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地域連携の上田モデルと地域医療のあり方を語る
37 ■ 座談会 長野県上田市発 地域連携の上田モデルと地域医療のあり方を語る 司 会 東京医科歯科大学大学院教授 い内科クリニック院長 新田の風理事長 上田保健福祉事務所所長 医師 イイジマ薬局 上田薬剤師会会長 川渕孝一 氏 井 益雄 氏 長棟美幸 氏 飯島康典 氏 ■ OPINION TALK 激論! 2016 改定を踏まえた薬局像展望 ファルメディコ㈱代表取締役社長 医師 一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長 プライマリーファーマシー代表 保険薬局経営者連合会会長 狹間研至 氏 山村真一 氏 ■ あたらしい薬局像を探して 薬学的専門性をもって患者に寄り添う ― 総合メディカル㈱そうごう薬局天神中央店 ㈱マディア 古川 綾 氏 シリーズ座談会 地域包括ケアとこれからの地域医療 ④ 長野県上田市発 地域連携の上田モデルと 地域医療のあり方を語る 面分業が定着している地域として知 られる長野県の上田。国が進める 「か かりつけ薬局」を全国に先駆けて実 行している。上田薬剤師会が協力団 体として支援する NPO 法人「新田 の風」は、地域住民を柱に据えた包 括ケアに取り組む。こうした上田エ リアの取り組みを厚生労働省関係者 が視察する機会が絶えないという。 今回は、地域包括ケアシステムの構 築に際して全国から注目される上田 エリアの地域医療の取り組みについ い内科クリニック院長 新田の風理事長 イイジマ薬局 上田薬剤師会会長 て、当事者であるお三方に話し合っ 井 益雄 氏 飯島康典 氏 ていただいた。司会は川渕東京医科 歯科大学大学院教授にお願いした。 司会 上田保健福祉事務所所長 医師 東京医科歯科大学大学院教授 長棟美幸 氏 川渕孝一 氏 住民の参加を前提とした包括ケアの仕組みが全国から 上田ではなぜ面分業、かかりつけ薬局が 定着しているのか 注目されています。そこでその仕組みづくりの当事者 ともいうべき、上田薬剤師会・飯島会長、い内科クリ ニック・井院長、そして上田保健福祉事務所・長棟所 2 川渕 わが国は 2025 年に向けて地域包括ケアシステム 長のお三方から、上田の先進的な取り組みについて を構築することで、地域における医療・介護の総合的 伺っていきます。 な確保を目指しています。ただこの仕組みづくりは現 まずは飯島会長、上田は昔から医薬分業の先進地と 在も試行錯誤の状態で、いくつかの地域でモデル的な して有名です。いわゆる門前薬局が皆無だそうですが、 取り組みとして位置づけられたものが運用されていま これは本当ですか。 す。この上田も病診薬の連携ができていることに加え、 飯島 たしかに面分業が定着していて、医療機関の近 Towa Communication Plaza 隣の薬局に院外処方せんは集中しません。分業率は約 82% で、会員薬局の処方せん受付平均医療機関数は約 80 あります。課題に対して、個々の薬局がバラバラに 上田の薬局は調剤、OTC、健康相談と 間口が広い 患者さんや病院・診療所と対応するのではなく、薬剤 師会全体で対応している点が上田の特徴です。ですか 川渕 ここから上田の薬局の機能についてお聞きし、 らどの薬局でも同質のサービスが提供されます。 さらに上田薬剤師会と協力関係にある 「新田の風」 や長 川渕 このところ医薬分業のあり方に注目が集まり、 棟所長の取り組みについて紹介してもらいます。飯島 とくに門前薬局のあり方に疑問符が付いた部分があり 会長、井先生から上田エリアの薬局を評価するお話が ます。上田ではなぜマンツーマンではない医薬分業が ありましたが…。 達成できたのですか。 飯島 上田薬剤師会では早い時期から地域における薬 飯島 薬剤師会として以前から地域社会活動、たとえ 剤師の役割に目を向け、薬局機能の充実に努めてきま ば 「かかりつけ薬局、薬剤師を持ちましょう」 という取 した。医療機関への受診勧奨、 症状に適した OTC 選択、 り組みをしてきました。また自分のかかりつけ医も 生活指導等への適切な対応や提案を行っています。ま 持っていて、生活習慣病などの受診先が決まっていま た健康や薬に関する啓発活動も重要な役割の一つで す。院外処方せんも自宅近くの、いつも薬の相談を聞 す。本来、薬局は間口が広いのです。上田の薬局はみ いてくれる薬局へ行くようになっています。これは 30 なそのようです。 年〜 40 年の歴史の中で培われてきたものです。だから 川渕 基準薬局上田版 2)を作られていますね。これな 住民のヘルスリテラシーというか、薬局の利用の仕方、 どはまさに国が進めたい 「かかりつけ薬局」 そのもので 医師のかかり方については相当理解しているのではな すね。 いかと思います。 飯島 上田の基準薬局制度は、地域から必要とされる 川渕 長棟所長は、東京で長く麻酔科医や臨床医をされ 薬局・薬剤師の条件をポイント制にしたもので、サー ていて、その後長野県に入職されたとお聞きしました。 ビスの均一化と質の向上を目指しています。地域に密 長野県はいわゆる 「ピンピンコロリ (PPK) 」 で有名です 着し、薬剤師の職能意識、倫理観といったものを高め が、上田では住民のヘルスリテラシーは高いのですか。 