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PDFファイル 2. - 大阪大学ラジオアイソトープ総合センター

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PDFファイル 2. - 大阪大学ラジオアイソトープ総合センター
ま え が き
大阪大学ラジオアイソトープ総合センターの 2005 年度利用年報をお届けします。こ
の年報は 2005 年 4 月から 2006 年 3 月までの1年間、センターを利用して行なわれた
研究の成果を記したものです。吹田本館利用 24 件のうち 18 件の報告、豊中分館利用
14 件のうち 13 件の報告からなっています。ここに収録されている研究が、当センター
を利用してさらに発展することを願うものであります。
大阪大学には 22 の放射性同位元素等使用施設があり、合計 4600 名を越す放射線
業務従事者が登録され利用しています。当センターは、全学の放射線安全管理、安
全教育を担う一方、各種の放射線実験設備と装置を整備し、各部局へ共同利用の場
を提供して、放射線関連の研究の推進に寄与しています。年報からもわかるように、放
射線の高度利用を進めるための研究、放射性同位元素を利用した応用研究、放射線
安全管理に関連した研究、教育、講習が行なわれています。基礎科学の分野から社
会関心の高い分野まで、広い領域にわたって学際的な研究が行なわれていることが
わかります。
大阪大学は、常に先進的・独創的な研究を世界に発信してきました。当センターも、
共同利用施設として研究者のニーズにこたえ、学際的な総合分野での一大拠点とな
るべく、施設の充実、円滑な運営をはかってまいります。皆様方の御協力をお願いい
たします。
2006年6月
大阪大学ラジオアイソトープ総合センター
センター長
畑澤 順
目
次
まえがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i
畑澤
順
低線量・低線量率放射線の影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
野村大成・中島裕夫・本行忠志・梁
山口喜朗・斎藤
治子・足立成基
直
メスバウアー分光・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
八木清仁・川瀬雅也・森本正太郎
真核生物の遺伝子発現機構に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
西川淳一・長田茂宏
高エネルギー粒子線照射場のキャラクタリゼーションに関する研究・・・・・・・・7
飯田敏行・加藤裕史・佐藤文信・口丸高弘・東野優
清水喜久雄
イオンビーム照射における出芽酵母の突然変異誘発に関する基礎研究・・・・・・・9
西嶋茂宏・松尾陽一郎・清水喜久雄
Pd-Ag合金の水素吸蔵時の空孔形成現象・・・
・・・・・・・・・・・・・10
白井泰治・荒木秀樹・水野正隆
陽電子消滅法によるソフトマテリアルの評価・・・・・・・・・・・・・・・・・12
泉
佳伸・三町博子・秋山庸子・武田真一・西嶋茂宏
アンチコンプトン同時計数法を用いた低バックグラウンド計測・・・・・・・・・14
宮丸広幸
工学部未臨界実験室のトリチウム汚染の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・15
吉岡潤子
工学研究科RI実験室排水のγ線測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
吉岡潤子
単一細胞の放射線照射効果に関する研究 ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・18
飯田敏行・加藤裕史・佐藤文信・口丸高弘・東野
優
藤田智久・清水喜久雄
電磁界と電離放射線の微生物に対する相乗作用・・・・・・・・・・・・・・・・20
中岡保夫・清水喜久雄
-ⅲ-
L1 0 型 金 属 間 化 合 物 TiAl に お け る 不 純 物 拡 散 の 異 方 性 と 拡 散 機 構 の 解 明 ・ ・ ・ ・ ・ 2 1
中嶋英雄・仲村龍介
DNAポリメラーゼの生化学的解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
清水喜久雄・細田洋史・横山和也・松尾陽一郎
環境放射能測定に関する基礎的検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
山口喜朗・斎藤
直
二重ベータ核分光による中性微子質量および右巻き相互作用の検証・・・・・・・25
岸本忠史・阪口篤志・味村周平・小川
硲
泉・松岡健次
隆太・梅原さおり・岸本康二・市原佳代子
向田賢太郎・平野祥之・小林哲也・柳澤明希子・村山理恵
伊田祥吾・今別府デニス幸生・庄野暢晃・坪田悠史・吉田斉
放射性核種を用いた物性研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
篠原
厚・高橋成人・佐藤
渉・吉村
崇・笠松良崇
遠山有二・二宮和彦・齋宮芳紀・北本優介・雑賀大輔
杉浦啓規・松尾啓司・高部智正・田代祐基・中嶋啓二
中塚敏光・猪飼拓哉・大江一弘・越智憲崇・栗林隆宏
重核・重元素の核化学的研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
篠原
厚・佐藤
渉・吉村
崇・高橋成人・遠山有二
二宮和彦・高部智正・田代祐基・中嶋啓二・中塚敏光
猪飼拓哉・大江一弘・越智憲崇・栗林隆宏
イオン輸送性蛋白質とその制御因子の機能解析・・・・・・・・・・・・・・・・32
桑原直之・佐野由枝・松下昌史・三井慶治・金澤浩
大 腸 菌 mRNA エ ン ド リ ボ ヌ ク レ ア ー ゼ の 解 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 4
岩本
明・古賀光徳・濱田崇宏・多田康子・米崎哲朗
植物細胞機能の解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
高木慎吾
損傷DNAの分子認識に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
岩井成憲・明樂里香・藤原芳江
環境中の放射能動態の基礎的検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
斎藤
直・山口喜朗
メスバウアー分光・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
斎藤
直・那須三郎・川瀬雅也・森本正太郎
-ⅳ-
医 学 部 機 能 系 実 習 (R I )・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 2
本行忠志・石井
裕・中島裕夫・梁
治子
医学系研究科放射線取扱実習・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
青田聖恵・田上真次・谷川裕章・小田茂樹
基礎セミナー科学のなぞと不思議
ⅠⅠ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
宮丸広幸・1,2年次学生約20名
理学部化学系放射化学学生実習・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
篠原
厚・高橋成人・佐藤
渉・吉村
崇・二宮和彦
斎宮芳紀・北本優介・3年次学生80名
理学部物理学実験”放射線測定”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
福田光順・三原基嗣・清水
俊・武智麻耶・松宮亮平
長友傑
基礎セミナー”原子核を見る”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
松多健策・福田光順
基礎工学部電子物理科学科物性物理科学コース3年次物性実験「放射線測定」・・48
半沢弘昌・3年次学生(60名)
平成17年度共同利用一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
-ⅴ-
低線量・低線量率放射線の影響
Low dose and low dose rate effects of radiation
(医学系研究科・放射線基礎医学)野村大成、中島裕夫、本行忠志、
梁 治子、足立成基、
(ラジオアイソトープ総合センター)山口喜朗、斎藤 直
(Dept. Rad. Biol. Med. Genet., Fac. Med.) T. Nomura, H. Nakajima, T. Hongyo,
H. Ryo, S. Adachi
(Radioisotope Center) Y. Yamaguchi, T. Saito
低線量放射線(<0.2 Gy)の発がんリスクは、比較的高線量域での高線量率、低線量率被曝による線量効果曲線(LQ
モデル)により、UNSCEAR, BEIR, NCRP, ICRP 等は、低減係数(線量率効果係数)を求め、リスク推定に用いてきた。最
近の動向をみても、線量・線量率効果係数(Dose and Dose Rate Effectiveness Factor, DDREF)は白血病で 2、固型腫
瘍で 3 を超えることがないとされ、
0~2.0 Gy 域では固型腫瘍に対し 1.43、
白血病に対し 1.58 と報告されている
(UNSCEAR,
1993, 2000)。
本研究は、ヒト臓器・組織の中でも放射線に高い、あるいは、致命的な感受性を示す臓器であり、ヒトの成長に最も重
要な役割をもつ甲状腺組織と骨髄細胞を、拒絶反応をなくした重度複合免疫不全(severe combined immunodeficient)
マウス(SCID マウス)に移植、長期維持することにより、人体組織に及ぼす放射線の影響を定量的に評価する新たな研究
システムの開発するのを目的とする。本システムの開発により、低線量・低線量率放射線被曝の人体リスクを動物実験や、
生体とかけはなれた培養細胞でなく、ヒト臓器・組織を用い、正確に把握することが可能となったため、DDREF を求める
ことにより、ヒト大量・高線量率被ばくの調査資料より、ヒト低線量・低線量率被ばくによる障害を正確に推定できる。
がん、白血病に関しては、これまでマウスを用い調査研究してきた低線量・低線量率実験および継世代的影響研究成果を
ふまえ、現在、我が国の放射線審議会でも討議されている医療被曝、宇宙飛行士、通常飛行乗務員への低線量放射線のリ
スク推定と防護の資料を提供できる。
本年度成果―成果発表
コンピュータ制御した137Csシミュレーター(RIセンター)を用い、線量率 1.07Gy/min、および 0.23 mGy/min(ガンマセ
ル、医学部)で、1週間毎に 1Gyのγ線照射を行い、貴重な成果を 16 年度に得た(16 年度成果報告書参照)。
17 年度はその成果を総括し、以下の学会誌、国際学会等で公開した。
発表論文
1. Katsumi Furitsu, Haruko Ryo, Klaudiya G. Yeliseeva, Le Thi Thanh Thuy, Hiroaki Kawabata, Evelina V.Krupnova,
Valentina D. Trusova, Valery A. Rzheutsky, Hiroo Nakajima, Nikolai Kartel, Taisei Nomura. Microsatellite
mutations show no increases in the children of the Chernobyl liquidators. Mutat. Res., 581: 69-82, 2005.
2. Taisei Nomura. Proposals and Perspectives for Research on Radiation Effects: Underlying Problems In: Low
Dose Radiation Exposures and Bio-Defense System, pp. 1-5, I.E.S., Rokkasho, 2005.
3. Taisei Nomura. Transmissible Genetic Risk Causing Tumours in Mice and Humans
Royal Society of Chemistry、2005, in press.
4. 野村大成 安全の哲学 ISOTOPE NEWS 616:1-2、2005
5. 野村大成
放射能被曝と発がん 綜合臨床 55:434-439、2006
口頭発表
1. 野村大成
日本実験動物技術者協会関西支部総会 基調講演
“マ ウ ス と 私” 大阪大学 銀杏会館 3. 26. 2005
2. 野村大成
HAB研究機構学術年会 特別講演
ヒト臓器・組織を用いた安全性評価システムの開発 昭和大学講堂 5. 20. 2005
3. 野村大成
インド国立科学アカデミー第 75 回年会 学士院外国人会員受章講演
SCID Biotechnology to Maintain Human Organs and Tissues for Medical Sciences
12月7-10日、2005年 インド: Pondicherry 大学 (Pondicherry, India)
4. 野村大成
医薬基盤研究所連携フォーラム2005大阪
疾患モデル動物研究プロジェクト 千里中央ライフサイエンスセンター 12 月 19~20 日
5. 野村大成
彩都シンポジューム TOKYO
疾患モデル動物研究プロジェクト 日本貿易振興機構(ジェトロ)本部 1.20.06
6. 野村大成
バイオメヂカル研究のためのヒト組織維持 SCID バイオテクノロジー
SCID Biotechnology to Maintain Human Organs and Tissues for Biomedical Research
インド: TATA 記念研究所 (Mumbai, India) 12月10日、2005年
7. 野村大成
第 7 回国際 DNA 修復、染色体、がん会議 特別講演
TRANSGENERATIONAL TRANSMISSION OF GENETIC RISK CAUSING TUMOURS AND MALFORMATIONS IN MICE AND HUMANS
University of St. Andrews Bute Medical School(St. Andrews 大学医学部) 6月5―8日、2005年
8. 野村大成
第 3 回父親由来の発生毒性国際会議 特別講演
Transmissible Genetic Risk Causing Tumours in Mice and Humans ブラッドフォード大学(Bradford, UK)
7月31日―8月3日、2005年
9. 野村大成
第 28 回英国環境変異原学会
U. K.: 8月3―4日、2005年 ブラッドフォード大学(Bradford)
10. 野村大成
環境リスク管理のための人材養成-健康リスク評価論 特別講義
“環境汚染有害因子の次世代リスク” 中之島センター 10.6.2005
11. 野村大成
全国被爆二世団体連絡協議会 基調講演
“放射線の次世代への影響” 自治労会館(広島県広島市西区横川新町)1月21-22日、2006年
12. 野村大成 第 4 回OPTAセミナー
“胎内被曝-夢千代日記より”
中之島センター 1. 18. 2006
13. 野村大成 環境リスク管理のための人材養成-健康リスク評価論 特別講義
“放射能被爆と発がん”
中之島センター 2.16.2006
14. 野村大成 Vietnam-Japan Students' Scientific Exchange Meeting 2005 特別講演
“Concern for Transgenerational Effects of Dioxin - Lesson of Viet Nam War”大阪大学シグマホール 9.28, 2005
15. 野村大成
放射線疫学シンポジウム、
“Dose Rate Effects on Radiation Carcinogenesis” 東京フォーラム 3. 9. 2005
16. 野村大成
第3回大阪臨床 PET 研究会 特別講演
“低線量・低線量率被曝の影響”
ワシントンホテル 8. 20. 2005
17. 野村大成 環境国際シンポ2005 特別講演
“Proposals and Perspectives for the Research on Radiation Effects -Problems Underlying Research on Radiation Effects” 環境科学研究所 六ヶ所 9.28.05
メスバウアー分光
Mössbauer Spectroscopy
(薬) 八木清仁、川瀬雅也、(基礎工) 森本正太郎
(Graduate School of Pharmaceutical Sciences) K. Yagi and M. Kawase
(Graduate School of Engineering Science) S. Morimoto
本研究課題においては、57Fe、119Sn、151Euメスバウアー分光により、薬学研究への応用が期待される基礎研
究として、(1)細胞培養基材候補としてのガラス系材料、(2)錠剤成型への賦形剤候補としての粘土鉱物など層
状構造系材料などの研究を計画していた。
本年度は線源購入および実験装置の不具合から、計画していた実験を進展させることができなかった。
【論文発表】
なし
【口頭発表】
なし
真核生物の遺伝子発現機構に関する研究
Regulation mechanisms of gene expression in eukaryotes
(薬学研究科)西川淳一、長田茂宏
(Graduate School of Pharmaceutical Sciences) J. Nishikawa, S. Osada
20世紀に人類は10万種類を超える化学物質を創出し、我々はその恩恵を享受してきた。しかし、これ
ら人為的に作られた化学物質は、発癌性や内分泌攪乱作用など、当初予想することが出来なかった弊害をも
たらし、ヒトを含めた生態系に脅威を与えている。特に、内分泌攪乱物質は生物の生態系に影響を及ぼし、
カモメやワニなどの野生生物の生殖機能を低下させ、ヒトに対する様々な影響も危惧されている。内分泌攪
乱物質は、生体の内分泌系に影響を与える化学物質の総称と考えられているが、その作用点や作用機構に関
しては不明な点も多い。内分泌系は多細胞生物の全体的なバランスを調節する上でも重要なシステムであり、
非常に精巧で複雑な系として成り立っている。化学物質がこのような複雑な系に対し影響を与える場合、そ
のエンドポイントは多岐にわたり、どのような物質を内分泌攪乱物質と定義するかについては議論の余地が
あるところである。
生物の内分泌系は、主にホルモンと呼ばれる微量の生理活性物質とその標的器官に存在する受容体によっ
て構成されている。その中でも、低分子で脂溶性の生理活性物質の作用は、主に核内受容体と呼ばれる転写
因子群によって仲介されている。核内受容体は、リガンド作動性の転写調節因子であり、様々な生理活性物
質に対応した数多くの受容体が存在している。これらの受容体群は遺伝子スーパーファミリーを形成してお
り、相互に機能、構造に類似点を持っている。核内受容体のリガンドとなる物質には、ステロイドホルモン
や甲状腺ホルモン、脂溶性ビタミンの活性化体などが含まれる。核内受容体は、これら生理活性物質のシグ
ナルを伝達することにより、生体の様々な営み(細胞の増殖や分化、生殖、代謝、恒常性の維持等)を制御
しており、重要な生物学的機能を担っている。近年、ヒトゲノムの解析によりヒトのゲノム上には48種類
の核内受容体が存在することが明らかになってきた。それらの中には、ステロイドホルモン受容体のような
リガンド既知の受容体だけでなく、オーファン受容体に分類される受容体も数多く存在している。リガンド
既知の受容体のほとんどは、内分泌系の機能維持に重要な役割を果たしていることなど多くの事が分かって
きているが、オーファン受容体に関しては、リガンドとなる物質の存在やその機能、また転写活性化機構に
関しても不明な点が多く、その全容の解明は未だなされていない。
これまでに、内分泌攪乱物質をはじめとして生体外物質が核内受容体を介し、生体内でホルモン様作用を
示すとの報告は多くある。特に、環境中に残留する化学物質の野生生物に対する生殖影響から、核内受容体
のなかでも性ホルモンの受容体であるエストロゲン受容体やアンドロゲン受容体が注目を集めてきた。しか
しながら、前述したように核内受容体遺伝子はスーパーファミリーを形成し、数多くの関連受容体が存在し、
これら全てが様々な化学物質の標的となりうる可能性を秘めている。また、この受容体ファミリーの機能の
多様性を考慮すれば、生殖毒性に限らず、化学物質が核内受容体を介して、様々な毒性を発現する危険性が
ある。以上のような観点から、我々は内分泌撹乱物質の様々な核内受容体への影響を調べた。
その結果、多くの有機スズ化合物が、RXR や PPAR に非常に強いアゴニスト作用を有することが分かった。
有機スズ化合物は、船体に付着して船の速度を低下させるフジツボやカキ殻を殺す防汚剤として使用されて
きた。非常に効果が強かったことで、世界全体で船舶の運航に必要な燃料費と船体クリーニング費など、莫
大な費用が節約されたと言われている。しかし、1970年代の後半から1980年代の始めにかけてヨー
ロッパで貝類やカキの養殖に悪影響を及ぼすことが判明し、有機スズ化合物の生態影響に関しては古くから
研究がなされてきた。その結果、有機スズ化合物は巻貝類においてインポセックス(雌の雄化現象)を引き
起こす事が知られるようになった。インポセックスの誘導機構に関しては、テストステロンからエストラジ
オールへの変換を触媒するアロマターゼの阻害作用や、テストステロンの硫酸抱合阻害、神経ペプチドを介
する作用が考えられてきた。しかし、本研究で見出されたような、RXR や PPAR といった核内受容体への作用
はこれまでに報告が無く、我々の発見が世界的にみても初めてである。
発表論文
1.
