呼ぶべき、想像力とクリエイティヴティ、創造性が培われていきます。 それが今度はグループになりますと、その中で色々な意見が出てきて、答えが導き出されていきま すね。前期 15 週の授業の中の 13 回ぐらいがそのような授業なのですが、グループディスカッション では、毎回、司会者を作ります。これは固定化せずにローテーションで行います。同時に書記も作り、 みんなの意見をひたすらまとめます。それをサブリーダーとも呼ぶのですが、その時間のグループ発 表をこのサブリーダーが行います。 そうすると一学期のうち、3回ぐらい、司会を行ったり、みんなを代表してプレゼンテーションを したりすることになります。だれもがイニシャティヴをとる機会を与えられることになります。 グループディスカッションの後、クラスディスカッションになりますが、そこでどういうものを伸 ばそうかと考えているかといいますと、課題発見力であり傾聴力です。特に傾聴力は重要だと思って いるのですが、それがかなり育ちます。中にはグループを仕切りたがる学生もいるのですけれど、仕 切っていて、発信しているだけでは自分が育たない、傾聴力が重要なのだということを自覚させてい きます。 そうした中でディスカッションしながら、前に踏み出す力とは何かを考えると、やはり一番大事な ことは主体性だと思うのですね。その主体性は授業ではどのように出てくるのか。得てして大学の授 業は、講師が壇上に立ったまま話し続ける授業になりがちなのですけれども、それではやはり主体性 は育たないわけで、講義の後にディスカッション、 あるいはディスカッションの後に講義という形で、 話し合いを入れることによって、学生は自分の見聞をきちっと主体的にとらえ、その能力を伸ばして いけるわけです。 またグループディスカッションの中では、先ほど言った傾聴力の他に、柔軟性、発信力、状況把握 力などが自ずと生まれてきます。そうした授業をしながら、必ず毎回、小レポートを書かしています が、授業で 2 つのことを押さえるように、と言っています。この 90 分の授業の中で自分が一番重要 だと思うことを、一つ書きなさいというのが課題です。2 番目は何か疑問があれば書いてくださいと いうことです。 A6 の小さな紙に、毎回、学生に書いてもらいまして、翌週、学生に返します。そこには評価の点 数は書いていなのですが、私の方では日々の評価を、10 点法で入れています。なぜ学生にそれを明ら かにしないのかと言うと、そこまで評価されていると思うと、ちょっと重くなってしまうと思うから です。そのためそこは評価の対象になっていないと学生は思っていますけれども、私の方では平常点 を評価しています。小レポートに疑問が書かれているときには、必ず答えを次の時間でやります。 このため授業自身は直線的には進みません。一つの作品を 2 回ぐらいで読み終えますが、その後に、 だいたい A4 で 3 枚ぐらいの小論文、作品論を書くことも課題として出しています。作品は次々と読 んでいくので、A という作品を終えて B という作品に入っているときに、A の課題が提出されるので すが、そうしたらその翌週にこれについて扱います。ですから B に入った後にまた A に戻ったりもす るわけです。 そのときに、小レポートもそうなのですが、特に優れている、面白いと思うものはプリントして全 員に配ります。その場合、1 回の授業を受けた中で感銘を受けたところがそれぞれに違っているので すね。そうすると、同じ授業を受けていながら、なぜあの人はあのようなところを面白がって、この ような感想を持っているのだろうかと学生たちが考えることになり、ある学生が感動したことが、次 141 の授業ではみんなに共有されることになります。 そうすると、授業を聞く態度がもの凄く積極的になる。いつか自分の書いたものも、プリントアウ トされて、面白い意見だと言われたいと思うようになるのですね。実際にはちょっと無理をしても、 教育的な配慮がありますので、必ず 1 学期の間に、全員のものがプリントアウトされるように、誰の ものをプリントしたかマークしておきます。この子はまだプリントアウトしてないからというわけで、 1 行でも面白いところがあればプリントアウトして、ここが面白いよと言って、誉めながらエンカレ ッジする。 そうすると小レポートを書くことも凄く興味があるし、授業中にこの授業で一番面白いものは何な のかを考えていると、90 分の間、一度も途切れずに集中できるのですね。つまり講義とグループディ スカッションとプレゼンテーションという 3 つの領域の中でやっているので、集中力も意識も途切れ ることがないし、100 人、200 人の学生でも眠る学生はゼロです。 いわゆる私語もありません。というよりも時間を取って、私語的な会話を積極的に勧めているわけ でして、自分たちで話し合う時間があり、自分の考えたことを相手に伝えることができるわけです。 レポートも同じようにして、優れたものはプリントアウトするだけではなくて、みんなの前で読み 上げることにしています。そのときに必ず、プリントアウトしたものにはコメントが付いていまして、 そこにどこがどのようにいいのか、具体的に誉めているわけですから、それが学生の参考になります。 『社会人基礎力 育成の手引き』の中にもレポートのサンプルが載っています。242 ページから始ま るところです。 リーディングⅡという 2 年生の必修の授業を扱ったものですけれども、そのときに扱ったレポート が 258 ページに載っています。コメントはかなりシンプルですが、参考にしてみてください。優秀な ものは詳しく書き出して、この論文はどこがいいのかを学生に示します。そうなると一番いい論文を 選ぶと、その論文が今度はクラス全体で共有するレベルにアップします。3、4 年生で一緒にやってい るので、特に 3 年生の中に優秀なのがいたりすると、4 年生はショックを受けるのですが、学年に関 係なく優れたものが出てくる。それをプリントアウトして、論文の書き方はどういうものかを、実際 の例を持って確認します。 従って授業展開としては予習があり、授業があって、レポートがあって、論文があってというパタ ーンを繰り返していって、最終的に前期の授業が終わる形を取っています。このリーディングⅡが、 2008 年の社会人基礎力グランプリの決勝に残って、講義型兼演習型の授業における社会人基礎力の育 成ということで、経済産業省の方からアカデミック部門での優秀賞をもらいました。私自身も、優れ た教育をしているといって誉められました。誉められれば幾つになっても嬉しいもので、頑張ろうと いう気持ちが高まり、経済産業省の方と審査員の方々には大変、感謝しています。 このような形で授業を行っていますが、とにかく学生が授業を楽しみにしていることが重要だと思 うのですね。授業が終わった後にも、そのつど、とても満足します。またグループディスカッション が教室でなされ、廊下でもまだティスカッションが続いたり、さらにキャフェテリアにまで行って、 ディスカッションを続けたりします。 僕らの時代は教室の外で学問するのが当たり前でしたが、今の学生は、授業が終わるととたんに「何 を食べる?」などという話になって、案外、軽薄なところがあるのでが、そういうものが消えていき ます。授業の延長線上で、授業の外でも学問を語り合えることの喜びを知るのです。それが大学に来 ていることの喜びであるし、学んだことをお互いに知らせながら、語り合うことの喜びを知るわけで す。 そうすると彼女たちに言わせると、 「私たち、学生しているじゃない!」とかいうことで、それが喜 142 びになるのです。その通りで、学生しているわけです。授業以外のところで、日常的に学生がお互い に真摯に向き合って、お互いに高めあうことが可能になっていく。その辺りがうまく大学の授業に組 み込まれると、学生は大学の授業に来ることを非常に楽しみにするようになると思っています。 ほんの一例でして、皆様のお役に立てるか分かりませんけれども、私の経験をお話させていただき ました。ご静聴、ありがとうございました。 143 社会人基礎力育成事例研究セミナー北海道会場 第 3 部 質疑応答 日時:平成22年9月27日(月) 場所:北海道大学学術交流会館 発言者:今村楯夫 東京女子大学現代教養学部教授 :三上力 キャリアバンク株式会社 雇用創出事業部 教育関連チーム課長 質疑応答 参加者 こういう授業のプログラムで、学生が成長するのは面白いと思いましたが、授業以外のとこ ろで学生が自分を成長させたいと思ったときに、授業が忙しすぎて、諦めたり、出られなかったり、 ということがよくあると思います、そういうときにどのようにお考えになるでしょうか。人の成長に はいろいろなパターンがあって、社会人基礎力のプログラムを設けたときに、それが合う人もいれば、 足枷になる人もいると思います。そういうときにどのように接したらいいか、お伺いできればと思い ます。 今村 この授業は 80 人ぐらいでプログラムに対する適応性に関しては問題はなかったのですが、異 文化理解の授業で 200 人ぐらいいて、そのときに 5 人一組でディスカッションをしたときに、グルー プの仲間で何人かが手抜きで宿題をやってこないことがあり、それに関する不満が寄せられたことが あります。このような場合、そうした不満を申し出た学生には直接、こちらの方針を伝え、一方で教 室では一般論として「協働作業が求められているのだから、積極的に参加しましょう」と説得したこ とがあります。 それから病気や家族の事情で授業に出て来られない学生もいました。欠席率自体は非常に低くて、 2、3%でしたが、そのときには欠席にした後にその理由を言ってもらって、できるだけ後でフォロー アップしています。今まであまりこぼれていく経験はありません。 参加者 もう一度、具体的に言いますと、一般の学生がバイトやサークルでの方が、社会人基礎力を 伸ばしているというデータが出ている中で、例えば 100 人の学生が履修していたときに、授業の中で の方が伸びるという学生と、それ以外の方が伸びるという学生がいると思います。そうしたときにど うアドバイスするかという意図の質問でした。 今村 確かに学生の中には、何科目も取っている学生がいます。その時に、どうも自分たちでランク 付けして、この授業は予習しなくていいとか、手を抜いていいとか決めているようです。個々の授業 に対する対応はさまざまでしょうし、学生が判断していると思います。 私自身は、学生の中に寝る人はいないし、そうした授業をやっているという自負がありますが、私 語をしないなら寝ていいよと言っている先生もいます。ですから学生本人が判断をして、授業に出る よりアルバイトの方がいいと思えばそちらに行くと思います。それは学生自身の主体性によって判断 することであって、われわれは、魅力ある授業を行うことしかないと思います。しかし、本来、アル バイトやサークル活動は大学での学びとは異なる余興でしかないのですから、授業がそれらを凌駕す る内容と魅力をもつよう教師が努力する必要があります。 三上 先ほどの授業を拝見していて感じたのですが、あの授業は非常に肯定的に参加できる仕組みに なっているのですね。仕事も同じなのです。同じプロジェクトに命令で参加しているのか、自分にと ってのプラスを考えて参加しているのか、肯定的に捉えられるかどうかというところが、凄く、大事 だと思います。 144 学生には確かに自分の判断で授業に出ないという選択もあるのかもしれませんけれども、それ以前 に、このような肯定的な仕組みを作っていることは、会社でも役に立つというか、プロジェクトを進 める上でも、参考にしたいなと思って聞いていました。少し質問の主旨とはずれましたが、そんなと ころです。 参加者 札幌市立大学で就職支援をしている者です。本学はデザイン学部と看護学部の二つに分かれ ているのですが、学部によって、社会人基礎力に取り組むコツはあると思いますか。 今村 私は 6 年ほど、大学のキャリアセンター長をやっていまして、キャリア教育のあり方について 意識してやってきました。 「現代 GP キャリア教育支援プロジェクト」で文部科学省から 3 年間のサポ ートをいただきました。全学的なプロジェクトとしてオープンテーマ演習という、もともとあった科 目を生かして使いました。2 年生から 4 年生まで学部・学科を越えて誰でも取れて、上限 15 人のクラ スです。教員の方も自分の専門領域から離れ、できるだけ普遍的な内容のものをやりましょうという ことで組まれて、 「自分の大学の良さを知り、外に向かって発信する」というテーマでさまざまな専門 領域の先生方に参加してもらい、プロジェクトを組みました。 文科省からは上限 15 人で、20 クラス作ってもせいぜい 300 人。全学 4000 人の中で果たしてそれ で大学全体に動きになるのかということを言われましたが、それに対する答えは、コミットする学生 は 300 人なのだけれども、学期が終わった後に、全学に向けてオープンテーマ演習の成果を発表する ことでした。 最終的に一番、集客力が大きかったのは、 「本学出身の作家研究」というオープンテーマ演習の授業 を受講した学生が主体となって、瀬戸内寂聴を呼んで講演してもらった企画でした。この時は、1,000 人を越えるオーディエンスが集まりました。そのときに瀬戸内寂聴という大物を連れてくることも含 めて、担当教員は多少補助的なことをされたようですが、学生が企画から何から全部担いました。授 業を越えるものとしてやりました。 そのように全学的に広めていくためには、自分たちがやったものを、どれだけ学内でシェアしてい くかにあると思うのです。方法さえ確立していれば、いかなる専門領域でも社会人基礎力の育成は可 能だろうと思っています。デザイン学部であろうと看護学部であろうと、授業形態に社会人基礎力を 取り込んでいく、という明確な指針をもち、その具体的な展開方法を援用すれば専門領域に関係なく、 実現可能だと思います。その実践方法の基本は「協働」であり、学生同士はもちろんですが、そこに 教師自身が積極的に加わっていくことが重要だと思います。 三上 私の場合は、これまでいろいろな大学さんに提案をさせていただいている中で、新しいことを 始めるのか、それとも今までやっていることにどういう位置付けをしていくのかということで、答え はまったく違ってくると思っています。 今日は新しく始めることではなくて、今、やっていることの見直しをして、意識を持てば、社会人 基礎力はすぐに始められるというメッセージを伝えたかったのですね。 ポイントはやはり社会人基礎力について、みなさんの中で理解を共有する場を作ることだと思って います。その中で、例えば授業のやり方で、今までどうしているかを見ていくと、結構、ディスカッ ションの場はあるのですね。そこに意識付けを与えることでいい流れが作れるように思います。 新しく始める場合の例になるか分かりませんが、インターンシップを行うときに、うちの場合は 3 大学を同じ時にまとめてしまいます。いろいろな大学が集まって、お互いにやっていることが違って いても、社会人基礎力というキーワードで他の大学生とつながる効果がありました。ですので、学部 を越えて行って見てもいいのではないかと思います。 145 参加者 もう一度続けていいですか。あくまでも就職率にイコールな社会人基礎力ではないと、先ほ ど教えていただきました。しかし実際に就職支援の場にいるものとして考えるのですが、本学の中で もいろいろとディスカッションはやっているのですね。ところが就職活動になるとグループディスカ ッションで通らないのです。そこでかなり自信を落として帰ってきます。私としてはいつも同じもの と討論していて、自己満足になっているのではないかと思っているのですが、そういうところはどの ようにお考えですか。 三上 今の問題ですが、私は今、新卒の未就職者の支援もさせていただいていています。高校や大学 でいろいろな取り組みがあり、一方では産業界の中で、なかなか雇用できる環境にないという現状も あります。私はその間をつなぐ仕組みが必要なのだと思っていますが、その中で特に社会人基礎力は、 一つのキーワードになると思っています。 就職の中で、前に踏み出す力があって、何度転んでも諦めない人は、いつか就職できるのですね。 諦めないで努力しています。また巻き込み力があって、周りからいろいろな情報を取ることで違った ものが見えてくる。これには傾聴力も関係していて、自分にはもしかしたらこっちに向いているかも しれないと足を伸ばしていく人たちは、時間がかかっても、就職ができています。ですから今、預か っている学生たちもいるのですが、そこのところを一番、大切にして伝えています。 以上 146 ⑥広島会場 時間 13:00~13:10 内容 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~14:00 大野孝二氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 山本真司) 14:00~14:10 休憩 14:10~14:35 事例紹介①(宮城大学事業構想学部教授 富樫敦氏) 「高度な実学による社会貢献を通した社会人基礎力育成・評価」 14:35~15:00 事例紹介②(愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 谷口功氏) 「地域での実践教育と社会人基礎力~豊田市と安城市をフィールドとし て~」 15:00~15:25 事例紹介③広島経済大学興動館課長 友松修氏 「地域連携を通じた人材育成の取り組み~広島経済大学「興動館教育プロ グラム」~ 15:25~15:35 休憩 15:35~16:45 パネルディスカッション 「地域との連携を通して学生の社会人基礎力を育成する」 松山大学経営学部教授 吉岡洋一氏 亀岡酒造株式会社取締役 横田光敏氏 谷口先生 友松氏 [司会]富樫先生 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 宮城大学 富樫 敦氏 愛知学泉大学 谷口 功氏 壷井秀一氏) 広島経済大学 友松 修氏 パネルディスカッション 松山大学 吉岡洋一氏 亀岡酒造株式会社 横田光敏氏 147 社会人基礎力育成事例研究セミナー広島会場 第 2 部 富樫敦氏発言 日時:平成 22 年 10 月 4 日(月) 場所:広島国際会議場 発言者:富樫敦 宮城大学事業構想学部教授 知識の習得を基本とした情報分野の授業に、課題解決型・PBL 型の授業を導入することで、「社会人基 礎力・実践力・知識」をバランス良く備え、産業界のニーズに応えられるITエンジニアの育成を目指す。I T教育に情報処理学会アクレディテーション委員会委員として、JABEE 認定にも携わる。 高度な実学による社会貢献を通した社会人基礎力育成・評価 はじめに~宮城大学の紹介 先ほど河合塾の山本さんから、リファレンスブックを中心にして、各大学の社会人基礎力育成・評 価導入の事例が説明されました。今、日本の経済にはいろいろな意味で閉塞感がありますが、大学の 先生方が強い意思を持って学生さんをもっと元気にすれば、地域が元気になり、日本全体も元気にな るのではないかと思っています。以上は前置きですが、 「高度な実学による社会貢献を通した社会人基 礎力育成・評価」というタイトルで,お話しさせていただきます。 残った 22 分間で、どのような話をするのか、初めに全体のアウトラインを簡単に述べますが、ま ず宮城大学の簡単な紹介をさせていただきます。これが 2 分です。 昨年は幸いにモデル校として本事業の採択を受けましたので、本事業の中行ったいろいろなプロジ ェクトをお話したいのですが、先ほどの DVD の中で、パナソニック電工の方が、 「全部しゃべっちゃ ダメなのだよ」とご指摘されていましたので、全部は話さず,事業のメインである PBL について, 地域からどのような課題をもらって PBL を実施したか.具体的にどのようなことを実施し,どのよ うな効果が得られたかを中心にお話しします。 次に、仙台は新幹線に乗れば東京から 1 時間 30 分ほどで着いてしまう地理的環境にあります。関 東圏に近いが,東京とは一緒になりたくはないという地域企業のカルチャーがあります。有能な学生 さんは皆、卒業後に東京に行ってしまいます。この問題を何とかしなければいけないということで、 仙台地域の伝統的な産学連携の枠組みが作られています。 『仙台スキーム』と言います.こういった枠 組みで,地域で活躍できる人材をもっと育成していこうという仕組みです.話題提供では,その仕組 みの話をします。 最後に地域と連携した人材育成の成功事例を中心にして、ちょっとしたアイデアはパネルディスカ ッションにとっておき、全体を 22~23 分間で終わらせます。 最初は宮城大学のことです。宮城大が位置しているのは、仙台市の北のはずれから少し出たところ に位置しています。道を一歩隔てると仙台市になります。宮城県出資の公立大学だから仙台市には作 ってはいけないという背景があり、仙台市からちょっとはずれたところに大学が設立されました。仙 台駅からは 10 キロくらいの位置、地下鉄を使って 40 分くらいかかります。 規模は学生・院生を含めて 2000 人くらいです。単科大くらいの大きさです。どんな学部があるか というと、昔でいう衣食住との関係で見ていくと、衣は医学の医になって、看護学部があります。食 はいろいろな意味で重要で、食産業学部があります。さらにビジネスを興し、経済を起こしていかね ばなりません。以上の趣旨から,事業構想学部が創られました。日本で唯一の学部名を冠する学部で す.学部カリキュラムは,情報、MBL 的なもの、建築などなんでもござれで、全て実学に基づいて います。特に地域観光などに代表されるように,いろいろな形で学生教員がフィールドワークに出て 活躍しています。その意味では,基礎よりは実践に重きを置いた教育研究カリキュラム体系になって います。私は今まで基礎研究を重視してきて、最初はかなりギャップがありましたが、郷に入れば郷 に従えで,いい意味で感化されていきました。 148 宮城大学における 3 年間の取り組み~社会人基礎力育成・評価事業~ 社会人基礎力事業について、平成 19 年度から 20、21 年度の事業概要は、スライドに書いてある通 りです。大学では高校から有能な、場合によってはそうでない学生さんもいただきながら、いかに「伸 びしろ」を大きく作って実社会に出していくかという使命があります。 先程山本さんの講演にもありましたように、基礎知識があって専門知識があり、間を結ぶ社会人基 礎力とありましたが、基礎力の重要性はこの間をつなぐ接着剤です。 学生と教員は学内外で実際に色々な人と関わりながら、中には自治体,いろいろな企業、大手の企 業もあれば小さな企業もありますが、その中で互いに切磋琢磨しながら,学生の教育を考えてきまし た。講義形式の教育を行うだけではなくて、実際の PBL に重きを置いて事業を推進してまいりまし た.ゼミ活動の方が、アルバイトよりもずっと社会人基礎力を育成できると言った事実もありました。 基礎力事業開始後,4 年間の中で、ウンとは言わない先生のお尻を叩き、東京女子大の今村先生にも 去年から FD で来ていただきご支援を頂きながら,事業の学内普及に努めてまいりました。 中には,今村先生のお話に「なるほどなあ」というふうに、感じ入った先生も多くいました.その 時は,FD はこんな風に実施すればいいのだと思いました。全体を通して,それほど変わったことを やっているわけではありませんが、できるだけ裾野を広げることを目指しました。最初の年の平成 19 年度は,協力いただいた教員は数名でしたが、その後だんだんとその波及効果が現れていったようで す。 経済産業省は「3 年で本事業は終わります.その後の 4 年目は自立するのですよ.」とおっしゃって いましたが,その意味で,今は細く長くではなく、中ぐらいの太さで長く本事業を持続している状況 です。 平成 19 年度は、PBL しかありませんでした。多くの企業からご協力をいただきました。仙台はど ちらかというと支店経済都市なので、NEC 系など大手の支店が集積しています。その他,有限会社 で従業員数名くらいの会社、地元仙台から立ちあがった会社など、多岐に渉る規模と職種の会社があ ります。こういった企業の数社から講師を派遣していただき、最初は 6 チーム 37 名の 6 つの PBL を 回していきました。詳細はスライドをご覧になってください。テーマは多岐にわたっています。流通 あり、ウェブ開発あり、観光あり、方言ありです。 以上のように,多種多様な課題があります。私が担当したのは、「ICT と食(エゴマ)を通じた地 域活性化」です。仙台からちょうど 30 キロほど離れたところに,色麻町という地方自治体がありま す。この課題解決事業がきっかけで,町や役場の雰囲気がこの数年だいぶ変わっていきました.その 意味で,本事業は地域の活性化に貢献しています。 初年度の社会人基礎力育成事業では,意欲ある学生さんをピックアップし、定員 36 名で実施しま した。1チームは約 6 名です。学生を対象に募集を掛けたところ,70 名から 80 名の学生さんが手を 挙げました。この人数は多すぎるので,学生に自分は何がやりたいのか、どのテーマで何をやりたい のかを書かせ、参加人数を半分くらいに減らしました。初年度は、意欲があり、明確な達成目標を持 った学生さんを募って PBL を実施しました.以上のような状況から、最初ということもあり担当者 の意気込みも暑く、新聞報道,テレビ報道,受賞とか,いい意味でメディアに露出させていただきま した。 面白いと思ったのは、こういった実績が学生さんの自尊感情を高め、学生さんの能力を更に伸ばし ていくのです。その当時は日本の経済状況も良く、就職状況も良かったのも反映して、参加学生さん には 2 つ 3 つ、いいところ(企業)からピックアップが来ました.こういった成果を見て,産業界は、 学力もさることながら実践力を持っている学生さんを望んでいるということが、身にしみて分かりま した。これが初年度の成果です。 149 本事業の3年間を通して,PBL では多くの地域課題をピックアップし、その解決方法に実践を交え て取り組みました.その際も,企業から協力していただきました.そこで質問として,どうして色々 な地域や企業が協力してくれたのかですが,この件については、後でお話します.本事業では,PBL 意外に、通常の授業の中でも社会人基礎力は育成できるのではないかという新規リクエストが経済産 業省からありました。 2 年目には,経済産業省の意向もあり、通常の授業の中でも基礎力を育成していくことに取り組み ました。初年度は,意欲のある学生さんだけを対象にしたので、それなりの成果があったのも当然か もしれません。2年目の事業では,意欲がそれほどでもない普通の学生さんを対象に,通常の授業で 意欲を持たせ,基礎力向上にトライしてみました。 授業の中で、 「我も我も」という学生さんだけだったら授業も活発になりそれなりの成果を望めるの ですが、普通の学生さんを対象にして,授業でどうやって基礎力を育成するかを試みました。更に, 授業も二つや三つではなく、1 年次から 4 年次までの 4 年間の一貫したカリキュラム体系の中で実施 しました.ピックアップする授業も、文系科目,理系科目,文理融合科目,初年度導入科目,リテラ シー育成を主眼とした授業科目と多岐に亘っています.中には,演習科目で一つのチームである地域 課題を解決するというのもあります.また,参加者も 1 年生から大学院生までの大学のカリキュラム 外の授業も作りました.基礎力向上について、4 年間のポートフォリオを作成したのが 2 年目です。 今回は、通常科目の教育内容ではなく PBL 等の地域連携事業に絞ってお話していますが、2 年目の 基礎力グランプリでは、卒業研究の内容を発表させていただきました.テーマは,地域の伝統野菜と 米粉利用の普及活動です.地域特産の野菜やお米を見直そうです.最近小麦の値段が高騰し,その代 替としての米粉に目を付けた試みです.彼女らの卒業研究の試みは地域に溶け込み、地域の協力もよ く得られていたようです.あるときは,宮城県だけに限らず他県にも出張し、他県の地域振興、観光 の振興も調査しました.このように,PBL 意外に通常の授業の中で基礎力育成を目指したのが 2 年目 です。 3 年目は、1 年目、2 年目と実施内容は大きく変わらないのですが、学生さんの能力を捉えようとし たときに、学内活動の評価尺度と学外活動のそれとは違うでしょうということになりました。学内活 動ではどちらかというと基礎ベース、知識ベースの能力向上活動が主で、授業の中でいかに意欲的に 勉学に励むかとか、チームワークを生かした学習活動ですが、学外活動はそれらの応用的実践であり, 関係する人たちも多岐に亘ります.3 年目は,学内の他学外活動も新たに追加した 3 次元モデルを考 案しました。このモデルに従い,学生さんの社会人基礎力をどうやって育成・評価していくのかがテ ーマです。 3年目の特異的試みの一つとして,リファレンスブックの最初の箇所に少し記載されていますが、 私の授業の中で、ほとんどレクチャーをしない授業を試みました。90 分間の授業のうち、20 分くら いそれなりにピンポイント的な講義はしますが、後の 70 分は学生さんのプレゼンだったり、ワーク だったりと、学生による演習中心の授業を 15 回やらせていただきました。その背景には、東京女子 大の今村先生の影響が大です。 以上,宮城大学のおける社会人基礎力育成・評価事業の3年間の概要を駆け足で説明させていただ きました.今現在の試みとして,基礎力事業で行った地域貢献を継続中です.具体的には,宮城大学 と包括連携協定を結んでいる気仙沼市を取り上げ,1 年間ではなく今度は 3 年間の計画で、学生さん と一緒に気仙沼市の活性化に取り組んでいます.当然,この活動を通して学生の基礎力育成も大きな 狙いの一つです. さて,気仙沼市ですが,昔民放のテレビ番組に度々登場した「気仙沼ちゃん」をご存じの方もいら 150 っしゃるかもしれませんが、その気仙沼ちゃんの出身地の宮城県気仙沼市です。当時は漁業が非常に 盛んでしたが、最近は遠洋漁業衰退を辿っていて、漁に出られない漁船が漁港で結構停留していると のことです。したがって,現在の地域経済は当時の半分以下に落ち込み、市役所のある通りはシャッ ター通りになっています。このような状況を打破し,地域経済に何らかの活路を見いだしたいという のが,市役所をはじめ気仙沼市住民の思いのようです. 気仙沼市は宮城県の北部に位置していて、仙台から高速道路を使って約 2 時間 30 分位掛かり高速 道路の最寄りに IC から約 1 時間もかかる、交通体系からも非常に遠いところに位置しています.し かし,気仙沼には観光名所がたくさんあります。フカヒレ以外の新たなブランディングをいかに情報 発信していくかが大きな課題になっています。気仙沼市役所の方から食による観光振興という具体的 なリクエストをいただき、複数の企業と連携しながらこのテーマに取り組んでいます。詳細は時間の 関係からお話しできませんが、遠洋漁業の復活の点から,マグロの親類にあたるメカジキの販売・流 通促進が市役所の熱い思いだったのです.実はメカジキは気仙沼が日本の漁獲量一番のお魚であり、 この魚を何とか全国に広めたいという思いがあるようです。そういった思いを受けて,去年はメカジ キに取り組みました。地域在住のおじいちゃん、おばあちゃんからメカジキを使った郷土料理を教わ りながら,自分たちでも実際に料理し、 「こう料理したらいいのではないか?ああいう風にしたらいい のではないかと、食育にも手を伸ばし,販売促進につながる料理法を模索しました.なかなか解決の 糸口が見えず,テレビで活躍し地域では有名な食の専門家に相談したりと,みんな気仙沼市民の気持 ちになって取り組んだのが昨年の事例です。 今年は昨年の成果を受けて採食健美ということで、採る、食べる、健康、美しく、の 4 つのキーワ ードで攻めている状況です。これには裏話(エピソード)がありまして、平成 19 年度、先程も触れ ましたように色麻町という自治体で行った社会人基礎力事業の一つ PBL 活動が起爆剤になり、地域 をもっと元気にしようとする機運が盛り上がり、その後政府系のいくつかの補助事業を通して地域振 興を盛り上げた事例があります.基礎力事業での一つの活動が、百倍の効果を生んだのです。経済産 業省の社会人基礎力事業様々です.気仙沼市を対象にした活動は,第二の色麻町の事例にしようとい う活動です. 仙台地域における産学連携と人材育成プログラム:仙台スキーム 今回のテーマと密接に関係する話になりますが、仙台地域では昔から産学連携が進んでいます。か れこれ 10 年くらいになると思います。仙台には東北大を筆頭に 10 幾つの大学があります。学都仙台 と言われています。 スライドで県内の大学の卒業生の就職状況をお見せしますが、これは宮城大学事業構想学部事業計 画学科の事例で、県内に残る学生の割合は 38%と比較的多い例です.私が所属するデザイン情報学科 では 4 人に 1 人しか県内には残りません。 東北大学工学部の例ですとだいたい 14%、大学院ですと5% しか県内には残りません。県庁,市役所,電力会社や銀行に就職する人も含めての 5%です。ほとん どが首都圏に行ってしまいます。これでは人材が地域に定着しません。しかも,仙台市は支店が多い ので、法人税はみな本店に持っていかれてしまい、地域には残りません。 この問題は看過できないということで、10 年前から「仙台スキーム」の取り組みが行われています。 仙台スキームというのはここ 2~3 年の間にできた造語ですが、いろいろな大学が連携をして、産業 界と一緒になって地域に貢献できる人材を育成していこうというモデルです.取り組みの背後には, 仙台市や宮城県という自治体の支援があります。このスキームによる育成事業のもと、学生さんは単 位にはならないが、企業の講師指導のもと SE に必要な能力向上につながるグループワークを行いま す.仙台地域では,社会人基礎力事業の PBL に相当するような事業を 10 年間くらい行っています。 人材育成に関し以上のような地域の理解もあり、宮城大で PBL を行おうとする場合、企業の余り 151 躊躇せず講師を派遣してくれます.過去の経緯とこれまでの実績があって、宮城大が行う事業に対し ても,企業からの講師派遣、評価員の派遣、協力が得やすいのではないかと思います。 地域(企業は自治体)と連携した人材育成の成功事例 何故、仙台圏の企業は本事業に協力してくれるのかは,これまで話したとおりです.大学の思いは、 有能な学生を企業や産業界、社会に送り出して、日本全体を元気にしたいというものです。実践的人 材育成に関し,実際の企業の現場ではどのように人材育成しているかが余り分からないのですが、企 業の協力によって、そういった実践的要素が大学の教育の中に取り込める.この意義は,非常に大き いと思います。 一方,地域で活躍できる人材育成の推進ということで、これを契機にして地域との連携をもっと強 めたいと言う点もあります。これも大学側の思いです。 地域の企業側,特に中小企業の思いとして、うちにも有能な学生さんが是非来て欲しいというもの があると思います。現実問題として,大手ではない地元の中小企業には,なかなかいい人材は来てく れません.人材獲得に対する地元企業の思いが、仙台スキームへの理解につながっています.事業や 企業の発展は、人が作ります.その意味で,企業は一人でも二人でも有能な人材を求めています. 仙台地域を母体にして,宮城県には宮城県情報サービス産業協会があります.協会に属する企業ト ップの多くは、 「有能な人材が自分の会社には来なくとも、協会のどこかの企業に来てくれことによっ て,その企業が発展し,その延長で協会全体発展することを一番望んでいる」とおっしゃっています. 広い視野での見識です.自分のところ(会社)だけが良かったらいいとは思っていない。相互扶助で す.最も,この業界は互いに仕事を委託しあったり,強い協力関係が底流に流れているせいかもしれ ませんが。 人材育成に協力いただいた企業のある講師の方はこんなことを言っていました。山本さんのお話に もありましたように、だいたい学生さん 5~6 人くらいが1チームを構成し,PBL に取り組むわけで すが、チームの企業講師は若手の入社 3 年目とか,5 年目以内の方が大半を占めています.講師とし て派遣されたその社員は,学生チームのまとめ役として仮想的なプロジェクトマネージャーの体験が できて大変よかったと言っていました.彼にとっては,半年間の経験はプロジェクトマネージャーの 仮想的な体験と好意に考えています.最も,学生さんをまとめあげられなければ、実際の企業の社員 をまとめることはできないわけですが。 入社前の学生には、いろいろな学生がいます。企業講師は,規律性の余りない学生さんを適度に叱 りつつ、プロジェクトの方向性を適宜判断し、プロジェクトをリードしていった例が殆どです.すで に述べたように,いい意味で若手社員の育成になったという上司のコメントが多かったようです.こ の他、大学とのお付き合いとかというのもありました.これは少し引いた消極的な考えですが。阪大 の例のようにはなかなかいかないものですが、今回のテーマが企業の次の投資の布石になったとかと いった、企業もありました。自治体の方は、今回の産学連携の推進は、企業が元気になれば、地域も 元気になり、自治体も元気になる道理ですので、自治体の思いも自ずと高くなりました。 152 社会人基礎力育成事例研究セミナー広島会場 第 2 部 谷口功氏発言 日時:平成 22 年 10 月 4 日(月) 場所:広島国際会議場 発言者:谷口功 愛知学泉大学 コミュニティ政策学部准教授 大学の地元である豊田市や安城市をフィールドとして、地方自治体が抱える実践的な課題に取り組みな がら、学生の問題発見・解決の能力育成に取り組む。社会で求められる力として社会人基礎力を意識さ せるだけでなく、学生が自身を振り返り、強み・弱みを理解し、自信につなぐ仕組みを導入した。 地域での実践教育と社会人基礎力~豊田市と安城市をフィールドとして はじめに 私は大学では社会学や経営組織論という科目を担当しながら、学生たちと外に出て学びをやってい ます。豊田市、安城市においてですが、ここは日本の製造業の中心の一つ、豊田市のおひざ元です。 関連企業がありまして、非常に製造業が盛んです。 私は大学では入試委員も担当していて、地元の高校の先生や進路の先生と話をするのですが、大学 進学率について悩ましい課題を抱えています。何かと言いますと、高校を出た子の多くが就職します。 進学校ですと大学に入ることがもちろんあるのですが、多くが就職します。何故就職できるのかとい うと、製造業があるからです。きちんと高卒で、トヨタ関連のラインに入ることができるなら、30 歳 で家を建てることができるという中で、大学に行く必要がないという話を聞きますし、何故、敢えて 大学に行ってまでその先の事を考えなければいけないのかということを言われます。 これに対して大学に行くことで、どのような付加価値が出せるのかという話のときに、社会人基礎 力のことを語るのですが、まだつながっていないのが現状です。そういうなかで私たちがどのような ことに取り組んでいるか話します。 本日配られた『手引き』の中で、学部としては 366 ページに取り上げられていますが、大学全体と しては、学則に社会人基礎力というキーワードを入れるというようにバックアップをする体制ができ ています。社会人基礎力に対して大学としては理解があります。 問題はどこの大学でもそうだと思いますが、個々の教員がどう理解するかといったときに、なかな か浸透しない面があります。私自身は、主観性、客観性をめぐるジレンマが大学人にあるのではない かと考えています。今日はその辺りで、私が社会人基礎力や地域社会を考えるときに、何をどのよう に考えているのかについて話していきたいと思います。 初めに私の立ち位置、私が具体的に大学でどのようなことを取り組んできたのかという内容、社会 人基礎力の導入の効果、教育的課題といったようなところで話をしていきたいと思っています。 私は社会学を行っていると言いましたが、比較的地域に入ることを学問の対象としています。ただ 地域に入るときに、その接し方の 3 つを使い分けるように注意しています。割と上の世代、年配の先 生方に多いのですが、調査をする、データを拾う、ヒアリングをする、そこで客観的な観察をすると いう立場があります。またその中で参与観察をしながら、その地域をどのように見て行くのかという 手法、これも社会学にあります。ただ時代の流れとして、研究者も地域に入って当事者として実践を しなさいという要請があります。30 代、40 代の若手教員たちはそれを求められる中で、世代間の争 いというか、そんなに学者が入るものではないという意見があり、いやいやとはいっても入らなけれ ばといった中でジレンマを抱えています。 主観・客観ということで言いますと、例えば上 2 つは論文を書いたり、報告を書いたりする時、主 語は比較的客観的にとらえ、 「彼らは」 「自治体は」 「商工会議所では」と、非常に客観視するような見 方をするのに対し、当事者として入ったときには、主語は私、私は何をしたかというようになります。 こうしたところで地域との接し方を、私自身は区別しています。この辺りについて、学生にどのよう 153 に理解を求めていくのか、地域社会、地域コミュニティに対してどう理解を求めるのかで、ここの使 い分けは重要になってくると考えています。 社会人基礎力についてですが、私はゆるやかに導入したいと思っています。社会人基礎力を目的化 しないというように考えています。理想的なあり方です。活動の現場で社会人基礎力を意識しないで、 社会人基礎力が意図する 12 の要素を発揮できることが、社会を形成していくために市民や住民たち に求められる行動原理だと思います。これをあえて目的化せず、ストンと自分の中に落ちるような形 でできるようになったらいいなと思います。 実際の運用では、学生たちが自らの行動を振り返る際の説明道具、キーワードとして、12 の要素を 用いるようになってきました。先ほどの山本さんのお話にもありましたように、見えないものをきち んと見えるようにするというのは、私自身も大切だと思っています。ですからこういう言葉を使いな がら、実際に可視化していくことは大事だと思っています。社会学からですと、何でもかんでも可視 化するのではなく、もう少し隠れさせて欲しいともう一方で考えていますが、とはいえこういう形で 見えないものをきちんと指標化するのは重要だと思っています。 実践内容 具体的な実践です。学部の柱なのですが、コミュニティ政策学部ということで、地域にコミットす ることに重きを置いています。地域の課題を発見し、解決の手法を考え、それを政策として立案する ための力量を身に付けることを目標にしています。文系学部ですが、法学、政治学、歴史学、社会学、 生態学、環境学など広く地域と密接に関わるカリキュラムを用意しています。 その中で私たちが売りにしているのは、今日の『手引き』にも載っている運営実習というものです。 当初この運営実習は、社会人基礎力という概念ではなく、社会人力、人間力といったものを取り入れ ていこうとやっていました。学部設立当初、12 年ほど前です。そのため、この社会人基礎力が導入さ れたことに対して、非常に問題意識が被るところがあると感じました。われわれ自身もその重要性を 認識していましたので、偉そうな言い方をしますと、ようやくそういうところを可視化する仕組みが できてきたのかなと思いました。 続いて具体的に、安城市、豊田市というおひざ元で何をどのようにやってきたのか、2009 年度、 2010 年度で分けて紹介します。 2009 年度は、パイロットモデルでした。大学が安城商工会議所と産学連携の提携を結びました。経 営学部、家政学部があります。私のいるコミュニティ政策学部にも依頼がきました。家政学部につい ては、毎年地元の食材を生かして社会人基礎力育成グランプリにも出ていますが、私たちの学部には 安城市最大のイベントである七夕祭りの市民部会への参画を依頼されました。「願い事プロジェクト」 のアシスタント、学生によるオリジナル企画を担当して欲しいといったメッセージが投げられました。 参加学生はプロジェクト型の授業です。この指止まれです。1 年生から 3 年生の 6 名の学生を集め ました。こういった形で大学として学部としてこれをやるからという形で、たまたま私が担当したの ですが、パイロット型、プロジェクト型で進めました。外部評価面談も行ってきました。 写真で紹介しますが、安城市は人口約 19 万人です。8 月の第 1 週の金・土・日で行われまして、3 日間で約 120 万人が訪れます。日本の3大七夕の一つだと言われています。非常ににぎやかなところ で、願い事プロジェクトは 5 千個の風船を、空に願い事と共に上げるという大きなイベントでした。 それにプラスアルファして、2009 年度は独自にバルーンアートを使った企画を実施しました。それを 学生たちが企画し、予算を建て、商工会議所や実行委員の方たちと調整して進めるということをして きました。 154 2010 年度は、産学連携として七夕祭りに参加するというスキームがなくなりました。企業や団体と 連携したときに、スッと梯子をはずされる可能性があることは、 私はとても残念に思うところですが、 いろいろな事情の中で、今年は産学連携でやるわけではないというお達しが来たわけです。 とはいえ祭りは毎年実施されるわけで、実行委からは市民によるボランティアチームを結成するの で参加しないかという打診がありました。誰が担当するのかということだったのですが、窓口として 行きました。特に何か大学として支援があるわけではないがどうだと言う話になったとき、前年度担 当した学生が中心となり、新たに新入生も加入しました。学生チームを作って自主的に参加です。特 に社会人基礎力のプログラムではないのですが、1 年生から 4 年生のメンバー、8 名でチームを回し ていくことになりました。願い事プロジェクトの担当ということで、今年はコアメンバーで、回して いく立場になりました。 こういう形で参加しますと、ぜひ報告して欲しいということになりまして、来週活動報告を東海地 方の企業の方を集めて報告します。 しかし社会人基礎力をベースに 2009 年度と 2010 年度の活動報告をするにあたり、学生たちに少し 困ったことがありました。私は 2009 年度の活動を研究対象として、参与観察として研究報告を書き なさいということで、東海地方の名古屋大学や岐阜大学、愛知大学等の社会学の先輩がおられる大学 との共同研究報告をさせました。 ここで書いた研究報告をベースに今年も報告させたのですが、就職課、もしくはそれに関連する方々 からはダメだと、それは研究報告だと。社会人基礎力は主語を私に変えなさいというふうに言われ、 学生たちは一挙にその内容を変えざるをえないという状況になりました。それは非常にいい経験だっ たと思いますが、彼ら自身は研究として報告するときには、あくまでも自分は一歩引いた形で見る。 しかし社会人基礎力を表現するときには、私を主語にしてきちんと報告するのだということを学びま した。これが安城での活動です。今年は七夕チームに外部評価は入っておらず、非常にのびやかにや らせていただきました。 次は豊田市です。豊田市は地元に大学がある関係で、また地元商工会議所の方や中心市街地活性化 協議会などの行政の方との、私自身の個人的な関係の中で依頼されました。商店街に設置される「ま ちづくり活動センター」、いわゆる空き店舗だったのですが、そこを活動センターにするから、運用は 谷口ゼミ中心で考えてくれないかということでした。その中でイベントスタッフとして参加したり、 地元の祭りと連動した独自イベントを実施したり、オリジナルマップを作ってはくれないかと依頼さ れました。 実は中心市街地の賑わいを考えるときに学生が活躍するというのは、全国に事例があります。それ を豊田でもやってくれないかということでした。これは専門ゼミです。卒論を書かせる 3 年生 4 年生 連続のゼミ生ですが、一緒に入ろうということで中に入ることにしました。2009 年度です。 活動センターで地元の方たちとワークショップをしている写真を紹介します。まさに地元の空き店 舗です。地元が企画するイベントに参加したり、独自の企画を作ったりをしていました。さらにマッ プ作りの写真です。地元を歩いて地域を歩いて町を歩いて、まさに自分たちの感性で手作りマップを 作るというマップ作業です。 彼らはスゴロクマップというものを作りました。各商店をブロックにしてスゴロクにしますが、DS のマリオの世界をイメージしたと言っていました。そうしたものを作り、さらにここに挙げた店舗を 各店主のコメントを取りながら、地図にまとめるという作業を、学生たちの自主性で作ってもらいま した。 非常に評判が良く、私自身いろんなところで紹介させてもらっていますが、一番私自身が嬉しかっ たのは、地域で学ぶということ、コミュニティのつながりを考えるということを、こういう作業を通 155 して学生たちが行ったことです。しかも商店街を点として捉えるのではなく、町全体を面として捉え るという、まさにコミュニティ政策学部での学びを、 彼らはストンと自分たちの中で理解できました。 当然そのプロセスの中で、いろいろな地元の方からの厳しい意見もありました。まちづくりを考える のに、学生が何を?と。自分たちは 30 年、40 年ここでやっているのに、何が君らにできるのだとい う厳しい意見もいただいています。それでも彼らは一生懸命に声を聞きながら、自分たちの案を練っ ていくという活動をしてきました。 今年度です。これが私のいる学部でのメインのカリキュラムになります。こういった地域での活動 を、具体的なカリキュラムの中、学部の運営実習の中で生かして欲しいということで、外部評価もあ りの授業をやっています。今年度は、地元の高専や高校との連携、中心市街地活性化協議会、彼らと チームを組みました。前年度から「まちづくり活動センター」の企画・運営に参加しているチームで す。 「まちなかま発見プロジェクト」を立ち上げ、市から助成金を受けました。それぞれの強みを発揮 しながらプロジェクトを今展開している最中です。 これは「まち歩き」の写真です。高校生や高専、大学生が一緒になり、地元のイベントに参加した り、自分たちの視点でツアーを企画したり、ということを練っています。当然、自分たちが企画して 地元の人たちに参加してもらうためには、お手伝いをしなければいけない。地元のおかみさん会が主 催する七夕祭りや、商店街が企画する打ち水大会に学生たちもお手伝いをすることで参加し、自分た ちの存在を知ってもらいます。そこで関係を作っていくという作業をしています。 これらを踏まえた上で、独自活動ですが、 建築系の高専が中心になって行っているスツール作りや、 高校生と連携したマップ作りがあります。また昨日は一日、学生や高校生が地元の住民たちと歩き、 地図作りのワークショップをしながら街を学びました。何も知らない学生たちです。豊田出身の学生 もいますが、そうでない学生たちが豊田の町を知り、自分たちがマップを作る。そのために町を知る 作業をしている最中です。 社会人基礎力の導入効果 これを踏まえて、社会人基礎力の導入の効果というところに触れさせていただきます。 まず学生にとってはプロジェクトXですね。私を主語にしてきちんと物語を考えること、実践の過 程で 12 の要素が要求されます。これを経験するのが一点目の効果だと思います。 二つ目は、自らの活動の振り返り、評価シートや外部面談で、12 の要素が道具化されています。経 験を語るための道具となり、言語、履歴書への記入につながっていきます。 三つ目ですが、当然意識の高い学生、低い学生がいます。学部としては、後で気付けばいいと、ゆ るやかにやっています。寛容に受容している状況です。評価されることの経験で、自己肯定感、自分 の自信を獲得する仕組みを導入しています。ゆるやかにやっているので、マイナスの評価がないよう に心掛けています。ただ評価者を活動関係者にするか関係者以外にするか、テクニカルなところでは 詰める必要があると思っています。 また四つ目にプレゼンテーションを実施しています。活動を外部の方に報告する機会を必ず設けて います。その時に、自分たちが報告することによって、成長を実感することにつながっていると思い ます。 教員にとっては、実習で外に出るためには、実習内容、ストーリーを精密化する必要が出てきます。 当然、学生に対して指示を出すこと、指示を分かりやすくすることが求められてきます。 二つ目には、地域の関係者に対する実習の意図をより説得的に説明する上で、社会人基礎力の概念 156 を使うことで、少しやりやすくなったと思っています。失敗もあります。それは後に報告しますが、 この失敗をどう受け入れるのかが重要になってくると思います。 三点目は学生の学習意欲を上げられる点です。きちんと問題意識のある学生は、自分で更に調べた いという学習意欲も出てきますし、就職への動機付けにもなっていると私自身思っています。 とはいえ、この間プロジェクトをやってくる中で、有志型といいますか、プロジェクト型ですと、 時間的に余裕のある学生が中心であり、お金に余裕のある学生でないと参加できません。交通費もば かになりません。ちょっとした食費等も出るので、学生の金銭的負担になります。こういうところで 学生の負担もあるなと実感しています。そもそも学生を外に連れ出すとくところに教員の負担もあり ますが、そういうところでは大学自体がバックアップする仕組みがあるので、大学や職員の理解の中 で進めさせてもらっています。 さらに社会人基礎力によって評価の軸を私自身が得たなと思っています。先ほど社会学、特に非営 利組織論をどう評価するかといったとき、今ちょうど名古屋は河村市長がいるのですが、その下で市 民活動の促進をするための政策プロセスに携わっている中で、NPO をどういう視点で評価するかと いう評価軸に非常に困っています。組織を評価するときに社会人基礎力が示した 12 の要素をうまく 導入できればいいかなと私は考えていまして、それをうまく評価指標にできるかどうかをやっている ところです。この発想、アイデアはいろんなところに応用できると思っています。 教育的課題 最後に教育的課題についてお話します。専門性との関連、主観性と客観性というところにもう一度 話を戻したいと思います。主語をどうするかということですが、社会人基礎力を実行するときには、 学生たちは、 「私はどうしたのだ」「私はどういう苦労にあったのだ」と主語を私にしています。まち づくりを実践するときにも、主語は私で、私に何ができるのかと考える。 学問的なところで考えると、実践と理論はどの学問でも持っていると思います。どう実践的に生か して理論的に反映するのか。実践の主語は「私」で、理論は「彼」 「彼ら」になると思います。では理 論と社会人基礎力、ここはやっかいだと思っているのですが、理論、「彼」「彼ら」という学問的なも のと、より実践に近い社会人基礎力をどう結び付けて合わせたらいいのか常に悩んできました。 私は大学の教育と研究は両輪だと思っています。きちんとつながっていると思います。理論と社会 人基礎力をどういった概念で結び合わせるのか、つなぐキーワードとしてパターン化するのか、とい う概念を考えています。理論もある種パターンを考えるということだと思います。社会人基礎力はあ る種コミュニケーションのパターンを身に付けさせるのではないかなと思っています。コミュニケー ション、振る舞いのパターンですね。 その中で課題解決力の限界と言いましたが、学生はいろいろ指摘されているように、非常に狭い世 界の中の関係性で、限定されたパターンの中でしか振る舞いうことができない、コミュニケーション もできないという現状にあります。しかし一方でいろいろな人と社会に出る、企業で働くときには、 多様なコミュニケーションのパターンが求められる。これをどのように身に付けていくのかというと ころが、課題解決力で、社会人基礎力で私自身が考えている重要なポイントではないかと思っていま した。そのためパターン化された課題解決力を、いかに創造的な解決力に発展させていくのかという ところを考えていきたいと思っています。 それはある問題があったときに、パターンに当てはまるか当てはまらないのか見分ける力を養って いくことではないかと思います。型に入るもの、入らないもの、入らないときにどうしたらいいのか、 いろんな解決手法のパターンがあると思うのですが、それを組み合わせていくところに創造性がある のではないか。まずいろいろな現場や地域に出て、多様なコミュニケーションパターンに接する機会 を、身に付ける機会を学生たちに経験させたいなと思っています。 157 実際にまちづくりの成功と、私自身が抱えている地域社会での課題というところでは悩ましいです。 絶対的なまちづくり手法というものがそもそもあるのか。中心市街地の活性化、どこの地方都市でも 悩んでいます。これが果たして、学生や大学人にできるのか。 豊田市は限界集落も抱えています。限界集落の再生といったときに、大学人として、学生ができる のか、大学ができるのか。そういったところに、何か新しい解決手法が見いだせるのかどうかが、今 私自身が抱えている研究課題であるとともに教育課題でもあります。現実に地域の方、中山間地に行 っても市街地に行っても、元気な学生や若者を取り込んだまちづくりをやってみたいという声は聞い ています。うまく接点ができればいいなと思っています。 地域との関連では、地域から大学に過大な期待があります。しかし実際には、求められることと結 果にズレがあります。実際は学生が入ることによって、失敗することが往々にあります。企業が絡ん できたときに、行政の方からは失敗という言葉はないとこの間、言われましたが、学生は失敗から学 ぶのです。そのため結果のズレがあるときに、どのように整合性をつけたらいいのかなと考えていま す。 企業の方や行政の方は単年度主義で、単年度できちんと目に見えるような成果が欲しいと言われま す。大学は教育プログラムの中で、彼らが 1 年、2 年、3 年となっていくプロセスの中で、何かを学 びそれがどう生かされていくのかを見ていくため、非常に継続性のあるものです。単年度的なものと 継続的なものをどのように折り合いをつけるのか、 そこでの期待に応えられるかどうか悩んでいます。 最後に、学生、大学に対するラベリングの覚悟。これはいい面だけではありません。先ほど失敗と いうことも述べましたが、いろいろな学生がいます。いい学生もいれば、なかなか振る舞いが厳しい 学生もいます。その学生を連れ出すことによって、非常に厳しい言葉をいただきます。全体の評価に 関わることもあります。それも受け入れながら、何とかお願いするという関係性を作っている最中で す。 こういった苦悩の先に、何か新しい社会を築いていくパラダイムができればいいなと思います。こ ういう希望を持っていないと、なかなか関わっていけませんが、希望をもって歩んでいきたいです。 158 社会人基礎力育成事例研究セミナー広島会場 第 2 部 友松修氏発言 日時:平成 22 年 10 月 4 日(月) 場所:広島国際会議場 発言者:友松修 広島経済大学興動館課長 広島経済大学における人間力育成の中核組織「興動館教育プログラム」の立ち上げから関わり、カリキュ ラムや指導方針の策定を担当する傍ら、自らも学生の指導にもあたっている。社会人基礎力の定義や評 価方法を導入することで、学生の能力育成と学内への理解を促すことに成功した。 地域連携を通じた人材育成の取り組み~広島経済大学「興動館教育プログラム」 はじめに~広島経済大学の概要 本日は、 「地域連携を通じた人材育成の取り組み」と題しまして、本学が進めている「興動館教育プ ログラム」の内容と事例を中心にお話させていただきたいと思います。 まず本題に入る前に、本学の概要を簡単に説明します。本学の設立母体は学校法人石田学園です。 こちらは明治 40 年に創設され、広島経済大学は昭和 40 年に開学しました。開学当初は、経済学部経 済学科のみの入学定員 150 名の小さな大学でしたが、その後、学科の増設を行い、現在では 5 学科入 学定員 850 名、今年の 9 月現在の学生数は 4,026 名となっております。 興動館教育プログラムの目的と拠点 さっそく本題に移りまして、平成 18 年度から始めました本学の興動館教育プログラムについて説 明させていただきます。平成 16 年の 4 月から、日本における社会科学系の教育、特に講義というも のが、本当に企業が必要としている人材を育成していないのではないか、というところから新しい教 育プログラムを考える会というものを始めました。 そして平成 18 年の 4 月、それまでのいろいろな議論の中で、興動館教育プログラムを開始するこ とになりました。従来から既にプレゼンテーション開発プログラムとして、ゼミを中心としたプログ ラムと、基礎知識開発プログラム、普通の専門科目、教養教育科目があったのですが、その内容も見 直した上で、平成 18 年度からは、人間力開発プログラム、これが興動館教育プログラムですが、こ れを加えて 3 つのプログラムによってできた人材、これを「ゼロから立ち上げる興動人」と示し、本 学の人材育成目標と明確にして、独自に動いています。この聞きなれない「興動人」という言葉です が、ただ行動するだけではなくて、自ら行動を興す人材を育てたいという意味で作った本学独自の造 語です。 この人間力を育成するためのプログラム、興動館教育プログラムの目的ですが、興動人に必要な知 識、プレゼンテーション能力、それプラス人間力を育成することです。人間力というのはいろいろな 意味で定義されていまして、辞書を見てもよく分からないですが、本学ではこのように定義しました。 「自分の心の壁を取り払い、自分をさらけ出すことができる勇気を持つこと」と、 「相手の心を推し量 って、相手にうまく働きかけることができる能力」 、そして 3 番目に、 「個人の持つ諸能力や、人を引 き付ける魅力を発揮して「人と共に何かを成し遂げる力」」。この 3 つの総合です。1 番と 2 番はコミ ュニケーション能力であり、3 番目はリーダーシップと協調性を表していると思われます。 こういった人間力を養うためには、座って講義を受けているだけでは身に付かないだろう、様々な ことを「経験・実践」する必要があるのではないかということで、このプログラムが始まったのです。 従来の教育方法では、まず理論を勉強して実践へと転換していくというのが通常ですけれども、学 生のほとんどが、その理論の必要性を感じないから勉強しないという現状もあると思います。こうい 159 ったことも、新しい教育プログラムを考える会で話合ったのですが、ともかく理論よりも実践をさせ て、その経験やプロセスにおいて、自分に足りないものを見付けさせる。そして理論の必要性を感じ させる。つまり学ぶ心に火をつけたいというのがこのプログラムの思いです。 この興動館教育プログラムを平成 16 年から考えてきましたが、それと同時に社会人基礎力という 言葉を耳にするようになったのです。スライドの図は社会人基礎力と、本学が定義した人間力を対比 させたものです。社会人基礎力には、前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力とありますが、 本学では人間力を、元気力と、行動力と、企画力と、共生力に分けました。これを分けて社会人基礎 力と照らし合わせるとこのような表ができます。前に踏み出す力は、元気力と行動力に当てはまるか なと。考え抜く力は企画力だなと。チームで働く力は共生力であるなと、私たちは理解しています。 こういったことを国レベルで本格的に取り上げ、このような取り組みが始まったことを知って、平 成 18 年度から興動館教育プログラムを始める際に大きな自信になりました。 なぜ興動館という名前が付いているかというと、このプログラムをするための建物を建て、興動館 と名付けました。興動館と言うと、どうしても武道、柔道の方を思われる方がいると思いますが、広 島経済大学では人間力を育成するための建物を、このプログラムを行うために建築したということに なります。 この活動の拠点となる興動館は、4 階建ての建物ですが、平成 17 年の 7 月に建てました。開館時間 は午前 10 時から夜 9 時までで、土日祝日は閉館しておりますが、申請すれば学生は 24 時間利用でき ます。現在は、学生の利用が多くなって、ほとんど 365 日稼働している状況です。1 階には職員が 6 名常駐していまして、学生が経営するカフェが隣接しています。これもカフェ運営プロジェクトで運 営されているものです。 2 階はワンフロアぶち抜きで、何もないフロアになっています。シートを敷いて物作りをすること もできますし、各プロジェクトのブースを、パーテーションで区切って設置することもできます。こ の中で学生は会議や活動をしています。 3 階には興動館科目を実施する部屋が 8 部屋、4 階には宿泊可能な畳の部屋が 5 部屋あります。最 大で 100 名くらい泊まれるようになっています。学生の利用はもちろんですが、地域社会との密着も 視野に入れまして、近隣の幼稚園や小学校、町内会や子ども会、福祉施設などの公的団体に、会議室 や教室を無料で貸し出しています。 興動館教育プログラムの全体像 興動館教育プログラムの概要ですが、二つの柱に分かれていまして、興動館科目と興動館プロジェ クトがあります。興動館科目では、先ほど人間力を 4 つに分けましたが、その 4 つのフィールドにい ろいろと設置しています。いろいろな内容があるのですが、4 つの各フィールドに達成方法と授業方 法を設置しまして、そのフィールド力を身に付けるきっかけを与えることを目的に開講しています。 29 科目、38 クラス、履修者数約 1000 名がいます。 最低条件はまず少人数であることです。ほとんどが約 30 名程度のクラスです。また双方向授業で あること。ほとんどがグループワークをする科目です。それからじっとしているだけではなく、身体 や手を動かすとか、フィールドワークに出るとか、最終授業では、発表、あるいは成果物を作ること。 これらの条件を満たしていないと興動館科目とは言えないと設定しています。 今日は、興動館プロジェクトの中の、地域連携のものについてお話をします。現在 17 のプロジェ クトがありまして、約 350 名が参加しています。プロジェクトというのは、国際交流、社会貢献、地 域活性、経済活動に集団で活動して、何かを達成するのが条件になっています。プロジェクトの内容 160 としては、プロジェクトの企画から交渉、予算管理、準備、実行、最後に報告発表をするのですが、 それら全てを学生が主体的に行うのが条件です。そういうことをすることで、実社会で必要な人間力 が養えるのではないかということでプロジェクトをしています。 プロジェクトの中にも種類がありまして、主催プロジェクト、これは大学がテーマを与えるプロジ ェクトです。それから公認プロジェクト、これは学生からの申請によるプロジェクトです。こういう ことがしたいのでお金をくださいということで学生が主体的に動く。 公認はさらに公認 A と公認 B に分かれています。公認 A は 50 名以上、公認 B は 20 名以上です。 これによって運営資金の上限が決まっています。公認 A は 1000 万円まで資金を与えます。公認 B は 500 万円を上限としています。 最後に準公認プロジェクトがあります。これも学生からの申請によって成り立つのですが、20 名に 満たない 5 名以上 20 名未満で、公認に将来なりえるもの、小さくても公認になって欲しいものを認 めて、最大で 100 万円まで支援することにしています。 1000 万円というとびっくりされるかもしれませんが、プロジェクトをやるときには、学生が作って きた予算書、企画書で私たちと折衝します。プレゼンをしてもらいます。その時に、とんでもないお 金が出てきた場合、これはいるのではないか、いらないのではないかということを折衝します。です から、主催だろうが公認だろうが、10 万円で行っているプロジェクトもあります。お金ありきで動く のではなく、本当にいるお金を大学が提供するというように理解していただければと思います。 補足ですが、興動館科目では、自由選択科目枠で単位認定しています。興動館プロジェクトでは、 社会貢献的な要素もありますので、単位で動いて欲しくないという面もありますし、自主的に活動し て欲しいということで、正課外で活動を行ってもらっています。 プロジェクトの活動期間は、1 年間を基本としていますが、継続する場合には、継続審査を受けて 継続活動をすることにしています。 興動館教育プログラム全体は、科目とプロジェクトのどちらも学科や学年の縛りはありません。学 科や学年の枠を越えて、いろいろな人間同士が集まって一つのことを達成して欲しいという思いがあ りますので、そのことを重視しています。 本日のセミナーのテーマが、地域との連携を通して学生の社会人基礎力を育成するということです ので、興動館教育プログラムの柱の一つであるプロジェクト 17 の中で、インドネシアで国際貢献す るもの、カンボジアに行くもの、中国で植林するもの、カフェを経営するもの、様々なものがありま すが、主に地域に支援や協力をいただいて活動しているプロジェクトを紹介します。 はじめに、 「子ども達を守ろうプロジェクト」です。このプロジェクトは、実は平成 17 年に広島市 安芸区で、女児殺害事件がありまして、それをきっかけにして、大学生が地域社会、特に小学生の安 全を守ることができないかと始まったものです。活動内容は、近隣の小学校で毎日ガードボランティ ア活動を行っています。約 20 名のメンバーが、授業の合間を縫って、毎日 4~5 人ずつ行っています。 もう 5 年経ちました。 昼休みの前に不審者がいないか学内を見回る、休み中は小学生と一緒に遊ぶ。遊ぶというのは、校 内に大人がいること外に見せつける意味があります。そうすることで小学校には不審者が入りにくい 状況が作れる。それが主な活動になっています。 それ以外には、節分やクリスマスなど、季節のイベントを、小学生を呼んで行ったり、小学校に入 る前の未就学児、幼稚園児を興動館に集めて、こんなおじちゃんについていっちゃだめだよと教える とかのイベントも行っています。 関連団体としては広島市立祇園小学校に行かせていただいていますが、もっと人数が増えれば近隣 には山本小学校とか長束小学校とかありますので、そういうところへも広がっていきたいという思い があります。 161 月 1 回、安佐南警察署内にある安佐南防犯連絡協議会に学生が赴いて、警察の方、地域の方と情報 交換させていただいています。11 月 2 日には広島市長と広島市内の学生とでタウンミーティングが行 われるのですが、その際に事例報告をすることになっています。 続いて「武田山まちづくりプロジェクト」を紹介します。本学は武田山の中腹にあるのですが、武 田山というのは鎌倉時代の終わり頃に、甲斐の国の武田氏が、安芸の国の守護をしていて、その銀山 城があったという由緒ある山で、そのまちおこしに学生が携われないかとプロジェクトが立ちあがり ました。 このプロジェクトの目標は、山の自然を守ってその魅力を広く伝える、地域の人々と武田山の魅力 を再認識しながらまちづくりをしたいというものですが、特に関連する団体として、祇園町商工会の 皆さまにお世話になっています。平成 20 年度には祇園町商工会が、中小企業庁の「地域資源∞全国 展開プロジェクト」に採択されました。地元の公民館、女性会、武田山の関連団体がいろいろあるの ですが、それら産学官民が一体となって一つの事業を行った事例もあります。 早稲田大学にボランティアセンターがありまして、そこが中心となって行っている「一学一山運動」、 一つの学校が一つの山を守るという全国展開されている活動があります。この活動にも参加していま す。今年から中・四国地区の拠点校となり、来年の 2 月だったと思いますが、その全国大会が広島で 行われる予定になっています。 続いて「中高生の夢・笑顔実現!!プロジェクト」というものがあります。このプロジェクトは 4 年前に立ち上がったのですが、立ちあげたリーダーが、自分自身が中学・高校で不登校を経験してい て、その経験を元に同じような境遇の生徒や保護者のために役に立ちたいと起ち上がったプロジェク トです。今、公認 B です。 様々な活動を通して、不登校の中高校生が新しい一歩を踏み出して、最終的に中高生が不登校を克 服していくことを目的に活動しています。昨年は、保護者や教職員を対象に、中高生やメンバー自身 が不登校体験を語る教育フォーラムを、南区民文化センターに一般の方 500 名くらいを集めて行いま した。大変盛況でした。今年は 1 回、興動館でフォーラムを行い 50 名くらい集まりましたが、秋に どこかの文化センターで大々的に行う予定です。 関連団体として、財団法人こども教育支援財団、クラーク記念国際高校の先生方にいろいろとお世 話になり、学生たちが様々なことを教えていただいています。平成 20 年度からは、この活動に賛同 していただいている国際ソロプチミスト広島という団体から、助成金もいただいています。 次に、「プロスポーツによる地域活性化プロジェクト」ですが、このプロジェクトも 4 年前に起ち 上がっており、公認 B プロジェクトです。もともと学内でスポーツ・ビジネスを専門にしているゼミ 生が中心となって立ち上げたプロジェクトです。 今は、サンフレッチェ広島を中心に動いております。 地元の方々にプロスポーツに対する興味・関心を持ってもらって、観戦のきっかけを作って欲しいと、 選手を招いた応援イベントやスタジアム観戦会などいろいろな企画をしております。 サンフレッチェ広島の事業部の方に、いろいろと教えてもらって、学生を動かしてもらっています。 学生を動かしてイベントをやった後に、サンフレッチェ広島の方が、ここはこうやったほうが良かっ たという報告書を作ってくれるのです。学生はこうしたフィードバックをいただいて、反省して次に 取り組むことになっています。サンフレッチェ広島の事業部の方には感謝しなければいけないと思っ ています。 その他、他大学で同様の活動を行っているところもありまして、そういった団体と連携協定を今年 は結び、広島のプロスポーツを特集したフリーペーパーを協同で制作しました。 最後ですが、 「愛と福祉のまち祇園プロジェクト」というのがありまして、このプロジェクトは高齢 162 者のサポートをしたいという現リーダーが、昨年、1 年生のときに立ち上げたものです。高齢者の孤 立を防いで、祇園地区を高齢者の笑顔があふれる街にしたいということが企画書に書いてありました。 大学の近くに祇園長束地区地域包括支援センターというのがあり、その方たちと一緒にやっています。 主なこととしては、昨年から今年にかけて、センターと協力して、高齢者がターゲットになってい る悪徳商法について、その対処法を自分たちで寸劇を作って紹介しました。悪徳商会の人、おばあち ゃん役など、学生が全部演じて、DVD を作り、それを地域の高齢者に配布しました。 興動館プロジェクトの教育効果 今紹介したようなプロジェクト活動で、学生はどのようになっているのか、見て感じた実際のこと をお話しようと思います。 行動することによって学問に対する興味が生まれています。プロスポーツによる地域活性化プロジ ェクトからマーケティングに興味を持ったとか、子どもたちを守ろうプロジェクトや、中高生の笑顔 実現プロジェクトから教職課程を選択し、先生になるための公務員対策を頑張り始めたという者もい ます。自分に足りないものが見つかって、学ぶ心に火がついたのではないかと思います。 多人数で活動することで、リーダーシップの意識が育まれるとか、知識だけではない感情レベルや 表現レベルでの暗黙知がついてきています。この暗黙知について、私たちは、いつの間にか人間的に ついた力と感じていますが、目を見て話さないとか、挨拶もできなかった学生が、いつの間にかそう いうことができるようになってきたことがあります。一般的な社会常識も伸びています。企業や地域 の人たちと関わりますので、電話応対、ビジネス文書の書き方、業者との折衝や名刺交換なども身に 付いてきているようです。 ホウレンソウ、報告・連絡・相談の重要性に気付くとか、もうちょっとレベルアップした学生です と、プラン・ドゥー・チェック・アクションというサイクルを理解してやっているような気がします。 このプログラムでは、学生が失敗しないように事前にレールを敷くということはないのです。レー ルを敷かずに、まず学生に企画や実践をさせるという意識を持っております。多くの失敗があります が、学生は失敗して始めて気づくことがあります。これが重要ではないかと考えています。 また平成 20 年度からは定量的に評価していきたいということで、社会人基礎力をとり入れて、評 価システムを構築しました。プログレスシートを、事前、中間、事後に書いて、中間と事後には教職 員と面談をして、本当にそのように伸びたのか面談しています。 伸びが一番高かったのが、発信力です。自分の自己評価は、一番低いのですが、やってみると会議 などいろいろありますので伸びている。傾聴力は以外に最初から高いです。スライドに示したグラフ もできて、定量的に示すこともできたのではないかと思います。 興動館プロジェクト参加者の進路 興動館プロジェクト参加者の進路ということで、プロジェクトの活動の影響を受けて進路選択した 例をあげます。まだこれだけしかいないといっていいくらいですが、子ども達を守るプロジェクトか らある学生が防犯に興味を持って、広島県警に就職しました。教育系の大学院に進学した者もいます。 プロスポーツによる地域活性化プロジェクトで、 サンフレッチェでいろいろお世話になった学生が、 契約職員として採用していただいています。中高生の夢・笑顔実現プロジェクトの学生は、現在、通 信制私立高校の非常勤講師に採用していただています。カフェ運営プロジェクトでは、地元の大手ス ーパーの外食担当部に採用された学生がおり、他にインドネシアに行って貿易に興味を持ったとか、 中国に植林に行って環境に興味を持って大学院に進学したとかいうようなことも出てきています。 163 本当に数少ない例の一部なので、これからはプロジェクトと将来が直結する例をもっともっと増や していかなければいけないと感じています。 最後になりますが、学生は、主体的に企業や地域のみなさまと活動させていただくことによって、 多くの知識、スキルを身に付けています。その反面、多くの失敗があります。しかし成功体験はもち ろん、失敗体験が更に、学生を大きくするということが見受けられています。このことをご理解いた だき、企業や地域のみなさまには、今後も学生たちを叱咤激励していただきながら育てて欲しいと思 っています。迷惑をかける学生もいるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。 164 社会人基礎力育成事例研究セミナー広島会場 第 3 部 パネルディスカッション 日時:平成 22 年 10 月 4 日(月) 場所:広島国際会議場 発言者:吉岡洋一 松山大学経営学部教授 谷口功 愛知学泉大学コミュニティ政策学部准教授 友松修 広島経済大学興動館課長 横田光敏 亀岡酒造株式会社取締役 司会:富樫敦 宮城大学事業構想学部教授 「地域との連携を通して学生の社会人基礎力を育成する」 講演 松山大学の取り組み 吉岡洋一 松山大学経営学部教授 商工会議所や地元の企業と産学連携の協定を結び、学生参加型の授業を推進する組織「社会連携プラットフォ ーム」を統括する傍ら、自らも社会人基礎力の育成を取り入れた指導にあたる。社会ニーズに応えるだけでなく、 学生側からの積極的な提案を評価の中心に据えた、地方大学の先進事例。 今から、松山大学の取組みについて紹介させていただきます。まだ本格的にやりだしたて 2 年ちょ っとです。走りながら考えている開発途上の活動ですので、あまり論理的にまとめていません。現在、 行っていることを紹介させていただいて、後ほどたたき台にしていただきたいと思っています。 われわれの学校では、産学協同プラットフォーム作りを通じた、社会人基礎力育成プロジェクトと いう名前で行っています。何故このような取組を始めたのかというと、プロジェクトの正式発足は 2009 年の 6 月で、昨年発足したばかりです。遡って考えてみますと、ちょうど 2 年ほど前、2007 年 の 5 月に亀岡酒造さんから商品開発による経営活性化の相談がありまして、私と山崎先生と学生でプ ロジェクトチームを結成したのが、このプロジェクトに本格的に入ったきっかけです。 これらの以前に、2007 年 9 月から 12 月、あわしま堂という、ドラ焼き等を作っている会社にこち らからお願いし、一期生の基礎演習・市場調査と提案をする機会をいただきました。山崎先生(ゼミ) と私のゼミが合同で調査し、提案をさせていただきました。あわしま堂さんというのは、八幡浜とい うみかんが有名なところに会社があり、京都にも工場を持っています。 2007 年の夏からは、のうみん社(農家の方が 75 社出資されて作られた食品加工会社)の甘夏シャ ーベットの市場拡販をしたいということで、有志メンバーで検討を始めました。 2008 年の秋に は、ハート社というバレンタインチョコの企画・提案を専門にやっている会社(スーパーやコンビニ に並んでいる商品はこの会社のものが多い)があり、次年度の企画・提案テーマをやらせていただい たというのがこれらのきっかけになっています。 なぜこういうことをやり始めたのかというと、私は大学教員になってまだ 9 年しか経っておらず、 それまでは産業界に近いところにおりました。大学教員になって大学生を見ていて感じたのは、 「何て 元気がないのだろう!」というのと、何の社会経験もなく教室の授業だけではつまらないだろうとい うことでした。思い切って社会の本物のテーマに挑戦して、自信をつける場が学生時代に設けられな いだろうかと、こんな思いの中で 4 つのプロジェクトにめぐり合い、学生たちと元気を共にするとい う試行が始まりました。学生たちと元気を共にするというのは、 「一緒になって考える、やる」という のが私たちのスタンスです。 個人的な温度差があっても、学生は若いので早くいろいろなことを吸収し、新しい刺激と体験の中 で非常に生き生きしていくということが分かってきました。「i-sole」(みかんと日本酒のリキュール) 165 が見事に商品化できまして、最初 6000 本くらいを目標にしていたのですが、4 倍ほど売れ、一つの ヒット商品になったことにより、学生たちも大変元気になった、こういうことが肌で感じられるよう になりました。 そこで、昨年度、経産省の体系的な社会人基礎力育成評価システム開発実証事業、3 期目に公募採 択されまして、四国としては初めて松山大学が本格的な取り組みを開始したという経緯があります。 私たちが、こういうプロジェクトに関わるときの基本スタンスにしているのは、全学部から公募を 行うということです。経済学部、経営学部、法学部、人文学部、短期大学、 (薬学部は理系学部なので 別)の文系から情報発信し、ある程度見える形で物・成果を出せるということを目標にしています。 全学部から公募-説明会をして申し込みを受けるという形を採っています。そして学生の自由意思に よって参加をする。一部、変則的にゼミ単位のものもあります。ゼミで集めたほうが小回りもきいて 楽です。全く知らない学部の人が顔を合わせて協調して、何かを作り上げていくというのは時間がか かり、そういう意味では大変なのですが、学生は自由意志で参加をしてくるということを大切にして います。 プロジェクトはプラットフォーム型と名付けておりまして、いろいろと性格の違うプロジェクト、 電車がフォームに入ってきて、プロジェクト電車に呼応した学生が、フォームからこれに乗り込み、 プロジェクトを推進していくということで、いろんなプラットフォームが大学にあるということを想 定しています。 それから、タイプの異なる種々のプロジェクトの受け入れ、試行をしているということです。亀岡 酒造さんのような商品開発的なもの、これは経営の活性化ということで必ずしも商品開発だけではな かったのですが、これをやらせていただきました。他には地域開発もあります。これらはどれも初め てなので、どんなプロジェクトが大学での人材育成に適合しているか分かりませんし、何がどうかみ 合うのだろうかということで、どんどんと申し込みがあったものを集めてみようと考えました。一部 お願いに行ってご協力いただいているものはありますが、これらは少数で、できるだけ情報発信を積 極的にやって、手を挙げてくださったところと一緒にやろうというスタンスです。 中小企業さん、地域の企業さんとタイアップしているので、大企業さんはほとんどないです。その ときに、各中小企業の方々は、非常に自分の身体を張ってやっておられます。そういう面では、この 種のプロジェクトでは、学生の育成と企業の話のバランスが取りにくいという問題がよく指摘される のですが、私が行っているプロジェクトの中では、この二つを二次元的には捉えていませんで、学校・ 学生の成果と企業の成果を一致させることを目標に定めています。 それは何故かと言いますと、コラボ企業さんだけが売れてということではなく、コラボ企業さんに 成果をとっていただく中で、学生もそれが自分の成功感になって「やった!」という気持ちになると ころを、同時実現したいという考え方に立っています。 今までの進行プロジェクトですが、亀岡酒造さんが出発で、昨年度いっぱいまでお願いしておりま した。二番目はのうみん社さんが初年度から続いています。のうみん社さんは最初の年が「甘夏シャ ーベットの市場拡販」という課題だったのですが、今、松山はライムの生産に力を入れていまして、 現在生産は 2~3 トンしかないのですが、これを 300 トンにしようと、中村市長の肝いりがありまし て、現在、市場開発、用途開発、その他を行っております。 ハート社さんではバレンタインチョコの調査、企画、提案を行っております。 またネクストワンという商工会議所の仕事があります。松山の優良商品の加工食品について「ネク ストワン」という称号を与えていまして、これを市場に拡販をしていくということで、グループイン タビュー調査、それに対しての商品化のお手伝いをしております。 166 街の元気再生ということでは、1 年目にアイデア・レベルで学生たちが 25 くらい出したものから本 年度実現するということで、柳井町のプロジェクトとして B 級グルメの話が今進行中です。蒋淵(こ もぶち)という農村の活性化などにも取り組んでいます。 さらにフリーペーパーを学生たちが企画して作っていくこと、愛媛新聞の「GoGo」という、若者 に新聞を読んでもらおうという企画で、土曜日のこれをしています。他に大洲のジャコカツを全国に 広めていくというプロジェクトもやっています。 プロジェクトのタイプは様々ですが、地域の中小企業さんとの問題解決型の連携プロジェクト、公 共機関との連携プロジェクト、地域商店街との連携プロジェクト、メディアとの共同企画、実行プロ ジェクト、現場教材提供型プロジェクトなどが並列しています。 普通は学生たちも忙しいので、毎週授業が終わってからの午後 6 時から 8 時までを活動時間に当てて います。4 年間携わっていてどんな変化があったか後で話題になるかと思いますが、これは後ほどお 話いたします。以上が、松山大学で進行中のプロジェクトの紹介です。 講演 学生と商品作りでコラボ 横田光敏 亀岡酒造株式会社取締役 松山大学との産学連携で開発・商品化され、ヒット商品となった「i-SOLE(愛媛みかんを使ったお酒)」に関する プロジェクトに平成 17 年当初より、企業サイドの担当者として関わる。プロジェクトではさまざまな視点から学生 の指導・評価を行う。地元・南海放送ではラジオのパーソナリティを担当。 愛媛県内子町から参りました横田です。愛媛県はこのちょうど広島の対岸で、松山、宇和島はみな さんご存知でしょうか。内子は松山から八幡浜、宇和島にいく途中の山の中にあります。3 町合併し た後も人口 1 万 8 千人。非常に小さな町です。以前は林業、農業が中心でしたが、今は古い街並みや、 芝居小屋などがあって観光がありまして、年間の観光客数は 60 万、ただし若干減ってきております。 そういう町の中で千代の亀というお酒を製造しております。この千代の亀というのは、およそ 300 年前、享保年間といいますから八代将軍・吉宗が暴れん坊をしていたころ創業した蔵ですが、まもな く創業 300 年を迎えます。しかし旧態依然とした閉鎖的な業界、製造の中で、いろいろ行き詰ってい るのが現状でした。その中で、経営的にも商品開発的にも何か打破できないかということで、知り合 いを通じて松山大学の山崎先生をご紹介いただき、吉岡先生のご指導もいただきながら始めたという のが事の発端です。 今日は、気合いを入れてご覧のように瀬戸内の海と空をイメージしたブルーのシャツと伊予かんを イメージしてオレンジのネクタイをしてきましたが、商品の現物を忘れてきてしまいました。 2007 年の 4 月、山崎先生に相談を持ちかけました。5 月に吉岡先生に入っていただき、プロジェク トがスタートしました。その年の 6 月 4 日の第 1 回目の会合には、学生が約 20 名参加しました。未 成年飲酒の防止ということで、3 回生で 20 歳以上の学生さんに限定にさせていただきました。 蔵元屋という愛媛の地酒のアンテナショップがあり、そこの定休日に学生さんと先生方に集まって いただき、お酒の話を含めて、商品開発の話に持っていこうと思いました。ところがなかなか話が進 まないのです。学生さんはお酒の作り方などには興味を持っていただけるのですが、 「どんなお酒が飲 みたい?」と聞いても全然反応がないのです。今の学生さん、非常にお酒を飲まなくなってきていま すね。そういう部分もあるだろうし、こちらの問題提起が難しかった面もあります。 1 時間半くらいはこちら側の話主導で進んでしまいました。これはちょっと良くないなと思いまし て、学生さんにブレンドすると面白いお酒もできるのですよということで、弊社のにごり酒の赤ワイ ンを混ぜてみせました。この二つは比重が違うのですね。にごり酒の方が、比重が重いので、ワイン グラスにつぐと下に白いにごり酒、その上に赤ワインがのり、紅白二重になります。その上にミント の葉をポンとのせると洋風のカクテルになります。 召し上がっていただくときに混ぜるとおいしいと、 167 そういうような提案をさせていただきました。そこからブレンドしよう、物を混ぜようということで どんどん話が広がっていきました。1回目は最初の 1 時間は低調だったのですが、最後の 30~40 分 くらいは議論が白熱し、終わりの時間は午後 8 時半くらいを想定していたのですが、10 時前になって しまいました。 そこで熱心に議論していただいたものを一旦持ち帰っていただいて、翌月 7 月 28 日に、弊社に学 生さん 12 名に来ていただいて、こういうお酒にしたらいいのではないかというプレゼンをいただき ました。 そのプレゼン以降、紆余曲折がありましたが、特にデザインについて、なかなか前に進まないので、 松山デザイン専門学校の学生さんにも入っていただくようになりました。その後、弊社の方から学生 さんへの協議の持ちかけ方も分からず、試行錯誤の中で進めまして、先ほどから先生方が、学生さん は失敗しながら学ぶのだとおっしゃっていましたが、私ども社会人も失敗しながら学ばせていただき、 やっと 12 月に商品の概略を決定しました。 ところがリキュールの製造免許という、お酒を作るにあたっての公的なお許しをいただかなければ いけません。そのために 4 カ月もかかってしまい、翌年の 10 月 3 日に免許をいただきました。それ からゴーサインを出し、12 月 4 日発表会見に漕ぎ着けまして、12 月 13 日に「i-sole スタンダード」 と「i-sole フローズン」の 2 種類を発売しました。 これは弊社のお酒と地元の温州みかんをブレンドしたものです。われわれの世代ですと温州みかん というと、お正月にコタツの中でむいて食べるというものですが、これとのブレンドです。弊社とし てはできればクリスマスに間に合わせたいということと、主体的に関わってくれた学生さんは 4 回生 になっていますので、彼らと一緒に開発した商品を、彼らに握り締めさせてあげたい、成功体験を味 あわせてあげたいということで、12 月に滑り込ませました。 年間発売予定数量 6 千本の予定でしたが、最初の 2 月で 2 年分を売ってしまいました。大変売れま して、弊社の供給体制が追い付かず、各方に迷惑をかけたのが実情です。そういう中で、学生さんに も発売日には地元のスーパーさんや百貨店さんに出ていただき、また年末年始、春の行楽シーズンの 多客期には松山空港で試飲即売をしていただくなど、実際の販売まで携わっていただく形をとらせて いただきました。 そんな中で好評につき一過性のものに終わらせないために、第 2 弾をスタートさせようということ で、このための協議を 2 月に始め、4 月にはプロジェクト開始のプレスリリースを行いました。これ は弊社としてもメディア露出をしていきたいという下心もありましたし、プレスリリースをしたので 後には引けない状況を作りまして、5 月から 11 月にかけて商品概略とデザインを練、決定しました。 翌年、本年の 2 月になりますが、 「i-sole プレミアム」を作りました。こちらは伊予柑を使っています。 第 1 弾の温州みかんよりも果汁の質が高く、お値段も高いのですが、それと弊社の純米酒の十年熟成 ものを使うことで、プレミアムを出させていただいております。 ここまでが簡単な流れなのですが、亀岡酒造と松山大学さんの山崎先生と私の 2 名だけのときもあ りますし、吉岡先生に入っていただいたりする中で、延べの会合回数は 53 回ありました。その中で 学生さんに入っていただいたのは 16 回。時間的な労力もつぎ込んだのは事実です。実際の販売本数 はスライドに書いてある通りです。 どういう商品かですが、脱日本酒をテーマに始めまして、女性受けをする味とかデザインを考えて いこうということで流れが進んでいきました。学生さんにも達成感を味わっていただきたいというこ とで、開発途中でも新聞とかテレビにどんどん取り上げていただきながら進めました。学生さんから いただいた意見を元に作ったお酒を、ターゲットは 20 代女性に設定し、販売チャンネルとしてはコ ンビニとしました。買いやすいということですね。 168 これは私たちの一番の狙いなのですが、地元の人が作って地元の人が消費する、地産地消ですね、 そういったイメージを一つの商品にしていこうと思いました。そのため、愛媛県に西予市というとこ ろがありますが、そこの楽天お取り寄せガイドとか、お取り寄せランキングの部門のオレンジジュー スの部で、ナンバー1をとったことがある無添加というジュースを使用させていただいております。 ネーミングは「i-sole」に決定しています。 ここに至るまでに、私どもはお酒を作る、販売する世界に入って長いものですから、ついついそれ は絶対ムリ、お酒とオレンジジュースを混ぜるということになると、オレンジジュースの油脂成分が 下にダマになり沈殿してしまうからダメとか、まずダメなことで取り掛かってしまっておりました。 社内に持ち帰って話をする上で、それが障害になっていて、ではどういうやり方でできるのだろうと、 一つひとつクリアしていきました。 弊社にも 29 歳、愛媛大学の理学部の大学院を出て入社しているものもおりまして、彼を私のサブ につけ、主任研究員にしました。その経過の中で交渉も含めて同じ世代で、同じ価値観を共有しなが ら商品を作るということも合わせて、弊社の中で取り組んだ事例としてご紹介します。 このネーミングの「i-sole」は、学生さんから出てきた名前です。イタリア語で「SOLE(ソーレ)」 は太陽です。オーソーレミーヨのソーレ。 「i(アイ)」は「愛媛の愛」という意味です。私たちが作 ったということで愛です。この名前、私はちょっと良くないのではないかと思いましたが、これに決 まりました。 デザイン案は、私はスライドに示した一番左の案がいいと思いましたが、多数決を取りましたらこ れが 2 位でした。しかも圧倒的に多数の票をとって 1 位をとったのはこれでした。コンビニのリーチ インショーケースに並べても見栄えもしないし、これはどうかな、と私たちは反対だと言っていたの ですが、実際に販売し流通するようになってから、名前はこれで良かったな、デザインはこれで本当 に良かったなと実感したところです。 いろんなところでご紹介していただいています。それを一過性のものにしないように、もっと高付 加価値をつけようということで、第 2 弾に 2009 年の 2 月から取り組みまして、愛媛の質感をどう上 げるかで素材を伊予柑にし、十年熟成の甘口の純米酒を使用し、イメージアップということで箱をつ けました。これもいろんなところでご紹介をいただいております。 私たちの取り組みとして、製造段階で目に溜まっていたウロコが、学生さんのともすれば無責任な 意見にどんどんボロボロと落ちていったというのが、私たちにとって、本当に良かったなと思ってい ます。特に、当時 56 歳の杜氏は、 「蔵にみかんなんか持ち込まんといてくれ」と言っていたのですが、 今「i-sole」の詰口(つめぐち)という製造段階の最終処理にあって、「これや、これや」と言いなが ら作っております。 弊社内の立場で見たときに、弊社の若手の社員がものすごく成長しました。不躾な言い方で恐縮な のですが、 「おまえそんな学生に毛の生えたことしてなにしょうぞ」といった叱り方をしておりました が、今は主体的にさせていただいておりますし、商品も私どもの財産ですが、社内にいただいたいろ んな風、これも素晴らしい財産であると思っています。