ていけば信頼が生まれます。よく 「上田は特別だから 長棟 たしかに住民の健康関連の公民館活動、行政が …」 と言われますが、特別ではないと思います。 主催して地域の医療・福祉関係者と住民が意見交換す 川渕 重要項目を高い点にするなどかかりつけ薬局と るタウンミーティングなど盛んだと感じます。 して 「取り組むべきこと」が一目で分かります。結局、 川渕 私も PPK の研究に関与したのですが、長野県 地域住民から支持される薬局は進みます。こういった は老人病院が少なくて、在宅での死亡割合が高いこと 指標は重要だと思います。 が老人医療費の安さにつながっているよ うです。これに対して福祉系は充実して いるようですね。 長棟 福祉系では NPO ほか民間にかなり がんばっていただいています。 川渕 井先生は農村医療で有名な故若月 俊一院長 (佐久総合病院)の弟子筋 1)だそ うですが、上田の医薬分業をどう見てお られますか。 井 上田薬剤師会の住民の意識レベルを 上げる諸々の活動、それと地域の仲間づ くりへの取り組みは素晴らしいですね。 1) かつて 「信州に上医あり」といわれた故若月俊一院長 (佐久 総合病院)の薫陶を受けたという。若月院長の命を受けた 井医師は、1980 年代の終わりには佐久地域で 365 日 24 時間体制の在宅医療を確立させた。 図1 上田薬剤師会が目指している地域でのチーム医療・介護 (上田薬剤師会資料より) 【チーム医療】かかりつけ薬局機能を通して ・情報把握 ・生活上の問題の発見 ・専門職との連携 高齢者、要介護者 安心感(孤立感からの開放) 地域住民 【病院】 Towa Communication Plaza 【ヘルパーステーション】 3 飯島 環境の変化に対応するには、地域住民からみた 時代背景を勘案して薬局自らが進化していく必要があ ります。できれば2年、3 年先を見据えて 「選ばれる薬 現在の医療・福祉の問題点 局の仕組み」 に取り組むことが必要でしょう。そういう 意味では私たちの取り組みは出発点であると考えます。 川渕 それと国が施策として進めるジェネリック医薬 品にも積極的ですね。 飯島 国民皆保険を堅持するためにはやらなければい 要介護者となって初めて動き 出す ↓ 後追いケアーをし ているだけ けない薬剤師の使命だと思っています。 川渕 井先生はいかがですか。 井 薬局がジェネリック医薬品を出してくれるのだっ たら、薬剤師の力量で適切な選択をお願いしたいと 常々思っているところです。 川渕 2016 年度調剤報酬改定で 「かかりつけ薬剤師 (指 導料) 」 が設けられました。国としても薬局に地域包括 ①入口戦略:住民の身近な存在から重症化を防ぐ ケアで一定の役割を果たしてほしいということなので しょうね。 飯島 これは私見ですが、かかりつけ薬剤師は点数が 付いたから取り組むものではないはずです。日頃の行 動によって患者さんから 「あなたでなきゃだめだよ」 と 信頼関係が構築されて成り立つものなのだと思います。 2)上田薬剤師会認定基準薬局制度。日本薬剤師会策定の 「基準薬局」 制度が 2015 年に解消された。上田薬剤師会では、従来の基準薬局制度の理念を踏襲し、地 域に根ざした薬局の育成を図ることを目的に策定した。注目されるのは 「基準 薬局の認定」 に関して、独自の認定項目 (点数表) で 70 点以上を獲得すること としたこと。この項目には、保険調剤・薬局の体制整備、一般用医薬品等の販 売、地域貢献などの基準区分が設けられている。また認定の有効期間を 3 年 としていること、項目を 2 年毎に見直すことなど、ニーズの変化に対応する 工夫もされている。 地域包括ケアのモデル「新田の風」の キーワードは“住民と共に” 崖から転がり落ちる前に手を打つ ↓ かかりつけ薬局のチェック 住民の気くばり・こころくばり ②中間戦略:崖ではなくなだらかな坂に 老いを地域全体で 伴走していく 川渕 最初に上田における医薬分業について伺いまし たが、地域包括ケアシステムではかかりつけ薬局も含 めた地域のチーム医療がポイントになるかと思いま す。ただこれも全国津々浦々回っていろいろなモデル を見てきましたが、なかなか難しいようです。上田の ③出口戦略:終末期を住民の手に 3) は、地域包括ケアシステムのモデルとし 「新田の風」 て厚生労働省の関係者も足を運んでいて、注目されて います。その新田の風の立ち上げの中心的役割を担っ たのが井院長と飯島会長だったと聞きます。 飯島 新田の風の取り組みの経緯を申しますと、偶然、 自治会役員の時期が井先生と重なったことがこの活動 1. たとえ介護者がいなくとも ご本人が望めば 最後まで在宅で支える 2. 「いのちの選択」 を普及させる ↓ かかりつけ薬局の全面的な 協力のもと,全国展開をめざす を始めるきっかけでした。新田地区の高齢化が話題に なり、そこから 2011 年には、厚労省補助事業 「チーム 医療実証事業―上田地域ケアを支える診療所・自治会・ 4 Towa Communication Plaza 図2 現在の医療の問題点を解決するための新田の風・上田 薬剤師会協同活動のイメージ 薬局等連携チーム」 を実施したのです。