Okamoto, Y., Hayashi, T., Toda, C., Ueda, K., Hashizume, K., Itoh, K., Nishikawa, J., Nishihara, T. and Kojima, N.
(2006) Formation of estrogenic products from environmental phthalate esters under light exposure. Chemosphere,
in press.
2.
Nakanishi, T., Hiromori, Y., Yokoyama, H., Koyanagi, M., Itoh, N., Nishikawa, J. and Tanaka, K. (2006) Organotin
compounds enhance 17β-hydroxysteroid dehydrogenase type I activity in human choriocarcinoma Jar cells:
Potential promotion of 17β-estradiol biosynthesis in human placenta. Biochem. Pharmacol., 71, 1349-1357.
3.
Hirooka, T., Nagase, H., Uchida, K., Hiroshige, Y., Ehara, Y., Nishikawa, J., Nishihara, T., Miyamoto, K. and
Hirata, K. (2005) Biodegradation of bisphenol A and disappearance of its estrogenic activity by the green alga
Chlorella fusca var. vacuolata. Environ. Toxicol. Chem., 24, 1896-1901.
4.
Osada, S., Kurita, M., Nishikawa, J. and Nishihara, T. (2005) Chromatin assembly factor Asf1p-dependent
occupancy of the SAS histone acetyltransferase complex at the silent mating-type locus HMLα. Nucleic Acid Res.,
33, 2742-2750.
5.
Nakanishi, T., Nishikawa, J., Hiromori, Y., Yokoyama, H., Koyanagi, M., Takasuga, S., Ishizaki, J., Watanabe, M.,
Isa, S., Utoguchi, N., Itoh, N., Kohno, Y., Nishihara, T. and Tanaka, K. (2005) Trialkyltin compounds bind retinoid
X receptor to alter human placental endocrine functions. Mol. Endocrinol., 19, 2502-2516
6.
Kanayama, T., Kobayashi, N., Mamiya, S., Nakanishi, T. and Nishikawa J. (2005) Organotin compounds promote
adipocyte differentiation as agonists of the peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR) γ/ retinoid X
receptor (RXR) pathway. Mol. Pharmacol. 67, 766-774.
7.
Ohta, K., Osada, S., Nishikawa, J. and Nishihara, T. Cloning and characterization of a cDNA encoding the histone
acetyltransferase MOZ (monocytic leukemia zinc finger protein) in the rat. (2005) J. Health Sci. 51, 253-256.
8.
Osada, S., Nishikawa, J., Nakanishi, T., Tanaka, K., and Nishihara, T. (2005) Some organotin compounds enhance
histone acetyltransferase activity. Toxicol. Lett. 155, 329-335.
高エネルギー粒子線照射場のキャラクタリゼーションに関する研究
Characterization of Irradiation Field with High Energy Particle Beams
工学研究科 飯田敏行、加藤裕史、佐藤文信、口丸高弘、東野優
Graduate School of Engineering, Osaka University T.Iida, F.Sato, T.Kuchimaru and Y.Higashino
ラジオアイソトープ総合センター 清水喜久雄
Radioisotope Research Center, Osaka University K.Shimizu
1.
はじめに
近年、ビーム収束技術の発展と供に、マイクロオーダーに収束させたイオンビーム、X 線といった電離放射線を用いた
研究がおこなわれている [1] 。その中で我々は、X 線マイクロビームを単一細胞に照射し、その照射効果を調べる目的で
X 線マイクロビーム照射装置を開発している。放射線照射下の細胞内で誘起される効果は、従来行われてきた致死量に達
するような高線量照射下でなくとも観察され、低線量(∼1 Gy)照射効果として興味を集めている [2] 。ここでは、開発し
た X 線マイクロビーム照射システムにおいて、その線量率をシミュレーションによって見積もり、細胞照射実験をおこな
ったので報告する。
2.
マイクロドシメトリシミュレーション
光子・電子輸送計算コードである EGS4 [3] を使用し、X 線マ
イクロビームによる細胞へのマイクロドシメトリを計算した。
図1 はX 線マイクロビーム照射装置における単一細胞照射実験
のモデルである。細胞(直径:10 µm、H2O)は培養液(H2O)に浸か
っており、培養ディッシュの底に沈んでいるので、X 線ビーム
は厚さ 0.5mm の培養液を通過して細胞に到達することになる。
図 2 に計算により得られた、細胞に到達した X 線ビームのエネ
ルギースペクトルと細胞へのエネルギー付与率の関係を示す。
図 1. X 線マイクロビームを用いた単一細胞照射モ
この結果から、X 線ビームの低エネルギー側は細胞に到達する
デル
前に培養液に吸収されてしまい、吸収率から細胞へのエネルギ
[a]
[b]
図 2. EGS4 による、
細胞位置での X 線ビームスペ
図 3. X 線の軌跡に沿って散乱された電子の拡がり
クトルと細胞へのエネルギー付与率
(X 線エネルギー:[a]10 keV、[b]20 keV)
ー付与は 4∼12 keV 程度の X 線が主になる。また、X 線の輸送において散乱された電子の広がりについても計算結果を図
3 に示す。発生する電子の 99%を考慮したとき、散乱電子のトラックによって、2 µm 程度のビーム径のにじみがあること
が計算された。これらの結果から、吸収線量率は最大 0.05 Gy/s (X 線管電圧:50 kV、電流:1 mA)と見積もられた。
単一細胞照射実験
3.
予備実験として、出芽酵母細胞を用いた単一細胞照射実験を
おこなった。図 4 は、CCD カメラによる、単一細胞照射の様子
である。画面中央の細胞に X 線ビームが照射されている。60 Gy
照射(20 分)後、試料細胞をそのまま室温で培養し、その様子を
20 時間録画観察した。その結果、周囲の細胞と比較し、照射細
胞には成長や分裂が観察されなかった。この結果、従来の X 線
照射実験による、吸収線量と生存率の関係 [4] から、X 線マイ
クロビームの照射によってターゲット細胞に致死線量が与えら
れていることが確認された。
図 4. 単一細胞照射の様子
まとめ
4.
単一細胞照射モデルにおいて、X 線マイクロビームによる細胞への線量率をシミュレーションから見積もったところ、
最大 0.05 [Gy/s]となった。そして、実際に細胞照射をおこない、酵母細胞の生存曲線と照射線量によい結果一致を確認し
た。これらの結果より、X 線マイクロビーム照射装置は、単一細胞照射研究に有効であると考えられる。
参考文献
[1]
A.Erko et al.; Spectrochimica Acta.Part B, Vol.59,pp.1543-1548(2004)
[2]
G. Schettino et al.; Radiat. Res., Vol.160,pp.505-511(2003)
[3]
M. D. Felici et al.; Med.Phys., Vol.32, Issue.8, pp.2455-2463(2005)
[4]
J. C. Game and R.K.Mortimer, Muta.Res:Fundamental and Molecular Mechanisms.,Vol. 24, Isuue.3, pp. 281-292(1974)
関連発表
・東野 優,口丸高弘,佐藤文信,飯田敏行; 光ピンセットを用いたマイクロ X 線照射装置の開発 、第 52 回応用物理学関係連合講演
会、2005/3/29-4/1、埼玉大学、31p-H-4
・口丸高弘、東野優、佐藤文信、加藤裕史、飯田敏行、清水喜久雄、 単一細胞照射のためのマイクロ X 線ビーム照射装置の開発 、
9p-ZH-15,2005 年秋季 第 66 回応用物理学会学術講演会(2005 年9 月7-11 日 徳島大学)
・口丸高弘、佐藤文信、加藤裕史、飯田敏行、清水喜久雄、 光ピンセットを用いたX線マイクロビーム照射装置の開発(2)、24p-M-7、
第53回応用物理学関係連合講演会(2006 年3月 22 日∼26 日 武蔵工業大学)
・T. Kuchimaru, F. Sato, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Microdosimetric Characteristics of Micro X-ray Beam for Single Cell Irradiation",
IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Conference,October 23 - 29, 2005 , Wyndham El Conquistador Resort, Puerto Rico.
T. Kuchimaru, F. Sato, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Development of Compact Micro X-ray Beam Irradiation System", The 1st Asian
Congress of Radiation Research, Hiroshima, Japan, November 16 - 17, 2005.
・F. Sato, T. Kuchimaru, T. Kagawa, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Single Cell Irradiation System with Microfocus X-ray Source", 14th
Symposium on Microdosimetry, November 13-18, 2005, Venezia, Italy.
イオンビーム照射における出芽酵母の突然変異誘発に関する基礎研究
Effect of Ion Beam Irradiation of Mutation in S.cerevisiae.
(工学研究科)西嶋茂宏、松尾陽一郎 (RI 総合センター)清水喜久雄
(Grad. Sch. Engennering) S. Nishijima, Y. Matuo (Radioisotope Res. Center) K. Shimizu
現在、
イオンビームによる突然変異を用いた育種技術は大きな進展が見られ、
多様な品種の作出に成功している。
しかしその突然変異のメカニズムは不明な部分が多い。本研究では高等生物のモデル系として酵母細胞を用いて、
重粒子線ならびにγ線による突然変異への寄与について、分子レベルで解析することに主眼をおいて行った。
照射試料として、S.cerevisiae の S288C(RAD +),および二本鎖切断修復不活性株である g160/2b (rad52 ) を
用いた。原子力研究開発機構 イオン照射研究施設(TIARA)の AVF サイクロトロンを用いて加速したカーボンイ
オン粒子(エネルギー:220 MeV,LET:107 keV/μm)を照射した。最も突然変異の頻度が高かった照射条件を用
いて突然変異の誘発を行い、URA3 領域(804bp)について PCR 法を用い増幅させ、変異位置をシーケンス解析によ
って決定した。また、ガンマ線の照射は大阪大学産業科学研究所のガンマ線源を用いた。細胞培養や DNA の精製は
ラジオアイソトープ総合センターの生物実験室の設備を利用して行なった。
イオンビームによる野生型の突然変異頻度は 100 Gy で最も高く自然突然変異と比較して 168.5 倍であった。γ
線における至適照射線量は 66Gy であった。それぞれ至適照射線量におけるシーケンス解析の結果、イオンビーム
では、局所的に変異が起こる部位(ホットスポット)が見られた。一方のガンマ線では確認できなかった(Fig.1)。
また、rad52 による実験でも同様の結果が得られた。これは線質による効果の違い、すなわちイオンビームがクラ
スター損傷等を形成するなど、ガンマ線とは異なる新しい遺伝子損傷のパターンを生み出すものと考える。変異パ
ターンを解析した結果、イオンビームならびにガンマ線では塩基置換の頻度が高く、なかでも G・C から T・A の
トランスバーションの割合が高かった。酸化的損傷がその置換変異の主な部分を占め、特に G・C から T・A のトラ
ンスバーションを誘発する 8-oxodGTP などによる損傷が優勢であると考えられる。
また突然変異が誘発される部位として、5 -AC(A/T)-3 配列中のC の位置の変異が 41% (21samples / total)
を占めていた。この変異はホットスポットでも確認されており、遺伝子配列と特異的に変異が起こる部位と関係が
あることを示唆している。さらにホットスポットは約 170 bp という間隔を持っていた。遺伝子は核のなかでクロ
マチン構造をとり、147 ヌクレオチド対の配列がヒストン-タンパク質コアのまわりを取り巻くことで ヌクレオ
ソーム を形成し、それぞれのヌクレオソームがリンカーDNA でつながっている。以上の結果は、局所的に変異が
起こる部位として、配列と構造の二つの要因があることを示している(Fig.2)
。
(A)
(B)
Fig.2
Fig.1 The Mutation site of ura3 mutants caused by ion beam (A) and gamma ray (B).
The tendency chart of position where
the peculiar mutation occurred.
Pd-Ag 合金の水素吸蔵時の空孔形成現象
Vacancy formation induced by hydrogen absorption in Pd-Ag alloys
(大学院工学研究科)白井泰治、荒木秀樹、水野正隆
( Graduate School of Engineering ) Y. Shirai, H.Araki and M. Mizuno
はじめに
様々な濃度の Pd-Ag 合金を作製し、臨界温度以下において固溶体相中に水素化物相を形成して水素化され
るケースと、臨界温度より高い温度において水素化物相を形成せずに水素化されるケースについて、空孔形
成現象を比較し、
固溶体相中に水素化物相が形成されることによって生じる歪み量が大きければ大きいほど、
空孔形成量が大きくなることを明らかしたので報告する。
実験方法
純 Pd と Pd-20、25at%Ag 合金を溶製し、温度 1223K で 4 時間歪み取り焼鈍を行った。水素化処理は、各試
料とも、243、296、353K の3つの異なる温度において、それぞれ同一の水素圧力(4MPa)で行った。異なる
温度によって水素化処理したことによって生じる空孔形成量の差違を調べるため、水素化処理後に陽電子寿
命測定を行った。その後、水素化によって形成された空孔の回復過程を調べるために、50K 間隔、保持時間
0.9ks で等時焼鈍を行い、陽電子寿命変化を測定した。
結果および考察
純 Pd の臨界温度は 568K であり、その温度より低い 243、296、353K で水素化を行うと、陽電子寿命は大
きく上昇し、大量の原子空孔が形成されることが明らかになった。同様に、Pd-20at%Ag 合金を、その臨界温
度(336K)より低い 243、296K で水素化を行うと、陽電子寿命値は大きく上昇した。一方、同じ試料を、臨界
温度より 17K 高い 353K において水素化を行うと、陽電子寿命値はほとんど増加せず、原子空孔は多量には
形成されないことが明らかになった。同様に、Pd-25at%Ag 合金を、その臨界温度 248K より高い温度である
296、353K において水素化を行ったところ、陽電子寿命値はほとんど変化しなかった。これらの結果は、た
とえ大量の水素を吸蔵したとしても、水素化温度が臨界温度より高い場合は、原子空孔はほとんど形成され
ないことを示している。言い換えると、水素化に伴い大量の原子空孔を導入するためには、水素化の過程で、
固溶体相中に水素化物相が形成されることによって、大きな歪みが導入される必要があることを示唆してい
る。
発表論文
1. “Identification of Mg Vacancy in MgO by Positron Lifetime Measurements and First-Principles Calculations”
Masataka Mizuno, Hideki Araki, Yasuharu Shirai, Fumiyasu Oba, and Isao Tanaka, Defects and Diffusion in
Ceramics - An Annual Retrospective VII, 1 (2005).
2. “First Principles Calculation of Defect Structure in Non-stoichiometric CoAl and CoTi”
Masataka Mizuno, Hideki Araki and Yasuharu Shirai, Materials Transactions, 46, 1112 (2005).
3. “Stability and structures of constitutional defects in nonstoichiometric intermetallic compounds by first-principles
calculations”
Masataka Mizuno, Hideki Araki and Yasuharu Shirai, Materials Science Forum 475-479(2005), 3111 (2005).
4. “陽電子消滅法によって調べた高張力鋼 HT780 の繰り返し軟化”
吉田政司, 浅野鉄夫、藤城泰文, 白井泰治, 鉄と鋼, 91(2005), 403 (2005).
5. “Zr2Niの過冷却液体からの結晶化における電子状態の変化”
杉田一樹, 水野正隆, 荒木秀樹, 白井泰治, DV-Xα研究協会会報, 18, 151 (2005).
6. “Chemical Bonding Around Lattice Imperfections in 3d-Transition Metal Compounds”
Masataka Mizuno, in Hartree-Fock-Slater Method for Materials Science, edited by H. Adachi, T. Mukoyama and J.
Kawai (Springer, Germany), 49 (2006).
7. “The effect of the hydrogenation process on the production of lattice defects in Pd”
Kouji Sakaki, Masataka Mizuno, Hideki Araki and Yasuharu Shirai, Journal of Alloys and Compounds, 414, 204
(2006).
8. “陽電子消滅法によるめっき銅中の格子欠陥への添加剤効果の研究”
宍戸逸朗, 松尾明彦, 豊山裕万, 水野正隆, 荒木秀樹, 白井泰治, 日本金属学会誌, 70, 118 (2006).
他多数
口頭発表
1. 「FeCo における欠陥構造に関する第一原理計算」
水野正隆、荒木秀樹、白井泰治、日本物理学会 2005 年秋季大会
(京都、平成 17 年 9 月).
2. 「バルクアモルファスZr55Al5Cu10Ni30の陽電子寿命」
荒木秀樹、松本昌高、杉田一樹、水野正隆、白井泰治、日本物理学会 2005 年秋季大会
(京都、平成 17 年
9 月).
3. 「金属間化合物の格子欠陥と相変態の陽電子消滅による研究」
白井泰治、日本金属学会 2005 年秋期大会
(広島、平成 17 年 9 月).
4. 「FeCo における空孔形成エネルギーの理論計算」
水野正隆、荒木秀樹、白井泰治、日本金属学会 2006 年春期大会
(東京、平成 18 年 3 月).
5. 「陽電子寿命法による TiNi 合金のマルテンサイト変態前駆現象の研究」
荒木秀樹、勝山仁哉、水野正隆、白井泰治、日本鉄鋼協会第 151 回春季講演大会
(東京、平成 18 年 3 月).
6. 「Pd-Ag 合金の水素吸蔵時の空孔形成現象」
荒木秀樹、伊達亮介、榊浩司、水野正隆、白井泰治、日本物理学会第 61 回年次大会
(愛媛、平成 18 年 3
月).