と言いながら、1 本 1 本の利益率は非常に悪 くて、銀行さんからは早く止めてしまえとも言われているのですが、限られた財源の中で労力をつぎ 込みながら一つの形になった地元の大学、これをどう使うか、それも使える大学として松山大学をど うアピールしていくのかも含めて、私たちはたくさんの財産をいただいたと思っています。 パネルディスカッション 富樫 司会を担当する富樫です。残り時間は,35 分しかありません。地域と連携して学生を教育する 169 場合、大学側のメリットは色々あると思うのですが、企業側のメリットは何でしょうか.地域の企業 が人材を派遣するには人件費というコストがかかります。経済産業省の口癖のように、国からの補助 金がある間は企業講師に謝金が支払われ企業は協力してくれますが、補助金が無くなったとたんに協 力できないというのは困りますね。多くの大学がこの課題の解を見つけるために,色々模索していま す。この意味で,企業が大学における人材育成に関して大学と連携するためには、企業側のメリット は何であるのか.大学側はこの問題に対してどのように考えているのかが,一つの論点になると思い ます。もう一つは,前者と関連するのですが,どのようにしたら産学連携型の人材育成ができるかで す.その場合の課題とできれば解決方法も.今回,この二つの論点を中心に議論しようと思ったので すが、時間が余りありません。 そこで,焦点を絞り、産学連携を進めようと思ったとき、大学だけでなく産業界や地元企業にもこ んなメリットありますよ,といったお考えや事例を紹介していただければと思います.関連して,産 学連携を継続していく際の課題についても言及していただければ幸いです. パネル前のご講演に関し,11 枚もの質問とコメントをいただいております。各ご講演の内容に直 接関わる質問は後でお応えいただくとして,まず先ほどの話題に関して関連するいただいた質問にも 応えながら,議論を深めたいと思います.議論の中で,更に,事業(プロジェクト)を通して学生が 失敗から学ぶ場合、産学連携の場合と、学生だけの場合、学生と大学のスタッフだけの場合とで成果 に違いはあるのかについてもご意見をいただければと思います.この場合,成果とは事業の成果と学 生の成長力に関する成果があると思います. 最初に,広島経済大学に,興動館プロジェクトを起すに至った経緯、産業界からどのような協力が 得られているか、1 千万円とか 500 万円とかいった資金の話が出ておりましたが、資金確保の問題. これらの点も踏まえながら、産学連携型人材育成に関し,産業界から協力をいただく場合,産業界に もこんな利点があるよといった事例をお話しいただければと思います. 友松 興動館教育プログラムの場合、企業や地域の連携を見越してプロジェクトをやっているわけで はないのです。学生がこういうことをしたいというテーマがあって、ではこういう企業にお願いして みようかというところから始まるというところが一点。これが大前提としてあります。学生がこうい うことがしたいという時に、ではあの企業にお願いしてみようかと、飛び込みで学生を連れて行った こともあります。企業の方に受け入れてもらえるところもあるし、学生がやるならいいですと協力が 得られなかったこともあります。 そういった中で、今プロジェクト活動で、特に広島の企業で協力いただいているのはサンフレッチ ェ広島さんで、その担当者の方にお伺いすると、学生を育てたいという思いのある方なのです。自分 自身が大学生のときにこういうものがあったら、もっと自分はやっていた、だから学生を育てたいと おっしゃっていました。この件で謝礼は払っていませんし、広島経済大学に来る際に交通費を払って いることもありません。いい関係ができていると思います。 サンフレッチェ広島に利点があるとすれば、プロジェクト活動以外のところで、その担当と学生が コミュニケーションを取れるのです。サンフレッチェ広島がホームゲームを広島でやるときに、ちょ っと手伝ってよ、と学生にお願いしたらそれだけコストがかからないとか、具体的な例を言うと、選 手とスポンサーの看板の写真を撮ってそれをスポンサーにあげるということをしているみたいです。 プロジェクトの活動の中に写真部の学生がいて、ピッチ内に入れて選手の写真もとれてうまい具合に 写真も撮るのです。本当の写真屋さんに頼んだら 1 枚につき何万円もかかるのです。スポンサーは何 百とありますので、それだけのコストがチケット代だけで済んだとかあります。学生と連携すること で企業にメリットはあるのではないかと担当者と話をしたことがあります。 富樫 興動館教育プロジェクト導入後の学生の変化、講義型授業と比べて興動館プロジェクトに参加 170 した学生の変わりようなどはいかがだったのでしょうか。 友松 学生の変わりようですが、事例報告では既に主体的に動いている学生が、もっとレベルアップ してこうなったという例を言いました。しかしもとはそうではない学生もいます。各プロジェクトに 20 名ほどの学生がいれば、本当にやる気を持っているものは 5 名くらいでしょうか。後はなんとなく ついていっているような学生です。ところがそういう学生、友達に来いよと言われて入っただけの学 生が、主体的な学生を見て、少しずつ主体的に動けるようになっているように感じています。 ただしそれでもなお、動かない学生もいます。社会人基礎力をつける以前の、やる気スイッチ、主 体的に動くための自分自身で入れなければいけないスイッチを、今度はどうやって入れたらいいのか なというのが私たちの一番の悩みです。それを入れることができれば社会人基礎力に対するプロジェ クト活動や、科目でもいろいろな内容をやっていますが、すんなりと身に付くのではないかと感じて います。そこをいつもスタッフ同士で悩んで話をしています。既に入っている子はどんどん伸びてい きますし、ちょっとスイッチが入ったら動き出します。全く入らない学生をどうすればいいのかが私 たちの一番の悩みです。 富樫 谷口先生に幾つか質問が来ています.2009 年度のプロジェクトは産学連携した場合だけでした. 2010 年度は,連携した場合と連携しなかった場合があったかと思います.産業界と連携した場合には, どうして企業に引き受けていただけたのか。豊田市とのプロジェクトの成果に関して、産業界と連携 した場合と学生だけの場合との成果を比較して違いはあったのか否かです.企業による支援の具体的 な概要と,連携の有無による成果の違いを中心にお話いただければと思います。 谷口 2009 年度、安城市の場合は大学全体が連携し、各学部でプロジェクトを立てました。各学部の 足並みもあったり、その成果物もあったり、商工会議所の方針もいろいろあり、違った関わり方をし て欲しいということで、今年度も大学と商工会議所の連携が無くなったわけではありません。安城市 中心市街地活性化協議会を作る中で、具体的に教員にも委員に入って欲しいということで今年度は関 わっています。そのプロセスの中で、学生の声を聞けたらというところです。具体的な予算支援があ ったのは 2009 年度でした。 2010 年度からは個々の教員が委員に入ったり、アドバイザーで入ったりということで連携は続いて いるので、方針転換というところではないかと私は理解しております。豊田市の話は個別でお願いし たいと思います。 先ほどの話で私自身が考えていることの補足ですが、地域にとってのメリットを考えますと、豊田 でも安城でも言われていることですが、学生だから責任はとらなくていい、自由にやって欲しいと言 われます。逆に言うと、学生は地域に入っていろいろなリアルを体験するのです。商工会議所青年部 のしがらみであったり、商店街同士のしがらみであったりということを目の当たりにします。 例えば、商工会議所がマップを作ったときに、 「何で俺の店が入ってなかったのだ」とクレームがあ ったときに、学生が作ると、 「学生だから」と言い訳できると言われます。逆に言うと「谷口さん、ご めん。そういうように使わせてもらうけど、大学お願いね」という話があります。これは行政からも 言われます。行政が入ってしまうと、公平性の問題で大変ですが、大学や学生が行っているとなると 言い訳ができるということで柔軟に使っていただいています。 その中で学生は学ぶことが多いですし、現実を知ることも多いです。そこはギブ・アンド・テイク ということで、私が心掛けているのは、お互いの関係の中で積極的に貸し借りを作るということです。 世話もするし世話にもなってもらうというところがお互いに自覚的にやっているポイントではないか と思っています。 171 まず企業や自治体の方に言いますのは、学生の固有の名前を覚えてということです。 「学生さん」で 一括りにしないで、プロジェクトのメンバーに入っているから名前を覚えて、きちんと個々の関係を 作ってねとお願いしています。 学生には、きちんと地元のことを思って欲しい。実家に戻っても学生時代にここに関わったことを 誇りに思って欲しいし、学生としてここで生活しているときは地元で消費しようと。コンビニもいい けれど、地元の商店街を使おうと。ファミリーレストランもいいけれど、普段絶対入らないような地 元の定食屋にも入ってみようと、積極的に心掛けています。これは学生への指導です。 両方のメリットですが、私自身はメディア、特に地元の新聞社にはなるべく取り上げて欲しいと、 積極的にお願いしてきました。それでお互いウインウインになると、学生も勇気付けられるし、地元 の人もいろいろやっているということが評価されるので、今のところはうまく行っています。大学の 後輩や知り合いが記者をやっていますので頼みやすいということもありますが、ともあれメディアへ の露出は重要だと思います。こういうことを考えながらやっています。細かいプロジェクトの関係は 個別にお願いします。 富樫 谷口先生から、貸し借り、ギブ・アンド・テイクですが、それが長い意味で大学が産業界と連 携する秘訣ではないかとのご意見がありました。松山大学も産学連携事業を数多く行っています.そ こで,吉岡先生からは産業界から協力を得る秘訣、横田取締役からは企業側からの視点として,どう いう理由があって大学に協力するに至ったのか、これらの点を中心にお話していただければと思いま す。 吉岡 難しい質問ですが、同じ企業でも東京辺りの大企業から何か仕事として来るものと、中小企業 さんから来る仕事は少し意味が違うように思います。商工会議所さん辺りもそうですが、あまりやり すぎたら予算がないからとか言われたりして、少しニュアンスが違います。 中小企業さんと地域のお付き合いをすることには、お互いいろいろな思いがあるのですが、成果が単 年度で確実に上がっていくというのが重要だと心掛けています。かなり細かく、特に反応を見る。結 果が出ないと焦れてきて、嫌そうな顔で、まだこんなことをやっているのかという感じが見えます。 その場合はだんだんと落ちてきて、ダメになって、いいものが作れないし、学生も意気が上がらない、 そういうところを一番、心してやっているつもりです。学生が主体で動くというのは中心ですが、バ ック・アップの部分では、課題設定のところで相当うまくしていかないと、企業さんの思いに学生が 寄せきれないで動いているときは、その辺が一致しないと焦れが出てくるのではないかと思います。 方向性が決まったら学生に任せていうということで、われわれは支援に、環境作りに重点を置いてい くことを心掛けています。 横田 不満の点から申し上げます。時間もコストですから、例えば前期の試験が終わってからねとか、 後期の試験が終わったら新学期になるよとか、どうしても 2 ケ月、3 ケ月ブランクが空いてしまうこ とがあります。 また自分たちがこの商品を買うのだったらという前提で、皆さん考えていただけます。その視点自 身はものすごく大切です。それが私たちに欠落していた視点です。しかしその商品を 380 円で出した い、380 円税込、流通体系を考えた場合、メーカーの製造原価は幾らになるのか。そこで例えば「し おり」をつける。そのしおりを学生さんに立案してもらうと、一つが 200 円くらいかかるものを、1 本 1 本に付けたりとかいう話になってしまう。その辺りの折り合いや調整をしていくことに時間がか かる。相互で納得して一つひとつ積み上げていきたいというのが大前提ですので、時間がかかりまし た。 172 いい部分ですが、5 点あります。メディア露出というのは企業にとっても PR 効果が高いです。ま た商品開発、流通開発、どういうふうに売るのか、どういうチャンネルでどう売るか、これも今まで にないプラスアルファが生まれました。 さらに弊社内の人材開発、これは非常に大きかったです。私も含めてです。取引先開発、こちらの 『手引き』の 472 ページの松山大学の紹介の7番目で「愛媛ぼっちゃんプロジェクト」というのがあ りますが、これは弊社の取引先の地産地消の銀座の居酒屋さんで、こちらも含めてさせていただきま した。ここの取引先と強い関係が結べることと、その取引先の若手のマネージャーさんクラスの人材 育成にも大きく寄与したと自負しております。 富樫 今、横田さんから、企業側のメリットとしてメディアに露出する利点があるとのお話しをいた だきました.プロジェクトの成果が新聞等に報道される.つまり,メディアに出現することを自社だ けで行った場合相当な予算がかるのですが、それが産学連携の場合ある意味タダでできたとありまし た。商品開発、流通開発、人材開発、取引会社のマネージャーの人材育成にもつながったなど,企業 側の不満をはるかに越えるプラス面が強調されました。 広島経済大学の友松さんにも質問が来ております。資金はどうしているのか。資金運営について先 ほど学生主導で行うとありましたが、原資は限られていると思いますので,限られた予算でどのよう な工夫を凝らしているのか.また,サンフレッチェにはお金は払ってないというお話でしたが、プロ ジェクトの中でどうしたらギブ・アンド・テイクが生まれるような素地を作ることができるか.これ らについてお話になっていただければ思います。 友松 プロジェクトの資金については、大学で年間 2 千万円予算を取っております。その中で、現在 2 千万といっても、だいたい海外プロジェクトも含めて、年間1千万円強をこのプロジェクトに当て ています。先ほどの事例でも報告しましたが、学生にはお金ありきで動かないように指導しています。 お金があるからやるのではない、これをやりたいから予算を欲しいのだという気持ちを持たすように しています。中高生の笑顔実現の不登校支援のプロジェクトで、国際ソロプチミスト様から助成金を いただいているということを報告しましたが、できるだけスポンサーや企業さんからの助成金とか、 市や県からの助成金を獲得することを考える。それ以外で取れないもの、消耗品とか、海外への旅費 については、いろいろな規定があるのですが、全額は学生に渡していません。国際貢献するのに、大 学がお金を出して何で行くのかという発想もありますので、学生に負担をさせて、大学は補助をして ということをやっています。年間予算はそのくらいで、指導としてはお金ありきで動くということは 絶対ないようにしています。 富樫 先程のお話の中で、企業には一切お金を払っていないとのことでしたね。学生のプロジェクト 提案の後に企業を探す.協力してくれる企業もあったり、そうでない企業もあったりということでし たが、協力してくれる場合の企業の理由、断る場合の企業の理由など,少しお話しいただけたらと思 います。 友松 する場合は、ちょっと分からないです。飛び込みで、学生がこういうことをやりたいのですが いいでしょうかと言ったら、ああいいですよ、とやっていただけるということで。先程のサンフレッ チェでいえば、コスト削減につながったとか裏ではあるのかもしれませんが、受け入れてくれる理由 は私には分かりません。先方もそのように学生と連携したいという思いがあるのだろうと思います。 断る理由としては学生がやることだから、学生の考えは甘いというのが先入観としてあります。理由 としてはそれしかないと思います。 173 富樫 今までの議論を踏まえて、私の方から大学における産学連携型人材育成に関して,産業界の利 点、大学の利点についてスライドを用意しました。 産学連携型人材育成について,大学には色々な利点があると思うのですが,今、パネリストの方々 から、企業側にも多様な利点があることをお聞きしました。今回のスピーカーのお話を通して、学生 は計り知れない潜在能力を持っているし,伸び代も非常に大きい。学内だけではなく,学外に出るこ とで二倍三倍にも伸びる可能性があるということが分かりました。 地域の企業の場合は、すぐ近くに立地していて距離的に近いし、身近で顔がすぐ見えますよね。サ ンフレッチェの場合は,試合を近くで見て、活動した成果がすぐ表れる。地域と協力するというのは, 顔がよく見えて敷居が低いのかもしれません. さて,広島経済大学の場合,プロジェクトに関わった学生がプロジェクトに関係する企業に就職す る事例が結構ありましたよね。松山大学の場合にも、愛知学泉大学の場合も、プロジェクトに関係し た学生の一部は、広島経済大学の場合と似たような進路を取っているいるのではないでしょうか。つ まり,プロジェクトに関連する企業に引き抜かれたりとか。この意味では,人材の地産地消、または 地育地活、地域で育てて地域で活かす、というのが一番の企業側の産学連携人材育成の利点だと思っ ています。 地域企業の協力による産学連携型の人材育成に関する事例では、有能な人材が多かったですね。プ ロジェクトを通して、学生がどのような能力を持っているのか把握できるわけですから、企業側も産 学連携を積極的に社員の新規採用につなげていったらいいとおもいます。文部科学省のインターンシ ップは、採用活動を一切抜きにしたインターンシップですが、経済産業省は多分違います。インター ンシップを採用に積極的に活かして欲しいとの思いです。どの企業も新入社員を採るために多大なコ ストをかけています。間違った選択をした場合、簡単には首を切ることができませんので、採用には 相応のコストをかけ,内定者を決定しています。 産学連携型プロジェクトに係われば、メンバーの学生がどんな人材かが分かるわけですから、人材 を地域に残す、またとないチャンスではないかと思います。一方,若手社員の研修の場になるといっ た利点も結構ありましたね。松山では会社のマネージャーの育成にもつながったとのことでした。も っとアドバンストな利点として、大阪大学の例になるのですが、新規ビジネスや新しい研究開発のシ ーズになるとの利点もあるのかなと思います。 一足飛びに非常に高いアドバンストな産学連携を行うのではなく,最初は梅プログラムから始まっ て、次に竹に進み、最終的には研究開発など、松プログラムを実施するのがいいのかなと思います。 最初は,学生にうちの企業をもっと知って欲しいとか、メディアに出たいとかといった動機でいいと 思います.そのうち,新規ビジネスに関わるようなものを大学に求めていったらいいのかなと思いま す。 今日の山本さんのお話にもありましたように、静岡県立大学での事例に,NPO を通して幾多のプ ロジェクトトを大学の方にお願いするという事例がありました。 この例に似たアイディアです.企業、 自治体からプロジェクトの依頼を受けて学生が解決します.小さいものでも少し大きいプロジェクト でも構いません。中には,1千万もするような大きなものでも結構だと思います.地域から課題と予 算をいただいて、予算は数万円から百万円位でしょうか、予算を学生への謝金,チームで使う消耗品, 活動費に当てるのです。課題と助成金の管理は,コンソーシアムが行います.プロジェクトの委託先 選考やその成果の評価も行います.委託されたプロジェクトの成果を評価して、非常に良い成果だか ら予算の満額で精算しますとか、成果が余り十分で無いので半分の金額で精算するとかといった具合 です.このようなコンソーシアム管理型のプロジェクト実施に基づいた地域連携による人材育成とい うのも面白い試みだと思います。 さて,私への質問としてあったのですが、企業からの課題をどうやって得られるような雰囲気にな ったのかですが、地域のこれまでの産学連携の経緯、実績が功を奏したのかなと思っています。一朝 174 一夕ではいきません。教育面だけでなく、研究面でもギブ・アンド・テイクがあり、研究面で大学か ら貢献してもらったから、教育面で我が社も貢献するよといった雰囲気ができあがったことです.こ うした素地が 10 年間の仙台スキームという産学連携活動の中で醸成されたのが功を奏したと考えて います。 吉岡 やってみて、私の実感は、大学に対して地方の中小の企業さんはかなりの期待があるというこ とでした。問題を解決するにはもちろん人材がいるのですが、なかなか充分な人材を得られないとい うこともあるでしょうし、考え方とスキルは商品を一つ作るにしても何かちょっと違った角度のもの がないと難しいので、そういうことに対する期待が凄くあります。その中で、たまたま私たちの場合 はアイソーレがうまくいき、もう一つライムサイダーというのも去年作ってこれも評判が良かったわ けですが、そういう情報が外に出て行くと、また地域から、そういうことやってくれるならならぜひ という声が上がり、地域連携も育っていくのかなと思います。ですから大学はどんどん外に向かって やるべきだと思います。私が見たところ、先生方はやや消極的かなという感じがしています。 富樫 学内に産学連携型人材育成を広めるには,学内に同じような考え方を持った先生方を増やす、 つまり学内で社会人基礎力育成の重要性を普及することが大切ですね。企業ではだいぶ社会人基礎力 が普及しつつありますが、とにかく,基礎力の重要性に賛同しその普及を進めていくことが一番重要 なのではないかと思います。PBL とは、プロジェクト・ベースト・ラーニング、プログラム・ベース ト・ラーニングですが、この重要性を日本全体で共有して推進していくことが、日本を元気にする一 番の特効薬ではないかと思います。これを機会に、学内で、企業内で、こんなに良い人材育成方法が あるのだよと語り、ぜひ先生方に、企業の方に、さっそくリファレンスブックをお読みになっていた だき、DVD をご覧になっていただいて、それぞれの組織や機関で活用していただけたらと思います。 以上で,パネルディスカッションを終わります。 175 ⑦仙台会場 時間 内容 13:00~13:10 開会挨拶 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 13:10~14:00 大野孝二氏) リファレンスブック等を基にした事例紹介・DVD上映 (経済産業省委託事業事務局 河合塾 小松原潤子) 14:00~14:10 休憩 14:10~14:35 事例紹介①(東海大学文学部教授 内藤耕氏) 「学生の行動事実をどう評価するか」 14:35~15:00 事例紹介②(金沢工業大学工学部教授 松石正克氏) 「金沢工業大学における社会人基礎力の評価」 15:00~15:40 事例紹介③(神戸大学教育推進機構教授 川嶋太津夫氏) 「社会人基礎力の育成と評価」 15:40~15:50 休憩 15:50~16:45 パネルディスカッション 「社会人基礎力で成績評価を行うためには」 宮城大学事業構想学部教授 富樫敦氏 松石先生 内藤先生 [司会]川嶋先生 16:45~17:00 社会人基礎力に関する政策説明 (経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 東海大学 内藤 耕氏 金沢工業大学 松石正克氏 壷井秀一氏) 神戸大学 川嶋太津夫氏 パネルディスカッション 宮城大学 富樫 敦氏 176 社会人基礎力育成事例研究セミナー 仙台会場 第 2 部 内藤耕氏発言 日時:平成22年10月11日(月) 場所:仙台国際センター 発言者:内藤耕 東海大学文学部教授 学生の行動事実をどう評価するか はじめに~社会人基礎力評価の成績への反映 東海大学の内藤です。私は社会学をベースにして、東南アジアの地域研究、特にインドネシアにつ いて研究をしています。今から 4 年ほど前にキャリア支援センターの仕事を仰せつかりました。ここ に「キャリア教育改革」と書いてありますが、本当のところ、東海大学はキャリア教育について非常 に遅れていまして、私がキャリア支援センターに行ってからキャリア教育を導入した次第です。キャ リア・コンサルタントと毎日のように連絡をとりあって、FD に奔走している状況です。 今日は、そういうキャリア支援センターの仕事を通して社会人基礎力と出会い、キャリア教育の中 ではもちろんのこと、自分の担当する東南アジア研究の授業においても社会人基礎力の観点から授業 改革を進めているということでお話をさせていただきます。 社会人基礎力の評価を成績に反映させる、私たちは S、A、B、C で S というランクを設定しておりま すが、通常は優良可ですね。この成績に反映していくことを社会人基礎力の授業の中で行ってきまし た。教育目標を示すのは、具体的にシラバスだったりするわけですが、そこに社会人基礎力の例えば 発信力を高めますとか、傾聴力を養いますと書いたら、必ず成績評価の中にそれを加味しないといけ ないのではないかと思います。それをやらないと学生の動機付けにもつながっていかないと思ってい ます。 通常の知識の習得を重視した科目に社会人基礎力を加味するだけでも大変なのに、更に成績の評価 にまでそれを反映させることについては学内的に抵抗感があるのも事実です。 これは私自身の持論ですが、社会人基礎力と学力の相関性は非常に強いのではないかと思っていま す。例外はもちろんありますが、全体から見れば両者をきちんと紐付けていくのは、教育全体を考え たときに有効ではないかと考えています。 特にこれは研究者を自認している先生方を説得するための方便でもあるのですが、研究者の資質に も社会人基礎力は必要なのではないかと思っていまして、そういう点でも社会人基礎力を成績の中に 加味していくことは重要なのではないかと思っています。 評価の項目 具体的に評価をどう進めていくかですが、まずは何を評価するかということです。私は自分の科目 だけではなく、社会人基礎力育成評価事業に協力してくださった先生方の科目についてシラバスの中 に社会人基礎力の能力要素項目を明示するようにお願いしました。その時にお願いしたのは、1 科目 あたり最大 3 つまで、極端なことを言えば一つでもかまわないということでした。これは欲張らない ことと、資源を集中させるためです。 社会人基礎力は一つの科目だけで育成されるようなものではなくて、おそらく大学の授業全体、大 学生活全体を通して伸びていくものだと思うのです。ところが教員というのは自分の担当している授 業が、特に文系の場合は、全体の中の一部であるとイメージするのが苦手なところがあります。そこ であまり欲張らないで、自分の授業はここにポイントを置くということで集中して欲しいとお願いし ました。 177 にもかかわらず、12 項目のうち 5 つも 6 つも上げてこられる先生もいて、そのあたりの調整が非常 に苦労しました。そのように絞り込んだのは、課題を通して評価を徹底していくことを考えたからで す。例えばプレゼンテーションなら発信力と、なるべく一つの課題で一つの能力要素を見ていく。あ まり評価基準を複数たてて複雑にしていくと、納得させづらくなるというか、なぜこの課題でこの点 数になったのか説明しにくくなるといったこともあります。これに対して教員は、どうしてもプレゼ ンで知識がちゃんと消化されていたか気にしてしまうのですが、知識については試験やレポートなど 他の手段を使って測ればいいと考えています。 そうなりますと、前提条件として一つの授業で複数の課題が設定されていきます。例えば私の授業 は、基本的にはプレゼンテーション、レポート、試験を組み合わせて展開していきました。キャリア 教育の科目については違うのですが、文学部で担当している科目については知識の定着ということも 同時に見ていかなければいけないので、それはレポートや試験で見ていくということですね。 個別の課題の評価基準は具体的かつ客観的に 個別の課題の評価基準ですが、これについては具体的かつ客観的に基準を立てるということを考え ました。 『手引き』ではアルバート大学のことが紹介されていましたけれども、抽象的な基準を立てて しまうと、どうしても主観に流れてしまう恐れがある。そういうつもりではなくても、学生の方から 見たときに、 何故この成績がついたのか見えにくいということですね。どこまでやれば何点とれるか、 学生に見通しを与える点でも、具体的な段階設定が重要ではないかと思っています。 また、抽象的な基準の場合は非常に評価しにくいということがあります。個人的に非常に苦い経験 をしています。どういうことかと言うと、就職セミナーで、これは大体キャリア・コンサルタントの 方に担当してもらっているのですが、あるときに講師の方の都合がつかなくて、私自身が学生を相手 に担当したことがありました。 その時に、友達同士でそれぞれの長所を指摘し合うワークをしました。学生は大分乗って非常に効 果的なワークだったのですが、その時、学生の 1 人が私のところにやってきて、先生も自分のいいと ころを指摘してくれと言うのです。非常に困りまして、学生たちを見ていると、友達のいいところを すらすらと答えているのですが、私は学生をきちんと見ていなかったようで答えられなかったのです ね。実は、私は、その学生は非常に能力があると評価していたつもりだったのですが、ではその能力 が高いというのをどの点を捉えて言ったらいいのか、日頃から細かく学生を観察していないと言えな いということを、その時、思い知らされたのです。 漠然とこの学生は主体性があるとか、この学生は傾聴力があるとか、そういった評価の仕方ではダ メで、どんな力がどこに表れているのか、 形として記録して残していくことが大切だと思っています。 キャリア支援に関わっている方々には、就職採用の面接の際に具体的な行動事実を紹介する中で自分 をアピールするということがもう当然なわけですが、一般の教員の中には、すくなくとも私自身の中 にはそういったクセがついていないなという反省です。 評価基準には、社会や学問領域、あるいは教員の価値観を反映させることも重要かなと思っていま す。 『手引き』の方に掲げておきましたが、1 年生向けの東南アジア研究の入門科目があります。それ は私のオリジナルではなくて、上智大学の先生が課しているものですが、東南アジアの料理を食べに 行き、レポートを書かせる課題があります。私もそれを活用しています。 その時に、ただ単に食べに行っただけではなくて、どういうような形で食べに行くのかも一つのア クションだと思うのですが、ではどういうふうな形で食べに行ったらそれを評価するのか。例えば友 だちと一緒に行く、あるいはレストランに行くというだけではなく、自分で食材を買ってきて作ると 178 か、そういうところまでやったら高いポイントをあげる。 これは私自身がフィールド調査を中心に研究を進めてきたことと関連しています。つまり、行動を 起こすことが、私の考えている東南アジア研究の基本にあり、1 年生のうちで実際に動いて勉強する ことを評価したいということです。私の専門領域に対する価値観が反映されているということでもあ るわけです。 そこで少し心配したのは、基準が具体的だと容易に達成されてしまうのではないかということでし た。例えば食材を買ってきて、自分の家で料理するというのは、考えてみればたいしたことではない。 ところが自分で料理したら一番いい点数をつけると言っているのにもかかわらず、なかなか実際には そこまでやる学生は多くないのです。意外でした。 課題の達成段階はよく見えるのですが、課題自体に負荷がかかっているのです。学生にとって負荷 があるのです。課題というのは評価の手段であると同時に、課題を通じて学生が力を付けていくもの だと考えていまして、力が付く課題でないと意味がないのではないか。さらに、できればそれを通じ て学生が何かに気付くという、気付きのある課題をなんとか工夫していかなくてはと思っています。 課題は能力の向上に結び付くものであると同時に、能力を客観的に反映するものとなっていくべきだ と思っています。 昨年行った社会人基礎力の育成評価授業では、課題ごとに評価比重をかけ、最終的な単位評価につ なげていくようにしました。評価比重は同時に、傾聴力についてはどのくらいついた、創造力につい てはこの授業でどのくらいついた、というより発揮されていたという方が正しいかと思いますが、発 信力はどうだったかといった結果をポートフォリオに上げていきました。 大切なのは、評価基準をあらかじめ示しておくということです。もちろん必ずしも採点基準どおり に全部の課題がピタッとはまっていくわけではありません。例えばレポートでも試験でも、採点して みてから、こういう着眼点もあるかと気づかされることがあります。それは評価後に解説していくと いうことも必要かと思います。 ですが、基本的には課題は、提示したと同時に評価ポイントを示すことが重要だと思います。課題 を通して学生に行動を促すことになっていくわけです。そこに示したのは東南アジア料理の体験レポ ートの採点基準です。単なる報告以上の情報を盛り込んでいるとか、写真を使うなどビジュアルな資 料を盛り込んでいるかなど、こんな感じで段階を設定してレポートを提出させました。私の専門であ る地域研究の場合は研究成果の発表においてビジュアルであることが求められることも、こうした評 価基準の設定を後押ししたかも知れません。 授業全体で言えば、学期末に試験もレポートもプレゼンも全部やるということではなく、15 回、あ るいは 30 回の授業の流れの中に適当に分散させて課題を配置させていかないといけないと思います。 そうなると評価というのは、その都度その都度行っていくのが原則になっていきます。課題は途中で 出して評価は最後にということでは PDCA のサイクルが作れないので、途中で課題を提示し、提出させ て評価していくということになっています。 WEB システムによる育成・評価支援 それをサポートするシステムとして、WEB による評価支援システムを構築しました。授業の進行と 並行してシステムを作ったので、必ずしも今言ったような形になっていないのですが、例えばうちの 学生がよく聞いてくるのは出席状況です。教員が出席状況をどのように把握しているのか、学生は非 常に気にするのです。それを学生の側からも見られるようにしたり、例えば 2 週間前に提出されたレ 179 ポートを、採点が終わった段階でどういうふうに成績がついているか、学生が WEB にアクセスして分 かるようにしたりしたシステムを作りました。 お見せしているのが WEB シラバスで、シラバスと成績表が連動するように構築したものです。特徴 としては、成績システムの方は学生の顔が見えるように、シラバスの方には教職員の写真が貼ってあ り、こういう科目はこういう顔をしている内藤が担当しているのだということが分かるようにしまし た。 この成績管理システムは、課題一つに対して原則としては、社会人基礎力の能力要素一つを紐付け ています。システム上 2 つ 3 つと複数設定することは可能なのですが、基本的には一つでやって欲し いということで、私の授業、他の授業についてもお願いしました。これをこのようなレーダーチャー トで積み上げ、平均点を取っていくという形になっていますが、これが学生の方に成績レポートとし て送られるわけです。 同時にこれは一つ一つの課題の素点を入れますと全部の課題が終わった段階で自動的に ABCD の評 価ランクが WEB 上に出てくるシステムになっています。このレーダーチャートを含めまして、WEB ポ ートフォリオとして構築した次第です。 ポートフォリオは本当に社会人基礎力を反映するか このポートフォリオについてですが、これが本当に社会人基礎力を反映しているのかどうかという 疑問が、われわれがこれを作っていく段階でわいてきました。これをどう考えるのか非常に難しいと ころですが、本来、社会人基礎力に代表されるコンピテンシーというものは、量的評価が容易でない。 環境や状況、条件によって評価基準が変化してしまう。小学生の社会人基礎力と大学生の社会人基礎 力は違うじゃないかということですね。難しいなと思っています。 例えば、前の総理大臣に決断力があったのかないのか、マスコミはいろいろたたきますけれど、あ あいうポジションにあったときにどういう力が発揮できるのか、学生が普通の課題をこなすときの力 とは違うわけです。ですから社会人基礎力がどのように評価できるかは、非常に難しいことだと思っ ています。 そこで、この社会人基礎力のポートフォリオをもって、その学生が社会に出たときの能力が客観的 に測れているかどうか、私は基本的には考えないことにしました。ポートフォリオは何のために使う のか。学生の就職力について判断するために使うのか。そうではなくて、学生自身が次のステップへ のモチベーションを構築していくための手段になればそれで充分ではないかと思っています。PDCA の サイクルが全体としてきちんと回せていけばそれでいいと思っています。 ほかにも評価項目について、課題間の負荷の違いや、教員によって評価の基準が変わってくること をどうしたらいいかなど、考え出すと限りがないのですが、評価の客観性を追求するよりも、学生が 出てきた評価を使って次の行動に移っていけるような、そういうものを目指したいと考えています。 事業を通して感じたこと 昨年度、平成 21 年度の育成評価事業を通じて感じたことをご紹介します。育成評価のイメージは、 柔軟に捉えた方がいいなと思っています。社会人基礎力はともすれば人材開発論のモチーフに捉われ て、なるべく緻密に評価していきたいということに流れやすいのですが、企業の現場と大学生を取り 巻く環境は違うのではないかと思っています。 働く現場は比較的一元的な評価基準が導入しやすいというか、働いている環境だけで、1 人の生活 世界が構築されてしまっていますが、大学生の場合、非常に複雑です。バイトやサークルなど、授業 外の活動を通じても学生はいろいろな力を身につけていきます。それらをどう評価していくのか、な 180 かなか難しいなと思っています。その一方で一つの授業の中で身に付く力をどこまで精密に測るかに あまりにエネルギーを注ぎすぎてしまっても意味はないのではないでしょうか。また、費用対効果の 点でも、どうかなと思っています。さらに、よく議論されることですが、教育効果についてはタイム ラグがありますので、それもまた評価の難しさを呼んでいるかと思います。 これはご専門の方がいたら教えていただきたいのですが、学生たちを見ていていつも感じるのは、 20 歳前後を境として彼らが大きく成長していくことです。そこの成長をどう評価していくのか、これ また難しいなと思っています。授業の評価というのは、そこに現れた細かい行動事実そのものを評価 しているのであって、その学生の持っているポテンシャリティみたいなものをきちんと測れているか というと、測れていない。目に見えるもの、それを評価するしかないだろうと。それに限界があるこ とは仕方がないと、割り切って私は考えているわけです。 それはコストの問題も呼んでいます。モデル事業をやって感じたのですが、非常に高コストで、時 間と金と手間がかかるということです。これも日常的に事業を離れて、授業を展開していくとなると なかなか大変です。今学期もある程度は行っていますが、昨年は委託事業ということで予算がありま したので TA などを雇うことができましたが、今年は事業も終わっており TA 無しで始めました。昨年 の受講生は 20 名ちょっとでしたが、今年は 60 名になっており、3 倍になった学生に対して同じこと をやろうとすると本当に大変です。お金がかかることをどのように考えていくのか、費用対効果の非 常に高いところからやっていって、費用がかかりすぎることはあっさり諦めてしまうことが必要かな と思っています。 委託事業の中で分かったことですが、自己評価と他者評価は実はあまり乖離しません。他者評価、 とくに企業の方の評価を入れることは確かに必要ですし、企業の方の評価が入りますと学生のモチベ ーションが変わりますが、そこにあまり力点を置きすぎますとお金のかかることになりますし、大変 だなと思っております。何のための他者評価かを見据えてやっていくことが必要かなと思っています。 181 社会人基礎力育成事例研究セミナー 仙台会場 第 2 部 松石正克氏発言 日時:平成22年10月11日(月) 場所:仙台国際センター 発言者:松石正克 金沢工業大学教授・実技教育部長・プロジェクト教育センター所長 企業で製品開発に従事した経験から、開発の現場で求められる力を身に付けるための教育の重要性を 実感。技術者教育の鑑とされる「プロジェクトデザインデザイン」科目のカリキュラム設計にあたる。 平成 19 年度「社会人基礎力育成・評価手法開発プロジェクト」委員。 金沢工業大学における社会人基礎力の評価 はじめに~金沢工業大学のプロジェクトデザイン教育 金沢工業大学の松石です。本日の話の内容ですが、メインの内容は社会人基礎力の評価ですが、社 会人基礎力の育成と評価は車の両輪ですので、そこで、まず社会人基礎力を育成している教育の概要 をお話させていただき、続いて社会人基礎力の評価をどのようにしているのか、また、教育効果がど うであったかを報告いたします。 社会人基礎力を育成させるための科目は、金沢工業大学では幅広い科目で行っていますが、中心に なっているのはプロジェクトデザイン科目です。プロジェクトデザイン教育は、実社会で行われてい る技術者の問題解決プロセスを大学の 1 年生からチーム活動を通して体験して、社会人基礎力を育成 していくことを狙っております。 まず金沢工業大学の教育目標は「自ら考えて行動する技術者を育成する」ことです。自ら考えて行 動する技術者とは、自ら問題を発見し、問題解決の方策を考えて、成果を発信できる技術者であると 考えています。 金沢工業大学では、社会人基礎力を育成するためのメイン科目として、4 年間一貫したカリキュラ ムを採用しています。入学した 1 年生はプロジェクトデザインⅠという科目を、2 年生はプロジェク トデザインⅡを履修し、4 年生でプロジェクトデザインⅢを履修します。これによって社会人基礎力 を育成していくことを考えています。 プロジェクトデザインは、PBL と呼ばれるプロジェクト型の科目です。プロジェクトデザイン教育 の狙いは、いろいろな科目で収得した知識・技術が統合されて役立ち生きてくることを理解し、自主 的・主体的に学ぶことの重要性を知ってもらうことです。またチームの一員として協力することによ り、コラボレーション、コミュニケーション能力を高めるということが二番目の目標です。メンバー それぞれのアイデアや知識を組み合わせれば、新しい価値や発想を生み出せることを体得することが 三番目、チーム活動状況を随時発表、報告させることでプレゼンテーション能力を育成することが四 番目の狙いです。 社会人基礎力の育成 社会人基礎力の育成を、具体的にどのように行っているか報告します。実施する科目は 1 年生から 4 年生までありますが、本日はそのうち 1 年生と 2 年生が受講する科目について説明します。科目名 は先ほどから触れているプロジェクトデザインⅠとⅡで、特徴としてプロジェクト型の学習科目です。 全学必須の受講科目で、金沢工業大学は 4 学部 14 学科ありますが、その全ての学科の学生、各学年 の約 1,700 名全員が受講します。各学年 50 クラスを開講します。モデル授業として 1 クラスだけ開 講するという科目ではありません。 この科目で社会人基礎力を育成するためには、学生が自ら学ぶ仕掛けを作る必要があると私たちは 182 考え、幾つかの仕掛けを設けました。その一つが、授業運営を学生自らが実行し、結果を振り返り、 その結果から何かを感じ取ってもらうということです。そこで学生が、自分の学習スタイルスタイル を作っていくことを目指しています。教員はコーチ役で、教室内の活動とオフィスアワーミーティン グを通じて助言をします。この際、チーム貢献度を非常に重要視しています。いろいろな課題をチー ム単位で行って、その計画と実績をいつも対比させています。リーダーと書記は交代制で全員がリー ダーの役割を経験するようにしています。 二番目の仕掛けは、自主的な学習の PDCA サイクルを構築することです。この科目の学習目標を、 非常に分かりやすく 28 項目に分類し、学生がその達成度を自己評価します。評価は学期の初め、中 間期、期末と 3 回行い、学生が自分の強みと弱みを認識し、足らざるところを補う学習と、足りてい るところを更に伸ばす学習を行うという PDCA サイクルを回すことを意図しています。 三番目の仕掛けは、教員から学生へのフィードバックを行うことです。フィードバックの情報とし て 3 種類の情報があります。教員が随時観察する情報、学生本人が自己評価する情報、チームメンバ ーが相互に評価するものです。この 3 つを使い、全ての学生にフィードバックします。 四番目の仕掛けは、施設に関したものです。この科目はグループで作成する課題が多いのですが、 そのための自習室を準備しています。面積は 700 ㎡あり、1 日 24 時間、年間 365 日利用可能で、グ ループ活動ができる場になっています。 もう一つは夢考房と呼ばれる施設で、学生は自由に物作りができます。この施設も年間 300 日、朝 8 時 40 分から夜の 9 時まで開館していまして、学生たちは自分たちがチームで考えたアイデアの有効 性を確認するための模型の製作や実験ができるようになっています。 社会人基礎力の評価 学生が次週的に学ぶための仕掛けを基にして、社会人基礎力の育成を行っていますが、続いて、社 会人基礎力の評価についてお話します。評価の内訳として、3 種類あります。 一つは達成度評価、これは教員が行います。二番目は学生の相互評価でチームメンバーが行います。 三番目が学生の自己評価で学生本人が行います。 それぞれの評価は目的が異なります。達成度評価は成績評価に活用します。学生相互評価は学期の 中間と期末に行うのですが、一つはチーム活動にどれだけ貢献したかという情報として達成度評価の 参考にします。中間に行った相互評価は、チーム活動への貢献が不足している学生に対するフィード バックの情報として活用します。学生の自己評価は、期初、中間、学期末の 3 回行いますが、学生は 達成が不十分な学習目標を自覚して、さらなる学習を目指すことができます。これは学習の PDCA サ イクルを回すことに相当します。また、教員がフィードバックをするときに学生の自己評価を参考に します。さらに、自己評価はすべてポートフォリオに自動的に転送・蓄積され、成長の記録として活 用します。 それでは、達成度評価の内容を順番に説明します。プロジェクトデザイン科目では学習成果と学習 プロセスの両方で評価しています。学習成果は 1 学期間のグループの学習として取り組んだ結果作り だされたもの、学習プロセスは 1 学期間の学習の取り組み姿勢です。その両方を評価します。グルー プ活動の評価と個人活動の二本立てで個人評価をします。この成績評価の評価方法はシラバスに掲載 して公開しています。 次に評価の内訳を説明します。1 年生のプロジェクトデザインⅠの科目では、グループ評価は 100 点満点のうちの 70 点分、個人評価は 30 点分です。グループ評価の内、毎週の宿題、これは学習のプ ロセスを評価するものに対応しているものが 30 点分、最終報告書、最終のレポートは 25 点分、最終 183 の口頭発表は 15 点分です。 個人評価は学習の姿勢が対象で、中味はチーム活動に対する貢献度が個人点のうちの半分で、30 点 のうちの 15 点分です。チーム活動への貢献度や課外活動の作業と実行、チームメンバーとのコミュ ニケーションなどを勘案して、チーム貢献度を評価します。授業への取り組み姿勢が 8 点です。最終 口頭発表は 7 点です。学生が遅刻したり欠席したり、クラスルールに違反したりした場合、減点をし ますので、出席したから合格点を与えるという評価はしておりません。 2 年生のプロジェクトデザインⅡの成績評価の内訳は、基本的には 1 年生のものと一緒ですが、学 期の終わりに 1,700 名の学生諸君がポスターを作ってポスターセッションで、公開発表しますので、 その評価が 10 点分あります。その結果グループ評価の内訳が、1 年生のときに比べると若干変わりま す。 2 年生の個人としての評価は、チーム貢献度が 15 点、授業への取り組み姿勢が 8 点です。教室内の 最終口頭発表とポスターセッションの両方合わせて 7 点です。 最終口頭発表の具体的な評価方法は、 セミナーの参加者に配布された「社会人基礎力 育成の手引き」 に口頭発表評価用紙が掲載されていますが、個人としての評価とグループとしての評価を行うように なっています。単に発表のスキルだけではなて、話の筋が通っているか、スライドの仕上がりは良い か、学生諸君がチームとして考え出したものの内容が良いかなど、広く評価するようにしています。 50 クラス開講して 1,700 名の学生の社会人基礎力を育成して評価するので、いろいろな情報の記録 にも学生が参画します。例えば同じグループのチームメンバーの行動を記録しています。出欠、口頭 発表の質疑応答、そうしたいろいろな活動の記録を、チームの行動記録係の人がつけます。これは毎 週順番に変わるのですが、このように授業への取り組みの情報を学生諸君に記録してもらってこれを 利用しています。 ウイークリーレポートを、毎週の課題として作成することになっています。計画、実績、また各チ ームメンバーがどういう仕事をどの程度の時間をかけて行ったのかが、ウイークリーレポートの中で 分かるようなシステムを採っていて、この情報からもチームメンバーのチーム活動への貢献が読み取 れるようにしています。 ウイークリーレポートのこの欄に学生から教員への相談や質問が書き込めるようになっています。 また最後に学生諸君はこのレポートが正しいものであるという署名をして教員に提出し、教員はこれ を見て採点し、コメントを下の欄に記入して返すという形を採っています。 授業は 16 週あり、最後の週は自己点検授業になっています。15 週ずっと宿題があります。これが 宿題の評価基準です。全ての資料を綴じているか、内容は正しいか、表現は適切か、この 3 項目につ いて評価します。 次に学生の相互評価について説明します。何故相互評価を行っているのかというと、この科目はグ ループで学習する科目ですから、グループ活動への貢献が非常に重要であり、その評価も重要です。 そのため相互評価を行うときには、この重要性を学生諸君に認識してもらうようにしています。グル ープ活動をしていくためには、自らがグループ活動に貢献することが必要であり、同じチームのメン バーの働きを正当に評価することができて、初めてグループ活動がうまくいく。このことを学生諸君 に認識してもらうようにしています。 評価方式ですが、中間期と学期末の評価があり、中間期の相互評価はグループ活動への参画度合い を把握して、主として学生を指導するときの参考にしております。学期末の相互評価はグループ活動 への貢献度を把握して成績評価の参考にしているので、中間期と学期末の評価様式は違っています。 学期の半ばに評価するときには、それぞれのチームメンバーに 100 万円のボーナスの原資を渡し、 184 チーム活動への貢献に応じて分配することになっています。従って、チーム活動への貢献が平均的な 場合、他のチームメンバーから 100 万円がもらえるような形式になっています。 期末の評価のときには、グループ活動に必要な 6 項目で評価します。例えば、積極的に自分の意見 を述べた、他人の話をよく聴いて活動した、問題が発生したときにリーダーシップを発揮したなど、 グループ活動をうまく進めていくために必要な 6 つの行動様式をとりあげて、5 段階評価するように しています。 自己評価についてですが、自分の強みと弱みを自覚し、弱みを克服する学習につなげて PDCA サイ クルを回すために行っています。これによって社会人基礎力の成長を測定しようということで、方式 としては学習項目を学生が分かりやすい 28 項目に分類し、学習目標の達成度を期初、中間、期末の 3 回で自己評価しています。 評価項目は大きくいいますと、実社会で活動する能力と、設計のプロセスを理解する能力に分けら れており、それがまた細分化されて、28 項目あります。先ず、学習目標と社会人基礎力の対応をつけ ておきます。28 項目の学習目標と社会人基礎力の 3 つの能力 12 の要素との対応をつけて、学生諸君 は分かりやすい学習目標で評価するようにしています。 その他にプログレス・シートがあり、期初、中間、期末に記入しています。例えば、期初では「今 の自分を振り返って自分の強みと弱みを自己評価しよう」 「この科目で重点的に取り組みたい抱負等を 自由記入しなさい」という設問があります。 学生諸君は、この科目で開設されているウエブサイトへ解答をアップロードします。教員はそれを 見て、1 人ひとりの学生にコメントを返す形を採っています。期末になると、次の科目へのつながり を考えて、5 つの設問を設けています。以上が社会人基礎力の育成と評価をどのように行っているか ということについての説明です。 教育効果-社会人基礎力の伸び- 最後に社会人基礎力の伸びがどうであったかを説明します。このグラフの横軸は時間時期で、縦軸 に評価値を記しています。縦軸の評価は、できなかったのが 1 で、非常によくできたが 5 です。グラ フは 1,700 名の学生の全体の平均値を表しています。個人のデータは、平均値のところでバラついて います。前に踏み出す力には 3 つの能力要素;主体性と働きかけ力と実行力があるわけですが、それ ぞれが時間の経過とともにどのように伸びたかがこのグラフに表わされています。 左側のグラフが 1 年生、右側が 2 年生の社会人基礎力の伸びです。これを見ると 1 学期間の学習を 通しての社会人基礎力が伸びていることが分かります。考え抜く力の伸び、具体的には問題発見力、 計画力、創造力も成長を示しています。 チームで働く力の伸び、これは発信力から始まり、ストレス・コントロール力まで 6 つの能力要素 があるわけですが、それぞれの能力は学期を通して伸びを示しています。 社会人基礎力の伸びの要因が、どういう教育によって実現できたかを分析してみると、発信力と傾 聴力の伸びは、1 学期の間に 4 回の中間口頭発表と、最終口頭発表の合計 5 回の発表があり、必ず発 表の時は質問応答の時間を設けてありますので、その中で発信力と傾聴力が伸びたのではないかと考 えています。 チームワーク力の伸びについては、リーダーと書記の役割をローテーション方式で行っていますか ら、全員が 2 回か 3 回は経験するので、チームワーク力が成長していると思われます。 考える力の伸びについては、チームで、自分たちで見つけたプロジェクトテーマに対する解決案を 考えるときに、3 つの要求条件を明示しています。一つは社会に役だって技術者倫理に反しない、二 185 番目は自分たちの工夫のある解決案を創出すること、三番目は夢物語ではなく実現可能性があること です。このような課題に取り組む中で、考える力が伸びたと思います。前に踏み出す力の伸びは、学 生が自主的に計画・行動する学習形式を採っていることによると思っています。 プログレス・シートの学期末の例は「プログラムを受講して当初どう思ったか?」です。学生の声 に「私は人見知りが激しいので、チーム活動等で知らない人と活動するのがいやでたまらなかった。 また活動すること自体も面倒臭いと思った」とあります。当初こういう記述だったのが成長していっ たことが分かります。詳しくは別刷をお読みください。 5 つの質問に対することでは、将来は営業部、企画部ではなく製造部、技術部に就こうと考えた、 このように技術者としての将来の夢を考えたようです。 以上で発表を終わります。 186 社会人基礎力育成事例研究セミナー 仙台会場 第 2 部 川嶋太津夫氏発言 日時:平成22年10月11日(月) 場所:仙台国際センター 発言者:川嶋太津夫 神戸大学教育推進機構教授 平成 19 年度の「社会人基礎力育成・評価手法開発プロジェクト」委員として社会人基礎力に精通。高等教 育改革の国際的な動向にも詳しく、中央教育審議会大学分科会専門委員のほか、OECD 高等教育にお ける学習成果の評価(AHELO)に関するワーキンググループ委員などを歴任。 社会人基礎力の育成と評価~高等教育研究の知見からの報告 はじめに~21 世紀大学教育の前提 神戸大学の川嶋です。皆さんの関心は、これまでの先生方のお話のように具体的な事例にあるかも れませんが、社会人基礎力について、高等教育研究者の立場からおさらいをさせていただきます。 おさらいのポイントは 3 つあります。一つは社会人基礎力が何故必要なのか。二つ目は育成すると いう観点でいえばどこがポイントなのか。最後に今日の全体のテーマですが、どうやって評価・アセ スメントするのかです。これについてお話をしたいと思っています。 何故今、社会人基礎力が関心を呼び、重要だと考えられているのかですが、すでにみなさん御承知 のように、 3 年離職率の高さということがよく話題になりますが大学生の場合は 3 割を超しています。 またそのうち大学を卒業して 1 年で仕事を辞めてしまう場合も 15%で、大学を卒業したけれども 1 年以内に就職した先を辞めてしまう者は 8 人に 1 人いるという状況です。 したがって大学の責任は、卒業した時点で 100%就職させれば、終わったのかというと、そうでは なくて、その後もずっと、例え辞めたとしても引き続き自分で仕事を続けていく力を育成することが、 大学に求められているのではないか。そういった意味で社会人基礎力は非常に重要ではないかという ことです。 21 世紀の大学教育はどのような条件、コンテクストの中で行われているのかということですが、1 つはユニバーサル化ということで、今や 18 歳の若者の 2 人に 1 人が大学に進学し、4 年制生大学へ の進学率も 50%を超えている現状です。日本の若者の 2 人に 1 人が、大学教育が最後の教育の機会に なっている。もちろん卒業してからも学ぶ機会はありますが、一応の区切りとしては若者の 2 人に 1 人は大学教育が社会との最後の接点になっています。 また今はポートフォリオ社会になっています。どういう意味かと言いますと、これまでのように終 身雇用で一生、同じ会社で同じ仕事を続けるというより、1 年であるいは 3 年で仕事を辞めてしまう ようになっていますから、私たちの生涯は、様々な仕事の組み合わせになってきています。そういう 意味でポートフォリオ社会と呼んでいるわけですが、転職するのは当たり前ということを前提の上で 教育する必要がある。 例えばアメリカと日本を比較すると、アメリカでは、毎年 3 人に 1 人が転職していると言われてい ます。38 歳までに平均 10 から 14 の職種を変えている。あるいは同一企業の勤務年数は 5 年以下が 半分を占めているのがアメリカの労働者の現状です。 日本はどうかと言いますと、なかなかアメリカのデータに匹敵するようなものが無いのですが、例 えば労働政策研修機構のデータによれば、同一企業の定着率に関して、30 歳から 34 歳の若い労働者 を見ますと、1998 年から 2003 年までの 5 年間で 60%の定着率だったのが、2003 年から 2006 年で は 50%に低下していて、ポートフォリオ社会、転職が当たり前の時代になってきたことが分かります。 したがって 2 人に 1 人は、大学が最後の教育の機会であり、社会に出てからも転職が当たり前の時 代の中で、われわれの目の前にいる学生は生きていかなければならず、それを踏まえた大学教育のあ 187 り方が問われているということです。 大学設置基準が改正されて、社会的・職業的自立を支援する取り組み、いわゆるキャリアガイダン スが義務化された背景には、そのようなことがあるからだろうと思います。 そういう中で社会人基礎力も含めて、極めて汎用的で、どのような企業、どのような職業について も共通に求められる能力、これをジェネリック・スキルと呼んでいますが、職業上必要なスキル・能 力というのは、このスライドに示したように上から下に行くに従ってより具体的になるのですが、特 定の職業、特定の組織、特定の業務に関わりなく、その基盤となるような能力、こういうものが、転 職が前提となる社会では必要とされるわけです。こうした社会人基礎力については、世界中のあらゆ る国で、育成することの重要性が認識されています。 また 21 世紀は知識基盤社会 Knowledge-based society と言われます。どんな知識を持っているの かだけでは知識社会の中で、十分に機能することはできない。理解した知識で何ができるのかが重視 される社会になってきています。そのために知識がどういう成果を生み出すのか、応用的な学習の体 験、経験を学生に与えることが重要になってきています。 従来は学問ベースの教育でしたので、その知識を具体的な課題に対して応用する学習機会を提供す るのは難しかったといいますか、われわれはその必要性が認識できなかったのですが、 『手引き』にあ るように、現在はこの応用的な学習の重要さは非常に強く認識されるようになってきているわけです。 このように社会や学生や労働市場が変わっている中で、大学教育のあり方も大きく変わっていく必 要があるわけで、最近よく言われているのが、これまでの教育パラダイムから学習パラダイムへの転 換が必要であるということです。 どういうことかと言うと、それを端的に示す漫画があります。これをスライドでお見せしますが、 2 人の男の子と犬がいて、1 人の男の子が、「僕はどうやって口笛を吹くのかこの犬に教えたのだよ」 と自慢気に言っているわけです。そうすると友だちが犬のところに近づいて「この犬の口笛は聞こえ ないよ」と言います。そうしたらこの犬の飼い主の少年は「僕は教えたとは言ったけれど、彼が学ん だとは言ってないよ」と言うのです。つまり教えることは必ずしも学ぶことを保証しない。 先生方は自分が教えたことは、すべて学んで欲しいと思うし、学んでいると思うのですが、教える ことと学ぶことには実は距離がある。重要なのは学生が学ぶか学ばないかです。 ところがこれまでの大学教育は、車で言えば学生が助手席に座り、先生が運転してどこに行くかを 決めていました。学生はそれに乗っていれば良かったのです。しかしこれからは学生が自分でハンド ルを握って、自分で目的地に行けるようにする必要があります。 しかし自動車学校と同じで、 学生を初めから運転席に座らせれば事故を起すのは当たり前ですから、 最初は隣に先生が座っていて、指示を出したり、安全ブレーキを踏んだりすることが必要です。そし てだんだん実習時間が増えてくれば、隣にいた先生は車から降りて、どこか遠くからリモートに指示 を与えるようになっていく。次第に自立させて、自分で学んでいける存在に変えていくことが今は求 められているわけです。 その意味で教員は、学生の学びをデザインしてあげる、あるいはチューターやファシリテーターと しての役目を果たすことがこれから重要になってきます。 もう一つ、21 世紀の大学教育の前提として、学びの最終的な目標を明示して、そこから出発する教 育やカリキュラムのあり方を考えていくあり方が、日本だけではなくて、いろいろな国で導入される ようになっています。Outcome Based Approach です。 この考え方では学生が何を学ぶのかが非常に重要ですので、例えばある大学で、4 年間の学士課程 を終えて社会に出て行くときに、その大学の学生はどういうことができて、どういうことを知識とし て得ていなければならないのかという期待される学習成果、あるいはこの授業では半年の授業を通じ 188 て、どういう知識や能力を身に付けるべきなのか、期待される学習成果を明確にすることが問われま す。当然、先生方はこれまでもそういう思いで授業をされてきたと思うのですが、それを明示化する ということです。これがまず出発点。 その次に、ある知識を理解し、あることができるようになるためには、どういう体験、カリキュラ ムを提供すれば、学習成果を獲得する機会が高くなるのかということで、教育や学習を設計すること が求められます。そして最後に学生がどれだけできるようになったのかを確認するためにアセスメン トを行います。この 3 つの要素の間に整合性が必要です。 例えば学習成果が、パワーポイントを使って、クラスの前で自分のプロジェクトのプレゼンができ るというものとして考えたとして、その間の15回の学習プロセスが、パワーポイントについてのテ キストをただ読むだけでは、この学習成果と学習の方法の間に整合性が取れていないことになります。 また最後にちゃんとパワーポイントでプレゼンができるかの確認についても、ペーパーの点数ででき るようになったとチェックするのでは、学習の成果とアセスメントに整合性がないわけですから、学 生にとって不都合だということになります。最終的にみんなの前で、プレゼンをさせる方法で評価・ アセスメントをすること、この整合性、アラインメントが非常に重要です。 これを学生から見るとあらかじめ初めに何を理解し、何ができるようになるべきかということが示 されることによって、どこに行くのか、目的地が非常に明確になる。そしてカリキュラムやアサイン メントが明示的になると、この目的地に行くにはどういうプロセスがあるかということが明確に伝わ るし、アセスメントの方法や基準が示されていると、何がどこまでできれば合格になるのか明確にな ります。 Active Learning の意義 あらためて基本に戻って、大学の使命は何かと言うと、教育、研究、社会貢献にあることはみなさ んご承知の通りです。では教育とは何かと言うと、学生の学習のプロセスを支援する目的的な活動の 総体のことであり、学習とは何かと言えば、行動に見ることができる学習者、学生の特性や能力が変 化する過程のことです。これはガニエが『インストラクショナルデザインの原理』の中で述べている ことですが、大学が最終的に求めることを、いかに学生に学習させるか。学生の学習や成長がどれだ け進むか。それを支援するのが教育であるわけです。 その意味で、学ぶということは、スポーツを観戦することと同じではない。大リーグの野球をスタ ジアムで見ても、プレーする能力は身に付きません。実際に、キャッチボールをし、バッティングし ないと能力は身に付かないわけです。同じように先生の話を聞いているだけでは必要なものが身に付 かない。よく自転車乗りのメタファーといいますけれども、自転車に乗るためには、自転車の乗り方 という本を読んだだけでは乗れません。自分で自転車にまたがって、倒れたりすることを繰り返さな いと乗れるようにはならない。学びとはそれと同じだということです。 そうしますと、学生に自転車に乗ってみる機会、学ぶ機会を先生方は学生に十分に準備し提供する ことが必要です。アメリカの高等教育学会では、これまでのさまざまな研究に基づいて、どういう活 動が学生の学びを促進するかということを 7 つに整理しています。 学生と教員の交流、学生同士の協働、迅速なフィードバック、時間の有効的活用・集中力、高い期 待、個性の重視・多様な学習機会、能動的学習 Active Learning です。 よく言われているように、馬を水のみ場に連れて行くことはできるけれど、水を飲ませることはで きません。そこでいかに水を飲ませるのか。馬と学生を一緒にするのは失礼千万ですが、これが学び という水であるとすれば、そこでいかに学生を学びに導くかが、先生の腕の見せ所になるわけです。 そこでどういう仕掛けが有効なのかということで、アメリカで調べたものがあります。ラーニング・ ピラミッドと呼ばれるもので、上に行くほど学習への主体的関与度が低く、下に行くほど高いという 189 ものですが、一番上にあるのは「聞く」ことです。先生の講義をただ机に座って聞いているだけでは、 非常に関与度は弱いわけです。 ところが、論文やテキストを学生が読むようにすると、意欲は高まりだす。さらに話す時間を入れ ると、自分でポイントを整理して話すわけで主体性はより高い。それで一番有効なのは、人に教えて みることです。これが一番、理解が高まります。ソクラテスなども語っていることで、一番、理解が 深まることは人に説明することなのです。 こうしたことが能動的学習ですが、これをシルバーマンという人が次のようにまとめています。 「聞 いたことは忘れる。聞いて、見たことは、少し覚える。聞いて、見て、質問したり、議論したりして、 ようやく理解し始める。聞いて、見て、質問し、議論し、自分でやってみて知識とスキルを獲得する。 誰かに教えて、習得できる。」というものです。こうした実際の事例が、 『手引き』の中に載っていま す。 こうしたアクティブ・ラーニングのヒントになるのが PBL です。PBL はプロジェクト・ベースド・ ラーニングと言われますが、私は、Participation Based Learning という意味で考えています。学生 が学習活動に参加するという意味です。それは何も Project Based でなくても、Problem Based でな くても可能です。 例えば講義の中でも、質問することでも学生をそうした学びに引き込むことができます。ただし単 に言葉や概念を覚えているかの質問ではなくて、思考を深めるもの、それはなぜ、 「なんでやねん」と いうのが紹介されていましたが、学生の思考を深めるような質問する、それならば有効です。 最近ではソクラテス・メソッドが有名です。ハーバード大学でサンデル教授が、正義論の授業で 1,000 人を相手に講義をされていますけれども、これも単に先生が、正義論についての、ロックやカ ントの説を話すだけではなくて、学生に意見を言わせるわけです。1,000 人の授業でも学生に主体的 に考えさせる場を作ることは可能なわけです。 ただあれは、表舞台は 1,000 人を相手にレクチャーと問答が可能になっていますけれど、それまで に学生たちが何十ページも資料を読んできて、講義のテーマを曲がりなりにも理解した上で出てきて います。 また全員がサンデル教授から質問を受けてやりとりをしているわけではありません。 しかし、こ の講義のほかにスモールグループのディスカッションがあり、10 人ぐらい集めて TA が、どこが分か らないのか討議しています。それがセットになってあの大講義が成立しています。日本のような 1 週 間に 1 回の授業では難しい。その背後には、日本の場合は半期ごとに受講する科目が非常に多いとい うことがあります。アメリカですと 4 科目か 5 科目ですから、週 2 回の授業があってもそれなりに事 前学習と事後のディスカッションが可能になるわけですけれど、日本の場合、10 科目以上学んでいて、 その全部に対してあらかじめ論文を読んでこいなどということになると、学生は勉強しすぎて、健康 を害することになってしまいます。 だからある意味で構造的な問題も存在しているということも確かです。しかし今日の報告や『手引 き』にあるように、いろいろと工夫することで、それを補うことも不可能ではない。その意味ではグ ループワークは一つの方法として有効です。うまく使えばさまざまなことを学べる要素が組み込まれ ているからです。 Assessment の意義 最後にアセスメント、学習の評価の問題をお話します。学生が本当に学んだのかどうか、それを評 価することをアセスメントと言います。教員の側からは、どのようにして、学生が学習したことを確 190 認するのか。あるいはどのように、学生が学習成果を達成したことを証明できるのかということに関 わる問題です。 アセスメントとエバリュエーションというものがあります。これを区別すると、アセスメントは学 生の学習状況について、体系的に情報や証拠を収集・分析し、期待される学習成果を獲得しているか どうかを検証することです。エバリュエーションは、アセスメントの結果を解釈し、必要な意思決定 を行うこと、改善することです。アセスメントの結果、学生がどうやら学習成果を達成できていない となれば、どこに問題があるかを分析して改善する、そのための意思決定、価値判断をすることがエ バリュエーションです。 アセスメントの意義は 3 つに分けられます。一つは Assessment of Learning で、学習のアセスメ ント、これは総括的評価と言われています。半年間終わって、学生がどれだけ学習成果を獲得したか。 またアカウンタビリティを求められた時、大学ではこれだけの学生がこれだけのことを獲得しました と総括することに使っていく。 それから Assessment for Learning で、学習のためのアセスメント、学習を伸ばすためのアセスメ ントです。これは形成的評価と言われます。期中、プロセスの中で行って、さらに次の学びにつなげ ていく。学習支援や改善のために行われるアセスメントです。 3 番目は Assessment as Learning で、学生は最終的には自分で自分を評価することを通じて、自 分で自律した学習ができる存在になっていくということです。どこまでできたかを確認することによ って、次の課題は何なのか、先生に言われなくても設定できる。大学を出たら自分で生きていかなく てはなりませんので、最終的には自分で自分の評価がきちんとできる、そういう存在に学生を上げて いく、そのためにアセスメントを使うわけです。 アセスメントの意味は、教員の立場から言うと、まず教育目標があり、この授業ではこういうこ とを目指しますというものがある。その次に最終的にこの授業が終わったときにどういうことができ るようになって欲しいかという学習成果が決まって、そのために必要な教育活動を行って、最終的に アセスメントで達成できたかを確認します。 逆に学生の方から見るとまずアセスメントの方に目がいきます。この授業では何をどこまでできる ようになれば合格点であるかをまず見て、その後に、そのためには何をどうすればいいかを知り、最 終的に学習成果が身に付きますが、これは具体的で客観的に測定できる必要があります。そのことを あらかじめルーブリックとして示しておく必要がある。 アセスメントは改善のために使うわけです。大学にとっても学生にとってもギャップを埋める、学 習成果がきちんと達成できているかどうかをみて、必要ならば改善する。こういうことが学生自らも できるようにしていく。こうしたアセスメントの方法にはアンケートなどの間接法と、テストなどの 直接法があります。 続いて成績 Grades との関係ですが、成績証明書は何を意味しているのか。S(秀)A(優)B(良) C(可)D(不可)とは何を意味しているのか。GPA3.0 は何を意味しているのか。今の成績のつけ方 は、学習以外の要素が考慮されています。出席が考慮されます。しかし必ずしも出席と学習は結びつ かない。また授業への参加度を評価するとしても、口頭のコミュニケーション能力を授業の学習目標 に明示していなければ意味はない。 また成績評価基準が今のつけ方では曖昧で一貫していません。先生の間でも評価基準が異なる。ま た成績はすべての学習経験を反映していません。にもかかわらず成績をつけているわけです。そこで あらかじめ合格・不合格の水準を示したルーブリックを示して評価をしていくことがこれから必要に なってきます。ルーブリックを活用することで学生は自己評価ができますし、自分で学習することが 可能になっていきます。 191 まとめ 同じことの繰り返しですが、重要なのは教育パラダイムから学習パラダイムへの転換です。教える ことと学ぶことの間にはかなり距離がある。そのギャップをいかに埋めるか。また大学教育の課題と しては、いかに学生自らが運転席に座って、自分で学んでいくことができるようになるか。そういう 存在に変えていくことにあります。 アセスメントの意義はお話した 3 つであり、最終的にはアセスメントを通じて学生が自律した学習 者に育っていくことが目標です。またルーブリックを使うことで自己評価と自己学習が可能になるし、 説明力のある成績評価が可能になります。効率的に評価ができる。 最後にハーバート・サイモンの言葉です。 「学習とは学生が行っていること、考えていることの結末 としてのみ生じる。教員は、学生が行っていることにしか影響を与えることができない。」 この短い時間にみなさんが何らかのことを学習されたことを期待して話を終わります。 192 社会人基礎力育成事例研究セミナー 仙台会場 第 3 部 パネルディスカッション 日時:平成22年10月11日(月) 場所:仙台国際センター 発言者:松石正克 金沢工業大学教授・実技教育部長・プロジェクト教育センター所長 内藤耕 東海大学文学部教授 富樫敦 宮城大学事業構想学部教授 司会:川嶋太津夫 神戸大学教育推進機構教授 社会人基礎力で成績評価を行うためには 川嶋 川嶋です。司会をさせていただきます。社会人基礎力のプロジェクトは、育成手法の開発に加 えて、それをどう評価するのかということでも、努力を傾注してきました。結果として、きちんと学 生の成長を評価することは、教育の質の保証ということにも深くつながることです。その点で各大学 の先生方に努力をしていただきました。今日はその辺りでディスカッションを進めていきたいと思い ます。その前に、宮城大学の富樫先生から、評価など、自らの実践についてお話いただきます。 講演 評価について 富樫敦 宮城大学事業構想学部教授 宮城大学の富樫です。これまで通常の授業の中で、社会人基礎力をどのように育成していこうかと いう話がありましたが、宮城大学の事例をお話します。 PBL on the Campus が課題だと思います。通常の授業の中に PBL を入れ、また社会人基礎力を入 れた場合、どのような教育効果があったのか。またどのように成績を返したのか。そこに問題はない のかです。今日はそれが議論の課題なのではないかと思います。 また他にもいろいろな反省があります。当然ながら、通常の授業の時間の中でワークを行うわけで すが、絶対的に教えないといけない内容については、どうしていったのか。またこれはいいと思った 内容を、全学にどう普及していくのか、これらの点を中心にお話します。 これまでモデル校として 3 年間の実践を積んできました。社会で活躍できる学生さんをどうしたら 輩出できるかを考え、いろいろな PBL を行いました。それでメディアにもいろいろ出ました。反省 としては、PBL の時間は非常に限られています。これを通常の、最低限の知識を習得しなければいけ ない通常の授業でできるのだろうか。これについて、一昨年、昨年、今年と実施してきました。 具体的な科目は、「コンピューター言語」です。一つは静的なもので、HTML を使いウェブサイト を作るもの。またより動的な、企業の中で数年かけてお客さんの要望を聞きながら作るようなウェブ サイトの構築も行いました。 授業は 15 回ありますが、1 回あたり、10 分から 20 分ぐらいしか説明を行いませんでした。ほとん どの授業時間は、進捗管理に当てました。お客さんからどのような要求をもらったのか。それならば どのようにスケジューリングするのかです。 学生さんのプレゼンが 70 分ぐらいです。6 チームだったので 1 チーム 10 分ぐらい。リーダーも司 会も全部学生さんです。コメンテーターがいて、必ず話さなければいけない。 それまでと大きく違ったのは、一方的に話す授業では 50 人ぐらいいると 1 割が寝てしまい、場合 によっては、後の方で内職している学生もいました。ところがアクティブラーニングになると、寝た り、内職したりする者がいなくなりました。 肝心の成績評価です。厳密に、組織だって行いましたが、かなりリスクがありました。スライドを 見て欲しいのですが、100 点満点ですが、教員と学生さんで評価します。お客さんからのヒアリング 193 に基づいてどれぐらいやれたか。これが成果物ですがこの評価は私が行いました。またチームでの発 表とその資料です。成果物とチーム発表と資料を私が評価して、あとはほとんど学生主導の評価にし ました。社会人基礎力の育成評価は、チームへの貢献度、発表での個人のプレゼンの面で見て、学生 さんによる自己評価と他者評価で行いました。 最終発表は持ち時間が 1 チーム 14 分ぐらい。システム開発でどのようなことを行ったか。それか ら開発過程での問題と対処法、社会人基礎力の育成にどれぐらい役に立ったか。その後、私が 1 分ぐ らい質問をしましたが、できるだけ学生さんをエンカレッジするものにしました。 お題は、研究室の書籍の管理システムです。お客さんは私です。私からいろいろとヒアリングをし てこのように設計をしたいと案を上げてきました。しかしできるだけ入力量を減らしたいということ で、こんなものもやりたい、あんなこともやりたいと言っていましたが、いかんせん、実際にできた のは、少しのものでした。また学生さんには、実際の企業での開発と同じようなことを求めましたの で、いろいろなドキュメントやマニュアルなども求めました。ウェブサイトのトップ画面も見栄えの いいものにし、スタイルシート2もしっかり作ってくださいよということで行いました。 最終発表では、初めはいろいろと案を上げていたけれど、実装が始まって実際にやってみると大変 さが分かったとか、日程調整が大変で、スカイプを使って遠隔で行った、これによってチームワーク 力ができた、互いに教え合うことによって理解につながっていった、毎回プレゼンを行ったので力が ついて、プレゼンにつながったなどの意見がありました。 それで先ほどの評価の中で、自己評価、他者評価がありました。これを全部把握するのは大変なの で、個人個人に対して自己評価とどのようなことを行ったのかを書き、同時にチームの他のメンバー への評価のコメントを書かせるようにしました。 プレゼンをして、各自に、今のプレゼンはどうだったかを評価させたのですが、社会人基礎力の 3 つの大きい力に即して評価してもらいました。 PBL は自分で行わないと進まないので、パッシブからアクティブになります。またこの授業が何の 目的であるのかが分かるようになった。それでアクティブラーニングの典型である PBL on the Campus が少し実感できたのではないかと思います。 今度は成績に加味した点ですが、自己評価は自分に甘く、他人に厳しくなると言われますが、普遍 的に行うと、自分がチームの中でどれぐらい行ったかが見えてきます。その点で以外と自己評価や他 者評価は、信頼するに値するのかなと思います。 また今回は事前にきちんと説明しましたので、あまり問題になりませんでしたが、社会人基礎力を 評価で考慮することに対して、これを一般的に行おうとしたときには問題があるかもしれない。 また知識の絶対的な不足があります。20 分しか説明をしないわけですから。そのため学生に多大な 負担がかかりました。大学設置基準を遥かに上回る勉強量が必要だった学生さんもいました。また全 学への普及とカリキュラムへの導入も課題だと思います。 パネルディスカッション 川嶋 今、幾つか反省に基づく課題を出していただきました。これについてはまた先生方に後でお話 を聞くとして、まず社会人基礎力の達成を、成績評価に組み込んでいく背景やその必要性について、 3 人の先生方に意見を伺いたいと思います。特に不合格になった場合にどうするのかという質問が来 ていますので、この辺について教えていただきたいと思います。 松石 社会人基礎力を成績評価につなげる必要についてですが、私は大学に着任する前に、約 30 年 2 WEB ページ上の「見栄え」を定義するための新しい技術 194 間、企業で研究開発の第一線にいて、いろいろな技術者の方、文系出身の方、経営者の方を見ていて、 知識があることと、社会との係わり合いの中で仕事をしている能力は必ずしも一致していないという ことを何度も感じました。 そういうことから、社会との係わり合いを持って仕事をしていくためには、専門的な学習だけでは なくて、社会人基礎力の育成が必要不可欠だと感じたことが、私自身が社会人基礎力の育成と評価を やっていこうという背景になっています。 それから今、不合格になった場合についての質問がありましたが、金沢工業大学の場合、不合格に は二種類ありまして、一つは成績が 60 点に達しない場合、これは D 評価といいます。もう一つは出 席が 70%を割った場合で、F 評価といいます。 1,2 年生の社会人基礎力育成のプロジェクト型の科目では、だいたい D 評価の学生が 1 ないし 2%、 F 評価の学生が 2,3%、合計しますと、数%の学生が不合格になります。 不合格になったときの対応は、まずはクラス編成については、50 クラス開講しているうちのどこか のクラスに入ってくるわけです。教員の対応としては、私の経験から言うと、学生が不合格になる大 きな要因は、ライフスタイルが大学での勉強に合っていなくて、結果として出席できないということ と、自信喪失していて、 グループの中での活動がなかなかできないことに二つであるように感じます。 金沢工業大学の場合は、一人ひとりの学生の就学情報が、ウェブに入っていて、教員がそれを共有 できるようになっていますので、授業の開始前に受講生の名簿をざっと見て、誰が落第した多年度生 かをチェックし、どういう状況であったかの予備知識を持ちます。後は本人との対話をできるだけ行 って、とにかく機会があれば誉めてやる。出席すると誉める。欠席したら、私と次に出てくることを 約束させ、それを守れば誉めてやる。そのようにできるだけ学生との対話で対応しているのが実情で すね。 内藤 社会人基礎力が成績評価でなぜ必要かということですが、そもそも知識とそれを生かす力がう まく連動してこなかったのがこれまでの大学教育だと思います。こうした力は社会に出て活用してい く力で、個人として生かしていくだけではなく、チームとして仕事をしていくわけですから、そこで 使われて初めて大学で培った知識が生きていくわけです。そのためやはり大学の教育の中にこれを取 り入れていく必要があると思っているわけです。 それからそもそも、社会人基礎力を評価の中に入れていくことを目標としたときに、授業改善その ものが進んでいくということがあると思っています。なんとかこの学生の力を伸ばそうといろいろと 考えるわけですが、具体的に何をやっていくか、きちんと目標を立てていくことが重要です。例えば、 コミュニケーション能力を高めることを目標にしながら、知識を問うような試験しかしないというこ とがこれまでありました。ですから成績評価の中に入れるとはっきり謳うことで、初めて授業という ものは変わっていくと私は考えています。 不合格になったときのフォローですが、カウンセラーをつけています。これは合格・不合格に関わ らず、出てきた成績を元に、次に何をしていくかを考えていくことが大切だと考えてのことです。た だカウンセリングをしても、必ずしも全ての学生が来てくれるわけではなくて、特にカウンセリング が必要な学生が出てこないなどということもあります。 また不合格自体については、欠席が多い、課題未提出など、なぜ不合格になったか本人も自覚して いる場合がほとんどで、フォローといっても、成績自体への不満は出てきていません。これは社会人 基礎力ではかえって分かりやすい点です。 知識中心で、しかも論述式の試験で成績を付けるとなると、 何でこれが A でこれが B かということを説明するのが結構苦しくなると思うのですが、社会人基礎力 に細かいルーブリックを作って計っていくということになると、割とそこは説明できると思います。 富樫 去年から成績評価に入れたのでけれども、去年の 3 年生は 2 年生の時から社会人基礎力の概念 195 は知っています。特に去年はリーマンショックによる経済危機から、学生さんの就職活動が悪い状況 になっていて、そうした中で、社会人基礎力というのは、企業が必要な人材を採るために非常に重要 視しているのだということを説明してきました。これが効果を増して、社会人基礎力に関する認識が 高まっていたので、その点で不合格がどうのということは、あまり心配していませんでした。 確かに来なかった学生さんは不合格になっていますけれども、活動がそれほど活発でなかった学生 さんでも合格の域に達したのが実情でした。その意味ではただ一方的に社会人基礎力を授業に入れる のではなくて、十分なアカウンタビリティ、説明責任を果たしていれば、それほど反発はなく、学生 さんは好意的に受けてくれるのではないかと思います。 川嶋 今、先生方から成績評価に社会人基礎力の達成度を組み入れることの効果をご報告いただきま したが、社会人基礎力育成のプロジェクトに参加し、成績評価を行ってきたことで、大学や先生自身 にとってこういうことが良かったということがあれば、ここでお話いただきたいのですが。 松石 良かった点については、一つの科目の教育効果が目に見えて顕著に現れるという形ではないの ですが、1 年生と 2 年生のプロジェクト型の学習をしたときに、学生諸君をいろいろと接します。私 の場合は、次に彼らと会うときは、4 年生の卒業研究の発表会のときになるのですが、その時に、学 生たちの顔がすっかり変わっているのですね。それを見て成長したなあと実感することが多くありま す。 具体的には、学生たちが何をするべきか、ということを自覚できていることと、それを行おうとい う行動力が身に付いていて、顔つきが変わっているのです。総合的な結果だと思うのですが、それに 貢献できているのではないかなと感じます。 内藤 具体的な効果について量的に計ってお見せできないのが辛いところなのですけれども、個別具 体的にはいい意味のリアクションがありまして、例えばこの『手引き』の中に私の授業に出た学生の コメントが出ています。後からめくってⅶページとローマ数字であるところなのですが、ここにもあ るようにこの学生は単位欲しさに受講した学生で、必ずしも受講態度は良くなかったのです。しかし 社会人基礎力を身に付けるという授業の目的は、彼の中できちんと受け止めてくれました。それで、 本当に驚いたのですけれども、非常に一生懸命に就職活動をしまして、早いうちにみずほファイナン シャルグループに内定をもらいました。参加した学生全体がある程度伸びたと思うのですが、学生の 中には、何かをきっかけにガラッと変わって劇的に伸びる者もいます。その一人の例かなと思ってい ます。 私のゼミ自身、社会人基礎力を目標に掲げて運営していますが、今年、顕著だったのは、ゼミの学 生をバリ島の農村に連れて行って、ホームステイをさせたときのことです。以前も同じようなことを 行っていましたが、1 グループで1軒という割り振りでした。それを、今年は思い切って 1 人 1 軒と して、ほとんどインドネシア語のできない学生たちを放り込みました。それでどういうことが起きた かというと、多くの学生がこのホームステイに満足し、秋学期になってほぼ全員がインドネシア語の 授業を受講するようになりました。 ようするに PBL のような授業を展開していくことによって、学生自身がまた次のステップで道を切 り開いていくということが、理屈では分かっていたのですが、今回、実感を得ることができました。 富樫 社会人基礎力かつ成績評価の導入についての効能ですが、良い面と悪い面と、両方お話したい と思います。まず良い面ですが、自ら意義を見出して、かつ学生主導で行いますので、自分が授業を 受けさせられているという観点からではなく、自分たちから進んで関わっていることです。またもう 一つの効能ですが、毎回、プレゼンをさせています。それで学生から、私から、企業の講師から質問 196 が来るのですけれども、毎回、それに答えなければいけない。それがうまく効果を上げて、就職面接 でうまくできましたということがありました。 これには長短が合って、毎回プレゼンをしますので、本来、JAVA など 500 ページぐらいのものを 読まないと実装できないのですが、授業での講義は 20 分、せいぜい全体で 200 分ぐらいしかできな いのですね。だから学生さんの自宅学習に拠る所が深いです。そのため自主学習の機運は盛り上がっ たのですけれど、それに対する適切な指導が必要なのかなということが課題として残っています。ま たグループワークで行うことで、中にはさぼる学生さんもいて、その辺も課題なのかなと思います。 川嶋 社会人基礎力の育成・評価事業に参加されて、非常に困ったというご苦労話もお聞かせ願いた いと思います。とくにフロアからの質問で、自己評価と他者評価について、評価の観点のウエイト付 けの考え方をどのようにされたのか。また教員をいかに巻き込むのかというものが来ています。私も 授業を担当する先生の能力開発などでご苦労されたのではないかと思うのですが、この辺りを含めて お聞かせください。 松石 先ほど述べた授業は、1 学年 1,700 人が受講し、50 クラス開講します。かつ学科が 14 ありま すから、その違いにも対応することが必要です。そのときに対応する教員は、各学年 40 人ぐらい必 要です。クラス数と教員数があってないのは、このプロジェクト科目には、専任の教員が何人かいま して、その人たちが幾つかのクラスを持っているからですが、いかにこの 50 クラスの質を同じにし て、かつ高めるのか。そのときに教員の意識をいかに高めるのかがやはり大きな問題です。まず教員 の意識が高まらないと、均質な発展を作れませんから、いろいろな場で教員に働きかけをします。 一つは大学全体の FD 活動を教育フォーラムという形で年に数回行います。ここで教員の問題意識 の共有を図ります。その他にこの科目を担当する教員にオリエンテーションをして、どういう考え方 でどういう運営をして欲しいかを伝えます。それから授業運営を助けるということでは専任の教員が 準備し、16 週分の説明用の標準のスライドはわれわれが準備して、教員が自分の専門に合わせてマイ ナーチェンジすればいいようにしています。 また 14 の学科の特徴の出し方ですが、基本になる問題解決のプロセスは同じであるということを 教員に認識してもらって、取り組む課題が学科ごとに異なればよろしいという方針でやっています。 しかし全員がそれでうまくいくかというと、いろいろと悩みがありまして、それを解決するために、 授業を開講している間、毎週、ED カフェというものを開きます。エンジニアリング・デザイン・カ フェです。大学からコーヒーとクッキーを出しもらって、毎週 1 時間、担当教員が悩みを話し合える 場を作っています。そういうことで乗り切っています。 内藤 苦労した点はいっぱいあるのですけれども、端的に言えるのは、成績評価基準を具体的に設定 する作業が結構、大変ですね。ですが、それは大変な半面、楽しい作業でもありまして、じっくり考 えれば何か出てくるだろうなというところです。しかし、もっと大変なのは学問分野の特質の問題で す。 今日の報告者の方々の中で、かなり私が異質だと思うのは、私が人文系の教員であることです。キ ャリア教育については、社会人基礎力の概念を導入して成績評価基準に入れていくのはそれほど違和 感がないのですけれども、自分が担当している専門科目に導入するのはなかなか難しいことです。私 自身は社会学が専門なのですが、私の学科のスタッフ 6 人は私以外、みな歴史学なのですね。その歴 史学の中にどのように社会人基礎力を織り込んでいくのか。学士力に関するセミナーでそういう悩み を申し上げましたが、中教審の先生から歴史学はもう無理ですと言われてしまいまして、これは大変 なところで、大変なことをやろうとしているなという状況です。 とにかく学問領域によって相対的にやりやすい分野とそうでない分野があると思います。またやり 197 にくい分野の先生方は、コンサバティブになることも多く、 「やはり知識が大切だ」ともおっしゃいま す。そのような先生方にどのように理解していただくのか。 私自身については、グループワークを取り入れたいということがあって、自分の授業をワークで構 成していったのですが、ではこの授業の中身やテーマを何にするのかが問われました。私の担当して いたのは近現代東南アジア論で、本来は政治経済のことを話すような科目に、グループワークを取り 入れるのが非常に辛くて、結局は、観光学科でやった方が適しているような「スタディーツアーを考 える」というテーマで授業を構築してみました。授業の効果も受講学生の満足度も高かったものの、 必ずしも科目とテーマがしっくりしてはいない問題があります。 それから、その授業でどの力を伸ばすのかということなのですけれども、多分、教員によって違っ てきます。同一科目でも、どういう手法を導入するかによっても変わりますし、教員の個性も出てき てしまう。結論から言えば、しばらくは仕方が無いだろうなといういのが個人的な意見です。無理や り FD をやって揃えようとすると、多くの教員からアレルギー反応が出てくるだけだろうな、と思うの です。取りあえずは今までとは違った授業をやってみよう、なんでもいいから社会人基礎力の観点を 入れてやることから始めていこうというのが結論なのですけれども、どう力を伸ばすか、目標の設定 が大変です。 実は今学期が始まるときに愕然としたのは、キャリア支援センターの仕事にかまけていて、学科の 方がどうなっているのかあまり見ていない間に大変なことになっていまして・・・・。 私たちの大学はこの春からカリキュラムマップという、それぞれの科目でどういうコンピテンシー を伸ばすのかという星取表のようなものを作っているのですね。昨年、学科でそれを作る会議に出て いたのですが、適当に聞き流してしまいました。ところが、今学期が始まるときに、じゃあ、やるぞ とシラバスを書こうと思ったら、ぜんぜん自分のイメージとは違うことが目標としてそのカリキュラ ムマップに書いてありまして、いきなり最初の授業から、カリキュラムマップにはこういうことが書 いてありますが、今学期の授業は違うことになりますと、学生に対して謝らざるを得なかったという ことがありました。 その点で、大学や学部、学科全体で、この力を伸ばしていくと初めから決めてしまうと、結構、大 変なことになってくるのかなと思います。ついわれわれは、全体をうまく設定することの方に意識が いってしまうのですけれども、取りあえずは、現場はどのような力を持っているのかを見て、それぞ れの先生が何を目標に授業を行うのか、ある程度、自由にやらせていくことも必要なのではないかな と思います。 長くなりますが、もう一つだけ。