地域のニーズを 度、重症化は防げます。ただ老衰や認知症は進んでい 把握するための住民アンケート調査や講演会を実施し くので、終末期に向けての坂をなだらかにしていく 「中 て、 「安心して老いを迎えられるまちづくり」 を目的と 間戦略」 も必要です。この部分を家族だけではなく、地 した活動を行いました。事業終了後は活動継続を希望 域で高齢者の生活を支え、伴走するのです。たとえば する住民の意向から、地域住民のサポート事業を行う 認知症なら軽中症期をなるべく長くする戦略です。そ 「NPO 法人新田の風」 として現在に至ります。 して 「出口戦略」 で、最後まで在宅で支えて終末期を迎 井 国は在宅推進を声高に唱えますが、現実は進んで えます。そのために元気なうちから終末期について準 いません。その原因は家庭介護力が弱まってきている 備をしてもらう、 「いのちの選択」 を普及させることも からだと思います。医療や福祉がどんなに頑張っても 重要なことと考えています。 介護者の代わりはできません。またいま盛んにいわれ 川渕 いわゆる介護の社会化ですね。それを住民参加 る多職種連携だけでも難しい。私たちが目指すのは、 でやっていこうということですね。 地域全体で高齢者や認知症患者を支える仕組みを作る 井 そうです。住民同士が支え合うためには、支援す ことにあります。それを公的支援制度を活用しながら る人もされる人も互いに顔見知りでないとスムーズに 住民参加のもとに実現していくことです。 いかないものです。そこで元気なうちは社会参加して 川渕 お二人が同じ志を持って始めたのが新田の風と 仲間を作る、介護が必要になった仲間を助ける、また いうことですね。具体的にはどんな活動をされていま 自分も必要に応じて支援を受ける、という流れを作る すか。 のが新田の風のねらいです。 飯島 活動の柱は認知症サポーターの育成、独自のエ ンディングノートの作成と普及、2014 年に誘致した小 規模多機能型居宅介護施設 「新田の家」の支援などで す。とくにこれからは認知症対応が重要だと考えてい て、薬剤師も地域の人たちの認知症早期発見につながる 3) 上田市は人口約 16 万人で長野県では 3 番目に人口が多く、中でも新田自治 会地区は同市では最も大きな自治会 (人口 3971 人、 1712 世帯) である。 「NPO 法人新田の風 (2014 年創設・井益雄理事長) 」 は、地域住民を柱にして、医師、 薬剤師、ケアマネージャー等が一体となって高齢対策、在宅介護に取り組む。 住民の要望が高かった在宅支援施設に関して、 小規模多機能型居宅介護施設 「新 田の家」 を誘致・開所した。 認知症サポーターの役割を積極的に果たしていきます。 井 これまでチーム医療に関しては、病診連携、福祉 との連携は多くの地域でやられています。そこに地域 「いのちの選択」で終末期医療の 意識を啓発 住民を巻き込んだ地域はそんなに多くはないと思いま す。この点が上田の特徴です。 川渕 「いのちの選択」 というのはいわゆるエンディン 川渕 新田の風は地域でのチーム医療・介護をまとめ グノート、終活といったことですか。 。 て推進する役割を担っていて、 「地域住民と共に」が 井 それらをもっと分かりやすくソフトなものにした キーワードだということですね。 もので、 「余命の告知、延命治療を望むか」 など、終末 井 新田の風が上田薬剤師会と協同してやろうとして 期の意思を示す簡易版シートです (図3) 。本人の意思 いることをイメージ図にしたものが図2です。いまの を知っておけば、最後の場面で身内とのトラブルを避 医療・福祉がやっていることは、いわゆる多職種連携 けることもできます。またこれをお薬手帳に挟んでお で、要介護になった人だけを何とかしようというもの いて、救急搬送時、持参する仕組みを作っています。 ですが、それだけでは手遅れになる部分も出てきます。 服薬している薬の情報と一緒に延命医療に関する意思 実際、一度病気や怪我で高齢者が入院すると、病院や 表示があれば、救急医師にとっても貴重な判断材料に 施設を転々として自宅に戻れなくなるケースが多発し なるはずです。 ているのです。これらの対処が遅れた場合、医療や福 川渕 実際、心肺停止での高齢者の救急搬送が増えて 祉にかかる費用はものすごく膨大なものとなります。 いるようで、救急現場に 「末期」 「看取り」 が増加して、 これからの人口構成を考えれば、このままにしておけ 本来の救急医療ができない状況があると聞きます。医 ば公的医療保険の持続可能性を脅かします。 療財源も厳しく、これから超高齢多死社会を迎えるわ 川渕 ではどうすれば手遅れになりませんか。 が国で、そういった仕組みは必要ですね。 井 私たちは 「入り口戦略」 と呼んでいますが、要はか 飯島 「いのちの選択」 は私たち薬剤師会も協力してい かりつけ薬局が見守り、重症化する前に隣人や友人が て、市内の薬局でも記入用紙を無料で入手できます。 すぐ医療機関に連れていくのです。そうすればある程 川渕 私も事前指定書、レット・ミー・ディサイド日 Towa Communication Plaza 5 図3 「いのちの選択」 (新田の風) 本版の翻訳を手伝ったことがありますが、これをどう 職としてできることとして、私が自治会館や公民館に 普及させるかは難しい。