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医薬品インタビューフォーム 抗真菌剤

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医薬品インタビューフォーム 抗真菌剤
2006 年 12 月(第 2 版)
日本標準商品分類番号
医薬品インタビューフォーム
日本病院薬剤師会の IF 記載要領(1998 年 9 月)に準拠して作成
抗真菌剤
剤
形
クリーム剤・液剤・軟膏剤
クリーム:1g中
規
格
・
含
量
外 用 液:1mL中 塩酸ネチコナゾール10mg含有
軟
一
般
名
製造販売承認年月日
薬価基準収載年月日
発
売
年
月
日
開発・製造販売・
発 売 ・ 提 携 ・
販 売 会 社 名
塩酸ネチコナゾール10mg含有
膏:1g中
塩酸ネチコナゾール10mg含有
和
名
:塩酸ネチコナゾール
洋
名
:Neticonazole hydrochloride
製造販売承認年月日
:2003年2月17日
薬価基準収載年月日
:2003年7月14日
発
:[クリーム] 1997年4月15日
売
年
月
日
[外 用 液] 1997年4月15日
膏] 1998年6月22日
[軟
販 売 元:鳥 居 薬 品 株 式 会 社
製造販売元:久 光 製 薬 株 式 会 社
担当者の連絡先・
電 話 番 号 ・
F A X
番
号
本 IF は 2006 年 8 月作成の添付文書の記載に基づき作成した。
872655
IF 利用の手引きの概要―日本病院薬剤師会―
1. 医薬品インタビューフォーム作成の経緯
当該医薬品について製薬企業の医薬情報担当者(以下、MR と略す)等にインタビュー
し、当該医薬品の評価を行うのに必要な医薬品情報源として使われていたインタビュー
フォームを、昭和 63 年日本病院薬剤師会(以下、日病薬と略す)学術第 2 小委員会が
「医薬品インタビューフォーム」(以下、IF と略す)として位置付けを明確化し、その
記載様式を策定した。そして、平成 10 年日病薬学術第 3 小委員会によって新たな位置
付けと IF 記載要領が策定された。
2. IF とは
IF は「医療用医薬品添付文書等の情報を補完し、薬剤師等の医療従事者にとって日常業
務に必要な医薬品の適正使用や評価のための情報あるいは薬剤情報提供の裏付けとな
る情報等が集約された総合的な医薬品解説書として、日病薬が記載要領を策定し、薬剤
師等のために当該医薬品の製薬企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付
けられる。
しかし、薬事法の規制や製薬企業の機密等に関わる情報、製薬企業の製剤意図に反した
情報及び薬剤師自らが評価・判断・提供すべき事項等は IF の記載事項とはならない。
3. IF の様式・作成・発行
規格は A4 判、横書きとし、原則として 9 ポイント以上の字体で記載し、印刷は一色刷
りとする。表紙の記載項目は統一し、原則として製剤の投与経路別に作成する。IF は日
病薬が策定した「IF 記載要領」に従って記載するが、本 IF 記載要領は、平成 11 年 1
月以降に承認された新医薬品から適用となり、既発売品については「IF 記載要領」によ
る作成・提供が強制されるものではない。また、再審査及び再評価(臨床試験実施によ
る)がなされた時点ならびに適応症の拡大等がなされ、記載内容が大きく異なる場合に
は IF が改訂・発行される。
4. IF の利用にあたって
IF の策定の原点を踏まえ、MR へのインタビュー、自己調査のデータを加えて IF の内
容を充実させ、IF の利用性を高めておく必要がある。
MR へのインタビューで調査・補足する項目として、開発の経緯、製剤的特徴、薬理作
用、臨床成績、非臨床試験等の項目が挙げられる。また、随時改訂される使用上の注意
等に関する事項に関しては、当該医薬品の製薬企業の協力のもと、医療用医薬品添付文
書、お知らせ文書、緊急安全性情報、Drug Safety Update(医薬品安全対策情報)等に
より薬剤師等自らが加筆、整備する。そのための参考として、表紙の下段に IF 作成の
基となった添付文書の作成又は改訂年月を記載している。なお適正使用や安全確保の点
から記載されている「臨床成績」や「主な外国での発売状況」に関する項目等には承認
外の用法・用量、効能・効果が記載されている場合があり、その取扱いには慎重を要す
る。
目次
I. 概要に関する項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
9.溶出試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
1.開発の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
10.生物学的試験法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
2.製品の特徴及び有用性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
11.製剤中の有効成分の確認試験法 ・・・・・・・・・ 10
II. 名称に関する項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
12.製剤中の有効成分の定量法 ・・・・・・・・・・・・・・ 11
1.販売名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
13.力価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
2.一般名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
14.容器の材質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
3.構造式又は示性式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
15.刺激性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
4.分子式及び分子量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
16.その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
5.化学名(命名法) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
V. 治療に関する項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
6.慣用名、別名、略号、記号番号・・・・・・・・・・・・・3
1.効能又は効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
7.CAS 登録番号 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2.用法及び用量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
III. 有効成分に関する項目・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
3.臨床成績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
1.有効成分の規制区分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
VI. 薬効薬理に関する項目 ・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.物理化学的性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群 ・ 15
3.有効成分の各種条件下における安定性 ・・・・・・5
2.薬理作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
4.有効成分の確認試験法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3.薬理学的特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
5.有効成分の定量法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
VII. 薬物動態に関する項目・・・・・・・・・・・・・・・ 21
IV. 製剤に関する項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
1.血中濃度の推移・測定法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
1.剤形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.薬物速度論的パラメータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
2.製剤の組成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3.吸収 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