昨年の授業をおこなう中で一番苦労したこととして、FD なのです けれども、意見を刷り合わせること以上に、時間とお金を作りだすことに苦労しました。特にキャリ ア科目は担当者がみな、非常勤なのですね。その先生たちに集まってもらい、説明し、理解するため には、その場に給与を発生させなければならないのです。これについては部署間の刷り合わせができ ていなくて、教務部門はそのような業務にお金は出せないというのです。非常勤は一コマ幾らで契約 していますので、そこのところをどうクリアするのかが課題です。たまたま昨年は経済産業省からの 委託ということでお金がありましたが、これが構造的になってくると、学内の報酬の制度もいじらな ければいけなくなってきます。これは技術的な問題ですが、結構、大きなことでした。 富樫 3 年間やらせていただきましたが、その中で一番、大変だったのは、学内への普及と正確な学 生ごとの評価、それから最後は、グランプリへの参加でした。普及については導入しやすい授業もあ ればそうでないものもあります。演習系とか実験のようなものには入れやすいと思うのですけれども、 教養科目で、100 人、200 人を対象にして、しっかり知識も入れていくもの、例えばマクロ経済とか 198 金融論などがそうですが、そこではある程度、基礎知識を習得してもらわないといけないわけですね。 その中でどれぐらい社会人基礎力を入れられるのか。 それからガチガチの工業系、技術系の科目では、最低限、動かすために必要なことをやらないとい けないわけですけれども、そこでもグループワークやプレゼンに時間がなかなか割けないということ があると思います。 それから 2007 年に始めた時は、結構、先生方が参加されました。何を勘違いしたのか、これに参 加すると研究費がもらえると思ったようです。しかし研究費は出なくて、評価などで結構やらなけれ ばいけないということが分かって、やめて言った方が多くいました。その意味で普及が大変でした。 また評価についてもいろいろとコストがかかっています。 最後に、モデル校だから、グランプリに出ますよね、というささやきがあって、分かりましたとい うことで、我こそはという学生さんをいかに集めて、東京に連れて行くか。これが大変でした。幸い、 今年は仙台で行いますので、ここにおられる大学の皆さんは、ぜひぜひ、グランプリに参加してくだ さい。 川嶋 いろいろと成功体験とご苦労をお話いただきました。平成 18 年度から検討を始めまして、全 国のたくさんの学生や教員の方々が参加して、こうした『手引き』を作成するところまで来ました。 しかしここが到達点ではなくて、さらに全国の大学で、学生を社会に送り出すという認識のもとで、 取り組んでいくことが重要だと思います。私の考えでは歴史学でもできると思いますので、ぜひそう したことを含めて、大学間などで連携し、引き続きこれに取り組んでいただきたいと思います。これ でパネルディスカッションを終わります。 199 1-4.参加者アンケート結果 1-4-1.アンケート結果の集計 各会場の入場者の内訳、およびアンケートの回収数を下表に示す。 ■図表 各会場の入場者内訳とアンケート回収数 高校・ 大学関係者 専門学校 企業関係者 その他 関係者 会場 会場 計(申込者数) アンケート アンケート 回答件数 回収率 北海道 44 2 13 1 60(58) 42 70.0% 東北 70 13 33 0 116(142) 78 67.2% 関東 78 2 149 0 229(302) 136 59.4% 中部 91 6 68 1 166(206) 130 78.3% 近畿 69 3 107 1 180(235) 118 65.6% 中・四国 44 0 27 1 72(81) 58 80.6% 九州・沖縄 66 2 32 1 101(112) 75 74.3% 462 28 429 5 924(1136) 637 68.9% 件数 各会場とも半数以上、全体で7割近い参加者からの回答が得られた。 以下に、全会場の共通設問についての回答の集計を掲載する。なお、各会場のアンケート結果につい ては、別紙資料集の「会場別アンケート集計結果」に掲載する。 1.参加者の所属 所属は、企業(人事)が 28.6%と最も多く、次いで大学職員の 27.0%が多い。大きく見ると学校・ 教育機関関係(1.大学教員/専門科目担当~7.専門学校教員)が 51.6%、企業・法人・その他(8.企 業(人事)~11.その他)が 48.4%と、ほぼ半々となっている。会場別に見ると、東京・大阪という 大都市圏の会場は企業関係者が 7 割近くを占め、名古屋がほぼ同数。札幌、広島、福岡では学校・ 教育機関関係者が過半数となり、大都市近郊では企業の、地方では大学等教育関係者の関心が高い ことがうかがわれた。 ■図表 参加者の所属 10. 法人 3.1% 11. その他 6.0% 9. 企業(人事以 外) 10.7% 1.大学教員/専 門科目担当 13.5% 2.大学教員/教 養・共通教育科目 担当 6.8% 3.短大教員 0.9% 8. 企業(人事) 28.6% 7.専門学校教員 0.5% 4.大学職員 27.0% 6.小中学校教員 0.2% 200 5.高校教員 2.8% 2.参加の目的 セミナー参加の目的について、所属別に訊いた。 学校・教育機関関係では、「『社会人基礎力』を知る」が 55.6%で最も多い。次いで、「教育・カリ キュラム改革に生かす」49.8%、「大学・学校の改革の検討材料とする」40.1%と続く。 ■図表 参加の目的【学校・教育機関関係】(n=329、複数回答) 0% 10% 20% 30% 1.自分自身の教育(授業)に生かす 40% 50% 60% 35.0% 2.FD企画に生かす 23.1% 3.教育・カリキュラム改革に生かす 49.8% 4.教員評価に生かす 5.2% 5.「社会人基礎力」を知る 55.6% 6.大学・学校の改革の検討材料とする 40.1% 7.進路指導の参考にする 36.2% 8.その他 4.6% 企業・法人・その他では、「社員の育成に生かす」が 60.7%と最も多く、 「『社会人基礎力』を知る」 51.0%、「社内の研修企画の参考とする」48.7%と続く。 ■図表 参加の目的【企業・法人・その他】(n=308、複数回答) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 70% 32.5% 1.採用に生かす 60.7% 2.社員の育成に生かす 48.7% 3.社内の研修企画の参考とする 9.1% 4.商品企画や会議等に生かす 51.0% 5.「社会人基礎力」を知る 33.4% 6.大学の最近の取り組みを知る 7.その他 60% 4.2% 大学等教育機関が、まず社会人基礎力とは何かを知ることを目的としているのに対して、企業側は 育成や研修に活かそうとする意識が高いことが見てとれる。 201 3.社会人基礎力の認知度 セミナーへ参加する前から社会人基礎力について知っていたかについては、 「1.内容まで詳しく知っ ていた」と「2.考え方について知っていた」を合わせると 56.8% となり、回答全体の過半数となった。 ■図表 社会人基礎力の認知度(全体) 社会人基礎力認知度 5.無回答 1.6% 1.内容まで詳しく知っ ていた 22.1% 4.全く知らなかった 16.3% 3.名前は聞いたことが あった 25.3% 2.考え方について知っ ていた 34.7% 所属別に見ると、学校・教育機関関係では「1.内容まで詳しく知っていた」と「2.考え方について 知っていた」を合わせると 67.5%となり、企業・法人・その他の 45.5% を上回り、より社会人基礎力 の認知度が高いと推測される。 「考え方について知っていた」までの割合は、いずれの地区も過半数を 占め、地域による差はほとんどなかった。 ■図表 社会人基礎力の認知度(所属別) 社会人基礎力認知度 0% 全体 学校・教育機関関係 企業・法人・その他 20% 40% 22.1% 34.7% 28.3% 15.6% 1.内容まで詳しく知っていた 4.全く知らなかった 60% 25.3% 39.2% 29.9% 80% 100% 16.3% 21.3% 29.5% 2.考え方について知っていた 5.無回答 1.6% 10.6%0.6% 22.4% 2.6% 3.名前は聞いたことがあった 上記 2 の参加目的と合わせてみると、企業の方が認知度はより低くても、教育や研修に活用しよ うという意識は高いことがうかがわれ、興味深い。 202 4.社会人基礎力を教育や研修・採用に導入する予定について 社会人基礎力の導入予定について訊いた。「導入する予定はない」はいずれも 10%前後だが、「本日 の研修を受けて導入したいと思った」は3割を超えている。特に企業の方が導入したいという回答が 多い。 ■図表 「社会人基礎力」を教育や研修・採用に導入する予定について※複数回答 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 23.2% 全体 38.3% 3.本日の研修を受けて、導入したいと思った 8.8% 4.導入する予定はない 11.3% 学校・教育機関関係 無回答 1.既に導入している 27.4% 2.導入を検討中である 27.1% 34.3% 3.本日の研修を受けて、導入したいと思った 5.8% 無回答 10.3% 17.2% 1.既に導入している 企業・法人・その他 50.0% 22.4% 1.既に導入している 2.導入を検討中である 4.導入する予定はない 40.0% 19.2% 2.導入を検討中である 42.5% 3.本日の研修を受けて、導入したいと思った 4.導入する予定はない 12.0% 無回答 12.3% 以下に、各回答に付記された自由記述をまとめた(同様の内容は 1 つにまとめてある)。 ■「既に導入している」と回答した人の自由記述より 具体的な内容 技術者倫理 モデルプログラムに採用されている。 一年次キャリア形成論 大学院専門講義として 4月からキャリア形成学部を立ち上げている。 担当中のキャリア教育科目 留学生向け就職支援の中で導入中「日本組織なじみ塾」 英語のReading、Writingクラス プロジェクト型学生事業(1年・2年共同で国際イベントの実施) 卒業研究 教員、教育実習生の指導・育成、高校生等への指導・助言 学校運営方針、プログレスノート(生徒自己評価)、シラバス、教員 研修-生徒向け講演会) (小)6年生の職場体験後に“働く人に必要なこと”を考えさせる授 業で、最後に社会人基礎力を資料として提示している。 新入社員導入研修等に取り入れています。 採用の見極め要件の1つ・新人研修にてワークショップ実施 ロジカルシンキング、問題解決… 新入社員教育時に「人間力」として説明している。 内定者教育の指標 内定懇談会にてグループワークを行いながら社会人基礎力を学ぶ 高校既卒者向けの就業支援事業における就業前訓練において。 若手社員に向け社会人基礎力セミナー、学生アルバイトスタッフ育 成、インターンシップ生の研修 203 所属 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学職員 大学職員 高校教員 高校教員 小中学校教員 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事以外) その他 その他 ■「導入を検討中である」と回答した人の自由記述より 具体的な内容 学部FD、個人の講義、ゼミ等に 振り返り、評価のしくみ キャリアビジョンの授業の中で。 臨床実習、FD キャリア教育、新シラバスの成績評価指標 所属 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学入試時から1年かけて“まなび学”という科目で育成しようと考 大学教員/教養・共通教育 えている。 科目担当 文科省の大学生の就職力育成支援事業として…内定した場合 大学職員 各ゼミ単位の中で、検討してもらう参考としたい 大学職員 学生支援セミナー等への導入 大学職員 学士力に併せて、学生に付加、強化したい。 大学職員 カリキュラム改革 大学職員 職員の指導、学生の情報教育等 大学職員 各職場における求める職員像の作成 大学職員 評価基準等 企業(人事) 採用から入社5年目くらいまでの育成方針にできる 企業(人事) 新入社員研修、内定者教育 企業(人事) 内定者のセルフチェック・教育の指針 企業(人事) 研修の評価、成長の度合いの確認、採用者の質の平均化 企業(人事) 管理職への教育モデルの参考。 企業(人事) どの能力を伸ばすかという軸をつくるため 企業(人事) 内定時期から入社1・2年目の教育として検討中 企業(人事) ビジネスゲーム内で実施 企業(人事以外) 新人研修 企業(人事以外) 主体性強化のプログラム導入 企業(人事以外) 次世代リーダーの育成 企業(人事以外) インターン受入企業とのやり取りでの説明 法人 ■「今回の研修を受けて導入したいと思った」と回答した人の自由記述より 具体的な内容・理由 初年次の演習や、研究室の学生の指導などに生かせると感じまし キーワードの意識化、評価方法への導入 シラバスや成績評価の基準などの設計 教育評価として活用できるかもしれない。 教務委員会時に挙げて検討してもらうつもりです。 また自分の講義に導入できないか考えてみたいと思います。 新人教育、教育実習事前指導 来年度、カリキュラム化されるので、それの柱に。 低回生からのキャリア教育プログラムにおいて 就職活動中の学生の状況把握 まず、教員が勉強したい。 学科目標やカリキュラムに活用していきたい。 総合的な学習 キャリア教育とのリンク 採用基準、入社前後の教育・研修への活用 特に新入社員教育の強化 採用はもとより、受け入れ側の教育にも取り入れられる 内部研修で導入したい。 新人研修、2年目フォローアップ研修等に利用 階層別研修(新卒フォロー3年目研修)の参考になった 技術者等の評価処理検討 未定、これから考えます。 社員のセルフチェック、採用方針 ATTを活用することで企業力もupできると思った。 対人スキルの低下が多いので、その強化を図るためのグループ ワークの活用 内定者→入社時に大学と同じ言語として 但し社会人基礎力の考え方を基に当社の基礎力を定義し人事制 度・考課・教育・研修・採用を連携していきたい。 204 所属 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学教員/教養・共通教育 科目担当 大学職員 大学職員 大学職員 大学職員 短大教員 短大教員 高校教員 高校教員 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 具体的な内容・理由 実施済でもありそうだが、一通り見直してみたい。 OJT・集合研修 指導方法、学生採用時の質問方法などの改善 人事考課・表彰制度において社員に求める資質やスキルの参考 評価項目への取り入れ プロジェクトマネジメント研修 所属 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 法人 法人 ■「導入する予定はない」と回答した人の自由記述より 具体的な理由 問題があるのは分かるが、今の「社会人~」のアプローチが正しい とも思えない。 何をもって「社会人基礎力」とするかがあるが、簡単なグループ学 習と振り返りシートは導入ズミ(自分の授業)。これ以上は自分の 専門科目には無理。 部分的には導入されている。計画的に導入する気は大学執行部 にはないようだ。 財政的理由。 消極的なのではなく、ニュートラルな状態。知識もない状態だった 為、予定がないということです。 提言できる立場にない。また、学生教育において専門の委員会を 設け、議論を行っている。既に社会人基礎能力に似た指標・授業 がある。 持ち帰り報告検討します。 大学の教育目的にそった展開を考えており、別な指標による このシステムを構築していく時間的余裕がない 職種として権限がないので。 もう少し理解してから 教育、研修の効果は少ないと考える どのようにとりくんでよいか不明。 内容につき、本日理解することができたが、何らかの形で役立てる 仕組みを検討したい。 単に社会人基礎力のモデルを真似るだけでは不充分で、各企業 や大学が、それぞれの強みを活かした育成計画と体系を構築しな ければいけないと考えます。それゆえ、直近で安易な導入は避け るべきだと思いました。 参考にさせて頂くがそのものを導入することは考えていない。 (企業人事担当として)既に別のモノサシ(一部類似している)で、 目標設定、評価の制度がある。 当社独自の採用基準、育成指標が確立されているため 評価方法、基準、既存社員との評価統一方法が不確定の為 指標は違えど、「自ら考え動く力」などを採用時に見抜けるよう、 色々検討しているため 社会人基礎力の指標ではないが同様の考え方は、教育研修の場 で、既に導入しており、参考にしていきたい。 今後の参考にしたい。 内容的には導入しようと思うが指標としては導入は? 経営層を理解させるのに時間がかかる 既にそのように実行しているつもり 企業で展開できない(応用)事例であった。 採用担当ではないので。 概当分野ではないため。 所属 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学教員/専門科目担当 大学職員 大学職員 大学職員 大学職員 高校教員 高校教員 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) 企業(人事以外) その他 「既に導入している」 「導入を検討中である」と回答した人の記述を見ると、大学の授業ではキャリ ア教育やプロジェクト型の授業が多かった。また、 「導入を検討中である」「今回の研修を受けて導入 したいと思った」では、具体的な授業内容の他に、シラバスやカリキュラム改革、育成目標や評価指 標といった、より大きな目的のために活用したいという意見が多くなっている。 一方、企業は「既に導入している」 「導入を検討中である」 「今回の研修を受けて導入したいと思った」 のいずれにおいても採用や若手社員の研修に活用している(したい)という回答が多いが、 「導入を検討 中である」では「次世代リーダーの育成」 「主体性強化のプログラム導入」等、社会人基礎力の可能性 205 をより幅広くとらえている回答が目に付いた。 逆に、 「導入する予定はない」の回答では、 「既に独自の指標を持っている」 「言葉は違うが、同じよ うなことを行っている」という立場からの意見がある一方で、 「(学生に)問題があるのは分かるが、社 会人基礎力のアプローチが正しいとも思えない」 「教育・研修の効果は少ないと思う」といった、内容 を疑問視する意見もあった。さらに、 「時間的余裕がない」 「予算が取れない」 「上層部の理解が得られ ない」等の構造的な問題がネックになっている場合があることも示された。 5.各講演プログラムの感想 全7会場で実施した「①リファレンスブックの紹介」「②社会人基礎力紹介DVD」「③経済産業省 の政策説明」 、5会場で実施した「④パネルディスカッション」 、2会場で実施した「⑤ワークショッ プ」(※)について、感想を訊いた。 ■図表 各講演プログラムの感想(全体) 0% 10% 30% 40% 20.3% ①リファレンスブックの紹介 60% 70% 80% 17.7% 38.8% 3.5%1.4% 13.7% 59.8% ⑤ワークショップ 100% 3.6%0.8% 3.1% 20.1% 38.6% 17.7% 90% 21.7% 54.5% 10.8% ④パネルディスカッション 50% 50.5% 18.2% ②社会人基礎力紹介DVD ③経済産業省の政策説明 20% 3.5% 0.6% 3.1% 27.9% 4.8%0.6% 24.4% 18.8% 3.4%1.7% 0.9% 15.4% 大変参考になる 参考になる どちらともいえない あまり参考にならない 参考にならない 無記入 ※パネルディスカッション実施地区:東北、関東、中部、近畿、中国・四国 ※ワークショップ実施地区:北海道、九州・沖縄 ■図表 各講演プログラムの感想 【学校・教育機関関係】(n=329、複数回答) 学校・教育機関関係 0% 10% ①リファレンスブックの紹介 23.1% ②社会人基礎力紹介DVD 22.2% ③経済産業省の政策説明 ④パネルディスカッション 20% 30% 40% 50% 60% 80% 53.2% 40.4% 16.5% ⑤ワークショップ 17.7% 60.0% 参考になる 2.1% 1.8% どちらともいえない あまり参考にならない 206 4.3%0.9% 3.3% 29.5% 2.4% 0.8% 15.0% 100% 4.6%0.9% 2.4% 16.7% 15.8% 36.9% 90% 15.8% 52.6% 10.3% 大変参考になる 70% 25.7% 3.8%2.5% 1.3% 参考にならない 無記入 17.5% ■図表 各講演プログラムの感想 【企業・法人・その他】(n=308、複数回答) 企業・法人・その他 0% ①リファレンスブックの紹介 ②社会人基礎力紹介DVD ③経済産業省の政策説明 ④パネルディスカッション 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 10.0% 40.6% 18.8% 4.9%1.0% 19.8% 36.7% 11.4% 59.5% ⑤ワークショップ 大変参考になる 参考になる どちらともいえない あまり参考にならない 100% 3.9% 0.6% 2.6% 2.9% 0.3% 2.6% 23.7% 56.5% 14.0% 90% 27.9% 47.7% 17.2% 80% 26.3% 7.0% 0.4% 23.2% 27.0% 0.0% 10.8% 2.7% 参考にならない 無記入 学校・教育機関、企業のいずれもワークショップに対する満足度が高い(大変参考になる+参考にな る)。また、企業ではワークショップに次いで社会人化基礎力紹介 DVD の満足度が高かったことから見 ると、社会人基礎力の実践を伝えるためには、まさに「百聞は一見に如かず」で、抽象的な説明より も具体的な活動場面を目の当たりにしたり、体験したりすることが有効であることがわかる。会場毎 のプログラムの感想については、別紙資料を参照されたい。 6.本事例研究会セミナーへの意見・感想等 アンケートの自由記述を、①セミナーを受講して参考になった点②内容、運営に関して改善すべき 点③講演、ワークショップ、パネルディスカッション等の中で特に印象に残ったもの④社会人基礎力 全体について⑤その他 の 5 つの観点から特徴的なものを以下にまとめる。 ①セミナーを受講して参考になった点 会場 今やっている授業のやり方を工夫することで社会人基礎力を向上させることが出来るということ。 札幌 社会人基礎力を育成するための様々なインプットを紹介していただいた点において参考になりました。た だ、その結果、どのような成果が得られたのか、プログラムの前後においてどのような変化があったのかが 札幌 紹介されていると、なお良いものになったのではないかと思います。 社会人基礎能力は教職員が一体となって力を合わせていくことが大切だと思います。 札幌 まずは意識することから始めたいと思います。 札幌 ワークショップは実践でしたので、セミナーであるという事を忘れて取り組んでおりました。目新しい手法で はないものの、教育においてのあるべき姿だと感じました。 実質的な学習成果を評価する場合の社会人基礎力という観点も重要であると認識させられた。 苦労されている点がとても参考になりました。学生へのフォローの様子もより詳しくお聞きしたかったです。 札幌 仙台 仙台 FD活動のワークショップなどで取り上げたいと考えた。(いかに共通認識を持たせるかetc) 普通授業で社会人基礎力を高める取り組みを初めて知った。 大学教員/専門科 目担当 大学職員 大学職員 企業(人事) 大学教員/専門科 目担当 大学教員/教養・共 通教育科目担当 仙台 大学教員/教養・共 通教育科目担当 仙台 大学教員/教養・共 通教育科目担当 社会人基礎力の考え方、内容といった大枠と、先進的な取組事例の両者を同時に学ぶことができ、大変参 仙台 考になりました。 仙台 各大学での社会人基礎力を取り入れた成績評価の取組事例を知ることができた点は参考になった。 当大学では「社会人基礎力」が「就職に向けた」という認識が大学内にある。また、大学全体でまだまだ教 員が理解していないと感じた。今回、各先生の講演内容から、評価基準を明確にすることの重要性はわか 仙台 るが、教員をどこまで納得させられるかむずかしい。 評価事例などが具体的に説明された点。 所属名称 大学教員/専門科 目担当 大学教員/教養・共 通教育科目担当 大学職員 大学職員 仙台 大学職員 学生の「社会における必要な能力」の認識と企業の認識とのマイナスマッチング→主体性・粘り強さとコミュ 仙台 ニケーション力など、その違いの大きさに驚き、高校時代でも、考えていきたい内容であると思った。 高校教員 大学教育で社会人基礎力を取り入れなければならない背景が理解できた。社会人基礎力の指導方法、評 価方法が参考になった。高校の教育現場も似たような基礎力が必要と考えていますので、取り入れられる 仙台 ところを検討していきたい。 高校教員 207 会場 東京 所属名称 大学職員 ディスカッションでは、教育をする時期、どのように行うかという内容が参考になりました。 東京 ・事例紹介・評価される点が学生が社会人になったところで変わることではない、という点は改めて考えるこ 東京 とができました。 大学職員 ・各大学の取組内容・HPなどで見るのと実際に話を聞くのでは、参考度合いが違う 社会人基礎力というものを、全体的に把握することができた。また、成績評価、シラバス、カリキュラムマッ プといった手法を知ることができた。 東京 学校教育と社会・企業との間で共通言語を持つ事の重要性を理解できた。今後、更に普及して互いに意見 東京 交換をする基盤として発展していってほしい(そう取り組みたい) 会社内でも新入社員、若手社員に対する指導の中で、叱ることや考えを掘り下げるために問い詰めること をしなくなってきたような気がする。北岡先生の講演の中であった、学生を追い込んで徹底的に考え抜く環 東京 境に置くということの大切さを改めて感じた。今後の指導、研修の場でも、そのような要素を意識的にとり入 れたい。 一方的な講義型から、グループワーク、ディスカッションを多く取り入れた教育になることを期待します。従 来一方通行の教育を受けていた学生に対して、グループワークなどの採用手法が行われていることに違和 東京 感を持っておりましたので、上記に期待します。 大学と企業の考え方に大きな差があるとあらためて感じました。知力ではなく考える力でもなく、社会で働く 東京 覚悟を育てていただきたいと感じました。 大学での取り組みが分かり、参考になりました。大学の先生にしかできないこと、専門知識の教育など、ま た企業にしかできないこと、仕事の進め方や社会人としての意識など、があると思います。無理をしてまで、 大学の先生に学生に対するキャリア指導はあまり必要ではないのかなと感じます。モチはモチ屋に任せる 東京 …その意識を共有するだけでもちがうのかなと思いました。 大学職員 大学職員 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 大学における取り組みと企業における取り組みが何らかの形でつながりがあることを知りました。今後採用 や初動教育の場に活かせると思います。 東京 企業(人事) コーチング的要素を入れることが必須な時代となり、まずは教える側が、変わらないといけない。 企業(人事) 東京 経済産業省と、大学の熱心な取組みを伺い、日本の若い人材に対する真剣さを感じました。単なる実験的 東京 な取組みでなく、将来の日本経済・産業界に必要不可欠な考え方だと感じました。 企業(人事) 大学でも取組んでいるのを知らなかったので、参考になった。大学でのプログラムは、企業にも応用できる 東京 と感じた。採用の参考にもなりそう。 企業(人事) インターンシップの課題(企業側、大学側)をどう解決していくか、整理していくヒントを得ました。 企業(人事) 東京 それぞれの支援者が何を大事にしているのかが伝わってきて感動した。現場でコアになる人が誰なのかは 重要だと思った。しかし多大の例を「そのまま」導入することはまったくの不可能であることを再認識した。 名古屋 大学職員 ・評価、フィードバック方法で、肯定的に行うことは、人事考課的にも使えると思う。・目標管理時の目標設 定や、評価時にも社会人基礎力項目は利用できる。(特に新入社員~若手社員、初給管理者レベル) 名古屋 企業(人事) 本会場のテーマである経験と振り返りの重要性は理解できたが、他会場のテーマである“どう育成するか” 名古屋 についての情報も知りたい。大学の工夫がよく伝わりました。企業人の方が基礎力が不足しています。 企業(人事) コーディネーターの重要性を再認識できた。 大阪 大学職員 キャリア教育の軸を自己理解から社会人基礎力へシフトさせたいと感じた 大阪 大学職員 産学連携による教育の必要性。・社内での社員教育(特に若年層)も、今まで通り行っていたのではダメだ 大阪 と再認識しました。 近年の学生が、対人スキルを苦手としていることを再認識できたので、強化すべきポイントが明確になっ た。 地域の企業との協力により、学生の社会人基礎力を育てることができることが参考となりました。 社会の求める学生像が明確になった。 大阪 広島 広島 企業(人事) 企業(人事) 大学教員/専門科 目担当 大学教員/専門科 目担当 産-学におけるメリット-デメリットについて、“助け”-“助けられ”の機会を多くつくる(これが働く、仕事におけ る基本で大事なことだと再確認させられた。)─関係性の構築。 広島 その他 3つの柱の導入順(自己肯定を高めるところから等)が参考になりました。大学等での長期での教育プログ 広島 ラムに比べて、公共職業訓練に導入するためのカリキュラム構築に参考にさせていただきます その他 企業側のメリットを生の声で聞けた。 広島 グループワークが役に立った。 福岡 その他 大学教員/教養・共 通教育科目担当 「場」を提供してあげるという点が共感をもてた。講師の方の熱意を感じ、パワーをもらった感じがしました。 やはり指導者の質・理念がポイントだと思いました。 福岡 企業(人事) 大学が「社会人基礎力」にこんなに力を入れ始めている、入れていることに驚愕した。非常にすばらしいこと 福岡 だと思いました。 企業(人事) 概要に関する説明よりも、各大学の実践やワークショップ等具体的な事例の紹介に好意的なコメン トが集まった。社会人基礎力の重要性は既に周知されているので、今後はそれをどのように実際の指 導の場面に取り入れるかを示すことが求められていることがわかる。 208 ②内容、運営に関して改善すべき点 会場 札幌 所属名称 大学職員 東京 大学職員 資料がカラーならありがたいが… 東京 高校教員 会場が狭かった。もっと広い会場を確保してほしい。 東京 大学職員 メモしたい内容が多かったので、机があると有難かった。立場の大分異なる参加者に同様の内容のセミ ナーなので、実務に生かせない講義も多くあった。 東京 大学職員 参考になる部分も多々ありました。採用・教育の中で活かせればと考えております。参加者同士が意見交 換できる場があると、更に良かったと思います。 東京 企業(人事) 4時間程度では、時間不足と感じました。 企業側の考える教育方法も、さらに盛り込んで欲しい。 社会人基礎力を大学教育にとり入れていく有効性は重々確認できた。今日は、さらに具体的に実施していく 東京 時の苦労した時と、それを乗り越えた方法をもっと聞きたかった。 大学職員 ○参加者同士がディスカッションできる時間があると良いと思います。(企業同士だけでなく企業と学校等良 い意見交換が出きると思います。)○内容とは関係ありませんが、ビデオカメラマンへ指示している方の声 東京 が大きく、耳障りで、パネルディスカッション等の内容が聞きとりづらくイライラしました。(1回でなく数回あり ました) 企業(人事) パネルディスカッションだけではなく、一般企業と大学との交流の場があれば、おもしろいのではと思いま す。 企業(人事) 東京 社会人基礎力を基本としている取り組みを行っている大学の学生を採用して今までとの違いがもっと知りた 大阪 いと思います。 企業(人事) 各開催地区ですべてのテーマのセミナーを実施してほしい。関心のあるテーマでも北海道や九州まで行くこ 大阪 とは困難です。 大学教員/教養・共 通教育科目担当 内容が4年制大学や大学院にかたよっている気がしました。女性の一般職と短期大学との関連から社会人 大阪 基礎力をどのように身につけるかというレベルの話が聞きたいです。 短大教員 他会場で実施される内容がすべて異なっており、全国をまわらないと本年度展開される社会人基礎力の事 大阪 例が聞けない方式は、参加者への金銭的・時間的負担が大きすぎる。 企業(人事) 小・中・高での取組み事例についても聞く機会があればと思いました。 広島 その他 具体例を複数うかがうことができとても参考になりました。授業を体験する時間があったこと参考になりまし 福岡 た。他の参加者の方と交流する時間があるともっとよくなると思う。 企業(人事) 全て参考になった。休みを1回増やして、午前中は1コマずらしてもらうくらいのスピード、時間配分ができれ ばありがたい。ついていける。 福岡 大学職員 企業側からの視点(学生に求める就職力)の報告があってよかったと思う。 福岡 大学職員 愛媛から参りました。愛媛では、基礎力の概念が高校にも企業にも少しずつ浸透してきています。たくさん の人に来て頂きたいので四国地区での開催を希望します。 福岡 法人 紹介されるティームティーチング、リーダーシップのとり方、問題解決は、事例etc.は「日本という文化を共有 する学生・教職員」を対象とされていたように感じるが、グローバル化が進む企業文化の中で、異文化のメ ンバーがチームを構成する時の「個」のあり方、チームへの参加の仕方、リーダーシップの発揮の仕方など 福岡 の事例研究を知りたい。全国で10~15%いるかと思われる発達障害がある学生に対しての視点は先生方 のプレゼンテーションにはなかったことが残念です。 大学教員/専門科 目担当 各講演の資料(PPT)は事前にダウンロードして目を通すことができるようにするのが良いのでは。当日に長 福岡 時間聞かされるのはつらいです。 大学教員/教養・共 通教育科目担当 各会場 4 時間のプログラムであったが、「時間が長すぎた」という感想よりももう少し時間を取っ て余裕を持ってほしい、質問や参加者同士の討論等の時間を持ってほしい、という意見が多かった。 また、個々の講演の内容が盛りだくさんであったため、プログラムの時間がずれ込むことが多く、そ れに対するクレームも目立った。 企業の参加者の比率が教育関係者よりも高かった会場では、もっと企業向けの内容を希望するコメ ントが目立ったが、一方で、大学の具体的な取り組みや努力の様子が聞けてよかった、という感想も 多く見られた。企業の参加者は、社会人基礎力を若手社員の育成や新卒採用に導入したいという意識 が強かったため(「4.社会人基礎力を教育や研修・採用に導入する予定について」 参照)、より即効 的な内容を求める意識が強かったことの現われと見られる。今回は、主たる目的が社会人基礎力の普 及にあったので、大学・企業双方の取り組みを知らせるために、大学に力点を置いて多様なケースを 見せてきたが、今後は対象や目的をより絞った内容で行うことが必要になろう。 209 ③講演、ワークショップ、パネルディスカッション等の中で特に印象に残ったもの 会場 濱田さんのお話の中での「一気に全学的に取り組むことは困難。少数でも有志からはじめる」という言葉に 勇気をもらいました。また、今村先生のワークショップで「学生」になったことで、前に立つ指導者に必要な 札幌 「要素」が少しわかったような気がしました。 所属名称 大学職員 キャリアバンク株式会社の三上さんのお話は、「身近なところ」から「社会人基礎力」をあげていくという考え 札幌 方は、改めて、自分自身を見つめ直す時間でした。 その他 東海大学・内藤先生のWEB上での育成評価のし方がすごい。高校の通知表もこういう形になっていくのだろ うと思いました。また、「ポートフォリオは学生の次のステップへのモティベーションになれば、それで十分」と 仙台 いう割り切りがなかなか現実的で良い。 高校教員 諏訪教授のとりまとめが上手く、感心しました。 東京 大学職員 パネルディスカッションの内容がよかった 東京 大学職員 内藤先生のお話は、大学における「社会人基礎力の育成」の具体例として、とてもわかりやすかった。企業 東京 での導入について、参考(ヒント)になるものであった。 企業(人事) 富士通さんのATTチャレンジ慨要について。内定時期から取組みをされていることにおどろきましたが内定 辞退抑止にもあるいい取組みと感じた。内定時に企業側から施策を出していいのかと迷っていたので(時 東京 間を奪ってしまわないか)とても参考になりました! 企業(人事) 企業をもっと利用されたらいかがでしょうか。例えば阪大で行われている様なCareer Design講座を積極的 に開設されることを望みます。(実は、私も国立大学も含めいくつかの大学で講師を務めております。) 企業(人事) 東京 諏訪先生の言葉にあった「指導者ではなく支援者になる!」は、企業の教育担当者にも通じるものだと感じ 東京 た。 パネルディスカッションはリアルなご意見が伺えてよかったです。企業が悩む、メンターについての意見交 東京 換が参考になりました。 企業(人事) 企業(人事以外) 愛知学泉大学の運営実習の授業 社会と結びついた学習プログラムを指向するも、自分の大学では学生 大学教員/専門科 の能力、教員の能力から出来なかったが、テーマ、目的、評価、学生への働きかけの仕方など非常に参考 名古屋 目担当 になった。 大阪大学作成の66の評価項目は大変役に立ちそう。活用させていただきたい。◎社会人基礎力に「論理 大学教員/専門科 的思考力」を加えるべきであると思う。米・欧に比べて、日本人はこの点で明らかに平均的に劣る。 名古屋 目担当 アドバイスの仕方(阪大)「ほめる」ことがハラスメント抑止(愛知学泉大)は、このプログラムの実効性を学 内にての理解促進に活かせると思います。ありがとうございました。 名古屋 大学教員/専門科 目担当 根岸先生の説明でありました、他者評価コメントの留意点にあった他者からの承認が「自信」を育む/人間 は肯定的に物事を受け止める習性があるというフレーズを、評価説明の際に活用させていただきたいと思 名古屋 企業(人事以外) います。 パナソニック電工の菰田氏の話が刺激的だった。大学と企業の物事に対する考え方のスピード感の違いを 感じた。のんびりと働いている大学教員、職員が多い中で、学ぶ学生に、卒業後すぐの就労に耐えられる 大阪 大学職員 訳がない。Internship-on-campusをすぐにでも導入すべき。企業と大学の連携をより密にすべきだと思う。 大学教員もフットワークが必要。 京産大の中川先生からの『インターンシップ制は日本ではなじみにくい。それより“社会人基礎力”の育成プ ログラムを推進するほうが社会的に求められているのではないか』との話しは参考になった。また流科大 大阪 頭師先生の「若者の多くは言動・行動をスムーズに作動できないカベを持っている。」との指摘も、なるほど と思いました。 実際コーオプ参加企業の担当者の方々、流通大学・パナソニックの講師は大変参考になりました。学生ら 大阪 の「成果」と心の部分での「満足感」がもっとも一番の成果と思います。 大学職員 企業(人事以外) 広経大職員の方の発表が最も理解しやすい。その他の大学の先生の発表は、研究発表色が強く、一般の 広島 企業人としては、理解に苦しむ点が多かったようだ。 企業(人事以外) これまで学生の社会体験というと、インターンシップなど、「社会の一部を知る(知ったつもりになる)」ものが 多い印象があった。しかし、日本酒の開発や豊田の事例を聞いて、むしろ学生だからできるものもあるの 広島 だ、という点が発見できたのが良かった。 その他 諏訪先生のワークショップは参考になりました。本学でも実践してみようと思います。 京都産業大学後藤教授の講話は本当に現在の大学学生の実態をよく表現されており、大変参考になっ た。 福岡 大学教員/教養・共 通教育科目担当 福岡 大学職員 大学・企業に関係なく優れた実践事例に「参考になった」「やってみたい」という感想が集まった。 今回の講演やパネルディスカッションでは、うまくいった事例だけでなく、苦労した点や最近の学生 の実態等も踏まえて語っていただくようにお願いしてあったが、それがリアルな印象を与えたことが 見て取れる。 210 ④社会人基礎力全体について 会場 発表では1年、1科目で力がつくようなものだったが、それで良いのだろうか。 仙台 所属 大学教員/専門科 目担当 社会人基礎力と就職力育成と一体で考えています。学生の資質を高める事は大切ですが、教員資質も高 札幌 める事が必要と感じています。教員査定と合わせ報酬査定を取り入れた方が良いと考えています。 大学職員 社会人基礎力というよりも教育基礎力である気もします。 大学職員 札幌 高校の総合的な学習で活用できると思いました。本校でも「進路コンパス」という取り組みにおいて、同じ様 札幌 な考えかたで進めています。 生徒、学生にとって連続性のある働きかけをしたいので文科省のキャリア教育との関係をはっきりわかるよ うに仲よくやって欲しい。 札幌 文部科学省の人も同席してほしいと思います。正直、今までの大学教育が?な部分もあったので、この考 えは出来たのでは?(文科省が厳しいので)出席が厳しくなったりして、「講義に出ること」が目的になってい 札幌 る学生が多い。手段と目的をはき違える学生が多いのが現状です。是非、文科省とわたりをつけて、より良 い日本を作ってほしいです。 文科省の学士力との関連性の整理をしてほしい! 大学関係者のために。 仙台 文科省の仰る「就業力」に、どのようにホンヤクするか考えております。 仙台 これまでの「起業家教育」「キャリア教育」との違いについて知りたいと思いました。学校の授業計画を立て 仙台 る上で、他の教員に説明する際に、その違いについて説明が求められると思います。 高校教員 高校教員 大学職員 大学職員 大学職員 高校教員 企業側の参加者として、是非、取り組みを強化して頂きたいと思います。反面、グループワークが重視され るあまり、1人1人の学生の基礎力が劣後にならないよう、また、「与えすぎ」に陥られないようご留意頂きた 仙台 いと思いました。(「知識を活かす力」よりも、もっと基礎的な部分の力を持った学生さんが増えることを望ん でいます。) この概念を文科省、厚労省と統一したものとして(共通概念、統一見解)として、展開していってほしい。小 学生~大学生まで一貫教育の必要があると思う。これではじめて『共通言語』になる。育成グランプリの費 用対効果は? 1人あたりどれくらい税金かけているの? 経産省のやるべき事? プライオリティは低い 仙台 のでは? 「生きる力」「キャリア教育」などの他の能力観に関する活動との連携をよろしくお願いします。 仙台 「社会人基礎力」という言葉や内容が学生の中でマニュアル化しないような視点も常に持っていないといけ 東京 ないと思っています。 大学職員 我々の学生時代には考えられない内容で正直おどろいた。しかし、実践している例を目の当たりにし、本学 東京 がおくれている事を痛感した。 大学職員 小学校から準備できる形に言葉をかえて、これからも活用させていただきたいと思います。 小中学校教員 東京 ゆとり世代をはじめとする若手世代の変容の中、会社側が、若手の社会人基礎力をないもの/不足してい るものとして、あきらめてしまっているふしがあるのが現実。もう一度見直すいいきっかけとして活用したい。 東京 学生・若者(新卒)に限らず、仕事を進める上で重要な指標だと思います。その学生や若い人達に指示を出 すリーダー・上司にこれらの能力が欠けていることもあり、全ての世代に活用できる能力指標として広めて 東京 頂きたい。 企業の中で、ベテランや管理職の中でも不足している者が多々いる。基礎力は若手だけの問題ではない。 東京 というか、基礎なのだから自然に身につくとないがしろにしてきたのではないか。 大学から始めても遅いと思います。小中高と連携して実施してほしい。(長い年月かかると思います) 企業(人事以外) その他 その他 企業(人事) 企業(人事) 企業(人事) 東京 企業(人事) 内容をまったく知らずに参加したが、現状についてはまったく同意見であり、コミュニケーション能力の不足 東京 などが若い社員に見られる。今日のセミナーを参考に新人研修等に盛り込んでみたい。 企業(人事) ・社会人基礎力を身に付けるためにはもっと早い段階から教育に組み込んだ方が良いのでは?と思った (中学校くらいから)・パネルディスカッションの時間がもう少しあれば良かった。 東京 HP上で、様々な企業と学生のディスカッションが掲載されており、非常に勉強になりました。今年度も開催さ 東京 れるなら、ぜひ更新をお願いします。 企業(人事) 企業(人事以外) キャリア教育の一つとしてであるが力を入れ過ぎ専門教育を忘れてしまう危険性があるので要注意。また、 大学教員/専門科 平成20年12月文科省のキャリア教育として、「学士力」他もあり、その関連性についても検討することを欠く 名古屋 目担当 ことができない。 学士力、就業力とも近い概念で、大学としてどちらで取り組めばよいかとまどいがある。 大学教員/専門科 名古屋 目担当 学生にとっては、社会人基礎力というのは一つの考え方で、経験によって多くは学ぶのだと思う。自己評価 名古屋 大学職員 ということで自分を振り返るのには大変良い。 大学は産業界の為に学生への教授をする場なのだろうか。すべての大学が一つの方向にむいてしまうとし たら、それはそれで大変おそろしくもある。人としての多様性も必要なのではないかと思った。基礎力の育 名古屋 大学職員 成を大学としてどうとらえるか熟考する必要があると感じた。 企業にとって、就職活動を行う学生と採用担当者を結ぶ「共通言語」として広く一般化されることを期待して おります。「愚直に」、「こつこつ」、「耐える」といった視点も企業としては求めていますが、どうも「本人主体」 な内容のみではないかとの思いがあります。企業の求める主体性は、「入社後、学生時代に思い描いた主 体性の限界(なかなか発揮できない)にさしかかった社員へ求めるもの」ではないかと思います(もしくはそ 名古屋 企業(人事) れもある)。本人主体の「主体性」を企業は本当に求めているのでしょうか?「やりたいこと」ばかり高めてい くと、入社ギャップにあうのでは? 就職と結びつけるのではなく、「社会生活が楽しくなる」「毎日の生活が楽しくなる」「明日が待ち遠しい」生き 名古屋 企業(人事) 方をするための基礎力として世の中に定着すればよいと期待しています。 211 会場 企業における教育も重要。即戦力と考えるのはダメ。 大阪 ○今の学生はなかなかツライ状況にあると感じる。知を得るために、授業をまじめに受けるだけではダメ。 そういう意味では、特別にプログラムを立ち上げて、そこに学生に参加させるのでは、多くの学生にそのプ ログラムを提供できない。○話であったように、授業の中でコツコツ「社会人基礎力」を養っていく必要があ 大阪 る。○大学教員、大学職員に「社会人基礎力」を理解させる、研修が必要である。○大学だけでなく、今後 日本のために、社会全体で本気で考えるテーマ 小・中学校で習得すべき基礎学力の低い大学生が多過ぎると思います。小・中学校における教育で、十分 に基礎学力を付けて頂きたい。小・中学校で留年をさせないなら、例えば夏休み、春休みを返上して、低学 力の児童・生徒に対して、補習授業をしてはどうでしょうか?基礎学力が社会人基礎力の基礎になると考え 大阪 ます。 なんとなく思っていることが可視化されたことは、とても評価できると思う。 広島 現在、コミュニケーションを円滑にしたり、目標達成のための考え方のセミナー、質問力を上げるセミナーを しています。又、マーケティングも事業の範囲のため社会人基礎力が、まさに必要分野だという自信と、共 広島 にためになりました。 所属 大学教員/専門科 目担当 大学職員 企業(人事) 大学職員 その他 大学全体に考え方を広めていくために、講師としてわかりやすく取り組みを紹介して下さる方々の人材バン 福岡 クのようなものを作っていただけないでしょうか。 大学教員/専門科 目担当 とても意味があると思っています。他方で、「学士力」との更なる接合を考えさせられます。「キャリア教育」 の使い方を工夫したいと思いつつ、スタンスの微妙な違いを浸透させることが大切と思っています。(文部省 福岡 系の応答文書での表現などにもやや気づかいを感じます。) 大学教員/教養・共 通教育科目担当 まず言葉が多すぎと思った。もっと少なくコンパクトにした方が学生へ浸透しやすい。もっとエッセンスを絞る べきではないか。今の学生のレベルを考えると。 福岡 大学職員 前述①でも触れたように、社会人基礎力の必要性は参加者全体で共有できていたと見られる。自由 記述では、「大学生では遅すぎる→小中学校時代から育成すべき」「企業でも活用したい(できる)」と 言った内容が多かった。また、特に大学関係者からは「学士力」 「就業力」との違いに関するコメント (違いは何か、文部科学省と連携した方がよい、等)が多かった。今回のセミナーでは、キャリア教育 の中でどのように位置づけが可能か、という内容についてはやや手薄感があり、このテーマについて もどこかでまとめて説明があることが望ましいと考えられる。 ⑤その他 会場 具体的な事例やワークショップがあると非常に理解しやすく、また今回おいでいただいた先生方のようなイ 札幌 キイキとされた方のお話だと、とても勉強になり、意欲が出てきます。 所属名称 大学職員 社会人基礎力を学生に身につけさせるために、すでに社会人基礎力を育成するために、科目を開設してい 札幌 る大学では、ご苦労されている様子がわかりました。 大学職員 大都市だけでなく、地方で開催していただいたことに感謝いたします。 仙台 大学職員 高校生段階で何をすべきか、大変考えさせられた。知徳体の調和、いのちを大切にする教育を考えている 今、自分の足でしっかり歩む力をつける必要がある。と同時に学校現場が抱えている問題をしっかりと研究 仙台 して人を育てる事を考えていただきたい。研究が先走りしないように大学の変化を期待します。 高校教員 色々な事例・視点が知れて大変参考になりました。資料も充実していて助かります。 東京 大学職員 教養、専門の穴埋めとしての社会人基礎力、高校と大学の穴埋めとしての社会人基礎力、大学と社会の穴 東京 埋めとしての社会人基礎力、それぞれをより深く話してほしい 大学職員 “人材を育てる”という視点で言えば、これは大学だけの仕事ではなく、小・中学校からも発達段階に応じて 東京 育むことができる、育むべきと考えております。 小中学校教員 全体感(現状と進むべき方向、等)がつかめました。良い企画でした。 東京 企業(人事) 理系には必要、文系には向かないように思います。文系には、もう一冊多くの本を読んでから、社会へ出て 東京 きて欲しく思います。 企業(人事) ただ、大学の授業を工夫する…“考える力”“積極性”などは大学生で意識させるだけでも、それが“知って 東京 いる”から“できる”へつながっていくのだと思います。 企業(人事) 効果が見える化し易い、中小企業に向けた取り組みが国力の向上につながるのではと思いました。 東京 企業(人事) 人事部で採用を担当しておりますが、ここ数年で新入社員の気質が変わってきたというのが問題になり、 ネットで調べているうちに「社会人基礎力」という言葉に出会いました。その後、今回のセミナー開催を知り、 東京 とても良いタイミングに参加することができました。大学での取り組みには企業も大きな関心を持っていま す。今後もぜひこの様な機会を作って頂きたいと思いました。 企業(人事) 212 会場 所属名称 実例の中に、所属大学、学科で必要とされる能力の重要性が、社会人基礎力に求められているものと合致 しており(主体性・コミュニケーション能力)、在学4年間の中で社会人基礎力を意識した方向性ができれば 名古屋 大学職員 より学科力につながるヒントになった。職員として、どう教員を学科をサポートしていくのか考えさせられた。 企業として、どのように大学側、学生側に働きかけを行うべきか。何をすれば日本の将来発展につながる のか。また、学生や企業、政治や市民などもっと意見を聞いたり、事例を集めるべきだと思う。継続して Watchします。 名古屋 企業(人事) 教育に特別な方法がないことを確認した。 福岡 大学教員/専門科 目担当 この種のセミナーで初めて「腑に落ちる」内容ばかりのものだと思いました。すべて具体的なものなのでわ かりやすかったと思います。 福岡 大学職員 企業として社員教育にも取り入れていきたいと思います。経済産業省の取り組みということで、今後定着し 広島 てくことを先取りしたく参加しました。 企業(人事) 大学教育の現場(社会へ学生を送り出す立場として)の話を聞けたことが新鮮な印象であった。 企業(人事) 福岡 今回のセミナーでは、社会人基礎力を「働くために必要な力」と言うだけでなく、教員の指導・学 生の取り組み両面においての意味で大学での学びの変革につながることに力点を置いて紹介した。そ の意味で、教育関係者からも企業からも、社会人基礎力を教育の問題として捉えた意見が多かったこ とは、参加者が企画の意図を汲んでくださったことがうかがわれる。また、大都市圏だけでなく、こ れまで情報が不足していたと考えられる地方の会場でも行ったことへの満足度も高かった。 一方で、各会場でテーマを分けたことで、来場者のニーズと合っていた場合の満足度は高かった反 面、自分の聞きたいテーマではなかった場合への不満も垣間見られている(②内容、運営に関して改善 すべき点参照)。 1-4-2.アンケート結果の総括 自由記述を含めて、アンケート結果全体の考察を以下に述べる。 ①「気づき」の重要性、影響力 セミナーを通じて、教職員、企業関係者にとって、自ら指導者としてのあり方に何らかの「気づき」 「発見」があったという感想が多く見られる。また、 セミナー参加が自分自身の振り返り機会となっ た と感じている参加者が少なくない。 加えて、他の教職員や「このような教育を受けていない社会人」に社会人基礎力の考え方を伝え、 同様の「気づき」を促す必要性も指摘されている。これは、指導する側も社会人基礎力の視点を身に 付けていることが、学生・若手社員を育成する周辺環境づくりとして必要不可欠であるという認識が あったためであろう。 ②会場別のテーマについて 7会場のテーマを変えたことで、より参加者1人ひとりの関心にマッチしたものが選択されており、 ミスマッチングによる不評が少ない印象。しかし、当然のことながら自分の興味のあるテーマが遠隔 地であった、というコメントは見られた。 富士通やパナソニック電工の事例は、大学・企業関係者双方に好評だった。特に菰田氏は絶賛コメ ントが多数あった。 ③ワークショップ ワークショップは札幌・福岡会場とも全体に好評であった。大学関係者、企業関係者を問わず、実 践をすることで何らかの手ごたえや気付きがあった様子が見て取れる。「こうすればよいのか」「こ ういう働きかけであれば、確かに自分でも動く」という実感をもっていただいたことが、「自分の職 場(学生、部下、社員等)」に対してこうしてみよう」という具体的なアクションの想起につながる という、社会人基礎力そのものの心の動きが見て取れた。また、諏訪・今村両先生が語られた、若い 人を導く存在としての心構えのようなもの(例:諏訪先生「指導者より支援者たれ」)が、参加者に 大きな印象を残している。 213 ④パネルディスカッションについて 司会進行役の力量、捌き方に対する評価が大変に辛い。今後同様のパネルを実施する場合、相当入 念な準備が必要と思われる。また、各会場でパネルディスカッションの冒頭でパネルのみの講師が講 演したが、参加者は短いとはいえ講演を聴いたからには彼らにも質問したくなる。だが、質問票はパ ネル前に回収されてしまっているため、その点に対する不満も散見された。 ⑤自校・自社への導入について 企業関係者は企業への導入事例をもっと知りたいという要望が強いため、別途、企業向けに特化し たセミナーを希望する声が、東京・大阪中心に見られる。大学関係者は導入に向けた具体事例のほか、 自校に特化したFD(Fuculty Development)・SD(Student Development)としてのレクチャーで、学 内で理解者を増やすことが必要と感じているケースが少なくない。 ⑥今後の社会人基礎力展開に対する希望 企業向けに「企業でどのように導入するか」といった内容の継続セミナーを求める声も見られる。 大学関係者も「社会人基礎力の素養を身につけた学生をどう受け入れるか」「企業の理解」という点 に懸念を持っているので、対象を企業に限定せず、軸足を企業に置いた形での話が必要であろう。 また、大学関係者を中心に、文部科学省の学士力との関係を、もっとわかりやすく示すことへの要 望が多数あった。経済産業省が文部科学省や厚生労働省など関係省庁と連携し、わが国としての人材 育成に対する考え方や施策を提示してほしいという要望も多く見られた。 以上を踏まえて、今後社会人基礎力に関する情報発信をセミナーという形で行っていく際に、望ま しいと考えられる内容や形式を下記にまとめる。 ①講演は、できるだけ実践事例を具体的に紹介するもの。大学関係者を対象とする場合には、大学・ 企業の両方があるとよい。ただし、企業関係者を対象にする場合には、育成や採用の具体的なノ ウハウを紹介するプログラムを入れるようにする。 ②講演だけでなく、ワークショップ等参加者が実際に体験できるプログラム、講演者との双方向の セッション等の活動が入るとよい。そのためには、定員は 100 名以内程度で、可動式の机が使え る会場があると望ましい。パネルディスカッション等もできるだけ参加者と講師とが意見交換し やすいセッティングや時間配分を工夫すべきである。 ③地方都市で、地元の大学や企業の優れた事例を通して、社会人基礎力が様々な活動を通して育成 されていることを知らしめる。社会人基礎力の育成は、特別な方法を使った授業を新しく立てた り、ツールを使ったりしなくても、日常的な活動の中で意識することが第一歩である、という ことを伝えることが、より大きな普及につながると考えられる。 ④できれば、小学校~高校も含めたキャリア教育で活用できるような内容のセミナーが実施できる とよい。その際、「生きる力」 「キャリア発達に関わる諸能力(例)」等、文部科学省等が提唱して いる能力観との異同を示すことが、参加者の混乱を少なくすると考えられる。 214 1-5.社会人基礎力育成グランプリへの波及効果 セミナーの成果の 1 つの指標として、2010 年 11 月から 12 月にかけて行われた「社会人基礎力育成 グランプリ 2011」の地方予選エントリー大学と、セミナー参加校のリストを比較した結果を以下にま とめた。 ■図表 「社会人基礎力育成グランプリ 2011」の地方予選エントリー大学と、セミナー参加校の比較 セミナー参加校 初参加(63) ★ セミナー会場で問い合わせ(5) ● 昨年度出場校(36) 太字 エリア 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 北海道・東北 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 関東 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 中部 19-21年度モデル校 大学名 ★ ● ★ ★ ★ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● グランプリ応募者が参加 グランプリ応募プログラム 担当教職員が参加 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 東北芸術工科大学 秋田大学 八戸大学 石巻専修大学 北星学園大学 札幌国際大学 山形大学 青森公立大学 小樽商科大学 北海道情報大学 八戸工業大学 旭川大学 北海道文教大学 東北学院大学 北翔大学 宮城大学 東京外国語大学 大東文化大学 順天堂大学 新潟医療福祉大学 共愛学園前橋国際大学 昭和女子大学 長岡大学 日本女子大学 杏林大学 創価大学 電気通信大学 静岡大学 慶應義塾大学 拓殖大学 明治大学 東京家政大学 立教大学 多摩大学 東海大学 大妻女子大学 城西大学 跡見学園女子大学 獨協大学 デジタルハリウッド大学 山梨学院大学 筑波学院大学 千葉商科大学 目白大学 神奈川工科大学 中京大学 中部大学 愛知学泉大学 愛知学泉短期大学 石川県立看護大学 至学館大学 大垣女子短期大学 名古屋商科大学 名城大学 名古屋工業大学 岐阜大学 日本福祉大学 三重大学 参加校数 (100) セミナー参加 校数 (70) 16校 15校 29校 14校 13校 9校 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 215 ○ エリア 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 近畿 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 中国・四国 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 九州・沖縄 大学名 ● ● ● ● ★ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● グランプリ応募者が参加 大阪商業大学 京都光華女子大学 摂南大学 阪南大学 同志社大学 奈良教育大学 京都女子大学 相愛大学 流通科学大学 関西大学 大阪工業大学 大阪国際大学 京都産業大学 大阪産業大学 立命館大学 和歌山大学 大阪女学院大学 京都外国語大学 龍谷大学 松山大学 倉敷市立短期大学 安田女子大学 高松大学 香川大学 広島経済大学 愛媛大学 広島工業大学 高知工科大学 広島国際大学 鳥取大学 福岡女学院大学 中村学園大学短期大学部 九州共立大学 福岡工業大学 佐賀大学 九州産業大学 宮崎大学 日本文理大学 長崎総合科学大学 香蘭女子短期大学 福岡大学 北九州市立大学 グランプリ応募プログラム 参加校数 セミナー参加 担当教職員が参加 (100) 校数 (70) ○ ○ ○ 19校 13校 11校 8校 12校 11校 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ グランプリ予選エントリー校は、昨年の 53 校から 100 校と 188.7%の大幅増となった。エントリー校 中、セミナー参加校は 70 校。初出場 63 校のうちセミナー参加校は 47 校、74.6%にのぼり、北海道・ 東北地区と九州・沖縄地区の初出場校は全てセミナー参加校である。北海道と九州は、昨年度のエン トリーは各 1 校のみであり、今年度地方予選の開催で参加しやすくなってエントリーが増加したこと がわかるが、セミナー参加がエントリーにつながったこともうかがわれる。さらに、セミナー参加者 とエントリーの応募者、あるいは担当教員は別である場合が多いことから、セミナーを受講した内容 が学内に伝えられた上で参加につながったことが見て取れる。その意味で、事例研究セミナー開催の 目標の 1 つである「グランプリの参加への促し」は達成できたと言える。 216 2. 「社会人基礎力」育成プログラム卒業生の追跡調査 217 2.「社会人基礎力」育成プログラム卒業生の追跡調査 今回の調査は、社会人基礎力育成を目指した教育活動を経験した学生が、大学での学業を修め、社 会に出て、あるいは就職活動を行う中で、 「社会人基礎力」とは何かを知り、それを伸ばした経験が、 どのように活かされたかを生の声で拾い、プログラムの効果検証を行うのが目的である。 具体的には、平成 19 年~21 年度に実施された経済産業省産学連携人材育成事業「体系的な社会人 基礎力育成・評価システム構築事業」のモデル大学(以下、「モデル大学」と略記)や、「社会人基礎力 育成グランプリ」(以下、 「グランプリ」と略記)の入賞校で、社会人基礎力育成プログラムを受講した 社会人と、就職活動を経験した学生に対してヒアリングを行い、社会人基礎力がどのような場面で役 に立ったか、 プログラムの中で特に有効だった経験について具体的なエピソードを収集した。さらに、 アンケートによって、上記の内容を社会人基礎力の項目毎、あるいは活動の内容毎に、必要性や効果 を定量的に分析した。 2‐1.調査の設計 調査の設計にあたって、当初は、モデル大学やグランプリ入賞大学で社会人基礎力育成プログラム を受講した卒業生と、受講していない人にアンケート調査を行い、その回答者の中からヒアリング対 象者を抽出することを考えていた。しかし、モデル大学教職員に対するプレヒアリングで、個人情報 保護等の問題から、卒業生を大学から紹介していただくことが非常に難しいこと、特に受講生以外の 学生の方がサンプルを集めにくいことが判明した。そのため、まず調査の対象となる大学の教職員に プログラムの受講生をヒアリング対象者として紹介していただき、その方にヒアリングとアンケート を両方お願いすることとした。また、卒業生だけでなく、就職活動を経験した学部 4 年生・研究科(修 士課程)2 年生も対象として、プログラムで身に付いた力がその後の学業や就職活動にどのように役に 立ったか、また採用面接での企業担当者の反応はどのようなものであったかについて聞いた。 また、アンケートについては、育成プログラムの受講者の対照群として、受講生に対して行ったも のとほぼ同じ設問でインターネットによるアンケート調査を行い、一般的な大学教育と比較した際の 育成プログラムの効果を検証した。本来は、受講者と同じ大学の卒業生であることが望ましいが、サ ンプル数が少ないと対照群としての結果に偏りが出るおそれがあるため、十分なサンプル数を集める (5000 サンプル程度)ことで、客観性を担保することとした。 2-1-1.プレヒアリング(平成 22 年 10~12 月実施) 調査の実施に先立って、社会人基礎力育成事業でモデル大学となった主要大学について、プレヒア リングを行った。プレヒアリングの趣旨は、卒業生調査の目的と意義を説明し、協力を求めるととも に、実際に卒業生にコンタクトを取る際に、どの程度まで大学の協力を仰ぐことが可能かについて意 見を聞くことである。今回、プレヒアリングを行ったのは、下記の 4 大学である。 ・大阪大学(平成 19・20・21 年度モデル大学) ・愛知学泉大学(平成 19・20・21 年度モデル大学) ・京都産業大学(平成 20・21 年度モデル大学) ・金沢工業大学(平成 20・21 年度モデル大学) ※プレヒアリングのレポートは別冊資料参照。 プレヒアリングの時点で計画していた卒業生調査の骨子は以下の通りである。 ①モデル大学・グランプリ上位入賞大学に対して、社会人基礎力育成プログラムを受講した卒業生 を紹介していたただき、アンケートを実施する。具体的には、大学から卒業生に対して調査への 依頼メールを送っていただき、 承諾を得た方に web 回答用の URL(またはアンケート用紙)を送り、 回答を集める。アンケートの内容は、以下の通り。 ・あなたの仕事で必要とされるものは何か ・主に大学で身に付いたと思うものは何か ・主に仕事を通して身に付いたと思うものは何か 218 ・大学時代に自分の能力・態度の成長の役に立ったと思う活動 →その活動の具体的な内容 ①’可能であれば、①の比較対照群として非受講生の卒業生をご紹介いただく。 ② ①で回答した人の中から、回答内容のおもしろい人に対してヒアリングを依頼し、実施する。 ヒアリングは、①のアンケートの内容を具体的に掘り下げる形で行う。 ③ ①’の比較対照群のサンプル数が不足した場合に備えるのと、一般的な大学教育でどのような 力が身につくかを調査するため、5000 人程度を対象としたインターネット調査を実施する。 サンプル数としても①+①’で約 100 人、②で 50 人程度を想定した。 実際にプレヒアリングでの大学の回答から、以下の問題点が明らかになった。 1.相当協力的な大学であっても、個人情報保護等の問題から卒業生への調査協力の依頼は難しい。 ゼミや研究室等、卒業後も OB 会等でつながりがある場合はまだ個人的なつながりで依頼は可能 であるが、モデルプログラムが通常授業の中で行われたような場合はほぼ不可能になる。 その意味で、①’の非受講生の紹介は事実上できない。 2.その意味で、逆に大学から直接紹介できる卒業生は、活動に熱心に取り組んだ人が多い。その ため、アンケートを行ってからヒアリング対象を探すよりも、ヒアリングから実施する方が効 率がよいことが予想される。 3.卒業生に比べて、受講者の中で卒業予定(就職活動経験済み)の学生であれば紹介が容易。教職 員から直接声をかけることが可能で、時間も取り易い。 以上を踏まえて、調査の設計を下記のように修正することとした。 Ⅰ.大学から紹介していただく学生には、アンケートではなくヒアリングを軸として話をうかがう。 アンケートのサンプルは、ヒアリング対象者からの紹介等、横のつながりも使うことにする。 Ⅱ.同じ大学の中で受講者と非受講者の比較をすることは難しいので、対照群はインターネット調 査で行う約 5000 サンプルを使う。これによって、 「受講者 vs.非受講者」ではなく、 「社会人基 礎力育成プログラムの受講者 vs.一般的な大学教育の受講者」の比較を行うこととする。 Ⅲ.卒業生だけでなく、既に就職活動を経験した卒業予定者も調査対象に加えて、受講後学問への 取り組みや生活全般に対する態度がどのように変化したかを聞く。さらに、採用試験の現場で 「社会人基礎力」という言語に対して、企業の担当者がどのような反応をしたか、プログラム に対してどのような印象を持たれたか、等について聞くことで、企業が社会人基礎力をどのよ うにとらえているかについて、情報を集めることとする。 219 2-1-2.ヒアリングの設計 ヒアリングを軸として情報収集をすることで、ヒアリングとアンケートの目的を下記のように設定 した。 ヒアリング ・具体的・個別的な事例の収集。ヒアリング対象者の職場独特の環境や人間関係、業務内容に ついても細かく聞き、そこで必要な能力や発揮場面を聞く。また、活動のどのような経験が現在 の仕事で役に立っているかについては、できるだけ活動の内容と現在の仕事の近似性も踏まえな がらまとめるようにする。 アンケート ・プログラム横断的に、活動を通して身に付いた力を定量的に表現する。またヒアリングでは、12 の能力要素全てについて聞くことは難しいので、ここではどのような力が成長が大きいかを見る ことで、大学教育の寄与度が大きい能力を横並びで比較することを目標とする。また、仕事の現 場では社会人基礎力以外にどのような力が必要か、あるいはプログラムを通してどのような力が 身に付いたか、についても同時に聞くこととする。 以上をふまえて、アンケートの基本的な質問項目を決定した。 【卒業生に対するヒアリングの質問】 1. あなたの今の仕事の内容を教えてください。 2. 仕事で必要とされる能力は何だと思いますか。 3. 社会人基礎力で言えばどの力だと思いますか。その力を発揮して成果を上げた場面を具体的に説 明してください。 4.プログラムを受講したことが、大学の学業に役に立ったことは何でしょうか。具体的な例を挙げ て答えてください。 5. 社会人基礎力育成プログラムの経験の中で、今の仕事に最も役立っている活動を教えてください。 それは、具体的にどのような能力(社会人基礎力、それ以外)の成長につながったと思いますか。 6. 社会人基礎力育成プログラムを受講したことが、 社会に出てからの成長につながっているのはど のようなところだと思いますか。 7.実際に働いてみて、 社会に出ないと身に付けられないと思った能力はありますか。社会人基礎力 とそれ以外についてお答えください。また、大学では身についたと思ったが、社会に出てから通 用しないと思った能力があるとすれば、それは何でしょうか。また、改善のためにはどのような 工夫をしたらよいと思いますか。 8. その他、社会人基礎力育成プログラム以外の大学時代の経験で、社会人基礎力の育成に役立った と思う活動を教えてください。 卒業生を対象とするヒアリングでは、まず仕事の現場で必要となる能力は何かを聞き、それ を軸として、どのような活動が役に立ったか、プログラムを通して身に付いた力は何か、逆に 大学時代の経験だけでは不十分で、社会に出てからの活動を通して初めて身に付く力は何か、 ということを掘り下げて聞くことにする。 【在学生(卒業予定者)に対するヒアリングの質問】 1. 社会人基礎力育成プログラムの経験が、その後の学業に役に立ったと思うことについて、具体的な 例をあげて説明してください。また、それはどのような能力(社会人基礎力、それ以外)の成長のた 220 めだと思いますか。 2. あなたが内定をもらった会社の業種・職種を教えてください。 3. 面接等で、社会人基礎力を問われていると思われる場面はありましたか。具体的にどのような場 面・質問ですか。 4. 社会人基礎力育成プログラムを受講したことが、就職活動についてプラスになったと思う点(面接 でアピールできたこと、活動を通して特に成長した力等)はありますか。具体的にどのような点でし ょうか。 5.採用担当の人は、 「社会人基礎力」について知っていましたか。また、面接で社会人基礎力育成プロ グラムについて話した時の、企業の人の反応で印象に残っていることを教えてください。 6.今後社会に出るにあたって、まだ課題として残っていることがあるとしたらどのような点でしょう か。社会人基礎力と、それ以外について教えてください。 7. 社会人基礎力育成プログラムに改善した方がよい点があったとしたら何でしょうか。また、改善の ためにはどのような工夫をしたらよいと思いますか。 在学生(卒業予定者)に対するヒアリングでは、「プログラムの経験がその後の他の学業に役立ったこ と」を最初に聞くこととした。近視眼的に○○力が成長したから、と結びつけるよりも、活動を通し て学習意欲が高まったり、苦手としていたことに前向きに取り組めるようになったり、という態度面 の成長を自覚したかどうかを確認した。さらに、実際の就職活動の場面での企業の反応に注目した(上 記質問 3~5)。企業がどのような能力に注目しているか、またそれがどのような質問や、学生の話を 聞いた時の反応となって現れているかは、企業が求める人材像についての生の情報であるとともに、 社会人基礎力を、学校(大学以外の教育機関も含めた意味で)と社会をつなぐ共通言語として機能させ るために、どのような普及・啓発が必要かを示すものでもあると考える。 2-1-3.アンケートの設計 アンケートは、在学生(卒業予定者)が対象のものと、社会人が対象のものの 2 種類を準備した。社 会人を対象とするものは、社会人基礎力育成プログラムの受講者と、社会人基礎力を全く知らない「普 通の」大学教育を受けた社会人に対して共通の設問を使うため、12 の能力要素の言葉をそのまま使う ことはせず、短文で説明したものを用いた(例:「自ら目標を定め、それに向けてモチベーションを高 める力、態度」=主体性)。また、アンケートでは、仕事で必要な力として、社会人基礎力以外に「人 間としての基本的な資質・能力(誠実さ・責任等)」 「基礎学力・汎用的能力(読解力、PC スキル、語学 等)」 「専門知識・スキル(業務に必要な専門知識・スキル等)」 「意識・視野(幅広い視野、問題意識等)」 についてもその必要度合いを尋ねた。 (1)社会人対象アンケート 社会人を対象とするアンケートの主な設問は以下の通りである。 1.あなたの仕事ではどのような力が必要か →社会人基礎力、知識・スキル、基礎学力・リテラシー等 35 の詳細項目をそれぞれ「大いに必要 である」~「全く必要ではない」の 7 段階で評価する 2.あなたは今 1 の各項目をどの程度身につけているか →1 と同じ項目を「大変高い・強い」~「全然高くない・強くない」の 7 段階で評価 3.それらの力を身につけたのは主にいつか →小学校以前~就職後の学校時代別に聞く 4.大学時代のどのような活動を通してそれらの力を身につけたか【活動の種類】 221 →学業全般、ゼミ・研究室、サークル活動、アルバイト等大学時代の活動(19 項目)から選ぶ。 5.大学時代に熱心に取り組んだ活動は何か →4 の各項目について、「大変熱心に取り組んだ」~「全然熱心に取り組んでいない」+「経験し ていない」の 8 段階で聞く 6.あなたの人間力の向上には、どのような経験が役立ったか【活動の内容】 →「人前で発表したこと」 「グループのリーダーをしたこと」「難しいと思われることに挑戦した こと」等、活動を通した経験 15 項目について、「大変有意義な経験だった」~「全く意義の ない経験だった」+「経験していない」の 8 段階で評価、 7.大学時代にはどのようなタイプの授業があったか →「実務・知識を教える授業」 「学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったり する授業」 「授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動」等 24 項目について、 「大 変多くあった」~「なかった」の 5 段階で評価 8.7 で挙げた授業は、人間力の育成に効果があったと思うか →7 の項目について、「大変有効だった」~「全く有効ではなかった」+「このような授業はなか った」の 8 段階で評価。 上記の項目について、社会人基礎力育成プログラムの受講者と、インターネット調査「社会で役に 立つ力と大学教育に関するアンケート」 (以下、 「インターネット調査」と略記)の集計結果を比較する。 さらに、インターネット調査では、上記の項目を回答者の属性別(性別、年代、出身学部、業種・職種、 雇用形態等)別に集計する。さらに1~7 の他に「仕事で求められる成果をあげていると思うか」「現 在の仕事や生活にやりがい・生きがいを持っているか」についても問い、これらの得点の高いグルー プと低いグループで回答傾向の差を見る。 卒業生アンケートの本票(Word 版)は、別冊資料に添付する。 (2) 在学生(卒業予定者)対象アンケート 在学生に対するアンケートでは、実際の仕事で必要な能力について聞くことができないため、(1) の「1.あなたの仕事ではどのような力が必要か」については、 「自分が今後「仕事」をする上で、どの 程度必要と思うか」という形で尋ねた。その他、上記 1~7 の設問については基本的に社会人向けのも のに準じた。 在学生アンケートの本票(Word 版)は、別冊資料に添付する。 (3)教員アンケート プログラムを担当した教員に対して、自分のプログラムをどのように意識しているかに関するアン ケートを行った。特に、仕事で求められる力の育成を、教員がどの程度意識して指導しているか、ま た、人間力の育成に有効と考えられる活動をどの程度盛り込んでいるかを聞くことは、プログラムの 効果を見る上だけでなく、一般的な大学の授業活動と社会人基礎力育成プログラムの差異を見る視点 としても有効であると考えた。設問は以下の通りである。 1. 社会人基礎力育成プログラムで育成を意図した能力は何か 2. 社会人基礎力育成プログラムで学生が成長した能力は何か →上記 2 つは、社会人・在学生アンケートで用いた社会人基礎力、知識・スキル、基礎学力・リ テラシー等 35 の詳細項目を使用した。 3. プログラムに重視して取り入れた活動は何か →「人前で発表させる」 「難しいと思われることに挑戦させる」等、社会人・在学生アンケートの 活動の内容を尋ねる設問と同じ項目を使用した。 222 4. プログラムの活動のタイプはどのようなものか →「実務・知識を教える授業」 「学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったり する授業」「授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動」等の 24 の項目を使用し た。 5. 社会人基礎力の振り返り・評価はどのように行ったか 6. 今後改善を考えるとすればどのような点か 教員アンケートの本票(Word 版)は、別冊資料に添付する。 223 2‐2.調査の実施 ヒアリングとアンケートは、平成 19・20・21 年度の社会人基礎力育成・評価手法開発事業のモデル 大学(のべ 19 大学)と、社会人基礎力育成グランプリ 2009・2010 の決勝大会出場大学に、社会人基礎 力育成プログラムを受講した卒業生・在学生(卒業予定者)の紹介を依頼した。協力するとの回答を得 た大学の教職員に調査の趣旨を伝え、卒業生・在学生へのファーストコンタクトは大学から取ってい ただく形とした。 2-2-1.ヒアリングの実施 ■実施時期 : 平成 22 年 12 月上旬~平成 23 年 2 月中旬 ■場所 :ほぼ半数が大学、その他職場・自宅の近辺、河合塾、イベント会場等 ■時間 :1 時間半~2 時間程度 ヒアリング対象者の大学別内訳は下記の通りである。 ■図表 大学別ヒアリング参加者数 ヒアリング (卒業生) (在学生) 大阪大学 宮城大学 1 愛知学泉大学 金沢工業大学 京都産業大学 2 広島経済大学 3 武蔵大学 中京大学 3 2 平成19・20・21年度モデル大学 6 平成20・21年度モデル大学 3 9 6 平成19年度モデル大学 山口大学 1 平成20年度モデル大学 東海大学 2 松山大学 日本文理大学 奈良佐保短期大学 香川大学 3 平成21年度モデル大学 流通科学大学 2 4 1 1 阪南大学 社会人基礎力育成グランプリ2009 5 決勝大会出場大学 10 2 社会人基礎力育成グランプリ2010 決勝大会出場大学 山形大学 石川県立看護大学 1 跡見学園女子大学 2 5 22 53 1 ヒアリングの記録は、別冊資料を参照。 224 2-2-2.アンケートの実施 (1)社会人・在学生アンケート ■実施時期 : 平成 22 年 12 月中旬~平成 23 年 2 月中旬 ■実施方法 : ①アンケートのワードファイルに入力し、メールで事務局に返信してもらう。 ②アンケート用紙に手書きで記入し、郵送で事務局に返信してもらう。 ③河合塾サイト上のアンケートシステムにアンケートを置き、参加者に下記 URL を伝えて入力してもらう。 社会人 [ PC ] https://kjp.oo.kawai-juku.ac.jp/enquete/index.php?action=GeneralAnswerAction&EnqueteID=3044 [携帯] https://kjp.oo.kawai-juku.ac.jp/enquete/i/index.php?action=General&EnqueteID=3044 在学生 [ PC ] https://kjp.oo.kawai-juku.ac.jp/enquete/index.php?action=Gen&EnqueteID=3088 [携帯] https://kjp.oo.kawai-juku.ac.jp/enquete/i/index.php?action=General&EnqueteID=3088 アンケート回答者の大学別内訳は下記の通りである。 ■図表 大学別アンケート回答者数 アンケート (卒業生) 大阪大学 (在学生) 9 宮城大学 1 平成19・20・21年度モデル大学 愛知学泉大学 2 金沢工業大学 京都産業大学 3 広島経済大学 5 武蔵大学 6 5 平成20・21年度モデル大学 3 13 平成19年度モデル大学 山口大学 1 平成20年度モデル大学 東海大学 9 松山大学 日本文理大学 2 8 平成21年度モデル大学 奈良佐保短期大学 4 香川大学 2 流通科学大学 1 阪南大学 11 2 山形大学 1 石川県立看護大学 1 跡見学園女子大学 社会人基礎力育成グランプリ2009 5 決勝大会出場大学 社会人基礎力育成グランプリ2010 決勝大会出場大学 1 1 4 38 62 インターネット調査については、この章の最後の「【参考】インターネット調査『社会で役に立つ力と 大学教育に関するアンケート』 」を参考されたい。 225 (2)教員アンケート ■実施時期 : 平成 22 年 12 月下旬~平成 23 年 2 月中旬 ■実施方法 : アンケートのワードファイルをヒアリング・アンケートに協力の回答をいただい た担当教職員に送付。入力したものをメールで事務局に返信してもらう。 ■図表 教員アンケート回答数 大阪大学 1 平成19・20・21年度モデル大学 金沢工業大学 広島経済大学 4 武蔵大学 1 中京大学 1 東海大学 3 平成21年度モデル大学 奈良佐保短期大学 香川大学 1 社会人基礎力育成グランプリ2009 1 決勝大会出場大学 流通科学大学 1 阪南大学 社会人基礎力育成グランプリ2010 1 決勝大会出場大学 石川県立看護大学 1 1 平成20・21年度モデル大学 平成19年度モデル大学 16 226 2‐3.ヒアリング結果のまとめと分析 ヒアリングでは、2-1-2 で示した項目に沿って話を聞いた。その中から、具体的なエピソードや感 想を抽出し、社会人基礎力育成プログラムの効果を能力要素や活動のスタイル別に考察する。なお、 活動の内容は受講当時のものであり、現在継続中のものとは異なる場合もある。 2-3-1.各プログラムの概要 今回のヒアリングに回答した社会人・在学生が経験した各プログラムの内容は以下の通りである(ヒ アリングおよび教員アンケートの回答、平成 21 年度「社会人基礎力育成・評価システム構築手法に関 する調査等」報告書等より)。 【大阪大学大学院工学研究科・研究室】 工学系研究室の研究指導で、企業で活躍する研究者やマネージャーを講師に招き、研究内容のプレゼン テーションに対してビジネス現場と同様の観点でプレゼン指導を実施。社会人基礎力の能力要素を、研 究・開発現場で必要な力に読み替えた評価項目で自己評価・他者評価を行った。 【宮城大学事業構想学部・PBL】 学年、文系・理系を融合した形での産学連携型 PBL の取り組み。「地域課題の発掘・解決・実施」を テーマに、地域の特産物の PR や地域課題の解決を通して社会人基礎力の育成を図る。 【愛知学泉大学家政学部管理栄養士専攻・産学連携 PBL】 家政学部管理栄養士専攻の学生が、地元のコンビニエンスストアの弁当のメニュー開発を実施。栄養学 の知識を活用して、栄養価の高いメニューを商品化するために企業と交渉を行った。相手先企業人も参 加して、社会人基礎力の振り返り面接も実施。 【金沢工業大学工学研究科・研究室】 研究室単位での卒業研究(「工学設計Ⅲ」 )では、産学共同研究形式での学生・教員・企業人が属する技 術開発チームを組み、研究室内では院生や同級生とも共同活動を実施した。通常学内で閉じられた卒業 研究の場合に実施される「学生の自己評価」と「教員の他者評価」に加え、 「企業人による他者評価」も 行い、3 回/年のペース(事前・事中・事後の 3 段階)で学生の社会人基礎力の評価を実施した。また、 大学院生も参加する研究室ゼミでの発表・質疑応答も踏まえ、プログラム受講生である学部 4 年生は、 教員・企業人・大学院生から、エンジニアリングデザイン能力と人間力の指導を受けた。 【京都産業大学・O/OCF-PBL】 学生のキャリア教育支援組織「キャリア教育研究開発センター」で実施する O/OCF-PBL に社会人基礎力 の育成を導入。地元の中堅企業から経営上、あるいは新規開拓で抱える現実的な問題を受け、学生が PBL として解決する。状況によってリーダーシップとフォロワーシップを柔軟に発揮できる人材の育成を目 標としている。 【広島経済大学興動館・プロジェクト】 実践を通じて「人間力」を涵養する教育プログラム「興動館プロジェクト」 。学生が主体となって地域貢 献や経営に関する活動している。プロジェクトには大学が資金面の援助を行い、学生に運営資金の管理 もさせて、大学で学んだ知識やスキルを実践に移す経験をさせている点が特徴。社会人基礎力の振り返 り面接も実施。 【武蔵大学・3 学部合同 PBL】 人文学部・社会学部・経済学部の学生が協働で技術系中小企業の採用ホームページの構築を行う。前半 の授業は学部単位で活動し、後半から 3 学部横断で行う。後半は専門の異なる 3 学部からなる 1 つのチ 227 ームを結成し、各学部の得意分野を活かしつつ、3 つの学部のメンバーが 1 つにまとまる過程で学びの 機会を増やす。課題への取り組みと並行して、合計 3 回のキャリアコンサルタントとの面談を設定。 【中京大学総合政策学部・ゼミ】 井村屋製菓、リクルート、サークルKサンクスの協力のもと、井村屋製菓で開発・製造し、サークルK サンクスで発売するスチーム商品(肉饅等)を企画する。学生が企画した商品が実際に販売される状況を シミュレートし、プロモーションまでも含めた販売計画を立てることで、製造業者から消費者へと至る 流通の流れを企画に反映させ、経営学の流通論の知見を実際の商品企画に活かす。 【山口大学・PBL】 地域企業の協力の下、産学連携プロジェクト課題「企業で働く社会人インタビューと企業紹介HPの作 成」に学生が取り組む中で、 「企業担当者と学生のインタラクションを誘起し思考を強いる刺激を与える こと」 「課題完遂に向け困難を乗り越える力・仲間と協力してプロジェクトを進める力の実践的強化を図 ること」を目指した。 【東海大学・通常授業】 全学部共通のキャリア科目に社会人基礎力育成を取り入れ、実践型学習、知識習得を重視した通常の科 目の双方について、理系と文系のモデル授業(カリキュラム)を設定した。通常科目の評価指標に社会 人基礎力のレベル評価を導入している。 【松山大学経営学部・PBL】 学生・教員と地域産業・企業が連携して、地域や地域産業の活性化を目指した PBL を実施。活動の形態は、 授業、公募型、ゼミ等様々。自己評価は3回、他者評価は教員がプロセス中心、企業人評価は成果物を 中心に実施。 【日本文理大学・2 学部合同 PBL】 人間力育成を目指した「社会参画実習」で、工学部と経営経済学部の 2 学部合同でプロジェクトを実施。 ヒアリング対象者は、大学近隣地区の「鶴崎清正公二十三夜祭」の活性化に取り組み、イベントの企画・ 運営を行った。 【奈良佐保短期大学・実習】 介護福祉士を目指す課程の3回の介護現場の実習において、人と深くかかわり、課題に挑戦し、克服し ながら、逆に被介護者から深いよろこびや勇気をもらう。高齢者に向き合う実習課題に対する PDCA サイ クルを展開することと、自分のかかわりの弱さや消極的な点に対して向き合うことで、社会人基礎力を 高める。 【香川大学工学部・産学連携 PBL】 基本的には、協力企業の事業活動について、その改善点を見つけ、改善策を提案する。「Teamology」と いう考え方に基づき、半年程をかけてチーム編成を行う。やり方は、まずアンケートを通して、各人の 特性/性向を把握し、その結果に基づいて、各人が補い合えるチーム編成を行う。その後、実証実験的に 各チームで活動を行い、その結果に基づき、チーム編成の微調整を行う。 【流通科学大学サービス産業学部・ゼミ】 複数の学部・学科に属するだけでなく、留学生も含まれた多様な参加者で構成されたゼミ生 15 人を 5 チ ームに分割して、福祉器具の新製品開発コンテストを行った。協働企業の訪問、社長による講義、指導 教員による講義、福祉施設の訪問、展示会の見学等を通じて知見を深め、各チームが実地調査を行った。 【阪南大学国際観光学部・ゼミ】 大阪の新今宮地域に外国人旅行者を誘致して,地域づくりにつなげて活性化させるべく,学生が主体と 228 なって新今宮観光インフォメーションセンターを立ち上げ運営する。 【山形大学工学部・PBL】 授業科目「キャリアプランニング」と連動して行われる「参加型学生活動」の一例で、1 単位が認定さ れる。山形大学工学部生のための就活支援冊子「就活の風」を、工学部生・院生が発行。企画・取材・ 原稿執筆・デザイン・発行の作業すべてを学生が行った。 【石川県立看護大学・PBL】 4年生の卒業研究で、能登地方の過疎化をテーマに高齢者の健康状態を調査・分析するとともに、住民 同士が支えあいながら、病気や介護の状態を予防して健康や体力の維持を目指す「地域の仲間づくり」 の再生に取り組んだ。これを実現するために、4年生は下級生ボランティアと役割を分担しながら地域 団体と協働して住民同士が交流できる生涯学習会(健康教室、郷土料理祭など)を企画・運営した。 【跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ】 マネジメント学部のゼミ活動。学生は、学外・学内・ゼミ内の 3 段階、50 以上のプロジェクトに複数関 わり、同時進行で仕事を進めていく。プロジェクトの内容によって、リーダー・フォロワーの両方の立 場を経験する。社会人基礎力の定義を学生自身で作り、伸びた力を自分達で分析することで、発揮・向 上を目指した。 229 2-3-2.社会人ヒアリングのまとめと分析 ヒアリングの回答を、以下の 4 つの観点で整理し、分析を試みた。 1.プログラムの受講によって身に付けた能力や態度が学業での成果や取り組みに及ぼした影響 2.現在の仕事で必要な能力は何か 3. プログラムの受講によって身に付けた能力や態度は現在の仕事にどのように役立っているか 4.社会に出てからでなければ身に付けられない能力、大学で身に付けただけでは不十分な能力 は何か 5.その他 なお、今回のヒアリング対象者の現在の仕事の業種・職種は下記の通りである。 ■図表 ヒアリング対象者の業種・職種 対象大学 大阪大学 愛知学泉大学 京都産業大学 現職 大手住宅メーカー・研究開発職 製薬会社コ-メディカルサポート部門派遣社員 民間総合病院・管理栄養士 地方自治体・事務職 私立大学入試センター・広報担当(2名) 県警察 広島経済大学 フードサービス・店舗勤務 通信制高校・非常勤講師 武蔵大学 大手鉄鋼メーカー・事務職 大手印刷会社・購買業務 知的障害者通所施設勤務 奈良佐保短期大学 特別養護老人ホーム勤務 重症心身障害児施設勤務 小規模多機能型受託介護事業所勤務 香川大学 流通科学大学 山形大学 石川県立看護大学 跡見学園女子大学 中堅製造業・研究・開発・企画マーケティング 大手メーカー・機械・設備開発 大手レンタル業・営業事務 ゼネコン・施工管理 民間総合病院・看護師 保険会社・総合営業 派遣会社・営業 230 ①プログラムの受講によって身に付けた能力や態度が学業での成果や取り組みに及ぼした影響 プログラムを受講して、学習意欲や物事に取り組む姿勢が向上した結果、大学時代の学業や研究に どのような影響を及ぼしたかを聞いた。 ・ 私立大学入試センター・広報担当【実行力、チームで働く力】 主体性を伸ばしたいと思っていたが、実際に受講して、チームワーク力が重要だと感じた。他の授業で も、何か複数名作業をする時やゼミナールで予定や段取りを決めたりする時に、自分から手を挙げたり、 こうしようと言って動ける場面が増えた。 (京都産業大・産学連携PBL) ・大手住宅メーカー・研究開発職【発信力、考え抜く力】 M2 後期でこの活動に参加したことで、先行研究の深掘りだけにとどまらず、研究を取り巻く社会的ニー ズや周辺領域の動向などに視野が広がった。その成果は修士論文の序論に活かすことができ、奥行きの 広い、豊かさのある論文になったと思う。また、自分の研究の意義を誰にでもわかるように発信するこ との重要性、それも平易な言葉で予備知識のない人であっても伝わるように表現することが、研究が研 究で終わらないためにもとても大切であることに気づかされた。論文審査ではそうした点も含めて評価 していただいたようで、日本学生支援機構の大学院第一種奨学金の「特に優れた業績による返還免除対 象者」として認定された。 (大阪大学大学院工学研究科・研究室) ・大手レンタル業・営業事務【前に踏み出す力】 医療福祉学科のボランティアで施設に行った時、自分から積極的に行動したり、 「どうふるまうべきか教 えてください」と自分から指導者や先輩にお願いした。仕事をしている人たちは忙しいので、学生がぼ ーっとしていたら放っておかれる。そこで何か学ぼうとしたら、自分から「教えてください」と向かっ ていかないと得られるものがないことがわかっていたので自分から動けた。 (流通科学大学サービス産業 学部・ゼミ) ・フードサービス・店舗勤務【知識と実践のリンク】 大学に入学した動機として、簿記や計算に会計に興味を持っていた、ということがあった。プロジェク トに参加したのもそのためだが、実際に生の「経営」というものを感じた上で、座学の授業での「経営」 を学ぶことができたので、学業とプロジェクトが「座学」「実践」としてリンクしていた。(広島経済大 学興動館・プロジェクト) 学業面への影響に関するエピソードでは、個別の授業に関するものよりも学業全体に対する学習意 欲や姿勢そのものが向上した、というものが多かった。チームで活動する場面の多い社会人基礎力 育成プログラムと、個々人の取り組みが中心の他の学業では一概に比較できない、という意見もあ った。 ②現在の仕事で必要な能力は何か 資格系の職種の人を中心に、 「専門知識・スキルが最も重要(あって当然)」と答える人が多かった。 ここでは、社会人基礎力や人間性等について、回答内容を中心となる能力要素別にまとめる。 ■前に踏み出す力 主体性 ~仕事や課題に自分のものとして取り組む、自発的に動く ・派遣会社・営業職【主体性、実行力】 まずアクションが大事。その中でも主体性。営業は、自分で動かないと仕事にならない。 (跡見学園女子 231 大学マネジメント学部・ゼミ) ・中堅機械メーカー・営業【主体性、発信力】 特に主体性が必要だと思う。自分はまだまだ新人なので、先輩に教えてもらうことが多い。ただ、先輩 方は皆忙しいので、待っていても教えてくれない。その際に主体性が必要になり、それなしでは成長で きないと感じる。教えてもらっても分からない場合には、質問の仕方を変えるなどの工夫をしている。 こういった努力をすることで、顧客からの質問に答えられるようになり、自分の成長も実感する。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・私立大学入試センター・広報担当A氏【主体性、創造力】 世代が異なる、視点の違う人間が、恐れずにどんどんアイデアを出すことが必要なので、自ら考えて、 主体的に提案できることが仕事を進めていく上で大事。 (京都産業大学・ O/OCF-PBL) ・大手印刷会社・購買【主体性、計画力】 人を相手にする仕事なので、まず「信頼関係の構築」が重要となる。その際に「人柄」が重要になる。 また、社会人基礎力については「主体性」が最も重要だと思う。会社の中では、言われたことをやって いれば、何となく過ごせてしまう。ただ、それでは、成長しない。成長するには、特に主体性が必要に なると思う。例えば、輸入材の購買の際、先方担当社との交渉の場面がある。少しでも安く購入するこ とが自社の利益に繋がるので、特に主体性を発揮して交渉をしている。その他、交渉の際には、どのよ うな段階を踏んで交渉を行うかの「計画力」が必要になる。(武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・中堅メーカー・開発・企画マーケティング【主体性、発信力、柔軟性】 学生の取組はあくまで学生の枠組みでやるので、専門分野の特定の考え方でこうあらねばとかいう理屈 が発表に滲み出ていたり、あまりうまく伝えられなかったりしても、企業が許してくれる部分もあった。 しかし企業に入ると、自分の意見をはっきり言い切った上で、視野の広さや自分の専門外の論理を柔軟 に受け入れて、よりよい着地点を探すといったことが必要になってくる。自分に足りないとすれば、よ り自分の意見をはっきり出すこと。 (香川大学工学部・産学連携 PBL) ・通信制高校非常勤講師【主体性、実行力/考え抜く力】 特に重要と感じるのは、 「アクション」や「シンキング」の能力である。今は個人ベースで仕事をしてい ることが多いので、チームワークに比べると重要度が高い。現在ゼミを1つ受け持っているが、何をど のようにやるか、全て自分に任されている。逆にいえば、自分がしっかりやらなければならない。自分 自身がしっかりと授業計画を立てなければならないので、主体性・実行力・計画性が必要だと思う。 (広 島経済大学興動館・プロジェクト) 働きかけ力 ~仕事を学び、さらに自分の可能性を広げていくために周りの人に働きかける ・重症心身障害児施設・介護士【働きかけ力、主体性、実行力】 学生のときは実習先で教えてくれる人が必ずいて、そういう人が一から十まで教えてくれるが、仕事と なると自分で知っていなければならないこととか、聞いて学ばなければならないことがたくさんあった ので、そういうところでちょっと躓いた。聞かないと教えてくれないし、自分流にやってしまうと失敗 してしまうことが多かったので、積極性のところが問われた。 (奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ・大手鉄鋼メーカー・事務職【働きかけ力、主体性、実行力、傾聴力、ストレスコントロール力】 わからないことは何でも積極的に聞いて、その上で対応することが求められていると感じている。そう いう意味で、円滑かつ積極的にコミュニケーションをとることが必要である。また職務がら、庶務的な 232 業務も発生する。何でもやらないといけないので、忍耐力を持って望まないといけない。自身では「ど んな仕事も(やったことがない仕事でも)チャレンジする意識が大事」と考えている。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・ゼネコン・施工管理【働きかけ力、主体性、実行力、度胸】 新入社員的な意味で言えば、前に踏み出す力がいちばん重要。主体性、働きかけ力、実行力とあるが、 度胸もすごく必要。知識もないのにお願いしたりするのも変な話なので、不安。 「わかって言ってるの?」 と怒られることもよくあるが、やらなければ終わらない。私たちは現場で工事をやってはいけないので、 お願いしてやってもらうしかない。 (山形大学工学部・PBL) 「前に踏み出す力」の中では、 「主体性」をあげた人が多かった。実行力ももちろん必要であるが、 仕事を自分のものとしてとらえる姿勢がまず何よりも重要である、と考えていることがうかがわれ る。さらに、自分の仕事を習得し、チームの一員として機能するためには、周りの人に自分から働 きかけ、学ぶ姿勢が必要である。そのためには、度胸も必要という回答もあったように、入社 1-2 年で仕事に必要な知識やスキルを身に付けるためには、指示待ちではなく、まさに自らアクション を起こすことが求められているのがわかる。 ■考え抜く力 課題発見力 ~成果につながる課題抽出や情報収集を積極的に行う ・私立大学入試センター・広報担当 B氏【課題発見力、主体性、実行力】 入試広報業務は、社会人基礎力の能力がすべて必要になってくる。何かが欠けていてもいけないのでは ないか。営業マンのように何かノルマが課されているわけではないが、広報担当として、どのような広 報をすれば受験生が増えるのか、大学をどのようにしたらアピールできるのかを自分なりに考え、その ために必要なことを具体化して行動しなければならないと思う。 (京都産業大学・O/OCF-PBL) ・ゼネコン・施工管理【課題発見力、計画力、[人柄、交渉力]】 現場の人と上司に挟まれるので、人柄や交渉力は重要だし、現場の問題点を発見する力や計画性も必要。 専門知識に関しては調べればわかるので、先輩のようにぱっと見て「これは違う」とわかるようになれ ばいいのはもちろんだが、それは新入社員はできなくてもいいようで、 「まず慣れろ。やれることをやっ ていけ」と言われている。専門知識がなくてもできる部分は、社会人基礎力の部分が多く、 「そこはでき ているものだと思って採用しているんだな」とすごく感じている。振り返れば、たぶん面接でもすごく そこを見ていたんだと思う。 (山形大学工学部・PBL) 計画力 ~次々と発生する問題や急な変更を処理して成果につなぐ ・大手メーカー・機械設備開発職【計画力】 自分のユニットがミスをすれば、工程全体に支障をきたすことにもなりかねないし、関連する部品メー カー等、他企業のスケジュール管理も必要なので計画力が必要である。 (香川大学工学部・産学連携 PBL) ・ゼネコン・施工管理【計画力、発信力、傾聴力】 工程管理は、先を見通してやらなければならないので、計画力が大事。今は、リーマンショックの影響 を建設業界がいちばん受けていて、周りのゼネコンよりも「いかに短い工期で安くできるか」というこ とをウリにしなければいかず、そうすると現場にしわ寄せがくるのは明らか。自分たちもサブコン(下 請け)さんたちも儲けて、施主も喜ぶという形にもっていかないといけないが、そうすることが今の時 代は難しくなってきている。施主とのやりとりは、設計に関しては設計担当の人たちがするが、施工上 233 安くできることがあったり、急なプラン変更があったりもするので、そういうときには現場の私たちも 施主さんと話す。いろいろな人たちと折衝しなければならない。 (山形大学工学部・PBL) ・大手レンタル業・営業事務【計画力、実行力、ストレスコントロール力】 営業事務なので、お客様からの連絡を営業マンにつないだり、発注を正確に伝票に起こしたり、請求書 を立てたりと、日々似たような、でも1つひとつ違うものを丁寧にすみやかに回していく必要がある。 お客様からの急な連絡や変更処理、迅速対応は日常的で、ストレスフルなことでも受け流すことも大事 だし、自分の中でどこかで折り合いをつけていく必要がある。確かにその時は大変だけど、それでいち いち辞めようという発想にはならないで済んでいる。社会人基礎力の 12 の能力の枠組みを念頭に行動し てきたことで、自分の中で折り合いのつけ方というか、うまく処理できるようになっている。 (流通科 学大学サービス産業学部・ゼミ) 創造力 ~よりよいものの創出のためにヒントをさがしたり工夫したりする ・大手住宅メーカー・研究開発職【創造力、実行力】 周りの人が自分の研究にヒントになるものがないか探そうとする姿勢を尊敬するし、どこにどんな人材 がいるということをウオッチしているアンテナの広さに驚いた。一方で、そうしたご質問に、わからな い、答えきれない、まだまだ知識の足りない自分が悔しい。なので、環境管理士資格取得に向けた勉強 を始めている。所属する研究所での昇進に必要な資格ということもあるが、周囲の期待に応えたるため にも、学び続ける気持ちの強さを痛感している。 (大阪大学大学院工学研究科・研究室) ・看護師・総合病院勤務【創造力、柔軟性】 仕事に必要でありながら、現場の人に足りないのは、創造力…「この症状にはこの方法」 「昔からこうだ から」ということに固執しがち。経験はもちろん大事だと思うが、新しい方法をなかなか取り入れられ ない。柔軟性…看護士、ME、医師等、立場の違いでしょっちゅう意見が食い違う。皆で話し合って解決 する、ということがなかなかできない。(石川県立看護大学・PBL) 「前に踏み出す」 「考え抜く」 「チームで働く」の 3 つの力の中では、コメント数がやや少なかった のが「考え抜く力」である。新入社員時代のこの時期では、自分一人で考え抜くことが最重視され る業務を任されることが比較的少ないためであろう。しかし、コメントは少ないと言っても、むし ろ重要度・必要度は非常に高い。特に、理系の仕事で作業や製造の工程に関わる仕事にとって計画 力は不可欠であり、大学時代よりも付加条件の多い環境で、スケジュール管理を行うことが求めら れる。1 つのミスが工程や組織全体に影響する、大きな責任の伴う能力であるとも言える。 ■チームで働く力 ・ 介護士・特別養護老人ホーム勤務【チームで働く力】 特別養護老人ホームに勤務。施設内では介護職員という立場になり、医師や看護師、栄養士など、さま ざまな職種のスタッフが協力しながら働いている。利用者のお年よりが清潔で快適に過ごせるよう、着 替えや食事・入浴などをお世話したり、コミュニケーションをとったりすることも仕事。利用者やその 家族の方との関係だけでなく、日勤・夜勤といった一日の中でのスタッフ入れ替わりに伴う引継ぎや、 多様な職種が混在するスタッフ間でうまく調整するなど、チームワークが重要。 (奈良佐保短期大学専攻 科福祉専攻・実習) 発信力 ~自分の考えをわかってもらうことで、仕事に必要な情報を得ていく・自分の考えを効果的に相手 に伝え、成果につなぐ 234 ・ゼネコン・施工管理【発信力】 現場の人にただお願いしただけではやってもらえない。 「めんどくせえよ、お前らでやれよ」と言われた りするので。そこをうまくやってもらえるようにもっていくのは、社会人基礎力だと思う。 (山形大学大 工学部・PBL) ・管理栄養士・民間総合病院勤務【発信力】 管理栄養士の仕事は、専門知識を身につけていてあたりまえ。それだけではなく、専門知識を患者さん や厨房スタッフ相手にうまく伝えて、メニュー提案をしながら健康の維持管理につなげていくというこ とが必要。社会人基礎力であれば発信力が必要だと思う。(愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) ・警察官・県警【発信力】 交番で勤務していると、道案内などお年寄りなどに対応するケースも多いが、プロジェクトの取り組み を通して地域の様々な年齢の方と関わっていたので、その経験が活きていると思う。そもそも、プロジ ェクトの活動を通して人前で話をする機会自体が多かったので、それも含めて「会話」のしかたが身に 付いた。プロジェクトの取組だけでなく、小学校のクラス担任の補助員(特別支援アシスタント:障害児 の支援)もやっていたので、「子どもに対する対応の仕方」については今の仕事に活かせていると思う。 深夜時間に見回りをしていると、夜遊びをしている子どもたちに声をかけるような機会があるが、大学 の経験を思い出して、 「今、どのような言葉づかい・声のトーンで話しかけるべきか」考えながら対応し ている。 (広島経済大学興動館・プロジェクト) ・私立大学入試センター・広報担当【発信力、傾聴力、実行力】 受験生は保護者の関わりが深いので、保護者に対してもしっかりと自分なりに、大学の方針や体制につ いてわかりやすく話ができる能力が必要。慣れも必要だが、相手の気持ちはやはり経験者が理解してい ると思うので、そのような機会があれば積極的に参加している。その点では、傾聴力も重要。 (京都産 業大学・O/OCF-PBL) ・大手メーカー・機械設備開発職【発信力、傾聴力、柔軟性、ストレスコントロール力】 所属部署は製造の大きな工程の中で言えば下流部門になるが、関連する部門や、部品メーカーとの折衝 が多いため、大切なのは人柄やチームワーク力(発信力、傾聴力、柔軟性) 。理想を求める上流の研究所 (研究開発部門)や、更に下流部門となる現場(工場のオペレーター)と交渉する際にも、コスト上、 出来ることと出来ないことを理論的に説明してわかってもらう必要がある。上流ユニットと下流ユニッ トの板挟みになることも多いが、そういう意味ではストレスコントロール力も重要。(香川大学工学部・ 産学連携 PBL) ・鉄鋼メーカー・事務職【発信力、傾聴力、計画力】 事務職ではあるが、職務上工場等とのやりとりが頻繁である。コミュニケーション能力が必要な職務と いえる。また、納期の調整なども自分が行う場合があるので計画力も必要。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・私立大学入試センター・広報担当 A氏【発信力、傾聴力、情況把握力】 受験生や保護者の方に会ったり、電話でやり取りしたりする中で、信頼されることがとても大事。落ち 着いて話を聞き取り、正確に情況を把握した上で、安心感を与えられるようなコミュニケーションをと れることが大切。(京都産業大学・O/OCF-PBL) ・私立大学入試センター・広報担当 B氏【発信力、傾聴力、情況把握力】 面接のようにかしこまって話すのでなく、人と対話をするというイメージで取り組む。また、自分を上 手く伝えるためにはどうしたらよいかを考えることや、相手の求めていることを理解することが重要。 235 その点では、傾聴力と発信力が重要だと思う。例えば、相手の質問を理解した上で、まず答えから話を するなど、明確に伝えることの工夫も心がけている。 (京都産業大学・O/OCF-PBL) ・大手レンタル業・営業事務【発信力、傾聴力、主体性】 自ら進んで動く、自発的な主体性。それから、仕事はつねにコミュニケーションが良好でこそ回ってい くので、お客様とも営業事務の同僚とも、営業マンともそうである。コミュニケーションの力に必要性 をものすごく感じる。 (流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 傾聴力 ~相手の言うことをしっかり受け止めることで、目標とする成果につなげる ・管理栄養士・民間総合病院勤務【傾聴力】 伝えるための前提として、聞くことがとても大事だと思う。患者さん 1 人ひとりによって状況は違うし、 厨房スタッフにも調理上できることとできないことがある。それらのネックになっている点を、丁寧に 辛抱強く聞き取って明らかにしていく粘り強さがないと、仕事にならない。 (愛知学泉大学家政学部・産 学連携 PBL) ・製薬会社コ-メディカルサポート部門・派遣社員【傾聴力、情況把握力】 コ-メディカルのサポートスタッフは、MR と違って女性が多い。看護士や薬剤師は女性が多いので、女性 同士だと話がはずみやすく、また女性同士でないと言いにくいことも結構あったりして、会話が盛り上 がった先に、重要な情報をぽろっと言ってくださることがあるので、女性ならではのコミュニケーショ ン能力を期待されていると感じる。 (愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) ・看護師・総合病院勤務【傾聴力、情況把握力、課題発見力】 絶対必要なのは、傾聴力…上司、チームのメンバー、患者、いずれにも必要。相手が何をしてほしいの か、ちゃんとニーズを汲み取れないとダメ。情況把握力(→注 回答の内容から言えば、課題発見力とも 言える)…患者の状態を観察して、その人にとって何が正常で何が異常なのかを判断する力が必要。その 人の普段の様子をきちんと把握した上で、状態を正しく判断できること。 (石川県立看護大学・PBL) ・管理栄養士・民間総合病院勤務【傾聴力、発信力、柔軟性、課題発見力】 入院患者向けメニューを作って厨房に持っていたら、 「こんな手間のかかるメニューは作れません」と厨 房スタッフに即答で断られたことがある。管理栄養士として僕のように新人が入ると、厨房スタッフは チェックしていて「生意気な若いのが入ったぞ、メニューについて何か言ってくるぞ」というようなこ とになるようだ。とはいえ、作れませんでは困るので、厨房スタッフといろいろ話をして、どこがネッ クなのか、別の食材や調理方法なら出せないのか、実現可能性を探っていくわけだが、そのやりとりは かなり大変。患者さん相手、厨房スタッフ相手いずれをとっても、現状を聞き取って、妥協点を見極め た上で、 「では、こうしましょうか」と話を持っていくような提案する力、相手を見極めて交渉する力が ないと、結果が出ない。(愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) 情況把握力 ~課題解決のために何が求められているかをつかむ、周囲の人の情況に配慮する ・フードサービス・店舗勤務【情況把握力、課題発見力(思いやり)】 特に重要と感じるのは、情況把握力。客の入り状況や売れている商品の流れを見て、タイムリーに行動 することが求められる。お客様に対する思いやり、というか、要望に柔軟に対応することも大事。販促 キャンペーンで、ある「おもちゃ」を配布(複数のおもちゃがあり、お客様はそれを選ぶことができず、 ランダムに配布される)していた時、キャンペーン最終日に、その「おもちゃ」を探していて、 「どうし ても欲しい」というお客様がいた。その日の閉店時間にキャンペーンが終了となるタイミングでそのお 236 もちゃをプレゼントしたら、後日そのお客様から、お礼状が届いた。私個人としても大変うれしかった し、お店のファンになってもらうことができたと思う。 (広島経済大学興動館・プロジェクト) ・製薬会社コ-メディカルサポート部門・派遣社員【情況把握力、発信力、傾聴力、柔軟性】 病院は特殊な場所で、経営者の方針でカラーが違うので、柔軟性と傾聴力、情況把握力が必要。看護師 さんはすごく忙しいので、話をしながら、 「この人本当は忙しいんだな」ということを口調などから感じ 取って、早く打ち切ったり、あるいは「今日は話したそう」と感じるときはいろいろ質問を投げかけた りというように、その人の状況を感じ取る力も、すごく大事。ただ発信するだけだと、「何か来てるよ」 としか思われないので、「時期を見て発信」というふうに、使い分けが大事だと思う。 (愛知学泉大学家 政学部・産学連携 PBL) 柔軟性 ~異なる意見を取り入れたり受容したりすることで、仕事を円滑に進めたり、より大きな成果を上げ た ・中堅メーカー・開発・企画マーケティング【柔軟性、創造力】 研究開発系の場合、研究に没頭するタイプの人と、複数ポジションをこなすユーティリティプレーヤー とがいると思うが、僕は後者だという自覚がある。なので、これしかできないという風には考えないよ うにしていて、ほかにいったいどんな手段・方法があるのかといったことを常に考える。柔軟性や適応 力は要る。 (香川大学工学部・産学連携 PBL) ・製薬会社のコ-メディカルサポート部門・派遣社員【柔軟性、情況把握力】 情報を提供して、有用な情報を探って、それを協働する MR さんや本社にあげて、会社全体の売り上げに つなげるような間接的な仕事をしている。 「確実に情報を得る」ということに関しても、やはりチームワ ーク力が重要。事前に MR さんと密にコミュニケーションをとっていく必要があるし、コ-メディカルの 人とも関係構築ができていないと、お話が全然できないので、双方のチームワークが大切。特に訪問活 動では、柔軟性や情況把握力の2つがいちばん生きているところではないかと感じる。 (愛知学泉大学家 政学部・産学連携 PBL) 3 つの力の中でも、 「チームで働く力」に関するコメントが最も多く、また他の能力との組み合わ せが多かった。発信力・傾聴力をはじめとして、職場のメンバー同士のコミュニケーションに対 しても、仕事で接するクライアントや他の職務の人との間の、いわば仕事上のスキルとしても重 要であると考えられていることが見てとれる。また、ストレスコントロール力は、 「仕事で必要な 力」としては多くは上がってきていないが、後述する「自分にはまだ足りない・身に付ける必要 がある力」では多くの人が上げているのが特徴である。 ③ プログラムの受講によって身に付けた能力や態度は現在の仕事にどのように役立っているか 社会人基礎力を発揮すること、あるいは社会人基礎力の考え方を知っていることによって、仕事が 良好に展開したエピソードを職種別にまとめた。 ■業務を進める上での行動や仕事の仕方 <営業・事務関係職> ・保険会社・総合営業職【働きかけ力、実行力、規律性】 企業の中に入っていい時間は決められているので、必ず 10 分前には着くようにしている。入ったら食堂 の前に立って、会話のきっかけにするために、その日のスポーツ新聞を配ったりしている。 「○○さんは、 237 △△のファンでしたよね。今日の試合ではこのような結果が出ていますよ」などと声をかけながら、仲 良くなったうえで、保険商品の提案をするようにしている。あるとき、いつも素通りしていた方と会話 をすることができたので、商品の提案もした。実はすでに弊社のお客様だったことがわかったので、契 約内容の確認をしたら、整理したほうがよいものがあったので、その旨説明したところ契約の見直しを して、自分のお客様になっていただくことができた。 (跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・保険会社・総合営業職【実行力、計画力】 同時期に複数のプロジェクトを抱えることもたびたびあり、仕事をするうえでは同時進行が必然になる ので、ゼミの経験が役立っている。 (跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・保険会社・総合営業職【課題発見力、働きかけ力、情況把握力】 ゼミの学園祭プロジェクトなどで代表を務めて、「どうすれば利益が出るか」「どのように伝えれば人は 動いてくれるか」ということは、つねに考えていた。今は、 「素通りしていく人にはどのようなアプロー チをすればいいのか」などを、数秒の間に読み取ることが求められる仕事についているが、ゼミで培っ たことは、気心が知れた仲間以外にも応用がきく。(跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・派遣会社・営業職【主体性、働きかけ力、実行力】 7~8回目に訪問した企業で、たまたま人事の方とお会いすることができて、 「今は5分くらい時間があ るから、ちょっと座ってくれてもいいよ」と声をかけていただいた。実はお会いできると思っていなか ったので、適切な資料を持っていなくて、とりあえず持っていた自己紹介票をお渡ししたら、 「字が小さ いから読みにくいよ」と言われた。次回の訪問時には大きい字で書き直した自己紹介表を持参して、 「書 き直してきました」とお伝えしたら、人事の方との距離が近くなって、契約していただけた。主体性や 働きかけ力が役に立ったのではないかと思う。(跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・機械メーカー・営業【柔軟性】 プログラムで行った討論(=多様な人々とのコミュニケーション)が役に立っている。会社/取引先には、 (学生時と異なり)年齢や出身地が異なる人が沢山いる。そういった方とは「自分とは考え方が違う」 ということを前提にしてコミュニケーションをとることが必要なので。(武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・機械メーカー・営業 【課題発見力、柔軟性】 物事を考える時、自分の中で複数の考え/アイデアが存在する時がある。それをひとつにまとめるには、 大きなコンセプト・テーマを念頭に置くことが必要。このようなまとめる能力は、プログラムの中で他 のメンバーから出る複数の意見をまとめていった作業で身についた。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・機械メーカー・営業 【考え抜く力】 プログラムでCSR報告書を作成したことが、現在の仕事の面での成長に繋がっている。現在の仕事で も、 「何となく作る」のではなく、細部(フォントタイプの選び方や画像素材の入れ方/位置等)にも拘 って作成している。この細部については、 「そうする根拠」をきちんと考えている。こうすることで、報 告書に対する質問にも的確に応えていける。これは「考え抜く力」にも相当する能力だと感じる。 (武蔵 大学・3 学部合同 PBL) ・大手印刷会社・購買【発信力、度胸】 大勢の前で意見を言う(発表する)という経験が仕事に役立っていると感じる。 「社会人基礎力育成グラ ンプリ」に出場して、大勢の前でプレゼンテーションをしたことで「大勢の前で意見を言う」という能 力が身につき、さらに度胸もついた。また、この「社会人基礎力育成グランプリ」の出場経験は就職活 動の面接の際にもPRした。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) 238 ・大手印刷会社・購買【傾聴力、柔軟性】 プログラムでは、他の人の(間違っていると思われる)意見を正面から拒絶せずに、オブラートに包ん で指摘し、プロジェクトを正しい方向に導く、ということをした。この経験は、会社での多様な意見に 対する対応の仕方の部分での成長に役立っている。(武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・大手レンタル業・営業事務【傾聴力、柔軟性】 それまでは自分の言いたいことを言うだけ言って、人の言うことまでは聞いていなかったが、社会人基 礎力を頭に置きながらゼミナール生活を過ごしたことで、自分の言いたいこともしっかり言いきるけれ ど、人の言いたいことも最後までしっかり聞いて、それぞれの言い分の中で正しいことも正しくないこ とも、それぞれの言い分以外の要素、締切とか他の関係者とかいろんな要素を考慮しながらどこに歩み 寄りを見出すのか、落としどころを考えながら決断を下す。そういうことができるようになった。 (流通 科学大学サービス産業学部・ゼミ) ・大手鉄鋼メーカー・事務職【課題発見力、実行力】 自分が先輩に聞かなければわからないことがある。これは代々、口伝えで後輩に教えているから業務の 仕方が文書化されていないからである。後々の新人のことを考え、可能な範囲で先輩に確認してもらい ながら、自発的に「マニュアル化」を試みている。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) <技術職> ・ゼネコン・施工管理【発信力】 自分よりずっと年上の経験豊富な方々に「それは危険だからやめてくれ」とか「こっちの作業がまだあ るから、この作業は中断して休憩していてほしい」と言わなければいけないときがあるので、うまく話 すことが必要になる。PBL の冊子作りでは、知らない人に電話してアポをとって取材に行ってまとめるこ とをやり、地域の方に関わる機会もあった。自分でも「お勉強だけしているのでは社会に出てからダメ だな」と思っていたので、いい経験ができたと思う。(山形大学工学部・PBL) ・大手住宅メーカー・研究開発職【発信力】 プログラムで先生方や企業の方に教えられたことで、自分の研究や思いをどうすれば伝えられるか、わ かってもらえるかを常に頭のどこかで意識するようになったし、ビジネス化するという視点は叩き込ま れた。その上で、自分の企画や提案をポンと出すのではなく、相手の立場・知識・関心を考えた上で、 伝わるように目配りすることで、展望が開けていくのだろう、といった期待や希望を持ちながら進めら れるようになった。(大阪大学大学院工学研究科・研究室) ・大手住宅メーカー・研究開発職【発信力】 学会のポスターセッションなどは研究をポスターに要約するが、企業向けだとこんな立派な研究ですと 言うだけではダメで、A3・1 枚にビジネスとしてこんな可能性・展望があるというところを織り込んだ 企画書にした上で、プレゼンしなければいけない。まったく発想が違うので最初は戸惑ったが、半年の 活動を経てみると、プレゼンに自信がもてるようになった。(大阪大学大学院工学研究科・研究室) ・大手メーカー・機械設備開発職 【計画力、情況把握力】 工場立上げ業務は、全体スケジュールが上から降りてくるので、トラブルで遅れそうになる時には、傷 口が広がる前に工程をチェックして、スケジュールの組み換えを即座に行わなければならない。その際 にはスピードをアップしつつも、精度が落ちないような工夫は必要であり、計画力と情況把握力は活か せた。大学院生時代には各 PBL チームの進行を管理していたこともあるが、その際の経験も役に立って 239 いる。 (香川大学工学部・産学連携 PBL) <資格関係職> ・管理栄養士・民間総合病院勤務 【考え抜く力、発信力】 企業の方に提案したり、実際の販促活動を展開したりする中で総合的に身についたと思う。とくに販促 活動では、PR 媒体にスペースと情報量に限りがある。また、企業側も、時間や実際の調理工程、コスト 面など多数の制約がある。それらの制約の中で自分たちの、栄養や健康に関するメッセージをどう消費 者に伝えるか、どうお弁当に具体化するか、といった点をとことん考え抜いた経験はすごく役に立って いる。 (愛知学泉大学家政学部・PBL) ・看護師・総合病院勤務【実行力、計画力】 プロジェクトを通して、仕事が重なって整理がつかなくなっても、短期・中期の目標を少しずつ変えなが ら、結果的に目標達成できればいい、ということが身についた。今も、ラダー制度(看護師の資格要件制 度)で 1 年後にどうなりたい、ということを考えなければならないが、計画通りに行かなくても、自分で 修正していける。(石川県立看護大学・PBL) ・製薬会社のコ-メディカルサポート部門・派遣社員 【傾聴力、情況把握力】 企業の人とやりとりすることで、傾聴力はかなり磨かれた。企業の中でも、本心を言わない人って結構 いるが、口調や視線から、 「あの人はこう思っているんじゃないか」ということを心にとめておいて、持 ち帰ってディスカッションをするときに、 「ああいう反応だったから、こっちのプランはダメだよ」とい うふうにした。言葉以外の表情から読み取る力は、今の業務でもすごく役立っている。 (愛知学泉大学家 政学部・PBL) ・介護士・知的障害者通所施設勤務 【仕事に対する姿勢、チームで働く力】 仲間同士で福祉についてのお互いの熱い思いを語り合った。また、「自分のいいところをもっと見よう。 でも、自分一人ではできないこともある。みんなそれぞれいいところがある」といった、チームで働く 上での考え方も分かち合うこともできた。その経験があったからこそ、自分なりの福祉現場での働き方、 あり方に対する考え方の基盤を作ることができた。その経験はまちがいなく、今、福祉の現場で働く上 で活きていると思う。 (奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ・通信制高校非常勤講師 【主体性、実行力】 大学時代から、見よう見まねであっても、とにかく積極的に物事を提案していくことができるようにな っており、現在に役立っていると思う。また、リーダーとしての立場から、計画を設計することについ ても慣れることができた。またプロジェクトではないが、授業のなかで「ビジネスプランの作成」を行 ったものがあり、授業計画を立てる、プランニングという点で現在に活かされている。 (広島経済大学興 動館・プロジェクト) 240 大きく見て、営業・事務系の職種では「実行力」と「柔軟性」に関するエピソードが多かった。 特に営業職は、自分から動かないと仕事にならない、という状況の中で、相手先に合わせて柔軟 に着地点を選択していくことが必要であり、ここで社会人基礎力を発揮することが仕事の成功に つながることが多いためであろう。技術系では「発信力」に関するエピソードが多い。コミュニ ケーション力の不足が指摘されることが多い技術系人材でも、発信力・傾聴力の重要性を知って 相手にわかりやすく、効果的に伝えることができることが重要であることが示される。資格系の 職種では、仕事の上で専門技術を生かすためには、様々な社会人基礎力の発揮が不可欠であるこ とがわかる。 ■自己分析・振り返りによる目標設定、求められる力の客観視 ・大手印刷会社・購買 【ストレスコントロール力】 プログラムの後の反省会でお互いの思いを話すことで、同じ悩みを抱えていることを知ることで、スト レスを解決できることが分かり、ストレスコントロール力が身についたと思う。(武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・鉄鋼メーカー・事務職 【目標設定】 振り返りの意識を持つようになったことは、今も役立っている。ただただ今を過ごしてしまうだけでな く、 「今年何ができたのか(できなかったのか)」といったことを振り返り、これを踏まえて目標を設定 する意識が付いた。(武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・私立大学入試センター・広報担当 A氏 【目標設定】 社会人基礎力プログラムを受講したことにより、自分の何を成長させるべきか、明確なキーワードに沿 って自分なりに整理できるようになった。具体的には、傾聴力をより成長させて、知識やノウハウを吸 収し、課題解決力等他の能力を成長させたいと今は思う。(京都産業大学・O/OCF-PBL) ・私立大学入試センター・広報担当B氏 【求められる力の客観視】 思った以上に自分の中に社会人基礎力のキーワードが入って、根付いている。話の中に社会人基礎力の キーワードが、とくに意識するでもなく自然に出てきていて、自分たちの行動を具体的に形容できる表 現を持っていることが、一番今につながっている。(京都産業大学・O/OCF-PBL) ・地方自治体・事務職【目標設定】 チームメンバーの中で自分がここまで主体的に動ける、徹底して提案を考えられるというのがわかった し、プログラム以外に自分がやりたいことが出てきた時に、その動機や必要性、重要性、今後のフォロ ーをきちっとメンバーに説明できて、納得して送り出してもらえた。さらに戻ってきた時にすんなり受 け入れてもらえたという経験も大きい。業務で今求められることでないとしても、いずれ必要になる時 のために、12 の能力を自分の中で意識して、自分の心がけということが大事になるのでは、と思ってい る。(京都産業大学・O/OCF-PBL) ・地方自治体・事務職【自己分析】 役所には役所の手順、手続き、論理というのがあるので、積極性や主体性、柔軟性といった能力が強く 求められるかというと、正直そうじゃないところがある。じれったいが、公務員である以上、受け身の 仕事が中心になるのはどうしようもないところ。今回ヒアリングを受けてみて、自分の長期的成長は、 自分で意識的に見ていかないと厳しい。業務という枠組みだけで成長しようとするのは難しいだろうと 感じる。 (京都産業大学・O/OCF-PBL) 241 ・大手住宅メーカー・研究開発職 【目標設定】 自分の立ち位置や成長の道筋がよく見えるし、専門領域と人間性の両面で今後どういう方向で伸ばして いけばいいのかといった問題意識も明確に言葉にできる。なので、職場での面談などでも所属長やその 上の上司とのやりとりがスムーズにできている気がする。(大阪大学大学院工学研究科・研究室) ・看護師・総合病院勤務 【自己分析・ストレスコントロール力】 仕事で壁にぶつかった時、自分自身を分析してみて、看護部長に「本当の自分らしさを失うのではなく、 よさをいかせるところで働きたい」と直訴した(当時所属していた整形は外科=急性期だが、自分は内科= 慢性期の方が向いている、等も)。こんなことを言っていいのか、と思ったが、辞めるのではなく変えら れることを変えてみよう、と思った。ちょうど腎内科の病棟ができたことで、異動させてもらえた。透 析は未経験で、全く知らないことばかりだが、今は仕事がとてもおもしろいと思える。複雑な気持ちだ ったが、今ではこれができたことが自信になった。これは、社会人基礎力を知っていたからこそできた ことだと思う。 (石川県立看護大学・PBL) ・看護師・総合病院勤務 【自己分析・ストレスコントロール力】 必修科目だけでなく、このような活動をやったからこそ主体性・働きかけ力・実行力がついたと思う。 また、看護の世界だけでなく、商工会の人や NPO の人等、いろいろな考え方を知って柔軟性が身につき、 自分の足りないところにも気がついた。この活動自体は地域の人の健康つくりで、健康の維持・増進と いう第一次予防の重要性を身をもって知ったのは大事だと思う。 (石川県立看護大学・PBL) ・看護師・総合病院勤務 【求められる力の客観視】 大学(学生)でも病院の現場でも、専門性が高い分、基礎力が足りない人が多いかもしれない、と思うこ とが多い。病院という限られた現場で外を知らないと、それが当たり前だと思ってしまうが、学生のと きに「社会人基礎力」というものがあることを知ったのは強みだと思う。足りないところがあることに 気づけたのがプラスになった。(石川県立看護大学・PBL) 社会人基礎力を使うことで、大学時代と共通の言語で自分の現状を客観的に捉え、何が必要 か、そのためにはどのような行動が必要かを考えることができていることが見て取れる。振 り返りの経験を繰り返し持つことで、目標設定や、そのために何をすればよいかを考えるこ とができるようになり、キャリアパスを自分で設計できるようになっていることもわかる。 また、周囲の人の行動を社会人基礎力の言葉で客観的に評価できることは、人間関係のスト レスの軽減につながることもうかがわれる。 ■ビジネス意識 ・フードサービス・店舗勤務 プロジェクトでカフェの運営に携わっていたので、お客様の大切さについては十分に理解している。ア ルバイトであれば「客が来ない方がいい(楽) 」だが、運営者の目線では「客が来て欲しい」と、全く違 う。プロジェクトでは、運営者として集客・売上を目標に置いていた。そういった目線で物事を見るこ とが出来るので、今はアルバイトの学生のモチベーションを上げることを意識している。 (広島経済大学 興動館・プロジェクト) 242 ・大手住宅メーカー・研究開発職 研究にしか目が向かなかった、知らなかった自分が、研究の周辺部分に目がいくようになり、 「ビジネス にするには」という観点を持てたので、間違いなく視野が広がり、修士論文や現在の業務の質を高める ことにつながっている。ビジネス化といっても、自分にはビジネスの規模感やスケジュール感、人員規 模がわからなかった。たとえば提案を発表する時に、 「それはどれぐらいの予算規模でやるのか」「まず どれぐらいの予算をつけてほしいのか」という質問があり、よくわからないまま何となく「まず 100 万 円ぐらい」というような回答をしたら、企業の方に「あなたの提案なら少なくとも 1 億円の予算が要る よ」と指摘された。また、 「その提案に社内の人材を投入できるとしたらせいぜい何人、あなたがやろう としていることは研究所の配置人員を超えている」といったやりとりも目にした。企業に入れば、その ようにお金やヒト、モノのことを常に考えた上で、実現可能なギリギリのラインを見極めて、出しても らうように交渉しなければいけないんだ、そのためには自分のやりたいことをいかに説得的に訴求でき るかが勝負なんだ、ということを強く意識した。今も業務に際してはそのような観点を必ず意識して立 案するようにしている。(大阪大学大学院工学研究科・研究室) 社会人基礎力育成プログラムには、学びや研究と社会とのつながりを意識させる設定の中で行 うものが多い。これによって、学生は自分の行っていることを社会で生かすためには、学問以 外に何を考えることが必要かを知ることになる。その経験が、社会で働くことへのスムーズな 移行につながったり、自分の研究の質を向上させたりしたというコメントが見られた。 ■困難さを乗り越えたり大きなプロジェクトをやりとげたりした経験 ・介護士・特別養護老人ホーム勤務【グランプリの準備】 介護実習の経験を社会人基礎力の言葉でふり返りながら、グランプリ発表用のパワーポイントを作り上 げていったり会場で発表したりした経験は、今にすごく生きている。あの時、きつくても頑張れたから、 今、職場でいろいろ難しいことや新しいことを任された時に、過去の自分にできて今の自分にできない ことはないと自分に言い聞かせることができる。 (奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ・管理栄養士・民間総合病院勤務【企業・組織との交渉】 大学でああいう規模の大きい社会人基礎力プログラムを経験していたおかげで、今のほうが楽。目の前 の厨房スタッフとの間で折り合いどころを見出せるように考えればいいだけだから。コンビニという大 きな企業、組織が提供するメニューを、学生の提案で動かすために求められる提案をし、交渉する大変 さに比べれば、何ほどでもないと思える。 (愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) ・製薬会社コ-メディカルサポート部門派遣社員【困難な状況の克服】 このプロジェクトを達成できたことで、4 年になってからの 1 年間の、国家試験合格という大きな目標に 向けての原動力や忍耐といったものに、すごく生かされていると思った。 「あのプロジェクトをやったん だから国家試験もできる」という感じ。今でも、何か大変に思うことがあっても、 「あれができたんだか ら大丈夫」というように、自分の中で自信になっている。(愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) 困難を乗り越える経験には様々なものがあるが、そこでの自らの成長に気づくことで、それ以後も 難しい状況に果敢に挑む姿勢につながる。活動の中にあえて困難な課題に挑戦する場面を作り、社 会人基礎力の言葉で振り返ることが能力のさらなる向上を導いた例である。 243 ④社会に出てからでなければ身に付けられない能力、大学で身に付けただけでは不十分な能力は何か 現在の仕事の上に必要な能力で、大学時代に身に付けられない、あるいは大学時代のレベルでは不 足だと思うものを、能力別にまとめる。 ■主体性 ・鉄鋼メーカー・事務職 集団でものごとを進め、作り上げるという経験は、 「責任感を自分に課する」という意味でとてもよい機 会であった。ただ、今の職場では(チームにもよるが)個々人が自立していることが求められているの で、もう一歩先の意識を持たなければならない。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ■働きかけ力、傾聴力 ・特別養護老人ホーム勤務 私に足りないところは、課題や問題を見つけた後にあると感じている。たとえば、利用者の方やスタッ フ間で生じた問題を、一人で抱え込んで自分だけでなんとかしようとして答えを出せなかったり、答え を出せても、人よりも遅くなったりしてしまう。いろいろなスタッフの意見を自分から意識的に聞いて いくとか、専門知識のある周りの人をどんどん頼って巻き込んでいくといった、傾聴力や働きかけ力の ところを伸ばしていかないといけないことを実感している。(奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ■課題発見力、発信力、傾聴力 ・ 保険会社・総合営業職 質問力がないことを痛感。ゼミのプログラムでは社会人と接する機会はあったが、日々話をするのは同 世代が主だったから、以心伝心でやっていたことがたくさんあった。社会人になってからは、お客さん にアポをとったあとの、話を始めるときの質問の投げ方次第で、どんどん相手が話してくださることも あるし、逆に話が弾まないこともあるので、質問の仕方は大切だということを実感している。 (跡見学園 女子大学マネジメント学部・ゼミ) ■計画力 ・管理栄養士・民間総合病院勤務 計画力がまだ足りない。やろうと思っていても違う仕事が入ってきて、予定通りにいかないことがまだ まだある。そうするとできるのがギリギリになってしまうので、もっと事前の予測力を高めないとと思 う。 (愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) ・知的障害者通所施設勤務 不足を感じるのは計画力。物事の順序がうまくつけられなくて、遠回りしがちなところ。社会に出ると、 仕事としてしなければいけないことや、利用者の方に対して自分ができることを確実にこなした上で、 それから自分のしたいこととなる。そのように、自分の気持ちをコントロールできなければいけないと 思うようになった。(奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ■計画力、実行力 ・ゼネコン・施工管理 学生時代は「いろいろなことをやりながらマネジメントをしてきた」という自負があったが、今は、現 場の施工管理についても自分自身のマネジメントについても、 「本当にできているの?」と聞かれるとで きていないし、全部が未熟だと思う。 「新入社員だから、まだできなくてもいいんだけど、次から頑張ろ うね」と言われると、すごく悔しい。グランプリでは賞を頂けるような評価をしていただいたが、立て た計画が甘かったり、 「まだ自分は甘いな」といろんな場面で実感している。 (山形大学工学部・PBL) 244 ■発信力 ・地方自治体・事務職 実際に社会に出てみて、これまで人前でスピーチする機会があまりなかったので、伝える力、情報を発 信するところが足りないと思う。パワーポイントなどでの発表の経験はあるが、会議などで話したりす る経験があまりなかったので、その点がまだまだなのではないかと思う。(京都産業大学・O/OCF-PBL) ・通信制高校非常勤講師 自分の興味に比例して「発信力」が変化してしまうことがよくない、と考えている。強く興味を持って いることはうまく発信できるが、そうでないものはそれなりの発信になってしまう。これではよくない と思うので、直していきたい。(広島経済大学・プロジェクト) ■発信力、柔軟性 ・介護士・小規模多機能型居宅介護事業所勤務 介護の現場で働いていても、一緒に働く人たちが介護の知識や経験を持っている方ばかりではないので、 自分の知識や表現が、そういう方にはあたりまえではなかったり、違う意味で受け取られたりしてしま って、結果的に利用者の方にまでご迷惑をかけてしまうことがある。どのように表現すれば、自分の思 う意味で伝わるかをつきつめて考え出すと、これがすごく難しい。利用されるお年寄りの方や、後輩に 話すときも、自分の思いや考えがどういうふうに言えば伝わるのか、いつも考えている。発信する力や 柔軟に対応する部分で自信を持ちたい。(奈良佐保短期大学専攻科福祉専攻・実習) ■規律性 ・ ゼネコン・施工管理 規律性はすごく難しいと思う。学生のうちは先生から言われたことや、皆で「守ろう」と決めたことが ルールだが、社会に出てからの規律には、社会全体の規律と会社の規律、職場の規律、現場の規律など がある。会社の中でも部署が移動するとルールが変わるし、現場の所長が打ち出すルールもあり、自分 自身の仕事に関して言えば、設備のルールと現場のルールが両方入ってくるという、部署をまたいでい る形。 (山形大学工学部・PBL) ■ストレスコントロール力 ・派遣会社・営業職 同期の人と比べると、ストレスコントロール力や主体性、柔軟性などの力はついていると思うが、与え られた仕事を消化しきれず、いっぱいいっぱいになることがしばしばある。学生時代は先生がやってく れいていたことを、今は自分でこなしていく必要があり、仕事量が格段に増えたと感じている。 (跡見学 園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・看護師・総合病院勤務 どれも学生時代のものでは通用しないが、特にストレスコントロール力。学生の間は、あらゆる意味で 守られている。ストレスの原因の大部分は人間関係だが、学生なら仲のいい者同士ですごせばいいし、 嫌いなら関わらないで済ませることもできる。その分、折り合いをつける経験が全くと言っていいほど ない。社会に出ると関わらないで済ますことはできないので、どう折り合いをつけていくかが試される。 (石川県立看護大学・PBL) ・管理栄養士・民間総合病院勤務 ストレスコントロール力をもっと高めたい。期限が迫ってきたり、現場から色々言われるとやはり切羽 詰ったり、いらっとしたりする。上司の方にも、 「人間を相手にする仕事にストレスがない仕事なんてな 245 いよ」と言われるが、やはりそれをコントロールできるようになりたい。 (愛知学泉大学家政学部・産学 連携 PBL) ・製薬会社コ-メディカルサポート部門・派遣社員 ストレスコントロール力。大学は1つの箱の中に入っている形だから、うまくいかないことがあっても、 先生方に守られている中でのことなので、どうにか解決できる範疇だが、社会に出ると想像だにしない 突拍子もないことが起きる。それに対して誰かが付いてくれるわけではないので、そういったときに、 自分の中でごちゃごちゃしている部分をどこにもっていくか。ストレスの中には、自分で解決しなけれ ばいけない部分と、忘れなければいけない部分があると思うが、そういう部分をどう発散するかとか、 課題を見つけなければいけない部分をどこにつなげるのかということを見極める力は、外に出ていろん なストレスに直面してみないとわからない。(愛知学泉大学家政学部・産学連携 PBL) ■粘り強さ ・大手レンタル業・営業事務 自分なりに粘り強さはあると思っていたが、社会ではもっとそれがハイレベルに求められる。学生レベ ルの粘り強さは、どんなに協力企業の方と一緒にやっていても、どこか学生はお客さんで、企業の方か らすれば、しかるべきプロセスを踏んで、ある一定の成功や達成を体験させてあげようというような、 善意や好意のウェイトが強い。でも、社会にでると、もっとストレートな、ギブアンドテイク、かけひ き、取引で、 「○○するから、○○してくれ」的な話になり、ソフトなフォローなんて行われないことが 多いけれど、そこでやめるわけにいかなくて、食い下がったり、提案しなおしたり、作業しなおしたり という粘りが要る。(流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) ■計画力、責任感、仕事のスケジュール感 ・大手メーカー・機械設備開発職 大学時代は(相手が企業であっても場合によっては)できませんでした、と謝れば許してもらえるが、 社会人はそうはいかないので、目的に沿ってスケジュール管理していく計画力は重要。PBL でもその重要 性は理解していたが、今の仕事でそれをやると全体のスケジュールだけでなく、他の企業との信頼や生 産量、利益にもつながるので、 「すみません」の概念が全然違う。また、5 年、10 年かけて取り組む技術 の概念についても、スケジュール感や計画性では学生時代の概念とは全く異なっている。 (香川大学工学 部・産学連携 PBL) ■責任感 ・ 県警察 プロジェクトでは「責任感」を持って取り組んでいたが、その大きさが今は全然違う。大学時代はいく ら責任感があるといっても、問題があったら大学や親が助けてくれる、という意識があった。今はまさ しく自分自身が「警察官」として、その時々において「警察を代表する人」として見られることもある ので、行動全てに責任が伴うし、その責任は自分個人が最終的に負わなければならない。まだまだ、そ ういった「厳格な責任感」というものは自分に不足していると思うし、そういった意識をもっとしっか り持って仕事に臨まなければならない、と感じている。 (広島経済大学興動館・プロジェクト) ・ゼネコン・施工管理 いちばん必要なのは責任感。(PBL で作った)冊子は究極の話、無くてもいいもの。作成のためのお金はも らっているが、「できませんでした」と先生に謝れば、何とかなると思う。「学生は研究も忙しいから」 という言い訳が通用する世界。しかし社会人になれば、自分が動かないとダメなことが多すぎて、そこ 246 からくるプレッシャーはすごく大きい。(山形大学大工学部・PBL) ■ビジネス意識 ・大手印刷会社・購買 会社員(サラリーマン)は会社の利益を追求していかないと生き残れない。この「どのように利益を出 すか」という考え方は、学生が身につけるのは困難だと思う。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) ・フードサービス・店舗勤務 プロジェクトでは、明確な売り上げの目標があるわけではなかった。仕事では、目標が明確に設定され ていて、それを達成するために何をするのか、どのようにアプローチするのかといった深いところまで 考えなければならない。学生当時は、こういった意識にまでは至っていなかった。 (広島経済大学興動館・ プロジェクト) ■その他【基本的な事務スキル等】 ・大手鉄鋼メーカー はじめは「与えられた仕事に、プラスアルファをつける」ということを目指していたのだが、実際には 与えられた仕事をこなすだけで精いっぱいである。自分がしたいことができない、ということに対する もどかしさがあった。そういった意識は大事にしながらも、まずは業務を着実・確実にクリアできるよ うにならなければならない。 (武蔵大学・3 学部合同 PBL) 社会人基礎力が身に付いていることが役立ったという様々な回答があった反面、大学時代のレベルで は通用しない、という意見も多数あった。共通して見られたのは、大学時代はいろいろな意味で守ら れているが、社会に出ると大きな責任を負わなければならないことを実感していることである。また、 ストレスコントロール力については、社会に出てからはストレス源から逃げてしまうことはほとんど 不可能であるため、どのように折り合いをつけていくか、という点でさらに高いレベルでの対処が必 要になる。今回のヒアリング対象者のように入社 1~3 年目の人には、まさに直面する状況で必要な 能力であると言える。 ⑤その他 社会に出て、改めて社会人基礎力育成プログラムの効果を感じている、という感想が多く、たとえ 能力要素の名称は忘れていても、必要な力の枠組みは消化されて自分のものとして身に付いているこ とが伺われた。さらに、社会とのつながりを意識させるプログラムでは、社会人基礎力以外にも学生 の視野を広げるきっかけになる例もある。 ・基礎学力や専門知識は、顧客にとっては、あって当たり前のことなので、土台よりも下の部分。そして 人柄は入社するときにある程度判断されているので、社会人基礎力が 100%ではないかと思う。社会人 基礎力は、大学で初めてやったところでどうにかできるものじゃないということをすごく感じる。頭が 柔らかい小中学生の頃から少しずつ入れていかないと、大学生になったときは結構人格形成がされてし まっているので、そこから凝り固まったものをほぐしていくのは、なかなか難しいのではないか。 (愛知 学泉大学家政学部・PBL) ・自分も、プログラムに参加した仲間ともに、大手企業に偏って応募、ということはあまりなかった。あ る程度プログラムの中で「中小企業、技術系企業」に目が行くような意識ができたからだと思う。 (武蔵 大学・3 学部合同 PBL) 247 ・受講のタイミングとしては少し遅くて、修士 1 年後期か 2 年前期で受けたかったという思いが残ってい る。かといって、学部 4 年生では早すぎる。やはり知識の積み上げが必要なので、ある程度中身のある 提案やビジネスを意識した研究ということになると、修士段階がフィットすると思う。(大阪大学大学院 工学研究科・研究室) 社会に出て、改めて身につけ直さなければならないとしても、大学時代の学業の中で社会人基礎力 発揮する経験は非常に有意義であることが様々なコメントから読み取れる。その際に、プログラムの 目標を何に置くか=どの能力を育成するかは、専門分野、学年、学生のレベル、活動のスタイルによ って大きく異なってくる。これを的確に設定し、育成しようとする能力に合わせたサポート体制を作 ることが、プログラムの成功につながると言えよう。 248 2-3-3.在学生(卒業予定者)ヒアリングのまとめと分析 卒業予定の学部 4 年生と修士課程 2 年生に対して行ったヒアリングのコメントを、以下の観点で まとめ、分析を行った。 1.プログラムの受講によって身に付けたと思う能力は何か 2.プログラムの受講が学業への取り組みに役立った点は何か 3. 就職活動の場面で、社会人基礎力育成プログラムの経験はどのように役立ったか 4.今後さらに伸ばさなければならないと考える能力は何か 5.プログラムの改善を希望する点 在学生は、実際に社会で働く経験をしていないため、能力要素名の分類は特に強調する必要のない 場合は「前に踏み出す」「考え抜く」「チームで働く」の 3 つの力を軸とする。また、本文中では大学 名・教員名は表記するが、企業・団体名はイニシアル等で略記する。また、大学院生のコメントにつ いては「M2」を付記する。 ①プログラムの受講によって身に付けたと思う能力は何か 特にチームで課題解決やもの作りを行うことを通して身に付いたり、重要性を知ったりした能力を、 能力要素別にまとめる。 ■チームで活動する経験を通して、困難を乗り越えより高い成果を得られることを知る ・【主体性、傾聴力】 高校では、主体性を発揮する機会が部活しかなかったが、ゼミの活動は、地域に出ていろんな人と関わり を持つのでとても楽しく参加した。活動を通じて、人と人とのつながりが重要であることを強く認識し、 人の話をよく聞くようになった。今後は、もっと「傾聴力」を身につけていきたいと思う。 (阪南大学国際観光学部・ゼミ) ・【主体性、働きかけ力、計画力、課題発見力】 もともと人をまとめる力はなかったが、イベントなどを通じて後輩を指導していくうちに、まとめる力は 結構高まったと思う。社会人基礎力でいうところの、働きかけ力や主体性か。そして人に動いてもらう ためには事前準備が必要なので、その点では計画力や課題発見力もついたのかと思う。 (松山大学経営学 部・PBL) ・【主体性、実行力、チームで働く力】 言えば聞いてもらえるし、わからないことは聞けばいいし、知りたいことは調べればいいと、よくわかっ たので、主体性や実行力は明らかに伸びた。そして、そんな自分をみんな見てくれて、信頼できる。そう いう人間関係があるから、途中が苦しくても最後までがんばれることもわかった。チームワークがよいこ と、チームワークをよくするように自分が心がけることが、プロジェクトを回す上でどれほど大事かを痛 感したので、面接ではそういう気付きを自分の成長として素直に話した。企業の方もその思いはすごくわ かってくれたみたいで、面接の手ごたえが違った。 (流通科学大サービス産業学部・ゼミ) ・【働きかけ力】 リーダーだからと全て自分で抱え込むのではなく、チームとして動き、チーム全員でより良い結果を出す ことが大事だと感じるようになった。2 年生の時は、自分 1 人が頑張っていて凄くしんどくて、それを自 分だけで抱えこむ部分があったので、みんなに話を振るようにして、自分だけではなく、みんなの意見も 入れて、できるだけいい会合にできるように心掛けた。この点を意識したことによって、相手から協力し てくれることもあり、こうしたことは、自分の意識一つで変わることがわかった。(中京大学総合政策学 部・ゼミ) 249 ・【働きかけ力】 個人間のやる気の差が問題になることが多かった。また、メンバーとの連絡が途絶えるなどの問題が起 きた時に、報告・連絡・相談の重要性についても気づいた。現在は、このようなことの気付きを活かせ る場面がないが、社会に出たら、求められるものだと強く思う。(香川大学工学部 M2・産学連携 PBL) ・【働きかけ力、実行力】 リーダーとして「あれこれやって」というよりは、 「リーダーがあれだけやっているのだから自分もやら なければ」と思ってもらえるぐらいに頑張った。その点では、働きかけ力と実行力の成長があったと思 う。その結果、みんなが自然に作業してくれるようになった。(山口大学・PBL) ・【発信力、ストレスコントロール力】 企業担当者からの指導により、プレゼンの時に原稿を見ることを許されなかったので、原稿を作成しな くても、プレゼンが上手くできるようになった。4 年生の先輩との関係や地元の対応への不満等もあった が、チームとしてやり遂げなくてはならないという意識から、我慢強くなり、ストレスコントロールが ついた。 (宮城大学事業構想学部・PBL) ・【チームで働く力】 「チームワーク力」の重要性を認識したこと。もともと主体性や実行力のあるタイプだと思うが、自分一 人の思い込みで行動してしまうところがあった。本プログラム受講により、チームワークの必要性を実感 することができた。(日本文理大学・2 学部合同 PBL) ・【チームで働く力】 人生で初めてリーダーの経験をした。今まではほとんど誰かに何かを言われるのを待つ立場で、自分から 発言していくのは初めてだったので、新しい見方を学んだ。お陰で、リーダーでない時も、リーダーはこ ういう気持ちを持っているから、自分はこうした方がいいというように考えられるようになり、自分の役 割を色々な見方から考えられるようになった(中京大学総合政策学部・ゼミ) ・【チームで働く力】 プログラムの中で、 「チーム内での役割」について考えるようになり、どうしたらこのチームの中で役に 立てるかを意識するようになった。「研究」というと個人プレーになりがちであるが、 「研究室」を「チ ーム」に見立て、自分がどのような役割を担うべきか分かるようになった。 (香川大学工学部 M2・産学連 携 PBL) ・【チームで働く力】 低年次の工学設計ではチーム貢献が求められるが、自分はあまり意識して取り組むことができず、成長実 感もあまりなかった。工学設計Ⅲ・Ⅳでひとつのテーマに自分で取組むことにより、研究室のメンバーと 協働する中で、かえって協調性が身に付いたと感じる。 (金沢工業大学大学院 M2・研究室) ・【チームで働く力】 最初は単位を取得するためという意識はあったが、今では「これを受講していなかったら後悔していた」 と感じている。スタジアムでのバイト経験で、仕事そのものは知っていたが、サッカーの試合を開催する ために、ボランティアの人含めて、多くの人がそれぞれ重要な役割を担っており、みんなの連携で試合が 成立しているということを知った。 (日本文理大学・2 学部合同 PBL) 250 チームで課題に取り組む経験のなかった学生が、他の人と協力して何かを成し遂げる経験を経て、 1 人で取り組むよりも大きな成果をあげ、チームで働くことの大切さを知ったというコメントが多 数あった。特徴的なのは、今まで同様な経験をしていても、チームの中での役割を知ることによっ て、取り組み方が変わった、という意見があったことである。また、リーダーの経験がなかった人 がリーダーをすることによって、フォロワーとしてどのように振る舞うことが望ましいチームワー クを生むかを知った、という意見も注目される。プログラムの中にチームの一員としての役割に気 づかせる工夫があることで、プログラムの効果がさらに大きくなることが示唆されると言えよう。 ■自分の考えを持ち、相手にわかりやすく伝えることの大切さを知る ・【主体性】 このようなプロジェクトを皆でやるときは、自分の意見を絶対持っておかなければいけない。普段から考 える力がないと、就職活動でグループディスカッションをするときは、自分の意見を言えないとそこで落 とされてしまうので、やっぱりここで培った、自分の意見を持つ、考える力というのは、大きなものだっ たと思う。 (松山大学経営学部・PBL) ・【主体性、前に踏み出す力】 身に付いた力は主体性、前に踏み出す力だと思う。お弁当の開発コンテストに出たときに、自分の考えて いることを形にすることの難しさに直面した。実際に自分の言葉で、自分の考えを出さないと相手に伝わ らないが、今までは、反感やバッシングが来るのではないかと怖くて、出せなかった。今回は出さないこ との方が後悔すると気づいたので、自分から出していこうという気持ちになれた。(流通科学大サービス 産業学部・ゼミ) ・【発信力】 工学設計Ⅲで発表を行うことで、自分が何を言いたいのか、何を伝えたいのかを明確にする必要性を感じ た。このことで、発表を受ける立場の際も、何が重要なことなのかを見極められるようになった。更には そういった能力が文章構成力の向上にも繋がっていると感じる。学外で発表する機会もあり、どうやって 伝えたらよいかを考えられるようになった。これが一番大きい。 (金沢工業大学大学院 M2・研究室) ・【発信力、責任感】 先生や企業の方に動いて頂く共同研究では、特に責任感が芽生えた。この責任感は最終的に、成果を発表 するというところに帰結する。学会等の発表の場があると、自分が伝えなければならない。もし伝えられ なければ、それまでにやったこと全て意味がなくなってしまうと思う。プレゼンテーション能力は今後も 伸ばしていきたいと思っている。またプレゼンテーション能力の原動力は責任感だと思っている。(金沢 工業大学大学院 M2・研究室) 自分はどう考えるか、という主体性とともに、それを相手にわかりやすく、確実に伝えるために はどうすればよいかを意識するという、発信力についても多くのコメントがあった。チームで働 く中で自分の意見を発信するためには、何を伝えたいかを明確にして、なぜその言葉を選ぶか、 ということを考えることが必要になる。責任を持った発信の経験が、学生の物事に取り組む姿勢 を向上させることにつながることがわかる。 251 ■他の人の話を聞く態度と、受容することが身に付く ・【傾聴力】 一つは傾聴力で、みんなが話しやすい雰囲気になるようにと、ちゃんと目を見てうなずいて聞くというこ とを心掛けるようになった。就職活動でも、私は説明会の時からそういうことを心掛けていたが、内定を いただいた企業の人事の方から、「説明会の時からいいと思っていたよ」と言っていただいて、凄く嬉し かった。 (中京大学総合政策学部・ゼミ) ・【傾聴力】 後輩に対する接し方が身について、グループワークをするときに役に立ったと思う。 「後輩だから」と思 って上から目線で接するのではなく、1人ひとりの意見をきちんと聞くようにしていたら、実にさまざま な考えがあることがわかった。(松山大学経営学部・PBL) ・【傾聴力、発信力】 人の話を聞いていないと進めない、自分も手に付かない、何も進めないということを経験し、人の意見を 聞いて、自分の意見を伝えるということを学んだ。 (流通科学大サービス産業学部・ゼミ) ・【傾聴力、柔軟性】 授業をとった後、前よりかなり良くなったと思ったのは傾聴力。自己主張が強くて、人の話を全然聞か ない癖があり、人が言ったことに対して、必ず「でも」と言っていたが、そこが改善されたので、この 調子で他の部分も底上げをしていきたい。リーダーをする中で、自分の意見を話すのではなく、他の人 に話を振るように意識していた。そのようにするには、人の話を聞かなければいけない。皆の意見を引 き出しながら、要所でキーワードをまとめて、 「要するにこういうことを言いたかったんだよね」と返す ようにしていた。言われたことを自分の中で処理して返すことで、その処理が正しいかどうかも確認で きるし、そういったことをしながら、傾聴力が鍛えられたと思う。(東海大学・通常授業) ・【柔軟性】 他の学部の人と合同になる授業で、柔軟性が身に付いていると実感した。以前は自分が批判されたり、 まったく違う意見が出たりすると、「それは違うよ」とすぐ言っていたが、生まれ育った環境は皆違う から、違う意見があるのは当たり前だと思えるようになった。(跡見学園女子大学マネジメント学部・ ゼミ) ・ 【柔軟性】 どこの企業でも大切だと言われたのは、「周りを巻き込みながら一緒に動く経験しました」と話した時。 またその時に、 「色々な意見を持っている人がいて、その多様性に対して、柔軟に自分の頭を切り替えら れるようになりました」と言うと、「それはいいね」と言われた。授業の中で、特に自分が伸びたのは、 多様性を受け入れるようになったということ。最初はとにかく自分の意見が通ればいいと思っていたが、 1 人の力ではなく皆が 10 の力を出したらもっと良くなるということが分かって、それでガラッと変わっ た。 (中京大学総合政策学部・ゼミ) ・【チームで働く力】 経済学部と工学部の合同チームで、私自身は「工業系なら任せておけ」という気持ちで取り組んだ。その 一方で、リーダーとして経済系の人には情報収集等得意なことを担当してもらった。すべて自分一人で決 めてつくり上げるより、みんなで力を合わせてつくり上げたいと思って活動した。そのようになった背景 としては、自分の知らない、できないことを他のメンバーが知っていることなどがあることに気づき、チ 252 ームとして協力しながら進めることが効果的であることを感じたから。 (日本文理大学・2 学部合同 PBL) 発信力以上に多くのコメントを集めたのが傾聴力と柔軟性であった。「コミュニケーション」とは自 分の意見を一方的に押し付けるだけでなく、相手の意見をじっくり聞き、尊重することも非常に重要 であることへの気づきが、鮮烈な印象を残したことがうかがわれる。それは、他の人の意見を受け入 れることによって、より大きな成果や成功につながることが結果として実感されるからであろう。そ の意味でも、育成プログラムの中で傾聴スキルを高めることが非常に重要であることがわかる。 ■困難さを乗り越える経験を通して達成感を味わい、粘り強さや自信を身に付ける ・【実行力、粘り強さ】 先生や企業の方から厳しいコメントをいただいて、自分の思いをぶつけているだけではダメだと思った場 面がたくさんあった。チームでもめた時も、妥協ではなく打開策を作ったほうが、皆が満足できて結果も 良くなるということが分かった。コメントはとにかく厳しかった。とにかく突き返され、凹むどころの騒 ぎではなかった。でもそこで甘くされていたら、私たちはこのようになれていなかった。(中京大学総合 政策学部・ゼミ) ・【計画力、前に踏み出す力】 先生は「お題を出すから後は自由に考えなさい」と僕らにポンと投げてくる。ただし、期日もバシッと設 定した上なので、逆算して段取りを決めて、何日までに何を決めるといった形で進行管理していかないと いけない。そのため、計画力は明らかに伸びた。他のメンバーに目配りしたり、それぞれの強いところ弱 いところを考えて役割をふったり、グランプリに向けて最善をつくしたりすることで、とくにアクション の要素がすごく身に付いたと感じている。 (流通科学大サービス産業学部・ゼミ) プログラムの中に、あえて困難なシチュエーションを設定し、それを乗り越えることによって 諦めずに最後まで取り組む経験をさせることで、様々な力が身に付くことがうかがわれる。ここ で重要なのは、学生をドロップアウトさせないためのファシリテーションと、乗り越えたことを 指導する教職員や企業人がきちんと評価し、達成感につなぐことである。自己評価・他者評価を 十分に活用したい。 ■自己分析、成長の自覚 ・グランプリ参加するにあたって自身の活動を振り返り、活動の結果として基礎力が育成されたと思う。 面接では、クラブ活動やアルバイトの経験については話すことがないので、すべてゼミ活動の内容を話 した。振り返りを行ったことにより、面接の時に、話したいことを要点よく、具体的なエピソードを話 すことができた。(阪南大学国際観光学部・ゼミ) ・3 年次 7 月から社会人基礎力の 12 の能力を意識しながらやってきたことで、長期的に自分をどう伸ばそ うという意識が強くなり、この先どうなるんだろうと先へ先へと予測していくことを、40 年先ぐらいま で考えられるようになった。業界を考える上でも、40 年先の自分でも使命感を持って仕事していたいと いう気持ちから、人の命に関わる医薬品業界に絞ることができた。 (流通科学大サービス産業学部・ゼミ) ・振り返りのおかげで、今までは考えてなかったことを考えられるようになったし、自分の弱かったとこ ろなど、自己分析に近いものができ、成長面も自分でよく分かった。不足しているところもよく分かっ 253 たので、就職活動にも役立った。社会人基礎力で学んだことで、自分を見直すことで、他人の意見のい いところを取り入れたり、自分の意見を向上させたりすることもできるようになり、プラスになった。 (流通科学大サービス産業学部・ゼミ) ・将来はトレーナーになりたかったが、就職する気はなかった。社会人基礎力のプログラムで、みんなで 一緒に何かをやり遂げることを体感でき、今後もみんなで一緒に何かをしたいという気持ちになったの で就職することにした。就職の目的としては、トレーナーの技術は二の次で、社会人基礎力をより磨く のが目的。前は自分一人でもなんとかなるという気持ちを持っていたが、本プログラムを受講して、自 分の小さいこと、自分が何もできないことがよくわかった。ボランティアの方々のサポート意識は強く、 彼らとの関わりがとても良い経験となり、みんなで協力して行動することが重要だと感じている。就職 して多くの人と一緒に働くことの重要性を認識することができた。(日本文理大学・2 学部合同 PBL) ・ふり返って文字にすること自体はめちゃくちゃ辛い作業で、もしかすると、ゼミナール活動で一番きつ い作業だったかもしれない。でも、書くために振り返り、行動を思い返してみると、これがどんどん書 ける。書けることを私はいっぱい持っているんだ、そう気付いてからすごく振り返りがおもしろくなっ て、GPに参加し、就職活動をし、4 年次のプロジェクトを進めながら、自分なりに振り返りシートを更 新していった感じ。(流通科学大サービス産業学部・ゼミ) プログラムをやりっぱなしにするのではなく、社会人基礎力の言葉で振り返ることによって成長 の実感を持つことができる。能力の全体像が示された中で、個々の能力要素別に行動を振り返る ことで、強み・弱みを客観的にとらえることができる。社会人ヒアリングでも示されたように、 振り返りが自発的にできるようになることで、社会に出てからも大学時代と同じ言葉を使って継 続的・段階的に成長させることが可能になると言える。 ■責任ある態度・行動が身に付く 【規律性、主体性】 自分が小学校に行って、子どもと遊んだり一緒に行動したりすることが多いので、子どもの見本であるこ とを意識するようになった。社会人基礎力でいえば、規律性や主体性といったところが特にあてはまる。 (広島経済大学興動館・プロジェクト) 【規律性、責任感】 中高生の、不登校の子の登校を支援する活動というのは責任がある。中高生に見られているし、また、 後輩たちに対しても、模範となるように自分自身がしっかりし、責任感を持って行動できるようになっ た。(広島経済大学興動館・プロジェクト) 社会貢献を目的とした活動に携わるためには、学生たち自身が責任ある態度や行動ができること が不可欠である。他の人に押し付けられるのではなく、何がその場にふさわしい行動かを自分で 考え、責任感とともに体得していったことがうかがわれる。これ以外にも、企業や地域の人と接 する中で、マナーや規律性の必要性を自覚し、自然にできるようになったというコメントは随所 に見られた。 254 ②プログラムの受講が学業への取り組みに役立った点は何か プログラムを通して身に付いた社会人基礎力や、知識・スキルを他の学業や研究の場面で活かすこ とができるようになったエピソードを、能力別にまとめた。 ・【主体性】 初めて大学生活でここまで本気になった体験ができたというところ。いただいたチャンスに積極的に食 いついてモノにする、ある種の貪欲さみたいなものが一番成長した。(流通科学大サービス産業学部・ ゼミ) ・【働きかけ力】 最も苦労したのが、チームメンバーのモチベーションの高め方について。メールを送っても返信がなか ったり、皆で集まっても与えられた役割を全うしない人もいた。こういった問題をどのように解決して いけば良いかについて、プログラムで学ぶことができた。この経験は、その後のインターンシップやチ ームプロジェクトで役に立った。具体的には、WEB の掲示板やスカイプを活用した。(香川大学工学部 M2・産学連携 PBL) ・【前に踏み出す力】 真剣に1つの目標に向けてチームで成し遂げていく科目だったので、その経験で得た集中力から、取り 組む姿勢への真剣味が増した。それまでの授業は「単位が取れればいいや」という気持ちで、成績も最 低評価のCを取れれば問題ないと考えていたが、この授業を受けたことで達成感や、 「今後はもっといい 成績をとっていこう」という向上心、集中力や積極性などに関する意識の変化があったと思う。社会人 基礎力の言葉でいうと、主体性や働きかけ力、実行力などが成長したという感じ。 (東海大学・通常授業) ・【前に踏み出す力】 もっと深く学びたい、もっと学んだ知識を活用してみたいと思えるようになった。大学で学ぶというこ との大切さ、なぜ大学で学ぶかということ、高校や大学で学ぶ知識は実践で使えるんだとわかり、社会 に出てからも企業に入っても必ず役に立つと思えるようになった。社会人基礎力を知ることで、大学で 学ぶ姿勢が変わり、世の中の見え方が変わった。(流通科学大サービス産業学部・ゼミ) ・【前に踏み出す力、考え抜く力、発信力】 卒業研究は社会人基礎力のアクション、シンキングの部分はすべてがこのプログラムで得た力が有効だ った。自分の研究なので自分で動かないといけないので、主体性や働きかけ力や実行力がかなり役に立 ったし、自分で問題点を発見していくということで、考え抜く力も生かされた。最終的には卒業論文を 人前で発表するということで、グランプリでその難しさをわかっているからこそ、どのようにすればい いか工夫をすることもできた。発表することで発信力も上がるし、 「これだとわかりにくいかな」と感じ る箇所については、研究室の同期や院生などの先輩方、先生からもご指南いただき、取り入れるところ は取り入れた。自分の研究テーマだが、他の人たちも一緒になってやってくれているという点では、社 会人基礎力というものは、ほぼすべてに生かされていると思う。研究テーマによっては、企業の方と連 携して行うテーマもあったので、応対の仕方をはじめ、 「この授業を受けていなかったら、ここまでやっ ていけなかったな」と感じることは多々あった。 (東海大学・通常授業) ・【課題発見力、創造力】 経営学部の授業だけをとって、サークルやアルバイトに行くだけの学生生活と比べると、プロジェクト に参加することでいろんな知識が身に付いたと思う。ライムの商品開発にあたっては、「瓶の値段がこ 255 うだから、価格はこう設定しなければいけない」などの経営的な課題があることも知ったし、炭酸の効 き方も、20 代には物足りなくても 60 代の方には強すぎるという話を聞くこともできた。自分たちの目 線だけでなく、幅広く物事を見る力が身に付けられたと思う。 (松山大学経営学部・PBL) ・【傾聴力】 自分たちが発表した時、他の人が聞いていないとすごく傷つくことを体験したので、先生が話している ときには、きちんと主体的に授業に取り組んでいる。うなずいているだけでも、前で話している人は「聞 いてくれているんだな」と思うだろうし、そういうところで主体性や傾聴力を発揮できるようになった。 授業に対する姿勢が変わったと思う。(跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・【傾聴力、情況把握力】 周囲の人たちが何をしようとしているのか思いが向くようになった。たとえば、どの授業でも先生の目 を見て、しっかり聞いて、メモをとりながらうなずいて、といったことを心がけるようにしてみると、 数百名の大教室授業で、私のことを個人として識別してくれる先生がいた。そのほかの授業でも私だけ 名前で呼んでもらったり、学生にとくにアプローチしないタイプの先生に「○○の授業に出ていて熱心 だね」と声をかけてもらったりすることを経験した。周りの学生がどうであれ、自分の意識が変われば、 大人(先生)は見ていて好意的に受け止めてくれるんだということを実感した。 (流通科学大サービス産 業学部・ゼミ) ・【専門分野への興味】 ・プロジェクトのカフェの運営で経理面を見ていたので、実際のお金の流れというものが理解できた。授 業で「聞くだけ」というよりも具体的な分理解がしやすく、専門科目に積極的に取り組もうという姿勢 にもつながったと思う。(広島経済大学興動館・プロジェクト) ・もともと、環境保全と経済発展に興味を持っていたが、プロジェクトで植林した木が枯れてしまうケー スがある、ということを知った。それがなぜ枯れてしまったのか、どうすれば枯れない植林ができるの か探究をしたいという意識が強くなり、大学院進学を決めた。(広島経済大学興動館・プロジェクト) プログラムで身に付いた社会人基礎力が、大学の学業や研究でも発揮された例である。社会人基礎 力は、仕事の現場だけでなく学びの姿勢も向上させることがよくわかる。より深く学ぼうとする意 欲だけでなく、自分が相手の立場であったら、という見方ができるようになり、マナーの向上にも 寄与していることが見て取れる。 ③就職活動の場面で社会人基礎力はどのように役立ったか 社会人基礎力育成プログラムの経験は、就職活動の主に面接の場面でどのように役に立ったか。ま た、社会人基礎力をどのように意識したかに関するエピソードをまとめた。また、内定先が決まって いる学生については、最終的な内定先の業種(・職種)を付記した。 ■成果につながる活動をした経験やチームで取り組んだ経験を話すことができる ・【主体性、働きかけ力、実行力、発信力、傾聴力】~銀行・総合職 どの企業の面接でも、プロジェクトについて話すと、 「具体的にどんなことをしたのか」「あなたはこの 活動で何を得られたのか」と聞かれることが多く、主体性や働きかけ力、実行力を問われていたのかな と思う。グループディスカッションでは、チームで働く力を見られている部分が多かったと思う。この 256 プロジェクトを通して、発信力や傾聴力が身についたと思っているが、実際の面接の場でも生かされた ような気がする。(松山大学経営学部・PBL) ・【実行力、課題発見力、情況把握力】~商社・営業事務 自分ができないことを目標としてできるようになる経験をしてきたということと、周りを見て行動する ことを学んだという点を凄く印象良く受け取ってもらえたと思う。周りを見て行動するということは、 私が就く営業事務という仕事にもつながると思う。周りの社員や営業の方が、自分の仕事で精一杯にな っているときに、これをしてあげようとか、私がこれをやっといた方がやりやすくなるとか、そういう ことを考えられる力をつけてきたことをアピールしたことが良かった。(中京大学総合政策学部・ゼミ) ・【発信力】~大手土建業・技術職 面接時、研究内容について話している際、「落ち着いているが、何か訓練でも受けたのか」と言われた。 研究室等での発表の経験で、プレゼンテーション能力や話す度胸が知らず知らずに身についていたのだと 思う。 (金沢工業大学・研究室) ・【情況把握力、マナー】~部品メーカー・営業事務 いろいろなプロジェクトに取り組み、商店街の方などいろいろな年代の方と接する機会があったので、社 会のいろいろな方々との接し方や、自分の立場や状況を把握する力など、当たり前のことが当たり前にで きるようになったと思う。面接では誰もが気合を入れて事前に準備をしていくが、説明会では挨拶がきち んとできなかったり、寝ちゃったり、下を向いてひたすら書いていたりする学生も多く、私は一度、説明 会で聞くときの姿勢がいいと誉められたことがある。自分はそれが当たり前だと思っていたが、当たり前 のことが当たり前にできたのは、ゼミなどの活動を通して身についているからなのだと思った。(跡見学 園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・【柔軟性、創造力】~メーカー 内定をいただいたときに、私の何が良かったのかと聞いたところ、君は一つの言葉に固執しないねと、お 褒めの言葉をいただいた。「古い世代の人が多いので若い人が欲しいが、上から言われたことをそのまま 実行する人材は欲しくない。言われたことは守るだけでなく、そこから自分で考えて、もっと考えて、よ りいい形がないか考えられる学生が欲しい」と言われた。(流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) ・【規律性、発信力】~地方銀行・一般職 たとえば1つの企画について話す時に、他の学生が「こんな大きなことをして、こんな大成功を収めまし た」と言っている横で、私は「この企画書を出す段階で、まず期日をきちんと守りました」とか「目標に 向かって、何をすればいいのかという計画を1つずつ立てました」という規律性や、 「どういう提案をし たら先方は喜ぶのか、創造力を働かせました」という形で話した。ルールや約束を守れるというのは、基 本的なことだと思うが、本当にそれがきちんとできているということを結構アピールした。(跡見学園女 子大学マネジメント学部・ゼミ) ・【ストレスコントロール力】~中古車販売・営業 普通、ストレスが溜まったら違うことで発散するのに、何故君は人との話で、溜まったストレスを人で発 散させていくのかと、いろいろな企業で言われた。私は「分からないことの方がストレスになる。自分が してしまったことでお客様を怒らせてしまったら、それがどうしてなのか分からないことの方が嫌で、ど こが悪いのか良いのか聞くことにしているので、私は人と話すことでストレスが軽減される」と話した。 多くの所でこのことを聞かれ、あれっと言われたり、変わっているねと言われたりしたが、採用してくれ た会社だけはそれが一番いい方法だよと言ってくれた。 (流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 257 ・【真剣に取り組んだ経験】 ソフトウエア開発会社・SE 企業の方はサークルでどうした、アルバイトでどうしたというのを聞きたいのではなく、大学で学ぶ中で 何を得たか、与えられたチャンスにどう積極的にトライしたのか、本気で何かに取り組んだ経験があるの か、そこでどういう気付きを得たのかといった話を聞きたいんだという確信を持っていたので、自信を持 って臨めた。 (流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 船舶代理店 面接等の場面では、 「話のタネ」として活用することができた。履歴書に「中高生の夢笑顔実現プロジェ クト」と書いてあっても内容は相手には伝わらないので、相手が聞いてくれる。そこで自分から積極的 に、プロジェクトでやってきたことなどを話すことができた。(広島経済大学興動館・プロジェクト) ・【実際の仕事の現場の視点を持つ】~フードサービス・店舗勤務 カフェでは売上・利益に意識をして活動していたので、そういった目線でモノを考えられることをアピ ールし、面接官の興味を惹くことができた。また、応募先企業が運営する飲食店のレポートを作成する という課題があったが、いいところ・悪いところ両面を指摘できたことが、評価していただけた。もと もとプロジェクトでカフェの運営について考えていたので、業界研究をする意識が強く持て、自分たち のプロジェクトのカフェだけでなくいろいろな店を運営する観点からみる習慣ができていた。そういっ た観点から「いいところ」だけでなく、悪いところもレポーティングできたことがよかった。(広島経済 大学興動館・プロジェクト) ・【キーワード】~医薬品会社・MR 「学生時代に頑張ったことは何か」 「自分の長所・短所は?」 「自己PRしてください」と面接官に質問さ れるが、それらはすべて社会人基礎力の 12 の能力をキーにして話すようにした。すると、すごくうまく フィットするようで、面接官の心にスーッと入っていく感じがした。(流通科学大学サービス産業学部・ ゼミ) プログラムを経験することによって、「大学時代にどのようなことをしたか」という問いに対して、何を したかだけでなく、それを通して何を得たか、どのような貢献をしたか、ということを自分の言葉で話す ことができるようになっていることがわかる。単なる就職対策ではなく、自らの活動をきちんと価値付け できることは、社会に出てからも当然必要な力につながっていることが示されている。振り返りの習慣の 重要性を示す結果と言える。 ■グループディスカッション等、チームで働く力が問われる場面への対応 ・【前に踏み出す力、チームで働く力】~食品メーカー・営業 企業に一番認めてもらえたのは、リーダーの経験をして、チームメイトの意見を引き出してまとめると いう力を付けてきたことだと思う。この点では企業の方自身から、 「組織に入って自分がチームの一員に なったとき、自分の意見が言えるだろうし、上に上がったときに意見を引き出す力があるだろう」と褒 めていただいた。 「他の学生さんはチームで活動した経験がない人が多い」と採用の方が言っていたので、 そういう経験をしていることが凄く評価されたのだと思う。私は前に踏み出す力も伸びたと思うが、一 番伸びたのはまとめる力というか、チーム全員を動かす力である。(中京大学総合政策学部・ゼミ) ・【チームで働く力】~大手鉄道会社・技術職 グループディスカッションの際に社会人基礎力が問われていると感じた。グループでひとつのテーマにつ 258 いて、その解決案を話し合い、それをプレゼンテーションするというものだったが、1 つのグループに 1 人の面接官がいて、ずっと見ていた。面接官は、誰がリーダーになるか、誰がアイディアを出すかなどを 見ている。その中で、見られながら役割をこなすのはかなり難しい。そういった際に本当の能力が問われ るのだとも思った。(金沢工業大学・研究室) ・【情況把握力、課題発見力】~教員 ある企業のグループディスカッションで、話し合いが一方向に流れていたときに、自分が敢えて「こうい う見方はどうか」と投げ掛けて、話の方向を変えてみた。後で企業の方から感想として、「君の意見で議 論がいい流れになったね」と言われた。就職活動の最初の方だったので、その後の自信につながった。 (中 京大学総合政策学部・ゼミ) ・【柔軟性、情況把握力】~証券会社・総合職 「コミュニケーション能力があります」と抽象的な言葉で言っても評価は低いと思うが、グループワーク でやったことは、自分自身の人間性を PR するポイントとして付加されたと思う。具体的には、1人ひと りの意見を引き出して、それぞれの意見を取り入れていくことを、すごく意識した。方向性がずれていた 発言もあるが、そういった発言についてもどこかを拾って、「こういう面はいいと思いますよ」と取り入 れていくようにした。そうするとグループに一体感が生まれるので、みんな笑顔で楽しそうに発表できて いた印象がある。グループワークは5~6回経験したが、この授業のおかげで一度も落ちたことはなかっ た。 (東海大学・通常授業) ・【情況把握力、チームで働く力】 医薬品会社・MR グループディスカッションでも、真っ先に役を引き受けるということができ、議論の落としどころを意識 しながら議論を誘導したり、発言の少ない人にも目配りするといったことができた。逆にすごい難関大学 の学生でもそれができない人もたくさんいるのを目にした。(流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 事務用品サプライ・営業 グループディスカッションとして「部活の予算を勝ち取る為の折衝をする」という、学校を舞台にしたロ ールプレイを行ったが、うまく立ち回ることができた。具体的には「情況把握力」を活かすことができた のではないかと思う。毎週、プロジェクトの中でカフェの運営について会議をやっていたので、集団討議 をすることには慣れがあったことが、アドバンテージになったと思う。(広島経済大学興動館・プロジェ クト) グループディスカッションのテクニックは、導入教育やリテラシー講座等で経験させる大学は少なく ないが、社会人基礎力育成プログラムでは、ディスカッションそのものを目的とするのでなく、真剣 な議論を通して成果につながる経験を繰り返すことで、自らのものとして習得していることがわか る。そのため就職活動のような特殊なシチュエーションであっても、自然にファシリテーターとなれ ることが評価につながっている。まさに、「習うより慣れた」結果であると言える。 ■自己分析の経験・習慣が求められる ・自動車メーカー・技術 PBLの活動については、先方の採用担当者も、「それはチームで行ったのか?」「チームの中での役割 は何か?」という点について、突っ込んだ質問をしてきた。この点に関して、自信を持って答えること ができた。 (香川大学工学部・産学連携PBL) 259 ・証券会社・総合職 「あなたはチーム内でどのような立場に立っていて、どのようなことを具体的に心がけているのか」と いうことを問われる質問があった。社会人基礎力の授業でやってきたことや、サークル活動などの学校 生活で、自分自身がどのような立場でチームの中で活動してきたかということ、つまりチームで働く力 が問われていたんじゃないかと思う。質問には短い時間で答えなければいけないので、 「こういう役割で す。たとえば具体的にこういう立場で、こういう経験をしてきました」と具体性をしっかり述べたので、 それ以上質問されることはなかった。(東海大学・通常授業) ・通信・営業事務 私は具体的にこういうところが良くて汲み取ってもらったというより、自分自身が成長したい、弱いとこ ろを伸ばしたいという気持ちを持っていることを買ってもらえたと思う。 (中京大学総合政策学部・ゼミ) ・メーカー 面接でよくあるのだが、 「私は○○をしました」と言った後で、すぐに「その時何を思ったの」と素早い 切り返しを受ける。集団面接をしたときに、 「えっ、だから」と固まることが周りにもよくあった。自分 も前はそうだったが、社会人基礎力に取り組む中で、自分が何かをしたときに何を思っているのかとい う、自己分析の習慣の力がかなりついたので、問われたときにすぐに切り返しができるようになった。 (流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 成果につながる活動をした経験・チームで取り組んだ経験の項で述べたように、 「大学で何をした か」だけでなく、「どのように」行い、「今後どうなりたいのか」というポテンシャルを問われて いることが見て取れる。そのためには、エントリーシートの記入だけでなく、ふだんから社会で 通用する言葉で自分の活動を振り返る経験をしていることがたいへん重要であることがわかる。 ■社会人基礎力が試される課題 ・【課題発見力、計画力、創造力】~小売業・店長候補 グループディスカッションで、 「わが社の問題点・改善点を教えてください」という課題を出されること もあり、発見力や計画力、創造力などが求められていたと感じた。(松山大学経営学部・PBL) ・【働きかけ力、実行力、創造力、発信力】~証券会社・総合職 内定した証券会社の最終面接で、役員の方から「もしも行きたくない部署に配属されたら、君はどうす る」と聞かれた際に、社会人基礎力がぱっと浮かんだ。自分自身、グループワークの授業を取りたいと はあまり思ったことがなかったが、実際に授業を受けてみると、人間関係を構築して1つの目標を達成 する喜びを知り、すごく楽しく終えることができた。なので、 「まず初めに一緒に働く相手の方のことを 知ろうと思います。自分自身を知ってもらうことを積極的に頑張ります。そしてしっかり仕事をしなが ら、自分なりにやりがいを見つけ、目標に向けて全員で協力してやっていきたいと思います」と答えた。 やりたくない部署に配属された時、まさに社会人基礎力というか、働きかけ力とか実行力とか創造力と か発信力とか、いろんなものが問われるんだろうという印象がある。 (東海大学・通常授業) ・【ストレスコントロール力】~通信 「もし自分の担当となった先輩社員が人見知りであまりしゃべらず、笑顔も不自然な暗い感じの対応な らどう対応しますか」と言われた時、社会人基礎力を凄く問われていると思った。それが正解かどうか は分からないが、 「その先輩から得られるものはあると思うので得られるものは得る。親しくなって仕事 以外のプライベートな面や飲み会などで少しずつでもアドバイスできるような関係を作っていって、先 260 輩も私から得られるものがあったらいいし、先輩自身も変わっていってくれるように私も努力しようと 思う」と言った。