上田ではどうされていますか。 出かけていって、社協で出しているエンディングノー 飯島 井先生や長棟所長に講演していただくと、みん トも活用しながらお話をしているわけです。住民の方 な問題意識が高まって、 「胃ろうをやりたい人?」 と聞 たちに 「自分がどんな死に方をしたいか、家族にはどん いても誰も手を挙げない。 「救急車で運ばれて気管切開 な最期を迎えさせてあげたいか」 を問いかけて、ご自身 をされたくないから、書いておきたい」という住民が の終末ビジョンを持ってもらおうということです。 ぐっと増えます。やはりこのような住民啓発を繰り返 井 終末期医療は医療・福祉だけでは解決できない問 しやっていくことだと思います。 題を抱えています。そういう意味では住民を巻き込ん 川渕 上田では行政でもそういう取り組みがあるので で、住民があらかじめ準備しておいて意思表示するこ すか。 と、つまり終末期医療に対する国民の意識レベルを上 長棟 3 年ほど前から、公民館などで上田市社会福祉 げる、啓発するということがポイントではないかと思 協議会 (社協) の活動の一環として、終末期や看取りの います。 「いのち選択」 もそうですし、長棟所長の講演 意識啓発を行っており、私自身も 「おだやかな人生の終 活動もそういう取り組みだと思います。 わり方」 という講演を行いながら関わっています。 川渕 それは上田保健福祉事務所所長としてやられて いるのですか。 地域包括ケアシステムに関わる 薬局を目指して 長棟 そうです。考え方は井先生と全く一緒で、住民 6 の意識を改めてもらうことです。10 年ほど臨床医とし 川渕 冒頭で申し上げたように、地域包括ケアシステ て老人医療に関わって約 300 人を看取ってきた中で、 ムの構築はわが国の課題です。飯島会長、薬局や薬剤 患者さんご本人が強く胃ろうを拒んでいても、本人の 師は地域包括ケアシステムにどう参加していきますか。 意思ではなく、家族の希望で病院に連れていって胃ろ 飯島 信頼関係こそが地域包括ケアシステム参加の要 うをつくられて帰ってくる。私もそのような患者さん 諦だと思っています。地域住民や他職種から 「医薬品の を少なからず見てきましたし、そういう家族を説得で 安定供給、安全な薬物療法に薬剤師がいなければ駄目 きなかったという悔いもあります。ですから今、行政 だ」 と思ってもらえることがすべてでしょう。 Towa Communication Plaza 川渕 上田の場合はどうやっているのですか。 長棟 地域包括ケアシステムとは、地域主体でそれぞ 飯島 信頼を得るには地域社会活動が大事だという考 れの地域に合ったものを作っていくことだと考えてい えで、薬剤師が自分たちの職能以外にもいろいろな活 ます。行政としても積極的に関与していきます。その 動に参加することです。上田薬剤師会では、公民館活 一つとして、医療関係者、地域包括支援センター、居 動、地元有線放送の出演など積極的に行っています。 宅介護支援事業者の代表者を加えた 「上小地域4)在宅医 また地域の雑草刈りなどの奉仕活動にも積極的に参加 療介護連携推進協議会 (仮称) 」 を設置します。地域包括 します。こういったことが地域に溶け込み、信頼を得 ケアを推進するために必要不可欠となる多職種の連携 ていく秘訣だと考えています。 体制、管内の状況把握と連携のための協議の場を設け 川渕 井先生、地域包括ケアシステムで薬剤師に期待 ます。 することは何ですか。 川渕 地域住民の皆さんとはどのように関わりますか。 井 私も訪問診療後、薬局から患者さんに薬を届けて 長棟 地域住民の皆さんにアクションを起していただ もらうことがあります。そのときに 「この薬を飲んでい くために県民、市民を交えたプランを実施していきま ない」 「薬がこれだけ余っている」 といった電話をもら す。たとえば社協と共同開催して、地域包括ケアシス う。これこそ患者さんの生の情報であり、一番大事な テムによる地域の支えに向けて医療、介護、行政、市 ものです。医師が訪問しても聞き出せないことです。 民を交えて、これからの地域のあり方について意見交 こういう形でそれぞれの職種がそれぞれの専門家の目 換をしています。シニア世代が地域で支えられるだけ で見て情報を共有し、そのことで在宅患者を支える、 ではなく、地域を支える側として活発な活動を展開で それが本当の地域におけるチーム医療、地域包括ケア きるように、県の施策である 「人生二毛作社会づくり」 だと思っています。 に取り組んでいるところです。 川渕 医師に本音を言いにくいときでも、薬剤師なら 川渕 「人生二毛作社会」 は長野県の施策なのですね。 話しやすいことがある。その情報が大事だということ 長棟 本県では 「総合 5 か年計画〜しあわせ信州創造 ですね。 プラン〜」 を実施中で、その中の 「人生二毛作社会の仕 飯島 そういったことは店内カウンターだけではでき 組みづくり」 を策定しました。高齢者の社会参加を推進 ません。これからは在宅と OTC や医療雑貨があって、 するための組織 「長野県長寿社会開発センター」 にシニ なんでも相談できる態勢ができているのが地域包括ケ ア活動推進コーディネーターを配置し、高齢者に係る アの薬局の姿だと思います。 様々な関係機関との連携を図っています。 