他多数
陽電子消滅法によるソフトマテリアルの評価
Evaluation of Soft Material by Positron Annihilation Methods
(大学院工学研究科・環境・エネルギー工学専攻)泉佳伸、三町博子、秋山庸子、武田真一、西嶋茂宏
(Dept. of Sustainable Energy and Environmental Engineering)
Y. Izumi, H. Mimachi, Y. Akiyama, S. Takeda and S. Nishijima
生体内では、
蛋白質の凝集、
ゲル化を通して生体組織の構築が行なわれ、
それにより組織の成長や修復が起こる。
この蛋白質のゲル化過程をナノ空間構造の観点から明らかにすることによって皮膚や軟骨など生命組織体の構築
過程におけるメゾスコピックな構造変化と機能の獲得の関係を知ることができる。我々は、メゾスコピックな構造
変化を評価する手段として陽電子消滅法を選び、生体蛋白質の凝集過程の研究を行なっている。生体組織のほとん
どは水を70~80%含む生体高分子である。生体中の水は、物質代謝やイオン輸送、組織構造の維持、熱的あるいは
化学的変性からの保護といった作用を担っており、水の果たす役割は大きい。そこで本研究では、生体組織中の高
分子表面と水の間の相互作用を、陽電子消滅法と熱分析を用いて定量化することを試みた。
生体組織のモデルとして 0wt%~40wt%のゼラチンを用い、DSC(示差走査熱量分析)による水構造の定量的評価
を行った。さらに、PALS(陽電子寿命測定)による高分子網目の微細構造の評価から水-高分子間の微視的相互作
用について考察した。まず DSC の吸熱ピークが表す融解エンタルピーから、各濃度のゼラチンにおける自由水・結
合水の比率を求めた。その結果を Fig.1 に示す。ゼラチンの濃度の上昇に伴い、結合水は増加し、自由水は減少
した。また、実際の生体についても同様の実験を行なった。鶏の肝臓と鮭の卵は、対応する濃度のゼラチンの自由
水・結合水の比率に近い値をとっていることより、実際の生体に含まれる水も対応する水分量のゼラチンゲル中の
水の束縛状態に近いことが示唆された。
100
このようなゼラチン濃度による結合水・自由水の比
れる。そこで、PALS(Positron Annihilation Lifetime
Spectroscopy:陽電子消滅法)を用いた自由体積空孔評
価により高分子網目の微細構造を評価し、水と高分子
の相互作用を考察した。濃度 20wt%、30wt%のゼラチン
90
Percentage of Bound Water and
Free Water (wt.%)
率の変化は、ゼラチンの網目構造に起因すると考えら
80
60
50
40
30
20
ゲルを直径 10mm、高さ 20mmのアルミニウム製の円
10
筒内に調製した。線源と試料が直接接触することを防
0
ぐため、試料と線源の間に厚さ 0.8μmのアルミニウム
箔を挟んで遮蔽した。アルミニウム箔は短寿命成分し
か示さないため、自由体積に関連する成分には影響し
ない。また、もう一方の端はゼラチンゲルの乾燥を防
ぐためにパラフィルムで覆った。線源には 5.0μmカ
プトン膜で密封した22Na線源を用い、解析にはPATFIT
Chicken Liver
70
Salmon Roe
0
10
20
30
40
Gelatin Concentration (wt%)
50
60
Fig. 1 Percentage of bound water and free water
against total water in gelatin gels and vital
tissues calculated from fusion enthalpy of DSC
curves (2K/min) as a function of gelatin
concentration. ■ :bound water of gelatin gels,
□:free water of gelatin gels, ●:bound water of
chicken liver, ○ :free water of chicken liver,
▲:bound water of salmon roe, △free water of
salmon roe.
プログラムを用いた。
消滅γ線を測定し、カウント数を時間に対してプロットしたものをFig.2 に示す。このスペクトルをPATFITによ
り 3 成分解析し、ゼラチン中のo-Psの寿命(τ3)を求めた結果をTable 1 に示す。τ3より求めたゼラチン濃度 100%
のときの自由体積空孔半径は 2.14Åであり、ゼラチン濃度が低いほど、すなわち含水率が高いほど自由体積は大
きくなり、含水率 80%のときは 2.63Åになった。また、4 成分解析した場合の寿命τ4により求めた自由体積空孔
半径は約 6.2~13Åとなり、体積に換算して数百個の水分子(半径約 1.5Å)が入ることが可能である。しかし、
寿命τ4の強度はいずれの場合も 1%以下と低かったため、τ4に対応する大きさの空孔は存在するが非常に少ないと
いうことが言える。したがって、以下では主にτ3に着目して議論する。
ゼラチンの自由体積空孔半径は、2.14Åと他の高分
子に比べ非常に小さい値となった。さらに、含水率 80%
1.0E+06
においてもその自由体積は純水に比べ小さかった。
1.0E+05
Uchiyama らの研究によるとゼラチンは含水率約 90%の
1.0E+04
とき自由体積空孔半径は 2.69Åとなり、純水の値に近
づくという報告がある。このことより、ゼラチンは乾
Count (-)
Dry
30 wt.%
20 wt.%
1.0E+03
1.0E+02
燥状態においては水分子の大きさより小さい空孔を持
っており、含水するにしたがってゼラチン分子の形成
する網目構造に水が入り込み、徐々にゼラチンのヘリ
1.0E+01
1.0E+00
-1
0
ックス構造が広がると考えられる。そのためゼラチン
の高分子構造は含水率により明らかに変化したといえ
1
2
3
4 5 6
Time (ns)
7
8
9
10
Fig. 2 Positron annihilation lifetime spectra of
dried gelatin, 20wt.% and 30wt.% gelatin gels.
る。
DSC による含水ゼラチン中の水構造は、含水率が低いほど結合水が多く、含水率 70%以下(ゼラチン濃度 30%以
上)では結合水の割合が自由水を上回るという結果であった。これはゼラチンの含水に伴う網目の広がりのためで
あると考える。PALS によって求めた含水率 70%以下のゼラチンの自由体積は純水のものよりも小さく、この濃度範
囲において水はゼラチン網目構造内で自由水と比較して密な状態で存在していることを示唆している。さらに、こ
のときの自由体積の大きさは水分子の半径を 1.5Åとした場合、水分子は数個しか入ることができない。このこと
より、自由体積空孔が純水のそれよりも大幅に小さいとき、結合水の比率が高くなるといえる。以上のことから、
ゼラチン濃度の増加に伴い、すなわち
含水率が低くなるにつれ結合水の比
Table 1. Summery of positron annihilation lifetime (τ) and
intensity (I) of f dried gelatin, 20wt.% and 30wt.% gelatin gels.
率が増加するのは、乾燥ゼラチンは水
τ1 (I1)
τ2 (I2)
τ3 (I3)
20wt.%
0.23(67.9)
0.77 (15.8)
1.84 (16.3)
30wt.%
0.22(63.9)
0.69 (18.3)
1.77 (17.8)
100wt.%
0.22 (75.2)
0.54 (11.8)
1.41 (13.0)
分子より小さい空孔を多く持ってお
り、水分子がゼラチン分子の網目構造
を押し広げた形で含水しているため
に、水が自由水として存在しにくいた
めであるといえる。
口頭発表
三町博子ら、第 53 回レオロジー討論会「生体高分子と水の相互作用とそのレオロジー特性」
(2005.11.28-30)
アンチコンプトン同時計数法を用いた低バック
グラウンド計測
Low background measurement by anti-Compton technique.
(大学院工学研究科 電子電気情報工学専攻) 宮丸広幸
(Graduate School of Engineering) Hiroyuki Miyamaru
極微量分析の感度向上を目的としたGe半導体検出器とNaIシンチレーターとを組み合わせたアンチ
コンプトン同時計数装置の開発、改良を行っている。RIセンターに現有するアンチコンプトン用のNaI
シンチレーターの特性を調べた。このシンチレーターについては検出感度は高いものの波高情報につい
てはブロードな出力を出すことが明らかになった。また4台の光電子増倍管ならびに前置増幅器との調
整を行ったがおおむね出力波高が小さいために低エネルギー側に関心領域がある場合、同時計数が難し
いことが分かった。アンチコンプトンによる計測の場合にはGe周辺部のNaIシンチレータでの計測
は主にコンプトン散乱による成分が主となるため、低エネルギー側の低バックグラウンド室に設置され
たこの同時計数システムだが、バックグラウンドレベルを抑えても低エネルギー側のチャンスコインシ
デンスによる信号が観測されることが分かった。これについては装置全体を鉛ブロック、銅板等でより
遮蔽を厳重に行って改善を行った。しかしながら装置の仕様上Ge検出器を配置する方向については遮
蔽が難しいために効果が小さいものであった。これまで同時計数に用いていた上Ge検出器は可搬型の
物であり、液体窒素デュワーの容積の小さいものであったため頻繁に液体窒素の補給が必要なため、遮
蔽等にも制限があった。これを改善すべく電子冷却型のGe検出器を導入を行うため性能評価を行って
いる。これまでの予備的実験では半日程度の短時間の計測の場合には問題がないが、数日にわたる長時
間の計測の際にわずかなピークのシフトが観測されている。40K(1461keV)のバックグラウンドピー
クについて数~数十keV程度の変動がある。これは前置増幅器の温度ドリフトの影響と考えているが今
後詳細に検討をする。アンチコンプトン同時計数装置では長時間の計測が予期されるため、測定モジュ
ールの動作安定性は重要である。NaIシンチレーター部においてはこれまで長時間にわたる動作の安定
性については実験をしていないため今後行う予定である。
工学部未臨界実験室のトリチウム汚染の測定
Measurement of Tritium Surface Contamination; Sub-Critical Laboratory (OKTAVIAN) in Graduate School of
Engineering
(工学部)吉岡潤子
(Faculity of Engineering) J. Yoshioka
1. はじめに
工学部(工学研究科)未臨界実験室では、主に 370GBq のトリチウムターゲットを用い、加速器からの重水素と DT 反
応させることによってできた中性子を用いた実験を行っている。
トリチウムはきわめて飛散しやすく、飛散したトリチウムが空気を汚染するだけでなく作業室の床、壁などに固着す
る。床や壁の表面汚染検査には拭き取り法および液体シンチレーションカウンタ(LSC)による測定を行っているが、よ
り簡単な方法として、放射能汚染の分布が視覚的に分かる、非破壊で放射能測定が行える、LSC による測定と違い有
害な廃液が出ない等のいくつかの利点があるイメージングプレート(IP)の使用を考えた。
本研究では、3H 用の IP を用いて、床に付着した汚染の程度や分布の様子を調べることを試みた。
2. 測定方法
IP は大きさ 25cm×20cm の BAS-TR(富士写真フイルム製)を使用した。また、3H 以外による放射線の影響を調べる
ため、汎用 IP(大きさ 25cm×20cm、富士写真フイルム製)による照射も行った。3H 用 IP および、汎用 IP (この時、IP
自体の汚染を防ぐためにあらかじめ汎用 IP は全体を、3H 用 IP については露光部分の端 15 ㎜および裏面に食品用のポ
リエチレン製ラップで覆った)を露光部分を下にして管理区域内の汚染検査で比較的高いカウントが検出される床 2 箇
所(未臨界実験室大実験室、加速器室)に置き、その上から遮光用に黒いケント紙及びポリエチレン製黒ゴミ袋で覆い
16 時間照射を行った。
照射終了後に IP を光が入らないように注意しながら別の黒ゴミ袋で包んで暗条件下で取り出し、イメージングアナ
ライザー(BAS1800;富士写真フイルム製)を用いて測定した。
バックグラウンドとしては、IP をトリチウムのない暗所に 16 時間放置した測定値を用いた。
測定後、IP の測定した部分を 9 分割して、Photo-Stimulated Luminescence (PSL)値の分布を調べた。
なお、PSL 値と放射能値の比較をするために、IP で測定した場所を 9 箇所をスミア濾紙で拭き取り、LSC で測定も
行った。
3. 結果
3H
用 IP を用いた照射結果、加速器室において不均一な分布(高い PSL 値のスポット)が見られた。その強度は1
mm2 当たりの PSL 値で最高 1990 であった。一方、汎用 IP による測定においては、高い PSL 値のスポットは特に見
られず、均一な放射能分布が見られたことと、IP で測定した場所の拭き取り法による LSC 測定を行った結果、低エネ
ルギー領域で有為の値が検出されたことから、高濃度のスポット部分は、3H によるものと考えられる。
3H 用 IP の PSL 値と LSC 測定による 3H 放射能値の関係で、互いに測定値の分布が一致しない原因として、
・IP が床に密着していなかった→重しを置くことを考えているが、重しの中に含まれている放射線の影響が無視
できない
・IP を露光後、移動させるときに遊離性の 3H が汚染していない測定領域に移った
といったことが考えられるが、原因については今後詳細に調べる必要がある。
(PSL/mm2)
< 0.2
最高PSL
1900(mm-2)
0.2~0.3
> 0.3
IPのPSL値分布
IPのPSL値分布
(Bq/cm2)
< 0.5
0.5~2
2~4
>4
スミア法+LSCでの
放射能密度分布
IP 照射画像
スミア法+LSCで
の放射能密度分布
大実験室における測定結果
IP 照射画像
加速器室における測定結果
図 1 未臨界実験室大実験室と加速器室における IP 及び LSC の測定値分布
PSL値の高い「汚染
スポット」がいくつ
か見られた。
均一な PSL 値分布
を示した。
3H用IP
汎用IP
図2
加速器室における3H用IPと汎用IPとの測定結果の比較
工学研究科 RI 実験室排水のγ線測定
Gamma-ray Monitoring of Weast Water from RI (radioisotope) Laboratory in Graduate School of Engineering
(工学部)吉岡潤子
(Faculity of Engineering) J. Yoshioka
1. はじめに
工学研究科 RI 実験室では、非密封の放射性同位元素として主に 59Fe を使用している。59Fe はβ線を放出する核種で
あるので、平成 14 年度まで液体シンチレーションカウンタによる排水中のβ線の計数から 59Fe の放射能濃度を評価し
ていた。
しかし、59Fe はβ線とともに比較的高いエネルギー(1.099MeV 56.5%、1.292MeV43.2%)のγ線も放出するので、
より正確に排水中の放射能濃度を評価するためにγ線をカウントすることも必要であると考えた。
そこで、平成 15 年度より、RI センター所有のアロカ社製オートウェルガンマシステム(以下、「γ線計数装置」と
する)を用いて、RI 排水中のγ線の測定を行ってきた。
平成 17 年度もγ線計数装置で同様の測定を行ったので、結果を報告する。
2. 測定
試料の調製は、工学研究科 RI 実験室にて行った。貯留槽から取った排水 5cm3 およびバックグラウンドとしての水
道水 5cm3 をそのままそれぞれ栄研チューブ 1 号に入れ蓋をしたものを、γ線計数装置にセットし、1 試料(及びバッ
クグラウンド)につき 30 分測定を行った。
測定条件として、59Fe に対して、842keV~1517keV のエネルギー範囲にてγ線のカウントを行い、計数効率は 20%
とした。測定値は、5 回測定した平均値を採用した。
3. 結果
排水中の放射能測定結果を、表に示す。いずれもバックグラウンドレベルで、科技庁告示(平成 12 年 10 月 23 日)
に定められた濃度限度(59Fe; 4.0×10-2 Bq/cm3)を下回っている結果となった。
表 排水中放射能濃度測定結果
測定日
H17.7.28
H18.1.23
H18.1.27
バックグラウンド計数率(cpm)
55.98
56.16
59.10
58.38
試料計数値(cpm)
57.40
56.48
56.04
58.56
正味計数値(cpm)
0
0.32
0
0.18
59Fe の放射能濃度(Bq/cm3)
0
0.005
0
0.003
濃度限度に対する割合
0
0.013
0
7.50×10-3
4. 発表論文、口頭発表
なし
H17.7.21
単一細胞の放射線照射効果に関する研究
Radiation Effects on Single Cell
工学研究科 飯田敏行、加藤裕史、佐藤文信、口丸高弘、東野優、藤田智久
Graduate School of Engineering, Osaka University T.Iida, F.Sato, T.Kuchimaru , Y.Higashino, T.Fujita
ラジオアイソトープ総合センター 清水喜久雄
Radioisotope Research Center, Osaka University K.Shimizu
1.
はじめに
近年、マイクロオーダーの領域、対象物に電離性放射線を照射する技術が注目されている [1] 。その技術の利用して、
単一の細胞に放射線を照射することによって細胞に観察される染色体異常、突然変異やバイスタンダー効果 [2] といっ
た現象に関して研究が進んでいる。我々は、従来、大型のシンクロトロン施設などでおこなわれてきた、細胞での放射線
誘起効果の研究に関して、効果的で簡便に利用できるテーブルトップサイズの X 線マイクロビーム照射装置を開発してい
る。
2.
X 線マイクロビーム照射装置
図 1 はマイクロ X 線照射装置の概略図である。装置は、
マイクロフォーカスX線管(管電圧:∼50 kV、
管電流:∼1 m
A)、X 線導管(ガラスキャピラリ)、蛍光 X 線分析用 Si 検出
器、サンプルステージユニットから構成されている。X 線
管、ガラスキャピラリ、Si 検出器は真空領域に設置してあ
り、市販の X 線顕微鏡 XGT-5000(堀場製作所) [3]のコンポ
ーネントを取り出し、倒立型顕微鏡と組み合わせている。
X 線管で発生した X 線はガラスキャピラリによって、
マイ
クロオーダーに収束される。X 線ビームはポリプロピレン
(厚さ:4 µm)から、大気中に取り出され、細胞試料に照射さ
れ、試料の様子は 60 倍対物レンズ、CCD カメラを用いて
観察できる。
3.
図 1. マイクロ X 線照射装置の概略図
X 線マイクロビーム特性評価
本装置の X 線発生部には、ロジウムターゲットを用いており、キャピラリ通過後の収束された X 線ビームのエネルギー
スペクトルは幾つかの特性X 線(Rh-L: 2.7 keV, Rh-Kα: 20 keV, and Rh-Kβ: 22 keV) に起因したピークを持っている(図 2)。
マイクロ X 線ビームの径の測定は、ナイフエッジ上に蒸着された金層(厚さ:0.3 µm)をステッピング駆動のステージ
で移動させ、Au-M (2.12 keV)と Au-L (9.7 keV)の 2 つの特性 X 線に対する強度変化から求めた。また、キャピラリを用い
た X 線の収束を、線源からキャピラリまでの距離を 30mm、キャピラリの長さを 100mm、キャピラリの径を 20 µm とし
て、2.7 keV(Rh-L)、20 keV(Rh-Kα)の X 線に対してシミュレーションした結果も図 3 に示す。キャピラリの終端から 11 mm
のところで、ビーム径 10 µm (FWHM)が得られており、ビームは距離が離れるごとに広がっていき、その発散角は Au-M
図 2. マイクロ X 線ビームのエネルギースペクトル
図3. キャピラリの終端からの距離とX線ビーム径の関係
(管電圧 50 kV、管電流 1 mA)
が 5.1 mrad、Au-L が 2.3 mrad となった。これは X 線のエネルギーが増加することによって臨界角が小さくなることに起因
している。
まとめ
4.