そうしたことは、実際にあり得ることだと思うし、社会に出たら、性格的に合わない から接しないというわけにはいかないので、そのときに自分がどう対応するかが見られていると思った。 社会人基礎力の 12 の要素を知っているから、この問いが社会人として大切なことを聞いている問いだと 思えたと思う。12 の要素を知っているのと知らないのとでは、答え方が違う。 (流通科学大学サービス産 業学部・ゼミ) ・【ストレスコントロール力、課題発見力、柔軟性】~生命保険代理店・営業 「お客さんからクレームがあったらどうするか」とか「自分が売ろうとしているモノより良いモノがあ るとわかっているのに、売らなければいけないときはどうするか」とか、答えづらい質問もいろいろさ れたが、これはストレスコントロール力を試されているんだなとわかった。 (跡見学園女子大学マネジメ ント学部・ゼミ) ・【課題発見力、主体性、働きかけ力】~賃貸仲介業・営業 面白かったものに「質問してください。以上」という面接があった。状況を把握して、相手は何を求め てそういう面接の仕方をしているのかを考えさせる面接だった。それ以外に、課題発見力、主体性、働 きかけ力の辺りは聞かれていると思った。ゼミの話をすると、そこから「どうやって仲間に働きかけた のか?」ということは聞かれている感じがした。 「学生時代にいちばん頑張ったことは何ですか?」と聞 かれることが多かったので、ゼミの話もそのまました。そこから主体性や情況把握力をアピールした。 (跡 見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) ・【12 の能力要素】 社会人基礎力を使ったグループ・ディスカッションがあった。12 の要素が紙に書いてあって、それを自 分の言葉で言うとどういう行動になるのかというもの。大分類の前に踏み出す力と、考え抜く力、チー ムで働く力と、12 の要素を自分で考えてそれを実行するために何がいるかという質問だった。前に踏み 出す力のときに、私は「勇気がいる」と言った。何をするにしても自分が一歩踏み出さないと何も行動 できないので、それをグループの意見として入れてもらえた。それでグループの代表として企業の方の 前で話した。企業の方も自分なりに能力について考えていて、1 人の方が、自分も前に踏み出す力につい て、最初に考えたのが勇気だったのだよと言われ、ベテランの方でも前に踏み出すときには勇気がいる のだなと思った。緊張するとも言っていたので、自分の考えていたことは一つの意見として、成り立っ ていたのだと思った(流通科学大学サービス産業学部・ゼミ) 採用試験での課題は、正答を求めるのではなく、抽象的な問いに対してどのように答えるかを見 るためのものもある。プログラムの中で、チームで活動するために今何を問われているか、どの ように答えればよいか、ということを常に考える経験がここでも有効であることがうかがわれる。 また、「望まない部署」「合わない先輩」等、まさにストレスコントロール力が必要な場面を想定 した問いは、学生の「打たれ強さ」を見る質問として注目できる。いずれにしても、社会人基礎 力の言葉を知っていて、その問いがどの能力にあてはまるか、という視点で考えられることは、 冷静に自分の言葉で答える余裕につながることになろう。 ■企業の人の社会人基礎力に対する認知度合い、反応 ・ソフトウエア開発会社・SE 261 正直いって社会人基礎力やグランプリの認知度自体は低くて、説明に苦労するところはあったが、基礎 力やグランプリそのものを説明するのでなく、12 の能力を使って自分を説明するんだと切り替えたら、 企業の方にはすっと入るキーワードのようで、面接のやりとりがスムーズになった。 (流通科学大学サー ビス産業学部・ゼミ) ・生命保険会社・一般職 東京の企業の人事でも、3 次面接での管理職クラスになると社会人基礎力のことを知っていたが、それ以 下のクラスの人はあまり知らなかったようだ。大手電機メーカーのエントリーシートには、社会人基礎 力が示されていてそれぞれの能力についての自己評価をするようになっていた。仙台で企業面接を受け た時、人事の人はほとんど社会人基礎力のことを知らなかった。(宮城大学事業構想学部・PBL) ・建設業・事務 このゼミでやっていることを言うと、「総合職のほうが向いているんじゃない?」とか「営業職になれ ば?」と言われた会社があった。私は事務職になりたかったのだが…。 (跡見学園女子大学マネジメント 学部・ゼミ) ・製造業・設計 社会人基礎力の授業が最も学生生活で力を入れたことなので、その内容を就職活動でアピールした。具 体的には、 「最初は大変苦労した。自分さえよければ他人は関係ないという意識ではだめで、メンバーに 対して意見を出しながら、考えを確認して、調整しつつ、仕上げていかなければならなかった。苦労し た結果、自分だけが望むものではなく、メンバーみんなの意見が反映された成果が得られたと実感して いる」という内容の話をした。社会人基礎力プログラムでの取組や活動の話をすると、 「あなたは営業職 に向いてるよ」と複数の企業から言われた。しかし、設計がしたいことを訴えてきた。 (日本文理大学・ 2 学部合同PBL) ・生命保険代理店・営業 ゼミの中だけで頑張ったことではなく、 「地域や企業の方と連携して何かをした」というほうが、企業の 方も興味を持ってくださったし、 「外から与えられる評価だから正当性もあり、その点がいい」と言われ たこともある。 (跡見学園女子大学マネジメント学部・ゼミ) 企業の採用担当者における社会人基礎力の認知度合いはまだ十分とは言えないが、社会人基礎力の言 語フレームは非常にスムーズに理解してもらえる、という感想が多かった。一方で、育成プログラム の経験を話すと、一般職や技術職希望であっても「営業向きだ」「総合職の方がよい」と企業の担当 者から言われて不本意だった、という回答も散見される。社会人基礎力は、業種・職種を問わずどの ような仕事でも必要不可欠な力であることを企業担当者自身がきちんと認識することが必要であり、 今後の普及・啓発活動においてはこの点にも十分留意することが必要であると言わねばならない。 ④今後さらに伸ばさなければならないと考える能力は何か 社会に出るにあたって、今後さらに伸ばしたり身に付けたりする必要のある能力は何か、という問 いに対するコメントを能力別にまとめる。 ・【主体性】 部品メーカー・一般職 もっと自分から積極的に何でも行っていくことが必要だと思う。(中京大学総合政策学部・ゼミ) 262 ・【働きかけ力】 スポーツメーカー・総合職 だいぶ良くなってきたと思うが、まだ1人で抱え込むことが完全には直りきっていない。信頼できる人 を多く見つけてそういう人に甘えることがもっとできたらいいと思う。 (中京大学総合政策学部・ゼミ) 小売業・店長候補 社会人基礎力の中でまだ課題として残っているのは、働きかけ力。ほかの項目は自分が頑張ればできる ことだが、働きかけ力は他の人の信頼を得ることが大切だから。(松山大学経営学部・PBL) ・【働きかけ力、発信力】 船舶代理店 不登校の中高生と話をすることもあって、 「人に物事を教えることの難しさ」を感じている。いろいろな 経験を通して働きかけ力の必要を学んだ。(広島経済大学興動館・プロジェクト) ・【働きかけ力、柔軟性、情況把握力、課題発見力】 スポーツジム・トレーナー チームで働く力がまだ足りないと思う。よく、ガツガツしている、自分で何でもできると思っているよ ね、と言われてしまうので、物事を柔軟に考えたり、状況判断を適切にできるようにしたい。トレーナ ー志望だが、人間力的な基礎的な能力を除けば、課題発見力が必要だと思う。(日本文理大学・2 学部合 同PBL) ・【働きかけ力、考え抜く力、知識】 証券会社・総合職 営業の分野で働くので、自分からしっかり考え抜いてお客様に働きかける力をもっと伸ばさないととい けないと思うし、チームで働く力もそう。社会人基礎力はすべて必要な能力だと思うので。社会人基礎 力以外では、一生勉強ということもあり、まだまだ知識が足りない部分があるので、もっと金融業界の 知識を勉強しなければいけないと思っている。(東海大学・通常授業) ・【課題発見力、発信力】 アパレル業・店舗勤務 アパレル業界なので、お客様の意図に沿うものを提供しなくてはならないと思う。ショップ店員という のは、ニーズを汲み取ること、相手が求めているものを察知して、サービスすることが重要だが、その 点ではまだまだ不十分だと思う。提案力やファッションの勉強など専門的にも未熟さもあるが、論理的 に話すのが難しいと感じている。なんとなく話してしまうことが多いので、端的に、スパッと思いを伝 える、相手の意図を汲み取るというところをもっと伸ばしていきたい。 (山口大学・PBL) ・【計画力】 成果物の作成が期日のぎりぎりになることが多いので、今後は社会人基礎力でいうと「計画力」が課題 だと思っている。もう少し余裕を持って取り組めるように計画力をつけたい。 (香川大学工学部・産学連 携PBL) 信用金庫 イベントの実施計画を立てて、それに向かって活動をするが、スケジュールにいつも余裕がない状態で、 期日が近づいてからバタバタしてしまう、ということになってしまった。自分にはおおざっぱなところ があるが、しっかりと余裕を持ったスケジューリングができなければいけないと自覚している。能力と して「計画力」が必要。(広島経済大学興動館・プロジェクト) 263 ・【計画力、発信力、働きかけ力】 協同組合 後輩が入ってくると、後輩を育てるためにいろいろと教えて、仕事を覚えてもらったり、引き継いでい かないとならないのだけど、自分でやる方が楽なので、ついそうしてしまいがちだった。 「教えること」 に関係する力が必要だと思う。(計画的に指導する、という意味でなど)(広島経済大学興動館・プロジ ェクト) ・【考え抜く力、発信力】 事務用品サプライ・営業 一つ一つのことをしっかりと考えて取り組む、という力が不足していると、特に思う。就職したら営業 職になるので、お客様の立場になってものが考えられるようでありたいし、そうならなければいけない と思う。(広島経済大学興動館・プロジェクト) ・【発信力】 自動車メーカー・技術 意見をとりまとめて相手に分かるように伝えるという「発信力」が足りないと思う。言葉足らずで相手 に伝わらないことがある。(香川大学工学部・産学連携PBL) 医療機器商社 いろいろな内容をまとめて、的確に相手に伝えること(発信力)が苦手だが、営業職になる可能性もあ る(事務職につくか、現時点でわかっていない)ので、改善していかないといけない。(広島経済大学興 動館・プロジェクト) ・【傾聴力】 ホテル・営業 流通分野で本社とのやりとりが発生すると思うので、傾聴力をより高めていきたい。 (阪南大学国際観光 学部・ゼミ) ・【情況把握力、ストレスコントロール力】 大学院進学予定 自分でやることについては底上げができている気がするが、自分でやってしまう部分が多い分、人との コミュニケーションがどうしても欠けてしまう部分がある。特に情況把握力。企業の方に対して受け答 えをするには、その場ですぐに情報処理・解決しないといけないので、その部分の底上げはもっとして いく必要があると思う。それからストレスコントロール力は、私たち若者には欠けているのではないか と自分でも感じる部分があるので、こういったところはどんどん鍛えていくしかないと思う。たとえば 先輩からあれこれ言われたときに、 「自分はダメだ」と思ってしまうときがある。先輩の言うことはほと んどが正しいので、反省して次にプラスになるように生かせればいいのだが、やっぱり最初はちょっと 落ち込んでしまう。これではまずいと自覚している。(東海大学・通常授業) ・【ストレスコントロール力】 協同組合・総合職 ストレスコントロール力が足りていないのかなと思う。神経質で不安症なので、 「自分がやったほうがう まくいくんじゃないか、人に任せて変な結果になったらどうしようか」と考えてしまう。 「できる自分が やったほうがいいんじゃないか」と責任を感じて、1人で考え込んでしまうところがあるので、もうち ょっと人を信用したほうがいいのかと思う。(松山大学経営学部・PBL) 264 コンビニエンスストア メンタル的に弱いところがあるので、その点を強くしていきたい。(阪南大学国際観光学部・ゼミ) 今回の回答の中では、 「働きかけ力」を中心として「前に踏み出す力」をあげた回答が多かった。こ れは、社会人ヒアリングでも、仕事で必要な力は主体性を中心とする「前に踏み出す力」と答えた 人が多かったことと呼応している。 コメントからもわかるように、学生は社会人基礎力の言葉で自分の弱みも自覚し、就職後の業務を 想像して、今後伸ばさなければならない必要性も理解している。企業が内定者に対して、業務で必 要な力とそのシチュエーションを具体的に説明し、入社までに行動の振り返りや自己啓発によって、 能力を高めておくことができれば、企業と学生の双方にとってたいへん意義のあることであると考 えられる。 ⑤プログラムの改善を希望する点 社会人基礎力育成プログラムで、改善した方がよいと思われる点について、個別の大学に特化しな い問題点に関するコメントをまとめた。 ・改善というより、タイミングが重要。プロジェクト前に言われてもわからなかった、興味を持てなかっ たと思う。僕らの場合、ある程度実践してみてから 12 の能力を具体的に教えられ、それらと紐付けしな がらシートで振り返りなさいという先生の指導があったからよかった。タイミング的にはベストで、社 会人基礎力を自分のこととして受け止められた。(文系学部・ゼミ) ・振り返りシートに発揮できた点とできなかった点を書く欄があるが、これに加えて今後の目標を書く欄 があるといいと思う。発揮できなかった点が目標にはなるが、全くできなかったことで、今後 100%でき るようになることはあまりないと思うので、このくらいまではできるようになりたいと、自分の中で目 標を立てることができるから、これを書き込む欄が欲しい。(文系学部・ゼミ) ・産学連携のプロジェクトで、企業の人しか分からない答えがチームの中に出てきた時に、もっと早く答 えを聞きたいことがあった。実際は企業の方は働いているので難しいと思うが、もっと企業の人に質問 できる日があるといいと思った。(文系学部・ゼミ) ・終盤になって営業で実際に企画をしている方と、製造ラインにいる方の話を聞いた。製造の方から、 「そ のアイデアを形にするのは難しいけれどこういう案にしたら可能だよ」と言われた。それが終盤だった ので、もっと早い段階から、企画の実現に関わる色々な立場の人の意見を聞く機会があったら良かった と思う。(文系学部・ゼミ) ・年を重ねるごとに、メンバー1人ひとりの向き不向きがあることが互いにわかってくるので、ちゃんと 伝えるべきところで「あの子はああだから」と思って伝えなかったり、 「これは違う人がやったほうがい い」と最初に決めつけてプロジェクトに取り組む部分が多くなってくる。 「全員が同じレベルで取り組め れば、もっとクオリティの高いものになったはずだ」と感じたプロジェクトがいくつかあったので、全 員が同じレベルのモチベーションをもって取り組めればいいと思う。(文系学部・ゼミ) ・今のプロジェクトは、基本的に先生の指導のもとに行っているので、もうちょっと学生に任せてもらえ ると、任せられた学生も責任をもつので自発的に動くし、途中でドロップアウトする人も少なくなるの ではないかと思う。骨組みだけを先生が決めてくれるぐらいが、ちょうどいいのかもしれない。(文系学 265 部・PBL) ・月に1回の会合以外に、自主的に集まったりすることがないので、ブランクが長かった。1つの課題に ついてみんなでディスカッションをするようなことでもいいし、やろうと思えばもっとできるが、4回 生は私だけなので、後輩に何かを教えるにはまだまだ勉強が足りない。先生に教えてもらって、何かみ んなで考えられることはないかと思う。(文系学部・PBL) ・いろんなプロジェクトを先生が一人で全部抱えている状況。先生は次の3月で離任なさるので、引き継 がなければいけないプロジェクトもあるが、他の先生が入ったとしても、いきなりでは状況の把握がで きないと思うので、教授自身も真剣に引き継ぐ係になってほしい。 (文系学部・PBL) ・今年は協力企業以外の専門家や他の部の先生に加わってもらったことで、去年に比べるとすごくよくな っているので、他のプロジェクトでも、企業と先生と学生だけではなく、外部のいろんな知識を持って いる人を呼んだほうが、より良いものができるし、プロジェクトも軌道に乗りやすいのではないかと思 う。(文系学部・PBL) ・地域の活性化に重きを置いていたので、社会人基礎力に関する自分の能力レベルをあまり意識せずに活 動していた。能力定義もあいまいなままだったので、もし初めにもっと詳しい説明があれば、もっと成 長できたかと思う。(文系学部・PBL) ・もっと長い期間、通年でやれたら良いと思う。また、3 年生で基礎力が必要、と気づいても築き上げる時 間がないので、1、2 年生の早い段階で社会人基礎力の大切さに気づけるのはよかったと思う。1 年から 4 年までずっと受けるというような授業であれば、段階を踏むことができるので、すごく伸びると思う。 (文系学部・PBL) ・類似の活動をしている、他の大学があるというのを聞いたので、そういったところと情報交換や連携が できるとよいのではないかと思う。学生の刺激になるだろうし、知名度の向上にも一役買うことができ るのではないか。(文系学部・PBL) ・厳しくすべきときは厳しく対応する、というスタンスでやって欲しい。今はそうして下さっているが、 それが今後も維持されて欲しい。失敗したり怒られたりすることで成長した、という実感があるので、 大事なことだと思う。(文系学部・PBL) ・企業側が、 「 (学生に)どこまで求めることができるか」をある程度明確に示しておくと良いと感じる。 チームによって、企業との関わり方や訪問回数などのバラつきがある。これは、プログラム内容の均質 化を阻むもので、改善できれば参加した学生がそれぞれ(バラつきなく)良い経験をすることができる と思う。(理系学部・PBL) ・ 「できること」 、 「できないこと」の線引きをしっかり定めるのが良い。例えば、いくらの予算があるのか が分かれば、何をどこまでできるのかが分かる。そういった点について、学生がわかるようにしたら良 いのではないか。そうすれば、何をどこまでできるかを検討するのに時間を費やすことがなくなると思 う。または、中間報告の機会を設けて、進捗状況を確認しあえれば良いのかもしれない。(理系学部・PBL) ・最後の発表だけではなく、中間発表という形で、他の先生にも発表する機会があった方が良いと感じる。 いきなり最後の発表になるよりも、皆の理解が良いのではないか。(理系学部・研究室) 266 プログラムを経験して日が浅いだけに、具体的な改善点が数多く出された。産学連携型のプログラム では、企業との関係の取り方に改善を希望する学生が多い。プログラムを作る際に、企業にどこまで 協力を依頼するかを決めた上で、その中で何を目標とした活動をするかを明確にして、それを学生・ 教員・企業が共有しておくことが必要であろう。また、教員の異動によって、今後のプログラムの運 営への影響を懸念する学生も見られた。社会人基礎力育成プログラムの問題点の 1 つとして、担当教 職員の負担が大きいことがあげられているが、大学の実態に合わせて、教職員個人の努力に依拠せず、 誰でも同質のプログラムができるような体制を作ることが今後の課題となろう。 在学生にとっては、就職活動の場で振り返りやグループディスカッション、プレゼンテーション等 の経験が役立ったことで、プログラムの効果を実感している、というコメントが多く見られた。ただ し、今回のヒアリング対象となった大学は、モデル大学やグランプリの上位入賞校等、プログラム自 体の質が非常に高いところであり、充実した活動の中に組み込まれたからこそ、社会人基礎力の成長 が言語になって表れた、と見るべきであろう。充実した内容やきめ細かいファシリテーションの伴わ ない活動に、社会人基礎力の言葉だけを付与すればよい、ということではないのは言うまでもない。 267 2‐4.アンケートの集計と分析 プログラムの成果を定量的に示すため、卒業生と在学生にアンケートを実施した。アンケートでは、 能力項目について社会人基礎力以外の専門知識・スキルや基本的な資質・能力等についても細かく尋ね るとともに、特に社会人に対しては、様々な能力を身につけた時期や、大学でどのようなスタイルの授 業が多かったか、さらにそれらが能力を伸ばすために役に立ったかどうかについても聞いている。 また、社会人基礎力育成プログラムを経験した人と、いわゆる普通の大学の授業を受けた人との意識 や学習経験を比較するために、22 歳から 40 歳までの大卒以上の社会人 5150 人に対して、卒業生と同じ 設問を使ったインターネット調査を実施している。この結果と比較することで、社会人基礎力育成プロ グラムの効果を提示する。アンケートの本票は別冊資料を参照。 2-4-1.アンケート結果全体の分析 ここでは、①社会人基礎力育成プログラムを受講した社会人(卒業生) [図表中:社会人(受講生)]、 ②社会人基礎力育成プログラムを受講した卒業予定の在学生(学部 4 年生、修士 2 年生)[在学生(受講 生)]、③インターネット調査を受検した大卒以上・22~40 歳の社会人 5150 人全体[全体(ネット調査)]、 ④インターネット調査を受検した人のうち、①と同じ年代=22~26 才の社会人[22-26 才群(ネット調 査)]の 4 つのグループについて、下記の観点で結果の比較を行い、次頁よりその結果と分析を示す。 【能力観に関する分析~社会人で、受講生と非受講生を比較】 1.「現在の仕事で必要だと思う力」は何か(基本的な資質・能力、基礎学力、専門知識、仕事に対す る意識・視野、社会人基礎力) →【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 2. 1 の各能力は、自分は現在どのレベルにあるか →【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 3.「仕事で必要な力」と「現在のレベル」の比較(上記 1 と 2 のポイントの差) →【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 【能力観に関する分析~受講生の社会人と在校生を比較】 4. 在学生(受講生)の「今後仕事で必要になると思う力」と、社会人(受講生)・22-26 才群(ネット調 査)の「今の仕事で必要だと思う力」の比較 →【在学生(受講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネット調査)】 5. 在学生(受講生)と社会人(受講生)の「現在のレベル」の比較 →【在学生(受講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネット調査)】 6. 受講経験のある在学生と社会人の「今後仕事で必要になると思う力」と「現在のレベル」の差の 比較 →【社会人(受講生)vs 在学生(受講生)】 【能力を身に付けた経験に関する分析】 7.各能力を身に付けた大学時代の活動(授業全体、アルバイト、サークル 等) →【社会人(受講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 8. 能力の向上に意義があった大学時代の経験(リーダーをしたこと、人前で発表したこと 等) →【社会人(受講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 9. 能力の育成に有効だった大学時代の授業や活動(講義、インターンシップ、プレゼン 等) →【社会人(受講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 【求められる成果を上げているか・仕事や生活全般に対するやりがい・生きがいを感じるか】 10.現在の仕事で、求められる成果を上げていると思うか。仕事や生活全般にやりがい・生きがいを 感じているか。 →【社会人(受講生)vs vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 268 【能力観に関する分析~社会人で、受講生と非受講生を比較】 1.現在の仕事で必要だと思う力は何か 【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット 調査)】 ■質問:下記の力や観点は、自分が今の「仕事」をすることにおいて、どの程度必要ですか。 (全く必要ではない:0点~大いに必要である:6点として、回答全体の平均点を算出。以下同) [傾向] 5.0~5.4 5.5~ 物事全般への前向きさ、積極性 5.7 5.7 4.9 4.9 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 5.1 5.1 4.6 4.5 5.2 5.5 4.9 4.8 5.7 5.7 5.1 5.1 5.2 5.2 5.1 5.3 5.3 5.2 4.6 4.3 4.3 4.6 4.4 4.3 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 4.7 4.4 5.1 4.5 5.1 4.7 4.9 4.6 4.4 3.9 4.5 3.5 4.5 4.1 4.6 3.8 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 3.6 4.9 4.5 4.8 3.0 4.2 3.1 4.3 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 5.2 5.0 4.9 5.0 4.9 4.9 4.8 4.8 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 5.5 5.4 5.0 4.9 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 4.9 5.3 4.6 4.6 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 4.9 5.1 4.4 4.3 自分の問題意識を仕事に生かす力 社会人基礎力以外の平均 5.1 5.0 5.1 5.1 4.6 4.5 4.5 4.5 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 社 会 人 基 礎 力 平均 在学生(受講 22~26才群 全体(ネット調 生) (ネット調査) 査) 社会人(受講 生) 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 5.1 5.4 4.7 4.7 5.1 5.1 5.3 5.4 4.7 5.1 5.0 5.4 5.4 5.5 5.6 5.1 5.2 5.3 5.3 5.2 5.4 5.1 5.4 5.3 5.7 5.5 4.4 4.6 4.6 4.6 4.2 4.5 4.3 4.5 4.6 5.1 5.1 4.5 4.6 4.7 4.6 4.3 4.5 4.3 4.5 4.5 5.0 4.9 5.2 5.3 4.6 4.6 社会人基礎力の平均 ■図表 現在の仕事で必要な力は何か 【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 社会人(受講生) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 6.0 5.0 4.0 3.0 意識・視野 前に踏み出す力 考え抜く力 チームで働く力 ス ト レ ス コ ン ト ロー ル力 269 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 創造力 計画力 課題発見力 実行力 働 き か け力 主体性 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に 生 か す 力 社 会 (所 属 し て いる 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 専門知識・スキル 幅 広 い視 野 / 教 養 、お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、 習 得 す る力 自 分 の業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 自 分 の業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る ) に関 す る 知 識 I T を活用 する力 基礎学力・汎用的能力 P C スキ ル 、 英 語 力 ・語 学 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や絵 で 表 現 す る 力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に思 考 す る 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で培 った 考 え 方 人間としての基本的な資質・能力 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ ) 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に共 感 し 、思 い や る 能 力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安 定 性 自 分 の 感 情 や行 動 を コ ン ト ロ ー ルす る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 ではな い ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 2.0 社会人基礎力以外の平均点、社会人基礎力の平均点いずれも、受講経験のある社会人が非受講者の社会人全 体・22-26 才群をいずれも 0.5~0.6 点上回り、力・能力全般に対する必要性意識の高さを示している。3 群に 共通して必要認識が比較的強い力・能力には、 「人間としての基本的な資質・能力」や社会人基礎力の力・能 力が見られる。共通して必要意識が比較的低い項目として、「基本的な計算力、数学・理科で培った考え方」 「英語力・語学力」がある。また、社会人基礎力は、受講経験者と非受講経験者のポイント差が他の能力に比 べて大きくなっている。受講経験者は、社会人基礎力のポイントがほとんど 5.0 以上であるのに対して、非受 講経験者ではポイントが 5 以上であったのは、規律性(全体、22-26 才群)とストレスコントロール力(22-26 才 群)のみである。 2. 1 の各能力は、自分は現在どのレベルにあるか【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体 (ネット調査)】 ■質問:下記の力や観点において、あなたは、現在どのレベルにあると思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) [傾向] 3.5未満 4.0以上 平均 社会人(受講 22~26才群 全体(ネット調 生) (ネット調査) 査) 物事全般への前向きさ、積極性 4.2 3.5 3.6 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 3.4 3.3 3.5 3.8 3.6 3.7 4.4 4.1 4.3 他人に共感し、思いやる能力 4.4 3.9 4.0 リーダーシップ 3.4 3.1 3.4 健康・体力・運動神経 4.2 3.5 3.5 文章力、読解力 3.1 3.5 3.7 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 3.1 3.3 3.6 3.6 3.5 3.8 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 社 会 人 基 礎 力 3.0 3.3 2.5 2.4 PCスキル、ITを活用する力 3.2 3.5 3.8 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 2.7 3.5 3.9 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 3.2 2.4 2.7 3.5 3.9 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 3.9 3.7 3.9 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 3.7 3.6 3.8 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 3.5 3.5 3.6 自分の問題意識を仕事に生かす力 3.9 3.4 3.6 社会人基礎力以外の平均 3.5 3.4 3.6 3.6 3.5 3.8 3.2 3.8 3.6 3.5 3.4 3.4 3.5 4.2 4.1 4.4 4.0 3.0 3.5 3.5 3.5 3.2 3.0 3.2 3.7 3.6 4.2 3.2 3.3 3.7 3.7 3.7 3.5 3.3 3.4 3.7 3.7 4.3 3.3 3.7 3.4 3.6 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 社会人基礎力の平均 270 ■図表 各能力は現在どのレベルにあるか【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 社会人(受講生) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 6.0 5.0 4.0 3.0 ス ト レ ス コ ン ト ロ ー ル力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 考え抜く力 発信力 創造力 計画力 前に踏み出す力 課題発見力 実行力 働 き か け力 意識・視野 主体性 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に生 か す 力 専門知識・スキル 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 取 り組 む力 幅 広 い視 野 / 教 養 、お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 基礎学力・汎用的能力 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、 習 得 す る力 を活 用 す る力 I T 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 スキ ル 、 P C 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る ) に関 す る 知 識 英 語 力 ・語 学 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 人間としての基本的な資質・能力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 ) 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 った 考 え 方 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安定性 自 分 の感 情 や行 動 を コ ン ト ロー ルす る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で はな い ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 2.0 チームで働く力 社会人基礎力以外の平均点は高い方から、非受講の社会人全体、受講経験のある社会人、非受講の 22-26 才群の 順であるのに対し、社会人基礎力の平均点は受講経験のある社会人、非受講の社会人全体、非受講の 22-26 才群の 順になる。受講経験のある社会人が、他の2群に比べて高く現在の自分を評価する力・能力は、「物事全般への前 向きさ、積極性」 、「健康・体力運動神経」、「柔軟性」 「ストレスコントロール力」であり、低く現在の自分を評価 する力・能力は、 「専門知識・スキル」に属する力・能力である。 「英語力・語学力」については 3 群とも現在のレベルについての自己評価が低い。 3.「仕事で必要な力」と「現在のレベル」の比較(上記 1 と 2 のポイントの差) 【社会人(受講生)vs 22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 [平均点の差] -1.5~1.9 -2.0~ 物事全般への前向きさ、積極性 -1.5 -1.4 -1.3 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) -1.7 -1.3 -1.0 -1.4 -1.3 -1.1 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 -1.3 -1.0 -0.8 -0.8 -0.7 -0.6 リーダーシップ -1.8 -1.2 -1.0 健康・体力・運動神経 -0.9 -0.8 -0.8 文章力、読解力 -1.6 -0.9 -0.8 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 -1.3 -0.6 -0.5 -1.5 -1.0 -0.8 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 -1.3 -0.5 -0.5 英語力・語学力 -1.2 -0.5 -0.7 PCスキル、ITを活用する力 -1.7 -0.7 -0.5 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 -2.5 -1.4 -1.1 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 社会人(受 講生) 平均 22~26才群 全体(ネット (ネット調 調査) 査) -2.2 -1.3 -0.9 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 -1.6 -1.3 -1.0 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 -1.2 -1.0 -0.8 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 -1.4 -0.9 -0.7 自分の問題意識を仕事に生かす力 社会人基礎力以外の平均 -1.2 -1.5 271 -1.2 -0.9 -1.0 -0.8 社会人(受 講生) 社 会 人 基 礎 力 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 -1.5 -1.9 -1.3 -1.7 -1.9 -1.3 -1.7 -1.5 -1.2 -1.3 -1.1 -1.6 社会人基礎力の平均 平均 22~26才群 全体(ネット (ネット調 調査) 査) -1.2 -0.9 -1.4 -1.2 -1.1 -0.9 -1.1 -1.0 -1.1 -0.9 -1.0 -0.8 -1.5 -1.2 -1.1 -0.9 -0.8 -0.8 -1.0 -0.8 -0.9 -0.7 -1.9 -1.6 -1.5 -1.2 -1.0 ■図表 「仕事で必要な力」と「現在のレベル」の比較(上記 1 と 2 のポイントの差) 【社会人(受講生)vs 22-26 才群 (ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 社会人(受講生) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5 ス ト レ ス コ ン ト ロ ー ル力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 考え抜く力 創造力 計画力 前に踏み出す力 課題発見力 実行力 働 き か け力 主体性 意識・視野 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に生 か す 力 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 専門知識・スキル 幅 広 い視 野 / 教 養 、 お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、習 得 す る 力 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 を活用 する力 I T 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る )に 関 す る 知 識 基礎学力・汎用的能力 P C スキ ル 、 英 語 力 ・語 学 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 っ た 考 え 方 人間としての基本的な資質・能力 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ ) 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安定性 自 分 の感 情 や行 動 を コ ン ト ロー ルす る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で は な い ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 -3.0 チームで働く力 力・能力全般について、「仕事で必要と思うレベル」から「現在の自分のレベル」のポイントを差し引い て、その開き具合を表したグラフである。 総じて受講経験のある社会人は現在の自己評価が厳しく、必要として考えるレベルも高い傾向が表われて いる。受講経験者が、必要レベルに対して、現在のレベルに不足を感じている力・能力は、 「リーダーシッ プ」 、 「専門知識・スキル」に属する項目、「計画力」、「発信力」である。これらの力・能力は、22-26 才群 や全体と比較してみても、下方に差が比較的大きく開いている。加えて「基礎学力・汎用的能力」に属する 項目でも同様の傾向である。とくに「専門知識・スキル」に属する項目については、受講経験者がきわめて 強い不足感をもっていることが特徴的である。しかし、 「人間としての基本的資質・能力」 「チームで働く力」 の差は他の項目群に比べて小さい。また、 「ストレスコントロール力」は 3 群とも、同程度の強い開き具合 となっており、不足の度合いを同様にとらえていることがわかる。 【能力観に関する分析~受講生の社会人と在校生を比較】 4. 在学生(受講生)の「今後仕事で必要になると思う力」と、社会人(受講生)・22-26 才群(ネット調 査)の「今の仕事で必要だと思う力」の比較【在学生(受講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネッ ト調査)】 ■質問:[社会人] 下記の力や観点は、自分が今の「仕事」をすることにおいて、どの程度必要ですか。 [在学生] 下記の力や観点は、自分が今後「仕事」をする上で、どの程度必要と思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) 272 [傾向] 5.0~5.4 5.5~ 社会人(受講 生) 5.7 5.7 4.9 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 5.1 5.1 4.6 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 社 会 人 基 礎 力 22~26才群 (ネット調査) 物事全般への前向きさ、積極性 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 在学生(受講 生) 5.2 5.5 4.9 5.7 5.2 5.2 5.7 5.3 5.3 5.1 4.6 4.3 5.1 4.7 4.4 5.1 5.2 5.1 4.7 4.9 4.3 4.4 3.9 4.5 4.5 3.6 4.9 4.6 4.5 4.8 3.5 3.0 4.2 5.2 5.0 4.9 4.9 4.9 4.8 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 5.5 5.4 5.0 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 4.9 5.3 4.6 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 4.9 5.1 4.4 自分の問題意識を仕事に生かす力 社会人基礎力以外の平均 5.1 5.0 5.1 5.1 4.6 4.5 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 社会人基礎力の平均 5.1 5.4 4.7 5.1 5.1 5.3 5.4 4.7 5.1 5.0 5.4 5.4 5.5 5.6 5.1 5.2 5.3 5.3 5.2 5.4 5.1 5.4 5.3 5.7 5.5 4.4 4.6 4.6 4.6 4.2 4.5 4.3 4.5 4.6 5.1 5.1 5.2 5.3 4.6 ■図表 在学生の「今後仕事で必要になると思う力」と、社会人の「今の仕事で必要だと思う力」の比較【在学生(受 講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネット調査)】 社会人(受講生) 在学生(受講生) 22~26才群(ネット調査) 6.0 5.0 4.0 3.0 ス ト レ ス コ ン ト ロー ル力 チームで働く力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 考え抜く力 創造力 計画力 前に踏み出す力 課題発見力 実行力 働 き か け力 主体性 273 意識・視野 自 分 の 問 題 意 識 を 仕 事 に生 か す 力 専門知識・スキル 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 取 り組 む 力 幅 広 い 視 野 / 教 養 、お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、習 得 する力 を 活 用 す る力 I T 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 スキ ル 、 基礎学力・汎用的能力 P C 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る )に 関 す る知 識 英 語 力 ・語 学 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 った 考 え 方 人間としての基本的な資質・能力 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ ) 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安定性 自 分 の感 情 や行 動 を コ ン ト ロー ルす る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で はな い ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 2.0 在学生(受講生)は総じて必要レベルについての意識が高いラインで安定している。受講経験のある社会 人が「英語力・語学力」や「創造力」について、非受講の 22-26 才群寄りに下ぶれするなど、力・能力によ って軽重の差が表われているのに比べ、在学生はオールマイティを求める傾向が見られる。 在学生の必要意識が特に強いのは、 「物事全般への前向きさ、積極性」 「安定性」 「誠実さ、責任感」 「規律 性」 「誠実さ、責任感」 、「規律性」である。 在学生と受講経験のある社会人の必要レベル意識が高い平均点で近接しているのに対し、22-26 才群が比較 的低い平均点に留まっているのは、「自分を肯定的に捉える態度」「リーダーシップ」 「健康・体力・運動神 経」 「意識・視野」に属する力・能力、社会人基礎力の 12 の能力要素である。 5. 在学生(受講生)と社会人(受講生)の「現在のレベル」の比較【在学生(受講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネット調査)】 ■質問:[社会人]・[在学生]下記の力や観点において、あなたは、現在どのレベルにあると思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) [傾向] 3.5未満 4.0以上 物事全般への前向きさ、積極性 4.2 4.5 3.5 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 3.4 3.9 3.3 3.8 3.9 3.6 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 4.4 4.4 3.4 4.7 4.6 4.1 4.1 3.9 3.1 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 4.2 3.1 3.1 4.0 3.3 3.1 3.5 3.5 3.3 英語力・語学力 3.6 3.2 2.4 3.5 3.2 2.0 3.5 3.0 2.5 PCスキル、ITを活用する力 3.2 3.2 3.5 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 2.7 3.0 3.5 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 社 会 人 基 礎 力 平均 社会人(受講 在学生(受講 22~26才群 生) 生) (ネット調査) 2.7 2.8 3.5 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 3.9 3.9 3.7 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 3.7 4.1 3.6 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 3.5 3.9 3.5 自分の問題意識を仕事に生かす力 3.9 4.0 3.4 社会人基礎力以外の平均 3.5 3.7 3.4 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 社会人基礎力の平均 3.6 4.2 3.5 3.2 3.8 3.6 3.5 3.4 3.4 3.5 4.2 4.1 4.4 4.0 3.8 4.0 3.9 3.7 3.7 3.8 3.8 4.3 4.3 4.9 3.7 3.0 3.5 3.5 3.5 3.2 3.0 3.2 3.7 3.6 4.2 3.2 3.7 4.0 3.4 274 ■図表 在学生と社会人の「現在のレベル」の比較【在学生(受講生)vs 社会人(受講生) vs 22-26 才群(ネット調査)】 社会人(受講生) 在学生(受講生) 22~26才群(ネット調査) 6.0 5.0 4.0 3.0 ス ト レ ス コ ン ト ロ ー ル力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 考え抜く力 創造力 計画力 前に踏み出す力 課題発見力 実行力 働 き か け力 意識・視野 主体性 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に生 か す 力 専門知識・スキル 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 幅 広 い視 野 / 教 養 、お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、 習 得 す る力 を 活 用 す る力 I T 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 スキ ル 、 基礎学力・汎用的能力 P C 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る ) に関 す る 知 識 英 語 力 ・語 学 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 人間としての基本的な資質・能力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 ) 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 った 考 え 方 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安定性 自 分 の感 情 や行 動 を コ ン ト ロ ー ル す る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で はな い ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 2.0 チームで働く力 現在のレベルに対する自己認識は、おおむね在学生(受講生)が最も高く、受講経験のある社会人、 非受講の 22-26 才群と続く傾向がある。とりわけその傾向が強いのが、 「意識・視野」と社会人基礎力に 関する能力群である。中でも「誠実さ、責任感」 「他人に共感し、思いやる能力」「規律性」に対する自 己評価のポイントが高く、プログラムを通して習得したことに対する自負がうかがわれる。一方、専門 知識・スキルの習得度合いは、非受講の社会人の方が高く、受講経験者は社会人・在学生とも社会で求 められる知識・スキルの高さを認識していることが見て取れる。 また、 「基礎学力・汎用的能力」に属する力・能力は 3 群の差がきわめて小さく、「英語力・語学力」は 3 群ともに自己評価が比較的低い。 6.受講経験のある在学生と社会人の「今後仕事で必要になると思う力」と「現在のレベル」の差の比較 【社会人(受講生)vs 在学生(受講生)】 [平均点の差] -1.5~1.9 -2.0~ -1.5 -1.2 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) -1.7 -1.2 -1.4 -1.6 他人に共感し、思いやる能力 -1.3 -0.8 -1.0 -0.7 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 -1.8 -0.9 -1.6 -1.3 -1.2 -1.2 -1.8 -1.6 -1.5 -1.3 -1.2 -1.7 -1.4 -1.4 -2.5 -1.6 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 -2.5 -2.0 -2.2 -2.1 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 -1.6 -1.5 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 -1.2 -1.2 社会(所属している企業、業界、国など)を意 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 -1.4 -1.2 自分の問題意識を仕事に生かす力 社会人基礎力以外の平均 -1.2 -1.5 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 意識・視野 在学生(受 講生) 物事全般への前向きさ、積極性 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 力 誠実さ、責任感 社 会 人 基 礎 力 以 外 の 能 力 ・ 観 点 平均 社会人(受 講生) 275 -1.1 -1.4 -1.5 -1.3 社会人基礎力の平均 ス ト レ ス コ ン ト ロ ー ル力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 創造力 計画力 課題発見力 実行力 働 き か け力 主体性 自 分 の 問 題 意 識 を 仕 事 に生 か す 力 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 276 在学生(受講生) 社会人(受講生) 0.0 チームで働く力 考え抜く力 前に踏み出す力 意識・視野 専門知識・スキル 幅 広 い視 野 / 教 養 、お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、 習 得 す る力 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 を活 用 す る力 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る ) に関 す る 知 識 スキ ル 、 英 語 力 ・語 学 力 文 章 力 、読 解 力 リ ー ダ ー シ ップ 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 誠 実 さ 、責 任 感 ) 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 った 考 え 方 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 I T 安定性 自 分 の感 情 や 行 動 を コ ン ト ロ ー ル す る 習 慣 、力 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で はな い ) ( 基礎学力・汎用的能力 人間としての基本的な資質・能力 P C -1.2 -1.3 -1.2 -1.4 -1.6 -1.5 -1.6 -1.3 -1.1 -1.0 -0.8 -1.8 社 会 人 基 礎 力 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 -3.0 -1.5 -1.9 -1.3 -1.7 -1.9 -1.3 -1.7 -1.5 -1.2 -1.3 -1.1 -1.6 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 在学生(受 講生) 社会人(受 講生) ■図表 受講経験のある在学生と社会人の「今後仕事で必要になると思う力」と「現在のレベル」の差の比較【社会 人(受講生)vs 在学生(受講生)】 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5 受講経験のある社会人と在学生で、 「必要レベル」から「現在のレベル」を差し引いて、その開き具 合を比較した。社会人と在学生が、不足を感じている度合いが低いという点で一致しているのは「他 人に共感し、思いやる力」、 「意識・視野」に属する力・能力、 「実行力」である。対して、不足を感じ る程度が高いという点で一致しているのは、「専門知識・スキル」に属する能力である。 在学生に比べて社会人が不足を感じる程度が強いのは、「リーダーシップ」「 「働きかけ力」「計画力」 となっている。社会人に比べて在学生が不足を感じる程度が強いのは、「英語力・語学力」である。 【能力を身に付けた経験に関する分析】 7.各能力を身に付けた大学時代の活動(授業全体、アルバイト、サークル等)【社会人(受講生)vs 在学 生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 ■質問:[社会人]・[在学生] 下記の力や観点は、大学時代を振り返って、特にどのような活動で身につけたと思いま すか。それぞれ 2 つまでお答えください。 [傾向] 50%以上 【社会人基礎力以外の能力】 40~49% 30~39% % 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.0% ミ 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.6% 物事全般への前向 在学生(受講生) ミ 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など きさ、積極性 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 24.8% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 22.7% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 28.6% 大学での学業全般 ミ 自分を肯定的に捉 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 在学生(受講生) 32.9% える態度(自信を ミ 課外活動 持ちつつ、傲慢で 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 23.5% 課外活動 はない) 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 23.7% 大学での学業全般 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 24.5% 課外活動 ミ 安定性(自分の感 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.9% 情や行動をコント 在学生(受講生) ミ 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 人 ロールする習慣、 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 24.0% 力) 課外活動 間 大学時代のクラブ、サークル活動など と 21.6% 大学時代のアルバイト 全体(ネット調査) 課外活動 し 大学での卒業研究としての研究室、ゼ て 社会人(受講生) 28.8% 大学時代のアルバイト ミ の 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 基 在学生(受講生) 29.2% 大学時代のアルバイト ミ 本 誠実さ、責任感 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 33.5% 的 課外活動 な 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 大学時代のアルバイト 28.6% 資 課外活動 質 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 33.3% ・ 課外活動 ミ 能 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 30.7% 力 他人に共感し、思 在学生(受講生) 課外活動 ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など いやる能力 22~26才群(ネット調査) 23.9% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 27.9% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 社会人(受講生) 34.0% ミ 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 在学生(受講生) 34.4% ミ 課外活動 リーダーシップ 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 27.4% 課外活動 ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 30.2% 課外活動 ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 社会人(受講生) 45.0% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 26.4% 大学時代のアルバイト 健康・体力・運動神 在学生(受講生) 課外活動 経 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 28.9% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 37.4% 大学時代のアルバイト 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 39.1% 大学での学業全般 ミ 社会人(受講生) 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 43.0% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 39.6% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 43.5% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 大学での学業全般 41.9% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) 大学での学業全般 42.9% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 43.6% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 49.1% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 41.2% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) 39.3% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 33.6% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 32.8% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 41.9% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) 41.0% 大学での学業全般 ミ 大学での学業全般 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 35.9% 課外活動 ミ 在学生(受講生) 文章力、読解力 基本的な計算力、 数学・理科で培っ た考え方 物事を客観的に捉 基 え、論理的に思考 する力 礎 学 力 ・ 汎 用 的 物事を概念化し、 能 図や絵で表現する 力 力 大学での学業全般 全体(ネット調査) 大学での学業全般 社会人(受講生) 大学での学業全般 在学生(受講生) 大学での学業全般 英語力・語学力 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 全体(ネット調査) 大学での学業全般 社会人(受講生) 大学での学業全般 大学での学業全般 PCスキル、ITを活 在学生(受講生) 用する力 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 全体(ネット調査) 大学での学業全般 % % 22.0% 大学での学業全般 20.0% 22.8% 大学での学業全般 12.0% 18.6% 大学での学業全般 17.6% 19.0% 大学での学業全般 17.9% 18.4% 大学時代の就職活動 20.0% 大学での学業全般 6.1% 11.8% 22.2% 大学での学業全般 16.9% 19.1% 大学時代のアルバイト 18.8% 22.6% 大学時代のアルバイト 18.9% 20.0% 大学での学業全般 11.8% 18.4% 大学での学業全般 15.5% 20.7% 大学での学業全般 19.3% 23.1% 25.0% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 19.2% 17.7% 19.2% 大学での学業全般 13.1% 21.3% 大学での学業全般 16.5% 22.2% 大学での学業全般 13.0% 26.1% 大学での学業全般 大学時代のアルバイト 17.0% 19.3% 大学での学業全般 18.1% 19.3% 大学での学業全般 15.9% 26.4% 大学での学業全般 11.3% 24.7% 大学での学業全般 15.1% 20.8% 大学時代のアルバイト 17.6% 20.5% 大学時代のアルバイト 17.5% 17.5% 大学での学業全般 大学時代の親元を離れた生活 18.1% 大学での学業全般 21.7% 10.0% 15.3% 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 10.5% ミ 17.7% 大学での学業全般 13.5% 34.8% 大学時代の就職活動 10.9% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 38.5% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 33.5% 課外活動 37.2% 9.3% 5.5% 6.2% 30.2% その他 14.0% 24.7% その他 15.6% 32.1% 大学時代のアルバイト 8.5% 31.0% 大学時代のアルバイト 6.3% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 31.5% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 28.6% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.6% 課外活動 29.4% 30.2% その他 30.8% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 9.6% 大学時代のアルバイト 9.8% 12.4% 14.7% 11.6% 9.3% 9.0% 7.7% 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 40.5% 35.3% 7.5% ミ 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 42.5% 17.5% その他 12.5% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 40.6% その他 31.9% 10.1% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 49.3% 13.6% 大学時代の海外留学 13.1% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 45.7% 19.3% 大学時代の海外留学 9.5% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 45.5% 40.9% その他 4.5% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 27.2% ミ 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 46.0% 28.0% その他 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 40.4% 30.1% その他 ミ 54.3% 277 9.9% 11.8% 12.8% 社会人(受講生) 大学での学業全般 自分の業務・職務 大学での学業全般 の分野(業種・職種 在学生(受講生) も含める)に関する 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 知識 全体(ネット調査) 大学での学業全般 専 社会人(受講生) 大学での学業全般 門 知 自分の業務として 在学生(受講生) 大学での学業全般 識 必要となる技術・ ・ 技能 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 ス キ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 ル 社会人(受講生) 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 41.3% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 37.4% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 40.7% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 35.7% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 36.8% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 39.0% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 39.8% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 36.2% ミ 40.5% 業務・職務で必要 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 41.1% 大学での学業全般 となる知識・技術を 在学生(受講生) ミ 自ら学び、習得す 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 32.3% る力 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 36.6% ミ 大学での学業全般 大学時代のクラブ、サークル活動など 社会人(受講生) 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 29.6% 課外活動 ミ 幅広い視野/教 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) 30.1% 大学での学業全般 養、およびそれを ミ 広げる姿勢 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 32.4% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 31.7% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 27.9% 大学での学業全般 意 社会(所属している 社会人(受講生) ミ 識 企業、業界、国な 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 26.7% 大学での学業全般 ・ ど)を 意識(貢献 在学生(受講生) ミ 視 意識、役割意識な 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 26.1% 野 ど)して、自分の業 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 務に取り組む力 全体(ネット調査) 大学での学業全般 26.3% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) 34.0% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 38.1% 大学での学業全般 自分の問題意識を 在学生(受講生) ミ 仕事に生かす力 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) 26.0% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) 大学での学業全般 26.5% ミ 28.6% その他 23.8% 32.5% その他 12.5% 25.2% アルバイト 13.1% 26.7% 大学時代のアルバイト 10.1% 28.6% その他 21.4% 27.6% その他 21.1% 24.1% 大学時代のアルバイト 14.9% 27.7% 大学時代のアルバイト 大学時代のアルバイト その他 大学時代のクラブ、サークル活動など 34.4% 課外活動 36.2% 9.9% 8.5% 12.2% 25.3% 大学時代のアルバイト 17.0% 28.2% 大学時代のアルバイト 11.5% 大学時代の就職活動 14.8% 大学時代のボランティア活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 19.3% 課外活動 29.0% 17.9% 大学時代のアルバイト 20.9% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 7.4% 16.1% 13.9% 14.6% 14.0% 20.0% 大学時代のアルバイト 18.9% 19.1% 大学時代のアルバイト 15.6% 19.8% 大学時代のアルバイト 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 16.7% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 21.7% 課外活動 25.5% 25.7% 大学時代のアルバイト 17.0% 14.9% 15.5% 18.5% 15.7% 【社会人基礎力】 % 社会人(受講生) 在学生(受講生) 主体性 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 全体(ネット調査) 前 に 踏 み 出 す 力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考 え 抜 く 力 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 社会人(受講生) 計画力 22~26才群(ネット調査) 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22~26才群(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 全体(ネット調査) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 課外活動 全体(ネット調査) 創造力 発信力 ー チ ム で 働 く 力 傾聴力 全体(ネット調査) 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 % 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 37.6% 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 21.5% ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 21.3% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 40.9% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 35.2% 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 27.1% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 27.2% ミ 37.3% 46.2% 大学での学業全般 36.6% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 29.3% 大学での学業全般 27.1% 大学での学業全般 50.0% 大学での学業全般 39.2% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 % 18.2% 大学での学業全般 11.8% 18.5% 大学での学業全般 12.9% 大学時代のクラブ、サークル活動など 18.0% 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 19.0% 18.3% ミ 20.3% 27.3% 大学での学業全般 13.6% 21.6% 大学での学業全般 15.9% 21.1% 大学での学業全般 18.0% 20.1% 大学での学業全般 18.7% 19.2% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 21.9% 大学での学業全般 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 16.7% 課外活動 16.3% 12.0% 21.4% 16.8% 23.2% 18.0% 19.3% 大学での学業全般 15.9% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 20.8% 課外活動 15.6% 29.2% 大学での学業全般 27.8% 14.5% 30.8% 大学での学業全般 29.6% 13.6% 43.8% 大学での学業全般 大学時代のクラブ、サークル活動など 18.6% 大学での学業全般 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 29.7% 29.1% ミ 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 29.7% 大学での学業全般 27.0% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 46.7% 15.6% 大学での学業全般 課外活動 40.7% 42.2% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 30.6% 大学での学業全般 31.0% 大学での学業全般 51.5% 大学での学業全般 42.3% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 36.3% 大学での学業全般 33.9% 大学での学業全般 15.4% 13.3% 16.9% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 26.6% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 17.2% 課外活動 15.4% 20.1% 大学での学業全般 12.7% 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 21.7% 課外活動 23.0% 大学時代のクラブ、サークル活動など 26.0% 大学での学業全般 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 35.3% 23.5% 大学での学業全般 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 23.5% 21.6% 大学での学業全般 ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 22.6% 大学での学業全般 ミ 278 15.3% 20.5% 大学での学業全般 26.8% 38.0% 25.3% 12.5% 14.0% 19.0% 13.1% 14.5% 17.4% 18.0% 16.5% 20.0% 20.5% 大学での卒業研究としての研究室、ゼ ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 22~26才群(ネット調査) 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 全体(ネット調査) 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 社会人(受講生) ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 在学生(受講生) ミ 社会人(受講生) 柔軟性 情況把握力 ー チ ム で 働 く 力 規律性 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 全体(ネット調査) 社会人(受講生) 22.2% 大学時代のアルバイト 17.6% 22.4% 大学での学業全般 13.3% 大学での学業全般 大学時代のアルバイト 18.4% 21.2% 大学時代のアルバイト 18.5% 28.3% 大学での学業全般 15.1% 22.2% 23.7% 大学時代のアルバイト 14.0% 19.3% 大学での学業全般 19.0% 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 20.0% 大学時代のアルバイト ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 30.8% 大学時代のアルバイト 25.0% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 24.5% 大学時代のアルバイト 23.4% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.2% 18.5% 大学での学業全般 課外活動 19.6% 15.4% 18.1% 16.3% 20.8% 大学での学業全般 18.0% 24.1% アルバイト 13.0% 17.4% 大学時代の就職活動 10.9% 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 18.5% 15.8% ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 19.9% 17.8% 課外活動 23.3% 大学での学業全般 大学時代のアルバイト 25.5% 大学での学業全般 25.7% 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学時代のアルバイト 28.1% 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 大学時代のクラブ、サークル活動など 29.6% ミ 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 25.0% 課外活動 ミ 大学時代のアルバイト ストレスコントロー 在学生(受講生) ル力 22~26才群(ネット調査) 大学時代のアルバイト 全体(ネット調査) 大学時代のクラブ、サークル活動など 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 34.7% 課外活動 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 24.7% ミ 大学での卒業研究としての研究室、ゼ 26.4% ミ 大学時代のクラブ、サークル活動など 32.1% 課外活動 大学時代のクラブ、サークル活動など 34.4% 課外活動 37.3% 21.1% 大学での学業全般 社会人基礎力以外の能力では、「人間としての基本的な資質・能力」の「前向きさ・積極性」「誠実さ・ 責任」 「自己肯定」 「安定性」 「リーダーシップ」で、受講経験のある社会人・在校生がサークル等の課外 活動やアルバイトやよりも研究室やゼミをより高く評価しており、しかもそのポイントが高いことが目 立つ。また、社会人基礎力では、「前に踏み出す力」「考え抜く力」についてみると、受講経験者と非受 講経験者で、身に付けるもととなった活動そのものの顔ぶれはほぼ同じだが、受講経験者は研究室・ゼ ミをより高く評価していることがわかる。一方で「チームで働く力」では、受講経験者が全ての力で研 究室・ゼミを最も高く評価しており、しかもそのポイントが高いのに比べて、非受講経験者は、サーク ル等の課外活動、アルバイトが上位に来ている。しかし、そのポイントは、受講経験者の研究室・ゼミ のポイントに比べて高いものではない。 8. 能力の向上に意義があった大学時代の経験(リーダーをしたこと、人前で発表したこと等) 【社会人 (受講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 ■質問:[社会人][在学生]大学時代を振り返って、下記の経験はあなたの能力や人間性の向上にとって意義があ ったと思いますか。(全く意義のない経験だった:0点~たいへん有意義な経験だった:6点とした平均点を算出) [傾向] 4.5未満 5.5以上 ある活動にコミットし、試行錯誤したこと 最後まで何かを成し遂げたこと 難しいと思われることに挑戦したこと 実社会に関わる取り組みをしたこと 人前で発表を行ったこと グループで、ある目標に向けて取り組んだ グループのリーダーをしたこと 何か成し遂げたことを、認められたり誉めら れたりしたこと 他者から評価された経験 自分で選択・決定する機会が増えたこと 新たな価値観や知識・情報に出会ったこと 教員との出会い、交流 考え方やバックグランド、年齢が異なる人と の交流をしたこと 友人との交流 異性との関わり(恋愛経験など) 平均 平均 社会人(受 在学生(受 22~26才群 全体(ネット 講生) 講生) (ネット調 調査) 5.5 5.6 4.5 4.3 5.7 5.7 4.9 4.7 5.5 5.4 4.7 4.6 5.1 5.5 4.5 4.4 5.5 5.7 4.5 4.4 5.6 5.6 4.5 4.3 5.3 5.4 4.4 4.3 5.3 5.5 4.7 4.4 5.2 5.4 5.7 5.6 5.4 5.4 5.6 5.4 4.6 4.7 4.9 4.0 4.4 4.5 4.7 3.8 5.5 5.5 4.6 4.5 5.5 5.1 5.4 5.5 4.9 5.5 4.9 4.7 4.6 4.8 4.5 4.4 279 ■図表 能力の向上に意義があった大学時代の経験(リーダーをしたこと、人前で発表したこと等)【社会人(受講 生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 社会人(受講生) 在学生(受講生) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 6.0 5.0 4.0 異 性 と の 関 わ り (恋 愛 経 験 な ど ) 友 人 と の交 流 考 え 方 や バ ック グ ラ ン ド 、年 齢 が 異 な る 人 と の 交 流 を した こ と 教 員 と の 出 会 い 、交 流 新 た な 価 値 観 や 知 識 ・情 報 に 出 会 った こ と 自 分 で 選 択 ・決 定 す る 機 会 が 増 え た こ と 他 者 から評 価 さ れ た経 験 何 か 成 し 遂 げ た こ と を 、認 め ら れ た り 誉 め ら れ た り した こ と グ ルー プ の リ ー ダ ー を し た こ と グ ル ー プ で 、あ る 目 標 に 向 け て 取 り 組 ん だ こ と 人 前 で 発 表 を 行 った こ と 実 社 会 に関 わ る 取 り 組 み を し た こ と 難 し い と思 わ れ る こ と に 挑 戦 し た こ と 最 後 ま で何 か を 成 し遂 げ た こ と あ る 活 動 に コ ミ ッ ト し 、試 行 錯 誤 し た こ と 3.0 全般に受講経験者の方が大学時代の経験に対する評価が高いが、特に大きな差がついたのは「教 員との出会い・交流」で、プログラムを通して、教員に受けた指導を高く評価していることが 見て取れる。また、受講生では「ある活動にコミットして試行錯誤したこと」 「人前の発表」 「グ ループである目標に向けて取り組んだこと」 「異なる背景を持つ人との交流」等、社会人基礎力 育成プログラムに多く組み込まれる活動の評価が高く、意図的にこのような場面や活動を組み 込むことの有効性を示している。受講経験のある社会人のポイントが最も高い「新しい価値や 情報とであったこと」は、非受講生も高く評価しており、両者のポイントの差は小さくなって いる。 9. 能力の育成に有効だった大学時代の授業や活動(講義、インターンシップ、プレゼン等)【社会人(受 講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 ■質問:以下の大学時代の授業や活動は、「今の仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効でしたか。 (全く意義のない経験だった:0点~たいへん有意義な経験だった:6点とした平均点を算出) [傾向] 3.5未満 4.5以上 実務知識・技術を教える授業 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニングする 実験 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等) 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 理論や概念を教える授業 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授業 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったりする 学生の指導助手がサポートする授業・活動 教員から直接指導を受ける機会 先輩から直接指導を受ける機会 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活動 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 何らかモノを作る授業・活動 プレゼンテーションを求める授業・活動 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授業(講 予習が必要となる授業・活動 論文やレポート執筆を求める授業・活動 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグループ単位 の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 平均 社会人(受 講生) 平均 22~26才群 全体(ネット (ネット調 調査) 査) 4.4 3.7 3.6 4.4 3.7 3.6 4.2 3.4 3.4 4.5 3.5 3.5 4.8 3.9 3.8 4.5 3.6 3.5 4.0 3.4 3.4 4.0 3.3 3.2 4.5 3.4 3.4 3.5 3.2 3.1 4.6 3.5 3.4 4.3 3.5 3.4 4.7 3.8 3.6 4.2 3.5 3.3 4.8 3.7 3.5 4.3 3.6 3.6 5.1 4.0 3.9 3.7 3.3 3.2 3.7 3.4 3.2 4.3 3.7 3.5 4.0 3.4 3.3 3.8 3.5 3.3 在学生(受 講生) 4.5 4.5 3.5 4.2 4.5 4.2 4.0 3.9 4.6 3.8 4.6 4.3 5.0 4.3 4.9 4.4 4.9 3.7 4.1 4.5 4.1 3.8 4.7 4.4 3.6 3.5 4.4 4.3 4.3 4.3 3.6 3.5 3.5 3.4 280 ■図表 能力の育成に有効だった大学時代の授業や活動(講義、インターンシップ、プレゼン等)【社会人(受講生)vs 在学生(受講生) vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 5.5 ■質問: あなたは、今の仕事において自分の業務で求められる成果をあげていると思いますか。 