川渕 井先生、何をもって 「地域包括ケアシステムが 地域包括ケアシステムを どうつくっていくか 成功した」 と言うのでしょうか。 井 ゴールは 「安らかな看取り」 だと思います。それを どれだけ地域で実現できるかでしょう。そういう意味 川渕 最後に、地域包括ケアシステムをどうつくるか、 上田発のアドバイスをお聞きしましょう。 でも終末期を住民自身の手に取り戻すことにつながる 「いのちの選択」 は重要です。 井 住民と共に地域の在宅患者をどう支えていくかに 長棟 同感です。私も終末期医療について、もっと身近 ついて、医師、薬剤師、ケアマネージャー、行政が話 に感じていただきたい思いで普及啓発を行っています。 し合い、一つの輪になってチームを作ることだと思い 川渕 地域包括ケアシステムの最終ゴールは安らかな ます。医師や薬剤師の役割は、医療の専門家として患 看取り、それが多いと成功したということになるわけ 者と住民の橋渡しをすることです。問題が起こればま ですね。今日の議論をまとめると、 「地域住民と共に」 た皆で話し合う。このようなことを繰り返していけば、 の発想、そして医療・福祉専門家の役割が重要で、そ 一人暮らしの高齢者であっても、地域で終末期まで支 れは住民の立場で共に活動できるセンスと行動力が必 えていけるのではないかと思っています。 要だということ。これはまさに地域包括ケアシステム 飯島 井先生のおっしゃったことに付け加えれば、私 を成功させるカギであるようにも感じます。本日はあ たち医療や福祉職は専門家でもあるけれども、一方で りがとうございました。 一住民として、お互いに助け合うという気持ちでやれ ばうまくいく。それが新田の風で実践していることです。 (座談会収録:2016 年 3 月 2 日 上田市内にて) 4) 長野県東信地方の上田市を中心とした地域のこと。 川渕 長棟所長、行政はどう関わっていきますか。 Towa Communication Plaza 7 OPINION TALK 2016 改定を踏まえた薬局像展望 2016 調剤報酬改定を見ると、厚生労働省の「患者さんのための薬局ビジョン」に書かれ ている「立地から機能へ」 「対物業務から対人業務へ」という薬局の行動変容を促す内容に なっている。ここでは改定内容を踏まえて、これからの薬局、薬剤師のあるべき姿を聞いた。 ファルメディコ㈱代表取締役社長 医師・医学博士 一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長 狹間研至 氏 プライマリーファーマシー代表 保険薬局経営者連合会会長 山村真一 氏 2016 改定に込められた メッセージを読む! 狹間-果たすべき役割が明確になっ た。 山村-今まで通りでは評価されない ということ。 狹間 政府の規制改革会議や財政制 度等審議会での議論を受けて、これか らの薬局、薬剤師の方向性を具体的に 示す改定内容となった印象がある。そ の意味では改定に込められたメッ セージを受けとめ、いかに行動で示す かが問われてくる。 山村 同感だ。医薬分業の議論では 「患者さんのためになっていない」と いう厳しい見方が出た。改定は 「今ま 8 ビジョンだがいずれ法律に反映され きる。その意味では国が薬剤師の本気 る可能性もあり得る。 度を見ていると考える必要がある。 山村 超高齢社会が進んでいく中で 山村 同感。算定件数より中身 (質) が 地域医療も変わる。国は地域包括ケア 大事だ。算定要件を満たした薬剤師が という方向性を示しているわけで、私 患者さんからその後もずっと認めら たち薬局、薬剤師もその方向を向かな れてこそ、かかりつけ薬剤師だ。 いといけない。 狹 間 本 当 は 薬 が 患 者 さ ん の 手 に かかりつけ薬剤師・薬局の 評価 新 かかりつけ薬剤師指導料 ● 新 かかりつけ薬剤師包括管理料 ● 改 基準調剤加算 ほか ● 狹間-「薬は患者さんの手に渡って から」 がかかりつけ薬剤師のポイント。 山村-算定件数より中身(質)が重 要だ。 で通りの薬局では評価されない。これ 山 村 規 制 改 革 会 議 の 公 開 デ ィ ス からの薬局、薬剤師はこういう機能、 カッションで、町の薬局に対する評価 能力を持ってほしい」を具体的に示し をどうするかが議論された。それが今 た。グッと背筋が伸びるような認識で 回の 「かかりつけ薬局」につながった。 これを見ないといけない。 患者さんの服用薬を一元的に管理し、 狹間 明確になったのは、もはや “門 薬に関する問題解決など医薬分業の 前薬局の計数調剤”はこれ以上は評価 質的な充実を企図したもの。先進的に されないということ。インフラとして やっている薬局もあるが、点数化 (制 薬局を 5 万数千軒つくるまでは一定 度 化 )さ れ た こ と の 意 味 は 大 き い。 のインセンティブをつけてきたが、そ ハードルは厳しくとも、近い将来には れを今改定から転換する。 当たり前の業務にしていく必要がある。 山村 「健康サポート薬局」や 「患者さ 狹間 これからの薬剤師や薬局のあ んのための薬局ビジョン」には今後に るべき姿を追いかけた点数だと思う。 向けたシナリオが書かれている。それ 山村 同意を得ることへの違和感な まで漠然としていた青図が明文化さ どネガティブな声も聞こえる。 