テーブルトップサイズの X 線マイクロビーム照射装置を開発した。生成される X 線マイクロビームのサイズは、ナイフ
エッジ法によって最小径 10 µm [FWHM]と測定され、その発散についても調べた。シミュレーションで得られた値から推
測できる結果となり、単一細胞照射に十分用いることができることを確認した。
参考文献
[1]
A.Erko et al.; Spectrochimica Acta.Part B, Vol.59, pp.1543-1548(2004)
[2]
H. Nagasawa et al.; Cancer.Res., Vol.52, Isuue.10-11, pp.6394-6396, 1992
[3]
S.Ohzawa et al.; Spectrochimica Acta PartB, Vol.59, pp.1295-1299(2004)
関連発表
・東野 優,口丸高弘,佐藤文信,飯田敏行; 光ピンセットを用いたマイクロX 線照射装置の開発 、第52 回応用物理学関係連合講演会、
2005/3/29-4/1、埼玉大学、31p-H-4
・口丸高弘、東野優、佐藤文信、加藤裕史、飯田敏行、清水喜久雄、 単一細胞照射のためのマイクロ X 線ビーム照射装置の開発 、
9p-ZH-15,2005 年秋季 第66 回応用物理学会学術講演会(2005 年9 月7-11 日 徳島大学)
・口丸高弘、佐藤文信、加藤裕史、飯田敏行、清水喜久雄、 光ピンセットを用いたX線マイクロビーム照射装置の開発(2)、24p-M-7、
第53回応用物理学関係連合講演会(2006 年3月22 日∼26 日 武蔵工業大学)
・T. Kuchimaru, F. Sato, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Microdosimetric Characteristics of Micro X-ray Beam for Single Cell
Irradiation", IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Conference,October 23 - 29, 2005 , Wyndham El Conquistador Resort, Puerto Rico.
T. Kuchimaru, F. Sato, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Development of Compact Micro X-ray Beam Irradiation System", The 1st Asian
Congress of Radiation Research, Hiroshima, Japan, November 16 - 17, 2005.
・F. Sato, T. Kuchimaru, T. Kagawa, Y. Higashino, K. Shimizu, Y. Kato, and T. Iida,"Single Cell Irradiation System with Microfocus X-ray Source", 14th
Symposium on Microdosimetry, November 13-18, 2005, Venezia, Italy.
電磁界と電離放射線の微生物に対する相乗作用
Additional effects of electromagnetic field and ionized radiation
on micro-organisms
(生命機能研究科)中岡保夫、(RI総合センター)清水喜久雄
(Grad. Sch. Front. Bioscience) Y. Nakaoka, (RI Research Center) K. Shimizu
単細胞真核生物のゾウリムシや酵母を用いて電磁場と電離放射線がこれら微生物の遺伝子や生理活性にどのような影響を与
えるかを調べている。数年前、我々はゾウリムシを強い直流磁場(0.7 T)の中に置くと、ゾウリムシは磁場と垂直の向きに泳ぐとい
う結果を報告した。このような泳ぎは、ゾウリムシを構成する微小管などの蛋白が反磁性を持ちゾウリムシの細胞内で整然と並ん
でいることによると考えた。ところが最近、米国の研究グループがさらに強い直流磁場(5 T)中でゾウリムシは磁場と平行方向に
泳ぐという報告を出した。そこで我々は、改めて直流磁場中のゾウリムシの泳ぎを解析した。そうすると0.7 Tの直流磁場中でも一
部のゾウリムシは磁場と平行に泳ぐことが確認された。しかしながら我々の場合、磁場中に置かれたゾウリムシの多くは磁場と垂
直向きに泳ぐ。どのような因子が磁場中での泳ぎの向きを決めているのかを知るために、いろいろと条件を変えて、磁場中で磁
場に平行に泳ぐものの比率が多くなる条件を探した。その結果(1)ゾウリムシを高温で培養し低温で磁場中の泳ぎを観察した時、
(2)ゾウリムシを泳がせる液のK+濃度を高くした場合とで、磁場と平行向きに泳ぐものが多くなった。これらの条件下ではゾウリ
ムシ細胞膜の脂質流動性が低く、膜の構造はより秩序立った状態になると予想される。そこで、ゾウリムシの細胞膜を蛍光色素
laurdanで染め蛍光顕微鏡画像を解析する方法で生きた細胞について膜の流動性を測定したところ、これらの条件下で膜の流
動性が低い状態になっていることが確認された。細胞膜の脂質も反磁性を示しチューブ状の膜脂質はその長軸を磁場と平行に
して並ぶことが知られている。おそらくゾウリムシの場合でも細胞膜の流動性が低く膜の構造が秩序立った状態になると反磁性
による磁気異方性が大きくなり、ゾウリムシ細胞の長軸方向が磁場と平行に並ぼうとすると考えられる。
発表論文
1. 「原生生物における電磁場の影響」
中岡保夫、 臨床環境医学, 14, 88-91 (2005).
口頭発表
1. 「原生生物における電磁場の影響」
中岡保夫、第14回日本臨床環境医学会総会シンポジウム(久留米、2005 年 7 月)
L1 0 型金属間化合物TiAlにおける不純物拡散の異方性と拡散機構の解明
Anisotropy of impurity diffusion in L1 0 -type intermetallic compound TiAl
and clarification of its diffusion mechanism
産業科学研究所
中嶋英雄, 仲村龍介
The Institute of Scientific and Industrial Research, Hideo NAKAJIMA and Ryusuke NAKAMURA
金属間化合物や規則合金には優れた高温強度特性や種々の機能的性質を有するものがあり、軽量耐
熱材料や高機能性材料としての用途が期待されているものが多い。このような金属間化合物や規則合
金の組織を制御する上で、相変態やクリープ挙動などの現象を理解する必要がある。ところが、これ
らの現象を律速していると考えられる原子拡散に関する知見は重要であるにも関わらず、十分ではな
く、今後の研究に待つべき点が多い。
[001]
(c axis)
これまで我々のグループでは、図 1 に示すような
L1 0 型の原子配列の金属間化合物であるTiAlにおける
種々の原子拡散について調べ、その結晶学的異方性に
● Ti atom
○ Al atom
起因する原子拡散の異方性を明らかにしてきた。これ
までの結果によると、原子拡散の異方性はTiAl中でそ
[100]
(a axis)
の元素がどの位置(Ti位置あるいはAl位置)を占めるか
に大きく依存する。今年度は、Ti, Al両方の位置を占
図1
TiAl の原子配列.
めると報告のあるFeの拡散係数を測定し、その異方性を明らかにすることを目的とした。拡散係数を
測定する際のトレーサーには放射性同位元素 59 Feを用い、1173~1373Kの温度範囲で、[001]方向(c軸方
向)および[001]に垂直な方向([100]方向、a軸方向)のトレーサー拡散係数を測定した。また、他の原子
拡散の異方性と併せて、TiAlにおける原子拡散機構について検討した。
アーク溶解により合金を作製し、フローティングゾーン法によりTiAl単結晶 (Ti 47 Al 53 )を育成した。
背面反射ラウエ法により単結晶の方位を決定し、試料表面の面法線が[001]方向のものと、それに垂直
な方向を持つものをそれぞれ切り出した。その後、均質化焼鈍を施し、トレーサーを拡散させる面を
研磨した。仕上げ研磨は 1 μmのダイヤモンド粒子を用いたバフ研磨によって行った。試料表面をスパ
ッタすることにより、酸化膜を除去した後、同じチャンバー内で、大気に曝すことなく 59 Feを蒸着した。
次に、焼鈍中のAlの蒸発を防ぐためにTi 45 Al 55 で作製した容器の中に試料とダミー試料(Ti 42 Al 58 )を入れ、
さらに酸化を防ぐためにこれらをTa, Ti, Zr箔の順で包み、1 × 10 -5 Pa 程度の真空中で所定の温度で拡
散焼鈍した。焼鈍後の拡散濃度分布を測定するために、イオンビームスパッタ法により試料をセクシ
ョニングした。NaIシンチレーションカウンター (Aloka, ARC-380)を用いて各セクションにおける放射
線強度を測定し、トレーサーの濃度分布を決定した。その際、59 Feの 1.1 および 1.3MeVのγ線強度を測
定した。このようにして得られたトレーサーの濃度–距離プロファイルにFickの第二法則の薄膜拡散源
に対する解の式を当てはめ、トレーサー拡散係数を決定した。
図 2 に、TiAl 中の Fe のトレーサー拡散係数の温度依存性を示す。Fe の拡散係数は、我々のグルー
プがこれまでに測定した Ti, In, Ni の拡散係数と同程度の大きさである。その異方性については、[001]
方向の拡散係数が[001]に垂直な方向のそれよりも大きく、Ti や In とは逆の傾向であることがわかった。
また、この温度依存性の傾きから求めた活性化エネルギーについては、どちらの方向も 3eV 程度であ
った。これまでに測定した元素における活性化エネルギー、拡散係数の大小関係を表 1 にまとめる。
次に、これらの元素の拡散機構について考える。L1 0 構造のAB合金のA原子の拡散ジャンプには以
下の 4 種類が考えられる。(i) A原子副格子面内のジャンプ, D(i)、 (ii) A原子面からB原子面へのジャン
プ, D(ii)、 (iii) (ii)の逆のジャンプ, D(iii)、 (iv) アンチサイト原子としてB原子面内を動くジャンプ,
D(iv)。これらのジャンプのうち、(ii)と(iii)のジャンプは熱平衡状態でアンチサイト原子濃度は一定に
保たれるという条件から一つの部分拡散係数D(ii,iii) として考える。また、それぞれの部分拡散係数に
対する活性化エネルギーをQ ⊥ (i)のように表す。
まず、[001]方向の拡散係数の表式は(ii)と(iii)のジャンプのみが関係するので以下のようになる。
D // = D // (ii,iii)
(1)
次に、[001]に垂直な方向の拡散は全てのジャンプが関係し、
D ⊥ = D ⊥ (i)+D ⊥ (ii,iii)+ D ⊥ (iv)
(2)
のようになる。ここで、ジャンプの類似性から
D // (ii,iii) = 4×D ⊥ (ii,iii)
Q // (ii,iii) = Q ⊥ (ii,iii)
(3)
(4)
が成り立つ。これらの式と表 1 の大小関係から、拡散機構を類推することができる。このとき、[001]
方向のジャンプは 1 種類なので考えなくてよい。従って、[001]に垂直な方向の支配的なジャンプ、つ
まり(2)式における活性化エネルギーの最小な部分拡散係数の項を考えればよいことになる。
例えば、Inの拡散係数では活性化エネルギーがQ // > Q ⊥ であり、(4)式を併せて考えると、Q ⊥ (ii,iii)に
比べてQ ⊥ (i)あるいはQ ⊥ (iv)が小さいと予想される。このとき、(i)もしくは(iv)のジャンプが支配的であ
ると考えられる。計算機シミュレーションの結果から、たしかにQ ⊥ (iv)が最も小さく、これらを総合し
て考えるとInはTi原子面内を拡散することが示唆される。次に、今回測定したFeについて考えてみる。
活性化エネルギーの大小関係はQ // ≈ Q ⊥ であるから、Q ⊥ (ii,iii)が最も小さくなければならない。このと
き、D ⊥ = D ⊥ (ii,iii)となり、(3)式からD // / D ⊥ = 4 となる。今回測定したFeの拡散係数の値は、D // / D ⊥ = 1.5
~4 であり、拡散係数の式から類推される結果と実験結果は非常によく一致している。この場合、TiAl
中のFeはTi, Al両方の位置にまたがって拡散していくことが示唆される。これは、先に述べたFe原子の
占める位置に関する報告に合致する。
以上のように、これまでの我々の系統的な拡散係数の測定により、L1 0 型の化合物においては、拡散
10
Diffusion coefficient of Fe / m s
2 -1
の異方性を調べることによって、その拡散機構を類推することが可能であることが示された。
10
10
10
-15
D//
6
4
活性化エネルギー、拡散係数の大小関係.
2
D⊥
-16
元素
活性化エネルギー
拡散係数
In
Q // > Q ⊥
D // < D ⊥
Fe
Q // ≅ Q ⊥
D // > D ⊥
Ni
Q // < Q ⊥
D // > D ⊥
Ti
Q // > Q ⊥
D // < D ⊥
6
4
2
-17
6
4
2
Ti47Al53
-18
0.7
T
図2
表1
-1
0.8
-3 -1
0.9
/ 10 K
Fe の拡散係数の温度依存性.
発表論文
Impurity diffusion in γ-TiAl single crystals, Y. Nose, N. Terashita, T. Ikeda and H. Nakajima: Acta Mater.,
54 (2006), 2511-2519.
DNA ポリメラーゼの生化学的解析
Biochemical analysis of DNA polymerases
(RI総合センター)清水喜久雄、細田洋史、横山和也 (工学研究科)松尾陽一郎
(Radioisotope Res. Center) K. Shimizu, H. Hosoda, K. Yokoyama (Grad. Sch. Engennering) Y. Matuo
【目的】
生体に対し紫外線や生物を取り巻く自然環境、さらに細胞内での生化学的反応によりラジカルが発生
する。このラジカルが生物細胞の分裂、増殖、DNA 複製の際の誤りに影響を及ぼす可能性が考えられる。
本研究では OH ラジカルと同じ性質をもち、半減期が 20 時間以上ある長寿命ラジカルに注目した。長寿
命ラジカルが DNA に影響を及ぼした場合の突然変異誘発頻度について解析を行った。
【方法】
大腸菌のファージベクターである M13mp18 二本鎖 DNA に対し制限酵素 PuvⅠ・PuvⅡを用いて lacZ 領域を
切断した。切断した二本鎖 DNA と一本鎖 DNA のアニーリングを行い、一部が一本鎖の DNA (gapped DNA) を
作製した。gapped DNA に T4 DNA Polymerase 及び、γ線 (5kGy) を照射した牛血清アルブミン (BSA) を加
えて複製をさせた (filling DNA)。続いて JM109(大腸菌株)に M13mp18 を形質導入行い、Color Selection
法による自然突然変異の頻度を調べた。同様に JM109 に filling DNA を形質導入行い、ラジカルによる変異
の頻度を調べた。
【結果】
gap-DNA をラジカル存在下、非存在下で T4 DNA polymerase により複製反応を行った。DNA 合成が正
しく行われ、ギャップを埋めているかどうかをラジオアイソトープ標識(32P)を用いてゲル解析を行った。
IP による像(左)とアガロースゲル電気泳動(右)の結果を Fig.1 に示す。
バ ッ クグ ラ ウン ド であ る 自然 突 然変 異を 調 べた 結 果 33013 個の 青 色コ ロ ニー に 対し 、白 色 コ
ロ ニ ー (変 異 )は 1で あ っ た 。 自然 突 然 変 異の 頻度 は 約 1/30,000 で ある と 推 定 され る 。 さ らに
JM109 に M13mp18 を 精製 し た filling DNA を 形質 導 入 した 結 果、 32801 個 のコ ロ ニー を 確認 し 、
白 色 コ ロニ ー (突 然 変異 )を 12 個 確認 し た。変異 率 は 1/2733 と な り、ラ ジカ ル 非存 在 下酵 素 と
比 べ 12.08 倍 の変 異 率上 昇 が確 認 され た (Table.1)。 今後 、 総コ ロ ニー を ふや し 精度 を高 め て
い く 予 定で あ る。
Table 1 突然変異誘発率の比較
Fig.1 DNA 合成反応における IP 像(左) ならびにアガロー
スゲル電気泳動増 (右). 酵素あり(L)、酵素なし(R)。
環境放射能測定に関する基礎的検討
S tu die s on En vir on men ta l R ad ioa ct ivi ty Mo ni tor in g
( ラシ ゙オア イソ トーフ ゚総 合 セン ター) 山 口
喜朗、斎藤
直
(Radioisotope Res. Center) Y.Yamaguchi, T.Saito
人工放射性同位元素が地球上で広範囲に分布する原因として、大気圏内核爆発実験や
原子炉、核燃料施設での事故などがあげられるが、現在ではその影響は少なくなってき
た。しかし、原子力施設、加速器や放射性同位元素等使用施設などからも極微量ではあ
るが放射能や放射線が放出されている。これらは物質移動および動植物活動に伴って移
動し長期間にわたり環境を汚染したり、なかには動植物内に蓄積されるものもある。二
十年前に起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故では、現在でも発電所周辺は高濃
度の放射性物質により汚染されている。また、数年前茨城県東海村で起きた核燃料加工
施設での臨界事故も放射性同位元素を環境中に放出した例で、施設周辺に放射性同位元
素が分布する結果となった。
このようにして広範囲に分布した環境中の極微量放射能を測定する場合には放射化分
析 、 ICP-MS、 低 バ ッ ク グ ラ ウ ン ド 液 体 シ ン チ レ ー シ ョ ン カ ウ ン タ ー に よ る β 線 測 定 、 ゲ
ルマニウム半導体検出器によるγ線測定などがあげられるが、試料の前処理を必要とす
る こ と が 少 な く な い 。 数 年 前 か ら ICP-MS、 液 体 シ ン チ レ ー シ ョ ン カ ウ ン タ ー 、 ゲ ル マ ニ
ウ ム 半 導 体 検 出 器 に よ る 環 境 放 射 能 測 定 の 試 料 前 処 理 法 と し て HPLC、 マ イ ク ロ 波 加 熱 及
び低温灰化の有用性について検討しており、マイクロ波加熱により試料を迅速処理する
方法等については既に報告した。現在では、マイクロ波加熱による更なる迅速試料処理
お よ び HPLC、 低 温 灰 化 の 試 料 処 理 へ の 有 用 性 に つ い て 検 討 し て い る 。
ま た 、E - D I S 線 量 計 に よ る 放 射 線 施 設 の 環 境 モ ニ タ リ ン グ に つ い て も 検 討 し て い る 。こ
の 線 量 計 は フ ィ ン ラ ン ド の R A D O S 社 が 開 発 し た 電 子 線 量 計 で 、器 壁 と フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー
トの間で形成された電離箱と不揮発性メモリ素子で構成されている。放射線が入射する
と、器壁材との間で相互作用を起こした二次電子が器壁内のガスを電離させ不揮発性メ
モリ素子に電荷が蓄えられ情報として記録される。専用読み取り装置でこの電圧の変化
を読み取ることにより線量を測定する。なお、線量計には高線量用、中線量用及び低線
量用の3種類の電離箱が封入されている。現在は、この線量計を用いて管理区域外にお
けるバックグラウンド測定による指示値の信頼性及び非管理区域、管理区域境界、管理
区域内での測定における方向特性、積算線量などについて検討している。
二重ベータ核分光による中性微子質量および右巻き相互作用の検証
Nuclear and particle physics studied by ultra rare-process nuclear spectroscopy
(理学研究科物理学専攻)岸本忠史、阪口篤志、味村周平、小川泉、松岡健次、硲隆太、梅原さおり、
岸本康二、市原佳代子、向田賢太郎、平野祥之、小林哲也、柳澤明希子、村山理恵、
(理学部物理学教室)
伊田祥吾、今別府デニス幸生、庄野暢晃、坪田悠史(理学研究科付属原子核科学実験施設)吉田斉
(Graduate School of Science) T. Kishimoto, A. Sakaguchi, S. Ajimura, Ogawa, I., K. Matsuoka, R. Hazama,
S. Umehara, K. Kishimoto, K. Ichihara, K. Mukaida, Y. Hirano, T. Kobayashi, A. Yanagisawa, R. Murayama,
(Faculty of Science) S. Ida, Y.D. Imabeppu, N. Shouno, Y. Tsubota, (OULNS) S. Yoshida
中性微子(ニュートリノ、ν)放出を伴わない二重ベータ崩壊は、その事象が確認されると、質量の絶対
値及び起源(Dirac 型または Majorana 型)に対する理解が深まるだけでなく、レプトン数保存則の破れを意
味し、宇宙の物質・反物質の非対称性を解く鍵となる可能性がある。それ故世界中で多くの実験が実施・計
画されている。また、宇宙暗黒物質は WMAP 衛星などにより宇宙密度全体に対する割合などに関する理解
が進んでいるとはいえ、その正体は依然不明である。その候補粒子と考えられている WIMPs の検出を目的
とした実験研究はますます重要性を増している。これらはともに非常に稀な事象であると考えられており、
様々な放射性雑音を如何に減らすかが重要な実験技術である。
我々のグループでは大阪大学核物理研究センター大塔コスモ観測所に設置された検出器(ELEGANT VI)
を用いて上記の探索実験を進めてきた。また、特に二重ベータ崩壊実験においてより検出感度を向上させる
べく、CANDLES の開発及び建設を RI センターに設置された機器類を利用して進めている。
発表論文
1.