30~39% 20~29% 中 小 企 業 や ベ ン チ ャ ー 企 業 の 魅 力 を 伝 え る 授 業 ・活 動 [傾向] 40%以上 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を 学 外 の 人 に 与 え ら れ 、 学 生 が グ ル ー プ 単 位 の活 動 で そ の 課 題 解 決 の 方 法 を 見 出 し て い く 授 業 ・活 動 テ ス ト ・ レ ポ ー ト 以 外 の ユ ニー ク な 方 法 で 成 績 を つ け る 授 業 ・活 動 授 業 後 の 反 省 な ど 授 業 を 振 り 返 る 活 動 の あ る 授 業 ・活 動 論 文 や レ ポ ー ト 執 筆 を 求 め る 授 業 ・活 動 予 習 が 必 要 と な る 授 業 ・活 動 授 業 時 間 全 体 を 教 員 (指 導 者 )が 知 識 の 教 授 ・説 明 に あ てる授 業 講義 職 場 を 体 験 す る 実 習 (イ ン タ ー ン シ ッ プ 、教 育 実 習 、病 院実習等 ) 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を テ ー マ に し 、考 え る 授 業 理 論 や概 念 を 教 え る 授 業 一 回 の 授 業 で 複 数 教 員 が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る授 業 学 外 の 人 (企 業 や 地 域 の 人 な ど )が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授 業 学 生 の 指 導 助 手 が サ ポ ー ト す る 授 業 ・活 動 教 員 から直 接 指 導 を受 ける機 会 先 輩 から直 接 指 導 を受 ける機 会 学 生 同 士 の対 話 や デ ィ ス カ ッシ ョ ン が組 み入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 教 員 の 質 問 に対 し て学 生 の発 言 が組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・ 活動 グ ル ー プ 単 位 の 活 動 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 何 ら か モ ノ を 作 る 授 業 ・活 動 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 求 め る 授 業 ・活 動 ) フ ィ ー ル ド に 出 て 、調 査 や 実 習 を 行 う 授 業 ・活 動 実験 281 2.6% *無回答15.8% 2.6% 1.6% 5.3% 4.0% 3.2% 7.9% 9.3% 6.6% 28.9% 21.1% 18.4% 21.1% 41.2% 39.4% 10.5% 18.2% 25.0% 7.9% 3.6% 5.9% 社会人(受講生) 22-26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 全くそう思わ ない どちらかと どちらかと どちらとも言 そう思わな 言えばそう 言えばそう えない い 思う 思わない 大変そう思 そう思う う ( 知 識 ・技 術 を 活 用 で き る よ う に す る 授 業 / ス キ ル を ト レー ニ ング す る 授 業 実 務 知 識 ・技 術 を 教 え る 授 業 2.5 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 在学生(受講生) 社会人(受講生) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 これも受講経験者の方が、大学の教育活動に対する評価が高い。特に、「学生同士のディスカッション」 「グループでの取り組み」 「プレゼンテーション」等、プログラムに意図的に組み込まれた活動に対する 評価が高く、非受講経験者との差が大きくなっている。非受講者が最も有効だったと見ているのは「イ ンターンシップの職場体験」であり、これは受講経験者も評価は高いが、前述の 3 つの活動の評価の方 がより高く、これらの経験をより多く取り入れることで、能力を高める機会が増える、と見ることがで きる。 【求められる成果を上げているか・仕事や生活全般に対するやりがい・生きがいを感じるか】 10.現在の仕事で、求められる成果を上げていると思うか。仕事や生活全般にやりがい・生きがいを 感じているか。【社会人(受講生)vs vs22-26 才群(ネット調査) vs 全体(ネット調査)】 ■図表 現在の仕事で、求められる成果を上げていると思うか 50.0% 40.0% 社会人(受講生) 30.0% 22-26才群(ネット調 査) 全体(ネット調査) 20.0% 10.0% 全 く そう思 わ な い そう思 わ な い ど ち ら か と言 え ば そ う 思 わ な い ど ち ら とも言 え な い ど ち ら か と言 え ば そ う 思 う そう思 う 大 変 そう思 う 0.0% ■質問: あなたは仕事および生活全般にやりがい・生きがいを感じていますか。 [傾向] 30~39% 20~29% 大変そう思 そう思う う 26.3% 6.4% 6.2% 社会人(受講生) 22-26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) どちらかと どちらかと どちらとも言 そう思わな 全くそう思わ 言えばそう 言えばそう えない い ない 思う 思わない 36.8% 19.9% 22.1% 7.9% 34.1% 34.5% 5.3% 16.8% 18.9% 5.3% 11.1% 10.2% 2.6% 7.4% 5.0% 0.0% *無回答15.8% 4.3% 3.1% ■図表 仕事や生活全般にやりがい・生きがいを感じているか 40.0% 30.0% 社会人(受講生) 22-26才群(ネット調 査) 全体(ネット調査) 20.0% 10.0% 全 く そ う思 わ な い そう 思 わ な い ど ち ら か と言 え ば そ う 思 わ な い どち ら とも 言 え な い ど ち ら か と言 え ば そ う 思 う そう 思 う 大 変 そ う思 う 0.0% 受講経験のある社会人は、 「業務で求められる成果」については他の設問と同様、非受講経験者と比べ ると自己評価が辛めで、グラフのピークが他の 2 群に比べて右よりとなった。 一方で、仕事・生活全般へのやりがい・生きがいに対して肯定的な 3 つの選択肢合計は約 71%となり、 グラフのピークが他の 2 群に比べて左よりとなった。さらに、社会人は「大変そう思う」を選択した 回答の割合が他の 2 群に比べて顕著に多い。総じて、やりがい・生きがいを強く感じていることが示 282 される。 以上の結果から、社会人基礎力育成プログラムの受講者の回答の傾向をまとめる。 ・受講経験者は、「社会で求められる力」に関する自己評価は、一般の若手社会人よりもやや厳しめ であるが、 「チームで働く力」に関しては、一般社会人よりも高く自己評価している。特に、 「柔軟 性」「ストレスコントロール力」「情況把握力」の差が大きい。「規律性」にはほとんど差が見られ ない。 ・上記の「柔軟性」 「ストレスコントロール力」 「情況把握力」をどこで身に付けたかという問いに対 して、受講経験者は「研究室、ゼミ」をあげた人が最も多かったのに対して、一般の若手社会人で は、「サークル等の課外活動」や「アルバイト」の回答が多い。 ・能力や人間性の向上に意義のあった大学時代の経験として、受講経験者が高く評価したのは「最後 まで何かを成し遂げたこと」 「新たな価値観や知識、情報に出会ったこと」 「グループである目標に 向けて取り組んだこと」「教員との出会い、交流」である。この中で後者の 2 つは、一般の若手社 会人の評価は低く、受講経験者と大きな開きが出ている。 ・「今の仕事に必要な能力の向上に役立った大学時代の授業や活動」に関して、受講経験者のポイン トは、一般の若手社会人を全体の平均点で 0.8 ポイント上回り、大学の授業や活動を高く評価して いることがわかる。 受講経験者の評価が高かった活動は、「学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授 業・活動」 「グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動」 「プレゼンテーションを求める授業・ 活動」であり、一方一般の若手社会人では「プレゼンテーションを求める授業・活動」「職場を体 験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等)」であった。 両者のポイントの差が大きかったのは、「学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授 業・活動」 「グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動」(平均点で 1 ポイント以上の差)であ り、育成プログラムの受講生が能力の向上に有効であると考える活動を、一般的な大学教育を受け た人は、効果的な形で受講していない、あるいはそのような経験自体を持っていないことが伺われ る。 ・「現在の仕事で求められる成果を上げているか」という問いに対しては、受講経験者の方が非受講 経験者よりもやや自己評価が低い。しかし、「仕事や生活全般に対するやりがい・生きがいを感じ るか」に対しては「大いに感じている」 「感じている」という評価をした人が、非受講経験者が 26.3% に対して受講経験者が 63.1%と大きく上回り、仕事に前向きに取り組んでいることがわかる。 ・プログラムを受講した社会人と在学生を比較すると、在学生の方が能力に対する自己評価が高い。 これは、在学生が受講後に自らの成長を自覚して自己効力感を持っており、一方で社会人は実際の 現場では、学生時代に身に付けた能力だけではまだ十分ではないことを知ったために、自己評価が 下がったと推察される。これは、1 章の社会人基礎力育成事例研究セミナーで、富士通株式会社の 人材育成の取り組みで報告された、新卒採用者の自己認識の傾向と通じるものである。 ・在学生が現時点(卒業前)で特に不足を感じている能力は、 「専門知識・スキル」の習得と、 「英語力・ 語学力」である。これは、平成 21 年度の「社会人基礎力意識調査」の結果にも通じるものである。 以上の結果から見られるように、社会人基礎力育成プログラムを受講した社会人は、社会人基礎 力を含めた能力全体に対する自己評価は必ずしも高くない。そこには、まだ入社後日が浅く、実 際に社会人基礎力を発揮して大きな成果を上げるまでの場面に至っていない、という状況が背景 にある。 しかし、プログラムを通して、仕事の現場で必要な力を実践として認識しているため、学生時 代に身につけたレベルではまだ十分ではないことを理解している。また、受講経験者の大学の教 育プログラムに対する評価は非常に高く、現在の仕事に対してもやりがい・生きがいを持って前 向きに取り組んでいることがわかる。今後、受講生が仕事の現場で中核的な役割を担う年代にな った際に、改めて同様な調査を行うことが、より本質的な意味の効果検証となると言えよう。 さらに、今回在学生と卒業生を比較すると、在学生の方が全般的に能力に対する自己評価がや や甘いことが見て取れた。各大学が受講生に対してプログラムの効果検証を行う場合にも、プロ グラム終了直後だけでなく、卒業前や、就職後にも継続的に調査を実施して、さらに客観的な判 283 断を下すことが必要であると考える。 2‐4‐2.社会人アンケートの集計結果 ①回答者の属性 回答者のプロフィールに関する項目の集計結果を以下に示す。 性別 単一回答 N 男性 女性 全体 % 28 10 38 73.7% 26.3% 100.0% 年齢 単一回答 N 22才~24才 25才~26才 全体 % 26 12 38 68.4% 31.6% 100.0% 雇用形態 単一回答 N 公務員 会社員(正社員) 会社員(派遣) その他 全体 % 2 33 1 2 38 5.3% 86.8% 2.6% 5.3% 100.0% 従業員規模(全社) 単一回答 N 50人未満 50~300人未満 300~1,000人未満 1,000~5,000人未満 5,000人以上 全体 % 2 6 8 4 18 38 5.3% 15.8% 21.1% 10.5% 47.4% 100.0% 最終学歴 単一回答 N 大学卒業 修士課程修了 全体 % 22 16 38 57.9% 42.1% 100.0% 職種 単一回答 営業/営業企画 販売 接客/サービス 購買/物流 一般事務/営業事務 広報/宣伝/IR 調査/マーケティング 情報システム 研究/開発 設計 生産技術/品質管理/検査 看護師 その他医療関係従事者 教員 建設/工事 その他【 】 全体 N % 4 1 6 2 5 1 1 1 7 1 1 1 1 1 4 1 38 10.5% 2.6% 15.8% 5.3% 13.2% 2.6% 2.6% 2.6% 18.4% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 10.5% 2.6% 100.0% 284 業種 単一回答 N 建設 化学・化学品・化粧品 薬剤・医薬品 鉄鋼・非鉄 機械器具 電気機器 輸送用機器 その他製造【 】 衣服・履物小売 保険 鉄道 飲食店 電気・ガス・水道 出版・印刷 広告・調査 情報サービス 病院・医療 老人福祉・介護 教育 その他サービス【 】 公務員 全体 % 4 1 1 1 1 4 1 3 1 1 1 1 1 3 1 1 2 3 3 2 2 38 10.5% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 10.5% 2.6% 7.9% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 7.9% 2.6% 2.6% 5.3% 7.9% 7.9% 5.3% 5.3% 100.0% 出身学科 単一回答 N 外国語学系 社会学・行動科学・コミュニケーション・メ ディア・情報・観光系 社会福祉学系 経済学系 経営・商学・経営情報学系 文・人文・社会科学その他 電気・電子系 情報工学系 物質・応用化学系 生物工学系 建築系 土木工学系 工学その他 保健・看護学・医療技術系 生活科学系 全体 % 1 2.6% 2 5.3% 4 4 7 1 5 2 2 1 1 3 1 2 2 38 10.5% 10.5% 18.4% 2.6% 13.2% 5.3% 5.3% 2.6% 2.6% 7.9% 2.6% 5.3% 5.3% 100.0% 出身大学・大学院の所在地 (学舎が複数の場合は、卒業時の学舎) 単一回答 山形県 東京都 石川県 愛知県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 広島県 香川県 全体 N % 1 7 4 2 3 9 1 4 5 2 38 2.6% 18.4% 10.5% 5.3% 7.9% 23.7% 2.6% 10.5% 13.2% 5.3% 100.0% 285 ②社会人基礎力育成プログラム受講者の集計結果と考察 設問3.下記の力や観点は、自分が今の「仕事」をすることにおいて、どの程度必要ですか。 (全く必要ではない:0点~大いに必要である:6点として、回答全体の平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 人間としての基 本的な資質・能 力 基礎学力・汎用 的能力 専門知識・スキ ル 意識・視野 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信 を持ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培っ た考え方 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現す 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知 専門業務として求められる技術・技 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広 げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国 等)を意識(貢献、役割)して、自分の 業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 どちらか どちらと 大いに必 必要であ と言えば もいえな 要である る 必要であ い る 26 11 1 0 どちらか あまり必 全く必要 と言えば 要ではな ではない 必要では い ない 0 0 0 平均 5.7 12 20 5 0 0 1 0 5.1 15 15 7 1 0 0 0 5.2 26 14 15 16 7 11 17 17 11 19 1 6 5 9 7 0 1 1 1 4 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5.7 5.2 5.2 5.1 4.7 6 13 11 7 0 0 1 4.4 14 10 4 11 19 13 22 14 10 7 19 8 12 13 9 10 14 4 10 10 3 1 5 4 3 1 3 0 0 3 3 1 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 5.1 4.5 3.6 4.9 5.2 4.9 5.5 17 11 5 3 1 0 1 4.9 11 17 5 4 1 0 0 4.9 16 13 5 4 0 0 0 社会人基礎力以外平均 5.1 5.0 どちらか どちらと 大いに必 必要であ と言えば もいえな 要である る 必要であ い る 29 36 7 1 どちらか あまり必 と言えば 全く必要 要ではな 必要では ではない い ない 2 1 0 【社会人基礎力】 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 平均 5.1 15 15 6 1 1 0 0 5.1 実行力 26 38 9 3 0 0 0 5.1 課題発見力 35 30 9 2 0 0 0 5.3 計画力 16 21 1 0 0 0 0 5.4 創造力 10 13 9 5 1 0 0 4.7 発信力 32 25 14 3 2 0 0 5.1 傾聴力 13 16 7 1 1 0 0 5.0 チームで働く力 柔軟性 22 12 3 0 1 0 0 5.4 情況把握力 18 18 2 0 0 0 0 5.4 規律性 23 12 3 0 0 0 0 5.5 ストレスコントロール力 27 9 1 1 0 0 0 5.6 社会人基礎力平均 5.2 考え抜く力 ポイントの平均を見ると、社会人基礎力の方の必要性のポイントの方がより高い。 社会人基礎力以外の力・能力の中では、「人間としての基本的な資質・能力」に属する力・能力が、 平均 5 点台を揃え、「物事全般への前向きさ、積極性」 「誠実さ、責任感」が平均 5.7 と群を抜いて 高い。また、社会人基礎力は、「創造力」が平均 4.7 となった以外はすべて 5 点台であり、 「ストレ スコントロール力」「規律性」のポイントが特に高い。 286 設問4.下記の力や観点において、あなたは、現在どのレベルにあると思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 どちらかと どちらかと あまり高く 全く高くな 大変高い、 どちらとも いえば高く 高い、強い いえば高 ない、強く い、強くな 強い いえない ない、強く い、強い ない い ない 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信 を持ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント 人間としての基本的な資質 ロールする習慣、力) ・能力 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で 培った考え方 基礎学力・汎用的能力 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現す 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知 専門知識・スキル 専門業務として求められる技術・技 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広 げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国 意識・視野 等)を意識(貢献、役割)して、自分 の業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす 平均 2 16 11 4 3 1 0 4.2 3 6 8 11 5 3 1 3.4 2 6 17 7 3 2 0 3.8 6 4 2 5 1 11 12 5 11 6 13 16 12 12 6 5 5 9 6 14 1 0 6 0 5 0 0 2 3 4 0 0 1 0 1 4.4 4.4 3.4 4.2 3.1 1 7 9 9 4 4 3 3.1 2 0 2 2 1 1 4 5 7 3 8 4 2 5 15 8 3 7 7 9 16 9 11 10 8 11 11 7 5 9 5 6 5 6 4 1 2 9 4 4 3 1 0 0 5 2 5 5 0 3.6 3.2 2.4 3.2 2.7 2.7 3.9 5 6 9 9 7 1 0 3.7 0 9 12 9 2 4 1 3.5 2 9 18 3 3 1 1 社会人基礎力以外平均 【社会人基礎力】 どちらかと どちらかと どちらとも 言えば必 あまり必要 全く必要で 必要である 言えば必 いえない 要ではな ではない はない 要である い 大いに必 要である 3.9 3.5 平均 主体性 4 11 28 18 9 3 1 前に踏み出す力 働きかけ力 1 4 12 9 7 4 0 3.2 考え抜く力 実行力 課題発見力 計画力 4 4 2 10 10 4 35 27 13 16 19 11 7 11 5 2 1 1 0 1 1 3.8 3.6 3.5 創造力 2 3 12 11 8 1 0 3.4 発信力 3 12 23 16 13 6 1 3.4 傾聴力 2 5 14 8 5 3 0 3.5 柔軟性 4 11 14 5 3 0 0 4.2 情況把握力 3 9 16 7 2 0 0 4.1 規律性 5 13 13 4 1 1 0 4.4 ストレスコントロール力 6 8 13 5 3 チームで働く力 0 2 社会人基礎力平均 3.6 4.0 3.7 「仕事に必要な能力」(設問 2)と「実際のレベル」(設問 3)のレベル感の差を比較したグラフを次頁に 示す。 287 ■図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力以外) 必要性 現在のレベル 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 意識・視野 ■図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力) 必要性 現在のレベル 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 ス ト レ ス コ ン ト ロー ル 力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 創造力 計画力 設問 3 で仕事の上で必要度が高いとされた社会人基礎力は、 「身につけている」という度合いでも社 会人基礎力以外よりも高い。個別のポイントを見ると、 「誠実さ、責任感」「他人に共感し、思いや る態度」 「規律性」の平均点が 4.4 で最も高い。周囲に配慮しつつ、真面目に仕事に取り組もうとす る態度が見て取れる。一方で、専門知識・スキルに対する自己評価は 2 点台と、他に比べても低い ことが見て取れる。 回答の分布を見ると、社会人基礎力以外の力・能力は平均 2.4~4.4(上下幅 2.0)であるのに対し、 社会人基礎力の力・能力は平均 3.2~4.4(上下幅 1.2)で、自己評価レベルは比較的高めで安定して いる。 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に生 かす 力 教 養 、お よ び そ れ を 広 げる姿勢 社 会 所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 し て 、自 等 を 意 識 貢 献 、役 割 分 の業 務 に取 り 組 む 力 幅 広 い視 野 知 識 ・ス キ ル を 学 ぶ 習 慣 、力 専 門 業 務 と し て 求 め ら れ る 技 術 ・技 能 を活用する力 専 門 業 務 と し て 求 め ら れ る 知 識 ・知 見 P C スキ ル 、 英 語 力 ・語 学 力 問 題 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 物 事 を 論 理 的 に思 考 す る 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 っ た考え方 文 章 力 、読 解 力 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 リ ー ダ ー シ ップ 課題発見力 実行力 288 ) 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 誠 実 さ 、責 任 感 働き か け力 チームで働く力 考え抜く力 前に踏み出す力 I T 安 定 性 自 分 の 感 情 や 行 動 を コン ト ロー ル す る 習 慣 、力 ) 専門知識・スキル ( 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で は な い ) 主体性 0.0 ( 基礎学力・汎用的能力 人間としての基本的な資質・能力 ( / ) 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 0.0 設問 5 下記の力や観点それぞれを、特に身につけた時期はいつだと思いますか。それぞれ2つまでお答えください。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため合計が 100.0%にならないことがある 【社会人基礎力以外の能力・観点】 物事全般への前向きさ、積極性 就職後 小学校・小 その他の 大学時代 高校時代 中学時代 学校入学 時代) 以前 身につけ ていない 4.7% 41.9% 23.3% 11.6% 11.6% 2.3% 4.7% 24.4% 46.3% 17.1% 4.9% 0.0% 0.0% 7.3% 15.6% 37.8% 22.2% 17.8% 0.0% 2.2% 4.4% 10.9% 32.6% 15.2% 26.1% 15.2% 0.0% 0.0% 4.3% 36.2% 17.0% 14.9% 25.5% 0.0% 2.1% 14.0% 55.8% 18.6% 4.7% 0.0% 0.0% 7.0% 健康・体力・運動神経 6.0% 14.0% 22.0% 28.0% 30.0% 0.0% 0.0% 文章力、読解力 5.9% 31.4% 35.3% 15.7% 5.9% 0.0% 5.9% 基本的な計算力、数学・理科で培った 考え方 0.0% 12.8% 34.0% 34.0% 14.9% 0.0% 4.3% 基礎学力・汎用的能 物事を論理的に思考する力 力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 20.8% 50.0% 16.7% 4.2% 0.0% 0.0% 8.3% 8.7% 32.6% 30.4% 10.9% 4.3% 2.2% 10.9% 英語力・語学力 4.3% 28.3% 37.0% 13.0% 4.3% 0.0% 13.0% PCスキル、ITを活用する力 17.0% 44.7% 19.1% 6.4% 2.1% 0.0% 10.6% 専門業務として求められる知識・知見 50.0% 35.7% 0.0% 2.4% 0.0% 0.0% 11.9% 専門業務として求められる技術・技能 50.0% 34.1% 2.3% 2.3% 0.0% 0.0% 11.4% 知識・スキルを学ぶ習慣、力 31.9% 40.4% 12.8% 4.3% 4.3% 0.0% 6.4% 23.9% 58.7% 15.2% 0.0% 2.2% 0.0% 0.0% 44.2% 37.2% 2.3% 2.3% 2.3% 0.0% 11.6% 41.7% 43.8% 6.3% 0.0% 0.0% 0.0% 8.3% 自分を肯定的に捉える態度(自信を持 ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 人間としての基本的 誠実さ、責任感 な資質・能力 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 専門知識・スキル 意識・視野 幅広い視野/教養、およびそれを広げ る姿勢 社会(所属している企業、業界、国等) を意識(貢献、役割)して、自分の業務 に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 【社会人基礎力】 就職後 前に踏み出す力 考え抜く力 小学校・小 その他の 大学時代 高校時代 中学時代 学校入学 時代) 以前 身につけ ていない 主体性 21.3% 52.1% 14.9% 10.6% 0.0% 0.0% 1.1% 働きかけ力 21.3% 53.2% 12.8% 0.0% 0.0% 0.0% 12.8% 実行力 12.1% 62.6% 17.6% 3.3% 1.1% 0.0% 3.3% 課題発見力 17.6% 62.6% 14.3% 1.1% 0.0% 0.0% 4.4% 計画力 22.9% 54.2% 18.8% 0.0% 0.0% 0.0% 4.2% 創造力 13.6% 56.8% 11.4% 0.0% 0.0% 0.0% 18.2% 発信力 10.5% 74.4% 11.6% 0.0% 0.0% 0.0% 3.5% 傾聴力 15.2% 56.5% 15.2% 4.3% 0.0% 0.0% 8.7% 柔軟性 21.3% 51.1% 14.9% 8.5% 0.0% 0.0% 4.3% 情況把握力 23.4% 44.7% 21.3% 4.3% 2.1% 0.0% 4.3% 規律性 14.0% 25.6% 11.6% 27.9% 20.9% 0.0% 0.0% ストレスコントロール力 24.0% 52.0% 20.0% 2.0% 0.0% 0.0% 2.0% チームで働く力 289 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力以外)】 0% 20% 40% 60% 80% 100% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知見 専門業務として求められる技術・技能 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 就職後 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他の時代) 身につけていない 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力)】 0% 20% 40% 60% 80% 100% 主体性 働きかけ力 実行力 課題発見力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 就職後 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他の時代) 身につけていない 社会人基礎力以外の力・能力については、大学時代を軸にしつつ各年代に散らばる傾向が見られる。しか し社会人基礎力の力・能力は、大学時代に約 45~75%の回答が集中している点が特徴的である。ただし規 律性だけは、回答が各年代に散らばっている。 290 設問6.下記の力や観点は、大学時代を振り返って、特にどのような活動で身につけたと思いますか。それぞれ 2 つ までお答えください。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため、合計が 100.0%にならないことがある 大学時代 大学での卒 大学時代 のクラブ、 大学時代 大学時代 大学での学 業研究とし の学園祭・ サークル活 のアルバイ の就職活 業全般 ての研究 自治会等 動など課外 ト 動 室、ゼミ の活動 活動 物事全般への前向きさ、積極性 意識・視野 32.0% 22.0% 2.0% 6.0% 8.0% 2.0% 2.0% 2.0% 4.0% 0.0% 28.6% 28.6% 2.0% 4.1% 6.1% 2.0% 2.0% 2.0% 4.1% 2.0% 11.3% 22.6% 24.5% 1.9% 18.9% 5.7% 0.0% 1.9% 1.9% 7.5% 3.8% 11.5% 28.8% 19.2% 1.9% 23.1% 1.9% 1.9% 0.0% 3.8% 7.7% 0.0% 他人に共感し、思いやる能力 13.0% 22.2% 33.3% 5.6% 11.1% 3.7% 0.0% 0.0% 5.6% 5.6% 0.0% リーダーシップ 11.3% 34.0% 26.4% 3.8% 7.5% 7.5% 0.0% 0.0% 3.8% 0.0% 5.7% 健康・体力・運動神経 10.0% 7.5% 45.0% 0.0% 17.5% 0.0% 2.5% 0.0% 2.5% 10.0% 5.0% 文章力、読解力 34.8% 39.1% 2.2% 0.0% 4.3% 10.9% 0.0% 0.0% 2.2% 2.2% 4.3% 基本的な計算力、数学・理科で培った 考え方 41.9% 30.2% 4.7% 0.0% 7.0% 0.0% 0.0% 0.0% 2.3% 0.0% 14.0% 物事を論理的に思考する力 29.4% 41.2% 9.8% 0.0% 3.9% 9.8% 0.0% 0.0% 5.9% 0.0% 0.0% 問題を概念化し、図や絵で表現する力 30.2% 41.9% 7.0% 0.0% 2.3% 2.3% 0.0% 0.0% 7.0% 0.0% 9.3% 英語力・語学力 42.5% 17.5% 7.5% 0.0% 2.5% 0.0% 10.0% 5.0% 2.5% 0.0% 12.5% PCスキル、ITを活用する力 45.5% 40.9% 2.3% 0.0% 2.3% 2.3% 0.0% 0.0% 2.3% 0.0% 4.5% 専門業務として求められる知識・知見 40.5% 28.6% 0.0% 0.0% 4.8% 0.0% 0.0% 0.0% 2.4% 0.0% 23.8% 専門業務として求められる技術・技能 35.7% 28.6% 2.4% 0.0% 7.1% 0.0% 0.0% 0.0% 2.4% 2.4% 21.4% 知識・スキルを学ぶ習慣、力 36.2% 36.2% 4.3% 0.0% 8.5% 4.3% 0.0% 0.0% 2.1% 0.0% 8.5% 29.6% 29.6% 14.8% 0.0% 3.7% 7.4% 3.7% 0.0% 7.4% 3.7% 0.0% 20.9% 27.9% 14.0% 0.0% 9.3% 4.7% 2.3% 0.0% 9.3% 2.3% 9.3% 25.5% 34.0% 14.9% 0.0% 10.6% 6.4% 2.1% 0.0% 4.3% 0.0% 2.1% 幅広い視野/教養、およびそれを広げ る姿勢 社会(所属している企業、業界、国等) を意識(貢献、役割)して、自分の業務 に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 大学時代 大学での卒 大学時代 のクラブ、 大学時代 大学時代 大学での学 業研究とし の学園祭・ サークル活 のアルバイ の就職活 業全般 ての研究 自治会等 動など課外 ト 動 室、ゼミ の活動 活動 前に踏み出す力 考え抜く力 大学時代 大学時代 のボラン の親元を離 その他 ティア活動 れた生活 18.4% 人間としての基本的 誠実さ、責任感 な資質・能力 専門知識・スキル 大学時代 の海外留 学 20.0% 自分を肯定的に捉える態度(自信を持 ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 基礎学力・汎用的能 力 大学時代 の旅行 大学時代 の旅行 大学時代 の海外留 学 大学時代 大学時代 のボラン の親元を離 その他 ティア活動 れた生活 主体性 11.8% 37.3% 18.2% 2.7% 10.0% 10.0% 1.8% 0.0% 2.7% 5.5% 0.0% 働きかけ力 13.6% 40.9% 27.3% 4.5% 6.8% 0.0% 0.0% 0.0% 4.5% 2.3% 0.0% 実行力 19.2% 46.2% 16.3% 2.9% 2.9% 6.7% 1.0% 0.0% 1.9% 1.0% 1.9% 課題発見力 16.7% 50.0% 15.6% 3.1% 3.1% 8.3% 0.0% 0.0% 2.1% 0.0% 1.0% 計画力 20.8% 43.8% 12.5% 2.1% 2.1% 4.2% 2.1% 0.0% 4.2% 0.0% 8.3% 創造力 13.3% 46.7% 15.6% 2.2% 4.4% 2.2% 0.0% 0.0% 6.7% 0.0% 8.9% 発信力 17.2% 51.5% 13.1% 2.0% 1.0% 11.1% 1.0% 0.0% 2.0% 1.0% 0.0% 傾聴力 18.0% 38.0% 26.0% 2.0% 2.0% 8.0% 0.0% 0.0% 4.0% 2.0% 0.0% 柔軟性 17.6% 37.3% 25.5% 2.0% 9.8% 3.9% 0.0% 0.0% 2.0% 0.0% 2.0% 情況把握力 15.1% 32.1% 28.3% 3.8% 9.4% 3.8% 0.0% 0.0% 5.7% 1.9% 0.0% 規律性 9.6% 30.8% 15.4% 1.9% 25.0% 7.7% 0.0% 0.0% 3.8% 5.8% 0.0% ストレスコントロール力 7.4% 29.6% 24.1% 1.9% 13.0% 7.4% 3.7% 1.9% 5.6% 5.6% 0.0% チームで働く力 291 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 誠実さ、責任感 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 他人に共感し、思いやる能力 大学時代の就職活動 リーダーシップ 大学時代の旅行 健康・体力・運動神経 大学時代の海外留学 大学時代のボランティア活動 文章力、読解力 大学時代の親元を離れた生活 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 その他 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知見 専門業務として求められる技術・技能 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 主体性 大学での学業全般 働きかけ力 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 実行力 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代の学園祭・自治会等の活動 課題発見力 大学時代のアルバイト 計画力 大学時代の就職活動 大学時代の旅行 創造力 大学時代の海外留学 発信力 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 傾聴力 その他 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 「人間としての基本的な資質・能力」の習得は、社会人基礎力以外の力・能力では、 「研究室、ゼミ」 「課 外活動」が中心となり、その他の 3 領域の習得は、おおむね「学業全般」 「研究室・ゼミ」が中心となっ ている。一方、社会人基礎力では、 「研究室、ゼミ」が約 30~52%の回答を集め、習得の中心的な場とし て機能していることがうかがえる。 292 設問7.あなたは学生時代に、下記の活動に熱心に取り組みましたか。 (全く熱心には取り組んでいない:0点~大変熱心に取り組んだ:6点とした平均点を算出) どちら 大変熱 かとい 熱心に どちら 心に取 えば熱 取り組 ともい り組ん 心に取 んだ えない だ り組ん だ 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 大学時代の就職活動 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 中学・高校時代の授業 大学受験勉強 中学・高校時代の文化祭・体育祭・生徒会などの課外活動 中学・高校時代の部活動 中学・高校時代の海外留学 小学校時代の授業 小学校時代の課外活動、学校以外の活動 小・中・高校時代の家庭での生活、家族との活動 小・中・高校時代の地域での活動 4 13 10 7 6 8 8 1 4 5 8 6 9 16 0 4 7 9 5 17 12 9 3 13 15 4 1 3 4 10 9 10 7 1 12 7 10 6 6 4 4 9 8 4 8 1 5 4 8 10 7 3 1 8 9 7 6 3 2 3 2 3 2 3 1 2 2 2 2 4 4 1 5 2 4 7 どちら かとい えば熱 心には 取り組 んでい ない 2 2 2 2 1 2 3 0 4 0 4 2 1 1 1 1 2 2 2 全く熱 熱心に 心には は取り 取り組 組んで んでい いない ない 0 0 1 5 2 1 3 0 2 0 1 2 2 2 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 1 1 0 2 0 0 0 0 0 0 1 2 1 2 19項目 の平均 値 学生時代に熱心に取り組んだ活動 平均 4.4 5.0 4.7 3.9 4.4 4.5 3.9 4.5 3.4 4.8 4.4 4.3 4.5 4.8 3.5 4.2 4.2 4.5 3.8 4.3 【参考】19項目の平均値(4.3) 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 小 ・中 ・高 校 時 代 の 地 域 で の 活 動 小 ・中 ・高 校 時 代 の 家 庭 で の 生 活 、家 族 と の 活 動 小 学 校 時 代 の 課 外 活 動 、学 校 以 外 の活 動 小 学 校 時 代 の授 業 中 学 ・高 校 時 代 の 海 外 留 学 中 学 ・高 校 時 代 の 部 活 動 中 学 ・高 校 時 代 の 文 化 祭 ・体 育 祭 ・生 徒 会 な ど の 課 外 活 動 大学受験勉強 大学時代の活動← 中 学 ・高 校 時 代 の 授 業 大 学 時 代 の親 元 を 離 れ た 生 活 大 学 時 代 の ボ ラ ン テ ィア 活 動 大 学 時 代 の海 外 留 学 大 学 時 代 の旅 行 大 学 時 代 の就 職 活 動 大学 時 代 の ア ルバ イ ト 大 学 時 代 の 学 園 祭 ・自 治 会 等 の 活 動 大 学 時 代 の ク ラ ブ 、サ ー ク ル 活 動 など課外活動 大学 で の卒業 研 究 と して の研 究 室 、ゼ ミ 大学 で の学業 全 般 3.0 →大学入学以前の活動 大学時代に熱心に取り組んだ活動として「大学での卒業研究としての研究室、ゼミ」が平均 5.0 で最も 高い。また「親元を離れた生活」は平均 4.8 と高いだけでなく、否定的回答がゼロとなっているのが特 徴的である。また、受講経験者の大学入学以前の活動では、 「中学・高校時代の部活動」への熱心さが群 を抜いて高い点は注目される。 なお、比較的熱心さの程度が低い活動(平均 3 点台)は、いずれも回答が幅広く分布しており、受講生の 学習環境や興味関心等の個人差が大きいことに留意した理解が必要である。 293 設問8.大学時代を振り返って、下記の経験はあなたの能力や人間性の向上にとって意義があったと思いますか。 (全く意義のない経験だった:0点~たいへん有意義な経験だった:6点とした平均点を算出) たい へん 有意 義な 経験 だった ある活動にコミットし、試行錯誤したこと 最後まで何かを成し遂げたこと 難しいと思われることに挑戦したこと 実社会に関わる取り組みをしたこと 人前で発表を行ったこと グループで、ある目標に向けて取り組んだこと グループのリーダーをしたこと 何か成し遂げたことを、認められたり誉められたりしたこと 他者から評価された経験 自分で選択・決定する機会が増えたこと 新たな価値観や知識・情報に出会ったこと 教員との出会い、交流 考え方やバックグランド、年齢が異なる人との交流をしたこと 友人との交流 異性との関わり(恋愛経験など) 18 23 19 16 20 21 15 15 16 16 25 23 22 24 13 あまり 多少 大きな 有意 は意 どちら 意義 義な 義の ともい のな 経験 ある えない い経 だった 経験 験だっ だった た 12 1 0 0 9 1 0 0 12 1 1 0 8 3 3 0 11 2 0 0 12 0 0 0 6 4 1 0 13 4 1 0 10 6 1 0 14 3 0 0 6 2 0 0 7 3 0 0 8 1 0 0 6 2 0 0 10 7 2 0 能力や人間性の向上に意義があった経験 意義 のな い経 験だっ た 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 全く意 義の 平均 ない 経験 だった 15項 目の 平均 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 【参考】15項目の平均値(5.4) 6.0 5.5 5.0 4.5 異 性 と の 関 わ り (恋 愛 経 験 な ど ) 友 人 と の交流 考 え 方 や バ ック グ ラ ン ド 、年 齢 が 異 な る 人 と の 交 流 を し た こと 教 員 と の 出 会 い 、交 流 新 た な 価 値 観 や 知 識 ・情 報 に 出 会 った こ と 自 分 で 選 択 ・決 定 す る 機 会 が 増 え た こと 他 者 から 評価 さ れ た 経 験 何 か 成 し 遂 げ た こ と を 、認 め ら れ た り 誉 め ら れ た り し た こと グ ルー プ の リ ー ダ ー を し た こと グ ル ー プ で 、あ る 目 標 に 向 け て 取 り 組 ん だ こと 人 前 で 発 表 を 行 った こ と 実 社 会 に関 わ る 取 り 組 みを した こ と 難 し いと 思 わ れ る こと に 挑 戦 し た こと 最 後 ま で 何 か を 成 し 遂 げ た こと あ る 活 動 に コ ミ ッ ト し 、試 行 錯 誤 し た こと 4.0 全項目が平均 5 点台となり、しかも否定的回答の少ないことが特徴となっている。とりわけ「最後 まで何かを成し遂げたこと」 「新たな価値観や知識・情報に出会ったこと」は平均 5.7 と最も高い結 果となった。平均 5.6 には、「グループで、ある目標に向けて取り組んだこと」「教員との出会い、 交流」が続く。全体に、教員やグループメンバー、友人など、人間関係の構築に関する経験につい て高く評価する傾向が見られる。 294 5.5 5.7 5.5 5.1 5.5 5.6 5.3 5.3 5.2 5.4 5.7 5.6 5.5 5.5 5.1 5.4 設問9.大学時代を振り返って、以下の授業や活動はどの程度ありましたか。 大変多くあった 多くあった あった 少しだけあった なかった 実務知識・技術を教える授業 18.2% 21.2% 18.2% 33.3% 9.1% 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニン グする授業 15.2% 21.2% 30.3% 24.2% 9.1% 実験 18.2% 9.1% 21.2% 12.1% 39.4% フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 15.2% 18.2% 24.2% 24.2% 18.2% 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習 等) 15.2% 21.2% 18.2% 15.2% 30.3% 9.1% 24.2% 39.4% 21.2% 6.1% 16.7% 46.7% 30.0% 6.7% 0.0% 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授 業 0.0% 30.3% 42.4% 21.2% 6.1% 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たった りする授業 6.1% 36.4% 33.3% 21.2% 3.0% 学生の指導助手がサポートする授業・活動 6.1% 27.3% 24.2% 21.2% 21.2% 教員から直接指導を受ける機会 24.2% 36.4% 36.4% 3.0% 0.0% 先輩から直接指導を受ける機会 12.1% 18.2% 36.4% 15.2% 18.2% 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活 動 24.2% 24.2% 39.4% 12.1% 0.0% 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 6.1% 33.3% 27.3% 24.2% 9.1% 15.2% 48.5% 24.2% 12.1% 0.0% 9.1% 12.1% 27.3% 33.3% 18.2% プレゼンテーションを求める授業・活動 18.2% 24.2% 39.4% 18.2% 0.0% 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる 授業(講義) 36.4% 39.4% 21.2% 0.0% 3.0% 6.1% 39.4% 42.4% 9.1% 3.0% 36.4% 39.4% 21.2% 3.0% 0.0% 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 6.1% 36.4% 24.2% 21.2% 12.1% テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活 動 6.1% 6.1% 24.2% 33.3% 30.3% 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグルー プ単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活 動 10.0% 10.0% 50.0% 23.3% 6.7% 9.7% 6.5% 22.6% 25.8% 35.5% 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 理論や概念を教える授業 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 何らかモノを作る授業・活動 予習が必要となる授業・活動 論文やレポート執筆を求める授業・活動 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 295 【図表 大学の授業・活動の実施程度】 0% 20% 40% 60% 80% 100% 実務知識・技術を教える授業 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニングする 授業 実験 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等) 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 理論や概念を教える授業 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授業 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったりする 授業 学生の指導助手がサポートする授業・活動 教員から直接指導を受ける機会 先輩から直接指導を受ける機会 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活動 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 何らかモノを作る授業・活動 プレゼンテーションを求める授業・活動 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授業(講 義) 予習が必要となる授業・活動 論文やレポート執筆を求める授業・活動 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグループ単 位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 大変多くあった 多くあった あった 少しだけあった なかった 「実務知識・技術を教える授業」 「何らかモノを作る授業・活動」が「少しだけあった」が最多とな るなど、全般に実践的活動は多くないことが目をひく。さらに、 「テスト・レポート以外のユニーク な方法で成績をつける授業・活動」を経験している学生は比較的少なく、成績評価等における工夫 の余地が推測される。ただし、この結果は学科・専攻を区別なく集計したものであり、程度の多寡 がまんべんなく散らばる授業・活動も少なくないのは、学科・専攻等の人材育成目標や学問分野、 カリキュラムによる活動の違いが大きく影響していることが起因していると考えられる。 296 設問 10.以下の大学時代の授業や活動は、「今の仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効でしたか。 ※「全く有効でなかった:0点~大変有効だった:6点」とした平均点を算出し、平均点の降順に並べ替えた。 どちら どちら 大変有 かと言 どちらと かと言 有効で 全く有 有効 効だっ えば有 も言え えば有 なかっ 効でな だった た 効だっ ない 効でな た かった た かった 1 実務知識・技術を教える授業 平均 7 9 10 2 0 2 0 4.5 6 8 11 3 0 1 0 4.5 3 実験 3 3 5 7 2 0 2 3.5 4 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 4 8 7 5 1 0 1 4.2 10 3 5 4 0 1 1 4.5 6 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 5 6 14 5 3 0 0 4.2 7 理論や概念を教える授業 2 6 14 9 0 0 0 4.0 8 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授業 1 8 10 7 3 0 0 3.9 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たった りする授業 8 8 11 4 1 0 0 4.6 10 学生の指導助手がサポートする授業・活動 2 7 6 8 5 0 0 3.8 11 教員から直接指導を受ける機会 5 15 9 3 1 0 0 4.6 12 先輩から直接指導を受ける機会 6 4 11 6 1 0 0 4.3 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活 動 11 13 8 1 0 0 0 5.0 14 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 6 4 11 7 0 0 0 4.3 15 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 8 13 11 0 0 0 0 4.9 16 何らかモノを作る授業・活動 5 6 8 3 2 0 0 4.4 12 10 9 1 0 1 0 4.9 3 6 12 4 4 1 2 3.7 19 予習が必要となる授業・活動 4 5 14 7 2 0 0 4.1 20 論文やレポート執筆を求める授業・活動 7 7 14 4 1 0 0 4.5 21 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 4 8 10 4 2 2 0 4.1 2 5 9 13 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニング する授業 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習 等) 17 プレゼンテーションを求める授業・活動 18 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授 業(講義) 22 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活 動 2 3 10 7 3 0 0 3.8 23 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグルー プ単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 11 6 7 6 0 0 0 4.7 6 2 6 4 0 1 0 4.4 24 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 24項目 の平均 値 297 4.3 ■今の仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効だった大学時代の授業や活動 中 小 企 業 や ベ ン チ ャ ー 企 業 の 魅 力 を 伝 え る 授 業 ・活 動 講義 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を 学 外 の 人 に 与 え ら れ 、 学 生 が グ ル ー プ 単 位 の 活 動 で そ の 課 題 解 決 の 方 法 を 見 出 し て い く 授 業 ・活 動 テ ス ト ・レ ポ ー ト 以 外 の ユ ニー ク な 方 法 で 成 績 を つ け る 授 業 ・活 動 授 業 後 の 反 省 な ど 授 業 を 振 り 返 る 活 動 の あ る 授 業 ・活 動 論 文 や レ ポ ー ト 執 筆 を 求 め る 授 業 ・活 動 予 習 が 必 要 と な る 授 業 ・活 動 授 業 時 間 全 体 を 教 員 (指 導 者 )が 知 識 の 教 授 ・説 明 に あ て る 授 業 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 求 め る 授 業 ・活 動 何 ら か モ ノ を 作 る 授 業 ・活 動 グ ル ー プ 単 位 の 活 動 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 教 員 の 質 問 に 対 し て 学 生 の 発 言 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 298 学 生 同 士 の 対 話 や デ ィ ス カ ッ シ ョ ン が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 先 輩 から直 接 指 導 を受 ける機 会 教 員 から直 接 指 導 を受 ける機 会 学 生 の 指 導 助 手 が サ ポ ー ト す る 授 業 ・活 動 実験 フ ィ ー ル ド に 出 て 、調 査 や 実 習 を 行 う 授 業 ・活 動 職 場 を 体 験 す る 実 習 (イ ン タ ー ン シ ッ プ 、教 育 実 習 、病 院 実 習 等 ) 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を テ ー マ に し 、考 え る 授 業 理 論 や概 念 を 教 え る 授 業 一 回 の 授 業 で 複 数 教 員 が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授 業 学 外 の 人 (企 業 や 地 域 の 人 な ど )が 教 え た り 、指 導 に 当 た っ た り す る 授 業 ( 知 識 ・技 術 を 活 用 で き る よ う に す る 授 業 / ス キ ル を ト レ ー ニ ン グ す る 授 業 実 務 知 識 ・技 術 を 教 え る 授 業 3.0 【参考24項目の平均値(4.3)】 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 ) 「学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活動」は、5.0 と最も高い平均点である上に、否定的回 答は全くなかった。「今の仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効であるという、受講経験者の認識はおおむね 一致しているといえよう。この設問では、平均点の高い授業・活動には、否定的回答が極めて少ないことが共通した 傾向である。 一方、「実験」や「授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授業(講義)」は、回答が幅広く散らば り、価値観の個人差が大きいと言える。 ■自由記述のまとめ 自由記述欄に記載されたコメントから、社会人基礎力育成プログラムが役に立った点と、問題を感じ る点について、ヒアリング対象者以外からのものを中心に代表的なものをまとめる。 【グループ活動の経験】 ・学生時代の基本的な学習は個人で進めるものが多かったので、このプログラムを通じて様々な人たちと一 緒に作業をできたことが今に役立っていると思う。実社会において個人で進めることのできる仕事は少な いので、このプログラムのように教員の方々、3 学部のメンバー、担当企業の方々と一緒に作業をしてき た経験が今に活きている。(武蔵大学) ・何かを行うにあたって、ただ人々とのつながりがあるのではなく、その人々とのつながりの大切さや、自 分とは違った立場や考え方を持っている人と関わることで、自分自身にとってもとてもいい刺激になり、 ひとつのことに対しても色々な考え方ができるようになった。(金沢工業大学) ・実際に社会に出ていちばん苦労している点は、年齢の違いや経験の違いから生じる考え方や感じ方の違い。 大学では年の近い人と接することが多いのであまり感じることがなかった。自分とは年の離れている人と たくさん接する機会を増やし、その中で自らの考えを相手にうまく伝えることが仕事に役立つ力に必ずつ ながると思う。(金沢工業大学) ・本気で意見を交換し合う機会は、高校時代や部活動、私生活ではなかった。目標に向かって真剣に取り組 むために交わす意見は、自分自身の価値観も大きく広げることができたし、相手の意見から提案を生み出 す力も身につけられ、仕事の役に立っている。(広島経済大学) 【学外の人による指導】 ・社外の方、特に、大企業のトップクラスの方にプレゼンテーションの指導をしていただいたため、入社し てから「社会人」になるまでの切り替えがスムーズに行えた。社会人基礎力の質を維持するためにも、毎 年フレッシュな課題を考え続ける必要があるのではないかと思う。(大阪大学) ・学生の立場で社会人と接することができた。自分の考えを持って行動し、それを相手に伝える難しさを知 ることができた。違う学部の人など、専門性の違う人たちとひとつのものを創りあげた。世の中には、た とえ聞いたことがない会社でも素晴らしい技術をもった会社がたくさんあることに気付けた。チームの中 での自分の位置を意識しながら、何をするべきか考えながら行動する力が身についた。(武蔵大学) ・個人プレーの講義ではなく、PBL のようにグループで企業が取り組んでいる問題(非常に簡単な問題であ っても)に取り組む講義をもっと増やした方がよいと思う。自分の専門知識をどう活かすか、知らない知 識を自分から学ぶ姿勢、年や立場の違う人達との付き合い方など、受身の講義では得られないものが多く ある。(香川大学) 【現場に通じる仕事のしかた】 ・社会人基礎力のテーマが「自分の研究テーマを使って新規事業を行う」だったため、研究に関する周辺知 識を身に付けることができ、また、研究テーマに対して広い視野を持つことができるようになった。現在 は研究開発職として働いているため、基礎力で身に付けた基本的な考え方がとても役に立っている。(大阪 大学) ・ネガティブな実験結果であっても、前向きに実験データを捉えて、顧客に説明する力が身に付いた。コミ ュニケーションを顧客と交わしながら、自己の商品を売り込むために、前向きに自信を常に持って実験デ ータを説明する能力は非常に重要であると思う。(大阪大学) 【他の活動では経験できない学びの方法】 ・教員から教わる知識を一方的に聴講するという講義が 9 割以上を占めているため、インプットは得意でも アウトプットを出すというトレーニングは(社会人基礎力を受けるまでは)できていなかったように思う。 学生同士で意見を交わす等、理系にも「文系らしい」講義を取り入れる必要があるのではないかと思う。(大 阪大学) ・プロジェクトのように他者を巻き込み、一つのものを作り上げるという経験は仕事に役立つ能力の育成に 非常に役立つと思う。内容はいろいろあると思うが、前もって知識が必要なこと、期限を設けること等、 299 実践的な環境で学生の責任で作業をさせる取り組みはこれからもっと進めて欲しいと思う。(武蔵大学) ・グループワークやディスカッションなど、他人と協働することで成り立つ課題に取り組む授業を多く取り 入れることは、社会に出たときの即戦力になるきっかけ作りになるだけでなく、自らの持つ課題を発見し たり、集団の中での自らの位置を把握することができる力を養うことが出来ると思う。(愛知学泉大学) ・今回のように、 「プレゼン能力」 「研究視点とビジネス視点の違い」を学べる授業はとても有意義だと思う。 その他には、 「インターネットなどからの情報収集能力」「仕事で使えるノートのまとめ方」など学生のう ちから身に付けられると役に立つと思う。(大阪大学) ・自分の能力に対して、自己分析し、先生や企業人の見解をいただくことで自分に不足している力などをグラ フにして明確にできたこと。企業の方と研究を進めていくことで、自分の考えや意見を相手に対してわか りやすく伝えるなどのコミュニケーション能力を少しでも身につけることができたことは、社会に出てと ても役立っていると感じる。(金沢工業大学) 【問題点】 ・回を重ねるにつれて我々学生の考え方は進化していったと思うが、議論に参加している教員に柔軟性がな く自分の意見を固持し続けるため、いつも同じ話題に収束していった。学生の間でせっかく盛り上がりか えていた熱が冷めてしまっていた。(理系大学・研究室) ・実社会での上下関係や業務の流れにそぐわない点。課長や部長といった上司との関係を企業の方と築けれ ば、さらにブラッシュアップできたものが発表できたと思う。あくまでも学生と社会人の関係に終わって いた。(文系大学・産学連携 PBL) ・企業側からみるとPBLなどの取組みに人員と時間を積極的にかけられないという点。(理系大学・産学連 携 PBL) 300 2‐4‐3.在学生(受講生)アンケートの集計結果 ①回答者の属性 回答者のプロフィールに関する項目の集計結果を以下に示す。 性別 単一回答 N 男性 女性 全体 % 35 27 62 56.5% 43.5% 100.0% 年齢 単一回答 N 22才~24才 25才~26才 全体 % 60 2 62 96.8% 3.2% 100.0% 所属学科/大学院研究科 単一回答 N 文化学・教養学系 社会学・行動科学・コミュニケーション・メ ディア・情報・観光系 経済学系 経営・商学・経営情報学系 文・人文・社会科学その他 機械系 情報工学系 土木工学系 薬学系 体育・健康科学系 全体 % 1 1.6% 14 22.6% 5 19 3 9 4 5 1 1 62 8.1% 30.6% 4.8% 14.5% 6.5% 8.1% 1.6% 1.6% 100.0% 就職内定先の業種 単一回答 農業・林業・水産業 建設 薬剤・医薬品 機械器具 輸送用機器 精密機器 その他製造【 】 化学医薬卸 スーパー・コンビニエンスストア 衣服・履物小売 食品・飲料小売 各種車輌小売 家電・電気器具小売 その他小売【 】 銀行・信託 証券・先物 保険 その他金融【 】 不動産 鉄道 郵便・運輸サービス 飲食店 通信 宿泊所・ホテル 情報サービス ソフトウェア 病院・医療 その他サービス【 】 官庁・自治体 その他団体【 】 未定・未回答 全体 N % 1 2 1 4 1 1 1 1 2 1 1 2 1 1 4 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 4 1 1 20 62 1.6% 3.2% 1.6% 6.5% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 3.2% 1.6% 1.6% 3.2% 1.6% 1.6% 6.5% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 1.6% 6.5% 1.6% 1.6% 32.3% 100.0% 301 ②社会人基礎力育成プログラム受講者の集計結果と考察 設問 2.下記の力や観点は、自分が今後「仕事」をすることにおいて、どの程度必要ですか。 (全く必要ではない:0点~大いに必要である:6点として、回答全体の平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 大いに必 要である 物事全般 への前向 きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持 ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情 や行動をコントロー ルする習 慣、力) 人間 としての基 本 的な資質・能力 誠実さ、 責任感 必要であ る どちらか と どちらかと あまり必 どちらとも 言えば必 言えば必 要では な いえない 要ではな 要である い い 全く必 要で はない 平均 44 16 2 0 0 0 0 5.7 21 30 9 2 0 0 0 5.1 35 24 3 0 0 0 0 5.5 46 14 1 0 0 1 0 5.7 他人に共感し、思いやる能力 27 25 10 0 0 0 0 5.3 リーダーシップ 27 29 5 1 0 0 0 5.3 健康・体 力・運動神 経 24 30 7 1 0 0 0 5.2 文章力、 読解力 22 29 9 1 1 0 0 5.1 9 33 14 3 3 0 0 4.7 基本的な 計算力、数 学・理科で培った 考え方 基礎学力・汎用的 物事を論理的に思考する力 能力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 18 23 17 2 2 0 0 4.9 9 28 21 2 1 1 0 4.6 英語力・ 語学力 11 25 18 4 3 1 0 4.5 PCスキル、ITを活 用する力 11 29 20 1 0 1 0 4.8 専門業務 として求められる知 識・知見 19 28 12 1 2 0 0 5.0 専門知識・スキル 専門業務 として求められる技 術・技能 14 34 10 2 2 0 0 4.9 31 24 6 0 1 0 0 5.4 29 25 8 0 0 0 0 5.3 21 30 10 1 0 0 0 5.1 20 29 11 2 0 0 0 5.1 知識・スキルを学ぶ 習慣、力 意 識・視野 幅広い視野/教養、およびそれ を広げる 姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を 意識(貢献、役割)して、自分の業務に取 り組む力 自分の問 題意識を仕事に生か す力 【社会人基礎力】 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 考 え抜く力 大いに必 要である 必要であ る どちらか と どちらかと あまり必 どちらとも 言えば必 言えば必 要では な いえない 要ではな 要である い い 全く必 要で はない 平均 61 51 9 2 1 0 0 5.4 22 31 6 2 1 0 0 5.1 実行力 43 64 13 3 0 1 0 5.2 課題発見 力 48 67 8 1 0 0 0 5.3 計画力 26 29 7 0 0 0 0 5.3 創造力 21 32 8 1 0 0 0 5.2 発信力 59 55 9 1 0 0 0 5.4 傾聴力 25 23 12 2 0 0 0 5.1 柔軟性 29 29 4 0 0 0 0 5.4 情況把握 力 24 33 5 0 0 0 0 5.3 チームで働く力 規律性 27 25 10 0 0 0 0 5.3 ストレスコントロール力 40 14 8 0 0 0 0 5.5 社会人基礎力の中では「ストレスコントロール力」が平均 5.5 点、「主体性」 、「発信力」、 「柔軟性」 が 5.4 点で続く。以下も全項目が 5 点台であり、受講生は学生時代から、仕事上、社会人基礎力が 必要になることを意識できていると推察される。一方、社会人基礎力以外の能力では、基礎学力・ 汎能力に関する能力が平均 4.8 点程度と低い。受講生は、社会人基礎力や人間としての基本的な資 質・能力の方を重要視しており、これは企業が採用で重視する基準にも近いことが認識できる。 302 設問 3.下記の力や観点において、あなたは、現在どのレベルにあると思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 大変高 い、強い 物事全般への前向きさ、 積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持 ちつつ、傲慢で はない) 安定性(自分の感情や行動をコントロー ルする習慣、力) 人間としての基 本的な資質・能力 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 どちらかと どちらかと あまり高く 全く高くな どちらとも いえば高く いえば高 ない、強く い、強くな いえない ない、強く い、強い ない い ない 高い、強 い 平均 9 21 24 6 2 0 0 4.5 0 21 24 9 5 3 0 3.9 3 17 24 7 9 2 0 3.9 15 24 16 4 2 1 0 4.7 12 26 18 2 4 0 0 4.6 リーダーシ ップ 4 19 23 10 5 1 0 4.1 健康・体力・運動神経 7 17 18 10 10 0 0 4.0 文章力、読解力 1 7 22 15 12 4 1 3.3 基本的な計算力、数学・理科で培った 考え方 2 8 15 13 16 7 1 3.1 5 10 16 14 14 3 0 3.5 3.2 基礎学力・ 汎用 物事を論理的に思考する力 的能力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 2 12 15 13 10 9 1 英語力・語学力 2 3 4 10 17 16 10 2.0 PCスキル、ITを活用する力 2 9 16 17 9 8 1 3.2 専門業務として 求められる知識・知見 3 4 13 25 5 10 2 3.0 専門知識・スキル 専門業務として 求められる技術・技能 2 5 16 17 7 10 5 2.8 4 9 33 8 6 2 0 3.9 5 14 30 9 3 1 0 4.1 6 10 24 17 3 1 1 3.9 5 12 28 12 4 0 1 4.0 知識・スキルを学ぶ習慣、力 意識・視野 幅広い視野/ 教養、およびそれを広げ る 姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を 意識(貢献、役割)して、自分の業務に取 り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 【社会人基礎力】 主体性 どちらかと どちらかと どちらとも いえば高く あまり高く 全く高くな ない、強く い、強くな いえば高 いえない ない、強く ない い い、強い ない 高い、強 い 平均 17 28 49 20 9 0 1 6 14 17 14 9 2 0 3.8 15 28 49 19 8 3 2 4.0 課題発見力 4 28 55 26 9 1 0 3.9 計画力 4 11 23 11 12 1 0 3.7 創造力 2 14 25 11 7 3 0 3.7 発信力 8 34 34 24 16 7 1 3.8 傾聴力 3 15 19 17 6 2 0 3.8 柔軟性 7 24 18 8 5 0 0 4.3 情況把握力 2 28 21 8 3 0 0 4.3 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 考え 抜く力 大変高 い、強い 4.2 チームで働く力 規律性 13 33 12 3 1 0 0 4.9 ストレスコント ロール力 10 12 15 10 9 4 2 3.7 社会人基礎力の中では「規律性」が 4.9 点と全項目の中でも最も高く、 「柔軟性」 「状況把握力」 「主 体性」も平均が 4.0 点を超えている。一方で、 「計画力」 「創造力」 「ストレスコントロール力」につ いては、いずれも 3.7 点と厳しい自己評価をしている。社会人基礎力以外の能力では「誠実さ、責 任感」 「他人に共感し、思いやる能力」「物事全般への前向きさ、積極性」が 4.5 点以上と、突出し て高くなっている。受講生は責任感、積極性、また周囲の状況を察知して対応する能力の成長には 自覚を持っているが、ストレス対策と思考力、専門知識・スキルに対しては課題を感じていること がわかる。 「仕事に必要な能力」(設問 2)と「実際のレベル」(設問 3)のレベル感の差を比較したグラフを次頁に 示す。 303 ■図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力以外) 必要性 現在のレベル 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に生 かす 力 社会 所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 し て 、自 等 を意識 貢 献 、役 割 分 の業務 に取り 組む力 教 養 、お よ び そ れ を 広 げる姿勢 リ ー ダ ー シ ップ を活用する力 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 文 章 力 、読 解 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 っ た考え方 物 事 を 論 理 的 に思 考 す る 力 問 題 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 英 語 力 ・語 学 力 P C スキ ル 、 専 門 業 務 と し て 求 め ら れ る 知 識 ・知 見 専 門 業 務 と し て 求 め ら れ る 技 術 ・技 能 知 識 ・ス キ ル を 学 ぶ 習 慣 、力 幅 広 い視 野 ) 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 ス ト レ ス コ ン ト ロー ル 力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 創造力 計画力 課題発見力 実行力 働 き かけ力 304 I T 自 分 の 感 情 や 行 動 を コン ト ロー ル す る 習 慣 、力 主体性 チームで働く力 考え抜く力 前に踏み出す力 ( 誠 実 さ 、責 任 感 安定性 ) 意識・視野 専門知識・スキル 基礎学力・汎用的能力 人間としての基本的な資質・能力 ( / ) 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 で は な い ) 0.0 ( 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 0.0 ■図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力) 必要性 現在のレベル 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 受講生が仕事をする上での必要性と実際のレベル差に最もギャップを感じている能力は「英語力・ 語学力」であり、それ以外の「専門知識・技術」や「基礎学力」についても、仕事で必要なレベル と実際のレベル差に課題を感じている。また「他人に共感し、思いやる能力」は必要性を認めなが ら、実際のレベルにもそれなりの自信を持っていることが分かる。同様に社会人基礎力において、 仕事をする上での必要性と現在のレベル差を最も感じているのは「ストレスコントロール力」であ り、一方「規律性」については、現在のレベルに自信を持っていると推察される。 設問 4,下記の力や観点それぞれを、特に身につけた時期はいつだと思いますか。それぞれ2つまでお答えくださ い。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため合計が 100.0%にならないことがある 【社会人基礎力以外の能力・観点】 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小 その他(選択 身につけて 学校入学以 肢1~5以外 いない 前 の時代) 43.8% 26.3% 17.5% 11.3% 0.0% 1.3% 45.3% 20.0% 20.0% 5.3% 0.0% 9.3% 40.5% 35.4% 11.4% 3.8% 0.0% 8.9% 誠実さ、責任感 31.6% 17.7% 25.3% 21.5% 0.0% 3.8% 他人に共感し、思いやる能力 24.0% 25.3% 25.3% 25.3% 0.0% 0.0% リーダーシップ 44.4% 27.2% 17.3% 7.4% 1.2% 2.5% 7.7% 19.2% 42.3% 23.1% 0.0% 7.7% 23.4% 33.8% 20.8% 10.4% 1.3% 10.4% 9.0% 28.2% 34.6% 19.2% 0.0% 9.0% 物事を論理的に思考する力 61.1% 16.7% 6.9% 4.2% 1.4% 9.7% 問題を概念化し、図や絵で表現する 力 33.8% 28.4% 9.5% 10.8% 0.0% 17.6% 英語力・語学力 13.7% 26.0% 24.7% 4.1% 0.0% 31.5% PCスキル、ITを活用する力 46.7% 36.0% 9.3% 0.0% 0.0% 8.0% 63.1% 9.2% 0.0% 0.0% 0.0% 27.7% 57.6% 7.6% 0.0% 0.0% 1.5% 33.3% 57.7% 21.1% 8.5% 7.0% 1.4% 4.2% 64.9% 21.6% 6.8% 4.1% 0.0% 2.7% 63.4% 16.9% 5.6% 0.0% 1.4% 12.7% 70.8% 10.8% 6.2% 0.0% 1.5% 10.8% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を 持ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培っ た考え方 専門業務として求められる知識・知 見 専門業務として求められる技術・技 能 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広 げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国 等)を意識(貢献、役割)して、自分の 業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 【社会人基礎力】 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小 その他(選択 身につけて 学校入学以 肢1~5以外 いない 前 の時代) 主体性 54.2% 26.1% 10.6% 5.6% 1.4% 2.1% 働きかけ力 53.4% 26.0% 9.6% 4.1% 0.0% 6.8% 実行力 49.3% 22.5% 11.3% 9.2% 0.7% 6.3% 課題発見力 63.4% 17.6% 6.3% 3.5% 1.4% 3.5% 計画力 57.1% 17.1% 12.9% 1.4% 2.9% 8.6% 創造力 64.2% 16.4% 7.5% 3.0% 0.0% 9.0% 発信力 62.0% 19.7% 10.6% 1.4% 0.7% 3.5% 傾聴力 57.7% 26.8% 9.9% 0.0% 1.4% 4.2% 柔軟性 51.2% 31.7% 12.2% 2.4% 0.0% 2.4% 情況把握力 51.3% 31.3% 12.5% 2.5% 0.0% 2.5% 規律性 27.3% 16.9% 27.3% 28.6% 0.0% 0.0% ストレスコントロール力 32.5% 27.5% 20.0% 11.3% 0.0% 8.8% 305 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力以外)】 0% 20% 40% 60% 80% 100% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知見 専門業務として求められる技術・技能 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 就職後 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他の時代) 身につけていない 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力)】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 主体性 働きかけ力 実行力 課題発見力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 就職後 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他の時代) 身につけていない 社会人基礎力の能力については、 「規律性」と「ストレスコントロール力」を除き、大半を大学時代に身 につけたと回答している。社会人基礎力以外の力・能力については、 「専門知識・スキル」 「意識・視野」 の各項目のほか、「リーダーシップ」 「論理的思考力」「PC スキル」等を大学時代に身につける傾向が強 い。逆に初・中等教育において身につける(ことが可能な)能力は「基本的な計算力」や「英語力・語 学力」 、 「体力・運動神経」である。 「責任感」や「他人を思いやる力」についての回答は各年代に拡散し ており、個人差があることがわかる。 306 設問 5.下記の力や観点は、大学時代を振り返って、特にどのような活動で身につけたと思いますか。それぞれ 2 つ までお答えください。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため、合計が 100.0%にならないことがある 【社会人基礎力以外の能力・観点】 大学時代の 大学での卒 大学時代の クラブ、 大学時代の 大学時代の 大学での学 業研究とし 学園祭・自 大学時代の 大学時代の 大学時代の 大学時代の サークル活 ボランティ 親元を離れ その他 業全般 ての研究 治会等の活 アルバイト 就職活動 旅行 海外留学 動など課外 ア活動 た生活 室、ゼミ 動 活動 物事全般への前向きさ、積極性 12.0% 32.6% 22.8% 2.2% 9.8% 6.5% 0.0% 3.3% 5.4% 4.3% 1.1% 自分を肯定的に捉える態度(自信を持 ちつつ、傲慢ではない) 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 11.8% 32.9% 20.0% 2.4% 10.6% 8.2% 1.2% 1.2% 4.7% 3.5% 3.5% 9.6% 27.7% 21.7% 2.4% 16.9% 7.2% 0.0% 1.2% 3.6% 7.2% 2.4% 人間としての基本的 誠実さ、責任感 な資質・能力 基礎学力・汎用的能 力 専門知識・スキル 意識・視野 14.6% 29.2% 17.7% 2.1% 25.0% 2.1% 0.0% 1.0% 5.2% 2.1% 1.0% 他人に共感し、思いやる能力 17.0% 26.1% 30.7% 2.3% 17.0% 1.1% 0.0% 0.0% 3.4% 1.1% 1.1% リーダーシップ 15.1% 34.4% 24.7% 4.3% 7.5% 4.3% 0.0% 1.1% 4.3% 0.0% 4.3% 健康・体力・運動神経 15.3% 8.3% 26.4% 2.8% 18.1% 2.8% 0.0% 1.4% 1.4% 9.7% 13.9% 文章力、読解力 43.0% 37.2% 9.3% 1.2% 0.0% 2.3% 1.2% 1.2% 1.2% 1.2% 2.3% 基本的な計算力、数学・理科で培った 考え方 42.9% 24.7% 3.9% 2.6% 2.6% 3.9% 0.0% 0.0% 1.3% 2.6% 15.6% 物事を論理的に思考する力 31.5% 39.3% 12.4% 1.1% 2.2% 4.5% 0.0% 0.0% 3.4% 1.1% 4.5% 問題を概念化し、図や絵で表現する力 30.8% 41.0% 9.0% 2.6% 2.6% 1.3% 0.0% 0.0% 3.8% 0.0% 9.0% 英語力・語学力 40.6% 10.1% 4.3% 1.4% 0.0% 1.4% 2.9% 5.8% 1.4% 0.0% 31.9% PCスキル、ITを活用する力 54.3% 27.2% 9.9% 1.2% 1.2% 1.2% 0.0% 0.0% 1.2% 0.0% 3.7% 専門業務として求められる知識・知見 41.3% 32.5% 5.0% 1.3% 3.8% 2.5% 0.0% 0.0% 1.3% 0.0% 12.5% 専門業務として求められる技術・技能 36.8% 27.6% 7.9% 1.3% 3.9% 0.0% 0.0% 0.0% 1.3% 0.0% 21.1% 知識・スキルを学ぶ習慣、力 34.4% 41.1% 12.2% 2.2% 3.3% 3.3% 1.1% 0.0% 2.2% 0.0% 0.0% 幅広い視野/教養、およびそれを広げ る姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を 意識(貢献、役割)して、自分の業務に 取り組む力 29.0% 30.1% 16.1% 3.2% 7.5% 4.3% 2.2% 1.1% 3.2% 1.1% 2.2% 20.0% 26.7% 13.3% 3.3% 18.9% 8.9% 1.1% 0.0% 4.4% 0.0% 3.3% 自分の問題意識を仕事に生かす力 16.7% 38.1% 15.5% 2.4% 15.5% 6.0% 0.0% 0.0% 3.6% 0.0% 2.4% 【社会人基礎力】 前に踏み出す力 考え抜く力 大学時代の 大学での卒 大学時代の クラブ、 大学時代の 大学時代の 大学での学 業研究とし 学園祭・自 大学時代の 大学時代の 大学時代の 大学時代の サークル活 ボランティ 親元を離れ その他 業全般 ての研究 治会等の活 アルバイト 就職活動 旅行 海外留学 た生活 動など課外 ア活動 室、ゼミ 動 活動 主体性 12.9% 37.6% 18.5% 3.9% 10.7% 7.3% 0.6% 2.2% 働きかけ力 15.9% 35.2% 21.6% 5.7% 8.0% 3.4% 1.1% 1.1% 実行力 12.4% 37.6% 22.5% 3.9% 10.1% 7.3% 0.0% 3.4% 課題発見力 15.7% 38.8% 19.1% 3.9% 6.7% 7.3% 0.6% 0.0% 計画力 14.0% 40.7% 18.6% 4.7% 7.0% 5.8% 0.0% 創造力 16.9% 42.2% 20.5% 3.6% 7.2% 1.2% 0.0% 発信力 13.5% 44.9% 21.3% 2.8% 5.1% 11.8% 0.6% 傾聴力 16.5% 35.3% 23.5% 3.5% 8.2% 3.5% 0.0% 1.2% 柔軟性 13.3% 34.7% 22.4% 3.1% 12.2% 7.1% 1.0% 2.0% 情況把握力 12.9% 34.4% 23.7% 3.2% 14.0% 4.3% 0.0% 2.2% 規律性 16.0% 24.5% 18.1% 3.2% 23.4% 7.4% 0.0% 9.8% 25.0% 17.4% 3.3% 17.4% 10.9% 1.1% 4.5% 1.7% 0.0% 4.5% 0.0% 3.4% 4.5% 0.0% 1.1% 4.5% 0.0% 2.2% 0.0% 4.7% 2.3% 2.3% 0.0% 4.8% 1.2% 2.4% 1.1% 3.9% 1.1% 0.0% 4.7% 1.2% 2.4% 4.1% 0.0% 0.0% 4.3% 1.1% 0.0% 0.0% 4.3% 3.2% 0.0% 1.1% 3.3% 5.4% 5.4% チームで働く力 ストレスコントロール力 307 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 誠実さ、責任感 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 他人に共感し、思いやる能力 大学時代の就職活動 リーダーシップ 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 健康・体力・運動神経 大学時代のボランティア活動 文章力、読解力 大学時代の親元を離れた生活 その他 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 物事を論理的に思考する力 問題を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 専門業務として求められる知識・知見 専門業務として求められる技術・技能 知識・スキルを学ぶ習慣、力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 主体性 働きかけ力 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 実行力 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 課題発見力 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 計画力 大学時代の就職活動 創造力 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 発信力 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 傾聴力 その他 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 社会人基礎力の各能力と、人間としての基本的な資質・能力を身につけた活動は「研究室、ゼミ」が最多で、 続いて「クラブ、サークル活動など課外活動」が続くのが概ねの傾向である。