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心の絆

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心の絆
優秀賞
心の絆
周南市立熊毛中学校2年
広実
未央
教室にいると廊下から声がした。「昨日めっちゃおもしろかったんやけど!」「そうそ
う、こっちはふざけて言っとるのに、本気で真にうけとるんかね?」と笑っていたのだ。
私はグループのチャットを見た時以上に嫌な気持ちになり、同時にとてつもなく腹が立っ
た。しかし、チャットを見た時と同じように、私にはそれを注意する勇気はなかった。
私が中学校入学してすぐのことだ。私は教室に入ったとたん、初めて見る子ばかりで、
がちがちに緊張していた。友達ができるかどうか不安だったのだ。自然に声をかけてくれ
る子がいたから、私は気持ちがとても楽になった。でも、新しく友達になった子のほとん
どはLINEをしていたので、LINEでの話に追いつけなくなった。だから仲間はずれ
にされるのが嫌で私も携帯を買ってもらった。
それから二ヶ月くらいたってからのことだ。私はもうLINEに慣れて、色々なグルー
プに入っていた。LINEの通知音が「ピロン」と鳴った。見ると、とあるグループから
だった。その後、そのグループから何度も何度も通知が来たのだ。宿題をしていた私は、
「うるさいな。」と面倒くさそうにつぶやきながら、通知音をオフにしようと思い画面を
開いた。見た瞬間、私は目を疑った。「退会しろ。」と言ったり、変なあだ名で呼んだり
と、ある人をあおるような発言をしていたのだ。そして言われた人が本当に退会すると、
おもしろがっているのか、またグループに招待するのだ。私は見ていて嫌な気持ちになっ
た。やめればいいのにと思った。しかしそれを送信する勇気は私にはなかった。
「LINE」、それは携帯やパソコンに対応したコミュニケーションアプリである。チ
ャットや通話、グループチャットも無料で行え、スタンプも豊富である。だから、中高生
にも人気のアプリなのだ。しかし、ニュースでよくあるネットでのいじめの問題。その中
でも最近目立っているのが、そのLINEでのいじめである。いじめていた子はすぐに忘
れてしまうものだが、いじめられていた子の傷は一生残る。その上、LINEは残るもの
だから私はこれがもっとも残酷ないじめだと思う。LINEは便利なコミュニケーション
アプリだが、使い方を少し間違えただけで、人と人との関係を断ち切る、残酷なツールに
豹変してしまう。LINEで顔が見えないからといって、おもしろ半分でからかいをする
ことが、やがていじめとなり自殺へと発展していくこともある。相手の顔が見えないから
こそ相手の心の痛みに鈍感になり、エスカレートするのかもしれない。
私はあの時、勇気を出して止められなかったことをとても後悔している。いじめを止め
ることは難しいことだ。注意をすれば、自分もいじめられるのではないかという恐怖感が
あるからだ。しかし、このままではいけない。勇気を出すためには何が必要なのだろうか。
もし、私がいじめを受けていたら、私の親は自分の命に換えてでも私を守ってくれるだ
ろう。私だって、もし妹や弟がいて、学校でいじめられていたら、私はいじめっ子に「や
めて」と言えるだろう。それは家族という絆があるからだ。だから、自分がどうなっても
相手を守りたいという強い気持ちになれるのだ。そう考えると、なぜ私がLINEの出来
事で勇気が出せなかったかが見えてきた。私は、いじめている人ともいじめられている人
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とも、まだ太い心の絆で繋っていなかったのだ。だから、いじめられている人の気持ちを
親身になって考えられなかった。また、信頼関係で結ばれていなかったから、いじめてい
る人に「それはおかしいよ。」と注意できなかった。そして「大丈夫だろう。」と心の隅
で安易に考え、逃げていたのかもしれない。
では、人と人との心の絆はどうして作ればいいのだろうか。私は日常生活での人と人と
の関わりが鍵だと思う。直接会って会話して、お互いの顔を見て相手の気持ちを受けとめ
ること。一緒に泣いたり笑ったりけんかしたりして、その中から相手の気持ちを推し量り
自分の気持ちを伝えていくこと。いろいろな人と積極的に関わっていくことが大切だ。そ
の過程で心の絆はできていくのだと思う。太い心の絆で繋がっていれば、何でも言い合え
るし、お互いに成長できる。
ある日の道徳の授業はLINEについてのことだった。先生はスクリーンに「バカじゃ
ねえの。」と送信したLINEの画像を見せて、こう言われた。「皆はこの発言を冗談で
言っている感じか、本気で言っている感じかわかりますか?」皆はもちろん分からないと
答えた。そして、その授業があってからグループでのチャットは何か変わったような気が
した。
私たちはまだ未熟で失敗することもあるだろう。だけどこうやって一つひとつ勉強し、
積極的に人と関わりながら、互いの絆を築いていきたい。そして、いじめで苦しむ人がい
ない明るい社会を作っていきたいと思う。
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