“CANDLES for the Study of ββ Decay of 48Ca”
I. Ogawa et al., Proceedings of the Fifth International Workshop on NEUTRINO OSCILLATIONS AND THEIR
ORIGIN (2005) World Scientific.
口頭発表
2.
“CANDLES for Double Beta Decay of 48Ca”
S. Umehara, 9th Int. Conf. on Topics in Astroparticle And Underground Physics (TAUP05) (Zaragoza, Spain,
September 2005)
3.
「宇宙の謎解きと極微量自然放射能測定」
松岡健次
4.
他、機器・分析技術研究会(岩手、2005 年 9 月)
“CANDLES for the study of 48Ca double beta decay”
T. Kishimoto, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
5.
“Liquid Scintillator for CANDLES System”
I. Ogawa, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
6.
“Challenge on 48Ca enrichment”
R. Hazama, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
7.
“Background Rejection for CANDLES System”
S. Umehara, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
8.
“Data acquisition system for CANDLES III”
K. Ichihara, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
9.
“Calibration system for CANDLES III”
Y. Hirano, US-Japan seminar on "Double Beta Decay and Neutrino Mass" (Hawaii, USA, September 2005)
10. "Separation of Calcium Isotopes with a Crown Ether for the Study of Double Beta Decay of 48Ca"
R. Hazama, 2nd International Symposium on Isotope Science and Engineering from Basics to Applications
(Nagoya, Japan, September 2005)
11. “Double beta decay of 48Ca in CANDLES III – Construction and first run”
K. Ichihara, 2ndJoint Meeting of the Nuclear Physics Division of the APS and JPS (HAWAII 2005) (Hawaii, USA,
September 2005)
12. “Double beta decay of 48Ca in CANDLES III – development of the calibration system”
Y. Hirano, HAWAII 2005 (Hawaii, USA, September 2005)
13. “Performance test of the prototype detector for Dark Matter Search
A. Yanagisawa, HAWAII 2005 (Hawaii, USA, September 2005)
14. 「2 重ベータ崩壊と同位体濃縮(CANDLES 計画)」
岸本忠史、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
15. 「Double beta decay experiments」
小川泉、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
16.
「CANDLES (48Ca) and chemical isotope separation」
硲隆太、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
17. 「Centrifugal separation of 48Ca」
松岡健次、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
18. 「Low Background Ge Detector」
梅原さおり、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
19.
「大塔村コスモ観測所における放射能不純物測定のための Ge 検出器」
平野祥之、二重ベータ崩壊と同位体科学(大阪、2005 年 11 月)
20. 「 CANDLES 実 験に おけ る 48Ca を 用 いた 二重 ベ ータ 崩壊 の 研究 -地 下 実験 施設 移 設に 向け た
CANDLES III の性能評価 -」
平野祥之
他、日本物理学会第 61 回年次大会(松山、2006 年 3 月)
21. 「ELEGANT VI による Dark Matter 測定データの解析」
向田賢太郎
他、日本物理学会第 61 回年次大会(松山、2006 年 3 月)
放射性核種を用いた物性研究
Condensed matter studies with radioactive isotopes
(大学院理学研究科)篠原厚、高橋成人、佐藤渉、吉村崇、笠松良崇、遠山有二、二宮和彦、齋宮芳紀、
北本優介、雑賀大輔、杉浦啓規、松尾啓司、高部智正、田代祐基、中嶋啓二、中塚敏光、猪飼拓哉、
大江一弘、越智憲崇、栗林隆宏
(Graduate School of Science)
A. Shinohara, N. Takahashi, W. Sato, T. Yoshimura, Y. Kasamatsu, Y. Tooyama,
K. Ninomiya, Y. Itsuki, Y. Kitamoto, D. Saika, H. Sugiura, K. Matsuo, T. Takabe, Y. Tashiro, K. Nakashima, T.
Nakatsuka, T. Ikai, K. Ooe, N. Ochi, and T. Kuribayashi
1.γ線摂動角相関法による物質科学
-0.15
γ線摂動角相関法は、不安定核から放出される2本のカス
Undoped
Room Temp.
ケードγ線の角度相関の時間変化を観測することによってプ
-0.1
ローブ周辺の超微細場の情報を得る分光法である。本研究で
は
111
Cd をプローブとして光触媒や半導体として広く応用が期
-0.05
待されている酸化亜鉛(ZnO)の局所場を観察したので報告する。
インジウムを 500 ~ 50000 ppm ドープした ZnO とドープして
0
-0.15
いない ZnO (undoped-ZnO) をそれぞれ 1100℃で焼鈍した。イ
ドープしている。これらの試料に
111
In(塩化インジウム溶液、
日本メジフィジクス)を適量滴下し、再び空気中で焼鈍して
A 22G22(t)
ンジウムは格子欠陥と物性の関係を調べることを目的として
5000-ppm Doped
Room Temp.
-0.1
-0.05
摂動角相関測定用の試料とした。測定は 10 K から 673 K の温
度 範 囲 で 行 っ た 。 Fig. 1 に 5000 ppm ド ー プ し た 試 料 と
0
-0.15
undoped-ZnO の摂動角相関スペクトルを示す。インジウムを
ドープすることによって、undoped-ZnO では観測されない新
5000-ppm Doped
673 K
-0.1
しい高周波数成分が出現することが明らかとなった。また、
高温側ではより顕著な周波数成分が観測されている。これは
-0.05
熱的により安定な位置をプローブが占有したため、この周波
数を与える成分の存在比が大きくなったことを示唆している。
現在、スペクトルのインジウム濃度依存性と温度依存性につ
いて検討中である。
0
0
50
100
150
200
250
300
Time / ns
Fig. 1. TDPAC spectra of
in ZnO.
111
Cd (← 111 In)
2 . Tc 錯 体 の 合 成
第七族に属するテクネチウムは、多様な金属間結合様式が発現する事が期待される。しかしながら、
テクネチウムの多核錯体に関する研究は非常に少ない。今回、我々は、過剰のハロゲン化物イオン共存
下で、金属テクネチウム、硫黄、およびハロゲンを混合し、高温反応により分子性の錯体 [Tc6 (µ 3 -S) 8 Br 6 ] 4- 、
テクネチウム六核ユニットが 1 次元に繋がった錯体[Tc6 (µ 3 -Se) 8 Br 4 ] 2- 、キャップ配位子およびターミナ
ル配位子で 3 次元に架橋された[Tc6 (µ 3 -Se) 8 I 2 ]を得た。得られた錯体のテクネチウムイオンの酸化数は、
すべて III 価をとっている。テクネチウム六核クラスターユニット内の結合距離および結合角は、同族
のレニウム(III)六核錯体と非常に似た値であった。[Tc6 (µ 3 -S) 8 Br 6 ] 4- は、溶液に可溶な初めての八面体型
テクネチウム六核錯体である。溶液中の吸収スペクトルにおいて、そのスペクトルパターンは対応する
[Re6 (µ 3 -S) 8 Br 6 ] 4- と は 大 き く 異 な っ て い る 。 ま た 、 [Tc6 (µ 3 -S) 8 Br 6 ] 4- は ア セ ト ニ ト リ ル 中 で +0.75 V vs.
Ag/AgCl に TcIII6 /TcIII5 TcIV、+1.05 V vs. Ag/AgCl に TcIII5 TcIV/TcIII4 TcIV2 過程に帰属できる 2 段階の 1 電子酸
化還元波を示した。TcIII6 /TcIII5 TcIV 過程の酸化還元電位は、対応するレニウム六核錯体に比べて約 0.4 V
正側に観測され、第二周期と第三周期の遷移金属元素同士で見られる一般的な傾向に定性的に一致した。
一方、TcIII5 TcIV/TcIII4 TcIV2 過程の酸化還元電位は対応するレニウム六核錯体の ReIII5 ReIV/ReIII4 ReIV2 過程の
電位に比べて 0.1 V 負側に観測され、一般的な傾向とは異なる興味深い挙動を示した。
発表論文
1. “Synthesis, Structure, and Spectroscopic Properties of fac-[TcICl(CO) 3 (bpy)]”
Y. Tooyama, A. Harano, T. Yoshimura, T. Takayama, T. Sekine, H. Kudo, and A. Shinohara
J. Nucl. Radiochem. Sci., 6, 153-155 (2005).
2. “A Novel Seven-coordinate Technetium(IV) Complex: Synthesis and Characterization of [TcO(tpen)]2+ (tpen =N, N, N’, N’-Tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine)”
T. Yoshimura, M. Kawai, T. Takayama, T. Sekine, H. Kudo, and A. Shinohara
Chem. Lett., 34, 1624-1625 (2005).
口頭発表
1. “Synthesis, structure and properties of technetium complex with polypyridyl ligand”
T. Yoshimura, Y. Tooyama, M. Kawai, T. Takayama, T. Sekine, H. Kudo, and A. Shinohara
International Symposium on Technetium –Science and Utilization(大洗、2005 年 5 月).
2.「γ線摂動角相関法による酸化亜鉛中の局所場観察」
齋宮芳紀、佐藤渉、高橋成人、篠原厚
2004 日本放射化学会年会(金沢、2005 年 9 月).
3.「tpen を配位子とする七配位テクネチウム(IV)錯体の合成と性質」
吉村崇、河合正徳、高山努、関根勉、工藤博司、篠原厚
第 55 回錯体化学討論会(新潟、2005 年 9 月).
4.「八面体状に金属間結合をもつレニウム六核錯体の酸化還元、光物性とテクネチウム六核錯体への
展開」
吉村崇
第 55 回錯体化学討論会シンポジウム(新潟、2005 年 9 月).
5.「高配向熱分解グラファイト中 PAC プローブの核四極緩和」
佐藤渉、上野秀樹、谷口秋洋、齋宮芳紀、笠松良崇、篠原厚、旭耕一郎、浅井吉蔵、大久保嘉高
「原子核プローブ生成とそれを用いた物性研究」専門研究会(熊取、2005 年 11 月).
6. “Synthesis of technetium octahedral cluster and mononuclear complexes”
T. Yoshimura, Y. Tooyama, M. Kawai, T. Takayama, T. Sekine, H. Kudo, and A. Shinohara
International Conference New Frontiers of Modern Coordination Chemistry (ノボシビルスク、2005 年 11 月).
7. “Time-differential perturbed angular correlation studies by means of the probe implantation method”
W. Sato, H. Ueno, H. Watanabe, H. Miyoshi, A. Yoshimi, D. Kameda, J. Kaihara, K. Shimada, T. Ito, S. Suda,
Y. Kobayashi, H. Ogawa, Y. Itsuki, Y. Kasamatsu, A. Shinohara, A. Taniguchi, K. Asahi, and Y. Ohkubo
2005 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies(ホノルル、2005 年 12 月).
8.「八面体型テクネチウム六核クラスター錯体の合成と構造」
吉村崇、高山努、関根勉、篠原厚
日本化学会第 86 春季年会(千葉、2006 年 3 月).
重核・重元素の核化学的研究
Research for nuclear chemistry of heavy nucleus and heavy elements
(大学院理学研究科)篠原厚、佐藤渉、吉村崇、高橋成人、遠山有二、二宮和彦、高部智正、
田代祐基、中嶋啓二、中塚敏光、猪飼拓哉、大江一弘、越智憲崇、栗林隆宏
(Graduate School of Science) A. Shinohara, W. Sato, T. Yoshimura, N. Takahashi, Y. Tooyama, K.Ninoniya,
T. Takabe, Y. Tashiro, K. Nakashima, T. Nakatsuka, K. Ooe, N. Ochi, T. Kuribayashi,
研究目的
原子番号 101 番以降の元素(重元素)は相対論効果の影響により、同族元素間での化学的性質の系統性から
逸脱する可能性が指摘されている。原子番号 100 番の Fm までは原子炉で生成が可能であるのに対し、101
番の Md 以降の重元素は全て加速器による重イオン核反応により生成する必要がある。この重イオン核反応
における断面積は非常に小さく、その上、生成核の寿命が極めて短いため、重元素を用いた研究を行う際に
は迅速化など実験装置にかなりの工夫が求められる。当研究室では重元素について化学的性質を調べる事を
目的とし、そのための化学的基盤の確立、装置開発と 102 番元素ノーベリウムの励起関数測定、液液抽出に
関する研究を行った。
重元素化学
1)238U(22Ne,5n)255No反応における励起関数の測定
理化学研究所リングサイクロトロンにおいて、238U(22Ne,5n)255No反応を用いて255Noの合成を行った。ま
た、照射エネルギー120±1 , 116±1 , 113±1 , 108±1 MeVの五点についてそれぞれの反応断面積を測定し、
励起関数を描いた。
2)マイクロチップを用いた溶媒抽出
重元素は短寿命のため迅速な化学操作が必要となる。ランタノイドの液液抽出実験において1秒以下での
平衡到達が確認されているマイクロチップを用い、理化学研究所のリングサイクロトロンを用いて、実験を
行った。ビームに22Ne(115 MeV on target)、ターゲットに238Uを用いて238U(22Ne,5n)255Noの反応により半
減期 3.1 分の255Noを生成し、これをHeガスジェットによる搬送、溶液化を経て、抽出剤としてHDEHPを用
いてマイクロチップでの抽出実験を行ったところ、水相、有機相合わせて 5 時間で 42countsが得られた。こ
の結果からマイクロチップを用いれば半減期の短い重元素でも化学操作を行うことが十分可能な事がわかっ
た。
重元素化学の化学的基盤の確立
1)液液抽出系の探索
重アクチノイドの化学的性質の解明に向けた基礎データの取得のため、抽出剤にβ-diketone を用いてラ
ンタノイドおよびアクチノイドの抽出実験による分配比を算出した。これは同程度のイオン半径をもつラン
タノイドおよびアクチノイドで抽出を行い、それぞれの錯体の安定性を比較する事により重アクチノイドの
結合性、錯安定度を求めることを目的としている。β-diketone として 2-Thenoyltrifluoroacetone および 4,
4,4-Trifluoro-1-phenyl-1,3-butanedione を用い、イオン強度一定化のため KCl、溶媒にベンゼン、pH 調整
のために HCl を用いて数種類のランタノイドおよびアクチノイドに対して抽出を行った。その結果、β-di
ketone は電子供与能が大きいほど、ランタノイドは表面電荷密度が大きいほど錯体の安定性が増す事が観測
された。また、アクチノイドに関してはイオン半径から予想される値とずれたがデータ数が限られているた
め、さらに研究を進めていく必要がある。
2)装置開発
(1) フロー電解セルを用いたSg還元実験のための基礎研究
原子番号 106 番のSgは酸化還元の可能性があ
り、酸化還元電位を調べる事で化学的性質への知見を得る事ができる。本研究ではSgの還元に向け、同族元
素であるWを使用し、フロー電解セルを用いた還元実験を行った。このとき還元効率は 25-50%ほどであっ
た。また、核物理センターにおいてnatEr(12C,xn)W反応によりWを合成し、抽出剤として塩化テトラフェニ
ルアルソニウムを用いて抽出を行い、酸化還元前後での分配比の変化を調べた。その結果、還元後は分配比
が大きくなる事が分かった。現状のフロー電解セルではデッドボリュームが大きく還元効率が良くないため
マイクロチップ型の電解セルの使用などを検討している。
(2) キャピラリー電気泳動法を用いた希土類の相互分離
重元素はその短い半減期の為、副生成物の分離除
去と対象元素の分析を同時に行う必要がある。そこで、高分離能かつ金属-配位子間結合などの議論が可能
な手法としてキャピラリー電気泳動法に着目し、考案したフラクション分取用装置を用いてアクチノイド元
素Am, Cmと希土類元素の相互分離実験を行った。試料として複数のランタノイドおよび241Amと
243Cmを
混合し、pH4.0 の塩酸に溶解させたトレーサー溶液を用いて、これを内径 75μm、60cmのフューズドシリ
カキャピラリー(不活性化キャピラリー)に落差法(10cm, 10s)で導入し、+30kVの電圧を印加し
て電気泳動を行いその移動度を測定した。その結果,短時間で希土類元素, Am, Cmを高効率に相互分
離することに成功した。
(3) 液体シンチレーションカウンター(LSC)による重元素検出条件の設定
LSCは、検出効率が 100%である事、蒸発乾固の手間が省ける事などから、重元素の溶液化学の測定系に適
しているが、β線のバックグランドが難点である。これを緩和する目的で、径が細いチューブを用いてα線
とβ線の飛程の違いによる弁別を試みた。より具体的には 300μmのチューブをコンパクトにネジに巻きつ
けて測定部内で 40μlの液量を確保し、そこに241Amを含むシンチカクテルを流し込みα線を測定した。その
結果,β線バックグランドの減少が見られたが、発光量減少によるクエンチングを起こしてしまった。今後さ
らなる改良が必要である。
口頭発表
1.