一方、「基礎学力・汎用的能 力」や「専門知識・スキル」 「意識・視野」は、多くが学業全般を通して身につけた能力となっている。ま た「基礎学力・汎用的能力」や「意識・視野」、社会人基礎力の「規律性」、 「ストレスコントロール力」 「柔 軟性」は、アルバイトで身につけたとの回答が概ね 10%以上と高くなっている。 308 設問 6.あなたは学生時代に、下記の活動に熱心に取り組みましたか。 (全く熱心には取り組んでいない:0点~大変熱心に取り組んだ:6点とした平均点を算出) どちら どちら かとい かとい 大変熱 熱心に どちらと えば熱 熱心に えば熱 心に取 は取り もいえ 心には 取り組 心に取 り組ん 組んで ない んだ 取り組 り組ん だ いない んでい だ ない 16 32 24 13 20 23 12 7 10 14 8 8 20 24 1 16 22 14 9 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 大学時代の就職活動 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 中学・高校時代の授業 大学受験勉強 中学・高校時代の文化祭・体育祭・生徒会などの課外活動 中学・高校時代の部活動 中学・高校時代の海外留学 小学校時代の授業 小学校時代の課外活動、学校以外の活動 小・中・高校時代の家庭での生活、家族との活動 小・中・高校時代の地域での活動 20 15 6 10 17 16 19 1 5 12 29 22 17 22 1 21 20 18 9 18 9 3 13 10 5 11 0 6 3 14 7 16 6 0 13 7 11 18 1 2 4 2 4 5 7 0 5 3 6 2 1 2 0 5 2 11 10 4 0 1 2 3 3 1 0 2 0 0 5 0 0 0 1 1 3 2 全く熱 心には 取り組 んでい ない 1 2 0 5 2 1 1 0 2 0 2 5 3 2 0 2 3 3 3 0 0 3 4 0 0 2 0 1 0 1 6 1 1 0 2 1 0 1 19項目 の平均 値 平均 4.7 5.2 4.9 4.0 4.7 4.9 4.4 5.9 4.2 5.2 4.5 3.8 4.7 5.0 5.5 4.5 4.8 4.3 4.0 4.7 【図表 学生時代に熱心に取り組んだ活動】 6.5 【参考】19項目の平均値(4.7) 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 小 ・中 ・高 校 時 代 の 地 域 で の 活 動 小 ・中 ・高 校 時 代 の 家 庭 で の 生 活 、 家 族 と の活 動 小 学 校 時 代 の 課 外 活 動 、学 校 以 外 の 活動 小 学 校 時 代 の授 業 →大学入学以前の活 動 中 学 ・高 校 時 代 の 海 外 留 学 中 学 ・高 校 時 代 の 部 活 動 中 学 ・高 校 時 代 の 文 化 祭 ・体 育 祭 ・ 生 徒 会 な ど の課 外 活 動 309 大 学 受験 勉強 大学時代の活動← 中 学 ・高 校 時 代 の 授 業 大 学 時 代 の親 元 を 離 れ た 生 活 大 学 時 代 の ボ ラ ン テ ィア 活 動 大 学 時 代 の海 外 留 学 大 学 時 代 の旅 行 大 学 時 代 の就 職 活 動 大 学 時 代 の ア ル バイ ト 大 学 時 代 の 学 園 祭 ・自 治 会 等 の 活 動 大 学 時 代 の ク ラ ブ 、サ ー ク ル活 動 な ど課 外 活 動 大 学 で の卒 業 研 究 と し て の研 究 室 、 ゼミ 大 学 で の学 業 全 般 3.0 設問 7.大学時代を振り返って、下記の経験はあなたの能力や人間性の向上にとって意義があったと思いますか。 (全く意義のない経験だった:0点~たいへん有意義な経験だった:6点とした平均点を算出) 多少は たいへ ん有意 有意義 意義の どちらと 義な経 な経験 ある経 もいえ 験だっ だった 験だっ ない た た 37 42 33 37 44 38 29 33 32 26 38 31 35 40 22 ある活動にコミットし、試行錯誤したこと 最後まで何かを成し遂げたこと 難しいと思われることに挑戦したこと 実社会に関わる取り組みをしたこと 人前で発表を行ったこと グループで、ある目標に向けて取り組んだこと グループのリーダーをしたこと 何か成し遂げたことを、認められたり誉められたりしたこと 他者から評価された経験 自分で選択・決定する機会が増えたこと 新たな価値観や知識・情報に出会ったこと 教員との出会い、交流 考え方やバックグランド、年齢が異なる人との交流をしたこと 友人との交流 異性との関わり(恋愛経験など) 18 16 22 19 13 20 11 22 20 32 19 23 22 14 17 1 1 3 2 2 2 6 3 5 1 2 4 3 3 7 あまり 大きな 意義の ない経 験だっ た 0 0 0 1 0 0 2 1 3 1 1 2 0 2 5 意義の ない経 験だっ た 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 全く意 義のな い経験 だった 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15項目 の平均 値 6.0 平均 5.6 5.7 5.4 5.5 5.7 5.6 5.4 5.5 5.4 5.4 5.6 5.4 5.5 5.5 4.9 5.5 【参考】15項目の平均値(5.5) ) 5.5 5.0 4.5 異 性 と の 関 わ り (恋 愛 経 験 な ど ) 友 人 と の交 流 考 え 方 や バ ック グ ラ ンド 、年 齢 が 異 な る 人 と の交 流 を し た こ と 教 員 と の 出 会 い 、交 流 新 た な 価 値 観 や 知 識 ・情 報 に出 会 っ た こと 自 分 で選 択 ・決 定 す る 機 会 が 増 え た こと 他 者 から 評 価 さ れ た 経 験 何 か 成 し 遂 げ た こ と を 、認 め ら れ た り 誉 めら れ た り し た こと グ ルー プ の リ ー ダ ー を し た こ と グ ルー プ で 、あ る 目 標 に向 け て取 り 組 ん だ こと 人 前 で発 表 を 行 った こ と 実 社 会 に関 わ る 取 り 組 みを し た こ と 難 し いと 思 わ れ る こ と に挑 戦 し た こ と 最 後 ま で何 か を 成 し遂 げ た こ と あ る 活 動 に コミ ット し 、試 行 錯 誤 し た こと 4.0 「異性との関係(恋愛経験など)」を除けば、いずれの項目も平均して、能力や人間性の向上に有意義 な経験であったと捉えている。中でも「最後まで何かを成し遂げたこと」「人前での発表」は平均 5.7 点、 「ある活動にコミットし、試行錯誤する」 「グループである目標に向けて取り組む」は平均 5.6 点と、 社会人基礎力の育成を象徴するような経験の多くは平均が高い。 310 設問 8.大学時代を振り返って、以下の授業や活動はどの程度ありましたか。 大変多くあった 多くあった あった 少しだけあった なかった 実務知識・技術を教える授業 6.7% 28.3% 38.3% 20.0% 6.7% 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニン グする授業 6.7% 28.3% 31.7% 28.3% 5.0% 実験 3.3% 8.3% 20.0% 15.0% 53.3% フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 11.9% 13.6% 28.8% 20.3% 25.4% 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習 等) 10.0% 10.0% 40.0% 13.3% 26.7% 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 13.3% 35.0% 43.3% 8.3% 0.0% 理論や概念を教える授業 15.0% 26.7% 43.3% 13.3% 1.7% 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授 業 6.7% 16.7% 36.7% 23.3% 16.7% 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たった りする授業 6.7% 26.7% 40.0% 21.7% 5.0% 学生の指導助手がサポートする授業・活動 1.7% 16.7% 35.0% 18.3% 28.3% 教員から直接指導を受ける機会 18.3% 23.3% 45.0% 13.3% 0.0% 先輩から直接指導を受ける機会 5.0% 18.3% 28.3% 28.3% 20.0% 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活 動 6.7% 26.7% 36.7% 26.7% 3.3% 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 5.0% 26.7% 33.3% 31.7% 3.3% グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 6.7% 26.7% 45.0% 18.3% 3.3% 何らかモノを作る授業・活動 3.3% 8.3% 36.7% 15.0% 36.7% プレゼンテーションを求める授業・活動 6.7% 31.7% 51.7% 10.0% 0.0% 28.3% 28.3% 35.0% 8.3% 0.0% 3.3% 8.3% 48.3% 33.3% 6.7% 18.3% 45.0% 31.7% 5.0% 0.0% 5.0% 8.3% 48.3% 23.3% 15.0% 3.3% 5.0% 18.3% 41.7% 31.7% 1.7% 11.7% 35.0% 30.0% 21.7% 3.3% 13.3% 25.0% 38.3% 20.0% 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる 授業(講義) 予習が必要となる授業・活動 論文やレポート執筆を求める授業・活動 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・ 活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグルー プ単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活 動 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 311 【図表 大学の授業・活動の実施程度】 0% 20% 40% 60% 80% 100% 実務知識・技術を教える授業 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニングす る授業 実験 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等) 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 理論や概念を教える授業 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授業 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったり する授業 学生の指導助手がサポートする授業・活動 教員から直接指導を受ける機会 先輩から直接指導を受ける機会 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活動 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 何らかモノを作る授業・活動 プレゼンテーションを求める授業・活動 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授業 (講義) 予習が必要となる授業・活動 論文やレポート執筆を求める授業・活動 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグループ 単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 大変多くあった 多くあった あった 少しだけあった なかった 上位にあがった項目をみると、「プレゼンテーションを求める授業」が「大変多くあった」「多くあ った」とした回答は 38.3%、同じく「グループ活動」 「学生同士のディスカッション」は 33.3%と、 学生が主体的に学ぶスタイルの授業は、少なからず経験しているとみられる。一方、 「授業後の振り 返り」や「テスト・レポート以外での成績評価」を経験している学生は 10%台と少ないことから、 学習の成果を検証していく取り組みは全体として少ないことが分かり、今後の課題と言える。 設問 9. 以下の大学時代の授業や活動は、「今後仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効だと思いますか。 ※「全く有効でなかった:0点~大変有効だった:6点」とした平均点を算出し、平均点の降順に並べ替えた。 どちらか どちらか どちらと と言え 有効で 全く有 と言え も言え ば有効 なかっ 効でな ば有効 かった た でな ない だった かった 大変有 有効 効だっ だった た 平均 1 実務知識・技術を教える授業 5 19 24 5 1 0 0 4.4 2 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニン グする授業 6 20 20 7 1 1 0 4.4 3 実験 4 11 8 4 1 2 0 4.2 4 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 10 14 11 7 0 2 0 4.5 5 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習 等) 15 12 9 5 0 1 0 4.8 6 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 9 22 18 7 1 0 0 4.5 7 理論や概念を教える授業 5 15 22 11 3 2 0 4.0 8 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授 業 6 13 13 11 3 1 1 4.0 9 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たっ たりする授業 15 18 11 9 4 0 0 4.5 3 7 15 10 4 1 4 3.5 11 教員から直接指導を受ける機会 10 25 14 7 1 0 0 4.6 12 先輩から直接指導を受ける機会 6 14 14 7 3 0 0 4.3 10 学生の指導助手がサポートする授業・活動 13 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・ 活動 14 21 14 3 2 1 0 4.7 14 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活 動 6 18 16 12 1 1 0 4.2 14 25 12 5 1 0 0 4.8 9 11 9 6 4 1 0 4.3 20 24 13 1 0 0 0 5.1 3 12 23 11 3 4 2 3.7 19 予習が必要となる授業・活動 3 12 17 16 2 4 0 3.7 20 論文やレポート執筆を求める授業・活動 6 16 28 5 1 2 0 4.3 21 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 3 12 22 9 2 0 1 4.0 3 11 8 17 2 1 0 3.8 6 17 14 4 2 1 0 4.4 10 10 12 14 0 0 1 4.3 15 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 16 何らかモノを作る授業・活動 17 プレゼンテーションを求める授業・活動 18 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる 授業(講義) テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・ 活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグ 23 ループ単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授 業・活動 22 24 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 24項目 の平均 値 313 4.3 中 小 企 業 や ベ ン チ ャ ー 企 業 の 魅 力 を 伝 え る 授 業 ・活 動 講 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を 学 外 の 人 に 与 え ら れ 、 学 生 が グ ル ー プ 単 位 の 活 動 で そ の 課 題 解 決 の 方 法 を 見 出 し て い く 授 業 ・活 動 テ ス ト ・レ ポ ー ト 以 外 の ユ ニー ク な 方 法 で 成 績 を つ け る 授 業 ・活 動 授 業 後 の 反 省 な ど 授 業 を 振 り 返 る 活 動 の あ る 授 業 ・活 動 論 文 や レ ポ ー ト 執 筆 を 求 め る 授 業 ・活 動 予 習 が 必 要 と な る 授 業 ・活 動 授 業 時 間 全 体 を 教 員 (指 導 者 )が 知 識 の 教 授 ・説 明 に あ て る 授 業 義 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 求 め る 授 業 ・活 動 何 ら か モ ノ を 作 る 授 業 ・活 動 グ ル ー プ 単 位 の 活 動 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 教 員 の 質 問 に 対 し て 学 生 の 発 言 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 学 生 同 士 の 対 話 や デ ィ ス カ ッ シ ョ ン が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 先 輩 から 直 接 指 導 を 受 ける 機 会 教 員 から 直 接 指 導 を 受 ける 機 会 学 生 の 指 導 助 手 が サ ポ ー ト す る 授 業 ・活 動 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を テ ー マ に し 、考 え る 授 業 理 論 や概 念 を 教 え る 授 業 一 回 の 授 業 で 複 数 教 員 が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授 業 学 外 の 人 (企 業 や 地 域 の 人 な ど )が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授業 ( 職 場 を 体 験 す る 実 習 (イ ン タ ー ン シ ッ プ 、教 育 実 習 、病 院 実 習 等 ) フ ィ ー ル ド に 出 て 、調 査 や 実 習 を 行 う 授 業 ・活 動 実験 314 ) 知 識 ・技 術 を 活 用 で き る よ う に す る 授 業 / ス キ ル を ト レ ー ニ ン グ す る 授業 実 務 知 識 ・技 術 を 教 え る 授 業 3.0 【参考24項目の平均値(4.3)】 仕事 に必 要な 能力を伸 ばすことに有 効だったか 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 今後の仕事に必要な能力を伸ばすために、最も有効だった授業や活動は、「プレゼンテーションを求める授 業」で平均 5.1 点。設問 8 の「能力や人間性の向上にとって意義がある活動」と同様、学生は、人前でプレゼ ンテーションを行うことに、成長と意義を感じていることが分かる。また「グループ活動」「学生同士のディスカ ッション」についても同様の結果であった。その他、仕事に必要な能力として上位にあがっているのは、「イン ターンシップ」や「教員からの直接指導」「学外者からの指導」であった。 2-4-4.教員アンケート結果の分析 社会人基礎力育成プログラムの担当教職員に対して行ったアンケートを、設問毎に集計・分析する。 [アンケート回答者数(n)=16 人] ・設問 2-1 プログラムや活動を通して、下記の力や観点の育成をどの程度意図して指導されましたか。 7 大いに意図した 6 意図した 5 どちらかと言えば意図した 4 どちらとも言えない 3 どちらかと言えば意図しなかった 2 あまり意図しなかった 1 意図はしなかった 【凡例】 0~3 人 、4~7 人ああ 、8 人以上ああ ■図表 育成を意図した能力 人間としての 基本的な資質や能力 リーダーシップ 1 物事全般への前向きさ、積極性 2 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 3 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 4 誠実さ、責任感 5 他人に共感し、思いやる能力 6 他人と協働したり、集団で活動したりする場面で、方向性を示したり、グループをまとめたりする力 7 健康・体力・運動神経 8 文章力、読解力 9 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 10 物事を論理的に思考する力 基礎学力・ 汎用的能力 11 問題を概念化し、図や絵で表現する力 12 英語力・語学力 13 PCスキル、ITを活用する力 14 専門業務として求められる知識・知見 専門知識・スキル 15 専門業務として求められる技術・技能 16 知識・スキルを学ぶ習慣、力 17 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 意識・視野 18 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 19 自分の問題意識を仕事に生かす力 主体性 社会人基礎力/ 働きかけ力 「前に踏み出す力」 実行力 社会人基礎力/ 「考え抜く力」 課題発見力 20 自分の意志で判断し、行動する力・態度 21 自ら目標を定め、それに向けてモチベーションを高める力、態度 22 目標の遂行のために他者に働きかけ、巻き込んでいく力、態度 23 物事を実行に移し、確実に遂行する力 24 難しい課題に大胆に挑戦し、粘り強く取り組む態度 25 問題や状況を柔軟に捉えて理解し、課題、原因等を抽出する力 26 問題や状況を把握するために、情報や知識を収集し、再構築する力 計画力 27 与えられた目標を明確化し、その実現のために計画を立てる力 創造力 28 知識や情報を自らの視点・視野で理解し、独自の構想やアイデアを生み出す力 発信力 傾聴力 社会人基礎力/ 柔軟性 「チームで働く力」 29 口頭で事実を伝え、表現する力(プレゼンテーションスキルを含む) 30 場の中で自らを表現し、考えを他人に表明する力 31 他人の考えをうまく引き出し、理解する力 32 自分とは異なる意見であっても柔軟に合わせて思考・対応する力 状況把握力 33 周りの人々の考えや置かれている状況を理解し、自らの役割を把握する力 規律性 34 他人との間で決められ約束事や、社会的な常識、規律を守る習慣や態度 ストレスコントロール力 35 ストレスとうまく付き合う力 7 6 5 4 3 2 12 5 2 6 4 7 1 4 2 6 7 8 7 6 2 2 2 1 1 1 4 1 1 1 4 3 3 1 1 3 2 4 1 1 2 7 4 2 2 3 4 2 1 1 5 3 5 5 1 4 4 2 5 4 1 2 3 4 1 2 2 3 3 2 5 2 2 5 4 5 2 2 1 2 7 8 6 3 5 5 4 2 1 1 1 3 8 9 9 7 5 7 5 6 8 6 2 1 1 3 5 7 6 8 5 5 9 3 6 3 3 1 2 7 6 3 2 5 8 1 6 8 8 9 7 5 4 3 2 3 3 2 1 7 1 1 1 2 1 1 3 1 1 1 1 1 1 4 5 2 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 ・設問2-2.上記以外に特に育成を意図した能力等がありましたらお書きください。 【一般社会へ発信する意識、競争心】 ・ 第一に、発信力に関しては、担任や学内での評価に留まらず、一般社会に問いかけることを強く意図し た。実際に商品化することは、自らの考え方を公にし、世に問うということである。第二に、競争させ ることを意図した。競争とは切磋琢磨につながる基礎であり、その結果は全体の底上げにつながると信 じている。 (流通科学大学) ・ 能力ではないが、学生の貪欲さを引き出すことを大切にした。(中京大) 【合意形成、チームの一員としての振る舞い】 ・ 集団としての方向性を考える際は十分に議論して、皆が納得できるまで議論を煮詰めることを重視した。 315 とりわけ、我々の行動が社会的にどのような意義を持ち、どのようなインパクトを将来生み出す取り組 みなのか、そのあたりを学生たちに訴え、理解を得た。集団としての意思が固まってからは、思いのほ か楽だった。あえて言うならば、それぞれ個性があって、集団を支える役割は色々あるから、自分の役 割を探して、その役割を果たしなさい、という点くらいか。(阪南大) ・ 仲間やまわりの人の話をきちんと聞いて理解するとともに、それに対して誠実に応答する力。(石川県 立看護大学) 【専門分野の異なる学生同士のコミュニケーション】 ・ 自分の意見が言える環境整備のため、専門の異なる学生同士でチームを結成させたこと。専門の異なる 同士の方が簡単な質問を発しやすいことに注目した。(武蔵大) 【失敗を恐れない行動力】 ・ 失敗を恐れずに行動する力。(広島経済大) 【自分の行動の客観的な振り返り】 ・ 自己のかかわり(取り組み)を客観的に振り返り、相手の行動によって自己の取り組みを評価しようと する力。(奈良佐保短期大学) ・ 自分を客観的に捉える態度(適切な自己認識ができる)、働くことの意義・意味や楽しさを理解できる 力。(東海大学) 【社会で通用するプレゼンとは何かを知る】 ・研究室の内輪や、学会の発表はいわばディフェンス。自分がやったことが 100%であり、準備したことを 並べて話せばよい。それに対して、社会人基礎力育成プログラムで行うプレゼンはインタラクション。 守るだけでなく、インタラクションを通して 1 つのものを創造する経験であるところが大きく違う。机 上の思考でなく、相手の言うことに、切り返していく瞬発力が必要である。(大阪大学) 社会人基礎力育成プログラムでは、当然のことながら社会人基礎力の3つの力・12 の能力要素の育成 が強く意図されている。その中でも PBL 等の活動の軸となる「働きかけ力」 「計画力」 「規律性」は意 図するという回答が多い。一方、ある程度の専門知識・スキルがベースになる「課題発見力」と「創 造力」、また「ストレスコントロール力」については、教員の意識の度合いに散らばりがある。 社会人基礎力以外の能力で同様に強く意図されているのは、リーダーシップを含む「人間としての基 本的な資質」 「意識・視野」といった、学ぶ姿勢をベースに置くものである。一方、計算力、語学力、 PCスキル等といった「基礎学力・汎用的能力」、また「専門知識・スキル」については、プログラ ムや活動の内容にもよるが、重視する度合いにはばらつきが見られる。 その他、自由記述からは競争心や貪欲さ、失敗等、実社会では当然必要になるが、教育の場では負の 影響を及ぼしかねない要素を、教員のファシリテーションのもとであえて目指させることで、学生の 意欲や実行力を高めようとした興味深い記述も見られる。 316 ・設問2-3.プログラムや活動を通して、結果的に下記の力や観点について学生は実際にどの程度成長したと思 われますか。 7 大いに成長した 6 成長した 5 どちらかと言えば成長した 4 どちらとも言えない 3 どちらかと言えば成長しなかった 2 あまり成長しなかった 1 成長しなかった 【凡例】 0~3 人 、4~7 人ああ 、8 人以上ああ ■図表 実際に学生が成長したと思う能力や態度 人間としての 基本的な資質や能力 リーダーシップ 基礎学力・ 汎用的能力 専門知識・スキル 社会人基礎力/ 「考え抜く力」 2 2 3 4 4 1 2 3 8 6 5 4 3 3 1 4 6 6 7 4 4 2 2 4 2 3 4 1 2 7 5 5 9 3 6 8 5 6 7 1 3 3 1 1 3 4 8 7 5 6 7 7 1 2 4 5 1 2 2 2 7 4 5 7 8 6 6 4 5 6 5 6 7 3 1 2 2 2 健康・体力・運動神経 8 文章力、読解力 1 9 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 10 物事を論理的に思考する力 11 問題を概念化し、図や絵で表現する力 12 英語力・語学力 13 PCスキル、ITを活用する力 14 専門業務として求められる知識・知見 15 専門業務として求められる技術・技能 16 知識・スキルを学ぶ習慣、力 自分の意志で判断し、行動する力・態度 21 自ら目標を定め、それに向けてモチベーションを高める力、態度 22 目標の遂行のために他者に働きかけ、巻き込んでいく力、態度 23 物事を実行に移し、確実に遂行する力 24 難しい課題に大胆に挑戦し、粘り強く取り組む態度 25 問題や状況を柔軟に捉えて理解し、課題、原因等を抽出する力 26 問題や状況を把握するために、情報や知識を収集し、再構築する力 計画力 27 与えられた目標を明確化し、その実現のために計画を立てる力 創造力 28 知識や情報を自らの視点・視野で理解し、独自の構想やアイデアを生み出す力 29 口頭で事実を伝え、表現する力(プレゼンテーションスキルを含む) 30 場の中で自らを表現し、考えを他人に表明する力 31 他人の考えをうまく引き出し、理解する力 32 自分とは異なる意見であっても柔軟に合わせて思考・対応する力 状況把握力 33 周りの人々の考えや置かれている状況を理解し、自らの役割を把握する力 規律性 34 他人との間で決められ約束事や、社会的な常識、規律を守る習慣や態度 ストレスコントロール力 35 ストレスとうまく付き合う力 傾聴力 3 7 20 社会人基礎力/ 柔軟性 「チームで働く力」 4 他人と協働したり、集団で活動したりする場面で、方向性を示したり、グループをまとめたりする力 自分の問題意識を仕事に生かす力 発信力 1 2 7 8 3 6 9 3 6 19 課題発見力 4 2 6 2 7 6 誠実さ、責任感 安定性(自分の感情や行動をコントロールする習慣、力) 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿勢 実行力 4 8 6 6 8 3 3 他人に共感し、思いやる能力 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつつ、傲慢ではない) 3 社会(所属している企業、業界、国等)を意識(貢献、役割)して、自分の業務に取り組む力 社会人基礎力/ 働きかけ力 「前に踏み出す力」 5 4 2 18 主体性 6 3 1 5 物事全般への前向きさ、積極性 17 意識・視野 7 9 6 6 5 6 8 1 1 2 1 4 4 3 1 4 2 1 2 1 1 1 4 8 2 1 4 2 1 1 1 1 5 3 2 2 1 1 2 3 1 2 1 1 1 1 4 1 2 1 1 ・設問2-4.上記以外に特に学生が成長した能力や態度等がありましたらお書きください。 【コスト意識や効率への意識】 ・ 程度は不明だが、コスト意識や効率性への関心が高まったように感じる。(流通科学大学) 【集団の中でそれぞれの役割を理解して発揮】 ・ 主体的に関わった学生は 40 名近くに及ぶため、一般論としては語り難い。リーダー的学生、調整力を発 揮する学生、黙々と下支えする学生、それぞれがそれぞれのポジションで能力を発揮して成長した結果、 集団としての成果があがったと考える。教育者として確信するが、人にはそれぞれの向き不向きがあっ て、一律に同じ能力と成長を求めても難しい。同じチャンスを一度は平等に与えて、向き不向きをちゃ んと見極めることはとても重要。しかし、向き不向きが判明すれば、全員をエースの 4 番バッターに育 てようとするのは、逆に不幸を招く。(阪南大学) ・ チームで働くことの大変さと意義を大いに学んだ。一人ではどんなに頑張ってもできないことをチーム で達成した意義は大きい。(武蔵大学) 317 【学んだ内容の抽出と言語化】 ・ 人とのかかわりの中から、その場において自分の学び(成長)となったことを抽出し、言語化する力が 身についた。(奈良佐保短期大学) 【未知の存在や他者に関心を持ち、積極的に関わる姿勢】 ・ ある程度の枠の中で、よく知らない人に自己表現し、相手の話を聞こうとする力(毎回のグループメン バーチェンジと自己紹介で、知らない人と話すことの抵抗感が少なくなった)。(東海大学) ・ 他者への興味を高め、交流を持とうとする力(いろんな人と話す機会を持ったことで、視野が広がる体 験を通して、関心を異にする人に対して関心を向けるようになった)。(東海大学) 【自身の考え方や行動を決定する規範】 ・ 物事を進めるにあたって、学生は自身がもつべき規範(自身の考えや行動を決定する元の規範)を少しで も身につけたと思われる。ただし、この規範の形式化は非常に難しい。社会人基礎力は、それを身につ ける以前に、自身の状態に気づき、新たな状態を創り出そうとする学生の深い思考と実践に伴う省察に よって熟達すると考えられる。学生の成した行動を評価するよりも、そこに至る学生の深い思いと省察 が重要となると想定される。そこで、現在では、教員自身が技術者のもつべき自律的な規範のあり方を 形式化し、テキスト化することに取り組んでいる。(金沢工業大学) 【積極性・自発性】 ・ 全体的には中間的な結果しか出ておりません。積極的に取り組んだ学生にのみ、様々なフルーツが待ち 受けています。この授業の基本が自発性にあり、自発的に自分が予期していなかった様々なクラッシュ に立ち向かった学生にはどんどんと道が開け、開眼していきます。そういう学生がチーム内に一人いる と周りも引っ張られます。ただ、今年あたりから、前の年の学生の情報を基に、かた付け仕事をする傾 向が出てきました。これをやり始める学生がでると悪影響は一瞬にして伝染します。関係する教員が増 えたために、成果を求めたがって自発性を疎んじているのかもしれないので原因の追及中です。(香川 大学) 「育成を意図した」と回答した教員が多かった3つの力・12 の能力要素については、 「実際に学生が 成長した」という回答も多い。「課題発見力」と「ストレスコントロール力」については、教員側の 育成への意図が他の能力と比べて低かったため、学生の実際の成長度合いには差が見られるが、同様 に育成への意図の度合いが高くなかった「創造力」は、「成長した」と感じている教員が多く、期待 以上の効果が見られる。 社会人基礎力以外の能力では、「人間としての基本的な資質」、「意識・視野」が成長したと見る教員 が多い一方、「基礎学力・汎用的能力」「専門知識・スキル」については、「どちらとも言えない」と 回答した教員の割合が高い。 全体に「大いに成長した」という回答は少なかったが、教員側が当初成長を期待した能力と、プログ ラム終了後に成長を感じた学生の能力はリンクしており、教員の意図に沿った成長が見られたと言え る。 318 ・設問3-1.プログラムの中で、下記の活動や環境をどの程度重視して取り入れましたか。 →「重視した」とは、意図的にその頻度や環境を増やす、あるいはその機会を生かすような設定をすることを意味します 7 大いに重視した 6 重視した 5 どちらかと言えば重視した 4 どちらとも言えない 3 どちらかと言えば重視しなかった 2 あまり重視しなかった 1 重視しなかった 【凡例】 0~3 人 、4~7 人ああ 、8 人以上ああ ■重視して取り入れた活動や環境 1 活動に深くコミットし、試行錯誤する 2 最後まで何かを成し遂げる 3 (本人たちが)難しいと思うことに挑戦させる 4 活動を通して実社会に関わる 5 人前で意見を述べたりプレゼンをしたりする 6 グループやチームで、ある目標に向けて取り組む 7 グループのリーダーを経験させる 8 努力して成し遂げたことを、認めたり誉められたりする 9 他者(教職員、チームのメンバー、協力企業人等)から行動の評価を受ける 10 自分達で選択・決定をさせる 11 新たな価値観や知識・情報に出会う機会を増やす 12 教職員・企業人自身の思いや経験等を伝える 13 考え方やバックグランド、年齢が異なる人と意図的にチームを組ませる 14 学生同士が交流し、親睦を深める機会を持つ 7 6 7 9 9 8 11 9 3 6 9 8 7 6 5 6 7 5 5 5 3 6 3 7 4 6 4 5 4 5 5 4 3 2 1 2 2 2 3 1 7 1 2 2 4 2 2 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 2 1 1 1 1 2 1 1 1 ・設問3-2.上記について、具体的な工夫をお書きください。 【専門分野の異なる学生同士のチーム編成】 ・ コンテスト形式を用い、チーム編成は複数の学部・学科に在籍する学生を混合させ、なかには留学生が 入ったチームも存在した。(流通科学大学) ・ 前半の授業は学部単位で活動させ、後半から三学部横断で行う。そのことで、後半は専門の異なる 3 つ のグループからなる 1 つのチームが結成され 3 つのグループが 1 つにまとまる過程で学びの機会を増や す。(武蔵大学) ・ 毎回席替えして、よく知らないメンバーとのグループをつくり、毎回自己紹介とグループ演習をするこ とで、知らない人と接することへの抵抗感を減らした。ペアの相手へのフィードバックや話し合いでは、 「よいところ」を積極的に伝えることを指示した。その上で「さらに良くするためには」として改善点 を伝えるようにした。また数回の固定チームでの短時間のプレゼン準備によって、チーム作りへの貢献 と集中力への気づきとなった。(東海大学) ・ 学生たちは同じ学科の学生と組むことを好みます。ただ、それでは多様性がなくなるので、彼らの希望 は一切聞きませんでした。チーム編成はアンケートにより行い、それで多様性が図られるように工夫し ました。企業の方には自分たちがやりたいことをやらせるのではなく、あくまでも学生たちに選ばせる ようにお願いしました。意見が一致しない時は、会社の方に下がってもらいました(むしろ、学生を誘 導できなかったのは企業側の説明力不足だと言いました)。失敗に関しては、基本的には教員の責任で あり、学生の責任にはならないということを何度も言って挑戦させました。また、失敗をしたこと、そ の行動を行ったことを非常に評価しました(失敗の数のほんの数分の1だけ成功があるということを常 に言っています)。(香川大学) ・ チームの学年・学部・構成をできるだけばらばらにした。(山口大) 319 【各種コンテスト、マスコミ等 外部評価の積極的な受入れを含む主体性の重視】 ・ プレゼンテーション大会では、業界における著名人や観客からも審査を受け、順位付けがされた。優勝 案は商品化されたが、その他の案は、外部のコンテストに再応募し、それぞれが高い評価を受けた。参 加した全ての学生が何らかの賞状を手にすることができた。(流通科学大学) ・ 自分たちの活動がどのような意義があるのか、それは社会的な他者評価によって確認できる。だから、 マスメディアからの取材は積極的に受け入れた。自分たちで進み道を選択・決定させることは、とりわ け重視した。主体的選択が学生の自覚を促す。教員としては、地域や大学の事情など客観的な情勢を説 明して、学生たちの置かれた現状を浮き彫りにし、学生たちには自分たちの力を見極めさせ、やるかや らないか、できるかできないか、の議論を尽くした。と言いながらも、できるかできないかわからない 時は、失敗してもいいからとにかくやってみよう、躊躇した時は後ろへさがるのではなく、必ず前に進 もう、という姿勢は徹底した。(阪南大学) ・ プロジェクトにおいては、企画・準備・実行・予算管理・報告などの全てにおいて学生が主体的に活動 することを重視し、教職員はサポートする立場に徹している。(広島経済大学) ・ 競争原理を導入した。本プログラムでは開始当初より「良い企画を立案したグループに関しては、I製 菓が実際に試作品をつくり、可能な限りSコンビニエンスストアでの販売を実現させる。ただし、逆に 企画立案に何の努力も見られないグループは、講義途中であったとしても受講を断ることもありうる」 ということを学生に伝えることとした。これにより、学生たちは本プログラムにおいては信賞必罰が徹 底されるということを理解し、意欲的に講義に臨むことができたように思われる。(中京大学) 【マナーの徹底と成功体験の積み重ね】 ・ 小さな成功体験を積ませるということである。本プログラムを開始する際、学生に対して、(1)挨拶をす ること、(2)遅刻をしないこと、という2つを最低限守らなければならないルールとするよう指導した。 これら2つのルールは大学教育においては比較的守られていないものであるが、一般社会では基本中の 基本のルールである。また、この2つは学生自身が意識すれば比較的容易に実行できるものであり、実 際、学生たちも最初は戸惑っていたものの、すぐに挨拶の徹底と時間厳守を実行できるようになった。 その段階で支援員が「この講義を受講している者はしっかりと挨拶ができていて、時間も守られている のが素晴らしい」と評価することで、学生たちのやる気を引き出していくことができたと思われる。(中 京大学) 【PDCAサイクル実施~学生の意欲向上】 ・ いわゆる「PDCAサイクル」を複数回実行させることとした。学生たちはプログラムの途中より、ほ ぼ毎回企画の立案・報告→改善→改善案の報告という流れを繰り返し、自らのたてた企画の問題点を見 つけ、それを改善するという作業を繰り返していった。これにより、学生たち自身が講義中の報告の前 に「もっと問題点はないか」と課題発見しようとする姿勢をもつようになり、また、支援員がその一つ ひとつを丹念に評価することで、学生の更なる意欲向上に結びつけるよう企図した。(中京大学) 【「ベンチマーク(高レベル)グループ」の位置づけによる相乗効果】 ・ 全 10 グループの中で1つのグループを「ベンチマークグループ」と位置づけ、このグループに比較的高 いハードルを課すことにより、求められるレベルが高いのだということを意識させることにした。この ベンチマークグループには、プログラム最初のプレゼンテーションの際に、事前に高めのハードルを設 定したうえでプレゼンを行わせ、他の受講生にこの講義のレベル設定を上方修正させることに成功した と思われる。(中京大学) 320 【担当教員、事務職員、協力企業での情報共有と頻繁な学生対応】 ・ 担当教員、事務職員、協力企業全ての者がメールを通して学生からの質問や意見に完全に対応する体制 をとった。特に、学生たちが課題内容に応じて質問先を柔軟に変更できるかたちになっていたことは、 学生たちにとって講義の質の高さを感じさせる結果につながったと思われる。もちろん、このような体 制をとるために、担当教員・事務職員・協力企業の間で密なコミュニケーションを十分にとったことは 言うまでもない。(中京大学) ・ 課題を完成することの意味を伝え、困難な場合は相談に来るように、常に励まし見守る態度でいた。(東 海大学) ・ 学生に頻繁に接触し、課題完遂の後押しをした。(山口大学) 【リーダー(役職)経験、チーム帰属意識の明確化】 ・ 毎週の授業ごとに、司会や書記を交代させ、リーダーの大変さを多くの学生に経験させるようにした。 (武蔵大学) ・ 授業ごとに SNS 上で日記を書かせる。自分を振り返る機会をより多く設け、そのことがチームで働く力 につながるようにした。(武蔵大学) ・ 学生が何かを出力する毎にフォーマットの異なるフィードバックが学生に与えられるようにした。チー ム形成後すぐに役職付与を行い、チームへの帰属意識を高めチーム内で取るべき行動を明確化させた。 (山口大学) 【企業との交流機会】 (山 ・ 企業の社員と学生が交流する場、またプログラム中に学生が企業の事業場を訪問する機会を設けた。 口大) ・ 社会人に話を聞くことを課題として、環境・状況が大きく異なる人との接点を持たせたことで、社会人 や社会への関心を喚起し、自分を客観視することにつながった。(東海大) ・ 企業との共同研究体制を結び、学生、教育、企業者、ならびに大学院生が同じ目的を形成し、成果をあ げようとする環境を構築した。その中で、学生の役割をコミットし、自身で考え行動する学習プログラ ムを実施した。活動途中では 4 者が共有するプラットホームとして IT を活用したポートフォリオを構築 して、日々の意思伝達を実施した。また、年間活動の中で、事前、事中、事後において、4 者の打合せ を実施し、学生の KIT 社会基礎力の状態を話し合い評価した。学生は自身を低めに評価する傾向がある。 大学院生は 4 年生よりは目的に対する責任を感じ、自身と比較して 4 年生を評価する傾向がある。企業 人は企業と大学は異なると考え、個々の学生のよい点を評価しようとする傾向が強い。このような視点 は、4 者の打合せから、教員が俯瞰を意識し、強く感じた傾向である。社会人基礎力は、目的に向かっ た継続的な実践とその省察が重要であると考えられる。しかし、その省察の規範が、社会人になっても 暗黙知として存在し、形式化されていることは希である。これを改善するためには、技術者のもつべき 自律的な規範のあり方を形式化する必要がある。 (金沢工業大学) 学生が能動的に学ぶ活動が「大いに重視」または「重視」されている。特に「活動に深くコミットし、 試行錯誤する(考え抜く力)」 「最後まで何かを成し遂げる(実行力)」 「自分達で選択・決定させる(主 体性)」「難しいと思うことに挑戦させる(課題発見力・創造力)」「人前で意見を述べたりプレゼンし たりする(発信力)」 「グループやチームである目標に向けて取り組む」 「活動を通して実社会と関わる」 等といった活動を積極的に取り入れることで、社会人基礎力を発揮する機会を十分に準備しているこ とがうかがわれる。 一方、教員によって差が見られたものは、 「学生同士の親睦」 「背景の異なる他者とのチーム編成」 「教 員自身の思いや経験の発信」」 「リーダーの経験」であった。 「リーダーの経験」はそれほど重視されて いなかったが、設問 2-3 の結果と比較すると、活動全体を通して、個々の学生のリーダーシップは醸 成されていたことがわかる。 自由記述の具体的な工夫の例からは、各プログラムの内容や学生の資質等に合わせてきめ細かい工夫 321 がなされていることが見て取れる。特に、専門分野や学年等、背景の異なるメンバー同士でチームを 組ませ、あえて緊張や衝突の起こりうる環境を設定することは、社会人基礎力育成の重要な要素と言 えよう。 ・設問4.このプログラムは、下記のそれぞれにどの程度あてはまりますか。 7 大いにあてはまる 6 あてはまる 5 どちらかと言えばあてはまる 4 どちらとも言えない 3 どちらかと言えばあてはまらない 2 あまりあてはまらない 1 あてはまらない 【凡例】 0~3 人 、4~7 人ああ 、8 人以上ああ ■図表 プログラム内容にあてはまる取組みや型式 1 実務知識・技術を教える 2 知識・技術を活用できるようにする/スキルをトレーニングする 3 実験 4 フィールドに出て、調査や実習を行う 5 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等) 6 実社会や現実の課題をテーマにし、考える 7 理論や概念を教える 8 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする 9 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったりする 10 学生の指導助手がサポートする 11 教員が直接指導する 12 先輩が直接指導する 13 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられている 14 教員の質問に対して学生の発言する機会が組み入れられている 15 グループ単位の活動が組み入れられている 16 何らかのモノを作る 17 プレゼンテーションを求める 18 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明に宛てる講義 19 予習が必要である 20 論文やレポート執筆を求める 21 授業後の反省など授業を振り返らせる活動がある 7 6 5 4 3 2 3 3 5 1 7 1 4 7 3 4 2 4 3 7 2 5 6 5 2 4 2 2 1 7 4 11 7 11 5 11 22 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける 23 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、学生がグループ単位の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 24 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 6 8 8 7 11 1 4 3 4 4 5 8 3 5 2 1 3 6 2 6 1 1 1 2 3 1 1 1 2 1 1 3 3 3 1 1 2 1 1 3 1 1 4 2 1 1 1 3 1 5 3 3 3 6 1 8 1 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1 3 1 1 2 1 1 4 1 2 3 1 1 2 3 9 2 3 2 6 1 4 導入されている頻度の高い活動は、 「学生同士の対話やディスカッション」 「グループ単位の活動」 「教 員の質問に対して学生が発言する機会」「プレゼンテーション」「授業を振り返る活動」「論文やレポ ート執筆」 「実社会や現実のテーマ課題への取り組み」等 いずれも能動的、かつ他人と協同して進め るスタイルとなっている。反対に「授業全体を教員からの説明」に充てることは、いずれのプログラ ムにとっても馴染まないことがわかる。 なお、プログラム実施の体制の違いによる「TAや複数教員による指導」 「インターンシップ」 、研究 テーマや分野の特性に左右される「理論・概念を教える」 「知識・技術を活用させる」 「予習を課する」 「中小企業、ベンチャー企業の魅力を伝える」等は、プログラムによって差が見られた。 322 ・設問 5-1.社会人基礎力の「振り返り・評価」は、どのような形で行いましたか。 【社会人基礎力レベル評価基準表(リファレンスブック)の活用】 ・ 参加学生には、レファレンスブックにある社会人基礎力レベル評価基準表を用いて自己評価させた。 指導教員は、基準を参考にしながら企業側のヒアリングを含めて総合的に評価した。(流通科学大学) ・ 社会人基礎力レベル評価基準表を用いるとともに、活動ごとに自己のふりかえりを自由記載させた。 自作の学生能力指標を用いて、活動に参加いただいた方に学生の力を評価いただいた。(石川県立看護 大学) ・ 自己評価:事前および事後の2回、社会人基礎力の12要素全てを示した全モデル科目共通の基準表に より実施。(東海大学) ・ 学生は計 3 回の定量的評価と計 1 回の定性的評価。授業ごとに社会人基礎力を通した振り返り。学生が 最後の授業において、チームメンバーに対して、授業期間を通して最も伸びた社会人基礎力に対するコ メント。教員は授業を通して、学生の社会人基礎力の変化に着目し、評価は計 3 回の発表等の成果を通 してコメントして行う。(武蔵大学) 【学生同士のピア評価】 ・ 一人一冊のプログレスシートについて、科目においては事前と事後、プロジェクトにおいては事前・中 間・事後の自己評価の記入を行う。また、プロジェクトにおいては、他者評価として中間と事後にコー ディネーターと学生が面談を行い、その際に学生同士のピア評価も同時に行う。(広島経済大学) 【定型フォーマット・ポートフォリオの活用】 ・ ポートフォリオを構築し、学生、教員、企業人、大学院生の日々のコミュニケーションを行うとともに、 成果物、資料、評価結果などのエビデンスを共有した。評価は事前に設定した KIT 社会人基礎力基準に よって、4 者が評価し、互いに確認している。(金沢工業大学) ・ 評価は「事前」「事中」「事後」として決められたフォーマットで「学生自身の評価」「教員の評価」 および「社会人の評価」としておこなった。評価シートについては「社会人基礎力育成の手引き」(経 済産業省)に掲載されている。 (金沢工業大学) ・ 事前チェック:最初の授業中に、社会人基礎力のチェック表(自分で 5 段階評価できるように作成した もの)を配布し、学生が各自チェック、回収→データを入力し、集計を出した。 ・ 事後チェック:最後の授業の前に、大学のHPを通じて、web上で社会人基礎力チェック表(授業最 初に使用したものと同じ内容)を記入してもらい、集計を出す→最後の授業で、一人ひとりの事前と事 後のデータを円グラフにしたものを配布。(東海大学) 【(企業等)外部評価の導入】 ・ 6 月(事前)、12 月(事中)、3 月(事後)の 3 段階で、5 つの社会人基礎力の要素に対して、学生による自己 評価、教員による他者評価および企業人による他者評価を、レベル評価基準に示される 3 水準で評価し た。評価順は、初めに教員、次に企業人、最後に教員評価と企業人評価を見ながら学生評価を実施した。 (金沢工業大学) ・ 学生が活動し、何らかの出力(レポート、企画、プレゼン等)を行う毎に教員/企業担当者が評価を行 った。評価の形態は口頭伝達、文書によるものを使い分けた。(山口大学) 【学生の自発性を重視】 ・ チームごとにテーマが異なりますし、テーマにあわせて課題も変わってきます。学ぶ内容もまちまちで すし、課題の解決へ向けたヒントを出すことはあっても、内容を具体的に言うことは厳に慎むように教 323 員には伝えております。全部を自発性に任せて「俺はお前たちを信用している」という態度をとり続け ることが重要だと思います。(香川大学) 【実習等の内容も含めた総合評価】 ・ 学生の自己評価、実習指導者、実習巡回担当教員の 3 つを統合させて、専攻科の教員が総合的 に評価をする。(奈良佐保短期大学) 【個別面談の活用等】 ・ 個別面談 ・ 教員評価:3つの課題を与えて提出されたレポートに対する評価を中心に実施。(東海大学) 平成 19 年度版のリファレンスブックで振り返り・評価の基本的な方法を提示したことを経て、各 大学が自らのプログラムの内容や学生の状況に合わせた評価の方法を工夫し、実施してきているこ とが見て取れる。一方で、 「そもそも社会人基礎力の向上を評価や単位認定の基準にはしておらず、 完全なボランティア活動で行ってきた。よって社会人基礎力育成グランプリに出場して発表したこ と自体が、振り返り・評価である。評価は後から付いてくるものなので、自分たちの活動の社会的 意義と方向性をしっかりと見極めて、地道に淡々と努力することが大事と指導してきた」(阪南大 学)もあった。面接や成績評価等の形でなく、グランプリ出場等を通した学生達自身の振り返りの 機会を以って自己評価の場とするという方法で、評価そのものを活動の目的とすることなく、あく までも活動の充実を重視する、という立場もあり、興味深い。 設問6.今後このプログラムに改善を加えるとすればどのような点でしょうか。具体的にお書きください。 【講義担当者の負担軽減、指導メソッドの蓄積と再利用の促進】 ・ 講義担当者の負担があまりにも大きいため、それを改善する必要がある。(中京大) ・ この授業は相当完成度の高いものであり、武蔵大学の学生に上手くフィットしたものとなっている。唯 一の問題は、人的、質量的な負担がかなり大きいことである。可能であれば、現プログラムの発展した ものとして、他大学もしくは海外の学生との協働プロジェクトをゼミ形式で展開できればと思う。(武 蔵大学) ・ 各グループの内容がアーカイブ化され、身につけたい能力に対する指導の方法について、情報が得られ るような仕組みがあるとよいと思う。(大阪大学) ・ 日々のコミュニケーションをポートフォリオによって実施した。これによる 4 者間の実践対応が頻繁に なり、相当な手間が必要となる。学生が安易な思考状態で、何でも質問できる環境をつくるのは、よい 方法とは一概に言えないようである。やはり、学生自身が自身の状態に気づき、思い、自立・自律する ような能力を改善するしくみづくりが必要である。(金沢工業大学) 【全学に普及、参加学生を増やすための意識付け】 ・ これまで以上に多くの学生に参加してもらうための意識づけが必要である。また、評価システムに関し ては興動館教育プログラムのみならず、全学的に一人一冊のプログレスシートを記入するシステムを導 入する必要がある。(広島経済大学) 【担当(指導)者の理解促進と能力育成】 ・ 学生の主体性を引き出し発揮できるよう、教員がファシリテーション能力を磨くこと。(石川県立看護 大学) 324 ・ 介護実習のプログラムそのものが社会人基礎力の育成につながっていることを介護現場の指導者にもさ らに理解を求め、意識的な連携を深めていく必要があると考えている。例えば、実習においては、小手 先の技術やノウハウに関する指導だけではなく、学生が自ら課題に気づき、解決方法を考え抜き、実践 して、振り返るプロセスによって人間力を高めるような指導のあり方に関する研修会を積極的持つなど。 (奈良佐保短期大学) 【カリキュラム(卒業単位上として)の位置づけの明確化】 ・ 下級生の授業単位にもなるようカリキュラムにしっかり位置づけること。(石川県立看護大学) 【地域・協力団体との連携強化】 ・ 活動に関係する地域団体の協力を促すよう、大学と地域団体との連携を密にすること。(石川県立看護 大学) 【学生への客観的なフィードバック面談実施とフォロー】 ・ 事後チェック後の個別面談ができるとよい。学生のころに成長が期待される能力は総合的で抽象的で表 し難いものであるが、「社会人基礎力」としてまとめられたことは、かなり分かりやすくてよいと考え ます。ただし、人によって善し悪しの基準が異なるので、その成長具合を測るのは、難しいところがあ ります。今回は学生に自分でチェックしてもらいましたが、自分の中での変化を自分で認めることには いくらか効果があったと思います。さらに効果を上げるには、事前と事後のそれぞれチェックのあとに、 1 人 1 人と授業担当者(あるいはキャリアカウンセラー)が面談をして、質問をしながら学生に口頭で 語ってもらい、カウンセラーが客観視してフィードバックしたり、認め励ます言葉をかけてあげたりす れば、社会人基礎力に関して、この授業後も関心を持って自ら成長させることにつながるのではないか と考えます。ただし、1 クラスの人数が多いと、現実的には難しい面があります。(東海大学) 【社会人基礎力育成プログラムの方向性 ~育成自体は「目的」か「手段」か】 ・ 社会人基礎力という概念はとても有意義だと考える。しかし、その育成のみを目的として、講義やプロ グラムを考える方向性は違和感がある。武術と武道の違いのような違和感。私個人は術を説かずに道を 説きたい。道を説き実践するなかで、自然と術は身につくと考える。教育で一番大事なのは、まず、社 会のなかでどのように生きるのかを教えることである。どのように生きるのかという道が定まって初め て、社会人基礎力という術が見えてくる。その術は道に応じて一律ではない。学生には、実践のなかか ら色々な道があって、それはそれぞれ意味や意義があり、それに応じた術を身につける必要があること を理解して欲しい。(阪南大学) 【新製品開発(成果)に要する時間の勘案】 ・ 福祉器具をテーマにしたことの利点は数多く挙げられるが、その商品化にあたっての安全性の確認検査 に約 2 年という時間を要した。結果的に、参加学生の卒業に間に合わず、成果物が世に出るまでに時間 がかかりすぎたことは残念である。また、特許申請を行ったが、こちらもその審査に時間がかかってし まい採否が明らかになっていない。特許申請の前提として、公知の事実とならないように、一般の観覧 者をプレゼンテーション大会に列席させることもできなかった。これらの点を考慮し、次年度には新型 弁当をテーマに同様のプログラムを行ったところ、数々の幸運も味方となり大きな成果を残すことがで きた。新製品開発というテーマに関しては、一種のパターンを描けたと考えている。(流通科学大学) 担当教員の負担軽減と、学内普及も含めた教員の指導力の向上は、平成 19 年度にモデル事業が始 まったときから指摘され続けており、社会人基礎力育成プログラムの最大の課題とも言える。担 当教員の異動によって、プログラムの存続そのものが難しくなることもある一方で、新しい教員 が参加すると合意形成が難しくなり、活動の質が変容する可能性も指摘されている。各大学の実 態に合わせたプログラムの断続的な改善が必要であると言えよう。 325 ■コラム 1 社会人基礎力育成グランプリの効果 ヒアリング・アンケートを通して、「社会人基礎力育成グランプリ」に関するコメントが、社会 人からも在学生からも数多くあがった。ここでは、グランプリが社会人基礎力の育成に寄与した効 果をまとめる。 【プレゼンテーションの経験】 ・生かされていると思ったのは、プロジェクトの中でプレゼンテーションをする機会が多かったこと。 特に読売ホールでの発表や、そのあとの教授会での発表など、大勢の前でプレゼンテーションする機 会があったことで、舞台度胸がすごくついたと思う。今の仕事では看護士さんやスタッフさん向けに、 製品の使い方の説明会をする機会が結構あって、10 人くらいに対する説明会だが、ここで物怖じせず スムーズに話せる力がついているのは、もともとそのような経験をしていたからだと思う。とくに読 売ホールのような大きなところで話す機会は、一生に 1 回あるかないかで、すごくいい機会だったと 思う。(愛知学泉大学・社会人) ・大勢の前で意見を言う(発表する)ということが仕事に役立っていると感じる。「社会人基礎力育成グ ランプリ」に出場して、大勢の前でプレゼンテーションをしたことで「大勢の前で意見を言う」とい う能力が身につき、さらに度胸もついた。また、この「社会人基礎力育成グランプリ」の出場経験は 就職活動の面接の際にもPRした。(武蔵大学・社会人) 【活動の振り返り】 ・グランプリに参加するにあたって自身の活動を振り返り、活動の結果として基礎力が育成されたと思 う。面接では、クラブ活動やアルバイトの経験については話すことがないので、すべてゼミ活動の内 容を話した。振り返りを行ったことにより、面接の時に、話したいことを要点よく、具体的なエピソ ードを話すことができた。(阪南大学・在学生) 【困難を乗り越える経験】 ・グランプリでは知らない人たちを前に、自分や仲間の成長をどう伝えるか、本当に考え抜く力が付い た。(流通科学大学・在学生) ・社会人基礎力育成グランプリに出場することになって、発表内容を作り上げるために、すごく長い時 間をみんなと一緒に過ごして介護について語り合い、先生とも話し合った。その中には、福祉や介護 の現場で働くにあたって、仲間や自分、先生が持っている熱い思いが詰まっている。準備は大変だっ たが、あの時、頑張れたから、今、いろいろなことを任されても、過去にできて、今できないことは ないと自分に言い聞かせることができる。(奈良佐保短期大学・社会人) 【卒業後の仕事を見つめる機会】 ・介護福祉士をやっているというと、 「大変やろう」 「よくやってんなあ」 「給料も安いし」とか言われる。 でも福祉の現場で働くことには、こんなに楽しいことがあるのだよとか、私たちが利用者の方に接す ることを通じて、こんなに人として成長させてもらっているんだとか、そこを分かってもらえるよう に発表しよう、という思いで決勝に臨んだ。なので、会場特別賞をいただいたことや、表彰式の後に 泣きながら「胸を張って生徒に福祉を勧められます」と言ってきてくれた方がいたことが、すごく嬉 しかった。私たちの思いが伝わったという手ごたえがあった。(奈良佐保短期大学・社会人) 326 【採用面接の話題】 ・エントリーシートに GP で奨励賞ということはどんどん書いたし、面接でもたいていは「この社会人基礎 力グランプリって?」と質問され、面接で企業の人と同じ土俵でできる話のネタに困るということがな かった。私が就職活動をした時期はまだ、企業の方が社会人基礎力やグランプリを知らない場合が多か ったが、説明すると、興味を持ってくれる面接官がほとんどだった。どなたも、社会人基礎力を意識し て 2 年次からゼミナール活動を積み重ねてきた私の姿を素直に受けとってくれた。総じて、社会人基礎 力の 12 の能力を介して語ることで、面接官とうまくコミュニケーションがとれ、私という人間をよく理 解してもらえたという印象。 (流通科学大学・社会人) 【異分野の人のプレゼンを聞く機会】 ・理系生は研究成果を発表するプレゼンが中心であり、グランプリでも理系学部の発表については、特別 な印象はなかったが、文系学部生が行った「聞き手に如何にわかりやすく説明するか」といったことに 重きが置かれたプレゼンは、自分にとってある意味ショックだった。(香川大学・社会人) ・個人的にはあの場で他大学の発表から理系の学生が学べることは少なくないと思う。僕が聞いていた限 りでは、理系のチームはなまじ研究や技術に関する発表機会が学会であるもので、その延長線上で参加 していたチームが多かったなという印象。でも、グランプリで文系のプレゼンテーションを聞いてすご く勉強になった。人に伝わるように発信するってこういうことなのかと、目からうろこだった。企業か ら仕事をとったり、企画に GO を出したりしてもらうのは、理系の人間でもそう変わらないはずだが、技 術の話ばかりして、それでどうやってお金を出してもらうんだ、買ってもらうんだというところまでな かなか話を持っていけない。でも、社会ではそれが要るんだ、それを当たり前にやっている人たちがい るんだと、会場で見ていて感じるところがあった。(香川大学・社会人) 代表的なものを上げたが、活動全体を通した成長の実感の内容と重なるものが多く、まさにグラン プリが社会人基礎力育成プログラムを凝縮した活動になっているとも言える。特に、コメントからも わかるように、理系の学生は学会等でプレゼンの機会は多いが、同じ分野の人の前で、より詳しく正 確に話すためのプレゼンを求められ、 「いかにわかりやすく話すか」 「自分の発表を魅力的に伝えられ るか」という観点は軽視されがちである。同年代の全く異分野の人のプレゼンを聞くことで、おのず と発信力の重要さを知ることになる貴重な機会であることと言えよう。その意味で、例えば大学内で、 学部・学科を横断する形でプレゼンテーションコンテストを行うような機会を作ることは、社会人基 礎力の育成にも、学生の視野を広げるためにも大きな効果があると考えられる。 平成 22 年度で 4 回目となる社会人基礎力育成グランプリは、予選出場校も約 100 大学にのぼり、 社会的な認知度も上がってきていると考えられる。その一方で、出場した学生からは「テスト問題と 同じで、グランプリに特化して対策と傾向をした大学(発表を聞いていると物事が綺麗に進みすぎて いる)が有利だと感じる」「どこを評価されているのか、曖昧だ」というコメントも聞かれる。回を 重ねるごとに、「勝ちパターン」が決まってくるのは好ましい状況ではなく、また社会人基礎力育成 に一定の色付けをしてしまうのは厳に避けなければならない。その意味で、今後グランプリの審査に あたっては、プレゼンのうまさや予定調和的に作りこまれたストーリーでなく、困難を乗り越えるこ とで学生が何をつかみ、学業にどのようにいかしたのか。社会に出るためにはさらに必要なものは何 かを認識しているか、等まで幅広く評価することがますます必要になると言えよう。 327 ■コラム 2 理系研究室活動における社会人基礎力育成の効果 平成 19 年度から、工学系研究室における産学連携の社会人基礎力育成プログラム「Internship On Campus」に取り組んできた大阪大学の教員ヒアリングから、研究・開発者や技術者を育成する 理系の研究室教育に、プログラムの意義と学生の成長を聞いた。理系の研究室は、もとより人間力育 成の場であるとされてきたが、社会人基礎力育成の視点を導入することが、どのような教育的効果を もたらしたかを、担当教員へのヒアリングからまとめる。 【プログラムの概要】 大阪大学工学研究科の研究室で、学生の研究発表のプレゼンテーションを協力企業の方が直接指導す る。プレゼン担当は修士 1 年または 2 年の学生。研究室の全員がオーディエンスとして参加する。 【社会人基礎力育成プログラムの特徴・意義】 ・研究室の内輪や、学会の発表はいわばディフェンス。自分がやったことが 100%であり、準備したこと を並べて話せばよい。それに対して、社会人基礎力育成プログラムで行うプレゼンはインタラクション。 守るだけでなく、インタラクションを通して 1 つのものを創造する経験であるところが大きく違う。 机上の思考でなく、相手の言うことに、切り返していく瞬発力が必要である。 ・他成長を感じる点としては、 自分の研究の社会史的な意義が位置づけられるようになった 専門家でない人にもわかるように話そうとするようになった 前に出てきていないことは話さない(=新出のことについてはきちんと説明を入れた上で話す)こ とができるようになった 「私は…」を主語にしたプレゼンができるようになった 「自分はこんなにいいこと(社会に役に立つ、等)を研究している」と言えるようになった Proactive(先を見越した行動を取る、initiative を取るような)な姿勢が身についてきた ・社会で通用するプレゼンは、自分の思うこと・持っているものを順に並べただけの、やらされ感が伝わ るようなものではなく、相手をひきつける仕掛けのあるものが必要である。自分で考えた仮説をきちん と持っていれば、相手の質問にリアクションできる。こうすることで、 「消費者」ではなく、「生産者」 となることができる。社会人になったら、役割を果たすだけの「使われる存在」ではなく、自分自身の 資源を使って創造していく存在になってほしいと思う。そのためには、自分がそこで何をしたいか(=主 体性)を持っていることが必要である。 ・社会人基礎力は、即戦力になる人材を育てるものだが、専門知識を縦軸と見て、社会人基礎力を横軸と 考える。大学での研究や専門に特化した勉強の場合、自分が身につけた専門知識はその分野以外では役 に立たないことがある。一方、異なる専門の間には多くの相似関係が存在する。したがって、一つの分 野の専門知識を抽象化・一般化することができれば、相似関係を持つ多くの分野に抽象化・一般化され た知識(メタ知識)を適用することが可能となる。このような思考ができると、一つの学習内容が多く の適用可能性を持つ。逆に、あらゆる学習機会から得られた知識を専門分野に適用することもできるよ うになる。この関係には相乗効果があり、あらゆる機会が成長する機会となる。 社会人になる時には専門が大きく変わることは多いが、このような能力(習慣)が身についていると、 まず、専門の変更をポジティブにとらえることができる。次に、新しい分野において自分が身につけた 専門で通用するロジックを踏襲することで学習速度を上げることができる。また、自分の専門知識に基 づく発想は人のまねではないオリジナルなものとなり、誰にも代わりのできない仕事をすることができ る可能性もある。 328 さらには、あらゆる経験から得られた知識・能力を有機的につなげることができ、社会人としての 魅力を加えることになると思う。これは縦軸(専門知識)、横軸(基礎力)で作られた面が形成される イメージである。 ・自分で(このプログラムのような)学習の機会を作って、力をつけていける学生はいる。そういった人の 方がおもしろい伸び方をするとも言える。しかし、今回のプログラムでは、能力はこのように分割でき、 指標化されているということに気づくことができる。もれなく示されているので、(強み・弱みの)気づ きにもつながる。 【学生の現状と、企業の人から指導を受けることの意味】 ・学生の横同士のネットワークはすごい。また、受身的な立場で言われたことをこなすのは得意で、情報 収集力もある。同年代の間なら、専門分野についての議論もしているが、仲間同士のフラットな関係の 中では詰めが甘くなりがちである。 ・本来研究室の活動の中で先生方や先輩と接する中で「大人と話す」機会は十分にあり、先生方も、学生 との会話の中で研究の社会的な意義等を語っておられるので、生活の中で自分のやっていることをアピ ールすること(機会、方法含めて)を学んでいけるはず。しかし、自分でそれができない学生が多い。違 うコミュニティーや大人(教員・企業の方等)の人と話すのは、仲間同士とのコミュニケーションとは別 のことと考えているようだ。社会人基礎力育成プログラムは、大人の人ときちんと話す機会を提供する 場でもある。 ・忙しい先生は、学生がやっていることに対して「そうではない、こうだ」と教えてしまいがちになる。 本当は、方向性を示して考えさせることが必要なのだが。一方で、 研究室の学生は、いろいろな意味 で厳しさから守られている存在。その中で、プログラムを通して企業の人と接することは、自分の足り ないところに気づく機会になる。 【プレゼン以外で社会人基礎力育成プログラムに導入したい活動】 ・企画書を書く学習の経験があるといいと思う。小手先のテクニックではなく、研究で学んだことをわか りやすく形にして、それを他のテーマ(分野)にも敷衍できるようにするもの。何が求められていて、何 を提示するのが必要か、誰が読むのか、どのような分析をかけたらよいかを、研究の内容のディティー ルに左右されずに形にしていく力を身につけさせたい。本来は研究室で論文を書いていく中で自分で身 につけるべきものではあるが。ただ、研究室に閉じこもっている中では、なかなか難しい。 理系の研究室に限らず、大学教育の中で行われる研究発表の指導に通じる点が多いため、ほぼ全 文を紹介した。「研究室の内輪や、学会の発表はいわばディフェンス。自分がやったことが 100%で あり、準備したことを並べて話せばよい。それに対して、社会人基礎力育成プログラムで行うプレ ゼンはインタラクション。守るだけでなく、インタラクションを通して 1 つのものを創造する経験 であるところが大きく違う。相手の言うことに、切り返していく瞬発力が必要である」という指摘 は、大学と社会の現場でのプレゼンの性質の違いを端的に示すものであり、 「社会で通用する力」を 育成するためには、教員はこの点をまず認識することが必要である。そのインタラクションに必要 なのは、知識に加えて社会人基礎力である、と言うことができる。グランプリの学生の感想で、文 系の学生のプレゼンを見て「人に伝わるように発信するってこういうことなのかと、目からうろこ だった」というものがあったが、プレゼンの機会を設けさえすれば、発信力を育成できるというの ではなく、「何のために」「どのように」伝えるか、までを意識した指導が必要であろう。 329 【参考】インターネット調査「社会で役に立つ力と大学教育に関するアンケート」 社会人基礎力育成プログラムを受講した人と、そうでない人の意識や学習経験の違いを比較するた めに、インターネットによるアンケート調査を実施した。本来であれば、今回の卒業生調査の対象大 学の非受講生を対象とするべきではあるが、実際は大学を通して卒業生を紹介していただくことが非 常に困難であるため、より一般的な傾向を求めるために、下記の条件でサンプルを収集した。 【インターネット調査の概要】 <調査対象> ○性別:男女 ○年齢:22 歳~40 歳(※) ○学歴:大学卒、または大学院修了以上(短大は含めず・大学院中退を含む) ○職業: 会社員、経営者・役員、自由業、自営業、公務員、パート・アルバイト ○地域:全国 ○子どもの有無・未既婚:指定なし <調査期間> ○平成 23 年 12 月 24~26 日 <サンプル数> ○5150 人 ※対象年齢を 40 歳までとしたのは、1990 年代前半から大学設置基準の見直し(1991 年 7 月施行)等、大 学教育の改革が進み、教育の体制や内容が大きく変化したため、同一の視点で回答結果を解釈するこ とが困難であるためである。 ①回答者の属性 回答者のプロフィールに関する項目の集計結果を以下に示す。 性別 単一回答 N % 男性 女性 全体 3393 1757 5150 65.9 34.1 100.0 単一回答 N % 20才~24才 25才~29才 30才~34才 35才~39才 40才 全体 221 1096 1600 1869 364 5150 4.3 21.3 31.1 36.3 7.1 100.0 単一回答 N % 北海道 東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方 全体 167 220 2394 811 870 228 112 348 5150 3.2 4.3 46.5 15.7 16.9 4.4 2.2 6.8 100.0 年齢 ※左表の年齢段階は、インターネット調査の標 準設定表示であり、実際の対象者は 22 才以上で、 大学・大学院等在学者は含まれていない。また、 分析においては個人のデータまで戻り、22~26 才のサンプルのみ抽出した。 居住地域 330 居住地区は、首都圏、京阪神、東海の大都市圏 を含む関東・中部・近畿の 3 地域を合わせて約 80%を占め、都市部の人の回答が大部分を占め る。 未既婚 単一回答 N % 未婚 既婚 全体 2731 2419 5150 53.0 47.0 100.0 単一回答 N % 公務員 経営者・役員 会社員(事務系) 会社員(技術系) 会社員(その他) 自営業 自由業 専業主婦(主夫) パート・アルバイト 全体 426 79 1647 1344 932 230 63 1 428 5150 8.3 1.5 32.0 26.1 18.1 4.5 1.2 0.0 8.3 100.0 単一回答 N % 経営者、役員 公務員 会社員(正社員) 会社員(契約社員) 会社員(派遣) 自営業 アルバイト、パート その他 全体 81 428 3542 218 156 238 436 51 5150 1.6 8.3 68.8 4.2 3.0 4.6 8.5 1.0 100.0 単一回答 N % 50人未満 50~300人未満 300~1,000人未満 1,000~5,000人未満 5,000人以上 わからない 全体 1399 1151 814 732 848 206 5150 27.2 22.3 15.8 14.2 16.5 4.0 100.0 単一回答 N % 大学卒業 修士課程修了 修士課程中退 博士課程修了 博士課程中退 博士課程満期退学 全体 4358 629 41 85 21 16 5150 84.6 12.2 0.8 1.7 0.4 0.3 100.0 職業 雇用形態 従業員規模(全社) 最終学歴 331 職業は会社員(事務系・技術系・その他)が 76.2%と、 最も多い。また、雇用形態では正社員が約 70%を 占めている。 職種 単一回答 経営者・自営/取締役 営業/営業企画 財務/会計/経理 総務 人事/労務 法務/知的財産 販売 接客/サービス 購買/物流 仕入/商品管理 一般事務/営業事務 企画 広報/宣伝/IR 調査/マーケティング 経営企画/事業企画 経営管理/コンサルタント(会計/戦略な ど) コンサルタント(人事) コンサルタント(IT関係) 情報システム 研究/開発 設計 生産 生産技術/品質管理/検査 クリエイター/デザイナー 記者/編集者 MR/医療用具営業(医薬) 医師 獣医師 薬剤師 看護師 その他医療関係従事者 教員 建設/工事 その他【 】 全体 N % 205 628 285 250 91 55 135 356 54 33 637 73 29 29 62 4.0 12.2 5.5 4.9 1.8 1.1 2.6 6.9 1.0 0.6 12.4 1.4 0.6 0.6 1.2 24 0.5 7 33 327 417 177 108 194 91 23 4 38 9 57 30 104 200 85 300 5150 0.1 0.6 6.3 8.1 3.4 2.1 3.8 1.8 0.4 0.1 0.7 0.2 1.1 0.6 2.0 3.9 1.7 5.8 100.0 332 業種 単一回答 N % 農業・林業・水産業 鉱業 建設 食品・飲料 繊維・衣料 化学・化学品・化粧品 薬剤・医薬品 鉄鋼・非鉄 金属製品 機械器具 電気機器 輸送用機器 精密機器 情報通信機器 その他製造【 】 化学医薬卸 衣服繊維卸 食料飲料卸 電気機器卸 輸送機器卸 その他卸【 】 百貨店 スーパー・コンビニエンスストア 衣服・履物小売 食品・飲料小売 各種車輌小売 家庭機具小売 家電・電気器具小売 医薬品・化粧品小売 その他小売【 】 銀行・信託 消費者金融 クレジット 証券・先物 保険 その他金融【 】 不動産 鉄道 道路輸送 水上輸送 航空輸送 倉庫 郵便・運輸サービス 飲食店 旅行 通信 電気・ガス・水道 賃貸・リース 宿泊所・ホテル 理容・美容 娯楽 放送 出版・印刷 広告・調査 情報サービス ソフトウェア 病院・医療 老人福祉・介護 教育 その他サービス【 】 官庁・自治体 公務員 その他団体【 】 全体 25 2 272 117 34 115 77 45 51 86 185 106 123 43 136 10 13 36 40 10 90 14 73 33 28 17 6 24 32 86 120 9 21 49 94 23 130 26 27 15 15 32 37 79 28 94 40 14 28 8 68 21 107 10 268 300 262 77 333 386 212 163 125 5150 0.5 0.0 5.3 2.3 0.7 2.2 1.5 0.9 1.0 1.7 3.6 2.1 2.4 0.8 2.6 0.2 0.3 0.7 0.8 0.2 1.7 0.3 1.4 0.6 0.5 0.3 0.1 0.5 0.6 1.7 2.3 0.2 0.4 1.0 1.8 0.4 2.5 0.5 0.5 0.3 0.3 0.6 0.7 1.5 0.5 1.8 0.8 0.3 0.5 0.2 1.3 0.4 2.1 0.2 5.2 5.8 5.1 1.5 6.5 7.5 4.1 3.2 2.4 100.0 333 出身学科 単一回答 文・人文・社会科学 系 理学系 工学系 農学系 医学・医療系 家政・生活系 N 哲学・倫理学・宗教学系 史学・地理学系 日本文学系 外国文学系 文化学・教養学系 外国語学系 心理学・人間科学系 教育学・教員養成・こども学・保育系 社会学・行動科学・コミュニケーション・メ ディア・情報・観光系 社会福祉学系 法・政治学系 経済学系 経営・商学・経営情報学系 政策科学系 国際関係学・国際文化学系 その他【 】 数学系 物理学系 化学系 生物学系 情報学系 その他【 】 機械系 電気・電子系 情報工学系 材料系(金属、セラミックス等) 物質・応用化学系 生物工学系 経営工学系 応用物理学 建築系 土木工学系 その他【 】 バイオ系(応用生命、農芸化学等) バイオ系以外 その他【 】 環境系 医学・歯学系 薬学系 保健・看護学・医療技術系 生活科学系 食物・栄養学系 その他【 】 芸術・美術・デザイン 芸術・美術・デザイン系 系 体育・健康科学系 体育・健康科学系 その他 その他【 】 全体 % N 37 133 152 145 62 194 122 173 0.7 2.6 3.0 2.8 1.2 3.8 2.4 3.4 178 3.5 80 474 581 633 22 81 40 61 62 122 72 119 19 203 252 165 39 83 22 31 5 89 84 47 55 66 14 24 51 81 60 16 29 4 1.6 9.2 11.3 12.3 0.4 1.6 0.8 1.2 1.2 2.4 1.4 2.3 0.4 3.9 4.9 3.2 0.8 1.6 0.4 0.6 0.1 1.7 1.6 0.9 1.1 1.3 0.3 0.5 1.0 1.6 1.2 0.3 0.6 0.1 106 36 26 5150 % 3107 60.3 455 8.8 1020 19.8 135 2.6 216 4.2 49 1.0 2.1 106 2.1 0.7 0.5 100.0 36 26 5150 0.7 0.5 100.0 出身学科は、約 60%が文・人文・社会系、工学系が約 20%でこれに続く。母集団の中ではやや文 系の割合が高いものの、全体としては、ほぼ実際の学生数の割合に近い構成となっている。 334 出身大学・大学院の所在地 (学舎が複数の場合は、卒業時の学舎) 単一回答 N % 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 海外【 】 全体 203 29 22 99 10 24 29 64 28 40 154 189 1460 328 48 25 55 18 26 24 47 51 330 20 34 295 489 218 41 16 4 17 66 107 39 21 25 25 17 194 13 26 39 24 22 18 26 51 5150 3.9 0.6 0.4 1.9 0.2 0.5 0.6 1.2 0.5 0.8 3.0 3.7 28.3 6.4 0.9 0.5 1.1 0.3 0.5 0.5 0.9 1.0 6.4 0.4 0.7 5.7 9.5 4.2 0.8 0.3 0.1 0.3 1.3 2.1 0.8 0.4 0.5 0.5 0.3 3.8 0.3 0.5 0.8 0.5 0.4 0.3 0.5 1.0 100.0 335 【図表】出身学科と勤め先(業種)の関係①(%表示) あなたの出身学科をお選びください。 社会学・ 行動科 教育学・ 学・コ 心理学・ 教員養 ミュニ 文化学・ 哲学・倫 社会福 法・政治 経済学 外国語 史学・地 日本文 外国文 人間科 成・こど ケーショ 教養学 理学・宗 祉学系 学系 系 学系 理学系 学系 学系 学系 も学・保 ン・メ 系 教学系 育系 ディア・ 情報・観 光系 [比率の差] 全体 +10 ポイント 全体 +5 ポイント 全体 -5 ポイント 全体 -10 ポイント 、 あ な た の お 勤 め 先 ※の 完 全業 に種 一を 致お し選 なび いく 場だ 合さ もい 。 、 。 最 も 近 い と 思 わ れ る も の を お 選 び く だ さ い N 農業・林業・水産業 鉱業 建設 食品・飲料 繊維・衣料 化学・化学品・化粧品 薬剤・医薬品 鉄鋼・非鉄 金属製品 機械器具 電気機器 輸送用機器 精密機器 情報通信機器 その他製造 化学医薬卸 衣服繊維卸 食料飲料卸 電気機器卸 輸送機器卸 その他卸 百貨店 スーパー・コンビニエンスストア 衣服・履物小売 食品・飲料小売 各種車輌小売 家庭機具小売 家電・電気器具小売 医薬品・化粧品小売 その他小売 銀行・信託 消費者金融 クレジット 証券・先物 保険 その他金融 不動産 鉄道 道路輸送 水上輸送 航空輸送 倉庫 郵便・運輸サービス 飲食店 旅行 通信 電気・ガス・水道 賃貸・リース 宿泊所・ホテル 理容・美容 娯楽 放送 出版・印刷 広告・調査 情報サービス ソフトウェア 病院・医療 老人福祉・介護 教育 その他サービス 官庁・自治体 公務員 その他団体 N 5150 25 2 272 117 34 115 77 45 51 86 185 106 123 43 136 10 13 36 40 10 90 14 73 33 28 17 6 24 32 86 120 9 21 49 94 23 130 26 27 15 15 32 37 79 28 94 40 14 28 8 68 21 107 10 268 300 262 77 333 386 212 163 125 0.7 0.0 0.0 0.7 2.6 0.0 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 3.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.3 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 4.3 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7 0.0 0.0 1.1 2.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.7 0.3 0.4 1.3 0.9 0.8 0.9 1.2 1.6 2.6 4.0 0.0 0.7 2.6 2.9 1.7 1.3 0.0 0.0 1.2 1.1 0.0 1.6 0.0 0.7 0.0 7.7 5.6 0.0 0.0 3.3 0.0 1.4 3.0 0.0 5.9 0.0 0.0 0.0 1.2 2.5 0.0 0.0 8.2 4.3 4.3 5.4 0.0 0.0 6.7 0.0 6.3 2.7 3.8 7.1 4.3 2.5 7.1 3.6 0.0 2.9 4.8 6.5 0.0 1.5 1.3 1.1 2.6 6.0 2.6 4.7 3.1 3.2 3.0 4.0 0.0 4.0 1.7 5.9 0.9 0.0 0.0 2.0 0.0 0.5 1.9 0.0 0.0 1.5 0.0 15.4 5.6 2.5 0.0 4.4 21.4 4.1 6.1 0.0 5.9 0.0 4.2 3.1 3.5 5.8 11.1 4.8 0.0 5.3 0.0 2.3 0.0 3.7 0.0 0.0 3.1 0.0 1.3 3.6 1.1 7.5 0.0 0.0 12.5 1.5 4.8 9.3 0.0 2.2 2.3 3.8 2.6 4.2 4.1 2.8 2.5 2.4 2.8 0.0 0.0 1.8 2.6 0.0 0.0 2.6 4.4 0.0 1.2 1.1 0.0 2.4 0.0 1.5 0.0 15.4 0.0 12.5 0.0 2.2 7.1 4.1 3.0 3.6 5.9 0.0 0.0 0.0 1.2 7.5 0.0 0.0 4.1 4.3 4.3 3.1 3.8 3.7 6.7 6.7 3.1 2.7 6.3 14.3 3.2 0.0 14.3 3.6 0.0 5.9 4.8 6.5 0.0 3.4 2.7 0.4 0.0 3.6 2.1 3.8 1.2 5.6 1.2 0.0 0.0 0.4 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 0.0 0.0 1.6 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 1.1 7.1 2.7 3.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 1.7 11.1 0.0 0.0 6.4 0.0 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 5.4 3.8 3.6 1.1 0.0 7.1 3.6 0.0 0.0 0.0 1.9 0.0 1.5 1.3 0.4 5.2 1.2 1.6 0.0 0.6 1.6 3.8 4.0 0.0 3.7 4.3 8.8 0.9 1.3 2.2 3.9 1.2 0.5 6.6 1.6 2.3 4.4 0.0 7.7 2.8 5.0 10.0 6.7 7.1 6.8 3.0 0.0 0.0 0.0 8.3 0.0 2.3 5.0 0.0 0.0 4.1 6.4 4.3 2.3 3.8 0.0 6.7 26.7 3.1 10.8 3.8 17.9 4.3 5.0 0.0 3.6 0.0 2.9 4.8 5.6 0.0 3.4 1.0 1.9 2.6 6.0 5.4 3.8 1.8 4.8 2.4 0.0 0.0 2.2 1.7 5.9 0.9 1.3 0.0 2.0 0.0 0.5 0.9 0.8 2.3 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 2.7 3.0 0.0 5.9 0.0 0.0 0.0 3.5 0.8 0.0 4.8 0.0 2.1 4.3 3.1 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 5.1 0.0 2.1 0.0 0.0 0.0 25.0 0.0 0.0 1.9 0.0 3.0 1.0 6.9 6.5 4.5 3.1 1.4 3.1 4.8 3.4 4.0 0.0 1.5 0.0 0.0 1.7 2.6 2.2 0.0 2.3 0.0 1.9 1.6 0.0 0.0 0.0 7.7 0.0 2.5 0.0 2.2 0.0 2.7 3.0 7.1 0.0 16.7 0.0 6.3 2.3 1.7 11.1 0.0 0.0 1.1 0.0 4.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7 0.0 3.6 1.1 0.0 0.0 3.6 0.0 2.9 0.0 2.8 0.0 1.9 2.0 1.9 2.6 17.7 3.9 3.8 14.1 0.8 3.5 4.0 0.0 1.8 3.4 0.0 0.0 2.6 2.2 0.0 0.0 1.1 2.8 1.6 4.7 2.9 0.0 0.0 5.6 2.5 0.0 6.7 0.0 4.1 6.1 0.0 0.0 0.0 4.2 6.3 3.5 2.5 0.0 14.3 0.0 6.4 8.7 6.2 3.8 0.0 0.0 0.0 3.1 10.8 5.1 3.6 3.2 0.0 7.1 3.6 0.0 5.9 19.0 6.5 20.0 4.1 3.7 0.8 5.2 2.1 6.2 4.2 1.2 5.6 336 1.6 4.0 0.0 0.4 1.7 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 0.0 2.7 0.