3.用時溶解して使用する製剤の調整法 ・・・・・・・・8
4.分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
4.懸濁剤、乳剤の分散性に対する注意 ・・・・・・・・8
5.代謝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
5.製剤の各種条件下における安定性 ・・・・・・・・・・8
6.排泄 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
6.溶解後の安定性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
7.透析等による除去率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
7.他剤との配合変化(物理化学的変化) ・・・・・ 10
VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項 ・ 25
8.混入する可能性のある夾雑物 ・・・・・・・・・・・・・ 10
1.警告内容とその理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
2.禁忌内容とその理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
8.製造販売承認年月日及び承認番号・・・・・・・ 31
3.効能・効果に関連する使用上の注意とその理由・・・・・・ 25
9.薬価基準収載年月日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
4.用法・用量に関連する使用上の注意とその理由・・・・・・ 25
5.慎重投与内容とその理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
6.重要な基本的注意とその理由及び処置方法 25
10.効能・効果追加、用法・用量変更追加等の
年月日及びその内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
11.再審査結果、再評価結果公表年月日及び
その内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
7.相互作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
12.再審査期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
8.副作用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
13.長期投与の可否・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
9.高齢者への投与 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
14.厚生省薬価基準収載医薬品コード ・・・・・・・・ 31
10.妊婦、産婦、授乳婦等への投与・・・・・・・・・・・ 27
15.保険給付上の注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
11.小児等への投与 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
XI. 文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
12.臨床検査結果に及ぼす影響 ・・・・・・・・・・・・・・ 27
1.引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
13.過量投与 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
2.その他の参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
14.適用上の注意及び薬剤交付時の注意(患者等
に留意すべき必須事項等) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
XII. 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
15.その他の注意・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
1.主な外国での発売状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
16.その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
XIII. 備考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
IX. 非臨床試験に関する項目 ・・・・・・・・・・・・・ 28
1.その他の関連資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
1.一般薬理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
2.毒性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
X. 取扱い上の注意等に関する項目・・・・・・・・ 30
1.有効期間又は使用期限・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
2.貯法・保存条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
3.薬剤取扱い上の注意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
4.承認条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
5.包装 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
6.同一成分・同効薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
7.国際誕生年月日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
I. 概要に関する項目
1.開発の経緯
近年、抗菌スペクトルが広く、白癬、皮膚カンジダ症、癜風などに有効で、一般的に毒性も低い
ことよりイミダゾール系抗真菌剤が広く用いられるようになっている。
このイミダゾール系化合物の中からイミダゾール環が置換ビニル基に結合した化合物に着目し系
統的に合成および抗菌スクリーニングを行なった結果、抗菌活性が強く、抗菌スペクトルも広く
かつ皮膚刺激性の低い化合物として塩酸ネチコナゾールを選び開発を行なった。
一般的に皮膚外用療法は症状等の病態に応じた剤形ごとの使い分けが行なわれており、皮膚真菌
症に対する幅広い適応を目的として、塩酸ネチコナゾールを成分に、アトラントクリーム、外用
液を 1993 年、軟膏を 1998 年に発売した。
2.製品の特徴及び有用性
(1) 国内で合成・開発されたイミダゾール系抗真菌剤である。
(2) 1 日 1 回の塗布により優れた効果が期待でき、コンプライアンス向上に寄与する。
(3) 抗菌スペクトルが広く、強い抗真菌作用を示し、白癬、皮膚カンジダ症、癜風の治療に効果を発揮
する。
(4) 皮膚糸状菌に対し殺菌活性が強く、
血清添加による MIC(最小発育阻止濃度)への影響も軽微である。
(5) モルモットにおける試験で、皮膚角質層に貯留し、長時間効果を持続する。
(6) 皮膚真菌症を対象とした臨床試験における有効率(有効以上例数/評価症例数)は、クリームで
84.2%(784 例/931 例)、外用液で 86.2%(326 例/378 例)、軟膏で 89.3%(284 例/318 例)であった。
(7) 副作用はクリームで 1.16%(69 例/5,942 例)、外用液で 2.36%(32 例/1,356 例)、軟膏で 2.02%(22 例
/1,090 例)であった。
-1-
II. 名称に関する項目
1.販売名
(1)和名
アトラントクリーム® 1%、アトラント® 外用液 1%、アトラント® 軟膏 1%
(2)洋名
ATOLANT® Cream1%、ATOLANT® Solution1%、ATOLANT® Ointment1%
(3)名称の由来
特になし
2.一般名
(1)和名(命名法)
塩酸ネチコナゾール
(2)洋名(命名法)
Neticonazole hydrochloride(INN)
3.構造式又は示性式
構造式:
4.分子式及び分子量
分子式:C17H22N2OS・HCl
分子量:338.90
5.化学名(命名法)
(E)-1-[2-methylthio-1-[2-(pentyloxy)phenyl]ethenyl]-1H-imidazole hydrochloride
-2-
6.慣用名、別名、略号、記号番号
治験番号:
クリーム・・・・・・ SS717-C
外 用 液・・・・・・ SS717-L
軟
膏 ・・・・・ SS717-O
7.CAS 登録番号