れたと言ってよい。 狹間 一方で、仮にだが、もし、算定 狹間 持続性のある社会保障制度中 件数優先で、患者さんにメリットが感 で、薬剤師、薬局のあり方をもう一回 じられないような事態になるとすれ 考えようということ。薬局ビジョンは ば、次回改定でなくなることも想定で Towa Communication Plaza 渡ってからが勝負になる。患者さんは 頭痛薬が欲しいのではなく、頭痛を治 したい。それが本当に頭痛薬で治して いい頭痛なのか、もしくは何かの副作 用で出ているのかといったことを見 るのが薬剤師。そこがかかりつけ薬剤 師のポイントだ。 山村 「飲んでみていかがですか?」 「体調で何か気になることはあります か?」と薬剤師からアクションを起し プライマリーファーマシー代表 保険薬局経営者連合会会長 山村真一 氏 ていく。患者さんのアドヒアランスを ている。残薬、多剤併用などは喫緊の 引き出していき、 「ありがたい!」 と言 課題。ここは薬局、薬剤師に担っても われる仕事を積み重ねていけば薬剤 らいたい、という点数だと思う。 師の評価が上がってくるはず。 山村 ある意味で施策側が薬剤師、薬 狹間 調剤して出した後の仕事、この 局を “再発見してくれた”のだと思い 実績が今まで薄かった。 「出した後も たい。その期待に応えるような行動を ちゃんと薬剤師が関与している」とい しなければいけない。また疑義照会の うエビデンスを蓄積していくことが 結果、処方変更という内容が求められ 重要になる。 ており、処方医とのコミュニケーショ 山 村 調 剤 基 本 料 が 細 分 化 さ れ て 山村 「こういうふうに関与して、こ ン能力も問われる。 チェーン薬局には厳しいという声。新 んな結果になった」というデータの集 狹間 現状は疑義照会の率は 4 〜 5% たに2や3に該当する薬局は大幅減 積も必要になってくる。 という報告が多い。実際に処方が変 収になる。 わったのはそのうちの 6 〜 7 割だか 狹間 「経営は順調のようだ。でも役 ら、 「2 〜 3%の処方変更のために 2 に立っているのか?」という声に集約 兆円払っているのか」と言われないた される。費用対効果が問われていると めにも行動が必要だ。 いうこと。医療は社会保障費で賄われ 山村 薬局での残薬確認をしやすく ていて、完全な自由主義経済とは違う する処方せん様式も導入された。また という認識が必要だ。 医科でも減薬のインセンティブがあ 山村 薬は一般消費財のように手に り、さらに薬局との連携による加算ま 入れる利便性と安さで話をするもの で新設されているので、情報提供を求 ではない。 められる機会も多くなるはず。いろい 狹間 あるべき姿の業務をやることが ろなチャレンジをすべきだと思う。そ 大切。医療以外の発想は評価されない。 こがポリファーマシーの議論ともつ 山村 国の期待値と薬局の “あるべき 狹間 良い意味だが 「早く、間違いな ながってくる。 姿の絵”が見えていることが大切。そ く出して、分かりやすく説明する部分 狹間 今まで何を言っても 「先生の言 の仕事」を対物とすれば、それを対人 う通りに出しておいて」と言われてき に転換していく。門前に出店して対物 た。今回の診療報酬改定では 「薬剤総 業務をやるというのは、一時的な社会 合評価調整加算・管理料」 (各 250 点) 的ニーズは満たした。国も同様に考え が設定された。減らした場合の評価を て制度に入れ込んだ。今は変化の時期。 その意味とともに知らせることが重 変化に対応してこれからの時代を乗り 要。 1) で、 「立地 切りたい。私は 「薬局 3.0」 山村 負担軽減で、繰り返し来局しや 依存から人材依存」とかねてより言っ すくなるという患者さん向けの配慮 てきた。 もできた。 山村 対物から対人、これは薬剤師に 狹間 お薬手帳についても、結局、調 とって大きな変化だと思う。処方せん 剤報酬だけを見るのではなく、診療報 をきちんとこなす、相互作用をチェッ 酬、介護、社会保障制度のあり方、さ クする、そこ迄はよくやってきた。対 らにはこの国のあり方を見た上で、逆 人業務上、必要なスキルも出てくる。 算的に考えていくことが必要。そうす 窓口でやっていたことに加える対応 れば薬剤師がやらなければというと が求められてくるので、薬剤師自身も ころ浮き彫りになる。ミクロで見てし 変わっていかないといけない。 まうと、今回の真意は分かりづらい。 薬局における対人業務の 評価の充実 改 重複投薬・相互作用 ● 防止加算 改 薬剤服用歴管理指導料 ● 改 内服薬の調剤料と一包化加算 ● ほか 狹間―「モノから人へ」の流れは次 回改定以降も変わらない。 山村-窓口でやっていたことプラス の能力が求められてくる。 狹間 国は、薬局がきっちり機能すれ ば、薬は減るし医療費は安くなると見 評価の適正化 改 調剤基本料 ほか ● 狹間―費用対効果が薄いところには もうお金を入れられない。 山村―規模の大小ではなく“あるべ き姿の絵” が見えていることが重要。 ファルメディコ㈱代表 医師 狹間研至 氏 Towa Communication Plaza 9 れを示す一つの例が健康サポート薬 山村 それがまさに 「対物から対人」 。 狹間 私が薬局で言うのは、 「だいた 。