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.8 0.0 4.8 2.0 1.1 0.0 0.0 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.5 0.0 0.0 0.9 0.0 0.4 0.3 5.0 29.9 1.2 2.1 1.9 0.6 2.4 9.2 16.0 50.0 4.4 5.1 8.8 5.2 6.5 8.9 7.8 5.8 5.4 3.8 8.9 9.3 5.9 40.0 0.0 11.1 5.0 40.0 4.4 7.1 13.7 15.2 10.7 11.8 16.7 0.0 9.4 14.0 12.5 11.1 14.3 14.3 10.6 21.7 12.3 3.8 29.6 6.7 13.3 9.4 27.0 7.6 3.6 11.7 12.5 14.3 10.7 12.5 8.8 4.8 10.3 10.0 8.2 5.0 3.8 10.4 8.1 11.7 15.1 17.2 12.0 11.3 8.0 0.0 9.9 7.7 14.7 8.7 1.3 11.1 13.7 4.7 3.2 4.7 5.7 11.6 16.2 10.0 15.4 16.7 20.0 0.0 21.1 14.3 16.4 24.2 21.4 23.5 33.3 41.7 6.3 18.6 23.3 11.1 14.3 18.4 12.8 21.7 21.5 23.1 22.2 6.7 6.7 21.9 10.8 19.0 28.6 6.4 10.0 7.1 17.9 0.0 20.6 4.8 10.3 0.0 12.7 9.3 4.2 7.8 5.7 9.8 11.8 11.7 9.6 経営・商 学・経営 政策科 情報学 学系 系 12.3 4.0 0.0 11.8 9.4 23.5 13.0 5.2 15.6 17.6 15.1 10.3 6.6 8.1 4.7 16.9 0.0 23.1 22.2 17.5 30.0 18.9 7.1 13.7 12.1 14.3 29.4 16.7 16.7 6.3 20.9 15.8 11.1 19.0 18.4 20.2 4.3 19.2 15.4 14.8 13.3 13.3 28.1 5.4 17.7 7.1 22.3 10.0 21.4 7.1 25.0 13.2 19.0 10.3 20.0 15.3 9.7 4.2 10.4 5.1 14.0 8.5 8.6 14.4 0.4 0.0 0.0 0.4 0.9 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 0.0 0.0 0.0 0.0 4.3 0.0 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.3 0.0 2.6 0.6 1.6 0.0 0.0 1.6 国際関 生物学 情報学 物理学 係学・国 その他 化学系 その他 数学系 系 系 系 際文化 学系 1.6 0.0 0.0 2.2 2.6 0.0 0.9 0.0 0.0 2.0 0.0 1.1 0.0 0.8 2.3 0.7 0.0 0.0 11.1 0.0 10.0 2.2 0.0 2.7 0.0 3.6 5.9 0.0 0.0 3.1 2.3 0.8 0.0 0.0 6.1 3.2 4.3 0.8 3.8 0.0 0.0 6.7 0.0 0.0 1.3 0.0 2.1 0.0 0.0 0.0 0.0 2.9 0.0 1.9 0.0 1.9 1.0 1.5 1.3 1.8 1.3 2.4 0.6 2.4 0.8 0.0 0.0 0.0 1.7 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.5 0.0 1.6 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.5 0.8 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.8 0.0 0.0 6.7 6.7 0.0 0.0 1.3 0.0 1.1 0.0 0.0 3.6 0.0 0.0 4.8 1.9 10.0 0.4 1.3 0.8 2.6 0.3 0.8 1.4 0.0 0.8 1.2 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 1.2 2.2 1.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 0.0 2.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 6.7 0.0 0.0 2.7 0.0 0.0 2.1 0.0 0.0 0.0 0.0 2.9 0.0 0.9 0.0 2.6 2.7 0.8 0.0 3.9 0.5 0.5 3.7 0.8 1.2 0.0 0.0 0.7 0.0 2.9 1.7 0.0 0.0 0.0 1.2 3.8 0.0 0.8 4.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 0.0 1.4 0.0 3.6 0.0 16.7 0.0 0.0 0.0 0.8 11.1 0.0 2.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.2 7.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.9 2.3 0.0 0.0 2.7 0.5 1.4 1.8 1.6 2.4 0.0 0.0 0.7 7.7 0.0 22.6 7.8 6.7 5.9 2.3 2.2 2.8 6.5 0.0 4.4 10.0 0.0 2.8 2.5 0.0 2.2 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 4.2 0.0 0.0 1.7 0.0 0.0 2.0 0.0 4.3 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 0.0 1.9 10.0 1.9 2.3 1.1 0.0 1.8 0.8 2.4 1.2 1.6 1.4 12.0 0.0 0.4 5.1 0.0 5.2 9.1 0.0 0.0 0.0 0.0 1.9 1.6 0.0 2.2 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 1.1 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 4.2 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 3.7 0.0 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.1 0.0 2.9 0.0 0.9 0.0 0.7 0.3 1.5 1.3 1.2 1.0 0.9 1.8 4.8 2.3 4.0 0.0 0.7 0.0 2.9 0.9 0.0 2.2 2.0 2.3 3.2 1.9 3.3 4.7 2.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 0.0 0.0 6.1 0.0 0.0 1.5 0.0 3.7 0.0 0.0 0.0 2.7 3.8 3.6 3.2 0.0 0.0 0.0 0.0 4.4 0.0 0.9 10.0 5.6 11.3 0.4 0.0 1.8 1.6 3.3 0.6 0.0 0.4 0.0 50.0 1.1 0.0 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 1.4 0.0 3.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 11.1 0.0 0.0 1.1 4.3 0.0 0.0 0.0 6.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.3 0.4 0.0 0.6 0.0 0.0 0.0 0.0 【図表】出身学科と勤め先(業種)の関係②(%表示) あなたの出身学科をお選びください。 バイオ 材料系 系(応用 物質・応 医学・歯 バイオ 土木工 生物工 経営工 応用物 電気・電 情報工 (金属、 薬学系 その他 環境系 その他 生命、 建築系 用化学 機械系 学系 系以外 学系 学系 学系 理学 子系 学系 セラミッ 農芸化 系 クス等) 学等) [比率の差] 全体 +10 ポイント 全体 +5 ポイント 全体 -5 ポイント N 保健・看 芸術・美 体育・健 護学・医 生活科 食物・栄 その他 術・デザ 康科学 その他 療技術 学系 養学系 イン系 系 系 全体 -10 ポイント 、 あ な た の お 勤 め 先 ※の 完 全業 に種 一を 致お し選 なび いく 場だ 合さ もい 。 、 。 最 も 近 い と 思 わ れ る も の を お 選 び く だ さ い N 農業・林業・水産業 鉱業 建設 食品・飲料 繊維・衣料 化学・化学品・化粧品 薬剤・医薬品 鉄鋼・非鉄 金属製品 機械器具 電気機器 輸送用機器 精密機器 情報通信機器 その他製造 化学医薬卸 衣服繊維卸 食料飲料卸 電気機器卸 輸送機器卸 その他卸 百貨店 スーパー・コンビニエンスストア 衣服・履物小売 食品・飲料小売 各種車輌小売 家庭機具小売 家電・電気器具小売 医薬品・化粧品小売 その他小売 銀行・信託 消費者金融 クレジット 証券・先物 保険 その他金融 不動産 鉄道 道路輸送 水上輸送 航空輸送 倉庫 郵便・運輸サービス 飲食店 旅行 通信 電気・ガス・水道 賃貸・リース 宿泊所・ホテル 理容・美容 娯楽 放送 出版・印刷 広告・調査 情報サービス ソフトウェア 病院・医療 老人福祉・介護 教育 その他サービス 官庁・自治体 公務員 その他団体 5150 25 2 272 117 34 115 77 45 51 86 185 106 123 43 136 10 13 36 40 10 90 14 73 33 28 17 6 24 32 86 120 9 21 49 94 23 130 26 27 15 15 32 37 79 28 94 40 14 28 8 68 21 107 10 268 300 262 77 333 386 212 163 125 3.9 12.0 0.0 3.7 2.6 2.9 1.7 2.6 13.3 15.7 31.4 12.4 23.6 13.0 2.3 5.1 0.0 0.0 5.6 2.5 0.0 1.1 7.1 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 1.7 0.0 4.8 0.0 2.1 0.0 3.1 11.5 0.0 0.0 13.3 3.1 0.0 1.3 0.0 1.1 5.0 0.0 3.6 0.0 4.4 4.8 0.9 0.0 1.5 3.3 0.0 0.0 0.9 3.1 1.4 1.2 2.4 4.9 0.0 0.0 5.9 0.9 2.9 2.6 1.3 11.1 5.9 5.8 31.9 13.2 16.3 25.6 10.3 0.0 0.0 2.8 7.5 0.0 3.3 0.0 0.0 6.1 3.6 0.0 0.0 4.2 6.3 3.5 0.0 0.0 0.0 4.1 0.0 0.0 0.8 7.7 3.7 0.0 6.7 3.1 5.4 0.0 0.0 8.5 12.5 0.0 3.6 12.5 4.4 14.3 0.0 0.0 3.7 8.3 0.0 0.0 0.3 2.1 0.9 3.1 0.8 3.2 0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.9 0.0 0.0 2.0 8.1 6.5 5.7 9.8 18.6 0.7 0.0 0.0 0.0 5.0 0.0 1.1 0.0 2.7 0.0 3.6 0.0 0.0 8.3 3.1 2.3 1.7 0.0 4.8 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 3.7 6.7 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 5.3 2.5 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 3.7 10.0 9.3 15.0 0.4 0.0 1.5 1.3 0.9 0.0 0.0 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 0.0 6.7 5.9 3.5 0.5 7.5 3.3 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 1.0 0.4 0.0 0.3 0.3 0.5 0.6 0.8 1.6 0.0 0.0 0.7 1.7 2.9 13.9 5.2 2.2 0.0 1.2 4.9 6.6 1.6 0.0 5.1 10.0 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 5.0 7.1 3.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 1.0 0.8 0.0 1.5 0.8 1.4 0.6 0.8 0.4 0.0 0.0 0.0 2.6 0.0 2.6 3.9 0.0 0.0 1.2 0.0 0.9 0.8 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 0.3 0.5 0.6 0.0 0.6 4.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 1.3 0.0 2.0 0.0 1.1 0.0 0.8 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 0.0 6.7 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.9 2.3 0.4 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 2.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 4.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 4.0 0.0 18.0 0.9 0.0 0.0 1.3 4.4 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 1.2 1.7 0.0 0.0 2.0 0.0 4.3 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.7 0.0 0.0 0.3 1.8 1.9 1.2 0.8 1.6 0.0 0.0 15.1 0.0 2.9 0.0 0.0 2.2 2.0 0.0 0.5 0.0 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 10.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.1 0.0 0.0 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 5.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.7 0.0 0.7 1.0 1.1 0.0 0.9 1.0 3.3 1.8 0.0 337 0.9 0.0 0.0 0.4 0.9 0.0 0.9 2.6 0.0 0.0 3.5 2.7 1.9 1.6 2.3 0.7 20.0 0.0 0.0 2.5 0.0 0.0 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.7 6.7 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 1.1 2.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.7 1.0 0.0 0.0 0.0 1.3 1.4 0.6 2.4 1.1 4.0 0.0 0.0 12.0 0.0 2.6 6.5 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 2.8 0.0 0.0 0.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 0.0 0.8 3.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 1.1 5.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.4 0.7 0.0 1.3 1.5 0.5 2.4 1.2 0.0 1.3 4.0 0.0 1.5 7.7 0.0 1.7 2.6 0.0 3.9 3.5 0.0 0.0 1.6 2.3 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 11.1 0.0 2.0 1.1 0.0 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.6 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.7 1.3 0.4 0.0 0.9 1.3 2.8 3.1 2.4 0.3 0.0 0.0 0.4 1.7 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.0 0.0 1.3 0.5 0.6 0.8 0.5 4.0 0.0 1.5 0.9 0.0 0.9 1.3 0.0 0.0 0.0 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 0.0 1.3 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.0 0.4 0.0 0.3 0.5 1.4 0.0 0.8 1.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 6.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 16.8 0.0 1.2 0.0 0.0 0.6 0.0 1.6 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.9 23.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 10.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 31.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 16.4 0.0 0.0 0.3 0.9 0.6 0.8 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 18.3 1.3 0.6 0.3 1.4 1.8 0.0 0.3 0.0 0.0 0.7 0.9 2.9 0.0 0.0 2.2 0.0 0.0 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.8 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.3 0.4 0.0 0.0 0.0 0.5 0.0 0.8 0.6 0.0 0.0 0.0 3.4 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.7 2.8 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 1.3 1.2 1.8 0.9 0.6 0.8 0.1 0.0 0.0 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 0.0 2.1 0.0 0.0 0.4 0.0 5.9 0.9 1.3 0.0 2.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.0 2.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 0.0 1.4 6.1 0.0 5.9 0.0 4.2 6.3 2.3 0.8 0.0 4.8 0.0 1.1 0.0 3.1 0.0 0.0 0.0 0.0 3.1 2.7 6.3 3.6 3.2 2.5 0.0 7.1 0.0 7.4 9.5 6.5 10.0 4.5 0.7 0.4 0.0 2.7 4.9 0.5 1.2 1.6 0.7 0.0 0.0 0.4 0.0 2.9 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.8 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.3 0.0 0.0 4.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.4 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 1.1 1.3 2.4 1.3 0.9 1.2 0.8 0.5 0.0 0.0 0.0 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 6.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.0 0.0 7.1 0.0 1.5 0.0 0.9 0.0 0.0 1.3 0.8 0.0 0.9 0.5 0.5 1.8 0.8 ■下記の力や観点は、自分が今の「仕事」をすることにおいて、どの程度必要ですか。 (全く必要ではない:0点~大いに必要である:6点として、回答全体の平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 誠実さ、責任感 力 4.9 4.9 4.5 4.6 4.8 4.9 5.1 5.1 他人に共感し、思いやる能力 4.6 4.6 リーダーシップ 4.4 4.3 健康・体力・運動神経 4.3 4.3 文章力、読解力 4.5 4.4 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 4.1 3.9 4.6 4.5 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 社会(所属している企業、業界、国など)を意 意識・視野 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 平均 3.8 3.5 3.1 4.3 3.0 4.2 5.0 4.9 4.8 4.8 4.9 5.0 4.6 4.6 4.3 4.4 4.5 4.6 4.5 4.5 【社会人基礎力】 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 4.7 4.7 4.5 4.4 4.6 4.6 4.7 4.6 4.6 4.6 4.3 4.2 4.5 4.5 4.3 4.3 4.5 4.5 4.5 4.6 5.0 5.1 4.9 5.1 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 平均 4.6 4.6 22-26 才群と全体の間にほとんどポイントの差はなく、仕事で必要な力として、社会人基礎力とそ れ以外の力の間に大きな差は見られない。全体と 22-26 才群の両方でポイントが 5 点を上回ったの は、社会人基礎力では「規律性」、社会人基礎力以外では「誠実さ・責任感」のみだった。中系統 で見ると、「専門知識・スキル」のポイントが最も高い。 338 ■下記の力や観点において、あなたは、現在どのレベルにあると思いますか。 (全く高くない、強くない:0点~大変高い、強い:6点とした平均点を算出) 【社会人基礎力以外の能力・観点】 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信を持ちつ つ、傲慢ではない) 人間としての基 安定性(自分の感情や行動をコントロールす 本的な資質・能 る習慣、力) 誠実さ、責任感 力 他人に共感し、思いやる能力 3.6 3.5 3.5 3.3 3.7 3.6 4.3 4.1 4.0 3.9 リーダーシップ 3.4 3.1 健康・体力・運動神経 3.5 3.5 文章力、読解力 3.7 3.5 基本的な計算力、数学・理科で培った考え方 3.6 3.3 3.8 3.5 3.3 3.0 2.4 2.5 3.8 3.5 3.9 3.5 基礎学力・汎用 物事を客観的に捉え、論理的に思考する力 的能力 物事を概念化し、図や絵で表現する力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職種も含め る)に関する知識 専門知識・スキ 自分の業務として必要となる技術・技能 ル 業務・職務で必要となる知識・技術を自ら学 び、習得する力 幅広い視野/教養、およびそれを広げる姿 勢 社会(所属している企業、業界、国など)を意 意識・視野 識(貢献意識、役割意識など)して、自分の業 務に取り組む力 自分の問題意識を仕事に生かす力 平均 3.9 3.5 3.9 3.7 3.8 3.6 3.6 3.5 3.6 3.4 3.6 3.4 【社会人基礎力】 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 3.8 3.5 3.3 3.0 3.7 3.5 3.7 3.5 3.7 3.5 3.5 3.2 3.3 3.0 3.4 3.2 3.7 3.7 3.7 3.6 4.3 4.2 3.3 3.2 主体性 前に踏み出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 柔軟性 チームで働く力 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 平均 3.6 3.4 「仕事に必要な力」と「現在のレベル」を比較すると、現在のレベルの方が全体では約 1 ポイント、 22-26 才群で 1.2 ポイント低い。特に現在のレベルが低いのは「語学力」だが、22-26 才群の社会人 基礎力で、「働きかけ力」「発信力」のポイントが 3.0 と、最も低くなっているのが目立つ。全体・ 22-26 才群両方で 4 ポイントを上回ったのは、「規律性」のみであった。 「仕事に必要な能力」(設問 2)と「実際のレベル」(設問 3)のレベル感の差を比較したグラフを次頁に 示す。 339 【図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力以外の能力・観点)】 6.0 自 分 の問 題 意 識 を 仕 事 に 生 か す 力 社 会 (所 属 し て い る 企 業 、業 界 、国 な ど )を 意 識 (貢 献 意 識 、役 割 意 識 な ど )し て 、自 分 の 業 務 に 取 り組 む力 22-26才群 (ネット調査) 全体 (ネット調査) 幅 広 い視 野 / 教 養 、 お よ び そ れ を 広 げ る 姿 勢 業 務 ・職 務 で 必 要 と な る 知 識 ・技 術 を 自 ら 学 び 、習 得 する力 自 分 の 業 務 と し て 必 要 と な る 技 術 ・技 能 を活 用 す る力 自 分 の 業 務 ・職 務 の 分 野 (業 種 ・職 種 も 含 め る )に 関 す る知 識 スキ ル 、 英 語 力 ・語 学 力 ス ト レ ス コ ン ト ロ ー ル力 規律性 情況把握力 柔軟性 傾聴力 発信力 創造力 計画力 課題発見力 実行力 340 物 事 を 概 念 化 し 、図 や 絵 で 表 現 す る 力 物 事 を 客 観 的 に 捉 え 、論 理 的 に 思 考 す る 力 基 本 的 な 計 算 力 、数 学 ・理 科 で 培 った 考 え 方 文 章 力 、読 解 力 健 康 ・体 力 ・運 動 神 経 リ ー ダ ー シ ップ 他 人 に 共 感 し 、思 い や る 能 力 働 き か け力 主体性 チームで働く力 考え抜く力 前に踏み出す力 誠 実 さ 、責 任 感 安 定 性 (自 分 の 感 情 や 行 動 を コ ン ト ロ ー ル す る 習 慣 、力 ) 自 分 を 肯 定 的 に 捉 え る 態 度 (自 信 を 持 ち つ つ 、傲 慢 ではな い ) 2.0 I T 意識・視野 専門知識・スキル 基礎学力・汎用的能力 人間としての基本的な資質・能力 P C 物 事 全 般 への 前 向 き さ 、積 極 性 2.0 22-26才群 (ネット調査) 全体 (ネット調査) 5.0 4.0 3.0 【図表 仕事に必要な能力と現在の実際のレベルの比較(社会人基礎力)】 6.0 5.0 4.0 3.0 ■下記の力や観点それぞれを、特に身につけた時期はいつだと思いますか。それぞれ2つまでお答えください。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため合計が 100.0%にならないことがある 【社会人基礎力以外の能力・観点】 小学校・小 大学時代 高校時代 中学時代 学校入学 その他 以前 就職後 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信 を持ちつつ、傲慢ではない) 人間として の基本的 な資質・能 力 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で 培った考え方 物事を客観的に捉え、論理的に思 基礎学力・ 考する力 汎用的能 物事を概念化し、図や絵で表現す 力 る力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職 種も含める)に関する知識 専門知識・ 自分の業務として必要となる技術・ 技能 スキル 業務・職務で必要となる知識・技術 を自ら学び、習得する力 幅広い視野/教養、およびそれを 広げる姿勢 社会(所属している企業、業界、国な 意識・視野 ど)を 意識(貢献意識、役割意識な ど)して、自分の業務に取り組む力 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 自分の問題意識を仕事に生かす 22~26才群(ネット調査) 力 全体(ネット調査) 19.1% 33.3% 18.7% 33.5% 22.6% 37.9% 22.0% 31.3% 12.5% 22.5% 21.9% 35.5% 8.3% 10.3% 10.3% 17.4% 6.7% 9.8% 26.6% 41.0% 11.3% 22.0% 6.0% 12.2% 27.6% 48.5% 60.1% 69.4% 60.9% 70.5% 56.7% 67.2% 32.4% 46.1% 45.0% 30.1% 24.0% 31.4% 24.4% 30.7% 22.7% 24.4% 19.5% 23.0% 19.2% 33.6% 26.4% 15.4% 11.5% 25.5% 22.9% 17.0% 16.9% 36.9% 29.7% 22.7% 20.0% 22.5% 20.2% 44.9% 35.3% 22.3% 18.9% 20.9% 17.6% 23.7% 19.4% 37.8% 31.9% 26.9% 19.4% 14.5% 19.3% 14.7% 22.4% 14.9% 19.6% 14.3% 19.9% 15.7% 13.0% 11.8% 19.6% 19.9% 28.1% 23.3% 30.6% 27.7% 17.5% 12.8% 18.8% 17.5% 32.2% 27.2% 15.6% 7.3% 6.7% 4.0% 6.5% 4.0% 7.0% 4.8% 13.8% 8.9% 7.4% 10.6% 10.3% 9.3% 9.1% 9.2% 9.7% 14.6% 13.9% 15.7% 15.5% 9.5% 8.0% 23.8% 26.7% 16.5% 17.1% 23.3% 24.4% 5.2% 5.2% 16.0% 13.6% 17.0% 16.5% 4.2% 2.6% 1.6% 1.7% 2.0% 1.6% 2.1% 1.9% 3.1% 3.0% 2.6% 8.6% 8.9% 6.1% 6.6% 5.3% 6.1% 11.9% 15.6% 20.1% 19.6% 5.4% 4.2% 20.4% 20.3% 11.0% 11.8% 13.2% 13.5% 1.8% 2.4% 11.7% 9.3% 2.8% 2.3% 2.0% 0.9% 0.9% 0.6% 0.8% 0.6% 1.3% 0.9% 1.7% 2.1% 1.4% 2.1% 1.9% 1.2% 1.5% 1.9% 1.5% 2.5% 2.2% 3.3% 2.6% 1.0% 1.4% 2.4% 2.5% 1.3% 1.3% 1.4% 1.2% 1.0% 1.4% 2.1% 1.9% 1.6% 1.2% 0.4% 1.1% 0.9% 1.3% 0.8% 1.3% 1.0% 1.4% 1.0% 1.4% 1.1% 身につけ ていない 10.0% 7.2% 14.0% 10.3% 7.9% 7.1% 5.1% 3.2% 5.5% 4.9% 15.7% 12.8% 10.1% 8.8% 7.2% 6.2% 7.7% 6.5% 10.9% 7.5% 17.4% 15.8% 17.9% 20.4% 5.3% 4.3% 7.5% 4.1% 8.3% 4.4% 8.3% 4.4% 10.4% 6.6% 15.7% 57.9% 21.1% 4.9% 2.2% 1.0% 1.3% 11.6% 44.4% 60.3% 27.6% 19.7% 8.2% 4.9% 2.1% 2.0% 0.8% 0.8% 0.3% 1.1% 16.6% 11.1% 【社会人基礎力】 就職後 主体性 前に踏み 出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで 働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 24.2% 36.8% 24.0% 39.8% 23.3% 38.9% 27.5% 44.8% 26.4% 43.8% 24.7% 41.2% 22.8% 37.9% 26.6% 41.4% 26.4% 40.4% 28.0% 43.2% 19.6% 27.7% 37.1% 49.7% 小学校・小 大学時代 高校時代 中学時代 学校入学 その他 以前 37.1% 28.7% 28.9% 23.2% 33.1% 25.3% 38.6% 28.9% 35.4% 26.3% 33.2% 26.5% 37.2% 29.1% 33.7% 26.1% 33.3% 27.0% 35.5% 26.2% 21.2% 17.5% 27.6% 19.3% 19.7% 15.5% 14.2% 11.3% 19.2% 14.2% 14.1% 10.7% 15.7% 12.5% 13.5% 10.5% 14.5% 10.1% 13.6% 9.8% 15.7% 11.8% 12.7% 10.7% 15.8% 13.4% 10.7% 7.9% 341 7.1% 7.8% 6.2% 5.5% 8.0% 7.2% 5.5% 4.6% 7.4% 5.7% 6.7% 5.1% 6.3% 5.5% 6.1% 4.9% 10.1% 7.6% 8.1% 6.8% 15.5% 14.5% 4.3% 4.2% 3.4% 4.1% 2.8% 2.8% 3.3% 3.7% 1.8% 2.1% 1.4% 2.2% 4.2% 3.6% 4.0% 3.6% 2.9% 2.1% 4.5% 4.0% 4.2% 3.4% 21.0% 21.4% 1.8% 1.9% 身につけ ていない 0.5% 1.4% 1.0% 1.3% 1.0% 1.6% 1.4% 1.4% 0.9% 1.3% 1.0% 1.4% 1.3% 1.3% 1.2% 1.6% 0.9% 1.5% 1.0% 1.7% 2.6% 2.4% 1.1% 1.6% 7.9% 5.8% 22.9% 16.2% 12.2% 9.2% 11.0% 7.5% 12.8% 8.3% 16.6% 11.7% 14.0% 12.4% 16.0% 14.1% 9.0% 7.7% 10.7% 8.0% 4.3% 3.1% 17.3% 15.4% 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力以外の能力・観点)】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他 30% 40% 60% 80% 90% 100% 物事全般への前向きさ、積極 22~26才群(ネット調査) 性 全体(ネット調査) 自分を肯定的に捉える態度 22~26才群(ネット調査) (自信を持ちつつ、傲慢では ない) 全体(ネット調査) 安定性(自分の感情や行動を 22~26才群(ネット調査) コントロールする習慣、力) 全体(ネット調査) 人間として の基本的 な資質・能 力 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 基本的な計算力、数学・理科 22~26才群(ネット調査) で培った考え方 全体(ネット調査) 物事を客観的に捉え、論理 22~26才群(ネット調査) 基礎学力・ 的に思考する力 全体(ネット調査) 汎用的能 物事を概念化し、図や絵で表 22~26才群(ネット調査) 力 現する力 全体(ネット調査) 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業 種・職種も含める)に関する 知識 専門知識・ 自分の業務として必要となる 技術・技能 スキル 業務・職務で必要となる知 識・技術を自ら学び、習得す る力 幅広い視野/教養、および それを広げる姿勢 意識・視野 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 社会(所属している企業、業界、国な 22~26才群(ネット調査) ど)を 意識(貢献意識、役割意識な ど)して、自分の業務に取り組む力 全体(ネット調査) 自分の問題意識を仕事に生 22~26才群(ネット調査) かす力 全体(ネット調査) 就職後 大学時代 高校時代 身につけていない 【図表 各能力を身に付けた時期(社会人基礎力)】 0% 主体性 前に踏み 出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで 働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 10% 20% 50% 70% 80% 90% 100% 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 就職後 大学時代 高校時代 中学時代 小学校・小学校入学以前 その他 身につけていない ネット調査全回答と 22-26 才群を比較すると、「人間としての基本的な資質・能力」「基 礎学力・汎用的能力」以外のほとんどすべての項目で、22-26 才群よりも全回答の方が「就 職後に身に付けた」という回答の比率が上がっている。つまり、年齢が上がると仕事で 必要な力のほとんどは就職後に身に付いた、と感じる人が多くなっており、特に「専門 知識・スキル」「意識・視野」でその傾向が強い。 342 ■下記の力や観点は、大学時代を振り返って、特にどのような活動で身につけたと思いますか。それぞれ 2 つまで お答えください。 ※割合については小数点第 2 位以下を四捨五入して表記したため、合計が 100.0%にならないことがある 【社会人基礎力以外の能力・観点】 大学時代 大学での 大学時代 大学時代 のクラブ、 大学時代 大学時代 大学時代 大学時代 大学での 卒業研究 の学園祭・ 大学時代 の親元を サークル のアルバ の就職活 の海外留 のボラン その他 学業全般 としての研 自治会等 の旅行 離れた生 活動など イト 動 学 ティア活動 究室、ゼミ の活動 活 課外活動 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 17.6% 17.9% 16.9% 19.1% 15.5% 19.3% 13.1% 16.5% 18.1% 15.9% 17.3% 16.0% 9.9% 13.5% 38.5% 43.5% 43.6% 49.1% 28.6% 32.6% 35.9% 40.5% 49.3% 45.7% 46.0% 40.4% 37.4% 40.7% 39.0% 39.8% 32.3% 36.6% 32.4% 31.7% 26.1% 14.2% 16.1% 14.2% 16.0% 14.8% 14.5% 10.8% 15.2% 11.3% 13.3% 20.8% 20.5% 10.5% 8.9% 39.6% 33.5% 32.1% 31.0% 33.6% 32.8% 35.9% 35.3% 13.6% 19.3% 28.0% 30.1% 25.2% 26.7% 24.1% 27.7% 25.3% 28.2% 19.3% 17.9% 19.1% 18.6% 22.7% 22.2% 23.7% 18.4% 21.6% 19.2% 21.3% 23.9% 27.9% 27.4% 30.2% 28.9% 37.4% 5.5% 6.2% 6.1% 5.9% 14.7% 11.6% 9.6% 7.5% 5.9% 5.4% 4.5% 5.3% 9.7% 7.5% 7.2% 7.5% 10.0% 8.6% 13.9% 13.2% 14.0% 3.4% 3.7% 1.7% 2.7% 3.0% 2.4% 3.5% 3.0% 2.5% 3.9% 5.1% 4.6% 4.6% 3.2% 1.5% 1.4% 2.4% 1.6% 2.2% 2.0% 2.9% 2.2% 0.5% 0.9% 0.6% 1.0% 1.5% 2.0% 2.1% 2.0% 2.6% 1.9% 1.5% 1.6% 2.7% 24.8% 19.0% 23.5% 18.8% 24.0% 20.7% 33.5% 28.6% 19.3% 19.3% 17.6% 17.5% 21.7% 17.7% 5.1% 5.1% 8.5% 6.3% 10.8% 9.5% 7.7% 6.6% 5.0% 4.0% 4.9% 4.8% 13.1% 10.1% 14.9% 9.9% 17.0% 11.5% 11.5% 14.6% 15.6% 5.3% 3.5% 6.0% 3.7% 5.6% 3.3% 6.2% 3.1% 2.9% 1.6% 2.4% 1.5% 5.9% 1.7% 3.3% 2.3% 1.2% 1.4% 2.8% 2.6% 2.4% 1.3% 0.5% 0.8% 2.1% 2.2% 3.9% 3.0% 2.1% 2.8% 4.4% 3.3% 2.9% 2.4% 5.8% 4.0% 2.4% 1.0% 1.5% 0.3% 0.9% 0.0% 0.3% 1.3% 1.7% 1.8% 1.3% 1.3% 1.8% 0.4% 0.6% 0.0% 0.2% 0.6% 0.5% 0.0% 0.4% 5.9% 6.3% 0.2% 0.2% 0.0% 0.6% 0.5% 0.6% 0.0% 0.7% 4.4% 3.9% 3.1% 2.2% 2.9% 2.0% 2.2% 0.7% 1.2% 0.4% 1.0% 2.1% 1.6% 1.2% 1.3% 0.7% 1.1% 1.5% 1.3% 0.6% 0.5% 1.1% 1.3% 0.5% 0.4% 13.1% 9.5% 0.4% 0.6% 1.0% 1.1% 2.1% 1.4% 2.2% 1.9% 2.9% 3.1% 2.3% 1.9% 1.3% 1.0% 1.1% 3.0% 1.0% 3.1% 1.7% 4.2% 2.3% 3.3% 1.3% 1.3% 0.8% 0.7% 0.4% 0.6% 0.1% 0.8% 0.7% 0.5% 0.2% 0.5% 0.4% 0.2% 0.2% 0.0% 0.9% 0.5% 0.8% 0.0% 0.5% 2.4% 1.3% 5.4% 4.3% 6.8% 5.6% 6.6% 7.2% 9.5% 6.9% 6.3% 6.7% 7.1% 0.9% 2.4% 6.6% 5.1% 0.7% 1.0% 1.2% 0.8% 1.4% 2.3% 0.5% 1.1% 0.5% 0.7% 1.2% 2.4% 1.0% 1.1% 1.0% 1.3% 0.9% 1.6% 2.4% 4.7% 1.6% 3.7% 3.7% 6.0% 4.7% 7.6% 5.7% 3.5% 3.0% 7.6% 5.5% 2.4% 3.3% 8.6% 8.8% 3.3% 4.7% 3.6% 3.2% 3.3% 4.4% 4.3% 4.5% 5.4% 6.9% 11.8% 12.8% 7.3% 6.2% 6.7% 6.3% 5.2% 5.3% 6.3% 5.5% 4.3% 自分の問題意識を仕事に生かす 22~26才群(ネット調査) 力 全体(ネット調査) 26.3% 21.7% 26.5% 19.8% 26.0% 25.7% 13.6% 18.5% 14.0% 3.0% 3.9% 2.7% 17.0% 15.7% 15.7% 4.6% 3.5% 2.8% 2.2% 0.8% 0.9% 2.4% 2.8% 1.8% 2.1% 1.2% 1.5% 3.3% 2.8% 3.8% 5.5% 3.1% 4.7% 物事全般への前向きさ、積極性 自分を肯定的に捉える態度(自信 を持ちつつ、傲慢ではない) 人間として の基本的 な資質・能 力 安定性(自分の感情や行動をコント ロールする習慣、力) 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 基本的な計算力、数学・理科で 培った考え方 物事を客観的に捉え、論理的に思 基礎学力・ 考する力 汎用的能 物事を概念化し、図や絵で表現す 力 る力 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業種・職 種も含める)に関する知識 専門知識・ 自分の業務として必要となる技術・ 技能 スキル 業務・職務で必要となる知識・技術 を自ら学び、習得する力 幅広い視野/教養、およびそれを 広げる姿勢 意識・視野 社会(所属している企業、業界、国な ど)を 意識(貢献意識、役割意識な ど)して、自分の業務に取り組む力 全体(ネット調査) 【社会人基礎力】 大学時代 大学での のクラブ、 大学での 卒業研究 サークル 学業全般 としての研 活動など 究室、ゼミ 課外活動 主体性 前に踏み 出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで 働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 22~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 21.5% 21.3% 18.0% 18.7% 21.4% 23.2% 27.8% 29.6% 29.7% 27.0% 26.8% 26.6% 23.0% 21.7% 20.0% 20.5% 18.4% 17.0% 19.0% 17.7% 16.3% 18.0% 18.5% 19.9% 20.3% 18.3% 21.1% 20.1% 29.3% 27.1% 29.2% 30.8% 29.1% 29.7% 30.6% 31.0% 36.3% 33.9% 21.6% 22.6% 22.2% 21.2% 18.7% 20.0% 15.0% 14.8% 15.8% 15.1% 18.0% 19.0% 27.1% 27.2% 16.8% 18.0% 14.5% 13.6% 15.3% 15.4% 19.0% 15.4% 14.5% 17.4% 23.5% 25.3% 24.7% 26.4% 22.2% 25.7% 18.5% 20.8% 15.1% 17.8% 343 大学時代 大学時代 大学時代 大学時代 大学時代 大学時代 の学園祭・ 大学時代 の親元を のアルバ の就職活 の海外留 のボラン その他 自治会等 の旅行 離れた生 イト 動 学 ティア活動 の活動 活 2.6% 2.9% 4.9% 4.9% 4.0% 3.4% 2.1% 2.7% 3.9% 3.1% 2.9% 3.5% 3.0% 2.9% 3.2% 3.6% 2.7% 3.4% 4.3% 4.2% 2.6% 2.8% 2.4% 2.6% 16.7% 16.2% 17.7% 16.3% 13.0% 13.0% 14.4% 10.7% 9.0% 10.5% 10.3% 10.1% 11.1% 12.0% 16.5% 15.3% 18.4% 18.5% 19.3% 19.6% 32.2% 28.1% 23.3% 21.1% 5.4% 4.5% 2.6% 2.3% 3.7% 3.4% 5.0% 3.2% 4.5% 3.7% 2.6% 2.0% 5.3% 4.2% 4.8% 2.7% 2.7% 2.0% 3.5% 1.9% 3.5% 3.1% 7.5% 3.8% 2.2% 2.1% 0.8% 0.9% 2.8% 1.5% 0.7% 0.8% 1.2% 1.3% 0.3% 1.2% 0.4% 0.7% 0.6% 0.9% 0.5% 1.2% 2.0% 1.0% 0.9% 0.6% 2.1% 1.9% 2.4% 2.4% 1.9% 1.7% 1.5% 2.0% 0.3% 1.1% 1.2% 1.6% 0.6% 1.3% 1.6% 2.0% 2.6% 1.3% 2.5% 1.7% 1.4% 1.7% 1.3% 0.9% 1.0% 1.6% 1.8% 0.9% 2.3% 1.3% 1.3% 0.9% 1.1% 0.8% 1.2% 0.9% 1.9% 1.2% 1.8% 0.9% 2.9% 1.4% 2.5% 1.0% 3.5% 1.4% 1.8% 0.9% 1.0% 0.7% 5.1% 8.2% 1.5% 2.9% 2.5% 3.7% 1.6% 2.5% 1.2% 2.9% 1.9% 3.2% 1.1% 1.4% 0.6% 2.0% 0.8% 3.0% 1.4% 2.6% 4.4% 6.4% 5.5% 7.4% 3.9% 4.2% 2.3% 3.8% 3.8% 3.8% 3.4% 4.1% 3.6% 3.9% 2.9% 4.4% 1.9% 2.8% 3.5% 4.5% 4.7% 4.6% 4.6% 4.4% 3.5% 3.6% 7.9% 8.0% 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動(社会人基礎力以外)】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 物事全般への前向きさ、積極 20~26才群(ネット調査) 性 全体(ネット調査) 自分を肯定的に捉える態度 20~26才群(ネット調査) (自信を持ちつつ、傲慢では ない) 全体(ネット調査) 安定性(自分の感情や行動を 20~26才群(ネット調査) コントロールする習慣、力) 全体(ネット調査) 人間として の基本的 な資質・能 力 誠実さ、責任感 他人に共感し、思いやる能力 リーダーシップ 健康・体力・運動神経 文章力、読解力 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 基本的な計算力、数学・理科 20~26才群(ネット調査) で培った考え方 全体(ネット調査) 物事を客観的に捉え、論理 20~26才群(ネット調査) 基礎学力・ 的に思考する力 全体(ネット調査) 汎用的能 物事を概念化し、図や絵で表 20~26才群(ネット調査) 力 現する力 全体(ネット調査) 英語力・語学力 PCスキル、ITを活用する力 自分の業務・職務の分野(業 種・職種も含める)に関する 知識 専門知識・ 自分の業務として必要となる 技術・技能 スキル 業務・職務で必要となる知 識・技術を自ら学び、習得す る力 幅広い視野/教養、および それを広げる姿勢 意識・視野 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 社会(所属している企業、業界、国な 20~26才群(ネット調査) ど)を 意識(貢献意識、役割意識な ど)して、自分の業務に取り組む力 全体(ネット調査) 自分の問題意識を仕事に生 20~26才群(ネット調査) かす力 全体(ネット調査) 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 大学時代の就職活動 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 その他 【図表 能力を身に付けた大学時代の活動(社会人基礎力)】 0% 主体性 前に踏み 出す力 働きかけ力 実行力 課題発見力 考え抜く力 計画力 創造力 発信力 傾聴力 チームで 働く力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 20~26才群(ネット調査) 全体(ネット調査) 大学での学業全般 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代のアルバイト 大学時代の旅行 大学時代のボランティア活動 その他 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代の就職活動 大学時代の海外留学 大学時代の親元を離れた生活 社会人基礎力以外では、 「人間としての基本的な資質・能力」では、クラブ・サークル活動とア ルバイト、 「基礎学力・汎用能力」 「専門知識・スキル」 「意識・視野」では学業全般の割合が高 い。一方、社会人基礎力では、 「考え抜く力」では学業、ゼミ・研究室の割合が高いが、他の 344 能力では学業、ゼミ・研究室、クラブ・サークル、アルバイトがほぼ同じ割合となっている。 全体と 22-26 才群で回答傾向の大きな差は見られない。 ■あなたは学生時代に、下記の活動に熱心に取り組みましたか。 (全く熱心には取り組んでいない:0点~大変熱心に取り組んだ:6点とした平均点を算出) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 大学での学業全般 大学での卒業研究としての研究室、ゼミ 大学時代のクラブ、サークル活動など課外活動 大学時代の学園祭・自治会等の活動 大学時代のアルバイト 大学時代の就職活動 大学時代の旅行 大学時代の海外留学 大学時代のボランティア活動 大学時代の親元を離れた生活 中学・高校時代の授業 大学受験勉強 中学・高校時代の文化祭・体育祭・生徒会などの課外活動 中学・高校時代の部活動 中学・高校時代の海外留学 小学校時代の授業 小学校時代の課外活動、学校以外の活動 小・中・高校時代の家庭での生活、家族との活動 小・中・高校時代の地域での活動 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 3.4 3.8 3.6 3.9 3.5 3.9 2.4 2.8 4.1 4.4 3.4 3.9 3.3 3.7 3.2 3.6 2.7 3.2 4.1 4.3 3.8 4.0 3.9 3.9 3.2 3.6 3.8 4.0 3.0 3.4 3.7 3.9 3.6 3.8 3.6 3.9 2.9 3.2 全体(ネット調査) 22- 26才群(ネット調査) 5.0 4.0 3.0 小 ・中 ・高 校 時 代 の 地 域 で の 活 動 小 ・中 ・高 校 時 代 の 家 庭 で の 生 活 、家 族 と の 活 動 小 学 校 時 代 の 課 外 活 動 、学 校 以 外 の 活 動 →大学入学以前の活動 大学時代の活動← 小 学 校 時 代 の授 業 中 学 ・高 校 時 代 の 海 外 留 学 中 学 ・高 校 時 代 の 部 活 動 中 学 ・高 校 時 代 の 文 化 祭 ・体 育 祭 ・生 徒 会 な ど の課 外 活 動 大学受験勉強 中 学 ・高 校 時 代 の 授 業 大 学 時 代 の親 元 を 離 れ た 生 活 大 学 時 代 の ボ ラ ン テ ィ ア活 動 大 学 時 代 の海 外 留 学 大 学 時 代 の旅 行 大 学 時 代 の就 職 活 動 大 学 時 代 の ア ルバ イ ト 大 学 時 代 の 学 園 祭 ・自 治 会 等 の 活 動 大 学 時 代 の ク ラ ブ 、 サ ー ク ル活 動 な ど 課 外 活 動 大 学 で の 卒 業 研 究 と し て の 研 究 室 、ゼ ミ 大 学 で の学 業 全 般 2.0 大学時代に熱心に取り組んだ活動としては、「大学時代のアルバイト」と「親元を離れた生活」 が、全体・22-26 才群のいずれも最もポイントが高かった。いずれの項目も 22-26 才群がネッ ト調査全体のポイントを上回っているが、大学時代の活動のポイント差が、他の年代に比べて さらに大きくなっている。 345 ■大学時代を振り返って、下記の経験はあなたの能力や人間性の向上にとって意義があったと思いますか。 (全く意義のない経験だった:0点~たいへん有意義な経験だった:6点とした平均点を算出) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ある活動にコミットし、試行錯誤したこと 最後まで何かを成し遂げたこと 難しいと思われることに挑戦したこと 実社会に関わる取り組みをしたこと 人前で発表を行ったこと グループで、ある目標に向けて取り組んだ グループのリーダーをしたこと 何か成し遂げたことを、認められたり誉めら れたりしたこと 他者から評価された経験 自分で選択・決定する機会が増えたこと 新たな価値観や知識・情報に出会ったこと 教員との出会い、交流 考え方やバックグランド、年齢が異なる人と の交流をしたこと 友人との交流 異性との関わり(恋愛経験など) 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 4.3 4.5 4.7 4.9 4.6 4.7 4.4 4.5 4.4 4.5 4.3 4.5 4.3 4.4 4.4 4.7 4.4 4.5 4.7 3.8 4.6 4.7 4.9 4.0 4.5 4.6 4.8 4.5 4.9 4.7 全体( ネット調査) 2 2- 26 才群( ネット調査 ) 5.0 4.5 4.0 異 性 と の 関 わ り (恋 愛 経 験 な ど ) 友 人 と の交 流 考 え 方 や バ ッ ク グ ラ ン ド 、年 齢 が 異 な る 人 と の交 流 を し た こ と 教 員 と の 出 会 い 、交 流 新 た な 価 値 観 や 知 識 ・情 報 に 出 会 っ た こ と 自 分 で 選 択 ・決 定 す る 機 会 が 増 え た こ と 他 者 から評 価 さ れ た経 験 何 か 成 し 遂 げ た こ と を 、認 め ら れ た り 誉 めら れ た り した こ と グ ルー プ の リ ー ダ ー を し た こ と グ ル ー プ で 、あ る 目 標 に 向 け て 取 り 組 ん だ こと 人 前 で 発 表 を 行 った こ と 実 社 会 に関 わ る 取 り 組 み を し た こ と 難 し い と思 わ れ る こ と に挑 戦 し た こ と 最 後 ま で何 か を 成 し遂 げ た こ と あ る 活 動 に コ ミ ッ ト し 、試 行 錯 誤 し た こ と 3.5 全体に比べて 22-26 才群のポイントが全体に高いが、ポイントの傾向は類似しており、 「最後ま で成し遂げたこと」「新たな価値観や知識・情報との出会い」「友人との交流」の 3 つが有効で あることが示されている。全項目の中で「教員との出会い・交流」のポイントが際立って低く、 この項目のポイントが高かった受講経験者の結果と対照的である。 346 ■大学時代を振り返って、以下の授業や活動はどの程度ありましたか。 1 実務知識・技術を教える授業 2 知識・技術を活用できるようにする授業/ スキルをトレーニングする授業 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 実験 フィールドに出て、調査や実習を行う授 業・活動 職場を体験する実習(インターンシップ、 教育実習、病院実習等) 実社会や現実の課題をテーマにし、考え る授業 理論や概念を教える授業 一回の授業で複数教員が教えたり、指導 に当たったりする授業 学外の人(企業や地域の人など)が教え たり、指導に当たったりする授業 学生の指導助手がサポートする授業・活 動 教員から直接指導を受ける機会 先輩から直接指導を受ける機会 学生同士の対話やディスカッションが組 み入れられた授業・活動 教員の質問に対して学生の発言が組み 入れられた授業・活動 グループ単位の活動が組み入れられた 授業・活動 何らかモノを作る授業・活動 17 プレゼンテーションを求める授業・活動 18 授業時間全体を教員(指導者)が知識の 教授・説明にあてる授業(講義) 19 予習が必要となる授業・活動 20 21 22 論文やレポート執筆を求める授業・活動 授業後の反省など授業を振り返る活動の ある授業・活動 テスト・レポート以外のユニークな方法で 成績をつける授業・活動 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学 23 生がグループ単位の活動でその課題解決の方法を 見出していく授業・活動 24 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝え る授業・活動 少しだけ 大変多く なかった 多くあった あった あった あった 22~26才群(ネット調査 14.7% 23.0% 26.1% 24.6% 11.6% 全体(ネット調査) 9.2% 18.4% 26.5% 25.0% 20.9% 22~26才群(ネット調査 10.6% 23.0% 28.5% 24.2% 13.7% 全体(ネット調査) 7.5% 16.3% 27.9% 24.7% 23.6% 22~26才群(ネット調査 10.2% 15.1% 16.6% 14.5% 43.6% 全体(ネット調査) 10.8% 14.5% 18.2% 12.8% 43.8% 22~26才群(ネット調査 6.4% 13.0% 25.3% 21.8% 33.6% 全体(ネット調査) 4.9% 10.9% 20.0% 19.0% 45.2% 7.3% 11.6% 24.6% 16.4% 40.1% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 4.6% 8.0% 17.6% 11.2% 58.6% 22~26才群(ネット調査 8.5% 19.9% 28.0% 23.9% 19.7% 全体(ネット調査) 4.6% 12.5% 25.8% 21.6% 35.6% 22~26才群(ネット調査 13.0% 27.0% 32.4% 15.9% 11.8% 全体(ネット調査) 13.3% 25.1% 33.0% 15.4% 13.2% 22~26才群(ネット調査 5.9% 13.7% 29.9% 17.6% 32.9% 全体(ネット調査) 3.4% 9.5% 20.9% 16.4% 49.8% 22~26才群(ネット調査 6.2% 14.4% 29.9% 24.9% 24.6% 全体(ネット調査) 3.2% 9.3% 23.2% 20.4% 43.9% 6.4% 14.5% 29.2% 18.3% 31.5% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 3.7% 10.5% 23.6% 18.1% 44.1% 22~26才群(ネット調査 17.1% 23.2% 32.9% 16.1% 10.7% 全体(ネット調査) 12.1% 21.1% 34.9% 17.0% 14.9% 22~26才群(ネット調査 7.3% 13.0% 20.1% 24.4% 35.3% 全体(ネット調査) 5.4% 12.4% 22.2% 19.9% 40.1% 11.8% 20.9% 31.3% 23.0% 13.0% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 6.3% 15.2% 31.4% 24.4% 22.8% 22~26才群(ネット調査 9.0% 19.6% 29.8% 24.7% 17.0% 全体(ネット調査) 4.8% 13.1% 27.8% 24.7% 29.6% 10.2% 20.4% 32.7% 23.9% 12.8% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 6.0% 16.4% 33.6% 22.1% 22.0% 22~26才群(ネット調査 9.0% 13.8% 23.5% 17.8% 35.8% 全体(ネット調査) 6.5% 12.2% 22.5% 15.4% 43.4% 22~26才群(ネット調査 12.5% 22.3% 35.3% 22.0% 8.0% 全体(ネット調査) 7.1% 17.0% 29.7% 23.4% 22.8% 27.9% 27.9% 25.8% 10.4% 8.1% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 23.7% 25.7% 26.3% 10.8% 13.5% 22~26才群(ネット調査 12.3% 23.0% 32.4% 22.0% 10.4% 全体(ネット調査) 9.3% 21.7% 36.3% 20.6% 12.2% 23.4% 32.0% 30.3% 10.2% 4.2% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 16.0% 30.6% 36.0% 12.2% 5.3% 22~26才群(ネット調査 8.3% 18.7% 28.4% 23.0% 21.6% 全体(ネット調査) 4.0% 12.9% 25.2% 23.4% 34.4% 6.2% 15.4% 23.9% 20.8% 33.7% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 4.1% 10.3% 22.3% 21.5% 41.8% 22~26才群(ネット調査 4.8% 12.6% 18.9% 17.8% 45.8% 全体(ネット調査) 2.6% 8.2% 16.8% 13.7% 58.7% 2.9% 9.5% 14.7% 18.2% 54.7% 22~26才群(ネット調査 全体(ネット調査) 1.8% 6.1% 11.2% 11.3% 69.6% 「大変多くあった」で最も回答が集まったのが、 「授業時間全体を教員が知識の教授・説明にあ てる授業(講義)」で、22-26 才群で 27.9%、全体で 23.7%である。次いで「論文やレポート執筆 を求める」 「教員から直接指導を受ける」と続く。実践的な活動や実験、あるいは学外の人の協 力等は、学問分野や授業の目標等によっては導入が難しい場合もあるが、 「学生同士のディスカ ッション」や「グループ単位の活動」 「プレゼンテーション」等、工夫次第によってどのような 授業でも導入可能な、社会人基礎力の育成に効果的な活動も、実施の割合は高くないことが わかる。 347 ■以下の大学時代の授業や活動は、「今の仕事に必要となる能力」を伸ばすことに有効でしたか。 ※「全く有効でなかった:0点~大変有効だった:6点」とした平均点を算出した。 平均 全体 22-26才群 (ネット調査) (ネット調査) 1 実務知識・技術を教える授業 3.6 3.7 2 知識・技術を活用できるようにする授業/スキルをトレーニングする 3.6 3.7 3 実験 3.4 3.4 4 フィールドに出て、調査や実習を行う授業・活動 3.5 3.5 5 職場を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等) 3.8 3.9 6 実社会や現実の課題をテーマにし、考える授業 3.5 3.6 7 理論や概念を教える授業 3.4 3.4 8 一回の授業で複数教員が教えたり、指導に当たったりする授業 3.2 3.3 9 学外の人(企業や地域の人など)が教えたり、指導に当たったりする 3.4 3.4 10 学生の指導助手がサポートする授業・活動 3.1 3.2 11 教員から直接指導を受ける機会 3.4 3.5 12 先輩から直接指導を受ける機会 3.4 3.5 13 学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授業・活動 3.6 3.8 14 教員の質問に対して学生の発言が組み入れられた授業・活動 3.3 3.5 15 グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動 3.5 3.7 16 何らかモノを作る授業・活動 3.6 3.6 17 プレゼンテーションを求める授業・活動 3.9 4.0 18 授業時間全体を教員(指導者)が知識の教授・説明にあてる授業(講 3.2 3.3 19 予習が必要となる授業・活動 3.2 3.4 20 論文やレポート執筆を求める授業・活動 3.5 3.7 21 授業後の反省など授業を振り返る活動のある授業・活動 3.3 3.4 22 テスト・レポート以外のユニークな方法で成績をつける授業・活動 3.3 3.5 実社会や現実の課題を学外の人に与えられ、 学生がグループ単位 3.5 3.6 23 の活動でその課題解決の方法を見出していく授業・活動 24 中小企業やベンチャー企業の魅力を伝える授業・活動 3.5 3.6 平均 3.4 3.5 全体(ネット調査) 22-26才群(ネット調査) 4.5 4.0 3.5 中 小 企 業 や ベ ン チ ャ ー 企 業 の魅 力 を 伝 え る 授 業 ・活 動 実 社 会 や現 実 の課 題 を 学 外 の人 に与 え ら れ 、 学 生 が グ ル ー プ 単 位 の 活 動 で そ の 課 題 解 決 の 方 法 を 見 出 し て い く 授 業 ・活 動 テ ス ト ・レ ポ ー ト 以 外 の ユ ニ ー ク な 方 法 で 成 績 を つ け る 授 業 ・活 動 授 業 後 の反 省 な ど授 業 を振 り返 る活 動 のあ る 授 業 ・活 動 論 文 や レ ポ ー ト 執 筆 を 求 め る 授 業 ・活 動 予 習 が 必 要 と な る 授 業 ・活 動 授 業 時 間 全 体 を 教 員 (指 導 者 )が 知 識 の 教 授 ・説 明 に あ て る 授 業 (講 義 ) プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 求 め る 授 業 ・活 動 何 ら か モ ノ を 作 る 授 業 ・活 動 グ ルー プ 単 位 の活 動 が 組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 教 員 の質 問 に 対 し て学 生 の 発 言 が組 み入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 学 生 同 士 の対 話 や デ ィ ス カ ッシ ョ ン が組 み 入 れ ら れ た 授 業 ・活 動 先輩 から直接 指導 を受 ける機会 教員 から直接 指導 を受 ける機会 学 生 の 指 導 助 手 が サ ポ ー ト す る 授 業 ・活 動 学 外 の 人 (企 業 や 地 域 の 人 な ど )が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授 業 一 回 の 授 業 で 複 数 教 員 が 教 え た り 、指 導 に 当 た った り す る 授 業 理 論 や概 念 を 教 え る 授 業 実 社 会 や 現 実 の 課 題 を テ ー マ に し 、考 え る 授業 職 場 を 体 験 す る 実 習 (イ ン タ ー ン シ ッ プ 、 教 育 実 習 、病 院 実 習 等 ) フ ィ ー ル ド に 出 て 、調 査 や 実 習 を 行 う 授 業 ・活 動 実験 知 識 ・技 術 を 活 用 で き る よ う に す る 授 業 / ス キ ルを ト レー ニ ング す る 授 業 実 務 知 識 ・技 術 を 教 え る 授 業 3.0 受講経験者の 24 項目の平均が 4.3 であったことと比較すると、22-26 才群、全体とも平均点で 1 ポイント近 く下回り、大学の授業や活動に対する評価が低いことがうかがわれる。その中で評価が高かったのは、「プ レゼンテーション」と「インターンシップ等職場を体験する実習」であり、実施の頻度は特に高くなくても、有 効性が高いことが示される。一方、受講経験者の評価が最も高かった「学生同士の対話やディスカッショ ン」「グループ単位の活動」は、「知識・技術を使えるようにする」「論文やレポート執筆」等とほとんど同じレ ベルである。これらを見ると、インターネット調査の回答者が、大学の授業や活動で有効だったと考える授 業や活動は、チームとしてよりも個人の取り組みや能力を伸ばすものであることがわかる。 348 2-5.卒業生調査の総括 ヒアリングとアンケートから、社会人基礎力育成プログラムの経験が学生にどのような態度変容を もたらし、社会的に望ましい行動ができるようになるかという様々な事例が提示された。ここでは、 2-3.ヒアリング結果のまとめと分析、2-4.アンケート結果の集計と分析を通して明らかになった、社 会人基礎力育成プログラムの教育的な効果を総括する。 2‐5‐1.プログラムでの経験と、身に付けられる社会人基礎力 ここでは、社会人基礎力育成プログラムの活動の経験がどのような能力の成長につながったかを、 模式図とヒアリングの典型的なコメントとで提示する。なお、図中の能力要素名は代表的なものであ り、これらの限りではない。 1.グループディスカッションのファシリテーション技術 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・人の話を聞いていないと、自分も手が出せないし、 何も進められないということを経験し、人の意見 を聞いて、自分の意見を伝えるということの大切 異なる意見を受容したり、 チームとしての成果を出すために 他のメンバーに目配りしたり メンバーと真剣なディスカッションを することができるようになる 繰り返した経験 傾聴力 柔軟性 さを学んだ。(在学生) ・リーダーとしてチームで話し合う時には、自分の 情況把握力 意見を話すのではなく、他の人に話を振るように 意識していた。そのようにするには、人の話を聞 かなければいけない。皆の意見を引き出しながら、 要所でキーワードをまとめて、 「要するにこういう ことを言いたかったんだよね」と返すようにして いた。言われたことを自分の中で処理して返すことで、その処理が正しいかどうかも確認できるし、そ ういったことをしながら、傾聴力が鍛えられたと思う。(在学生) ・それまでは自分の言いたいことを言うだけ言って、人の言うことまでは聞いていなかったが、社会人基 礎力を頭に置きながらゼミナール生活を過ごしたことで、自分の言いたいこともしっかり言い切るけれ ど、人の言いたいことも最後までしっかり聞いて、それぞれの言い分の中で正しいことも正しくないこ とも、それぞれの言い分以外の要素(締切、他の関係者等)を考慮しながらどこに歩み寄りを見出すの か、落としどころを考えながら決断を下す。そういうことができるようになった。(社会人) 2.相手に受け入れられるコミュニケーション・プレゼンテーション 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・建築の現場で、自分よりずっと年上の経験豊富 な方々に「それは危険だからやめてくれ」とか 「こ っちの作業がまだあるから、この作業は中断して休 相手に受容してもらえるように 立場や意見、価値観の異なる人に 自分の意見を説明した経験 話したり説明したりすることが 憩していてほしい」と言わなければいけないときが できるようになる あるので、うまく話すことが必要になる。PBL の就 発信力 情況把握力 職案内冊子作りで地域の知らない人に電話して、ア ポをとって取材に行ってまとめることをやった経験 が活かされている。(社会人) ・プログラムで先生方や企業の方に教えられたこと 349 で、自分の研究や思いをどうすれば伝えられるか、わかってもらえるかを常に頭のどこかで意識するよ うになったし、ビジネス化するという視点も叩き込まれた。その上で、自分の企画や提案をポンと出す のではなく、相手の立場・知識・関心を考えた上で、伝わるように目配りすることで、展望が開けてい くのだろう、といった期待や希望を持ちながら進められるようになった。(社会人) 3.他の人を巻き込んで仕事を進める工夫 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・自分が先輩に聞かなければわからないことがある。 代々口伝で後輩に教えているから、業務の仕方が 文書化されていないもの。後々の新人のことを考 現状を打開するための 他の人を巻き込んで、成果を 工夫ができるようになる え、可能な範囲で先輩に確認してもらいながら、 主体性 働きかけ力 自発的に「マニュアル化」を試みている。(社会人) 実行力 課題発見力 あげるための工夫をした経験 ・リーダーだからと全て自分で抱え込むのではなく、 チームとして動き、チーム全員でより良い結果を 出すことが大事だと感じるようになった。2 年生 の時は、自分 1 人が頑張っていて凄くしんどくて、 それを自分だけで抱えこむ部分があったので、み んなに話を振るようにして、自分だけではなく、みんなの意見も入れて、できるだけいい会合にできる ように心掛けた。この点を意識したことによって、相手から協力してくれることもあり、こうしたこと は、自分の意識一つで変わることがわかった。(在学生) 4.リーダーシップ、フォロワーシップの理解 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・人生で初めてリーダーの経験をした。今までは ほとんど誰かに何かを言われるのを待つ立場で、 グループの動かし方、 リーダーを務めた経験、異なる学年 フォロワーとしての好ましい 自分から発言していくのは初めてだったので、 行動がわかるようになる 新しい見方を学んだ。お陰で、リーダーでない 同士のチームを運営した経験 発信力 時も、リーダーはこういう気持ちを持っている 傾聴力 情況把握力 から、自分はこうした方がいいというように考 えられるようになり、自分の役割を色々な見方 から考えられるようになった。(在学生) ・後輩に対する接し方が身について、グループワークをするときに役に立ったと思う。 「後輩だから」と思 って上から目線で接するのではなく、1人ひとりの意見をきちんと聞くようにしていたら、実にさまざ まな考えがあることがわかった。(在学生) 350 5.目標達成のためのスケジュール意識 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・先生はお題を出すから後は自由に考えなさいと、 僕らにポンと投げてくる。ただし、期日もバシ 目標設定や優先順位のつけ方、 決められたスケジュールの中で、 目標達成を課せられた経験 ッと設定した上なので、逆算して段取りを決め トラブル対応がスムーズに て、何日までに何を決めるといった形で進行管 できるようになる 計画力 理していかないといけない。そのため、計画力 課題発見力 は明らかに伸びた。(在学生) ・工場の立上げ業務は、全体スケジュールが上か ら 降りてくるので、トラブルで遅れそうになる 時には、傷口が広がる前に工程をチェックして、 スケジュールの組み換えを即座に行わなければならない。その際にはスピードをアップしつつも、精度 が落ちないような工夫は必要であり、計画力と情況把握力は活かせた。大学院生時代には各 PBL チーム の進行を管理していたこともあるが、その際の経験が役に立っている。(社会人) ・プロジェクトの仕事が重なって整理がつかなくなっても、短期・中期の目標を少しずつ変えながら、結果 的に目標達成できればいい、ということが身についた。今も、研修制度で 1 年後にどうなりたい、とい うことを毎年考えなければならないが、計画通りに行かなくても、自分で修正していける。(社会人) 6.話し手の立場を理解した「聴く態度」 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・一つは傾聴力で、みんなが話しやすい雰囲気に なるようにと、ちゃんと目を見てうなずいて聞 「聴く」ことの重要性・ 話し手の立場に立って 傾聴した経験 くということを心掛けるようになった。就職活 マナーが身に付く 傾聴力 動でも、私は説明会の時からそういうことを心 情況把握力 掛けていたが、内定をいただいた企業の人事の 方から、 「説明会の時からいいと思っていたよ」 と言っていただいて、凄く嬉しかった。(在学生) ・周囲の人たちが何をしようとしているのか思い が向くようになった。たとえば、どの授業でも先 生の目を見て、しっかり聞いて、メモをとりながらうなずいて、といったことを心がけるようにしてみる と、数百名の大教室授業で、私のことを個人として識別してくれる先生がいた。そのほかの授業でも私だ け名前で呼んでもらったり、学生にとくにアプローチしないタイプの先生に「○○の授業に出ていて熱心 だね」と声をかけてもらったりすることを経験した。周りの学生がどうであれ、自分の意識が変われば、 大人(先生)は見ていて、好意的に受け止めてくれるんだということを実感した。(在学生) 351 7.実社会とのつながりが生み出す学習意欲 「経験」 「効果」(身につく基礎力) ・もっと深く学びたい、もっと学んだ知識を活用し てみたいと思えるようになった。大学で学ぶとい 自分から学びを深めたり、 学んでいる専門知識と実社会との つながりを知った経験 うことの大切さ、なぜ大学で学ぶかということ、 目標を高めたりする姿勢が 高校や大学で学ぶ知識は実践で使えるんだとわか 身に付く 主体性 り、社会に出てからも企業に入っても必ず役に立 実行力 つと思えるようになった。社会人基礎力を知るこ とで、大学で学ぶ姿勢が変わり、世の中の見え方 が変わった。(在学生) ・M2 後期でこの活動に参加したことで、先行研究の深堀りだけにとどまらず、研究を取り巻く社会的ニー ズや周辺領域の動向などに視野が広がった。その成果は修士論文の序論に活かすことができ、奥行きの 広い、豊かさのある論文になったと思う。また、自分の研究の意義を誰にでもわかるように発信するこ との重要性、それも平易な言葉で予備知識のない人であっても伝わるように表現することが、研究が研 究で終わらないためにとても大切であることに気づかされた。論文審査ではそうした点も含めて評価し ていただいたようで、日本学生支援機構の大学院第一種奨学金の「特に優れた業績による返還免除対象 者」として認定された。(社会人) 8.振り返りと気づきによる自己分析の習慣 ・看護師の仕事で壁にぶつかった時、自分自身を 「経験」 分析してみて、看護部長に「本当の自分らしさ 「効果」(身につく基礎力) を失うのではなく、よさをいかせるところで働 自己分析や目標設定ができる ようになり、何を学んだり身に きたい」と、自分の適性や希望を直接訴えた。 自己の取組を社会人基礎力の 付けたりするべきかがわかる。 言葉で振り返った経験 こんなことを言っていいのか、と思ったが、辞 好ましくない現状を改善できる めるのではなく、変えられることを変えてみよ 課題発見力 う、と思った。ちょうど新しい病棟ができたこ ストレスコントロール力 とで、異動させてもらえた。新しい科の仕事は 未経験で、全く知らないことばかりだが、今は 仕事がとてもおもしろいと思える。複雑な気持 ちだったが、今ではこれができたことが自信に なった。社会人基礎力を知っていたからこそできたことだと思う。(社会人) ・振り返りの意識を持つようになったことは、今も役立っている。ただただ今を過ごしてしまうだけでな く、 「今年何ができたのか(できなかったのか)」といったことを振り返り、これを踏まえて目標を設定 する意識が身に付いた。(社会人) 352 9.ビジネス意識の習得 ・研究にしか目が向かなかった、知らなかった自分が、 「経験」 「効果」(身につく基礎力) 研究の周辺部分に目がいくようになり、 「ビジネス にするには」という観点を持てたところか。間違 自分の学びや研究を 自己の取組と経済活動を 結びつけて考えた経験 いなく視野が広がり、修士論文や現在の業務の質 ビジネスの視点から捉え直す を高めることにつながっている。(社会人) ことができるようになる ビジネス意識 ・プロジェクトでカフェの運営に携わっていたので、 お客様の大切さについては十分に理解している。 アルバイトであれば「客が来ない方がいい(楽) 」 だが、運営者の目線では「客が来て欲しい」と、 全く違う。プロジェクトでは、運営者として集客・ 売上を目標に置いていた。そういった目線で物事を見ることが出来るので、今はアルバイトの学生のモ チベーションを上げることを意識している。(社会人) 2-5-2.「社会で求められる力」に関する社会人基礎力育成プログラムの経験者と一般的な大学教育の 経験者の意識の比較 社会人基礎力育成プログラムを経験した社会人(以下、 「受講経験者」)と、インターネット調査の同 年代の社会人(22-26 才グループ:以下、 「一般の若手社会人」)を比較すると、下記のような傾向が見 られる。 ・受講経験者は、 「社会で求められる力」に関する自己評価は、一般の若手社会人よりもやや厳しめ であるが、 「チームで働く力」に関しては、一般の若手社会人よりも高く自己評価している。特に、 「柔軟性」 「ストレスコントロール力」 「情況把握力」の差が大きい。 「規律性」にはほとんど差が 見られない。 ・上記の「柔軟性」「ストレスコントロール力」 「情況把握力」をどこで身に付けたかという問いに 対して、受講経験者は「大学での卒業研究としての研究室、ゼミ」をあげた人が最も多かったの に対して、一般の若手社会人では、「サークル等の課外活動」や「アルバイト」の回答が多い。 ・能力や人間性の向上に意義のあった大学時代の経験として、受講経験者が高く評価したのは「最 後まで何かを成し遂げたこと」 「新たな価値観や知識、情報に出会ったこと」「グループである目 標に向けて取り組んだこと」 「教員との出会い、交流」である。この中で後者の 2 つは、一般の若 手社会人の評価は低く、受講経験者と大きな開きが出ている。 ・ 「今の仕事に必要な能力の向上に役立った大学時代の授業や活動」に関して、受講経験者のポイン トは、一般の若手社会人を全体の平均点で 0.8 ポイント上回り、大学の授業や活動を高く評価し ていることがわかる。 受講経験者の評価が高かった活動は、 「学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授 業・活動」「グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動」 「プレゼンテーションを求める授 業・活動」であり、一方一般の若手社会人では「プレゼンテーションを求める授業・活動」 「職場 を体験する実習(インターンシップ、教育実習、病院実習等)」であった。 両者のポイントの差が大きかったのは、 「学生同士の対話やディスカッションが組み入れられた授 業・活動」「グループ単位の活動が組み入れられた授業・活動」(平均点で 1 ポイント以上の差) であり、受講経験者が能力の向上に有効であると考える活動を、 一般的な大学教育を受けた人は、 353 効果的な形で受講していない、あるいはそのような経験自体を持っていないことが伺われる。 ・ 「現在の仕事で求められる成果を上げているか」という問いに対しては、受講経験者の方が非受講 経験者よりもやや自己評価が低い。しかし、 「仕事や生活全般に対するやりがい・生きがいを感じ るか」に対しては「大いに感じている」「感じている」という評価をした人が、非受講経験者が 26.3%に対して受講経験者が 63.1%と大きく上回り、仕事に前向きに取り組んでいることがわか る。 ・プログラムを受講した社会人と在学生を比較すると、在学生の方が能力に対する自己評価が高い。 これは、在学生が受講後に自らの成長を自覚して自己効力感を持っており、一方で社会人は実際 の現場では、学生時代に身に付けた能力だけではまだ十分ではないことを知ったために、自己評 価が下がったと推察される。これは、1 章の社会人基礎力育成事例研究セミナーで、富士通株式 会社の人材育成の取り組みで報告された、新卒採用者の自己認識の傾向と通じるものである。 ・在学生が現時点(卒業前)で特に不足を感じている能力は、「専門知識・スキル」の習得と、「英語 力・語学力」である。これは、平成 21 年度の「社会人基礎力意識調査」の結果にも通じるもの である。 2-5-3.社会人基礎力のさらなる普及に向けて 調査全体と、社会人基礎力育成事例研究セミナーでの指摘を受けて、以下の点を提言としてまとめ たい。 1.社会人基礎力を向上させる教育活動のポイントとしては、 ・学生がチームで協力し合って課題に取り組む ・自分の意見をわかりやすく、魅力的に発表する ・異なる意見や背景を受け入れ、それらを持つ人を巻き込んでものごとを進める ・活動を通した成長を、モノとしての成果ではなく、能力や態度を通して振り返る ・学びや研究と社会とのつながりを意識し、同じモノや考え方が社会で評価されるためには何が必 要かを知る機会を持つ があげられる。つまり、これらが取り入れられた教育活動は全て社会人基礎力の育成につながって おり、これらを社会人基礎力の育成である、と教員・学生がともに意識し、活動を進めることが 能力の向上につながる第一歩となる。 2.上記は、必ずしも特別なツールや教授法を必須とするものではない。しかし、重要なのは学生の成 長を見守り、認め、適切なサポートを行う教職員のファシリテーションである。そのためには、学 生に育成プログラムを通してどのような成長を期待するかを明確に持ち、時に弱気になる学生のフ ォローも含めてきめ細かく見ていくことが必要である。 3.資格系(教員、管理栄養士、医師、看護師等)の教育では、カリキュラムが資格取得に特化している ため、教える側からその職種内に閉じた職業観やスキルを一方的に押し付けることになる可能性が ある。職業人である前に、まず一社会人として必要な能力の全体像を知り、その中でその職種に特 に必要な能力と、それを発揮すべき場面を意識させることが非常に重要になると考える。 →ヒアリングの例から:管理栄養士・看護師にとっての「傾聴力」「柔軟性」等 4.社会人基礎力の言葉で振り返りの習慣が身に付いた学生は、仕事の場面を客観的に分析して、自分 が身に付けなければならない能力とは何かを考えることが自発的にできる。そのため、企業が採用 内定者に対して、業務で考えられる場面で必要な力を社会人基礎力の言葉で提示し、その力が十分 備わっているか、足りないとすればどのような経験や心構えをしておくべきか、の自己評価や意識 354 付けを内定期間中に行っておくことは、入社後のストレスを軽減するとともに、大学と企業が共通 の言葉で育成を行うことになり、有効な手段であると考える。その意味で、この先駆的な取り組み として、社会人基礎力育成事例研究セミナーの東京会場でご紹介いただいた富士通株式会社の「ATT チャレンジプログラム」は、非常に優れた事例である。 5.特に地方の企業にとって、 「社会人基礎力」はまだ十分普 及しているとは言いがたい状況にある。また、学生のヒア リングでもあがっていたように、プログラムの中で上記 1 能力の全体像 -職場や地域で活躍する上で必要となる力- にあげたような活動をしたことを話すと、採用担当者から 「営業向きだ」 「総合職はどうか」という反応が少なからず あったようだ。 「社会人基礎力=やり手・熱血・リーダー格」 社会人基礎力 基礎学力 (読み、書き、算数、 基本ITスキル 等) (課題解決力、実行力、 チームワーク 等) 専門知識 (仕事に必要な知識や 資格 等) という一種の偏見が感じられる発言である。 今後企業に向けて社会人基礎力を発信していく際には、 12 の能力要素の説明とともに、基礎学力・専門知識・人間 人間性、基本的な生活習慣 (思いやり、公共心、倫理観、基礎的なマナー 等) 1 性等とともにあるという、能力の全体像を伝え、職種を問わず一人の社会人として誰もが必ず持つ べき力であることに理解を促すことが必要であろう。さらに、社会人基礎力を身に付け、自己分析 の習慣を持つことは、 「自分から学び続けること」「異なる意見を受け入れながらわかりやすく話す こと」「ストレスに対応しつつ粘り強く取り組むこと」の必要性を知ることにもつながる。平成 20 年度の「社会人基礎力意識調査」で、まさに企業側が学生の不足を指摘した点を自ら改善しうる姿 勢であることも、合わせて伝えることで、大学のみならず若手社員の育成にとっても有効であるこ とを伝えていくべきであると考える。 355 結び 平成 19 年度のリファレンスブック「今日から始める社会人基礎力の育成と評価」を制作した際、社 会人基礎力レベル評価基準表に載せる 12 の能力の発揮事例を集めるために、企業の若手社員の方にヒ アリングを行った。入社 5 年から 10 年程度の方に、社会人基礎力のさまざまな力を発揮して、仕事で 成功した具体的な例をお話ししていただいたのである。様々な業種・職種の方から実におもしろいエ ピソードをうかがった。このヒアリングから私達は、社会人基礎力は一つの定義に縛られるものでは なく、あらゆる場面で様々な形で求められ、仕事や学びを成功に導くものであることを、改めて知る ことができた。 今回お話をうかがった社会人の方々は、平成 19 年度から始まった、大学における社会人基礎力育成 プログラムを受講された、いわば「社会人基礎力一期生」と言うべき方々である。さぞバリバリと成 果をあげておられるだろう、という当初の予想に比べて、お話の内容は意外なほど謙虚だった、とい うのが正直な印象である。インターネット調査から抽出した同年代の人と比べても、全体に自己評価 が厳しいことが見てとれた。 しかし、一つ一つのお話をじっくり読むと、彼らは決して成果をあげていないわけではない。現場 で自分よりずっと年上のベテランの人に対して、無理を通してくれ、とお願いをする人。代々口伝え が慣例だった事務処理の作業マニュアルを一人で作るために、先輩たちに頭を下げて回る人。あるい は、一度は辞めようと思いながらも、 「自分はこういうことがやりたいから配属を変えてください」と 上司に訴えて異動させてもらった人もいた。彼らは、自分に今何が必要で、そのためには何をしなけ ればならないかを真剣に考え、決して慢心していない。現場に出て求められるレベルの高さを謙虚に 受け止め、なすべき仕事を確実にやりとげながら、もっと上を目指したいという静かな貪欲さが感じ られる。それを生み出し、今もなお支えるのが、社会人基礎力育成プログラムで、自分の意見を受け 入れてもらえるように努力しながら話したり、全く異なる意見や立場の人との協力を模索したり、厳 しいスケジュールや課題を力を合わせて乗り越えたりした経験なのである。彼らの 5 年後、10 年後に 改めて話をうかがってみたい、と思われた。 プログラムの受講経験者とインターネット調査の同年代の回答比較で特徴的だったのが、能力や人 間性の向上に役立った経験として、 「教員との出会い・交流」のポイントが、一般の同年代の回答を大 きく上回ったことである。これは、 「友人との交流」のポイント差の倍以上に上り、教員の寄与によっ て能力や人間性の向上が可能であることを示している。その意味でも、社会人基礎力育成プログラム は、単に社会に出て役に立つ能力を育成するだけでなく、学びの場としての大学教育の改善にも資す ると言うことができる。 今後社会人基礎力が教育機関に普及することで、さらに多様なプログラムが展開されることになろ う。そこで重要なのは、社会人基礎力を高めることのみを目的とするのでなく、学びの中に学生が主 体的・能動的に取り組める活動をいかに組み込むかである、ということを発信し、また、優れたプロ グラムとはどのようなものかについて、情報を共有する場を継続的に設けることであると考える。そ れが、社会に最も近い教育機関である大学の活性化につながり、ひいては初中等教育も含めた教育全 体を動かすことになるからである。 356