クリーム・外用液・軟膏:130726-68-0
-3-
III. 有効成分に関する項目
1.有効成分の規制区分
指定医薬品
2.物理化学的性質
(1)外観・性状
白色の結晶または結晶性の粉末で、わずかに特異なにおいがあり、味は刺激性で苦い。
(2)溶解性
溶
媒
エタノール
ジエチルエーテル
メタノール
無水酢酸
水
塩酸ネチコナゾール 1g を
溶解するのに要する溶媒量(mL)
0.9
10,000 以上
0.7
5.0
0.5
日本薬局方の
溶解度の表現
極めて溶けやすい
ほとんど溶けない
極めて溶けやすい
溶けやすい
極めて溶けやすい
(3)吸湿性
相対湿度 30∼72%まで、吸湿性はほとんど認められなかった。相対湿度 84%以上で重量増加を示
し、本品は吸湿性であった。
(4)融点(分解点)、沸点、凝固点
融点:145∼148℃
(5)酸塩基解離定数
pKa=5.8
(6)分配係数
オクチルアルコール、Britton-Robinson 緩衝液(pH2∼9)系における分配係数(オクチルアルコー
ル層中の濃度/水層中の濃度)は pH により変化し、酸性からアルカリ性になるに従い、オクチル
アルコール層への分配の増加が認められ、pH8.0 以上ではオクチルアルコール層にほとんど分配
された。
(7)その他の主な示性値
なし
-4-
3.有効成分の各種条件下における安定性
(1)安定性試験成績
保
長
存
条
期
件
保存期間
室
温
42 ヵ月
40℃
温度
結
果
性状(色、形状、におい、溶解性)、確認
試験、融点、純度試験、乾燥重量、強熱
残分および定量値とも変化は認められず
安定であった。
6 ヵ月
50℃
3 ヵ月
性状(色、形状、におい)、定量値とも変
化がなく分解物も検出されなかった。
60℃
40℃・75%RH
湿度
6 ヵ月
50℃・75%RH
3 ヵ月
60℃・75%RH
1,000 ルックス
3 カ月後に分解物が認められた。
光
3 ヵ月
1 カ月後、変色と同時に分解物が認めら
れた。
直射日光
苛
温
度
室温
6 ヵ月
性状(外観)、定量値とも変化がなく、分
解物も検出されなかった。
60℃
3 ヵ月
性状(外観)、定量値とも変化がなく、分
解物も検出されなかった。
3 ヵ月
1 ヵ月後に分解物が認められた。3 ヵ月後
含量は約 15%低下が認められた。
2日
1 日後に生成物が認められた。2 日後含量
は約 30%低下が認められた。
6 ヵ月
性状(外観)、含量とも変化がなく、分解
物も検出されず安定であった。
3 ヵ月
性状(外観)に変化はなかったが含量は 3
∼4%低下し、分解物が認められた。
中性
酷
1,000
溶液
光
ルックス
水:無水エタノー
ル
(9:1)
直射
日光
酸性
溶液
アルカリ性
溶液
1 ヵ月後に潮解し、無色澄明となったが、
成分含量に変化は認められず、分解物も
検出されなかった。
温
度
室温
0.1N HCl 試液
60℃
室温
温
度
60℃
0.1N NaOH 試液・
無水エタノール
(1:1)溶液
6 ヵ月
3 ヵ月
性状(外観)、定量値とも変化がなく、分
解物も検出されなかった。
(2)強制分解による生成物
塩酸ネチコナゾールの水溶液(1→200)を直射日光照射下で 5 日間保存および塩酸ネチコナゾール
の 0.1N 塩酸試液溶液(1→200)を 100℃で 5 日間保存で認められた。分解物は、塩酸ネチコナゾー
ルが異性化した(Z)-1-[2-メチルチオ-1-[2-(ペンチルオキシ)フェニル]エテニル]-1H-イミダゾール
である。
-5-
4.有効成分の確認試験法
(1)硫酸イオンの定性反応(日局):
本品 0.03g をとり、水 20mL を吸収液とし、酸素フラスコ燃焼法により分解し、燃焼ガスを吸収
させた後、煮沸し冷却した液は硫酸塩の定性反応(1)及び(2)を呈する。
(2)ライネッケ塩による沈殿反応:
本品 2mg を 0.01N 塩酸試液 5mL に溶かし、ライネッケ塩試液 3 滴を加えるとき淡赤色の沈殿を
生じる。
(3)赤外吸収スペクトル法:
本品および塩酸ネチコナゾール標準品につき、赤外吸収スペクトル測定法の臭化カリウム錠剤法に
より測定し、両者のスペクトルを比較するとき、同一波数(波長)のところに同様の強度の吸収を認
める。
(4)塩化物の定性反応(日局):
本品 0.6mg を水 6mL に溶かし、アンモニア試液を加えてアルカリ性とし、生じた沈殿をろ過す
る。ろ紙に希硝酸を加えて、酸性とした液は塩化物の定性反応を呈する。
5.有効成分の定量法
(製剤の項参照)
-6-
IV. 製剤に関する項目
1.剤形
(1)投与経路
経皮
(2)剤形の区分、規格及び性状
性
状
容
器
白色の乳剤性の軟膏で、わずかに特異なにおいがある。 アルミニウムチューブ
無色澄明の液で、特異なにおいがある。
ポリエチレン容器
白色∼微黄色の軟膏で、わずかに特異なにおいがある。 アルミニウムチューブ
クリーム
外用液
軟膏
(3)製剤の物性
pH
比重 d
:5.0∼7.0(クリーム・外用液)
20
20
:0.89∼0.92(外用液)
(4)識別コード
クリーム:HP251C(チューブに記載)
外 用 液:HP250L(容器に記載)
軟
膏:HP252-O(チューブ記載)
(5)無菌の有無
該当しない
(6)酸価、ヨウ素価等
該当しない
2.製剤の組成
(1)有効成分(活性成分)の含量
クリーム:1g 中に塩酸ネチコナゾール 10mg(1.0%)を含有する
外 用 液:1mL 中に塩酸ネチコナゾール 10mg(1.0W/V%)を含有する
軟
膏:1g 中に塩酸ネチコナゾール 10mg(1.0%)を含有する
(2)添加物
クリーム:ステアリルアルコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ワセリン、ポリオキシエチレン
セチルエーテル、ステアリン酸グリセリン、トリエタノールアミン、エデト酸 Na、
メチルパラベン、ブチルパラベン
外 用 液:セバシン酸ジエチル、エタノール、ラウリン酸マクロゴール、トリエタノールアミン
軟
膏:セバシン酸ジエチル、ワセリン、水酸化 Na、セスキオレイン酸ソルビタン、エデト
酸 Na、BHT
(3)添付溶解液の組成及び容量
該当しない
-7-
3.用時溶解して使用する製剤の調整法
該当しない
4.懸濁剤、乳剤の分散性に対する注意
該当しない
5.製剤の各種条件下における安定性 1)∼3)
(1) クリーム
試験項目:性状、定量、確認試験
保
長期
温度
存
条
件
保存期間
室温
42 ヵ月
40℃
6 ヵ月
50℃
3 ヵ月
保
存
形
態
結
果
アルミニウムチューブに充
填し直射日光を避けた室内
に保存
性状、確認試験および定量値
とも変化は認められず、安定
であった。
無色透明のガラス容器に充
填し保存
性状および定量値とも変化
は認められず安定であった。
アルミニウムチューブに充
填し保存
性状、確認試験および定量値
とも変化は認められず安定
であった。
60℃
湿度
40℃・75%RH
1000 ルックス
6 ヵ月
3 ヵ月
無色透明のガラス容器に充
填し保存
光
直射日光
30 日間
-8-
1 ヵ月後約 8%、
3 ヵ月後約 12%
の含量低下が認められ、TLC
および HPLC の分解物の検索
で分解物のスポットとピー
クが認められた。
10 日後約 13%、30 日後約 17%
の含量低下および変色が認
められ、TLC および HPLC の
分解物の検索で分解物のス
ポットとピークが認められ
た。
(2) 外用液
試験項目:性状、定量、確認試験
保
存
長期
温度
条
件
保存期間
室温
42 ヵ月
40℃
6 ヵ月
50℃
3 ヵ月
保
存
形
態
結
果
ポリエチレン容器に充填し、 性状、確認試験および定量値
直射日光を避けた室内に保 とも変化は認められず、安定
存
であった。
無色透明のガラスアンプル
に充填し保存
性状および定量値とも変化
は認められず安定であった。
ポリエチレン容器に充填し
保存
性状および定量値とも変化
は認められず安定であった。
60℃
40℃・75%RH
湿度
50℃・75%RH
60℃・75%RH
1000 ルックス
6 ヵ月
3 ヵ月
3 ヵ月
無色透明のガラスアンプル
に充填し保存
光
直射日光
3 時間
1 ヵ月後約 5%、
3 ヵ月後約 16%
に含量低下が認められ TLC
および HPLC による分解物の
検索で分解物のスポットと
ピークが認められた。
1 時間後約 6%、
3 時間後約 18%
の含量低下が認められ TLC
および HPLC による分解物の
検索で分解物のスポットと
ピークが認められた。
(3) 軟膏
試験項目:性状、定量、確認試験
保
長期
温度
存
条
件
保存期間
室温
42 ヵ月
40℃
6 ヵ月
50℃
3 ヵ月
保
存
形
態
結
果
アルミニウムチューブに充
填し直射日光を避けた室内
に保存
性状、確認試験および定量値
とも変化は認められず、安定
であった。
無色透明のガラス容器に充
填し保存
性状および定量値とも変化
は認められず安定であった。
無色透明のガラス容器に充
填し保存
性状および定量値とも変化
は認められず安定であった。
60℃
40℃・75%RH
湿度
50℃・75%RH
60℃・75%RH
1000 ルックス
6 ヵ月
3 ヵ月
3 ヵ月
無色透明のガラス容器に充
填し保存
光
直射日光
30 日間
-9-
1 ヵ月後約 5%、
3 ヵ月後約 10%
の含量低下および変色が認
められ、TLC および HPLC に
よる分解物の検索で分解物
のスポットとピークが認め
られた。
10 日後約 10%、30 日後約 14%
の含量低下および変色が認
められ、TLC および HPLC に