間違いなく 2018 年度改定以 狹間 地域包括ケアで多職種連携が いジェネリックに替わっている。でも 必要というが、他の職種からは 「薬剤 もう一回ゼロベースで取り組もう」 師は運んでくれる、分けておいてくれ と。それと今は不要だった薬、副作用 る (対物の)人」だと思われていること に対して使わざるを得ない薬も全部 が多いようだ。そのままでは組むのは 一緒にして薬剤費として計算されて 難しい。積極的に動いてこのイメージ いる可能性がある。保険財政上は費用 を変えないといけない。 対効果という発想も必要になってき 山村 地域包括ケアはいろいろなプ ている。 レーヤーが関わるシステム。薬剤師も 山村 たしかに医薬品費の削減では やる、やらないという選択可能な話で ジェネリック使用促進がキーになっ はなく、やらなければいけないものだ。 ているが、80 というゴールが見えて 局 2) 降に何か入ってくるはず。 在宅薬剤管理指導業務の推進 新 在宅患者重複投薬・ ● 相互作用防止管理料 ほか 狹間―薬剤師は業務のセルフイメー ジを変えるべき。 山村―薬局の在宅はもはや必須に なっている。 山村 地域包括ケアを考えると薬局 の在宅はもはや必須になっている。こ れまで外来でしか評価がなかったと ころに、在宅でも同様に評価されたの はいち早く取り組んできた薬局には プラス。 狹間 基準調剤加算も新たな要件を 満たせない場合は影響が大きい。でも それは在宅などに取り組み地域に密 着した薬局になることで算定可能に くると、フォーミュラリーの議論を始 ジェネリック医薬品の 使用促進 めていくのも必要だ。ある薬効群の中 でコストが安くてエビデンスがしっ 後発医薬品調剤体制加算要件の 厳格化 かりしているもの、たとえば PPI で 狹間―“20 - 80” という国の目標 値に向かって努力することが必要。 山村-費用対効果の観点からフォー ミュラリーの議論も始めるべき。 はこれを第一選択とするといったこ と。薬にかかわるコストダウンの責任 を薬剤師が担っていると自負するの ならこういう議論を薬剤師から提案 していく必要がある。 なるということは、 「こちらがこれか 山村 そもそも国がジェネリック使 狹間 賛成だ。医師の立場で言うと、 らの薬局のあり方ですよ」と方向性を 用促進に舵を切るまで、薬剤師が積極 院内では採用薬が決まっているので、 示していることになる。そういう意味 的に動くことでコストダウンにつな 「この薬効はこのリストから」という では調剤報酬が変わるというのは、マ がるという項目はなかった。しかし度 制限があるところで出すのは慣れて ジョリティが動くときには効果的だ 重なる診療報酬改定を経て、ジェネ きている。医療界全体で医療保険の持 と思う。 リックインセンティブもいよいよ最 続可能性意識を高めるべきだ。 山村 マンパワーが足りなかったり、 終コーナーが見えてきた。その意味で * * きっかけがなくて在宅をまだやれて 今回の改定をどう行動に移すかが次 狹間 今回のこの改正はよく考えて いなかったところは良い意味で基準 回改定で評価される。 ある。外来患者さんに早く、正確に渡 調剤に促されることにもなる。在宅の 狹間 ジェネリックには 20 - 80 最初の 1 軒というのは、たった 1 軒 という国の目標値がある。保険の中に 「しっかり評価されるためにはどうし とはいえ、ゼロと 1 は全然違うとい は当然ルールがある。ルールで決まっ ますか」と。そうすると調剤基本料 1 う重い 1 だ。 ていることは、ステークホルダーはそ を取らなければいけない。1 を取れば 狹間 十何年も見ていた患者さんが れに則った活動をするべきだ。また剤 基準調剤加算が取れる。まさに努力し 来局しなくなる。それを 「なぜ来なく 型や風味の工夫によってコンプライ たものが報われ、結果的に 「モノから なったのか」と考えるのが在宅への第 アンスが上がるといった状況をちゃ 人、立地から機能」が達成されていく 一歩になる。 「医師から指示が来ない んと把握してやることも大事だ。 ように考えられているようだ。 ので、うちにはニーズがない」という 山村 求められているのは、患者さん 山村 情報に敏感になり、世の動きを ものではない。自分の仕事は 「処方せ にとって最善の薬物治療を提供しな 見ればやるべきことが読めてくると んを貰って薬を渡すところで終わる」 がらも、医療経済上、医療費削減、効 思う。今回の改定は変化へのトリガー というセルフイメージがあるなら変 率化という観点で結果を出すこと。そ になる。 えるべきだ。 れで算定基準を引き上げた。 3) すというところは変わらない。そこで (収録:2015 年 4 月 15 日) 1) 在宅ケア機能などを備え地域医療と一体化した薬局。TCP-No.30(狹間氏インタビュー参照) 2) 健康サポート薬局の届出は 2016 年 10 月より始まる。 3) 2018 年度から 2020 年度末までのなるべく早い時期に 80%の普及を目指すとした厚生労働省の目標値。参考:100%達成すれば薬剤費の削減は 1.4 兆円 になるという試算がある。 