「マイクロチップを利用したオンライン迅速溶媒抽出法の開発」
雑賀大輔、北本優介、松尾啓司、田代祐基、高部智正、吉村崇、佐藤渉、高橋成人、羽場宏光、
榎本秀一、篠原厚、第49回放射化学討論会、金沢、2005 年 10 月
2.
「超重元素ラザホージウムの塩化物錯体形成」
塚田和明、豊島厚史、羽場宏光、浅井雅人、秋山和彦、石井康雄、當銘勇人、西中一郎、佐藤哲也、
市川隆敏、平田勝、永目輸一郎、矢坂毅、後藤真一、池沢孝明、佐藤渉、松尾啓司、北本優介、田代祐
基、横山明彦、新井理人、坂間稔、大浦泰嗣、末木啓介、篠原厚、工藤久昭、Matthias Schädel、第4
9回放射化学討論会、金沢、2005 年 10 月
3.
「超重元素ラザホージウムの TBP-HCl 系逆相抽出クロマトグラフィー」
豊島厚史、羽場宏光、塚田和明、秋山和彦、浅井雅人、石井康雄、當銘勇人、西中一郎、市川隆敏、
佐藤哲也、市川進一、永目輸一郎、佐藤渉、松尾啓司、北本優介、田代祐基、篠原厚、池沢孝明、
坂牧雅巳、後藤真一、工藤久昭、新井理人、鎌滝真次、横山明彦、大浦泰嗣、末木啓介、第49回放射
化学討論会、金沢、2005 年 10 月
4.
「超重元素ラザホージウムのフッ化物錯体形成」
豊島厚史、羽場宏光、塚田和明、浅井雅人、秋山和彦、後藤真一、石井康雄、佐藤渉、松尾啓司、
北本優介、田代祐基、横山明彦、坂間稔、大浦泰嗣、西中一郎、佐藤哲也、市川隆敏、平田勝、
市川進一、末木啓介、篠原厚、工藤久昭、永目輸一郎、中原弘道、Matthias Schädel、第49回放射化
学討論会、金沢、2005 年 10 月
5.
「理研 AVF サイクロトロンを用いた重元素化学研究のための環境整備」
高部智正、北本優介、雑賀大輔、松尾啓司、田代祐基、吉村崇、羽場宏光、加治大哉、篠原厚、第49
回放射化学討論会、金沢、2005 年 10 月
6.
「アクチノイドの抽出挙動と液体シンチレーションカウンターを用いた自動検出システムの開発」
田代祐基、北本優介、雑賀大輔、松尾啓司、高部智正、佐藤渉、高橋成人、吉村崇、篠原厚、第49回
放射化学討論会、金沢、2005 年 10 月
7.
「キャピラリー電気泳動法によるアクチノイドの分離とイオン半径の導出」
北本優介、雑賀大輔、松尾啓司、高部智正、田代祐基、佐藤渉、高橋成人、吉村崇、羽場宏光、
榎本秀一、三頭聰明、篠原厚、第49回放射化学討論会、金沢、2005 年 10 月
8.Development of the microchip solvent extraction apparatus for superheavy elements
Yusuke Kitamoto, Keiji Matsuo, Daisuke Saika, Tomomasa Takabe, Yuki Tashiro,
Takashi Yoshimura, Wataru Sato, Naruto Takahashi, Hiromitsu Haba,
Shuichi Enomoto,
Atsushi Shinohara、INTERNATIONAL CHEMICAL CONGRESS OF PACIFIC BASIN SOCIETIES
2005, Hawaii
9.
「金属-配位子間相互作用を利用した3価アクチノイドのキャピラリー電気泳動分離」
北本優介、雑賀大輔、松尾啓司、高部智正、田代祐基、大江一弘、栗林隆弘、佐藤渉、高橋成人、
吉村崇、羽場宏光、榎本秀一、三頭聰明、篠原厚
第85回日本化学会年会、千葉、2006 年 3 月
イオン輸送性蛋白質とその制御因子の機能解析
Functional analysis of ion transporting membrane proteins and its regulators
(理学研究科) 桑原直之、佐野由枝、松下昌史、三井慶治、金澤浩
(Grad. Sch. of Sci.) N. Kuwabara, Y. Sano, M. Matsushita, K. Mutsui, H. Kanazawa
【はじめに】
細胞内pHを含む様々なイオン環境の細胞内恒常性の維持は、生命にとって極めて重要な活動の一つで
ある。たとえば、細胞内(細胞質)のpHは、中性付近に常に一定に保たれている。また、細胞内の小器官(小胞
体、ゴルジ体、リソソームなど)は、それぞれ固有のpH環境を保持しており、これはそれぞれの小器官が持つ固
有の機能に必須である。そのため、これらの細胞内イオン環境は、厳密に制御されている。その細胞内イオン環境
の維持・制御メカニズムの中心的な役割を果たしているのが、形質膜をはじめとする生体膜にほぼ普遍的に存在す
る様々なイオン輸送性膜タンパク質である。そのなかでも、細菌から高等動物にいたるまであらゆる生物の膜に存
在し、細胞内pHや浸透圧の調節を行っている膜タンパク質がNa+/H+交換輸送担体である。Na+/H+交換輸送担体は、
膜を隔ててNa+とH+を交換輸送することにより、細胞内Na+濃度や細胞内pH、浸透圧の調節を行っている。我々の
研究室では、細菌から動物細胞でのNa+/H+交換輸送担体のイオンの交換輸送メカニズムや活性制御機構について研
究を行っている。
【細菌 NhaA の pH 応答性メカニズムの解明】
細菌にはNa+/H+交換輸送担体の一つとしてNhaAが存在しH+の電気化学的勾配と共役してNa+を排出す
ることで細胞内Na+濃度や細胞内pHの調節に重要な働きをしている。これまでに研究により、大腸菌由来のNhaA
(ECNhaA)は細胞内が酸性から中性pHの環境ではイオン輸送活性をほとんど保持していないが、アルカリpH環境に
より活性化され、精製NhaAをもちいた再構成系での22Naの輸送活性(NhaAを含んだ小胞への22Naの取り込み活性)
からイオン輸送速度(Vmax)がおよそ 1000 倍に増加することが知られている。このことからECNhaAはpH環境に応
答してそのイオン輸送活性を大きく変化させるpH応答性活性化メカニズムを保持していると考えられている。こ
のECNhaAのpH応答性活性化メカニズムの解明は、我々のNhaA研究の大きな課題の一つである。しかし、我々は
胃という非常に酸性環境で生育することができるピロリ菌由来のNhaA (HPNhaA)が、大腸菌ECNhaAと異なり酸性
pHにおいても活性を有し、非常に広いpH環境(酸性pHからアルカリpH)においてイオン輸送機能を発揮すること
ができることを見出した。この異なる生物種由来のNhaAがどのようにして異なるpH応答性を獲得しているのかに
ついて非常に興味深い問題である。我々はこれら 2 つのNhaAを比較、解析することでpH応答性機構を解明できる
のではないかと考えている。現在までに、ECNhaAとHPNhaAを共に高純度に精製し、人工小胞に再構成すること
により、両タンパク質のイオン輸送活性(22Naの取り込み活性)の測定に成功している。その結果から、HPNhaA
はECNhaAと比べ、Na+に対する親和性が高いことが明らかになった。
【動物細胞Na+/H+交換輸送担体の制御因子(CHP)の機能解析】
Na+/H+交換輸送担体(NHE)の機能は細胞の生存、分化や増殖と深く関わっている。動物細胞のNHEには
9 つのアイソフォームが知られており、いずれもC末端側が細胞質に突出した親水性領域を有している。この細胞
質領域がNHEの活性に重要であることが示唆されている。当研究室では、この領域に未知のタンパク質が結合す
る可能性を考え検索を行った結果、新規のカルシニューリンB様タンパク質(CHP)を同定し、その機能の解析を行
なってきた。これまでにCHPはNHEの活性の発現に必須であることを示唆する報告がなされているが、その詳細
は不明である。またCHPはNHE以外のタンパク質とも結合する多機能性タンパク質と考えられているが、細胞内
での挙動の全体像は明らかとなっていない。こうした問題を解決する 1 つの方法としてCHP欠損細胞株を樹立し、
CHP遺伝子の発現を人為的に調節する系を確立することは有用である。そこで本研究では、CHP1 遺伝子のみが発
現しているニワトリBリンパ球細胞株DT40 を用いてCHP遺伝子欠損株を作製し、CHP欠失の及ぼす影響を解析し
てその機能について考察した。細胞内へのNHE1 に依存した22Naの取り込みを測定し、NHE1 のイオン輸送活性と
した。その結果、ヘテロノックアウト細胞ではNHE1 活性が野生型の約 60%に減少し、ホモノックアウト細胞につ
いては活性がほぼ消失していることが確認された。また、ホモノックアウト細胞にCHP1 を再導入することにより、
NHE1 活性の回復が観察された。これによりCHP1 はNHE1 の活性に必須であり、細胞内でイオン恒常性の維持に
寄与する因子であることが強く示唆された。また、細胞膜表面におけるNHE1 の発現を特異的抗体を用いて調べた
ところ、ホモノックアウト細胞において、NHE1 は細胞全体では野生型と同等に発現しているにもかかわらず、細
胞膜表面にはほとんど発現していないことが明らかになった。また、CHP1 の再導入した細胞では、野生型と同様
にNHE1 の細胞膜での発現が観察された。これらのことからCHP1 はNHE1 の細胞内輸送または安定性の維持に関
与している可能性が示唆された。
【発表論文】
1. “Four Na+/H+ exchanger isoforms are distributed to Golgi and post-Golgi compartments and are involved in organelle pH
regulation”
N. Nakamura, S. Tanaka, Y. Teko, K. Mitsui, H. Kanazawa, J. Biol. Chem., 280, 1561-72, (2005).
【口頭発表】
1. 「ニワトリ B リンパ球細胞株 DT40 を用いたカルシニューリン B 様タンパク質(CHP)遺伝子欠損細胞株の樹立
とその解析」
佐野由枝、横山俊介、高居朋世、松下昌史、三井慶治、井上弘樹、金澤浩
第 28 回 日本分子生物学会年会(福岡、2005 年 12 月)
大腸菌 mRNA エンドリボヌクレアーゼの解析
Analysis of mRNA endoribonucleases from Escherichia coli
(理学研究科生物科学)岩本明、古賀光徳、濱田崇宏、多田康子、米崎哲朗
(Graduate School of Science) A. Iwamoto, M. Koga, T. Hamada, Y. Tada, T. Yonesaki
遺伝子発現に直接作用をもつ mRNA エンドリボヌクレアーゼの生物学的意義を明らかにするため、大腸菌を
モデル生物として解析を行っている。2005 年度は我々が新たに同定した RNase LS の性状解析、RNase E、
RNase G、RNase LS 等の mRNA エンドリボヌクレアーゼ活性を制御する機構について解析を進めた。
RNase LSの解析
RNase LS複合体を部分精製し、複合体に含まれるRnlAと単独RnlAの量をそろえて活性を調べたところRnlA単
独によるRNA切断活性に比べ複合体では10-20倍活性が高かった。従って、複合体の他成分による促進効果が
明瞭に認められる。T4ファージDmdはいずれに対しても特異的阻害効果を示した。
RNase LS構成成分の同定
RNase LS活性に必須遺伝子として同定されているrnlAの近傍の塩基配列を分析したところ、転写プロモータ
ー様配列、rnlA、未知遺伝子rnlB、転写ターミネーター様配列、配置が認められた。このことから、rnlAと
rnlBはオペロンを形成していることが示唆される。そこで、rnlBの破壊株を作成して表現型を調べた。野生
型大腸菌にT4ファージのdmd変異体が感染した場合にはRNase LSの作用により遺伝子発現不能となり増殖が
できない。これに対して、rnlB破壊株への感染では予想通りdmd変異体が増殖可能であった。また、dmd変異
体感染rnlB破壊株内におけるmRNA切断の解析、rnlB破壊株抽出液におけるRNase LS活性の解析から、rnlB破
壊株ではRNase LS活性が検出されなかった。これらのことから、rnlBは rnlAと同じくRNase LSに必須の遺伝
子であることが明らかとなった。さらに、Western blottingによりRnlAとRnlBはRNase LS複合体に含まれて
いることが判明した。
RNase LSが認識するシス配列或は構造の探索
in vivo で RNase LS が標的にしやすい mRNA には何らかの認識配列或は構造が存在すると考えられる。そこ
で、標的になりやすい soc mRNA となりにくい uvsY mRNA について、5'UTR、orf、3'UTR を互いに入れ替え
た一連のキメラ mRNA を作成して標的になりやすさを測定した。その結果、soc mRNA の標的になりやすさを
決定する構造が 3'UTR に存在することが明らかとなった。
RNase EとGを活性化するT4遺伝子の探索
T4 ファージゲノムの TK2 領域内にある遺伝子が感染直後に発現することによって RNase E と G による大腸
菌 mRNA の急速な分解が誘導される。遺伝子を特定するために TK2 領域の半分を欠失した変異体を2種類作
成した。その一種ΔA は、正常に大腸菌 mRNA 分解を誘導したが、他の一種ΔB は誘導できなかった。さら
にΔA 領域を2つに分け、それぞれを欠失した変異体ΔA1 とΔA2 を作成したところ、ΔA1 は大腸菌 mRNA
分解を誘導したが、ΔA2 は誘導できなかった。従って、原因遺伝子はΔA2 が欠失している約 7 遺伝子のい
ずれかであることが示唆された。
発表論文
1.
RNA Cleavage Linked with Ribosomal Action.
Yamanishi, H., and Yonesaki, T. Genetics, 171, 419-425 (2005).
2.
Opposite roles of the dmd gene in the control of RNase E and RNase LS activities.
Kanesaki, T., Hamada, T., and Yonesaki, T. Genes Genet. Syst., 80, 241-249 (2005).
3.
A Novel Endoribonuclease, RNase LS, in Escherichia coli.
Otsuka, Y., and Yonesaki, T. Genetics, 169, 13-20 (2005).
4.
mRNA 分解と遺伝子発現調節.
米崎哲朗. Radioisotopes, 54, 517-519 (2005).
口答発表
1. 「大腸菌 RNase LS に必須な RnlA の解析」
岩本明、米崎哲朗、第 77 回 日本遺伝学会(東京、2005 年 9 月)
2. 「大腸菌 RNase LS による uvsY mRNA と soc mRNA の認識に差を生じさせるシス因子の同定」
濱田崇宏、兼崎琢磨、大塚裕一、米崎哲朗、第 28 回
日本分子生物学会(福岡、2005 年 12 月)
3. 「大腸菌 RNase LS に必須な RnlA の解析」
岩本明、古賀光徳、大塚裕一、米崎哲朗、第 28 回
日本分子生物学会(福岡、2005 年 12 月)
4. 「RnlA と RnlA 結合タンパク質が形成する複合体の RNase 活性の解析」
古賀光徳、岩本明、米崎哲朗、第 28 回 日本分子生物学会(福岡、2005 年 12 月)
5. 「大腸菌 mRNA の不安定化を誘導する T4ファージ遺伝子の探索」
多田康子、米崎哲朗、第 28 回
日本分子生物学会(福岡、2005 年 12 月)
植物細胞機能の解析
Analysis of plant cellular functions
(理学研究科) 高木慎吾
(Graduate School of Science) S. Takagi
植物細胞の伸長方向は、細胞壁の主成分であるセルロース微繊維の配列方向(配向)によって決定され、セル
ロース微繊維の配向の制御には、細胞質表層微小管が関与すると考えられている。陸上双子葉植物アズキの茎の
表皮細胞では、オーキシンの存在に依存して、表層微小管の配向が、細胞伸長の方向に対して、平行→直角→平
行→直角→・・・と周期的に変化する。茎切片にサイトカイニンとオーキシンとを与えると、茎切片の長軸方向
への伸長が抑制され、表層微小管の配向は平行方向で安定化される。ジベレリンとオーキシンとを与えると、茎
切片の長軸方向への伸長が促進され、表層微小管の配向は直角方向で安定化される。さらに、各々の処理の時、
セルロース合成阻害剤を同時に与えると、サイトカイニンによる伸長抑制、ジベレリンによる伸長促進が部分的
に打ち消されるにもかかわらず、各処理における配向の安定化はより強められ、次の配向変化が起こりにくくな
った。以上より、
「表層微小管(細胞内)→セルロース微繊維(細胞壁)
」という方向だけでなく、
「セルロース
微繊維(細胞壁)→表層微小管(細胞内)
」という方向の情報伝達が起こっている可能性が示唆された。
発表論文
1. “Reorganized actin filaments under high-intensity blue light anchor chloroplasts along the anticlinal walls of Vallisneria
epidermal cells”
Y. Sakai, S. Takagi, Planta, 221, 823 (2005).
2. “Photoregulation of cytoplasmic motility”