よる分解物の検索で分解物
のスポットとピークが認め
られた。
6.溶解後の安定性
該当しない
7.他剤との配合変化(物理化学的変化)
8.混入する可能性のある夾雑物 4)
2-ヒドロキシ-2 メチルチオアセトフェノン(製造原料)
(E)-1-[1-(2-ヒドロキシフェニル)-2-(メチルチオ)エテニル]-1H-イミダゾール(中間体)
9.溶出試験
該当しない
10.生物学的試験法
該当しない
11.製剤中の有効成分の確認試験法 1)、4)
(1) クリーム
1)ライネッケ塩による沈殿反応:
本品 1g(塩酸ネチコナゾールとして約 0.01g に対応する量)に水 10mL を加えよく振り混ぜた後、
クロロホルム 50mL で抽出しクロロホルム抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水する。この液
5mL をとり(残りの液は(2)に用いる)、シリカゲルカラムに毎分 1mL の流速で流した後、クロロ
ホルム 12mL でカラムを洗浄する。次にジクロルメタン・メタノール混液(4:1)20mL で流出し、
溶媒を留去する。残留物に 0.01N 塩酸試液 2mL を加え、よく振り混ぜた後、ろ過する。ろ液に
ライネッケ塩試液 3 滴を加えるとき、淡赤色をの沈殿を生ずる。
2)薄層クロマトグラフ法:
1)で得た液 20mL をとり、溶媒を留去する。残留物にメタノール 2mL を加え、よく振り混ぜた
後、遠心分離し、上澄液を試料溶液とする。別に塩酸ネチコナゾール 0.02g をメタノール 10mL
に溶かし、標準溶液とする。これらの液について、薄層クロマトグラフ法により試験を行う。試
料溶液および標準溶液 5μL ずつを薄層クロマトグラフ用シリカゲル(蛍光剤入り)を用いて調製
した薄層板にスポットする。次に無水エーテル・イソプロピルエーテル・酢酸エチル・ジエチル
アミン混液(8:6:2:1)を展開溶媒として約 10cm 展開した後、薄層板を乾燥する。これに紫外線(主
波長 254nm)を照射するとき、試料溶液および標準溶液から得たスポットは暗紫色を呈し、それ
らの Rf 値(約 0.4)は等しい。
- 10 -
(2) 外用液
1)ライネッケ塩による沈殿反応:
本品 2mL(塩酸ネチコナゾールとして約 0.02g に対応する量)をとり、溶媒を留去した後、残留
物に 0.01N 塩酸試液 20mL を加え、よく振り混ぜた後、ろ過する。ろ液 10mL をとり、クロロ
ホルム 50mL で抽出し、クロロホルム抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水する。この液 5mL を
とり(残りの液は(2)に用いる)、溶媒を留去した後、残留物を 0.01N 塩酸試液 2mL に溶かし、ラ
イネッケ塩試液 3 滴を加えるとき、淡赤色の沈殿を生ずる。
2)薄層クロマトグラフ法:
1)で得た液 20mL をとり、溶媒を留去する。残留物にメタノール 2mL を加えて溶かし、試料溶
液とする。別に塩酸ネチコナゾール 0.02g をメタノール 10mL に溶かし、標準溶液とする。こ
れらの液につき、薄層クロマトグラフ法により試験を行う。試料溶液および標準溶液 5μL ずつ
を薄層クロマトグラフ用シリカゲル(蛍光剤入り)を用いて調製した薄層板にスポットする。次に
無水エーテル・イソプロピルエーテル・酢酸エチル・ジエチルアミン混液(8:6:2:1)を展開溶媒と
して約 10cm 展開した後、薄層板を風乾する。これに紫外線(主波長 254nm)を照射するとき、
試料溶液および標準溶液から得たスポットは暗紫色を呈し、それらの Rf 値(約 0.4)は等しい。
(3) 軟膏
1)ライネッケ塩による沈殿反応:
本品 0.4g(塩酸ネチコナゾールとして約 4mg に対応する量)に 0.01N 塩酸試液 10mL を加え、水
浴中で時々振り混ぜながら 5 分間加温する。冷後、ろ過し、ろ液 2mL にライネッケ塩試液 3 滴
を加えるとき、淡赤色の沈殿を生ずる。
2)薄層クロマトグラフ法:
本品 2g(塩酸ネチコナゾールとして約 0.02g に対応する量)にメタノール 10mL を加え、水浴中
で時々振り混ぜながら 5 分間加温する。冷後、ろ過し、ろ液を試料溶液とする。別に塩酸ネチ
コナゾール 0.02g をメタノール 10mL に溶かし、標準溶液とする。これらの液につき、薄層ク
ロマトグラフ法により試験を行う。試料溶液および標準溶液 5μL ずつを薄層クロマトグラフ用
シリカゲル(蛍光剤入り)を用いて調製した薄層板にスポットする。次に無水エーテル・イソプロ
ピルエーテル・酢酸エチル・ジエチルアミン混液(8:6:2:1)を展開溶媒として約 10cm 展開した後、
薄層板を風乾する。これに紫外線(主波長 254nm)を照射するとき、試料溶液および標準溶液か
ら得たスポットは暗紫色を呈し、それらの Rf 値(約 0.4)は等しい。
12.製剤中の有効成分の定量法 1)、4)
[クリーム・外用液・軟膏]
液体クロマトグラフ法(内標準法)により定量する。
操作条件
検
出
器:紫外吸光光度計(測定波長:286nm)
カ
ラ
ム:内径約 4mm、長さ約 25cm のステンレス管に 5μm のオクタデシルシリル化
シリカゲルを充填する。
カ ラ ム 温 度:50℃付近の一定温度
移
流
動
相:メタノール・pH2.0 の 0.05M 酒石酸水素ナトリウム溶液混液(6:5)
量:ネチコナゾールの保持時間が約 13 分になるように調整する。
カラムの選定:塩酸ネチコナゾール 2mg およびネチコナゾール Z 異性体 2mg を薄めたメタノ
ール(1→2)100mL に溶かす。この液 20μL につき、上記の条件で操作すると
き、ネチコナゾール Z 異性体、ネチコナゾールの順に溶出し、その分離度が 1.5
以上のものを用いる。
- 11 -
13.力価
該当しない
14.容器の材質
クリーム:アルミニウムチューブ
外 用 液:ポリエチレン容器
軟
膏:アルミニウムチューブ
15.刺激性 5)
皮膚疾患患者を対象にクリーム剤、液剤およびそれぞれの基剤を用いたパッチテストを実施した結
果、皮膚刺激性は弱いものであった。
16.その他
なし
- 12 -
V. 治療に関する項目
1.効能又は効果
下記の皮膚真菌症の治療
白
癬:足白癬、体部白癬、股部白癬
皮膚カンジダ症:指間びらん症、間擦疹
癜
風
2.用法及び用量
1 日 1 回患部に塗布する。
3.臨床成績
(1)臨床効果 6)∼8)
1) クリーム
一般臨床試験として 546 例、比較臨床試験として 385 例の総計 931 例について臨床試験を実施
し、アトラントクリームの有効性が認められている。
2) 外用液
378 例について臨床試験を実施し、アトラント外用液の有効性が認められている。
3) 軟膏
一般臨床試験として 318 例について臨床試験を実施し、本剤の有効性が認められている。
疾
白
患
癬
名
有効率(%)(有効以上例数/評価症例)
クリーム
外用液
軟膏
足白癬
76.1
(232/305)
体部白癬
84.3
(150/178)
股部白癬
90.8
(108/119)
83.6
(61/73)
71.0
(66/93)
91.3
(63/69)
90.2
(55/61)
90.9
(40/44)
73.2
(60/82)
97.0
(64/66)
96.6
(56/58)
95.7
(22/23)
95.0
(133/140)
93.5
(43/46)
89.8
(53/59)
86.2
(100/116)
90.8
(59/65)
86.2
(326/378)
96.7
(29/30)
89.3
(284/318)
指間びらん症
皮膚カンジダ症
間擦疹
癜
風
計
84.2
(784/931)
(2)臨床薬理試験:忍容性試験
該当資料なし
(3)探索的試験:用量反応探索試験
該当資料なし
- 13 -
(4)検証的試験
1) 無作為化平行用量反応試験
該当資料なし
2) 比較試験
該当資料なし
3) 安全性試験
該当資料なし
4) 患者・病態別試験
該当資料なし
(5)治療的使用
1) 使用成績調査・特別調査・市販後臨床試験
該当資料なし
2) 承認条件として実施予定の内容又は実施した試験の概要
該当しない
- 14 -
VI. 薬効薬理に関する項目
1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群
イミダゾール系抗真菌剤
2.薬理作用
(1)作用部位・作用機序
作用部位:皮
膚
作用機序 9):
塩酸ネチコナゾールの作用機序は、完全発育阻止および殺菌的作用を示す高濃度域では直接
的細胞膜障害が、また部分的発育阻止を示す濃度域においては真菌細胞の構成成分であるエ
ルゴステロールの合成阻害が主で、その作用による膜脂質組成の変化が前者の作用を増強す
るものと考えられる。
1) 直接的細胞膜障害作用 9)
Candida albicans 細胞浮遊液に各濃度の塩酸ネチコナゾールを添加して、細胞外に放出される
K+及び PO43-の量を測定した。その結果、塩酸ネチコナゾールは 20μg/mL 以上の濃度で細胞
膜障害の指標となる細胞内 K+及び PO43-を明らかに放出させた。この作用は真菌細胞膜のリン
脂質との物理化学的相互作用に基づく直接的細胞障害と推察される。
- 15 -
2) エルゴステロール合成阻害作用 9)
Candida albicans 細胞から Ryder らの方法に準拠して不鹸化脂質を抽出し、ガスクロマトグラ
フィーにより分析を行った。その結果、部分的発育阻止作用を示す 0.08μg/mL から 5μg/mL