10 Towa Communication Plaza 古川綾の あたらしい薬局像を探して…④ 薬学的専門性をもって患者に寄り添う ㈱マディア 古川 外来がん治療認定薬剤師 綾氏 測定など、そうごう薬局の中で、常に 外来がん治療を安全に施行するため 先進的な取り組みを実施してきた。ま に、がん治療に関する知識・技能の向 た、3 年前より担当制を導入した。対 上、ならびに、地域がん医療において、 象疾患を 「がん」 と 「糖尿病」 とし、それ 患者とその家族をトータルサポートで ぞれ専門性を研鑽する薬剤師が、担当 きる薬剤師の養成を目指して、日本臨 薬剤師として患者に向き合う。まさに、 床腫瘍薬学会は、2013 年度より 「外 本年 4 月より始動した 「かかりつけ薬 来がん治療認定薬剤師」の認定を開始 剤師」の先駆的取り組みである。下川 用する抗がん薬の催吐性リスクを評価 している。2015 年 5 月現在で、認定 氏は、常時約 200 人のがん患者を担 し,リスクに応じた制吐剤が処方され された薬剤師は全国で 169 名、うち 当している。 ていない場合にも処方提案する。副作 用についても確認する。分子標的治療 保険薬局に勤務する薬剤師が 9 名であ る (日本臨床腫瘍薬学会ホームページ ふるかわ あや ㈱マディア代表取締役、薬剤師。大塚製薬にて新薬開発プ ロジェクトのリード、ファーマコビジランス部室長、PwC コンサルティング、IBM ビジネスコンサルティングにて Life Science R&D practice の AsiaPacific Lead、 IMS ジャパンを経て 2010 年5月㈱マディアを設立。リ スクコミュニケーションを探求し、地域で頑張る薬剤師を 応援している。多摩大学医療・介護ソリューション研究所 シニアフェローも務める。 チャレンジ1:治療目標を理解 薬の血圧上昇は医師も確認がもれるこ より) 。総合メディカル㈱そうごう薬 がん患者のケアには、病態や処方内 とがある。例えば、肝臓がんで分子標 局天神中央店に勤務する下川友香理氏 容の把握のみならず、患者の治療目標 的治療薬を服用している患者に、血圧 もその一人である。“患者さんに寄り を理解することが最も重要であると下 について確認すると全く注意していな 添うということを大事にすると共に、 川氏は指摘する。処方が治療ガイドラ かったこともあり、毎日血圧を測定し 薬学的知識に基づいた保険薬局でのケ インで示されているレジメンと異なっ 記録するための血圧手帳を渡したこと アの方法を確立したい”と今後の目標 ている場合、例えば、点滴の投与スケ もあった。 を語られた。 ジュールが 4 週 2 休のところ、2 週 2 チャレンジ4:薬薬連携の活用 分子標的治療薬などの治療の進歩 休となっている理由として、腎機能が 患者との面談結果はレポートにまと や、治療成績の向上、副作用対策が確 低下しているので標準と異なっている め、病院の専門薬剤師を通じて、医師 立されてきたことから、通院でのがん のかなど、なぜそのような処方になっ に届けられる。また、 疑問点は連携シー 治療が増加している。外来がん治療の ているのかを理解しなければいけな トで質問をして回答を得る。書面での 患者への薬局薬剤師による支援に対し い。疑問に思う点は、処方元の病院の 連絡のみならず、直接会ってミーティ て社会からの期待がある今、下川氏は、 専門薬剤師との連携シートを活用し回 ングも実施している。薬薬連携を行う その職業モラルを原動力に、がん患者 答を得ている。 中で、病院・薬局共通で使う副作用対 と向き合うチャレンジをすることを決 チャレンジ2:患者さんに寄り添う 策についてなどのツールも共有してい 意された。 患者の治療目標を共有しなければ、 る。がんの通院治療の場合、患者はが そうごう薬局は全国約 570 店舗を 患者に寄り添うことができない。初回 ん治療と日常生活の両立が必要とな 有し、目標の一つに、専門性の向上を 面談では長時間、患者の話を聴くこと る。がん治療は精神的、身体的な苦痛 掲げている。天神中央店は、これまで もある。患者のことばには全身全霊で を伴う副作用が多く、日常生活を送り に地域住民への健康教室の開催、検体 耳を傾ける。治療に対する患者の不安 ながら継続するのはたやすいことでは を受け止め、治療継続に向け励ますこ ない。その苦痛と治療目標を理解して ともある。 いる薬剤師が、患者支援することは、 チャレンジ3:薬学的介入 治療を継続する上で不可欠である。 薬学的介入では、支持療法薬の提案 総合メディカル㈱ そうごう薬局天神中央店・下川友香理氏 が最も多い。保湿が必要なハンドフッ 天神中央店は、下川氏の他に、がん ト症候群や、医師に言えなかった口内 専門の薬剤師 3 名、糖尿病専門の薬剤 炎などについて薬局で把握した場合、 師 4 名で構成されている。患者との関 ステロイド軟膏やヘパリン類似物質 係性を大切にしていることが評価さ ローション、トリアムシノロンアセト れ、家族や友人を紹介されるケースも ニド軟膏などの追加処方を提案する。 多いそうだ。地域住民に選ばれる薬局 化学療法を実施している患者には、使 となっている。 Towa Communication Plaza 11 東和コミュニケーションプラザ 2016 年6月発行 Vol.37 編集・発行 東和薬品株式会社 〒571-8580 大阪府門真市新橋町 2-11 KK 1606.13