S. Takagi, In “Light Sensing in Plants” (M. Wada et al., eds.), Springer-Verlag Tokyo, Tokyo, pp. 87 (2005).
口頭発表
1. ”Interaction of chloroplasts with actin filaments and plasma membrane in spinach mesophyll cells in vivo and in vitro”
T. Kumatani, N. Sakurai, H. Takamatsu, N. Miyawaki, E. Yokota, T. Shimmen, I. Terashima, S. Takagi, XVIIth
International Botanical Congress (Vienna, Austria, July, 2005)
2. 「画像処理による細胞質運動性の定量的解析」
高木慎吾、第 23 回日本植物細胞分子生物学会(京都、2005 年 8 月)
3. 「ホウレンソウにおける葉緑体の細胞内定位とアクチン細胞骨格」
高木慎吾、第 12 回日本光生物学協会年会(京都、2005 年 8 月)
4. 「ホウレンソウ細胞膜ゴーストを用いた葉緑体アンカー機構の解析」
高松秀安、櫻井-尾里納美、高木慎吾、日本植物学会第 68 回大会(富山、2005 年 9 月)
5. 「シロザ葉柄における屈曲の誘導と停止による屈曲角の調節メカニズム」
藤田佳子、高木慎吾、寺島一郎、第 47 回日本植物生理学会年会(つくば、2006 年 3 月)
損傷 DNA の分子認識に関する研究
Studies on molecular recognition of damaged DNA
(基礎工学研究科)岩井成憲、明樂里香、藤原芳江
(Graduate School of Engineering Science) S. Iwai, R. Myoraku and Y. Fujiwara
基礎工学研究科・岩井研究室では DNA の損傷と修復に関する研究を行っており、有機合成化学を基
盤としているが、分子生物学や構造生物学にも研究分野を広げつつある。その一環として、DNA 修復酵
素の分子認識や触媒反応の機構を解明するために平成17年度後期からラジオアイソトープ総合セン
ター豊中分館の利用を開始した。平成17年度は、近い将来実施を予定している DNA 修復にかかわる
タンパク質と損傷 DNA の複合体の結晶構造解析に備えて、結晶化に適した安定な複合体を得るための
方法としてタンパク質−DNA 間の架橋形成を試みた。当該年度には遺伝子組換え実験によりタンパク質
を調製するための設備や手続きを完備できなかったので、以前より大腸菌リボヌクレアーゼ HI に関し
て共同研究を行っている工学研究科・金谷研究室において変異体タンパク質を調製していただき、この
酵素を研究対象とした。
リボヌクレアーゼHはDNAとRNAから成るハイブリッド2本鎖中のRNA鎖を分解する酵素であり、大
腸菌からヒトに至るまで保存されているほか、ヒト免疫不全ウイルスの逆転写酵素やRNAによる遺伝子
発現抑制系で働くArgonauteタンパクにも含まれている重要な酵素である。この酵素の基質への結合は塩
基配列等に依存しないため、結晶化に適した特異的な複合体を得ることができず、本研究を開始した時
点(平成16年度)では本酵素の基質認識機構は解明されていなかった(その後 2005 年 7 月にBacillus
haloduransのリボヌクレアーゼHと基質の複合体の結晶構造が発表された;Nowotny et al. (2005) Cell 121,
1005–1016)。そこで、酵素と基質の特定の位置で架橋を形成させることにより安定で特異的な複合体を
得ることが可能ではないかと考えた。参考にしたのはハーバード大学のVerdineのグループが開発した方
法(Huang et al. (1998) Science 282, 1669–1675; Huang et al. (2000) Chem. Biol. 7, 355–364)で、基質となる
核酸中の1ヶ所にシスタミン(H2NCH2CH2S–SCH2CH2NH2 )が2位に付いたグアニン誘導体(F)を入
れ、その近傍に存在すると予測される位置にシステインを入れた変異体タンパク質と組み合わせること
により、特異的な複合体が形成された時にのみタンパク質−核酸間にジスルフィド結合の架橋が形成さ
れるというものである。
金谷教授らとの共同研究でこれまでに得られた大腸菌リボヌクレアーゼ HI に関する実験結果から、
基質として r(ATGGCAGCCCATGGAC)・d(GTCCATGGGCTGCCAT) という 16 塩基対のハイブリッド2
本鎖を設計し、RNA 鎖および3つ並んだ G のそれぞれに上記の修飾塩基を入れた DNA 鎖(FGG, GFG,
GGF)を化学合成した。酵素については、基質との構造モデルを構築し、DNA 鎖の近傍に存在すると予
測された Gln72, Gln76, Asp94 をそれぞれシステインに変えた3種類の変異体(Q72C, Q76C, D94C)が金
谷研究室にて作製された。
RNA鎖の 5'末端を 32Pで標識したのち、修飾のないDNA鎖および修飾塩基を入れた3種類のDNA鎖の
それぞれとハイブリッドを形成させ、まず野生型の酵素と反応させた。その結果、変性条件のポリアク
リルアミドゲル電気泳動により修飾のない2本鎖ではRNAの 5'末端から 6〜9 ヌクレオチドの断片が検
出され、修飾塩基を持つものでは 6 番目のAと 7 番目のGの間で共通の切断が見られたものの、Fと塩基
対を形成するCの両側では切断が起こらないことが明らかとなった。また、3種類の変異体酵素を使っ
て修飾のないRNA/DNAハイブリッドの切断を調べると、酵素側の変異は切断位置や活性にほとんど影
響しないことがわかった。
3種類の修飾基質と3種類の変異体酵素を組み合わせた9通りについて、切断に必要なMg2+イオンの
ない条件下で複合体中の架橋形成を調べた。Verdineらの方法に従って 1 mM 2-メルカプトエタノールの
存在下でRNA鎖の 5'末端を 32P標識したDNA/RNAハイブリッドと変異体酵素を混合し、SDS-ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動により分析したところ、3種類の基質のすべてについてQ72Cのみが複合体のバン
ドを与えた。また、これら複合体のバンドは 2-メルカプトエタノールの濃度を高くすることにより消失
したことから、ジスルフィド結合による架橋であることが示された。次に、架橋形成を行ったのちMg2+
イオンを添加して変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析すると、架橋された複合体中でも切断反
応が起こること、およびDNA鎖の修飾位置に依存して切断位置が変化することがわかった。切断位置は
RNA鎖の 5'末端から 12,13 番目の間(FGG)、11,12 番目の間と 12,13 番目の間(GFG)、10,11 番目の間
と 11,12 番目の間(GGF)であり、最初に構築したモデルから予測される切断位置にほぼ一致していた。
この実験ではFGGのDNA鎖を用いた場合に均一な複合体が形成されることが示されたが、他の2つの基
質を用いた場合にはこの酵素の基質結合ドメインの一部がDNA/RNAハイブリッドの外側にはみ出すた
めに酵素と基質の相対的な位置に若干のずれが生じると考えられる。以上の結果から、ジスルフィド結
合による架橋形成は塩基配列等に特異性のない複合体形成において位置特異性を持たせるために応用
可能であることが明らかとなり、この系においてはFGGのDNA鎖を持つ基質とQ72C変異体の組み合わ
せが結晶化に適していることが示唆された。
発表論文、口頭発表
ラジオアイソトープ総合センターを利用した研究では、まだ発表はありません。
環境中の放射能動態の基礎的検討
Radiochemical Study of Radionuclides in the Environment
(RIセンター)斎藤直、山口喜朗
(Radioisotope Research Center) T. Saito and Y. Yamaguchi
例年春季に発生する黄砂現象は、中国大陸を起源とすることが知られているが、近年特に黄砂飛来
量の増加によって、さまざまな環境への影響がいわれるようになってきた。その飛来源の特定を目指
して、日本と中国大陸で採取した土壌試料の比較測定を行った。放射能測定は、井戸型ゲルマニウム
検出器を用いたγ線スペクトロメトリによった。また、元素分析をICP-MSを用いて行った。
γ線測定では、天然放射性核種
226
Ra(t 1/2 =1600y)、
210
Pb(t 1/2 =22.3y)などと人工放射性核種
137
Cs(t
1/2 =30.2y)が検出され、特に後2者の存在比から時間情報が得られないかを検討している。元素分析結
果では、存在率の低い元素に注目して、特異性を見出せないかを調査している。
他の環境試料として、チェルノブイリ原発事故関連試料を測定し、汚染核種
137
Cs(t 1/2 =30.2y)の分
布が表面土層で平衡状態となったのち、動植物の食物連鎖でどのように濃縮されていくかを検討して
いる。
さらに別の環境として、非密封放射性同位元素を取り扱う作業環境におけるRI濃度測定について検
討した。そこでは短寿命PET核種
18
F(t 1/2 =110m)を想定して、その検出感度がNaIシンチレーション検
出器を用いる全γ計数による場合と、Ge半導体検出器を用いるγ線スペクトロメトリによる場合とで
どちらがすぐれているかを比較した。バックグラウンド計数率から、Ge検出器による消滅放射線ピー
+
クの検出限界は0.035cps、すなわち1.1β /sと計算され、NaI検出器の全γ計数の検出限界は同様に0.30c
+
ps、すなわち1.0β /sと計算された。計数効率は、
して決めた。気中
18
-6
85
Kr線源(1.3kBq)から放出される514keVγ線を利用
3
F検出限度は5×10 Bq/cm に相当するが、両法ともに同程度の感度であることが
わかった。
なお、実際の試料にあっては、ダストに含まれるラドン系列核種などによるバックグラウンドの増
加が見られるために、上記の数値は達成困難であることも判明した。そのため、全計数の増加では消
滅放射線由来と判断できないため、スペクトル測定が優位であると結論できる。しかし、いずれの方
法によっても法定濃度限度値の100分の1以下の濃度までは、容易に検出可能であることがわかった。
発表論文
1. 「国立大学におけるRI取扱作業室の空気中RI濃度測定」
斎藤直、小嵜正彦、江口朋宏、山口喜朗、KEK Proceedings 2005-4 (2005), p.210.
口頭発表
1.「作業環境測定における短寿命陽電子放出核種の検出」
斎藤直、日本放射線安全管理学会第4回学術大会(京都、2005年11月).
2.「作業環境測定におけるPET核種の検出」
斎藤直、第7回環境放射能研究会(つくば、2006年3月).
メスバウアー分光
Mössbauer Spectroscopy
(RI センター) 斎藤直、那須三郎、(薬) 川瀬雅也、(基礎工) 森本正太郎
(RI research center) T. Saito, S. Nasu
(Graduate School of Pharmaceutical Sciences) M. Kawase
(Faculty and Graduate School of Engineering Science) S. Morimoto
今年度は57Fe、119Snメスバウアー分光による研究を行った。今年度は以下のテーマのメスバウアー分光によ
る研究を行った。(a)鋼材表面さびに含まれる鉄酸化物・オキシ水酸化鉄、 (b)Fe二核錯体、 (c)常圧・高圧下
のFe-N系化合物、(d)高圧下のFe2O3、(e)高圧下のFe-Ni合金、(f)Sn固溶-Ni基合金(照射効果)、 (g)磁場誘起金
属-絶縁体転移を示すFe添加Mnペロブスカイト酸化物、(h)価数混合状態を示すFeホウ酸塩、(i) 含有Fe新奇Np
化合物、(j) 新奇含Feリン酸塩、(k) 含Fe-Snガラス、(l)含Fe
低次元鉱物。
ここでは、進行中の含 Fe 低次元鉱物について述べる。
FePb4Sb6S14は天然にJamesonite(毛鉱)として産出し、近年、
松下らにより人工的に合成された[1]。この構造では、FeS6八
面体が擬一次鎖を形成し、c軸に沿って伸びている。33.5 K
以下での反強磁性的振る舞いが示され、有効磁気モーメン
ト(peff = 4.41 μB)は高スピン状態のFe2+を示唆する[1]。
B
本研究では57Feを 20%富化した試料を新たに作製した。
メスバウアースペクトル(Fig. 1)は 15 Kより低温側で磁気分
裂成分の増大が見られる。ただし磁化曲線の極大の温度
(33.5 K)とは調和的でない。
室温ではアイソマーシフト(以下、IS):0.75 mm/s、四極
子分裂(以下、QS):0.91 mm/sの非対称doubletで解析される。
この非対称性の原因は、現在検討中である。やはりFeS6八
面体の一次元鎖を有するFeSb2S4のIS:~1.1 mm/s、QS: ~
2.7 mm/sと比べて、ともに小さい。
10、8、4 Kでは、(i)(内部磁場:小)+ (QS:大)の (複雑に
分裂した)成分と、
(ii)(内部磁場:大)のsextetの 2 成分で解
析された。成分(i)の詳細な解析には、エネルギー固有値計
Fig. 1. Mössbauer spectra of synthetic
算に基づく必要があり、現在検討中である。現状では(内部
Jamesonite
磁場:小)+(QS:大)の成分(i)を便宜上 7 つの成分の組合せ
temperatures.
(FePb4Sb6S14)
at
various
(原理的には 8 つ)、(内部磁場:大)+(QS:小)の成分(ii)をsextet
で解析した。4 Kでは成分(ii)は~13%の吸収を占める。その内部磁場は~34 T、IS~0.64 mm/sと解析される。
またこの値はFe2+の典型的な値と比べて小さいように思わ
れる。なおISの導出にはQSの導出が必須となるが、成分(ii)
のsextetの内 1 本目:~-4.8、2 本目:-2.6、6 本目:~6.3 mm/s
が現れた考えた。
低温での成分(i)のメスバウアーパラメータの温度依存
性をFig. 2. に示す。内部磁場の大きさが低温ほど小さいが、
この原因については明らかでない。一方、成分(i)のISは 4 K
において~0.89 mm/sと推定している(7 成分のISと面積の
比率との加重平均)。この値はFe2+を示唆する。
謝辞
試料を提供いただき有益なご議論をいただきました東
大物性研の松下氏、上田教授に感謝致します。また冒頭に
Fig. 2. Mössbauer parameters of synthetic
Jamesonite (FePb4Sb6S14) at low temperatures.
The dashed lines are guides for eyes.
挙げた研究は進行中の研究であるが、それぞれ (a)住金総
研、上村氏、(b)甲南大理、酒井教授、(c)、(e)日大量子科研、川上講師、(d)海洋研、佐多氏、(e)法政大工、井
野教授、(f)京大原子炉、義家教授、(g)、(h)帝京大理工、中村講師、(i)東北大金研、本間助手、(j)京大化研、
高野教授、(k)産総研大阪センター、赤井氏らとの共同研究であり、ここに記して謝意を表します。
参考文献
[1] Y. Matsushita and Y. Ueda, Inorg. Chem. 42, 7830 (2003).
[2] K. Łukaszewicz et al., J. Sold State Chem., 162, 79-83 (2001).
論文発表
(1) T. Kamimura, S. Nasu, T. Segi, T. Tazaki, H. Miyuki, S. Morimoto and T. Kudo, "Influence of cations and anions on
the formation of β-FeOOH", Corrosion Science, 47(10), 2531-42 (2005).
(2) Y. Homma, S. Nasu, D. Aoki, K. Kaneko, N. Metoki, E. Yamamoto, A. Nakamura, S. Morimoto, H. Yasuoka, Y.
Ōnuki and Y. Shiokawa, "Magnetically induced quadrupole splitting and hyperfine field in NpFeGa5", Physica B:
Condensed Matter, 359-361, 1105-7 (2005).
学会発表
(1) 森本、松下(東大物性研)、上田(東大物性研)、那須、「擬一次元硫化物FePb4Sb6S14の57Feメスバウアー分光」
、
日本物理学会(京都、2005 年 9 月).
(2) 伊藤、川上(以上、日大量科研)、那須、森本、斎藤、高橋(阪大産研)、「γ'-Fe4N の高圧下メスバウアー分
光」、金属学会(東京、2006 年 3 月).
(3) 上村、和暮、鹿島、幸(以上、住金総研)、那須、森本、「高飛来塩分環境下における鋼の大気腐食生成物
の解析」、鉄鋼協会講演大会(広島、2005 年 9 月).
(4) 森本、松下(東大物性研)、上田(東大物性研)、那須、
「天然低次元硫化物のメスバウアー分光」、KUR 専門
研究会(大阪、2005 年 11 月).
(5) 森本、「高原子価鉄酸化物のメスバウアー分光」
、第7回メスバウアー分光研究会(東京、2006 年 3 月).
医学部機能系実習 (RI)
Training course of handling radioisotopes for medical students
(医学部・放射線基礎医学)
(Fac. of Medicine)
本行忠志、石井裕、中島裕夫、梁治子
T. Hongyo, Y. Ishii, H. Nakajima,
H. Ryo
医学部では、3 年次学生を対象に、生理学を中心とした後期機能系実習を行っている。その一環として、放
射線基礎医学担当の、「RI の安全取扱い」と「放射線の生物作用」の 2 実習項目が組み込まれている。9 時
から 17 時までの実習を 2 日間、これを 1 サイクルとして、今年度は、平成 18 年 1 月 11 日から 1 月 26 日ま
で、計 6 サイクル行った。学生数は、16~18 名ずつ、計 102 名であった。卒業後、非密封 RI を扱う機会が多
いため、非密封 RI の安全取扱いを主としている。
「RIの安全取扱い」の実習については、まず、基礎編として、RIの物理学的性質を学習させている。32P水
溶液を与え、半減期、測定効率を考慮して適度に希釈させ、測定試料を作らせる。これを使って、1)吸収板
を用いた最大エネルギーの測定、2)距離と計数値の関係、3)計数値の統計的バラツキ、の 3 課題をGMカウ
ンターで行う。次に、応用編として、3H、32P、51Crを使った模擬汚染試料による汚染検査の実習を行う。既
知濃度の上記 3 核種をステンレス板に塗りつけて試料とし、スメア濾紙で拭き取り、GMカウンター、ガンマ
ーカウンター、液体シンチレーションカウンターで測定し、測定効率、拭き取り効率を理解させるとともに、
核種による測定器の選択、非密封RIの安全取扱い、廃棄物の処理方法、管理区域の意義を学ばせている。
「放射線の生物作用」の実習は、細胞の間期死についてのものである。マウスに X 線を照射し、次の日に
胸腺、脾臓を剔出してその白血球数を数えることにより、照射線量と間期死の関係を理解させる。マウスの
実習は医学部動物実験施設で行っている。
医学系研究科放射線取扱実習
Safety Handling of RadioIsotopes for Students
(遺伝子治療学講座)青田聖恵、(精神医学講座)田上真次、(RI管理室)谷川裕章、小田茂樹
(Division of Gene Therapy Science)Kiyoe.Aota
(Psychiatry and Behavioral Proteomics)Shinji Tagami
(Radio Isotope Lab.)H.Tanigawa & S.Oda
本実習は、当学部RI使用施設への立入前教育訓練の一環であり、非密封放射性同位元素の使用経験が全くな
い新規登録者を対象としている。実施は通年、春と秋に数日間行われているが平成17年度は計4日間、49人
が受講した。
実習の構成は、RI取扱前の教育訓練としての障害防止法、本学放射線障害予防規程等に準拠した講義、なら
びに放射性同位元素等の取扱実習からなり(計4時間)、基本的な取扱と、取扱上での安全の確保を重点に行っ
ている。取扱実習に先立つ講義は、「放射性同位元素とは」から始まる基礎的な事項から説き起こし、医学領域
において使用することの多い核種、その崩壊形式、半減期、エネルギー等それぞれの性質を解説した。次にそれ
らの核種を使用する上で必要な放射線測定器の動作原理、測定法等について述べ、RIを用いた実際の実験上で
起こりうる汚染、被ばく等に対する予防的な実験操作、対処の方法について説明した。
実習は日に1回行われ、対象者約12名を4グループとし、1グループにつき1名の指導教官がつき、海外留
学生には必要に応じて通訳者を伴い実施した。
実習の内容は「実験器具に汚染の可能性がある、いかに対処すべきか」を主題とし、受講者には未知の核種を
用いて汚染をつくらせ、測定、除去する過程においてRIの安全取扱を学ばせることが目的となっている。具体
的な内容を次に示す。
1.