の濃度の塩酸ネチコナゾール存在下で培養した細胞においては全ステロール中のエルゴステロ
ールの割合は顕著に低下し、これに伴って 24-メチレン-ジヒドロラノステロールなどの前駆体
の比率が増大した。このエルゴステロール合成阻害の作用点は、メチル化ステロールの脱メチ
ル化の段階にあることが推察される。
Candida albicans のステロール合成に及ぼす塩酸ネチコナゾールの処理濃度
塩酸ネチコナゾール処理濃度
0.31μg/mL
1.25μg/mL
<0.1
<0.1
17.5
8.9
6.3
5.4
ステロール
薬剤無処理対照 a)
エルゴステロール
ジヒドロラノステロール
ラノステロール
24-メチレン-ジヒドロラ
ノステロール
発育(%)b)
92.5
<0.1
7.6
0.08μg/mL
21.7
20.2
6.6
<0.1
51.5
76.3
85.8
85.9
100
64.3
40.0
27.1
8.0
5.00μg/mL
<0.1
8.8
5.3
a):全ステロール中の割合(%)
b):乾燥重量(mg/mL 培養液)を指標とした Candida albicans 細胞の発育割合
定量分析:ガスクロマトグラフ法
(2)薬効を裏付ける試験成績
1)臨床新鮮分離菌に対する最小発育阻止濃度 10)、11)
塩酸ネチコナゾールは、皮膚糸状菌をはじめ酵母状真菌、癜風などに優れた抗真菌作用を示した。
主な臨床分離株に対する最小発育阻止濃度(MIC)は次のとおりである。
菌
MIC(μg/mL)
種
幾何平均値(最小∼最大)
Trichophyton rubrum
0.07 (0.05∼0.10)
Trichophyton mentagrophytes
0.13 (0.10∼0.20)
Microsporum canis
0.04 (0.012∼0.05)
Microsporum gypseum
0.39 (0.39)
Epidermophyton floccosum
0.012 (0.012)
Candida albicans
12.90 (6.25∼25)
Malassezia furfur*
0.58 (0.08∼5)
培地:サブロー・デキストロース寒天培地
* :イースト・ニトロゲン・ベース Tween 60 添加寒天培地
2)最小発育阻止濃度 10)、11)
真菌 33 種 71 株および細菌 22 種 27 株に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。
その結果、
塩酸ネチコナゾールは、皮膚糸状菌、黒色真菌、酵母状真菌、癜風菌、その他の病原糸状菌、好
気性グラム陽性菌および、一部の嫌気性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを示した。
なかでも、Trichopyton rubrum、Trichopyton mentagrophytes を含む皮膚糸状菌に対して強い
抗真菌活性が認められた。
真菌の MIC 測定は、サブローデキストロース(2%)寒天培地を用いた寒天培地希釈法にておこな
い、培養および判定は酵母状真菌が 27℃で 3 日後、皮膚糸状菌が 7 日後、その他の真菌は 5 日
後に判定した。ただし、癜風菌はイースト・ニトロゲン・ベースにビタミンおよび Tween60 を
- 16 -
添加した培地を用い、5 日後に判定した。好気性および嫌気性の細菌は日本化学療法学会標準法
に準じておこなった。
菌名(
)内は株数
Trichophyton mentagrophytes(3)
Trichophyton rubrum(3)
Trichophyton tonsurans(1)
MIC(μg/mL)
0.16(0.10∼0.20)
0.16(0.10∼0.20)
0.05
Microsporum gypseum(1)
Microsporum audounii(1)
Microsporum cookei(1)
Microsporum canis(1)
Aspergillus niger*(1)
0.39
0.2
0.78
0.78
Aspergillus fumigatus*(1)
Aspergillus terreus*(1)
Aspergillus flavus*(1)
0.39
0.39
Penicillium chrusogenum*(1)
Penicillium notatum*(1)
Penicillium citrinum*(1)
Mucor spinosus*(1)
Rhizopus oryzae*(1)
Fusarium moniliforme*(1)
Fonsecaea pedrosoi*(2)
Fonsecaea compacta*(2)
Cladosporium bantianum*(1)
Phialophora verrucosa*(1)
Candida albicans(6)
Candida glabrata(12)
Candida tropicalis(3)
0.78
0.78
1.56
0.39
0.78
12.5
3.12
0.39
0.10(0.05∼0.20)
0.28(0.20∼0.39)
1.56
0.39
12.49(3.12∼50)
0.93(0.39∼1.56)
15.85(6.25∼25)
Candida krusei(2)
0.78
Candida guilliermondii(1)
Candida parapsilosis(1)
Candida kefyr(1)
1)*:承認効能外菌種
3.12
25
<0.006
菌名(
)内は株数
Cryptococcus neoformans*(3)
Debaryomyces hansenii*(1)
Saccharomyses
cerevisiae*(1)
Saccharomyses ruxii*(1)
Malassezia furfur*(12)
Bacillus subtilis*(1)
Staphylococcus aureus*(3)
Staphylococcus
epidermidis*(1)
Streptococcus faecalis*(1)
Micrococcus luteus*(1)
Micrococcus
lysodeikticus*(1)
Esherichia coli*(1)
Salmonella tyhpi*(1)
Shigella flexneri*(1)
Pseudomonas aeruginosa*(1)
Klebsiella pneumoniae*(1)
Proteus vulgaris*(1)
Proteus rettgeri*(1)
Serratia marcescens*(1)
Clostridium perfringens*(1)
Clostridium botulinum*(1)
Clostridium tetani*(1)
Peptococcus magnum*(1)
Propionibacterrium
acnes*(1)
Bacteroides
thetaiotaomicron*(1)
Bacteroides vulgatus*(1)
Bacteroides gingivalis*(1)
MIC(μg/mL)
4.96(1.56∼12.5)
0.2
0.2
0.2
2.97(2.5∼5)
6.25
6.25
3.12
6.25
0.78
3.12
>100
>100
25
>100
>100
>100
>100
>100
50
3.94(1.56∼6.25)
6.25
12.5
50
50
25
50
2)複数の菌株の場合は幾何平均値として算出した。 MIC は幾何平均値
なお、>25 は 50 として算出し、<0.006 は 0.003 として算出した。
3)真菌に対する殺菌的作用と静菌的作用 10)
塩酸ネチコナゾールは、液体培地希釈法による最小発育阻止濃度および最小殺菌濃度測定の結果
より、皮膚糸状菌に対して殺菌的に作用し、酵母状真菌に対しては静菌的作用を示した。
塩酸ネチコナゾールのカンジダ酵母菌および皮膚糸状菌に対する最小発育阻止濃度と最小殺菌濃度
菌名(
)内は株数
Trichophyton rubrum(3)
Trichophyton mentagrophytes(3)
Trichophyton tonsurans(1)
Microsporum gypseum(1)
Microsporum canis(1)
Candida albicans(4)
Candida glabrata(4)
Candida tropicalis(2)
MIC(μg/mL)
MCC(μg/mL)
0.06
0.31
0.20
0.78
0.78
6.25
1.11
6.24
0.49
0.98
0.78
6.25
12.5
84.1
25
200
MIC、MCC は幾何平均値
- 17 -
4)抗真菌作用に及ぼす血清添加の影響 10)
塩酸ネチコナゾールの影響として 10%ウマ血清をサブローデキストロース(2%)寒天培地に添加
し、MIC を測定した。
菌名(
)内は株数
Trichophyton mentagrophytes(2)
Trichophyton rubrum(2)
Trichophyton tonsurans(1)
Microsporum gypseum(1)
Microsporum audounii(1)
Microsporum cookei(1)
Microsporum canis(1)
Candida albicans(3)
Candida glabrata(2)
Candida tropicalis(2)
Candida krusei(1)
Candida guilliermondii(1)
Candida parapsilosis(1)
無添加
(μg/mL)
0.14
0.14
0.10
0.39
0.20
0.78
0.78
4.96
1.10
17.7
0.78
6.25
25
MIC
10%ウマ血清添加
(μg/mL)
0.97
0.20
0.20
0.39
0.39
0.78
0.56
4.96
12.5
35.4
2.12
12.5
50
MIC は幾何平均値
培養および判定:27℃で酵母糸状菌が 3 日後、皮膚糸状菌が 7 日後及びその
他の糸状菌が 5 日後
5)抗真菌作用に及ぼすケラチン添加の影響 12)
角質層および毛髪の主構成成分であるケラチンの影響を、MIC 値の測定により検討を行った。
試験培地に SDA 培地を用い、ケラチンは 1%濃度添加した。その結果、ケラチン添加による明
らかな MIC 値の上昇が認められ、ケラチンへの吸着が示唆された。
そこで、ケラチンに吸着した塩酸ネチコナゾールの抗真菌活性を検討すべく、SDB 培地に 1%の
ケラチンを添加し、30℃で 1 時間振盪して薬剤を吸着させ、同 SDB 培地にて洗浄して薬剤吸着
ケラチンの MIC を SDA 培地にて測定し、未洗浄ケラチンの MIC と比較した。その結果、洗浄
および未洗浄共に同じ MIC 値が得られ、ケラチンへの強い吸着性と吸着した塩酸ネチコナゾー
ルの抗真菌剤としての有効性が示された。
以上のことから、塩酸ネチコナゾールは浅在性真菌症の感染部位である角質層内や毛嚢内のケラ
チンに親和性を示し、強い吸着により長時間作用して優れた治療効果が期待される。
最小発育阻止濃度に対するケラチンの影響
菌名(
)内は株数
Trichophyton mentagrophytes(2)
Trichophyton rubrum(2)
Trichophyton tonsurans(1)
Microsporum gypseum(1)
Microsporum audounii(1)
Microsporum cookei(1)
Microsporum canis(1)
Candida albicans(3)
Candida glabrata(2)
Candida tropicalis(2)
Candida krusei(1)
Candida guilliermondii(1)
Candida parapsilosis(1)
無添加
(μg/mL)
0.14
0.14
0.10
0.78
0.20
1.56
0.78
4.96
1.56
17.68
1.56
12.5
25
MIC
ケラチン添加
(μg/mL)
4.42
2.21
3.12
25
6.25
25
25
63
141.42
50
25
25
>100
MIC は幾何平均値
- 18 -
薬剤吸着ケラチンによる抗真菌活性
菌名(
)内は株数
Trichophyton mentagrophytes(2)
Trichophyton rubrum(2)
Trichophyton tonsurans(1)
MIC
未洗浄ケラチン
(μg/mL)
4.42
2.21
1.56
洗浄ケラチン
(μg/mL)
4.42
2.21
1.56
MIC は幾何平均値
6)モルモット実験的白癬に対する効果 13)、14)
Hartley 系モルモットの背部に Trichophyton mentagrophytes を接種し、明らかに感染が成立
した 5 日目より、塩酸ネチコナゾールクリーム、ビフォナゾールクリーム、塩酸ネチコナゾール
液およびビフォナゾール液を 1 日 1 回の塗布で 14 日間治療を行った。薬剤塗布量は各クリーム
製剤が 1 感染部位当たり 0.3g、液剤が 0.2mL とした。その結果、塩酸ネチコナゾールクリーム、
塩酸ネチコナゾール液共に無処置対照群や基剤群に比較して、経日的変化に明らかな病変の改善
が認められ、治療 14 日後の最終判定では統計学的にも有意な治療効果(p<0.01)が認められた。
また、同様に Hartley 系モルモットの背部に Trichophyton mentagrophytes を接種し、明らか
に感染が成立した 5 日目より、塩酸ネチコナゾール軟膏および塩酸ネチコナゾールクリームを 1
日 1 回、1 感染部位当たり 0.3g の塗布で 14 日間治療をおこなった。その結果、塩酸ネチコナゾ
ール軟膏および塩酸ネチコナゾールクリームともに無処置対照群や基剤群に比較して、経日的変
化に明らかな病変の改善が認められ、治療 14 日後の最終判定では統計学的にも有意な治療効果
(p<0.01)が認められた。なお、軟膏、クリームの間に有意な差は認められなかった。
**
##
**
##
**
##
**
##
Scheffe の多重比較
**:無処置群との比較
##:基剤群との比較
p<0.01
p<0.01
- 19 -
**
##
**
##
7)実験的白癬に対するクリーム剤前投与による感染防御効果 13)
薬 剤 前 投 与 に よ る 感 染 防 御 効 果 を 調 べ る た め 、 Hartley 系 モ ル モ ッ ト の 背 部 皮 膚 面 に
Trichophyton mentagrophytes 接種 24、48 および 72 時間前に塩酸ネチコナゾールクリームを
接種部位当たり 0.3g 塗布した。判定は菌接種 12 日後、接種部位組織小片培養陽性率にて検討し
た。その結果、菌接種 72 時間前に塩酸ネチコナゾールクリームを塗布した群においても低い菌
陽性率を示し、統計学的に明らかな感染防御効果(p<0.01)が認められた。このことから、モルモ
ット皮膚での貯留性が示唆された。
組織小片培養
陽性率
対照群
菌接種 24 時間前
塗布
菌接種 48 時間前
塗布
菌接種 72 時間前
塗布
93.3%
1.7%
3.3%
13.3%
8)モルモットの実験的白癬に対する菌陰性化率 15)、16)
Hartly 系モルモットの背部に Trichopyton mentagrophytes を接種し、明らかに感染が成立し
た 5 日目より、塩酸ネチコナゾール軟膏、塩酸ネチコナゾールクリームおよび塩酸ネチコナゾー
ル液を 1 日 1 回の塗布で 14 日間治療をおこなった。薬剤塗布量は軟膏、クリームとも 1 感染部
位当たり 0.2g、液は 0.2mL とした。その結果塩酸ネチコナゾール軟膏、塩酸ネチコナゾールク
リームおよび塩酸ネチコナゾール液ともに無処置対照群に比較して、統計学的にも有意な菌陰性
化率(p<0.01)が認められた。なお、軟膏、クリームおよび液の間に有意な差は認められなかった。
Tukey の多重比較検定
3.薬理学的特徴
アトラントは酵母状真菌、皮膚糸状菌、癜風菌、黒色真菌およびその他の糸状菌に対して広範囲な
抗真菌作用を有する。なかでも Candida glabrata や皮膚糸状菌に対してクロトリマゾールおよびビ
フォナゾールよりも強い抗真菌作用が認められ、また臨床新鮮分離の皮膚糸状菌に対しても強い作
用が認められた。さらに、ケラチン添加による MIC 測定試験より、角質層への高い親和性を示し、
抗真菌作用は血清添加による影響を受けにくく、強い活性を示す。
- 20 -
VII. 薬物動態に関する項目
1.血中濃度の推移・測定法 17)
2.0%の塩酸ネチコナゾールクリームを健常成人男子 5 名の背部にそれぞれ 5g(塩酸ネチコナゾー
ルとして 100mg)を 10 時間密封塗布した時の血漿中濃度を測定した。その結果、塩酸ネチコナゾ
ールの血漿中濃度は、塗布後 8 時間まで上昇し、以後比較的速やかに消失した。塗布後 24 時間
には検出限界以下になった。
製
剤
クリーム
Cmax(ng/mL)
Tmax(hr)
t1/2(hr)
AUC0-120
(ng hr/mL)
5.9±1.0
8.0±0
7.63
63.3±12.9
2.0%塩酸ネチコナゾールクリーム 5g(塩酸ネチコナゾールとして 100mg)を健常人 5 名の背部に
それぞれ 10 時間塗布したときの平均血漿中塩酸ネチコナゾール濃度推移(平均値±標準偏差)
(1)治療上有効な血中濃度
該当資料なし
(2)最高血中濃度到達時間
8時間
(3)通常用量での血中濃度
該当資料なし
(4)中毒症状を発現する血中濃度
該当資料なし
2.薬物速度論的パラメータ
(1)吸収速度定数
該当資料なし
(2)バイオアベイラビリティ
VII-1 参照
- 21 -
(3)消失速度定数
該当資料なし
(4)クリアランス
該当資料なし
(5)分布容積
該当資料なし
(6)血漿蛋白結合率
該当資料なし
3.吸収
吸収部位:皮膚
吸 収 率:該当資料なし
(1)吸収 18)
1)クリーム
雄ラットに 14C-塩酸ネチコナゾールクリーム 25mg/kg を経皮投与したとき、血液中放射能濃度
は投与後 8 時間より上昇し、24 時間に最高濃度に達した後、緩やかに消失した。
2)外用液
雄ラットに 14C-塩酸ネチコナゾール液 25mg/kg を経皮投与したとき、血液中放射能濃度は投与
後 1 時間より上昇し、8∼32 時間に最高濃度に達した後、緩やかに消失した。
(2)分布 18)
1)ミクロオートラジオグラム
14C-塩酸ネチコナゾールクリームおよび液を雄モルモットの除毛背部に
16 時間密封経皮投与
し、薬剤除去後の投与部位のミクロオートラジオグラムにおいて、両薬剤とも表皮部位に薬剤
が多く認められ、次いで毛包に見られた。一方、皮脂腺を含む真皮および筋層にはほとんど認
められなかったことから、経皮投与された塩酸ネチコナゾールは、表皮(特に角質層)に貯留し、
一部が経毛包ルートにより吸収されることが示唆された。
2)全身オートラジオグラフィー
14C-塩酸ネチコナゾールクリームおよび液を雄ラットの除毛背部に
12 および 24 時間密封経皮