汚染した器具を想定したプレートを用意し、未知の3核種(3H,32P,51Cr)を10倍に希釈した後、0.1ml
分注し、プレート上に滴下する。
2.
GMサーベイ及びシンチサーベイメータを使って核種を同定させ、スミア法によるふき取り試料(プレー
ト汚染部位)を作成し各核種に応じた放射線測定器を選択して測定する。
3.
作製した標準試料との比較によって測定器の測定効
率、スミア法のふき取り効率等を求める。
4.
実習終了後、使用器具、机上、床等の汚染検査を行
い、その結果について汚染検査報告書を提出する。
以上の実習過程を通じて各核種に対する、最適なしゃへい材、測定装置、汚染除去法等を習得させ、実習終了
後には機器の測定効率、拭取り効率などを算出し、結果について考察を加え教育訓練のまとめとした。
最後に医学系研究科放射線施設において、施設使用に関する簡単なオリエンテーションを行った。
基礎セミナー
First-year Seminar,
科学のなぞと不思議
II
Mysteries in the Frontiers of Science II
(大学院工学研究科 電子電気情報工学専攻) 宮丸広幸
基礎セミナー受講生 1,2年生 (約20名)
(Graduate School of Engineering) Hiroyuki Miyamaru
基礎セミナー受講生(新入生ならびに2年生、約20名)を対象としてくらしの中の放射線を実感す
るというサブタイトルの下、X線透過、減弱の放射線計測に関する基礎実験ならびに自然放射線の測定
等が RI センター吹田本館で行われた。実験の内容は以下の通りである。
1)密閉標準線源を用いた放射線の透過、減弱測定
2)まわりのものに含まれる自然放射線の測定(ベータ線測定)
3)霧箱の作製と放射線の観察
4)半導体X線検出器による放射線測定
5)空気中に含まれる自然放射線の捕集と測定、半減期の算出
放射線安全協会から貸与された放射線測定器“はかるくん”を受講生が一人一台利用して上記実験を
行った。1)については一定距離に置かれた密閉標準線源と検出器との間に各種の金属板を配置し、そ
の強度の減弱を測定した。また距離の変化による応答についても測定した。2)についてはカリ肥料、
るつぼ、マントル、蛍光塗料、昆布など自然放射線が含まれているものを対象としてベータ線測定を主
に行った。3)についてはドライアイス、黒画用紙、プラスチックケースなどを準備し、霧箱を各グル
ープで作成させ、マントル切片から放出されるベータ線の飛跡を観察した。4)についてはCdTe検
出器を用いて、主に低エネルギーのX,γ線のスペクトル測定を行った。5)については、掃除機の吸
引機能を用いて空気を捕集し、濾紙に付着した自然放射性物質由来のベータ線を測定した。
これらの実験を通して、放射線の性質の理解を深め、放射線計測の基礎知識を習得した。さらに自然
放射線の存在や放射線の遮蔽について実験的に学習することができた。また本実験の一部はRIセンタ
ー所有の各種放射線測定モジュールと本研究室に所有する検出器を組み合わせることで実験が可能と
なった。本実験にあたり器具の破損や放射線取り扱いの不備もなく無事に全日程を消化することができ
た。放射線の測定に関する設備が整っているため受講学生が課題に時間をかけて取り組むことができ、
放射線計測への理解の向上に結びついた。
理学部化学系放射化学学生実習
Practica1 Program of Radiochemistry in Chemical Experiments 1 for Chemistry Students
(大学院理学研究科化学専攻)篠原厚、高橋成人、佐藤渉、吉村崇、
二宮和彦、斎宮芳紀、北本優介
(理学部化学科)3 年次学生 80 名
(Department of Chemistry, Graduate School of Science) A. Shinohara, N. Takahashi, W. Sato, T. Yoshimura,
K. Ninomiya, Y. Itsuki, Y. Kitamoto
(Department of Chemistry, Faculty of Science) 3rd undergraduate students
理学部化学科 3 年次学生対象の必修科目として、化学実験 1(分析化学、放射化学、物理化学)のうち放射化学の実
習を 4 月 13 日から 6 月 16 日までの期間行った。学生は7つの班(1,2,3,6,7 班 12 名、4,5 班 10 名)に分かれて 2
班ずつ交替で、豊中分館、実習棟講義室、3F の測定実習室と放射化学実習室にて 6 日間の放射化学学生実習を受
けた。実習の具体的な内容を以下に記す。尚、実習に際しては放射線作業従事者の資格を満たすために、これらの
カリキュラムに先立って、2 年生時に 6 時間半の R1 の安全取扱いに関する講習を行った。
第一日:実習棟 2 階の講義室にて学生が実習する課題Ⅰ、Ⅱの実験内容の説明、管理区域への入退出方法、RI 取扱
に関する注意等を受けた後 2 班に分かれて 3 階の実習室へ入り実習を始めた。
第二日目以降: 課題Ⅰ、Ⅱの実習を行った。
第 4 日目には課題の交替を行った。
課題 I の内容:GM 計数管と Ge 検出器を用いた放射線測定
測定実習室にて 2 名 1 組で密封線源を用いて放射線の測定実験を行った。市販の GM 計数管を用いて、計数管のプ
ラトー特性、分解時間を調べた。また Sr-90 を用いてβ線の最大エネルギー測定などを行った。Ge 検出器のネル
ギー分解能の測定、Ge スペクトロメーターのエネルギー較正を行った。さらに課題として与えられた未知線源に
ついてGM計数管を用いたエネルギー吸収法によるβ線のエネルギー測定とGe検出器によるγ線スペクトルの測定
より未知核種の同定を行った。
課題Ⅱの内容:化学分離法とγ線測定法による核種の確認
放射化学実習室にて 2 名 1 組で非密封 RI を用いて化学分離、放射線測定の実験をおこなった。Mn-54 と Cs-137 の
混合溶液から、沈殿法を用いて各アイソトープを分離し、その放射能純度と化学収率を NaI(T1)検出器とマルチチ
ャンネルアナライザーを用いたガンマ線スペクトロメトリーによって求めた。
また Mn-54 除去後の溶液からイオン
交換分離で Ba-137m および Cs-137 をそれぞれ分離し、Ba-137m(半減期 2.55 分)の減衰と成長を NaI(T1)検出器で
測定し、得られた減衰、成長のグラフより半減期を求めた。
実習終了後、無機液体、可燃物、難燃物等の放射性廃棄物の処理を行った。実験器具、実験着のモニター、実験室
床面のスミアーテストを行い、汚染がないことを確かめた。
理学部物理学実験
放射線測定
A Prac ti cal pr ogram of exp eri m en tal p hys i cs for s tu de nt s :
" Radi ati on d et ect i on and me as ur eme nt "
(理学研究科物理)福田光順、三原基嗣、清水俊、武智麻耶、松宮亮平、長友傑
( De p t. o f P h ys .) M . F u ku da , M . M i ha r a , S . S h im i zu , M . Ta k e c hi , R . M a ts um i ya , a nd T . Na g a to m o
平成17年度理学部物理学科3年生を対象とした、実験物理学実習「放射線測定」が、豊中分
室実習棟内の物理系実習室にて年度を通して行なわれた。
実習の目的は、
1 . 放射線の測定方法、および測定装置に関する一般的技術を習得する。
2 . 放射線を測定することによって、放射線が物質内の原子と行なう相互作用に対する理解を深め
る。
3 . 放射線のエネルギー、強度等を測定することにより、放射線の種類や性質について理解を深め
る。
ということにある。
実習は、3種類の実験装置を用いて行なわれ、内容は以下のとおりである。
( 1) GM計数管
i ) プラトー特性の測定
i i ) ポアソン分布の測定
i i i ) 分解時間の測定
i v) γ線吸収係数の測定(Al , Fe , Pb)
v) 永久磁石によるβ線エネルギースペクトルの測定
( 2) NaI ( T l) シンチレーション・カウンター
i ) 1 3 7 Cs , 6 0 Co , 2 2 Na のパルスハイト・スペクトルの測定
i i ) スペクトルのエネルギー較正
i i i ) 未知試料( 6 5 Zn, 5 4 M n, 1 3 3 Ba, 1 5 2 E u)の核種の同定及び強度の測定
i v) 鉛版によりコンプトン散乱されたγ線のエネルギーと角度の関係の測定
( 3) Si 半導体検出器
i ) 2 4 1 Am のα線スペクトルの測定
i i ) バイアス電圧とパルスハイト、ピーク幅の関係の測定
i i i ) Al 薄膜内のエネルギー損失による膜厚の測定
一回の実験参加者は通常10名であり、2名ずつが1組となって、それぞれが上記の3テーマ
を5週間、延べ8日間または9日間にわたり実習した。平成17年度内に実習を受けた学生総数
は59名であり、実習の総時間数は約250時間であった。
基礎セミナー”原子核を見る”
First-year Seminar "Feel Nuclei Yourself"
(理学研究科物理)松多健策、福田光順
(Dept. of Physics) K. Matsuta and M. Fukuda
新入学生対象の基礎セミナー”原子核を見る”を物理系実習室において実施した。 セミナーの目的は、既存又は自作の測定
器を用いて、放射線を計測することにより、放射線とは何か、放射線はどうすれば観測できるか、放射線の物質との相互作用、
放射性原子核の崩壊、等を実地に楽しく学習する事にある。また、電子の素電荷測定装置と比電荷(e/m)の測定装置を用いて
電子の特性を測定する事により、原子や原子核をより身近に実感する事もセミナーのねらいに加えている。
放射線は今日、工業や医療に欠かす事の出来ない技術になっているが、放射線に対する知識はあまり普及しておらず、大学
教育にできるだけ多く放射線教育を取り入れて行きたいと考えている。近年、高校では、実験を交えた授業を行い難くなってき
ている上に、放射線や原子・原子核を題材にした実験は困難である。実験を通して、放射線というこれまであまり触れた事のな
い題材を、楽しく学習し実感できる機会になればと考えている。
基礎セミナーは全学向けで、本年度は4名が受講した。学生は実験を主体にした自主実地学習を行う。今年度は以下の実験
課題を行ったが、この課題の内の一部を RI センター物理系実習室にて行った。
(1)ミリカンの装置による電子の素電荷測定。
(2)電子の比電荷測定。
(3)拡散型霧箱の製作とα線の観測。
(4)既製の GM 計数管を用いた身の回りの放射線(147Pm, 40K, 222Rn の娘核)の観測。
(5)ガンマ線の吸収の測定。
ミリカンの装置と比電荷測定装置により、電子の電荷と質量を実際に測定し、既知の値と比較した。基本的物理量の測定を実
際に自分達で行ってみて、原理、法則を利用して測定方法を工夫する事の大切さを実感してもらった。また、目には見えない放
射線をどうしたら検出できるのか、霧箱の製作とそれを用いたアルファ線の飛跡の観測を通して、学習した。また、既製の放射線
計測器により物質によるガンマ線の吸収の違いを実感し、これから物質との相互作用を学習した。さらに、KCl やカリ肥料等の
40K を含む物質、空気中の塵に含まれる 222Rn の娘核の放射線測定や蛍光灯のグロー球等の 147Pm を含む機器、Th を含む製
品やタイルの光沢面等の測定を行い、身の回りの放射線についての学習を行った。
最後に、発表会を行って学習・研究の成果をグル−プ間で討論した。学生はセミナーを通じて、実験の楽しさ、チームで新しい
実験に取り組む姿勢、プレゼンテーションの重要性、等を無理なく学ぶとともに、放射線に関する正しい知識を身につける。
基礎工学部電子物理科学科物性物理科学コース3年次物性実験「放射線測定」
Practical Program of Experimental Physics for Students (Radiation measurement)
(基礎工学研究科、物質創成専攻)半沢弘昌
(基礎工学部、物性物理科学コース)3年次学生(60名)
(Graduate School of Engineering Science) H.Hanzawa
(School of Engineering Science) the 3rd undergraduate students
本年度、基礎工学部電子物理科学科物性物理科学コース3年次学生60名が、ラジオアイソトープ総合セ
ンター豊中分館の物性実習室において物性実験「放射線測定」を受講した。物性実験では、2名ないし3名
1組の学生が、毎週、火、木曜日の第3時限目から実験課題に取り組み、1課題に4日または5日間の日程
で実験に取り組んだ。「放射線測定」は、物性実験の課題の中で本コースの学生には必修課題である。
実験の目的は、放射線に対する基礎的知識を学ぶことと放射線計測に必要な測定装置及び測定方法の技術
を習得することである。実験では、ガンマ線標準線源キットの密封線源から放出されるガンマ線をGM計数
管またはシンチレーション検出器を用いて計測し、ガンマ線の強度やそのエネルギーを測定した。
実験の第1回目には、当施設実習棟講義室において放射線についての基礎知識、放射線の人体に与える影
響、障害防止及び各種線源の取扱いに関するビデオ教材を用いた講習を行い、併せて実験を始めるに当たり
物性実習室を含む当施設の利用上の諸注意及び実験装置の取扱いについての説明を行った。
毎回の実験では、
一度に2組の学生が下記のいずれかの実験課題に取り組んだ。
(1)GM計数管の製作とその特性について
Qガスを用いたガスフロー型GM計数管を製作し、オシロスコープ及びパルスカウンターを用いてGM計
数管からのパルス波形を観測し、パルス波形の形状や大きさ、始動電圧などについて定量的に測定した。作
製したGM計数管のプラトー特性を観測し、その測定からGM計数管の始動電圧、パルス波形の変化、プラ
トー領域の計数特性などについて考察した。また、パルス波形の観測からGM計数管の分解時間を求め、数
え落としの割合を計算してGM計数管の使用可能条件について吟味した。
(2)シンチレーション検出器によるガンマ線のエネルギー測定について
NaI(Tl)シンチレーション検出器とマルチチャンネル波高分析器を用いて137Cs、60Coなどの
密封線源から放出されるガンマ線のエネルギースペクトルを観測した。エネルギースペクトルのデータ解析
からスペクトルに示されるピークエネルギーを求め、
各線源から放出されるガンマ線のエネルギーを決定し、
マルチチャンネル波高分析器のエネルギー較正曲線を求めた。また、測定に用いた密封線源の中から一つの
線源を選択し、アルミニウム板に対する質量吸収係数を求めた。
実験の日程の最終日には発表会を行い、選択した実験課題について実験結果を報告した。併せて各自が実
験内容について考察した実験レポ-トを提出した。
実験中の学生の被爆線量は、半導体式デジタル線量計の検出限界以下であった。
平成 17年 度共 同利用 一 覧
吹 日本館
共 同利
所属部局
利用 申請者
研
究
題
目
用者数
摂 取放射性物質 の体 内動態 のシ ミュ レー シ ョン と低線量 ・低線 量率放射線 の
生物影 響
大成
9
〃
本行 忠 志
1 1 5
医学部機 能 系実習 (RI)
〃
谷川 裕 章
1 0 4
放射線取扱 実習
学
医
野村
〃
4
有機廃液 焼却処理
細井 理 恵
4
有機廃液 の焼却
八木 清 仁
3
メ スバ ツア ー 分光測 定
西川 淳 一
4
真核生物 の遺伝子発現機構 に関す る研 究
飯田 敏 行
6
高 エ ネ ル ギー粒 子線 照射場 のキ ャラクタ リゼ ー シ ョンに 関す る研 究
〃
西鳴 茂 宏
3
電離及び非電離放射線 の生 態影響 の解析
〃
白井 泰 治
1 7
〃
泉
伸
7
〃
宮丸 広 幸
2 2
〃
〃
〃
薬
学
学
工
佳
吉岡
〃
潤子
揚電子消滅 に よる材料研 究
陽電子消滅 法 に よる ソフ トマ テ リアル の評価
基礎 セ ミナ ー 科 学 の なぞ と不思 議 Ⅱ
2
ア ンチ コ ンプ トン同時計数法 を用 いた低 バ ックグラ ウン ド計測
1
未 臨界実験室 の トリチ ウム汚染 の測 定
験 室 排水 の γ線測 定
〃
〃
1
工 学研 究科 RI実
生命 機 能
中岡 保 夫
2
電磁界 と電離放射線 の微 生物 に対す る相乗作用
産
中鳴 英 雄
4
金属お よび金属 間化合物 にお け る拡散
蛋 自 研
西尾 チ カ
1
放射性有機廃液 の焼却
生物 工学
仁平 卓 也
3
放繰菌オ ー トレギ ュ レー ター ジセ プ ター の研 究
R
清水喜久雄
4
DNAポ
山口 喜 朗
2
環境放射能測定 に関す る基礎 的検討
研
I
〃
リメラー ゼ の生化学的 解析
工
学
飯田 敏 行
6
単 一 細胞 の放射線 照射効果 に関す る研 究
産
研
立松 健 司
4
液体 シンチ レー ター の焼却
治
3
HPLCを
生物 工 学
関
達
用 いた RI標 識 され た糖 質 の解析
平成 17年 度共同利用 一 覧
豊 中分館
共 同利
所属部局
利用 申請者
研
究
題
目
用者数
〃
史
忠 厚
学
理
岸本
篠原
〃
′
′
〃
″
1 9
二 重 ベ ー タ核 分光法 に よる 中性微子質量及び右巻 き相互作用 の検証
2 0
放射性核種 を用 いた物性研 究
2 0
重核 ・重元素 の核化学的研 究
1 2 0
浩
化 学実験 1の うち放射化 学 の実習
金澤
1 9
イ オ ン輸送性 タンパ ク質お よびその制御 因子 の解析
〃
松多
2 4
基礎 セ ミナ ー
〃
福田
8 7
物理学実験
〃
米崎
5
大腸菌/T4フ
〃
高木
9
植物細胞機 能 の解析
基礎 工学
半沢
6 2
R
斎藤
2
環境 中の放射 能動態 の基礎 的検討
策
健
〃
順
光
朗
哲
吾
慎
昌
弘
直
I
“
"お
よび物理 学 セ ミナ ー
原子核 を見 る
“
"
放射線測定
ァー ジにお けるmRNA分
基礎 工 学部電子物理科学科物性物理科学 コー ス 3年 次物性 実験
〃
〃
7
基礎 セ ミナ ー 「
環境 とアイ ノ トー プ 」
〃
〃
4
メ スバ ウアー 分光測 定
6
損傷 DNAの
基礎 工 学
岩井
成憲
解 と制御
分子認識 に関す る研究
Fly UP