投与(塩酸ネチコナゾールとして 25mg/kg)したとき、両薬剤群とも投与部位の皮膚、腸内容物、
胆管内胆汁、胃内容物、膀胱内貯尿、肝、腎および肺において他の組織よりも放射能が高いこ
とが示された。
4.分布
(1)血液−脳関門通過性
該当資料なし
(2)胎児への移行性 19)
妊娠 13 および 18 日目ラットに 14C-塩酸ネチコナゾールを単回皮下投与(25mg/kg)したとき、胎
児組織への放射能の分布はほぼ均一であり、特定組織への局在は認められなかった。
- 22 -
(3)乳汁中への移行性
該当資料なし
(4)髄液への移行性
該当資料なし
(5)その他の組織への移行性
該当資料なし
5.代謝 20)
(1)代謝部位及び代謝経路
塩酸ネチコナゾールのラットおよびウサギにおける代謝経路は、下図のように考えられる。
- 23 -
(2)代謝に関与する酵素(CYP450 等)の分子種
該当資料なし
(3)初回通過効果の有無及びその割合
該当資料なし
(4)代謝物の活性の有無及び比率
該当資料なし
(5)活性代謝物の速度論的パラメータ
該当資料なし
6.排泄 18)
(1)排泄部位
1)クリーム
14C-塩酸ネチコナゾールクリームを雄ラットに単回経皮投与(25mg/kg)したとき、投与後
120 時
間までの尿および糞中排泄率は、それぞれ投与量の 3.8%および 1.8%であった。また、投与後
120 時間における体内残存率(投与部位皮膚を除く)は投与量の 0.3%であった。
2)外用液
14C-塩酸ネチコナゾール液を雄ラットに単回経皮投与(25mg/kg)したとき、投与後
120 時間まで
の尿および糞中排泄率は、それぞれ投与量の 3.6%および 1.7%であった。また、投与後 120 時
間における体内残存率(投与部位皮膚を除く)は投与量の 0.2%であった。
(2)排泄率
該当資料なし
(3)排泄速度
該当資料なし
7.透析等による除去率
(1)腹膜透析
該当資料なし
(2)血液透析
該当資料なし
(3)直接血液灌流
該当資料なし
- 24 -
VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目
1.警告内容とその理由
該当しない
2.禁忌内容とその理由
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
3.効能・効果に関連する使用上の注意とその理由
該当しない
4.用法・用量に関連する使用上の注意とその理由
該当しない
5.慎重投与内容とその理由
該当しない
6.重要な基本的注意とその理由及び処置方法
該当しない
7.相互作用
(1)併用禁忌とその理由
該当しない
(2)併用注意とその理由
該当しない
8.副作用
(1)副作用の概要
1)クリーム
5,942 例中副作用が報告されたのは 69 例(1.16%)で、その主なものは皮膚炎 35 件(0.59%)、瘙
痒感 26 件(0.44%)、刺激感 11 件(0.19%)、発赤・紅斑 9 件(0.15%)等であった。(承認時及び再
審査終了時までの調査)
頻度
種類
皮
膚
0.1∼5%未満
0.1%未満
局所の刺激感、皮膚炎、発赤・紅斑、 亀裂、白癬疹
瘙痒感、湿潤、落 の増加等
注)このような症状があらわれた場合には使用を中止すること。
- 25 -
頻度不明
自家感作性皮膚炎
2)外用液
1,356 例中副作用が報告されたのは 32 例(2.36%)で、その主なものは刺激感 19 件(1.40%)、皮
膚炎 12 件(0.88%)、瘙痒感 4 件(0.29%)等であった。(承認時及び再審査終了時までの調査)
頻度
0.1∼5%未満
種類
皮
膚
0.1%未満
局所の刺激感、皮膚炎、発赤・紅斑、 亀裂
瘙痒感等
注)このような症状があらわれた場合には使用を中止すること。
3)軟膏
1,090 例中副作用が報告されたのは 22 例(2.02%)で、その主なものは皮膚炎 9 件(0.83%)、瘙痒
感 9 件(0.83%)、発赤・紅斑 5 件(0.46%)、刺激感 5 件(0.46%)等であった。(承認時及び再審査
終了時までの調査)
頻度
0.1∼5%未満
種類
皮
膚
0.1%未満
局所の刺激感、皮膚炎、発赤・紅斑、 亀裂、白癬疹
瘙痒感、湿潤、落 の増加等
頻度不明
自家感作性皮膚炎
注)このような症状があらわれた場合には使用を中止すること。
1) 重大な副作用と初期症状
該当しない
2) その他の副作用
(2)項目別副作用発現頻度及び臨床検査値異常一覧
久光製薬集計
副作用発現症例数
クリーム
外用液
軟
膏
調査症例数
副作用等の発現症例数
副作用等の発現件数
副作用等の発現症例率
副作用の種類
皮膚・付属器障害
アレルギー性湿疹
皮膚落
皮膚亀裂
皮膚剥離
皮膚湿潤
皮膚糜爛
5,942
69
101
1.16%
1,356
32
41
2.36%
副作用等の種類別発現症例(件数)率(%)
19(0.32)
3(0.22)
1(0.02)
−
8(0.13)
1(0.07)
3(0.05)
1(0.07)
−
1(0.07)
3(0.05)
−
5(0.08)
−
1,090
22
30
2.02%
適用部位障害
接触(性)皮膚炎
投与部位刺激感
投与部位疼痛
投与部位熱感
投与部位発赤
投与部位反応
64(1.08)
35(0.59)
11(0.19)
−
−
9(0.15)
26(0.44)
2(0.18)
−
−
−
−
1(0.09)
1(0.09)
22(2.02)
9(0.83)
4(0.37)
−
1(0.09)
5(0.46)
9(0.83)
31(2.29)
12(0.88)
15(1.11)
4(0.29)
−
3(0.22)
4(0.29)
(3)基礎疾患、合併症、重症度及び手術の有無等背景別の副作用発現頻度
該当資料なし
- 26 -
(4)薬物アレルギーに対する注意及び試験法
次の患者には使用しないこと
本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
9.高齢者への投与
該当資料なし
10.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
該当資料なし
11.小児等への投与
該当資料なし
12.臨床検査結果に及ぼす影響
本剤投与によると思われる臨床検査値の異常は認められなかった。
13.過量投与
該当資料なし
14.適用上の注意及び薬剤交付時の注意(患者等に留意すべき必須事項等)
(1) クリーム、軟膏
1)眼科用として角膜、結膜には使用しないこと。
2)著しい糜爛面には使用しないこと。
(2) 外用液
1)眼科用として角膜、結膜には使用しないこと。
2)著しい糜爛面には使用しないこと。
3)亀裂、糜爛面には注意して使用すること。
15.その他の注意
なし
16.その他
なし
- 27 -
IX. 非臨床試験に関する項目
1.一般薬理 21)
塩酸ネチコナゾールはイミダゾール系抗真菌剤共通の一過性の血圧下降と反射性の心拍数および
呼吸数の増加、軽度の胃粘膜障害作用がみられた以外、特別な薬理作用を示さなかった。
2.毒性
(1)急性毒性試験 22)、23)
1)LD50
(mg/kg)
使用動物
投与経路
ICR 系マウス(5 週齢)
SD 系ラット(5 週齢)
♂
♀
♂
♀
経
口
860
820
1700
1650
皮
下
970
890
>5000
4740
2)イヌ(ビーグル犬)では、塩酸ネチコナゾール皮下 200mg/kg の最大投与量でも著明な毒性症
状は認められなかった。
(2)亜急性毒性、慢性毒性試験
1)亜急性毒性 24)
ラット(SD 系 5 週齢)13 週間皮下投与では、5mg/kg/day では投与部皮膚局所にのみ変化がみ
られ、15、50mg/kg/day では投与部の出血、炎症に起因する変化がみられた。
2)慢性毒性 25)、26)
①ラット(SD 系 5 週齢)塩酸ネチコナゾール 0.5mg/kg/day、4mg/kg/day、30mg/kg/day 26
週間皮下投与(4 週間回復期間)したところ、4mg/kg/day 以上の投与で局所刺激性による
と思われる皮膚症状がみられたため、最大無影響量は 0.5mg/kg/day であると推定される。
②イヌ(ビーグル犬)を用いた 26 週間皮下投与試験において、0.5mg/kg/day 投与においても
薬剤に起因した変化の認められなかった 0.5mg/kg/day が最大無影響量であると推定され
た。
(3)生殖発生毒性試験 27)∼29)
1)妊娠前および妊娠初期投与試験(皮下投与)
ラット(SD 系 7 週齢)雄に交尾前 60 日間、(SD 系 11 週齢)雌に交尾前 14 日間および妊娠 7 日目
まで塩酸ネチコナゾールを投与した。
50mg/kg/day で、雄親に体重増加抑制および摂餌量の減少、雌親の心、脾および副腎の重量増
加がみられたが、生殖能に影響はなく、胎仔の致死作用、発育抑制および催奇形成作用もみられ
なかった。
2)胎仔の器官形成期投与試験(皮下投与)
①ラット(SD 系 10 週齢)に妊娠 7 日目から 11 日間塩酸ネチコナゾールを投与したところ、
50mg/kg/day で腰助の発現頻度が増加したが、催奇形性は認められなかった。母動物に対す
る最大無影響量は 50mg/kg/day と考えられた。
- 28 -
②ウサギ(日本白色種ウサギ)に妊娠 6 日目から 13 日間塩酸ネチコナゾールを投与したところ、
50mg/kg/day で催奇形性作用と考えられる変化が認められた。最大無影響量は 15mg/kg/day
と考えられた。
3)周産期および授乳期投与試験(皮下投与)
ラット(SD 系 10 週齢)に妊娠 17 日目から分娩 21 日間まで 26∼27 日間塩酸ネチコナゾールを投
与した。50mg/kg/day 投与では母体に軽度な毒性を示すものの新生仔に影響を及ぼさなかった。
15mg/kg/day および 5mg/kg/day 投与では、母体および新生仔とも影響を認めなかった。
したがって、最大無影響量は母体 15mg/kg/day、次世代については 50mg/kg/day と考えられた。
(4)その他の特殊毒性試験
1)抗原性試験 30)
モルモット(Hartley 系雄性モルモット)を用いて、ASA 反応および PCA 反応試験を行なった結
果、塩酸ネチコナゾールは抗原性を示さなかった。
2)光感作性試験 31)
モルモット(Hartley 系雌性モルモット)を用いて、塩酸ネチコナゾールクリーム・液の光感作性
試験を行なったが、いずれの製剤にも光感作性は認められなかった。
3)変異原性試験 32)、33)、34)
細菌、ハムスター肺繊維芽細胞を用いた試験およびマウスの小核試験において変異原性は認めら
れなかった。
4)局所刺激試験 35)、36)
ウサギの背部皮膚を用いた試験の結果、製剤の皮膚刺激性は弱く、またラット 35 日間の連続塗
布試験においても問題となる刺激性は認められなかった。
- 29 -
X. 取扱い上の注意等に関する項目
1.有効期間又は使用期限
使用期限
クリーム: 3 年(外箱・チューブに記載の期限内に使用すること)
外 用 液: 3 年(外箱・容器に記載の期限内に使用すること)
軟
膏: 3 年(外箱・チューブに記載の期限内に使用すること)
2.貯法・保存条件
クリーム:遮光、室温保存
外 用 液:遮光、気密容器、室温保存、火気を避けて保管のこと。
軟
膏:遮光、室温保存
3.薬剤取扱い上の注意点
外 用 液:プラスチックや塗料を溶かすことがあるので注意すること。
4.承認条件
該当しない
5.包装
クリーム:10g×20、10g×50
外 用 液:10mL×20、10mL×50
軟
膏:10g×20
6.同一成分・同効薬
同一成分薬:なし
同
効
薬:ビフォナゾール
7.国際誕生年月日
なし
- 30 -
8.製造販売承認年月日及び承認番号
承認年月日
クリーム:2003 年 2 月 17 日
外 用 液:2003 年 2 月 17 日
軟
<参考>
アトラントクリーム、アトラント液、アトラント軟膏として
承認年月日
クリーム:1993 年 7 月 2 日
:1993 年 7 月 2 日
液
膏:2003 年 2 月 17 日
膏:1998 年 3 月 5 日
承認番号
軟
クリーム:21500AMZ00054
承認番号
外 用 液:21500AMZ00050
軟
膏:21500AMZ00053
クリーム:(5AM)364
液
軟
:(5AM)365
膏:21000AMZ00357000
9.薬価基準収載年月日
クリーム:2003 年 7 月 4 日
外 用 液:2003 年 7 月 4 日
軟
膏:2003 年 7 月 4 日
<参考>
アトラントクリーム、アトラント液、アトラント軟膏として
クリーム:1993 年 8 月 27 日
液
:1993 年 8 月 27 日
膏:1998 年 6 月 19 日
軟
10.効能・効果追加、用法・用量変更追加等の年月日及びその内容
該当しない
11.再審査結果、再評価結果公表年月日及びその内容
再審査結果公表年月日:2000 年 12 月 21 日
内容:薬事法第 14 条第 2 項の各号の承認拒否事由のいずれにも該当しない
12.再審査期間
終了
13.長期投与の可否
該当しない
14.厚生省薬価基準収載医薬品コード
クリーム:2655711N1034
外 用 液:2655711Q1030
軟
膏:2655711M1039
<参考>
アトラントクリーム、アトラント液、アトラント軟膏として
クリーム:2655711N1026
液
軟
:2655711Q1022
膏:2655711M1020
15.保険給付上の注意
該当しない
- 31 -
XI. 文献
1.引用文献
1) 久光製薬株式会社 : 製剤の安定性および確認試験に関する試料(社内資料)
2) 久光製薬株式会社 : 長期保存試験に関する資料(社内資料)
3) 久光製薬株式会社 : 苛酷試験に関する資料(社内資料)
4) 久光製薬株式会社 : アトラント軟膏の規格及び試験方法に関する資料(社内資料)
5) 久光製薬株式会社 : 抗真菌剤 SS717 の皮膚安全性試験(第ニ報)
−皮膚疾患患者におけるパッチテスト及び光パッチテスト−(社内資料)
6) 山本 泉 他
: 抗真菌剤 SS717 製剤の皮膚真菌症に対する臨床効果
基礎と臨床 25(5)1605,1991
7) 香川三郎
他
: 皮膚真菌症に対する SS717 クリームの臨床評価
−ビフォナゾールクリームを対照とした無作為化比較試験−
基礎と臨床 25(7)2411,1991
8) 久光製薬株式会社 : 臨床試験の試験成績に関する資料(社内資料)
9) 前橋一紀
他
: 新規ビニル系イミダゾール剤 SS717 の抗真菌作用メカニズム
真菌誌 31(4)343,1990
10) 浅岡健光
他
: イミダゾール系新抗真菌剤 SS717 に関する研究
第1報 In vitro 抗真菌活性
CHEMOTHERAPY 38(8)753,1990
11) 久光製薬株式会社 : イミダゾール系抗真菌剤 neticonazol(SS717)の Malassezia 属酵母に対す
る in vitro 抗菌活性(社内資料)
12) 久光製薬株式会社 : イミダゾール系抗真菌剤 SS717 の基礎的研究
In vitro 抗菌活性に及ぼす角質層成分の影響(社内資料)
13) 浅岡健光 他
: イミダゾール系新抗真菌剤 SS717 に関する研究
第二報モルモットの実験的白癬に対する治療効果と薬剤前投与による感染
防御効果
CHEMOTHERAPY 38(8)768,1990
14) 久光製薬株式会社 : モルモット背部実験白癬に対する SS717 軟膏の用量比較試験(社内資料)
15) 久光製薬株式会社 : 1%SS717-C 及び 1%SS717-O の生物学的同等性試験(社内資料)
16) 久光製薬株式会社 : 1%SS717-L 及び 1%SS717-O の生物学的同等性試験(社内資料)
17) 久光製薬株式会社 : 抗真菌剤 SS717 のヒトにおける第一相試験(社内資料)
18) 矢野憲一
他
: Neticonazole の体内動態(第 3 報)
ラット、モルモットにおける経皮投与後の吸収、分布および排泄
薬物動態 6(4)553,1991
19) 矢野憲一
他
: Neticonazole の体内動態(第 2 報)
ラットにおける胎仔、乳汁移行性および反復投与試験
薬物動態 6(4)535,1991
20) 久光製薬株式会社 :SS717 を経口及び皮下投与時のラットあるいはウサギにおける代謝
21) 川崎博己
他
(社内資料)
: 抗真菌剤
(E)-1-[2-Methylthio-1-[2-(pentyloxy)phenyl]ethenyl]-1H-imidazole
hydrochloride(SS717)の一般薬理作用
応用薬理 42(1)21,1991
- 32 -
22) 久光製薬株式会社 : SS717 のマウスおよびラットにおける経口および皮下急性毒性試験
−最終報告書−(社内資料)
23) 久光製薬株式会社 : ビーグル犬における皮下単回投与急性毒性試験(社内資料)
24) 久光製薬株式会社 : SS717 のラットにおける 13 週間皮下亜急性毒性試験および 4 週間回復性
試験(社内資料)
25) 伊藤隆太 他
: 抗真菌剤 SS717 のラット 26 週間皮下投与慢性毒性試験
基礎と臨床 24(13)6693,1990
26) 久光製薬株式会社 : SS717 のイヌにおける 26 週間反復皮下投与毒性試験及び 4 週間回復試験
(社内資料)
27) 久光製薬株式会社 : SS717 のラットにおける妊娠前および妊娠初期皮下投与試験(社内資料)
28) 久光製薬株式会社 : SS717 のラットにおける周産期および授乳期皮下投与試験(社内資料)
29) 伊藤隆太
他
: 抗真菌剤 SS717 のラットおよびウサギにおける生殖・発生毒性試験
−器官形成期投与試験−
基礎と臨床 24(13)6753,1990
30) 久光製薬株式会社 : SS717 のモルモットにおける抗原性試験(社内資料)
31) 久光製薬株式会社 : SS717 製剤(クリーム、液)のモルモット光毒性、光感作性および皮膚感作
性試験(社内資料)
32) 久光製薬株式会社 : SS717 の細菌を用いる復帰変異試験(社内資料)
33) 久光製薬株式会社 : SS717 の哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験(社内資料)
34) 久光製薬株式会社 : SS717 のマウスを用いた単回投与による小核試験(社内資料)
35) 久光製薬株式会社 : SS717 製剤(クリーム、液)および各劣化品のウサギ皮膚一次刺激性試験
(社内資料)
36) 石塚修司 他
: 抗真菌剤 SS717 製剤(クリームおよび液)のラット 35 日間反復塗布試験
基礎と臨床 24(13)6718,1990
2.その他の参考文献
該当資料なし
- 33 -
XII. 参考資料
1.主な外国での発売状況
なし
- 34 -
XIII. 備考
1.その他の関連資料
なし
- 35 -
MKI0.3−0612G
ATL DB002B
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